サイト内検索|page:81

検索結果 合計:2798件 表示位置:1601 - 1620

1601.

世界初の第3世代がん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス「G47Δ」

単純ヘルペスウイルスベクターを用いた抗腫瘍免疫増強法「G47Δ」※クレジットは下記の通りG47Δは、口唇ヘルペスの原因ウイルスである単純ヘルペスウイルス1型を用いた第3世代のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス。3つのウイルス遺伝子を改変することで、正常細胞では増殖せず、がん細胞だけで増殖するウイルスを作製した。東京大学医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野の藤堂具紀氏らが創製に成功し、開発を進めている。ウイルス療法は、がん細胞に感染させたウイルスが増殖することで、直接的にがん細胞を破壊する治療法である。単純ヘルペスウイルス1型の主な特徴として、1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染、2)殺細胞効果が比較的強い、3)抗ウイルス薬があるため治療を中断できる、4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が減弱しない、などが挙げられている。また、G47Δは、既存のがん治療用ウイルスに比べ、安全性と治療効果が高いとされる。さらに、がん細胞を破壊する過程で抗腫瘍免疫を引き起こすため、投与部位だけでなく非投与部位のがんにも、免疫を介した抗腫瘍効果が期待できるという。加えて、がんの根治を阻害するとされるがん幹細胞をも、破壊することが知られている。G47Δは、2016年2月に、厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に、2017年7月には、悪性神経膠腫を対象とした「希少疾病用再生医療等製品」に指定されている。※Content Providers: CDC/ E. L. Palmer - This media comes from the Centers for Disease Control and Prevention's Public Health Image Library (PHIL), with identification number #2171.G47Δは1年生存割合において高い効果を示す藤堂氏らの研究グループは、初期治療後に残存または再発した膠芽腫病変(悪性脳腫瘍の一種)を有する予後不良の患者を対象に、医師主導治験(第II相試験)を行った。初回手術後に、放射線照射と化学療法(テモゾロミド)を行う標準治療に、G47Δによるウイルス療法を上乗せする治療法の有効性を検討した。G47Δは、定位脳手術により最大6回、腫瘍内に投与された。試験は、30例の登録を予定し、2015年5月に開始された。2018年7月、13例が治療開始から1年経過した時点で、事前に規定された中間解析が行われた。主要評価項目である1年後の生存割合は92.3%(12/13例)であり、他の複数の臨床試験の結果から算出された標準治療の1年生存割合(15%)と比較して高い有効性を示した。また副次評価項目である全生存期間中央値は、中間解析時点では中央値に達しておらず、無増悪生存期間中央値は8.6ヵ月、2年間の経過観察が終了した4例の腫瘍縮小効果の最良効果はいずれも安定(SD)であった。中間解析時に16例で安全性の評価を行ったところ、主な副作用は発熱が15例(93.8%)、嘔吐とリンパ球数減少がそれぞれ8例(50.0%)、悪心が7例(43.8%)で認められた。入院期間の延長が必要となった副作用は、Grade 2(軽度)の発熱による2例(12.5%)のみであった。これらの結果により、中間解析の時点で、本治験におけるG47Δの治療効果の有効性が確実となったため、独立データモニタリング委員会の勧告で、患者登録は終了となった。これらの知見に基づき、2020年12月、悪性神経膠腫を適応症とするG47Δの製造販売承認申請が行われた。G47Δへの期待G47Δは、動物実験で、あらゆる固形がんに有効であることが示されており、今後、速やかにすべての固形がんに適応を広げることを目指すという。2013年には、前立腺がんおよび嗅神経芽細胞腫を対象とした臨床試験が行われた。また、2018年からは、悪性胸膜中皮腫の患者の胸腔内にG47Δを投与する臨床試験も開始されている。ウイルス療法は、がん治療における標準的な治療法として確立されると期待されている。

1602.

降圧薬と認知症リスク~メタ解析

 認知症は、予防や治療戦略が難しい健康問題である。認知症を予防するうえで、特定の降圧薬使用が、認知症リスクを低下させるともいわれている。米国・国立衛生研究所のJie Ding氏らは、特定の降圧薬による血圧低下が認知症リスクに及ぼす影響について検討を行った。The Lancet. Neurology誌オンライン版2019年11月6日号の報告。高血圧患者に対する降圧薬使用は認知症リスクを低下させる 1980年1月1日~2019年1月1日までに公表された適格な観察研究より参加者データを収集し、メタ解析を実施した。適格基準は、コミュニティーの成人を対象としたプロスペクティブコホート研究、参加者2,000人超、5年以上の認知症イベントデータの収集、血圧測定および降圧薬の使用、認知症イベントに関する追加データを収集するための対面試験、死亡率のフォローアップを含む研究とした。ベースライン時の高血圧(SBP140mmHg以上またはDBP90mmHg以上)および正常血圧において、5つの降圧薬クラスを用いて、認知症やアルツハイマー病との関連を評価した。降圧薬服用確率に関連する交絡因子を制御するため、傾向スコアを用いた。研究固有の効果推定値は、変量効果のメタ解析を用いてプールした。 降圧薬と認知症との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間7~22年間(中央値)のコミュニティーベースプロスペクティブコホート研究6件より得られた、55歳超の非認知症成人3万1,090人を解析対象とした。・認知症診断は3,728件、アルツハイマー病診断は1,741件であった。・高血圧群(1万5,537人)では、降圧薬を使用している患者は、使用していない患者と比較し、認知症発症リスク(ハザード比[HR]:0.88、95%CI:0.79~0.98、p=0.019)およびアルツハイマー病発症リスク(HR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.021)の低下が認められた。・認知症リスクに対して、降圧薬のクラス間で有意な差は認められなかった。・正常血圧群(1万5,553人)では、降圧薬使用と認知症またはアルツハイマー病との間に関連は認められなかった。 著者らは「高血圧患者に対する降圧薬使用は、認知症リスクを低下させる。しかし長期の観察では、特定の降圧薬が、他の降圧薬と比較し、認知症リスク低下に効果的であることは示唆されなかった。このことから、今後の高血圧臨床ガイドラインでは、認知症リスクに対する降圧薬の有益な効果を考慮すべきである」としている。

1603.

高齢者肺がんの治療満足度は?GAを用いた多施設共同臨床試験「ENSURE-GA」 【肺がんインタビュー】 第29回

第29回 高齢者肺がんの治療満足度は?GAを用いた多施設共同臨床試験「ENSURE-GA」出演:島根大学医学部 呼吸器・化学療法内科 津端 由佳里氏高齢者総合的機能評価(GA)を用いた肺がんの多施設共同臨床試験ENSURE-GA試験が実施される。治験責任者の島根大学 津端 由佳里氏に試験の背景と実施内容を聞いた。参考ENSURE-GA試験(UMIN-CTR)ENSURE-GA試験に関する問い合わせ

1604.

ダメージは不可逆、頭痛の裏に失明リスクのある眼疾患/日本頭痛学会

 眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(11月15~16日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。長期間高眼圧が続くと、視神経のダメージは不可逆 はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。 翌日には眼圧が正常化し、頭痛・眼痛・吐き気は改善したが、視力は光覚弁(暗室にて眼前で照明を点滅させ明暗を弁別できる視力で、失明に含まれる)となった。高眼圧が続くことによる視神経のダメージは不可逆であり、「もっと早い眼科受診で失明を回避できた可能性がある。このような症例は、1、2年に1例くらいの頻度で残念ながら遭遇することがある」と同氏。一方で、最初の受診時に眼の痛みや不調に関する訴えがない場合は、眼科疾患の診断が難しいと指摘した。緑内障のなかでも特殊な病態、急性閉塞隅角緑内障の所見とは 緑内障患者の主な特徴としては、眼圧が高い(ただし眼圧が正常である正常眼圧緑内障患者は日本では多い)、年齢が高い(40歳以上で要注意)、近視が強い、初期には自覚症状がほとんどない、などが挙げられる。40歳以上の日本人における緑内障有病率は約5%とされ、日本人の失明原因の第1位となっている。 このうち、急性閉塞隅角緑内障の病態は少し特殊である。高度眼圧上昇(多くは40mmHg以上)がみられ、症状としては眼痛・頭痛・悪心・嘔吐などがある。緑内障の他の病型と異なり近視よりも遠視の人がなりやすく、虹輪視(電球などを見たときに、その周囲に光の輪のようなものが見える)や霧視(かすみがかって見える)、高度の視力低下がみられる。しかし、とくに高齢者では患者側から自主的にそれらの申告がないこともあり、内科的あるいは脳外科的疾患の誤診につながってしまうことがあるという。 家木氏は、急性閉塞隅角緑内障の鑑別の参考に、近視の場合はほとんどが開放隅角、白内障手術が済んでいたら開放隅角、遠視で背の低い高齢女性に閉塞隅角が多い、といった情報を紹介。診断は眼圧を測定すれば可能であり、たとえ結果が眼科と関係なかったとしても除外診断には役立つため、疑わしい場合は積極的に眼科医にコンサルトしてほしいと話して講演を締めくくった。

1605.

脊髄小脳変性症〔SCD : spinocerebellar degeneration〕

1 疾患概要■ 概念・定義脊髄小脳変性症は、大きく遺伝性のものと非遺伝性のものに分けられる。非遺伝性のものの半分以上は多系統萎縮症であり、多系統萎縮症では小脳症状に加えてパーキンソン症状(体の固さなど)や自律神経症状(立ちくらみ、排尿障害など)を伴う特徴がある。また、脊髄小脳変性症のうち、遺伝性のものは約3分の1を占め、その中のほとんどは常染色体優性(顕性)遺伝性の病気であり、その多くはSCA1、SCA2などのSCA(脊髄小脳失調症)という記号に番号をつけた名前で表される。SCA3型は、別名「Machado-Joseph病(MJD)」と呼ばれ、頻度も高い。常染色体性劣性(潜性)遺伝形式の脊髄小脳変性症は、頻度的には1.8%とまれであるにもかかわらず、数多くの病型がある。近年、それらの原因遺伝子の同定や病態の解明も進んできており、疾患への理解が深まってきている。多系統萎縮症は一般的に重い病状を呈し、進行がはっきりとわかるが、遺伝性の中には進行がきわめてゆっくりのものも多く、ひとまとめに疾患の重症度を論じることは困難である。一方で、脊髄小脳変性症には痙性対麻痺(主に遺伝性のもの)も含まれる。痙性対麻痺は、錐体路がさまざまな原因で変性し、強い下肢の突っ張りにより、下肢の運動障害を呈する疾患の総称で、家族性のものはSPG(spastic paraplegia)と名付けられ、わが国では遺伝性ではSPG4が最も多いことがわかっている。本症も小脳失調症と同様に、最終的には原因別に100種類以上に分けられると推定されている。細かな病型分類はNeuromuscular Disease CenterのWebサイトにて確認ができる。■ 症状小脳失調は、脊髄小脳変性症の基本的な特徴で、最も出やすい症状は歩行失調、バランス障害で、初期には片足立ち、継ぎ足での歩行が困難になる。Wide based gaitとよばれる足を開いて歩行するような歩行もみられやすい。そのほか、眼球運動のスムーズさが損なわれ、注視方向性の眼振、構音障害、上肢の巧緻運動の低下なども見られる。純粋に小脳失調であれば筋力の低下は見られないが、最も多い多系統萎縮症では、筋力低下が認められる。これは、錐体路および錐体外路障害の影響と考えられる。痙性対麻痺は、両側の錐体路障害により下肢に強い痙性を認め、下肢が突っ張った状態となり、足の曲げにくさから足が運びにくくなり、はさみ歩行と呼ばれる足の外側を擦るような歩行を呈する。進行すると筋力低下を伴い、杖での歩行、車いすになる場合もある。脊髄が炎症や腫瘍などにより傷害される疾患では、排尿障害や便秘などの自律神経症状を合併することが多いが、本症では合併が無いことが多い。以下、本稿では次に小脳失調症を中心に記載する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 鑑別診断小脳失調症については、治療可能なものを調べる必要がある。治療可能なものとして、橋本脳症が多く混ざっていることがわかってきており、甲状腺機能が正常かどうかにかかわらず、抗TPO抗体、抗TG抗体陽性例の測定が必要である。陽性時には、診断的治療としてステロイドパルス療法などの免疫療法の反応性を確認する必要がある。ステロイド治療に反応すれば橋本脳症とするのが妥当であろう。その他にもグルテン失調症などの免疫治療に反応する小脳失調症も存在する。また、抗GAD抗体陽性の小脳失調症も知られており、測定する価値はある。悪性腫瘍に伴うものも想定されるが、実際に悪性腫瘍の関連で起こることはまれで、腫瘍が見つからないことが多い。亜急性の経過で重篤なもの、オプソクローヌスやミオクローヌスを伴う場合には、腫瘍関連の自己抗体が関連していると推定され、悪性腫瘍の合併率は格段に上がる。男性では肺がん、精巣腫瘍、悪性リンパ腫、女性では乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの探索が必要である。ミトコンドリア病(脳筋症)の場合も多々あり、小脳失調に加えて筋障害による筋力低下や糖尿病の合併などミトコンドリア病らしさがあれば、血清、髄液の乳酸、ピルビン酸値測定、MRS(MRスペクトロスコピー)、筋生検、遺伝子検査などを行うことで診断が可能である。劣性遺伝性の疾患の中に、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(ataxia with vitamin E deficiency : AVED)という病気があり、本症は、わが国でも見られる治療可能な小脳変性症として重要である。本症は、ビタミンE転送蛋白(α-tocopherol transfer protein)という遺伝子の異常で引き起こされ、ビタミンEの補充により改善が見られる。一方、アルコール多飲が見られる場合には、中止により改善が確認できる場合も多い。フェニトインなど薬剤の確認も必要である。おおよそ小脳失調症の3分の1は多系統萎縮症である。まれに家族例が報告されているが孤発例がほとんどである。通常40代以降に、小脳失調で発症することが多く、初発時にもMRIで小脳萎縮や脳血流シンチグラフィー(IMP-SPECT)で小脳の血流低下を認める。進行とともに自律神経症状の合併、頭部MRIで橋、延髄上部にT2強調画像でhot cross bun signと呼ばれる十字の高信号や橋の萎縮像が見られる。SCAの中ではSCA2に類似の所見が見られることがあるが、この所見があれば、通常多系統萎縮症と診断できる。さらに、小脳失調症の3分の1は遺伝性のものであるため、遺伝子診断なしで小脳失調症の鑑別を行うことは難しい。遺伝性小脳失調症の95%以上は常染色体性優性遺伝形式で、その80%以上は遺伝子診断が可能である。疾患遺伝子頻度には地域差が大きいが、わが国で比較的多く見られるものは、SCA1、 SCA2、 SCA3(MJD)、SCA6、 SCA31であり、トリプレットリピートの延長などの検査で、それぞれの疾患の遺伝子診断が可能である。常染色体劣性遺伝性の小脳失調症は、小脳失調だけではなく、他の症状を合併している病型がほとんどである。その中には、末梢神経障害(ニューロパチー)、知的機能障害、てんかん、筋障害、視力障害、網膜異常、眼球運動障害、不随意運動、皮膚異常などさまざまな症候があり、小脳失調以上に身体的影響が大きい症候も存在する。この中でも先天性や乳幼児期の発症の疾患の多くは、知能障害を伴うことが多く、重度の障害を持つことが多い。小脳失調が主体に出て日常生活に支障が出る疾患として、アプラタキシン欠損症(EAOH/AOA1)、 セナタキシン欠損症(SCAR1/AOA2)、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(AVED)、シャルルヴォア・サグネ型痙性失調症(ARSACS)、軸索型末梢神経障害を伴う小脳失調症(SCAN1)、 フリードライヒ失調症(FRDA)などがある。このうちEAOH/AOA1、SCAR1/AOA2、 AVED、ARSACSについては、わが国でも見られる。遺伝性も確認できず、原因の確認ができないものは皮質小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy: CCA)と呼ばれる。CCAは、比較的ゆっくり進行する小脳失調症として知られており、小脳失調症の10~30%の頻度を占めるが、その病理所見の詳細は不明で、実際にどのような疾患であるかは不明である。本症はまれな遺伝子異常のSCA、多系統萎縮症の初期、橋本脳症などの免疫疾患、ミトコンドリア病などさまざまな疾患が混ざっていると推定される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)小脳失調症の治療は、正確な原因診断に関わっている。上記の橋本脳症、GAD抗体小脳失調、そのほかグルテン失調症など他の自己抗体の関与が推定される疾患もあり、原因不明であれば、一度はステロイドパルスをすることも検討すべきであろう。ミトコンドリア病では、有効性は確認されていないがCoQ10、L-アルギニンなども治療薬の候補に挙がる。ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、脳卒中様発作症候群(MELAS)においてはタウリンの保険適用も認められ、その治療に準じて、治療することで奏功できる例もあると思われる。小脳失調に対しては、保険診療では、タルチレリン(商品名: セレジスト)の投与により、運動失調の治療を試みる。また、集中的なリハビリテーションの有効性も確認されている。多系統萎縮症の感受性遺伝子の1つにCoQ2の異常が報告され、その機序から推定される治療の臨床試験が進行中である。次に考えられる処方例を示す。■ SCDの薬物療法(保険適用)1) 小脳失調(1) プロチレリン(商品名:ヒルトニン)処方例ヒルトニン®(0.5mg) 1A~4A 筋肉内注射生理食塩水(100mL) 1V 点滴静注2週間連続投与のあと、2週間休薬 または 週3回隔日投与のどちらか。2mg投与群において、14日間連続投与後の評価において、とくに構音障害にて、改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(2) タルチレリン(同:セレジスト)処方例セレジスト®(5mg)2T 分2 朝・夕食後10mg投与群において、全般改善度・運動失調検査概括改善度で改善を認める。28週後までに構音障害、注視眼振、上肢機能などの改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(3) タンドスピロン(同:セディール)処方例セディール®(5~20mg)3T 分3 朝・昼・夕食後タンドスピロンとして、15~60mg/日有効の症例報告もあるが、無効の報告もあり。重篤な副作用がなく、不安神経症の治療としても導入しやすい。2) 自律神経症状起立性低血圧(orthostatic hypotension)※水分・塩分摂取の増加を図ることが第一である。夜間頭部挙上や弾性ストッキングの使用も勧められる。処方例(1) フルドロコルチゾン(同:フロリネフ)〔0.1mg〕 0.2~1T 分1 朝食後(2) ミドドリン(同:メトリジン)〔2mg〕 2~4T 分3 毎食後(二重盲検試験で確認)(3) ドロキシドパ(同:ドプス)〔100mg〕 3~6T 分3 毎食後(4) ピリドスチグミン(同:メスチノン)〔60mg〕 1T/日■ 外科的治療髄腔内バクロフェン投与療法(ITB療法)痙性対麻痺患者の難治性の症例には、検討される。筋力低下の少ない例では、歩行の改善が見られやすい。4 今後の展望多系統萎縮症においてもCoQ2の異常が報告されたことは述べたが、CoQ2に異常がない多系統萎縮症の例のほうが多数であり、そのメカニズムの解析が待たれる。遺伝性小脳失調症については、その原因の80%近くがリピートの延長であるが、それ以外のミスセンス変異などシークエンス配列異常も多数報告されており、正確な診断には次世代シークエンス法を用いたターゲットリシークエンス、または、エクソーム解析により、原因が同定されるであろう。治療については、抗トリプレットリピートまたはポリグルタミンに対する治療研究が積極的に行われ、治療薬スクリーニングが継続して行われる。また、近年のアンチセンスオリゴによる遺伝子治療も治験が行われるなど、遺伝性のものについても治療の期待が膨らんでいる。そのほか、iPS細胞の小脳への移植治療などについてはすぐには困難であるが、先行して行われるパーキンソン病治療の進展を見なければならない。患者iPS細胞を用いた病態解析や治療薬のスクリーニングも大規模に行われるようになるであろう。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 脊髄小脳変性症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Neuromuscular Disease Center(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会(患者、患者家族向けの情報)1)水澤英洋監修. 月刊「難病と在宅ケア」編集部編. 脊髄小脳変性症のすべて. 日本プランニングセンター;2006.2)Multiple-System Atrophy Research Collaboration. N Engl J Med. 2013; 369: 233-244.公開履歴初回2014年07月23日更新2019年11月27日

1606.

サッカー選手は認知症になりやすい?(解説:岡村毅氏)-1142

 サッカー選手はアルツハイマー型認知症になりやすいという論文だ。ああクリスマスか、と思ったがちょっと待て、まだ11月である。BMJのクリスマス号(英国ジョークのひねりの効いた論文が掲載される特別号)ではなく、真面目な論文であった。 元プロサッカー選手と一般人口を比較すると、元サッカー選手は当然ながら健康なので死亡は少ないし、虚血性心疾患も少ない。しかし神経変性疾患は多く、アルツハイマー型認知症についてはおよそ5倍である。 またこの論文ではフィールド・プレーヤーとゴールキーパーを比較している。両者は認知症リスクは変わらなかったが抗認知症薬の処方はゴールキーパーでは少なかったらしい。 どういうことであろうか? 実はコンタクトスポーツでは遅発性の脳損傷が多いことはよく知られている。最も危険とされるのはアメリカンフットボールであり、認知症やうつ病がきわめて多いことは周知の事実であろう。選手を脳損傷から守ることは世界的なトレンドであり、ラグビーワールドカップでもHIA(Head Injury Assessment)が行われていたのをご覧になった方も多いだろう。 なぜかこの論文でははっきり書いていないようだが…サッカーで脳損傷が起きる原因は、はっきり言おう、ヘディングである。 ゴールキーパーとしつこく比較しているのも、ヘディングの有無を見たいからに違いない。 英国サッカーといえば、今でこそやれゲーゲンプレスやらティキ・タカやらおしゃれな戦術サッカーが隆盛であるが、かつてはサイドからのセンタリングを押し込むだけであった。考えただけでも脳損傷を起こしそうだが。 野球の球数制限はようやく実現したが、ヘディングが禁止される日もいつか来るのかもしれない。いろいろ思うところはあるが、時代の流れであることは確かだ。

1607.

血中トランス脂肪酸と認知症リスク~久山町研究

 トランス脂肪酸と認知症との関連はよくわかっていない。九州大学の本田 貴紀氏らは、トランス脂肪酸の客観的バイオマーカーである血清エライジン酸(trans 18:1 n-9)レベルと認知症やそのサブタイプとの関連をプロスペクティブに調査した。Neurology誌オンライン版2019年10月23日号の報告。 対象は、2002~03年にスクリーニング検査を受け、2012年11月までフォローアップ(期間中央値:10.3年、四分位範囲:7.2~10.4)を行った、認知症でない60歳以上の日本人高齢者1,628人。血清エライジン酸レベルは、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて測定し、四分位に分類した。血清エライジン酸レベルとすべての原因による認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症のハザード比を推定するために、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に、いずれかの認知症を発症した高齢者は377人(AD:247人、血管性認知症:102人)であった。・従来のリスク因子で調整後、高血清エライジン酸レベルは、すべての原因による認知症(p for trend=0.003)およびAD(p for trend=0.02)の発症リスク増加と関連が認められた。・総エネルギー、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の摂取を含む食事の因子で調整後も、これらの関連性は、有意なままであった(各々p for trend<0.05)。・血清エライジン酸レベルと血管性認知症との間に、有意な関連性は認められなかった。 著者らは「高血清エライジン酸レベルは、高齢者のすべての原因による認知症およびADの発症に対する潜在的なリスク因子であることが示唆された。トランス脂肪酸を減らすための公衆衛生政策は、認知症の1次予防に有用な可能性がある」としている。

1608.

第33回 「異常Q波」アップデート~最近の考え方~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第33回:「異常Q波」アップデート~最近の考え方~ここ何回かのレクチャーで扱った「異常Q波」。これまでの右前胸部誘導(V1~V3)は「存在」確認で診断できましたが、そのほかの誘導ではどうでしょうか? ちまたの教科書などではさまざまな「定義」が述べられ、やや混沌としている印象です。「心筋梗塞」の反映という観点から、波形の特徴はもちろん、誘導同士の組み合わせや個数まで、Dr.ヒロが最新の考え方を解説します。さぁ、知識をアップデートしましょう!【問題】陳旧性心筋梗塞を反映する「異常Q波」に関する診断条件のうち正しいものを2つ選べ。1)深さ:2mm以上2)深さ:同一誘導のR波高の1/3以上3)隣接する誘導グループのうち、3つ以上で認める4)QS型5)幅:0.03秒以上解答はこちら4)、5)解説はこちら心筋梗塞の診断に役立つ「異常Q波」の定義に関する問題です。今回は症例問題がありませんが、次回に扱おうと思います。選択肢として挙げたものは、いずれも教科書などで取り上げられるものを題材としています。2000年代に入ってから、「Q波」を用いた心筋梗塞の診断法はいくつか改良がなされました。少し前までの“当たり前”が、今は“そうじゃない”ってこともあるんです。今後も微修正される可能性はありますが、目下、最新の診断基準を共有したいと思います。“「異常Q波」な人ってどれくらいいる?”労働衛生協会のデータによると、2017年に健康診断で心電図検査を受けた13万6,000人のうち、「有所見」(要経過観察・受診・精査)とされたのは8.5%、そのうち「異常Q波」は5.4%(男性6.3%、女性3.5%)に認められました。つまり、「心電図異常」を理由に二次健康診断として医療機関を紹介された人は、20人に1人の確率で「異常Q波」の所見が認められるわけです。残念ながら、受診しない方もいますから、受け手側のわれわれが抱くイメージと若干ズレている可能性はありますが、「異常Q波」は割とコモンな所見だってことです。健康診断でこんな状況なのですから、心血管疾患の患者さんが集まる病院では「異常Q波」の出現頻度がもっと高いでしょう。“時代とともに変わる異常Q波の定義”ところで、「異常Q波」を指摘する意味は何だったでしょうか? それは死んで機能しなくなった心筋の反映で、その“代表選手”は「心筋梗塞」です。冠動脈閉塞により心筋梗塞が起こり「異常Q波」が記録された様子のイメージを、図1からつかんでみましょう。(図1)異常Q波と心筋梗塞の関係画像を拡大するところで、心筋梗塞のすべての患者さんが「強い胸痛」を発症し、カテーテル治療を受けて、自身の病名をその後も忘れずに完全に把握しているとしたら…心電図でQ波を探すよりもご本人に問診すれば済むはずです。しかし、患者さんの多くはメディカル・プロフェッショナルではありませんし、記憶があいまいなケースも多々あります(第32回)。それよりもっと重要なのは、自分の知らないうちに心筋梗塞を起こしている人がいるということです。まったく症状がなかったり、心筋梗塞だと思わずにガマンしてしまったり…後者は別にして、「無症候性」(silent)心筋梗塞が全体の1/3を占めるなんていうショッキングな論文1)、2)もあります。こうした “いつの間にか心筋梗塞”を見抜く術として心電図検査があり、とくに「異常Q波」がその役割を果たすと言えます。このへんで少し昔話。心電図が苦手でキライだった “ダメ医学生”の時代(第24回、第25回)、当時のボクが習った「異常Q波」の定義は、A) R波高≦1mm(0.1mV)なら「Q波」とみなして良い、B) 幅≧0.04秒(40ミリ秒[ms])、C) 深さ≧同一誘導でのR波高の25%(1/4)、でした。A)は「1mmなかったら、陽性波が“ない”のと同じ」ってこと。ごくごく小さいR波がわずかにあり「Q波」かな?と悩む場合には、今でも時おり参考にしています。B)は心電図波形の方眼紙では、横1mmが「0.04秒(40ミリ秒[ms])」に相当するので、これも“1mmつながり”です。最後のC)については、問題の選択肢2)のように「1/3」と記載している本もありました。『1/3とか1/4って言うけど、いちいちR波が何ミリ、Q波が何ミリとかって測るのが面倒だなぁ…』と思った記憶があります。一つずつR波高と比べるのも確かに大変ですし、早期にPCIがなされてR波の減高が軽度にとどまる場合、相当な深さのQ波でないと“異常”とはならず、現実をうまく説明できません。そんな“現場の声”が届いたのか、2000年に心筋梗塞の定義が見直されました。その後、約20年間に何度か改訂がなされ、現在の異常Q波の定義は次のものです。一昔前の定義がまったくダメというわけではありませんが、目下“最新版”というものをお示しします。■過去の心筋梗塞を示唆する心電図所見3)(左室肥大、左脚ブロックを除く)■V2~V3誘導:幅>0.02秒のQ波あるいはQS型それ以外:幅≧0.03秒 かつ 深さ≧1mmのQ波あるいはQS型(I、II、aVL、aVF、V4~V6誘導*1)が隣接する誘導グループ*2のうち2つ以上で認められる。V1~V2誘導:R波幅>0.04秒 かつ そろってR/S>1で陽性T波*1:V2、V3は別に定義されており、その心は「III、aVR、V1を除く」ということ(正常でも「異常Q波」様の波形が出る代表的なIII誘導)。*2:(1)I、aVL、(2)V1~V6、(3)II、III、aVFの3つ。“「V1~V3」と「それ以外」で考えよ”一見して気づくのは「V2、V3」と「それ以外」で分けている点でしょう。前回までは「V1~V3」で扱ったのに? 個人的には、この定義のようにV1誘導だけを“のけ者”にするような定義は好みません。現在の定義でV1誘導が除かれているのは、V1誘導では健常者でも「Q波」が出ることがあるためで、単独ではもちろん、人によっては「V1、V2にQ波あり」でも、心エコーなどでは左室「前壁」含めて何にも異常がない方もいます。ただ、同じパターンでホンモノの心筋梗塞の既往がある人もいます。なので、たとえV1誘導単独でもQRS波が陰性波から始まっていたら「Q波」と指摘して欲しいですし、その「異常」基準はV2、V3誘導と同じで結構です。“例外・特殊”、“~だけ”という言葉は、漏れのない判読を推奨するDr.ヒロ流の教えに反します。ちなみに「0.02秒」の条件はあまり気にしないでOKですよ。横幅で言ったら0.5mmですし、それ以下なら正常と言えるわけでもなく(「q波」としての指摘はすべき)、ひとまず「V1」も含めて“あるだけで異常“のスタンスは崩さないほうが良いでしょう。ですから、本質的な理解としては「V1~V3」と「それ以外」で良いと思います。そして、定義ではQS型が「あるいは」で並列しています。これは陽性(r/R)波がまったくないため、「Q波」とも「S波」とも決めがたいという意味で、実質的には「(異常な)Q波」と同義として扱って良いのでした(第17回)。次に、深さの「1/4(ないし1/3)以上」が「1mm」になったのはいいとして、幅はどうでしょう? 「0.03秒(30ms)」って、横1mmが0.04秒(40ms)なのに…って思いませんか? 個人的には、人の目を引くくらい“幅広”なら、ほぼ1mmでアウト、厳密に1mm以上じゃなくていいよっていう解釈です。このように「V1~V3“以外”」では深さも幅も「1mm」がキーワードですから、これをDr.ヒロは“1mm基準”ないし“1ミリの法則”と呼んでいます。ほかにも冒頭で紹介した一昔前の基準も含めて、「異常Q波」の世界では「1mm」が頻発するのです。では、もう一つの「隣接する」(contiguous)ってどういうことでしょう? 一見“n”と“g”を打ち間違えたように見えますが、“g”でOKです。意味的には“continuous”と似ていますがね。この「contiguous」という単語って、あまり英語が得意でないボクにはここ以外ではあまり使われない気がしますが、皆さんはどうでしょうか?胸部誘導の場合、電極を貼る位置が“隣同士”あるいは“お隣さん”、たとえば「V2、V3、V4」とか「V5、V6」とか。いずれにせよ2つ以上が大事。Dr.ヒロ流では“お隣ルール”という名称で解説しています。胸部誘導は、電極位置がそのまま左室壁の「どこ」に対応していましたし(第17回)、心筋梗塞は同じ血管で灌流される一定のゾーンがやられるわけで、「単独」とか「飛び飛び」のような誘導にはならないんです。これはわかりやすいですね。“肢誘導での「隣」に注意すべし”一方の肢誘導では、“お隣ルール”の理解に注意が必要です。標準様式の心電図では、用紙の左半分の上からI、II、III、aVR、aVL、aVFと並んでいますが、見た目通りの“IはIIの隣”や“aVRとaVLは隣同士”というのは間違いです。ややこしいことに、肢誘導では波形の並び順ではなく、「空間的・位置的」に、お隣なんです。『へ…?この人、何言ってんの?どういうこと?』と、思われる方がいるかもしれませんが、大丈夫。全然難しいことではないんです。ボクはすでに何度もレクチャーで扱っています。肢誘導の空間的な位置を示すものと言えば…そう、「肢誘導界」の円座標の世界です(第5回)。ここでは、「IとaVL」、そして「II・aVF・III」の組み合わせが“隣接誘導”*3になります。*3:Dr.ヒロ流では“仲良し誘導”という言い方をすることもある。■“お隣ルール”での隣接誘導群の考え方■胸部誘導は電極の貼り位置そのまま肢誘導は“円座標”の世界での話であることに注意!そして最後。気をつけていないと見過ごしてしまいそうですが、「異常Q波」の定義のはずが、3つ目にV1、V2誘導の「R波」が述べられています。なぜ「R波」が心筋梗塞なのか、聞いたことがあるでしょうか? こちらは“裏”ないし“鏡”の世界と言える、左室「後壁」という「前壁」の真反対の話です。「Q波」の話題から少しズレるので、今回は扱うのをやめておきます(軽く目をやる程度で済ませてください)。以上が最近の「異常Q波」の考え方のトレンドですので、しっかり理解しておきましょう。次回は、具体的な症例でこれらの知識を用いてみようと思いますので、ご期待あれ!Take-home Message異常Q波の診断基準をアップデートしよう。V1~V3誘導では「存在」ないし「QS型」、それ以外の誘導では“1mm”がキーワード(幅・深さ)単独ではなく、“お隣ルール”で「2つ以上」が本当の「異常Q波」杉山裕章. 心電図のみかた・考え方(応用編). 中外医学社;2014.p.80-124.1)Kannel WB, et al. N Engl J Med. 1984;311:1144–1147.2)De Torbal A, et al. Eur Heart J. 2006;27:729–736.3)Thygesen K, et al. Circulation. 2018;138:618-651.【古都のこと~鈴虫寺(華厳寺)】人生の岐路に立ったり悩んだりしたとき、われわれは神や仏に願うでしょう。“鈴虫寺*1”として有名な西京区の華厳寺(山号:妙徳山)*2は、京都でも有名な“ご祈願スポット”で、嵐山エリアで松尾大社や西芳寺(苔寺)のすぐ近くです。長めの石段を上ると、山門の左手に“幸福のお地蔵さま”*3に並ぶ行列が…。受付で志納料を払い、大書院に通されると周囲に鈴虫が飼育された木枠のガラスケース*4が! そして部屋中に響く鈴虫の音! 録音かと疑ってしまうくらいの見事な“大合唱”でした。当寺オリジナルスイーツ茶菓“寿々むし”とおいしいお茶をいただきながら*5、僧侶の“鈴虫説法”に耳を傾けます。自らの来し方を振り返り、行く末を思案するー妙に説得感があり、随所にシャレを効かせた“プレゼン”の上手さに脱帽しました。鈴虫の音はオスの求愛行動によるもので、メスが一緒にいることで初めて鳴くそうです。鈴虫の寿命は約100日。成虫となり最後の1ヵ月に精一杯鳴き、産卵後ほどなくオス・メスとも亡くなっていく話は“無常”ともリンクしたなぁ。受験合格、婚活、出世、起業…利己的な願いを胸に寺を訪れたとしても涙がちょっと出てきましょう。30分ほど話を伺い、鈴虫ケースをもう一周眺め、本尊である大日如来に手を合わせました。そして、最後にちゃっかりお地蔵さまにもお願いをして帰るDr.ヒロなのでした(笑)*1:鈴虫の英語表記は「bell(-ringing) cricket」で、欧米ではコオロギの一種と扱われている。石碑には「鈴蟲の寺 華厳禅寺」と書かれている。*2:鳳潭上人が華厳宗の復興のため享保8年(1723年)に開山。その後、臨済宗に改宗(明治元年[1868年])され、現在に至る。*3:「幸福地蔵大菩薩」。わらじスタイルは日本で唯一。たった一つだけ願い事を聞いてくれる(一願成就)。黄色の幸福御守を両手に挟み、心の中でお願い事を言うのがお約束。住所、氏名を先に言うのを忘れずに(お地蔵さまが家まで歩いて来てくれる)。*4:当日は約4,000匹とのことだったが、多い時はケース数が2倍(7,000~8,000匹)になることも。*5:禅宗の教えの一つに「茶礼」がある。

1609.

ポリフェノールは死亡率も下げるか~高山スタディ

 日本人はコーヒーや緑茶から多くポリフェノールを摂取している。ポリフェノール摂取による健康ベネフィットは疫学研究で示されているが、日本人における死亡率との関連は報告されていない。今回、お茶の水女子大学の田口 千恵氏らが高山コホート研究で調査したところ、食事によるポリフェノール総摂取量が全死亡率、心血管疾患および消化器疾患による死亡率と逆相関することが示された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2019年11月15日号に掲載。 本研究の対象は高山市の住民2万9,079人。食事摂取量は、1992年に半定量的食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて評価し、その後16年間における死亡率を調べた。食事によるポリフェノール摂取量は、食物摂取データを独自のポリフェノール含有データベースと照合し計算した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に合計5,339人が死亡した。・多変量調整後、ポリフェノール総摂取量の最高四分位群を最低四分位群と比較すると、全死亡率が有意に低かった(ハザード比:0.93、95%信頼区間:0.82~0.99、傾向のp=0.003)。・ポリフェノール総摂取量の最高四分位群は、最低四分位群に比べ心血管疾患による死亡率が有意に低く、なかでも脳卒中死亡率で強い逆相関が認められた。ほかの原因、とくに消化器疾患による死亡率でも逆相関が認められた。・一方、ポリフェノール総摂取量とがん死亡リスクに有意な関連はみられなかった。

1610.

認知症予防の可能性、カマンベールチーズvs.運動

 東京都健康長寿医療センター、桜美林大学、株式会社 明治(以下、明治)の共同研究グループは、高齢者女性を対象としたランダム化比較試験(RCT)において、カマンベールチーズの摂取による認知機能低下抑制を示唆し、認知症予防の可能性を見いだすことに成功した1)。 2019年11月6日、明治主催のメディアセミナー「人生100年時代に考える認知症予防について~カマンベールチーズの新たな可能性~」が開催。鈴木 隆雄氏(桜美林大学老年学総合研究所 所長)が「人生100年時代~認知症予防とBDNF」を、金 憲経氏(東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長)が「カマンベールチーズがBDNFに及ぼす影響~ランダム化比較試験」について講演した。BDNF濃度が認知症予防に影響 国内外の研究報告によると、高齢者の認知症の中で最も多くの患者数を占めるのがアルツハイマー病である。現在の日本では、認知症は高齢者人口の約15%を占め、その前駆状態である軽度認知障害(MCI)すなわち認知症予備軍は約13%を占めている。MCIの高齢者の約半数が5年以内にアルツハイマー病に移行することが報告されていることから、鈴木氏は「MCIの段階で予防対策を講じることが極めて重要」と述べた。さらに、「エビデンスの質、科学的根拠のレベルの高さが重要となる中で、これまでの認知症予防の視点での食品研究はほとんどが観察研究だった。今回の試験結果は介入試験からの結果であり、信頼性は高い」と、過去の研究とエビデンスレベルが異なる点を強調し、Journal of the American Medical Directors Association 9月号1)に掲載された研究について解説した。 今回の研究で一番の焦点となったのは、BDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇である。BDNFとは、神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる、いわば“脳の栄養分”とも呼ばれる重要なタンパク質で、脳内、とくに記憶の中枢である海馬に高濃度に存在している。BDNFの血中濃度は加齢や糖代謝異常、そして認知症に伴い減少することが示されており、臨床的に広く評価されている指標でもある。 BDNFの変動については、運動が血中BDNF濃度の増加に寄与していることがこれまでいくつかの研究で示されている。しかし、同氏は「食品とBDNFの関連性についてのエビデンスレベルの高い研究は少なく、今回の研究の意義は大きい」と、述べた。カマンベールチーズで血中BDNF濃度が有意に上昇 以前、65歳以上の高齢女性を対象にチーズ摂取と認知機能に関する観察研究を行い、チーズ摂取の有無と認知機能の関連性を明らかにした金氏は、「国内では、アルツハイマー病マウスでのカマンベールチーズの作用が示唆2)されていたことから、今回、実際のヒトを対象として、70歳以上のMCIの高齢女性を対象としたRCTを行った」と述べた。 次に、同氏はチーズの利用価値について説明。チーズは栄養価が非常に高く、タンパク質、ミネラル、ビタミンを効率よく補うことができる食品であり、世界で1,000種類以上も存在する。なかでも、カマンベールチーズには、デヒドロエルゴステロールという神経細胞において抗炎症作用を示す成分が含まれるほか、白カビの作用によりトリグリセリドからオレイン酸が、タンパク質からアンモニアが生じる。 このような過程で生じたオレイン酸とアンモニアが反応し、オレアミドが産生される。これが脳内のミクログリアに作用することで、アミロイドβの除去2)やミクログリアの過剰な炎症を抑制2、3)すると考えられている。 今回の研究では、カマンベールチーズ群と対照チーズ群でオレアミドの含有量を比較。その結果、カマンベールチーズ群の含有量は対照チーズ群の10倍以上であった。また、今回のRCTの結果、血中BDNF濃度がカマンベールチーズ群では対照チーズ群と比較して有意に増加し、ベースラインから変化率が6.18%も増加した。これらの結果を踏まえて、金氏は「血中BDNF濃度が約6.2%も増加するということは、フレイル高齢者が1回あたり60分の運動を2回/週、3ヵ月継続したもの(変化率:7.6%)4)とほぼ同等の効果であり、注目に値する」と述べ、「来年に発表される長期追跡試験のデータから認知機能改善作用が確認できるかどうかが今後の課題である」と、締めくくった。

1611.

今シーズンのインフルエンザ診療の動向は?

結果概要ここ数年、過去最大規模の流行を繰り返すインフルエンザだが、今年は早くも流行が始まっている。現場での診療方針はどのような傾向にあるのだろうか。ケアネットでは先月、会員医師を対象に「今シーズンのインフルエンザ診療について」のアンケートを行い、325人から回答を得た。アンケートでは、早期流行の実感、迅速診断キットの使用頻度、抗インフルエンザウイルス薬の処方頻度、外来での抗インフル薬の選択について答えていただいた。主な結果は、以下のとおり。6割超の医師が、インフルエンザの早期流行を実感している約8割の医師が、迅速診断キットと抗インフル薬をほぼ全例に使用最も処方頻度が高い抗インフル薬はオセルタミビル、次いでザナミビル集計結果の詳細と、寄せられたご意見を以下にまとめた。62%の医師が、早期流行を実感している厚生労働省により、例年より早期の流行開始が報告されたが、実臨床ではどう感じているのだろうか。アンケート回答の結果を見ると、62%の医師がインフルエンザの早期流行を「実感している」と答えた。早期流行は、臨床現場の感覚ともおおむね一致していることが示された。迅速診断キットはほぼ全例に使用されるが、「不要」という意見も「外来でのインフルエンザ診断に、どのくらい迅速診断キットを使用しますか」という設問に対しては、「インフルエンザが疑われる患者のほぼ全員に使用する」と答えた医師が78%に上った。次いで、「ほかの重篤疾患との鑑別など、必要性が高い場合のみ使用する」(13%)、「患者から希望があった場合のみ使用する」(7%)、という結果だった。迅速診断キットについて、日本医師会は「検査は必ずしも全例に実施する必要はない」との見解1)を示しているが、現場に広く受け入れられるには時間がかかりそうだ。インフルエンザのほぼ全例に抗インフル薬が処方次に、「抗インフル薬の外来処方についてお聞かせください」という問いに対し、77%の医師が「発症後48時間以内と想定される患者のほとんどに、抗インフル薬を処方する」と答えた。「高リスク患者には抗インフル薬を処方するが、低リスク患者にはなるべく処方しない」は17%、「抗インフル薬は基本的に処方しない」は5%だった。オセルタミビルの次に多いのはザナミビル薬剤選択に関しては、オセルタミビル(商品名:タミフル)が最も多く61%、次いでザナミビル(同:リレンザ)22%、ラニナミビル(同:イナビル)7%、バロキサビル(同:ゾフルーザ)6%、ペラミビル(同:ラピアクタ)1%という回答結果となった。「処方しない」と答えた医師は3%に留まった。2018年に10代への使用制限が解除され、経口投与かつ剤形選択ができるオセルタミビルを第1候補とする医師が多いと考えられる。高リスク患者にはペラミビル、インフル疑い・48時間経過例には麻黄湯かさらに、「前問で選択した薬剤以外の抗インフル薬を処方するのは、どのような場合ですか?」という記述形式の設問に対しては、「年齢(小児・高齢者など)」、「経口/吸入の可否」、「予防投与の場合」、「妊娠の有無」、「患者アドヒアランス」、「アレルギーや副作用などの既往歴」、「患者負担(経済面)」など、患者の希望や状況によって、処方を調整しているという声が多数寄せられた。また、入院症例や重症例などの高リスク群には、ペラミビルを処方するという意見が多かった。このほか、アンケートの選択肢にはなかったが、麻黄湯を積極的に使うという意見も見られた。全身状態が安定している人や理解がしっかりしている人には説明後、麻黄湯を処方することがある。(小児科・40代・岡山県)症状が強い症例には麻黄湯を併用している。周囲の発生状況を確認している。(内科・50代・高知県)偽陰性を疑う場合は麻黄湯を使う。(内科・50代・京都府)48時間以上経過した場合は麻黄湯を選択する。(循環器内科・60代・埼玉県)耐性ウイルスや、全例における薬物治療に対する懸念の声も最後に、日頃のインフルエンザ診療で取り組んでいる工夫や、困っている点について尋ねたところ、さまざまな意見が寄せられたので、その中から一部を抜粋して紹介する。診療での工夫に関しては、30~40代の医師による意見が目立った。不要な抗インフル薬の処方は減らすよう、心掛けている。(呼吸器内科・30代・大分県)小児症例では危険度が高いと判断し、小児科に受診を勧めている。(内科・40代・大阪府)今年は院内発生があり、感染拡大予防に努めている。(消化器内科・30代・広島県)一方、困っている点に関しては、耐性ウイルスを気にする声が多かった。12歳以下の小児ではザナミビル吸入やオセルタミビルを投与する方針である。(循環器内科・60代・福岡県)耐性ウイルスが疑われ、いったん解熱した患者が再発熱した場合の対応に困る。(消化器内科・50代・愛知県)耐性を気にするが、どちらかというと皆さんが苦しいのを少しでも和らげたいと思うので、効果が出るものを処方したい。(内科・50代・長野県)さらに、抗インフル薬を使用した薬物治療については、疑問の声も挙がった。本当に全症例に抗インフル薬が必要か疑問に思っている。対症療法の方が免疫獲得できていいような気もする。(その他・50代・静岡県)軽症インフルエンザの扱いには疑問を感じることもある。(放射線科・40代・京都府)インフルエンザ診療における情報は、治療薬の選択肢が増えたり、使用上の注意が改訂されたりと、シーズンを問わず更新されている。今年の流行ピークが訪れる前に、最新の情報を確認して、万全の体制で臨みたいところだ。アンケート概要タイトル今シーズンのインフルエンザ診療についてお聞かせください実施日2019年10月28~11月3日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師(有効回答数:325人)【分類詳細】内科系:内科、神経内科、循環器内科、消化器内科、血液内科、呼吸器内科、糖尿病・代謝・内分泌内科、腎臓内科、感染症内科、心療内科、総合診療科外科系:外科、整形外科、消化器外科、形成外科、脳神経外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺外科その他:小児科、精神科、放射線科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、眼科、皮膚科、産婦人科、泌尿器科、麻酔科、救急科、腫瘍科、臨床研修医アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。参考1)インフルエンザ診療で不要なこと:医師会の見解今季インフルエンザ治療のポイントとは?東京都でインフルエンザ流行開始、昨年比で3ヵ月早くゾフルーザに低感受性の変異株に関する調査結果ゾフルーザに「使用上の注意」の改訂指示

1612.

認知症の攻撃性および興奮に対する介入比較~メタ解析

 認知症患者の精神症状の治療には、薬理学的介入と非薬理学的介入の両方が用いられる。カナダ・St. Michael's HospitalのJennifer A. Watt氏らは、認知症の攻撃性および興奮に対する薬理学的介入および非薬理学的介入の有効性比較を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月15日号の報告。 対象研究は、認知症の攻撃性および興奮に対する治療介入を比較したランダム化比較試験。データは、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、PsycINFOより検索し、2019年5月28日までの灰色文献および選択した研究やシステマティック・レビューから抽出したリファレンスを用いた。研究の選択、データの抽出、バイアスリスクの評価は、独立した2人1組のレビューアにより実施された。 主な結果は以下のとおり。・攻撃性と興奮をターゲットとした介入148件(2万1,686例)の分析では、通常ケアと比較し、以下の治療介入が臨床的に有用であった。 ●学際的ケア(標準化平均差[SMD]:-0.5、95%信頼区間[CI]:-0.99~-0.01) ●マッサージおよびタッチ療法(SMD:-0.75、95%CI:-1.12~-0.38) ●マッサージおよびタッチ療法と音楽療法の併用(SMD:-0.91、95%CI:-1.75~-0.07)・レクリエーション療法は、統計学的に有意ではあったが(SMD:-0.29、95%CI:-0.57~-0.01)、臨床的には通常ケアよりも効果的とはいえなかった。・本研究の限界として、研究の46%において、アウトカムデータが欠落しており、バイアスリスクが高かった。また、治療介入の有害性およびコストは評価されていなかった。 著者らは「認知症の攻撃性および興奮を軽減するための非薬理学的介入は、薬理学的介入よりも効果的であると考えられる」としている。

1613.

積極的降圧治療は通常の降圧治療よりも深部白質病変の増加を抑制するが、総脳容積の減少は大きい(解説:石川讓治氏)-1132

 SPRINT研究において、積極的降圧治療(目標収縮期血圧120mmHg)が通常の降圧治療(目標収縮期血圧140mmHg)と比較して、心血管イベントを減少させることが報告され、この積極的降圧治療の優位性は75歳以上の後期高齢者でも認められた。Montreal Cognitive Assessment(MoCA)で評価した認知機能に関しては、1次エンドポイントであるProbable dementiaの発症に関しては、有意な抑制が認められなかったが、mild cognitive impairment (MCI)への進行は有意に抑制された。これらの結果より、積極的降圧治療が通常の降圧治療よりも軽度の認知機能低下であれば抑制する可能性が示唆された。 本研究はSPRINT研究において頭部MRIが平均約4年間の追跡期間で評価された患者のサブ研究である。本研究の結果、積極的降圧治療は、深部白質病変の増加を0.54cm3大きく抑制したが、総脳容積は降圧治療で減少し、その減少度は積極的降圧治療で3.7cm3大きかった。降圧治療における深部白質病変と総脳容積の変化が乖離する原因は不明である。過去の報告では、どちらも認知機能低下と関連していたことが報告されているが、本研究におけるProbable dementiaを発症した患者におけるサブ解析でも深部白質病変と総脳容積との関連は明らかではなかった。解剖学的な脳の構造と認知機能低下の間のメカニズムについては不明な点が多い。降圧治療による総脳容積の減少度は、男女差が認められ、男性にとくに多く減少が認められている。 SPRINTの頭部MRIサブ研究は、SPRINT全体の患者よりも女性や黒人が多く、収縮期血圧が低く、心血管疾患の既往が少なく、MoCAが低かった。また、頭部MRIサブ研究に参加した670例のうち221例の患者で追跡の頭部MRIが撮影されていなかった。この頭部MRIの追跡データの欠損患者は、女性や心血管疾患の既往が多く、収縮期血圧が高く、身体的な生活の質が低下しており、MoCAの点が低かった。すなわち、頭部MRIサブ研究の患者は、SPRINT全体の患者よりも心血管リスクの低い患者が多く、心血管リスクの高い患者が多く脱落していた。解析には混合線形モデルが使用され、追跡の頭部MRIデータの脱落者の値が統計的に推測されるような解析方法を用いている。また、SPRINT研究自体からは、糖尿病、脳卒中の既往、老人施設入所者などのハイリスク患者が除外されている。そのため今回の研究の結果を、今すぐにわれわれの高齢者高血圧の日常臨床に当てはめることは困難である。 降圧治療において、深部白質病変と総脳容積のどちらが重要なのか? さらなる疑問が大きくなった。

1614.

第32回 右脚ブロックの“魔法”に注意!~華々しさに潜む傷跡~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第32回:右脚ブロックの“魔法”に注意!~華々しさに潜む傷跡~ある日、交通外傷の患者さんが運ばれて来ました。意識レベルも悪く右足からはひどく出血し、変形もあり骨折していそうです。それだけを見て「整形外科」を案内して良いでしょうか? 皆さんなら外表からはわかりにくい頭部や内臓にも異常がないかチェックするでしょう。当たり前のことのようですが、こと心電図の話となると別物。目立つ所見にばかり気を取られ、より重要な部分に注意が及ばないことがしばしばあります。こうした状況を「右脚ブロック」を例にDr.ヒロと一緒に確認してみましょう!症例提示70歳、女性。高血圧症、脂質異常症、心臓弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症)にて内服治療中である。定期外来で記録された心電図を以下に示す(図1)。(図1)定期外来での心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として誤っているものを2つ選べ。1)QRS電気軸:+120°2)洞(性)徐脈3)完全右脚ブロック4)PR(Q)延長5)低電位(胸部誘導)解答はこちら1)、5)解説はこちら1問目はイントロ問題。軽~中等度の大動脈弁閉鎖不全症のある70歳、女性です。いつもの通り、まずは“真っ白な心”で心電図を眺めます(第10回、第30回)。もちろん読みは「系統的判読」でね(第1回)。1)×:電気軸はQRS波の「向き」に注目します。お決まりの順番はaVL:下、I:ほぼ“トントン(第9回)”、-aVR:上、II:上、です。I(+0°)を“トントン・ポイント”(TP)と考えれば、TPに直交し(±90°)、aVFが上向きですから「+90°」を選択します(あえて消去した自動計測値は「+78°」でした)。2)○:調律の判定は、はじめの“レーサー(R3)・チェック”です。R-R間隔は整、心拍数は“新・検脈法”(第29回)を使って、胸部誘導の最後を「+0.5拍」と数えて7.5×6=45/分なので徐脈ですね。P波の向きは“イチニエフの法則”(第2回)通りで「洞調律」ですから、心拍数からは「洞(性)徐脈」です。3)○:QRS波の向き・高さ・幅を“スパイク・チェック”しましょう。幅は一番広いところで見ると3~4目盛りあり、幅広(wide)です(自動計測値も「136ms」)。QRS幅が広い時に考えるのは「脚ブロック」で、普通はまず右脚か左脚かを考えます。V1とV6誘導による“顔認証”が診断の基本で、「右脚ブロック」は以下のように特徴的な形をしたV1誘導に反応できるようになりましょう(図2)。(1)「rsR'型(ないしそのバリーエション)」や(2)「RR'型(またはrR'型)」の2つが大半を占め、これらはともに“M字”パターンのQRS波形となるのが特徴的です。ワイドで単相の(3)のようなパターンもありますがまれなので、まずは“M字”で覚えておきましょう。QRS波の命名法を意識すれば、今回は「rsR'型」となり、“M字サイン”陽性で「完全右脚ブロック」です。(図2)右脚ブロックのQRS波形(V1誘導)画像を拡大する4)○:「PR(Q)間隔」は“バランス・チェック”でしたね。P波とQRS波が“つかず離れず”と言えるのは3~5目盛りで、時間にすると120~200ms(0.12~0.2秒)です。心電図(図1)ではPR(Q)間隔はほぼ6目盛り(240ms)ですので、「第1度房室ブロック」と言えるレベルの「PR(Q)延長」でしょう。5)×:「低電位(差)」は肢誘導と胸部誘導とで診断基準が異なり、多くは肢誘導で見られます。「すべての(胸部)誘導でQRS波の振幅≦1.0mV(1cm)」が胸部誘導での基準ですが、一番大きなV4誘導に着目すれば、R波高だけでも1cm(10mm)ありますので、「低電位(差)」には該当しません。心電図診断洞(性)徐脈(45/分)完全右脚ブロック第1度房室ブロック症例提示80歳、男性。転居に伴い来院(初診)。紹介状(診療情報提供書)は持参していない。お薬手帳を確認すると、糖尿病、脂質異常症、高血圧症で内服加療されている様子。心疾患の既往を問診すると、以下の返答であった。「心臓の病気? あー、血管が詰まったよ。2~3度はカテーテルも受けたかな。今は胸には何にもないよ」血圧148/67mmHg、脈拍90/分・整。以下に心電図(図3)を示す。(図3)初診外来時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図所見として正しいものを選べ。1)洞(性)頻脈2)右軸偏位3)完全右脚ブロック4)ST上昇5)QT延長解答はこちら3)解説はこちら転医してきた患者さんですが、皆さん、こういう状況ってままありませんか? 紹介状もない状況で、“お薬手帳”と初診時検査からある程度の推測を余儀なくされる患者さん…そんな状況でとられた心電図の読みが問われています。仮に紹介状があったとしても、心電図の読みは平坦な気持ちで眺めましょう。1)×:R-R間隔は整でおおむね太枠(マス)3.5個分くらいなので、「頻脈」ではないですね。もちろん“新・検脈法”で84/分と求めて判断してもOKです。2)×:QRS波の「向き」は、I:上、aVF:下は明らかですから、「左軸偏位」ゾーンです。“トントン法Neo”(第11回)を使えば、正味で-aVRは「+1mm」、IIが「-1mm」ですので、両者の中間(+45°)に“トントン・ポイント”はあります。IないしaVFの極性から求める電気軸は「-45°」ですよね。Dr.ヒロお得意の“左右違い”です。3)○:見た目に1問目の波形よりもQRS幅は明らかに広く、V1誘導も「rSR'型」ですから、「完全右脚ブロック」の診断で間違いありません。ちなみに、イチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)の「側壁誘導」で最後のS波が“おデブ”な感じ(slurred S-wave)になるのも、右脚ブロックの特徴ですから知っておきましょう。4)×:これは“目のジグザグ運動”ね(第14回)。V1誘導だけ微妙ですが、ギリギリ・セーフと考えて下さい。ST変化に関しては、むしろニサンエフ(II、III、aVF)の「ST低下」があるように見えます。5)×:QT間隔もPR(Q)間隔と同様に“バランス・チェック”です。心拍数が正常範囲(50~100/分)なら、R-R間隔の半分までは“セーフ”と考える(目視法)か、自動計測の「QTc間隔」*1の“カンニング”も実践的です。wideなQRS波では長く見えがちですが、今回は「QT(c)延長」はありません。*1:実は「QT(c)時間」には性差があり、男性:450ms、女性:460msを上限と考えると良い。【問題3】自動診断は「前壁梗塞の可能性」となっている。どの所見によるものか。また、早急な対処が必要か?解答はこちら V2、V3誘導の異常Q波、早急な対応はおそらく不要(陳旧性心筋梗塞)。解説はこちらボクが解説したかった本題は、コレです。人によって多少の差はあるかもしれませんが、この心電図(図3)で一番目立つ所見は「完全右脚ブロック」。次に「左軸偏位」かなぁ…? でも、それだけで終了したら、「系統的判読」の観点からは“半人前”。前問で扱ったST変化以外にもう一つ、大事な所見があります。それは前々回(第30回)に扱った「異常Q波」。これは右前胸部誘導(V1~V3)に注目して下さい!“右脚ブロックの“魔法”に注意せよ”科学的ではありませんが、「脚ブロック」には“魔力”があります。心電図を読む者に“魔法”をかけて混乱させるのです。それ自体を見つけた満足感からほかの所見を見落としてしまったり、逆にそれ以上読まなくていい所見*2で騒いでしまったり…。*2:「左脚ブロック」にも、「異常Q波」や「ST上昇」、「陰性T波」…それ自体に病的意義を求めてはいけない“魔力”所見がある。右前胸部誘導のST-T変化は「2次性変化」と呼ばれ、脚ブロックに“流されて”生じる所見と考えましょう。そのため右脚ブロックの場合、V1~V3誘導のST部分が“マスク”されて判定不能になりますが、その他の多くは「普段通り」読めるのです。“おデブ”なQRS波に心乱されないようにしてくださいね。ポイントは“クルッと”の“ク”で、「異常Q波」を指摘するプロセス。V1には1mmにも満たないですが、きちんと陽性波(r波)から始まっています*3。でも、V2とV3にはそれがなく、陰性波から始まっていますね。つまり「Q波」、しかもダメなやつです。V1~V3誘導では、「存在する」、すなわち「異常」でしたから、V2、V3誘導には「異常Q波」があり、隣り合う2つにこれがあったら…まず疑うべきは「心筋梗塞」による壊死巣の存在でしたよね(第17回、第30回)。V2~V4誘導は前胸壁のド真ん前にある誘導ですから、梗塞部位はズバリ左室「前壁」*4ですね。*3:1mmに満たないr波は「ない」と考え、「Q波あり」とする考え方も一部にあり。*4:V1誘導にもQ波ありと考えたら「前壁中隔」ですね。「そう言われるとたしかにそうだなぁ~」そうなんです! こんなに幅広く(1mm以上)、しかも深い(V2:9mm、V3:3mm)のに“見逃す”んです。あたかもwideなQRS波にすべてを包み込まれるかのように…これが右脚ブロックの“魔法”ですから、とくに注意して臨むようにしましょう。その意味では、必ず最後に「自動診断」を確認するクセをつけると良いでしょう。“カンニング”を積極的に薦める先生って、Dr.ヒロくらいかも(笑)。今回なら「前壁梗塞の可能性:V2・V3」という“ヒント”から、「異常Q波はあったっけ…」と思えたら見逃しは水際で防げるかもしれません。■右脚ブロックの“魔力”に注意!■V1~V3誘導のST低下、陰性T波「以外」は普通に読んでOK“急性か陳旧性か?”心筋梗塞は時期により、おおむね発症1週間以内が「急性期」、1ヵ月以上経ったら「陳旧性期」と呼ばれます*5。さて、心電図で心筋梗塞の所見を見た時、「部位」の次に問題にするのは「時期」、つまり“いつ”起きたかということです。皆さんも医学生時代から必死に覚えたのではないでしょうか? T波増高、ST上昇、異常Q波、ST回復、陰性T波…。それぞれが○時間、ないし○日とかね。でも、実際には各所見の有無で「発症後○○時間(日)」と推定できるほど単純ではありません*6。*5:1週間と1ヵ月の間は「亜急性期」と呼ぶ。10日~2、3週間くらいのイメージで良い。*6:来院・診断・PCIのタイミングで全然異なる。今回の症例のように「症状(胸痛)がない」、「ST上昇がない」のに“現在進行形”、つまり「急性」を疑うのは基本ナンセンスです。今回は普通の外来ですからね。ほかにすることは…? もちろん、患者さんへの問診や、過去の心電図との比較が大事です。今回の方は、病歴や心エコー所見(前壁の菲薄化)、そして後日届いた前医からの紹介状にあった数年前の心電図でも、同様な所見を確認できたので「陳旧性」と判断しました。当然、至急の対応などは不要ですよね。以上、“右足のキズ”(右脚ブロック)に潜む古い心筋梗塞の“爪痕”(異常Q波)を探す練習をしました。Take-home Message「脚ブロック」には“魔力”がある~「見落とし」や「深読み」に注意せよ右脚ブロック波形に紛れた異常Q波(とくにV1~V3誘導)を見逃すな!【古都のこと~宇治上神社~】皆さんは、宇治市には世界文化遺産が2つあることをご存じでしょうか? 一つは誰もが知る宇治平等院。もう一つはウジガミ神社、「氏神」ではなく「宇治上」と書く平等院の鎮守社*1です。平等院から宇治川を“川向こう*2”に渡って「さわらびの道*3」を行き、学問の神「宇治神社」*4にも参拝を済ませたら徒歩数分で赤鳥居に到着します。簡素な門をくぐって縋破風(すがるはふ)が美しい拝殿に対面。両横の円錐形の“清め砂”の存在感に背筋が伸びます。そして「桐原水」*5が湧き出ている手水舎側から裏手に回れば、世界遺産たる由縁の本殿(国宝)が姿を現します。平安時代後期に伐採された木材が使われ、神社建築としては現存最古になるとのこと。「一間社流造の内殿三棟*6」…素人のボクには「意外にアッサリしてるなぁ」というのが正直な感想(笑)。平等院と対照的なのは、ここ朝日山の山裾には“静”の空気が流れており、より精神が研ぎ澄まされるでしょう。最後に宮司お手製の限定御朱印をゲットすれば、秘かな宇治の魅力を堪能できます。皆さまもぜひ、平等院とともに訪れてみてください。*1:「(宇治)離宮明神」の神位を与えられており、宇治上神社の別称でもある。*2:宇治川(淀川の京都府内での名称)。*3:この辺りは光源氏の死後、薫君や匂宮を中心に描かれる『宇治十帖』の舞台にもなっている(「早蕨」は四十八帖)。*4:宇治上神社にも祀られる菟道稚郎子(うじのわきいらつこ:応仁天皇の末子)が祭神。聡明で百済で学問を究め皇太子となったが、異母兄の大鷦鷯尊(おおさざきのみこと、のちの仁徳天皇)に皇位を譲るべく自死したという美談に涙。宇治上神社と宇治神社は明治維新までは二者一体で、離宮上社・下社と呼ばれていた。*5:残存する「宇治七名水」はここのみ。三大銘茶の一つを支えた貴重な水と思われる。*6:いっけんしゃながれづくり。「一間社」は正面の柱間が一つのもの。「流造」は前面の屋根を長く伸ばしたスタンダードな神社形式の一つ。宇治上神社は内殿三棟を覆屋(後世にかけられた)が囲む様式で、一般的な神社とは異なる外観。写真では確認できないが、左右の社殿が中央よりも大きいのも特徴。

1615.

睡眠時間と認知症リスク~メタ解析

 睡眠時間と認知症リスクとの関連について、一貫性のない結果が疫学研究で報告されている。この関連性を明らかにするため、中国・Chinese PLA General HospitalのLi Fan氏らが、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2019年10月8日号の報告。 対象者には、コミュニティまたは臨床環境における認知症またはアルツハイマー病(AD)の患者と一般集団を含めた。睡眠時間とすべての原因による認知症またはADとの関連を調査したプロスペクティブコホート研究を、PubMed、EMBASE、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。睡眠時間(短時間または長時間vs.正常)とすべての原因による認知症またはADとの関連について、ランダム効果モデルと組み合わせた逆分散法を用いて検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・特定された研究は、すべての原因による認知症で7件、ADで6件であった。・プール解析では、長時間睡眠は、すべての原因による認知症リスクを77%(ハザード比[HR]:1.77、95%信頼区間[CI]:1.32~2.37)、ADリスクを63%(HR:1.63、95%CI:1.24~2.13)増加させることが示唆された。・短時間睡眠は、すべての原因による認知症(HR:1.20、95%CI:0.91~1.59)またはAD(HR:1.18、95%CI:0.91~1.54)のリスク増加との有意な関連は認められなかった。 著者らは「長時間睡眠のみが、認知症およびADリスク増加と有意な関連が認められた。この関連の根底にあるメカニズムをより理解するためにも、今後の研究が必要である」としている。

1616.

喫煙と認知症リスクの関連、禁煙後何年で消失?

 喫煙は認知症の危険因子として知られているが、禁煙によってリスクは減少するのだろうか。米国・ジョンズホプキンス大学School of Public HealthのJennifer A. Deal氏らが、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究で調べたところ、禁煙は認知症リスク減少に有益ではあるものの、禁煙期間に依存することがわかった。本研究では、禁煙後9年以上経過した場合に認知症発症との関連が消失し、認知症リスクを減らすためには中年早期に禁煙する重要性が示唆された。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2019年11月1日号に掲載。 ARIC研究は、1987~89年に始められた米国の4つのコミュニティーでの前向きコホート研究で、52〜75歳の1万3,002人の男女(25%がアフリカ系アメリカ人)が参加。認知症(すべての原因を含む)は、縦断的認知データ、代理報告書、病院および死亡証明書における認知症のコードを組み込んだ標準化アルゴリズムを用いて定義した。認知機能低下は、2つの時点(1996~98年および2011~13年)で測定された3つのテストによる複合認知スコアを用いて測定した。喫煙と禁煙は、1987~89年および1996~98年のデータを用いた自己申告によって定義した。認知症発症リスクと喫煙有無による認知機能低下の違いは、それぞれCox比例ハザードモデルと線形回帰モデルで推定した。 主な結果は以下のとおり。・非喫煙者、元喫煙者、現在喫煙者の割合は、44%、41%、14%であった。・元喫煙者の79%は、ベースライン時点で9年以上禁煙していた。・1,347人の参加者が認知症を発症した。・非喫煙者に対する現在喫煙者の認知症の調整ハザード比は1.33(95%信頼区間[CI] :1.12~1.59)、ベースライン時に禁煙から9年未満の元喫煙者は1.24(95%CI:1.01~1.52)であった。・ベースライン時に9年以上禁煙していた場合、認知症との関連はなかった。・認知機能低下率について喫煙の有無による差は認められなかった。

1617.

双極性障害患者のパーキンソン病発症リスク~メタ解析

 パーキンソン病では運動症状および非運動症状を呈するが、その10年以上前から気分障害が先行して起こる可能性がある。また、双極性障害は、うつおよび躁エピソードが周期的に出現する疾患であり、病態生理にドパミンが関連している可能性が示唆されている。ポルトガル・リスボン大学のPatricia R. Faustino氏らは、双極性障害とその後の特発性パーキンソン病との関連について評価を行った。JAMA Neurology誌オンライン版2019年10月14日号の報告。双極性障害患者はパーキンソン病の発症リスクが有意に高い可能性 2019年5月までのパーキンソン病、双極性障害、躁病に関連するエビデンスを、Cochrane Controlled Register of Trials、MEDLINE、Embase、PsycINFOより検索した。対象研究は、双極性障害の有無によるパーキンソン病発症の可能性に関して報告している研究とした。2人の独立したレビュアーが研究を選択し、データを抽出した。変量効果モデルを用いてデータをプールし、オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、I2を算出した。主要アウトカムは、パーキンソン病のORとした。 双極性障害とパーキンソン病発症との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・対象研究は7件(437万4,211例)であった。・双極性障害の診断歴は、その後の特発性パーキンソン病診断の割合を増加させた(OR:3.35、95%CI:2.00~5.60、I2=92%)。・バイアスリスクの高い研究を削除し感度分析を行ったところ、双極性障害患者ではパーキンソン病リスクの増加が認められた(OR:3.21、95%CI:1.89~5.45、I2=94%)。・研究デザインと診断の確実性に基づき事前に計画したサブグループ解析では、有意な影響は認められなかった。 著者らは「双極性障害患者では、一般集団と比較し、パーキンソン病の発症リスクが有意に高い可能性がある。しかし、サブグループ解析では、この関連性を過大評価している可能性が示唆された。このことから、双極性障害がその後のパーキンソン病発症と関連していることを考慮し、双極性障害患者のパーキンソニズムの特徴を鑑別診断することが重要である」としている。

1618.

日本人高齢者のてんかん有病率は中年の約3倍、その原因は~久山町研究

 てんかんは小児期から老年期まで、すべての年齢層でみられる一般的な慢性神経疾患である。運転中にドライバーが発作を起こせば重大事故につながるリスクがあり、たびたび社会問題としても報じられている。米国・ロチェスターにおける研究では、てんかんの発生率が乳児と高齢者で高く、有病率が加齢と共に増加することが報告されているが、国内における人口ベースの研究はほとんどない。今回、京都府立医科大学の田中 章浩氏らが久山町研究で調べたところ、高齢者におけるてんかん有病率は中年の約3倍であり、症例の半数以上が高齢で最初の発作を経験していることがわかった。研究結果は、Epilepsia誌に掲載され、現在、神戸市で開催されている第53回日本てんかん学会でも報告された。 本研究は、久山町研究のサブスタディとして実施。2012年6月~13年11月の期間に、地域居住の40歳以上(4,679例)を対象に、心血管リスク因子とてんかん発作の経験の有無についての調査を実施し、このうち3,333例(居住者の71.2%)が登録された。 調査は対面のインタビュー形式で、てんかんの既往歴の有無および現在抗てんかん薬を服用しているか否かについて聞き取りが行われた。既往歴の定義は、過去5年以内に少なくとも1回の発作を起こし、神経科医の医師などによって診断された活動性てんかんのエピソードを有するか、抗てんかん薬を使用し、治療を受けていることとした。 調査の結果、23例がてんかんと診断され、有病率は1,000人あたり6.9症例(95%信頼区間[CI]:4.1~9.7)であった。この結果に有意な性差は認められなかった(p=0.23)。年齢層でみると、40~64歳の中年層(1,000人あたり3.6症例、95%CI:0.7~6.4)よりも、65歳以上の高齢層(1,000人あたり10.3症例、95%CI:5.4~15.1)で有意に高く、その差は約3倍の開きがあった(p=0.02)。てんかんの主な原因は脳血管疾患であった(n=11、てんかん症例の48%)。また、症例の半数以上が、65歳以上で初回エピソードを経験していることもわかった(n=13、同57%)。 著者らは、「今回の研究結果は、高齢者の脳血管疾患と関連して、てんかんの有病率が増加することを示唆している。将来的なてんかんリスクを軽減するためにも、脳血管疾患の予防が非常に重要である」と述べている。

1619.

早産児、主要併存疾患なし生存の割合は?/JAMA

 スウェーデンにおいて、1973~97年に生まれた早産児のほとんどは、成人期初期から中年期まで主要併存疾患を伴わず生存していたが、超早産児については予後不良であった。米国・マウントサイナイ医科大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンのコホート研究の結果を報告した。早産は、成人期における心代謝疾患、呼吸器疾患および神経精神障害との関連が示唆されてきたが、主要併存疾患を有さない生存者の割合については、これまで不明であった。JAMA誌2019年10月22日号掲載の報告。1973~97年に生まれた約260万人を18~43歳まで追跡 研究グループは、1973年1月1日~1997年12月31日の期間にスウェーデンで生まれ、妊娠週数のデータがあり、2015年12月31日(18~43歳)まで生存と併存疾患に関する追跡調査を受けた全国住民256万6,699例について解析した。 主要評価項目は、超早産(22~27週)、極早産(28~33週)、後期早産(34~36週)、早期正期産(37~38週)で生まれた人と、満期正期産(39~41週)で生まれた人の主要併存疾患のない生存率であった。 併存疾患は、思春期および若年成人に一般的に現れる神経精神障害等を評価するAdolescent and Young Adult Health Outcomes and Patient Experience(AYA HOPE:思春期および若年成人の健康転帰と患者の体験)Comorbidity Indexを用いて定義するとともに、成人期の死亡率を予測する主要慢性疾患等を評価するCharlson Comorbidity Index(CCI)を用いて定義した。AYA HOPE併存疾患なし54.6%、CCI併存疾患なし73.1% 解析対象集団のうち、48.6%が女性、5.8%が早産で、追跡期間終了時の年齢中央値は29.8歳(四分位範囲12.6歳)であった。 追跡期間終了時でのAYA HOPE併存疾患なしの生存者の割合は、全早産出生者で54.6%(超早産22.3%、極早産48.5%、後期早産58.0%)、早期正期産で61.2%、満期正期産で63.0%であった。この割合は、満期正期産出生者と比較して全早産出生者で有意に低下した(補正後率比:超早産0.35[95%信頼区間[CI]:0.33~0.36、p<0.001]、全早産0.86[95%CI:0.85~0.86、p<0.001]、補正率比の差:超早産-0.41[95%CI:-0.42~-0.40、p<0.001]、全早産-0.09[95%CI:-0.09~-0.09、p<0.001])。 また、CCIで評価した併存疾患を有することなく生存していた人の割合は、全早産73.1%、超早産32.5%、極早産66.4%、後期早産77.1%、早期正期産80.4%、満期正期産81.8%であった(補正後率比 超早産:0.39[95%CI:0.38~0.41、p<0.001]、全早産:0.89[95%CI:0.89~0.89、p<0.001]、補正後率比の差 超早産:-0.50[95%CI:-0.51~-0.49、p<0.001]、全早産:-0.09[95%CI:-0.09~-0.09、p<0.001])。

1620.

元プロサッカー選手、神経変性疾患死3.45倍/NEJM

 元プロサッカー選手は、神経変性疾患による死亡率が高く、一般的な疾患での死亡率は低いことが示された。英国・グラスゴー大学のDaniel F. Mackay氏らによる、スコットランドの元プロサッカー選手7,676例を対象とした後ろ向き適合コホート研究の結果で、元選手は認知症関連治療薬の処方率も高かったという。神経変性疾患は、コンタクトスポーツのエリート選手で報告されている。元プロサッカー選手の神経変性疾患の発症率については明らかにされていなかった。著者は、「今回観察された結果について、前向き適合コホート研究を行い確認する必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2019年10月21日号掲載の報告。スコットランドの元プロサッカー選手と適合コホートを比較分析 研究グループは、スコットランドの選手データベースから、元プロサッカー選手7,676例と、性別、年齢、社会的剥奪(social deprivation)の程度で適合した一般住民の対照コホート2万3,028例について、後ろ向きコホート研究を行い、神経変性疾患死亡率を比較した。 死因については、死亡診断書で特定した。また、認知症治療薬の処方データについても比較した。処方情報は、全国処方情報システムから入手した。アルツハイマー病死のリスクが最も高く5.07倍 中央値18年以上の追跡において、元サッカー選手群では1,180例(15.4%)が、対照群では3,807例(16.5%)が死亡した。全死因死亡率は、70歳までは元サッカー選手群が対照群よりも低かったが、その後は逆に高かった。 虚血性心疾患による死亡リスクは、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.02)。また、肺がんによる死亡リスクも、元サッカー選手群で有意に低かった(同:0.53、0.40~0.70、p<0.001)。 一方で神経変性疾患による死亡率は、元サッカー選手群1.7%、対照群0.5%で有意に高率だった(虚血性心疾患死・全がん死の競合リスク補正後HR:3.45、95%CI:2.11~5.62、p<0.001)。元サッカー選手において、死亡診断書で神経変性疾患が死因・要因と記述されていた死亡は、疾患のサブタイプによってばらつきがあった。最も頻度が高かったのはアルツハイマー病で(元サッカー選手群vs.対照群のHR:5.07、95%CI:2.92~8.82、p<0.001)、最も低かったのはパーキンソン病だった(2.15、1.17~3.96、p=0.01)。 認知症関連治療薬の処方率も、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に高率だった(オッズ比[OR]:4.90、95%CI:3.81~6.31、p<0.001)。 元サッカー選手の中で、神経変性疾患が死因・要因の割合は、元ゴールキーパーと元フィールド・プレーヤーで有意差はなかった(HR:0.73、95%CI:0.43~1.24、p=0.24)。しかし、認知症関連治療薬の処方率は、元ゴールキーパーが元フィールド・プレーヤーより有意に低率だった(OR:0.41、95%CI:0.19~0.89、p=0.02)。

検索結果 合計:2798件 表示位置:1601 - 1620