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子供の喘息・アトピーは在胎期間に関連する

 子供の喘息とアトピー性皮膚炎は、在胎期間と関係するのだろうか。フィンランドで、早産児における7歳までの喘息治療および喘息とアトピー性皮膚炎による入院の必要性を評価する目的で、全国登録研究が行われた。その結果、前期/後期早産(32~36週)児では、正期産児よりも学齢期の喘息リスクが高いこと、一方でアトピー性皮膚炎による入院リスクは低いことが明らかになった。European Journal of Pediatrics誌オンライン版2016年2月22日号掲載の報告。 本調査は、1991~2008年の間にフィンランドで生まれた子供101万8,302人を対象に行われた。在胎期間に応じて、以下の4つのカテゴリに分類し、この分類に基づき、7歳時までの各疾患の罹患との相関を評価した。・超早産(32週未満、very preterm;VP)・前期早産(32~33週、moderately preterm;MP)・後期早産(34~36週、late preterm;LP)・正期産(37週以降、term control;term) 主な結果は以下のとおり。・喘息の薬物治療は、在胎期間が短い子供ほど多く受けていた(VP>MP>LP>term、それぞれ15.4%、8.0%、5.7%、3.8%)。・喘息による入院も同様の傾向が見られた(VP>MP>LP>term、20.1%、10.6%、7.3%、4.8%)。・MPおよび・LPにおける喘息の薬物治療が生じるリスクは、子供の性別(男児がより高リスク)、妊娠中の喫煙歴、妊娠糖尿病、人口呼吸器による加療などにより予測することができた。・アトピー性皮膚炎による入院は、在胎期間が長くなるほどリスクが高まった(term>LP>MP、罹患率は5.2%、4.7%、4.2%)。

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妊娠とメトホルミン-本当に「禁忌」なのか?-(解説:住谷 哲 氏)-492

 肥満人口の増加とともに、耐糖能異常を合併した妊婦の数も増加している。耐糖能異常合併妊娠は、妊娠前糖尿病(pregestational diabetes)、overt diabetes in pregnancy、妊娠糖尿病(gestational diabetes:GDM)に分類されるが、その管理目標は母児の周産期合併症を予防することにある。妊娠中の血糖管理の基礎は食事療法であるが、血糖降下薬を必要とする場合は少なくない。ある薬剤が妊娠中に使用できるかどうかについては、わが国には明確な基準がなく、米国FDAのpregnancy category(薬剤胎児危険度分類基準)を参考にすることが多い。妊娠中に使用できる血糖降下薬はインスリンのみで、他の血糖降下薬は「禁忌」と一般的に考えられているが、本論文で使用されたメトホルミンはカテゴリーBに分類され、実は妊婦に対して使用可能である(ただし、わが国の添付文書には妊婦への投与は禁忌と記載されている)。 GDMに対するメトホルミン投与の有用性が広く知られるようになったのは、2008年に報告されたMiG(Metformin versus Insulin for the Treatment of Gestational Diabetes)試験が契機である1)。この試験では、751例のGDM患者を、メトホルミン2,500mg投与群とインスリン投与群に分け、本論文とほとんど同様のアウトカムを評価した。その結果、主要評価項目では両群に有意差を認めず、胎児に対する有害事象の発症率も両群で有意差を認めなかった。しかし、試験で割り振られた治療を再度選択したいと答えた患者がメトホルミン群で有意に多かった。さらに、この試験で誕生した新生児の満2歳時の体格および体組成を比較した結果が報告されているが、メトホルミン投与群の母親から誕生した子供は、インスリン投与群に比較して、より皮下脂肪が多く内臓脂肪が少ないことが示された(MiG TOFU)2)。その後も、GDMに対するメトホルミンの有用性を検討した試験が行われ、それらを統合したsystematic reviewにおいては、インスリンに対するメトホルミンの優越性が結論されている3)。 以上述べたように、GDMに対するメトホルミンの有用性はすでに確立している。そこで、本論文においてはさらに一歩進んで、耐糖能異常を合併しない肥満合併妊婦に対するメトホルミンの有用性が検討された。対象患者は、高リスクの妊婦を選択する目的でBMI>35とされた。また、メトホルミン投与量不足の可能性を最小にするため、投与量は3,000mg/日とされた。その結果は、主要評価項目である新生児出生体重Zスコア中央値は両群間に有意差を認めなかったが、妊娠高血圧腎症(妊娠中毒症)の発症率は、メトホルミン投与群でオッズ比0.24 (95%信頼区間:0.10~0.61、p=0.001)に減少した。さらに、新生児の有害アウトカムの発症率も両群に差はなかった。 本試験およびMiG試験の結果からいえることは、その有用性に加えて、妊婦に対するメトホルミンの安全性であろう。当然ながら両試験において、乳酸アシドーシスは1例も発生していない。もちろん、今後も引き続きメトホルミン投与群の妊婦から誕生した新生児に対する長期的な観察が必要であることは言うまでもない。しかし、耐糖能異常合併妊娠のみならず、肥満合併妊娠も増加しているわが国においても、妊娠におけるメトホルミンの位置付けを再考する必要があると考えられる。

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性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

性差医療とその本質とは? 歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。この性差という個体の特徴における相違は、生物学的要因としてのホルモンバランスの違いなどがその原因として挙げられている。現代医学は、この性差を無視して成立しなくなったこともあり、性差研究を通して医療に反映させる性差医療が発展してきた。しかし、この性差医療に関し危惧されることがある。それは、性差がもたらすだろう損得を種々追求するがあまり、性差は個体の特徴の1つに過ぎないという本質を失念し、人種や年齢などの寄与度の高い危険因子の存在を無視・偏重して解析することであり、さらに性差がその疾患の予後を規定する普遍の定理かのような提起をしてしまうことである。このことは厳に慎まなければならない。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめる。本論文は、女性であることが心房細動の予後規定因子としてより強い心血管イベント/死亡リスクであるのか、30件のコホート研究、計437万1,714例を解析対象として行ったメタ解析研究である。 その結果、心房細動の各アウトカムに対する相対危険の男女比(女性/男性)は、全死亡:1.12(1.07~1.17)、脳卒中:1.99(1.46~2.71)、心血管死:1.93(1.44~2.60)、心イベント:1.55(1.15~2.08)、心不全:1.16(1.07~1.27)であった。したがって、心房細動は、女性であることが心血管イベントや死亡リスクに対し、より強い予後規定因子であると報告している。著者らはその機序として、女性のほうが男性より治療が遅れるのではないかということや、抗凝固薬による出血が多いことが、より強い心血管イベント/死亡リスクとなったのではないかとしているが、あくまでも著者らの推論の域を出ない。 各国の心房細動に対する抗凝固療法ガイドラインにおける性差 心房細動患者の生命予後に対する性差の影響に関しては、わが国も含めてこれまでも多くの研究報告がなされているが、その結果は混沌としていて一定の見解が得られていない。 フラミンガム心臓研究の38年に及ぶ追跡調査では、心房細動の危険度は高血圧があれば男性1.5倍、女性1.4倍とほぼ同等であったが、糖尿病があれば男性1.4倍、女性1.6倍高いという結果が報告された1)。 わが国の心房細動の有無と死亡リスクの関連を検討した、1万人以上の住民を登録したNIPPON DATA80では、非心房細動患者の死亡リスクを1としたとき、心房細動患者の循環器疾患死亡リスクは、男性で1.4倍、女性で4.0倍と多く、総死亡リスクは男性で1.4倍、女性で2.4倍と、女性において心房細動は全死亡あるいは心血管死の独立した危険因子であることが示された2)。しかし、この研究データは1980年~1999年の追跡調査より得られていることから、ワルファリンによる抗凝固療法が普及する以前を反映しているものと考えられ、現状に即応していないものと考えられている。 一方、最近では、心房細動患者の生命予後に関して、女性という因子はそれほど強い危険因子ではないのではないかという報告がなされている。デンマークで行われた、ワルファリン療法を受けていない心房細動患者7万例を登録したコホート研究によると、うっ血栓心不全、高血圧、および糖尿病といったCHADS2スコア1点のリスクと比較して、女性という性差のリスクがきわめて低いことが示された3)。 このような混沌とした結果を受けて、各国のガイドラインも異なった取り扱いをしている。2014年10月にアップデートされた、カナダの心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインでは、女性という因子のみはエビデンスがないと抗凝固の対象には入れないとしている4)。これに対して、2015年2月にヨーロッパ心血管プライマリケア学会から出された、心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインでは、65歳以上の女性あるいは75歳以上の男性であるならば、CHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断することとしており、女性という性差を心房細動の予後規定因子として重要視している5)。 わが国のガイドラインにおいては、65歳未満でほかに器質的心疾患を伴わない心房細動患者において、女性であることは単独の危険因子にならないとし、さらに65~74歳は性別にかかわらず考慮可となりうることから、単独因子として女性という性差は記載されていない6)。さらに、昨年5月に報告されたわが国のJ-RHYTHMレジストリを用いたCHA2DS2-VAScスコアの妥当性を検討した論文では7)、血栓塞栓症は男性(年1.6%)に比較し、女性(年1.2%)ではかえって少ないこと、CHA2DS2-VAScスコアから女性を除いたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で有用であり、さらに日本人では、65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないことから、かえってこれらの因子を含めると予測能が落ちるため、むしろCHADS2スコアで抗凝固薬の使用を評価するのがよいと結論付けられている。はたして女性は心房細動の危険因子なのか? これまでの結果から、心房細動患者に対する抗凝固療法の適応を考慮するとき、女性という性差をその危険因子として考えることよりも、やはり人種による差が大きいといわざるを得ない。その点、この論文は所詮欧米のガイドラインを構築するエビデンスに過ぎず、わが国のガイドラインを左右するほどの影響力は持ち合わせていない。 米国心臓協会 (American Heart Association)の活動として、“Go Red for Women”が提唱されている。この標語は、日本人にとってわかりづらい英語の表現であったこともあり、私が『女性の心血管疾患を減らすことを目的として、女性に積極的に呼びかけていこうという運動の名称』であると知ったのは、かなり経ってからである。米国における女性の心血管疾患罹患の深刻化が問題となっていることの一端であるが、わが国の現状とはかなり異なっているといわざるを得ない。参考文献1)Kannel WB, et al. Am J Cardiol. 1998;82:2N-9N.2)Ohsawa M, et al. Circ J. 2007;71:814-819.3)Olesen JB, et al. BMJ 2011;342:d124.4)Verma A, et al. Can J Cardiol. 2014;30:1114-1130.5)Hobbs FR, et al. Eur J Prev Cardiol. 2016;23:460-473.6)日本循環器学会ほか. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).PDF (2016.3.1参照)7)Tomita H, et al. Circ J. 2015;79:1719-1726.

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糖尿病患者への降圧治療、ベネフィットあるのは140mmHg以上の人/BMJ

 糖尿病患者に対する降圧治療は、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg以上であれば、全死因死亡リスクや心血管疾患リスクの低減効果が認められるものの、140mmHg未満では、逆に心血管死リスクが増大することが示された。スウェーデン・ウメオ大学のMattias Brunstrom氏らが、システマティック・レビューとメタ解析の結果、明らかにした。糖尿病患者への降圧治療は、同患者で増大がみられる心血管疾患リスクを低減するが、至適血圧値については議論が分かれている。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。糖尿病患者100例以上のRCTを分析対象に 研究グループは、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)、Medline、Embase、BIOSISを基に、システマティック・レビューとメタ解析を行った。 糖尿病患者100例以上を対象にした無作為化比較試験で、治療期間は12ヵ月以上、降圧薬対プラセボ、2種類の降圧薬対1種類の降圧薬の比較を行ったものや、目標血圧値の違いによる比較を行った試験を分析対象とした。 糖尿病患者の降圧治療について、ベースラインなどの血圧値の違いによる、死亡や心血管疾患発症への低減効果を検証した。 49試験、被験者総数7万例超についてメタ解析 49試験(被験者総数7万3,738例)について、メタ解析を行った。被験者のほとんどが、2型糖尿病の患者だった。 分析の結果、ベースライン収縮期血圧値が150mmHg超の群は、降圧治療により、全死因死亡(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99)、心血管死亡(0.75、0.57~0.99)、心筋梗塞(0.74、0.63~0.87)、脳卒中(0.77、0.65~0.91)、末期腎不全(0.82、0.71~0.94)のリスクが、いずれも有意に低減した。 また、ベースライン収縮期血圧値が140~150mmHgの群でも、降圧治療により、全死因死亡(0.87、0.78~0.98)、心筋梗塞(0.84、0.76~0.93)、心不全(0.80、0.66~0.97)のリスクが有意に低減した。 一方で、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg未満の群については、降圧治療により、心血管死リスクは増大し(1.15、1.00~1.32)、全死因死亡リスクも増大の傾向がみられた(同:1.05、0.95~1.16)。メタ回帰分析の結果、ベースライン収縮期血圧が低い人ほどアウトカムは不良で、心血管死(収縮期血圧値10mmHg低下ごとの相対リスク:1.15、95%CI:1.03~1.29、p=0.015)、心筋梗塞(同:1.12、1.03~1.22、p=0.011)については降圧治療による有意な悪影響がみられた。これらの結果を踏まえて著者は、「糖尿病患者で収縮期血圧140mmHg未満の人への降圧治療は、心血管死リスク増大と関連しており、ベネフィットはみられなかった」とまとめている。 なお、降圧治療のリスク低減効果について、治療達成収縮期血圧値(140mmHg超、130~140mmHg、130mmHg未満で分類)で分析した場合も、同様のパターンがみられた。

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Vol. 4 No. 3 ACC/AHA 脂質管理ガイドラインコントロバーシー その経緯と現在の考え

荒井 秀典 氏国立長寿医療研究センターはじめに米国のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が中心となって作成したNCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel)のガイドラインが2001年に発表され、そのガイドラインが2004年に改訂された。心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のための脂質管理に関しては、本ガイドラインが作成された米国だけでなく、アジアを含め多くの国々で脂質管理のガイドラインとして使われてきたと思われる。2008年頃よりNCEP-ATP IIIの改訂版であるNCEP-ATP-IV作成に向けた作業が行われていたが、結局NHLBIはその作成を断念せざるをえなかったと聞く。その後、American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)という米国を代表する循環器の学会が、NHLBIと共同で動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した1)。そのガイドラインは、これまでのガイドラインから180度転換を図るものであった。ACC/AHAガイドラインは、脂質異常症に関する3つのcritical questions(CQ)に対する回答の形で作成されており、質の高いrandomized controlled trial(RCT)とメタ解析の論文を中心に系統的にレビューし、作成された。したがって、フォローアップ期間の短いRCTやRCTのサブ解析などは採用されていない。ACC/AHAガイドラインは、これまで数多く実施されてきたスタチンによるRCTおよびそのメタ解析の結果をもとに脂質管理の指針が出された結果となっている。このため、実臨床とは解離したガイドラインとの批判もある。メタ解析についてはCholesterol Treatment Trialists' collaborationなどのメタ解析の結果から2-4)、ハイリスク群における高用量スタチンを推奨するガイドラインとなっている。スタチンによるASCVD発症予防効果が期待できる4つのグループを同定設定されたCQに対してシステマティックレビューを行った結果、スタチン治療による多くの心血管イベント抑制を示すエビデンスおよびそのメタ解析より、治療が有益と判断される以下の4つの患者群が同定された。その4つの患者群とは、「ASCVDを有する患者(2次予防患者)」、「LDL-コレステロール(LDL-C)が190mg/dL以上の患者(続発性は除く)」、「LDL-Cが70~189mg/dLで40~75歳のASCVD既往のない糖尿病患者」、「LDL-Cが70~189mg/dL、ASCVD既往も糖尿病もない40~75歳で、10年間のASCVDリスクが7.5%以上(10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく)の患者」である。治療方針は、図に示すようなアルゴリズムに従って決定される。まず、2次予防で75歳以下の患者に対しては高用量スタチンによる治療を行うべきであり、76歳以上の患者には中用量スタチンによる治療を行う。1次予防においては、家族性高コレステロール血症など極めて冠動脈疾患の発症リスクの高い原発性高脂血症に対する治療の必要性から、LDL-Cが190mg/dL以上で21歳以上であれば、高用量スタチン治療を行う。わが国のガイドラインにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上ある場合には家族性高コレステロール血症の可能性が強くなるため、スタチン治療を考慮すべきであるとしているが、家族性高コレステロール血症でなければ、高用量スタチン治療を推奨しているわけではない。次に40歳から75歳までの糖尿病患者は1型、2型を問わずスタチン治療が推奨されている。なかでも10年間のASCVD発症リスクが7.5%以上の患者においては高用量スタチンが、それ以外では中用量スタチンによる治療が推奨される。4つめのグループとしては、2次予防でもLDL-C 190mg/dL以上でも糖尿病でもなくても、10年のASCVD発症リスクが7.5%以上の群であり、この基準を満たす場合にはスタチン治療の適用となる(表)。このように、治療方針決定のための判断材料としては、10年間のASCVD発症リスクを用いる以外は理解しやすく、治療を行う医師は高用量か中用量のスタチンを選べばよいということで、decision makingが容易となっている。図 動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨画像を拡大する表 高用量、中用量スタチンの治療対象画像を拡大するLDL-Cおよびnon HDL-Cの管理目標値は設定しない本ガイドラインでは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、図に示すように高用量(50%以上のLDL-C低下)あるいは中用量(30~50%のLDL-C低下)のスタチンによる治療が推奨されている。その理由は特定のLDL-Cを目標として(例えば、130mg/dL未満と100mg/dL未満でどちらのグループでよりイベント発症が少ないかなど)比較をしたRCTがないからであると説明されている。わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20~30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されており、LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状ではないことに関して異論はないが、日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、アドヒアランスを維持するためには管理目標値が必要であると考えている。したがって、動脈硬化性疾患予防ガイドラインにあるようにLDL-Cの管理目標値を考慮しながら治療にあたるというのがより実際的ではなかろうか。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドラインではLDL-Cの管理目標を設定しているが、“脂質管理目標値は到達努力目標値である”ことも認識すべきである。すなわち、100%その値をクリアすることを求めているわけではない。また、ASCVD予防のための脂質低下治療に関しては、高用量、中用量のスタチンのみが推奨されているが、わが国の保険診療では認められていない用量が推奨されている。非常にリスクが高い場合には、高用量スタチンが選択されるであろうが、日本で認められている最大用量のスタチンを用いることになるであろう。さらに、スタチン以外の薬剤でASCVDの発症リスクを有意に減少させる、あるいはスタチンとの併用で相加的なリスク減少が得られるとのエビデンスは得られなかったとされているが、JELISやACCORD Lipidのサブ解析などのエビデンスも考慮し、わが国のガイドラインでは、スタチン以外の薬剤の使用についても妥当としている。1次予防のための包括的リスク評価本ガイドラインにおいては、米国における5つのコホート研究10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく。年齢、性別、人種(アフリカ系アメリカ人かそれ以外)、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無により、その患者の10年間のASCVD発症リスクが計算される。また、生涯リスクも計算される。しかしながら、このリスクチャートをアジア人に適用することは、リスクの過大評価につながることは容易に想像できる。すでに欧米人の解析でも、NCEP-ATP IIIを適用した場合と比べて、スタチンの治療対象となる患者がかなり増加するとの試算もある。例えば、60歳以上の高齢者はほとんどがスタチンによる治療対象となるといわれている。このようにスタチン治療の適応範囲を広げることは、日本人における動脈硬化性疾患発症リスクを考えても現実的ではない。現在わが国のガイドラインでは、NIPPON DATA80を元にしたリスクチャートを用いており、これが日本人のリスク予測には妥当と考えている。ただ、死亡がエンドポイントとなっているため、今後は発症をエンドポイントとしたリスク評価手法を検討していく必要性はあろう。なおこのガイドラインでは、当然ではあるが、スタチン治療を開始する前に患者とのdiscussionが必要であると述べられており、正しい方向性である。安全性への配慮本ガイドラインでは、採用したRCTの成績に基づいて安全性に関する推奨を行っているが、特にスタチンによる糖尿病の新規発症、筋症(CK上昇を伴わないケースも多い)、認知機能低下などである。スタチンによる糖尿病の新規発症に関してはメタ解析の結果も発表されており、明らかであるが、スタチンによる心血管イベント抑制効果をしのぐものではない。また、メタ解析の結果からスタチンによる糖尿病の新規発症は用量依存性であり、スタチンの用量が少ない日本においては糖尿病の新規発症が欧米に比べ低いことが予想できる。スタチンによる糖尿病の新規発症のメカニズムは十分に明らかになっておらず、今後の検討課題である。バイオマーカーや非侵襲性検査の役割本ガイドラインにおいて、すでに述べたように年齢、性別、人種、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無が主要な危険因子であり、これらの危険因子により計算された10年間のASCVD発症リスクが7.5%未満の際に、高感度CRP、冠動脈のカルシウムスコア、ankle brachial index(ABI)などのバイオマーカーあるいは非侵襲性検査を用いることも考慮してよいとなっているが、そもそも慢性腎臓病(CKD)がリスクとしてカウントされておらず、日本でよく使用されている頸動脈エコーについてもエビデンスの欠如から採用されていない。頸動脈エコーについては、もちろん症例を選ぶべきではあろうが、治療の意欲やアドヒアランスを考えると有用な検査であろう。もちろん、エビデンスの蓄積をさらに進めるべきである。脂質異常症ガイドラインの今後の方向性本ガイドライン作成委員は、本ガイドラインがASCVD抑制のみにフォーカスしたガイドラインであり、脂質異常症の包括的なマネジメントのためのガイドラインではないことは認めている。したがって、今後実施すべき臨床試験について以下のように記載している。すなわち、高TG血症の治療はどうすべきか、non HDL-Cを治療ターゲットとできるか、アポB、Lp(a)、LDL粒子数などのマーカーがリスク評価に使えるか、治療方針決定のための最もよい非侵襲検査はなにか、生涯ASCVDリスクは使えるか、心不全や透析患者のなかでスタチンの恩恵を受けることができるのはどのようなグループか、スタチンによる新規糖尿病発症の長期的な影響はどうなのか、RCTから除外されているグループ(HIV患者、臓器移植患者)へのスタチンの効果はどうなのか、などである。いずれも重要なテーマであるが、RCTにそぐわないものもあり、観察研究などの結果もガイドラインに反映させるべきであろう。まとめ今回のACC/AHAガイドラインの特徴の1つは、脂質管理目標値を設定しないことである。ACC/AHAガイドラインにおける治療指針はスタチンによるRCTのみに基づいているため、LDL-Cを中心とした管理のみが強調されている点は注意が必要であり、レムナントなど他の脂質マーカーにも着目して、残余リスクの管理を考慮しながら治療にあたるべきである。今後、ガイドラインの作成は、ACC/AHAガイドラインのようにRCTのみをベースとしたものになる可能性が高いが、時間、コストなどの問題を考えると観察研究などのエビデンスもある程度は取り入れながら、ガイドラインの作成を行うことが現実的ではないかと思われる。文献1)Stone NJ et al. 2013 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014; 129: S1-45.2)Baigent C et al. Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 2005; 366: 1267-1278.3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681.4)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators et al. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet 2012; 380: 581-590.

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糖尿病治療薬併用による陰性症状改善効果を検証

 統合失調症の陰性症状の病態生理における炎症、酸化ストレス、代謝異常の明確な中心的役割は、これら症状に対する薬理学的選択肢の可能性に新たな見解をもたらした。ピオグリタゾンは、抗炎症および抗酸化性を有する糖尿病治療薬である。イラン・テヘラン大学のNegar Iranpour氏らは、統合失調症の陰性症状の軽減を目的としたリスペリドンの補助療法としてのピオグリタゾンの有効性を評価した。Human psychopharmacology誌オンライン版2016年2月8日号の報告。 本試験は、プラセボ対照無作為化二重盲検試験にて行われた。対象は、PANSS陰性尺度20以上の慢性期統合失調症患者40例。対象患者は、リスペリドンに加えてピオグリタゾン(30mg/日)またはプラセボを併用する群に無作為に割り付けられ、8週間の投与を受けた。患者の症状と有害事象は、ベースライン、2、4、6、8週目に評価した。主要評価項目は、PANSS陰性尺度スコア減少の2群間の差とした。 主な結果は以下のとおり。・試験終了時、ピオグリタゾン併用患者は、プラセボ群と比較して、PANSS陰性尺度スコアの有意な改善が認められた(p<0.001)。また、PANSS総スコアの有意な改善も認められた(p=0.01)。・本試験では、統合失調症の陰性症状軽減にピオグリタゾン増強療法が有効である可能性が示唆された。関連医療ニュース 閉経後の女性統合失調症、陰性症状改善にSERM併用が有用 統合失調症の陰性症状軽減へ新たな選択肢となりうるか 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか

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インクレチン製剤で膵がんリスクは増大するか/BMJ

 糖尿病治療薬であるインクレチン製剤による膵がんの発症リスクは、スルホニル尿素(SU)薬と変わらないことが、カナダ・マギル大学のLaurent Azoulay氏らが行ったCNODES試験で確認された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月17日号に掲載された。インクレチン製剤は低血糖のリスクが低く、体重への好ましい作用があるが、膵がんとの関連が示唆されている。インクレチン製剤の膵がんリスクについては、これまでに6件の観察研究があるが、結果は相反するものであり、方法論上の欠陥の指摘もあるという。97万例以上を追跡し、コホート内症例対照研究で関連を評価 CNODES試験は、2型糖尿病患者の治療におけるインクレチン製剤とその膵がんリスクの関連を検証する国際的な多施設共同コホート研究(カナダ保健省健康研究所の助成による)。 カナダ、米国、英国の6施設が参加し、2007年1月1日~13年6月30日の間に抗糖尿病薬による治療を開始した97万2,384例が解析の対象となった。 各参加施設においてコホート内症例対照研究を行った。膵がん発症例に対し、性別、年齢、登録日、糖尿病治療期間、フォローアップ期間をマッチさせた対照を最大20例まで設定した。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症のハザード比(OR)および95%信頼区間(CI)を推算した。また、薬剤のクラス別(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)および使用期間別(累積使用期間、治療開始後期間)の膵がんリスクの評価を行った。 DPP-4阻害薬はリナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチンが、GLP-1受容体作動薬にはエキセナチド、リラグルチドが含まれた。使用期間が長くなると、リスクが低下する傾向に 全体(97万2,384例)の平均年齢は56.9歳、男性が50.9%含まれた。各施設のフォローアップ期間中央値は1.3~2.8年であり、全体のフォローアップ期間は202万4,441人年だった。 この間に、1,221例が新規に膵がんを発症した(粗発症率:0.60/1,000人年)。背景因子をマッチさせた対照は2万2,298例であった。 対照群に比べ、膵がん群は肥満が少なかったが、糖尿病のコントロール不良やアルコール関連疾患を有する患者が多く、喫煙歴や急性/慢性膵炎歴を有する症例も多かった。 SU薬の使用例はインクレチン製剤使用例よりも年齢が若く、治療期間が長く、肥満の頻度が高く、HbA1c値が高かった。また、インクレチン製剤使用例は、細小血管合併症の診断例が少なかった。膵炎の既往例は両薬剤で同等だった。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症の補正HRは1.02(95%CI:0.84~1.23)であり、有意な差を認めなかった。また、SU薬に比べて、DPP-4阻害薬(補正HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)およびGLP-1受容体作動薬(1.13、0.38~3.38)の膵がん発症リスクは、いずれも同等であった。 累積使用期間が1年未満の症例では、インクレチン製剤で膵がんリスクが増大したが有意ではなかった(補正HR:1.53、95%CI:0.93~2.51)。これに対し、有意差はないものの、投与期間が1~1.9年の症例ではリスクが低下し(1.07、0.82~1.39)、2年以上の症例ではむしろインクレチン製剤のほうがリスクは低くなった(0.62、0.36~1.07)。 治療開始後期間についても、インクレチン製剤の膵がんリスクに有意な影響はなかった(1~1.9年=HR:1.06、95%CI:0.86~1.31、2年以上:0.93、0.60~1.45)。 個々のインクレチン製剤についても、同様の知見が得られた。 著者は、「インクレチン製剤に起因するがんが潜在している可能性があるため監視を継続する必要があるが、これらの知見によりインクレチン製剤の安全性が再確認された」としている。

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LDL-Cが高い糖尿病患者、骨折リスクが低い?

 糖尿病では骨折リスクが増加するが、骨密度や主なリスク因子による説明は十分なされていない。デンマーク・オーフス大学病院のJakob Starup-Linde氏らは、糖尿病患者の骨折リスクにおける薬物治療および生化学的マーカーの関連について検討した。その結果、調査したほとんどの因子において骨折リスクが高かったが、LDLコレステロール(LDL-C)については値が高いと骨折リスクが低かった。BMJ Open誌2016年2月12日号に掲載。 著者らは、The Danish National Hospital Discharge Registryにおける糖尿病患者において、コホート内ケースコントロール研究を行った(ケース:骨折している糖尿病患者2万4,349例、コントロール:骨折していない糖尿病患者13万2,349例)。糖尿病患者2,627例の患者特性、併存疾患、生化学的パラメータ、薬剤の使用について分析した。 主な結果は以下のとおり。・高年齢(オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:1.01~1.04)、長い糖尿病歴(OR:1.06、95%CI:1.02~1.09)、骨折の既往(OR:2.20、95%CI:1.55~3.11)、アルコール関連疾患の診断(OR:2.94、95%CI:1.76~4.91)、総コレステロール(OR:2.50、95%CI:1.20~5.21)、抗てんかん薬使用(OR:2.12、95%CI:1.39~3.59)は、骨折リスクの増加と関連した。・LDL-Cは骨折リスクの減少と関連した(OR:0.34、95%CI:0.16~0.74)。また、LDL-C値を8分位で検討した場合、最高分位である3.04~5.96mmol/L(117~230mg/dL)で骨折リスクが最も低かった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第6回

第6回:米国で使用されている冠動脈疾患に対する新しい薬 ticagrelor、ranolazine前回に引き続き、日本では未承認ですがアメリカでは処方されている薬を紹介したいと思います。ticagrelor(商品名:Brilinta、日本では2016年2月現在、承認申請中)ticagrelorは、比較的新しいP2Y12受容体拮抗薬です。日本ではチカグレロルと呼ばれていると思いますが、アメリカではタイカグレロールと発音します。ご存じのとおり、日本では長らくチクロピジンしか使用できませんでしたが、その後クロピドグレルが登場し、最近ではプラスグレルも使用されていると思います。ticagrelorは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新しい薬剤です。プロドラッグであるチエノピリジン系(クロピドグレルやプラスグレル)は肝臓で代謝された後、非可逆的にP2Y12受容体を阻害します。一方、ticagrelorは同じ受容体に直接かつ可逆的に作用します。結果として、作用が発現するまでの時間は短くなります。また、可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能も回復します。プラスグレルやticagrelorは血小板機能の抑制作用がクロピドグレルよりも早いため、急性冠症候群(ACS)の患者においては、より早い効果が期待できます。また、クロピドグレルに抵抗性のある患者は2割程度いますが、プラスグレルやticagrelorはその点でも優れています。ACS患者を対象にしたランダマイズド試験であるPLATO試験において、ticagrelorは、クロピドグレルに比べて死亡や心筋梗塞、脳卒中が少ないことが示されました(大出血イベントは同等、バイパス術に関連しない出血は増加)(図1)。表1 12ヵ月の時点での複合一次エンドポイント(心血管イベントによる死亡、心筋梗塞、脳卒中)の発生(PLATO試験) バイパス手術が必要となる3枝病変が予想されるようなACSの患者においては、P2Y12受容体拮抗薬の選択や投与のタイミングは難しい問題です。米国では、日本と比べて診断から手術までの時間が圧倒的に短いため、バイパス術が冠動脈造影の翌日となることも珍しくありません。初期投与(loading dose)だけなら気にされない心臓外科医もいますが、クロピドグレルやプラスグレルは手術を遅らせる原因となります(クロピドグレルやプラスグレルの使用中止後5~7日待つことが勧められている)。また、プラスグレルは、クロピドグレルに比べて、バイパスに関連した大出血イベントが有意に増加する可能性があります(TRITON-TIMI 38試験)。ticagrelorは可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能が回復します。実際、欧州心臓病学会(ESC)からの勧告でも、バイパス前の中止期間は、クロピドグレルとticagrelorでは最低でも3日となっていますが、プラスグレルは5日となっています。この待機時間は、入院費用が高い米国においては大きな問題です。このような背景から、現状では、費用の問題を除けばticagrelorが最も使いやすいP2Y12受容体拮抗薬と考えられています。同様の薬で静注薬であるcangrelorも2015年に認可されています。ranolazine(商品名:Ranexa、日本では未承認)ranolazineは、2006年に承認された慢性狭心症の薬です。2012年のガイドラインでは、β遮断薬に忍容性がないもしくは有効でない患者に、β遮断薬の代わりとしてもしくはβ遮断薬と組み合わせて用いることが、class IIaとして推奨されています。狭心症患者が多い米国では、経皮的冠動脈血行再建術(PCI)によって改善できない慢性狭心症の患者が非常に多く、治療に難渋することがあります。内向きの遅延ナトリウムチャネルを阻害し、心筋内のカルシウムを減らし、心筋の酸素消費を減らすと考えられていますが、詳しい効果の機序は不明です。TERISA試験は、14ヵ国で行われた、2型糖尿病と慢性狭心症を有する患者に対する前向きのプラセボ対照比較試験です。薬剤投与前の観察期間中の狭心症発作は、ranolazine群6.6回/週とプラセボ群で6.8回/週でしたが、薬剤投与開始後2~8週間後では、それぞれ3.8回/週(95% CI:3.57~4.05)と4.3回/週(95% CI:4.01~4.52)で、プラセボ群と比較してranolazine群で有意に減少したという結果でした(図2)。表2 ranolazine投与前後の狭心症状発生回数(TERISA試験) しかし、解釈には注意が必要です。というのも、有意といっても週0.5回というわずかなものでしたし、プラセボでも発作が減っていたのです。個人的には、プラセボ群でも発作が減る、狭心症状は経過とともに頻度が減っていくという結果のほうが、興味深く感じられました。実際には、ranolazineは最後の切り札といった感じで使用しています。なぜなら、前述のような軽度の改善効果に加えて、高価(1錠6ドル)であることもネックになっているからです。大規模で見ると改善効果があるのかもしれませんが、実際の臨床で効果を感じるのは難しい印象です。次回は、米国の心疾患治療で使用されている新しいデバイスについて書きたいと思います。

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糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という洗脳から解き放たれるとき(解説:桑島 巖 氏)-487

 多くの臨床医は、“糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という考えにとりつかれてはいないだろうか。この問題にあらためて挑戦し、メタ解析を行ったのが、“的確な臨床試験コメンテーター”で知られるMesserli氏らのグループである。 彼らは、PubMed、Embaseやコクランライブラリーなどといった信頼性の高いデータベースから、糖尿病患者に対するRAS阻害薬の心血管合併症予防効果を、他の降圧薬と比較するメタ解析を行った。メタ解析で最も注意すべきセレクションバイアスは、独立した3名の専門家による論文選択と、コクランライブラリー基準にのっとりながら極力除外している。 RCT選択は、100例以上のサンプルサイズであること、最低1年以上の追跡期間であること、プラセボ対照試験を除外していること、そして注意すべきことは心不全を含んだトライアルは除外していることである。ACE阻害薬の心不全予防効果が他の降圧薬よりも優れていることは、証明されているからとしている。 そのメタ解析の結果、総死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中のいずれにおいても、RAS阻害薬が他の降圧薬よりも優れているという結果は得られなかったと結論付けている。個々の降圧薬との比較をみると、Ca拮抗薬との比較では、心不全以外ではまったく差が認められず、利尿薬、β遮断薬との比較においても、心血管イベント抑制効果に優位性は認めることができなかった。 そもそも、臨床医が“糖尿病合併高血圧ではRAS阻害薬”という考えにとりつかれたきっかけは、糖尿病性腎症に対するRAS抑制薬の蛋白尿抑制効果が大規模臨床試験で報告され、以来“糖尿病にはRAS阻害薬”というように拡大解釈された結果ではないかと著者らは考察している。 わが国の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病合併高血圧患者における降圧薬選択に関しては、糖脂質への影響と糖尿病性腎症に対する効果のエビデンスより、RA系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)を第1選択薬として推奨するとある。 しかも、その根拠としてABCD試験やFACET試験のようなきわめて小規模なトライアルを引用しているにすぎない。さらに問題は、CASE-Jのサブ解析結果を引用していることである。CASE-JにおけるARBカンデサルタンの糖尿病新規発症予防効果は、実はスポンサーの指示によって定義を後付けで変更するという不正な操作によって導き出されたことが、調査報告書で明らかになっているのである。それにもかかわらず、ガイドラインはいまだこの部分を訂正していない。 本メタ解析では、ベースライン時に腎症を合併している糖尿病のアウトカムについても解析しているが、他の降圧薬に比べて優位性を認めることができなかったとしている。 ここ20年間、ARBの降圧を超えて臓器保護効果や、糖尿病にはRAS阻害薬といった、誤ったマインドコントロールから覚めるときが来たようである。

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DPP-4阻害薬は心不全入院リスクを高める可能性/BMJ

 2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬使用をめぐる心不全リスクの増大について、中国・四川大学のLing Li氏らが、無作為化比較試験(RCT)および観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、心不全リスクを増加させるかどうかは、研究の追跡期間が相対的に短くエビデンスの質も低いため不確かであるが、心血管疾患またはそのリスクを有する患者においては非使用との比較で心不全による入院のリスクが増大する可能性があることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告より。無作為化比較試験43件、観察研究12件についてメタ解析 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.govを用いて2015年6月25日までの論文を検索し、成人2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬と、プラセボ/生活習慣改善/血糖降下薬を比較したRCT、非RCT、コホート研究ならびに症例対照研究で、心不全または心不全による入院のアウトカムを明確に報告した研究を選択した。 解析対象研究のスクリーニング、バイアスのリスク評価およびデータ収集は、研究者2人1組からなるチームがそれぞれ独立して行った。臨床試験と観察研究のデータはそれぞれメタ解析を行い、エビデンスの質はGRADEシステムを用いて評価するとともに、研究の異質性をコクランχ2検定とI2統計量を用いて検証した。 RCTは43件(6万8,775例)および観察研究12件(コホート研究9件、症例対照研究3件;177万7,358例)が本研究に組み込まれた。入院リスクは増大の可能性も 心不全について報告しているRCT38件を解析した結果、DPP-4阻害薬群と対照群との間で心不全のリスクに有意差は認められなかった(イベント数42/1万5,701 vs.33/1万2,591、オッズ比0.97、95%信頼区間[CI]:0.61~1.56)。リスク差、すなわち5年間における2型糖尿病患者1,000例当たりの心不全イベント数の差は、-2(95%CI:-19~+28)であった。ただし、バイアスリスク等のためエビデンスの質は低かった。観察研究でも臨床試験とほぼ同様の結果であったが、エビデンスの質は非常に低かった。 一方、心不全による入院に関しては、RCT5件の解析において、DPP-4阻害薬群で対照群よりリスクが増加することが示され、エビデンスの質は中等度であった(イベント数622/1万8,554 vs.552/1万8,474、オッズ比:1.13、95%CI:1.00~1.26)、リスク差は、8(95%CI:0~16)。観察研究では、DPP-4阻害薬群(シタグリプチン)と非使用群を比較した2件の統合解析の結果、DPP-4阻害薬群で心不全による入院のリスク増加が示唆されたが(統合調整オッズ比:1.41、95%CI:0.95~2.09)、エビデンスの質は非常に低かった。 著者は、「報告されたデータには限界があり、心不全による入院のリスク増加が1つのクラス効果なのかは不明である」と述べている。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第27回

第27回:食事における栄養の「神話」は本当?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日々の食事は健康の維持やあらゆる疾患管理に重要な役割を持っています。そして、健康的な食事は罹患率や早期死亡の減少に関係しています。 今回は、微量栄養素(ビタミンやミネラル)、主要栄養素(炭水化物、タンパク質、および脂肪)、非栄養素、食物エネルギーに関しての「神話」とエビデンスの比較をみてみましょう。日常診療における食事指導の参考になれば幸いです。 タイトル:臨床における栄養療法の神話と食事指導についてNutrition Myths and Healthy Dietary Advice in Clinical Practice以下、American family physician 2015年5月1日号1) より◆「骨の健康のために集中的なカルシウム摂取が必要」骨折予防に対するカルシウムサプリメントの効果は限定的で、NNT=1,000(住民女性)、NNT=111(施設入所者)である(推奨レベルA)。また、腎結石のリスクを高め、心血管イベントや大腿骨頸部骨折を高めるかもしれない(推奨レベルB)。乳製品など自然食品は、骨の健康に関する利点は明らかでないものの、サプリメントと同様のリスクはもたらさないと思われる。◆「脂質は肥満につながり、心血管系に有害」高脂質食の摂取は、低脂質食やカロリー制限食の摂取と比較して、同等かそれ以上の体重減少を示す(推奨レベル A)。ultra-processed食品(過剰加工食品:甘味料や乳化剤などをわざわざ添加しすぐに食べられるようにした食品、保存肉など)は飽和脂肪酸が多く含まれており、心血管イベントや全死亡率の増加と関連している。一方、飽和脂肪酸を含む自然食品(乳製品など)は不慮の心血管疾患、2型糖尿病、肥満の減少と関連している(推奨レベルB)。◆「あらゆる食物繊維は有益である」自然の食物繊維を豊富に摂取すると、心血管イベントや糖尿病、便秘、消化器がん、乳がんの発症を抑制しうる。しかし人工的な食物繊維の有用性は示されていない(推奨レベルB)。◆「3,500カロリーは体重1ポンド(0.45kg)に相当する」1週間で3,500カロリー制限しても体重0.45kg減量するわけではない(推奨レベルC)。しかし1日100カロリー制限すれば、ほかに何をしなくても1年後には50%の人が、3年後には95%の人が体重4.5kg減少する(推奨レベルC)。ここに示した「神話」は微量栄養素、主要栄養素、非栄養素、エネルギーとして多くの栄養学、食品成分の評価に基づいているが、患者は食品成分ではなく食品として食べているということに注意が重要である。また、ultra-processed食品の消費量を制限し、できるだけ自然に近い形の加工食品の摂取が勧告されている。家庭医は、患者のために上記の神話を払拭し、実際の食品や広い食事パターンに着目してアドバイスを与えることが望ましい。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Lesser LI, et al. Am Fam Physician. 2015;91:634-638.

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糖尿病患者へのRAS阻害薬、他の降圧薬より優れるのか?/BMJ

 糖尿病患者へのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用について、他の降圧薬と比べて心血管リスクや末期腎不全リスクへの影響に関して優越性は認められないことを、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが、19の無作為化試験について行ったメタ解析で明らかにした。多くのガイドライン(2015米国糖尿病学会ガイドライン、2013米国高血圧学会/国際高血圧学会ガイドラインなど)で、糖尿病を有する患者に対しRAS阻害薬を第1選択薬として推奨しているが、その根拠となっているのは、20年前に行われたプラセボ対照試験。対照的に、2013 ESH/ESCガイドラインや2014米国合同委員会による高血圧ガイドライン(JNC8)は、近年に行われた他の降圧薬との試験結果を根拠とし、RAS阻害薬と他の降圧薬は同等としている。BMJ誌オンライン版2016年2月11日号掲載の報告。死亡、心血管死、心筋梗塞や末期腎不全などの臨床的アウトカムを比較 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane centralを基に、糖尿病患者を対象とした、RAS阻害薬 vs.その他の降圧薬に関する無作為化試験についてメタ解析を行った。 主要評価項目は、死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、末期腎不全だった。心血管・腎不全の臨床的アウトカムで、RASは他の降圧薬と同等 メタ解析の対象となったのは、19の無作為化試験で、糖尿病被験者総数2万5,414例、延べ追跡期間9万5,910患者年だった。 RAS阻害薬はその他の降圧薬と比較して、全死因死亡(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.93~1.05)、心血管死(同:1.02、同:0.83~1.24)、心筋梗塞(同:0.87、同:0.64~1.18)、狭心症(同:0.80、同:0.58~1.11)、脳卒中(同:1.04、同:0.92~1.17)、心不全(同:0.90、同:0.76~1.07)、血行再建術(同:0.97、同:0.77~1.22)のいずれのエンドポイントのリスクについても同等だった。 また、末期腎不全の臨床アウトカムについても、他の降圧薬との比較で、有意差はなかった(同:0.99、同:0.78~1.28)。 結果を踏まえて著者は、「初見は、ESH/ESCガイドラインやJNC8の推奨を支持するものであった。それらのガイドラインでは、腎障害を有していない糖尿病患者に対しては、いずれの降圧薬も同等に推奨されている」とまとめている。

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インスリン抵抗性の脳梗塞/TIA例、ピオグリタゾンが効果/NEJM

 非糖尿病だがインスリン抵抗性を認め、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した患者に対し、ピオグリタゾンを投与することで、脳卒中または心筋梗塞リスクがおよそ4分の3に減少することが示された。糖尿病の発症リスクについても、ピオグリタゾン投与により半減したという。米国・イェール大学のW.N. Kernan氏らによる4,000例弱を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年2月17日号で発表された。HOMA-IRが3.0超の患者にピオグリタゾンを投与 虚血性脳卒中/TIAを発症した患者では、現行の予防的治療を行っても将来的な心血管イベントのリスクが高い。一方で、脳卒中や心筋梗塞のリスク因子としてインスリン抵抗性が確認されており、インスリン感受性を改善するピオグリタゾンは脳血管疾患を有する患者に対してベネフィットをもたらす可能性が示唆されている。 そこで研究グループは、糖尿病ではないが、インスリン抵抗性指標HOMA-IRが3.0超であり、最近、虚血性脳卒中またはTIAを発症した3,876例を対象に、ピオグリタゾンの有効性と安全性を調べる試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはピオグリタゾン(目標用量:1日45mg)を投与し(1,939例)、もう一方の群にはプラセボを投与した(1,937例)。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳卒中または心筋梗塞だった。脳卒中・心筋梗塞リスクは0.76倍、糖尿病リスクは0.48倍に 被験者は2005~13年に、179の病院またはクリニックで集められた。両群とも平均年齢は63.5歳、グリコヘモグロビン値は5.8%、HOMA-IR中央値はピオグリタゾン群4.7、プラセボ群4.6、糖尿病(2010米国糖尿病学会ガイドラインに基づく)はそれぞれ6.0%、6.7%であった。 追跡期間の中央値は4.8年、試験中断は227例(5.9%)、追跡不能は99例(2.6%)だった。 解析の結果、脳卒中または心筋梗塞が発生した患者は、プラセボ群228/1,937例(11.8%)に対し、ピオグリタゾン群では175/1,939例(9.0%)と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.62~0.93、p=0.007)。 糖尿病を発症したのは、プラセボ群が149例(7.7%)に対し、ピオグリタゾン群では73例(3.8%)と、発症率は半分以下に低下した(HR:0.48、95%CI:0.33~0.69、p<0.001)。 一方で、全死因死亡率は両群で同等だった(HR:0.93、95%CI:0.73~1.17、p=0.52)。 なおピオグリタゾン群は、4.5kg超の体重増(ピオグリタゾン群52.2% vs.プラセボ群33.7%、p<0.001)、浮腫(それぞれ35.6% vs.24.9%、p<0.001)、手術や入院を要する骨折(それぞれ5.1% vs.3.2%、p=0.003)に関して、いずれも有意にリスクが高かった。

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認知症発症率は過去30年間で低下:フラミンガム心臓研究/NEJM

 フラミンガム心臓研究の参加者では、30年間に認知症の発症率が経時的に低下していることが、米国・ボストン大学医学部のClaudia L Satizabal氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年2月11日号に掲載された。認知症の有病率と関連医療費は、平均寿命の延長に伴い急速に増加すると予測されているが、高所得国では年齢別の認知症発症率(=特定の年齢層における認知症リスク)が減少しているという。時間的傾向(temporal trend)は、典型的な地域のサンプル集団において、新規の症例を一貫性のある診断基準を用いて継続的にモニタリングすることで信頼性が最も高くなるが、この条件を満たす既報のデータは限られている。60歳以上の約5,200例で、4期の5年発症率を評価 研究グループは、フラミンガム心臓研究の参加者のデータを用いて1975年以降の30年間における認知症の発症率の時間的傾向について検討を行った(米国国立保健研究所[NIH]の助成による)。 60歳以上の5,205例を対象に、年齢と性別で補正したCox比例ハザードモデルを用いて、4つの時期(第1期:1977~1983年、第2期:1986~1991年、第3期:1992~1998年、第4期:2004~2008年)における認知症の5年発症率を算出した。 また、各時期と年齢、性別、アポリポ蛋白(APO)Eε4、教育水準の交互作用を検討し、これらの交互作用が時間的傾向に及ぼす影響を解析するとともに、血管リスク因子および心血管疾患の影響の評価を行った。寄与因子は不明、1次、2次予防が重要 ベースラインの各時期の平均年齢は69~72歳(傾向検定:p<0.001)、範囲は60~101歳で、女性が56~59%(同:p<0.01)を占めた。各時期でMMSE(mini-mental state examination)スコアに差はなかった。 371例が認知症を発症した。年齢と性別で補正した認知症の5年累積ハザード比(HR)は、第1期が100人当たり3.6、第2期が同2.8、第3期が同2.2、第4期は同2.0であり、経時的に低下した。相対的な発症率は、第1期に比べ第2期は22%減少し、第3期は38%、第4期は44%低下した。 各時期と年齢、性別、APOEε4の交互作用が、認知症発症率の時間的傾向に影響を及ぼすことを示唆するエビデンスは認めなかった。一方、リスクの低下は高校卒業以上の集団にのみ認め(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.67~0.88)、高校を卒業していない集団では有意差はなかった。 肥満と糖尿病を除くほとんどの血管リスク因子の有病率と、脳卒中、心房細動、心不全関連の認知症リスクは、いずれも経時的に減少したが、これらの傾向だけでは認知症の発症率の低下を十分には説明できなかった。 著者は、「認知症の発症率は30年間で経時的に減少したが、これに寄与した因子は同定されなかった」とまとめ、「認知症リスクを有する高齢者数の増加により、今後、認知症の疾病負担が爆発的に増大することが予測され、これを抑制するには1次および2次予防が重要と考えられる。本試験の結果は、認知症の予防あるいは少なくとも遅延の可能性という、わずかな希望をもたらすものだが、時間的傾向の理解の不十分さを強調するものでもあり、寄与因子のさらなる探索が求められる」と指摘している。

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家族性大腸腺腫症〔FAP : familial adenomatous polyposis〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体性優性遺伝性の一種のがん症候群である。■ 疫学FAPの発生頻度は、欧米では出生10,000~20,000人に1人と推定されている。日本においては17,400人に1人と推測されており、世界的にあまり差がない。■ 病因APC遺伝子の生殖細胞系列の変異が原因ではあるが、腺腫はAPC遺伝子の機能喪失、すなわちもう一方のAPC遺伝子の体細胞変異(結果的に両方の遺伝子の異常:細胞単位では劣性発現といえる)によって引き起こされる。APC遺伝子は、その機能としてはいわゆる腫瘍抑制遺伝子ともいえる。APC遺伝子の実際の機能あるいは大腸がんに至る遺伝子変異の詳細は不明である。■ 症状下痢、下血(排便時出血)、腹痛、貧血が主な症状である。このような症状が若年に起こるために、胃腸虚弱ないし痔核からの出血だろうと考えられて、大腸がんの危険性が見過ごされやすい。FAPあるいは大腸がんの家族歴があればより注意が必要である。■ 分類大腸腺腫数で分類するのが一般的である(表1)。大腸腺腫数の計測は困難であるが、おおよその数で分類されている。腺腫数はAPC遺伝子変異部位と関連するといわれる。傾向として腺腫数が多いほど発症年齢が若く、また大腸がんが発生しやすい。画像を拡大する100個未満の多発性ポリープを「oligo-polyposis」ということがある。また、大腸ポリポーシスにデスモイドあるいは外骨腫を合併する症例を「ガードナー症候群」ということがあるが、FAPの一部と考えられている。■ 予後大腸がんをはじめ、ほかの消化管がん、デスモイド腫瘍、そのほかのがんを早期に制御、治療できれば予後は良好である。主として大腸がんおよびほかの消化管がんのコントロールが重要である。ただしそれを生涯にわたって行わなければならない点で、患者の負担が大きく、その難しさがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)最も有力な検査は、病理組織学的検査を伴う大腸内視鏡検査(図1)である。注腸造影検査によって大腸内のポリープの分布の様子が観察される。大腸にびまん性のポリポーシスを認め、それが腺腫である場合はFAPである可能性が強い。画像を拡大する2)上部消化管検査は必須である。(1)胃内視鏡検査:胃底腺ポリポーシス、腺腫およびがんの鑑別をして対応する。(2)十二指腸内視鏡検査:スピゲルマンによるおおよその病期分類を行い対応する(表2)。画像を拡大する(3)小腸検査:大腸手術後状態で、(大腸がんより小腸がんが先に出ることは少ない)腹痛などがあれば小腸検査が望ましい。バリウム造影、カプセル内視鏡がスクリーニングとして行われる。3)随伴病変(その他のがんを含む)の検査(1)先天性網膜色素上皮肥大(図2):視力には影響ない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(2)潜在骨腫または外骨腫(図3):共に治療の必要はない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(3)デスモイド腫瘍(図4):過去にデスモイド既往がある場合、または家系内にデスモイド患者が出た場合は、よりデスモイド腫瘍が発生しやすいといわれている。画像を拡大する(4)甲状腺がん:若年女性に多い。乳頭がんであるが、そのなかに特徴的な組織像を示すことがある。治療成績は通常の乳頭がんと同様で良好である。触診ないしエコー検査を行う。(5)卵巣がん、子宮がん: 35歳以上では定期検査を勧めるべきである。■ 鑑別診断1)ポリープ数が少ない状態のFAP(attenuated FAP:AFAP)APC遺伝子変異はあるが、ポリープ数が100個に満たない(oligo-polyposisの状態)。2)MUTYH関連ポリポーシス(MAP)DNA酸化障害の修復に関わるMUTYH遺伝子変異の異常によって発生する大腸腺腫症。ポリープ数は少ない場合が多いが、まれに1,000個近くのこともある。常染色体劣性遺伝性である。3)ポリメラーゼ校正遺伝子関連ポリポーシス(PPAP)ポリープ数は多くて数個~数十個。形質発現はAFAP、MAPないしリンチ候群に類似すると思われるが、さらに症例の集積と検討が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPにおいては予後の項で述べたように、がん発生について生涯にわたり注意が必要である。各臓器の良性腫瘍の病期は発がんの危険性と相関するため、病期を維持ないし低減できればがん発生を抑えられる可能性がある。筆者はこれを「病期低減戦略(stage reduction strategy)」ないし「病期低減治療(stage reduction treatment)」と位置づけている。これはFAPのすべてに通ずる。■ 原則1)早期診断これにより病期を低いところでみつけることができる。2)病期低減治療大腸腺腫、十二指腸(乳頭部)腺腫、デスモイド腫瘍に当てはまるそれぞれ異なった病期に対して、それを維持ないし低減する方法が取られることになる。それは利益と損失を考慮して判断される。■ 大腸1)内視鏡治療今後の発展によって病期低減治療法の中心になる可能性がある。ポリープ数が比較的少ない状況で適応になる。また、5mm以下の小さいポリープは、早期にがん化するとは考えられず、必ずしも切除する必要はない。2)化学・薬物治療現在実用的ではない。3)手術治療次の3つの方法が一般的である。(1)大腸全摘・回腸瘻造設術:大腸に関しては最も根治的。生活の質も悪くはない。(2)結腸全摘・回腸直腸吻合術:病期低減治療である。直腸ポリープが少ない必要がある。直腸は最もがんが発生する危険性が高い。(3)大腸全摘・J型回腸嚢肛門管吻合術:上記2つの利点を取ったものである。ただし手術が複雑。良好な排便機能が得られるかどうか、不安定である。直腸がんの危険はかなり低減するが、肛門に近い直腸粘膜が残るため、理論上ゼロとはならない。時間と共にJ嚢内に腺腫が高率に発生することもわかっており、術後の内視鏡検査は引き続き必要である。■ 十二指腸、乳頭部腺腫経過観察、および病期が上がった場合に、それに応じて病期を下げる手段としては、(1)内視鏡的切除、(2)十二指腸切開局所切除、(3)膵温存十二指腸切除、(4)膵頭十二指腸切除などが選択される。■ デスモイド腫瘍悪性ではないが、浸潤性に発達しやすい線維腫症といえる状態で治療にやや難渋する。デスモイドの出やすい状況(診断の項を参照)であれば、内視鏡治療を優先して手術をなるべく遅くする。大腸切除術後の約8%に発生する。発生部位は腹腔内(後腹膜、腸間膜)および腹壁手術瘢痕部に発生する。死亡率は10%以下と考えられる。病期分類および治療の指針としてChurchによる分類がある(表3)。画像を拡大する4 今後の展望1)病期低減治療法として、内視鏡的ポリープ切除の効果について多施設研究が始まっている。まだ標準的治療法ではない。2)大腸癌研究会家族性大腸癌委員会において、いくつかの研究プロジェクトが計画施行されつつある。3)十二指腸腺腫:膵温存十二指腸切除術など、病期に応じた治療法が検討されつつある。5 主たる診療科消化器内科および消化器外科が主たる診療科となり、病態に応じて、婦人科、内分泌外科などに相談する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国際消化管遺伝性腫瘍学会InSiGHT(医療従事者向けの英文サイト:ここからの情報は世界標準となる)大腸癌研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:日本の活動の現況がわかる)患者会情報ハーモニー・ライフ:関東の患者会(患者、患者家族向けの情報:ニュースレターほか、種々の情報が得られる)ハーモニー・ライン:関西の患者会(患者、患者家族向けの情報:疾患に関する冊子などが得られる)デスモイド基金(アメリカの患者支援組織、英文サイト)1)大腸癌研究会編. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版.金原出版;2012.2)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版.大腸癌研究会;2014.3)岩間毅夫.日内会誌.2007;96:207-212.4)岩間毅夫.日本大腸肛門病会誌.2004;57:859-863.公開履歴初回2013年10月24日更新2016年02月23日

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うつ病患者の予後に影響する生活習慣病

 肥満、メタボリックシンドローム(Mets)、地中海式ダイエットの低い順守率は、うつ病患者で頻繁にみられ、それぞれが予後と関連している。うつ病のアウトカムに対する、これらの要因の6、12ヵ月の予測力を分析するため、スペイン・バレアレス大学のRachel H B Mitchell氏らは、検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月19日号の報告。 273例のうつ病患者から、うつ症状評価のためにベックうつ病評価尺度と14項目の地中海式ダイエット順守スコアを収集した。Metsは、国際糖尿病連合(IDF)の基準に従って診断した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の地中海式ダイエット順守は、抑うつ症状と逆相関していた(p=0.007)。・うつ病への反応は、正常体重の患者(p=0.006)、非Mets患者(p=0.013)で高かったが、地中海式ダイエットの順守率との関連は認められなかった(p=0.625)。・Metsである肥満患者は、Metsでない肥満患者よりもうつ症状の改善傾向が低かった。・肥満やMets(ベースライン時における地中海式ダイエットの低い順守率を除く)は、12ヵ月時点でのうつ病の不良転帰を予測した。 結果を踏まえ、著者らは「肥満や食事よりむしろMetsが、うつ病の予後に対し負の影響を与える重要な要因であることが、本研究で示唆された。このことから、臨床医は、肥満うつ病患者(とくに治療成果が十分でない場合)におけるMets診断と治療について認識しておく必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か MetSリスクの高い抗うつ薬は うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

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食品からのフラボノイド摂取は体重管理に有用か/BMJ

 フラボノイド(とくにフラボノール、フラバン-3-オール、アントシアニン、フラボノイドポリマー)を豊富に含む、リンゴ、西洋なし、ベリー類、ピーマンなどの果物や野菜を多く食べることは、体重管理に有用であることを、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMonica L Bertoia氏らが、3つの大規模前向きコホート研究、合わせて約12万4,000人を最長24年追跡したデータを解析し、明らかにした。フラボノイドは天然に存在する生理活性化合物で、果物や野菜に含まれている。これまで、果物や野菜類の摂取量が多いと体重が増加しにくいことや、緑茶に含まれるフラボノイドが脂肪吸収の減少とエネルギー消費の増加などに関与していることが報告されていた。しかし、体重の減少に関する研究の多くは、緑茶で発見されたフラバン-3-オールに関するもので、試験参加人数も限られていた。著者は、「今回の研究成果は、肥満の予防や肥満の悪影響リスクを低減する食事摂取基準の見直しに役立つ可能性がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版、2016年1月28日号掲載の報告。米国の医療従事者12万4,086人を24年間追跡したデータを解析 研究グループは、医療従事者追跡調査(HPFS、1986年開始)、看護師健康調査(NHS、1976年開始)およびNHS II(1989年開始)の参加者のうち、ベースラインで慢性疾患(肥満、糖尿病、がん、心血管疾患など)の既往歴がなく65歳未満など基準を満たした計12万4,086人(HPFS:男性2万525人、NHS:女性3万9,423人、NHS II:女性6万4,138人)を対象として、1986年から2011年まで4年間ごとの体重変化量と、同期間における7種類のフラボノイド(フラバノン、アントシアニン、フラバン-3-オール、プロアントシアニジン、フラボノイドポリマー、フラボノール、フラボン)の摂取量変化との関連を、多変量一般化線形回帰モデルにて解析した。 体重の変化量は、2年ごとに行われた健康状態などに関するアンケート調査に基づき算出。また、フラボノイド摂取量の変化(1標準偏差/日)は4年ごとに行われた半定量的食物摂取頻度調査を基に、食品のフラボノイド含有量とプロアントシアニジンに関する米国農務省のデータベースを用いて算出した。フラボノイド摂取量が多いと体重は増えない 食事、喫煙状況、身体活動など生活習慣に関連する因子を補正後、フラボンとフラバノンを除く5種類のフラボノイドについて、摂取量の増加が、わずかだが体重の減少と関連していた。とくにアントシアニン、フラボノイドポリマー、フラボノールで関連が強く、アントシアニンの場合、摂取量増加が10mg/日で体重変化量は-0.23(95%信頼区間:-0.30~-0.15)ポンド(1ポンド=約0.45kg)、同様にフラボノイドポリマーは138mg/日増で-0.18(-0.28~-0.08)ポンド、フラボノールは7mg/日増で-0.16(-0.26~-0.06)ポンドであった。食物繊維を追加補正後は、アントシアニン、プロアントシアニジンおよびフラボノイドポリマーのみ有意な関連が認められた。 著者は「体重の減少はわずか(<0.5kg)であったが、健康状態の改善に役立つ可能性がある」とし、「大部分の米国人は、毎日果物は1カップ未満、野菜は2カップ未満しか摂取していないが、健康ベネフィットを享受するには、果物は2カップ、野菜は2.5カップに増やすとよいだろう」と指摘している。

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日本糖尿病学会:「キラリ☆女性医師!」に2016年2月の新記事を掲載

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」ホームページでは、「キラリ☆女性医師!」コーナーに和栗 雅子氏(大阪府立母子保健総合医療センター)の記事を掲載した。 本コーナーは、さまざまな女性医師を紹介するコーナーとして2015年4月に開設され、これまでに計10名の女性医師が実名で登場している。 各記事は以下関連リンクより閲覧可能。関連リンク「キラリ☆女性医師!」(日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」)

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