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2020年のがん診断数は前年比9%減、とくに早期での発見が減少/日本対がん協会

 2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかった。おおむね早期が減る一方、進行期は両年で差が少ない傾向となり、今後進行がんの発見が増えることが懸念される。日本対がん協会は11月4日、がん関連3学会(日本学会、日本治療学会、日本臨床腫瘍学会)と共同実施したアンケート調査の結果を発表した。2020年のがん診断数の減少で進行期のがん患者数が増加のおそれ アンケートは今年7~8月、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象として実施。5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)について診断数、臨床病期(1~4期、がん種によって0期も含む)、手術数、内視鏡治療数などを聞いた。大規模調査は全国初で、北海道東北、関東、中部北陸、近畿、中国四国、九州沖縄の各地域の計105施設から回答を得ている(回答率21.6%)。 2020年の5がん種の診断数の減少幅は下記のとおり。・胃がん:2019年1万9,470件→2020年1 万6,868件(-13.4%)・大腸がん:2019年2 万1,975件→2020年1 万9,724件(-10.2%)・乳がん:2019年1 万9,528件→2020年1 万7,919件(-8.2%)・肺がん:2019年2 万3,010件→2020年2 万1,548件(-6.4%)・子宮頸がん:2019年4,831件→2020年4,601件(-4.8%) がんに罹患する人の割合は2019年、2020年でほぼ変わらないと考えられるため、2019年と同じように検診や通院ができていれば発見できたがんが約9%あったと推測される。2020年のがん診断数の減少は早期が顕著なため、進行期のがん患者数の増加が心配されるほか、予後の悪化や将来的にはがん死亡率が増加するおそれもある。

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非小細胞肺がん化学放射線療後のデュルバルマブ地固め療法、リアルワールドでの肺臓炎発現(HOPE-005 / CRIMSON)/Lung Cancer

 デュルバルマブによる局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時療法(CCRT)後の地固め療法は標準治療として用いられて久しい。しかし、同デュルバルマブの地固め療法での肺臓炎の発症、再投与の実臨床での状況は明らかになっていない。デュルバルマブ地固め療法を局所進行非小細胞肺がんで安全に完遂する この状況を調べるため、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)では、化学放射線療法を実施した非小細胞肺の医療記録を後ろ向きに評価したHOPE-005 / CRIMSON試験を実施。その結果がLung Cancer誌に掲載された。 デュルバルマブの地固め療法での肺臓炎の発症について評価した主な結果は以下のとおり。・対象は、2018年5月〜2019年5月に化学放射線療法を開始した非小細胞肺がん患者302例で、年齢中央値は70歳であった。・V20(20Gy以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合)が5%を超えた症例は2%、平均肺線量20Gyを超えた症例は1%であった。・デュルバルマブの地固め療法は75%(225例)の症例で実施されていた。・肺臓炎/症候性肺臓炎の発現は、全Gradeで83%(251例)、Grade3以上は34%(103例)、Grade5は7%(21例)で、25%が肺臓炎治療のためのステロイド投与を受けた。・多変量解析により、症候性肺臓炎発症の予測因子は、V20 25%以上(オッズ比[OR]:2.37、p=0.008)、平均肺線量(MLD)10Gy以上(OR:1.93、p<0.0047)であった。・デュルバルマブ地固め療法後の肺臓炎でステロイドを投与された52例のうち、21例はデュルバルマブを再投与された。・患者全体の81%がPACIFIC試験の再投与基準を満たしており、デュルバルマブの再投与で重症の肺臓炎を再燃した症例はみられなかった。 局所進行非小細胞肺がんの化学放射線療法とデュルバルマブの地固め療法を安全に完遂するには、放射線科と腫瘍内科医との協力が重要である、と筆頭著者である千葉大学の齋藤 合氏は結んでいる。

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血中サイトカインによるうつ病と双極性障害の鑑別

 双極性障害は、うつ病と診断されることも少なくない。その結果、治療が奏効せず、臨床アウトカムが不良となってしまうこともある。現在の双極性障害の診断は、臨床症状の評価に依存しており、これは主にレトロスペクティブであり、記憶バイアスの影響を受ける。フランス・コートダジュール大学のEmanuela Martinuzzi氏らは、うつ状態にある双極性障害患者の鑑別において、うつ病と双極性障害を区別する血液バイオマーカーを特定するため、検討を行った。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2021年3月10日号の報告。 双極性障害またはうつ病の包括基準を満たしたうつ病エピソードを有する患者を対象とした2つの独立した自然主義的コホート研究より臨床データおよび血清サンプルデータを収集した。discovery cohortは462例、replication cohortは133例の患者で構成されていた。患者に対し標準的な診断面接により臨床症状を評価し、現在の治療を含む臨床変数を記録した。採取した血液より31種のサイトカインレベルの評価を行うため、高感度マルチプレックスアッセイを用いた。双極性障害に関連するサイトカインを特定するため、ノンパラメトリックブートストラップ法を組み合わせたペナルティ付きロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・discovery cohortでは、インターロイキン(IL)-6、IL-10、IL-15、IL-27、C-X-Cリガンドケモカイン(CXCL)-10は、双極性障害と正の相関が認められた。・上記の5つのサイトカインのうち、IL-10、IL-15、IL-27は、replication cohortにおいても双極性障害との関連が認められた。 著者らは「気分障害の病態生理学的メカニズムに関する新たな知見が得られる可能性があるため、本結果については、プロスペクティブコホート研究で検証されるべきであろう」としている。

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糖尿病、心不全、CKDと拡大するダパグリフロジン/AZ・小野薬品

 アストラゼネカと小野薬品工業は、選択的SGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が2021年8月25日に2型糖尿病合併の有無にかかわらず、わが国で初めて「慢性腎臓病(CKD)」の効能または効果の追加承認を取得したことを受けて、「国内における慢性腎臓病治療の新たなアプローチ -SGLT2阻害剤フォシーガの慢性腎臓病治療への貢献-」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、今回の追加承認のもとになった“DAPA-CKD STUDY”などの概要などが説明された。人工透析の医療費は年1.6兆円 セミナーでは、柏原 直樹氏(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 教授)を講師に迎え、「腎臓病の克服を目指して」をテーマに講演が行われた。 慢性腎臓病(CKD)の推定患者は、全国で約1,300万人と推定され、2017年時点での慢性透析患者数も約33万4,000人に上り、年間1.57兆円に上る医療費が人工透析に使用されている。CKDは加齢とともに増加し、高齢化社会の日本では腎機能症障害への対応は今後も大きな課題となる。 そこで、近年、腎疾患対策の推進のために厚生労働省は、全体目標として「CKDの早期発見・診断、良質で適切な治療の実施と継続」「重症化予防」「患者のQOLに維持向上」を掲げ、成果目標として2028年までに新規透析導入患者数を35,000人以下に減少させるという目標を謳っている。DAPA-CKD試験の概要 こうしたCKDの克服に期待されているのが治療薬である。今回、CKDへの効能または効果の追加承認を取得したダパグリフロジンは、DAPA-CKD試験でその効果が検証された。 本試験は、国際多施設共同試験として18歳以上の慢性腎臓病患者4,304例(うち日本人244例)を対象に行われ、対象患者をダパグリフロジン10mg群とプラセボ群に1:1に無作為に割付、標準治療に追加して1日1回経口投与した。主要複合エンドポイントは「eGFRの50%以上の持続的な低下、末期腎不全への進展、心血管死または腎臓死」のうち、いずれかのイベント初回発現までの期間で実施された。 その結果、32ヵ月時点での各エンドポイントの成績は以下の通りだった。・主要複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群で約20%だったのに対し、ダパグリフロジン群では約12%であり、ハザード比は0.61(95%CI:0.51、0.72)だった。・腎複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約17%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約9%であり、ハザード比は0.56(95%CI:0.45、0.68)だった。・心血管複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約7%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約6%であり、ハザード比は0.71(95%CI:0.55、0.92)だった。・全死亡までの期間の累積発現率がプラセボ群が約8.5%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約5.5%であり、ハザード比は0.69(95%CI:0.53、0.88)だった。 また、サブグループ解析では、「糖尿病の有無」、「心不全の有無」、「腎機能低下例」、「IgA腎症」が行われた。 安全性としてダパグリフロジンでは、2,149例中で重篤な有害事象は594例(27.6%)が報告され、急性腎障害、肺炎、心不全、急性心筋梗塞、末期腎不全の順で多かったが、顕著な有害事象はなかった。 最後に柏原氏は、今回の適応拡大について私見としながら「ようやくわが国も世界に追いついた。今後既存薬の見直しの機運が上がる可能性がある。“DAPA STUDY”によりさらなる疾病の克服や患者への希望の共有がなされることを望む」と述べレクチャーを終えた。

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コロナワクチン、高齢ほど感染・入院リスク低下/Lancet

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種プログラムの導入の初期段階に、高齢者におけるCOVID-19患者数やCOVID-19による救急診療部受診数、入院者数が減少し、ワクチン接種の寄与は不明なものの死者数も減少したことが、米国疾病予防管理センターのLucy A. McNamara氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月3日号で報告された。米国50歳以上を対象に生態学的研究 米国では、2020年12月中旬に、緊急使用許可(EUA)下に最初のCOVID-19ワクチンの使用が可能となった。2021年6月8日の時点で、全人口の52%が少なくとも1回のワクチン接種を受け、42%は2回の接種を完了しており、このうち65歳以上の接種率はそれぞれ86%および76%に達している。 本研究は、2020年11月1日~2021年4月10日の期間に、米国の初期段階のCOVID-19ワクチン接種プログラムが、全米の50歳以上の集団におけるCOVID-19患者、救急診療部受診、入院、死亡に及ぼした影響の評価を目的とする生態学的研究である(米国疾病予防管理センターの通常の運営資金で行われ、外部からの研究助成は受けていない)。 特定の年齢集団のワクチン接種率が初めて基準年齢集団(50~64歳または50~59歳)の接種率を1%以上上回った週を基点として、ワクチン接種前と接種後の高齢集団と若年の基準集団における各評価項目の発生率の相対的な変化を算出した。引き続き、ワクチン接種前と接種後の期間を比較して、これらの相対的な変化の比が両期間で異なるかを評価した。接種率向上の重要性を強調する結果 ワクチン接種後と接種前のCOVID-19患者の発生率比の変化を比較した相対的な変化の比は、50~64歳と比較して、65~74歳で53%(95%信頼区間[CI]:50~55)、75歳以上では62%(59~64)それぞれ減少した。 同様にCOVID-19による救急診療部受診者数は、50~64歳と比較して、65~74歳で61%(95%CI:52~68)、75歳以上では77%(71~78)減少した。また、COVID-19による入院者数は、50~59歳と比較して、60~69歳で39%(29~48)、70~79歳で60%(54~66)、80歳以上では68%(62~73)低下した。 COVID-19による死亡も、50~64歳と比較して、65~74歳で41%(95%CI:−14~69)、75歳以上では30%(-47~66)減少したが、ワクチン接種の普及が死亡にどの程度の影響を及ぼしたかは不明であった。 著者は、「本研究の結果は、既存のワクチンのすでに確立されている有効性のデータと一致しており、対象者全員の接種率を高めることの重要性を強調するものである」としている。

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妊娠中の抗うつ薬、子供の数学の成績に影響か/JAMA

 妊娠中に抗うつ薬を処方された母親の子供は、処方されなかった母親の子供と比較して、数学のテストの点数は2点低く有意差が認められ、国語のテストの点数には差がなかったことが、デンマーク・オーフス大学のJakob Christensen氏らの調査で示された。結果について著者は、「数学の平均点は曝露群で低かったが、差は小さいことから臨床的な意義は不確実である。この研究結果は、妊娠中の母親にうつ病治療を行うことの利点と比較して検討する必要がある」としている。JAMA誌2021年11月2日号掲載の報告。デンマークの後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中の抗うつ薬の処方が、義務教育期の子供の標準化されたテストの成績に影響を及ぼすかを評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(Central Denmark Regionなどの助成を受けた)。 解析には、1997年1月1日~2009年12月31日の期間にデンマークで出生し、公立の小学校または中学校に通い、2010年1月1日~2018年12月31日の期間に「デンマーク全国テストプログラム」の国語(2、4、6、8年生が対象)または数学(3、6、8年生が対象)のテストを受けた7~17歳の児童生徒が含まれた。「デンマーク処方箋登録」から、妊娠中に抗うつ薬の処方を受けた母親の情報が収集された。 関連する交絡因子を補正した線形回帰モデルを用いて、母親が抗うつ薬を処方された子供と処方されなかった子供で、数学と国語の標準化された点数(1~100点、得点が高いほどテスト成績が良い)の差が推算された。数学:52.1点vs.57.4点、国語:53.4点vs.56.6点 57万5,369例(男児51.1%)の児童生徒が解析に含まれ、このうち1万198例(1.8%)が妊娠中に抗うつ薬を処方された母親の子供(抗うつ薬曝露群)であった。テストを受けた時の児童生徒の平均年齢(SD)は、2年生の8.9(0.4)歳から8年生の14.9(0.4)歳の範囲だった。 数学のテストの平均点は、抗うつ薬曝露群が52.1点(95%信頼区間[CI]:51.7~52.6)と、非曝露群の57.4点(57.3~57.4)に比べて有意に低かったが、群間の差は小さかった(補正後群間差:-2.2点、95%CI:-2.7~-1.6)。 一方、国語のテストの平均点は、曝露群が53.4点(95%CI:53.1~53.7)、非曝露群は56.6点(56.5~56.6)であり、両群間に差は認められなかった(補正後群間差:-0.1[95%CI:-0.6~0.3])。

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国・地域により評価が分かれる研究(解説:野間重孝氏)

 チカグレロルはcyclo pentyl triazolo pyrimidine (CPTP)系の薬剤に分類される抗血小板薬である。クロピドグレルやプラスグレルなどのチエノピリジン系の薬剤がプロドラッグであり肝臓で代謝されることにより活性体となるのに対し、チカグレロルは自身が活性体であるためその作用の出現が速やかであるとともに肝代謝による影響を受けることがない。いずれの系統の薬剤も血小板のP2P12受容体に結合することによりその作用を発揮するが、チエノピリジン系の結合が非可逆的なものであるのに対し、チカグレロルの結合は可逆的である。そのため中止後の効果消失も速やかであるが、その反面作用時間が短いため1日2回の服用が必要である。 チカグレロルが注目を浴びるようになったのはPLATO studyによるものだったと言ってよい。同studyでは急性冠症候群患者(ACS)を対象としてアスピリンと併用する血小板2剤併用療法(DAPT)の比較研究がなされ、チカグレロル維持量90mg×2/日とクロピドグレル維持量75mg/日の比較において、死亡・心筋梗塞・脳卒中の発生頻度を減少させる点で、チカグレロルがクロピドグレルに比して優れているとの結果が得られたのである。この研究を踏まえ、欧州心臓病学会(ESC)では、ACSに対する際には使用禁忌がない場合にはアスピリン+チカグレロルを第1選択薬とした。しかしPLATO studyの事後サブグループ解析において非ST上昇型ACSにおいて総死亡率の低下が見られるいう結果は主要評価項目ではなかったため、あくまで探索的なものだったのではないかとの疑問もあった。事実、その後いくつか行われた臨床研究においてもチエノピリジン系薬剤に対してはっきりとした優位を示す結果は提出されていない。ACC/AHAガイドラインでは第1選択薬としての使用は認めているものの推奨度は低い(IIaB)。 JCSのガイドラインにおいては、East Asian paradoxという言葉があるように東アジア地域においては欧米よりも出血リスクが高く、血栓リスクが低いことが示されていることが勘案され、「アスピリンを含むDAPTが適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板薬の投与が困難な場合に限る」とされた(アテローム血栓症の発生頻度がとくに高いことが予想される病態がいくつか追加的適応として挙げられているが、ここでは省略する)。種々の研究において、チカグレロルはチエノピリジン系薬剤に比して出血の合併症が多いことが示されていたためである。なお、それ以外に呼吸困難感が比較的高頻度で生じることも知られている。このような理由からわが国においてはチカグレロルはほとんど使用されることがないが、わが国の臨床家たちがとくに不便を感じたという話を聞かない。さらに2020年の改訂で、チエノピリジン系がDAPT終了後の単独投与薬剤として認められたことも大きい(チカグレロルは認められていない)。 そこで本論文をどう評価するかという本題に入るが、この評価はESCのガイドラインを順守している国・地域であるのかどうかによってその価値評価が大きく異なることがまず指摘されなければならない。確かに本研究は著者らが言うように、いわゆるde-escalation therapy(この用語の妥当性自体が問題なのだが)が効果的かつ安全であることを示した初めての大規模臨床研究であると言える。しかし、もともとチカグレロルを第1選択薬としていない地域の医師たちにとっては関係のない論題だと言えるからである。そういう意味でこの研究の発端自体がESCのガイドラインに依存したものだったと言わなくてはならない。評者は、当たり前に思えることであってもあらためて証明することには価値があるということをこの欄で常々述べてきたが、この研究課題は普遍的な課題とはいえないと言わざるを得ないと思う。チカグレロルを第1選択薬とする必要がないことは米国や日本における血栓事故の発生率を見れば明らかなのだが、いったん決められたものを改めるには然るべき手続き(この場合研究)が必要だったと解釈される。 一方、本論文中で論じられている内容で、わが国の医師・国民の関心が薄い問題があることを指摘しておかなければならない。費用の問題である。韓国での薬価については調べることができなかったが、わが国ではクロピドグレル75mg錠が52.3円、チカグレロル(ブリリンタ)90mg錠が142円、つまり1日142×2=284円ということになる。わが国では国民皆保険制度が当たり前となっているため、薬価に対する関心が薄い。話題になるのは驚くほど高価な抗がん剤などが発売された場合などに限られるのではないだろうか。しかし一般諸外国ではこうした一般治療薬の価格についてもかなり関心が高く、議論の発端となりうることは知っておく必要がある。あらためて指摘する必要もないであろうが、わが国の保険財政は逼迫していることを忘れてはならない。 最後になるが、内容とは離れてこの論文の形態について一言述べておきたい。本論文では4ページ以上にわたってdiscussionが書かれているのだが、このような長大な考察を書く必要があったのだろうか。この研究の内容は決して分かりにくいものではなく、その内容も長く論述する必要のあるものとは思えない。評者は何年かにわたって『ジャーナル四天王』の論文評を担当させていただいているが、最近論文のスタイルの崩れが目立つように感じられてならない。仮にもLancet掲載論文なのである。評者が現役であった頃はこうした雑誌の査読者、編集者たちは論文の形態・形式についてもかなり厳しい注文をつけてきたことを記憶している。この論文評の最後にこのような一般的なことまで含めて書くのは申し訳ないとは思うが、一言苦言を呈したかったことをご理解いただきたい。

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第83回 街中の会話にヒントが!?若者や副反応経験者に3回目ワクチンを促す策とは

つい先日、昼食のために入ったラーメン屋で私の右側のカウンターに座っていた男性3人組の会話が耳に入ってきた。この3人を私から近い順にA君、B君、C君としよう。ちょうど私のすぐ隣にいたA君が「どうだった?」とB君とC君に尋ねていた。B君うん、めっちゃ熱出て、体もだるくてきつかったA君3回目の接種もあるって話じゃんB君いや、もう3回目はいいやC君俺も3回目はなしだな職業病のせいか、ついつい周囲の会話に聞き耳を立ててしまう癖はなかなか抜けない。この時もそうだったのだが、会話の内容も内容だったから余計のこと真剣に聞き耳を立ててしまった。多くの人にとって察しはついただろうが、新型コロナワクチン接種に関してである。このラーメン屋の近傍には複数の大学がある。その後も彼らの会話に聞き耳を立てていたが、どうやら彼らは付近のある私大の学生で、大学でモデルナ製ワクチンによる職域接種が行われ、B君とC君は接種、A君は様子見で今も接種するかどうかを迷っているらしい。私はファイザー製ワクチンの接種者だが、周知のようにモデルナ製ワクチンは投与量が多いため、効果もやや高い分、副反応も強めと言われ、モデルナ接種者での副反応に関する愚痴はよく耳にする。新型コロナに限らず、ワクチンでは接種者が効果を実感できることは稀で、むしろ自覚できる副反応があれば、そちらのほうの印象が強くなるのは必然のこと。いわゆる反ワクチン派の存在も多分にそうした現実に由来している。その意味で副反応の最小化はワクチン接種の浸透では必須事項となるが、そもそも個々のワクチンの特性により一定の頻度の副反応は避けがたい。たとえば今回の新型コロナのmRNAワクチンでは、極めて高頻度な発熱や倦怠感は減らそうと思って減らせるものではない。あとは症状が発現した際の適切な軽減策の周知であり、今回はすでに解熱鎮痛薬の使用推奨はかなり行われている。だが、それでも前述の学生の反応は非常に気になった。ワクチン接種完了者が国民のほぼ4分の3に達し、新規感染者数報告も小康状態とは言え、今後の新型コロナの動向はまだ完全に読み切れていない。そのうえで3回目接種も現実となった今、「3回目はもういいや」という人が一定数出ることは感染拡大の火種になる。そんなこんなを抱えながらネットサーフィンをしたら思いもかけないレポートに遭遇した。モデルナ製ワクチンの職域接種を行った岡山大学のアンケート調査結果である。ざっくりまとめると、学生を中心とした接種後のアンケート調査で副反応は局所性、全身性とも98%以上が1週間以内に消失し、90%弱が接種に満足、80%強が身近な人への接種を勧め、かつ3回目の接種を希望するというもの。非常に喜ばしい結果だ。また、副反応の発熱で解熱薬を服薬した人は66.0%で、これと別に予防内服を行った人が4.8%。私が一番驚いたのは、予防内服をした人が思ったよりも少なかったことだ。報道やSNSを通じて新型コロナワクチンでの発熱の副反応が周知され、それゆえに逆に接種前にやや怖くなっていた人も少なくなかったはず。一方で副反応回避策としての予防的解熱薬服用は推奨されていない。その中で予防内服が少なかった現実は若年層もかなりしっかりとした情報入手をしていた傍証でもある。では不安材料はないかと言えば、そうとは言えない。たとえば「インフルエンザワクチンと比べて副反応が重かった」との回答者が84.9%だった一方で、「打つ前の想像と比べて(副反応が)重かった」との回答者が43.3%だったことから、「副反応の重さがある程度周知されていたと思われる」との分析を示しているが、本当にそうだと言えるだろうか?前述の身近な人に勧めるか、あるいは3回目接種を希望するかとの問いに、否定的な回答は5%に満たないが、「どちらとも言えない」という動揺層が10数%いる現実は副反応の結果と推定される。また、3回目接種を希望するかについて「ワクチンの種類は検討するが希望する」が 22.0%もいたことも見逃せない。これはご存じのようにモデルナ製ワクチンで報告されている若年層での心筋炎の副反応を恐れてのことだろう。また、本レポートではワクチン接種との因果関係は不明ながらも、極めてごくわずかな人たちが接種1ヵ月後にも不調を訴えており、そのケアの必要性を強調している。こうした不安に単純に「みんな経験する副反応だから」あるいは「それは科学的に見て副反応ではない」と対処することは科学的には正しくとも、後々のワクチン不信を増幅させる可能性がある。こう訴える人たちに医療従事者だけでなく、行政、メディアもどのように対処すべきかはまだ課題は少なくないだろう。俗な言い方になるが、恐怖心を抱く人への寄り添いは最低限必要と感じる。また、そんなこんなを考えていた矢先、以下のような新たな情報も飛び出してきた。【独自】大規模会場2930人の急性期副反応、9割が不安に伴うストレス原因…若者が3割強(読売新聞)要は防衛省が運営していた大規模接種会場で、接種への不安などが原因の迷走神経反射などの急性副反応がインフルエンザワクチンなどより高頻度で発生しており、その中心は若年者だったという現実である。こうした急性反応は一定程度医学的にも対処可能なものである。すでに年代別の接種率を見ると50代以降は接種完了率が85%以上に達する中、1回以上接種が70%台の10~30代はまだまだ接種率向上の余地は高い。こうした層の底上げと全国民の確実な3回目接種の実現のため、医学的にも社会的にもまだまだやれることは残されていると言えそうだ。

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がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版

がん治療に伴う外見変化への治療的・整容的対応、5年ぶりの改訂がん治療(手術・薬物療法・放射線療法)により皮膚障害や脱毛、爪の変形・変色などの外見(=アピアランス)の変化を生じた患者に医療者がより良いアピアランス支援を実践できるよう、医学・看護学・薬学・香粧品学・心理学の専門家が集結し、現在のエビデンスをもとに治療面と日常整容面のアプローチを分かりやすく解説。誤った情報に惑わされないために、がん診療に携わる医療者必読の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版定価2,860円(税込)判型B5判頁数204頁・図数:28枚・カラー図数:6枚発行2021年10月編集日本がんサポーティブケア学会

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避けたいワクチン接種時のケアレスミス/厚労省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国で順調に行われ、満12歳以上への接種も始まり、3回目の接種についても細部が決まりつつある。また、インフルエンザの流行を控え、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種というケースも散見されるようになってきた。こうした環境の中ではワクチン接種時の事故は避けたいものである。 厚生労働省は、令和3年9月30日までに報告された予防接種の間違いの概要をまとめた「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その3)」を10月29日に全国の自治体に発出し、注意を喚起した。 同省では、インフルエンザワクチンが多く接種される時期でもあり、これらの留意点を参考に、あらためて予防接種の手順を再確認することにより、間違いの発生防止とCOVID-19ワクチン接種の適切な実施に向けた取り組みを進めてほしいと記している。一番多い接種上の間違いは「接種間隔」1)間違いとして報告のあった回数(10万回当たり数)延べ接種回数163,738,220回のうち・間違い報告件数:1,805回(1.102)・重大な報告件数:739回(0.451)・上記以外の報告件数:1,066回(0.651)2)間違いの態様別の上位5つ(10万回当たり数)(1)接種間隔の間違い:526件(0.321)(2)接種器具の扱いが不適切:350件(0.214)(3)不必要な接種:246件(0.15)(4)血液感染を起こし得る間違い:170件(0.104)(5)接種量の間違い:99件(0.06)トレイを分ける、声を出すなどでミスを防ぐ COVID-19ワクチン接種の具体的な3つの事例と対策、これら問題の背景を下記に紹介する。〔事例1〕1日の同じ時間帯の中で、COVID-19ワクチンの接種と他のワクチンの接種の両方が行われていた。〔対策〕可能な限り、COVID-19ワクチンと他のワクチンを接種する曜日や時間帯を分ける。〔事例2〕次のようなさまざまな理由により、同一の診察室内に、COVID-19ワクチンと他のワクチンが持ち込まれ、接種者の手が届く範囲に複数種類のワクチンが置かれた。・同一の診察室で、新型コロナワクチンと他のワクチンの両方を接種している。・本来は、COVID-19と他のワクチンと接種用の診察室を分けていたが、院内の都合でCOVID-19ワクチン仕様になり他のワクチンが持ち込まれた。・本来は、ワクチンにより接種用の診察室を分けていたが、たまたま誘導員が間違えて誤った診察室に案内してしまった。〔対策〕1トレイに1種類(可能な限り、1トレイに1人分)のワクチンを準備することとし、診察室内において、接種者の手が届く範囲に異なる種類のワクチンを置かない。〔事例3〕接種者は、予診票の確認を行い他のワクチンの接種を受ける者であることを認識しながらも、無意識にCOVID-19ワクチンを手にとり接種してしまった。〔対策〕接種直前は一呼吸おき、接種者と被接種者とで接種するワクチン名を声に出して確認する。【間違いの背景】・同じ時間帯に新型コロナワクチンと他のワクチンの予約を受け付けており、物理的に患者が混在していた。・接種者の手が届く範囲に、複数の異なる種類のワクチンが置かれていた。・新型コロナワクチンの接種数が多く、接種に慣れてしまっていた(無意識、惰性で打ってしまった)。・接種者が、接種直前に接種するワクチン名を確認していなかった。※インフルエンザワクチンなどのバイアル製剤だけでなく、シリンジ製剤でも接種間違いは起こっている。

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うつ病の寛解に対する夜型生活改善の影響

 夜型生活は、うつ病のより悪いアウトカムと関連している。時間生物学的治療による夜型生活の改善の可能性や、その結果がうつ病の長期アウトカムに及ぼす影響については、よくわかっていない。これらの影響を明らかにするため、香港中文大学のJoey Wy Chan氏らは、うつ病治療における夜型生活改善効果について検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月21日号の報告。 5週間の補助的光療法のランダム化比較試験に参加した非季節性単極性うつ病で夜型生活の成人患者91例を対象とし、そのデータを分析した。夜型生活の定義は、朝型夜型質問票(MEQ)スコア41以下とした。治療5週目でのMEQスコア41超を達成した場合を夜型生活の改善とし、治療後5ヵ月目までMEQスコア41超を維持した場合を夜型生活の持続的な改善と定義した。 主な結果は以下のとおり。・治療5週目に夜型生活の改善が認められた患者は33例(36%)であった。・一般化推定方程式モデルでは、治療5週目の夜型生活の改善は、5ヵ月後のうつ病寛解の2倍増を予測していた(OR:2.61、95%CI:1.20~5.71、p=0.016)。・夜型生活の持続的な改善が認められた患者は25例(75.7%)であり、5ヵ月後のうつ病寛解の可能性が高かった(OR:3.18、95%CI:1.35~7.50、p=0.008)。 著者らは「夜型生活のうつ病患者に対する5週間の時間生物学的治療は、約3分の1の患者で夜型生活を改善し、5ヵ月後の寛解の可能性が高まることが示唆された」としている。

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脳卒中再発予防、チカグレロルvs.クロピドグレル/NEJM

 中国人のCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する軽度虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者において、90日時点の脳卒中再発リスクは、クロピドグレルと比較しチカグレロルがわずかに低かった。また、中等度~重度出血リスクは両群間に差はなかったものの、すべての出血イベントはクロピドグレルと比較してチカグレロルで増加した。中国・首都医科大学のYongjun Wang氏らが、中国の202施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CHANCE-2試験」の結果を報告した。これまで、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子保有者の脳卒中再発予防に関して、チカグレロルとクロピドグレルを比較した研究はほとんど実施されていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月28日号掲載の報告。6,412例を対象に、アスピリンへのチカグレロル併用とクロピドグレル併用を比較 研究グループは、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する40歳以上の軽度虚血性脳卒中/TIA患者(NIHSS≦3、ABCD2スコア≧4)を、発症後24時間以内にチカグレロル群(チカグレロルを1日目に180mg、2~90日目に90mg 1日2回、およびクロピドグレルのプラセボ)、またはクロピドグレル群(クロピドグレルを1日目に300mg、2~90日目に75mg 1日1回、およびチカグレロルのプラセボ)に、1対1の割合で無作為に割り付け、両群ともアスピリンを21日間併用投与した。 有効性の主要評価項目は、90日時点の新規虚血性または出血性脳卒中、副次評価項目は、30日以内の新規脳卒中、血管イベント(脳卒中、TIA、心筋梗塞、血管死の複合)など。安全性の主要評価項目は90日以内の中等度~重度出血とした。 2019年9月23日~2021年3月22日の間に計1万1,255例がスクリーニングされ、6,412例が割り付けられた(チカグレロル群3,205例、クロピドグレル群3,207例)。患者の年齢中央値は64.8歳、女性が33.8%、98.0%が漢民族であった。90日以内の脳卒中発症は、チカグレロル群6.0%、クロピドグレル群7.6% 90日以内の脳卒中発症は、チカグレロル群で191例(6.0%)、クロピドグレル群で243例(7.6%)確認された(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.64~0.94、p=0.008)。副次評価項目も概して主要評価項目と同じ結果であった。 中等度~重度出血は、チカグレロル群で9例(0.3%)、クロピドグレル群で11例(0.3%)に認められ、すべての出血はそれぞれ170例(5.3%)、80例(2.5%)に発現した。 なお、著者は、対象患者の98%が漢民族であり一般化できないこと、漢民族はアジア以外の民族に比べて頭蓋内動脈狭窄の発生率が高く、漢民族以外の患者ではチカグレロルとクロピドグレルの効果が異なる可能性があること、心原性脳塞栓症や中等度~重度脳卒中、血栓溶解療法や血栓除去術を受けた患者等が除外されていること、などを研究の限界として挙げている。

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ファイザー製ワクチン有効性、3回接種vs.2回接種/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の3回接種は、2回接種(5ヵ月以上前に接種完了)と比較して、COVID-19の重症化予防に有効であることが認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。多くの国でSARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株によるCOVID-19の再流行が発生しており、これらの国では、経時的に免疫が減弱しデルタ変異株に対する有効性が低下する可能性があるため、ワクチン3回目接種を検討している。Lancet誌オンライン版2021年10月29日号掲載の報告。イスラエルのデータを基に、COVID-19関連入院、重症化、関連死のリスクを解析 研究グループは、イスラエル国民の半数以上が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、2020年7月30日~2021年9月23日にBNT162b2ワクチンの3回目接種を受けた人(3回接種群)、ならびに人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせた3回目ワクチン未接種者(対照群)について解析した。 適格基準は、5ヵ月以上前に2回接種を完了しており、SARS-CoV-2感染歴がなく、直近3日以内に医療施設を受診していないこととし、医療従事者、長期療養施設の居住者および自宅療養者は除外された。 主要評価項目は、COVID-19関連の入院、重症化およびCOVID-19関連死であった。Kaplan-Meier法を用いて各アウトカムのリスクを推定し、リスク比とリスク差を算出、3回接種の有効性は1-リスク比(相対リスク減少率)として推定した。3回接種群、入院93%、重症化92%、COVID-19関連死81%減少 調査期間中の3回接種者は115万8,269例であった。マッチングの結果、解析には3回接種群および対照群それぞれ72万8,321例が含まれた。年齢中央値は52歳(IQR:37~68)、51%が女性で、3回目または2回目接種後の観察期間(接種後7日以降)は、両群とも中央値13日(IQR:6~21)であった。 3回接種群の有効性(3回目接種後7日以降に評価)は、対照群(5ヵ月以上前に2回目接種を受けたのみ)と比較し、入院を93%(95%信頼区間[CI]:88~97、イベント件数:3回接種群29 vs.対照群231)、重症化を92%(95%CI:82~97、イベント件数:17 vs.157)、COVID-19関連死を81%(95%CI:59~97、イベント件数:7 vs.44)減少すると推定された。

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ファイザー製ワクチン、18歳以上のブースター接種を厚労省が承認

 ファイザーは11月11日、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン「コミナティ」について、国内の18歳以上に対する追加接種(追加免疫)の承認を取得したと発表した。米国本社が先月発表したプレスリリースによると、3回目のブースター接種の効果を検証した第III相臨床試験の結果、95.6%の有効性を示したという。 コロナワクチンのブースター接種を巡っては、米国においてはコミナティが9月より、65歳以上および重症化リスクが高い18〜64歳、SARS-CoV-2への頻繁な曝露を伴う18〜64歳へのブースター接種が実施されており、11月9日には接種対象を全成人に拡大するようFDAに申請した。このほか、モデルナ社および米・ジョンソンエンドジョンソン社のワクチンについても10月に米国で追加接種が認められたところだ。<添付文書情報> ※下線部分が今回の主な追加・変更箇所6. 用法及び用量 本剤を日局生理食塩液1.8mLにて希釈する。 初回免疫の場合、1回0.3mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。 追加免疫の場合、1回0.3mLを筋肉内に接種する。7.2 追加免疫7.2.1 接種対象者 18歳以上の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.2.2 接種時期 通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。7.2.3 初回免疫として他のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した臨床試験は実施していない。

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がん種別5年・10年生存率ランキング、最新版を公表/全がん協調査

 11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率ランキングが最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。がん種別に10年生存率を最新版と過去とを比較できる 本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表している。 がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を最新版と過去とを比較できるのは現時点で本調査のみとなっている。また、がん種、病期、治療法などさまざまな条件設定での10年生存率、診断からの経過日数を指定したうえでのサバイバー生存率をグラフ描画できるのは現時点でKapWebのみとなっている。<データベース概要>対象施設:全国がんセンター協議会加盟32施設(2021年現在)収集症例:1997~2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った87万6,679症例集計対象:[5年生存率]2011~13年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした15万1,568症例[10年生存率]2005~08年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした12万649症例<がん種別5年生存率>全部位および部位別の5年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2010~12年症例の5年相対生存率。・全部位:68.9%(68.6%)・食道:50.1%(48.9%)・胃:75.4%(74.9%)・大腸:76.8%(76.5%)・肝:38.6%(38.1%)・胆のう・胆管:28.7%(28.9%)・膵臓:12.1%(11.1%)・喉頭:80.4%(82.0%)・肺:47.5%(46.5%)・乳(女):93.2%(93.6%)・子宮頸:75.9%(75.7%)・子宮体:86.2%(86.3%)・卵巣:64.3%(65.3%)・前立腺:100.0%(100.0%)・腎臓など:71.0%(69.9%)・膀胱:67.7%(68.5%)・甲状腺:93.0%(92.6%)<がん種別10年生存率>全部位および部位別の10年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2004~07年症例の10年相対生存率。・全部位:58.9%(58.3%)・食道:34.4%(31.8%)・胃:67.3%(66.8%)・大腸:69.7%(68.7%)・肝:17.6%(16.1%)・胆のう・胆管:19.8%(19.1%)・膵臓:6.6%(6.2%)・喉頭:64.2%(63.3%)・肺:33.6%(32.4%)・乳(女):87.5%(86.8%)・子宮頸:68.2(68.7%)・子宮体:82.3%(81.6%)・卵巣:51.0%(48.2%)・前立腺:99.2%(98.8%)・腎臓など:63.3%(62.8%)・膀胱:63.0%(61.1%)・甲状腺:86.8%(85.7%) 5年生存率および10年生存率ともに、前回公表データと比較した場合多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められていない。

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若手医師フォーラム【Dr. 中島の 新・徒然草】(400)

四百の段 若手医師フォーラム独立行政法人国立病院機構では、毎年秋に国立病院総合医学会というのを開催しています。私の勤務する大阪医療センターを含む全国140病院が合同で行う学会で、診療部だけでなく、看護部や事務部も参加する一大学会です。国立病院機構の職員の間で「今度の学会には参加するのですか?」といった会話があった場合、通常はこの国立病院総合医学会を指します。第75回となる今回は、若手医師フォーラムというセッションにディスカッサントとして参加いたしました。これは、レジデントが自らの研究や症例報告を英語で発表するという野心的なものです。この際の議論を活発化させるために、ディスカッサントが何人か指名され、発表を受けてコメントや質問を行います。その後にディスカッサントらが採点を行い、研究部門と症例部門のそれぞれで最優秀発表者を選ぶことになっています。コメントや質問も英語で行うので、あらかじめ提出されている抄録を基にあれこれ想定問答を考えなくてはなりません。例によって、オンライン英会話のフィリピン人先生相手に何度も練習しました。「発表者が練習するのならわかるけど、何でディスカッサントが練習しなくちゃならないんだ」というツッコミはなしでお願いします。どんな機会も勉強のキッカケにするのは悪い事ではありません。実際に、フィリピン人先生相手に練習してみて思ったのは、我々は無意識に専門用語を使っているということです。たとえば hypocapnia という単語です。hypercapnia と共に医学領域ではしばしば使われる単語ですが、フィリピン先生はご存じではありませんでした。なので、”Let me spell it for you.” と言いながらチャットボックスに書きこむと、先生が手元のスマホか何かでチャチャッと調べて「ああ、なるほど。血液中の二酸化炭素が減っている状態を hypocapnia と言うのね、勉強になったわ」と喜んでくれます。逆に、先生が何を言っているのかわからない場合にも “Could you spell it for me?” と言ってチャットボックスに書き込んでもらいます。たとえば先生が言ったことが「ルーポール」としか聞こえず、「ちょっと書いてくれまへんか?」と頼んだところ ”loop hole” と返ってきたので、大いに納得しました。話を戻します。オンラインで行われた若手医師フォーラムでは、8人のレジデントの発表がありました。それぞれに一生懸命練習してきたことと思いますが、ディスカッサントからの質問の内容が難しい時には、振り返って画面の外にいる指導医に尋ねたりしているところは微笑ましかったです。英語や発表内容のレベルはそれぞれで、中には質問に答えるのに禁断の日本語を使った人もいました。それでも若者らしく挑戦するということが何よりも大切だと思います。私自身も、あらかじめ考えておいた質問が、発表の中で先に答えられてしまったので、慌ててその場で質問を考える羽目になり、思わずドキドキさせられました。老いも若きも、常に何かに挑戦し続けるということが大切ですね。最後に1句準備した 質問ボツで 大慌て

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原発性アルドステロン症〔PA:Primary aldosteronism〕

1 疾患概要原発性アルドステロン症(PA)は治癒可能な高血圧の代表的疾患である。副腎からアルドステロンが過剰に分泌される結果、腎尿細管からのナトリウム・水再吸収の増加による循環血漿量増加、高血圧を呈するととともに、腎からのカリウム排泄による低カリウム血症を示す。典型例では高血圧と低カリウム血症の組み合わせが特徴であるが、近年は、血清カリウムが正常な例も多く経験され、通常の診察のみでは本態性高血圧との区別がつかない。高血圧は頻度の高い生活習慣病であることから、日常診療において常にその診断に配慮する必要がある。頻度が高く、全高血圧の約3~10%を占めることが報告され、わが国の患者数は約100万人とも推計されている。典型例は片側の副腎腺腫が原因となる「アルドステロン産生腺腫」であるが、両側の副腎からアルドステロンが過剰に分泌される両側性の原発性アルドステロン症(「特発性アルドステロン症」と呼ばれてきた)もあり、最近では、前者より後者の経験数が増加している。腺腫による場合は病変側の副腎摘出により、高血圧、低カリウム血症が治癒可能で、治癒可能な二次性高血圧の代表的疾患である。一方、診断の遅れは治療抵抗性高血圧の原因となり、これに低カリウム血症、アルドステロンの臓器への直接作用が加わって、脳・心血管・腎などの重要臓器障害の原因となる。わが国の研究からも通常の高血圧より、脳卒中、心不全、心肥大、心房細動、慢性腎臓病の頻度が高いことが明らかにされていることから、早期診断と特異的治療が極めて重要である1)。腺腫によるPAでは、細胞膜のカリウムチャンネルの一種であるKCNJ5の遺伝子変異などいくつかの遺伝子異常が発見され、アルドステロンの過剰分泌の原因となることが明らかにされている。一方、両側性は肥満との関連が示唆2)されているが、病因は不明である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 自覚症状低カリウム血症がある場合は、四肢のしびれ、筋力低下、脱力感、四肢麻痺、多尿、多飲などを認める。正常カリウム血症の場合では、高血圧のみとなり、血圧の程度に応じて頭痛などを認めることもあるが、非特異的な症状であり、本態性高血圧との区別はつかない。■ どのようなケースで疑うか正常カリウム血症で特異的な症状を認めない場合は本態性高血圧症と鑑別が困難なことから、すべての高血圧患者でその可能性を疑う必要があるが、ガイドラインでは特にPAの頻度が高い高血圧患者を対象として積極的にスクリーニングすることを推奨している(表)3)。表 PAの頻度が高いため、特にスクリーニングが推奨される高血圧患者低カリウム血症合併(利尿薬投与例を含む)治療抵抗性高血圧40歳未満での高血圧発症未治療時150/100mmHg以上の高血圧副腎腫瘍合併若年での脳卒中発症睡眠時無呼吸症候群合併(文献3より引用)■ 一般検査所見代謝性アルカローシス(低カリウム血症がある場合)、心電図異常(U波、ST変化)を認めることがある。典型例では低カリウム血症を認めるが、正常カリウム血症の症例が多い。また、血清カリウム濃度は(1)食塩摂取量、(2)採血時の前腕の収縮・伸展、(3)溶血などのさまざまな要因で変動することから、適宜、再評価が必要である。■ スクリーニング検査血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)を測定し、両者の比率アルドステロン/レニン活性比(ARR)≧200以上かつPAC≧60pg/mLの場合に陽性と判定する。ARRは分母であるPRAに大きく依存することから、偽陽性を避けるためにPACが一定レベル以上であることを条件としている。従来、PACはラジオイムノアッセイにより測定されてきたが、本年4月から化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)に変更され、それに伴ってPAC測定値が大幅に低下した。このためARR100~200の境界域も暫定的に陽性とし、個々の例で患者ニーズと臨床所見を考慮して検査方針を判断することが推奨される。■ 機能確認検査スクリーニング陽性の場合、アルドステロンの自律性・過剰産生を確認するために機能確認検査を実施する。カプトプリル試験、生食負荷試験、フロセミド立位試験、経口食塩負荷試験がある。カプトプリル試験は外来でも実施可能である。フロセミド立位試験は起立に伴い低血圧を来すことがあるので、前2つの検査が実施困難な場合を除き、推奨されない。一検査が陽性の場合、機能的にPAと診断する。測定法の変更に伴い、陽性判定基準も見直されたため注意を要する。約25%にコルチゾール同時産生を認めるため、明確な副腎腫瘍を認める場合には、デキサメタゾン抑制試験(1mg)を実施する。降圧薬はレニン・アルドステロン測定値に影響するため、可能な限り、Ca拮抗薬、α遮断薬の単独あるいは併用が推奨されるが、血圧コントロールが不十分な場合は、血圧管理を優先し、ARBやACE阻害薬を併用する。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の影響は比較的大きいが、高血圧や低カリウム血症の管理が困難な場合は、適宜使用する必要がある。■ 局在・病型診断病変が片側性か両側性か、片側性の場合、右副腎か左副腎かを明らかにする。副腎摘出術の希望がある場合に実施する。まず副腎腫瘍の有無を確認するため造影副腎CTを実施するが、PAの腺腫は小さいことから、約60%はCTで腫瘍を確認できない。一方、明確な腫瘍を認めても非機能性腺腫の可能性があり、腫瘍の機能評価はできない。このため、確実な局在・病型診断には副腎静脈サンプリングが最も推奨される。副腎静脈血中のアルドステロン濃度/コルチゾール濃度比の左右差(Lateralized ratio)にて病変側を判定する。侵襲的なカテーテル検査であり、技術に習熟が必要であることなどから、専門医療施設での実施が推奨される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 主たる治療法副腎腫瘍を有する典型的な片側性PAでは腹腔鏡下副腎摘出術が第1選択、両側性や手術希望が無い場合は、MR拮抗薬を主とする薬物治療を行う。片側性PAでは手術による降圧効果が薬物治療より優れることが報告されている。通常の降圧薬のみで血圧コントロールが良好であっても、PAではアルドステロン過剰に対する特異的治療(手術、MR拮抗薬)による治療が推奨される。スクリーニング陽性であるが、機能確認検査を初めとする精査を実施しない場合、臨床所見の総合判断に基づき、MR拮抗薬投与の必要性を検討する。■ 診断と治療のアルゴリズム日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズムを図に示す3)。PAの頻度が高い高血圧患者でスクリーニングを行い、陽性の場合に機能確認検査を実施する。1種類の検査が陽性判定の場合に臨床的にPAとし、CT検査さらには、患者の手術希望に応じて副腎静脈サンプリングを実施する。機能確認検査以降の精査は、専門医療施設での実施が推奨される。局在・病型診断の結果に基づき、手術あるいは薬物治療を選択する。図 日本内分泌学会PAガイドラインにおける診療アルゴリズム3)画像を拡大する(文献3より引用)4 今後の展望局在・病型診断には副腎静脈サンプリングが標準的であるが、侵襲的検査であるため、代替えとなる各種バイオマーカー4)、PETを用いた非侵襲的画像診断法5)の開発が進められている。MR拮抗薬に変わる治療薬として、アルドステロン合成酵素の阻害薬の開発が進められている。PAの多くが両側性PAであることから、その病因解明、適切な診断、治療方針の確立が必要である。5 主たる診療科診断のスタートは高血圧の診療に従事する一般診療クリニック、市中病院の内科などである。スクリーニング陽性例は、内分泌代謝内科、高血圧内科などの専門外来に紹介する。副腎静脈サンプリングの実施が予想される場合は、それに習熟した専門医療施設への紹介が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)「重症型原発性アルドステロン症の診療の質向上に資するエビデンス構築(JPAS)」研究班(研究開発代表者:成瀬光栄)(医療従事者向けのまとまった情報)「難治性副腎疾患の診療に直結するエビデンス創出(JRAS)」研究班(研究開発代表者:成瀬光栄)(医療従事者向けのまとまった情報)「難治性副腎腫瘍の疾患レジストリと診療実態に関する検討」研究班(主任研究者:田辺晶代)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Ohno Y, et al. Hypertension. 2018;71:530-537.2)Ohno Y, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103:4456-4464.3)日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン策定と診断水準向上」委員会 編集.原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021.診断と治療社;2021.p.viii.4)Nakano Y, et al. Eur J Endocrinol. 2019;181:69-78.5)Abe T, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101:1008-1015.公開履歴初回2021年11月11日

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誰に?いつから?緩和ケアのニーズを見極める「この問い」【非専門医のための緩和ケアTips】第15回

第15回 誰に?いつから?緩和ケアのニーズを見極める「この問い」緩和ケアの実践に当たって、必ず議論になるのが「いつからやるか問題」です。限られた時間の中で、適切なタイミングと対象に緩和ケアを届ける必要があります。それを見極める便利な方法を教えます。今日の質問高齢患者が多い内科の開業医です。外来で人生の最終段階に向けた話し合いをしたいと思うのですが、どの患者さんにいつすべきなのか悩みます。通院できる間に、急に悪くなったときや看取りを見据えた話をしたいのですが、いきなり始めるのも失礼になりそうで…。ニーズを見極める方法はありますか?入院時は患者さんもご家族も自然と今後について考えるでしょうが、通常の外来では切迫した病状の方は少なく、どのタイミングで最期に向けての話し合いに取り組めばよいのか迷う方も多いでしょう。ですが、意思表明ができなくなる状況も見据え、早い段階から時間をかけて患者さんと対話しておくことは、外来でしかできない緩和ケアの実践です。時間の限られた外来で緩和ケアを必要とする患者さんを見つけるために、何かよい方法はあるでしょうか?こうした状況は日本だけでなく海外でも同様のようで、ニーズを持つ患者さんを見つけることを緩和ケア領域では「緩和ケアニーズのスクリーニング」と呼んでいます。スクリーニングの方法はいろいろあるのですが、外来で手軽に使えるのが「サプライズ・クエスチョン」という方法です。これは「この患者さんが1年以内に亡くなったら、医師であるあなたは驚きますか?」という質問に対し、その答えが「驚かない」であれば、緩和ケアニーズが存在する可能性があり、介入を検討するきっかけにする、というものです。どうですか、簡単でしょう? たった1つの自問自答だけです。私自身も外来で診ていた患者さんについて、「あの患者さん、CPAで救急外来に搬送されて亡くなりました」とスタッフから連絡をもらったことがありました。急なことと感じつつも、高齢で徐々にADLが低下していた患者さんだったので、驚きまではありませんでした。そして、「あの患者さんに、外来での緩和ケアを実践すべきだった」と反省しました。「サプライズ・クエスチョン」、皆さんの診療環境でも活用してみてはいかがでしょうか? 検査も何も必要とせず、医療者の経験や印象で検討することができます。看護師の視点からも考えてもらい、「驚かない」となったら、その方に合った緩和ケアについて一緒に検討してもらうこともよいでしょう。今回のTips今回のTips「この患者さんが1年以内に亡くなったら驚くか?」という自問自答が、緩和ケアニーズの見極めに役立ちます。

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第83回 相次ぐ列車内事件で見えた「孤独・孤立」問題、対策に医療者が関与する余地は?

走行中の列車内を狙った事件が相次いでいる。容疑者の年齢は20〜60代と幅広い。東京・京王線の車内で乗客17人に切りつけ、放火した20代の男は「人を殺して死刑になりたかった」、九州新幹線の車内に火をつけようとした放火未遂の疑いで逮捕された60代の男は「火を放って自殺しようとした」などと警察に供述しているという。いずれも身勝手な理由だが、もしも彼らが孤独・孤立対策のネットワークとつながっていたら、犯罪を未然に防げたかもしれない。たとえば、そこに医療者が関与する余地はないだろうか。コロナ禍では経済的な理由や孤独・孤立などで自殺者数が急増し、とくに女性と若者の増加が注目された。厚生労働省と警察庁によると、2020年の自殺者数は約2万1,000人で、対前年比では4.5%増えた。2021年は、9月末時点で約1万5,900人に上り、前年と同じようなペースで増えている。菅 義偉政権は21年4月、イギリスに次いで世界で2番目の「孤独・孤立対策担当大臣」を設置(第1次岸田内閣では野田 聖子氏)、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」も設置したが、孤独・孤立対策は緒に就いたばかりだ。医療現場では「孤独が問題になっている患者」が増加イギリスでは、国民の7人に1人、65歳以上の10人に3人が孤独を感じているという。孤独によって身体的・精神的健康を損ない、それによる経済的損失は年間320億ポンド(約4.9兆円)に上るという。そこで政府は、孤独は個人の問題ではなく、国を挙げて取り組むべき課題と判断し、エビデンスの構築や国民への啓蒙、分野横断的な孤独対策などが計画された。日本の場合、一人暮らしをしている65歳以上の高齢者は、大切な人との離別や定年退職、リストラ、病気、引っ越しなどによる心身のストレスがもたらす「寂しさ」を訴えている。全世帯のうち、独居世帯は3分の1を超え、未婚率(50歳時)は男性3割弱、女性2割弱と急増。医療情報専門サイトm3.comの調査によれば、4割弱の医師が「孤独が問題になっている患者」が増えたと回答している。孤独・孤立は心血管疾患・認知症・がんのリスク要因孤独・孤立が健康に及ぼす影響については、海外では1970年代から疫学研究が蓄積されている。東京都健康長寿医療センター研究所の村山 洋史氏によると、心血管疾患では「つながりの少なさ」が冠動脈疾患で29%、脳卒中で32%、発症を増加。認知症では「社会参加の乏しさ」が41%、「対人接触の少なさ」が57%、「孤独感」が58%、発症を増加させると報告されている。がんの死亡についても「ソーシャルネットワークが大きい」と20%、「ソーシャルサポートが豊富」だと、リスクが25%減少した。孤独・孤立は死亡リスクにも影響し、「一人暮らし」で32%、「社会的孤立」で29%、「孤独感」で26%高まることが示された。興味深いのは、「社会的孤立」が、その主観にかかわらず「孤独感」と同じく有害であったことだ。医療者が地域の「つながり」生む戦略的対策の1つに孤独・孤立対策には、社会的サポートの強化や社会的交流の機会の増加など「社会的孤立」を防ぐ取り組みが必要だろう。それは人間関係を再構築するだけでなく、予防医学的観点からも重要だ。医療者の関わり方について、高齢化が進む大規模団地で地域コミュニティの構築を目指している自治会長は次のように語る。「住民たちはかかりつけ医が決まっており、住民と医師のマンツーマンの関係はあるのだが、地域を丸ごと診てくれる医師はいない。医師会が地域に担当医を割り当て、継続的に地域全体のケアに関わってもらいたい。地域を支えるには自治体、社会福祉協議会、民生委員の3本柱がうまく機能することが重要だが、ここに医療者が加わって4本柱になるのが理想だ」。地縁・血縁・社縁が弱まり、人々が孤独・孤立に陥りやすくなっている日本。「つながり」を戦略的に生み出す対策には、医療者の関与が重要なカギになるかもしれない。

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Webベースの認知症BPSDケアプログラムの普及促進のために

 COVID-19パンデミックとその結果引き起こされたソーシャルディスタンスの順守は、認知症患者の精神神経症状を誘発する可能性があるといわれている。東北大学の中西 三春氏らは、認知症の精神神経症状に対応するためのWebベースの心理社会的介入プログラムの有効性およびWebベースツールを利用する認知症介護者に対するeラーニングトレーニングコースの有用性を評価した。JMIR Medical Education誌2021年10月12日号の報告。 本研究は、東京において準実験的研究として実施された。eラーニングコースは、2020年7月~12月に専門の介護者に対し3回実施した。コースを修了した介護者は、認知症患者の精神神経症状レベルを評価するため、Webベースツールを介したNeuropsychiatric Inventory(NPI)合計スコアを用いた。主要アウトカムは、2021年3月までNPI評価のフォローアップを実施した介護者数およびベースラインから最新の評価までのNPIスコアの変化とした。2019年7月~2020年3月に対面によるトレーニングコースを完了した専門の介護者を対照群とし、情報を入手した。 主な結果は以下のとおり。・2020年にeラーニングコースを完了した介護者は268人であった。・患者268例中63例が認知症患者であり、56例(20.9%)がフォローアップ評価を実施できた。・平均NPIスコアは、ベースライン(20.4±16.2)から最新のフォローアップ評価(14.3±13.4)まで有意な減少が認められた。・エフェクトサイズは、中程度であると推定された(Cohen's drm=0.40)。・対面によるトレーニングコースを完了した介護者(対照群)は252人であった。・患者252例中114例(45.2%)がフォローアップ評価を実施できた。・eラーニングコースを完了した介護者は、対照群と比較し、フォローアップ評価を実施する割合が有意に低かった(χ2=52.0、p<0.001)。・NPIスコアの変化は、トレーニングコースの種類で違いは認められなかった(coefficient=-0.61、p=0.69)。 著者らは「対面トレーニングをeラーニングに変更することで、これまでプログラムに参加できなかった専門の介護者にDEMBASE認知症ケアプログラムへ参加する機会を創出することができた。どちらのトレーニングコースでもプログラムの効果は同等であったが、再現性は最適ではなく、eラーニングコースを受けた介護者の実施レベルは低かった。実現可能性を改善するためには、実施や技術支援の動機付けを提示できる戦略を開発する必要がある。また、オンラインコミュニティを使用したプログラムについても調査する必要がある」としている。

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