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米国の45~49歳の大腸がん検診において、既定の郵送型免疫化学的便潜血検査(FIT)と比較して参加者自身の能動的選択(FITまたは大腸内視鏡検査を3種類のアウトリーチ戦略で選ぶ)に基づく検査はいずれも、6ヵ月後の検診の受診率が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のArtin Galoosian氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年8月4日号に掲載された。能動的選択と既定の検査を比較する無作為化試験 米国では、2021年、大腸がんの検診開始年齢が45歳に引き下げられたが、この年齢層における最適な受診促進法は明らかでない。研究グループは、45~49歳の年齢層における大腸がん検診の受診を促進するための、集団健康施策(population health)上の最も効果的なアウトリーチ戦略を決定する目的で、研究者主導の無作為化臨床試験を行った(UCLA Melvin and Bren Simon Gastroenterology Quality Improvement Programなどの助成を受けた)。 本研究は、南カリフォルニア地方の都市部の大規模な学術的統合保健システムであるUCLA Health(患者42万例超、50ヵ所の外来プライマリケア施設が参加)において、2022年5月2~13日に行われ、同年11月13日まで追跡調査を実施した。 平均的な大腸がんリスクを有する45~49歳の集団を対象とし、大腸がん検診の受診を促す次の4つのアウトリーチ戦略を受ける群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。検査法の選択肢として、(1)FIT、(2)大腸内視鏡、(3)FITまたは大腸内視鏡の提示を受ける、または(4)通常の既定の郵送型FIT。 各群の適格者に、参加者ポータルを介して受診を促す案内を送付した。(1)(2)(3)の参加者は、当該の検査を受けるか、今回は検診を受けないかを能動的に選択してその旨を返信し、(4)はこのような選択肢なしにFITの検査キット一式を郵送で受け取った。(1)と(4)の唯一の違いは、(1)が自発的にFITを選択したのに対し、(4)はFITを自ら選んでいない点である。 主要アウトカムは、受診案内を受けてから6ヵ月の時点での検診(FITまたは大腸内視鏡)の受診であった。1種類よりも2種類からの選択で、受診率が高い 2万509例(平均[SD]年齢47.4[1.5]歳、女性53.9%、黒人4.2%、非ヒスパニック系白人50.8%、アジア系13.7%)の参加者を登録した。このうち3,816例(18.6%)が検診を受けた。 受診率は、通常FIT群が26.2%(1,342/5,126例)であったのに対し、FIT群は16.4%(841/5,131例)(受診率の通常FIT群との群間差:-9.8%[95%信頼区間[CI]:-11.3~-8.2]、p<0.001)、大腸内視鏡群は14.5%(743/5,127例)(-11.7%[-13.2~-10.1]、p<0.001)、FIT/大腸内視鏡群は17.4%(890/5,125例)(-8.9%[-10.5~-7.4]、p<0.001)と、3つの能動的選択群のいずれもが有意に低かった。 1種類の検査法のみを選択する群(FIT群と大腸内視鏡群)の受診率が15.4%(1,584/1万258例)であったのに比べ、2種類の検査法から選択する群(FIT/大腸内視鏡群)の受診率は17.4%(890/5,125例)であり、有意に高かった(受診率の群間差:-1.8%[95%CI:-3.0~-0.1]、p=0.004)。FITから大腸内視鏡へのクロスオーバーが多い 2種類の検査法から選択する群(FIT/大腸内視鏡群)の5,125例では、FITを受診した参加者(5.6%[288例])よりも、大腸内視鏡を受診した参加者(12.0%[616例])のほうが多かった(受診率の群間差:-6.4%[95%CI:-7.5~-5.3]、p<0.001)。 また、FITから大腸内視鏡へのクロスオーバーが多かった(FIT群の9.8%[502/5,131例]、通常FIT群の9.8%[501/5,126例])のに対し、大腸内視鏡からFITへのクロスオーバーは少なかった(大腸内視鏡のみ群の2.7%[137/5,127例])。 著者は、「45~49歳で最も効果的な集団健康施策上の大腸がん検診戦略は、従来の既定の郵送型FITであった。全体として検診の受診率は低く、この年齢層の受診率の向上には、より効果的な戦略の導入が必要と考えられる」「今後は、多様な集団や他の医療環境において検診への参加を促進するために、郵送型FITアウトリーチのいっそうの最適化と個別化を進める必要がある」としている。