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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法における低分子医薬品ウパダシチニブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。すなわち、抗TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬ウステキヌマブ、インテグリン拮抗薬ベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなど新規薬剤の出現で難治性UCが次第に少なくなってきている。しかし、中等度以上の活動性を有するUC症例の中にはいまだに十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、次々に新たな作用機序を有する治療薬の追加が求められているのが現状である。 今回、新たな経口低分子化合物でJAK1選択的阻害薬であるウパダシチニブの中等度から重度UC患者を対象とした2本の寛解導入試験と引き続き施行された寛解維持試験の結果、UCの寛解導入および寛解維持に対するウパダシチニブの有効性と安全性が示された論文が2022年5月のLancet誌に掲載された。 本研究で特記すべきは有用性を検証した評価項目である。従来の臨床研究において病勢の推移に使用されてきたMayoスコア(排便回数、血便、内視鏡的粘膜所見、医師による全般評価)から主観性の高い医師による全般評価を除き内視鏡的所見と組織学的所見の評価に重点を置いたAdapted Mayoスコアを用いて、さらに粘膜の炎症状態を把握する高感度CRPと便中カルプロテクチンや患者の治療方針に影響する腸管切迫感や腹痛を新たに含む評価としている。客観的で厳密なアウトカムの評価は、試験結果の信ぴょう性を高くして、一般診療現場における有用性を期待できるものとなり、今後の臨床試験での評価モデルとなる可能性が示唆された。 JAK阻害薬であるウパダシチニブ、トファシチニブおよびフィルゴチニブは、わが国の一般診療で慢性関節リウマチ(RA)に対して比較的長い間使用されているが、UCやRAなど自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化はよく知られており、長期使用に関しては感染症および悪性疾患の発生には留意する必要がある。そのほか、血管血栓症や帯状疱疹の発生リスク上昇の可能性、進行性多巣性白質脳疾患(PML)の発現も報告されており、薬理作用に精通した患者管理が重要である。

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フェローの臨床業務は短期集中のローテーション【臨床留学通信 from NY】第34回

第34回:フェローの臨床業務は短期集中のローテーションさて、前回では循環器フェローの教育プログラムについてレクチャーを中心に説明いたしましたが、今回は臨床業務についてお話しします。アメリカと日本の研修の大きな違いは、ローテーションが目まぐるしく変わることです。多くは2週間をひと単位として、コンサルテーション、CCU、心不全、心エコー、カテーテル、不整脈、核医学を回っていきます。良くも悪くもローテーション制度なので、エコーやカテーテル検査はより集中的に取り組みます。エコーは、初期に経胸壁心エコーの検査のやり方を学び、慣れてきて解読のトレーニングになったときは、検査自体を行うわけではなく解読だけに徹します。また、コンサルテーション、CCU、心不全のときは、患者さんの診察が主です。アメリカの患者は移植前後を含めた重症心不全が多くて病状が悪く、在院日数が短いこともあり、いざ退院が決まるとその日のうちに退院させる事務処理も煩雑なため、診察だけでもハイボリュームで忙しいのです。この点では、日本の後期研修医のように、外来、病棟(CCU患者を含む診療)をしつつ、毎日カテーテル検査等に入れるほうが、技術の習得には有利かと思います。というのも、1年のうち2ヵ月カテーテルに触れただけでは進歩はさほどありません。ただし米国では、一般循環器フェローを経験した後、カテーテルフェロー(interventional cardiology fellow)、不整脈フェロー(EP fellow)が上位フェローとしてあるため、一般循環器フェローの心臓カテーテル治療、カテーテルアブレーションのトレーニングには重きが置かれていないという理由もあります。また、米国心臓病学会がトレーニングを画一化するために、3年間の循環器フェロー中に、一定のトレーニング期間を設定しています。加えて、その3年の間にエコーを6ヵ月、核医学を4ヵ月履修すると、循環器専門医以外に心エコー専門医、核医学専門医を取得できるため、そういったトレーニングにも重点が置かれています。経食道心エコーは、どこの病院でトレーニングを受けても概ね習得できるようになっているのは、日本とは違う点です。フェローの人数自体も非常に多く、私が所属する800床+400床の2つの大学病院では、主に3学年の30人のフェローが在籍しています。日本では考えられないほど多いかと思いますが、その一部(とくに1~2年目)が、コンサルテーション、CCU、心不全といった診察中心のハードな業務を担当し、そのほか(とくに3年目)は、ある意味のんびりと興味のある分野を選択し研修しています。勤務体制はシフト制で、当院では、日勤と夜勤を連続して担当した後はオフとなっているため、最大勤務時間が24時間であることも、日本よりはましかもしれません。誰かがカバーを必ずしている仕組みなので、うまく調整すれば、誰でも休暇を2週間×2回取れるのも魅力的です。最近はコロナ禍で旅行などもあまりできていませんが、それでも英語漬けの日常から離れ、仕事から離れて骨休みできるのは、非常にありがたいことです。今年の夏休みは2週間あるので、カリブ海のプエルトリコに行く予定です。Column共同執筆で取り組んだこちらの論文では、COVID-19の長期的なCT所見をまとめています(Impact Factor:6.4)。呼吸器集中治療系で臨床留学を志す人に筆頭著者として書いてもらいました。ただし、私にとっては畑違いなところもあるため、concept/methodは私が担当し、全体の内容は大学の同期に監修してもらい、まとめあげました。Watanabe A, Kuno T, et al. Respirology. 2022 Jun 12. [Epub ahead of print]

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創部の麻酔【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q20

創部の麻酔Q20症例とくに既往のない28歳男性、左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのもためらわれるため、自分で縫ってみる。非滅菌手袋もつけたし、1%リドカインで指神経ブロックしなきゃな。どこに何回局注するんだっけ?

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標準治療耐性のEGFR陽性肺がんに対するamivantamab+lazertinibの成績(CHRYSALIS-2)/ASCO2022

 EGFRとMETの二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibとの併用が、オシメルチニブおよび化学療法後に進行したEGFR陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に有効であることが、CHRYSALIS-2試験の結果から示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 EGFR変異陽性NSCLC 患者に対するamivantamabとlazertinibの併用療法の有効性はオシメルチニブ耐性例で示されている。今回は、オシメルチニブとプラチナベース化学療法による後治療などの標準治療全体に耐性のEGFR陽性NSCLCに対する同レジメンを評価したCHRYSALIS-2試験の拡大コホートAのアップデート結果である。・対象:拡大コホートAに登録された、オシメルチニブまたは第1/2世代EGFR-TKIとその後プラチナベース化学療法、あるいは強度の高い他の治療で進行したEGFR陽性(del19またはL858R)NCSLC(162例)・方法:amivantamab(最初の28日間は週1回、その後は2週に1回)+lazertinib連日投与した。・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DoR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、有害事象(AE)など 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は61.5歳、男性35%、66例、脳転移あり41%(未治療30例、既治療36例)。・前治療数中央値は3(オシメルチニブ→プラチナベース化学療法23%、第1/2世代EGFR-TKI→オシメルチニブ→プラチナベース化学療法42%、他治療35%)であった。・観察期間10.0ヵ月におけるORRは33%であった。・PFS中央値5.1ヵ月、OSの中央値14.8ヵ月、DoR中央値は9.6ヵ月であった。・AEはほとんどGrade1/2であり、毒性のために投与中断となった患者は57例(35%)、減量された患者は15例(9%)で、2剤とも投与を中止した患者は12例(7%)であった。安全性プロファイルは過去の報告と一致しており、新たな問題は示されなかった。

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腎細胞がんに対するエベロリムスの術後療法は無再発生存期間を改善する可能性(EVEREST)/ASCO2022

 腎細胞がん(RCC)の術後療法としてのmTOR阻害薬のエベロリムスは無再発生存期間(RFS)を改善する可能性があることが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において米国・Oregon Health & Science UniversityのChristopher W. Ryan氏から発表された。米国で行われた無作為化比較の第III相試験であるEVEREST試験(SWOG S0931)の最終解析結果である。・対象:腎部分または完全切除術を施行されたRCC症例1,545例登録症例のリスクカテゴリーは([中高リスク]pT1bではGrade3~4でN0、pT2では全GradeでN0、pT3aではGrade1~2でN0と定義、[超高リスク]pT3aではGrade3~4でN0、pT3b-c/T4では全GradeでN0、N+の場合は全pTで全Gradeと定義)・試験群:エベロリムス10mg/日連日投与54週 (Evero群:775例)・対照群:プラセボ連日投与54週 (Pla群:770例)・評価項目:[主要評価項目] RFS[副次評価項目] 全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・登録期間は2011年4月~2016年9月、追跡期間中央値は76ヵ月であった。・年齢中央値は両群共に約58歳、男性が約70%であり、中高リスクが両群ともに45%、超高リスクは55%、非淡明細胞型が16-17%であった。・治療期間中央値はEvero群で9.3ヵ月、Pla群で12.6ヵ月で、減量はEvero群で37%、Pla群で7%にあった。・病勢進行や死亡ではない治療中止は、Evero群で47%、Pla群で17%であった。・RFSは両群共に中央値未到達。5年RFS率はEvero群67%、Pla群63%、ハザード比(HR)は0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、片側検定p=0.025)であったが、事前に設定された片側有意水準0.022を満たさなかった。・リスク別のRFSでは、超高リスク群ではHR0.79(95%CI:0.65~0.97)、片側検p=0.011であった。中高リスク群ではHR0.99(95%CI:0.73~1.35)、片側検定p=0.48であった。・5年OS率はEvero群87%、Pla群85%、HRは0.90(95%CI:0.71~1.13)、片側検定p=0.178で、カプランマイヤー曲線も重なっていた。・Evero群における新たなる安全性の懸念はなかったが、Grade3以上の有害事象は、Evero群46%で、Pla群は11%であった。主なGrade3以上の有害事象は口内炎で、Evero群14%、Pla群0%、高トリグリセリド血症が11%と2%、肺炎が1%と0%であった。 演者は最後に「RCCの術後療法としてのエベロリムスは、RFSの改善は示したが、統計学的な有意差を出すところまでは至らなかった。しかしその有効性は超高リスク症例群においては特に顕著だった。」と述べた。

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12~18歳の新型コロナワクチン有害事象、女子に高リスク傾向/日本化学療法学会

 現在、12~18歳の約75%が新型コロナウイルスワクチンの2回接種を終えているという。この年齢層での新型コロナウイルスワクチンの有害事象の調査結果について、大阪医科薬科大学の小川 拓氏が、2022年6月3日~5日に開催された第70回日本化学療法学会総会にて発表した。ワクチン接種による有害事象は12~18歳も成人データと大きく変わらない 本研究では、中学校・高等学校の生徒のうち、新型コロナウイルスワクチンの接種を、希望者469人に対して、2021年9月25日~10月28日に職域接種として行った。1回目はすべてモデルナ製ワクチン(0.1mg)であったが、若年男性に心筋炎・心膜炎のリスクがあることが厚生労働省から発表されたことを受け、2回目は男子に限りモデルナ製に加え、ファイザー製ワクチン(0.225mg)も選択可能とした。男子108人(うち2回目ファイザー製72人)、女子44人の計152人が研究に参加した。被験者に、新型コロナウイルスワクチンの有害事象でよく見られる症状を記載したアンケート形式の健康観察票に、2週間分を記録してもらった。 1回目接種後の新型コロナウイルスワクチンの有害事象の主な調査結果は以下のとおり。・男女ともに、接種部の局所反応と全身反応ともに、症状の持続期間の中央値3日であった。接種部疼痛や腫脹などの局所反応は、長くても10日程度で治まっていた。・新型コロナウイルスワクチンの有害事象の頻度として多いものは、接種部疼痛(男子89.8%、女子97.7%)、接種部腫脹(男子39.8%、女子50.0%)、37.1℃以上の発熱(男子38.9%、女子50.0%)、倦怠感(男子41.7%、女子40.9%)、頭痛(男子24.1%、女子40.9%)であった。・男女で統計学的に有意な差が見られた新型コロナウイルスワクチンの有害事象は、38.1℃以上の発熱(男子3.7%、女子18.2%)、頭痛(男子24.1%、女子40.9%)であり、女子のほうに多く見られた。・1回目接種の3日後に、14歳男子1例が虫垂炎のために入院した。・接種後の待機時間中に男子1例が腕のしびれを発症したが、速やかに改善した。 2回目接種後の新型コロナウイルスワクチンの有害事象の主な調査結果は以下のとおり。・新型コロナウイルスワクチンの有害事象の頻度として多いものは、接種部疼痛(男子・ファイザー製80.6%、男子・モデルナ製78.3%、女子100.0%)、37.1℃以上の発熱(男子・ファイザー製77.8%、男子・モデルナ製82.6%、女子92.1%)、38.1℃以上の発熱(男子・ファイザー製38.9%、男子・モデルナ製52.2%、女子89.5%)、頭痛(男子・ファイザー製52.8%、男子・モデルナ製60.9%、女子89.5%)、悪寒(男子・ファイザー製20.8%、男子・モデルナ製21.7%、女子44.7%)であり、1回目よりも2回目接種後のほうが各項目の新型コロナウイルスワクチンの有害事象の発生頻度が高く、男子よりも女子のほうが発生頻度が高かった。・ファイザー製を接種した男子4例が、遷延する咳嗽(2例)、めまい(1例)、嘔吐(1例)のため通院したが、いずれも速やかに回復した。・接種後の待機時間中に男子1例が指のしびれを発症したが、12時間以内に消失した。 小川氏は本結果について「12~18歳のワクチン接種による有害事象について、日本における成人のデータと傾向は大きく変わらず、症状の持続期間の中央値はいずれも3日程度で、すべての有害事象が10日目までに消失している。頭痛は月経のある世代では、男性よりも女性に多く報告されており、交絡因子の可能性がある」と述べている。また、本研究では、接種者469人のうち約3割の152人しか研究に参加しなかったこともあり、サンプルサイズが小さいため、モデルナ製ワクチンの若年男性に発生頻度が高いとされる心筋炎や心膜炎については評価できなかったという。

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ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がん、PD-1阻害薬単独で治癒?/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんは、PD-1阻害薬のみの治療で治癒する可能性が高いことが、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏らが行った、前向き第II相試験の結果、示された。局所進行直腸がんは、術前化学療法と放射線療法、その後の手術療法が標準治療となっているが、ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんでは、標準的な化学療法では十分な奏効を得られないことが示されていた。一方で、転移を有する患者および治療抵抗性の患者における免疫チェックポイント阻害薬のみの客観的奏効率は33~55%と、第一選択薬として非常に有効であることが報告されており、研究グループはこれらの知見に基づき、PD-1阻害薬の単剤投与が、ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がんに有益であるとの仮説を立て、dostarlimabによる術前化学療法の奏効率を調べる試験を行った。NEJM誌オンライン版2022年6月5日号掲載の報告。dostarlimabを単独投与しCRを評価 試験は、ミスマッチ修復機能欠損を有するStageIIまたはIIIの直腸腺がんの患者を対象とし、抗PD-1モノクローナル抗体dostarlimab単剤を3週ごと6ヵ月間(9サイクル)投与した。 患者は本治療後に、標準化学放射線療法と手術療法が行われたが、dostarlimab療法で臨床的完全奏効(cCR)を示した患者には、その後の治療は行われなかった。 主要評価項目は、dostarlimab療法後12ヵ月の持続的cCR、または化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab療法後の病理学的CR、および化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab術前療法の全奏効(OR)であった。治療完遂12例全例でCRを示し、フォローアップ25ヵ月時点で進行/再発例なし 計16例の患者が登録された。年齢中央値は54歳(範囲:26~78)、女性62%、臨床Stageは15例がIII、腫瘍StageはT3が9例(56%)、T4が3例(19%)で、腫瘍遺伝子変異量は37.9~103.0/Mb(平均60.0)と高値であった。 このうち12例がdostarlimab療法を完遂し、少なくとも6ヵ月時点のフォローアップを受けた。 全12例がCRを示し(100%、95%信頼区間[CI]:74~100)、MRI、18F-FDG PET、内視鏡評価、直腸指診または生検で、腫瘍は認められなかった。 本報告時点で、化学放射線療法または手術を受けた患者はおらず、追跡期間中(範囲:6~25ヵ月)に進行または再発が報告された症例はなかった。 Grade3以上の有害事象の報告はなかった。 なお、今回の試験の結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡を行い、奏効の期間を評価する必要がある」と述べている。

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高齢未治療MCL、標準化学免疫療法へのイブルチニブ上乗せでPFS延長(SHINE)/NEJM

 未治療のマントル細胞リンパ腫(MCL)高齢患者において、標準化学免疫療法(ベンダムスチン+リツキシマブ:BR療法)へのブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブの上乗せは、プラセボとの比較において、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael L. Wang氏らによる国際無作為化二重盲検第III相試験「SHINE試験」の結果、示された。これまでに未治療/再発/難治性MCLの患者17例を対象とした第Ib相試験で、BR療法へのイブルチニブ上乗せは、患者の76%が完全奏効(CR)を有し、安全かつ有効であることが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年6月3日号掲載の報告。BR療法+イブルチニブを対プラセボで評価 SHINE試験の対象は、中央施設でMCLと診断された65歳以上、未治療で疾患StageII~IV、最長径1.5cm以上の測定可能な病変1つ以上、Eastern Cooperative Oncology Groupパフォーマンスステータススコア0または1(スケール範囲:0~5、数値が大きいほど障害が大きいことを示す)、十分な臓器機能を有する患者であった。 研究グループは、被験者を無作為に1対1の割合で、イブルチニブ560mgを1日1回経口投与する群またはプラセボ群に割り付け、両群に、ベンダムスチン90mg/m2(体表面積)(28日として定義された各サイクルの1日目と2日目に投与)およびリツキシマブ375mg/m2(各サイクルの1日目に投与)を4週ごと6サイクル併用投与した。また、客観的奏効(完全または部分的奏効)を示した患者には、リツキシマブ維持療法を8週ごと最大12回追加投与した。 主要評価項目は、治験責任医師が評価したPFSであった。全生存(OS)および安全性も評価した。PFSはイブルチニブ群80.6ヵ月vs.プラセボ群52.9ヵ月で有意差、OSは同等 2013年5月~2014年11月の間に、北米、南米、欧州、アジア太平洋地域の183の試験地(日本を含む)で計523例が無作為化を受け、261例がイブルチニブ群に、262例がプラセボ群に割り付けられた。 追跡期間中央値84.7ヵ月(主要解析のデータカットオフ日2021年6月30日)の時点における疾患の進行または死亡は、イブルチニブ群116例(44.4%)、プラセボ群は152例(58.0%)であった。PFS期間中央値はイブルチニブ群80.6ヵ月、プラセボ群52.9ヵ月であった(疾患の進行または死亡のハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.59~0.96、p=0.01)。 CRを示した患者は、イブルチニブ群171例(65.5%)、プラセボ群151例(57.6%)であった(p=0.06)。客観的奏効が認められた患者の割合は、両群で同等であった(それぞれ89.7%、88.5%)。 データカットオフ日の時点で、死亡はイブルチニブ群104例(39.8%)、プラセボ群107例(40.8%)。OSは両群で同等であった(HR:1.07、95%CI:0.81~1.40)。7年時点のOSは、イブルチニブ群55.0%、プラセボ群56.8%。一方で、疾患の進行による死亡は、イブルチニブ群30例(11.5%)、プラセボ群54例(20.6%)であった。 治療期間中のGrade3/4の有害事象の発生率は、イブルチニブ群81.5%、プラセボ群77.3%であった。最も頻度の高かったGrade3/4の有害事象(各群で10%以上を占めたものと定義)は好中球減少症(イブルチニブ群122例[47.1%]、プラセボ群125例[48.1%])で、肺炎(それぞれ20.1%、14.2%)、リンパ球減少症(16.2%、11.9%)、貧血(15.4%、8.8%)、血小板減少症(12.7%、13.1%)、発疹(12.0%、1.9%)、および白血球減少症(10.0%、11.2%)が報告された。

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Luminal Aの低リスク乳がん患者、術後放射線療法を省略できる可能性(LUMINA)/ASCO2022

 乳房温存術後、内分泌療法のみで治療された55歳以上のLuminal A(Ki67低値)、T1N0の女性乳がん患者では、5年局所再発リスクが非常に低く、放射線療法を省略できる可能性が示唆された。通常、術後放射線療法は局所再発リスクを減らすために実施されるが、急性および晩期毒性が報告されている。カナダ・マクマスター大学のTimothy Joseph Whelan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で前向き多施設共同コホート研究の結果を報告した。Luminal Aで乳房温存術後、内分泌療法で治療された乳がん患者の再発率・対象:Luminal A(ER≧1%、PR>20%、HER2陰性)、≧55歳、切除マージン≧1mm、組織学的グレード1~2、内分泌療法歴と乳房温存術歴のあるT1N0浸潤性乳管がん患者・試験デザイン:International Ki67 Working Groupの推奨に従い、免疫組織染色法でKi67を検出、Ki67≦13.25%の患者を試験に登録し、放射線療法なしの群に割り当てた・治療とフォローアップ:内分泌療法はアロマターゼ阻害薬あるいはタモキシフェンを5年以上投与。はじめの2年は半年に一度、以降は年に1回のフォローアップを実施、また年1回のマンモグラフィを実施した・評価項目:[主要評価項目]局所再発(LR:浸潤がんもしくは非浸潤がん)[副次評価項目]対側乳がん、いずれかの再発、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS) 乳房温存術後、内分泌療法のみで治療された55歳以上のLuminal A(Ki67低値)、T1N0の女性乳がん患者の再発リスクを研究した主な結果は以下のとおり。・2013年8月~2017年7月まで、カナダの26施設から500例が解析対象とされた。追跡期間中央値は5年。・ベースライン特性は、年齢中央値が67歳、腫瘍径中央値は1.1cm、組織学的グレード1が66%、内分泌療法はアロマターゼ阻害薬が59%だった。・5年時点のLR率は2.3%(95%信頼区間[CI]:1.3~3.8)で、事前に設定された境界値(<5%)を満たした。・5年時点の対側乳がん率は1.9%(95%CI:1.1~3.2)、いずれかの再発率が2.7%(95%CI:1.6~4.1)だった。・5年OS率は97.2%(95%CI:95.9~98.4)、5年DFS率は89.9%(95%CI:87.5~92.2)だった。

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銃所持者と一緒に住むと殺されるリスクが上昇【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第212回

銃所持者と一緒に住むと殺されるリスクが上昇photo-pixabayより使用ニューヨークの地下鉄で銃を乱射した事件が先日報道され、パネェなと思っていたところで、タイミングよくAnnals of Internal Medicineというトップジャーナルから銃による殺人の論文が出ました。前回に引き続き、なんか物騒な話題で申し訳ありませんが。Studdert DM, et al.Homicide Deaths Among Adult Cohabitants of Handgun Owners in California, 2004 to 2016FREE A Cohort Study.Ann Intern Med . 2022 Apr 5. doi: 10.7326/M21-3762.アメリカで銃を購入する目的は、基本的に「自己防衛」のためです。ただ、諸刃の剣でもあり、銃を持っている家の人たちは殺人被害に遭いやすいという見解もあります。この後ろ向きコホート研究では、カリフォルニア州の住民約1,760万人をかなり長期間追跡し、合法的に銃を所持している人と同居することが、殺人被害のリスクを高めるかどうかを推定しました。銃を所持している人と同居した約60万人のうち、3分の2が女性でした。カリフォルニア州全体の殺人は2,293人で、殺人の割合は銃所持者と同居している人のほうがそうでない人よりも2倍高いという結果でした(調整ハザード比[aHR]:2.33、95%信頼区間[CI]:1.78~3.05)。家庭で発生した殺人だけを見てみると、銃所持者の同居人は、配偶者や親密なパートナーによって発砲される割合が7倍高いことがわかりました(aHR:7.16、95%CI:4.04~12.69)。犠牲者の84%が女性でした。アメリカに住んでいる知り合いに聞いたところ、銃を所持しているかどうか、というのは実際にはわからないこともあるそうです。となると、「隠れ銃所持者」もこの研究に含まれている可能性があります。女性は、ちょっと気性の荒い銃所持者の男性と一緒に住むのは、控えたほうがよいのかもしれません。とくに、ドメスティックバイオレンス傾向のある男性は、衝動的に発砲してしまうリスクが高そうです。

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第113回 医学的に解決できないもの-抗HIV薬の発展から問われる課題

ここまで進化したのか。あるニュースを私はそんな思いで見つめている。先日薬価収載された抗HIV薬初の長時間作用型注射製剤のカボテグラビル(商品名:ボカブリア)とリルピビリン(同:リカムビス)の承認と薬価収載に関するニュースだ。多くの方がご存じのように、HIV感染症は1980年代から1990年代半ばまで「不治の病」だった。過去にも触れたが、私が専門誌記者になったのはまさにこの頃だ。しかし、1990年代半ば以降に確立された作用機序が異なる複数の抗HIV薬を併用するHAART(highly active anti-retroviral therapy)療法により、もはや多くの感染者にとってコントロール可能な慢性感染症となっている。とはいえHAART療法の確立直後は、薬剤耐性やウイルス量増加を回避するため、服用回数が異なる複数の経口抗HIV薬を忘れることなく服用することが患者にとっての至上命題。しかも、初期のHAART療法の中で主流として使われていた抗HIVプロテアーゼ阻害薬のインジナビル(同:クリキシバン)は、腎結石の副作用頻度が高かったため、服用者は毎日1.5Lの水分摂取が必要だった。当時、取材で知り合ったあるHIV感染者と話した際、私が「少なくとも死の病ではなくなる可能性が高くなりましたね」と口にしたら、本人は頷きながらもそのまま無言になり、自分が持っていたカバンのチャックを開け、それを黙って私に差し出したことがある。かばんの中には水をつめたラベルのない500mLのペットボトルが3本入っていた。私は「ああ、副作用を防ぐための水ですね」と答えたが、本人はほぼ無表情で黙ったままだった。私自身は尿酸値が高い傾向があるため、現在は必死になって1日2Lの水分を摂取しているが、これが実はかなりの苦痛である。そうした今になって初めて、あの時のこの感染者が無言で私に伝えようとしていたメッセージが分かる気がする。その後、HAART療法は個々の薬剤成分そのものが副作用の少ないものに置き換わり、さらに合剤化が進んだ。現在ではほとんどの感染者が1日1回の服用のみで医学的には非感染者と変わらない生活が送れるようになっている。もっとも感染者にとって毎日の服薬を怠らないよう気を付けることや服薬のたびにHIV感染を自覚させられるストレスは残されている。そうした中で今回上市されたカボテグラビルとリルピビリンの併用筋注で感染者のこうしたストレスはより緩和される可能性が高まっている。臨床試験で判明している結果では、経口薬で血中のHIVが検出限界以下になった後、この2剤を1ヵ月あるいは2ヵ月間隔で筋注すれば、毎日経口薬を服用するのと同レベルの臨床効果が得られる。有害事象も疼痛などの注射部位反応は8割以上に認められるものの、薬剤関連の全身性の有害事象は頭痛、発熱が5%程度の人に起こるぐらいだ。少なくとも服薬のたびにHIV感染を自覚させられる苦痛という観点に立てば、それは今回の両薬の登場で60分の1~30分の1に減少することになる。これ自体は極めて画期的なことだと私自身も思う。もっともこうした慢性疾患特有の医学的課題が1つ1つクリアされればされるほど、残された課題の壁は高くなるとも感じている。まず、医学的に残された最大の課題は感染者の誰しもが望むであろう根治だ。これについては、血液がんを併発して骨髄移植を受けたHIV感染者で、ほぼ根治と言って良い事例が世界で3人確認されている。少なくともHIV根治が実現可能性の低い夢とは言えなくなっているのは確かだろう。ただし、ただでさえ適応が限られ、治療時の死亡リスクも高い骨髄移植を誰にでも行うわけにはいかない。HIV感染者すべてに適応可能な簡便な治療法の実現という意味ではまだ道は遠いと言わざるを得ない。こうした「遠い道程」のなかで感染者が抱えるであろう心理的負担は医学のみでは解決不可能と言って良い。日本国内では2018年に医療機関がHIV感染を事前告知しなかったソーシャルワーカーの内定取り消しを行い、そのことが法廷の場に持ち込まれて敗訴するなど、まだまだ根深い偏見・差別があることが白日の下にさらされている。また、こうした社会状況なども背景にあるのだろうが、HIV感染者での精神疾患併発率は一般集団と比べても高いとの報告もある。残念ながらこうした差別、偏見を解消する医学的手段はこの世にはない。その意味で約30年間、HIV治療を横目で眺め続けてきた私は、大きな一歩を目の当たりに感動しながらも、これからこの社会全体がクリアしなければならない急峻な絶壁のほうも考えてしまいやや悶々としているのが現状なのである。

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高画質・低線量の次世代型CT、東海大学がアジア1号機を導入

次世代型CTであるフォトンカウンティングCT(シーメンスヘルスケア製)が2022年1月に保険承認を受け、アジア地域の1号機が東海大学医学部附属病院に導入された。フォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」画像を拡大する従来型CTは身体を透過したX線を検出器に当てて可視光に変え、それを電気信号に変換して画像化する。この2段階の変換によってX線の光子エネルギーに関する情報が失われ、コントラストや画像の鮮明さも損なわれていた。これに対し、フォトンカウンティングCTは一つひとつの光子(Photon)をそのまま計測(Counting)する。 X線を直接電気信号に変換することでエネルギー情報の損失がなくなり、精度の高い画像が実現した。これにより従来型CTと比較して大幅な被ばく線量の低減従来型CTでは困難であった微細な構造の鮮明な描出・エネルギー情報によって物質を判別し、特定の物質を強調したり除去したりできるといった利点がもたらされる。導入した東海大学医学部画像診断学・教授の橋本 順氏は、フォトンカウンティングCTの臨床応用にあたっての期待を以下のように述べる。【高画質】中耳や内耳などの頭頚部領域の細かい構造をより鮮明に観察できる→耳鼻科冠動脈ステント内の血栓形成状況(内腔)まで確認できる→循環器内科/心臓血管外科【低線量】放射線感受性が高い小児に使いやすい→小児科【物質選択的な画像解析】画像のカルシウム部分を除去することで、骨のなかの軟部組織を精密に確認できる→整形外科冠動脈の画像では内腔の造影剤と壁の石灰化との判別が困難な場合があるが、石灰化部分だけ除去できる→循環器内科/心臓血管外科造影剤と石灰化が判別しづらい冠動脈の画像(左)を、石灰化部分を選択して除去(右)造影剤と石灰化が判別しづらい冠動脈の画像(上)を、石灰化部分を選択して除去(下) 画像を拡大する 画像を拡大する新型コロナ患者の肺野CT左/従来型CT中/フォトンカウンティングCT右/フォトンカウンティングCTで血流部分を選択して色付け画像を拡大する橋本氏はさらに「現在使われているヨードの造影剤は腎毒性がある。フォトンカウンティングCTはヨード部分を強調することで造影剤の使用量を減らせるほか、ヨード以外の物質を用いた新しい造影剤の開発に期待している。今後は臨床で使いながら適した症例を見つけ、新たな用途を探したい。今後10年ほどでCTはこのタイプに置き換わっていくだろう」とする。シーメンスヘルスケアによると、国内では東海大学のほか、大学病院や研究機関などを中心に導入を図っていく予定で、海外においても欧米の主要大学や病院にプロトタイプを20台ほど導入済みだという。

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amivantamabの METex14スキッピング非小細胞肺がん患者に対する効果(CHRYSALIS)/ASCO2022

 進行中の第I相試験(CHRYSALIS試験)のMETexon14 (METex14)スキッピング変異陽性患者を対象としたコホートのアップデート結果から、EGFRおよびMETを標的とした二重特異性抗体amivantamabは、METex14スキッピング変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても有用であることが示された。英国・マンチェスター大学のMatthew G. Krebs氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 amivantamabはプラチナベース化学療法後のEGFRexon20挿入変異陽性NSCLC患者に対して米国で承認されている。一方で、amivantamabはEGFR-MET二重特異性抗体であることから、CHRYSALIS試験ではMETex14スキッピング変異陽性対象としたコホートにおいても、その有効性が検討された。・対象:2022年4月11日までに、amivantamabの投与を受けたMETex14スキッピング変異陽性患者55例。・方法:amivantamabの投与量は第II相試験推奨用量である1回1,050mg(体重80kg以上の場合は1,400mg)とし、最初の4週間は週1回、その後5週目からは2週間1回の投与とした。・評価項目:第II相試験推奨用量における安全性と有効性 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者の年齢中央値は70歳、58%が女性、10例(18%)に脳転移の既往があり、前治療数中央値は2であった。未治療患者が9例、既治療だがMET阻害薬の投与を受けていない患者が18例で、28例にMET阻害薬による治療歴があった。・有効性の評価が可能であった46例において、15例で部分奏効(PR)が認められ、奏効率(ORR)は33%であった。未治療患者では7例中4例にPRを認めORRは57%、既治療だがMET阻害薬の投与なしの患者は15例中7例でPRを認めORRは47%、MET阻害薬による治療歴のある患者は24例中4例でPRを認めORRは17%であった。・15例中11例で奏効が継続しており、このうち10例は6ヵ月以上続き、最長の継続期間は76週間となっている。・無増悪生存期間(PFS)の中央値は6.7ヵ月であった。・amivantamabの安全性プロファイルに関しては、これまでの臨床試験で得られたものと同様であった。

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高血圧患者数約2,700万人の9割に治療薬が処方/日本高血圧学会

 日本高血圧学会、医療経済研究機構、東京大学は共同研究として、全国民のレセプトデータであるNDB(national database)の分析により、わが国の医療機関における高血圧性疾患受療者数と治療薬処方数を初めて明らかにし、その内容をHypertension Research誌オンライン版2022年6月10日号に公開した。 解析の結果、高血圧性疾患に罹患しているが実際に未受診の患者が多いこと、高血圧性疾患の受療者の多くは小規模な医療機関を受診していること、都道府県別での高血圧受療率の差などが本研究で明らかとなった。 高血圧性疾患の受療率・処方率の継続的な観察、加えて地域の特性に応じた高血圧医療の改善を進めることが、国民の循環器病予防と健康寿命延伸に不可欠であると考察している。高血圧患者数が東北地方、北関東には多い傾向【研究目的】医療機関における高血圧性疾患患者の受療者数や受療率ならびに高血圧治療薬の処方患者数や処方率の実態を明らかにすること。【方法】2014年のNBDから外来医科レセプト・調剤レセプトデータを用い、高血圧患者および高血圧治療患者の有病率などを調査した。【結果】・2014年に高血圧と判定された日本人患者の数は約2,700万人であり、そのうちの95%の診断名が「高血圧」だった。投薬を受けている高血圧患者数は受療者の89.6%に当たる約2,400万人だった。・高血圧性疾患患者の受療率(10万人当たり)は、女性で2万1,414人、男性で2万1,084人だった。高血圧治療薬の処方率(10万人当たり)は、女性で1万9,118人、男性で1万8,974人だった。・年齢階級別に比較すると年齢が高いほど高血圧患者の受療率は高く、80歳以上では人口の65.6%が受療していた。・都道府県別に高血圧患者の年齢調整受療率を比較すると、人口10万人当たり、女性では最小2万254人(京都府)/最大2万4,625人(栃木県)であり、男性では最小1万9,833人(神奈川県)/最大2万4,504人(福島県)だった。最大の府県は最小の府県の約1.2倍だった。・都道府県別に年齢調整処方率を比較すると、人口10万人当たり、女性では最小1万7,860人(京都府)/最大2万2,557人(栃木県)であり、男性では最小1万7,221人(神奈川県)/最大2万2,598人(福島県)だった。・高血圧性疾患患者の約59%が診療所(0〜19床)の小規模医療機関で受診していた。【考察】 研究グループは、今回の解析をうけ高血圧患者数約2,700万人と国民健康・栄養調査における推計有病患者約4,300万人との差、約1,600万人について未受診に患者が多いことを示唆している。また、高血圧のコントロールには小規模医療機関におけるかかりつけ医の診療が重要としている。 地域別では東北地方、北関東で高血圧受療率が高い傾向がみられ、これらの地方での高い脳卒中死亡率とも関連しているとともに、受療率の低い地域でも未受療患者が多い可能性があり、注意が必要と警鐘を鳴らしている。

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日本人乳がん患者におけるワクチン接種後の中和抗体価/ASCO2022

 日本人乳がん患者における新型コロナワクチン2回接種後の中和抗体価が調べられ、95.3%と高い抗体陽転化率が示されたものの、治療ごとにみると化学療法とCDK4/6阻害薬治療中の患者で中和抗体価の低下が示唆された。名古屋市立大学の寺田 満雄氏らによる多施設共同前向き観察研究の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表された。・対象:2021年5~11月にSARS-CoV-2ワクチン接種予定の乳がん患者(Stage 0~IV)・試験群と評価法:がん治療法ごとに5群に分け(無治療、内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法、抗HER2療法)、最初のワクチン接種前と2回目ワクチン接種後(4週後)に血清サンプルを採取、ELISA法で血清中IgG濃度および各変異株に対する中和抗体価を評価した。・評価項目:[主要評価項目]2回目ワクチン接種4週後のSARS-CoV-2 Sタンパクに対する血清中IgG濃度[副次評価項目]各治療群ごとのIgG濃度および抗体陽転化率、野生株・α・δ・κ・ο株に対する中和抗体価、がん治療への影響(休薬および減薬) 主な結果は以下のとおり。・全体で85例(無治療5例、内分泌療法30例、CDK4/6阻害薬14例、化学療法21例、抗HER2療法15例)が評価対象とされた。・年齢中央値は62.5(21~82)歳、55.3%が早期乳がん・44.7%が進行あるいは転移を有する乳がん患者だった。新型コロナワクチンの種類は、76.5%がファイザー製・3.5%がモデルナ製だった。・抗体陽転化率は全体で95.3%。治療法別にみると、無治療・内分泌療法・CDK4/6阻害薬・抗HER2療法では100%、化学療法のみ81.8%だった。・化学療法群では、無治療群と比較して有意に血清中IgG濃度が低下していた(p=0.02)。・各変異体に対する中和抗体価は、野生株に対する中和抗体価と比較し有意に低下していた。とくにο株に対しその傾向が強く、低下は治療法によらずみられた。・CDK4/6阻害薬群では、無治療群と比較して野生株に対する中和抗体価(p<0.01)およびα株に対する中和抗体価(p<0.01)が有意に低下していた。・化学療法群では、無治療群と比較して野生株に対する中和抗体価(p=0.001)、α株に対する中和抗体価(p<0.001)、およびκ株に対する中和抗体価(p=0.03)が有意に低下していた。・ワクチン接種による副反応と関連した乳がん治療の休薬または減量はみられず、1例のみ副反応への懸念での休薬があった。筆頭著者 名古屋市立大学寺田 満雄氏へのインタビュー今回の結果をどのように解釈されていますか? おおむね健常者と同等のワクチン効果が得られることがわかり、この点は海外の過去の報告とも一致しています。一方で、CDK4/6阻害薬など現在乳がんでしか使われない治療薬にワクチンの効果を妨げる可能性がある薬剤があることもわかりました。また、変異株ごとに大きく異なる点も注目に値します。実際の感染防御にどれほど影響するかは本研究からはわかりませんが、今後のワクチン接種を考える上で重要なデータとなったと考えています。乳がん患者のワクチン接種や感染予防について、今回の結果から示唆されたことは? 効果の面でも、安全面でも今回の結果は、乳がん患者さんへのワクチン接種を支持するものとなりました。しかし、CDK4/6阻害薬や化学療法中では抗体がついたとしても中和抗体の力価としては弱い場合もあり、ワクチン接種後だとしても引き続き予防行動は重要であると言えます。今後の課題、研究の見通しなどがあればお教えください。 なぜCDK4/6阻害薬や化学療法中でワクチン効果が弱まることがあるのかについてはわかっていないことも多くあります。第30回日本乳学会学術総会(2022/7/2・土 厳選口演10)では、一部の患者さんでワクチンの効果が十分に得られなかった原因をもう少し考察したデータを発表予定です。がん患者における免疫不全は、COVID-19に限らず重要な課題でありますので、私自身も今後も研究を続けていきたいと思います。

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コロナワクチンの副反応疑い、長期観察での発生率は?ファイザーvs.モデルナ

 RCTではBNT162b2(ファイザー製)ワクチンおよびmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを接種した人の副反応疑い(有害事象)の発生率が低いことはわかっている。しかし、より長期フォローアップかつ大規模で多様な集団での、より広範囲の潜在的な有害事象に対する安全性は明らかになっていない。そこで、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBarbra A Dickerman氏らは、上記2剤のワクチン接種による有害事象リスクに関して直接の安全性を比較するための調査を実施。その結果、ファイザー製またはモデルナ製ワクチン1回目接種から14日以内では有害事象リスクにほとんど差がなかったものの、42日以内でわずかな差が生じることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版6月13日号掲載の報告。ファイザー製もモデルナ製も有害事象の38週間リスクは概して低かった 本研究は米国最大の統合医療システムであるアメリカ合衆国退役軍人省のデータベースを用い、2021年1月4日~9月20日の期間にファイザー製またはモデルナ製ワクチンの1回目接種を受けた退役軍人の潜在的な有害事象を評価した。その後に各ワクチン接種者を危険因子に応じて1:1でマッチングさせた。 評価に用いた大規模パネルには、神経学的イベント、血液学的イベント、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、心筋梗塞、そのほかの血栓塞栓性イベント、心筋炎または心膜炎、不整脈、腎機能障害、虫垂炎、自己免疫疾患、帯状疱疹/単純ヘルペス、関節炎/関節症、および肺炎が含まれた。1次分析では38週間リスクを、2次分析では14日間または42日間の有害事象リスクを分析した。なお、38週間リスクはカプランマイヤー推定量で推定した。 ファイザー製またはモデルナ製ワクチン接種による有害事象リスクを比較した主な結果は以下のとおり。・43万3,672例が評価の対象となり、うち男性が93%(20万908例)、黒人が20%(4万3,452例)だった。年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:60〜74歳)だった。・対象者の併存疾患で最も多かったのは高血圧症(ファイザー製群:63%[13万7,265例]、モデルナ製群:65%[14万774例])で、肥満(同:47%[10万885例]、同:47%[10万1,207例])、糖尿病(同:34%[7万2,895例]、同:37%[7万9,338例])と続いた。・過去5年間のインフルエンザワクチン接種回数は5回以上が最も多かった(ファイザー製群:37%[7万9,717例]、モデルナ製群:37%[8万792例])。・有害事象の38週間リスクは、ファイザー製またはモデルナ製のどちらを接種しても概して低かった。・1万人当たりのイベント発生のリスク差を見ると、ファイザー製群はモデルナ製群と比較し、虚血性脳卒中は10.9件(95%信頼区間[CI]:1.9~17.4件)、心筋梗塞は14.8件(同:7.9~21.8件)、そのほかの血栓塞栓イベントは11.3件(同:3.4~17.7件)、腎機能障害は17.1件(同:8.8~30.2件)と多かった。・上記に対応するリスク比(ファイザー製vs.モデルナ製)は虚血性脳卒中で1.17(同:1.03~1.28)、心筋梗塞で1.32(同:1.16~1.49)、そのほかの血栓塞栓イベントで1.20(同:1.05~1.32)、腎機能障害で1.16(同:1.08~1.29)だった。・上記の推定値は、年齢(40歳未満、40~69歳、70歳以上)と人種(黒人/白人)によるサブグループ間でもほぼ同様の値を示した。しかし、高齢者と白人では、虚血性脳卒中のリスク差は非常に大きく、高齢者間では腎機能障害が、黒人間ではほかの血栓塞栓性イベントのリスク差がより大きかった。・2つのワクチンのなかで有害事象の発生リスクにわずかな差が見られたのは1回目接種から42日間で、14日間ではほとんど違いが見られなかった。

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レイボー錠(片頭痛治療剤)を発売/リリー・第一三共

 2022年6月8日、日本イーライリリーと第一三共は、片頭痛治療剤 「レイボー錠50mg/100mg」(一般名:ラスミジタンコハク酸塩)の販売を開始した。 レイボー錠は、Lilly(米国)により片頭痛発作の急性期治療薬として開発された、既存の急性期治療薬とは異なる薬理作用をもつ、世界初のジタン系、低分子の選択的セロトニン1F受容体作動薬である。 片頭痛の病態には、中枢での疼痛シグナル伝達、および末梢での三叉神経系の過活動が関係しており、セロトニン1F受容体が視床、大脳皮質、三叉神経系の神経細胞やシナプスに発現していることから、セロトニン1F受容体の片頭痛の病態への関連性が指摘されてきた。レイボー錠は、血液脳関門通過性を有し、セロトニン1F受容体に選択的に結合することにより、中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」やグルタミン酸などの放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すことが期待される。レイボー錠の薬価と発売日 レイボー錠は、米国において2019年10月に片頭痛の急性期治療薬として承認を取得し、日本において2022年1月に「片頭痛」の効能または効果で製造販売承認を取得した。レイボー錠の製品概要販売名:レイボー錠50mg/100mg一般名:ラスミジタンコハク酸塩効能又は効果:片頭痛用法・用量:通常、成人にはラスミジタンとして1回100mgを片頭痛発作時に経口投与する。ただし、患者の状態に応じて1回50mg又は200mgを投与することができる。頭痛の消失後に再発した場合は、24時間あたりの総投与量が200mgを超えない範囲で再投与できる。薬価:50mg 1錠 324.70円/100mg 1錠 570.90円製造販売承認日:2022年1月20日薬価基準収載日:2022年4月20日発売日:2022年6月8日製造販売元:日本イーライリリー株式会社販売元:第一三共株式会社

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StageII大腸がん、ctDNAに基づく術後化学療法の選択は有用(DYNAMIC)/NEJM

 StageII大腸がんの治療において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた治療方針の決定により無再発生存期間(RFS)を損なうことなく術後化学療法の使用を減少できることが、オーストラリア・Walter and Eliza Hall Institute of Medical ResearchのJeanne Tie氏らが行った多施設共同無作為化第II相試験「Circulating Tumour DNA Analysis Informing Adjuvant Chemotherapy in Stage II Colon Cancer trial:DYNAMIC試験」の結果、示された。StageII大腸がんにおける術後化学療法の役割については議論が続いている。術後にctDNAが存在する場合はRFSが非常に短いことを、存在しない場合は再発リスクが低いことを予測するが、ctDNA陽性者に対する術後化学療法の有用性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年6月4日号掲載の報告。ctDNAの有無による術後化学療法vs.標準治療のRFSを比較 研究グループは2015年8月10日~2019年8月2日の期間に、オーストラリアの23施設において、StageII(T3またはT4、N0、M0)の結腸または直腸腺がんでR0切除が得られ、術後化学療法を実施可能なECOG PS 0~2の患者455例を、ctDNAの結果に基づき治療を行うctDNA群または標準治療群に、2対1の割合で無作為に割り付けた(それぞれ302例、153例)。 ctDNA群では、術後4週および7週時のいずれかでctDNAが陽性であった場合に、フルオロピリミジン単剤またはオキサリプラチンを含む2剤併用療法による術後化学療法を行い、標準治療群では従来の臨床病理学的所見に基づいた治療が行われた(いずれの群も、主治医による選択)。 有効性の主要評価項目は、2年RFS率(非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間[CI]の下限が-8.5%)、主要な副次評価項目は術後化学療法の実施とし、ITT解析を行った。ctDNA群の標準治療群に対する非劣性を確認、術後化学療法はctDNA群で減少 追跡期間中央値37ヵ月(ctDNA群37ヵ月、標準治療群38ヵ月)において、術後化学療法を受けた患者の割合は、ctDNA群が標準治療群より少なく(15% vs.28%、相対リスク:1.82、95%CI:1.25~2.65)、2年RFS率に関してctDNA群の標準治療群に対する非劣性が認められた(93.5% vs.92.4%、絶対群間差:1.1%、95%CI:-4.1~6.2)。 3年RFS率は、術後化学療法を受けたctDNA陽性者で86.4%、術後化学療法を受けなかったctDNA陰性者では92.5%であった。

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