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新型コロナワクチン、既感染者での効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者にワクチンを接種すべきかどうか、まだはっきりしていない。これまでに既感染者が未感染者よりワクチンによる抗体応答が有意に高かった報告は少ない。今回、イタリア・シエナ大学のGabriele Anichini氏らが実施したコホート研究では、既感染者でのワクチン単回接種後の中和抗体価が、未感染者における2回接種後より有意に高いことが示された。NEJM誌オンライン版2021年4月14日号のCORRESPONDENCEに報告。 本研究では、SARS-CoV-2既感染者38人(男性9人と女性29人、平均年齢35.1歳、95%信頼区間[CI]:31.7~38.6歳、感染からワクチン接種までの平均日数:111日)と、未感染者62人(男性25人と女性37人、平均年齢44.7歳、95%CI:41.0~47.6歳)の計100人の医療従事者が参加した。 両群ともファイザー社製mRNAワクチンBNT162b2を接種。既感染者は初回接種の10日後に、未感染者は2回目接種の10日後に血清サンプルを採取した。すべての参加者において、化学発光微粒子免疫分析を用いて、特異的抗SARS-CoV-2スパイクIgGの有無を調べた。 主な結果は以下のとおり。・血中循環抗スパイクIgG抗体力価は、既感染者と未感染者で有意差はなかった。・特異的抗SARS-CoV-2中和抗体の幾何平均力価は、既感染者(569、95%CI:467〜670)と未感染者(118、95%CI:85〜152)に差がみられた(p<0.001)。年齢や性別による実質的な差はなかった。・既感染者(血中循環抗スパイクIgG抗体が検出されなかった1人を除く)を感染からワクチン接種までの期間が1〜2ヵ月(8人)、2〜3ヵ月(17人)、3ヵ月以上(12人)の3グループに分類したところ、血中循環IgG抗体の平均力価は、感染1〜2ヵ月後に接種したグループ(1mL当たり15,837任意単位)と2〜3ヵ月後に接種したグループ(同21,450任意単位)で差がみられた。感染2~3ヵ月後に接種されたグループと3ヵ月以降に接種されたグループ(同21,090任意単位)の間には有意差はみられなかった。中和抗体の幾何平均力価では、感染1〜2ヵ月後に接種されたグループが437(95%CI:231〜643)、2~3ヵ月後に接種されたグループが559(同:389~730)、3ヵ月以降に接種されたグループが694(同:565~823)であり、感染後3ヵ月以上以降に接種するとブースター反応がより効果的であることを示しているが、決定的な結論を下すには十分ではなかった。 著者らは、「これらの結果は、SARS-CoV-2既感染者のワクチン単回接種後は未感染者の2回目接種後より強い液性応答を示すというエビデンスを提供する」と述べている。

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イスラエルの新型コロナワクチンの効果、地域や年齢による差は?

 新型コロナワクチンの接種が各国にて急ピッチで進められているが、社会における実質的な効果の検証が求められている。イスラエル・ワイツマン科学研究所のHagai Rossman氏ら研究チームが、国内におけるワクチン接種の開始前後におけるCOVID-19症例数と入院数の経時的変化について分析したところ、ワクチン接種における年齢および地域の優先順に、COVID-19症例数および入院者数が大幅かつ速やかに減少傾向を示していたことがわかった。イスラエルでは、2020年12月20日から新型コロナワクチン接種が始まり、優先対象の60歳以上では、2月24日時点で85%が2回の接種済みだという。著者らは、本結果がコロナパンデミックに対する全国的なワクチン接種キャンペーンの実効性を示唆するものだと述べている。Nature Medicine誌オンライン版2021年4月19日号に掲載の報告。 本研究では、2020年8月28日~2021年2月24日に収集したイスラエル保健省のデータを後ろ向きに分析。2020年12月20日に開始されたファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)接種キャンペーン後の新しいCOVID-19症例数と入院数の経時的変化を検証した。具体的には、(1)優先接種対象の60歳以上とそれ以下の年齢層(2)2020年9月のロックダウンと2021年1月のロックダウン(3)ワクチン接種の実施が早かった都市と遅い都市―の3項目について、ワクチン接種がどのように影響しているか調べた。 年齢層の検証では、ワクチン接種の優先順位の高かった60歳以上で、それ以下の年齢層よりもCOVID-19症例数および入院数が大幅かつ速やかな減少が見られた。この傾向は、国のワクチン接種優先スケジュールの順番と正比例していた。また、同様の減少傾向は2021年1月のロックダウン時には見られたが、ワクチン接種の実施前となる2020年9月のロックダウン時には観察されなかった。 地域の検証では、早期にワクチン接種を実施した都市において、60歳以上のCOVID-19症例数および入院数の大幅かつ速やかな減少が見られた。具体的には、早期に実施した都市では、ピーク値と比べCOVID-19症例数は88%、重症者入院率は79%減少したのに対し、後期に実施した都市ではCOVID-19症例数78%、重症者入院率66%の減少にとどまった。

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小児高悪性度神経膠腫への遺伝子組み換えヘルペスウイルスG207、第I相試験結果/NEJM

 小児の再発/進行性高悪性度神経膠腫(HGG)患者において、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)G207の腫瘍内投与単独または放射線療法併用は、忍容性が良好であることが認められた。米国・アラバマ大学バーミングハム校のGregory K. Friedman氏らが、第I相試験の結果を報告した。再発/進行性HGGの小児/青年の予後は不良で、これまでの報告では全生存(OS)期間中央値はわずか5.6ヵ月とされている。G207は、HSV-1を用いた遺伝子組み換え腫瘍溶解性ウイルスで、成人HGG患者の第I相試験で腫瘍内投与と単回放射線照射併用の安全性が確認され、前臨床試験において小児脳腫瘍モデルはG207による腫瘍溶解に高い感受性があることが示されていた。小児HGGは、腫瘍浸潤リンパ球がほとんどない免疫学的に“silent”または“cold”tumorであるが、著者は「G207により、免疫学的に“cold”tumorが“hot”tumorに変わった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年4月10日号掲載の報告。4つのコホート(107PFU±5Gy、108PFU±5Gy)でG207の安全性を評価 本試験の対象は、3~18歳で手術、放射線療法または化学療法後に進行した、生検で確認された直径1.0cm以上のテント上悪性脳腫瘍患者である。3+3デザインを用いた4つのコホート(107PFU、108PFU、107PFU+5Gy、108PFU+5Gy)が設定された。 腫瘍内カテーテルを定位的に最大4本留置し、翌日、107PFUまたは108PFUのG207を6時間かけて点滴した。コホート3および4では、G207投与後24時間以内に放射線(5Gy)を照射した。 唾液、結膜、血液からのG207排出を培養およびPCR法により評価し、治療前および治療後の組織検体を用い免疫組織学的に腫瘍浸潤リンパ球を調べた。用量制限毒性作用・重篤な有害事象は認められず 計12例(男性6例、女性6例、年齢範囲7~18歳)にG207が投与された(各コホート3例)。G207投与後30日以内の有害事象は、主に嘔吐、発熱、下痢、疲労、血小板減少、頭痛などであった。治験責任医師評価によるG207に起因する用量制限毒性作用または重篤な有害事象は、認められなかった。G207に関連している可能性のあるGrade1の有害事象は20件であった。G207の排出は認められなかった。 11例で放射線学的、神経病理学的または臨床的効果が認められた。OS中央値は12.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.0~16.4)であり、4例はG207投与後18ヵ月以上生存していた(2020年6月5日現在)。G207投与により、腫瘍浸潤リンパ球数が著しく増加することが示された。(2021年4月28日 記事内容を一部修正いたしました)

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健康の社会経済的格差、生活習慣の影響は?/BMJ

 米国および英国の成人において、不健康な生活習慣が健康の社会経済的格差に及ぼす影響は小さいことが、中国・華中科技大学のYan-Bo Zhang氏らによるコホート研究データの解析の結果で示された。結果を踏まえて著者は、「健康的な生活習慣の推進だけでは、健康の社会経済的格差は縮小されない可能性があり、健康の社会的決定要因に取り組む他の方策が必要である」と指摘したうえで、「それでも、健康的な生活習慣はさまざまな社会経済的地位の集団において全死因死亡および心血管疾患(CVD)のリスク低下と関連しており、疾病負担の軽減における健康的な生活習慣の役割は重要である」と述べている。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。米国NHANESから約4万5千人、英国Biobankから約40万人のデータを解析 研究グループは、社会経済的地位と死亡およびCVD発症との関連に生活習慣が影響するかどうか、また、生活習慣と社会経済的地位の交互作用や関連の程度を検討する目的で、米国の国民健康栄養調査(NHANES、1988~94年および1999~2014年)、英国のBiobankのデータを用いてコホート研究を行った。解析対象は、20歳以上の米国成人4万4,462人および37~73歳の英国成人39万9,537人である。 社会経済的地位は、世帯収入、職業・雇用形態、教育レベル、健康保険(米国のみ)を用いた潜在クラス分析により、項目回答確率に応じて3段階(低、中、高)に分類した。健康的な生活習慣のスコアは、喫煙未経験、大量飲酒なし(女性は1日1杯以下、男性は1日2杯以下、1杯のエタノール含有量は米国では14g、英国では8g)、身体活動量上位3分の1、および食事の質の高さの情報を用いて構築した。 主要評価項目は、米国集団では全死因死亡、英国集団では全死因死亡、CVD死および発症であった。社会経済的地位が低い成人は高い成人と比べ転帰不良のリスクが高い 米国集団では追跡期間平均11.2年で死亡が8,906人、英国集団では同8.8~11.0年で死亡が2万2,309人、CVD発症が6,903件記録された。 社会経済的地位が低い成人における年齢調整死亡リスク(1,000人年当たり)は、米国集団22.5(95%信頼区間[CI]:21.7~23.3)、英国集団7.4(95%CI:7.3~7.6)、英国集団の年齢調整CVDリスク(1,000人年当たり)は2.5(95%CI:2.4~2.6)であった。一方、社会経済的地位が高い成人では、それぞれ11.4(95%CI:10.6~12.1)、3.3(95%CI:3.1~3.5)、1.4(95%CI:1.3~1.5)であった。 社会経済的地位が低い成人は、高い成人と比較した場合のハザード比(HR)(生活習慣で補正後)が、全死因死亡は米国集団2.13(95%CI:1.90~2.38)、英国集団1.96(95%CI:1.87~2.06)、英国集団におけるCVD死は2.25(95%CI:2.00~2.53)、同CVD発症は1.65(95%CI:1.52~1.79)で、いずれも高かった。 また、生活習慣の影響度(proportion mediated)は、米国集団の全死因死亡12.3%(95%CI:10.7~13.9%)、英国集団の全死因死亡4.0%(95%CI:3.5~4.4%)、英国集団のCVD死3.0%(95%CI:2.5~3.6%)、同CVD発症3.7%(95%CI:3.1~4.5%)であった。米国集団では生活習慣と社会経済的地位の間に有意な交互作用はなかったが、英国集団では社会経済的地位が低い成人で生活習慣と転帰に強い関連が認められた。 社会経済的地位が高く健康的な生活習慣の要素を3または4つ有する成人に比べて、社会経済的地位が低く健康的な生活習慣の要素が1つまたはまったくない成人は、全死因死亡(HR:米国集団3.53[95%CI:3.01~4.14]、英国集団2.65[95%CI:2.39~2.94])、英国集団におけるCVD死(HR:2.65、95%CI:2.09~3.38)およびCVD発症(HR:2.09、95%CI:1.78~2.46)のリスクが高かった。

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多発性骨髄腫、CRd療法でダラツムマブ追加の有効性確認/JAMA Oncol

 最近の研究によって、多発性骨髄腫の1次治療として、プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾンの3剤併用(VRd療法)にダラツムマブを追加することの有用性が確認されたが、プロテアソーム阻害薬をカルフィルゾミブに代えたCRd療法においても、ダラツムマブ追加の有効性が示されたという。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのOla Landgren氏らの非ランダム化MANHATTAN試験の結果によるもので、JAMA Oncology誌4月15日号オンライン版に掲載された。 2018年10月1日~2019年11月15日の間にメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターで新たに多発性骨髄腫と診断された患者41例が登録された。治療開始からの追跡期間中央値は20.3(95%CI:19.2~21.9)ヵ月だった。 カルフィルゾミブ(1、8、15日)、レナリドミド(1~21日)、デキサメタゾン(週次)、ダラツムマブ(1、8、15、22日[1~2サイクル]、1、15日[3~6サイクル]、1日[第7、8サイクル])投与を、28日間・8サイクル実施した。主要評価項目は、微小残存病変(MRD)率、副次的評価項目は安全性と忍容性の評価、奏効率の評価、無増悪生存率(PFS)と全生存率(OS)だった。 主な結果は以下のとおり。・41例の年齢中央値は59歳(範囲:30~70歳)、25例(61%)が女性で、20例(49%)が高リスクの多発性骨髄腫であった。・主要評価項目である骨髄でのMRD陰性化(感度<10-5)は、41例中29例(71%、95%CI:54%~83%)で達成され、試験の成功が判断された。・MRD陰性化までの期間中央値は6(範囲:1~8)サイクルだった。・副次評価項目である全奏効率は100%(41/41)、非常に良好な部分奏効率または完全奏効率は95%(39/41)だった。・最も多かった(2例以上)グレード3または4の有害事象は、好中球減少(12例[27%])、発疹(4例[9%])、肺感染症(3例[7%])、アラニンアミノトランスフェラーゼ値の上昇(2例[4%])だった。死亡例はなかった。 著者らは、CRd療法+ダラツマブ併用療法は安全性と忍容性に優れている可能性があり、新たに多発性骨髄腫と診断された患者において高い残存病変陰性率と高いPFSを示すことが示唆された、としている。

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第54回 専門家コメントの揚げ足を取る奴ら、新型コロナ感染対策の赤点取るなよ

もう高校を卒業してから30年以上が経過しているが、先日同世代のある方と電話で話していて「赤点」という懐かしい言葉を耳にした。いうまでもなく学習の習熟度を測る基準点で、高校時代はこの点数を下回ると最低でも追試、最悪は留年となった。赤点ラインは学校によってかなり差があり、私の高校では全教科一律で50点未満が赤点。ちなみに大学入学後、この母校の赤点ラインは周囲と比べてかなり厳し目であることを初めて知った。かくいう私は2度の赤点経験者だが、なんとか無事に卒業はしている。そんなこんなを思い出しながら、ふと今のコロナ禍に思いが至った。というのも、この電話をしていた日に以下の記事が文藝春秋の運営する情報サイト「文春オンライン」に掲載され、話題を呼んでいたからだ。「『東京五輪1年再延期の検討を』 西浦教授が提言」西浦教授とは言うまでもなく、コロナ禍の当初、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症クラスター対策班の一員として活動し、流行拡大を阻止のために人と人との接触を8割減にする必要があると繰り返し主張してきた通称「8割おじさん」こと、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授(クラスター対策班当時は北海道大学大学院医学研究院教授)の西浦 博氏のことである。内容は何のことはない。「今の感染急増を踏まえると、ワクチン接種の機会が医師ですら不足する可能性もある。そのことを考慮して、国民に広くワクチンが行き渡るであろう来年に東京オリンピック・パラリンピックを再延期してはどうか」という西浦氏の提言が紹介された記事だ。この記事は「Yahoo!ニュース」で配信されると瞬く間にネット上で拡散され、4月21日時点で「Yahoo!ニュース」コメント欄には6000件超のコメントが寄せられている。コメントの多くは、おおむね西浦氏の主張には理解を示している。ただ、「延期はない。中止だろう」の趣旨のものが目立つ。私は西浦氏の本音は中止なのだろうが、大会関係者の意向も忖度して「再延期」と表現しているのだと勝手に推測している。ただ、このコメント欄や記事を引用したTwitterやFacebookの投稿の一部には、もはや誹謗中傷の域としか思えないコメントも見受けられる。この記事に対する反響は配信直後から良くも悪くも相当大きかったのだろう。西浦氏はTwitter上でお詫びも含めたツイートをしている。悪いほうの反響で多く見かけるのが、西浦氏が2020年4月に発表した数理モデルを利用した試算への批判だ。これは感染拡大に無対策だった場合、流行終息までに日本国内では約42万人が死亡するというもの。当時、社会に衝撃を与えた試算だったが、前述の批判とはこれを「大外れだったではないか」と指摘するものである。その多くは医療と無関係な一般人だが、ごく一部には医療従事者もいるようだ。私はこの批判は的外れだと思っている。そもそも試算は、「無対策ならば」などの条件付きであり、試算結果のようにならないために「人と人の接触8割減」が必要という提言もセットで発表されている。冒頭のテストに例えれば、私たちは予め問題と模範解答を示され、赤点を回避するよう迫られていたわけである。もし試算が的中したら政治、アカデミアも含め国民全員の敗北、言葉は汚いが日本は「国民総アンポンタン」との烙印を押されていたのである。この西浦氏の「人と人の接触8割減」提言について、政治の側で満額回答を示したわけではなかったが、インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく初の緊急事態宣言発出とそれを根拠にした飲食店の時短営業や一部商業施設の休業、イベントの中止・延期、テレワークの推奨などといった対策に落とし込まれ、さらに国民には「3密の回避」「マスク着用」「手洗いの励行」などのメッセージが繰り返し伝えられた。その結果として一時的とはいえ感染拡大はかなり抑制できた。今現在、私たちは第4波とでも言うべき感染急増に晒されている。4月5日以降、特措法に基づく「まん延防止等重点措置」が10都府県に順次発出されたが、それでも連日1,000人を超える感染者が報告されている大阪府、感染拡大傾向を見せる東京都はともに緊急事態宣言発出が確実視されている。この感染急拡大の原因の一つとして英国株を中心とする感染力が強い変異株の流行が指摘されている。それは事実だろうが、改めて言うまでもなく、野生株だろうが、変異株だろうが、▽人と人との接触減(その中でもとりわけ3密の回避)▽マスク着用▽手洗いの励行といった感染拡大阻止の対策は変わらない。むしろその徹底がより必要となってくる。強いて言うならば、これらの対策に「接種できる人は速やかにワクチン接種をする」という対策が加わる。いずれにせよ西浦氏の最初の試算発表時から今まで、私たちは同じ問題とそれに対応したほぼ同じ模範解答が示され、その徹底を求められている。医療従事者と私たち報道関係者は、自分自身の徹底に加え、他者への呼びかけも今まで以上に求められることになる。最終的に東京オリンピック・パラリンピックが予定通り1年遅れで開催されるのか、再延期となるのか、それとも中止となるのか。この点は医学的な判断のみならず高度に政治的な判断も加わるため、今の時点で予測不可能だ。現在、緊急事態宣言発出を巡って、一部への休業要請も含めたより強い対策をどこまで行うのかは水面下で調整が行われている。が、まん延防止等重点措置にしろ緊急事態宣言にしろ、一度発出されてしまえばその後は単に政治家や医療従事者だけでなく、対象となる地域の住民も行動の真価が問われることになる。そして私たちに「赤点」が付くかどうかは数ヵ月以内に判明することになる。

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黒字なのに倒産危機!? 病院経営はキャッシュフローが肝心!【今さら聞けない!医療者のための決算書の読み方】第4回

<登場人物>少し前から、友人でコンサルタントの田中に、定期的に相談を始めた宮路。財務諸表のうち、損益計算書と賃借対照表について学び、だいぶ調子が出てきたようだが…。宮路:田中さんに財務諸表のことを教えてもらって、少し自信がついてきたよ。実家の病院を継ぐためには、とりあえず損益計算書と賃借対照表を見ることができれば十分だよね?田中いやいや。財務諸表にはもう1つ、「キャッシュフロー計算書」という欠かせないものがあるよ。とくに宮路さんの実家の病院は最近赤字だから、キャッシュフロー、つまりお金の動きもきちんと押さえておくことが大事だよ。宮路そうなんだ…。まだまだ学ぶことがあるんだね。キャッシュフロー計算書についても教えてほしいな。田中:了解! 今回からより詳しい内容を説明するために、病院の経営危機を幾度となく救ってきた、友人の公認会計士、安田 憲生さんと一緒に解説するよ!公認会計士・安田の解説キャッシュフロー計算書とは、「病院がどのような経緯でお金を手に入れて、どう使ったか。結果として、お金がどう増減したか」を表すものです。損益計算書と似ているけど、異なるものです。表1:キャッシュフロー計算書の主な区分と意味画像を拡大する損益計算書は、「売上から費用を差し引いて利益を計算する書類」です。実際のお金の動きとは異なり、取引が行われた時点で売上や費用を計上(発生主義と呼びます)します。たとえば、先に商品を渡して代金を後で回収する、いわゆる「掛け売り」の場合を考えてみましょう。損益計算書上では、商品の「売上」が計上されていますが、実際に商品代金(キャッシュ)が入金されるのはその翌月だったりします。つまり、「売上」はあるのに、実際には、手元にお金が入ってきていない状態です。このように、損益計算書だけ見ていても、「実際のお金の動き」はわかりません。キャッシュフロー計算書はこの点を解決するものであり、入金・出金があった時点で計上するために、「実際のお金の動き」を見ることができるんですよ。コンサルタント・田中の解説医療機関の場合は、診療行為を行って売上が発生しても、患者自己負担分以外の約7割の保険収入は、レセプト請求を行ったうえで診療月の2ヵ月後に入金される制度になっているため、損益計算書上のお金の動きと実際のキャッシュフローに大きな差が出る。この入金タイミングの差によって、資金繰りに苦慮する医療機関も少なくないんだ。とくに、開業間もない診療所の経営者は、始めの2ヵ月間は収入が極端に少ないため資金繰りに苦労するケースが多い。それからもう1つ重要な点としては、「借入金の動き」も損益計算書では見えないため、キャッシュフロー計算書で確認する必要があるんだ。いくら損益計算書上で一定の利益が出ていても、実際にはその何倍も借り入れがあったうえで経営が成り立っている場合には、経営がうまくいっているとはいえない可能性がある。このように、損益計算書上では利益が出て黒字であっても、実際には手元にお金がない場合は支払いができなくなり、最悪の場合には倒産してしまう(=黒字倒産)病院もある。資金繰りに課題がある場合は早めに対処することが大切だ。宮路:黒字倒産…、聞いたことはあっても、実際に病院でもあるんだね。田中そうなんだ。医療機関のように、毎回売上のタイミングと報酬の大部分の入金のタイミングにズレがあるような取引では、実際のお金の動きを見るために、キャッシュフロー計算書をきちんと読むことが大切だよ。宮路そうか。まずは実家の病院のキャッシュフロー計算書を見てみるよ!安田毎月、当月から翌々月くらいまでの資金繰りを管理する必要があります。資金繰り管理をどうやっていくかわからない場合は、早めに専門家に相談してくださいね。

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日本における認知症専門チームに対する金銭的インセンティブの効果

 これまで、急性期治療環境下における認知症治療の質は批判的にみられていた。2016年に日本において、急性期病院の認知症専門家チームによる認知症ケアに対する金銭的インセンティブが導入された。筑波大学の森田 光治良氏らは、この金銭的インセンティブが、短期的な結果(院内死亡率および30日間の再入院)に対して有用であったかを調査した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年3月17日号の報告。 日本の全国入院患者データベースを用いて、2014年4月~2018年3月に肺炎、心不全、脳梗塞、尿路感染症、頭蓋内損傷、股関節骨折で入院した中等度~高度の認知症高齢者を特定した。金銭的インセンティブを採用した病院(185件中180件)と採用しなかった病院(744件中180件)の傾向スコアが一致するよう選択した。次に、患者レベルの差分分析を実施した。感度分析では、介入後のグループにおいて、実際に認知症ケアを受けた患者に限定した。 主な結果は以下のとおり。・金銭的インセンティブの採用と院内死亡率(調整オッズ比:0.97、95%CI:0.88~1.06、p=0.48)または30日間の再入院(調整オッズ比:1.04、95%CI:0.95~1.14、p=0.37)との間に関連は認められなかった。・金銭的インセンティブを採用している病院の患者のうち、実際に認知症ケアを受けていた患者は29%のみであった。・感度分析では、認知症ケアを受けることと院内死亡率低下との関連性が示唆された。 著者らは「個々の認知症ケアが院内死亡率の低下と関連していることが確認されたが、日本の認知症専門家チームによる認知症ケアを強化するための金銭的インセンティブは、効果的に機能していない可能性が示唆された」としている。

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中和抗体カクテル療法で症候性COVID-19発症リスクが81%減/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は4月12日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染者との家庭内での濃厚接触者を対象に、中和抗体カクテル療法によるCOVID-19発症リスクおよび負担軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)において、良好な結果を確認したと発表した。casirivimabとimdevimabの皮下投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少したことが示されたという。 REGN-COV 2069試験は、SARS-CoV-2感染者との家庭内における濃厚接触者への症候性感染予防を目的に、casirivimabおよびimdevimabの有効性と安全性を評価する複数コホートからなる二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、ロシュ社が米国・国立アレルギー・感染症研究所と共同で実施したもの(日本は不参加)。過去4日以内にSARS-CoV-2陽性と判定された人と同居し、ベースラインでSARS-CoV-2に感染しておらず、casirivimab+imdevimab(1,200mg)またはプラセボを単回皮下投与した1,505例が対象。主要評価項目は、29日間の評価期間におけるSARS-CoV-2の症候性感染が生じた人の割合とした。その結果、casirivimab+imdevimab群において症候性感染の発症リスクがプラセボ群に比べ81%減少(p<0.0001)したことが示された。 本試験ではさらに、新規感染の無症候性患者204例について、casirivimab+imdevimab(1,200mgの単回皮下投与)またはプラセボに無作為に割り付け、抗体カクテル療法を評価した。その結果、casirivimabとimdevimabは、症候性COVID-19に進行するリスクを全体で31%減少させた。 また、casirivimabとimdevimabによる治療を受けたものの症候性COVID-19感染を発症した人では、平均1週間以内に症状が消失したのに対し、プラセボ群では症状が消失するまでに3週間を要した。新たな、あるいは重大な安全性シグナルは認められなかった。 casirivimabとimdevimabによる抗体カクテル療法の国内開発は、中外製薬が実施している。

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CLLに次世代BTK阻害薬アカラブルチニブを販売開始/アストラゼネカ

 アストラゼネカは2021年4月21日、「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を効能又は効果とした、アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の販売を開始した。アカラブルチニブは、経口投与可能な次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。・製品名:カルケンスカプセル 100mg・一般名:アカラブルチニブ・効能又は効果:再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)・用法又は用量:通常、成人にはアカラブルチニブとして1回 100mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。・製造販売承認日 2021年1月22日・薬価100mg 1カプセル 15,202.20円・薬価基準収載日 2021年4月21日・発売日 2021年4月21日

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アビガン、発症早期COVID-19患者に対する第III相試験開始/富士フイルム富山化学

 富士フイルム富山化学は、アビガン(一般名:ファビピラビル)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象とした新たな第III相試験を国内で開始したことを、4月21日に発表した。本試験は、重症化リスク因子を有する、発症早期のCOVID-19患者において有効性・安全性を検証する二重盲検プラセボ対照試験。 アビガンについては、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象とした国内第III相試験において主要評価項目で統計学的有意差を確認したことから、製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。 今回の第III相試験は、昨年実施した臨床試験の中でとくに発症早期の患者で症状改善を早める効果が示唆されたことから、重症化リスク因子を有する、発症早期のCOVID-19患者(発熱などの症状発現から72時間以内かつ基礎疾患や肥満などの重症化リスク因子を有する50歳以上のCOVID-19患者)を対象に、重症化した患者の割合を主要評価項目として有効性を検証していくという。

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中等度~重度うつ病に対するpsilocybin vs.エスシタロプラム/NEJM

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏らは、6週間の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果、中等度~重度大うつ病性障害に対しpsilocybinは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のエスシタロプラムと比較して、6週時のQIDS-SR-16うつ症状スコアの変化に基づく抗うつ作用に有意差はないことを明らかにした。psilocybinおよびその代謝物のシロシンは催幻覚物質で、その作用は主に5-HT2A受容体アゴニスト作用による。これまでに、治療抵抗性うつ病患者を対象とした小規模な非盲検試験ではpsilocybinの抗うつ症状改善効果が報告されていた。しかし、確立された既存のうつ病治療薬とpsilocybinの直接比較は行われていなかった。著者は今回の結果に基づき、「psilocybinと既存の抗うつ薬を比較検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年4月15日号掲載の報告。psilocybin 25mgの3週間ごと2回投与の有効性をエスシタロプラムと比較 研究グループは、長期間持続する中等度~重度大うつ病性障害患者を、psilocybin群(psilocybin 25mgを3週間隔で2回投与+プラセボを1日1回6週間投与)、およびエスシタロプラム群(psilocybin 1mgを3週間隔で2回投与+エスシタロプラムを1日1回6週間投与)のいずれかに1対1の割合で割り付けた。なお、全例に心理学的サポートを行った。 主要評価項目は、16項目版自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR-16:スコア範囲0~27、スコアが高いほどうつ症状が重症であることを示す)のベースラインから6週時までの変化であった。副次評価項目は、6週時のQIDS-SR-16による奏効率(>50%のスコア減少)、寛解率(スコアが5点以下)などの16項目とした。6週時のQIDS-SR-16の変化量は両群で有意差なし 59例が登録され、psilocybin群30例、エスシタロプラム群29例に割り付けられた。 ベースラインのQIDS-SR-16平均スコアは、psilocybin群14.5点、エスシタロプラム群16.4点であった。6週時におけるベースラインからの変化量(平均±SE)は、psilocybin群が-8.0±1.0点、エスシタロプラム群が-6.0±1.0点であり、群間差は2点であった(95%信頼区間[CI]:-5.0~0.9、p=0.17)。 QIDS-SR-16による奏効率は、psilocybin群70%、エスシタロプラム群48%、群間差22ポイント(95%CI:-3~48)、寛解率はそれぞれ57%、28%で群間差28ポイント(95%CI:2~54)であった。 その他の副次評価項目は、全般的にエスシタロプラムよりもpsilocybin群のほうが良好であったが、多重比較の補正は行われなかった。有害事象の発現率は、両群で類似していた。

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オキシトシンによる分娩誘発、陣痛活動期に継続すべきか中止すべきか?/BMJ

 胎児の状態と子宮収縮のモニタリングが保証される環境において、オキシトシンによる誘発の中止は、帝王切開率のわずかな上昇につながる可能性があるが、子宮過刺激および胎児心拍異常のリスクを有意に低下したことが示された。デンマーク・Randers Regional HospitalのSidsel Boie氏らが、同国の9病院とオランダの1病院で実施した国際共同無作為化二重盲検比較試験「Continued versus discontinued oxytocin stimulation in the active phase of labour:CONDISOX」の結果を報告した。これまで4件のメタ解析では、いったん陣痛活動期に入れば、オキシトシンの投与を中止しても分娩の経過は継続し、帝王切開のリスクが低くなることが示されていた。しかし、2018年のCochrane reviewで過去の研究の質が疑問視され、多くの試験が、バイアスリスクが高いまたは不明と判断されていた。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。オキシトシンが帝王切開率低下と関連するかを検証 CONDISOX試験の対象は、正期産、頭位、単胎で選択的陣痛誘発または陣痛前破水によりオキシトシンを投与された女性で、陣痛活動期(子宮口開大6cm以上、10分間に3回以上の子宮収縮)に入った時点で、オキシトシン継続群または中止群(プラセボとして生理食塩水を投与)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。施設、出産経験の有無およびオキシトシンの適応(選択的陣痛誘発、陣痛前破水)による層別化も行われた。 主要評価項目は、帝王切開による分娩であった。 2016年4月8日~2020年6月30日に、計1,200例が無作為化された(継続群593例、中止群607例)。帝王切開率は中止群と継続群で差はなし 帝王切開率は、中止群16.6%(101例)、継続群14.2%(84例)であった(相対リスク:1.17、95%信頼区間[CI]:0.90~1.53)。また、帝王切開歴のない経産婦94例における帝王切開率は、中止群7.5%(11/147回)、継続群0.6%(1/155回)であった(相対リスク:11.6、95%CI:1.15~88.7)。 オキシトシン中止は、分娩所要時間の延長(無作為化から分娩までの時間の中央値:中止群282分vs.継続群201分)、過剰刺激のリスク低下(3.7%[20/546例]vs.12.9%[70/541例]、p<0.001)、胎児心拍異常のリスク低下(27.9%[153/548例]vs.40.8%[219/537例]、p<0.001)と関連していたが、母体および新生児の他の有害アウトカムについては両群で類似していた。 なお、著者は研究の限界として、割り付けられた介入を受けなかった女性の割合がかなり高かったこと、助産師が分娩誘発を再開する場合にオキシトシンの使用を選択することが多かったことなどを挙げている。

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アナモレリン、がん悪液質に新たな治療選択肢/小野薬品

 小野薬品工業は、2021年4月21日、グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)について、「悪性腫瘍(非小細胞肺、胃、膵、大腸)におけるがん悪液質」の効能又は効果で国内において新発売した。アナモレリンの効果はがん悪液質患者の体重および筋肉量の増加並びに食欲の増加 がん悪液質は、がんに伴う体重減少(特に筋肉量の減少)や食欲不振を特徴とする複合的な代謝異常症候群であり、がん患者の生活の質(QOL)や予後に顕著な影響を及ぼすことが分かってきているが、これまでに国内でがん悪液質の治療薬として承認された薬剤はなかった。 グレリンは、主に胃から分泌される内在性ペプチドである。グレリンがその受容体に結合すると、体重、筋肉量、食欲および代謝を調節する複数の経路を刺激する。アナモレリンはグレリン様作用で、がん悪液質患者における体重および筋肉量の増加並びに食欲の増加効果を示している。アナモレリンの製品概要エドルミズ錠50mgの概要・製品名:エドルミズ®錠 50mg・一般名:アナモレリン塩酸塩・効能又は効果:下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質        非小細胞肺、胃、膵、大腸・用法及び用量:通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100 mgを1日1回、空腹時に経口投与する。・製造販売承認日:2021年1月22日・薬価基準収載日:2021年4月21日・薬価:246.40円/錠・製造販売:小野薬品工業株式会社

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腎性貧血に対するHIF-PH阻害薬モリデュスタットを発売/バイエル薬品

 バイエル薬品は、HIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害薬モリデュスタットナトリウム(商品名:マスーレッド)を腎性貧血治療薬として2021年4月22日に発売したと発表した。本剤は、保存期および透析期慢性腎臓病(CKD)の主要な合併症の1つである腎性貧血に対して、1日1回の経口投与によりヘモグロビン値を管理できる腎性貧血治療薬。 本剤は、高地などで低酸素状態に適応する際の身体の生理的な反応を穏やかに活性化し、エリスロポエチンの産生を誘導して赤血球の産生を促進することにより、腎性貧血を改善する。錠剤の識別性の向上のため、両面に製品名や用量を印字している。 本剤の承認は、透析実施前(保存期CKD)および透析(血液透析および腹膜透析)実施中の患者を対象とした国内第III相臨床試験プログラム「MIYABI」(5試験)などの試験成績に基づいている。MIYABIのうち実薬対照試験では、主要評価項目である評価期間中の平均ヘモグロビン値のベースラインからの変化量に関して、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)に対する本剤の非劣性が検証された。なお、有害事象の発現頻度はESAと同程度だった。 HIF-PH阻害薬としては、ロキサデュスタット(商品名:エベレンゾ、アステラス製薬)、ダプロデュスタット(同:ダーブロック、グラクソ・スミスクライン)、バダデュスタット(同:バフセオ、田辺三菱製薬)、エナロデュスタット(同:エナロイ、日本たばこ産業/鳥居薬品)の4剤が発売されており、モリデュスタットは5剤目となる。マスーレッドの概要販売名:マスーレッド錠5mg/12.5mg/25mg/75mg一般名:モリデュスタットナトリウム効能・効果:腎性貧血用法・用量:<保存期慢性腎臓病患者>・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合通常、成人にはモリデュスタットとして1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回200mgとする。・赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合通常、成人にはモリデュスタットとして1回25mg又は50mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回 200mgとする。<透析患者>通常、成人にはモリデュスタットとして1回75mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回200mgとする。製造販売承認取得日:2021年1月22日発売日:2021年4月22日薬価:マスーレッド錠5mg 44.30円/12.5mg 93.70円/25mg 165.10円/75mg 405.30円製造販売元:バイエル薬品株式会社

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高用量セマグルチドが肥満糖尿病患者の体重減量やQOLに有効である(解説:安孫子亜津子氏)-1378

 わが国では2010年からGLP-1受容体作動薬を糖尿病治療薬として使用しており、血糖降下作用以外の、食欲抑制効果、胃内容物排出遅延効果により、体重の減少効果も期待できる薬剤である。2020年からわが国でも使用できるようになった週1回注射製剤のセマグルチド(Sema)(商品名:オゼンピック)は、26位アミノ酸のリジンに脂肪酸を結合させることでアルブミンへの結合が増強されて分解が遅延するため、血中半減期が約1週間のGLP-1アナログである。 これまでにSemaの2型糖尿病患者への臨床試験は「SUSTAINプログラム」として、多くの試験が実施され、Sema 0.5mgおよび1.0mgの血糖降下作用、および体重減少作用が報告されてきた。わが国でのSema 1.0mg単独療法での30週における体重減少効果は-3.87kgであった1)。さらにSUSTAIN-6では心血管イベントの有意な抑制効果が認められている2)。 今回Lancet誌で紹介された「STEP 2試験」は、BMI 27kg/m2以上の肥満または過体重である2型糖尿病患者に対して、高用量2.4mgのSemaの効果を、糖尿病治療薬として使用されている1.0mg Semaおよびプラセボと比較した第III相臨床試験である。12ヵ国、149施設の患者、計1,210名が参加しており、アジア人種も26.2%含まれている。参加者の治療介入前平均体重は99.8kg、平均BMIは35.7kg/m2であり、わが国の2型糖尿病患者の平均BMIに比較するとかなり高値である。 68週の治療で、本試験の主要評価項目である体重の減少率は、Sema 2.4mgでは-9.6%であり、プラセボの-3.4%に比較して6.2%減少に差が認められた。Sema 1.0mgでは-7.0%であり、Semaの投与用量を多くすることでさらなる体重減少効果が認められたこととなる。実際の体重減少で見るとSema 2.4mgでは-9.7kg、Sema 1.0mg で-6.9kg、プラセボ-3.5kgであり、これまでのSema治療用量に比較してその体重減少効果が大きいことが示されている。 そのほか、HbA1c、収縮期血圧、脂質パラメーターなど、すべてプラセボに比較して改善効果が認められているが、とくに興味深かった結果は、HbA1cはSema 2.4mgと1.0mgでともに-1.6%、-1.5%と同等の低下作用であり、糖尿病薬としてのGLP-1の効果は1.0mgでほぼ十分であることがわかる。ちなみに低血糖の発現はSema 2.4mgで5.7%、Sema 1.0mgで5.5%と同等であり、高用量のSemaで低血糖が誘発されるわけではないことも理解できる。 副作用に関しては、既存のGLP-1受容体作動薬同様に吐き気や嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状が最も多く、Sema 2.4mgとSema 1.0mgでほぼ同程度であった。そのほか、高用量Semaによる特異的な副作用は認められていない。 肥満によって患者のQOLが低下することが多いが、本試験ではSF-36v2とIWQOL-Lite-CTといった2つの方法で治療によるQOL変化の評価を行っている。その結果、Sema 2.4mgではプラセボに比較して身体的活動が改善していることが示されている。週に1回の注射で、これだけの体重減少効果と各種代謝パラメーターの改善が認められることは、これまでの抗肥満薬や肥満手術に比較してもQOLを向上させる効果が期待できると考えられる。 今回のSTEP 2試験の結果から、高用量のSemaにより、長期的にどれくらいの心血管イベント抑制効果が認められるかどうかに今後注目したい。今後、肥満糖尿病患者の治療の主軸としてGLP-1受容体作動薬が位置付けられことが予想される。現在、数々のSTEP試験によって糖尿病のない肥満者においてもその有効性が示されており、さらに幅広い患者での使用機会が期待される。

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梅に鶯、松に鶴【Dr. 中島の 新・徒然草】(371)

三百七十一の段 梅に鶯、松に鶴大阪ではコロナ第4波!ウチの病院もコロナ対応にマンパワーを割かれて大変です。他部門は、これまで3人でやっていた仕事を2人でやらなくてはなりません。余裕がなくなる分、自分でもイライラしてくるのを感じます。こんな時こそ、毒にも薬にもならないコネタで乗り切りましょう。まずは、実習に来ていた医学生の話から。中島「自分、出身はどこなん?」学生「大阪の八尾市です」中島「おお、八尾か」学生「中島先生は八尾って知ってますか?」中島「知ってるも何も。八尾いうたら朝吉やないか」学生「は?」中島「あの勝 新太郎が映画『悪名』で演じた八尾の朝吉なんやけど」学生「カツ……シンタロー?」中島「まさか勝 新太郎を知らんのか。『首相の代わりはおっても勝新の代わりはおらん!』と言ったあのカツシンやがな」学生「カツシン……ですか」中島「もうエエから、家でお父ちゃんに聞いとけ!」学生「わかりました」映画「悪名」とか、俳優の勝 新太郎とか、今の若者には全く通じません。中島「ところで清次役の田宮 二郎のほうは知ってるよな」学生「ええっと」中島「ワシらにとって特別な存在やんか」学生「特別?」中島「財前 五郎を演じとったやろ、『白い巨塔』の!」学生「そうだったんですか」中島「情けない」(泣)阪大医学部の生んだ偉人中の偉人、財前 五郎!色んな俳優が演じましたが、私は田宮 二郎版が好きです。もう財前 五郎がのりうつったとしか言いようのない鬼神の演技。財前は胃がんで死ぬのですが、田宮も最終回放映を待たずして亡くなりました。役にとりつかれてしまったのでしょうか。その田宮 二郎が映画「悪名」シリーズで演じたのが朝吉の弟分、清次。財前 五郎とは全く違うキャラ、お調子者のチンピラを演じています。「梅に鶯、松に鶴。朝吉に清次の清次とはワイのことや!」たしかそんなセリフだったと思います、清次の啖呵は。清次役も田宮 二郎らしさ全開で笑えます。さて、先日の脳外科外来でのこと。御夫婦で来院された患者さんがたまたま八尾の会社の社長さん。80代にして現役。処置をしながらの世間話です。中島「研修医には爽やか対応を口やかましく言っとるんですわ」社長「ウチの従業員なんか皆、八尾弁やからな。全然爽やかなことあらへん」中島「やっぱり八尾といえば八尾の朝吉ですね」奥さん「朝吉さんはこの人のお兄さんが親しかったんですよ」中島「ええっ! 朝吉って人がホンマにおったんですか」奥さん「そうですよ、消防団やってました」中島「映画では朝吉親分と呼ばれてましたけど」社長「極道やあらへん。親はブラシ屋や」奥さん「八尾は歯ブラシ屋が多いんです」中島「そうなんですか!」奥さん「朝吉さんはお酒が好きやってねえ」それにしても驚きました、八尾の朝吉が実在していたとは。外来をしていると、いろいろと見聞を広めることができます。束の間の昭和に浸ったところで最後に1句病院は なにわの町の 縮図かな

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必ずアクセプトされる医学英語論文 改訂版

いかなる発見も、論文に書かれなければ何も残らないそして自分の研究成果を世界中の1人でも多くの人に知らしめたければ論文は英語で書くに限る。エレガントな表現など必要ない。冗長・曖昧さを排した簡潔で的確な英語表現技術、論文各パーツにおける論理性・一貫性を重視した論述・構成のノウハウ等々、初版を大幅に改訂し、それらの具体的な手法をさらに厚く説明した。本書が掲げる50の鉄則がアクセプトへの最短の道を照らす。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    必ずアクセプトされる医学英語論文 改訂版定価3,520円(税込)判型A5判頁数200頁 発行2021年3月著者康永 秀生電子版でご購入の場合はこちら

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第54回 最悪のタイミングで導入された「レセプト記載要領コード化」、どこが問題?

2020年度の診療報酬改定により、電子レセプト請求に「レセプト記載要領の電算コード」が1,700項目追加された。同年10月診療分から本格適用されたが、コロナ禍で医療人材が不足し、業務の効率化が求められる中、医療機関からはかえって事務作業量が増え、現場が混乱しているという声が上がっている。9割以上の医療機関で業務量が「増えた」大阪府では新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を記録する中、大阪府保険医協会はこのほど、「電子レセ請求におけるレセ記載要領コード化」に関するアンケートを、府内約500病院を対象に実施し、100病院から回答を得た(3月15日現在)。それによると、9割以上の病院で業務量が「増えた」ことが明らかになった。アンケートでは、レセプト記載コード化の実施による請求事務部門の業務時間の増減について尋ねたところ、100病院中54病院が「増えた」、37病院が「多少増えた」と回答。「減った」と回答した病院は0件だった。とくに在宅医療では「重複した年月日を別コードで何度も入力しなければならない」「月の請求書であるレセプトになぜ元号から入力しないといけないのか」、検査でも「病名で部位がわかるのに、なぜ超音波の部位をコード入力するのか」など批判の声が上がっているという。また、診療報酬請求だけではなく、電子カルテと連携している場合にはカルテ記載の際にもコード入力を求められ、「診療が止まってしまう」との意見も寄せられている。合理化・簡素化を目的として実施されたレセプト記載コード化が、医療機関の負担軽減とは真逆の内容であることが浮き彫りになった。新たに入力しなければならない項目などが増加電子カルテの導入状況などについて尋ねた項目の回答を見ると、導入状況は半数程度であり、病院ということで一括りにはできず、請求事務と医療現場を繋ぐシステムの状況は病院ごとにかなり異なることが伺えた。とくに苦労している点などについて記述してもらったところ、回答した病院の8割以上(81件)から具体例が挙げられた。主に問題点は以下の3点だった。(1)救急医療管理加算における記載事項、リハビリテーションにおける起算日の内訳の入力に代表されるように、請求事務部門で完結できない確認作業が伴うため、時間がかかった。また、恒常的に対応するため、現場のメディカルスタッフに当該数値や情報の入力・報告を求めるなど、医療現場との業務調整まで行う必要があったことなどが指摘されている。(2)レセプト記載コード化だけでなく、新たに入力しなければならない事項が増えているのも問題であるとする指摘も多数見られた。(3)レセプトコンピュータや電子カルテの対応状況やメディカルスタッフの保険請求への理解など病院の実情により、負担感の違いが伺えるが、院内の体制が手薄な中小規模の病院ほど、レセプトをまとめる医事課などの請求事務部門の負担が大きいと推察される。実態は医療側ではなく「審査側の効率化」このように、医療情報のデータ化に伴う作業は多大な負担を伴っている。この負担の大きさに見合う意義があるのか、その成果が医療機関側にどのようにもたらせられるか、大阪府保険医協会は疑問を呈している。その成果が「審査側の効率化」というのでは、コロナ禍の中でこの作業に従事している医事課職員をはじめ医療機関職員が報われない。言うまでもなく、請求事務の目的は、医療機関で行われた医療行為(療養の給付)を診療報酬点数表に則って保険請求を行い、対価を得ること。その対価が医療従事者の給与や医療機器の整備等に充てられ、国民医療の継続的な提供や医療の質を担保している。審査側にとっての「効率化」を行うのであれば、厚労省や審査・支払機関、保険者が汗をかいて行うべきでは、との意見も寄せられている。大阪府保険医協会には診療所からも意見が寄せられ、3月下旬現在、レセプト記載コード化の凍結を求める院長署名が約1,700件集まっているという。同協会は3月25日、中央社会保険医療協議会(中医協)委員に要望書を送付した。厚労省の説明は現場の実態と乖離レセプト記載コード化について、厚労省は「事務作業量の軽減に資する」と説明しているが、現場の実態とはあまりに乖離している。また、混乱の要因を「新型コロナ感染拡大による周知不足」とも説明しているが、その内容自体に大きな問題があり、周知徹底を行ったところで医療機関の納得を得られるものではないと思われる。医療機関は、新型コロナ感染対策により大きな緊張を強いられた状況で診療を行っている。レセプト記載コード化は、導入のタイミングの悪さも一因ではあるが、医療機関にとっては余計な負担増にほかならない。医療のIT化は大きな流れとはいえ、2022年度の診療報酬改定を議論する中医協には、医療現場にこれ以上の負担をかけない議論が望まれる。

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