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血栓溶解療法のドアから針までの時間が短いほど1年後の死亡と再入院は少ない(解説:内山真一郎氏)-1244

 この高齢者向け医療保険制度(Medicare)の受益者を対象とした全米の後方視的コホート研究は、発症後4.5時間以内のtPAの静注療法を行った65歳以上の脳梗塞患者において、病院への到着(ドア)から注射(針)までの時間が短いほど1年後の死亡率と再入院率が低いことを明らかにした。これまでも、ドアから針までの時間が短いほど、院内死亡、出血性梗塞、90日後の転帰不良が少ないことはわかっていたが、1年後という長期の転帰との関係が明らかにされたのは初めてである。 日本脳卒中学会による『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』でも、「発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほど良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)アルテプラーゼ静注療法を始めることが強く勧められる」とされている。ただし、脳主幹動脈閉塞例に関しては、機械的血栓回収療法前の血栓溶解療法はスキップしても転帰は変わらないという成績が中国や日本から発表されている。

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第42回 心電図中級への道:右心系を“チラ見”するテクニック(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第42回:心電図中級への道:右心系を“チラ見”するテクニック(前編)右心系(右房、右室)の心電図異常の特徴をおさえられれば、心電図的には“中級レベル”に入った証。「右房拡大」についてはこれまで何度か扱いましたが、今回は「右室肥大」(RVH)について扱いましょう。左心系に比べて頻度が低いのですが、出会った時にビシッと診断できると病態把握やマネージメントの質が向上するでしょう。心電図の話をする前に、今回は軽めに病態の考え方を整理して、次回以降の心電図の話につなげたいと思います。【問題1】以下のうち、心電図において「右室肥大」(RVH)所見を呈することが稀なものをすべて選べ。1)ファロー四徴症2)慢性気管支炎3)高血圧性心疾患4)心室中隔欠損症5)肺動脈性肺高血圧症6)肺動脈弁狭窄症7)大動脈弁狭窄症8)慢性血栓塞栓性肺高血圧症9)気管支喘息10)細菌性肺炎解答はこちら(3)、(7)、(10)解説はこちら今回、次回は心電図における「右室肥大」(RVH)を扱いますが、その前に病態生理を考えましょう。いずれも循環器専門の方はよく見る疾患ですよね。心電図でのRVH所見は右室に「容量」(ボリューム)より「圧」(プレッシャー)の負荷を生じる疾患が代表的で、それに注目して選んでくださいね。“心電図界での「右室肥大」の考え方”「肥大」とは、病的に心筋重量が増えることですよね。ボディービルダーのように心室筋が厚さを増す「求心性」、英語では「concentric」と呼ばれる肥大と、壁厚は不変ないし減少しても膨らんだ風船のように全体的にサイズアップする「遠心性」(こちらは「eccentric」)な肥大の2パターンがあります。右室への“負荷”という観点では、求心性肥大は「圧負荷」、遠心性肥大は「容量負荷」と関連することが多いことはご存じでしょう。「左室肥大」(LVH)のところでも述べましたが、RVHに関してはより顕著で、検査としての感度・特異度いずれの面において心電図は心エコーにかないません。というのも、正常時から左室に比べて心筋量の少ない右室では、相応の求心性肥大でないとなかなか心電図所見として現れにくいからです。たとえば、“ARVC”と称される「不整脈原性右室心筋症(異形成はARVD)」という病気があります。これは拡張型心筋症(DCM)と類似の病態が右室メインに生じて右心不全(と心室性不整脈)を生じますが、高度に右室拡大(遠心性肥大)をきたしてもRVHの心電図を呈することは稀だと思います。心電図のRVH所見と関連づけておくべき病態のDr.ヒロ流整理法を以下に示します。■右室肥大を見た時に考える病態■(ア)肺動脈弁ないしその手前(右室流出路)の狭窄(イ)先天性心疾患(ウ)肺高血圧症(エ)慢性呼吸器疾患(肺性心)これら個々の疾患を丸暗記するのではなく、うまく考えてできるだけ“覚えない”のがポイントです。(ア)は肺動脈弁狭窄症が典型です。肺動脈弁より手前で右室から肺動脈につながる「右室流出路」の狭窄を呈するファロー四徴症も病態的には類似します(こちらは[イ]にも該当します)。(ウ)は肺動脈性肺高血圧症や慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)が該当します。どちらも日常臨床で頻繁に見かける疾患ではないですが、基本的には高血圧でLVHを生じるのと同じ考え方と思っておきましょう。心室中隔欠損症(VSD)は(イ)の“代表選手”で通常「左→右シャント」となる右室への流入血による「容量負荷」をきたします。負荷が一定以上となるとRVH所見が見られることがあります。先天性心疾患のすべてで右心系負荷、RVHを生じるわけではありませんが、頻度が高いのは事実ですし、特殊疾患*1でバリエーションも豊富、そもそも心電図による詳細な診断は不可能です(心エコーの独壇場)。ですから、ボクは心電図でRVHを考える場合、「先天性心疾患」という大きな括りでとらえ、疾患の“微”や“細”には立ち入らないスタンスを推奨しています。(エ)は“cor pulmonale”(肺性心)と表現され、普通は慢性的な呼吸器疾患による影響(肺高血圧症)が右心系に反映されるというものです。慢性気管支炎や肺気腫などCOPDと呼称されるもの、また管理不良の気管支喘息も肺性心の一因となることが知られています。*1:成人に関しても“ACHD”(Adult Congenital Heart Disease)が専門領域の一つとして認知されつつある。今回はここまでにしましょう。心電図を見るだけでは、右室肥大を生じている原因(疾患)まで特定することはできません。ただ、発見のキッカケが心電図となることも多いのが現実です。それが不意の”中級”への入門試験かもしれません。今回のような考え方で鑑別を挙げ、次の診断プロセスに進んで行ければ、普段の臨床現場で心電図を”活かす”―その言葉が真となるはずです。次回、実際の症例を用いて引き続き「右室肥大」を考えます。乞うご期待!Take-home Message右室への圧負荷を呈する病態が「右室肥大」(RVH)心電図を来すケースが多いので、代表的な4つのパターンをおさえよう。【古都のこと~安国寺】安国寺(景徳山)は、通常の寺院と比べ雰囲気が一風変わっているのでオススメです。JR綾部駅からバスで15分くらい、車なら京都縦貫自動車道からインターチェンジ*1を降りてすぐで、京都市内中心部から1時間半はかかりません。安国寺は室町幕府を築いた足利尊氏と非常に深いつながりがあります。正暦年間(990~995年)に開創され、はじめは光福寺と呼ばれていました。この辺りはもともと上杉荘と呼ばれていましたが*2、足利貞氏家に嫁いだ上杉清子は、同寺門前の別邸*3に里帰りし、1305年(嘉元3年)に尊氏を出産*4します。以後、光福寺は上杉・足利両氏の尊崇を受けることになります。その後、時代が鎌倉から南北朝、そして室町へと変わる激動の中、尊氏は夢窓疎石の勧めで、後醍醐天皇をはじめ戦乱で亡くなった人々の冥福や菩提を祈るため、国ごとに安国寺・利生塔(りしょうとう)の建立を発願し、1338年(暦応元年)自身のルーツでもある光福寺を丹波の安国寺とし、諸国の筆頭に置きました。何といっても目を引くのは、茅葺き屋根の本殿で、どことなく田舎の原風景を感じさせます。本尊に手を合わせ、なぜかホッコリ(笑)。尊氏が三つ並びで母と妻(登子)と眠るとされる宝篋印塔(ほうきょういんとう)に一礼し、紅葉シーズンの境内の風情を想像しながら、その場を後にしました。*1:綾部安国寺IC。綾部市は日本有数の繊維メーカーがあることでも知られる。*2:勧修寺重房が1252年(慶長4年)に上杉荘を賜り、「上杉」を姓とするとともに、光福寺は上杉氏の菩提寺となった。*3:のちに安国寺に寄進され、常光寺という門外塔頭(たっちゅう)となっていたが、大正初年に廃寺となった。*4:産湯に使ったとされる井戸も残されている。

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「そろそろ禁煙しないと」と思っているだけの患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第34回

■外来NGワード「禁煙しなさい!」(これでできたら苦労していない)「喫煙を続けると早死にしますよ!」(ショックを与える言動)「タバコの本数を減らしなさい!」(あいまいな節煙指導)■解説 新型コロナ感染症の重症化には、糖尿病、心不全、呼吸器疾患、透析などに加え、喫煙が強く関係しています。喫煙室は、新型コロナウイルス感染リスクが高い「3密」(密閉、密集、密接)の代表ともいえます。また、テレワークや休校のために、喫煙者が家でタバコを吸う機会が多くなり、家族の受動喫煙のリスクも高まっています。このようなパンデミックは、経済的な負担だけでなく精神的なダメージも大きく、「ストレスで喫煙本数が増えた」という患者さんもおり、普段以上に禁煙のハードルが高くなっているのかもしれません。禁煙治療には、ニコチンパッチ・ニコチンガムなど(ニコチン代替療法)や、禁煙補助薬バレニクリンなどを用いた薬物療法があります。薬物療法に行動療法(行動パターン変更法、環境改善法、代償行動法など)を組み合わせることで、禁煙成功率は高まります。しかし、すぐに禁煙しようとしない無関心期にある患者さんの場合、本数を減らすという選択肢もあります。コクランによると、禁煙する前に喫煙本数を減らすのと、ただちに完全禁煙する場合では、同程度の禁煙成功率であるとのエビデンスが報告されています1)。徐々に減らす場合には、1~2週間後に禁煙するという目標を立てることが大切です。新型コロナ感染症にはACE2受容体が関係するとの報告がありますが、喫煙はACE2受容体の発現を増加させます。喫煙が新型コロナウイルス感染症の重症化に深く関わることを上手に説明して、禁煙に真摯に向き合ってもらえるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、タバコの本数はいかがですか?患者今、テレワークになって家にずっといるんですが、子供も家にいるのでタバコが吸いづらくて。医師なるほど。確かに、ご家族にとっては受動喫煙になりますからね。患者そうなんです。妻から、「家の中では吸わないで」と言われていて…。医師どこで吸っておられるんですか?患者外に出て吸っています。近くに喫煙所もないし、マンションのベランダも喫煙禁止なので。医師なるほど。喫煙室も3密ですし、吸える場所がだんだん少なくなってきましたね。患者そうなんですよ。医師ところで、喫煙が新型コロナの重症化に深く関わっているのはご存じですか?患者やっぱり、そうですよね。そろそろ、禁煙しないといけないとは思っているんですが。医師これをきっかけに、禁煙について真剣に考えてもいいかもしれませんね。患者はい。けど、スパッと禁煙する自信がなくて。医師そんな人でも禁煙できる方法がありますよ!(前置きする)患者それはどんな方法ですか?(禁煙の準備についての話に進む)■医師へのお勧めの言葉「コロナをきっかけに、禁煙について真剣に考えてみませんか?」1)Lindson N, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2019;9:CD013183.2)Berlin I, et al. Nicotine Tob Res. 2020 Apr 03. [Epub ahead of print]3)Vardavas CI, et al. Tob Induc Dis. 2020;18:20.4)Seys LJM, et al. Clin Infect Dis. 2018;66:45-53.5)Brake SJ, et al. J Clin Med. 2020;9:841.

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ACE2遺伝子発現の年齢依存的な増加はCOVID-19重症化と関連?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の1つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。米国・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのSupinda Bunyavanich氏らの調査で、鼻上皮におけるACE2遺伝子発現が年齢とともに増加することが示された。JAMA誌オンライン版2020年5月20日号リサーチレターでの報告。ACE2遺伝子発現は10歳未満で最も低く、年齢とともに増加 本研究は、2015~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version 3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10〜17歳(185例)、18〜24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。 4~60歳のCOVID-19患者のACE2遺伝子発現を調査した主な結果は以下のとおり。・305例のコホートが収集され、そのうち48.9%が男性、49.8%が喘息だった。・鼻上皮に年齢依存的なACE2遺伝子発現が見られた。ACE2遺伝子発現は、10歳未満で最も低く2.40(95%信頼区間:2.07~2.72)で、年齢とともに増加し、10〜17歳では2.77(同:2.64~2.90)、18〜24歳では3.02(同:2.78~3.26)、25歳以上では3.09(同:2.83~3.35)だった。・従属変数としてのACE2遺伝子発現および独立変数としての年齢層を使用した線形回帰は、年少児と比較して、ACE2遺伝子発現が年長児(p=0.01)、若年成人(p<0.001)、および成人(p=0.001)で有意に高かったことを示した。・性別と喘息について調整された線形回帰モデルでも、ACE2遺伝子発現と年齢層間に有意な関連(両側検定、有意な閾値:p≦0.05)が示され、この関連が性別と喘息に依存しないことを示した。 著者らは「この研究結果は、SARS-CoV-2と人体の最初の接触点である鼻上皮におけるACE2発現が年齢依存的であることを示している。成人に比べて子供のACE2発現が低いことが、COVID-19が子供に少ない理由を説明するのに役立つかもしれない。なお、本研究の限界として60歳以上の検体が含まれていないということがある」と述べている。

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認知症患者におけるCOVID-19の影響

 認知症患者において、COVID-19による死亡リスクへの影響は不明である。イタリア・Istituto Clinico S.Anna HospitalのAngelo Bianchetti氏らは、COVID-19で入院した患者における認知症の有病率、臨床症状、その後のアウトカムについて評価を行った。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌オンライン版2020年5月15日号の報告。 北イタリア・ブレシア県にある急性期病院のCOVID-19病棟にCOVID-19肺炎で入院した627例を対象に、認知症の診断、COVID-19の発症様式、病院での症状やアウトカムなどの診療記録をレトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。・認知症患者は、82例(13.1%)であった。・認知症の有無別の死亡率は、非認知症患者で26.2%(545例中143例)、認知症患者で62.2%(82例中51例)であった(カイ二乗検定:p<0.001)。・ロジスティック回帰年齢モデルでは、認知症の診断は死亡率の高さと独立した関連が認められ、認知症患者のORは1.84(95%CI:1.09~3.13、p<0.05)であった。・認知症患者の中で最も頻繁に認められた症状は、せん妄(とくに活動性の低下タイプ)、機能状態の悪化であった。 著者らは「認知症は、COVID-19による死亡率上昇の重要なリスク因子であり、とくに認知症が進行した患者では注意が必要である。認知症患者のCOVID-19による臨床症状は非定型的であり、早期の症状把握や入院を困難にさせるため、せん妄や機能状態の悪化などの徴候に注意する必要がある」としている。

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周術期のCOVID-19、術後肺合併症や死亡への影響は/Lancet

 手術を受けた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染患者では、2割以上が30日以内に死亡し、約半数が術後肺合併症を発症しており、全死亡例の約8割に肺合併症が認められたとの調査結果が、英国・バーミンガム大学のDmitri Nepogodiev氏らCOVIDSurg Collaborativeによって報告された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月29日号に掲載された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行以前には、質の高い国際的な観察研究により、術後の肺合併症(最大10%)および死亡(最大3%)の割合は確立されていた。研究グループは、COVID-19が世界的に流行している現在および収束後に、外科医と患者がエビデンスに基づく意思決定を行えるようにするには、術後の肺合併症と死亡に及ぼすSARS-CoV-2の影響を明らかにする必要があるとして本研究を行った。235施設が参加した国際的なコホート研究 本研究は、24ヵ国235施設が参加した国際的なコホート研究であり、2020年1月1日~3月31日の期間に実施された(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 対象は、手術の7日前~30日後の期間にSARS-CoV-2感染と診断された患者であった。良性疾患、がん、外傷、産科などを含むあらゆる適応症で手術を受けた患者が対象となった。年齢制限は各参加施設の規定に基づき、小児も含まれた。 主要アウトカムは、術後30日以内の死亡とした。主な副次アウトカムは、肺合併症(肺炎、急性呼吸急迫症候群[ARDS]、術後の予期せぬ換気[術後抜管後の侵襲的・非侵襲的換気、体外式膜型人工肺のエピソード、または患者が術後に計画どおりに抜管できなかった場合])であった。流行期はとくに70歳以上の男性で手術の閾値を高くすべき 2020年5月2日の解析の時点で、30日間のフォローアップが完了した1,128例が解析に含まれた。605例(53.6%)が男性で、214例(19.0%)が50歳未満、353例(31.3%)が50~69歳、558例(49.5%)が70歳以上であった。 術前にSARS-CoV-2感染が確定していたのは294例(26.1%)で、術後の確定例は806例(71.5%)だった。835例(74.0%)が緊急手術、280例(24.8%)は待機的手術を受けた。手術の内訳は、良性疾患が54.5%、がんが24.6%、外傷が20.1%であり、小手術が22.3%、大手術は74.6%であった。 30日死亡率は23.8%(268/1,128例)だった。補正後解析では、以下の6つが30日死亡の有意な予測因子であった。 男性(女性と比較したオッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.28~2.40、p<0.0001)、年齢70歳以上(70歳未満と比較したOR:2.30、1.65~3.22、p<0.0001)、米国麻酔学会(ASA)の術前状態分類のGrade3~5(Grade1/2と比較したOR:2.35、1.57~3.53、p<0.0001)、がんの診断(良性疾患/産科の診断と比較したOR:1.55、1.01~2.39、p=0.046)、緊急手術(待機的手術と比較したOR:1.67、1.06~2.63、p=0.026)、大手術(小手術と比較したOR:1.52、1.01~2.31、p=0.047)。 肺合併症は577例(51.2%)で発生した。このうち、456例(40.4%)が肺炎、240例(21.3%)が予期せぬ換気、162例(14.4%)はARDSであった。肺合併症例の30日死亡率は38.0%(219/577例)であり、非肺合併症例の8.7%(46/526例)に比べて高かった(p<0.0001)。また、肺合併症は、全死亡例の81.7%(219/268例)に認められた。補正後解析では、男性(OR:1.45、95%CI:1.07~1.96、p=0.016)およびASA Grade3~5(2.74、1.89~3.99、p<0.0001)は、肺合併症の独立の予測因子であった。 著者は、「COVID-19の世界的流行の期間中は、とくに70歳以上の男性において、通常の診療時よりも手術の閾値を高くすべきである。また、緊急性のない手術の延期を検討し、手術の遅延や必要性の回避を目的とする非手術的治療の積極的導入を考慮する必要がある」と指摘している。

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進行前立腺がんへのレルゴリクス、持続的アンドロゲン除去療法で好成績/NEJM

 進行前立腺がん患者の治療において、レルゴリクス(進行前立腺がん治療薬としての適応は未承認)はリュープロレリンに比べ、テストステロンをより迅速かつ持続的に抑制し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクをほぼ半減させることが、米国・Carolina Urologic Research CenterのNeal D. Shore氏らの検討「HERO研究」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月4日号に掲載された。リュープロレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬の注射剤は、投与初期においてテストステロン値が上昇し治療効果発現の遅延が認められるが、前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法の標準薬とされる。一方、レルゴリクスは、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬で、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を迅速に阻害し、テストステロン値を低下させることが、複数の第I相および第II相試験で確認されている。2剤を直接比較する無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む世界の155施設が参加した非盲検無作為化第III相試験で、2017年4月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(Myovant Sciencesの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的に前立腺の腺がんと確定され、1年以上の持続的アンドロゲン除去療法が可能と判定された患者であった。 被験者は、レルゴリクス(120mg、1日1回、経口)またはリュープロレリン(3ヵ月ごとに注射)の投与を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、48週の治療が実施された。 主要エンドポイントは、48週を通じてテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)で持続することとした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの非劣性、4日目のテストステロン値の去勢レベルおよび15日目の高度去勢レベル(<20ng/dL)の達成などであった。また、テストステロン回復に関してサブグループ解析を行った。主要エンドポイント:96.7% vs.88.8%、MACEリスク54%低下 930例が登録され、レルゴリクス群に622例、リュープロレリン群には308例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲:47~97)で、日本人患者が11.5%含まれた。前立腺特異抗原(PSA)の平均値はレルゴリクス群が104.2±416.0ng/mLと、リュープロレリン群の68.6±244.0ng/mLに比べ高かったが、中央値ではそれぞれ11.7ng/mL、9.4ng/mLであり、類似していた。追跡期間中央値は52週だった。 去勢レベル(<50ng/dL)のテストステロン値が48週間持続した患者の割合は、レルゴリクス群が96.7%(95%信頼区間[CI]:94.9~97.9)、リュープロレリン群は88.8%(95%CI:84.6~91.8)であった。群間の差は7.9ポイント(95%CI:4.1~11.8)であり、レルゴリクス群の非劣性と優越性が示された(優越性のp<0.001)。 主な副次エンドポイントである4日目のテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)の患者の割合(レルゴリクス群 56.0% vs.リュープロレリン群 0%)、15日目のテストステロン値が去勢レベルの患者の割合(98.7% vs.12.0%)、15日目のPSA奏効(PSA値の50%以上の低下)が29日目にも確認された患者の割合(79.4% vs.19.8%)、15日目のテストステロン値が高度去勢レベル(<20ng/dL)の患者の割合(78.4% vs.1.0%)、24週時の平均FSH値(1.72 IU/L vs.5.95 IU/L)はいずれも、レルゴリクス群がリュープロレリン群に比べて良好であった(いずれもp<0.001)。 テストステロン値の回復を追跡した184例のサブグループでは、投与中止後90日目の平均テストステロン値はレルゴリクス群が288.4ng/dL、リュープロレリン群は58.6ng/dLであった。90日目に280ng/dL(正常範囲の下限値)以上に回復した患者の割合は、レルゴリクス群が54%、リュープロレリン群は3%だった(名目上のp=0.002)。 有害事象の発生率は、両群でほぼ同様であった。最も頻度の高い有害事象はホットフラッシュ(レルゴリクス群54.3%、リュープロレリン群51.6%)だった。致死的有害事象が、レルゴリクス群7例(1.1%)およびリュープロレリン群9例(2.9%)で認められた。48週時のMACE(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、全死因死亡)の発生率は、それぞれ2.9%および6.2%であった(ハザード比:0.46、95CI:0.24~0.88)。 著者は、「進行前立腺がん男性の経口薬による治療では、アドヒアランスの低下が懸念されるが、この研究では99%以上であり、注射剤とほぼ同等であった」としている。

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acalabrutinib、新型コロナ重症例のサイトカインストーム改善/アストラゼネカ

 多施設無作為化非盲検国際共同試験のCALAVI試験において、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤acalabrutinib(国内未承認)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の炎症マーカーを低下させ、臨床転帰を改善したと示された。これを受け、アストラゼネカは2020年6月5日に本試験結果を発表。Science Immunology誌2020年6月5日号にも同時掲載された。 現在、ウイルス誘発性の過剰免疫反応(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)がCOVID-19患者の呼吸器疾患の主な発症機序であると仮説が立てられている。そこで、本試験ではCOVID-19入院患者を対象とし、既存のベストサポーティブケアにacalabrutinibを追加した併用療法による効果について検証された。主要評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数。本試験は世界中で実施されており、米国、欧州、そして日本も参加している。 本試験結果によると、acalabrutinibをCOVID-19重症患者19例(酸素補充:11例、人工呼吸器管理:8例)に投与。10〜14日間の治療コースにおいて、acalabrutinib投与により大部分の患者の酸素化を改善した。また、CRPとIL-6、リンパ球の減少と相関して酸素化が改善した。acalabrutinib投与終了後、酸素補充を要した11例中8例(72.7%)と人工呼吸器管理を要した8例中2例(25%)は室内気で退院。人工呼吸器管理を要した8例中4例(50%)は抜管に成功した。 次世代の選択的BTK阻害薬のacalabrutinibは、B細胞の増殖・輸送・遊走化、および接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすBTKに結合し、阻害作用を発揮する。現在、日本国内では未承認であるが、成人の慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性リンパ腫(SLL)、成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦、インドなどで承認されている。ただし、現時点でSARS-CoV-2関連疾患の治療薬としては承認されていない。

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切除不能StageIII NSCLC、デュルバルマブ地固め療法のPD-L1発現別転帰(PACIFIC)/Ann Oncol

 PACIFIC試験では、化学放射線療法(CRT)後に進行しない切除不能なStageIII非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、デュルバルマブはプラセボと比較して生存(PFSおよびOS)を大幅に改善した。探索的分析である腫瘍細胞(TC)PD-L1発現別の結果を含む、調査期間中央値3.3ヵ月の追跡結果が発表された。・対象:CRT後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者・試験群:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月(473例)・対照群:プラセボ、2週ごと12ヵ月(236例)・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会(BICR)判定によるPFS、OS[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までの時間、安全性などCRTの1~42日後に、被験者はデュルバルマブとプラセボに2対1に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・合計713例の患者が2:1に無作為に割り当てられ、709例が各群の治療を受けた(デュルバルマブ473例、 プラセボ236例)。・PD-L1評価可能症例は451例(63%)あった。その内訳は、TC≧25%以上35%、<25%は65%(<1% 33%、1〜24% 32%)であった。・PFSは(一次分析データカットオフ2017年2月13日)、すべてのサブグループで、プラセボと比較べ、デュルバルマブで改善した([TC≧25%]HR:0.41、95%CI:0.26〜0.65、17.8対3.7ヶ月、[TC<25%]0.59、0.43〜0.82、16.9対6.9ヵ月、[≧1%]0.46、0.33〜0.64、17.8対5.6ヵ月、[1%〜24%]0.49、0.30〜0.80、NR対9.0ヵ月、[

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HER2+転移乳がんへのpyrotinib+カペシタビン、ラパチニブ併用よりPFS延長(PHOEBE)/ASCO2020

 トラスツズマブと化学療法の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対して、pan-ErbB阻害薬pyrotinibとカペシタビンの併用が、ラパチニブとカペシタビンの併用より無増悪生存期間(PFS)を延長したことが、第III相PHOEBE試験で示された。中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。 pyrotinibは、EGFR、HER2、HER4を標的とする不可逆的pan-ErbB受容体チロシンキナーゼ阻害薬である。第I/II相試験で、カペシタビンとの併用で転移を有するHER2陽性乳がん患者における臨床的ベネフィットと許容可能な忍容性が確認されている。今回、ラパチニブとカペシタビンとの併用と比較した多施設無作為化非盲検第III相試験であるPHOEBE試験の結果が報告された。・対象:トラスツズマブとタキサンおよび/またはアントラサイクリンの治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がん患者(転移後の化学療法は2ラインまで)・試験群:pyrotinib(400mg、1日1回経口)+カペシタビン(1,000mg/m2、1日2回経口、Day 1~14、21日ごと)134例(pyrotinib併用群)・対照群:ラパチニブ(1,250mg、1日1回経口)+カペシタビン(試験群と同じ)132例(ラパチニブ併用群)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、無増悪期間(TTP)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、ラパチニブ併用群の6.8ヵ月に比べて、pyrotinib併用群が12.5ヵ月と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.39、95%CI:0.27~0.56、片側p<0.0001)。・トラスツズマブ抵抗性症例におけるPFS中央値も、ラパチニブ併用群6.9ヵ月に比べてpyrotinib併用群12.5ヵ月と延長する傾向がみられた(HR:0.60、95%CI:0.29~1.21)。・ORRはpyrotinib併用群67.2% vs.ラパチニブ併用群51.5%、CBRは73.1% vs.59.1%、DOR中央値は11.1ヵ月 vs.7.0ヵ月であった。・OS中央値は両群とも未達だが、1年OSはpyrotinib併用群91.3%、ラパチニブ併用群77.4%で、pyrotinib併用群で大きく改善する傾向がみられた。・Grade 3以上の治療関連有害事象は、pyrotinib併用群が57.5%に、ラパチニブ併用群が34.1%に発現し、下痢(30.6% vs.8.3%)および手足症候群(16.4% vs.15.2%)が多かった。

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日本における無理心中の特徴【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第164回

日本における無理心中の特徴pixabayより使用時折テレビで流れる無理心中のニュース。本当に追い詰められての選択肢だと思うのですが、幼い子供が親に殺されるニュースを見ると、いたたまれなくなります。そんな無理心中の症例をまとめた報告がありました。世の中にはスゴイ報告があるもんだ。ブルブル……。Satoh F, et al.Trend of homicide-suicide in Kanagawa Prefecture (Japan): Comparison with western countries. Med Sci Law. 2016 Oct;56(4):258-263. これは、神奈川県における76件の無理心中例、169例の死亡者を調べた珍しい研究です。無理心中の加害者と被害者の関係、犠牲者の数、年齢、性別、原因、亡くなった場所、動機などを調べました。まず、加害者と被害者の関係は、24件(31%)が夫婦、22件(29%)が親と18歳以上の子供、19件(25%)が親と17歳以下の子供、7件(9%)が家族、2件(3%)がカップル、2件(3%)がその他の関係でした。加害者は、39件が男性、40件が女性で、平均年齢は51.6歳でした。被害者は男性39人、女性51人で、平均年齢は35.4歳でした。驚くべきことに、この研究では加害者の約半数が女性でした。欧米では、こういった無理心中例や殺人における加害者のほとんどが男性ですので、日本独特の現象なのかもしれません。また、日本では親子間での無理心中が際立って多く、母親が幼い子供を殺した後に自分も自殺するパターンが多かったそうです。育児疲れでノイローゼになった母親が……というのが典型的でしょうか。もちろん、家庭内暴力が隠れているケースや、精神疾患が影響するケースもあるので1)、そういうサインを見逃さないよう注意が必要です。1)Flynn S, et al. Homicide-suicide and the role of mental disorder: a national consecutive case series. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2016 Jun;51(6):877-84.

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第10回 救える未来があるならば高額薬でもいいじゃない-ゾルゲンスマは少子化対策の切り札だ

新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴い、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が行われたインパクトは絶大で、その間起きていた現象やニュースはやや吹き飛ばされた感がある。その一つが5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)で薬価収載が了承された脊髄性筋萎縮症治療薬・ゾルゲンスマ(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク)の件である。1患者当たりの薬価は1億6,707万7,222円と薬価収載品としては初の億超えを記録。従来の最高薬価はCAR-T細胞療法・キムリアの投与1回当たり3,349万3,407円であり、その5倍超の薬剤が登場したことになる。もっともこの件は、既に2019年5月に米・FDAの承認が先行し、そこで日本円にして2億3,300万円の薬価がついていたために、「ああ、やっぱり」という程度の反応だった医療関係者も少なくないだろう。この薬価収載了承時の新聞各紙の見出しを並べると、次のようになる。ゾルゲンスマ、1回1.7億円 難病治療薬、保険対象に 厚労省(朝日新聞)超高額薬「ゾルゲンスマ」保険適用を了承 国内最高の1億6707万円(毎日新聞)難病治療薬「ゾルゲンスマ」薬価1億6700万円で保険適用(読売新聞)乳幼児難病薬1.6億円 最高額、保険適用へ 脊髄性筋萎縮症(産経新聞)医療保険ゆさぶる高額薬 1億6707万円、20日保険適用(日本経済新聞)メディアの側にいる身として、こういう見出しにならざるを得ないことは重々承知している。そして記事の中身については、医療保険財政への影響に関する言及の仕方で3つに分けられる。影響を懸念:産経新聞、日本経済新聞影響はなし:読売新聞言及はせず:朝日新聞、毎日新聞もっともこれらの記事中にもあるように、ゾルゲンスマの投与対象となる患者は年25人程度で、年間売上高は42億円の見込みであるため、前述の分類で厳格に採点するならば、後二者が○になる。脊髄性筋萎縮症、そしてゾルゲンスマとは?そもそも脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)は、ざっくり言えば、運動神経細胞生存(SMN:survival motor neuron)遺伝子の欠失あるいは変異により筋力低下、筋萎縮、深部腱反射の減弱・消失を起こす遺伝性疾患だ。小児期に発症するI型(重症型、別名:ウェルドニッヒ・ホフマン病)、II型(中間型、別名:デュボビッツ病)、III型(軽症型、別名:クーゲルベルグ・ウェランダー病)、成人期に発症するIV型に分類される。発症時期が早期であればあるほど重症で、生後6ヵ月ごろまでに発症するⅠ型の場合、ミルクを飲むことすら困難で、支えなしに座ることすらできない。人工呼吸器を用いなければ、ほとんどの患者が1歳半までに死亡するという厳しい予後である。ゾルゲンスマは、アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno Associated Virus)にSMAの原因となるSMN遺伝子を組み込んだもの。これを1回注射することで正常な遺伝子を長期的に補い、症状を改善する。I型SMA患者15例を対象に行われた海外の第Ⅰ相試験・CL-101試験では、投与後24ヵ月のフォローアップ完了時点で全員が人工呼吸器なしで生存。支えなしで座るなど、運動機能も大幅に改善されたことがわかっている。まだまだ長期評価は必要だが、ある種の治癒に近い状態が得られる可能性も指摘されている。高額新薬への財政懸念と命を天秤に掛ける?こうした薬剤が世に出るようになった背景には、製薬業界の変化と技術革新がある。従来、製薬企業各社は生活習慣病領域など、メガマーケットを軸に創薬を行ってきたが、これらの領域では近年、創薬ターゲットが枯渇しつつある。その結果、1ヵ国での患者数は少ないものの、世界的に見れば一定の患者数があり、なおかつ高薬価になる難病・希少疾患に対する創薬が活発化してきた。これを「カネ亡者」と評する向きもあることは承知しているが、結果として患者への恩恵が増えていることからすれば、私個人はどうでもいいことと思っている。むしろそれ以上に、こうした高薬価の希少疾病治療薬が登場する度にむしずが走るのが「知ったかぶりの保険財政懸念派」である。世界最速の少子高齢化が進行する日本では、将来的に医療保険財政の逼迫は確実である。しかし、その陰で飲み忘れや自己中断による残薬の額が年間推定約500億円にものぼるとの試算を代表に、数々の無駄が指摘されている。国民皆保険を維持しながら持続的な社会保障制度を維持していくとするならば、少子高齢化のうち、「高齢化」については、医療とは無縁ではいられない高齢者での医療費適正化・低減化に取り組むのは当然と言えば当然で、そのために国や現場の医療従事者が必死に取り組んでいるのは百も承知している。しかし、少子高齢化のうち「少子化」については、どうにも決定打に欠ける政策ばかりだと常に感じている。今年5月29日に閣議決定された第4次の「少子化社会対策大綱」を見ても溜息が出る。要は働き方改革・IT化による「産めよ増やせよ」でしかない。だが妊娠・出産、さらにその後の育児は男女のパートナーシップの中での価値観に左右されるもので、単に労働時間や子育て関連給付の変更で何とかなるものではないことは明らかである。少子化対策の発想転換を一方、視点を変えて厚生労働省が発表する人口動態統計2018年版を見てみよう。年齢・死因別でみると、今回のSMAに代表されるような「先天奇形、変形及び染色体異常」により亡くなる未成年は758人いる。同じく、がんで380人、心疾患で139人の未成年が命を落とす。周産期にかかわる障害などで500人弱の0歳児の命が失われている。これらは統計上、各年齢で死因トップ10に挙げられているものを集計しただけで、そのほかにも医療の進化・充実次第で失われなくて済む若年者がいる。たぶんその数は10代までで数千人はいるだろうし、これを20代まで拡大するなら万単位になるだろう。「そんな数はたかだか知れている」という御仁もいるかもしれない。しかし、考えてみて欲しい。厚生労働省が2019年12月に発表した人口動態統計の年間推計によると、同年の日本人の国内出生数は86万4,000人である。今後この数は確実に減少していく。ならば、新規出生数の1%程度の若年者数千人の命を医療で救うことができるならばそれも十分意味のあることではないだろうか?そしてもし前述のような若年者が医療のおかげで一定レベルの日常生活を取り戻せるならば、彼らが将来働くことで経済を潤すかもしれないし、直接的にお金には換算できなくとも新たな価値を生む可能性だってある。またその介護などに時間を割かれていた家族も働くことができるようになるかもしれない。さらにはこうした若年者が家庭を持って子供を持つかもしれない。その意味で「少子高齢化」対策として、若年者を死なせない医療・創薬という視点があってもいいのではないかと常に思っている。どうにも大人の世界は引き算ばかりの夢のない世界になりがちだ。実は私は過去のテレビCMで今でも時々思い出すものがある。いつの時期だったか忘れたがNTTドコモのCMだ。CMでは手塚治虫原作のSF漫画「鉄腕アトム」の白黒テレビアニメ時代の映像が登場し、その手には携帯のようなものが握られている。鉄腕アトムのテーマソングをバックに流れたキャッチフレーズは次のようなものだった。「僕たちが夢見た未来がやってきた」これまで、難病で失われていった若年者にも生きていた時に夢見た未来があったはず。それを大人の銭感情だけで汚して良いものかと、ゾルゲンスマの薬価収載に際して思うのだ。今回のSMAについては患者家族による「脊髄性筋萎縮症家族の会」がある。このホームページの背景にはSMA患者の子供たちの写真がモザイクのように配され、その多くが人工呼吸器を装着している。ゾルゲンスマは適応が2歳未満となっているため、世界各地で承認を待ちわびながらも間に合わず、やむなく気管切開して人工呼吸器を装着したSMA患者も少なくないと聞く。私はこのホームページの背景が人工呼吸器なしで笑う子供たちで埋め尽くされ、したり顔で経済性を語っていた大人が黙りこくる未来がやってくることを今期待している。

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“シャリテ-”はドイツの誇り【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第11回

先日、ドイツのクリスチャン・ドロステン教授が「コロナ対策は日本をモデルにするべきだ」とコメントして、日本でもそのことがニュースになりました。このドロステン教授、超有名な先生で、この先生の発言に連日ドイツ中が注目している状況です。ドロステン先生は画像のようにイケメンでベルリンにある「シャリテー病院」のウイルス学の教授です。実はこの「シャリテー」と言う施設、恥ずかしながら私ドイツに来るまで名前も知りませんでした。シャリテーは約300年の歴史シャリテーは“Charite”(eはアキュート・アクセント)と書きます。フランス語で「博愛」を意味する単語です。なんでフランス語なのか、何人か聞いてみたことがあるのですが、結局わからずじまいでした。設立は1710年で、300年以上昔になります。そもそも「ドイツ」と言う国ができるよりずっと前からあるので、当時の「国」とか「言語」とか、今の区分で分類すること自体ナンセンスなのかもしれません。シャリテーはドイツでは医療従事者でなくともその名を知っている「ドイツの誇り」だと教えてもらいました。2019年のニューズウィーク誌世界病院ランキングで5位。ヨーロッパでは最高位にランクされている病院です。ベルリン大学と提携していて、ベルリン市内にいくつか施設があります。全部で3,000床以上の病床数を誇ります。ドイツの医学研究をリードするシャリテードイツのノーベル生理学・医学賞のほとんどはシャリテー出身者が受賞しています。細菌学のロベルト・コッホも、外科領域でもよく耳にするルドルフ・ルートヴィヒ・カール・フィルヒョウ(病理学者)、テオドール・ビルロート(外科医)などのビッグネームもシャリテー出身です。そして、日本からも森鴎外や北里柴三郎などが留学していたことで知られています。 建物の内部は(すべて見たわけではないのですが)殺風景で、お洒落さはほとんど感じません。廊下も基本的に狭いし、デザインも単調なので迷子になりそうです。無駄なところにお金をかけない、「いかにもドイツの病院」と言った感じです。しかし、どの分野においても、世界をリードする最新の治療がここでは行なわれています。たとえば心臓外科領域に関して言えば、ドイツに3つある国立心臓センターのうちの1つがシャリテーの中に組み込まれています。この歴史を感じさせる建物が、「ベルリン心臓センター」です。200床程度の小さな病院ですが、年間3,500例を超える心臓・大血管手術をこなし、冠動脈、弁膜症、大血管…それぞれの分野のエキスパートが揃っています。移植大国ドイツでも屈指の心移植数を誇り、年間100例の心移植を達成したこともあるそうです。日本で初めて認可された小児用補助心臓を制作している「ベルリンハート社」はドイツ心臓センターが設立した会社だそうです。外見に負けず劣らず、内装も歴史を感じさせる建物でしたが、現在移転のプロジェクトが進んでいるとのことです。

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急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性、忍容性を評価するため、ランダム化試験のシステマティックレビュー、ネットワークメタ解析を実施した。Psychopharmacology誌2020年5月号の報告。 2019年5月22日までの研究を、Scopus、MEDLINE、Cochrane Libraryより検索した。主要アウトカムは治療反応率とし、副次的アウトカムは中止率、有害事象発生率とした。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された研究は14件(3,925例)であった。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの治療反応率は、両剤ともにプラセボよりも優れていた。【治療反応率】 ●アリピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.78~0.92) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.77~0.92)・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールのすべての原因による中止率、有害事象発生率、効果不十分の割合は、両剤ともにプラセボよりも低かった。【すべての原因による中止率】 ●アリピプラゾール:RR=0.80(95%CI:0.71~0.89) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.83(95%CI:0.72~0.95)【有害事象発生率】 ●アリピプラゾール:RR=0.67(95%CI:0.47~0.97) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.64(95%CI:0.46~0.94)【効果不十分の割合】 ●アリピプラゾール:RR=0.56(95%CI:0.40~0.77) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.68(95%CI:0.48~0.99)・ブレクスピプラゾールの有害事象としての統合失調症症状の発生率は、プラセボよりも低かった(RR:0.57、95%CI:0.37~0.85)。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの体重増加の発生率は、両剤ともにプラセボよりも高かった。【体重増加の発生率】 ●アリピプラゾール:RR=2.12(95%CI:1.28~3.68) ●ブレクスピプラゾール:RR=2.14(95%CI:1.35~3.42)・傾眠、アカシジア、錐体外路症状、めまいなどの個々の有害事象の発生率は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールとプラセボとの間に有意な差は認められなかった。・アリピプラゾールとブレクスピプラゾールのアウトカムに違いは認められなかった。 著者らは「急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性の短期的な違いは認められなかった。両剤間に長期的なアウトカムの違いがあるかを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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EGFR陽性NSCLC脳転移例に対するオシメルチニブの有用性(OCEAN)/ASCO2020

 脳転移を有するEGFR変異陽性(T790M変異を含む)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの治療が、有用性を示したという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で静岡県立静岡がんセンターの和久田 一茂氏より発表された。 本試験はWJOG臨床試験グループが実施した、2コホートの第II相シングルアーム試験(OCEAN試験/LOGIK1603-WJOG9116L)である。今回の発表はそのうち、T790M変異を有するコホートの解析結果である。・対象:第1/2世代のEGFR-TKIによる治療後に病勢進行を来たし、T790M変異が確認されたNSCLC症例。かつ、放射線による治療を受けていない、腫瘍径5mm以上の脳転移巣を有する症例・介入:オシメルチニブ80mg/日の投与・評価項目:[主要評価項目]PAREXEL評価を用いた脳転移巣の奏効率[副次評価項目]RECIST評価を用いた脳転移巣の奏効率。無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、無脳転移生存期間(BPFS)、安全性など※一般的なRECIST評価が10mm以上の腫瘍径の評価に用いられるのに対し、PAREXEL評価はより小径(5mm以上)の脳転移巣の評価に有用 主な結果は以下のとおり。・2016年10月~2019年7月に40例が登録された。年齢中央値は69歳、男性が30%、症候性の脳転移が20%、多発脳転移が77.5%であった。・PAREXEL評価による脳転移巣の奏効率は、66.7%(90%CI:54.3~79.1)であり、これは予め設定されていた奏効率の閾値を上回っていた。・RECIST評価による脳転巣の奏効率は、70.0%(95%CI:49.9~90.1)で、RECIST評価を用いた全奏効率は40.5%(95%CI:24.7~57.9)であった。・PFS中央値は7.1ヵ月(95%CI:3.4~13.6)であり、BPFS中央値は19.8ヵ月(95%CI:7.0~未到達)であった。・OSはまだ追跡期間が短く、その中央値は26.1ヵ月(95%CI:16.7~未到達)であった。・治療に関連する肺臓炎は、全Gradeで10.0%に、Grade3以上で2.5%に発現した。その他のGrade3以上の有害事象は10%未満だった。 最後に和久田氏は「本試験は放射線未治療の脳転移を有するEGFR T70M陽性NSCLCを対象にしたオシメルチニブの初めての試験であり、こういった背景を持つ症例へのオシメルチニブの有用性を示唆するものである」と述べた。

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ニンテダニブ、進行性線維化を伴う間質性肺疾患の国内適応を追加/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは、ニンテダニブ(商品名:オフェブ)について、2020年5月29日付で、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(進行性線維化を伴うILD)の効能・効果で国内における製造販売承認を取得した。 今回の承認は、国際共同第III相臨床試験(INBUILD試験)に基づくもので、ニンテダニブは日本で初めて進行性線維化を伴うILDを適応として承認された治療薬となる。海外においては、2020年3月に進行性線維化を伴うILDの唯一の治療薬として、世界で初めて米国で承認された。 進行性線維化を伴うILDには、関節リウマチ関連ILD、全身性強皮症に伴うILD 、混合性結合組織病に伴うILD、特発性非特異性間質性肺炎、分類不能型特発性間質性肺炎、過敏性肺炎、じん肺など職業環境性ILD、サルコイドーシスなど幅広い疾患が含まれる。しかしながら、これら疾患の一つひとつは、患者数が少なく、頑健なエビデンスを基に承認された薬剤がなかった。

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大腸がん、1次治療からFOLFOXIRI+ベバシズマブで予後良好/Lancet Oncol

 未治療の転移を有する切除不能大腸がん(mCRC)に対する有効な治療法が明らかにされた。1次治療でFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)療法を行い2次治療も同療法を再導入する治療法は、1次治療でmFOLFOX+BEV療法→2次治療でFOLFIRI+BEV療法を逐次投与する治療法と比較して、良好な治療成績が得られることが認められたという。イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏らが、イタリア国内58施設で実施した、無作為化非盲検第III相試験「TRIBE2試験」の最新解析結果を報告した。Lancet Oncology誌2020年4月号掲載の報告。 研究グループは、2015年2月26日~2017年5月15日に未治療mCRC患者679例を、対照群(340例)と試験群(339例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 対照群では、1次治療でmFOLFOX6+BEV療法(オキサリプラチン[OX]85mg/m2 /ロイコボリン[LV]200mg/m2の2時間静注、フルオロウラシル[5-FU]400mg/m2ボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)→2次治療でFOLFIRI+BEV療法(イリノテカン[IRI]180mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 400mg/m2のボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 試験群では、1次治療および2次治療ともにFOLFOXIRI+BEV療法(IRI 165mg/m2の1時間静注、OX 85mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 3,200mg/m2を48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 主要評価項目は、無作為化から2次治療における増悪(PD)または死亡までの期間(無増悪生存期間[PFS]2)とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値35.9ヵ月(四分位範囲:30.1~41.4)(データカットオフ日:2019年7月30日)において、PFS2は試験群19.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.3~21.4)、対照群16.4ヵ月(95%CI:15.1~17.5)であった(ハザード比:0.74、95%CI:0.63~0.88、p=0.0005)。・1次治療の期間中に認められた主なGrade3/4の有害事象(発現率:試験群vs.対照群)は、下痢(17% vs.5%)、好中球減少症(50% vs.21%)、動脈性高血圧症(7% vs.10%)であった。・重篤な有害事象は、試験群で84例(25%)、対照群で56例(17%)に認められた。・治療関連死亡は試験群で8例(腸閉塞、腸穿孔および敗血症各2例、心筋梗塞および出血各1例)、対照群で4例(閉塞2例、穿孔および肺塞栓症各1例)報告された。・最初の増悪後、神経毒性を除き、対照群と試験群でGrade3/4の有害事象の発現率に差は認められなかった。神経毒性は試験群でのみ報告された(132例中6例、5%)。・増悪後の重篤な有害事象は、試験群で20例(15%)、対照群で25例(12%)に認められた。・最初の増悪後の治療関連死亡は、試験群で3例(腸閉塞2例、敗血症1例)、対照群で4例(腸閉塞、腸穿孔、脳血管イベントおよび敗血症各1例)報告された。

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COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。UKCCMPに登録された最初の新型コロナ感染症のがん患者800例を解析 UKCCMPは、COVID-19のがん患者における臨床的および人口統計学的特徴とCOVID-19の転帰を検討し、がんの存在およびがん治療がCOVID-19に及ぼす影響を評価する目的で、2020年3月18日に発足した、最初のCOVID-19臨床レジストリである。ほぼリアルタイムでデータの収集、分析およびレポートを可能にし、迅速な臨床的意思決定をサポートしている。 研究グループは、英国がんネットワークのがんセンターを受診しているすべてのがん患者のうち、鼻咽頭拭い液のRT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定された患者を登録した(画像診断または臨床的にCOVID-19と診断されてもRT-PCR検査が陰性の患者は除外)。 今回は、2020年3月18日~4月26日の期間に、英国内のがんセンター55施設で登録された症候性COVID-19を有するがん患者800例について解析した。主要評価項目は、患者が入院中にその施設で評価された全死亡または退院である。抗がん剤はがん患者の新型コロナ感染症による死亡に有意な影響を及ぼさない 解析対象800例のうち、412例(52%)は軽症COVID-19で、226例(28%)が死亡した。死亡リスクは、年齢の上昇(オッズ比[OR]:9.42、95%信頼区間[CI]:6.56~10.02、p<0.0001)、男性(OR:1.67、95%CI:1.19~2.34、p=0.003)、高血圧(OR:1.95、95%CI:1.36~2.80、p<0.001)および心血管疾患(OR:2.32、95%CI:1.47~3.64、p=0.0003)などの基礎疾患の存在と有意な関連が認められた。 281例(35%)が、RT-PCR検査で陽性と判定される前4週以内に細胞障害性抗がん剤による治療を受けていた。年齢、性別、基礎疾患で補正すると、新型コロナウイルス感染症による死亡率は、過去4週間に抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者とで有意差はなかった(OR:1.18、95%CI:0.81~1.72、p=0.380)。また、過去4週以内に免疫療法、ホルモン療法、分子標的療法、放射線療法を受けた患者においても、死亡率に有意な影響は認められなかった。

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