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第102回 私が見聞きした”アカン”医療機関(後編)日大板橋の外来の和式便所に驚く、私学助成金全額不交付で新病院はどうなる?

十数年ぶりに訪れた日大板橋病院こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、「まん延防止等重点措置」も解除されたということで、茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。一昨年末、食道がんの手術をした先輩は、術後しばらくは激ヤセし、体力も落ちて、農業も開店休業の状態でした。しかし、約1年かけてリハビリに励んだ結果、農業再開の目処が立ち、「レタスやネギの定植を行うので手伝いに来てほしい」という応援依頼が来たのです。というわけで、仲間と馳せ参じたのですが、働いたのは土曜午前のみ。午後から雨が降って来たので、納屋で仲間とお酒を飲みながら、麻雀をしてその日は終わりました。手積みの麻雀は久しぶりで、皆ミスを連発。こちらも相応のリハビリが必要と感じた次第です。さて、今回は、「第100回 私が見聞きした“アカン”医療機関(前編)時間外接種費用の上乗せ不正請求、処方箋の応需義務違反」「第101回 私が見聞きした“アカン”医療機関(中編) オンライン診療、新しいタイプの“粗診粗療”が増える予感」と続けてきた、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関の最終回です。最後は私の体験です。2ヵ月ほど前にある取材で、日本大学医学部附属板橋病院(東京都板橋区)を訪れました。日大板橋病院を訪れるのは実に十数年振りでしたが、病院に加え、隣の医学部の建物もボロボロなのに驚きました。昨年から今年にかけて同病院の建て替え計画を巡る背任事件や、同大学の前理事長の脱税事件が大きな社会問題となって世間を騒がせました。訪れた同病院は外観を見るだけでも、さすがにこれは全面建て替えが必要だ…と実感できるほどでした。【その4】全国有数の大学病院で和式便器とはさて、取材時間よりも早く病院に着いたため、周囲をウロウロ見学しているうちに便意を催してしまった私は、病院本館1階の外来診療フロアに入って、トイレを探しました。やっと見つけた男子トイレで「大」の扉を開くと、そこにあったのは和式便器でした。今どき、都内有数の大学病院の外来が和式便器とは、正直驚きました。「トイレは和式じゃないと」という患者に配慮した結果なのでしょうか? 仮にそうだとしても、この和式便器では虚弱な高齢者は用を足せません。足せたとしても立ち上がれないでしょう。病院がボロボロであること以前に、この時代、高齢者が多数訪れる外来のトイレが和式便器というのは“アカン”ですね。相撲部OBだという前理事長であっても、75歳の身体でこのトイレを使ったら、用を足した後はもう立ち上がれなかったのではないでしょうか。ということで、私自身も立ち上がれない恐怖もあったため、フロアの他のトイレを探し、なんとか洋式便器を見つけて事なきを得ました。震度6強~7の地震で倒壊・崩壊の危険性が「高い」と診断調べてみるとこの日大板橋病院は、いわくつきの建物でした。2018年3月、東京都は、1981年の法改正前の旧耐震基準で建てられた東京都内の大規模な商業ビルやマンションなどについて耐震診断を行い、その結果を公表しています。それによれば、地上8階、地下2階の日大板橋病院は、震度6強~7の地震で倒壊・崩壊の危険性が「高い」と診断されていたのです。同病院が現在の地に新築移転したのは、万国博覧会が大阪で開かれた1970年と今から半世紀も前です。その後、板橋キャンパスにはさまざまな建物が建てられましたが、病院本体はその時のままです。病院の隣に建っている医学部の臨床教育棟などはひょっとしたらそれよりも古いかもしれません。日大への2021年度私学助成金は全額不交付に一方、今回の前理事長の脱税事件や元理事らによる背任事件を受け、文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団は、日大への2021年度の経常費補助金(私学助成金)を全額不交付とする決定を1月26日に下しています。前理事長の所得税法違反事件や元理事らによる背任事件といった不祥事が相次ぎましたが、大学が説明責任などを十分に果たしていないことから、とくに厳しい処分が下された模様です。日大には、2020年度は全国の私大で2番目(一番は早稲田大学)に多い約90億円が交付されていました。不交付の場合は原則として翌年度も不交付になり、その後も当面減額されるのが通例です。不交付や減額が複数年続くとすると、その金額は300〜400億円近くに上るとみられます。ちなみに日大は2018年度もアメリカンフットボール部の反則タックル問題や医学部の不適切入試を受け、私学助成金が35%減額されています。「都内トップクラスの患者数を受け入れ」た意味私学助成金の不交付や減額によるマイナスは、新病院の建て替え費用と匹敵するほどの額とも言われています。そうなると、私学助成金の不交付の穴を、これまで積み立てて来た新病院の建設費用を取り崩して埋めることになるかもしれません。そう考えると、日大板橋病院が、コロナ対応で「都内の患者数受け入れトップクラス」(NHKニュースなど)と頑張った意味も見えてきます。ちなみに同病院は2022年2月時点で、新型コロナの中等症や重症患者向けに60床を確保していました。こうしたコロナへの積極対応は、一連の事件による、日大のイメージダウンを挽回するだけでなく、コロナ病床に対する補助金で金銭的ダメージもカバーしようという経営的な意図もあったと考えられます。大学病院クラスでコロナに積極的に取り組めば、数十億円規模の利益が出ているはずです。これで私学助成金90億円のマイナスの幾ばくかは埋め合わせることができるでしょう。いずれにせよ、大地震で災害医療の拠点となるはずの大学病院が倒壊しまっては、それこそ洒落にもなりません。倒壊の恐れのない、洗浄機付き洋式便器がしっかり設置された新しい病院が早くできることを願っています。

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COVID-19患者の脱毛症、特徴が明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が報告されている脱毛症患者について、米国・マイアミ大学のBetty Nguyen氏らが系統的レビューとメタ解析を実施。男性型脱毛症は、重症新型コロナウイルス感染症のリスク因子である可能性が認められ、一方で休止期脱毛症は新型コロナウイルス感染症の後遺症としての出現が認められること、また円形脱毛症は概して、円形脱毛症既往患者に再発として認められることを報告した。新型コロナウイルス感染症は男性型脱毛症、休止期脱毛症、円形脱毛症と関連することが示されているが、これまで包括的なデータ分析は行われていなかった。JAAD International誌オンライン版2022年2月22日号掲載の報告。休止期脱毛症はコロナ後遺症として出現 研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、新型コロナウイルス感染症関連の脱毛症のタイプ、発生率、時期および臨床アウトカムの特徴付けを行った。PubMed/MEDLINE、Scopus、Embaseにて、“脱毛症(alopecia)”または“髪(hair)”およびCOVID-19の検索単語を用いて、2019年11月~2021年8月に発表された論文を検索した。 新型コロナウイルス感染症と脱毛症におけるメタ解析の主な結果は以下のとおり。・新型コロナウイルス感染症を有した脱毛症患者について描出した41の原著論文を特定した。・レビューには、新型コロナウイルス感染症を有した脱毛症患者1,826例(平均年齢54.5歳、男性54.3%)を包含した。・最も一般的にみられた脱毛症のタイプは、男性型脱毛症(全体の30.7%、男性では86.4%)、休止期脱毛症(19.8%、男性では19.3%)、円形脱毛症(7.8%、男性では40.0%)であった。・男性型脱毛症を呈したコロナ陽性患者全員が、男性型脱毛症既往であり(100%)、男性型脱毛症は、新型コロナウイルス感染症に先んじて認められた。・休止期脱毛症を呈したコロナ陽性患者は、概して休止期脱毛症は非既往で(93.6%)、休止期脱毛症は新型コロナウイルス感染症によって新たに引き起こされたものであった。・円形脱毛症を呈した新型コロナウイルス陽性患者は、ほとんどが円形脱毛症既往で(95.1%)、円形脱毛症は概して円形脱毛症既往の患者で発生が認められるものであった。

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インターネット・ゲーム依存に対する治療の有効性比較~メタ解析

 インターネット・ゲーム依存は、小児や若年成人に負の影響を及ぼす可能性のある精神疾患の1つである。台湾・中央研究院のChuan-Hsin Chang氏らは、インターネット・ゲーム依存に対する薬物療法および心理社会的介入の推定効果を包括的に比較するため、ランダム化比較試験や最新メタ解析を用いて、メタ回帰分析を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2022年2月24日号の報告。 インターネット依存およびインターネット・ゲーム依存に対する介入を検討した研究(2000~17年)をPubMed、MEDLINE、Cochrane Library、Airiti Libraryより検索した。選択された29論文より124研究が抽出された。対象は、小児、若年成人のインターネット依存およびインターネット・ゲーム依存患者5,601例。 主な結果は以下のとおり。・プールされた標準化平均差(SMD)のメタ解析では、インターネット依存およびインターネット・ゲーム依存に対する治療介入の高い効果が示唆された(予備的ランダム効果:1.399、95%信頼区間:1.277~1.527)。・交絡リスク(年齢、出版年、対象者の種類、研究の種類)で調整した後、最も効果的な治療オプションは、薬物療法と認知行動療法(CBT)またはマルチレベルカウンセリング(MLC)の併用療法であることが明らかとなった。・より効果的な測定方法は、オンラインで過ごす時間(p=0.006)またはインターネット依存の重症度(p=0.002)に関する尺度を使用することであった。・うつ病を合併している患者では、他疾患を合併している若年患者と比較し、アウトカム不良であった。・対応するモデルの適合度指数は、τ2=1.188、I2-Residual=89.74%、Adjusted-R2=16.10%であった。 著者らは「インターネット・ゲーム依存の若年患者にとって、薬物療法とCBTまたはMLCの併用療法は、効果的な治療戦略である可能性が示唆された」としている。

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ペムブロリズマブの非小細胞肺がんアジュバントがPD-L1発現問わずDFS延長/Merck

 Merck社は、2022年3月17日、第III相KEYNOTE-091試験(EORTC-1416-LCG/ETOP-8-15-PEARLS)の結果を発表した。 PD-L1発現の有無にかかわらず、外科的切除後のStage IB期(≧4 cm)〜IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブの術後補助療法が、主要評価項目の1つである無病生存期間(DFS)を有意に延長した(HR:0.76、95% CI:0.63〜0.91、p=0.0014)。DFS中央値はペムブロリズマブ53.6ヵ月で、プラセボ42.0ヵ月であった。このデータは、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のバーチャルプレナリーで発表されている。 もう1つの主要評価項目であるPD-L1高発現(TPS≧50%)では、いずれの投与群でもDFSの中央値は未達であった。ペムブロリズマブでDFSを延長したが、事前に設定された統計学的な有意性は示されていない(HR:0.82、95%CI:0.57〜1.18、p=0.14)。 主な副次評価項目である全生存期間(OS)のデータはimmatureであり、今回の中間解析の時点では統計学的な有意水準に達していなかった。試験では引き続きTPS≧50%の患者集団におけるDFSのほか、OSについて評価を実施する。本試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、これまでに報告されている試験の結果と一貫していた。

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COVID-19関連の超過死亡、報告されている死亡の3倍/Lancet

 2020~21年の2年間における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による全体的な死亡への影響は、COVID-19のみに起因する死亡よりもはるかに大きく、全年齢層における世界的な超過死亡の割合は10万人当たり平均120人であり、300人を超えた国は21ヵ国に及ぶことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らCOVID-19 Excess Mortality Collaboratorsの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年3月10日号に掲載された。超過死亡を系統的解析で評価 研究グループは、2020年1月1日~2021年12月31日の期間の、191の国と領土、および252の地域におけるCOVID-19の世界的流行による超過死亡の推定を目的に、COVID-19関連死亡の報告書を系統的に解析した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。 この調査では、上記期間とその最大11年前までの期間における週ごとまたは月ごとのあらゆる原因による死亡(総死亡)の報告書が、世界74の国と領土、および266の地域(低・中所得国の31の地域を含む)から収集された。また、インドの12州から超過死亡データが得られた。 経時的な超過死亡者数は、観測死亡者数(死亡登録の遅れや、熱波などの異常気象の影響を受けた期間のデータは除外)から予測死亡者数を差し引いた値とされた。予測死亡者数の推定には6つのモデルが用いられ、最終的な推定値はこれらを融合したモデルに基づいて算出された。 世界的な死亡記録は不完全であるため、総死亡のデータがない地域や期間の超過死亡率を予測する統計モデルが構築された。国、地域、世界レベルでの超過死亡者数の平均値と95%不確実性区間(UI)が算出され、最終的なモデルに基づいてサンプル以外での予測妥当性の検証が行われた。COVID-19関連の超過死亡率、報告されている死亡率の3.07倍 2021年12月31日までの2年間に、世界で報告されたCOVID-19による死亡者数は594万人であったが、COVID-19の世界的流行による超過死亡者数は1,820万人(95%UI:1,710万~1,960万)と推定された。 この期間の世界の全年齢層におけるCOVID-19による死亡率は人口10万人当たり39.2人で、COVID-19の世界的流行による超過死亡率は人口10万人当たり120.3人(95%UI:113.1~129.3)であり、超過死亡率の実際の死亡率に対する比は3.07(2.88~3.30)であった。超過死亡の負担の程度には各国で大きなばらつきが認められ、COVID-19の世界的流行による超過死亡率が人口10万人当たり300人を超えたのは21ヵ国であった。 地域別でCOVID-19による超過死亡者数が多かったのは、南アジア(527万人[95%UI:471万~570万])、北アフリカ/中東(173万人[157万~199万])、東ヨーロッパ(139万人[137万~141万])の順であった。 国別でCOVID-19による超過死亡者数が多かったのは、インド(407万人[95%UI:371万~436万])、米国(113万人[108万~118万])、ロシア(107万人[106万~108万])、メキシコ(79万8,000人[74万1,000~86万7,000])、ブラジル(79万2,000人[73万~84万7,000])、インドネシア(73万6,000人[59万4,000~95万5,000])、パキスタン(66万4,000人[49万8,000~84万7,000])の順であった。 これらの国のうち、超過死亡率が最も高かったのは、ロシア(人口10万人当たり374.6人[95%UI:369.7~378.4])とメキシコ(325.1人[301.6~353.3])であり、ブラジル(186.9人[172.2~199.8])と米国(179.3人[170.7~187.5])は同程度であった。 日本は、COVID-19による死亡者数が1万8,400人、COVID-19の世界的流行による超過死亡者数は11万1,000人(95%UI:10万3,000~11万6,000)であった。また、COVID-19による死亡率は10万人当たり7.3人、COVID-19の世界的流行による超過死亡率は10万人当たり44.1人(95%UI:41.0~46.4)であり、超過死亡率の実際の死亡率に対する比は6.02(5.58~6.33)だった。 著者は、「それぞれの国・地域から実際に報告されたCOVID-19による死亡と、COVID-19関連の超過死亡との間に認められた大きな差は、COVID-19対策やモニタリング、評価の取り組みでは、超過死亡推定値の使用が重要であることを浮き彫りにするものである」としている。

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抗TNFα抗体製剤治療中のIBD患者、2回目の新型コロナワクチン接種後の免疫応答が低下

 抗TNFα抗体製剤は、炎症性腸疾患(IBD)などの免疫介在性炎症性疾患の治療に頻繁に用いられる生物学的製剤の1つだ。これまで抗TNFα抗体製剤は、肺炎球菌やインフルエンザワクチン接種後の免疫応答を減弱させ、重篤な呼吸器感染症リスクを増加させることが知られていた。しかし、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンに対するデータは不足していた。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのSimeng Lin氏らは、インフリキシマブ(抗TNFα抗体製剤)またはベドリズマブ(腸管選択的抗α4β7インテグリン抗体製剤)で治療中のIBD患者において、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体濃度やブレークスルー感染の頻度を比較した。Nature Communications誌2022年3月16日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者7,226例を連続して登録した。そのうち新型コロナウイルス感染歴のないインフリキシマブ治療中の2,279例とベドリズマブ治療中の1,031例を対象とした。被験者はファイザー製BNT162b2ワクチン、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれかを接種し、2回目のワクチン接種から14~70日後に抗体が測定された。 主な結果は以下のとおり。・2回目のBNT162b2ワクチン接種後、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗SARS-CoV-2スパイク(S)受容体結合ドメイン(RBD)抗体の幾何平均濃度(SD)が低く、半減期が短かった(566.7 U/mL[6.2]vs.4,555.3 U/mL[5.4]、p<0.0001、26.8日[95%CI:26.2~27.5]vs.47.6日[45.5~49.8]、p<0.0001)。・ChAdOx1 CoV-19ワクチンでも同様に、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗S RBD抗体の幾何平均濃度が低く、半減期が短かった(184.7 U/mL[5.0]vs.784.0 U/mL[3.5]、p<0.0001、35.9日[34.9~36.8]vs.58.0日[55.0~61.3]、p<0.0001)。・新型コロナウイルスのブレークスルー感染は、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて頻度が高かった(5.8%[201/3,441]vs.3.9%[66/1,682]、p=0.0039)。・ワクチン接種前に新型コロナウイルス感染歴がある患者では、治療薬にかかわらず、より高く持続した抗体レベルが認められた。 著者らは「抗TNFα抗体製剤で治療中の、リスクを有する患者においては、個々に適したワクチン接種スケジュールの検討が必要な可能性がある」と述べた。

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BRCA変異陽性高リスク早期乳がん患者への術後オラパリブ、OSも改善(OlympiA)

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する、オラパリブ(商品名:リムパーザ)の術後投与が、全生存期間(OS)を有意に延長した。本試験(第III相OlympiA試験)の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であり、主要解析結果は、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会で初めて発表され、NEJM誌に同時掲載されている。今回、2022年3月16日に行われた欧州臨床腫瘍学会のバーチャルプレナリーで、OSの最新の結果が発表された。・対象:根治的局所療法および術前/術後薬物療法が完了したgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者 1,836例・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)を1年間投与 921例・対照群:プラセボ(1日2回)を1年間投与 915例・評価項目:[主要評価項目]ITT集団におけるiDFS[副次評価項目]遠隔無再発生存期間(DDFS)、OS、QOL、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・OSにおいて、オラパリブはプラセボと比較し、死亡リスクを32%低下させた(ハザード比:0.68、98.5%信頼区間:0.47~0.97、p=0.009)。・3年生存率は、プラセボ群89.1% vs.オラパリブ群92.8%であった。・4年生存率は、プラセボ群86.4% vs.オラパリブ群89.8%であった。・本試験におけるオラパリブの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一貫していた。 また、2022年3月11日、AstraZenecaおよびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米およびカナダ以外ではMSD)は、第III相OlympiA試験の結果に基づき、オラパリブがgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する術後薬物療法として、米国で承認を取得したことを発表した。

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ちびまる子ちゃん(続々編)【その教室は社会の縮図? 男子校と女子校の危うさとは?(恋愛能力)】Part 1

今回のキーワード中学受験男女別学恋愛(生殖)における非認知能力恋愛心理の臨界期「反応性恋愛障害」恋愛の機能男性の恋愛能力女性の恋愛能力昨今、中学受験のための教育熱が加熱しているようです。その中でも、とくに男子校と女子校のエリート中学校は人気があります。その理由は、異性を意識せずに学業に専念して、将来的にエリート大学に入学してエリート職に就くことを多くの親が見越しているからでしょう。または、同性同士で切磋琢磨して、「個性が際立つ」という意見もあるようです。とくに女子は、リーダーシップを育むことができるという意見もあるでしょう。そのベネフィットがある一方で、そのリスクはないでしょうか? ベネフィットばかりに目が向き、そのリスクをあまり気にしていない親が多いようです。そして、そのリスクについて、アカデミックに掘り下げた記事があまり見当たりません。この答えを探るために、今回も、アニメ「ちびまる子ちゃん」のキャラクターを使います。このアニメのキャラクターたちは、前回の記事で、小学校のエリート教育のリスクの考察のために登場してもらいました。今回は、ちびまる子ちゃんのクラスメイトを選抜した男子校と女子校を想定し、そこから男女別学のリスクを、恋愛心理の視点で明らかにします。そして、その根拠を、脳科学的に、発達心理学的に、そして進化心理学的に掘り下げます。さらに、恋愛を「能力」として捉え直し、恋愛の機能を解き明かします。最後に、共学であっても別学であっても、私たち(または私たちの子どもたち)はどうすればいいのかという恋愛の本質に迫ってみましょう。なお、今回は、異性愛に焦点を当てています。同性愛や性別違和(性同一性障害)については、割愛します。男子校と女子校に進学しそうなキャラクターは?ちびまる子ちゃんのクラスメイトは、まる子をはじめとするさまざまなキャラクターがいました。その中で、男子校と女子校のエリート中学校に進学しそうなキャラクターは誰でしょうか?エリート中学校が選ぶ基準は、基本的に試験の学力(認知能力)と小学校の内申点(学校活動)です。これを踏まえて、誰が合格するかを一緒に想像してみましょう。(1)エリート男子校最も合格する可能性が高いのは、丸尾君です。彼は、生真面目キャラで、勉強熱心であることに加えて、学級委員になることに執着する典型的な優等生です。前回の記事で彼と一緒にエリート小学校にいそうであると考察した花輪クンも合格する可能性はあります。ただし、花輪クンは、学校活動に丸尾君ほど積極的ではない点で、どちらかで言うと、丸尾君が選ばれるでしょう。そもそも、花輪クンは、セレブキャラで、語学力がすでにあるため、海外のエリート学校に行ってしまうかもしれません(2)エリート女子校最も合格する可能性が高いのは、みぎわさんです。彼女は、思い込みキャラですが、丸尾君と同じく、勉強もできて、学級委員を務めあげる優等生です。ちなみに、前回の記事で彼女と一緒にエリート小学校にいそうであると考察した城ヶ崎さんは、みぎわさんほど合格の可能性は高くないです。その理由は、城ヶ崎さんは、お嬢様キャラで、とくに勉強熱心ではなく、学校活動もみぎわさんほどしていないからです。むしろ、城ヶ崎さんは、エリート中学校にいるとしたら、エリート小学校からエスカレーター式に上がってきている場合でしょう。そして、そのまま女子大まで進学しそうなキャラクターでしょう。なお、たまちゃんは、しっかり者キャラで優等生であるため、合格する可能性はあります。前回の記事で、彼女は、小学校受験では、頑張ったとしても、父親が変わり者であるため、親子面接で惜しくも落とされると考察しました。中学受験では、親子面接がないことが多いため、可能性が出てきます。ただし、彼女は、友達を大事にするキャラクターなので、まる子と一緒に公立中学校に進学する道を選ぶでしょう。男女別学のリスクとは?ちびまる子ちゃんのキャラクターの中で、エリート男子校にいる典型的なキャラクターは丸尾君で、エリート女子校にいる典型的なキャラクターはみぎわさんであることがわかりました。それでは、ここから、この2人のキャラクターをイメージしながら、男女別学のリスクを大きく3つ挙げ、脳科学的に解釈してみましょう。(1)身近にいる異性を好きになれない-消極性エリート男子校に進学した思春期の丸尾君、エリート女子校に進学した思春期のみぎわさんは、勉強に部活(おそらく文化系)に励むでしょう。しかし、1日に多くの時間を過ごすその学校には、異性はいません。その代わりとして、ネット・アニメ・マンガなどに出ている理想化された異性のアイドルやキャラクターへの思い入れを強めてしまうでしょう。理想化された男性は、昔から「王子様」と呼ばれています。最近、理想化された女性は「女神」と呼ばれているようです。そして、その分、必然的に、実際の現実的な異性を好きになる経験が少なくなるでしょう。男女別学のリスクの1つ目は、身近にいる異性を好きになれない、つまり恋愛への消極性です。実際に、ある結婚相談所でのアンケート調査で、「(実は)結婚したくない」と回答した人は、共学出身の男性が18%であるのに対して、男子校出身者は28%であることがわかっています。また、共学出身の女性が8%であるのに対して、女子校出身者は11%であることがわかっています。つまり、とくに男子校出身者は結婚に消極的になりがちであることが示唆されました。女性よりも男性にこの傾向が見られる原因として、もともと男性は女性よりも共感性が低いという性差が考えられます。これは、恋愛の量的な問題と言えます。なお、「結婚したくないけど、身近にいる異性を好きになる」人は、そもそも結婚相談所に入らないことが想定されますので、除外します。「(実は)結婚したくない」のに結婚相談所に入っている理由は、親など周りからの推奨(または圧力?)が推測されます。自分の意に反して親などに従ってしまう点で、自分らしい人生を送ることへの消極性も、伺えます。また、現実的な異性との結婚には消極的ですが、相変わらず「王子様」や「女神」との結婚を夢見ていることも、伺えます。しかしながら、男子校出身者については、この婚活における内面的なディスアドバンテージが、エリートになることによる社会的地位や経済力などの外面的なアドバンテージによって、ある程度緩和または相殺されている可能性はあります。つまり、エリート男性になった丸尾君は、実は結婚に消極的ですが、婚活ではモテてしまうということです。男女別学は、それだけ現実の異性への「惚れ慣れ」ができなくなるリスクがあると言えます。この「惚れ慣れ」は、恋愛(生殖)における自発性(非認知能力)とも言い換えられます。脳科学的に言えば、これは、現実的な異性を好きになる経験の積み重ねによる快感(ドパミン活性化)によって高まると考えられます。(2)異性をそのまま受け止められない-ストレス脆弱性思春期の丸尾君は、女子たちが時に情緒的になるのを見慣れることはありません。一方で、思春期のみぎわさんは、男子たちが理屈っぽくなるのを見慣れることはありません。そして、そんな2人は、異性を好きになって告白してフラれたり、付き合って喧嘩別れしたり、仲直りしたりする経験を積み重ねることはありません。一方で、「王子様」や「女神」は、当然ながらアイドルビジネスであるため、彼らを気持ち良くさせる都合の良いリアクションを徹底的に演じます。そんな「王子様」にみぎわさんは、かなりハマってしまいそうです。そして、その分、必然的に、実際の現実的な異性を理解する経験が少なくなるでしょう。男女別学のリスクの2つ目は、異性をそのまま受け止められない、つまり恋愛へのストレス脆弱性です。実際に、結婚相談所でのアンケート調査の結婚相手に求める条件において、「性格」「金銭感覚」の項目の割合は、共学出身の男性と女性のどちらも、男子校出身者と女子校出身者を上回ったのに対して、「家柄」「同じ出身地」の項目の割合は、男子校出身者と女子校出身者のどちらも、共学出身の男性と女性を上回ることがわかっています。さらに、男子校出身者は「収入」「仕事内容(勤務先)」、女子校出身者は「自分の両親との良好な関係」「容姿」の項目を重視する傾向があることがわかりました。つまり、共学出身の男性と女性はより内面を、男子校出身者と女子校出身者はより外面を重視する傾向があることが示唆されました。この原因として、男子校出身者と女子校出身者は、相手選びにおいて、わかりにくい内面よりも、わかりやすい外面(スペック)に頼ってしまうことが考えられます。さらに、恋愛において、異性を理解する経験が少ないと、自分自身を理解する経験も少なくなる、つまり自分自身をそのまま受け止められないリスクもあります。なぜなら、恋愛は、自分が受け止めるだけでなく、相手から受け止めてももらう「合わせ鏡」(相互作用)で成り立っているからです。つまり、丸尾君は「女神」を求め続ける永遠の「少年」になってしまい、みぎわさんは「王子様」を待ち続ける永遠の「お姫様」になってしまうということです。結果的に、大人と大人の関係として、内面的に自分に合う(釣り合う)相手を見極めることを軽視してしまい、相手選びの外面的なハードルばかりが上がってしまいます。また、フラれた場合、納得ができず、ついストーカー行為をしてしまう場合もあるでしょう。これは、恋愛の質的な問題と言えます。男女別学は、それだけ現実の「異性慣れ」ができないリスクがあると言えます。この「異性慣れ」は、生殖におけるセルフコントロール(非認知能力)とも言い換えられます。脳科学的に言えば、これは、現実的な異性を受け止める経験(曝露)の積み重ねによるストレス耐性(セロトニン不活性化の抑制)によって高まると考えられます。(3)異性と一緒にいて楽しめない-排他性思春期の丸尾君とみぎわさんは、それぞれの男子校と女子校で、同性のクラスメイトたちとの連帯感(同調性)を強めるでしょう。これは、「男子校ノリ」「女子校ノリ」と呼ばれています。また、丸尾君やみぎわさんがそれぞれ思い入れるアニメやマンガで登場する「女神」や「王子様」は、どんどん積極的にアプローチしてくるので、丸尾君やみぎわさんは何もしなくても良いことになります。これは、多くの人が望む性的ファンタジーです。だからこそ、そういうストーリーがよく作られるわけです。そして、よく売れます。そしてまたよく作られるというからくりがあります。現実の異性は違うことを、実体験として理解することが難しくなります。つまり、同性同士の連帯感と理想化した異性との性的ファンタジーが高まる分、必然的に、実際の異性と一緒にいる時間を積極的に楽しむ経験が少なくなるでしょう。男女別学のリスクの3つ目は、異性と一緒にいて楽しめない、つまり恋愛への排他性です。実際に、イギリスの研究調査において、共学出身の男性よりも、男子校出身者のほうが、42歳までに離婚や別居に至るリスクがやや高いということがわかっています。この原因として、異性と一緒にいて楽しむ経験を積むことがなく、楽しもうと積極的になっていないことにより、一緒にいることがむしろ苦痛に感じてしまうことが考えられます。たとえば、男性はどうしていいかわからずに楽しく思えない、女性は受け身になって不満に感じるだけで楽しく思えないことです。さらに、「男性なんだから女性の気持ちを考えてリードしてほしい(察してほしい)」「女性が急に怒るのはやめてほしい(説明してほしい)」など、相手の問題にすり替えてしまい、許せなくなってしまうことです(認知的不協和)。とくに、女性は、男性から性的に見られることに慣れていない場合は、一緒にいることがただの苦行になってしまいます。そして、結果的に、ますます恋愛経験を積むチャンスが減ってしまいます。男女別学は、それだけ現実の異性との「交際慣れ」ができないリスクがあると言えます。この「交際慣れ」は、恋愛(生殖)における共感性(非認知能力)とも言い換えられます。脳科学的に言えば、これは、異性と一緒にいる経験の積み重ねによる同調(オキシトシンとドパミンが連動的に活性化)によって高まると考えられます。次のページへ 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ちびまる子ちゃん(続々編)【その教室は社会の縮図? 男子校と女子校の危うさとは?(恋愛能力)】Part 2

どうやって恋愛能力を高めるの?男女別学のリスクとは、身近にいる異性を好きになれない(消極性)、異性をそのまま受け止められない(ストレス脆弱性)、異性と一緒にいて楽しめない(排他性)であることがわかりました。言い換えれば、現実の異性への「惚れ慣れ」(自発性)、「異性慣れ」(セルフコントロール)、「交際慣れ」(共感性)という恋愛(生殖)における非認知能力が高まらないことがわかりました。つまり、恋愛を「能力」として、捉え直すことができます。名付けるなら、恋愛能力です。これは、心理学者フロムの「愛するという技術(art of loving)」という名言を裏付けます。それでは、どうやってこの恋愛能力を高めましょうか? 言い換えれば、どうやって異性を好きになり、受け止め、一緒にいて楽しめるのでしょうか?その答えは、現実の異性への「惚れ慣れ」「異性慣れ」「交際慣れ」をとくに思春期にすることです。つまり、思春期にこそ、この生殖における非認知能力を高める練習をする必要があるということです。この理由を、愛着形成や性格形成のメカニズムをヒントにして、癖になりやすさ(嗜癖性)の臨界期の観点から、発達心理学的に掘り下げてみましょう。なお、臨界期とは、特定の刺激に対して脳(脳神経回路)が反応しやすい(可塑性が高い)特定の時期です。これは、反応しやすくなる時期と反応しにくくなる期限があることを意味します。期限があるのは、次のステップ(発達段階)に進むために必要な脳のメカニズムであると考えられています。(1)愛着という能力は乳児期に高まる愛着とは、乳児が授乳する母親にくっついていたいと思うことです。これは、抱っこや愛撫などの親との肌の触れ合いの刺激に繰り返し曝されることで、乳児の脳内のオキシトシンとドパミンが連動的に活性化され、親を後追いする愛着行動として発達していきます。このメカニズムがなければ、乳児はおっぱいをもらうアピールができずに餓死してしまうかもしれません。この点で、愛着は、依存行動(嗜癖)であると同時に能力であると言えます。名付けるなら、愛着能力です。この依存形成(愛着形成)の期間(臨界期)は、生後半年から2歳までの乳児期であることがわかっています。つまり、授乳期に一致します。この期間で、愛着能力が高まり、特定の親への愛着が固定化されるのです。逆に言えば、臨界期がなければ、次々と違う大人への愛着行動を示してしまい、親子の絆が定まらなくなります。また、この期間に、ネグレクト(虐待)によって愛着行動をしていないければ、愛着は充分に形成されません。これは、反応性愛着障害と呼ばれます。なお、愛着の嗜癖性の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)性格という能力は児童期・思春期で高まる性格とは、周りの人に対しての、その人の感じ方、考え方、行動の仕方です。これは、学校環境(社会環境)での友達とのかかわりの刺激に繰り返し曝されることで、子どもの脳内のドパミン、セロトニン、オキシトシンが主に活性化され、周りの人たちにうまくつながっていようとする社会適応行動として発達していきます。このメカニズムがなければ、子どもは社会に出て周りとうまくやっていきたいと思えず、社会生活をするのが難しくなります。この点で、性格も、愛着と同じく、依存行動(嗜癖)であると同時に能力であると言えます。名付けるなら、社会適応能力です。この依存形成(性格形成)の期間(臨界期)は、児童期と思春期であると考えられます。つまり、義務教育の期間にほぼ一致します。この期間で、社会適応能力が高まり、アイデンティティという性格が固定化されるのです。それ以降は30歳くらいまでに徐々に可塑性がなくなっていくと考えられます。逆に言えば、臨界期がなければ、自分の性格も相手の性格も定まらず、人間関係を安定して築くのが難しくなるでしょう。また、この期間に、不登校、いじめ、非行などによって社会適応行動をしていなければ、性格は適応的には形成されないリスクがあります。これは、パーソナリティ障害と呼ばれます。なお、性格の嗜癖性の詳細については、関連記事2をご覧ください。(3)恋愛という能力は思春期に高まる恋愛とは、すでにご説明した通り、異性を好きになり、受け止め、一緒にいて楽しめることです。そして、これは、実際の異性とのかかわりの刺激に繰り返し曝されることで、思春期特有の性ホルモンが活性化され、脳内のドパミン、セロトニン、オキシトシンの活性化とあいまって、異性に近づこうとする恋愛行動として発達していくことが考えられます。この点で、恋愛も、愛着や性格と同じように考えれば、依存行動(嗜癖)であると同時に能力であると言えます。この依存形成(恋愛心理の形成)の期間(臨界期)は、まさに思春期であると推定されます。その一番の根拠は、性ホルモンを分泌する生殖器の発達が10~20歳までの思春期に限定されていることです。実際に、初恋の年齢で最も多いのは10歳前後で、その初恋相手で最も多いのはクラスメイトであることがわかっています。逆に、10歳以降にクラスメイトなどの実際の異性からの刺激を極端に排除すれば、先ほどのアンケート調査で示されたように、量的にも質的にも恋愛行動での問題が現れるというわけです。つまり、この期間で、恋愛能力が高まり、見た目や性格などの異性の好みのタイプ(恋愛心理)が固定化されるのです。それ以降は30歳くらいまでに徐々に可塑性がなくなっていくと考えられます。逆に言えば、臨界期がなければ、新しく別のタイプの異性を好きになる可能性があり、特定の好みの異性とのパートナーシップを安定して築くのが難しくなるでしょう。ちょうど、友情は、児童期で不特定多数の友達たちによって量的に育まれますが、思春期になると同じ好みや考え方の特定少数の親友によって質的に育まれていきます。同じように、恋愛心理は、思春期である程度の異性のクラスメイトたちによって量的に育まれますが、成人期になると好みのタイプの特定の交際相手によって質的に育まれていくと言えるでしょう。これは、成人期の発達段階(エリクソンによる)である親密性を裏付けます。ちなみに、不倫については、まったく別の生殖戦略になります。この心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。よって、男女別学だけでなく、共学であっても、この期間に、恋愛行動をある程度していなければ、恋愛能力が充分に高まらないと言えます。この状態は、名付けるなら「反応性恋愛障害」です。なお、これは、理想化した異性は好きだけど実際の異性は好きになれないという葛藤がある場合に限定します。そもそも異性そのものが好きではない同性愛や無性愛(アセクシャル)は除外します。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ちびまる子ちゃん(続々編)【その教室は社会の縮図? 男子校と女子校の危うさとは?(恋愛能力)】Part 3

なんで恋愛は「ある」の?恋愛能力が高まるのがとくに思春期である理由は、性ホルモンを分泌する生殖器の発達がこの思春期に限定されているからであることがわかりました。それでは、そもそもなぜ恋愛は「ある」のでしょうか? 言い換えれば、そもそもなぜ異性を好きになり、受け止め、一緒にいて楽しめる心が「ある」のでしょうか?進化心理学的に言えば、その答えは、セックスだけでなく、セックスの先にある子育ても含めた包括的な生殖の適応度を上げるために必要だからです。これは、恋愛の機能と言えます。この根拠として、思春期の女性の妊娠のしにくさ(妊娠能力の低さ)が挙げられます。これは、初潮直後(平均12歳)から15歳までの妊娠能力はほぼ0で、15歳以降に徐々に高まり、22歳で最大になることです。つまり、思春期の女性はたとえ頻繁にセックスをしても妊娠率が極端に低い現象です。もちろん、原始の時代に避妊具はありません。この現象は、類人猿にある程度存在すると考えられていますが、ほかの哺乳類には見られないことがわかっています。この訳は、この時期に妊娠しないことで、より生殖に有利な相手選び(配偶者選択)ができるからであると考えられています。たとえば、それは体格や運動能力などの身体的特徴です。さらに、人間の場合は、子育てで協力関係を築くことができるという性格的特徴も挙げられます。また、自分自身も協力関係を築く練習ができるからであると考えられます。もしも、この時期にあっさり妊娠してしまったら、恋愛能力の高い相手探しも自分の恋愛能力を高める練習もできないために、その後の子育てで協力関係が築けず、生殖の適応度を下げてしまう可能性があります。なお、思春期の男性の妊娠のさせにくさ(妊娠能力の低さ)については、不明です。おそらく、男性については、妊娠能力は低くなっていないことが推測されます。その理由として、男女の生殖戦略の違いが挙げられます。それは、男性(精子)はなるべく多くの女性(卵子)を求める一方、女性(卵子)はなるべく優れた男性(精子)を求めることです。なぜなら、精子は小さくコストがかからないのでたくさんつくれるのに対して、卵子は大きくコストがかかるので限られているからです。ただし、思春期の男性の妊娠能力が低くなくても、その相手となる思春期の女性の妊娠能力が低いだけで、子どもはできないので、結果的には、思春期の男性も恋愛能力を高める練習ができると考えられます。グラフ2に示すように、初恋(平均10歳)が初潮(平均12歳)や精通(平均14歳)よりも先行しており、恋愛心理の形成の臨界期(10~20歳)が女性の妊娠能力が最大になる時期(22歳)よりも先行しています。つまり、恋愛心理の形成と妊娠能力の高まりにはタイムラグがあることがわかります。逆に、もしも、恋愛心理そのものが「ない」としたら、初恋のタイミングで初潮や精通が来るはずです。そして、そのタイミングで妊娠ができるはずです。これは、ほかの哺乳類に当てはまります。そうならなかったのは、そうした人類の種は、長い進化の歴史の生殖の適応度を下げて、淘汰されたことが示唆されました。なんで思春期の恋愛は軽んじられているの?進化心理学的に言えば、恋愛が「ある」のは、セックスだけでなく、セックスの先にある子育ても含めた包括的な生殖の適応度を上げるために必要だからであることがわかりました。この恋愛心理は、約700万年前に人類が誕生して、約300万年前に夫婦で子育てをするようになってから、長い時間の中で進化してきました。にもかかわらず、現在、思春期の恋愛は軽んじられているようです。なぜでしょうか?その答えは、日本で約1000年前の平安時代から近代まで続いた封建社会の文化(権威主義的パーソナリティ)の影響が残っているからです。この心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。この文化は、個人よりも社会の秩序、つまり上下関係に重きを置きます。よって、結婚相手は、個人の意思よりも親(社会)の意向が優先されます。つまり、個人の意思(恋愛能力)がなくて受け身であっても(むしろ受け身であったほうが)、結婚できたのでした。しかし、時代は変わりました。現代は、封建社会の文化とは対照的な個人主義の文化(民主主義的パーソナリティ)が広がっています。この社会構造では、逆に受け身(恋愛能力を高めていない)ままだと、結婚がうまく行かないリスクが出てきてしまったのでした。結局、恋愛にどうすればいいの?恋愛能力が軽んじられる原因は、封建社会の文化(権威主義的パーソナリティ)の影響が残っているからであることがわかりました。この状況を踏まえて、結局、私たち(私たちの子どもたち)は、恋愛にどうすればいいのでしょうか? 言い換えれば、男子校にいる丸尾君と女子校にいるみぎわさんはどうすればいいのでしょうか?その答えは、とくに思春期に恋愛の練習をすることです。そのために、学校は、勉強する(認知能力)だけでなく、性格(社会適応能力)、そして恋愛心理(恋愛能力)を育む場所であることを再認識することです。そして、勉強、部活、恋愛のバランスをもっと意識することです。たとえば、丸尾君とみぎわさんは校外の活動でより積極的に出会う必要があります。そして、18歳で卒業したら、積極的にお付き合いをして、それ以降に、恋愛のリハビリをする必要があります。共学に進むまる子とはまじをお手本にすることもできます。この2人が付き合ったとしたら、言いたいことを言い合いながらも、一緒にいて楽しんでいる様子は目に浮かぶでしょう。なお、恋愛能力の男女別の具体的なスキルについては、関連記事5、関連記事6をご覧ください。そんな丸尾君とみぎわさんの恋愛を思春期から大人になるまで温かく見守る親、そして社会の恋愛への在り方が望まれます。そうすることで、丸尾君とみぎわさんは、誰もがうらやむ「女神」や「王子様」を見つけられないけれど、自分だけのほど良い「女神」や「王子様」をパートナーに見いだすことができることに気付けるのではないでしょうか?1)「男子校/女子校出身者と婚活の関係性」についてアンケート調査:(株)パートナーエージェント2)大学生を対象とした出身高等学校の共学・別学体験に関する質問紙調査P12:茂木輝順3)進化と人間行動P224:長谷川寿一・長谷川眞理子、東京大学出版会、2000<< 前のページへ■関連記事そして父になる(その1)【もしも自分の子じゃなかったら!?(親子観)】Part 2ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 2昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 2半沢直樹【なんでやられたらやり返すの?逆に手を組むには?(ゲーム理論)】Part 3CM「あたらしい英雄、はじまる。」【対人魅力(男性編)】 CM「サントリー角」【対人魅力(女性編)】

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英語で「~だとわかった」は?【1分★医療英語】第21回

第21回 英語で「~だとわかった」は?I’d like to hear about the result of the blood test...(血液検査の結果を聞きたいのですが…)It turned out that you have diabetes.(検査の結果、あなたは糖尿病だとわかりました)《例文1》It turned out that the patient has lung cancer.(その患者は肺がんに罹患しているとわかった)《例文2》The blood test has turned out/come out to be negative.(血液検査の結果は陰性でした)《解説》“turn”という動詞には、単独では「向きを変える」などの意味がありますが、“I’m turning 40 next month.”(私は来月40歳になる)の使い方のように、「ある状態になる」といった意味もあります。“turn out”で、「〜だとわかる」「〜という結果になる」という意味になりますが、ここには「予想していた結果と異なる」というニュアンスが含まれます。同様に、“The patient turned out to be allergic to dye.”(その患者は造影剤にアレルギーがあることがわかった)などのように、対象を主語にして用いることもできます。用例としては、“The chemotherapy turned out to be effective for the patient.”([予測に反して]化学療法はその患者には有効であることがわかった)、“The patient, as it turned out, hadn’t taken his insulin for the last couple of days.”(その患者は[期待に反して]、この数日間インスリンを打っていなかったことがわかった)などもあります。一方、“come out”も「何かが明らかになる」という意味があり、こちらは予測と結果の関係によらずに使うことができます。“The result has just come out.”(ちょうど結果が出たところだ)のように使われます。講師紹介

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J-CLEAR特別座談会(5)「臨床高血圧の最近の進歩」

J-CLEAR特別座談会(5)「臨床高血圧の最近の進歩」出演東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巖 氏東京都健康長寿医療センター循環器内科専門部長 石川 讓治 氏久留米大学医療センター循環器内科教授 甲斐 久史 氏東京医科大学循環器内科教授 冨山 博史 氏福岡大学医学部衛生・公衆衛生学教授 有馬 久富 氏福岡大学医学部心臓・血管内科学 主任教授 三浦 伸一郎 氏さいたま赤十字病院 総合臨床内科 江口 和男 氏「CLEAR!ジャーナル四天王」執筆メンバーが、「臨床高血圧の最近の進歩」をテーマに、各々の専門領域の知見を基に議論を交わしたウェブ座談会の模様を全5回シリーズでお届けします。なお、この番組は2022年2月2日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。

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第105回 COVID-19後の長患いの予防や治療を見つける試験が進行中

ワクチン2回接種後14日以上経ってから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)した約3,000人(3,090人)を調べたところ、感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の発現率はワクチン非接種感染者に比べて41%低いことが示されました1)。COVID-19後遺症、すなわちCOVID-19以外では説明がつかない4週間を超えて続く症状があったと答えた人の割合はワクチン接種済み群では9.5%、非接種群では14.6%でした。そのようなCOVID-19後の長患いを減らすワクチン以外の手段の検討も始まっています2)。Merck & Coの飲み薬molnupiravir(モルヌピラビル)がCOVID-19患者の入院を阻止したり回復を早めたりできるかどうかの検討を含む英国オックスフォード大学主催のPANORAMIC試験3)では治療後3ヵ月と6ヵ月の経過が調べられます。試験の主眼ではありませんがそれらのデータが集まれば同剤で後遺症が生じ難くなるかどうかを知ることができそうです。Pfizerの飲み薬paxlovid(パクスロビド)の試験2つでも被験者の6ヵ月間の追跡が含まれています。比較的軽症のCOVID-19患者にもっぱら使われるそれらの抗ウイルス薬の検討のみならずCOVID-19入院患者の治療の長期の効果も調べられています。世界保健機関(WHO)主催の国際試験SOLIDARITYのヘルシンキ大学担当部分がその一つで、COVID-19治療の先駆けremdesivir(レムデシビル)で治療されたCOVID-19入院患者の1年間の追跡結果がまもなく揃うと研究者は見込んでいます。SOLIDARITY試験の他の2つの治療の追跡もなされています。1つは免疫抑制を担う抗TNF薬infliximab(インフリキシマブ)、もう1つは血管の炎症を鎮めうるチロシンキナーゼ阻害剤imatinib(イマチニブ)です。退院したCOVID-19患者の長期経過を改善しうる治療を見つけることを目指す英国での大規模試験HEAL-COVID4)では心血管標的薬2つが検討されています。1つは抗凝固薬apixaban(アピキサバン)で、もう1つは血管の炎症を鎮めると考えられているコレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)です。退院間近の患者に試験に参加するかどうかを尋ね、退院後1年間の再入院や死亡がそれら薬剤の使用で減らせるかどうかが調べられています。退院したCOVID-19患者の再入院は少なくなく、退院後半年足らずのうちに3人に1人近い29%は再入院する羽目に陥っており、およそ8人に1人(12%)は命を落としています4,5)。COVID-19患者が入院を終えた後の死亡の最も確からしい原因は心肺系への影響であろうとHEAL-COVID試験を率いるケンブリッジ大学の集中治療医Charlotte Summers氏は述べています。シカゴ大学の呼吸器医師Ayodeji Adegunsoye氏はCOVID-19で入院して酸素投与を必要とした患者の肺に感染後だいぶ経ってから瘢痕病変・線維化組織が増えうることを観察しており、そのような患者への免疫抑制剤sirolimus(シロリムス)の試験を始めています2)。線維化を促す細胞が肺に集まるのをシロリムスが防いでくれることを同氏は期待しています。参考1)Risk of Long Covid in people infected with SARS-CoV-2 after two doses of a COVID-19 vaccine: community-based, matched cohort study. medRxiv. February 24, 20222)Can drugs reduce the risk of long COVID? What scientists know so far / Nature3)PANORAMIC / UNIVERSITY OF OXFORD4)HEAL-COVID / HEAL-COVID5)Epidemiology of post-COVID syndrome following hospitalisation with coronavirus: a retrospective cohort study. medRxiv. January 15, 2021

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経口困難になったがん末期患者のモルヒネを持続皮下注へ切り替え【うまくいく!処方提案プラクティス】第46回

 今回は、がん末期患者の服薬負担を考慮して、モルヒネの内服薬から持続皮下注へ切り替えた症例を紹介します。一度は疼痛および服薬負担が解消され、患者さんに安心していただくことができましたが…。患者情報70歳、男性(施設入居)基礎疾患咽頭がん(骨転移、肺内転移)、糖尿病、脊柱管狭窄症、末梢動脈硬化症服薬管理施設管理処方内容1.モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル30mg 2カプセル 朝夕食後2.ベタメタゾン錠0.5mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠30mg 1錠 朝食後4.ジアゼパム錠2mg 3錠 毎食後5.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 毎食後6.ナルデメジントシル酸塩錠0.2mg 1錠 夕食後7.エスゾピクロン錠1mg 1錠 就寝前8.モルヒネ塩酸塩水和物内服液10mg/5mL 疼痛時 1回1包本症例のポイントこの患者さんは、咽頭がんの進行に伴う突発的な疼痛と呼吸苦がありました。レスキュー薬としてモルヒネ塩酸塩水和物内服液を5〜6回/日服用していて、痛みはNRS(Numerical Rating Scale)6〜7から3程度まで改善していました。しかし、咽頭の閉塞による通過障害があり、内服薬を服用するのが心身共に苦しいという状態が続いていました。訪問診療の前日にこれらの訴えを本人からヒアリングし、現況の痛みも服薬の苦痛も緩和したい、そして施設で最期を迎えたいという希望を確認しました。訪問看護師やケアマネジャーと注射薬への切り替えも手ではないかと話し合い、現行のオピオイド内服薬から持続皮下注へのスイッチをどのように提案するかを検討しました。オピオイドの換算<現行>ベース薬モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 60mg/日レスキュー薬モルヒネ塩酸塩水和物内服液 50〜60mg/日1日オピオイド総量目安110〜120mg/日単純な等価換算では、モルヒネ注50〜60mg/日相当となりますが、この等価換算はあくまで目安です。切り替え後のコントロール目標や副作用の懸念、24時間サイクルでの投与設計の都合で約50mg/日を提案することとしました。<切り替え提案内容:モルヒネ塩酸塩注射液48mg/日>モルヒネ塩酸塩注射液200mg/5mL 2管 10mLモルヒネ塩酸塩注射液50mg/5mL 2管 10mL生理食塩液 28mL総量48mL 0.2mL/時間、LOT15分、レスキュー0.2mL/回、10日間相当*1日量4.8mL→モルヒネ約10mg/mL<切り替えタイミング>モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 夕方服用時刻から切り替え処方提案と経過翌日の訪問診療に同行し、患者は通過障害から内服が困難な状況にあり、心身共に苦痛があることを医師に共有しました。そこで、内服薬から持続皮下注への切り替えについて意向を確認しました。医師も介護士や訪問看護師の報告から切り替えを検討していたようですが、具体的に何をどの程度投与するのがよいか頭を悩ませていたところだったそうです。上記の処方提案を文書で提示したところ、選択薬剤、用量も含めて提案の内容で始めることになりました。また、内服薬に関してはすべて中止し、持続皮下注のモルヒネのみの管理とする指示もありました。すぐに訪問看護師とPCAポンプの手配と接続時間を確認し、当日の夕方から切り替えたところ、レスキューボタンの使用回数は平均4〜5回/日で、患者さんも内服時の苦痛がなくなり安心している様子でした。しかし、切り替えから1週間経過するとせん妄が強くなりました。PCAポンプの接続チューブを自己抜去するなどの危険行動があったため中止となり、外用薬での治療コントロールに切り替えることになりましたが、切り替えの翌日にお亡くなりになりました。一度は疼痛コントロールができ、服薬の負担も解消することができましたが、せん妄について十分な管理ができず、反省点の残る事例でした。日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編. がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン.金原出版株式会社;2020.

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急性期双極性うつ病に対する補助的抗うつ薬治療~メタ解析

 双極性障害のうつ病相は、重篤な機能障害や疾患負荷の原因となる。双極性うつ病治療における抗うつ薬の有効性および安全性は、長年にわたり議論の対象となっている。中国・上海交通大学医学院のYuliang Hu氏らは、急性期双極性うつ病に対する、気分安定薬または抗精神病薬の単独療法と抗うつ薬の併用療法において、有効性、躁転リスク、忍容性を比較した研究についてのメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2022年2月22日号の報告。 18歳以上の急性期双極性うつ病患者を対象に、補助的抗うつ薬治療を用いた場合とそうでなかった場合における有効性および有害事象を比較した、非盲検および二重盲検のランダム化比較試験を複数のデータベースより検索した。バイアスリスクとアウトカムの評価には、コクランバイアスリスクツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は、19件であった。・補助的抗うつ薬治療は、治療反応率の改善に対し有意な効果を示さなかった(リスク比[RR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.98~1.23)。・サブグループ解析では、抗精神病薬の単独療法と比較し、抗精神病薬に補助的抗うつ薬を併用した場合において小さいながらも有意に良好な治療反応率が確認されたが、気分安定薬に併用した場合では認められなかった。・しかし、この傾向は、抗精神病薬として主にオランザピンを用いた研究により制限されていた。・補助的抗うつ薬治療は、抑うつ症状の改善に対し、臨床的に有意な影響が認められなかった(わずかな有意差が観察されるのみであった)(標準化平均差:-0.13、95%CI:-0.24~-0.02)。・躁転リスク増大との関連は認められず(RR:0.97、95%CI:0.68~1.39)、効果不十分によるドロップアウトの低さとの関連が認められた(RR:0.66、95%CI:0.45~0.98)。 著者らは「急性期双極性うつ病への補助的抗うつ薬治療は、治療反応率および抑うつ症状の臨床的改善効果について支持されなかった。一方、短期間での躁転リスク増大はなく、十分に許容されることが確認された」としている。

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人口の何%が感染?コロナの“いま”に関する11の知識(2022年3月版)/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2022年3月版)」を3月11日に公開した。これは、日本の新型コロナウイルス感染症の感染者数・重症化率・病原性、感染性、検査・治療、変異株について、現在の状況とこれまでに得られた科学的知見を11の知識としてとりまとめたもの。主な更新内容は以下のとおり。日本のコロナ感染率は2022年3月1日時点で全人口の約4.0%Q 日本では、どれくらいの人が新型コロナウイルス感染症と診断されていますか。2022年3月1日0時時点で499万4,387人が新型コロナウイルス感染症と診断され、全人口の約4.0%に相当する。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人や死亡する人はどれくらいですか。2021年7~10月に新型コロナウイルス感染症と診断された人における重症化率は0.98%(50代以下0.56%、60代以上5.0%)、死亡率は0.31%(50代以下0.08%、60代以上2.5%)だった。Q 新型コロナウイルス感染症はどのようにして治療するのですか。2022年3月1日時点で国内で承認されている治療薬一覧、重症度別の治療薬の一覧を掲載。Q 接種の始まった新型コロナワクチンはどのようなワクチンですか。接種はどの程度進んでいますか。初回(1、2回目)接種と追加(3回目)接種における接種可能なワクチンの種類と対象者、ワクチンの効果と主な副反応、年齢階級別の接種実績(2022年2月28日公表時点)の一覧表を掲載。Q 新型コロナウイルスの変異について教えてください。現在はB.1.1.529系統のオミクロン株が日本を含む世界各地で主流であることなどを記載。上記のほか、以下の6項目についてまとめられている。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化しやすいのはどんな人ですか。Q 海外と比べて、日本で新型コロナウイルス感染症と診断された人の数は多いのですか。Q 新型コロナウイルスに感染した人が、他の人に感染させる可能性がある期間はいつまでですか。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、どれくらいの人が他の人に感染させていますか。Q 新型コロナウイルス感染症を拡げないためには、どのような場面に注意する必要がありますか。Q 新型コロナウイルス感染症を診断するための検査にはどのようなものがありますか。※追記(2022年4月8日)本資料は4月8日に2022年4月版に更新された。4月版では、新型コロナウイルス感染症に診断されたのは2022年4月1日0時時点で653万8,890人(全人口の約5.2%に相当)となっている。

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COVID-19ワクチンの免疫性神経疾患リスクを検証/BMJ

 4種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種後には、免疫性神経疾患(Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎)の安全性シグナルは認められないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したワクチン未接種者ではBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群のリスクが増大していることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月16日号で報告された。英国とスペインの接種者800万人以上のコホート研究 研究グループは、COVID-19ワクチン、SARS-CoV-2感染症と免疫性神経疾患の関連の評価を目的に、人口ベースのコホート研究と自己対照ケースシリーズ研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 解析には、英国とスペインのプライマリケア診療記録のデータが用いられた。対象は、年齢18歳以上、ワクチン接種キャンペーンの開始日(英国2020年12月8日、スペイン2020年12月27日)から、データベースの利用終了日の1週間前(英国2021年5月9日、スペイン2021年6月30日)までの期間に、COVID-19ワクチンの初回接種を受け、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。さらに、2020年9月1日以降に初めて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法でSARS-CoV-2陽性となったワクチン未接種者と一般人口も、解析に含まれた。 主要アウトカムは、Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎とされた。アウトカムは、初回ワクチン接種から21日とSARS-CoV-2検査陽性から90日までの発生率、および一般人口における2017~19年の自然発生率が推定された。間接的標準化罹患比を用いて観測値と予測値の比較が行われ、自己対照ケースシリーズでは補正後罹患率比が算出された。 ChAdOx1 nCoV-19(Oxford/AstraZeneca製)接種者437万6,535例、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)接種者358万8,318例、mRNA-1273(Moderna製)接種者24万4,913例、Ad26.CoV.2(Janssen/Johnson & Johnson製)接種者12万731例と、SARS-CoV-2陽性ワクチン未接種者73万5,870例および一般人口1,433万80例が、解析の対象となった。横断性脊髄炎は解析不可能 ワクチンの初回接種を受けた参加者(年齢中央値の幅:英国56~64歳、スペイン51~62歳)は、一般人口(年齢中央値:英国48歳、スペイン47歳)よりも高齢で、英国のSARS-CoV-2感染者(年齢中央値:41歳)はワクチン接種者よりも若かった。また、ワクチン接種者は一般人口に比べ、併存疾患(自己免疫疾患、がん、糖尿病、肥満、心疾患、腎不全)の割合が高かった。 全体として、ワクチン接種後のBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群の発生率は、一般人口で予測された自然発生率と一致しており、免疫性神経疾患のリスクの増大は認められなかった。また、自己対照ケースシリーズ研究は、統計学的検出力が限定的であったためBell麻痺についてのみ行われ、どのワクチンでも安全性シグナルはみられなかった。 一方、SARS-CoV-2感染者では免疫性神経疾患の発生率が予想以上に高く、標準化罹患比は、英国ではBell麻痺が1.33(95%信頼区間[CI]:1.02~1.74)、脳脊髄炎が6.89(3.82~12.44)、ギラン・バレー症候群は3.53(1.83~6.77)であり、スペインでは、それぞれ1.70(1.39~2.08)、3.75(2.33~6.02)、5.92(3.68~9.53)であった。 横断性脊髄炎はまれで(すべてのワクチン接種コホートで5件未満)、解析は不可能だった。 著者は、「これらの知見と同様に、SARS-CoV-2感染後に免疫性神経疾患のリスクが増大したとの報告がいくつかあるが、今回の結果は、どの先行研究よりもリスクが大きかった」としている。

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第94回 研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁

<先週の動き>1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がん6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁新潟市民病院の女性医師が2016年1月に過労自殺したことをめぐり、遺族が病院を運営する新潟市に損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、新潟地裁であった。裁判長は病院を運営する新潟市側に安全配慮義務違反があったとして、約1億626万円を遺族に支払う命令を下した。この裁判は、原告の遺族側が裁判所からの求めに応じて和解案を提示したが、被告の新潟市側が応じず、今回の判決となった。裁判長は「研修医の時間外労働は160時間を超えていた月もあった」として、長時間労働と研修医の自殺との間に因果関係があると認めた。(参考)研修医過労自殺、病院側に賠償命令 「労働時間の適切な把握怠る」(朝日新聞)市民病院の研修医自殺 新潟市に賠償命じる判決(NHK)新潟市に1億626万円賠償命令 市民病院の医師過労自殺訴訟(新潟日報)2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職今年3月以降、医師の大量退職が報道されている滋賀・大津市民病院の理事長が、大津市長に対して辞意を表明したことが明らかとなった。当病院では京都大から派遣されていた外科、消化器外科、乳腺外科の医師9人のほか、泌尿器科医・脳神経外科医もそれぞれ5人が4月以降に順次退職する意向を示しており、通院患者や市民からは不安の声が上がっている。辞意を表明した理事長による外科医への退職勧告はパワハラと申告され、内部検証では「パワハラは認められない」とされたが、外科医側は納得せず、2月に弁護士による第三者委員会が設置された。今月末までに結論が出される予定で、病院側は京都大学との信頼回復に努めたいとしている。外科・消化器外科・乳腺外科については、医師の退職に伴う影響を最小限にとどめるため、4月1日から新たに派遣される消化器外科医師4名と在籍中の医師による診療体制になることを公表した。(参考)医師の大量退職問題、市民病院理事長が市長に辞意 大津市民病院(読売新聞)パワハラ申告された理事長退任へ 医師大量退職意向の大津市民病院(産経新聞)4月以降の外科等の診療体制について(大津市民病院)3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省後藤 茂之厚生労働大臣は25日、閣議後の記者会見において、塩野義製薬が開発した新型コロナに対する経口抗ウイルス薬について、承認後に100万人分を購入することについて、同社と基本合意したことを明らかにした。国内の製薬企業が開発した内服治療薬は初めて。同社は2月25日に条件付き承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を行っている。また同日、厚労省は新型コロナワクチン4回目接種の準備について、5月から開始できるように自治体に向けて通知を発出した。4回目接種でも、従来と同様にファイザー製とモデルナ製を用いる見通し。接種対象者については、「重症化リスクが高い人などに対象を絞るべきではないか」という意見も出たが、現在のところ対象者は「3回目接種を受けたすべての住民」を想定して準備を進めるよう求めている。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 国内供給に向けた厚生労働省との基本合意書の締結について(塩野義)厚労相“塩野義製薬のコロナ飲み薬 承認前提に100万人分購入”(NHK)ワクチン4回目 5月下旬めどに準備完了を 厚労省 自治体に通知(同)4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省厚労省は、23日に「第17回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。働き方改革では、すべての勤務医を対象とした時間外労働の上限規制が2024年4月以降に適用されるため、すべての病院に対して医師だけでなく経営者やメディカルスタッフも交えた「働き方改革に向けた意見交換」の会合開催を求めた。また、医師の時間外労働を削減するため、ガイドラインを用いて医師の労働時間短縮計画を立てるなど、各病院に対して本格的に取り組むよう求めている。一方、日本病院会や全日本病院協会などを含む四病院団体協議会(四病協)は、2024年からの規制強化で産婦人科や救急医療に影響が出るとして、当直時間を時間外労働時間(残業時間)から外せる宿日直許可の基準緩和を求めている。今後、医療現場で働き方改革を見据えたさらなるタスクシフトなどが進んでいくだろう。(参考)「働き方改革に向けた病院内の意見交換会」、すべての病院で実施してほしい―医師働き方改革推進検討会(Gem Med)宿日直許可基準、医師について緩和してほしい―四病協(同)医師労働時間短縮計画作成ガイドライン(案)(厚労省)5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がんがん患者が死亡前に「体の苦痛が少なく過ごせた」と感じていた割合は42%に過ぎないことが、国立がん研究センターによる国内最大規模の実態調査で明らかとなった。調査では、2017~18年に亡くなったがん患者の遺族を地域別に無作為に選び、19~20年にアンケートを実施。5万4,167人の遺族から回答を得た。また、29%が亡くなる前1週間に強い痛みを感じていたとする結果も公表された。遺族視点での評価ではあるが、この結果から、がん終末期の患者の苦痛を十分に和らげることができていない状況について「改善の余地がある」と専門家は意見している。(参考)がん終末期「苦痛少なく」は4割にとどまる 国がんが遺族5万人調査(朝日新聞)がん終末期3割に強い痛み 遺族調査、緩和ケアに課題(共同通信)がん患者の人生の最終段階の療養生活の実態調査結果 5万人の遺族から見た全体像を公表(国がん)6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳高久 史麿元日本医学会会長が24日に死去した。25日、高久氏が会長を務める地域医療振興協会が発表。同氏は東京大学の第三内科教授、医学部長を経て、1996〜2012年まで自治医科大学の学長を務め、名誉学長となったほか、国立国際医療研究センター名誉総長、東京大名誉教授でもあった。04年には日本医学会の第6代会長に就任し、血液学の専門を生かして骨髄バンクの設立に貢献したほか、医師研修制度の見直しのための検討会など多くの公務についた。1971年に論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞。94年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受章した。(参考)日本医学会 元会長 高久史麿さん死去 91歳(NHK)元日本医学会会長の高久史麿氏が死去 MRの資格制度化に尽力 直前まで認定制度改革の議論に携わる(ミクスonline)

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