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アテゾリズマブがTNBCに適応拡大、免疫CP阻害薬で初/中外製薬

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:小坂 達朗)は2019年9月20日、PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する免疫チェックポイント阻害薬として国内で初めて、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)が適応拡大されたことを発表した。PD-L1発現状況の確認は、2019年8月20日にコンパニオン診断薬として適応拡大の承認を取得した、病理検査用キットベンタナOptiView PD-L1(SP142)によって行う。 今回の適応拡大は、第III相IMpassion130試験の成績に基づく。IMpassion130試験は、全身薬物療法を受けていない切除不能な局所進行または転移のあるTNBC患者を対象に、アテゾリズマブ併用群(アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル)とnab-パクリタキセル単独群(プラセボ+nab-パクリタキセル)を比較した多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検国際共同臨床試験。 併用群では、ITT(Intent to treat)解析集団およびPD-L1陽性集団において、単独群と比較して主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)の延長を示した(ITT集団のPFS中央値:7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.0025/PD-L1陽性集団のPFS中央値:7.5ヵ月 vs.5.0ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。もう1つの主要評価項目であるOS(全生存期間)については、第2回中間解析時点では、ITT解析集団におけるOS延長について、統計学的な有意差は認められなかった(OS中央値:21.0ヵ月 vs.18.7ヵ月、HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.078)。一方、PD-L1陽性患者において、臨床的に意義のあるOSの延長が認められたものの、階層構造に基づいて統計解析を行う試験デザインであることから、今回の PD-L1陽性患者におけるOSの解析は検証的な位置づけではない(OS中央値:25.0ヵ月 vs.18.0ヵ月、HR:0.71、95%CI:0.54~0.93)。フォローアップは次回の計画されている解析まで継続される。 併用療法による安全性プロファイルは、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、本併用療法で新たな安全性のシグナルは確認されなかった。なお、同試験におけるアテゾリズマブの用法・用量が840mgの2週間間隔での投与であるため、至適用量製剤として開発が行われ、9月20日付けで840mg製剤の剤形追加についても承認された。 また、中外製薬株式会社は同日、HER2陽性乳がん患者に対するペルツズマブ(商品名:パージェタ)とトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の配合皮下注製剤が、両剤の静注製剤に対して非劣性を示したことを発表。配合皮下注製剤の投与には、初回は約8分、2回目以降は約5分を要する。これに対して、両剤の静注製剤を併用投与する場合、初回は約150分、2回目以降は60~150分を要する。本結果は第III相FeDeriCa試験によるもので、詳細は今後開催される医学会で発表される予定。

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キノロン系薬に末梢神経障害などの使用上の注意改訂指示

 フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の添付文書について、2019年9月24日、厚生労働省より使用上の注意の改訂指示が発出された。今回の改訂は、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬のアキレス腱や精神、末梢神経障害に関連した副作用に関するもので、米国や欧州の添付文書が改訂されたことを受け、日本国内症例、公表論文等の情報に基づき添付文書改訂の必要性が検討されたことによるもの。製剤ごとの改訂内容記載の違いに注意改訂の概要は以下のとおり。・「重大な副作用」の項に「末梢神経障害」「精神症状」を追記する。・「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。・「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の初期症状などの記載を整備する。または、「腱炎、腱断裂等の腱障害」の項を「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」とし、初期症状等の記載を整備する。◆該当薬剤の一覧(商品名:承認取得者)オフロキサシン[経口剤] (タリビット:アルフレッサファーマ、ほか)メシル酸ガレノキサシン水和物 (ジェニナック:富士フィルム富山化学)シタフロキサシン水和物 (グレースビット:第一三共、ほか)シプロフロキサシン (シプロキサン:バイエル薬品、ほか)シプロフロキサシン塩酸塩水和物 (シプロキサン:バイエル薬品、ほか)トスフロキサシントシル酸塩水和物[経口剤] (オゼックス:富士フィルム富山化学、トスキサシン:マイランEPD、ほか)ノルフロキサシン[経口剤] (バクシダール:杏林製薬、ほか)パズフロキサシンメシル酸塩 (パシル:富士フィルム富山化学、パズクロス:田辺三菱製薬)ピペミド酸水和物 (ドルコール:日医工)プルリフロキサシン (スオード:MeijiSeikaファルマ)モキシフロキサシン塩酸塩[経口剤] (アベロックス:バイエル薬品)レボフロキサシン水和物[経口剤、注射剤] (クラビット:第一三共、ほか)塩酸ロメフロキサシン[経口剤] (バレオン:マイランEPD、ほか)薬剤ごとに注意喚起が異なるのはなぜか? 腱障害および精神症状については、すべてのフルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の添付文書において注意喚起がなされるよう改訂が適切と判断された。これは、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の多くの成分の現行添付文書で一定の注意喚起がなされているものの、腱障害についてはコラーゲン組織の障害が、精神症状についてはGABA神経の抑制などが発現機序として考えられ、当該抗菌薬に共通のリスクと判断されたためである。 一方、末梢神経障害については、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬に共通のリスクであることを示す発現機序や疫学的知見は乏しく、現時点で一律の改訂は不要と考えられている。しかし、トスフロキサシントシル酸塩水和物、レボフロキサシン水和物、メシル酸ガレノキサシン水和物については国内症例が集積していること、オフロキサシンは国内症例の集積はないもののレボフロキサシンのラセミ体であることから、改訂が適切と判断された。■「添付文書記載要領」関連記事4月の添付文書記載要領改正、実物の記載例公表

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STEMI合併多枝冠動脈疾患、完全血行再建術は有効か/NEJM

 ST上昇心筋梗塞(STEMI)を伴う多枝冠動脈疾患患者の治療では、非責任病変を含む完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、心血管死と心筋梗塞の複合のリスクだけでなく、心血管死+心筋梗塞+虚血による再血行再建術の複合をも有意に抑制することが、カナダ・マクマスター大学のShamir R. Mehta氏らが行ったCOMPLETE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。STEMI患者では、責任病変へのPCIは心血管死と心筋梗塞のリスクを低減するが、非責任病変へのPCIがこれらのイベントのリスクをさらに抑制するかは不明だという。責任病変PCIが成功したSTEMIが対象の無作為化試験 本研究は、31ヵ国140施設が参加した国際的な無作為化試験であり、2013年2月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 対象は、STEMIで入院し、責任病変へのPCIが成功後72時間以内に試験への組み入れが可能であり、冠動脈造影で梗塞と関連のない病変(非責任病変)が1つ以上認められた多枝冠動脈疾患を有する患者であった。 被験者は、非責任病変への完全血行再建術を行う群またはそれ以上の血行再建術は行わない群に無作為に割り付けられた。完全血行再建術群は、非責任病変PCIの施行時期(初回入院中または退院後数週以内)で層別化された。 第1の主要アウトカムは、心血管死と心筋梗塞の複合とし、第2の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、虚血による再血行再建術の複合であった。第1の主要アウトカムが26%、第2の主要アウトカムは49%改善 4,041例が登録され、完全血行再建術群に2,016例(平均年齢61.6±10.7歳、男性80.5%)、責任病変PCI群には2,025例(62.4±10.7歳、79.1%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は35.8ヵ月だった。 第1の主要アウトカムは、完全血行再建術群が2,016例中158例(7.8%)に発生し、責任病変PCI群の2,025例中213例(10.5%)に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.60~0.91、p=0.004)。この差は、完全血行再建術群で心筋梗塞(5.4% vs.7.9%、HR:0.68、95%CI:0.53~0.86)がより少なかったことによる(心血管死は2.9% vs.3.2%、HR:0.93、95%CI:0.65~1.32)。 第2の主要アウトカムは、完全血行再建術群が179例(8.9%)に発生し、責任病変PCI群の339例(16.7%)と比較して有意に優れた(HR:0.51、95%CI:0.43~0.61、p<0.001)。虚血による再血行再建術は、完全血行再建術群が有意に良好であった(1.4%vs.7.9%、HR:0.18、95%CI:0.12~0.26)。 主な副次アウトカムである心血管死、心筋梗塞、虚血による再血行再建術、不安定狭心症、NYHAクラスIVの心不全の複合の発生は、完全血行再建術群が有意に優れた(13.5% vs.21.0%、HR:0.62、95%CI:0.53~0.72)。 2つの主要アウトカムの双方における完全血行再建術群のベネフィットは、非責任病変PCIの施行時期が初回入院中および退院後のいずれにおいても、一貫して認められた(それぞれ交互作用:p=0.62、p=0.27)。 一方、大出血(2.9% vs.2.2%、HR:1.33、95%CI:0.90~1.97)、脳卒中(1.9% vs.1.4%、HR:1.31、95%CI:0.81~2.13)、ステント血栓症(1.3% vs.0.9%、HR:1.38、95%CI:0.76~2.49)には両群間に有意な差はなかった。また、造影剤関連の急性腎障害が、完全血行再建術群の30例(1.5%)、責任病変PCI群の19例(0.9%)で発現した(p=0.11)。 著者は「3年間で、1例の心血管死/心筋梗塞を予防するのに要する治療必要数(NNT)は37件であり、1例の心血管死/心筋梗塞/虚血による再血行再建術を回避するのに要するNNTは13件だった」としている。

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PCI後の糖尿病合併安定CAD、チカグレロル追加が有望/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた糖尿病を伴う安定冠動脈疾患の治療では、チカグレロル+アスピリンはプラセボ+アスピリンに比べ、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合の発生を有意に抑制する一方で、大出血を増加させるものの、良好なネット臨床ベネフィット(net clinical benefit)をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行ったTHEMIS-PCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。PCIを受けた糖尿病合併安定冠動脈疾患患者は虚血性イベントのリスクが高く、とくにステント留置術を受けた患者のリスクは高いという。THEMIS-PCI試験は、THEMIS試験に参加した患者のうちPCIを受けた患者を対象とするサブスタディである。日本を含む42ヵ国のプラセボ対照無作為化試験 THEMIS試験は、日本を含む42ヵ国1,315施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2014年2月~2016年5月の期間に患者登録が行われた(AstraZenecaの助成による)。 対象は、年齢50歳以上、2型糖尿病が認められ、血糖降下薬の投与を6ヵ月以上受けており、安定冠動脈疾患を有し、3つの非除外基準(PCI既往歴、冠動脈バイパス術[CABG]の既往歴、冠動脈造影で1つ以上の冠動脈に50%以上の狭窄を認める)のうち1つに該当する患者であった。このうち、今回の解析には、PCI既往歴のあるサブグループが含まれた。 被験者は、チカグレロル(90mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての患者に、アスピリン(75~150mg/日)が経口投与された。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、intention-to-treat解析が行われた。有効性の主要アウトカム:7.3% vs.8.6%、TIMI大出血:2.0% vs.1.1% THEMIS試験の参加者のうちPCI既往歴のある1万1,154例(58%)が解析に含まれた。チカグレロル群は5,558例、プラセボ群は5,596例であった。糖尿病の罹患期間中央値は10.0年、直近のPCI以降の経過期間中央値は3.3年であった。フォローアップ期間中央値は3.3年(IQR:2.8~3.8)だった。 有効性の主要アウトカムの発生は、チカグレロル群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(チカグレロル群5,558例中404例[7.3%]vs.プラセボ群5,596例中480例[8.6%]、ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.97、p=0.013)。PCIを受けていない患者では、このような効果は観察されなかった(p=0.76、p interaction=0.16)。 心血管死(3.1% vs.3.3%、HR:0.96、95%CI:0.78~1.18、p=0.68)および全死因死亡(5.1% vs.5.8%、0.88、0.75~1.03、p=0.11)はいずれも、両群間に有意な差は認めなかった。一方、心筋梗塞(3.1% vs.3.9%、0.80、0.65~0.97、p=0.027)および脳卒中(1.7% vs.2.3%、0.74、0.57~0.96、p=0.024)はいずれも、チカグレロル群が有意に少なかった。 チカグレロル群は、TIMI出血基準の大出血の発生率(5,536例中111例[2.0%]vs.5,564例中62例[1.1%]、HR:2.03、95%CI:1.48~2.76、p<0.0001)が有意に高かった。一方、致死的出血(0.1% vs.0.1%、1.13、0.36~3.50、p=0.83)および頭蓋内出血(0.6% vs.0.6%、1.21、0.74~1.97、p=0.45)は、両群間に有意な差はみられなかった。 また、チカグレロル群は、事前に規定された探索的エンドポイントである総合的臨床ベネフィット(intention-to-treat集団における全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、致死的出血、頭蓋内出血の複合の初回イベント発生までの期間として評価される不可逆的な危害と定義)が有意に優れた(5,558例中519例[9.3%]vs.5,596例中617[11.0%]、HR:0.85、95%CI:0.75~0.95、p=0.0052)のに対し、非PCI患者ではこのような効果はなかった(p=0.39、p interaction=0.012)。 著者は、「これらの知見は、PCI既往歴を有し、抗血小板療法に忍容性のある糖尿病患者で、虚血性リスクが高く、出血リスクが低い場合には、チカグレロル+アスピリンによる長期治療を考慮すべきであること示唆する」と指摘している。

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AI技術で非黒色腫皮膚がんリスクモデルの精度が向上

 皮膚科におけるディープラーニング技術の活用報告が相次いでいる。今回発表されたのは、非黒色腫皮膚がんの予測モデル開発に関する研究報告で、台湾・台北医学大学のHsiao-Han Wang氏らがディープラーニング技術を活用し、高リスク集団を捉えることが可能な精度の高い予測モデルを開発した。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年9月4日号掲載の報告。 研究グループは、アジア人集団において、UV曝露または特異的病変に関する情報なしで、大規模で多次元的な非画像医学情報をベースとした非黒色腫皮膚がんのリスク予測モデルを、ディープラーニングを活用して開発する研究を行った。 1999年1月1日~2013年12月31日の台湾全民健康保険研究データベースから、200万例のサンプル患者を無作為抽出してデータベースを構築。初発のがんとして非黒色腫皮膚がんと診断された患者群と、非がん無作為対照群を抽出して解析した。リスク予測モデルにはディープラーニングアプローチである畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)が使われ、3年間の臨床診断情報、医療記録、経時的な情報を使用して、翌年までの特定の患者の皮膚がんリスクを予測した。モデルの重要・確定因子を調査するため、段階的な特徴選択も行われた。統計的解析は2016年11月1日~2018年10月31日に実施。モデルの性能を感度、特異度、AUROC曲線を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者群1,829例(女性923例[50.5%]、平均年齢65.3歳[SD 15.7])と、対照群7,665例(女性3,951例[51.5%]、平均年齢47.5歳[SD 17.3])が含まれた。・時間統合型の特徴マトリクス(time-incorporated feature matrix)として連続的な診断情報と処方情報を用いた、非黒色腫皮膚がんの1年発生リスクの予測モデルは、AUROC 0.89(95%信頼区間[CI]:0.87~0.91)、平均感度83.1%(SD 3.5%)、平均特異度82.3%(SD 4.1%)を達成した。・予測のための識別特性因子は、皮膚上皮内がん(AUROC:0.867、-2.80%)およびほかの慢性併存疾患(骨の変性[AUROC:0.872、-2.32%]、高血圧[0.879、-1.53%]、慢性腎不全[0.879、-1.52%]など)であった。・トラゾドン、アカルボース、全身性抗真菌薬、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、サイアザイド系利尿薬などの薬剤は、このモデルにおける最上位の識別特性であった。・上記の薬剤はいずれも、個別に除外した場合にAUROCが1%超減少した(トラゾドン[AUROC:0.868、-2.67%]、アカルボース[0.870、-2.50%]、全身性抗真菌薬[0.875、-1.99%]など)。

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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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薬剤師会が再教育せざるを得なくなった薬剤師の倫理観【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第33回

薬局・薬剤師のコンプライアンスや倫理観の強化が、待ったなしの状態になっているようです。東京都薬剤師会の永田泰造会長は9月5日の定例会見で、「薬局による不適切行為」といった不祥事に対して、都内全薬局の管理薬剤師を対象にしたコンプライアンス研修会の詳細を公表した。10月から11月にかけ、都内4か所の会場で、平日の勤務終了時間を想定した午後7時から2時間、「より高い倫理観の醸成」を目的に開催する。(2019年9月6日付 RISFAX)この記事は東京都薬剤師会が主催する管理薬剤師を対象とした研修について報じていますが、日本保険薬局協会(NPhA)も会員企業の経営陣を対象としたコンプライアンス強化に向けた新たな取り組みを実施すると発表しました。また、2019年10月開催の日本薬剤師会学術大会でも、「医薬品の製造・流通・販売に関わる者のガバナンスの強化について」という組織体制や仕組みの強化をテーマとした分科会が開催される予定です。なぜ急にコンプライアンスやガバナンスが白熱しているのか? と思われる方もいるかもしれませんが、きっかけは昨年発生したある薬局チェーンの調剤報酬不正請求問題のようです。この問題は、薬歴が未記載のまま薬剤服用歴管理指導料を請求していた薬局が地方厚生局から指摘を受けたことに端を発します。薬局は過去5年間さかのぼって薬歴の記載と請求額を調査して、不適切に受け取っていた額を返還することになりましたが、その返還額を改ざんして過少に報告していたことが発覚し、さらにこの改ざんは当時の取締役が指示を出していたという悪質な事例です。具体的な改ざん行為は、薬剤服用歴の入力日の改ざんや未記載だった薬歴の事後記入などであったと発表されています。コンプライアンス違反で「今までどおりやっていた」は言い訳にならない薬歴は、書いても書かなくてもその月内に行政にチェックされることなくレセプト請求ができるのが現状です。しかし、患者さんのアレルギー歴や併用薬のチェック、副作用は起きていないか、どのような理由で薬が変更されたのかなど、さまざまな情報を積み重ねることで包括的に患者さんを把握し、安全にお薬を飲んでもらうというのが薬局・薬剤師業務の根幹であることは言うまでもありません。薬歴を書いていないというのは薬剤師の業務を行っていないのと同義でしょう。そもそも薬歴を書いていない状態で薬剤師の業務が行えるわけがないとも思います。ほかにも、処方箋をグループ会社の別薬局に送付し、処方箋を受け取った別薬局で調剤を行ったものとして保険請求をしたという事例や、薬剤師認定制度実施機関から交付される研修受講シールがインターネット上のオークションサイトなどで売買されている事例なども記憶に新しいのではないでしょうか。これらもいわゆる「不適切行為」に当たります。違反して、「今までどおりにやっていた」「みんなそうやっている」「前任者からそうやると聞いている」などは言い訳になりません。すべての薬剤師がコンプライアンスをいま一度見直す必要性を感じます。

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第3回 これぞ心リハによる恩恵!【今さら聞けない心リハ】

第3回 これぞ心リハによる恩恵!今回のポイント心臓リハビリテーション(心リハ)は心血管疾患患者の症状を改善するだけではなく、病因・病態を改善する「心血管治療」である心リハの効果は多くの臨床試験で証明されている心血管疾患を有するすべての患者に心リハが必要~薬剤を追加する前に心リハオーダを~ケアネットの読者の皆さん、心血管疾患患者に対する心リハの効果について、どの程度ご存じでしょうか?「運動耐容能を改善する」「自覚症状を改善する」と答えた方は正解ですが、それだけでは100点満点中30点程度です。心リハは、心血管疾患患者の運動耐容能(全身持久力・筋力・筋量)・自覚症状を改善するだけではなく、糖代謝、脂質代謝、血管内皮機能、自律神経機能を改善することで、疾患の再発・悪化を抑制し、生命予後をも改善させることが多くの臨床試験で示されています(表1)。(表1)心リハの効果画像を拡大する心リハの効果は、多くの薬剤による効果をひとまとめにしたようなものと言えますが、薬剤のような副作用はありません。また、心血管疾患を患うと多くの患者が鬱状態に陥りますが、心リハで運動療法や多職種介入を行うことでうつや不安が改善します(これがホントの“心”リハ!?)。なので「この患者は歩けるから心リハは必要ないだろう」などと言うことは誤りであり、虚血性心疾患や心不全などで通院加療を行うすべての患者に、心血管治療の一環として心リハが必要なのです。~運動制限と安静を一緒にすべからず~「心リハではエルゴメータを用いた自転車こぎ運動をするけれど、高齢で自転車にも乗れないような心不全患者のリハビリはどうなるの?」「慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)を合併している患者は運動してもいいの?」など、いろいろな疑問が湧き上がってくる方もいらっしゃるでしょう。まず、フレイルを合併した高齢者ですが、通常のエルゴメータに乗れなくても、普通の椅子に座ったまま専用の器具を使えば下肢の持久性運動は可能ですし、低強度の筋力トレーニングやバランス機能の改善を目的とした運動も生活機能改善や転倒予防に有用です。また、心リハ時に服薬状況の確認や薬剤の微調整を行うことで、病状悪化による再入院を防ぐことができます1)。次に、CKD患者はどうでしょう? 日本の急性心不全レジストリ研究によると、急性心不全の75%に腎機能障害が認められています2)。つまり、心血管疾患患者の多くがCKDを合併しているわけです。CKD患者で、「小さい頃に腎臓病になって以来、運動は制限されてきました。だから運動はしないんです。」と言う方にしばしば出会います。しかし、これは誤解です。小児が体育で長距離走やサッカーなどの激しい運動をすることと、成人がフィットネスとして自転車こぎ運動やウォーキングを行うことは、目的や身体への負荷量がまったく異なります。運動制限=安静ではないのです。~高齢者やCKD患者に適したプラン~中高年のCKD患者では、有酸素運動や軽度の筋力トレーニングを行うことで、腎機能が悪化することなく全身持久力や筋力、筋量を改善することが報告されており、CKDのガイドラインでも肥満やメタボリックシンドロームを伴うCKD合併心不全患者において運動療法は減量および最高酸素摂取量の改善に有効であるため、行うよう提案されています(小児CKDでも、QOLや運動機能、呼吸機能の点から、軽度~中等度の運動を行うよう提案3)されています)。一般的に中年以降は運動不足になりがちですから、意識的に運動習慣を作っていく必要があります。まだ研究数は多くはありませんが、保存期のCKD患者だけではなく、血液透析患者においても運動療法の有用性が明らかにされつつあります。日本では2011年に「日本腎臓リハビリテーション学会」が発足し、CKD患者に対する運動療法のエビデンス確立と普及を目指した活動が展開されつつあります。「えっ、心リハだけじゃなくて、腎リハもあるの?」そう、“腎リハ“もあるんです。CKD合併患者では、そもそも心血管疾患の合併が多く、透析患者の死亡原因の第1位は心不全です。CKD患者の生活の質と予後を改善するために、今後の心リハ・腎リハの普及が期待されています。心血管疾患と運動、本当に奥が深いですね。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>実体験から心リハの有用性を学ぶ私が医学生の頃(約20年前)、心リハの講義はありませんでした。当然ながら、当時ほぼすべての医学生が持っていた医師国家試験の「バイブル」的参考書、イヤー・◯-トにも心リハについての記載はなかったと思います。その後、心リハを知ったのは研修医の時。急性心筋梗塞後の患者さんの離床にあたり、ベットサイド立位から1,000m歩行まで、日ごとに安静度をあげていくことを「心リハ」と呼んでおり、その際に立ち会い、12誘導心電図とモニタ心電図を確認することが研修医のDutyでした(今から思うと急性期の離床リハビリのみで、退院後の運動指導などはあまりできていませんでした)。当時、CCU(Coronary Care Unit)管理の重症患者を含め最大29人もの入院患者を担当し常にあくせくしていた私にとって、「心リハ」の時間はかなりゆったりとした、半ば退屈な時間でした。恥ずかしながら、その頃の私は、「循環器医の本命は救急救命医療!」と思っており、心リハの立ち会いは雑多なDutyの一つという認識でしかなかったのです。そんなある日、印象的な出来事が起こりました。“心リハ”プログラムの一環として、患者さんが500m歩行終了後、次のステップとして初回のシャワー浴前後で心電図・バイタルチェックがあり、シャワー後の心電図確認に呼ばれました。病室に入ると、ベッドに横たわり心電図検査中のその70代男性患者さんは「久々のシャワーは気持ちよかったです」と上機嫌でした。次の瞬間、「さっぱりしましたか、よかったですねー」と言いながら、12誘導心電図を見た私は凍りつきました。研修医の私が見てもびっくりするほど、心電図の胸部誘導でST部分が4~5mmほど“ガバ下がり”していたのです。「○○さん、胸、苦しくないですか!?」と尋ねると、「そういえば、ちょっともやもや…」とシャワーに入れた喜びもちょっと冷めて、少し不安そうな患者さん。ニトロを舌下すると、症状は少し改善しましたが、心電図は完全には戻りません。すぐに主治医へ連絡して、緊急カテーテル検査となりました。冠動脈造影では、2週間前に留置された前下行枝中間部のステント内に血栓性閉塞を認め、同部位に再度PCIを行いました。いわゆる亜急性ステント血栓症(Subacute stent thrombosis:SAT)でした。その後、2週間程度で患者さんは無事に自宅退院されましたが、あのとき、心リハでルーティンのシャワー後の心電図をとっていなかったら、その患者さんは元気に退院できていなかったかもしれません。この症例を含め、重篤な症状が明らかとなってから救命救急医療を行うのではなく、症状が出ていないうちから早期に異常を発見し対応することの大切さを、いくつもの症例で経験しました。病状が安定しているように見える場合であっても、循環器疾患の患者さんでは、“急変”がしばしば認められます。担当医とて一生懸命治療に取り組んでいるのに、なぜ急変してしまう患者さんがいるのか…それは常に後手後手に回っていた自分の診療姿勢や、患者さんのこれまでの生活歴・治療歴にも問題がある、と考えるようになりました。「発症してから、あるいは急変してから治療しても、できることは限られている…“急変”させないように早期から介入することが大事だ」-医師として3年目、もっと心血管疾患予防を学びたいと、私は大学院入学を決めていました。「患者さん自身が教科書である」とは、医学教育の父と言われるウィリアム・オスラーの名言ですが、私が今も心リハを専門にしているのは、研修医時代に担当させていただいた患者さんたちと、指導していただいた先生方のおかげです。1)Rich MW, et al. New Engl J Med. 1995;333:1190-1195.2)Yaku H, et al. Circ J. 2018;82:2811-2819.3)日本腎臓学会編. CKD診療ガイドライン2018

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わが国の進行固形がん患者におけるVTE発生頻度~多施設共同前向き観察研究/日本がんサポーティブケア学会

 がんは静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子であるといわれている。しかし、日本においては固形がん患者を対象に積極的なスクリーニングを用いてVTEの評価をする大規模な研究は報告されていない。そこで、日本人の進行固形がん患者におけるVTEの発生割合を、造影CT、下肢静脈エコー、D-ダイマーを用いたスクリーニングにより前向きに評価する多施設共同観察研究VISUAL Studyが行われた。その結果を第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会にて静岡市立静岡病院の佐竹 康臣氏が発表した。 対象は、初回全身治療を28日以内に予定している切除不能または進行・再発の固形がん患者(PS0~2)。主要評価項目は、登録時から登録後24週までのVTEの発生割合。副次評価項目は、VTE発生割合(登録時、12週、24週)、がん種別のVTE発生割合、症候性のVTEの発生割合、肺塞栓症の発生割合、VTEの治療状況であった。 主な結果は以下のとおり。・860例が対象集団として登録された。・登録時から登録後24週までのVTEの発生割合は22.6%(860例中194例)であった。・登録時のVTE発生割合は11.3%、12週後では16.8%、24週後では14.1%であった。・がん種別のVTE発生は肺がん24.1%、消化器がん17.7%、肝胆膵がん25.6%、婦人科がん32.1%であった。・症候性のVTE発生割合は4.0%、肺塞栓症の発生割合は1.0%であった。・登録時にVTEを認めなかった患者においても、化学療法開始後には12.7%にVTEが発症した。・治療前のVTEの独立したリスク因子は、女性、D-ダイマー高値であった。 インテンシブなVTEのスクリーニングを行った本試験では、わが国の進行固形がん患者におけるVTE発生頻度は、過去の報告と比較しても高いことが示された。

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日本人の海藻摂取と脳・心血管リスク

 海藻に含まれるミネラルやビタミン、可溶性食物繊維、フラボノイドは、心血管疾患予防に役立つが、海藻摂取と心血管疾患リスクとの関連は明らかになっていない。今回、わが国の多目的コホート(JPHC)研究で、筑波大学の村井 詩子氏らが海藻摂取と脳卒中および虚血性心疾患リスクとの関連を調査したところ、虚血性心疾患リスクとの逆相関が認められた。一方、脳卒中とは有意な関連はみられなかった。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2019年9月13日号に掲載。 本研究は、2つの大規模コホート(40~69歳)における男性4万707人と女性4万5,406人が対象。ベースライン時(1990~94年)、食事摂取頻度調査票(FFQ)で海藻摂取について調査した。脳卒中および虚血性心疾患の発症率は、2009年末(コホートI)または2012年末(コホートII)まで調査した。地域による層別化と心血管疾患リスクおよび食事因子の調整後、Cox比例ハザードモデルを使用して男女別の心血管疾患のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・149万3,232人年の経過観察中に、脳卒中4,777例(虚血性脳卒中2,863例、脳実質内出血1,361例、くも膜下出血531例)、虚血性心疾患1,204例が確認された。・男性では、海藻をほとんど摂取しない群に対する、ほぼ毎日摂取する群の多変量HRは、虚血性心疾患で0.76(95%CI:0.58~0.99、傾向のp=0.04)、心血管疾患全体で0.88(同:0.78~1.00、傾向のp=0.08)であった。女性では、虚血性心疾患で0.56(同:0.36~0.85、傾向のp=0.006)、心血管疾患全体で0.89(同:0.76~1.05、傾向のp=0.10)であった。・海藻摂取と脳卒中全体および脳卒中の各タイプとのリスクとの間には、男女とも有意な関連はみられなかった。

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大腿骨近位部骨折は社会的損失も大

 日本整形外科学会(理事長:松本 守雄氏[慶應義塾大学医学部整形外科学教室 教授])は、「骨と関節の日(10月8日)」を前に、9月5日に都内で記者説明会を開催した。説明会では、学会の概要や活動報告、運動器疾患の現況と今後の取り組みについて説明が行われた。また、「大腿骨近位部骨折とロコモティブシンドローム」をテーマに講演も行われた。ロコモティブシンドロームのさらなる認知度向上にむけて はじめに理事長挨拶として松本氏が登壇し、1926年の学会設立以来、順調に会員を増やし、現在では2万5,126名の会員数を誇る世界有数規模の運動器関連学会であると説明。従来の変性疾患、外傷、骨・軟部腫瘍、骨粗鬆症などのほか、今日ではロコモティブシンドローム(ロコモ)の診療・予防に力を入れ、ロコモの認知度向上だけでなく、ロコモ度テストの開発・普及、ロコモーショントレーニング(ロコトレ)の研究・普及などにも積極的に活動していることを紹介した。寝たきりになると介護・医療費は6.7倍に 続いて、澤口 毅氏(富山市民病院 副院長)が「大腿骨近位部骨折」をテーマに、本症の概要や自院の取り組み、予防への動きについて講演を行った。 大腿骨頸部/転子部骨折の患者は女性に多く、2017年の調査で約20万例の骨折が報告されているという。また、骨折が起きる場所として屋内が約70%、屋外が約20%であり、原因では約80%が「立った高さからの転倒」という日常生活内で起こることが説明された。 骨折後1年後の死亡率と機能障害では、死亡が20%、永続的機能障害が30%、歩行不能が40%、ADLの1つでも自立不能が80%と多大なリスクとなることも示された1)。同時に同部位の骨折で高齢者で寝たきりになった場合、寝たきりにならない場合と比べ、介護・医療費が約6.7倍(約1,540万円)と高く、このため家族が介護離職を余儀なくされ、復職できないなど、社会的経済損失も大きいという。 骨折の治療では、「合併症が少なく、生存率が高く、入院期間が短い」という理由から、早期の手術がガイドラインでは推奨されている(Grade B)。しかし、わが国の入院から手術までの日数は、平均4.2日と欧米の平均2日以内と比較しても長いことが問題となっている。また、入院期間についてもわが国は平均36.2日であるのに対し、欧米では数日~10日以内と大きく差があることが示された2)。この原因として、手術室の確保、麻酔科医の不足、執刀医の不在など医療機関側に問題があることを指摘した。 一方、オーストリアやドイツなど欧州では、高齢者の骨折に対し、医師、看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士によるチーム医療が行われ、とくに整形外科と老年病科の医師の連携により、入院中や長期死亡率の減少、入院期間の短縮、重篤な合併症と死亡率の低下、再入院の減少、医療費の低下に成果をあげているという。手術待機日数、平均1.6日への取り組み 次に同氏が所属する富山市民病院の高齢骨折患者への取り組みを紹介した。同院では、2013年よりチーム医療プロジェクトを開始し、「骨折を有する高齢患者を病院全体で治療する」ことを基本方針に、さまざまな改革を行ったという。その一例として、電子カルテの専用テンプレート導入、職種・経験の有無にかかわらない統一・均一な初療体制の構築などが行われた。 現在では、大腿骨近位部骨折と診断されると3~5時間で手術を行うことができ、術後は病棟薬剤師による鎮痛やせん妄への対処、リハビリテーション科による早期離床と早期立位・歩行へのフォロー、精神科によるせん妄予防、肺炎予防、栄養管理(骨粗鬆症予防も含む)、高齢診療科医師による術後管理、退院サポートなどが行われている。 とくに大腿骨近位部骨折をした患者の再骨折率は高く2)、同院では転倒防止教室や電話によるフォロー、「再骨折予防手帳」の活用を行っているという。そして、これらの取り組みにより、「手術待機日数は平均1.6日(全国平均4.2日)、在院日数は平均19.6日(全国平均36.2日)と短縮されたほか、患者1人あたりの平均入院総医療費も全国平均に比べ少なくなっている」と成果を語った。運動で防ぐ骨折、再骨折 次に大腿骨近位部骨折とロコモについて触れ、「『大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン 改訂第2版』では、骨折の原因となる転倒予防に運動療法は有効(Grade A)となっている。開眼片脚立ちなどのロコトレを行うことで、骨粗鬆症予防と転倒予防に役立つと学会では推奨している」と説明。また、全国で行われている骨折予防の取り組みとして患者向けに「再骨折予防手帳」の発行、患者の退院後のフォローを専門スタッフが行う「骨折リエゾンサービス」の実施や地域連携として「骨粗鬆症地域連携手帳」の発行の取り組みなどを紹介した。 最後に同氏は、「将来、アジア地域で骨折患者の爆発的な発生も予想される。今のうちから各国間で診療ネットワーク作りをして備えたい」と展望を語り、講演を終えた。

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経皮吸収型抗精神病薬の理論的根拠と現状

 イタリア・ボローニャ大学のAngela Abruzzo氏らは、現在承認されている抗精神病薬の概要、主な利点を調査し、経皮吸収製剤の開発における理論的根拠について報告を行った。CNS Drugs誌オンライン版2019年9月6日号の報告。 過去10年間に公表された論文、特許、臨床試験を検索し、経皮吸収型抗精神病薬に関する研究の進展について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・経皮吸収型抗精神病薬に関する利用可能なデータは、剤型の特徴、薬物吸収促進効果に焦点を当て報告、議論がなされていた。・現在、多数の抗精神病薬が承認されているにもかかわらず、経皮吸収システムによる開発が行われている薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、クロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、プロクロルペラジン、クエチアピン、リスペリドンなど一部の薬剤のみであった。・いくつかの研究や特許では、抗精神病薬の臨床的有用性を拡大する目的で、クリーム、フィルム、ゲル、ナノシステム、パッチ、液剤、スプレーなどの経皮吸収製剤が評価されていることが示唆された。・とくに、ナノ粒子/小胞の使用や浸透促進剤、イオン導入によるマイクロニードルなどさまざまな戦略の使用は、抗精神病薬の経皮吸収を改善させる可能性がある。・しかし、経皮吸収型抗精神病薬に関する臨床試験はほとんど行われておらず、アセナピンやブロナンセリンにおいて、薬物動態、有効性、忍容性に関して、興味深い臨床結果が示されている。・2019年6月18日、日本において統合失調症治療薬としてブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤が承認され、2019年9月10日に発売された。・ブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤は、1日1回(通常用量:40mg、最大用量:80mg)胸部、腹部、背部のいずれかに貼付することにより24時間安定した血中濃度を維持できるため、良好な有効性および安全性が期待できる薬剤である。・また、テープ製剤は、貼付の有無や投与量を視認できるメリットに加え、食事の影響を受けにくいことから、食生活が不規則な患者や経口投与が困難な患者にも使用可能である。

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急性冠症候群へのプラスグレル、チカグレロルより高い有効性/NEJM

 ST上昇の有無を問わず急性冠症候群患者の治療では、プラスグレルはチカグレロルと比較して、1年後の死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合の発生率が有意に低く、大出血の発生率は両群間に差はないことが、ドイツ心臓センターミュンヘンのStefanie Schupke氏らが行ったISAR-REACT 5試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。抗血小板薬2剤併用療法(アデノシン二リン酸受容体拮抗薬とアスピリン)は、急性冠症候群の標準治療とされる。プラスグレルとチカグレロルは先行薬のクロピドグレルに比べ、血小板阻害作用が強く、効果の発現が迅速かつ安定しているとされる。一方、侵襲的評価が予定されている患者における、これらの薬剤による1年間の治療の相対的な優劣のデータはこれまでなかったという。2剤を直接比較する医師主導の無作為化試験 本研究は、ドイツの21施設とイタリアの2施設が参加した医師主導の多施設共同非盲検無作為化第IV相試験であり、2013年9月~2018年2月の期間に患者登録が行われた(German Center for Cardiovascular Researchなどの助成による)。 対象は、急性冠症候群(ST上昇型心筋梗塞[STEMI]、非ST上昇型心筋梗塞[NSTEMI]、不安定狭心症)で入院し、侵襲的評価(冠動脈造影検査)が予定されている患者であった。 被験者は、プラスグレル(負荷用量60mg、維持用量10mg、1日1回)またはチカグレロル(負荷用量180mg、維持用量90mg、1日2回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、主な副次エンドポイントは出血であった。主要エンドポイント:6.9% vs.9.3%、大出血:4.8% vs.5.4% 4,018例が登録され、プラスグレル群に2,006例(平均年齢64.6±12.1歳、女性23.8%)、チカグレロル群には2,012例(64.5±12.0歳、23.8%)が割り付けられた。STEMIが41.1%、NSTEMIが46.2%、不安定狭心症が12.7%であった。84.1%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を、2.1%が冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。 主要エンドポイントは、プラスグレル群が2,006例中137例(6.9%)で発生し、チカグレロル群の2,012例中184例(9.3%)と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.09~1.70、p=0.006)。 主要エンドポイントの個々の要素の発生率は、死亡がプラスグレル群3.7%、チカグレロル群4.5%(HR:1.23、95%CI:0.91~1.68)、心筋梗塞がそれぞれ3.0%、4.8%(1.63、1.18~2.25)、脳卒中は1.0%、1.1%(1.17、0.63~2.15)であり、プラスグレル群における主要エンドポイントの発生率の低さは、主に心筋梗塞が少ないためであった。 ステント血栓症(definite、probable)は、プラスグレル群が1.0%、チカグレロル群は1.3%(HR:1.30、95%CI:0.72~2.33)で発現し、このうちdefiniteはそれぞれ0.6%、1.1%に認められた。 大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3、4、5)は、プラスグレル群が4.8%、チカグレロル群は5.4%にみられた(HR:1.12、95%CI:0.83~1.51、p=0.46)。 著者は「いくつかの過去の知見により、チカグレロルに基づく戦略はプラスグレルに基づく戦略よりも優れるとの仮説を立てたが、結果は予想とは異なっていた」としている。

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STEMIのプライマリPCI、新世代ステントが有望/Lancet

 直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受ける急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、1年後の標的病変不全の発生に関して、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントよりも有効であることが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが行ったBIOSTEMI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせた新世代の薬剤溶出ステントは、薄型ストラットを用いた第2世代の薬剤溶出ステントに比べて、プライマリPCIを受ける急性心筋梗塞患者の血管治癒を促進し、臨床アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。標的病変不全を評価する医師主導無作為化試験 本研究は、スイスの10施設が参加した医師主導型の多施設共同単盲検無作為化試験であり、2016年4月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Biotronikの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、発症から24時間以内で、1つ以上の冠動脈責任病変を有し、プライマリPCIが検討されている急性期STEMI患者であった。 被験者は、生分解性ポリマーからシロリムスを溶出する超薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Orsiro)を留置する群(生分解性ポリマー群)、または耐久性ポリマーからエベロリムスを溶出する薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Xience Xpedition/Alpine)を留置する群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12ヵ月後の標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋再梗塞、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術)とした。標的病変不全:4% vs.6%、不全の個々の項目に差はない 1,300例(1,623病変)が登録され、生分解性ポリマー群に649例(816病変、62.2[SD 11.8]歳、女性21%)、対照群には651例(806病変、63.2[11.8]歳、女性27%)が割り付けられた。1年後のフォローアップデータは、生分解性ポリマー群が614例(95%)、対照群は626例(96%)で得られた。 1年後の標的病変不全は、生分解性ポリマー群が649例中25例(4%)で発生し、対照群の651例中36例(6%)と比較して、有意に良好であった(群間差:-1.6、率比[RR]:0.59、95%ベイズ確信区間[Crl]:0.37~0.94、ベイズ事後確率:0.986)。 1年後の心臓死(生分解性ポリマー群3% vs.対照群3%、RR:0.77、95%Crl:0.43~1.40、ベイズ事後確率:0.806)、標的血管の再心筋梗塞(1% vs.1%、0.55、0.19~1.60、0.875)、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術(1% vs.3%、0.55、0.26~1.13、0.949)、全死因死亡(4% vs.3%、0.97、0.58~1.62、0.553)、definiteステント血栓症(1% vs.1%、0.68、0.22~1.89、0.762)、出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3~5)(3% vs.2%、1.26、0.73~2.45、0.205)は、両群間に差が認められなかった。 著者は、「標的病変不全の差は、主に虚血による標的病変再血行再建術が生分解性ポリマー群で少なかったことによると考えられる」とし、「急性心筋梗塞患者のプライマリPCIでは、新世代の薬剤溶出ステントはベアメタルステントに比べ高い有効性をもたらすが、超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせたステント技術の改良により、臨床アウトカムがさらに改善する可能性が示唆される」と指摘している。

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腫瘍循環器病学の基礎研究の1つとなる論文(解説:野間重孝氏)-1113

 腫瘍循環器病学(Onco-cardiology)という領域には、まだあまりなじみのない方が多いのではないかと思う。この領域が本格的に稼働し始めたのは今世紀に入ってからで、実際、最初の専門外来がテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター内に開設されたのは2000年の出来事だった。わが国で同種の外来が大阪府立成人病センターにおいて初めて設置されるには、その後10年を待たなくてはならなかった。こうした事情を考えると、この領域について少し解説を加える必要があるのではないかと思う。 がん治療における心毒性の歴史は、アントラサイクリン心筋症に始まる。抗がん剤において急性期心毒性に加え、1年以上も経過してから出現する亜急性期心毒性が報告されたことが、同剤の心毒性についての関心を大きく高めた。1970年代の出来事である。その後の研究で、アントラサイクリンの投与容量がドキソルビシン換算400~450mg/m2以上で、高い頻度で心不全の発症が見られることがわかり、投与量を計画的に制限することでその発症を大幅に減少させることが可能になった。この一連の研究が、腫瘍循環器病学のいわば基礎になったことは言うまでもない。 その後がんの病態の解析が進み、今世紀には分子標的薬が出現する。HER2受容体を特異的に阻害する抗体であるトラスツズマブの出現は、今まで増殖性が強く難治性であったHER2陽性乳がんの予後を著明に改善し注目された。しかし、投与前には予想されていなかった心不全例が出現し、その原因としてHER2受容体が心筋細胞にも存在することが証明されたことは、大きな驚きをもって迎え入れられた。最近の最大の話題の1つに、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫チェックポイント阻害薬があるが、この種の薬剤でも劇症心筋炎が報告され、対応が苦慮されている。つまり新しい抗がん剤が出現すると、さらに新しい作用に合わせた予想できない心毒性が出現する可能性が考えられるのである。 しかし一連の研究の流れが、薬剤の心毒性→薬剤性心筋症→心不全という方向だけだったなら研究は薬剤研究の範囲内にとどまり、腫瘍循環器病学という新しい分野が創出されるに至ったかどうかは疑わしいと思う。がんから回復した患者(がんサバイバー)にがん治療からかなり時期をずらして静脈血栓症が多発すること、そして何よりもがんサバイバーに冠動脈疾患の発生率が高いことが(数倍~10倍ともいわれる)、この領域の研究がぜひ必要と認知される決定的な理由になったのではないかと思う。これらの疾患は原因・病態が複雑でひとくくりにできる性格のものでないことは言うまでもないが、まだその細かな解析にまでは至っていないのが現状である。この領域は、まだ生まれたばかりなのである。 さて、本論文はそうした状況の中、代表的ながん20種について英国の権威あるデータベースであるUK Clinical Practice Research Datalinkを用い、がんサバイバー10万8,215例に対し、年齢・性別をマッチさせた52万3,541例の(つまり複数の)対象をおいて心血管疾患の発生を25年にわたって追跡した大規模疫学研究である。それぞれのがんについて心血管疾患の発生倍率を算出し、かつ信頼区間についても明示された。研究グループの地道な努力に敬意を表するものである。さらに、従来この種の疫学研究は比較的若年者を対象とすることが多かったが、本研究では高齢者も対象としており、かつ年齢が発生頻度と関係することを示したことも注目されるべき点だろう。なお著者らは今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量、がんの再発、心血管疾患の家族歴、人種、食事、アルコール消費量などの情報に信頼できるデータを示すことができなかったことを挙げているが、評者にはこれは確かに限界と言えば限界には違いないが、この種の疫学調査では避けて通れない種類の限界であり、この研究の価値を下げるものではないと思われる。それぞれの患者がそれぞれ置かれた環境で至適治療を受けたという事実が問題で、その結果としてどうなったのかこそが問題だからである。 今後がん治療には、どんどん新しい分野が開拓されていくことが予想される。その際、最も問題になるのが心血管系合併症であることが、はっきりと示されたことは大変に重要なことだと考える。本論文は正確な実態を把握することを主目的とし、何か新しい知見を示すことを目的とはしていない。しかし、今後ますます重要性を増していくであろうこの分野における、記念碑的な論文の1つになるであろうと考えるものである。

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「死なない・死ねない」時代が来る――その時、医師は?【Doctors' Picksインタビュー】第3回

各方面の医療の進化の概略を示し「人は死なない・死ねない時代に入りつつある。これからの時代を生きるうえで、それを踏まえた心と身体の準備をすべき」と呼び掛ける自著をまとめた奥 真也氏。その俯瞰的な視点には、放射線医というキャリアのスタート地点と、民間の医療関連企業で勤務した経験が大きく関わっているという。医療の急速な進化は、医師の仕事も変えていくはず、と奥氏は語る。最大の敵“がん”克服の道筋私は1988年、昭和最後の年に医師になりました。平成の30年間がそのまま医師のキャリアです。この期間に、医療は驚くほど変わりました。その代表格が「がん治療」です。私が医師のキャリアをスタートした20世紀後半には、がんは致死的疾患の主要な座を占めていました。部位ごとのみならず患者さんごとにまったく異なる特徴を示すがんに対し、人類はなかなか有効な手だてを見いだせずにいました。1990年代半ばから、その状況は変わり始めます。手術や放射線、抗がん剤治療が発達し、それらを組み合わせることでがんを克服できるケースが出てきました。さらに21世紀に入ると、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬という新しい治療法の開発が急速に進み、本当の意味で「がんに効く薬」が登場しました。さらに、光免疫療法や遺伝子ゲノム解析を用いた治療も実臨床の段階に入りつつあります。この30年間の各種がんの5年生存率の変化や、死亡率上位を占めるがん種の変遷を見ると、胃がんや大腸がん、肺がんといった、かつては不治と思われたいくつかのがんが、今や克服可能となっていることがわかります。現場で臨床に当たっている方は「克服」と断定してしまうことに違和感があるかもしれませんが、30年前と比較し、人類とがんとの戦いがまったく異なるフェーズに入っていることに異論はないでしょう。「医療の完成」までわずか、死の概念も変わるこれまでの人類の歴史は、病気との戦いの連続でした。ペスト、天然痘、結核、AIDS…、ある病気を克服してもすぐに次の病気が立ちはだかりました。しかし、「がん」という高い壁の乗り越え方が見えつつある今、私はすべての病気を治せる「医療の完成」の9合目の地点まで来た、と考えています。90%ではなく9合目と表現しているのは、最後の1合には、乗り越えるのが大変な「難敵」が待ち構えているからです。大別すると、(1)膵臓がんや胆管がんといった発見・アプローチが難しい病気、(2)筋ジストロフィー、脊髄側索硬化症(ALS)や種々の遺伝的な免疫不全症などの希少疾患、(3)大動脈解離やくも膜下出血などの急死につながりやすい疾患、これらが具体的な難敵でしょう。しかし、(1)のがんは前述のとおり有効なアプローチが増加し、(2)の希少疾患についても、筋ジストロフィーについては小児のうちに完治を目指すアプローチの新薬が登場するなど、克服の道が見えつつあるものが増えてきています。(3)の急死を含め、完全な克服には医療保険制度や社会の在り方なども含めて議論する必要があり、時間はかかるでしょうが、それでもアプローチは日進月歩で進化しています。克服困難だった病気が次々に治療可能となり、数十年前と比較して人類は「予期しないタイミングで死ぬ」ことが圧倒的に減りました。寿命は延び続け、日本をはじめ先進国では急速に高齢化が進んでいます。簡単には「死なない・死ねない時代」になりつつある今、「死」自体が、これまでに考えられてきたもの、長らく恐れられてきたものから変容するでしょう。死、そして人生そのものに対する向き合い方が根本的に変わっていくのです。これまで、私たち医師の役割は、目の前の人の病気を治し、1日でも長く生かすことでした。でも、その常識すらも変わっていくでしょう。私たち医師は、そうした患者さんや社会の変化に向き合う準備ができているでしょうか?画像診断・病理診断はAIの独擅場に医師の仕事を変えつつある、もう1つの大きな要因は人工知能(AI)の応用です。2016年、 Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ碁)」が世界のトップ棋士に勝ち越しました。1980年代には「複雑なルールの囲碁において、コンピュータが人間に勝つのは22世紀以降になる」といわれていたものが、21世紀早々のタイミングでいとも簡単に壁を越えていったのです。こうしたAIが医療の世界ですでに応用されているのは、皆さんもご存じのとおりです。私はよく、画像診断で病変を見つける作業を絵本の『ウォーリーをさがせ!』に例えるのですが、この絵本で要求される「似たような中から条件に当てはまる1人を見つける」という作業は、集中力を要し時間もかかるものです。しかも臨床現場では、「異常があるのかさえもわからない」「あっても確率は1万分の1」といった難しさも加わります。こうした作業は、AIが圧倒的に得意な分野です。たとえば、マンモグラフィの画像診断において、熟練医師が1人の画像を診断するのに10分かかるところ、AIは同じ10分で6万人分を診断します。1分で6,000人を診断して精度にも問題がないのですから、勝負にすらなりません。現在の放射線科医や病理医の仕事の一部は、急速にAIに替えられていくでしょう。そして、変化はややゆっくりかもしれませんが、どの診療科にも同じ流れはやってきます。人間の医師が不要になるわけではありませんが、5年、10年後の医師の仕事は、今とはまったく異なるものになることでしょう。この変化の影響を一番受けるのは医学生や若手医師の方でしょうが、今の医学教育や医師育成のシステムはこれらの変化に対応し切れていないように見えます。事実、こうした話を書籍*にまとめたところ、一般向けの書籍を目指したのにもかかわらず、医師や医学生から反応が多くあったり、大学の医学部から副読本・参考書として使いたいという話がきたりもしました。まったく異なるキャリアで視野を広げる私がこのように医療を俯瞰的に見る視点を持つようになったのは、キャリアのスタートが放射線医だったことが大きく影響しているのだと思います。放射線科は、複数の科の患者の画像診断を一手に引き受ける部門です。幅広い診療科の医師と一緒に仕事をしたことや、多岐にわたる患者の診断を受け持ったことが、自分の土台になっています。もう1つ、ほかの医師があまり持たないキャリア経験が、民間企業に所属したことでしょう。私は長らく大学で教鞭を執っていましたが、あるきっかけから民間企業に転じ、製薬会社や医療系コンサルティング会社、そして医薬機器メーカーに勤めました。それまで、医師として薬や診断機器のユーザー側だったものが、メーカーに入って提供する側に回ったのです。この両者の経験が、医療の全体感をつかむことに大きく役立ちました。私の場合、意図してのキャリアチェンジではありませんでしたが、まったく異なる環境で働き、異なる視点で医療の世界を見る経験は、長い医師人生の中で必ず役立つはずだと感じます。人生100年時代、医師がすべきことは?ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏は、共著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の中で「人生100年時代に備えよ」と呼び掛け、大きな話題を集めました。この問題はもちろん、医師自身にも当てはまります。大学で役職をもらい、定年まで勤め上げるといった、これまでの「上がり」のキャリアでは、長く延びつつある人生に対応し切れません。医療が大きく変化しつつある今は、医師にとって活躍の場が増えている時代でもあります。臓器再生や脳の記憶を保存するなど、「不死」の時代を見据えた新たな医療ビジネスがどんどん登場しています。まだ決定的な治療法が見つかっていない認知症に社会としてどう向き合っていくのか、というのも大きな論点でしょう。どのテーマにも、医療の専門知識とともに、高い倫理観が求められます。さらに、「死なない・死ねない」時代を迎えるにあたり、避けて通れないのが「安楽死」を巡る議論でしょう。安楽死(医療が介入する積極的安楽死)を法律で認めている国は、世界に8ヵ国(米国は州単位)あります。もちろん、簡単に答えを出せる問題ではありませんが、高い専門知識と死に向かう人の実情を知る医師だからこそ、この問題からも目を背けず、積極的に議論していくべきではないかと思います。*『Die革命 医療完成時代の生き方』(奥 真也/著. 大和書房. 2019年3月発行)※この記事は、奥氏の著書『Die革命 医療完成時代の生き方』(大和書房)と2019年7月に開催された同書の出版記念講演(「医療の完成による死なない・死ねない時代が来る!!~人生100年時代の生き方~」紀伊國屋書店 新宿本店)の内容を再構成したものです。このインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!私のPICKした記事がん遺伝子パネル検査後の治療をご希望される患者さんへ個人に対するがん治療を遺伝子検査によって最適化するパネル検査。春先に保険収載され始め、いよいよ本格的に動き出しました。本来はがんの標本自体が必要ですが、血液等で代用するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)の手法も大いに注目されます。このような追い風の中ですが、まだまだ、「遺伝子的な最適状況は判明しても、適切な治療が提供できない」ということが、パネル検査の概念について、大きな障碍になっているのが現状です。今後、パネル検査、リキッドバイオプシー由来のデータを基に、薬の開発法が新たな方法論に進んでいく時代が拓かれると思われます。仮説検証的な方法から、発見的(heuristic)な方法への転換です。

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うつ病と糖尿病合併に関する調査結果

 うつ病と糖尿病合併との関連を明らかにするため、オーストリア・ウィーン医科大学のGernot Fugger氏ら欧州リサーチコンソーシアムの治療抵抗性うつ病研究グループ(GSRD)は、多施設共同研究を実施した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年8月30日号の報告。 DSM-IVでうつ病と診断された患者1,410例の2012~16年の人口統計および臨床情報を、横断的に検索した。糖尿病合併の有無により患者特性の比較には、記述統計、共分散分析(ANCOVA)、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者の糖尿病合併ポイント有病率は、6%であった。・糖尿病合併うつ病患者は、高齢、重症、入院、慢性身体疾患の合併の割合が有意に高かった。・現時点での自殺リスクが有意に高く、メランコリックな特徴が顕著であった。・糖尿病合併うつ病患者は、さまざまな増強療法を組み合わせるよりも、1剤以上の抗うつ薬併用療法が行われていた。 著者らは「うつ病患者の糖尿病合併率は、これまでの研究よりも低かったが、研究の地理的要因における糖尿病有病率を考慮すると、一般人口と比較し、うつ病患者はリスクが高いことが示唆された。現時点では、自殺リスクが著しく増加しており、すべての糖尿病合併患者を徹底的に評価する必要がある。うつ病の重症度や治療反応は、糖尿病合併の影響を受けていなかった」としている。

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高齢者乳がん、カペシタビン術後療法の10年評価/JAMA Oncol

 カペシタビンの早期高齢乳がん術後補助化学療法における標準療法に対する非劣性を検討した「CALGB 49907試験」の長期10年の追跡結果が、米国・ノースカロライナ大学Lineberger Comprehensive Cancer CenterのHyman B. Muss氏らにより発表された。Journal of Clinical Oncology誌2019年9月10日号掲載の報告。 同試験の主要解析の結果は、追跡期間中央値2.4年後に報告されており、標準術後化学療法は、カペシタビンとの比較において有意に良好な無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)を示していた。今回、同グループは、追跡期間中央値11.4年後の結果をアップデート報告した。 CALGB 49907試験では、65歳以上の早期乳がん患者を、標準術後補助化学療法群(担当医がシクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル、もしくはシクロホスファミド+ドキソルビシンのいずれかを選択)またはカペシタビン群に無作為に割り付け追跡が行われた。ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いて試験サンプルサイズを確認し、カペシタビンの非劣性検定を行った。主要評価項目はRFSであった。 主な結果は以下のとおり。・試験は、初回サンプルサイズ評価後、被験者633例に達した時点で終了となった。・RFSは、標準化学療法群で有意に延長したままであった。・10年時点で、RFSは標準化学療法群56%、カペシタビン群は50%であった(HR:0.80、p=0.03)。・乳がん特異的生存率は、それぞれ88%、82%であった(HR:0.62、p=0.03)。・より長期の追跡で、標準化学療法はホルモン受容体陰性の患者では依然としてカペシタビン群に対して優れていたが(HR:0.66、p=0.02)、ホルモン受容体陽性患者では有意差は認められなかった(HR:0.89、p=0.43)。・集団全体の死亡率は43.9%で(乳がんによる死亡13.1%、乳がん以外による死亡16.4%、原因不明の死亡14.1%)、2次性非乳がんの発生は14.1%であった。

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医療小説の最高峰【Dr.倉原の“俺の本棚”】第22回

【第22回】医療小説の最高峰久坂部 羊という名前を聞いたことがない医師はいないでしょう。彼の数ある医療小説の中で、この『悪医』が好きです。第3回日本医療小説大賞(日医主催、厚生労働省後援、新潮社協力)を受賞した、名作。『悪医』久坂部 羊/著. 朝日新聞出版. 2013主人公は、3ヵ月の余命宣告を受けた52歳の末期がん患者さんと、その主治医である35歳の外科医です。この小説の特筆すべき点は、恐ろしいほどのリアリティ。互いの思いが交互に綴られる形で進んでいきます。外科医は、「もうこれ以上の治療法はないので、副作用で命を縮めるよりも、残された時間を有意義に過ごしてほしい」と伝えますが、患者さんは「死ぬよりましだと思ってつらい治療に耐えてきたのに、治療法がないというのは死ねということか!」と激昂します。主人公たちの思いが交互に綴られるのを読んでいるうちに、末期がんに対する医師と患者さんの認識が、ここまで違うものかと身につまされます。この両者の埋まらない溝が、しつこいくらいに何度も登場します。患者さんは、セカンドオピニオンだけでなく、新しい抗がん剤、免疫細胞療法といろいろな治療に手を出します。外科医は、どうすれば患者さんに正しい情報が伝わるだろうかと苦悩し続けます。医療情報という観点からは、すれ違いばかりの2人でしたが、患者さんは最期に緩和ケア病棟にたどり着き、外科医に対して「自分は時間を無駄にしたとは、思っていない。(外科医の言った)その通り、有意義にすごした」と伝えます。患者さんにとって何が有意義か、など医師にはわかりません。がんと向き合い、死と向き合い、少しでも回復できる見込みがある新たな治療法を求めて奔走することが、有意義と感じる患者さんもいるかもしれません。終末期に医師がよく言う、“有意義”の意味を今一度考えたい。患者さんにとって、有意義の定義なんて、それぞれ違うのですから。『悪医』久坂部 羊/著出版社名朝日新聞出版定価本体1,700円+税サイズ四六版刊行年2013年

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