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75歳超にもスタチン療法は有益か/Lancet

 スタチン療法は、年齢にかかわらず主要血管イベントを有意に抑制することが、28件の無作為化試験、被験者総数約19万例を対象にしたメタ解析の結果、明らかになった。閉塞性血管疾患の所見がすでにみられない75歳超の高齢者におけるベネフィットについては、直接的なエビデンスが不足していたが、その点に関して現在、さらなる試験が行われているという。オーストラリアの研究グループ「Cholesterol Treatment Trialists' Collaboration」が行った研究結果で、Lancet誌2019年2月2日号で発表された。スタチン療法は、さまざまな患者の主要血管イベントや血管死を抑制することが示されているが、高齢者における有効性および安全性は不確かである。研究グループは、年齢の違いによるスタチン療法の有効性を比較したすべての大規模スタチン試験からデータを集めてメタ解析を行った。被験者年齢群を6グループに分け有効性を検証 研究グループは、適格条件に満たした、被験者数1,000例以上で治療期間2年以上の無作為化試験28件を対象にメタ解析を行った。そのうち22試験(被験者総数13万4,537例)からは被験者の個人データを、1試験(同1万2,705例)からは詳細サマリーデータを、5試験(同3万9,612例)からは強化スタチン療法と非強化スタチン療法を比較した個人データを組み込み、解析を行った。 スタチン療法の主要血管イベント(主要冠動脈イベント、脳卒中、冠血行再建術など)、死因別死亡、がん罹患への効果を、LDLコレステロール値1.0mmol/L低下ごとにおける率比(RR)として推算した。 被験者の年齢により、55歳以下、56~60歳、61~65歳、66~70歳、71~75歳、75歳超の6つのグループに分類し、異なる年齢グループの相対リスク減少率を比較した。グループ間の不均一性(2群間の場合)や傾向(2群超の場合)に対しては標準χ2検定法を用いた。主要冠動脈イベントリスク減少は高齢により縮小傾向 28試験の被験者総数は18万6,854例で、うち75歳超は8%(1万4,483例)であり、追跡期間中央値は4.9年だった。 全体的に、スタチン療法/強化スタチン療法は、LDLコレステロール値1.0mmol/L低下につき、主要血管イベントを21%減少した(RR:0.79、95%信頼区間[CI]:0.77~0.81)。すべての年齢グループで主要血管イベントの有意な減少が認められ、その相対リスクの減少幅は、年齢が上がるにつれて縮減したが、その傾向は有意ではなかった(傾向のp=0.06)。 同様に、主要冠動脈イベントについてスタチン療法/強化スタチン療法は、LDLコレステロール値1.0mmol/L低下による相対リスクの低下率は24%(RR:0.76、95%CI:0.73~0.79)で、年齢が上がるにつれて有意に縮減する傾向が認められた(傾向のp=0.009)。 冠血行再建術リスクについては、同相対リスク低下率は25%(RR:0.75、95%CI:0.73~0.78)で、年齢による有意な違いはみられなかった(傾向のp=0.6)。全脳卒中(タイプを問わない)リスクについても、同相対リスク低下率は16%(RR:0.84、95%CI:0.80~0.89)で、年齢による有意な違いはみられなかった(傾向のp=0.7)。 心不全または透析患者のみが登録されていた4試験(これら被験者はスタチン療法の有効性は示されなかった)を除外後、主要冠動脈イベントについては、年齢上昇に伴う相対リスク低下の縮減はわずかだが認められたものの(傾向のp=0.01)、主要血管イベントについては、やはり有意差は認められなかった(傾向のp=0.3)。 血管疾患既往患者においては、年齢にかかわらず、主要血管イベントの相対的な低下はわずかに認められた(傾向のp=0.2)。一方で血管疾患が不明な場合は、若年者よりも高齢者のほうが、低下が小さいようだった(傾向のp=0.05)。 血管死の同相対リスク減少率は12%(RR:0.88、95%CI:0.85~0.91)だった。高齢群でリスク低下率の縮減傾向が認められたものの(傾向のp=0.004)、心不全と透析患者のみを対象にした試験を除き解析した結果では、有意な傾向は認められなかった(傾向のp=0.2)。 なお、スタチン療法/強化スタチン療法は、どの年齢グループにおいても、非血管死、がん死、がん罹患のいずれにも影響はみられなかった。

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脳卒中後の至適降圧目標は「130/80mmHg未満」か:日本発RESPECT試験・メタ解析

 脳卒中後の血圧管理は、PROGRESS研究後付解析から「低いほど再発リスクが減る」との報告がある一方、PRoFESS試験の後付解析は「Jカーブ」の存在を指摘しており、至適降圧目標は明らかでない。 この点を解明すべく欧州では中国と共同でESH-CHL-SHOT試験が行われているが、それに先駆け、2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)のLate Breaking Clinical Trialsセッション(7日)において、わが国で行われたRESPECT試験が、北川 一夫氏(東京女子医科大学・教授)によって報告された。 登録症例数が当初計画を大幅に下回ったため、「通常」降圧に比べ、「積極」降圧による有意な脳卒中再発抑制は認められなかったものの、すでに報告されている類似試験とのメタ解析では、「積極」降圧の有用性が示された。通常降圧群と積極降圧群の脳卒中再発率の比較 RESPECT試験の対象は、脳卒中発症後30日~3年が経過し、血圧が「130~180/80~110mmHg」だった1,280例である。降圧薬服用の有無は問わない。当初は5,000例を登録予定だった(中間解析後、2,000例に変更)。 平均年齢は67歳、登録時の血圧平均値は145/84mmHgだった。初発脳卒中の病型は、脳梗塞が85%、脳出血が15%である。スタチン服用率は約35%のみだったが、抗血小板薬は約7割が服用していた。 これら1,280例は「140/90mmHg未満」を降圧目標とする「通常」降圧群(630例)と、「120/80mmHg未満」とする「積極」降圧群(633例)にランダム化され、非盲検下で平均3.9年間追跡された(心筋梗塞既往例、慢性腎臓病例、糖尿病例は「通常」群でも降圧目標は130/80mmHg未満)。 ランダム化1年後までに血圧は、通常群:132.0/77.5mmHg、積極群:123.7/72.8mmHgへ低下した。メタ解析では積極降圧で脳卒中再発率の低下が示される その結果、1次評価項目である「脳卒中再発」は、通常群の2.26%/年に対し、積極群では1.65%/年と低値になったが、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.49~1.11)。ただし脳出血のみで比較すると、通常群(0.46%/年)に比べ、積極群(0.04%/年)でリスクは有意に低下していた(HR:0.09、95%CI:0.01~0.70)。 重篤な有害事象は、両群間に有意差を認めたものはなかった。 この結果を踏まえ北川氏は、すでに公表されている、脳卒中発症後の通常降圧と積極降圧を比較した3つのランダム化試験(SPS3、PAST-BP、PODCAST)とRESPECTを併せてメタ解析した(4,895例中636例で再発)。すると積極降圧群における、脳卒中再発リスクの有意な低下が認められた(HR:0.78、95%CI:0.64~0.96)。 RESPECT以外の上記3試験では積極降圧群のSBP目標値が「125~130mmHg未満」だったため、エビデンスは脳卒中後の降圧目標として「130/80mmHg未満」を支持していると北川氏は結論した。 本試験の資金は「自己調達」と報告されている(UMIN000002851)。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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減量に朝食摂取は本当に有効か/BMJ

 朝食の摂取は、その習慣の有無にかかわらず、体重減少の戦略としては有効とはいえない可能性があるとの研究結果が、オーストラリア・モナシュ大学のKatherine Sievert氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年1月30日号に掲載された。規則的な朝食の摂取は、低BMIと関連し、体重増加に対する防御因子であることが、多くの観察研究で示唆されている。一方、これまでに得られた朝食摂取に関する無作為化対照比較試験のエビデンスは、一貫性がないという。規則的朝食摂取と体重の関連をメタ解析で評価 研究グループは、高所得国の住民において、規則的な朝食の摂取が体重の変化およびエネルギー摂取に及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(研究助成は受けていない)。 医学データベースを用いて、1990~2018年の期間に報告された文献を検索した。また、2018年10月に、世界保健機関(WHO)の国際臨床試験登録プラットフォームの検索ポータルを検索し、未発表および進行中の試験を同定した。 対象は、朝食の摂取と非摂取を比較し、体重またはエネルギー摂取量の評価を行った高所得国の無作為化対照比較試験とした。 2人のレビュアーが個別にデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。変量効果を用いてメタ解析を行った。試験の質が低く、結果の解釈には注意が必要 日本の1件を含む13件(並行群間比較試験7件、クロスオーバー試験6件)の試験が解析の対象となった。7件は体重の変化を、10件は1日のエネルギー摂取量の評価を行っていた(4件は両方)。 体重変化のメタ解析では、朝食抜きの参加者は朝食摂取者に比べ、わずかだが体重が減少していた(平均差:0.44kg、95%信頼区間[CI]:0.07~0.82)が、試験結果にはある程度の非一貫性(inconsistency)が認められた(I2=43%)。 また、1日の総エネルギー摂取量のメタ解析では、朝食抜きの参加者は、朝食摂取者に比べ摂取量が少なく(平均差:259.79kcal/日、95%CI:78.87~440.71)、抜いた朝食分のエネルギーを昼食や夕食などの他の食事で補っていないことが示唆された。しかしながら、試験結果には、実質的な非一貫性がみられた(I2=80%)。 解析対象の試験はすべて、1つ以上のドメインでバイアスのリスクが高いまたは不明であり、平均フォローアップ期間が短かった(体重変化の試験:7週[範囲:2~16週]、エネルギー摂取量の試験:2週[24時間~6週])。試験の質は、ほとんどの試験が低いと判定されたため、結果の解釈には注意を要すると考えられる。 著者は、「成人の体重減少に朝食を推奨する場合は、逆効果となる可能性にも留意する必要がある」と指摘し、「体重管理のアプローチにおける朝食摂取の役割の検討では、今後、質の高い無作為化対照比較試験を行う必要がある」としている。

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血友病〔Hemophilia〕

血友病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■概要血友病は、凝固第VIII因子(FVIII)あるいは第IX因子(FIX)の先天的な遺伝子異常により、それぞれのタンパクが量的あるいは質的な欠損・異常を来すことで出血傾向(症状)を示す疾患である1)。血友病は、古代バビロニア時代から割礼で出血死した子供が知られており、19世紀英国のヴィクトリア女王に端を発し、欧州王室へ広がった遺伝性疾患としても有名である1)。女王のひ孫にあたるロシア帝国皇帝ニコライ二世の第1皇子であり、最後の皇太子であるアレクセイ皇子は、世界で一番有名な血友病患者と言われ、その後の調査で血友病Bであったことが確認されている2)。しかし、血友病にAとBが存在することなど疾患概念が確立し、治療法も普及・進歩してきたのは20世紀になってからである。■疫学と病因血友病は、X連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)による遺伝形式を示す先天性の凝固異常症の代表的疾患である。基本的には男子にのみ発症し、血友病Aは出生男児約5,000人に1人、血友病Bは約2万5,000人に1人の発症率とされる1)。一方、約30%の患者は、家族歴が認められない突然変異による孤発例とされている1)。■分類血友病には、FVIII活性(FVIII:C)が欠乏する血友病Aと、FIX活性(FIX:C)が欠乏する血友病Bがある1)。血友病は、欠乏する凝固因子活性の程度によって重症度が分類される1)。因子活性が正常の1%未満を重症型(血友病A全体の約60%、血友病Bの約40%)、1~5%を中等症型(血友病Aの約20%、血友病Bの約30%)、5%以上40%未満を軽症型(血友病Aの約20%、血友病Bの約30%)と分類する1)。■症状血友病患者は、凝固因子が欠乏するために血液が固まりにくい。そのため、ひとたび出血すると止まりにくい。出産時に脳出血が多いのは、健常児では軽度の脳出血で済んでも、血友病児では止血が十分でないため重症化してしまうからである。乳児期は、ハイハイなどで皮下出血が生じる場合が多々あり、皮膚科や小児科を経由して診断されることもある。皮下出血程度ならば治療を必要としないことも多い。しかし、1歳以降、体重が増加し、運動量も活発になってくると下肢の関節を中心に関節内出血を来すようになる。擦り傷でかさぶたになった箇所をかきむしって再び出血を来すように、ひとたび関節出血が生じると同じ関節での出血を繰り返しやすくなる。国際血栓止血学会(ISTH)の新しい定義では、1年間に同じ関節の出血を3回以上繰り返すと「標的関節」と呼ばれるが、3回未満であれば標的関節でなくなるともされる3)。従来、重症型の血友病患者ではこの標的関節が多くなり、足首、膝、肘、股、肩などの関節障害が多く、歩行障害もかなりみられた。しかし、現在では1回目あるいは2回~数回目の出血後から血液製剤を定期的に投与し、平素から出血をさせないようにする定期補充療法が一般化されており、一昔前にみられた関節症を有する患者は少なくなってきている。中等症型~軽症型では出血回数は激減し、出血の程度も比較的軽く、成人になってからの手術の際や大けがをして初めて診断されることもある1)。■治療の歴史1960年代まで血友病の治療は輸血療法しかなく、十分な凝固因子の補充は不可能であった。1970年代になり、血漿から凝固因子成分を取り出したクリオ分画製剤が開発されたものの、溶解操作や液量も多く十分な因子の補充ができなかった1)。1970年代後半には血漿中の当該凝固因子を濃縮した製剤が開発され、使い勝手は一気に高まった。その陰で原料血漿中に含まれていたウイルスにより、C型肝炎(HCV)やHIV感染症などのいわゆる薬害を生む結果となった。当時、国内の血友病患者の約40%がHIVに感染し、約90%がHCVに感染した。クリオ製剤などの国内製剤は、HIV感染を免れたが、HCVは免れなかった1)。1983年にHIVが発見・同定された結果、1985年には製剤に加熱処理が施されるようになり、以後、製剤を経由してのHIV感染は皆無となった1)。HCVは1989年になってから同定され、1992年に信頼できる抗体検査が献血に導入されるようになり、以後、製剤由来のHCVの発生もなくなった1)。このように血友病治療の歴史は、輸血感染症との戦いの歴史でもあった。遺伝子組換え型製剤が主流となった現在でも、想定される感染症への対応がなされている1)。■予後血友病が発見された当時は治療法がなく、10歳までの死亡率も高かった。1970年代まで、重症型血友病患者の平均死亡年齢は18歳前後であった1,4)。その後、出血時の輸血療法、血漿投与などが行われるようになったが、十分な治療からは程遠い状態であった。続いて当該凝固因子成分を濃縮した製剤が開発されたが、非加熱ゆえに薬害を招くきっかけとなってしまった。このことは血友病患者の予後をさらに悪化させた。わが国におけるHIV感染血友病患者の死亡率は49%(平成28年時点のデータ)だが、欧米ではさらに多くの感染者が存在し、死亡率も60%を超えるところもある5)。罹患血友病患者においては、感染から30年を経過した現在、肝硬変の増加とともに肝臓がんが死亡原因の第1位となっている5)。1987年以後は、輸血感染症への対策が進んだほか、遺伝子組換え製剤の普及も進み、若い世代の血友病患者の予後は飛躍的に改善した。現在では、安全で有効な凝固因子製剤の供給が高まり、出血を予防する定期補充療法も普及し、血友病患者の予後は健常者と変わらなくなりつつある1)。2 診断乳児期に皮下出血が多いことで親が気付く場合も多いが、1~2歳前後に関節出血や筋肉出血を生じることから診断される場合が多い1)。皮膚科や小児科、時に整形外科が窓口となり出血傾向のスクリーニングが行われることが多い。臨床検査でAPTTの延長をみた場合には、男児であれば血友病の可能性も考え、確定診断については専門医に紹介して差し支えない。乳児期の紫斑は、母親が小児科で虐待を疑われるなど、いやな思いをすることも時にあるようだ。■検査と鑑別診断血友病の診断には、血液凝固時間のPTとAPTTがスクリーニングとして行われる。PT値が正常でAPTT値が延長している場合は、クロスミキシングテストとともにFVIII:CまたはFIX:Cを含む内因系凝固因子活性の測定を行う1)。FVIII:Cが単独で著明に低い場合は、血友病Aを強く疑うが、やはりFVIII:Cが低くなるフォン・ヴィレブランド病(VWD)を除外すべく、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)活性を測定しておく必要がある1)。軽症型の場合には、血友病AかVWDか鑑別が難しい場合がある。FIX:Cが単独で著明に低ければ、血友病Bと診断してよい1)。新生児期では、ビタミンK欠乏症(VKD)に注意が必要である。VKDでは第II、第VII、第IX、第X因子活性が低下しており、PTとAPTTの両者がともに延長するが、ビタミンKシロップの投与により正常化することで鑑別可能である。それでも血友病が疑われる場合にはFVIII:CやFIX:Cを測定する6)。まれではあるが、とくに家族歴や基礎疾患もなく、それまで健康に生活していた高齢者や分娩後の女性などで、突然の出血症状とともにAPTTの著明な延長と著明なFVIII:Cの低下を認める「後天性血友病A」という疾患が存在する7)。後天的にFVIIIに対する自己抗体が産生されることにより活性が阻害され、出血症状を招く。100万人に1~4人のまれな疾患であるがゆえに、しばしば診断や治療に難渋することがある7)。ベセスダ法によるFVIII:Cに対するインヒビターの存在の確認が確定診断となる。■保因者への注意事項保因者には、血友病の父親をもつ「確定保因者」と、家系内に患者がいて可能性を否定できない「推定保因者」がいる。確定保因者の場合、その女性が妊娠・出産を希望する場合には、前もって十分な対応が可能であろう。推定保因者の場合にもしかるべき時期がきたら検査をすべきであろう。保因者であっても因子活性がかなり低いことがあり、幼小児期から出血傾向を示す場合もあり、製剤の投与が必要になることもあるので注意を要する。血友病児が生まれるときに、頭蓋内出血などを来す場合がある。保因者の可能性のある女性を前もって把握しておくためにも、あらためて家族歴を患者に確認しておくことが肝要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)従来は、出血したら治療するというオンデマンド、出血時補充療法が主体であった1)。欧米では1990年代後半から、安全な凝固因子製剤の使用が可能となり、出血症状を少なくすることができる定期的な製剤の投与、定期補充療法が普及してきた1)。また、先立って1980年代には自己注射による家庭内治療が一般化されてきたこともあり、わが国でも1990年代後半から定期補充療法が幅広く普及し、その実施率は年々増加してきており、現在では約70%の患者がこれを実践している5)。定期補充療法の普及によって、出血回数は減少し、健康な関節の維持が可能となって、それまでは消極的にならざるを得なかったスポーツなども行えるようになり、血友病の疾患・治療概念は大きく変わってきた。定期補充療法の進歩によって、年間出血回数を2回程度に抑制できるようになってきたが、それぞれの因子活性の半減期(FVIIIは10~12時間、FIXは20~24時間)から血友病Aでは週3回、血友病Bでは週2回の投与が推奨され、かつ必要であった1)。凝固因子製剤は、静脈注射で供給されるため、実施が困難な場合もあり、患者は常に大きな負担を強いられてきたともいえる。そこで、少しでも患者の負担を減らすべく、半減期を延長させた製剤(半減期延長型製剤:EHL製剤)の開発がなされ、FVIII製剤、FIX製剤ともにそれぞれ数社から製品化された6,8)。従来の凝固因子に免疫グロブリンのFc領域ではエフラロクトコグ アルファ(商品名:イロクテイト)、エフトレノナコグ アルファ(同:オルプロリクス)、ポリエチレングリコール(PEG)ではルリオクトコグ アルファ ペゴル(同:アディノベイト)、ダモクトコグ アルファ ペゴル(同:ジビイ)、ノナコグ ベータペゴル(同:レフィキシア)、アルブミン(Alb)ではアルブトレペノナコグ アルファ(同:イデルビオン)などを修飾・融合させることで半減期の延長を可能にした6,8)。PEGについては、凝固因子タンパクに部位特異的に付加したものやランダムに付加したものがある。付加したPEGの分子そのもののサイズも20~60kDaと各社さまざまである。また、通常はヘテロダイマーとして存在するFVIIIタンパクを1本鎖として安定化をさせたロノクトコグ アルファ(同:エイフスチラ)も使用可能となった。これらにより血友病AではFVIIIの半減期が約1.5倍に延長され、週3回が週2回へ、血友病BではFIXの半減期が4~5倍延長できたことから従来の週2回から週1回あるいは2週に1回にまで注射回数を減らすことが可能となり、かつ出血なく過ごせるようになってきた6,8)。上手に製剤を使うことで標的関節の出血回避、進展予防が可能になってきたとともに年間出血回数ゼロを目指すことも可能となってきた。■個別化治療以前は<1%の重症型からそれ以上(1~2%以上の中等症型)に維持すれば、それだけでも出血回数を減らすことが可能ということで、定期補充療法のメニューが組まれてきた。しかし、製剤の利便性も向上し、EHL製剤の登場により最低レベル(トラフ値)もより高く維持することが可能となってきた6,8)。必要なトラフ値を日常生活において維持するのみならず、必要なとき、必要な時間に、患者の活動に合わせて因子活性のピークを作ることも可能になった。個々の患者のさまざまなライフスタイルや活動性に合わせて、いわゆるテーラーメイドの個別化治療が可能になりつつある。また、合併症としてのHIV感染症やHCVのみならず、高齢化に伴う高血圧、腎疾患や糖尿病などの生活習慣病など、個々の合併症によって出血リスクだけではなく血栓リスクも考えなければならない時代になってきている。ひとえに定期補充療法が浸透してきたためである。ただし、凝固因子製剤の半減期やクリアランスは、小児と成人では大きく異なり、個人差が大きいことも判明している1)。しっかりと見極めるためには個々の薬物動態(PK)試験が必要である。現在ではPopulation PKを用いて投与後2ポイントの採血と体重、年齢などをコンピュータに入力するだけで、個々の患者・患児のPKがシミュレートできる9)。これにより、個々の患者・患児の生活や出血状況に応じた、より適切な投与量や投与回数に負担をかけずに検討できるようになった。もちろん医療費という面でも費用対効果を高めた治療を個別に検討することも可能となってきている。■製剤の選択基本的には現在、市場に出ているすべての凝固因子製剤は、その効性や安全性において優劣はない。現在、製剤は従来型、EHL含めてFVIIIが9種類、FIXは7種類が使用可能である。遺伝子組換え製剤のシェアが大きくなってきているが、国内献血由来の血漿由来製剤もFVIII、FIXそれぞれにある。血漿由来製剤は、未知の感染症に対する危険性が理論的にゼロではないため、先進国では若い世代には遺伝子組換え製剤を推奨している国が多い。血漿由来製剤の中にあって、VWF含有FVIII製剤は、遺伝子組換え製剤よりインヒビター発生リスクが低かったとの報告もなされている10)。米国の専門家で構成される科学諮問委員会(MASAC)は、最初の50EDs(実投与日数)はVWF含有FVIII製剤を使用してインヒビターの発生を抑制し、その後、遺伝子組換え製剤にすることも1つの方法とした11)。ただ、初めて凝固因子製剤を使用する患児に対しては、従来の、あるいは新しい遺伝子組換え製剤を使用してもよいとした11)。どれを選択して治療を開始するかはリスクとベネフィットを比較して、患者と医療者が十分に相談したうえで選択すべきであろう。4 今後の展望■個々の治療薬の開発状況1)凝固因子製剤現在、凝固因子にFc、PEG、Albなどを修飾・融合させたEHL製剤の開発が進んでいることは既述した。同様に、さまざまな方法で半減期を延長すべく新規薬剤が開発途上である。シアル酸などを結合させて半減期を延長させる製剤、FVIIIがVWFの半減期に影響されることを利用し、Fc融合FVIIIタンパクにVWFのDドメインとXTENを融合させた製剤などの開発が行われている12)。rFVIIIFc-VWF(D’D3)-XTENのフェーズ1における臨床試験では、その半減期は37時間と報告され、血友病Aも1回/週の定期補充療法による出血抑制の可能性がみえてきている13)。2)抗体医薬これまでの血液製剤はいずれも静脈注射であることには変わりない。インスリンのように簡単に注射ができないかという期待に応えられそうな製剤も開発中である。ヒト化抗第IXa・第X因子バイスペシフィック抗体は、活性型第IX因子(FIXa)と第X因子(FX)を結合させることによりFX以下を活性化させ、FVIIIあるいはFVIIIに対するインヒビターが存在しても、それによらない出血抑制効果が期待できるヒト型モノクローナル抗体製剤(エミシズマブ)として開発されてきた。週1回の皮下注射で血友病Aのみならず血友病Aインヒビター患者においても、安全性と良好な出血抑制効果が報告された14,15)。臨床試験においても年間出血回数ゼロを示した患者の割合も数多く、皮下注射でありながら従来の静脈注射による製剤の定期補充療法と同等の出血抑制効果が示された。エミシズマブはへムライブラという商品名で、2018年5月にインヒビター保有血友病A患者に対して認可・承認され、続いて12月にはインヒビターを保有しない血友病A患者においてもその適応が拡大された。皮下注射で供給される本剤は1回/週、1回/2週さらには1回/4週の投与方法が選択可能であり、利便性は高いものと考えられる。いずれにおいても血中濃度を高めていくための導入期となる最初の4回は1回/週での投与が必要となる。この期間はまだ十分に出血抑制効果が得られる濃度まで達していない状況であるため、出血に注意が必要である。導入時には定期補充を併用しておくことも推奨されている。しかし、けっして年間出血回数がすべての患者においてゼロになるわけではないため、出血時にはFVIIIの補充は免れない。インヒビター保有血友病A患者におけるバイパス製剤の使用においても同様であるが、出血時の対応については、主治医や専門医とあらかじめ十分に相談しておくことが肝要であろう。血友病Bではその長い半減期を有するEHLの登場により1回/2週の定期補充により出血抑制が可能となってきた。製剤によっては、通常の使用量で週の半分以上をFIXが40%以上(もはや血友病でない状態「非血友病状態」)を維持可能になってきた。血友病Bにおいても皮下注射によるアプローチが期待され、開発されてきている。やはりヒト型モノクローナル抗体製剤である抗TFPI(Tissue Factor Pathway Inhibitor)抗体はTFPIを阻害し、TF(組織因子)によるトロンビン生成を誘導することで出血抑制効果が得られると考えられ、現在数社により日本を含む国際共同試験が行われている12)。抗TFPI抗体の対象は血友病AあるいはB、さらにはインヒビターあるなしを問わないのが特徴であり、皮下注射で供給される12)。また、同様に出血抑制効果が期待できるものに、肝細胞におけるAT(antithrombin:アンチトロンビン)の合成を、RNA干渉で阻害することで出血抑制を図るFitusiran(ALN-AT3)なども研究開発中である12)。3)遺伝子治療1999年に米国で、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた血友病Bの遺伝子治療のヒトへの臨床試験が初めて行われた15)。以来、ex vivo、in vivoを問わずさまざまなベクターを用いての研究が行われてきた15)。近年、AAVベクターによる遺伝子治療による長期にわたっての安全性と有効性が改めて確認されてきている。FVIII遺伝子(F8)はFIX遺伝子(F9)に比較して大きいため、ベクターの選択もその難しさと扱いにくさから血友病Bに比べ、遅れていた感があった。血友病BではPadua変異を挿入したF9を用いることで、より少ないベクターの量でより副作用少なく安全かつ高効率にFIXタンパクを発現するベクターを開発し、10例ほどの患者において1年経た後も30%前後のFIX:Cを維持している16-18)。1回の静脈注射で1年にわたり、出血予防に十分以上のレベルを維持していることになる。血友病AでもAAVベクターを用いてヒトにおいて良好な結果が得られており、血友病Bの臨床開発に追い着いてきている16-18)。両者ともに海外においてフェーズ 1が終了し、フェーズ 3として国際臨床試験が準備されつつあり、2019年に国内でも導入される可能性がある。5 主たる診療科血友病の診療経験が豊富な診療施設(診療科)が近くにあれば、それに越したことはない。しかし、専門施設は大都市を除くと各県に1つあるかないかである。ネットで検索をすると血友病製剤を扱う多くのメーカーが、それぞれのホームページで全国の血友病診療を行っている医療機関を紹介している。たとえ施設が遠方であっても病診連携、病病連携により専門医の意見を聞きながら診療を進めていくことも十分可能である。日本血栓止血学会では現在、血友病診療連携委員会を立ち上げ、ネットワーク化に向けて準備中である。国内においてその拠点となる施設ならびに地域の中核となる施設が決定され、これらの施設と血友病患者を診ている小規模施設とが交流を持ち、スムーズな診療と情報共有ができるようにするのが目的である。また、血友病には患者が主体となって各地域や病院単位で患者会が設けられている。入会することで大きな安心を得ることが可能であろう。困ったときに、先輩会員に相談でき、患児の場合は同世代の親に気軽に相談することができるメリットも大きい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報一般社団法人ヘモフィリア友の会全国ネットワーク(National Hemophilia Network of Japan)(血友病患者と家族の会)1)Lee CA, et al. Textbook of Hemophilia.2nd ed.USA: Wiley-Blackwell; 2010.2)Rogaev EI, et al. Science. 2009;326:817.3)Blanchette VS, et al. J Thromb Haemost. 2014;12:1935-1939.4)Franchini M, et al. J Haematol. 2010;148:522-533.5)瀧正志(監修). 血液凝固異常症全国調査 平成28年度報告書.公益財団法人エイズ予防財団;2017. 6)Nazeef M, et al. J Blood Med. 2016;7:27-38.7)Kessler CM, et al. Eur J Haematol. 2015;95:36-44.8)Collins P, et al. Haemophilia. 2016;22:487-498.9)Iorio A, et al. JMIR Res Protoc. 2016;5:e239.10)Cannavo A, et al. Blood. 2017;129:1245-1250.11)MASAC Recommendation on SIPPET. Results and Recommendations for Treatment Products for Previously Untreated Patients with Hemophilia A. MASAC Document #243. 2016.12)Lane DA. Blood. 2017;129:10-11.13)Konkle BA, et al. Blood 2018,San Diego. 2018;132(suppl 1):636(abstract).14)Shima M, et al. N Engl J Med. 2016;374:2044-2053.15)Oldenburg J, et al. N Engl J Med. 2017;377:809-818.16)Swystun LL, et al. Circ Res. 2016;118:1443-1452.17)Doshi BS, et al. Ther Adv Hematol. 2018;9:273-293.18)Monahan PE. J Thromb Haemost. 2015;1:S151-160.公開履歴初回2017年9月12日更新2019年2月12日

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TG低下とLDL-C低下、有益性はほぼ同等/JAMA

 アポリポ蛋白B(アポB)値の単位変化当たりのトリグリセライド(TG)値低下の臨床的有益性は、LDLコレステロール(LDL-C)値低下とほぼ同等であり、アポB含有リポ蛋白粒子の減少の絶対値と比例する可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のBrian A. Ference氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年1月29日号に掲載された。TGとコレステロールは、いずれもアポB含有リポ蛋白粒子によって血漿中に運ばれる。血漿TG値の低下により、心血管イベントのリスクはLDL-C値の低下と同程度に低減するかとの疑問への確定的な回答は得られていないという。63研究のメンデル無作為化解析でCHDリスクを評価 研究グループは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子のTG低下バリアントおよびLDL受容体(LDLR)遺伝子のLDL-C低下バリアントと、アポBの単位変化当たりの心血管疾患リスクとの関連を評価する目的で、メンデル無作為化解析を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 解析には、1948~2017年の期間に北米および欧州で行われた63件のコホート研究および症例対照研究に参加した患者のデータを用いた。LPLおよびLDLRの遺伝子スコアと関連する血漿TG値、LDL-C値、アポB値の評価を行った。 主要アウトカムは、アポB含有リポ蛋白の10mg/dL低下当たりの冠動脈性心疾患(CHD:冠動脈死、心筋梗塞、冠動脈血行再建)のオッズ比(OR)とした。個々のアポB含有リポ蛋白のリスクへの影響は同程度 65万4,783例(平均年齢62.7[SD 8.1]歳、51.4%が女性)が解析に含まれ、このうち9万1,129例がベースライン時にCHDに罹患していた。 アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりのLPL遺伝子スコアは、TG値の69.9mg/dL(95%信頼区間[CI]:68.1~71.6、p=7.1×10-1363)の低下およびLDL-C値の0.7mg/dL(0.03~1.4、p=0.04)の上昇と関連した。これに対し、アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりのLDLR遺伝子スコアは、LDL-C値の14.2mg/dL(13.6~14.8、p=1.4×10-465)の低下およびTG値の1.9mg/dL(0.1~3.9、p=0.04)の低下と関連を示した。 このようにTG値およびLDL-C値の変動には違いがみられたが、LPL遺伝子スコアおよびLDLR遺伝子スコアと、アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりのCHDリスクの低下との関連はほぼ同じであった(LPL遺伝子スコア OR:0.771、95%CI:0.741~0.802、p=3.9×10-38、LDLR遺伝子スコア:0.773、0.747~0.801、p=1.1×10-46)。 多変量メンデル無作為化解析では、アポB値の差で補正すると、TG値およびLDL-C値とCHDリスクとの関連はなくなったが、アポB値とCHDリスクの関連は維持されていた(TG値 OR:1.014、95%CI:0.965~1.065、p=0.19、LDL-C値:1.010、0.967~1.055、p=0.19、アポB値:0.761、0.723~0.798、p=7.51×10-20)。 著者は、「すべてのアポB含有リポ蛋白粒子(TG rich VLDL粒子、その代謝物であるレムナント、LDL粒子)は、ほぼ同程度の心血管疾患リスクへの作用を有し、結果として、TG値やLDL-C値、これら双方の低下の臨床的有益性は、実際のTG値やLDL-C値の変化にかかわらず、アポB含有リポ蛋白の変化の絶対値と比例する可能性がある」としている。

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急激な空腹時血糖の増加、心血管リスク高い~吹田研究

 心血管疾患(CVD)発生率との関連において、空腹時血糖(FPG)の変動を検討した研究はこれまでほとんどなかった。今回、国立循環器病研究センター/藤田医科大学の尾形 宗士郎氏らは、吹田研究でCVD発生とFPGの変動によるサブグループを評価した。本研究の結果から、著者らは「FPGが急激に増加した人は、CVD予防のために危険因子の管理が重要かもしれない」としている。Journal of the American Heart Association誌2019年2月5日号に掲載。 本研究は、日本の集団ベースのコホート研究である吹田研究による。主要アウトカムは、1989~2013年における最初のCVDイベント(脳卒中および冠動脈疾患)の発生率で、FPGは2年ごとに測定された。CVD累積発生率の調査期間におけるFPGの変動をみるためにjoint latent class mixed modelを使用し、FPGの変動とCVD累積発生率でサブグループに分類した。 主な結果は以下のとおり。・男性3,120人および女性3,482人における各追跡期間中央値17.2年および20.2年の間に、それぞれ356件および243件のCVDイベントが観察された。・joint latent mixed modelにより、男性は3つ、女性は2つのサブグループに分類された。・男性の3つのサブグループのうちの1つは、FPG値が急激に増加(40~80歳で96.5~205.0mg/dL)し、CVD累積発生率が高かった。・女性の2つのサブグループのうちの1つは、FPG値が急激に増加(40~80歳で97.7~190.5mg/dL)し、CVD発生率が他のサブグループよりわずかに高い傾向があった。

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安価なインスリンへの変更、血糖値への影響は/JAMA

 米国のメディケアに加入する2型糖尿病患者において、インスリンアナログ製剤からヒトインスリンへの変更を含む医療保険制度改革の実行は、集団レベルでHbA1c値のわずかな上昇と関連していたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のJing Luo氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。新規のインスリンアナログ製剤の価格は上昇しており、ヒトインスリンよりも高額である。しかし、臨床アウトカムを大きく改善しない可能性が示唆されており、低価格のヒトインスリンが多くの2型糖尿病患者にとって、現実的な初回治療の選択肢ではないかと考えられていた。JAMA誌2019年1月29日号掲載の報告。メディケア処方プランに基づくインスリン変更前後のHbA1c値を評価 研究グループは、米国4州で実施されているメディケア・アドバンテージ処方プランの加入者を対象に、分割時系列分析による後ろ向きコホート研究を実施した。被験者には、2014年1月1日~2016年12月31日の期間にインスリンが処方された(追跡期間中央値729日)。医療保険制度改革に伴い、アナログ製剤からヒトインスリンへ変更する介入は、2015年2月にアリゾナ州で試験的に開始され、同年6月までに制度全体での施行が完了した。 主要評価項目は、12ヵ月間の平均HbA1c値の変化量とし、2014年の介入前(ベースライン)、2015年の介入時、2016年の介入後の3期間で評価した。副次評価項目は、重症低血糖または高血糖の頻度とし、ICD-9-CMおよびICD-10-CMの診断コードを用いて評価した。アナログからヒトインスリンへの切り替えでHbA1cがわずかに上昇 1万4,635例(平均[±SD]年齢72.5±9.8歳、女性51%、2型糖尿病93%)に、3年以上にわたりインスリンが22万1,866件処方された。 ベースラインの平均HbA1c値は8.46%(95%信頼区間[CI]:8.40~8.52%)で、介入前は-0.02%/月(95%CI:-0.03~-0.01、p<0.001)の割合で減少していた。介入開始と、HbA1c値0.14%増加(95%CI:0.05~0.23、p=0.003)との関連、および傾斜変化0.02%(95%CI:0.01~0.03、p<0.001)との関連が確認された。介入完了後は、平均HbA1c変化量は0.08%(95%CI:-0.01~0.17)、傾斜変化は<0.001%(95%CI:-0.008~0.010%)で、介入時と比較して有意差は確認されなかった(それぞれp=0.09、p=0.81)。 重症低血糖の発現については、介入開始との間に有意な関連は確認されず、変化量は2.66/1,000人年(95%CI:-3.82~9.13、p=0.41)、傾斜変化は-0.66/1,000人年(95%CI:-1.59~0.27、p=0.16)であった。介入後は、1.64/1,000人年(95%CI:-4.83~8.11、p=0.61)、傾斜変化-0.23/1,000人年(95%CI:-1.17~0.70、p=0.61)で、介入時と比較し有意差は確認されなかった。ベースラインの重症高血糖の頻度は、22.33/1,000人年(95%CI:12.70~31.97)であった。重症高血糖の頻度に関しても、変化量4.23/1,000人年(95%CI:-8.62~17.08、p=0.51)、傾斜変化-0.51/1,000人年(95%CI:-2.37~1.34、p=0.58)であり、介入開始との間に有意な関連はみられなかった。

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降圧目標120mmHg未満でも認知症リスクは低下せず/JAMA

 50歳以上の高血圧患者に対し、収縮期血圧の目標値を120mmHg未満として降圧治療を行っても、140mmHgを目標とする通常の降圧治療と比べて、認知症リスクの有意な低下は認められなかったことが示された。一方で、軽度認知障害のリスクは有意な低下が認められたという。米国・ウェイクフォレスト大学のJeff D. Williamson氏ら「SPRINT試験・SPRINT MIND」研究グループが、9,000例超を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、JAMA誌2019年1月28日号で発表した。ただし結果について、「試験が早期に中止となり、認知症例も予想より少なく、エンドポイントの検出力は不足している可能性がある」と指摘している。現状では、軽度認知障害や認知症のリスクを低減する実証された治療法は存在しておらず、今回研究グループは、血圧コントロールの強化が認知症リスクに与える影響を検討した。米国、プエルトリコの102ヵ所で試験 研究グループは、米国とプエルトリコの102ヵ所の医療機関を通じて、高血圧症で糖尿病や脳卒中の病歴がない50歳以上、9,361例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の群は収縮期血圧の目標値を120mmHg未満とし(強化治療群4,678例)、もう一方の群は同目標値を140mmHgとした(標準治療群4,683例)。 無作為化は2010年11月8日から始められたが、主要アウトカム(複合心血管イベント)と全死因死亡に対する効果が認められたことで、予定より早く2015年8月20日に試験は中止となった。認知機能アウトカムのフォローアップ最終日は2018年7月22日だった。 主要認知機能アウトカムは、認知症の可能性ありとの判定。副次認知機能アウトカムは、軽度認知障害の診断、軽度認知障害または認知症の可能性ありの複合などだった。強化治療群の標準治療群に対する認知症発生ハザード比は0.83 被験者9,361例の平均年齢は67.9歳、女性は3,332例(35.6%)を占め、8,563例(91.5%)が追跡期間中に1回以上の認知機能評価を受けた。介入期間中央値は3.34年、追跡期間中央値は5.11年だった。 追跡期間中の「認知症の可能性あり」との判定者は、強化治療群7.2例/1,000人年に対し、標準治療群8.6例/1,000人年で、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.67~1.04、p=0.10)。 一方、「軽度認知障害」の判定者は、強化治療群14.6例/1,000人年、標準治療群18.3例/1,000人年で、強化治療群で有意に減少した(HR:0.81、95%CI:0.69~0.95、p=0.007)。「軽度認知障害または認知症の可能性あり」の判定者も、それぞれ20.2例/1,000人年、24.1例/1,000人年と、強化治療群で有意に減少した(HR:0.85、95%CI:0.74~0.97、p=0.01)。

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第11回 風邪を予防する5ヵ条【実践型!食事指導スライド】

第11回 風邪を予防する5ヵ条医療者向けワンポイント解説風邪やインフルエンザについての流行時期や感染経路などがニュースになる時期です。食生活への意識は、これらに対する予防効果として期待できますし、体調管理にもつながります。そこで、風邪を予防するための5つのポイントをまとめました。1)喉などの粘膜を保護するためにビタミンAを摂取するビタミンAは、体内で免疫機能、視覚、生殖、細胞情報伝達に関与している栄養素です。皮膚や粘膜の保護、健康を維持する働きがあるため、ウイルスや菌の予防に対しても効果があると考えられています。ビタミンAは2種類あり、肉や魚、乳製品、卵などに含まれるレチノールなどの既成ビタミンAと、野菜や果物などに含まれるβ−カロテンなどのプロビタミンAカロテノイドがあります。多く含まれる食品として、牛乳やチーズなどの乳製品、緑黄色野菜(色の濃い野菜:ニンジン、パセリ、ほうれん草、春菊、ブロッコリー、水菜など)があります。脂溶性ビタミンなので、「油で炒める」、「ドレッシングをかける」、「肉や魚と一緒に食べる」ことで効率的な吸収が期待できます。2)免疫を高めるためにビタミンDを摂取するビタミンDは、骨を丈夫にする働き、免疫機能を調整する働きがあり、ウイルスや菌などに対して予防効果が期待されています。ビタミンDは、サケ、イワシ、サバなどの魚類、キクラゲ、干し椎茸などのキノコ類に多く含まれます。なかでも、イワシ缶やサバ缶は手軽にとれる食品です。また、キクラゲや干し椎茸を意識して料理に加えるのも良いでしょう。ビタミンDは、太陽光に含まれる紫外線を浴びることで、皮膚で生合成されるビタミンです。しかし、最近では、日焼け止めクリーム、UVカットガラスの普及に伴い、30歳以上の約半数がビタミンD不足の状態であるという報告もあります。また、冬場は日照時間も少なくなるため、食べ物からのビタミンD摂取を意識することが大切です。3)果物や葉物野菜からビタミンCを摂取するビタミンCは、コラーゲンの生成、抗酸化作用、栄養素の吸収など様々な働きがあるため、免疫力を高め、風邪予防に対しても効果が期待されます。ただし、一度に大量摂取しても、尿へ排泄されてしまいます。こまめに摂取しましょう。ビタミンCは、レモンやオレンジ、みかんなどの果物からの摂取が一般的ですが、実は野菜に多く含まれ、赤ピーマン、かいわれ大根、カリフラワー、ミニトマト、キャベツなどに豊富に含まれます。熱に弱く、水溶性ビタミンのため、生での摂取が効率的です。ただし、オレンジジュースなどの大量摂取は、ビタミンCよりも糖の摂取過多が懸念されるので、野菜からのビタミンC摂取をすすめすると良いでしょう。4)のど飴や温かい飲み物で口の乾燥を予防する冬は、室内、野外ともに乾燥していることがほとんどです。乾燥により粘膜が乾燥すると、ウイルスや菌が侵入しやすくなるため、口腔内の保湿が重要です。口の中にのど飴などを入れておくと、唾液が出て乾燥予防になります。温かい飲み物は、水分補給によりカラダ全体の乾燥を予防するだけではなく、カラダを直接温め、胃腸の動きを活性化し、代謝を高める働きが期待できます。5)肉や魚などのタンパク質を摂取して体力を増強する免疫力を高めるためには、体力の増強が大切です。肉や魚をはじめとする動物性タンパク質は、筋肉になりやすく、日常的に意識して摂取することが大切です。大豆製品などの植物性タンパク質は、脂質が少なく、食欲がないときにも摂取しやすい良質なタンパク源です。しっかりと噛んで食べることは、胃腸への負担を減らし、消化の助けになります。また、噛むことは副交感神経を刺激します。副交感神経が優位になると、リンパ球が増え、免疫力の強化も期待できます。

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アスピリンの1次予防は、メリットより出血リスクのほうが大きい(解説:桑島巖氏)-1002

 被検者数1,000例以上のシステマティックレビューとメタ解析の結果、1次予防薬としてのアスピリンの出血リスクは心血管イベントの発症予防のメリットを上回るというのが本論文の主旨である。アスピリンは脳卒中や虚血性心疾患を有している症例に対する2次予防効果が確認されているが、1次予防効果に対する有効性に関してはいまだ定かではなかった。そもそもは、1989年にPhysicians Heart studyという米国の医師を被検者としてアスピリン325mg隔日服用群とプラセボ群にランダマイズして両群の心筋梗塞発症率を比較したRCTで、アスピリン群のほうが44%もAMIが少なかったという成績がNEJM誌に発表されたことから、一躍アスピリンの心血管イベント抑制効果が注目され始めた。 しかし、その後わが国を含め多くのアスピリンの1次予防に対する有効性を検討した結果が発表されているが、次第に否定的な結果の発表が増えていった。なかでもわが国で行われた2つの大規模なRCTは、いずれも否定的な結果に終わっている。日本人の心筋梗塞の発症率は米国よりもかなり低いことが関係していると思われるが、もう1つ研究が行われた時代背景も関係している。 Physician Heart studyは今から20年前の臨床研究であるが、その後高リスクの症例ではスタチン薬処方が普及するとともに、降圧目標もより厳格となったことで心筋梗塞が起こりにくくなっているという事実がある。かっては心血管イベント1次予防の抑制に有効であったが今や、そのデメリットである大出血リスクのほうが上回るようになったといえよう。治療薬の評価も時代とともに変化するのである。 メタ解析の常として、採用されたトライアルの均質性、たとえばアスピリンの用量、症例のリスク因子のレベルなどは担保されていない点は留意しておく必要がある。

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1型糖尿病患者に経口治療薬登場

 2019年1月17日、アステラス製薬株式会社は、寿製薬株式会社と共同開発したイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)が、2018年12月に1型糖尿病への効能・効果および用法・用量追加の承認を受けたことを機に、都内でプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、SGLT2阻害薬の1型糖尿病への期待と課題、適正使用のポイントなどが解説された。1型糖尿病患者への経口薬の適応が検討されてきた経緯 セミナーでは、加来 浩平氏(川崎医科大学・川崎医療福祉大学 特任教授)を講師に迎え「1型糖尿病治療の新しい選択肢 ~SGLT2阻害薬スーグラ錠への期待と注意すべきポイント~」をテーマに講演が行われた。 1型糖尿病は、全糖尿病患者の約6%(11万人超)の患者がいるとされ、治療では、インスリンの絶対的適応となる。また、1型糖尿病では、いままで経口治療薬としてαグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の1種類しか保険適用ではなく、治療では低血糖やケトアシドーシスの発現で非常に苦労をしていたという。そのため、血糖管理を2型糖尿病患者と比較しても、2型糖尿病の平均HbA1c値が2002年7.42%から2017年7.03%へと低下しているのに対し、1型糖尿病では2002年8.16%からの推移を見ても、2009年から7.8%前後で下げ止まりとなるなど、インスリンだけの治療の困難さについて触れた。 こうした背景も踏まえ1型糖尿病患者への経口薬の適応が検討され、イプラグリフロジンの臨床試験が行われたと臨床試験の経緯を説明した。1型糖尿病患者175例を対象にインスリン製剤と併用投与 24時間インスリン製剤を使用した際のイプラグリフロジン50mgの有効性および安全性を検討した、第III相二重盲検比較試験/長期継続投与試験が行われた。対象者は、20歳以上のインスリン療法で血糖管理が不十分な1型糖尿病患者175例(HbA1c7.5%以上11.0%以下)で、4週間のスクリーニング期と2週間のプラセボrun-in期を経て、イプラグリフロジン50mgまたはプラセボに2:1に無作為に割り付けられ、二重盲検下で24週間、インスリン製剤と併用投与された。また、安全性に問題がないと判断された場合は、28週間の非盲検期に移行された。主要評価項目はHbA1c値の改善で、副次評価項目は空腹時血糖値の改善、併用総インスリン1日投与単位数であった。 24週後の二重盲検投与終了時のHbA1c値は、イプラグリフロジン群で-0.47%だったのに対し、プラセボ群は-0.11%とイプラグリフロジン群の方が-0.36%低下し、優越性が検証された。また、併用総インスリン1日投与単位数では、イプラグリフロジン群とプラセボ群では-7.35IUと有意差を認める結果だった。体重の変化では、プラセボ群に比べ、イプラグリフロジン群で平均-2.87kgと有意な体重減少も認められた。 安全性に関しては、死亡や重篤な副作用は確認されなかったが、「インスリンを減量しないと低血糖の発現リスクが、一方で減量しすぎるとケトアシドーシスのリスクが高まる可能性がある。ケトン体の出現など服用3ヵ月くらいが注意する期間」と加来氏は指摘し、これら相反する問題に対して、どうマネジメントしていくかがSGLT2阻害薬処方時のこれからの課題と語った。1型糖尿病治療へイプラグリフロジンを用いる長所 加来氏は、イプラグリフロジン使用のポイントとして、日本糖尿病学会提唱の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を参考にするとともに、とくに1型糖尿病の患者への注意点として、「必ずインスリン製剤を併用すること、インスリンの注射量の減量は医師の指示に従うこと」を挙げた。また、処方で注意すべき症例として「女性、痩せている人、インスリンポンプ使用者」を具体的に挙げ、女性はケトアシドーシスの報告が多く、インスリンポンプは故障により低血糖リスクが増加するケースがあると注意を促した。 最後にまとめとして、イプラグリフロジンを1型糖尿病治療へ用いる長所として「血糖改善、インスリン使用量の削減、体重抑制」などがあるとともに、課題として「ケトアシドーシスのリスク増加、インスリンの中断や過剰な減量などでのリスクがある。この点を見極めて使用してもらいたい」と述べ、講演を終えた。

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第9回 意識障害 その7 AKAって知ってる?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)バイタルサイン、とくに呼吸数に着目し、重篤な病態を見逃すな!2)アルコール性ケトアシドーシスを知ろう!3)ビタミンB1は「不足しているかも?」と思った段階で忘れずに投与しよう!【症例】60歳男性の意識障害:これまた良く出会う症例60歳男性。アルコール性肝硬変、2型糖尿病、慢性腎臓病で内服治療中の方。来院前日から労作時の呼吸困難を認めた。自宅で様子をみていたが、大好きなお酒も飲むことができなくなった。病院にいこうと家を出たが、路上で嘔吐を認め、動けなくなり、目撃した通行人が救急要請。●搬送時のバイタルサイン意識3/JCS血圧132/98mmHg脈拍118回/分(整)呼吸30回/分SpO294%(RA)体温35.0℃瞳孔3/3mm+/+今回の意識障害の原因は何でしょうか。救急外来で診療していると、しばしば出会う病態です。アルコール関連の意識障害は、単純な酩酊から外傷、痙攣などなど、さまざまです。では、明らかな外傷を認めない場合、アルコール多飲患者で考えておくべき病態はどのようなものがあるでしょうか?その場で判断ができないことも多く、具体的な着眼点を追って解説していきます。頻呼吸に出会ったらこの患者さんのように、呼吸回数が上昇している患者さんをみたら、どのような病態、病気を考えるべきでしょうか。「過換気」とまず考えてしまうのは御法度です。もちろんその可能性もありますが、それよりも急を要する状態である「代謝性アシドーシスの代償」の可能性を、まずは考えましょう。ヘンダーソンの式(pH=6.1+log[HCO3−]/0.03×[PaCO2])からもわかるように、代謝性アシドーシス(HCO3−が低下)となれば、それを代償しようと(PaCO2を低下させようと)呼吸回数が上昇するのです。表の10’s Ruleでも、まずは具体的な疾患よりもABCの安定、バイタルサイン、病歴、身体所見の重要性を強調してきました。バイタルサインの中でも呼吸数は軽視されがちです。とくに意識障害患者が頻呼吸を認めた場合は、いわゆる「まずい」状態です。qSOFA(意識、呼吸、収縮期血圧の3項目)の2項目満たしているわけですからね。画像を拡大する代謝性アシドーシス?と思ったら血液ガスを確認しましょう。10’s Ruleでは「5)何が何でも低血糖の否定から!」の部分で、簡易血糖測定(デキスタ)とともに確認するとよいでしょう。その場で血液ガスが測定できれば、数分以内に確認可能ですね。血液ガスは動脈から採取する必要があるでしょうか? 具体的な酸素・二酸化炭素分圧を確認する場合には、動脈血で確認しますが、静脈血でもわかることがたくさんあります。pHやHCO3−は静脈血でも動脈血でも大きな差がないことがわかっており、静脈血で代謝性アシドーシスを認める場合には、その時点でまずいことがわかります。と同時に血糖値、カリウムなどの電解質、CO-Hb(カルボキシヘモグロビン)、MetHb(メトヘモグロビン)、そして乳酸値もわかる血液ガスは、緊急性、重症度の判断にきわめて有用な検査です。実際にこの症例では、pH7.15、HCO3−12.1mmol/L、base excess-16.6mmol/L、乳酸9.8mmol/Lと著明なアシドーシスを認めていました。血糖値は100mg/dL、電解質異常は認めませんでした。原因は何でしょうか? どのように対応するべきでしょうか?乳酸アシドーシスに出会ったら乳酸が上昇していたら焦りましょう。正常値は2mmol/L(18mg/dL)以下です。4mmol/L(36mg/dL)以上を一般的に上昇と捉え、その場合には必ず原因を考えましょう。乳酸アシドーシスの鑑別は、「(1)ショック、(2)腸管虚血、(3)けいれん、(4)ビタミンB1欠乏、(5)薬剤、(6)その他」と覚えておきましょう1)。とくに本症例のような、アルコール関連疾患が想起される場合には、必ずビタミンB1欠乏を鑑別の上位に挙げ、対応する必要があります。ビタミンB1欠乏の症状と対応ビタミンB1の欠乏というとウェルニッケ脳症や末梢神経障害が有名ですが、その他に乳酸アシドーシス、脚気心(高拍出性心不全:wet beriberi)も重要です。原因がよくわからない乳酸アシドーシスや心不全では、ビタミンB1の欠乏を意識して対応する癖を持つとよいと思います。ビタミンB1は即結果が出るわけではなく、その場で欠乏の有無を判断することはできませんが、安価で副作用もほとんどないため、「必要かな?」と思ったら投与しましょう。欠乏のリスクが少しでもあると判断した段階でビタミンB1は100mg静注、アルコール多飲や妊娠悪阻、担がん患者などで寝たきり・低栄養状態でリスクが高いと判断した場合には200mgは静注しましょう。また、ウェルニッケ脳症の可能性があると判断した場合には、初回500mgの投与(1,500mg/日)が推奨されています。(意識障害 その3参照)本症例では、心機能評価目的にエコーを行うと、心収縮力の低下を認めました。乳酸アシドーシス、心機能低下からビタミンB1の欠乏が考えられます。DKAだけでなくAKAも覚えておこう!DKAは糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis)として有名ですが、AKAはご存じでしょうか? アルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis:AKA)です。アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスをみたら鑑別に挙げ、患者が慢性アルコール依存患者(アルコール多飲者)であった場合には、積極的に鑑別に挙げ介入する必要があります。「体調が悪く、お酒すら飲むことができなくなった」という病歴が「らしい」ことを示唆しています。ただ、AKAの確定診断をその場で行うことは難しく、疑い症例に対して介入し、その後の経過やβ-ヒドロキシ酪酸などのケトン体分画の結果で診断します。初療において重要なことは、AKAの治療として細胞外液・ビタミンB1の投与、血糖が低めの場合にはブドウ糖の投与を行い、それとともにAKA以外のアシドーシスの原因となりうる病態がないかを検索することです。急性膵炎、消化管出血はAKA同様にアルコール関連疾患として頻度も高く、合併していることもあります。また、アルコール離脱によって痙攣し、乳酸値が上昇することもあります。いろいろと考えることがあるのです。アルコール?と思ったら病歴や既往から、意識障害の原因としてアルコールの影響を考えた場合には、具体的にどうするべきでしょうか?いつ何時でもABCの安定が大切であるため、原因をアルコールによる酩酊とは決めつけず、バイタルサインや血液ガス所見から重症度を判断し、対応します。●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!アシドーシスや低血糖を伴う場合には、迷わず検体採取後に速やかにビタミンB1を静注し、細胞外液を投与しつつ全身管理を行いながら、鑑別を進めます。本症例では、初療時には敗血症、AKA、ビタミンB1欠乏などを考え対応しました。集中治療を要しましたが、数日後には状態は改善しました。後日判明したビタミンB1値は著明に低下していました。確定診断することは大切です。しかし、初療時にすべてが判明するわけではありません。疑い、そして否定できなければ、あるものとして対応することが必要な場合もあるのです。“AIUEOTIPS”の“S”にSupplementを追加し、ビタミン欠乏を見逃さないように心掛けましょう!(意識障害 その2参照)次回は、「AIUEOTIPS」の活用法を学びましょう。1)Kraut JA,et al. N Engl J Med. 2014;371:2309-2319.

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第12回 アナタはどうしてる? 術前心電図(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第12回:アナタはどうしてる? 術前心電図(前編)内科医であれば、外科系の先生方から術前心電図の異常について、一度はコンサルテーションされたことがありますよね? 循環器内科医なら日常茶飯事のこの案件、もちろん“正解”は一つじゃありません。前編の今回は、症例を通じて術前心電図の必要性について、Dr.ヒロと振り返ってみましょう。症例提示67歳、男性。変形性膝関節症に対して待機的手術が予定されている。整形外科から心電図異常に対するコンサルテーションがあった。既往歴:糖尿病、高血圧(ともに内服治療中)、喫煙:30本×約30年(10年前に禁煙)。コンサル時所見:血圧120/73mmHg、脈拍81/分・整。HbA1c:6.7%、ADLは自立。膝痛による多少の行動制限はあるが、階段昇降は可能で自転車にて通勤。仕事(事務職)も普通にこなせている。息切れや胸痛の自覚もなし。以下に術前の心電図を示す(図1)。(図1)術前の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ1)洞(性)徐脈2)左軸偏位3)不完全右脚ブロック4)(第)1度房室ブロック5)左室高電位(差)解答はこちら3)、5)解説はこちら術前心電図でも、いつも通りに系統的な心電図の判読を行いましょう(第1回)。1)×:R-R間隔は整、P波はコンスタントで、向きも“イチニエフの法則”に合致しますから、自信を持って「洞調律」です(第2回)。心拍数なら“検脈法”が簡便です。左半分(肢誘導)のみ、あるいは左右全体(肢誘導・胸部誘導)で数えても60/分ですから、「徐脈」基準を満たしません。Dr.ヒロ的な“境界線”は「50/分」でしたね。2)×:QRS電気軸は、“スパイク・チェック”にて、QRS波の「向き」を確認するのでした(第8回)。I、II、aVF誘導いずれも上向き(陽性)で、軸偏位はありません(正常軸)。ちなみに、以前紹介した“トントン法Neo”だと、「+40°」と計算されます(TPは、III [+120°]と-aVL [+150°]の間で前者よりの「+130°」)。3)○:典型的ではないですが、一応「不完全右脚ブロック」でいいでしょう。V1誘導の特徴的な「rSr'型(r<r')」と、イチエルゴロク(とくにI、aVL、V5)でS波が軽めに“主張”する感じです(Slurという)。QRS幅が0.12秒(3目盛り)以内なら、“不完全”という言葉を冠します(自動診断でQRS幅は0.102秒です)。4)×:「(第)1度房室ブロック」はPR(Q)間隔が延長した所見であり、“バランスよし!”の部分でチェックします。P波とQRS波の距離はちょい長め(≒0.20秒)ですが、これくらいではそう診断しません(目安:0.24秒以上)。「PR(Q)延長」との指摘にとどめるべき範疇でしょうか。5)○:QRS波の「高さ」は“高すぎ”ですね。具体的な数値も知っていて損はないですが、V4~V6あたりの誘導、とくにゴロク(V5、V6)のR波が突き抜けて直上の誘導に突き刺さる“重なり感”にボクはビビッときます(笑)。加えて、軽度ですがII、V4~6誘導に「ST低下」があり、高電位所見とあわせて「左室肥大(疑い)」とジャッジしたいものです。【問題2】術前心電図(図1)の意義について考察せよ。解答はこちら意義:耐術性や心合併症リスク評価の観点では「低い」解説はこちら非心臓手術の術前検査で何をどこまで調べるか? 心電図に限らず、これは全ての検査に言えることなので、純粋な心電図の読みから少し離れてお話しましょう。非心臓手術における術前検査に関するガイドラインは、米国では10年以上前*1、2から、そして最近ではわが国でも欧米のものを参考に作成*3されています。これらのガイドラインによると、今回のように日常生活や仕事などで特別な症状もなく十分に“動ける”ケースの場合、心電図検査のみならず、術前心血管系評価そのものが「適応なし」とされます。従って、心電図に「意義」を求めるのは“筋違い”なのかもしれません。ただ、現実はどうでしょう? 皆さんの病院の診療はガイドライン通りに行われていますか…? おそらく「NO」なのではないでしょうか?欧米では、こうした“見なくて良かった”心電図異常のコンサルト、手術の対象疾患とは無関係な心臓の追加検査が、コスト的にムダとみなされています。これは、検査技師やナースにも無駄な仕事をさせているともとらえることができますよね?*1:Fleisher LA, et al.Circulation.2014;130:e278-333.*2:Feely MA, et al.Am Fam Physician.2013;87:414-8.*3:日本循環器学会ほか:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン2014年改訂版.(注:*1は2019年1月に一部改訂)循環器内科医・内科医にとって、外科医からの術前心電図のコンサルテーションは非常によくあります。実際に、日本の病院では、非心臓手術をする前に心電図を“(ほぼ)全例”やっているのではないでしょうか。そんな状況下で、術前心電図をすべきか否かを論じるのは正直ナンセンスな気もします。心電図検査をすること自体に、一見、悪いことなんて見当たりません。採血の痛みもレントゲンの被曝もない安全・安心な検査ですから。前述のガイドライン*1でも、低リスク手術でなければ心電図検査は年齢を問わず“考慮”(considered)となっています(ただし、膝手術を低リスクと見なす文献もあり)。ほかにも、「65歳以上」なら心電図を“推奨”(recommended)、今回のように「糖尿病」や「高血圧」を有するなら“考慮”(considered)とする文献もあります。「よく調べてもらっている」という患者さん側のプラスな印象も相まって、わが国の医療・保険制度上では、オーダーする側の医師のコスト意識も、諸外国に比べて断然低いと想像できます。“ルーチンでやっちゃえ”的な発想が根付くのにも納得です。でも、本当にそうでしょうか?少し古いレビューですが、次の表を見て下さい(図2)。(図2)ルーチン心電図の検査意義画像を拡大する既往歴や動悸・息切れ、胸痛などの心疾患を疑う思わせぶりな自覚症状があってもなくても、あまり深く考えずに術前に“ルーチン”で心電図検査をすると、4.6~31.7%に“異常”が見つかります。中央値は12.4%で、これは実に8人に1人の割合です。どうりで術前コンサルトが多いはずです。もしも、何も考えずに自動診断のところに何か所見が書いてあったら、循環器(内科)に相談しておこう、という外科医がいたとしたら、ボクたちの“通常業務”も圧迫しかねない“迷惑な相談”です(いないと信じたい)。でも、実際には臨床的意義のある心電図所見は約3分の1の4.6%、そして驚くなかれ、治療方針が変わったのは全体の0.6%なんです!より具体的に言うと、仮に200人の非心臓手術を受ける患者さんに、盲目的に術前心電図をオーダーすると、約25人に何らかの自動診断による所見があります。でも、治療方針に影響を与えるような重大な結果があるのはせいぜい1人。つまり大半の24人には大局に影響しない、ある意味“おせっかい”な指摘なんです。自分の診療を振り返ってみても、確かにと納得できる結果です。心電図をとってもデメリットはないと言いましたが、たとえば癌で手術を受けるだけでも不安な患者さんに、心電図が余計な“心配の種”になっていたら本末転倒だと思いませんか?今回の67歳男性も整形外科で膝の手術を受けるわけですが、心疾患の既往やそれを疑うサインもない中で、なかば“義務的”に心電図検査を受けたがために、「不完全右脚ブロック」と「左室肥大(疑い)」という“濡れ衣”を着せられようとしています。これはイカン。“ボクたちの仕事増やすな”という冗談は置いといて、今回、ボクが皆さんに投げかけたいテーゼはこれです。緊急性を要さない心電図異常、とくに「波形異常」の術前コンサルトの場合、循環器内科医(または内科医)のとるべきスタンスは…1)心電図異常=心臓病とは限らない2)今の心臓の状態は、今回の手術を優先して問題ないので、追加検査は原則必要ないと言ってあげること。これが非常に大事です。しいて言えば、所見の重症度や外科医の意向などから、せいぜい心エコー検査を追加するくらいでしょうか。この辺は一様ではなく、病院事情やコンサルタントの裁量で決めることになろうかと思います。ボクなりのコメント例を示します。「今回は手術を受けるために心電図検査を受けてもらいました。○○さんの検査結果には多少の所見がありましたが、ほかの人でもよくあることです。心臓病の既往や疑いもないですし、普段も自覚症状がないようなので手術には影響のないレベルです。必要に応じて、手術が済んでから調べても問題ないのですが、外科の先生の希望もあるため、念のためエコー検査だけ受けてもらえませんか?」患者を安心させ、コンサルティ(外科医)の顔もつぶさず、かつ病院の“慣習”にも逆らわない“正解”は様々でしょう。けれど、このような内容を知っているだけで対応も変わってくるのではないでしょうか。今回は、ルーチン化している術前検査の意義について、心電図を例に提起してみました。次回(後編)も引き続き、術前心電図をテーマに一歩進んだ異常所見の捉え方についてお伝えします。お楽しみに!Take-home Messageルーチンの術前心電図では高率に異常所見が見つかるが、大半は精査・急な処置ともに不要!【古都のこと~夕日ヶ浦海岸~】本連載では、京都市内ないし近郊の名所をご紹介してきましたが、今回は少し遠出します。おとそ気分覚めやらぬ1月初旬、京丹後市の夕日ヶ浦(浜詰)海岸を訪れました。京都縦貫自動車道を使って片道3時間(往復300km)の道のりですが、立派に府内です。春すら感じてしまう天候、はるかな水平線、海、空、そして数km続く白浜…。そこには、前年に訪れた際の小雨降る青黒い日本海とは“別の顔”がありました。“何をそんな小さなコト・モノ・ヒトにこだわっているの?”日本屈指のサンセット・ビーチのダイナミックなパノラマビューを眺めれば、誰でもそんな声が聞こえるはず。かに料理に舌鼓を鳴らし露天風呂につかれば、至高の休日です。

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非代償性肝硬変を伴うC型肝炎に初の承認

 平成元年(1989年)に発見されたC型肝炎ウイルス(HCV)。近年、経口の直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)が次々と発売され、C型慢性肝炎や初期の肝硬変(代償性肝硬変)の患者では高い治療効果を得られるようになったが、非代償性肝硬変を伴うHCV感染症に対する薬剤はなかった。そのような中、平成最後の今年、1月8日にエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠、以下エプクルーサ)が、「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」に承認された。また、DAA治療失敗例に対する適応症(前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善)も取得した。ここでは、1月25日に都内で開催されたギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーで、竹原 徹郎氏(大阪大学大学院医学系研究科内科学講座消化器内科学 教授)が講演した内容をお届けする。予後の悪い非代償性肝硬変で初めて高い治癒率を実現 HCV感染者は長い期間を経て、慢性肝炎から代償性肝硬変、非代償性肝硬変へと進行する。非代償性肝硬変患者の予後は悪く、海外データ(J Hepatol. 2006)では、2年生存率が代償性肝硬変患者では約90%であるのに対し、非代償性肝硬変患者では50%以下という。国内データ(厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書)でも、Child-Pugh分類A(代償性肝硬変)では3年生存率が93.5%に対して、非代償性肝硬変であるB、Cではそれぞれ71.0%、30.7%と低い。しかし、わが国では非代償性肝硬変に対して推奨される抗ウイルス治療はなかった(C型肝炎治療ガイドラインより)。 このような状況のもと、非代償性肝硬変に対する治療薬として、わが国で初めてエプクルーサが承認された。 非代償性肝硬変患者に対する承認は、エプクルーサ単独とリバビリン併用(ともに12週間投与)を比較した国内第 3 相臨床試験(GS-US-342-4019)の結果に基づく。竹原氏は、「海外試験ではリバビリン併用が最も良好なSVR12(治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率)を達成したが、この国内試験では両者のSVR12に差がみられなかったことから、有害事象の少なさを考慮して併用なしのレジメンが承認された」と解説した。 本試験でエプクルーサ単独投与群には、年齢中央値67歳の51例が組み入れられ、うち24例はインターフェロンやリバビリン単独投与などの前治療歴を有する患者であった。主要評価項目であるSVR12は92.2%で、患者背景ごとのサブグループ解析でも高いSVR12が認められ、治療歴ありの患者で87.5%、65歳以上の患者でも96.6%であった。同氏は、「より進行した状態であるChild-Pugh分類Cの患者で若干達成率が低かったが、それでも約80%で治癒が確認されている」とその有効性を評価。有害事象は9例で認められ、主なものは発疹、皮膚および皮下組織障害、呼吸器・胸郭および縦郭障害(それぞれ2例で発現)であった。他の薬剤で治癒が確認されていない特殊な薬剤耐性例でも効果 一方、DAA治療失敗例に関しては、DAA既治療のジェノタイプ1型および2型患者を対象とした試験(GS-US-342-3921)において、リバビリン併用の24週間投与により96.7%のSVR12率を達成している。「DAA既治療失敗例は、複雑な耐性変異を有する場合が多いが、これらの患者さんでも95%以上の治癒が得られたのは非常に大きい。とくに他の薬剤で治癒が確認されていない特殊な薬剤耐性P32欠損についても、5例中4例で治癒が確認された」と同氏は話した。また有害事象に関しては、リバビリンに伴う貧血の発現が約20%でみられたが、「貧血が起こっても、薬剤の量を調整することで症状を抑えることが可能。貧血が原因で投与中止となった例はない」と話している。 最後に同氏は、「非代償性肝硬変とDAA治療失敗例という、これまでのアンメットメディカルニーズを満たす治療薬が登場したことを、広くすべての医療従事者に知ってもらい、専門医と非専門医が連携して、治療に結び付けていってほしい」とまとめた。

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子供における肥満とうつ病に関するメタ解析

 14歳までに診断可能な精神疾患は全症例の半数に上るにもかかわらず、小児期の精神疾患は、医療従事者および両親にあまり認識されていない。世界的には、10~19歳において、うつ病は疾患負荷の主な原因となっている。うつ病を未治療のままにすると、学業不振、社会機能の低下、薬物乱用、成人期の再発性うつ病、自殺リスクの増加を引き起こす可能性が高まる。その結果として生じる治療費のために、国民健康保険が負担する費用は20億ポンドを超えると推定されており、うつ病の社会的および経済的影響は、かなり大きいと考えられる。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのShailen Sutaria氏らは、肥満の子供と標準体重の子供におけるうつ病の割合を比較した。Archives of Disease in Childhood誌2019年1月号の報告。 観察研究としてシステマティックレビューおよびランダム効果メタ解析を行った。2000年1月~2017年1月までの研究を、EMBASE、PubMed、PsychINFOより検索を行った。適格基準は、18歳未満の小児を対象とし、年齢・性別によるBMIの一覧表またはInternational Obesity Task Force(IOTF)の年齢、性別のカットオフ値を用いた、横断的または縦断的観察研究とした。うつ病の併発と将来的な発症について検討した。 主な結果は以下のとおり。・22研究より14万3,603例がメタ解析に含まれた。・肥満児のうつ病有病率は10.4%であった。・肥満児のうつ病発症オッズは、標準体重児と比較し、1.32(95%CI:1.17~1.50)高かった。・女児では、肥満児のうつ病発症オッズは、標準体重児と比較し、1.44(95%CI:1.20~1.72)高かった。・過体重児とうつ病との関連性は認められなかった(OR:1.04、95%CI:0.95~1.14)。・男性では、肥満(OR:1.14、95%CI:0.93~1.41)または過体重(OR:1.08、95%CI:0.85~1.37)とうつ病との関連は認めらなかった。・横断的または縦断的研究のサブグループ解析では、小児における肥満は、うつ病の併発(OR:1.26、95%CI:1.09~1.45)および将来的な発症(OR:1.51、95%CI:1.21~1.88)の両オッズと関連していることが、それぞれで明らかとなった。 著者らは「女児における肥満は、標準体重と比較し、うつ病発症オッズが有意に高く、このリスクは、成人期まで継続することが示唆された。臨床医は、肥満女児のうつ病スクリーニングを検討すべきである」としている。■関連記事難治性うつ病発症に肥満が関連かうつ病になりやすいのは、太っている人、痩せてる人?肥満が双極性障害の病態生理に影響

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CVDのない患者へのアスピリン投与は有効か/JAMA

 心血管疾患のない人へのアスピリン投与は、心血管リスクを低減する一方で、大出血リスクを増大することが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSean L. Zheng氏らによる、システマティックレビューとメタ解析の結果、示された。著者は、「この情報を、心血管イベントと出血の1次予防におけるアスピリンの使用に関して患者と話し合う際に、伝えるのがよいだろう」と述べている。心血管系の1次予防におけるアスピリンの役割については、出血リスクが増大するという点でベネフィットが限定的であり、なお議論の的になっている。研究グループは、13の無作為化試験を対象にメタ解析を行った。JAMA誌2019年1月22日号掲載の報告。被験者総数1,000例以上、追跡期間12ヵ月以上の試験を対象に分析 研究グループは、Cochrane LibraryのCentral Register of Controlled Trials(CENTRAL)を通じて、2018年11月1日時点のPubMedとEmbase掲載の無作為化試験を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 心血管疾患のない被験者数1,000例以上を対象に、追跡期間12ヵ月以上、アスピリンとプラセボまたは無治療を比較した無作為化試験を対象に、分析を行った。 ベイズ法および頻度論的方法でメタ解析を行い、アスピリンと心血管イベントの1次予防、または出血との関連を評価した。 主要心血管アウトカムは、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合とした。主要出血アウトカムは、個々の試験で定義したすべての大出血とした。心血管アウトカムのNNTは265、大出血のNNHは210 計13の無作為化試験(16万4,225例、105万511人年)が解析に含まれた。被験者の年齢中央値は62歳、男性は47%(7万7,501例)で、糖尿病患者が19%(3万361例)含まれ、ベースラインの主要心血管アウトカム発生リスクの中央値は9.2%(範囲:2.6~15.9)だった。 心血管複合アウトカムの発生率は、アスピリン群57.1/1万人年に対し、非アスピリン群は61.4/1万人年だった(ハザード比[HR]:0.89[95%信頼区間[CI]:0.84~0.95]、絶対リスク減少:0.38%[95%CI:0.20~0.55]、治療必要数[NNT]:265)。 一方、大出血の発生率は、アスピリン群23.1/1万人年に対し非アスピリン群は16.4/1万人年だった(HR:1.43[95%CI:1.30~1.56]、絶対リスク増加:0.47%[95%CI:0.34~0.62]、有害必要数[NNH]:210)。

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出揃ったC型肝炎治療薬、最新使い分け法

 相次いで有効な新経口薬が登場し、適切に使い分けることでほぼ全例でウイルス排除が可能となったC型肝炎。しかし、陽性患者の治療への移行割合が伸び悩むなど課題は残っており、医師・患者双方が、治療によるメリットと治療法をより正しく認識することが求められている。1月9日、都内で「C型肝炎の撲滅に向けた残された課題と今後の期待~C型肝炎治療の市販後の実臨床成績~」と題したメディアセミナーが開催され(主催:アッヴィ合同会社)、熊田 博光氏(虎の門病院 顧問)、米澤 敦子氏(東京肝臓友の会 事務局長)が講演した。マヴィレットは実臨床でも高いSVRを達成、残された非治癒例とは? 発売から約1年が経過したC型肝炎治療薬マヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル)の虎の門病院における市販後成績は、治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率(SVR12)はすべてのジェノタイプ、治療歴の患者で臨床試験と同様の良好な結果が得られ、有害事象に関しても新たな事象の発現はみられなかった。 ただし、他の直接作用型抗ウイルス療法(DAA)既治療の患者、ならびにジェノタイプ3型感染者については、98.7%、87.5%とSVR12が若干低い傾向がみられている(臨床試験ではそれぞれ93.9%、83.3%)。熊田氏は、この両者への対応について解説した。 まずDAA既治療患者について、ジェノタイプ1型のマヴィレット非治癒例の詳細解析を行ったところ、C型肝炎ウイルスのNS5A領域P32遺伝子欠損という共通点がみつかった。このP32遺伝子欠損の患者には、1月8日に薬事承認されたエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)とリバビリンの併用療法が80%の患者に効果があったと報告されている。「P32遺伝子欠損の患者には、エプクルーサ+リバビリン24週投与が第一選択になるだろう」と同氏。DAA既治療患者のうち、P32遺伝子欠損症例の発現頻度は5%ほどと考えられるという1)。 3型感染者については、日本人では元々非常に少ない(虎の門病院のデータで、1万879例中55例[0.5%])。「マヴィレットで大部分の患者に対応できるが、非治癒だった症例に対しては、ソバルディとリバビリンの併用を24週投与することで治癒する症例が確認されている」と話した。DAA未治療/既治療それぞれのC型肝炎治療薬の使い分け 上記を踏まえ、同氏は虎の門病院で医師間の申し送り時に使用しているという「DAAの使い分け法」を解説。DAA未治療/既治療それぞれの、C型肝炎治療薬の使い分けを以下に紹介する。 [初回・DAA未治療] 慢性肝炎(1型、2型とも)→マヴィレット8週間 肝硬変  代償性→(1型、2型とも)ハーボニーあるいはマヴィレット12週      (1型のみ)エレルサ・グラジナ12週間  非代償性→エプクルーサ12週間 [DAA既治療] 1型  Y93H、L31ダブル耐性あり→マヴィレット12週間*あるいはエプクルーサ  +リバビリン24週間  Y93H、L31ダブル耐性なし→マヴィレット*、ハーボニー、エレルサ・グラジナの  いずれか12週間、あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 *P32欠失例を除く 2型→マヴィレット(ハーボニー)12週間あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 3型→マヴィレット12週間(ただし、マヴィレット非治癒例にはソバルディ  +リバビリン24週間) 最後に同氏は、C型肝炎ウイルスへの感染が肝臓以外のさまざまな他臓器疾患にも影響を及ぼすことに言及。SVR非達成例では、達成例と比較してCKD発症率が約2.7倍2)、骨粗鬆症症例における骨折の発症率が約3倍3)というデータを紹介し、「糖尿病のコントロール向上に関連するというデータもあり、早いうちにC型肝炎を確実に治療することで、肝外病変に対しても好影響がある。短期間の経口薬投与でこれだけの治療率が達成されているので、他科の先生方もぜひ積極的にC型肝炎チェックを実施して、治療につなげていってほしい」と呼び掛けた。C型肝炎治療は高齢者には難しいという認識が根強いが・・・ 続いて登壇した米澤氏は、東京肝臓友の会にこの1年半ほどの間で寄せられた相談内容をいくつか紹介。「医師から一人暮らしの後期高齢者にそんな治療はしないぞ! と怒られた」「過去にインターフェロン治療を行ったが効かず、治療薬のことを知りかかりつけ医に相談したが、知らないと言われた」などの相談が実際に寄せられているという。 患者側も、自覚症状がなければ治療に踏み切れない事例も多い。「主治医から治療を勧められたが、肝機能はずっと正常値。症状もないので治療はしなくてもいいか?」などで、同氏は「インターフェロン治療の時代が長かったため、C型肝炎治療は高齢者には難しい、あるいは大変な治療という認識が根強くある。またかかりつけ医から専門医への受け渡しがスムーズにいっていない事例もあると感じる」と話した。 なお、肝炎ウイルス検査陽性の場合の精密検査費用の国による助成が、2019年度から民間分も対象になる予定であることも紹介された。

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【GET!ザ・トレンド】大動脈から全身を探る(前編)

100年前、William Osler博士は「人は血管と共に老いる」という言葉を残した。血管は生命予後に大きな影響を与える。従来の知見と共に、目の前の患者の血管が今どういう状態なのか。それが把握できれば、より具体的かつ個別な治療戦略の立案が可能である。血管内視鏡の臨床活用の現状と今後の可能性について、NPO法人 日本血管映像化研究機構 名誉理事長 児玉 和久氏に聞いた。全血管に適用可能になった血流維持型血管内視鏡1952年にわが国で開発された消化器内視鏡は、いまや世界の臨床医学の中で不可欠な技術である。この技術を同じ管腔臓器である血管にも活かせないか。1980年代、血管内視鏡の開発はそこから始まった。消化管とは異なり、血管では血液をよけなければ内腔を観察できない。血液をよけるには、阻血と疎血という2つの方法がある。最初の血管内視鏡は、米国で開発された。冠動脈をターゲットとし、バルーンで血液を“阻”む血流遮断型内視鏡で、1990年にFDAから承認された。しかし、人工的に作られる虚血リスクのため、承認後に数多くの事故を起こし、使用禁止措置になっている。児玉氏らは、虚血リスクを回避して“疎”血するため、内視鏡と外筒(誘導カテーテル)の隙間から疎血液(主体はデキストラン溶液)を注入して先端を疎血化する方法を開発した。1988年にAHA(米国心臓協会)国際会議でプロトタイプを発表し、1990年に、冠動脈をはじめとするすべての軟性血管を対象にした臨床使用に保険収載された。使用開始後、その利点からきわめて安全性が高いことが実証されている。とはいえ、血流の多い血管では十分に疎血できない。そのため、2014年に2ヵ所から疎血液を注入するDual Infusion法を開発し成功した。このDual Infusion法は、血流が多く、圧力も高い大動脈の内腔の観察も可能にした。このような改良を加え、児玉氏らの血流維持型血管内視鏡は、現在まで4万2,000例、そのうち冠動脈3万9,000例、大動脈2,000例超の実績を残している。さらに、内視鏡長を1.5mに延長し、1本で冠動脈から大動脈、末梢血管まですべて観察できるよう開発している。原因不明の突然死と急性大動脈症候群(AAS)の関係わが国の原因不明の突然死、その多くの疾病名は心臓疾患である。しかし、久山町研究で原因不明の突然死を解剖したところ、20%が大動脈の突然破裂である急性大動脈症候群(Acute aortic syndrome:AAS)であった。大動脈破裂の発生率は、欧州の疫学調査では0.015%で、大きな問題とはされていない。しかし、「日本人の人口1.2億人に換算すると、1.5万人と決して無視できない数字。たとえば50歳以上の高血圧など特定のコホートを選べばもっと高くなると考えられる」と児玉氏は言う。AASの致死率は高く、英国の病院における2万例の研究での院内死亡率は66%であった。イベントを起こす前の先制診断が必要だ。しかし、AASについての知見は少なく、無症状が多いため、発作前診断はきわめて難しい。血流維持型血管内視鏡によるAASの先制診断の可能性「大動脈解離も大動脈瘤も、その発端は血管内膜の微細な損傷」である。早期に大動脈の内膜を詳細に観察することが早期発見につながる。しかし、現在の血管造影、CT、超音波などの画像診断方法では、空間分解能が不足し、この微細な損傷は検出不可能である。児玉氏らのDual Infusion血流維持型血管内視鏡は、空間分解能、時間分解能にすぐれ、大動脈内腔の詳細な観察が可能である。実際に無症状の患者を含む多くの症例で、内膜の亀裂、血流の潜り込み、粥腫破綻といった大動脈内腔の異常が確認できており、AASの先制診断の可能性が示唆される。>>後編に続く

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【GET!ザ・トレンド】大動脈から全身を探る(後編)

日本血管映像化研究機構の研究が、Journal of the American College of Cardiology誌2018年6月26日号(筆頭執筆者、小松 誠:大阪暁明館病院)」に掲載された1)。300例以上の心血管疾患の診断または疑い患者の80%で、大動脈に動脈硬化性粥腫がびまん性に高密度に散在し、常に無症状の自発的破綻を起こしていることが血流維持型血管内視鏡で観察された。さらに、そのサイズは、従来考えられていたものよりもはるかに小さいものであった。大動脈の粥状硬化とコレステロール・クリスタル実臨床における多数例の大動脈内腔観察の実績から「大動脈にはおびただしい数の粥状硬化病変が認められる。粥状硬化は若年から進行し、自発的破綻を繰り返している」と児玉氏は述べる。また、多くの大動脈粥腫の破綻時に、粥腫のdebrisと共にコレステロールの結晶である「コレステロール・クリスタル」が大量に遊離されていることが、児玉氏らのDual Infusion血流維持型血管内視鏡で確認されている。これらは大動脈を通して、すべての臓器に流れていく。とくに、コレステロール・クリスタルは、末梢動脈にトラッピングを起こし、その結果、虚血性細胞死を引き起こすと考えられる。毛細血管は平均8μm、一方コレステロール・クリスタルは平均50~60μmである。毛細血管でトラッピングされる可能性はきわめて高い。実際に、コレステロール・クリスタルは「動脈血中のみに存在し、静脈血ではほとんど観察されないことから、末梢組織で濾過され、全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性がある。大動脈がこういったごみを流し続ければ、すべての臓器に大きなダメージを引き起こす可能性がある」と児玉氏は言う。この現象は、脳、眼、耳、消化器、腎臓、筋肉、四肢などあらゆる臓器に、時間を経るに従い顕著となり、種々の悪影響を引き起こす。実際に、無症候性脳虚血、脳梗塞を併発した認知症、網膜動脈閉塞による失明、腸間膜閉塞、CKD(慢性腎臓病)、PAD(末梢動脈疾患)といった症例で、大動脈内の粥腫破綻とコレステロール・クリスタルの内視鏡所見が一致することが、児玉氏らの血流維持型血管内視鏡で確認されている。臨床研究によるエビデンス形成多くの所見が確認されているとはいえ、エビデンスを作っていく必要がある。現在、同法人の理事長 平山 篤志氏を中心に、内視鏡所見と臨床経過を突き合わせていくレジストリ研究が始まっている。また、国立循環器病研究センターに保存されている脳梗塞の標本についても再検討が始められ、コレステロール・クリスタルの存在を確認する作業が進められているという。前述のWilliam Osler博士による「人は血管と共に老いる」という言葉に対し、児玉氏は、「いまや“人は大動脈と共に老いる”ではないか」と提言する。今年で13回目となる日本血管映像化研究機構主催のTCIF(Trans Catheter Imaging Forum)が4月26日・27日に大阪で開催される。テーマは上記の「人は大動脈と共に老いる」である。近年、循環器科にとどまらず、脳神経外科、放射線科、眼科などに参加者は拡大しているという。さまざまな未知の病態が、この日本発の技術の進歩と共に解明されていくことを期待する。1)Komatsu S, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:2893-2902.参考第13回 TCIF 2019関連記事世界初、大動脈プラーク破綻の撮影に成功<<前編に戻る

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タバコの害を知っていても禁煙を渋る患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第26回

■外来NGワード「タバコは百害あって一利なし。すぐにやめないと!」(わかり切っていること)「まだ、禁煙できていないんですか! ちゃんと禁煙しないと」(毎回同じ指導内容)■解説 禁煙指導には、短時間支援のABR方式(Ask、Brief advice、Refer)と標準的支援のABC方式(Ask、Brief advice、Cessation support)が用いられています。身体によくないとわかっていても、頑固に禁煙を渋る患者さんが多いのも事実。そういった患者さんに「タバコは百害あって一利なし。すぐにやめないと!」などと言って医師が説得したところで、禁煙に進める人は少数です。喫煙者の中には、タバコの害は熟知していても、「禁煙したらストレスがたまる」などを理由にタバコをやめる自信がないタイプの人もいれば、禁煙する自信はあっても「もう歳だから、今さら禁煙しても…」など禁煙へのモチベーションが低いタイプの人もいます。動機付け面接では、禁煙の重要性と自信を高めることで禁煙への動機付けを図ります。ところが、「まだ、禁煙できていないんですか! ちゃんと禁煙しないと…」などと毎回同じ指導を繰り返していても、患者さんのモチベーションは上がりません。禁煙の重要性を感じてはいるが、禁煙する自信がない人には、少しずつ自信を高めてもらうためのアプローチを行うと効果的です。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師血糖コントロールはよさそうですね。患者よかったです。涼しくなったので、通勤のときに一駅前で降りて、歩くようにしています。医師それはいいですね。歩くようになって体力も付いてきたんじゃないですか?患者はい! 前を歩いている人を追い抜けるように、少し速足で歩いています。医師それはいいですね。運動を続けると体力だけでなく、心肺持久力も付いてきますからね。患者そうなるといいです。医師ところで、禁煙の準備は進んでいますか?患者ハハハ…。禁煙したいと思ってはいるんですが、なかなか…。医師ダイエットと同じで「痩せたい」と思っているだけでは、なかなか痩せないですからね。患者確かに。何から始めたらいいでしょうか。医師そうですね。まずは、いつから禁煙するか、始める日を決めることです。患者なるほど。医師次は、それに向けて具体的な準備を進めることです。患者というと…。(禁煙準備の話に展開する)■医師へのお勧めの言葉「禁煙の準備は進んでいますか?」

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