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糖尿病の有無別にアルコールおよび茶の摂取と肝がん発症リスクとの関連を検討した前向きコホート研究の結果、アルコール摂取はとくに糖尿病患者で肝がんリスクを大きく高めることが確認された一方で、茶の摂取による肝がんリスク低下効果は非糖尿病患者に限られたことが、中国・清華大学のXiaoru Feng氏らによって明らかになった。Nutrients誌2025年9月4日号掲載の報告。 一部の研究では少量のアルコール摂取は肝がんリスクを下げる可能性が報告されているが、高頻度・大量のアルコール摂取は肝がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている。茶の摂取は肝がんリスク低下に関連する可能性があるとする研究がある一方で、有意な関連を認めない研究も多く、結論は一様ではない。また、糖尿病患者は代謝異常のためにアルコールや茶の影響を受けやすく、それが肝がんのリスクに関与している可能性もある。そこで研究グループは、大規模かつ長期の追跡調査を行い、アルコールおよび茶の摂取と肝がん発症との関連を、糖尿病の有無別に評価した。 本研究では、中国のChina Kadoorie Biobank(CKB)前向きコホートの51万2,581例を解析対象とした(糖尿病患者3万289例、非糖尿病患者48万2,292例)。ベースライン時に過去1年間のアルコールおよび茶の摂取頻度、量、期間、種類を質問票で収集し、全国の医療保険・疾病登録データを用いて肝がんの発症を追跡した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病群では中央値9.6年、非糖尿病群では中央値10.1年の追跡期間中に、それぞれ193例(0.69例/1,000人年)、398例(0.45例/1,000人年)の肝がんの新規発症が記録された。・週1回以上のアルコール摂取は肝がんリスクの上昇と関連しており、糖尿病群では非糖尿病群よりもその関連が強かった。 -糖尿病群 HR:1.62、95%CI:1.12~2.34 -非糖尿病群 HR:1.20、95%CI:1.07~1.35・糖尿病群において、週当たりのアルコール摂取量が多い、飲酒歴30年以上、アルコール度数50%以上の蒸留酒を摂取している場合は肝がんリスクが上昇し、そのリスク上昇は非糖尿病群よりも顕著であった。 -アルコール摂取量が多い HR:2.21、95%CI:1.28~3.80 -飲酒歴30年以上 HR:1.70、95%CI:1.06~2.71 -アルコール度数50%以上の蒸留酒摂取 HR:1.91、95%CI:1.20~3.04・週1回以上の茶摂取は、非糖尿病群では肝がんリスク低下と関連した。とくに少量摂取(HR:0.82)、飲用歴10年未満(HR:0.74)、飲用歴10~29年(HR:0.84)、緑茶摂取(HR:0.86)の場合に有意な低下が認められた。なお、茶の摂取量が増えてもリスクがさらに減少することは認められなかった。・糖尿病群では、茶摂取と肝がんリスクに有意な関連は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「アルコール摂取は、とくに糖尿病患者において肝がんリスク上昇と有意に関連していた。一方、茶の摂取によるリスク低下効果は非糖尿病患者においてのみ観察された。これらの所見は、糖尿病患者におけるアルコール摂取の制限の重要性を強調している」とまとめた。