mRNAワクチン後24週間の感染リスク、ワクチンで差はあるか/NEJM

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン、「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を接種後24週間の感染リスクは4.5~5.8件/1,000人と低率であることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のBarbra A. Dickerman氏らによる、ワクチン接種済み米国退役軍人約44万人のデータの解析で明らかにされた。リスクは、BNT162b2よりもmRNA-1273で低く、こうした情勢はアルファ変異株、デルタ変異株が優勢だった時期にかかわらず一貫していたという。mRNAワクチンはCOVID-19に対して90%以上の効果があることが示されていたが、多様な集団におけるさまざまなアウトカムについて有効性の比較は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。
リスク因子に応じ、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価
研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.7変異株(アルファ株)が猛威を振るっていた2021年1月4日~5月14日にかけて、「BNT162b2」または「mRNA-1273」の初回接種を受けた米国退役軍人を対象に、電子健康記録を基に分析を行った。接種者のリスク因子に応じて、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価した。アウトカムは、記録されたSARS-CoV-2感染、症候性COVID-19、COVID-19による入院やICUへの入室および死亡で、Kaplan-Meier推定量を用いてリスクを推算した。
また、B.1.617.2変異株(デルタ株)の影響を評価するため、別途2021年7月1日~9月20日にワクチン接種を受けた退役軍人を対象に試験を行った。
感染、発症、入院リスクはBNT162b2接種群よりmRNA-1273接種群で低い
「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種者それぞれ21万9,842人について分析を行った。アルファ株流行期24週間の追跡期間中の確定感染の推定リスクは、BNT162b2群が5.75件/1,000人(95%信頼区間[CI]:5.39~6.23)、mRNA-1273群が4.52件/1,000人(4.17~4.84)だった。
同リスクはBNT162b2群がmRNA-1273群より高く、1,000人当たりの過剰イベント数は、確定感染が1.23件(95%CI:0.72~1.81)、症候性COVID-19が0.44件(0.25~0.70)、COVID-19による入院は0.55件(0.36~0.83)、同ICU入室は0.10件(0.00~0.26)、同死亡は0.02件(-0.06~0.12)だった。
なお、デルタ株流行期に注目した12週間の追跡調査において、確定感染に対する過剰リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、6.54件/1,000人(95%CI:-2.58~11.82)だった(リスク比:1.58、95%CI:0.85~2.33)。
結果を踏まえて著者は、「これらのワクチンについて有効性と安全性のさらなる比較評価が必要である」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
関連記事

COVID-19 関連情報まとめ
(2020/02/03)

ファイザー製ワクチン2回目後、90日から徐々に感染増加/BMJ
ジャーナル四天王(2021/12/06)

新型コロナウイルスワクチン接種者のブレークスルー感染(既感染者と未感染者の比較)(解説:小金丸博氏)
CLEAR!ジャーナル四天王(2021/11/26)
[ 最新ニュース ]

2価RSVpreFワクチン、第IIa相チャレンジ試験で有効性を確認/NEJM(2022/07/04)

オミクロン株BA.4/BA.5、BA.2より免疫逃避しやすい?/NEJM(2022/07/04)

睡眠障害に対するスボレキサントからレンボレキサントへの切り替え治療の有効性(2022/07/04)

抗菌糸の使用でSSI発生率低減~日本人大腸がん患者での大規模研究(2022/07/04)

2,000年前のポンペイ人のゲノム解読に成功(2022/07/04)

減量により肥満男性の精子数が上昇(2022/07/04)

テレビ視聴1日1時間未満なら心臓病になりにくい?(2022/07/04)

COVID-19ワクチン接種はメンタルヘルスを改善しない?(2022/07/04)
[ あわせて読みたい ]
開業に浮かれ、契約書をきちんと確認しない医師が陥ったこと【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第34回(2022/01/24)
診療所の承継時、やってはいけない3つのNG行動【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第33回(2022/01/10)
譲れない条件は? 案件探しは「婚活」だ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第32回(2021/12/24)
1日の集患数がわかる?「診療圏調査」を信じて開業すると…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第31回(2021/12/13)
医師向けガイドライン改訂に対応した患者ガイドブック2021年版~日本肺癌学会【肺がんインタビュー】 第72回(2021/12/10)
Dr.増井の心電図ハンティング2 失神・不整脈編(2021/12/10)
見分けづらい・見逃しやすい疾患特集(2021/12/06)
「後輩に譲りたい」、その先輩心で売価7割減!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第30回(2021/11/19)
「サードキャリア」という医師の新しい働き方【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第29回(2021/11/08)
不動産ごと引き継いで欲しい!で難易度アップ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第28回(2021/10/25)
専門家はこう見る
BNT162b2とmRNA-1273の液性/細胞性免疫、感染/発症/重症化予防効果の推移:オミクロン株を中心に(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)
コメンテーター : 山口 佳寿博( やまぐち かずひろ ) 氏
東京医科大学 呼吸器内科 客員教授
健康医学会附属 東都クリニック