コロナワクチンのブースター、オミクロン株に最も有効なのは?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/10

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」(AstraZeneca製)または「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の2回接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)による症候性疾患への防御効果は限定的である。BNT162b2または「mRNA-1273」(Moderna製)ワクチンによるブースター接種によって、ワクチン有効性は大幅に増大するが、時間の経過とともに減弱する。英国健康安全保障庁(UKHSA:U. K. Health Security Agency)のNick Andrews氏らが、オミクロン株感染者約89万人を対象にイングランドで行った診断陰性(test-negative)デザイン法(TND)による症例対照試験の結果を報告した。オミクロン変異株によるCOVID-19症例の急増によって、現行ワクチンの有効性に関する懸念が生じている中で本検討は行われた。NEJM誌オンライン版2022年3月2日号掲載の報告。

ワクチン3種のプライマリ接種+3種ブースター接種の有効性を検証

 研究グループは、オミクロン変異株とデルタ変異株による症候性疾患へのワクチン有効性を推定するため、イングランドで診断陰性症例対照試験を行った。ワクチン有効性は、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、またはmRNA-1273のそれぞれ2回接種後について算出し、また、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、mRNA-1273のいずれかのブースター接種後の有効性を検証した。

対オミクロン変異株へのワクチン有効性は、対デルタ変異株より低下

 2021年11月27日~2022年1月12日に、オミクロン変異株感染者88万6,774例とデルタ変異株感染者20万4,154例、および診断陰性症例対照試験の適格者計157万2,621例を特定した。

 検証した全時点および2回のプライマリ接種と1回のブースター接種のワクチンの全組み合わせにおいて、ワクチン有効性は、対デルタ変異株が対オミクロン変異株より高かった。また、ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種後20週では、オミクロン変異株に対するワクチン有効性はまったく認められなかった。BNT162b2を2回接種後2~4週では、同有効性は65.5%(95%信頼区間[CI]:63.9~67.0)だったが、25週以降では8.8%(7.0~10.5)に低下した。mRNA-1273ワクチン2回接種後2~4週でも、同有効性は75.1%(70.8~78.7)だったが、25週以降では14.9%(3.9~24.7)に低下した。

 ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種群において、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は62.4%(95%CI:61.8~63.0)に上昇したが、10週以降では39.6%(38.0~41.1)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は70.1%(69.5~70.7)に上昇したが、5~9週以降では60.9%(59.7~62.1)に低下した。

 BNT162b2の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は67.2%(95%CI:66.5~67.8)に上昇したが、10週以降では45.7%(44.7~46.7)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は73.9%(73.1~74.6)に上昇したが、5~9週以降では64.4%(62.6~66.1)に低下した。

 mRNA-1273の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週では、ワクチン有効性は64.9%(95%CI:62.3~67.3)、mRNA-1273ブースター接種後の2~4週では同66.3%(63.7~68.8)だった。5週以降については被験者数が不十分で検証結果は得られていない。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 山口 佳寿博( やまぐち かずひろ ) 氏

山梨大学 医学部 呼吸器内科 臨床教授

健康医学協会附属 東都クリニック

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