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5α-還元酵素阻害薬による2型糖尿病発症リスクの増加(解説:吉岡成人氏)-1033

5α-還元酵素阻害薬と前立腺肥大症、男性型脱毛症 前立腺肥大症や男性型脱毛症は中高年以降の男性が罹患する代表的疾患であるが、発症の要因の1つとしてジヒドロテストステロン(DHT)の関与が知られている。テストステロンは5α-還元酵素によってより活性の強いDHTに変換され、前立腺においてはテストステロンの90%がDHTに変換されている。そのため、5α-還元酵素に対して競合的阻害作用を持つ5α-還元酵素阻害薬が、前立腺肥大症や男性型脱毛症の治療薬として使用されている。 5α-還元酵素には2種類のアイソフォームがあり、type 1は肝臓、皮膚、毛嚢などに分布し、男性化に関与するtype 2は外陰部の皮膚、頭部毛嚢、前立腺などに分布している。type 1、type 2の双方を阻害する薬剤がデュタステリド(商品名:アボルブ、ザガーロ)であり、type 2のみを阻害する薬剤がフィナステリド(商品名:プロペシア)である。フィナステリドはRCTであるProstate Cancer Prevention Trial(PCPT)により、前立腺がんの発症リスクを低下させることが知られており、最近では、前立腺がんによる死亡リスクも低下させる可能性が示唆されている(Goodman PJ, et al. N Engl J Med. 2019;380:393-394.)。5α-還元酵素阻害薬の副作用としては性機能不全(勃起不全、射精障害)や女性化乳房があり、1%前後の割合で発症する。5α-還元酵素阻害薬によるインスリン抵抗性の増強 10~20例と少数例ではあるが、ヒトを対象とした臨床研究においてtype 1、type 2の双方の5α-還元酵素を阻害するデュタステリドはインスリン抵抗性を増強させ、肝臓での脂肪蓄積を引き起こすことが報告されている(Upreti R, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:E1397-E1406.、Hazlehurst JM, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101:103-113.)。しかし、type 2の5α-還元酵素のみを阻害するフィナステリドにおけるインスリン抵抗性の増強作用は確認されていなかった。5α-還元酵素阻害薬と糖尿病の発症 このような背景の下で、大規模臨床データベースを用いて5α-還元酵素阻害薬の投与と2型糖尿病の発症についての関連を検討した成績がBMJ誌に掲載された(Wei L, et al. BMJ. 2019;365:l1204.)。英国の大規模臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD 2003-14)と台湾の医療保険請求に基づくデータベース(Taiwanese National Health Insurance Research Database:NHIRD 2002-12)を用いて解析が行われている。 英国におけるCPRDでは、デュタステリド投与群8,231例、フィナステリド投与群3万774例、対照としてα1遮断薬であるタムスロシン(商品名:ハルナール)を投与した1万6,270例を抽出して、プロペンシティースコアマッチングを行い、各群1,251例、2,445例、2,502例として2型糖尿病の発症についてCox比例ハザードモデルを用いて検討されている。追跡期間中央値5.2年の間における2型糖尿病の発症率は1万人年当たりで、デュタステリド群76.2(95%信頼区間:68.4~84.0)、フィナステリド群76.6(95%信頼区間:72.3~80.9)、タムスロシン群60.3(95%信頼区間:55.1~65.5)であり、デュタステリド、フィナステリドのいずれの投与群でもハザード比で1.32、1.26と2型糖尿病の発症リスクが増大することが確認された。 台湾におけるNHIRDの結果もCPRDに一致するもので、デュタステリド、フィナステリドのいずれの投与群でもハザード比で1.34、1.49であり、2型糖尿病の発症リスクが高まるという。 日本においては、男性型脱毛症における5α-還元酵素阻害薬の使用は保険診療ではないため、どの程度の人たちに使用されているのかはわからないが、前立腺肥大症の患者には一定の割合で使用されており、5α-還元酵素阻害薬の副作用として耐糖能障害や脂肪肝などインスリン抵抗性に基づく病態が惹起されることを再認識すべきではないかと思われる。

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女子短大生における睡眠の質とスマートフォン依存

 スマートフォンの使用は一般的となり、青少年の睡眠の質に影響を及ぼしている。思春期の女性では、睡眠の質に関連する問題が増大する傾向にある。台湾・Changhua Christian Children HospitalのPo-Yu Wang氏らは、これまで研究されていなかった、女子短大生における睡眠の質とスマートフォン依存および健康関連行動との関連を調査し、睡眠の質に影響を及ぼす予測因子を特定するため検討を行った。PLOS ONE誌2019年4月3日号の報告。 本横断的研究では、台湾南部の短大生409例を対象に、構造化されたアンケートを用いて、データ収集を行った。アンケートは、基本的な人口統計データ、ピッツバーグ睡眠質問票、スマートフォン依存の評価、健康増進ライフスタイルプロフィール(HPLP)で構成した。睡眠の質とスマートフォン依存またはHPLPとの関連性は、ロジスティック回帰分析を用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・睡眠の質は、スマートフォン依存度、HPLPの総スコア、HPLPの4つのサブスコア(栄養行動、自己実現、対人支援、ストレス管理行動)と有意な関連が認められた。・スマートフォン依存度が低いほど、睡眠の質は良好であった。・さらに、スマートフォン依存度とHPLP総スコアは、睡眠の質の重要な予測因子であった。 著者らは「スマートフォン依存は、女子短大生の睡眠の質に影響を及ぼしている。健康関連行動(栄養行動、自己実現、対人支援、ストレス管理行動)の改善で、睡眠の質の改善も促進できる」としている。■関連記事日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク女子学生の摂食障害への有効な対処法日本語版スマートフォン中毒尺度の有用性

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結核のDOTにもスマートフォン導入か(解説:吉田敦氏)-1032

 抗結核療法は長期にわたる。不完全な内服は、治療効果を下げるばかりか、耐性出現と周囲への感染リスクを少なくするためにもできる限り避けるべきであり、アドヒアランスの保持を目的としたDOT(Direct observed therapy)は世界的にも主流となっている。しかし直接会って内服を確認するのは、患者、医療従事者双方にとって負担である。スマートフォンの普及がDOTにプラスに働くかどうか―スマートフォンとアプリを使って内服状況を本人がビデオ撮影し、医療従事者に送信してアドヒアランスを確認するVOT法が英国で試みられ、従来の対面によるDOTとVOT法のランダム化比較試験の結果が発表された。 本検討では、過去にホームレス、懲役刑、薬物乱用、アルコールやメンタルヘルスの問題の既往のある患者が約6割を占め、また多くが英国外出生であった。DOTは週3~5日の確認(約半数は家において)、VOTは毎日の確認であり、VOTでは何らかの症状がある場合それについても報告可能とした。プライマリーエンドポイントは、ランダム化後の2ヵ月でスケジュールどおりの内服率が80%以上に達することとしたが、DOT群ではアドヒアランスはランダム化後すみやかに低下してしまい、プライマリーエンドポイント達成割合はVOT群で70%、DOT群で31%であった。なお有症状報告患者数は両群ともほぼ同数であったが、報告数でみるとVOTのほうが多かった。またVOTに関わる時間は、医療従事者・患者ともにDOTよりも少なかったわけであるが、コストは週5回のDOTに比較して、VOTは3分の1以下となった。 アドヒアランスに支障が生じやすい患者を相当数含んだ今回の検討において、得られた達成率を鑑みるとVOTは評価できるとみてよいであろう。とくに(英国外生まれの)34歳以下の男性で差が大きく、いわばスマートフォンになじみやすい世代に有効であったことがうかがえる。アドヒアランスを高める“動機”はさまざまであることがわかっているが、より個人に合い、簡便で、かつ自発性を促すものが望まれるかもしれない。一方で提供されたVOTにはリマインドや内服確認、症状報告メッセージなど細かなサービスが要求されていた。VOTのサービスの質的改良はこれからも続き、それによるアドヒアランス向上も期待できると考えられるが、VOTが果たしうる役割は、文化的・社会的背景が異なるそれぞれの国によっても差があるであろう。ロンドンではすでに多剤耐性結核患者にもこのVOTが導入されたと聞く。世界各国での今後の展開と応用に期待したい。

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1段階ずつ登る英語ペラペラへの道【Dr. 中島の 新・徒然草】(270)

二百七十の段 1段階ずつ登る英語ペラペラへの道最近、オンライン英会話をしている女房を見ていると、いろいろとタメになります。季節とか文化とか天気とか、簡単なことが英語でうまく出てきません。25分間のレッスンが終わると…女房「アカン、全然英語が出てけえへん」中島「何を聞かれたわけ?」女房「季節ごとのフェスティバルは何かって」中島「奈良のお水とりとか聞こえてきたけど、自分が知らん事は英語でも言われんぞ」女房「そらそうやな」中島「自分が普段やっていることを言ったらええんや」女房「たとえば」中島「春は花見、夏は花火、秋は紅葉、冬はイルミネーションとか」女房「あんた、ようそんなにスラスラ出てくるなあ」というわけで、花見や紅葉を英語で何というか。いろいろ調べた上で、翌日、女房は別のオンライン講師に挑戦。前半はスラスラ出てきたものの、後半になって急に失速。講師「日本の四季を説明してください」女房「ガ、ガギグゲゴ」講師「はあ?」女房「く、苦しい-!」想定通りに会話が進むのは最初だけで、途中からどんどん想定外。レッスンが終わる頃には汗だくです。女房「フィリピンは1年中ずっと夏で、乾季と雨季しかないらしいで」中島「へえー!」女房「四季を説明しろと言われたって困るがな」中島「春はウォーム、夏はホット、秋はクール、冬はコールドでええやろ」女房「なるほどねえ。でも、ようそんなにスラスラ出てくるなあ」私が思うに、英語でペラペラというには3つの段階を経る必要があります。第1段階:自分の言いたいことを日本語で準備する第2段階:言いたいことで使う英単語を調べる第3段階:それらの英単語を駆使してしゃべる丸腰でいきなり英語をしゃべろうなんて無謀そのもの。3段飛びで階段を登ろうとするみたいなもんです。でも、上記の第1段階、第2段階をクリアすれば英語ペラペラもすぐ目の前。せめて第1段階の「日本語で準備する」だけでも、できていれば大違いです。というわけで、女房は毎日のように前半は調子よく、後半は苦しみながら英語レッスンを続けています。そのうち置いていかれそう。私もやらなくては!最後に1句ペラペラへ まずは日本語 英単語

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日本人うつ病患者における健康関連QOLや経済的負担

   うつ病は、健康だけでなく経済的負担への影響も大きい疾患である。武田薬品工業の山部 薫氏らは、日本人成人におけるうつ病診断の有無による健康関連アウトカムとコストへの影響について調査を行った。ClinicoEconomics and Outcomes Research誌2019年3月号の報告。 日本の健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の2012~14年のデータ(8万3,504人)を用いて、レトロスペクティブ観察研究を行った。日本人のうつ病診断群2,843例、うつ病未診断群2,717例(weight)、非うつ病対照群2,801例(weight)における健康関連QOL、仕事の生産性および活動障害に関する質問票(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire:WPAI)、医療リソース利用、年間コストの差を評価した。共変量で調整した後、傾向スコアの重み付けと加重一般化線形モデルを用いて、アウトカム変数の群間比較を行った。日本人うつ病患者は1人当たりのコストが高かった 日本人のうつ病診断による健康関連アウトカムとコストの主な調査結果は以下のとおり。・日本人のうつ病未診断群は、うつ病診断群よりも有意に良好なアウトカムを示したが(p<0.001)、非うつ病対照群よりも有意に不良なアウトカムを示した(p<0.001)。・平均精神的サマリー(Mental Component Summary)スコアの比較において、うつ病診断群(33.2)は、うつ病未診断群(34.5)および非うつ病対照群(48.6)よりも低かった。・同様の所見が、平均身体的サマリー(Physical Component Summary)スコア(49.2 vs.49.5 vs.52.8)および健康状態効用スコア(0.61 vs.0.62 vs.0.76)においても得られた。・日本人のうつ病診断群は、うつ病未診断群および非うつ病対照群よりも、欠勤(13.1 vs.6.6 vs.2.5%)、プレゼンティズム(presenteeism、41.4 vs.38.1 vs.18.8%)、全体的な作業生産性の低下(47.2 vs.41.1 vs.20.2%)、活動障害(48.4 vs.43.3 vs.21.1%)が多く認められた。・日本人のうつ病診断群は、うつ病未診断群よりも、患者1人当たりの直接的コスト(1.6倍)および間接的コスト(1.1倍)が高かった。 著者らは「本研究の知見で、うつ病の適切な診断・治療を促進するためには、日本人成人においてうつ症状をより意識する必要性を示唆している」としている。

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第14回 コンビニの3連豆腐で栄養バランスアップ!【実践型!食事指導スライド】

第14回 コンビニの3連豆腐で栄養バランスアップ!医療者向けワンポイント解説タンパク質摂取の必要性と手軽に食べられる高タンパク質の食品について、前2回(第12回、第13回)でお伝えしてきました。食事バランスの中で、摂取が最も過多になりがちな栄養素は、手軽に食べられる米飯、パン、麺類などの「炭水化物」です。一方で、不足しがちな栄養素の中で多くの方が意識しているのは、ビタミンやミネラル、食物繊維が摂取できる「野菜」です。しかし、タンパク質が豊富な肉や魚、卵、大豆製品などは、食べる習慣のある方とない方に大きく分かれるため、食習慣によって摂取を進めるのか、脂質過多に気をつけてもらうべきかが分かれてきます。それほど不足していない場合でも、「肥満があり、摂取量を調整したい」など、ダイエットを目的とする場合でも、良質なタンパク質を見直すことは、食欲を正常化させ、脂質量を抑えることにも役立ちます。今回は、コンビニやスーパーなどで手軽に買える豆腐の簡単アレンジについて、ご紹介します。種類豊富な豆腐の中でも、コンビニなどで多く見かける3連パックの豆腐は、水切り不要なものが多く、手軽にサラダなどとも組み合わせることができる便利で良質なアイテムです。しかし、豆腐というと、そのまま冷奴として食べることが多くなり、毎日は飽きる、冷たいのでカラダが冷えるという意見もよく聞かれます。豆腐や納豆などは良質なタンパク質であるほか、大豆ペプチドには、血圧を下げる効果や大豆ファースト(食事の最初に大豆を食べること)により血糖値の上昇を抑制する効果があることもわかっていますので、積極的に食べたい食品です。「コンビニ食材のみで作ることができ、1)調理不要、2)器1つ、3)レンチン*でできる」手軽で満足感のある上手な豆腐の食べ方を3つご紹介しますので、ぜひ、毎日のメニューに加えてみてください(*電子レンジでチンするという意)。大きなポイントは、豆腐を温める「温奴」にすることです。これは、湯豆腐ではなく、電子レンジなどで温めるだけで大丈夫です。温かい食材は、冷たい食材よりも同じカロリーでも食べた満足度がぐっと上がります。◎スープ耐熱カップに、豆腐、市販のスープのもと(今回は、お吸い物のもと)、刻み青ネギ、レトルトのもち麦を加え、湯を注ぎ入れる。電子レンジで30秒ほど加熱すると、満足度の高いスープ雑炊の完成です。スープのもとはお好みで変えてもらうことで、毎日でも飽きずに食べることができます。◎副菜耐熱皿に、豆腐、冷凍野菜、チーズや明太子、しらすなどをふりかけて電子レンジで50秒ほど加熱します。ボリュームアップでき、食べたときの満足度が上がります。低脂肪にしたいけれど、ボリュームが欲しい方にもオススメです。◎デザート深めの耐熱皿に、豆腐、豆乳をかけ、電子レンジで30秒加熱をします。あんこをのせれば、ヘルシーなデザートのでき上がりです。黒蜜やシロップ、バニラアイスなどでも美味しく食べることができます。いかがでしたでしょうか? 手軽に購入できる3連豆腐パックを活用して、手軽に栄養バランスアップをしてみましょう。

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第17回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんDの場合◎経過──182歳、男性。施設入所中の方です。杖をついて歩くことができ、施設内でのレクリエーションにも積極的に参加しています。生活習慣病として高血圧症・糖尿病・脂質異常症があり、主治医からは降圧薬・経口血糖降下薬処方されています。普段は元気に過ごされていますが、2日前から発熱・嘔吐・下痢があり、ウイルス性胃腸炎との診断で嘱託医から胃粘膜保護薬と整腸薬が処方されました。本日、あなたが施設に行くと、職員があわただしく動き回っている光景を見ました。「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」見ると、いつも元気で過ごしているEさんが、ベッド上にぐったりとして意識がないようです。一方で、他の職員は嘱託医に電話連絡しているところでした。意識と、意識の中枢と、意識障害意識という言葉は、医学だけでなくいろいろな分野でいろいろな意味合いで使われているようですが、一般的には「目が覚めていて(覚醒)、自分や周囲の状況が認識できている(認知)状態」と定義されます。これらが障害された状態を意識障害といいます。ヒトは覚醒しているとき、脳幹にある「脳幹網様体」と呼ばれる部分に身体の感覚が入り、それが脳の視床という部分を介して大脳皮質に伝わります(上行性網様体賦活系といいます)〈図〉。この脳幹網様体が障害された時、または、両側の大脳が広範に障害された時に意識障害を生じます。意識障害の状態は表1のJapan Coma Scale(JCS)を参考にしてください。スライドを拡大する◎経過──2意識がないEさんを目の当たりにして、あなたは少し動揺してしまいました。(先生には連絡が行っているはずだから、こういうときこそ落ち着いて、基本に立ち返って...)あなたは一度深呼吸をして、バイタルサインを確認しました〈表2〉。Eさんはぐっしょりと全身に汗をかいています。(意識レベル以外にあまり異常はないわ...。どうしよう)意識障害の原因前述の通り、脳幹網様体や、両側大脳が広範に障害されると意識の状態が悪くなります(=意識障害を来します)。これらが障害されるのは、脳出血・脳梗塞といった頭蓋内疾患の場合もありますし、脳幹や大脳に影響を及ぼすような脳以外の疾患の場合もあります。意識障害の原因を検索するとき、表3のような「アイウエオチップス」という覚え方があります。表3を見ていただくと、実は脳の疾患に伴う意識障害よりも、脳以外の疾患を原因とする意識障害の方が多いことに気がつきます。ですから、「意識障害=脳の疾患」という訳ではありません。意識障害の鑑別には、その場のバイタルサインだけでなく、意識障害に至った病歴、既往歴、服用歴、身体診察、さらに血液検査、血液ガス分析、頭部CTを含めた画像診断が必要となります。この観点から、意識障害の患者さんは必ず病院の受診が必要ですが、意識障害の原因疾患の中でも緊急度の高いのは、バイタルサインに異常を来している場合(呼吸や循環にも異常がある場合)と低血糖です。スライドを拡大する◎経過──3(そういえばEさん、糖尿病の薬を内服している!)そう思ったとき、嘱託医が到着しました。医師が診察を始めるのと同時に、看護師は医師の指示で血糖を測定しました〈写真〉。「血糖『20未満』です」看護師が言うと、医師は静脈路確保の後、50%ブドウ糖液を40mL静注し、まもなくEさんの意識レベルは改善しました。最近の嘔吐・下痢で食事があまり摂れないのに、経口血糖降下薬は継続していたため、低血糖になったと考えられました。内服薬の効果の持続する時間を考えると、低血糖が遷延する可能性があり、提携している病院に入院することとなりました。医師はEさんを搬送するため、救急車に同乗していきました。

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自閉スペクトラム症におけるADHD症状とインターネット依存

 いくつかの研究報告によると、自閉スペクトラム症(ASD)患者では、インターネット依存(internet addiction:IA)がより多く認められるという。しかし、IAを伴う青年期のASD患者の特徴は、よくわかっていない。愛媛大学・河邉 憲太郎氏らは、青年期ASDにおけるIAの有病率を調査し、IA群と非IA群の特徴を比較した。Research in Developmental Disabilities誌オンライン版2019年3月13日号の報告。ADHD症状がインターネット依存と強く関連 対象は、愛媛大学医学部附属病院および愛媛県立子ども療育センターの外来ASD患者55例(10~19歳)。患者およびその両親に対し、Youngのインターネット依存度テスト(IAT)、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)、自閉症スペクトラム指数(AQ)、ADHD Rating Scale-IV(ADHD-RS)を含む質問を行った。 主な結果は以下のとおり。・総IATスコアに基づき、55例中25例がインターネット依存を有していた。・インターネット依存群は、非依存群と比較し、SDQおよびADHD-RSにおけるADHD症状の高スコアが認められたが、AQおよび知能指数においては有意な差が認められなかった。・インターネット依存群は、非依存群と比較し、携帯ゲームの使用頻度が高かった。 著者らは「青年期ASDでは、ADHD症状がインターネット依存と強く関連していた。ADHD症状を有する青年期ASD患者では、インターネット依存に対する、より強固な予防と介入が必要である」としている。

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パーキンソン病に対するレボドパ製剤無作為化遅延開始試験(解説:仙石錬平氏)-1034

 パーキンソン病の治療について考える際の重要な項目の1つに、進行抑制を可能とする治療法(Disease modifying therapy:DMT)が存在するのかしないのかが挙げられる。2019年時点でパーキンソン病治療に対するDMTは存在しない。DMTを間接的に評価、証明するための研究デザインの1つに今回、本論文で使用された“delayed start trial”がある。これは、試験薬剤を研究開始時から投与する群(early-start group)と投与する時期を遅らせて開始する群(delayed-start group)に割り付けて両群比較し、長期観察後にearly-start groupに症状の進行抑制が認められたかどうかをみる試験デザインである。 パーキンソン病のレボドパ治療介入をいつから始めるべきなのか。アフリカに位置するガーナと欧州に位置するイタリアのパーキンソン病患者のレボドパ初期投与時期を比較して運動合併症発現までの期間を検討した研究1)がある。この研究では運動合併症の発生を遅らせるためにレボドパ療法の開始時期を先延ばしにすることは妥当ではないと結論付けている。 そこで今回、レボドパにDMT(疾患修飾効果)があるのかどうかを明らかにすることで、疾患経過のどの時点でレボドパによる治療を開始すべきかの指針が得られるかどうか検討が行われた。研究グループは、初期パーキンソン病患者を無作為にレボドパ(100mg、1日3回)とカルビドパ(25mg、1日3回)を80週間併用投与した群222例(early-start group)と、プラセボを40週間投与後、レボドパとカルビドパを40週間併用投与した群223例(delayed-start group)の2群に分け、ベースラインから80週までの統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS:0~176で点数が高いほど疾患が重症)の合計スコアの平均変化量の群間差を主要評価項目とした。結果は、80週時点で群間の有意差を認めず、「レボドパには、疾患修飾効果がない」ことが示唆された。 パーキンソン病治療においてdelayed start trialが行われた研究としてラサギリン(MAO-B阻害薬)ではTEMPO研究2)とADAGIO研究3)があり、プラミペキソール(ドパミンアゴニスト)ではPROUD研究4)がある。これらの研究ではラサギリン 1mgの投与であればプラセボ開始群に比しUPDRSスコアの改善が有意差をもって認められるが、2mgに増量すると差がなくなり、前述のとおり進行抑制効果は認めなかった。結論としてDMTがないことに変わりはないが、短期間においては薬剤の副作用出現はプラセボ群と有意差を認めず、早期からの治療に伴う副作用発現についての議論はされていない。また、delayed start trialには、使用した薬剤が症状改善に大きな効果を与える場合、保護効果を適切に評価できないのではないかという批判も存在する。 今回のレボドパの研究に関して見てみると、本研究はあくまでも早期パーキンソン病患者を対象としており、進行抑制効果は80週では追いつかれてしまったものの、逆に言うと治療が40週遅れてしまっても取り戻せるという解釈もできるのかもしれない。大切なことはあくまでも「早期」患者についての検討であり、「進行期」について必ずしもこの結果が当てはまるわけではないということである。また、論文中にも述べられているが、臨床診断は最大で15%誤診がありうること、対象患者に対して22%しか補助的な画像診断(ドパミントランスポーター等)が実施されていないことなどから、対象患者の純粋性に関しては限界がある。 大切なことは現時点でパーキンソン病に対する疾患修飾効果を示す薬剤がないからといって、いたずらに投与を遅らせるべきではない。適切な時期に適切な量のレボドパを投与することが肝であることは忘れてはならない。

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出産前後の日本人女性に対する抗てんかん薬処方~健康管理データベースからの検討

 東北大学の石川 智史氏らは、出産前および産後の日本人女性に対する抗てんかん薬(AED)の処方率および処方パターンについて、大規模データベースを用いて評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2019年3月10日号の報告。 公表されているアルゴリズムまたは乳児の生年月日を用いて、妊娠開始日および出産日を推定した。AEDの処方率、最大用量、併用療法の頻度について、妊娠開始前180日、妊娠中、産後180日で評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、妊婦3万3,941人。・AEDが1剤以上処方されていた妊婦は、妊娠前180日~産後180日の期間で225人(66/1万分娩)、妊娠中では135人(40/1万分娩)であった。・AEDの処方率は、妊娠第1期、2期で減少し、妊娠第3期および産後に増加した。・最も頻繁に処方された薬剤はバルプロ酸であり、次いでクロナゼパム、ラモトリギン、カルバマゼピンであった。・妊娠第1期にバルプロ酸を1回以上処方された妊婦49人のうち9人(18.4%)は、バルプロ酸600mg/日超で処方されていた。・併用療法の可能性について、2剤以上のAED処方は、妊娠前180日~産後180日の期間で40人(12/1万分娩)、妊娠中で31人(9/1万分娩)であった。 著者らは「日本人妊婦に対しては、さまざまなAEDが処方されていた。妊娠可能年齢の女性では、リスクとベネフィットのプロファイルに応じて、妊娠前に適切なAEDを選択する必要がある」としている。■関連記事妊娠可能年齢のてんかん女性に対するレベチラセタム単独療法スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬使用に関する比較研究妊娠中の抗うつ薬使用パターンに関するコホート研究

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第18回 腕試し! 心電図クイズで“おさらい”だ【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第18回:腕試し! 心電図クイズで“おさらい”だ皆さん、かつてない大ゴールデンウイークをどうお過ごしですか? ボクは基本的には家でゆっくりの“インドア派”、時にバイトをしています(笑)。せっかくのお休みですから、あまり込み入った話はやめて、今までの“振り返り”はどうでしょう? Dr.ヒロが選んだ心電図問題にチャレンジしつつ、過去のレクチャーを見直してみましょう。では、スタートです!症例提示149歳、男性。肥大型心筋症でフォロー中。定期外来時の心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】これは「正常洞調律」と言って良いか? また、心拍数はいくらか?解答はこちらNo:(理由)洞不整脈のため心拍数:78/分(検脈法:肢誘導+胸部誘導 [10秒] )解説はこちらいつ・どんな時も「系統的判読」が大事です。この問題は“レーサー(R3)・チェック”に関するもの(第1回)。つい「R-R間隔はレギュラー(整)で…」と始めてしまいそうですが、否です。肢誘導の最初と最後ではR-R間隔がだいぶ違います。立派に「R-R間隔:不整」なんです。こういう場合の心拍数は“検脈法”の独壇場です。肢誘導に6個、胸部誘導に7個のQRS波があり、ともに5秒、5秒で計10秒間の記録だということを意識すると、13✕6=78/分 と求まります(第3回)。3つ目の“R”は「調律」でした。これは“イチニエフの法則”で洞性P波の満たす「向き」を確認します。QRS波の直前に明瞭なP波がコンスタントにあって、向きはイチニエフ・ブイシゴロで上向き(陽性)、アールで下向き(陰性)ですから、“サイナス”(洞調律)でいいんです(第2回)。しかし、このようにR-R不整を伴う場合を「洞不整脈」(sinus arrhythmia)といい、主に呼吸による影響とされます。“変わり種”の洞調律ですから、「正常」の枕詞はとりましょうね。【参考レクチャー】第1回『心電図の読み“型”伝授します』第2回『洞調律を知る』第3回『心拍数を求めよう』【問題2】QRS電気軸は何度か? 定性的評価も加えよ。解答はこちらQRS電気軸:+70°(トントン法Neoによる)正常軸解説はこちら(QRS)電気軸は、前額断(冠状断)にて電気が心室内を進む方向を反映するものでした。定性的には、I誘導とaVF(またはII)誘導のQRS波の向きに着目します。この例はすべて「上向き」(陽性)ですから、「正常軸」でいいでしょう(第8回)。具体的に数値で「何度」と求める方法について、詳しく解説している教科書は少ないですが、Dr.ヒロ流“トントン法”、あるいはその進化版の“Neo”ならおおむね可能です。注目すべき肢誘導の中に“トントン”なQRS波がないですから、そういう時は肢誘導界の円座標を思い浮かべ、「aVL(-30°)→ I(0°)→-aVR(+30°)→ II(+60°)→ aVF(+90°)→III(+120°)→-aVL(+150°)」の順番にQRS波の向きをチェックしていきます(第11回)。この心電図(図1)では、はじめのaVLとIの間で向きの逆転が起こっており、この場合の“トントン・ポイント(TP)”は両者の中間(-15°)、ないし“aVL寄り”(-20°)でしょう。これに直交し、Iは「上向き」なので、ボク的には「+70°」を正解とします(「+75°」でも可)。【参考レクチャー】第8回『QRS電気軸イロハのイ』第11回『QRS電気軸(完結編)~進化したトントン法は無敵!~』【問題3】心電図(図1)の所見として正しくないものを選べ。1)ST低下2)左室高電位3)完全左脚ブロック4)右房拡大5)陰性T波解答はこちら3)解説はこちら1)◯:II、III、aVF、V4~V6誘導で「ST低下」(水平/下行型)があります。2)◯:V5、V6誘導のR波高は、さほどではないのですが、「SV1(V1誘導のS波の深さ)+RV5(V5誘導のR波の高さ)>35mm」という基準は満たすので、「左室高電位」でOKです。これと側壁誘導(I、aVL、V [4] 5~6)のST-T変化との“合わせ技”で「左室肥大」と診断します。この方は「肥大型心筋症」ですので、相応の心電図ということになります。3)×:「脚ブロック」はQRS“幅”がワイドな時に考えます。この例では、やや“太め”ですが(「左室肥大」のため)、許容範囲内といえます。4)◯:II誘導のP波がツンッと立っています。II、III、aVF誘導のいずれかでP波高が2.5mm超の場合、「右房拡大」と診断します。5)◯:絶対にT波が下を向いてはいけない“イチニエフ・ブイシゴロ”(これも“イチニエフの法則”です)以外に、この例ではIII誘導でも「陰性T波」を認めますね。症例提示270歳、男性。糖尿病、高血圧で治療中。数日前から倦怠感が出現。本日、咳嗽著明、意識レベル低下もあり救急搬送。諸検査から肺炎が疑われ、即日入院となった。体温37.8℃、血圧107/54mmHg、脈拍89/分・整、酸素飽和度91%。入院時の心電図を示す(図2)。(図2)入院時心電図画像を拡大する【問題4】心電図(図2)の調律と心拍数について述べよ。解答はこちら調律:(正常)洞調律心拍数:84/分(検脈法:肢誘導 [5秒] )90/分(検脈法:肢誘導+胸部誘導 [10秒] )解説はこちらR-R間隔:整で“イチニエフの法則”から「洞調律」でOK、心拍数は“検脈法”で求めますが、R-R整なら肢誘導または胸部誘導どちらか5秒間の情報で計算可能です(第2回)、(第3回)。ややトリッキーかもしれませんが、たとえば、II誘導の2、4拍目でS波が“オン・ザ・ライン”(オレンジ太線上)ですよね? この間が7マス(太枠7個)で、“300の法則”かつ2拍分のR-R間隔であることに注目して「300÷7✕2≒86/分」と算出すると、自動計測値により近づきます(第3回)。【参考レクチャー】第2回『洞調律を知る』第3回『心拍数を求めよう』【問題5】心電図(図2)の電気軸をどう表現するのがよいか?解答はこちら不(確)定軸解説はこちらIとaVF(またはII)誘導のQRS波の向きを見ましょう。アレッ? どれも“トントン”ですね。このような“煮え切らない”状況ではQRS電気軸は決定できず、「不定軸」(indeterminate axis)という診断になります。正式には、標準肢誘導(I、II、III)のいずれでも上下“トントン”な場合が「不定軸」の定義です。なお、時折、IもaVF(またはII)誘導も下向きの状況を「不定軸」と称しているケースに出会いますが、個人的には賛同できません。Dr.ヒロ流は「高度(の)軸偏位」ないし「北西軸」と呼んで欲しいです。【参考レクチャー】第8回『QRS電気軸イロハのイ』【問題6】心電図(図2)のST部分は(A)女性型、(B)男性型、(C)不定型のいずれか?解答はこちら(B)男性型解説はこちらこれは「ST部分」の男女差を扱った時に述べたものです。ポイントはV1~V4誘導の「J点」と「ST角度」でしたね(第15回)。この男性は、V2、V3誘導で明らかなJ点(ST)上昇があり、かつ「ST角度」も急峻(20°以上)なパターンです。病歴的には元気がなくても、心電図は若年男子に特徴的な猛々しい「男性型」のST部分を示しています。こうした例での「STEMI(ST上昇型急性心筋梗塞)」の診断には注意が必要だったことも復習しておきましょう(第14回)。【参考レクチャー】第14回『“若さ”って心電図に表れる?』第15回『アナタの心電図は“男女”どっち?』さて、2症例、計6問の腕試しクイズでしたが、いかがだったでしょうか? 心電図の知識は“臨床に生かせてなんぼ”。そんなボクのモットーが体験できる問題となるよう、今までに“ドキドキ心電図”のレクチャーで扱った内容を中心に症例形式で出題しました。できなかった問題については、該当回をもう一度読み直してみてくださいね。それでは、素敵な連休を! 「令和」元年からも引き続きDr.ヒロの熱血講義をお楽しみ下さい。【古都のこと~平野神社~】京都には多くの桜の名所がありますが、連載の間隔的になかなか紹介できないのは残念です。今回は平野神社(北区)。北野天満宮から徒歩数分の立地で、観桜期には数多くの屋台や桜茶屋で賑わいます。2018年9月の台風21号で拝殿が倒壊、自慢の木々も甚大な被害を受けた影響もあり、例年より悲壮感が漂っていました。が、やはり門前の「魁(さきがけ)桜」、そして桜苑には心奪われました。逆境にも負けぬ健気さにエネルギーをもらい、「開運さくら湯」を飲み干してから職場に向かうのでした。

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週1本のワインによるがん生涯リスクはタバコ何本に相当?

 適度のアルコールもやはりリスクなのか。英国・サウサンプトン大学病院 NHS Foundation TrustのTheresa J. Hydes氏らが英国のデータを解析し、ワインを1週間に1本飲む女性は、アルコール関連がんの生涯絶対リスクが増加し、この増大をもたらしているのは、乳がんであることを明らかにした。女性では、週1本のワインは週10本の喫煙に相当するという。著者は、「今回の結果は、女性にとって適度な飲酒は公衆衛生上の重大なリスクであることを知ってもらうのに役立つだろう。男性でも、週1本のワインが週5本の喫煙に相当することに注意が必要である」とまとめている。BMC Public Health誌2019年3月28日号掲載の報告。 研究グループは、適度な飲酒に起因するがんの絶対リスク(1,000人当たりの症例数)の増加を推定するとともに、これらを低頻度の喫煙が関与するがんの絶対リスクと比較した。 アルコール関連がんおよび喫煙関連がんの一般集団における生涯リスクから、アルコールおよび喫煙の寄与割合を差し引き、禁酒をしている非喫煙者のがんの生涯リスクを算出した。これにアルコールおよび喫煙の寄与として、消費レベルの増加も含み、1週間にアルコール10単位の飲酒またはタバコ10本の喫煙の相対リスクを乗じた。 主な結果は以下のとおり。・非喫煙者のがんの生涯絶対リスクは、1週間にワイン1本で男性では1.0%、女性では1.4%増加した。・ワイン1本/週によるがんの生涯リスクの絶対増加は、タバコにすると男性で5本/週、女性で10本/週に相当した。・飲酒による顕著な性差は、女性の非喫煙者の乳がんの絶対リスクが0.8%増加することであった。

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クロザピンと他の抗精神病薬による好中球減少症発症比較~メタ解析

 クロザピンは、他の抗精神病薬と比較し、好中球減少症との関連性が高いとの懸念から、ほとんどの国において、白血球数の定期的なモニタリングを行わなければ使用できない。しかしこれまで、対照研究のメタ解析により決定的に実証されてはいなかった。オーストラリア・クイーンズランド大学のNicholas Myles氏らは、他の抗精神病薬と比較したクロザピンの好中球減少症との関連性を評価するため、対照研究のメタ解析を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年3月13日号の報告。 Medline(1948~2018年)、PsycINFO(1967~2018年)、Embase(1947~2018年)より検索を行った。エフェクトサイズの評価には、Mantel-Haenszelリスク比を使用したランダム効果メタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロザピンおよび他の抗精神病薬に関連した好中球減少症発症率についての研究は、20件抽出された。・クロザピン群におけるリスク比は、他の抗精神病薬と比較し、有意な増加は認められなかった(Mantel-Haenszelリスク比:1.45、95%CI:0.87~2.42)。・このことは、好中球絶対数(ANC)500/µL未満の重度の好中球減少症においても、同様であった(Mantel-Haenszelリスク比:1.65、95%CI:0.58~4.71)。・クロザピンに関連した好中球減少症の相対リスクは、各抗精神病薬とも有意な関連は認められなかった。 著者らは「対照研究のデータからは、クロザピンが他の抗精神病薬よりも、好中球減少症との関連性が強いとの結論に至らなかった。このことは、すべての抗精神病薬の使用に際し、血液学的モニタリングを実施すべきことを意味しているか、クロザピンに限定されたモニタリングが正当化されないことを意味している」としている。■関連記事日本におけるクロザピン使用の安全性分析クロザピン誘発性副作用のリスク遺伝子同定:藤田保健衛生大学クロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか

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血栓溶解を用いた低侵襲脳内血腫除去術の有効性と安全性(MISTIE-III)/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1031

 テント上の脳内出血による急性脳卒中は、高いmorbidityとmortalityを伴う。開頭血種除去術は、大きなRCTで何らの有効性も得られていない。本研究(minimally invasive surgery with thrombolysis in intracerebral haemorrhage evacuation: MISTIE-III)では、血種サイズを15mL以下に低下させることを目標とする低侵襲脳内血腫除去術(MISTIE)が、脳内出血患者の機能的転帰を改善するかどうかを検討した。約500例を対象に、365日時のmRSスコア0~3を2群で評価 MISTIE-IIIは、非盲検エンドポイント盲検無作為化対照比較第III相試験である。対象は、年齢18歳以上の非外傷性テント上脳内出血(30mL以上)の患者であった。被験者は、血腫の大きさ15mL以下を目標にイメージガイド下MISTIEを施行する群、または標準治療群に無作為に割り付けられた。MISTIE群では、血栓溶解薬アルテプラーゼ1.0mgを8時間ごとに最大9回投与した。主要アウトカムは良好な機能的アウトカムとし、365日時の修正Rankinスケール(mRS)のスコアが0~3と定義され(事前に規定されたベースラインの共変量で補正)、修正intention to treat(mITT)解析が行われた。2013年12月~2017年8月の期間に、北米、欧州、オーストラリア、アジアの78施設で506例が登録され、499例(MISTIE群:250例、標準治療群:249例)がmITT解析に含まれた。365日時のmRS 0~3達成率:45% vs.41%で2群間に有意差なし 全体の年齢中央値は62歳(IQR:52~71)、61%が男性であった。血腫部位は、大脳基底核が307例(62%)、lobar regionが192例(38%)で、脳内血腫量は41.8mL(IQR:30.8~54.5)であり、GCSは10(8~13)、NIHSSは19(15~23)だった。mITT解析による365日時のmRS 0~3の達成率は、MISTIE群:45%、標準治療群:41%と、両群間に有意な差を認めなかった(補正リスク差:4%、95%信頼区間[CI]:-4~12、p=0.33)。7日時の死亡率は、MISTIE群:1%(2/255例)、標準治療群:4%(10/251例)であり(p=0.02)、30日時はそれぞれ9%(24例)、15%(37例)であった(p=0.07)。症候性脳出血(MISTIE群2% vs.標準治療群1%、p=0.33)および脳細菌感染(1% vs.0%、p=0.16)の発生はいずれも同等であったが、無症候性脳出血はMISTIE群で有意に多かった(32% vs.8%、p<0.0001)。また、30日時までに1件以上の重篤な有害事象が発現した患者は、それぞれ30%(76例)、33%(84例)であり、その件数は126件、142件と、有意な差がみられた(p=0.012)。今後のサブ解析にMISTIEの活路を見いだせるか? 血栓溶解を用いたMISTIEは、脳内出血患者の機能的転帰を改善する治療法として大きな期待を持たれてきたが、MISTIE-III研究では、その明確な有効性を示すことができなかった。研究の詳細を見ると、MISTIE群では、血腫の大きさが最終的に15mL以下となった症例数が146例(58%)と記載されているが、このサブグループの成績がどのような結果になっているかが知りたいところである。また、約500例の発症から治療開始までの時間が、<36時間:143例、36~<48時間:127例、48~60時間:118例、>60時間:111例と4分割され、発症から治療開始までの時間が<36時間のグループの治療成績が比較的良いことが示されているが、発症から治療開始までの時間に関しても詳細な分析が知りたいところである。MISTIE-III研究を、今後どのような研究に引き継ぐことができるか、研究者の動向をしばらく注目したい。

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レディ・プレーヤー1【なぜゲームをやめられないの?どうなるの?(ゲーム依存症)】

今回のキーワード多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームeスポーツ「デジタルドラッグ」「ゲーム脳」「シンデレラ法」「スマホ育児」AI(人工知能)「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)皆さんは、ゲームをしますか? またはお子さんがゲームをしますか? 今や、ゲームと言えば、多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)です。これは、インターネット上のサーバーを介して、不特定多数の人が同じゲームの中で、数人のチーム(ギルド)をつくり、冒険、狩り、モンスター退治などをするものです。自分のプレイの分身(アバター)によって、ほかのプレーヤーと文字のやりとりや会話を行うこともできます。さらにこれからは、VR(仮想現実)ゴーグルによる、よりリアルな体験をするゲームが注目されています。最近では、ゲームをeスポーツと呼び、従来のスポーツ大会の種目の1つに入れようとする動きがあります。また、学校の部活動の1つとして、「eスポーツ部」を認めようとする動きもあります。これは、サークルや同好会ではなく、部活動としてゲーム関連の費用を学校が負担することを意味します。どうやらゲームは、今、世の中でますます広がりを見せています。ところで、そのゲームをやめられない、やめさせられないと困っている人はいませんか? または、そのようは相談を受けることはありませんか? なぜゲームをやめられないのでしょうか? やめられないとどうなるのでしょうか? そもそも、なぜゲームは「ある」のでしょうか? そして、どうすれば良いのでしょうか? これらの疑問を解き明かすために、今回は、2018年の映画「レディ・プレーヤー1」を取り上げます。この映画を通して、ゲームをする心理を脳科学的に、そして、その起源を進化心理学的に掘り下げ、ゲーム依存症の理解を深めましょう。そして、私たちの未来の生き方について、一緒に考えていきましょう。なぜゲームをやめられないの?ストーリーの舞台は、未来の西暦2045年。多くの人は、食べる、寝る、トイレに行く以外は、VR(仮想現実)ゴーグルを着けて、オアシスというネット上のVR(仮想現実)の世界で過ごしています。まさに「食う、寝る、遊ぶ」です。まずここから、このVRの世界を現在のゲームと照らし合わせながら、その3つの特徴を整理してみましょう。そして、「なぜゲームをやめられないの?」という問いへの答えを導きましょう。(1)何でもできる -達成感主人公のウェイドは、「今、現実は重くて暗い。みんな逃げ場を求めている」「(一方で)オアシスは、想像が現実になる世界。何でもできる」と言っています。現実の世界は、ゴミだらけで荒廃しており、彼はぱっとしない日常を送ります。一方、オアシスは、色鮮やかで華やかで、魅力的なキャラクターたちが次々と登場し、冒険、戦闘、自動車レースなどが、毎日繰り返されています。ウェイドは、パーシヴァルという名のアバターで、やりたいことをして、毎日生き生きとした時間を過ごしています。1つ目の特徴は、何でもできる、つまり達成感が得られることです。これは、現在のゲームにも通じています。そのからくりは、主に3つあります。1つ目は、時間とお金をかければ必ずうまくいくように作られていることです。お金をかけるとは、課金システムで強い武器などのアイテムを得て、地位を上げることです。2つ目は、繰り返しやればチャンスが増すように作られていることです。たとえば、「連続ログインボーナス」は、毎日必ずログインして一定期間が経つと、ボーナスがもらえる仕組みです。また、「1日1回だけのチャンス」は、1日1回だけ特級アイテムを得る「ガチャ」(抽選)のチャンスがもらえる仕組みです。逆に言えば、1日1回しかチャンスがないので、毎日必ずログインしてチャレンジするよう仕向けられていると言えます(機会損失の回避)。3つ目は、次から次へと新しい課題が出され、飽きないように作られていることです。これは、ゲームの設定が常にアップデートされるためです。つまり、従来のゲームのようなクリア(ゴール)という概念がなく、延々とやり続けることが可能になります。このように、ゲームをやめられなくなるのは、やればやるほど達成感が得られるからです。逆に言えば、現実の世界では、そう簡単に達成感は得られません。そのわけは、ゲームほど何でもできる状況がそもそもあまりないからです。(2)仲間がいる -連帯感オアシスで、パーシヴァル(ウェイド、以下略)は「エイチは、はっきり言って親友だ。現実の世界では会ったことないけど」と言い、エイチと過ごします。やがて、彼は、オアシスの後継者の権利を掛けた宝探しレースをする最中、ランキングで暫定1位になり、オアシスの住人全員から注目を集めて、人気者になります。そして最後に彼は、エイチたちと5人組の仲間となり、オアシスの共同運営者になります。2つ目の特徴は、仲間がいる、つまり連帯感が得られることです。これは、現在のゲームにも通じています。そのからくりは、主に3つあります。1つ目は、自分の居場所があるように作られていることです。これは、毎回プレイ中にチームのメンバーとコミュニケーションをすることで、仲良くなり、信頼され、つながっている感覚が得られることです(所属欲求)。2つ目は、自分の役割があるように作られていることです。これは、チームで協力することで、お互いに必要とされ、勇気や決断力が認められる感覚が得られることです(承認欲求)。3つ目は、自分の目指すものがあるように作られていることです。これは、チームで敵や宝などの分かりやすいターゲットに向かって突き進んで達成していくことです(自己実現欲求)。これは、ゲームの1つ目の特徴である達成感にもつながります。もはや、チームのメンバーは「戦友」で、ターゲットは「戦果」とも言えます。逆に言えば、自分がやめると、チームのメンバーに遅れをとってしまったり、迷惑をかけることになります。このように、ゲームをやめられなくなるのは、やればやるほど連帯感が得られるからです。逆に言えば、現実の世界は、そう簡単に連帯感は得られません。そのわけは、ゲームほど仲間でいることの理由が見いだせないことが多いからです。(3)気楽である -安全感パーシヴァルは、現実のウェイドと違って、ビジュアルが良く、おしゃれで、身体能力も高いです。もちろん、見た目だけでなく声を変える設定もできます。彼は、アルテミスという女性とデートをして、イケイケのダンスもします。彼は、彼女に「現実の世界で会いたい」「君に恋してる」と言うと、「私の顔はこんなんじゃない。がっかりするよ」と言われてしまいます。また、パーシヴァルは、ライバルのソレントと向き合った時、VRゴーグルを一時的に外して、動悸を隠します。また、オアシスでは、死ぬと所持金は0になりますが、リセットすれば生き返るようになっています。3つ目の特徴は、気楽である、つまり安全感です。これは、現在のゲームにも通じています。そのからくりは、主に3つあります。1つ目は、見せたくない自分を見せないように作られていることです。これは、顔などの見た目から相手にされないのではないかという不安がなくなります。2つ目は、見たくない相手やものを見ないように作られていることです。これは、気が合わない相手でもその場にいなければならないという義務感がなくなります。また、音や光などの感覚刺激は、調節したり遮断することができます。3つ目は、いつでも休めたりやり直しができるように作られていることです。これは、失敗すると取り返しが付かないという緊張感がなくなります。このように、ゲームをやめられなくなるのは、安全感が保たれているからです。逆に言えば、現実の世界は、そう簡単に安全感は保たれません。そのわけは、ゲームほど気楽なままで何かを達成する機会はあまりないからです。ゲームをやめられないとどうなるの? ―ゲーム依存症ウェイドと同居する叔母の恋人は、オアシス内の戦闘ゲームでアバターが死んでしまい、「(高性能の武器を使うために)全部つぎ込んだ。勝てるはずだった」と怒り狂います。同じように、ある幼児は、アバターが死んで、泣き叫びます。ある男性は、飛び降り自殺をしようとします。ある母親は、ゲームに夢中になり、家事や育児に手が付かなくなっています。ウェイドは、「みんな、全部オアシスにつぎ込んでるから、全部失ったら(ゲームに負けてアバターが死んだら)、そりゃ正気も失うよね」と説明します。このように、お金や時間などが奪われて日常生活に差し障るほどゲームがやめられなくなる、コントロールができない状態は、通称、ゲーム依存症と言います。精神医学的には、ゲーム障害(ICD-11)、インターネットゲーム障害(DSM-5研究枠)と呼ばれます。また、先ほどご紹介した「ガチャ」(抽選)によってアイテムを得る課金システムは、必ずしも欲しいアイテムが得られるわけではないので、つい「ガチャ」をやりすぎてお金をつぎ込んでしまうというギャンブル依存症の要素もあります。ここから、ゲーム依存症の特徴を3つに分けて、脳科学的に考えてみましょう。そして、「どうなるの?」という問いへの答えを導きましょう。(1)もっとやりたくなる -渇望先ほどご紹介した達成感や連帯感は、脳へのご褒美、つまり報酬です。とくに連帯感は、社会的報酬と言います。これらは、満足感、幸福感、わくわく感、胸のときめき、快感などと自覚され、ドパミンという脳内ホルモン(神経伝達物質)が大きく関わっています(報酬系)。たとえば、栄養価が高いものを食べると、ドパミンが刺激され、美味しいと感じます。それが、もう1回食べようという動機付けになります。まさに、「味を覚える」「味を占める」というわけです。ゲームは、このドパミンがより効率的に分泌し続けるように人工的に作られたものです。分かりやすく言えば、安楽なままで快感がすぐに得られてしまう覚醒剤に似ています。実際の論文では、脳画像検査(PET)によって、ゲームの開始前と50分後での脳内(線条体)のドパミンの放出量が2倍に増えていると報告されています。これは、覚醒剤(0.2mg/kg)の静脈注射に匹敵します。もちろん現実の世界でも、達成感や連帯感からドパミンがこのレベルに増えることはあります。ただし、その頻度はまれで、時間は一瞬からせいぜい数十分です。美味しいものも満腹になればそれ以上食べられません。それに対して、ゲームは、やっている時間すべてです。つまり、ゲームによるドパミン分泌は、そもそも覚醒剤と同じくらい刺激が強くて長続きするものであるということです。もはやゲームは、「デジタル・ドラッグ」とも言えるでしょう。すると、どうなるでしょうか?1つ目の特徴は、ゲームをもっとやりたくなります(渇望)。言い換えれば、脳がゲームの刺激をより欲してしまいます。そのメカニズムは、大きく3つあります。1つ目は、ゲームの刺激に鈍くなることです(耐性)。これは、ちょうど1回目の覚醒剤の摂取が一番快感で、その後に同じ快感を得るために量が増えていくことに似ています。その理由として、ドパミンを使いすぎて足りなくなっていることがあげられます。もう1つの理由としては、慢性的なドパミンの刺激によって、脳内のドパミンの受け皿(受容体)の数が減ってしまうことがあげられます(ダウンレギュレーション)。これは、過剰な刺激で神経細胞が消耗するのを防ぐため、その反応を抑えることでバランスを保つ生体の調節機能が自動的に働くからです(ホメオスタシス)。2つ目は、ゲームをしないといらいらすることです(離脱症状)。これは、ちょうどアルコール依存症の人が断酒後に手が震えて汗が出るなどのいわゆる禁断症状に似ています。その理由として、慢性的な刺激を受けていると、それがバランスのとれた通常の状態(ホメオスタシス)であると脳が誤認識してしまい、逆に刺激がなくなると脳が異常だと誤作動を起こしてしまうからです。3つ目は、ゲーム関連に敏感になることです(プライミング、キュー)。たとえば、それは、ゲームの宣伝を見ることから、パソコンやスマホの画面をただ見ること、そして自室の椅子にただ座ることなどです。これは、ちょうど覚醒剤依存症の人が注射器を見ただけで覚醒剤を打ちたくなったり、アルコール依存症の人がおつまみを見ただけでビールが飲みたくなったり、ギャンブル依存症の人がネオンサインを見ただけパチンコがしたくなることに似ています。その理由として、刺激を受け続けることで脳神経のネットワークが変わり(短絡回路)、頭の中はその報酬がすべてになってしまうからです(投射ニューロン)。言い換えれば、その刺激と結び付いた情報や体験がセットになって脳に記憶として刻まれることで、報酬が予測されやすくなるからです(報酬予測、条件反射)。ひと言で言えば、「ゲーム漬け」「ゲームに溺れる」ということです。逆に言えば、現実の世界の達成感や連帯感は、苦労しても少ししか得られないばかりか、脳がゲームだけでなく現実の生活の刺激にも鈍くなってしまうため、ますますバカらしくてどうでも良くなってしまいます。つまり、報酬系とは、その人の価値観であり、生き方を決めてしまうものです。まさに、ゲーム依存症になると、その人の生き方が変わってしまうと言えるでしょう。(2)頭が働かなくなる -認知機能障害ドパミンが慢性的に出すぎていると、興奮状態になった神経細胞がやがて消耗していき、死んでいきます(変性)。実際の論文では、脳画像検査(MRIのDTIやVBM)によって、ゲーム依存症の人の前頭葉などで、覚醒剤などの薬物依存症と同じように、神経ネットワークの統合性の低下や萎縮が認められていることが報告されています。すると、どうなるでしょうか?2つ目の特徴は、頭が働かなくなります(認知機能障害)。体が酷使されて弱るのと同じように、脳も酷使されて弱っている状態です。たとえば、衝動的でキレやすくなったり(眼窩前頭葉)、相手の気持ちに無関心で冷淡になったり(前帯状回)、無気力で無関心になります(外包)。これは、ちょうど同じくドパミンが慢性的に出すぎていることで引き起こされる統合失調症の陰性症状に似ています。かつて、根拠がないと批判され、「疑似科学」の烙印を押された「ゲーム脳」が、いまや現実の科学として認められたことになります。ウェイドは、「重くて暗い」現実から軽やかでまぶしいオアシスに逃げ場を求めていきました。しかし、実は、彼はオアシスでの強い刺激を受け続けていることで脳が消耗してしまい、現実が「重くて暗い」ようにますます見えてしまっているという解釈もできるでしょう。ここで、皆さんに考えていただきたいことがあります。それは、ゲームが、冒頭でもご紹介したeスポーツとしてスポーツ大会の種目の1つになったり、学校の部活動になるのは良いと言えるでしょうか? 答えは、ノーです。なぜなら、スポーツの理念(スポーツ基本法)の1つが健康になることであるという点で、ゲームは不健康になるリスクがあまりにも高いからです。もちろん、従来のスポーツもトレーニングをしすぎて体を壊すということはありえます。ただし、決定的な違いは、ゲームは刺激性や依存性があることです。そして、それによって「脳を壊す」おそれが著しく高いことです。そのゲームが従来のスポーツと並んでしまうと、あたかも健康的なイメージを子供にも植え付けてしまいます。ゲーム会社のマーケティング戦略に完全に取り込まれているように思われます。やはり、望ましいのは、ゲームは「eスポーツ」とは名乗らないこと、そしてゲームは「ゲーム大会」として従来のスポーツ大会とは区別し、別々に開催されることです。(3)気疲れしやすくなる -ストレス脆弱性先ほどご紹介した安全感が保たれることは、逆に言えば、ストレスフリーの時間が増えることになります。ストレスとは、相手からどう見られるか緊張したり、相手が何を考えているか察知し、状況により我慢するなど、周りの空気を読む意識的な労力です(社会脳)。また、外界で複雑に絡み合ってざわざわと揺らいでいる音や光などの感覚刺激の無意識的な情報処理です(デフォルトモードネットワーク)。すると、どうなるでしょうか?3つ目の特徴は、気疲れしやすくなります(ストレス脆弱性)。体を動かさないで鈍るのと同じように、頭も動かさないで鈍っている状態です。たとえば、人混みが耐えられなくなったり、初対面の相手に極度に緊張したり、雑談ができなくなったり、逆に、言われたことを過剰に気にするようになることです。これは、ちょうど同じく社会的参加のストレスを避けた「社会的ひきこもり」の精神状態に似ています。ウェイドは、オアシスで、アルテミスとイケイケのダンスをして体を密着させていたのに、現実の世界で会った時はキスするのをためらっていました。これは、もともと彼が奥手であったということに加えて、生身の人間と触れ合うことに緊張しやすくなっていたという解釈もできるでしょう。ゲーム依存症になりやすい人は? ―リスクそれでは、ゲーム依存症になりやすいのは、どんな人でしょうか? そういう人を特徴と状況に分けて、ゲーム依存症のリスクを考えてみましょう。(1)特徴特徴、つまり個人因子としては、主に2つあげられます。a.探究心が強いウェイドは、宝探しのヒントが、オアシスの開発者の言動にあるとひらめき、オアシスの博物館に何度も通い、探し求めます。1つ目の特徴は、探究心が強いことです(新奇性探求)。それを、ゲームが達成感として手軽に満たしてくれます。これは、ADHDとの関連が強いです。その特性としては、興味のあることに飛び付きます(衝動性)。一か八かの勝負事が好きで、スリルと興奮を追い求めます(衝動性)。ひらめきなどの発想の転換が早く、アイデアマンの素質もあります(多動性)。また、ADHDの気の早さ(衝動性)や気の多さ(多動性)と同時に見られる気の散りやすさ(不注意)が、ゲームをすることで改善し、一時的に注意力や集中力が高まることです。そもそもADHDは前頭葉のドパミンの働きが弱いです。そのため、ゲームをすることは、ADHD治療薬と同じようにドパミンの働きを活性化させます。ゲームが、あたかもADHDの自己治癒行動になっています。b.内気であるオアシスの開発者のハリデーは、「オアシスをつくったのは、現実世界はどうにも居心地が悪かったからなんだ」「周りの人たちと、どうつながっていいか分からなかった」「ずうっとびくびくしながら生きてきた」と言っています。現実のハリデーがおどおどしている一方で、オアシスでのアノラック(ハリデーのアバター名)は、堂々として威厳があります。2つ目の特徴は、内気であることです(回避性)。それを、ゲームが安心感として満たしてくれます。これは、社交不安、回避性パーソナリティ、そして自閉症スペクトラムとの関連が強いです。とくに自閉症スペクトラムの特性は、周りの空気を読むのが苦手であることです(社会的コミュニケーションの低さ)。これが、ゲームの中では目立たなくなります。そのわけは、コミュニケーションの目的や手段は、現実の世界では曖昧で複雑である一方、ゲームの中では明確で単純だからです。また、興味のあることには、のめり込みます(こだわり、過集中)。特性であるこだわりが生かされているとも言えます。さらに、自閉症スペクトラムの別のこだわりである音や光、肌触りへの敏感さ(感覚過敏)が、ゲームの環境では、調節・遮断することができるため、快適になることです。(2)状況状況、つまり環境因子としては、主に2つあげられます。a.居場所がないウェイドの両親は早くに病死しているため、ウェイドは叔母さんとその恋人の家に居候し、とても肩身の狭い思いをしています。1つ目の状況は、居場所がないことです(自尊心の低さ)。それを、ゲームが連帯感として満たしてくれます。これは、反応性愛着障害や境界性パーソナリティとの関連が強いです。自分を大切にしてくれるつながり(愛着対象)がないため、それを極度に欲してしまいます。また、自尊心の低さは、社交不安や回避性パーソナリティの根っこにもなっています。b.ストレスがたまっているウェイドは、叔母の恋人から暴力を振るわれ、叔母さんからは「あんたも出ていきな」と言われ、家出してから3日間、ゲーム漬けになっています。2つ目の状況は、ストレスがたまっていることです(ストレス負荷)。それを、ゲームが達成感、連帯感、安心感のある逃げ場として満たしてくれます。これは、適応障害やPTSDなどのストレス障害との関連が強いです。最近の研究では、トラウマなどのストレス体験を脳に記憶させることをある程度阻害するために、その体験から6時間以内にコンピューターゲームのテトリスをやり続ける予防策が提唱されています。まさにストレス解消法です。ゲームが、あたかもストレス障害の予防行動になっています。なぜゲームは「ある」の?そもそも、なぜゲームは「ある」のでしょうか? ここから、ゲームの起源を進化心理学的に考えてみましょう。そして、ゲームの三大要素に重ねてみましょう。(1)コミュニケーションをするため -相手約2億年前に哺乳類が誕生し、生まれてからより多くの記憶を学習する脳を進化させました。たとえば、ネズミは、相手のネズミと上になったり下になったりするじゃれ合いをします(プレイ・ファイティング)。また、犬は、相手の犬に頭を下げてお尻を上げて尻尾を振るあいさつ遊びをします(プレイ・バウ)。それらは、人間の1歳児から好まれる、体が触れ合うじゃれ合いや「グーチョキパーでなにつくろう」「てをたたきましょう」などの手遊びに通じます。ゲームの起源の1つ目は、コミュニケーションです。相手との相互作用によって、身体感覚を発達させ、あいさつをはじめとするコミュニケーションを学習するようになったと考えられます。ゲームの三大要素の1つに重ね合わせると、コミュニケーションとして相手がいることです。相手とは、ゲームでいう対戦相手、競争相手、つまり敵に当たります。さらには、チームメイト、協力関係の相手、つまり味方も当てはまります。(2)トレーニングをするため -ルール約700万年前に人類が誕生し、約300~400万年前に相手の気持ちをくむ脳を進化させました(社会脳)。それは、2歳児から好まれる「おままごと」などのふり遊び、見立て遊び、ごっこ遊びに当たります。そして、約10~20万年前に喉の構造を進化させ、言葉を話すようになり、抽象的な思考ができるようになりました。それは、現代の4歳児から好まれる「鬼ごっこ」「カード遊び」などのルール遊びに通じます。ゲームの起源の2つ目は、トレーニングです。ルール遊びを理解することを通して、社会生活のルールの学習をトレーニングとして積み重ねるようになったと考えられます。ゲームの三大要素の1つに重ね合わせると、トレーニングとしてルールがあることです。ルールとは、ゲームでいう武器を揃えることや戦略に当たります。(3)シミュレーションをするため -勝ち負け約1万数千年前に農業革命が起こり、人間は、食料という富を蓄積し、定住するようになりました。すると、部族同士の縄張り争いや略奪、つまり戦争が頻発するようになりました。また、食料の取り置きが可能になったため、時間の余裕ができるようになりました。その暇つぶしや娯楽として、戦いのまねごと、シミュレーションをするようになったでしょう。それは、現代の大人からも好まれるスポーツなどの競技に通じます。ゲームの起源の3つ目は、シミュレーションです。競技で勝ち負けの結果を重視することを通して、実際の社会生活をうまく切り抜けるシミュレーションの能力を発達させるようになったと考えられます。ゲームの三大要素の1つに重ね合わせると、シミュレーションとして勝ち負けがあることです。勝ち負けとは、ゲームでいう得点、生死、結果に当たります。このように、ゲームが「ある」のは、コミュニケーション、トレーニング、そしてシミュレーションをして、生存や生殖に有利になる手段として発達したからと言えます。人類は、「ホモサピエンス」(賢い人)と呼ばれますが、それだけでなく、「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)とも呼ばれています。これは、遊びという現実から離れた想像力を持つ人類という意味です。ただし、その想像力の賜物(たまもの)であるゲームが、これからの技術革新によって、生活を支える手段を超えて、生活(人生)のすべて、つまり目的そのものになってしまう時代に来ています。どうすれば良いの?それでは、そんな生活と結び付きを強めるゲームの特徴を踏まえて、ゲーム依存症にどうすれば良いのでしょうか? その対策を主に3つ挙げてみましょう。(1)オフラインの時間を設ける ―ゲームの制限ウェイドは、オアシスの運営者となり、新しい取り組みを進めます。彼は、「3つ目の変更はいまいちウケなかったけど、火曜日と木曜日はオアシスを休みにしたんだ。」「人には現実で過ごす時間も必要だよ」と言っています。1つ目の対策は、オフラインの時間を設ける、つまりゲームの制限です。たとえば、韓国では、オンラインゲームをするためのIDが必要で、ユーザーが16歳未満の場合は、0時から6時までオフラインになるシャットダウン制が設けられています(「シンデレラ法」)。個人だけでなく、家族や社会としての取り組みも重要になるでしょう。たとえば、家族全員でオフラインにする時間帯を設定するなど家族の一体感も利用できます。また、オフラインによる制限の程度は、アルコール依存症や薬物依存症などの物質の依存症と、過食嘔吐(摂食障害)や抜毛症や自傷行為(境界性パーソナリティ)などの行動の依存症の中間であると考えることができます。もちろん、ゲームをアルコールや薬物のように完全に断つ制限ができれば一番良いです。たとえば、それは、ゲームのメインアカウントを消去すること、刺激(キュー)となる通知も来ないようにすることです。しかし、ゲームは、デジタル機器との結び付きが強く、食べること、毛を抜くこと、リストカットをすることと同じくらい身近に溢れ手軽にできてしまう行動です。そのため、まず日常生活に差し障らない上限のお金や時間を決めて制限するのが現実的でしょう(ハームリダクション)。(2)現実の世界で社会生活をする ―「リアル」な体験ウェイドは、現実の世界で、サマンサ(アルテミスの実名)に「ここってゆっくりだね。風も人も」と言います。サマンサの住まいは自然の緑に囲まれており、オアシスの無機的な世界とのギャップに気付かされ、見ている私たちもほっとします。ラストシーンで、オアシスの開発者のハリデーはウェイドに「ようやく分かったんだよ。確かに現実はつらいし、苦しいし」「でも、唯一、現実の世界でしか、うまい飯は食えないってな。なぜなら、現実だけがリアルだから」と言っています。2つ目の対策は、現実の世界で社会生活をする、つまり「リアル」な体験です。つまり、ただゲームをしなければ良いというわけではなく、もともと人間に必要な社会生活を十分にすることです。なぜなら、私たちの脳は、原始の時代から大きく変わってはいないからです。そのために、ゲーム以外の、たとえば、相手に直接会ったり、スポーツをするなど、ゲームの代わりになる達成感や連帯感をあえて見いだし、安心感のない適度なストレスをあえて味わうことです。(3)子供に予防する ー低年齢化の予防ハリデーの子供時代、テレビゲームばかりしている様子が当たり前のように映し出されます。3つ目は、子供に予防する、つまり低年齢化の予防です。たとえば、使用時間帯と使用時間制限を書面にするなど、親子でルール作りをする取り組みです(ペアレンタル・コントロール)。フィルタリング機能やタイマー機能を駆使することもできます。同時に、先ほど触れたように、ほかの「リアル」な体験を一緒にすることです。学校や病院などの理解者、第三者を介入させるのも一案です。子供の予防対策が重要な理由は、ゲームの開始年齢が早いほど、ゲーム依存症の発症リスクが上がることが分かっているからです。子供の脳は、大人よりも刺激に敏感で、影響を受けやすいです(可塑性)。そして、影響を受けたら、大人よりも回復しにくいです。だからこそ、より刺激(嗜癖性)の強い、アルコールとタバコは20歳から、パチンコやポルノは18歳からと法律的に制限されています。ちなみに、スマートフォンのアプリでぐずる乳児をあやす、いわゆる「スマホ育児」は、どうでしょうか? とても危ういです。なぜなら、乳児には刺激が強すぎるからです。実際に、日本小児科医会からは「スマホに子守りをさせないで!」というポスターが出され、問題の提言がされています。現時点で、子供へのスマートフォンは制限されていないので、実質0歳から見せることができます。タバコは、麻薬へのゲートウェイ・ドラッグと言われます。「スマホ育児」は、ゲーム依存症への「ゲートウェイ・デジタルドラッグ」と言えるかもしれないです。よって、子供に早くからその「味」を覚えさせない取り組みが重要になります。そういう意味では、今後の社会的な取り組みとしては、刺激の強いゲームの宣伝を規制することになるでしょう。これは、ゲーム依存症の特徴でも触れたように、子供をなるべくゲームの刺激にさらさないことです。海外で映画の喫煙シーンがR指定になっているように、手がかり刺激(キュー)への反応性を高めなくするためです。私達の未来の生き方は? ―「幻」か「リアル」かパーシヴァルが「オアシスでは、結婚もできるし、離婚もできる」と説明するシーンがあります。その後、「オアシスで現実の世界で見つけられないものをやっと見つけた。生きがいとか。友達とか。愛も見つけた」とオアシスの住人に高らかに語るシーンもあります。彼はオアシスで大まじめで苦労もしています。自分は頼りにされていると実感もしています。オアシスで生きることが、人生そのものになっています。ストーリーの中では、現実の世界とうまくつながり、ハッピーエンドになりました。しかし、もしその達成感や連帯感、そして苦労さえもが、AI(人口知能)によって本人に都合良く作られたものだったらどうでしょうか?その答えに近いことをアルテミス(サマンサ)が答えています。彼女は、パーシヴァルに「あんたが見てるのは、私が見せたいと思ってる私」「私の夢に恋してるの」「あんたはリアルの世界に生きてない」「あんたが生きてるのは幻の中」と言い放っています。サマンサの父親は、課金による借金で強制労働をさせられて、現実の世界で死んでいました。彼女は、その敵討ちのためにオアシスの宝探しレースに参加していたのでした。彼女は、実は駆け引きに長けた現実主義者なのでした。ゲームと現実の世界の決定的な違いは、「幻」か「リアル」かです。「リアル」とは、単に食べ物が美味しい、セックスが気持ち良いだけでなく、仕事や人間関係がうまくいかないで逃げ出したくなる生々しい苦しさや葛藤も含まれます。そして、その「リアル」な苦労があるからこそ、些細な喜びにも意味を見いだせます。そして、苦労するからこその「リアル」な人間的成長があります。たとえば、山頂まで自分で登るのと、VRゴーグルを着けて空を飛んで登った気分になるのとでは、山頂に立つ喜びの「味」やそれを感じる「舌」の感度がまったく変わってくるということです。現在のゲームでも、時間とお金をかければ、自分に都合の良い理想の親友、パートナー、そして子供をつくることができます。それは、ユーザーが満足することを最優先にした「友情ごっこ」「恋愛ごっこ」「子育てごっこ」というコンテンツです。そこに、「リアル」な苦労はありません。その「幻」をどこまで生活(人生)の一部にするかです。つまり、「幻」をどこまで「リアル」の代わりとして望むかということです。私たちの未来の生き方が問われてきます。その生き方を見極めるために、3つの価値観を考えてみましょう。(1)「こうでなければならない」1つ目は、「こうでなければならない」という価値観です。これは、これまでの社会の価値観です。その社会構造としては、貧富の格差がありました。これは、約1万数千年前の農業革命によって生まれ、200年前の産業革命によって広がりました。その社会を生き残る個人の価値観としても、たとえば「親や先生の言うことを聞かなければならない」「友達と仲良くしなければならない」「勉強しなければならない」「仕事をしなければならない」「出世しなければならない」「結婚して子供を生まなければならない」「子育てをしなければならない」「子供を良い学校に行かせなければならない」「親の介護をしなければならない」という義務感がありました。そこには、親をはじめとする社会の同調圧力が個人に対して機能していました。同時に、その価値観に従ってさえいればうまくいくので、個人としても、あまり深く考えなくても良かったのでした。良く言えば、受け身で生きていれば良かった時代でした。(2)「どうであっても良い」ところが、時代が変わりつつあります。20世紀後半の情報革命により、社会よりも個人に重きがますます置かれるようになりました。「かけがえのない自分」「特別な存在」という自意識を根っこに、忍耐や自己犠牲よりも、個性や自己実現が尊ばれるようになりました。このような多様化した社会では、もはや「こうでなければならない」という価値観は通じにくくなります。そして、AI(人口知能)の登場です。貧富の格差を生み出す「面倒な仕事」がすべてAI化されたら、社会はどうなるでしょうか?2つ目は、「どうであっても良い」という価値観です。これは、これからの社会の価値観になるでしょう。2040年頃に「シンギュラリティ(技術的特異点)」というAIが人間の知能を超える転換点を迎えると言われています。その頃には、「生活革命」が起きるでしょう。それは、人間が何もしなくても生活(人生)が送れることです。ストーリーの設定である2045年のオアシスのように、「食う、寝る、遊ぶ(VRの世界で過ごす)」という生活が現実になるでしょう。この点で、現代の「ひきこもり」は、未来の生活を先駆けていると言えるかもしれません。彼らがますます増えているのも、彼らこそが時代の最先端だからとも言えるかもしれません。(3)「こうありたい」ただし、果たしてその生活は自分が望んでいるものでしょうか? 仕事をしないで遊んで暮らせているから、得しているようにも見えます。しかし、実はその分、何かを失って損しているかもしれないです。その生活は、安楽かもしれませんが、退屈で楽しくないかもしれません。なぜなら、やはり「リアル」な苦労をしていないからです。たとえば、それは、「友達とけんかする」「第一志望の学校に落ちる」「がんばっても仕事がうまく行かない」「交際相手から振られる」「夫婦喧嘩をする」「子供の夜泣きで眠れない」「子供が反抗期になる」「親が認知症になる」などの生々しい人生経験です。これらの「リアル」な苦労をしてこそ得られる人間的成長やそれを乗り越えた時の喜びがあります。なぜなら、先ほどにも触れましたか、私たちの脳は、ほとんど原始の時代のままだからです。原始の時代の環境と同じく、苦労することもセットであってこそ脳は恒常性(ホメオスタシス)を保つからです。ちょうど飽食の現代だからと言って食べ過ぎたりお酒を飲み過ぎたりすると、また便利な時代だからと言って運動不足になると不健康になるのと同じです。AIの時代だからと言って、ストレスフリー、つまり「ストレス不足」になると、不健康になるとも言えるでしょう。それでは、ストレスフルながらも人間的成長やその喜びを得るための価値観とは何でしょうか?3つ目は、「こうありたい」という価値観です。たとえば、けんかしながらも相手の気持ちに思いをはせることで、相手のことをより深く理解できるようになります。雑務を含め自分が最初から最後までかかわった仕事だからこそ思い入れや、やりがいを感じます。腹を立てながらも粘り強く子供の面倒を見ることで子供への愛情が深まり、そして子供からの愛着も深まります。逆に言えば、AIを相手にしていたら、「リアル」なコミュ力は高まりません。AIに仕事を任せたら、仕事をこなす能力も思い入れも高まりません。AIに子育てを任せたら、子供が懐くのはAIであり、自分ではなくなるかもしれません。つまり、自分が納得して「こうありたい」と主体的に思う気持ちが重要になっていきます。そして、その程度は、人それぞれになっていくでしょう。それは、未来の社会構造を大きく揺るがす、文化の較差と言えます。進化心理学的に言えば、受け身なままで安楽に生きれば、遺伝子(ジーン)も文化(ミーム)も残せません。残す人が、その先の未来をつくります。つまり、何をしたいか、何を与えたいか、そして何を残したいかは自分次第であることをますます問われる時代になってきました。そして、どういう自分になりたいか、どういう生き方を子供(次の世代)に伝えたいか、そしてどういう社会をつくっていきたいかを考えさせられます。「レディプレーヤー1」とは?「レディプレーヤー1」とは、初期のテレビゲームの最初に表示される「プレーヤー1、準備を」という意味です。原作者の思い入れからタイトルとされました。これを先ほどの3つの生き方に重ね合わせると、かつて人生はプレーヤーの1人としてクリアすべきという価値観がありました。つまり、人生は苦労しなければならないという考え方です。今や、人生はプレーヤー1(主役)として好きに生きていける価値観が広がりつつあります。これは、人生は苦労しなくても良いという考え方です。そして、その先は、「リアル」な人生のプレーヤー1(主役)としての「レディ」(心構え)をより意識する価値観が生き残ると言えるでしょう。つまり、人生は苦労したいという考え方です。この映画から、「リアル」な人生という苦労する「ゲーム」を通して、今、その瞬間の苦労をあえて買って出る、その苦労に意味付けをすることの大切さに気付くことができるのではないでしょうか? そして、「幻」への受け身ではなく、「リアル」への働きかけの大切さをより学ぶことができるのではないでしょうか?■関連記事(外部サイト含む)2019年サンプルスライド「嗜癖性障害」「カイジ」と「アカギ」(前編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】酔いがさめたら、うちに帰ろう。(前編)【アルコール依存症】酔いがさめたら、うちに帰ろう。(後編)【アルコール依存症】だめんず・うぉ~か~【共依存】1)スマホゲーム依存症:樋口進、内外出版社、20182)インターネット・ゲーム依存症:岡田尊司、文春新書、20153)進化発達心理学―ヒトの本性の起源:D.F.ビョークランドほか、新曜社、2008

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低食物摂取アルツハイマー病患者に対するリバスチグミンパッチの有効性

 多くのアルツハイマー病(AD)患者は、食物摂取不良や食欲不振を経験し、認知障害の進行を加速させる。これまでのいくつかの報告によると、リバスチグミンがAD患者の食欲を改善させることが示唆されている。香川大学の角 徳文氏らは、AD患者における低食物摂取を改善させるためのリバスチグミンパッチの有効性について検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年3月12日号の報告。リバスチグミンパッチはAD患者の食物摂取不良や食欲不振を改善させる可能性 対象は、「AD患者の食物摂取に対するリバスチグミンの効果に関する研究(Attitude Towards Food Consumption in Alzheimer's Disease Patients Revive with Rivastigmine Effects study)」にて募集した、食欲不振または不十分な食物摂取のいずれかを経験したAD患者。対象患者に、リバスチグミンパッチを16週間使用した。患者の食物摂取量、体重、MMSEスコア、すべての有害事象を調査した。 AD患者における低食物摂取を改善させるためのリバスチグミンパッチの有効性を調査した主な結果は以下のとおり。・AD患者38例(年齢:86.2±5.4歳)を調査した。・ベースライン時の平均MMSEスコアは、10.1±7.0であった。・リバスチグミンパッチ使用1週目で、食物摂取量(54.9±98.0g、p<0.01)および食物摂取率(9.3±17.6%、p<0.01)の増加が認められ、試験期間を通じて維持された。・多重線形回帰分析では、独立変数が食物摂取量または食物摂取率と有意な関連を示さなかった。・MMSEスコアのより高い群では、食物摂取量に変化傾向が示されたが、統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。 著者らは「リバスチグミンパッチは、AD患者の食物摂取不良や食欲不振を改善させる可能性があることが示唆された」としている。■関連記事アルツハイマーへのリバスチグミン、その有用性はコリンエステラーゼ阻害薬を使用した新規認知症患者における抗コリン作用の影響AD患者におけるパッチ剤切替のメリットは?

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低線量CTの肺がんスクリーニング、5年以上実施で10年生存が改善/Ann Oncol

 肺がんスクリーニングは肺がん死を減少するのか。National Lung Screening Trial(NLST)では、低線量CTによる年1回3年間の肺がんスクリーニングが肺がん死を減少させたことが示されている。イタリア・Foundation IRCCS国立がん研究所のUgo Pastorino氏らは、低線量CTによるさらに長期のスクリーニングについて評価する前向き無作為化臨床試験「Multicentric Italian Lung Detection:MILD試験」を行った。その結果、5年を超える長期スクリーニングは、NLST研究と比較し、早期発見のベネフィットの増強が可能であり、全死亡および肺がん死を大きく減少できる可能性が認められたという。Annals of Oncology誌オンライン版2019年4月1日号掲載の報告。 研究グループは、49~75歳の喫煙歴のある試験参加希望者4,099例を、低線量CTによるスクリーニングを実施する介入群(2,376例)と、実施しない対照群(1,723例)に無作為に割り付けた。介入群ではさらに、年1回群(1,190例)と隔年群(1,186例)に無作為に割り付け、中央値で6年間のスクリーニングを実施した。 主要評価項目は、10年間の全死亡および肺がん特異的死亡であった。低線量CTによるスクリーニングの長期効果を検討するため、最初の5年間における肺がん発症および死亡を除外したランドマーク分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~18年までに、3万9,293人年の追跡調査が行われた。・介入群では対照群と比較し、10年で肺がん死亡リスクが39%減少し(HR:0.61、95%CI:0.39~0.95)、全死亡リスクが20%減少した(HR:0.80、95%CI:0.62~1.03)。・低線量CTのベネフィットは、5年目以降のスクリーニングも改善した。肺がん死亡リスクは58%減少(HR:0.42、95%CI:0.22~0.79)、全死亡リスクも32%減少した(HR:0.68、95%CI:0.49~0.94)。

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PCV10ワクチン導入、ケニアでIPDが激減/Lancet

 ケニアにおいて、キャッチアップキャンペーン(追加的なワクチン接種活動)を伴う10価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV10)接種の導入により、小児/成人におけるPCV10型の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)が有意な血清型置換を伴わず大幅に減少したという。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のLaura L. Hammitt氏らが、ケニア海岸農村部キリフィ県の「健康と人口動態追跡調査システム(Health and Demographic Surveillance System:HDSS)」に登録されている住民を対象とした、ケニア中央医学研究所とイギリス・ウェルカムトラスト財団の共同研究プログラム(KEMRI-Wellcome Trust Research Programme)によるサーベイランス研究の結果で、著者は「幼児のPCV10型定期予防接種プログラムが熱帯アフリカの低所得地域において直接的および間接的に大きな予防効果を上げる可能性が示唆された」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年4月15日号掲載の報告。PCV10による予防接種の有効性をサーベイランスで評価 ケニアでは、2011年1月に生後6週、10週および14週に接種するPCV10が導入された(キリフィ県では5歳未満の小児を対象としたキャッチアップを伴っている)。 研究グループは、キリフィ県の小児および成人における鼻咽頭保菌とIPDに対するPCV10の有効性を評価する目的で、1999~2016年にHDSSが運用されたキリフィ県立病院に入院した患者(全年齢)におけるIPDの臨床的および細菌学的調査を解析した。ワクチン導入前(1999年1月1日~2010年12月31日)とワクチン導入後(2012年1月1日~2016年12月31日)で、交絡因子を調整したIPDの罹患率比(IRR)を算出し、1-IRRの計算式でIPDの減少率を報告した。鼻咽頭保菌については、2009~16年に年次調査を行った。 月齢2~11ヵ月の小児で2回以上PCV10の接種を受けた割合は、2011年で80%、2016年で84%、月齢12~59ヵ月の小児で1回以上PCV10接種を受けた割合はそれぞれ66%および87%であった。ワクチンに含まれる血清型のIPDは92%減少、あらゆる血清型のIPDは68%減少 HDSSの観察期間中、321万1,403人年でIPDは667例が確認された。5歳未満の小児の年間IPD発生率は、2011年のワクチン導入後に急激に低下し、低い状態が継続した(PCV10型IPD:ワクチン導入前60.8例/10万人vs.ワクチン導入後3.2例/10万人、補正後IRR:0.08[95%信頼区間[CI]:0.03~0.22]、あらゆる血清型のIPD:81.6例/10万人vs.15.3例/10万人、補正後IRR:0.32[95%CI:0.17~0.60])。 ワクチン未接種の年齢集団においても、ワクチン導入後の時期でPCV10型IPDの発生率が同様に低下した(月齢2ヵ月未満:ワクチン導入後の症例は0、5~14歳:補正後IRR:0.26[95%CI:0.11~059]、15歳以上:補正後IRR:0.19[95%CI:0.07~0.51])。非PCV10型IPDの発生率は、ワクチン導入前後で違いは確認されなかった。 5歳未満の小児において、PCV10型の保菌率はワクチン導入前後で低下し(年齢標準化補正後有病率:0.26、95%CI:0.16~0.35)、非PCV10型の保菌率は増加した(1.71、1.47~1.99)。

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放射線療法による口内炎の疼痛、有効な含嗽薬は?/JAMA

 頭頸部放射線療法を実施している患者において、doxepin含嗽あるいはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽は、プラセボと比較し、含嗽後最初の4時間の口腔粘膜炎の疼痛を有意に軽減させたものの、その効果は臨床的に意味のある最小の差より小さかった。米国・Mayo Clinic HospitalのTerence T. Sio氏らが、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽の有効性を評価する第III相無作為化試験「Alliance A221304」の結果を報告した。doxepin含嗽により口腔粘膜炎関連の疼痛が軽減することが無作為化試験で示されているが、一般的に広く用いられているジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽については、無作為化プラセボ対照比較試験やCochraneレビューで使用を支持するエビデンスは示されていなかった。JAMA誌2019年4月16日号掲載の報告。2つの含嗽とプラセボで、口腔粘膜炎の疼痛スコアを比較 研究グループは、2014年11月1日~2016年5月16日の期間で、米国の30施設において、根治的頭頸部放射線療法を実施し口腔粘膜炎の疼痛スコア(範囲0~10)が4点以上の患者275例を、doxepin含嗽群92例、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群91例、プラセボ群92例に無作為に割り付け、最大28日間追跡した。 主要評価項目は、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽を単回投与後4時間における、プラセボ含嗽と比較した全口腔粘膜炎の疼痛の軽減とし(曲線化面積によって確認、ベースライン時の疼痛スコアで補正)、臨床的に意味のある最小差は変化量3.5点とした。 副次評価項目は、眠気、不快な味、刺すような痛み(刺痛)および灼熱痛。すべての評価尺度は0点(最小)~10点(最大)とした。含嗽後4時間以内の疼痛スコアは低下するも臨床的に意味のある最小差に達せず 無作為化された275例(年齢中央値61歳、女性58例[21%])のうち、227例(83%)が試験を完遂した。 投与後最初の4時間以内の口腔粘膜炎の疼痛スコアは、doxepin含嗽群で11.6点、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で11.7点、プラセボ含嗽群で8.7点の低下が確認された。群間差は、doxepin含嗽群vs.プラセボ含嗽群で2.9点(95%信頼区間[CI]:0.2~6.0、p=0.02)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群vs.プラセボ含嗽群で3.0点(95%CI:0.1~5.9、p=0.004)であった。プラセボ含嗽群と比較して、doxepin含嗽群のほうが眠気(1.5点、95%CI:0~4.0、p=0.03)、不快な味(1.5点、95%CI:0~3.0、p=0.002)、刺すような痛みと灼熱痛(4.0点、95%CI:2.5~5.0、p<0.001)が多く報告された。 Grade3(最大)の有害事象は、doxepin含嗽群で3例(4%)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で3例(4%)、プラセボ含嗽群で2例(2%)報告された。倦怠感は、doxepin含嗽群で5例(6%)確認されたが、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群では確認されなかった。 著者は研究の限界として、化学療法の種類や放射線療法の範囲など他の要因が関与している可能性などを挙げ、「両含嗽法の長期的な有効性と安全性についてさらに評価する必要がある」とまとめている。

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