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肝臓病には必ず肝不全用輸液製剤?「アミノレバン」には経口薬のアミノレバンENと輸液製剤のアミノレバンがあり、ややこしいですね。研修医時代は経口薬をそっくり置き換えたのが輸液製剤だと思っていましたが、それは間違いです。今回は肝疾患の患者さんにおける栄養療法を再確認しましょう。栄養療法の原則は経口・経腸栄養ですが、静脈栄養が必要となることもあります。アミノ酸投与に関して、次の肝疾患の患者さんには、(1)〜(3)のどれが適切な選択でしょうか?(1)アミノレバンを使用する(2)標準的な組成のアミノ酸を含む一般用静脈栄養製剤を使用する(3)アミノ酸は投与しない症例症例1 代償性肝硬変68歳男性、C型肝炎後肝硬変(Child-Pugh A)。癒着性腸閉塞の手術予定で絶食中。AST42U/L、ALT 38U/L、T-Bil 1.0mg/dL、Alb 3.7g/dL、NH3 38μg/dL。意識清明。症例2 非代償性肝硬変72歳男性、アルコール性肝硬変(Child-Pugh C)。食道静脈瘤治療歴、腹水あり。誤嚥性肺炎で入院。数日間絶食予定。T-Bil 4.0mg/dL、Alb 2.3g/dL、PT 45%、NH3 55μg/dL。意識清明、羽ばたき振戦なし。症例2の続き入院3日目、便秘と感染を契機に傾眠傾向となり、NH3 165μg/dL。羽ばたき振戦あり。症例3 劇症肝炎(急性肝不全)35歳女性。3日前から発熱、全身倦怠感、黄疸が出現し、会話のつじつまが合わないことに家族が気付き救急搬送された。来院時は傾眠傾向、羽ばたき振戦を認める。AST 5,240U/L、ALT 4,980U/L、T-Bil 11.8mg/dL、PT 23%、NH3 172μg/dL、血糖 52mg/dL。集中治療室へ入室した。経口用と輸液用のアミノレバンの違い輸液製剤のアミノレバンは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む経口剤とは異なり、栄養補充を目的としたものではありません。肝性脳症を改善させるためのアミノ酸インバランスの是正が主な役目です1,2)。経口剤のように栄養療法として継続使用する想定ではなく、あくまでも肝性脳症に対する治療薬という位置づけです。ちなみに肝不全用アミノ酸輸液製剤は一般用静脈栄養製剤と同様、2020年より「透析又は血液ろ過を受けている患者」が禁忌対象から除外されました。現在は肝性脳症を来した透析患者さんにもアミノレバンは投与可能です3)。肝疾患における栄養療法の考えかた~タンパクの取り扱い通常、肝硬変患者では安静時エネルギー消費量が増加しており、エネルギー摂取量の目標は耐糖能異常がない場合は25~35kcal/kg(標準体重)/日とされ、飢餓状態を短くするために1日3〜5回の分割食と就寝前軽食が推奨されています。タンパク摂取量の目標は、タンパク不耐症がない肝硬変患者の場合は1.0~1.5g/kg/日(BCAA製剤を含む)、タンパク不耐症がある肝硬変患者の場合は0.5〜0.7g/kg/日+BCAA高含有肝不全用経腸栄養剤とされます。肝性脳症時であっても、タンパク制限は窒素平衡を負に傾け、体タンパクの分解を促進するため推奨されません1,2)。一方、劇症肝炎では、血漿中の全てのアミノ酸濃度が高くなっており、BCAAを含めてアミノ酸投与は回避しなくてはなりません2)。表1 肝疾患とタンパク必要量画像を拡大する各症例の考え方タンパク不耐性、すなわち肝性脳症がなければ通常の栄養管理を行うことが原則であり、アミノレバンは肝硬変の栄養輸液ではなく「肝性脳症の治療薬」であることを念頭に考えましょう。症例1、症例2はいずれも肝性脳症を伴わない肝硬変患者であり、静脈栄養に際しては(2)の一般用静脈栄養製剤を使用します。しかし症例2の続きでは肝性脳症を併発しており、このときに初めて(1)のアミノレバンを選択して治療します。症例3は劇症肝炎による急性肝不全であり、アミノ酸投与は禁忌のため(3)となります。この場合、輸液は糖電解質輸液を基本とし、血漿交換が行われることでしょう。アミノレバンは栄養輸液ではなく肝不全治療薬です。栄養療法におけるアミノ酸輸液とは切り離して考えましょう。肝不全用アミノ酸製剤を深堀りする肝硬変では、肝機能の低下や筋肉量の減少に伴って代謝に異常が生じます。とくに筋肉でのアンモニア処理にBCAAが消費されてBCAAが低下し、逆に芳香族アミノ酸(AAA)が増加することで、アミノ酸インバランス(フィッシャー比の低下)を引き起こします。Fischerらはこのフィッシャー比の低下に着目し、BCAA含有量を増加させ、含硫アミノ酸やAAAを減少させたFischer処方を考案しました。この特殊組成アミノ酸輸液(Fischer液)により血漿アミノ酸インバランスを是正し、肝性脳症における意識障害の改善に成功しました。このFischer液をそのまま製剤化したものがアミノレバンです4)。アミノレバンは、肝不全時のアルカローシスを増強しないようCl-を多く含んでおり、Na+との間に乖離(Na+:14mEq/L、Cl-:94mEq/L含有)があるため、高クロール性代謝性アシドーシスに注意が必要です。腎機能障害のない患者でもアシドーシスを引き起こす可能性があり、軽度~中等度の慢性腎臓病患者(eGFR:30~60mL/分/1.73m2)では発生率が有意に高いことが報告されています5)。投与開始直後からリスク上昇がみられるため、意識障害の改善が得られた時点で速やかに経口によるBCAA補充への変更を検討する必要があります。表2 アミノレバンと一般アミノ酸製剤(アミパレン)の比較画像を拡大する1)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. 肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版). 南江堂;2020.2)日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)編.JSPENコンセンサスブック2 肺疾患/肝疾患/腎疾患. 医学書院;2023.3)今回の「使用上の注意」改訂の経緯と課題について / 日本栄養治療学会4)高橋 善彌太ほか. 臨床医薬. 1982;31:175-185.5)Kaji K, et al. Biol Pharm Bull. 2025;48:46-50.