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抗原検査や唾液検体が使えるようになり検査の選択肢が広がる中、一般診療の現場ではどのような考え方で目の前の患者さんをトリアージしていくべきか。そして各医療機関は地域の検査体制にどのようにつながっていけばよいのだろうか。東京都では6月下旬からの感染者の再増加を受け、直近では最大約5,000件/日のPCR検査を実施している。検査体制の整備と検査実施の最新状況、そして今後の見通しについて、東京都医師会副会長の角田 徹氏に聞いた。PCRセンターの稼働状況など、現在の東京都の検査実施体制はどうなっていますか?東京都では5月以降、都内に47ある地区医師会を中心に、各地域でのPCR検査の実施を担う地域PCR検査センター(PCRセンター)の設置を進めてきました。現在では23区と多摩地区で、約40ヵ所が稼働しています。保険適用の行政検査を担うのが、このPCRセンターと、従来からの帰国者・接触者外来(都内に84ヵ所)です。その他に、保険診療外で行政が負担する「行政検体」と呼ばれる濃厚接触者の検査を担う東京都健康安全研究センターなどの地方衛生研究所があります。3~4月には、帰国者・接触者外来だけでは医師が「PCR検査が必要」と判断した症例に対応しきれず、検査ができないために診断ができない症例が急増したという状況がありました。こういった状況を改善するために、地域の状況を踏まえながらPCRセンターの設置を進めました。現在の約40ヵ所というのは適正な数ではないかと考えています。かかりつけ医の検査依頼先としては、どちらに依頼するかに差異はありませんが、現在も帰国者・接触者外来では対応しにくい場合もあると聞いていますので、各地域のPCRセンターを活用いただきたいと思います。発熱外来の設置も推進していますか?都医師会として、発熱外来の設置を積極的に推進するということはしていません。というのも、地域によって医療機関の状況に違いがあるからです。たとえば私のクリニックは三鷹市にありますが、三鷹市では医療機関に状況を聞いたところ、約半数の医療機関が発熱者の診療が可能との回答がありました。そこで、発熱者の診療はその半数の医療機関で行うという役割分担を行いました。ただ、地域によってはその役割分担が難しいという場合もあり、その場合は、都内でもいくつか発熱外来を設置している地域があります。「発熱外来の設置」という形式を重視するのではなく、各地域で発熱者の診療を適切に行う体制を整えることが重要と考えます。抗原検査や唾液検体の活用状況について教えてくださいまず抗原検査は、2つに分けて考える必要があります。簡易検査は30分ほどで結果が出て、非常に簡便ですが、精度は劣るようです。東京都で発生したあるクラスターで比較したところ、PCR検査結果との一致率は高くなかった。一方の定量検査は、精度は良好だが専用の機器が必要になる。この機器があるのは全国で現在800ヵ所程度と聞いているので、都内では80~100ヵ所程度ではないでしょうか。抗原定量検査は、救急の現場での活用を推進していくべきではないかと考えています。4~5月には、救急に運ばれてくる患者さんが新型コロナウイルス感染者かどうかわからないということが、現場の大きな負担になりました。各医療機関内で検査を完結することができれば、感染の有無によって対応できます。東京都医師会では東京都に対して、約250ある都内の2次救急病院へ抗原定量検査あるいはPCR検査の機器を導入してもらえるよう、要望をしています。唾液検体の活用がPCR検査と抗原定量検査で認められたことは、非常に大きな変化です。先ほど、PCRセンターの設置数は現状で適正と話しましたが、感染リスクの少ない唾液検体の採取であれば、より多くの医療機関で対応できる可能性がある。そこで当会では、人口1万人当たり1ヵ所(都内で約1,400ヵ所)を目途にPCR検査可能な医療機関を整備していきたいと考えています。行政との契約方法もより簡便に行えるようになってきており、地区医師会などを通じた集合契約が結べるようになったことで、たとえば練馬区などでは、約60人以上のかかりつけ医の先生方が手を上げていただいたと聞いています。7月17日の事務連絡では契約をさらに簡素化する通知が出ており、より多くの医療機関で担っていくことができるのではないかと期待しています。唾液検体の搬送については、従来の民間検査会社が行っている血液や尿検体の搬送と併せて行うことができ、大きな障壁にはならないだろうと考えています。今後、かかりつけ医に求められるのはどのような役割でしょうか?基本的な考え方は4~5月と変わりありません。発熱や感染の不安のある患者さんには、まず電話で相談してもらうよう伝え、電話で可能な範囲で対応をする。この時点で、不安のみが先行していた患者さんについては、除外することができます。先日発表された東京都での約2,000例の抗体検査結果では、感染者は0.1%程度。局地的にクラスターが発生する可能性は常にあるものの、基本的に発熱患者の多くが新型コロナ感染症以外であり、通常の発熱診療・トリアージを行っていただきたい。そして標準予防策をきちんと実施していれば、通常の診療だけでは濃厚接触者にはあたらず、感染リスクは非常に低い。ただし、これからインフルエンザのシーズンが始まると、検査時のリスクが高まります。そこで現在、日本感染症学会を中心にかかりつけ医のための診療のフローチャートをまとめていて、近日中に公表される予定です(注:8月3日に日本感染症学会ホームページ上で公表された)。また現在、宿泊療養施設を増やす努力がされていますが、それでも自宅療養者が激増することはありえます。保健所の業務量は過大となっており、自宅療養者に対しては、やはりぜひかかりつけ医の協力が必要です。陽性者が出た時点で、医師は発生届を提出する義務があります。そこで終わりではなく、継続的な支援をぜひお願いしたい。たとえば、濃厚接触歴をヒアリングすることもできるだろうし、自宅療養中に1日2回、電話で状況を聞くこともできる。それらにより、保健所の負担を軽減できるのではないかと思っています。いま以上に爆発的に感染者が増加する可能性に備えた、東京都医師会としての医療体制整備の考え方・対策案についてお聞かせください継続して要請を行っているのが、1,000~2,000床を備えた、新型コロナ専門病院の設置です。現在の各病院に病床数の確保を求めていくやり方では、通常の医療への影響が大きく、各病院への負担も大きい。新型コロナ専門病院に機能を集約させて、その他の病院では通常通りの診療を行っていくことが、医療全体を維持していくために必要ではないかと考えています。そのうえで、2次救急病院へのPCRないし抗原検査を実施するための機器および必要に応じた人的補完、唾液検査可能な医療機関の拡大、かかりつけ医による自宅療養者へのサポートを推進できるよう、東京都医師会として、各所に要請・支援を行っていきたいと考えています。(インタビュー:2020年7月27日、聞き手・構成:ケアネット 遊佐 なつみ)参考東京都医師会 新型コロナウイルス感染症情報