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<先週の動き> 1.救急搬送677万人のうち高齢者が6割超、救急需要は構造的増加/消防庁 2.2026改定の「短冊」提示、かかりつけ医評価は小幅修正 要件は拡大/厚労省 3.マイナ保険証の利用率レセプトベースで49.5%に/厚労省 4.出生数急減、少子化の加速で自治体の7割が「地域社会の維持に影響」/厚労省 5.東大教授が収賄容疑で逮捕、国際卓越研究大の認定 相次ぐ不祥事でガバナンス焦点/東大 6.77日連続勤務の果てに若手医師自殺、病院側を提訴/千葉県 1.救急搬送677万人のうち高齢者が6割超、救急需要は構造的増加/消防庁総務省消防庁は1月20日に「令和7年版救急・救助の現況」を発表した。これによると、2024年の救急車出動件数は772万件、救急搬送人員は677万人と、いずれも3年連続で過去最多を更新した。119番通報から現場到着までの平均時間は全国で9.8分と前年より0.2分短縮したが、通報から医療機関へ引き継ぐまでの時間は平均44.6分で、コロナ禍前の2019年と比べると約5分長い水準が続いている。需要増に対して受け入れ調整や搬送がボトルネックとなり、救急体制の逼迫が慢性化している実態が浮き彫りとなった。救急搬送者の63.3%は65歳以上で、とくに75歳以上が全体の約半数を占めた。内訳では75~84歳が24.9%、85歳以上が24.8%とほぼ同水準で、高齢者救急が構造的に増加している。その一方で、乳幼児の搬送は大幅に減少しており、救急需要の中心が明確に高齢者へ移行していることがわかる。傷病程度別では「軽症(外来診療)」が減少する一方、「中等症(入院)」や「重症」は増加しており、単なる軽症要請だけでなく、医療的介入を要する症例が増えている点も特徴的。事故種別では「急病」が最多で、転倒などの一般負傷や転院搬送も増加した。東京都では救急出動が約93万件に達し、救急要請の約2割が不要不急とされる。不要不急の要請の増加は、現場到着や搬送調整の遅延を招き、真に緊急性の高い患者の救命に影響しかねない。かかりつけ医や開業医にとっては、高齢患者の増悪予防、転倒・脱水・感染症流行期の早期対応、救急要請の判断基準の共有が一層重要となる。また、電話相談「#7119」や救急受診ガイドの周知、夜間・休日の受療行動の整理を通じ、救急の適正利用を地域で支える役割が求められている。救急需要が構造的に増え続ける中、外来・在宅での1次対応力が救急医療の持続性を左右する局面に入ったといえる。 参考 1) 令和7年版 救急・救助の現況(消防庁) 2) 救急搬送者数が3年連続で過去最多更新 24年は677万人 総務省消防庁(CB news) 3) 救急車の到着9.8分 出動件数は最多更新(MEDIFAX) 2.2026改定の「短冊」提示、かかりつけ医評価は小幅修正 要件は拡大/厚労省厚生労働省は、1月23日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2026年度診療報酬改定に向けた「個別改定項目」(いわゆる「短冊」)を示した。2026年度診療報酬改定の個別改定項目では、かかりつけ医・開業医に関わる外来医療の評価は「小幅修正」にとどまり、制度的な位置付けの明確化は先送りされた。2025年度に開始した「かかりつけ医機能報告制度」と診療報酬を直接ひも付ける見直しは行われず、機能強化加算の点数も据え置かれた。支払い側や財務省が求めていた機能に応じた初・再診料の差別化は反映されず、支払側からはメリハリ不足との指摘もある。その一方で、開業医の日常診療に直結する運用面での変更は多い。機能強化加算では、災害時の診療継続を想定した業務継続計画(BCP)の策定が新たな要件として追加され、外来・在宅データ提出加算の提出を促す記載が盛り込まれた。さらに、外来医師過多区域で新規開業し、保険医療機関指定期間が3年とされた医療機関は、機能強化加算を算定できない仕組みが導入され、都市部での開業戦略に影響を与える。生活習慣病管理料では、事務負担軽減策として療養計画書への患者署名が不要となる方針が示された。一方で、包括評価である管理料(I)については、少なくとも6ヵ月に1回以上の血液検査実施が要件化され、検査実施の管理がより厳格化される。糖尿病診療では、眼科・歯科との連携を評価する新たな加算が設けられ、地域連携の実績が収益に結び付く構造が強まる。また、在宅自己注射指導管理料については、糖尿病以外の薬剤でも併算定が可能となり、慢性疾患を多く抱える患者への対応の幅が広がる。特定疾患療養管理料では、胃・十二指腸潰瘍患者に禁忌とされる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を投与している場合、算定不可とする案が示され、処方内容と管理料算定の整合性が改めて問われる。病診連携では、特定機能病院からの「逆紹介」を受けた患者の初診を評価する新加算が創設され、診療所や200床未満病院が患者を受け入れるインセンティブが強化された。連携強化診療情報提供料も対象が拡大される一方、算定頻度は「月1回」から「3ヵ月に1回」へと整理される。物価・賃上げ対応として初・再診料は引き上げられるが、病院への配分が相対的に厚く、診療所ではベースアップ評価料の活用による職員賃上げの実行力が経営上の鍵となる。今回の改定は大きな制度転換こそ見送られたものの、かかりつけ医には「体制整備」「データ提出」「地域連携」を前提とした診療の質と説明責任が一層求められる内容といえる。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) かかりつけ医の報酬、26年度改定は小幅 メリハリ欠く(日経新聞) 3) 生活習慣病管理料の療養計画書は患者署名を不要とする方針(日経メディカル) 4) 厚労省が個別改定項目を提示 機能強化加算とかかりつけ医機能報告制度のひも付けは行わず(同) 3.マイナ保険証の利用率レセプトベースで49.5%に/厚労省厚生労働省は、2025年11月のマイナ保険証利用率が49.5%だったと公表した。厚労省はこれまで用いてきた「オンライン資格確認件数ベース」ではなく、レセプト件数ベースで初めて算出。レセプト件数ベースは、実際に診療を受けた患者数に近い指標であり、利用実態をより正確に反映するとされている。利用率は前月から2.22ポイント、前年同月比では約30ポイント上昇しており、制度移行後も着実に浸透が進んでいることが示された。参考値として示されたオンライン資格確認件数ベースでは、25年12月時点で47.7%だった。マイナ保険証を通じて取得された情報の閲覧利用件数は、25年11月分で診療情報が約6,094万件、薬剤情報が約2,296万件、特定健診等情報が約3,062万件に上った。これらは患者の同意を前提に医療機関や薬局が活用した実績であり、外来診療や薬物療法における情報連携が一定程度機能していることを示す。その一方で、薬剤情報や健診情報の閲覧件数は前月から減少しており、必ずしも「取得した情報を十分に使い切れていない」現場の実態もうかがえる。デジタル庁によると、マイナ保険証の利用登録件数は9,000万件を超え、マイナンバーカード保有者の約9割、総人口比でも約73%に達しているなど登録は広がる一方、実際の利用はまだ途上といえる。国は今後、薬剤重複投与の防止や高額療養費の窓口負担軽減といったメリットの周知を強化する方針。医療現場では、スマートフォン対応マイナ保険証に対応した施設が約8.4万に拡大しているものの、患者側のスマホ登録は約500万件にとどまる。かかりつけ医・開業医にとっては、利用率が「5割」に近づいた今、単なる資格確認手段としてではなく、薬剤・健診情報を診療にどう活かすかが問われる段階に入った。今後の評価制度やDX加算の在り方を見据え、現場での活用度が差別化要因になりつつある。 参考 1) マイナ保険証利用率49.48%、昨年11月 レセプト件数ベースで初めて公表 厚労省(CB news) 2) マイナ保険証、利用登録9,000万件超え 年内「9割超え」目指す(Impress Watch) 4.出生数急減、少子化の加速で自治体の7割が「地域社会の維持に影響」/厚労省厚生労働省は1月23日に2025年11月分の「人口動態統計速報」を公表した。これによると、2025年1~11月の出生数は64万5,255人と前年同期比で2.5%減少した。外国人を含む数値で、日本人のみの通年出生数は、過去最少だった2024年の約68万人をさらに下回る見通し。1899年の統計開始以降初めて2024年は70万人を割り込み、少子化は加速局面に入ったといえる。未婚・晩婚化の進行や子育て費用の負担感が主因とされ、婚姻数は2025年1~11月で1.1%増加したものの、出生数の回復には結び付いていない。こうした少子化を背景に、人口減少が地域社会に及ぼす影響も深刻化している。日本経済新聞社が実施した全国首長調査では、自治体の約7割が「人口減少が地域社会の維持に影響している」と回答した。2~3年後の人口動向については、8割超の自治体が「人口減が進む」と見通し、2割は「想定以上のスピード」と答えた。とくに四国、中国、東北など地方部で危機感が強い。影響が最も大きい分野は「地域コミュニティー」で、祭りや住民活動の維持が困難とする自治体は7割超に上る。公共交通網への影響も顕著で、全国の7割以上が「すでに影響が出ている」と回答し、担い手不足と財政制約が限界に近付いている。人口減対策としては「子育て支援」を挙げる自治体が最多で、医療費無償化や保育・給食の無償化が効果的施策として重視されている。少子化の進行は将来の医療需要や地域医療体制にも影響が及ぶ可能性があり、医療政策と地域政策を横断した対応が求められている。 参考 1) 人口動態統計速報(令和7年11月分)(厚労省) 2) 25年1~11月出生数64万5千人(共同通信) 3) 25年出生数、通年で最少の可能性 24年の約68万人を下回る見通し(産経新聞) 4) 自治体の7割、急速な人口減で地域社会の維持「困難」 全国首長調査(日経新聞) 5.東大教授が収賄容疑で逮捕、国際卓越研究大の認定 相次ぐ不祥事でガバナンス焦点/東大警視庁は2026年1月24日、東京大学大学院医学系研究科の教授(皮膚科学、62歳)を収賄容疑で逮捕した。報道によれば、民間団体との共同研究で便宜を図った見返りとして、共同研究先の一般社団法人から高級クラブや性風俗店を含む接待(約30回、計約180万円相当)を受けた疑いがある。国立大学法人の教職員は刑法上「みなし公務員」に当たり、金銭に限らず接待などの利益供与も収賄の対象となり得る。認否は明らかにされていない。共同研究は、同大学側に設置された社会連携講座で、大麻草由来成分の1つであるカンナビジオール(CBD)の皮膚疾患への有効性などを検討する目的だったとされる。運営費は民間側が負担する枠組みで、研究内容の選定や実施方針に影響し得る立場の研究者が接待を受けた点は、臨床研究の中立性・利益相反管理への不信を招きやすい。また、同講座を巡っては2025年にトラブルが表面化し、同大学が検証や制度見直しに動いた経緯が報じられている。研究資金の受入れや対外契約を伴う「社会連携講座」は医療系でも増えている一方、ガバナンスの脆弱性が露呈すれば、研究者個人のみならず大学・医局・附属病院全体の信頼や共同研究の継続性に波及する。同大学は国の「国際卓越研究大学」認定を巡り継続審査となっており、不祥事が続く中で、研究資金・外部連携の管理体制やコンプライアンス強化の実効性が問われる局面を一段と厳しくする。 参考 1) 東大大学院教授収賄疑い 法人側 接待の場で教授に研究の要望か(NHK) 2) 東京大学でまたも汚職事件 10兆円ファンドの支援、組織改革が左右(日経新聞) 3) 東大大学院教授を収賄容疑で逮捕 風俗店などで180万円分の接待か(朝日新聞) 4) 銀座のクラブに吉原のソープ 収賄容疑の東大大学院教授が受けた接待(同) 5) 国際卓越研究大に東京科学大と京大 「本命視」の東大、なぜ継続審査(同) 6.77日連続勤務の果てに若手医師自殺、病院側を提訴/千葉県千葉県松戸市の市立病院に勤務していた男性医師が2023年に自殺したのは、病院側が労働環境の管理を怠り、過重な長時間労働を強いたことが原因だとして、遺族が病院を運営する松戸市を相手取り、約1億8,900万円の損害賠償を求めて山形地裁に提訴した。男性医師は2021年に大学を卒業後、臨床研修を経て2023年4月に同病院へ勤務を開始した。訴状などによると、勤務開始直後から業務負担は極めて重く、2023年4月の時間外労働は約150時間、5月は約198時間に達した。4月3日からは77日間連続で勤務し、休日は一切なかったとされる。入院患者の診療に加え、専門外来や救急当番にも従事し、労働時間はいわゆる「過労死ライン」とされる月100時間を大きく超える状態が続いていた。6月中旬には適応障害を発症し休職したが、7月初旬に職場復帰した後も業務量は軽減されず、同月26日に自殺した。遺族は、長時間労働と連続勤務が強い心理的負荷となり、精神障害の発症となり自殺に至ったと主張。病院側には業務量調整や健康管理を行う「安全配慮義務」があったにもかかわらず、これを怠ったとしている。報道によれば、この事案については労災認定されたとされる。病院側は「係争中のためコメントは差し控える」としている。 参考 1) 医師「過労自殺」と病院側を提訴 両親、1億8,900万円賠償求め(共同通信) 2) 松戸市の病院勤務医が77日連続勤務後に自殺 山形市の遺族が市を提訴し1億9,000万円求める(山形放送)