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嚥下機能低下の患者さんへの糖尿病治療薬/田辺三菱製薬

 高齢者や病中・病後の患者さんなど飲み込む力、すなわち嚥下機能が落ちている患者さんにとって薬を飲みこむことは一仕事であり、場合によっては服薬中断など服薬コンプライアンスを悪化させる原因となる。こうした身体状況に対処できる工夫はあるだろうか。 田辺三菱製薬株式会社は、選択的DPP-4阻害剤テネリグリプチン(商品名:テネリアOD錠20mg、同錠40mg)について、6月18日に薬価基準に収載され、発売したと発表した。 同社は、高齢の患者さんや嚥下機能が低下した患者さん、また、水分の摂取制限が必要な患者さんにおける、さらなる利便性や服薬コンプライアンスの向上を目指し、口腔内崩壊錠(OD錠)の開発を行い、本年2月に同薬剤の製造販売承認を取得していた(「テネリア錠20mg」は2012年6月に、「同錠40mg」は2018年8月に製造販売承認を取得)。 同社では、治療薬の研究・開発・提供を通じ、「2型糖尿病治療における新たな選択肢を提供し、糖尿病治療により一層貢献していく」と抱負を語っている。製品概要製品名:テネリアOD錠 20mg/同OD錠 40mg一般名:テネリグリプチン効能・効果:2型糖尿病用法・用量:通常、成人にはテネリグリプチンとして20mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら40mg1日1回に増量することができる。薬価:20mg 1錠 134.70円/40mg 1錠 202.50円製造販売承認日:2021年2月5日薬価基準収載日:2021年6月18日発売日:2021年6月18日製造販売元:田辺三菱製薬株式会社

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デュルバルマブの肺がんCCRT維持療法、5年生存4割(PACIFIC試験)/ASCO2021

 化学放射線同時併用療法(CCRT)後に疾患進行しなかった切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第III相PACIFIC試験において、デュルバルマブは無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の有意な改善を示している。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、PACIFIC試験の5年のOSおよびPFSデータが発表された。デュルバルマブ群とプラセボ群の5年OS率は42.9%と33.4%と依然として良好・対象:cCRT後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者・試験群:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月(473例)・対照群:プラセボ、2週ごと12ヵ月(236例)・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会(BICR)判定による無増悪生存期間(PFS)、OS[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までの時間、安全性などCRTの1~42日後に、被験者はデュルバルマブとプラセボに2対1に無作為に割り付けられた。 デュルバルマブを投与したPACIFIC試験の5年のOSおよびPFSデータの主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年1月11日)の追跡期間中央値は全無作為化患者では34.2ヵ月、最後に生存が確認された患者では61.6ヵ月であった。・更新されたOS中央値は、デュルバルマブ群47.5ヵ月、プラセボ群29.1ヵ月、5年OS率は42.9%と33.4%と、デュルバルマブ群が依然として良好であった(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.59〜 0.89)。・更新されたPFSはデュルバルマブ群16.9ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月、5年PFS率はそれぞれ、33.1%と19.0%であった(HR:0.55、95%CI:0.45~0.68)。 発表者は、今回のデュルバルマブのPACIFIC試験の結果は初回解析結果と一致したものであり、これらの対象患者の標準治療の新たな基準を確立したと結んでいる。

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MSI-H大腸がん1次治療、ペムブロリズマブ単剤vs.化学療法の最終結果(KEYNOTE-177)/ASCO2021

 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の転移のある大腸がん(mCRC)の1次治療として、ペムブロリズマブ単剤治療と標準化学療法を比較した第III相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-177試験」の最終結果を、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。高いクロスオーバー率(60%)によりOSの統計学的有意差は示されなかったが、ペムブロリズマブ単剤治療の死亡低下を認める結果が得られたことを報告した。 本検討については第2回中間解析の結果として、ペムブロリズマブ単剤が化学療法として比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが報告されていた。最終解析は、事前に計画されていた第2回中間解析後12ヵ月時点で行われた。・対象:未治療のMSI-H/dMMRを有するStageIVの大腸がん患者、PS 0~1、307例・試験群:ペムブロリズマブ単剤200mg 3週ごと、最大35サイクル(Pembro群、153例)・対照群:mFOLFOX6療法あるいはFOLFIRI療法±ベバシズマブ/セツキシマブ 2週ごと(Chemo群、154例、病勢進行後クロスオーバー可)・評価項目:[主要評価項目]PFS、全生存期間(OS、有意性p=0.0246)[副次評価項目]奏効率(ORR)、PFS2、健康関連QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年2月19日)の追跡期間中央値は、Pembro群44.5ヵ月、Chemo群44.4ヵ月であった。・最終解析におけるPFSは、Pembro群16.5ヵ月、Chemo群8.2ヵ月であった(HR:0.59、95%CI:0.45~0.79)。・確定ORRは、Pembro群45.1%、Chemo群33.1%であった。CRはそれぞれ13.1%、3.9%であった。・有効性のITT解析のクロスオーバー率は60%であった。Chemo群の56例(36.4%)がPD後クロスオーバーし、さらに37例(24.0%)が治験外で抗PD-1/PD-L1治療を受けていた。・無作為化からPDまたは全死因死亡までの期間としたPFS2は、Pembro群54.0ヵ月Chemo群24.9ヵ月であった(HR:0.61、95%CI:0.44~0.83)。・OS中央値はPembro群未到達、Chemo群36.7ヵ月であった。HRは0.74(0.53~1.03、p=0.0359)であり、統計学的有意差は示されなかったが、Pembro群で死亡が低い傾向が認められた(OSイベントはPembro群62例vs. Chemo群78例)。・感度解析によるOSのHRは、rank-preserving structure failure time(RPSFT)モデルを用いた場合0.66(95%CI:0.42~1.04)、inverse probability of censoring weighting(IPCW)法では0.77(95%CI:0.44~1.38)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は、Pembro群79.7%、Chemo群98.6%であり、Grade3以上のTRAEはそれぞれ21.6%、66.4%であった。 Andre氏は、「最終解析の結果は、ペムブロリズマブは、MSI-H/dMMR mCRC患者の1次治療の標準治療とすべきことが確認された」と述べた。

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AML初回治療、シタラビンのプロドラッグBST-236の有用性/ASCO2021

 初発急性骨髄性白血病(AML)はシタラビンによる強力寛解導入療法が標準治療となるが、毒性が強く高齢者や合併症のある患者は不適となる。不適患者にはベネトクラクスと脱メチル化薬(HMA)の併用療法が推奨されるが、臨床応用ははじまったばかりでリアルワールドのデータは乏しい。 こうした状況において開発中のaspacytarabine(BST-236)はシタラビンのプロドラッグで、シタラビンの曝露量を減少させ、全身毒性を軽減する。このaspacytarabineの有用性をみた多施設共同シングルアーム第II相試験の中間解析結果を、ノースウェスタン大学Jessica K. Altman氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:標準化学療法不適の初発AML患者・介入:aspacytarabine 4.5g/m2/日(シタラビン3g/m2/日に相当)を6日間静脈内投与、寛解導入療法1~2コースと地固め療法1~3コース・評価項目:[主要評価項目]完全寛解(CR)率[副次評価項目]最小残存病変(CRMRD)陰性、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・aspacytarabineの1~4コースを完了した46例が解析対象となった。年齢中央値75歳、ECOG PS 0~1が27例(59%)、2が19例(41%)だった。・26例(63%)がde novo AML、17例(37%)が二次性で、うち6例(13%)がHMAによる前治療を受けていた。・ベースライン時の骨髄芽球中央値は52%で、欧州白血病ネット(ELN)スコアが不利または中間の患者はそれぞれ54%と29%だった。・全CR率は39%、HMA±ベネトクラクス未治療群は45%、de novo AML群は52%、二次性群は18%だった。・完全寛解のうち、63%が最小残存病変(MRD)陰性だった。・20%以上の患者で発生した有害事象は、発熱性好中球減少症(57.4%)、低カリウム血症(44.7%)、末梢性浮腫(42.6%)などだった。Grade3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(48.9%)、血小板減少症(38.2%)、貧血(27.7%)などだった。 Altman氏はaspacytarabineの反復投与における安全性と忍容性が確認されたとしている。一方で本試験は奏効期間中央値12ヵ月、全生存期間中央値24ヵ月(フォローアップ終了時)にいずれも達しておらず、最終結果は今後の学会で発表される予定となっている。

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ワクチン予診票、17ヵ国語対応版を公開/厚労省

 厚生労働省サイトでは、各国語に対応した新型コロナワクチン接種に使う「予診票」「ワクチン種類別の説明書」「接種に関するお知らせ」が公開されている。 対応言語は英語、中国語(簡体字・繁体字)、フランス語、アラビア語など計17ヵ国語。「予診票」はかかりつけ医の項目が削除された最新版に対応しており、ファイザー製とモデルナ製それぞれに対応した「説明書」は対象年齢や接種のスケジュール、接種が受けられないケースといった基本事項が説明されている。「接種のお知らせ」は接種当日の服装や持ちものについての説明が記載されている。 医療従事者、高齢者以外にもワクチン接種が進み、今後は在日外国人等への接種も本格化することが見込まれる中、自治体や大規模接種センターでの用途が想定される。なお、各国語版での予診票では接種費用の請求はできず、日本語版の予診票に転記して請求することが必要となる。

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1つであらゆるコロナ変異株防ぐ「スーパー中和抗体」作製/富山大

 富山大学などの研究グループは6月16日、新型コロナウイルスのさまざまなタイプの変異株の感染を防ぐことができる中和抗体を人工的に作製することに成功したと発表した。1つの抗体で多種の変異株の感染を防御できる現時点で最も理想的な抗体として、研究グループは「スーパー中和抗体」と命名。6月14日付で特許を出願し、製薬会社との共同事業化等により治療薬として実用化に向けた対応を急ぎたい考えだ。 研究グループは、COVID-19回復者の血清中の中和活性を測定し、高力価の中和抗体を持つ患者を選定。患者の末梢血B細胞からスパイクタンパク質に強く結合する抗体を作るB細胞を選定して抗体遺伝子を取り出し、遺伝子組換え抗体を作製した。さらに、その中から中和活性のとくに高い抗体を特定し、スーパー中和抗体(28K)を取得することに成功したという。 28Kは、その特徴を生かし、軽症および中等症から急激にウイルスが増殖し重症化に移行する段階で迅速に投与することにより、重症化の抑制が期待できるという。さらに、スパイクタンパク質に直接結合し、各種変異株の特異的エピトープに被ることなくACE2との結合を阻害するため、1つの抗体で新型コロナウイルスの野生株だけでなく、現在確認されているさまざまなタイプの変異株(アルファ、ベータ、カッパ、デルタ等)を防御できるのが特徴。このメカニズムにより、新たな変異株出現に対しても治療効果が発揮できる可能性があるという。 富山大学は今後、製薬会社と連携し、新型コロナウイルス感染症の治療に役立つ中和抗体製剤の実用化を目指したいという。

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男性の精子数、mRNAワクチン接種で減少なし/JAMA

 COVID-19感染後に男性の生殖機能に障害が生じるという複数の報告※1※2があるが、mRNAワクチン接種後に精子の状態を調べた研究では、精子濃度が高まり、精液量と精子運動性も高まったことが確認されたという。JAMA誌オンライン版2021年6月17日号Research Letterの報告。 米マイアミ大学で行われたこの単施設の前向き研究では、18~50歳までの健康な男性をボランティアとして募集。参加者は不妊症の基礎疾患がないことが確認され、COVID-19有症状者と90日以内の検査結果陽性者は除外された。参加者は2~7日間の禁欲後、1回目のワクチン接種前と2回目のワクチン接種から約70日後に精液サンプルを提出した。 主な結果は以下のとおり。・2020年12月17日~2021年1月12日に45例が登録した(年齢中央値:28歳[IQR:25~31])。2回目接種後サンプルは中央値75(IQR:70~86)日目に提出され、試験は2021年4月24日に終了した。・サンプル接種前の禁欲期間は、ベースライン時は中央値2.8(IQR:2~3)日、フォローアップ時は中央値3(IQR:3~4)日だった。・45例中、21例(46.7%)がBNT162b2(ファイザー製)を接種し、24例(53.3%)がmRNA-1273(モデルナ製)を接種した。・ベースライン時の精子濃度は2,600万/mL(IQR:1,950~3,400)、総運動精子数(TMSC)は3,600万(IQR:1,800~5,100)だった。2回目接種後、精子濃度中央値は3,000万/mL(IQR:2,150~4,050、p=0.02)、TMSC中央値は4,400万(IQR:2,700~9,800、p=0.001)と有意に上昇し、精液量と精子の運動性も有意に増加した。・ワクチン接種前には45例中8例が乏精子症だった(濃度中央値:850万/mL[IQR:510~1,200])が、8例中7例は追跡調査で正常精子域まで精子濃度が増加した(中央値:2,200万/mL[IQR:1,700~2,550])。・ワクチン接種後に無精子症になった例はなかった。 研究者らは、mRNAワクチンが精子のパラメータに影響を与える可能性は低く、数値の増加は通常の個人差の範囲内であり、2回目のサンプル採取までの禁欲期間が長くなったことが要因の一つとして考えられる、としている。

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ヘルメットで甲状軟骨骨折【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第189回

ヘルメットで甲状軟骨骨折いらすとやより使用ヘルメットは、致死的な頭部外傷のリスクを軽減させるとされている装具です(医学的エビデンスはよくわかりません)。道路交通法第63条によると、13歳未満の児童では自転車に乗る場合にも着用努力義務があります。親など大人が運転する自転車に、子どもを乗せる時にも適用されます。ヘルメットにはあごひも(バックル)があり、これが実は頸部に対するリスクになるのでは……、という議論があります。Ostby ET, et al.Helmet Clasp Cracks Larynx? A Case Series and Literature ReviewAnn Otol Rhinol Laryngol . 2018 Apr;127(4):282-284.これは、米国・カリフォルニア州にあるロマ・リンダ大学の単施設のケースシリーズです。自転車とオートバイの交通事故の後、甲状軟骨の骨折があった3人の診療録や画像データを見返すと、興味深いことがわかりました。3人には嗄声や嚥下障害という症状がありました。ヘルメットのあごひも(バックル)が甲状軟骨の直上にある場合、ヘルメットが後ろにずれたタイミングで、ひもが甲状軟骨を骨折させてしまうことがあるのです。通常の装着方法では、甲状軟骨よりももう少し上になってヘルメットも固定されていることが多いですが、やや甘めに装着してしまうと、ヘルメットが脱げたときにあごひも(バックル)が甲状軟骨に大きな力をかけてしまいます。過去の文献検索では、ヘルメットの使用に続発した喉頭損傷の報告は1例のみですが、高エネルギー外傷においては、このあごひも(バックル)による喉頭へのダメージが軽視されている可能性があります。甲状軟骨や輪状軟骨の骨折は、ときに気管の損傷を合併することがあります。Gussackの分類にもあるように(図)、頸部外傷部位に皮下気腫がみられる場合、緊急性が高いです。画像を拡大するとくに、首から掛けて“なんちゃってヘルメット装着”をしている中高生は注意です。ちなみに私が中高生のときは、ノーヘルでした。時代ですな。1)Gussack GS, et al. Laryngotracheal trauma: a protocol approach to a rare injury. Laryngoscope 1986; 96: 660-665

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第62回 ワクチンオタクがコロナの余剰ワクチン打ってきた!~接種に辿り着くまで~

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の高齢者向け接種が始まって2ヵ月が経過した。接種業務については、周知のとおり各自治体にかなり裁量権があることや自治体ごとに人口構成や地理的条件も異なるため、ここに来てかなり自治体間の「格差」が生じている。以前の本連載の第52回でも触れたように、私は「ワクチンマニア」「ワクチンオタク」を自認している。当然ながら早く接種したくてうずうずしている。ちなみに私の居住地は東京都練馬区。いわゆる個別医療機関でのワクチンの小分け配送による接種体制を最初に確立した「練馬モデル」の地域である。練馬区では最近、2バイアル当たりの残り分で接種1回分を確保する運用の「リザーブワン」モデルも始めている。もっとも接種を受ける側からすると、現時点で区報に記載された個別接種医療機関のうち、かかりつけ患者以外に対応するのは少数であること、64歳以下の接種券配布はまだ行われていないこと、区が主導するキャンセル待ちシステムがないなど、もう少しウイングを広げて欲しいと考える点はある。さて、先ほど「早く接種したくてうずうずしている」と書いたが、より正確には「早く接種したくてうずうずしていた」が正しい。実はキャンセルにより発生した余剰ワクチンで1回目の接種を終えたからだ。これまた本連載の第59回で触れたように、河野大臣が記者会見で余剰ワクチンは接種券の有無や年齢、居住地に関係なく接種して良いと語り、そのことが通知となってからはひたすら余剰ワクチンのキャンセル待ちができる医療機関を探し始めた。最初に申し込みをしたのは、NHKでもキャンセル待ちシステムが紹介されたあるクリニックグループ、そして今月上旬に20年来の友人が無事接種にこぎつけた別のクリニックグループ、その他個別のクリニックなど、いずれもネットを通して申し込んだ。また、顔見知りの医師で、自院で接種を行っている人にも声をかけた。もっとも顔見知りの医師はほぼ一様に「いや、本当にキャンセルでの余剰ワクチンを接種したとしても、村上さんが相手だとコネだと批判されそうだなあ」との反応。まあ、この反応は予想の範疇だったので「どんなに代わりを探しても誰も見つからない場合に…」とだけ伝えておいた。そのうえで余剰ワクチン発生時にはいつでも接種できるよう、厚生労働省のホームページからダウンロードした予診票のうち事前に記入可能なところは記入し、過去のワクチン接種歴が記載されているイエローカード、お薬手帳とともにジャケットの内ポケットに入れて常に携帯していた。ちなみに記入済みのもう一枚の予診票とイエローカード、お薬手帳のコピーはいつも持ち歩くデイバッグの中に。これらすべてのスキャンデータをPDF化し、PCとスマホにも保管していた。一報があれば、これらを先にメールなどで送り、駆けつけることで対面時の問診を最小限するためだ。それからというものほぼ毎日のように「ワクチン and キャンセル待ち」でGoogle検索をかけていたが、ある時、自治体が公的にキャンセル待ちシステムを用意していなくても、個別接種医療機関のホームページでキャンセル待ちを募集しているケースがそこそこにあることに気づいた。そこで区内の個別接種医療機関のホームページ巡りをしたところ、あるクリニックの「ワクチン無駄ゼロバンク」なるキャンセル待ちシステムが目にとまった。LINE、電話、窓口を通じ、予め登録した人がキャンセル待ちをできるというもの。登録時は▽名前、年齢、性別▽そのクリニックの診察券番号(持っている人のみ)▽電話番号▽住所▽アレルギーの有無(ある場合は詳細)▽既往歴▽内服薬(薬剤名も詳細に)、の情報が必要になる。区内在住者ならば接種券がなくとも後日持参することで対応するという。早速、LINEを通じて申し込んだ。その際、わざわざ「お薬手帳、過去のワクチン接種歴がわかるイエローカード、当日の状況以外は記載済みの新型コロナワクチン予診票は常に携帯」とメッセージを送り、イエローカードの写真データも送付した。「やりすぎ」と言われるかもしれないが、こちらはいつでも応じる覚悟ありという姿勢を示しておきたかったのだ。その日のうちにクリニックからは登録完了の返信が来た。そして翌日、「週明けに接種枠を拡大することになったため、予約枠の空き状況によっては無駄ゼロバンクの登録者に接種の案内をするので、都合の悪い日時を教えて欲しい」とLINEメッセージが来た。これはよく聞いていたケースだ。行政などからの要望に応じて接種枠を増やした直後、大規模会場や職域での新たな接種などのスタートと重なり、個別接種医療機関の予約枠がガラガラになってしまい、ワクチンも余ってしまう問題だ。あとは完全に医療機関の裁量でも良いと思うのだが、自治体によってはその場合でも「接種券のある人のみ」や「自治体の住民のみ」との縛りを設けていることが多く、私自身一部の医師からの不満も耳にしていた。この辺は厚生労働省からの通知があったとしても、後々の現場の事務作業が煩雑になることを警戒した自治体の判断らしい。とりあえずNG日だけを伝えると、折り返しクリニックから6月26日に1回目、7月17日に2回目、いずれも午前10時という日程が提示されて了承した。それでもなお「その前に余剰が発生した際にはすぐにご連絡ください」と念を押した。日程確定の翌日、国立国際医療研究センター主催のオンラインプレスセミナーを視聴中、あと数分で終わりという段階で電話が鳴った。すでにこのクリニックの電話番号はスマートフォンの電話帳に登録済みだったので着信した瞬間に分かった。受けると同時にこちらから「村上です。ワクチンに余剰が出たんですね?」と尋ねた。クリニック側「その通りです。今から来れますか?」私     「はい、20分で」クリニック側「確か記入済みの予診票をお持ちでしたよね」私     「はい」クリニック側「助かります。ではお待ちしております」すぐさま事務所から飛び出してクリニックに向かって駆け出した。20分という時間予想はあくまで徒歩だったが、一刻も早く着きたかった。接種できるようになったから走って行ってくるとFacebookに投稿すると「ダッシュして息上がってゼハゼハ言って、体温も上がってサーモで引っかかるに10ルーブル」とコメントが入り、はっとして歩き始めた。クリニックに到着すると、すでに院内は高齢者で一杯。窓口でキャンセルワクチンの件で連絡が来た旨を伝え、予診票を示すと、すぐに体温計を渡された。36.3℃で問題なし。そしてカタカナで名前が書かれたシールを貼りつけたリストバンドを渡され、装着するよう指示された。体温計を戻して2分ほど待つと、診察室に案内された。中には医師と看護師の2人。挨拶をして念のために持ってきましたと、イエローカードとお薬手帳を見せると、看護師が「ああ、このグリーンカード(いえ、イエローカードです!)の人、みんなの中で話題になってたんですよ」と素っ頓狂な声をあげる。医師は「ほー」と言いながらイエローカードを手に取って眺めている。「海外にも行かれたりするんですか?」と聞かれたので、「ええ、まあ」と。そしてあっさり「じゃあ打ちますか?」となった。接種シーンを撮影しても良いか尋ねたところOK。ということで看護師さんにスマホを渡して接種シーンを撮影してもらった。「はい、終了です」と言われた時には「え、もう終わり?」という感じだった。一応、マニアとして10種類のワクチン筋注を経験しているが、その中で最も針刺し感がなかったからだ。一応、アトピー性皮膚炎持ちのアレルギー体質ということもあり、アナフィラキシー確認の待機時間は自ら30分を希望し、了承された。待合室に戻ると、リストバンドの名前シールがはがされ、受付にある大きな砂時計に貼り付けられる。15分計測の砂時計らしい。ほかの待機者分も含め複数の砂時計が置かれている。スマホで撮影してもらった写真を拡大し、間違いなく針が刺されていたことを確認。その後は持ってきた本を読みながら過ごし、15分後に看護師さんから「村上さんはもう1周ね」と声を掛けられ、再度砂時計がひっくり返された。最終的に何事もなく、そのまま帰宅の途に就いた。さて、それからちょうど丸2日になる。翌日は注射部位反応の軽い圧痛はあったが、倦怠感、発熱はなし。本日もやはり倦怠感、発熱はなし、昨日の圧痛すらなし。あっけなく1回目の接種が終了した。ちなみにこの2日間、キャンセル待ちを入れたほかの医療機関のキャンセル取り消しにてんやわんやとなった。

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進行TN乳がんへのアテゾリズマブ、どの免疫フェノタイプや分子サブタイプに有効か(IMpassion130)/ASCO2021

 未治療の進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する第III相IMpassion試験の探索的解析から、免疫フェノタイプや分子サブタイプによりアテゾリズマブの上乗せ効果が異なることが示された。米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 IMpassion130試験は、進行TNBCの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ併用群、451例)をプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群、451例)と比較した第III相試験で、PD-L1 IC+(腫瘍浸潤免疫細胞が1%以上発現)患者において、アテゾリズマブ併用群で有意な無増悪生存期間(PFS)の改善と臨床的に意味のある全生存期間(OS)の改善が報告されている。また探索的分析では、腫瘍微小環境(TME)がリッチな患者や腫瘍遺伝子変異量が多い患者におけるアテゾリズマブ併用による臨床アウトカムの改善が、PD-L1 IC+患者に限られることも報告されている。今回は、アテゾリズマブの併用効果に関連するTMEの構成要素を特定するために探索的解析を実施した。 PD-L1発現の有無と免疫フェノタイプ(inflamed/excluded/desert)は免疫組織化学染色(IHC)で評価し、分子サブタイプと経路の分析にはRNA-seqを使用した。アテゾリズマブ併用群とプラセボ群のPFSおよびOSは、タキサン治療歴、肝転移を調整しCox回帰分析を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・免疫フェノタイプ別では、PD-L1 IC+患者のinflamedタイプ(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.80)およびexcludedタイプ(HR:0.72、95%CI:0.51~1.00)で、アテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OSの改善はinflamedタイプ(HR:0.61、95%CI:0.42~0.88)のみでみられた。・分子サブタイプ別には、PD-L1 IC+患者のBLIA(basal-like immune-activated)タイプ(HR:0.49、95%CI:0.34~0.69)およびBLIS(basal-like immune-suppressed)タイプ(HR:0.66、95%CI:0.44~0.98)でアテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OS改善はBLIAタイプ(HR:0.54、95%CI:0.36~0.80)のみでみられた。 Emens氏は、「TMEの特徴は、PD-L1 IC+の進行TNBC患者におけるアテゾリズマブ+nab-PTXの臨床アウトカムと関連している。一方、PD-L1 IC-の患者のアウトカムと関連する特徴は確認されていない」とまとめた。

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アテゾリズマブによるNSCLCアジュバントの成績は?(IMpower010)/ASCO2021

 完全切除された早期NSCLCにおける化学療法アジュバント後のアテゾリズマブを評価した無作為化第III相非盲検試験IMpower010中間解析の結果がASCO2021で発表された。アジュバントアテゾリズマブはBSCに比べ、良好な無病生存(DFS)を示した。・対象:Stage IB~IIIAで術後化学療法(プラチナ+ペメトレキセド/ドセタキセル/ゲムシタビン/ビノレルビン)、21日ごと最大4回サイクル)受けた完全切除NSCLC患者(ECOG PS 0~1)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日 3週ごと16サイクル(Atezo群)・対照群:ベストサポーティブケア(BSC群)・評価項目[主要評価項目]治験責任医評価の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)[副次評価項目]Stage II~IIIAのPD-L1(TC)≥1%のDFS、Stage II~IIIA全患者の DFS、ITT集団(Stage IB-IIIA)のDFS、ITT集団のOS(階層的に検証)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年1月21日)の追跡調査中央値は32.2ヵ月であった。・Stage II~IIIA PD-L1(TC)≧1%のDFS中央値はAtezo群未達、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88、p=0.0039)。・Stage II~IIIA全集団のDFS中央値はAtezo群42.3ヵ月、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.96、p=0.0205)。・IITT集団のDFS中央値は、Atezo群未達、BSC群37.2ヵ月であった(HR:0.88、95%CI:0.67~0.99、p=0.0395)。・全Gradeの有害事象(AE)は、Atezo群92.7%、BSC群70.7%で発現した。Grade3/4はそれぞれ21.8%と11.5%であった。投与中止につながるAtezo群のAEは18.2%で発現、Grade5の治療関連AEはAtezo群の0.8%で発現した。

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ペムブロリズマブの腎細胞がん術後アジュバントが予後を改善(KEYNOTE-564)/ASCO2021

 淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する腎摘除手術後の術後療法としてのペムブロリズマブの単剤治療が、生存の延長に寄与するという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏より発表された。 本試験(KEYNOTE-564)は、国際共同の無作為化二重盲検比較の第III相試験であり、今回が初めての中間解析結果報告である。・対象:腎摘除術を12週間以内に受け、再発リスク分類で中程度以上と判定された淡明細胞型RCC・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週間ごと最長1年間投与(Pembro群)・対照群:プラセボ 3週間ごと最長1年間投与(Pla群)・評価項目:[主要評価項目]主治医判定による無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2019年9月に、994例(Pembro群:496例/Pla群:498例)が登録された。・リスクカテゴリー中等度~高度の症例(N0/M0/核異形度4のpT2またはpT3)が、約86%を占め、PD-L1発現は、CPSスコア1以上が74%~77%、1未満が23~25%であった。・観察期間中央値が24.1ヵ月時点(データカットオフ2020年12月)でのDFS中央値は両群ともに未到達で、Pembro群のPla群に対するハザード比(HR)は0.68、95%信頼区間(CI)は0.53~0.87、p=0.0010と有意にPembro群で良好であった。・1年DFS率は、Pembro群85.7%、Pla群76.2%、2年DFS率は、Pembro群77.3%、Pla群68.1%で、両群のカプランマイヤー曲線は早期から離れる傾向を示していた。各サブグループでのDFS解析では、全体と齟齬のある因子は無かった。・OS中央値も両群未到達で、HRは0.54(95%CI:0.30~0.96)、p=0.0164であったが事前設定のp値の有意水準は超えていなかった。1年OS率は、Pembro群98.6%、Pla群98.0%、2年OS率はおのおの96.6%と93.5%であり、今後の追跡が期待される結果であった。・安全性については既報と同様、全身倦怠感、甲状腺機能異常、皮膚障害などがPembro群で多く報告された。治療関連有害事象による投薬中止はPembro群で17.6%(中止中央値7サイクル)であったが、両群とも治療関連死はなかった。免疫関連有害事象でステロイド剤の投薬が必要となったのはPembro群で7.4%であった。 発表者は、「KEYNOTE-564は、RCCの術後療法として、臨床的に意味のあるDFSの延長を示した初めての試験であり、今後の新しい標準療法としての可能性を示した」と結んだ。

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食道がんのニボルマブ術後補助療法、追加解析の成績(CheckMate 577)/ASCO2021

 CheckMate577試験は、食道がん/食道胃接合部がんに対する術後補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬を評価した世界初の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、ニボルマブはプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を統計学的に有意に延長することが報告されている(N Engl J Med. 2021; 384: 1191-1203.)。米国・ベイラー医科大学医療センターのRonan Joseph Kelly氏は、既報の結果も含め有効性、安全性およびQOLに関する追加解析の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表。ニボルマブ群で無遠隔転移生存期間(DMFS)、無増悪生存期間2(PFS2;無作為化から2次治療の増悪、3次治療の開始または死亡までの期間)を延長したことを報告した。・対象:術前補助化学放射線療法および完全切除後に病理学的残存病変を認めたStageII~III食道/食道胃接合部がん患者、PS 0~1、794例・試験群:ニボルマブ240mgを2週間ごと16週間、その後480mgを4週間ごと投与(ニボルマブ群、532例)・対照群:プラセボ(プラセボ群、262例)・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、1年OS率、2年OS率、3年OS率[探索的評価項目]安全性、DMFS、PFS2、QOL 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値24.4ヵ月であった。・DMFS中央値は、ニボルマブ群28.3ヵ月、プラセボ群17.6ヵ月であった(HR:0.74、95%CI:0.60~0.92)。・遠隔再発はニボルマブ群29% vs.プラセボ群39%、局所再発は12% vs.17%で、いずれもニボルマブ群で低頻度であった。・PFS2中央値は、ニボルマブ群未到達(95%CI:34.0~NE)、プラセボ群32.1ヵ月(95%CI:24.2~NE)であった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.99)。・ニボルマブの忍容性は良好で、ほとんどの治療関連有害事象(TRAE)はGrade1/2であった。重篤なTRAEの発現率は、全Gradeでニボルマブ群8%、プラセボ群3%、TRAEによる治療中止は同様に全Gradeでそれぞれ9%、3%であった。・ニボルマブ群における主な免疫関連TRAEは、ほとんどがGrade1/2でありGrade3/4は1%以下で、Grade5はなかった。免疫関連TRAEは早期に発現し(発現までの期間中央値6〜13週)、ほとんどの患者は確立された管理アルゴリズムにより回復した(回復までの期間中央値3~21週間)。 Kelly氏は、「術前補助化学放射線療法と完全切除を受けても病理学的完全奏効が得られなかった食道/食道胃接合部がん患者に対し、ニボルマブによる術後補助療法は新たな標準治療となり得る」とまとめた。

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新型コロナ変異株、デルタ株の増加傾向顕著

 厚生労働省は6月16日、都道府県別の懸念される変異株(VOCs:Variant of Concern)について、最新の事例数を公表した(6月14日までにHER-SYSで把握した国内事例の累計)。このうち、インドで最初に報告されたB.1.617系統の変異株(デルタ株等1))への感染は新たに30例が確認され、累計は11都府県で117例となった。いわゆる南アフリカ型のベータ株やブラジル型のガンマ株がいずれも1例程度の増減だったのに比べ、デルタ株の新規感染例が大幅に増加しており、拡大が懸念される。1)デルタ株のほか、B.1.617.3系統およびB.1.617.1系統の変異株(カッパ株)が含まれている。 国内の新型コロナウイルス感染は、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株 [英国型])にほぼ置き換わったと見られ、現在はB.1.351系統の変異株(ベータ株)、P.1系統の変異株(ガンマ株)、そしてB.1.617系統の変異株(デルタ株等)が懸念される変異株としてモニタリング対象となっている。 このうち、ベータ株は前週から新たに1例増加して累計24例となり、ガンマ株は1例の減少(公表後にHER-SYS上で事例削除・変更等の事例あり)だった。一方、デルタ株は1週間で新たに30例の増加となり、前週が34例増だったのに引き続き、増加傾向が顕著だ。 新規感染例が報告された都道府県別の内訳は、神奈川9例、東京7例、千葉・埼玉・静岡各4例、群馬2例。

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AZ製ワクチン接種後のVITT、免疫グロブリン療法による治療転帰/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンの、まれな副作用であるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)の治療として、高用量免疫グロブリン静注(IVIG)療法と抗凝固薬の併用療法が推奨されている。カナダ・マックマスター大学のAlex Bourguignon氏らは、ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の接種後にカナダで確認されたVITTの、最初の3例におけるIVIG療法について報告した。NEJM誌オンライン版2021年6月9日号掲載の報告。3例とも動脈血栓症を発症 3例はいずれもインド血清研究所で製造されたワクチンを接種していた。また、63~72歳と高齢であるが、カナダでは、VITTは若年者に多いという欧州の報告に基づき、ChAdOx1 nCoV-19の使用を55歳以上に限定していたことが背景としてある。3例のうち1例は女性であった。 2例が四肢動脈血栓症、3例が脳静脈および脳動脈血栓症を発症した。注目すべきは、3例全例が1つ以上の動脈血栓症を発症したことで、高齢のVITT患者は動脈血栓症を呈しやすい可能性が推察された。 また、ヘパリンおよび血小板第4因子(PF4)に対する血小板活性化のパターンはさまざまであり、血清におけるVITTの兆候は不均一であることが示唆された。3例ともIVIG療法により抗体誘発性の血小板活性化が低下した。VITTを発症した3例の臨床経過【症例1】 72歳女性。特記すべき既往歴なし。接種7日後に左下肢痛と跛行を発症し、発症8日後に入院。画像診断にて、左浅大腿動脈と深部大腿動脈の閉塞、腹腔動脈と右腓骨動脈の部分的血栓を伴う副腎血栓を認めた。ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は疑われなかったことから未分画ヘパリンの投与を開始し、3日後に外科的塞栓摘出術を実施。その頃にはVITTが疑われ、アルガトロバン投与を開始するも、5日間で血小板数の改善を認めず、高用量IVIGを投与した。その後、血小板数は増加し、アピキサバン経口投与を行い、退院となった。【症例2】 63歳男性。心血管リスク因子および血栓症の既往歴なし。接種18日後に左下肢けいれんを認め、その4日後に急性呼吸困難を発症。接種24日後に救急外来受診、造影CTにて左下肢急性動脈血栓症と広範囲の肺塞栓症を認め、低分子ヘパリンのtinzaparinを投与し、外科的塞栓摘出術を施行。VITTが疑われたため、ヘパリンからフォンダパリヌクスへ変更するとともにIVIG投与。その後、新たな血栓症は発症しなかったが、下肢遠位部の血栓残存のため足尖部の虚血性壊死となり、本報告時点では切断術の待機中。【症例3】 69歳男性。2型糖尿病、高血圧症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、前立腺がん(最近診断されステージはまだ不明)の既往あり。血栓症の既往なし。9ヵ月前に経カテーテル大動脈弁置換術を受けた際にヘパリンが投与され、その後1日1回アスピリン(81mg)を服用中。 接種12日後に、頭痛と混乱状態、進行性の左半身脱力を主訴に入院。入院3日目に左半身脱力の増強、出血性変化を伴う右中大脳動脈梗塞が確認され、VITTと診断した。さらに、右内頸動脈、右大脳横静脈洞とS状静脈洞、右内頸静脈、肝静脈、下肢遠位部静脈に血栓を認め、肺塞栓症も発見された。フォンダパリヌクスとIVIGで治療し、片麻痺は持続したが新たな血栓症は認めなかった。その後、血小板減少症が再発しIVIGを追加投与。その後、接種後47~62日の期間に血漿交換療法を13回行い、徐々に血小板数は回復し正常化した。

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子供への新型コロナワクチン、学会が声明発表/日本小児科学会

 2021年6月16日、日本小児科学会は新型コロナワクチンの子供への接種について、学会としての見解を発表した。「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」と題したこの声明では、子供を感染から守るためには、周囲の成人が免疫を獲得することが重要とし、まずは成人の接種が優先されるべきで、とくに医療的ケア児等や重篤な基礎疾患のある子供に関わる業務従事者、そして健康な子供に関わる業務従事者は、職種・勤務形態を問わずワクチンを接種することが重要とした。 そのうえで子供自身への接種に関しては、以下のように提言している。健康な子供 12歳以上はワクチン接種に意義がある。小児でもまれにある重篤化や同居する高齢者への感染リスクを防止できる。接種前に本人と養育者への十分な説明が必要となり、できれば個別接種が望ましい。ワクチン接種を希望しない子供と養育者が特別扱いされない配慮が必要となる。重篤な基礎疾患がある子供 基礎疾患がある子供はCOVID-19感染時に重症化する可能性があり、接種対象年齢の子供はワクチン接種でそれを防ぐことが期待できる。ただし、子供は副反応の頻度が高いことが報告されており、主治医と養育者による体調管理と接種後の観察が重要となる。 学会は、引き続き情報収集を行い、内容は随時アップデートする可能性があるとしている。

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骨髄腫新薬、ダラツムマブ皮下注が患者負担を軽減/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは5月に多発性骨髄腫の治療薬としてヒト型抗CD38モノクローナル抗体「ダラツムマブ(以下、ダラツムマブ)」を配合した皮下投与製剤「ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)」を発売開始した。これに伴い6月3日にメディアセミナーを開催し、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏が、多発性骨髄腫の基礎知識と新薬が診療に与える影響について講演を行った。 多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄にある形式細胞ががん化する疾患。国内における新規罹患者数は7,000人/年程度で、人口10万人当たりでは5.4人となる。診断時の年齢中央値は66歳で罹患率・死亡率とも高齢になるほど増加する。 鈴木氏は「診療をはじめた40数年前、多発性骨髄腫は平均余命3年程度の厳しい疾患だった。それが画期的な新薬の登場で7年程度まで延びてきた」と紹介し、「高齢の患者さんが多く、薬剤は有効性だけでなくQOL維持も重要となる」とした。 ダラツムマブはCD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体で、CD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して抗腫瘍効果を示す。移植非適応患者の1次治療として、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾンの併用療法(DRd)等のレジメンが国内外で推奨治療とされている。 ただ、これまでの点滴薬のダラツムマブの場合、初回7時間、2回目以降4時間程度の投薬時間が必要で、診察等を含めると1日がかりとなり、治療開始時は週1回の投与が必要で患者と医療者の負担が大きかった。ダラキューロの場合、15mlを3~5分かけて皮下注することとなり、診察を含めても半日かからない程度まで短縮できるという。 ダラキューロのダラツブマブに対する非劣性はCOLUMBA試験※により示され、年齢や体重によっても有効性に差は生じず、新規の有害事象も認められなかった。補液量で懸念があった心機能低下患者やフレイルな患者にも投与の可能性が広がる。ただし、副作用が発現するまでの時間はダラキューロのほうが時間がかかる(1.5時間vs.3.6時間)ため、鈴木氏は「初回は入院治療が必要になるだろう」とした。 また、COLUMBA試験参加施設の医療従事者を対象とした追加調査では、点滴から皮下注となったことで医療従事者の関与時間も大幅に減ったとの結果も出ており、鈴木氏は「皮下注への切り替えは患者負担を減らすだけでなく、外来化学療法室の回転を上げ、医療スタッフ業務の効率化につながる可能性も高い」とした。

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統合失調症の認知機能とキノリン酸との関連

 トリプトファンとその代謝産物(TRYCATs)は、統合失調症やうつ病の病態生理に影響する末梢免疫系の活性化や中枢神経伝達物質の異常と関連することが示唆されている。しかし、これらの疾患におけるさまざまな精神病理的な関連は、まだ解明されていない。スイス・チューリヒ大学のFlurin Cathomas氏らは、統合失調症およびうつ病患者におけるTRYCATsの潜在的な違いを調査し、認知機能への影響について検討を行った。Scientific Reports誌2021年5月11日号の報告。 統合失調症患者45例、うつ病患者43例、健康対照者19例を対象に、血漿中のトリプトファン、キヌレニン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸の違い、血漿タンパク質と認知機能との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、BMI、喫煙、投薬の共変量で調整した後、うつ病患者は、健康対照者と比較し、キヌレニンと3-ヒドロキシキヌレニンのレベルが低かった。・統合失調症患者では、キノリン酸と複合的な認知機能スコアとの負の相関が認められ。より重篤な認知機能障害は、キノリン酸の血漿レベルの上昇との関連が認められた。この関連は、うつ病患者では認められなかった。 著者らは「統合失調症やうつ病では、キヌレニン経路の調節不全が関連していると考えられる。キノリン酸は、統合失調症患者の認知機能の病態生理ととくに関連している可能性が示唆された。これら神経精神疾患の病因とTRYCATsとの因果関係を判断するためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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