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糖尿病診療ガイドライン2019を公開~日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病診療ガイドライン2019』を発行し、同会のホームページ上で公開を始めた。 糖尿病診療ガイドラインは、エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的に3年ごとに改訂されて、今回の第6版が最新版となる。糖尿病診療ガイドライン2019はCQ・Q方式を踏襲し、付録も充実 糖尿病診療ガイドライン2019の記載方式は2016年版と同様に「CQ・Q方式」とし、推奨グレードも策定委員の投票で決定し、合意率も記載されている。また、今般では、CQ・Qの各項目を適宜見直すとともに、必要に応じ新たなCQ・Qを設定している。 糖尿病診療ガイドライン2019の内容としては、新しい文献をできうる限り引用し、これらの知見を取り上げているほか、付録としてわが国における大規模臨床試験「J-DOIT 1〜3」「JDCP study」「J-DREAMS」を紹介している。とくに食事療法に関しては、従来の標準体重の代わりに目標体重という概念を取り入れ、より個々の症例に対応可能な柔軟な食事療法が示されている。もちろん日本動脈硬化学会や日本高血圧学会の最新のガイドラインを参考に、これらとの齟齬がないような改訂が行われている。糖尿病診療ガイドライン2019は21項目で詳細に診療方針を記載 糖尿病診療ガイドライン2019は「糖尿病診断の指針」から始まり、「糖尿病治療の目標と指針」「食事療法」「運動療法」「血糖降下薬による治療(インスリンを除く)」など大きく21項目に分け、その中にCQまたはQ、その両方が記載される構成である。 たとえば、「血糖降下薬による治療(インスリンを除く)」のQ5-1「血糖降下薬の適応はどう考えるべきか?」に対し、ステートメントとして2項目が詳細に説明されている。 糖尿病診療ガイドライン2019の策定に関する委員会では、「このガイドラインがわが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、さらに発展を続けていくことを願っている」と糖尿病診療への活用に期待を寄せている。 詳しくは、同学会のホームページを参照されたい。また、糖尿病診療ガイドライン2019の書籍については10月中旬に南江堂より発刊される予定。

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高リスクPCI施行患者の出血、チカグレロル単独vs.DAPT/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた出血・虚血イベントリスクの高い患者において、術後3ヵ月間チカグレロル+アスピリンの併用投与後、チカグレロル単剤投与への変更は併用投与継続の場合と比べて、死亡・心筋梗塞・脳卒中のリスクを上昇することなく臨床的に重大な出血リスクを有意に低下することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のRoxana Mehran氏らが行ったプラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月26日号で発表された。これまでP2Y12阻害薬を早期に中断して抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を最短とするアプローチについて、いくつかの試験が行われていたが、概して低リスクの患者が対象で虚血イベントに関する検出力が不足していた。研究グループは、アスピリン投与期間を短縮することで、とくに消化器毒性についてのアスピリンに関連した出血リスクを回避でき、P2Y12阻害薬の効力を長期に受けられる可能性があるとの仮説を立て検討を行った。BARC出血基準タイプ2、3、5の発生リスクを比較 研究グループは、11ヵ国187ヵ所の医療機関を通じ、PCIで薬剤溶出ステントを1ヵ所以上に埋設し、担当医がチカグレロル+アスピリン療法下で退院させることを予定していた、出血または虚血イベントリスクが高い患者を対象に試験を行った。 PCIを施行しチカグレロル+アスピリンを3ヵ月投与した後、大出血イベントまたは虚血イベントのなかった患者を無作為に2群に分け、両群にチカグレロルを継続したまま、一方にはアスピリンを、もう一方にはプラセボを、いずれも1年間併用投与した。 主要エンドポイントは、BARC出血基準タイプ2、3、5の出血とした。また、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントについても評価。非劣性マージンは絶対差1.6ポイントとした。チカグレロル単剤投与群でBARC出血基準2、3、5発症リスクは0.56倍に  2015年7月~2017年12月に9,006例が試験に登録され、そのうち3ヵ月後に無作為化を受けたのは7,119例(intention-to-treat集団)だった。平均年齢は65歳、女性が23.8%、糖尿病を有していたのは36.8%で、64.8%が急性冠症候群によるPCI施行であった(29.8%が非ST上昇型心筋梗塞)。無作為化後1年間の服薬アドヒアランスはチカグレロル+アスピリン(併用)群、チカグレロル+プラセボ(単剤)群で同等だった(85.9% vs.87.1%)。 無作為化から1年間の主要エンドポイントの発生率は、単剤群4.0%、併用群7.1%で(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.45~0.68、p<0.001)、群間差は-3.08ポイント(95%CI:-4.15~-2.01)だった。BARC出血基準タイプ3または5の発生リスクの群間差も同様だった(発生率は単剤群1.0%、併用群2.0%、HR:0.49[95%CI:0.33~0.74])。 全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイント発生率は、両群ともに3.9%だった(群間差:-0.06ポイント[95%CI:-0.97~0.84]、HR:0.99[95%CI:0.78~1.25]、非劣性のp<0.001)。■「DAPT」関連記事ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

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第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?高齢糖尿病患者は罹病期間が長い例が多く、進行した合併症を有する例も多く経験します。今回はいわゆる三大合併症について解説します。合併症の進展予防には血糖管理だけではなく、血圧、脂質など包括的な管理が必要となりますが、すべてを厳格にコントロールしようとするがあまり“ポリファーマシー”となり、症例によっては、かえって予後を悪化させる場合もありますので、実際の治療に関しては個々の症例に応じて判断していくことが重要になります。Q1 微量アルブミン尿が出現しない場合も? 糖尿病腎症の管理について教えてください。高齢糖尿病患者でも、高血糖は糖尿病腎症の発症・進展に寄与するため、定期的に尿アルブミン・尿蛋白・eGFRを測定・計算し、糖尿病腎症の病期分類を行うことが推奨されています1)。症例にもよりますが、血液検査は外来受診のたび、尿検査は3~6カ月ごとに実施していることが多いです。高齢者では筋肉量が低下している場合が多く、血清Cre値では腎機能をよく見積もってしまうことがあり、BMIが低いなど筋肉量が低下していることが予想される場合には、血清シスタチンCによるeGFR_cysで評価します。典型的な糖尿病腎症は微量アルブミン尿から顕性蛋白尿、ネフローゼ、腎不全に至ると考えられており、尿中アルブミン測定が糖尿病腎症の早期発見に重要なわけですが、実際には、微量アルブミン尿の出現を経ずに、あるいは軽度のうちから腎機能が低下してくる症例も多く経験します。高血圧による腎硬化症などが、腎機能低下に寄与していると考えられていますが、こういった蛋白尿の目立たない例を含め、糖尿病がその発症や進展に関与していると考えられるCKDをDKD (diabetic kidney disease;糖尿病性腎臓病)と呼びます。加齢により腎機能は低下するため、DKDの有病率も高齢になるほど増えてきます。イタリアでの2型糖尿病患者15万7,595例の横断調査でも、eGFRが60mL/min未満の割合は65歳未満では6.8%、65~75歳で21.7%、76歳以上では44.3%と加齢とともにその割合が増加していました2)。一方、アルブミン尿の割合は65歳未満で25.6%、 65~75歳で28.4%、76歳以上で33.7%であり、加齢による増加はそれほど目立ちませんでした。リスク因子としては、eGFR60mL/min、アルブミン尿に共通して高血圧がありました。また、本研究では80歳以上でDKDがない集団の特徴も検討されており、良好な血糖管理(平均HbA1c:7.1%)に加え良好な脂質・血圧管理、体重減少がないことが挙げられています。これらのことから、高齢者糖尿病の治療では、糖尿病腎症の抑制の面からも血糖管理だけではなく、血圧・脂質管理、栄養療法といった包括的管理が重要であるといえます。血圧管理に関しては、『高血圧治療ガイドライン2019』では成人(75歳未満)の高血圧基準は140/90 mmHg以上(診察室血圧)とされ,降圧目標は130/80 mmHg未満と設定されています3)。75歳以上でも降圧目標は140/90mmHg未満であり、糖尿病などの併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満への降圧を目指すとしています。しかしながら、こうした患者では収縮期血圧110mmHg未満によるふらつきなどにも注意したほうがいいと思います。降圧薬は微量アルブミン尿、蛋白尿がある場合はACE阻害薬かARBの使用が優先されますが、微量アルブミン尿や蛋白尿がない場合はCa拮抗薬、サイアザイド系利尿薬も使用します。腎症4期以上でARB、ACE阻害薬を使用する場合は、腎機能悪化や高K血症に注意が必要です。また「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、75歳以上で腎症4期以上では、CCBが第一選択薬として推奨されています4)。腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤(ESA)の使用については、75歳以上の高齢CKD患者では「ESAと鉄剤を用い、Hb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理するが、症例によってはHb値9g/dL以上の管理でも許容される」となっています。高齢者ではESAを高用量使用しなければならないことも多く、その場合はHbA1c 10g/dL程度を目標に使用しています。腎臓専門医への紹介のタイミングは日本腎臓学会より示されており、蛋白尿やアルブミン尿の区分ごとに紹介基準が示されているので、ご参照ください(表)。画像を拡大するQ2 網膜症、HbA1cの目安や眼科紹介のタイミングは?高血糖が糖尿病網膜症の発症・進展因子であることは高齢者でも同様です。60歳以上の2型糖尿病患者7万1,092例(平均年齢71歳)の追跡調査では、HbA1c 7.0%以上の患者ではレーザー光凝固術の施行が10.0%以上となり、HbA1c 6.0%未満の患者と比べて約3倍以上となっています5)。また、罹病期間が10年以上の高齢者糖尿病では、10年未満の患者と比べて重症の糖尿病性眼疾患(失明、増殖性網膜症、黄斑浮腫、レーザー光凝固術施行)の頻度は高くなりますが、80歳以上ではその頻度がやや減少すると報告されています6)。このように、高齢糖尿病患者では罹病期間が長く、光凝固術の既往がある例も多く存在します。現在の血糖コントロールが良好でも、罹病期間が長い例では急激に糖尿病網膜症が進行する場合があり、初診時は必ず、その後も少なくとも1年に1回の定期受診が必要です。増殖性前網膜症以上の網膜症が存在する場合は急激な血糖コントロールにより網膜症が悪化することがあり、緩徐に血糖値をコントロールする必要があります。どのくらいの速度で血糖値を管理するかについて具体的な目安は明らかでありませんが、少なくとも低血糖を避けるため、メトホルミンやDPP-4阻害薬単剤から治療をはじめ、1~2ヵ月ごとに漸増します。インスリン依存状態などでやむを得ずインスリンを使用する場合には血糖目標を緩め、食前血糖値200mg/dL前後で許容する場合もあります。そのような場合には当然眼科医と連携をとり、頻回に診察をしていただきます。患者さんとのやりとりにおいては、定期的に眼科受診の有無を確認することが大切です。眼科との連携には糖尿病連携手帳や糖尿病眼手帳が有用です。糖尿病連携手帳を渡し、受診を促すだけでは眼科を受診していただけない場合には、近隣の眼科あての(宛名入りの)紹介状を作成(あるいは院内紹介で予約枠を取得)すると、大抵の場合は受診していただけます。また、収縮期高血圧は糖尿病網膜症進行の、高LDL血症は糖尿病黄斑症進行の危険因子として知られており、それらの管理も重要です。高齢者糖尿病の視力障害は手段的ADL低下や転倒につながることがあるので注意を要します。高齢糖尿病患者797人の横断調査では、視力0.2~0.6の視力障害でも、交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理などの手段的ADL低下と関連がみられました7)。J-EDIT研究でも、白内障があると手段的ADL低下のリスクが1.99倍になることが示されています8)。また、コントラスト視力障害があると転倒をきたしやすくなります9)。Q3 高齢者の糖尿病神経障害の特徴や具体的な治療の進め方について教えてください。神経障害は糖尿病合併症の中で最も多く、高齢糖尿病患者でも多く見られます。自覚症状、アキレス腱反射の低下・消失、下肢振動覚低下により診断しますが、高齢者では下肢振動覚が低下しており、70歳代では9秒以内、80歳以上では8秒以内を振動覚低下とすることが提案されています10)。自律神経障害の検査としてCVR-Rがありますが、高齢者では、加齢に伴い低下しているほか、β遮断薬の内服でも低下するため、結果の解釈に注意が必要です。検査間隔は軽症例で半年~1年ごと、重症例ではそれ以上の頻度での評価が推奨されています1)。しびれなどの自覚的な症状がないまま感覚障害が進行する例もあるため、自覚症状がない場合でも定期的な評価が必要です。とくに、下肢感覚障害が高度である場合には、潰瘍形成などの確認のためフットチェックが重要です。高齢者糖尿病では末梢神経障害があると、サルコペニア、転倒、認知機能低下、うつ傾向などの老年症候群を起こしやすくなります。神経障害が進行し、重症になると感覚障害だけではなく運動障害も出現し、筋力低下やバランス障害を伴い、転倒リスクが高くなります。加えて、自律神経障害の起立性低血圧や尿失禁も転倒の誘因となります。また、自律神経障害の無緊張性膀胱は、尿閉や溢流性尿失禁を起こし、尿路感染症の誘因となります。しびれや有痛性神経障害はうつのリスクやQOLの低下だけでなく、死亡リスクにも影響します。自律神経障害が進行すると神経因性膀胱による排尿障害、便秘、下痢などが出現することがあります。さらには、無自覚低血糖、無痛性心筋虚血のリスクも高まります。無自覚低血糖がみられる場合には、血糖目標の緩和も考慮します。また、急激な血糖コントロールによりしびれや痛みが増悪する場合があり(治療後神経障害)、高血糖が長期に持続していた例などでは緩徐なコントロールを心がけています。中等度以上のしびれや痛みに対しては、デュロキセチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者では副作用の点から三環系抗うつ薬は使用しづらく、デュロキセチンかプレガバリンを最小用量あるいはその半錠から開始し、少なくとも1週間以上の間隔をあけて漸増しています。両者とも効果にそう違いは感じませんが、共通して眠気やふらつきの副作用により転倒のリスクが高まることに注意が必要です。また、デュロキセチンでは高齢者で低Na血症のリスクが高くなることも報告されています。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂; 2017.2)Russo GT,et al. BMC Geriatr. 2018;18:38.3)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;20194)日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社会; 20185)Huang ES, et al. Diabetes Care.2011; 34:1329-1336.6)Huang ES, et al. JAMA Intern Med. 2014; 174: 251-258.7)Araki A, et al. Geriatr Gerontol Int. 2004;4:27-36.8)Sakurai T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012;12:117-126.9)Schwartz AV, et al. Diabetes Care. 2008;31: 391-396.10)日本糖尿病学会・日本老年医学会編著. 高齢者糖尿病ガイド2018. 文光堂; 2018.

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腎機能低下糖尿病患者にメトホルミンは使用可能か/JAMA

 腎機能が低下した2型糖尿病患者の薬物療法では、メトホルミンはSU薬に比べ、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが低いことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristianne L. Roumie氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。従来、安全性に関する懸念から、腎臓病を有する糖尿病患者ではメトホルミンの使用が制限されていたが、2016年4月、米国食品医薬品局(FDA)は軽症~中等症の腎臓病患者におけるメトホルミンの安全性のエビデンスに基づいてガイダンスを変更し、軽度腎機能障害(eGFR:45~60mL/分/1.73m2)および中等度腎機能障害の一部(30~45mL/分/1.73m2)では安全に使用可能としている。一方、腎機能が低下した糖尿病患者の臨床転帰に及ぼすメトホルミンの効果は明らかにされていないという。MACE発生を比較する後ろ向きコホート研究 本研究では、米国の国立退役軍人保健局(VHA)の施設で治療を受けた退役軍人の後ろ向きコホート研究であり、2001~16年のメディケア、メディケイド、National Death Indexと関連付けて補足したデータが用いられた(米国VA Clinical Science Research and Developmentなどの助成による)。 年齢18歳以上で、定期的にVHAのケアを受けている退役軍人の中から、メトホルミンまたはSU薬(glipizide、glyburide[グリベンクラミド]、グリメピリド)の新規使用者を選出することで2型糖尿病患者を特定した。これらの患者を長期的に追跡し、腎機能が低下した患者(eGFR<60mL/分/1.73m2または血清クレアチニン値が女性は≧1.4mg/dL、男性は≧1.5mg/dL)を選出した。 以降は、MACE、治療変更、追跡不能、死亡、試験終了(2016年12月31日)まで追跡を継続した。腎機能低下以降も血糖降下治療を継続したメトホルミンまたはSU薬の新規使用者を解析の対象とした。 主要アウトカムは、MACE(急性心筋梗塞・脳卒中・一過性脳虚血発作による入院、心血管死)とした。傾向スコアで重み付けをして治療群間でMACEの原因別ハザードを比較し、治療変更および心血管系以外の原因による死亡の競合リスクを考慮して累積リスクを推算した。MACEが1,000人年当たり5.8件減少 メトホルミンまたはSU薬の単剤治療を継続した患者は、それぞれ6万7,749例および2万8,976例であった。重み付けコホートは、メトホルミン群が2万4,679例、SU薬群は2万4,799例であり、全体の登録時の年齢中央値は70歳(IQR:62.8~77.8)、4万8,497例(98%)が男性、4万476例(82%)が白人で、eGFR中央値は55.8mL/分/1.73m2(51.6~58.2)、HbA1c中央値は6.6%(6.1~7.2)であった。追跡期間中央値は、メトホルミン群が1.0年、SU薬群は1.2年だった。 追跡期間中における傾向スコア重み付け後のMACE発生率は、メトホルミン群が23.0/1,000人年、SU薬群は29.2/1,000人年であった。共変量で補正後のメトホルミン群のSU薬群に対するMACE原因別補正ハザード比(HR)は、0.80(95%信頼区間[CI]:0.75~0.86)であり、メトホルミン群はSU薬群に比べMACEイベントが1,000人年当たり5.8件(95%CI:4.1~7.3)減少した。 1年後の累積MACE発生率は、メトホルミン群が1.9%、SU薬群は2.5%であり、3年後はそれぞれ3.4%および4.4%、4年後は3.8%および4.9%であった。 MACEの構成要素である急性心筋梗塞・脳卒中・一過性脳虚血発作による入院(補正後HR:0.87[95%CI:0.80~0.95]、補正後群間発生率差:-2.4[95%CI:-3.7~-0.9])および心血管死(0.70[0.63~0.78]、-3.8[-4.7~-2.8])についても、同様の結果であった。また、主要アウトカムから一過性脳虚血発作を除外した副次アウトカムの結果(0.78[0.72~0.84]、-5.9[-7.6~-4.3])も一致していた。 著者は、「FDAは、腎機能の評価はクレアチニンではなくeGFRで行うことを推奨している。eGFRが低下した患者では、頻回のモニタリングと減量により、メトホルミンの使用は可能と考えられるが、30mL/分/1.73m2未満の患者では禁忌である」としている。

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甲状腺機能低下症患者に対する補充療法(解説:吉岡成人氏)-1120

甲状腺機能低下症は頻度が高い疾患 甲状腺機能低下症は、日常の診療の中できわめて高頻度に遭遇する内分泌疾患である。日本においては臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症の頻度は0.50~0.69%、TSHのみが上昇する潜在性甲状腺機能低下症の頻度は3.3~6.1%であり、女性に多い疾患である(志村浩巳. 日本臨床. 2012;70:1851-1856.)。TSHは加齢に伴い上昇することが知られており、潜在性甲状腺機能低下症の頻度は加齢とともに増加する。甲状腺機能低下症の原因としては、慢性甲状腺炎による原発性甲状腺機能低下症が大部分を占める。しかし、最近ではアミオダロン、炭酸リチウムなどの薬剤に加えて、免疫チェックポイント阻害薬によって発症することも、まれならず経験される。 甲状腺機能低下症には、合成T4製剤(レボチロキシンNa、商品名:チラーヂンS)が経口投与される。T4製剤は小腸から吸収され、吸収率は70~80%、空腹時(朝食前や就寝時)に服薬すると吸収が良いことが知られている。T4製剤の維持量は、TSHを正常に保つように調節することが推奨されている。臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症患者にT4製剤を投与することにはなんら異論はないが、潜在性甲状腺機能低下症の場合、妊婦を除いて、治療についてはエビデンスが少なく、慎重に対応すべきであると考えられている。顕性甲状腺機能低下症の患者に補充療法を行った際のTSHの値と予後の関連 英国における1,500万人の患者を対象としたプライマリケアの大規模データベース(The Health Improvement Network)を用いて、1995年1月~2017年12月までに甲状腺機能低下症と診断されTSHを複数回測定された16万439人(平均年齢58.4歳、男性23%、女性77%)を平均6年間にわたって追跡し、T4製剤の補充を行い、TSH値を基準範囲(正常範囲)内に調節した際の、TSH値とさまざまなヘルスアウトカムの関連を検討した後ろ向き解析の論文がBMJ誌に掲載された(Thayakaran R, et al. BMJ. 2019;366:l4892.)。 アウトカムとして、全死亡、心房細動、虚血性心疾患、心不全、脳卒中・一過性脳虚血発作、骨折を取り上げており、それぞれのアウトカムはTSH値が基準範囲内(2~2.5mIU/L)であった場合には、有意な差はなかった。しかし、TSH値が10mIU/Lを超える場合に、虚血性心疾患のハザード比(HR)が1.18(95%信頼区間:1.02~1.38)、心不全ではHRが1.42(95%信頼区間:1.21~1.67)となり、有意なリスク増加が確認された。一方、TSH値が0.1mIU/L未満の場合には心不全に対するリスクが減少し、HRは0.79(95%信頼区間:0.64~0.99)、TSH値が0.1~0.4mIU/LではHRが0.76(95%信頼区間:0.62~0.92)であった。また死亡率に関しては、TSH値が0.1mIU/L未満でHRが1.18、TSH値が4~10mIU/LではHRが1.29と、基準範囲を下回った場合も超えた場合もリスクの増加が確認された。すべての骨折とTSH値との関連はなかったが、脆弱性骨折に関してはTSH値が10mIU/Lを超えた際のHRは1.15(95%信頼区間:1.01~1.31)であったと報告されている。臨床現場での対応を追認 顕性甲状腺機能低下症患者に補充療法を行い、TSH値が基準値の範囲内(2~2.5mIU/L)であれば死亡や心不全などのリスクに影響はないものの、全死亡、虚血性心疾患、脆弱性骨折のリスクは、TSH値が10mIU/Lを超えると1.1~1.4倍増加し、死亡に関してはTSH値が0.1mIU/L未満でもリスクが増加するという。 中高年の臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症患者にT4製剤を投与する際には、TSH値を基準範囲内になるように補充すべきであろうということが再認識された臨床試験といえる。

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新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会

 新薬の登場やエビデンスの蓄積を受けて、約10年ぶりに「夜間頻尿診療ガイドライン」が改訂される。40代で約4割、80歳以上では9割以上でみられる夜間頻尿について、専門医だけでなく一般医に対する診療アルゴリズムを新たに作成し、クリニカルクエスチョン(CQ)を充実させる見通し。第26回日本排尿機能学会(9月12~14日、東京)で、「新・夜間頻尿診療ガイドライン:改定に向けての注目点」と題したセミナーが開催され、作成委員長を務める国立長寿医療研究センター泌尿器科の吉田 正貴氏らが解説した。 本稿では同セミナーのほか、鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学の大石 充氏による「循環器疾患と夜間頻尿・多尿」と題した講演の内容を紹介する。改訂版は今後パブコメを含む最終調整を経て、2020年春の発行が予定されている。新・夜間頻尿診療ガイドラインでは29のCQを初めて設定 夜間頻尿は、夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという訴えと定義される。年齢とともに回数は急上昇し、回数が増えるごとにQOLは明らかに低下する1)。本邦では、頻度2回以上の夜間頻尿は70代の男性の約6割(女性では約5割)、80歳以上では約8割(約7割)と報告されている2)。夜間頻尿のリスク因子には糖尿病、高血圧、肥満などがあり、逆に夜間頻尿がうつ、転倒骨折、睡眠障害などのリスク因子となる。 新・夜間頻尿診療ガイドラインでは、排尿日誌を使用しない場合(主に一般医向け)と使用する場合(主に専門医向け)に分けて、フロー図の形で診療アルゴリズムを整理。新たに29個のCQを設定して、診断、行動療法、薬物療法についてそれぞれ推奨度が明記され、エビデンスが整理される。夜間頻尿診療ガイドラインに弾性ストッキング使用の生活指導 新・夜間頻尿診療ガイドラインでは診断に関して、夜間頻尿患者に対する排尿記録やQOL評価、残尿測定、尿流動態検査、睡眠障害の検査についてそれぞれCQが設定され、推奨度のほか評価時期や評価手法が解説される。また、泌尿器科、循環器科、睡眠障害専門医への紹介のタイミングや保険診療上の注意点についてもCQが設けられ、アルゴリズムと組み合わせて診断・鑑別が進められるよう構成される。 行動療法に関しては、生活指導(飲水に関する指導、運動療法、禁煙、弾性ストッキング使用、夕方の足の挙上など)と行動療法(生活指導以外)を区別する形でCQを設定。エビデンスは十分ではないものの、非侵襲的であり、生活指導が夜間頻尿治療の第一選択であることは従来どおり。一方の行動療法(生活指導以外)については、過活動膀胱(OAB)の場合は膀胱訓練や定時排尿などの計画療法や、骨盤底筋訓練などの理学療法の有用性が報告され、OABのガイドラインでも推奨されているが3)、睡眠障害を伴った夜間頻尿では有用性のエビデンスは明確でない。新・夜間頻尿診療ガイドラインでのデスモプレシンの位置付けは? 新・夜間頻尿診療ガイドラインでは薬物療法に関して、夜間多尿(夜間多尿指数[夜間尿量/24時間尿量]が高齢者:0.33以上、若年者:0.20以上)の有無、原因疾患(OAB、前立腺肥大症)に応じて選択される。2019年9月19日、「男性における夜間多尿による夜間頻尿」の適応症でV2受容体作動薬デスモプレシンが発売された。エビデンスが充実しており、男性では生活指導および行動療法による効果が得られない患者への第一選択薬として、推奨グレードAとされる見通し。 ただし、同薬の本邦での適応は「夜間多尿指数0.33以上、かつ夜間排尿回数が2回以上」に限定され(排尿日誌の記録が必須)、低ナトリウム血症や心不全の患者、中等度以上の腎機能障害の患者、利尿薬の併用などは禁忌とされる。また、65歳以上で低ナトリウム血症や頭痛などの有害事象が報告されており、年齢・体重・血清ナトリウム値に応じた少量開始、定期的な検査や観察が推奨されるなど、適正使用への留意が必要となっている。OABや前立腺肥大症に伴う夜間頻尿にも、10年間で新薬やエビデンス蓄積 この10年で、OABに対して抗コリン薬のオキソブチニン貼付剤とフェソテロジン、β3受容体作動薬(ミラベグロン、ビベグロン)が新たに処方可能となっている。各薬剤での夜間頻尿に関するエビデンスも蓄積し、抗コリン薬では前回エビデンスが不十分であったイミダフェナシンで前向き臨床試験が最も多く報告され、夜間排尿回数の減少と夜間1回排尿量の増加、睡眠の質の向上などが確認されている。しかし、OABに関係する夜間頻尿には有効であるが、夜間多尿群では十分な効果が得られない薬剤もある。 ミラベグロンはOABに対するエビデンスが多く蓄積しているものの、夜間頻尿患者に対する第III相試験のpost-hoc解析は行われていない。2018年発売のビベグロンについては本邦で行われた第III相試験から、夜間頻尿患者での回数の減少と夜間1回排尿量の増加が確認されている4)。 前立腺肥大症に伴う症例に対しては、PDE5阻害薬タダラフィルが新たに承認され、前回評価不能だったα1遮断薬シロドシンなどについてエビデンスが蓄積。また、本邦発のGood-Night Studyで、α1遮断薬単独で改善のない夜間排尿2回以上の患者に対する、抗コリン薬(イミダフェナシン)併用の有効性が示されており5)、新たなエビデンスとして加わっている。利尿薬は併存する循環器疾患によって使い分けが必要? 夜間多尿に伴う夜間頻尿、とくにデスモプレシンが使えない女性では、利尿薬が選択肢となる。大石氏は、夜間頻尿診療ガイドライン改訂にあたって実施したシステマティックレビューの結果などから、高血圧と心不全の併存患者における利尿薬の使い方について講演した。 利尿薬×夜間頻尿というキーワードで論文検索を行うと、ループ利尿薬についてはとくにhANP高値例6)や就寝6時間前投与7-9)が有効、サイアザイド系利尿薬についてはα遮断薬抵抗性例に朝投与が有効10)といった報告が確認された。一方で、ループ利尿薬が夜間頻尿を悪化させる11)、高齢者での夜間頻尿を惹起する12)といった報告や、サイアザイド系が排尿症状を悪化させる11)という報告もある。 これらを受け大石氏は、併存する循環器疾患ごとに、夜間頻尿となるメカニズムが異なる可能性を指摘。食塩感受性高血圧患者では、日中の食塩摂取量が過多になると、夜間高血圧となり、塩分排泄のキャリーオーバーで夜間多尿や夜間頻尿につながると考えられる。ループ利尿薬は近位部で作用(水抜き)することから、このような症例で多量に使うとNa+貯留が起こる可能性があり、遠位尿細管で作用(塩抜き)するサイアザイド系が適しているのではないかとした。 一方、うっ血性心不全患者の夜間頻尿は、心臓の機能が落ちることで静脈還流が増加し、臥位になった夜間に水を抜かなければならないことから引き起こされる。すなわち、ループ利尿薬で体液調整をすることでコントロール可能となると考えられるという。会場からは、「女性の食塩感受性高血圧患者の夜間頻尿ではサイアザイド系と考えてよいか」といった質問があがり、同氏は「女性では浮腫がある症例も多い。そういった場合はもちろん水分を抜くことも必要で、必要な薬剤の量を見極めながら、病態に応じて選択・併用していく形が望ましく、循環器医と積極的に連携してほしい」と話した。■「食塩感受性高血圧」関連記事塩分摂取によって血圧が上昇しやすい人と、そうでない人が存在するのはなぜか?―東大 藤田氏らが解明―■参考1)Coyne KS, et al. BJU Int. 2003 Dec;92:948-54.2)Homma Y, et al. Urology. 2006 Aug;68:318-23.3)日本排尿機能学会過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会編. 過活動膀胱診療ガイドライン 第2版.リッチヒルメディカル.2015.4)Yoshida, et al. Int J Urol. 2019 Mar;26:369-375.5)Yokoyama O, et al. World J Urol. 2015 May;33:659-67.6)Fujikawa K, et al. Scand J Urol Nephrol. 2001 Sep;35:310-3.7)Pedersen PA, et al. Br J Urol. 1988 Aug;62:145-7.8)Reynard JM, et al. Br J Urol. 1998 Feb;81:215-8.9)Fu FG, et al. Neurourol Urodyn. 2011 Mar;30(3):312-6.10)Cho MC, et al. Urology. 2009 Mar;73(3):549-53.11)Hall SA, et al. BJU Int. 2012 Jun;109:1676-84.12)Johnson TM 2nd, et al. J Am Geriatr Soc. 2005 Jun;53:1011-6.

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高リスク2型糖尿病の心血管リスク、リナグリプチンvs.グリメピリド/JAMA

 心血管リスクが高い比較的早期の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU薬グリメピリドに対し、心血管死、非致死的な心筋梗塞・脳卒中の複合のリスクが非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCAROLINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクを増加させる。リナグリプチンの心血管安全性を評価したプラセボ対照比較試験では非劣性が示されているが、実対照薬との比較試験は実施されていなかった。43ヵ国607施設が参加した実薬対照非劣性試験 本研究は、43ヵ国607施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照非劣性試験であり、2010年11月~2012年12月の期間に患者登録が行われた(Boehringer IngelheimとEli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、HbA1c 6.5~8.5%の2型糖尿病で、心血管リスク因子として、(1)アテローム動脈硬化性心血管疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)、(2)2つ以上のリスク因子(2型糖尿病罹患期間>10年、収縮期血圧>140mmHg、喫煙など)、(3)年齢70歳以上、(4)細小血管合併症(腎機能障害、増殖網膜症など)を満たす患者であった。 被験者は、通常治療に加えて、リナグリプチン(5mg、1日1回)を投与する群またはグリメピリド(1~4mg、1日1回)を投与する群に無作為に割り付けられた。担当医には、臨床的必要性に応じて、主にメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジンジオン系薬、インスリンを追加または用量を調整することで、血糖降下治療を強化することが奨励された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とし、リナグリプチンのグリメピリドに対する非劣性の評価が行われた。両側検定で、ハザード比(HR)の95.47%信頼区間(CI)の上限値<1.3を満たす場合に非劣性と判定した。体重が1.54kg低く、低血糖が少ない 6,033例(平均年齢64.0歳、2,414例[39.9%]が女性、平均HbA1c値7.2%、罹患期間中央値6.3年、大血管疾患42%、メトホルミン単剤療法59%)が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値は6.3年だった。 主要アウトカムは、リナグリプチン群が3,023例中356例(11.8%、2.1/100人年)、グリメピリド群は3,010例中362(12.0%、2.1/100人年)で発生し、非劣性の判定基準を満たした(HR:0.98、95.47%CI:0.84~1.14、非劣性のp<0.001)。一方、優越性は認められなかった(p=0.76)。 主な副次アウトカムとして、主要アウトカムに不安定狭心症による入院を加えて解析を行ったところ、リナグリプチン群が3,023例中398例(13.2%、2.3/100人年)、グリメピリド群は3,010例中401例(13.3%、2.4/100人年)で発生していた(HR:0.99、95%CI:0.86~1.14)。 全死因死亡(HR:0.91、95%CI:0.78~1.06、p=0.23)、心血管死(1.00、0.81~1.24、p=0.99)、心血管系以外の原因による死亡(0.82、0.66~1.03、p=0.08)には有意な差はみられなかった。 HbA1c値の平均変化は、当初、リナグリプチン群よりもグリメピリド群で良好であったが、全体では両群間に有意な差はなかった(256週までの補正後平均重み付け平均差:0%、95%CI:-0.05~0.05)。また、グリメピリド群で早期にわずかな体重増加が認められ、その後は増加せずに維持されたが、全体ではリナグリプチン群のほうが体重が低かった(-1.54kg、-1.80~-1.28)。 有害事象は、リナグリプチン群が2,822例(93.4%)、グリメピリド群は2,856例(94.9%)で発現した。重篤な有害事象は、それぞれ46.4%および48.1%にみられた。 審査によって確定された急性膵炎は、リナグリプチン群15例(0.5%)、グリメピリド群16例(0.5%)に認められ、慢性膵炎は3例(0.1%)および0例(0.0%)、膵がんは16例(0.5%)および24例(0.8%)にみられた。また、1回以上の低血糖エピソードは、それぞれ320例(10.6%)および1,132例(37.7%)で発現し(HR:0.23、95%CI:0.21~0.26)、重症低血糖は10例(0.3%)および65例(2.2%)、入院を要する低血糖は2例(0.1%)および27例(0.9%)に認められた。 著者は「心血管へのベネフィットが証明されているメトホルミン治療後に、さらなる血糖降下治療を要する場合は、リナグリプチンなどのDPP-4阻害薬は低血糖や体重増加のリスクが少ない選択肢となる」としている。

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インスリン療法開始時の選択肢にも有用ーゾルトファイ配合注

 インスリン療法時の低血糖回避が血糖コントロール不良を招き、心疾患の発症に影響を及ぼすことがある。このようなジレンマを新たな薬剤が解決してくれるかもしれない-。 2019年9月26日、ノボノルディスクファーマがゾルトファイ配合注フレックスタッチの発売を記念してプレスセミナーを開催。綿田 裕孝氏(順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 教授)が「インスリン デグルデク/リラグルチド(IDegLira):2型糖尿病治療の新たな選択肢」と題して、新薬の有用性について語った。新たな配合剤の適応やメリットは? 今回発売されたIDegLira(商品名:ゾルトファイ配合注)は、インスリンとGLP-1受容体作動薬を組み合わせた製剤で、インスリン療法が適応となる2型糖尿病に投与可能である。1日1回の用法で2剤が同時投与でき、“注射時刻は原則として毎日一定とする”という条件を守れば、患者のライフスタイルに応じた投与スケジュールを作成できる。これに対し、綿田氏は「患者QOLやアドヒアランス向上にも寄与する」と、コメントした。持効型インスリン/GLP-1配合剤はこれまでの治療不安を払拭できるか 2型糖尿病のインスリン治療には、「低血糖」「体重増加」「血糖コントロール」の3つのアンメットメディカルニーズが存在する。低血糖を起こすと、救急搬送や入院にかかる費用だけではなく、事故や就労不能、業務効率低下といった社会経済にも影響を及ぼし、さらにはHbA1cの目標値達成を阻害する。そして、インスリン治療がもたらす体重増加がHbA1cの目標達成の障壁となり、Basalインスリンを投与する2型糖尿病患者の半数以上はHbA1cの目標値を達成していない。 このような問題が生じることから、インスリン治療に抵抗を示す医師も少なくない。綿田氏が示したデータによると、医師の理想より、実際にインスリン治療を開始する時期は遅れており、患者が実際にインスリン治療を医師から薦められた際の平均HbA1cは9.6%であった1)。GLP-1受容体作動薬との組み合わせで副作用軽減 GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制するため、インスリンと比べても低血糖リスクは少ない。心血管疾患リスク低下や体重減少も報告されていることから、GLP-1受容体作動薬の併用はインスリン治療のデメリット改善につながる。GLP-1受容体作動薬を単独で投与すると胃腸障害(悪心、嘔吐、下痢)の出現頻度は高いが、「IDegLiraは10ドーズにリラグルチドとして0.36mg含有と少量のため、徐々に用量を増加していくと、単独で使用するよりも副作用の出現は低いと考えられる」と、同氏は述べた。 日本人を対象としたIDegLiraの大規模臨床試験(DUAL I JAPAN試験2)、DUAL II JAPAN試験3))結果によると、低血糖リスクや体重増加、悪心などのリスクを回避しながらHbA1cの変化量および平均値の改善を達成した。これを踏まえて同氏は「インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬はそれぞれの課題を有しているが、併用することでお互いを補い合う作用が期待できる治療法である。ほかのインスリン療法と比較しても好ましい治療法であることがメタ解析からも示唆された」と述べ、「IDegLiraはBasalインスリンからの治療強化だけではなく、新規にインスリン療法を開始する際の選択肢にもなる」と締めくくった。

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ビルダグリプチン+メトホルミン早期介入が新規2型DMに有効/Lancet

 新たに診断された2型糖尿病患者において、ビルダグリプチン+メトホルミン併用療法による早期介入は、現在の標準初期治療であるメトホルミン単剤療法と比較し長期的ベネフィットがあることが認められた。英国・オックスフォード大学のDavid R. Matthews氏らが、34ヵ国254施設で実施された無作為化二重盲検比較試験「VERIFY試験」の結果を報告した。初期治療の強化は良好な血糖コントロールの維持につながり、糖尿病合併症の進展抑制に重要とされる。そうした機会が、初期治療として併用療法を導入することで、従来の段階的アプローチよりも多くなることが示唆されていたが、その効果については確定されていなかった。Lancet誌オンライン版2019年9月18日号掲載の報告。ビルダグリプチン+メトホルミン併用群と単剤群に1対1で割り付けて5年間追跡 本試験は2週間のスクリーニング期、3週間のメトホルミン単剤導入期、5年間の治療期(試験期1、2、3に分けられる)から構成された。対象は、登録2年以内に新たに2型糖尿病と診断された18~70歳で、HbA1c値6.5~7.5%、BMI値22~40の患者で、併用群またはメトホルミン単剤群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 試験期1において、メトホルミンの安定用量(1,000、1,500または2,000mg)に加えて、併用群ではビルダグリプチン50mgの1日2回投与を追加し、メトホルミン単剤群はプラセボを追加した。初期治療でHbA1c値が7.0%(53mmol/mol)未満に維持されなかった場合(13週間あけた連続2回の受診で確認)、メトホルミン単剤群ではプラセボの代わりにビルダグリプチンを投与し、全患者に併用療法を行う試験期2に登録した。 有効性の主要評価項目は、無作為化から初期治療失敗(試験期1における無作為化から13週後以降、連続した2回の受診でHbA1c値7.0%以上)までの期間であった。 最大解析(full analysis)は、割り付けられた試験薬を1つ以上服用し、無作為化後の有効性に関する項目の評価を1回以上受けた被験者を対象とした。安全性の解析は、割り付けられた試験薬を1投与量以上服用した全被験者を対象とした。ビルダグリプチン+メトホルミン併用群は単剤群に比べて、初期治療失敗のリスクが半減 登録は2012年3月30日に開始され、2014年4月10日に完了した。4,524例がスクリーニングを受け、このうち2,001例がビルダグリプチン+メトホルミン早期併用群(998例)および単剤群(1,003例)に無作為に割り付けられた。2,001例のうち、ビルダグリプチン+メトホルミン早期併用群および単剤群でそれぞれ811例(81.3%)および787例(78.5%)の計1,598例が5年の治療期を完遂した。 試験期1における初期治療失敗の発生は、ビルダグリプチン+メトホルミン早期併用群429例(43.6%)、単剤群614例(62.1%)であった。初期治療失敗までの期間中央値は、単剤群で36.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:15.3~未到達[NR])であった。一方のビルダグリプチン+メトホルミン早期併用群は61.9ヵ月(IQR:29.9~NR)で、わずかに試験期を越えていた可能性があった。 5年の試験期間中、ビルダグリプチン+メトホルミン早期併用群は単剤群と比較して、初期治療失敗までの期間の相対リスクを有意に低下したことが確認された(ハザード比:0.51、95%CI:0.45~0.58、p<0.0001)。 両群とも、安全性および忍容性は良好であり、予期しないあるいは新たな有害事象の発現はなく、治療に関連した死亡もなかった。

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CKD治療抵抗性高血圧症、patiromer併用でスピロノラクトン服薬率上昇/Lancet

 治療抵抗性高血圧症の慢性腎臓病(CKD)患者に対し、カリウム吸着薬patiromerを用いることで、より多くの患者が高カリウム血症を呈することなくスピロノラクトンによる治療が継続可能なことが示された。米国・インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らが、10ヵ国62外来医療センターを通じて行った第II相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。スピロノラクトンは、治療抵抗性高血圧症で血圧コントロール不良の患者において、降圧効果があることが示されている。しかし、CKDが併存する患者では高カリウム血症を呈することからスピロノラクトンの使用は制限される場合があることが課題となっていた。Lancet誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。12週後のスピロノラクトン服薬継続率を比較 研究グループは、10ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ジョージア、ハンガリー、ウクライナ、フランス、ドイツ、南アフリカ共和国、英国、米国)、62ヵ所の外来医療センターを通じ、推定糸球体濾過量(eGFR)が25~45以下mL/分/1.73m2のCKDで、コントロール不良の治療抵抗性高血圧症を有する18歳以上を対象に試験を行った。最終スクリーニングですべての適格基準を満たした患者を、血清カリウム値(4.3~4.7未満mmol/Lまたは4.7~5.1mmol/L)と糖尿病歴の有無で層別化した。 被験者を双方向ウェブ応答システムで無作為に1対1の割合で割り付け、非盲検下で投与したスピロノラクトン(25mgを1日1回から開始)とベースラインで服用中の高血圧治療薬に加えて、patiromer(8.4gを1日1回)またはプラセボのいずれかを投与した。patiromerの用量漸増は1週間後、スピロノラクトンは3週間後に可能とした。 被験者、投薬管理と血圧測定を行う試験チーム、および研究者は、割り付け治療群に対してマスキングされた。 主要エンドポイントは、12週後のスピロノラクトン服薬継続率の群間差だった。有効性のエンドポイントと安全性は、無作為化を受けた全被験者(intention-to-treat集団)で評価された。スピロノラクトン服薬継続率、patiromer群86%、プラセボ群66% 2017年2月13日~2018年8月20日にスクリーニングを受けた574例のうち、すべての基準を満たした295例(51%)を対象に無作為化試験を行った。patiromer群147例、プラセボ群148例だった。 12週後、スピロノラクトンを服薬継続していたのは、プラセボ群98/148例(66%)に対し、patiromer群126/147例(86%)と有意に高率だった(群間差:19.5%、95%信頼区間[CI]:10.0~29.0、p<0.0001)。 有害イベントは大半が軽度~中等度で、プラセボ群79/148例(53%)、patiromer群82/147例(56%)で発生した。 これらの結果を踏まえて著者は、「こうしたCKDが進行した患者集団において、治療抵抗性高血圧症の治療のために、スピロノラクトン継続使用が可能となることは、臨床的に意味がある」と述べている。

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EF低下心不全へのダパグリフロジン、心不全増悪・心血管死リスク大幅減/NEJM

 駆出率(EF)が低下した心不全患者に対し、標準治療に加えたSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの投与は、糖尿病の有無にかかわらず、心不全増悪および心血管死のリスクを有意に低下することが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J. V. McMurray氏らが、 4,744例の患者を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化試験で明らかにした。2型糖尿病(DM)患者では、SGLT2阻害薬が心不全の初発入院リスクを低下することが示されている。その機序はグルコースとは独立していると考えられており、研究グループは、2型DMの有無を問わず、EF低下心不全患者におけるSGLT2阻害薬の作用に関するデータを集めるため本試験を行った。NEJM誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。心不全増悪または心血管死を比較 研究グループは、NYHA心機能分類II~IVでEFが40%以下の心不全患者4,744例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはダパグリフロジン(1日1回10mg)を、もう一方にはプラセボを、推奨されている治療に加えて投与した。 主要アウトカムは、心不全増悪(心不全の静注療法を要する入院もしくは緊急受診)または心血管死の複合だった。心不全増悪の初回発生リスク、ダパグリフロジン群で3割減 追跡期間中央値18.2ヵ月において、主要アウトカムの発生は、プラセボ群502/2,371例(21.2%)に対し、ダパグリフロジン群は386/2,373例(16.3%)だった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.85、p<0.001)。 初発の心不全増悪は、プラセボ群326例(13.7%)、ダパグリフロジン群237例(10.0%)だった(HR:0.70、95%CI:0.59~0.83)。心血管死はそれぞれ273例(11.5%)、227例(9.6%)で(同:0.82、0.69~0.98)、全死因死亡は329例(13.9%)、276例(11.6%)だった(同:0.83、0.71~0.97)。 糖尿病の有無による所見の違いはみられなかった。循環血液量減少や腎機能不全、低血糖に関連した有害事象の発現頻度も、両群間で差はなかった。

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第19回 噛む回数を増やすメリットと簡単実践方法【実践型!食事指導スライド】

第19回 噛む回数を増やすメリットと簡単実践方法医療者向けワンポイント解説肥満や糖尿病の予防に対して、「よく噛みましょう」「1口30回噛みましょう」と伝えられることがありますが、早食い癖のついている人にとって「よく噛むこと」は、実行しにくい行動です。よく噛むためには「噛むメリット」を知り、「噛めるメニュー」を選ぶコツが必要です。●噛むメリットとは何か?1)唾液が出て口内が清潔になる噛むことは唾液の分泌を促します。唾液には食べ物のカスや細菌を洗い流す作用があり、虫歯や歯周病予防につながります。2)消化がスムーズ唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼには、デンプンを分解し消化吸収を高める働きがあります。また、咀嚼運動により刺激され、胃液の分泌を助けます。3)満腹感が得やすい噛むことにより満腹中枢が刺激されます。また、腸管から分泌されるGLP-1やPYY(ペプチドYY)*による刺激が迷走神経から視床下部へ伝達され、摂食が調整されます。健常人を対象にした実験で、咀嚼回数が多いほど、GLP-1やPYYの血中の濃度が高くなるという結果があります。*:摂食抑制に機能する消化管ホルモン4)肥満や糖尿病のリスク低下消化促進や満腹中枢の刺激などの働きが合わさることで、食べる量が調整され、肥満の予防、糖尿病のリスク低下につながります。5)脳を刺激し活性化咀嚼刺激を与えることにより、脳を刺激し記憶力や集中力を高める働きがあることがわかっています。また、マウスモデルでは成長期における咀嚼刺激の低下が、顎の骨や咀嚼筋の成長を抑制し、海馬をはじめとする脳神経系の発達を妨げることで、記憶や学習機能を障害する可能性もが示唆されています。その結果、記憶や認知症の治療や予防につながり、咀嚼機能の維持や強化に有効であると期待されています。●噛むための簡単実践方法i)箸を使うスプーンやフォークを使うことで、1口の量が大きく、流し込み食べをしやすくなります。箸の動作を意識することでひと口の量が調整され、また、動きがでることで噛む回数を増やすことができます。ii)丼・麺などの単品ものよりも定食スタイルにする丼物や麺類は同じ味が続きやすく、味の変化が少ないことで満足度を下げ、食べる速度を上げがちです。定食スタイルで箸を使うことにより、口中で味の変化が起こり、ゆっくりと味わうことがしやすくなります。iii)いろいろな食材を取り入れる食感の変化のなさ、柔らかさも噛む回数を減らす原因です。単品で食べるより、違う食材をプラスする意識をもてば、噛む回数を増やすことができます。たとえば、「白飯にふりかけを合わせるよりも、しらす干しや納豆をのせる」「唐揚げ単品よりも千切りキャベツを添える、パンで挟む」など、ひと手間で噛む回数と満足度を変えることができます。iv)食材は大きく切る・細かくしない・加工は少なく食材が大きく切られているほうが、当然ながら噛む回数を増やすことができます。また、食感があることが重要です。ハンバーグなどやわらかい料理よりもステーキなどを選ぶことで、噛みごたえを増やすことができます。v)素材のままを1品加える味が濃いと噛まずに飲みこみやすくなりますが、素材のままの味わいのものは、味を感じようと自然と噛む動作が増えます。たとえば、チャーハンは早食いできても、炊いただけの玄米ご飯は早食いできない、といったところです。自然と噛めるメニューを加えることは、実は、栄養バランスが自然と整う方法でもあります。

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適切な治療法を届けたい、「バセドウ病治療ガイドライン2019」

 バセドウ病は1,000~2,000人に1人に発症する疾患であり、日常診療において遭遇率の高い疾患の1つである。なかでも、若い女性では約300人に1人が罹患しているとされ、妊娠中の検査で判明することも少なくない。 2019年5月、日本甲状腺学会によるバセドウ病治療ガイドラインが8年ぶりに改訂。本書は専門医だけではなく非専門医やそのほか医療者のバイブルになることを目的として作成されていることから、吉村 弘氏(伊藤病院/バセドウ病治療ガイドライン作成委員会委員長)に一般内科医にも知ってもらいたい改訂ポイントや「バセドウ病治療ガイドライン2019」の特徴について聞いた。バセドウ病治療ガイドライン2019はFCQを新設 今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」の改訂では、FCQ(Foreground Clinical Question)を新設し、クリニカルクエスチョンをFCQ6項目とBCQ(Background Clinical Question)39項目の2つに分けて記載している。これについて吉村氏は、「FCQの項を設けたガイドラインは日本では数少ない。FCQは今現在の課題や結果が出ていない事項に対して、世界中のエビデンスを基にして作成するので、ガイドライン本来の役割を果たす項である。ForegroundをMindsに従って翻訳すると“前景的”となるが、読者が意味を取りやすいよう“発展的”重要検討課題とした」と説明。なお、FCQは、推奨度を「強く推奨する」「弱く推奨する」「推奨なし」の3段階で、推奨決定のためのエビデンス総体の質(確信性)のグレードは、「強」「中」「弱」「とても弱い」の4段階で示されている。 一方、教科書的な内容を記載しているBCQは、推奨ではなく、エビデンスに基づく回答や解説などで構成されている。同氏は非専門医に向けて、「ガイドラインすべてを把握するのは労力が必要。まずは、BCQの回答と解説を熟知してほしい」とコメントした。 また、「バセドウ病治療ガイドライン2019」のBCQには妊娠中の管理はもちろんのこと、「バセドウ病患者の生活指導」「特殊な病態と合併症の治療」「手術」に関する項目が盛り込まれているほか、「ヨウ素を多く含む食品」など、BCQに該当しない内容がコラムとして記載されているので、非専門医がバセドウ病合併患者を対応する際にも有用である。「バセドウ病治療ガイドライン2019」の妊娠中の治療方針における変更点 妊娠兆候がある人は、産婦人科による甲状腺疾患の有無を確認する血液検査が必須である。そのため、同氏の所属病院には産婦人科からの紹介も多く、同氏の調べによると「不妊治療を行っている人の2~3割に甲状腺の精査が必要」という。 さらに、バセドウ病の治療は妊娠の有無にかかわらず、すべての患者に薬物治療が必要になることから、日本甲状腺学会は妊娠前~妊娠中の薬物治療への対応に注意を払っている。たとえば、今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠中のバセドウ病の治療方針と管理方法(BCQ37)について、「器官形成期である妊娠4週から妊娠15週、とくに妊娠5週から妊娠9週はMMI(チアマゾール)の使用は避ける。妊娠16週以降はMMIを第一選択薬とする」と変更されている。これについて同氏は、「エビデンスを検索するかぎり、MMIの影響については妊娠10週までしか報告されていない。しかし、一般的な薬物の影響を考慮して、「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠5~15週でのMMIの使用回避を記載した」と改訂時の留意点をコメント。加えて、「バセドウ病の場合は、永続的に疾患と付き合っていかなければならず、挙児希望のある患者、とくに131I内用療法後の男性への指導については現時点ではエビデンスが乏しいため、FCQ6に対応法を盛り込んだ」と述べた。 最後に同氏は「FCQ2、4、6は、とくに重要な項目なので注目してほしい」と強調した。<バセドウ病治療ガイドライン2019の主な変更点>FCQ1:妊娠初期における薬物治療は、第一選択薬として何が推奨されるか?(変更前)推奨なし・MMIは妊娠4~7週は使用しないほうが無難(変更後)抗甲状腺薬が必要な場合はPTU(プロピルチオウラシル)を使用、MMIは妊娠5週0日から9週6日まで避けるべきFCQ2:無顆粒球症にG-CSFは推奨されるか?(変更前)推奨なし(変更後)無症候性で顆粒球数100/μL以上では低用量のG-CSFを外来で試験投与可能、顆粒球数100/μL未満は入院のうえ高用量のG-CSF投与が推奨FCQ3:抗甲状腺薬服薬中および治療後にヨウ素制限を行うか?(変更前)食事性ヨード摂取の制限を勧める必要はない(変更後)行わないFCQ4:18歳以下のバセドウ病患者に131I内用療法は推奨されるか?(変更前)慎重投与[他の治療法が選択できないとき](変更後)6~18歳以下でほかの治療法が困難である場合のみ容認、5歳以下は禁忌FCQ5:授乳中のバセドウ病患者にMMI、PTU、無機ヨウ素は推奨されるか?(変更前)PTU300mg/日以下、MMI10mg/日以下であれば授乳を制限する必要はない(変更後)PTU、MMIは変更なし、治療量の無機ヨウ素薬は可能な限り避けるFCQ6:131I内用療法後、挙児計画はいつから許可するか?(男性の場合)(変更前)推奨なし、6ヵ月以上期間を置く(変更後)4ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[強い]、6ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[弱い]

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シニアに必要な視力の健康

 9月11日、バイエル薬品株式会社は、都内において「人生100年時代の生き方・老い方会議~100年ずっと見える人生のために~」をテーマに講演会を開催した。 第2回となる今回のテーマは「見えることの重要性」で、講演会では一般のシニア約100名を前に、眼科医師による眼の健康とシニアの生き方の講演や現役で活躍するシニアの代表が登壇し、健康に生きる秘訣などを語った。 同社では、今後も世界各国でヘルシーエイジング(健康的で幸せに歳を重ねていく)活動の応援を推進するとしている。視力が弱ると認知症も増える 講演では飯田 知弘氏(東京女子医科大学医学部眼科 教授)を講師に迎え、「人生100年時代を生き抜くための『眼の健康』」をテーマに、高齢化に伴う眼の疾患について説明した。 これからの人生は100年時代であり、政府も「いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」を目指し、シニアのさまざまなチャレンジを後押ししていると説明し、そのためには「健康」であることが重要と述べた。 健康を保つポイントとして、健康寿命と平均寿命には差がある(男性9.13年、女性12.68年)ことを示し、この差を短くすることが重要と指摘した。また、シニアにとって認知症は大きな問題である。世界保健機関(WHO)が策定した「認知症予防指針」によれば、「有酸素運動」「多量の飲酒を避ける」「血圧を維持」「血糖コントロール」「体重を一定に保つ」「適度な休息」など12項目があり、わが国も認知症施策推進大綱を発表し、本格的に取り組みを開始したことを説明した。同じく、認知症の発症関連リスクとして「難聴」「高血圧」「肥満」「喫煙」「うつ」など9つの因子があり、これらの抑制ができれば発症を35%抑制できると語った1)。 一方で、視力と認知症の関係について研究した藤原京スタディにも触れ、加齢とともに視力不良と認知症が増加し、視力不良の患者では認知症の発症割合が約2~3倍高いことを指摘した2)。シニアは気を付けたい白内障、緑内障、加齢黄斑変性 次に眼の働き、仕組みについて触れ、わが国の視覚障害の原因疾患は、緑内障(28.6%)、網膜性色素変性(14.0%)、糖尿病網膜症(12.8%)、黄斑変性(8.0%)、 脈絡網膜萎縮(4.9%)の順で多く、その中でもシニアの視力障害では、「白内障、緑内障、加齢黄斑変性」の3つが挙げられると同氏は指摘した。 「白内障」は、水晶体が濁ることで起きる視力障害で60歳を過ぎると80%以上、80歳を過ぎると100%で症状が認められる。主な自覚症状として、かすみ目、明るいところで見えにくい、ピントや眼鏡が合わない、2重3重に見えるなどがある。 「緑内障」は、眼圧が高くなり、視神経が障害される疾患。主な自覚症状として、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする。正常眼圧でも起こるケースもあり、日本人に多いという。自覚症状に乏しく、気付きにくいため、定期的な眼科受診が勧められる。 「加齢黄斑変性」は、50歳以上で、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が起こる疾患。欧米では成人の失明原因の1位となっている。主な自覚症状として、視野の中心部が歪む変視症や視野の中心部が黒くなる中心暗点がある。 これらの疾患の治療では、手術が必要となるが、白内障手術により視力が回復することで、認知機能の改善が認められた報告3) もあり、健康の維持には、視力の維持も重要であると指摘した。 同氏は、まとめとして100歳まで健康な視力を維持するために、「病気のことをよく知る」「定期的に眼科受診」「早期発見、早期治療が大切」と3項目を示し、「『人生100年時代』生き生きとした生活を送るためには眼の健康が大切」と強調し、講演を終えた。 この後、シニア代表として中村 輝雄氏(中村印刷所 代表取締役社長)が登壇し、自社が開発した「水平開きノート」(http://nakaprin.jp/)製作の軌跡、眼が健康であればシニアも「働ける、学べる、夢が持てる」と体験談を披露した。■文献1) Livingston G, et al. Lancet. 2017;390:2673-2734.2) Mine M, et al. Biores Open Access. 2016;5:228-234.3) Ishii K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146:404-409.■参考バイエル薬品株式会社 Healthy Aging

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コメディカルによる地域包括ケア、心血管イベント抑制に効果/Lancet

 地域の状況を熟知したプライマリケア医と患者家族、地域住民の支援の下で、医師以外の医療従事者(NPHW)が行う包括的なケアは、血圧コントロールと心血管疾患リスクを実質的に改善することが、カナダ・マックマスター大学のJon-David Schwalm氏らが行ったHOPE 4試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。高血圧は、世界的に心血管疾患の主要な原因である。高血圧のコントロールは、その有益性が証明されているにもかかわらず、十分に実施されていないという。Schwalm氏らは、コントロール不良および新規に診断された高血圧患者では、降圧治療とともに、地域の状況を詳細に分析して得られた他のリスク因子を改善する包括的なアプローチが、通常ケアに比べ有効性が高いとの仮説を立て、検証を行った。2つの中所得国30地域のクラスター無作為化試験 本研究は、NPHW、プライマリケア医、患者家族、有効な薬剤の提供から成るケアのモデルが、心血管疾患のリスクを実質的に低減するか否かの検証を目的に、2014~17年の期間にコロンビアとマレーシアの30地域(15地域ずつ)で実施された地域住民ベースのクラスター無作為化対照比較試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 30地域は、介入群と対照群に無作為に割り付けられた。介入群では、(1)NPHWが、タブレット型コンピュータ内の簡易な管理アルゴリズムと指導プログラムを用いて心血管疾患リスク因子の治療を行い、(2)医師の監督下でNPHWが無料の降圧薬およびスタチンを推奨し、(3)治療支援者として患者家族または友人が、服薬や健康的な行動の順守を改善する手助けを行った。対照群では通常治療が行われた。 主要アウトカムは、フラミンガムリスクスコア(FRS)によるベースラインから12ヵ月までの心血管疾患10年リスク推定値の変化の差とした。SBP<140mmHg達成の変化は2倍以上に 30地域(1,371例)のうち14地域が介入群(644例、平均年齢65.1歳[SD 9.1]、女性58%)に、16地域は対照群(727例、65.8歳[9.7]、54%)に割り付けられた。1,371例中1,299例(生存例の97%、介入群607例、対照群692例)が12ヵ月のフォローアップを完遂した。 ベースラインにおいて対照群で、喫煙者(7.8% vs.9.4%)と糖尿病患者(32% vs.37%)が多かった。全体の参加者の多く(1,008例、73.5%)が高血圧既往で、降圧薬を服用していたが血圧はコントロールされていなかった。残りの参加者は新規に診断された高血圧患者であった。 FRSの10年心血管疾患リスクのベースラインから12ヵ月までの変化は、介入群が-11.17%(95%信頼区間[CI]:-12.88~-9.47)、対照群は-6.40%(-8.00~-4.80)であり、両群間の変化の差は-4.78%(-7.11~-2.44)と、介入群で有意に良好であった(p<0.0001)。介入群におけるFRSの相対的減少率は34.2%だった。 介入群は対照群と比較して、12ヵ月時の収縮期血圧(SBP)の変化が11.45mmHg(95%CI:-14.94~-7.97)低く、総コレステロール値が0.45mmol/L(-0.62~-0.28)、LDLコレステロール値は0.41mmol/L(-0.60~-0.23)低下した(いずれもp<0.0001)。また、12ヵ月時の血圧コントロール(SBP<140mmHg)達成の変化は、介入群が対照群の2倍以上であった(69% vs.30%、p<0.0001)。 一方、血糖値、HDLコレステロール値、禁煙率、体重には両群間に有意な差はみられなかった。 介入群で18件の重篤な有害事象が発現したが、いずれも試験関連薬が原因ではなく、17件(94%)では患者が服薬を継続していた。死亡、心筋梗塞、脳卒中、これらの複合、心血管疾患による入院は、いずれも両群間に有意な差はなかった。 著者は、「HOPE 4戦略は効果的かつ実用的であり、2つの中所得国において、一般に医師が行う現在の戦略と比較して、実質的に心血管疾患を低減する可能性がある」としている。

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178)「明日からダイエット」が必ず失敗する理由【糖尿病患者指導画集】

患者さん用:ダイエットはいつから?説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師最近、体重の変化はどうですか?患者ダイエットは明日からやります…!医師ハハハ。「今日のところは・・・」と食欲を優先してしまう人は太りやすいそうですよ。患者えっ、そうなんですか。今日は帰りに好きなものを食べて、明日から頑張ろうと思っていました。医師ちなみに、子どもの頃、夏休みの宿題は、最初に片付けてから遊ぶタイプでしたか? それとも最後に追い込むタイプでしたか?患者後者です。家族に手伝ってもらっても間に合わないことがありました・・・。医師ダイエットも同じで、先延ばしにしてもいいことはないですよ。患者じゃあ、どうしたらいいんですかね。医師いい方法がありますよ。「今日からダイエットする!」と、家族や友人に宣言するんです。ここに、「ダイエット宣言書」として、日付と名前を書いてみましょう。患者なるほど。じゃあ今日から・・・、いえ、今からダイエットします!●ポイントダイエットを先延ばししてしまう人には、家族や友人の前で「ダイエット宣言」をしてもらいましょう。

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新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(1)【新型タバコの基礎知識】第9回

第9回 新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(1)Key Points加熱式タバコや電子タバコによるハーム・リダクションの可否を考えるためには、発がん性物質だけでなく、ニコチン依存症に関する理解も必要。ニコチンの本当のリスク:ニコチン依存症は実は“幸せ”を奪っている。最近、米国で電子タバコによるものと考えられる呼吸器症状・疾患のために6人が死亡したとする報道がなされ、トランプ大統領がフレーバー添加の電子タバコの使用を禁止する旨を発信したとして話題になっています。死亡は最大レベルの不可逆的有害事象であり、この電子タバコによると考えられる死亡の事実は重いものです。専門家団体が電子タバコなら害がほとんどない(95%少ない)と主張していた英国でも、電子タバコの扱いについて見直すべきではないかという意見も出ています。しかし、電子タバコによる害が本当に大きいのかどうかを判定するためには、死亡の件数よりも、死亡が発生する確率が高いのか低いのかを判定することが求められます。現在のところ、その情報は得られていません。私は、今回の死亡例の報告に関しては、電子タバコの極端なヘビーユーザーや、違法薬剤等を添加して使用するなどの変則的使用が原因なのではないかと推測していますが、これは想像の域を出ていません。まずは、米国がまとめる報告書を待ちたいと思います。さて、今回のテーマは、ハーム・リダクション(害の低減)です。ハーム・リダクションとは、簡単に言うと、大きな害のある行動をそれよりも小さな害の行動に置き換えることによって、害は完全にはなくせないが、害を少なくさせること、をいいます。具体例としては、薬物使用者らが1つの注射器を回し打ちすることによってHIVウイルス感染が蔓延するという問題に対して、薬物使用をやめさせる取組みとは別に、HIVウイルス感染を防止するために無料の注射器を配ったという事例があります。また、自動車事故による死亡を防ぐために、自動車事故をなくす取組みとは別に、運転時にシートベルトを着用する、ということもハーム・リダクションの一例として知られています。タバコ問題の場合のハーム・リダクション戦略として、どうしてもタバコをやめられない人に対して、タバコの代わりにニコチン入りの電子タバコ等を吸ってもらったら、有害物質への曝露を減らせるのではないか、というわけです。しかし、議論は単純ではありません。世界的にハーム・リダクションの効果や可能性が主に議論されているのは、ニコチン入りの電子タバコについてです。タバコ問題におけるハーム・リダクションについて考えていくために、今回はニコチン依存症について取り上げたいと思います。そもそもニコチン依存症とは何でしょうか?ニコチン依存症とは「血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう疾患」とされます1)。ニコチンを摂取していると、それなしでは不快感を感じるようになってしまい、摂取すればその不快感がなくなるので、繰り返し摂取するようになってしまうのです。 ニコチンは吸収が速く、体内から消失するのも速いため、喫煙してから30分程度ですぐにニコチン切れ症状を生じてしまい、「吸いたい、吸いたい」となってしまうのです。 しかし、この説明だけではニコチン依存症の本当の意味で残酷な病態については理解できないかもしれません。ニコチン依存症は実は、“幸せを奪っている”のです。ニコチン依存になると、楽しいことやうれしいことがあっても、楽しい! うれしい! と感じなくさせられてしまうのです。人生の楽しみや幸せを奪うのがニコチン依存なのです。禁煙した人が「禁煙したら、ご飯がおいしくなった」と言っているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。でも実はそうではなくて、もともとご飯はおいしいのです。喫煙していると、ニコチンという物質が、人がおいしいと感じたり、楽しい、うれしい、幸せだと感じたりするときに機能する脳の中の報酬系(ほうしゅうけい)回路を邪魔してしまい、もともとおいしいご飯を食べても、おいしいと感じられなくさせられてしまっていたのです。喫煙していると、ご飯を食べても、楽しいことがあっても、幸せだと感じるようなタイミングでも、それを感じることができなくさせられてしまっているといえます。喫煙者はタバコを吸っていない時間はすぐにニコチン欠乏状態となり、いつも「吸いたい、吸いたい」という感情に支配されてしまうのです。ニコチンの欠乏状態を喫煙により補充した瞬間だけニコチンが足りているという満足感が得られ、喫煙者はそれでニコチンにより救われた気になってしまいます。本当は、ニコチンにより「おいしい、楽しい、うれしい、幸せ」を感じることが奪われているのに、です。このことを実証した実験研究があるので、紹介します2)。うれしいことがあると脳の報酬系回路の反応が活発になります。それをMRIを使って測定した研究です。多くの子どもは、チョコレートをもらったらうれしいと感じるものだと思います。この研究では、タバコを吸っている10代の男女43人と、吸っていない10代の男女43人に、チョコレートをあげたときの脳の反応を比べています。その結果、図のように脳の報酬系回路の反応性は、タバコを吸っているかどうかで大きく違っていました。光っている反応が強いほど、脳の報酬系回路の反応が強い(例えば、うれしいと感じている)ことを示しています。タバコを多く吸っているほど、脳の反応が弱くなっていたのです。チョコレートをもらうことは些細なことであって、そんなにうれしがることではない、と指摘する人もいるかもしれません。しかし、些細なことの積み重ねが人生ではないでしょうか。ニコチンという物質は、そんな些細な幸せを奪ってしまうのです。加熱式タバコには、紙巻タバコとほとんど変わらないレベルのニコチンが含まれています(第3回参照)。そのため、紙巻タバコから加熱式タバコにスイッチしても、ニコチン依存は維持されます。タバコが吸いにくい環境で、加熱式タバコなら吸うことができるからという理由で、加熱式タバコを吸っている人もいます。加熱式タバコによりニコチンを補充しやすくなり、より強固なニコチン依存状態に陥ってしまう可能性もあるのです。画像を拡大する第10回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)」です。1)厚生労働省e-ヘルスケアネット「ニコチン依存症」2)Peters J et al. Am J Psychiatry. 2011; 168: 540-549.2

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糖尿病と食道腺がんリスク(プール解析)/Cancer

 糖尿病とさまざまながんの関係が研究されているが、食道/食道胃接合部の腫瘍との関係は明らかになっていない。米国国立がん研究所(NCI)のJessica L. Petrick氏らは、2,309例の食道腺がん(EA)、1,938例の食道胃接合部腺がん(EGJA)、1,728例のバレット食道(BE)、および1万6,354例の対照を含む、国際バレットおよび食道腺がんコンソーシアム(International Barrett's and Esophageal Adenocarcinoma Consortium:BEACON)の13の研究データを統合し、糖尿病とEA、EGJA、BEの関連についての研究固有のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、ロジスティック回帰を用いて推定した。Cancer誌オンライン版2019年9月6日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病によるEAリスクのオッズ比は1.34(95%CI:1.00~1.80、I2=48.8%)、EGJAリスクのオッズ比は1.27(95%CI:1.05~1.55、I2=0.0%)、EAとEGJAを合わせたリスクのオッズ比は1.30(95%CI:1.06~1.58、I2=34.9%)であった。・胃食道逆流症状がある患者では、糖尿病によるEA/EGJAのリスクはさらに増加し、オッズ比は1.63(95%CI:1.19~2.22、交互作用のp=0.04)であった。・胃食道逆流症状がない患者では、糖尿病とEA/EGJAリスクとの関連はみられなかった(OR:1.03、95%CI:0.74~1.43)。・糖尿病とBEの間に一貫した関連性はみられなかった。

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PPCI前の遠隔虚血プレコンディショニング、STEMI予後に有意義か/Lancet

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、PPCI前に遠隔虚血コンディショニング(remote ischaemic conditioning:RIC)を行っても心臓死/心不全による入院は減少しないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek J. Hausenloy氏らが行ったCONDI-2/ERIC-PPCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月6日号に掲載された。RICは、上腕に装着したカフの膨張と解除を繰り返すことで、一時的に虚血と再灌流を引き起こす。これにより、PPCIを受けるSTEMI患者の心筋梗塞の大きさが20~30%縮小し、臨床アウトカムが改善すると報告されていたが、十分な検出力を持つ大規模な前向き研究は行われていなかった。欧州4ヵ国33施設の医師主導無作為化試験 本研究は、英国、デンマーク、スペイン、セルビアの33施設が参加した医師主導の単盲検無作為化対照比較試験であり、2013年11月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛がみられてSTEMIが疑われ、PPCIが適応とされた患者であった。被験者は、PPCI施行前にRICを行う群または標準治療を行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 RIC群では、上腕に装着した自動カフの膨張(5分間)と収縮(5分間)を交互に4回繰り返すことで、間欠的に虚血と再灌流を誘発した。英国の施設のみ、対照群にシャムRICを行った。 データ収集とアウトカムの評価を行う医師には、治療割り付け情報がマスクされた。主要複合エンドポイントは、12ヵ月後の心臓死と心不全による入院の複合とし、intention-to-treat解析を行った。新たな心臓保護の標的の特定が必要 5,115例(intention-to-treat集団)が登録され、RIC群に2,546例(平均年齢63.9[SD 12.1]歳、女性24.0%)、対照群には2,569例(63.1[12.2]歳、22.4%)が割り付けられた。 12ヵ月後の主要複合エンドポイントの発生率は、RIC群が9.4%(239/2,546例)、対照群は8.6%(220/2,569例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.91~1.32、p=0.32)。 同様に、12ヵ月後の心臓死(3.1% vs.2.7%、HR:1.13、95%CI:0.82~1.56、p=0.46)および心不全による入院(7.6% vs.7.1%、1.06、0.87~1.30、p=0.55)にも、両群間に差はみられなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、年齢、糖尿病の有無、PPCI前のTIMI血流分類、梗塞部位、first medical contact to balloon timeの違いによる主要複合エンドポイントの発生に関して両群間に有意な差はなかった。 主要複合エンドポイントのper-protocol解析の結果も、intention-to-treat解析ときわめて類似しており、両群間に差はなかった(RIC群9.0% vs.対照群8.1%、HR:1.11、95%CI:0.90~1.36、p=0.35)。 30日以内の心臓死と心不全による入院の複合、および個々のイベントの発生には両群間に有意差はなく、30日以内の主要心血管イベント/脳有害事象(全死因死亡、再梗塞、予定外の血行再建、脳卒中)、および個々のイベントの発生にも差はなかった。また、12ヵ月以内の植え込み型除細動器の施術の頻度にも差は認められなかった。 また、試験治療関連の予想外の有害事象はみられなかった。RIC群で皮膚点状出血が2.8%、一過性の疼痛や知覚障害が5.8%で報告された。有害事象による治療中止はなかった。 著者は「RICは、STEMI発症後の臨床転帰改善の最も有望な心臓保護戦略であり、他の選択肢は少ない。それゆえ、新たな心臓保護の標的を特定し、複数の標的への併用治療のような革新的な保護アプローチを開発するために、新たな研究を要する」としている。

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ベジタリアンは肉食より脳卒中リスク増/BMJ

 魚食や菜食主義(ベジタリアン)の人は、肉食の人と比較して虚血性心疾患の発生率は低かったが、ベジタリアンでは脳出血および全脳卒中の発生率が高いことが示された。英国・オックスフォード大学のTammy Y N Tong氏らが、ベジタリアンと虚血性心疾患および脳卒中との関連を調査した前向きコホート研究「EPIC-Oxford研究」の18年を超える追跡調査結果を報告した。これまでの研究では、ベジタリアンが非ベジタリアンより虚血性心疾患のリスクが低いことは報告されていたが、利用可能なデータが限られており、脳卒中に関するエビデンスは十分ではなかった。BMJ誌2019年9月4日号掲載の報告。約5万人を肉食・魚食・ベジタリアンに分け心血管疾患および脳卒中の発生を調査 研究グループは、1993~2001年に虚血性心疾患、脳卒中、狭心症または心血管疾患の既往がない4万8,188例を登録し、ベースラインとその後2010~13年に収集された食事の情報に基づいて、肉食群(魚、乳製品、卵を消費するかどうかにかかわらず肉を食べる人:2万4,428例)、魚食群(魚は食べるが肉は食べない人:7,506例)、菜食群(ヴィーガンを含むベジタリアン:1万6,254例)に分類し、追跡調査した。ベースラインとその後の2010年頃(平均追跡期間14年後)の両方で食事に関する報告があったのは2万8,364例であった。 主要評価項目は、2016年までの英国医療サービスの関連記録から特定された虚血性心疾患および脳卒中(脳梗塞、脳出血)の発生とし、Cox比例ハザードモデル、Wald検定を用いて解析した。ベジタリアン群の脳卒中が肉食群に比べ20%増加 18.1年以上の追跡調査の結果、虚血性心疾患2,820例、全脳卒中1,072例(脳梗塞519例、脳出血300例)が確認された。社会人口学的および生活習慣の交絡因子を調整後、魚食群およびベジタリアン群の虚血性心疾患の発生は、肉食群と比較してそれぞれ13%(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77~0.99)および22%(HR:0.78、95%CI:0.70~0.87)低下した(異質性のp<0.001)。この差は、虚血性心疾患の発生が肉食群よりもベジタリアン群において、10年以上で1,000人当たり10症例(95%CI:6.7~13.1)少ないことに相当した。虚血性心疾患との関連性は、自己報告による高コレステロール、高血圧、糖尿病、BMIで調整すると、部分的に減弱した(ベジタリアン群のHR:0.90、95%CI:0.81~1.00)。 一方、ベジタリアン群では、全脳卒中の発生が肉食群より20%増加した(HR:1.20、95%CI:1.02~1.40)。これは、10年以上で1,000人当たり3症例多いことに相当し、大部分は脳出血の増加によるもので、脳卒中との関連性は疾患リスク因子を調整しても減弱しなかった。 なお、著者は研究の限界として、スタチンなどの薬物療法に関する情報が利用できなかったこと、食事や食事以外に関する交絡因子の可能性、対象者の多くが欧州の白人であり一般化できるかは限定的であることなどを挙げている。

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