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整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折

疾患診断の精度を上げ、患者満足度を高める「ニュースタンダード整形外科の臨床」第2巻整形外科の実臨床に真に役立つテキストシリーズの2冊目。本巻では、主に整形外科医が整形外科的救急外傷として扱う疾患として捻挫、靱帯損傷、肉離れ、打撲、骨挫傷、脱臼、骨折、末梢神経損傷、外傷に伴う合併症について取り上げた。治療については保存的治療を中心に、保存的治療か観血的治療かの選択の考え方についても解説。診断や評価法、リハビリテーションの動画を収載し、理解を深めるサイドノートを満載。整形外科医のみならず、プライマリケアをされる他科のジェネラリストの診療にも活用できる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する整形外科の外傷処置 捻挫・打撲・脱臼・骨折定価12,100円(税込)判型B5判頁数468頁発行2025年4月専門編集・編集委員井尻 慎一郎(井尻整形外科)編集委員田中 栄(東京大学)松本 守雄(慶應義塾大学)ご購入はこちらご購入はこちら

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うつ病やPTSDに対するブレクスピプラゾール+抗うつ薬併用療法〜前臨床試験のシステマティックレビュー

 ブレクスピプラゾールは、抗うつ薬と併用することで、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、セロトニン、ドパミン神経伝達物質に対し相補的な作用を示し、さらに強力な効果を得られる可能性が示唆されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのMalaak Brubaker氏らは、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬の併用療法に関する前臨床試験からどのような情報が得られているかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年2月28日号の報告。 ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法の前臨床研究を検索するため、システマティック文献レビューを実施した。対象には、精神疾患に関連する行動テストを含めた。2011年1月〜2021年7月5日までに公表された研究を、Ovid MEDLINE、Ovid Embase、カンファレンス抄録より検索した。ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法による統計学的に有意な結果(p<0.05)を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた296件のうち、7つの独自研究について記載された9件の論文が抽出された。・3つのうつ病モデル(慢性予測不能軽度ストレス、社会的敗北ストレス、リポ多糖誘発性うつ病)を含むげっ歯類モデルにおいて、ブレクスピプラゾールと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の併用療法は、対照群と比較し、うつ病様行動(強制水泳試験、尾懸垂試験、ショ糖嗜好性試験)に対して一貫した有意なベネフィットを示した。しかし、ブレクスピプラゾールまたは抗うつ薬の単剤療法では、統計学的に有意なベネフィットは認められなかった。・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の捕食動物嗅覚ストレスモデルにおいて、ブレクスピプラゾールとSSRI(エスシタロプラム)併用療法は、不安様行動(高架式十字迷路試験)および過覚醒(聴覚性驚愕反射)に対し、対照群/単独療法群よりも有意な効果を示した。しかし、ブレクスピプラゾールおよびエスシタロプラムの単独療法は、対照群と比較し、統計学的に有意な差は認められなかった。・PTSDの恐怖条件付けモデルにおいて、ブレクスピプラゾール単剤療法およびブレクスピプラゾールとエスシタロプラム併用療法のいずれにおいても、有意な改善が認められた。 著者らは「少数の研究ではあるものの、うつ病およびPTSDに対する前臨床試験において、ブレクスピプラゾールと抗うつ薬併用療法は、いずれかの単剤療法と比較し、有効性が高いことが報告されている。これらの前臨床試験の結果は、うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法およびPTSDに対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法の有効性に関するランダム化臨床試験の結果を支持しているものである」と結論付けている。

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ポリープの家族歴、頻度・人数が多いほど大腸がんリスク増加

 近年の研究により、家族内での大腸ポリープ診断の頻度が大腸がんリスクと関連していることが示されている。ドイツ・ハイデルベルク大学のYuqing Hu氏らは親族におけるポリープ診断の頻度と、大腸がんの全体的なリスクおよび早期発症リスクとの関連性を評価するための大規模研究を行った。本試験の結果はGastroenterology誌オンライン版2025年1月10日号に掲載された。 研究者らは、スウェーデンの大規模な家族性がんデータセット(1964~2018年)の1,167万6,043例を対象とし、親族における大腸ポリープ診断の頻度と大腸がんリスクの関連を調査した。親族のポリープ診断歴を「1回のみ」と「複数回」に分けて解析を行った。大腸がんと診断、移住、死亡、または2018年末のいずれか早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・計1,167万6,043例が最長54年間追跡された。追跡期間中央値は31年、51%が男性だった。16万2,927例が大腸がんと診断された。・大腸腫瘍の家族歴のない人(14万2,234例)と比較した場合、一等親血縁者(FDR:自分と2分の1の遺伝子を共有している親族:親、子、兄弟姉妹)に1回のポリープの診断歴がある人(1万1,035例)の全大腸がんリスク(SIR:標準化発症比)は1.4倍(95%信頼区間[CI]:1.3~1.4)、早期大腸がんリスクも1.4倍(95%CI:1.3~1.5)だった。・1人のFDRに2回以上のポリープ診断歴がある場合、大腸がんリスクは有意に高くなった(全大腸がん1.8倍、早期大腸がん2.3倍)。1回診断されたFDRが2人以上いる場合も同様のリスク増が観察された(全大腸がん1.9倍、早期大腸がん2.2倍)。・ポリープの診断を2回以上受けたFDRが2人以上いる場合、全大腸がんリスクは2.4倍、早期大腸がんリスクは3.9倍になった。・FDRのポリープ診断時の年齢が若い場合、大腸がんリスクが高くなった。二等親血縁者(自分と遺伝的に25%の遺伝子を共有している親族:祖父母、孫、叔父叔母、甥姪など)におけるポリープ診断歴は、診断回数が2回以上の場合のみ、リスク増加が認められた。 研究者らは「家族歴に基づく大腸がん検診の戦略を策定する際、親族のポリープ診断頻度を考慮することが重要だ。とくに複数回のポリープ診断歴を持つFDRが複数いる場合はリスクが顕著に増加するため、より積極的な検診が推奨される」とした。

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HR+早期乳がんにおける年齢と内分泌療法の中断期間、再発リスクの関係/JCO

 ホルモン受容体陽性(HR+)早期乳がんにおいて、内分泌療法(ET)のアドヒアランス欠如は、若年患者の生存率の低さの潜在的な原因の1つと考えられるが、ETのアドヒアランス改善が生存にもたらすベネフィットは明確ではない。フランス・パリ・シテ大学のElise Dumas氏らによるフランスの全国コホート研究の結果、とくに34歳以下の患者において厳格なET継続戦略によって得られる生存ベネフィットが示され、ETのアドヒアランス改善のための個別化戦略の必要性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月5日号への報告。 本研究では、フランス国民健康データシステムからのデータとtarget trial emulationの手法を用いて、3つのET継続戦略(治療中断期間として30日、90日、または180日以下を許容)について、5年無病生存率(DFS)を観察された(自然な)ET継続群と比較した。 主な結果は以下のとおり。・計12万1,601例のHR+早期乳がん患者が解析に含まれ、うち29.8%が診断時に50歳未満であった。・若年患者は高齢患者よりも DFS が低く、ETを中断する可能性が高かった。・34歳以下の患者では、厳格な ET継続戦略(中断≦30日)により、観察されたET継続群と比較して 5 年 DFS 率が 74.5% から 78.8%に改善した(4.3%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.6 ~7.2])。・≦90日および≦180日の中断を許容するET継続戦略では、34歳以下の患者における5年DFSベネフィットはそれぞれ1.3%ポイント(95%CI:0.2~3.7)および1.0%ポイント(95%CI:-0.2~3.4)であった。・対照的に、50歳以上の患者におけるET継続戦略によるDFSベネフィットは、その中断期間にかかわらず、観察されたET継続群と比較して1.9%ポイント以下であった。

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3枝病変へのFFRガイド下PCIは有効か/Lancet

 左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)と比較してゾタロリムス溶出ステントを用いた冠血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、5年間の追跡調査において、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムの発生に関して有意差はみられないが、心筋梗塞と再血行再建術の頻度は高いことが、米国・スタンフォード大学のWilliam F. Fearon氏らが実施した「FAME 3試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2025年3月30日号に掲載された。世界48施設の医師主導型無作為化試験 FAME 3試験は、左冠動脈主幹部以外の冠動脈3枝病変を有する患者において、ゾタロリムス溶出ステントを用いたFFRガイド下PCIとCABGの有効性と安全性を比較する医師主導型の無作為化試験であり、2014年8月~2019年11月に欧州、米国、カナダ、オーストラリア、アジアの48施設で参加者を募集した(MedtronicとAbbott Vascularの助成を受けた)。 年齢21歳以上、左冠動脈主幹部には臨床的に重大な狭窄がなく、冠動脈造影所見で3枝病変を認める患者を対象とし、心原性ショックや最近のST上昇型心筋梗塞、重度の左室機能障害(駆出率<30%)、CABGの既往歴がある患者は除外した。 主要エンドポイントは、ITT集団における死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の5年間の発生率とした。なお、1年後の解析では、FFRガイド下PCIはCABGに対して、死亡、脳卒中、心筋梗塞、再血行再建術の複合アウトカムに関して、事前に規定された非劣性の閾値を満たさなかった。死亡、脳卒中には差がない 1,500例を登録し、PCI群に757例、CABG群に743例を割り付けた。全体の登録時の年齢中央値は66歳(四分位範囲:59~71)、1,235例(82%)が男性で、428例(29%)は糖尿病、587例(39%)は非ST上昇型急性心筋梗塞であった。PCI群の724例(96%)とCABG群の696例(94%)が5年間の追跡期間を完了した。 5年の時点での死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合の発生率は、PCI群が16%(119例)、CABG群は14%(101例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.16[95%信頼区間[CI]:0.89~1.52]、p=0.27)。 主要エンドポイントの個々の項目については、死亡(PCI群7%vs.CABG群7%、HR:0.99[95%CI:0.67~1.46])と脳卒中(2%vs.3%、0.65[0.33~1.28])の発生率には両群間に差はなかったが、心筋梗塞(8%vs.5%、1.57[1.04~2.36])、再血行再建術(16%vs.8%、2.02[1.46~2.79])の発生率はPCI群で高かった。安全性のエンドポイントはCABG群で発生率が高い 一方、安全性のエンドポイントである出血、急性腎障害、心房細動/重大な不整脈、再入院の1年後の発生率は、いずれもPCI群に比べCABG群で有意に高かった。 著者は、「これらのデータは、この分野における先行研究の結果とは明らかに異なっており、医師と患者のより効果的な共同意思決定(shared decision making)の促進に資する可能性がある」としている。

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PCI後DAPT例の維持療法、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に標準的な期間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した、虚血性イベントの再発リスクが高い患者の維持療法において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、3年時の主要有害心・脳血管イベント(MACCE)が少なく、なかでも心筋梗塞のリスクが有意に減少し、出血の発生率は両群で差がなく、上部消化管イベントのリスクはクロピドグレル群で低いことが、韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのKi Hong Choi氏らSMART-CHOICE 3 investigatorsが実施した「SMART-CHOICE 3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年3月30日号で報告された。韓国の無作為化試験 SMART-CHOICE 3試験は、薬剤溶出ステントによるPCI後に標準的な期間のDAPTを完了した患者における、クロピドグレル単剤とアスピリン単剤の有効性と安全性の比較を目的とする非盲検無作為化試験であり、2020年8月~2023年7月に韓国の26施設で参加者の適格性を評価した(Dong-A STの助成を受けた)。 年齢19歳以上、PCI後に標準的な期間のDAPTを完了し、虚血性イベントの再発リスクが高い患者(心筋梗塞の既往歴がある、糖尿病で薬物療法を受けている、複雑な冠動脈病変を有する)を対象とした。被験者を、クロピドグレル(75mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)を経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ITT集団におけるMACCE(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)の累積発生率とした。MACCEの推定3年発生率:4.4%vs.6.6% 5,506例を登録し、クロピドグレル群に2,752例、アスピリン群に2,754例を割り付けた。全体の年齢中央値は65.0歳(四分位範囲[IQR]:58.0~73.0)、1,002例(18.2%)が女性であった。2,247例(40.8%)が糖尿病(2,089例[37.9%]が糖尿病の薬物療法を受けていた)で、2,552例(46.3%)が急性心筋梗塞(1,330例[24.2%]が非ST上昇型、1,222例[22.2%]がST上昇型)でPCIを受けていた。PCI施行から無作為化までの期間中央値は17.5ヵ月(IQR:12.6~36.1)だった。 追跡期間中央値2.3年の時点で、MACCEはアスピリン群で128例に発生し、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は6.6%(95%信頼区間[CI]:5.4~7.8)であったのに対し、クロピドグレル群では92例、4.4%(3.4~5.4)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.71[95%CI:0.54~0.93]、p=0.013)。 MACCEの個々の項目(副次エンドポイント)の推定3年発生率は、全死因死亡がクロピドグレル群2.4%、アスピリン群4.0%(HR:0.71[95%CI:0.49~1.02])、心筋梗塞がそれぞれ1.0%および2.2%(0.54[0.33~0.90])、脳卒中が1.3%および1.3%(0.79[0.46~1.36])であった。大出血の発生率にも差はない 出血(BARC type 2、3または5)(クロピドグレル群3.0%vs.アスピリン群3.0%、HR:0.97[95%CI:0.67~1.42])、大出血(BARC type 3または5)(1.6%vs.1.3%、1.00[0.58~1.73])のリスクは両群で差はなかった。 上部消化管イベント(クロピドグレル群2.8%vs.アスピリン群4.9%、HR:0.65[0.47~0.90])および有害な臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)(5.4%vs.7.3%、0.78[0.61~0.99])はクロピドグレル群で少なく、血行再建術(4.2%vs.4.5%、0.94[0.69~1.27])の頻度は両群で同程度だった。 著者は、「これらの患者において、クロピドグレル単剤療法は、出血を増加させずに全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合リスクの低下をもたらしたことから、長期維持療法としてアスピリン単剤療法に代わる好ましい選択肢と考えられる」としている。

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バターを植物油に置き換えると死亡リスク17%減

 バターがあれば何でもおいしくなる、というのは料理人の格言だが、バターは健康には良くないことが新たな研究で示された。バターの摂取量が多い人は少ない人に比べて早期死亡リスクが高いが、オリーブ油のような植物性の油を主に使っている人は早期死亡リスクが低いことが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のYu Zhang氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に3月6日掲載されると同時に、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI/Lifestyle Scientific Sessions 2025、3月6~9日、米ニューオーリンズ)でも発表された。 この研究は、医療従事者を対象とした3つの長期研究で30年以上にわたって追跡調査された、22万1,054人の参加者の食事や健康状態に関するデータに基づいたものだ。参加者の中に、研究参加時にがん、心血管疾患(CVD)、糖尿病、神経変性疾患を有する人はいなかった。これらの研究では、4年ごとに食事内容に関する調査が実施されていた。調査では、バターの総摂取量として、バターとマーガリンをブレンドしたもの、バタースプレッド、家庭でのパン作りや揚げ物、炒め物などの料理に使われるバターの摂取量も調査された。植物油の摂取量は、揚げ物や炒め物、ソテー、パン作り、サラダのドレッシングに使った量に基づき推定された。 33年間の追跡期間中に5万932人が死亡していた。死因は主に、がん(1万2,241人)とCVD(1万1,240人)だった。バターまたは植物油の摂取量に応じて、参加者をそれぞれ4群に分類して解析した結果、バターの摂取量が最も多い群では、最も少ない群と比べて死亡リスクが15%高いことが示された(ハザード比1.15、95%信頼区間1.08〜1.22、P for trend<0.001)。一方、植物油の摂取量が最も多い群では、最も少ない群と比べて死亡リスクが16%低かった(同0.84、0.79〜0.90、P for trend<0.001)。さらに、毎日少量のバターを植物油に置き換えるだけでも死亡リスクが低下することが示された。具体的には、1日当たり10gのバターを植物油に置き換えることで、全死亡およびがんによる死亡のリスクがそれぞれ17%低下することが明らかになった(全死亡:同0.83、0.79〜0.86、P<0.001、がんによる死亡:同0.83、0.76〜0.90、P<0.001)。 Zhang氏は、「驚いたのは、その関連の強さだ。毎日の食事でバターを植物油に置き換えることで全死亡リスクが17%低下するというのは、健康に対してかなり大きな影響だと言える」とAHAのニュースリリースの中で述べている。 また、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院栄養学助教のDaniel Wang氏は、「バターを大豆油やオリーブ油に置き換えるというシンプルな食事内容の変更が、長期的に大きな健康効果をもたらす可能性がある。このことを人々は考慮した方が良いかもしれない」とニュースリリースの中で述べている。 Zhang氏らによる研究の背景情報によると、バターと植物油にはいくつかの種類の脂肪酸が含まれており、それぞれが体に異なる影響を与えるという。例えば、バターにはコレステロールの上昇や動脈硬化との関連が指摘されている飽和脂肪酸が多く含まれている。飽和脂肪酸は、炎症の亢進やホルモン活性の変化にも関連しており、がんのリスクを高める可能性がある。一方、植物油にはコレステロールを下げ、細胞や脳の健康を維持し、炎症を抑え、特定のビタミンの吸収を助ける不飽和脂肪酸が多く含まれている。 また、米アーカンソー医科大学疫学助教のYong-Moon Mark Park氏らが執筆した付随論評では、バター好きの人は日頃から他にも健康を損なうような食事を選択している可能性があると指摘されている。Park氏は、「バターは不健康な食習慣との関連が指摘されることが多い。一方、植物油は地中海食や植物性食品を中心とした食事など、より健康的な食習慣との関係が示されることが多い。こうした食事には、栄養価の高い食品と健康的な脂肪が豊富に含まれており、これらが相乗的に作用して慢性疾患と早期死亡のリスクを低下させる」と述べている。

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睡眠不足の看護師は感染症に罹患しやすい

 夜間勤務(以下、夜勤)の影響で睡眠不足を感じている看護師は、風邪やその他の感染症への罹患リスクの高いことが新たな研究で明らかになった。研究グループは、「シフト勤務が睡眠の質に与える影響が看護師の免疫系に打撃を与え、感染症にかかりやすくさせている可能性がある」と述べている。Haukeland大学病院(ノルウェー)睡眠障害コンピテンスセンターのSiri Waage氏らによるこの研究結果は、「Chronobiology International」に3月9日掲載された。 この研究は、ノルウェーの看護師1,335人(女性90.4%、平均年齢41.9歳)を対象に、睡眠時間、睡眠負債、およびシフト勤務の特徴と自己報告による感染症の罹患頻度との関連を検討したもの。これらの看護師は、過去3カ月間における睡眠時間、睡眠負債、シフト勤務、および感染症(風邪、肺炎/気管支炎、副鼻腔炎、消化器感染症、泌尿器感染症)の罹患頻度について報告していた。 その結果、睡眠負債(1〜120分、または2時間超)が多いほど感染症の罹患リスクは上昇することが明らかになった。睡眠負債がない人と比べた睡眠負債がある人での感染症罹患の調整オッズ比は、睡眠負債が1〜120分、2時間超の順に、風邪で1.33(95%信頼区間1.00〜1.78)と2.32(同1.30〜4.13)、肺炎/気管支炎で2.29(同1.07~4.90)と3.88(同1.44~10.47)、副鼻腔炎で2.08(同1.22~3.54)と2.58(同1.19~5.59)、消化器感染症で1.45(同1.00~2.11)と2.45(同1.39~4.31)であった。 また、夜勤の有無や頻度(0回の場合と比べて1〜20回の場合)は、風邪のリスク増加と関連していた。風邪の調整オッズ比は、夜勤がない場合と比べてある場合では1.28(95%信頼区間1.00〜1.64)、夜勤が0回の場合と比べて1〜20回の場合では1.49(同1.08〜2.06)であった。一方、睡眠時間やクイックリターン(休息間隔が11時間未満)と感染症罹患との間に関連は認められなかった。 Waage氏は、「睡眠負債や、夜勤を含む不規則なシフトパターンは、看護師の免疫力を弱めるだけでなく、質の高い患者ケアを提供する能力にも影響を及ぼす可能性がある」と「Chronobiology International」の発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で指摘している。 研究グループは、病院や医療システムは看護師が十分な睡眠を取れるようにすることで、患者により良いケアを提供できる可能性があると述べている。論文の共著者であるHaukeland大学病院のStale Pallesen氏は、「夜勤の連続勤務を制限し、シフト間に十分な回復時間を確保するなど、シフトパターンを最適化することで、看護師は恩恵を受けることができる」とニュースリリースで話している。同氏はさらに、「免疫系が正常に機能するには睡眠が重要であることに対する医療従事者の認識を高めるとともに、定期的な健康診断とワクチン接種を奨励することも役立つ可能性がある」と付言している。

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水中エアロビクスは減量とウエスト周囲径の減少に効果あり

 水中エアロビクス(有酸素運動)により、過体重や肥満の人の体重が2.7kg程度減り、ウエスト周囲径も2.75cm細くなったとする研究結果が報告された。論文の上席著者である国立釜慶大学校(韓国)のJongchul Park氏は、「10週間以上の水中エアロビクスによる介入により、試験参加者の体重とウエスト周囲径が大幅に減少した」と述べている。この研究の詳細は、「BMJ Open」に3月11日掲載された。 Park氏らは、論文データベースを用いて、過体重または肥満の人を対象に水中エアロビクスが人間の身体計測値(体重、ウエスト周囲径など)と体組成に与える影響を、他の介入や何もしない場合と比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施し、10件を選出(対象者の総計286人)。これらのRCTのデータを抽出した後、メタアナリシスを行い、過体重や肥満の人における水中エアロビクスの効果を評価した。 これらのRCTで対象者は、1セッション当たり1時間程度の、水中エアロビクス、水中ズンバ、水中ヨガ、水中ジョギングなどの水中運動を、週に2〜3回、6~12週間にわたって行っていた。研究グループは、水中エアロビクスは、水の浮力により陸上での運動中に起こり得る関節へのダメージが軽減されるため、特に過体重や肥満の人には有効だと述べている。 その結果、水中エアロビクス群では対照群と比べて、介入により体重が平均2.69kg減少し(加重平均差−2.69、95%信頼区間−4.10〜−1.27、P<0.05)、水中エアロビクスが減量に有効であることが示唆された。また、水中エアロビクス群では対照群に比べてウエスト周囲径も2.75cm減少していた。(同−2.75、−4.41〜−1.09、P<0.05)。一方、BMIなど他の指標に対する水中エアロビクスの効果は認められなかった。 ただし研究グループは、本研究対象者に男性が占める割合は非常に低かったため、水中エアロビクスにより男性も同様の効果を得られるのかを判断することはできないと述べている。それでも研究グループは、本研究の全体的なエビデンスは、「肥満関連の健康リスクの管理において重要な要素である体重と中心性肥満の改善に、水中エアロビクスが効果的な介入策となることを支持するものだ」と結論付けている。 研究グループは論文の結論部分において、「水中エアロビクスは過体重や肥満の人にとって重要な運動の一つであり、体組成と全体的な健康の改善に大きな効果をもたらす」と述べている。また、水中エアロビクスの潜在的な利点をより深く理解するためには、より多くの人を対象に研究を行うことが必要だとし、「水中エアロビクスの長期的な効果を調査し、その有効性を他の運動方法と比較することで、貴重な洞察が得られるだろう」と付言している。

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第257回 フジの中居問題を医療者も教訓にしたい、組織内でのコンプラ対応

ここ数日はテレビをつければ、トランプ関税のニュースが大半を占めている。そして1週間ほど前、国内はあるニュースで埋め尽くされた。フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビが公表した、フジテレビ女性社員が元SMAPの中居 正広氏から受けた性暴力に関する第三者委員会(以下、同委員会)報告書に関する報道である。同委員会の委員となった弁護士の方々には相当強いプレッシャーがあっただろうと思う。世間が注目していた事件だけに、中途半端な結果を出せば、委員各人までもが世間から批判の嵐にさらされることが必定だったからだ。正直、この手の同委員会報告書は多くの場合、尻切れトンボのようなものであることが多い。しかし、今回公表された報告書は、資料まで含めれば実に400ページ弱という膨大な内容である。一応、私も全文を通読したが、同委員会はデジタルフォレンジック*を駆使しながらも、短期間でよくここまで調査したものだと驚いた。実際には同委員会の弁護士3人以外に総勢23人もの弁護士が調査担当として加わっており、その注力ぶりがうかがえる。*コンピューターやスマートフォンなどの電子機器に残された情報を収集・解析し、証拠を保全・分析する技術中身を報道で知っている人は多いだろうが、必ずしも報告書の全文を読んだ人ばかりでもないだろう。この報告書は何らかの形で精神を病んでしまった人に対する組織の対応に関する教訓にあふれている。その意味では、組織に所属する人にとって他人事ではないはずである。そこで今回、あえてこの内容を取り上げたいと思う。ただ、その内容は膨大なことから2回にわけてお届けする。中居氏が守秘義務解除を拒否、報告書へ被害状況は記載されずまず、報告書では今回の事案の性暴力の様態については記載がされていない。これは中居氏と被害者Aさんとの間で示談が成立し、その部分には守秘義務が課されているからである。もっとも同委員会は、調査に当たって両者に守秘義務解除を打診し、Aさん側は全面解除に応じたが、中居氏側が応じなかったため、被害の詳細な実態はわかっていない。ただ、Aさんが被害を訴えたフジテレビ社員などからのヒアリングから、同委員会は今回の事案に関してAさんが性暴力に遭ったと認定している。もっとも前述のようにかなり綿密に行われた調査ゆえに、Aさんのその後の症状やその後のフジテレビ社内の対応は生々しすぎるほど明らかにされている。以下はその後のAさんの状況を概説する。なお、フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビの取締役、中居氏以外は同報告書で記載されていた仮名を用いることとする。被害の大筋、本件から見える課題被害発生から4日後の2023年6月6日、Aさんはフジテレビの健康相談室のC医師に電話し、泣きながら被害発生日以降の不眠などを訴え、C医師は同日午後に健康相談室の心療内科医D医師の診察を予約。AさんはC医師とD医師に対し、中居氏から受けた被害内容とその後の心身の状況について話をした。Aさんは不眠、食欲不振、身体のふらつきなどの症状を訴え、次のように語ったという。「前の自分に戻れない気がする」「みんな生きている世界と自分に大きな隔たりがあって、もう戻れない」「(事件の時に)食べていたものや流れていた音楽を聞くと辛い」「(ニュースを読んでいる際に亡くなった人の名前を読んで)私が代わりに死ねばよかったと思った」これに対しD医師は急性ストレス反応と診断。症状軽減のため治療薬を処方した。Aさんは業務継続の意向であり、C医師とD医師が弁護士への相談をAさんと検討しようとしたが、本人は精神的に非常に混乱しており、そうした判断が困難な状態だったという。また、この同日、アナウンス室長のE氏がデスクで突っ伏していたAさんに気付いて声をかけたところ、涙を流し始めたので個室に移動して面談。そこでE氏はAさんが中居氏から性暴力を受けた旨の報告を受けた。E氏はAさんに女性管理職F氏にも相談するよう伝えるとともに、事前にF氏にAさんの相談概略を伝達。翌6月7日にAさんはF氏にも被害を相談した。F氏との面談の際、Aさんは中居氏との共演は可能である旨を伝えていたが、混乱状態での話だったため、F氏は「今後何か心変わりがあれば言ってほしい」と伝えている。さらに6月8日には健康相談室のC医師から連絡があり、E氏、F氏がAさんの状況について情報を共有した。それによると、これまで各氏に対してAさんが語った内容はほぼ同じ内容だったという。以下に箇条書きする。「誰にも知られたくない」「知られたら生きていけない」「自分は元の自分に戻れない」「もう幸せになれない」「仕事も変わりなくやっていきたい、こんなことで自分の人生ダメにしたくない」「(中居氏から被害があった日の食事である)鍋の食材をスーパーで見ることができない、まったく食べられない」「(中居氏との共演は)かまわない。負けたくない」中居氏との共演に関する発言は、性暴力を受けて大きな混乱にある中でもなお泣き寝入りはしたくないということなのだろう。あまりにも痛々しい。また、この相談は過呼吸・号泣しながらの相談で心身の状況が悪いことなども共有された。この時の3氏の面談結果を受けたフジテレビのアナウンス室は▽本事案を誰かに共有する際にはAさんに確認する▽Aさんが非常に精神的に不安定なため、そのケアを最優先にする▽番組出演についてもアナウンス室の判断で勝手に取りやめさせない▽業務継続か休務かは必ず医師に相談し、医師の所見をもとに判断するとの対応方針を決めた。F氏はAさんと相談の上で、2023年6月10日頃まで番組に出演し、翌週から1週間は「体調不良」で休務することを決定。その後、一旦業務に復帰した。しかし、F氏のもとにはほかのアナウンサーからAさんについて、手の震え、歩くのもふらつく様子があると報告され、同時期に健康相談室を訪れたAさんはC医師・D医師に「食べられない」「ふらふらしている」「仕事中も手が震える」「力が入らない」「眠れない」「(被害時の)食材を見たくない・食べたくない」「身体も痛い」などと訴えた。C医師とD医師は、Aさんがかなり痩せて食欲不振も激しい状態だったため、即入院が必要と判断。すぐに都内の病院への入院調整を行い、病床が空いていた消化器内科にまず入院して精神科医師の併診とする治療体制とし、精神科のベッドに空きが出た時点で転科することが取り決められた。入院時の病院宛ての「紹介・診療情報提供書」には、傷病名を「うつ状態、食思不振」と記載され、「仕事関係者からのハラスメントによる」とも付記された。結局、当初のこの事件の情報共有範囲はAさんの意向に沿って、E氏、F氏、C医師、D医師の4名に限定されていた。しかし、Aさんの入院長期化が予想されたことなどから、2023年7月中旬にF氏がE氏に対して経営上層部への報告を要望。E氏は編成制作担当取締役、編成制作局長G氏、人事局長H氏に本事案を報告する予定であるともにAさんとの連絡窓口をF氏に一本化したい旨を伝え、実際、以後のAさんとのコミュニケーションはF氏に委ねられた。そしてE氏からはG氏、H氏への報告が行われたが、両氏ともこの件を「プライベートの問題」と認識したと報告書には記載されている。報告書では両氏にはE氏から具体的な性暴力の内容まで報告された記載がある。ちなみにG氏に関しては、「プライベートな問題」と判断した理由について、Aさんが中居氏所有のマンションで2人で会ったこと、これまでもタレントと女性アナウンサーが交際・結婚した事例もあったからと述べている。一方で、心身の状態が悪化し入院に至っているため混乱したともヒアリングに回答している。この辺はE氏の説明の仕方に起因するのか、G氏の思考に起因するのかはわからない。ただ、H氏は同委員会に対して「社員に対する安全配慮義務の問題として捉えるべきであると判断した」旨も述べている。ちなみに、この段階ではG氏の判断で役員やコンプライアンス推進室へは報告されていない。というか、すでに報道などでもご存じのように、コンプライアンス推進室へはまったく報告がされなかった。G氏は、役員へすぐ報告しなかったこと、コンプライアンス推進室への報告をしなかったことについて、「Aさんが誰にも言わないでほしいと哀願している」「コンプラにいる人間がそれを聞いて情報拡散しないか不安に思った」「フジは情報が漏れやすい会社である」「女性アナウンサーは社内からどう見られるか気にしている」などの理由を挙げている。このように、Aさんが言っていたとされる「誰にも言わないでほしい」を当事者たちが都合よく解釈しているように映るのも気になる点である。この場合、より突っ込んでAさんの真意を解釈するならば、「自分に関して何らかの責任ある判断とそれに基づく決定ができるわけでもない、単なる興味本位の人に共有をしないでほしい」ということではないだろうか。ちなみにG氏、H氏への報告が、当初アナウンス室が決めた「本事案を誰かに共有する際にはAさんに確認する」の手続きを踏んでいたかは報告書を読む限りは不明だが、これ自体はG氏やH氏の職責やAさんの事件の重大性などを考えれば、たとえ事前許諾を得ていなかったとしても、大きな問題ではないと私個人は考えている。結局、6人も対応に関与していたのにさて、ここまでが途中経過だが、これだけでもメンタルの異常が強く疑われる社員、しかも性暴力被害者への対応としては、かなり問題ありの点が多々うかがえる。登場するE氏には被害に遭ったAさんのことをかなり心配して慎重に対応していることがうかがえる。しかし、報告書でも指摘されていることだが、まず問題なのは入院に至る重篤な心身状況にあるAさんへの対応窓口をメンタルケアの専門家ではないF氏に一任したことである。E氏はおそらく「同じ女性だから」という意味で良かれと思ってそのような判断をしたのだろう。しかし、一般人はメンタルが異常をきたしている相手にやってはいけない「過剰な励ましや前向きの強要」「感情の否定や軽視」を悪気なくやってしまいがちである。つまるところF氏の采配次第で、Aさんのメンタル状況が大きく左右されることになる。もし窓口を一本化するならばC医師あるいはD医師である。実際、Aさんは真っ先に自分から健康相談室にコンタクトを取り、性被害について自らC医師やD医師に話しているのだから、窓口の役目としてF氏よりも明らかに適任といえる。また、報告書でも指摘されているが、当然ながらF氏に大きな精神的負担が生じる結果となっている。しかも、それに対するフォローアップは報告書を見る限り、皆無である。前述のようにE氏からG氏、H氏の報告の際、両氏は当初「プライベートな問題」と認識したと同委員会に回答しているが、一定以上の権限を持つこの両氏への報告の際は、欲を言えば、E氏がC医師、D医師に同席を求めるのが望ましい姿だ。ちなみに報告書の記載では両医師ともAさんとの最初の面談時点で性暴力を受けたとの認識で一致しており、これまでのAさんの病状も含め、E氏やF氏よりもより正確な情報を持っている。正直、この辺からメンタルに問題を抱える人への対応としては、ボタンの掛け違いが始まっているようにさえ思える。この上にさらに情報が上がると、ボタンの掛け違いどころか冬服と夏服の取り違えくらいの様相になるのだが…。そこは次回に触れたいと思う。

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デフレの王者からインフレの賢者へ! 物価高騰から身を守るための処方箋【医師のためのお金の話】第91回

食料品の価格高騰が止まりません。2025年1月の消費者物価指数では、キャベツが前年同月比2.9倍、白菜が2.1倍、お米は70.9%増、チョコレートは30.8%増となりました。いずれも、たった1年ですごい値上がり率ですね。他の野菜、果物、魚介類などの生鮮食品も全体的に21.9%上昇しており、2004年11月以来の高水準です。毎日の食卓に欠かせない野菜やお米の価格高騰が長引いており、物価上昇を実感せざるを得ません。これらの価格上昇には、それぞれの事情があります。キャベツが高くなったのは、猛暑や雨不足による生育不良で出荷量が激減したことが原因です。チョコレートは原材料価格の高騰が影響していると言われています。背景には、気候変動による猛暑や豪雨の頻発があります。その影響で、生鮮野菜などの生育不良による供給量の減少や価格上昇につながっている可能性があります。肥料の主要生産国であるロシアによるウクライナ侵攻で価格が高騰したことも一因でしょう。しかし、これほど多くの物の値段が上がっているのは異常事態です。個別要因を鵜呑みにして、インフレによる通貨価値の下落という根本的原因から目をそらしていると、足元をすくわれる可能性があります。医師の立場でインフレについて考えてみましょう。ガリガリ君の値上げ謝罪CMが懐かしい!?数年前まで、日本はデフレの真っただ中でした。値上げなど考えられないという風潮が、生産者と消費者の双方にありました。その象徴的な出来事が、2016年に放映された「ガリガリ君の値上げ謝罪CM」でしょう。ガリガリ君の値段は、1981年の発売当時50円でした。それが10年後の1991年に60円、そして2016年には25年ぶりの値上げに踏み切り70円になりました。値上げ謝罪CMでは、赤城乳業社員たち総出のお辞儀が話題になりました。当時の感覚でも、やり過ぎ感はあったものの、値上げに対する反応にそれほど違和感はありませんでした。それほどまでに日本では物価は上がらないというデフレマインドが支配的だったのです。しかし、コロナ禍を経て状況は一変しました。当初は物価が高くなるものが少しずつ増えていきました。値上げするものは少数だったので、個別要因を説明されると納得したものです。そして、値上げの原因が解消されれば、また値段が下がると思っていました。しかし、今では値上げする物が多すぎて、とても個別要因だけでこれほど多くの商品が値上がりしているとは信じられません。確かに個別要因はありますが、根本的な部分では、通貨価値下落によるインフレが原因になっていることが誰の目にも明らかになってきました。デフレの王者・医師が生き残る道は?医師はデフレの王者でした。その理由は、医師の報酬の財源になっている社会保障費がデフレ下でも拡大し続けたからです。他の業界を尻目に、医療業界は活況を呈します。医師の報酬は下がらないので、物価が下落すると相対的に購買力が増したからです。ところが、インフレになるとこの状況が逆回転し始めます。医師の報酬は良くも悪くもほとんど変化がありません。ところが物価だけがどんどん上昇するので、相対的な購買能力が低下し始めたのです。もちろん、医師の報酬はもともと高いので、多少物価が上昇した程度では、致命的な状況にはなりません。しかし、インフレが数年間にわたって持続すると、医師といえども高額所得者から陥落する可能性が高まります。私の肌感覚では、コロナ禍以前と比べて医師は10~20%程度は貧しくなったと感じています。このまま物価上昇が収まってくれればよいのですが、残念ながら現時点で、その気配を感じることはできません。この状況に対抗する最も簡単な方法は節約でしょう。これまでの医師であれば、多少散財しても収入が多いので大勢に影響はありませんでした。しかし、今は状況が異なります。とくに携帯電話代などの固定費を中心に、無駄なものがないかを確認する必要があるでしょう。一方、根本的には収入を上げるしかありません。収入を上げる方法は千差万別ですが、これまでの医療一本足打法では立ち行かなくなる可能性が高いです。短絡的に株式投資や不動産投資を勧めるわけではありませんが、勉強ぐらいは始めても良いかもしれませんね。

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軽度認知障害の再考:MCIの時期までにやっておくべきこと【外来で役立つ!認知症Topics】第28回

MCIの現代的な意義誰しも加齢とともに物忘れをしやすくなるから、どこまでが生理現象でどこからが認知症なのかという問いは、ずっと以前からある。1962年にV. A. Kralが提唱した「良性健忘」と「悪性健忘」という概念は、このような疑問への初期の回答としてよく知られている。この後、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)が1990年代からRonald C. Petersenの定義を軸に着実に世界に浸透した。このMCIとは「認知症とはいえないが、記憶が悪くて日常生活に多少の障害があるのだが、なんとか自立しているレベル」を意味する。MCIの意義は、アルツハイマー病(AD)の早期発見と、当事者およびその介護者が将来への生活設計をする起点にあったと思う。またこの頃からADの新薬開発が加速し始め、そのターゲットとしてMCIが注目されるようになった。そして新薬はADになってからでは遅いとされ、このMCIが新薬の主たるターゲットになってきた。そしてレカネマブやドナネマブの登場により、MCIの意義が確かになった。とはいえ、従来のAD治療薬の効果が「天井から目薬」なら、筆者の実感ではこれらの薬の効果は「50センチ上から目薬」である。だから残念ながら、「早期発見」と「生活設計」が持つ意義は廃っていない。10年間で日本のMCIが1.4倍も増加さてMCI の予後に関しては、メタアナリシスで、4年で半分の人が認知症に進行することがほぼ定着している。一方で26%の人が、正常に戻ることも報告されている。わが国の認知症・MCIの疫学調査1)は、2012年と2022年に行われている。両時点の高齢者人口は3,079万人と3,603万人である。その結果概要として、認知症が462万人から443万に減少している。ところがMCIは400万人から559万人と、1.4倍も増加しているのである。画像を拡大する図. 認知症および軽度認知障害の有病率の推移(資料1より)この背景について、2つの私的推察をしてみた。まず前向きに捉えると、近年の欧米の報告と同様に、血管要因をはじめとする認知症の危険因子へ対応する人が増えてきたので認知症にはならずに、MCIでとどまる人が増えた可能性がある。つまり従来のMCI者は「4年で」半数が認知症になったのが、「5年、6年で」と変わったのかもしれない。反対も考えられる。2012年時点で認知症者の8割は80歳以上であった。Lancet誌のメタアナリシス2)によれば、認知症者は診断確定後の平均余命は5年前後である。すると2012~22年の10年間に2012年当時の認知症者の少なからぬ者が亡くなった可能性が高い。そうした死亡者数が新たに認知症になった人数より多かったから、2022年に認知症者は減少したのかもしれない。一方で2012~22年は、戦後のベビーブーマー世代が老年期に達し、さらに後期高齢者になった時代である。とすると、人数が多いこの世代におけるMCIの発生がMCI全体の数を増やしたとしても不思議でない。「太陽と死は直視できない」――エンディングノートを書けない理由ところで以前、本連載に「未来への連絡帳」くらいには言い換えて欲しいと書いたように「エンディングノート」の名は気を滅入らせる。リビングウィルに詳しい人と、その記述とMCIの関係を話し合ったことがある。エンディングノートは近年の隠れたベストセラーで、とくに敬老の日の前後は、多くの書店で山積みにされる。多くの人はこれを買っても最後まで書けないから、毎年9月になるとその売り上げは急増するのでベストセラーであり続ける由。ところでエンディングノートの難所は、介護の場、終末期医療、財産相続、そして葬儀関連の4つにあるそうだ。そしてなぜ書けないか?の「あるあるの理由」も知られる。「介護の場」では、在宅(家族)介護から施設介護にシフトすべき基準がわからないが最多だそうだ。「終末期医療」では延命治療の基本的なことも知らないし、子供たちに負担をかけたくないこと。財産相続では、子供たちが「争族」になったら困るので、財産の分け方を決めかねること。そして「葬儀関連」では、死に対する心理的抵抗が強くて考えられないとの由。要は「太陽と(自分の)死は直視できない」(ラ・ロシュフコー)ということか? だから「まあ何とかなるだろう。子供たちがどうにかやってくれるだろう」が多数派となる。「未来への連絡帳」に書き込めるのはMCIの時期までしかし認知症臨床の場では、当事者がターミナルに至った時に、また亡くなった後に、皆が困る事態に至る例が少なくない。エンディングノート(未来への連絡帳)を完成させるには、意思能力や合理的な判断能力が必要である。平たく言えば、精神活動の3要素とされる「知情意」(知は知能、情は情操、意は意志)がそろって健全でなくてはならない。しかし加齢と共に知のみならず、情・意のほころびも多くの人に忍び寄ってくる。「情」なら、腹立ち・イライラしやすくなる、お追従に弱くなりがちだ。「意」では、三日坊主、面倒臭いからやめておこう、といった具合である。私的な経験ながら、健全な情意の維持は、MCI期に至ると怪しくなると思う。だから「未来への連絡帳」に書き込めるのはMCIの時期までと意識したい。筆者自身も筆が止まる箇所がある。全部でなく「書けることは書いておく」だけでもいい。また書けない事項については、なぜそうかの箇条書きがあるだけでも、後に思いがけず役立つかもしれない。参考1)厚生労働省.認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計. 2)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.

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乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大

 日本の乳がんサバイバーと年齢をマッチさせた一般集団における、がん以外の疾患の発症リスクを調査した結果、乳がんサバイバーは心不全、心房細動、骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつの発症リスクが高く、それらの疾患の多くは乳がんの診断から1年以内に発症するリスクが高いことを、筑波大学の河村 千登星氏らが明らかにした。Lancet Regional Health-Western Pacific誌2025年3月号掲載の報告。 近年、乳がんの生存率は向上しており、乳がんサバイバーの数も世界的に増加している。乳がんそのものの治療や経過観察に加え、乳がん以外の全般的な健康状態に対する関心も高まっており、欧米の研究では、乳がんサバイバーは心不全や骨折、不安・うつなどを発症するリスクが高いことが報告されている。しかし、日本を含むアジアからの研究は少なく、消化管出血や感染症などの頻度が比較的高くて生命に関連する疾患については世界的にも研究されていない。そこで研究グループは、日本の乳がんサバイバーと一般集団を比較して、がん以外の12種類の代表的な疾患の発症リスクを調査した。 日本国内の企業の従業員とその家族を対象とするJMDCデータベースを用いて、2005年1月~2019年12月に登録された18~74歳の女性の乳がんサバイバーと、同年齢の乳がんではない対照者を1:4の割合でマッチングさせた。乳がんサバイバーは上記期間に乳がんと診断され、1年以内に手術を受けた患者であった。転移/再発乳がん、肉腫、悪性葉状腫瘍の患者は除外した。2つのグループ間で、6つの心血管系疾患(心筋梗塞、心不全、心房細動、脳梗塞、頭蓋内出血、肺塞栓症)と6つの非心血管系疾患(骨粗鬆症性骨折、その他の骨折[肋骨骨折など]、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつ)の発症リスクを比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、乳がんサバイバー2万4,017例と、乳がんではない同年齢の女性9万6,068例(対照群)であった。平均年齢は両群ともに50.5(SD 8.7)歳であった。・乳がんサバイバー群は、対照群と比較して、心不全(調整ハザード比[aHR]:3.99[95%信頼区間[CI]:2.58~6.16])、消化管出血(3.55[3.10〜4.06])、不安・うつ(3.06[2.86〜3.28])、肺炎(2.69[2.47~2.94])、心房細動(1.83[1.40~2.40])、その他の骨折(1.82[1.65~2.01])、尿路感染症(1.68[1.60~1.77])、骨粗鬆症性骨折(1.63[1.38~1.93])の発症リスクが高かった。・多くの疾患の発症リスクは、乳がんの診断から1年未満のほうが1年以降(1~10年)よりも高かった。とくに不安・うつは顕著で、1年未満のaHRが5.98(95%CI:5.43~6.60)、1年以降のaHRが1.48(1.34~1.63)であった。骨折リスクは診断から1年以降のほうが高かった。・初期治療のレジメン別では、アントラサイクリン系およびタキサン系で治療したグループでは、骨粗鬆症性骨折、その他の骨折、消化管出血、肺炎、不安・うつの発症リスクが高い傾向にあり、アントラサイクリン系および抗HER2薬で治療したグループでは心不全のリスクが高い傾向にあった。アロマターゼ阻害薬で治療したグループでは骨粗鬆症性骨折、消化管出血の発症リスクが高い傾向にあった。 これらの結果より、研究グループは「医療者と患者双方がこれらの疾患のリスクを理解し、検診、予防、早期治療につなげることが重要である」とまとめた。

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高齢者の治療抵抗性うつ病に対して最も効果的な治療は?〜メタ解析

 高齢者のうつ病は、十分に治療されていないことがある。2011年の高齢者治療抵抗性うつ病(TRD)の治療に関するシステマティックレビューでは、プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が1件のみ特定された。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAlice Jane Larsen氏らは、高齢者のTRD治療に対する有効性に関するエビデンスを統合し、更新レビューを行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2025年3月3日号の報告。 対象研究は、55歳以上のTRD患者に対する治療を調査したRCT。治療抵抗性の定義は、1回以上の治療失敗とした。2011年1月9日〜2023年12月10日(2024年1月7日に検索を更新)に公表された研究を、電子データベース(PubMed、Cochrane、Web of Science)よりシステマティックに検索した。メタ解析により、寛解率を評価した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias(RoB)2ツールを用いた。エビデンスの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)基準を用いた。 主な結果は以下のとおり。・14研究、1,196例(平均年齢:65.0歳、男性:548例、女性:648例)が包括基準を満たした。・10研究はプラセボ対照試験であり、4研究は低RoBであった。・介入群の寛解割合は0.35(17アーム、95%信頼区間[CI]:0.26〜0.45)。・対照群と比較し、介入群の寛解の可能性は高かった(9研究、OR:2.42、95%CI:1.49〜3.92)。・対照群と比較し、寛解率が良好であった治療は、ケタミンが優れており(3研究、OR:2.91、95%CI:1.11〜7.65)、経頭蓋磁気刺激(TMS)はその傾向がみられた(3研究、OR:1.99、95%CI:0.71〜5.61)。単一のプラセボ対照研究では、セレギリン、アリピプラゾール増強療法、薬理遺伝学的介入(PGP)、認知機能リハビリテーション介入の有用性が認められた。 著者らは「高齢者TRD患者の寛解率向上に対する治療として、ケタミン治療およびアリピプラゾール増強療法が有効であるとする弱いエビデンスとTMS、PGP、認知機能リハビリテーションが有効であるとする非常に弱いエビデンスが特定された。日常的に使用される抗うつ薬や心理社会的介入に関するエビデンスの欠如は問題であり、臨床医は、若年層からのエビデンスを拡大することが求められる」と結論付けている。

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高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会

 日本人の高齢化に伴い、国内での心血管疾患(CVD)の発生が増加傾向にある。このCVD発生には全身性の炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)の上昇が関連しており、これが将来の心血管イベントの発症予測にも有用とされている。しかし、その関連性は主に西洋人集団で研究されており1)、日本人でのデータは乏しい状況にある。そこで今回、小室 一成氏(国際医療福祉大学 副学長/東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 特任教授)が日本人集団における全身性炎症と心血管リスクの関係を評価し、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies1において発表した。 本研究は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)および心不全(HF)患者における全身性炎症に関連する長期健康アウトカム、ならびに医療費や医療資源の利活用にも注目してその特徴などを調査した観察研究である。メディカル・データ・ビジョンのデータベースの約5,000万例2)を基に、2008~23年にASCVDまたはHFと診断された18歳以上で、ASCVDまたはHF患者と診断され、hsCRP測定が適格と判断された約360万例を解析。主要評価項目は主要心血管イベント(MACE)とHF複合累積罹患率であった。 主な結果は以下のとおり。・ASCVDを有する患者集団をコホート1(10万7,807例)、HFを有する患者集団をコホート2(7万1,291例)とし、各コホートの患者をhsCRPで3群(正常低値:0.1mg/dL未満、正常高値:0.1~0.2mg/dL未満、高値:0.2~1.0mg/dL)に分類した。 ・コホート1について、hsCRPの上昇と関連する因子を特定するためにステップワイズ法を用いたロジスティクス回帰分析を実施したところ、高値群の患者特性として、男性、高齢、認知症、2型糖尿病、CKDなどがみられた。 ・コホート2も同様に解析したところ、脳卒中の既往歴を有する患者割合がコホート1よりも少ない一方で、高血圧症は約75%超の患者でみられ、COPD、2型糖尿病、心房細動、認知症と続いた。 ・HF複合累積罹患率として5年発症リスクを各群で分析したところ、正常低値群は17.6人年、正常高値群は24.0人年(調整ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.25~1.38、p<0.0001)、高値群は27.3人年(HR:1.37、95%CI:1.32~1.44、p<0.0001)だった。 ・HF複合累積罹患率から各群の入院や全死亡を見ると、hsCRPが高くなるほどいずれも発生率が上昇した。 最後に小室氏は「本結果より、日本人のCVD患者の35%以上がhsCRP高値であった。とくに男性、高齢者、およびCKD、COPD、2型糖尿病、認知症などの特定の併存疾患が、両コホートにおいてhsCRP高値と関連していた。また、MACEやHF複合累積罹患率に影響することが明らかになったことから、炎症がASCVDだけでなくHFの悪化にも寄与する可能性が示唆された。この状態あるいは疾患における炎症関連の有害事象が、何らかの共通メカニズムを介しているのか、それともいくつかの異なるメカニズムによって引き起こされているのかは、今後の検討課題である」と締めくくった。(ケアネット 土井 舞子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大

 「早食い」は太る原因といわれている。この食べる早さと肥満の相関は、子供にも当てはまるのだろうか。この課題に対し、大阪大学有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の高阪 貴之氏らの研究グループは、わが国の小学生1,403人の咀嚼能力および咀嚼習慣と肥満との関連を検討した。その結果、早食いや咀嚼能力の低下は、男子で肥満と関連していた。この結果は、Journal of Dentistry誌2025年3月8日号のオンライン版に掲載された。男子は早食い、満腹、噛む力が肥満に関係 研究グループは、大阪市の9~10歳の児童1,403人を対象に、咀嚼習慣を質問紙で評価し、咀嚼能力は色変化するチューインガムを用いて測定した。肥満は、身長と体重に基づく過体重の割合で判定し、多変量ロジスティック回帰分析を行い、咀嚼習慣と咀嚼能力を説明変数とし、性別、DMFT指数、ヘルマン歯発育段階を調整した肥満のオッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析では、すべての参加者において、肥満と性別(オッズ比[OR]=1.54、95%信頼区間[CI]:1.08~2.17 )、早食い(OR=1.73、95%CI:1.23~2.44 )、咀嚼能力低下(OR=1.50、95%CI:1.05~2.15)との間にそれぞれ有意な関連が認められた。・男子では、早食い(OR=1.84、95%CI:1.16~2.92)、満腹(OR=1.59、95%CI:1.03~2.46)、咀嚼能力の低下(OR=1.63、95%CI:1.02~2.59)が肥満とそれぞれ有意に関連していた。・女子では、有意に関連する変数はなかった。早食いと咀嚼能力の低下を組み合わせると、肥満と有意に関連し、両方の行動を示す男子で最も強いオッズ比が観察された(OR=3.00、 95%CI:1.49~6.07)。 この結果から研究グループは、「9~10歳の児童において、早食い、口一杯の食事、および咀嚼能力の低下は、とくに男子で肥満と関連していた。さらに、肥満との関連は、早食いと咀嚼能力の低下を組み合わせた場合に高かった」と結論付けている。

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死亡リスクの高いPAH患者に対するsotaterceptの有効性/NEJM

 最大耐量の基礎療法を受けている死亡リスクの高い肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、sotaterceptの上乗せはプラセボと比較し、全死因死亡、肺移植またはPAH悪化による24時間以上の入院の複合リスクを低下させることが、フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らによる第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ZENITH試験」の結果で示された。sotaterceptは、世界保健機関(WHO)機能分類クラスIIまたはIIIのPAH患者の運動耐容能を改善し、臨床的悪化までの時間を遅らせるが、進行したPAHで死亡リスクの高い患者に対するsotaterceptの追加投与の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年3月31日号掲載の報告。基礎療法へのsotatercept追加投与の有効性をプラセボと比較検証 研究グループは、安定した最大耐量のPAH基礎療法を受けているWHO機能分類IIIまたはIVのPAH成人患者で、REVEAL Lite 2リスクスコアが9以上、無作為化前6週間以内の肺血管抵抗が5 Wood単位(400 dyne・秒・cm-5)以上、肺動脈楔入圧または左室拡張末期圧が15mmHg以下の患者を、sotatercept群(3週間ごとに皮下投与、開始用量0.3mg/kg、0.7mg/kgまで増量)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ基礎療法に加えて投与した。 主要エンドポイントは、全死因死亡、肺移植またはPAH悪化による24時間以上の入院の複合とし、time-to-first-event解析で評価した。sotatercept追加で、複合リスクが有意に低下 2021年12月1日に登録が開始された。255例がスクリーニングを受け、172例がITT集団に組み入れられた(sotatercept群86例、プラセボ群86例)。本試験は、事前に規定された中間解析(データカットオフ日2024年7月26日)の有効性結果に基づき、早期に中止となった。 主要エンドポイントのイベントは、sotatercept群で15例(17.4%)、プラセボ群で47例(54.7%)に発生し、ハザード比は0.24(95%信頼区間:0.13~0.43、p<0.001)であった。 全死因死亡はsotatercept群7例(8.1%)、プラセボ群13例(15.1%)、肺移植はそれぞれ1例(1.2%)、6例(7.0%)、PAH悪化による入院8例(9.3%)、43例(50.0%)であった。 sotatercept群の主な有害事象は、鼻出血と毛細血管拡張症であった。

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大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

 大腸がん検診への参加率は、大腸内視鏡検査より免疫学的便潜血検査(FIT)のほうが高く、大腸がん関連死亡率について、本研究で観察された参加率に基づくとFITベースのプログラムは大腸内視鏡検査ベースのプログラムに対し非劣性であることが確認された。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Castells氏らCOLONPREV study investigatorsが、スペインの8地域における3次医療機関15施設で実施したプラグマティックな無作為化比較非劣性試験「COLONPREV試験」の結果を報告した。大腸内視鏡検査とFITは、平均的なリスク集団(大腸がんの既往歴または家族歴のない50歳以上の人々)における一般的な大腸がんスクリーニング戦略である。中間解析でも、FIT群は大腸内視鏡検査群よりスクリーニング参加率が高いことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年3月27日号掲載の報告。10年時大腸がん死亡率を比較検証 研究グループが適格としたのは、大腸がん、腺腫、炎症性腸疾患の既往歴、遺伝性または家族性大腸がんの家族歴(第1度近親者が2人以上大腸がんと診断、または1人が60歳未満で大腸がんと診断)、重度の合併症、あるいは結腸切除術の既往歴がない、50~69歳の健康と推定される人であった。適格者はスクリーニングへの招待前に、1回の大腸内視鏡検査群、または2年ごとのFIT群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、10年時大腸がん死亡率、重要な副次エンドポイントは10年時大腸がん発生率などで、intention-to-screen集団で評価した。非劣性マージンは絶対差0.16%ポイント未満とした。10年時大腸がん死亡率FIT群0.24%、大腸内視鏡検査群0.22%で、FITは非劣性 2009年6月1日~2021年12月31日に、5万7,404例が大腸内視鏡検査群(2万8,708例)またはFIT群(2万8,696例)に無作為化された。intention-to-screen集団は、大腸内視鏡検査群が2万6,332例、FIT群が2万6,719例であった。intention-to-screen集団における何らかのスクリーニングへの参加率は、大腸内視鏡検査群31.8%、FIT群39.9%であった(リスク比:0.79、95%信頼区間[CI]:0.77~0.82)。 10年時大腸がん死亡リスクに関して、FITの大腸内視鏡検査に対する非劣性が認められた。大腸内視鏡検査群では0.22%(死亡55例)、FIT群では0.24%(死亡60例)であり、リスク差は-0.02(95%CI:-0.10~0.06)、リスク比は0.92(95%CI:0.64~1.32)であった(非劣性のp=0.0005)。

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