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抗CGRP抗体エレヌマブによる急性頭痛薬の減少効果

 トリプタンやエルゴットなどの片頭痛に特異的な治療薬(migraine-specific medication:MSM)を含む急性期治療薬の過度な使用は、薬物乱用頭痛の出現など健康への悪影響につながる可能性がある。米国・Geisel School of Medicine at DartmouthのStewart J. Tepper氏らは、反復性および慢性片頭痛患者における急性期治療薬(とくにMSM)の減少に対するエレヌマブの効果について調査を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年7月23日号の報告。 2つのエレヌマブの研究(反復性片頭痛患者955例および慢性片頭痛患者667例を対象とした試験とその後続試験)における二重盲検治療段階のデータを用いて、事後分析を行った。対象患者には、エレヌマブ(70または140mg)またはプラセボの月1回皮下投与を行った。毎日の急性期治療薬(MSMおよび非MSM)の使用については、治療開始4週前(ベースライン期間)から治療期間終了まで電子日誌を用いて記録した。アウトカムは、ベースライン時の急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化、ベースライン時のMSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化、ベースライン時の非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化として、測定を行った。 主な結果は以下のとおり。・すべての急性頭痛薬使用患者のうち、反復性片頭痛患者の60%、慢性片頭痛患者の78%に対し、ベースライン時のMSM使用が確認された。・反復性片頭痛患者を対象とした研究における二重盲検前と比較した4、5、6ヵ月目の各アウトカムは、以下のとおりであった。 ●急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化  プラセボ群:1.5日、エレヌマブ70mg群:2.5日、エレヌマブ140mg群:3.0日 ●MSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化  プラセボ群:0.5日、エレヌマブ70mg群:2.1日、エレヌマブ140mg群:2.8日 ●非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化  プラセボ群:2.3日、エレヌマブ70mg群:2.6日、エレヌマブ140mg群:2.7日・慢性片頭痛患者を対象とした研究における二重盲検前と比較した3ヵ月目の各アウトカムは、以下のとおりであった。 ●急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化  プラセボ群:3.4日、エレヌマブ70mg群:5.5日、エレヌマブ140mg群:6.5日 ●MSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化  プラセボ群:2.1日、エレヌマブ70mg群:4.5日、エレヌマブ140mg群:5.4日 ●非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化  プラセボ群:5.9日、エレヌマブ70mg群:6.4日、エレヌマブ140mg群:6.6日・MSM使用日数の減少効果は、両研究の後続試験においても持続していた。・エレヌマブは、反復性片頭痛および慢性片頭痛のいずれにおいても、プラセボと比較し、MSM使用患者の1ヵ月当たりのMSM使用日数がベースラインから50%以上、75%以上、100%減少が認められる患者の割合が高かった。 著者らは「エレヌマブ治療は、反復性片頭痛および慢性片頭痛のいずれにおいても、急性頭痛薬、とくにMSMの使用を有意に減少させ、その効果が持続することが示唆された」としている。

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認知刺激の強い仕事は高齢期の認知症リスクを低下させる可能性/BMJ

 認知刺激が強い労働に従事している人々は、認知刺激が弱く受動的な労働に就いている人々と比較して、高齢期の認知症のリスクが低く、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害する血漿タンパク質のレベルが低下していることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMika Kivimaki氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月18日号で報告された。3つの解析を行うマルチコホート研究 研究グループは、認知刺激が強い労働と、後年の認知症リスクの関連を評価し、この関連に関与するタンパク質生合成経路の特定を目的にマルチコホート研究を行った(NordForskなどの助成を受けた)。 本試験では、英国、欧州、米国のデータを用いて次の3つの解析が行われた。(1)解析1:認知刺激と認知症の関連、対象はIPD-Work consortium(individual participant data meta-analysis in working populations)による7つの人口ベースの前向きコホート研究の参加者10万7,896人、(2)解析2:認知刺激とタンパク質の関連、対象はWhitehall II試験の参加者の無作為抽出標本2,261人、(3)解析3:タンパク質と認知症の関連、対象はWhitehall II試験の参加者の無作為抽出標本とARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)試験の参加者で合計1万3,656人。 認知刺激は、ベースライン時に能動的職務と受動的職務に関する標準的な質問票を用いて評価され、ベースラインおよびそれ以降は経時的に、仕事への曝露マトリックス指標を使用して評価された。また、Whitehall II試験の無作為抽出標本2,261人の血漿試料を用いて、4,953種のタンパク質の解析が行われた。 認知症発症者の平均追跡期間は、コホートによって13.7~30.1年の幅が認められた(全体の平均追跡期間は16.7[SD 4.9]年)。認知症発症者は、電子健康記録と臨床検査の反復で特定された。認知症の生物学的機序解明の手掛かりの可能性 認知刺激-認知症解析(解析1)に含まれた10万7,896人のベースラインの平均年齢は44.6(SD 9.5)歳で、6万2,816人(58.2%)が女性、4万5,080人(41.8%)は男性であった。2万9,243人(27.1%)が認知刺激が弱い仕事、5万724人(47.0%)が認知刺激が中等度の仕事、2万7,929人(25.9%)は認知刺激が強い仕事に従事していた。180万1,863人年の期間に、1,143人が認知症を発症した。 認知症のリスクは、強認知刺激職務従事者のほうが弱認知刺激職務従事者に比べて低く(1万人年当たりの認知症の粗発生率:強認知刺激職務群4.8件vs.弱認知刺激職務群7.3件、年齢と性別で補正したハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.92)、コホート間の異質性に有意な差は認められなかった(I2=0%、p=0.99)。 この関連は、教育や成人の認知症リスク因子(ベースラインの喫煙、大量アルコール摂取、運動不足、過緊張な仕事、肥満、高血圧、糖尿病罹患率)、認知症診断前の心代謝性疾患(糖尿病、冠動脈性心疾患、脳卒中)の補正を追加しても、頑健性が保持されていた(全補正後HR:0.82、95%CI:0.68~0.98)。 また、弱認知刺激職務群の認知症リスクは、追跡開始から10年(HR:0.60、95%CI:0.37~0.95)および10年以降(0.79、0.66~0.95)にも観察され、認知刺激の職務曝露マトリックス指標による評価でも再現された(認知刺激の1標準偏差[SD]上昇当たりのHR:0.77、95%CI:0.69~0.86)。 多重比較による解析(解析2)では、強認知刺激職務群は弱認知刺激職務群に比べ、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害するタンパク質のレベルが低かった(slit homologue 2[SLIT2、全補正後β〔タンパク質レベルの1SD上昇当たり〕:-0.34、p<0.001]、炭水化物スルホトランスフェラーゼ12[CHSTC、全補正後β:-0.33、p<0.001]、ペプチジルグリシンαアミド化モノオキシゲナーゼ[AMD、全補正後β:-0.32、p<0.001])。 これらのタンパク質は認知症リスクの増加と関連しており、1SD当たりの全補正後HRは、SLIT2が1.16(95%CI:1.05~1.28)、CHSTCが1.13(1.00~1.27)、AMDは1.04(0.97~1.13)だった(解析3)。 著者は、「認知刺激が、軸索形成やシナプス形成を阻害し認知症のリスクを高める可能性のある血漿タンパク質レベルの低下と関連しているとの知見は、認知症の根本的な生物学的機序の解明の手掛かりとなる可能性がある」としている。

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コロナ禍のコミュニケーション【コロナ時代の認知症診療】第6回

認知症の最大の危険因子?「中年期からの難聴」2017年に「中年期からの難聴」が認知症の最大の危険因子だと報告されて以来、難聴への注目が高まった。これは予防のみならず、認知症になっても心身機能を維持する上で不可欠だと、筆者は経験的に思う。なぜ危険因子かについては、難聴からコミュニケーション不足、そこから孤立・うつ、そして認知症という考え方が主流のようだ。一方で我が国の認知症者の約80%は80歳以降だが、この世代において、コミュニケーション不足は脳の刺激・トレーニング不足になると考える。つまり受動的には聞き取りが困難になり、能動的には自らの考えをまとめ文章に練り上げて発声する機会が減る。聞き取りでは、一般的な難聴も多いが、実は音は聞こえているのに瞬時に意味が頭に沁みないケースも少なくない。難聴を専門とする耳鼻科医はこれを「われわれが未知の外国語を聞くようなもの」と表現した。加えて彼は「もう一つ、高齢者にはご都合性難聴もあるからね」と笑って言った。喋るという能動面では、高齢者の声は枯れ、小さくなり、不明瞭になりがちだ。こうした加齢性音声障害の原因は喉頭の筋力低下だが、これは同時に誤嚥の原因にもなる。そこに肺機能の低下も重なれば嚥下性肺炎のリスクも高まる。だとすると難聴が認知症発症の危険因子であったり、認知症をさらに悪化させたりしても不思議ではないと思う。加齢と声の出にくさの関係さて加齢と声の関係は以前から何となく知っていたが、恥ずかしながら声はどうしてできるかの生理学的メカニズムを知らなかった。そこで都内の大型書店に行って調べてみた。すぐにわかったのは「パタカラ体操」に代表される嚥下訓練の書がまさに溢れていることである。いい声になる、カラオケで上手に歌うための指導書も多い。それらはほぼすべて喉から上、つまり喉頭、咽頭から口腔を基盤に記述されている。ところが声が生まれるメカニズムという基本は医学書でも多少とも詳しいものが容易にみつからなかった。ようやくわかったことは以下のようにまとめられる1)。関わる器官はいわゆる口、喉頭、気管、肺である。まず音の発生源は肺だと読んで「ほーっ」と思った。そこで生まれた音エネルギーが喉頭、そして口腔などの器官に伝わり、加工をされて音になってでてくるのだそうだ。少し付け加えると、声は肺からの呼気流をエネルギー源とする。肺では、呼気筋群と吸気筋群の調節が行われ、空気の流れが作られる。音源を作り出す肺の呼吸運動では横隔膜そして肋間筋そして外腹斜筋等が大きな関わりをしている。喉頭では喉頭筋群が関わる。そして声帯が、音の振幅と周波数および振動などを調節している。これまで加齢性音声障害の対策として、大きな声で楽しく会話したり歌ったりすることが推奨されてきた。これが出来ないのが当世だが、病院や施設なら毎日1回ラジオ体操的に戸外や屋上で、十分な距離を取って誰もが知る歌などを大声で合唱してみるのもいいかもしれない。個人ならもっと容易にできるだろう。いずれにしても肺に力を入れると意識して、「ウン!」と動かすのが大事だなと思っている。制限のある中でどうコミュニケーションをとっていくかマスクをつけてアクリル板越しの会話が当たり前になった。だから私自身が聞き取れない、わかってもらえないやりとりをしょっちゅう経験している。そこで自助努力の他に優れもの機器の利用もある。最近のハイテク商品では、外付け補聴器もある。高価なこれも使っている筆者としては、実は量販店にあるような拡声器も結構役立つと思っている。慎重に音量を調整してアクリル板の向こうから話してもらう。また拡声器を反対に向けてこちらが返事をすることもある。なお拡声器の値段はピンキリながら、経験的には1万円位の品で実用に足りる。ところでIT音痴は現代版のコミュニケーション不足だと述べても、コロナ禍では、過言でなくなっている。昨年来、容易に家族間の面会が出来なくなった病院や施設では、スマホを介した動画のやり取りがとくに家族に喜ばれるようになった。このTV電話に代表されるようにITを介したやりとりでは、双方向性が要である。これを備えた機器がこれからの主流だろう。しかしIT機器と聞いただけで逃げ出す高齢者は多い。また施設の若い職員であっても、IT機器を十分使いこなせる人はそう多くない。またなにより操作が煩雑で、高齢利用者ごとに機器を立ち上げ、傍らで付き添うならその負担は大きい。そこでIT が使えない人に対して普通は若い送り手から高齢利用者に一方向性で画像や音声などを送る装置はすでにあった。最近では、高齢者がオプションとなる機器を用いてTV画面上で双方向性のやりとりを実現できる装置も生まれている。こうした新情報も集めつつ、飛沫感染をさけた双方向性を実現できる環境を整えることがコロナ時代には1つのポイントになる。参考文献・参考情報1)本田清志.音声学・言語学 第2版.医学書院.2020.第2章音声学.pp6-19.

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歯周病とアルツハイマー病リスク~メタ解析

 歯周病とアルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)との関連を調査した研究結果は、一貫性が認められておらず、2017年に発表されたメタ解析では、不十分な研究が含まれていた。中国・上海交通大学のXin Hu氏らは、歯周病とADまたはMCIのリスクとの相関をシステマティックに評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年7月11日号の報告。 2人の研究者が独立して、各種データベース(CENTRAL、PubMed、EMBASE、China National Knowledge Interne、China Science and Technology Journal Database、Wanfang Data、www.ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform)より言語制限なしでスクリーニングを行った。含まれた研究の不均一性に応じて、変量効果モデルまたは固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした13件の研究(AD:8件、29万1,114例、MCI:8件、4,805例)をメタ解析に含めた。・プールされた結果では、歯周病患者は、非歯周病患者と比較し、ADおよびMCIのリスクが有意に高かった。 ●ADのオッズ比:1.78(95%CI:1.15~2.76) ●MCIのオッズ比:1.60(95%CI:1.24~2.06)・とくに重度の歯周病患者では、ADおよびMCIのリスクがより高かった。 ●ADのオッズ比:4.89(95%CI:1.60~14.97) ●MCIのオッズ比:2.32(95%CI:1.24~4.36) 著者らは「歯周病は、ADやMCIのリスク上昇と関連しているため、早期介入が必要であろう」としている。

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。VITT有無別の転帰を評価する英国のコホート研究 CAIAC collaboratorsは、VITTの有無を問わず、ワクチン接種後の脳静脈血栓症の特徴を記述し、VITTの存在がより不良な転帰と関連するかを検証する目的で、多施設共同コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19ワクチン接種後に脳静脈血栓症を発症した患者の治療に携わる臨床医に対し、ワクチンの種類や接種から脳静脈血栓症の症状発現までの期間、血液検査の結果にかかわらず、すべての患者のデータを提示するよう要請が行われた。 脳静脈血栓症患者の入院時の臨床的特徴、検査結果(血小板第4因子[PF4]のデータがある場合はこれを含む)、画像所見が収集された。除外基準は設けられなかった。 VITT関連の脳静脈血栓症は、入院期間中の血小板数の最低値が<150×109/L、Dダイマー値が測定されている場合はその最高値が>2,000μg/Lと定義された。 主要アウトカムは、VITTの有無別の、入院終了時に死亡または日常生活動作が他者に依存している患者(修正Rankinスコア3~6点[6点=死亡])の割合とされた。また、VITTの集団では、International Study on Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis(ISCVT)に登録された脳静脈血栓症の大規模コホートとの比較が行われた。主要アウトカム:47% vs.16% 2021年4月1日~5月20日の期間に、英国43施設の共同研究者から脳静脈血栓症99例のデータが寄せられた。このうち4例は、画像で脳静脈血栓症の明確な所見が得られなかったため解析から除外された。残りの95例のうち、70例でVITTが認められ、25例は非VITTであった。 年齢中央値は、VITT群(47歳、IQR:32~55)が非VITT群(57歳、41~62)よりも低かった(p=0.0045)。女性はそれぞれ56%および44%含まれた。ISCVT群は624例で、年齢中央値37歳(VITT群との比較でp=0.0001)、女性が75%(同p=0.0007)を占めた。 ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)ワクチンの1回目接種後に脳静脈血栓症を発症した患者が、VITT群100%(70例)、非VITT群84%(21例、残り4例のうち3例はBNT162b2[Pfizer-BioNTech製]の1回目接種後、1例は同2回目接種後)であり、接種から脳静脈血栓症発症までの期間中央値はそれぞれ9日(IQR:7~12)、11日(6~21)だった。 VITT関連脳静脈血栓症群は非VITT関連脳静脈血栓症に比べ、血栓を形成した頭蓋内静脈数中央値が高く(3[IQR:2~4]vs.2[2~3]、p=0.041)、頭蓋外血栓症の頻度が高かった(44%[31/70例]vs.4%[1/25例]、p=0.0003)。 退院時に修正Rankinスコアが3~6点の患者の割合は、VITT群が47%(33/70例)と、非VITT群の16%(4/25例)に比べて高かった(p=0.0061)。また、VITT群におけるこの有害な転帰の頻度は、非ヘパリン抗凝固療法を受けた集団が受けなかった集団に比べて低く(36%[18/50例]vs.75%[15/20例]、p=0.0031)、直接経口抗凝固薬投与の有無(18%[4/22例]vs.60%[29/48例]、p=0.0016)および静脈内免疫グロブリン投与の有無(40%[22/55例]vs.73%[11/15例]、p=0.022)でも有意な差が認められた。 著者は、「VITT関連脳静脈血栓症は他の脳静脈血栓症に比べ転帰が不良であることが明らかとなったが、VITTはChAdOx1ワクチン接種によるきわめてまれな副反応であり、COVID-19に対するワクチン接種の利益はリスクをはるかに上回る」としている。

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新「内科専門医」と「総合内科専門医」、年代・診療科別の取得予定は?医師1,000人に聞きました

 9月に実施が予定されていた「総合内科専門医」試験は来年度に延期となったが、新「内科専門医」試験は2021年7月に初めて実施され、従来の「認定内科医」試験は6月が最後の試験となった。今後の取得予定について、医師たちはどのように考えているのか? CareNet.comの内科系診療科の会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年度総合内科専門医試験について延期発表前の2021年8月12日~13日実施)。新「内科専門医」は約27%が取得予定と回答 回答者の属性としては、30代が35.6%と最も多く、40代(26.6%)、50代(20.5%)と続いた。既取得の認定医・専門医・指導医資格としては「内科認定医」が最も多く、60%以上が取得していた。総合内科専門医についても約36%の医師が既取得であり、約14%が内科指導医資格を有していた。 今年初めて試験が実施され、機構認定の内科系のサブスぺシャリティ領域専門医の基本領域資格となる新「内科専門医」については、26.6%の医師が取得予定(受験済も含む)と回答。年代別にみると20代は78.7%、30代では29.3%、40代では26.6%が取得予定と回答した。また、20~50代の各年代でそれぞれ10%ほどが「迷っている」と回答している。 母数等が異なるため厳密な比較はできないが、診療科別にみると、血液内科(37.5%)、腎臓内科(36.7%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(35.1%)などで取得予定と答えた医師が多い傾向がみられた。「総合内科専門医」は取得済・取得予定を合わせると半数以上 「総合内科専門医」を取得予定と答えたのは17.0%で、取得済の36.1%と合わせると過半数となった。年代別では、40代(58.1%)、50代(50.2%)で既取得の医師が多かった一方、20代で取得予定と回答したのは17.6%に留まり、新「内科専門医」と比較すると低かった。 診療科別にみると、腎臓内科(46.7%)や呼吸器内科(46.3%)で既取得の医師が多く、取得予定と合わせると6~7割を占める一方、総合診療科(既取得:16.7%、取得予定:23.3%)や膠原病・リウマチ科(既取得:21.4%、取得予定:32.1%)では低い傾向がみられた。J-OSLERへのリアルな悲鳴、制度の複雑さ嘆く声など 新専門医制度に対する疑問や困っている点について自由記述で尋ねた問いに対しては、さまざまな回答が寄せられた。20~30代の医師からは、「J-OSLERにより取得過程の負担が増加している(20代、神経内科)」、「J-OSLERの登録を臨床を行いながら行うのは非常に難しい(30代、神経内科)」など、専攻医登録評価システム(J-OSLER)の煩雑さを指摘する声のほか、「コロナ禍で剖検症例が圧倒的に不足している(20代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」、「試験の延期も対応が中途半端で内科学会に振り回されている(30代、呼吸器内科)」などの声が上がった。また、サブスぺ領域がどうなるのかの正式な発表が遅れていることを指摘する声も多くみられた。 40~60代の医師からは、「正直わけがわからなくなっています(50代、内科)」、「複雑すぎる。提唱している水準は担保されているのか? お金集めだけにもみえる(60代、内科)」といった率直な声のほか、「旧制度、新制度両方に言えるが、職場からは取得して欲しいと頼まれるが、それに対する金銭的なサポートが全くない。専門医更新にもお金がかかる(40代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」など、取得のメリットとそのサポート体制の不足を指摘する声が多くみられた。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新「内科専門医」・「総合内科専門医」の取得予定は?-会員1,000人アンケート

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抗CGRP抗体フレマネズマブ治療後の頭痛重症度と期間の変化

 フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたヒト化モノクローナル抗体であり、片頭痛回数の減少が期待できる薬剤である。デンマーク・コペンハーゲン大学のMessoud Ashina氏らは、慢性片頭痛(CM)または反復性片頭痛(EM)患者を対象に、抗CGRP抗体フレマネズマブ治療による頭痛発作の重症度と期間に対する影響を評価した。Headache誌2021年6月号の報告。 3つの12週間ランダム化二重盲検第III相試験(HALO CM、HALO EM、FOCUS)のデータを用いて、探索的事後分析を実施した。3つの試験いずれにおいても、CMまたはEM患者をフレマネズマブ3ヵ月に1回投与群(1ヵ月目:フレマネズマブ675mg、2ヵ月目:プラセボ、3ヵ月目:プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(1ヵ月目[CM]:フレマネズマブ675mg、1ヵ月目[EM]:225mg、2ヵ月目以降:225mg)、プラセボ月1回投与群に1対1対1の割合で割り付けられた。中~重度の頭痛日数の割合、ピーク時の頭痛重症度、毎月の平均頭痛時間(任意の重症度および中等度以上の重症度)、1日当たりの平均頭痛時間(すべての重症度)について、ベースラインからの変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化された2,843例中2,823例(HALO CM:1,121例、HALO EM:865例、FOCUS:837例)を分析に含めた。・3つの試験の各群におけるベースライン時の中~重度の1ヵ月当たりの頭痛日数の平均値は以下のとおりであった。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:13.2±5.5日 ●フレマネズマブ月1回投与群:12.8±5.8日 ●プラセボ月1回投与群:13.3±5.8日 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:7.2±3.1日 ●フレマネズマブ月1回投与群:6.8±2.9日 ●プラセボ月1回投与群:6.9±3.1日 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:12.4±5.8日 ●フレマネズマブ月1回投与群:12.7±5.8日 ●プラセボ月1回投与群:12.8±5.9日・12週間後、中~重度の1ヵ月当たりの頭痛日数は、ベースラインと比較し、最小二乗平均(LSM)の割合の有意な減少が認められた(各々、vs.プラセボ群:p<0.0001)。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-34.5%(95%CI:-39.8~-29.2) ●フレマネズマブ月1回投与群:-36.2%(95%CI:-41.4~-31.0) ●プラセボ月1回投与群:-19.6%(95%CI:-20.0~-14.3) 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-40.7%(95%CI:-47.8~-33.5) ●フレマネズマブ月1回投与群:-43.4%(95%CI:-50.4~-36.3) ●プラセボ月1回投与群:-17.9%(95%CI:-24.9~-11.0) 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-36.5%(95%CI:-41.9~-31.1) ●フレマネズマブ月1回投与群:-38.6%(95%CI:-44.0~-33.3) ●プラセボ月1回投与群:-3.5%(95%CI:-8.9~1.8)・3つの試験の各群におけるベースライン時の中~重度の1ヵ月当たりの頭痛時間の平均値は以下のとおりであった。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:66.4±58.8時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:68.0±53.9時間 ●プラセボ月1回投与群:68.5±57.0時間 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:33.3±25.4時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:31.7±23.7時間 ●プラセボ月1回投与群:31.6±23.2時間 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:59.2±54.7時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:64.3±65.2時間 ●プラセボ月1回投与群:65.9±70.2時間・中~重度の1ヵ月当たりの頭痛時間は、ベースラインと比較し、LSM値の有意な減少が認められた(各々、vs.プラセボ群:p<0.001)。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-24.4±2.5時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-26.4±2.3時間 ●プラセボ月1回投与群:-14.1±2.5時間 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-14.5±1.4時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-15.5±1.3時間 ●プラセボ月1回投与群:-8.1±1.3時間 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-16.8±3.0時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-18.3±3.0時間 ●プラセボ月1回投与群:-2.3±3.0時間 著者らは「フレマネズマブの3ヵ月に1回または月1回投与による治療は、CMまたはEM患者の頭痛重症度と期間を有意に減少させることが示唆された。これらの患者の中には、2~4クラスの既存の片頭痛予防に奏効しなかった患者も含まれており、フレマネズマブは、難治性片頭痛患者の治療において期待できる薬剤であると考えられる」としている。

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「セレニカR」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第65回

第65回 「セレニカR」の名称の由来は?販売名セレニカR顆粒40%セレニカR錠200mgセレニカR錠400mg一般名(和名[命名法])バルプロ酸ナトリウム(JAN)効能又は効果○各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療。○躁病および躁うつ病の躁状態の治療。○片頭痛発作の発症抑制。用法及び用量〈各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉通常、バルプロ酸ナトリウムとして400~1200mgを1日1回経口投与する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。〈片頭痛発作の発症抑制〉通常、バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)〈効能共通〉1.重篤な肝障害のある患者2.カルバペネム系抗生物質を投与中の患者3.尿素サイクル異常症の患者[重篤な高アンモニア血症があらわれることがある。]〈片頭痛発作の発症抑制〉4.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2021年8月18日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年9月改訂(第20版)医薬品インタビューフォーム「セレニカ®R顆粒40%、セレニカ®R錠200mg/R錠400mg」2)興和株式会社:製品情報検索

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片頭痛発作の発症抑制薬、アイモビーグ皮下注発売/アムジェン

 アムジェン株式会社は2021年8月12日、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤 エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ)を発売したことを発表した。本剤は2021年6月に「片頭痛発作の発症抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得していた。 本剤はCGRP受容体を阻害することで片頭痛患者における片頭痛を予防できるように特異的にデザインされた完全ヒトモノクローナル抗体。複数の臨床試験で本剤の安全性および有効性が検討されている。4,000人以上の患者が本臨床試験プログラムに参加した。アイモビーグは、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、スイスメディック(Swissmedic)、オーストラリア医療製品管理局(TGA)など、世界の多くの規制当局から成人の片頭痛予防薬として承認されている。製品概要販売名:アイモビーグ皮下注70mgペン一般名:エレヌマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:片頭痛発作の発症抑制効能又は効果に関する注意:・十分な診察を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。・最新のガイドライン等を参考に、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療等を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること。用法及び用量:通常、成人にはエレヌマブ(遺伝子組換え)として70mgを4週間に1回皮下投与する。製造販売承認日:2021年6月23日薬価基準収載日:2021年8月12日発売日:2021年8月12日薬価:アイモビーグ皮下注70mgペン 41,356円製造販売元:アムジェン株式会社

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脊髄性筋萎縮症で初の経口治療薬エブリスディ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は、8月12日に乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬であるリスジプラム(商品名:エブリスディ)のドライシロップ60mgの販売を開始した。本製品はSMAで初の経口の治療薬であり、患者・患児の治療での利便性の向上が期待される。 SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により筋萎縮や筋力低下を示す遺伝性の神経筋疾患。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患で、乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされる。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患。 リスジプラムは、SMN(survival motor neuron)タンパクの欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、SMAを治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤。SMNタンパクレベルを増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されている。SMNタンパクは全身にみられ、運動神経と運動機能の維持に重要な働きをする。リスジプラムは、2020年8月に米国で、2021年3月に欧州で承認を取得し、わが国では同年6月23日に製造販売承認を取得している。 同社では、「本治療薬は、乳児から成人までの広い年齢層で有効性を示し、経口剤のため在宅治療が可能となる。SMAの患者とその家族の皆様に、新たな治療選択肢によるこれまでにない価値を届けられるように、適正使用の推進に努めていきたい」と抱負を語っている。製品概要販売名:エブリスディ ドライシロップ 60mg一般名:リスジプラム効能・効果:脊髄性筋萎縮症用法・用量:通常、生後2ヵ月以上2歳未満の患者にはリスジプラムとして、0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与する。通常、2歳以上の患者にはリスジプラムとして、体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与する。薬価:エブリスディ ドライシロップ60mg 97万4,463.70円/1瓶承認日:2021年6月23日薬価基準収載日:2021年8月12日販売開始日:2021年8月12日

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腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021、“腰痛の有無”を削除

 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』が5月に発刊された。2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新した。そこで、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン(GL)策定委員長の川上 守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授/済生会和歌山病院 院長)に、脊柱管狭窄症の評価方法や難渋例などについて話を聞いた。腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインに“腰痛の有無は問わない”基準 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の“定義”自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のとおりに「腰痛の有無は問わない」と明記された。<診断基準>(1)殿部から下肢の疼痛やしびれを有する(2)殿部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する(3)腰痛の有無は問わない(4)臨床初見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する その理由は、脊柱管や椎間板の狭小化による神経組織や血流の障害から惹起される腰痛と非特異的腰痛を鑑別する確立された評価法がないためである。さらに、川上氏によると「ガイドライン作成の基本は論文査続だが、腰痛の定義が一致していないことが問題で、臀部の痛みを腰痛に含める場合もある。腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021の6ページにあるように、腰痛を明確に鑑別することができないことから『腰痛の有無を問わない』とした。ただし、診断基準の(1)(2)(4)は従来通りで、これが揃えば腰部脊柱管狭窄による症状であると判断できる」と説明した。 一方で、「腰部脊柱管狭窄症患者の腰痛が除圧術で良くなったという報告がある。臀部痛を腰痛に含めた場合には神経障害性の痛みである可能性があり、神経除圧で腰痛が改善する例もある。前任地の和歌山県立医科大学紀北分院では、腰部脊柱管狭窄症患者の腰痛を明確に定義して、他の症状や画像所見との関係を調査した。その結果は投稿中だが、狭窄の程度や有無よりも椎間板や終板の障害と関連することが明らかとなったので、次回の腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂には引用してもらえるのではと考えている」とも話した。腰部脊柱管狭窄症診断ツールの利用とその状況、紹介タイミング 診断に有用な病歴や診察所見は、NASS(North American Spine Society)ガイドラインやISSLS(International Society for the Study of the Lumbar Spine)のタスクフォースによる国際的調査で報告された7つの病歴などに基づいている。また、診断ツールとしては、初版より“腰部脊柱管狭窄症診断サポートツール”(p12.表1)の使用が推奨されており、専門医のみならず、プライマリ・ケア医による診断、患者の自己診断にも有用とされる。 診断ツールの普及率や実際の使用例について、同氏いわく「このツールは広く使われているのではないか。と言うのは、優秀な友人の内科医が、“立位で下肢痛あり、ABI 0.9以上、下肢深部腱反射消失した75歳の女性を、腰部脊柱管狭窄症サポートツール8点と紹介状につけて紹介してくれたことがあった。実際は、変形性膝関節症だったが、地域でプライマリ・ケアを担っている先生が使ってくれているのだなぁと実感したことがあった」とし「しかしながら、腰部脊柱管狭窄症サポートツールは参考にはなるものの、最終的な診断は画像所見を含めて整形外科医、脊椎外科医にお願いしてほしい。7点をカットオフ値に設定した場合の感度は92.8%、特異度は72.0%である」と専門医への紹介理由を補足した。腰部脊柱管狭窄症、非専門医が鑑別できる症例と難しい症例 腰部脊柱管狭窄症と鑑別すべき疾患には“末梢動脈疾患などの血管性間欠跛行”がある。一般的にはABIを使って鑑別するが、非専門医などでABIを導入していない場合は「足背動脈や後脛骨動脈が触知するかどうかでABIの代わりになるだろう。また、糖尿病や高血圧症などの併存疾患があり、上述した動脈に触れない、または触れにくい場合には、専門医に紹介することを推奨している」と専門医への紹介タイミングにも触れた。 一方で、脊柱管狭窄症と鑑別が難しいのは、慢性硬膜下血腫、脳梗塞、パーキンソン病、頚髄症、胸髄症、末梢神経障害、そして末梢動脈疾患(PAD)の存在だ。同氏は「腰部脊柱管狭窄症と紹介された人の中に、実際はほかの疾患であった患者さんが結構いたのは事実。今はMRIが簡単に撮像できるが、画像上の脊柱管狭窄は高齢者であればかなりの頻度である。そこに下肢症状があると腰部脊柱管狭窄症と考えられてしまう傾向にある。そのため、他疾患がないか、他科への対診も含めて十分に検討した上で『腰部脊柱管狭窄症である』と分かった時には安心する。何故ならば、希望があれば最終的には手術で対応できるから」と自身の経験した難渋例と向き合い方を語った。 最後に腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021の編集にあたって苦労した点を伺うと、「やはり、“CQ12-2:腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓根スクリューを用いた制動術は保存治療、除圧術、除圧固定術よりも有用か”のところ。論文の少ない項目もあったが、比較的質の高そうな論文を見ても最近の動向とかけ離れていることがわかった。併発症の発生率の高さや従来の術式を凌駕する臨床成績ではない点、並びにコストを考えると推奨し難い結果だった」と述べるとともに「今回の改訂で力を入れた1つに文言・文章の統一がある。委員会の先生方は育った大学・医局が違うため、文章の表現も微妙に異なる。文章の言い回しの統一を3人のコアメンバー(井上 玄氏[北里大学 診療教授]、関口 美穂氏[福島県立医科大学 教授]、竹下 克志氏[自治医科大学 教授])にお願いして、一緒に校正を行った。十分読み応えがあり、なおかつ非常に読みやすい文章のガイドライン改訂版になったと自負している」と振り返り、次回の腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂では、「医療者と患者双方に有益で相互理解に役立つか、効率的な治療により人的・経済的負担の軽減が期待できるかを視野に進めたい」と締めくくった。

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第73回 若いマウスの糞移植で老齢マウスの脳が若返り

歳を取ると忘れっぽくなり、習い事が身に付き難くなります。脳の機能を良好に保つのは容易ではありませんが、老いたマウスが若いマウスからある物を取り入れることで脳の衰えが解消して若返りうることが示されました1,2)。ヒトでも同様の効果があるとすればしない手はないでしょうが、怖じ気付かずに実行するには相当なガッツで腹を決める必要があるかもしれません。老齢マウスが若いマウスから何を受け取ったかといえばその糞です。そうすることで糞中の微生物の老化への関与が検討されました。研究者は生後3~4ヵ月の若いマウスの糞を8週間のあいだ週に2回栄養チューブで生後19~20ヵ月の老齢マウスに投与しました3)。その結果、最初の変化として老齢マウスの腸の微生物組成が若いマウスに似通い始め、若いマウスと同様に腸球菌がより豊富になりました。脳も変化し、学習や記憶と関連する脳領域・海馬の性質が若いマウスのそれにより近くなりました。老化と関連する脳と末梢の免疫の差も解消しました。効果は振る舞いにも現れました。迷路をより早く通れるようになり、もう1回させたところ迷路の道順をより覚えており、老化と関連する認知障害の改善が裏付けられました。若いマウスではなく老齢マウスの糞が与えられた老齢マウスではそれらの効果は認められていません。老いた個体の糞を若い個体に移植するとどうなるのか? 去年5月の別の報告4)によると若返りとは逆の衰えが生じます。すなわち老齢ラットからの糞移植で若いラットはワーキングメモリー障害、樹状突起棘の減少、神経栄養因子(BDNF)発現低下などの認知機能低下を意味する振る舞いや脳の変化を呈しました。血を薄めるだけでも若返る?若返りの源はなにも糞中微生物に限らず血液にもどうやら含まれています。数年前のスタンフォード大学のTony Wyss-Coray氏等の論文報告によると、老齢マウスに若いマウスの血漿を注射したところ糞の移植と同様に老化関連認知障害が改善しました5)。血漿の投与はいつもの臨床の一環であり、その試験をするのに米国FDAの承認を得る必要がありません。そこで早速Wyss-Coray氏等は新会社を設立し、若い人の血漿をアルツハイマー病患者に投与する試験の計画に取り掛かり、2014年5月の論文発表から4ヵ月後の同年9月には早くも試験へのアルツハイマー病患者の組み入れが始まりました。18~30歳の若者の血漿をアルツハイマー病患者18人に投与したその試験の結果は2019年にJAMA Neurology誌に掲載され、主な目当てであった安全性や良好な忍容性などが確認されました6)。効果のほどは被験者数が少なくて投与期間も短いのでなんとも言えず、今後の大規模試験での検討が必要です。若さに頼らない若返りの方法も研究されています。たとえば血を薄めることはその1つで、去年5月の報告によると老いたマウスの血漿の半分をそれらに含まれるアルブミン相当量含有(アルブミン5%)生理食塩水で置き換えて血漿中のタンパク質を薄めたところ脳、肝臓、筋肉が若い血を入れたときと同程度かそれ以上に若返りました7,8)。血漿成分を変える瀉血は自己免疫疾患の治療として米国FDAにすでに承認されています。高齢者の健康や回復力の改善に瀉血が役立つかもしれないと著者は述べています。参考1)Boehme M,et al. Nature Aging. 2021 Aug 9.2)Microbes turn back the clock as UCC research discovers their potential to reverse aging in the brain / University College Cork3)New poo, new you? Fecal transplants reverse signs of brain aging in mice / Science4)Li Y,et al. Aging (Albany NY). 2020 May 1;12:7801-7817.5)Villeda SA,et al.Nat Med. 2014 Jun;20:659-63.6)Sha SJ, et al.JAMA Neurol. 2019 Jan 1;76:35-40.7)Mehdipour M, et al. Aging (Albany NY). 2020 May 30;12:8790-8819.8)Diluting blood plasma rejuvenates tissue, reverses aging in mice /Eurekalert.

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薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブ

 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性について、イタリア・ボローニャ大学のUmberto Pensato氏らは、検討を行った。Neurological Sciences誌オンライン版2021年7月5日号の報告。 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性を評価するため、実生活環境下におけるプロスペクティブ多施設共同試験を実施した。対象は、3クラス以上の薬理学的治療に加え、onabotulinumtoxinAによる治療が奏効しなかった慢性片頭痛患者。 主な結果は以下のとおり。・エレヌマブを使用した患者396例のうち、選択基準を満たした患者は149例(38%)であった。・エレヌマブ治療3ヵ月後における1ヵ月当たりの片頭痛日数が50%以上減少した患者は76例(51%)、75%以上減少した患者は30例(20%)であった。・1ヵ月当たりの鎮痛薬の使用量および頭痛日数は減少が認められた。 ●鎮痛薬の使用量:46.1±35.3→16.8±13.9(p<0.001) ●頭痛日数:25.4±5.4→14.1±8.6(p<0.001)・試験期間を通じて、エレヌマブの有効性の上昇が確認された。・アロディニアは、エレヌマブの有効性を予測する負の因子であった(オッズ比:0.47、p=0.03)。・薬物乱用を伴わない反復性片頭痛における臨床的治療反応率は、64%(96例)であった。・重篤な有害事象は観察されなかった。 著者らは「エレヌマブ治療により、薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛における片頭痛の頻度および鎮痛薬の摂取量の有意な減少が認められた」としている。

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心原性ショックの薬物療法、ミルリノンvs.ドブタミン/NEJM

 心原性ショックの薬物療法について、ミルリノンとドブタミンは、院内死亡や蘇生された心停止、心臓移植や機械的循環補助といった複合アウトカムの発生率に有意差はないことが示された。各項目単独の発生率についても、両群で有意差は認められなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca Mathew氏らが、192例を対象に行った無作為化比較試験の結果を発表した。心原性ショックは高い罹患率および死亡率と関連している。変力性サポートは、心原性ショックの中心的な薬物治療だが、現状では臨床における変力性薬剤の選択肢を示すエビデンスはほとんどないという。NEJM誌2021年8月5日号掲載の報告。二重盲検下で無作為化し、ミルリノンまたはドブタミンを投与 研究グループは、心原性ショックの患者を二重盲検下で無作為に2群に割り付け、一方にはミルリノンを、もう一方にはドブタミンを投与した。 主要アウトカムは、院内死亡、蘇生された心停止、心臓移植、機械的循環補助の実施、非致死的心筋梗塞、神経内科医の診断による一過性脳虚血発作または脳梗塞、腎代替療法の開始の複合アウトカムだった。 副次アウトカムは、主要複合アウトカムの各項目などだった。主要アウトカム発生率、両群ともに約半数で有意差なし 被験者総数は192例(各群96例)だった。主要アウトカム発生については、ミルリノン群47例(49%)、ドブタミン群52例(54%)で有意差はなかった(相対リスク[RR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.69~1.19、p=0.47)。 副次アウトカムの発生についても、院内死亡(ミルリノン群37%、ドブタミン群43%、RR:0.85、95%CI:0.60~1.21)、蘇生された心停止(7%、9%、ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.29~2.07)、機械的循環補助の実施(12%、15%、HR:0.78、95%CI:0.36~1.71)、腎代替療法の開始(22%、17%、HR:1.39、95%CI:0.73~2.67)と、群間の有意差はなかった。

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うつ病に対する抗うつ薬の治療パターンとアウトカム

 米国において、うつ病は重大な問題となっている。うつ病に対するケアは、非常に多様であり、文書化された報告も限られている。米国・スタンフォード大学のMaurice M. Ohayon氏らは、米国の一般集団におけるうつ病の有病率と治療パターンについて調査するため、縦断的研究を実施した。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。 2002~15年の間に2回のWeb調査を実施した。1回目の調査(W1)は、米国8州の18歳以上の一般集団1万2,218人を対象に実施した。2回目の調査(W2)は、W1で3年後の再調査に同意した1万931人を対象に実施した。W1およびW2に回答した1万931人を分析対象とした。うつ病の診断は、DSM-V基準に従った。 主な結果は以下のとおり。・3年間のうつ病発症率は、3.4%(95%CI:3.1~3.7)であった。・うつ病有病率は、W1で5.1%(95%CI:4.7~5.5)、W2で4.2%(95%CI:3.8~4.6)であった。・部分寛解または完全寛解に達した患者の割合は、以下のとおりであった。 【部分寛解】  ●W1:4.4%(95%CI:4.0~4.8)  ●W2:7.9%(95%CI:7.4~8.4) 【完全寛解】  ●W1:3.9%(95%CI:3.5~4.3)  ●W2:4.4%(95%CI:4.0~4.8)・部分寛解および完全寛解に達した患者を含めたうつ病の有病率は、W1で13.4%、W2で16.5%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、併存疾患を有していた患者の割合は、61.9%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、W2でも抑うつ症状が報告された患者の割合は、41.8%であった。・W1で部分寛解に達した患者の19.9%および完全寛解に達した患者の5.5%は、W2で寛解に達していなかった。・うつ病患者のうち、抗うつ薬が使用されていた患者の割合は、W1で52.2%、W2で42.9%であった。最も使用されていた薬剤クラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、W1で34.7%、W2で28.3%の患者に使用されていた。・抗うつ薬を処方した医師の内訳は、プライマリケア医45.7%、精神科医31.4%、神経内科医2.5%、その他7.9%であった。・平均治療期間は、36.9ヵ月(SE:2.4)であった。・W1において、抗うつ薬を使用していた患者の3分の1以上が抗うつ薬治療に不満を持っており、W2での抗うつ薬の種類の変更につながっていた。 著者らは「米国におけるうつ病有病率は、13.4~16.5%であった。抗うつ薬が使用されていたうつ病患者は、約半数程度(52%)にとどまっており、多くの患者で治療が不十分であることが示唆された。本研究では、うつ病患者の4人に1人以上は、初期の抗うつ薬治療で寛解が得られておらず、うつ病治療の課題が浮き彫りとなった」としている。

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リスジプラム、I型の脊髄性筋萎縮症に有効/NEJM

 I型脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳児において、リスジプラムは歴史的対照と比較して、運動マイルストーンの達成割合が高く、運動機能が改善した乳児の割合も優れることが、米国・ハーバード大学医学大学院のBasil T. Darras氏らが行った「FIREFISH試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。I型SMAは進行性の神経筋疾患で、生後6ヵ月までに発症し、特徴として、支えなしで座位を保持できない、運動神経細胞生存(SMN)蛋白の不足が認められる。リスジプラムは経口投与が可能な低分子薬で、SMN2のメッセンジャーRNA前駆体スプライシングを修飾し、血中の機能性SMN蛋白の増加をもたらすとされる。2部構成の非盲検試験の第2部の結果 本研究は、I型SMA乳児におけるリスジプラムの安全性と有効性の評価を目的とする2部構成の非盲検臨床試験で、第1部は用量設定試験(既報)であり、第2部では第1部で決定された用量の臨床効果と安全性が歴史的対照と比較された(スイスF. Hoffmann-La Rocheの助成による)。この試験には10ヵ国14施設が参加し、今回は第2部の結果が報告された。 対象は、生後28日~3ヵ月に症状が発現し、登録時に生後1~7ヵ月のI型SMAの患児であった。リスジプラムは、生後5ヵ月以上の乳児には0.2mg/kg/日が投与され、5ヵ月未満の乳児は初回用量0.04または0.08mg/kg/日で投与が開始され、1~3ヵ月で0.2mg/kg/日となるように調節された。嚥下が可能な乳児には経口投与が行われ、不可能な乳児には栄養チューブを用いてボーラス投与された。 主要エンドポイントは、投与開始から12ヵ月後に、支えなしで座位を5秒以上保持できることとした。主な副次エンドポイントは、フィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査スコア(CHOP-INTEND:0~64点、点数が高いほど運動機能が良好)が40点以上、CHOP-INTENDスコアのベースラインから4点以上の増加、Hammersmith乳児神経学的検査のセクション2(HINE-2、0~26点、点数が高いほど運動機能が良好)で評価した運動マイルストーン(蹴る、頭部の制御、転がる、座る、這う、立つ、歩く)の改善、恒久的人工呼吸管理のない生存とした。副次エンドポイントは、I型SMA乳児40例の自然経過データの90%信頼区間(CI)の上限値との比較を行った。主要および主な副次エンドポイントがすべて改善 主解析の臨床的カットオフ日(全患児が、12ヵ月の投与期間を終了、試験中止、死亡のいずれかに達する)は2019年11月14日であり、41例が登録された。登録時の年齢中央値は5.3ヵ月(範囲:2.2~6.9)で、54%が女児であった。ベースラインのCHOP-INTENDスコア中央値は22.0点(範囲:8.0~37.0)、HINE-2スコア中央値は1.0点(範囲:0.0~5.0)であった。39例(95%)が嚥下可能だった。 投与開始から12ヵ月後の時点で、支えなしで座位を5秒以上保持できた患児は12例(29%、95%CI:16~46、自然歴データ[5%]との比較でp<0.001)であり、これは本疾患では達成されていないマイルストーン(画期的出来事)であった。 12ヵ月後に、主な副次エンドポイントを達成した乳児の割合を、歴史的対照のCI上限値と比較したところ、CHOP-INTENDスコア40点以上は、56%(23/41例)および17%、CHOP-INTENDスコアのベースラインから4点以上の増加は90%(37/41例)および17%、HINE-2による運動マイルストーンの奏効は78%(32/41例)および12%、恒久的人工呼吸管理のない生存は85%(35/41例)および42%であった(いずれの比較とも、p<0.001)。 48件の重篤な有害事象が報告された。最も頻度の高い重篤な有害事象は、肺炎(13例[32%])、細気管支炎(2例[5%])、筋緊張低下(2例[5%])、呼吸不全(2例[5%])であった。 著者は、「I型SMA乳児におけるリスジプラムの長期的な安全性と有効性を明らかにするには、より長期で大規模な試験が求められる」としている。

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認知症に対するロボットケア介入の有効性~メタ解析

 認知症ケアへの利用に期待が高まるロボット介入。認知症に対するロボット介入の研究は進んでいるものの、その効果はどの程度なのだろうか。台湾・高雄医学大学のIta Daryanti Saragih氏らは、認知症患者におけるロボット介入の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Nursing誌オンライン版2021年5月26日号の報告。 各種データベース(Academic Search Complete、CINAHL、Cochrane Library、MEDLINE、PubMed、SocINDEX、UpToDate[OVID]、Web of Science)よりシステマティックに検索した。適格基準は、認知症患者、ランダム化比較試験、英語での出版とした。対象研究の方法論的質を評価するため、PEDroスケールを用いた。ロボット介入のプールされた効果を算出するため、固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。統計分析には、STATA 16.0を用いた。PRISMAガイドラインに従って結果報告を行った。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は、15件(1,684例)であった。・全体として、認知症患者に対するロボット介入により、以下に対するプラスの影響が認められた。 ●興奮症状(SMD:0.09、95%CI:-0.22~0.33) ●不安症状(SMD:-0.07、95%CI:-0.42~0.28) ●認知機能(SMD:0.16、95%CI:-0.08~0.40) ●うつ症状(SMD:-0.35、95%CI:-0.69~0.02) ●神経精神症状(SMD:0.16、95%CI:-0.29~0.61) ●日中の総睡眠時間(SMD:-0.31、95%CI:-0.55~0.07) ●QOL(SMD:0.24、95%CI:-0.23~0.70)・認知症患者の健康状態を改善するうえで、ロボット介入は、効果的かつ代替的な介入である可能性が示唆された。 著者らは「今後の研究において、ロボット介入の不安症状への効果や介入頻度、期間、ネガティブなアウトカムについて検討する必要がある」としながらも「認知症患者のケアを提供する際、看護スタッフは、非薬理学的なアプローチとして、臨床的なベネフィットをもたらすロボット介入を取り入れる可能性がある」としている。

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那須・ハコラ病〔PLOSLまたはOMIM221770:Polycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy〕

1 疾患概要■ 定義・概念那須・ハコラ病(OMIM221770)は、1970年代に那須博士とハコラ博士により報告された疾患である。臨床的には、病的骨折、前頭葉症状、進行性の若年性認知症に特徴付けられる。常染色体劣性の遺伝性疾患であり、原因遺伝子はDNAX activating protein of 12 kDa(DAP12)とtriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)である。 また、本症はpolycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy(PLOSL)とも呼ばれている1)。■ 疫学本疾患は希少疾患であり、わが国と北欧のフィンランドからの報告が多い。フィンランドでは、DAP12のExon1-4の欠失変異(c.-2897_277-1227del5265)の創始者効果のために有病率が高いと考えられており、同国の推定有病率は100万人あたり1~2人である2)。なお、わが国では平成21年度に厚生労働科学難治性疾患克服研究事業「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」の研究班が実施したアンケート調査の結果から、患者数は200人程度と推定されている3)。■ 病因那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の機能喪失変異で発症する。DAP12とTREM2は破骨細胞やミクログリアの細胞膜表面に発現し、複合体を形成する。リガンドがTREM2と結合することで、DAP12/TREM2の複合体から下流にシグナル伝達が生じる。那須・ハコラ病は、DAP12またはTREM2の変異により、下流へのシグナル伝達が阻害されることが原因と考えられている。しかし、その他の詳細な分子生物学機序については明らかになっていない3)。■ 症状那須・ハコラ病は進行性の疾患であり、その臨床経過は4期に分けることができる。(1)特に症状が認められない無症候期(Latent stage)。(2)骨嚢胞や病的骨折が認められる骨症状期(Osseus stage)。(3)脱抑制などの前頭葉症状を中心とした精神症状などが認められる早期精神神経症状期(Early neuropsychiatric stage)。(4)認知機能障害低下が顕著となる晩期精神神経症状期(Late neuropsychiatric stage)、である。無症候期においては特に発達などに異常は認められない。20代で骨症状期に移行する。骨症状期では、軽微な事故などを契機に足関節や足に疼痛や圧痛を認めるようになる。また、最初の骨折は30歳以前で認められる。骨折は主に長管骨で認められる。30代では、早期精神神経症状期へと移行する。この時期には、性格の変化に加え、注意力や判断力の低下、多幸感や社会性の欠如などの前頭葉症状が緩徐に進行する。神経学的には、痙性などの上位運動ニューロン徴候が認められる。さらに、不随意運動としてアテトーゼや舞踏運動が認められ、30代半ばには頻繁にてんかん発作が経験される。40代で晩期精神神経症状期に移行する。この時期では、歩行などは困難となる。50代には、寝たきり、意思疎通が困難となる。これまでに明らかな骨症状を認めずに精神神経症状を呈した症例も報告されている4)。■ 予後本疾患は進行性で、50代には誤嚥性肺炎などを契機に死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)那須・ハコラ病の診断には、(1)骨嚢胞、(2)中枢神経病変、(3)遺伝子変異を確認するために各種検査を実施する必要がある1-3)。骨嚢胞は長管骨の骨端部に多発する。手指や手根骨、足根骨の骨X線検査で嚢胞様病変や骨梁の菲薄化が認められる。これらの異常所見の確認にはCT検査やMRI検査も有用である。骨生検は必ず行う必要はないものの、生検組織で膜嚢胞性変化(lipomembraneous osteodysplasia)が確認できる。中枢神経病変の確認には神経症状に加えて、頭部CT検査や頭部MRI検査が有用である。CT検査では両側性に基底核の石灰化が認められる。側脳室の拡大、基底核や視床の萎縮、脳溝の開大などの萎縮所見も認められる。加えて、頭部MRI T2強調像やfluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)では、白質のびまん性高信号所見が認められる。Single photon emission computed tomography(SPECT)やpositron emission tomography(PET)検査では皮質領域、視床、基底核に血流低下が認められる場合がある。遺伝子検査ではDAP12またはTREM2の遺伝子変異が認められる。一般的にはホモ接合性変異であるが、複合ヘテロ接合性変異の症例も確認されている5)。他に進行期の脳波では徐波やてんかん性放電が確認される。なお、わが国では「那須・ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究」研究班が作成した診断基準がある(表)3)。表 那須・ハコラ病の診断基準画像を拡大する本疾患と鑑別疾患としては、前頭側頭型認知症(ピック病など)やスフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids:HDLSまたはadult-onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia:ALSP)などが挙げられる。HDLSは常染色体優性遺伝形式の疾患で、頭部MRI検査では白質のびまん性高信号所見が認められる。原因遺伝子はcolony stimulating factor l receptor(CSFIR)である。これらの疾患では骨病変が認められない点や遺伝形式の違いが鑑別点となる1-3)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)那須・ハコラ病の根治的な治療は現時点ではない。骨病変に対しては、骨折については整形外科的な治療が行われる。加えて骨病変に対する疼痛管理や装具装着なども試みられることがある。精神症状については抗精神病薬が用いられる。てんかん発作に対しては、抗てんかん薬が用いられる。4 今後の展望現在、治験などは予定されていない。DAP12/TREM2のシグナル伝達異常がどのように病態に関わっているのかが不明な点が多く、病態の解明が望まれる。5 主たる診療科脳神経内科対症療法として、整形外科、精神科、リハビリテーション科、呼吸器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 那須・ハコラ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Adam MP, et al.(eds). GeneReviews. Seattle.WA;2020.2)Pekkarinen P, et al. Am J Hum Genet. 1998;62:362-372.3)佐藤準一. 新薬と臨牀. 2016;65:76-81.4)Bock V, et al. J Neurol Sci. 2013;326:115-119.5)Kuroda R, et al. J Neurol Sci. 2007;252:88-91.公開履歴初回2021年8月6日

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