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ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症〔LAL-D:Lysosomal Acid Lipase Deficiency〕

ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義ライソゾームは細胞内小器官であり、不要となった組織や細胞の構成成分である糖脂質や糖蛋白を取り込んで加水分解する働きを持つ。ライソゾーム病は、ライソゾームに局在する酵素活性が失われることを病因とし、基質が分解されず蓄積するため、種々の臓器の肥大と機能障害を引き起こす。ライソゾーム病の特徴は、進行性であること、蓄積物質により罹患臓器が異なること、重症度は患者によりさまざまで、それぞれ発症時期や障害臓器範囲、症状が異なることである。このライソゾーム病の1つにライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)がある。LAL-D(OMIM 278000)は、LIPA遺伝子変異によりLDL受容体を介して細胞内に取り込んだコレステロールエステルやトリグリセリドを加水分解する酵素であるライソゾーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase:LAL)の活性が低下し、全身の臓器のライソゾーム内にコレステロールエステルとトリグリセリドが蓄積する常染色体劣性遺伝疾患である1、2)。■ 疫学LAL-Dは臨床的に2つの主要な表現型を呈する。乳児型のウォルマン病(WD)と小児・成人型のコレステロールエステル蓄積症(CESD)である。LAL活性がWDでは完全欠損、CESDでは部分欠損である。その発生頻度は、WDは50万人に1人と推定されている。CESDで最も高頻度にみられる遺伝子異常は、LIPA遺伝子エクソン8のsplice junction mutation(c.894G>A;E8SJM-1G>A)であるが、CESD発症率はドイツでのE8SJM-1G>A変異頻度から4万人に1人と推定されている。しかし、実際の報告では13~30万人に1人と推定よりも少なく、未診断例が相当数いると考えられる1、2)。両病型とも性差はない。日本を含むアジアでのCESD発症頻度はいまだ不明である。最近、日本の症例報告をまとめた論文が発表されている3)。■ 病因乳児型のWDはより重症であり、LAL活性が欠損している。小児・成人型のCESDはLAL活性が1~12%と低下している。この2つの疾患は完全に分かれるものではなく、中間型も存在し、疾患の連続性がある。LIPA遺伝子の変異は、2つの表現型でほとんどが共通しないが、数ヵ所共通の変異が報告されている2)。LAL-DのうちCESDの病態を示す(図)。LDLコレステロールは、LDL受容体を介して細胞に取り込まれ、ライソゾームへ輸送される。LIPA遺伝子異常によりLAL活性が低下すると、ライソゾーム内の脂質が分解されずコレステロールエステル/中性脂肪が蓄積してライソゾームが肥大化し、細胞が膨張する。この結果、小滴性脂肪沈着が生じる。また、細胞内で遊離コレステロール放出量が低下し、HMG-CoAの抑制が不十分となり、細胞内でのコレステロール産生の抑制ができずに増加する。さらに、LDL受容体発現がある程度抑制され、LDLコレステロール取り込みが低下し、血中LDLの上昇がみられる。このため動脈硬化の促進、心血管障害が生じる1)。WDではLAL活性が完全に欠損するため、ライソゾーム内の脂質がまったく分解されず、細胞内に遊離コレステロールが放出されなくなる。このためLDL受容体発現の抑制ができず、LDL取り込みが亢進し、ライソゾーム内にコレステロールエステルがさらに蓄積し、血中LDLは上昇しない1)。画像を拡大する■ 症状、分類および予後WDはライソゾーム内への著しい脂質蓄積を生じ重症化する。肝不全、脾腫、骨髄不全、呼吸障害、小腸吸収不全、下痢、重度成長障害など重度で多彩な症状を呈し、生後半年までに死亡する。副腎石灰化は診断的価値が高い。CESDではライソゾーム内への脂質蓄積は、WDより緩徐である。そのため発症は遅く、成人期まで症状が現れないこともある。一般的に肥満は少ない。肝腫大(99.3%)、脾腫大(74%)、持続的な高トランスアミナーゼ血症、脂質異常症(LDLコレステロール高値、HDLコレステロール低値)を来し、進行すれば肝硬変症(門脈圧亢進症、食道静脈瘤)、脳血管障害、虚血性心疾患を引き起こす。89%は12歳未満で発症し、死亡例の約半数は21歳未満であるため、早期発見が重要である。過半数は肝不全が死因である1、2)。なぜ肝線維化の進行が早いのかについては、大量に蓄積したコレステロールエステルが肝線維化を促進する、線維化の進行防止に重要な役割を持つライソゾーム関連NK細胞が酸性リパーゼ活性低下によって阻害される、などの説があるが明らかにはなっていない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)潜在的にLAL-Dが含まれる可能性がある疾患を表1に示す1)。非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)や家族性高コレステロール血症(FH)と思われる症例の中には、LAL-D患者が潜在化している可能性があり、注意を要する。ALT値はNAFLDと同程度であるが、FHと同程度の高いLDL値と、NAFLDより低めのHDL値が目安になるかもしれない(表2)。LDL高値症例のうち、家族性高コレステロール血症の遺伝子異常を持たない症例に対し、肝機能障害やHDL低値、非肥満などを参考にLAL-Dをスクリーニングする試みも報告されている4)。また、減量しても肝機能が改善しないNAFLD症例で、後にLAL-Dと診断された症例も報告されており、治療に反応しないNAFLD症例には注意を要する5)。診断には小滴性脂肪沈着(Oil Red O染色など脂肪染色で強く染まる)、泡沫状マクロファージといった特徴的な肝組織学的所見やLAL酵素活性測定、LIPA遺伝子解析が有用である1、6、7)。とくにLAL酵素活性測定は商業ベースのラボでは実施していないが、新生児マススクリーニング用の濾紙血で測定可能であり、診断に有用である6)。WDは急速に全身状態が悪化する致死的疾患であり、またCESDは診断がついていない症例が潜在する可能性がある。上記の症状や所見を手掛かりに、積極的に診断していく必要がある。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)HMG-CoA阻害薬は、CESD患者の脂質異常症改善にある程度効果がみられることがあるものの、肝病変は通常改善しない。肝移植は肝硬変合併例で行われてきたが、長期的なデータが限られていることや、移植後の合併症が懸念される。他のライソゾーム病で試みられている造血幹細胞移植においても、長期的なデータが限られていることや、造血系起源の細胞にのみ影響することから根治治療にはならない。同様にケミカルシャペロン療法や基質合成抑制療法もLAL-Dの治療法としては確立されていない。遺伝子組換えヒトLALが開発され、WDとCESDに対する酵素補充療法 セベリパーゼ・アルファ(商品名:カヌマ点滴静注)の治験として、WDを対象とした第II/III相試験8)およびCESDを対象とした第III相臨床試験(ARISE trial)9)が行われ有効性、安全性が示され、わが国では2016年5月に薬価収載(保険適用)になった。主な副作用はアナフィラキシーを含む投与時反応である。4 今後の展望わが国におけるLAL-Dの診断例はきわめて少ない。WDは急速に進行し重症化するため、診断が遅れると致死的になる恐れがある。CESDは他疾患と診断されたまま潜在化する可能性がある。LAL-Dが疑わしい患者に対しては積極的にLAL活性の測定を行い、診断される必要がある。また、LAL-Dと診断しえた症例が増えることで、わが国における本疾患の発生率や臨床的特徴がより明らかになると思われる。5 主たる診療科WDは乳児期発症の致死的疾患であり、またCESDは小児期に多くが発症することから小児科が、この疾患をみる主たる診療科になるものの、CESDは成人期発症例もあること、治療の進歩により長期生存例が増えてくれば、消化器内科においても診療されることになると考えられる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報Online Mendelian Inheritance in ManのLAL-Dの概要(医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センターの酸性リパーゼ欠損症の概要(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ライソゾーム病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)全陽. 肝胆膵. 2014;69:445-453.2)Bernstein DL, et al. J Hepatol. 2013;58:1230-1243.3)Ikari N, et al. J Nippon Med Sch. 2018;85:131-137.4)Draijer LG, et al. Atherosclerosis. 2018;278:174-179.5)Himes RW, et al. Pediatrics. 2016;138:e20160214.6)Dairaku T, et al. Mol Genet Metab. 2014;111:193-196.7)Kuranobu N, et al. Hepatol Res. 2016;46:477-482.8)Jones SA, et al. Mol Genet Metab. 2015;114:S59.9)Burton BK, et al. N Engl J Med. 2015;373:1010-1020.公開履歴初回2017年3月7日更新2019年3月12日

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「投薬後の継続フォロー」で40%の患者にイベント発見【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第20回

現在、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)改正に向けて議論が続けられています。薬機法は、2013年に薬事法から改正されました。その附則で「施行後5年をめどに法律の見直しを行う」と規定されており、昨年から見直しが始まりました。定期点検的であると思われていた見直し作業ですが、厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会により出された「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」というとりまとめが大きな論点になり、議論が長引いています。議論されている項目のうち、薬局や薬剤師に関連が強い項目としては、以下のようなものがあります。服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を、調剤時のみならず薬剤の服用期間を通じて行うことを薬剤師法上で義務化する。薬局を地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の2類型化する。製品への添付文書の同梱を廃止し、電子的方法による提供を基本とする。今回の議論の中で、薬剤師に投薬時のみならず、服用期間を通じた継続的な服薬状況の把握や服薬指導の実施が義務付けられる見込みです。そうなると、次回の来局時に症状や副作用を確認するのではなく、薬剤師が主体的に服薬中の患者さんにアプローチして、必要があれば医師へ情報提供する必要があります。では、服薬中の患者さんのフォローとは、具体的にどのようなことで、そこからどのような効果が得られるのでしょうか。明治薬科大学 公衆衛生・疫学研究室の赤沢 学氏らによる、投薬後に患者さんのフォローを行った研究では、下記のような活動結果があったと報告されています。薬剤師が長期処方患者に対し、投薬後から次回受診までの間に、患者の服薬状況や症状変化の確認、治療に関する悩みの解消に取り組んだ。データを集計した61例のうち、1年間にイベントの発生が1回以上あったのは約40%の25例であった。61例のうち、解析対象となった40例において、SOAP形式の「P(Plan)」の記録は計438件であった。その438件のうち、次回介入時に「前回のP」のとおりに確認しているのは計357件(約80%)であり、薬剤師による確認は計画に沿って実施できていた。(2019年2月21日付 PHARMACY NEWSBREAK抜粋)薬剤師による服薬中の患者さんへのフォローが行われたことで、何もフォローしなかった場合には見過ごされていたであろうイベントを、かなりの割合で発見することができています。発生したイベントの内容は、副作用が17件、重複投与・相互作用が4件、その他(検査値の増悪や痛みの出現など)が51件で、薬剤師が中間介入することで患者さんのQOL、アドヒアランスが向上したケースは多かったと想像できます。この研究データは現在解析中で、今年6月ごろに報告会を実施すると報じられていますので、その報告を楽しみにしたいと思っています。この赤沢氏の研究のように、服薬中の患者さんのフォローを行いつつその結果を評価するには、SOAP形式での薬歴記載、とくにその中で「P(Plan:計画)」の記載による計画の伝達が必須であると思われます。そのためには、前回の投薬時にどのような「S(Subjective:主観的な情報)」や「O(Objective:客観的事実)」から「A(Assessment:導き出される評価)」を考え、どのような「P」が必要と考えたのか、という記録を確実に残す必要があります。現時点では改正薬機法の細部は未定ですが、まずは薬剤師が「介入の必要性を考え、その根拠を記す」ことから、今後の、そして本来の薬剤師業務が始まるのではないかと思います。

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第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?Q1 なぜ、高齢者の血糖コントロール目標が発表されたのですか?糖尿病の血糖コントロールに関しては、かつては下げれば下げるほどよいという考え方でした。ところが、ACCORD試験などの高齢者を一部含む大規模な介入試験によって、厳格すぎる血糖コントロールは細小血管症を減らすものの、重症低血糖の頻度を増やし、死亡に関してはリスクを減らさずに、むしろ増やすことが明らかになりました。さらに、重症低血糖は、死亡だけでなく、認知症、転倒・骨折、ADL低下、心血管疾患の発症リスクになることがわかってきました。また、軽症の低血糖でもうつ状態やQOL低下をきたすことも報告されています。すなわち、低血糖は老年症候群の一部を引き起こすのです。また、低血糖は高齢者で起こりやすくなり、とくに重症低血糖は80歳以上の高齢者でさらに増えることがわかっており、低血糖の弊害の影響を大きく受けるのは高齢者ということになります。生物学的には高齢者においても血糖コントロールは糖尿病合併症を減らすと考えられますが、心血管を含めた合併症を予防するためには少なくとも10年間以上の良好な血糖コントロールを要すると思われます。とすると、平均余命が短い高齢者では厳格な血糖コントロールの意義が相対的に小さくなることになります。平均余命の推定は困難なことが少なくありませんが、高齢者の死亡リスクは疾患やそのコントロール状況よりもむしろ機能状態、すなわち認知機能やADLの状態によって決まることがわかっています。認知機能、ADL、併存疾患などで糖尿病を3つの段階に分けると、機能低下の段階が進むほど、死亡リスクが段階的に増えていくので、血糖コントロール目標は柔軟に考えていく必要があるのです。また、高齢者に厳格なコントロールを行うと、重症低血糖のリスクだけでなく、多剤併用や治療の負担も増えることになります。一方、血糖コントロール不良(HbA1c 8.0%以上)は網膜症、腎症、心血管死亡だけなく、認知症、転倒・骨折、サルコペニア、フレイルなどの老年症候群のリスクにもなることにより、高齢者でもある程度はコントロールしたほうがいいことも事実です。こうしたことから、米国糖尿病学会(ADA)、国際糖尿病連合(IDF)は平均余命や機能分類を3段階に分けて設定する高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を発表しました。本邦でもこうした高齢者糖尿病の種々の問題から、高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が発足し、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)が発表されました(第4回参照)。Q2 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」のわかりやすい見かたとその意味について教えてください。日常臨床において、上記の図を見ながら高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)を設定するのは複雑で大変であるという意見もあります。そこで、私たちが行っている方法を紹介します。図1の簡単な血糖コントロール目標の設定を参照してください。1)まず、75歳以上の後期高齢者でインスリン、SU薬など低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合を考えます。この場合、カテゴリーIの認知機能正常で、ADLが自立している元気な患者と、カテゴリーIIの軽度認知障害または手段的ADL低下の患者の目標値は全く同じで、HbA1c 8.0%未満、目標下限値はHbA1c 7.0%。この数字だけでも覚えておくといいと思います。目標下限値がHbA1c7.0%というのはIDFの基準と全く同じであり、HbA1c 7.0%をきると重症低血糖、脳卒中、転倒・骨折、フレイル、ADL低下または死亡のリスクが高くなるという疫学データに基づいています。2)つぎに中等度以上の認知症または基本的ADL低下があるカテゴリーIIIの患者の場合は、(1)に+0.5%で、HbA1c 8.5%未満で目標下限値はHbA1c 7.5%です。中等度以上の認知症とは、場所の見当識、季節に合った服が着れないなどの判断力、食事、トイレ、移動などの基本的ADLが障害されている場合で、誰がみても認知症と判断できる状態の患者です。HbA1c 8.5%未満としているのは、8.5%以上だと、肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症のリスクが上昇し、さらに上がると高浸透圧高血糖状態(糖尿病性昏睡)のリスクが高くなるからです(第3回参照)。3)65~75歳未満の前期高齢者で、低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合は、まず元気なカテゴリーIの場合を考えます。この場合は(1)から-0.5%で、HbA1c 7.5%未満、目標下限値はHbA1c 6.5%となります。すなわち、7.0%±0.5%前後です。前期高齢者では、カテゴリーが進むにつれて0.5%ずつ目標値が上昇していき、カテゴリーIIIでは後期高齢者と同じHbA1c 8.5%未満、目標下限値はHbA1c 7.5%です。4)つぎは低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用していない場合で、DPP-4阻害薬、メトホルミン、GLP-1受容体作動薬などで治療している場合です。この場合、血糖コントロール目標は従来の熊本宣言のときに出された目標値と同様で、カテゴリーIとIIの場合はHbA1c 7.0%未満、カテゴリーIIIの場合はHbA1c 8.0%未満で、目標下限値はなしです。このように、低血糖のリスクの有無で目標値が異なるのはわが国独自のものです。わが国では医療保険などでDPP-4阻害薬などが使用できる環境にあるので、低血糖のリスクが問題にならない場合は、「高齢者でも良好なコントロールによって合併症や老年症候群を防ごう」という意味だと解釈できます。

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ブルガダ症候群、ICD植込み後の成績に関するメタアナリシス【Dr.河田pick up】

 日本を含めたアジアでよくみられるブルガダ症候群に対する植え込み型除細動器(ICD)の適応は、以前と比べて変わってきており、どの症例で本当にICDが必要なのかの判断はいまだに難しい。オランダ・エラスムス大学医療センターのAdem Dereci氏らが、メタアナリシスの結果をJACC.Clinical Electrophysiology誌2019年2月号に報告している。 本研究の目的は、ICDが植込まれたブルガダ症候群患者の予後を要約することである。ブルガダ症候群は、心臓伝導障害や突然死につながる心室性不整脈の発生リスクが高いことで知られる。臨床的な予後、適切および不適切なICD治療、そしてICD治療による合併症についてすべて要約したものはない。22の研究から1,539例のデータを抽出 オンラインのMEDLINEデータベースを用いて、2017年12月までに発表された報告が抽出され、ブルガダ症候群に対するICD植込み後の臨床成績と合併症に関する828の研究が調べられた。それらを慎重に評価した結果、22の研究から1,539例がメタアナリシスに組み込まれた。ICDの適切作動は100患者・年当たり3.1 1,539例の平均年齢は45歳、18%が女性で、79%の患者は一次予防目的、21%の患者は二次予防目的でICDが植込まれていた。4.9年の平均フォローアップ期間中、適切および不適切ICD作動は、100患者・年あたりそれぞれ3.1、3.3であった。 100患者・年あたりの心臓関連死亡率は0.03で、非心臓関連死亡率は0.3であった。100患者・年あたりのICDに関連した合併症は、リードの不具合が1.6、精神的な合併症が1.3、感染症が0.6、リードの移動が0.4、その他の合併症が0.6であった。リードの不具合、心房細動に伴う不適切作動の評価にはより長期の評価が必要 ブルガダ症候群の患者で、心室性不整脈のリスクが高いと判断された患者は、ICD治療からかなりの恩恵を受ける可能性があり(100患者・年当たり3.1)、ICDの植込み後の心臓関連死亡率と非心臓関連死亡率は低い。ただし、不適切なICDによる治療とICDに伴う合併症は重篤な問題となりうる。 今回の研究では患者の平均年齢が45歳であり、平均フォローアップ期間が5年程度しかないことは、ICDのリードの長期使用に伴う合併症や心房細動による不適切作動が十分に評価されていないことを示唆している。また、ブルガダ症候群のリスク評価手法はこれらの論文が発表された頃とは変わってきており(たとえばEPSの有効性は今では疑問視されている)、個別の症例に応じたリスク評価が必要と考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。投与開始時期と血流感染症、入院、死亡との関連を評価 研究グループは、イングランドにおける高齢UTI患者への抗菌薬治療と重度有害アウトカムとの関連の評価を目的に、住民ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 英国のClinical Practice Research Datalink(2007~15年)のプライマリケアのデータを、イングランドの全入院情報を含むhospital episode statisticsおよび死亡記録と関連付けた。2007年11月1日~2015年5月31日の期間に、プライマリケア医を受診し、下部UTI疑い、または確定診断が1回以上なされた65歳以上の患者15万7,264例が解析の対象となった。 主要アウトカムは、UTIのインデックス診断日から60日以内の血流感染症、入院ならびに平均入院期間、全死因死亡率とした。抗菌薬の即時投与(初回UTI診断時または同日)、待機的投与(初回UTI診断から7日以内)、非投与の患者に分けて比較した。とくに85歳以上の男性患者でリスクが高い 全体の平均年齢は76.7(SD 9.2)歳で、22.1%が85歳以上、78.8%が女性であった。UTIエピソード31万2,896件(15万7,264例)のうち、7.2%(2万2,534件)で抗菌薬処方の記録がなく、6.2%(1万9,292件)では遅延投与の処方が記録されていた。 初診時に処方された抗菌薬(27万1,070件)は、トリメトプリム(54.7%)が最も多く、次いでnitrofurantoin(19.1%)、セファロスポリン系(11.5%)、アモキシシリン/クラブラン酸(9.5%)、キノロン系(4.4%)の順であった。 初回UTI診断から60日以内に、1,539件(0.5%)の血流感染症エピソードが記録されていた。血流感染症の発症率は、初診時に抗菌薬が処方された患者の0.2%に比べ、初診から7日以内の再診時に処方された患者は2.2%、処方されなかった患者は2.9%であり、いずれも有意に高率だった(p=0.001)。 主な共変量で補正すると、抗菌薬の即時投与群と比較して、待機的投与群(補正後オッズ比[OR]:7.12、95%信頼区間[CI]:6.22~8.14)および非投与群(8.08、7.12~9.16)は、いずれも血流感染症を経験する可能性が有意に高かった。 また、抗菌薬即時投与群と比較した血流感染症の有害必要数(number needed to harm:NNH)は、非投与群が37例と、待機的投与群の51例よりも少なく、非投与のリスクがより高いことが示された。これは、抗菌薬即時投与群では発症しないと予測される血流感染症が、非投与群では37例に1例、待機的投与群では51例に1例の割合で発症することを意味する。 入院の割合は、待機的投与群が26.8%、非投与群は27.0%と、いずれも即時投与群の14.8%の約2倍であり、有意な差が認められた(p=0.001)。平均入院日数は、非投与群が12.1日であり、待機的投与群の7.7日、即時投与群の6.3日よりも長かった(p<0.001)。 60日以内の全死因死亡率は、即時投与群が1.6%、待機的投与群が2.8%、非投与群は5.4%であった。死亡リスクは、60日のフォローアップ期間中のどの時期においても、即時投与群に比べ待機的投与群(補正後OR:1.16、95%CI:1.06~1.27)および非投与群(2.18、2.04~2.33)で有意に高かった。 85歳以上の男性は、血流感染症および60日以内の全死因死亡のリスクが、とくに高かった。 著者は、「イングランドでは、大腸菌による血流感染症が増加していることを考慮し、高齢UTI患者に対しては、推奨される1次治療薬の早期の投与開始を提唱する」としている。

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双極性障害と統合失調感情障害の維持治療に対する持効性注射剤抗精神病薬に関するシステマティックレビュー

 抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)は、主に統合失調症スペクトラム障害における服薬アドヒアランス不良を改善するために用いられる。スペイン・バルセロナ大学のIsabella Pacchiarotti氏らは、双極性障害(BD)および/または統合失調感情障害(SAD)に対する抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口剤を比較した利用可能なエビデンスの要約を行った。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年2月12日号の報告。 長時間作用型の抗精神病薬と疾患名(BD、SAD、躁病[maniaまたはmanic]、双極性うつ病)を検索ワードとし、2018年3月28日までの研究を6つのデータベースより検索した。BDにおけるいくつかの臨床アウトカムについてLAIとの比較を行ったピアレビュー二重盲検試験、またはレトロスペクティブ評価期間と同じプロスペクティブなオープンミラー試験を含めた。統合失調症とSADを区別することなく、混合して評価した試験は除外した。 主な結果は以下のとおり。・プールされた症例数は、642例であった。・重複および包括除外基準により除外したところ、15試験が抽出された。内訳は、二重盲検試験6件、オープンラベル試験9件であり、対象患者別では、BDが13件、SADが2件であった。・LAIには、躁病の予防効果が認められたが、うつ病の再発予防効果は認められず、うつ症状を悪化させる可能性が示唆された。・リスペリドンLAIは、プラセボと比較し、気分症状/躁症状に効果的であるが、うつ症状の再発には効果が認められなかった。・SAD患者に対するパルミチン酸パリペリドンの追加および単剤療法は、精神病性症状、うつ病性症状、躁病性症状への効果が認められた。・試験登録時に躁病エピソードを有していた双極I型障害(BD-I)患者に対するアリピプラゾールLAIは、うつ病エピソードを誘発することなく、躁病エピソードの再発までの期間を有意に延長させた。 著者らは「LAI治療は、BDおよびSADに対し効果的かつ忍容性の高い維持療法であり、うつ病よりも躁病の予防に優れた有効性を示すことが示唆された。LAIは、躁病エピソードが強い、アドヒアランス不良なBD-I、SAD患者において、第1選択薬となりうる」としている。■関連記事双極性障害の再発エピソード、持効性注射剤の効果は統合失調症または双極性障害患者におけるアリピプラゾール経口剤と持効性注射剤の服薬アドヒアランスの比較日本におけるアリピプラゾールの経口剤と持効性注射剤の併用期間に関する分析

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第11回 リスク比とオッズ比の違いは?【統計のそこが知りたい!】

第11回 リスク比とオッズ比の違いは?厚生労働省の疫学調査結果や、学会から発表されるガイドライン、そして医学論文でもよく目にする「リスク比(risk ratio)もしくは相対危険度(relative risk:RR)」。そして、リスク比とよく似た指標で「オッズ比(odds ratio:OR)」があります。名前が違うので、もちろんこれら2つの意味も異なりますが、この2つの指標の違いについて理解しているつもりでも混乱してしまうことがよくあります。今回は、この「リスク比とオッズ比の違い」について解説します。■リスク比(相対危険度)とはリスク比というのは、「ある状況下に置かれた人と、置かれなかった人とで、ある疾患にかかる危険度(リスク)の比を表すもの」といえます。ですから、ここでのリスクは、ある疾患にかかる割合(確率)のことです。たとえば、表1で喫煙する人は喫煙しない人と比べて、どれくらい高い割合で心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)が原因で死亡するかを調べたとしましょう。表1 調査開始後10年間に心血管疾患で亡くなった人の割合(喫煙vs.非喫煙)この結果から、喫煙する人と喫煙しない人で、心血管疾患が原因で死亡した人の割合を計算してみましょう。理解しやすいように表2に分割表を作成しました。表2 表1の調査の分割表表2によれば、喫煙する人と喫煙しない人で心血管疾患が原因で死亡した人の割合は、喫煙者で7%、非喫煙者で3%となりました。喫煙者が非喫煙者に比べてどれくらい高い割合で、心血管疾患が原因で死亡するのかを知るには、喫煙者での割合を、非喫煙者の割合で割ればよいのです。「7(%)÷3(%)」で2.3になります。この値が「リスク比(risk ratio)」です。このようにリスク比は、とても簡単に求められますが、大切なことはリスク比の求め方ではなく、その解釈の仕方です。この事例では、リスク比は2.3ということから、「心血管疾患が原因で死亡する喫煙者のリスク(割合)は非喫煙者に比べ2.3倍である」と解釈できることになります。これが相対危険度で、医学論文では「RR=2.3」と表記されることもあります。このようにリスク比(相対危険度)の解釈は簡単です。その値が高いほど、ある状況下にある人は、その状況下にない人に比べて、ある疾患にかかるあるいはある疾患で死亡する危険度がより高くなると解釈できるのです。■オッズ比とはオッズは、競馬など賭け事でよく使われますので、こちらもなじみのある言葉です。オッズの意味は、「ある状況が他の状況に比べて起こりやすい割合(確率)」ということです。先ほどの事例を用いてオッズ比について解説します。喫煙者の心血管疾患での死亡者数を非喫煙者の死亡者数で割った値を「オッズ(odds)」といいます。同様に、喫煙者で死亡しなかった人数を非喫煙者の死亡しなかった人数で割った値もオッズといいます。表3をご覧ください。表3 事例のオッズ比算出のための分割表表にあるように心血管疾患が原因での死亡者数(死亡あり)に着目すると、喫煙者の死亡者数(700人)は非喫煙者の死亡者数(300人)に比べ2.3倍、すなわち、死亡者数オッズは2.3です。死亡しなかった人数(死亡なし)に着目すると、喫煙者は9,300人、非喫煙者の9,700人に比べると0.96倍、すなわち、非死亡者数オッズは0.96となります。ここからが大切なところですが、死亡者数(死亡あり)オッズと非死亡者数(死亡なし)オッズの比を「オッズ比(odds ratio)」といいます。オッズ比は2.3÷0.96で算出しますので、2.4となります。オッズ比の値は2.4となったので喫煙の有無は、心血管疾患による死亡の影響要因といえそうです。ここで重要なのは、「喫煙者が心血管疾患で死亡するリスクは、非喫煙者に比べ2.4倍だと言ってはいけない!」ということです。絶対に間違ってはいけません。つまり、喫煙は健康によくないことはわかりますが、喫煙者は非喫煙者と比べて何倍くらい心血管疾患で死亡する可能性が高いのか、ということはわかりません。なぜならば、「心血管疾患で死亡した人での喫煙に関するオッズ」と「死亡しなかった人での喫煙に関するオッズ」からは、「喫煙するとどのくらい心血管疾患で死亡する危険性が高まるのか」は導き出すことができず、それはリスク比(相対危険度)でしか解釈できないからです。このように解説していくと、オッズ比はリスク比と比べると臨床ではあまり使い道がないように思われるかもしれません。しかし、実際の臨床研究の論文では、オッズ比はよく使われています。このように理解しにくいオッズ比が、なぜ臨床研究で使われているのか疑問を持たれる方もいると思います。それはそれなりに、オッズ比の活用法があるからということです。次回は、この「オッズ比の活用法について」を解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション2 よくあるオッズ比の間違った解釈第4回 ギモンを解決!一問一答質問5 リスク比(相対危険度)とオッズ比の違いは?(その1)質問5 リスク比(相対危険度)とオッズ比の違いは?(その2)

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調剤ロボットは対人業務への流れを後押しする?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第11回

先日、とある薬局が調剤業務の自動化の実証実験を行うとの報道がありました。報道によれば、各種調剤機器の導入で薬剤師の業務を効率化できる見込みであり、その分対人業務に力を入れられるようになることが期待されているようです。3年以上議論されている対人業務への流れ将来的な対人業務の充実に関しては、本年予定されている医薬品医療機器等法の改正において、「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援」、「医師等への服薬状況等に関する情報の提供」などといった議論がされており、2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~1)」でも、基本的な考え方の1つに「~対物業務から対人業務へ~」と記載されています。対人業務が重要視されている一方で、調剤機器の活用などを含めた業務効率化についても議論されており、「薬機法等制度改正に関するとりまとめ2)」には以下のように記載されています。第3 薬剤師・薬局のあり方 2.具体的な方向性(4)対人業務を充実させるための業務の効率化質の高い薬学的管理を患者に行えるよう、薬剤師の業務実態とその中で薬剤師が実施すべき業務等を精査しながら、調剤機器や情報技術の活用等も含めた業務効率化のために有効な取組の検討を進めるべきである。※厚生労働省 薬機法等制度改正に関するとりまとめp.8(平成30年12月25日 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会)より引用薬剤師に期待されている対人業務を行うためには、対物業務における機械化について、調剤ロボットの活用なども含め、今まで以上に検討していく必要があります。今回の報道の内容は、今後求められる薬剤師の業務と関連づけてみると、より興味深いのではないでしょうか。機械にどこまで任せるのかは人と同等の議論が必要もっとも、業務の一部を機械化するとしても、薬剤師法第19条の存在を忘れてはいけません。(調剤)第19条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。以下略ここでの「調剤」が何を意味するのかという論点はありますが、薬剤師でなければ「調剤」はできません。そのため、対物業務から対人業務へという流れで、今まで薬剤師が行ってきた業務の一部を非薬剤師に任せるとして、どの業務をどのような形でどこまで任せることができるかなどが議論になっています。薬剤師業務を機械やロボットなどが担う場合には、人と違って議論しづらいかもしれませんが、処方箋の受付から薬剤の交付、服薬指導まで、一連の流れに一切薬剤師が関わらないとなると問題がありそうです。対人業務の充実を図る中で、ロボットなどの導入による機械化が進むのは好ましいことかと思います。しかし、機械による業務については、運用をどうするのかなどだけでなく、人に任せる場合と同様の議論が必要であることを意識しておくべきです。機械化しても責任は薬剤師にある今回報道された薬局でも、その辺りを踏まえて導入しているはずですので、皆さんの薬局などで機械化を進める場合にも、その問題を意識して運用を検討する必要があるでしょう。任せられる業務に関しては、人と機械で差があることが想定されますが、いずれの場合であっても、薬剤師が行うのと同等またはそれ以上の安全性確保が必要でしょうし、薬剤師は、何らかの形で監督しなければならないでしょう。また、一部の業務を機械が行ったとしても、その責任は、機械の操作や調剤、監査に関わった薬剤師などが担うと考えられますので、その点も踏まえた検討をしておくことが適切と考えられます。参考資料1)厚生労働省 患者のための薬局ビジョン~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~2)厚生労働省 薬機法等制度改正に関するとりまとめ(平成30年12月25日 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会)

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第29回 全国から集まった誤投薬防止のグッドアイデア!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説施設での配薬与薬ミス防止のための意見を川添先生が募集したところ、全国の薬剤師や介護職の皆さんから多くのアイデアや資料が届きました。今回はそこで寄せられた意見をもとに川添先生が考えた配薬与薬ミスを防ぐ6段階の心構えについてお話しします。全国の仲間が実践する明日からの仕事に役立つヒントが満載です!

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最新鋭のがん患者用手引きHPで公開-静岡がんセンター

 近年、がん治療の分野では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新薬が次々に発売されている。また、多剤併用による治療、外来患者の増加により、治療・副作用対策の指導が複雑なものになりつつある。そんな折、2019年2月25日に静岡県立静岡がんセンターは、これらの問題を解決するべく、「処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】」をホームページ上に公表した。 この説明書は、抗がん剤治療の全貌がわかるように作成されている。そして、これを患者に渡すのは医師であり、がん薬物療法の決定後、治療前に患者へ手渡しされる。その後、薬剤師や看護師がその冊子を用いて、必要に応じて説明を行うそうだ。 今回作成されたのは、同センターにおいて使用頻度が高い70療法91冊(消化器、呼吸器、皮膚科)。ニボルマブなど新薬との併用療法についても公開されており、そのほかのがん種の冊子については、順次拡大を予定しているとのこと。<特長>◆その1:病気の種類別、使用する薬の組み合わせ別に冊子が作成されているこれからがん薬物療法を受ける、または、すでに受けている患者やその家族向けに、がん薬物療法の理解を深め副作用の対処が行えるよう、病気の種類・使用する薬の組み合わせ別に治療スケジュールや注意事項、副作用とその対処法、医療者に報告する目安などが1冊にまとめられている。◆その2:がん薬物療法を受ける際に患者・家族が心構えできる治療の概要、どんな副作用がいつ現れるのかなどを治療前に理解してもらえるよう、主な副作用の現れやすい時期や頻度が一覧表になっている。◆その3:副作用の対処法がわかる 副作用の対処と工夫(病院への連絡の目安、予防を含めた具体的対処法)が写真を交えて記載されているため、治療を行う前に、生活の見通しや副作用対策を患者自らが立てやすくなっている。◆その4:地域の医療関係者が患者への指導の参考として活用できるすべての冊子は同じ構成で作られているため、患者・家族、そして医療者が効率よく利用できるようになっている。 同センターの広報担当者によると、「これまでこのような類の手引きは存在していない。医師、看護師、薬剤師などの医療従事者が共通して使用することで、患者さんの抗がん剤治療の副作用に対する理解が深まるのではと考えている」。■参考静岡県立静岡がんセンター:処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】

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うつ病や不安症状に対する食事療法~メタ解析

 不適切な食生活は、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。しかし、食事介入療法が気分やメンタルに及ぼす影響に関するエビデンスは、十分に評価されていない。オーストラリア・西シドニー大学のJoseph Firth氏らは、食事介入療法がうつ病や不安症状に及ぼす影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Psychosomatic Medicine誌オンライン版2019年2月5日号の報告。 臨床的および非臨床的集団を対象とし、食事介入療法のうつ病および/または不安症状の変化について検討した2018年3月までのすべてのランダム化比較試験(RCT)を、主要電子データベースより検索した。対照群と比較した食事介入療法のエフェクトサイズ(Hedges' g、95%信頼区間[CI])を算出するため、ランダム効果メタ解析を用いた。不均一性の潜在的な原因は、サブグループおよびメタ回帰分析を用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたRCTは16件、対象者数は4万5,826例であった。対象者の大多数が非臨床的うつ病サンプルでの調査(15件)であった。・それでもなお、食事介入療法は、抑うつ症状を有意に減少させた(g=0.275、95%CI:0.10~0.45、p=0.002)。・質の高いエビデンス(g=0.321、95%CI:0.12~0.53、p=0.002)および非介入群(g=0.308、95%CI:0.02~0.60、p=0.038)、介入対照群(g=0.174、95%CI:0.01~0.34、p=0.035)と比較した場合においても、同様の結果が認められた。・食事介入療法の不安症状に対する効果は認められなかった(k=11、n=2,270、g=0.100、95%CI:-0.04~0.24、p=0.148)。・女性を対象とした研究では、うつ病と不安症状に対する食事介入療法の有意な効果が認められた。 著者らは「食事介入療法は、うつ症状軽減のための新規介入療法として期待される。メンタルヘルスの改善や根本的なメカニズムを探求し、臨床および公衆衛生において食事介入療法を導入する効果的な計画の確立のためにも、今後の研究が必要とされる」としている。■関連記事うつ病治療と食事パターンストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか

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血糖コントロールに有効な携帯型デバイス/Lancet

 d-Navインスリン・ガイダンス・システム(Hygieia)は、血糖値を測定してその変動を記録し、自動的に適切なインスリン量を提示する携帯型デバイス。2型糖尿病患者では、医療者による支援に加えてこのデバイスを用いると、医療支援のみの患者に比べ良好な血糖コントロールが達成されることが、米国・国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月23日号に掲載された。インスリン療法は、用量の調整を定期的かつ頻回に行えば、最も有効な血糖コントロールの方法とされるが、多くの医師にとってほとんど実践的ではなく、結果としてインスリン量の調整に不均衡が生じているという。米国の3施設が参加、デバイスの有無でHbA1cの変化を比較 本研究は、血糖コントロールにおけるd-Navの有用性の検証を目的とする無作為化対照比較試験であり、2015年2月~2017年3月の期間に米国の3つの糖尿病専門施設で患者登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所のプログラムの助成による)。 対象は、年齢21~70歳、2型糖尿病と診断され、HbA1c値が7.5~11%、直近の3ヵ月間に同一のインスリン療法レジメンを使用している患者であった。BMI≧45、心臓・肝臓・腎臓の重度の障害、過去1年以内に2回以上の低血糖イベントを認めた患者は除外された。 被験者は、d-Navと医療者による支援を併用する群(介入群)または医療者による支援のみを行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、6ヵ月のフォローアップ期間中に、3回の面談による診察と4回の電話による診察を受けることとした。 主要目標は、ベースラインから6ヵ月までのHbA1c値の変化の平均値とした。安全性については、低血糖イベントの頻度の評価を行った。HbA1c値の低下:1.0% vs.0.3% 2型糖尿病患者181例が登録され、介入群に93例(平均年齢61.7[SD 6.9]歳、女性52%)、対照群には88例(58.8[8.5]歳、45%)が割り付けられた。平均罹病期間はそれぞれ16.1(SD 7.3)年、15.3(6.0)年で、ベースラインのHbA1c値は8.7%(SD 0.8)、8.5%(0.8)、体重は100.2kg(SD 17.1)、101.1kg(17.2)だった。 HbA1c値のベースラインから6ヵ月までの変化は、介入群が1.0%低下したのに対し、対照群は0.3%の低下であり、両群間に有意な差が認められた(p<0.0001)。 6ヵ月時にHbA1c<7%を達成した患者の割合は、介入群が22%と、対照群の5%に比べ有意に良好であった(p=0.0008)。また、ベースライン時のHbA1c<8%の患者の割合は、介入群が23%、対照群は32%とほぼ同等であったが(p=0.16)、6ヵ月時にはそれぞれ62%および33%に増加し、有意な差がみられた(p<0.0001)。 低血糖(<54mg/dL)の頻度は、介入群が0.29(SD 0.48)イベント/月、対照群は0.29(1.12)イベント/月であり、両群で同等であった(p=0.96)。重症低血糖は、6ヵ月間にそれぞれ3イベント(介入との関連の可能性が示唆されるのは1イベント)および2イベント(いずれも介入との関連はない)が認められた。 体重は、6ヵ月間に介入群で平均2.3%増加し、対照群の0.7%の増加に比べ増加率が高かった(p=0.0001)。 著者は、「この携帯デバイスは、2型糖尿病患者において安全かつ有効なインスリン量の調整を可能にすることが示された。今後、これらの知見の確証を得て、その費用対効果を検討するために、大規模な医療システムにおいて評価を行うためのアプローチが求められる」としている。

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進行卵巣がん、後腹膜リンパ節郭清は必要か/NEJM

 進行卵巣がんの手術において、腹腔内腫瘍が肉眼的に完全切除され、術前・術中ともにリンパ節が正常な患者への骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清は、非郭清例と比較して全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間のいずれをも延長させず、術後合併症の頻度は高いことが、ドイツKliniken Essen-MitteのPhilipp Harter氏らが行ったLION試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年2月28日号に掲載された。肉眼的完全切除例に対する骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清がもたらす生存への有益性は、その可能性を示唆する後ろ向きの解析がいくつかあるが、無作為化試験のエビデンスは限られているという。郭清の有無でOSを比較する無作為化試験 研究グループは、進行卵巣がん肉眼的完全切除例における骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清に関する前向き無作為化対照比較試験を実施した(Deutsche ForschungsgemeinschaftとAustrian Science Fundの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、新規に進行卵巣がん(国際産婦人科連合[FIGO]分類IIB~IV期)と診断され、全身状態(ECOG PS)が0/1で、肉眼的完全切除を受け、術前・術中ともにリンパ節が正常の患者であった。 手術中に、肉眼的完全切除が達成された患者が、リンパ節郭清を受ける群または受けない群に無作為に割り付けられた。参加施設は試験参加前に、手術技術に関する基準を満たすことが求められた。主要評価項目はOS期間であった。OS:65.5ヵ月 vs.69.2ヵ月、PFS:25.5ヵ月 vs.25.5ヵ月 2008年12月~2012年1月の期間に、647例が無作為化の対象となり、リンパ節郭清群に323例(年齢中央値:60歳[範囲:21~83]、FIGO Stage IIIB/IV:80.8%)、非郭清群には324例(60歳[23~78]、75.3%)が割り付けられた。リンパ節郭清群における切除リンパ節数中央値は57個(骨盤リンパ節35個、傍大動脈リンパ節22個)だった。 OS期間中央値は、リンパ節郭清群が65.5ヵ月と、リンパ節非郭清群の69.2ヵ月との間に有意な差を認めなかった(リンパ節郭清群の死亡のハザード比[HR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.83~1.34、p=0.65)。また、PFS期間中央値は、両群とも25.5ヵ月であった(リンパ節郭清群の病勢進行または死亡のHR:1.11、95%CI:0.92~1.34、p=0.29)。 リンパ節郭清群では、退院時の抗菌薬治療を要する感染症(25.8% vs.18.6%、p=0.03)およびリンパ囊胞(無症状:4.3% vs.0.3%、p<0.001、有症状:3.1% vs.0、p=0.001)が有意に多かった。また、重篤な術後合併症として、術後60日以内の再開腹(12.4% vs.6.5%、p=0.01)および死亡(3.1% vs.0.9%、p=0.049)の頻度が有意に高かった。 術後の全身治療として、プラチナ製剤+タキサン系薬剤±ベバシズマブが、リンパ節郭清群の80.5%、リンパ節非郭清群の83.9%で施行された。 著者は、「この、前向きに無作為化され、十分な検出力を有する国際的な多施設共同試験の結果は、進行卵巣がんにおけるリンパ節郭清の役割に関する長年の議論にレベル1のエビデンスを付与するとともに、臨床エビデンスの創出における適切な研究方法の使用の重要性を繰り返し強調するものである」としている。

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新規のアミノグリコシド系抗菌薬plazomicinの複雑性尿路感染症に対する効果(解説:吉田敦氏)-1013

 腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の薬剤耐性は、現在、われわれが日常最も遭遇する薬剤耐性と言ってよいであろう。たとえば本邦で分離される大腸菌の約4割はフルオロキノロン耐性、約2割はESBL産生菌である。実際に複雑性尿路感染症の治療を開始する際に、主原因である腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性をまったく危惧しない場合は、ほぼないと言えるのではないだろうか。そして結果としてβラクタム系およびフルオロキノロン系が使用できないと判明した際、残る貴重な選択肢の1つはアミノグリコシド系であるが、腎障害等の副作用が使用を慎重にさせている点は否めない。 今回の検討では、腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症例をアミノグリコシド系であるplazomicin群(1日1回静脈内投与)とメロペネム群にランダムに割り付け、少なくとも4日間以上続けた後、およそ8割の例で経口抗菌薬に変更し、合計7~10日の治療期間としている。なお投与開始から5日目、および15~19日目の臨床的、微生物学的改善がプライマリーエンドポイントとして設定された。そして結果としてplazomicinはおおよそメロペネムに劣らなかったが、特に15~19日目における臨床的、微生物学的改善率がplazomicin群において高かった。 本検討において最も関心が持たれる点はおそらく、(1)薬剤耐性菌の内訳と、それらへの効果、(2)plazomicinの副作用の有無と程度、(3)経口抗菌薬による影響、そして(4)再発に対する効果ではないだろうか。今回の検討例ではレボフロキサシン耐性は約4割、ESBL産生は約3割、カルバペネム系耐性(CRE)は約4%であるから、本邦の現在よりやや耐性株が多い。そしてESBL産生菌、アミノグリコシド(AMK、GM、TOBのいずれか)耐性株ともにplazomicin群がメロペネム群よりも微生物学的改善率が高かった。検討例はクレアチニンクリアランスが30mL/min以上の者であるが、うち30~60mL/minが35%、60~90mL/minが38%、90mL/min以上が26%を占める。このような集団でのCr 0.5mg/dL以上の上昇例がplazomicin群で7%、メロペネム群で4%認められた。一方、経口抗菌薬の第1選択はレボフロキサシンであるが、実際にはレボフロキサシン耐性株分離例の60%でレボフロキサシンが選択されていた。また治療後の無症候性細菌尿と、それに関連する再発がplazomicin群で低かった。 ほかにも結果解釈上の注意点がある。まず微生物学的改善の基準は、尿路の基礎状態にかかわらず、治療前に尿中菌数が105CFU/mL以上であったものが、治療後104CFU/mL未満になることと定義している点である。尿中菌数とその低下は基礎状態にも左右されるし、実際の低下度合いについては示されていない。さらに微生物学的改善の評価における重要な点として、当初から検討薬に耐性である例は除外されていることである(plazomicin感性は4μg/mL以下としている)。また治療前に感性であったものが、治療後に耐性になった例はplazomicin群の方がやや多かった。 以上のような注意点はあるものの、多剤耐性菌が関わりやすい複雑性尿路感染症の治療手段として有用な選択肢が増えた点は首肯できると言えよう。なおplazomicinはアミノグリコシド修飾酵素によって不活化されにくい点が従来のアミノグリコシドに勝る利点であるが、リボゾームRNAのメチル化酵素を産生するNDM型カルバペネマーゼ産生菌には耐性であり1)、ブドウ糖非発酵菌のPseudomonas、Acinetobacterについては従来のアミノグリコシドを凌駕するものではないと言われている2)。反面、尿路感染症では関与は少ないが、MRSAに対する効果が報告されている3)。本邦への導入検討に際しては、本邦の分離株を対象とした感受性分布ならびに耐性機構に関するサーベイランスが行われるのが望ましいと考える。そのような検討が進むことに期待したい。

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第10回 意識障害 その8 原因不明の意識障害の原因の鑑別に「痙攣」を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)原因不明の意識障害では“痙攣”の可能性を考えよう!2)“痙攣”の始まり方に注目し、てんかんか否かを見極めよう!3)バイタルサイン安定+乳酸値の上昇をみたら、痙攣の可能性を考えよう!【症例】80歳男性。息子さんが自宅へ戻ると、自室の机とベッドとの間に挟まるようにして倒れているところを発見した。呼び掛けに対して反応が乏しいため救急要請。●搬送時のバイタルサイン意識100/JCS血圧142/88mmHg脈拍90回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3mm+/+今回は“痙攣”による意識障害に関して考えていきましょう。痙攣というと、目の前でガクガク震えているイメージがあるかもしれませんが、臨床の現場ではそう簡単ではありません。初療に当たる時には、すでに止まっていることが多く、痙攣の目撃がない場合には、とくに診断が難しいのが現状です。そのため、意識障害の原因が「痙攣かも?」と疑うことができるかが、初療の際のポイントとなります。痙攣の原因として、大きく2つ(てんかんor急性症候性発作)があります。ここでは、わが国でも100人に1人程度認める、てんかん(症候性てんかん含む)の患者さんの痙攣をいかにして見抜くかを中心に考えていきましょう。いつ痙攣を疑うのか?皆さんは、いつ意識障害の原因が痙攣と疑うでしょうか? 今まで述べてきたとおり、意識障害を認める場合には、ABCの安定をまずは目標とし、その後は原則として、低血糖、脳卒中、敗血症を念頭に対応していきます。これらは頻度が高いこと、血糖測定や画像検索で比較的診断が容易なこと、緊急性の高さが故の順番です。痙攣も今まさに起こっている場合には、早期に止めたほうがよいですが、明らかな痙攣を認めない場合には時間的猶予があります。痙攣の鑑別は10's rule(表)の9)で行います1)。●Rule9 疑わなければ診断できない! AIUEOTIPSを上手に利用せよ!AIUEOTIPSを意識障害の鑑別として上から順に鑑別していくのは、お勧めできません。なぜなら、頻度や緊急度が上から順とは限らないからです。また、患者背景からも原因は大きく異なります。そのため、AIUEOTIPSは鑑別し忘れがないかを確認するために用いるのがよいでしょう(意識障害 その2参照)。見逃しやすい原因の1つが痙攣(AIUEOTIPSの“S”)であり、採血や画像検査で特異的な所見を必ずしも認めるわけではないため、原因が同定できない場合には常に考慮する必要があるのです。「原因不明の意識障害を診たら、痙攣を考える」、これが1つ目のポイントです。画像を拡大する目撃者がいない場合痙攣を疑う病歴や身体所見としては、次の3点を抑えておくとよいでしょう。「(1)舌咬傷、(2)尿失禁、(3)不自然な姿勢で倒れていた」です。絶対的なものではなく、その他に認める所見もありますが、実際に救急外来で有用と考えられるトップ3かと思いますので、頭に入れておくとよいでしょう。(1)舌咬傷てんかんによる痙攣の場合には、20%程度に舌外側の咬傷を認めます。心因性の場合には、舌咬傷を認めたとしても先端のことが多いと報告されています2)。(2)尿失禁心因性や失神でも認めるため絶対的なものではありませんが、尿失禁を認める患者を診たら、「痙攣かも?」と思う癖を持っておくと、鑑別し忘れを防げるでしょう3)。(3)不自然な姿勢で倒れていたてんかん、とくに高齢者のてんかんは局在性であるため、痙攣は左右どちらかから始まります。左上肢の痙攣が始まり、その後全般化などが代表的でしょう。意識消失の鑑別として、失神か痙攣かは、鑑別に悩むこともありますが、失神は瞬間的な意識消失発作で姿勢保持筋が消失するため、素直に倒れます。脳血流が低下し、立っていられなくなり倒れるため、崩れ落ちるように横になってしまうわけです。それに対して、痙攣を認めた場合には、左右どちらかに引っ張られるようにして倒れることになるため、素直には倒れないのです。仰向けで倒れているものの、片手だけ背部に回っている、時には肩の後方脱臼を認めることもあります。「なんでこんな姿勢で? なんでこんなところで?」というような状況で発見された場合には、痙攣の関与を考えましょう。その他、痙攣を認める前に、「あー」と声を出す、口から泡を吹いていたなどは痙攣らしい所見です。そして、時間経過と共に意識状態が改善するようであれば、らしさが増します。目撃者がいる場合患者が倒れる際に目撃した人がいた場合、(1)どのように痙攣が始まったのか、(2)持続時間はどの程度であったか、(3)開眼していたか否かの3点を確認しましょう。(1)痙攣の始まり方この点はきわめて大切です。失神後速やかに脳血流が回復しない場合にも、痙攣を認めることがありますが、その場合には左右差は認めません。これに対して、てんかんの場合には、異常な信号は左右どちらかから発せられるため、上下肢左右どちらかから始まります。「痙攣は右手や左足などから始まりましたか?」と聞いてみましょう。(2)持続時間一般的に痙攣は2分以内、多くは1分以内に止まります。これに対して心因性の場合には2分以上続くことが珍しくありません。(3)開眼か閉眼かてんかんの場合には、痙攣中は開眼しています。閉眼している場合には心因性の可能性が高くなります4,5)。痙攣を示唆する検査所見痙攣の原因検索のためには、採血や頭部CT検査、てんかんの確定診断のためには脳波検査が必須の検査です。ここでは、救急外来など初療時に有用な検査として「乳酸値」を取り上げておきましょう。乳酸値が上昇する原因として、循環不全や腸管虚血の頻度が高いですが、その際は大抵バイタルサインが不安定なことが多いです。それに対して、意識以外のバイタルサインは安定しているにもかかわらず乳酸値が高い場合には、痙攣が起こったことを示唆すると考えるとよいでしょう。原因にかかわらず、乳酸値が高値を認めた場合には、初療によって改善が認められるか(低下したか)を確認しましょう。痙攣が治まっている場合には30分もすれば数値は正常化します。さいごに痙攣の原因はてんかんとは限りません。脳卒中に代表される急性症候性発作、アルコールやベンゾジアゼピン系などによる離脱、ギンナン摂取なんてこともあります。痙攣を認めたからといって、「てんかんでしょ」と安易に考えずに、きちんと原因検索を忘れないようにしましょう。ここでは詳細を割愛しますが、てんかんを適切に疑うためのポイントは理解しておいてください。本症例では、病歴や経過から痙攣の関与が考えられ、画像診断では陳旧性の脳梗塞所見を認めたことから、症候性てんかん後のpostictal stateであったと判断し対応、その後脳波など精査していく方針としました。次回は「原因が1つとは限らない! 確定診断するまでは安心するな!」を解説します。1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中!. 中外医学社;2015.2)Brigo F, et al. Epilepsy Behav. 2012;25:251-255.3)Brigo F, et al. Seizure. 2013;22:85-90.4)日本てんかん学会ガイドライン作成委員会. 心因性非てんかん性発作に関する診断・治療ガイドライン.てんかん研究. 2009;26:478-482.5)Chung SS, et al. Neurology. 2006;66:1730-1731.

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重度アルコール離脱症候群に対する早期集中ベンゾジアゼピン療法

 アルコール離脱症候群(AWS)治療の現在のエビデンスでは、symptom-triggered therapyが支持されている。早期段階での集中的なベンゾジアゼピン(BZD)治療は、ICU在室期間を短縮させるといわれているが、在院日数への影響については、よくわかっていない。米国・カリフォルニア大学のJin A. Lee氏らは、最初の24時間での集中的なBZD治療がAWS患者の在院日数を短縮させるかどうかについて、介入前後コホート研究により検討を行った。Clinical Toxicology誌オンライン版2019年2月7日号の報告。 対象は、重度AWS患者。介入前コホート(PRE)は、2015年1~11月に入院した患者とし、鎮痛尺度(Richmond Agitation-Sedation Scale:RASS)に基づき、ジアゼパムおよびフェノバルビタールの漸増によるsymptom-triggered therapyを行った。介入後コホート(POST)は、2016年4月~2017年3月に入院した患者とし、最初の24時間(導入相)でジアゼパムおよびフェノバルビタールの漸増療法を行い、その後72時間(終了相)ですべての治療を終了させた。重度AWSの定義は、ジアゼパム30mg超を必要とする患者とした。集中治療の定義は、AWS診断後24時間以内の総ジアゼパム投与量の50%超とした。AWSの非興奮症状、ジアゼパム追加用量を評価するためRASSの補助としてSHOT尺度を用いた。主要アウトカムは、在院日数とし、副次的アウトカムは、ICU在室日数、BZD使用、人工呼吸器未使用日数とした。 主な結果は以下のとおり。・AWSプロトコルを用いて治療した患者532例中、113例が重度AWSであった。・PRE群75例、POST群38例の年齢、性別、AWS歴、疾患重症度は均一であった。・集中治療を受けたPOST群では、かなりの差が認められた(51.3%vs.73.7 %、p=0.03)。・POST群では、在院日数(14.0日vs.9.8日、p=0.03)およびICU在室日数(7.4日vs.4.4日、p=0.03)において、有意な短縮が認められた。 著者らは「重度AWS患者の対する早期集中マネジメントは、ICU在室期間や在院日数の減少させることが示唆された」としている。■関連記事アルコール依存症に対するナルメフェンの有効性・安全性~非盲検試験ベンゾジアゼピン耐性アルコール離脱症状に対するケタミン補助療法アルコール関連での緊急入院後の自殺リスクに関するコホート研究

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糖尿病患者への禁煙指導/糖尿病学の進歩

 喫煙は、血糖コントロール悪化や糖尿病発症リスク増加、動脈硬化進展、がんリスク増加などの悪影響を及ぼす。禁煙によりこれらのリスクは低下し、死亡リスクも減少することから禁煙指導は重要である。3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登 洋氏が「喫煙と糖尿病合併症」と題して講演し、喫煙と糖尿病発症・糖尿病合併症・がんとの関連、禁煙指導について紹介した。タバコ1日2箱で糖尿病発症リスクが1.5倍 糖尿病患者の喫煙率は、日本の成人における喫煙率とほぼ同様で、男性が31.9%、女性が8.0%と報告されている。男女ともに30代がピークだという。喫煙は、血糖コントロール悪化、糖尿病発症リスク増加、HDL-コレステロール低下、動脈硬化進展、呼吸機能悪化、がんリスク増加、死亡リスク増加といった悪影響を及ぼす。喫煙による糖尿病発症リスクは用量依存的に増加し、国内の研究では、1日当たり1箱吸う人は1.3倍、2箱吸う人は1.5倍、発症リスクが増加すると報告されている。また、受動喫煙でも同様の影響があり、受動喫煙による糖尿病発症リスクは、国内の研究ではオッズ比が1.8と報告されている。 喫煙による糖尿病発症機序としては、コルチゾールなどのインスリン抵抗性を増やすホルモンの増加や、不健康な生活習慣(過食や運動不足)で内臓脂肪の蓄積を引き起こしインスリン抵抗性が惹起されることが想定されている。さらに、喫煙者は飲酒する傾向があるため、それも発症に関わると考えられる。また喫煙は、脂肪組織から分泌されるサイトカインやリポプロテインリパーゼに影響を与え、糖代謝や脂質代謝にも直接悪影響を与える。さらに、ニコチンそのものがインスリン抵抗性を惹起することが想定されている。禁煙後の糖尿病発症リスクの変化、体重増加の影響は? では、禁煙した場合、糖尿病発症リスクはどう変化するのだろうか。禁煙後半年から数年は、ニコチンによる食欲抑制効果の解除、味覚・嗅覚の改善、胃粘膜微小循環系血行障害の改善により体重が増加することが多く、また数年後には喫煙時の体重に減少することが多い。体重増加は糖尿病のリスクファクターであるため、禁煙直後の体重増加による糖尿病リスクへの影響が考えられる。実際に禁煙後の糖尿病発症リスクを検討した国内外の疫学研究では、禁煙後5年間は、糖尿病発症リスクが1.5倍程度まで上昇するが、10年以上経過するとほぼ同レベルまで戻ることが報告されている。さらに、禁煙後の体重変動と糖尿病発症リスクを検討した研究では、禁煙後に体重が増加しなかった人は糖尿病発症リスクが減少し続け、体重が10kg以上増えた人は5年後に1.8倍となるも、その後リスクが減少して15~30年で非喫煙者と同レベルにまで下がること、また禁煙後の体重増加にかかわらず死亡率が大幅に減少することが示されている。能登氏は「禁煙して数年間は糖尿病が増加するリスクはあるが体重を管理すればそのリスクも減少し、いずれにしても死亡リスクが減少することから、タバコをやめるのに越したことはない。禁煙するように指導することは重要であり、禁煙直後は食事療法や運動療法で体重が増えないように療養指導するべき」と述べた。 喫煙と糖尿病合併症との関連をみると、とくに糖尿病大血管症リスクとの関連が大きい。また、糖尿病によってがんリスクが増加することが報告されているが、喫煙によって喫煙関連がん(膀胱、食道、喉頭、肺、口腔、膵臓がん)の死亡リスクが4倍、なかでも肺がんでは約12倍に増加するため、糖尿病患者による喫煙でがんリスクは一層高まる。また、糖尿病合併症である歯周病、骨折についても喫煙と関連が示されている。禁煙は「一気に」「徐々に」どちらが有効か 禁煙のタイミングについては、喫煙歴が長期間であったとしても、いつやめても遅くはない。禁煙半年後には、循環・呼吸機能の改善、心疾患リスクが減少し、5年後には膀胱がん、食道がん、糖尿病の発症リスクが減少することが示されている。 では、どのような禁煙方法が有効なのだろうか。コクランレビューでは、断煙法(バッサリやめる)と漸減法(徐々にやめる)の成功率に有意差はなかった。短期間(6ヵ月)に限れば断煙法の禁煙継続率が高いという報告があるが、個人差があるため、まず患者さんの希望に合わせた方法を勧め、うまくいかなければ別法を勧めるというのがよいという。代替法としてはニコチンガムやパッチなどがあるが、近年発売された電子タバコ*を用いる方法も出てきている。最近、禁煙支援で電子タバコを使用した場合、ニコチン代替法より禁煙成功率が1.8倍高かったという研究結果が報告された。能登氏は、「煙が出るタバコの代わりに電子タバコを吸い続けるというのは勧めないが、禁煙するときに電子タバコを用いた代替法もいいかもしれない」と評価した。 能登氏は最後に、「糖尿病とがんに関する日本糖尿病学会と日本学会による医師・医療者への提言」から、日本人では糖尿病は大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク増加と関連があること、糖尿病やがんリスク減少のために禁煙を推奨すべきであること、糖尿病患者には喫煙の有無にかかわらず、がん検診を受けるように勧めることが重要であることを説明した。がん検診については、聖路加国際病院では患者さんの目につく血圧自動測定器の前に「糖尿病の方へ:がん検診のお勧め」というポスターを貼っていることを紹介し、講演を終えた。*「電子タバコ」は「加熱式タバコ」(iQOS、glo、Ploom TECHなど)とは異なる

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オピオイド使用障害に持効性ブプレノルフィン注が有用/Lancet

 オピオイド使用障害治療の月1回皮下注薬であるRBP-6000(徐放性ブプレノルフィン:BUP-XR)について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験の結果、プラセボと比較してオピオイド断薬率が有意に高く、忍容性も良好であることが示された。米国・Indivior社のBarbara R. Haight氏らが報告した。BUP-XRは、月1回投与によりオピオイド乱用の薬物嗜好を遮断するブプレノルフィン血中濃度を維持し、同時に離脱症状や渇望症状をコントロールすることから、医療現場ではBUP-XRの投与が中毒や乱用等も軽減することが期待されていた。Lancet誌2019年2月23日号掲載の報告。BUP-XRの2つの用量についてオピオイド断薬率をプラセボと比較 研究グループは2015年1月28日~11月12日に、米国の36施設で、18~65歳の治療を要する中等度~重度オピオイド使用障害(DSM-5)患者を、ブプレノルフィン/ナロキソン舌下フィルム剤による最長2週間の非盲検導入試験に登録し、その後、適格患者についてBUP-XR300mg/300mg(300mg×6回注射)、BUP-XR300mg/100mg(300mg×2回+100mg×4回注射)、またはそれぞれのプラセボ群に4対4対1対1の割合で音声自動応答/Web応答システムを用いて無作為に割り付けた。いずれも28日ごとに投与するとともに、個別に週1回の薬物療法のカウンセリングを行った。ブプレノルフィンの追加投与は不可とした。 有効性の主要評価項目は、尿検査陰性および5~24週におけるオピオイド不正使用の自己報告で確定したオピオイド断薬率である。オピオイド断薬率は、プラセボ5%に対しBUP-XR両群で約41~43% スクリーニングされた1,187例中665例が導入試験に登録され、504例がBUP-XR300mg/300mg(201例)、BUP-XR300mg/100mg(203例)、またはプラセボ(各群50例、計100例)の投与を受けた。 オピオイド断薬率(平均±SD)は、BUP-XR300mg/300mg群41.3±39.7%、BUP-XR300mg/100mg群42.7±38.5%、プラセボ群5.0±17.0%であった(BUP-XR両群でp<0.0001)。BUP-XR投与中に非オピオイド系薬の代償的使用は確認されなかった。 主な有害事象は、頭痛(BUP-XR300mg/300mg群8%、BUP-XR300mg/100mg群9%、プラセボ群6%)、便秘(それぞれ8%、9%、0)、悪心(18%、9%、5%)、注射部位の掻痒感(9%、6%、4%)であった。注射部位反応はBUP-XRの投与を受けた患者の5%以上で報告されたが、その多くが軽度で治療を制限するものではなく、BUP-XRの安全性プロファイルはオピオイド使用障害に対する他のブプレノルフィン製剤と一致していた。

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