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1.

AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFでOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。本研究は、欧州、北アフリカ、中東9ヵ国の脳卒中センター35施設のデータを用いた多施設共同後ろ向き観察研究で、2020年2月~2025年2月に、AFでOAC服用中に脳梗塞を発症した成人患者を対象に解析を行った。また、対象患者は、指標となる脳梗塞発症時にOACを継続的に服用している必要があり、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用中の場合は「指標となる脳卒中発症前の7日間、服用を中断することなく、最後の服用が脳卒中症状発症の48時間前以内であること」、ビタミンK拮抗薬(VKA)服用中の場合は「最後の服用から脳卒中症状発症までの経過時間にかかわらず、国際標準化比(INR)が1.5以上であること」と定義された。ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因は、OACと相互作用しうる併用薬、活動性がん、心原性塞栓以外の競合する脳梗塞病因とした。主要評価項目は90日以内の新規脳梗塞で、副次評価項目は90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコア分布、心筋梗塞、全死亡、血管死(致死的な虚血性または出血性脳卒中、突然心臓死、心筋梗塞、またはそのほかの血管イベントによる死亡)、安全性評価項目は中等度~重度出血および頭蓋内出血とした。主な結果は以下のとおり。・解析対象1,649例の年齢中央値は80.4歳(四分位範囲[IQR]:73.2~85.6、女性860例[52.2%])であった。発症時の服用薬剤はDOAC1,275例(77.3%)、VKA374例(22.7%)であった。・ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因が1つ以上認められた患者は724例(43.9%)で、潜在的原因が1つのみの患者は544例(33.0%)、複数の患者は180例(10.9%)であった。・潜在的原因の内訳は、OACと相互作用しうる併用薬が469例(28.4%)、心原性塞栓以外の競合する病因が401例(24.3%)、活動性がんが72例(4.4%)であった。併用薬ではプロトンポンプ阻害薬が450例(27.3%)と大半を占め、抗てんかん薬が31例(1.9%)、H2受容体拮抗薬が3例(0.2%)、デキサメタゾンが3例(0.2%)、ケトコナゾールが1例(0.1%)と続いた。・競合する病因では、頭蓋内/頭蓋外大血管アテローム性動脈硬化が240例(14.6%)で最も多かった。・潜在的原因の有無における結果は以下のとおり(その原因を有する患者vs.原因なしの患者)。・高血圧(87.3%vs.76.3%、p<0.001)・脂質異常症(58.1%vs.45.8%、p<0.001)・糖尿病(30.1%vs.24.3%、p=0.009)・心筋梗塞既往(29.3%vs.16.6%、p<0.001)・脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(28.7%vs.21.8%、p=0.001)・慢性心不全(21.1%vs.13.4%、p<0.001)・慢性腎不全(20.4%vs.13.0%、p<0.001)・末梢動脈疾患(7.3%vs.2.9%、p<0.001)・90日追跡時点で、新規脳梗塞は57例(3.5%)、心筋梗塞は21例(1.3%)、全死亡は334例(20.3%、うち血管死は215例[13.0%])、中等度~重度出血は55例(3.3%)、頭蓋内出血は28例(1.7%)に認められた。・OAC再開までの期間中央値は7日(IQR:3~12)であった。・主要評価項目である90日以内の新規脳梗塞は、潜在的原因を1つ以上有する患者で4.8%、潜在的原因なしの患者で2.4%であり、潜在的原因を有する患者でリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.04、95%信頼区間[CI]:1.18~3.53、p=0.011)。・一方、90日時点のmRSスコア分布のオッズ比は1.15(95%CI:0.97~1.37、p=0.106)で、90日以内の心筋梗塞(1.5%vs.1.1%、HR:1.70、95%CI:0.69~4.14、p=0.246)、90日以内の全死亡(22.7%vs.18.4%、HR:1.24、95%CI:0.99~1.55、p=0.057)、90日以内の血管死(13.7%vs.12.5%、HR:1.06、95%CI:0.80~1.40、p=0.697)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・安全性評価項目についても、中等度~重度出血(4.0%vs.2.8%、HR:1.38、95%CI:0.80~2.38、p=0.245)および頭蓋内出血(2.1%vs.1.4%、HR:1.48、95%CI:0.69~3.18、p=0.310)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・逆確率重み付け解析では、相互作用しうる併用薬あり818例となし831例が比較され、90日以内の新規脳梗塞は併用薬あり群4.3%、なし群4.0%で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.67~1.73、p=0.761)。一方、90日以内の心筋梗塞は併用薬あり群で2.3%、なし群で0.7%であり、併用薬あり群で有意に高かった(HR:3.26、95%CI:1.30~8.17、p=0.012)。本研究結果について著者らは、AFに対するOAC継続中に発症するブレークスルー脳梗塞では、薬物相互作用、心原性塞栓以外の脳梗塞病因、活動性がんといった同定可能で一部修正可能な潜在的原因が相当数で認められ、これらを体系的に同定し、積極的に管理することがブレークスルー脳梗塞の予防や2次予防の最適化につながる可能性があるとまとめている。

2.

認知症高齢者、診断の何年前から自動車事故リスクが高い?

 アルツハイマー病およびアルツハイマー関連認知症(ADRD)の患者は、認知機能の低下により自動車事故のリスクが高まる。この認知機能低下は、診断の数年前から始まっていることも少なくない。自動車事故は、ADRDに関連する認知機能障害の指標となり、早期診断を促進する可能性がある。米国・ブラウン大学のNina R. Joyce氏らは、ADRD患者の自動車事故発生について、診断前までさかのぼり、調査を行った。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2026年8月6日号の報告。 2010~17年にADRDと診断されたニュージャージー州のメディケア受給者(69歳以上)を対象(ADRD群)に、マッチング・コホート研究を実施した。対照群を2つ設定した。1つはネガティブコントロール群として、ADRDを有さず、かつ急性心筋梗塞、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病のいずれかを有する患者を選定した。もう1つは、非ADRD群として、復元抽出法を用いて、性別、年齢、診断または請求が行われた暦四半期を基準にマッチさせ、選定した。診断前6ヵ月、1、2、3年における自動車事故発生率はカイ二乗検定を用いて比較し、事故の経時的傾向を調べるために月ごとの発生率をプロットした。 主な結果は以下のとおり。・2010~17年にADRDと診断された対象者4万3,115例を特定した。・自動車事故の発生率は、診断前のすべての期間において、非ADRD群やネガティブコントロール群よりも、ADRD群で高い値を示した。【6ヵ月】2.99%vs.2.31~2.53%【1年】5.26%vs.4.18~4.65%【2年】9.52%vs.7.88~8.67%【3年】13.64%vs.11.29~12.37%・群間差は統計学的に有意であったが、絶対差は小さかった。・ADRD群は、診断前の期間に複数回の事故を起こす傾向が認められたが、複数回の事故は全体としてまれであった(3%未満)。・事故発生率からは、指標となる診断に至るまでの数年間における認知機能低下の明確な兆候は認められなかった。 著者らは「ADRDを有する高齢者は、診断前の3年間において、対照群よりも自動車事故発生率がわずかに高かったものの、その絶対的な差は小さく、事故の再発もまれであった。自動車事故単独では、ADRDの初期段階を示す指標とするには発生頻度が低すぎるため、より感度の高い指標が必要であることが浮き彫りとなった」としている。

3.

70歳以上の1次予防、スタチンは有益か?/NEJM

 地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照無作為化試験で、アトルバスタチンは主要心血管イベントリスクを抑制したが(追跡期間中央値5.9年時点)、障害のない生存期間の延長には寄与しなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のSophia Zoungas氏らSTAREE Investigatorsが、同国の一般診療所(general medical practice)で行った「STAREE試験」の結果を報告した。高リスク成人において、スタチンが心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低減させることは十分に確立されているが、臨床ガイドラインにおいて、70歳以上の高齢者へのスタチン処方を強く推奨する記述はなく、とくに75歳以上の高齢者への処方を推奨するエビデンスは乏しい。また、認知症や障害への影響に対するエビデンスも不足していることから、研究グループは、主要心血管イベントおよび障害のない生存へのアトルバスタチンの影響を評価した。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。アトルバスタチン40mgを1日1回vs.プラセボ STAREE試験では、心血管疾患、糖尿病、認知症の既往がない、地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象とした。 研究グループは被験者を、アトルバスタチン40mgを1日1回またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要評価項目は2つで、心血管死、非致死的心筋梗塞または脳卒中、冠動脈血行再建術の複合(主要心血管イベントへの影響を評価)と、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合(障害のない生存への影響を評価)で、階層的に評価された。主要心血管イベントは有意に減少、障害のない生存期間は延長せず 2015年7月~2023年3月に9,971例が無作為化された(アトルバスタチン群4,984例、プラセボ群4,987例)。被験者の平均年齢(SD)は74.7±4.5歳で、女性は51.9%であった。 ベースラインで、被験者の大半は現在飲酒の習慣があり、喫煙歴なしと申告した。服用薬数中央値は2(四分位範囲:1~4)で、最も多かった薬剤は降圧薬(46.3%)、胃酸関連疾患の治療薬(27.1%)などであった。過去にスタチン服用歴ありと報告した被験者は5.2%。既往歴として多かったのはがん、うつ病であった。また、認知機能スコアは良好であることが示され、88.7%の被験者が日常生活動作(ADL)の自立度を評価する修正Katz Indexの6項目について、いずれも困難はないと報告した。 追跡期間中央値5.9年後において、主要心血管イベントの発生はアトルバスタチン群297例(1,000人年当たり10.9イベント)、プラセボ群412例(1,000人年当たり15.5イベント)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.82、p<0.001)。 障害のない生存への影響を評価した、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合の発生は、アトルバスタチン群637例(1,000人年当たり21.6イベント)、プラセボ群676例(1,000人年当たり23.0イベント)であった(HR:0.94、95%CI:0.84~1.05、p=0.25)。 重篤な有害事象の発現は、アトルバスタチン群で131例(2.7%)、プラセボ群で129例(2.7%)に認められた。筋骨格系、肝胆道系、および糖尿病関連の有害事象はアトルバスタチン群でより多く認められた。

4.

バービーとケンの身体プロポーション、より「現実」に近く

 長年にわたり、現実離れした完璧なスタイルの美男美女を体現してきたバービー人形だが、その身体プロポーションは現実の人間に近付いてきているようだ。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)医学部健康科学分野のSara Grafenauer氏らが6月16日付で「PLOS One」に発表した研究によると、現在のバービーとケンの身体プロポーションは、実際の人間にはるかに近くなっているという。 この研究は、バービーとケンの身体プロポーションが現実の人間とかけ離れていることを明らかにした1996年の画期的な論文から約30年を経て行われた。研究グループによれば、初期のバービー人形の身体プロポーションはあまりにも極端で、同様の身体プロポーションを持つ人は1000万人に1人未満と推定されるという。 今回の研究では、バービーの「ファッショニスタ」シリーズの身体各部を測定した。このシリーズには、スタンダード(標準的)、トール(長身)、カービー(曲線的な体型)、プチ(小柄)の4つの体型がある。また、ケンの新しいモデルである「マリブ・ケン」についても身体各部を測定した。測定項目は身長に加え、首、胸部、ウエスト、ヒップ、大腿部、ふくらはぎ、足首、上腕、前腕、手首の周囲径であり、これらの測定値を基に、ウエスト・ヒップ比、胸囲・ウエスト比、胸囲・ヒップ比、ウエスト・身長比を算出した。研究グループは、人形の測定値と、1996年の研究で比較対象とされた南オーストラリアの若年成人の身体計測値を、いずれも身体計測研究で用いられる標準身長(ファントム身長)の170.18 cmに相当する値に換算した上で比較した。 その結果、1996年の研究で調査されたバービーとケンに比べると、今回、身体計測を行ったバービーとケンには、より現実的な身体プロポーションとより幅広い体型が反映されていることが明らかになった。特に、ウエスト・ヒップ比と胸囲・ウエスト比は、従来のバービーに比べると現実的になり、今回調査した4体のバービーはいずれも比較対象集団の95%信頼区間内に収まっていた。また、各部位の周囲径では、カービー・バービーが多くの項目で比較対象集団の平均値に近かった。一方、マリブ・ケンは、足首以外の全ての周囲径で比較対象集団の平均値に近かった。 1996年の研究論文の筆頭著者で今回の論文では上席著者を務めたニューサウスウェールズ大学医学部健康科学分野のKevin Norton氏は、「この結果は、身体の表現をめぐる社会の変化を反映している。バービーとケンの体型に見られる好ましい変化は、医療従事者やこれらの人形を選ぶ保護者に、ある程度の安心感を与えるだろう。体型の多様性が広がっているということは、子どもが日常的に目にする人々がより適切に反映されているということであり、前向きな一歩だ」とニュースリリースで述べている。 論文の共著者であるニューサウスウェールズ大学医学部健康科学分野のBelinda Durey氏は、「こうした多様性は、子どもが自分や他者の身体をどのように捉えるかにも良い影響を与える可能性がある。玩具は単に子どもを楽しませるだけのものではない。身体や健康、アイデンティティーに対する認識の形成にも関わっている。玩具が現実の人々の多様性を反映するほど、その影響もより好ましいものになり得る」と述べている。 Durey氏はさらに、「バービー人形に複数の体型が導入されたことは、前向きな一歩である。サイズや形、身体プロポーションの違いを含め、さらに多様化を進めることで現実の人々をより適切に反映できる。現在のバービーとケンが依然としてデフォルメされた体型であることは間違いないが、初期世代のバービーとケンに比べれば、平均的な人間の身体プロポーションに大いに近付いている。これは正しい方向への一歩である」との見方を示している。

5.

後天性視床下部性肥満への薬物療法の体組成への影響

 視床下部の器質的病変ないしは物理的損傷により生じる後天性視床下部性肥満(aHO)の患者への薬物療法が体組成に及ぼす影響などは、どのようなものがあるだろうか。このテーマについて、中国・上海体育大学運動・健康学部のHanhan Yu氏らの研究グループは、aHO患者への薬物療法が体組成に及ぼす影響と背景療法としての生活習慣介入の効果を体系的に評価した。その結果、特定の薬物療法がaHOの体重や体組成の転帰を改善する一方で、エビデンスがまだ限定的であり、確実性が低いことがわかった。Obesity誌2026年8月26日号に掲載。7つのRCTを対象に検討した結果 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane Library、CINAHL、CNKIを用い、2015年7月24日~2025年11月8日までの研究論文を検索した。対象とした研究は、あらゆる年齢のaHO患者を対象に、体重管理を目的とした薬物療法および/または生活習慣介入を評価したランダム化比較試験(RCT)の全文論文。評価項目は、身体計測・体組成、代謝マーカー、行動・エネルギー関連指標、有害事象の4つの領域とした。バイアスリスクはCochrane Risk of Bias 2ツールを用いて評価し、エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いて評価した。介入内容や評価指標に大きな異質性が認められたため、記述的な統合のみを行った。 主な結果は以下のとおり。・7件のRCTが対象となった。・セマグルチドは持続的な体重減少を示し、持続型エキセナチドは除脂肪体重の大きな減少を伴わずに脂肪量を減少させた。・tesometは体重と除脂肪体重の双方の減少に関連していた一方で、ジアゾキシドの体重管理に対する有効性は限定的だった。・いくつかの介入は満腹感を高め空腹感を軽減させたが、代謝に関する所見は研究間で一貫していなかった。・有害事象は大部分が軽度から中等度であった。・バイアスリスク評価では、1件の研究が高リスク、1件が「懸念あり」と判定された。・GRADEアプローチに基づくと、エビデンスの確実性は、身体計測・体組成、代謝、行動・エネルギー関連の各指標については「低い」、有害事象については「中等度」だった。 以上の結果から研究グループは、「現在のエビデンスは、特定の薬物療法がaHOにおける体重や体組成の転帰を改善する可能性を示唆している一方で、そのエビデンスは依然として限定的であり、主に確実性は低い。既存の研究には、除脂肪体重の評価が不十分であることや、生活習慣への介入方法の標準化が不十分であるといった制約がある。今後は、体系的な体組成評価と構造化された生活習慣介入プロトコールを組み込んだ、大規模かつ長期的なRCTの実施が求められる」と提言している。

6.

PCI施行STEMI患者、アスピリン投与は省略できるか/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、プライマリPCI施行前に開始した低用量プラスグレル単剤療法は、アスピリン+プラスグレルの抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に対して、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合に関して非劣性を示さなかった。近畿大学の高橋 邦彰氏らPREMIUM Trial Investigatorsが、国内69病院で実施した多施設共同非盲検無作為化試験「PREMIUM試験」の結果を報告した。欧米のガイドラインでは、出血リスクが高くない急性冠症候群患者には、虚血性イベントの2次予防としてPCI後少なくとも12ヵ月のDAPTが標準治療として推奨されている。一方で、ステント技術が進展し、強力なP2Y12阻害薬が開発され、イベント予防と出血リスクのバランスを取ることがますます困難になっており、こうした流れの中で、DAPT期間の短縮や、P2Y12阻害薬単剤療法による戦略が検討されている。STEMI患者は通常、虚血性イベントおよび出血イベントがいずれもプライマリPCI後早期に発生する。しかしながら、12ヵ月のDAPT標準治療とアスピリンを用いないアップフロント治療を直接比較した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合を評価 PREMIUM試験は、18歳以上、発症から12時間以内のSTEMIで、エベロリムス溶出プラチナクロムステントを用いたプライマリPCIが予定された、12ヵ月のDAPTに適応があった患者を適格とした。 研究グループは書面にて同意を得た後、患者を低用量プラスグレル単剤療法またはDAPT群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月治療を行った。 プラスグレル単剤療法群では、PCI前にアスピリン投与なしでプラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のプラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。DAPT群では、PCI前にアスピリン(162~200mg)+プラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のアスピリン(81~100mg)+プラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。 主要評価項目は、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合で、プラスグレル単剤療法群の非劣性について評価した。事前に規定した非劣性マージンはハザード比(HR)の片側95%信頼区間(CI)上限が1.50と定義された。 重要な副次評価項目は、12ヵ月時点の大出血(BARC出血基準のタイプ3[非致死的大出血]またはタイプ5[致死的出血])であり、主要評価項目の非劣性が示された場合に優越性を評価した。Kaplan-Meier推定発生率、プラスグレル単剤11.0%vs.DAPT 8.5% 2023年4月~2024年12月に2,268例が無作為化され、解析集団には2,216例が含まれた(プラスグレル単剤療法群1,109例、DAPT群1,107例)。両群の患者背景はバランスが取れており、平均年齢は69.4±12.5歳、男性は76.6%で、糖尿病併存者は38.5%、出血リスクが高い患者は35.9%であった。無作為化前に5.6%がアスピリン、3.1%がP2Y12阻害薬の投与を受けていた。病院到着から無作為化までの時間中央値は43.3分であった。 12ヵ月時点で全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の発生は、プラスグレル単剤療法群124例(Kaplan-Meier推定11.0%)、DAPT群94例(Kaplan-Meier推定8.5%)であった(HR:1.34、95%CI:1.02~1.75、非劣性のp=0.40)。 大出血は、プラスグレル単剤療法群61例(Kaplan-Meier推定5.6%)、DAPT群92例(Kaplan-Meier推定8.4%)で認められた(HR:0.66、95%CI:0.47~0.91)。definiteもしくはprobableのステント血栓症(プラスグレル単剤療法群1.4%、DAPT群1.5%)および重篤な有害事象(それぞれ17.2%、16.5%)が報告された患者の割合は、両群で同程度であった。

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第332回 苦境の自治体病院(前編) 東京・日野市立病院、シルバーウィークで資金ショートの危機、9月の給与支払えず市が急遽支援へ

アインホールディングス社長の「私の履歴書」にがっかりこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本経済新聞の8月の「私の履歴書」には正直がっかりしました。国内最大規模の調剤薬局グループを率いるアインホールディングスの大谷 喜一社長の「履歴書」だったのですが、1ヵ月続いた連載は、高校野球の話、M&Aの話、著名経営者との関わり、スポーツ選手や芸能人との交流といった話が中心で、大谷社長とアインが考える薬局や薬剤師の今後の方向性や将来像について語る回がほとんどありませんでした。薬局は今、「処方箋を受け取って薬を渡す場所」から、地域医療を支えるサービス拠点に転換できるかの瀬戸際にあると言われています。ロボットが調剤を行い、コンピュータ(AI)が薬剤情報提供を行うようになれば、リアルな薬剤師はほぼ不要になるとの予測もあります。そんな中、「私の履歴書」にアインホールディングスの社長が登場するのは、業界や薬剤師にとっても大きな意味があると期待していたのですが……。「履歴書」は調剤報酬によって巨大化したチェーン薬局経営者の自慢話に終始、薬局・薬剤師のあるべき将来像を聞くことはできませんでした。今回の「私の履歴書」担当記者もM&Aなどの企業経営には詳しいものの、医療には疎かった印象です。ところで、厚生労働省が主導する「新たな地域医療構想」においても、薬局に関する記述はわずかです。それは、国が地域医療構想の構成要素として薬局を重要視していない表れと言えます。「私の履歴書」は経営者や有名人が個人史を語るコラムではありますが、薬局業界を世間に大きくアピールする貴重な機会であったことは確かです。その大切な機会を大谷社長はみすみす逸したわけです。なお、9月の「私の履歴書」は阪神タイガース元監督(現オーナー付顧問)の岡田 彰布氏です。子供時代は相当なお金持ちの家のぼんぼんだったようで、今のところ(9月8日付連載ではまだ早稲田大学野球部)とても面白いです。さて、今回は自治体病院の窮状を伝えるニュースを紹介します。公立・公的病院の経営の苦しさを伝える地方ニュースについては、「第306回 統合計画頓挫の室蘭市立病院が2027年度めどに閉院へ、市長は『財政再生団体』転落回避が理由と説明」などでも取り上げましたが、相変わらず公立・公的病院の苦境を伝えるニュースが絶えません。朝日新聞は、日野市立病院が資金ショートで医師らへの給与支払いができなくなりそうだと報じ、ちょっとした話題となりました。その実情はどのようなものだったのでしょうか。日野市立病院、「9月の給与払えない」ため市にSOS8月29日、朝日新聞の朝刊(東京版)は、地方版の紙面で「日野市立病院『9月の給与払えない』財政難に連休も影響、市が支援へ」と題する記事を掲載しました。同記事によれば、「東京都日野市は、市立病院の資金が不足し、医師や看護師、職員ら約700人の給与が支払えなくなる恐れがあるとして、急きょ1億円を貸すことを決めた。(中略)同病院は財政難が続いており、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も今回の1億円とは別に10億円を支援する方針」とのことです。資金ショートの理由について同記事は、「9月には19~23日の5連休があり、約2億7千万円にのぼる職員給与の支払いを本来の21日から18日に前倒しする必要があるが、同月分の診療収入が入ってくるのが連休明けの24日にずれ込むため、手持ちの資金がショートすることが分かった。市は同月1日に始まる市議会に補正予算案を出し、可決され次第、病院へ貸し付ける」と書いています。つまり、毎月入金される診療報酬を同月の給与支払いに充てるという綱渡りの資金繰りを続けてきたものの、シルバーウィークのためにそれができなくなり、開設者である市に泣きついたということのようです。同紙は同病院について、「近隣の総合病院との競合や、人件費の上昇などで財政難が続いている。市の担当者は『半ば自転車操業が続いている』と明かす」とも書いています。「資金ショート報道はあおり過ぎだが学び深い」と日経メディカルこのニュースの背景をもう少し詳しく解説した記事を日経メディカルが9月5日に配信しています。編集長によるコラム、「土曜日のゆったり雑談」です。同コラムは「日野市立病院の資金ショート報道はあおり過ぎだが学び深い」というタイトルで、朝日新聞の記事の「書きぶりはよくない」とチクリと批判しています。同コラムは、「日野市は2026年5月に『日野市立病院在り方検討委員会』を立ち上げ、市立病院の今後について協議していますが、6月15日に開かれた第2回会合(市のウェブサイト)に、市の現状認識を記した資料が提出されています。そこには、2024年度の医業損益が23億8,000万円の赤字となり急速に現金が流出したこと、2025年度も赤字で10億円を追加貸付したこと、さらに追加の貸付がなければ2026年9月に資金が不足する見込みであることが書かれています。つまり、『シルバーウィークがあるから資金ショートすることが分かった』という場当たり感はなく、今年も市による10億円以上の貸付がなければキャッシュフローを維持できないことは『ずっと分かっていた』わけです」と書いています。要するに、朝日の記者はその流れを詳報してもニュースにならないため、「急きょ1億円を貸すことを決めた」感を強調して今回の記事にしたというわけです。確かに「書きぶりはよくない」ですね。「新たな地域医療構想」によって加速化する「再編・集約化」の対象になってしまう可能性も日野市立病院は7対1の一般病床を300床持つ急性期病院ですが、日野市に隣接する八王子市東部には東海大学医学部付属八王子病院(500床、東京都八王子市)や医療法人社団KNI・北原国際病院(99床、東京都八王子市)など、急性期病院が多数あります。公表されているデータによれば、2024年度の病床稼働率は62.0%、入院1日当たり単価5万8,453円、救急応需率は2024年で55.2%といずれも低水準です。日経メディカルの同コラムは、「日野市立病院在り方検討委員会」における病院の経営改善に向けての議論の内容も紹介、「委員会では病床再編にも言及があり、病床を削減した上で『急性期病院A』とするのか、『急性期病院B』として一部を地域包括ケア病床に転換するのかといったシミュレーションが示されています。また議事録で印象的なのが、多くの委員が救急応需を増やすよう求めている点です。応需率はすでに60%台後半まで改善しているとのことで、さらなる取り組みについても議論されています」と書き、「やはり今どきの病院経営は救急応需が鍵なのだと、改めて勉強になりました」と結んでいます。本連載の「第312回 救急患者争奪戦が激化の予感(前編) 新設の『急性期病院一般入院基本料』が“なんちゃって急性期病院”に迫る『急性期現場からの退場』」では、「『急性期病院一般入院基本料』の新設と、従来からの『急性期一般入院料』の整理によって、これまで“背伸び”をしてきた“なんちゃって急性期病院”はほどなく淘汰され、急性期医療の現場から退場を余儀なくされるでしょう」と書きました。日野市立病院も現状7対1の病院ではありますが、今後の救急への取り組みや入院料の選択いかんでは、急性期医療の最前線から脱落し、「新たな地域医療構想」によって加速する「再編・集約化」の対象になる可能性は多分にあると考えられます。もっとも、「再編・集約化」をすればいい、というものでもないようです。次回は「再編・集約化」のある“失敗例”について書いてみたいと思います。(この項続く)

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収益率が高い?ゴミ屋敷は困る?在宅医療、医師1,000人アンケート結果

 今後、本邦では医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上の高齢者の増加が見込まれ、2020~40年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増加し、在宅医療需要は62%増加すると推計されている。CareNet.comでは会員医師1,027人を対象に、在宅医療への従事状況・従事意向、魅力やハードルと感じる点について聞くアンケートを実施した(2026年7月23~24日実施)。53.1%が在宅医療への従事経験あり、診療科別では? 現在、または過去の在宅医療(訪問診療または往診)への従事状況について聞いた質問では、「主たる業務として従事している(週4日以上)」が6.5%、「外来診療の合間などに、定期的に従事している」が15.9%、「かかりつけ患者の急変時など、不定期に行っている(往診のみなど)」が7.4%、「過去に従事していたが、現在は行っていない」が23.3%と、従事経験のある医師が53.1%を占めた。「これまで従事したことはない」は46.9%であった。 診療科別にみると、現在何らかの形で従事している医師が最も多かったのは総合診療科(55.5%)で、外科(50.0%)、内科(45.4%)、皮膚科(40.6%)、腫瘍科(37.5%)などが続いた。「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」と回答した医師は12.0% 今後の従事意向について聞いた質問では、「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」との回答が12.0%で、「機会があれば従事してみたい/現状維持で継続したい」が48.8%と最も多かった一方、39.2%は「従事したくない/減らしたい」と回答した。 年代別にみると、「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」との回答は10.7~13.3%と大きな差はなかったが、「従事したくない/減らしたい」との回答は30代では30.0%と最も少ない一方で、60代では46.0%と多い傾向がみられた。魅力/ハードルと感じる点について、最も多かった回答は? 在宅医療への従事状況に応じて「現在従事している」「過去に従事していたが、現在はしていない」「従事したことがない」の3群に分けて、在宅医療の魅力・メリットと感じる点について聞いた結果(上位3つまでの複数回答)、最も多かったのは、すべての群で「1人の患者を全人的に診ることができる(55.6%/51.0%/35.7%)」であった。2番目に多かった回答は、「現在従事している」医師では「生活に寄り添った診療ができる(33.0%)」であったのに対し、「過去に従事していたが、現在はしていない」「従事したことがない」医師では「収入面(28.5%/22.4%)」であった。 同様に、在宅医療に従事するに当たり「ハードル(障壁)」と感じる点について聞いた質問では、従事状況によらず「24時間365日の対応(オンコール負担)」が最も多く(54.9%/69.9%/57.7%)、「緊急時のバックアップ体制の欠如」が続いた(54.9%/48.5%/44.2%)。「自宅にいるときの笑顔がよい」などポジティブな意見がある一方、ゴミ屋敷問題なども… 在宅医療の現場で医師としてやりがいを感じたエピソード、実際に直面した困難、制度や環境の課題と感じる点について、自由記述で聞いた質問では、「自宅にいるときの笑顔がよい(50代・外科)」「1人の人の人生において、医療以外のことを尊重した医療的な提案ができる(40代・内科)」などのポジティブな意見が寄せられた一方、「他人の家へ入ることは危険。以前殺人事件も起こったが対策しようがない(60代・内科)」「ゴミ屋敷は困る(40代・泌尿器科)」といった、安全面・衛生面での懸念も寄せられた。 そのほか、多職種・複数の医療機関や施設間で連携することについて、「グループ診療で相談ができる(60代・内科)」という声がある一方で、「施設往診をしているが、施設ごとに患者データの報告レベルが違いやりにくい(60代・外科)」といった課題も寄せられた。利益面についても、「利益率が高い(60代・糖尿病・代謝・内分泌内科)」「入院医療費がカットできるのは大きい(50代・神経内科)」といったプラスの側面が挙げられた反面、「今後診療報酬が下がりそう(50代・循環器内科)」という声もあった。 その他のアンケート結果・詳細は以下のページに掲載中。「在宅医療への従事状況・従事意向/医師1,000人アンケート」

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リバウンド後も糖尿病リスク低下を維持した減量法は?

 減量は主要心血管イベント(MACE)や糖尿病(T2D)のリスク低下につながる。では、減量10年後のリスク変化をデータ化した場合、運動様式によって変化はあるのであろうか。このテーマについて、米国・アラバマ大学バーミンガム校保健医療学部栄養科学科のAbdelrahman M. Elshakankiry氏らの研究グループは、過体重の女性を対象に食事療法や運動療法などを実施し、10年後のリスク変化予測とその推移を検討した。その結果、減量はMACEおよびT2Dのリスクを低下させるが、体重のリバウンドに伴い両リスクとも再び上昇することがわかった。Obesity誌オンライン版2026年8月23日号に掲載。T2Dリスク再上昇予防に「食事療法+レジスタンス運動」が有効 研究グループは、減量前、減量終了時(Post-WL)、および1年後の各時点で、MACEおよびT2Dの10年予測リスクを算出し、その経時変化が運動様式によって異なるかを検討した。過体重かつ座位が多い女性(21~49歳)を対象に「食事+有酸素運動」、「食事+レジスタンス運動」、「食事のみ」のいずれかの群に無作為に割り付け、BMIが25未満になるまで1日800kcalの食事療法を実施した。MACEおよびT2Dの10年予測リスクは、心代謝疾患の病期分類式を用いて算出した。経時的変化および介入順守状況の影響については、一般化推定方程式を用いたフラクショナル・ロジット・モデルにより解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった221例(うちアフリカ系アメリカ人115例)において、平均BMIは28.3から23.9へ低下したが、1年後には25.8へとリバウンドした。・MACEリスクは、全群においてベースラインからPost-WLにかけて低下し、Post-WLから1年後にかけて上昇(リバウンド)した(いずれもp<0.001)。・MACEリスクの低下幅は、「食事のみ」群のほうが「食事+レジスタンス運動」群よりも大きかった(p=0.022)。・T2Dリスクは全群で低下したが(いずれもp<0.001)、「食事+有酸素運動」群と「食事のみ」群ではリバウンドが認められた。・「食事+レジスタンス運動」群では、1年後も有意なリスク低下が維持された(p=0.003)。・追跡期間中の運動順守状況は、T2Dリスクのリバウンド抑制と関連していた(p=0.024)。 これらの結果から研究グループは、「減量はMACEおよびT2Dのリスクを低下させたが、体重のリバウンドにより両リスクとも再び上昇した。T2Dへの進行を防ぐための減量介入として、レジスタンス運動が有益な可能性がある」と示唆している。

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【GET!ザ・トレンド】原因不明の多臓器症状に潜む「ミトコンドリア病」と創薬の最前線

はじめに:早期診断の鍵は、ミトコンドリアの「SOS」を見抜く力にかかっている「少しの運動による著しい疲弊(運動不耐症)」「若年期からの難聴や糖尿病」「発熱や代謝負荷に伴う急激な症状悪化」など、日常外来で単なる「原因不明の慢性疲労」や不定愁訴、あるいは個別の臓器疾患として片付けられがちな症状の背景には、エネルギー代謝の根幹を担うミトコンドリアの機能異常「ミトコンドリア病」が隠れている可能性がある。こうした希少神経筋疾患や先天性代謝異常症の診療・研究の第一線で長年患者と歩んできた、自治医科大学小児科学講座の小坂 仁氏に話を伺った。同氏によれば、ミトコンドリア病は多臓器にまたがる複雑な病態で主訴も多岐にわたるため、一般外来で診断に至らず長年苦しむ患者が少なくないという。そして彼らを早期診断・適切な医療へとつなぐ鍵は、「多臓器症状を細胞のエネルギー不足という共通軸で捉え直す視点」にあると指摘する。なお、毎年9月の第3週は「世界ミトコンドリア病啓発週間(World Mitochondrial Disease Week)」として、International Mito Patients(IMP)を中心に、世界規模で疾患の認知向上と研究推進に向けたキャンペーンが展開されている。この機会に、日常診療の背後に潜むミトコンドリアからの「SOS」にあらためて目を向けてみたい。1. 疲れやすさの影に潜む多臓器症状:「個別の不調」を線でつなぐ視点「細胞のエネルギー不足」という診断の共通軸ミトコンドリア病診療において、小坂氏がまず強調するのは、単なる「疲れ」として見過ごされがちな症状の質だ。「ミトコンドリア病はウルトラレア(超希少)と思われがちですが、決して診る機会のない疾患ではありません。ただ、病態が複雑なため『どう疑うか』が難しいと感じる先生も多いようです。もちろん、単に『疲れやすい』という主訴だけで本症を疑うのは現実的ではありません。重要なのは、疲労感の質と多臓器症状の合併です」と同氏は語る。軽微な労作で著しく体力を消耗する運動不耐症や進行性の筋力低下に加え、エネルギー需要の高い心筋、耳(内耳)、内分泌系(膵臓)などの障害、具体的には若年発症の難聴、糖尿病、心筋症、片頭痛などが複数併存している場合、それらを個別の疾患として捉えるのではなく、細胞のエネルギー不足という共通軸で評価することが診断の第一歩になるという。「増悪のタイミング」を問診するさらに小坂氏が注意を促すのが、過度の代謝負荷がかかった局面に現れる「急激な症状の顕在化」だ。「普段は静かに順応して生活していても、体に急激なエネルギー需要が発生すると、一気に症状が表出する特徴があります」と同氏は指摘する。小児期のリー(Leigh)症候群などでは、発熱や感染症、激しい運動などを契機に、突然の痙攣や意識障害、呼吸不全などが引き起こされる。また成人期のミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)などにおいても、過食や過度な運動、精神的ストレスが誘因となり、脳卒中様発作や激しい頭痛として顕在化するケースがあるという。「日常外来において『症状が急激に悪化したとき』の問診を丁寧に拾い上げること、そして小児例であれば脳MRIで脳血管支配に一致しない脳卒中様病変や、両側基底核や脳幹に左右対称性の病変がないかを確認することが、きわめて強力な診断の手掛かりになる」と同氏は語る。「母系遺伝」という固定観念からの脱却診断の過程で留意したいもう1つのポイントが、遺伝形式に対する理解だという。「『ミトコンドリア病=母系遺伝』という印象が強いかもしれませんが、実際には常染色体遺伝やX連鎖遺伝など多様な遺伝形式が存在します。とくに小児発症例では核DNA上の病的バリアントによるものも多く、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)では両親が無症状であることも少なくありません」と同氏は説明する。一方で、成人期に多いMELASなどのミトコンドリアDNA変異では母系遺伝を認める。そのため、「母系親族における若年性の難聴、糖尿病、片頭痛、筋力低下、腎障害などの集積がないか」を問診することは、病型を見抜くうえできわめて有効な鍵になると同氏は強調する。こうした問診や観察のポイントを踏まえ、一般外来でミトコンドリア病を疑うための臨床チェックリストを下表にまとめた。表 一般外来で疑うための臨床チェックリスト疲れの質:少しの労作で極端に疲弊する「運動不耐症」はあるか?多臓器症状:若年難聴、糖尿病、心筋症、片頭痛、腎障害などが「複数」重なっていないか?増悪の契機:発熱・感染・過食・激しい運動・精神的ストレスなどで「急激に増悪」したエピソードはあるか?遺伝形式の解釈:「母系遺伝=すべてのミトコンドリア病」ではない。家族歴がなくても、小児発症例では核DNA上の病的バリアントによるものも多いことを念頭に置く。2. 対症療法から根本病態への介入へ:最新創薬が拓く未来と意外な広がり着実に進む臨床応用への歩み長らく対症療法に限られてきたミトコンドリア病だが、近年は国内外で新薬開発の動きが大きく加速している。小坂氏はその最前線について次のように語る。「現在、世界中で低分子化合物や遺伝子治療など多様なアプローチによる創薬が進んでいます。国内においても、東北大学で見いだされ、第II相臨床試験中であるMitochonic acid-5(MA-5)は、ミトコンドリア病の幅広い遺伝的背景の患者由来細胞でATP産生を促進することが示されている化合物であり、臨床現場からの期待も非常に大きい『希望の星』です。また、パーキンソン病治療薬アポモルフィンの化学構造を出発点に、ドパミン作用を抑え、ミトコンドリア機能改善作用に着目した誘導体を開発しています。現在、安全性の向上を目指しながら前臨床研究を進めています」。さらに、MELASの脳卒中様発作抑制薬としてタウリンが世界に先駆けて日本で承認・実用化された実績もある。「病態の解明から臨床応用まで日本人が主導したこの成功体験は、希少疾患研究における誇るべき足跡なのです」と同氏は強調する。パーキンソン病や老化現象の未来を変えるポテンシャルなぜ、希少疾患とされるミトコンドリア病の創薬にこれほどの期待が寄せられるのか。小坂氏は、その影響範囲が希少疾患にとどまらず、臨床医が日常で遭遇する加齢性疾患や神経変性疾患にまで及ぶ点を示唆する。「ミトコンドリアの機能低下は、パーキンソン病などの神経変性疾患や老化現象とも密接に関与しています。ミトコンドリア病研究から得られた知見が、パーキンソン病などの神経変性疾患や加齢に伴う病態の理解、新たな治療標的の発見につながる可能性があります。希少疾患研究は、私たちが日常的に診ている疾患の治療をも大きく変えるポテンシャルを秘めているのです」と同氏は語る。3. 「患者の熱意が、医師と研究者を突き動かす」:二人三脚の歩み「共に治療法を創るパートナー」へインタビューの終盤、小坂氏が最も熱を込めて語ったのは、長年共に歩んできた患者やその家族との深い絆であった。ミトコンドリア病における患者用ハンドブックの作成や診療マニュアルの編集は、単なる医師主導のプロジェクトではない。かつて患者・家族と医師たちが合宿形式で膝を突き合わせ、情熱を注ぎ込みながら形作られてきた歴史がある。「患者さんや、『わが子を救いたい』というご家族の切実な声に接したとき、私たち医師や研究者のエンジンが一気に掛かるのです」と同氏は振り返る。実際、国内で進む創薬プロジェクトの多くも、患者・家族とアカデミアの強い結びつきから生まれている。患者である「七海(ななみ)ちゃん」のご家族と一般社団法人こいのぼりが主体となり、自ら研究資金を募りアカデミアと連携して治療薬開発を推し進めた「7 SEAS PROJECT(セブン・シーズ・プロジェクト)」はその象徴的な例だ。「こうした動きは、もともと海外で先行して活発に行われてきたものでもあります。海外では患者会が自ら巨額の研究費を募り、米国食品医薬品局(FDA)や世界の研究機関を動かして開発を牽引する活動が行われています。希少疾患の医療においては、患者と医師・研究者が対等なパートナーとして手を取り合い、新たな治療法を一緒に創り出していくという側面が非常に強いと感じています」と同氏は語る。おわりに:日常外来の「1つの選択肢」が患者の未来を変える最後に小坂氏は、一般外来で日々多様な病態と向き合う医師たちに向けて、次のようなメッセージを寄せた。「多臓器にまたがる原因不明の不調を訴える患者さんを前にしたとき、頭の片隅に『ミトコンドリア病かもしれない』という選択肢が存在するかどうか。その可能性への思いが、長年原因がわからず診療科を転々としてきた患者さんを早期の専門医療へとつなぐ鍵となります」。日常診療の背後に潜むミトコンドリアのSOSに耳を傾け、希少疾患領域から発信される最新の知見に目を向ける。そのアプローチは、ミトコンドリア病の克服にとどまらず、多様な疾患の治療法を切り拓く未来の医療への第一歩となる。(ケアネット 三浦 愛子)

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英論文を作成する【タイパ時代のAI英語革命】第20回

日本語原稿を、ChatGPTを通じて英語化論文執筆の第一歩は、草稿を作成することです。日本人の医療従事者にとって、まず日本語で草稿を書くことは自然なアプローチでしょう。母語を用いることで、研究の背景や医学的な考察を整理しやすくなります。しかし、これを国際的な英語論文として成立させるには、単なる翻訳を超えた「医学英語として洗練された表現」が求められます。これまでであれば、専門の翻訳家やネイティブ校正者の助けを借り、何十時間もかけてようやく完成するものでした。しかし、近年の生成AIの登場により、このプロセスが劇的に変化しています。とくにChatGPTのような大規模言語モデルを活用することで、「早く」「的確に」「低コストで」英語論文を仕上げることが可能になってきました。本節では、なぜこれまで日本語→英語の翻訳が難しかったのかを確認したうえで、ChatGPTを用いた効率的な翻訳の方法についてご紹介します。なぜ日本語→英語の翻訳は難しいのか?医学論文における翻訳の壁は、単に語彙や文法の違いにとどまりません。とくに日本語と英語には、以下のような本質的な言語構造の違いがあります。・主語の省略日本語では、文脈から主語が明らかであれば省略することが一般的です。一方、英語の通常の文では、原則として主語を明示する必要があります。たとえば、「検査を行った」だけでは英語に訳せません。「We conducted the examination」など、主語を明示する必要があります。日本語原稿から英語にする際には、この「省略された主語」を補完する作業が不可欠です。・時制の使い分け日本語では時制の使い分けが比較的曖昧で、「~している」「~した」などが文脈により柔軟に使われます。しかし英語の論文では、Introductionでは現在形、MethodsやResultsでは過去形など、セクションごとに明確な時制のルールがあります。これを知らずに翻訳すると、不自然な英文になるリスクがあります。・医学論文特有の表現英語論文には、「be associated with…」といった頻出かつ定型的な表現があります。英語論文での「お作法」を知らなければ文のクオリティが担保されなかったり、正確に伝えられなかったりするリスクをはらみます。ChatGPTを使ったプロンプト設計図英語論文作成にはこうした困難があったわけですが、ChatGPTを活用することで日本語原稿を効率的に英語に翻訳することが可能になりました。ただし、その効果を最大限に引き出すには、「プロンプトの設計」が重要です。これまでの回でも何度も登場したプロンプトは、ChatGPTに与える指示文のことです。前回は「RTFフレームワーク(Role, Task, Format)」を紹介しましたが、今回はさらに精密な指示を可能にする「CRAFTフレームワーク」をご紹介します。私はこのプロンプト法を米国の小児学会のAIセッションで専門家から学びました。とても有用だと感じているので、ここで皆さんとシェアしたいと思います。「RTF」と基本的な構造は同じですが、「CRAFT」では新たに Context(文脈)と Target Audience(想定読者) の2つの要素が加わっています。なお、「RTF」の「T(Task)」に当たる部分は、「CRAFT」では「A(Action)」として位置付けられています。これらの追加要素により、ChatGPTに対してより詳細で文脈に即した指示を出すことが可能となり、論文執筆における微妙なニュアンスや目的に応じた英語表現を引き出すことができます。それでは例を見ながら実践していきましょう。以下に、ChatGPTを使って生成された架空の英語アブストラクトをご紹介します(あくまで翻訳練習用に作成されたサンプルであり、医学的な根拠は一切ありませんのでご注意ください)。背景糖尿病患者の血糖コントロールは合併症予防に不可欠であり、運動療法は有効な介入手段とされている。しかし、週3回程度の有酸素運動がHbA1cに与える影響を検討した研究は限られている。目的本研究では、2型糖尿病患者において週3回の有酸素運動がHbA1c値に与える影響を明らかにすることを目的とした。対象は2型糖尿病患者60例(平均年齢58.2±9.1歳、男性32例、女性28例)であり、介入群30例は12週間にわたり週3回、1回60分の中等度強度有酸素運動(ウォーキングまたはエアロバイク)を実施した。対照群30例には通常の生活習慣を維持させた。主要評価項目は介入前後のHbA1c値の変化とした。結果介入群ではHbA1c値が平均で0.6%低下し(7.8%→7.2%)、これは統計学的に有意であった(p<0.01)。対照群では有意な変化は認められなかった。群間比較でも介入群の改善効果が明確に示された(p<0.05)。結論週3回の有酸素運動は2型糖尿病患者において血糖コントロールを改善する効果を有することが示唆された。本研究結果は、日常診療における運動療法の推奨を裏付ける重要なエビデンスとなる。それでは早速「CRAFT」を用いて、この架空のアブストラクトを英語の論文調に変えていきましょう。プロンプト例C - Context(文脈)これから与えられる日本語の医学アブストラクトを、科学的正確性を維持しつつ、原文の内容のみに基づいて、流暢で簡潔かつ学術的に適切な英語に翻訳せよ。アブストラクトを提示する。R - Role(役割)あなたは、医学論文の英訳に豊富な経験をもち、一流学術誌への投稿支援を行ってきた専門的な翻訳者であり、同時に優秀なジャーナルエディターとして振る舞うこと。A - Action(行動)以下の日本語アブストラクトを英語に翻訳し、国際的な医学論文にふさわしいスタイルへと整えること。なお、以下の点に留意すること:原文の意味を忠実に保持すること。国際医学誌の執筆規範(統計表記・学術英語)に従うこと。医学専門用語を正確に使用すること。外部知識や推測は一切加えないこと。F - Format(形式)出力は 標準的な構造化アブストラクト形式(Background, Objective, Methods, Results, Conclusions)とする。フォーマルで簡潔な学術英語を使用すること。 数値や統計は国際的に標準的な記載(例:mean±SD、p<0.05)に整える。T - Target Audience(読者)対象読者は、国際的な医学学術誌の査読者である。彼らは、簡潔で正確かつ科学的インパクトのある英語アブストラクトを求めている。プロンプトの文量はやや多めですが、細かく条件を指定することで、精度の高い出力が得られます。このプロンプトをChatGPTに入力すると、「準備ができたら、アブストラクト本文を貼り付けてください」というメッセージが表示されました。そこで先ほどの日本語のアブストラクトを貼り付けると完成です。興味のある方はこのままコピーして試してみてください。いかがでしたか? 非常に自然で、ネイティブスピーカーが執筆したような論文調の英訳が一瞬で完成したのが確認できるかと思います。専門的な用語や表現も適切に使われており、学術誌にもそのまま通用するようなクオリティです。正直なところ、近年のChatGPTはさらに性能が向上しており、「CRAFT」を使用せずとも「英訳してください」の指示だけで、日本語の文脈から想定読者をある程度読み取り、それなりに質の高い翻訳を提示してくれるようになっています。とはいえ、語彙の選び方や表現の微妙なニュアンスには出力のばらつきが多く、アウトプットに差が出てしまうことも多くあります。より精度の高い英語表現を得るためには、「CRAFT」を活用することを強くおすすめします。このフレームワークはMyGPTに保存しておくことで、次回以降は日本語文を貼り付けるだけで自動的に高品質な翻訳を得られるようになり、さらに効率的に活用できるようになります(MyGPTの作成法は本コラムの第4回を参照)。

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第335回 リポタンパク質(a)抑制薬が注目のPh3試験で心血管転帰抑制ならず

Novartisの新しい機序の心血管薬pelacarsenが注目の第III相試験で主要評価項目を達成せず1)、心血管疾患を専門とする医師に衝撃を与えているようです2)。pelacarsenは1963年にノルウェーの医師Kare Berg氏が初めて記した3)血漿成分のリポタンパク質(a)[Lp(a)]の生成を阻害します。Lp(a)はLDLに似ており、LDL様のアポリポタンパク質B-100[apoB-100]と糖タンパク質のアポリポタンパク質(a)[apo(a)]が共有結合して作られます4)。Lp(a)のapoB-100の動脈硬化誘発作用、apo(a)のプラスミノーゲン様プロテアーゼ領域を介する血栓形成促進作用、Lp(a)が運ぶ酸化リン脂質の炎症促進作用がどうやら心血管疾患を生じやすくするようです。実際、血漿のLp(a)が多いことと心血管疾患や大動脈弁狭窄症を生じやすくなることの関連を支持する結果が、疫学や遺伝情報解析などの20年に及ぶ研究で得られています。恐らく逆もまた真なりで、遺伝配列のおかげで血漿のLp(a)が少ないことと心血管疾患を生じ難いことの関連が示されてもいます5)。そのような経緯を背景にして、血漿のほぼすべて(約99%)のLp(a)を構成する肝臓起源のapo(a)の生成を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の開発が始まります。pelacarsenはapo(a)の遺伝子LPAのmRNAを妨げる第2世代のASOと、肝細胞表面のアシアロ糖タンパク質(ASGP)受容体に結合する成分のGalNAc3をつなげて作られ、肝細胞に限って取り込まれるようにできています。Lp(a)濃度が高い患者が参加した第IIa相試験で、pelacarsenは22日時点までの6回の皮下注射から2週間後(36日時点)のLp(a)濃度を用量依存的に多ければ92%下げました6)。pelacarsenの半減期は長くおよそ1ヵ月とわかり、次の第II相試験では主に1ヵ月に1回(4週間ごと)の投与が検討されました。やはり用量依存的な効果があり、高用量の60mgが4週間ごとに投与された群のLp(a)濃度は72%低下しました7)。それらの結果を踏まえて2019年に始まった8)Lp(a)HORIZONと銘打つ第III相試験は、Lp(a)濃度が高い心血管疾患(心臓発作、脳卒中、末梢動脈疾患)患者1万例弱(8,323例)が参加し、1対1の割合で4週間ごとのpelacarsenかプラセボの皮下注射に割り振られました。pelacarsenの用量は第II相での最高用量より多い80mgでした。具体的な数値は今回の発表に記されていませんが、pelacarsenでLp(a)レベルはやはり下がったものの、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、急な冠血行再建での入院をプラセボに比べてより減らすという肝心の目標を達成できませんでした。詳しい結果は学会での発表を待たねばなりませんが、心血管リスクの低減がみられなかったのはLp(a)低下がもしかしたら不十分だったのかもしれません9)。Lp(a)HORIZON試験でのLp(a)低下は、先立つ試験における72%低下と同程度だったとIonisは言っているとアナリストが報告しています。NovartisはIonisからpelacarsenの権利を手に入れています。pelacarsenと同様にapo(a)のmRNAを狙うAmgenやLillyのRNA干渉薬のolpasiranやlepodisiranのこれまでの成績はより目を引くもので、Lp(a)濃度を実に90%超下げています。olpasiranとlepodisiranはどちらも第III相試験が進行中で、ClinicalTrials.govによると前者の結果は2028年3月10)、後者はその1年後の2029年3月11)に判明する見込みです。中国のSino Biopharmaceutical Limitedが手掛けるapo(a)標的RNA干渉薬Kylo-11も有望そうです12)。Cleveland Clinicの心臓医のAshish Sarraju氏が指揮した第I相試験で、単回のKylo-11が投与された被験者のおよそ1年時点(48週時点)のLp(a)濃度がベースライン時に比べて97%低下していました。第I相試験の結果はつい先月末にLancet誌オンライン版に発表され、今月9月5日の刊に掲載されました13)。Sinoの子会社とCleveland Clinicの協力の下でKylo-11の第II相試験が進行中です14)。参考1)Novartis announces Lp(a)HORIZON Phase III topline results for pelacarsen in patients with elevated Lp(a) and established cardiovascular disease (CVD) / GlobeNewswire2)Another Heart Drug Fails, Shocking Cardiologists / The New York Times3)Berc K. Acta Pathol Microbiol Scand. 1963;59:369-382.4)Schmidt K, et al. J Lipid Res. 2016;57:1339-1359.5)Emdin CA, et al. J Am Coll Cardiol. 2016;68:2761-2772.6)Viney NJV, et al. Lancet. 2016;388:2239-2253.7)Tsimikas S, et al. N Engl J Med. 2020;382:244-255.8)Lp(a)HORIZON試験(ClinicalTrials.gov)9)Novartis Lp(a) drug fails to lower cardiovascular risk in closely watched ph. 3 trial / FierceBiotech10)OCEAN(a)試験(ClinicalTrials.gov)11)ACCLAIM-Lp(a)試験(ClinicalTrials.gov)12)ESC Oral Presentation and Publication in The Lancet! First Disclosure of Kylo-11 Phase I Clinical Study Data with Up to 48 Weeks of Follow-Up / Sino Biopharmaceutical Limited13)Sarraju A, et al. Lancet. 2026;408:899-909.14)First in Human Long-Acting Gene Silencing Therapy Significantly Lowers Heart Disease Risk Marker with One Injection / Cleveland Clinic

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亜鉛欠乏はCKM症候群の進行リスクを高めるか

心血管・腎・代謝(CKM)症候群は、代謝異常、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患が連続的に進展する疾患概念として注目されている。微量元素の1つである亜鉛が欠乏することで心血管・腎アウトカムの悪化をもたらすことが報告されているものの、CKM症候群の進行との関連は十分に明らかでない。今回、台湾・Chi Mei HospitalのKuan-Chieh Tu氏らは、CKMステージ1または2の成人において、亜鉛欠乏はCKMステージ3~4への進行リスク上昇と有意に関連していたことを明らかにした。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2026年7月23日号に掲載された。本研究は、世界の医療機関172施設の匿名化電子健康記録を集積したTriNetX Global Collaborative Networkを用いた後ろ向きコホート研究である。2010年1月1日~2026年3月31日に、CKMステージ1または2に該当し、前年に血清亜鉛測定を受けた18歳以上を対象とした。血清亜鉛濃度70μg/dL未満を亜鉛欠乏群、70~120μg/dLを対照群とし、1:1の傾向スコアマッチング後に解析を行った。主要評価項目は、CKMステージ1~2からステージ3~4への進行に相当する心血管疾患または進行CKDの新規発症とした。副次評価項目は、主要心血管イベント(MACE)、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、心房細動、虚血性脳卒中、心不全、進行CKD、全死亡などであった。追跡期間は最大365日で、中央値はいずれの群も365日であった。主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたCKMステージ1~2かつ血清亜鉛測定済みの患者は22万4,495例で、このうち亜鉛欠乏群9万168例、対照群13万4,327例であった。傾向スコアマッチング後は各群7万4,245例となり、平均年齢は亜鉛欠乏群49.5歳、対照群48.9歳、女性の割合はそれぞれ69.5%、71.2%であった。・主要評価項目であるCKMステージ3~4への進行は、亜鉛欠乏群4,864例(6.6%)、対照群3,752例(5.1%)に発生し、亜鉛欠乏はCKM進行リスク上昇と関連していた(ハザード比[HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.30~1.41、p<0.001)。・副次評価項目はそれぞれ以下の結果となった。 ●MACEのHRは1.35(95%CI:1.30~1.41、p=0.001、亜鉛欠乏群5,434例[7.3%]、対照群4,204例[5.7%])で、亜鉛欠乏群でリスクが高かった。 ●冠動脈疾患のHRは1.33(95%CI:1.26~1.41、p<0.001、2,731例[3.7%]vs.2,131例[2.9%])。 ●末梢動脈疾患では1.17(95%CI:1.06~1.31、p=0.003、729例[1.0%]vs.646例[0.9%])。 ●心房細動では1.42(95%CI:1.29~1.56、p<0.001、1,024例[1.4%]vs.748例[1.0%])。 ●虚血性脳卒中では1.38(95%CI:1.22~1.55、p<0.001、638例[0.9%]vs.481例[0.6%])。 ●心不全では1.61(95%CI:1.48~1.74、p<0.001、1,501例[2.0%]vs.971例[1.3%])。 ●進行CKDでは1.31(95%CI:1.21~1.43、p<0.001、1,226例[1.7%]vs.955例[1.3%])。 ●全死亡では1.65(95%CI:1.55~1.75、p<0.001、2,906例[3.9%]vs.1,820例[2.5%])。・ランドマーク解析でも、亜鉛欠乏とCKM進行との関連は維持された。リスク上昇はインデックス日後3ヵ月以内でHR 1.57(95%CI:1.47~1.66)、3ヵ月~1年でHR 1.24(95%CI:1.18~1.31)、6ヵ月~1年でHR 1.21(95%CI:1.14~1.28)であり、1~3年の追跡に限定しても有意であった(HR:1.12、95%CI:1.07~1.16)。・3~12ヵ月後の再測定でも亜鉛欠乏を認める持続性亜鉛欠乏を曝露とした解析でも、CKM進行リスクは上昇していた(HR:1.58、95%CI:1.36~1.83、p<0.001)。また、感染症(HR:1.24、95%CI:1.21~1.26)、敗血症(HR:1.56、95%CI:1.47~1.65)、治癒不良創傷(HR:1.31、95%CI:1.23~1.40)、CRP高値(HR:1.27、95%CI:1.24~1.31)、動脈硬化性プラーク(HR:1.21、95%CI:1.09~1.34)、心拡大(HR:1.71、95%CI:1.58~1.85)、eGFR 45mL/分/1.73m2未満(HR:1.35、95%CI:1.31~1.40)のリスクも高かった。本研究結果について著者らは、「CKMステージ1~2患者において、亜鉛欠乏はCKMステージ3~4への進行、ならびに心血管、腎、死亡アウトカムの幅広い悪化と関連していた」とし、「亜鉛欠乏はCKM健康状態不良の重要なマーカーであり、CKM進行リスクが高い患者の同定に役立つ可能性がある」と結論付けた。

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ESC心不全GL改訂、HFmrEF廃止・「急性心不全」は「非代償性心不全」へ/ESC2026

 欧州心臓病学会(ESC)による新たな心不全診療ガイドライン「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」がEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号でオンライン公開され1)、8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において改訂の要点が解説された2)。今回の改訂では、疾患の予防と早期治療の徹底、左室駆出率(LVEF)に基づく分類の簡素化、「急性心不全」から「非代償性心不全」へ名称変更、新たな治療分類(FMT・AMT・GDIT)の導入など、時代に即した大幅な再定義が行われている。 本ガイドラインにおける主な改訂のポイントは以下のとおり。【心不全の分類・定義の刷新】LVEFに基づく分類の簡素化(HFmrEFの廃止) 従来、LVEF 41~49%の病態は「軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されていたが、今回の改訂でこの分類が廃止された。HFmrEF患者は、LVEF低下例(HFrEF)と同様の病態生理を共有し、同様の治療から恩恵を受けることが明らかになったためである。これにより、心不全のフェノタイプは以下の2つにシンプル化された。新LVEF分類・LVEFが低下した心不全(HFrEF):LVEF 50%未満で、心不全の症状・徴候を有する病態。・LVEFが保たれた心不全(HFpEF):LVEF 50%以上で、心不全の症状・徴候に加え、構造的・機能的異常やナトリウム利尿ペプチドの上昇を認める病態。予防・早期介入のためのステージ分類導入 発症予防と早期治療の徹底を目的として、心不全リスク段階(ステージA)から、前心不全(ステージB)、症候性心不全(ステージC)、重症/進行性心不全(ステージD)に至る段階的なステージ分類が採用された。また、高血圧またはステージBの心不全患者において、心不全発症リスクを低減するため、収縮期血圧130mmHg未満を目指す厳格な血圧管理がクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。「急性心不全」から「非代償性心不全」への名称変更 従来「急性心不全(Acute HF)」と呼ばれていた病態は、心機能の徐々の低下に伴い代償機構が破綻した状態を正確に表現するため、「非代償性心不全(Decompensated HF:DHF)」へ名称が変更された。DHFの初期管理においては、尿中ナトリウムモニタリングに基づく利尿薬調整(クラスIIb)や、初期安定化後のSGLT2阻害薬の院内早期導入(クラスI)が盛り込まれている。【治療分類の刷新と薬物治療のアップデート】「GDMT」から動的な3分類(FMT・AMT・GDIT)への移行 長年使用されてきた「ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)」という用語が見直された。新規薬剤や医療デバイスの承認に合わせて動的(dynamic)に対応し、常に最新の管理を行えるよう、治療法が以下の3クラスに再定義された。治療クラスの新たな3分類・基礎的薬物治療(FMT:Foundational medical therapy):対象を限定しない心不全患者全体に対して、罹患率や死亡率の低減に関する最も強いエビデンスを持つクラスI推奨の薬物治療。 ―HFrEFのFMT:β遮断薬、ACE阻害薬/ARNI/ARB、MRA、SGLT2阻害薬の4薬剤。  ―HFpEFのFMT:MRA、SGLT2阻害薬の2薬剤。・追加的薬物治療(AMT:Additional medical therapy):特定サブ集団における転帰改善、または症状・QOL改善に特化したエビデンスを持つ薬物治療(クラスIIa/IIb推奨、または特定の症状改善目的のクラスI推奨)。・ガイドラインに基づく介入治療(GDIT:Guideline-directed interventional therapy):推奨されるすべての心臓植え込み型電子デバイス(CIED)や経カテーテル治療などのインターベンション治療。FMTの主な推奨事項・全LVEF領域におけるSGLT2阻害薬とMRAの推奨 SGLT2阻害薬およびミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、LVEFを問わずすべての有症候性心不全患者に対し、心不全入院または心血管死のリスク低減を目的としてクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。具体的な対象薬剤は以下のとおり。・SGLT2阻害薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン・MRA ―HFrEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン、エプレレノン) ―HFpEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン)、非ステロイド性MRA(フィネレノン) なお、慢性心不全の管理において、FMTは症状やバイタルサイン、血液検査を参考に少なくとも1~2週間ごとに漸増し、目標用量に達することがクラスIで推奨された。また、無症状化やLVEF改善が得られた場合であっても、原則として最高耐容用量でのFMT継続がクラスIで推奨されている。AMTの主な推奨事項・肥満を伴うLVEF 45%以上の心不全に対するGLP-1受容体作動薬 BMI 30kg/m2以上かつLVEF 45%以上の肥満を伴う有症候性心不全患者(糖尿病の有無を問わない)に対し、体重減少、運動耐容能・QOLの改善を目的としてセマグルチドまたはチルゼパチドの投与がクラスIIa(エビデンスレベルB1)で推奨された。・慢性心不全へのAMT 最適なFMTを実施しても有症候性のHFrEF(LVEF 40%以下)患者に対し、心不全入院リスク低減目的で強心配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)の追加がクラスIIaで推奨された。また同様に、FMT 治療後のHFrEF(LVEF 45%未満)患者に対してはベリシグアトの追加もクラスIIbで考慮される。GDITの主な推奨事項・経カテーテル的Edge-to-Edge修復術(TEER) 最適なFMTや適応のある心臓再同期療法(CRT)を実施しても持続する、血行動態が安定した重症二次性僧帽弁閉鎖不全症を伴う有症候性HFrEF患者に対し、心不全入院リスク低減およびQOL改善を目的としたTEERがクラスI(エビデンスレベルB1)で推奨された。【早期介入の重要性と患者参加型医療への展望】 ガイドライン作成タスクフォースの共同委員長を務めたLars Kober氏(デンマーク・コペンハーゲン大学病院)は、「高齢化や肥満などのリスク因子の増加に伴い、心不全の全体的な疾病負担は高まると予想される。今回のガイドラインで特に強調したかったのは、予防と可能な限り早期からの治療開始の重要性である」とプレスリリースで述べている。さらに新たな治療用語の導入について、「10年以上前に導入された『GDMT』という用語は治療の進歩に伴い、今日において何を指すのか曖昧になっていた。新用語(FMT・AMT・GDIT)は、今後新たな薬剤やデバイスが承認された際にも柔軟に対応し、常に時代に即した概念であり続けられるよう設計されている」と解説している。 同じく共同委員長を務めたMarianna Adamo氏(イタリア・ブレシア大学)は、LVEF分類の簡素化について「軽度低下(HFmrEF)という分類は、従来臨床試験に含まれにくかった患者に光を当てるため導入されたが、これらの患者がHFrEFと同様の病態生理を共有し、同様の治療恩恵を受けることが判明したためシンプル化した」と説明している。また、「急性」から「非代償性」への変更点については「突然悪化するのではなく、心臓が欠陥を補いきれなくなるまで徐々に機能低下していく病態を明確にするための改訂である」と付言した。 本ガイドラインには患者教育とセルフケアに関するセクションが含まれている。Adamo氏は「患者教育とライフスタイルのアドバイスは、患者自身が心不全を管理し、医療者と意思決定を共有する力を与える。患者が自身のケアのパートナーとなることを目指し、患者向けバージョンのガイドラインも公開されている3)」と結んでおり、医療者と患者が一体となった包括的な心不全管理の重要性がさらに高まると期待される。

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セマグルチド使用後に食欲が戻ったと感じても摂取量は抑制される

 肥満症に対してGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)であるセマグルチドによる治療を開始後、しばらくすると食欲が元に戻ったように感じることがあるが、少なくとも60週間は、実際の摂取エネルギー量が有意に少ない状態が維持されることが分かった。米ペンシルベニア大学のJena Tronieri氏らが行ったプラセボ対照二重盲検比較試験(RCT)の結果であり、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」8月号に掲載された。 セマグルチドによる食欲抑制、摂取エネルギー量低下、体重減少効果は、主として介入期間が20週間ほどの研究で示されてきており、より長期間介入した場合のそれらの変化については不明点が残されている。食欲については、いったん低下した後、長期投与で再び増加する可能性を示唆する報告も見られる。これらを背景にTronieri氏らは、介入期間が60週間に及ぶRCTを実施した。 BMI30以上で18~70歳の成人、またはBMI27以上で肥満関連疾患を有する成人、計120人(平均年齢45.7±12.0歳、女性78.3%、BMI37.5±5.9)を3:2の割合で無作為に割り付け、72人にはセマグルチド2.4 mg、48人にはプラセボを投与。ベースライン(0週)、20週、40週、60週の時点で食欲や、食べ物に対する反応性などを評価した。食欲については、前夜から12時間絶食した空腹時にビジュアルアナログスケールを用いて計測した。その計測後、550 kcalの標準化された朝食を摂取してもらい、その4時間後に昼食を支給。昼食は本人が満足するまで自由に摂食可とし、摂取エネルギー量を測定した。 解析の結果、空腹時の食欲は、20週時点においてはセマグルチド群の方がプラセボ群より有意に低かったが(P=0.0044)、40週および60週時点では有意差が消失していた。また、食べ物への反応性も、20週時点(P=0.0203)と40週時点(P=0.0060)においては、セマグルチド群の方が低く有意差が認められたが、60週時点では有意差が消失していた。 一方、昼食の摂取エネルギー量に関しては、介入後のいずれの時点でもセマグルチド群の方が有意に低く、20週では291.9±64.4 kcal(P=0.0004)、40週では240.2±87.8 kcal(P=0.0235)、60週では269.5±83.6 kcal(P=0.0076)の差があり、セマグルチド群が24~30%少なかった。体重の変化についても全ての時点で有意差が認められ、60週時点ではセマグルチド群がベースラインから-15.1±1.3%、プラセボ群は-3.4±1.8%の変化だった(P<0.0001)。 論文の筆頭著者であるTronieri氏は、「減量目的でセマグルチドの処方を受ける患者の中には、数カ月たつと食欲が戻ってきたことに気づき、薬の効果がなくなったのではないかと心配する。しかしわれわれの研究結果は、たとえ食欲が戻ったと感じたとしても、同薬が引き続き食べる量を抑制していることを示している。この持続的な摂取エネルギー量の抑制が、長期にわたって減量効果が維持される主な理由であると考えられる」と述べている。 なお、本研究の一部は、ノボ ノルディスク社の研究助成による支援を受けて実施された。

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PREVENT時代にCACスコアは何を加えるのか―予測能と臨床的有用性を巡って(解説:野間重孝氏)

 2026年ACC/AHA/Multisociety脂質異常症ガイドラインでは、動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)の1次予防における10年リスク評価に、Predicting Risk of Cardiovascular Disease EVENTS(PREVENT)によるASCVD予測式が採用され、境界域リスク(3%以上5%未満)または中間リスク(5%以上10%未満)でスタチン開始の判断が定まらない場合には、冠動脈石灰化(coronary artery calcium:CAC)スコアを考慮することが推奨された1)。 本研究は、多民族動脈硬化研究(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis:MESA)に登録されたASCVD既往のない45~79歳の6,098例を対象として、PREVENTにCACを加えた場合の予測能を検討したものである。10年間に366例(6.0%)が心筋梗塞または脳卒中を発症し、Harrell C統計量はPREVENT単独の0.73からCAC追加後には0.75となった。改善幅は0.02、カテゴリー別net reclassification improvement(NRI)は0.095であり、著者らは、全リスク層にCACを加えた場合の改善は限定的である一方、境界域および中間リスク群に対する選択的使用は支持されると結論している2)。 一見すると、これはCACの選択的使用を支持する素直な結果にみえる。しかし、本研究を評価するうえで重要なのは、NRI 0.095という数値そのものではなく、どのような患者群がいずれの方向に再分類されたことによって、NRIが正の値となったのかという点である。 ASCVDを発症した366例では、CAC追加による上方再分類18例に対して下方再分類は39例で、event-NRIは-0.057であった。一方、非発症者5,732例では、下方再分類1,097例に対して上方再分類は224例で、nonevent-NRIは+0.152となった2)。全体NRIが0.095という正の値を示したのは、主として非発症者の下方再分類によるものであり、これが集団全体のリスク順位を改善し、C統計量を0.02上昇させた背景にあると考えられる。 event-NRIが負となったのは主として、PREVENTリスク5%以上で、すでにスタチンを含む脂質低下療法を検討すべき群に属していた発症者が、境界域へ下方再分類されたためである。下方再分類された発症者39例のうち、この群が29例(74%)を占めた。これに対し、境界域の発症者では上方再分類14例、下方再分類10例であり、10年発症率もCACスコア0の1.9%から300以上の14.3%まで明瞭に分かれた2)。したがって、event-NRIが負であったことを、境界域におけるCACの有用性の否定と見なすべきではない。むしろこの結果は、CACの役割が全リスク層の再分類ではなく、治療判断の定まらない境界域における追加的な層別化にあることを示唆している。 ただし、わずかなCACが認められるだけで、直ちに高リスクと考えることも適切ではない。CACスコア0超100未満の発症率は3.9%であり、依然として境界域にとどまっていた。明瞭な上方再分類をもたらしたのは主としてCACスコア100以上である2)。したがって、CACスコア0は低リスク側への再分類を支持し、CACスコア100以上は積極的な脂質低下療法を支持する一方、CACスコア0超100未満では、なお他の危険因子と患者の意向を含めた判断が必要となる。 なお、PREVENTによって、年齢、血圧、脂質、糖尿病、喫煙、腎機能などに基づく基礎的リスクはすでに捉えられており、CAC追加によるC統計量の改善幅が0.02にとどまったことは必ずしも意外ではない。予測リスクと実際の発症率との整合性を示す較正勾配は、1が理想とされ、PREVENT単独で1.09、CAC追加後で0.92であった。いずれも信頼区間は1を含んでおり、少なくとも較正勾配からは、CAC追加による明瞭な改善は示されなかった2)。 今回の改善幅を評価するうえで、著者らはKhanらが2023年にJAMAへ報告した冠動脈疾患予測研究を比較対象として挙げている。同研究では、統合コホート方程式(pooled cohort equations:PCE)にCACを加えることにより、冠動脈疾患を評価項目としたC統計量が0.09上昇し、カテゴリー別NRIも0.19改善した3)。これに対して、本研究の主要評価項目は心筋梗塞と脳卒中の複合であり、両者を分けた成績は示されていない。PREVENT-ASCVDを評価するうえでは整合的な設定であるが、冠動脈の解剖学的指標であるCACの付加価値を検討する際には慎重な解釈を要する。今回の改善幅が小さかった背景には、予測モデルの違いだけでなく、アウトカムの定義の違いが関係した可能性もあり、両研究の結果を単純に比較することはできない。 本研究は予測モデルの性能を検討した観察研究であり、CACに基づく治療方針の変更がASCVDイベントを減少させることを示したものではない。検査費用、放射線被曝、偶発所見などを含めた臨床的なnet benefitも検討されていない。また、MESAはPREVENTの開発にも用いられ、CAC追加モデルも同じ集団内で評価されているため、独立した外部集団における検証が必要である2)。欧米より冠動脈疾患が少なく、脳卒中の比重が大きい日本では、冠動脈の指標であるCACのASCVD予測への付加価値は、本研究で示された以上に限定的となる可能性がある4)。 本研究が示したのは、CACの価値が失われたということではない。むしろ、その役割が「すべての人のリスク予測を改善する検査」ではなく、「治療判断の難しい患者を選択的に再層別化する検査」であることを明確にした点に、本研究の意義がある。集団全体の予測能と、個々の患者における意思決定上の有用性とは同じものではない。CACについて問うべきなのは、集団全体の予測能をどれほど高めるかだけではなく、治療判断の定まらない患者に対して、実際に判断を変えうる情報を提供できるかということであろう。

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がん既往CKM症候群でもフィネレノンの効果は一貫(FINE-HEART)/Eur Heart J

心血管・腎・代謝(CKM)症候群では、共通のリスク因子や病態機序を背景にがんを併存する患者が少なくない。しかし、がん既往を有するCKM症候群患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンの有効性・安全性が同様に得られるかは明らかではない。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMihaly Ruppert氏らは、FINE-HEART統合解析を用いて、がん既往の有無別の臨床像、転帰、フィネレノンの治療反応を検討した。その結果、がん既往は全死亡および全入院リスクの上昇と関連したが、フィネレノンの治療効果はがん既往の有無にかかわらず一貫していた。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月18日号に掲載された。本研究は、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HFの3試験を対象とした、FINE-HEART患者レベル統合解析の事後解析である。対象は、2型糖尿病と慢性腎臓病を有する患者、または左室駆出率が軽度低下もしくは保持された心不全患者の計1万8,991例とした。3試験では、標準治療にフィネレノンまたはプラセボが追加された。がん既往は病歴記録から、追跡中の新規がんは有害事象報告から同定した。主要評価項目は心血管死(死因不明を除く)で、全死亡、心不全入院、全入院、腎複合アウトカム、主要心血管イベント(MACE)、新規心房細動なども評価した。主な結果は以下のとおり。・1万8,991例のうち、ベースライン時にがん既往を有した患者は1,389例(7.3%)であった。がん種は消化管がん18.3%、男性生殖器がん17.1%、腎・尿路がん13.3%などが多く、肥満関連がんは40.5%を占めた。・がん既往あり群はなし群と比較して高齢(72.2歳vs.66.6歳)で、eGFRが低く(52.5 vs.59.5mL/分/1.73m2)、CKMステージ3~4、心房細動、現喫煙または過去喫煙の割合が高かった。・がん既往は、全死亡リスクの上昇(16.3%vs.11.1%、調整ハザード比[aHR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.13~1.52)および初回全入院リスクの上昇(57.8%vs.44.6%、aHR:1.26、95%CI:1.17~1.36)と独立して関連した。・一方、心血管死、心不全入院、MACE、腎複合アウトカム、新規心房細動では、共変量調整後にがん既往による有意差は認められなかった。・ベースライン時にがん既往のない1万7,602例のうち、追跡期間中央値2.9年に915例(5.2%)で新規がんが報告された。フィネレノン投与による新規がん発症(HR:0.95、95%CI:0.83~1.08)およびがん関連死(HR:0.81、95%CI:0.63~1.03)の有意なリスク低下・増加は認められなかった。・フィネレノンの治療効果(心血管死、全死亡、心不全入院、全入院、MACE、腎複合アウトカムなど)は、がん既往の有無にかかわらず一貫していた。・安全性について、重篤な有害事象の発現率はがん既往あり群で高かったが、薬剤による差は認められなかった。高カリウム血症はフィネレノン群で多く認められたものの(がん既往あり:14.4%vs.プラセボ6.1%、がん既往なし:12.7%vs.プラセボ6.2%)、高カリウム血症による死亡はいずれの群でも認められなかった。本研究結果について著者らは、CKM症候群患者においてがん併存は比較的多く、予後不良と独立して関連したが、フィネレノンの治療利益を減弱させなかったとまとめた。また、治療開始時点で余命12ヵ月未満と見なされない場合、がん併存を理由にCKM健康改善を目的としたリスク低減治療の実施を控えるべきではないと述べている。

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卵巣明細胞がん治療薬リソバリシブ使用時の高血糖に関する注意喚起/日本糖尿病学会

 卵巣明細胞がんの新たな治療薬としてPI3Kα阻害薬リソバリシブ(商品名:ハイツエキシン)が発売された。リソバリシブはその薬剤特性から高い有効性とともに、高血糖リスクが懸念される。日本糖尿病学会は、同薬の高血糖などで紹介を受ける糖尿病医への情報共有を目的に「PI3Kα阻害剤リソバリシブメシル酸塩水和物使用時の高血糖発現についての注意喚起」を発出した。 卵巣明細胞がんではPIK3CA遺伝子変異が高頻度に認められ、PIK3CAがコードするPI3Kαは有望な治療標的である。リソバリシブはがん化学療法後のPIK3CA変異陽性の卵巣明細胞がん(日本人52例を含む)を対象としたCYH33-G201試験において、奏効率34.5%を示している。これらの結果から、国内では2026年3月に「がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌」を効能・効果として承認された。 主な注意喚起は以下のとおり。・CYH33-G201試験におけるリソバリシブの高血糖の発現率は89.2%。尿中ケトン体陽性3例、ケトアシドーシス1例およびケトーシス1例も報告されている。・高血糖発現例のうち96.4%に血糖降下薬が開始され、インスリン治療を要した例も43.4%確認された。・高血糖発現日の中央値は4.0日と短いため、投与開始直後の血糖自己測定または持続グルコースモニタリングの使用を検討する。・リソバリシブの半減期は12.8~25.2時間と長いため、高血糖遷延に注意し、血糖モニタリングを実施する必要があると考えられる。・CYH33-G201試験における血糖降下薬はメトホルミンが中心であったが、リソバリシブは消化器系の副作用の発現率が高いため、状況に応じてSGLT2阻害薬などの使用も考慮する。・空腹時血糖250mg/dL以上の高血糖を認めた場合は、原則として糖尿病を専門とする医師に連絡してインスリン治療を含めた治療を検討する。 同学会は、急激な血糖値上昇のリスクや糖尿病ケトアシドーシスでインスリン投与を要する可能性も想定し、診療に当たっていただきたいとしている。

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ビーガン食、わずか1カ月で「細胞の老化」に変化

 たとえ短期間でもビーガン食に切り替えることで、炎症が軽減し、細胞レベルで老化が遅くなる可能性が、新たな研究で示された。わずか1カ月間だけビーガン食を取り入れた人では、肉類を多く含む食事を取った人と比べて、炎症の軽減や生物学的老化の減速に関連するDNAメチル化に変化が認められたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部神経科学分野のJerome Mertens氏らによるこの研究結果は、8月3日付で「MedComm」に掲載された。 Mertens氏は、「遺伝子がわれわれの運命を決めるわけではない。注目すべきは、単に一方の食事がもう一方より優れていたということではない。エピゲノムがわずか4週間で測定可能なほど反応したことだ。これは、われわれの体の仕組み(バイオロジー)は一般に考えられているよりもはるかに動的で、日々の選択に反応することを表している」と述べている。 今回の研究では、健康な成人48人を、標準食を1週間摂取した後に、1カ月間ビーガン食を摂取する群と肉類を多く含む食事を摂取する群のいずれかに24人ずつランダムに割り付けた。両群の食事の摂取カロリーは同程度だった。研究グループは、介入前後の血液サンプルを用いて、ヒトゲノム全体の81万2,934カ所を対象に、DNAメチル化について解析した。DNAメチル化は、遺伝子の働きを調節する仕組みの一つで、DNAの塩基(主にシトシン)にメチル基が付加されることをいう。 その結果、ビーガン食群ではがん関連の経路や細胞増殖に関係する経路(mTOR、Hippo)で、遺伝子プロモーター(遺伝子の転写開始を制御する領域)のメチル化が増加し、これらの遺伝子の働きがより強く抑制されることが示唆された。また、細胞型デコンボリューション法を用いて細胞構成比を推定したところ、ビーガン食群では好中球の割合が減少する一方、CD4陽性T細胞の割合は増加しており、炎症が抑制される方向への変化が示唆された。DNAメチル化データから推定された好中球と単球の割合は、過去の研究で血液検査により得られたそれぞれの実測値と高い相関を示した。この結果について論文の筆頭著者であるUCSD医学部神経科学分野のLukas Karbacher氏は、「この一致から、単にコンピューター画面上の変化を見ているのではなく、実際に生じている意味のある生物学的変化を捉えていることが分かった」と述べている。 ビーガン食群ではさらに、脂質代謝やインスリン経路に関連する遺伝子プロモーターのメチル化にも変化が見られ、脂質代謝関連遺伝子の働きが抑制される一方、インスリン経路関連遺伝子の働きが高まることを示唆する結果が得られた。生物学的年齢の指標であるエピジェネティッククロックのPhenoAgeとGrimAgeによる評価では生物学的老化の減速が示された。ただし、Skin & Blood clockでは、逆に老化の加速が示された。Mertens氏は、「これらの結果は、生物学的老化を測る全ての指標が同じ生物学的側面を捉えているわけではないという考えを裏付けるものだ。疾患リスクや全般的な健康状態と関連する時計はいずれも一貫して同じ方向を示しており、食事の変化が単なる時間の経過ではなく、健康に関連する経路に影響を及ぼしていた可能性を示唆している」と述べている。 ただし、今回の研究は比較的小規模で、DNAメチル化の変化もわずかだった。このことから研究グループは、ビーガン食に本当に疾患リスクを低下させる効果があるのかを明らかにするには、より大規模で長期間の研究が必要になるとしている。

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キシリトールが心血管イベント増加と関連/ESC2026

 人工甘味料のキシリトールは食品や口腔ケア製品などに広く使用されているが、一般集団における長期的な心血管安全性に関するエビデンスは限定的である。今回、カナダ・マギル大学のThomas M. Zheng氏らの研究グループが、北米と欧州の2つの大規模前向き観察コホートのデータを用いて解析した。その結果、血中キシリトール濃度が高い一般集団において、主要心血管イベント(MACE)リスクが有意に上昇することが示された。本研究結果は、ドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において8月29日に発表された。 研究グループは、カナダの「Canadian Longitudinal Study on Aging(CLSA)」から7,651例(追跡期間6年)、および欧州の「European Prospective Investigation into Cancer(EPIC)-Norfolk研究」から1万59例(追跡期間30年)の計1万7,710例の非標的メタボロミクス(untargeted metabolomics)データを解析した。血中キシリトール濃度により四分位群(Q1~Q4)に分類し、初回MACE(心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合)発症リスクとの関連を評価した。解析にはCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙状況などの従来の心血管リスク因子を補正した調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者1万7,710例(平均年齢60.9歳)において、追跡期間中にCLSAコホートで2,950例、EPIC-Norfolkコホートで5,670例のMACEが発生した。・従来の心血管リスク因子を調整後、血中キシリトール濃度最高四分位群(Q4)は最低四分位群(Q1)と比較して、MACEリスクが有意に高かった。-CLSAコホートにおけるaHR:1.47(95%CI:1.15~1.86、p=0.002)。-EPIC-NorfolkコホートにおけるaHR:1.18(95%CI:1.09~1.27、p<0.0001)。・中間四分位群(Q2・Q3)を含めた解析においても、両コホートで血中キシリトール濃度が高くなるほどMACE発生率が高まる用量依存的な関連が示唆された。・サブグループ解析においても、ベースライン時の患者背景や既存の心血管メタボリック因子にかかわらず、一貫したMACEリスクの増加が認められた。 著者らは、過去の研究で示されたキシリトールの血小板凝集・血栓形成促進作用に触れ1)、明白な心血管リスク因子を持たない1次予防対象者においてもキシリトールが残留リスクを及ぼす可能性があると指摘している。発表者であるMarco Witkowski氏は、「人工甘味料は砂糖より健康に良いと考え消費されており、規制当局からも一般に安全と見なされている。しかし、一般集団における今回の長期的な知見は、われわれがキシリトールの心血管系の安全性についていかに知見が不足しているかを浮き彫りにしている」と、ESCのリリースの中で述べている。そのうえで、製品中のキシリトール含有量が増加し続ける現状を踏まえ、さらなる検証が必要であると結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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