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生菌製剤と食物繊維、肺がんに対するICIの効果を増強か/日本呼吸器学会

 がん免疫療法において腸内細菌叢へのアプローチが注目されている。近年、生菌製剤として用いられる酪酸菌Clostridium butyricum MIYAIRI 588株(以下、CBM588)が、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を用いた進行肺がん患者の全生存期間(OS)の延長と関連していたことが、後ろ向き研究で報告されている1)。また、腎細胞がんでは、無作為化比較試験においても、CBM588がICIによる治療を受ける患者の無増悪生存期間や奏効率の改善に寄与する可能性が示唆されている2,3)。そこで、本邦においても、CBM588の使用の有無と食物繊維の摂取量がICIの効果に及ぼす影響について、前向き観察研究での検討が実施された。その結果、CBM588の使用はICIによる治療を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者のOSを延長する可能性があり、その効果は食物繊維摂取量が多いと増強されることが示唆された。第66回日本呼吸器学会学術講演会において、徳永 龍輝氏(熊本大学病院 呼吸器内科)が報告した。 本研究は、単施設前向き観察研究として実施された。対象は、2021年3月~2024年8月に熊本大学病院でICIによる治療を開始した、20歳以上の進行・再発NSCLC患者101例とした。ICI治療開始3週間前から投与中の期間に、整腸剤としてCBM588を投与された患者(CBM588群、55例)と投与されなかった患者(対照群、46例)に分類した。また、アンケート回答が得られた88例について、推定食物繊維摂取量が10g/1,000kcal以上に相当するhigh-fiber集団(CBM588群25例、対照群30例)と、それ未満のlow-fiber集団(それぞれ23例、10例)に分類して評価した。OSの解析には、傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPTW)を用いたCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・CBM588群は対照群と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はCBM588群未到達、対照群10.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.24~0.78、p=0.005)。・IPTWを用いた解析においても、CBM588群でOSの有意な延長が認められた(HR:0.28、95%CI:0.14~0.58、p<0.001)。・食物繊維摂取量別の解析において、CBM588群ではhigh-fiber集団がlow-fiber集団と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はhigh-fiber集団未到達、low-fiber集団27.3ヵ月であった(HR:0.26、95%CI:0.08~0.82、p=0.021)。・一方、対照群では、high-fiber集団とlow-fiber集団の間にOSの差はみられなかった(OS中央値:15.9ヵ月vs.16.1ヵ月)。 本結果について、徳永氏は「腸内細菌は食物繊維の発酵により酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する。この酪酸はCD8陽性T細胞の抗腫瘍機能を高めるとされており、ICIの抗腫瘍効果を増強した可能性が考えられる」と考察した。また「NSCLC患者において、CBM588はICIの効果を増強し、生存期間を延長する可能性がある。また、十分な食物繊維摂取下では、さらにICIの抗腫瘍効果を増強する可能性があることが示唆された」とまとめた。

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CD19-CAR-T細胞療法/日本造血・免疫細胞療法学会

 CD19キメラ抗原受容体T(CD19-CAR-T)細胞療法は、再発・難治性B細胞性悪性腫瘍に対する革新的な細胞免疫療法であり、急性リンパ芽球性白血病(ALL)や大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を中心に臨床実装が進んでいる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「CD19-CAR-T細胞療法」をテーマとしたシンポジウムが開催され、ALLやLBCLに対する治療の進化と課題、さらに治療アクセスの課題などを含めた包括的な議論が展開された。CD19-CAR-T細胞療法はすでに重要な治療選択肢として位置付けられている中で、その治療最適化に伴い、治療戦略の再設計や医療提供体制の整備などが同時に求められる段階に入っていることが示された。LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法の最前線 冒頭、米国のCaron Jacobson氏(米国・Dana-Farber Cancer Institute)は、LBCLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の現状と将来展望について、主要な臨床試験データを基に包括的に概説した。 まず、3つの主要臨床試験により、LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法(Axi-cel、Tisa-cel、Liso-cel)の長期寛解の可能性が示され、再発・難治性患者の約40%で長期寛解が達成されていることが確認された。さらに、長期寛解を維持している患者の多くが、CAR-T細胞投与後に微小残存病変(MRD)陰性を達成していることも示されている。 また、CD19-CAR-T細胞療法は治療戦略のタイミングにも大きなパラダイムシフトをもたらしている。ZUMA-7試験(Axi-cel)やTRANSFORM試験(Liso-cel)などの第III相試験では、ハイリスク患者に対して二次治療の段階でCAR-T細胞療法を早期導入することにより、従来の化学療法および自家幹細胞移植と比較して、無イベント生存率(EFS)が有意に改善することが示された。一方で、三次治療以降にCAR-T細胞療法を施行した患者では治療成績が低下する傾向がみられ、投与時期の遅れが治癒機会の減少につながる可能性が示唆された。さらに、リアルワールドデータ(CIBMTR解析)もこれらの知見を支持しており、併存疾患や攻撃的な疾患生物学的背景により臨床試験の対象外であった患者においても、有効性および安全性がおおむね再現されていることが示された。 続いて、次世代CAR-T細胞製品の開発動向が紹介された。CD19/CD20二重標的CAR-Tや、迅速製造プロセスを導入した製品(例:KITE-753)などが開発されており、T細胞の幹性(stemness)を維持・向上させながら毒性を抑制し、高い完全寛解率(CR)を確保することを目指している。また、CD19陰性再発への対応策として、CD22やB細胞活性化因子受容体(BAFF-R)を標的とするCAR-T細胞療法の可能性についても解説された。 さらに、患者側、T細胞側、腫瘍側の各因子は相互に影響し合い、CAR-T細胞療法の治療効果を規定していることが強調された。したがって、腫瘍微小環境、既存の免疫状態、ならびに最終的に投与されるT細胞製品の特性が治療アウトカムに及ぼす影響を総合的に理解することが、より精緻で多面的な治療戦略を構築するうえで不可欠となる。 最後にJacobson氏は、「現時点において、CD19-CAR-T細胞療法は高リスクLBCLに対する最も有力な治癒選択肢として確立されている。しかし、今後さらなる治療成績の向上を実現するためには、腫瘍微小環境の制御やT細胞機能の最適化に加え、患者個々の免疫学的背景を踏まえた個別化アプローチの導入が重要となる。これらを統合的に発展させることで、より安全かつ持続的な治療効果の達成が期待される」と締めくくった。ALLに対するCART療法の位置付け:小児・若年成人例を中心として 続いて、加藤 格氏(京都大学医学部附属病院 小児科)は、ALLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の臨床的位置付けについて、小児および思春期・若年成人(AYA)世代を中心に概説した。 近年、ALLの治療成績は年代を追うごとに着実に向上している。治療プロトコールの改良や支持療法の進歩を背景に、生存率は全体として改善傾向にあり、とりわけ小児領域(0~14歳)では2000年ごろに5年全生存率が約90%に達するなど、きわめて良好な成績が得られている。一方で、初回治療後に再発を来した症例の予後は依然として不良であり、長年にわたり重要な臨床課題とされてきた。こうした状況の中、2014年以降(日本では2019年以降)にCD19-CAR-T細胞療法(Tisa-cel)が承認され、再発・難治例に対する治療戦略を大きく変える画期的治療法として位置付けられるようになった。 現在、日本で小児ALLに対するTisa-cel療法を実施可能な施設は35施設に及ぶ(造血幹細胞移植実施施設は71施設)。2019~21年にTisa-cel投与実績のあった11施設におけるリアルワールドデータ(42症例)の解析では、完全寛解率(CR/CRi)93%、MRD陰性化率97%と高率であり、1年全生存率(OS)は82%、1年EFSは56%と良好な成績が示された。これらは国際共同第III相試験(ELIANA試験)などと比較しても遜色のない結果であり、日本の実臨床においても高い有効性と再現性が確認された。 治療成績に影響を及ぼす因子についても検討が進んでいる。遺伝子異常は従来の化学療法では重要な予後因子であったが、CD19-CAR-T細胞療法の初期反応性には大きな影響を与えないとされる。ただし、KMT2A遺伝子再構成例では再発時に骨髄性白血病への形質転換を来しやすく、予後不良であることから慎重な経過観察が必要である。また、投与時の残存腫瘍量も重要であり、低腫瘍量であるほど望ましいが、造血細胞移植とは異なり、必ずしも投与前にMRD陰性化を達成する必要はない。骨髄中芽球比率が5%未満にコントロールされていれば、十分な治療効果が期待できるとされている。さらに、ブリナツモマブの先行使用については、理論上はCD19発現低下が懸念されるものの、現時点では治療成績に重大な悪影響を及ぼすとは示されていない。 CD19-CAR-T細胞療法後の造血幹細胞移植の適応については、「全例に実施するか」ではなく、「どの症例に実施すべきか」という個別化医療の観点から議論されている。再発リスクや持続的寛解の可否、CAR-T細胞の持続性などを踏まえたリスク層別化が重要である。とくに、B細胞無形成が6ヵ月未満で回復する症例や、投与後28日目の次世代シーケンシング(NGS)でMRD陽性が確認される症例では、再発リスクが高い可能性があり、追加移植を検討すべきとされる。 このように、CD19-CAR-T細胞療法はALL治療のパラダイムを大きく変革した。今後は、治療後に一律に移植を行うのではなく、B細胞回復動態や遺伝学的背景などを踏まえ、患者ごとに最適な後療法を選択する個別化治療の重要性がいっそう高まっている。CAR-T 治療アクセスを向上させる体制整備 最後に、加藤 光次氏(九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科)は、日本におけるCD19-CAR-T細胞療法のアクセス格差と、その解消に向けた体制整備に関する現状と課題について論じた。 CD19-CAR-T細胞療法は国内導入から7~8年が経過し、再発・難治性びまん性LBCLを中心に実臨床で定着している。累積症例数は3,000例以上に達し、全国レジストリを通じて長期フォローを含むリアルワールドデータが蓄積されつつある。細胞治療ワーキングの解析では、2019~21年と2022~23年を比較して治療成績は改善傾向を示した。支持療法の標準化、患者選択の適正化、治療プロセスの成熟がその背景にあると考えられる。一方で、患者からT細胞を採取するアフェレーシスから、製造されたCAR-T細胞を輸注するまでのVein-to-Vein(V2V)期間は中央値約60日と、大きな短縮には至っていない。海外では米国約50日、欧州約66日と報告され、約2週間の差が無増悪生存率に20%以上の影響を及ぼしうることが示唆されている。国内データでもV2V延長は予後不良と関連しており、時間的ボトルネックの解消は喫緊の課題である。V2Vは単なる製造期間ではなく、紹介タイミング、施設選択、情報共有など、医療システム全体の「アクセス設計」によって規定される指標となる。 こうした課題に対し、日本造血・免疫細胞療法学会主導の下、企業と連携して全国共通の紹介フォームが整備された。病歴、治療歴、病勢、検査値などを標準化フォーマットで共有することで、紹介の迅速化と情報の質向上を図るものである。これは同時にリアルワールドデータの精度向上にも寄与する。また、施設偏在の是正を目的としたマッチングアプリ構想も進行中である。紹介元が患者情報を入力すると、各施設の受け入れ状況を踏まえた候補が提示される仕組みで、地域研究を経て全国展開が検討されている。 約4%で発生し、現在治験薬として提供されている規格外製品(Out of Specification:OOS)への対応も重要な論点である。OOS投与例の解析では、Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)13%、Grade3以上の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)4.3%と、安全性はおおむね許容範囲内であった。完全寛解率も約40%と一定の有効性が示されている。薬機法改正により、市販後の枠内での適切な提供の位置付けと長期データの構築が求められる。 長期安全性の観点では、CAR-T細胞療法後二次がんが焦点となる。海外では発症率約4%と報告され、T細胞リンパ腫の発症もまれながら注目を集めている。CAR-T関連T細胞リンパ腫疑い例ではCAR遺伝子の確認や挿入部位解析を行い、企業と連携した検査体制が整備されつつある。さらに、妊娠例に対する対応や、全身性エリテマトーデスなど自己免疫疾患への応用も進み、診療科横断的な連携体制の構築が新たな課題となっている。 加藤氏は次のように述べて講演をまとめた。「経済面では、日本の薬価は欧米より低水準に設定されており、企業の採算性低下によるドラッグロスが懸念される。持続可能なアクセス確保には、アカデミアによる質の高いリアルワールドデータの提示、企業の開発意欲の維持、国による適正な価格・償還制度設計が不可欠である。CD19-CAR-T細胞療法の均てん化とは、紹介標準化、V2V短縮、安全性監視、経済的持続性を包含する包括的なアクセス再設計にほかならない。全国的な連携強化が、次世代細胞療法時代の基盤整備につながることが期待される。」

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高齢者の貧血で認知症発症リスクが約1.66倍に上昇

 貧血は認知症発症リスクの上昇と関連することが知られているが、アルツハイマー病(AD)に関連する血液バイオマーカーとの関係は十分に明らかではなかった。今回、認知症を発症していない高齢者を対象としたコホート研究において、貧血は横断的にADバイオマーカー値の上昇と関連し、縦断的には認知症発症リスクの上昇と関連していたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所/ストックホルム大学のMartina Valletta氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2026年4月17日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンの地域住民コホート研究(SNAC-K)のデータを用い、ヘモグロビン値とADバイオマーカーとの横断的関連に加え、ヘモグロビン値およびADバイオマーカーと認知症発症との縦断的関連を検討した。対象はベースライン時点で認知症を発症していない60歳以上の参加者で、2001年から2019年まで年齢に応じて3年または6年ごとに追跡された。貧血はWHOのヘモグロビン値の基準(女性12g/dL以下、男性13g/dL以下)で定義した。 主要アウトカムはDSM-IVに基づく認知症の発症、リン酸化タウ217(p-tau217)、神経フィラメント軽鎖(NfL)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の血清濃度であった。統計解析にはCox比例ハザード回帰および分位点回帰を用い、さらにヘモグロビンとADバイオマーカーの組み合わせによる認知症発症リスクの関連も検討した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインで認知症を発症していない2,282例(年齢中央値72.2歳、女性61.6%)を解析対象とし、うち199例(8.7%)が貧血であった。・平均9.3年の追跡期間中に362例(15.9%)が認知症を発症した。・貧血群は、非貧血群と比較して認知症発症リスクが66%高かった(ハザード比[HR]:1.66、95%信頼区間[CI]:1.21~2.28)。・ヘモグロビン値と認知症リスクの関係は非線形であり、約14g/dLを下回るとリスク上昇がみられ、それ以上では頭打ちとなった。・貧血群は、p-tau217(β=0.22、95%CI:0.15~0.30)、NfL(β=0.25、95%CI:0.19~0.31)、GFAP(β=0.08、95%CI:0.03~0.12)の血清濃度が高かった。・貧血とADバイオマーカー高値が併存する群では、いずれも正常な群と比較して認知症リスクはさらに高かった(貧血+高NfLのHR:3.64)。・これらの関連は男性でより強い傾向がみられた。 これらの結果から、研究グループは「ヘモグロビン値が低く、ADバイオマーカーが高い場合に認知症リスクが最も高かったことから、認知症の発症において貧血と神経病理の間に相互作用が存在する可能性が示唆される。貧血は認知症リスクの層別化において臨床的に重要な因子であり、認知症予防戦略における修正可能な標的となる可能性がある」とまとめた。

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Z薬の使用と全死亡率との関係~メタ解析

 ゾルピデム、エスゾピクロン、ゾピクロン、zaleplonなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるZ薬は、世界中の不眠症患者に広く用いられている。Z薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤よりも安全性が高いと考えられてきたが、いくつかの研究においてZ薬の副作用についての議論が巻き起こっている。韓国・慶北大学校のJi-Yeon Park氏らは、Z薬と全死因死亡率との関連性を評価するため、観察コホート研究のメタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2006年1月23日号の報告。 2025年3月14日までに報告された観察コホート研究をPubMed、Embase、Scopusより検索し、メタ解析を実施した。研究対象集団は臨床患者であった。Z薬と全死因死亡率との関連性を評価するため、ランダム効果モデルを用いて全死因死亡率の統合ハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)を算出した。感度分析およびサブグループ解析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・9件のコホート研究より参加者201万8,397例をメタ解析に含めた。・Z薬の使用は、全死亡リスクの増加と有意な関連が認められた(HR:1.600、95%CI:1.027~2.491、p=0.038)。ただし、研究間の異質性は有意に高かった(I2=99.642%、p<0.001)。・感度分析では、結果の安定性が確認された(HR:1.440~1.761、各々p<0.05)。・サブグループ解析では、地域、フォローアップ期間、研究の質にかかわらず、一貫して正の相関傾向が認められた(HR:1.120~1.780)が、一部は統計的に有意ではなかった。 著者らは「本メタ解析において、Z薬の使用と全死亡率との間に正の関連が示された。しかし、研究間の異質性が非常に高いため、これらの結果の解釈には注意が必要である」としながらも「臨床医は、高リスク患者にZ薬を使用する際には注意を払うべきである」と結論付けている。

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虚血性脳卒中の2次予防、asundexian追加が有効性示す/NEJM

 非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)発症後72時間以内の患者において、血液凝固第XI因子(FXI)阻害薬asundexianの1日1回50mg経口投与は、抗血小板療法との併用下でプラセボと比較し大出血のリスクを増加させることなく、虚血性脳卒中および主要心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、カナダ・McMaster UniversityのMukul Sharma氏らOCEANIC-STROKE Investigatorsが実施した「OCEANIC-STROKE試験」で示された。NEJM誌2026年4月16日号掲載の報告。37ヵ国702施設で第III相試験を実施 OCEANIC-STROKE試験は、日本を含む37ヵ国702施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベント主導型第III相試験で、対象は非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスクTIA発症後72時間以内の2剤併用または単剤による抗血小板療法が予定されている18歳以上の患者であった。 虚血性脳卒中はNIHSSスコア(範囲0~42:高スコアほど重症)が15以下、高リスクTIAはABCD2スコア(範囲0~7:高スコアほど高リスク)が6または7と定義された。また、すべての患者は、急性非ラクナ梗塞の画像所見、冠動脈疾患・末梢血管疾患または50%以上の頸動脈狭窄の既往歴、脳血管アテローム性動脈硬化の画像所見のいずれか1つ以上を満たしていることとし、心房細動の既往歴または抗凝固療法の適応となる病態を有する患者などは除外した。 研究グループは、適格患者をasundexian(1日1回50mg経口投与、経管投与も可)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、予定されていた抗血小板療法に加えて投与した。 有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中発症、副次アウトカムはすべての脳卒中(虚血性または出血性)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合、全死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合など、安全性の主要アウトカムは国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血であった。虚血性脳卒中およびすべての脳卒中が26%有意に減少、大出血は増加せず 2023年1月~2025年2月に1万2,578例がスクリーニングを受け、1万2,327例が無作為化された(asundexian群6,162例、プラセボ群6,165例)。 無作為化後の追跡期間中央値567日(四分位範囲:377~729)において、虚血性脳卒中はasundexian群で384例(6.2%)、プラセボ群で518例(8.4%)に発生した(原因別ハザード比[csHR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)。 asundexian群およびプラセボ群で、すべての脳卒中はそれぞれ404例(6.6%)、545例(8.8%)(csHR:0.74、95%CI:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは568例(9.2%)、685例(11.1%)(0.83、0.74~0.92、p<0.001)、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは649例(10.5%)、757例(12.3%)(0.85、0.77~0.95、p=0.003)に発生した。 大出血は、asundexian群で1.9%(117/6,124例)、プラセボ群で1.7%(107/6,130例)に認められた(csHR:1.10、95%CI:0.85~1.44、層別log-rank検定のp=0.46)。有害事象の発現割合はasundexian群69.3%、プラセボ群70.1%であり、重篤な有害事象の発現割合はそれぞれ19.2%および19.5%であった。

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ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ

 ワクチン接種率向上のための介入について、全体的には機会の拡大、予約の支援、金銭的インセンティブ、費用負担支援および動機付け面接が有効な構成要素であり、人との対話や、医療従事者のみでなく医療従事者+地域住民による提供が効果的な実施要素であることを、英国・ブリストル大学のSarah R. Davies氏らが、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析の結果で示した。ただし、有効な要素は、年齢層、医療サービスが不十分な集団およびCOVID-19パンデミック前後で異なっていた。著者は、「今回の知見は、対象を絞った介入の策定、最適化および実装に重要な示唆を与えるものであり、異なる集団や状況においてどの要素が有効であるかを明らかにしている。介入に関する経済データを考慮することで、資源に基づいた意思決定がさらに支持されるだろう」とまとめている。BMJ誌2026年4月15日号掲載の報告。無作為化比較試験237件について解析 研究グループは、ワクチン接種率向上のための介入における各要素の有効性を特定する目的で、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析を行った。 解析対象は、英国の予防接種スケジュールに基づくすべてのワクチンの接種対象者またはその介護者を対象とする介入群と、適格な対照(非介入、通常ケア、アテンションプラセボ)群を比較した、参加者が100例以上のクラスター無作為化比較試験で、高所得国および高中所得国で実施され、2000年1月~2024年4月に発表された237件の研究(570の介入、参加者436万1,717例)であった。 介入は、ワクチン接種率向上を目的としたあらゆる介入とし、介入の主要な内容および実施形態は独自のコーディングフレームワークを用いて特定した。研究者(5人)がペアとなり、独立して各介入の構成要素や実施方法のすべてについてコーディングを行った。また、Cochrane Risk of Bias 2ツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主要アウトカムはワクチン接種率で、要素レベルのベイズメタ回帰分析により、介入要素の相対効果をオッズ比の比(ROR)として推定し、95%信用区間(CrI)を算出した。小児は費用負担支援、青少年・若年成人は医療従事者+地域住民、成人は人との対話で介入効果が高い 解析対象研究237件のうち、バイアスリスクが「低」の研究は110件、「懸念あり(some concern)」は96件、「高」は31件であった。参加者の40%(174万4,686例)が男性であった。 小児集団においては、費用負担支援(ROR:3.01、95%CrI:1.49~6.06)および意思決定支援ツール(2.73、1.14~7.06)に有益な効果のエビデンスがあり、機会の拡大(1.37、0.98~1.95)および社会的要因(1.27、0.99~1.65)にはある程度のエビデンスがあることが示された。 青少年・若年成人集団においては、医療従事者のみと比較し医療従事者+地域住民による提供(ROR:6.42、95%CrI:1.94~25.62)、社会的要因(2.62、1.45~5.04)、非個人的と比較し個人的に働き掛ける形式の介入(2.13、1.09~4.40)に有益な効果のエビデンスが認められたが、意思決定支援ツール(0.43、0.18~0.98)および自動化された対話(0.47、0.21~1.02)には負の効果が示された。 成人集団においては、人との対話(ROR:1.86、95%CrI:1.42~2.45)、動機付け面接(1.79、1.21~2.64)、機会の拡大(1.63、1.35~2.00)、費用負担支援(1.47、1.03~2.16)、予約の支援(1.38、1.06~1.78)が有益な効果を示し、金銭的インセンティブ(1.15、0.99~1.35)およびワクチンの安全性・有効性に関する情報(1.15、0.99~1.32)はある程度のエビデンスを示したが、自動化された対話は対話なしと比較し負の効果をもたらすことが示された(0.72、0.57~0.92)。 サブグループ解析では、医療サービスが不十分な集団や、COVID-19パンデミックとの関連(2020年以前と2020年以降)で結果にばらつきがみられた。

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腹部脂肪は心不全リスクと関連/AHA

 心不全リスクを知りたいのなら、BMIではなく腹部脂肪に注目する必要があるようだ。新たな研究で、腰回りに蓄積された脂肪は、身長と体重から算出されるBMIよりも心不全リスクとの関連が強いことが明らかになった。国立陽明交通大学(台湾)のSzu-Han Chen氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)の疫学・生活習慣科学セッション(EPI/Lifestyle Scientific Sessions 2026、3月17~20日、米ボストン)で発表された。Chen氏は、「この結果は、体重は正常範囲でも心不全を発症する人がいる理由を理解する手がかりになる」と述べている。 この研究では、ミシシッピ州ジャクソンで行われている心臓病の継続的研究(Jackson Heart Study)の参加者である1,998人のアフリカ系米国人を対象に、2016年12月31日まで追跡し(中央値6.9年)、腹部脂肪と心不全リスクとの関連と、その関連に炎症がどの程度関与しているかを検討した。試験参加時の年齢は35~84歳(平均年齢58歳)で、女性が36%を占めており、心不全を有する者はいなかった。腹部脂肪の指標として、体重、BMI、ウエスト周囲径、ウエスト身長比を用いた。また、血液サンプルを用いて、炎症性の指標である高感度C反応性蛋白(hs-CRP)を測定した。 追跡期間中に112人が心不全を発症した。解析の結果、過剰な腹部脂肪は心不全リスクの上昇と関連していた。具体的には、ウエスト周囲径が大きい場合、心不全リスクは31%、ウエスト身長比が高い場合、同リスクは27%上昇した。一方、BMIは心不全リスクと関連していなかった。また、hs-CRP値が高い人は心不全を発症する傾向が強いことも示された。さらに、腹部脂肪と心不全リスクとの関連のうち、約4分の1~3分の1は炎症によって説明された。 Chen氏は、「ウエスト周囲径や炎症の状態をモニターすることで、医師はリスクの高い人を早期に特定でき、症状出現前に心不全の発症を減らす予防策に重点を置くことができる可能性がある」と説明している。 今回の研究成果をレビューした、米ノースウェスタン大学心血管疫学分野教授のSadiya Khan氏は、「この研究は、ウエスト周囲径などの中心性肥満の指標を日常の予防医療に取り入れることの重要性を示している。中心性肥満などの心不全の上流要因を理解することは、心不全リスクを認識し、修正する上で重要だ」と述べている。 研究グループは今後、腹部脂肪や炎症が心不全にどのように影響を及ぼすのか、炎症の抑制が予防に役立つのかどうかを調べる研究が必要との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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若年女性で膵がん増加の兆候~日本全国データ解析

 膵がんは依然として予後不良ながんの一つであり、その発症動向の変化が注目されている。今回、日本の全国データを解析した研究で、若い女性における膵がん罹患率の上昇を示す兆候が確認された。また、高齢者では膵体尾部切除を中心に膵がんの手術件数が増加していることも明らかになった。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門の森村玲氏らによるもので、詳細は「Annals of Gastroenterological Surgery」に1月22日付でオンライン掲載された。 膵がんは世界的に罹患率が上昇しており、2022年には世界で約51万人が新たに診断され、がん死亡原因の上位を占めている。日本は人口10万人当たりの罹患率(粗罹患率)が世界で最も高く、2023年には男女ともにがん死亡原因の第3位となるなど、その影響は大きい。近年は若年発症例の増加も国際的に懸念されているが、日本における最新の発症動向や術式別の手術実態については、全国規模での詳細な検討が十分とはいえない。そうした中、本研究では、日本の全国規模データを用いて、近年の膵がん罹患率の推移と年齢・性別ごとの特徴、さらに術式別の手術動向について包括的に検討した。 膵がんの罹患データ(2016~2021年)は、国立がん研究センターの全国がん登録データを用いて解析した。手術件数(2016~2023年)は、厚生労働省の管理する匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)から抽出した。膵臓は、「膵頭部(すいとうぶ)」「膵体部(すいたいぶ)」「膵尾部(すいびぶ)」の3つの部位に分けられる。膵がんの手術は、膵体尾部切除(膵体部・尾部を切除)と膵頭十二指腸切除(膵頭部や十二指腸などを切除)に分類し、さらに開腹手術と腹腔鏡手術に区分した。なお、コード定義の変更により、膵頭十二指腸切除および術式別(開腹・腹腔鏡)のデータは2020~2023年のみ取得可能であり、膵体尾部切除は2016~2023年の期間で解析した。人口10万人当たりの罹患率・手術率を算出し、ポアソン回帰分析で年間リスク比(RR)を推定した。多重比較の影響を考慮し、ボンフェローニ補正を適用した。 2016~2021年の調査期間中、日本では年間平均約4万3,000人が膵がんと診断され、症例の約8割は65歳以上であった。 年齢調整後の膵がん罹患率は、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に上昇した(RR=1.007、1.016、1.011、いずれもP<0.0001)。特に10~29歳の女性では顕著な上昇がみられた(RR=1.347~1.449、いずれもP<0.0009)。 膵体尾部切除の手術率も、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に増加した(RR=1.033、1.032、1.033、いずれもP<0.0001)。年齢別にみると、65~89歳の高齢者で特に増加が顕著であった(RR=1.018~1.114、いずれもP<0.0012)。膵頭十二指腸切除の手術率も2020~2023年にかけて増加したが、解析期間が短いため年次推移の統計的評価は行えなかった。 2023年の膵がん手術は計1万4,397件で、その内訳は膵頭十二指腸切除が65.6%(9,444件)、膵体尾部切除が34.4%(4,953件)であった。アプローチ別では、開腹手術が77.0%(1万1,079件)と主流で、腹腔鏡手術は23.0%(3,318件)、ロボット支援手術は8.8%(1,271件)であった。 著者らは、「日本の膵がん疫学において、若年女性での罹患増加の兆候と、高齢者での膵体尾部切除の増加という二つの変化がみられた」と述べている。若年女性については組織型の違いも含めた原因解明とハイリスク群への層別スクリーニングが、高齢者については低侵襲手術を含む外科治療体制の整備が、今後の課題として重要になるとしている。 なお、本研究の限界として、病期・組織型などの臨床情報を含まないデータの使用、コード変更に伴う解析期間の制約、異なるデータベースを用いた推定による解釈の不確実性などを挙げている。

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第310回 麻疹患者の発生情報、個人特定のリスクか

INDEX都内の集団発生はブレークスルー感染?情報開示による個人特定のリスク都内の集団発生はブレークスルー感染?以前も本連載(第301回)で触れた麻疹の流行が止まらない。国立健康危機管理研究機構が公表している感染症発生動向調査週報(IDWR)によると、2026年15週(4月6~12日)時点の全国での報告数(速報値)は299例。報告事例は25都道府県に及び、最多は東京都の108例。すでに昨年末の52週(12月22日~28日)までの265例をわずか3ヵ月強で超えてしまった。今年は麻疹の流行がかなり危惧される状況だ。東京都では新宿区の小学校で生徒・教職員18例の感染が確認され、都内では12年ぶりの学年閉鎖という異例の事態にまで発展している。感染者の年齢は10代と40代で、由々しきことは、現時点で判明している感染者のワクチン接種歴は1回以下が2例、2回が16例と、そのほとんどがブレークスルー感染という現実である1)。あくまで推測になるものの、感染事例のうちワクチン2回接種済みの16例はおそらくほぼ全員が10代の生徒だろう。小学校であることを考えれば、これら16例の年齢は10~12歳。麻疹ワクチンの定期接種スケジュールから考えれば、2回目接種からわずか5~6年でブレークスルー感染に遭遇した計算になる。現在の新宿区内の小学校は公立私立含めて30校あり、総生徒数は約1万1,000人。単純計算すれば1校1学年当たりの生徒数は約60人。麻疹ワクチンの2回接種でも抗体価が得られない事例が1~5%、同ワクチンの発症予防効果が97%、接種後も10〜20年単位で防御効果が大きくは崩れないという一般的な認識から考えると、新宿区での多数のブレークスルー感染は説明がつかない。小学校の同一教室で朝から夕方まで時間を共有している結果、相当なウイルス量による曝露が起こり、その結果、ブレークスルー感染が起こったと考えるしかなさそうだ。情報開示による個人特定のリスクさて、今回の流行で各種発表を参照していた中、私が気になった事例がある。その理由は後述するが、最近では麻疹感染例が確認されると、各自治体は感染例の行動履歴のうち不特定多数に接触した可能性がある部分を公表し、注意を促す。これ自体はむしろ公衆衛生の観点からは必要な対応だと考えている。私が気になったのは、ある自治体での麻疹感染者の行動履歴の公表事例である。そこには不特定多数への感染リスクがある、立ち寄り先と公共交通機関の利用日時が分刻みで公表されていた。どちらも同一日のことだが、同事例を見ると、感染者がある時間の範囲内でどのような行動をしていたかが、かなりの確度で推定できる。そして、たまたまGoogleマップを利用して同事例の履歴と照らし合わせてみた際にハッとした。少なくとも同事例では、当たっているかどうかは別にして感染者個人の居住地域を推定できてしまう。この自治体の人口は数十万人規模だが、行動履歴から推定できる地域の人口はその5分の1程度。それでも10万人以上だが、公表された行動履歴からは、さらに数万人規模まで絞り込める。しかも今やネット時代。さまざまな情報をつなぎ合わせることで、誤認も含め個人を特定できてしまう可能性がある。ちなみにこうした行動履歴の公表内容は、旧国立感染症研究所感染症疫学センターが2016年6月に公表した『麻疹発生時対応ガイドライン 第二版:暫定改訂版』2)を基に各自治体の裁量に任されている。同ガイドラインでは以下のような記載があるのみである。「情報発信に際しては、患者数が減少しており、個人を特定できる可能性が以前より増しているため発症者及びその周囲にいる感染を受けた者両者への人権に配慮する必要がある。ただし、感染拡大や対策を実施するうえで、麻疹患者の情報の共有が重要となることもある。公表する情報の質、範囲などについては関係機関と十分協議し、個人のプライバシーと感染拡大防止の公衆衛生学的意義を考慮したうえで決定することが望ましい」もちろんこの自治体の公表内容については、個人情報保護と感染拡大防止のせめぎあいのギリギリのラインで決定されたものだろうとは思っている。とくに麻疹の場合は基本再生産数が12~18と、きわめて感染力が強い。時間を分刻みで公表しているのも、パニックのような過剰な反応が起きないようにとの配慮があるのだろうとも受け止めている。しかし、ケースによっては公表された情報から“犯人探し“が行われてしまう可能性は否定できない。言葉として不適切なことを承知で言えば、今回のケースは麻疹という一般には聞き慣れた感染症だから、そこまでのことは起きていないだろうと推察している。ただ、これが多くの人にとって聞き慣れない新興感染症で、この事例のような公表をした場合は、犯人探しリスクはかなり高まる。その意味では、今回のケースは個人特定を防ぐために、行動履歴の時間の粒度をやや粗めにするという対応はできなくもない。国はそろそろ過去の事例なども参照しながら、情報公開に関してはもう少し詳しいガイドラインを作成してもよいのではと思うのだが…。1)都庁総合ホームページ:麻しん(はしか)患者の集団発生について2)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト::麻疹発生時対応ガイドライン〔第二版:暫定改訂版〕

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がん患者、24時間以内の死亡予測は可能か

 角膜反射の消失は、末期がん患者において24時間以内に死が差し迫っていることを示す特異的かつ臨床的に有用な徴候であることを韓国・Gyeongsang National University Changwon HospitalのSe-Il Go氏らが明らかにした。BMJ Supportive and Palliative Care誌2026年2月27日号掲載の報告。 研究者らは、末期がん患者における24時間以内の死亡を予測する上で、角膜反射の予後予測的意義を評価することを目的として前向き観察研究を実施。Gyeongsang National University Changwon Hospitalのホスピスセンターに入院し、死期が迫っている進行がん患者665例の分析を行った。訓練を受けた看護師が標準化された基準を用いて、角膜反射およびそのほかの臨死期の徴候を1日3回評価。混合効果ロジスティック回帰を用いて24時間以内の死亡予測因子を特定し、24~96時間における診断性能を検討した。 主な結果は以下のとおり。・角膜反射の消失は24時間以内の死亡と強く関連しており(オッズ比5.48、p<0.001)、24時間死亡は70.7%であった。・角膜反射の消失の特異度は85.0%、陽性的中率は70.7%といずれも高かった。・鎮静度を10段階に分けて評価するRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)スコアが-4(深い鎮静状態)または-5(昏睡)の患者においても角膜反射の消失は24時間死亡の有意な予測因子であり、角膜反射が消失した患者の71.2%が、反射が残存した患者の37.1%が24時間以内に死亡した。・そのほかの有意な予測因子として、末梢性チアノーゼ、酸素飽和度低下、低血圧などが認められた。 研究者らは「本研究結果は、臨死期の予後予測および意思決定への応用を裏付けるもの」としている。

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双極症患者の食事の質、うつ病患者や健康対照者との違いは?

 双極症患者は、心血管疾患を発症するリスクが高いことが知られている。欧米型の食生活は、双極症患者における心血管疾患リスクを上昇させるという仮説が立てられている。しかし、双極症患者における食習慣については、これまで十分に研究されていなかった。オランダ・Leiden University Medical CentreのMirjam A. Riedinger氏らは、双極症患者、単極性うつ病患者、寛解期の単極性うつ病患者、健康対照者における食事の質を評価するため、大規模コホートによる検討を行った。Bipolar Disorders誌2026年5月号の報告。 オランダうつ病不安研究(NESDA)から合計1,358例を対象に実施した。参加者の分類は、双極症患者(100例、男性の割合:48.0%、平均年齢:50.9歳)、単極性うつ病患者(199例、男性の割合:28.0%、平均年齢:52.4歳)、寛解期の単極性うつ病患者(722例、男性の割合:29.8%、平均年齢:52.4歳)、健康対照者(337例、男性の割合:40.7%、平均年齢:51.2歳)。食事の評価は、238項目の食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて、「地中海食スコア」(MDS)を算出した。食事スコアは、社会人口統計学的因子、身体活動、喫煙を調整した多変量回帰分析を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・双極症患者は、寛解期の単極性うつ病患者および健康対照者と比較し、MDSが有意に低かった(各々、p=0.01、p=0.02)。しかし、単極性うつ病患者との差は認められなかった。・エフェクトサイズは、双極症患者と寛解期の単極性うつ病患者で0.24、双極症患者と健康対照者で0.25であった。・さらに、双極症患者は健康対照者と比較し、平均ウエスト周囲径(p=0.03)およびBMI(p=0.02)が有意に高かった。 著者らは「双極症患者の平均的な食事の質は、寛解期の単極性うつ病患者および健康対照者と比較して低かった。このことが、双極症患者にみられるウエスト周囲径の増加およびBMIの上昇、そしてそれに伴う健康への悪影響の一因となっている可能性がある」と結論付けている。

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在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

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血栓後症候群、血管内治療が症状およびQOLを有意に改善/NEJM

 中等症または重症の血栓後症候群(PTS)および腸骨静脈閉塞を有する患者において、血管内治療は標準治療と比較し、6ヵ月後のPTS重症度を有意に軽減し健康関連QOLを改善した。ただし、出血リスクは高かった。米国・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らC-TRACT Trial Investigatorsが、同国29施設で実施した第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Chronic Venous Thrombosis: Relief with Adjunctive Catheter-Directed Therapy trial:C-TRACT試験」の結果を報告した。PTSは深部静脈血栓症(DVT)発症後によくみられ、下肢の重篤な症状により患者の活動性やQOLを著しく低下させることがある。血管内治療は、慢性静脈閉塞を除去でき、PTS重症度を軽減することが期待されていた。NEJM誌オンライン版2026年4月13日号掲載の報告。血栓後症候群に対する血管内治療の有効性を、6ヵ月後のPTS重症度で評価 研究グループは、中等症または重症のPTSを有し、画像診断により腸骨静脈閉塞(閉塞または50%以上の狭窄)が確認された患者を登録した。 PTSは、登録の3ヵ月以上前に発症したDVTの同側下肢における慢性静脈疾患と定義し、静脈症状により日常活動や作業能力に著しい制限が生じ、修正Venous Clinical Severity Score(VCSS)が8以上、Villalta PTSスコアが10以上、または開放性静脈性潰瘍を認める場合を中等症または重症とした。 適格患者を、血管内治療(腸骨静脈ステント留置および強化抗血栓療法)群または非血管内治療(標準治療のみ)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも標準的なPTS治療として、圧迫療法、抗凝固療法、生活指導を行い、開放性静脈性潰瘍を有する患者はエビデンスに基づくケアを行うため創傷/潰瘍ケアクリニックへ紹介された。 主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時のPTS重症度で、VCSS(スコア範囲:0~30、高スコアほど重症)を用いて盲検下で評価した。主要な副次アウトカムは、無作為化後6ヵ月時の患者報告によるQOLで、静脈疾患に特異的なVenous Insufficiency Epidemiological and Economic Study Quality of Life(VEINES-QOL)質問票(範囲:0~100、4~6ポイントの変化を臨床的に重要な変化と定義)、および包括的なMedical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Status Survey(SF-36)を用いて評価した。安全性アウトカムは、出血、静脈血栓塞栓症の再発、および死亡とした。PTS重症度は血管内治療群で有意に低下、生活の質も向上 2018年7月~2025年6月に225例が無作為化された。このうち画像検査で腸骨静脈閉塞がないことが判明した1例を除く224例(血管内治療群112例、非血管内治療群112例)が主要解析の対象集団となった。 無作為化後6ヵ月時のPTS重症度は、血管内治療群が非血管内治療群に比べて有意に低かった(平均[±SD]VCSSスコア:8.1±5.1 vs.10.0±4.9、補正後群間差:-2.0、95%信頼区間[CI]:-3.2~-0.8、p=0.001)。 VEINES-QOLスコア(平均値±標準偏差)は、6ヵ月時点で血管内治療群62.8±24.6、非血管内治療群48.6±26.7であり、血管内治療群が良好であった(補正後群間差:14.5ポイント、95%CI:9.5~19.4、p<0.001)。同様に、SF-36の身体機能スコアも血管内治療群のほうが良好であった(補正後群間差:6.1ポイント、95%CI:2.8~9.3、p<0.001)。 安全性については、出血(大出血+非大出血)は血管内治療群のほうが非血管内治療群より発現割合が有意に高く(11.6%vs.3.6%、p=0.03)、その主な要因は非大出血であった(9.8%vs.2.7%)。

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肝線維症、40歳以上の有病率と主な要因/Lancet

 欧州の40歳以上の一般集団において、診断されていない肝線維症(肝硬度測定[LSM]8kPa以上)が4.6%に認められ、その主な要因は代謝因子とアルコール摂取であることが示唆された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのIsabel Graupera氏らLiverScreen Consortium Investigatorsが、9ヵ国(スペイン、デンマーク、イタリア、スロバキア、クロアチア、英国、フランス、オランダ、ドイツ)の35施設(3次医療機関16施設を含む)で実施した大規模前向きコホート研究「LiverScreen project」の結果を報告した。小規模な単一国の研究では、未診断の肝線維症が一般集団で広くみられることが示唆されているが、実際の有病率やリスク因子はわかっていなかった。著者は、「肝硬変や合併症への進行を予防するための個別化された介入には、早期発見がきわめて重要となる」とまとめている。Lancet誌2026年4月11日号掲載の報告。40歳以上の一般住民を対象にスクリーニング検査を実施 研究グループは、未診断の肝線維症の有病率と代謝因子およびアルコール摂取との関連性を評価する目的で、40歳以上の一般住民を募集し登録した。募集方法は、定期健康診断または経過観察の1次医療施設受診者からの無作為抽出(スペイン、クロアチア、フランス、ドイツ)、社会保障番号または郵便番号の無作為抽出後オンラインまたは電話で招待(デンマーク、スペイン、イタリア、英国、オランダ)、既存の集団スクリーニングプログラムまたは職業健康診断に参加した個人(スペイン、ドイツ、スロバキア、フランス)であった。 肝線維化は、FibroScan装置を用いたVibration-controlled Transient Elastography(VCTE)でLSMを推算し、スクリーニング検査でLSMが8kPa以上、またはアラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限値の1.5倍以上のいずれかまたは両方を満たす場合を陽性と定義した。 参加者はスクリーニング検査を受診し、陽性の場合は慢性肝疾患の診断確定のため肝臓専門医による診察を受けた。主要アウトカムは、LSMが8kPa以上の参加者の割合であった。未診断の肝線維化の有病率は4.6%、線維化を伴う慢性肝疾患の推定有病率は1.6% 2018年5月2日~2024年12月19日に6万7,074例が招待され、3万909例が参加に同意した。このうち3万541例がスクリーニング受診を完了し、除外基準を満たしていた参加者などを除く3万199例が解析対象となった。 解析対象集団の背景は、平均年齢58歳、女性が57%、白人が89%で、70%が1つ以上の代謝リスク因子を有し、59%が飲酒を報告し、6.1%は有害な飲酒を報告した。 スクリーニング検査が陽性であった参加者は3万199例中2,075例(6.9%)であり、主要アウトカムであるLSMが8kPa以上の参加者は1,376例(4.6%)であった。LSMの上昇は、肥満、2型糖尿病、および有害な飲酒と強い相関が認められた。 スクリーニング陽性の2,075例のほか、VCTE信頼性不良または実施不能例342例および見落とし40例を含む計2,457例が肝臓専門医の紹介受診となり、1,491例(61%)が追跡調査を完了した。1,491例中477例(32%)が線維化を伴う慢性肝疾患と診断され、全体の推定有病率は1.6%(477/3万199例)であった。線維化を伴う慢性肝疾患症例では脂肪性肝疾患が93%(443/477例)を占めた。

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GLP-1受容体作動薬、減量後は注射頻度減でも体重維持の可能性

 肥満症治療のためにGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を使用している患者が同薬の使用を中止すると、体重が元に戻ってしまうことが多いが、中止ではなく注射の頻度を減らした場合は減量効果が維持できる可能性があるとする米スクリップスクリニックのMitch Biermann氏らによる研究が、「Obesity」に2月24日掲載された。 GLP-1RAの注射頻度を減らすという試みは、Biermann氏が同院の患者たちの間に共通するパターンがあることに気付いたことから始まった。何人かの患者が当初は毎週注射していたが、途中から間隔を空けて注射するようにしたところ、それでも体重の減少を維持できたと話していたという。同氏は「3人目の患者が『2~3週間に1回の注射でも体重を維持できている』と教えてくれた時点で、私はほかの患者にもこの方法を勧めるようになった」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 Biermann氏は、GLP-1RAによる減量に成功した後、注射スケジュールを変更していた34人の患者の医療記録を調査した。結果は有望なものだった。多くの患者は体重を維持できており、血糖値や血圧は依然として良好であった。また、追加の体重減少は筋肉ではなく主に脂肪の減少によるものであった。注射の間隔を広げた後に体重が増加していたのはわずか4人であり、その患者らは最終的に元の週1回注射に戻していた。 注射回数を減らした状態を維持していた30人のBMIの推移を見ると、GLP-1RA治療開始前が30.0±0.7と肥満であり、注射回数を減らした時点では25.2±0.5と過体重の範囲に低下していた(日本ではBMI25以上が肥満とされるが、米国ではBMI25~30未満は過体重とされる)。そして注射頻度を減らした後もさらにBMIが低下し続け、平均36.3週間経過後には24.6±0.5と、普通体重の範囲に収まっていた。なお、この30人のうち6人は注射頻度を10~14日に1回、17人は2週間に1回へと減らし、さらに残りの7人は2週間超の間隔で注射していた。 ただし本研究は小規模なものであり、対象者の大半は民間医療保険に加入している白人であることから、この結果が全ての人に当てはまるわけではないことに留意が必要である。また、本研究は医療記録を用いた後ろ向き研究であり比較対照群も設けられておらず、「ゴールドスタンダード」とされるランダム化臨床試験として行われたものではない。加えて、研究対象者が減量目標を達成した後の患者であって、さらにGLP-1RAの注射頻度を減らしたものの同薬の投与そのものを完全に中止したわけではないことを専門家らは指摘している。 米ハーバード大学医学部の肥満治療の専門医であるFatima Stanford氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、「注射頻度を減らすことに同意した人は、もともと治療順守度が高く自分の行動に自信があり、代謝の反応が良好な人であった可能性がある」と語り、対象患者の約12%は元の週1回投与に戻す必要があったことを指摘。ただし同氏は一方で、「この研究はこれまでの議論の枠組みを変えるものだ。肥満症が慢性治療だからといって、必ずしも規定通りの投与方法で永続的に注射を続ける必要はない。個々の患者に合わせて注射スケジュールを設定した方が効果的なのかもしれない」とも述べている。

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加齢観が健康改善に関連、高齢者の約半数で機能向上

 加齢は、身体的な衰退や認知機能の低下とイコールだと捉えられやすい。しかし新たな研究によると、高齢者でも心構え次第で歳とともに健康状態が改善するケースが少なくないことが示唆された。米イェール大学公衆衛生大学院のBecca Levy氏らが、米国健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータを解析して明らかにしたもので、詳細は「Geriatrics」に3月4日掲載された。 HRSは米国立加齢研究所のサポートにより、50歳以上の米国民を対象に隔年で実施されている長期追跡調査。Levy氏らの研究ではこのHRS参加者のうち、加齢に対する考え方と健康状態に関するデータに欠落のない1万1,000人以上を解析対象とした。加齢に対する考え方は、「歳を取ると役立たなくなると感じる」、「若いころと同じくらいに幸せだ」などの5項目の質問に対する同意の程度をスコア化して評価した。身体的健康状態は歩行速度で評価し、認知機能は妥当性が評価された電話による認知機能評価(Telephone Interview for Cognitive Status;TICS)にて評価した。 最長12年間の追跡で、参加者の45%が身体的健康または認知機能のいずれか、あるいはその両方で改善を示した。具体的には、身体的健康については4,638人(平均年齢74.03±6.07歳)を平均8.54±2.86年追跡し、対象者の28.00%に歩行速度の向上が認められた。認知機能については1万1,314人(同68.12±9.92歳)を平均8.04±3.27年追跡し、対象者の31.88%にTICSスコアの上昇が認められた。この結果の重要な点として、Levy氏は、「全体の平均値で評価すると、こうした改善は認められず、加齢による機能低下が示唆された。しかし、個々人の推移を見ると全く異なる変化が認められ、健康状態が改善していた高齢者がかなりの割合を占めていた」と指摘している。 また、加齢をポジティブに捉えている人は、身体的健康と認知機能の双方が改善することが多いという関連も見つかった。具体的には、加齢の捉え方のスコアが中央値を上回っている人は、スコアが中央値以下の人と比べ、交絡因子(年齢、性別、人種/民族、教育歴、婚姻状況、社会的孤立、抑うつレベル、認知症の遺伝的リスク〔APOE4〕など)を調整後、TICSスコア上昇のオッズ比(OR)が1.04(95%信頼区間1.00~1.08)であり、歩行速度の向上はOR1.09(同1.02~1.17)だった。なお、加齢に対する否定的な考え方が、記憶力や歩行速度の低下、心臓病やアルツハイマー病のリスク増大につながる可能性があることは、先行研究でも示されている。 Levy氏は、「得られた結果は、晩年になっても健康状態を改善する余地のあることを示唆している。そして、その可能性に影響を及ぼし得る加齢観は変更可能である。これらの知見は、高齢者の健康のために、個人ができることと社会的に介入すべきことの双方の可能性を開くものと言える」と総括。また研究者らは、一連の研究成果が高齢者の潜在的な回復力を活用する予防医療、リハビリテーション、健康増進プログラムの推進につながるだろうと述べている。

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FXI阻害薬は有効かつ安全か?(解説:後藤信哉氏)

オリジナルニュースAsundexian for Secondary Stroke Prevention/NEJM 血液凝固第X因子の阻害薬FXa阻害薬はNOACs、DOACsなどと総称され、心房細動の脳卒中予防などに広く使用された。長らく続いた特許による独占も一部の薬剤については終了し、安価なジェネリック薬も使用可能となった。FXa阻害薬が十分に有効かつ安全であれば、特許切れにより安価となるところであった。しかし、実際はFXa阻害薬開発試験などを見直せば重篤な出血イベントリスクは年率2~3%あり、十分に安全とは言い難い。より出血イベントリスクの低い薬剤としてFXの、内因系の上流であるFXI阻害薬が開発された。各種疾病を対象としたランダム化比較試験が施行されている。本研究にて使用された経口FXI阻害薬であるasundexianは、心房細動の脳卒中予防ではFXa阻害薬アピキサバンに脳卒中予防効果が劣るとのことで開発中止されている。 本研究では脳卒中再発予防効果をプラセボと比較した。脳梗塞再発を中心とする有効性のエンドポイント発現リスクは、プラセボの8.4%に比較してasundexian群では6.2%と低かった(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.65~0.84、p<0.001)。重篤な出血イベントリスクには差がなかった。FXI阻害薬はプラセボとの比較において、脳梗塞再発予防の観点では重篤な出血イベントリスクを増加させない抗凝固薬であった。安価なジェネリック品が中心となるFXa阻害薬との総合的な比較において、FXI阻害薬が有効性、安全性、経済性の観点から広く使用される薬剤になるか否かを見守りたい。

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以て他山の石とせよ【Dr. 中島の 新・徒然草】(628)

六百二十八の段 以て他山の石とせよすっかり花びらが散って葉桜になりました。それでも八重桜はまだ頑張って精いっぱい咲いています。例年どおりの風景ですね。さて、先日のこと。「グワッシャーン!」大きな音とともに、フードコートの床に海鮮焼きそばをぶちまけてしまいました。同時にガチャーンという食器の割れる音も。「大丈夫ですか!」「おけがはありませんか?」そう言いながら、周囲の人たちが気遣ってくれました。近所のフードコートでの出来事。休日の昼間とて激混みでした。注文していた海鮮五目焼きそばと炒飯のトレイを、両手に1つずつ持って運んでいたときに手を滑らせてしまったのです。「こちらのテーブルに置いてください!」「ナプキンどうぞ」「清掃の方を呼んで来ます!」四方八方から声を掛けてもらって、本当に恥ずかしいかぎり。すぐに清掃スタッフの方がやってきて、手早く片付けてくれます。 清掃スタッフ 「お客さま、このトレイとお皿のほうだけ、お店の方に持っていってくださいね」 中島 「わかりました、そうします」 清掃スタッフ 「ひょっとしたら新しいのと取り替えてくれるかもしれませんよ」 まさか取り替えてもらおうだなんて、滅相もない。無事だったほうのトレイを近くのテーブルに置かせてもらって、滑らせたほうのトレイを店に返却しました。店の人たちはびっくりしながらも「おけがはありませんでしたか?」と言ってくれます。この人たちが正気に戻る前に退散しなくてはなりません。もし割った皿の弁償とか言われたら、まあ払うしかないわけですけど。無事だったほうのトレイを持って席に戻ったら、案の定、女房に散々言われました。 女房 「ええーっ、私の海鮮五目焼きそばのほうを落としたの!」「遅いなあと思ってたら、やっぱり落としとったんか」「あんだけ1回に1つずつにしなさいと言ってたのに」 言われ放題です。次にもっと大変なことをやらかして上書きするまで、一生言われ続けるかもしれません。いや、上書きなんかなくて、おそらくは「別名で保存」されてしまいそう。それにしても、落としたのが床でよかったです。その辺のベビーカーの赤ん坊の上に落としていたら、大変なことになるところでした。これからの人生、何事も慎重に。1回に1つずつ、何か大事なものを持つときは両手で……って。これいつも手術室で、自分が若い連中にガミガミ言ってることじゃん!ぬかった、情けない。 女房 「それにしても、あの人混みやったからなあ。何人かはアンタを知ってる人間がいたんと違うか?」 この期に及んで、女房に笑われました。もうね、残った炒飯を2人で分けたんで空腹のままだし。いつなんどき店員さんに「弁償しろ」と言われるか、気が気じゃないし。傷心のまま、家路につきました。それにしても読者の皆さま。くれぐれも片手でトレイを持たないように。仮に持たざるを得ない状況になったとしても、両手に1つずつトレイを持ったりしないようにしましょう。ぜひとも私の失敗を他山の石としてください。ということで、最後に1句 葉桜の フードコートで 大失態

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