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英語論文のさらなる探索サポートツール【タイパ時代のAI英語革命】第9回

英語論文のさらなる探索サポートツールこれまで、リサーチクエスチョンや論文検索の方法について説明してきましたが、今回はさらに一歩進んだ「医学英語論文に関連するAIツール」をご紹介します。とくに、先週までのさまざまな方法を使って選定した論文を「さらにどう活用するか?」「その関連文献をどう深掘りしていくか?」という課題に対して、視覚的・直感的なアプローチを可能にしてくれるのが、以下で紹介するAIツールです。これらのツールを使えば、「英語を読む」より先に「見る」ことでハードルがぐっと下がり、英語論文への理解もよりスムーズに進められるようになるはずです。1. ResearchRabbit:論文の関連性を視覚的に評価する概要と特徴英語論文の検索は「タイトルを見てもよくわからない」「アブストラクトを読むのが大変」など、最初の一歩のハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。また、「楽しく論文検索をしたい」という方にも、ResearchRabbit(リサーチ・ラビット)は良いツールです。ResearchRabbitは、英語論文を探索するうえで、とくに「次に何を読むべきか」を考えるときに大きな助けとなるツールです。従来の論文検索では、キーワードを入力して一覧表示された文献を一つひとつクリックしていく必要がありましたが、ResearchRabbitでは論文同士のつながりを視覚的に「見える化」してくれる点が最大の特徴です。類似の機能を持つAIツールは他にも存在しますが、現時点ではResearchRabbitが最も高機能なツールといえるでしょう。しかも、現在(2025年9月時点)は、すべての機能が無料で利用可能です。使い方このツールの魅力は、視覚的に研究の流れを把握できる点にあります。ウェブサイトや論文情報は英語対応のみですが、操作自体はそこまで複雑ではありません。まず、サイト(https://www.researchrabbit.ai/)から、アカウントを作成します。ログイン後、「New Collection」を選択して、好きな名前のフォルダー(collection)を作成します。下の画像では、一例で「1」というフォルダーを作ってみました。そしてAdd Papersをクリックします。画像を拡大するまずは、気になる1本の論文を入力します(タイトル、DOI、PubMed IDなどが検索利用可能です)。すると、その論文を中心として、関連文献が下のネットワーク図のように視覚的に表示されます。画像を拡大するこの図では、各論文が「点」として示され、点と点を結ぶ「線」が論文間の関係性を表します。その論文がどの文献を引用しているか、またはどの文献に引用されているかといった情報が一目でわかります。このネットワーク図の優れている点は、マウスとクリック操作で自由に動かし、特定の論文をクリックすると、アブストラクトの表示や原文へのリンクにすぐアクセスできることです。さらに、同じ著者の他の論文著者間の関係性(共同研究など)といった情報まで直感的に探索できます。たとえば、ある論文の周囲にたくさんの線でつながっている文献があれば、それはその分野で注目されている中核的な論文である可能性があります。また、最近の論文が急に増えている場合には、「この研究分野は今、盛り上がっているのだな」といった研究トレンドを感じ取ることも可能です。唯一気になる点としては、使える機能が非常に多く自由度が高い分、操作に迷うこともあるかもしれません。また、クリックを繰り返していくと次々と新しい情報が表示されるため、慣れるまで時間がかかる可能性があります。2. Connected Papers:とにかく簡単! ログインなしで論文マップが見えるツール概要と特徴ResearchRabbitほどの多機能さは求めないけれど、「もっと気軽に」「もっとシンプルに」英語論文を探索したい。そんな方にぴったりなのが、Connected Papersというツールです。このツール最大の魅力は、ログイン不要ですぐに使えること、そして操作が非常にシンプルなことです。試しに使ってみる際には個人情報の入力も不要です。使い方サイト(https://www.connectedpapers.com/)からページに飛ぶと、下のような検索窓のあるページが表示されます。ここに、気になる論文のタイトル、またはDOIを入力して、「Build a graph」というボタンをクリックすれば完了です。すると、その論文のネットワーク図が即座に表示されます。画像を拡大する思い立ったらすぐに使えるというのは、忙しい医療従事者や、英語に苦手意識のある方にとって非常に大きなメリットです。表示されるのは、その論文と「内容的に近い論文たち」のネットワークです。ResearchRabbitと同様に、それぞれの論文が「点」としてマップ上に配置され、距離が近いほど関係性が強いことを示しています。他にも、引用数が多いほど点が大きく表示色が濃いほど最近の論文といった情報も、視覚的に一瞬で把握できます。点をクリックすると、右側にその論文のタイトル、著者、アブストラクトなどが表示され、そのまま元論文のページへのリンクにもアクセスできます。論文タイトルをいちいち読む前に、「このあたりの文献は密につながっていそうだな」とか「この方向には新しい研究が多そうだ」といった感覚的な情報が図として目に飛び込んできます。英語に苦手意識がある方でも、研究の流れをつかむことができます。Connected Papersのもう1つの特徴として、検索結果画面の上部にある「Prior works(先行研究)」および「Derivative works(派生研究)」をクリックすることで、基礎研究から臨床応用への研究の時間的流れを視覚的に追うことができます。ただし、Connected Papersには無料版と有料版があり、無料版では一定時間内の使用回数に制限がある点にご注意ください。まとめ3週にわたり、英語論文や医学情報の検索に苦手意識がある方でも、効率よく調べ物ができるようになるためのAIツールを紹介してきました。これらは、単に英語の検索を簡単にしてくれるだけでなく、情報の質や信頼性のチェック関連文献の広がりの把握といった、「調べる力」そのものを強化するための支援ツールでもあります。以下に、過去3回で紹介した各ツールの要点をまとめました。【第7回で紹介】ChatGPT内のGPT機能(PubMed Buddy):PubMedと連携し、論文を検索・要約できるChatGPT内の特化型チャットボックス。ChatGPTを使った検索式作成:自然言語からPubMed用の精密な検索式を自動生成できるプロンプト活用法。【第8回で紹介】Elicit:自然言語の質問文から関連論文を抽出し、それぞれの要約や研究デザインを自動で整理してくれるリサーチツール。OpenEvidence:医療系の信頼性あるエビデンスを検索・比較できるヘルスケア特化型のチャットボックス。【今回紹介】ResearchRabbit:関連論文をネットワーク図化し、研究分野の詳細から全体の構造まで立体的に把握できるリサーチツール。Connected Papers:簡単操作で1つの論文から関連研究をネットワーク図化し、研究の展開も視覚的にたどることができるリサーチツール。これらのツールを活用すれば、英語に不安がある方でも、質の高い情報に効率よくアクセスできるようになります。次回からは、こうして得られた情報をどのように読み解き(reading)、どのように書き表すのか(writing)、そのAI活用方法を紹介していく予定です。

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第284回 自由診療クリニックで相次ぐ再生医療等安全性確保法がらみの事件(後編)  個人輸入のウイルスベクターがカルタヘナ法に抵触し治療中止、怪しげな遺伝子治療はこれで駆逐に向かうか?

高市新総裁誕生で社会保障政策はどうなる?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。自民党に初の女性総裁が誕生しました。高市 早苗総裁はこのまま行けば、日本初の女性総理大臣に就任します。社会保障分野での目立った実績はありませんが、第3次安倍内閣で総務大臣をしていた2015年には、「新公立病院改革ガイドライン」の策定に関与し、地域医療構想に沿った公立病院の病床機能分化・連携強化を推し進めました。菅 義偉元首相と同様、病院経営や病院リストラに関しては一定の素養がある(石破 茂現首相はそうした素養ゼロ)とみられます。総裁選のマニフェストに「地域医療・福祉の持続・安定に向け、コスト高に応じた診療・介護報酬の見直しや人材育成支援を行います」と書いていることを踏まえると、苦境に立つ医療機関(とくに病院)経営を考慮して、来年の診療報酬改定にはそれなりの追い風となる気もしますが、一方で、病院再編に向けては大ナタを振るうかもしれません。とは言え、社会保障財源不足の状況は変わりません。また、連立政権の枠組みも不安定で、法案成立にも相当苦労するでしょう(「新たな地域医療構想」を定めた医療法改正案はまだ成立していません)。総理大臣就任後の社会保障政策を注視したいと思います。さて、今回も前回に引き続き、都内のクリニックで発覚した、再生医療等安全性確保法がらみの事件について書いてみたいと思います。こちらは、同法に加えて遺伝子改変した動植物が拡散することを防ぐ「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」にも抵触したケースでした。中国から個人輸入した未承認の医薬品を進行・末期がんの患者に対し自由診療で使用8月22日付の朝日新聞等の報道によると、厚生労働省と環境省は同日、医療法人社団DAP・北青山D.CLINIC(東京都渋谷区)の阿保 義久院長に対し、カルタヘナ法に基づく措置命令を下し、手続きを経ていない製剤の適切な廃棄などを命じました。カルタヘナ法に基づく自由診療への措置命令は初めてとのことです。同クリニックは「CDC6shRNA治療」と称して、中国から個人輸入した未承認の医薬品を進行・末期がんの患者に対し自由診療で使用していました。「CDC6shRNA治療」はがん細胞の無限増殖を促すタンパク質であるCDC6を標的とした遺伝子治療で、CDC6に対応するshRNAをレンチウイルスベクターを使ってがん細胞に送達し、CDC6の発現をノックダウンするというもの。ウイルスベクターを用いる治療法のため、カルタヘナ法に基づく届け出が必要にもかかわらず、届け出が行われていませんでした。 遺伝子治療は、昨年改正された再生医療等安全性確保法で新たに規制対象に含まれることになりました(施行は2025年5月31日)。改正前は「細胞加工物」を用いる治療が規制対象であり、体内で直接遺伝子の導入・改変を行う治療法(核酸やウイルスベクター等を用いたもの)は対象外でした。しかし、多種多様、有象無象の遺伝子治療が自由診療の医療機関などで広がりを見せていることを背景に、安全性・信頼性を担保するために、新たに規制対象となりました。同クリニックは改正再生医療等安全性確保法に則った届け出の準備を進める過程で、「CDC6shRNA治療」がカルタヘナ法に基づいた承認も必要だと認識し、厚労省に相談したことでカルタヘナ法に違反した状態だったことが判明、今回の措置命令となりました。遺伝子組換え生物等を取り扱う際に、生物多様性への悪影響を未然に防止するために規制措置を講じることを目的としたカルタヘナ法カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等を取り扱う際に、生物多様性への悪影響を未然に防止するために規制措置を講じることを目的とした法律です。バイオセーフティに関する国際合意「カルタヘナ議定書」に基づいて2004年に施行されました。医療分野に限らず、農業分野、食品分野など遺伝子組換え生物を扱うあらゆる分野が対象となります。遺伝子治療を実施する際は、遺伝子組換え生物ごとに第一種使用(環境中への拡散を防止しないで行う使用等)、第二種使用(環境中への拡散を防止しつつ行う使用等)の認定を受け、厚生労働省への申請および承認が必要となります。今回のレンチウイルスを用いたin vivo(患者体内)の遺伝子治療は第一種使用に該当し、同法の規制対象だったわけですが、用いたウイルスは「複製能力を持たず自然条件下で組み換えを起こすことは極めて低いこと」等の理由で、同クリニックは規制対象外だと判断していたとのことです。患者への同意文書には「がん細胞に特異的に発生するCDC6というたんぱくを消去するための遺伝子を投与する」と記載 各紙報道によれば、同クリニックでは、この「CDC6shRNA治療」を2009年以降、末期がん患者等3,000人以上に提供していました。患者への同意文書には「がん細胞に特異的に発生するCDC6というたんぱくを消去するための遺伝子を投与する」と記載、治療は1週間に1〜2回の頻度で、9月3日付の日経バイオテクの報道によれば、「料金は1回当たり約30万円〜80万円」だったそうです。ちなみに、現在、「CDC6shRNA治療」が保険適用されている国はどこにもなく、臨床試験にも至っていません。国内では、がん患者などを対象に、科学的根拠が十分ではない遺伝子治療が、全額患者の自費負担になる自由診療として多く実施されています。実際、この「CDC6shRNA治療」も、インターネットで検索すると北青山D.CLINIC以外にも実施していそうなところがいくつか出てきます。こうした医療機関においても、仮にウイルスベクターを用いているとすれば、すぐにでも再生医療等安全性確保法とカルタヘナ法に則った対応が必要になります。北青山D.CLINICのホームページに掲載された「遺伝子治療の現況と経緯」と題する報告には、「遺伝子治療の一時停止」を詫びるとともに、「本治療の早期再開が必要な患者さん方の期待に応えられるよう速やかに治療の再開を果たすべく再生医療等安全性確保法及びカルタヘナ法の手続きに急ぎ着手しております。同法の申請手続きにおいて、行政府の承認、許可を得るのに相応の時間を要すると聞いておりますが、可及的速やかに治療の再開が果たせるように尽力いたします」と書かれています。しかし、現実問題としてその再開は難しそうです。遺伝子治療がダメでもエクソソーム療法が、規制当局と医療機関のイタチごっこはまだまだ続く改正された再生医療等安全性確保法では、核酸等を用いる医療技術は最も高いリスクが想定される「第一種再生医療等技術」に分類されました。これによって、適用対象の治療を提供するには、医療機関が第一種再生医療等提供計画を作成し、特定認定再生医療等委員会を経た上で、厚生労働大臣へ計画を提出。厚生科学審議会(再生医療等評価部会)への諮問を経て、承認されることが必要です。さらに、医療機関が国内外の施設に製剤の製造を委託するには、特定細胞加工物等製造施設を届け出た上で、医薬品医療機器総合機構の調査を経て、許可や認定を受けなければなりません。今回のケースでは、製造元の中国企業の製造施設を届け出て調査を受ける必要が出てきます。9月8日付の日経バイオテクはこうした手続きと承認に至るまでのハードルの高さを指摘、「『事実上、きちんとしたエビデンスが蓄積された提供計画でないと厚生科学審議会は通らないと見られる。また、PMDAの調査もハードルは高い』と厚労省の関係者は指摘します」と書いています。というわけで、エビデンスが希薄にもかかわらず患者から暴利を貪る怪しげな遺伝子治療は、日本においては実質的に駆逐に向かいそうです。しかし、再生医療に詳しい知人の記者は、「まだまだ抜け道がある。その一つがエクソソーム療法だ」と話します。「第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中」でも書いたように、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり、細胞には当たらないと整理されており、再生医療等安全性確保法の対象外となっています。インターネットで検索するとエクソソームを用いたがん治療を提供している自由診療の医療機関がたくさんヒットします。怪しげながん治療法を提供している医療機関の中には、法律のハードルが高くなった遺伝子治療からエクソソーム療法に鞍替えするところも多数出てくるでしょう。前回書いた「一般社団法人」の問題とあわせて、自由診療の医療機関で提供される怪しげな治療法を巡っては、規制当局と医療機関のイタチごっこはまだまだ続きそうです。

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抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性【論文から学ぶ看護の新常識】第34回

抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性抜管直後から「少量ずつ飲水」することの効果と安全性を検証したランダム化比較試験が行われ、「抜管直後の少量飲水は口渇と咽頭不快感を和らげる効果があり、有害事象は増加しない」ことが示唆された。Sarka Sedlackova氏らの研究で、Journal of Critical Care誌オンライン版2025年8月7日号に掲載の報告。抜管直後の「少量飲水」vs.経口水分摂取の遅延:ランダム化比較試験研究チームは、抜管後すぐに経口で水分を「少量ずつ摂取」することが、口渇と不快感を軽減し、集中治療の現場において安全であるかどうかを評価することを目的に、単施設ランダム化比較試験を行った。抜管基準を満たしたICU患者160例を、水分摂取遅延群(抜管2時間後から水分摂取を開始)と、即時少量飲水群(2時間かけて最大3mL/kgを摂取)のいずれかに1:1でランダムに割り付けた。口渇、不快感、および有害事象(吐き気、嘔吐、誤嚥)を、0分、5分、30分、60分、90分、120分後に評価した。主な結果は以下の通り。120分時点では、両群ともに80例中64例(80%、95%信頼区間[CI]:70~88%)が口渇を訴え、群間差は0.0%であった(95%CI:-12%~12%、p=1.000)。120分後までの口渇の緩和は、少量飲水群の11.3%(95%CI:5~20%)に対し、水分摂取遅延群では1.3%(95%CI:0~7%)であり、10%の有意な差が認められた(95%CI:1~19%、p=0.0338)。90分時点での咽頭の不快感は、少量飲水群の23.8%(95%CI:15~35%)に対し、水分摂取遅延群では42.5%(95%CI:32~54%)であり、-18.7%の有意な差が認められた(95%CI:-34%~-3%、p=0.0118)。有害事象(吐き気、嘔吐)はまれであり、両群で同等であった;誤嚥はどちらの群でも観察されなかった。抜管直後からの少量飲水は、安全であり、喉の渇きを和らげ、ICU患者の不快感を軽減し、有害事象を増加させることなく行えると考えられる。皆さんの施設では抜管後いつから飲水が可能になりますか?施設によっては厳密な基準はなく、「翌日から飲水可能」といった大まかなスケジュールで運用されているかもしれません。でもこれって実はエビデンスが乏しく、慣習的に決められていることが多いです。「患者さんは喉が渇いてないかな?」と気にかかりながらも、「でも吐かないかな?誤嚥して肺炎になったらどうしよう」と思う葛藤を、皆さん一度は抱いたことがあるのではないでしょうか?今回は、「抜管2時間後から飲水可能」vs.「抜管直後からの少量飲水(ちょびちょび飲み:シッピング)」を比較した研究を紹介します。研究の結果、2時間後の口渇感の有無自体には両群で差はありませんでした。しかし、口渇感と咽頭不快感の軽減については、「抜管直後からの少量飲水」群が有意に優れていました。さらに、吐き気、嘔吐、誤嚥などの有害事象の発生率は両群で同等であり、少量飲水によりリスクは増加しないことが示されました。これらの知見は、従来の画一的な2時間の絶飲食に疑問を投げかけ、より患者中心に不快感を低減するケアを考えるきっかけとなります。ただし、患者さんの不快感をとるために、無制限に飲水をしていいわけではありません。まず、この研究では一度の摂取量は5~10mL程度とごく少量で、2時間かけて最大3mL/kg(合計約200mL)を上限にする制限も設けられています。またリスクがある、上部消化管手術(食道、胃、十二指腸)、頭蓋外傷、または嚥下や意識に影響を与える神経学的障害がある患者は、事前に除外しています。あくまでも誤嚥や創部に水が入るリスクが低いと想定される患者さんに限定していることは覚えておきましょう。また実臨床で取り入れる場合には、飲水により胃内容物が溜まることでPONV(Postoperative Nausea And Vomiting:術後悪心・嘔吐)のリスクが増すため、女性、オピオイド使用、非喫煙者、乗り物酔いの既往がある患者さんでは注意が必要です。適切なリスク評価を行った上で、実施可能であれば、患者さんの不快感を減らす新たなアプローチの導入を検討してみてはいかがでしょうか。論文はこちらSedlackova S, et al. J Crit Care. 2025 Aug 7. [Epub ahead of print]

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減塩には甘じょっぱい味は向かない/京都府立医科大

 高血圧の管理では、塩分摂取量の削減は重要である。人間は塩分を好むという前提に基づいているが、高濃度の塩分に対し、嫌悪感も認識することが大切である。近年の研究では、慢性腎臓病(CKD)患者において味覚認識だけでなく、高塩分濃度への嫌悪感も変化していることが明らかにされた一方で、さまざまな味覚を組み合わせた場合の影響は依然として不明であった。そこで、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の奥野-尾関 奈津子氏らの研究グループは、甘味を加えることでCKD患者の塩分嫌悪に影響を与えるかどうかを研究した。その結果、甘味は健康成人とCKD患者の双方で高塩分への嫌悪感を低減することが判明した。この結果はScientific Reports誌電子版2025年7月7日号に掲載された。 研究グループは、健康成人100例とCKD患者66例を対象に、濃度の異なる塩化ナトリウム、スクロース、酒石酸、キニーネ塩酸塩を浸した濾紙を用いた味覚試験を実施した。嫌悪閾値は、不快と感じられる最低濃度と定義し、甘味と塩味、酸味、苦味の組み合わせにおける嫌悪閾値を測定した。  主な結果は以下のとおり。・塩味、酸味、苦味に対する嫌悪感は濃度とともに増加した。・高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が44%、CKD患者が79%だった。・甘味を加えると塩味嫌悪が有意に減少し、高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が52%、CKD患者が92.4%だった。・甘味は酸味に対する嫌悪感をやや軽減したが、いずれの群においても苦味には影響しなかった。・甘味は健康成人とCKD患者の双方において、高塩分濃度への嫌悪感を低減した。 著者らは、「塩分摂取を制限するには、塩分含有量を減らすだけでなく、塩分嫌悪感を低下させる過剰な甘味も避けるべきである」と結論している。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール〜RCTメタ解析

 アジテーションは、苦痛を伴う神経精神症状であり、アルツハイマー病の約半数にみられる。また、アルツハイマー病に伴うアジテーションは、認知機能の低下を促進し、介護者の負担を増大させる一因となっている。セロトニンおよびドーパミンを調節するブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する有効性が示されている薬剤であるが、高齢者における有効性、安全性、適切な使用については、依然として不確実な点が残っている。ブラジル・Federal University of PernambucoのAnderson Matheus Pereira da Silva氏らは、アルツハイマー病高齢者のアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月31日号の報告。 本研究は、PRISMA 2020ガイドラインおよびコクランハンドブックに従い、実施した。分析対象には、臨床的にアルツハイマー病と診断された高齢者を対象に、ブレクスピプラゾール(0.5〜3mg/日)とプラセボを比較したRCTを組み入れた。主要アウトカムは、アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状、有害事象とした。アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状の評価には、それぞれCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)を用いた。リスク比(RR)、平均差(MD)、95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて統合した。ランダム効果メタ解析は、頻度主義モデルおよびベイズモデルver.4.3.0を用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・5件のRCT、1,770例を分析に含めた。・ブレクスピプラゾール治療は、CMAIのアジテーション(MD:-5.79、95%CI:-9.55〜-2.04、予測区間:-14.07〜-2.49)の減少、CGI-Sスコア(MD:-0.23、95%CI:-0.32〜-0.13、予測区間:-0.39〜-0.06)の改善との関連が認められた。・NPIスコアに有意な差は認められなかった。・錐体外路症状や日中の眠気などの有害事象は、ブレクスピプラゾール群でより多く発現したが、その範囲は広く、有意ではなかった。・メタ回帰分析では、用量または投与期間は、効果修飾因子として同定されなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、認知機能の悪化を伴わずに、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対し、短期的に中程度の効果をもたらす可能性があるが、安全性に関するシグナルは依然として不明確な部分が残っている。しかし、予測区間には相当の不確実性があり、ブレクスピプラゾール使用は個別化され、綿密にモニタリングすべきであることが示唆された。今後の試験では、長期的なアウトカムや患者中心の指標を優先的に評価すべきである」と結論付けている。

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新型コロナは依然として高齢者に深刻な脅威、「結核・呼吸器感染症予防週間」でワクチン接種の重要性を強調/モデルナ

 モデルナ・ジャパン主催の「呼吸器感染症予防週間 特別啓発セミナー」が9月24日にオンラインで開催された。本セミナーでは、9月24~30日の「結核・呼吸器感染症予防週間」の一環として、迎 寛氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野[第二内科]教授)と参議院議員であり医師の秋野 公造氏が登壇し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、とくに高齢者にとって依然として深刻な脅威であると警鐘を鳴らした。新型コロナの5類移行から3年が経ち、社会の警戒感や関心が薄れているなか、継続的なワクチン接種と社会全体の意識向上の重要性を訴えた。隠れコロナ感染と高齢者の重症化リスク セミナーの冒頭では、迎氏が新型コロナの現状と高齢者が直面するリスクについて、最新のデータを交えながら解説した。 新型コロナが5類に移行して以降、定点報告上の感染者数は減少傾向にあるものの、入院患者数は依然として高止まりしている。神奈川県の下水疫学データによると、とくに2025年以降、定点報告数と下水中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)濃度との間に大きな乖離が生じており、下水データは市中に依然として不顕性を含む新型コロナウイルス感染者が多く存在することが示唆されている1)。迎氏は、定点報告では捉えきれていない「隠れコロナ感染者」が市中に多数存在し、その中から一定数の高齢者や基礎疾患を持つ人が重症化して入院に至っている可能性を指摘した。死因の第8位、死者の多くは高齢者 新型コロナは2023年と2024年の2年連続で、日本の死因第8位となっている。とくに深刻なのは高齢者の状況で、死亡者の97%が65歳以上、そのうち79%が80歳以上の高齢者で占められている2)。死亡者数はインフルエンザと比較して、新型コロナが約15倍であるという。こうしたデータから、迎氏は「コロナは風邪と同じ」という認識が誤りであるという見解を示した。また、新型コロナの感染拡大期には、高齢者のフレイル有病率も増加するという影響が懸念されている3)。 迎氏が所属する長崎大学病院には、この5年間で新型コロナにより1,047例が入院したという。臨床データからは、入院患者の死亡率は高齢になるほど顕著に高くなる一方で、ワクチン未接種の患者群は、接種済みの患者群に比べて、重症化する割合が明らかに高い結果となった。迎氏は、とくに高流量酸素療法が必要な患者や重症患者のうち、約4割がワクチン未接種者であったことは、ワクチンの重症化予防効果を明確に裏付けていると指摘した。 迎氏は日本が世界的にみてワクチンへの信頼度が低い傾向にあることに触れ4)、接種率が低下している現状を変えるためにも、9月24~30日の「結核・呼吸器感染症予防週間」を通じて、80歳以上の高齢者の死亡リスクやワクチン接種の重要性について啓発していきたいと述べた。「結核・呼吸器感染症予防週間」創設 続いて秋野氏が政策的な観点から、呼吸器感染症対策の現状と課題、そして今後の展望について語った。 秋野氏は、自身も創設に尽力した「結核・呼吸器感染症予防週間」について触れた。2024年度より、毎年9月24〜30日は、以前まで実施されていた「結核予防週間」が「結核・呼吸器感染症予防週間」に改められた。この期間には、インフルエンザや新型コロナなど、呼吸器感染症が例年流行する秋冬前に、呼吸器感染症に関する知識の普及啓発活動が行われる。秋野氏は、肺炎が依然として日本人の死因の上位を占める中で、秋冬の感染症シーズンを前に正しい知識を普及させることの重要性を強調した。普及啓発のシンボルとなる「黄色い縁取りのある緑色のリボン」のバッジや、啓発のためのポスターが5)、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会の協力のもと作成された。ワクチン定期接種は「65歳以上一律」でよいのか 秋野氏は、現在の新型コロナワクチンの定期接種制度が「65歳以上」と一律に定められている点が課題となっていることについて言及した。先に迎氏が述べたとおり、実際の死亡リスクは80歳以上で急激に高まる。研究によると、新型コロナの重症化リスクとして、「年齢(とくに80歳以上)」、「ワクチン接種から2年以上空いていること」が重要な因子となっている6)。こうした科学的知見に基づき、リスクの特性に応じた、よりきめ細やかな制度設計が必要だと主張した。とくに死亡リスクが突出して高い80歳以上に対し、費用負担のあり方や国による接種勧奨の必要性について、改めて検討すべきだと訴えた。海外のワクチン助成のあり方 さらに秋野氏は、肺炎球菌ワクチン接種に公的補助があった自治体の接種率は全国平均よりも2倍以上高いという研究を挙げ7)、公費助成とワクチン接種率には密接な関連が考えられると述べた。また、海外の新型コロナワクチン接種支援策との比較によると、米国、英国、フランス、オーストラリアなどの国々では、高齢者に対して年2回や無償での接種といった手厚い支援が行われており、接種率も高い水準を維持している。これに対し、日本の支援は年1回の定期接種で一部自己負担であり、国の助成が縮小されれば自己負担額が1万5,000円を超える可能性もあり、これが接種率低下の一因となりかねないと指摘した。 秋野氏は、「国民の命を守るため、最新の知見に基づいた柔軟な対応が必要」とし、今後も国会で働きかけていきたいと述べた。また、今回の「結核・呼吸器感染症予防週間」を通じて、新型コロナに対する現状を国民に広く知っていただき、高齢者の命を守る対策について共に考えていきたいとして、講演を終えた。■参考文献1)AdvanSentinel. 神奈川県におけるCOVID-19流行動向の多角的分析 - 下水疫学データが示す「見えざる感染リスク」(2025年7月22日)2)厚生労働省. 人口動態調査の人口動態統計月報(概数)3)Hirose T, et al. J Nutr Health Aging. 2025;29:100495.4)de Figueiredo A, et al. Lancet. 2020;396:898-908.5)厚生労働省. 感染症対策のための普及・啓発ツール6)Miyashita N, et al. Respir Investig. 2025;63:401-404.7)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2014;20:450-453.

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脳卒中リハビリテーション、レボドパ追加は有効か/JAMA

 レボドパは、脳卒中発症後の運動機能の回復を促進する可能性が示唆されているが、有効性に関するエビデンスは肯定・否定が混在するにもかかわらず、脳卒中リハビリテーションに補完的に使用されているという。スイス・バーゼル大学のStefan T. Engelter氏らの研究チームは「ESTREL試験」において、急性期脳卒中患者に対する入院リハビリテーションでは、標準的リハビリテーションにプラセボを加えた場合と比較してレボドパの追加は、3ヵ月後の運動機能の改善をもたらさないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年9月22日号で発表された。スイスの研究者主導型無作為化試験 ESTREL試験は、スイスの13の脳卒中施設と11のリハビリテーション施設の共同による研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(スイス国立科学財団[SNSF]の助成を受けた)。 2019年6月~2024年8月に、急性期(発症から7日以内)の虚血性または出血性の脳卒中で、臨床的に意義のある片麻痺(米国国立衛生研究所脳卒中スケール[NIHSS]の上肢運動、下肢運動、四肢運動失調のスコアの合計が3点以上)を有する患者610例を登録した。 被験者を、課題指向型訓練に基づく標準化されたリハビリテーションに加え、レボドパ100mg/カルビドパ25mg(307例)またはプラセボ(303例)を1日3回、39日間、経口投与する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは3ヵ月後の時点でのFugl-Meyerアセスメント(FMA)総スコア(0~100点、点数が低いほど運動機能が劣る)中央値であった。 ベースラインの全体の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:64~82)、女性が252例(41.3%)で、NIHSSスコア中央値は7点(IQR:5~10)、FMA総スコア中央値は34点(IQR:14~54)であった。3ヵ月後のFMA総スコアに差はない 3ヵ月後までに死亡した28例を除く582例(95.4%、レボドパ群296例、プラセボ群286例)を主解析の対象とした。主要アウトカムである3ヵ月後の時点でのFMA総スコア中央値は、レボドパ群が68点(IQR:42~85)、プラセボ群は64点(44~83)と両群間に有意差はなく(ベースラインのFMA総スコアで補正した両群間のFMA総スコアの平均差:-0.90点、95%信頼区間[CI]:-3.78~1.98、p=0.54)、レボドパ/カルビドパ追加による運動機能の改善は認めなかった。 副次アウトカム(3ヵ月後の患者報告アウトカム測定情報システム[PROMIS]-29のスコア、PROMIS-10のスコア、FMAの上肢および下肢スコア、NIHSSスコア、修正Rankin尺度スコアなど)についても、いずれの項目にも両群間に有意差はなかった。感染症の頻度が高い 重篤な有害事象は177例に255件発現した(レボドパ群126件、プラセボ群129件)。最も頻度の高い重篤な有害事象は両群とも感染症であった(同55件、44件)。 事前に規定されたとくに注目すべき有害事象は115例に146件発現した(レボドパ群79件、プラセボ群67件)。このうち最も頻度が高かったのはレボドパ群で錯乱(12件)、プラセボ群では幻覚(10件)だった。 著者は、「これらの結果は、最近のメタ解析で示唆されたレボドパによる有益な運動機能回復の増強効果という見解に反しており、脳卒中リハビリテーションの補強を目的としたレボドパの使用を支持しない」としている。

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ナルコレプシー治療にパラダイムシフト、oveporextonが第III相試験の評価項目をすべて改善、先駆的医薬品にも指定/武田

 武田薬品工業の経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬oveporexton(TAK-861)はナルコレプシータイプ1(NT1)に対する第III相試験で有望な結果を示した。その結果は世界睡眠学会で発表された。また、同薬は国内では先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。 NT1は、脳内のオレキシンニューロンが減少することで引き起こされる慢性かつまれな神経疾患であり、日常生活に支障を来すさまざまな症状を引き起こす。oveporextonはオレキシンの欠乏に対処することで、NT1の広範な症状を改善する。現在、NT1の原因となるオレキシン欠乏を標的とする治療薬はなく、認可されればoveporextonがファースト・イン・クラスとなる。世界睡眠学会「World Sleep 2025」での第III相試験結果 2025年9月に行われた世界睡眠学会「World Sleep 2025」では、oveporextonに対する2つの国際共同第III相試験(FirstLightとRadiantLight試験)のデータが発表された。両試験には19ヵ国273例の被験者が登録されている。両試験の主要・副次すべての評価項目で統計学的に有意な改善が認められた。以下が主な項目の結果である。 日中の過度の眠気(EDS):12週時点の覚醒維持検査(MWT)による、平均睡眠潜時およびエプワース眠気尺度(ESS)スコアのベースラインからの変化とも、プラセボ群と比べoveporexton群で統計学的に有意な改善を示した。とくに2mg×2/日投与群においては、被験者の大多数で平均睡眠潜時が正常範囲内(≧20分)まで改善し、健康成人と同程度のESSスコア(≦10)を達成した被験者は85%近くであった。 カタプレキシー(情動脱力発作)発現率:1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)はプラセボ群に比べ、oveporexton群で12週にわたり有意に低下した(ベースラインからの変化率の中央値は80%超)。oveporexton群におけるカタプレキシーが発現しない日の頻度は、ベースライン時の0日/週から12週時には4〜5日/週に改善した。 症状の重症度:ナルコレプシー重症度尺度(NSS-CT)の総スコアにおいて、プラセボ群に比べ、oveporexton群で統計学的に有意な変化を示した。70%を超える被験者が最低重症度(軽度、スコア0〜14)を示した。 安全性プロファイル:oveporextonの忍容性はおおむね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様で、治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はなかった。先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定 oveporexton(TAK-861)は、2025年9月29日、NT1を予定される効能又は効果として厚生労働省より先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。今回の指定は国際共同第IIb相臨床試験(TAK-861-2001試験)の結果に基づくものである。 なお、oveporextonは同国際共同第IIb相臨床試験のデータに基づき、米国食品医薬品局(FDA)および中国国家食品薬品監督管理局からも、NT1患者の日中の過度の眠気に対する治療薬としてブレークスルーセラピーに指定されている。

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低カロリー甘味料が脳の老化を促進する可能性

 カロリーがない、または低カロリーの甘味料が脳の老化を促進する可能性を示唆するデータが報告された。特に糖尿病患者では、より強い関連が見られるという。サンパウロ大学(ブラジル)のClaudia Kimie Suemoto氏らの研究の結果であり、詳細は「Neurology」に9月3日掲載された。 アスパルテーム、サッカリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの低カロリーまたはノンカロリーの甘味料(low- and no-calorie sweeteners;LNCS)は、摂取エネルギー量の抑制に役立つ。しかし論文の上席著者であるSuemoto氏は、「われわれの研究結果は、一部のLNCSは脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している」と話している。 この研究では、ブラジルの35歳以上の公務員対象の縦断的観察研究のデータが解析された。食物摂取頻度質問票を用いて、7種類のLNCSの摂取量を推定。記憶力、言語能力、思考力など、6種類の認知機能の指標のzスコアとの関連性を検討した。 摂取エネルギー量が極端な人(1パーセンタイル未満または99パーセンタイル超)や、データ欠落者を除外し、1万2,772人(平均年齢51.9±9.0歳、女性54.8%)を解析対象とした。ベースライン時点のLNCSの摂取量は92.1±90.1mg/日であり、平均追跡期間は約8年だった。 認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢や性別、高血圧、心血管疾患など)を調整後の解析で、LNCS摂取量の第1三分位群(摂取量が少ない下位3分の1の集団)に比べて、第3三分位群(摂取量が多い上位3分の1の集団)は、認知機能(思考力や記憶力)の低下速度が62%速く、これは約1.6年分の脳の老化に相当すると計算された。また、第2三分位群(摂取量が平均的な3分の1の集団)でも第1三分位群に比べると、低下速度が35%速く、これは約1.3年分の脳の老化に相当すると計算された。 年齢60歳未満/以上で二分すると、60歳未満ではLNCS摂取量が多い群で認知機能の低下が速いという有意な関連が見られた一方、60歳以上ではこの関連が非有意だった。他方、糖尿病の有無で二分すると、糖尿病のある群ではLNCS摂取量が多い群で、認知機能指標の一部がより速く低下することが示唆された。この点についてSuemoto氏は、「糖尿病の有無にかかわらず、中年層においてはLNCS摂取量の多さと認知機能低下との関連が明らかになった。また、糖尿病患者は砂糖の代替としてLNCSを使用することが多い傾向がある」との考察を付け加えている。 LNCSの摂取と認知機能低下との関連のメカニズムについて研究者らは、LNCSが体内で分解されて、脳にダメージを及ぼすような物質に変化したり、炎症を引き起こしたりするのではないかと推測している。ただし、この研究は観察研究であるため、LNCS摂取と認知機能低下との直接的な因果関係を証明するものではないことを、著者らは研究の限界として挙げている。 「われわれの研究の追試が必要である。さらに、本研究で検討しなかった、アップルソース、ハチミツ、メープルシロップ、ココナッツシュガーなど、他の代替甘味料では認知機能にどのような影響があるのかを調査する研究も求められる」とSuemoto氏は述べている。

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白内障の両眼同日手術、安全性と有効性が示される

 白内障の両眼同日手術は安全かつ有効で、実用的である可能性が、2件の研究で示された。白内障手術は通常、数週間から数カ月の間隔を開けて片眼ずつ行われる。しかし、両眼を同時に手術しても安全性や有効性に違いはなく、手術後に患者が自宅で自立して過ごす能力を妨げることはないことが示されたという。これらの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 英ムーアフィールズ眼科病院の眼科医Gabriele Gallo Afflitto氏は、「患者にとって、これらの結果は心強いものだ。特に、多焦点レンズの挿入と組み合わせた場合、同日に両眼の白内障手術を受けることで優れた視力を得られ、眼鏡に頼る必要性も減り、より早い回復が期待できることを、これらの結果は示している」と話している。 白内障は両眼に発生することが多い。眼の水晶体が濁って視界がぼやけ、視力が低下した場合に手術が必要になり、濁った水晶体を人工のレンズ(眼内レンズ)に置き換える。眼内レンズには単焦点と多焦点があり、眼鏡のレンズのように選択することができる。 1件目のAfflitto氏らの研究では、ムーアフィールズ眼科病院で2023年12月から2024年12月の間に両眼の白内障手術を受けた1万192人の患者のデータが分析された。その結果、同日に両眼に多焦点レンズを挿入した患者の85%、単焦点レンズを挿入した患者の約70%で20/20以上の視力が得られたことが明らかになった。一方、片眼ずつ2回に分けて手術を受けた患者では、77%が20/20以上の視力が得られたという。さらに、手術後に、手術前の目標屈折度数と術後の実測値との差が小さかった(±0.5ディオプター)患者の割合は、同日に両眼に多焦点レンズを挿入した患者の88%、片眼ずつ2回の手術で単焦点レンズを挿入した患者の67%、同日に両眼に単焦点レンズを挿入した患者の71%であった。 ムーアフィールズ眼科病院のコンサルタント眼科外科医であるVincenzo Maurino氏は、「患者と病院にとって、このアプローチには待機時間の短縮や視力の早期回復、通院回数の削減、さらには全体的なコスト削減といった効率面でのメリットがある。しかも、患者のアウトカム低下を伴わずにこれらのメリットが得られるのだ」とニュースリリースの中で述べている。 Silkeborg Regional Hospital(デンマーク)のMia Vestergaard Bendixen氏らによる2つ目の研究では、デンマークで白内障の同日両眼手術を受けた157人の患者を対象に、退院後の生活における支援の必要性について調査が行われた。その結果、88%が「自宅内を自分で移動できた」と回答していたほか、79%が「食事の準備ができた」、51%が「携帯電話の使用に支援は必要なかった」と回答していた。全体として、62%が「手術後24時間以内に介助者の必要性は全くなかった」と回答した。一方で、51%が「点眼薬の使用にはまだ助けが必要だった」と回答していた。 Bendixen氏は、「患者の多くは手術後すぐに自立した生活ができるようになると期待して良いだろう。このことは、支援の必要性についての不安の軽減につながるかもしれない。ただし、術後1日目は介助者からのサポートが有益な場合もある」と話している。また、同氏は「臨床医にとって、この研究結果は両眼同日手術の実施を支持するとともに、患者教育や必要に応じた一時的なサポートの計画の重要性を強調するものでもある」としている。 ESCRSのJoaquin Fernandez氏は、2件の研究について、「一度に両眼の白内障手術を安全に行えること、術後も自宅で良好な回復が得られること、そして何よりも、2回に分けて手術を行った場合と同等かそれ以上の視力予後が得られることが示された。このことは、患者やその家族、そして外科医にとって、(両眼の手術を同日に行っても)安全性が損なわれないという安心感を与えるはずだ」とする見解を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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新たな血液検査が頭頸部がんの早期発見を可能に

 新たな血液検査により、症状が現れる最大10年前からヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の頭頸部がんを検出できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。HPV-DeepSeekと呼ばれるこの検査は、腫瘍から剥がれて血流に入ったHPV DNAの微細な断片を検出するものだという。米ハーバード大学医学大学院および米Massachusetts Eye and EarのDaniel Faden氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に9月10日掲載された。 研究グループは、この検査の妥当性が確認されれば、HPV関連の頭頸部がんを検査できる初のスクリーニング検査になる可能性があるとしている。Faden氏は、「われわれの研究は、無症状の個人において、がんと診断される何年も前にHPV関連頭頸部がんを正確に検出できることを初めて示した」と話している。 頭頸部がんは、首から上の領域に発生するがんの総称で、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、唾液腺がんなどが含まれる。米国における頭頸部がんの約70%はHPVが原因である。研究グループによると、頭頸部がんにはスクリーニング検査が存在しないため、がんが進行して体の他の部位に転移してから診断されるケースが多いという。 研究グループによると、HPV-DeepSeekに関する過去の研究では、診断精度が99%に達する可能性が示されているという。今回の研究でFaden氏らは、Mass General Brighamのバイオバンクから、HPV関連頭頸部がん診断の1.3〜10.8年前に採取された血漿サンプル28点と、これらのがん患者と年齢および性別を一致させたがんではない対照の血漿サンプル28点を用いて、HPV-DeepSeekの実臨床での有用性を検討した。 その結果、HPV-DeepSeekはがん患者の28点の血漿サンプルのうち22点で陽性反応を示し(感度79%)、最長で診断の7.8年前にがんを検出できることが示された。一方、対照サンプルで陽性例はなかった(特異度100%)。診断精度は、がん診断前4年以内で最も高く、HPV抗体検査よりも有意に優れていた(P=0.004)。研究グループがさらに、AIを活用して独立した306人のコホートで訓練・検証したところ、28例のがん症例のうち27例を特定することに成功し、感度は96%に向上した。最も早い例では、診断の10.3年前から疾患を予測した。  Faden氏は、「患者が、がんの症状を抱えてクリニックを訪れる頃には、重篤で生涯にわたる副作用を伴う治療が必要になる。HPV-DeepSeekのようなツールによって、これらのがんを非常に早い段階で発見し、最終的には患者の転帰と生活の質(QOL)を向上させることができると期待している」と話している。 研究グループは現在、米国立がん研究所から採取した数百点のサンプルを使った追跡研究で、これらの結果の検証作業を行っているところである。

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新規作用機序の高コレステロール薬「ネクセトール錠180mg」【最新!DI情報】第48回

新規作用機序の高コレステロール薬「ネクセトール錠180mg」今回は、ATPクエン酸リアーゼ阻害薬「ベムペド酸(商品名:ネクセトール錠180mg、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は新規作用機序を有する高コレステロール血症治療薬であり、スタチンの効果が不十分な患者やスタチン不耐となった患者の治療選択肢として期待されています。<効能・効果>高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与します。なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用します。<安全性>副作用として、高尿酸血症(5%以上)、痛風、肝機能異常、肝機能検査値上昇(いずれも1~5%未満)、AST上昇、ALT上昇、四肢痛(いずれも1%未満)、貧血、ヘモグロビン減少、血中クレアチニン増加、血中尿素増加、糸球体濾過率減少(いずれも頻度不明)があります。なお、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用すると、HMG-CoA還元酵素阻害薬の血中濃度が上昇するので、横紋筋融解症などの副作用が現れる恐れがあります。定期的にクレアチンキナーゼを測定するなど患者の状態の十分な観察が必要です。また、これらの副作用の症状または徴候が現れた場合には、速やかに医師に相談するよう患者に指導します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症の患者さんに処方されます。肝臓でコレステロールの生合成に関わるアデノシン三リン酸クエン酸リアーゼという酵素を阻害することにより、血液中のコレステロールを低下させます。2.HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用されます。3.自己判断での使用の中止や量の加減はしないでください。指示どおり飲み続けることが重要です。<ここがポイント!>脂質異常症とは、血中のLDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、トリグリセリド(TG)が基準値から逸脱した状態を指し、動脈硬化の進行と密接に関連しています。とくにLDL-Cは、動脈硬化予防の中心的な管理指標とされており、高コレステロール血症の治療にはHMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチン系薬剤が広く用いられています。しかしながら、スタチンを使用しても十分な効果を得られない症例や有害事象により継続が困難になるスタチン不耐となる症例があります。本剤は、クエン酸をアセチルCoAに変換するアデノシン三リン酸クエン酸リアーゼ(ACL)を阻害することで、肝臓におけるアセチルCoAの新規合成を抑制し、スタチンの作用点よりも上流でコレステロールの生合成経路を阻害します。さらに、ベムペド酸は肝臓に高発現するACSVL1によって活性化されるプロドラッグです。骨格筋を含むその他の臓器にはACSVL1の発現がほとんどないため、骨格筋の機能維持に必要なコレステロール合成への影響は少ないと考えられています。本剤は、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分、またはHMG-CoA還元酵素阻害薬を許容できない患者に対し、1日1回の経口投与によりLDL-C低下作用をもたらします。現在、スタチン効果不十分/不耐には注射薬である抗PCSK9抗体薬が使用されていますが、本剤は新規作用機序の経口薬であるので、新たな治療選択肢として期待できます。LDL-Cのコントロールが不十分な高LDLコレステロール血症患者を対象とした国内第III相試験(CLEAR-J試験)において、主要評価項目である投与12週時におけるLDL-Cのベースラインからの変化率は-25.25%であり、プラセボ群の-3.46%と比較して、LDL-Cの有意な低下が認められました(群間差:-21.78%、95%信頼区間:-26.71~-16.85、p<0.001、MMRM解析)。

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男性の鉄欠乏性貧血【日常診療アップグレード】第40回

男性の鉄欠乏性貧血問題45歳男性。健診で軽度の貧血を指摘された。無症状である。悪性腫瘍の家族歴はない。バイタルサインは正常で、身体診察でも異常を認めない。Hb 10.7g/dL(基準値:13.5~17.5)、MCV 76fL(基準値:83~101)、フェリチン35ng/mL(基準値:20~250)である。痔の既往があるというので、1年後の再検査とした。

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10月7日 おなかを大切にする日【今日は何の日?】

【10月7日 おなかを大切にする日】〔由来〕気温が下がることでお腹が冷えて腸のぜん動運動が鈍くなったり、寒暖差による自律神経の乱れから便秘など腸の不調が出やすいこの時期に、腸活への関心を高めてもらいお腹の調子を良くして健康な毎日を送ってもらおうと、ビオフェルミン製薬が「じゅうような(10)おなか(07)」の語呂合わせから制定。関連コンテンツ下痢後に急速に進行する筋力低下と腱反射低下【日常診療アップグレード】副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?ピロリ除菌後の胃がんリスク~日本の大規模コホート餅は胃内で硬くなる!?胃に丸餅10個確認された症例

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副作用編:副腎不全(irAE)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第5回

今回は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中の「副腎不全」についてです。副腎不全はICIにより引き起こされる内分泌関連の免疫関連有害事象(irAE)の1つです。副腎不全が進行すると倦怠感、食欲不振、低血圧、低Na血症などを呈し、場合によっては急性副腎クリーゼに至ることもあります。治療機関が遠方の場合には、自宅近くのクリニックを受診するケースもあります。今回は、副腎不全で受診された際に有用な鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】65歳、男性主訴倦怠感、食欲低下病歴進行胃がんに対し、SOX+ニボルマブ療法を開始。3コース終了後より、全身倦怠感、食欲低下を自覚し、かかりつけ医(クリニック)を受診。バイタルサイン血圧 92/60mmHg、脈拍 96/分、体温 36.3℃身体所見皮膚冷感あり、軽度の脱水徴候を認める。ステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤治療中の倦怠感や食欲不振のほとんどが使用中の抗がん剤によるものですが、ICI使用時はさまざまなirAEを念頭におく必要があります。他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)倦怠感や食欲不振の原因服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(感染、腫瘍進行、代謝性疾患ほか)との鑑別。倦怠感以外の症状やバイタルの変動を確認。鑑別疾患とポイント画像を拡大する(2)症状からirAEを推察する(逆引きマニュアル)クリニックなど一次診療の場では、詳細な画像検査や内分泌・免疫関連の特殊検査を行うことは困難です。そのため、まず症状から「もしかするとirAEかもしれない」と推測することが大切になります。たとえば、倦怠感や食欲不振といった一見よくある症状でも、その背景に副腎不全や甲状腺のトラブルといった免疫関連の副作用が隠れていることがあります。以下の表は症状から想定されるirAEを逆引きマニュアルとして作成しました。逆引きマニュアル画像を拡大するステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。来院時は倦怠感が強く、血圧も低下傾向でした。化学療法はSOX+ニボルマブ療法をすでに3コース実施していましたが、詳しく問診すると最初の2コースはそれほどの倦怠感や食欲不振はありませんでした。わずかに冷汗もあり、血糖測定を実施したところ低値であったため、グルコースを含んだ輸液を行い、治療機関へ救急搬送を行いました。搬送先の病院で精査が行われ、下垂体前葉機能低下による副腎皮質機能低下症(irAE)と診断されました。ホルモン補充療法を実施され、現在も化学療法を継続中です。副腎皮質機能低下症患者における急性副腎不全(副腎クリーゼ)の対応急性副腎不全(副腎クリーゼ)は、副腎ホルモンが急激に不足し、放置すれば致死的となる緊急病態です。主な原因は、(1)慢性副腎不全患者に感染や外傷などのストレスが加わり、必要量が急増した場合、(2)長期ステロイド治療中の患者で不適切な減量・中止を行った場合、の2つが多いです。発症の誘因としては、とくに胃腸炎などの感染症の頻度が高く、そのような場合は通常量の1.5~3倍のヒドロコルチゾン(コートリル)の補充が必要となります。もし、コルチゾール補充療法を行っている患者が発熱などを主訴に来院した場合は、副腎クリーゼの可能性を勘案し、医療機関の指示どおり手持ちのコートリルを通常用量より多く内服したか確認を行い、直ちに治療機関へ受診もしくは連絡するよう指導いただければ幸いです。1)柳瀬 敏彦. 日本内科学会雑誌.2016;105:645-646.2)日本肺学会. 肺. 2021;61.

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第287回 ヘパリン吸入で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡が減少

ヘパリン吸入で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡が減少オーストラリア国立大学が英国のKing’s College Londonと協力して手掛けた試験の解析で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡を減らす未分画ヘパリン(UFH)吸入の効果が示されました1-3)。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は2019年12月に中国で報告されて世界に広がりました。流行の第一波でのCOVID-19患者は5例に1例近くが低酸素血症を発現し、それが入院の主な原因となりました。入院したCOVID-19患者のかなりが急性呼吸不全となり、7~8例に1例ほど(12~14%)が挿管での侵襲性人工呼吸を必要としています。その後の新参株の流行での入院、急性呼吸不全、死亡率は集団免疫の向上を背景にして低下しました。しかし挿管患者の生存は低いままのようです。少し前の報告になりますが、2020年8月末~2021年7月中旬までの約1年間に発表された試験を探してメタ解析したところ、COVID-19で挿管した患者の死亡率は流行第一波よりその後のほうがむしろ上昇しており、それぞれ62.2%と72.6%でした4)。ヘパリンはよく知られる血液の抗凝固活性に加えて抗炎症作用やウイルス全般を阻止する作用を有し、肺損傷に有益なことが示唆されています。SARS-CoV-2に限って言うと、スパイクタンパク質と細胞受容体ACE2の結合を妨げるヘパリンの効果が報告されています。UFHはスパイクタンパク質に結合して変形を強い、ACE2に結合できなくして感染を阻止します。UFHは炎症を封じる作用も有します。その抗炎症作用がCOVID-19の肺損傷に寄与する好中球細胞外トラップ(NET)生成や肺の過度の炎症を鎮める働きを担うようです。それに、ヘパリンのおはこの抗凝固作用も有益なようで、微小血管血栓症などのCOVID-19で重視すべき病変を制限しうることが示唆されています。4年近く前の2022年の始めに発表されたオーストラリア国立大学の研究者によるレトロスペクティブ解析では、入院COVID-19患者のUFH吸入と酸素指標の改善の関連が、挿管しているかどうかを問わず認められています5)。同研究チームは今回の解析で、未挿管のCOVID-19入院患者のUFH吸入の効果を調べました。7ヵ国の10病院での6つの無作為化試験の結果を集めて、あらかじめ決めていた計画に沿ってメタ解析しました。7ヵ国の1つのオーストラリアでは事務手続きの遅れにより被験者を集められず、実質的には6ヵ国で組み入れられた被験者478例が解析されました。その結果、挿管か死亡した患者の割合は、標準治療に加えて噴霧UFHを吸入する群(UFH吸入群)では11.2%、標準治療のみを行う群では22.4%でした。すなわちUFH吸入群の挿管か死亡の発生率は標準治療群の半分ほどで済みました(オッズ比:0.43)1)。UFHの効果はSARS-CoV-2に限らず種々のウイルス、さらには細菌にも有効かもしれません。ヒトのあちこちの組織の表面で発現するヘパラン硫酸などのプロテオグリカンとの相互作用を頼りに侵入しようとするそれら病原体一揃いなどをUFHは阻止できそうです。それに緑膿菌やインフルエンザウイルスなどの病原体の数々の接着を制限する作用があり、それらの働きによって肺炎や菌血症を防ぎうることがヒトや動物での検討で示唆されています。実際、研究チームはインフルエンザや呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などのSARS-CoV-2以外の呼吸器感染症へのUFHの効果を確かめる試験を欧州で実施するつもりです2,3)。また、吸入用のヘパリンの開発にも取り組んでいます。 参考 1) van Haren FMP, et al. eClinicalMedicine. 2025 Sep 27. [Epub ahead of print] 2) Low-cost drug shows promise for patients with life-threatening respiratory infections/Australian National University(ANU) 3) Low-cost drug shows promise for patients with life threating respiratory infections/King’s College London 4) Xourgia E, et al. Expert Rev Respir Med. 2022;16:1101-1108. 5) van Haren FMP, et al. Br J Clin Pharmacol. 2022;88:2802-2813.

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IPFに対するnerandomilast、第III相試験のアップデート解析(FIBRONEER-IPF)/ERS2025

 ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastは、特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」2)において、主要評価項目の努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制したことが報告されている。欧州呼吸器学会(ERS Congress 2025)において、FIBRONEER-IPF試験のデータ最終固定時の解析結果をJustin M. Oldham氏(米国・ミシガン大学)が報告した。本解析において、FVCの低下抑制効果は76週時まで維持された。また、主要な副次評価項目に有意差はみられなかったものの、nerandomilast高用量群では死亡リスクの数値的な低下がみられた。【FIBRONEER-IPF試験】・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVC(FVCの予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLco(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIP[通常型間質性肺炎]またはprobable UIPパターンを有する)患者1,177例試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 392例試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生 本発表では、76週時までのFVCの絶対変化量、データの最終固定時までのイベント発生に関する解析結果が示された。主な結果は以下のとおり。・既報のとおり、主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-183.5mLであったのに対し、低用量群が-138.6mL、高用量群が-114.7mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(それぞれp=0.02、p<0.001)1)。・76週時においても、プラセボ群と比較して低用量群および高用量群のFVCのベースラインからの低下は抑制され、52週時よりもプラセボ群との差は大きい傾向にあった。・データ最終固定時(平均投与期間14.8ヵ月、平均追跡期間16.4ヵ月)において、主要な副次評価項目のイベントは286例に発生し、104例が死亡した。・主要な副次評価項目については、低用量群および高用量群のいずれも、プラセボ群に対する差はみられなかった(それぞれハザード比[HR]:0.92、0.99)。・%FVCが10%超低下または死亡のリスクは、高用量群で低下する傾向がみられた(HR:0.75、95%信頼区間[CI]:0.59~0.95)。・死亡のリスクは、高用量群で数値的な低下がみられた(HR:0.66、95%CI:0.41~1.08)。・死亡のリスクを抗線維化薬の併用薬別にみると、高用量群のうち抗線維化薬の併用がない集団で低下する傾向がみられ、ニンテダニブを併用する集団でも数値的な低下がみられた。HR(95%CI)は以下のとおり。<低用量群> 併用なし:0.56(0.21~1.49) ニンテダニブ併用:1.02(0.51~2.04) ピルフェニドン併用:1.23(0.58~2.59)<高用量群> 併用なし:0.26(0.07~0.91) ニンテダニブ併用:0.64(0.30~1.37) ピルフェニドン併用:1.12(0.51~2.47)・nerandomilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であった(プラセボ群18.3%、低用量群32.1%、高用量群42.3%)。下痢は、とくにニンテダニブを併用する集団で多かった(それぞれ31.2%、50.5%、62.4%)。投与中止に至った有害事象は、それぞれ13.0%、13.5%、16.1%に発現した。ニンテダニブを併用する集団では、nerandomilast投与群の投与中止に至った有害事象が多かった(それぞれ13.9%、18.5%、23.0%)。 本結果について、Oldham氏は「nerandomilastを単剤または既承認の薬剤との併用において、IPF治療に用いることを支持するものである」とまとめた。 なお、FIBRONEER-IPF試験とFIBRONEER-ILD試験の統合解析の結果が、ポスター発表で示された。統合解析において、抗線維化薬の併用なしの集団では、低用量群(HR:0.55、95%CI:0.34~0.88)および高用量群(同:0.41、0.24~0.70)で死亡リスクが低下する傾向がみられた。また、ニンテダニブを併用する集団でも、高用量群で死亡リスクが低下する傾向が示された(同:0.59、0.37~0.94)。

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直近5年、アクセプトされた論文があると答えた医師は何割?/医師1,000人アンケート

 オンラインジャーナルやオープンアクセスジャーナルの普及に加え、生成AIを活用した検索や翻訳・要約も広まりつつあり、論文の閲覧・執筆を取り巻く状況が大きく変化している。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、論文閲覧・執筆の最近の状況についてアンケートを実施した(2025年8月26~27日実施)。論文検索の手段、PubMed以外で多かったのは 興味のある論文を見つけるための主な手段について、76.5%の医師がPubMedと回答し、医中誌(39.1%)、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事(38.4%)、所属する学会の学会誌(19.6%)などが続いた。 年代別にみると、PubMedとの回答が最も多いのは共通していたが、20~50代では75%以上を占めたのに対し、60代では59.0%と若干低い傾向がみられた。一方、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事との回答は20~50代では40%以下だったのに対し、60代では51.2%であった。そのほか、XなどのSNSからの情報との回答は全体で4.0%と低いものの、20~30代では10.9%と他世代と比較して高かった。ひと月に読む平均論文数は、アブスト・本文ともに1~5本との回答が最多 アブストラクトのみおよび本文全体について、平均して月何本の論文を読むか聞いた質問では、ともに1~5本との回答が最も多く、アブストラクトのみ1~5本は49.6%、本文全体を1~5本は28.6%であった。 年代別、所属する施設の病床数別にみた結果に大きな差はみられなかったが、月に本文全体を6本以上読むと回答した医師は、200床以上の医療機関に勤務する医師で多い傾向がみられた(12.1%)。 論文を読む主な目的としては、専門領域の情報収集が79.2%と最も多く、他科領域の情報収集(25.7%)、論文執筆・学会発表・講演準備のため(24.4%)、個人的な興味関心(18.5%)が続いた。直近5年、筆頭著者としてアクセプトされた論文がある医師は約4割 直近5年に“筆頭著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(29.2%)、4~6本(5.2%)、7~10本(2.2%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は38.3%であった。同じく直近5年に“責任著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(5.5%)、4~6本(1.9%)、7~10本(0.8%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は9.9%であった。 年代別にみると、“筆頭著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は年代が高くなるにつれ減少し、20~30代(51.3%)、40代(49.4%)、50代(34.0%)、60代(20.1%)であった。一方“責任著者”としての論文数が1本以上あると回答した割合は50代で最も高く(13.9%)、60代・40代(9.0%)、20~30代(7.0%)であった。 病床数別にみると、“筆頭著者”および“責任著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は200床以上の施設に勤務する医師で最も高く、それぞれ48.2%、14.6%であった。自由回答で最近の変化を聞いた質問では、「医局を離れて縁がなくなった(60代、消化器内科)」、「倫理委員会を求められるので、大学などの組織にいないと研究の論文が出せない傾向について、是正したくない人たちも多いことを感じる(60代、小児科)」といった意見が寄せられ、所属施設による影響もうかがわれた。 医学論文を執筆・投稿する主な目的について聞いた質問では、専門医や指導医、学位などの取得・更新のためが最も多く38.5%を占めた。次に多かったのは医学論文を執筆・投稿することはない(34.5%)で、この回答を年代別にみると、60代で最も多く49.6%、50代(35.6%)、40代(28.6%)、20~30代(23.5%)であった。 このほか、診療科別にみた論文閲覧状況、自由回答で聞いた最近感じている変化など、アンケート結果の詳細は以下のページにて公開している。『医師の論文閲覧&執筆状況』

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ケサンラ、新しい用量でARIA-Eの発症リスクが有意に減少/リリー

 日本イーライリリーは2025年9月18日、「認知症の治療現場の今とケサンラの最新使用法に関するメディアセミナー ~新しい投与スケジュールによりARIA-Eの発現割合が低下~」を開催した。「ケサンラ点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)は、2024年9月に「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」を効能または効果として国内における承認を取得し、同年11月26日に発売された。 ケサンラの従来の用法および用量は、初回から700mgを4週間隔で3回、その後は1,400mgを4週間隔で少なくとも30分かけて点滴静注するスケジュールであった。一方、抗アミロイドβ抗体薬の投与ではARIA(アミロイド関連画像異常)の発現が懸念される。ARIAは抗アミロイドβ抗体薬の投与に伴って起こるMRIの異常所見の総称で、ARIA-E(浮腫/滲出液貯留)とARIA-H(微小出血/脳表ヘモジデリン沈着)に大別される。このARIA発現のリスク低減を目的に、2025年8月、用法および用量について「通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1,050mg、その後は1回1,400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する」と投与量を漸増していくスケジュールへの変更承認を取得した。 本セミナーの冒頭で、日本イーライリリーの片桐 秀晃氏(研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 本部長)は、「国内の65歳以上の高齢者のうち、2022年時点で認知症または軽度認知障害(MCI)に該当する人は約1,000万人、有病率は27.8%と推計され、日本は超高齢化社会に直面している」と述べたうえで、同社の取り組みとして認知症と共生する社会に貢献すべくまい進する姿勢を見せた。認知症は早期の治療開始が鍵 続いて、患者や家族にとっての進行抑制の価値や早期発見・診断の重要性などについて、岩田 淳氏(東京都健康長寿医療センター 副院長)が解説した。まず、一部の患者や家族にある「点滴治療=重症者向け」という認識が、診断・治療開始の遅れを招く原因となることを指摘した。これに対し、専門医の立場ではMCIの段階で速やかにケサンラの投与を開始することが重要とされており、先送りは将来的に投与の適応外となる可能性があるため、MCIを疑う所見があればHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やMMSE(ミニメンタルステート検査)の結果にかかわらず、早期に受診・専門医への紹介につなげる必要があるとした。そのうえで、こうした早期介入の目的は治療自体ではなく、患者の治療後のQOLを高めることにあると述べた。薬剤負荷を抑える用量漸増によりARIA-Eが有意に減少 ケサンラの新しい用法・用量の承認の根拠となった「TRAILBLAZER-ALZ 6試験」の結果や、副作用としてのARIAの発症機序について、猪原 匡史氏(国立循環器病研究センター 副院長・脳神経内科部長)が解説した。TRAILBLAZER-ALZ 6試験とは、アミロイドPET検査により脳内にアミロイドβプラーク沈着が認められた早期アルツハイマー型認知症患者(843例)を対象に、沈着量の変化やARIAの発現割合を検討した多施設共同無作為化二重盲検第III相試験である。被験者を350mg開始群(212例)、700mg開始群(208例)、投与スキップ群(210例)、頻回投与群(213例)の4つの群に無作為に割り付け、同じ総投与量を異なる方法で投与した。 主要評価項目は24週時までのARIA-E関連事象の発現割合で、700mg開始群と比較して投与24週時のARIA-E関連事象の相対リスクが20%減少する事後確率を算出し、これが事前に規定した閾値(80%)を超えるか否かを検討した。結果、24週時のARIA-E関連事象の発現割合は、350mg開始群で13.7%、700mg開始群で23.7%であり、相対リスク減少率は40.5%、相対リスクが20%減少する事後確率は94.1%と、事前に規定した閾値を上回った。 副次評価項目について、76週時のMRI検査に基づくARIA-E関連事象の重症度は、700mg開始群と比較して350mg開始群では軽度であり、有意差が認められた(p=0.015、CMH検定)。ベースラインから76週時までの脳内アミロイドβプラークの減少量は、350mg開始群で70.92センチロイド、700mg開始群で72.14センチロイドと同程度であった。 安全性について、治療開始76週時までの有害事象の発現割合は、350mg開始群で93.9%(199/212例)、700mg開始群で92.3%(191/207例)であった。副作用の発現割合は、350mg開始群で53.8%(114/212例)、700mg開始群で53.1%(110/207例)であった。その中でARIA-Eの発現割合は、700mg開始群が23.2%(48例/207例)であったのに対し、350mg開始群は15.1%(32例/212例)と有意に減少していた。 ARIAは、血管周囲の排泄経路障害や血液脳関門の破綻によりアミロイドβが蓄積し、そこに抗アミロイドβ抗体薬が投与されるとアミロイドβのクリアランスに伴い一過性に血管外漏出を引き起こすことで発症する。TRAILBLAZER-ALZ 6試験の結果について同氏は、「投与初期の薬剤負荷を抑える漸増法によってアミロイドβのクリアランス経路に見合った段階的な除去が促され、過度な蓄積を避けることでARIAリスク低減に寄与する可能性を示唆している」と述べた。さらに、抗アミロイドβ抗体薬の治療対象者の多くは高齢者であるため、既存の脳微小出血や抗血栓薬の併用などのARIAのリスク因子について理解し、定期的なMRI検査などで処方医と読影医が連携することが重要であるとした。最後に同氏は、MRI検査によりARIAを早期に捉え、高血圧などの血管障害リスクとなりうる生活習慣病のマネジメントを行っていく必要性を強調した。

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