サイト内検索|page:552

検索結果 合計:35155件 表示位置:11021 - 11040

11021.

うつ病の早期寛解の予測因子

 抗うつ薬による治療反応は、患者ごとに大きく異なり、治療前に予測することは困難である。NTT西日本九州健康管理センタの阿竹 聖和氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびミルタザピンの治療反応と相関するサイトカイン、これらサイトカインが各抗うつ薬治療による寛解の予測因子となりうるかについて、調査を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年3月9日号の報告。 抗うつ薬治療前の患者95例を対象に、酵素結合免疫吸着測定法を用いて、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の分析を行った。うつ症状の評価は、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて4週間調査した。 主な結果は以下のとおり。・SSRI治療群では、非寛解者よりも寛解者において、ベースライン時のGM-CSFレベルが有意に高かった(p=0.022)。・ミルタザピン治療群では、非寛解者よりも寛解者において、ベースライン時のTNF-αレベルが有意に高く(p=0.39)、IL-2レベルは有意に低かった(p=0.32)。・ミルタザピン治療群では、ROC曲線で算出されたTNF-α(10.035 pg/mL)およびIL-2(1.170 pg/mL)のカットオフ値が寛解率を予測する因子であることが示唆され、寛解率はそれぞれ31.3%から60.0%および50.0%に増加することが推定された。・SSRI治療群では、GM-CSF(0.205 pg/mL)をカットオフ値として用いることで、寛解率が37.0%から70%と約2倍に増加することが推定された。 著者らは「抗うつ薬治療前のTNF-α、IL-2、GM-CSFの血漿濃度は、SSRIまたはミルタザピンによる寛解率を予測する因子である可能性が示唆された」としている。

11022.

小児の乳製品摂取量と片頭痛との関連

 片頭痛は、病因が明らかになっておらず、理解不十分な病態生理学的経路を伴う疾患である。乳製品の摂取量と小児の慢性的な症状および片頭痛との関係についてのデータを充足するため、イラン・テヘラン医科大学のShadi Ariyanfar氏らは本研究を実施した。Iranian Journal of Child Neurology誌2022年冬号の報告。 3次医療圏の頭痛クリニックにおける人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は7~14歳の小児290例。片頭痛の診断は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の基準を用いて神経内科医が行った。人口統計学的および人体測定学的特性を収集した。食事摂取量の調査には、検証済みの半構造化された食事摂取頻度調査票(food frequency questionnaire:FFQ)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ケースグループの小児は、平均年齢、平均BMIが有意に高かった(p=0.000)。・セカンド回帰モデルでは、片頭痛のオッズ比(OR)は、低脂肪乳製品の摂取量が第2三分位で48%(OR:0.52、95%信頼区間[CI]:0.27~1.00)、第3三分位で53%(OR:0.47、95%CI:0.24~0.92)の減少が認められた(P trend=0.03)。・完全に調整されたモデルにおける片頭痛のORは、第2三分位で0.48(95%CI:0.24~0.95)、第3三分位で0.46(95%CI:0.21~0.96)であった(P trend=0.04)。・高脂肪乳製品の摂取量がより多い小児は、エネルギー、ペストリー、単糖、スナック菓子、硬化油の摂取量も多かった(p<0.05)。 著者らは「低脂肪の乳製品をより多量に摂取すると、小児および青年期の片頭痛リスク低下に寄与することが示唆された。これらは、食事成分の微量栄養素や生物活性含有量に起因する可能性がある」としている。

11023.

乳がん検診10年の偽陽性リスク、乳房トモシンセシスvs.デジタルマンモグラフィ

 デジタル乳房トモシンセシスによる乳がん検診は、デジタルマンモグラフィより偽陽性率が低い可能性がある。米国・カリフォルニア大学デービス校のThao-Quyen H. Ho氏らは、デジタル乳房トモシンセシスまたはデジタルマンモグラフィによる10年間の検診で、偽陽性の累積リスクを推定した結果、デジタル乳房トモシンセシスのほうが低く、また、モダリティの違いよりも隔年検診・高齢・非高濃度乳房が偽陽性率の大幅な低下と関連することが示された。JAMA Network Open誌2022年3月1日号に掲載。 本研究は、Breast Cancer Surveillance Consortiumの126の放射線施設において、2005年1月1日~2018年12月31日に前向きに収集したデータを用いた効果比較研究で、40~79歳の90万3,495人の結果を2021年2月9日から9月7日まで分析。乳がん診断と死亡の競合リスクを考慮し、年1回もしくは隔年でデジタル乳房トモシンセシスまたはデジタルマンモグラフィで10年間検診後、追加画像診断・短い間隔での経過観察の推奨・生検の推奨について1回以上の偽陽性リコールの累積リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・90万3,495人の女性における296万9,055回の検診(初回検診を除く)の画像を、放射線科医699人が読影した。・検診時の平均年齢(SD)は57.6(9.9)歳、60歳未満での検診が58%、高濃度乳房は46%、トモシンセシスでの検診が15%だった。・年1回の検診では、10年間における1回以上の偽陽性の累積確率はデジタルマンモグラフィに比べトモシンセシスで有意に低かった。全リコールは49.6% vs.56.3%(差:-6.7、95%CI:-7.4~-6.1)、短い間隔での経過観察の推奨で16.6% vs.17.8%(差:-1.1、95%CI:-1.7~-0.6)、生検の推奨で11.2% xs.11.7%(差:-0.5、95%CI:-1.0~-0.1)だった。・隔年の検診でも、偽陽性の累積確率は、デジタルマンモグラフィに比べトモシンセシスで有意に低かった(35.7% vs.38.1%、差:-2.4、95%CI:-3.4~-1.5)が、短い間隔での経過観察の推奨(10.3% vs.10.5%、差:-0.1、95%CI:-0.7~0.5)、生検の推奨(6.6% vs.6.7%、差:-0.1、95%CI:-0.5~0.4)では有意な差はなかった。・デジタルマンモグラフィに対するトモシンセシスでの偽陽性の累積確率の減少は、年1回検診した非高濃度乳房の女性で最も大きかった。・モダリティにかかわらず、偽陽性の累積確率は、年1回の検診より隔年の検診、年齢が若い患者より高い患者、extremely dense breastの女性よりentirely fattyの女性で大幅に低かった。

11024.

NK1受容体拮抗型制吐薬ホスネツピタント承認 /大鵬薬品

 大鵬薬品とヘルシングループは、2022年3月28日、NK1受容体拮抗型制吐薬ホスネツピタント(製品名:アロカリス)について、抗悪性腫瘍薬(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)の効能・効果で製造販売承認を取得した。NK1受容体拮抗型制吐薬ホスネツピタント、ホスアプレピタントとの有効性を比較 化学療法に伴い発現する悪心・ 嘔吐は、患者のQOLに負の影響をおよぼし、化学療法の施行を妨げる原因となる。ガイドラインでも積極的な予防対策が推奨されている。  今回のNK1受容体拮抗型制吐薬ホスネツピタントの承認は、高度催吐性抗悪性腫瘍薬(シスプラチン)投与患者を対象に、パロノセトロンおよびデキサメタゾン併用下で、NK1受容体拮抗型制吐薬ホスネツピタントとホスアプレピタントの有効性および安全性を比較した第III相試験(CONSOLE6) の結果に基づいたもの。本試験成績は、Journal of Clinical Oncology に掲載された。

11025.

医療従事者への4回目接種、その効果は?/NEJM

 イスラエルの医療従事者を対象に、3回目接種から4ヵ月後にファイザー製およびモデルナ製の新型コロナワクチンを投与した結果、4回目接種後の中和抗体価は投与前の9~10倍に増加した。一方で3回目接種後のピーク反応との比較から、著者らはmRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大となる可能性が示唆されたとしている。イスラエル・Sheba Medical CenterのGili Regev-Yochay氏らによる非盲検非無作為化臨床試験の結果が、NEJM誌オンライン版2022年3月16日号のCORRESPONDENCEに掲載された。医療従事者への4回目接種による効果、感染予防より発症予防のほうがより高い Sheba HCW COVID-19コホートに登録された適格な医療従事者1,250人のうち、154人が3回目接種から4ヵ月後にBNT162b2(ファイザー製)の4回目の投与を受け、その1週間後に120人がmRNA-1273(モデルナ製)を投与された。それぞれの参加者について、残りの参加者の中から年齢をマッチさせた2人の対照者が選定された。 研究期間はBNT162b2投与群が2021年12月27日~2022年1月30日、mRNA-1273投与群が2022年1月5日~2022年1月30日。同期間は感染率が極めて高く、毎週PCR検査による綿密なアクティブサーベイランスが行われていたため、ポアソン回帰モデルによりワクチンの有効性も評価された。期間中分離された株の100%がオミクロン株であった。 医療従事者への4回目接種の効果を研究した主な結果は以下のとおり。・BNT162b2投与群の平均年齢は59.0(30~85)歳、mRNA-1273投与群の平均年齢は55.1(29~87)歳だった。・医療従事者への4回目接種後、どちらのmRNAワクチンもSARS-CoV-2受容体結合ドメインに対するIgG抗体を誘導し、中和抗体価が上昇した。・4回目接種後の各測定値は9~10倍に増加し、3回目の投与後に達成された抗体価よりもわずかに高くなり、2つのワクチン間に有意差はなかった。・両ワクチンとも、オミクロン株およびその他のウイルス株(デルタ株、野生株)に対する中和能が約10倍に増加し、3回目の投与後の反応と同様であった。・4回目接種後、多くの接種者で軽度の全身および局所症状が報告されたものの、実質的な有害事象の報告はなかった。・試験期間中、対照群では25.0%がオミクロン株に感染していたのに対し、4回目接種のBNT162b2群では18.3%、mRNA-1273群では20.7%だった。・SARS-CoV-2感染に対する4回目接種によるワクチン有効性は、BNT162b2では30%(95%信頼区間[CI]:-9~55)、mRNA-1273では11%(95%CI:-43~44)だった。・感染した医療従事者の多くは、対照群、介入群ともに、ごく軽度の症状を訴えた。しかし多くは、比較的高いウイルス量(Ct値≤25)を有していた。・また、4回目接種によるワクチンの効果は発症予防効果のほうがより高いと推定された(BNT162b2群で43%、mRNA-1273群で31%)。 著者らは、本データは4回目のmRNAワクチン接種が、免疫原性、安全性、およびある程度の有効性(主に症候性疾患に対して)を有することを示すとした一方、4回目接種による初期反応と3回目接種によるピーク反応を比較したところ、体液性反応やオミクロン特異的中和抗体のレベルには大きな違いは見られなかった。 これらの結果から、mRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大になり、4回目の接種で抗体レベルが回復する可能性が示唆されたとし、医療従事者の感染に対するワクチン有効性は低く、ウイルス量が比較的多いことから、感染者が感染能を有することがわかった。高齢者や脆弱な集団に対する評価は行われていないが、健康な若い医療従事者への4回目のワクチン接種は、わずかな利益しか得られない可能性があるとしている。

11026.

左房機能低下は認知症発症と関連/JAMA

 心エコーで評価した左房機能の低下は、その後の認知症のリスク増加と有意に関連しており、左房容積は関連していないことを、米国・ミネソタ大学のWendy Wang氏らが、地域住民を対象とした前向きコホート研究「Atherosclerosis Risk in Communities study:ARIC研究」で示した。著者は「今回の所見は、左房機能障害が認知症のリスク因子になり得ることを示唆するものである」とまとめている。左房の機能や大きさの変化が特徴である心房ミオパチーは、心房細動とは無関係に虚血性脳卒中と関連していることが知られる。心房ミオパチーの心電図マーカーは認知症と関連しているが、断層(2D)心エコーで評価した左房機能や大きさが認知症と関連しているかどうかについては不明であった。JAMA誌2022年3月22日・29日号掲載の報告。前向きコホート研究で、左房機能や容積と認知症との関連を探索的に解析 ARIC研究は、登録開始時(1987~89年)の年齢が45~64歳の黒人および白人からなる地域住民を対象とした前向きコホート研究で、米国の4つの地域(ノースカロライナ州フォーサイス郡、ミシシッピ州ジャクソン、メリーランド州ワシントン郡、ミネソタ州ミネアポリス近郊)から1万5,792例が参加した。今回の解析は、5回目の定期受診時(2011~13年)に断層心エコーを受け、心房細動、脳卒中および認知症を有していない参加者を対象とし、2019年12月31日まで追跡調査した。 断層心エコーで左房機能(reservoir strain、conduit strain、contractile strain、emptying fraction、passive emptying fraction、active emptying fraction)、および左房容積(最大および最小左房容積係数)を評価するとともに、対面および電話での認知機能評価、入院コード、死亡診断書により認知症症例を特定し、Cox比例ハザードモデルを用いて探索的に左房機能と認知症発症との関連を解析した。左房機能低下は認知症のリスク増加と関連あり 解析対象は4,096例(平均年齢75[SD 5]歳、女性60%、黒人22%)であった。このうち、追跡期間中央値6年において、531例が認知症を発症した。 認知症発生率(100人年当たり)は、すべての左房機能指標において最低五分位群で最も高かった(reservoir strain 4.80、conduit strain 3.94、contractile strain 3.29、emptying fraction 4.20、passive emptying fraction 3.67、active emptying fraction 3.27)。 すべての共変量を補正後、LA passive emptying fraction以外の左房機能と認知症との間に統計学的に有意な関連が認められた。最高五分位群に対する最低五分位群のハザード比は、reservoir strainで1.98(95%信頼区間[CI]:1.42~2.75)、conduit strainで1.50(1.09~2.06)、contractile strainで1.57(1.16~2.14)、emptying fractionで1.87(1.31~2.65)、active emptying fractionで1.43(1.04~1.96)、passive emptying fractionで1.26(0.93~1.71)であった。 最大左房容積係数の最高五分位群の認知症発生率(100人年当たり)は3.18で、最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比は0.77(95%CI:0.58~1.02)であった。また、最小左房容積係数の最高五分位群の認知症発生率は3.50で、最低五分位群に対する最高五分位群のハザード比は0.95(0.71~1.28)であった。いずれも、認知症との有意な関連は認められなかった。 これらの結果は、心房細動または脳卒中を発症した参加者を除外した感度解析でも頑健性が示された。 なお、著者は認知症発症日の特定が困難であること、認知症の診断方法がさまざまであったこと、高齢者が多く若年者に一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

11027.

J&J製ワクチン、第III相試験で重症化・死亡に対する有効性確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のAd26.COV2.Sワクチン(Johnson & Johnson製)単回接種は、ベータ変異株およびデルタ変異株のいずれにおいても重症COVID-19およびワクチン接種後のCOVID-19関連死に対して有効であることが認められた。南アフリカ共和国・Desmond Tutu HIV CentreのLinda-Gail Bekker氏らが、医療従事者を対象とした単群非盲検第IIIB相試験「Sisonke試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年3月19日号掲載の報告。南アフリカ共和国の医療従事者約48万人で検証 研究グループは、南アフリカ共和国の18歳以上の医療従事者を全国のワクチン接種会場122施設のいずれかに招待し、Ad26.COV2.Sワクチン(ウイルス粒子量5×1010)単回接種を実施した。ワクチンの有効性を評価するため、2つの大規模な医療保険組織またはマネジドケア組織(Discovery Healthが管理する医療制度[A]と、Government Employees Medical SchemeおよびMedSchemeが管理する医療制度[B])の個人データを用い、ワクチン接種済みの医療従事者を一般集団のワクチン未接種者とマッチングさせた。 主要評価項目は、一般集団と比較した重症COVID-19(COVID-19関連の入院、救命救急または集中治療を必要とする入院、死亡と定義)に対するワクチンの有効性で、ワクチン接種またはマッチングから28日以降のデータカットオフ日まで評価した。 2021年2月17日~5月17日の期間に、医療従事者47万7,102例が登録されワクチン接種を受けた。女性が35万7,401例(74.9%)、男性が11万9,701例(25.1%)、年齢中央値42歳(IQR:33.0~51.0)であった。このうちワクチン接種者21万5,813例を、ワクチン未接種者21万5,813例とマッチングし分析した。COVID-19関連死の予防効果は83%、COVID-19関連入院の予防効果は67% データカットオフ日(2021年7月17日)時点で、マッチングされた全コホートにおけるワクチンの有効性は、COVID-19関連死の予防が83%(95%信頼区間[CI]:75~89)、救命救急または集中治療を必要とするCOVID-19関連入院の予防が75%(69~82)、COVID-19関連入院の予防が67%(62~71)であった。 3つの評価項目に対するワクチンの有効性は、A制度とB制度で一貫していた。また、ワクチンの有効性は、高齢の医療従事者やHIV感染症を含む併存疾患を有する医療従事者においても維持されていた。 本試験の期間中にベータ変異株(B.1.351)、その後、デルタ変異株(B.1.617.2)が流行したが、ワクチンの有効性は一貫しており、全コホートのCOVID-19関連入院に対する有効性はベータ変異株流行中で62%(95%CI:42~76)、デルタ変異株流行中で67%(62~71)、COVID-19関連死に対する有効性は、ベータ変異株流行中で86%(57~100)、デルタ変異株流行中で82%(74~89)であった。

11028.

米国でのオミクロン、デルタ、アルファ株におけるCOVID-19の臨床的重症度とmRNAワクチンの有効性の違い(解説:寺田教彦氏)

 2019年末より新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症は世界的に拡大し、2022年3月現在でも、流行は続いている。この間に、新型コロナウイルスの特徴も判明し、ワクチン開発、治療方法の整備も進んだが、新型コロナウイルスも変異を繰り返し、流行の終息はまだ見えていない。 本研究は、2021年3月11日から2022年1月14日までに米国21病院が参加した前向き研究で、mRNA COVID-19ワクチンのアルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株に対するCOVID-19関連入院の予防効果、COVID-19関連入院患者における変異株ごとの重症化率、死亡率について検討され、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。 本研究以前より知られている事実として、mRNAワクチンの2回接種はアルファ株やデルタ株による入院予防に非常に効果的だったこと、ワクチンの有効性を長期的に維持するために2021年8月以降mRNA COVID-19ワクチンの3回目接種が認可されていたことがある。ちなみに2021年8月は、世界的にはデルタ株が臨床的な問題となっていた期間であり、本研究でも同時期はデルタ株の流行時期として取り扱われている。 本研究における新規知見は3点挙げられている。1点目は、mRNAワクチン2回接種に伴うCOVID-19関連入院の予防効果は、アルファ株やデルタ株よりもオミクロン株のほうが低い(それぞれアルファ株:85%、デルタ株:85%、オミクロン株:65%)が、オミクロン株に対しても3回目のワクチン接種を行うことで、アルファ株やデルタ株に対する2回接種と同様の有効性(86%)を達成すること。2点目は、COVID-19関連入院患者の重症度はオミクロン株のほうがデルタ株よりも低いこと。3点目は、オミクロン株でも15%の患者に侵襲的人工呼吸器管理が必要となり、7%の患者が死亡したことである。それぞれについて本邦の新型コロナウイルス感染症診療と照らし合わせて考察する。 現在、日本でもオミクロン株の流行が続いており、3回目のワクチン接種が行われている。今回の研究結果は、3回目のワクチン接種により、2021年12月26日から2022年1月14日の間におけるオミクロン株感染による入院予防効果が高かったことが示されている。本邦でも、オミクロン株の流行が続いており、米国よりもワクチン接種が遅れて開始したことを考えると、本邦での3回目のワクチン未接種者に対してワクチン接種を支持する根拠となるだろう。さて、本論文では、オミクロン株でも3回ワクチンを接種することで、他の株と同様の予防効果が期待されるとしているが、単純に株の問題のみに結び付けてよいかは疑問が残る。米国で、3回目のワクチン接種(ブースター接種)が開始された時期は、米国ではまだデルタ株が流行しており、当時の時点でもデルタ株に対してワクチン効果が落ちはじめていることが指摘されていた。実際に本論文でも、Fig.2において、2回目ワクチン接種後150日以内の患者のほうが、150日以降の患者よりも入院予防効果は高かった。オミクロン株の流行時期は2回のみのワクチン接種者の場合には、ワクチン接種後すでに時間が経過していたために効果が下がっていた可能性も考えられる。そのため、単純に株の種類とワクチン接種の回数問題のみでワクチンの予防効果は結論付けられないかもしれない。ブースター接種に関しては、本邦でも4回目のワクチン接種の是非について検討されている。2022年3月末までに報告されているデータでは、オミクロン株に対して4回目のワクチン接種では抗体獲得効果が不十分である可能性を示唆するイスラエルからの報告がある。ただし、ワクチンの4回目接種の是非を判断する十分なデータではないため、今後のデータを待つ必要があるだろう。 2点目の、オミクロン株がデルタ株よりは重症度が低いことに関しては、本邦での診療経験やこれまでの過去の論文報告とも合致するだろう。 最後に、オミクロン株でも重症化率や死亡率がいまだに高いことが本研究で指摘された。筆者も本邦の医療機関で新型コロナウイルス感染症治療に従事しているが、オミクロン株による入院患者の死亡率が7%という本研究の死亡率はやや高い印象がある。本研究は、米国21施設の入院患者を対象としており、米国で新型コロナウイルス感染症に罹患した患者全体を対象としたわけではない。本邦の新型コロナウイルス感染症患者の入院閾値が米国よりも低いために、本研究の重症化率や死亡率を高く感じるのかもしれない。とはいえ、米国の医療機関でオミクロン株による重症化率や死亡率が比較的高いことは事実であり、新型コロナウイルス感染症はいまだ軽視するわけにはいかないことを再認識させられる。 本研究を通して、米国で流行した新型コロナウイルスの各株の特徴やそれぞれの株に対するワクチンの効果を確認することができた。本邦を含め世界的にはオミクロン株の流行が続いており、今後は4回目のワクチン接種の効果や副反応の知見を基にブースター接種の是非を判断していくとともに、新型コロナウイルス流行の抑制に役立つ薬剤等を含めた技術開発を期待したい。

11029.

続・人は病気になってから予防する【Dr. 中島の 新・徒然草】(419)

四百十九の段 続・人は病気になってから予防する禁煙を諦めた女性の話は、第四百十六の段で紹介しました。今回はその続きです。簡単に前回のあらすじを述べておきましょう。慢性咳嗽で紹介された50代の女性。念のために撮影した胸部単純レントゲンで、直径2センチくらいの円形らしい陰影が!肺がんかもしれないと思い、胸部CTを予約しました。もちろん女性は顔面蒼白。「人は病気になってから予防する」と言われますが、今度こそ禁煙できるかな。翌日、たまたま会議の時に隣になった放射線科医に、ちょっと尋ねてみました。会議の時にはつまらなそうな顔をしていましたが、読影には興味津々。放科「どれどれ、ちょっとモニターで確認しましょうか」中島「この右肺の丸く見えるものなんですけどね」モニター画面で示します。放科「ああ、これは肋軟骨の石灰化ですね」ほとんど指さした瞬間に言われました。中島「実は、胸部CTをオーダーしたのですけど」放科「以前の胸部レントゲンはありますか?」中島「いや、ウチではこれが初めてなんです」放科「じゃあ、CTを撮っておいたほうが無難ですね。左側は石灰化していないし」今度はモニターすら見ずに言われてしまいました。実際のところ、後日撮影した胸部CTもそれを裏付けています。放射線科所見には「肋軟骨の石灰化」と書かれていました。さて、検査結果を患者さんに告げる日になりました。診察室に入ってきた女性は、すでに半泣きです。中島「結果から申し上げると、肺がんではありませんでした」女性「ありがとう、先生。ありがとう!」もう彼女は大泣き。中島「ところでタバコのほうは?」女性「吸ってません。もう1本も吸ってません」どうやら、肺がんの恐怖が、喫煙の誘惑に勝ったみたいです。中島「じゃあ、この機会にタバコはやめておきましょうか?」女性「もう、残っていたタバコもライターも、全部捨ててしまいました」もちろん、50代になってからの禁煙も、健康上の御利益があると思います。肺がんのほかに、動脈硬化やCOPDの予防にもなることでしょう。でも、ほかにも大切なことがあったのではないでしょうか。それは、彼女が自分の人生を、真剣に見つめ直したであろうことです。これまでの後悔、残された日々、やり残したあれこれ。本当はどういう人生を送りたかったのか。中島「神様が、1回だけチャンスをくれたんだと思いましょう」女性は泣きながら、何度も私に礼を言いました。今日が第2の誕生日。生まれ変わって、新たな人生を歩んで欲しいですね。最後に1句彼岸すぎ モニター見ながら 泣き笑い

11030.

心毒性リスク、どんな薬剤に注意している?―アンケート結果(中編)【見落とさない!がんの心毒性】第10回

今回は、腫瘍科医の皆さまへ心毒性に関し注意している(困っている)薬剤について、がん種別にご紹介いたします。しかし、腫瘍科医の皆さま以上にお困りなのは循環器科医の皆さまではないでしょうか。日々進歩し増加する抗がん剤において、それぞれ異なる機序により出現する心毒性へ対応するための情報を集めて整理することは、循環器科医にとって最も頭の痛い問題の一つとなっているからです。さらに、最近のトピックとして臓器横断的な治療薬の登場が挙げられます。これらの心毒性へ対応するためには、ゲノム関連も含め複数の関連する科の協力と参加が必要となっています(こちらは、次回[後編]でご紹介する予定です)。CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表1)上記を基に向井氏が作成画像を拡大する心毒性は、多くのがん治療、そしてほとんどの抗がん剤で出現すると言っても過言ではありません。(表2)に主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]を示します。(表2)主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]画像を拡大するこの結果では、読者の皆さまが注意している薬剤として、“細胞障害性抗がん剤”が第一に挙げられています。使用頻度から言ってもやはりという結果で、前編のアントラサイクリン系抗がん剤に加え、シクロフォスファミド、タキサン系、プラチナ製剤などは重要な薬剤ですが、これらの心毒性のエビデンスはすでに確立しており、多くのガイドラインにも記載されています。ところが、実臨床での対応は決して十分とは言えない状況のようです。次に、分子標的薬、多標的チロシンキナーゼ阻害薬による頻度が高くなっています。第4回VEGFR -TKIの心毒性(草場 仁志氏・森山 祥平氏)で解説した血管新生阻害薬が心毒性の中心的存在となっています。血管新生阻害薬の心毒性には、用量依存性と時間依存性が認められており、一旦出現すると急速に進展し重篤化することが多いため、その対応には、腫瘍科医のみならず循環器科医の早期からの参加が必要と考えられています。(表3)血管新生阻害薬の投与用量/時間による血管毒性の変化画像を拡大するこのように分子標的薬は、細胞障害性抗がん剤による従来の化学療法とは大きく異なる心毒性、とくに血管毒性、腎毒性などが出現しやすく、腫瘍科医の皆さまが手強い合併症を多く経験する傾向にあるのが特徴です。また、近年開発された分子標的薬において不整脈毒性を認める薬剤が増加しています。中でもQT延長に伴う致死的不整脈や心房細動などの重篤な不整脈の管理には循環器科医の協力が必須となっています。しかしながら、これらの新しい標的に対する薬剤での心毒性発症の機序には不明な点が多く、その対応に苦慮することが少なくありません。さらに、循環器疾患に大きく影響する糖尿病などを含む代謝毒性は、免疫チェックポイント阻害薬の内分泌系irAEに加えmTOR阻害薬やPI3K阻害薬など代謝系に作用する抗がん剤を投与する際に、脂質異常症などと合わせて注意が必要です。その他、第6回新治療が心臓にやさしいとは限らない(大倉 裕二氏)で解説したように、がん治療では多種多様の薬剤が併用投与されており、支持療法に用いられる薬剤も含めそれぞれ心毒性が存在しており、添付文書に記載してある「警告」に対しては十分な注意が必要です。QT時間は心電図により容易に反復した計測が可能であり、古くから心毒性の有無を判断する指標として、CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events、有害事象共通用語規準)にも用いられてまいりました。しかし、実臨床で実際のQT時間延長の意義、QTc時間(心拍数補正)などについて、不安を抱えていらっしゃる腫瘍科医はどのくらいおられるでしょうか。この点を正しく理解いただき不安を払拭してもらうためにも、ぜひとも第二部(症例編)で取り上げ解説したいと思います。講師紹介

11031.

第102回 反ワクチン派の陰謀?接種協力医療機関への訴訟示唆する不可解現象

国内のコロナワクチン3回目接種率は、3月中旬で3割を超え、主要7カ国(G7)の最下位から何とか脱した。ただ、接種率が一定を超えると伸び悩む「7割の壁」が課題となり、依然ワクチンへの疑念や拒絶感を抱く人たちは少なくないようだ。ワクチン反対やノーマスクを訴えるデモを時折見かけるが、最近では接種に協力する医療機関に対し訴訟をちらつかせる悪質なビラが投函されている。筆者が住む自治体でも、ワクチン接種を行っている複数の医療機関に対し、訴訟を示唆するビラが投げ込まれていたようだ。中には、接種を行っていないクリニックにまで投函されており、当該の院長は困惑している。院長がワクチン接種をやめる決断をした経緯「反ワクチン運動」と言っても、欧米と日本では動機が異なる。欧米ではワクチン接種義務への反発から起きているが、日本の場合は陰謀論的な言説に惑わされている人が多いようだ。ただ、コロナワクチンを巡るさまざまな影響が明らかになりつつある中、一部の医療従事者でもワクチンへの疑念が生じているようだ。たとえば前述の院長の場合、訪問診療先の老人ホームにおいて、昨年、入居者にコロナワクチンを接種したところ、その翌日から1ヵ月以内に複数人が死亡したという。施設長は死因を「老衰」と遺族に説明したが、院長はワクチン接種との因果関係を疑っている。このようなこともあり、院長は自院でのワクチン接種を実施していない。ちなみに、ワクチン接種後の死亡として報告された事例は、今年1月下旬時点で1,400件を超えるが、厚労省は「ワクチン接種との因果関係があると結論付けられた事例はない」としている。別の医療従事者に「コロナワクチン接種後に体内で生成されるスパイク蛋白が卵巣に溜まり、長期的に不妊症を引き起こす可能性が欧米で明らかになってきている」と懸念する人もいたが、すでにさまざまな研究で、「ワクチンによる不妊」といった情報は科学的根拠がないことが立証されている。しかしながら、大量の医療情報が絶え間なく流布する中、医療従事者であっても、情報の正確さを判断するのがより難しい状況になっているといえるだろう。打たない人の理由も聞いてみた。ある会社経営者の場合、知人2人(50代と70代)が昨年、ワクチン接種直後に相次いでくも膜下出血で倒れたからだという。幸い2人とも家族に早期発見され、処置を受けたため、重い後遺症は残らなかった。会社経営者は、ワクチンの副反応によるものではないかと考えているようだ。人は時として、科学的根拠のある情報を理解しながらも、個人的な経験を無意識に優先して判断することが往々にしてあるものだ。さらに昨今では、SNSの普及によって、自分と同じ傾向の意見を見聞きし続けることで、自らの意見が増幅・強化される「エコーチェンバー現象」という言葉が話題になっているが、こうした状況も偏った思考や行動への傾倒を助長しているのかもしれない。頻繁なワクチン接種が人体の免疫に悪影響を及ぼす懸念政府は今夏にも4回目接種を行う検討に入ったが、欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は1月、コロナワクチンの追加接種を短い間隔で繰り返すことに懸念を表明、頻繁なワクチン接種が人体の免疫に悪影響を及ぼす可能性も指摘した。コロナ感染の後遺症は少しずつわかってきたが、コロナワクチン接種の重篤な副反応や後遺症はあまりわかっていない。政府は、国民の接種に対する疑問や不安に対して、新たな研究成果や海外の事例などに基づいて回答していくべきではないだろうか。ワクチンだけなく国や医療従事者に対する疑問も前出の会社経営者は「イスラエルや韓国などワクチン接種率の高い国々で感染爆発が起き、ワクチン接種効果が疑問視される中、ワクチンパスポートの廃止や規制解除が行われている。このような状況下、接種ありきの国のやり方に対し疑問を持つ人は少なくないのでは」と述べる。それが医療機関訴訟という行動となって表れているというのである。個々人の信条を裁判で白黒付けようという行動は、不可解で突飛としか言いようがないが、ワクチンを接種する側・される側に芽生えている不安は、納得のいく丁寧な説明でしか払拭できないのではないだろうか。

11032.

統合失調症と双極性障害患者における脳容積の違い

 統合失調症と双極性障害は、重複するポリジーン構造や臨床的類似性が認められるものの、臨床的には非類似の特性を有する別疾患である。両疾患において、皮質下容積の特定の違い、皮質下の違いによる臨床的特徴への影響については、不明なままである。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症患者、双極性障害患者、健康対照者における皮質下容積の違いについて検討を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における特定の皮質下容積に対する臨床的特徴への影響についても、併せて調査した。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌2022年3月1日号の報告。 単一施設の単一スキャナを用いて、対象患者413例(統合失調症:157例、双極性障害:51例、健康対照:205例)より、3T MRIにおけるT1強調画像を収集した。T1強調画像の処理、皮質下脳容積をセグメント化するため、FreeSurfer ver. 6.0を用いた。7つの皮質下領域(視床、尾状核、被殻、淡蒼球、海馬、扁桃体、側坐核)の違いについて、群間比較を行った。また、統合失調症と双極性障害の患者における皮質下容積と臨床的特徴との相関についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・7つの皮質下領域のうち、統合失調症患者は健康対照者と比較し、左側視床(Cohen d=-0.29、p=0.00583)、両側海馬(左側Cohen d=-0.36、p=0.000885)(右側Cohen d=-0.41、p=0.000115)、左側扁桃体(Cohen d=-0.31、p=0.00402)の容積が有意に小さかった。・双極性障害患者は健康対照者と比較し、両側海馬(左側Cohen d=-0.52、p=0.00112)(右側Cohen d=-0.58、p=0.000030)の容積のみが有意に小さかった。・統合失調症患者は双極性障害患者と比較し、両側扁桃体(左側Cohen d=-0.43、p=0.00422)(右側Cohen d=-0.45、p=0.00456)の容積が有意に小さかった。・統合失調症患者の左側扁桃体容積の小ささは、より若年での発症と有意な相関が認められた(r=0.22、p=0.00578)。・本研究では、双極性障害患者のサンプルが限られていたため、同疾患の臨床サブタイプや症状エピソード歴に基づいた層別化による皮質下容積の違いを評価することができなかった。 著者らは「臨床的に類似した統合失調症と双極性障害を鑑別するうえで、扁桃体容積の違いが推定バイオマーカーとなりうる可能性が示唆された」としている。

11033.

セルペルカチニブがRET遺伝子異常甲状腺がんの新たな治療選択肢に/リリー

 2022年2月、RET遺伝子異常を有する甲状腺がんに対しRET阻害薬セルペルカチニブの適応が承認された。甲状腺がんにおける新たな治療選択肢セルペルカチニブの役割について、日本医科大学 内分泌外科学分野の杉谷 巌氏が紹介した。 甲状腺がんの大半は予後良好だが、予後不良な高リスク群の存在が明らかに 甲状腺がんの多くは予後良好だが、低分化がんや髄様がんの一部は良好ではない。また近年、甲状腺がんの約90%を占め、従来は予後良好とされていた乳頭がんの一部に予後の悪い高リスク群が存在することが明らかになった。甲状腺がんの治療は分子標的薬の登場で進化した 高リスク群の治療は、甲状腺全摘を主体とした隣接臓器の切除やリンパ節郭清である。全身療法としては放射性ヨウ素内用療法(RAI)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)抑制療法があるが、分化がんのみが対象で、未分化がんや髄様がんには適応がない。 そのような中、2010年代に分子標的薬が臨床導入される。いずれも血管阻害作用を主体とするソラフェニブ、レンバチニブ、バンデタニブの3剤である。 分子標的薬は、対処方法がなかった根治切除不能、RAI抵抗性の進行症例に適用され、甲状腺がんの治療を進化させる。ただし、これら分子標的薬が使えるのはいずれも治療後期であり、根治切除、RAIの使用が前提となる。甲状腺がんにみられるRET遺伝子異常は点突然変異と融合遺伝子の2種 ゲノム研究の進化により、甲状腺がんの遺伝子異常が解明される。その結果、甲状腺がんのドライバー遺伝子としてRET遺伝子が同定された。 甲状腺がんにみられるRET遺伝子異常は、点突然変異と融合遺伝子の2種である。遺伝性髄様がんでは90%に生殖系列のRET変異があり、通常の髄様がんでは60%以上にRET変異が認められる。乳頭がんの10〜20%にRET融合遺伝子が発現する。 RET遺伝子異常がある甲状腺がんは、異常がない腫瘍に比べ、有意に予後が良くない。セルペルカチニブのRET遺伝子異常を有する甲状腺がんでの有効性 2021年に登場したRET阻害薬セルペルカチニブは、点突然変異と融合いずれのRET遺伝子異常においても細胞内のシグナル伝達を阻害する。 RET遺伝子異常を有する甲状腺がんでのセルペルカチニブの有効性は、2020年に発表された国際共同第I/II臨床試験「LIBRETTO-001試験」で示されている。この試験で、セルペルカチニブは、標準的な1次治療歴のないRET融合遺伝子陽性の分化がんでは100%、同じく標準的な1次治療歴のないRET遺伝子変異陽性の髄様がんでは63.3%と優れた奏効率を示した。 RET遺伝子異常を有する甲状腺がんへのセルペルカチニブの保険適応は、今年(2022年)2月に承認された。RET遺伝子異常の発見と治療薬セルペルカチニブの臨床導入は、血管新生阻害薬に続き、甲状腺がん治療に進歩をもたらすと期待される。

11034.

ダイエットの成功率、方法、成功のコツは?/アイスタット

 現在のように飽食の時代では「ダイエット」は老若男女に共通する課題であり、コロナ禍の今は「外出ができない」「運動が難しい」などの制約から、その意識はさらに高まっている。こうした環境下で人々のダイエットの意識はどのようなものがあるであろう。ダイエットの成功率「100%」「75%」の人ほど「やせ型」が多い 株式会社アイスタットは、3月21日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~59歳の300人が対象。■調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年3月21日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(30~59歳)を対象■アンケートの概要・最近、話題のダイエット方法の効果は、信用できないと思っている人が約8割近く。「肥満型」の人ほど効果が信用できる、「やせ型」の人ほど効果が信用できない。・「効果が期待できるダイエット法」「現実的にできそうなダイエット法」は、どちらも「間食・おやつ・飲酒量の制限」が第1位。・ダイエットの成功率「100%」「75%」の人ほど「やせ型」が多く、成功率「0%」「25%」の人ほど「肥満型」が多い。・ダイエットを成功させる秘訣の第1位は「持続」が48.3%、第2位は「手軽」の32.7%。・「規則正しい食生活」「体を動かしている」「間食・おやつ・飲酒量の制限」を心がけている人は、「やせ型」が最も多い。ダイエットを必ず成功させる人は9.9%、1割弱という統計結果 質問1で「最近、本やテレビ、Webなどで話題のダイエット方法の効果」(単一回答)について聞いたところ、「あまり信用できない」が51.7%で最も多く、「まったく信用できない」が25.3%、「やや信用できる」が19.7%の順だった。信用有無別の分類では、「信用できる」が23%、「信用できない」が77%で、約8割近くの回答者が不信を感じている結果だった。 質問2では2つの質問として(1)「ダイエットで効果が期待できる内容はどれか」(複数回答)と(2)「実際にダイエットをしようと思ったとき、現実的にできそうな内容、もしくはすでに経験した内容」(複数回答)について聞いた。(1)の「ダイエットの効果が期待できる内容」では、「間食・おやつ・飲酒量の制限」が48.7%で最も多く、「食事制限(回数・量・カロリーなど)」が39.0%、「ウォーキング・散歩」が38.3%だった。また、(2)の「できそうなダイエット方法」などでは、「間食・おやつ・飲酒量の制限」が31.7%で最も多く、「特になし」が26.7%、「ウォーキング・散歩」が28.7%だった。 質問3で「ダイエットの経験」(単一回答)について聞いたところ、「1度もない」が43.0%で最も多く、「過去にしたことがある」が35.3%、「現在している」が21.7%の順だった。経験有無別の分類では、「経験あり」が57%、「1度もない」が43%で、「経験あり」が上回った。また、体型との関連では、「現在ダイエット中」と回答した人の体型は「肥満型」が最も多く、「ダイエットの経験が1度もない」と回答した人の体型は「やせ型」が最も多い結果だった。 質問4で「現在ダイエット中」「過去ダイエット経験あり」と回答した171名に「ダイエットを始めたときの成功率(ベスト体重まで戻る確率)」(単一回答)について聞いたところ、「成功率50%→成功、失敗の確率は半々」が33.3%で最も多く、「成功率75%→成功は3/4の確率」が24.6%だった。一方、「成功率100%必ず成功」の人が9.9%と1割弱であったという統計結果から、ダイエット成功へのハードルの高さが見受けられた。 質問5で「ダイエットを成功させるコツや秘訣」(複数回答)について聞いたところ、「続けること」が48.3%で最も多く、「手軽にできること」が32.7%、「長い目でみること」が28.3%の順だった。なお体型別では、「手軽にできること」「苦痛を伴わないこと」「ジムやエステなど他人の力を借りること」を回答した人は「肥満型」で最も多かった。 質問6で「日頃の生活習慣」(複数回答)について聞いたところ、「体重計にのって自身の体重を把握している」が29.0%で最も多く、「規則正しい食生活を心がけている(回数・量、栄養バランスなど)」が25.7%、「適度な運動を実施している」が23.7%の順だった。体型別では、「規則正しい食生活を心がけている」「普段の生活の中で、意識して体を動かしている」「間食・おやつ・飲酒量を摂りすぎないようにしている」と回答した人はやせ型で多く、「適度な運動を実施している」と回答した人は「普通体型」で多かった。 質問7で「現在の体型」(単一回答)について聞いたところ、「普通体型」が48.0%で最も多く、「ぽっちゃり型」が23.3%、「やせ型」が15.7%の順だった。「肥満型」を回答した人の属性では「40代」「男性」「未婚」「専業主婦」で多かった一方で、「やせ型」を回答した人の属性では「30代」「男性」「未婚」「有職者」で多かった。

11035.

HER2+乳がん2次治療、HR0.28でT-DXdがPFS延長(DESTINY-Breast03)/NEJM

 トラスツズマブおよびタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移のある乳がん患者において、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)はトラスツズマブ エムタンシン(同:カドサイラ)と比較し、病勢進行または死亡のリスクを有意に低下させることが認められた。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが、世界15ヵ国169施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast03試験」の中間解析結果を報告した。本試験での発現率はこれまでの臨床試験に比べ数値的に低かったもののトラスツズマブ デルクステカンの投与は間質性肺疾患の発現と関連しており、著者は「臨床使用においては慎重なモニタリングが不可欠」と注意を促したうえで、「トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブとタキサン系薬剤、ならびにペルツズマブによる治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する有効な新しい治療薬である」とまとめている。NEJM誌2022年3月24日号掲載の報告。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSとORR 研究グループは、2018年7月20日~2020年6月23日に、トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移性乳がん患者524例を、トラスツズマブ デルクステカン(5.4mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群とトラスツズマブ エムタンシン(3.6mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群に、ホルモン受容体の状態(陽性または陰性)、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無を層別因子として1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存(PFS)、主要な副次評価項目は全生存(OS)、その他の副次評価項目はBICRおよび治験担当医師判定による客観的奏効率(ORR)、治験担当医師判定によるPFS、および安全性であった。トラスツズマブ デルクステカンは病勢進行または死亡のリスクを72%低下 追跡期間中央値がトラスツズマブ デルクステカン群16.2ヵ月、トラスツズマブ エムタンシン群15.3ヵ月において、PFS期間中央値はトラスツズマブ デルクステカン群は未到達、トラスツズマブ エムタンシン群は6.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.2)であった。12ヵ月時点のPFS率はそれぞれ75.8%(95%CI:69.8~80.7)、34.1%(27.7~40.5)で、病勢進行または死亡のハザード比は0.28(95%CI:0.22~0.37、p<0.001)であった。 また、12ヵ月時のOS率は、トラスツズマブ デルクステカン群94.1%(95%CI:90.3~96.4)、トラスツズマブ エムタンシン群85.9%(80.9~89.7)で、死亡に関するハザード比は0.55(95%CI:0.36~0.86、p=0.007)であり、事前に規定した有意水準(p<0.000265)を満たさなかった。 ORRは、トラスツズマブ デルクステカン群79.7%(95%CI:74.3~84.4)、トラスツズマブ エムタンシン群34.2%(28.5~40.3)であった。 全Gradeの副作用発現率は、トラスツズマブ デルクステカン群98.1%、トラスツズマブ エムタンシン群86.6%、Grade3/4の副作用発現率はそれぞれ45.1%、39.8%であった。間質性肺疾患はトラスツズマブ デルクステカン群で27例(10.5%)、トラスツズマブ エムタンシン群で5例(1.9%)に認められ、いずれもGrade3以下であった。

11036.

ファイザー製ワクチン3回目、第III相試験で有効率95%/NEJM

 BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回目接種から中央値で10.8ヵ月後に行われた3回目接種は、プラセボ接種(BNT162b2ワクチン2回接種)と比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効率が95.3%であった。ブラジル・オズワルドクルス財団のEdson D. Moreira氏らが、米国、南アフリカ共和国、ブラジルの123施設で実施した無作為化プラセボ対照第III相試験「C4591031試験」の結果を報告した。積極的なBNT162b2ワクチンの接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によるCOVID-19パンデミック下での重要な予防手段となりうる。ワクチンの2回目接種から6ヵ月後には液性免疫が低下するという報告を踏まえ、16歳以上への3回目(ブースター)接種の安全性と有効性に関するデータが必要とされていた。Lancet誌オンライン版2022年3月23日号掲載の報告。2回接種済みの約1万人を、3回目接種群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、2021年7月1日~8月10日に、BNT162b2ワクチン30μgの2回目接種を6ヵ月以上前に完了している参加者1万136例を、BNT162b2ワクチン3回目接種群(5,088例)またはプラセボ接種群(5,048例)に無作為に割り付けた。 安全性の主要評価項目は、接種1ヵ月後までの有害事象および接種6ヵ月後までの重篤な有害事象。有効性の主要評価項目は、接種後7日目までのCOVID-19発症とした。新たな安全性シグナルなし、心筋炎や心膜炎の症例は報告されず ワクチン3回目接種を受けた参加者は5,081例、プラセボ接種を受けた参加者は5,044例であった。ワクチン2回目接種から3回目接種までの期間中央値はワクチン群10.8ヵ月、プラセボ群10.7ヵ月であり、追跡期間中央値は2.5ヵ月であった。 ワクチン3回目接種による局所および全身の反応原性イベントは概して低グレードであり、新たな安全性シグナルは確認されず、心筋炎や心膜炎の症例は報告されなかった。接種後1ヵ月以内の有害事象の発現率は、ワクチン群(5,055例)で25.0%、プラセボ群(5,020例)で6.5%、データカットオフ日2021年10月5日までの重篤な有害事象の発現率はそれぞれ0.3%、0.5%であった。 SARS-CoV-2感染歴がなく評価が可能であった参加者において、3回目接種後7日目までのCOVID-19発症はワクチン群で6例、プラセボ群で123例に認められ、相対的なワクチン有効率は95.3%(95%信頼区間[CI]:89.5~98.3)であった。

11037.

紹介状に不満がある医師は約7割!その紹介の実態は?/1,000人アンケート

 医療連携の一環として活用される紹介状。正式名称は「診療情報提供書」である。かかりつけ医が高度医療の必要があると判断して患者を紹介したり、その逆で患者の病状が安定したからとかかりつけ医などに戻ってもらう際に使用したりする。だが、この紹介状が名ばかりで実際の情報提供になっていないことがあるらしい。そこで今回、ケアネットでは会員医師1,000人を対象に『紹介状で困ったこと・良かったこと』に関するアンケートを実施した。紹介状に対する不満、開業医「紹介したのに返信がない」が1番 開業医、勤務医各500人にアンケートしたところ、大多数が紹介状の内容に不満を感じており、1番の理由は開業医では「紹介したのに返信がない」、勤務医では「紹介状が手書きで読めない」だった。実際に開業医に対して紹介状の記載ツールを伺ったところ、手書きと回答した方は31%で、年代が上がるほどその割合は増えていた。 次に不満を感じる理由として、開業医は「患者の転帰情報が送られてこない」、勤務医は「患者の丸投げと感じる」を挙げているが、それらの不満コメントをみると開業医だからといって勤務医だけに不満があるわけではなく、開業医同士、勤務医同士でも意見はあるようだ。<開業医の不満>・外科術後患者で術後診断がない(60代、消化器科)・紹介状と、受診したときの処方などの内容が違っていた(60代、外科/乳腺外科)・紹介先から初診診察医が変更になったので新たに紹介状を書くように言われた(60代、整形外科)・92歳で心不全持ちなど、どう見ても外来手術適応外の患者を外来手術目的で紹介してくる開業医の先生が困る(50代、眼科)<勤務医の不満>・かなりの重症患者を連絡なしで患者家族の運転する車で飛び込み受診された(40代、腎臓内科)・患者の希望と記載してあるが、実際は丸投げであったこと(30代、循環器内科/心臓血管外科)・広告の裏紙を使った紹介状で、しかも殴り書きで来たことがある(40代、血液内科)・手書きで判読が困難な紹介状や略語は困ります。(紹介状を)書く際には略語は使いません(60代、循環器内科/心臓血管外科) このほか、それぞれの医師が「良かったと感じた紹介状」や「書く際に心掛けていること」についてもアンケート結果を公開している。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『受け取った紹介状、開業医/勤務医がモヤっとする第1位は?』<アンケート概要>●タイトル:紹介状で困ったこと・マナー違反と思ったことを教えてください●内容:紹介状のやり取りで開業医/勤務医それぞれが困っていること、良かったと感じたことを調査●実施期間:2022年2月24日(木)●調査方法:インターネット●対象:30代以上の会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)

11038.

新たなインクレチン関連薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)がもたらす効果(解説:安孫子亜津子氏)

 わが国の2型糖尿病は欧米に比較してインスリン分泌能低下がメインの病態である患者が多いことが知られている。以前はSU薬中心であった2型糖尿病の治療が、2009年にDPP-4阻害薬が上梓されてからは、かなり多くの患者で使用され、SU薬の使用量が大きく減少した。さらにGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬に比較して、より血糖低下効果が大きく、食欲抑制効果なども併せ持っていることから、その使用患者は増加してきており、とくに週1回注射のGLP-1受容体作動薬の登場後は、幅広い患者で使われるようになってきている。このようにインクレチン関連薬の有用性が認知されている中、新たなインクレチン関連薬としてGIP/GLP-1受容体作動薬「tirzepatide」が登場し、現在次々と臨床試験の結果が報告されてきている。 今回の論文はtirzepatideのインスリンへの追加の有効性、安全性を検証した第III相試験「SURPASS-5」である。40週でのHbA1cの低下効果は2%以上であり、現在使用されているGLP-1受容体作動薬の臨床試験結果と比較しても大きな低下効果である。これまでGIPは脂肪細胞に作用し体重を増加させる方向に働くと考えられていたが、tirzepatideでは用量依存性に5~8kg台の体重減少効果が認められた。もちろんインスリン使用量の減量も認められている。週1回投与であることも本剤の魅力である。消化器症状を主体とした有害事象は、GLP-1特有のものであり、一定数の出現が認められている。投与量増量のタイミングなどをうまく調整することで、より安全に本剤の有効性を引き出せる可能性がある。本論文の結果から、新たなインクレチン関連薬tirzepatideが本邦でも使用できるようになれば、さらに幅広い患者での良好な血糖および体重コントロールに寄与できることが期待できると考える。

検索結果 合計:35155件 表示位置:11021 - 11040