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「ジェイゾロフト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第62回

第62回 「ジェイゾロフト」の名称の由来は?販売名ジェイゾロフト錠25mgジェイゾロフト錠50mgジェイゾロフト錠100mgジェイゾロフトOD錠25mgジェイゾロフトOD錠OD錠50mgジェイゾロフトOD錠OD錠100mg一般名(和名[命名法])セルトラリン塩酸塩(JAN)効能又は効果○うつ病・うつ状態○パニック障害○外傷後ストレス障害用法及び用量通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後14日間以内の患者3.ピモジドを投与中の患者※本内容は2021年7月28日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年6月改訂(第18版)医薬品インタビューフォーム「ジェイゾロフト®錠25mg/錠50mg/錠100mg、ジェイゾロフト®OD錠25mg/OD錠50mg/OD錠100mg」2)Pfizer PROFESSIONALS:製品情報

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日本のウイルス肝炎診療に残された課題~今、全ての臨床医に求められること~

COVID-19の話題で持ち切りの昨今だが、その裏で静かに流行し続けている感染症がある。ウイルス肝炎だ。特に問題になるのは慢性化しやすいB型およびC型肝炎で、世界では3億人以上がB型、C型肝炎ウイルスに感染し、年間約140万人が死亡している。世界保健機関(WHO)は7月28日を「世界肝炎デー」と定め、ウイルス肝炎の撲滅を目的とした啓発活動を実施している。検査方法や治療薬が確立する中、ウイルス肝炎診療に残された課題は何か?今、臨床医に求められることは何か?日本肝臓学会理事長の竹原徹郎氏に聞いた。自覚症状に乏しく、潜在患者が多数―日本の肝がんおよびウイルス肝炎の発生状況を教えてください。日本では、年間約26,000人程度が肝がんで死亡しているという統計があります。その大半はウイルス肝炎によるもので、B型肝炎は約15%、C型肝炎は約50%を占めています。B型およびC型肝炎ウイルスに感染して慢性肝炎を発症しても、自覚症状はほとんど現れません。気付かぬうちに病状が進行し、肝がん発症に至るわけです。日本においてB型、C型肝炎ウイルスの感染に気付かずに生活している患者さんは数十万人程度存在すると考えられています。こうした患者さんを検査で拾い上げ、適切な医療に結び付けることが、肝がんから患者さんを救うことにつながります。検査後の受診・受療のステップに課題―臨床では、どのような場面で肝炎ウイルス検査が実施されるのでしょうか。臨床で肝炎ウイルス検査が実施される場面は様々ですが、(1)肝障害の原因を特定するために行う検査、(2)健康診断で行う検査、(3)手術時の感染予防のために行う術前検査などが挙げられます。(1)はそもそも肝障害の原因を特定するために行われているので問題ないのですが、(2)では、検査で異常が指摘されても放置される場合がありますし、(3)では、陽性が判明してもその後の医療に適切に活用されないことがあり、課題となっています。その要因は様々ですが、例えば他疾患の治療が優先され、検査結果が陽性であることが二の次になるケースや、長く診療している患者さんでは、変にその結果を伝えて不安にさせなくても良いのではないか、とされるケースもあるでしょう。また患者さんの中には、検査結果を見ない、結果が陽性であっても気にしない、陽性であることが気になっていても精密検査の受診を躊躇する、といった方も多いです。そのため医療者側にどのような事情があっても、陽性が判明した場合はその結果を患者さんに伝え、精密検査の受診を促すことが大事です。非専門の先生で、ご自身では精密検査の実施が難しいと思われる場合は、ぜひ近隣の肝臓専門医に紹介してください。そのうえで、最終的に治療が必要かどうかまで結論付け、治療が必要な場合には専門医のもとでの受療を促すことが重要です。目覚ましい進歩を遂げる抗ウイルス治療―ウイルス肝炎の治療はどのように変化していますか。近年、ウイルス肝炎の治療は劇的に変化しています。特にC型肝炎治療の進歩は目覚ましいものがあります。従来のC型肝炎治療はインターフェロン注射によるものが中心で、インターフェロン・リバビリン併用でウイルスを排除できる患者さんの割合は50%程度でした1)。また、インフルエンザ様症状やその他の副作用が多くの患者さんで出現し、治療対象の患者さんも限られていました1),2)。しかしここ数年、経口薬である直接作用型抗ウイルス剤(DAA)が複数登場し、その様相は変化しています。まず治療奏効率は格段に向上し、ほとんどの患者さんでウイルスが排除できるようになりました。そして従来ほど副作用が問題にならなくなり3)、患者さんにとって治療がしやすい環境になっています。治療対象が高齢の患者さんや肝疾患が進行した患者さんに広がったことも、大きな変化です。B型肝炎治療では、まだウイルスを完全に排除することはできないものの、抗ウイルス治療によってウイルスの増殖を抑え、肝疾患の進行のリスクを下げることができます。このように、現在は治療に進んだ後のステップにおける課題はクリアされてきています。そのため、日本のウイルス肝炎診療の課題は、やはり検査で陽性の患者さんを受診・受療に結び付けるまでのステップにあるといえるでしょう。術前検査などで陽性が判明した患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ検査結果を患者さんに適切に伝え、受診・受療を促すと共に、近隣の肝臓専門医に紹介していただきたいと思います。日本肝臓学会のウイルス肝炎撲滅に向けた取り組み―日本肝臓学会では、ウイルス肝炎撲滅に向けてどのような取り組みを実施されていますか。日本肝臓学会では「肝がん撲滅運動」という活動を20年以上にわたって行ってきています。具体的には、肝炎や肝がん診療の最新情報を患者さんや一般市民の皆さまに知っていただくための公開講座を、毎年全国各地で開催しています。3年ほど前からは、肝炎医療コーディネーターを育成するための研修会も設けています。肝炎医療コーディネーターとは、看護師、保健師、行政職員など多くの職種で構成され、肝炎の理解浸透や受診・受療促進などの支援を担う人材です。また最近では、製薬企業のアッヴィ合同会社と共同で、「AbbVie Elimination Award」を設立しました。肝臓領域の臨床研究において優れた成果を上げた研究者を表彰する、研究助成事業です。「Elimination」は「排除」という意味で、一人でも多くの患者さんから肝炎ウイルスを排除したい、という意図が込められています。このように、日本肝臓学会ではウイルス肝炎撲滅に向けて、啓発活動や研究助成事業など、様々な活動に取り組んでいます。世界の先陣を切ってWHOが掲げる目標の達成を目指す―ウイルス肝炎の治療にあたる肝臓専門医の先生方に向けて、メッセージをお願いします。WHOはウイルス肝炎の撲滅に向けて「2030年までにウイルス肝炎の新規患者を90%減らし、ウイルス肝炎による死亡者を65%減らすこと」を目標に掲げています。COVID-19の流行によって、受診控えや入院の先送りなどの問題が発生し、この目標への到達は困難に感じられることもあるかもしれません。しかし、日本のウイルス肝炎診療には、国民の衛生観念がしっかりしている、肝臓専門医の数が潤沢である、行政的な施策が整備されている、など様々なアドバンテージがあります。世界の先陣を切ってWHOが掲げる目標を達成できるよう、今後も取り組んでいきましょう。肝炎ウイルス検査で陽性の患者さんは、肝臓専門医に紹介を―最後に、非専門の先生方に向けてメッセージをお願いします。従来のウイルス肝炎の治療は、副作用が問題になる、高齢の患者さんでは治療が難しい、といったイメージがあり、現在もそのように思われている先生がいらっしゃるかもしれません。患者さんも誤解している可能性があります。しかし、ウイルス肝炎の治療はここ数年で劇的に変化しています。肝炎ウイルス検査を実施して陽性が判明した場合は、患者さんにとって良い治療法があるかもしれない、と思っていただいて、ぜひ近隣の肝臓専門医に紹介してください。日本肝臓学会のHPに、肝臓専門医とその所属施設の一覧を都道府県別に掲載していますので、紹介先に迷われた際は、参考にしていただければと思います。1)竹原徹郎. 日本内科学会雑誌. 2017;106:1954-1960.2)日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編「 C型肝炎治療ガイドライン(第8版)」 2020年7月, P16.3)日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編「 C型肝炎治療ガイドライン(第8版)」 2020年7月, P57,63.

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第68回 「骨太」で気になった2つのこと(前編) かかりつけ医制度化拒む日医は開業医の質に自信がない?

「骨太の方針」は国や財務省が考える医療リストラ策こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、ぼんやりとオリンピックの開会式を観ていたのですが、最終聖火ランナーの中に、何度か取材したことのある、多摩ファミリークリニック院長の大橋 博樹氏が「クルーズ船で対応にあたった」という紹介とともに突然登場したのには驚きました。それも、長嶋 茂雄氏、王 貞治氏、松井 秀喜氏から聖火を引き継ぐ形で。一緒に聖火をつないだのは、大規模クラスターが発生し、現場対応で大変な苦労をされた永寿総合病院の看護師の方とみられます。いわゆる“コロナ医療枠”というわけですが、どういう経緯でコロナに関わる数多くの医師の中から大橋氏(日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長でもあります)が選ばれたのか、今度取材する機会があったらうかがってみたいと思います。さて、今回は約1ヵ月前の6月18日に、政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(「骨太の方針2021」)について、気になったことを書きたいと思います。「骨太の方針」とは、政府としての経済・財政運営の基本的な方針や重要政策をまとめたものです。内閣府の重要政策に関する会議の一つである経済財政諮問会議(議長は首相、経済財政担当相、財務相、民間議員らで構成)において、通常年明けから主要テーマを決めて検討します。最終的に、例年6月に経済財政諮問会議で決定された後、政府の正式な決定として閣議決定されます。「骨太」と言われる所以は、2001年1月、省庁再編により内閣府に設置された経済財政諮問会議が開催され、当時の宮沢 喜一財務相が「骨太」と命名したため、と言われています。基本策、つまり「骨や軸」を諮問会議で決めた後、中身の具体策を財務省などで決めていく流れです。宮沢財務相は、「太くてしっかりした骨組み」という意味合いを込めて「骨太」と表現したようです。ではなぜ、毎年「骨太の方針」の内容が医療関係者を悩ませるのか。それは、国の予算の4割近くを社会保障費が占めているからです(2021年度予算案の国の一般会計歳出106.6兆円のうち社会保障費は35.8兆円[33.6% ])。社会保険料等も含めた社会保障給付費全体は2020年度で126.8兆円、うち医療費は40.6兆円で32%を占めています。つまり、医療関係者から見る「骨太の方針」とは、国や財務省が考える、医療リストラ策の方針そのものなのです。「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」をフィーチャー「骨太の方針2021」では、感染症拡大の緊急時の対応を、より強力な体制と司令塔の下で推進する考えが示されました。中でも医療提供体制については、感染症に対応するため、医療定休体制の「平時」と「緊急時」の体制を迅速・柔軟に行うべきとしています。注目されるのは、上記の具体的方策として「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」がフィーチャーされた点です。かかりつけ医については、「第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革」の章で、「かかりつけ医機能の強化・普及等による医療機関の機能分化・連携の推進」と明記されました。これは、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会が今年4月、医療や介護、年金など社会保障制度の改革についての考え方を示した中で提言した、「かかりつけ医機能」の制度化を、やや表現をマイルドにしてもってきたものと言えます。この提言については以前の本連載でも紹介しました(第59回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる? “家庭医構想”というパンドラの匣)。4月の時点で財務省は、「かかりつけ医機能」の制度化について、紹介状なしで大病院外来を受診した患者から定額負担を徴収する仕組みと共に推進し、外来医療の機能分化と連携につなげることを求めていました。日医はかかりつけ医制度化に「反対」を再度表明「骨太」では「制度化」という言葉は使わず、「かかりつけ医機能の強化・普及等」になっています。とはいえ閣議決定された文書に明記されたのだから何らかのアクションあるはず、と思いますですが、なかなかそうは問屋が卸さないようです。日本医師会の中川 俊男会長は6月23日の定例記者会見で、「骨太の方針2021」に対する日医の見解を説明しています。その中で、「かかりつけ医機能の強化・普及」について、「かかりつけ医は患者が選ぶものであり、その際には、国民皆保険の柱であるフリーアクセスを担保する必要がある」と、定番の「フリーアクセス」を持ち出して制度化反対を表明しました。さらに、日医がこれまで「かかりつけ医機能研修制度」を創設し、地域住民から信頼される「かかりつけ医」の養成・普及に努めてきたことを説明し、その上で「今後は、医療費抑制のためにフリーアクセスを制限するような仕組みを制度化するのではなく、『骨太の方針』にも記載されているとおり、上手な医療のかかり方を啓発し、かかりつけ医を普及していくことが重要である」と話したとのことです。以前の回でも書いたように、相変わらずののらりくらり振りです。中川会長は、「俺たち医師側はちゃんとしている。患者側に上手な医療のかかり方を啓発しろ」と言っているわけですが、これでは議論放棄です。コロナワクチン接種を巡っては、「通ったことがある」とかかりつけ医の個別接種を希望した人が、受診回数や頻度が少ないので「あなたは、うちのかかりつけではない」と断られるケースが各地で頻発しました。これも「かかりつけ医」の定義が曖昧であることから起こっているのですが、そうした現場での混乱について中川氏は特段コメントしていません。中医協でも本格議論始まる「骨太の方針2021」を受ける形で、7月に入り中央社会保険医療協議会(中医協)でも、かかりつけ医の評価を2022年の診療報酬改定にどう反映させるかについての議論が始まっています。7月7日に開かれた総会では、診療・支払各側の委員が共にかかりつけ医推進の重要性を言及しています。もっとも、支払側の委員が「いわゆるゲートキーパー的な機能を患者は求めている。特定の領域に偏らず、幅広い疾患をまずは診療できるという医師と患者が1対1の関係でしっかりした関係を構築し、安心、安全で質の高い医療を提供できる場合に評価するような医療費の配分を次期改定でぜひ行っていくべき」と患者視点のかかりつけ医の必要性を述べたのに対し、診療側(日医常任理事)はかかりつけ医の制度化について「フリーアクセスということは担保されるべき。日本医師会としては明確に反対させていただく」と述べたとのことです。何度聞いても日医の言う「フリーアクセス」とは、患者のためのものではなく、質が悪い医師のところにも一定の患者が来るようにしておくための仕組みとしか思えないのですが、どうでしょう。なお、この場で支払側委員は「次期診療報酬改定において、かかりつけ医機能を評価する診療報酬項目の要件をゼロベースで見直し、再構築すべき」とも提案しています。医療の質を、会員全体で担保できないからでは?日医側の、かかりつけ医関係の診療報酬は上げて欲しいが、その診療報酬を得るための「かかりつけ医の制度化」は嫌だ…、というのは本当に虫のいい話です。なぜ、日医は制度化を嫌がるのでしょうか。それは、かかりつけ医(言い換えれば総合診療のプロ)としての医療の質を、会員全体で担保することができないからではないでしょうか。普通に考えれば、日医が自慢げに話す「かかりつけ医機能研修制度」を今回の制度化のベースにもってくればいい気がします。ただ、研修内容の中身や応用研修受講者延べ3万9,073名、修了者数6,009名(2020年3月現在)という規模では、報酬の恩恵を多くの会員が受けられず、診療報酬算定の要件として提案できそうにありません。「かかりつけ医の制度化で、医療の質の面には踏み込んで欲しくない。だって実力も自信もないから。でも報酬は上げてくれ」というのが彼らの本心なのかもしれません。ちなみに、冒頭で触れた大橋先生が所属する日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医の認定制度のカリキュラム内容は、当然ながら日医の研修制度よりも充実しています。患者の立場にたてば、かかりつけ医、家庭医を自称し報酬増も望むからには、これくらいの質の担保は欲しいところです。財務省は現時点ではやる気まんまんかかりつけ医については、医療法等改正で新たに始まる外来機能報告制度の中身を議論する「外来機能報告等に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織)でも議論される予定です。7月20日付のメディファクスには、医療・介護の予算を担当する財務省主計局の一松 旬主計官(厚生労働係第1担当)のインタビューの概要が掲載されています。同記事によれば、一松主計官は、2022年度診療報酬改定に向けて 「医療提供体制の改革なくして改定なし」の姿勢で臨む考えを示すとともに、かかりつけ医を普及・定着させるには、 要件を定めて認定することや、 患者による登録促進といった「制度化は必ず必要」と述べたとのことです。さらに、かかりつけ医の診療報酬上の評価は「包括払いがなじむ」とも語ったとのことです。患者が登録して包括払いとなると、財務省は以前の回でも紹介した英国のNHS(National Hearth Service)の家庭医制度に近い仕組みをイメージしているのかもしれません。仮にそうならば、日医の反対運動は相当なものになるでしょう。今秋から冬にかけ、かかりつけ医の制度化に向けての動きから、目が離せません。次回は、「骨太」の中でもう一つ気になった「地域医療連携推進法人」について考えてみたいと思います(この項続く)

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抗精神病薬LAIの悪性症候群リスク

 精神疾患に対する抗精神病薬の長時間作用型(LAI)使用は、いくつかの良いアウトカムをもたらすが、重篤な副作用の1つである悪性症候群が発生した場合、LAIの使用がデメリットとなるかはわかっていない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者における悪性症候群の発生率とアウトカムの予測因子について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年5月20日号の報告。 フィンランドのヘルスケアエンカウンタの代表的なデータベースを用いて、1972~2017年に統合失調症および/または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、悪性症候群の発生率およびアウトカムの予測因子を調査した。抗精神病薬の剤型(LAIと経口)およびクラス(第1世代[FGA]と第2世代[SGA])による違いを調査するため、ネステッドケースコントロールデザインを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、悪性症候群が認められた患者172例および性別、年齢、診断が一致した対照群1,441例(年齢:58.8±13.1歳、男性の割合:59.9%)。・悪性症候群の発生率は、1.99/1万人年(1.98~2.00)であった。・悪性症候群の発生率は、抗精神病薬の剤型およびクラスで違いが認められなかった。 ●LAI対経口の調整オッズ比[aOR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.59~1.33 ●FGA経口対SGA経口のaOR:1.08、95%CI:0.66~1.76 ●FGA経口対FGA-LAIのaOR:0.89、95%CI:0.52~1.53 ●FGA経口対SGA-LAIのaOR:1.35、95%CI:0.58~3.12・悪性症候群のリスク因子は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬数の増加(オッズ比[OR]:5.00、95%CI:2.56~9.73) ●抗精神病薬数の減少、切り替え(OR:2.43、95%CI:1.19~4.96) ●抗精神病薬の用量の多さ(規定された1日投与量の2倍超のOR:3.15、95%CI:1.61~6.18) ●抗コリン薬の併用(OR:2.26、95%CI:1.57~3.24) ●リチウムの併用(OR:2.16、95%CI:1.30~3.58) ●ベンゾジアゼピンの併用(OR:2.02、95%CI:1.44~3.58) ●心血管疾患の合併(OR:1.73、95%CI:1.22~2.45)・悪性症候群が認められた患者の4.7%は、30日以内に死亡しており、抗精神病薬の剤型間による違いは認められなかった。また、1年以内では15.1%であった。・悪性症候群後に抗精神病薬を再投与した患者119例のうち、5例(4.2%)で再発が認められた。抗精神病薬再投与後の再発までの期間中央値は、795日(範囲:77~839日)であった。 著者らは「悪性症候群は、生命に影響を及ぼす可能性のあるリスクとなりうる。今回の結果は、死亡率を含む悪性症候群の発症またはアウトカムに関連するLAIの安全性に対する懸念を和らげるうえで役立つであろう」としている。

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妊婦への新型コロナワクチン、有効性と安全性/JAMA

 妊婦において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ワクチン非接種と比較してSARS-CoV-2感染リスクを有意に低下させることが確認された。イスラエル・テルアビブ大学のInbal Goldshtein氏らが、妊婦を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊婦におけるBNT162b2ワクチンの有効性と安全性については、第III相試験において妊婦が除外されたためデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2021年7月12日号掲載の報告。ワクチン接種妊婦vs.非接種妊婦、各7,530例でSARS-CoV-2感染を比較 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesのデータベースを用い、2020年12月19日~2021年2月28日に、妊娠中に1回目のBNT162b2 mRNAワクチン接種を受けた妊婦を特定し、2021年4月11日まで追跡した。また、ワクチン接種妊婦と年齢、妊娠週数、居住地域、民族、経産歴、インフルエンザ予防接種状況などについて1対1の割合でマッチングさせたワクチン非接種妊婦を対照群とした。 主要評価項目は、初回ワクチン接種後28日以降におけるPCR検査で確定したSARS-CoV-2感染であった。 解析対象はワクチン接種群7,530例、対照群7,530例で、妊娠第2期が46%、妊娠第3期が33%、年齢中央値は31.1歳(SD 4.9)であった。初回ワクチン接種後28日以降のSARS-CoV-2感染が約80%低下 主要評価項目の追跡期間中央値は37日(四分位範囲:21~54、範囲:0~70)であった。ワクチン接種群で追跡期間が21日以上の妊婦は、ほとんどが追跡期間終了までに2回目の接種を受けていた。 追跡期間終了時までのSARS-CoV-2感染者は、合計でワクチン接種群118例、対照群202例であった。感染者で症状を有していたのは、ワクチン接種群で105例中88例(83.8%)、対照群で179例中149例(83.2%)であった(p≧0.99)。 初回ワクチン接種後28~70日にSARS-CoV-2感染が確認されたのは、ワクチン接種群10例、対照群46例であった。感染のハザードはそれぞれ0.33%および1.64%、絶対群間差は1.31%(95%信頼区間[CI]:0.89~1.74)であり、ワクチン接種群は対照群と比較して統計学的に有意にハザード比が低下した(補正後ハザード比:0.22、95%CI:0.11~0.43)。 ワクチン接種群におけるワクチン関連有害事象は68例報告され、重篤な副反応はなかった。68例中3例は、ワクチン接種の直近にSARS-CoV-2に感染しており、症状はワクチンではなく感染に起因する可能性が示唆された。主な症状は、頭痛(10例、0.1%)、全身の脱力感(8例、0.1%)、非特異的な疼痛(6例、<0.1%)、胃痛(5例、<0.1%)であった。

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アベマシクリブ関連ILD、実臨床での発症率と好発時期は?/日本乳学会

 日本人転移・再発乳がん患者におけるアベマシクリブ関連薬剤性肺障害(ILD)の実臨床での発症率と好発時期について、国内77施設での調査結果が報告された。日本人におけるアベマシクリブ関連ILDの発症率やリスク因子、臨床病理学的特徴を明らかにする目的で進行中のネステッドケースコントロール研究(NOSIDE)の中間報告結果を、昭和大学乳腺外科・先端がん治療研究所の吉沢 あゆは氏が第29回日本乳学会学術総会で発表した。研究概要 2018年11月~2019年12月にアベマシクリブによる治療が実施された転移・再発乳がん患者を対象に、年齢・性別、アベマシクリブ開始日・終了日、ILD発症(疑いを含む)の有無と発症日等についてアンケート調査を実施(1次調査)。 7名の中央評価委員による中央評価委員会を7回開催し、アベマシクリブ投与の関連を認めるILD症例を確定した。現在進行中の2次調査ではネステッドケースコントロール研究のデザインを用いてILD症例と、3倍の非ILD症例を抽出し、患者基本情報、既往歴・合併症、乳がん治療歴、アベマシクリブ投与開始前および投与中の身体所見・検査所見、ILD発症後の身体所見、検査所見、治療内容、転帰について詳細な調査を実施。リスク因子の評価などが行われる計画となっている。・評価項目:[主要評価項目]ILDの発症率(1次調査)およびリスク因子(2次調査)[副次評価項目]ILDの好発時期およびILDの重症度、臨床病型、臨床経過(1次調査)  今回発表された主な結果は以下のとおり。・国内77施設から1,189例が1次調査に登録された。女性が1,184例(99.6%)、年齢中央値は61(52~70)歳であった。・各施設から「ILD発症有(疑いも含む)」と報告されたのは76例。そのうち、中央評価委員会によりアベマシクリブ関連ILDと判定されたのは59例(5.0%)であった。・アベマシクリブ関連ILD発症59例の年齢中央値は66.0(55.0~73.0)歳、内服開始から発症までの期間は91~120日が最も多く、中央値は133.0(86.5~224.0)日であった。・ILDの臨床病型はOP39例(66.2%)、AIP/DAD23例(22.0%)、NSIP3例(5.1%)、HP3例(5.1%)、その他(肺水腫様)1例(1.7%)であった。・アベマシクリブ療法の治療ラインについては、1~2ライン目での使用が最も多く半数以上を占めたが、6ライン目での使用も多くみられた。・CTCAEのGradeは、Grade1が15例(25.4%)、Grade2が29例(49.2%)、Grade3が7例(11.9%)、Grade5が8例(13.6%)であった。・「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」に基づく重症度は、軽症(PaO2≧80torr)28例(47.5%)、中等症(60torr≦PaO2<80torr)7例(11.9%)、重症(PaO2>60torr[PaO2/ FiO2<300])14例(23.7%)、判定不能10例(16.9%)であった。・転帰(発症後のCT所見および主治医判断の転帰を参考に、中央評価委員会が総合的に判断)については、治癒8例(13.6%)、軽快29例(49.2%)、悪化1例(1.7%)、死亡8例(13.6%)、不変1例(1.7%)、判定不能1例(1.7%)、未確認11例(18.6%)であった。 これらの結果を受け演者の吉沢氏は、5.0%というILD発症率は市販後半年の調査結果と比較して3倍程度高いが、MONARCH-2・3試験の日本人集団におけるILD発症率(4.0%)と近い結果であり、本研究結果がより正確なILD発症率に近いと考察した。また、アベマシクリブ内服中はILD発症の可能性を念頭におき、問診、定期的な聴診、胸部X線撮像のほか、KL6やSP-Dのチェックが必要と考察している。発症時期は内服開始後3~4ヵ月に多いが、1年後以降の発症例が認められた点も指摘している。CTCAE Grade3以上を15例(25.5%)に認めており、MONARCH 2・3試験より重症例が多い結果であるが、これらの要因等の評価は現在施行中の2次調査で評価予定である。 なお2次調査は、2021年10月までの全例データ固定を予定している。

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コロナワクチンで注目される解熱鎮痛薬への2つの懸念【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第72回

新型コロナウイルスワクチンの接種が若年層へ拡大する中、副反応に対する不安をよく耳にします。接種後に発熱や痛みが生じやすいというのはよく報告されていますが、それ以外にも根拠が不明な眉唾物の副反応情報が拡散していて、接種を躊躇する方もいらっしゃいます。逆に、接種後の発熱や痛みが少なかった高齢者の方が、「私には効いているのか?」と不安になって薬局に尋ねてくることもあったと聞きます。回答に困る質問は多々あると思いますが、厚生労働省が3月末に開設した「新型コロナワクチンQ&A特設サイト」では随時新たな情報が更新されているため、そのような際に参考になります。このサイトのQ&Aでは、ワクチン接種後の発熱や接種部位の痛みは高齢者では少し発症頻度が低いものの、しっかりと有効性が確認できている旨が掲載されています。先述の高齢者の方にはこの回答をお伝えしたいですね。また、副反応への対処法の1つとして、「市販の解熱鎮痛薬で対応することも考えられる」とし、「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただける」といったように、成分名も記載した回答を掲載しています。さて、このワクチン接種後の発熱や痛みの対応について、2つの懸念が生じています。1つ目は、このような情報を見て、「ワクチン接種には解熱鎮痛薬の準備が必要!」と解釈された可能性があることです。薬局では一時的にOTC薬の解熱鎮痛薬が品薄になり、解熱鎮痛薬を配布した接種会場もあったと聞きます。OTC薬を1箱購入して家族で使いまわすこともあると思いますが、アレルギー歴のある方や病気治療中の方の服用に薬剤師は関わることができているでしょうか。そして、緊急時といえども、医薬品の販売および譲渡のルールに変更はありませんので、医薬品の販売に当たっては医薬品販売業の許可が必要で、原則として無償での譲渡はできません。患者さんのことを思ってのことでしょうが、医薬品の提供については通常時と変わらないことに注意が必要です。2つ目としては、副反応の症状が出る前に解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服している人がいることです。これについては現在のところ推奨されていません。予防的な服用を希望する患者さんには、解熱鎮痛薬の副作用の説明をするとともに、Q&Aを参考に「副反応の大部分は接種後数日以内に回復することがわかっている」と過度に心配する必要はないことを説明して安心してもらいましょう。このサイトを見ると、その回答自体はやわらかい言葉で書いてあるのですが、その根拠としてワクチンの審査報告書が閲覧できたり、CDC(米国疾病予防管理センター)の論文へのリンクが貼り付けてあったりと、一般の方向けとしてはかなり専門的な内容だなぁと思います。ぜひ一度ざっと見て、一般の方がどのような疑問を持つ可能性があるのか予習してみてはいかがでしょうか。

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そして父になる(その1)【もしも自分の子じゃなかったら!?(親子観)】Part 1

今回のキーワード親子の絆(親子観)新生児取り違え血のつながり(血縁の心理)情(子育ての心理)愛着の心理アイデンティティ現在、精子提供、卵子提供などによる生殖医療、子連れ再婚、そして赤ちゃん縁組(特別養子縁組)など、必ずしも血のつながらない親子が増えています。また、従来の里親制度、LGBTのカップルや選択的シングルマザーによる子育てなど、家族の形、親子の形が多様化しています。そんな中、皆さんは、親子の絆は何だと思いますか? やはり血のつながりでしょうか? それとも情でしょうか? さらに視点を変えて、子どもにとっての親子の絆とは何でしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「そして父になる」を取り上げます。この映画を通して、親子の絆を精神医学的に解き明かしてみましょう。親子の絆とは?―親子観主人公は、野々宮良多。大企業のエリートサラリーマン。専業主婦のみどりと6歳の一人息子の慶多と一緒に都心の高級マンションに住んでいます。慶多がお受験で有名私立小学校に合格し、良多にとって人生のすべてが思い通りに進む中、慶多が生まれた里帰りの前橋の病院から1本の電話がかかります。子どもの取り違え(新生児取り違え)が発覚したのでした。そこから、野々宮家の夫婦と取り違え先の斎木家の夫婦は、親子の絆への葛藤が始まります。まず、彼らの親子の絆、つまり親子観を2つに分けてみましょう。(1)血のつながり-血縁の心理病院の事務部長から「とにかくこういうケースは、最終的には、100%ご両親が交換という選択肢を選びます。お子さんの将来を考えたら、ご決断は早いほうが良いと思います。できれば、小学校に上がる前に」と結論ありきで迫られます。その後、良多は、自分の父親から「(生みの子は)似てたか、お前に。似てたんだろう。そういうもんだよ、親子なんて。離れて暮らしたって、似てくるもんさ」「いいか、血だ。人も(競馬の)馬と同じで、血が大事なんだ。これから、どんどんその子はお前に似てくるぞ。慶多は逆にどんどん相手の親に似ていくんだ」と説かれます。そして、良多はその言葉をなぞって、慶多の生みの母親である斎木ゆかりに「これから、どんどん慶多は斎木さんの家族に似てきます。逆に、琉晴(良多の実の子)はどんどん僕らに似てきます。それでも、血がつながっていない子を今まで通り愛せますか?」と迫ります。親子観として1つ目は、血のつながりです。これは、血がつながって似ていてこそ親子は通じ合えると思う血縁の心理が根っこにあります。このプラス面は、似ていることで、親密さを感じて絆が深まることです。一方のマイナス面は、その裏返しで、見た目だけでなく、能力や性格も似てほしいと思うようになることです。これは、自分が子どもとつながっている感覚が強いため、子どもを自分の分身のようにとらえ、子どもが自分の思い通りになると思うことでもあります。これは、いわゆる「毒親」の心理です。逆に言えば、似ていなくて、思い通りにならなければ、不安が高まります。実際に、良多は、DNA検査で取り違えが確定した時、「やっぱりそういうことか」とつぶやきます。後にみどりは「あなたは、慶多があなたほど優秀じゃないのが最初から信じられなかったんでしょ」と見透かして指摘します。つまり、血のつながりにこだわることは、競走馬と同じように、親に似て優秀でなければならない、美しくなければならないという期待が強くなり、子どもをありのままに受け入れにくくなる危うさがあると言えます。なお、「毒親」の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)情-子育ての心理良多は、小学生の時、実は両親が離婚していました。そして、父親に引き取られ、大学に入学するまで新しい母親と暮らしていた過去がありました。良多が久々にその継母に会った時、彼女は、「血なんてつながらなくたって、一緒に暮らしてたら、情は沸くし、似てくるし。夫婦ってそういうところあるじゃない。親子もそうなんじゃないかしらね。私はね、そういうつもりであなたたちを育てたんだけどなあ」と言います。また、ゆかりは、「このままってわけには行かないですかね? 全部なかったことにして」と言い出します。そして、先ほどの良多の「血がつながっていない子を今まで通り愛せますか?」という質問に対して、「愛せますよ、もちろん。似てるとか似てないとか、そんなことにこだわるのは、子どもとつながっている実感のない男だけよ」と言い返します。親子観として2つ目は、情です。これは、血がつながっていなくても一緒にいれば親子は通じ合えると思う子育ての心理が根っこにあります。このプラス面は、一緒にいることで、親密さを感じて絆が深まることです。一方のマイナス面は、生みの親が現れた場合、親子関係が複雑になります。また、親子関係がうまく行かなかった場合、虐待のリスクが高まります。実際に、生みの子(実子)に比べて育ての子(継子)が虐待死に至るリスクは、数倍から数十倍に跳ね上がることが分かっています。法律的にも、親子関係を解消できてしまう不安定さがあります(ただし特別養子縁組を除きます)。なお、虐待の心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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そして父になる(その1)【もしも自分の子じゃなかったら!?(親子観)】Part 2

子どもにとっての親子の絆とは?親子の絆とは、血のつながり(血縁の心理)と情(子育ての心理)があることが分かりました。しかし、実は、これは親にとっての親子観です。それでは、子どもにとっての親子の絆とは何でしょうか?慶多と琉晴は、事情を知らされず、言われるままに、休日に野々宮家と斎木家を交換して外泊が始まります。そして、やがて交換したままになるのです。ここから、彼らの親子観を同じく2つに分けて考えてみましょう。(1)情-愛着の心理野々宮家でずっと暮らすことになった琉晴は、良多がつくった野々宮家のルールのリストを読まされます。そして、納得が行かず、「なんで?」と良多に繰り返し聞き続けるのです。そして結局、家出をして、斎木家に帰ってしまいます。一方、斎木家で暮らしている慶多は、琉晴ほどはっきり抵抗しませんが、元気がなくなっていきます。子どもにとっての親子観として、1つ目は、情です。これは、血がつながっていてもいなくても、特別な誰かと一緒にいたいと思う愛着の心理です。この愛着は、生後半年から2歳までの間(臨界期)に形成されます。この時期に一番長く一緒にいた人が親(愛着対象)として刷り込まれます(親プリンティング)。そして、その親から離れることは、アルコール依存性や薬物依存症と同じように、「禁断症状」を引き起こします。つまり、愛着とは、依存行動(嗜癖)とも言えます。逆に言えば、いくら血がつながっていても、その大切な時期(臨界期)に一緒にいなければ、その親は「依存対象」(愛着対象)になりようがないので、その親から離れても「禁断症状」は出ません。実際に、琉晴がせっかく外泊に来ているのに、良多は仕事を優先してあまり構っていませんでした。慶多の生みの父親である雄大は、そんな良多を見かねて、「もっと一緒にいる時間をつくったほうがいいよ、子どもと」「俺、この半年で、良多さんが一緒にいた時間よりも、長く慶多といるよ」とたしなめています。つまり、臨床的に考えれば、新生児取り違えのあとに交換で問題が起きないのは、親プリンティングが始まる前の半年までです。半年から2歳までがグレーゾーン、2歳以降は愛着の問題のリスクが高まるでしょう。この愛着の心理から、琉晴が良多やみどりに懐くことは簡単ではないことがよく分かります。取り違えは、子どもから見れば、「親の取り違え」です。親以上に、実は子どもにとって危機的状況なのです。なお、愛着の心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。(2)血のつながり-アイデンティティ琉晴は、良多から「おじさんが本当のパパなんだ」と告げられます。しかし、無反応です。慶多は、良多から「(慶多が成長するための)ミッション」と遠回しに伝えられただけでしたが、はっきり告げられたとしてもリアクションはおそらく同じでしょう。6歳の子どもにとって、血がつながっているかどうかは、ぴんと来ないのです。つまり、子ども心に選ぶ親は「生みの親より育ての親」であるということです。ただし、彼らが思春期になっても、彼らの親子観はそのままでしょうか?子どもにとっての親子観として、2つ目は、思春期になればやはり血のつながりです。思春期になると、より抽象的な思考ができるようになります。そして、自分のルーツや自分らしさなど、自分探しをするようになります。アイデンティティの確立です。この時に、育ての親しか知らない場合、生みの親を知りたくなるのです。これは、養子や生殖医療で生まれた子の心理でもあります。そして、これは、子どもの人権(出自を知る権利)として、すでにいくつかの先進国では制度化されており、日本でも制度化しようとする動きがあります。つまり、アイデンティティの確立とは、血がつながっていることにこだわるスイッチが入ることとも言い換えられます。なお、この真実告知のタイミングについては、愛着形成期である幼児期よりも後で、反抗期になる思春期よりも前、つまり小学校低学年の学童期が望ましいでしょう。<< 前のページへ■関連記事八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】Mother(続編)【虐待】Mother(中編)【母性と愛着】

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第70回 Pfizerワクチン2回目接種後に自然免疫が大幅増強

インドで見つかって世界で広まるデルタ変異株にもPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2が有効なことが先週21日にNEJM誌に掲載された英国Public Health Englandの試験で示されました1)。その効果を得るには決まりの2回接種が必要であり、デルタ変異株感染の発症の予防効果はBNT162b2接種1回では僅か36%ほどでした。2回接種の予防効果は大幅に上昇して88%となりました。一方、イスラエル保健省の先週木曜日の発表によると、デルタ変異株が広まる同国でのBNT162b2のここ最近1ヵ月程のCOVID-19発症予防効果は心配なことに約41%(40.5%)に低下しています2)。ただし、被験者数が少なくて対象期間も短いためかなり不確実な推定であり、今後更なる慎重な解析が必要です3)。仮に感染予防効果が落ちているとしても重症化は防げており、COVID-19入院の88%と重度COVID-19の91%を予防しました。BNT162b2はデルタ変異株感染による重症化を予防する効果も恐らく高く、先月発表された英国Public Health Englandの報告によるとデルタ変異株COVID-19入院の96%を防いでいます4)。BNT162b2は中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株を起源とするにも関わらず少なくとも変異株感染重症化を確かに防ぎ、2回接種すると効果が跳ね上がるのはなぜなのか? 抗体やT細胞などの標的特異的な免疫反応のみならず感染源に素早く手当たり次第より広く攻撃を仕掛ける自然免疫を引き出す力がその鍵を握るのかもしれません。SARS-CoV-2への免疫の研究やニュースといえば主に抗体で、T細胞がたまに扱われるぐらいです。スタンフォード大学の免疫学者Bali Pulendran氏のチームはそういう免疫のパーツではなくそれらを含む免疫系全体に目を向け、BNT162b2が接種された56人の血液検体を調べてみました。その結果、抗体やT細胞の反応が他の研究と同様に認められたことに加え、強力な抗ウイルス防御を担うにもかかわらずワクチン開発で見過ごされがちな効果・自然免疫の増強が判明しました5)。自然免疫の大幅な増強は2回目の接種後のことであり、インターフェロン応答遺伝子(ISG)を発現する単球様の骨髄細胞の一群・C8細胞が1回目接種1日後には血液細胞の僅か0.01%ほどだったのが2回目接種1日後には100倍多い1%ほどに増えていました。2回目接種1日後の血中インターフェロンγ(IFN-γ)濃度は高く、C8細胞の出現と関連しており、C8細胞の誘導にはIFN-γが主たる役割を担っているようです。SARS-CoV-2のみならず他のウイルスの防御にも働きうるC8細胞は新型コロナウイルス感染自体ではどうやら生じないようです5,6)。C8細胞を引き出すためにも1回のBNT162b2接種で十分とは思わず、他の多くの試験でも支持されている通り2回目も接種すべきでしょう7)。ModernaのワクチンもBNT162b2と同様にmRNAを中身とします。Modernaのワクチンも恐らくはBNT162b2と同様の反応を引き出すと想定されますが定かではありません。実際のところどうかを調べるべくPulendran氏はそれらワクチン2つの比較研究を始めています7)。参考1)Lopez Bernal J,et al.N Engl J Med. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print] 2)Concentrated data on individuals who have been vaccinated with two vaccine (HE) doses before 31.1.2021 and follow up until 10.7.2021 / gov.il 3)Israeli Data Suggests Possible Waning in Effectiveness of Pfizer Vaccine / New York Times4)Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant / PHE5)Arunachalam PS, et al.. Nature . 2021 Jul 12. [Epub ahead of print]6)Study shows why second dose of COVID-19 vaccine shouldn't be skipped / Eurekalert.7)How the Second mRNA Vaccine Bolsters Immunity / TheScientist

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クラスター発生の飲食店と発生していない飲食店、違いはどこに?/厚労省アドバイザリーボード

 7月14日開催の第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、飲食店における国推奨の感染対策チェックリストの遵守状況とクラスター発生との関連についての調査結果が公表された。感染対策の遵守率はクラスター発生店で低く、個別の感染対策としては、アクリル板の設置や他グループと1m以上の距離をとること、トイレ等への消毒設備の設置のほか、就業時の検温などスタッフ側の対応もクラスター発生防止との関連性が高いと考えられた。[調査概要] 2020年10月~2021年5月に国内でクラスター(※1)の発生した12施設(和歌山県8施設、岐阜県2施設、沖縄県[宮古島]2施設)および対照群(※2)19施設(すべて宮古島)に対し、有症者・接触・飛沫・エアロゾル感染対策を中心として、計18問(※3)の質問アンケート調査を実施。※1:クラスターは、上記期間中に8人以上の感染者が生じた施設とする。※2:対照群は、同期間中に感染者数2人以下の施設で、クラスターの発生した施設と規模や業務形態が同程度の施設を抽出した。※3:有症者対策3項目、接触感染対策6項目、飛沫感染対策5項目、エアロゾル感染対策4項目の計18項目[クラスターの有無における感染対策の遵守率]・18項目のうち、対策を行っていると答えた割合(感染対策遵守率)は、クラスター発生群44.4%に対し、対照群では85%であった(p<0.001)。[18項目のうちクラスターとの関連性が考えられた感染対策]・トイレなど公共の場に消毒設備を設置:クラスター発生群(該当対策を行っていた施設の割合)50% vs. 対照群100%(p<0.001)・他のグループとの距離を1メートル以上とっている:18.2% vs.94.7%(p<0.001)・他のグループとの間にアクリル板が設置されている:9.1% vs.89.5%(p<0.001)・スタッフは就業時に体温測定と体調確認をしている:54.5% vs.100%(p=0.001)・飲食時以外はマスクを着用するよう客に促している:33.3% vs.89.5%(p=0.001)・客が入れ替わるタイミングでテーブル等を消毒している:60% vs.100%(p=0.003)・スタッフは客が触れた物を扱ったあと手指衛生を行っている:60% vs.100%(p=0.003)・スタッフは常にマスクを着用して接客している:50% vs.94.7%(p=0.004)・カラオケを提供していない:16.7% vs.68.4%(p=0.005)・窓やドアを開けて定期的に換気している:60% vs.94.7%(p=0.019)・スタッフに症状を認めるときは検査を受けさせている/保健所の指示に従っている/休ませている:40% vs.90.9%(p=0.040)・トイレにペーパータオルを設置している:80% vs.100%(p=0.043)

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非浸潤性乳がんの局所再発におけるTILの影響~メタ解析

 非浸潤性乳がんのバイオマーカーとしての腫瘍浸潤リンパ球(TIL:Tumor Infiltrating Lymphocyte)の役割を検討するため、ベルギー・Universite Libre de BruxellesのRafael Caparica氏らは、非浸潤性乳がん患者の予後へのTILレベルの影響についてメタ解析で評価した。その結果、高TILの患者は、局所再発(浸潤性または非浸潤性)が起こりやすいが、非浸潤性乳がんでは浸潤性局所再発の可能性は低いことが示された。Breast誌オンライン版2021年7月9日号に掲載。 著者らは、系統的文献検索により、非浸潤性乳がん患者のTILレベル(高vs.低)による局所再発を評価している研究を特定し、局所再発(浸潤性および非浸潤性)ごとのサブグループ解析を実施した。副次評価項目は、TILレベルと非浸潤性乳がんのサブタイプ、年齢、グレード、壊死との関連だった。各研究からオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を抜き出し、ランダム効果モデルを用いてプール解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・7つの研究(3,437例)でメタ解析を実施した。・高TILの場合、局所再発の可能性が高いが(浸潤性または非浸潤性、2,941例、OR:2.05、95%CI:1.03~4.08、p=0.042)、浸潤性局所再発の可能性は低かった(1,722例、OR:0.69、95%CI:0.49~0.99、p=0.042)。・高TILは、トリプルネガティブ乳がん(OR:3.84、95%CI:2.23~6.61、p<0.001)、HER2陽性乳がん(OR:6.27、95%CI:4.93~7.97、p<0.001)、高グレード(OR:5.15、95%CI:3.69~7.19、p<0.001)、壊死(OR:3.09、95%CI:2.33~4.10、p<0.001)と関連していた。

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ビタミンBと認知症リスクに関する性差~日本のメモリークリニック外来患者での調査

 認知症や認知機能障害は、重大な社会的および医学的な問題の1つである。ビタミンBと認知機能低下には明確な関係が認められるが、男女間の差に関しては、十分な評価が行われていない。昭和大学の三木 綾子氏らは、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年4月9日号の報告。 2016年3月~2019年3月に昭和大学病院のメモリークリニック外来を受診した188例を対象に、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)日本語版、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)を用いた。ビタミンレベルを測定するため、血液検査を実施した。ロジスティック回帰分析を用いて、認知症のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。ビタミンレベルに応じて3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンレベルが高い女性と比較し、ビタミンレベルが低い女性では、認知症(MMSEスコア23以下)のORの有意な増加が確認された。 【ビタミンB1】OR:3.73、95%CI:1.52~9.16 【ビタミンB12】OR:2.97、95%CI:1.22~7.28・対照的に、男性ではビタミンレベルと認知症との有意な関連は認められなかった。・認知症の定義に、HDS-R(スコア20以下)を用いた場合でも、同様であった。 著者らは「認知症発症を予防するうえで、女性ではビタミンB1摂取が有効である可能性が示唆された。ビタミンレベルの低下が認知障害の前後いずれで起こるのか、高ビタミンレベルを維持すれば認知機能の悪化や認知症発症を予防できるかを明らかにするためには、今後の縦断的研究が必要とされる」としている。

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超加工食品の高摂取で炎症性腸疾患のリスク大/BMJ

 超加工食品の摂取量増加は、炎症性腸疾患(IBD)のリスク増加と関連していることが、前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)」で明らかとなった。カナダ・マックマスター大学のNeeraj Narula氏らが報告した。IBDは先進国で多くみられ、食事などの環境因子が影響していると考えられている。しかし、添加物や保存料を含む超加工食品の摂取とIBDとの関連性についてのデータは限られていた。著者は、「今後はさらに、超加工食品中の寄与因子を特定するための研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2021年7月14日号掲載の報告。35歳以上の約11万6千例で超加工食品摂取とIBD発症の関連を評価 研究グループは、PURE研究のうち欧州・北米、南米、アフリカ、中東、東アジア、東南アジアおよび中国の7地域における、低・中・高所得国を含む21ヵ国のデータを用いて評価した。 解析対象は、2003年1日1日~2016年12月31日に登録され、ベースラインの食物摂取量調査(各国で検証済みの食物摂取頻度調査票を使用)ならびに、3年ごとの前向き追跡調査を少なくとも1サイクル完遂している、35~70歳の成人11万6,087例である。 主要評価項目は、クローン病や潰瘍性大腸炎を含むIBDの発症とした。Cox比例ハザードモデルを用い、超加工食品とIBDリスクとの関連についてハザード比(HR)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。超加工食品の摂取量増加で、IBDリスクが約1.7~1.8倍に上昇 追跡期間中央値9.7年(四分位範囲:8.9~11.2)において、解析対象11万6,087例中467例がIBDを発症した(クローン病90例、潰瘍性大腸炎377例)。潜在的な交絡因子で補正後、超加工食品の摂取量が多いほどIBDの発症リスクが高いことが認められた(1日1サービング未満と比較した1日5サービング以上のHR:1.82[95%CI:1.22~2.72]、同1日1~4サービングのHR:1.67[95%CI:1.18~2.37]、傾向のp=0.006)。 清涼飲料水、精製甘味料入り食品、塩分の多いスナック菓子、加工肉などの超加工食品のさまざまなサブグループで、IBDのリスク上昇との関連が認められた。結果はクローン病と潰瘍性大腸炎で一貫しており、異質性は低かった。 一方、白身肉、赤身肉、乳製品、でんぷん、果物、野菜、豆類の摂取量は、IBD発症と関連していなかった。 なお、著者は、参加者の年齢が35~70歳であったためクローン病の発症例が少数であったこと、小児や若年成人でIBDを発症した患者に一般化できるかは不明であること、経時的な食事の変化は考慮されていないこと、観察研究の特性上バイアスが残存している可能性があること、などを研究の限界として挙げている。

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第64回 米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC

<先週の動き>1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC米国疾病予防管理センター(CDC)は、2020年のアメリカ人の平均寿命が77.3歳と、2019年から2020年にかけて1.5歳短くなったことを公表した。最大の要因は、新型コロナウイルスによる死者数の増加である。平均寿命が短縮したのは、第二次世界大戦中の1943年(2.9歳短縮)以来のこと。これまで延長していた平均寿命は、20年近くも後退した。また、今回の平均寿命短縮を人種別で見ると、ヒスパニック系は81.8歳から78.8歳と-3.0歳、黒人は74.7歳から71.8歳と-2.9歳でそれぞれ短くなった一方、白人は78.8歳から77.6歳と1.2歳の短縮に留まり、人種差が再び広がる傾向が見られた。(参考)新型コロナの影響で米国の平均寿命が1.5歳短く 第2次大戦以来の落ち込み(東京新聞)米CDC “平均寿命1歳半短く 新型コロナによる死者増が主要因”(NHK)Provisional Life Expectancy Estimates for 2020(CDC)2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続政府は、7月末までに新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、これまで診療所に支援してきた特例加算を継続することとした。8月以降も、週100回以上の接種を4週間以上行う診療所には1回につき2,000円、週150回以上の場合は3,000円を上乗せして補助する。11月までに、希望者全員にワクチン接種の完了を目指す。(参考)ワクチン接種 診療所への費用上乗せ支援策 来月以降も継続へ(NHK)3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み政府は、7月19日時点で、国内の新型コロナウイルスワクチンの総接種回数が7,000万回を超えたと公表した。1回の接種を受けた人の割合は総人口の33.5%となり、65歳以上の高齢者では81.7%、2回目まで完了した高齢者は57.9%となった。なお、7月23日時点で、2回目の接種率は総人口の19.6%であり、欧米と比べた遅れがまだ挽回できていない。また、都道府県別の接種率を見ると、上位は25%を超える中、下位には千葉県17.4%、埼玉県16.7%、東京都16.6%、栃木県16.4%、沖縄県14.5%など、感染拡大が続いている大都市圏が並び、さらなる接種の推進が求められる。(参考)新型コロナワクチンについて(内閣府)ワクチン接種1回目終了 高齢者全体の8割超(NHK)国内ワクチン接種、7000万回超す 7月19日公表分までで(日経新聞)4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ厚労省は20日、新型コロナウイルスワクチンについて、2022年の初頭から5,000万回分の追加供給を受けることをモデルナと正式契約したことを明らかにした。また、菅 義偉首相は23日に、来日しているファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と会談し、10月以降に予定していたワクチン供給の前倒しを要請した。さらに、米・ノババックスとも、来年前半から1億5,000万回分のワクチン供給について協議を進めている。政府は、ワクチン供給不足による接種計画の遅れに対する国民の声に対して、早期のワクチン接種完了を急ぐ。(参考)米モデルナとワクチンの追加契約 22年以降の5000万回分(毎日新聞)ワクチン供給、前倒し要請 首相、ファイザーCEOと会談(日経新聞)5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始政府は、海外へ渡航する人が新型コロナウイルスワクチンの接種済みを証明する「ワクチンパスポート(予防接種証明書)」の申請受け付けを、26日から各市町村で開始することを明らかにした。イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5ヵ国に入国する際に利用可能となる。なお、発行に当たっては、海外渡航にワクチンパスポートが必要な場合に限って申請が認められ、国内での使用は想定していない。(参考)ワクチン接種証明書 発行手続 第1回自治体向け説明会(内閣官房副長官補室)同 第2回自治体向け説明会(同)「ワクチンパスポート」26日から受け付け開始 「経済活動再開の第一歩」「差別につながる」と賛否渦巻く(J-CAST)「ワクチンパスポート」発行テスト 26日から申請受け付け(NHK)6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省厚労省は、後発医薬品の出荷調整や回収による欠品発生を防止する目的で、薬価収載日から5年経過していない後発品で供給不足を起こした企業が新たな薬価基準収載希望書を提出する際には、「安定供給義務が守れない品目があった場合には以後2回分の収載を見送る」との念書を提出するよう求めた。今回の通知は8月16日までに製造販売承認を受け、20日までに薬価収載希望書の受け付けが済んだ医薬品が対象となる。今年12月収載予定からの運用となる見込み。これにより、医療機関や調剤薬局が直面している欠品による調達困難の改善や後発品への不安を取り除くのが狙い。(参考)欠品で1年間の収載見送り~後発品に対する規制強化【厚生労働省】(薬読)

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第26回 アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーか否かを迅速に判断!2)アドレナリンの投与は適切に!アナフィラキシーに関しては以前(第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?)も取り上げましたが、大切なことですので、今一度整理しておきましょう。今回の症例は、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーとして報告された事例*からです。この経過をみて突っ込みどころ、ありますよね?!*第53回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会令和2年度第13回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会【症例】30歳女性。ワクチン接種後待機中、呼吸困難を自覚。咳嗽が徐々に増悪し、体中の掻痒感を自覚した。接種5分後、SpO2が85~88%まで低下。酸素負荷、その後ネオフィリン注125mg、リンデロン注2mg点滴を開始。接種後20分緊急入院。眼瞼浮腫、喘鳴、SpO2100%(酸素4L)、血圧収縮期150mmHg程度、脈拍70~80/分、体幹に丘疹。接種55分後、アドレナリン0.3mL皮下注。その後、喘鳴は徐々に改善。接種4時間後酸素負荷終了。翌日午前中に一般病棟に転出。午後になり呼吸困難を自覚、サルブタモール吸入も効果なし。喘鳴は徐々に増強。その後も、リンデロン1.0mg投与効果なし、SpO2は98~100%、心拍70~80/分であった。オキシマスク2L投与併用。意識障害はなかったが、発語は困難であった。数時間後にリンデロン3mgを投与したところ、徐々に呼吸状態は改善。その後会話が可能な程度にまで回復した。翌朝、意識清明、会話可能、喘鳴なし、SpO2低下なし、リンデロン投与を継続し、経過観察したところ再燃なし、数日後自宅退院とした。はじめにアナフィラキシーは、どんな薬剤でも起こりえるものであり、初期対応が不適切であると致死的となるため、早期に認識し、適切な介入を行うことが極めて大切です。救急外来で診療をしているとしばしば出会います。また、院内でも抗菌薬や造影剤投与後にアナフィラキシーは一定数発生するため、研修医含め誰もが初期対応を理解しておく必要があります。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種も全国で進んでおり、勤務先の病院やクリニック、大規模接種センターなどでアナフィラキシーに対して不安がある医療者の方も多いと思います。今回はアナフィラキシーの初期対応をシンプルにまとめましたので整理してみてください。アナフィラキシーを疑うサインとはアナフィラキシーか否かを判断できるでしょうか。そんなの簡単だろうと思われるかもしれませんが、意外と迷うことがあるのではないでしょうか。薬剤投与後に皮疹と喘鳴、血圧低下を認めれば誰もが気付くかもしれませんが、皮疹を認め喉の違和感や嘔気を認めるもののバイタルサインは安定している、皮疹は認めないが投与後に明らかにバイタルサインが変化しているなど、実際の現場では悩むのが現状であると思います。アナフィラキシーの診断基準は表の通りですが、抗菌薬や造影剤、さらにワクチン接種後の場合には、「アレルゲンと思われる物質に曝露後」に該当するため、皮膚や呼吸、循環、消化器症状のうち2つを認める場合にはアナフィラキシーとして動き出す必要があります。「血圧が保たれているからアドレナリンまでは…」「SpO2が保たれているからアドレナリンはやりすぎ…」ではないのです。皮膚症状もきちんと体幹部や四肢を直視しなければ見落とすこともあるため、薬剤使用後に呼吸・循環・消化器症状を認める場合、さらには頭痛や胸痛、痙攣などを認めた場合には必ず確認しましょう。表 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する(Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.より引用)ワクチン接種後のアナフィラキシーは、普段通りの全身症状で打つことに問題がない方が打っているわけですから、より判断がしやすいはずです。抗菌薬や造影剤の場合には、細菌感染や急性腹症など、全身状態が良好とはいえない状況で使用しますが、ワクチンは違いますよね。筋注後に何らかの症状を認めた場合にはアナフィラキシーを念頭にチェックすればいいわけですから、それほど判断は難しくありません。痛みや不安に伴う反射性失神によるもろもろの症状のこともありますが、皮疹や喘鳴は通常認めませんし、安静臥位の状態で様子をみれば時間経過とともによくなる点から大抵は判断が可能です。ここで重要な点は、「迷ったらアナフィラキシーとして対応する」ということです。アナフィラキシーは1分1秒を争い、対応の遅れが病状の悪化に直結します。アナフィラキシー? と思ったらアナフィラキシーと判断したらやるべきことはシンプルです。患者を臥位にしてバイタルサインの確認、そしてアドレナリンの投与です。アナフィラキシーと判断したらアドレナリンは必須なわけですが、投与量や投与方法を間違えてしまっては十分な効果が得られません。正確に覚えているでしょうか?アドレナリンは[1]大腿外側に、[2]0.3~0.5mg、[3]筋注です。肩ではありません、1mgではありません、そして皮下注ではありません。OKですね? アドレナリンの投与量に関しては、成人では0.5mgを推奨しているものもありますが、エピペンは0.3mgですから、その場にエピペンしかなければ0.3mgでOKです。何が言いたいか、「とにかく早期にアナフィラキシーを認識し、早期にアドレナリンを適切に投与する」、これが大事なのです。救急医学会が公開した、アナフィラキシー対応・簡易チャート(図)を見ながらアプローチをきっちり頭に入れておいて下さい。アナフィラキシー対応・簡易チャート画像を拡大する間違い探しさぁそれでは今回の症例をもう1度みてみましょう。この患者は基礎疾患に喘息などがあり、現場での対応が難しかったことが予想されますが、ちょっと突っ込みどころがあります。まず、ワクチン接種後、掻痒感に加え呼吸困難、SpO2も低下しています。この時点でアナフィラキシー症状の所見ですから、なる早でアドレナリンを投与する準備を進めなければなりません。よくアナフィラキシーに対して抗ヒスタミン薬やステロイドを投与しているのをみかけますが、これらの薬剤は使用を急ぐ必要は一切ありません。そして、アドレナリンは皮下注ではありません、筋注です! 重症喘息の際のアドレナリン投与は、なぜか皮下注も選択肢となっていますが筋注でよいでしょう。本症例では特にアナフィラキシーが考えられるため0.3~0.5mg筋注です。位置は大腿外側ですよ!さいごにアナフィラキシーはどこでも起こりえます。アナフィラキシーショックや死亡症例の多くは、アドレナリンの投与の遅れが大きく影響しています。迅速に判断し、適切なマネジメントができるように、今一度整理しておきましょう。1)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.2)救急医学会. ワクチン接種会場におけるアナフィラキシー対応簡易チャート

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経営資料は秘密!? それは「身体を見ずに診察して」と同じですよ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第22回

第22回 経営資料は秘密!? それは「身体を見ずに診察して」と同じですよ!漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継において、売り手側が準備しなければならない資料は多岐にわたります。これらを準備することに多大な労力がかかるためになかなか話を進められない、というお嘆きを聞くこともあります。ですが、こうした一次情報(資料)は、診察でいうところの身体計測や問診データです。こうした情報なしに医業承継の査定や判定ができないのは当然のことでしょう。医業承継で必要となる資料には、たとえば下記のようなものがあります。<医療法人の場合>医療法人の定款登記簿謄本社会保険医療機関指定通知書納税証明書金銭消費賃貸借契約書と借入状況一覧確定申告書の提出書類一式(3期分)テナント賃貸借契約書リース契約書  等<個人経営の場合>診療所開設時の提出書類一式社会保険医療機関指定通知書青色申告決算書一式(3期分)テナント賃貸借契約書リース契約書  等こうした資料を基に、仲介業者は下記のような点を見極めます。帳簿上以外での債務(主にリース残債)がどの程度ありそうか?3年推移でみた際に売り上げや利益が著しく下がっていないか?3年推移でみた際に不透明なお金の動きがないか?テナントの契約内容で、買い手側・売り手側にとって注意すべき点はないか?(第三者承継禁止などの文言がないか)売り手は退職金をどの程度もらうことができるか?売り値をいくらで設定できそうか?  等こうした資料を用意するのには労力を伴いますが、顧問税理士が保管する資料も多く、顧問税理士と医業承継の仲介会社が直接やりとりをすることで、あまり労なく共有することが可能になるケースもあります。ふだんから資料を整理し、周囲に共有しておくことが大切です。

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ASCO2021 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2021 ASCO Virtual Scientific ProgramCOVID-19の影響で昨年に引き続きバーチャル開催となったASCO2021。この1年でわれわれもバーチャル開催の学会に随分慣れてしまった感があります。将来、現地開催が復活した時にはどのように感じるのでしょうか。本年のPresidential Themeは“Equity: Every Patient. Every Day. Everywhere.”ということで、いまや全世界に蔓延しているCOVID-19を強烈に意識してのことでしょうか。何はともあれ急速に進歩していくがん治療をさらに推進することももちろん重要ですが、時には足下を見直して、がん患者のケア・治療・研究の偏在をなくし、世界中の人々に平等なアクセスを可能にする努力も忘れてはならないことだと思います。さて、Scientific Programの中から注目の演題をピックアップして紹介するこのレポート、前立腺がん領域では昨年に引き続きPSMA-PET関連の重要な報告が、尿路上皮がんと腎細胞がんでも引き続き免疫チェックポイント治療の話題が中心となっています。米国におけるアフリカ系米国人の若年男性におけるPSA検診の増加は前立腺がんの転帰を改善する(Abstract #5004)上記のPresidential Themeに合致するように、racial disparityをテーマとしたアブストラクトが取り上げられています。背景として、アフリカ系米国人の男性は、前立腺がんの罹患率・死亡率ともに多人種に比べて高いことが知られています。つまり、開始年齢や頻度などスクリーニングを強化すべき対象であると考えられます。実際に家族歴などの他のリスク因子も有する場合には、アフリカ系米国人のPSA検診開始推奨年齢は40歳とされています。にもかかわらず、PSA検診に関する研究への参加者におけるアフリカ系米国人の占める割合が低いことなどがしばしば指摘され、本集団に対する適切な受診勧奨の妨げになってきました。今回の研究では55歳未満のアフリカ系米国人男性におけるPSA検診の頻度と診断時の前立腺がんリスクおよび前立腺がん特異的死亡率(PCSM)との関連を調べるために、退役軍人保健局(Veterans Health Administration、退役軍人に対する健康保険プログラムがあるため医療受給に対するバリアが低いこと、病歴情報へのアクセスが可能なシステムが構築されていること、などから本研究のような解析に適している)が有する登録データを用いて、2004~17年に前立腺がんと診断された40〜55歳のアフリカ系米国人男性を特定しました。前立腺がん診断からさかのぼること最長5年間に受けたPSA検診の頻度を算出し、診断時の転移の有無と、PCSMについてその関連を解析しました。前立腺がんと診断されたアフリカ系米国人男性が4,654例特定され、その平均年齢は51.8歳、毎年のPSA検診受診率は平均で53.2%でした。平均値を境にPSA検診受診頻度の高かったグループと低かったグループとに分けて比較すると、低グループでは高グループよりも診断時に転移を有する患者の割合が高かったとのことです(3.7% vs.1.4%、p<0.01)。PSA検診率の増加は診断時の有転移率の低下(オッズ比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.47~0.81、p<0.01)およびPCSMのリスクの低下(サブ分布ハザード比:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.02)と有意に関連していました。若年アフリカ系米国人男性に対するPSA検診は早期前立腺がん検出を促し、その転帰を改善する可能性があるという仮説を支持しています。ただし、前向きコントロール研究ではないこと、過剰診断・過剰治療の問題など、まだ解決すべき課題は残されているといえるでしょう。mCRPCに対するルテチウム-177-PSMA-617の効果:VISION Trial(Late-breaking abstract #LBA4)PSMAを標的にβ線を発する177Luを腫瘍微小環境に送達する標的放射性リガンド療法のmCRPCに対する効果を検証した国際ランダム化非盲検第III層試験(VISION Trial, NCT03511664)の結果が公表されました。対象は少なくとも1剤の新規ARシグナル阻害薬と1剤のタキサン系抗がん剤に抵抗性となったmCRPC患者で、事前に68Ga-PSMA-11 PETでPSMA陽性が確認されました。参加者は標準治療に加えて1回7.4GBqの177Lu-PSMA-617を6週間ごとに6サイクル投与する治験薬群と標準治療のみの群(標準治療群)とに2:1の割合で無作為割り付けされました。主要評価項目は、PCWG3 criteriaに基づき、独立した中央レビューによる画像評価によって判定されたrPFSと、OSでした。計831例が治験薬群(551例)あるいは標準治療群(280例)に割り付けられ、観察期間の中央値は20.9ヵ月でした。治験薬群は、標準治療群と比較して有意に長いrPFSを示しました(rPFS中央値:8.7ヵ月vs.3.4ヵ月、HR:0.40、99.2%CI:0.29~0.57、p<0.001、片側)。OSも治験薬群では標準治療群と比較して有意に延長されました(OS中央値:15.3ヵ月vs.11.3ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.52~0.74、p<0.001、片側)。治験薬群ではGrade3以上の有害事象の発生率が標準治療群と比較して高くなりましたが(52.7% vs.38.0%)、治療の忍容性は良好でした。177Lu-PSMA-617治療は忍容性の高いレジメンであり、既存治療に対して抵抗性を獲得したPSMA陽性mCRPC患者において、標準治療単独と比較して、rPFSおよびOSの延長効果を示しました。わが国では、放射性医薬品規制の面で解決すべき課題があるものの、今後、本セッティングにおける標準治療として承認されることが期待されます。mCSPCに対する新規ARシグナル阻害薬治療時代の局所療法:PEACE-1 Trial (Abstract #5000)mCSPC患者に対する局所放射線照射は、低腫瘍量(low metastatic burden)の患者でOSベネフィットを示しており、NCCNガイドラインでも低腫瘍量患者において推奨されています。しかしこれらの根拠となった臨床試験(HORRADやSTAMPEDE)における全身治療はADTが標準でした。しかし現在、リスクにかかわらずmCSPC患者に対する全身治療はADTに新規ARシグナル阻害薬を上乗せすることが推奨されています。PEACE-1試験(NCT01957436, Abstract #5000)は、mCSPC患者に対するベースラインADT治療にアビラテロン(プレドニゾン併用)と局所放射線治療(EBRT)のいずれかあるいは両方を追加することがOSの延長につながるかどうかを、2×2の分割デザインで検証しようというものです。途中ドセタキセルの併用が許容されるなどのプロトコール変更があり、やや複雑となっていますが、基本的なデザインはmCSPC患者をADT治療のみあるいは、アビラテロンとEBRTのいずれかあるいは両方を追加する4群に無作為割り付けするというものです。主要評価項目はrPFSとOSで、今回はEBRTの有無にかかわらず、アビラテロンの有無がrPFSに与える影響を解析した結果が報告されました。アビラテロン(±EBRT)群はADT(±EBRT)群と比較してrPFSを有意に延長(HR:0.54[0.46~0.64]、p<0.0001、中央値2.2年vs.4.5年)し、その効果はドセタキセル併用群でも一貫していました(HR:0.38[0.31~0.47]、p<0.0001、中央値1.5年vs.3.2年)。今回の結果は既存のSTAMPEDE試験の結果などにそれほどの新規知見を加えるわけではありませんが、今後EBRTの有無によるrPFSあるいはOSの延長効果の解析結果が待たれるところです。腎細胞がん患者の術後補助療法としてのペムブロリズマブの効果:KEYNOTE-564 Trial(Late-breaking abstract #LBA5)淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)におけるペムブロリズマブの術後再発予防効果を検証した、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-564 Trial, NCT03142334)の結果が公表されました。これまでに、ccRCCにおいて術後補助療法として明確な再発予防効果やOS延長効果を示した薬剤は存在しませんでした。本試験は、組織学的に診断された術後再発リスクの高いccRCC患者を対象として実施されました。術後再発の高リスクは、(1)pT2N0M0でグレード4あるいは肉腫様コンポーネントを有する、(2)pT3-4N0M0(組織学的悪性度は問わない)、(3)pTanyN1M0(組織学的悪性度は問わない)、(4)M1 NED(腎摘除術後1年以内に再発巣あるいは軟部組織転移巣が完全切除され残存病変を認めない)と定義されました。3週ごとのペムブロリズマブあるいはプラセボ投与は術後1年間(計17回投与)続けられました。主要評価項目は無再発生存(DFS)で全生存(OS)は副次的評価項目とされました。計994例がペムブロリズマブ群(496例)あるいはプラセボ群(498例)に割り付けられ、観察期間の中央値(範囲)は24.1ヵ月(14.9~41.5ヵ月)でした。事前に計画されていた第1回目の中間分析で、主要評価項目であるDFSにおいてペムブロリズマブ群の優位性が示されました(両群とも中央値未到達、HR:0.68、95%CI:0.53~0.87、p=0.0010、片側)。24ヵ月での推定DFS率は、ペムブロリズマブ群で77.3%、プラセボ群で68.1%でした。全体として、ペムブロリズマブ群のDFSに対する効果はサブグループ間で一貫していました。OSイベントが観察されたのは51例(ペムブロリズマブ群で18例、プラセボ群で33例)とまだ少なく、両群間のOSに統計学的な有意差は認めませんでした(両群とも中央値未到達、HR:0.54、95%CI:0.30~0.96、p=0.0164、片側)。24ヵ月での推定OSは、ペムブロリズマブ群で96.6%、プラセボ群で93.5%でした。Grade3以上の有害事象の発生頻度はペムブロリズマブ群で32.4%、プラセボ群で17.7%でした。ペムブロリズマブ群における治療関連死亡は報告されませんでした。ペムブロリズマブは、術後再発リスクの高いccRCCの患者において、プラセボと比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるDFS延長効果を示しました。OSに関しては追加のフォローアップが計画されています。今回、KEYNOTE-564試験は、RCCの術後補助療法として免疫チェックポイント阻害薬を用いた第III相試験としては初めて主要エンドポイントを満たしました。今後、本セッティングにおける新たな標準治療として期待が持てる結果といえるでしょう。長期フォローアップでOSの延長効果も示すことができるかが重要なポイントであると考えます。また、長期フォローの結果、プラセボ群の無再発生存率がどれくらいでプラトーに達するのか(プラセボ群での無再発生存率が高いということは不必要なアジュバント治療を受ける患者が多いことを示しており、対象患者のさらなる最適化が望ましいということになります)という点にも注目したいと思います。このほか腎がん領域では、上記のほかにKEYNOTE-426試験(NCT02853331)の長期(42ヵ月)フォローアップデータ(Abstract #4500)が公表されました。筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)における選択的膀胱温存療法:3つのP II試験の結果(Abstracts #4503/#4504/#4505)MIBCの標準治療はネオアジュバント化学療法に続く根治的膀胱全摘ですが、以前から膀胱を温存しながら根治を目指す治療が一部患者で可能であることは知られています。しかし、膀胱温存可能な患者の治療前からの予測が難しいこと、臨床的CRの基準が曖昧であること、そして救済膀胱全摘の意義が不明であることなどから、適応の是非が未確定な状態が続いています。今回は3つの第II相試験の結果がOral sessionで報告されています。1つ目はHCRN GU 16-257試験(NCT03558087, Abstract #4503)で、本試験ではシスプラチン適格なcT2-T4aN0M0の膀胱尿路上皮がん患者をエントリーし、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)にニボルマブを上乗せしたレジメンを4コース施行後に画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、経尿道的生検/切除によって再評価を行っています。いずれの検査でもがんなしと判断された場合(Ta腫瘍の残存は許容)には、cCRと判断しニボルマブを2週間隔で8回投与した後に経過観察となります。主要評価項目はcCRの達成率に加え、cCRによる2年無転移性生存(MFS)の予測能となっています。また、副次的評価項目としてcCRによるMFS予測において初回TUR-BT組織を用いて解析した遺伝子変異プロファイル(TMB、ERCC2変異、FANCC変異、RB1変異、ATM変異)の有用性も評価されました。今回はcCR達成率と1年の中間解析の結果が報告されました。76例(男性79%、年齢の中央値69歳、cT2:56%、cT3:32%、cT4:12%)がエントリーされ、うち64例(84%)が4サイクルのGC+ニボルマブ治療後の再評価を受けました。64例中31例(48%、95%CI:36~61%)がcCRと判定されました。TMB≧10 mutations/Mb(p=0.02)、ERCC2変異(p=0.02)がCRと関連していました。今後より長期の観察に基づくアウトカムに期待を持たせる結果と考えられます。2つ目は放射線治療も組み合わせた、いわゆるTrimodality therapyの第II相試験(NCT02621151, Abstract #4504)で、これもcT2-T4aN0M0のMIBC患者が対象ですが、こちらは膀胱全摘拒否または不耐患者が対象となっています。シスプラチン適/不適は不問でeGFR>30mL/minが条件となっています。治療プロトコールは、ペムブロリズマブの初回投与の2~3週間後にTURによる可及的切除を行い、さらに膀胱に寡分割照射によるEBRT(52Gy/20回、IMRTを推奨)と同時に週2回(×4週間)のゲムシタビン(27mg/m2)と3週ごとのペムブロリズマブを3回投与するというものです。EBRTの12週後に画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、経尿道的生検/切除による効果判定を実施します。その後も画像検査(CT/MRI)、尿細胞診、膀胱鏡によるフォローアップを行いました。最初の6例が安全性評価の対象となり、さらに48例が治療効果評価の対象となりました。主要評価項目は2年の膀胱温存無病生存(BIDFS)でした。本研究でも腫瘍検体およびPBMCを用いた解析が行われています。予定されていた54例がエントリーされ、ステージの内訳はcT2が74%、cT3が22%、cT4が4%でした。安全性評価の対象となった最初の6例全例が治療プロトコールを完遂しました。治療効果評価の対象となった48例のうち1例(2%)がEBRTとゲムシタビンを、2例(4%)がゲムシタビンを、4例(8%)がペムロリズマブを主に副作用を理由に中断しました。48例の観察期間の中央値(範囲)は11.7ヵ月(0.6~32.2ヵ月)で、12例(25%)が何らかの様式で再発を来しました(NMIBC 6例、MIBC 0例、所属リンパ節2例、遠隔転移4例)。Grade3以上の有害事象は35%の症例で観察され、ペムブロリズマブに限るとGrade3以上の有害事象発生率は6%でした。ここまでのところ、有害事象は既報と同等で、2年フォローアップの最終解析と、バイオマーカー探索の結果が報告される予定になっています。3つ目はIMMUNOPRESERVE-SOGUG trial試験(NCT03702179, Abstract #4505)で、本試験でもcT2-T4aN0M0の膀胱尿路上皮がんを有し、膀胱全摘拒否または不耐患者が対象となっています。治療プロトコールは、まずTUR-BTを先行し、それに続くデュルバルマブ(1,500mg/body)+トレメリムマブ(75mg/body)を4週間ごとに3回投与しました。治療開始2週間後には、小骨盤に46Gy、膀胱に64~66Gyの線量で正常分割EBRTを開始しています。腫瘍残存あるいは再発例に対しては救済膀胱全摘を推奨しています。主要評価項目は経尿道的生検による筋層浸潤がんの消失によって定義されるCR達成率でした。最初の12例で6例以上がCRを達成した場合にさらに20例を追加する2段階デザインが採用されました。32例がエントリーされ、臨床病期の内訳はT2が28例(88%)、T3が3例(9%)、T4が1例(3%)でした。全例が少なくとも2コースのデュルバルマブ+トレメリムマブ治療を受け、膀胱への照射線量の中央値(範囲)は64Gy(60~65)でした。経尿道的生検によるCR達成率は81%でした。観察期間の中央値(範囲)は6.1ヵ月(2.5~20.1)で、BIDFS、DFS、OSはそれぞれ76%(95%CI:61~95%)、80%(95%CI:66~98%)、93%(95%CI:85~100%)でした。Grade3以上の有害事象は31%の症例で観察されています。前二者に比べてT2症例の割合が比較的高いものの、本レジメンも良好な成績を残しているといえるでしょう。今回の報告のほかにもさまざまなレジメンが膀胱温存療法として試されており、今後どのような治療レジメンが標準治療として残ってくるのか不透明な状態ですが、バイオマーカー探索などにより、対象症例とレジメンの最適化が進めば、MIBC患者にとって福音となることが期待されます。このほか尿路上皮がん領域ではKEYNOTE-052試験(NCT02335424, Abstract #4508)およびKEYNOTE-045試験(NCT02256436, Abstract #4532)の5年フォローアップデータが発表されております。おわりに総じて、前立腺がんではPSMA-PET関連の話題が昨年に引き続き大きなインパクトをもって報告されています。腎がんでは術後アジュバント、尿路上皮がんではネオアジュバントあるいは膀胱温存と、免疫チェックポイント阻害薬を絡めた治療が着実にEarly lineに食い込んできています。とくに尿路上皮がんではそのタイミングや併用薬、放射線治療の有無など、治療プロトコールが多様化しており、今のところは混沌としています。ゲノム関連を中心としたバイオマーカーによる個別化に進むか、それを凌駕する効果的な治療法が開発されるか、いずれにしても今後どのように最適化されてくるのか注視したいと思います。

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治療抵抗性片頭痛に対するフレマネズマブの有効性

 既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療に奏効しなかった慢性片頭痛または反復性片頭痛患者に対するフレマネズマブの月1回または四半期ごと投与の有効性を評価するため、チェコ・Vestra ClinicsのLadislav Pazdera氏らは、検討を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年5月14日号の報告。 既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療に奏効しなかった慢性片頭痛または反復性片頭痛患者をフレマネズマブ四半期ごと投与群、フレマネズマブ月1回投与群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、12週間の二重盲検治療を実施したランダム化二重盲検プラセボ対照第IIIb相臨床試験であるFOCUS試験のデータを分析した。既存の片頭痛予防薬による治療に奏効しなかったクラス数により事前に定義したサブグループについて、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化および有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。・奏効しなかったクラス数ごとの患者数の内訳は、2クラス414例、3クラス265例、4クラス153例であった。・いずれのサブグループにおいても、12週間における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化は、プラセボ群と比較し、有意な改善が認められた。それぞれの、対プラセボ最小二乗平均差および95%信頼区間(CI)は以下のとおりであった。 【2クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-2.9(95%CI:-3.83~-1.98)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-3.7(95%CI:-4.63~-2.75)、p<0.001 【3クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-3.3(95%CI:-4.65~-1.95)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-3.0(95%CI:-4.25~-1.66)、p<0.001 【4クラス】 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:-5.3(95%CI:-7.38~-3.22)、p<0.001 ●フレマネズマブ月1回投与:-5.4(95%CI:-7.35~-3.48)、p<0.001・いずれのアウトカムにおいても、サブグループと治療の交互作用(treatment-by-subgroup interaction)は観察されなかった(各々:p interaction>0.20)。・有害事象は、プラセボ群と同等であった。 著者らは「4つのクラスの既存の片頭痛予防薬を用いた治療に奏効しなかった片頭痛患者の場合でも、フレマネズマブは、プラセボと比較し、統計学的に有意な効果が認められた」としている。

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向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響~メタ解析

 イタリア・パルマ大学のMargherita Trinchieri氏らは、向精神薬が膀胱機能に及ぼす影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurourology and Urodynamics誌オンライン版2021年5月18日号の報告。 向精神薬で治療された患者における治療誘発性尿路障害に関するランダム化比較試験を、PubMedおよびEmbaseより検索し、システマティックレビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・52件の研究が抽出された。・抗うつ薬治療では、畜尿症状ではなく、膀胱排尿症状の出現がより頻繁に認められた。・プール分析では、プラセボと比較し、排尿症状のオッズ比(OR)が高かった(OR:3.30、信頼区間[CI]:1.90~5.72、7,856例、p<0.001)。・排尿機能障害の割合は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と比較し、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のほうが高かった。・抗精神病薬治療では、排尿、畜尿障害を含む不均一な尿障害との関連が認められた。・抗精神病薬治療中の認知症患者の尿失禁のORは、プラセボよりも高く(OR:4.09、CI:1.71~9.79、p=0.002)、抗精神病薬間での差は認められなかった。・排尿障害の割合は、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬との間に差は認められなかったが(OR:1.64、CI:0.79~3.39、p=0.19)、クエチアピンは、他の非定型抗精神病薬よりも排尿機能障害を起こす可能性が高かった(OR:2.14、CI:1.41~3.26、p>0.001)。 著者らは「三環系抗うつ薬またはSNRIで治療中の患者でみられる膀胱排尿障害は、泌尿器系疾患の症状ではなく、向精神薬治療による副作用の可能性がある。これらの薬剤で治療を行った患者では、尿症状の出現を積極的にモニタリングする必要がある。また、抗精神病薬治療による尿関連副作用では、状況に応じた対処が求められる」としている。

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