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妊娠期の暑さへの曝露が子どもの脳の発達に影響か

 気候変動が子どもの脳発達に影響を及ぼす可能性があるようだ。妊娠期および乳児期に高温環境にさらされることが、その後の視床の成長速度の低下と関連することが、新たな研究で示された。視床は、嗅覚を除く全ての感覚情報を大脳皮質へ送る中継点の役割を果たすほか、運動調節や意識、記憶、情動のコントロールにも関与している重要な脳領域である。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のEsmee Essers氏らによるこの研究成果は、「Environment International」8月号に掲載された。Essers氏は、「今後の研究では、人生早期の暑さへの曝露が神経発達障害の発症に関与するかどうか、また視床の発達の変化が両者の関連を説明する手がかりとなるかどうかを検討する必要がある」と述べている。 研究グループによると、視床は妊娠初期から発達が始まり、その発達には十分な血液供給が必要であるため、高温の影響を特に受けやすい。また、高温への曝露は胎盤や胎児への血液供給にも影響を及ぼす可能性があるという。 この研究では、オランダの3,251人の小児を対象に、妊娠期から8.5歳までの高温および低温への曝露が、9〜15歳時点での脳構造の変化と関連するかどうかが検討された。対象児はいずれも、2002年に開始された長期出生コホート研究への参加者で、妊娠期から成人期までの成長、健康状態、発達の経過が追跡されていた。10.1歳時と14.0歳時に取得されたMRIデータを用いて、11の脳構造の体積変化が評価された。論文の筆頭著者であるバルセロナ国際保健研究所Laura Granes氏は、研究目的について、「われわれの研究は、受胎時から8.5歳までの期間における暑さや寒さへの曝露が、思春期から青年期にかけての脳発達の変化と関連するかどうかを調べ、脳が最も影響を受けやすい時期を特定することを目的とした」と説明している。 その結果、受胎から生後5カ月までの期間では、基準温度(平均12.5℃)の環境への曝露と比べて、平均気温20.5℃の高温環境への曝露が、その後の視床体積の成長速度の低下と関連していた。平均気温20.5℃の環境への累積曝露に伴う視床体積の成長量の差は、妊娠第1トリメスターで−25.80mm3、第2トリメスターで−25.60mm3、第3トリメスターで−22.92mm3、生後3カ月間で−5.31mm3であった。低温への曝露や、視床以外の脳構造については、影響を受けやすい時期は確認されなかった。また、視床の成長遅延は、思春期における攻撃的行動や規則違反行動などの外在化行動症状と関連した。一方、認知能力との関連は確認されなかった。 では、なぜ外気温がこのような違いをもたらすのだろうか。研究グループは、暑さは母体のストレスホルモンのレベルを上昇させる一方で、胎盤が胎児をこうしたホルモン変化から守る能力を低下させる可能性があると推測している。また、高温環境は神経伝達物質であるセロトニンの働きを損なう可能性もあるという。セロトニンは、妊娠期から乳児期にかけて、視床と大脳皮質を結ぶ神経回路の形成に重要な役割を果たしている。 論文の上席著者である同研究所のMÒnica Guxens氏は、「地球温暖化により世界各地でより深刻かつ長期化する熱波が発生している中で、この研究結果は重要な意味を持つ可能性がある。世界の気温が上昇し続ける中、妊娠期および乳児期早期の暑熱曝露を減らすことは、小児の脳発達を守る上で重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。

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マダニによる肉アレルギー関連抗体保有者は想定以上か

 マダニに咬まれることで発症する肉アレルギーとして知られるα-Gal(アルファガル)症候群に関連する抗体を持つ米国人は、これまで考えられていたよりもはるかに多い可能性が、新たな研究で示された。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校感染症分野のEleanor Saunders氏らが7月2日付で「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に報告した研究によると、α-gal IgE抗体陽性率が高い5州では、成人の約4人に1人がこの抗体を保有していることが判明したという。研究グループは、「これらの結果は、α-galに対する抗体を保有していても、必ずしもα-Gal症候群を発症するわけではないことを示している」との見解を示している。 α-galは糖鎖の一種で、多くの哺乳類の細胞表面に存在する。マダニに咬まれると、マダニの唾液などを介してα-gal関連物質に曝露され、免疫系がα-galに反応するようになる。その後、牛肉や豚肉、羊肉などを摂取すると、免疫系がそこに含まれるα-galを異物として認識し、アレルギー反応を起こすことがある。これがα-Gal症候群である。その症状は、じんましん、腫れ、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などで、生命を脅かすアナフィラキシーショックを引き起こすこともある。 Saunders氏らは、米国成人におけるα-galに対するIgE抗体の保有状況を調べるため、2024年11月14日から2025年4月9日にかけて、10州の献血者から採取された3,000件の血液サンプルを解析した。 その結果、α-galに対するIgE抗体の推定陽性率は、ワシントン州の1.1%からアーカンソー州の31.2%まで大きな幅があった。抗体陽性率が最も高かった5州(アーカンソー州、ケンタッキー州、ミズーリ州、テネシー州、バージニア州)では、約4人に1人(24.0%)がα-gal IgE抗体検査で陽性になると推定された。また、α-gal IgE抗体陽性率は、16~34歳の若年層より55~64歳で高く、女性より男性で高い傾向が認められた。さらに、郡の人口密度が10倍になるごとに、16歳以上の住民のα-gal IgE抗体陽性率は29.5%低下した。 米国では、2022年時点で、α-Gal症候群の患者数は最大45万人と推定されていた。この推定に対し研究グループは、「今回の研究結果は、実際にはさらに多くの人がマダニに咬まれてα-galに対する抗体を獲得しているものの、症候群の発症には至っていない可能性があることを示している」と述べている。またSaunders氏は、「多くの人はα-galに感作(抗原に対して免疫反応を示す状態)され、抗体が検出される状態になっていても症状が現れない可能性がある」とニュースリリースでコメントしている。 研究グループは、血液検査の結果だけで判断すると、α-Gal症候群を過剰診断する可能性があると指摘している。Saunders氏は、「α-Gal症候群の診断には、症状と一致する臨床歴と、検査による証拠の両方が必要だ」と述べている。 研究グループは、α-gal IgE抗体保有者のうち、実際にα-Gal症候群を発症する人の割合や、発症しやすい人の特徴を明らかにするには、さらなる研究が必要だとしている。Saunders氏は、「献血者の抗体陽性率データは、α-galへの曝露がどこで起きているのかを把握する上で貴重な情報となる。今回の知見は、リスクが高い地域社会において、監視体制の構築、予防策、医療従事者への教育を重点的に進める地理的に絞ったアプローチを支持するものだ」と話している。

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血液検査でアルツハイマー病がわかる世界へ(解説:岡村毅氏)

 「将来、血液検査によってアルツハイマー病がわかるようになる」と、長い間言われ続けてきた。 10年ほど前まで、アルツハイマー型認知症の診断は、CTやMRIなどの形態画像、SPECTなどの機能画像、脳脊髄液検査、心理検査、そして臨床的な面接などを組み合わせて行われてきた。脳脊髄液検査とは、腰から針を刺して髄液を採取する侵襲的な検査である。検査する側にとっても、される側にとっても、なかなか大変だったのだ。 ところが、アルツハイマー病の神経病理が徐々に明らかになり、アミロイドPETなどの分子イメージングも臨床実装された。さらに現在では、認知症という臨床像だけではなく、アミロイドやタウといったバイオマーカーによってアルツハイマー「病」を捉える方向へと大きく動いている。 この先に、「それなら血液検査でわかれば、もっと楽ではないか」という未来を見るのは自然であろう。 ただし、血液検査で「認知症」がわかるわけではない。わかるのは、アルツハイマー病の「病理」である。 今回JAMA誌に報告された研究では、複数の高齢者コホートのデータを統合し、認知機能障害のない人でも、血漿リン酸化タウ217(p-tau217)が高いほど、その後、認知機能障害へ進行するリスクが高いことが示された。 科学が一歩一歩進んでいることを喜びつつ、精神科医の視点から、いくつか気になることも挙げておきたい。 第1に、p-tau217は、まだ「○○以上なら異常」という世界共通の物差しが完成しているわけではない。測定法によって絶対値が異なるため、今回の研究でも各コホート内で値を標準化している。とくに「5年間で認知機能障害へ進行するリスクが38%と推定された」very high群は、アミロイドPETでいえば、おおむね60 Centiloidsを超える、かなり強いアミロイド蓄積に相当する。そして裏返せば、これほど高い値を示していても、約6割は5年間では認知機能障害へ進行しなかった。 第2に、アルツハイマー病は精神疾患ではないが脳と心はかなり近い(寝室と夢くらい近い)。精神科医としては、ここに少し「ざわざわ」するものを感じる。精神医学には、血液検査、脳画像、眼球運動など、さまざまな生物学的指標から「将来、精神疾患を発症する人」を見つけようとしてきた長い、そして時に負の歴史がある。一方、臨床家は危険性についても考えてきた。「あなたは、もうすぐ精神病を発症する可能性が高い。だから、今からあなたを保護します」そんなディストピアを想像してみればよい。 もちろん、アルツハイマー病のバイオマーカー研究に差別の意図などない。しかし科学的な「リスク」が社会の中で「この人は実は認知症だ」と翻訳されれば、大きな権利侵害が起きる可能性がある。そして、血液検査が簡単になればなるほど、この問題はむしろ重要になる。 第3に、やがて血液検査でバイオマーカー陽性者を見つけ、抗体薬などによって、症状が現れる前から介入する時代が来るかもしれない。それ自体は素晴らしい医学の進歩である。 ただし、人生は1回きりである。臨床試験なら、「治療しなかった人」と「治療した人」を比較して、「認知機能が保たれる期間が延びた」と言える。しかし1人の人間は、「治療した人生」と「治療しなかった人生」の両方を生きることはできない。 将来、治療によって認知機能の低下を2年、3年と遅らせることができるようになったとしても、その人自身の主観的な人生は、「治療しなかった自分より3年間得をした」と経験されるわけではない。「少しずつ認知機能が低下し、やがて認知症になった」という、1回だけの連続した人生として経験されるだろう。 だからこそ、認知症になることを遅らせることと同時に、認知症があってもなくても、その人がよりよく生きられる社会をつくることが大事なのだ。血液検査でアルツハイマー病がわかる時代とは、医学が簡単になる時代ではない。むしろ、「脳内を覗きながら、私たちはどう生きるのか」という、少し難しい問いが始まるのだ。

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2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの効果(解説:小川大輔氏)

 2型糖尿病の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が登場し、その後GIP受容体に対する作用を併せ持つGIP/GLP-1受容体作動薬が使用されるようになった。そしてGIP受容体、GLP-1受容体に加え、グルカゴン受容体を同時に刺激するGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬、いわゆる「トリプルアゴニスト」が開発されている。今回2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの第III相試験の結果が報告された1)。 食事療法と運動療法で血糖コントロール不良(HbA1c 7.0~9.5%)の2型糖尿病患者を対象に、retatrutide群(4mg、9mg、12mg)とプラセボ群に無作為に割り付け、40週間投与した。retatrutideはGLP-1受容体作動薬セマグルチドやGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドと同じく週1回投与の注射製剤である。主要エンドポイントであるベースラインから40週時のHbA1cの変化量は、プラセボ群と比較しretatrutide群で有意差を認めた(retatrutide 4mg群-0.88%、9mg群-1.04%、12mg群-1.12%)。 グルカゴンは膵臓のα細胞から分泌されるホルモンで、肝臓でのグリコーゲン分解促進、糖新生の促進、脂肪組織での脂肪分解の促進などの作用により血糖値を上げる働きをする。retatrutideのグルカゴン受容体刺激により血糖値上昇が懸念されるが、グルカゴン受容体への作用が低親和性に調整されていること、またGLP-1およびGIPによるインスリン分泌作用、食欲抑制作用および胃排泄遅延作用により実際には血糖値は上昇しない2)。またretatrutideのグルカゴン受容体への作用により、エネルギー消費量の増加、肝臓の脂肪代謝改善、中枢性の食欲抑制などにより血糖値はむしろ低下し、さらに体重減少効果もあると考えられている3)。 GLP-1とGIPの受容体に働くデュアルアゴニストのチルゼパチドは、血糖降下作用に加えて体重減少効果もあり、現在実臨床でよく使用されている。そしてGLP-1、GIPに加え、グルカゴン受容体にも働くトリプルアゴニストのretatrutideは、グルカゴン受容体の刺激が加わることで、食欲抑制やインスリン分泌だけでなく、エネルギー消費や脂肪燃焼の効果がさらに高まると考えられ、チルゼパチドよりも強力なのではないかと期待されている。現在、retatrutideをシングルアゴニストのセマグルチドと比較する試験や、腎障害のある糖尿病患者を対象とした試験が行われており、今後の報告に注目したい。

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ブラジルの公聴会【Dr. 中島の 新・徒然草】(644)

六百四十四の段 ブラジルの公聴会ようやく暑さが峠を越えました。夜は虫の鳴き声が聞こえてきます。考えてみれば今年は8月7日が立秋だったので、もう秋なんですね。さて、先日のこと。夜遅く「疲れた、疲れた」と言いながら女房が帰ってきました。なんでもブラジルの博士課程学生の公聴会(PhD defense committee)に外部評価委員で参加していたのだそうです。もちろん出席はオンラインで、ブラジルの午前8時、日本の午後8時に始まったのだとか。博士課程の学生はパトリックという青年で、テーマは「隠れたリーダーシップ」というチームダイナミクスに関するもの。仕事中に困ったときに実際は誰に相談するのか、上司が不在の時にどうするのか、そのような組織の中の非公式リーダーシップとレジリエンスを科学的に解き明かすというのが彼のテーマでした。なぜ日本人医師である女房にそのような外部評価委員の役割が降ってきたのか?パトリックの指導教授(工学部)が女房と旧知の間柄だったのと、研究対象が医療現場だったからのようです。ほかの評価委員はオーストラリアからと地元ブラジルからの参加でした。この公聴会が面白い!ローカル色と国際標準が混ざりあったものでした。そもそも公聴会は誰が出席してもいいのですが、あまりにも年齢も服装もさまざまな人たちが参加していたので、女房は仰天したそうです。聞くところによると、故郷からオンラインで参加した一族郎党だとのこと。故郷というのはサンパウロかどこかにあるストリート。端から端まで丸ごとパトリックのファミリーが住んでいるのだとか。あまり裕福とはいえないストリートに突如生まれた神童を一族全員で応援した結果、今回の晴れ舞台に至ったのだそうです。それに加えて、パトリックがアルバイトで教えている英語学校の生徒たちも出席していました。こちらも自分たちの先生が学位に挑むということで、応援に来てくれたのだそうです。ブラジルはポルトガル語圏ですが、パトリックは流暢な英語でプレゼンテーションを行いました。興味深いのは世界標準に関する部分。オーストラリアからの外部評価委員が体調不良ということで文書参加でした。この文書が、前年の予備公聴会でのノルウェーからの外部評価委員と同じようなフォーマット。何ページにもわたって「ここはこうしろ。あそこはこうだ」と、冠詞1つにまで事細かく注文が付けられていたのだとか。つまり、このような場での文書は型が決まっており、ブラジルもオーストラリアもノルウェーも同じなのだそうです。知らんかった。あと、なぜ前年にも予備公聴会があったのか?実はパトリックの研究は3部作で、第1部と第2部は前年の予備公聴会の後に論文化されていたとのこと。なので今年がいよいよ正念場。今回の公聴会をクリアすれば彼の3部作が完成し、念願の学位を獲得できるということでした。30分間の発表の後に、30分間の評価委員たちからの厳しい質問を凌ぎきり、別室での合議の後にパトリックは見事に合格!その瞬間、親戚一同と生徒たちから「パトリック、おめでとう!」という言葉とともに、ポルトガル語で書かれた黄色い爆弾みたいなのが画面に出てきました。ハートとか拍手マークならわかるのですが、なぜ黄色い爆弾なのか、それは今でも謎です。そして「ここからはポルトガル語でお話しします」というパトリック。ポルトガル語なので何を言っているのかよくわからないのですが、たぶんこんなところでしょう。 「まずは、これまで経済的にも精神的にも僕を支えてくれたママに感謝します」 「そして、お祖母ちゃんにも感謝します。お祖母ちゃん、本当にありがとう!」こうして感動のスピーチとともに公聴会は無事に終了しました。そんなわけで、ウン十年前の私自身の公聴会と比べてみると、ブラジルのそれは大きく違っていたようです。日本ではこんな感じでした。 英語でなく日本語だった。 発表と質疑応答合わせて1人30分くらい。1日に何人もの審査があった。 家族や友人知人の出席なし。 質問するのはせいぜい前後の発表者とその共同研究者くらい。 主査、副査は全員学内の教授。ネット普及前のせいか外部評価委員は皆無。 現在の日本がどうなっているのか知りませんが、彼我の違いに驚くばかりです。あと、ブラジル的気配りについて触れておきましょう。女房がオンライン出席している画面に壁時計が映っていたみたいで、向こうの指導教授が「日本ではもう午後10時過ぎか、そろそろ切り上げよう」と言ってくれました。予想外の親切さですね。一方で予定を決める時に「12時間の時差だから日本が午前8時、ブラジルが午後8時始まりでもいいんじゃないか」と言ったら、そこはブラジル人。「俺たちが午後8時に働くなんてあり得ない」と却下されてしまったそうです。日本人には理解できないところに力が入っているみたいでした。というわけで、読者の皆さんにも異国の公聴会の様子を楽しんでいただくことができれば幸いです。最後に1句 立秋の 公聴会は ブラジルで

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第72回 たった1試合のヘディングでも脳に「サイン」が。アマチュア選手の血液が語る神経ダメージ

サッカーの元プロ選手は、認知症などの神経変性疾患にかかるリスクが一般の人の2~3倍高いことが、これまでの大規模調査で報告されています1)。その原因の候補として疑われてきたのが、繰り返しの頭部への衝撃、つまりヘディングです。しかし、実際の試合中のヘディングが脳にどのような急性の影響を与えるのかは、これまでよくわかっていませんでした。従来の研究は実験的に非現実的な回数のボールを当てたり、運動そのものの影響を考慮していなかったりと、限界があったのです。今回オランダの研究チームは、上位アマチュアリーグの男性選手302人(平均24.6歳)を対象に、実際の公式戦11試合でこの問いを検証しました。試合前、試合直後(1時間以内)、そして24~48時間後に血液検査を行い、ビデオ解析でヘディングの回数や強さを1回ずつ記録。さらに運動強度の影響を補正した、これまでにない厳密なデザインの研究です2)。1試合のヘディングで血液マーカーが上昇結果として、選手の72%が試合中に少なくとも1回のヘディングをしており、平均は1人あたり2.0回でした。分析の結果、ヘディングをした選手は、しなかった選手に比べて試合直後の「S100B」(脳を支えるグリア細胞の傷害を示すタンパク質)の血中濃度が34.7%高く上昇していました。また、ヘディングの回数が多いほど、S100Bと「p-tau217」(神経細胞の軸索の傷害やアルツハイマー病の病理と関連するタンパク質)の上昇が大きくなる、いわゆる「量反応関係」も認められました。とくに注目されるのは、ボールが20メートル以上飛んできてから当たる「高衝撃ヘディング」の影響です。これを複数回受けた選手では、ヘディングをしなかった選手に比べ、p-tau217が51.4%、S100Bも51.4%と大幅に上昇していました。一方で、神経の傷害を示す他のマーカー(NfL、GFAPなど)には有意な変化はみられませんでした。数値は48時間で正常化、それでも残る懸念上昇したマーカーは、24~48時間後には元のレベルに戻っていました。ただし研究チームは、「血液中の数値が正常化しても、脳の組織が回復したことを意味するわけではない」と注意を促しています。1回1回は小さなダメージでも、長年繰り返されることで、神経変性疾患につながる病的なプロセスが積み重なる可能性は否定できないからです。一方で、この研究はあくまで観察研究であり、ヘディングが将来の認知症を引き起こすと証明したものではありません。対象も成人男性のアマチュア選手に限られており、女性や子供、プロ選手に同じ結果が当てはまるかは今後の検証が必要です。私たちが知っておきたいのは、プロではない普通の競技レベルでも、1試合のヘディングが脳に検出可能な急性の変化を起こしうるという事実です。とくに遠くから飛んでくるボールへのヘディングは影響が大きく、研究チームは「ヘディングの回数や強い衝撃を減らすルール作りが、脳への急性の影響を減らせる可能性がある」と指摘しています。実際、海外では子供のヘディングを制限する国も出てきています。サッカーに親しむ本人やお子さんを持つ方は、こうした議論が科学的データに基づいて進んでいることを知っておくとよいでしょう。1)Mackay DF, et al. Neurodegenerative disease mortality among former professional soccer players. N Engl J Med. 2019;381:1801-1808.2)Hoppen MI, et al. Amateur soccer heading and acute elevations in blood-based p-tau217 and S100B. JAMA Neurol. 2026;83:635-644.

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PPI長期使用、即時中止vs.漸減中止

 長期投与中のプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、症状改善後も漫然と継続されることが少なくない。一方、中止後の症状再燃への懸念から、減量しながら中止すべきか、あるいは即時中止でも問題ないかについては十分なエビデンスがなかった。今回、多施設ランダム化比較試験により、臨床的に安定した胃食道逆流症(GERD)患者において、PPI(P-CABを含む)の即時中止と漸減中止の有効性を比較した結果、両群の中止成功率に有意差は認められなかった。順天堂大学消化器内科の北條 麻理子氏らによる本研究はJournal of Gastroenterology誌2026年8月号に掲載された。 本試験は、多施設共同ランダム化比較試験だった。対象は、長期間PPIまたはP-CABによる治療を受け、症状が安定している外来のGERD患者63例だった。患者を、薬剤を直ちに中止する「即時中止群」と、2週間半量投与後に中止する「漸減中止群」に1:1で無作為に割り付けた。中止後は症状出現時にレスキューとしてPPIの使用を認めた。 主要評価項目は24週時点でのPPI中止成功率、副次評価項目は48週時点でのPPI中止成功率とした。中止成功は、28日間の評価期間におけるレスキューPPI使用日数8日以下と定義した。 主な結果は以下のとおり。・24週時点での中止成功率は、即時中止群74.2%、漸減中止群75.0%であり、リスク差は-0.8%(95%信頼区間:-23.1~21.5)と、両群に差は認められなかった。48週時点でも同様の結果が得られ、Per-protocol解析でも結果は一貫していた。・安全性については、事前に規定された有害事象は認められなかった。探索的解析では、高齢であること、ベースラインの逆流症状(regurgitation)スコアが低いことが中止成功と関連していた。また、レスキューPPIの使用は中止直後に集中して認められたものの、その後の長期的な中止成功を妨げる要因とはならなかった。 PPIの長期使用は、適応が消失した後も継続される例が少なくなく、不要な長期投与は医療費や潜在的な有害事象の観点からも見直しが求められている。本試験は、症状が安定したGERD患者では、段階的な減量を行わなくても、即時中止で同等の中止成功率が得られることを示した。 著者らは、「臨床的に安定した患者において、PPIの即時中止と漸減中止は、同程度の成功率だった。いずれの方法においても、一時的な症状や必要時のレスキュー療法に関するカウンセリングが中止成功を促進する可能性がある」と結論づけている。

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日本人Lp(a)の実態解明、2つのカットオフ値を提案(LEAP研究)

 日本人のLp(a)濃度分布やLp(a)の心血管疾患(CVD)との関連を明らかにするために国内で実施されている多施設共同後ろ向き観察研究(LEAP研究)。2025年の第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会での発表時には、日本人におけるLp(a)濃度分布と冠動脈疾患(CAD)をはじめとする併存疾患の関連性について、具体的に示されていなかった。今回、本研究の筆頭著者である山田 知明氏(東京科学大学病院 医療情報部)らはそれらを明らかにし、Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2026年8月1日号で報告した。 Lp(a)は動脈硬化の独立したリスク因子として世界的に注目されている一方、日本国内では測定機会が限られており、日本人集団における正確な濃度分布やリスクの閾値(カットオフ値)に関する実臨床データは十分に明らかになっていない。そこで本研究グループは、国内6施設(東京科学大学、国立循環器病研究センター、大阪医科薬科大学、金沢大学、東京慈恵会医科大学、杏林大学)においてLp(a)が測定された6,173例を対象に解析を行った。本研究の測定患者は除外基準を設けず全例登録され、また、2種類の免疫学的測定キット(日東紡、積水メディカル)が用いられていたLp(a)測定値を既報の変換式に基づき「nmol/L」単位に標準化したうえで解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・6,173例のうち男性は58.3%で、年齢中央値は63歳であった。・有病率は家族性高コレステロール血症(FH)18.5%、CAD25.7%、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)28.3%、糖尿病(DM)30.1%であり、全体としてCVDリスクが高い集団であった。・測定値を標準化した後のLp(a)中央値は20.88nmol/L(75パーセンタイル:61.7nmol/L、90パーセンタイル:137.1nmol/L)であり、右に裾が長い分布を示した。・Lp(a)中央値は、DMを除くいずれの併存疾患において、併存群は非併存群と比較して有意に高値であった。ただし、DMにおいては、併存群は非併存群と比較して有意に低値であった。 ● CAD:31.5nmol/L vs.19.4nmol/L(p<0.05) ● ASCVD:33.8nmol/L vs.18.7nmol/L(p<0.05) ● 慢性腎臓病(CKD):31.4nmol/L vs.19.2nmol/L(p<0.05) ● DM:16.5nmol/L vs.23.5nmol/L(p<0.05) ● FH:53.0nmol/L vs.18.0nmol/L(p<0.05)・FHの遺伝型別(非FH<ヘテロ接合体<ホモ接合体)でLp(a)値が高くなる段階的な傾向が観察された。・ROC解析において、CADおよびASCVD発症に対するLp(a)のAUCはそれぞれ0.60、0.59であった。・感度・特異度の均衡から第1のカットオフ値25nmol/L(注意・リスク評価を考慮する水準)を、特異度0.90を超える閾値として第2のカットオフ値125nmol/L(高リスク水準)を日本人基準として提案した。・年齢、性別、LDL-C、DM、CKDを調整した多変量解析においても、Lp(a)25~125nmol/L群、および125nmol/L超群は、25nmol/L未満群と比較してCADおよびASCVDに対する独立した有意なリスク因子であることが確認された。 山田氏は、日本動脈硬化学会が5月に開催したプレスセミナーにおいて、「大規模データをnmol/L単位へ標準化し、日本人のLp(a)分布および各種動脈硬化性疾患との関連を可視化した初めての取り組み」であることを強調し、「これまで不明であった日本人でのLp(a)の実態、FHとの明確な関連を示すことができた点は非常に意義深い」とコメント。また、「解析により提案されたカットオフ値25nmol/Lは、(一次予防・一般人口における絶対的なリスク境界というよりも)二次予防や併存疾患を有する集団における『スクリーニングや個別リスク評価を考慮すべき注意信号』としての役割を持つ。一方、125nmol/Lを超える高リスク群に対しては、積極的な介入やFHに準じたカスケードスクリーニング(血縁者診断)を行う重要な基準となる」とも説明した。 最後に、「現状、国内のLp(a)の測定機会は限られているが、脂質異常症や動脈硬化性疾患リスクを持つ患者に対し少なくとも“生涯に1回”の測定が行われるよう、日常診療や健診での啓発と普及を進めていきたい。また、健康成人を含む一次予防に対する研究も実施段階であり、今後詳細を明らかにしていきたい」と結んだ。

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日本における初発統合失調症患者に対するLAI抗精神病薬の投与パターンが判明

 長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬は、統合失調症治療の継続性を支える可能性がある。しかし、日本における初発統合失調症におけるリアルワールドでのLAI抗精神病薬の開始パターンについては、十分に明らかにされていない。京都大学の宮川 亮祐氏らは、JMDCレセプトデータベースを用いて、日本における初発統合失調症患者に対するLAI抗精神病薬の投与パターンを明らかにするため、本研究を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2026年7月7日号の報告。 2005年1月~2024年3月のJMDCレセプトデータベースを用い、初発統合失調症に近似するレセプトベースの代理コホートを対象に、縦断的記述疫学研究を実施した。本コホートは、操作的診断アルゴリズム、診断と抗精神病薬治療開始の時間的近接性、インデックス日前の遡及期間を含む継続的な加入期間に基づき定義された。統合失調症の疑いと診断された症例は除外した。主な記述的指標は、フォローアップ期間中のLAI抗精神病薬の開始(LAI抗精神病薬の調剤が1回以上)、統合失調症診断から初回LAI抗精神病薬調剤までの期間、抗精神病薬調剤の年次推移とした。経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬への切り替え、かつLAI抗精神病薬開始の前後1年間にわたりデータがフォローアップ可能な患者に限定した探索的記述解析では、治療継続性(週ごとの服薬期間割合[PDC])および精神科入院について記述した。 主な内容は以下のとおり。・対象となった2万4,226例の初発統合失調症患者において、フォローアップ期間の中央値は30ヵ月(四分位範囲[IQR]:13~58)であり、1回以上のLAI抗精神病薬の調剤が行われた患者は437例(1.8%)であった。・診断から初回LAI抗精神病薬調剤までの期間の中央値は12ヵ月(IQR:2~31)であり、LAI抗精神病薬の調剤を受けた患者の割合は、研究期間を通じて一貫して2%未満であった。・経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬へ切り替えた患者において、LAI抗精神病薬開始前の1年間におけるPDCの中央値は0.82(IQR:0.50~0.96)であり、同期間中に26.9%が医療保護入院を経験していた。 著者らは「日本の医療保険加入者のレセプト集団において、LAI抗精神病薬の開始はまれであり、多くは経口抗精神病薬の開始後に行われていた。これらの知見は、医療保険加入者集団における、新たに確認・治療された統合失調症患者のLAI抗精神病薬の開始パターンを明らかにするものである」としている。

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婦人科腫瘍の循環器合併症~血栓症と高血圧~/日本婦人科腫瘍学会

 婦人科がんと循環器疾患の関連は深い。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会にて、大阪がん循環器病予防センターの向井 幹夫氏は「婦人科腫瘍学と腫瘍循環器学の連携」と題し、両者の密接な関係について紹介した。婦人科腫瘍とがん関連血栓症(CAT) 婦人科腫瘍患者は、閉経後の動脈硬化リスク上昇に加え、卵巣摘出後の外科的閉経や薬物治療により心血管イベントリスクが増大する。中でも、CATへの対応は婦人科腫瘍の診療においてきわめて重要である。 がんはTissue Factor(TF)やサイトカイン、さらにマイクロパーティクルを分泌して凝固系を活性化し血栓を形成する。がんはこの血栓を利用して転移するのである。がん自体による血栓形成以外に、薬剤による血栓形成も問題となる。婦人科がんで汎用される内分泌薬やパクリタキセル、タキサンなどの化学療法薬は血栓症合併リスクが高い。 日本の固形がん1万例における静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を前向きに調べたCancer VTE Registryによれば、全体集団では5.9%、婦人科腫瘍では5.5%にVTEが認められた。また、婦人科腫瘍800例超におけるVTEの発症と危険因子を調べたGOTIC-VTE試験では、全体のVTE発症は5.8%、卵巣・卵管・腹膜がんでは13.7%に上る。その多くは無症候性であり、近位部よりも遠位部が多かった。婦人科腫瘍における脚の腫れは治療によるリンパ浮腫とみなされがちだが、末梢の血栓が隠れているケースは多いと、向井氏は注意を促す。 『肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』2025年改訂版では、がん関連VTEに関する記載が追加された。そこでは、活動性がん患者の肺血栓塞栓症/中枢型深部静脈血栓症(DVT)の治療は、がんが治癒しない/活動性がなくならない限り継続を考慮すること、中枢型DVTの延長治療には低用量DOACを考慮することなどが記載されている。婦人科腫瘍とがん関連高血圧(Onco-Hypertension) がん治療関連高血圧では、がん由来のサイトカインや化学療法の血管内皮障害により、通常の高血圧より急速に病態が重篤化する。通常5年かかるプラーク形成が、これらの薬剤では1年程度で起こる可能性があるという。 血管新生阻害薬は投与直後から血圧を上昇させ、長期使用で血管内皮の障害を引き起こす。そのほかプラチナ系薬、アルキル化薬、PARP阻害薬、アロマターゼ阻害薬など婦人科腫瘍の治療で汎用される抗がん剤には血圧を上昇させるものが多い。 『高血圧管理・治療ガイドライン』2025年改訂版では、担がん患者の項が追加され、がんと高血圧の双方向性や治療ステップが示されている。そこでは、がん治療患者の降圧治療開始時期と降圧目標、降圧薬の第1選択、治療抵抗性への対応などが取り上げられている。 婦人科腫瘍における循環器合併症の管理には、ライフステージ、性ホルモン、血栓・出血リスクといった婦人科特有の課題がある。より良い循環器疾患の合併症管理には、婦人科腫瘍医と循環器医の情報共有と連携が大きな鍵を握ることは間違いない。

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非糖尿病CKDへのフィネレノン、eGFR低下を有意に抑制/NEJM

 非糖尿病の慢性腎臓病(CKD)成人患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、32ヵ月間にわたる推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を抑制したことが示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のHiddo J. L. Heerspink氏らFIND-CKD Investigatorsが、国際共同第III相二重盲検無作為化試験の結果を報告した。先行の無作為化試験において、フィネレノンは2型糖尿病およびCKDを有する患者における腎・心血管アウトカムを改善したが、糖尿病を伴わないCKD患者への効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2026年8月6日号掲載の報告。ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率を評価 研究グループは、糖尿病を伴わないCKD(eGFR:25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満かつ尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]:200~500mg/g、またはeGFR:25mL/分/1.73m2以上90mL/分/1.73m2未満かつUACR:500~3,500mg/g)を有し、レニン・アンジオテンシン系阻害薬を服用している成人を対象に、フィネレノンの有効性と安全性を検証した。 被験者を、フィネレノン(10mgまたは20mgを1日1回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、総eGFRスロープ(ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率と定義)で、2スロープ線形スプライン混合効果モデル(ベースラインから3ヵ月時点までの効果[すなわち急性eGFRスロープ]と3ヵ月時点から治療中止までの有効性を区別する[両者は異なると予想された]ためのモデル)で評価した。副次評価項目は、腎・心血管複合イベント(eGFRのベースラインからの持続的低下が57%以上、腎不全、心不全による入院または心血管死)、腎複合イベント、心血管複合イベントなどであった。eGFR年間変化率、フィネレノン群-3.3mL/分/1.73m2/年で有意に抑制 2021年9月21日~2023年5月12日に1,584例が無作為化された(793例がフィネレノン群、791例がプラセボ群)。両群のベースライン特性は類似しており、平均年齢は54.7歳、535例(33.8%)が女性で、UACR中央値は818.9mg/gであった。 ベースラインのeGFRは、フィネレノン群46.8±16.2mL/分/1.73m2、プラセボ群46.6±16.0mL/分/1.73m2であった。ベースラインから3ヵ月時点までのeGFRの平均変化量は、フィネレノン群(-2.0mL/分/1.73m2)がプラセボ群(-0.8mL/分/1.73m2)よりも1.2mL/分/1.73m2大きかったが、3ヵ月以降、フィネレノン群のeGFR低下率は緩徐になった。 主要評価項目のベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率は、フィネレノン群で-3.3mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-3.6~-3.1)、プラセボ群で-4.0mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.3~-3.8)であった(群間差:0.7、95%CI:0.3~1.1、p<0.001)。 事前に規定された階層的検定で、腎・心血管複合イベントリスクは、フィネレノン群でプラセボと比較して低いことが示された(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.60~0.99、p=0.04)。HRは、腎複合イベントについては0.78(95%CI:0.60~1.01)、心血管複合イベントについては0.60(95%CI:0.27~1.33)であった。 最も多くみられた有害事象は高カリウム血症であった(フィネレノン群135例[17.0%]、プラセボ群105例[13.3%])。高カリウム血症により、それぞれ12例(1.5%)と1例(0.1%)で試験治療が中止され、7例(0.9%)と5例(0.6%)が入院に至った。

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週1回皮下投与のzenagamtide、2型糖尿病に対する有効性は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、zenagamtide 0.4~40mgの週1回皮下投与はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬で、2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象に評価が行われた初期の臨床試験において、2型糖尿病患者を対象としたさらなる検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年7月30日号掲載の報告。週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応試験 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、週1回皮下投与のzenagamtide群またはプラセボ群に6対1の割合で割り付けられ、さらに6つの用量群(0.4、1.5、5、10、20、または40mg)のいずれかに1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide皮下投与は0.2mgで開始し、維持用量(0.4~40mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、治験薬の投与を受けた無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量、6用量群で-0.9%~-1.7% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち262例(29%)が、zenagamtide群(225例)またはプラセボ群(37例)に無作為化された。被験者はさらに、6用量群のいずれか1用量群(0.4mg群38例、1.5mg群36例、5mg群37例、10mg群38例、20mg群38例、40mg群38例)またはプラセボ群(37例)に無作為化され、261例が治験薬の投与を受けた。 ベースラインにおける全群のHbA1c平均値は7.8%(SD 0.8)であった。36週時点で、HbA1c推定変化量は、zenagamtide 0.4mg群の-0.9%(対プラセボの推定治療群間差:-0.77%、95%信頼区間[CI]:-1.26~-0.28、p=0.0021)からzenagamtide 40mg群の-1.7%(同:-1.56、95%CI:-2.05~-1.07、p<0.0001)の範囲にわたっていた。 有害事象の大部分は消化器系のもので、重症度は軽度~中等度であった。重篤な有害事象は、21/261例(8%)で報告された(0.4mg群4例、1.5mg群3例、5mg群2例、10mg群5例、20mg群3例、40mg群1例、プラセボ群3例)。死亡は報告されなかった。

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男性は女性より進行がんで診断されやすい

 がんによる死亡率は女性よりも男性の方が高いが、その理由の一端を説明し得る新たな研究結果が報告された。同研究によると、男性は女性と比べてがんが最初に発生した部位(原発巣)から近傍のリンパ節や他臓器へ広がった段階でがんと診断される可能性が高いことが明らかになったという。この研究は、米国立がん研究所(NCI)のBeth Maclin氏らによるもので、詳細は「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」7月号に掲載された。 この結果は、男性ではがんの発見が遅れ、治療がより困難で死亡につながりやすい段階で診断されることを意味していると研究グループは指摘している。論文によると、米国における2019~2023年の人口10万人当たりのがん死亡者数は男性が約172人、女性が約126人であった。論文の筆頭著者であるMaclin氏はニュースリリースの中で、「全体として、男性は女性よりも多くの種類のがんで死亡することが知られている。また、診断時のがんの進行度が生存率を左右する重要な予測因子であることも明らかにされている」と説明している。一般に、診断時の病期が進行しているほど、予後は悪くなる傾向があるという。その上で同氏は、「診断時の病期に男女差があるかどうかを詳しく調べることは、がん死亡率の男女差を理解するとともに、全ての患者の生存率向上につながる対策を見出す上で重要だ」と話している。 この研究では、2015~2022年にNCIのデータベースに登録された240万1,772例のがん症例が解析された。解析では、がんを、1)原発巣にとどまる「限局がん」、2)近くのリンパ節への転移を伴う「領域がん」、3)別の臓器への転移を伴う「遠隔転移がん」の3段階に分類した。 その結果、女性と比べて男性では16種類のがんで、限局がんではなく領域がんとして診断される可能性が高いことが示された。例えば、舌がんで151%、唾液腺がんで93%、口腔・咽頭がんで80%、甲状腺がんで74%、胃がんで67%高いことが示された。 また、男性では女性と比べて17種類のがんで、限局がんではなく遠隔転移がんとして診断される可能性が高いことも示された。例えば、舌がんで134%、甲状腺がんで128%、唾液腺がんで97%、胃がんで56%、メラノーマで50%高いことが示された。一方、喉頭がん、膀胱がん、肛門がん、肝がんでは、女性と比べて男性では進行した段階で診断される可能性が低いことが示された。 Maclin氏は、「今回調べたがん種の多くで男女差が認められた要因については、さまざまな可能性が考えられる」と指摘。その上で、「検診によって発見可能ながんに関しては、がん検診の受診率の違いが影響した可能性がある」との見方を示している。 また、「男女で受診行動に違いがあることも要因の一つとなっている可能性がある。これまでの研究では、男性よりも女性の方が医療機関を受診する頻度が高いことが示されている。したがって、女性では医師によってがんの症状が早い段階で見つかる機会が多く、領域がんや遠隔転移がんになる前の限局がんの段階で診断されやすい可能性がある」と説明している。 さらに、Maclin氏は、「医師のがんの症状の捉え方が男女で異なる可能性もある。そのために検査や治療方針にも違いが生まれ、がん診断が早まる場合もあれば遅れる場合もあり得る」と付け加えている。いずれにしても、定期的に医療機関を受診し、治療しやすい早期の段階でがんを発見することが最も重要であるとMaclin氏は強調している。同氏は、「私から伝えたい最も重要なメッセージは、『誰もが定期的に医師の診察を受けるべきである』ということだ。自分の体に何らかの変化を感じたら、受診を先延ばしにしないでほしい」と呼びかけている。

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AIを用いたMRI解析で従来検出困難だった多発性硬化症の皮質病変を検出

 多発性硬化症(MS)では脳の皮質に生じる病変(皮質病変)が身体機能障害や認知機能低下と深く関連しているが、従来のMRI検査では皮質病変の可視化に限界があった。しかし、新しく開発されたAI(人工知能)を活用したMRI画像解析手法により複数のMRI画像の情報を組み合わせて解析することで、従来のMRI検査では見えなかった病変を検出できる可能性が示された。 論文の筆頭著者である米バッファロー大学神経学および生物医学情報学分野のMichael Dwyer氏は、「従来のMRI画像を見ても、通常は皮質病変を確認することはできない。しかし、AIは画像間のごくわずかな違いを検出できるため、非常に強力なツールとなる。AIはこうした小さな差異を捉えることで、その部位に異常が生じており、組織の機能が健常な組織とは異なることを明らかにする」とニュースリリースで述べている。この研究の詳細は、7月7日付で「Communications Medicine」に掲載された。 今回の研究でDwyer氏らは、MRI画像処理技術として、FLAIR画像とT2強調画像を組み合わせたFLAIR2画像、T1強調画像とT2強調画像の信号比を用いたT1/T2比画像、AIを用いて一般的なMRI画像からDIR(Double Inversion Recovery)画像を生成するAI-DIR画像を評価した。その上で、これらの手法を組み合わせた病変強調画像「MMCLE(Multi-Modal Cortical Lesion Enhanced)」を開発した。さらに、トランスフォーマーを基盤とするAIを用いて皮質病変を自動検出し、専門家がその結果を確認・修正した。これらの手法を用いた皮質病変検出の有用性は、732人の患者(平均年齢44.6歳)を対象としたMS治療薬に関する第3相ORATORIO試験で取得されたMRI画像を用いて評価した。 その結果、開発用データセット(80人、平均年齢46.6歳、平均罹病期間7.0年)では、この解析法により、これまで検出できなかった皮質病変が患者1人当たり平均14.8個特定された。専門家によるブラインド評価では、MMCLE画像単独での病変検出性能が最も高く、真陽性率86.0%、偽陽性率8.4%であった。データセット全体(732人)では、専門家による評価の結果、計1万366個、1人当たり平均14.4個の病変が検出された。 論文の上席著者であるバッファロー大学ジェイコブス医学・生物医学部のRobert Zivadinov氏は、「従来型のMRIでは可視化できなかった皮質病変を検出できることは、MS研究と臨床診療の双方に大きな意義を持つ。これまで隠れていた認知機能障害や身体機能障害と関連する病変も含めたMS進行の指標を初めて可視化できるようになったことは重要な前進だ」と述べている。 この技術を活用すれば、例えば、皮質病変の形成をどの程度抑制できるかを指標として、既存および新規のMS治療薬の有効性を評価できるようになる。これまでは、従来のMRIで確認可能な白質病変に対するMS治療薬の効果しか評価できなかった。Zivadinov氏は、「脳内にこれほど多くの見えない病変が存在することを明らかにした本研究は、過去の臨床試験データの再評価だけでなく、今後実施される臨床試験にも大きな影響を与えるだろう」とコメントしている。 なお、本研究は、製薬企業Genentech社から一部支援を受けて実施された。同社は、このシステムの検証に用いられたMRIデータを収集した臨床試験にも資金を提供している。

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「卵を分ける」だけじゃない? 医師の収入に+αの「カゴ」を持つ生き方【医師のためのお金の話】第107回

先生方は、ご自身の資産や将来の収入源について、確固たる戦略をお持ちでしょうか? 投資の世界には「卵を1つのかごに盛るな」という有名な格言があります。これを聞くと、多くの方は株式投資における「銘柄の分散」を思い浮かべるかもしれません。今回ご提案したいのは、「かごそのものを増やす」という資産形成術です。医師としての収入に加えて、事業や不動産など複数の収入源を確立することで、市場環境や制度の変化にも揺るがない、盤石な経済基盤を築くことができます。とはいえ、最初から手当たり次第に手を出せば良いわけではありません。虻蜂取らずにならないためにも、初期段階で最も重要なのは「第一のかご=医師としての実力」を完成させることです。本コラムでは、本業を最優先としながら、卒後10~20年で人生の選択肢を劇的に広げる「かごの横展開戦略」の極意を解説します。将来の経済的な不安をなくしたい先生は、ぜひご一読ください!■「卵を1つのかごに盛るな」とは?改めて「すべての卵を1つのかごに盛るな」という格言について触れておきましょう。これはとくに株式投資において、一点集中よりも分散投資の方がリスクを抑えられ、手堅い結果につながることを意味しています。確かに、1つの銘柄への集中投資は、予測が当たれば莫大なリターンを生みます。たとえば、NVIDIAやキオクシアのようなAIや半導体の急成長銘柄に一点集中投資をしていれば、大きな資産を築けたはずです。しかし、予測を外したときのダメージは目も当てられません。過去の東芝のようなケースに一点集中投資をしていたら、大切な資産の多くを失ったでしょう。このように、投資ではリスクを回避して「卵を1つのかごに盛らない」という考え方が非常に役立ちます。■卵だけでなく「かご」そのものを増やす資産形成術私はここからさらに踏み込んだ戦略を持っています。1つの「かご」の中で「卵」を増やすだけでなく、「かご」そのものをどんどん増やしていくことこそが、資産形成の王道ではないかと考えているのです。通常、多くの人は株式投資という範囲の中で、いくつものジャンル(かご)に分散させます。「日本株」「米国株」「世界株」などがそれにあたります。オルカン1本という方も、実は「世界株」という大きなかごを所有している状態です。そして、個別株投資を実践する方は、各かごの中で複数の銘柄(卵)に分散させます。1つのかごの中に卵を詰め込み過ぎないことは、リスク管理の観点から重要です。たとえば「日本株」だけに投資対象(卵)を集中させるのは危ないでしょう。しかし、私はこの考え方をさらに一段高い視点から捉えて、投資対象の「かご」自体を大きくジャンル分けしています。現在、私自身の資産形成には、以下の5つの「かご」があります。医師としての収入という「かご」事業運営という「かご」株式投資という「かご」不動産投資という「かご」貴金属投資という「かご」そして、それぞれの「かご」の中に、たくさんの「卵」を入れています。たとえば私の場合、不動産投資のかごには約20物件という卵が、株式投資のかごには数百銘柄の卵が入っています。このように、私は単なる銘柄や物件の分散だけでなく「投資対象の分散」にも注力しています。こうすることで、仮に株式市場が低迷しても、不動産や事業の利益でカバーできる体制が整うのです。極端な話、私が体調を崩して医師として働けなくなったとしても、残り4つのかごがあるため生活に困窮することはありません。つまり、資産形成においては投資対象の分散が非常に重要なのです。自分の能力と時間が許す限り、かごの数をどんどん増やしていく。そして、それぞれのかごの中にたくさんの卵を入れ、持ちきれないほどの「かご」と「卵」を所有し続けることこそが、資産形成の王道ではないでしょうか。■医師としての「確固たるかご」から始める横展開戦略ただ、この戦略には1つだけ重要な注意点があります。それは「資産形成の初期段階からいきなりたくさんのかごを横展開するべきではない」ということです。何よりもまず、1つ目の「確固たるかご」を作り上げることが最優先です。私たち医師にとって、それは「本業で確実に収入を得るための、医師としての実力を付けること」に他なりません。この最初のかごを頑丈に完成させた時点で、他の投資対象へと積極的に横展開していくのが、最も安全性が高くて確実な資産形成ルートです。もちろん、若手として研修を積む間に、株式や不動産投資の勉強を並行することは問題ありません。しかし、医師としての研修に悪影響を及ぼすほど傾注することは控えた方が良いでしょう。まずは医師として独り立ちをする。そして、本業の地盤が固まってから、本格的に他のかごを増やしていく努力を開始してはいかがでしょうか。その手順を踏むことで、卒後10~20年時点で複数の確固たる「かご」が完成して、人生の選択肢は劇的に広がるはずです。

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肝臓病には必ず肝不全用輸液製剤?【ケースで学ぶ輸液オーダー】第6回

肝臓病には必ず肝不全用輸液製剤?「アミノレバン」には経口薬のアミノレバンENと輸液製剤のアミノレバンがあり、ややこしいですね。研修医時代は経口薬をそっくり置き換えたのが輸液製剤だと思っていましたが、それは間違いです。今回は肝疾患の患者さんにおける栄養療法を再確認しましょう。栄養療法の原則は経口・経腸栄養ですが、静脈栄養が必要となることもあります。アミノ酸投与に関して、次の肝疾患の患者さんには、(1)〜(3)のどれが適切な選択でしょうか?(1)アミノレバンを使用する(2)標準的な組成のアミノ酸を含む一般用静脈栄養製剤を使用する(3)アミノ酸は投与しない症例症例1 代償性肝硬変68歳男性、C型肝炎後肝硬変(Child-Pugh A)。癒着性腸閉塞の手術予定で絶食中。AST42U/L、ALT 38U/L、T-Bil 1.0mg/dL、Alb 3.7g/dL、NH3 38μg/dL。意識清明。症例2 非代償性肝硬変72歳男性、アルコール性肝硬変(Child-Pugh C)。食道静脈瘤治療歴、腹水あり。誤嚥性肺炎で入院。数日間絶食予定。T-Bil 4.0mg/dL、Alb 2.3g/dL、PT 45%、NH3 55μg/dL。意識清明、羽ばたき振戦なし。症例2の続き入院3日目、便秘と感染を契機に傾眠傾向となり、NH3 165μg/dL。羽ばたき振戦あり。症例3 劇症肝炎(急性肝不全)35歳女性。3日前から発熱、全身倦怠感、黄疸が出現し、会話のつじつまが合わないことに家族が気付き救急搬送された。来院時は傾眠傾向、羽ばたき振戦を認める。AST 5,240U/L、ALT 4,980U/L、T-Bil 11.8mg/dL、PT 23%、NH3 172μg/dL、血糖 52mg/dL。集中治療室へ入室した。経口用と輸液用のアミノレバンの違い輸液製剤のアミノレバンは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む経口剤とは異なり、栄養補充を目的としたものではありません。肝性脳症を改善させるためのアミノ酸インバランスの是正が主な役目です1,2)。経口剤のように栄養療法として継続使用する想定ではなく、あくまでも肝性脳症に対する治療薬という位置づけです。ちなみに肝不全用アミノ酸輸液製剤は一般用静脈栄養製剤と同様、2020年より「透析又は血液ろ過を受けている患者」が禁忌対象から除外されました。現在は肝性脳症を来した透析患者さんにもアミノレバンは投与可能です3)。肝疾患における栄養療法の考えかた~タンパクの取り扱い通常、肝硬変患者では安静時エネルギー消費量が増加しており、エネルギー摂取量の目標は耐糖能異常がない場合は25~35kcal/kg(標準体重)/日とされ、飢餓状態を短くするために1日3〜5回の分割食と就寝前軽食が推奨されています。タンパク摂取量の目標は、タンパク不耐症がない肝硬変患者の場合は1.0~1.5g/kg/日(BCAA製剤を含む)、タンパク不耐症がある肝硬変患者の場合は0.5〜0.7g/kg/日+BCAA高含有肝不全用経腸栄養剤とされます。肝性脳症時であっても、タンパク制限は窒素平衡を負に傾け、体タンパクの分解を促進するため推奨されません1,2)。一方、劇症肝炎では、血漿中の全てのアミノ酸濃度が高くなっており、BCAAを含めてアミノ酸投与は回避しなくてはなりません2)。表1 肝疾患とタンパク必要量画像を拡大する各症例の考え方タンパク不耐性、すなわち肝性脳症がなければ通常の栄養管理を行うことが原則であり、アミノレバンは肝硬変の栄養輸液ではなく「肝性脳症の治療薬」であることを念頭に考えましょう。症例1、症例2はいずれも肝性脳症を伴わない肝硬変患者であり、静脈栄養に際しては(2)の一般用静脈栄養製剤を使用します。しかし症例2の続きでは肝性脳症を併発しており、このときに初めて(1)のアミノレバンを選択して治療します。症例3は劇症肝炎による急性肝不全であり、アミノ酸投与は禁忌のため(3)となります。この場合、輸液は糖電解質輸液を基本とし、血漿交換が行われることでしょう。アミノレバンは栄養輸液ではなく肝不全治療薬です。栄養療法におけるアミノ酸輸液とは切り離して考えましょう。肝不全用アミノ酸製剤を深堀りする肝硬変では、肝機能の低下や筋肉量の減少に伴って代謝に異常が生じます。とくに筋肉でのアンモニア処理にBCAAが消費されてBCAAが低下し、逆に芳香族アミノ酸(AAA)が増加することで、アミノ酸インバランス(フィッシャー比の低下)を引き起こします。Fischerらはこのフィッシャー比の低下に着目し、BCAA含有量を増加させ、含硫アミノ酸やAAAを減少させたFischer処方を考案しました。この特殊組成アミノ酸輸液(Fischer液)により血漿アミノ酸インバランスを是正し、肝性脳症における意識障害の改善に成功しました。このFischer液をそのまま製剤化したものがアミノレバンです4)。アミノレバンは、肝不全時のアルカローシスを増強しないようCl-を多く含んでおり、Na+との間に乖離(Na+:14mEq/L、Cl-:94mEq/L含有)があるため、高クロール性代謝性アシドーシスに注意が必要です。腎機能障害のない患者でもアシドーシスを引き起こす可能性があり、軽度~中等度の慢性腎臓病患者(eGFR:30~60mL/分/1.73m2)では発生率が有意に高いことが報告されています5)。投与開始直後からリスク上昇がみられるため、意識障害の改善が得られた時点で速やかに経口によるBCAA補充への変更を検討する必要があります。表2 アミノレバンと一般アミノ酸製剤(アミパレン)の比較画像を拡大する1)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. 肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版). 南江堂;2020.2)日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)編.JSPENコンセンサスブック2 肺疾患/肝疾患/腎疾患. 医学書院;2023.3)今回の「使用上の注意」改訂の経緯と課題について / 日本栄養治療学会4)高橋 善彌太ほか. 臨床医薬. 1982;31:175-185.5)Kaji K, et al. Biol Pharm Bull. 2025;48:46-50.

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第328回 「骨太の方針2026」の注目ポイント(後編) 地域医療構想ガイドライン公表を受け医療提供体制への言及多数、「攻めの予防医療」は総花的で斬新さなし

「注釈」で「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」と有床診の役割見直しを示唆こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、5月に内側側副靱帯損傷で傷めた左ひざの最終リハビリ目的で、山梨県の茅ヶ岳(「日本百名山」の著者・深田 久弥が登山中に急逝した山)に登ってきました。3ヵ月ぶりの登山でしたが、左足はほぼ完調で、急な上り下りが特徴の山でしたが、ストックを使うこともなく無事山行を終えました。が、下山してみると今度は右足の裏、土踏まずのあたりに痛みが発生し、次第に強くなりました。足底腱膜炎の症状です。登山中、知らず知らずのうちに左足をかばっていたツケと思われます。左足を受傷して3ヵ月、歩行のシンメトリー(対称性)の重要性に改めて気づかされた登山でした。ちなみに、茅ヶ岳の麓にある深田記念公園には、深田直筆の「百の頂に百の喜びあり」の言葉が刻まれた記念碑があります。実に深い言葉です。しかし、今の私には「百の頂に百の苦しみあり」と読めました。さて、今回も前回に引き続き、7月21日にようやく閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026 『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!」(骨太の方針2026)の注目ポイントについて書いてみたいと思います。「骨太の方針2026」では前回書いた社会保障改革関連の記述以外では、新たな地域医療構想のガイドラインが公表されたことを受け、次のように医療提供体制への言及が多くありました。「2040年に向けて、病床数の適正化を着実に実施した上で、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとともに、地域包括ケアシステムの深化を図り、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療・介護サービス提供体制を構築する」。なお、本文中の「医療機関の連携・再編・集約化」の文言には、「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」とする「注釈」が付きました。有床診療所の施設数・病床数は減少傾向にあり、人材不足、経営悪化、後継者不足などによりその存続が危ぶまれています。一方で、2040年に向けて、高齢者救急、在宅医療、看取り、介護施設との連携の需要は高まると考えられ、既存の有床診療所をそうした機能を提供するインフラとしてどう活用していくかが大きな課題となっています。この「注釈」から、有床診療所の役割の明確化と再評価が行われるだろうということが予想できます。救急医療体制の確保、人生の最終段階における医療・ケア、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込むその他の医療提供体制関連では、「妊娠・出産の経済的負担軽減と安心・安全な小児・周産期医療提供体制の両立、救急医療体制の確保、ドクターヘリの安全で持続可能な運航の確保、看取りなど人生の最終段階における患者中心の適切な医療・ケア、精神医療に関する地域医療構想を踏まえた取組、訪問看護の適切な実施、中山間・人口減少地域での柔軟な介護・障害福祉サービスの提供」などが挙げられていました。加えて、「かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策、大学病院等からの医師派遣の推進を含めた総合的な医師偏在対策、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む」と、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込まれました。また、「医療分野においては、新たな地域医療構想の下、将来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への必要な支援の在り方を検討する。介護・福祉分野においても、老朽化・災害対策を含む施設・設備の計画的な整備を支援する」と、地域医療構想を前提としながらも、施設・設備の整備についても記述されました。建設費や設備費の高騰で病院の建て替えや新設が滞っている地域は少なくありませんが、補助金等による国による何らかの対応が行われそうです。薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙医療保険制度関連では、前回詳しく書いた70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合に関する記述のほかは、「長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラリの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する。セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策を検討し、必要な措置を行う」など、薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙されました。一見目新しい「攻めの予防医療と疾病対策」今回の「骨太の方針2026」で一見目新しいのは、高市 早苗首相が過去の記者会見でも強調していた「攻めの予防医療と疾病対策」の項目です。「国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍できる日本を実現する」として、「攻めの予防医療」を推進するとしています。具体的には、「健康増進、肥満症を含む疾病予防、早期発見、早期介入及び行動変容に関係機関が連携して取り組む。栄養・食生活を含む健康リテラシーの向上、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、学齢期の健康診断の在り方の見直し、予防接種、HIVや性感染症の予防、下水サーベイランス等の感染症対策、がん検診や精密検査の受診率向上、循環器病・糖尿病を含む生活習慣病等の予防、いわゆる国民皆歯科健診の具体化、口腔と全身の健康の関係に基づく歯科疾患対策・口腔健康管理、認知症の早期診断・早期対応、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション、PHRの利活用と情報連携を推進する」としています。さらに、「更年期世代の女性への医療の推進や女性の健康総合センターの機能強化、『プレコンセプションケア推進5か年計画』の工程表の策定と実行、企業と保険者のコラボヘルス、睡眠対策を含む健康経営の推進等、予防・健康づくりを支えるヘルスケア産業の育成等を図る。 がん、脳卒中・心臓病その他の循環器病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性疼痛、難病、アレルギー、依存症、難聴、睡眠障害等の疾病対策や移植医療対策を推進する」ともしています。新しさに欠ける「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療 厚生労働省関係施策~」よく読んでみると、予防医療と疾病対策の項目が総花的に羅列してあるだけで、どこが「攻め」なのかよくわかりません。「責任ある積極財政」と同じように、実態は二の次に、見た目(読んだ感じ)が一見カッコいいキャッチコピーにしたのでしょう。7月27日付のミクスオンライン等の報道によれば、上野 賢一郎厚生労働大臣は7月24日の閣議後会見で、「骨太方針2026」に盛り込んだ「攻めの予防医療」について、「健康寿命の更なる延伸や社会保障を支える基盤の維持・強化に向けて、取り組みを速やかに実施していく」と述べたとのことです。なお、具体化に向けて厚労省は「骨太の方針2026」が閣議決定された2日後の7月23日、「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表しています。「U.E.N.O.」は厚労大臣の名前から取ったキャッチコピーで、「Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」の略だそうです。ちょっと強引なコピーですね。同プランは「栄養・食生活」「がん・循環器病等」「歯科保健」「認知症」「リハビリテーション」「性差に由来するヘルスケア」の6領域を「直ちに取り組むべき第一弾の重点領域」として位置づけ、「攻め」の取り組みを具体化するため施策を盛り込んだものとのことです。ただ、その内容を見てみると、「栄養・食生活」は「食事ガイドを作成する」、「がん・循環器病等」は「がん検診の受診率60%、精密検査受診率90%の達成」、「認知症」は「新たな検査技術を活用し、早期診断・早期対応等を推進」というように、「攻め」という割には、従来施策の踏襲で、それほど斬新な取り組みが並んでいるわけではありません。というわけで、高市政権のさまざまな政策においても指摘されている、「華々しくぶち上げていること」と「実際にやっていること」の乖離を感じた今年の「骨太の方針」でした。

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心・脳血管疾患の既往やNSAIDs使用はパーキンソン病リスクを高めるか?

 心・脳血管疾患の既往はパーキンソン病(PD)のリスク増加と関連することが示されているが、逆の因果関係による可能性が疑われていた。一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はPDリスクを低減させると考えられてきたが、過去のエビデンスは一貫しておらず、背景にある血管疾患による交絡の可能性も懸念されていた。 英国・University of OxfordのClare Wotton氏らは、女性約82万例を対象とした大規模前向きコホート研究「Million Women Study」のデータを用いて解析を行った。その結果、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往はPD発症リスクの有意な上昇と関連しており、逆の因果関係だけでは説明できないことが示された。一方、NSAIDsの使用とPD発症リスクとの関連はみられなかった。本結果はAnnals of Clinical and Translational Neurology誌オンライン版2026年7月24日号に掲載された。 本研究では、1996~2001年に募集された英国の「Million Women Study」のデータが用いられた。ベースライン時(中央値2001年)の質問票でNSAIDs(アスピリン、イブプロフェン)の過去4週間の大半における使用(定期的な使用)の有無に回答し、かつPDの既往がない女性81万9,575例を対象とした。ベースライン時の自己申告および入院記録から、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往を特定した。主要評価項目は、PDの診断を伴う初回入院またはPDを原死因とする死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。なお、本研究における「逆の因果関係」とは、運動症状が顕在化する前のPD前駆期において、病態の初期発現として血管疾患が生じた可能性や、初期症状に反応してNSAIDsの使用状況が変化した可能性を指す。この逆の因果関係の影響を評価するため、ベースラインから10年未満と10年以上の追跡期間別にも解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者81万9,575例において、平均18.2年(SD 4.3)の追跡期間中に、1万364例(1.3%)のPD発症が確認された。・虚血性心疾患の既往がある人は、既往がない人と比較してPD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.45、95%CI:1.35~1.54)。・脳血管疾患の既往がある人も同様に、PD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.51、95%CI:1.32~1.73)。・これらの血管疾患とPD発症リスクの関連は、ベースラインから10年以上経過した期間においても依然として顕著であった(10年以上のHRは虚血性心疾患で1.39、脳血管疾患で1.35)。・アスピリンの定期的な使用は、未調整モデルではPDリスク上昇と関連していたが(HR:1.20、95%CI:1.14~1.27)、血管疾患の既往で調整するとその関連はほぼ消失した(aHR:1.06、95%CI:1.00~1.13)。・イブプロフェンの定期的な使用は、調整の前後にかかわらず、PD発症リスクとの関連を示さなかった(調整前HR:1.03、95%CI:0.96~1.10、aHR:1.04、95%CI:0.97~1.11)。 著者らは、10年以上の追跡調査でも血管疾患がPD発症リスクの大幅な増加と関連していたことから、これらは単なる逆の因果関係だけでは説明できないと指摘している。背景として、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、炎症の関与が示唆された。これらは血管疾患のリスクを高めるアテローム性動脈硬化症の発症・進行に寄与する一方で、PDの特徴であるレビー小体を形成するα-シヌクレインの凝集にも関与している可能性がある。また、アスピリンやイブプロフェンの使用はPD発症リスクと直接的な関連がないことも示された。

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認知症リスク低下と関連する野菜の種類は?

 野菜や果物の総摂取量および摂取する野菜や果物の種類と認知症との関連を示すエビデンスは、依然として限られている。中国・浙江大学のLiyan Huang氏らは、3つのプロスペクティブコホート研究およびメタ解析を用い、野菜や果物の総摂取量およびサブグループ別の摂取量と認知症リスクとの関連を検討した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2026年6月27日号の報告。 本研究は、Health and Retirement Study (HRS)、Framingham Heart Study Offspring Cohort (FOS)、Whitehall II Study (WHII)のデータを用いて実施した。1日平均の野菜や果物の総摂取量および7つのサブグループの摂取量は、食物摂取頻度調査票を用いて評価した。認知症発症は、各コホート独自の定義に基づき特定した。Cox回帰モデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、本研究の結果と過去の13件のコホート研究の知見を統合したメタ解析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・45歳以上の参加者1万8,339人(HRS:6,750人、FOS:3,068人、WHII:8,521人)を対象とし、平均7~13年間のフォローアップ期間中に936例の認知症発症が確認された。・多変量調整後、野菜や果物の総摂取量において、摂取量が最も少ない群(第1三分位)と比較し、最も多い群(第3三分位)では、認知症リスクが低いことが示された(第3三分位vs.第1三分位のHR:0.74、95%CI:0.61~0.89、p-trend=0.165)。・さらに、緑黄色野菜の摂取において、予防的な関連が認められた(1サービング増加当たりの統合HR:0.82、95%CI:0.70~0.96、p-trend=0.015)。・その他の野菜または果物のサブグループについては、有意な統合関連は認められなかった。・22万2,108人の参加者を対象としたメタ解析の結果、野菜や果物の摂取量が多いことは、摂取量が少ない場合と比較し、認知症リスクの低下と関連していることが示された(摂取量最多群と最小群の比較における統合HR:0.80、95%CI:0.71~0.91)。・野菜の摂取量(統合HR:0.87、95%CI:0.82~0.92)および果物の摂取量(統合HR:0.90、95%CI:0.85~0.95)についても、同様に有意な負の関連が認められた。 著者らは「本研究結果は、野菜や果物の摂取と認知症リスクとの間に負の関連があることを裏付けるものである。今後、特定のサブグループを対象としたさらなる研究が求められる」としている。

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