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オンライン服薬指導の実態 初診で麻薬のNG処方も【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第53回

2月末に発出された事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」により、いわゆるオンライン服薬指導が可能になってから半年が経過しました。4月には特例措置で初診でのオンライン診療が可能になるなど目まぐるしい変化がある日々でしたが、先日、4~6月のオンライン診療および服薬指導に関する運用実績が報告されました。厚生労働省は8月6日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえたオンライン診療・服薬指導に関する特例措置について、現在の運用実績を「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」に報告した。5~6月のオンライン服薬指導の件数は6万8,849件で、全体の0.51%となり、最大処方日数は22~30日が3万580件で最多となった。診療では、初診から麻薬、向精神薬を処方したケースが見られたものの、現在の感染状況を考慮し、特例措置を継続することを決めた。(2020年8月17日付 薬事日報)報告を見てみますと、オンライン診療の受診者の年齢は0~10歳が全体の約30%と最も多く、50歳以下が大多数を占めています。一方、61~70歳が約4%、71~80歳が約3%という結果でした。慢性疾患の症状が安定していて、感染リスクが高い高齢者ほど利用してほしいシステムですが、「オンライン」というものはやはり高齢者にはハードルが高いものなのだと実感しました。さらに、電話・情報通信機器による服薬指導の実施割合については、全処方箋枚数のうち、5月は0.61%、6月は0.37%で、その98%が過去にもその薬局を利用している患者さんでした。悩みのタネであった薬剤の配送方法については、配送業者を利用したケースが90%近くを占めていました。薬局の立地にもよりますが、薬剤師や薬局スタッフによる手渡しのリスクや手間を考えると、思い切って配送業者を利用するほうが感染リスクも抑えられて合理的だという判断なのでしょう。特例措置は当面継続特例措置では、初診において「麻薬および向精神薬の処方をしてはならない」と明記されていますが、麻薬および向精神薬が処方されている事例が18件報告されています。安全管理が必要な抗がん薬、免疫抑制薬などのいわゆる「ハイリスク薬」の処方については、診療録などにより当該患者の基礎疾患の情報を把握することが条件となっていましたが、これらの情報の把握ができないにもかかわらず処方されていたケースも確認されています。4月10日付事務連絡において、「原則として3か月ごとに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況や、本事務連絡による医療機関および薬局における対応の実用性と実効性確保の観点、医療安全等の観点から改善のために検証を行うこととする」とあり、上記のような特例措置の要件を順守しない処方については指導を行うよう都道府県に依頼したとあります。オンライン診療・服薬指導の特例措置は当面このまま継続されるようですが、3ヵ月後の11月ごろにまた継続するかどうかの判断が行われるはずですので、医療機関への受診を敬遠する患者さんであっても安心・安全に治療できるように体制を整えたいものです。

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第24回 COVID-19下水検査の本領発揮?/紫色光の制限で代謝活性が上がる可能性

COVID-19下水検査の本領発揮?糞便と共に排出された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAを下水から検出することを米国・アリゾナ大学は感染の早期発見の取り組みの一つとしており、先月8月末の同大学の発表によるとその試みは確かに有効なようです1,2)。先月、学生が入居してから数日後の同大学の寮の下水にSARS-CoV-2ウイルスRNAが含まれており、その寮の世話人と入居学生311人がすぐに検査されました。入居学生は入居前の検査で全員が感染していないことを確認済みでしたが、再検査の結果2人がウイルスを有しており、すぐに隔離されました。下水検査がなければ感染が検出される前にだいぶ広まっていたに違いなく、「もしその2人が発症するまで寮で過ごしていたらどれほどの人に感染が広まっていたか」と同大学再開の取り組みを指揮しているRichard Carmona医師は言っています。脳も光を感じる?~紫色光の制限で代謝活性が上がる可能性私達がものを見ることができるのは光を検出する網膜タンパク質・オプシンのおかげです。光を浴びてオプシンは神経細胞膜のイオンの往来を変え、最終的に視神経を活性化します3)。光を受け止めるのは網膜だけではありません。光が生み出す明暗周期は人の行動や生理を決定付けており、睡眠-覚醒周期を形作り、体温やエネルギー代謝の24時間変動を生み出します。去年10月に米国・オハイオ州シンシナティ小児病院(Cincinnati Children's Hospital)の研究者Richard Lang氏等が率いるチームはいくつかあるオプシンタンパク質の1つ・オプシン5(OPN5)が見ることとは程遠い組織・皮膚に存在し、マウス皮膚の周期的活動を明暗周期に同調させる働きを担うことを明らかにしました4,5)。眼以外のオプシンタンパク質が哺乳類の24時間周期を直接制御していることを示したのはその研究が初めてです。Lang氏等のチームによるOPN5の研究はさらに進展し、先週水曜日9月2日にNature誌に掲載された新たな研究の結果、マウス脳の視床下部視索前野(POA)という領域で発現するOPN5が紫色の光に応じて活性化して褐色脂肪組織(BAT)による発熱を減らす働きがあると判明しました6,7)。OPN5発現細胞があるPOAは脳の奥深くに存在しますが、紫色光は頭蓋を貫通してPOAまで到達することができます。脳からBATへと通じる交感神経系が分泌した神経伝達物質・ノルアドレナリンを受容してBATは熱を生み出し、紫色光でOPN5が活性化した神経はそのBAT活性化神経路を阻害するように働いて熱生成を減らします。ゆえにOPN5の遺伝子を欠くマウスはBATが活発で体温が高く、エネルギーをより消費し、体脂肪やコレステロールが少なく、寒さに強いという特徴を示しました。紫色光は頭蓋を貫通してOPN5発現POA神経まで届く事が確認されていますが、OPN5発現神経を直接活性化するかどうかはまだ分かっていません。また、マウスと同様にサルの視床下部にOPN5が存在することは分かっていますが、自然光がその領域まで達するのかどうかは分かっていません。今後の研究でそれが判明すれば人に役立つ応用技術の開発が大きく前進しそうです。これまでの研究によると、食べるのを明るい時間帯(日中)に限る日中限定食で糖尿病前駆患者のインスリンの効き具合い(感受性)が改善することが明らかになっています3)。インスリン感受性が改善すれば完全な糖尿病に至り難くなります。今回マウスで見つかった仕組みが人にも備わるなら、紫色光を制限してBATを活性化することで日中限定食の代謝改善を増強できるかもしれません。日中限定食と同様に、BATを活性化するβアゴニストは人のインスリン感受性を高め、血糖値を下げ、代謝を底上げします。βアゴニストの効果が紫色光を排除すると向上することが今回の研究で確認されており、紫色光の制限でβアゴニストの代謝改善効果の向上も期待できそうです。生き物は紫色光以外の光も代謝調節に利用しています。Lang氏等のチームが今年1月に発表したマウス研究によると糖や脂肪酸を燃やすBATとは対照的にエネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞ではオプシン3(OPN3)が発現しており、OPN3は紫色光ではなく青色光に反応して脂肪分解を促し、白色脂肪細胞から血中へ脂肪酸を放出させます8,9)。そしてOPN3はなんとBATでも発現しており、BATのOPN3は青色光ではなく赤色光に反応して糖の取り込みを増やし、POAのOPN5とは逆にBATでの熱生成を促します10)。普段の生活で何気なく浴びている色とりどりの光は脳や脂肪組織などに作用し、糖などのエネルギーの蓄えを調節する熱生成を加減する働きを担うようです。参考1)The University of Arizona says it caught a dorm’s covid-19 outbreak before it started. Its secret weapon: Poop / The Washington Post2)Poop tests stop COVID-19 outbreak at University of Arizona / Science3)Light-activated neurons deep in the brain control body heat / Nature4)Skin Keeps Time Independent of the Brain5)Buhr ED,et al. Curr Biol. 2019 Oct 21;29:3478-3487.6)Cincinnati Children's: This is Your Brain…on Sunlight / PRNewswire7)Zhang KX, et al. Nature. 2020 Sep 2. [Epub ahead of print]8)Nayak G,et al. Cell Rep. 2020 Jan 21;30:672-686.9)Fat Cells Can Sense Sunlight. Not Getting Enough Can Disrupt Metabolism10)Sato M, et al. PLoS Biol. 2020 Feb 10;18:e3000630.

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卵巣がん・卵管・腹膜治療ガイドライン 2020年版発刊

 日本婦人科腫瘍学会は、「卵巣がん・卵管・腹膜治療ガイドライン 2020年版」を8月31日に発刊した。5年ぶりの改訂となる2020年版には、妊孕性温存や漿液性卵管上皮内(STIC:Serous tubal intraepithelial carcinoma)、分子標的薬、PARP阻害薬などに関する新たな情報も追加され、手術療法、薬物療法のクリニカルクエスチョン(CQ)が大幅に更新された。そのほか、推奨の強さの表記は「推奨する」「提案する」に一新され、臨床現場ですぐに役立つ治療フローチャートや全45項のCQが収載されている。 三上 幹氏(日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会委員長)は本書の序文において、「日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会が2002年に設置され、初版の『卵巣がん治療ガイドライン2004年版』が発刊されて以降、子宮頸治療、外陰がん・膣がん治療など、さまざまなガイドラインが臨床の現場で活用されている。今回、『卵巣がん2015年版(第4版)』を5年の歳月を経て、名前を変更し『卵巣がん・卵管・腹膜治療ガイドライン2020年版(第5版)』の発刊に至った。最初のガイドライン発刊より16年が経過しており、とても感慨深く感じる」とコメント。 さらに、「今回の改訂では、“Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017”にできる限り準拠して行うことを目標にした。そのポイントは、(1)作成委員として医師以外に看護師、薬剤師、患者、一般の方(女性・男性)が参加、(2)CQにPICO形式*を導入したこと、(3)推奨グレード・エビデンスの表現法を変更したこと、(4)エビデンス総体の考え方を導入したこと、(5)参考文献は研究デザインで分類したこと、(6)一部のCQについてSystematic Reviewを施行したこと、(7)各CQ・推奨について投票を行い、合意率を推奨の後に記載したこと」と述べている。*:P(patient・対象となる患者集団)、 I(Intervention・治療や検査などの介入 )、C(Comparison・比較となる介入)、 O(Outcome・介入による影響) 主な記載内容は以下のとおり。フローチャート1:卵巣・卵管・腹膜の治療フローチャート2:再発卵巣・卵管・腹膜の治療フローチャート3:上皮性境界悪性卵巣腫瘍の治療フローチャート4:悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療フローチャート5:性索間質性腫瘍の治療本ガイドラインにおける基本事項I 進行期分類・第1章 ガイドライン総説・第2章 卵巣・卵管・腹膜・第3章 再発卵巣・卵管・腹膜・第4章 上皮性境界悪性腫瘍・第5章 胚細胞腫瘍・第6章 性索間質性腫瘍・第7章 資料集II 略語一覧III 日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会業績IV 既刊の序文・委員一覧

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レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症を鑑別する臨床病理学的特徴

 レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病認知症(PDD)は、臨床的および神経病理学的な特徴が重複している疾患であり、神経病理にはともに、DLBとアルツハイマー型認知症(AD)の病理学的特徴が含まれている。また、脳アミロイド血管症(CAA)はADでよくみられる所見であり、認知症との関連が知られている。英国・UCL Queen Square Institute of NeurologyのD. Hansen氏らは、DLBとPDDの臨床的および神経病理学的な違いについて調査を行った。Neuropathology and Applied Neurobiology誌オンライン版2020年7月27日号の報告。 Queen Square Brain Bank for Neurological disordersより得たPDD 50例、DLB 16例を分析した。運動および認知機能の包括的な臨床データは、医療記録より抽出した。神経病理学的評価には、CAA、DLB、ADの病理学的検査を含めた。 主な結果は以下のとおり。・CAAは、PDDよりもDLBで認められた(p=0.003)。・DLB は、PDDよりもCAAの重症度が高く(p=0.009)、頭頂葉(p=0.043)および後頭葉(p=0.008)のCAAスコアが有意に高かった。・最も高いCAAスコアは、APOEε4/4およびε2/4で観察された。・生存分布では、DLBはPDDよりも各臨床段階への進行が早く、予後が不良であった。・DLBにおけるジスキネジアの欠如は、レボドパの生涯累積用量がPDDと比較して有意に少ないことと関連していた。 著者らは「DLBとPDDは、顕著なCAA病理および各臨床段階への急速な進行により鑑別できる可能性があることが示唆された」としている。

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selpercatinib、RET融合遺伝子陽性NSCLCに有望/NEJM

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、selpercatinibは、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者と未治療の患者の双方において、頭蓋内の効果を含む持続的な有効性をもたらし、主な毒性作用は軽度であることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが実施した「LIBRETTO-001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月27日号に掲載された。RET融合遺伝子は、NSCLCの1~2%にみられるがんドライバー遺伝子で、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者は脳転移のリスクが高いとされる。selpercatinibは、新規のATP競合的で高選択性の低分子RETキナーゼ阻害薬であり、中枢神経系にも到達するよう設計されており、前臨床モデルでは脳内での抗腫瘍活性が確認されている。selpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験 本研究は、RET融合遺伝子陽性NSCLCの治療におけるselpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験であり、日本を含む12ヵ国65施設が参加した(Loxo Oncologyなどの助成による)。 対象は、年齢12歳以上(規制当局や施設内倫理委員会の許諾が得られない場合は18歳以上)のRET融合遺伝子陽性進行NSCLCで、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者、または未治療の患者であった。 第I相用量漸増試験では、20mg(1日1回)~240mg(1日2回)の範囲でselpercatinibが経口投与(カプセルまたは液剤)された。第II相試験では、推奨用量(160mg、1日2回)のselpercatinibが投与された。治療は、28日を1サイクルとし、病勢進行、死亡、許容できない毒性作用、同意の撤回のいずれかが起きるまで継続された。 主要評価項目は、独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目には、奏効期間、無増悪生存、安全性などが含まれた。selpercatinibの奏効割合は既治療例64%、未治療例85% 2017年5月~2018年12月の期間に、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のあるRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者105例(年齢中央値61歳、女性59%、前治療レジメン数中央値3[範囲1~15]、脳転移あり38例[36%])が登録された。また、2017年12月~2019年6月の期間に、未治療のRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者39例(年齢中央値61歳、女性56%、脳転移あり7例[18%])が登録された。 プラチナ製剤ベースレジメンによる既治療例のselpercatinibの奏効割合は64%(95%信頼区間[CI]:54~73)であり、このうちCRが2%、PRは62%であった。奏効期間中央値は17.5ヵ月(12.0~評価不能)であり、フォローアップ期間中央値12.1ヵ月の時点で、奏効例の63%で奏効が持続していた。また、フォローアップ期間中央値13.9ヵ月の時点で、無増悪生存期間中央値は16.5ヵ月(13.7~評価不能)であり、1年無増悪生存率は66%(55~74)だった。 また、既治療例のベースライン時に脳転移を認めた38例のうち、11例が測定可能病変を有しており、このうち91%(10/11例)が客観的頭蓋内奏効(CR:3例[27%]、PR:7例[64%])を達成し、中枢神経系の奏効期間中央値は10.1ヵ月だった。 一方、未治療の39例では、selpercatinibの奏効割合は85%(95%CI:70~94)であり、CRはなく、PRが85%であった。6ヵ月の時点で、奏効例の90%で奏効が持続していた。また、奏効期間中央値(フォローアップ期間中央値7.4ヵ月)および無増悪生存期間中央値(同9.2ヵ月)には未到達で、1年無増悪生存率は75%だった。 全体で最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、高血圧症(14%)、ALT値上昇(12%)、AST値上昇(10%)、低ナトリウム血症(6%)、リンパ球減少症(6%)であった。Grade5の有害事象が6件(4%)(敗血症が2例、心停止、多臓器不全症候群、肺炎、呼吸器不全が1例ずつ)認められた。これらのイベントは、担当医によりselpercatinibとは関連がないと判定された。 selpercatinibの投与を受けた531例のうち、薬剤関連有害事象により160例(30%)が減量し、12例(2%)が投与を中止した。 著者は、「selpercatinibは、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に迅速で持続的な抗腫瘍効果をもたらし、以前にマルチキナーゼ阻害薬で達成されたアウトカムよりも優れたことから、RET融合遺伝子は肺がんにおいて実質的かつ臨床的に使用可能なドライバー遺伝子として確立された」と指摘している。

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COVID-19診療の手引きの第3版を公開/厚生労働省

 9月4日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版」を公開した。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、随時最新の内容に更新されている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き第3版の改訂箇所 今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版の改訂では、日本小児科学会の協力を得て臨床像の更新を図ったほか、薬物療法では、最近有効性が確立したレムデシビルとデキサメタゾンの使用など中等症患者のマネジメントを修正した。 診療の手引き検討委員会では「依然COVID-19はパンデミックの状況にあるとしつつ、患者の発生にはいまだに地域差が大きい」と指摘。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きが「これまでと同様に活用され、患者の予後改善と流行制圧の一助となることに期待する」としている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き目次 第3版1 病原体・疫学 病原体/伝播様式/国内発生状況2 臨床像 臨床像/画像所見/重症化のリスク因子など3 症例定義・診断・届出 症例定義/病原体診断/血清診断/届出4 重症度分類とマネジメント 重症度分類/軽症/中等症/重症5 薬物療法 日本国内で承認されている医薬品/日本国内で入手できる薬剤の適応外使用6 院内感染対策 個人防護具/非常事態におけるN95マスクの例外的取扱い/非常事態におけるサー ジカルマスク、長袖ガウンなどの例外的取扱いなど7 退院基準・解除基準 退院基準/宿泊療養等の解除基準/生活指導

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今冬の発熱患者への対応はどうするか/厚生労働省

 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、9月4日に全国の保健所設置市衛生主管部などにあて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における季節インフルエンザ流行対策に関し「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」の通知を発出した。 COVID-19とインフルエンザは、症状について臨床的に鑑別することが困難であることが指摘され、とくに発熱患者への対策では地域の医療体制の構築が待たれていた。 今回、厚生労働省では「医療提供体制整備」に関し、発熱患者などの相談または診療・検査可能な医療機関として指定される医療機関については都道府県から厚生労働省へ報告を行うとし、「検査体制の整備」に関し、次のインフルエンザ流行を見据えた検査需要、検査体制、検査(分析)能力などを都道府県毎に計画をするとしている。さらに、発熱患者などの診療または検査可能な医療機関として指定される医療機関に対する個人防護具(PPE)の配布支援を実施する必要があることから、都道府県ごとの必要物資数などにつき、都道府県から厚生労働省へ報告を明記している。詳細は、今後連絡する予定。体制整備は都道府県ごとに実施 インフルエンザ流行に備えた体制整備は、都道府県が主体となって推進し、達成することを基本とし、都道府県は、本通知による次のインフルエンザ流行に備えた体制整備を進め、10月中を目処に体制整備を完了すること。体制整備を進めるに当たっては、新型コロナウイルス感染症対策を協議する協議会などを定期的に開催し、関係者と協議することとしている。発熱患者を地域でどのように診るか 体制整備の方向性として、発熱患者の相談・受診について地域のかかりつけ医の役割に期待が示されている。また、従来COVID-19疑いの発熱患者などからのアプローチを担ってきた「帰国者・接触者相談センター」が、都道府県ごとに「受診・相談センター(仮称)」へと変更され、発熱などの症状のある患者から相談があった場合、最寄りの適切な医療機関の案内や必要に応じて受診調整を行うことが記載されている。そして、発熱患者などを診察する体制をさらに整備していくため、電話・オンライン診療によって発熱患者などを診療する体制も検討することとされている。なお、医療機関においては、院内感染防止のため、患者が医療機関と受診時間や受診方法などを事前に調整した上で、受診することが重要とされ、そのため都道府県などや医療機関は、発熱などを伴う患者の受診の際は事前に電話予約の上で受診することを徹底するよう、広く住民に周知することとしている。 医療機関が行う感染対策としては、駐車場で患者が自家用車などに乗ったままの状態やプレハブや簡易テントを設置しての診療や検査の実施が提案されている。また、こうした対応ができない場合は、時間指定での発熱など疑い患者の診察(その場合、地域の診療所などと時間帯を分担することが望ましい)、輪番制による曜日単位などで患者の診察をする医療機関を設定することなどが提案されている。 これらの他にも新しい生活様式下での三密の回避やインフルエンザのワクチン接種の励行も明記されている。

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第22回 希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制

<先週の動き>1.希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制2.季節性インフルエンザ、疑い例をかかりつけ医で診療できる体制作りへ3.新型コロナウイルス感染拡大による病床稼働率低下の実態4.厚生労働事務次官に旧・厚生省出身の樽見 英樹氏が就任5.新型コロナによる診療報酬上の臨時的対応で、病院の実績要件など緩和1.希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制現在、国内外で研究が進められている新型コロナウイルスワクチンだが、内閣府は8日、7,000億円超の予備支出について閣議決定した。ワクチン購入費として充てる見込み。ワクチンの優先接種については、1)新型コロナ患者に直接対応する医療従事者、2)重症化リスクの高い65歳以上の高齢者および基礎疾患がある人を接種順位上位に位置付けている。ゆくゆくは希望者全員に無料で接種できるようにする案を検討。実施主体は市町村で、費用は全額国が負担する方針。また、重篤な副反応による健康被害などが生じた場合、健康被害救済を目的とした新たな立法措置を検討している。(参考)新型コロナウイルス感染症対策分科会(第8回)議事次第(内閣府)コロナワクチン、希望者全員無料に 政府検討(日本経済新聞)2.季節性インフルエンザ、疑い例をかかりつけ医で診療できる体制作りへ厚生労働省は4日、都道府県に対して事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」を発出した。季節性インフルエンザは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別が困難であり、インフルエンザ流行時期に備えた体制整備を行う必要がある。各都道府県に対して、発熱患者などが帰国者・接触者相談センターを介することなく、かかりつけ医などの身近な医療機関に相談・受診し、必要に応じて検査を受けられる体制について、10月中を目途に整備することを求めている。(参考)次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について(厚労省)3.新型コロナウイルス感染拡大による病床稼働率低下の実態厚労省は4日に今年度5月分の病院報告を発表した。報告によると、2020年3月から5月にかけて、病院の1日平均外来患者数並びに1日平均在院患者数が減少し続けていた。一般病床、介護病床をはじめ、感染病床を除くすべての病床で平均在院日数が延長していることが明らかとなった。(参考)病院報告(令和2年5月分概数)結果の概要(厚労省)4.厚生労働事務次官に旧・厚生省出身の樽見 英樹氏が就任厚労省は4日、鈴木 俊彦事務次官の退任と後任人事を発表した。新しく厚生労働事務次官に就任するのは樽見 英樹新型コロナウイルス感染症対策推進室長。今回の次官人事により、4代続けて旧・厚生省出身の官僚が就任することとなった。樽見氏の後任には吉田 学氏が就任する。通常の定期異動時期は7月であり、9月に厚労省の次官人事がずれ込んだのは新型コロナウイルス感染拡大のためで、ようやく発令となったと考えられる。(参考)厚労次官に樽見氏(時事通信)5.新型コロナによる診療報酬上の臨時的対応で、病院の実績要件など緩和厚労省は8月31日付けで、事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)」を都道府県などに発出した。今回の新型コロナウイルス感染拡大によって、診療実績などの要件が満たせなくなった場合について、新たな解釈を発表。COVID-19患者などを受け入れた医療機関では、平均在院日数、重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率および医療区分2または3の患者割合などについて、当該要件を満たさなくなった場合においても、ただちに施設基準の変更届出を行わなくてもよいなど、現場の声を反映したもの。加算要件に必要な研修会についても、実施予定を示すことで、新型コロナの影響により開催されなかったとしても、届出は可能であるとしている。(参考)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)(厚労省)

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イベント不明を伴うメタアナリシスではIMORによる感度分析をすべきだろう(解説:折笠秀樹氏)-1282

 メタアナリシスをしようとすると、関連する臨床研究を検索し、各研究からイベント有無の数値を拾い出します。イベント有無の人数に加えて、イベント不明(欠損)が含まれていることがあります。1年内のイベントの有無を数えるとき、中途脱落例ではイベントの有無は不明となってしまいます。このイベント不明を「有」にするのか、「無」にするのか、それとも除外してしまうのか、迷うわけです。100件のメタアナリシス論文を見ると、「有」としたのが2%、「無」としたのが3%、除外したのが3%、残りの93%は不明でした。欠損があるとき、いろいろな埋め合わせを試してみて、結論の安定性を確かめるのが基本です。感度分析と言います。実際にはいろいろな埋め合わせはしてなかったわけですが、著者らはそれを試したのです。なお、「埋め合わせ」は通常語であり、統計用語は「補完」です。 100件のメタアナリシス論文は、すべて統計学的有意差がありました。これらに対して、9通りの埋め合わせを試しました。Best caseではイベント不明をすべて「無」に、Worst caseではすべて「有」としました。Best caseでは結果はさらに有意の方向へ、Worst caseでは非有意の方向へ動きます。それ以外に、イベントを有か無にする比を1.5:1、2:1、3:1、5:1とする埋め合わせも試しました。この比のことを、IMOR(Informative Missingness Odds Ratio)と呼びます。5:1とは何か。イベント不明があったら、「有」にするか「無」にするかの比を5:1にすることです。「有」と「無」の相反するものの比、それはオッズ比と言います。5:1では「有」にする確率が高いので、Worst caseに近いと言えます。逆に、1.5:1だとBest case寄りのわけです。1:1だと「有」にするか「無」にするかは五分五分なので、除外するのと同じになります。これらの欠損値埋め合わせオプションは、汎用ソフトである「Stata」に搭載されているようです。 結果ですが、IMORによる欠損値埋め合わせをすることによって、非有意方向へ変わるのが80%以上ありました。実際に非有意へ変わってしまった割合も、6%(IMOR=1.5:1)~22%(IMOR=5:1)ありました。これは大問題です。メタアナリシス研究の22%は誤りだったかもしれないのです。有意差というのが誤りであれば、読者にバイアスを与えていたことになります。イベント不明を伴うメタアナリシスでは、IMORなどによる感度分析をすべきと言えるでしょう。

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事例009 同一日院内処方 + 院外処方の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例の患者は、熱発をみとめ、早朝時間外の救急外来を受診し、いったん帰宅。同日の時間内に再受診をしていました。時間外では院内調剤にて1日分の処方があり、時間内では院外処方箋にて時間外と同一薬剤を4日分投与されていました。このうち、院内調剤に係る手技料一式が事由B「医学的に過剰・重複と認められるものをさす」の「重複」として査定になったものです。院外処方箋の発行と院内調剤の同時併用、または同日併用は、2以上の診療科で異なる医師が処方した場合を除き、原則算定は認められません。やむを得ない場合には、その理由と日付をレセプトに補記して併用することができます。この場合は、院外薬局との関連性を明確にするため、院外処方箋を優先させて算定します。なぜならば、処方箋料には調剤料、処方料、調剤技術基本料が含まれており、重複算定はできないとされているからです。したがって、同日の院内調剤分の薬剤料のみを算定します。今回は、救急診療科と内科の両受診であったことで、異なる診療科であれば両方が算定できるものとして保険請求されたものです。しかしながら、病名が同じであり、処方内容に同一薬剤が含まれていたために、一連の診療とみなされて査定されたものと考えられます。レセプトチェックシステムのアラートに見直しをかけて防止策としています。

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ALK陽性肺がん、アレクチニブ1次治療の5年生存は6割超(ALEX)/Ann Oncol

 未治療進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とする、アレクチニブとクリゾチニブの有効性を比較した「ALEX試験」の最終解析結果が、中国・香港中文大学のT. Mok氏らにより報告された。同試験については、初回データカットオフ(2017年2月9日)時点で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されていた。Annals of Oncology誌2020年8月31日号掲載の報告。 研究グループは、未治療のIII/IV期ALK陽性NSCLC患者を、アレクチニブ群(1回600mg、1日2回経口投与、152例)またはクリゾチニブ群(1回250mg、1日2回経口投与、151例)に無作為に割り付け、病勢進行、毒性発現、同意撤回または死亡まで投与を継続した。 主要評価項目は治験参加医師の評価によるPFS、副次評価項目は奏効率、全生存期間(OS)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・治験参加医師の評価によるPFSの中央値は、アレクチニブ群34.8ヵ月、クリゾチニブ群10.9ヵ月と、アレクチニブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~0.58)。・追跡期間中央値は、アレクチニブ群48.2ヵ月、クリゾチニブ群23.3ヵ月。OSイベントの発生が37%の時点でのOS中央値は、アレクチニブ群が未達、クリゾチニブ群は57.4ヵ月であった(層別化HR:0.67、95%CI:0.46~0.98)。・5年OS率は、アレクチニブ群62.5%、クリゾチニブ群45.5%であり、それぞれ34.9%、8.6%の患者が治療を継続していた。・OSに対するアレクチニブのベネフィットは、ベースラインで中枢神経系転移を有する患者(HR:0.58、95%CI:0.34~1.00)でも有していない患者(HR:0.76、95%CI:0.45~1.26)でも認められた。・治療期間中央値は、アレクチニブ群が長かった(28.1ヵ月 vs.10.8ヵ月)。・安全性に関する新たな所見は観察されなかった。

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COVID-19での嗅覚・味覚障害、アジア人と白人で3倍の差:メタ解析

 新型コロナウイルス陽性例ではかなりの割合で嗅覚・味覚障害が認められる。しかし、発現率は報告によって大きく異なり、その理由は不明である。米国・ネバダ大学リノ校のChristopher S. von Bartheld氏らは、系統的レビューとメタ解析を実施し、嗅覚・味覚障害の有病率について統合解析を行ったところ、白人がアジア人の3倍高いことがわかった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2020年9月1日号に掲載。COVID-19の嗅覚・味覚障害の有病率は白人54.8%、アジア人17.7% 著者らは、米国国立衛生研究所のCOVID-19ポートフォリオを検索し、COVID-19患者の嗅覚・味覚障害の有病率を報告した研究を調査した。3万8,198例を含む104件の研究を適格と判断し、系統的レビューとメタ解析を行った結果、推定ランダム有病率は、嗅覚障害が43.0%、味覚障害が44.6%、全体で47.4%であった。 また、年齢、性別、疾患重症度、人種による嗅覚・味覚障害の有病率への影響を調べたところ、高齢者、男性、重症者(入院患者)で有病率が低かった。人種による差が最も大きく、白人(54.8%)がアジア人(17.7%)の3倍であった。 著者らは、ウイルス変異株(D614G)では感染力が異なる可能性のほか、宿主側ではウイルス結合侵入蛋白の人種別の変異株が嗅上皮および味蕾へのウイルス侵入を促進する可能性を挙げ、「どちらもCOVID-19パンデミックにおけるウイルス感染力、診断、管理に大きな影響を与える」としている。

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気分変調症とうつ病を合併した患者に対する治療~メタ解析

 うつ病と気分変調症を合併した二重うつ病(Double depression:DD)は、あまり知られておらず研究も少ないが、臨床においてうつ病患者の間に広がっている。そのため、DDに対する治療の有効性を把握することは重要である。米国・ノートルダム大学のDavid G. May氏らは、DDに対する治療の有効性を明らかにするため、メタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2020年7月8日号の報告。 抗うつ薬を使用したうつ病治療に関する研究のメタ解析を実施した。データベースをシステマティックに検索し、選択基準を満たす11研究、775例の患者を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・薬物療法前後での抑うつ症状の差を示す全体的なエフェクトサイズは1.81(95%CI:1.47~2.16)であり、治療後にうつ病患者の抑うつ症状は有意な軽減が認められた。・調整分析では、集団サンプル内のDDの割合が高いほど、エフェクトサイズは小さかった。・本結果に、出版バイアスの影響は認められなかった。・不均一性が高いため、エフェクトサイズの変動性が示唆された。・関連データの不足により、治療結果に対する潜在的なモデレーターは解明できなかった。 著者らは「DDの治療に薬物療法は有効であると考えられるが、うつ病または気分変調症単独の患者と比較し、治療が困難な場合がある。確実な結論を導き出すためには、DDの治療に焦点を当てた大規模なランダム化対照研究が必要とされる」としている。

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乳がんに対するsiRNA核酸医薬候補、医師主導治験開始/がん研有明病院

 がん研究会有明病院は9月2日、東京大学医科学研究所らと共同研究を進めてきたsiRNA核酸医薬候補の乳がん治療薬(SRN-14/GL2-800)を用いて、医師主導治験(First In Human 試験)を開始したことを発表した。 SRN-14/GL2-800は、幹細胞関連転写因子であるPR domain containing 14 (PRDM14)分子に対する、キメラ型siRNAとそのナノキャリアーから構成される化合物。川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)、東京大学、東京大学医科学研究所が共同で開発した。 治療標的となるPRDM14分子は、人体のほぼすべての正常組織では発現がないことから、その発現を押さえても副作用が少ないと考えられる。一方で、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を含む乳がんの症例の半数以上で発現が高いことが明らかになっている。腫瘍組織以外では、胚性幹細胞と原始生殖細胞に一過性に発現することが知られている。PRDM14 分子は細胞の核で発現する分子であることから、これを標的とする低分子化合物や抗体の開発は極めて難しく、遺伝子配列情報から開発が可能な核酸医薬品の開発が行われた経緯がある。 キメラ型siRNAとは、siRNA がRISC複合体上で mRNA と対合する際に最重要なシード配列に相当する部分を DNA に置換したsiRNA であり、siRNA とノックダウン効果が同等であることが証明されている。RNase に対する耐性が高く血清中で安定であり、免疫応答誘導性が低く、保護基を必要としないため代謝産物が生命体由来のものとなる。 SRN-14 は、特許出願技術であるsiRNA 配列探索プログラム1)を基盤に治療用配列を選定した、極めて標的分子に対する特異性が高い siRNA。核酸ナノキャリアーである、分岐型 PEG-ポリオルニチンブロックポリマー(GL2-800)は、核酸と単分散(均一の粒形分布)を示す安定な複合体を形成し、高い安全性、優れた血中滞留性とがん組織への高い集積性を示す2)。事前に実施された非臨床試験において、TNBC に由来する乳がん細胞を用いた同所移植モデル、肺転移モデルを作成し、治験薬である SRN-14/GL2-800 を静脈注射で投与したところ、乳がん細胞で形成される腫瘍サイズの縮小、および肺の転移巣形成の抑制が認められた。さらに、毒性試験において重篤な有害事象は見られなかった3,4)。 本治験は、SRN-14/GL2-800 を、ヒトに対して初めて投与する医師主導治験(第I相)で、治癒的切除不能または遠隔転移を有する再発乳がんで化学療法の全身投与適応となる患者に対して用量漸増法で行われる。主要評価項目である安全性、SRN-14/GL2-800 投与後の薬物動態の確認の他、副次的に SRN14/GL2-800 の薬効についても検討を行う予定となっている。

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高リスク喘息児、ビタミンD3補充は有益か/JAMA

 喘息を有するビタミンD値が低い小児において、ビタミンD3補充はプラセボと比較して重度の喘息増悪発生までの期間を有意に改善しないことが、米国・ピッツバーグ小児病院のErick Forno氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VDKA試験」の結果、示された。重度の喘息増悪は、重大な病的状態を引き起こし大幅なコスト増を招く。これまで、ビタミンD3補充が小児の重度の喘息増悪を低減するかは明らかになっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「所見は、今回の試験対象患児集団については、重度の喘息増悪の予防療法としてのビタミンD3補充を支持しないものだった」とまとめている。JAMA誌2020年8月25日号掲載の報告。血中ビタミンD値30ng/mLの喘息児を対象にプラセボ対照無作為化試験 VDKA(Vitamin D to Prevent Severe Asthma Exacerbations)試験は、6~16歳で低用量吸入コルチコステロイドを服用し、血漿中25-ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満の、高リスクの喘息患児を対象とした。 米国7医療センターで参加者を募り、48週間のビタミンD3(4,000 IU/日)またはプラセボを受ける群に無作為に割り付け追跡評価した。なお、フルチカゾンプロピオン酸の服用は、176μg/日(6~11歳)、または220μg/日(12~16歳)にて継続された。 主要アウトカムは、重度の喘息増悪発生までの期間であった。副次アウトカムは、ウイルス誘発性重度増悪発生までの期間、吸入コルチコステロイドの服用量が試験期間中に半減した参加者の割合、試験期間中のフルチカゾン累積服用量などであった。 参加者の登録は2016年2月に開始。参加者数は400例を目標としたが、早期に無益性が明らかになり試験は2019年3月に中止となった。フォローアップの終了は2019年9月であった。重度増悪の頻度、発生までの期間ともにプラセボと有意差なし 合計192例(平均年齢9.8歳、女児77例[40%])がビタミンD3群(96例)またはプラセボ群(96例)に無作為に割り付けられ、そのうち180例(93.8%)が試験を完遂した。 ビタミンD3群は36例(37.5%)、プラセボ群は33例(34.4%)が、1回以上の重度増悪を呈した。プラセボ群と比較してビタミンD3群の、重度増悪までの期間は有意に改善しなかった。増悪までの平均期間は、ビタミンD3群240日、プラセボ群253日であった(平均群間差:-13.1日[95%信頼区間[CI]:-42.6~16.4]、補正後ハザード比[HR]:1.13[95%CI:0.69~1.85]、p=0.63)。 同様に、ビタミンD3群はプラセボ群と比較して、ウイルス誘発性重度増悪発生までの期間、試験期間中に吸入コルチコステロイドの服用量が減じた参加者の割合、またはフルチカゾン累積服用量についても、有意な改善は認められなかった。 重篤な有害事象の発生も両群で類似していた(ビタミンD3群11例、プラセボ群9例)。

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selpercatinib、RET変異甲状腺髄様がんに有効な可能性/NEJM

 RET変異を有する甲状腺髄様がんの治療において、selpercatinibは、バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わず持続的な有効性をもたらし、主な毒性作用は軽度であり、既治療のRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんでも同様の抗腫瘍活性を発揮することが、米国・マサチューセッツ総合病院のLori J. Wirth氏らが実施した「LIBRETTO-001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月27日号に掲載された。RET変異は、甲状腺髄様がんの70%に生じており、他の甲状腺がんでRET融合遺伝子が発現することはまれだという。selpercatinibは、新規のATP競合的で高選択性の低分子RETキナーゼ阻害薬。実験モデルでは、V804残基における後天的ゲートキーパー抵抗性突然変異を含む多様なRET変異に対してナノモル濃度で効果を発揮し、脳内での抗腫瘍活性も確認されている。甲状腺髄様がんと甲状腺がんの第I/II相試験 研究グループは、RET変異陽性甲状腺がんの治療におけるselpercatinibの安全性と有効性を検討する第I/II相試験を行った(Loxo Oncologyなどの助成による)。 対象は、12歳以上(規制当局の許諾が得られない場合は18歳以上)で、バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わずRET変異遺伝子を有する甲状腺髄様がんと、これらの薬剤による治療歴のない既治療のRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんの患者であった。 第I相用量漸増試験では、selpercatinibが20mg(1日1回)~240mg(1日2回)の範囲で、経口投与(カプセルまたは液剤)された。第II相試験では、推奨用量(160mg、1日2回)が投与された。治療は、28日を1サイクルとし、病勢進行、死亡、許容できない毒性作用の発現、同意の撤回があるまで継続された。 主要エンドポイントは、独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次エンドポイントは、奏効期間、無増悪生存、安全性などであった。髄様がんの約7割で奏効、1年無増悪生存率8~9割 2017年5月~2019年6月の期間に、12ヵ国65施設で162例が登録された。バンデタニブまたはカボザンチニブあるいはその両方による治療歴のあるRET変異甲状腺髄様がん患者が55例(A群:年齢中央値57歳、男性36例)、これらの薬剤による治療歴のないRET変異甲状腺髄様がん患者が88例(B群:58歳、58例)、これらの薬剤による治療歴のない既治療のRET融合遺伝子陽性甲状腺がん患者が19例(C群:54歳、9例)であった。 A群は、奏効割合が69%(95%信頼区間[CI]:55~81)で、このうちCRが9%、PRが60%であった。奏効期間中央値は評価不能(95%CI:19.1~評価不能)で、1年無増悪生存率は82%(69~90)だった。 B群は、奏効割合が73%(95%CI:62~82)で、CRが11%、PRは61%であった。奏効期間中央値は22.0ヵ月(評価不能~評価不能)で、1年無増悪生存率は92%(82~97)だった。 C群は、奏効割合79%(95%CI:54~94)、CR 5%、PR 74%で、奏効期間中央値18.4ヵ月(7.6~評価不能)であり、1年無増悪生存率は64%(37~82)だった。 全体で最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、高血圧(21%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇(11%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇(9%)、低ナトリウム血症(8%)、下痢(6%)であった。Grade5の有害事象は5件(喀血、出血、敗血症、心停止、心不全[各1例])認められた。 selpercatinibの投与を受けた全531例のうち、160例(30%)が治療関連有害事象のため減量し、12例(2%)が投与を中止した。 著者は、「RETの阻害から利益を得る可能性のある非家族性の甲状腺髄様がん患者を特定するには、生殖細胞性または体細胞性のRET変異を有する患者に対する効果的な分子スクリーニング戦略の実施が不可欠だろう」としている。

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新型コロナワクチンAZD1222、日本での第I/II相臨床試験を開始/アストラゼネカ

 9月4日、アストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンAZD1222の日本国内における第I/II相臨床試験を開始したことを発表した。国内の複数の施設で18歳以上の被験者約250名を対象に実施し、日本人に接種した際の安全性と有効性を評価していく。 AZD1222は、アストラゼネカと英オックスフォード大学と共に開発を進めており、世界各国で治験を行っている。現在、南アフリカで第I/II相試験、英国で第II/III相試験、ブラジル・米国で第III相試験を実施している。

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Digital Medicineの世紀:Apple Watchによる心房細動の検出(解説:香坂俊氏)-1279

自分は腕時計をしない。手洗いのときに邪魔だからとか、腕が片方だけ重いからとか、病院からプレゼントされるガラケーで時間を見られるからとかいろいろと理由はあるのだが、実は必ずどこかに忘れてきてしまうから、というのがその最大の理由である(ガラケーやスマホもよく忘れるが、こちらはなんとか追跡できる)。しかし、そんな自分でも最近のスマートウォッチの動向には興味を持っている。たとえばApple Watchには、Steve Jobsの意向を受けて脈拍計や心電計が装備されており、これが循環器領域でどのように活用されていくのか非常に興味を引くところである。とくに、こうしたデジタルヘルスケアデータは随時更新され続けるため、1回で終わってしまう外来での検査や診察室でのバイタルチェックと異なり、蓄積されるデータ量が根本的に異なる。こうしたことを踏まえ、最近米国で、Apple Watchの検出する不規則脈波と心房細動の一致を検討した大規模臨床研究Apple Heart Studyが行われた(スマートウォッチ活用、心房細動の陽性適中率は84%/NEJM)。この研究では、Apple Watchが心臓のリズムに異常を検出すると通知が表示され、動画での相談の後、携帯型心電図パッチによる継続検査を受けるというプロトコールで運用がなされた。実に40万人以上がこの研究に登録を行い、このうち心臓のリズム異常の通知を受信したのは参加者の0.5%であった(Apple Watchを利用するユーザーは比較的健康だった?)。しかし、特筆すべきはその精度であり、アプリから通知を受けたユーザーの34%が実際に心房細動であると診断された。この数値が高いか低いかというところは議論が残るところかと思われるが、自分は一度も医療機関を受診せずにこれだけの新規心房細動を検出できるというのは特筆すべきことであるように思う(Apple Heart Studyはアプリ上で同意を取得し、そのまま研究に参加となり、心臓のリズムに異常が検出されたときのみ正規の心電図検査をうけるため医療機関の受診を促される)。さらに言うならば、この電子的な介入での有害事象は0であった。今後こうしたデジタルデバイスは、個々の行動データ(歩行パターンや睡眠サイクルなど)とも連動し、医療の現場においてもさまざまな役割を果たしていくものと思われる。スマートウォッチには心拍変動も保存されており、1拍ごとの脈拍を十分な時間分解能で記録し続けられれば、自律神経の評価なども可能になるであろう。本研究はそのはしりとなるものと考えられる。

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第22回 急転直下の安倍首相辞任-振り返れば“異変”はアノ時からだった

先週の本コラムで、私の脳内で展開する『世界びっくり人間コンテスト』の対象者の一人として取り上げた安倍首相が、コラム公開前日の8月27日夕刻から始まった記者会見で突如辞任を表明した。会見では持病の潰瘍性大腸炎の悪化がその理由だと説明された。私も一応職歴26年のニュース屋の端くれであり、この会見が決まった後に首相が何を話すつもりなのか、ちょこちょこ探りは入れていた。しかし、この日の午前中まで“辞任”の“じ”の字すら聞こえてこない状況。そこから急転直下の「辞任表明の見込み」の一報が流れ、まさに青天の霹靂だった。そしてこうしたニュースというのは、発表後に「実はあの時は…」と振り返ることができる事象があることも少なくない。「異変」は7月中旬から始まった既に約1年半にわたって原則毎日運動する習慣を取り入れていた私は、午後5時から始まった安倍首相の会見を所属しているスポーツジムのトレッドミル(いわゆるランニングマシン)に一体化されたテレビのディスプレイにイヤホンを差し込み、走りながら聞いていた。午後5時の会見開始2分前からトレッドミルで走り出し、9分くらいになる時だった。安倍首相が自身の健康問題に触れ始めた。その中で安倍首相が言った次の言葉に私はハッとした。「先月中頃から体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました」ここでいう先月中旬とは7月中旬である。この頃、今考えれば不思議なことが起きていた。というのもこの時期に旧知の大手新聞社の記者2人(それぞれ別々の会社)から「親族がかかったので潰瘍性大腸炎について教えて欲しい」と連絡があったのだ。当時は何も思わずに基礎的なことを話した。一般人は“難病”という言葉で“数の少ない病気”と先入観を持ってしまうようだが、国内の潰瘍性大腸炎患者は20万人超で、俗に3大がんといわれる胃がん、大腸がん、肺がんのそれぞれの年間新規診断者数よりも多い一般的な病気である。実際、私の周辺には、仕事に関係なく出会った6人と関連して出会った4人の合計10人の潰瘍性大腸炎患者がいる。ちなみに私が医療を取材するようになってから、この病気に関わった機会は結構多い。最初は1997年。ちょうど5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の中で、初めて大腸のみで成分が放出されるよう設計されたメサラジン(商品名:ペンタサ)の発売から約1年が経過し、その臨床での評価を取材して回ったのである。その後も折に触れてこの病気を取材する機会は少なくなかった。そんなこんなで新聞記者からの問い合わせにも5-ASA製剤、ステロイド、免疫抑制薬、免疫調節薬、生物学的製剤の特徴や日常生活での注意点などはとくに何も見なくとも一通り話すことはできた。突飛すぎる週刊誌記者からの依頼ところがそれから10日以上経った7月下旬、私の携帯電話にやはり旧知の週刊誌記者から着信があった。あいにく私は電話を受けることができなかったが、当人からすぐに「メールをお送りします」とのSMSが届いた。たまたま、メールは確認できる状態だったため、メーラーを立ち上げておいたところ、それから約15分後に次のようなメールが届いた。「首相が持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、9月にも退陣するという情報があるのですが、これに関連して、専門医に安倍首相の顔色や表情、皮膚の状態などから、病状を判断してもらおうかと考えています。そこでお願いですが、こうしたリクエストに応じてくれる医師をご存じないでしょうか。こちらも何人か当たっているのですが、なかなか応じてもらえません。心当たりがあれば、教えていただけませんでしょうか」旧知の記者なのに申し訳ないが、無茶苦茶な依頼である。そもそも潰瘍性大腸炎の診療経験値が極めて高い専門医でも、ぱっと見で重症度・病状が判断できるわけはない。私は次のように返信メールを書いた。「潰瘍性大腸炎は下痢や血便の頻度、血液検査、大腸内視鏡で病状を判断するものなので、ぱっと見で病状診断は無理です。見た目でこの病気の病状を診断するというのは、およそ星占いの1000倍以上当てにならない話です」また、潰瘍性大腸炎の専門医は国内に数百人程度で、大御所を中心にヒエラルキーが確立しているのは医療関係者なら周知のこと。その環境下でこの記者が要望するような非科学的コメントをする医師がいれば袋叩きにあってしまう。その旨も返信メールに記述し、協力は難しいと伝えた。そしてこの瞬間、私の記憶に蘇ってきたのは7月中旬の新聞記者からの問い合わせだ。一瞬、「もしかしてこのこと?」とは思ったものの、週刊誌記者からの依頼があまりにも突拍子もないものだったことの反動もあって、この時点では首相の体調悪化→辞任というシナリオもないだろうとの判断に傾いた。もっとも、やはり記者は自分が思うことでも一度は疑ってかかるもの。念のため、ある雑誌で長年政治取材をしている記者に8月上旬に連絡を取った。ちなみにこの頃、一部の週刊誌の誌面では「首相が官邸で吐血した」との情報が躍っていた。私が聞いた記者は次のように答えた。「あの吐血情報はどう考えても官邸から出てるんですよね。でももし事実ならば、絶対かん口令が敷かれるはずなんですが…」その後、2度にわたり安倍首相が慶應義塾大学病院を受診したことは報道されている通りである。まさかまさかの辞任表明そしてあの首相の辞任表明会見の前夜から、念のため何人かの記者や関係者に話を振ってみた。要は「辞任があるやなしや」という点である。皆一様に辞任を否定した。「いやいや、前回の政権投げ出し批判があるから、本人も周囲もことさら体調理由の辞任になることは絶対避けたいシナリオ。ここではないですよ」「結局、メディアがことさら騒いでいるだけで、会見も言ってしまえば『大山鳴動して鼠一匹』になりますよ」まあ、これで今回は何もないかと思った。28日午前にもある政治担当記者とやり取りすると、夕方の会見でも述べられた「指定感染症見直し」で厚生労働省と官邸側が話をつめているらしいとの情報のみで、やっぱり「今日はまず辞任はないと思います」との返事。実はかくいう私もそれらの情報を受け、原稿のやり取りをしている当コラムの担当編集者へのお昼直前のメールに次のように書いている。「本日の会見、今の時点でさすがに辞任はなさそうです」各種報道によると、安倍首相が辞意を明らかにしたのは、この日の閣議後に麻生副総理と2人で会談した場だったという。首相動静によれば午前11時過ぎ。それから2時間と経たずに空気は一変した。あとは冒頭に触れたとおりである。潰瘍性大腸炎と私の出会いちなみに首相の辞任表明会見後、7月中旬に私に電話をしてきた新聞社の記者に連絡を取ってみた。うち1人は「ノーコメ(ノーコメント)ということで…」とごまかし笑い。もう1人はいまだ電話を受けてくれていない(笑)。ちなみに私が初めてこの病気の患者と出会ったのは大学1年の時で、その患者は同級生である。彼とは実験などで同じ班だったが、時々、実験の最中に忽然と姿を消すことがあった。大学の実験はギリギリの人数でやっているので、そうそう姿を消してもらっては困る。姿を消した彼がひょっこり戻ってくると、同じ班のほかのメンバーが「おい、何してたんだよ」と詰める。彼はいつも苦笑いしながらぽつりと言った。「うん、ウンコ」そこで班内は爆笑になる。いつのまにか彼は陰で「ウンコ○○(○○は彼の名字)」と呼ばれるようになった。そんなある日、学食で私が一人で食事をしているとトレーを持った彼が「おう」と言いながら、向かいに座った。そして自らこう語り出した。「実はさ、しょっちゅうトイレ行くの病気なんだよね。潰瘍性大腸炎っていう」今のように医学の知識のなかった私はこう返した。「それって治るの」彼は私のほうも見ずにうどんをすすりながら言った。「いや、治らない」なんと返していいかわからなかった。彼はうどんを食べ終わると、私の前に大きなオレンジ色の錠剤を出して見せてくれた。「これが薬なんだ」当時は何もわからなかったが、今ならあれが初期の5-ASA製剤サラゾピリンだとわかる。男女問わず、尿や汗をオレンジ色にしてしまい、男性では精液にまで色を付けてしまうあの薬だ。そして今ならわかる。彼が堂々と笑いながら「ウンコ」と口にしたのは彼が身につけた防衛策だろうと。首相辞任会見を難病周知のきっかけに先週の安倍首相の辞任会見以来、この記事を執筆している今現在までに各紙・各週刊誌の記者とやり取りする中で、必ず話題になるのが首相の病気である潰瘍性大腸炎のことだ。そして20万人もの患者がいながら、案外この病気のことは知られていないことに驚く。ちなみにこの間、両手指を超える記者と話して、知り合いにこの病気の患者がいると答えたのは1人のみ。だが、そんなはずはない思う。身の回りで大腸がん、肺がん、胃がんの患者の話を聞いたことがない成人はいないと思う。潰瘍性大腸炎の患者はそうしたがんの患者よりも多いのだ。結局のところ排泄のことも関係するために多くの患者は周囲に言えないだけなのだろうと思う。その意味で私が仕事とは直接関係なく出会った潰瘍性大腸炎の患者の一部からはこういわれたことがある。「医療に詳しいみたいだから言っても問題ないかなと思って」そうした彼らの期待に今の自分が応えられているかと問われれば私も自信はない。だが、日本の国家元首自らのカミングアウトは、アンサングな患者たちのことに今一度思いをはせる良い機会ではないだろうか。もっともこの職業ゆえの余計な一言かもしれないが、安倍首相の政治的成果に対する評価は別途厳格に行わなければならないし、そこでは基本、鞭を打つ姿勢で臨むべきであり、手を緩める必要はまったくないと思っている。

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