脳卒中リハビリテーション、レボドパ追加は有効か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/08

 

 レボドパは、脳卒中発症後の運動機能の回復を促進する可能性が示唆されているが、有効性に関するエビデンスは肯定・否定が混在するにもかかわらず、脳卒中リハビリテーションに補完的に使用されているという。スイス・バーゼル大学のStefan T. Engelter氏らの研究チームは「ESTREL試験」において、急性期脳卒中患者に対する入院リハビリテーションでは、標準的リハビリテーションにプラセボを加えた場合と比較してレボドパの追加は、3ヵ月後の運動機能の改善をもたらさないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年9月22日号で発表された。

スイスの研究者主導型無作為化試験

 ESTREL試験は、スイスの13の脳卒中施設と11のリハビリテーション施設の共同による研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(スイス国立科学財団[SNSF]の助成を受けた)。

 2019年6月~2024年8月に、急性期(発症から7日以内)の虚血性または出血性の脳卒中で、臨床的に意義のある片麻痺(米国国立衛生研究所脳卒中スケール[NIHSS]の上肢運動、下肢運動、四肢運動失調のスコアの合計が3点以上)を有する患者610例を登録した。

 被験者を、課題指向型訓練に基づく標準化されたリハビリテーションに加え、レボドパ100mg/カルビドパ25mg(307例)またはプラセボ(303例)を1日3回、39日間、経口投与する群に無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは3ヵ月後の時点でのFugl-Meyerアセスメント(FMA)総スコア(0~100点、点数が低いほど運動機能が劣る)中央値であった。

 ベースラインの全体の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:64~82)、女性が252例(41.3%)で、NIHSSスコア中央値は7点(IQR:5~10)、FMA総スコア中央値は34点(IQR:14~54)であった。

3ヵ月後のFMA総スコアに差はない

 3ヵ月後までに死亡した28例を除く582例(95.4%、レボドパ群296例、プラセボ群286例)を主解析の対象とした。主要アウトカムである3ヵ月後の時点でのFMA総スコア中央値は、レボドパ群が68点(IQR:42~85)、プラセボ群は64点(44~83)と両群間に有意差はなく(ベースラインのFMA総スコアで補正した両群間のFMA総スコアの平均差:-0.90点、95%信頼区間[CI]:-3.78~1.98、p=0.54)、レボドパ/カルビドパ追加による運動機能の改善は認めなかった。

 副次アウトカム(3ヵ月後の患者報告アウトカム測定情報システム[PROMIS]-29のスコア、PROMIS-10のスコア、FMAの上肢および下肢スコア、NIHSSスコア、修正Rankin尺度スコアなど)についても、いずれの項目にも両群間に有意差はなかった。

感染症の頻度が高い

 重篤な有害事象は177例に255件発現した(レボドパ群126件、プラセボ群129件)。最も頻度の高い重篤な有害事象は両群とも感染症であった(同55件、44件)。

 事前に規定されたとくに注目すべき有害事象は115例に146件発現した(レボドパ群79件、プラセボ群67件)。このうち最も頻度が高かったのはレボドパ群で錯乱(12件)、プラセボ群では幻覚(10件)だった。

 著者は、「これらの結果は、最近のメタ解析で示唆されたレボドパによる有益な運動機能回復の増強効果という見解に反しており、脳卒中リハビリテーションの補強を目的としたレボドパの使用を支持しない」としている。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員