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腎デナベーションの国内治療成績と期待されること/メドトロニック

 昨夏に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』での治療に関するClinical Question*に対し、作成委員の合意率100%のもとで盛り込まれた腎デナベーション。2026年2月には『腎デナベーションシステムの適正使用指針』が各関連学会を通じて公表され、翌3月にはその治療システムが国内初の保険適用を取得、2社より同時発売された**。高血圧症治療における唯一の侵襲的治療であることからも、現時点での実施可能施設や施行可能医師は限定的であるが、治療の個別最適化が求められる今、このシステムがどのように活用されていくべきなのだろう―。*CQ16「治療抵抗性高血圧の治療において、腎デナベーションは推奨されるか?」(推奨の強さ2、エビデンスの強さB)**日本メドトロニックの「Symplicity SpyralTM腎デナベーションシステム」、大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」 2026年5月15日、『Symplicity SpyralTM腎デナベーションシステム』の製造販売元である日本メドトロニックが主催するメディアセミナーが開催され、苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が「治療抵抗性高血圧における治療選択肢の進展―腎デナベーションがもたらす高血圧治療の新たな選択肢」と題し、現時点での治療成績、本治療が適する患者像について解説した。薬剤が到達しない領域の治療に貢献 前述のガイドラインでは、合併症を考慮しながらも“全年齢で130/80mmHg未満”の降圧目標が設定されたが、現状は140/90mmHgでさえも高血圧有病者の27%しか達成できていない。この目標未達者のうち、“真の治療抵抗性高血圧”患者を救い出すためにも腎デナベーション(Renal Denervation:RDN)の保険適応は大きな前進といえる。苅尾氏は「高血圧有病者4,300万人のうち、3ヵ月以上多剤服用を続けていても降圧しない治療抵抗性高血圧患者は約10%(400万人)と推定される」と潜在患者について触れた。また、治療抵抗性高血圧への介入の必要性について、「2007~17年に実施されたJ-HOP研究(日本人における家庭血圧の心血管予後推定能に関する研究)1)からも治療抵抗性高血圧患者では10年間で3人に1人が循環器疾患を発症していたことが明らかになっている」とコメントした。―――――――――――――――――――<RDNの適応となる“真の治療抵抗性高血圧”>◆治療抵抗性高血圧の定義:利尿薬を含むクラスの異なる3剤の降圧薬を用いても血圧が目標値まで下がらないもの・診察室血圧140/90mmHg以上 かつ・診察室外血圧 自由行動下血圧測定(ABPM):24時間130/80mmHg以上、昼間135/85mmHg以上、夜間120/70mmHg以上 いずれかに該当 家庭血圧:朝/晩 135/85mmHg以上、夜間 120/70mmHg以上 いずれかに該当・eGFR40mL/分/1.73m2未満は除外する―――――――――――――――――――期待される治療効果、国内症例から明らかに RDNシステムとは、高周波エネルギー(ラジオ波)あるいは超音波を用いて腎動脈周囲を走行する交感神経線維(遠心路、求心路)を選択的に焼灼することでパーフェクト24時間血圧コントロール2)の達成が可能となるという。同氏はこれまでに実施された国内試験(SYMPLICITY HTN-Japanほか)や7つのシャム対照試験を比較した研究などを踏まえ、「シャム群の降圧には薬剤のOn-Offが影響している可能性が高いが、薬剤を完全OffしたHTN-OFF MED試験でもRDNによる降圧効果が認められている」と述べ、「(多剤)薬物治療では長期持続性がないため、24時間血圧のなかでも夜から朝にかけてのコントロールに難渋するが、RDNではとくに“モーニングサージ型”あるいは“夜間高血圧型”患者の血圧改善が見込まれる」と強調した。 RDNの特徴は、交感神経線維を完全に焼灼するのではなく部分的に焼灼することで、起立性低血圧や腎機能低下などの予測しうる副作用の回避につながっている。一方で、「手技のエンドポイントがない」「ドラッグフリーになるまでの降圧効果が現時点で明らかになっていない」「高周波システムと超音波システムの患者ごとの使い分けに対するエビデンスが不足している」といったウィークポイントもあり、その解決は今後の検討課題であるという。また、二次性高血圧のうち、原発性アルドステロン症例は治療対象外となる。これについて「降圧の作用機序が異なるため、効果が得られにくい可能性がある」と同氏は説明した。学会総会で実施症例を徹底検討!恩恵を受ける患者発掘に注力 本システムを使用するには、日本高血圧学会(JSH)・日本循環器学会(JCS)・日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の3学会合同で作成された適正使用指針ならびにコンセンサスステートメントに則り、認定専門施設でのみ実施可能である。それらの施設には“高血圧RDN治療チーム(HRT)”があり、3学会専門医、看護師、薬剤師、管理栄養士が患者介入し、患者嗜好を共有意思決定(SDM)したうえでようやく適応となる。なお、日本人高血圧患者のRDN嗜好/希望について同氏が調査3)を行った結果、約3割の患者が「希望する」と回答していた。 現在、3学会合同で1例ごとに実施可否の判断がなされ、全国で約10例に実施されている(2026年5月時点)。将来的な適応について同氏は、「脳卒中、急性心筋梗塞、心不全、大動脈解離など、重篤な循環器イベントの抑制を目指していく」と述べ、「現時点での最大の課題は、最も恩恵を受ける対象者を探すこと」だという。 そこで、同氏が会長を務め10月10~12日に開催される第48回日本高血圧学会総会において、実施症例の患者背景やベースライン時の血圧情報(診察室血圧・家庭血圧・ABPMなど)、併存疾患、服薬状況に関する報告がなされる予定だ。これまでに例をみない学会の試みにより、「専門医に向けて、患者発掘や実施可能例の理解につなげていく」と締めくくった。

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病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

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双極症の維持療法に有効な薬剤とその用量〜ネットワークメタ解析

 双極症は、生涯にわたる治療を必要とする慢性精神疾患である。イタリア・University School of Medicine of Naples Federico IIのMichele Fornaro氏らは、双極症の維持療法における薬物療法の有効性と安全性を、年齢層別の用量効果を考慮して比較検討するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2026年8月15日号の報告。 PubMed/MEDLINE、Embase、Web of Science、Scopusより創刊から2026年1月12日までに公表された研究を、システマティックに検索した。双極症の維持療法における薬物療法の比較またはプラセボとの比較を行ったランダム化比較試験(RCT)を対象としてネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムは、再発率(すべての気分極性の急性エピソードの再発)および忍容性(副作用による治療中止)とした。副次的アウトカムは、特定の気分極性(うつ病、躁病、混合極性など)のエピソードの再発、受容性(すべての原因による治療中止)、特定の有害事象の発生率とした。ネットワークメタ解析の信頼性も評価した。 主な結果は以下のとおり。・23種類の異なる治療の組み合わせを含む44件のRCTを解析に含めた(1万867例)。・バイアスリスクの低い研究のみを残し、効果修飾因子の可能性のある外れ値を除外した感度分析の結果、プラセボよりも優れていることが示された治療および用量は、次のとおりであった。 アセナピン:20mg/日 アリピプラゾール:20mg/日、30mg/日 クエチアピン:300mg/日、600mg/日、550mg/日 リチウム:800mg/日 ルラシドン:80mg/日 カルバマゼピン:400mg/日、650mg/日 バルプロ酸:71~125μg/mL オランザピン:20mg/日 アリピプラゾール持続性注射製剤:400mg/4週間 リスペリドン持続性注射製剤:25mg/2週間 アリピプラゾール(30mg/日)とラモトリギン(200mg/日)の併用・対象患者の平均年齢、女性の割合、双極症I/II型患者の割合、躁病/うつ病のベースライン重症度、試験期間といった点で外れ値として浮上したものの、ほかにも有効性が示唆される薬剤がいくつか存在した。 著者らは「本研究の結果は、これまでのネットワークメタ解析および現行のガイドラインと一致する。しかし、異なる薬剤、用量、年齢層を同時に評価することで、既存の知見を拡張するものである」としている。

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IDH1変異陽性胆道がんに対するイボシデニブ、国内初のIDH1阻害薬として承認/日本セルヴィエ

 日本セルヴィエは2026年6月19日、IDH1遺伝子変異陽性の切除不能な胆道がんを対象として、イボシデニブ(商品名:ティブソボ)の適応追加承認を取得したと発表した。適応は「がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道」であり、国内初のIDH1遺伝子変異を標的とした胆道がん治療薬となる。 胆道がんは胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんからなり、多くが進行期に診断されるため予後不良である。なかでも肝内胆管がんは近年国内で増加傾向にあり、10~20%の症例にIDH1遺伝子変異が認められると報告されている。これまで国内では、胆道がんに対するIDH1変異標的薬は承認されておらず、2次治療以降の選択肢は限られていた。 今回の承認は、IDH1遺伝子変異陽性の既治療切除不能または転移のある胆管がん患者を対象とした国際第III相試験「ClarIDHy試験」および日本人患者を対象とした国内第II相試験(CL2-95031-008試験)の結果に基づく。 ClarIDHy試験は185例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、患者はイボシデニブ500mg群またはプラセボ群に2:1で割り付けられた。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、イボシデニブ群で中央値2.7ヵ月、プラセボ群で1.4ヵ月となり、有意な改善が示された(ハザード比[HR]:0.37、95%信頼区間[CI]:0.25~0.54、p<0.0001)。 一方、副次評価項目の全生存期間(OS)は、イボシデニブ群10.3ヵ月、プラセボ群7.5ヵ月で統計学的に有意な延長は認められなかった。しかし、本試験ではプラセボ群患者の70.5%が病勢進行後にイボシデニブへクロスオーバーしており、その影響を補正した解析ではOS中央値はプラセボ群5.1ヵ月となり、イボシデニブ群は死亡リスクを51%低減した(HR:0.49、95%CI:0.34~0.70、p<0.0001)。 安全性解析対象166例における副作用発現率は62.7%であった。主な副作用は下痢(21.1%)、悪心(20.5%)、疲労(16.9%)、嘔吐(8.4%)、食欲減退(7.2%)、頭痛(6.0%)、心電図QT延長(5.4%)などであり、既報と大きな差異は認められなかった。 イボシデニブは2025年3月にIDH1遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する適応で国内承認を取得しており、今回の適応追加により固形がん領域へ保険適用が拡大した。胆道がんでは近年、FGFR2融合遺伝子やRET融合遺伝子など、分子異常に基づく治療開発が進んでいる。今回のイボシデニブ承認は、IDH1変異を標的とした国内初の治療選択肢となり、次世代シークエンシング(NGS)を用いたがん遺伝子パネル検査などの臨床的重要性をさらに高めるものとなる。【製品情報】商品名:ティブソボ錠250mg一般名:イボシデニブ効能・効果:IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道用法・用量:通常、成人にはイボシデニブとして1日1回500mgを経口投与する。

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IgA腎症へのatrasentan、eGFR低下を長期抑制するか/Lancet

 選択的経口エンドセリンA受容体拮抗薬であるatrasentanはIgA腎症患者において、プラセボと比較して2.5年間にわたり蛋白尿を減少させ、腎機能低下を抑制した。この効果はSGLT2阻害薬の併用の有無にかかわらず認められ、忍容性は良好であった。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らALIGN study groupが、20ヵ国133施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ALIGN試験」の最終解析結果を報告した。同試験の事前に規定された中間解析(36週時点)では、atrasentanはプラセボと比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある蛋白尿の減少をもたらしたことが報告されていた。Lancet誌2026年6月13日号掲載の報告。第III相無作為化試験の2.5年間の最終解析 ALIGN試験の対象は、生検によりIgA腎症と確定診断され、スクリーニング前12週以上安定した至適用量のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬投与下で、eGFRが30mL/分/1.73m2以上かつ尿中総蛋白排泄量が1.0g/日以上の成人患者であった(主要解析集団)。 安定用量のRAS阻害薬に加えて安定用量のSGLT2阻害薬を12週以上投与されていた患者は、探索的にSGLT2阻害薬併用集団として登録した。 研究グループは、適格患者をatrasentan群(0.75mgを1日1回経口投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は132週間で、その後、4週間の追跡期間を設け、136週時の受診を完了した患者は任意で48週間の非盲検延長投与期間に移行した。 主要アウトカムは、主要解析集団におけるベースラインから36週時までの24時間蓄尿による尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)の変化量で、中間解析で評価され、すでに報告されている(ジャーナル四天王「高リスクIgA腎症へのatrasentan、重度蛋白尿を改善/NEJM」)。 本論で報告する重要な副次アウトカムは、主要解析集団におけるベースラインから136週時までのeGFRの変化量で、無作為化されたすべての患者を解析対象とした(ただし、中間事象[IgA腎症に対する制限薬もしくは代替薬の投与開始、または腎代替療法の開始]発生後のデータは除外)。安全性は、試験薬の投与を少なくとも1回受けた無作為化された全患者を対象に評価された。atrasentanの蛋白尿低減効果は持続 2021年3月15日~2023年4月28日に、404例が無作為化された(主要解析集団340例、SGLT2阻害薬併用集団64例)。 主要解析集団において、重要な副次アウトカムである136週時のeGFRのベースラインからの変化量は、atrasentan群-7.5mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-9.2~-5.8)、プラセボ群-9.9mL/分/1.73m2(95%CI:-11.7~-8.1)であり、群間差は2.4mL/分/1.73m2(95%CI:-0.1~4.8、p=0.057)であった。 4週間の追跡期間中にeGFRの上昇が認められなかったことから、投与を終了した132週時のeGFRのベースラインからの変化量が評価項目として事後に追加された。その群間差は2.6mL/分/1.73m2(95%CI:0.1~5.0、名目上のp=0.039)であった。 また、重要な副次アウトカムの支持的解析項目として評価した136週時までの総eGFRスロープは、atrasentan群-2.7mL/分/1.73m2/年(95%CI:-3.4~-2.1)、プラセボ群-4.1mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.8~-3.4)、群間差は1.4mL/分/1.73m2/年(95%CI:0.5~2.3、名目上のp=0.0033)であった。 SGLT2阻害薬併用集団では、136週時のeGFRのベースラインからの変化量は、atrasentan群-1.5mL/分/1.73m2(95%CI:-5.7~2.7)に対し、プラセボ群-10.6mL/分/1.73m2(95%CI:-15.0~-6.2)で、群間差は9.1mL/分/1.73m2(95%CI:3.0~15.2)であった。 主要解析集団において、治療下で発現した有害事象はatrasentan群(157/169例、93%)、プラセボ群(159/170例、94%)でおおむね同様であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。 atrasentan群でプラセボ群よりとくに発現割合が高かったのは体液貯留で、それぞれ14%(24/169例)、12%(20/170例)であった。

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非DM肥満/過体重への経口GLP-1薬elecoglipron、最大10.5%の減量効果/Lancet

 非糖尿病の肥満/過体重の成人において、elecoglipron(AZD5004)の1日1回経口投与は臨床的に意義のある体重減少を示し、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬クラスの既知の報告に合致することが確認された。英国・レスター大学のMelanie J. Davies氏らが、日本を含む7ヵ国で実施された第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「VISTA試験」の結果を報告した。elecoglipronは、食事や水分摂取の制限なしに1日1回経口投与可能な低分子GLP-1受容体作動薬で、これまで2型糖尿病を有する肥満/過体重の患者の体重管理を目的として開発が進められてもいる。今回の結果を踏まえて著者は、「非糖尿病の肥満/過体重成人を対象とする第III相試験でさらなる開発を進めることが支持された」とまとめている。Lancet誌2026年6月20日号掲載の報告。5~75mg、1日1回経口投与の有効性と安全性を評価 VISTA試験は、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、台湾、英国、米国で実施された。対象は、18歳以上で、肥満(BMI値30以上)、または過体重(BMI値27以上)で未治療/治療中の体重関連疾患(高血圧症、脂質異常症、心血管疾患、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)を少なくとも1つ有する患者であった。1型または2型糖尿病の既往あり、またはスクリーニング時のHbA1cが6.5%以上などの患者は除外した。 適格患者を、elecoglipronの5mg群(用量漸増なし)、15mg群(用量漸増なし)、50mg群(4週ごとの用量漸増あり)、75mg群(週1回の用量漸増あり)、75mg群(2週ごとの用量漸増あり)、または対応するプラセボ群に、2対3対3対3対3対5の割合で無作為に割り付け、1日1回経口投与した。 試験期間は最大42週間で、スクリーニング期最大4週間、投与期最大36週間を含み、最終追跡調査は投与期の最後の受診から約2週間後に予定された。 主要エンドポイントは2つで、26週時点におけるベースラインからの体重変化率、および26週時点で体重が5%以上減少した患者の割合であった。安全性および忍容性についても評価した。elecoglipron群で体重減少は2.6~10.5%、5%以上の体重減少の達成割合は約4~9割 2024年10月8日~2025年2月18日に472例がスクリーニングを受け、162例が適格基準を満たさず、310例が無作為化された。288例(93%)が試験を完了し、231例(75%)が割り付け治療を完遂した。 ベースラインの被験者特性は、平均年齢48.4歳(SD 13.7)、女性225例(73%)、男性85例(27%)、平均体重は106.9kg(SD 24.1)、平均BMI値38.2(SD 7.2)であった。 elecoglipronの投与により、用量依存的な体重減少が認められた。26週時におけるベースラインからの体重変化率(最小二乗平均値)は、プラセボ群-0.6%に対し、elecoglipron 5mg群で-2.6%、15mg群-5.6%、50mg群-8.1%、75mg(週1回漸増)群-10.5%、75mg(2週ごと漸増)群-10.0%であった(いずれも有効性推定による評価)。 また、26週時点で体重が5%以上減少した患者の割合は、プラセボ群15.6%に対し、elecoglipron群ではそれぞれ40.4%、51.3%、72.5%、86.1%、88.8%であった。 有害事象は、elecoglipron 5mg群で84%(27/32例)、15mg群88%(43/49例)、50mg群88%(44/50例)、75mg(週1回漸増)群98%(48/49例)、75mg(2週ごと漸増)群92%(45/49例)、プラセボ群84%(68/81例)に認められた。 elecoglipron群の主な有害事象は、悪心、便秘、下痢、頭痛および嘔吐で、これらはプラセボ群より発現割合が高かった。

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メル・ギブソン氏の発言後、イベルメクチンの併用処方が倍増

 俳優のメル・ギブソン(Mel Gibson)氏が、著名なポッドキャストで抗寄生虫薬イベルメクチンを「がんに有効な適応外治療」として宣伝して以降、同薬を含む併用処方数が倍増したことが、新たな研究で報告された。2025年1月、ギブソン氏はジョー・ローガン(Joe Rogan)氏のポッドキャスト番組「The Joe Rogan Experience」で、ステージ4のがんに罹患していた3人の友人が、イベルメクチンとフェンベンダゾールの併用療法により回復したと語った。フェンベンダゾールは、動物用としてのみ承認されている駆虫薬である。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医学部のKatherine Kahn氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に5月12日掲載された。 研究グループによれば、イベルメクチンや、フェンベンダゾールのようなベンゾイミダゾール系駆虫薬は、実験室レベルや動物実験では抗がん作用を示しているものの、人間のがん治療において安全性や有効性を示す臨床試験は存在しない。Kahn氏は、「たとえ馴染みのある人や影響力のある人から発信されたものであっても、広く共有されている健康情報が全て正確とは限らない。効果が証明されていない治療法の使用は、実際にリスクを伴う。特に、有効性が確認されている治療の開始が遅れてしまう場合にはなおさらだ。医師や医療機関は、患者が情報を正しく理解し、適切な判断を下せるよう支援する重要な役割を担っている」とニュースリリースで述べている。 イベルメクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に注目を集め、一部のインフルエンサーがCOVID-19の治療薬として宣伝した。しかし、こうした主張が裏付けられたことはなく、米国立衛生研究所(NIH)もCOVID-19に対する使用を推奨していない。 今回の研究でKahn氏らは、2018年1月1日~2025年7月31日の間に米国の67の医療機関で診療を受けた6837万3,949人の患者の電子カルテデータを用いて、18~90歳の患者に処方されたイベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬の併用処方を特定した。併用処方は、同じ日にイベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬(アルベンダゾール、フェンベンダゾール、メベンダゾール、およびチアベンダゾール)がそれぞれ1回以上処方された場合と定義し、月単位で1,000人当たりの併用処方率を算出した。 その結果、イベルメクチンとベンゾイミダゾール系駆虫薬の併用処方率は、2024年1月1日~2024年7月31日と比べて、ギブソン氏の発言後に当たる2025年1月1日~2025年7月31日には約2倍に上昇していた(率比1.97)。がん患者では、この併用処方率の上昇がさらに大きく、2.5倍以上に達していた(同2.63)。この傾向は、女性より男性(女性:同1.93、男性:同2.79)、また、65歳以上と比べて18~64歳(65歳以上:同1.61、18~64歳:同2.68)で、より明確であった。地域別では、米国南部での増加が特に顕著で、併用処方率は約3.9倍に上昇していた(同3.91)。 論文の上席著者であるUCLA医学部のJohn Mafi氏は、「私はプライマリ・ケア医として、全ての人が、より長く健康に生きることに役立つことが示されている治療を受ける機会を持ってほしいと思っている。たった1本のポッドキャストをきっかけに、有効性が証明されていないがん治療の処方が2倍以上に増えたこと、それが特に男性や米国南部で顕著だったことは、患者が実証済みの治療を回避したり後回しにしたりして、有効性が確認されていない治療法に頼っている可能性を示しており、懸念される」と語った。 研究グループは、「本研究結果は、不確かな医療情報が、特に有名人によって広められた場合、どれほど急速に拡散するかを示している」と指摘している。論文の筆頭著者である米バージニア工科大学のMichelle Rockwell氏は、「われわれは普段、エビデンスをいかに効率よく医療現場へ普及させるかに注目している。しかしこの結果は、別の力が極めて短期間のうちに医療行動に影響を与え得ることを改めて示した。医療システムの課題は、患者に適切なタイミングで迅速かつ信頼できる情報を届ける方法を見つけることだ」とニュースリリースで述べている。

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睡眠時無呼吸症候群治療薬、臨床試験で症状改善を確認

 睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療法の一つであるCPAP(持続陽圧呼吸療法)を忍容できない患者では、毎晩1回服用する錠剤がCPAPに代わる治療法となり得ることが、第3相臨床試験で示された。実験的治療薬AD109(aroxybutynin/atomoxetine)は、上気道筋の弛緩を抑制する作用を有する。臨床試験では、この薬を服用した患者で、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計数(無呼吸低呼吸指数〔AHI〕)が約44%低下したという。米ピッツバーグ大学医療センターの睡眠医療専門医であるPatrick John Strollo氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に5月18日掲載された。 OSAは、喉の筋肉が弛緩して気道を塞ぎ、睡眠中に断続的な呼吸停止を引き起こす疾患である。CPAPはOSAの標準治療であるが、患者は騒音を伴うこともある装置に接続されたマスクを装着して眠らなければならない。Strollo氏は、「CPAPは多くの患者にとって継続が難しいものだ」と指摘する。 Strollo氏は、「心血管疾患、喘息、2型糖尿病などの多くの慢性疾患において、診断された患者の多くが未治療または治療不十分のままでいることは考えにくい。だがOSAではそれが依然として現実である」とニュースリリースで述べている。 今回の臨床試験では、軽度~重度のOSA患者646人(年齢中央値58歳、女性49.3%)をAD109群(324人)またはプラセボ群(322人)にランダムに割り付け、AD109の有効性と安全性を検討した。試験完了率はAD109群83.3%、プラセボ群85.9%だった。 その結果、26週時点までのAHI変化量は、AD109群で−3.3回/時、プラセボ群で0.7回/時であり、群間差は−4.0回/時だった。これは、AD109群でAHIが幾何平均44.1%減少したことに相当し、プラセボ群の17.6%減少を上回った。また、AD109群ではプラセボ群と比べて、26週時点の酸素飽和度低下指数(ODI)と低酸素負荷(HB)にも改善傾向が認められた。疲労指標については、全体では有意差は認められなかった。さらにAD109群では、26週時点で17.6%がAHI 5回/時未満に達し、OSAが完全にコントロールされた状態となった(プラセボ群では9.3%)。主な副作用は、口の渇き、悪心、不眠、排尿困難などで、AD109群の21.2%、プラセボ群の3.1%は副作用のため治療を中止した。 Strollo氏は、「これらの結果は、神経筋機能障害を標的とする治療が、臨床的に意義のある改善につながり得ることを示す有望な証拠であり、この疾患の病態に関する生物学的理解の進展とも一致している」と述べている。さらに同氏は、「睡眠中の気道虚脱に関与する神経筋系の制御因子を標的とする経口薬は、こうした治療格差を埋め、現在も未治療の患者に対して有効な治療選択肢を広げる可能性がある」と語っている。 AD109は、米食品医薬品局(FDA)から迅速審査を目的とする「ファストトラック指定」を受けている。開発企業であるApnimed社は、すでにFDAへ新薬承認申請を提出している。なお、本臨床試験は、Apnimed社の資金提供を受けて実施された。

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認知症の疾患概念を考え直す(解説:岡村毅氏)

 アルツハイマー型認知症が「アミロイドの蓄積⇒タウの蓄積⇒神経変性⇒軽度認知障害の顕在化⇒認知症の顕在化」という一連の流れであることがわかってきた。 かつては「もの忘れで受診したときには、すでに遅いのである」「アミロイドやタウの病理は完成しているから介入できない」とされていた。しかし、脳画像検査や血液検査の進歩によって、本人にはもの忘れ等の自覚がない時期に、脳内の変化が検出できるようになってきている。 神経学者たちは、より早く見つけ、より早く介入しようとしているのである。本論文はまさにその最先端である。 60歳前後の認知症のない集団に、認知症関係の血液バイオマーカー検査をしたところ、バイオマーカーで陽性の人はかすかに認知機能が低下傾向にあった、というものである。血液検査で認知症の前駆期の人を見つけ、少しでも遅らせる治療を始めるという新しい時代に向かうものだ。 それは医学の進歩であり、素晴らしいことだが、私は別の視点から眺めてみたいと思う。 かつて認知症の病理的な検査ができなかった時代は、生活障害が起き、認知症を示唆する傍証(CTで海馬の萎縮が疑われるとか、徐々にもの忘れが進行している経過とか)があると認知症と診断されていた。しかし少なくともアルツハイマー型認知症では、冒頭に述べたような経過がわかってきて、さらに画像や血液検査で病理がわかってくると、病理学がアルツハイマー病を定義するようになる(2011年のNIA-AA基準から始まった)。 かつては生活障害がある人が対象だった。いまは脳内の変化がある人が対象になった。 今回の論文では一定程度の人が脳内の変化とともに生きていることがわかった。ただし彼らがどのような生活をしているか、あるいは困っているか困っていないのか、といったことはわかっていない。また彼らがこの後、認知症になっていくのかどうかもわかっていない。 何を言っているんだ、脳内が変化しているのだから、四の五の言わずに薬を投入しろ、と思う人もいるかもしれない。 だが、神経病理がわかってきたからといって、認知症という現象を、神経学に還元してしまってよいものだろうか。たとえば精神科医としては、認知機能がちょっと低下すると大騒ぎになり、生活が破綻する人もいれば、かなり低下しても平穏に暮らしている人もいる。たとえば自分の周りを完璧にコントロールしている、知的に高く、支配的な人は、認知機能がちょっと低下しただけで周囲との関係が破綻したり、自分がすべてをコントロールできないことに焦燥したりする。一方で、周囲をうまく使っている人、環境に適応する力の強い人、自分のことを大局的に見ている人(メタ認知の強い人)は、いくら認知機能が低下しても盤石だという人もいる。 血液バイオマーカーの進歩に水を差したくはないが、「あくまで神経学的に定義されたアルツハイマー病」が早期に発見されているのだという留保をつけたい。 神経病理学の進歩によって、私たちは「アルツハイマー病」を早期に発見できるようになった。しかし、それによってわかるのは脳内の変化であって、その人の生活ではない。認知症研究はこれから、「脳で何が起きているか」だけでなく、「その人がどのように生きているか」を同時に問いたい。 今後、血液バイオマーカーで見つかった人に投薬し、病理変化を遅らせる研究が数十年続くだろう。それは重要な研究である。しかし同時に、「早期に見つかった人」は何に困っているのか、あるいは困っていないのか、早期に見つかったことでどのような苦悩や希望を抱くのか、どのような支援を必要とするのかを明らかにする研究も必要だろう。認知症を脳内病理だけでなく、人が生きる現象として理解することが必要だ。 認知症とアルツハイマー病が今後枝分かれしていく可能性もあるだろう。前者は社会福祉、看護学、精神医学などが重視してきた対象であり、後者は神経学が主として対象としてきた領域である。ただ、同じ1人の人間に起きている現象であり、枝分かれが望ましいかどうかは難しい問題だ。

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自慢話を聞かせて!【Dr. 中島の 新・徒然草】(637)

六百三十七の段 自慢話を聞かせて!今年の夏至は6月21日だったのだとか。ということは、もうすでに日が短くなりつつあるわけですね。何だか寂しさを感じてしまいます。さて、私の外来に通院している患者さんたち。病気だけでなく、交通事故に遭ったとか、子供の頃に虐待を受けたとか。それぞれに不幸を背負っています。しかし、いつまでも過去に囚われていたら解決できません。過去を変えることはできないわけですから。しかし、皆さん、外来でもずっと愚痴をこぼし続けています。親が悪い、加害者が悪い……って。気の毒とは思うものの、同情の言葉をかけても事態はまったく改善しません。さて、ある日のこと。私は外来診察室で、そんな患者さんの1人と話をしていました。彼女から聞かされるのは、いつもの愚痴です。ところが、何の間違いか、話が昭和の「法則」に及んでしまいました。その「法則」というのは、女友達に「誰か紹介してくれ」と頼んでも、ガッカリさせられることが多かったという話です。読者の中にも賛同する方がおられることでしょう。やおら彼女は興味を示しました。 患者 「法則って何ですか?」 中島 「『女は決して自分より美人は連れてこない』という資本主義社会の原理原則ですよ」 私がそう言ったら、彼女はフッと笑ったのです。 患者 「私にも心当たりがありますよ」 中島 「やっぱりそうですか!」 患者 「自分が美人だから、誰を連れて行っても『法則』が発動してしまうんですよね」 おいおい、正気か?もしかして高度なギャグなのかも。私は思わず心の中で叫びつつ、かろうじて踏みとどまりました。代わりに口から出てきたセリフは「たし……かに」という言葉。それからの10分間、私たちはどこにも真実のない話で盛り上がってしまいました。そして彼女は、今までに見たことのない晴れやかな表情で帰って行ったのです。あのいい加減な相槌がこんなに効くとは!ということは……外来のたびに彼女のモテ自慢を聞けってことでしょうか?それで機嫌が良くなるなら安いもの。待てよ。もしかしてこの方法、ほかの患者さんにも使えるかも。そう思った私は、次に中年の男性患者さんに試してみました。この人は交通事故で受傷したのですが、いつも恨み辛みを言ってます。「それ、加害者に言ってくれよ」というのがこちらの本音。でも、なぜか私が愚痴を聞かされるわけです。が、今回の外来では武勇伝を語ってもらいました。コンビニで店員に怒鳴ってやったら、ほかの客もびっくりしていたとか、そんな困った話ですが。「いやあ、すごいですねえ!」と感心して見せたら、これまた患者さんは機嫌良く帰って行きました。効果絶大ですよ、これ。自慢話や武勇伝を聞いてあげることが、こんなにも人を明るく前向きにするとは!でも、考えてみれば、客の自慢を聞いてお金を頂く、というのは夜の街の常套手段。今頃になって気付いたか、中島!でも、この自慢話療法。何だか底知れぬ可能性を感じます。果たして誰に対しても効果があるものなのでしょうか?仮に効果があったとしても、効率のほうも大切です。話が長時間になったり、こちらが疲れてしまったりしては元も子もありません。幸い、私は愚痴より自慢を聞くほうが好きなので、さほど苦にならないかも。この新治療、もう少しいろいろな患者さんに試してみたいと思います。最後に1句 夏至去れど 自慢話は まだ続く

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ASCO2026 レポート 先端研究・希少がん

レポーター紹介[目次]SARC041試験(第III相試験)PEAK試験(第III相試験)StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験)RINGSIDE試験(第III相試験)EMITT-1試験【Abstract LBA2】SARC041試験(第III相試験):脱分化型脂肪肉腫に対するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの有効性を検証進行・再発脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma:DDLPS)に対し、CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが報告された。DDLPSでは12番染色体長腕(12q13-15)の増幅が高頻度に認められる。その部位にはCDK4やMDM2遺伝子増幅が認められる。そのため、CDK4阻害が治療として期待され、過去、単群の第II相試験が実施され、有効性が示唆されていた。本試験は、DDLPSにおいて第III相比較試験でCDK4阻害薬がpositiveな結果を示した点で重要である。本試験は、進行・再発または転移のあるDDLPS患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、患者をアベマシクリブ200mg 1日2回内服群またはプラセボ群に1:1で割り付けた。適格基準として前化学療法歴の有無は問わなかった。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後にはプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目であるPFS中央値は、アベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、アベマシクリブ群で統計学的に有意な延長を認めた(ハザード比[HR]:0.38、p<0.001)。6ヵ月PFS率は60%vs.22%、12ヵ月PFS率は39%vs.13%であった。奏効率はアベマシクリブ群9%、プラセボ群0%であった。全生存期間(OS)については、中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月であり、統計学的有意差には至らなかったものの、アベマシクリブ群で良好な傾向を認めた(HR:0.55、p=0.07)。プラセボ群の85%が病勢進行後にアベマシクリブへクロスオーバーしていた。探索的な解析であるが、前化学療法歴なしの患者のPFS中央値は16.4ヵ月、ありの患者では5.3ヵ月であった。安全性については、アベマシクリブで既知の有害事象プロファイルとおおむね一致していた。主な有害事象は、下痢、血球減少、貧血、白血球減少、クレアチニン上昇などであり、用量減量を要した症例はアベマシクリブ群で39%であった。本試験の結果から、アベマシクリブは進行・再発DDLPSにおける新たな治療選択肢となると考える。一方、本試験は海外の臨床試験グループにより実施されたものであり、日本ですぐに使用可能な状況とはならない。今後、日本での治療開発も期待される。目次に戻る【Abstract 11500】PEAK試験(第III相試験):イマチニブ治療後GISTに対するbezuclastinib+スニチニブ併用療法の有効性イマチニブ治療後の進行消化管間質腫瘍(GIST)に対し、KIT阻害薬であるbezuclastinibとスニチニブの併用療法が、現在の標準的2次治療であるスニチニブ単剤と比較してPFSを有意に延長することが、PEAK試験の結果として報告された。GISTでは、1次治療のイマチニブ後に耐性機構としてKITの2次変異が出現することが知られており、exon13/14やexon17/18変異がその代表である。現在の標準的な2次治療はスニチニブであるが、スニチニブはexon13/14への阻害活性が高い一方、exon17/18への阻害活性が乏しい。bezuclastinibは次世代のKIT阻害薬であり、exon17/18への阻害活性を有している。両者を併用することで広範にKIT変異をカバーする意義を検討したのが本試験である。本試験は、イマチニブ抵抗性または不耐の進行GIST患者を対象とした国際共同第III相ランダム化試験である。主要評価項目であるPFS中央値は、bezuclastinib+スニチニブ群16.5ヵ月、スニチニブ単剤群9.2ヵ月であり、併用群で統計学的に有意な延長を認めた(HR:0.50、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、exon17/18変異、exon13/14変異、またKITの1次変異であるexon9、exon11変異の状況にかかわらず、全体的に併用群で良好であった。奏効率も併用群46%、スニチニブ単剤群26%と、併用群で高い腫瘍縮小効果が示された。OSは、データカットオフの時点でイベント数が20%未満であり、現時点でimmatureであった。PFS2においても併用群に良好な傾向が示された。安全性については、bezuclastinib+スニチニブ併用による新たな安全性シグナルは認められず、全体としてスニチニブの既知の安全性プロファイルとおおむね一致していた。Grade3以上の主な有害事象としては、高血圧、好中球減少、肝機能上昇、貧血、下痢などが報告された。ALT/AST上昇は併用群で多い傾向があるものの、多くは可逆的で管理可能とされた。本試験では、イマチニブ治療後GISTにおいて、スニチニブ単剤に対してbezuclastinib+スニチニブ併用療法が明確な優越性を示した。新たな標準治療候補となる可能性が高い。現在、FDAではpriority review(優先審査)となっている。本試験に日本は参加しておらず、今後日本での本治療開発が期待される。目次に戻る【Abstract 11501】StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験):進行GISTに対する新規KIT阻害薬velzatinibの1次・2次治療における有効性の示唆先に記載したPEAK試験に続き、同セッションで本StrateGIST 1試験が発表された。進行・再発または切除不能のGISTに対し、新規KIT阻害薬であるvelzatinib(IDRX-42)が、1次治療および2次治療のいずれにおいても有望な抗腫瘍活性と忍容性を示すことが報告された。velzatinibは、新規KIT阻害薬を創出する目的でexon13変異を対象としたハイスループットスクリーニングとその後の最適化のステップを経て開発された経緯がある(Blum A, et al. J Med Chem. 2023;66:2386-2395.)。velzatinibはexon14変異以外の1次、2次KIT変異に対して高い阻害活性を有する。StrateGIST 1試験は、進行GIST患者を対象としたfirst-in-humanの第I/Ib相試験であり、今回の解析では推奨第Ib相用量であるvelzatinib 300mg錠または曝露量が同等となる400mgカプセルを投与された1次治療例および2次治療例が評価された。対象は、KITまたはPDGFRAに変異を有する進行・再発または切除不能GIST患者であり、1次治療コホートでは未治療例、2次治療コホートでは主にイマチニブ治療後の患者が含まれた。有効性評価可能例は、1次治療コホート23例、2次治療コホート46例であった。1次治療コホートでは、未確定奏効率は65%、確定奏効率は56%であり、多くの症例で腫瘍縮小が認められた。最大腫瘍縮小までの期間は中央値8.1ヵ月であり、データカットオフ時点で83%の患者が治療継続中であった。観察期間中央値は7.4ヵ月であり、PFSはimmatureであった。観察期間はまだ限られるものの、初回治療として高い腫瘍縮小効果と持続的な病勢制御が期待される結果である。2次治療コホートでは、未確定奏効率は40%、確定奏効率は33%であり、PFS中央値は13.7ヵ月であった。安全性については、1次・2次治療例73例の解析において、治療関連有害事象(TRAE)は95%に認められ、Grade3以上のTRAEは33%であった。有害事象による治療中止は5%、用量減量は21%であり、全体として管理可能な安全性プロファイルであった。主な有害事象は、下痢、悪心、味覚異常、好中球減少、倦怠感、胃食道逆流症、貧血、食欲低下、腹痛、嘔吐などであった。Grade3以上では好中球減少や貧血が比較的多く認められており、血液毒性のモニタリングは重要と考えられる。本試験は単群の第I/Ib相試験であり、現時点で標準治療に影響があるものではない。しかし、velzatinibは1次治療では高い奏効率、2次治療ではPFS中央値13.7ヵ月という有望な成績を示しており、次世代KIT阻害薬として期待される。イマチニブ後の2次治療においては、スニチニブとの比較第III相試験であるStrateGIST 3試験が進行中である。一方で、1次治療としての位置付けについては、イマチニブとの比較試験や長期安全性、耐性変異出現パターンの検討が今後の課題である。目次に戻る【Abstract 11506】RINGSIDE試験(第III相試験):進行性デスモイド腫瘍に対するγセクレターゼ阻害薬varegacestatの有効性進行性デスモイド腫瘍に対し、経口γセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatがプラセボと比較して主要評価項目であるPFSを有意に改善することが、RINGSIDE試験の結果として報告された。デスモイド腫瘍は遠隔転移を来さないものの、局所浸潤性が強く、疼痛、機能障害、臓器障害を引き起こす中間悪性度の肉腫である。デスモイド腫瘍では、APCやβカテニンの変異によるWntシグナルの活性化が生じている。一方、Notchシグナルも腫瘍の病態に寄与している可能性が報告されている。DeFi試験では別のγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの有効性が示され、FDAで承認されている。本試験は、新規のγセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatについて検証したものである。RINGSIDE試験は、進行性デスモイド腫瘍患者156例を対象とした国際共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、varegacestat 1.2mg 1日1回投与とプラセボが比較された。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであり、主な副次評価項目としてRECIST v1.1に基づく奏効率、腫瘍体積変化、患者報告アウトカムによる疼痛評価などが設定された。主要評価項目であるPFSについて、varegacestatはプラセボと比較して病勢進行または死亡リスクを84%低下させた(HR:0.16、p<0.0001)。このPFS改善効果は、腫瘍部位、ベースライン腫瘍サイズ、年齢、前治療歴などのサブグループにおいても一貫していた。奏効率はvaregacestat群56%、プラセボ群9%であり、腫瘍縮小効果も明確に示された。さらに、疼痛スコアは投与開始後早期から改善し、12週時点で臨床的にも意味のある疼痛軽減が認められた。安全性については、全体としてγセクレターゼ阻害薬で予想される有害事象プロファイルと一致していた。主な有害事象は、下痢、倦怠感、皮疹、悪心、咳嗽などであり、多くはGrade1または2であった。一方、閉経前女性では卵巣機能に関連する有害事象が一定割合で認められており、若年女性に投与する際には妊孕性や月経異常に関する説明とモニタリングが重要である。また、有害事象による用量減量や中止も一定数みられており、長期投与を前提とした副作用管理が必要となる。本試験の結果から、varegacestatは進行性デスモイド腫瘍に対する有力な新規治療選択肢となる可能性がある。とくに、PFSのみならず、奏効率、腫瘍体積、疼痛という患者にとって臨床的意義の高い評価項目を同時に改善した点は重要である。一方で、すでに同じγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの臨床的位置付けが確立しつつあるため、今後は、有効性、安全性、卵巣機能への影響、投与スケジュール、患者背景ごとの使い分けが課題となる。現在、日本ではnirogacestatの単群の第II相試験が実施され、募集終了となっている(jRCT2031250269)。目次に戻る【Abstract 2500】EMITT-1試験:ERAP1阻害薬GRWD5769とセミプリマブ併用による抗腫瘍免疫再活性化の可能性免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示した複数の固形がんに対し、経口ERAP1阻害薬GRWD5769と抗PD-1抗体セミプリマブの併用療法が、早期臨床試験ながら複数のがん種で抗腫瘍活性を示したことが、EMITT-1試験の第Ib相拡大コホートの結果として報告された。免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の克服は重要課題である。ERAP1はMHC class Iに提示されるペプチドレパートリーの形成に関与する酵素である。ERAP1阻害により腫瘍細胞表面に提示される抗原ペプチドが変化し、T細胞による腫瘍認識を再誘導することが期待される。GRWD5769はfirst-in-classの経口ERAP1阻害薬であり、腫瘍の抗原提示を変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性を克服するという新しい免疫治療アプローチである。EMITT-1試験は、GRWD5769とセミプリマブ併用療法を評価する第I/II相試験であり、第Ib相拡大コホートでは、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、MSS大腸がん、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮がんの6コホートが検討された。多くの症例は既治療歴を有し、MSS大腸がんを除き、抗PD-1療法に対する2次抵抗性を示した患者が対象とされた。有効性については、各コホートで奏効率13~36%が報告された。尿路上皮がんでは奏効率36%、非小細胞肺がんでは21%、肝細胞がんでは14%、MSS大腸がんでは17%、子宮頸がんでは14%、頭頸部扁平上皮がんでは13%であった。また、6ヵ月以上の奏効または安定を含むdurable clinical benefitも複数のコホートで認められ、非小細胞肺がんおよびMSS大腸がんではPFS中央値が33週と報告された。とくに、MSS大腸がんは一般に免疫チェックポイント阻害薬単独では有効性が乏しい集団であり、本併用療法のシグナルは注目される。安全性については、全体として忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。多くの有害事象はGrade1であり、免疫関連有害事象も限定的であった。本試験は早期相試験であり、対象患者数も限られているため、現時点で標準治療を変える結果ではない。しかし、ERAP1阻害による抗原提示改変という新しい治療戦略が、臨床的にも抗腫瘍活性を示しうることを示した点で意義が大きい。今後は、ランダム化第II相試験での検証、奏効予測バイオマーカーの同定、がん種別の最適な対象集団の絞り込みが重要となる。目次に戻る

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第67回 「長生き」を買おうとする富豪たち、その方法に科学はあるのか

「死なない男」として知られる起業家ブライアン・ジョンソン氏は、2019年から、寿命を延ばす目的で、ある薬を毎日のように自分に注射し続けてきました。本来は臓器移植の拒絶反応を防ぐために使う免疫抑制薬「ラパマイシン」です。ところが2024年9月、彼はこの「実験」をやめます。皮膚の感染症や血糖値の上昇、脂質の異常などが現れ、利益よりも害が上回ると判断したからでした。彼のように、自分の体を「ハッキング(改造)」して数年でも長く生きようとするIT長者たちが増えています。そして、その試みをSNSなどで世界中に発信しています。今回は、こうした「バイオハッキング」ブームの実態を伝えたNature誌の記事1)をもとに、ご紹介します。富豪たちが試す、さまざまな「若返り術」ジョンソン氏は「ブループリント」と名づけた自己流の健康法を公開し、多くの追随者を生んでいます。彼が取り入れている方法の1つが、若い人から血液をもらう「若年血漿(けっしょう)輸血」です。これは米国食品医薬品局(FDA)が2019年と2024年に「効果の根拠がなく危険」と警告したものでした。ほかにも、別の富豪が「120歳まで生きたい」と成長ホルモンを使っていることを公言したり(医療機関は健康な大人への効果を疑問視しています)、集中力を高めるとして染料由来の物質やニコチン製品を勧めたりと、その種類はさまざまです。これらに共通するのは、効果や安全性がはっきりしないまま広まっている点です。科学的な裏づけは、どこまであるのかもちろん研究者たちは慎重です。老化そのものに働きかけて人の寿命を延ばすと明確に証明された方法は、いまのところ1つもないからです。ある専門家は、わずかなデータの中に「期待できそうな兆し」と「雑音」が入り交じり、一般の人にはその区別が難しいと指摘します。たとえば話題のラパマイシンは、マウスの寿命を23~60%延ばしたという研究があります2)。しかし、ヒトで同じことを示すのは簡単ではありません。ヒトでの研究はごくわずかで、65歳以上の200人余りでワクチンの効きがよくなったという2014年の報告3)や、高齢者の呼吸器感染症が減ったという2018年の報告4)がある程度です。研究者が333人の使用者を調べた2023年の調査では「生活の質が上がった」との声が多かったものの、本人の自己申告に頼っており、悪い経験をしてやめた人が含まれていない可能性が高いと、研究チーム自身が限界を認めています5)。一方で、糖尿病薬のメトホルミンや、肥満症で使われるGLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)のように、加齢に伴う病気を遅らせる可能性が期待され、臨床試験が進んでいる薬もあります。「自分1人のデータ」という落とし穴最大の問題は、富豪たちが自分1人の体で試した結果が、そのまま一般の人へと「正しい基準」のように広まってしまうことです。本来、薬の効果を確かめるには、数千人規模で慎重に比較する臨床試験が欠かせません。「科学は『1人(n=1)』では成り立たない」のです。しかし、健康長寿を支援するクリニックには「ブループリントをやりたい」「あの成分が欲しい」と、検査も受けないうちに名指しで求める人が増えているそうです。また、影響力のあるインフルエンサーの中には、自分のブランドのサプリメントを売る人もいますが、商売上の利害がからんでいることが、見ている側には伝わりにくい構造もあります。きちんとした臨床試験には大規模な費用がかかりますが、それは富豪たちの資産からすればごく一部にすぎません。しかし、その熱意と資金は本物の科学に向けられているとは言えない実情があります。日本でも、海外の健康トレンドはSNSを通じてすぐに入ってきます。「海外の有名人がやっているから」は、効果や安全の証拠にはまったくならない。そんな冷静な視点を、私たち一人ひとりが持っておきたいものです。1)Stokel-Walker C. Tech tycoons are biohacking for a longer life: is there science behind their methods? Nature. 2026;654:589-591.2)Miller RA, et al. Rapamycin-mediated lifespan increase in mice is dose and sex dependent and metabolically distinct from dietary restriction. Aging Cell. 2014;13:468-477.3)Mannick JB, et al. mTOR inhibition improves immune function in the elderly. Sci Transl Med. 2014;6:268ra179.4)Mannick JB, Morris M, Hockey HP, et al. TORC1 inhibition enhances immune function and reduces infections in the elderly. Sci Transl Med. 2018;10:eaaq1564.5)Kaeberlein TL, Green AS, Haddad G, et al. Evaluation of off-label rapamycin use to promote healthspan in 333 adults. GeroScience. 2023;45:2757-2768.

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病院機能集約化の賛否は年代・病床数・診療科で異なる?/医師1,000人アンケート

 地域医療構想に基づき、地域内に点在している複数の病院が有する特定の医療機能を拠点となる一部の病院に集め、医療資源を効率的に配置する病院機能の集約化が進められている。それにより、医療の質の維持・向上や、医療者の労働環境の改善が期待されるが、集約化の対象となる診療科に勤務する医師は好意的に捉えているのか。CareNet.comでは、20床以上の病院の内科、外科、小児科、産婦人科、腫瘍科、救急科勤務の医師1,000人を対象に「医療機関の経営状況や病院機能の集約化」に関するアンケートを行った(実施日:2026年5月18~19日)。施設規模が大きくなるにつれて経営状況が不良に Q1では、まず2025年度の勤務先の病院の経営状況について聞いた(単一回答)。全体では、「良好である」が31%、「良好ではない」が50%、「わからない」が19%であり、ちょうど半数の医師が経営状況に不安を感じていることが明らかになった。 病床数別では、20~99床の施設は「良好である(38%)」と「良好ではない(37%)」がほぼ同数であったが、「良好ではない」が100~199床では43%、200床以上では54%と、施設規模が大きくなるにつれて経営状況の悪化が目立った。年代別では、20~50代の医師の勤務先は「良好ではない」が53~54%と半数を超えていたが、60代以上では40%と低かった。これは、本調査の回答者は、年代が上がるにつれて、大規模病院から中小規模病院に勤務する割合が増えていたことに起因すると考えられる。 診療科別では、「良好ではない」は小児科(60%)、外科(57%)、救急科(55%)、腫瘍科(55%)で半数以上であり、全体(50%)よりも高い選択率であった。「良好ではない」が最も少ないのは内科(43%)であった。勤務先の経営状況への危機感が最も強いのは腫瘍科 Q2では、勤務先の今後の経営状況について危惧しているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では「危惧している」が35%、「どちらかというと危惧している」が43%、「どちらかというと危惧していない」が16%、「危惧していない」が6%であり、「危惧している」+「どちらかというと危惧している」を合わせて78%が危機感を抱いていた。 なお、Q1で勤務先の病院の経営状況が「良好である」と回答した医師の「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合は64%であったのに対し、「良好ではない」と回答した医師では92%とやはり危機感が顕著であった。 年代別の「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合は、20~30代が80%、40代が84%、50代が81%と高かったが、60代以上になると68%と大きく減少した。病床数別では、施設規模が大きくなるほど「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合が増えた(20~99床:70%、100~199床:74%、200床以上:80%)。 診療科別ではばらつきが大きく、「危惧している」+「どちらかというと危惧している」が最も少ないのは産婦人科(68%)であった。一方、最も多いのが腫瘍科(90%)で、「危惧している」が55%、「どちらかというと危惧している」が35%と、非常に強い危機感を抱いていることが示唆された。若い世代ほど病院機能の集約化に強く賛成 Q3では、地域医療構想に基づく病院機能の集約化に賛成か反対かを聞いた(単一回答)。全体では「賛成」が28%、「どちらかというと賛成」が54%、「どちらかというと反対」が16%、「反対」が2%であり、82%の医師が賛成派であった。すべての年代で「賛成」+「どちらかというと賛成」は75%を超えていたが、若い世代ほど「賛成」が多く、より強固な支持を集めていた(20~30代:33%、40代:32%、50代:29%、60代以上:18%)。 病床数別では、施設規模が大きくなるほど「賛成」および「どちらかというと賛成」のいずれも右肩上がりに増えていった。診療科別の「賛成」+「どちらかというと賛成」が最も多かったのは小児科と救急科(いずれも92%)であった。腫瘍科では「賛成」が50%に上り、とくに強い支持を集めていた。病院機能の集約化の最大の懸念は「医療アクセスの低下」 Q4では、病院機能の集約化の問題点があるとしたら何かを聞いた(複数選択[3つまで])。全体では、「医療アクセスの低下」「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」「大病院への負担集中」「医療者の偏在」「医療者の業務負担増加・働き方の悪化」「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」「患者の不安増大」「患者の医療機関選択の制限」と続いた。 「地域医療の弱体化」は若い世代ほど選択率が高く、「医療者の偏在」は年代が上がるにつれて選択率が高まった。「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」は20~30代および60代以上と比較して40代・50代で多く選ばれており、実務の中心を担う世代ならではの懸念がうかがえた。 病床数別では、「大病院への負担集中」は200床以上の施設の医師で選択率が高く、勤務先の施設では負担が増大すると予想しているようであった。「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」も施設規模が大きくなるほど多くなった。「医療アクセスの低下」「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」は20~99床で多かった。 診療科別では、「医療アクセスの低下」「医療者の偏在」が産婦人科で突出して多かった。救急科では「大病院への負担集中」「医療者の業務負担増加・働き方の悪化」、腫瘍科では「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」が全体を大きく上回っていた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。 医療機関の経営状況や病院機能の集約化/医師1,000人アンケート

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日本の内科医と精神科医でアルツハイマー病に伴うアジテーションに対する治療方針が異なっている?

 認知症の行動・心理症状であるアジテーションは、日本ではいまだ十分に認識されていない。東京慈恵会医科大学の品川 俊一郎氏らは、日本におけるアルツハイマー病に伴うアジテーションに対する医師の認識と治療実践を明らかにするため、ウェブベースの横断調査を実施した。Scientific Reports誌オンライン版2026年5月7日号の報告。 調査対象は、神経内科、脳神経外科、精神科、または一般内科の医師で、調査パネルに登録し、参加に同意した医師。病院またはクリニックで勤務し、月10例以上のアルツハイマー病患者を診療していることを条件とした。調査は、2024年10月にウェブベースで実施した。 主な内容は以下のとおり。・回答医師数は529人。1ヵ月当たりに診察していた平均アルツハイマー病患者数は35.0例、そのうち8.4例(24%)がアルツハイマー病に伴うアジテーションを有していると回答した。・アジテーションという言葉から何を連想するかという質問に対し、医師が最も多く挙げたのは、神経精神症状評価尺度(NPI)の「興奮・攻撃性」項目に相当する日本語の「興奮性」であった(58.6%)。・一般内科では、24.2%の医師がアジテーションの概念を認識していなかった。・アルツハイマー病の新規治療薬として、最も多く選択されたのは抗認知症薬(91.7%)であった。・一方、精神科では抗精神病薬が最も多く選択され(95.8%)、他の診療科よりも副作用を重要な考慮事項として挙げる傾向が高かった。 著者らは「これらの結果は、アルツハイマー病に伴うアジテーションの認識と治療方法が診療科によって異なることを示唆しており、とくに抗精神病薬の処方において顕著であった。精神科医は、安全性に対する意識が高い一方、他の診療科、とくに一般内科では、アルツハイマー病に伴うアジテーションの認識が低いことがその傾向に表れていると考えられる」としている。

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パーキンソン病へのiPS細胞由来「ラグネプロセル」薬価収載、最適使用推進ガイドライン発出

 パーキンソン病に対する再生医療等製品「ラグネプロセル(商品名:アムシェプリ)」について、住友ファーマが日本における製造販売承認(条件及び期限付承認)を2026年3月6日に取得し、5月20日に薬価収載された。本品の使用に当たっては、厚生労働省より5月19日に「最適使用推進ガイドライン」が発出された。 ラグネプロセルは、世界初となる日本発のiPS細胞由来製品で、京都大学iPS細胞研究財団が提供するiPS細胞ストックを原材料とした、「非自己(他家)iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」を有効成分とする再生医療等製品に分類される。本品の効能、効果又は性能として、レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善とされている。本品は1回当たりの薬価が5,530万6,737円となるが、公的医療保険の対象となり、高額療養費制度や難病医療費助成制度も適用される。製造販売後のスケジュールと流通 ラグネプロセルは「条件及び期限付承認」の品目であり、製造販売後承認条件評価として製造販売後臨床試験(第IV相試験)および使用成績調査の実施が義務付けられている。住友ファーマの3月6日付のリリースによると、2026~29年頃までは、第IV相試験に参加する患者のみが移植対象となる。登録患者数は計35例(18歳以上65歳以下が30例、30例の移植完了後に65歳超が5例)を予定しており、実施施設は選定中の7施設となる見込みである。第IV相試験の終了後にあらためて申請を行い、本承認を取得した後に施設や対象患者の範囲が拡大される見込みとなっている。移植対象となる患者の選択基準 「最適使用推進ガイドライン」に定められた患者選択における主な適格基準は以下のとおり。・パーキンソン病と診断され、罹病期間が5年以上の者。・既存の薬物療法ではパーキンソン病の運動症状のコントロールが十分に得られていない者。・MDS-UPDRS Part III及び/又は症状日誌からオンとオフの状態を有する者。・オフ時のH&Y重症度分類が2度以上の者。・オン時のH&Y重症度分類が3度以下の者。・抗パーキンソン病薬休薬時(practically defined off)のレボドパ反応性が30%以上である者。 なお、臨床試験において70歳超の患者への移植経験がないことなどから、70歳超の患者への移植については有益性と危険性をより慎重に評価した上で判断することが求められている。ガイドラインに基づく施設要件 本品は定位脳手術による局所投与を行うため、以下の厳格な施設要件が規定されている。・対象施設:特定機能病院、大学附属病院(脳神経外科に係る診療科を有する場合に限る)、日本脳神経外科学会の基幹・連携施設、若しくは日本定位・機能神経外科学会の認定施設。・人員配置:適切な患者選択および術後管理が実施できる日本脳神経外科学会認定専門医、および日本神経学会認定神経内科専門医がそれぞれ1名以上配置されていること。また、随伴する免疫抑制療法(タクロリムス)に関連する有害事象発現時に適切に対応できる医師が配置されていること。・診療体制:重篤な不具合・副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、当該施設または連携施設において当日中に入院管理および必要な検査結果が得られ、直ちに対応可能であること。・検査体制:自施設または連携施設で[18F]FDOPA PET検査の実施体制を有し、かつオフ時のMDS-UPDRSスコアを評価できること。有効性および安全性の評価 承認の根拠となった第II相試験の非盲検非対照国内試験(IACT16049-01試験)(有効性解析対象集団6例)における、移植後24ヵ月時の主な成績は以下のとおり。・有効性について、オフ時でのMDS-UPDRS Part III合計スコアのベースラインからの平均変化量は-9.5±13.8であり、6例中4例で著効(5点以上の改善)と判断された。また、6例全例で移植後12ヵ月および24ヵ月時点で被殻への細胞生着が確認された。・安全性について、本品の副作用発現割合は14.3%(1/7例)であった。タクロリムスの副作用発現割合は42.9%(3/7例)であり、2例以上に認められた副作用は軽度の腎機能障害(2例)であった。左右それぞれで3cm3を超える脳内の移植片の増大は全例で認められなかった。 ただし、本品はiPS細胞由来の製品であり、移植片の増大や腫瘍形成の理論的リスクを完全には否定できないため、投与後は定期的なMRI観察(移植翌日、12週、6ヵ月、12ヵ月、16ヵ月、18ヵ月、24ヵ月、その後は定期的に実施)を行うことが留意事項として挙げられている。【製品概要】商品名:アムシェプリ(18瓶1組)一般名:ラグネプロセル対象となる効能、効果又は性能:レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善薬価:55,306,737円対象となる用法及び用量又は使用方法・本品の移植 通常、成人には、非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞として片側あたり5.4×106個を目標として、定位脳手術により、両側の被殻に移植する。頭蓋骨の小孔1箇所を通る3つの投与経路から、1投与経路あたり約1.8×106個を1〜2mm間隔で6〜9箇所に分けて移植する。注入速度は約0.1μL/秒とする。・本品に対する免疫反応の抑制を目的とした本品移植前後のタクロリムス水和物の投与方法 通常、初期にはタクロリムスとして1回0.03~0.15mg/kgを1日2回、移植日の朝から経口投与する。以後、目標血中トラフ濃度を5~10ng/mLとし、血中トラフ濃度をモニタリングしながら投与量を調節する。 拒絶反応が認められた場合は、目標血中トラフ濃度を10~20ng/mLとする。 投与開始後1年を目安に、以後12週間かけて漸減し投与を中止するが、必要に応じて投与期間を延長する。製造販売業者:住友ファーマ株式会社

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多発性骨髄腫治療薬イサツキシマブ、皮下注射製剤の承認取得/サノフィ

 サノフィは2026年6月19日、イサツキシマブ(商品名:サークリサ)について、皮下注射製剤の製造販売承認を取得した。この承認は、多発性骨髄腫に対する、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法(Kd)、ボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(VRd)を対象としている。 今回の承認により、イサツキシマブは点滴静注製剤に加え、皮下注射製剤による提供が可能になる。皮下注射製剤では、市販のシリンジを用いた手動による皮下投与が可能になり、静脈内投与と比較して投与に要する時間の大幅な短縮が可能で、患者さんや医療従事者の負担を軽減することが期待される。また、皮下投与では静脈内投与より緩徐に吸収されるため、infusion reaction発現率の低下が臨床試験で示されている。なお、臨床試験では、開発中のEnable Injections社のハンズフリー自動インジェクターであるenFuse OBIを用いて皮下投与された。 今回の承認は、国際共同第III相試験であるIRAKLIA試験を含む5つの試験結果に基づいている。IRAKLIA試験では、レナリドミドおよびプロテアソーム阻害薬を含む1次治療以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫の成人患者を対象に、PdにイサツキシマブをOBIを用いて1,400mg皮下投与を併用する治療法と、10mg/kg静脈内投与を併用する治療法を比較した。結果は、奏効率(ORR)と定常状態における投与前血中薬物濃度(トラフ濃度)を複合主要評価項目として、静脈内投与に対する皮下投与の非劣性が示された。ORRは皮下投与群71.1%、静脈内投与群70.5%であり、安全性データは、これまで静脈内投与で確立されている安全性プロファイルと同様であった。また、OBIを用いた皮下投与の重大な安全上の問題は認められなかった。

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セマグルチドがMASH適応を取得、国内初の治療薬に/ノボ

 2026年6月19日、ノボ ノルディスク ファーマは同社のGLP-1受容体作動薬セマグルチド(ウゴービ)が、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)のうち、中等度または高度の肝線維化を有する患者を対象とした効能・効果の追加承認を取得したことを発表した。これにより同薬は日本で初めて承認されたMASH治療薬となる。 MASHは、従来「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」として知られていた疾患概念を発展させたもので、代謝異常を背景として肝細胞障害や炎症、線維化が進行する慢性肝疾患である。初期には自覚症状に乏しい一方で、病態が進行すると肝硬変や肝不全、肝細胞がんに至る可能性があり、近年その疾病負荷が大きな課題となっている。 今回の承認は、ステージF2またはF3の肝線維化を有するMASH患者を対象に実施された第III相ESSENCE試験パート1の結果に基づくもの。同試験では、セマグルチド2.4mg週1回皮下投与群とプラセボ群を比較し、72週時点での肝組織学的改善を評価した。 主要評価項目の1つである「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」は、セマグルチド群で36.8%、プラセボ群で22.4%に認められ、統計学的に有意な改善が示された。また、もう1つの主要評価項目である「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」は、セマグルチド群で62.9%、プラセボ群で34.3%となり、セマグルチド群が有意に高い達成率を示した。安全性については、これまでの肥満症治療や糖尿病治療で蓄積されたデータと概ね一致しており、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 ESSENCE試験は総計約1,200例を対象とし、セマグルチドを240週間投与する設計となっている。今回の承認申請は、約800例を対象とした72週時点の中間解析結果に基づいて行われた。現在進行中のパート2では、240週時点における肝関連イベント発症リスクの低減効果を検証しており、試験完了は2029年を予定している。 日本におけるMASHの有病率は約3%と推計されている。肥満症や2型糖尿病との関連が強く、心血管疾患リスクの上昇に加え、大腸がんや乳がんなど肝外悪性腫瘍との関連も指摘されている。さらに、肝がんへ進展した場合には予後不良であり、早期介入と進行抑制が重要視されている。 これまでMASHに対しては体重減少を目的とした生活習慣改善が治療の中心であり、承認薬が存在しなかった。今回の承認により、疾患そのものに対する薬物治療の選択肢が初めて提供されることになる。 肥満症治療薬として広く使用されているGLP-1受容体作動薬が、MASHに対しても有効性を示したことで、代謝性疾患と慢性肝疾患を横断した包括的な治療戦略への期待が高まる。今後は実臨床における長期予後改善効果や肝関連イベント抑制効果に関するエビデンスの蓄積が注目される。【製品概要】一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)商品名:ウゴービ効能または効果:◯肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上◯肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る。

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飲食制限のない経口GLP-1薬elecoglipron、2型DM患者のHbA1cを有意に改善/Lancet

 2型糖尿病治療薬として開発中の1日1回経口投与の低分子GLP-1受容体作動薬elecoglipronは、プラセボと比較して、より優れた血糖降下作用を示し、安全性および忍容性プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と同様であった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、日本を含む9ヵ国で行われた第IIb相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SOLSTICE試験」の結果を報告した。elecoglipronは、食事や水分制限なしに投与ができる。著者は、「2型糖尿病患者を対象とする第III相試験でさらなる開発を進めることが支持された」とまとめている。Lancet誌2026年6月20日号掲載の報告。 第IIb相試験、5~75mgを1日1回26週間にわたり経口投与 第IIb相試験は、9ヵ国(カナダ、ドイツ、ハンガリー、日本、ポーランド、スロバキア、スペイン、英国、米国)の医学研究センターおよび病院で実施された。食事・運動療法のみ、あるいはメトホルミンまたはSGLT2阻害薬の単剤療法を受けている2型糖尿病患者を対象に、elecoglipron治療についてさらなる評価を行うよう設計され、5~75mgを1日1回26週間にわたり経口投与するレジメンについて評価が行われた。試験施設は、試験実施要件(規制当局および倫理委員会による承認、適切な施設設備および人員確保、対象患者集団へのアクセスほかを含む)を満たす能力に基づき選定された。 主な適格基準は、18歳以上、BMI値23以上、2型糖尿病(HbA1cが7.0%以上10.5%以下[米国は6.5%以上10.5%以下])、食事・運動療法単独あるいは安定用量のメトホルミンまたはSGLT2阻害薬の単剤療法を受けていることとした。双方向ウェブ応答システムを用いて、elecoglipronの固定用量群(5mg/日群、15mg/日群、25mg/日群)、または目標用量を50mgまたは75mgとする用量漸増群(2週間隔で50mg/日に漸増する群、2週間隔で75mg/日に漸増する群、4週間隔で75mg/日に漸増する群)、これらレジメンの適合プラセボ群、あるいは非盲検下で経口投与するセマグルチド14mg/日(4週間隔で漸増)群に、3対5対3対5対3対3対6対4の割合で無作為に割り付けられた。参加者、治療担当医、試験スポンサーは、elecoglipron群およびプラセボ群について盲検化され、セマグルチド群については盲検化されなかった。 主要エンドポイントは、26週時におけるHbA1cのベースラインからの変化量であった。プラセボと比較しHbA1cが大きく改善 2024年10月8日~2025年6月6日に、863例が試験の適格性についてスクリーニングされた。適格基準を満たしていない、または除外基準に該当した457例を除外。406例が登録され、8つの治療群のいずれか1つを受けるよう無作為化され、404例が少なくとも1回の試験治療を受けた。 404例のベースライン特性(平均[SD])は、年齢58.4歳(10.7)、HbA1cが7.9%(0.9)、体重99.8kg(22.1)、BMI値34.9(7.5)で、168例(42%)が女性、また280例(69%)が白人であった。 26週時点におけるHbA1cのベースラインからの変化量は、プラセボ群-0.15%(95%信頼区間[CI]:-0.42~0.12)に対し、elecoglipron投与群は5mg群の-0.91%(95%CI:-1.25~-0.58)から2週間隔で目標用量75mg/日に漸増する群の-1.88%(95%CI:-2.23~-1.53)の範囲にわたった。 有害事象の発現割合は、プラセボ群63%(45/71例)に対し、elecoglipron投与群は5mg群の63%(24/38例)から4週間隔で75mg/日に漸増する群の87%(33/38例)の範囲にわたった。最も多くみられたのは消化器系有害事象で、悪心、便秘、下痢、嘔吐などであった。

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フィネレノンが原因疾患や糖尿病の有無を問わずCKD患者の腎・心リスクを低減/Lancet

 原因疾患や血糖値、推算糸球体濾過量(eGFR)、アルブミン尿の程度が異なる慢性腎臓病(CKD)の患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンは腎不全単独を含むCKD進行リスクを抑制し、心不全による入院、心血管死および全死因死亡リスクを低下させることが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らFIND-CKD, FIDELIO-DKD and FIGARO-DKD Investigatorsが行ったメタ解析の結果で示された。フィネレノンは、2型糖尿病合併CKDにおいて腎関連および心血管系への有益性が示されているが、広範なCKD患者集団における有効性や安全性は評価されていなかった。結果を踏まえて著者は、「フィネレノンは多岐にわたるCKD患者の基礎治療として支持される」と述べている。Lancet誌2026年6月13日号掲載の報告。3つの無作為化二重盲検プラセボ対照試験の患者個別データをメタ解析 研究グループは、CKD患者におけるフィネレノンについて評価した3つの無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FIDELIO-DKD試験[2015年9月17日~2020年4月14日]、FIGARO-DKD試験[2015年9月17日~2021年2月2日]、FIND-CKD試験[2021年9月21日~2026年2月2日])の、被験者個々のデータを用いてメタ解析を行った。 Cox比例ハザードモデルを用いて、腎関連および心血管アウトカムへの相対的有効性を評価した。腎関連の主要アウトカムは、腎不全またはeGFRの57%以上の持続的な低下であり、心血管系の主要アウトカムは、心不全による入院または心血管死であった。腎関連複合アウトカムリスクを24%、心血管系複合アウトカムリスクを20%低下 3試験には1万4,574例が登録されており、平均年齢は63.7歳(SD 10.6)、女性4,467例(30.7%)、男性1万107例(69.3%)で、平均eGFRは56.4mL/分/1.73m2(SD 21.4)であり、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は567.4mg/g(四分位範囲:233.6~1,164.7)であった。 フィネレノンはプラセボと比較して、腎関連複合アウトカムのリスクを24%低下させ(22.3 vs.28.8件/1,000患者年、ハザード比[HR]:0.76[95%信頼区間[CI]:0.68~0.86])、腎不全単独のリスクも低下させた(HR:0.85[95%CI:0.74~0.99])。 また、フィネレノンはプラセボと比較して、心血管系複合アウトカムのリスクを20%低下させた(19.1 vs.23.9件/1,000患者年、HR:0.80[95%CI:0.70~0.91])。心不全による入院のHRは0.78(95%CI:0.66~0.92)、心血管死のHRは0.82(95%CI:0.67~0.999)であった。 フィネレノンは、全死因死亡のリスクも低下させた(HR:0.88、95%CI:0.79~0.99)。 腎関連複合アウトカムへの治療効果は、血糖値、CKDの原因疾患、ベースラインのeGFR値、アルブミン尿およびSGLT2阻害薬の使用状況を問わず一貫していた。 フィネレノン群ではプラセボ群よりも高カリウム血症が高頻度に認められたが、入院に至る高カリウム血症の絶対的な発現頻度は低かった。

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