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前立腺がんに対する短期集中的な放射線治療は安全に実施可能

 前立腺がんに対して通常よりも短期間で集中的な放射線治療を行っても安全である可能性が、新たなパイロット試験で示された。1回当たりの放射線量を増やして通常の5回照射を2回照射に減らしても、5回照射と比べて副作用が増えることはなかったという。英Royal Marsden NHS Foundation Trustおよび英ロンドン大学がん研究所のSian Cooper氏らによるこの研究結果は、欧州放射線腫瘍学会(ESTRO 2026、5月15~19日、スウェーデン・ストックホルム)で発表された。 研究グループは、「この小規模試験の結果は、わずか数回の通院で安全かつ有効な放射線治療を実施できる可能性を示している」と述べている。またCooper氏は、「患者にとって、2回の治療コースは従来の放射線治療で必要とされてきた数週間にわたる毎日の通院より、はるかに負担が少ない。この利便性は、仕事、余暇、家族生活、旅行といった面で明確な利点をもたらす」と話している。 この小規模臨床試験では、局所前立腺がん患者46人を登録し、2週間で5回放射線照射を行う標準治療と同じ総線量を8日間で2回の照射にした場合の安全性を検討した。対象者のうち、24人は標準的な5回照射を、22人は集中的な2回照射を受けた。治療は全て、最新鋭のMRリニアックシステムを用いて実施された。この装置はMRI画像診断と放射線照射を組み合わせたもので、リアルタイムでMRI画像を得られるため、周囲の正常組織への照射を抑えながら前立腺を高精度に照射できる。 その結果、両群とも約4人に1人に治療後6カ月から2年の間に頻尿や切迫尿など泌尿器系に中等度の副作用が生じたが、泌尿器系や腸管系での重度の副作用は報告されなかった。勃起障害が見られた患者は、5回照射群の方が2回照射群より多かった。 Cooper氏はニュースリリースで、「2年後の時点で、患者らは生活の質(QOL)にほとんど変化がないと報告した。2回照射群が経験した副作用は、標準的な5回照射群と比較して差がないか、あってもごくわずかだった」と説明している。 ESTRO会長であるチューリヒ大学(スイス)放射線腫瘍学ディレクターを務めるMatthias Guckenberger氏は、「前立腺がんに対する放射線治療は、手術と比較して膀胱機能障害や勃起障害のリスクを低減できる可能性がある。治療を2回に限定することで患者の通院回数を減らすことができるため、放射線治療施設から遠方に住む患者にとっても治療完遂が容易になる」と述べている。 ただし、MRIを用いて放射線を精密照射できる装置を備えた病院は、現時点ではまだ多くないという。Guckenberger氏は、「今回の試験で使用された技術は、現在のところ、世界でも限られた専門施設にしか導入されていないが、その数は急速に増加している。今回の結果は、こうした技術の活用法を導く助けとなり、2回照射の放射線治療が新たな標準治療となるべきかどうかを理解する一助となる可能性がある」と述べている。 研究グループは、より短期間で集中的な放射線治療が、前立腺がんに対して標準的な5回照射と同等の有効性を持つかどうかを確認するため、さらなる研究が必要であるとしている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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高齢者認知症の2割に「ADとDLB併存」、見極めのポイントは?【外来で役立つ!認知症Topics】第42回

新規個別指導での「痛いところを突く」一言新規開業した院長なら誰もがビクビクと気になるものに「新規指定の個別指導」がある。これは保険医療機関として新たに指定を受けた後、保険診療や診療報酬請求が適切に行われているか否かを確認するための指導だ。筆者の場合、長く印象に残る指導者の一言があった。「診療録の診断名に、アルツハイマー病(AD)疑いとレビー小体型認知症(DLB)疑いと2つあるけど、今でも鑑別できないんですか? 長年認知症の医療をやっているんでしょう?」当初「うーん?」と思ったが、「ああそうか、普通の内科医には、両者の微妙な関係は知られていないんだ」と気付いた。とはいえ、筆者も実は鑑別が難しいとわかったのは、てっきりADと思っていたケースに幻視や寝ぼけ、そしてパーキンソン症候などが加わって「ありゃ! DLBだったよ、見誤った」と内心忸怩の思いを抱く、といった体験を重ねた末のことである。このような経験は、認知症の臨床に携わってきた人であれば、ときにあるのではないだろうか。ADとDLBの「併存」は決して珍しくないこの両者の併存に関するレビューを読んだので、今回はその概要を紹介しよう。「α-シヌクレインシード増幅アッセイ」は、DLBやパーキンソン病(PD)の革新的な診断法として知られる。これを用いて診断した研究報告を、このレビューが総括している1)。疫学的には、認知機能障害のある高齢者の20~25%で、また障害のない高齢者でも8%に両者の共存が見られるとされる。症状では、両者が併存すると、単独の例に比べて認知機能低下の速度が速く、記憶のみならず、注意や遂行機能という前頭葉機能、さらに視空間機能や運動機能まで広範に悪化しやすいと述べている。「知れば知るほどわかってくる」多様な臨床スペクトラムもっとも、病理が併存する症例の臨床症状のスペクトラムは広い。経験的にも、典型的なADと典型的なDLBの混合したような形態になることもある。しかし、早期からの記憶障害、また言語や視空間の機能障害も目立つ「AD寄り」のケースもある。こうした症状は一般的なDLBやPDでは初期からあまり出ない。逆に「DLB寄り」ケースの症状としては、症状の変動、幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害などが比較的初期から見られる。画像を拡大するしかし注意すべきは、初期からこれらがすべてそろっていることはまれだということだ。よく診ると、「どれか1つか2つかをはらんでいるな」というレベルが多いと思う。DLBの最初の報告者である故・小阪 憲司先生がよく「知れば知るほどわかってくるDLB」とおっしゃっていたが、以上のような広いスペクトラムを指しておられたのだろう。3つの異常蛋白が絡み合うメカニズムと新たな治験さて、こうしたAD+DLBの症例に既存の抗アミロイドβ抗体薬を投与する治験が始まると聞いた。患者数の多さからいっても重要なのだが、病気のメカニズムに迫る視点からも興味深い。というのは、アミロイドβとタウ、α-シヌクレインと3つある異常蛋白のうち、「アミロイドβを叩けば、その分、症状の悪化が抑えられるのだろうか?」あるいは「3者が影響し合って相乗的な効果がもたらされるのだろうか?」という意味である。ADならアミロイドβとタウ、DLBではα-シヌクレインと、主要な異常蛋白は異なっても、共通する点はシナプス障害やネットワークレベルの異常である。ADではアミロイドβとタウの蓄積が進行するに伴ってシナプス機能の障害が拡大していくとされる。DLBではα-シヌクレインからなるレビー小体、レビー神経突起と、その前段階とされるオリゴマーが神経ネットワークを障害する。画像を拡大する既述したように、併存例では単独例よりも認知機能の低下速度が速いとされる。その背景について、病理学的観点からは、AD+DLB例ではアミロイドβ、タウ、α-シヌクレインが互いに影響し合って、シナプスレベルあるいは神経回路レベルでの障害が増幅するのではないかと言われている。連鎖する「ドミノ倒し」をどう防ぐかADの悪役アミロイドβだが、その生理的機能として、神経の成長と修復に欠かせない役割を果たしている。また、本来タウは軸索にあって物質輸送に重要な微小管の安定性を調節している。一方でDLBのα-シヌクレインは生理的に、神経終末において神経伝達物質の放出の制御に関わっていると考えられている。ところが、過剰なα-シヌクレインはGSK3βを介してタウのリン酸化を促進する。さらに神経終末の過剰なα-シヌクレインはexocytosis(開口放出)によってシナプス間隙に放出され、後シナプスに取り込まれる。するとドミノ倒しのように神経細胞への障害が連鎖していくと考えられている。今回の治験によって、こうした仮説の是非、新たな創薬の端緒や方向性などが見つかるのではないかと期待される。臨床での気付き:ADと思ってもDLBを頭の片隅に終わりに、このような合併例への気付きを述べる。とくに第一印象で「ADかな?」と思った例でも、DLBも頭の片隅に置くことが大切だろう。上記したような症状の特徴(幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害、症状の変動)がまずポイントになる。また脳画像では、PETやSPECTでの帯状回島兆候(cingulate island sign:CIS)が重要である。ADでは周囲と比較して、後部帯状回から楔前部・楔部の循環・代謝が低下しやすいが、DLBでは比較的保たれるため、それを反映するCIS値は鑑別上役立つ。さらに大脳MRIにおける脳幹背側の萎縮も大切だ。これら2つは、通常、読影レポートにも記載されている。 1) Baiardi S, et al. In vivo detection of Alzheimer's and Lewy body disease concurrence: Clinical implications and future perspectives. Alzheimers Dement. 2024;20: 5757–5770.

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ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

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第321回 病床大削減時代が到来! 予算規模7.5倍の新制度に生まれ変わった「病床数適正化緊急支援事業」申請開始

グレードアップして今年も行われる病床数適正化のための支援事業こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。世の中がサッカーのワールドカップ一色になって来ました。テレビは地上波、BS含め、数多くの解説者を集めて、解説・分析合戦を繰り広げていますが、中には日本代表が弱かった時代の昔過ぎる元選手を呼ばざるを得ない番組もあって、今の時代には合わない根性論的なコメントや非論理的な分析の数々に、炎上するのではないかとハラハラしている今日この頃です。さて今回は、今年も募集が行われる病床数適正化緊急支援事業について書いてみたいと思います。昨年に続き、病床を削減する医療機関を支援する事業が行われます。予算規模は3,490億円と、昨年の7.5倍に膨れ上がりました。自民・公明・維新の3党は2025年5月、社会保障改革に関する合意文書で全国の医療機関の余剰病床約11万床を削減する方針をまとめており、それを達成するための大胆な予算措置と言えます。昨年に続いて数多くの申請が集まりそうです。医療機関からの申請を6月23日から受け付けるよう都道府県に周知病床削減する医療機関を支援する「病床数適正化緊急支援事業」について、 厚生労働省は6月16日付の事務連絡で、医療機関からの申請を6月23日から受け付けるよう、都道府県に周知しました。4月の事務連絡では初回の申請は6月末を締切予定としていましたが、正式な受付開始日は決まっていませんでした。申請は厚労省のWebサイトに掲載されている申請様式を、指定の申請フォームに送信する形式です。申請予定の医療機関はすでに準備済みと思われますが、該当医療機関(2025年12月16日~2027年3月31日に病床削減を行う医療機関、事業計画書を提出し2024年12月17日~2025年9月30日に病床削減を行った医療機関等)は、申請忘れをしないようにしたいものです。削減した病床1床につき410万4,000円交付「病床数適正化支援事業」(旧名称)は、2024年末の補正予算を機に始まった制度です。背景には、地域医療構想が進む中、病床をただ減らすのではなく、経営が厳しい医療機関を支えつつ、実際の医療需要に合わせて病床を調整したいという国の意向がありました。2024年12月17日の令和6年度補正予算成立後、同日から期日内(2024年度中が原則)までの病床削減を対象とする支援として「医療施設等経営強化緊急支援事業」の1つとして「病床数適正化支援事業」がスタートしました。この段階では、一般病床・療養病床・精神病床の削減に対して、削減病床1床につき410万4,000円交付される仕組みでした。昨年の「病床数適正化支援事業」 は削減病床計1万1,278床、総額462億8,491万円この最初の「病床数適正化支援事業」については、昨年の本連載「第256回  “撤退戦”が始まっていることに気付かない人々(後編) 長崎大病院全病床の1割以上に当たる98床削減、国も『病床1床減らせば410万円』の補助金用意、“撤退戦”本格化の兆し」、「第262回 “撤退戦”本格化へ 1床削減で410万円補助の『病床数適正化支援事業』、計7,000床程度の想定に全国で計5万4,000床の申請、倍率は7.7倍!」などでも詳しく書きました。「病床数適正化支援事業」の第1次内示は2025年4月11日に内示されましたが、配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床でした。福岡 資麿厚労相(当時)は記者会見で、過剰な入院用のベッドを減らした場合に支給する補助金への申請について、当初は計7,000床程度の削減を見込んでいましたが、想定の7.7倍、全国で計5万4,000床に上ったことを明らかにしました。申請数は約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床だったそうです。2025年6月27日に公表された第2次内示では配分額約168億円 、対象病床数は4,108床でした。「一般会計の繰入等がない医療機関」という条件を付けて第1次内示で公立病院を対象外としたことが一部で物議を醸したことから、第2次内示では公立病院も対象となっています。令和6年度補正予算による「病床数適正化支援事業」 は最終的に、4月の第1次内示と合わせて削減病床は計1万1,278床、総額462億8,491万円に上りました。国がお金をばらまき始めてやっと“撤退戦”が本格化したと言えるでしょう。「病床数適正化緊急支援事業」へと名称変更、支援のスキームも改変さて、昨年は「病床数適正化支援事業」でしたが、今年(令和7年度補正予算)は「病床数適正化緊急支援事業」へと名称が変わっています。「緊急」という言葉が付いた理由は、医療需要の変化(特にコロナ後の急激な減少)に迅速に対応し、病床削減を「緊急」に促進する必要があると政府が判断したためとされています。支援のスキームも大きく変わりました。これまでは厚生労働省の「医療施設等経営強化緊急支援事業」の一事業で、都道府県が給付金を支給し、国がその財源を補助する仕組みでした。それが、2025年に成立した改正医療法で「医療機関が経営の安定を図るために緊急に病床数を削減することを支援する事業」を都道府県が実施できる規定が新たに設けられたことで、今年度(令和7年度補正予算の繰越事業)からは、国が基金を作り、都道府県が事業主体となって行う新たな事業に生まれ変わったのです。制度の法的位置付けと政策目的が格段に強化されることになったわけです。今年の「病床数適正化緊急支援事業」の予算は3,490億円と実に7.5倍、単純計算で実に8万5,000床分用意予算規模も大きく変わりました。昨年の令和6年度補正予算による「病床数適正化支援事業」の実績は総額約463億円でしたが、令和7年度補正予算の「病床数適正化緊急支援事業」は3,490億円と、実に昨年の7.5倍となっています。自民・公明・維新の3党は2025年5月、社会保障改革に関する合意文書で、2027年4月の「新たな地域医療構想」スタートまでに全国の医療機関の余剰病床約11万床(一般・療養5万6,000床、精神5万3,000床)を削減する方針をまとめており、それを達成するための予算措置と言えます。1床削減で410万円(休床の場合は205万円)ですから、単純計算で実に8万5,000床分が用意されたことになります。合意文書では「11万床を削減すれば医療費1兆円の削減効果」と記されていましたが、その成否はともかく、日本が病床数大削減時代に入ったことは確かでしょう。病院経営者は、「新たな地域医療構想」を先取りしたと言われる2026年度診療報酬改定の内容を吟味しながら、2040年に向けての自院の病床数の適正規模を、真剣に考える時が来たと言えるでしょう。

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夜間家庭血圧の測定に手首式血圧計は有用

 夜間血圧は高血圧管理における確立された予後因子であるが、携帯型血圧計による測定が負担となる。今回、自治医科大学の苅尾 七臣氏らが、上腕式血圧計よりも睡眠への影響が少ない手首式血圧計を用いて検討したWISDOM-HMOD研究の結果、手首式血圧計による夜間血圧が左室肥大および心不全を含む後遺症の独立したリスク因子であることが示唆された。Hypertension誌2026年7月号に掲載。 本研究は、2021~24年に登録された高血圧または心不全患者1,218例(平均年齢67.2歳、男性53.9%)を対象とした前向き研究である。参加者は手首式血圧計(HEM-9601T、オムロン)を用いて、7日間の夜間血圧(午前2時、3時、4時、および就寝4時間後)と朝・夕の血圧を測定した。 主な結果は以下のとおり。・夜間収縮期血圧の上昇は、診察室血圧や朝・夕の家庭血圧とは独立して、左室心筋重量係数(LVMI)の増加と有意に関連していた。・夜間収縮期血圧の10mmHg上昇ごとのオッズ比は、全体で1.36(95%信頼区間:1.15〜1.60)、男性で1.54(同:1.19〜2.00)、女性で1.27(同:1.01〜1.58)であり、男女共に左室肥大のリスク因子であった。これは、診察室血圧や朝の家庭血圧などの共変量とは独立していた。 著者らは「本研究は、手首式オシロメトリック血圧計で測定した夜間の家庭血圧が独立して左室肥大に関連しており、朝の血圧に加えて補完的な情報を提供することを示した初めての研究である」とした。また、これらの結果は「高血圧患者における心血管リスク評価において、夜間血圧が重要な役割を果たす可能性を示唆するもの」としている。

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うつ病や不安に対する笑い療法、その効果と最適な介入期間が明らかに

 笑い療法は、心理的苦痛に対する実用的かつ効果的な代替療法として注目されている。台湾・亜洲大学のChia-Yu Liu氏らは、笑い療法の有効性をさらに検証するため、試験逐次分析(TSA)を統合し、用量反応メタ解析を用いて、最適な治療期間を検討した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2026年4月16日号の報告。 本システマティックレビューでは、主要データベース(PubMed、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Library)より各データベースの創設時から2023年11月12日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を検索した。対象は、うつ病、不安、ストレス、疼痛、生活の質の改善を目的とした笑い療法に関する研究とした。エビデンスの確実性の評価にはTSA、最適な治療期間の検討には用量反応メタ解析を用いた。研究情報、患者特性、介入の種類、介入期間などのデータを抽出した。アウトカムに関する情報(アウトカムの種類、測定ツールなど)およびエフェクトサイズ推定に必要な統計データの抽出は、2人の独立した著者により行った。 主な結果は以下のとおり。・33件の研究を分析対象に含めた。・笑い療法により、うつ病(標準化平均差[SMD]=-0.9、95%信頼区間[CI]:-1.29~-0.52)、不安(SMD=-0.83、95%CI:-1.16~-0.50)、ストレス(SMD=-0.68、95%CI:-1.02~-0.33)に対する有意な軽減が認められた(各々、p<0.001)。・用量反応メタ解析では、累積治療期間がうつ病に対して400分、不安に対して600分までは改善効果が大きく、それ以降は効果が頭打ちになることが明らかになった。・サブグループ解析では、笑い療法は、年齢、患者の状態、ケア環境を問わず、うつ病、不安、ストレスを有意に軽減することが示された。 著者らは「笑い療法は、うつ病、不安、ストレスを効果的に軽減した。また、これらの効果を得るための最適な治療時間が特定された。本研究は、笑い療法のエビデンスを強化し、臨床応用に向けた今後のRCTの実施を支持する根拠を提供するものである」と結論付けている。

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タファシタマブとレナリドミドの併用、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に承認/インサイト・ジャパン

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は6月19日、タファシタマブ(商品名:ミンジュビ)とレナリドミドの併用療法について、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療として、製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。タファシタマブは、国内で再発または難治性の濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブおよびレナリドミドとの併用療法として承認されており、本承認が2つ目の効能の承認となる。 本承認は、自家造血幹細胞移植の対象とならない再発・難治性のDLBCLを対象とした国際共同第II相試験であるMOR208C203試験(L-MIND試験)と、国内第Ib/II相試験であるINCMOR 0208-102試験パート4(グループ6)(J-MIND試験)の結果に基づいている。 L-MIND試験における独立評価委員会の評価において、主要評価項目である奏効率(ORR)は58.8%であり、そのうち完全奏効(CR)は41.3%、部分奏効(PR)は17.5%であった(データカットオフ:2018年11月30日)。追跡期間中央値44ヵ月以上における奏効期間中央値は未達だった。また、J-MIND試験における独立評価委員会判定によるORRは71.4%であり、そのうちCRは45.2%、PRは26.2%であった(データカットオフ:2023年8月31日)。主な副作用は好中球減少、血小板減少などであった。

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デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ

 アストラゼネカは2026年6月19日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、「胃がんにおける術前・術後補助療法」の適応で厚生労働省の承認を取得したと発表した。これにより同薬は、日本で初めてかつ唯一の切除可能胃がんに対する周術期免疫療法として使用可能となった。 胃がんは世界で年間約100万人が新たに診断される主要ながんの1つであり、日本でも罹患数第3位、死亡数第4位を占める。切除可能症例では手術と周術期治療が治癒を目指す標準的アプローチであるものの、依然として再発率は高く、さらなる予後改善が課題となっている。 今回承認されたレジメンは、デュルバルマブとFLOT療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン、ドセタキセル)を組み合わせた周術期治療(D-FLOTレジメン)である。用法・用量は、術前および術後にそれぞれ最大2回、4週間間隔でデュルバルマブ1,500mgをFLOT療法と併用投与し、その後デュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大10回投与する。 今回の承認は国際第III相MATTERHORN試験の結果に基づくもの。同試験は、切除可能なStageII~IVAの胃がんまたは食道胃接合部がん患者948例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験である。患者はデュルバルマブ+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に割り付けられ、主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)とされた。 計画された中間解析では、デュルバルマブ併用群は対照群と比較して病勢進行、再発または死亡のリスクを29%低下させた(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。EFS中央値は対照群の32.8ヵ月に対し、デュルバルマブ群では未到達であった。24ヵ月時点のEFS率は67.4%対58.5%と、デュルバルマブ群で良好な結果が示された。 さらに最終全生存期間(OS)解析では、死亡リスクが22%低下した(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.021)。3年生存率はデュルバルマブ群69%、対照群62%であり、経時的に生存曲線の乖離が拡大する傾向が認められた。OSベネフィットはPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 安全性については既知のプロファイルと概ね一致していた。Grade3以上の有害事象発現率はデュルバルマブ群71.6%、対照群71.2%と同程度であり、手術完遂率にも大きな差はみられなかった。 日本人サブグループ解析では、デュルバルマブ群40例、プラセボ群46例が登録され、有効性および安全性はいずれも全体集団と同様の傾向を示した。 愛知県がんセンターの室 圭氏は、「周術期D-FLOTレジメンは日本の患者にも新たな治療選択肢となり、周術期免疫療法が新たな標準治療となる可能性がある。切除可能胃がん治療における大きなパラダイムシフトである」とコメントした。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループ代表の吉川 貴己氏も、「依然として高い再発率を背景に、より強力な周術期治療が求められていた。本承認は切除可能胃がん患者の予後改善に向けた重要な選択肢となる」と期待を示した。 今回の承認により、切除可能胃がんに対する周術期治療戦略は、化学療法単独から免疫療法併用へと移行する可能性がある。【製品概要】(下線部が今回より追加)製品名:イミフィンジ点滴静注120mg、イミフィンジ点滴静注500mg一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:・切除不能な局所進行の非小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法・切除不能な進行・再発の非小細胞肺・非小細胞肺における術前・術後補助療法・進展型小細胞肺・限局型小細胞肺における根治的化学放射線療法後の維持療法・治癒切除不能な胆道・進行・再発の子宮体・膀胱における術前・術後補助療法・胃における術前・術後補助療法

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糖尿病患者の治療薬、残歯数と周術期死亡の関連/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第69回年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 近年、口腔内の衛生状態が糖尿病や心不全をはじめとするさまざまな疾患と関連することが知られている。糖尿病患者では、治療薬と残歯数は手術後の死亡リスクに関係するのであろうか。この課題について尾崎 邦彰氏、高橋 裕氏ら(奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科学講座)の研究グループは、同公衆衛生学教室との共同研究により、口演52「大規模臨床試験」において「糖尿病薬の周術期死亡リスクへの影響は残歯数によって異なる:レセプトビッグデータ解析」をテーマに発表を行った。 研究グループは、大規模レセプトデータを調査・解析し、その結果、一定の糖尿病治療薬と残歯数は手術後の死亡率と相関していることが判明した。糖尿病患者の口腔ケアは周術期の死亡リスクを減らす可能性 高橋氏らの研究グループは、糖尿病と残歯数はともに周術期リスクとなるが、同一コホートで検討した報告がないことから、周術期死亡に対して糖尿病治療薬と残歯数が与える影響を検討した。 研究は後方視的研究により1,700万人登録の商用DeSCデータベース(国民健康保険、後期高齢者医療広域連合および健康保険組合より提供されたレセプト情報・特定健診情報が含まれている)を使用した。対象者は18歳以上で全身麻酔下の手術が行われた人で、主要アウトカムは術後30日以内の死亡、副次的な解析として糖尿病治療薬と手術後死亡との関連、および残歯数について検討した。糖尿病の定義は、手術前6ヵ月以内に糖尿病治療薬が処方された人。 主な結果は以下のとおり。・手術を受けた対象者は124万1,425例、そのうち歯の本数の情報がある対象者は56万1,515例だった。このうち術後30日以内の死亡は3,414例だった。・対象者のプロフィールとして、糖尿病群では高齢、男性の割合が高く、死亡割合も高かった。・残歯数について、死亡者では糖尿病群と比べて約1.7本少なく、平均では残歯数20本の人が多かった。・残歯数23本以下では糖尿病患者が多く、残歯数26本以上では非糖尿病患者が多かった。・糖尿病を有することで死亡割合は約1.85倍に増加した。・糖尿病の有無によらず、残歯数が少ないほど死亡割合も増加していた。・手術後死亡の関連因子では、インスリン使用、加齢、残歯数の減少が死亡リスクの増加と関連していた。・層別化すると残歯数20本以上の群ではビグアナイド薬の使用が、20本未満の群ではチアゾリジン薬の使用が死亡リスクの低下と関連していた。 研究グループは、これらの結果から「糖尿病の罹患が周術期後の死亡の増加と関連し、残歯数も少なくなることとも関連することが判明した。また、残歯数が少ないことが周術期後の死亡の増加と関連することも判明した。糖尿病患者には、診断時から口腔(歯)への介入が推奨されている一方で、歯科受診は半分に満たないという報告もある。そして、糖尿病患者で残歯数20本未満の68歳の死亡リスクは、糖尿病ではない残歯数20本以上の80歳の死亡リスクと同等であることが示された。加齢、糖尿病の存在、残歯本数の減少はそれぞれが関連しながらも独立して死亡リスクと関連した。これらの結果から糖尿病患者には、歯の喪失に関連して、比較的若年であっても高齢者に相当するリスクを有するため、適切な歯科的介入の重要性が示される」と述べている。

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早期パーキンソン病へのprasinezumab、レボドパ併用で進行遅延の可能性/Lancet

 安定した対症療法を受けている早期段階のパーキンソン病患者の治療において、prasinezumab(αシヌクレイン凝集体のC末端に結合するヒト化モノクローナル抗体)を追加しても運動症状の進行の有意な遅延をもたらさないが、探索的解析の結果などから有望な疾患修飾治療となる可能性が示唆されることが、スイス・F. Hoffmann-La RocheのTania Nikolcheva氏らが実施した「PADOVA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2026年5月30日号で報告された。9ヵ国の第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験 PADOVA試験は、欧州と北米の9ヵ国110施設で実施した第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較優越性試験(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。2021年5月~2023年3月に、年齢50~85歳、パーキンソン病の診断後3ヵ月~3年が経過し、Hoehn-Yahr重症度分類の1または2度で、レボドパまたはMAO-B阻害薬による対症療法(単剤)を3ヵ月以上受けている患者586例(平均年齢64.2[SD 7.3]歳、女性214例[37%])を登録した。 被験者を、対症療法に加え、prasinezumab(1,500mg、4週ごと)を静脈内投与する群(293例)またはプラセボ群(293例)に無作為に割り付け、76週間以上投与した。 主要エンドポイントは、確認された運動症状の進行イベントまでの期間(運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度[MDS-UPDRS]パートIIIによる休薬時スコアの5点以上の上昇)とし、最大の解析対象集団で評価した。主要エンドポイントは達成されず、安全性/忍容性プロファイルは良好 550例(prasinezumab群277例、プラセボ群273例)が二重盲検下の治療を完了した。ベースラインで586例中435例(74%)がレボドパ、151例(26%)はMAO-B阻害薬の投与を受けていた。 主要エンドポイントは達成されなかった。主解析では、プラセボ群との比較において、prasinezumab群で運動症状の進行の遅延は認めなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.69~1.01、p=0.066)。 また、prasinezumab群における確認された運動症状の進行までの期間中央値は61.1週間(95%CI:52.3~71.9)であったのに対し、プラセボ群は49.7週間(95%CI:40.1~58.1)であった。 一方、事前に規定された探索的解析では、レボドパによる対症療法を受けているサブグループにおいて、prasinezumab群で運動症状の進行の遅延がみられた(HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、名目上のp=0.044)。 prasinezumab群の安全性および忍容性プロファイルは良好であった。最も頻度の高い有害事象(器官別大分類[SOC])は、感染症/寄生生物(prasinezumab群58%[169/292例]、プラセボ群54%[157/290例])だった。 1件以上の重篤な有害事象の発生率は両群で同程度であった(prasinezumab群12%[34/292例]、プラセボ群12%[34/290例])。prasinezumab群で2例が重篤な有害事象(急性心筋梗塞1例、心内膜炎1例)により投与中止に至り、このうち心内膜炎はprasinezumab関連と判定された。試験期間中に3例が死亡したが、いずれも試験薬とは関連がなかった(prasinezumab群1例[<1%]、プラセボ群2例[1%])。 著者は、「主要エンドポイントは達成されなかったものの、本試験のエビデンスからは、prasinezumabを効果的な対症療法と併用することで、早期パーキンソン病患者において進行を遅らせる可能性があることが示唆される」「第III相試験(PARAISO)におけるprasinezumabの継続的な検討が正当化される」としている。

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夜間の熱波で喘息リスクが上昇

 猛暑は喘息増悪の引き金となる可能性があり、特に夜間の熱波は喘息増悪リスクの上昇と関連することが、新たな研究で示唆された。米ボルティモアの病院データを解析したところ、熱波の発生後には喘息関連で救急外来(ED)を受診する患者が増加することが明らかになったという。米ジョンズ・ホプキンス大学地球惑星科学教授のBenjamin Zaitchik氏らによるこの研究の詳細は、「GeoHealth」に5月6日掲載された。 研究では、猛暑が夜間まで続いた場合に喘息増悪リスクが特に高まることが明らかになったという。Zaitchik氏は、「夜間に屋外が暑いと、エアコンのないタウンハウス(長屋)の2階の寝室は息が詰まるほど蒸し暑くなる。これは生死に関わる問題だといえる。なぜなら、人によっては致死性の喘息増悪を経験する可能性があるだけでなく、生活の質(QOL)や幸福感、子どもが子ども時代を楽しむ力にも影響を及ぼすからだ」とニュースリリースの中で述べている。 研究グループは今回、2016~2022年の夏季にボルティモアで発生した成人819件、小児695件の喘息増悪によるED受診を対象に、患者の居住地ごとに、土地利用や都市構造を基に推定した高解像度の日中・夜間気温データを割り当てた。熱波の定義は研究により異なるため、本解析では、11種類の既存の熱波指標を用いた。これらの指標における熱波の判定には、ボルティモア空港で取得された1991~2020年の30年間の気温データの統計分布が基準として用いられた。その上で、これらのデータを基に、暑さと喘息増悪との関連を解析した。 その結果、地域レベルの気温データを用いた解析では、夜間の最低気温がその地域として異常に高い場合に、喘息関連のED受診との強い関連が認められた。小児患者の場合、夜間の熱波後に喘息増悪のリスクが28~38%上昇し、成人患者でも26~40%の上昇が見られた。また、小児患者では地域差が見られ、特に社会的に脆弱な地域ではリスク上昇が顕著だった。一方、空港の気象観測データを用いた熱波指標では、夜間よりも昼間の極端な暑さとの関連が示されたが、ボルティモア市の猛暑警報(コードレッド)に用いられている指標では有意な関連は認められなかった。 研究グループによると、連夜にわたって暑さに長時間さらされ続けると、喘息症状が増悪する可能性があるという。論文の上席著者であるジョンズ・ホプキンス大学医学部の喘息プレシジョンメディシンセンター長のMeredith McCormack氏は、「喘息の増悪や喘息発作は、咳や胸の圧迫感、息切れなどの症状の増加から始まることがある。EDを受診する前に、吸入薬の使用回数を増やすなどの方法を試す患者もいるだろう。そのため、ED受診を要するほど症状が悪化するまで、数日間のタイムラグが生じる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 また、McCormack氏によると、夜間の暑さは身体が休息し回復する機会を奪うため、喘息患者に大きな負担を与えるという。さらに、身体の防御機能の一部は夜間に低下する。例えば、気管支拡張作用を持つアドレナリンの血中濃度は周期的に午前3時前後に自然に低下するため、この時間帯には喘息症状を抑える働きが弱まる。 研究グループは、今回の研究の結果を踏まえ、日中の気温予測に基づいた猛暑警報システムでは、本来の効果が発揮されていない可能性があるとの見方を示している。また、現在は、地域の気象局観測所で測定された単一の気温データが市全体の代表値として用いられているが、都市部では地域ごとに気温を測定する方が住民の助けになる可能性があるとも指摘している。論文の筆頭著者であるBianca Corpuz氏は、「暑さへの曝露量は地域によって大きく異なり、その違いは健康にも影響する。地域単位で気温を測定すると、広域の気象データでは捉えきれない傾向が見えてくる。各都市が脆弱な地域社会をしっかりと守るためには、こうした地域レベルの情報が極めて重要になる」と述べている。

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NY市のカビ対策プログラムで喘息による救急外来の受診が25%減

 ニューヨーク市が実施したカビ対策プログラムによって、公営住宅の住民の間で喘息関連の救急外来(ED)受診数が減少したことが、新たな研究で示された。ニューヨーク市では2019年、集合住宅内のカビを原因とする喘息に苦しんでいた住民らが集団訴訟を起こしたことを受け、カビ対策プログラム「カビバスターズ(Mold Busters)」を構築した。研究を実施した米テキサス大学オースティン校のNina Flores氏らによると、同プログラムによって喘息関連のED受診数が25%減少したという。この研究は、米国胸部学会年次学術集会(ATS 2026、5月15~20日、オーランド)で発表された。この結果についてFlores氏は、「喘息の誘発要因に対処する住宅介入が、長年続いてきた喘息格差を縮める上で重要な役割を果たし得ることを示唆するものだ」と述べている。 米疾病対策センター(CDC)によると、カビは喘息の既知の誘発要因の一つである。研究グループによると、カビバスターズでは、公営住宅でのカビの報告に対する市の対応を改善し、エビデンスに基づいた最適なカビ除去方法に関する職員研修が行われた。 今回の研究では、2016〜2023年のニューヨーク市の公営住宅の建物単位で集計した喘息関連ED受診データを用いて、カビバスターズの対象となった公営住宅居住者の喘息によるED受診数を、所得水準が同程度の近隣地域の住民で構成された対照群と比較した。 その結果、カビバスターズの介入を受けた群の喘息関連ED受診数が、対照群と比べて1,000人当たり年間平均9.0件少なかった。これは、年間約2,800件の受診減少に相当する。また、カビの苦情が最も大きく減少した建物では、喘息関連ED受診数も大幅に減少した。Flores氏は、「このことは、カビバスターズが実際に住民の健康状態の改善に寄与した可能性を示している」と説明している。さらに同氏は、「今回の研究では、ED受診を要するほどではないが欠勤や学校欠席につながるような軽症の喘息やアレルギー症状については追跡していなかった。そのため、実際のカビバスターズの効果は研究で確認された効果を上回る可能性がある」との見解を示し、「本研究で報告された健康上のベネフィットは、この介入による全体的な健康関連のベネフィットを過小評価している可能性が高い」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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心カテ室とホルムズ海峡 ―医療用手袋の向こうに見える世界―【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第97回

手袋は空気のように存在している心カテ室でカテーテル検査やPCI(経皮的冠動脈形成術)を日々行っていると、どうしても見落としてしまうことがあります。それは、私たちが毎日当然のように使っている医療材料の多くが、実は遠く離れた異国の出来事に強く影響されているという事実です。その代表例が、医療用の手袋です。循環器内科医がカテーテルを挿入する時も、心臓外科医が患者の胸を開く時も、検査技師が採血をする時も、医療者の手には必ず手袋があります。あまりに当たり前すぎて、その存在についてあらためて考えることはほとんどありません。言ってみれば「空気」のようなものです。しかし最近(2026年6月)、その空気であるはずの手袋の供給がやや不安定になり、価格もじわじわと上がり始めています。その原因をさかのぼっていくと、病院の物品庫ではなく、どういうわけか遥か中東の海へと行き着くのです。病院は思った以上に石油依存である手袋は天然ゴムや合成ゴムで作られていますが、その製造には当然ながら膨大なエネルギーが必要であり、その起源は石油にあります。さらに包装資材も石油化学製品ですし、医療現場で使われるチューブやカテーテル、シリンジ、点滴バッグに至るまで、現代医療の武器の多くが石油由来の素材でできています。さらに言えば、医療機器を動かす電力、照明、空調、電子カルテなど、病院という空間そのものがエネルギーの巨大な消費地です。つまり、少し乱暴に言ってしまえば、病院は「コンクリートの建物」ではなく「石油の上に建っている構造物」と言っても大きく外れてはいません。患者の命を救う最前線が、実は原油価格の波にじわじわと揺さぶられているというのは、なかなか興味深い構図ですが、同時にあまり笑えない現実でもあります。トイレットペーパー騒動という記憶石油と生活の関係を語るうえで外せないのが、1973年の第1次オイルショックです。中東戦争をきっかけに原油価格は短期間で約4倍に高騰し、社会全体が一種のパニック状態に陥りました。その象徴が、いわゆるトイレットペーパー騒動です。店頭からトイレットペーパーが消え、人々は我先にと買い占めに走りました。私は当時小学生でしたが、あの狂騒はよく覚えています。とくに印象的なのは、私の母親が「今買わなければ大変なことになる」という強迫観念に駆られ、本気で買いに走った結果、我が家に数百本単位のトイレットペーパーが備蓄される事態となったことです。その後、数年間かけてそれを使い切ることになり、結果として我が家のトイレは長きにわたり「国家備蓄基地」のような様相を呈していました。今振り返るとやや滑稽に見える出来事ですが、その本質は単純です。つまり、「資源は無限ではない」という現実を、社会全体がいっせいに突きつけられた恐怖の記憶だったのです。中東情勢と医療材料の意外な関係1979年のイラン革命、続くイラン・イラク戦争によって引き起こされた第2次オイルショックを経て、世界はエネルギー供給の脆弱性を繰り返し経験してきました。そして2026年現在、米国とイランの関係悪化や軍事的緊張により、とくにホルムズ海峡の安全性が懸念されています。この海峡は世界の海上輸送原油の約2割が通過する重要な要衝であり、ここで何か起こると、現実に輸送が止まらなくても「止まるかもしれない」という不安だけで市場が跳ね上がります。その結果として原油価格が上昇し、ナフサ価格が上がり、石油化学製品の価格が上昇し、最終的に医療用手袋の価格や供給へと波及します。つまり、ホルムズ海峡の緊張が、巡り巡って滋賀の病院の手袋在庫を脅かすという、風が吹けば桶屋が儲かるような、不思議でリアルな連鎖が成立しているのです。医療版トイレットペーパー騒動の恐怖ある日、スタッフから「先生、手袋があと1週間分しかありません」と言われたとします。この一言で、循環器内科医の精神状態は一気に不安定になります。トイレットペーパーであれば、極論として新聞紙で代用するという荒技がないわけではありませんが(決して試したくはありませんが)、手術用手袋に関してはそうはいきません。「今日は手袋がないので素手で頑張りましょう」という選択肢は、感染対策的にも倫理的にも100%存在しないのです。この意味で、医療現場における「トイレットペーパー騒動」とは、手袋やカテーテル、注射器といった医療材料の物理的な枯渇を意味し、その深刻さは日常生活の比ではありません。日本経済は「虚血」に強くなったのかもっとも、現在は1973年当時とは事情が異なります。当時の日本は中東の石油にきわめて強く依存しており、その構造は循環器内科的に言えば、「左冠動脈主幹部(LMT)依存」の心臓のようなものでした。ここが1本閉塞すれば即座に心原性ショックに陥る、きわめて脆弱な状態です。しかし現在の日本は、エネルギー源の多様化や調達先の分散、国家備蓄の整備、省エネ技術の進歩などによって、かなり体質が改善されています。いわば、メインの冠動脈に狭窄はあるものの、側副血行路(コラテラル)やバイパス血管がしっかり発達している状態に近く、多少のトラブルではすぐに致命傷にはならない構造になっています。過去のショックという名の「心筋虚血」を経験した結果、世界は少しだけ虚血に強い循環動態を持つようになったと言えるかもしれません。いわゆる「虚血プレコンディショニング」の効果です。世界経済にも動脈硬化があるそれでも、中東情勢の緊張によって原油価格が上昇すれば、その影響は確実に末端の医療現場まで血流を悪くするように波及します。ナフサ価格の上昇を経て石油化学製品が値上がりし、最終的には医療材料のコストという形で病院の経営を圧迫します。カテーテルを操作しながらふと考えるのは、目の前の患者さんの冠動脈だけでなく、世界経済という巨大な循環器もまた、どこかで深刻な狭窄を抱えているのではないか、ということです。そして残念なことに、世界経済の狭窄に対しては、私たちが得意とするPCIもバイパス手術も適応はなく、少なくともホルムズ海峡にステントを入れるわけにはいかないのです。手袋1枚の向こうにあるものホルムズ海峡で一触即発の事態が起きれば、遠く離れた滋賀の病院で物品担当者が頭を抱えることになる。この一見すると非現実的にも思えるバタフライ・エフェクトこそが、現代社会の実態です。患者さんの前で装着する1枚の薄い手袋の背景には、ペルシャ湾を航行する巨大タンカーがあり、産油国の政治があり、国際情勢のパワーバランスがあります。病院は地域に閉じた世界ではなく、むしろ想像以上に細く、しかし切っても切れない糸で世界とつながっているのです。手術室で手袋をはめるたびに、そのゴムの向こう側に中東の砂漠と原油タンカーの姿がぼんやりと見えるような気がすることがあります。もっとも、そこまで壮大な妄想に耽っていると、次に気になるのは医療材料の納品書であり、物品担当者からは「先生、国際政治より、まずはうちの病院の診療報酬を心配してください」と、冷酷な現実に引き戻されるのですが。最後に一言だけそれでもあえて、医療現場の末端から国際政治に一言申し上げることが許されるならば、こうなります。トランプ大統領に対して、医療の安全を守る立場から、教育的指導として一言。「イラン事をしたら、アカン」現場からは、以上です。

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末梢静脈カテーテル、推奨される交換頻度は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第29回

Q29 末梢静脈カテーテル、推奨される交換頻度は?末梢静脈カテーテルの推奨される交換間隔はどのくらいですか? その期間は、どのような根拠を元に判断されているものなのでしょうか?

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認知症やせん妄、痛みの評価が難しい場合は?【非専門医のための緩和ケアTips】第126回

認知症やせん妄、痛みの評価が難しい場合は?痛みとの付き合い方は人それぞれではありますが、緩和ケアを提供している立場としては、できるだけ苦痛を和らげてあげたいと思いますよね。そうした医療者にとって難しさを感じるのが「痛みを訴えない患者さん」です。今日の質問私が担当している患者さんですが、症状緩和を丁寧にしようと思っても、いつも「大丈夫です」って反応で困っています。画像所見などからは痛みがあると思うので心配しています。ご家族に尋ねても、「我慢強いので、あまりつらいとは言わないだろう」ということでした。こうした場合にできる工夫はありますか?「痛くないです」と言うのに、表情が硬い、動かない、呼吸が浅い……、そんな「言葉と態度がかみ合わない」患者に出会うことがあります。痛みは主観的症状であり、患者の訴えから考えることが基本ですが、さまざまな理由から痛みを言葉で伝えられない患者がいるのも事実です。今回は「痛みを訴えない患者」を診る際に、私がルーチンで検討していることを紹介します。まず、こうしたケースで一番多い要因は「認知症」でしょう。私も担当する患者の大半が高齢者なので、真っ先に可能性を考えるのが認知症です。認知症といっても中核症状である物忘れよりも、軽度の認知機能低下を起こしているケースが多くあります。医療者が「痛みはどうですか?」といった言葉を掛けても痛みの概念化が難しかったり、表現する語彙が少なくなって言葉に詰まり、それを取り繕っていたりするのです。こうした場合は、本人の言葉だけではなく、動作時の様子などから痛みを判断し、「もう少し痛み止めを増やしたほうがよさそうだと思いますが、調整してよいですか?」といったようにアプローチします。せん妄もよく経験する原因です。注意障害で医療者側の質問を理解できていなかったり、睡眠覚醒のリズムがずれて日中にいつも眠っていたりする状況です。さらに、夜間に混乱が見られ、夜勤の看護師に痛みを訴えることもあります。この場合、まずはせん妄の原因が可逆的なものか、不可逆的なものかを判断することが最初のアプローチです。看護師と連携を取り、「せん妄を見逃さない」ように気を付けます。せん妄が見逃されている状況は、意外と多いものです。とくに興奮などを伴わない低活動性せん妄の場合、「ぼーっとしているだけ」「活気がないだけ」という印象にとどまりがちです。痛みだけに目を奪われず、せん妄による意識状態の変化が生じていないかに注意を払いましょう。以上、私が取り組んでいる工夫についてお話ししました。皆さまの工夫もぜひ聞かせてください。今日のTips今日のTips認知症とせん妄、「痛みを訴えない」患者の原因にアプローチすることが大切。

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第324回 薬での体冷却で脳卒中後の脳損傷を減らせるかもしれない

神経遮断作用を担う2つの薬の組み合わせがサルの体温を下げて脳卒中後の脳損傷を減らし、ヒトに投与する試験段階に進んでいます1,2)。その2つは1950年代から体温を下げることが知られる3)抗精神病薬のクロルプロマジンと抗ヒスタミン薬のプロメタジンです。英語表記での頭文字をとってC+Pと呼ばれるその組み合わせが脳の活動と糖代謝を抑制して、いわば冬眠のような状態を作り出すことで脳卒中から神経を守る働きを担いうることが、2019年のラットでの検討で示されています4)。また、2022年に報告された研究では、C+Pがラットの体温を36℃未満に下げて脳梗塞病変を減らしました5)。動物での検討が進む一方で、ヒトにC+Pを経口投与した臨床試験結果が早くも2019年に報告されています。試験には急性虚血性脳卒中患者64例が参加し、およそ半数の34例にはプラセボ、30例には低用量のC+Pが投与されました。治療期間は2週間で、クロルプロマジンとプロメタジンの1日量はどちらも多くて50mgでした(25mgを1日2回)。残念ながら機能的アウトカムの改善はみられませんでしたが、幸いにも深刻な有害事象はありませんでした6)。同試験の著者に名を連ねる米国・ウェイン州立大学(Wayne State University)のYuchuan Ding氏を含むチームは、先立つ研究をなぞって小型動物のマウスでC+Pの効果を改めて検証し、続いて新たな試みとしてより大型の動物のサルでC+Pの効果を検討しました。C+Pはサルの深部体温をマウスでの検討と同様に下げ、グルコース代謝を抑え、脳卒中での脳の損傷を減らしました。脳損傷が減ったおかげかサルは腕を使って食べ物を引き寄せる動作がより素早く、C+Pは運動機能も改善したようです。サルの体温を安全に引き下げた無毒性量(no observed adverse event level:NOAEL)からヒトでも安全に効果を発揮しうるクロルプロマジンとプロメタジンの最大用量が100mgと推定され、その用量を含む4つの用量が2024年11月に始まった第I相試験7)で検討されました。試験には急性虚血性脳卒中患者32例が参加し、標準治療に加えて最高用量(100mg)のC+Pが静注された患者に限って体温がつかの間下がりました。脳損傷を減らす効果や神経/身体機能を改善する効果は認められませんでしたが、被験者数32例ばかりの本試験では効果の確証は叶わなかったと著者は言っています1)。試験でC+Pは12時間かけて点滴されました。深部体温を十分下げるには投与速度がゆっくり過ぎたのかもしれません2)。よって新たな試験ではより短時間かより高用量の投与で有意な体温低下を達成できるかどうかを調べる必要があります。1時間での急速点滴がより体を冷やして確かな効果を発揮するかどうかを調べる試験に研究者らは早速取り掛かっています2)。参考1)Xu S, et al. Sci Transl Med. 2026;18:eady7847.2)Chilling the body with drugs could limit brain damage from stroke / NewScientist3)BURN JH. Proc R Soc Med. 1954;47:617-621.4)Guan L, et al. Curr Neurovasc Res. 2019;16:232-240.5)Guan L, et al. Biomolecules. 2022;12:851.6)Zhu H, et al. J Neurosurg Sci. 2019;63:265-269.7)Study on Hibernation-like Therapy Based on Mechanical Thrombectomy(CHILL-1) / ClinicalTrials.gov

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服用薬剤調整支援料2が110点→1,000点に!? 求められる薬剤レビューとは?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第172回

2026年度の調剤報酬改定に関して、いくつかコラムを書いてきました。「今後の薬局の方向はこっち!」という明確な役割や方向性が打ち出された改定だったように思います。そして、薬剤師の方向性についても、今回の改定の目玉があります。それが「薬剤師による薬剤レビュー」です。薬剤レビューとは何か、どういう患者さんに算定できるのかなどをみていきましょう。今回の調剤報酬改定で、従来の「服用薬剤調整支援料2」の点数が、110点から1,000点に大幅に増えました。1,000点というと調剤報酬として1万円であり、3割負担で3,000円、1割負担でも1,000円の窓口負担になります。服用薬剤調整支援料2の算定要件が薬剤レビューです。薬剤レビューは、複数の診療科から内服薬6種類以上が処方されている、いわゆるポリファーマシーの患者さんが対象です。患者さんやご家族の求めに応じて、これまでの処方歴や検査値、診断名などの客観的データと、患者さんの生活環境や考えといった情報を薬剤師が網羅的に集めて科学的に評価し、医師へ薬剤調整の提案を文書で行います。これまでのこういった項目は減薬提案が目的であり、薬を減らすことが中心でしたが、今回は減薬がマストではありません。患者さんの薬物治療全体を見直して、追加や減薬を含めて最適化する「包括的評価+提案」業務といえます。残念ながらすべての薬剤師が服用薬剤調整支援料2を算定できるわけではなく、ポリファーマシー対策に関する研修を受けた「かかりつけ薬剤師」である必要があります。この場合の研修とは、日本老年薬学会の提供する老年薬学服薬総合評価研修会の修了、あるいは日本老年薬学会が定める老年薬学認定薬剤師の取得を指します。この日本老年薬学会の研修にも別途受講資格があり、ハードルは決して低くはありませんが、ぜひ日本老年薬学会のホームページなどを見てみてください。それだけでも意味があるとも思います。この加算は、医師に提案した時点で算定可能とされており、採用されなくても算定可能です。同一の患者さん1人につき6ヵ月に1回まで算定可能、また、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで算定可能です。なお、改定後の服用薬剤調整支援料2は2027年(令和9年)6月1日から適用されるため、2026年6月1日~2027年5月31日は算定できません。検査値や副作用、複数の医療機関受診やアドヒアランスなど、さまざまな問題が薬剤レビューのきっかけになるでしょう。すでに何人かの患者さんが頭の中に浮かんでいる人もいるのではないでしょうか。提案した後はもちろんフォローアップも必要で、患者さんだけでなく医師とのコミュニケーションも継続していくことになります。学会が絡むなどハードルの高さは否めませんが、本来の薬剤師業務に1,000点が付く大型加算です。点数は結果ですが、期待値とも受け取れると思います。あえて高い算定ハードルにして、どのくらい取り組む薬剤師がいるのか様子をみるのでは…とさえ思いますが、これができるようになると結果的に本来の薬剤師業務が楽しくなるのではとワクワクします。将来的にはすべての薬剤師ができる基本的業務になるといいなぁと思います。

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複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

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