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各認知症と尿酸との関連を分析

 血清尿酸(sUA)レベルと認知障害および認知症は関連しうる。この関連性は、認知症のサブタイプによってさまざまで、とくに脳血管性認知症(VaD)とアルツハイマー病(AD)やパーキンソン病関連認知症(PDD)との間では異なる。英国・グラスゴー大学のAamir A Khan氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、sUAと認知障害および認知症との関連についてのすべての公開データを統合することを目的とし、検討を行った。Age (Dordrecht, Netherlands)誌2016年2月号(オンライン版2016年1月28日号)の報告。 検討には、sUAと任意の認知機能測定または認知症の臨床診断との関連を評価した研究が含まれた。AD、VaD、PDD、軽度認知障害(MCI)および混合型または未分化の患者によるサブグループ分析を事前に定義した。許可が得られたデータについて、バイアスリスクと一般化可能性を検討し、研究全般における関連性のプールされた基準を評価するため、メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・4,811件中、46件(1万6,688例)が選択基準を満たした。・対照と比較して、認知症の患者ではsUAが低かった(SDM:-0.33 [95%CI])。・AD(SDM:0.33[95%CI])とPDD(SDM:-0.67 [95%CI])では、認知症サブタイプとの関連性が明確に認められたがが、混合型(SDM:0.19 [95%CI])とVaD(SDM:-0.05 [95%CI])では認められなかった。・Mini-Mental State Examination(MMSE)とsUAレベルとの関連性は、PDD患者(summary r:0.16、p=0.003)を除き、関連が認められなかった(summary r:0.08、p=0.27)。 結果を踏まえ、著者らは「本結論は、臨床的な不均一性と試験のバイアスリスクにより限定的である」としたうえで、「sUAと認知症および認知障害との関連は、すべての認知症グループで一貫しているわけではなく、とくにVaD患者では他のサブタイプと異なる場合がある」とまとめている。関連医療ニュース レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究

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魚介類が持っている水銀、認知症とは関連せず/JAMA

 魚介類摂取頻度が増えると、脳内水銀量は増加するものの、アルツハイマー型認知症を示唆する脳神経病理とは関連しない。また、アポリポ蛋白E(APOEε4)遺伝子を持つ人では、魚介類摂取がアルツハイマー病リスクの軽減とつながっていることを、米国・ラッシュ大学メディカルセンターのMartha Clare Morris氏らが、高齢者286例の剖検脳と生前の魚介類摂取頻度との関連を分析した結果、明らかにした。JAMA誌2016年2月2日号掲載の報告より。平均年齢約90歳の高齢者を対象に、横断解析 魚介類の摂取量は、神経毒として知られる水銀汚染の懸念が指摘されながらも、健康ベネフィットがあるとして増大している。研究グループは、魚介類摂取量の増加と脳内水銀量の増加に相関関係が認められるのか、また脳神経病理との関連が認められるかを調べた。 対象としたのは、2004~13年に、米国シカゴのリタイアメント・コミュニティ居住者で臨床神経病理コホート研究「Memory and Aging Project」に参加し死亡した高齢者286例。生前の魚介類摂取頻度を調べ、死後に行った剖検脳所見との関連を横断的に分析した。 被験者の平均年齢は89.9(SD 6.1)歳、女性は67%(193例)で、教育を受けていた年数は平均14.6(同2.7)年だった。魚介類摂取頻度についての質問は、死亡より平均4.5年前に開始されていた。 主要評価項目は、認知症関連病理の評価として、アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、大小の梗塞数とした。魚介類およびn-3脂肪酸の摂取量は死亡前年単位で評価。水銀およびセレニウムの組織片濃度は、機器的中性子放射化分析法にて調べた。α-リノレン酸摂取量が多いと脳大梗塞リスクは半減 その結果、1週間の平均魚介類摂取頻度と、脳内水銀量の相関性が認められた(ρ=0.16、p=0.02)。 年齢や性別、教育レベル、総エネルギー摂取量で補正後、APOEε4遺伝子を持つ人については、魚介類を週1回以上食べる人は、老人斑密度が低く(β=-0.69)、重度・広範囲にわたる神経原線維濃縮体が少ない(β=-0.77)など、アルツハイマー病の病理学的特徴を持つ人が少なく、病理学的にアルツハイマー病と診断される人も少なかった(β=-0.53)。 また、α-リノレン酸摂取量について三分位に分けて検討した結果、最高分位の人は最低分位の人に比べ、脳大梗塞リスクのおよそ半減が認められた(オッズ比:0.51、95%信頼区間:0.27~0.94)。 なお、魚油サプリメント摂取はいかなる神経病理マーカーとも有意な関連が認められなかった。また、脳内水銀濃度と脳神経病理学的な異常との間の関連も示されなかったという。

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ベーチェット病〔BD: Behcet’s disease〕

※疾患名にある「Behcet's」は「」が正しい綴りですが、WEB上では正しく表示されない場合があるため、本ページでは「Behcet's」としています。1 疾患概要■ 概念・定義ベーチェット病(BD)は、多臓器侵襲性の非肉芽腫性炎症性疾患であり、病因はいまだ不明の多因子疾患で、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍を4主病変として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とする疾患である。病名の由来は、1937年、トルコのイスタンブール大学皮膚科のベーチェット教授の報告に基づく。近年、新患症例の減少と病態の軽症化が指摘されている。■ 疫学1972(昭和47)年にスモン、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)とともに最初に厚生労働省(当時は厚生省)の特定疾患の治療研究事業対象疾患として指定された。疾患の伝播経路から「シルクロード病」ともいわれる。特定疾患医療受給者数は、2万35人で(2015年3月末現在の特定疾患医療受給者数は1万9,147人)、男女比はほぼ同数だが特殊型や重症型は男性に多い。■ 病因(図1)遺伝的にはHLA-B51やHLA-A26との関連、環境因子としてS.sanguinisや熱ショック蛋白(HSP)との関連などが報告されている。近年では、IL-10、IL23R/IL12RB2のほか、ERAP-1(Endoplasmic reticulum aminopeptidase 1)、TLR-4(Toll-like receptor 4)、NOD2(Nucleotide-binding oligomerization domain-containing protein 2)およびMEFV(Mediterranean fever)などの関与も報告されているが、病因はいまだ不明の多因子疾患である。近年、MEFVの関与を含め、臨床所見やコルヒチン(商品名:コルヒチン[わが国ではベーチェット病・同ぶどう膜炎に対しては未承認])に対する有効性などの類似所見から家族性地中海熱などの範疇である自己炎症症候群との関連が報告されている。画像を拡大するBDの病態は、獲得免疫および自然免疫の双方から説明される。獲得免疫では、IL-12などが関与するTh1型の免疫反応が生じることが報告されている(IL-10はTh1型の免疫反応には抑制的)。それらの過程にHLA-B51、HLA-A26などのMHCクラスⅠ遺伝子の関与が推測されているが、近年、BDにMHCに付与するペプチドをトリミングする網内系アミノぺプチダーゼ(ERAP)のSNPが疾患感受性遺伝子として報告され、BD発症におけるHLA-B51陽性との相乗効果が示唆されている。自然免疫では、臨床所見の類似性などから家族性地中海熱などの自己炎症症候群との関連が指摘されていたが、近年、家族性地中海熱の原因遺伝子MEFV M694Vが疾患感受性遺伝子であることが報告された。実際に、それらの疾患に過剰に産生される炎症性サイトカイン(IL-1、TNF)はBDの治療標的でもある。また、Toll様受容体4(TLR-4)およびヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の異常も指摘されていたが、近年の遺伝学的解析により、TLR4やNOD2も疾患感受性遺伝子として同定された。炎症性サイトカインの分子標的治療に加えて、将来、IL-10、HO-1、ERAPおよび細菌を標的とした治療の開発も期待できる。(田中良哉編. 免疫・アレルギー疾患の分子標的と治療薬事典. 羊土社; 2013. p. 230. より改変)■ 症状(図2)口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、毛嚢炎様皮疹、結節性紅斑様皮疹、皮下の血栓性静脈炎、外陰部潰瘍などの粘膜皮膚病変および虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎などの眼病変を主病変とする。また、大関節を主とする関節炎や副睾丸炎、さらには、生命予後にも影響を与える腸管、神経、血管病変を副病変とする。画像を拡大する■ 分類(表1)口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍の4主病変すべてを併せ持つ完全型、および4主病変と5副病変(関節炎、副睾丸炎、腸管病変、血管病変、神経病変)の組み合わせにより、不全型(3主病変 or 2主病変+2副病変 or 眼病変+1主病変または2副病変)、疑い(主病変の一部のみ)、その他に分類される。また、副病変のうち、生命に関わるもの、あるいは後遺症を残す腸管、血管、神経病変が主病変で、不全型以上のものは特殊型として分類されている。画像を拡大する■ 予後重症の眼病変は日常生活動作を著しく障害するが、概して、特殊型を除き生命予後はよい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)BDには疾患特異的な組織像やバイオマーカーがなく、経過を通じての再発性アフタ性潰瘍炎、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍の4主病変、関節炎、副睾丸炎、腸管病変、血管病変、神経病変などの5副病変の臨床症状の組み合わせにより診断される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)(表2)病因が不明で特異的な治療法はなく、一般的な生活指導のほかに、局所療法をはじめとした対症療法が主体となる。2007年1月に世界に先駆けて保険収載(効能追加)された難治性ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ(商品名:レミケード)や、シクロスポリン(同:サンディミュンほか)および眼症状、皮膚粘膜症状、関節炎などに対するコルヒチン(未承認)は効果が認められている。消化器病変、血管病変、中枢神経病変の特殊型には副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が有効な場合があるが、2013年5月、腸管BDにアダリムマブ(同:ヒュミラ)が、2015年8月には特殊型3型(腸管、血管、神経)のすべてにインフリキシマブが保険収載(効能追加)された。画像を拡大する4 今後の展望近年、病態の軽症化が指摘されている。理由は不明だが、その1つとしてインフラ整備の影響が考えられる。また、BDはTh1型の疾病であるが、Th2型の疾病であるアレルギー体質の増加なども指摘されている(シーソー現象)。病因に関しては、主として自然免疫系が関与する自己炎症症候群に分類する試みがあるが、BD患者には有意にHLA-B51が多いことから、自然免疫、獲得免疫の双方の関与が示唆される。さらに、近年の遺伝子学的研究により、IL-10、IL23R/IL12RB2、ERAP-1、TLR-4、NOD2、MEFVなどの疾患感受性遺伝子が新たに発見されており、今後、それらの機能解析によりさらなる進歩が期待できる。なお、厚生労働省ベーチェット病研究班では、世界的な診断、治療の標準化を目指して、特殊型の診療ガイドライン、眼病変の診療ガイドラインを報告しているが、平成28年度をめどにCQを含む新たなガイドライン作成のために厚労省BD班を中心として検証中である。治療面では、難治性ぶどう膜炎にインフリキシマブ、腸管BDに対してアダリムマブ、特殊型(腸管、血管、神経)に対してインフリキシマブが保険収載(効能追加)された。現在も、アプレミラストをはじめ、多くの臨床治験が施行中であり、さらなる治療の選択肢の増加が期待される。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、眼科、皮膚科、その他の内科(消化器内科、神経内科、血管内科、循環器内科)、外科(血管外科、消化器外科)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ISBD(International Society For Behcet’s Disease)(国際ベーチェット病協会の英文での疾患説明)公的助成情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省科学研究費補助金 ベーチェット病に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病ドットコム ベーチェット病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ベーチェット病友の会(ベーチェット病患者と患者家族の会)NPO法人 海外たすけあいロービジョンネットワーク(眼炎症スタディーグループより改名)(眼炎症患者と患者家族の会)1)腸管ベーチェット病診療ガイドライン平成21年度案 ~コンセンサス・ステートメントに基づく~. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書.研究代表者 石ヶ坪良明). 2011 ; p.231-234.2)腸管ベーチェット病診療コンセンサス・ステートメント案(2012). ベーチェット病に関する調査研究 平成24年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2013; p.149-154.3)神経ベーチェット病の診断予備基準. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2011; p.239-234.4)ベーチェット病眼病変診療ガイドライン. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2011; p.197-226.5)Yoshiaki Ishigatsubo,editor. Behcet's Disease From Genetics to Therapies.Tokyo:Springer;2015.公開履歴初回2013年08月22日更新2016年02月16日

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ベンゾジアゼピン系薬は高齢者の認知症リスクを高めるか/BMJ

 ベンゾジアゼピン系薬の累積使用量が少ない場合に認知症のリスクはわずかに高まるが、多い場合はこの関連が認められないことが、米・ワシントン大学のShelly L Gray氏らによる地域住民ベースの前向きコホート研究で明らかとなった。著者は、「この結果は、ベンゾジアゼピン系薬と認知症との因果関係を支持しないものだ」と結論付けている。高齢者では、転倒、骨折、せん妄のリスクがあるためベンゾジアゼピン系薬の投与は推奨されていない。にもかかわらず、睡眠障害や不穏等に対する使用は、年齢とともに増えているのが現状である。これまでの研究で、ベンゾジアゼピン系薬の投与が認知症リスクの増加と関連していることが示唆されていたが、長期の使用が認知症や認知機能低下と関連しているかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2016年2月2日号掲載の報告。非認知症65歳以上を対象、過去10年間のベンゾジアゼピン累積使用量別に解析 本研究は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステムGroup HealthによるAdult Change in Thought研究の一環として行われた。参加者は、シアトル在住のGroup Health加入者から無作為抽出された、登録時に認知症のない65歳以上の高齢者である。1994~96年に2,581例、2000~03年に811例が登録され、2004年以降は認知症発症あるいは死亡等による入れ替えで継続して登録された。登録時および2年ごとに、認知症・アルツハイマー病の有無(標準的な診断基準に基づく)、認知機能(cognitive abilities screening instrument[CASI]による評価)、患者背景等(既往歴、健康に関する行動、健康状態)について調査した。追跡調査は、認知症発症、Group Health脱退または2012年9月30日以前の最後の受診日までとした。平均追跡期間は7.3年。 解析は、登録時Group Healthに10年以上加入している人に限定し、登録後1回以上医療機関を受診したことのある人を対象として認知症発症に関して(解析対象3,434例)、また、登録時のCASIスコアがある人全員を対象に認知機能低下に関して解析を行った(解析対象3,993例)。ベンゾジアゼピン系薬の累積使用量は、Group Healthの処方データベースを用い、過去10年間における標準化1日量(薬剤ごとに処方総量を高齢者で推奨されている1日最小有効量で除したもの)の合計(total standardized daily doses:TSDD)として算出した。TSDDの算出にあたっては、解析項目によって、前駆症状に対する治療の可能性を排除するため登録前直近の使用について除外した。明らかな因果関係は認められず 認知症発症に関する解析では、3,434例中797例(23.2%)が認知症を発症し、そのうち637例がアルツハイマー病であった。登録前直近1年間の使用を除外した場合、ベンゾジアゼピン系薬非使用(TSDD0)と比較した認知症発症の補正後ハザード比(HR)は、累積使用量がTSDD1~30で1.25(95%信頼区間[CI]:1.03~1.51)、TSDD 31~120で1.31(1.00~1.71)、TSDD≧121で1.07(0.82~1.39)であった。 アルツハイマー病も同様に、累積使用量が少ない場合にのみ発症リスクの増大がみられた(TSDD1~30のHR:1.27、95%CI:1.03~1.57)。また、累積使用量が多い群をさらにTSDD121~364と≧365に分けても、認知症およびアルツハイマー病のいずれも発症リスクの増大は認められなかった。 認知機能の低下に関する解析では、ベンゾジアゼピン系薬のすべての累積使用量群で非使用群と比較し、CASI平均スコアまたは変化率に差はなく、累積使用量は認知機能の急速な低下と関連していなかった。 ベンゾジアゼピン系薬の累積使用量が少ない群で認知症のリスクが増加した理由について、著者は、「認知症の前駆状態に対する治療であった可能性がある」と指摘し、「前駆状態の人はベンゾジアゼピン系薬の影響を受けやすく、急性有害事象としてせん妄などの認知機能障害を生じたためにベンゾジアゼピン系薬の投与中止に至り、結果として累積使用量が低かったのではないか」と考察している。

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悪名は無名に勝るとはいうけれど…ベンゾジアゼピンの憂鬱(解説:岡村 毅 氏)-479

 これまでに、ベンゾジアゼピン(以下Bzと略す)は認知症発症の危険因子であるとする報告がいくつかなされている。しかし、本研究は大規模な前向き調査ではおおむね否定されたという報告である。おおむねというのは、厳密には少量の摂取ではわずかに関連があるが多量の摂取だと関連は消えるという、奇妙な結果だからである。考え方はいろいろあるだろうが、公平に見れば「危険因子とはいえない」となるだろう。 まず、2点コメントする。1つはデザインに関してであるが、認知症前駆期には当然不安が生じ、Bzの投薬を受けてしまう可能性があるので、発症前の1年あるいは2年のラグ(この間の内服を計上しない)を設けたモデルで解析してある。そして、結果は仮説通りで、ラグが長いほどリスクは低下した。これは、認知症前駆期のBzの処方(つまり不安など)が増えているということである。考えてみれば認知症の前駆期は…いや老いとは、不安なものである。迫り来る超越的出来事(死や、主体の変容)を思えば当然だ。しかし、後述のようにBzが高齢者に投与しにくいことを考えると、高齢者の不安は可能な限り非薬物的にとるべきである…言うまでもなく、それは家族や友人や地域の人々と一緒にいるという安心によってとるべきなのである。 次に結果に関してであるが、(大量ではなく)少量だと認知症リスクという、にわかに納得しがたい結果は次のように考察されている。すなわち、認知症前駆期にはせん妄などの有害事象に対していっそう脆弱になるのでBzは減量されるのではないかと。疫学論文でありながら、この臨床的なセンスには驚くばかりである。  以下は気楽にお読みください。 筆者はBzに恨みがあるわけではなく、同時に擁護する立場にもないが、Bzほど評判の悪い薬剤はないだろう。 そもそもBzとは、GABA受容体を活性化させ、鎮静、抗不安、抗けいれんという3つの作用に加えて、筋弛緩作用をもたらす。したがって、Bzは「抗不安薬」「抗てんかん薬」「睡眠薬」に分類され、しかも複数にまたがるものも多く、同時に副作用に「ふらつき」があるというわかりにくさがある。とくに高齢者では、加齢に伴う代謝能の低下により効果が必要以上に持続しやすく(ハングオーバー)、日中の傾眠をもたらし(同時に認知機能の低下)、いっそうの夜間の不眠やせん妄を惹起する。ふらつきにより高齢者の骨折のリスクを増加させるという報告は多い。エビデンスだけをみると、気楽には処方はしかねるという状況である。 同時に、これほど(少なくとも精神科の)臨床現場で頻繁に遭遇する薬剤はない。そして、大学病院ではおおむね不適切に大量に出されているものを減薬することがほとんどだ(最近ぼんやりしているので認知症になったのではないかと家族に連れられて受診した高齢者が、大量のBzを日中に内服していて、減薬とBz以外の少量眠前処方に置換しただけで解決した、というようなケースである)。処方する者を擁護するわけではないが、これにはいくつか背景がある。 まず、今では使われないが、かつてBzは「マイナー・トランキライザー」などといわれた。メジャー/マイナーという呼称は、専門家にとっては一般の方が使うスラングみたいなものであるが、「マイナー」というからには何となく安全な薬というイメージがあったことだろう。 また、身体疾患と共に生きることは不安であり、不眠にもなるだろう。そのため、さまざまな科でわりと気楽に処方されてきた。とくに精神科等への敷居が高かった時代は、親切なお医者さんは「精神科に行きなさい」などと言わずに処方してくれていたものだ。 最後に、即効性があり、主観的に効果を感じられる「いい薬」である。患者さんに「○○○を○錠○日分ください」などと指示的に言われるのは大体がBzだ(あくまで個人的な意見です)。依存性もあるし、今飲んでいるほかの薬との飲み合わせもよくないので処方できないと伝えると「医者なんて薬を出しときゃいいんだ!」と怒られたりしたこともある(若造のころの話である)。一方で「先生、この薬でないとダメなんです。これまでいろいろ試してこうなったんです。頼れるのは先生だけです」と泣き落としもある。 Bzは、学問的にはあまり推奨されていないにもかかわらず、臨床現場では脈々と過度に処方されてしまい問題とされている。Bzにとっては、感謝はされないのに多用されるという、あんまりな立場である。 加えて、認知症にもなってしまうという悪名を着せられつつあったBzであったが、さすがにそれは否定されたのが本研究である。しかし、本論文でも最後に「因果関係は否定されたけど、やはり有害事象は多いのだから処方は避けるべきだ」と書かれてしまっている。

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抑うつ症状は認知症の予測因子となりうるのか

 抑うつ症状は、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)においてもよく見られる症状である。抑うつ症状と認知症への転換との関連はまだ明らかになっていない。ベルギー・ブリュッセル自由大学のEllen De Roeck氏らは、aMCI患者における抑うつ症状が認知症への転換を予測するかを確認するため、縦断的研究を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 本研究にはaMCI患者35例が参加した。すべての参加者について、認知機能検査を行い、抑うつ症状の有無を確認するため高齢者用うつ尺度(GDS)を用いて評価した。GDSスコア11以上を、有意な抑うつ症状ありのカットオフ値とした。認知症への転換は、1.5、4、10年後のフォローアップ訪問にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・31.4%の患者は、ベースライン時に抑うつ症状が認められた。・ベースライン時のいずれの認知機能検査においても、うつ症状の有無による有意差は認められなかった。・1.5、4、10年後に認知症へ転換した患者は、それぞれ6、14、23例であった。・ベースライン時のGDSスコアは認知症への転換を予測しなかったが、認知機能検査、具体的には手がかり再生検査(記憶障害スケールを含む)は転換の良好な予測因子であった。・今回の対象者において、MCI患者における抑うつ症状は、認知症への転換を予測する因子とは言えなかった。関連医療ニュース 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標 アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか 認知症、早期介入は予後改善につながるか

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片麻痺の歩行訓練は「リズム感」が重要?

 リズム音を用いた運動訓練は片麻痺患者の歩行機能に好影響をもたらすことがわかった。「片麻痺(半身麻痺)」は脳卒中後、非常に多く見られる後遺症である。片麻痺患者は歩行の異常な運動特性・非対称性などの歩行障害を抱えており、歩行能力向上のための有用なリハビリテーション法が模索されている。そこで韓国・延世大学校医科大学のShin YK氏らは、リズミカルな音刺激(rhythmic auditory stimulation:RAS)を用いた歩行訓練の効果について研究を行い、RAS歩行訓練が動的歩行指数(GDIスコア)や股関節内転・膝の屈曲・足首の底屈における近位/遠位関節の運動的歩行パターンを有意に改善することを明らかにした。Yonsei Med J誌2015年11月号掲載の報告。 対象患者は脳性麻痺もしくは脳卒中と診断された片麻痺患者18例。RAS歩行訓練は、対象患者全員に1回30分を週3回のペースで4週間行われた。RASには電子ピアノの伴奏によるリズム音が用いられ、運動学的・時間空間的データは3次元動作解析システムを用いて収集・分析された。 主な結果は以下のとおり。・RAS歩行訓練は、GDIスコア、股関節内転・膝の屈曲・足首の底屈における近位/遠位関節の運動的歩行パターンを有意に改善した。また、片麻痺の患者における立脚相と遊脚相の時間的な非対称性を改善した。・RAS歩行訓練を行った脳卒中患者は遊脚中期の膝の屈曲・立脚終期の足首背屈において有意な運動的改善を証明した。・脳卒中患者のうち、亜急性期の患者は慢性期の患者と比較してGDIスコアの有意な向上が見られた。・Hoffer分類で「household ambulator(社会的活動に杖歩行と車いす移動を併用)」に分類される患者は、GDIスコアの改善とともに、骨盤の前方への傾き減少に有意な効果がみられた。・一方、「community ambulator(戸外、室内とも歩行可能)」に分類される患者は、遊脚中期の膝の屈曲・立脚終期の足首背屈が有意に増加した。 研究グループは、「RAS歩行訓練は、片麻痺患者の歩行パターンに有益な効果をもたらし、RASを用いた運動リハビリテーションの臨床的意義だけでなく、歩行機能に関わる特異的影響をもたらした」と結論付けている。【用語解説】  底屈:関節を足の裏(=足底)の方向に向ける運動 背屈:関節を足の甲(=足背)の側に向ける運動 立脚相:歩行の際、地面についている側の下肢 遊脚相:歩行の際、地面を離れて振り出されている側の下肢 遊脚中期:下肢が体幹の直下にあるとき 立脚終期:身体を支持脚より前へ運ぶとき

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Dr.たけしの本当にスゴい症候診断2

第1回 意識障害第2回 頭痛第3回 痙攣第4回 しびれ第5回 発作性めまい第6回 持続性めまい 患者の訴える症状に対してどんな鑑別疾患を挙げ、どのように問診し、いかに身体所見・検査値を評価し、疾患を絞り込んでいくか?医師として当たり前の「診断」を、膨大なエビデンスを綿密かつ公正に分析して行うのがDr.たけし流。ますます進化するその“スゴさ”は必見です。このDVDでは意識障害・頭痛・痙攣・しびれ・めまいといった神経内科的な症候を取り上げます。問診と身体診察を武器に、迅速・正確に診断できるスキルを高めていきましょう!第1回 意識障害第2弾シリーズの第1回の症候は“意識障害”です。意識障害は系統的な鑑別が必須です!ではその系統的な鑑別では有名なAIUEO TIPSがありますが、それが本当に有用なのでしょうか。使いこなせていますか?確かに重要な項目は入っていますが、覚えにくく、かつ重要度、緊急度の高いものから鑑別できるようになっていません。Dr.たけしの経験と膨大なエビデンスを元にしたシンプルな系統的鑑別方法をお教えします。第2回 頭痛第2回は頭痛へのアプローチです。頭痛の原因はなんと194にも分類されます。(国際頭痛分類)実際にはすべてを鑑別するというのは非常に困難ですので、この番組では、よくある原因や見落としてはいけない疾患に絞って詳しく解説します。見落としてはならない2次性頭痛、片頭痛と緊張型頭痛の鑑別が難しい1次性頭痛。それぞれ、原因の鑑別に必要なポイントをしっかりと見極めましょう。第3回 痙攣第3回は痙攣へのアプローチです。痙攣発作の患者が受診した際、慌てないように、まずすべきことは何かを知っておきましょう。その上で、まずは、失神とてんかん発作を鑑別していきます。鑑別のポイントは、病歴と身体所見。どのような所見で、てんかん発作を疑うのか、それとも失神を疑うのか。エビデンスの分析を基に解説します。第4回 しびれしびれは診療する機会が多く、かつ鑑別疾患が多岐にわたり、診断に苦慮することも多い症候です。今回は、末梢神経障害に絞って解説します。末梢神経障害は、単神経障害、多発単神経障害、多発神経障害に分類されます。その中でも、とくに高頻度で、原因疾患が100以上もある“ややこしい”多発神経障害を中心に取り扱います。診断に必要なのは「系統的な診断方法」です。その方法とは?Dr.たけしがエビデンスを基に詳細にお教えします。第5回 発作性めまいめまいは良性発作性頭位めまい症(BPPV)を中心とする末梢性であることがもっとも多い原因です。そのことを念頭においた上で、中枢性、前失神、心因性などの見逃してはならない重大疾患を除外しながら診断を進めていきます。めまいの診断には、身体診察が強力な武器となります。めまいの性状、眼振、誘発因子、持続時間、随伴症状などを詳細に確認することで、原因疾患を見極めていきましょう。番組後半では、BPPVの治療につながる診察方法を実演を交えながら解説します。第6回 持続性めまい今回は急性前庭症候群についてです。診断には、脳梗塞との鑑別が肝要です。めまい患者のうち、一般的な神経学的所見に異常のない隠れ脳梗塞の患者が150人に1人いると言われています。その隠れ脳梗塞を見逃さないためには眼振の診察-HINTSが重要となりますです。HINTSが陰性であれば、脳梗塞をかなりの確率で否定できます。実は数値上はMRIよりも診断に有用だとか。HINTSについてもアニメーションを用いて詳しく解説します。

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「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?

 女性てんかん患者(WWE)は、インターネットなどの多くのソースから妊娠関連の重要な情報を入手していることを調査が示している。イスラエル・ヘブライ大学のTal Lavi-Blau氏らは、妊娠、授乳中における4種類の抗てんかん薬使用について、Google検索により提供されているWebサイトのタイプを評価した。Epilepsy & behavior誌オンライン版2016年1月12日号の報告。 検索に使用されたコンピュータは、医療従事者が使用する40台、非医療従事者が使用する40台、イスラエルのWWEが使用する5台、米国の非医療従事者が使用する8台で行われた。各コンピュータにおいて、Google検索結果は1つの抗てんかん薬名(カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、レベチラセタム[またはKeppra])を含む「妊娠」「授乳(LactationまたはBreastfeeding)」検索用語の組み合わせで調査された。すべての検索で得られたトップ3とトップ10のWebサイトがマッピングされた(各コンピュータからのWebサイトの合計はそれぞれ45サイト、150サイト)。 主な結果は以下のとおり。・英語でのすべての検索結果において、米国、イスラエルのどちらのコンピュータでも、トップ3およびトップ10の結果に挙げられたWebサイトの大部分は、独立した健康ポータルサイトであった。・てんかん財団のWebサイトは10%以下であり、わずかな結果は米国国立衛生研究所の一般市民向けMedlinePlusからの入手であった。・ヘブライ語検索では、結果はほぼ全面的に、イスラエルまたはヘブライ語翻訳のWebサイトが含まれていた。英語の場合と同様に、市民向けであり、ヘブライ語で専門的に書かれたWebサイトは50%未満であった。・全体として、妊娠または授乳中の女性への抗てんかん薬使用に関する、読みやすく有用で高品質な情報は限定的であった。・的確なWebリソースに向けて患者を指導することは、彼らがオンライン入手可能な膨大な情報をナビゲートする手助けができる。関連医療ニュース てんかんと自殺企図、病因は共通している 新規抗てんかん薬の催奇形性リスクは 妊娠可能年齢のてんかん女性に対するレベチラセタム単独療法

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Vol. 4 No. 2 実地臨床における抗血小板薬選択のポイント

小田倉 弘典 氏土橋内科医院はじめに臨床医が抗血小板薬を使用する機会は多い。実地医家が最低限知っておくべき薬理学的知識をおさえ、疾患ごとに、1次予防と脳心血管疾患慢性期の2次予防において、どの場面でどういった薬剤を選べばよいか、あくまで現場からの視点で概説する。抗血小板薬でおさえるべき薬理学的知識実地臨床における抗血小板薬の使い分けについて論じる前に、人の止血機構とそこに抗血小板薬がどう働くかについての理解が欠かせない。筆者は止血血栓が専門ではないが、近年抗血栓薬に注目が集まっていることから、プライマリ・ケア医としておおよそ以下のように止血機構を把握することにしている。ヒトの血管壁が傷害された場合、1次血栓(血小板血栓)→ 2次血栓(フィブリン血栓)が形成される1次血栓:血小板が活性化され凝集することで形成される2次血栓:活性化された血小板表面で凝固系カスケードが駆動し、フィブリンが生成され強固な2次血栓(フィブリン塊)が形成される動脈系の血栓(非心原性脳塞栓、急性冠症候群など)では血小板血栓の関与が大きく、抗血小板薬が有効である。静脈系および心房内の血栓(心房細動、深部静脈血栓症など)ではフィブリン血栓の関与が大きく、抗凝固薬が有効である血小板活性化には濃染顆粒から分泌されるトロンボキサンA2(TXA2)とアデノシン2リン酸(ADP)による2つの正のフィードバック回路が大きく関与するアスピリンは、アラキドン酸カスケードを開始させるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1を阻害することで、TXA2を抑制し血小板の活性化を阻害するチエノピリジン系(クロピドグレル、チクロピジン)はADP受容体P2Y12の拮抗作用により血小板の活性化を阻害するシロスタゾールは、血小板の活性化を抑制するcAMPの代謝を阻害するホスホジエステラーゼ3を阻害することで血小板凝集を抑制する虚血性心疾患のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防古くは、Physicians’ Health Study1)において、虚血性心疾患の既往のない人へのアスピリン投与は、心血管死は減少させないものの心筋梗塞発症はアスピリン群のほうが低かったため、処方の機運が高まった時期がある。しかし、日本人の2型糖尿病患者2,539人を対象としたJPAD試験2)において、アスピリン群は対照群に比べ1次評価項目(複合項目)を減らさなかった(5.4% vs. 6.7%)。2次評価項目(致死性心筋梗塞、致死性脳卒中)および65歳以上のサブグループ解析における1次評価項目においては、アスピリン群で有意に少なかった。日本循環器学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』においても、高リスクの脂質異常症におけるイコサペント酸エチル投与の考慮が推奨度クラスI、複数の冠危険因子をもつ高齢者に対するアスピリン投与がクラスIIとされているのみである。現時点では、虚血性心疾患を標的とした抗血小板薬の1次予防は有効性が確立されておらず、65歳以上の糖尿病患者で多数の冠危険因子を有する場合以外は、投与は控えるべきと考えられる。2. 2次予防(慢性期)2009年のATT4)によるメタ解析において、心筋梗塞(6試験)または脳卒中(10試験)の既往患者に対して、アスピリン投与群は対照群と比較して1次評価項目(心筋梗塞、脳卒中、血管死)を有意に低下させたが(6.7% vs. 8.2%、p<0.0001)、出血性合併症は増加させなかった。一方、脳心血管イベントの既往例19,815例を対象として、アスピリンとクロピドグレルを比較したCAPRIE試験5)においては、クロピドグレルはアスピリンに比較して心血管イベントの発生を有意に抑制した(5.3% vs. 5.8%、p=0.043)。一方、重篤な出血性イベントは、両群間で差はなかった。3. 冠動脈ステント治療後現在、日本循環器学会のガイドライン6)では、ベアメタルステント(BMS)植込み後は1か月、薬剤溶出性ステント(DES)植込み後は1年(可能であればそれ以上)のアスピリンとクロピドグレル併用療法(DAPT)が推奨されている(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。ただし、いわゆる第二世代のDESでは遅発性血栓症リスクが低いため、DAPT期間の短縮を検証する大規模試験が現在進行中である。4. その他の抗血小板薬チエノピリジン系であるチクロピジンのアスピリンとの併用によるステント血栓予防効果は、確立したエビデンスがある。ただし、チクロピジンは肝障害や顆粒球減少などの副作用が多く、CLEAN試験7)の結果からも、アスピリンとの併用はクロピドグレルが第1選択と考えられる。プラスグレルは、クロピドグレル同様P2Y12受容体拮抗薬だが、クロピドグレルより効果発現が早く、CYP2C19の関与が少ないため、日本人に多いといわれている薬剤耐性に対しても有利と考えられている。今後の経験の蓄積が期待される。シロスタゾールは上記抗血小板薬に比べて抗血小板作用が弱いため、これらの薬剤が何らかの理由により使用困難な場合にその使用を考慮する。5. 抗凝固薬併用時2014年8月に、欧州心臓病学会(ESC)のワーキンググループから抗凝固薬併用時に関するコンセンサス文書が示され、注目されている8)。それによると、PCIを施行されたすべての抗凝固薬服用患者で、導入期には3剤併用(抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル)が推奨される。ただし、出血高リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)かつ低ステント血栓リスク(CHA2DS2-VAScスコア1点以下)の場合はアスピリンが除かれる。その後3剤併用は、待機的PCIの場合、BMSは1か月間、新世代DESは6か月、急性冠症候群ではステントの種類を問わず6か月(ただし高出血リスクで新世代ステントの場合は1か月)を考慮するとされ、その後抗凝固薬+抗血小板薬1剤の維持期へと移行する。この際、抗血小板薬としてはアスピリンはステント血栓症や、心血管イベント率の点で抗血小板薬2剤よりも高率であることが知られているが9)、一方、アスピリンとクロピドグレルの直接比較はないため、個々の出血とステント血栓症リスクにより決めることが必要である。施行後12か月を経た場合の長期管理については、1つの抗血小板薬を中止することが、コンセンサスとして明記されている。ただしステント血栓症が致命的となるような左主幹部、びまん性冠動脈狭窄、ステント血栓症の既往や心血管イベントを繰り返す例では、抗凝固薬+抗血小板薬1剤を継続する必要がある。脳卒中(非心原性脳梗塞)のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防脳梗塞の既往はないが、MRIで無症候性脳梗塞(特にラクナ梗塞)が見つかった場合、日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2009』10)においては、「無症候性ラクナ梗塞に対する抗血小板療法は慎重に行うべきである」として推奨度はグレードC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)とされている。また最近の日本人高齢者約14,000人を対象としたJPPP試験11)では、心血管死+非致死的脳卒中+非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの5年発生率はアスピリン群、対照群で同等であった。脳卒中の1次予防に対する抗血小板薬の高度なエビデンスはまだなく、治療としては血圧をはじめとする全身的な動脈硬化予防をまず行うべきである。2. 2次予防『脳卒中治療ガイドライン2009』において、非心原性脳梗塞の再発予防にはアスピリン、クロピドグレルがグレードA、シロスタゾール、チクロピジンはグレードBの推奨度である。2014年米国心臓病協会(AHA)の虚血性脳卒中の治療指針12)では、非心原性脳梗塞、TIAに対しアスピリン(推奨度クラスI、エビデンスレベルA)、アスピリンと徐放性ジピリダモール併用(クラスI、レベルB、日本では未承認)、クロピドグレル(クラスIIa、レベルB)となっている。現時点ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールの3剤のいずれかのうち、エビデンス、患者の好みと状況、医者の専門性を考慮して選択すべきと考えられる。エビデンスとしては、上記のCAPRIE試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死の年間発症率は、クロピドグレル単独投与群(75mg/日)が、アスピリン単独投与群(325mg/日)より有意に少なかった。またCSPS試験13)では、シロスタゾール(200mg/日、2分服)はプラセボ群に比し有意な脳卒中の再発低減効果を有し(プラセボ群に比し41.7%低減)、層別解析では、ラクナ梗塞の再発予防に有効であった。日本で行われたCSPS214)ではアスピリンとシロスタゾールの比較が行われ、脳梗塞再発抑制効果は両者で同等であり、出血性合併症がシロスタゾールで少ないことが報告されている。副作用として、アスピリンによる消化管出血、クロピドグレルによる肝障害、シロスタゾールによる頭痛、頻脈はよく経験されるものであり、これらとコストなどを考えながら選択するのが適切と考える。末梢血管疾患のエビデンス・ガイドライン下肢虚血症状(間歇性跛行)の治療と併存するリスクの高い心血管イベント予防とに分けて考える。下肢虚血症状に対する効果のエビデンスとしてはシロスタゾールおよびヒスタミン拮抗薬があることから、本邦および米国のガイドラインでは、まずシロスタゾールが推奨されている15)。心血管イベントの予防については、上記記載を参照されたい。現時点における抗血小板薬の使い方の実際以上をまとめると、虚血性心疾患、脳卒中ともに、1次予防に有効であるというアスピリンのエビデンスは確立されておらず、現時点では慎重に考えるべきであろう。また、2次予防に関しては、冠動脈ステント治療後の一定期間はアスピリンとクロピドグレルが推奨されるが、ステント治療後以外の虚血性心疾患および非心原性脳塞栓では、抗血小板薬いずれか1剤の投与が推奨されている。その際、複合心血管イベントの抑制という点で、クロピドグレルあるいはシロスタゾールがアスピリンを上回り出血は増加させないとのエビデンスが報告されている。現時点では、状況に応じてクロピドグレルあるいはシロスタゾールの使用が、アスピリンに優先する状況が増えているかもしれない。一方、アスピリンは上記以外にも虚血性心疾患、非心原性脳塞栓の2次予防に関して豊富なエビデンスを有する。またコストを考えた場合、アスピリン100mg1日1回の場合、1か月の自己負担金は50.4円(3割負担)に対し、クロピドグレル75mg1日1回の場合は2,475円とかなり差がある(表)。また、各抗血小板薬の副作用として、アスピリンは消化管出血、クロピドグレルは肝障害、シロスタゾールは頭痛と頻脈に注意すべきである。一律な処方ではなく、症例ごとにエビデンス、副作用(出血)リスク、医師の経験、コストなどを考慮に入れた選択が適切と考えられる。さらに、抗血小板薬2剤併用をいつまでつづけるか、周術期の抗血小板薬の休薬をどうするかといった問題に関しては、専門医とプライマリ・ケア医との連携が不可欠である。こうした問題に遭遇した際に情報共有が円滑に進むように、日頃から良好な関係を保つことが大切であると考える。表 抗血小板薬のコスト画像を拡大する文献1)Steering Committee of the Physicians' Health Study Research Group. Final report on the aspirin component of the ongoing Physicians' Health Study. N Engl J Med 1989; 321: 129-135.2)Ogawa H et al. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-2141.3)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).4)Antithrombotic Trialists' (ATT) Collaboration. Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet 2009; 373: 1849-1860.5)CAPRIE Steering Committee: A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.6)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).7)Isshiki T et al. Clopidogrel trial in patients with elective percutaneous coronary intervention for stable angina and old myocardial infarction (CLEAN). Int Heart J 2012; 53: 91-101.8)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA)endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.9)Karjalainen PP et al. Safety and efficacy of combined antiplatelet-warfarin therapy after coronary stenting. Eur Heart J 2007; 28: 726-732.10)篠原幸人ほか. 脳卒中治療ガイドライン2009. 協和企画, 東京, 2009.11)Ikeda Y et al. Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older with atherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial. JAMA 2014; 312: 2510-2520.12)Kernan WN et al. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke and transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2014; 45: 2160-2236.13)Gotoh F et al. Cilostazol stroke prevention study: a placebo-controlled double-blind trial for secondary prevention of cerebral infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis 2000; 9: 147-157.14)Shinohara Y et al. Cilostazol for prevention of secondary stroke (CSPS 2): an aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority trial. Lancet Neurol 2010; 9: 959-968.15)Rooke TW et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for the Management of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline): a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol 2011; 58: 2020-2045.

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家庭の味が認知症ケアには必要

 伝統的な食品は、帰属感、アイデンティティ、伝統の感情を強め、認知症患者の文化的アンデンティティやQOLの保持や強化に役立っている。味覚は、生理学的というよりも文化的なものである。食習慣は、人生の早い段階で確立され、その変更は難しい場合がある。また、なじみのない料理は、失望や裏切られたような気持ち、愛されていない感覚につながる可能性がある。ノルウェー・Lovisenberg diakonale hogskoleのIngrid Hanssen氏らは、施設に入居する認知症患者に対する伝統的な食品の意味について検討を行った。Journal of clinical nursing誌オンライン版2016年1月11日号の報告。 使用した3つの研究は定性的なデザインであった。認知症ケアを経験した家族や看護師へのより綿密なインタビューは、南アフリカ、エスニックノルウェー人、ノルウェーのサーミ人で行われた。文字説明によるContent-focused分析は、思考、感情、文化的意味を説明するために使用された。 主な結果は以下のとおり。・伝統的な食品は、帰属感や喜びを生み出した。・なじみのある味や匂いは、患者の楽しい思い出を呼び起こし、幸福感やアイデンティティ、帰属感を後押しし、普段話せなかった人にも発言をもたらした。・認知症者の子供のころから覚えている料理を提供することは、維持、文化的アイデンティティの強化、喜びの醸成、患者の帰属感向上、尊重や配慮されることに役立つ。・さらに伝統的な食品は、患者の食欲、栄養摂取、QOLを向上させる。・特別養護老人ホームで伝統的な食品を提供するためには、追加の計画やリソース、伝統的な知識、クリエイティビティ、患者の個人的な好みを知ることが必要である。関連医療ニュース 認知症に対する回想法、そのメリットは 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか

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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

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てんかんと自殺企図、病因は共通している

 てんかん発症患者は非発症者と比べて、てんかん診断前でも初回自殺企図のリスクが2.9倍高く、また自殺企図の再発リスクも1.8倍高いことが、米国・コロンビア大学のDale C. Hesdorffer氏らによる、住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。JAMA Psychiatry誌2016年1月号の掲載報告。てんかんと自殺企図およびその再発の関連が診断前でもみられた 先行研究で、てんかん患者は自殺リスクが5倍高いことが示されているが、自殺企図に関してや、精神障害や抗てんかん薬が自殺企図リスクに影響を及ぼすかどうかは、ほとんど明らかとなっていない。そこで研究グループは、自殺企図とてんかんとの関連の程度を評価するため、てんかん診断以前に初回の自殺企図および2回目の自殺企図(自殺企図の再発)を試みた患者(症例患者)と、てんかんを認めず初回および再発の自殺企図がみられた患者(対照患者)を比較する検討を行った。また、同関連について、精神障害の併存、および抗てんかん薬処方の除外による影響についても評価した。検討は、住民ベースの後ろ向きコホート研究にて、英国のClinical Practice Research Datalinkを用いて、一般診療を受けている人から症例患者と対照患者を特定して行った。症例患者は1987~2013年に診断を受けた10~60歳。対照患者は、各症例患者のてんかん診断日以前にてんかんの診断を受けていない、誕生年、性別、一般診療を適合させた各4例(症例患者1例に対し、対照患者4例)を無作為に選定した。主要評価項目は、症例患者と対照患者の初回自殺企図および自殺企図再発のハザード比(HR)であった。 てんかんと自殺企図との関連の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・症例患者1万4,059例(年齢中央値:36歳)vs.対照患者5万6, 184例(同36歳)において(年齢範囲は両群とも10~60歳)、症例患者のてんかん診断前における初回自殺企図リスクは2.9倍(95%信頼区間[CI]:2.5~3.4)高率であった。・症例患者278例(年齢中央値:37歳)vs.対照患者434例(同35歳)において(年齢範囲は両群とも10~61歳)、症例患者のてんかん診断前における自殺企図再発リスクは1.8倍(95%CI:1.3~2.5)高率であった。・診断日以前の抗てんかん薬処方を除外しても、自殺企図リスクについて結果に意味のある変化は認められなかった。・精神障害の有無別の解析でも、自殺企図リスクについての結果に意味のある変化は認められなかった。 著者らは、「てんかんと自殺企図およびその再発の関連が発症前でもみられたことは、両者の生物学的基盤が共通していることを示唆するものである」と述べ、「自殺企図およびその再発は、抗てんかん薬の服用がなくても、また精神障害の診断がなくても関連がみられ、機序は不明だが病因が共通しているとのエビデンスを強化する所見が示された」とまとめている。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか

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術後の栄養管理、診療科ごとの傾向と課題は?

 術後の栄養管理は、患者の回復に大きな影響を及ぼす。2010年より「栄養サポートチーム加算 200点(週1回)」の算定が可能となり、さまざまな病院で栄養サポートチーム(Nutrition Support Team、以下NST)の活動をはじめとした栄養管理に対する関心がますます高まっている。 そこで、今回は稲葉 毅氏(帝京大学医学部附属病院 外科)らによる、NSTなどの活動を通じて明らかになった各診療科の栄養管理における傾向と課題、さらにNSTの関わり方を考察した論文「外科系病棟の栄養管理 ―診療科による栄養管理の相違―」1)を紹介する。 著者の勤務する大学病院では、2006年にNSTが設置されたが、NSTへのコンサルト数は十分とは言えなかった。そこで、2010年度より褥瘡対策チームとの合同回診を開始し、栄養不良状態の患者に対応し始めた。その結果、褥瘡を有する患者には栄養不良患者が多いことが明らかになり、NSTが対応する診療科・症例が増加した。併せて、2008年から参加している欧州代謝栄養学会のnutritionDay栄養調査から、栄養管理のさらに詳しい状況を探ることができた。これらの活動における、従来NSTにコンサルトのなかった診療科との接触を通じて、術後における栄養管理の特色が明らかになった。内科系・外科系にみられる術後の栄養管理の傾向 2つの活動から示された、主な診療科における術後の栄養管理の傾向は以下のとおり。【外科系】・消化器外科:悪性腫瘍や消化管狭窄などのため、栄養状態不良の患者が多く、積極的な栄養療法が日常的に行われていた。・脳神経外科:手術後に経腸栄養を投与されているケースが多かった。術後高血糖を考慮し、糖尿病用の栄養剤を多く用いられていた。・心臓血管外科:栄養過多患者が多く、水分量を厳密に管理される傾向があるため、経腸栄養が必要なケースは少なかった。・耳鼻咽喉科:咽喉頭がんに対して栄養管理が必要なケースがあり、中心静脈栄養や末梢静脈栄養で対応されていた。また、経管栄養には習熟していない印象であった。【内科系】・神経内科:胃瘻を造設するケースが多く、経管栄養を積極的に用いる傾向にあった。しかし、栄養投与量は他科に比べて低かった(成人男性で900kcal/day程度であった)。・血液内科・呼吸器内科:慢性的に栄養不良な患者が多いが、基本的に経口摂取可能であるため栄養補助療法が十分に行われていない傾向にあった。各診療科における術後の栄養管理の課題とは さらに、著者は、各診療科において、患者の性質ごとに術後の栄養管理の課題が存在することを指摘した。 まず、内科系の診療科は、実際の摂食量にかかわらず、入院時に設定されたエネルギー制限食が漫然と投与されているケースがみられる。これに対して、外科系の診療科は、こうした漫然とした投与は少ないものの、中心静脈栄養使用時の脂肪製剤投与不足や、経腸栄養使用時の微量元素製剤の投与欠如などがみられる。 そのうえで著者は、今後このような問題症例をどのように発見していくかが課題であると強調した。さらに、NSTは自施設における各診療科の各特長を踏まえたうえで、各科の栄養治療法を学びながら栄養管理を進めていく必要があると考察した。 原著には、より詳細な調査結果や考察が記載されている。術後の栄養状態が不良な患者を抱えている先生方にはぜひ一読いただき、NSTへのコンサルトを含めた栄養管理方法を改めて検討していただきたい。

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筋萎縮性側索硬化症〔ALS : amyotrophic lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、中年期以降に発症する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が侵される疾患である。構音・嚥下筋、呼吸筋を含む全身の筋萎縮と脱力が進行性に認められ、呼吸補助を行わなければ平均2~4年で死に至る神経難病の1つである。従来ALSは運動神経系に限局した疾患とされ、主に日本から報告されてきた認知症を伴ったALS(ALS with dementia:ALS-D)は特殊な亜型と考えられていた。ところが近年、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と病理所見、原因となる遺伝素因についての共通性が明らかとなり、ALSとFTLDを一連の疾患スペクトラムで捉えようとする考えが広まっている。■ 疫学2009年度の調査では、わが国におけるALSの発症率は、人口10万人当たり2.1~2.3人、有病率は10万人当たり9.7~10.1人とされ、ほぼ全世界で同じような数字を示し、人種差もないとされている。性別では、男性が女性に比して約1.3~1.5倍多く発症する。また、発症率は40歳代より上昇し、ピークは60~70歳代である。■ 病因ALSの約5~10%に家族歴が認められ、その多くが常染色体顕性(優性)遺伝を示す。常染色体顕性遺伝を示す家系の約20~30%は活性酸素を消去する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が原因と報告されている。この変異したSOD1遺伝子を強制発現したtransgenic mouseはALSと類似した神経症状を示すことから、変異SOD1が運動ニューロンの障害に働くことは間違いないが、その機序については明らかとなってはいない。SOD1以外の遺伝子座や原因遺伝子も次々に同定されてきているが、ALSの大多数を占める孤発例の原因についてはいまだ不明という状況である。病理で認められるユビキチン陽性封入体の本体としてTDP-43(transactive response DNA-binding protein 43 kDa)が同定され、病原蛋白質と想定されている。■ 症状上位と下位運動ニューロンが障害されるが、下記の症状がそれぞれの程度に応じて障害部位に認められる(表)。画像を拡大する上位運動ニューロンの障害巧緻運動の障害痙縮深部腱反射の亢進病的反射陽性(ホフマン反射、バビンスキー反射など)下位運動ニューロンの障害筋力低下筋萎縮筋緊張の低下筋線維束性収縮深部腱反射の減弱ないし消失また、前述したようにALSにおける認知機能障害が注目されるようになり、約半数の症例で何らかの障害を示すとされている。その特徴として、記銘力や見当識の障害は目立たず、行動異常、性格変化や意欲の低下、言語機能の低下として表れることが報告されている。ALSでは、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥創を来すことは少なく、陰性4徴候と呼ばれている。■ 分類上位・下位運動ニューロン徴候が四肢からみられ、体幹・脳神経領域に進展していく脊髄発症型(古典型)と、病初期に脳神経領域が強く障害され、四肢にはあまり目立たない球麻痺型(進行性球麻痺型)が病型の中核をなす。また、病初期には上位運動ニューロン徴候のみ、あるいは下位運動ニューロン徴候のみを示して進行性に悪化する症例があり、前者は原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、後者は脊髄性進行性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)あるいは単に進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)と診断されてきた。これらの疾患が独立した一疾患単位であるのか、あるいはALSの亜型と考えるべきなのか議論がいまだにあり、結論は得られていない。■ 予後ALSの経過には、個々人での差異もかなりみられることに留意する必要があるが、一般的には、発症から死亡もしくは呼吸補助が必要となるまで平均2~4年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ALSの診断は、構音障害や嚥下障害などの球麻痺症状を含む全身性、進行性の筋萎縮や脱力がみられるか、または筋電図検査において、広範な部位に脱神経所見が認められることにより診断される。画像検査においては後述するような所見が認められることもあるが、基本的には筋力低下や筋萎縮の原因となりうる脳幹や脊髄での圧迫、腫瘍病変などを除外する目的で行われる。なお、ALSの診断基準は診断感度を上げるための改定が行われており、改定El Escorial診断基準、Updated Awaji診断基準、Gold Coast診断基準などが出されている。表に示した診断基準は、改定El Escorial診断基準を取り入れながら,わが国において従来用いられてきた厚生労働省特定疾患神経変性疾患調査研究班の診断基準を改訂し、2003年度に神経変性疾患に関する研究班により作成されたものであり、指定難病の申請をする際に利用されている。1)針筋電図検査神経原性の場合、運動単位電位(muscle unit potential:MUP)の種類が減少し、高振幅、多相性のものが目立ち、干渉波が減少する。脱神経があると、安静時の検査で線維性収縮電位、陽性鋭波、線維束性収縮電位が認められる。脳幹領域、胸髄領域では各1筋、頸髄および腰仙髄領域では神経根支配と末梢神経支配の異なる2筋について検索を行うようにする。2)頭部MRIALSのMRI所見としては、T2強調画像における皮質脊髄路に沿った高信号域、中心溝を縁取るように線状の低信号領域などが報告されている。前者は皮質脊髄路における神経線維の変性・脱落、マクロファージの出現、グリオーシスによるものとされ、後者は鉄の沈着によるものと推定されている。いずれの所見もALSに特異的にみられるわけではなく、健常者でも同様の所見が認められるとの報告もある。現時点でALSに特異的なMRI所見はなく、筋萎縮や脱力を呈する他疾患を除外する目的で行われる。3)鑑別診断鑑別すべき疾患は先述の表の鑑別診断を参照。その他に鑑別すべき疾患として、ポリオ後症候群、重症筋無力症なども挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法ALSでは治療に関する高いエビデンスは少なく、その薬物療法に関して、長らくグルタミン酸拮抗剤であるリルゾール(商品名:リルテック)が唯一という状況であった。しかし、2015年6月、フリーラジカル消去剤として脳梗塞の治療薬として使用されていたエダラボン(同:ラジカット)が、ALSの進行を遅らせることが証明され、治療薬として認可された。当初点滴薬のみであったが、2022年12月に経口薬の製造販売が承認された。リルゾールは、生存期間を平均3ヵ月延長するとされる。ALSと診断された方に治療薬として処方することが勧められるが、同時に、投与する前に患者には薬の効果は顕著ではないこと、肝機能障害、貧血、その他の副作用が生じる可能性があることを充分説明した上で同意を得て使用する。なお、努力性肺活量(%FVC)が60%を切っている患者への投与は、効果が期待できないとの理由で避けるべきである。一般的には、1回50mgを朝、夕食前に内服する。エダラボンのALSに関する進行抑制効果は、発症後2年以内で、呼吸機能が保たれている患者群において確認された。一方、ALS重症度分類4度以上、%FVCが70%未満に低下している症例での有効性は確認されていない。実際の臨床では、病期・状態にかかわらず、すべてのALS患者に投与可能とされているが、投与はALSの治療経験を持つ医師と連携しながら実施する。経口剤は、1日1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に投与する。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、第1クールは14日間連続投与した後、14日間休薬する。第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬し、以後同様のサイクルで投与を続ける。家族性ALSのうちで最も頻度の高いSOD1遺伝子変異を有する症例に対して、蛋白合成を抑制するアンチセンスヌクレオチドである「トフェルセン」の髄腔内投与が米国および欧州において認可された。ALSの機能評価スケールでの有意な改善は認められなかったが、髄液中のSOD1蛋白質濃度が低下し、血漿中のNfL濃度の低下が認められた。対症療法として、痙縮に対する理学療法、抗痙縮薬の投与などを行う。流涎に対して、抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬などの効果が報告されている。ALS患者においてしばしば認められる強制泣き・笑いなどの情動調節障害に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬で効果があるとされ、試みる価値がある。米国ではデキストロメトルファンとキニジンの合剤が承認されているが、わが国では未承認である。疼痛や精神不安、不眠に対しては、呼吸抑制などのリスクがあることを患者および家族に説明した上で、麻薬を含む鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などの積極的薬物治療を行うべきである。■ 呼吸管理ALSは、呼吸筋を含む全身筋の脱力を来す疾患で、呼吸補助を行わなければ呼吸不全がその死因となることが多い。すなわち適切な呼吸補助と全身管理を行えば長期の生存も期待できるが、その際問題になることとして、一度装着した呼吸器を外すことは現在のわが国では難しいこと、呼吸器を装着した患者が長期入院できる医療施設が限られるため、在宅での療養を選択せざるを得ず、患者家族の負担が過大となる点が挙げられる。呼吸補助に関しても、まずマスクを用いた非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation:NIV)を選択し、その後気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheotomy (and)invasive ventilation:TIV)へと変更する方法、最初から侵襲的呼吸補助を行うなどの選択が考えられる。呼吸補助が検討されるべき時期として目安となる基準を提示しているガイドラインもあるが、遅くとも呼吸障害に関連した臨床症状(呼吸苦、朝の頭痛、小声など)が認められた段階で開始するようにする。以前は%FVCが65%未満での導入が検討されていたが、より早期に導入することで生存期間が延長するとの報告もある。■ 栄養管理ALSでは、嚥下障害の進行により、栄養不良、脱水、誤飲などの危険にもさらされる。栄養状態が不良だと予後不良となることが報告されており、適切な栄養管理を行う必要がある。現在、経皮的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が比較的安全に施行できることから、球麻痺症状のある患者では、窒息、誤飲の危険を回避するために早めにPEGを施行しておくことが勧められる。■ リハビリテーション比較的急速に進行する筋萎縮・脱力に対して、筋力増強あるいは維持を目的とした運動療法が有効か否かという疑問がある。現在でもこれに対する確かな答えはないが、定期的な軽い運動療法を施した群では、とくに運動療法を行わなかった群と比べて、有意性は認められないものの、一部のADL評価スケールで障害度が軽くなる傾向が報告されている。ただし一般的に筋力の改善は期待できない。強い運動強度を負荷することに関しては、逆に悪影響を及ぼした可能性を示唆するものが目立ち、積極的なリハビリを推奨することはできない。近年、ロボット・リハビリテーション医療が発展して装着型サイボーグ“Hybrid Assistive Limb”(商品名:HAL)が保険適用となり、歩行距離の延長、歩行システムの再構築に有用であるとの報告もある。4 今後の展望ここ数年、ALS患者より樹立したiPS細胞を利用した薬剤スクリーニングで、有効とされた薬剤をはじめとしたいくつかの薬剤の臨床試験が実施され、新たな薬剤として認可されるものがでることが期待される。また、10年ぶりにガイドラインの改定が行われ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023」が刊行された。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患に関する調査研究班(医療者向け診療、研究情報)JaCALS(医療者向け診療・研究情報)患者会情報日本ALS協会(患者とその家族会の情報)1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編集. 日本神経学会監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂;2023.公開履歴初回2013年6月13日更新2016年1月19日更新2024年8月22日

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認知症ドライバーの通報規定、どう考えますか

 米国では、各州で医師による認知症ドライバーに関する州政府自動車省(DMV)への通報規定が異なっており、義務となっている州もあれば任意の州もある。また、この問題に関して規定がない州もあり、アーカンソー州もその1つである。一方でアーカンソー州の医師には、意に反して患者をDMVへ通報した場合に法的責任を負わされるリスクがある。そこで、ニューメキシコ州立大学のErika M. Gergerich氏がアーカンソー州の医師が抱える認知症ドライバー問題を明らかにする目的で調査を行ったところ、アーカンソー州議会が任意の通報規定を採択するよう求める結果が示された。著者は、「認知症患者の運転適性評価の訓練と同様、州の通報規定に関する医師への教育も必要である」と述べている。Gerontologist誌オンライン版2015年11月25日号の掲載報告。 研究グループは、アーカンソー州の神経内科医および老年病専門医が認知症ドライバーの問題をどのように捉えているのかを確認するため、3つの課題について調査用紙を配布した。(1)認知症ドライバーのDMVへの通報に関する州政策についてどのような知識を有しているか(2)認知症ドライバーの通報に関するさまざまな政策の選択肢について、どのような意見を持っているか(3)認知症ドライバーに関する通報の実務はどうしているか 主な結果は以下のとおり。・回答から、リスクのある認知症ドライバーの評価や通報のプロセスに関し、かなりの懸念があることが判明した。・通報について、任意を支持する意見が強く、義務化を望む声は少なかった。・運転をやめることについての患者および介護者との対話については、論争中または継続中との回答が目立った。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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レノックス・ガストー症候群〔LGS : Lennox-Gastaut syndrome〕

1 疾患概要■ 定義・疫学Lennox-Gastaut syndrome(LGS)は、小児期発症のてんかん症候群のうち、1~10%を占める。典型例は、(1)脳波異常:遅棘徐波(<3 Hz)、(2)精神遅滞・認知障害、(3)多彩な難治性てんかん発作を呈する。1~8歳の小児期(多くは3~5歳)に発症し、やや男児に多い。■ 病因60%は症候性であり、原因として周産期障害、局所性皮質形成異常、結節性硬化症、ダウン症候群、頭部外傷などが挙げられる。残りの40%は潜因性である。30~65%は症候群から移行する。近年、全エクソン解析によって遺伝学的背景が明らかとなってきており、CHD2、HNRNPU、DNM1、GABRB3、SCN1Aなど複数の原因遺伝子が報告されている。■ 症状LGSの75%以上は、2種類以上の発作型を有する。1)強直発作最も多い発作型であり診断には必須とされる。レム睡眠期に頻度が高く、数秒間の短い発作であり、軸性(頭部・頸部)、体軸-肢体性(上肢)、全身性に分類される。頻脈、顔面紅潮、瞳孔散大、失禁などの自律神経症状を伴う。2)非定型欠神発作強直発作と同程度の頻度で認められる。小児の定型欠神発作と比較すると、発作の起始と終了は不明瞭であり、持続時間が長いことが特徴である。眼瞼や口部のミオクローヌス、四肢屈曲、頸部強直などの運動発作や自動症を伴うこともある。3)脱力発作頻度は10~56%とされ、強直発作より少ない。程度はさまざまで、頭部前屈のみの発作から転倒を伴うものまでみられる。発作に先行してミオクローヌスを認めることもある。4)その他全身強直間代性けいれん、ミオクロニー発作や複雑部分発作もみられる。5)非けいれん性てんかん重積LGSでは、50~75%と比較的高頻度にみられる。活動性低下や意識混濁が長く続き、運動要素を伴う発作頻度が増加する。強直発作が、覚醒・睡眠中にほぼ持続的に出現する強直発作重積もみられることがある。■ 脳波所見遅棘徐波(1.5~2.5 Hz)を認め、覚醒から入眠期にかけて増加し、最大振幅は前頭葉であることが多い(図)。ノンレム睡眠時には広汎性多棘徐波複合となり、覚醒時と比較して周波数は遅くなる。深睡眠では、特徴的な10~15Hzのrapid rhythmを認める。背景活動の周波数は、年齢に比して遅い。脱力発作では、頭部や顔面の外傷を予防するため、ヘルメットなどで保護する必要がある。■ 予後てんかんは小児期に始まり、成人期まで難治性のまま経過する。認知発達は障害され、LGS発症5年後で75~90%に精神遅滞を認める。行動異常や自閉性も伴い、大部分は教育において特別支援を要する。早期発症やWest症候群から移行した例、重積発作を反復する例では、より予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)Severe myoclonic epilepsy of infancy(SMEI または Dravet症候群)乳児期に発熱と関連する、全身性けいれんで発症する。その後、1~4歳頃に無熱性の間代性けいれん、ミオクロニー発作、非定型欠神発作を認める。LGSとは異なり、熱性けいれんやてんかんの家族歴を高率に認め、SCN1A遺伝子変異を認めることが多い。2)ミオクロニー失立てんかん(MAE または Doose症候群)発症年齢や発作型がLGSと類似しており、鑑別困難な疾患の1つであるが、LGSと比較して、MAEは発症時に正常発達であることが多く、経過に伴って発作の主体がLGSは強直性けいれん、MAEではミオクロニー失立発作となる特徴がある。また、発症から数年後にけいれん発作が軽快する予後良好な症例群がみられることも、LGSと異なる。覚醒時脳波では、開眼によっても消失しない4~7Hz頭頂後頭部θ波が特徴的である。3)非定型良性小児部分てんかん/偽性LGS睡眠時の部分発作や非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を認める。脳波では、深睡眠での頻回もしくは持続性の棘徐波が特徴である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 抗てんかん薬2013年3月にルフィナミド(商品名:イノベロン)が、LGSに対する他のてんかん薬との併用療法として承認された。有効率は32.7%で、特に強直発作と脱力発作に対する効果が示唆されている。バルプロ酸(同:デパケンほか)とラモトリギン(同: ラミクタール)はすべての発作型にある程度効果を認めるが、脱力発作により有効である。フェニトイン(同:アルビアチンほか)は強直発作、エトスクシミド(同:エピレオプチマルほか)は脱力発作への効果が報告されている。クロバザム(同:マイスタン)高容量(1.0mg/kg/day)で脱力発作が40%以上減少したと報告があるが、鎮静や分泌増加の副作用に注意する必要がある。その他、トピラマート(同:トピナ)とfelbamate(わが国では未承認)は脱力発作をそれぞれ34%、 14.8%減少させる有効性が報告されている。■ その他外傷を伴う転倒発作に対して、脳梁離断術が行われるが、効果は一定しない。迷走神経刺激療法は、種々の発作、とくに脱力発作への有効性が示唆されている。4 今後の展望原因遺伝子が複数同定されてきており、今後分子病態を基にした新規抗てんかん薬の開発が期待される。5 主たる診療科小児神経科(日本小児神経学会ウェブサイトより)てんかん科(日本てんかん学会ウェブサイトより)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)小児慢性特定疾患(日本小児神経学会)(一般利用者向けと会員医療従事者向けのまとまった情報)てんかん診療ネットワーク(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Living with LGS(一般利用者向けの英文サイト)1)Crumrine PK. Paediatr Drugs.2011;13:107-118.2)VanStraten AF, et al. Pediatr Neurol.2012;47:153-161.3)久保田雅也.小児てんかんの最新医療.In:五十嵐隆、岡明 編.小児科臨床ピクシス3.中山書店;2008.p.146-149.4)Beaumanoir Aほか. Lennox-Gastaut症候群.In: J Rogerほか編.てんかん症候群 乳幼児・小児・青年期のてんかん学.中山書店;2007.p.123-145.5)Epi4K Consortium & Epilepsy Phenome/Genome Project, et al. Nature.2013;501:217-221.6)Montouris GD, et al. Epilepsia.2014;55:10-20.公開履歴初回2013年07月11日更新2016年01月12日

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糖尿病による認知症リスクに男女差あり~230万人の解析

 2型糖尿病により上乗せされる心血管疾患リスクは、男性より女性で大きい。糖尿病は認知症の危険因子でもあるが、その関連性に男女差がないかどうかは不明である。オーストラリアAlfred HealthのSaion Chatterjee氏らは、男女の糖尿病患者と認知症発症における性特異的な関連を検討するために、未発表データを用いてメタ解析を行った。その結果、2型糖尿病患者は非糖尿病者に比べて認知症の発症リスクが約60%高いこと、また、血管性認知症の上乗せリスクは女性のほうが大きいことが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2015年12月17日号に掲載。 著者らは、2014年11月以前に発表された研究で、糖尿病と認知症とのプロスペクティブな関連についての報告を体系的に検索した。各研究の著者から、糖尿病と認知症(全体およびサブタイプ)の関連における未発表の性特異的相対リスク(RR)および95%CIを入手した。ランダム効果メタアナリシスを用いて、性特異的RRおよびRRの女性対男性比(RRR)をプールした。 主な結果は以下のとおり。・14研究、合計231万330人、認知症10万2,174例のデータを解析した。・複数の交絡因子による調整後の解析では、男女共に、糖尿病により何らかの認知症のリスクが約60%増加した(女性:プールされたRR 1.62 [95%CI:1.45~1.80]、男性:同 1.58 [同:1.38~1.81])。・血管性認知症における糖尿病関連RRは、女性で2.34(95%CI:1.86~2.94)、男性で1.73(同:1.61~1.85)であった。また、非血管性認知症におけるRRは、女性で1.53(同:1.35~1.73)、男性で1.49(同:1.31~1.69)であった。・糖尿病の女性の血管性認知症の発症リスクは、男性よりも19%高かった(複数因子で調整されたRRR 1.19 [95%CI:1.08~1.30]、p<0.001)。

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