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乾癬患者における、COVID-19の重症化因子は?

 COVID-19への決定的な対策はいまだ見いだされていないが、入院・重症化リスクを捉えることで死亡を抑え込もうという世界的な努力が続いている。本稿では、乾癬患者のCOVID-19に関する国際レジストリ「PsoProtect」へ寄せられた25ヵ国からの臨床報告に基づき、英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのSatveer K. Mahil氏らが乾癬患者の入院・重症化リスクを解析。「高齢」「男性」「非白人種」「併存疾患」がリスク因子であることを明らかにした。また、乾癬患者は複数の疾患負荷と全身性の免疫抑制薬の使用によってCOVID-19の有害アウトカムのリスクが高まる可能性があるとされているが、これまでデータは限定的であった。今回、著者らは「生物学的製剤の使用者は、非使用者と比べて入院リスクが低かった」とも報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2020年10月16日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者におけるCOVID-19の臨床経過を明らかにし、入院と関連する因子を特定するため、国際レジストリ「PsoProtect」を通じて、COVID-19確認/疑いと臨床医が報告した乾癬患者を対象に、多重ロジスティック回帰法にて、臨床/人口統計学的特性と入院との関連を評価した。また、患者自身が報告する別のレジストリ「PsoProtectMe」のデータから、リスクの回避行動を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・評価は、臨床医からの報告症例である25ヵ国374例(確認例172例[46%]、疑い例202例[54%])の患者を対象に行われた。36%が英国、21%がイタリア、15%がスペインの患者で、年齢中央値は50歳、男性61%、白人種85%であった。喫煙歴なし54%、現在喫煙者は15%だった。・71%の患者が生物学的製剤による治療を受けていた。非生物学的製剤による治療を受けていた患者は18%、全身療法が行われていなかったのは10%だった。・COVID-19から完全に回復したのは348例(93%)であった。入院を要したのは77例(21%)、死亡は9例(2%)であった。・入院リスクの増大因子は、高齢(多変量補正後オッズ比[OR]:1.59/10歳、95%信頼区間[CI]:1.19~2.13)、男性(2.51、1.23~5.12)、非白人種(3.15、1.24~8.03)、慢性肺疾患の併存(3.87、1.52~9.83)であった。・入院率は、生物学的製剤使用患者よりも非使用患者で高率だった(OR:2.84、95%CI:1.31~6.18)。生物学的製剤のクラスの違いによる有意差はなかった。・患者報告のデータ(48ヵ国1,626例)から、生物学的製剤使用患者と比べて非使用患者はソーシャルディスタンスのレベルが低いことが示唆された(OR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。

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機械学習モデルは統計モデルよりも優れるか/BMJ

 機械学習および統計モデルについて、同一患者の臨床的リスクの予測能を調べた結果、モデルのパフォーマンスは同等だが、予測リスクはさまざまに異なることが、英国・マンチェスター大学のYan Li氏らによる検討で示された。ロジスティックモデルと一般的に用いられる機械学習モデルは、中途打ち切りを考慮しない長期リスクの予測には適用すべきではなく、QRISK3のような生存時間分析モデルが、中途打ち切りを考慮し説明も可能であり望ましいことが示されたという。結果を踏まえて著者は、「モデル内およびモデル間の一貫性のレベルを評価することを、臨床意思決定に使用する前にルーチンとすべきであろう」と指摘している。QRISKやフラミンガムといった心血管疾患のリスク予測モデルは、臨床で幅広く使われるようになっている。これらの予測にはさまざまな技術が用いられるようにもなっており、最近の研究では、機械学習モデルがQRISKのようなモデルよりも優れているといわれるようになっていた。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。19のモデルについてリスク予測能の一貫性を検証 研究グループは機械学習と統計モデルの、個別の患者レベルおよび集団レベルにおける心血管疾患リスクの一貫性と、リスク予測の中途打ち切りの影響について評価する長期コホート試験(1998年1月1日~2018年12月31日)を行った。被験者は、イングランドの一般診療所391ヵ所でClinical Practice Research Datalinkに登録された患者360万人で、入院および死亡記録とひも付けして評価した。 主要評価項目は、モデルパフォーマンス(識別、較正)およびモデル間の同一患者におけるリスク予測の一貫性であった。検討したモデルは19で、それぞれ異なる予測技術を有するものであったが、機械学習モデルが12個(R言語で機械学習を行うパッケージCaretやSklearn、h2oに基づくロジスティックモデル、random forest、neural networkなど)、Cox比例ハザードモデルが3個(local fitted、QRISK3、フラミンガム)、パラメトリック生存モデルが3個(Weibull、Gaussian、logistic distribution)、ロジスティックモデルが1個(統計的因果関係フレームワーク適合モデル)であった。機械学習モデルはリスクをかなり過小評価 集団レベルでは、モデル間のパフォーマンスは類似していた(C統計値はおよそ0.87で較正も同等)。 一方で、個人レベルでは、ばらつきが大きく、また機械学習や統計モデルの種別ごとに違いが認められた。ばらつきなどはとくに高リスクの患者について大きかった。 QRISK3で9.5~10.5%とリスクが予測された患者は、random forestでは2.9~9.2%、neural networkでは2.4~7.2%の予測リスクであった。QRISK3とneural networkの予測リスクの差は、95%範囲値でみた場合-23.2~0.1%にわたった。 また、中途打ち切りを考慮しないモデル(すなわち打ち切られた患者はイベントフリーと仮定する)は、心血管疾患リスクをかなり過小評価していた。QRISK3で7.5%超の心血管疾患リスクを有していた患者22万3,815人のうち、その他のモデルを用いた場合は57.8%が7.5%未満に再分類された。

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70歳以上、ビタミンD・ω3・運動による疾患予防効果なし/JAMA

 併存疾患のない70歳以上の高齢者において、ビタミンD3、オメガ3脂肪酸、または筋力トレーニングの運動プログラムによる介入は、拡張期または収縮期血圧、非脊椎骨折、身体能力、感染症罹患率や認知機能の改善について、統計学的な有意差をもたらさなかったことが、スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らが行った無作為化試験「DO-HEALTH試験」の結果で示された。ビタミンD、オメガ3および運動の疾患予防効果は明らかになっていなかったが、著者は「今回の結果は、これら3つの介入が臨床アウトカムに効果的ではないことを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2020年11月10日号掲載の報告。8群に分けて3年間介入、血圧、身体・認知機能、骨折、感染症などへの影響を評価 研究グループは、ビタミンD3、オメガ3、筋力トレーニングの運動プログラムについて、単独または複合的介入が、高齢者における6つの健康アウトカムを改善するかを検討した。70歳以上で登録前5年間に重大な健康イベントを有しておらず、十分な活動性があり認知機能が良好な高齢者2,157例を対象に、二重盲検プラセボ対照2×2×2要因無作為化試験を実施した(2012年12月~2014年11月に登録、最終フォローアップは2017年11月)。 被験者は無作為に、次の8群のうちの1つに割り付けられ3年間にわたり介入を受けた。2,000 IU/日のビタミンD3投与・1g/日のオメガ3投与・筋力トレーニングの運動プログラム実施群(264例)、ビタミンD3・オメガ3投与群(265例)、ビタミンD3投与・筋トレ実施群(275例)、ビタミンD3投与のみ群(272例)、オメガ3投与・筋トレ実施群(275例)、オメガ3投与のみ群(269例)、筋トレ実施のみ群(267例)、プラセボ群(270例)。 主要アウトカムは6つで、3年間にわたる収縮期・拡張期血圧(BP)の変化、Short Physical Performance Battery(SPPB)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、非脊椎骨折および感染症罹患率(IR)であった。6つの主要エンドポイントを複合比較し、99%信頼区間(CI)を示し、p<0.01を統計学的有意差と定義した。いずれも有意な影響はみられず 無作為化を受けた2,157例(平均年齢74.9歳、女性61.7%)のうち、1,900例(88%)が試験を完了した。フォローアップ期間中央値は2.99年であった。 全体的に、3年間の個別の介入または複合介入について、6つの主要エンドポイントに対する統計学的に有意なベネフィットは認められなかった。 たとえば、収縮期BPの平均変化差は、ビタミンDあり群とビタミンDなし群の比較では-0.8(99%CI:-2.1~0.5)mmHgで有意差なし(p=0.13)、オメガ3あり群とオメガ3なし群の比較では-0.8(-2.1~0.5)mmHgで有意差なし(p=0.11)であった。拡張期BPの平均変化差は、オメガ3あり群とオメガ3なし群では-0.5(-1.2~0.2)mmHgで有意差なし(p=0.06)であり、また、オメガ3あり群とオメガ3なし群の感染症罹患率の絶対差は-0.13(-0.23~-0.03)、IR比は0.89(0.78~1.01)で有意差はなかった(p=0.02)。 SPPB、MoCA、非脊椎骨折のアウトカムへの影響は認められなかった。 全体で死亡は25例で、群間で差はなかった。

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AZ社の新型コロナワクチン有効率最大90%、貯蔵はより容易か/第II/III相試験中間解析

 アストラゼネカ社は、COVID-19に対するウイルスベクターワクチンAZD1222の第II/III相および第III相試験の中間分析の結果、最大90%の有効率が示されたことを11月23日に発表した。2つの異なる投与レジメンで有効性が示され、平均70%の有効率が示されている。条件付きまたは早期承認のためのデータを世界各国の規制当局に提出し、承認取得次第、2021年に最大30億回分のワクチンを製造できるよう準備を進めているという。 AZD1222は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含む、複製欠損および弱毒化されたチンパンジー由来の風邪アデノウイルスを用いて作製される。ワクチン接種後スパイクタンパク質が生成され、感染した場合に免疫系を刺激し、SARS-CoV-2ウイルスを攻撃する。 第II/III相COV002試験は英国の12,390人の参加者を対象に、第III相COV003試験はブラジルの10,300人の参加者を対象に実施されている。ともに参加者は18歳以上で健康あるいは医学的に安定した慢性疾患を有する患者。COV002では、半用量(〜2.5×1010ウイルス粒子)または全用量(〜5×1010ウイルス粒子)のAZD1222、対照群として髄膜炎菌ワクチンMenACWYを1回または2回筋肉内投与。COV003では、全用量のAZD1222またはMenACWYが2回投与される(対照群では1回目にMenACWY、2回目はプラセボとして生理食塩水を投与)。 中間分析では計131例のCOVID-19発症が確認された。今回発表された結果のうち、1回目に半用量を投与後、少なくとも1か月間隔で全用量を投与した2,741人では、90%の有効率を示した。少なくとも1か月間隔で全用量を2回投与した8,895人では、62%の有効率を示している。両投与レジメンの11,636人についての複合解析では、平均70%の有効率が示され、これらの結果はすべて統計的に有意であった(p≦0.0001)。 独立データモニタリング委員会は、2回投与を受けてから14日以上後に発生するCOVID-19からの保護を示す主要評価項目を満たしたと判断し、今回の結果が発表された。AZD1222に関連する重大な安全イベントは確認されておらず、AZD1222投与群ではCOVID-19による入院や重症例は報告されていない。 なお、AZD1222の臨床試験は、米国、日本、ロシア、南アフリカ、ケニア、ラテンアメリカでも実施されており、他のヨーロッパやアジアの国々でも試験が計画されている。また、同社はAZD1222の貯蔵について、標準的な家庭用または医療用冷蔵庫の温度である2~8℃(36~46°F)で少なくとも6ヵ月間保管、輸送、および取り扱いでき、既存の医療環境で投与可能としている。

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薬局薬剤師の常駐が廃止へ!押印廃止議論からまさかの波及【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第57回

政府の規制改革推進会議によって、「薬局薬剤師の常駐廃止」が検討されています。きっかけは、2020年9月に発足した菅政権において「押印廃止」の議論が持ち上がったことで、印鑑問題だけにとどまらず、さまざまな事項のデジタル化へ派生しつつあります。そのうちの1つが「薬局の薬剤師の常駐廃止」です。「えっ! 私たちいなくていいの?」とびっくりした人も多いのではないでしょうか。薬局の薬剤師の常駐廃止とはどういう意味で、どのようなスケジュールが想定されているのかまとめます。政府は行政手続きや民間で書面や対面での対応を義務付けている規制に関し、デジタル化で代替できるものから撤廃する検討に入った。工程表をつくり、第1段階 押印廃止第2段階 書面・対面の撤廃第3段階 常駐・専任義務の廃止第4段階 税・保険料払いのデジタル化――の4段階で順に取り組む。(2020年10月9日付 日本経済新聞WEB)この第2段階の「書面・対面の撤廃」にオンライン診療・服薬指導が含まれていて、第3段階の「常駐廃止」に薬局薬剤師が含まれています。第1段階の押印廃止は、全省庁を対象として準備が進められています。すでに行政サービスのほとんどで廃止のめどが立っているとの報道があり、なんと約1万5,000種類ある行政手続きにおける押印のうち、83の手続きを除いて廃止される方向です。行政に対するものだけではなく、患者さんや他施設とやり取りする文書も、その場で発行して渡したり押印した原本の郵送がなくなったりするなど、影響があるかもしれません。第2段階の書面・対面の撤廃には、これまで対面が義務付けられていた業務をオンラインで可能にするという規制緩和が盛り込まれています。この中には診療および服薬指導も含まれており、現状では特例的であったり諸条件が設けられていたりするオンライン診療・服薬指導、それに付随する電子処方箋などが推進されることになりそうです。第3段階の常駐廃止では、現在、薬局には薬剤師が常駐し、調剤した後に服薬指導をしなければなりませんが、昨年に成立した改正医薬品医療機器等法にはオンライン服薬指導の解禁も含まれており、さらに服薬指導のオンライン化が進むと考えられます。常駐廃止と聞くと、薬剤師不要論のようなネガティブな印象を受けるかもしれませんが、1人薬局が在宅訪問しやすくなったり、薬剤師のテレワークが可能になったり、良い面もあるかもしれません。なお、現在は労働安全衛生法などに基づいて、1,000人以上の従業員がいる企業では専属で産業医が常駐する必要がありますが、おそらく第2段階の対面せずに診察できる仕組みが整えば、スムーズに第3段階の産業医の常駐廃止に進むことが想像できます。第4段階の「税・保険料払いのデジタル化」については、税金や社会保険料支払いのキャッシュレス化を進めるとしており、すでに電子決済で支払いができる自治体もあります。これらの取り組みは2021年の通常国会において関連する法律の改正案を一括で提出する予定で、おおむね5年以内の完成を目指すとされています。処方箋に押印する調剤済みの薬剤師印や、疑義照会後の病院への変更内容の連絡、保険証の確認など、薬剤師の薬局業務にはさまざまなアナログな作業がありますので、それらにも多かれ少なかれ影響するでしょう。デジタル化には大変なこともあると思いますが、患者さんはわざわざ薬局に足を運ばなくても薬剤師のサポートを受けられるようになり、薬剤師の職能が発揮される場面が増えると期待したいと思います。

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第35回 母乳保育は子にCOVID-19防御免疫を授けうる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)後の出産女性の大半の母乳にはSARS-CoV-2への抗体反応が備わっており1)、それらの女性の母乳保育は子に抗ウイルス免疫を授けうると示唆されました。ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)の免疫学者Rebecca Powell氏等はPCR検査でSARS-CoV-2が検出された8人と検査はされなかったけれども感染者との濃厚接触などがあって恐らく感染した7人の感染期間終了から数週間後の母乳を集めてSARS-CoV-2への抗体を調べました。その結果15人全員の母乳にSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質に反応する抗体が認められました。また、15人中12人(80%)の母乳には細胞感染阻止(neutralization)に重要なSタンパク質抗原決定基・受容体結合領域(RBD)への結合抗体も認められました。目下のCOVID-19流行の最中(2月30日~4月3日)に41人の女性からCOVID-19経験の有無を問わず集めた母乳を解析した別の試験2)でもSタンパク質反応抗体がほとんどの女性から検出されています。それらの女性のSARS-CoV-2感染の有無の記録はなく、SARS-CoV-2に反応する抗体の出処は不明ですが、SARS-CoV-2以外のウイルスの貢献が大きいようです。Sタンパク質に反応するIgG抗体レベルは先立つ1年間に呼吸器ウイルス感染症を経た女性の方がそうでない女性に比べて高く、SARS-CoV-2へのIgAやIgM抗体の反応はSタンパク質に限ったものではなさそうでした。2018年に採取された母乳でもSARS-CoV-2タンパク質へのIgAやIgM抗体反応が認められ、目下のCOVID-19流行中に採取された母乳と差はなく、どうやらSARS-CoV-2以外のウイルスに接したことがSARS-CoV-2にも反応する抗体を生み出したようです。母乳中に分泌される抗体はSARS-CoV-2への抵抗力を含む幅広い免疫を授乳を介して子に授けうると研究チームの主力免疫学者Veronique Demers-Mathieu氏は言っています3)。この8月にJAMA誌オンライン版に掲載された試験でCOVID-19感染女性の母乳から生きているウイルスは検出されておらず4)、今回の結果も含めると、女性はCOVID-19流行のさなかにあっても少なくとも安心して母乳保育を続けることができそうです。もっと言うなら母乳保育は子にCOVID-19疾患の防御免疫を授ける役割も担うかもしれません。マウントサイナイ医科大学のPowell氏等は次の課題として母乳中の抗体がSARS-CoV-2の細胞感染を阻止しうるかどうかを調べます。また、母乳中のSARS-CoV-2反応抗体はCOVID-19疾患を予防する経口の抗体薬となりうる可能性を秘めており2)、Powell氏等のチームはCOVID-19を食い止める抗体を母乳から集める取り組みをバイオテック企業Lactigaと組んで進めています3)。参考1)Fox A, et al. iScience. 2020 Nov 20;23:101735.2)Demers-Mathieu V, et al. J Perinatol. 2020 Sep 1:1-10c3)Breastmilk Harbors Antibodies to SARS-CoV-2/TheScentist4)Chambers C, et al. JAMA. 2020 Oct 6;324:1347-1348.

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統合失調症に対するルラシドンの長期評価

 英国・サノビオン・ファーマシューティカルズ・ヨーロッパ・リミテッドのPreeya J. Patel氏らは、統合失調症におけるルラシドンの長期有用性を評価するため、二重盲検(DB)アクティブコントロール試験と非盲検(OLE)試験の事後分析を実施した。Neurology and Therapy誌オンライン版2020年10月24日号の報告。 DB試験では、統合失調症患者をルラシドンまたはリスペリドンの12ヵ月間投与にランダムに割り付けた。OLE試験では、すべての患者に対し6ヵ月間のルラシドン投与を行った。治療による有害事象(TEAE)の評価を行った。有効性の評価には、再発率(DB試験のみ)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・DB試験では、ルラシドン群399例、リスペリドン群190例にランダム化され、そのうちルラシドン群129例、リスペリドン群84例がOLE試験に移行した。・DB試験中のTEAE発生率は、ルラシドン群84.1%、リスペリドン群84.2%であり、同等であった。・ルラシドン群の代謝量およびプロラクチンレベルは最小限の変化にとどまっていたが、リスペリドン群では、プロラクチンレベルと空腹時血糖値において臨床的に有意な増加が認められた。・DB試験終了時のメタボリックシンドローム発生率は、ルラシドン群25.5%、リスペリドン群40.4%であり、ルラシドン群において有意に低かった(p=0.0177)。・OLE試験時にリスペリドンからルラシドンに切り替えを行った患者では、体重とプロラクチンレベルの低下が認められた。また、ルラシドン治療を継続した患者では、代謝量とプロラクチンレベルの変化は最小限のままであった。・OLE試験終了時のメタボリックシンドローム発生率は、ルラシドン群23.5%、リスペリドン群31.5%であり、両群間の差は認められなかった。・有効性アウトカムは、DB試験中では両群間で類似しており、OLE試験移行後も維持されていた。 著者らは「長期間安定した統合失調症患者に対するルラシドン治療は、忍容性が高く、効果的であった。リスペリドンからルラシドンに切り替えた患者においても、6ヵ月間にわたり、忍容性、有効性が良好であった。また、リスペリドンからの切り替えにより、代謝パラメータやプロラクチンレベルの改善も認められた。本結果より、統合失調症患者に対するルラシドン治療の長期有効性および良好な代謝プロファイルが裏付けられた」としている。

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未就学児へのアジスロマイシン集団配布で耐性因子が増加/NEJM

 アジスロマイシンの年2回、4年間の集団配布により、マクロライド系抗菌薬のみならず、マクロライド系以外の抗菌薬の耐性遺伝子が増大する可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のThuy Doan氏らが実施したMORDOR試験の補助的調査で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年11月12日号に掲載された。サハラ以南のアフリカでは、就学前の子供へのアジスロマイシンの年2回、2年間の配布により、小児死亡率は低下するものの、マクロライド耐性の増大という代償を要することが報告されている。また、より長期の年2回アジスロマイシン投与が、体内の抗菌薬耐性遺伝子の集積場所である腸レジストーム(gut resistome)に影響を及ぼすかは明らかにされていないという。4年投与の腸レジストームへの影響を評価するクラスター無作為化試験 研究グループは、アジスロマイシンの年2回の配布を4年間受けた小児の腸レジストームを調査する目的で、MORDOR試験の補助的研究としてクラスター無作為化試験を行った(Bill and Melinda Gates財団などの助成による)。 本試験には、MORDOR試験が進行中のニジェールで、同時試験として30の村落が登録された。生後1~59ヵ月の小児全員が、6ヵ月ごとに48ヵ月間アジスロマイシンを集団配布され、経口投与される群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 腸レジストームを解析するために、ベースライン、36ヵ月、48ヵ月の時点で直腸スワブが採取された。これらの検体を用いて、メタゲノミクスに基づくDNAシークエンシングにより、耐性遺伝子の決定因子の評価が行われた。 主要評価項目は、48ヵ月の時点におけるアジスロマイシン群のプラセボ群に対する遺伝学的マクロライド耐性因子の比とした。β-ラクタム系の耐性因子も2.1倍に 24ヵ月の時点で1つの村落が試験を中止した。48ヵ月の期間全体における6ヵ月ごと計8回の投与の平均(±SD)服用率は、アジスロマイシン群(14村落)が83.2±16.4%、プラセボ群(15村落)は86.6±12%であった。ベースライン、36ヵ月、48ヵ月の時点を通じて、1村落当たり37±6人の小児から直腸検体が得られ、全試験期間中に3,232検体が採取された。 48ヵ月後の解析にはアジスロマイシン群の504検体(平均年齢31ヵ月、女児45%)とプラセボ群の546検体(32ヵ月、47%)が、36ヵ月後はそれぞれ513検体(31ヵ月、45%)と554検体(30ヵ月、46%)が、ベースラインは554検体(31ヵ月、48%)と561検体(31ヵ月、46%)が含まれた。 ベースラインのマクロライド耐性因子は両群で同程度であった。投与開始後のマクロライド耐性因子は、アジスロマイシン群がプラセボ群よりも多く、36ヵ月の時点で7.4倍(95%信頼区間[CI]:4.0~16.7)、8回の投与が終了した48ヵ月の時点では7.5倍(3.8~23.1)であった。 また、アジスロマイシン群では、36ヵ月の時点でマクロライド系以外のいくつかの抗菌薬の耐性因子が顕著に増加しており、たとえばβ-ラクタム系抗菌薬の耐性因子は2.1倍(95%CI:1.2~4.0)であった。これら36ヵ月の時点で耐性因子が増加していたマクロライド系以外の抗菌薬は、48ヵ月の時点では耐性因子がわずかに減少しており、いずれも未補正の95%CIの下限値が1未満であった。 著者は、「耐性の調査は、あらゆる薬剤の集団配布プログラムの本質的な要素であり、メタゲノミクスを用いたアプローチは耐性調査に有用な可能性がある」としている。

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75歳以上への脂質低下療法、心血管イベントの抑制に有効/Lancet

 脂質低下療法は、75歳以上の患者においても、75歳未満の患者と同様に心血管イベントの抑制に効果的で、スタチン治療とスタチン以外の脂質低下薬による治療の双方が有効であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のBaris Gencer氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年11月10日号に掲載された。高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の臨床的有益性に関する議論が続いている。2018年の米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)のコレステロールガイドラインでは、高齢患者に対する脂質低下療法の推奨度が若年患者よりも低く、2019年の欧州心臓病学会(ESC)と欧州動脈硬化学会(EAS)の脂質異常症ガイドラインは、高齢患者の治療を支持しているが、治療開始前に併存疾患を評価するための具体的な考慮事項を追加している。75歳以上における主要血管イベントをメタ解析で評価 研究グループは、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法のエビデンスを要約する目的で、系統的レビューとメタ解析を実施した(研究助成は受けていない)。 医学データベース(MEDLINE、Embase)を用いて、2015年3月1日~2020年8月14日の期間に発表された論文を検索した。対象は、2018年のACC/AHAガイドラインで推奨されているLDLコレステロール低下療法の心血管アウトカムを検討した無作為化対照比較試験のうち、フォローアップ期間中央値が2年以上で、高齢患者(75歳以上)のデータを含む試験であった。心不全または透析患者だけを登録した試験は、これらの患者にはガイドラインで脂質低下療法が推奨されていないため除外した。標準化されたデータ形式を用いて高齢患者のデータを抽出した。 メタ解析では、LDLコレステロール値の1mmol/L(38.67mg/dL)低下当たりの主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞/他の急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)のリスク比(RR)を算出した。主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで有益性を確認 系統的レビューとメタ解析には、スタチン/強化スタチンによる1次/2次治療に関するCholesterol Treatment Trialists' Collaboration(CTTC)のメタ解析(24試験)と、5つの単独の試験(Treat Stroke to Target試験[スタチンによる2次予防]、IMPROVE-IT試験[エゼチミブ+シンバスタチンによる2次予防]、EWTOPIA 75試験[エゼチミブによる1次予防、日本の試験]、FOURIER試験[スタチンを基礎治療とするエボロクマブによる2次予防]、ODYSSEY OUTCOMES試験[スタチンを基礎治療とするアリロクマブによる2次予防])の6つの論文のデータが含まれた。 合計29件の試験に参加した24万4,090例のうち、2万1,492例(8.8%)が75歳以上であった。このうち1万1,750例(54.7%)がスタチンの試験、6,209例(28.9%)がエゼチミブの試験、3,533例(16.4%)はPCSK9阻害薬の試験の参加者であった。フォローアップ期間中央値の範囲は2.2~6.0年だった。 LDLコレステロール低下療法により、高齢患者における主要血管イベントのリスクが、LDLコレステロール値の1mmol/L低下当たり26%有意に低下した(RR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.61~0.89、p=0.0019)。これに対し、75歳未満の患者では、15%のリスク低下(0.85、0.78~0.92、p=0.0001)が認められ、高齢患者との間に統計学的に有意な差はみられなかった(pinteraction=0.37)。 高齢患者では、スタチン治療(RR:0.82、95%CI:0.73~0.91)とスタチン以外の脂質低下療法(0.67、0.47~0.95)のいずれもが主要血管イベントを有意に抑制し、これらの間には有意な差はなかった(pinteraction=0.64)。また、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の有益性は、主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで観察された(心血管死[0.85、0.74~0.98]、心筋梗塞[0.80、0.71~0.90]、脳卒中[0.73、0.61~0.87]、冠動脈血行再建術[0.80、0.66~0.96])。 著者は、「これらの結果は、高齢患者におけるスタチン以外の薬物療法を含む脂質低下療法の使用に関するガイドラインの推奨を強化するものである」としている。

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COVID-19の予防に対する意識が低い人とは?

 COVID-19に対する予防措置を講じても、約20%の人が適切な実施に対して消極的であることが、東京大学医科学研究所の武藤 香織氏らの研究によって明らかとなった。消極的な人の特徴として、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さが挙げられた。PLOS ONE誌2020年6月11日号の報告。 COVID-19に対して予防措置や自制の呼び掛けといった対策を講じ、協力を要請した状況下で、予防的行動がいつ、どのように変化したか調査した。クォータサンプリングに基づき、オンラインプラットフォームで実施された横断調査のミクロデータ(20~64歳、回答者数合計1万1,342人)を使用した。 全国調査の結果については以下のとおりである。・社会的距離の測定は、約85%が実践しており、女性、高年齢の割合が高かった。・頻繁な手洗いは全体の86%(女性の92%、40歳以上の87.9%)で実践されていた。・予防措置に影響を与えた要因に、2020年2月初旬に発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での感染が影響していた。・適切な予防措置の実施に約20%が消極的であり、その特徴は、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さであった。 著者らは、「日本での感染拡大を防ぐためには、さまざまな手段を用いて行動の変化を促すことが不可欠である」としている。

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日本人のマスク率が高いワケ

 マスクを着用することで不安は解消されるが、リスク軽減の期待には影響しないことが、同志社大学の中谷内 一也氏らが行った日本人対象の研究によって明らかとなった。Frontiers in Psychology誌2020年8月4日号の報告。 COVID-19に対するマスクの着用は、着用者の感染を防ぐことではなく、ほかの人への感染を防ぐことでパンデミックの蔓延を抑える。日本ではパンデミックの初期段階からマスクを着用する習慣が広まり、マスクの供給不足を引き起こした。なぜ日本では他国と比較しても、COVID-19パンデミックでマスクを着用する人が多いのか、マスクを着用する6つの考えられる心理的理由を基に調査した。 全国調査の結果については以下のとおりである。・マスクを着用することで社会の規範に準拠し、不安が解消された。・リスク軽減の期待に、マスクの着用は影響しなかった。 著者らは、「COVID-19パンデミックと闘うためには、マスク着用の社会的動機を考慮して戦略を検討すべきである」と示唆している。

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第47回 祝2周年!心電図クイズで腕試し(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第47回:祝2周年!心電図クイズで腕試し(後編)先月に引き続き、今回も連載2周年記念のクイズを出題します。今までに習った知識を総動員して、問題にチャレンジしてみてください。そして、できなかったところは、該当回のレクチャーをもう一度丁寧に読み直してみましょう。では、後編をどうぞ!症例提示1 18歳、女性。中学生時代に労作時息切れ、失神を契機に特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)と診断され、現在、投薬加療中。血圧84/50mmHg、脈拍数76/分・整、酸素飽和度(SpO2)94%。定期外来診察時の心電図を示す(図1)*:クイズの性格上、自動診断結果の一部を非表示にしている。(図1)定期外来診察時の心電図画像を拡大する【問題1】QRS電気軸の定性評価を与え、適切な数値として最も近いものを以下から1つ選べ。1)+0°2)+40°3)+90°4)+110°5)-70°解答はこちら定性評価:右軸偏位数値:4)解説はこちら電気軸と言えば、QRS波の「向き」に注目ですね。I誘導:下向き(陰性)、II(またはaVF)誘導:上向き(陽性)ですから、定性的な評価としては「右軸偏位」となります。この時点で「+90°~+180°」のゾーンに入ると予想されるので、何も考えずに4)が選べると思います。ただし、仮に「6)いずれでもない」という選択肢があっても、自身で定量的に(数値として)電気軸の位置を推定できるほうが望ましいです。実臨床では“選択肢”から選ぶわけではありませんからね。“肢誘導界”の円座標は覚えていますか?aVL(-30°) → I(0°) → 「-aVR」(+30°) → II(+60°) → aVF(+90°) → III(+120°) → 「-aVL」(+150°)「-aVR」と「-aVL」はそれぞれaVRとaVLを“真逆”(180°方向)にしたものです。見事に30°ずつ半周をカバーしており、それぞれの正反対を考えれば、実は円一周分“30°刻み”のアンテナが立っているわけです(図2)。(図2)肢誘導円座標とQRS電気軸偏位(再掲)画像を拡大する電気軸を求めるには、肢誘導の中で“(上下)トントン”に近いQRS波を探すのがミソでしたが、強いて言えばaVR(または-aVR)誘導でしょうか。それと直交方向で“右向き”(I誘導と反対)な「+120°」を選択するのが初心者にお勧めな方法です(“トントン法”)。レクチャーでは、もう少し細かい見方も紹介しました。この心電図(図1)では、I誘導と「-aVR」誘導の間で極性転換(下向き→上向き)を生じています。正味で見た方向はI:-4mm程度、-aVR:+4mm程度ですから、“トントン・ポイント”(TP)は両者の中間(+15°)あたりと予想され、上と同様に考え「+105°」と予想できれば一歩進歩でしょうか(自動診断では「107度」と表示されていました)。さらに、ボクの肉眼(フィーリング?)では、I誘導よりも「-aVR」誘導のほうがより“トントン”チックに見えるため、TPをそちら寄りの「+20°」と予想して、電気軸は「+110°」(これを選択肢としました)としてもOKではないでしょうか(“トントン法Neo”)。参考レクチャー:第9回、第11回【問題2】心電図(図1)に関するその他の所見として、正しいものをすべて選べ。1)時計回転2)反時計回転3)右房拡大4)左房拡大5)不完全右脚ブロック6)完全右脚ブロック7)完全左脚ブロック8)右室肥大9)左室肥大10)上肢電極の左右つけ間違え解答はこちら1)、5)、8)※3)を選んでも正解とする。解説はこちらこの問題が本題です。各々のYES・NOを判断してゆくのもいいですが、Dr.ヒロの心は一つ、 “系統的判読”をすることなので、選択肢がなくとも自分で所見を言えるようになりたいものです。1)と2)は「回転」についてです。単独のレクチャーでは解説していませんが、胸部誘導におけるR波の増高プロセスに関係します。通常、V1→V2→…→V5→V6にかけてR波が高くなり、S波が浅くなっていくのですが、今回はR波の成長が悪く、V5誘導の段階でも「R<S」となっていますから、1)「時計回転」のほうです。逆に2)は、V1とかV2でR波がどデカくなり過ぎな場合です。ただ、たとえそうでも、今回のように5)や8)があるような時は、そうは言いません。「心房拡大」はII(、III、aVF)とV1(V2)誘導の波形からチェックしますが、今回の左房は大丈夫そうです。「右房拡大」のほうは微妙。下壁誘導に関しては「2.5mm以上」なので満たしませんが、V1・V2誘導は“2±0.5mm”。本によって「1.5~2.5mm以上」とされており、V1誘導あたりは満たすかもしれません。後述するように「右室肥大」の心電図ですから、関連病態として3)を拾っていくのは悪くない姿勢だと思います(ただ、個人的には選ぶほどではないと思いますが)。この心電図のQRS幅はワイド(幅広)ではありませんので、7)、8)はNG。しかし、6)の「不完全右脚ブロック」ではありそうです(V2、V6誘導に着目)。これも右心系負荷の代表的所見ではあります。「心室肥大」について、今回の心電図から9)を疑う人はいないでしょう。もう一つの“まれなほう”の8)「右室肥大」であるかがポイントです。前問でまぁまぁ高度の「右軸偏位」がありましたので、「時計回転」などを見たら抱くべき疑問が『これって「右室肥大」かなぁ?』です。レクチャーではDr.ヒロ・オリジナルの診断フローチャートも提示しましたが、その時はじめに注意すべきが「脚ブロック」の有無でした。今回は「120ミリ秒(ms)以上」の“完全”レベルではないので、診断要件としたアイテムを使ってもらって大丈夫です。“見るな!”と言ったMilnor基準が、QRS幅が狭い(narrow)時とほぼ同じでしたね。V1誘導は“ノッチ”でギザついてますから、ボクが紹介したのはValencia基準で、「R'≧10mm」(通常の“7mm基準”の1.5倍[×1.5])でした。今回、これを満たすので、8)はYESです。心電図を勉強したての頃は、なかなかここまで考えが至らないかもしれませんが、「右室肥大」を疑う時に、“もしかして”と考えられるようになったら、ボクがレクチャーした甲斐があるというものです。最後の10)はオマケです。I誘導で陰性(下向き)QRS波を見た時、必ず鑑別に挙げるべきですが、P波・T波の極性から違うでしょう。参考レクチャー:第43回、第44回、第45回症例提示283歳、男性。一週間前から増悪傾向を示す左下肢脱力と構音障害のため来院。糖尿病および高血圧症にて内科フォロー中であった。血圧139/59mmHg、脈拍90/分・不整。患者コメント:「歩こうと思ったら歩けるけど、足の運びがしんどくてね。あとしゃべりがおかしいって家族の者に言われたな。あと食事でよくむせるんだ。」入院時に記録された心電図を示す(図3)。(図3)入院時の心電図画像を拡大する【問題3】心電図(図3)の肢誘導5拍目に関して、正しいものを1つ選べ。1)心房期外収縮、代償性休止期2)心房期外収縮、非代償性休止期3)房室接合部期外収縮、代償性休止期4)房室接合部期外収縮、非代償性休止期5)心室期外収縮、代償性休止期6)心室期外収縮、非代償性休止期解答はこちら5)解説はこちらこれは期外収縮の基本事項の復習です。普通に見たらQRS幅もワイドで洞収縮波形と似ても似つかぬ形状、そしてP波の先行もないようです。ですから、これは「心室期外収縮」(PVC)でいいですね。1)~4)の「心房」期外収縮(PAC)と「房室接合部」期外収縮(PJC)とは、まとめて「上室」期外収縮(“性”はつけない)と称されますが、QRS波形が洞収縮と類似していることが多いです。P波の先行の有無については、とくに前心拍のT波部分をほかと比べられるようになるといいですね。今回は「なし」で良いと思います。PVCだとわかったら、5)と6)の最終“ジャッジ”は「休止期」の様子で決めましょう。これは期外収縮により洞周期が影響を受けるかということです。(図4)のようにPVCを挟むP-P間隔が洞周期のピッタリ2個分であることが確認できたら、休止期は「代償性」であると言い、前症例でも述べたPVCの“上品さ”を表す特徴の一つです。Dr.ヒロ流では“ニバイニバーイの法則”というのでした。以上から、正解は5)ということになりますね。(図4)図3よりII誘導のみ抜粋画像を拡大する参考レクチャー:第21回【問題4】心電図(図3)の胸部誘導4拍目に関して、正しいものを1つ選べ。1)心房期外収縮、代償性休止期2)心房期外収縮、非代償性休止期3)房室接合部期外収縮、代償性休止期4)房室接合部期外収縮、非代償性休止期5)心室期外収縮、代償性休止期6)心室期外収縮、非代償性休止期解答はこちら2)解説はこちら前問に引き続き、期外収縮を扱います。あまり深く考えないと、QRS幅も狭く(正常)「心房期外収縮」(PAC)で、どうせ休止期は「非代償性」でしょ…と考えて、2)を選ぶ人が多いかもしれません。クイズ的にはそれで“正解”ですが、たとえばV1誘導を抜粋してみましょう(図5)。(図5)図3よりV1誘導のみ抜粋画像を拡大するQRS波形はほかの洞収縮波形とまったく同じですか?…違いますよね。V2誘導なども見ると、なーんか違う気もします。差はわずかですが、“その目”で見れば、QRS幅も若干ですが広く見えます。これはボクが無理矢理言っているのではありません。普段からこのような視点を持つべきなんです。ここをいい加減にしてしまうと、なかなか不整脈、心電図を見る目は育ちません。3)~6)のPVCやPJCも、まさかコレ? と、悩み鑑別しようとするクセをつけましょう。繰り返しますが、期外収縮を考える際は『線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね』ですよ。洞収縮波形との相同性やQRS幅は述べたので、残りは「先行P波の有無」と「休止期」です。これは“P波探し”にかかっています。V1とV6誘導とを並んで示します。(図6)図3よりV1、V6誘導のみ抜粋画像を拡大するこういう時のテッパンは、直前のT波に着目せよ! ずばりコレです。そこを網掛けで示しています。ほかの収縮波形に随伴するT波と比べてどうですか? V1-T波の頂上付近にある“ちょいギザ”、あるいはV6-T波はほかよりホッソリ尖って見えませんか? そう、これがP波です。これが真髄! ゴミの山からほんの少ーしだけ頭を出した“金塊”を見つけるような作業に慣れればこれが自然とできるようになり、そのアクションがアナタの診断力を変えます。レクチャーでも何度か登場し、Dr.ヒロの愛読書の著者でもある“達人”Dr. Marriottもこの操作を『Cherchez le P on let T』と表現しているそうです。日本語や英語では“T波の上のP波を探せ”(Search for the P on the T)ということですが、フランス語で聞くとオシャレな響きを感じます(笑)。一方の休止期に関しては、期外収縮の前後のP-P間隔を見ればいいので、洞収縮の連続する1~3拍目のP1-P3間隔、つまり洞周期の“2倍(ニバーイ)”と比較します。すると、「P1-P3>P3-P5」ですから、これは休止期が「非代償性」であることを示しています。「洞周期が“リセット”されている」というのも同義の表現ですので、この表現も確認しておきましょう。つまり、やや「心室内変行伝導」を疑う、変形のあるPACが正解です。参考レクチャー:第21回、第26回さて、前回とあわせて計10問の心電図クイズ、いかがだったでしょうか。既に50回近く講義していますので、すべて扱うだけの問題を用意することはできませんでしたが、良い復習になったのではないでしょうか。次回からは、このレクチャーも終盤戦に入ります。臨床的な重要性の高い冠動脈疾患について考えていこうと思います。では、また!【古都のこと~延暦寺:根本中堂】「世の中に山てふ山は多かれど、山とは比叡の御山(みやま)をぞいふ」天台宗座主を4度も務めた慈円*1はこう崇め詠みました。偉大さがストレートに伝わってきます。慈円曰く“日本一”の霊山、比叡山にある延暦寺について話しましょう。仏教各宗各派の祖師高僧を輩出した“母山”ですから、知らない人はいないでしょう。京都の秋をご紹介する時、個人的には外せません。京都に来て何度行ったことか。車のほか、バスやケーブル・ロープウェイで行くことができますよ。眼下に琵琶湖、京都市街まで一望できる最高のパノラマ・ビューを保証します。しかも空気も最高! 写真奥方の白壁の建物は根本中堂(国宝)です。平成28年から約10年かけての大改修真っ最中です。延暦寺は実に広いですから、本堂以外に、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、そして北方の横川(よかわ)まで相当の健脚でも一日で回れるか…。でも、拝観料が安く思えるほど、丸1日“大人の秋旅行”が楽しめます。令和3年は、最澄御遷化([ご]せんげ)1200年に当たる年。皆さん、ぜひとも秋とは言わずに訪れて欲しいです。なお、昼食は延暦寺会館で最高の眺望とともに比叡御膳(精進料理)をいただきました!*1:前大僧正(さきのだいそうじょう)慈円。小倉百人一首にも登場する。『おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖』(95番)。『愚管抄』の著者としても有名。』

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話がまとまったはずが…契約更新NGって何!?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第5回

第5回 話がまとまったはずが…契約更新NGって何!?漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継に当たって、重要になるのが不動産の位置付けです。売り手側の院長が不動産を所有しているケースは3割程度で、残り7割の方はテナント(賃貸)で診療所を運営しています。テナントの場合は、診療所の引き継ぎ時に不動産のオーナーに許可を得る必要があります。テナントの引き継ぎには大別して以下の3つのパターンが存在します。(1)そのまま契約を継続する(2)ゼロから契約する(3)名義変更が生じる(1)そのまま契約を継続する売り手の診療所が医療法人という形態で「法人」としてテナントを借りている場合には、そのまま契約を継続するケースが多くなります。賃貸条件を原則そのままで引き継ぐことができる反面、このタイミングでは敷金や保証金が貸主から返還されることはありません。(2)ゼロから契約する売り手の診療所が個人運営である場合には、基本的には、売り手の院長と不動産オーナーの契約が解消され、その後、最新化された賃貸条件で買い手が新規に契約を締結します。仲介した業者への手数料も発生します。(3)名義変更が生じる(2)のケースの例外として、売り手の診療所が個人運営である場合であっても、名義変更だけで賃貸借契約を継続できるパターンがあります。この場合、不動産オーナーから敷金・保証金が売り手の院長へ返還されるケースと、オーナーの希望で(手間を減らすために)買い手・売り手・オーナー間で返還請求権を移行する「3者間契約」を締結するケースがあります。今回、ヤギ先生(売り手)は、知り合いの院長から(3)のパターンを聞き、自分の診療所もこのパターンが当てはまるものと思ってしまい、トラブルになりました。後継者候補の先生からすると(2)のパターンでは想定よりも多くの費用(礼金や仲介費)がかかるため、「ほかの案件を探す」という判断も出てきます。ヤギ先生が賃貸借契約書を十分に確認しておけば防げたはずのトラブルです。売り手も買い手も、対象の診療所が(1)~(3)のどれに当たるのか、賃貸借契約書の内容を細かく確認する必要があります。契約書の内容は複雑な場合もあるので、医業承継コンサルタントなどに相談し、注意すべき特約事項がないかなども併せて確認することをお勧めします。

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テネット【なんで時間を考えるのが癒しになるの?(アクセプタンス&コミットメント・セラピー[ACT])】Part 1

今回のキーワードアクセプタンスマインドフルネスコミットメントブリーフセラピーお葬式のメタファー人生の価値皆さんは、時間を忘れるのが癒しだと思いますか?確かに、時間に追われて生活していればそう思うことはあるでしょう。ただ一方で、時間を考えるのが癒しになることもあります。どういうことでしょうか?この理由を説明するために、今回は、タイムトラベルをテーマにしたSF映画「テネット」をお送りします。そして、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT、アクト)という最新のセラピーを重ね合わせます。この記事で時間を考えることを、物理学的な娯楽としてだけでなく、心理学的な癒しとしても見つめ直してみましょう。なお、より良い理解のために、この記事の2ページ目にネタバレのコーナーも用意しています。これからこの映画を見る人は、2ページ目にご注意ください。 なんで時間を考えるのが癒しになるの?-ACTの要素主人公はもともとCIAのエージェント。この映画では名もなき男と呼ばれ、あえて名前が付けられていません。彼は、第三次世界大戦を防ぐために、なかば強引にテネットという組織のメンバーにさせられます。そして、協力者として現れたニールと一緒に任務を遂行することになります。実は、このニールこそが陰の主人公であることに、私たちは映画の最後で気付くことになります。ここから、ニールの2つのセリフをACTの2つの要素に重ね合わせ、時間を考えるのが癒しになる訳を考えてみましょう。(1)「起きたことが起きた」-過去と現在の受け入れ-アクセプタンス名もなき男とニールが黒幕に迫っていく中、時間が逆行する装置の存在により、時間を逆行する人が出現して混沌となります。この映像体験は、私たちの常識を吹き飛ばします。そんな中、ピンチになった時にニールは口癖のように「起きたことが起きた(起きたことは仕方ない)」と言い、淡々と自分にできることをするのです。これは、名もなき男が、テネットの研究所で逆行する銃弾を見せられ当惑した時、研究者に言われたセリフ「考えないで。感じて」にも通じます。1つ目は、過去と現在の受け入れです。自分がどんなにうまくいっていなくても、その自分自身を受け止めること、つまり良い悪いの価値判断を無意識にしていることに気付くことです。これは、ACTのアクセプタンスに重なります。私たちは、問題が起きると、その葛藤による苦しみをコントロールしようとします。もちろん、苦しみをコントロールできるなら、それはそれで良いでしょう。しかし、どうしてもコントロールできない時は、どうなるでしょうか? 苦しみをコントロールできないという新たな「苦しみ」が生まれてしまいます。つまり、苦しみから逃れられないと突き詰めて考えること自体でさらに苦しくなるということです。これは、コントロールするという手段にばかり気をとられて、目的を見失ってしまいます。「手段の目的化」というよくある心理です。たとえば、それは、がんや難病による疼痛、全身倦怠感、身体的不自由です。予期不安もそうです。これは、不安(パニック発作)がまた起きると考えて(予期して)、不安になることです(パニック障害)。また、障害のある子の養育、最愛の人との死別、夫婦関係や親子関係の葛藤なども当てはまります。新たな苦しみは、本来あるべき健康な状態が前提になっています。その前提は、私たちがとらわれている、こうあるべきという常識(主流秩序)です。その常識から外れてしまった自分の状態に苦しみ、絶望しているのです。よって、その常識そのものにまず気付き、そのままにする、つまり苦しみをコントロールしようと思わないようにすることです。そして、苦しみはあるものの、そのままの人生を生きていくことです。そのために、「その行動は、そうあるべきと思っているから?」と自分自身に問いかけ、義務感や体裁を生み出す常識(主流秩序)に自分がコントロールされていないかを確かめる必要があります。ACTのアクセプタンスとは、こうあるべきという心を萎ませることとも言えます。これは、マインドフルネスに重なります。この詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。なお、アクセプタンスは、支持療法の「受容」とはまったく意味合いが違う点にご注意ください。 (2)「運命。俺にとっては現実だよ」-未来への思い入れ-コミットメントニールが名もなき男に「運命。俺にとっては現実だよ」と悟ったように答えるシーンがあります。また、「俺がどんな人生を送ってきたか、この事件が終わって片付いたときに生きていたら、話してあげたいよ」と意味ありげに話してもいます。ニールは一体何者なのでしょうか?私たちが映画を見終わってからニールの正体に勘づいた時、その言葉の重みと彼の任務への思い入れの強さに打ちのめされます。これから彼を待ち受けている「現実」を知ってしまった私たちは切なくなりますが、それでも彼はその「現実」を生きる価値があると思ったのでしょう。2つ目は、未来への思い入れです。自分はどんなふうに人生を送りたいのかという人生の目標を掲げて目指すこと、つまり自分の人生の価値をはっきりさせ行動することです。これは、ACTのコミットメントに重なります。もちろん、衣食住が満たされればそれ以上求めないという人は、それはそれで良いでしょう。しかし、一方で、とくに先ほど触れたような苦しみがもともとある場合は、このコミットメントに意識を向けることで、苦しみにばかり意識が向かなくなり、苦しみに振り回されることが減っていき、アクセプタンスが進むでしょう。もちろん、アクセプタンスがもともとある程度進んでいることで、現在の苦しみから未来に目が向き、コミットメントがはっきりしてくるでしょう。このように、アクセプタンスとコミットメントは、相互作用します。それでは、以下のケースはどうでしょうか? 難病によって大好きだった野球ができない人生は終わりだと嘆くクライアントがいます。彼のコミットメントは、野球をすることでしょうか? すると、彼にはコミットメント自体がないことになるでしょうか? そんなことはないです。彼のコミットメントとして、野球そのものではなく、野球をすることで得られる価値を考えてもらうことができます。それは、チームプレイによる信頼感、野球のゲーム性の魅力、体を動かす喜びなどいろいろ考えられます。それをはっきりさせて、その価値に沿う新たな行動をしてもらうのです。たとえば、それは仕事仲間とのコミュニケーションを増やしたり、野球の観戦をしたり、難病に差し障らない運動をすることです。また、うつ病によって結婚できずに子どももいない人生は意味がないと嘆くクライアントがいます。彼女のコミットメントは、家庭生活を送ることでしょうか? すると、彼女にはもうコミットメントを見いだすことは難しいでしょうか? そんなことはないです。彼女のコミットメントとして、家庭生活そのものではなく、家庭生活で得られる価値を考えてもらうことができます。それは、支え合う安心感、お世話をする喜びなどが考えられます。それをはっきりさせて、その価値に沿う新たな行動をしてもらうのです。たとえば、それはピアサポート(自助グループ)に参加したり、シェアハウスに入居したり、趣味の仲間同士でつながったり、友人の相談に乗ったり、ペットを飼うことです。コミットメントは、「お葬式のメタファー」でイメージアップすることができます。まず、「もしも自分が今死んだとしたら、お葬式に誰が来る?」「その人たちは何て言う?」と考えます。次に、「何十年か生きたあとで死んだとしたら、誰に来てほしい? 何て言ってほしい?」とさらに考えます。この2つの質問の答えの違いから分かることは、自分は何(誰)を大切にしたいのか、そして自分はどうなりたいのかという人生の方向性です。これが、人生の価値です。それは、ゴールとして終わるものではなく、方向として果てしなく続くプロセスです。そして、またその方向のほとんどは、人とつながることです(向社会性)。その「人生の地平線」に向かって、自分が日々どう行動するかは自分自身が一番よく知っているというわけです。ちなみに、映画のラストで戦いが終わり、立ち去るニールが名もなき男に見送られるシーンは、この「お葬式のメタファー」を想起させます。ACTのコミットメントは、こうありたいという心を膨らませることとも言えます。これは、ブリーフセラビーの「北極星のメタファー」、対人関係療法の「重要な他者」、マズローの「自己実現欲求」に重なります。ブリーフセラピーの詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。また、自己実現欲求や人生の価値が向社会性である理由やその起源の詳細については、末尾の関連記事3をご参照ください。 癒しにならないクライエントは?ACTの要素にニールのセリフを重ね合わせて、ACTの意味や効果を説明しました。ACTの適応対象は、セラピーとして幅広いです。ただし、やはり万能ではありません。ここから、癒しにならない場合、つまり適応対象にならないクライエントのケースを挙げてみましょう。知的障害や認知機能低下(認知症)など考えることにそもそも限界がある(知的レベルが低い)何(誰)かを大切にしたいという発想がそもそもなく自己本位である(向社会性が低い)こうあるべき(主流秩序)を貫くことが自分の生き方(価値)であると確信している苦しみを表現して周りからの援助を引き出すことが本人の生き方(アイデンティティ)になっている(シックロール)時間を考えるとは?動物は、過去を振り返ることも未来を見通すこともなく、時間を考えることはありません。その瞬間を本能的に反射的に生きています。そして、苦しみがあっても、コントロールしようとはしないです。人間(人類)も、20万年前まではそうでした。しかし、20万年前から言葉を話すようになり、言葉によって世界を認識し、時間を認識し、世界をコントロールするようになりました。一方で、人間は、言葉に、自分が学習した善悪のイメージ(認知)を融合させてしまうようにもなりました(認知的フュージョン)。皮肉にも、その言葉によって、自分が思い浮かべた言葉のイメージに引っ張られる、つまり、逆にコントロールされてしまい、コントロールできなくなることに苦しむようにもなったのでした。たとえば、いきなり「自殺」という言葉を聞いたら、その瞬間、私たちは緊張が走ります。差別用語や放送禁止用語なら、なおさらでしょう。また、特定の言葉を聞いただけで、かつての嫌な記憶を思い出して苦しむことも当てはまります。ACTの核心は、まさにこの言葉とイメージの融合を分離して、言葉そのものに間合いをとることです(脱フュージョン)。たとえば、先ほどの「自殺」という言葉を「ジ・サ・ツ」と単調に繰り返し言い続けていると、逆にこの言葉の意味が分からなくなることに気付きます(意味の飽和)。このように、言葉の「魔力」の揺らぎを感覚的に理解することができます。言葉を俯瞰することが、アクセプタンスです。そして、時間を俯瞰することが、コミットメントとも言えます。私たちは苦しみにぞっとして絶望を抱くことも、その苦しみをそっとしておいて希望を抱くこともできます。そのどちらの「地平線」に向かうのか、向かいたいのかはやはり私たち次第であるということです。ニールたちは、時間を逆行しました。私たちは、時間を逆行することはできないですが、未来への視点(価値)を持ち、逆算して今どう行動すれば良いかを考えることができます。これこそが、時間を考えることと言えるのではないでしょうか? ■関連記事1.「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】2.東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】3.恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】1)テネット映画パンフレット:岩田康平、松竹株式会社、20202)マインドフルネスそしてACTへ:熊野宏昭、星和書店、20113)こころのりんしょうa・la・carte ACT:熊野宏昭ほか、星和書店、2009 2ページ目【ネタバレ】これからこの映画を見る人は、2ページ目はネタバレになりますので、ご注意ください。(1)ニールの正体は?(2)ニールのコミットメントは?(3)なんで戦いのラストシーンが「お葬式のメタファー」なの?次のページへ >>

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テネット【なんで時間を考えるのが癒しになるの?(アクセプタンス&コミットメント・セラピー[ACT])】Part 2

【ネタバレ】これからこの映画を見る人は、2ページ目はネタバレになりますので、ご注意ください。(1)ニールの正体は?ニールの正体は、キャットとセイターの息子、マックスであることが映画ではほのめかされています。それは、以下の4点です。ニールもマックスも金髪である点(身体的特徴)ニールはイギリス英語を話しており、マックスはロンドンの学校に通っている点(言語的特徴)セイターはウクライナ出身であり、ニールはウクライナ語が話せることが示唆されるシーンがある点(言語的特徴)ニールは、大学で物理学の修士号を取ったと言っている。また、未来で名もなき男(未来のテネット創設者)にリクルートされたと最後に打ち明けている。一方、名もなき男とキャットが結ばれることで、マックスと名もなき男が親子関係になることが推測される。よって、マックスが物理学に興味を持ち、大学で修士号を取っても不思議ではない点(学問的興味)。(2)ニールのコミットメントは?ニール(34才)とマックス(10才)が同一人物であると仮定すると、マックスが少なくとも大卒の22才の時点で、10才の時点に戻るために、12年間の逆行生活を送ったことが推測されます。途中で何度か順行生活の「休憩」を入れたとしても、それだけですさまじい人生です。そして、22才+12年間=34才になって、ニールと名乗り、「若い」育ての父親(名もなき男)に再会するのです。ニールのコミットメントは、育ての父親(名もなき男)を助け、さらには守り、世界を救うことであると言えます。再会シーンで、ニールは名もなき男の飲み物をオーダーする時、「ダイエットコークだよね」と父親の好きな飲み物をさりげなく言います。そして、任務を遂行する中、2人には親子愛のような友情のような不思議な関係性が見えてきます。また、キャットがセイターに撃たれて負傷した時、逆行状態の中で、ニールが献身的に看病していたのも、キャットが母親であるなら納得がいきます。ラストシーンで、プリアに殺される予定であったキャットとマックスは、機転を働かせた名もなき男によって密かに救われます。ニールが名もなき男を命がけで守ろうとするのは、父親が命の恩人であるからとも言えるでしょう。なお、セイターは、末期がんで死期が近いことを知って、世界を道連れにして死のうとします。彼は、コミットメントのかけらもない人間として対照的に描かれています。彼は、死のうとする直前、「私の最大の罪は、息子を生んだこと」と言います。息子を道連れにして死なすことではなく、生んだこと自体が罪であると表現するのは、彼の非情さをよく表しており、過去への逆行を駆使している彼ならではの発想のように思えます。また、自分の計画が、結果的に息子によって阻止されてしまうことを暗示しているようも思えます。(3)なんで戦いのラストシーンが「お葬式のメタファー」なの?名もなき男は、2回ほど赤いストラップの付いたカバンを背負う謎の防護服の男に救われます。その男は、2回目には死んでしまいました。名もなき男は、その赤いストラップがニールのカバンに付いていることに、戦いのラストシーンのニールとの別れ際で気付くのでした。ニールがこのあとに逆行して名もなき男への2回目の援護によって自己犠牲を遂げることを名もなき男はその瞬間に勘付くのです。これは、名もなき男と私たちの視点です。一方で、ニールの視点で考えてみましょう。父親(名もなき男)は、未来でテネットの創設者になり、息子(ニール)を現在に送り込むわけです。ここで、育ての親とは言え、自分の息子を死ぬと分かっていてそこまでするのかという疑問が残ります。これは、名もなき男がもともとどういう人物かを考えれば納得がいきます。それは、冒頭シーンで、名もなき男は拷問に耐えて仲間のために死を選ぶ生き方をしていることです。名もなき男のコミットメントは、世界を救うことであり、自己犠牲であることはすんなり理解できます。よって、それを息子に託すことも理解できます。きっと未来の名もなき男なら、死ぬ可能性が高いことも息子(ニール)に伝えているでしょう。だからこそ、現在にやってきたニールはあれほどまでにひょうひょうとしていて、運命を「現実」と言うのです。ニールと名もなき男の別れ際のラストシーン。ニールは、これから過去の名もなき男を守るために死ぬことを悟っています。ニールにとって、この時の名もなき男の眼差しは、すでにニールの心の中に内在化された未来の名もなき男の眼差しに重なっているでしょう。立ち去るニールの背中は、「見ててくれよ、父さん」と語っているように思えてきます。このニールの心理状態こそ、このシーンが「お葬式のメタファー」である理由と言えるでしょう。 << 前のページへ

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オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。 AURA3試験の対象は、EGFR-TKIによる1次治療中に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC成人患者。被験者は、オシメルチニブ群またはプラチナ+ペメトレキセド群(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド、3週ごと最大6サイクル)に、2対1の割合で無作為に割り付けられ追跡を受けた。 プラチナ+ペメトレキセド群では、盲検化独立中央評価によって病勢進行が確認された場合は、オシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。OSおよび安全性が副次評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・279例がオシメルチニブ群、140例がプラチナ+ペメトレキセド群(治療を受けたのは136例)に割り付けられた。・データカットオフ(2019年3月15日)時点での死亡は、オシメルチニブ群188例(67%)、プラチナ+ペメトレキセド群93例(66%)であった。・OS中央値は、オシメルチニブ群26.8ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群22.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.67~1.12、p=0.277)。・24ヵ月および36ヵ月の推定生存率(オシメルチニブ群 vs.プラチナ+ペメトレキセド群)は、それぞれ55% vs.43%、37% vs.30%であった。・クロスオーバー調整後のOSのHRは0.54(95%CI:0.18~1.6)であった。・最初の後治療または死亡までの期間は、オシメルチニブ群で有意に延長し、臨床的に意義のある利点が示された(HR:0.21、95%CI:0.16~0.28、p<0.001)。・データカットオフ時点では、プラチナ+ペメトレキセド群の73%(99/136例)がオシメルチニブ群にクロスオーバーしており、そのうち67%(66/99例)が死亡した。・主な治療関連有害事象は、オシメルチニブ群では下痢(32%、Grade3以上は1%)および発疹(32%、Grade3以上は<1%)、プラチナ+ペメトレキセド群では悪心(47%、Grade3以上は3%)であった。

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睡眠時間がうつ病やQOLに及ぼす影響~日本におけるインターネット調査

 日中の眠気や睡眠障害の有無で調整後の一般集団における睡眠時間とQOLまたはうつ病との関連を評価した研究は、これまでなかった。国立精神・神経医療研究センターの松井 健太郎氏らは、これらの関連を調査するため、Webベースの横断調査を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2020年10月15日号の報告。 対象は、20~69歳の8,698人。平日の睡眠時間、日中の眠気、睡眠障害、QOL、うつ病との関連を調査した。エプワース眠気尺度、ピッツバーグ睡眠質問票(睡眠時間の項なし)、健康関連QOL評価尺度SF-8、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・日中の眠気は、平日の睡眠時間が短くなるにつれ、増加傾向が認められた。・睡眠時間が7~8時間の人と比較し、睡眠時間が短い人および長い人では、睡眠障害、身体的および精神的QOL、CES-Dスコアの悪化が認められた。・階層的ロジスティック回帰分析では、日中の眠気と睡眠障害の有無で調整した後でも、睡眠時間が短い人では、身体的および精神的QOLの低下と有意な関連が認められた。・日中の眠気で調整した後、睡眠時間が短い人および長い人では、独立してうつ病との有意な関連が認められた。しかし、睡眠障害で調整した後では、統計学的に有意な関連は認められなかった。 著者らは「睡眠時間の短さは、身体的および精神的QOLの低下との関連が認められた。また、うつ病に及ぼす影響は、睡眠時間の短さよりも、特定の睡眠障害と関連している可能性が示唆された」としている。

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研修医の悩みに寄り添う本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第36回

【第36回】研修医の悩みに寄り添う本研修医時代ってめちゃくちゃ悩みますよね。医師になるぞ!と張り切って現場に出てきたのに、薬剤の商品名を覚ておらず怒られたり、うまく患者さんへの対応ができずに悩んだり、担当患者さんの死に直面して動転したり……。『みんな、かつては研修医だった。医師が答える医師たちの悩み』柳井 真知/著. 金芳堂. 2020年まず目次を見てください。みなさんが悩んでいること、悩んできたこと、なんとなく乗り切ってきたこと、いろいろな「医師としての悩み」が散りばめられています。「心に響いた本(や映画、ドラマ)から文章やセリフを拝借しながらお答えする」というのが面白い観点で、独特の言い回しが読者を飽きさせません。「研修医と名乗ることに不安があります。」あーー、あるある!私も研修医時代、内科ローテートをしているとき、「研修医の倉原です」ではなく「内科の倉原です」などと言っちゃって、背伸びをしたことがあります。後期研修医のときも、「研修医」とかそういう言葉をできるだけ出したくなかった記憶があります。ナメられたくないというか、なんだこいつペーペーかよって患者さんに思われたくなかった。幸いにも、研修医になったとき、26歳なのに「先生は医学部再受験生?と言われるくらい老け込んでいたので、患者さんに「研修医ですか?」と聞かれることはありませんでした。「患者さんにうまく病状説明ができません。」あーー、あるある!ヤバイ、ページをめくる手が止まらない。こんな目次ばっかですぜ。病状説明のノウハウ、今でも悩むことがありますよね。昔から「見て学ぶ」というのが慣例になっているのですが、病状説明が下手くそな指導医とそうでない指導医の差は、たとえ研修医であっても必ずわかるはずです。病状説明が上手な指導医の説明に、できるだけ同席することをオススメします。説明が上手でなくても、医学用語を使わない、説明文書を手紙にする、などの工夫ができるはずです。「看護師さんが指示を聞いてくれません。」あーーー、あるある!!!!と書いたら……病棟の看護師さんから怒られてしまうので、ここまでにしましょう。こういう若手医師特有の悩みを、悪魔的な説得力でやさしく回答してくれる本。眠れない当直の合間にこそ、読んでほしい。『みんな、かつては研修医だった。医師が答える医師たちの悩み』柳井 真知 /著出版社名金芳堂定価本体2,600円+税サイズA5判変型刊行年2020年

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