オキシトシンによる分娩誘発、陣痛活動期に継続すべきか中止すべきか?/BMJ

胎児の状態と子宮収縮のモニタリングが保証される環境において、オキシトシンによる誘発の中止は、帝王切開率のわずかな上昇につながる可能性があるが、子宮過刺激および胎児心拍異常のリスクを有意に低下したことが示された。デンマーク・Randers Regional HospitalのSidsel Boie氏らが、同国の9病院とオランダの1病院で実施した国際共同無作為化二重盲検比較試験「Continued versus discontinued oxytocin stimulation in the active phase of labour:CONDISOX」の結果を報告した。これまで4件のメタ解析では、いったん陣痛活動期に入れば、オキシトシンの投与を中止しても分娩の経過は継続し、帝王切開のリスクが低くなることが示されていた。しかし、2018年のCochrane reviewで過去の研究の質が疑問視され、多くの試験が、バイアスリスクが高いまたは不明と判断されていた。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。
オキシトシンが帝王切開率低下と関連するかを検証
CONDISOX試験の対象は、正期産、頭位、単胎で選択的陣痛誘発または陣痛前破水によりオキシトシンを投与された女性で、陣痛活動期(子宮口開大6cm以上、10分間に3回以上の子宮収縮)に入った時点で、オキシトシン継続群または中止群(プラセボとして生理食塩水を投与)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。施設、出産経験の有無およびオキシトシンの適応(選択的陣痛誘発、陣痛前破水)による層別化も行われた。主要評価項目は、帝王切開による分娩であった。
2016年4月8日~2020年6月30日に、計1,200例が無作為化された(継続群593例、中止群607例)。
帝王切開率は中止群と継続群で差はなし
帝王切開率は、中止群16.6%(101例)、継続群14.2%(84例)であった(相対リスク:1.17、95%信頼区間[CI]:0.90~1.53)。また、帝王切開歴のない経産婦94例における帝王切開率は、中止群7.5%(11/147回)、継続群0.6%(1/155回)であった(相対リスク:11.6、95%CI:1.15~88.7)。オキシトシン中止は、分娩所要時間の延長(無作為化から分娩までの時間の中央値:中止群282分vs.継続群201分)、過剰刺激のリスク低下(3.7%[20/546例]vs.12.9%[70/541例]、p<0.001)、胎児心拍異常のリスク低下(27.9%[153/548例]vs.40.8%[219/537例]、p<0.001)と関連していたが、母体および新生児の他の有害アウトカムについては両群で類似していた。
なお、著者は研究の限界として、割り付けられた介入を受けなかった女性の割合がかなり高かったこと、助産師が分娩誘発を再開する場合にオキシトシンの使用を選択することが多かったことなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
原著論文はこちら
Boie S, et al. BMJ. 2021;373:n716.
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