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腹部脂肪は心不全リスクと関連/AHA

 心不全リスクを知りたいのなら、BMIではなく腹部脂肪に注目する必要があるようだ。新たな研究で、腰回りに蓄積された脂肪は、身長と体重から算出されるBMIよりも心不全リスクとの関連が強いことが明らかになった。国立陽明交通大学(台湾)のSzu-Han Chen氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)の疫学・生活習慣科学セッション(EPI/Lifestyle Scientific Sessions 2026、3月17~20日、米ボストン)で発表された。Chen氏は、「この結果は、体重は正常範囲でも心不全を発症する人がいる理由を理解する手がかりになる」と述べている。 この研究では、ミシシッピ州ジャクソンで行われている心臓病の継続的研究(Jackson Heart Study)の参加者である1,998人のアフリカ系米国人を対象に、2016年12月31日まで追跡し(中央値6.9年)、腹部脂肪と心不全リスクとの関連と、その関連に炎症がどの程度関与しているかを検討した。試験参加時の年齢は35~84歳(平均年齢58歳)で、女性が36%を占めており、心不全を有する者はいなかった。腹部脂肪の指標として、体重、BMI、ウエスト周囲径、ウエスト身長比を用いた。また、血液サンプルを用いて、炎症性の指標である高感度C反応性蛋白(hs-CRP)を測定した。 追跡期間中に112人が心不全を発症した。解析の結果、過剰な腹部脂肪は心不全リスクの上昇と関連していた。具体的には、ウエスト周囲径が大きい場合、心不全リスクは31%、ウエスト身長比が高い場合、同リスクは27%上昇した。一方、BMIは心不全リスクと関連していなかった。また、hs-CRP値が高い人は心不全を発症する傾向が強いことも示された。さらに、腹部脂肪と心不全リスクとの関連のうち、約4分の1~3分の1は炎症によって説明された。 Chen氏は、「ウエスト周囲径や炎症の状態をモニターすることで、医師はリスクの高い人を早期に特定でき、症状出現前に心不全の発症を減らす予防策に重点を置くことができる可能性がある」と説明している。 今回の研究成果をレビューした、米ノースウェスタン大学心血管疫学分野教授のSadiya Khan氏は、「この研究は、ウエスト周囲径などの中心性肥満の指標を日常の予防医療に取り入れることの重要性を示している。中心性肥満などの心不全の上流要因を理解することは、心不全リスクを認識し、修正する上で重要だ」と述べている。 研究グループは今後、腹部脂肪や炎症が心不全にどのように影響を及ぼすのか、炎症の抑制が予防に役立つのかどうかを調べる研究が必要との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

2.

在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

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肝線維症、40歳以上の有病率と主な要因/Lancet

 欧州の40歳以上の一般集団において、診断されていない肝線維症(肝硬度測定[LSM]8kPa以上)が4.6%に認められ、その主な要因は代謝因子とアルコール摂取であることが示唆された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのIsabel Graupera氏らLiverScreen Consortium Investigatorsが、9ヵ国(スペイン、デンマーク、イタリア、スロバキア、クロアチア、英国、フランス、オランダ、ドイツ)の35施設(3次医療機関16施設を含む)で実施した大規模前向きコホート研究「LiverScreen project」の結果を報告した。小規模な単一国の研究では、未診断の肝線維症が一般集団で広くみられることが示唆されているが、実際の有病率やリスク因子はわかっていなかった。著者は、「肝硬変や合併症への進行を予防するための個別化された介入には、早期発見がきわめて重要となる」とまとめている。Lancet誌2026年4月11日号掲載の報告。40歳以上の一般住民を対象にスクリーニング検査を実施 研究グループは、未診断の肝線維症の有病率と代謝因子およびアルコール摂取との関連性を評価する目的で、40歳以上の一般住民を募集し登録した。募集方法は、定期健康診断または経過観察の1次医療施設受診者からの無作為抽出(スペイン、クロアチア、フランス、ドイツ)、社会保障番号または郵便番号の無作為抽出後オンラインまたは電話で招待(デンマーク、スペイン、イタリア、英国、オランダ)、既存の集団スクリーニングプログラムまたは職業健康診断に参加した個人(スペイン、ドイツ、スロバキア、フランス)であった。 肝線維化は、FibroScan装置を用いたVibration-controlled Transient Elastography(VCTE)でLSMを推算し、スクリーニング検査でLSMが8kPa以上、またはアラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限値の1.5倍以上のいずれかまたは両方を満たす場合を陽性と定義した。 参加者はスクリーニング検査を受診し、陽性の場合は慢性肝疾患の診断確定のため肝臓専門医による診察を受けた。主要アウトカムは、LSMが8kPa以上の参加者の割合であった。未診断の肝線維化の有病率は4.6%、線維化を伴う慢性肝疾患の推定有病率は1.6% 2018年5月2日~2024年12月19日に6万7,074例が招待され、3万909例が参加に同意した。このうち3万541例がスクリーニング受診を完了し、除外基準を満たしていた参加者などを除く3万199例が解析対象となった。 解析対象集団の背景は、平均年齢58歳、女性が57%、白人が89%で、70%が1つ以上の代謝リスク因子を有し、59%が飲酒を報告し、6.1%は有害な飲酒を報告した。 スクリーニング検査が陽性であった参加者は3万199例中2,075例(6.9%)であり、主要アウトカムであるLSMが8kPa以上の参加者は1,376例(4.6%)であった。LSMの上昇は、肥満、2型糖尿病、および有害な飲酒と強い相関が認められた。 スクリーニング陽性の2,075例のほか、VCTE信頼性不良または実施不能例342例および見落とし40例を含む計2,457例が肝臓専門医の紹介受診となり、1,491例(61%)が追跡調査を完了した。1,491例中477例(32%)が線維化を伴う慢性肝疾患と診断され、全体の推定有病率は1.6%(477/3万199例)であった。線維化を伴う慢性肝疾患症例では脂肪性肝疾患が93%(443/477例)を占めた。

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GLP-1受容体作動薬、減量後は注射頻度減でも体重維持の可能性

 肥満症治療のためにGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を使用している患者が同薬の使用を中止すると、体重が元に戻ってしまうことが多いが、中止ではなく注射の頻度を減らした場合は減量効果が維持できる可能性があるとする米スクリップスクリニックのMitch Biermann氏らによる研究が、「Obesity」に2月24日掲載された。 GLP-1RAの注射頻度を減らすという試みは、Biermann氏が同院の患者たちの間に共通するパターンがあることに気付いたことから始まった。何人かの患者が当初は毎週注射していたが、途中から間隔を空けて注射するようにしたところ、それでも体重の減少を維持できたと話していたという。同氏は「3人目の患者が『2~3週間に1回の注射でも体重を維持できている』と教えてくれた時点で、私はほかの患者にもこの方法を勧めるようになった」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 Biermann氏は、GLP-1RAによる減量に成功した後、注射スケジュールを変更していた34人の患者の医療記録を調査した。結果は有望なものだった。多くの患者は体重を維持できており、血糖値や血圧は依然として良好であった。また、追加の体重減少は筋肉ではなく主に脂肪の減少によるものであった。注射の間隔を広げた後に体重が増加していたのはわずか4人であり、その患者らは最終的に元の週1回注射に戻していた。 注射回数を減らした状態を維持していた30人のBMIの推移を見ると、GLP-1RA治療開始前が30.0±0.7と肥満であり、注射回数を減らした時点では25.2±0.5と過体重の範囲に低下していた(日本ではBMI25以上が肥満とされるが、米国ではBMI25~30未満は過体重とされる)。そして注射頻度を減らした後もさらにBMIが低下し続け、平均36.3週間経過後には24.6±0.5と、普通体重の範囲に収まっていた。なお、この30人のうち6人は注射頻度を10~14日に1回、17人は2週間に1回へと減らし、さらに残りの7人は2週間超の間隔で注射していた。 ただし本研究は小規模なものであり、対象者の大半は民間医療保険に加入している白人であることから、この結果が全ての人に当てはまるわけではないことに留意が必要である。また、本研究は医療記録を用いた後ろ向き研究であり比較対照群も設けられておらず、「ゴールドスタンダード」とされるランダム化臨床試験として行われたものではない。加えて、研究対象者が減量目標を達成した後の患者であって、さらにGLP-1RAの注射頻度を減らしたものの同薬の投与そのものを完全に中止したわけではないことを専門家らは指摘している。 米ハーバード大学医学部の肥満治療の専門医であるFatima Stanford氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、「注射頻度を減らすことに同意した人は、もともと治療順守度が高く自分の行動に自信があり、代謝の反応が良好な人であった可能性がある」と語り、対象患者の約12%は元の週1回投与に戻す必要があったことを指摘。ただし同氏は一方で、「この研究はこれまでの議論の枠組みを変えるものだ。肥満症が慢性治療だからといって、必ずしも規定通りの投与方法で永続的に注射を続ける必要はない。個々の患者に合わせて注射スケジュールを設定した方が効果的なのかもしれない」とも述べている。

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1型糖尿病合併CKDに対するフィネレノンの可能性と限界―FINE-ONE試験が示したもの(解説:石上友章氏)

 1型糖尿病合併CKDに対する腎保護は、2型糖尿病合併CKDとは景色が異なる。2型ではSGLT2阻害薬が腎・心血管保護の中核に位置付けられ、そこにフィネレノンをどう上乗せするかが論点になりやすい。一方、1型では今なおインスリンを基盤とした良好な血糖管理が治療の根幹であり、KDIGOも1型では血糖管理の基盤をインスリンと整理している。さらにDCCT/EDICは、早期からの強化血糖管理が腎症を含む合併症の発症・進展抑制につながることを示しており、1型糖尿病合併CKDではまず血糖管理の質そのものが腎保護の出発点である。近年はCGM活用の重要性も一段と高まっている。 そのうえでFINE-ONE試験は、RAS阻害薬投与下の1型糖尿病合併CKD患者において、フィネレノンが6ヵ月時点のUACRを有意に低下させた点で意義深い。もっとも、その効果は手放しでは評価できない。高カリウム血症は増加し、eGFRは治療中により低下した一方、washout後にはeGFR差が縮小し、UACR改善もやや減弱した。したがって本剤の効果の少なくとも一部は、糸球体内圧変化を含むhemodynamicな機序を介した可逆的・機能的変化である可能性がある。これはRAS阻害薬や従来のステロイド性MRAにも通じる現象であり、本試験だけで長期腎予後や構造的腎保護を断定するのは早い。ただし、1型糖尿病合併CKDで新たな上乗せ治療の選択肢を示した意義は小さくない。 SGLT2阻害薬との比較では、2型糖尿病の経験をそのまま1型に持ち込めない点にも注意が必要である。FINE-ONE試験では、少なくともスクリーニング前8週間以内のSGLT2/1阻害薬またはGLP-1受容体作動薬使用例が除外されており、1型糖尿病合併CKDでフィネレノンとSGLT2阻害薬の優劣を直接論じられる設計ではない。加えて米国では、ダパグリフロジンは1型糖尿病の血糖管理適応を有しておらず、DKAリスク増加への注意喚起がなされている。欧州でも1型糖尿病適応は撤回されている。したがって現時点での本試験の位置付けは、「1型糖尿病合併CKDでは血糖管理とRAS阻害薬が主軸であり、そのうえにフィネレノンという新たな腎保護オプションが加わった」とみるのが最も妥当だろう。なお、民族差やアジア人集団での解釈は、今回の試験規模では探索的にとどまると受け止めたい。

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認知症の病理を叩く「表街道」、脳を育む「援護射撃」――Lancetの14の危険因子を読み解く(その3)【外来で役立つ!認知症Topics】第40回

前回、私はLancet誌の提唱する認知症の修正可能な14の危険因子1)を、「疾患・障害リスク」と「生活・環境リスク」とに分ける考え方を述べた。前者は従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化などの病理から説明しやすいもので、糖尿病や高LDLコレステロール(LDL-C)が代表的だ。これはいわば、アルツハイマー病の病理進行をくい止めようという「表街道」の予防法である。一方、後者はアミロイド仮説とは異なり、脳内ネットワークや認知予備能といった考え方で説明される。健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという、側面からの「援護射撃」ともいえる。この考え方をイラストに示した。以下に示す個々の危険因子について、それが「表街道」と「援護射撃」のどちらに属するかを述べていく。画像を拡大する筆者作成若年期の教育:脳の「控え選手」を育てる援護射撃若年期の危険因子だが、これは「教育」が中心となる。ここで作る大脳の基礎力が十分でなかったとしても、後年これを育み続けることが予防につながると考えればいい。この考え方の基本は、以前から知られる「認知予備能」に関連する。ざっくり言えば、人は生まれ持った脳細胞の一部しか使わないうちに一生を終える。これまで使ってこなかった「控え選手の神経細胞(予備能)」に働きかけるのである。具体的な方法としては、新たな社会交流が勧められる。とくにインターネットリテラシーが低い人こそ、ここで情報を得る習慣を持てば大きな成果が期待できる。教育は、まさに一生続く「援護射撃」なのである。中年期の危険因子:再発とうっかり事故を防ぐ表街道中年期の危険因子のトップは、第38回で述べたとおり難聴と高LDL-Cだが、続いて「うつ病」に触れたい。うつ病経験者は、そうでない者と比べ認知症の危険性が2倍とされる。背景には、神経炎症や、脳由来栄養因子を介した神経の可塑性障害、コルチゾール過剰分泌による海馬体積の減少説などがある。臨床的に大切なのは、うつ病は何度も繰り返しやすく、その再発自体が認知症発症の危険性を高める点だ。だからこそ再発予防が重要であり、主治医と共にフォローを欠かさないことが、病理を抑える「表街道」の対策となる。次に「頭部外傷」については、中等度のもので認知症リスクを2.3倍、重度で4~4.5倍にも増大させる2)。ボクシングなどによる頭部外傷が、50年以上も後にリスクとして現れる。なお高齢者では「転落が脳挫傷原因の3分の2以上」とされるだけに、住環境への配慮が重要になる。照明の改善、手すりやレールの設置、段差の除去や滑りにくい床への改善などが望ましい。身体機能面からは、運動機能の維持、視力や聴力の調整も重要となる。そして、単純ながら基本となるのが「適切な履物」の着用だ。屋内でスリッパなど履かないほうがよい人は多い。これもまた、脳への物理的ダメージを回避する「表街道」の予防といえる。運動不足:座りっぱなしを解消する援護射撃運動不足という危険因子は、従来からいわれてきた運動の予防効果の裏返しである。最近は、単に「たくさん運動すればよい」というより、「身体活動をしない者が運動すれば効果が生まれる」という考え方に変化してきた。最近、老年医学の分野では「座りがちな」という意味の英語で「sedentary」という言葉をよく見かける。そこですべき運動は、有酸素運動の一辺倒ではなく、レジスタンス運動やバランス運動を組み合わせることが重要だ。腰や膝の障害で運動が難しい人の場合でも、皿洗いや掃除、洗濯物干しなどの家事労働を長時間行えば、運動不足をかなり補える。こうした活動の積み重ねが、脳を支える「援護射撃」となる。糖尿病と高血圧:血管から病理を断つ表街道の王道糖尿病は認知症リスクを60%高めるとされるが、アルツハイマー病以上に、血管性認知症の危険性を高める。生物学的メカニズムとしては、直接的な血管障害や神経障害のほかにインスリン分解酵素(IDE)の影響が指摘されている。インスリンとアミロイドβ(Aβ)は同じIDEで分解されるため、高インスリン血症になるとAβの分解が滞り、蓄積していくと考えられる。なお低血糖発作は深刻な危険因子だと強調されている。食事による対応では、地中海食、そこに減塩を超えたダッシュ食、低炭水化物が推奨される。運動では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動を組み合わせた「表街道」の包括的な管理が求められる。そして、高血圧こそ認知症発症における最重要な修正可能リスクだろう。40~65歳の中年期の高血圧は、認知症リスクを61~69%増加させるが、降圧薬による治療により、認知症全体で12%、アルツハイマー病で16%のリスクを低減できるとされる3)。高血圧が認知症の危険因子となる理由として複数の説がある。まず脳血管損傷経路、また酸化ストレスと神経炎症経路、血液脳関門破壊経路、さらに脳構造変化と脳萎縮などである。これらをみると、アルツハイマー病の病理が形成されていくプロセスに関わる仮説の多くが高血圧と関連すると改めてわかる。治療面では、とくに血流の改善と脳構造の保護が重要である。わが国のガイドラインでは、年齢別、個人差を考慮した段階的な血圧管理を推奨している。また、いわゆる白衣高血圧の多さを考慮してか、最近では家庭用血圧計における継続的な測定結果が重視される。診察室での血圧よりも、自宅でリラックスして測定した値こそ「真の値」と考えるからだ。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、全年齢の降圧目標が、「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に定められている4)。なお言うまでもないが、血圧コントロールのみならず糖尿病や脂質異常症などの関連疾患の包括的な管理を通して、大きな予防効果が期待できる。これも「表街道」の予防法だ。認知症の修正可能な危険因子に関する今回の解説は以上である。14の危険因子のうちあと6つ、主にライフスタイルに関連するものが残っているが、これについては次回に述べることにしよう。参考文献・参考サイト1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Gottlieb S. Head injury doubles the risk of Alzheimer's disease. BMJ. 2000;321:1100.3)Ding J, et al. Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2020;19:61-70.4)日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

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受診ごとのBMI変動、とくに女性で認知症リスクと関連

 これまでの研究では、認知症リスクを検討する際に、BMIのスロープや変動を別の概念として区別することは一般的ではなかった。東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らは、スロープ調整済み受診ごとのBMI変動と認知症リスクとの関連性を評価した。International Journal of Obesity誌オンライン版2026年3月13日号の報告。 5年間の年次健康診断を受けた50~74歳を対象に、日本の国民健康保険データ(2015~23年)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。BMI変動は、経時的な傾向を考慮するため、スロープ調整済み標準偏差(SD)を用いて評価した。抗認知症薬の投与開始を認知症の代理指標とし、死亡を競合リスクとして考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者30万3,042例(平均年齢:66.6歳、男性の割合:38.6%)を平均2.17±1.19年間フォローアップした結果、665例に抗認知症薬(主にドネペジル:67.4%)の投与が開始され、2,394例に死亡が認められた。・ベースライン時のBMIおよび年間BMI変化量を含む共変量を調整した後、スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群(0.50kg/m2以上)は、最低三分位群(0.31kg/m2以下)と比較して、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた。・年間BMI変化量は、認知症リスクとU字型の関連を示し、とくに第1三分位群(BMI減少率が-0.31%以下)で顕著な上昇が認められた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.32~1.93)。・ベースライン時のBMIを除くベースライン共変量を含む基本モデルでは、ベースライン時のBMIを追加した場合とスロープ調整済みBMI-SDを追加した場合で、C統計量の改善に有意な差は認められなかった(+0.0147 vs.+0.0146)。一方、BMI低下-0.31%以下を追加した場合、C統計量の改善が最大であった。・スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群と認知症リスクとの関連は、男性よりも女性のほうが強かった(p for interaction=0.0039)。 著者らは「スロープ調整済みBMIの変動は、とくに女性において認知症リスクと独立して関連しており、BMI低下パターンは認知症の強力なリスク因子であることが示唆された。ルーチンの認知症スクリーニングに、受診ごとのBMI変動の縦断的モニタリングを組み込むことは有益な可能性がある」と結論付けている。

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6割超が年収2,000万円以上を適正と回答したのは◯◯科/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。そのなかで、自身の年収額を妥当と感じるか尋ねたところ、60.2%(そう思う、ややそう思うの合計)が妥当と考えていた。また、自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収を尋ねたところ、2,000万円以上と回答した割合は36.3%であった(実年収2,000万円以上は24.0%)。現在の年収、「妥当」と感じる医師は約6割 年収額の妥当性について、自身の年収額が妥当だと思うかという問いに対し「そう思う」が25.8%、「ややそう思う」が34.4%であり、合計すると60.2%となった。2016年もそれぞれ25.2%、36.4%で合計61.6%となり、大きな変化はみられなかった。年代が上がるほど年収の納得感が高い 年代別にみると、年代が上がるほど自身の年収を妥当と感じる割合が高くなる傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、35歳以下がそれぞれ20.5%、33.0%、合計53.5%であったのに対し、66歳以上はそれぞれ32.5%、40.5%、合計73.0%となった。大学病院勤務は年収の納得感が低い 勤務先別にみると、大学病院に勤務する医師は自身の年収を妥当と感じる割合が低い傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、一般診療所がそれぞれ33.9%、33.9%、合計67.8%と最も高かった。一方、大学病院はそれぞれ15.8%、28.3%、合計44.1%と低かった。診療科別の年収の納得感の傾向は? 「そう思う」「ややそう思う」と回答した医師の割合が70%以上、50%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<70%以上>・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):74.2%(35.5%、38.7%)・呼吸器内科(34人):70.6%(32.4%、38.2%)<50%以下>・消化器外科(34人):29.4%(5.9%、23.5%)・小児科(52人):50.0%(19.2%、30.8%)適正年収2,000万円以上は36.3% 自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収について尋ねた結果、「2,000万~2,500万円」が16.1%、「2,500万~3,000万円」が7.8%、「3,000万円以上」が12.4%で合計すると36.3%となった。2016年もそれぞれ17.1%、6.7%、10.9%で合計34.7%となり、大きな変化はみられなかった。実年収より高い額を適正年収として回答した割合は52.9%であり、実年収別にみると、実年収よりも適正年収を高く回答した割合は1,200万~1,400万円の集団(69.7%)が最も高かった。男性のほうが適正年収を高く回答 男女別にみると、男性のほうが自身の適正年収を高く回答する傾向がみられた。「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」の割合(括弧内は実年収の割合)は、男性がそれぞれ17.7%(14.9%)、8.4%(5.8%)、13.6%(5.3%)、合計41.7%(26.0%)であったのに対し、女性はそれぞれ4.3%(4.3%)、3.4%(4.3%)、3.4%(0%)、合計11.1%(8.6%)となった。消化器外科、脳神経外科は半数以上が適正年収2,000万円以上と回答 「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」と回答した医師の割合が50%以上、30%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<50%以上>・消化器外科(34人):64.7%(32.4%、20.6%、11.8%)・脳神経外科(37人):56.7%(21.6%、10.8%、24.3%)<30%以下>・内科(197人):29.4%(16.8%、2.0%、10.7%)・精神科(78人):29.5%(7.7%、6.4%、15.4%)アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第3回】年収の妥当性・適正年収

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冠動脈中等度狭窄への血行再建、vFFRガイドは有用か/NEJM

 欧米の現行の血行再建ガイドラインでは、中等度の狭窄を呈する冠動脈病変に対する血行再建の必要性を判断するための指針として生理学的評価を推奨しているが、プレッシャーワイヤーや血流増加薬を必要とせずに3次元定量的冠動脈造影から得られる冠血流予備量比(vFFR)に基づく血行再建と、従来のプレッシャーワイヤーを用いた血流予備量比(FFR)に基づく血行再建を比較したデータは十分でないという。オランダ・エラスムス大学医療センターのJoost Daemen氏らは、FAST III試験において、1年後の死亡、心筋梗塞、再血行再建術の複合エンドポイントに関して、vFFRに基づく血行再建はFFRに基づく血行再建に対して非劣性であることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月29日号に掲載された。欧州7ヵ国の研究者主導型無作為化非劣性試験 FAST III試験は、欧州7ヵ国の37施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2021年11月~2024年5月に参加者を登録した(Pie Medical ImagingとSiemens Healthineersの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上の慢性冠症候群、不安定狭心症、または非ST上昇型急性冠症候群で、中等度狭窄(定量的冠動脈造影で血管径の30~80%の狭窄)を呈する少なくとも1つの冠動脈病変を有する患者であった。 被験者を、冠動脈の中等度狭窄病変に対しvFFRガイド下血行再建術またはFFRガイド下血行再建術を施行する群に1対1の比率で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、1年の時点における全死因死亡、心筋梗塞、再血行再建術の複合とした。非劣性マージンは3.0%ポイントに設定し、発生率の群間差の両側95%信頼区間(CI)の上限値がこれを下回った場合に非劣性と判定した。生理学的評価の成功率は高い 2,211例(最大の解析対象集団、平均年齢67歳、女性24.3%)を登録し、vFFR群に1,116例、FFR群に1,095例を割り付けた。全体の18.7%が急性冠症候群、26.6%が糖尿病であった。1例当たりの平均(±SD)病変数は、vFFR群が1.27(±0.55)、FFR群は1.28(±0.55)だった。 完全な生理学的評価の成功率はvFFR群で96.7%、FFR群で99.1%であり、vFFR中央値は0.83、FFR中央値は0.85であった。血行再建の適応閾値(vFFR、FFRとも≦0.80)を満たした病変の割合はそれぞれ40.9%および31.3%で、実際に血行再建術が施行された患者の割合は45.0%および36.0%だった。 このうち経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者における施術の平均所要時間は、vFFR群で55.8(±26.8)分、FFR群で60.9(±28.5)分であった(群間差:-5.13分、95%CI:-8.55~-1.71)。対象血管不全、重篤な有害事象の頻度も同程度 1年の時点で、主要エンドポイントのイベントの発生を認めた患者は、vFFR群が80例(Kaplan-Meier推定値7.5%)、FFR群は79例(7.5%)であり(リスク群間差:-0.02%ポイント、95%CI:-2.25~2.21)、vFFRのFFRに対する非劣性が示された(非劣性のp<0.004)。 また、対象血管不全(心臓死、対象血管心筋梗塞、臨床的に適応のある対象血管の再血行再建術)のイベントは、vFFR群で43例(Kaplan-Meier推定値4.0%)、FFR群で49例(4.6%)にみられた(リスク群間差:-0.62%ポイント、95%CI:-2.35~1.10)。 重篤な有害事象の発生は両群で同程度であった。生理学的評価時の経皮的血行再建術関連の手技中の合併症は、vFFR群で3.7%、FFR群で6.0%に発現した。血行再建術の高施行率の意味を探る検討が必要 著者は、「数多くの臨床的妥当性の検証試験の結果が、その高い診断精度を裏付けていることから、本試験の知見は、血行再建の生理学的ガイダンスが適応となる場合には、プレッシャーワイヤーや充血の誘発を必要としない血管造影に基づく手法の使用を支持するものである」としている。 また、「vFFR群ではFFR群よりも血行再建術を受けた患者の割合が高かったこと(45.0%vs.36.0%)が、vFFRのほうが生理学的に意義のある病変をより的確に検出できたことを示すのかなどの疑問点を解決するために、新たな研究が必要である」と指摘している。

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1日1~2杯のお茶でうつ病リスクが低下?

 うつ病は、社会と健康の両方に大きな影響を及ぼす一般的な精神疾患である。お茶の摂取による潜在的な健康効果が示唆されているが、お茶の種類、摂取頻度、摂取量といった飲用パターンがうつ病のリスクと関連しているかどうかは不明であり、とくに異なる集団においては、これまでよくわかっていなかった。台湾・高雄医学大学のSi-Meng Chang氏らは、台湾バイオバンクの登録者2万7,119例のデータを用いて、自己申告による生涯うつ病歴の有病率とお茶の種類、摂取頻度、1日当たりの摂取量との関連性を評価した。Nutrients誌2026年3月5日号の報告。 お茶の種類(完全発酵茶、半発酵茶、非発酵茶)、摂取頻度、1日当たりの摂取量により分類した。自己申告による生涯うつ病歴のデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、お茶の摂取量は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さとの有意な関連が認められた(オッズ比[OR]:0.736)。・この関連性は、半発酵茶および非発酵茶で認められた(OR:0.674)。しかし、完全発酵茶では認められなかった。・1日1~2杯(350~700mL)のお茶の摂取は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、1日3杯以上の摂取では関連性が認められなかった。・さらに、お茶の摂取頻度に関して、毎日お茶を飲む人は自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、週に1回または月に1回しかお茶を飲まない人ではそのような関連が認められなかった。・サブグループ解析では、65歳以上の高齢者、糖尿病患者、喫煙者、飲酒者においては、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下との関連は認められなかった。・これは、健康状態や生活習慣が、お茶の摂取とうつ病との関連に影響を及ぼす可能性を示唆している。・ただし、交互作用分析では、有意な差は認められなかった。 著者らは「正式な交互作用検定において統計的に有意な差が認められなかったため、これらの結果は探索的なものと見なすべきである」としたうえで、「半発酵茶および非発酵茶を毎日1~2杯摂取することは、自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下と関連していた。この関連性には、摂取量や摂取頻度が影響を及ぼすことが示唆された。さまざまな種類のお茶の生物学的メカニズムを解明し、高リスク集団に対する介入戦略を開発するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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医師のアルバイト、10年で「していない」が激減、収入は増加傾向/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、医師のアルバイト事情において、10年前の調査と比較して顕著な変化が生じていることが明らかとなった。「アルバイトをしていない医師」は10年前から半減 今回の調査で最も際立ったのは、「アルバイトをしていない」と回答した医師が大幅に減少した点である。「アルバイトをしていない」医師は2016年の調査では52%だったのが、2026年調査では29%と10年間で約半数にまで減少しており、現在、医師にとってアルバイトがきわめて一般的な収入源となっていることが示された。アルバイト収入の分布:二極化と底上げ 2025年度のアルバイト年収は、全体として上昇傾向にあった。最多層は「200万円未満」の28%だが、これは2016年の16%から増加しており、少額でもアルバイトを行う医師の裾野が広がっていることを示している。一方で、アルバイト収入が「1,200万円以上」の層も5%存在し、2016年の2%から倍増した。大学病院勤務者の9割以上がアルバイトに従事 勤務形態別の分析では、大学病院勤務者の実態が顕著であった。大学病院などで働く医師のうち、アルバイトをしていない割合はわずか8%にすぎなかった。大学病院勤務者ではアルバイト年収が「1,000万円以上」に達する割合が23%(1,000~1,200万円未満:11%、1,200万円以上:12%)であり、ほかの勤務先(一般診療所・一般病院)に比べて圧倒的に高い傾向にあった。年代・診療科・地域によっても格差 年代別では、最も積極的にアルバイトを行っているのは「46~55歳」(「していない」割合が23%)であった。対して66歳以上では38%が「していない」との回答だった。 地域別では、北海道・東北では約半数(49%)が「200万円未満」の収入帯に属し、従事者は多いものの単価が低い傾向にあった。一方、九州・沖縄では約半数(49%)が「していない」という結果だった。 診療科別では、アルバイトに従事している医師の割合が最も高かったのは放射線科(「していない」割合が16%)であり、次いで整形外科、精神科、糖尿病・代謝・内分泌科などが続いた。総所得とアルバイト収入の相関 総所得が高い医師ほど、高額のアルバイトに従事している傾向も確認された。総所得2,500万円以上の層では、アルバイト収入だけで「1,200万円以上」を得ている割合が4分の1に達しており、高所得医師においてはアルバイトが所得を押し上げる大きな要因となっていることが裏付けられた。アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な結果については、以下のページに掲載している。医師の年収に関するアンケート2026【第2回】アルバイト代

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歯科でのHbA1c測定、3人に1人で糖尿病早期発見の可能性

 歯科への受診をきっかけに、未診断の糖尿病発見につながる可能性が報告された。歯科の患者に、指先穿刺による簡便な血液検査を行ったところ、3人に1人以上の割合で糖尿病または糖尿病前症が見つかったという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のGiuseppe Mainas氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Dentistry」4月号に掲載された。 この研究では、歯科受診者に対して診察室内でのHbA1c測定が、糖尿病のスクリーニングとして機能するか、横断的に検討された。英国成人の歯科受診頻度はかかりつけ医の受診頻度よりも高い傾向があり、かつ、医科受診時のHbA1c測定が日常的に行われているわけではないことが、この研究の背景にあるという。 解析対象はKCLによる口腔・歯科関連のバイオバンクに参加している911人で、このうち104人は、既に2型糖尿病の診断を受けている患者だった。歯肉の状態は、6.0%が健康、11.3%は歯肉炎、82.7%は歯周病だった。HbA1cは診察室内で指先穿刺により採血して測定し、所要時間は6分ほどだった。 HbA1cの平均は5.71±0.94%であり、既診断や自覚症状のある糖尿病患者を除くと、227人(28.7%)がHbA1c 5.7~6.3%で「糖尿病前症」に該当し、58人(7.3%)はHbA1cがより高く「糖尿病」に該当した。つまり、歯科でのスクリーニングにより、3人に1人以上に未診断の糖尿病前症または糖尿病が発見される可能性が示された。 また、歯肉の状態が悪いほどHbA1cが高いという関連も見つかった。具体的には、歯肉が健康な人のHbA1cは5.43±0.51%、歯肉炎の人は5.51±0.91%、歯周病の人は5.76±0.97%だった(傾向性P=0.004)。 Mainas氏は、「われわれの研究結果は、歯科受診が糖尿病リスクのある人を見いだす有用な機会となり得ることを示唆している。特に高齢者やBMIが高い人、歯周病のある人では、その可能性が高い」と述べている。また、論文の筆頭著者であるKCLのMark Ide氏は、「歯科受診を契機にHbA1cが高いことが判明した場合、患者はかかりつけ医を受診し詳しく調べてもらうことができる。歯科でHbA1cが検査されなければ、その機会はかなり先になってしまうかもしれない。実際、本研究に参加してHbA1cが高いことが判明した患者の大半は、自分が糖尿病前症や糖尿病に該当するとは思っておらず、判定結果に驚いていた」と話している。 なお、歯周病と糖尿病の関連について、論文の上席著者であるKCLのLuigi Nibali氏は、「これまでの多くの研究で、両者に双方向性の関連があることが示されている。歯周病による炎症は糖代謝に変化をもたらし、糖代謝の乱れは炎症に影響を与える。歯周病は糖尿病の発症や悪化に関連する可能性があり、その逆もまた同様だ」と解説している。

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猫さん糖尿病の顛末記 ― 主治医は獣医、コンサル先は教授【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第95回

帰宅しても返事がない家「ただいま」玄関のドアを開けた瞬間、空気の密度が違うことに気付きます。これまでは決まって「ニャオー」と勇ましい出迎えがあったはずの気配が、ない。2025年10月、愛猫レオは猫の星へと旅立ちました。こうしてわが家には、静かすぎる帰宅が日常となりました。猫の糖尿病は、予想以上に「フルスペック」だった以前の本エッセイでも触れましたが、2024年春、レオに持病が見つかりました。主訴は多飲多尿。獣医さんを受診すると、血糖値は500mg/dLを超えています。文句なしのDM(糖尿病)診断です。治療はもちろんインスリン。持続型製剤を朝夕2回投与する生活が始まりましたが、問題は用量調節です。人間と違い、猫の体はあまりにコンパクト。1.8単位、2.2単位……この「0.2単位を刻む世界」は、老眼が進み始めた眼球にはきわめて非友好的です。さらに、猫用SGLT2阻害薬も併用。ナトリウム・グルコース共輸送体をブロックし、尿糖排泄を促進する――。学生時代、まさか人間と同じ最新の医学ロジックを、ヒゲの生えた四足歩行の患者に適応する日が来るとは夢にも思いませんでした。教授への「アポなし猫コンサルト」ここで白状します。血糖コントロールが難航し、低血糖リスクに怯えていたある日、私は禁じ手を使いました。勤務先の糖尿病内分泌・腎臓内科の教授の部屋をノックしたのです。もちろん、患者は猫。しかもアポなし。完全なる「猫糖尿病コンサルト」です。にもかかわらず、教授は嫌な顔ひとつせず、インスリンの薬物動態から投与量調整のロジックまで、実に真顔でレクチャーしてくださいました。「猫ですか……なるほど、興味深い」この一言に、医師としての、そして人としての底知れぬ懐の深さ(あるいは重度の動物好きの片鱗)を見ました。この場を借りて、改めて深謝申し上げます。予後は一進一退、そして「終末期」の選択多くの方のサポートもあり、レオは一時、QOLを取り戻しました。「このまま維持できるかも」という淡い期待を抱いた時期もありましたが、2024年秋に再入院。点滴で持ち直しはしたものの、それ以降は緩やかな下り坂でした。それでも、レオは1年以上も病魔と付き合い、立派に生き抜きました。2025年夏の終わり、食欲不振が顕著になります。9月下旬にはADLが著しく低下。再入院の際、獣医さんは静かに言いました。「……そろそろ、お家で過ごさせてあげませんか」医師としての私、飼い主としての妻、そしてプロフェッショナルである獣医さん。三者の目に映る「予後」の景色が、完全に一致した瞬間でした。「これ以上、何ができるのか」その問いへの答えは、ガイドラインには載っていないシンプルなものでした。「ただ、最後までそばにいること」です。プロ顔負けのラスト・メッセージレオは最期まで見事でした。バスタオルの上で静かに横たわり、撫でるとしっぽの先を数ミリだけ動かす。それが彼なりの「インフォームド・コンセント」だったのかもしれません。午前3時頃。妻がおでこを撫でていると、彼は残った力を振り絞るように前脚を伸ばし、おでこで指をぐっと押し返します。「もっと撫でろ」そう命じられた直後、彼は静かに呼吸を止めました。不思議なことに、押し寄せたのは悲しみよりも安堵でした。「もう、打たなくていいんだ。苦しくないんだ」という想いだけが、深夜のリビングに満ちていました。ちなみに、毛並みは最期まで最高の手触りでした。いつまでも撫でていたかった。瞳も綺麗なままです。美しい姿です。猫のいない家と、尊敬の過去形声を上げて泣きたい時、一緒に泣いてくれる妻がいます。レオのいたずら、表情、賢さを語り合いながら、私たちは「欠員」の出た家で、生活を続けました。「ほんと、すごい猫だったよね」これは単なる過去形ではありません。最大の敬意を込めた、完了形に近い過去形です。「新患」ルナの来訪「次の猫は迎えない」それが当初の夫婦のコンセンサスでした。しかし半年が過ぎ、悲しみが穏やかな思い出へと昇華された頃、自然とこう思えたのです。「また、猫と暮らしたい」それはきっと、レオが遺していった最高のギフトでした。そんな折、運命の出会いがありました。里親を探していたメスの子猫――ルナです。初対面で直感しました。「……ビビッときた」医学的根拠はありません。しかし、臨床医としての長年の勘によれば、この「ビビッ」は、エビデンスを凌駕する正解なのです。オチ:主治医交代のお知らせ ルナと運動療法中 現在、わが家には再び猫がいます。ただし、以前とは立ち位置が異なります。今度は、私が「診察」される側です。深夜の運動療法(強制運動)、早朝の覚醒チェック、そして厳格な生活指導(主に激しい叱責)。レオは「人生」を教えてくれましたが、ルナは「生活習慣の矯正」を徹底してくれます。 私は今日も帰宅し、「ただいま」と言います。 今度は、耳をつんざくような、やたら元気なレスポンスが返ってきます。

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心血管疾患2次予防、目標LDL-C値55mg/dL未満でリスク低下/NEJM

 動脈硬化性心血管疾患患者において、目標LDL-C値は55mg/dL未満が70mg/dL未満よりも、3年時点の心血管イベントリスクの低下に結び付いたことを、韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らEz-PAVE Investigatorsが行った非盲検無作為化優越性試験の結果で報告した。ガイドラインでは動脈硬化性心血管疾患患者におけるLDL-C値低下を推奨しているが、これらの患者の2次予防のための適切な目標LDL-C値について評価した無作為化試験からのエビデンスは限定的なままであった。NEJM誌2026年4月9日号掲載の報告。主要エンドポイントは、3年時点の心血管死等の複合 研究グループは、19~80歳の動脈硬化性心血管疾患患者(次のいずれか1つ以上の既往または現有で定義:急性冠症候群[心筋梗塞または不安定狭心症]既往、画像検査または機能検査で確認された安定狭心症、冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術、脳卒中または一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患あり)を、目標LDL-C値を55mg/dL(1.4mmol/L)未満とする群(強化群)または70mg/dL(1.8mmol/L)未満とする群(従来群)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要エンドポイントは、3年時点の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、あらゆる血行再建術、または不安定狭心症による入院の複合であった。安全性も評価した。イベントの累積発生率は強化群6.6%、従来群9.7%で有意な差 2021年1月~2022年7月に韓国17施設で3,048例が無作為化された(強化群1,526例、従来群1,522例)。両群の患者特性はバランスが取れており、平均年齢は64.4±9.0歳、女性が638例(20.9%)で、LDL-C中央値は76mg/dL(四分位範囲[IQR]:61~96)であった。1,694例(55.6%)が急性冠症候群既往で、1,474例(48.4%)が画像検査または機能検査で確認された安定狭心症を、2,049例(67.2%)が冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術を有していた。 追跡期間中央値は3.0年(IQR:3.0~3.0)。試験期間中のLDL-C中央値は、強化群56mg/dL(1.4mmol/L)、従来群66mg/dL(1.7mmol/L)であった。 主要エンドポイントのイベント発生は、強化群100例(推定Kaplan-Meier累積発生率6.6%)、従来群147例(9.7%)であった(ハザード比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)。 事前に規定した安全性エンドポイントの発生は、強化群でクレアチニン値上昇の発現割合が有意に低かったこと(1.2%vs.2.7%、群間差:-1.5%ポイント、95%CI:-2.5~-0.5、p=0.004)を除き、両群で同程度であった。

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「タリージェ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第86回

第86回 「タリージェ」の名称の由来は?販売名タリージェ®錠2.5mg、5mg、10mg、15mgタリージェ®OD錠2.5mg、5mg、10mg、15mg一般名(和名[命名法])ミロガバリンベシル酸塩(JAN)効能又は効果神経障害性疼痛用法及び用量通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2026年4月14日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年2月改訂(第14版)医薬品インタビューフォーム「タリージェ®錠2.5mg、5mg、10mg、15mg/タリージェ®OD錠2.5mg、5mg、10mg、15mg」

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帯状疱疹、50歳未満でも罹患リスクが高くなる6つの併存疾患

 50歳以上および免疫不全を有する成人では、帯状疱疹の罹患リスクが高いが、18~49歳の併存疾患を有する患者における帯状疱疹罹患リスクについてのエビデンスは不足している。グラクソ・スミスクラインのRachel A. Cohen氏らによる米国の医療保険請求データを用いた大規模後ろ向き研究の結果、特定の併存疾患を有する若年成人(30歳以上)では、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して帯状疱疹の罹患リスクが高いことが示された。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2026年3月27日号掲載の報告。 本後ろ向きコホート研究では、2015~22年の米国におけるMerative MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータが用いられた。併存疾患(喘息、慢性腎臓病[CKD]、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、うつ病、糖尿病、ストレス、および外傷)を有する免疫不全のない若年成人(18~49歳)における帯状疱疹罹患率(IR)を、併存疾患および免疫不全のない成人(50~59歳)と比較した。 併存疾患および免疫不全のない50~59歳と比較した調整罹患率比(aIRR)について、非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の下限:0.62)があらかじめ設定された。aIRRは、同等(aIRRの95%CIの下限>0.62かつ≦1.0)、有意に高い(同>1.0)、または結論不能(それ以外の結果)に分類した。帯状疱疹罹患の定義は、診断コードに加え、±7日以内の経口抗ウイルス薬の処方とした。感度分析として、併存疾患の数(1、2、または3以上)別に帯状疱疹の罹患率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象集団は、帯状疱疹罹患歴または帯状疱疹ワクチンの接種歴がなく18歳以上の2,067万3,677人。免疫不全症および自己免疫疾患を有する成人を除外後、併存疾患を有する成人は316万45人であった。・全体として、併存疾患を有する成人において3万1,995件の帯状疱疹発症が報告された。・帯状疱疹罹患率は、気管支喘息(aIRR:1.19[95%CI:1.10~1.29])、COPD(1.31[1.22~1.40])、うつ病(1.31[1.22~1.40])、糖尿病(1.18[1.06~1.32])、ストレス(1.28[1.11~1.47])、および外傷(1.25[1.17~1.34])を有する集団では30~39歳において、またCKD(1.50[1.28~1.77])を有する集団では50~59歳において、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して有意に高かった(aIRRの95%CIの下限>1.0)。・感度分析の結果、帯状疱疹罹患率は併存疾患数の増加および年齢の上昇に伴って増加する傾向がみられた。

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エボロクマブ追加、動脈硬化のない糖尿病患者の1次予防に有効/JAMA

 既知の重度動脈硬化がなく糖尿病を有する患者において、エボロクマブによる早期の強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は有益であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNicholas A. Marston氏らVESALIUS-CV Investigatorsによる「VESALIUS-CV試験」の事前に規定されたサブグループ解析で示された。同試験は、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく心血管イベントのリスクは高いという、比較的リスクが低い集団の1次予防において、PCSK9阻害薬の追加投与が主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減することを実証した初めての臨床試験であるが、患者の多くが既知の重度の動脈硬化を有していた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年3月28日号で報告された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月に参加者の登録を開始し、2025年7月に最後の患者の追跡を終了した。 対象は、重度の動脈硬化を認めず(以下のいずれにも該当しない:動脈血行再建術の既往、動脈の50%以上の狭窄、冠動脈石灰化スコア≧100Agatston単位)、高リスク糖尿病(以下の少なくとも1つに該当:罹患期間10年以上、インスリンの連日使用、細小血管疾患)を有し、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポ蛋白B値≧80mg/dLがみられ、至適な脂質低下療法により病態が2週間以上安定している患者であった。 被験者を、忍容可能な至適な用量のスタチン療法に加え、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは次の2つとした。(1)3つの主要心血管イベント(冠動脈性心疾患死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)の複合(3-P MACE)、(2)4つのMACE(3-P MACEと虚血による動脈の血行再建術)の複合(4-P MACE)。48週でLDL-C値が52mg/dLに低下 試験全体の参加者1万2,257例のうち適格基準を満たしたサブグループ3,655例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:60~70]、女性57%)を解析の対象とした。エボロクマブ群に1,849例、プラセボ群に1,806例を割り付けた。 サブグループのベースラインBMI中央値は31.4(IQR:28.0~35.6)、9割弱が高血圧、ほぼ全例が糖尿病で、LDL-C中央値は132mg/dL(IQR:108~156)、89%が脂質低下療法を、64%は高強度スタチン療法を受けていた。 48週の時点で、LDL-C値中央値はエボロクマブ群が52mg/dL、プラセボ群は111mg/dLであった(p<0.001)。96週時にはそれぞれ44mg/dLおよび105mg/dLまで低下した。3-P・4-P MACEイベントとも有意に優れる 3-P MACEイベントは、プラセボ群で117例(5年Kaplan-Meier推定値7.1%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では83例(5.0%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.52~0.91]、p=0.009、群間差:2.1%[95%CI:0.4~3.8])。 また、4-P MACEイベントは、プラセボ群で178例(5年Kaplan-Meier推定値10.5%)に認めたのに対し、エボロクマブ群では127例(7.6%)と有意に少なかった(HR:0.69[95%CI:0.55~0.86]、p=0.001、群間差:2.9%[95%CI:0.9~4.9])。 さらに、心血管死(エボロクマブ群2.38%vs.プラセボ群3.49%、HR:0.68[95%CI:0.46~0.99])および全死因死亡(7.36%vs.9.52%、HR:0.76[95%CI:0.61~0.95])の発生率も、エボロクマブ群で良好だった。重篤・試験薬中止有害事象は同等 重篤な有害事象(エボロクマブ群24.5%vs.プラセボ群25.7%、p=0.41)、試験薬の投与中止に至った有害事象(同4.1%vs.4.3%、p=0.75)の発生率は両群で同程度だった。死亡は、エボロクマブ群で136例(5年Kaplan-Meier推定値7.8%)、プラセボ群で172例(10.1%)に認めた(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)。 著者は、「既知の重度な動脈硬化がなく糖尿病を有する高リスク患者の1次予防において、至適なスタチン療法にエボロクマブを加えると、プラセボと比較して初回MACEリスクが低減した」とまとめ、「これらのデータは、アテローム動脈硬化性心血管疾患の進行の初期段階にある患者に対して、スタチン療法に上乗せした強化治療を行うこと、および通常はきわめて高リスクの2次予防患者にのみ適用されるLDL-Cの目標値を目指すことを支持するものである」としている。

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事例45 デノタスチュアブル配合錠の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム(商品名:デノタスチュアブル)配合錠(以下「同錠」)が、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。査定の原因を探るため、まずは、同錠の添付文書を見てみました。効能または効果には「RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防」と記載があります。事例を見返すと、病名に「低カルシウム血症」は付与されていますが、レセプト内に「RANKL阻害剤」の投与が見当たりません。カルテを参照したところ、紹介の患者であって、当院に紹介される3ヵ月前に前医にて「RANKL阻害剤」の投与があったことを診療情報提供書にみつけました。担当医師は、この情報をもとに同錠を適切に投与されていました。レセプトにこの情報が反映されていなかったために、過剰な投与と判定されたものと推測ができます。算定要件に反していないため、「2025年6月、他院にてプラリア皮下注(RANKL阻害剤)施注済み」を理由にカルテの写しを添えて再審査請求を行ったところ復活しました。査定対策として、検査結果から同錠を処方する際には、処方画面にて「RANKL阻害剤」の有無をチェックする警告が表示されるようにマスター変更しています。

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緑茶は肝がんリスクを下げるのか~JACC Study

 緑茶の摂取と肝がんのリスクとの関連について、これまでの報告は一貫していない。今回、日本人成人の大規模な前向きコホート研究であるJACC Studyで、緑茶の摂取が肝がんリスクの低下と関連し、用量反応関係を示したことが報告された。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2026年4月号に掲載。 本コホート研究には、1988~90年のベースライン時点で肝がんの既往がなく、40~79歳の4万1,999人(男性1万8,205人、女性2万3,794人)が登録された。検証済みの自己記入式質問票を用いて、個人の社会人口統計学的特性、既往歴、生活習慣を評価し、2009年末まで肝がん発症状況を追跡した。1日当たり緑茶摂取頻度が1杯未満(基準)、2~4杯、5~6杯、7杯以上での肝がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をCox比例ハザードモデルを用いて算出した。年齢、性別、調査地域、学歴、糖尿病・肝疾患・胆のう疾患の既往歴、BMI、飲酒状況、喫煙状況、コーヒー摂取量、運動習慣、歩行量などの潜在的交絡因子を調整した。さらに、コーヒー摂取量、飲酒状況、肝疾患既往歴などの主要な交絡因子については層別化し分析した。 主な結果は以下のとおり。・緑茶の摂取は肝がんのリスク低下傾向と関連しており、多変量解析によるHRは2~4杯で0.87(95%CI:0.61~1.23)、5~6杯で0.87(同:0.61~1.25)、7杯以上で0.61(同:0.40~0.95)となり、1杯未満と比較してリスク低下の傾向がみられた(傾向のp=0.029)。この逆相関は、男性、がん以外の肝疾患既往歴がない人、現在飲酒者で有意だった。・7杯以上の摂取に対する多変量人口寄与割合(PAF)は7.1%(95%CI:0.9~11.4)であった。

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非保護左冠動脈主幹部病変のPCI、超音波ガイドvs.造影ガイド/NEJM

 非保護の左冠動脈主幹部病変を有する患者に対する冠動脈血行再建術では、近年、解剖学的な複雑性が軽度~中等度の場合は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が、冠動脈バイパス術(CABG)の許容可能な代替法として確立しているが、ステントの適切な拡張、血管壁への圧着、病変の被覆など長期的な転帰に影響を及ぼす可能性のある技術的な課題が残されているという。イタリア・IRCCS Policlinico San DonatoのLuca Testa氏らは「OPTIMAL試験」において、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCIは従来の血管造影ガイド下PCIと比較して、良好な臨床アウトカムをもたらすかについて評価した。NEJM誌オンライン版2026年3月30日号掲載の報告。欧州3ヵ国の研究者主導型無作為化優越性試験 OPTIMAL試験は、イタリア、スペイン、英国の28施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化優越性試験(Philips Image Guided Therapy DevicesとBoston Scientificの助成を受けた)。 2020年7月~2023年6月に、年齢18歳以上、50%以上の狭窄を伴う非保護の左冠動脈主幹部病変を有し、PCIの適応とされ、中等度~重度の虚血とともに、ガイドラインに基づく内科的治療を行っても症状を認める患者を登録した。 被験者を、診断目的の冠動脈血管造影で適格性を確認した後、ガイドワイヤー挿入前に、IVUSガイド下PCIまたは血管造影ガイド下PCIを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、最長の追跡期間における脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、全死因死亡から成る患者指向型の複合エンドポイントとした。患者指向型の主要複合エンドポイント、33.7%vs.30.9%で有意差なし 806例(平均[±SD]年齢71.4[±10.7]歳、男性78.4%、糖尿病34.7%)を登録し、IVUSガイド下PCI群に401例、血管造影ガイド下PCI群に405例を割り付けた。原疾患の発生率の内訳は、非ST上昇型心筋梗塞が39.1%、不安定狭心症が10.1%、慢性冠症候群が50.8%であり、平均SYNTAXスコアは29.7(±12.6)点(中等度~高度の解剖学的複雑性)だった。 追跡期間中央値2.9年の時点において、患者指向型複合エンドポイントのイベントは、IVUSガイド下PCI群で135例(33.7%)、血管造影ガイド下PCI群で125例(30.9%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.87~1.42、p=0.40)。 また、デバイス関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、臨床的に必要と判断された標的病変の再血行再建術)(IVUSガイド下PCI群22.4%vs.血管造影ガイド下PCI群20.5%、HR:1.10、95%CI:0.82~1.49)、血管関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、標的血管再血行再建術)(24.2%vs.21.5%、1.14、0.85~1.52)、全死因死亡(15.7%vs.15.1%、1.06、0.74~1.50)は、いずれも両群間に有意差がみられなかった。手技関連・安全性イベントにも差はない 心筋梗塞(IVUSガイド下PCI群11.2%vs.血管造影ガイド下PCI群10.9%、HR:1.04、95%CI:0.68~1.57)、再血行再建術(12.0%vs.11.1%、1.10、0.73~1.65)の発生率も両群で同程度であり、ステント血栓症(definite:0.7%vs.0.2%、3.07、0.32~29.53/probable/definite:2.0%vs.0.7%、2.73、0.72~10.27)の頻度にも有意な差はなかった。 手技関連イベントや全般的な安全性イベント、重篤な有害事象の発生についても、両群間に有意差を認めなかった。熟練施術者に血管内画像は不要の可能性 著者は、「1件の先行試験では、IVUSは施術者の経験が少ないほうが有益性は高いことが示されているが、本試験の参加施設の施術者は豊富な専門知識を持ち、左冠動脈主幹部PCI施行中は、もとよりIVUSに基づいて確立された血管造影アルゴリズムを順守するとともに、厳格な手技基準と最新のステントプラットホームを用いたことが、両群間のアウトカムの潜在的な差異を縮小した可能性がある」としている。 また、「本試験の結果は、左冠動脈主幹部の狭窄にPCIを行う際は、常に冠動脈内の画像によるガイドを使用すべきとの要件に異議を唱えるものであり、症例数の多い施設で熟練のIVUS施術者が処置を行う場合は、血管造影単独でも十分に適切である可能性を示唆する」と指摘している。

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