サイト内検索|page:8

検索結果 合計:35608件 表示位置:141 - 160

141.

転移のあるTNおよびHR+/HER2-乳がんへのSG、最大規模のリアルワールドでのOS解析

 転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)および転移を有するホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がん(HR+/HER2- mBC)の3次治療でのサシツズマブ ゴビテカン(SG)のリアルワールドにおける生存アウトカムを、フランス・National Agency for Medicine and Health Product Safety(ANSM)/National Health Insurance Center(CNAM)のAya Elhusseiny Shaaban氏らが過去最大規模のリアルワールド研究で評価した。本研究では、全生存期間(OS)中央値はmTNBCで11.0ヵ月、HR+/HER2- mBCで11.4ヵ月であった。British Journal of Cancer誌オンライン版2026年2月5日号に掲載。 本研究はフランス国民健康データシステム(National Health Data System)を用いて、2021年7月1日~2023年12月31日にSGを開始した全患者の人口統計学的情報、併存疾患、前治療歴を記録し、2024年6月30日まで追跡調査した。た。OSおよび治療中止までの期間(TTD)はカプランマイヤー法を用いて推定し、多変量Coxモデルを用いてOSの予後因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・3,653例が対象となり、うちmTNBCは2,527例、HR+/HER2- mBCは1,126例で、年齢中央値はそれぞれ58歳、61.5歳であった。・OS中央値は、mTNBCで11.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.4~11.7)、HR+/HER2- mBCで11.4ヵ月(95%CI:10.7~12.4)であった。・1年生存率はそれぞれ47%、48%、TTD中央値はそれぞれ4.3ヵ月、3.5ヵ月であった。・OSの不良は、入院SG治療および肝/消化管転移と独立して関連していた。mTNBCでは、脳転移、呼吸器疾患、喫煙関連の入院、複数の転移部位、前治療歴が加わった。

142.

脳梗塞発症後4.5~24h、tenecteplase vs.抗血小板療法/JAMA

 非大血管閉塞性の急性期脳梗塞で、救済可能な脳組織を有する患者では、発症後4.5~24時間までの静脈内tenecteplase(遺伝子改変ヒト組織型プラスミノゲンアクチベータ)投与は標準治療と比較して、症候性頭蓋内出血のリスクが増加するものの、90日時点の良好な機能的アウトカムの達成率が有意に高いことが、中国・National Center for Neurological DisordersのGaoting Ma氏らOPTION Investigatorsが行った「OPTION試験」の結果で示された。脳梗塞の治療では、静注血栓溶解療法は発症から4.5時間以内に行うことが標準とされてきた。しかし近年、画像診断技術の向上により、血流は低下しているが死滅していない救済可能な脳組織(ペナンブラ)を詳細に特定できるようになり、治療時間枠の拡張の可能性が示唆されている。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年2月5日号に掲載された。救済可能な脳組織を厳密に評価 OPTION試験は、中国の48施設で実施した非盲検(アウトカム盲検)無作為化試験(Beijing Hospitals Authority Clinical Medicine Development of special funding supportなどの助成を受けた)。2023年6月~2025年8月に、非大血管閉塞性の急性期脳梗塞と診断され、最終健常確認時から4.5~24時間が経過した、救済可能な脳組織を有する成人(年齢18歳以上)患者566例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:59~75]、女性196例[34.6%])を登録した。 救済可能な脳組織の領域とは、不可逆的な損傷を受けた虚血コア(CT灌流画像で脳血流量が正常組織の30%未満)の体積が50mL未満で、かつ重度低灌流組織と虚血コアの体積比が1.2以上、これらの体積差が10mL以上などを満たした場合とした。 被験者を、静脈内tenecteplase(0.25mg/kg、最大投与量25mg)の静脈内ボーラス投与を受ける群(282例)、または標準的内科治療(抗血小板療法)を受ける群(対照群、284例)に無作為に割り付けた。NNTは11、24時間以内再灌流率も優れる ベースラインの全体のNIHSSスコア中央値は7点(IQR:5~9)、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は12.0時間(IQR:8.6~16.7)だった。CT血管造影で最も頻度の高い動脈病変は、中大脳動脈M2~M4(39.2%[222例])、前大脳動脈(15.2%[86例])、後大脳動脈(13.8%[78例])の閉塞、および閉塞を伴わない大脳動脈狭窄(23.3%[132例])であった。 主要アウトカムである90日時点における良好な機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコア:0または1点)を達成した患者の割合は、対照群が34.2%(97/284例)であったのに対し、tenecteplase群は43.6%(123/282例)と有意に優れた(リスク比[RR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.04~1.57、p=0.02)。1件の良好な機能的アウトカム達成に要する治療必要数(NNT)は11だった。 90日時点におけるmRSの順序尺度分布の共通オッズ比は1.39(95%CI:1.04~1.86、p=0.03)であり、tenecteplase群で良好であった。90日時点の機能の独立(mRS:0~2点)の達成率(tenecteplase群62.8%vs.対照群55.3%、RR:1.14、95%CI:0.99~1.30、p=0.07)には両群間に差がなかった。 また、24時間以内の再灌流の達成率(37.7%vs.28.8%、RR:1.31、95%CI:1.02~1.68、p=0.03)はtenecteplase群で優れた。死亡率に差はない、24時間までの拡張を支持 36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率は、tenecteplase群で有意に高かった(2.8%[8/281例]vs.対照群0%、補正後リスク群間差:2.85%、95%CI:1.16~5.54、p=0.004)。一方、90日時点の全死因死亡率は、両群間に差を認めなかった(5.0%[14/281例]vs.3.2%[9/284例]、RR:1.57、95%CI:0.69~3.57、p=0.28)。 著者は、「これらの知見は、救済可能な脳組織を有する非大血管閉塞性の急性期脳梗塞の治療におけるtenecteplase静注療法の、発症から24時間までの時間枠の拡張を支持するものである」としている。

143.

スタチンによる好ましくない作用、多くは過大評価~メタ解析/Lancet

 スタチン製剤の製品ラベル(たとえば、製品特性概要[SmPC])には、治療関連の可能性がある作用として特定の有害なアウトカムが記載されているが、これらは主に非無作為化・非盲検試験に基づくため、バイアスの影響を受けている可能性があるとされる。英国・オックスフォード大学のChristina Reith氏らCholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaborationは、このようなスタチン製剤の好ましくない作用(undesirable effect)のエビデンスをより高い信頼性をもって評価することを目的に、大規模な二重盲検試験の個別の参加者データを用いたメタ解析を実施した。研究の成果は、Lancet誌2026年2月14日号で発表された。5つのスタチン製剤の有害作用をメタ解析で評価 CTT Collaborationは、二重盲検無作為化試験の個別の参加者データを用いたメタ解析において、5つのスタチン製剤(アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)について電子医薬品集(electronic medicines compendium:EMC)を検索し、スタチンのSmPCに記載されている好ましくない作用の用語のリストを作成した(本解析は英国心臓財団などの助成を受けた)。 メタ解析の対象とした無作為化試験は、(1)参加者数が1,000例以上、(2)予定された投与期間が2年以上、(3)スタチンとプラセボ、あるいは高強度と低強度スタチン療法の二重盲検比較試験であった。 イベント発生の率比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、偽発見率(FDR)を5%で調整して統計学的有意性を評価した。66項目中62項目は有害作用ではない 19件がスタチン療法とプラセボを比較した二重盲検試験であった(合計12万3,940例、追跡期間中央値4.5年[四分位範囲[IQR]:3.1~5.4])。参加者の平均年齢は63(SD 9)歳、3万4,533例(28%)が女性であり、5万9,610例(48%)に血管疾患の既往歴があり、2万2,925例(18%)が糖尿病の病歴を有していた。 筋肉関連アウトカムや糖尿病への有害な作用に加えて、スタチンに起因するとされた66項目の追加的な好ましくないアウトカムのうち、FDR有意水準を満たしたのは、わずかに次の4項目のみであった。・肝トランスアミナーゼ値異常:スタチン群783例(0.30%/年)vs.プラセボ群556例(0.22%/年)、RR:1.41(95%CI:1.26~1.57)・その他の肝機能検査値異常:スタチン群651例(0.25%/年)vs.プラセボ群518例(0.20%/年)、RR:1.26(95%CI:1.12~1.41)、肝機能検査値異常の合計における絶対的な年間超過率:0.13%・尿組成の変化:スタチン群556例(0.21%/年)vs.プラセボ群472例(0.18%/年)、RR:1.18(95%CI:1.04~1.33)・浮腫:スタチン群3,495例(1.38%/年)vs.プラセボ群3,299例(1.31%/年)、RR:1.07(95%CI:1.02~1.12)従来の結論を強化する知見 4件の高強度と低強度スタチン療法を比較した二重盲検試験(合計3万724例、追跡期間中央値:5.0年[IQR:2.3~6.6]、平均年齢:62[SD 10]歳、全例に血管疾患の既往歴)でも、用量依存性の肝トランスアミナーゼ値異常およびその他の肝機能検査値異常の有意な過剰発生を認めた。一方、尿組成の変化や浮腫については、有意な過剰発生はみられなかった。 これらの知見について、著者は「スタチン療法の既報の有害作用(筋肉関連アウトカム、糖尿病への影響)以外では、肝臓の生化学的異常のわずかな絶対的増加と、臨床的な意義不明の尿組成の異常および浮腫への潜在的な有害作用と関連するのみで、スタチン製剤のSmPCに記載されたその他のアウトカムとは関連しないことを示している」「スタチン療法が心血管系に及ぼす有益性は、スタチン関連のあらゆるリスクを大きく上回るという従来の結論を強化するものである」としている。 また、「スタチン製剤の製品ラベルの好ましくない作用の項はリスクを過大評価しており、臨床医と患者の誤解を招く恐れがあるため、有益な情報に依拠したエビデンスに基づく意思決定をより適切に支援するよう改訂すべきである」と主張している。

144.

風邪がひどくなるかどうかは「鼻の細胞」で決まる?

 なぜ、同じウイルスに曝露して、ひどく寝込む人とほとんど症状が出ない人がいるのだろうか。その答えは、「鼻の中で何が起きているか」にあるかもしれない。新たな研究で、風邪の最も一般的な原因ウイルスであるライノウイルスに対して鼻腔内の細胞がどのように反応するかが、症状が出るかどうかやその重症度を左右し得ることが明らかになった。米イェール大学医学部の免疫学者Ellen Foxman氏らによるこの研究結果は、「Cell Press Blue」に1月19日掲載された。 Foxman氏は、「この研究によって、一般的な風邪の感染時に体内で何が起きているのか、これまでになく詳細に理解できるようになった」とウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して語っている。 ライノウイルスは1年を通して見られるものの、特に秋と冬に多くなる。このウイルスに曝露された全ての人が発症するわけではなく、実際、感染しても症状が出るのは約半数に過ぎないという。そこで研究グループは今回、ウイルス曝露時の鼻上皮における細胞レベル・分子レベルの変化を詳しく調べるため、ヒト鼻粘膜上皮細胞を気液界面で4週間培養し、繊毛を持つ細胞や粘液産生細胞を含むヒト鼻粘膜に近い組織モデルを構築した。 その結果、ライノウイルスに曝露した際の反応は、大きく2つに分かれることが分かった。1つ目は、鼻の上皮細胞でウイルスの侵入や増殖を防ぐタンパク質であるインターフェロン(IFN)応答が正常に機能している場合である。この場合、鼻の上皮細胞がIFNを産生することで、感染する細胞が2%未満に抑えられた。IFN応答が迅速に起きると、ウイルスは増殖して症状を引き起こす前に封じ込められる。 もう1つは、IFN応答が遅れたり阻害されたりする場合である。この場合、ウイルスは容易に広がり、30%超の細胞が感染した。その結果、炎症や過剰な粘液分泌が起こり、典型的な風邪症状が現れる。人が「風邪を引いた」と実感するのは、この段階である。 Foxman氏は、「どちらの反応に傾くかを決定付ける要因は、まだ完全には分かっていない」と話す。ただし、本研究では、予後の良し悪しに関連するいくつかの要因が特定された。例えば、直近で別のウイルス感染を経験していた人ではすでにIFN応答が活性化している可能性があり、新たなウイルスを素早く抑え込むのがより容易になる。また、温度も重要だと考えられる。鼻や肺の空気が冷えていると、IFNの産生が遅れ、ウイルスが拡散する時間が長くなる可能性がある。これは、冬に風邪が流行しやすい理由の一部である可能性がある。さらに、環境要因も影響する。Foxman氏は、「大気汚染やタバコの煙を吸い込むと、その後に曝露される風邪ウイルスなどに対する免疫応答が大きく変化し、たいていは、より有害な炎症反応につながる」と説明している。

145.

2型糖尿病の病初期にも網膜の微細な変化が生じる

 2型糖尿病の初期段階で、網膜のわずかな菲薄化などの変化が生じることを示唆する研究結果が報告された。コインブラ大学(ポルトガル)のSara Oliveira氏らが行った動物実験の結果であり、詳細は「Eye and Vision」12月号に掲載された。 糖尿病網膜症は、過去20年ほどの間にいくつかの新たな治療オプションが開発されてきたにもかかわらず、依然として成人の失明原因の主要な一角を占めている。その一因として、糖尿病の発症から網膜症の診断までに年単位のタイムラグがあり、その間に網膜の分子・細胞レベルでの不可逆的な変化が生じてしまっており、網膜症診断後の治療では十分に病勢を制御できないことの影響が想定される。しかし、現在の臨床で一般的に使用可能な蛍光眼底造影、光干渉断層撮影(OCT)などの検査では、病初期の網膜の変化を検出できない。 一方、Oliveira氏らの研究グループは以前、1型糖尿病モデル動物を用いて、糖尿病発症初期の網膜テクスチャに変化が生じていることを報告している。同氏らは今回、1型糖尿病よりも網膜病変の進行が緩徐であると考えられる2型糖尿病モデル動物でも同様に、病初期で網膜の変化を捉えることが可能かを検討した。 10週齢のラットを高脂肪食で飼育し、腹腔内にストレプトゾトシンを35mg/kg投与して2型糖尿病を誘発。このプロトコル開始のベースライン、および、4週、8週、12週時点でOCTスキャンを施行するとともに網膜電図のデータを収集。自動OCTセグメンテーション、網膜厚計測、テクスチャ解析を実施するとともに、血液網膜関門の透過性、グリア反応性、神経炎症、ニトロソ化ストレスなどを評価した。 解析の結果、網膜テクスチャは、内網状層および視細胞内節・外節において変化を認めた。8週および12週時点では、自己相関、クラスタープロミネンス、均一性、相関情報量II、正規化逆差分モーメント、およびテクスチャの合計平均などの指標に、有意な増加または減少が観察された。重要な点として、これらの指標のうち多く(7項目)は、Oliveira氏らが以前に報告した1型糖尿病モデルにおいても、変化が確認されていたことが挙げられる。また、今回の2型糖尿病モデルでの検討では、網膜の軽度菲薄化と機能低下が認められ、タイトジャンクション蛋白の免疫反応性の軽度低下を伴っていた。ただし、血液網膜関門の破綻は認められなかった。 この結果について、論文の上席著者である同大学のAntónio Francisco Ambrósio氏は、「OCT画像の微細な構造信号を捉えるというこのアプローチは、2型糖尿病の最初期段階での網膜の変化の過程を解明する新たな手法となり得る。またこのアプローチは、永続的な視力障害が発生する前に高リスク患者を特定し、早期介入を実現し良好な転帰を導くという治療上のサポートとなる」と語っている。

146.

一般的なボトル入り飲料水の一部に規制対象外の化学物質

 ボトル入り飲料水を飲むことは、極めて安全な水分補給の方法と感じられるかもしれない。しかし、ボトル入り飲料水は多くの人々が考えているほど純粋ではなく、有害な化学物質を含んでいる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。10種類の人気ボトル入り飲料水ブランドの全てから化学物質が検出され、その中には政府による規制の対象となっていない化学物質も含まれていたという。米サウスカロライナ大学化学教授のSusan Richardson氏らによるこの研究の詳細は、「Water Research」3月15日号に掲載予定。 この研究では、10種類のボトル入り飲料水ブランドと水道水を対象に、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて規制対象および規制対象外の64種類の消毒副生成物(DBP)と呼ばれる化学物質について分析した。DBPは、飲料水の塩素消毒などの過程で、消毒剤が水中の天然有機物と反応して生成される化学物質である。飲料水の消毒は、コレラや腸チフスのような致死性の感染症を防ぐために不可欠である。しかし、その過程で生じるDBPが健康リスクをもたらす可能性がある。 解析対象となったボトル入り飲料水には、原水として水道水を用い、ろ過やオゾン処理などにより精製した製品(精製水)と、湧水または地下水を原水とし、ろ過などにより処理した製品(天然水)が含まれていた。解析の結果、全てのボトル入り飲料水からDBPが検出されたものの、その濃度は概して水道水よりもはるかに低かった。また、水道水からは通常37種類のDBPが検出されるのに対し、ボトル入り飲料水から検出されるDBPは平均3種類とはるかに少なかった。さらに、ボトル入り飲料水のうち、天然水では精製水よりも個々のDBP濃度が低い傾向が見られたが、総DBP濃度については天然水と精製水の間に統計学的な有意差は認められなかった。一方、精製水のうち2種類のスーパーマーケット・ブランドの製品では、毒性指標が他の製品と比べて最大で43倍または83倍高いことが判明した。 Richardson氏は、「これはボトル入り飲料水には良い研究結果であると私は考えている。これまで、有害性の評価の優先度が高いものの規制対象外となっているDBPの大半について、ほとんど情報がなかった。しかし、今回その情報を得ることができたからだ」とNewsweek誌に語っている。同氏によると、ヒトを対象とした多くの疫学研究で、DBP曝露は膀胱がんリスクの上昇と関連することが示されており、また、大腸がんリスク、流産や先天異常のリスクとの関連を示唆する研究も報告されているという。特に懸念される化学物質の一つが、規制対象外で、がんの原因となる可能性が指摘されているジブロモアセトニトリルである。研究グループによると、ボトル入り飲料水のジブロモアセトニトリルの濃度は低く、水道水の濃度と同程度であったという。 今回の研究結果の報告を受けて、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のNatalie Exum氏は、「規制対象外のDBPは、その毒性プロファイルから最も懸念されているが、健康への影響に関しては、まだ規制を要することを裏付けるエビデンスが得られていない。このことは、われわれが健康への有害性を十分に理解しないまま、これらを摂取している可能性があることを意味している」と話している。 一方、この研究結果は、全般的にボトル入り飲料水の方が水道水よりも安全性は高いことを意味するものではないと指摘する専門家もいる。米ギャノン大学でエリー湖の水質改善を目指すプロジェクト「NePTWNE」のディレクターを務めるSherri Mason氏は、「ボトル入り飲料水よりも水道水の方が安全性は高いというのが私の考えだ」とNewsweek誌に語っている。同氏は、別の研究で、ボトル入り飲料水には大量のマイクロプラスチックやベンゼンなどの化学物質が含まれている可能性が指摘されていることも付け加えている。また、水道水は1日に複数回にわたって検査されるのに対し、ボトル入り飲料水では検査頻度がはるかに低いことも指摘している。

147.

睡眠薬、抗コリン薬を処方中の患者を受け持つプライマリケア医に、電子カルテを介し減薬を勧める介入は、不適切処方を減らす効果があるが、死亡リスクを高めるかもしれない(解説:名郷直樹氏)

 高齢者の不適切処方は日本においても大きな問題の1つだが、本研究は米国のプライマリケア医を対象として、65歳以上の高齢者でベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗コリン薬が処方されている患者の不適切処方に対し、電子カルテを通し、前もって介入する群、診察後減薬を検討させる群と標準的な診療を比較し、1剤以上の減薬の効果を検討したクラスターランダム化比較試験である。ランダム化はプライマリケア医ごとに行われ、結果は患者ごとで解析されている。 2つの介入方法であるが、診療前群では、医師が電子カルテを開くと、初回には薬剤継続のリスクの患者との共有、患者向け説明資料、代替治療や減薬アルゴリズムへのリンクが表示され、2回目以降は、前回の情報提供を想起させ、具体的な減薬のお勧めが表示される。診療後介入群では、初回診察時に前もって介入する群と同様な通知が表示され、4週後に電子カルテ上のメールボックスに減薬のお勧めが送信され、診察時間以外に減薬を検討させるという具合である。 結果であるが、1次アウトカムの1剤以上の減薬ができた割合は、前もって介入する群で36.8%、診療後介入群で34.3%、通常診療群で26.8%、通常診療群に対して減薬できる割合が診療前介入群で1.4倍、95%信頼区間(CI)1.14~1.73、リスク差で10.4%、診療後介入群で1.26倍(95%CI:1.01~1.57)、リスク差で6.5%と報告されている。 しかし死亡については、診療前介入群で1.4%、診療後介入群で3.9%、通常診療群で1.8%と、診療後介入群で高い傾向にある。 医療費の視点で見れば、この結果は処方を減らすことによる医療費削減が見込まれ、医療政策の決定に対して重要である。しかし個々の患者の視点で見れば、診療後介入群で減薬が死亡リスクの増加につながる可能性が示されているように、こうした介入を現実に行うかどうかの判断は難しい。減薬は代用のアウトカムにすぎず、その後の患者アウトカムにつながっていない可能性があるという点は、この論文を実装するに当たって十分考慮すべき点だろう。

148.

副腎偶発腫瘍【日常診療アップグレード】第50回

副腎偶発腫瘍問題72歳女性。腎盂腎炎のため救急室を受診した際、CT検査で偶然に内部が均一な直径3cmの左副腎腫瘍が見つかった。単純CT検査でのCT値は8ハンスフィールド単位(Hounsfield Unit: HU)である。既往歴は高血圧、脂質異常症、2型糖尿病。処方薬はアムロジピン、アトルバスタチン、メトホルミン、デュラグルチドである。バイタルサインを含む身体所見は正常である。低用量デキサメタゾン抑制試験および血漿メタネフリン、血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比の結果は正常であった。追加検査や治療は不要である。

149.

論文投稿から採択まで 英文校正・カバーレター・査読対応のAI活用術(後編)【誰でも使えるChatGPT】第8回

さて、前回から引き続き、論文投稿から採択までのプロセスにおいて、上手なChatGPTの使い方を解説します。STEP 2:カバーレター作成カバーレターは論文の「顔」です。Editor(編集者)が最初に目にする文書であり、査読に回すかどうかの判断材料になります。しかし、「何を書けばいいのかわからない」という声をよく聞きます。カバーレターに含めるべき要素1.投稿する論文のタイトルと種類2.なぜこの雑誌を選んだか3.論文の新規性・重要性(2〜3文で簡潔に)4.類似論文との違い(該当する場合)5.倫理的配慮の確認6.利益相反の開示7.著者全員の同意確認カバーレター作成あなたは医学論文投稿の専門家です。以下の論文について、Editor宛のカバーレターを作成してください。【論文情報】-タイトル:Vitiligo-like depigmentation following Stevens-Johnson syndrome induced by allopurinol: A case report-投稿先:Journal of Dermatology(日本皮膚科学会誌・英文)-論文種類:Case Report-著者:Atsushi Otsuka, et al.-所属:Department of Dermatology, Kindai University【論文のポイント】-アロプリノールによるSJS後に白斑化したまれな症例-SJS後の色素変化の多様性を示す貴重な報告-長期経過観察(6ヵ月)で白斑化を確認【含めるべき内容】-この症例の学術的価値-Journal of Dermatologyの読者にとっての relevance-倫理審査承認済み、患者同意取得済みの記載-利益相反なしの記載-全著者が投稿に同意している旨【形式】-英語で作成-フォーマルだが簡潔に-300〜400語程度ChatGPTからの回答例 Dear Editor,We are pleased to submit our manuscript entitled "Vitiligo-like depigmentation following Stevens-Johnson syndrome induced by allopurinol: A case report" for consideration for publication in the Journal of Dermatology.This case report describes an unusual clinical course of a 67-year-old woman who developed vitiligo-like depigmentation following Stevens-Johnson syndrome (SJS) induced by allopurinol.While post-inflammatory hyperpigmentation is a well-recognized sequela of SJS, the transition from hyperpigmentation to depigmentation over a 6-month period, as observed in our case, is exceptionally rare and has significant implications for understanding the pathophysiology of pigmentary changes following severe cutaneous adverse reactions.We believe this case report is well-suited for the Journal of Dermatology for the following reasons: (1) it documents a rare clinical phenomenon that has not been extensively reported in the literature, (2) it provides insights into the complex mechanisms underlying post-SJS pigmentary changes, and (3) it offers valuable information for clinicians managing patients with drug-induced SJS regarding long-term pigmentary outcomes.This study was approved by the Institutional Review Board of Kindai University (approval number: XXX). Written informed consent was obtained from the patient for publication of this case report and accompanying images.All authors have no conflicts of interest to declare.All authors have read and approved the final manuscript and agree to its submission to the Journal of Dermatology.This manuscript has not been published previously and is not under consideration for publication elsewhere.We thank you for considering our manuscript and look forward to your response.Sincerely,Atsushi Otsuka, MD, PhDDepartment of DermatologyKindai University Faculty of Medicineカバーレター作成のコツChatGPTが生成したカバーレターは、そのまま使わず、必ず以下を確認・修正してください。【必ず確認すべき点】-倫理審査の承認番号(実際の番号に置き換え)-著者名・所属の正確性-論文タイトルの一致-投稿規定で求められている記載事項の網羅【カスタマイズすべき点】-なぜその雑誌を選んだかの理由をより具体的に-その雑誌の最近の掲載論文に言及すると効果的-自分の言葉で「この論文の一番の売り」を強調STEP 4:査読結果への対応(Revision)ここが最も重要で、最も難しいステップです。査読者からのコメントにどう対応するかで、採択されるかRejectされるかが決まります。査読結果のパターン-Accept:そのまま採択(まれ)-Minor Revision:軽微な修正で採択見込み-Major Revision:大幅な修正が必要、再査読あり-Reject with Resubmission:却下だが再投稿は歓迎-Reject:却下Minor RevisionやMajor Revisionの場合、査読者のコメントに1つずつ丁寧に回答する「Response to Reviewers(Point-by-Point Response)」を作成する必要があります。査読コメントへの回答作成あなたは医学論文の査読対応の専門家です。以下の査読者コメントに対する回答を作成してください。【査読者コメント】Reviewer #1, Comment 3:"The authors claim that vitiligo-like depigmentation following SJS is rare, but they do not provide a comprehensive literature review.How many similar cases have been reported? Please provide a more thorough review of the literature."【対応方針】-文献検索を追加で実施した-PubMed検索で3例の類似報告を発見-Discussionに文献レビューを追加した【回答の形式】-丁寧で建設的なトーン-査読者への感謝を示す-具体的に何を修正したか明記-修正箇所を原稿のどこで確認できるか示すChatGPTからの回答例 Response to Reviewer #1, Comment 3:We thank the reviewer for this valuable suggestion. We agree that a more comprehensive literature review strengthens our manuscript significantly.In response to this comment, we conducted an extensive literature search using PubMed with the following search terms: "Stevens-Johnson syndrome" AND ("vitiligo" OR "depigmentation" OR "hypopigmentation").Our search identified three previously reported cases of vitiligo-like depigmentation following SJS (References XX, XX, and XX).We have now added a detailed discussion of these cases in the revised manuscript (Discussion, page X, lines XX-XX).Specifically, we compare our case with these reported casesin terms of:-Causative drugs-Time course of pigmentary changes-Distribution of depigmentation-Proposed mechanismsThis comparison highlights the unique features of our case, particularly the well-documented transition from post-inflammatory hyperpigmentation to depigmentation, which was not clearly described in previous reports.We believe this addition significantly improves the manuscript and provides readers with a more comprehensive understanding of this rare phenomenon.査読対応の重要原則【原則1:すべてのコメントに回答する】たとえ「それは違う」と思うコメントでも、無視してはいけません。反論する場合も、丁寧に理由を説明します。【原則2:感謝と謙虚さを示す】批判的なコメントであっても、「ご指摘ありがとうございます」から始めるのが基本です。【原則3:修正箇所を明確に示す】「Discussionを修正しました」ではなく、「Discussion, page 8, lines 15-23」のように具体的に示します。【原則4:できないことは理由を説明する】追加実験や追加データの要求に応じられない場合は、なぜできないのかを説明し、代替案を提示します。批判的コメントへの丁寧な反論以下の査読者コメントに対して、丁寧に反論する回答を作成してください。【査読者コメント】Reviewer #2, Comment 1:"This is just a single case report with no mechanistic data.The clinical significance is limited. I recommend rejection."【私の見解】-症例報告の価値は機序解明だけではない-まれな臨床経過の記録自体に価値がある-ただし、可能な範囲で病理所見を追加した【回答の方針】-査読者の懸念を正面から受け止める-症例報告の学術的価値を丁寧に説明-追加した内容を具体的に示す-論文の限界は認めつつ、価値を主張するRejection(却下)された場合残念ながらRejectされた場合でも、ChatGPTは次のステップで役立ちます。別雑誌への再投稿準備以下の論文がJournal Aから却下されました。別の雑誌に再投稿するための準備を手伝ってください。【却下理由(Editor's comment)】"While the case is interesting, it does not meet the threshold of novelty for our journal.We receive many case reports and can only accept those with exceptional educational value."【質問】1.この却下理由から学べること2.論文をどう改善すべきか3.より適切な投稿先の候補4.カバーレターで強調すべき新たなポイント■ChatGPT活用の注意点まとめ絶対にやってはいけないこと1.査読者への攻撃的な回答を生成させる感情的になりそうなときこそ、冷静に。ChatGPTに「この査読者は間違っている」と言わせても、採択にはつながりません。2.存在しない文献を引用させるChatGPTは架空の論文を生成することがあります。すべての引用は自分で確認を。3.未発表データや患者情報を入力する守秘義務に反する可能性があります。4.ChatGPTの出力をそのまま投稿する必ず自分の目で確認し、修正を加えてください。推奨される使い方1.下書き・たたき台として使うゼロから書くより、ChatGPTの出力を修正するほうが効率的です。2.表現の選択肢を得る「この文をもっとフォーマルに」「別の言い方は?」と聞くと、選択肢が広がります。3.チェックリストとして使う「カバーレターに含めるべき要素は?」と確認に使うのも有効です。4.英語の勉強として使う修正理由を日本語で説明させると、英語力向上にもつながります。AI使用の開示について第5回でもお伝えしましたが、論文執筆過程でAIを使用した場合は、適切に開示することが求められています。カバーレターへの記載例:We used ChatGPT (OpenAI, GPT-4) for English language editing and proofreading of this manuscript.All AI-generated content was reviewed and verified by the authors, who take full responsibility for the final content.Take-Home Message論文投稿から採択までのプロセスは、論文執筆と同じくらい重要です。ChatGPTを「投稿支援アシスタント」として活用することで、このプロセスを効率化できます。【本日のポイント】英文校正はChatGPT+DeepL逆翻訳で確認ChatGPTで校正した英文をDeepLで日本語に戻し、意図した内容になっているか確認します。この二段階チェックで、英文校正サービスなしでも十分な品質を確保できます。カバーレターは「たたき台」を生成必要な要素を含んだ下書きを作成し、自分の言葉でカスタマイズすることで、説得力のあるカバーレターが完成します。査読対応は「丁寧さ」が命批判的なコメントにも感謝と謙虚さを示しながら、論理的に回答することが採択への近道です。ChatGPTに丁寧な表現を提案させましょう。すべてのAI出力は必ず確認引用文献の存在確認、医学的正確性のチェック、投稿規定との整合性など、最終確認は必ず自分で行ってください。論文投稿は時間と根気のいる作業ですが、ChatGPTという強力なアシスタントを得ることで、そのハードルは確実に下がります。ぜひ活用して、研究成果を世界に発信してください。

150.

イライラしながら嘔吐、何の中毒? 【中毒診療の初期対応】第5回

<今回の症例>年齢・性別17歳・男性患者情報繁華街のなかの空き地で「気持ち悪い」と叫びながら嘔吐を繰り返しているのを通りがかりの男性が発見し、救急センターに搬送された。初診時は、呼吸数36/分、SpO2 99%(室内気)、血圧116/74mmHg、心拍数146bpm、意識レベルJCS 2、瞳孔 左右4.5mm同大、対光反射+、体温36.8℃であった。ストレッチャー上で「気持ち悪い」などと繰り返し叫び、イライラして落ち着かず、嘔吐を繰り返した。また、受け答えは曖昧であったが、「何件かのドラッグストアを回って、購入した市販薬を2時間ほど前に100錠ほどまとめて飲んだ」「薬の箱や殻は道端に捨てた」などと話していた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 24.40×103/mm3、Hb 14.4g/dL、Ht 44.6%、Plt 122×103/mm3、生化学検査では、TP 7.2g/dL、AST(GOT)24IU/L、ALT(GPT) 22IU/L、LDH 156IU/L、CPK 342IU/L、AMY 88IU/L、Glu 182mg/dL、BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL、Na 140mEq/L、K 2.8mEq/L、Cl 102mEq/Lであった。動脈血ガス(室内気)では、pH 7.34、PaCO2 24.6Torr、PaO2 90.5Torr、HCO3- 16.3mmol/L、BE -7.2mmol/L、乳酸 8.6mmol/Lであった。心電図では洞性頻脈を認めた。なお、尿中薬物簡易スクリーニングキットでは何も検出されなかった。<問題1><解答はこちら>5.カフェイン<問題2><解答はこちら>3.血液透析法上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.1)Kamijo Y, et al. Intern Med 2018;57:2141-2146.2)Kohara S, et al. Hemodial Int 2026;30:73-79.

151.

第307回 小児科医由来の抗体が強力にRSウイルスを阻止

およそひっきりなしに呼吸器ウイルスに接することがいわば宿命の小児科医の血液由来の抗体が、承認済みの抗体より25倍も強力に呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を阻止し、しかもより多種のウイルス株を相手にできることが示されました1,2)。ニューモウイルス科に属するRSVやヒトメタニューモウイルス(hMPV)は世界の健康を蝕む主因の1つで、高齢者、免疫不全者、2歳以下の小児、とくに生後6ヵ月までの乳児の急な下気道感染症を引き起こします。RSVの融合前Fタンパク質抗原やその抗原を作るmRNA入りのワクチンの高齢者への接種は承認されていますが、小児向けの開発は難航しています。たとえば高齢者への使用が承認済みのモデルナのmRNAワクチンmRESVIAの生後8~23ヵ月の乳幼児への接種試験では、期待とは裏腹に重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しており3)、試験中断を余儀なくされています。RSVとhMPVの両方を相手するワクチンmRNA-1365でもやはりRSVによる重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しました。成人へのRSVワクチン接種でも心配事があります。RSVワクチンの普及は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が変異株を次々に発生させているように、網の目を潜る変異株の発生を促す恐れがあります。一方、ウイルスの不変領域に取り付く抗体であれば変異株を発生し難くできそうですが、そういう抗体はウイルス阻止効果がいまひとつという弱みがあります。では弱みのない抗体を見つけるにはどうしたらよいか? 小児のさまざまな感染症に日々取り組む仕事柄、RSVやhMPVに繰り返し接する小児科医の自然免疫は実は宝の山で、ウイルスとの歴戦で鍛え上げられた強力な抗体を備えているかもしれません。中国の重慶医科大学小児病院のHui Zhai氏らはそう考え、同病院で10年を超えて働く小児科医10人の血液を調べてみました。すると、それら小児科医の抗体のRSV阻止活性は、仕事でRSVやhMPVに接することのない健康な成人14人を3倍超上回りました。阻止活性が高かった小児科医3人の血液中の抗体をふるいに掛けところ、調べた57の抗体のほぼすべての56がRSVの融合前Fタンパク質にしかと結合しました。続いてそれらの抗体の人工品を作って研究室で検討したところ、CNR2056とCNR2053という呼び名の2つがRSV株のより多くに対してとくに活性を示しました。CNR2047という名称のもう1つの抗体はRSVとhMPVの両方を手広く阻止する交差活性がありました。CNR2056、CNR2053、CNR2047を単独または組み合わせてマウスやラットに投与したところ、RSVやhMPV感染症状を防げました。ウイルス阻止活性は強力で、既存のRSV阻止抗体のニルセビマブ(商品名:ベイフォータス)やclesrovimabを最大25倍上回りました。ニルセビマブやclesrovimabにせよRSVワクチンにせよ今のところ相手しうるRSV株の種類は限られます。小児科医がその職業人生で身に着けた自然免疫から見つかった今回の抗体の組み合わせは、多用途でより手広く感染を防ぐ手段となりうるとZhai氏らは示唆しています1)。参考1)Antibody cocktails based on the occupationally acquired immunity of pediatricians neutralize and confer protection against RSV and hMPV / Science Translational Medicine2)Paediatricians’ blood used to make new treatments for RSV and colds / NewScientist(MSN)3)Snape MD, et al. Safety and Immunogenicity of an mRNA-Based Rsv Vaccine and an Rsv/hMPV Combination Vaccine in Children 5 to 23 Months of Age. Preprints. 2024 Dec 11.

152.

マスクで心筋梗塞リスクが低下!?/Eur Heart J

 PM2.5への短期曝露は、急性心筋梗塞(AMI)リスクと関連することが知られている。AMIのなかでも、冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA)は、PM2.5の影響を受けやすい可能性がある。そこで、石井 正将氏(熊本大学病院 医療情報経営企画部)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴うマスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が、PM2.5曝露とAMIによる入院との関連に及ぼす影響を調査した。その結果、パンデミック前後のPM2.5への曝露に伴う心筋梗塞による入院リスクは、AMI全体および閉塞性冠動脈疾患を伴う心筋梗塞(MI-CAD)では不変であったが、MINOCAではパンデミック後に有意に低下した。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年2月13日号に掲載された。 本研究の対象は、2012年4月1日~2022年3月31日に、日本循環器学会が認定する施設へ入院したAMI患者27万91例(MI-CAD:24万7,054例、MINOCA:2万3,037例)とした。パンデミックの影響を評価するため、日本で緊急事態宣言が発令された2020年4月7日を境界として、研究期間をパンデミック前(2012年4月1日~2020年4月6日)とパンデミック後(2020年4月7日~2022年3月31日)に分類した。時間不変因子(性別、基礎疾患など)の影響を排除するため、時間層別ケース・クロスオーバー法を用いて、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3上昇した際のAMIによる入院のオッズ比(OR)を算出した。気温や湿度などの気象条件、長期的なPM2.5の傾向、Googleが提供するコミュニティモビリティレポートを用いた人流データなどを調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・MI-CAD群、MINOCA群の年齢中央値はそれぞれ70歳、71歳であり、男性の割合はそれぞれ75.5%、65.1%であった。・全期間において、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3増加するごとに、AMI全体、MI-CAD、MINOCAのいずれについても入院リスクの有意な上昇が認められた。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、2日前にPM2.5濃度が10μg/m3上昇すると、入院のORはAMI全体が1.105(95%信頼区間[CI]:1.022~1.193)、MI-CADが1.088(95%CI:1.004~1.180)、MINOCAが1.303(95%CI:1.005~1.688)に上昇した。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、パンデミック前後の比較において、AMI全体、MI-CADでは有意な変化はみられなかった。一方で、MINOCAについては、パンデミック後にリスクが減弱した。パンデミック前後のOR、交互作用のp値は以下のとおり。 AMI全体:1.105→1.091、p for interaction=0.070 MI-CAD:1.088→1.079、p for interaction=0.241 MINOCA:1.303→1.230、p for interaction=0.017・パンデミック開始日の定義を変更するなど、複数の感度分析を実施しても、パンデミック後のMINOCAによる入院リスク低下の傾向は一貫していた。 本研究結果について、著者らは「パンデミック後の期間においてMINOCAによる入院リスクが低下したことは、マスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が大気汚染に関連する心血管イベントに影響を及ぼすことを示唆している」と結論を述べた。また、パンデミック後のMINOCAによる入院リスクの低下は、行動制限や他の大気汚染物質の影響を考慮しても有意であったことに触れ「MINOCAの主な原因とされる冠攣縮や冠微小循環障害に対し、行動変容が保護的に働いた可能性が強く示唆される」と考察した。

153.

蛋白尿の進行が認知機能低下と独立して関連

 慢性腎臓病(CKD)患者を対象とした前向きコホート研究により、CKDの重症度が認知機能障害の発症リスク上昇と関連し、とくに蛋白尿の進行が注意力・処理速度および実行機能の低下と独立して関連することが、米国・Tulane University School of Public Health and Tropical MedicineのZhijie Huang氏らにより示された。JAMA Network Open誌2026年2月17日号掲載の報告。 これまでの研究により、CKDが認知症や認知機能低下のリスク因子となる可能性が指摘されているが、CKD患者のみを対象に前向きに検討した研究は限られている。そこで研究グループは、推算糸球体濾過量(eGFR)の低下と尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)の上昇が認知機能障害の発症率上昇と関連するという仮説を立て、eGFRおよびUPCRに基づくCKD重症度と認知機能障害の発症との関連を検討した。 対象は、Chronic Renal Insufficiency Cohort(CRIC)研究に2003~08年および2013~15年に登録された21~79歳のCKD患者5,607例であった。ベースラインで認知機能障害を有する患者は除外した。統計分析は2024年8月~2025年12月に実施した。 認知機能は、全般的認知機能をModified Mini-Mental State Examination、言語記憶・遅延再生をBuschke Selective Reminding Test、注意力・処理速度をTrail Making Test A、実行機能をTrail Making Test Bで年1回または2年ごとに評価した。各検査において、ベースライン時のコホート全体平均から1SD以上低い値を示した場合を認知機能障害の発症と定義した。Cox比例ハザードモデルを用い、人口統計学的因子や生活習慣、臨床因子を段階的に調整して解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・参加者5,607例のうち、男性は3,159例(56.3%)、平均年齢は59.6歳(SD 10.8)、追跡期間中央値は各検査で4~6年であった。・対数変換したUPCRが1SD上昇するごとに、注意力・処理速度障害のリスクは21%増加し(ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.05~1.41、p=0.01)、実行機能障害のリスクは16%増加した(HR:1.16、95%CI:1.02~1.31、p=0.02)。・eGFRが1SD低下するごとに、注意力・処理速度障害のリスクは21%増加した(HR:1.21、95%CI:1.05~1.38、p=0.006)。・CKDステージ別では、G4~5はG1~2と比較して、注意力・処理速度障害リスクが54%増加した(HR:1.54、95%CI:1.05~2.27、線形傾向のp=0.03)。・UPCRと認知機能障害との関連はeGFRで調整した後も維持された一方、eGFRと注意力・処理速度との関連はUPCRで調整した後に大きく減弱した。・eGFRとUPCRを組み合わせた統合解析では、両方が最も進行した群(eGFRが60mL/分/1.73m2未満かつUPCRが150mg/g以上)は、基準群(eGFRが60mL/分/1.73m2以上かつUPCRが150mg/g未満)と比較して、全般的認知機能障害のリスクが38%増加し(HR:1.38、95%CI:1.05~1.82、p=0.003)、言語記憶・遅延再生障害のリスクが54%(HR:1.54、95%CI:1.08~2.19、p=0.02)増加した。・これらの関連は、年齢、性別、人種、糖尿病の有無にかかわらず一貫して認められた。 これらの結果より、研究グループは「CKDの重症度が認知機能障害の発症率増加と前向きに関連することが示された。これらの知見は、CKDの重症度が認知機能低下の危険因子であることを強調するものである」とまとめた。

154.

中年日本人男性における就寝前の水分摂取が睡眠や抑うつ症状に及ぼす影響

 日中の適切な水分摂取はメンタルヘルスを向上させることが知られている。しかし、就寝中への影響はいまだ明らかになっていない。産業技術総合研究所の甲斐田 幸佐氏らは、就寝前の白湯摂取が睡眠パラメーターおよび抑うつ気分に及ぼす影響を明らかにするため、本研究を実施した。PLoS One誌2026年1月6日号の報告。 本研究は日本人2,000人を対象に、就寝前の水分摂取とうつ病自己評価尺度(CES-D)を用いて測定した抑うつ気分との関連を明らかにするため、質問票を用いて調査を行った(Study1)。また、就寝直前に280mLの白湯を摂取した場合と、就寝前2時間以上何も摂取しない場合の影響を比較した(Study2)。 主な内容は以下のとおり。・Study2の結果、就寝直前の白湯摂取は、翌朝の抑うつ気分を軽減し、レム睡眠潜時を延長させ、レム睡眠時間を短縮させることが示唆された。・しかし、白湯摂取は夜間頻尿の可能性を増加させた。 著者らは「メリットとデメリットのバランスを取ることは重要ではあるものの、就寝前に普通の水を飲む習慣は、主観的ウェルビーイングを高めるシンプルで効果的な手段である」としている。

155.

テゼペルマブ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加/AZ

 アストラゼネカは2026年2月19日、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)について「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療で効果不十分な18歳以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「WAYPOINT試験」の結果に基づくものである。WAYPOINT試験では、共主要評価項目の鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)が、いずれも有意に改善したことが報告されている。なお、NPSは投与4週時、NCSは投与2週時から改善が認められ、投与52週時まで改善が維持された。 電子化された添付文書の「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4. 効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)5. 効能又は効果に関連する注意〈気管支喘息〉5.1 最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。5.2 本剤は既に起きている気管支喘息の発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉5.3 本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。6. 用法及び用量〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉通常、成人にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。7. 用法及び用量に関連する注意〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から24週までには得られる。24週までに治療反応が得られない場合は、漫然と投与を続けないよう注意すること。8. 重要な基本的注意〈効能共通〉8.1 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。8.2 本剤の投与によって合併する他のアレルギー疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー疾患に対する適切な治療を怠った場合、症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれもある。本剤の投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー疾患を担当する医師と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理のもとで慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。〈気管支喘息〉8.4 本剤の投与開始後に喘息症状がコントロール不良であったり、悪化した場合には、医師の診療を受けるように患者に指導すること。

156.

リツキサン、自己免疫性溶血性貧血の適応追加/全薬工業・中外

 全薬工業および中外製薬は、共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体のリツキサン点滴静注100mg/同500mg(一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え))について、2026年2月19日、「自己免疫性溶血性貧血」の適応追加の承認を取得したことを発表した。 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対する適応追加は、日本血液学会および日本小児血液・がん学会より開発要望が提出され、2025年7月4日の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、同年7月31日の薬事審議会医薬品第一部会で公知申請を行って差し支えないと正式に決定された。これを受け、全薬工業が同年8月29日に公知申請を行い、今回の承認取得に至った。なお、第一部会で決定された7月31日付けで薬事承認を待たずに保険適用となっている。 AIHAは、自己抗体が体温(37℃)近くで反応する温式AIHAと、体温以下の低温条件で反応する冷式AIHA(寒冷凝集素症および発作性寒冷ヘモグロビン尿症)に大別される。温式AIHAでは約80%で副腎皮質ステロイド薬で改善がみられるが、再発が多く、長期投与が必要であり、再発・難治例では脾臓摘出術が行われている。また、寒冷凝集素症では保温が最も基本的な治療法だが、貧血症状、輸血依存、末梢循環障害などの重篤な症状を伴う場合もある。これらの患者に対する治療選択肢の1つとして、国内外の診療ガイドラインではリツキシマブによる治療が推奨されている。 リツキシマブは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を免疫系を用いて攻撃し細胞を傷害する。AIHAでの自己反応性B細胞の活性化や自己抗体の出現に至る病因は十分に解明されていないが、温式AIHAおよび冷式AIHAのいずれも自己抗体の出現が共通して認められることから、リツキシマブによるB細胞除去を介した治療効果が期待されるという。

157.

肝線維化を有するMASH、efimosfermin月1回投与の安全性と忍容性を確認/Lancet

 ステージF2またはF3の肝線維化を有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)患者において、月1回皮下投与はプラセボと比較し、安全性および忍容性が良好であることが認められた。米国・Houston Methodist HospitalのMazen Noureddin氏らが、米国の34施設で実施した第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。MASHの有病率が増加しており、線維化および疾患進行を抑制する効果的で安全な治療戦略は重要なアンメットニーズである。efimosferminは月1回投与が可能な線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アナログで、著者らは「今回の結果は、MASH関連線維症の治療薬としてefimosferminのさらなる開発を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年2月5日号掲載の報告。ステージF2/F3の肝線維化を伴うMASH患者とプラセボを比較 研究グループは、BMI値27以上、スクリーニング時または初回投与前6ヵ月以内に実施した診断的肝生検で、組織学的にステージF2またはF3のMASH(NASH Clinical Research Networkの分類に基づく)が確認され、非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア(NAS)が4以上、NASの3つの構成要素(脂肪変性、風船様変性、小葉炎症)のすべてで最低スコア1以上、MRIによるプロトン密度脂肪分画測定(MRI-PDFF)で肝脂肪化率≧8%、controlled attenuation parameter(CAP)スコア>300dB/m、肝硬度(vibration-controlled transient elastographyに基づく)7.0~20.0kPa、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>25U/L、メタボリックシンドロームの4つの構成要素(肥満または過体重、脂質異常症、2型糖尿病、高血圧)のうち2つ以上の既往または併存している18~75歳の患者を対象とした。肝線維化ステージ(F2 vs.F3)で層別化してefimosfermin 300mg群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、二重盲検下で皮下投与を4週間ごとに24週間行った。 主要エンドポイントは、安全性および忍容性(すなわち、試験治療下における有害事象[TEAE]、ベースラインから24週目までの血圧および心拍数の変化、24週時におけるGrade3および4の検査値異常の発生率)で、少なくとも1回投与を受けたすべての患者を解析対象とした。有害事象の発現率は67%vs.55%、Grade4以上の有害事象は報告なし 2023年5月4日~2024年3月22日に1,171例がスクリーニングされ、このうち適格基準を満たした84例がefimosfermin群(43例)またはプラセボ群(41例)に無作為化された。女性44例(52%)、男性40例(48%)、肝線維化ステージはF2が48例(57%)、F3が36例(43%)であり、65例で24週時の生検結果の評価が可能であった。efimosfermin群の43例全例とプラセボ群の41例中40例が少なくとも1回投与を受けた。 TEAEはefimosfermin群で43例中29例(67%)、プラセボ群で40例中22例(55%)に報告され、大半は軽度(efimosfermin群24例[56%]、プラセボ群15例[38%])または中等度(それぞれ18例[42%]、14例[35%])であった。 発現頻度が高い有害事象は悪心、下痢、嘔吐を含む消化器関連事象で、治療開始後数週間以内に発生し一過性であった。 両群ともバイタルサインに臨床的に有意な変化はなく、臨床的に重要なGrade3以上の検査値異常は認められず、Grade3を超える有害事象ならびに死亡例は報告されなかった。

158.

成人の肥満、重症感染症リスクが1.7倍/Lancet

 成人肥満は、病原体の種類、集団および患者背景を問わず感染症による入院および死亡のリスク因子であり、世界中の感染症による死亡の約10例に1例が肥満に起因する可能性があることを、フィンランド・ヘルシンキ大学のSolja T. Nyberg氏らが、同国の前向きコホート研究および英国のUK Biobankのデータを解析した結果で示した。これまで成人肥満は、特定の感染症との関連は示されているが、感染症全体に及ぼす影響に関するエビデンスはほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2026年2月9日号掲載の報告。フィンランドの2つのコホート約6万8千例と、英国の約47万9千例のデータを解析 研究グループは、フィンランドの2つの前向きコホート研究であるFinnish Public Sector(FPS)試験(ベースライン2000~02年)とHealth and Social Support(HeSSup)試験(ベースライン1998年)の統合データを用いて解析を行い、UK Biobank(ベースライン2006~10年)の独立した集団で再現性を検証した。 ベースラインでBMI値を評価し、健康体重(BMI 18.5~24.9)、過体重(BMI 25.0~29.9)、肥満(クラスI:BMI 30.0~34.9、クラスII:35.0~39.9、クラスIII:≧40.0)に分類した。 主要アウトカムは、非致死的感染症による入院または致死的感染症(重症感染症)の初回発生で、入院・死亡登録を通じて特定した。追跡調査期間は、FPS試験では2016年まで、HeSSup試験では2012年まで、UK Biobankでは2022年までであった。ベースラインまたはそれ以前に、入院登録に感染症の記録のある参加者は除外した。 肥満と重症感染症との関連についてハザード比(HR)を算出するとともに、世界疾病負担研究(GBD)のデータベースの肥満有病率推定値を用いて、2018年(COVID-19パンデミック前)、2021年(パンデミック中)、2023年(パンデミック後)における肥満に起因する致死的感染症の割合を世界全体、地域別および国別に推定した。 解析対象は、フィンランドコホートが計6万7,766例(平均年齢42.1歳[SD 10.8]、女性4万9,516例[73.1%]、男性1万8,250例[26.9%])、UK Biobankが47万9,498例(平均年齢57.0歳[SD 8.1]、女性26万1,084例[54.4%]、男性21万8,414例[45.6%])であった。重症感染症リスクは1.7倍、感染症死亡例の約10例中1例は肥満に起因 フィンランドコホートでは、追跡期間(平均±SD)14.1±3.1年において新規重症感染症が8,230例に発生した(平均年齢50.7歳)。UK Biobankでは、同様に12.6±3.2年において8万1,945例に発生した(平均年齢67.0歳)。 肥満は新規重症感染症リスクと関連し、すべてのコホートにおいてBMI値カテゴリーが上がるに従いHRも上昇した。健康体重者と比較し、クラスIII肥満者は非致死的重症感染症のリスクが3倍高く(フィンランドコホートのHR:2.75[95%信頼区間[CI]:2.24~3.37]、UK BiobankのHR:3.07[95%CI:2.95~3.19])、致死的重症感染症も同様であり(フィンランドコホートのHR:3.06[95%CI:1.25~7.49]、UK BiobankのHR:3.54[3.15~3.98])、両者の統合HR(いずれかのアウトカムに至るリスク)は、フィンランドコホートが2.69(95%CI:2.19~3.30)、UK Biobankが3.07(2.95~3.19)であった。 クラスI~IIIいずれかの肥満を有する場合、健康体重者に対する非致死的または致死的重症感染症の統合HRは1.7(95%CI:1.7~1.8)であった。この関連は、肥満の指標(BMI、腹囲、腹囲身長比)、ベースラインの人口統計学的・臨床的サブグループ、および感染症のタイプ(細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、急性、持続性など)で一貫していた。 これらのリスク推定値をGBDのデータに適用すると、肥満に起因する感染症関連死亡の人口寄与割合は、2018年で8.6%(95%CI:6.6~11.1)、2021年で15.0%(12.8~17.4)、2023年で10.8%(8.6~13.6)と推定された。

159.

出血と血栓のジレンマの問題は本当に根深いね(解説:後藤信哉氏)

 組織因子と血液凝固第VII因子は止血に重要な役割を演じる。遺伝子組み換え第VII因子(rFVIIa)は各種出血性疾患に対して止血効果を示した。本研究では発症後2時間以内の頭蓋内出血を対象として、rFVIIaの有効性を検証したランダム化比較試験である。 発症後2時間以内の脳梗塞症例を選定するのも難しい。本試験では626例のランダム化比較試験を試行するために、3,288例のスクリーニングが必要になっている。頭蓋内の出血がrFVIIaの使用により止血したか否かを検証するのは容易ではない。画像診断による血腫の増大、臨床症状などを間接的指標とせざるを得ない。 本研究では画像を用いた血腫の増大速度はrFVIIaの使用により遅くなった。しかし、出血の逆の合併症としての致死的な血栓イベントがrFVIIaにより増加してしまった。自分が頭蓋内出血したとしても、致死的血栓イベントリスクが増えるかもしれないとなるとrFVIIaを受けようとは思えない。出血と血栓のジレンマは本当に厄介な問題だと思う。

160.

第283回 2026年度診療報酬改定に思う「ストラクチャー評価からプロセス・アウトカム評価へ」-医療AIが前提となる時代

「人を増やせば稼げる医療」の終焉2月13日に2026年度の診療報酬改定が、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で厚生労働大臣に答申がなされました。今回の改定は、わが国の医療提供体制における評価軸を根本から転換するものになると思われます。これまでの診療報酬は、看護配置や人員基準といった「構造(ストラクチャー)」、あるいは処置や実施内容に基づく「プロセス」を中心に設計されてきました。しかし、今回の改定では、「どのような医療を提供して、どのような成果(アウトカム)を出したのか」が明確に問われる内容になりました。急性期病院では、人件費比率がすでに50~60%に達し、賃上げや物価高の影響も重なって「人を増やすことで収益を確保するモデル」は限界に来ているといえます。中医協でも、生産年齢人口の急減を背景に、厳格な人員配置基準そのものが医療現場の持続性を損なっているとの認識が共有されており、限られた人材で成果を出す医療への転換が求められています。そのため設けられたAI導入による看護師の配置の基準緩和や新たな看護・多職種協働加算の取得が対策の肝となります。医療におけるアウトカムとは、退院時ADLの維持・改善、在宅復帰率、重症度評価、再入院率、紹介・逆紹介の質など、医療の「成果」です。これらを従来と同様に現場のマンパワーだけで対応しようとすれば、業務負荷の増大と疲弊は避けられないため、医療AIの導入が不可欠となってきます。医療AIは「省力化ツール」ではなく「思考支援基盤」医療現場で最も時間を消費しているのは診療・看護行為ではなく、おそらく「カルテ記録」や「報告」だと思われます。2026年の改定では、生成AIや音声入力を活用することで、医師事務作業補助者を1.3人換算できる方針が示されました。国が公式にAIによる省人化を評価対象とした点は大きな転換点です。しかし、医療AIの本質的な価値は、単なる時間短縮ではありません。診察や看護、リハビリテーションで得られた患者情報を抽出・構造化し、整理された形で診療録やサマリのドラフトを作成できるようになります。医師や看護師などのスタッフはそれらを確認・修正するだけでよくなり、残業の原因となっていた入力作業から解放されることになり、結果として記録業務が「思考を妨げる作業」から「思考を整理するプロセス」へと変わり得ることになります。病床マネジメントは経験則からデータへ今回の改定で病院経営上の最大の論点は、急性期病床の再編です。重症度・医療看護必要度の評価は厳格化され、救急車の受け入れ実績や手術件数など、より「急性期らしさ」が強く求められるようになっています。医療現場でAIを用いることで、在院日数の予測、転棟タイミングの提示、在宅復帰困難患者の早期抽出などが可能となり、従来は「空床を埋めるために調整」していたベッドコントロール会議が、「患者を最適なタイミングで最適な場に送るための戦略会議」へと変化することが予想されます。さらにAIが示す退院予測を基に、多職種カンファレンスで患者のゴールをシェアし、役割を分担することで、主治医単独型からチーム医療への移行も現実味を帯びてきます。記録業務をAIに委ね、現場を守る看護配置においても、AIのほか見守りセンサーなどの活用で要件の緩和が示されています。重要なのは、バイタル転記や必要度判定などの定型的な記録業務をAIに任せることです。これにより看護スタッフは、PCの前で記録業務に専念する必要がなくなり、ベッドサイドで看護業務に多くの時間を割けるようになります。労働人口が減少する中、医療・看護人材確保が今後ますます困難となる時代、医療・看護現場でのAI活用は単なるIT投資ではなく、現場スタッフの負担を減らし、バーンアウト(燃え尽き)を防ぐ「人材戦略」ともいえるのではないでしょうか。なぜ医師・看護師主導でなければ失敗するのか医療AIの導入でIT部門や事務部門任せにすると、現場で使われない仕組みになりやすいと思います。患者フローや医療の価値を理解しているのは、医師や看護師など医療スタッフであり、何が「アウトカムとして意味を持つか」を定義できるのも、現場スタッフの視点や意見です。これまで現場のスタッフが残業時間で行っていた診療録の作成、退院サマリなどの文書作成、委員会資料作成など、AIの適用範囲を医師や看護スタッフが導入について主導することで、「頑張っているのにあまり評価されない病院」から、「構造的に評価される病院」へと転換が可能になります。医療AIのリスク、無料版AIの安易な利用には注意が必要個人情報保護の観点から、一般商用の無料AIの安易な利用は極めてリスクが高いので注意が必要です。厚生労働省からはわが国の医療機関が遵守すべきルールとして「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が出されており、最新版(第6.0版)では、クラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS)の利用について厳格な規定があります。このガイドラインでは、データ保存先の所在地と法制度の把握が求められています。多くの無料AIはこれを満たさず、医療機関での利用には適しません。このため、医療機関はサービス提供者と、安全管理措置や責任範囲を明確にした契約を締結する必要があります。無料AIの場合、個別の契約ができず、運営側に免責事項が多い「利用規約」のみで運用されるため、ガイドライン違反となります。さらに無料版のAIツールの多くは、入力されたデータを「AIの性能向上(学習)」に2次利用することをデフォルトで設定しています。学習データへの利用リスク(オプトアウトの欠如)が存在しており、患者の病歴や氏名などの情報がいったんAIの学習データに取り込まれると、第三者が特定のプロンプトを入力した際に、その情報が回答の一部として出力されてしまうリスクがあります。これは意図しない「情報の拡散」であり、重大な情報漏洩事案となります。さらに患者の病歴は「要配慮個人情報」に該当し、より厳格な取り扱いが求められます。個人情報保護法では、本人の同意なしに個人データを第三者に提供することを禁じています。国外のAIサービスにデータを入力することは、国外の第三者への提供とみなされる可能性があり、厳格な法的要件(適切な体制の確認など)をクリアする必要があります。そして、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は、正当な理由なく業務上知り得た他人の秘密を漏らしてはならない守秘義務(刑法および各職能法)があり、国外の制御不能なクラウドサービスに患者情報を送信する行為は、セキュリティが担保されていない以上、守秘義務違反を問われる可能性が極めて高いため、医療機関では、ガイドラインに準拠した契約型AIを用い、学習機能の制御や入力ルールを明確にした運用が不可欠と考えます。結びに-2026年は「最初の一手」を打つ年2026年度の診療報酬改定は、病院業界にとっては黒船にあたるAIを組み込んだ医療提供体制を構築できた病院により成果報酬をもたらす改定ともいえます。診察や検査は医療スタッフが行い、判断をAIが支援する一種の有能な秘書となるでしょう。このシステムをなるべくスムーズに導入して現場スタッフの業務軽減に役立てるかどうかが、病院の将来を左右すると予想されます。医療AIは魔法の杖ではありません。しかし、2040年を見据え、人手不足にいつも悩まされている医療現場のスタッフが、専門性に誇りを持って働き続けるための「最初の一手」となります。 参考 1) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 2) 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(厚生労働省)

検索結果 合計:35608件 表示位置:141 - 160