サイト内検索|page:824

検索結果 合計:35665件 表示位置:16461 - 16480

16461.

第14回 ヒト胚のCRISPR遺伝子編集はいらぬ大異変を誘発しうる

1年半ほど前の2018年11月、世界初となる“遺伝子編集ベビー”が誕生したというニュースが世間を騒がせました。HIVに感染し難くすることを意図したCRISPR遺伝子編集を経た胚が、双子として出産まで至ったことを中国の研究者He Jiankui氏が香港の遺伝子編集学会で発表し、物議を醸したのです1)。ロシアの科学者Denis Rebrikov氏は、世界の科学者の反対をよそにJiankui氏の後に続いてCRISPR遺伝子編集胚を女性に移植すること計画しています2)。ただしロシアの保健省は時期尚早との見解を表明していて、計画の実行は容易ではなさそうです。ロシア保健省の見解はおそらく正しく、ヒト胚のCRISPR遺伝子編集が下手をすると染色体まるごと1本を失うほど大規模な、いらぬ異変を招きうることが最近立て続けに発表された研究3報で示されました3)。3つの研究チームはいずれもたった1つの遺伝子の編集を試みたのですが、結果的にその目当ての一帯がDNAの大欠損や入れ替え等を被りました。英国・ロンドンのFrancis Crick Instituteの生物学者Kathy Niakan氏等は胚の発達や多能性に必要なPOU5F1遺伝子を変異させるCRISPR-Cas9編集を18の胚細胞に施しました。その結果、4つ(22%)の胚のPOU5F1遺伝子一帯に、広範囲に及ぶ欠損や増幅が生じました4)。ニューヨーク市・コロンビア大学の幹細胞学者Dieter Egli氏等による2つ目の試験では、胚細胞の6番染色体のEYS遺伝子失明変異をCRISPR-Cas9編集で正すことが試みられました。その結果、23の胚の約半分が6番染色体の大規模欠損を呈し、極端な場合には染色体がまるごと欠如していました5)。3つ目の研究はオレゴン州ポートランドのOregon Health & Science Universityの生殖生物学者Shoukhrat Mitalipov氏のチームによるもので、心臓病を引き起こすMYBPC3遺伝子変異をCRISPR-Cas9編集で正すことを試みたところ、その変異を含む染色体領域にやはり大規模な異変が生じました6)。上記3つの報告はいずれも研究目的であり、女性への移植を見越して実施されたわけではありません。使われた胚はいずれも研究で使われた後に尽き果てています。CRISPRで切断されたゲノムに生体がどう対処するのかは、実はほとんど分かっていないことを今回の3報告は浮き彫りにしました3)。CRISPR編集で生じた新たなDNA切断面はあっさり元通りになるとは限らず、でたらめな修復のせいでDNA損壊に至ることもあるのです。体内へゲノム編集成分を直接投与する試験7)がすでに始まっていますが、CRISPR標的部位一帯の大規模な異変についてこれまで以上に慎重を期す必要があるとカリフォルニア大学バークレー校の遺伝学者にしてCRISPR研究者でもあるFyodor Urnov氏は言っています。また、胚の編集には絶対取り掛かってはいけないとUrnov氏は警告しています8)。参考1)CRISPR Scientists Slam Methods Used on Gene-Edited Babies / TheScientist 2)Russian ‘CRISPR-baby’ scientist has started editing genes in human eggs with goal of altering deaf gene / Nature 3)CRISPR gene editing in human embryos wreaks chromosomal mayhem / Nature 4)Frequent loss-of-heterozygosity in CRISPR-Cas9-edited early human embryos. biorxiv. June 05, 20205)Reading frame restoration at the EYS locus, and allele-specific chromosome removal after Cas9 cleavage in human embryos. bioRxiv. June 18, 20206)FREQUENT GENE CONVERSION IN HUMAN EMBRYOS INDUCED BY DOUBLE STRAND BREAKS. bioRxiv. June 20, 20207)Allergan and Editas Medicine Announce Dosing of First Patient in Landmark Phase 1/2 Clinical Trial of CRISPR Medicine AGN-151587 (EDIT-101) for the Treatment of LCA10 8)CRISPR Gene Editing Prompts Chaos in DNA of Human Embryos / TheScientist

16462.

PD-L1陽性胃がんの2次治療でのペムブロリズマブの追跡結果(KEYNOTE-061試験)/ASCO2020

 米・イエールがんセンターのCharles S. Fuchs氏は、PD-L1陽性進行胃がん・胃食道接合部がんの2次治療でのペムブロリズマブとパクリタキセルを比較する無作為化非盲検第III相試験KEYNOTE-061の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。追加の2年の追跡期間を加えてもペムブロリズマブはパクリタキセルに比べ無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の有意な改善効果を示せなかったと報告した。・対象:フッ化ピリミジン+プラチナレジメンの1次治療で病勢進行となった進行胃・食道胃接合部腺がん592例試験薬:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(296例、PD-L1 がCPS≧1は196例)・対照薬:パクリタキセル80mg/m2(day1、8、15)4週ごと(296例、CPS≧1は199例)・評価項目:[主要評価項目] PD-L1(CPS)≧1のOS、PFS[副次評価項目]PD-L1(CPS)≧1の奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全症例での安全性 主な結果は以下のとおり。・CPS≧1でのOS中央値はペムブロリズマブ群9.1ヵ月、パクリタキセル群8.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.66~1.00)、CPS≧5では、それぞれ10.4ヵ月と8.3ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.53~0.99)、CPS≧10では、それぞれ10.4ヵ月と8.0ヵ月であった(HR:0.69、95%CI:0.46~1.05)。・CPS≧1でのPFS中央値はペムブロリズマブ群1.5ヵ月、パクリタキセル群4.1ヵ月(HR:1.25、95%CI:1.02~1.54)、CPS≧5では、それぞれ1.6ヵ月と4.0ヵ月(HR:0.98、95%CI:0.71~1.34)、CPS≧10では、それぞれ2.7ヵ月と4.0ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.51~1.21)。・CPS≧1でのORRはペムブロリズマブ群16.3%、パクリタキセル群13.6%、CPS≧5ではそれぞれ20.0%と14.3%、CPS≧10ではそれぞれ24.5%と9.1%であった。・CPS≧1でのDoR中央値はペムブロリズマブ群19.1ヵ月、パクリタキセル群5.2ヵ月、CPS≧5ではそれぞれ32.7ヵ月と4.8ヵ月、CPS≧10ではそれぞれ未到達と6.9ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発現率はペムブロリズマブ群が15.0%、パクリタキセル群が35.1%であった。 Fuchs氏は「OS、PFSともペムブロリズマブの優位性は示せなかったが、数値上、OS、ORRはペムブロリズマブ群のほうが高く、PD-L1陽性レベルが高くなるにつれてメリットが増えていくことがわかった」と述べた。

16463.

全身療法が計画されている高齢者での高齢者機能評価の有用性(INTEGERATE試験)/ASCO2020

 オーストラリア・モナシュ大学Eastern Health Clinical SchoolのWee-Kheng Soo氏は、全身療法が計画されている高齢者での包括的な高齢者機能評価や老年医学専門家の介入の有無を比較する無作為化非盲検試験・INTEGERATE試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。老年医学的介入群ではQOLが有意に改善し、予期せぬ入院や有害事象による早期治療中止が減少すると報告した。・対象:固形がんあるいはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、3ヵ月以内に化学療法、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬療法が予定されている70歳以上の高齢者154例・試験群:本人申告による質問票での回答と高齢者機能評価(CGA)を実施。栄養、身体機能などの改善に向けた標準的介入に加え、併存疾患のケアなど、アセスメントに基づく個別介入を実施(76例)・対照群:通常ケア(78例)・評価項目:[主要評価項目] ELFI(Elderly Functional Index)スコアによるQOL評価[副次評価項目]ヘルスケアサービスの利用状況、治療提供状況、機能、施設入所状況、気分、栄養状態、健康上の効用、生存状況 主な結果は以下のとおり。・追跡12週目でのELFIスコアは老年医学的介入群では71.4、通常ケア群で60.3(p=0.004)、追跡18週目でのELFIスコアはそれぞれ72.0と58.7(p=0.001)、追跡24週目ではそれぞれ73.1と64.6であった(p=0.037)。・QOL評価での社会的機能、疾患による苦しみ、将来への不安の項目は追跡24週間中、一貫して老年医学的介入群は通常ケア群を上回っていた。・老年医学的介入群では通常ケア群と比較して救急対応が39%減少、予期せぬ入院が41%減少、予期せぬ入院時の終日横臥状態が21%減少した。・有害事象による早期治療中止率は老年医学的介入群が32.9%、通常ケア群が53.2%であった(p=0.01)。  これらの結果から、Soo氏は「抗がん療法が予定されている70歳以上の高齢者では包括的な老年医学的アセスメントを受けるべきである」と述べた。

16464.

マスクの再利用、消毒後のウイルス遮断効果は?

 これまでの研究では、N95マスクを再利用するさまざまな滅菌方法の評価試験やN95マスクとサージカルマスクの比較試験などが行われてきた。しかし、現時点でKN95マスクやサージカルマスクの滅菌後のろ過効率の影響を調べた研究は乏しい。米国・オクラホマ大学のChangjie Cai氏らはKN95マスクとサージカルマスクが再利用可能かどうかを明らかにするための研究を実施。 その結果、滅菌プロセスが各マスクのろ過効率に影響を与えることが示唆された。ただし、研究者らは試験時の制限(マスクメーカーの種類が少ない、各マスクと条件のサンプルサイズが小さい、評価した滅菌技術が2つしかないなど)や1回より多く滅菌した場合にマスク劣化の可能性もあるため、これらを踏まえたさらなる調査が必要としている。2020年6月15日JAMA Network Open誌のリサーチレターに報告した。 本研究は、2020年3月25日~4月7日に3種類のマスク(N95マスク[モデル1860:3M社]、KN95マスク[Civilian Antivirus:Qingdao Sophti Health Technology社]、サージカルマスク[モデル1541:Dukal社])のろ過効率について調査を行った。すべてのマスクは38°C、相対湿度100%のインキュベーターで12時間前処理された。滅菌処理にはプラズマ状態の過酸化水素(H2O2)と二酸化塩素(ClO2)を使用し、各マスクのろ過効率と減圧についての平均値±SDが算出された。 主な結果は以下のとおり。・ろ過効率と減圧による滅菌効果を調べた結果、各未処理マスクの平均ろ過効率±SDはN95マスク群が97.3±0.4%、KN95マスク群が96.7±1.0%、サージカルマスク群が95.1±1.6%だった。・H2O2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が96.6±1.0%、KN95マスク群が97.1±2.4%、サージカルマスク群が91.6±1.0%で、N95マスク群とKN95マスク群は95%以上のろ過効率を維持したが、サージカルマスク群の効率は低下した。・ClO2滅菌後のろ過効率は、N95マスク群が95.1±1.6%、KN95マスク群が76.2±2.7%、サージカルマスク群が77.9±3.4%だった。・H2O2滅菌では、各マスク群全体のろ過効率の影響はわずかであったが、一方でClO2滅菌では、KN95マスク群とサージカルマスク群のろ過効率が著しく低下した。 圧力変化はすべて許容範囲内だった。・エアロゾルのサイズごと(16.8~514nm)に、ろ過効率による滅菌効果を調べた結果、サイズ別濾過効率はすべての未処理マスクで95%以上だった。・約300nm(0.3μm)の粒子において、ClO2滅菌後のN95マスク群の平均ろ過効率±SDは86.2±6.8%に低下したが、全体的なろ過効率は約95%に保たれていた。ただし、KN95マスク群では40.8±5.9%に、サージカルマスク群では47.1±14.4%に低下した。

16465.

COVID-19に関連する医師のメンタルヘルスやストレス

 COVID-19のアウトブレイクによる医師の不安やストレス、抑うつレベルへの影響について、トルコ・Istanbul Medeniyet UniversitesiのRumeysa Yeni Elbay氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年5月27日号の報告。 COVID-19アウトブレイクにおける医療従事者の心理的反応と関連要因を評価するため、オンライン調査を実施した。調査内容は、社会人口統計学的データ、個別の労働条件に関する情報、Depression Anxiety and Stress Scale-21(DAS-21)のセクションで構成した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象442人中、各症状が認められた人数は以下のとおりであった。 ●うつ症状:286人(64.7%) ●不安症状:224人(51.6%) ●ストレス:182人(41.2%)・スコアの高さと関連していた要因は、女性、若年、独身、実務経験の少なさ、最前線での診療であった。・一方、子供がいることは、各サブスケールスコアの低さと関連していた。・最前線での診療に当たっていた医師において、DAS-21合計スコアの上昇と関連する要因は以下のとおりであった。 ●毎週の労働時間の増加 ●ケアするCOVID-19患者数の増加 ●同僚や上司からのサポートレベルの低さ ●後方支援の低下 ●COVID-19関連タスクでの技量に対する不安 著者らは「本調査結果は、世界中の社会に多大な影響を与える災害と闘う中で、医師のメンタルヘルスを守るために注意すべき要因を強調するものである」としている。

16466.

超速効型インスリン ルムジェブを発売/日本イーライリリー

 6月17日、日本イーライリリーは、超速効型インスリンアナログ製剤(遺伝子組換え)インスリンリスプロ(商品名:ルムジェブ注)の「同ミリオペン」、「同ミリオペンHD」、「同カート」「同100単位/mL」を「インスリン療法が適応となる糖尿病」を効能・効果として新発売した。 本剤は、より良い血糖コントロールの実現のために、健康な人のインスリン分泌により近いインスリン動態の再現を目指し開発された薬剤。 既存の超速効型インスリンアナログ製剤の有効成分に添加剤を加えることで、皮下からの吸収を速め、日本人1型糖尿病患者において従来の製剤と比べて最高濃度の50%に達する時間を13分、曝露持続時間を88分短縮し、速やかなインスリン作用発現および消失を実現した。 本剤は通常、食事開始時(食事前2分以内)に1回2~20単位を皮下注射する。そのため、患者が食事内容を確認した上で、「いただきます」のタイミングで投与することが容易となり、処方薬剤の変更によって患者の現在の生活リズムを大きく変える必要がない。また、必要な場合は食事開始後20分以内に投与することも可能。 同社では、「本剤は、健康な方のインスリン分泌により近いインスリン動態を持つ有望な新薬。食後の血糖値を目標範囲内に収めるための新たな選択肢」と期待を寄せている。ルムジェブ注の概要一般名:インスリンリスプロ(遺伝子組換え)商品名: ルムジェブ注ミリオペン ルムジェブ注ミリオペンHD ルムジェブ注カート ルムジェブ注100単位/mL効能・効果:インスリン療法が適応となる糖尿病用法・用量: 通常、成人では1回2~20単位を毎食事開始時に皮下注射するが、必要な場合は食事開始後の投与も可能。時に投与回数を増やしたり、持続型インスリン製剤と併用したりすることがある。投与量は、患者の症状および検査所見に応じ適宜増減するが、持続型インスリン製剤の投与量を含めた維持量としては通常1日4~100単位。(ルムジェブ注100単位/mLのみ)必要に応じ持続皮下注入ポンプを用いて投与する。薬価: ルムジェブ注ミリオペン(300単位1キット)1,400円 ルムジェブ注ミリオペンHD(300単位1キット)1,400円 ルムジェブ注カート(300単位1筒)1,175円 ルムジェブ注100単位/mL(100単位1mLバイアル)277円製造販売承認日:2020年3月25日薬価基準収載日:2020年5月20日発売日:2020年6月17日

16467.

日医会長に中川俊男氏が初当選、新執行部体制へ

 任期満了に伴う日本医師会の会長選挙が6月27日行われ、副会長の中川 俊男氏(69歳)が、現職で5期目を目指す横倉 義武氏(75歳)を接戦の末おさえ、初めての当選を果たした。中川氏は、これまで日本医師会の常任理事2期、副会長を5期に渡って務めたほか、社保審や中医協の委員などを歴任。会長選には、初めての立候補だったが、14大都市医師会をはじめ多くの都道府県医師会会長の推薦を手堅く集め、17票の僅差ながら現職候補を破る結果となった。 日本医師会会長選挙は371人の代議員による投票で行われた。開票結果は以下の通り。・中川 俊男氏:191票(当選)・横倉 義武氏:174票その他、無効票:2票、白票:4票 副会長および常任理事は、以下の通り(立候補者数と定数が同一のため、いずれも信任投票)。【副会長】猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏【常任理事】江澤 和彦氏、長島 公之氏、松本 吉郎氏、羽鳥 裕氏、城守 国斗氏、釜萢 敏氏、渡辺 弘司氏、神村 裕子氏、宮川 政昭氏、橋本 省氏 中川氏は、今回の選挙時において、新型コロナウイルス感染症対策として、専門組織の強化や日本版CDC創設への働きかけを行うことを提言。地域医療を支える医業経営基盤の安定化策としては、診療報酬の構造的問題の見直しおよびあるべき診療報酬体系の提言、日医内に医療機関経営支援のための組織創設、控除対象外消費税を巡る医療機関ごとの補填のバラツキ解消などを掲げていた。

16468.

リンチ症候群の大腸がん予防にアスピリンが有効/Lancet

 リンチ症候群は、大腸がんのリスクを増大させ、他の広範ながん、とくに子宮内膜がんと関連する。英国・ニューカッスル大学のJohn Burn氏ら「CAPP2試験」の研究グループは、リンチ症候群における大腸がんの予防において、アスピリンの2年投与はプラセボに比べ、その発症を有意に抑制することを確認した。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。本試験では、2011年(平均フォローアップ期間55.7ヵ月[SD 31.4])の時点におけるアスピリンによる遺伝性大腸がんの予防効果を報告している。今回、予定されていた10年間のフォローアップを終了したことから、この高リスク集団における定期的なアスピリン服用の長期的な有効性のデータが報告された。アスピリン長期投与の予防効果を評価する無作為化試験 本研究は、欧州、オーストララシア、アフリカ、南北アメリカ大陸の43施設が参加した二重盲検無作為化試験であり、1999年1月~2005年3月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKなどの助成による)。 対象は、年齢26歳以上、DNAミスマッチ修復遺伝子変異の保持者と証明された患者(遺伝子診断)、およびアムステルダム診断基準を満たし、治癒したリンチ症候群による新生物の既往歴があるが、腸管にはほとんど損傷がない患者家族に属する患者(臨床的診断)であった。 被験者は、アスピリン(600mg/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。2年間の介入が行われ、さらに2年間の継続が選択可能とされた。解析には、10~20年間、がんのアウトカムのモニタリングを受けたイングランド、フィンランド、ウェールズの参加者のデータを用いた。 主要評価項目は大腸がんの発生とし、intention to treat解析とper protocol解析を行った。大腸がんリスク35%低下、至適用量の非劣性試験が進行中 適格基準を満たしたリンチ症候群937例の平均年齢は45歳であった。このうち861例が無作為割り付けの対象となり、アスピリン群に427例、プラセボ群には434例が割り付けられた。 平均介入期間は25.2ヵ月(SD:13.4、範囲:0.8~74.4)であり、平均フォローアップ期間は118.4ヵ月(63.5、1.1~238.9)であった。この間に、アスピリン群は9%(40/427例)、プラセボ群は13%(58/434例)で大腸がんが発生した。 Cox比例ハザードモデルを用いたintention to treat解析では、アスピリン群はプラセボ群に比べ、大腸がんのリスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.43~0.97、p=0.035)。リンチ症候群のがんスペクトルにおけるすべての原発がんを考慮して、負の二項回帰モデルで解析したところ、アスピリンの保護効果に関して同様のエビデンスが得られた(発生率比:0.58、95%CI:0.39~0.87、p=0.0085)。 また、2年間の介入を完了した509例(67イベント)のper protocol解析では、HRは0.56(95%CI:0.34~0.91、p=0.019)、発生率比は0.50(0.31~0.82、p=0.0057)であり、アスピリン群で発がんのリスクが低かった。 リンチ症候群関連の大腸がん以外のがんは、両群とも36例で発生した。intention to treat解析(HR:0.94、95%CI:0.59~1.50、p=0.81)およびper protocol解析(0.75、0.42~1.34、p=0.33)ともに、発がんのリスクに関して両群間に差は認められなかった。 これらを合わせたすべてのリンチ症候群関連がんの発生については、intention to treat解析(HR:0.76、95%CI:0.56~1.03、p=0.081)では有意な差はなかったが、per protocol解析(0.63、0.43~0.92、p=0.018)ではアスピリン群で発がんのリスクが有意に低下していた。 介入期間中の有害事象は、アスピリン群とプラセボ群で類似していた。また、介入期の完全なデータのある患者では、介入群間で服薬コンプライアンスに有意な差はみられなかった。 著者は、「リンチ症候群では、少なくとも2年間、毎日600mgのアスピリンを服用することで、将来の大腸がんのリスクが有意に減少するが、この効果は少なくとも4年間は明らかにならない点に留意する必要がある」とまとめ、「現在進行中のCaPP3試験は、用量の非劣性試験であり、がん予防と有害事象のバランスに関する至適な用量について、有益な情報をもたらすだろう」としている。

16469.

BTK阻害薬acalabrutinib、CLL2つの試験で有用性/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年6月12日、第II相ACE-CL-001試験および第III相ASCEND試験の詳細データから、慢性リンパ性白血病(CLL)に対して、acalabrutinibが長期にわたる有効性および忍容性が示されたことを発表した。 これらの試験データは、2020年6月11日から14日にバーチャル形式で開催された第25回欧州血液学会(EHA)年次総会にて発表された。 単一群を対象としたACE-CL-001試験では、1次治療における単剤療法としてアカラブルチニブによる治療を受けたCLL患者の86%が、中央値4年以上の追跡期間において治療を継続していた。この試験の全奏効率は97%(完全奏効:7%、部分奏効:90%)で、遺伝子変異(17p欠失およびTP53突然変異)、免疫グロブリンH鎖遺伝子(IGHV)非変異、および複雑核型を含む高リスク患者のサブグループにおいては100%の全奏効率を示した。なお、安全性所見では新たな長期的問題は認められなかった。 加えてASCEND試験の最終データ解析では、試験対象となった再発性または難治性CLL患者のうち、18ヵ月時点で生存かつ病勢進行も認められなかった患者の割合が、アカラブルチニブ投与群では82%だったのに対し、リツキシマブとidelalisibまたはベンダムスチンの併用群では48%であった 。本試験は、中間データ解析時点において、独立判定委員会(IRC)の評価による無増悪生存期間の主要評価項目を、すでに 達成している。

16470.

新型コロナウイルス感染症の重症化リスク解析について(解説:小林英夫氏)-1249

 新型コロナウイルス感染症はWHOによるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂)ではCOVID-19とコードされ、その和訳は「コロナウイルス感染症2019」とする案、つまり「新型」が付記されない方向で厚労省にて現在審議中とのことである。 さて、日本と欧米や東アジア間ではCOVID-19への対応状況が異なるが、死亡者数・感染者数に明らかな差異が報告されている。その差異の理由はいかなるものかを解明していくことは今後の必須テーマで、京都大学の山中 伸弥教授はこの因子にファクターXと名付けている。現状では実態不明のファクターXであるが誰にでも予想できる要素として、人種別の遺伝的要素、ウイルス遺伝子変異、などは当然の候補となろう。そこで本論文では重症化、呼吸不全化のリスクについてゲノムワイド関連解析を行っている。その方向性は適正であろう。本論文の和訳は別途本サイトで掲載されるが、血液型によるリスク差に関する結果の一部だけを切り取ってマスメディアが過剰に喧伝しそうで気掛かりである。本論文はあくまでイタリアとスペインというラテン系民族が対象であり、日本人に該当するかどうかは未定である。もちろん、感染症に対して遺伝的素因・体質的素因が関与することは予想される事項であり、本邦でも罹患リスクや重症化リスクへのゲノム解析への取り組みに期待したい。 筆者はウイルス学や感染制御が本業ではないが、連日のようにCOVID-19関連論文が発表されるのを目にする。ただ、情報の迅速性を優先するためであったのだろうが、Lancet、NEJMといった一流ジャーナルにおいてさえ論文の掲載撤回というあまり経験のない事態も生じている。研究に迅速性が望まれている現状であるから、論文の解釈には常時以上の慎重さをもって読み込みたい。

16472.

第13回 医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か

<先週の動き>1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出1.医療・介護従事者へのコロナ慰労金、8月下旬にも交付か第二次補正予算に組み込まれた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」について、医療・介護従事者とその事業者に対する慰労金の支払いスケジュールなどが明らかになった。厚生労働省は、16日に各都道府県への事務連絡を行っており、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)実施要綱」、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)交付要綱」などに基づいて、7月17日までに追加交付申請を求めている。医療機関などに対する感染拡大防止の支援金と共に、8月下旬の交付を目指す。各医療機関の担当者は、医療保険、介護保険それぞれについて、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の交付要綱を確認する必要がある。なお、今回の慰労金は個人に対する交付であり、6月30日までの間に「10日以上」勤務した場合、雇用形態にかかわらず、申請時点で在職中でなくても給付対象となる。(参考)新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の追加交付申請等について(同)新型コロナで医療者に慰労金、誰がいくらもらえるの?(看護roo!)医療者ら向け慰労金の交付、「8月下旬ごろから」で調整 厚労省(MEDIFAXweb)2.日本医師会会長選、横倉氏5選ならず中川俊男氏が選出任期満了に伴う日本医師会会長選挙が、27日に文京区の日医会館で行われた。今回は、現職の横倉 義武会長と中川 俊男副会長の一騎打ちとなり、投票の結果、中川氏が191票、横倉氏が174票で、中川氏が初当選として会長に選出された。任期は2年。副会長は、立候補者数が定数と同一のため信任投票となり、猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏が信任された。(参考)第147回日本医師会定例代議員会 選挙結果報告(日本医師会)3.死因究明の推進のため、新たに死因究明等推進本部が始動厚労省は26日、死因究明等推進本部を設置し、議事内容などを公表した。これは、2019年6月に衆議院本会議で可決・成立した「死因究明等推進基本法」の公布(本年4月1日)を受けたもの。加藤厚労大臣を本部長とする死因究明等推進本部では、来年の春ごろまでに議論を進め、死因究明等推進計画が閣議決定される見通し。(参考)第1回 死因究明等推進本部(厚労省)新たに始まる死因究明制度:死因究明等推進基本法について(新潟市医師会)死因究明等推進計画案、検討会設置し作成へ 厚労省、推進本部初会合の議事内容など公表(CBnewsマネジメント)4.医療費の自己負担増、全世代型社会保障検討会議の中間報告では見送り全世代型社会保障検討会議は、25日、感染症対策の視点も含めた持続可能な医療提供体制の整備を盛り込んだ「第2次中間報告」をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大に当たって、高市 早苗総務相から「公立病院が新型コロナ感染患者の受け入れで大きな役割を果たしていた」と意見が出され、地域医療構想の実現に当たってもこの視点を盛り込む必要性を求める意見が出た。75歳以上の医療費負担を原則1割から2割に引き上げる所得水準については結論を先送り、2020年末の最終報告で取りまとめることとした。また、新型コロナ感染拡大防止対策として、オンラインによる診療や面会など非接触サービスの提供を促進するため、医療機関や介護施設にタブレットやWi-Fiなどの導入支援の強化も打ち出されている。(参考)全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告(案)(首相官邸)5.人口減社会への対応を呼びかける答申、地方制度調査会が提出26日、総務省の第32次地方制度調査会から、「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」が安倍総理大臣に提出された。地方制度調査会は、これまで2年間にわたって審議を行ってきた。高齢者人口がピークを迎える2040年頃までに顕在化するさまざまな課題に対応する観点から、必要な地方行政体制のあり方について、人口構造、インフラ・空間、技術・社会などに分けて整理を行っている。医療については、地域の医療提供体制の確保や、困難に直面している人に対する生活支援などの社会機能の維持が必要である。住民の安心できる暮らしや地域の経済活動を支えるために、自治体が判断を主体的に行い、新しい技術の活用や地域の自治体との連携、ほかの地方公共団体、国と協力して対応することが求められている。(参考)2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申(案)(総務省)

16473.

ASCO2020レポート 肺がん

レポーター紹介2020年のASCO、とくに肺がん領域は、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった昨年に比べ、新たな知見が数多く報告された。その中でも、JCOG1205/1206試験の釼持先生、NEJ026試験の前門戸先生、NivoCUP試験の谷崎先生など、日本人演者のOral presentationが数多く報告されたことは特筆に値する。肺がん全体では、ADAURA試験などの初めての報告、さらには、CheckMate 9LA、CTONG1104試験、CASPIAN試験、CheckMate227試験、KEYNOTE-189試験など重要な試験のフォローアップの報告に注目が集まった。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。JCOG1205/1206試験JCOG肺がん外科グループ、肺がん内科グループのインターグループ試験として実施された、完全切除後の、肺の高悪性度神経内分泌腫瘍(HGNEC)を対象として、標準治療としてのシスプラチン+エトポシド、試験治療としてのシスプラチン+イリノテカンを比較する第III相試験の結果を、研究事務局の釼持先生が報告された。本試験では、完全切除後の肺HGNEC、病理病期StageI~IIIA、221例が1:1にランダム化され、無再発生存割合を主要評価項目として実施された。HGNECは小細胞肺がん、大細胞神経内分泌がんなどを含み、完全切除例は非常にまれである。当初全生存期間が主要評価項目とされていたが、想定よりも予後が良好であったことから無再発生存期間に変更されている。本試験は、残念ながら中間解析で主要評価項目である無再発生存期間での有効性を示すことができる可能性が低いことが判明し、無効中止とされ、現在は全生存期間のフォローアップを行っている。今回報告された無再発生存に関するデータでは、両群のハザード比が1.076、95%信頼区間0.666~1.738、3年の無再発生存割合が標準治療群で65.4%、試験治療群で69.0%という結果であり、無再発生存期間中央値は両群とも到達していない。全生存期間についても、結果が報告されているものの、両群で明らかな違いは認められなかった。有害事象に関しては、すでに知られているシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンの毒性プロファイルが再現されていた。肺がんの中でも希少フラクションに該当する完全切除後のHGNECに対して、第III相試験が実施されたことは世界で初めての快挙であり、これまで観察研究や単群試験の結果に基づいて実施されてきたHGNECの術後療法に、明確なエビデンスが確立された重要な試験である。全生存期間についてのフォローアップは継続中であり、そちらの結果も注目されている。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの追加、デュルバルマブ+tremelimumabの追加をそれぞれ評価する第III相試験がCASPIAN試験である。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目に無増悪生存期間、奏効割合などが設定されている。すでにデュルバルマブの追加が、有意に生存を延長するという結果が報告されており、IMpower133試験の結果で承認されたアテゾリズマブに続き、近い将来デュルバルマブが進展型小細胞肺がんの初回治療において使用可能となる見込みである。今回の発表では、本試験のうち、デュルバルマブ+tremelimumabを使用する群に関する結果が示されている。主要評価項目の全生存期間において、ハザード比0.82、95%信頼区間0.66~1.00であり、これは事前に設定された有意水準をわずかに下回っており、デュルバルマブ+tremelimumabについては主要評価項目を達成できなかった。また、アップデートされたデュルバルマブを単独で追加する群も含めた3本の生存曲線の解析結果も示されており、免疫チェックポイント阻害剤の追加により全生存期間の利益が得られることは明確であったが、デュルバルマブに加えてtremelimumabまで追加することの意義は生存曲線から見ても明らかではなかった。今後、進展型小細胞肺がんの1次治療においても、複数の免疫チェックポイント阻害剤、具体的にはアテゾリズマブ、デュルバルマブの使い分けについての議論を行う必要がある。KEYNOTE-604試験進展型小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのプラチナ+エトポシド療法に対して、ペムブロリズマブを追加することの意義を検証するために実施された第III相試験である。主要評価項目としては、無増悪生存期間、全生存期間がCo-primaryとして設定されており、無増悪生存期間にはα0.0048、全生存期間にはα0.0128がそれぞれ割り振られている。無増悪生存期間については、ハザード比0.75、95%信頼区間0.61~0.91であり、p値は0.0023と当初予定された有意水準を達成している。一方、全生存期間については、ハザード比が0.80、95%信頼区間0.64~0.98であり、p値は0.0164と一見すると有意であるように見えるものの、事前に設定された有意水準には到達しておらず、全生存期間については有効性を統計学的には示すことができなかった。この結果をどのように判断し、各国の規制当局がペムブロリズマブを承認するか否かは今後の情報を待ちたい。一方、無増悪生存、全生存の生存曲線を確認すると、いずれもIMpower133、CASPIANで示されたものと類似した形態を示しており、小細胞肺がんと非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害剤の挙動の違いが明瞭に示される結果であり、興味深い。CTONG1104試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のN1-2非小細胞肺がん患者を対象に、ゲフィチニブを試験治療(24ヵ月)、シスプラチン+ビノレルビンを標準治療(4サイクル)として実施する第III相試験が、CTONG1104試験である。ADJUVANT試験とも呼ばれ、222例が登録されている。無病生存期間を主要評価項目とした本試験の結果は、すでに報告されている。今回アップデートされた無病生存期間の報告では、5年の無病生存割合が、ゲフィチニブ群で22.6%、シスプラチン+ビノレルビン群で23.2%であった。生存曲線を見ると、当初ゲフィチニブ群の無病生存が明らかに良い傾向であったが、最終的に生存曲線は重なり、ハザード比は0.56、95%信頼区間0.40~0.79という結果であった。今回報告された全生存期間については、生存曲線は当初ゲフィチニブ群がやや上回る傾向があったものの全体ではほぼ一致しており、ハザード比は0.92、95%信頼区間0.62~1.36という結果であった。5年生存割合は、ゲフィチニブ群で53.2%、シスプラチン+ビノレルビン群で51.2%であり、全生存期間においてゲフィチニブを術後療法として使用することの明確な意義は示されなかった。その背景として、シスプラチン+ビノレルビン群で再発した患者のうち、51.5%がゲフィチニブなどEGFR-TKIの治療を受けていることが指摘されている。ADAURA試験の結果が初めて報告される中、本試験の意義は大きい。とくに、無病生存期間でハザード比では明らかにゲフィチニブの有効性が示されながらも、5年無病生存割合ではシスプラチン+ビノレルビン群に追いつかれており、さらに、全生存期間でも両群に差がなかったことは注目すべき点である。これは、ゲフィチニブは無病生存期間を延長することにつながっているが、術後患者における根治率の向上には貢献していないあるいは、貢献していたとしても本試験の規模では検出できない程度のインパクトであることが示している。IV期非小細胞肺がんにおいてゲフィチニブに無増悪生存期間、全生存期間ともに勝利したオシメルチニブにより、異なる結果が得られるのか、ADAURA試験の結果とフォローアップデータに注目が集まる。ADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のStageIB、II、IIIA非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを試験治療(36ヵ月)、プラセボと比較した第III相試験がADAURA試験である。プラチナ併用療法による標準的な術後療法を受けていない患者の登録も許容されており、両群とも約半数が術後療法を受けている。682例の患者が1:1で両群に割り付けられた、EGFR-TKIを用いた試験としては大規模な試験である。主要評価項目はII期、IIIA期の患者における無病生存割合、副次評価項目として全患者集団での無病生存期間、全生存期間などが設定されている。久しぶりにASCOのPlenaryで発表された本試験の無病生存期間は、ハザード比0.17、95%信頼区間0.12~0.23という驚異的な結果であり、36ヵ月時点でのオシメルチニブ群の無病生存割合が80%、プラセボ群の無病生存割合が28%という明らかな違いが示されている。IB期も含む全集団においても、オシメルチニブの無病生存割合は79%と変化しなかったが、プラセボ群では41%とIB期が入った分良好な結果が示されている。サブセット解析においても一様にハザード比の点推定値はオシメルチニブの有効性を示しており、IB期212例の結果もハザード比0.50、95%信頼区間0.25~0.96と、1をまたいでいないことは注目に値する。この点はステージ別の無病生存曲線でも詳細に示されており、最も大きな恩恵を得るのはIIIA期など、より進行した集団であった。幸いなことに、オシメルチニブ群において治療関連死が報告されていないことも重要である。全生存期間については、示された生存曲線は24ヵ月前後の部分でオシメルチニブ群がやや良好な傾向を示しており、ハザード比は0.40、95%信頼区間0.18~0.90と報告されているが、現時点でのイベントは全体で5%程度までしか到達しておらず、今後大きく変動しうる。本結果については、発表当初からASCOのVirtual meetingのコメント欄、さらにはSNSで多数の議論を呼んでおり、オシメルチニブを標準治療としてEGFR遺伝子変異陽性、完全切除後の集団における術後アジュバントに使用するべきという意見と、全生存期間の結果を待つべきとする意見がともに提示されている。前述のCTONG1104試験が222例の試験で、無病生存の生存曲線が最終的には重なり、全生存期間でも明らかな違いを示すことができなかったのに対し、ADAURA試験は700例弱の十分な検出力を持った試験である。この試験規模の違いにより、CTONG1104試験では示されなかった全生存期間でのベネフィットが、ADAURAで示されるのか、肺がんの専門家が固唾をのんで見守っている。NEJ026試験EGFR遺伝子変異陽性、根治放射線治療不能のIIIB期、IV期非小細胞肺がんを対象として、エルロチニブを標準治療に、エルロチニブ+ベバシズマブを評価した第III相試験がNEJ026試験である。同じレジメンを第II相試験で評価したJO25567試験は、無増悪生存期間で良好な結果を示したものの、当初予定されていなかった全生存期間の評価では、一部再同意の取得ができなかった患者のフォローアップができなかったなどの理由から、全生存に関しては満足できる評価が行われておらず、当初から全生存期間の評価を予定していたNEJ026試験の結果に注目が集まっていた。今回報告された全生存期間において、ハザード比は1.007、95%信頼区間0.681~1.490であり、生存曲線もほぼ重なっており、ベバシズマブを追加する明確な意義は示されなかった。サブグループ解析では、とくに無増悪生存期間の報告の際から注目されていた、EGFR遺伝子変異のタイプ別、具体的にはL858RとExon19delにおける効果の違いがOSで示されるのかが注目されたが、結果的にはいずれの変異でも全生存期間に明らかな違いは認められなかった。昨年初めて報告されたRELAY試験において、もう一つの血管新生阻害剤であるラムシルマブとエルロチニブの併用療法について、さらに大きなサンプルサイズでの検証が進められており、こちらの結果が今後の血管新生阻害剤とEGFR-TKI併用の評価を分ける重要な試験となる。さらに、血管新生阻害剤とオシメルチニブの併用療法についても、Phase III含めいくつもの試験が開始されており、TKIの違いにより異なる結果が得られうるのか、注目されている。CheckMate 9LA試験IV期あるいは再発のEGFR陰性、ALK陰性の非小細胞肺がんを対象として、初回治療におけるプラチナ併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を、標準治療としてのプラチナ併用療法と比較する第III相試験がCheckMate 9LA試験である。主要評価項目は全生存期間とされており、副次評価項目に無増悪生存期間などが設定されており、719例が登録され、全生存期間について最短でも12.7ヵ月のフォローアップがされた時点での結果が報告されている。ニボルマブ+イピリムマブのみでも化学療法に勝る結果がCheckMate227試験で報告されている中、プラチナ併用療法を2サイクル追加することにより、治療開始直後の生存曲線の落ち込み、すなわち、早期にPDとなり免疫チェックポイント阻害剤の恩恵を受けられない可能性がある患者集団を意識したレジメンとなっている。全生存期間における目標ハザード比0.75を、α0.05(両側)、検出力81%で検定し、全生存期間が統計学的に有意と示された場合はヒエラルキカルに無増悪生存期間、奏効割合の検定に進むという、ほかのニボルマブ+イピリムマブ関連の試験に比べるとシンプルな試験設定が採用されている。アップデートされた全生存期間では、生存曲線もきれいに分かれ、打ち切りを多数認めるものの、いわゆるTail plateauのような雰囲気が示されている。ハザード比は0.66、95%信頼区間0.55~0.80であり、12ヵ月時点での生存割合が試験治療群で63%、標準治療群で47%と全生存期間での試験治療の意義が確認された。この結果は、組織型、PD-L1の発現割合別のそれぞれのサブセットでもほぼ再現されており、とくにPD-L1陰性の集団においても、全生存期間での明確なベネフィットが示されている。ニボルマブ+イピリムマブということで、有害事象にも注目が集まり、やはり免疫関連有害事象の頻度は多いものの、ほかの免疫チェックポイント阻害剤と比較して根本的に異なる結果ではなかった。ただ、今回の報告では比較的有害事象に関する内容はシンプルであり、今後の追加報告に期待したい。また、別途報告されたCheckMate227試験の3年フォローアップ結果とも併せて、とくにPD-L1のサブセットによらない有効性という点でニボルマブ+イピリムマブの特性が示されている。今後本試験レジメン、ニボルマブ+イピリムマブが初回治療の選択肢として加わった場合の使い分けについて、今後さらに議論が続くものと思われる。KEYNOTE-189ポスター発表ではあるものの、KEYNOTE-189試験の“Final analysis”が報告されている。PD-L1発現レベルによらず、進行期、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、プラチナ+ペメトレキセドに対して、ペムブロリズマブの上乗せを検証した第III相試験である。すでに試験内容については各所で報告されている。今回のアップデートでは、全生存期間についてフォローアップ期間が延長された結果が示されている。とくに注目されたのは、いわゆるTail plateauと呼ばれる、ペムブロリズマブにより長期の効果が得られる患者集団が存在することによる効果が、プラチナ+ペメトレキセドの上乗せによりさらに強化されるのか、それともペムブロリズマブ単剤と大きく異ならないのかという点であった。今回の発表において、PD-L1 50%以上の集団においては、生存曲線の後半が平坦になる雰囲気が出現しているものの、そのほかのサブセットではその気配はまだ認められていない。さらに、PD-L1 50%以上のサブセットにおいて、フォローアップ後半戦の生存割合、すなわちtailの高さに着目すると、ペムブロリズマブ単剤のKEYNOTE-024試験(全体集団)とはほぼ同等であり、KEYNOTE-042試験(PD-L1 50%以上のサブセット)よりは良い結果が得られている。試験に参加した患者集団が異なるため、試験間の比較は意味を持たないとはわかりつつも、KEYNOTE-189試験の長期フォローの結果は、とくにPD-L1高発現の患者において、免疫チェックポイント阻害剤にプラチナ併用療法を加える意義があるか否かについての議論で、注目され続けるものと考えられる。NivoCUP試験肺がんの話題から少し離れるものの、NivoCUP試験については本稿でも触れておきたい。本試験は、原発不明がんの患者を対象としたPhase II、医師主導治験であり、研究事務局の近畿大学の谷崎 潤子先生が報告されている。原発不明がんの精査のために、十分な組織診断、画像診断に加え、各診療科の診察を受けることが規定され、その結果をもって原発不明がんと診断された55例の患者が登録されている。無治療でも登録可能ではあるが、統計学的設定は既治療例を対象に組まれており、主要評価項目である奏効割合の期待値が20%、閾値が5%、α0.025(片側)、検出力80%で、38例の登録を目指し、実際は45例が登録された。この既治療45例での奏効割合は22.2%、95%信頼区間は11.2~37.1、CR 4.4%、PR 17.8%、SD 31.1%という結果であり、主要評価項目を達成している。同集団における無増悪生存期間は4.0ヵ月、全生存期間は15.9ヵ月であった。原発不明がんという治療選択肢が限定され、治療開発の対象となりにくい集団において、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示した試験の価値は高く、本試験の結果に基づき国内でニボルマブが原発不明がんにおいて保険診療で使用可能となることが期待される。企業の治療開発の対象となりにくい希少フラクションを対象として、患者に近い研究者が医師主導治験を実施し、Unmet needsを解消しようとする非常に良い事例である。さいごに残念ながら完全にVirtual開催となったASCOであるが、報告された知見には肺がんの日常診療を刷新させうる内容が含まれていた。Virtual meetingのシステムもおおむね安定しており、情報を得るという意味ではこの開催方法も一定の評価を受けるものと思われるが、発表者、また多数のエキスパートが一堂に会する中で、目の前で報告される新たなエビデンスについて議論する場として、Virtualな会議室はまだまだ不十分な点が多いと感じたことも確かであった。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

16474.

ドイツとポーランド【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第12回

以前このエッセイで書かせてもらいましたが、私が今住んでいるのはグライフスヴァルトと言って、ドイツの北西の隅っこにあたる街になります。こんな感じのところです(地図の青点)。実はポーランドまでの距離が近く、生活圏内となっています。たとえば、住んでるところからシュチェチン(ポーランド)まで約180km、車で2時間くらいです。ドイツでは、日曜日は飲食を除くほとんどのお店がお休みになるのですが、ポーランドではわりと開いている店が多いので、買い忘れがあったりしたらポーランドの街まで買い出しにいったりします。ただ、残念ながらユーロが使えないのでカードしか使えない買い物になりますが…。これはワルシャワです。街中でも森がたくさんあって、空がだだっ広かった印象です。ポーランド人は、ショパンが大の自慢で、コペルニクスがちょっと自慢。「キュリー夫人(現地では“マリクリ”って言うみたいです)はどう?」とポーランドの友人に聞いたのですが、「彼女はパリの人だから」とそっけない感じでした(実際、キュリー夫人のお墓はパリにあります)。見つけた元素に“ポロニウム”なんて名前を付けるくらい祖国愛が強かったのに…片思いだったみたいです。実はショパンもパリで亡くなって、遺体はパリにあります。しかし、「心臓だけでも祖国に帰してくれ」と本人の強い希望があったため、今もとある教会の柱に心臓だけ保管されています(写真の柱)。こういうところが、ポーランド人に愛されている秘訣なんだろうな~。話がそれてしまいましたが、そもそも国境があってないようなEUでは、国境を越えて生活圏が広がっていることは珍しくありません。とくに私のように、「国の端っこ」に住んでいるならなおさらです。ところが…ポーランドに入った途端に、ドイツ語が通じなくなります。いや、もちろん外国にいくわけですから、ある意味それは当然のことではあるのですが…。隣国なのになんで?国境に接している街なのですが、街に入った瞬間から、全然コミュニケーションが取れなくなります。道を通行人に尋ねても、看板を見ても、ドイツ語だけではどうにもならなくなってしまいます。さらにお店にいくと、「メニューくれ」くらいは理解してもらえるのですが、あとはさっぱりです。ポーランドと反対側のフランスとドイツの国境の街にいったときは、もう少しドイツ語で通じたのですが…。今回、新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、ドイツとポーランド間の国境も閉鎖されました。それもかなり早い段階で。ちょっと好奇心で国境付近まで車でいってみたのですが、グラサンにサブマシンガンを持った警察? 軍隊? の人が立っていて、Uターンするように指示されました。とてもじゃないけど、写真が撮れるような雰囲気ではなかったです。ポーランドは歴史上のアレやコレやがあって、ちょっとドイツに対して複雑な思いがあるのはご存知の通りです。また、ロシアからも厳しい仕打ちを受けたこともあって、ロシアも嫌いらしいです。その結果、現在はわりと親米的な政策が行われているとのことです。ドイツでは店の数が少ない(少なくともうちの街にはない)スタバやケンタッキーなどのアメリカ発祥のファストフード店も、ポーランドにいけばあちらこちらで見かけることができます。ああ、早く国境閉鎖、解除されないかな…。

16475.

細胞療法の成功例、CAR-T細胞療法の仕組みに迫る!【そこからですか!?のがん免疫講座】第6回

はじめに前回までは、がん免疫療法における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の話が多かったのですが、最近登場してきた細胞療法のことにも触れておきたいと思い、全5回の連載予定をオーバーしていますが、もう少しお付き合いください。ICIは間接攻撃、細胞療法は直接攻撃ICIは、元々われわれの身体にある免疫細胞(とくにT細胞)を活性化させる治療であり、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体がその代表です。つまり、ICIは「元々備わっている免疫を介して間接的にがんを攻撃している治療」だといえます。一方で、細胞療法は、「外からがん細胞を攻撃する細胞を入れる治療」です。利用している細胞が免疫細胞なので、「免疫療法」のくくりに入れる場合が多いです。細胞療法は、間接的なICIに比べて直接的な治療であり、その攻撃の仕方にはいろいろな免疫の要素が含まれます。「外から細胞を入れるなんて」と抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、実はこの方法、かなり昔から取り組まれていたんです1)。抗体でT細胞を活性化させる「CAR-T細胞」細胞療法の中で、代表的な成功例がCAR-T細胞療法です2)。CARとは「キメラ抗原受容体:Chimeric Antigen Receptor」の略です。「キメラ」なので何かを「融合」させているのですが、「何を」「何のために」わざわざ融合させているのか、少し詳しく述べてみたいと思います。これまで、「T細胞ががん免疫の主役である!!」と繰り返し、しつこいくらいに述べてきました。少し思い出してほしいのですが、T細胞はその受容体であるTCRを介して、MHCというお皿の上に乗った抗原を認識して活性化し、がん細胞を攻撃していました(図1)。このTCRの替わりに「抗体」を使おう、というのがCARの発想です。画像を拡大する抗体とは、B細胞というリンパ球が産生し血中などに放出しているものです(正確には形質細胞ですが、これは元をたどるとB細胞なので、ややこしいのでここではB細胞とします)。繰り返しになりますが、がん細胞を含む異常細胞を攻撃・排除するための免疫を「細胞性免疫」と呼んでおり、T細胞が主役でした。一方、B細胞から産生され血中などに放出された抗体は、細胞の外にある異物を抗原として認識・結合して免疫反応を起こし、防御機構が働きます。血液で起きるということで、抗体が主につかさどる免疫を「液性免疫」と呼んでいます。抗体の由来はB細胞抗原受容体(BCR)です。BCRはTCRと同じように非常に多くのレパートリーを持つことで、さまざまな抗原を認識できます。治療にも用いられる抗EGFR抗体はEGFRを認識する抗体ですし、これまでにも散々登場した抗PD-1抗体はPD-1を認識する抗体です。抗体がTCRと大きく違うのは「MHCのお皿が必要ない」という点です。MHCは実はかなりの個人差があって、そのタイプに合わないとTCRが認識できないのですが、抗体はMHCとは無関係に抗原を認識することができます。T細胞ががん細胞を攻撃するためには、がん細胞を認識することが重要です。この認識の過程にTCRではなく抗体を使ってあげよう、というのがCARの発想です。人工的に合成した「抗体の抗原を認識する部分」をT細胞に導入することで、がん細胞の表面に出ている抗原であれば、MHCとは関係なくT細胞が認識できるようになります。しかし、単に認識するだけでは、がん細胞を攻撃できません。認識してさらにT細胞を活性化する必要があります。そこでT細胞に活性化シグナルを伝えるためのCD3という分子の一部分を抗体の抗原認識部分とキメラ化し、導入したものがCAR-T細胞です(図2)。画像を拡大するCD3はT細胞マーカーでもあり、同じ部分はT細胞の活性化にも重要です(図1)。単純な表現にすると「TCRの替わりに抗体を使ってT細胞を活性化させているものがCAR-T細胞」なのです。最近では、さらに活性化シグナルが入るように活性化共刺激分子であるCD28や4-1BBもキメラ化して導入したものが、すでに臨床で使われています(図2)。CAR-T細胞療法における成功例は、CD19という分子に対するものです。ある種の血液腫瘍にはCD19が非常に特異的に細胞表面に発現しており、これに対するCAR-T細胞療法は劇的な効果が報告され、臨床にも応用されています3)。ほかにも骨髄腫などで有望なものが報告されています。CAR-T細胞療法、ほかのがんへの応用は?ここまでの話で、「じゃあ、がん細胞表面の抗原とそれに対する抗体さえあれば、どんながんにも応用できるのでは?」と思われた方もおられるかもしれません。その発想は間違っていないのですが、いくつか問題点があります。一番の問題は、その細胞傷害効果が強力過ぎる、という点です。正常細胞にも発現している抗原を認識して傷害すると、大変な副作用が出る可能性が指摘されています。免疫を活性化させる物質であるサイトカインが体中で大量に放出され、ショック状態になってしまう「サイトカイン放出症候群」(これは正しく対処すればそこまで問題はないようです)や、中枢神経系に障害を起こす有害事象も報告されています。したがって、CD19のようにがん細胞表面に非常に特異的でないと開発が難しく、血液腫瘍以外への開発はなかなか進んでいません。そのほかの細胞療法CAR-T細胞療法の成功例を紹介しましたが、「わざわざ面倒なキメラなんて作らなくてもいいのでは?」と思った方もいるかと思います。そうですね、「TCRを直接使ってあげればいいんじゃない?」というのはより単純な発想で、実はこちらも以前から取り組まれており、TCR-T細胞療法と呼ばれています。紆余曲折はあるのですが、特定のがん抗原に対して有望なものも報告され、本邦でも開発が進んでいます。ただし、CARと異なり、TCRはMHCのタイプによっては認識できないため、特定のMHCを持つ患者さんにしか使用できない、という別の問題点もあります。患者さん由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を体外で培養・増殖させて、がんを攻撃するT細胞を増やし、体内に戻すTIL療法も効果が報告されています1,4)。本邦ではなかなか手間の問題でできていませんが、海外ではベンチャーもできており、大々的に治験が行われています。TIL療法は悪性黒色腫に対して古くから効果が報告されていましたが、最近ではそれ以外の腫瘍でも効果が報告され、注目を集めています。人工的に細胞を作ることに関して、「えっ」と思う方もおられるかもしれませんが、実は以前から実験室レベルで細胞の遺伝子操作をすることは、比較的簡単にできるようになっています。私も大学院時代の初期に教えてもらいました。CAR-T細胞療法は本邦ではこれから広がる治療ですが、そういった技術面の進歩もあり、今後もこれまでなかったような治療が次々に登場してくるかもしれません。次回はそんな将来像に少し触れ、締めにしたいと思います。1)Rosenberg SA, et al. Science. 2015;348:62-68.2)Singh AK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:e168-e178.3)June CH, et al. N Engl J Med. 2018;379:64-73.4)Zacharakis N,et al. Nat Med. 2018;24:724-730.

16476.

HER2+大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの成績(DESTINY-CRC01)/ASCO2020

 イタリア・Universita degli Studi di MilanoのSalvatore Siena氏は、HER2陽性転移大腸がんに対する抗HER2抗体薬物複合体製剤トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の多施設共同非盲検第II相試験DESTINY-CRC01の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。標準治療に抵抗性を示す転移大腸がんでは注目すべき活性を示すと報告した。・対象:2次治療以上の治療歴を有するHER2陽性切除不能・転移大腸がん患者78例  コホートA(53例):HER2 IHC3+またはIHC2+/ISH+  コホートB(7例):HER2 IHC2+/ISH-  コホートC(18例):HER2 IHC1+・介入:トラスツズマブ デルクステカン6.4mg/kg 3週ごと・評価項目:[主要評価項目]コホートAでの独立中央判定による確定奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、コホートBとCでのORR 主な結果は以下のとおり。・全治療のレジメン数中央値は4、全例がイリノテカン、フルオロウラシル、オキサリプラチンの投与歴を有した。また、全症例の20.5%、コホートAの30.2%で抗HER2療法の治療歴があった。・コホートAの確定ORRは45.3%で、うちCRは1例、DCRは83.0%であった。・コホートAのDoR中央値は未到達であった。・コホートAのPFS中央値は6.9ヵ月、OS中央値は未到達であった。・HER2低発現(IHC2+/1+)の2コホートにおいては、奏効が認められなかった。・全Gradeの治療関連有害事象(TEAE)発現率は症例全体、コホートA共に100%であった。Grade3以上のTEAEは全体が61.5%、コホートAが60.4%であった。・対象症例全体では薬剤関連の間質性肺炎は5例(6.4%)で認定され、Grade2が2例、Grade3が1例、Grade5が2例であった。・サブグループ解析では抗HER2療法の治療歴がある患者でも効果が認められた。 Siena氏は「進行HER2陽性大腸がんに対する治療オプションとしての潜在力を示している」との見解を表明した。

16477.

生活習慣病患者の2割が通院せず自粛/血糖トレンド委員会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、生活習慣病患者の多くが外出を自粛したことに伴い、医療機関への通院を控えた事例が散見される。では、実際どの程度の通院などの自粛がされていたのだろう。 血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者視点でわかりやすく正確な情報発信を行うこと目的とした委員会である「血糖トレンド委員会」(代表世話人: 西村 理明氏[東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授])は、生活習慣病患者にCOVID-19がどのような影響を与えたのかを分析するため調査を実施し、今回その結果を発表した。●調査概要・調査期間 2020年6月8日(月)・9日(火)・調査方法 インターネット調査・調査対象 生活習慣病患者309名(内訳:高血圧103名、2型糖尿病103名、高脂血症103名)・実施機関 株式会社マクロミル主な調査結果・定期的な通院を必要とする生活習慣病患者の20.4%がコロナ感染予防を理由に通院を自粛。患者の44.9%は今後の通院もいまだに不安。・外出自粛で変わった生活習慣。58.6%の患者が体調管理への意識が向上。・生活習慣病患者の49.8%が自己管理ツールに関心。60代でも7%がツールを利用、49%が関心あり。個々のアンケート調査の内容 「COVID-19の流行が始まってから、普段の通院回数に変化はありましたか」の問いに、「変わらない」(78.6%)、「減った/通院していない」(20.4%)、「増えた」(1.0%)の回答結果だった。また、「減った/通院しなかった理由」(n=63)では、複数回答で「新型コロナ感染予防のため」(77.8%)、「自主的に外出自粛をしていたため」(30.2%)の順で多かった。 「緊急事態宣言が解除されてからの通院状況について」では、「不安はなく、通院を再開した」(33.7%)、「不安はあったが、通院を再開した」(30.4%)の順で多かった。 「オンライン診療に関心があるか」では、「関心はあるが、受診したくない」(38.8%)、「関心があり、受診したい」(30.7%)、「関心がない」(28.5%)の順で多かった。 「自粛期間中、普段よりも自身の体調管理を意識したか」では、「意識をしていた」(58.6%)、「特に意識していない」(41.4%)とセルフメディケーションの意識が向上していた。 最後に「自身の健康管理をサポートしてくれるツールに興味があるか」という問いには、「興味がある」(49.8%)、「興味がない」(41.7%)、「すでに活用している」(8.4%)の回答結果で、とくに60歳以上の回答割合もほぼ同様で、スマートフォンの普及も向上し、今後活用されていく可能性が示唆された。 今回、調査を行った同委員会では、「今回の調査で、糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者たちがコロナ感染への不安を抱えながらも、コロナ禍において前向きに体調管理に取り組んでいたことが明らかとなった」と結果を分析している。

16478.

血清葉酸レベルと統合失調症の性別に基づく関連性

 血清葉酸濃度に性差があることはよく知られているが、血清葉酸レベルと統合失調症の関連性を性別に基づいて調査した研究はこれまでなかった。徳島大学の富岡 有紀子氏らは、日本人を対象に、性別で層別化した統合失調症患者と精神疾患でない健康な対照者における血清葉酸レベルの違いを調査した。以前の研究データを用いて、血清葉酸レベル、血漿総ホモシステイン(tHcy)、血清ビタミンB6(ピリドキサール)レベルとの関係も調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年5月23日号の報告。 統合失調症患者482例および精神疾患でない健康な対照者1,350例の血清葉酸濃度を測定した。性差に基づく両群間の血清葉酸レベルの違いを調査するため、共分散分析を用いた。葉酸、 tHcy、ビタミンB6レベルとの関係を評価するため、スピアマンの順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対照群では、男性よりも女性において、血清葉酸濃度が高かった。・統合失調症群では、男女ともに血清葉酸レベルが低かった。・血清葉酸レベルとtHcyとの逆相関、血清葉酸レベルとビタミンB6との弱い正の相関が認められた。 著者らは「性別に関係なく、低血清葉酸レベルと統合失調症が関連していることから、統合失調症治療において、葉酸の投与が有益であると考えられる。血清葉酸レベルが低い統合失調症患者に対して葉酸の投与を行うことで、高tHcyおよび低ビタミンB6レベルが改善する可能性がある」としている。

16479.

COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。 TERAVOLTレジストリは、横断的および縦断的な多施設共同観察研究で、COVID-19と診断されたあらゆる胸部がん(非小細胞肺がん[NSCLC]、小細胞肺がん、中皮腫、胸腺上皮性腫瘍、およびその他の肺神経内分泌腫瘍)の患者(年齢、性別、組織型、ステージは問わず)が登録された。試験適格条件は、RT-PCR検査で確認された患者、COVID-19の臨床症状を有しかつCOVID-19が確認された人と接触した可能性のある患者、または、臨床症状があり肺画像がCOVID-19肺炎と一致する患者と定義された。 2020年1月1日以降の連続症例について臨床データを医療記録から収集し、人口統計学的または臨床所見と転帰との関連性について、単変量および多変量ロジスティック回帰分析(性別、年齢、喫煙状況、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患)を用いて、オッズ比(OR)およびその95%信頼区間(CI)を算出して評価した。なお、データ収集は今後WHOによるパンデミック終息宣言まで継続される予定となっている。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、2020年3月26日~4月12日に、8ヵ国から登録された最初の200例であった。・200例の年齢中央値は68.0歳(範囲:61.8~75.0)、ECOG PS 0~1が72%(142/196例)、現在または過去に喫煙81%(159/196例)、NSCLC 76%(151/200例)であった。・COVID-19診断時に、がん治療中であった患者は74%(147/199例)で、1次治療中は57%(112/197例)であった。・200例中、入院は152例(76%)、死亡(院内または在宅)は66例(33%)であった。・ICU入室の基準を満たした134例中、入室できたのは13例(10%)で、残りの121例は入院したがICUに入室できなかった。 ・単変量解析の結果、65歳以上(OR:1.88、95%CI:1.00~3.62)、喫煙歴(OR:4.24、95%CI:1.70~12.95)、化学療法単独(OR:2.54、95%CI:1.09~6.11)、併存疾患の存在(OR:2.65、95%CI:1.09~7.46)が死亡リスクの増加と関連していた。・しかし、多変量解析で死亡リスクの増加との関連が認められたのは、喫煙歴(OR:3.18、95%CI:1.11~9.06)のみであった。

16480.

進行悪性黒色腫の1次治療、アテゾリズマブ追加でPFS延長/Lancet

 未治療のBRAFV600変異陽性進行悪性黒色腫患者の治療において、BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬cobimetinibによる標的治療に、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬アテゾリズマブを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性と忍容性も許容範囲であることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のRalf Gutzmer氏らが行った「IMspire150試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。免疫チェックポイント阻害薬、およびBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用はいずれも、BRAFV600変異陽性転移悪性黒色腫のアウトカムを改善すると報告されている。BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用は高い奏効率を有するが奏効期間は短く、免疫チェックポイント阻害薬は持続的な奏効をもたらすものの奏効率は相対的に低い。このような相補的な臨床的特徴から、これらの併用療法に注目が集まっているという。PFS期間を評価するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、20ヵ国112施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年1月~2018年4月の期間に患者登録が行われた(F Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、StageIVまたは切除不能なStageIIIcのBRAFV600変異陽性悪性黒色腫で、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。前治療を受けた患者は除外した。 被験者は、アテゾリズマブ+ベムラフェニブ+cobimetinibまたはプラセボ+ベムラフェニブ+cobimetinibを投与する群に無作為に割り付けられた。28日を1サイクルとし、1サイクル目にはベムラフェニブ+cobimetinibのみが投与され、2サイクル目以降にアテゾリズマブまたはプラセボが追加された。 主要アウトカムは、担当医判定によるPFSであった。奏効率は同等、奏効期間は延長 514例が登録され、アテゾリズマブ群に256例(年齢中央値54.0歳[範囲:44.8~64.0]、女性41%)、プラセボ群には258例(53.5歳[43.0~63.8]、42%)が割り付けられた。 追跡期間中央値18.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、アテゾリズマブ群がプラセボ群に比べ有意に延長した(15.1ヵ月vs.10.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.63~0.97、p=0.025)。事前に規定されたサブグループのほとんどで、PFS中央値がアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められた。 アテゾリズマブ群は93例(36%)、プラセボ群は112例(43%)が死亡し、全生存期間(OS)に差はなかった(HR:0.85、95%CI:0.64~1.11、p=0.23)。2年時の無イベント生存率はそれぞれ60%および53%だった。 担当医判定による客観的奏効率は、両群でほぼ同等であった(アテゾリズマブ群66.3% vs.プラセボ群65.0%)。一方、奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群のほうが長かった(21.0ヵ月vs.12.6ヵ月)。 両群で最も頻度の高い有害事象は、クレアチニン・ホスホキナーゼ上昇(51.3% vs.44.8%)、下痢(42.2% vs.46.6%)、皮疹(両群とも40.9%)、関節痛(39.1% vs.28.1%)、発熱(38.7% vs.26.0%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ上昇(33.9% vs.22.8%)、リパーゼ上昇(32.2% vs.27.4%)であった。有害事象による治療中止は、アテゾリズマブ群が13%、プラセボ群は16%で発生した。 著者は、「OSのデータはimmatureであったが、15ヵ月時の生存曲線はアテゾリズマブ群で良好な傾向がみられた。本研究の生存データは、この患者集団における至適な治療パラダイムに、有益な情報をもたらすであろう」としている。

検索結果 合計:35665件 表示位置:16461 - 16480