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第39回 「不整脈ならカフェインは禁止」の常識が覆る?コーヒー愛好家に朗報

心臓に持病があるから、あるいは動悸が気になるからコーヒーを控えているという方も多いかもしれません。しかし、2025年11月にJAMA誌に掲載された最新の臨床試験「DECAF試験」1)が、その「常識」に大きな疑問を投げかけました。コーヒーを飲むことが、むしろ心房細動の再発予防につながるかもしれないというデータが報告されたのです。今回は、長年の医学的通説を覆す可能性のあるこの研究について、具体的なデータを交えながら解説していきます。「コーヒーは心臓に悪い」は迷信?「コーヒー(カフェイン)は不整脈の引き金になる」。これは長い間、医療現場でも患者さんの間でも広く信じられてきた通説でした。医師から「不整脈を抑えるために、コーヒーやお茶は控えましょう」と指導された経験がある方もいるかもしれません。実際に、この研究の参加者スクリーニングの段階でも、多くの患者さんが「コーヒーは発作の原因になる」と信じて参加を辞退したり、医師からのアドバイスで既にコーヒーを断っていたりしました。しかし、近年の観察研究(人々の生活習慣と病気の関連を観察する研究)では、コーヒーを飲む習慣がある人の方が、むしろ心房細動のリスクが低い、あるいは変わらないという結果が相次いで報告されていました。はたして、コーヒーは心臓にとって「毒なのか、薬なのか」。この矛盾に決着をつけるべく行われたのが、今回のランダム化比較試験「DECAF試験」です。これは、実際に患者さんをくじ引きで「コーヒーを飲むグループ」と「断つグループ」に分け、その後の経過を比較するという、コーヒーの影響を検証するのに信頼性のより高い研究手法です。200例の患者で検証、「飲む」vs.「断つ」の直接対決研究チームは、持続性の心房細動(または心房細動の既往がある心房粗動)を持ち、電気的除細動(電気ショックで心臓のリズムを正常に戻す治療)を受ける予定の患者200例を対象に調査を行いました。参加者はランダムに以下の2つのグループに分けられました。カフェイン摂取グループ(100例)1日1杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲むことを推奨。カフェイン断ちグループ(100例)コーヒー(カフェインレス含む)やその他のカフェイン製品を完全に断つことを推奨。試験開始前の時点では、両グループとも平均して週に7杯(1日1杯程度)のコーヒーを飲んでいました。試験期間中、摂取グループはそのままの習慣を続け、カフェイン断ちグループは摂取量をゼロに近づけました。そして、電気ショックの治療によって正常なリズムを取り戻した後、6ヵ月間でどれだけの人が再び心房細動(または心房粗動)を起こすかを追跡しました。なんと、コーヒーを飲んだ方が再発しなかったその結果は、従来の「常識」とは正反対のものでした。6ヵ月の追跡期間中に不整脈が再発した人の割合は、以下のとおりでした。カフェイン断ちグループ:64%カフェイン摂取グループ:47%なんと、コーヒーを飲んでいたグループのほうが、再発率が明らかに低かったのです。統計的に分析すると、コーヒー摂取グループは断ちグループに比べて、再発のリスクが39%も低いという結果になりました。さらに、心房細動の再発だけでなく、入院や救急外来の受診といった有害事象についても比較が行われましたが、コーヒー摂取グループで悪影響が増えることはありませんでした。むしろ、不整脈に関連した入院の数は、コーヒー摂取グループのほうが少ない傾向さえ見られました。この結果は、「心房細動の再発防止のためにコーヒーはやめたほうがいい」という従来の指導が、必ずしも正しくない可能性を強く示唆しています。なぜカフェインが「心臓の保護」につながるのか?なぜ、刺激物であるはずのカフェインが、逆に不整脈を抑える結果となったのでしょうか。研究者たちはいくつかのメカニズムを推測しています。一つは、カフェインが「アデノシン受容体」をブロックするためです。アデノシンという物質は、心房細動を引き起こしやすくする作用があることが知られています。カフェインはこのアデノシンの働きを邪魔することで、結果的に不整脈の発生を抑えている可能性があります。また、コーヒーには抗炎症作用や抗酸化作用を持つ成分も含まれています。全身の炎症は心房細動のリスク因子の一つであるため、コーヒーが炎症を抑えることで心臓を守っている可能性も考えられます。さらに、興味深い視点として「運動量」の影響も挙げられています。過去の研究では、コーヒーを飲む人は1日の歩数が多い傾向にあることが示されています。適度な運動は心房細動の予防に有効であるため、コーヒーを飲むことで活動的になり、それが間接的に再発予防につながったのかもしれません。コーヒー好きは無理に我慢しなくてもいい?今回の研究は、心房細動の患者さん、とくにコーヒー好きの方にとっては朗報と言えるでしょう。これまでは再発を恐れて好きなコーヒーを我慢していたかもしれませんが、少なくとも1日1杯程度の適度な摂取であれば、我慢する必要がないばかりか、むしろ有益である可能性が出てきたからです。ただし、この結果を生活に取り入れる際にはいくつか注意点もあります。まず、この研究で推奨されたのは「1日1杯程度のコーヒー」であり、カフェインの過剰摂取や、エナジードリンクのような高濃度のカフェイン製品を推奨するものではありません。エナジードリンクには他の成分も含まれており、同様の効果があるかは不明です。また、この研究は電気的除細動を受けた後の患者さんを対象としています。すべてのタイプの不整脈患者さんに当てはまるかどうかは、まださらなる検証が必要です。しかし、少なくとも「不整脈と診断されたら一律にコーヒー禁止」という画一的な指導は見直されるべき時期に来ているようです。香り高いコーヒーを楽しむリラックスタイムが、実は心臓のリズムを整える助けになるかもしれない。私のようなコーヒー好きには、そんなうれしいニュースの大きな第一歩となる研究だったかもしれません。参考文献 参考文献・参考サイト 1) Wong CX, et al. Caffeinated Coffee Consumption or Abstinence to Reduce Atrial Fibrillation: The DECAF Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025 Nov 9. [Epub ahead of print]

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中年期の高感度トロポニンI高値が認知症と関連/Eur Heart J

 中年期の高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)高値は、その後の認知症発症リスクの上昇、認知機能低下の加速、脳容積の減少と関連していたことが示された。本結果は、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのYuntao Chen氏らが実施した前向きコホート研究「Whitehall II研究」で示され、European Heart Journal誌オンライン版2025年11月6日号で報告された。 研究グループは、Whitehall II研究の参加者のうち、ベースライン時(1997~99年)に45~69歳で、認知症および心血管疾患の既往がなく、hs-cTnI値が得られた5,985例を対象として解析を行った。hs-cTnI値に基づき、参加者を4群(2.5ng/L未満[定量下限未満:参照群]、2.5~3.4ng/L、3.5~5.2ng/L、5.2ng/L超)に分類した。主要評価項目は認知症の発症とした。認知機能の推移および脳MRI画像指標(2012~16年のサブ解析:641例)についても評価した。また、認知症発症例と非発症例(年齢、性別、教育歴でマッチング)を1:4の割合でマッチングさせたコホート内症例対照研究により、認知症診断前のhs-cTnI値の長期的推移を検討した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の参加者の平均年齢は56歳であった。・追跡期間中央値24.8年時点において、606例(10.1%)が認知症を発症した。・年齢、性別、心血管リスク因子などを調整したCox比例ハザードモデルを用いた解析において、ベースライン時のhs-cTnI値(log2変換値)が2倍になるごとに、認知症発症リスクが10%上昇した(ハザード比[HR]:1.10、95%信頼区間[CI]:1.03~1.17)。・hs-cTnI値別に解析した結果、高値(5.2ng/L超)群は、低値(2.5ng/L未満)群と比較して、認知症発症リスクが有意に高かった(HR:1.38、95%CI:1.09~1.74)。・ベースライン時のhs-cTnI値が高いほど、加齢に伴う認知機能低下が速い傾向にあった。・90歳時点において、hs-cTnI高値(5.2ng/L超)群は、低値(2.5ng/L未満)群と比較して、標準化された全体的認知機能スコアが低く(群間差:-0.19、95%CI:-0.35~-0.03)、これは約2年の加齢に相当する低下であった。・コホート内症例対照研究では、認知症診断の25年前から7年前にかけて、認知症発症群は非発症群よりhs-cTnI値が一貫して高い値で推移していた。・MRIサブ解析(ベースラインから平均15年後に測定)において、hs-cTnI高値(5.2ng/L超)群は低値(2.5ng/L未満)群と比較して、灰白質容積が小さく(群間差:-0.64%、95%CI:-1.05~-0.24)、海馬萎縮スコアが高かった(スコア比:1.18、95%CI:1.00~1.40)。これらはそれぞれ2.7年および3.0年の加齢の影響に相当した。なお、白質高信号域(white matter hyperintensities)との有意な関連は認められなかった。 本研究結果について、著者らは「中年期における無症候性心筋障害(hs-cTnI高値)は、晩年の認知症リスク上昇と関連していた。中年期にhs-cTnIを測定することは、認知機能低下や認知症のリスクがある集団を早期に特定するために有用である可能性がある」とまとめている。

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夕食時間が蛋白尿に影響、時間帯や患者特性は?

 蛋白尿や微量アルブミン尿は、心血管疾患および全死亡リスク上昇との関連が報告されている。また、いくつかの研究で、夕食時間の遅さと蛋白尿との関連が報告されているが、患者特性などは明らかにされていない。そこで今回、りんくう総合医療センター腎臓内科の村津 淳氏らは、夕食時間の遅さが蛋白尿を来すことを明らかにし、とくに低BMIの男性で強く関連することを示唆した。本研究結果はFront Endocrinol誌2025年11月10日号に掲載された。 研究者らは、夕食時間の遅さと蛋白尿の出現との関連を評価するため、りんくう総合医療センターの健康診断データを用い、推定糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2以上で腎疾患の既往のない2,127人(男性1,028人、女性1,099人)を対象に横断研究を実施。週3日以上、就寝前2時間以内に夕食を取った参加者を夕食時間が遅い群と定義した。夕食時間による蛋白尿の影響は、臨床的関連因子(年齢、性別、喫煙歴、飲酒歴、既往歴など)を調整したロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、これまでに報告された横断研究では、蛋白尿の有病率はBMI(kg/m2)とJ字型関係を示していることから、今回、男女別でBMIと腹囲を各3群に区分。BMIは、男性では22.3未満、22.3~24.9、24.9以上に分け、女性では20.3未満、20.3~23.0、23.0以上と分けた。腹囲(cm)は、男性は83.0未満、83.0~90.1、90.1以上、女性は75.0未満、75.0~83.5、83.5以上として評価した。 なお、「蛋白尿陽性」は尿試験紙法で蛋白尿±以上と定義した。その理由として、尿蛋白±が微量アルブミン尿に相当し、糸球体障害の早期段階や心血管リスクの上昇を反映することから、早期腎障害も評価に含めるためとしている。 主な結果は以下のとおり。・夕食時間が遅かったのは、男性297人(28.9%)、女性176人(16.0%)であった。・多変量調整後のロジスティック回帰分析の結果、夕食時間の遅さは男性の蛋白尿の出現率に有意に関連し、臨床的関連因子調整後も低BMI(BMI24.9kg/m2未満)の男性で有意であった(調整オッズ比は、それぞれ3.57[1.34~9.48]、3.15[1.22~8.13])。・BMI、腹囲が共に低いほど蛋白尿と有意な関係を認めた。・BMIが24.9kg/m2以上の高BMIではこの関連は認められなかった。

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ガイドライン順守率が精神疾患の長期アウトカムに及ぼす影響〜統合失調症とうつ病におけるEGUIDEプロジェクト

 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)は、精神科医に対してガイドラインの教育の講習を行い、統合失調症およびうつ病のガイドライン順守治療を促進することを目的として、日本で開始されたプロジェクトである。参加医師への短期的な効果は、すでに報告されていたが、長期的および施設全体への効果は依然として不明であった。国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、ガイドライン順守による治療が、施設間で時間の経過とともに改善するかどうかを評価した。その結果、潜在的な拡散効果またはスピルオーバー効果が示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年12月号の報告。 2016〜23年に、精神科施設298件を対象としたプロスペクティブ観察研究を実施した。統合失調症患者1万9,623例とうつ病患者9,805例の退院時処方箋および治療データを収集した。ガイドライン順守は、11の統合失調症品質指標(QI-S)と7つのうつ病品質指標(QI-D)を用いて評価した。年齢、性別、施設で調整した後、多重比較ではBonferroni補正を用いたロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症については、11のQI-Sのうち7つにおいて、前年比で有意な改善が認められた。改善された項目には、治療抵抗性統合失調症の診断評価(42.2%→62.5%)、修正型電気けいれん療法(mECT)の使用(6.1%→11.8%)、抗コリン薬を使用しない(70.7%→81.7%)などが挙げられた。・うつ病については、7つのQI-Dのうち3つにおいて、前年比で有意な改善が認められた。改善された項目には、重症度診断の評価(51.2%→77.0%)、mECTの使用(12.8%→26.6%)などが挙げられた。・とくに、認知行動療法(CBT)の実施が減少した。・これらの知見は、すべての施設において、参加していない臨床医に対しても長期的な行動変化が及んでいることを示唆している。 著者らは「EGUIDE講習を受けた精神科医が施設内にいることで、施設レベルのガイドラインを順守した治療の持続的な改善が認められた。これらの結果は、個々の教育的利益だけでなく、実践文化の浸透、すなわちスピルオーバー効果によって精神科医療の質が向上することを示唆している。このことから、治療実践を大規模に改善するには、継続的な教育努力が不可欠である」と結論付けている。

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eGFRcysとeGFRcrの乖離は死亡・心血管イベントと関連/JAMA

 外来患者において、eGFRcys(シスタチンC値を用いて算出した推定糸球体濾過量)の値がeGFRcr(クレアチニン値を用いて算出した場合)の値より30%以上低い患者は、全死因死亡、心血管イベントおよび腎代替療法を要する腎不全の発現頻度が有意に高いことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMichelle M. Estrella氏らChronic Kidney Disease Prognosis Consortium Investigators and Collaboratorsが、Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium(CKD-PC)の患者データのメタ解析結果を報告した。eGFRの算出にクレアチニン値を用いた場合とシスタチンC値を用いた場合でeGFR値が異なる可能性があるが、これまでその差異の頻度および重要性は明らかになっていなかった。今回の解析では、外来患者の約11%および入院患者の約35%で、eGFRcys値がeGFRcr値より30%以上低い患者が認められることも示されている。JAMA誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。eGFRcys値がeGFRcr値より30%以上低い患者の割合および特色を評価 研究グループは2024年4月~2025年8月に、CKD-PCの被験者で、ベースラインでシスタチンC値とクレアチニン値を同時に測定し、臨床アウトカムの情報が得られた患者のデータを集約し、個人レベルのメタ解析を行った。eGFRcys値とeGFRcr値の不一致率を評価し、不一致率がより高いことと関連する特色を明らかにし、また不一致率と有害アウトカムの関連を評価した。 主解析では、負の大きなeGFR値の差(eGFRdiff)を評価した(eGFRcys値がeGFRcr値より30%以上低いことと定義)。副次(従属的)アウトカムは、全死因死亡、心血管死、アテローム動脈硬化性疾患、心不全、腎代替療法を要する腎不全などであった。外来患者の11.2%が該当、全死因死亡などが高いことと関連 23の外来患者コホート82万1,327例(平均年齢59[SD 12]歳、女性48%、糖尿病13.5%、高血圧症40%)と2つの入院患者コホート3万9,639例(67[16]歳、31%、30%、72%)のデータが包含された。 外来患者において、11.2%が負の大きなeGFRdiffを有していた。負の大きなeGFRdiffは、コホート間でばらつきがみられた(範囲:2.8%~49.8%)。外来患者全体の平均eGFRcr-cys値(クレアチニン値とシスタチンC値を用いて算出)は86(SD 23)であった。 入院患者では、34.2%が負の大きなeGFRdiffを有していた。全体の平均eGFRcr-cys値は63(SD 33)であった。 外来患者の平均追跡期間11(SD 4)年において、負の大きなeGFRdiffは、eGFRdiffが-30%~30%であった場合と比較して、全死因死亡(28.4 vs.16.8/1,000人年、ハザード比:1.69、95%信頼区間:1.57~1.82)、心血管死(6.1 vs.3.8、1.61、1.48~1.76)、アテローム動脈硬化性疾患(13.3 vs.9.8、1.35、1.27~1.44)、心不全(13.2 vs.8.6、1.54、1.40~1.68)、腎代替療法を要する腎不全(2.7 vs.2.1、1.29、1.13~1.47)の発現頻度がいずれも高かった。

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急性心房細動患者への薬物的除細動、vernakalant vs.プロカインアミド/BMJ

 急性心房細動患者の洞調律への迅速な復帰に関する薬物療法を直接比較した無作為化試験において、新薬であるvernakalantはプロカインアミドよりも復帰率が高く迅速な点で優れることが示された。カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らが「RAFF4試験」の結果を報告した。急性心房細動を呈し救急外来を受診した患者(一般的に発症から48時間以内)に対して、カナダの救急医の多くが薬物療法または電気的療法による除細動を行うが、古くて効果が限定的な薬物のプロカインアミドを用いることが多いという。今回の結果を踏まえて著者は、「vernakalantは急性心房細動患者の迅速な洞調律復帰と退院のために、安全で有効性が高い静脈内投与薬となりうるものである」とまとめている。BMJ誌2025年11月11日号掲載の報告。薬物投与完了後30分以内の洞調律復帰を評価 RAFF4試験は、救急部門での急性心房細動治療について、vernakalantの静脈内投与とプロカインアミドの静脈内投与の有効性と安全性を比較した無作為化非盲検比較試験であり、カナダの3次救急部門のある12医療施設で行われた。 急性心房細動を呈し、洞調律への迅速な復帰が安全な選択肢であった患者を対象とした。研究グループは患者を、vernakalantまたはプロカインアミド静脈内投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。洞調律復帰がなされなかった場合は、電気的除細動が患者に提案された。 主要アウトカムは、薬物投与完了後30分以内の洞調律復帰であった。副次アウトカムは、洞調律復帰までの時間、電気的除細動を受けた割合などであった。洞調律復帰成功率はvernakalant群62.4%vs.プロカインアミド群48.3% 2021年6月~2024年8月に適格患者350例が登録された。ベースライン特性はvernakalant群(178例)とプロカインアミド群(172例)で類似していた。 主要アウトカムの洞調律復帰の割合はvernakalant群62.4%vs.プロカインアミド群48.3%で、vernakalant投与のほうが優れた(補正後絶対群間差:15.0%[95%信頼区間[CI]:4.6~25.0、p=0.005]、補正後オッズ比[aOR]:1.87[95%CI:1.2~2.9、p=0.006])。vernakalant群のほうが、洞調律復帰までの時間が短く(21.8分vs.44.7分、平均群間差:22.9分[95%CI:16.0~29.9、p<0.001])、電気的除細動を受けた割合が低かった(33.7%vs.44.2%、OR:0.62[95%CI:0.39~0.96、p=0.033])。 有害イベントの発現は両群で同程度であり、概して軽度かつ一時的なものであった。ほとんどの患者は自宅退院となった。 洞調律復帰の割合に関するサブグループ解析(70歳未満vs.70歳以上)で、vernakalant投与は70歳未満の患者で非常に好ましい効果をもたらすことが示された(vernakalant群73.3%vs.プロカインアミド群47.2%、aOR:3.1[95%CI:1.7~5.5、p=0.001、交互作用のp=0.005])。

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トランスジェンダー女性のホルモン治療は心血管リスクを高めない

 トランスジェンダー女性が、男性から女性への性別移行のために女性ホルモンの一種であるエストラジオールを使用しても、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることはないことが、新たな研究で示された。それどころか、トランスジェンダー女性に対するホルモン治療は、生まれつきの性別と性自認が一致するシスジェンダー男性と比べて、心臓や血管に対する保護的な効果がある可能性が示されたという。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のLieve Mees van Zijverden氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に11月4日掲載された。 生まれつきの性別と性自認が一致しないトランスジェンダーの人は、胸の膨らみや低音の声など、自認する性により近い身体的特徴を得るためにホルモン治療を受けることを選択する人が多い。しかし過去の研究では、そのようなホルモン治療はトランスジェンダー女性の心血管イベントリスクの上昇と関連することが示唆されている。 Van Zijverden氏らは今回、Amsterdam Cohort of Gender Dysphoria(ACOG)のデータを用いて、トランスジェンダー女性2,714人、およびトランスジェンダー男性1,617人の健康状態を、一般人口と比較した。 その結果、エストラジオールを使用しているトランスジェンダー女性では、シスジェンダー男性と比べて心筋梗塞のリスクが50%低く(標準化罹患比0.50、95%信頼区間0.32〜0.71)、脳血管障害リスクは同程度であり(同0.94、0.72〜1.19)、静脈血栓塞栓症リスクは81%高い(同1.81、1.33〜2.35)ことが明らかになった。一方、トランスジェンダー男性では、シスジェンダー女性と比べて心筋梗塞リスクが約4倍高く(同4.20、2.72〜6.01)、脳血管障害リスクは55%高く(同1.55、1.01〜2.20)、静脈血栓塞栓症リスクは同程度(同1.00、0.53〜1.61)であった。 論文の上席著者でアムステルダム大学医療センター内分泌学教授のMartin den Heijer氏は、「先行研究では、トランスジェンダー女性の心筋梗塞や脳卒中のリスクがシスジェンダーの男性と比べて高い可能性が示唆されていた。われわれは、この結果に納得できなかった。今回の研究では、エストラジオールを使用しているトランスジェンダー女性において、心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇は認められなかった」とニュースリリースの中で説明している。同氏は、「エストラジオールには、心臓や血管を保護する作用があると考えられているが、今回の研究結果はそうした知見に合致するものだ」と指摘し、「今回の研究によって、長い間われわれを悩ませてきたパラドックスが解決された」と話している。 研究グループは、「全体として、これらの結果は、シスジェンダーの男性と女性の心血管リスクと一致していた。一般的に男性は女性よりも心臓の問題を抱えるリスクが高く、生殖器の違いがその一因となっている」と説明している。Van Zijverden氏は、「トランスジェンダー男性では、テストステロンの使用が血圧の軽度の上昇やコレステロール値の悪化を引き起こすことがあり、それによって心血管疾患のリスクが高まると考えられている」と説明している。 研究グループはまた、トランスジェンダー男性における心血管リスクの上昇には、ホルモン以外の要因も関与している可能性を指摘している。「そのため、今回の研究では、教育レベルや就労経験、収入などの生活習慣要因や社会経済的要因も考慮に入れて分析した。しかし、これらの要因ではリスク上昇のごく一部しか説明できないことが判明した」とvan Zijverden氏は説明する。同氏は、「トランスジェンダー男性のリスク上昇およびトランスジェンダー女性のリスク低下の正確な原因を明らかにするため、さらなる研究が必要だ」との見解を示している。

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夜間の人工光が心臓の健康に悪影響を与える

 人工的な光による夜間の過剰な照明の悪影響、いわゆる“光害”が、心臓病のリスクを高めることを示すデータが報告された。米マサチューセッツ総合病院のShady Abohashem氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)年次学術集会(AHA Scientific Sessions 2025、11月7~10日、ニューオーリンズ)で発表された。 この研究の解析対象は、2005~2008年に同院でPET検査またはCT検査を受けた466人(年齢中央値55歳、男性43%)。光害のレベルは、人工衛星のデータに基づき各地の夜間の人工光の強さを割り出したデータベースと、研究参加者の居住地住所を照らし合わせて把握した。 2018年末までの医療データを遡及的に追跡したところ、79人(17%)に重大な心臓病が記録されていた。解析の結果、夜間の人工光への曝露が多い人は、脳へのストレス、血管の炎症、そして重大な心臓病が多く認められた。これらのうち重大な心臓病については、夜間人工光への曝露量が1標準偏差多いごとに、5年間でのリスクが35%、10年間では22%上昇するという関連があった。この関連は、心臓病の既知のリスク因子、および、騒音公害や社会経済的地位といった、近年明らかになってきた新たなリスク因子の影響を調整後も、なお有意だった。 Abohashem氏は、「夜間の人工光への曝露がわずかに多いだけでも、脳と動脈へのストレスが増大するという関連が見いだされた。脳がストレスを感知すると免疫反応を引き起こし、血管に炎症を起こし得るシグナルが発せられる。このプロセスは、時間の経過とともに動脈硬化を進行させていき、やがて心臓発作や脳卒中のリスク上昇となって現れてくるのではないか」と述べている。なお、この研究では、交通騒音の激しい地域、所得水準の低い地域、および、ストレスを増大させる可能性のあるその他の環境因子のある地域の居住者では、重大な心臓病のリスクがより高いという傾向も観察された。 人工光による悪影響を回避する手段としてAbohashem氏は、「夜間は室内の照明が明るすぎないように調節して、寝室は暗くし、寝る前にはテレビや電子機器などの画面を見ないようにすると良い」とアドバイスしている。また研究者らは、「都市の不必要な屋外照明を減らしたり、街灯を遮蔽したり、人の動きに反応して点灯するセンサー付き照明に変えたりすることで、人々の健康を改善できるかもしれない」と述べている。 米ペンシルベニア州立大学の睡眠研究者でAHAの広報を担当しているJulio Fernandez-Mendoza氏は、「この研究結果は、夜間の過度の人工光への曝露を減らすことが公衆衛生上の課題であることを示唆しており、人工光の悪影響に関するエビデンスを補強するものだ」と述べている。同氏はまた、「夜間の人工光への過度な曝露が健康に悪く、特に心臓病のリスクを高めることは知られていたが、その悪影響がどのように生じるのかは分かっていなかった。本研究は、考えられるメカニズムの一つ、つまり脳がストレスに反応することの影響を検証しており、この領域の研究を大きく進歩させる知見と言えるのではないか」と付け加えている。なお、同氏は本研究に関与していない。 本研究の発表者らは今後、夜間の人工光への曝露を減らすことによって、心臓の健康状態が改善されるかどうかを調べることを予定している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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1日1杯のコーヒーは心房細動を予防する?(解説:名郷直樹氏)

 コーヒーは紅茶、日本茶と並び、日本でも最もよく飲まれているカフェイン含有飲料であるが、カフェインの依存性や不整脈に対して避けるべきものとして扱われてきた歴史がある。しかし、カフェインと不整脈の関係を検討した研究結果は必ずしも一致したものではなく、2023年にはカフェインと上室性期外収縮に必ずしも関連が認められなかったというランダム化比較試験も発表されている1)。 このように関連が不確実な状況を踏まえて行われたのが、今回のコーヒーと心房細動の再発の関連をみたランダム化比較試験である2)。電気的除細動術予定で日頃コーヒーを飲んでいる患者を対象とし、1日1杯以上のコーヒーを飲むグループと、コーヒーを6ヵ月間禁止するグループを比較して、心房細動と心房粗動の発生を1次アウトカムとした、プラセボを使わず、アウトカムの評価をマスキングしたProspective Randomized Open Blinded Endpoint Study:PROBE Studyである。 結果は、心房細動と心房粗動の発生が1日平均1杯のコーヒーを飲む群で47%、禁止群で64%、ハザード比0.61、95%信頼区間0.42~0.89、絶対危険減少でみれば17%という大きな効果であり、コーヒーを飲むことが、発生を増やすどころか予防するという結果である。 コーヒーを飲む群の試験参加前後のコーヒー摂取量については、平均値では1日1杯と差がないものの、摂取量の75パーセンタイルの上限は、試験前では18杯に対し、試験後には11杯と減少している。この多量摂取者の摂取量の減少が再発予防に関連している可能性がある。コーヒー摂取と心房細動、心房粗動の関係が線形ではなく、U字型であれば、過量摂取者の減少によって効果が過大評価されているかもしれない。 上記を考慮すれば、これまでどちらかといえばコーヒーを避けるように指導してきた状況に対し、現在コーヒーを常に飲んでいる人たちにコーヒー摂取を禁止しないで済むという対応につなげやすい点でこの論文の臨床的価値は高い。ただ、2杯以上のコーヒー摂取がどうかといえば、それについて結論を出すことは困難である。また、日頃コーヒーを飲んでいない人に対してコーヒーを飲んだほうがいいかどうかもはっきりしない。 コーヒーを飲まない人のカフェイン摂取、コーヒーを飲む人たちに対する適切な摂取量に関する研究が今後期待される。 ここまで書いたことは論文の一般的な評価と一般的な利用法にすぎない。それに付け加えて、最後に私自身のことを書いておきたい。私自身は1日3~5杯のコーヒーを飲む。食後や休憩時間のゆったりした時間に飲むコーヒーは、自分自身にとって最も心地よい時間である。それを1杯に制限するよりは、電気的除細動を受けることで心房細動を予防するほうを選びたい。手術を待つまでのコーヒー制限も簡便である。個別の状況で、この論文をどう使うかについて、正しい/間違いはない。エビデンスもまた実際にどうするかに関わる一要素にすぎないことは、強調しておきたい。

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災害避難で車中泊は危険なのか?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第11回

災害避難で車中泊は危険なのか?大規模災害の後、体育館が避難所として運営され、多くの避難者が生活していますが、避難所ではなく自家用車の中で生活している避難者も多くいるようです。避難所管理医師として、車中泊をする避難者の健康管理を行政から依頼されました。どのようなケアをすればいいでしょうか?車中泊する人は多い大規模災害時、避難所の収容限界や感染対策、プライバシーの問題から「車中泊」を選ぶ避難者は少なくありません。車中泊であれば、他人の物音に悩まされることもなく、周囲に気を使わずに夜中でもパソコンやスマートフォンを操作できます。実際、2016年の熊本地震では、避難者の6~7割が一時的に車中泊を経験しました1)。一方、震災関連死した被災者の約3割が車中泊経験者でした2)。こうした経緯から、車中泊は「避けるべきリスク」として語られがちです。しかし、指定避難所が満員である場合や、家族・ペットの事情などを考慮すると、多くの被災者にとって「積極的に選ばれる避難手段」となっているのが現実です。車中泊は血栓症のリスクなのか?医療者が注目すべきは、この避難様式が深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)のリスク因子となる点です3~5)。熊本地震後の調査では、車中泊経験者のDVT発症率は約10%に達し、心肺停止に至る重症PTEの症例も報告されています6)。このような事実から、「車中泊は極力避けるべき」と主張する支援者もおられます。しかし近年の研究では、問題の本質は「車中泊」そのものではなく、その過ごし方と環境にあることが示されています。とくに以下の要因がリスクを高めるといわれています。長時間の下肢屈曲保持(座席での就寝など)トイレ不足による水分制限 → 脱水・血液濃縮下肢運動不足 → 筋ポンプ機能の低下高齢、肥満、静脈瘤、悪性腫瘍、妊産婦、血栓症などの家族歴経口避妊薬や睡眠薬などの服薬歴寒冷環境や強いストレスによる交感神経の緊張車中泊中の血栓症の予防はどうするか?これらのリスクを有する避難者に対しては、車内でも可能な非薬物的予防が有効であり、避難所を預かる医師として、以下のような適切なアドバイスが必要です。足を伸ばせる姿勢を確保する弾性ストッキングや保温具を活用し、下肢を冷やさない1~2時間ごとの足関節運動や体位変換を行う簡易トイレを活用してトイレの不安を減らし、水分を十分に摂取するハイリスク群に対しては、薬物療法としてDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の予防的投与も一案です。しかし、腎機能障害時の出血リスクが高まり、とくに災害時は脱水環境になりやすいため、慎重な判断が求められます。現実的には薬物よりも、まずは非薬物的な予防と環境整備を優先すべきでしょう。災害時の車中泊を一律に「危険」と断じるのではなく、適切な介入と支援を行うことで、DVTやPTEは予防することができます。われわれ医療者は、やみくもにリスクばかり強調するのではなく、避難行動の多様性を尊重しながら、あらゆる状況で被災者の健康を守れる体制を事前に整えておく必要があります。 1) 熊本県. 平成28年熊本地震における車中泊の状況について. 2023年10月15日 2) 日本経済新聞. 熊本地震1年 関連死の犠牲者、3割が車中泊を経験. 2017年4月16日 3) 日本循環器学会/日本高血圧学会/日本心臓病学会合同ガイドライン. 2014年版 災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン 4) Sato K, et al. Risk Factors and Prevalence of Deep Vein Thrombosis After the 2016 Kumamoto Earthquakes. Circ J. 2019;83:1342-1348. 5) Sueta D, et al. Venous Thromboembolism Caused by Spending a Night in a Vehicle After an Earthquake (Night in a Vehicle After the 2016 Kumamoto Earthquake). Can J Cardiol. 2018;34:813.e9-813.e10. 6) 坂本 憲治ほか. 熊本地震後に発生した静脈血栓塞栓症と対策プロジェクト. 日本血栓止血学会誌. 2022;33:648-654.

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地域での薬剤耐性を知る【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第6回

地域での薬剤耐性を知る前回、セファゾリンのスペクトラム「S&S±PEK」を学びました。また、このPEKをセファゾリンがカバーできるかどうかは、地域によって大きく異なることを説明しました。では、どのようにして地域での薬剤耐性を調べればよいのでしょうか? 今回はその方法を紹介します。地域での薬剤耐性の調べ方実は、厚生労働省が地域別の薬剤耐性の統計をとっているため、そのデータベースを使うと地域における薬剤耐性の程度がわかります。院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)というのですが(図1)、無料で閲覧することができるため、使わない手はありません。図1 JANIS画像を拡大するこれを見ると、たとえば2024年度の茨城県における大腸菌の薬剤ごとの感受性率がわかるわけです(図2)。もちろん、ある程度の規模の病院のデータを集めているため、セレクションバイアスがかかっているのは否めないですが、有用なデータかと思います。図2 大腸菌の薬剤ごとの感受性率(茨城県)画像を拡大するこのようなデータを見て、大腸菌などの感受性が低い地域の場合は、尿路感染症にセファゾリンを使わないほうが無難かもしれません。そんな場合は、第2世代セフェム系抗菌薬のセフォチアムとか、あるいは第3世代のセフトリアキソンを使ってしまったほうが確実です。Proteus mirabilisさて、S&S±PEKのうち「P(Proteus mirabilis)」については、聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。これはいったい何者なのでしょうか。勉強してみると結構面白い細菌なので、寄り道したいと思います。図3に腎臓と尿管の絵があります。この尿管のところにProteus mirabilisが感染したとしましょう。尿路感染症を起こしているわけですね。このProteus mirabilisがちょっと特殊で、ウレアーゼを産生することで有名です。ウレアーゼは、尿素をアンモニアにする酵素。つまり、尿中がアンモニアだらけになるわけです。尿がアルカリ性になってpHが10などの高い数値になっていきます(図3)。その結果、尿管結石を引き起こしてしまい、尿路感染症が難治化する。これが、Proteus mirabilisの個性的なところになります。図3 Proteus mirabilisによるアンモニア産生画像を拡大するまとめJANISやProteus mirabilisなどへ寄り道をしてしまいましたが、とにかく皆さんに覚えていただきたいのは、セファゾリンのスペクトラムが「S&S±PEK」であるということです。S&Sが便利なため、蜂窩織炎や周術期抗菌薬でよく使います。PEKをカバーするので、地域によっては尿路感染症に対してバンバン使います。次回は皆さんが大好きなセフトリアキソンの解説をするため、楽しみにしていてください!

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第292回 藤田医科大の学費800万円値下げから見えてくる、熾烈を極める大学医学部サバイバル戦

一部の大学では学力試験を伴う“年内入試”がすでに本格化こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。明治神宮外苑や日比谷公園など都心部の公園のイチョウの黄葉がピークを迎えています。私の住む近所の公園でも黄葉真っ盛りです。同じ公園内でも日の当たり具合によって、黄葉の進み具合が微妙に異なるのが面白いです。こうした冬の訪れとともに東北地方などでのクマ被害の報道も少なくなりました。クマの冬眠とともに、人々のクマへの関心も急速に薄れていくでしょう。もっとも、来春、目覚めたクマたちがどんな動きを見せるのか、山登りをする身にはとても気掛かりなのですが。さて、今年度から大学入試のルールが変わり、一部の大学では学力試験を伴う“年内入試”がすでに本格化しているようです。これまで学力試験は2月以降と決められていましたが、今年から前倒しが認められたためです。ということで、今回は医学部入試にまつわる話題を取り上げます。藤田医科大学医学部(愛知県豊明市)は、2026年度入試から医学部の学費を6年間総額で2,152万円(現行2,980万円)に30%値下げします。約800万円という大幅な値下げには、いったいどんな狙いがあるのでしょうか。9年で約1,500万円学費を下げた藤田医科大医学部藤田医科大医学部の学費値下げは2025年5月29日に発表されました。その後、朝日新聞の大学選び情報サイト「Thinkキャンパス」が11月10日「藤田医科大が学費を800万円値下げ 医学部受験生への影響は?」と題する記事を掲載、医学部受験とは無関係の人にも広く知られることになりました。藤田医科大は2017年度にも3,620万円から2,980万円に学費を引き下げており、ここ9年ほどで実に約1,500万円引き下げたことになります。なんと太っ腹な大学でしょう。朝日新聞の報道によれば、「藤田医科大学の6年間の学費(2,152万円)は、国際医療福祉大学、順天堂大学、関西医科大学に続き、私立大学医学部では全国4番目に低い額(医系専門予備校メディカルラボ調べ)」とのことです。学費値下げの先鞭をつけた順天堂大学医学部は志願者が増え偏差値も上昇超高額なのが当たり前だった私大医学部の学費値下げの先鞭をつけたのは順天堂大学で、2008年度のことでした。この時、順天堂が6年間の学費を900万円下げた結果、志願者が増え、偏差値が上がりました。つまり、優秀な学生が入学してくるようになったわけです。順天堂大学の2026年度の学費は2,080万円で、今でも全国2番目の低さです。順天堂大学に続くかたちで、2009年度には帝京大学医学部も学費を下げています。最近では関西医科大学が2023年度の入学生から学費を大幅に引き下げ、6年間で計2,100万円(引き下げ前は2,770万円)にしています。この結果、同大も志願者数が急増、偏差値も上がっています。「学費の大幅値下げは、大学の生き残りをかけたプロジェクトの一環」朝日新聞「Thinkキャンパス」の記事によれば、藤田医科大の岩田 仲生学長は学費値下げの理由を「学費の大幅値下げは大学の生き残りをかけたプロジェクトの一環。(中略)100年後には人口が今の3分の1になるという試算もあります。その頃に必要とされる医学部の数は4分の1くらいになっていてもおかしくありません。そうなっても私たちは社会や国民から『そこにあり続けてほしい』と言われる、価値のある大学にしたいのです」と話しています。国公立、私立含めて大学病院の生存競争が激しくなる中、藤田医科大は比較的経営状態が良好であることから、将来を見据えて学費値下げに打って出たということでしょう。2021年度から6年間の学費を一気に約1,200万円も上げた東京女子医大とは真逆の対応と言えます(「第28回 コロナで変わる私大医学部の学費事情、2022年以降に激変の予感」参照)。その後の東京女子医大の凋落を考えると、医学部の学費は医科大学の経営状況のバロメーターと言えるかもしれません。 「全ての大学病院が一様に同じ役割・機能を同程度持ち続けることは難しい」と文科省検討会取りまとめ実際、全国の大学医学部はこれから過酷なサバイバル戦に突入するとみられています。本連載「第274回  文科省『今後の医学教育の在り方』検討会と厚労省『特定機能病院あり方検討会』の取りまとめから見えてくる大学病院“統廃合”の現実味(後編)」で書いたように、文部科学省は今年7月、「今後の医学教育の在り方に関する検討会」による「第三次取りまとめ」を公表しています。「第三次取りまとめ」は、医師の働き方改革をきっかけに激変した大学病院の経営環境を踏まえ、どう医学部・大学病院の教育研究環境を確保し、同時に大学病院の経営改善を図っていくかについて、今後の方向性を取りまとめたものです。大学病院を全国一律に捉えず、それぞれ必要とされる分野で機能・役割分化を促していく、というなかなか意味深な内容になっています。「II. 医学部・大学病院を巡る状況と今後の方向性について」の章では、「大学病院の役割・機能として、診療だけでなく、教育や研究も欠かすことができないが、所在する地域の状況や医師の働き方改革等大学病院を取り巻く様々な環境の変化によって、全ての大学病院が一様に同じ役割・機能を同程度持ち続けることは難しいといった指摘がある」と書かれています。つまり、「大学病院=教育・研究・診療が揃っているもの」というステレオタイプな捉え方はもはや古く、教育に重点を置く大学病院、研究に重点を置く大学病院、診療に重点を置く大学病院というように、機能分化せざるを得ない状況だと断言しているのです。「教育」「研究」を手放してしまったら、それは大学病院の“格落ち”を意味します。「診療に重点を置くだけの大学病院」では市中の病院と機能的に大きな違いはなく、人口減少が進む県では病院統廃合の対象にもなるかもしれません。そして最悪、閉校の可能性すらあります。藤田医科大の学費値下げは、そうした“格落ち”の危機を回避するために、今から優秀な学生を確保して「教育」「研究」に力を入れていくという“宣言”でもあるのです。大学医学部サバイバル戦はすでに終盤戦?財務省は11月11日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、教育の質を持続的に確保するために大学の統合や縮小、撤退を促進することが必要だと提言しました。また、厚⽣労働省は11月20⽇、医学部の⼊学定員を全体として「削減」する案を省内の検討会に提⽰しています。これまで「適正化」を進めるとしていましたが、減らす⽅針を初めて明確にしました。こうした動きからも、岩田学長の「必要とされる医学部の数は4分の1くらいになっていてもおかしくありません」という言葉は現実味があります。今後5年ほどで、「生き残る医学部」と「なくなる医学部」に二分されていくでしょう。医学部サバイバル戦は始まったというより、すでに終盤戦に入っているのかもしれません。

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「アラーム疲労」が看護師の「共感疲労」を招く【論文から学ぶ看護の新常識】第41回

「アラーム疲労」が看護師の「共感疲労」を招くアラーム疲労スコアが高い看護師ほど、共感疲労も強い傾向が確認された。Hamdiye Banu Katran氏らの研究で、BMC Nursing誌2025年9月30日号に掲載の報告。外科系集中治療室看護師におけるアラーム疲労と共感疲労の関係性:横断的研究研究チームは、外科系集中治療室(SICU)に勤務する看護師を対象に、アラーム疲労と共感疲労の関係性を明らかにすることを目的として、記述的かつ横断的な相関研究を行った。トルコ東部の大学病院および州立病院のSICU看護師162名(SICU経験1年以上、回答率85.7%)を対象に、対面によるデータ収集を行った。調査には、社会人口学的特性調査票、アラーム疲労尺度(α=0.77)、および共感疲労短縮版尺度(α=0.91)を用いた。データ解析にはSPSS 27.0を使用し、正規性の確認、記述統計、ピアソンの相関分析、多変量線形回帰分析を行った。信頼性はクロンバックのα係数で評価し、欠損データ(5%未満)はリストワイズ法で除外した。主な結果は以下の通り。SICU看護師のアラーム疲労スコアの平均は23.77 ± 7.26、共感疲労スコアの平均は62.82 ± 26.66であった。アラーム疲労と共感疲労の間には、中程度の有意な正の相関が認められた(r=0.302、p<0.01)。アラームへの「否定的反応」には、「二次的外傷性ストレス」(r=0.419、p<0.01)および「燃え尽き」(r=0.374、p<0.01)、「共感疲労の総平均スコア」(r=0.417、p<0.01)との間で、中程度の有意な正の相関が認められた。一方、「肯定的反応」では、「燃え尽き」(r=-0.204、p<0.05)および「共感疲労の総平均スコア」(r=-0.158、p<0.05)との間で、弱い負の相関が認められた。回帰分析の結果、アラーム疲労が共感疲労を9%予測することが示された(R2=0.091、p<0.05)。社会人口統計学的要因と、アラーム疲労および共感疲労のレベルとの間には、有意な相関は認められなかった。アラーム疲労は共感疲労の重要な決定要因であり、看護師は中程度のアラーム疲労および共感疲労を有していることが確認された。医療機関は、アラーム管理の教育を強化し、看護師のウェルビーイングを支援する戦略を優先することが推奨される。SICUにおけるアラーム疲労と共感疲労の関連を示した本研究は、患者を守るためのアラームという技術進歩が、皮肉にも医療者に弊害をもたらしている実態を浮き彫りにしています。特筆すべきは、アラームに対する「否定的反応」が、職業的燃え尽きだけでなく、二次的外傷性ストレスとも中程度の相関(r=0.419)を示した点です。これは、絶え間ないアラームが単なる「うるささ」という認知負荷にとどまらず、看護師の心理的な負荷となり、結果として患者への共感を枯渇させることを示唆しています。共感疲労の分散の約9%がアラーム疲労で説明されるという結果は、残りの要因は当然あるものの、環境調整がメンタルヘルス対策の「最初の一手」となり得ることを示しています。アラーム音の管理は、もはや患者の快適性の問題にとどまらず、看護師の心を守る上でも必須の安全対策として再定義されるべきです。論文はこちらKatran HB, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):1226.

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血圧コントロールに地域差、降圧目標達成が高い/低い都道府県は?/東北医科薬科大ほか

 日本における降圧治療開始後の血圧コントロール状況には、地域間で格差が存在し、降圧目標達成割合は医師の偏在や脳血管疾患死亡と関連していることが、岩部 悠太郎氏(東北医科薬科大学)らによる大規模なリアルワールドデータ解析で示された。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』1)では、年齢にかかわらず降圧目標を「130/80mmHg未満(診察室血圧)」としているが、本研究では治療開始後にこの目標を達成できた患者は26.7%にとどまった。本研究結果は、Hypertension Research誌オンライン版2025年11月18日号で報告された。 研究グループは、協会けんぽの健診データ(2015~22年度)を使用して、降圧治療を開始したと判断された40~74歳の男女131万8,437例を抽出し、後ろ向きコホート研究を実施した。降圧治療開始前後の健診データから、治療後の降圧目標(130/80mmHg未満[診察室血圧])達成割合を評価した。また、都道府県別の降圧目標達成割合の格差を算出するとともに、脳血管疾患死亡や医療資源指標(医師偏在指標など)との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・降圧治療開始前の平均血圧は148.3/92.4mmHgで、治療開始後は134.1/83.1mmHgへ低下した。・治療開始後に降圧目標(130/80mmHg未満)を達成した患者の割合は、全体で26.7%であった。・都道府県別の降圧目標達成割合は、未調整解析では最大10.2%の差があった。調整後でも7.4%の差が認められた。・調整後の降圧目標達成割合が上位/下位の府県は以下のとおり。【上位】 1位:香川県(26.2%) 2位:沖縄県(25.9%) 3位:高知県(24.4%) 4位:滋賀県(24.4%) 5位:大阪府(24.4%) 6位:熊本県(24.4%)【下位】 43位:群馬県(20.4%) 44位:山口県(20.2%) 45位:山形県(19.8%) 46位:鳥取県(19.5%) 47位:和歌山県(18.8%)・調整後の都道府県別の140/90mmHg未満の達成割合は、49.4%(和歌山県)~58.9%(宮崎県)の範囲であった。・生態学的分析の結果、降圧目標達成割合が1%上昇するごとに、10万例当たりの脳血管疾患死亡は3.5例減少した。・医師偏在指標は、降圧目標達成割合と有意な正の相関を示した(r=0.47、p<0.001)。これは、地域の医師供給量が多いほど血圧管理が良好であることを示唆するものである。 本研究結果について、著者らは「本研究で観察された血圧コントロールの地域差は、医療従事者数と関連する可能性が示された。また、医療従事者の偏在改善によって、血圧コントロールの地域差が縮小し、脳血管疾患死亡の地域差の縮小にもつながる可能性が示唆された」と述べている。

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気象関連疼痛に期待される食事性フラボノイドの有用性

 悪天候や気象変動は健康に悪影響を及ぼし、気象関連疼痛と呼ばれる症状を引き起こす可能性がある。症状の緩和には、鎮痛薬などによる薬物療法が一般的に用いられているが、副作用を引き起こす可能性がある。そのため、非薬物療法や食事療法への関心が高まっている。大塚製薬の池田 泰隆氏らは、気象関連疼痛に対する食事性フラボノイドであるケンフェロールの有効性を評価するため、オープンラベルパイロット研究を実施した。International Journal of Biometeorology誌2025年10月号の報告。 従来、気象関連疼痛は、気圧変動に対する内耳の感受性(交感神経系の活性化)が主なメカニズムと考えられてきたが、低気圧下での末梢低酸素症による酸素利用の低下も重要な要因であると考えられている。食事性フラボノイドであるケンフェロールは、これまでの研究において酸素利用を促進し、副交感神経系の優位性を促すことが示されていた。ケンフェロールを毎日摂取することで、酸素利用と自律神経バランスが改善され、気象関連の不快感が軽減されるという仮説を立て、本研究を実施した。本パイロット研究では、中等度の気象関連症状を有する458例を対象に、1日10mgのケンフェロールを4週間投与した。対象患者には、介入前後にアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・アドヒアランスが80%超であった患者387例のデータを分析した。・症状の頻度、持続時間、重症度の有意な減少が認められた。【症状の頻度】頭痛の場合:Cohen’s d=0.61、p<0.001【症状の持続時間】rank-biserial correlation=0.64、p<0.001【症状の重症度】Cohen’s d=0.57、p<0.001・介入終了時には、対象患者の80%超において症状の改善が認められた。 著者らは「ケンフェロールは、酸素利用と自律神経調節をターゲットとすることで、気象に関連した身体的および精神的症状を管理するための有望な非薬理学的戦略であることが示唆された」としている。

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現金給付による死亡率低下、そのメカニズムとは/Lancet

 米国・ペンシルベニア大学のAaron Richterman氏らは以前、現金給付プログラムが低・中所得国(LMIC)において、女性と幼児の死亡率を人口集団レベルで大幅に低下させることを報告している。同氏らの研究チームは今回、この死亡率の低下の背景にあるメカニズムの探索を目的に検討を行い、現金給付プログラムによって、妊産婦保健サービスの利用や子供の健康・栄養状態などに関連する12のアウトカムが大幅に改善されることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年11月10日号に掲載された。37のLMICで17のアウトカムを差分の差分分析で評価 本研究では、2段階差分の差分分析を用いて、アフリカ、中南米・カリブ海地域、東南アジアの37のLMICにおける人口動態・健康調査(DHS)の個人レベルのデータと、2000~19年の政府主導の現金給付プログラムの包括的なデータベースを統合し、プログラム導入前後で、プログラム実施国と非実施国を比較した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 現金給付プログラムが、妊産婦保健サービスの利用(3項目)、妊孕性・生殖に関する意思決定(5項目)、養育者の健康行動(3項目)、子供の健康・栄養状態(6項目)に関連する合計17項目のアウトカムに及ぼす影響を評価した。 研究対象の37ヵ国のうち、研究期間中に20ヵ国が大規模な現金給付プログラムを導入した。生児出生215万6,464人のデータと、5歳未満児95万4,202人のデータを解析の対象とした。子供の死亡率低下に4項目が直接関連 政府主導の大規模現金給付プログラムは、評価対象の17項目のうち次の12のアウトカムについて大幅な改善をもたらした。 早期妊婦健診(現金給付による絶対変化:5.0%ポイント、95%信頼区間[CI]:2.1~7.9、padjusted=0.0019)、施設分娩(同:7.3%ポイント、95%CI:3.2~11.3、同=0.0014)、有資格者による分娩介助(7.9%ポイント、3.2~12.6、0.0027)、希望妊娠(1.9%ポイント、0.5~3.2、0.014)、分娩間隔(2.5ヵ月、1.8~3.1、0.0017)、避妊ニーズの未充足(-10.3%ポイント、-15.2~-5.3、0.0006)、完全母乳育児(14.4%ポイント、13.3~15.5、0.0004)、最低限適切な食事(7.5%ポイント、5.5~9.5、0.0009)、麻疹ワクチン接種(5.3%ポイント、1.6~8.9、0.026)、男子双生児出生(男子生児出生1,000人当たり0.8人、0.3~1.4、0.023)、下痢性疾患(-6.4%ポイント、-11.7~-1.1、0.038)、低体重栄養状態(-2.0%ポイント、-3.6~-0.4、0.029)。 これらは、妊産婦保健サービスの利用、妊孕性・生殖に関する意思決定、養育者の健康行動、子供の健康・栄養状態に影響を及ぼし、施設分娩(補正後リスク比:0.89、95%CI:0.84~0.93)、有資格者による分娩介助(0.86、0.82~0.91)、分娩間隔(0.99/月の増加、0.99~0.99)、希望妊娠(0.88、0.81~0.96)の4項目は、その後の子供の生存率向上や死亡率低下に直接関連していた。早期妊婦健診(1.00、0.95~1.05)は死亡率とは関連しなかった。 一方、次の5項目には、現金給付プログラムによる統計学的に有意な改善を認めなかった。初産年齢(現金給付による絶対変化:1.6ヵ月、95%CI:-1.3~4.4、padjusted=0.48)、意図した妊娠(同:-0.2%ポイント、95%CI:-2.8~2.3、同=0.86)、主観的に小さい出生時サイズ(0.4%ポイント、-0.7~1.4、0.53)、やせ(-2.1%ポイント、-5.0~0.9、0.17)、低身長(4.3%ポイント、-0.2~8.7、0.10)。人口集団のカバー率が高いプログラムで優れた効果 主解析の結果は、多重比較法による補正後も頑健であった。また、サブグループ解析では、人口集団のカバー率が最も高い現金給付プログラムで最大の効果が観察された。 著者は、「現金給付と死亡率の因果経路における潜在的な役割を超えて、これらすべてのアウトカム自体が、きわめて重要な関心事である」「本研究は、LMICにおける主要な健康関連指標に関して、多数の国で実施された現金給付プログラムの集団全体への影響を包括的に評価した初の試みの1つである」「多くの国が現金給付プログラムの縮小または拡大を慎重に検討する中、これらの知見は、施策立案者が現金給付プログラムの健康面での恩恵を適切に判断するうえで有用と考えられる」としている。

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ココアやベリー類は座位行動による血管への悪影響を抑える?

 熱いココアや紅茶、リンゴ、ボウルいっぱいのベリー類は、ソファでゴロゴロしている生活やデスクワークをする人の心臓の健康を守るのに役立つかもしれない。これらの食品や飲み物にはフラバノールと呼ばれる物質が豊富に含まれており、長時間の座位行動に起因する上肢・下肢の血管の問題を予防する可能性のあることが示された。英バーミンガム大学栄養科学分野のCatarina Rendeiro氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Physiology」に10月29日掲載された。Rendeiro氏は、「座っている間にフラバノールを多く含む食べ物や飲み物を摂取することは、活動不足が血管系に及ぼす影響を軽減する良い方法である」と述べている。 Rendeiro氏は、「座りっぱなしの生活様式が一般的になり、それが血管の健康に悪影響を及ぼす可能性が高まっていることを考えると、フラバノールを豊富に含む食べ物や飲み物を摂取し、なおかつ短時間の散歩をしたり立ち上がるなどして座位行動を中断することは、体力レベルに関係なく、長期的に健康を増進する良い方法となる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 研究の背景情報によると、座位は血管内皮機能の低下を招き、心血管疾患などの慢性疾患リスクを高めることが示されている。座位中の栄養摂取は、こうした影響を最小限に抑える方法として活用できる可能性がある。一部の果物、お茶、ナッツ、カカオ豆に含まれているフラバノールは、精神的ストレスを受けているときに血管の健康を守る効果があることが知られている。 Rendeiro氏らは今回、40人の健康な若い男性(体力レベルの高い男性20人、低い男性20人)を対象に、座位行動の直前にフラバノールを摂取することで上肢・下肢の血管内皮機能の低下を防ぐことができるのかを検討した。対象者は、高フラバノールココア(150mgの(−)-エピカテキン)と低フラバノールココア(6mg未満の(−)-エピカテキン)をそれぞれ別日に摂取した後、座位で2時間過ごす試験を受けた。(−)-エピカテキンは、エピカテキンを構成する2種類の光学異性体の1つで、天然に多く存在する。 その結果、対象者の体力レベルに関わりなく、座位になることで浅大腿動脈(SFA)と上腕動脈(BA)の血流依存性血管拡張反応(FMD)が有意に低下し、血管内皮機能が悪化することが示された。また、拡張期血圧の上昇、血流量およびせん断応力の低下、筋組織の酸素化の低下も認められた。これに対し、高フラバノールを摂取した場合には、体力レベルに関わりなく、SFAとBAのFMD低下が抑えられた。血流量、せん断応力、拡張期血圧、筋組織の酸素化への影響は認められなかった。低フラバノールを摂取した場合には、このような血管内皮機能低下に対する抑制効果は認められなかった。この結果から研究グループは、「体力レベルの高さが座位行動による血管への悪影響を打ち消してくれるわけではないことを示唆している」と述べている。 共著者の一人であるバーミンガム大学脳血管・運動・実験生理学分野のSamuel Lucas氏は、「重要なのは、高フラバノール飲料を飲んだ後に、体力レベルに関わりなく、全ての対象者の血管の弾力性が、座位行動を行う前と同じレベルに保たれていたことだ」とニュースリリースの中で語っている。研究グループは、「これは、フラバノールが座位行動による血管障害を予防する可能性があり、この予防効果は体力とは無関係であることを示す初の研究結果だ」と述べている。 論文の筆頭著者であるバーミンガム大学のAlessio Daniele氏は、「フラバノールを多く含む食品を食事に取り入れるのは、実はとても簡単だ。スーパーや健康食品店では、フラバノール含有量を維持する方法で加工されたココア製品が販売されているし、ココアが苦手なら、リンゴ、プラム、ベリー類などの果物、ナッツ類、紅茶や緑茶などの定番の食材からでも簡単に摂取できる」と話している。

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断続的断食は成人の認知機能に影響しない

 食事を摂取する時間と断食する時間を定期的に繰り返す断続的断食(インターミッテントファスティング)を行っても、成人の思考力、記憶力、問題解決能力などの知的機能が鈍ることはないことが、新たな研究で明らかになった。オークランド大学(ニュージーランド)心理学准教授のDavid Moreau氏とザルツブルク大学(オーストリア)生理学部のChristoph Bamberg氏によるこの研究結果は、「Psychological Bulletin」に11月3日掲載された。 Moreau氏は、「本研究により、全体的には、短期間の断食が知的機能を低下させるという一貫したエビデンスは存在しないことが明らかになった。断食を行った人の認知機能の成績は、直前に食事をした人と驚くほど似通っていた。これは、食物を摂取していない状態でも認知機能は安定していることを示唆している」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。 Moreau氏はまた、「ここ数年、断食が流行しているが、『空腹になると本来の自分ではなくなる』などの頻繁に耳にする言葉に言い表されているように、食事を摂取しないことで頭脳の明晰さが大きく損なわれるのではないかという懸念が広がっている」と言う。 この研究でMoreau氏らは、空腹時と満腹時の認知機能を比較した63件の研究データを統合して解析した。これらの研究の対象者数は総計3,484人、効果量(比較対象となった指標の件数)は222件、断食の時間の中央値は12時間であった。解析の結果、断食群と満腹群との間で認知機能について意味のある差は認められなかった。 この結果についてMoreau氏は、「断食は、本質的に思考力を低下させるという広く信じられている仮説に反する結果であり、ある意味、驚きではあった」と話す。同氏は、「多岐にわたるさまざまな課題において、認知機能は驚くほど安定していた。食事を抜くとすぐに思考力が低下すると思っている人は多いが、われわれが得たエビデンスを総合すると、その考え方は支持されないようだ」とコメントしている。 ただし、12時間を超える長時間の断食では認知機能がやや低下する傾向が認められ、また、成人と比べて子どもでは短時間でも認知機能の低下が顕著であった。Moreau氏は、「年齢は強力かつ顕著な調整因子であり、断食中に子どもの成績は顕著な低下を示した。これは朝食を取ることが若年層の認知機能に有益であることを示した過去の研究結果と一致する」と話している。同氏はさらに、「この研究結果は、発達中の脳はエネルギー不足に対して非常に脆弱であり、小児において断食による介入を評価する際には特別な配慮が必要であることを示唆している」と付け加えている。 それでも研究グループは、全体的には、断続的断食の活用を支持する結果であったとの見方を示している。Moreau氏は、「最も重要なのは、この結果が含意する、安心感をもたらすメッセージだ。つまり、短期間の断食中でも認知機能は安定しており、健康な成人であれば、一時的な断食が頭脳の明晰さや日常の作業をこなす能力に影響を与えることを心配する必要はまずないということだ」と述べている。

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