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重度の円形脱毛症、MTX+低用量ステロイドで毛髪再生

 フランス・ルーアン大学病院およびフランス国立衛生医学研究所(INSERM)U1234のPascal Joly氏らは、円形脱毛症(AA)のうち重度とされる全頭型AAまたは汎発型AA患者を対象に、メトトレキサート(MTX)単剤とプラセボの比較、MTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法を比較する2段階の二重盲検無作為化比較試験を実施した。その結果、MTX単剤では主に部分的発毛が可能であったが、MTX+低用量prednisone併用療法は患者の最大31%で完全発毛が可能であった。著者らは、「これらの結果は、JAK阻害薬で最近報告された結果と同程度であるが、コストははるかに安価と考えられる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年3月8日号掲載の報告。 研究グループは、治療効果が低いと報告されているAAの中でも最も重度とされる全頭型AAと汎発型AAについて、安価な治療法であるMTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法の有効性と忍容性を検討した。 試験は、8つの大学病院の皮膚科部門で2014年3月~2016年12月の期間に行われた。対象は、6ヵ月超の局所および全身性の治療にもかかわらず症状進行が認められる全頭型AAまたは汎発型AA成人患者。 対象患者は第1段階として、MTX(25g/週)単剤群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。6ヵ月時点の評価で25%以上の発毛が認められた患者は、12ヵ月間後まで1段階目で割り付けられた治療を継続した。発毛が25%未満であった患者は、第2段階としてMTX+prednisone(20mg/日を3ヵ月と15mg/日を3ヵ月)併用群またはMTX単剤群(MTX+プラセボ)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、MTX単剤の開始から12ヵ月後の完全発毛またはほぼ完全発毛(Severity of Alopecia Tool[SALT]スコア10未満)であった。なお、主要エンドポイントの評価は、試験開始時からMTXが投与された患者に限定され、4人の国際的な専門家が写真を基に評価した。副次エンドポイントは、頭皮の50%を超える発毛、QOL、忍容性などであった。データ解析は、2018年10月~2019年6月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計89例(女性50例、男性39例、平均年齢±標準偏差:38.6±14.3歳、全頭型AA:1例、汎発型AA:88例)が、MTX単剤群(45例)またはプラセボ群(44例)に無作為に割り付けられた。・12ヵ月時点で、完全またはほぼ完全発毛が観察されたのは、MTX単剤群1例、プラセボ群0例であった。MTX(6または12ヵ月)+prednisone併用群では35例中7例(20.0%、95%信頼区間[CI]:8.4~37.0)で観察され、このうちMTX(12ヵ月)+prednisone(6ヵ月)併用群では16例中5例(31.2%、95%CI:11.0~58.7)で観察された。・完全またはほぼ完全発毛が観察された患者は非反応患者と比べて、QOLの改善が認められた。・MTX投与を受けた患者において、疲労が7例(6.9%)、悪心が14例(13.7%)に認められ、2例が疲労と悪心で試験を中断した。重度の治療関連有害事象は観察されなかった。

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オランザピンに食欲亢進・体重増加効果、肺がん・上部消化器がん患者で/JCO

 食欲減退は進行がん患者の30~80%にみられ、化学療法により悪化することがある。そこで、インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのLakshmi Sandhya氏らは、がん患者の化学療法に伴う消化器症状の改善に用いられるオランザピンについて、食欲亢進・体重増加効果を検討した。肺がん患者、上部消化器がん患者に対して、化学療法中に低用量のオランザピンを毎日投与することで、食欲亢進および体重増加が認められた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号に掲載された。オランザピン群は食欲改善が認められた患者の割合が有意に高率 18歳以上で、未治療の進行または転移を有する胃がん患者(68例)、肺がん患者(43例)、肝がん・膵がん・胆道がん患者(13例)計124例を対象とした。対象患者を化学療法とともに低用量オランザピン(2.5g/日)を投与する群(オランザピン群)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、12週間投与した。両群とも、標準的な栄養評価と食事のアドバイスを受けた。主要評価項目は、5%以上の体重増加が認められた患者の割合と食欲改善であった。食欲については、VAS(visual analog scale)およびFAACT ACS(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy system of Quality-of-Life questionnaires Anorexia Cachexia subscale)で評価した。副次評価項目は、栄養状態の変化、QOL、化学療法の毒性であった。 オランザピンの食欲亢進・体重増加効果を検討した主な結果は以下のとおり。・対象患者124例(年齢中央値:55歳[範囲:18~78]、オランザピン群63例、プラセボ群61例)のうち、112例(オランザピン群58例、プラセボ群54例)が解析可能であった。・5%以上の体重増加が認められた患者の割合は、プラセボ群が9%(5/54例)であったのに対し、オランザピン群は60%(35/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・VASに基づく食欲改善が認められた患者の割合は、プラセボ群が13%(7/54例)であったのに対し、オランザピン群は43%(25/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・FAACT ACSに基づく食欲改善(37点以上)が認められた患者の割合は、プラセボ群が4%(2/54例)であったのに対し、オランザピン群は22%(13/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p=0.004)。・オランザピン群では、栄養状態、QOLが良好であり、化学毒性も少なかった。 著者らは、「低用量オランザピンは、未治療患者におけるがん化学療法中の食欲と体重を改善する、安価かつ忍容性の高い治療である。低用量オランザピンには、栄養状態の改善やQOLの改善、化学療法の毒性の低減といった副次的なベネフィットもみられた」とまとめた。

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医師の働き方改革、いまだ2割強が基準超の時間外勤務/医師1,000人アンケート

 2024年4月から勤務医の時間外労働の上限が原則960時間となる、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートするのを踏まえ、会員の勤務医1,000人を対象に働き方改革の制度の理解度、期待と不安、勤務先の対応策などについて聞くアンケートを実施した(2023年3月9日実施)。 直近1年間の勤務時間について、1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準とした場合の「当直を含む時間外労働時間の合計」を聞いたところ、「月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)」が42%、「月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)」が36%、「月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)」が13%、「週40時間を超える」が9%という結果となった。この割合は年代別(20、30、40、50代以上)、診療科別(外科・救急科とそれ以外の診療科)で比較しても大きな違いは見られなかった。 2019年にCareNet.comが行ったアンケートでも同じ質問をしたが、このときは時間外労働が週40時間を超える医師は全体の19%だったが、今回は22%と悪化した。今回のアンケートは対象を勤務医(勤務先病床数20床以上)に限定、外科・救急科に総数の5分の1を割り当てるなどやや条件が異なるものの、この4年間で時間外労働の削減があまり進んでいないことがうかがわれる結果となった。 長年の議論を経て、ようやく固まりつつある医師の働き方改革の各制度についての理解度を聞いたところ、改革の柱となる「時間外労働の上限規制」については「完全に理解している」「おおよそ理解している」の合計が53%と半数を超えたが、「宿日直の扱いと許可」では45%、「自己研鑽時間の扱い」では43%と医師本人の働き方に関する項目でも半数に届かず、「B/連携B、Cの特例水準」では39%、「今後のスケジュール」では37%に留まった。 「医師の働き方改革に期待していることや不安なこと」を選択式(3つまで)で聞いたところ、期待としては「サービス残業がなくなる」が28%、「プライベートの時間が増える」が26%で続いた。一方、不安としては「収入が減る」がダントツの37%、続いて「アルバイト・副業等が禁止される」23%、「サービス残業が増える」22%で、全体として期待よりも不安に関する項目に多くの票が集まった。 「派遣先勤務・アルバイト・副業等について、主たる勤務先に業務内容・勤務時間を届け出ているか」との設問では、43%が「届け出ている」と回答したが、「届け出ていない」との回答も23%にのぼり、働き方改革スタートまで1年となっても、勤務医の正確な勤務時間や業務内容の把握ができていない医療機関が相当数に上ることが予想される結果となった。 「主たる勤務先では、働き方改革に対して何らかの対策をとっているか」(複数回答)との設問には、「医師スタッフの増員(常勤・非常勤とも)」が20%、「宿日直勤務の許可・申請」が19%で全体の5分の1を占めたものの、最多は「何もしていない」の35%だった。 最後に自由記述で「医師の働き方改革に関する意見」を聞いたところ、数多くの回答が集まった。最も目に付いたのは時間外労働規制による給与減の不安に関するもので、20~30代の若手層を中心に「収入減が一番困る。忙しくてもいいから維持したい」(20代、臨床研修医)、「給与改定を望む。基本給が少なく時間外勤務の補填で必要な給与を確保していたので、かなり痛い」(40代、脳神経外科)、「医師に働き方改革は不要。労働時間を減らすのではなく、労働時間分の給料を出せ」(30代、放射線科)といった「労働時間に見合った報酬を支払うべき」との声が目立った。 そのほか、「従うしかない。主治医制も変わっていくのでは」(50代、外科)、「公立病院は昔のブラックな働き方が残っているが、徐々に改善されるだろう。反面、人員の確保や報酬の増加により経営が圧迫される懸念がある」(60代、内科)、「若手が権利ばかりを主張し、結局しわ寄せが管理者側に来てしまうだけの制度だと思う」(40代、消化器内科)といった、多様な意見が寄せられた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。1年後に迫る医師の「働き方改革」、認知度と対策は?…会員1,000人アンケート

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不健康なプラントベース食では死亡、がん、CVDリスクが増大

 “健康的”なプラントベース食(植物由来の食品)の摂取が多いほど、死亡、がん、心血管疾患のリスクが低くなるが、“不健康”なプラントベース食ばかりではそれらのリスクがむしろ高くなることが、英国・クイーンズ大学ベルファストのAlysha S. Thompson氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2023年3月28日号掲載の報告。 プラントベース食は、卵、乳製品、魚、肉を少量のみ摂取またはまったく摂取しないことを特徴とする食事で、環境と健康の両方の理由から世界中で人気となっている。しかし、プラントベース食の質と死亡や慢性疾患のリスクに関する総合的な評価は不十分であった。そこで研究グループは、健康的なプラントベース食と不健康なプラントベース食が、英国成人の死亡や主要な慢性疾患(心血管疾患、がん、骨折など)と関連しているかどうかを調査した。 調査は、UKバイオバンクの参加者を前向きに収集して行われた。2006~10年に40~69歳の参加者を募集して2021年まで追跡し、データの解析は2021年11月~2022年10月に行われた。主要アウトカムは、健康的/不健康なプラントベース食の順守の程度による、死亡率(全死因死亡および疾患特異的死亡)および心血管疾患(全イベント、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)、がん(全がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん)、骨折(全部位、椎骨、股関節)の相対的危険度であった。 健康的なプラントベース食か不健康なプラントベース食かどうかは、1日最低2回の食事を、24時間の平均摂取量に基づいて17項目の食品群(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、植物性の代替食品、紅茶/コーヒー、フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖入り飲料、お菓子/デザート、動物性脂肪、乳製品、卵、魚介類、肉、その他の動物性食品)のスコアで評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者12万6,394例(平均年齢56.1歳、女性55.9%、白人91.3%)を10.6~12.2年間追跡したところ、5,627例の死亡、6,890例の心血管疾患イベント、8,939例のがん、4,751例の骨折が発生した。・健康的なプラントベース食をより多く摂取していたのは、女性、低BMI、高齢、服薬/健康異常なし、低アルコール摂取、高学歴の人であった。・健康的なプラントベース食の順守率が最も高い四分位集団では、最も低い集団と比較して、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが低かった(死亡のハザード比[HR]:0.84[95%信頼区間:0.78~0.91]、がんのHR:0.93[0.88~0.99]、心血管疾患のHR:0.92[0.86~0.99])。・同様に、健康的なプラントベース食の順守率が最も高い集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクも低かった(心筋梗塞のHR:0.86[0.78~0.95]、虚血性脳卒中のHR:0.84 [0.71~0.99])。・一方、不健康なプラントベース食を最も多く摂取していた集団では、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが高かった(死亡のHR:1.23[1.14~1.32]、がんのHR:1.10[1.03~1.17]、心血管疾患のHR:1.21[1.05~1.20])。・同様に、不健康なプラントベース食を最もよく摂取していた集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中リスクも高かった(心筋梗塞のHR:1.23[0.95~1.33]、虚血性脳卒中のHR:1.17[1.06~1.29])。・健康的または不健康なプラントベース食と、出血性脳卒中、個別のがん種、骨折(全部位、部位別)には有意差はみられなかった。・砂糖入り飲料、スナック/デザート、精製穀物、ジャガイモ、フルーツジュースの摂取量が少ない健康的な食事がリスクの低下と関連していた。・これらは、性別、喫煙状況、BMI、社会経済的地位、多遺伝子リスクスコア(PRS)と関連はみられなかった。 上記の結果より、研究グループは「健康的なプラントベース食の摂取が、心血管疾患、がん、および死亡のリスクの低下と関連していた。健康的なプラントベース食をより多く摂取し、動物性食品の摂取を減らすことで、慢性疾患の危険因子や遺伝子素因に関係なく健康に有益である可能性がある」とまとめた。

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アリピプラゾールの自律神経への影響、長時間作用型注射剤と経口剤の比較

 非定型抗精神病薬は、自律神経系(ANS)の活動にさまざまな影響を及ぼす。中でも、経口の抗精神病薬であるアリピプラゾールは、ANS機能不全と関連しているといわれている。長時間作用型注射剤(LAI)は統合失調症の主な治療オプションであるが、ANS活性に対するLAIと経口剤との違いは、これまでよくわかっていなかった。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、統合失調症におけるアリピプラゾールの経口剤と月1回LAI(AOM)のANS活性への影響を比較検討した。その結果、AOMによる単剤治療は、経口アリピプラゾールと比較し、交感神経系などの副作用リスクが低いことを報告した。BMC Psychiatry誌2023年3月3日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者122例(入院患者:10例、外来患者112例、男性:51例、女性:71例、平均年齢[±SD]:43.2±13.5歳)。内訳は、経口アリピプラゾール単剤治療患者72例、AOM単剤治療患者50例であった。ANS活性の評価には、心拍変動パワースペクトル解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口アリピプラゾールで治療された患者は、AOMで治療された患者と比較し、交感神経活性の有意な減少が観察された。・重回帰分析では、アリピプラゾール製剤は、交感神経活性に有意な影響を及ぼすことが明らかとなった。・AOMは、経口アリピプラゾールよりも、交感神経系などの副作用リスクが低いことが示唆された。

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MMR正常を含む進行・再発子宮体がん、dostarlimab追加でPFS延長(RUBY)/NEJM

 原発性の進行または再発子宮体がんの治療において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬dostarlimabの併用は、標準化学療法単独と比較して、2年後の無増悪生存率が有意に高く、安全性プロファイルは個々の薬剤の既知のものと全般的に一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMansoor R. Mirza氏らが実施した「RUBY試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号で報告された。19ヵ国113施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 RUBY試験は、19ヵ国113施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月18日~2021年2月23日に患者のスクリーニングが行われた(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、原発性のStageIII/IVまたは初回再発の子宮体がんの患者が、カルボプラチン+パクリタキセルによる標準化学療法に加え、dostarlimab(500mg)またはプラセボを3週ごとに6サイクル静脈内投与した後、dostarlimab(1,000mg)またはプラセボを単独で6週ごとに最長3年間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、担当医判定(RECIST ver1.1に基づく)による無増悪生存と、全生存であった。全生存率も、dMMR-MSI-H集団、全患者集団の双方で良好 494例が登録され、dostarlimab群に245例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:41~81])、プラセボ群に249例(65歳[28~85])が割り付けられた。118例(23.9%)がミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍であり、dostarlimab群に53例(61歳[45~81])、プラセボ群に65例(66歳[39~85])が含まれた。 dMMR-MSI-H集団では、24ヵ月の時点における推定無増悪生存率は、dostarlimab群が61.4%(95%信頼区間[CI]:46.3~73.4)と、プラセボ群の15.7%(7.2~27.0)に比べ有意に優れた(ハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.50、p<0.001)。 全患者集団における24ヵ月時の推定無増悪生存率は、dostarlimab群が36.1%(95%CI:29.3~42.9)であり、プラセボ群の18.1%(13.0~23.9)よりも有意に良好だった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.80、p<0.001)。 また、dMMR-MSI-H集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が83.3%(95%CI:66.8~92.0)、プラセボ群は58.7%(43.4~71.2)であり、dostarlimab群で優れた(HR:0.30、95%CI:0.13~0.70)。 全患者集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が71.3%(95%CI:64.5~77.1)、プラセボ群は56.0%(48.9~62.5)と、dostarlimab群で高かった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.87、p=0.0021)が、中止基準の有意水準(p=0.00177)は満たさなかった。 試験期間中に発現または悪化した有害事象のうち最も頻度が高かったのは、悪心(dostarlimab群53.9%、プラセボ群45.9%)、脱毛(53.5%、50.0%)、倦怠感(51.9%、54.5%)であった。Grade3以上の有害事象(70.5%、59.8%)、重篤な有害事象(37.8%、27.6%)の頻度は、プラセボ群よりもdostarlimab群で約10ポイント高かった。 著者は、「MMRとMSIの状態の検査は、子宮体がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の使用の可能性について、予後因子と効果予測因子の双方で考慮されるため重要であり、本研究では、dMMR-MSI-H集団においてdostarlimab群で良好な無増悪生存率が得られた」と指摘している。

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BA.4/5対応2価ワクチン、初回接種での使用を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは4月11日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2価ワクチン「コミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、生後6ヵ月~4歳における初回免疫と追加免疫、および5歳以上における初回免疫での使用を可能とするための承認事項の一部変更を厚生労働省に申請したことを発表した。 本剤は現在、国内において5歳以上の追加免疫での使用のみ承認されている。なお、米国においては、5歳以上の追加免疫での使用に加え、2022年12月8日に生後6ヵ月~4歳における初回免疫の3回目としての使用が、2023年3月15日には同年齢層における1回の追加免疫(初回免疫を1価ワクチンで3回接種完了した者が対象)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。

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スタチンのプレイオトロピック効果はあるの?(解説:平山篤志氏)

 4S試験以来スタチンによる心血管イベント抑制効果が明らかにされ、さらに追加解析でスタチンにはLDL-コレステロール(LDL-C)低下効果に加えて、抗炎症、抗酸化などのプレイオトロピック効果があると示唆されてきた。このような背景から機序の異なるLDL-C低下薬であるエゼチミブやPCSK-9阻害薬を用いた大規模臨床試験では、スタチンに追加することでLDL-Cを低下させる効果で有効性が示されてきた。 しかし、今回のベムペド酸(bempedoic acid)を用いたCLEAR Outcome試験では、対象がスタチン不耐性の患者であるためコントロール群にはスタチンが使用されていない。にもかかわらず、ベムペド酸治療群で、有意なLDL-Cと高感度CRPの低下とともに心血管イベントを有意に減少した。このことは、スタチン不耐性の患者でも使用可能な薬剤が示されたことだけでなく、スタチンのプレイオトロピック効果についても疑問を投げかけたことになる。 では、なぜ高LDL-Cが炎症を引き起こすのか? LDL-Cを低下させることで炎症が抑制されるのか?については、近年、血管内視鏡で大動脈の自然プラーク破綻を観察した小松らの研究から、プラーク内で生成されたコレステロール結晶が自然破綻した後に全身で炎症を惹起する可能性が注目されている。今後展開される多くの研究により解明されるであろう。 米国心臓病学会(ACC)で発表されたとき、ベムペド酸にエゼチミブを加えることでさらなるイベント抑止効果が得られたのではないか?という質問が出された。すでにエゼチミブ単独でイベント低下効果が示されている(EWTOPIA75)ことから、予測される結果であるが、FDAが試験での使用を認めなかったとのことであった。今後、実臨床ではエゼチミブの併用で多用されるであろう。ただ、ベムペド酸が高尿酸血症や痛風の頻度を上げることには注意が必要である。

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第108回薬剤師国家試験合格率は69%、最下位の大学は29%【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第108回

第108回薬剤師国家試験が2月18~19日に全国10都道府県で実施され、3月22日に合格発表が行われました。厚生労働省は22日、第108回薬剤師国家試験について、合格者数は前年から▲5人の9,602人、合格率も例年並みの69%だったと発表した。新卒に限った合格率は84.86%(7,254人)で、こちらも例年並み。合格率の低い私立大薬学部で、新卒と既卒を合わせた合格率の最下位は青森大の29.21%、次いで下から姫路獨協大30.97%、第一薬科大36.36%、奥羽大39.18%、千葉科学大42.55%の順だった。(2023年3月23日付 RISFAX)新しく薬剤師になった人は9,602人で、昨年度とほぼ同様の結果でした。ここ10年ほどは、国家試験の合格率が話題になることが多かったような気がします。2013年度にあたる第99回において合格率60%という全薬剤師が震撼する数字をたたき出して以降、2015年度の第101回から5回連続で70%台という厳しい数字で推移し、2019年度の第105回以降は70%を下回っています。今回の合格率も69%で、60%台という数字も見慣れてしまいました。おそらく、環境の変化や何か具体的にテコ入れがされることがない限り、今後もこのくらいの数字で推移するのだろうと想像します。2006年度に薬剤師を養成する薬学部は4年制から6年制になりました。この前後から6年制薬学部の新設が相次ぎ、2006年度は66大学67学部でしたが、2021年度には77大学79学部に増え、入学する学生も大幅に増えました。2006年度に入学した1年生が国家試験受験資格を得る6年生になるのが最速で2012年度ですから、6年制への移行・新設薬学部の増加と、薬剤師国家試験の合格率の低迷が関連していると思われます。文部科学省は、これまでも定員充足率や国家試験合格率が低い私立大学を問題視しており、改善を促してきました。また、厚生労働省の推計によると、2020年に約32万人だった薬剤師数は、25年後の2045年には最大で約45万人となり、供給過多になると予測されています。2022年8月には、文部科学省が2025年以降の6年制薬学部の新設・定員増を規制する方針を明らかにしており、早ければ2022年度中に大学設置認可基準を改定すると言われていましたので、近いうちに何らかの発表がなされるのではないかと思います。6年制への移行や新設薬学部の大幅増、薬剤師国家試験の合格率の変化などさまざまなことがあった10年でしたが、これからまた新しいフェーズが始まるのかもしれません。

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英語で「鼻うがい」は?【1分★医療英語】第75回

第75回 英語で「鼻うがい」は?My hay fever(seasonal allergy)is getting worse…(花粉症が悪化してきています)Nasal irrigation might help with your symptoms.(鼻うがいが良いかもしれません)《例文1》Gargling and nasal irrigation may ease sinus inflammation.([喉の]うがいと鼻うがいは、炎症を和らげる効果があります)《例文2》The idea behind nasal irrigation is that it helps flush out the nasal cavity.(鼻うがいは、鼻腔を洗い流す作業です)《解説》「鼻うがい」は“nasal irrigation”や“nasal rinse”と言いますが、うがいは“gargle”と言うので、“nasal gargle”と表現することもあります。日本では「手洗い・うがい」が習慣化されていますが、海外ではあまりうがいの習慣がないため、私が塩水でガラガラとうがいをしていたら、ルームメイトに注目されたこともありました。小規模な研究ですが、「1日2回の鼻うがいが新型コロナの感染後の入院や死亡率を下げる」という報告1)もあり、このときは米国でも鼻うがいが話題に上がりました。鼻孔のことを“nostril”と言います。鼻うがいのやり方の説明としては、“Pour the saline solution slowly into one nostril and let it drain out of the other nostril.”(片方の鼻孔から液体をゆっくり入れ、反対の鼻孔から流し出します)となります。“hay fever”(花粉症)の季節は毎年やってくるので、“personal hygiene”(清潔習慣)の一つである 鼻うがいの説明を覚えておくと、役に立つかもしれません。<参考>1)Baxter AL, et al. Ear Nose Throat J. 2022 Aug 25. [Epub ahead of print]講師紹介

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第158回 胎児脳のコロナ感染 / コロナ入院患者死亡率は依然として高い

妊婦感染コロナの胎児脳への移行が初めて判明妊婦に感染した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の胎児の脳への移行とその害が、米国・マイアミ大学の研究者いわく初めて認められました1,2,3)。調べられたのはコロナに感染した妊婦から生まれ、生まれてすぐに発作を起こし、出産時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達の大幅な遅れを示した小児2例です。2例の出産時の鼻ぬぐい液のPCR検査ではSARS-CoV-2は検出されませんでした。しかし2例とも抗コロナ抗体を有しており、血液中の炎症指標が有意に上昇していました。母親2例の胎盤を調べたところSARS-CoV-2のタンパク質が認められ、生まれた小児の血液と同様に炎症指標の亢進が認められました。小児の1例は1歳を迎えて間もない生後13ヵ月で不慮の死を遂げました。その脳を免疫染色で調べたところSARS-CoV-2に感染していたことを示すタンパク質が脳全域で認められました。亡くなったその小児が生前そうであったようにもう1例の小児も出生時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達もかなり遅れました。1歳になっても寝返りを打ったり支えなしで座ったりすることができず、報告の時点でホスピスを利用していました。妊娠半ばに感染したSARS-CoV-2は胎児と胎盤、さらには胎児の脳に至って胎盤と胎児の両方に炎症反応を誘発しうることを今回の調査結果は示しています。そうして生じた炎症反応は生後間もないころを過ぎても続く脳損傷や進行性の神経不調とどうやら関連しそうです。今回報告された2例の小児はコロナ流行が始まって間もない2020年のデルタ株優勢のころに妊娠第2期で感染した母親から生まれました。母親の1例は肺炎や多臓器疾患で集中治療室(ICU)に入り、そこでSARS-CoV-2感染が判明します。胎児の経過はその後も正常でしたが、妊娠32週時点で帝王切開による出産を要しました。死後脳に感染の痕跡が認められたのはこの母親の子です。一方、もう1例の母親のコロナ感染は無症状で、妊娠39週に満期出産に至っています。それら2例の母親が感染したころはワクチンが普及した現在と状況が違っていますが、胎児の経過観察の目下の方針は不十分であると著者は言っています。胎児の脳がSARS-CoV-2による影響を受けるのであればなおさら慎重な様子見が必要です。それは今後の課題でもあり、脳の発達へのコロナ感染の長期の影響を検討しなければなりません。コロナ入院患者の死亡率はインフル入院患者より依然として高いコロナ流行最初の年のその入院患者の死亡率はインフルエンザによる入院患者より5倍近く高いことが米国での試験で示唆されています。さてウイルスそのもの、治療、集団免疫が様変わりした今はどうなっているのでしょうか?この秋冬の同国のコロナ入院患者のデータを調べたところ、幸いにも差は縮まっているもののインフルエンザ入院患者の死亡率を依然として上回っていました4,5,6)。調べられたのは2020年10月1日~2023年1月31日にコロナまたはインフルエンザの感染前後(感染判明の2日前~10日後)に入院した退役軍人のデータです。いわずもがな高齢男性を主とするそれら1万1,399例のうちコロナ入院患者8,996例の30日間の死亡率は約6%(5.97%)であり、インフルエンザ入院患者2,403例のその割合である約4%(3.75%)を1.6倍ほど上回りました。他のコロナ転帰の調査がおおむねそうであるようにワクチンの効果がその解析でも認められています。ワクチン非接種者に比べて接種済みのコロナ入院患者の死亡率は低く、追加接種(boosted)も受けていると死亡率はさらに低くて済んでいました。コロナによる死を防ぐワクチンの価値を今回の結果は裏付けています。参考1)Benny M, et al. Pediatrics. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]2)COVID caused brain damage in 2 infants infected during pregnancy -US study / Reuters3)SARS-CoV-2 Crosses Placenta and Infects Brains of Two Infants: 'This Is a First' / MedScape4)Xie Y, et al. JAMA. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]5)COVID-19 patients were more likely to die than flu patients this past flu season: study / NMC6)Covid Is Still Deadlier for Patients Than Flu / Bloomberg

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精神科病棟の認知症患者に対する音楽療法~レトロスペクティブ研究

 音楽療法は、地域および施設でケアされている認知症患者の気分を高め、興奮を軽減し、苦痛を伴う行動の減少が期待できる治療法である。しかし、精神科病棟に入院している認知症患者に対する音楽療法の影響はあまり知られていない。英国・アングリア・ラスキン大学のNaomi Thompson氏らは、2つの精神科病棟において認知症患者に対する音楽療法の影響を調査した。その結果、音楽療法を実施した日は実施しなかった日と比較し、苦痛を伴う行動が有意に減少し、音楽療法が患者の気分および興奮の軽減をサポートする価値ある介入であることが報告された。BJPsych Open誌2023年2月23日号の報告。 本研究には混合研究法を用いた。COVID-19パンデミックにより音楽療法の実施が変化した2020年、「破壊的および攻撃的(disruptive and aggressive)」として報告された行動を含むインシデントについて統計分析を行った。音楽療法士3人、病棟スタッフ8人を対象にオンラインによる半構造化インタビューを実施し、分析には再帰的テーマティック分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・定量的な調査では、対面での音楽療法を実施した日(14日ごと)は、音楽療法を実施しなかった日(3.3日ごと)またはオンラインでの音楽療法を実施した日(3.1日ごと)と比較し、破壊的および攻撃的として報告された行動の頻度の有意な減少が確認された。・定性的な調査においてもこれは裏付けられ、音楽療法士および病棟スタッフは、音楽療法はアクセスが簡便で意義があり、患者の気分を高め興奮を軽減し、1日中持続するベネフィットおよび病棟環境への影響の可能性があることを報告した。・音楽療法の影響と最適な実施方法を調査するためには、介入研究が必要である。

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ピロリ菌による胃がんリスク、病的バリアントが増強/NEJM

 Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃がんのリスク因子だが、遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントの、胃がんリスクへの関与や、これらの病的バリアントとH. pylori感染の組み合わせの、胃がんリスクに及ぼす影響は十分に評価されていないという。理化学研究所の碓井喜明氏らは、9つの遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが胃がんリスクと関連していること、そのうち相同組換え修復機能に関わる遺伝子の病的バリアントが、H. pylori感染による胃がんのリスクをさらに増強することを示した。研究結果は、NEJM誌2023年3月30日号に掲載された。2つの独立コホートで、感染、病的バリアント、胃がんの関連を評価 研究グループは、バイオバンク・ジャパン(BBJ)の胃がん患者1万426例(年齢中央値69歳[四分位範囲[IQR]:62~75]、男性74.5%)と、対照群3万8,153例(64歳[54~72]、53.1%)を対象に、27個の遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントと胃がんリスクとの関連を評価した。 また、愛知県がんセンター病院疫学研究(HERPACC)の胃がん患者1,433例(年齢中央値62歳[IQR:54~69]、男性74.6%)と、対照群5,997例(55歳[45~64]、51.1%)を対象に、病的バリアントとH. pylori感染状態の組み合わせが、胃がんリスクに及ぼす影響を評価し、累積リスクを算出した。病的バリアント保持率は年齢とともに低下 BBJコホートの解析では、9個の遺伝子(APC、ATM、BRCA1、BRCA2、CDH1、MLH1、MSH2、MSH6、PALB2)の生殖細胞系列の病的バリアントが、胃がんのリスクと関連していた(9遺伝子すべてでp<1.85×10−3)。 これらの病的バリアント保持者の割合は、診断時の年齢が高くなるにつれて低下した(傾向のp=0.001)。9個の遺伝子の病的バリアント非保持者に比べ、APCの病的バリアント保持者は年齢が18.0歳低く(p=0.003)、CDH1の病的バリアント保持者は20.5歳(p<0.001)、MLH1の病的バリアント保持者は11.5歳低かった(p=0.02)。 追跡期間中央値7.5年の時点での全生存期間は、保持者と非保持者で差はなかった(log-rank検定のp=0.58、多変量解析のハザード比:1.27、95%信頼区間[CI]:0.82~1.97、p=0.28)85歳時の累積リスク、感染者で病的バリアント保持者は45.5% HERPACCコホートの解析では、胃がんリスクに関して、H. pylori感染と相同組換え遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、PALB2)の病的バリアントとの間に交互作用が認められた(交互作用による相対的過剰リスク:16.01、95%CI:2.22~29.81、p=0.02)。 85歳の時点で、H. pyloriの非感染者は、病的バリアントの保持・非保持にかかわらず、胃がんの累積リスクは5%未満であった。これに対し、H. pylori感染者で相同組換え遺伝子の病的バリアント保持者は、同病的バリアント非保持者に比べ、胃がんの累積リスクが高かった(45.5%[95%CI:20.7~62.6]vs.14.4%[12.2~16.6])。 著者は、「これらの結果は、相同組換え遺伝子の病的バリアントの保持者では、H. pylori感染の評価と除菌が、とくに重要となる可能性を示唆する」としている。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)などの助成を受けて行われた。

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循環器領域における「睡眠呼吸障害の診断・治療ガイドライン」改訂で“睡眠”も心血管リスク因子に/日本循環器学会

 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が循環器疾患の重要なリスク因子であることが明らかになり、2010年に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』が発刊された。あれから13年、3月11日に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』の2023年改訂版が発刊され、第87回日本循環器学会学術集会の「ガイドラインに学ぶ2」において、葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科 准教授)が改訂ポイントを6つに絞り、改訂の背景や臨床に役立つ点を発表した。『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』は“睡眠”を意識 SDBは、さまざまな循環器疾患に合併し、循環器疾患の悪化に関与するだけではなく、循環器疾患の発症そのものに関与することも示唆されている1)。AHAは2010年にCardiovascular Health Promotionとして、7つの修正可能な因子(適正体重の維持、禁煙、運動習慣、健康的な食習慣、血圧・血清脂質・血糖値のコントロール)をLife’s Simple7として示してきたが、「睡眠」の重要性がエビデンスの構築により高まり、2022年の改訂では追加されLife‘s Essential 8になっている。 今回、本邦の『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』にもその点が反映され、以下の6項目が改訂された。葛西氏は「とくに診断における定義・スクリーニング、検査時のスコアリングルールがアップデートされており重要」と述べ、「以前から多くの先生に引用されていたであろう“心血管疾患ごとのSDB合併頻度”についても改訂し、HFpEFなどの疾患項目数を増やした」と説明した(本GL図8参照)。また、現状の循環器診療においてSDB診断がなされているかを知るために福島県立医科大学の医師らがJROAD-DPCからその傾向を調査したところ、「入院患者のみのデータではあるが、2012~19年の期間に急性心筋梗塞以外でのSDB診断は若干増加したものの、全体としては未診断が散見され、検査の実施率も心房細動以外では低下傾向」であったことを言及し、「入院中検査は点数が算定できないことも要因の1つだが、循環器医に対して、SDB診断の普及啓発が必要である」とも話した。<『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版の主な改訂点>1)正常睡眠と睡眠障害:より循環器領域の内容に特化する形へ変更2)診断:最近の定義・スコアリングルールに関する内容にupdate3)疫学:有病率などをより近年のデータにupdate4)病態:近年提唱された新たな病因・病態生理について言及5)治療:全体をupdateするとともに、エビデンスが出ている治療(舌下神経電気刺激療法[保険収載]、中枢性睡眠時無呼吸への横隔神経電気刺激療法[保険未収載]など)の可能性に関して言及6)各疾患との関連と治療:項目を拡充し、高血圧以外の循環器疾患リスク因子にも言及。多数のエビデンスが報告された不整脈(とくに心房細動)や心不全に関して、細分化し項目を分けた。 主な変更点は以下のとおり。1)正常睡眠と睡眠障害睡眠呼吸障害以外に循環器医が注意すべき睡眠問題として、睡眠過不足、睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群[restless legs syndrome:RLS]、周期性四肢運動[periodic limb movement in sleep:PLMS])にもフォーカスを当てた。2)診断呼吸器学会が発行している「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」同様にSDBの診断基準は国際睡眠障害分類の第3版(ICSD-3)に準じ、成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea:OSA)の診断基準の1つに「患者が高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、あるいは2型糖尿病と診断されている」と書かれている点を踏襲。『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版では、スクリーニングと診断の違いを明記した(表10参照)。なお、OSAの診断基準とCPAP治療の保険適用の基準が異なる点に注意が必要。また、心房細動や粗動、うっ血性心不全、あるいは神経疾患の存在は、中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration:CSA-CSR)を合併しやすい点も重要。3)疫学各心血管疾患でのSDB合併頻度は肺高血圧症(89.0%)が最も高く、治療抵抗性高血圧(83.0%、AHI≧10)、心房細動(81.4%)、HFrEF(76.0%)と続く。これを踏まえ患者を診察してもらうことで、これまで以上にリスク患者をあぶりだせる可能性。4)病態OSAの機序の記載を大幅に変更し、「上気道の解剖学的異常、上気道の神経性調節異常、呼吸調節系の不安定性、覚醒閾値」について、『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』2023年版では具体的な説明を加えた。5)治療・OSAに対する舌下神経電気刺激療法(CPAPが受けられない患者に適用)の項が追加。・生活習慣是正については睡眠薬のうち非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やオレキシン受容体拮抗薬の処方検討を考慮してもよい。・OSAの薬物療法については上気道解剖学的要因、上気道神経性調節異常などに対しそれぞれ言及。・CSR-CSA治療に対しては心不全治療薬ARNIが追加。・そのほかのSDB治療については弾性ストッキングが追加。6)各疾患との関連と治療これまで「各論」としていた項目の名称を変更し、高血圧をはじめとする13疾患にカテゴライズ。とくにSDBのリスク因子となる高血圧、糖尿病、CKD、高尿酸血症のほか、多数のエビデンスが報告された頻脈性不整脈(上室)などの内容を充実させた(表35~45参照)。

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第142回 サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省

<先週の動き>1.サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省2.セキュリティ対策求め、オンライン診療のガイドラインを改定/厚労省3.医療DXで診療報酬改定の医療機関の負担を軽減を/厚労省4.飲む中絶薬、病院での待機を条件に月内に承認か/厚労省5.再生医療の産業育成、重点化で後押し/経産省6.民間病院グループが民事再生法申請、負債総額132億円/千葉県1.サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省厚生労働省は、去年、欧米を中心に流行した「サル痘」(感染症法上の4類感染症)の感染が、今年に入って国内でも感染者が増加しているため、「発疹など感染が疑われる症状がある人は医療機関に相談してほしい」と呼びかけている。厚生労働省によると、国内では2022年7月に1例目の患者が確認され、その後散発的に発生が報告されていたが、2023年4月4日時点で95例の患者報告が集積している。なお、厚生労働省は、WHOの新たな病名「エムポックス」の推奨を受けて、今後病名を変更するため政令改正の手続きを行っている。(参考)サル痘について(厚労省)サル痘の感染増加、今年87人感染 厚労省「疑う症状は相談を」(朝日新聞)「サル痘」感染 国内でことしに入り増加 “医療機関へ相談を”(NHK)サル痘感染者、100人に迫る 厚労省「疑い症状相談を」(共同通信)2.セキュリティ対策求め、オンライン診療のガイドラインを改定/厚労省厚生労働省は、このほど医療機関を標的とするサイバー攻撃の増加を受けて、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を改訂した。この中で、厚労省は、医療機関側に対して、使用するオンライン診療システムが患者の医療情報が漏洩や改ざんがされないように情報セキュリティ対策を確認するように要請している。また、オンライン診療を計画するときは、患者に対してセキュリティリスクを説明し、同意を得なければならないなど記載が追加されている。(参考)オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省)「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A(同)オンライン診療、セキュリティーの責任分界点確認を 厚労省が指針改訂(CB news)オンライン診療指針を改訂!「得られる情報が少ない」点を強調するとともに、過重なセキュリティ対策規定を見直し!-厚労省(Gem Med)オンライン診療の適切な実施に関する指針、2023年3月改訂版とQ&A更新(医療経営研究所)3.医療DXで診療報酬改定の医療機関の負担を軽減を/厚労省厚生労働省は、「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームを4月6日に持ち回り開催し、診療報酬改定DX対応方針案を公表した。令和6年度から医療DX工程表に基づいて、デジタル技術を最大限に活用し、共通算定モジュールの開発や共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善、標準様式のアプリ化とデータ連携などを行う。また、診療報酬改定の施行時期を後ろ倒しするなどで、中小病院や診療所などで負担となっている電子カルテなどのシステム改修コストを低減することを目的に、段階的に実装を目指す。(参考)第3回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム(厚労省)診療報酬改定DX対応方針(案)(同)診療報酬施行後ろ倒しへ、夏までに時期決定 厚労省が対応方針(CB news)4.飲む中絶薬、病院での待機を条件に月内に承認か/厚労省先月、厚生労働省が審議する予定の妊娠初期の中絶に使用される経口妊娠中絶薬の「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)[ラインファーマーズ]について、3月24日にパブリック・コメントが殺到したため、審議が見送りとなっていた。そして、今般、承認条件に新たに中絶が確認できるまで病院での待機を必須とする方向で検討していることが明らかとなった。厚生労働省は、インターネットや個人輸入により入手をしないよう、注意喚起を行っており、4月下旬に開催する薬事分科会で、製造販売の承認可否を審議する見通し。(参考)飲む中絶薬、病院待機を必須に 厚労省、月内にも承認審議(共同通信)ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について(厚労省)5.再生医療の産業育成、重点化で後押し/経産省経済産業省は、細胞・遺伝子治療分野が2030年まで年率30%の成長が見込まれるとして、再生医療を開発している研究機関や医療機関について、重要性が高い研究を行う拠点を重点的に補助金で支援する方針で、今年の春に公募を行い数ヵ所を決定する予定。一方、再生医療の安全性について懸念が高まっているため、日本再生医療学会は、再生医療認定医や上級臨床培養士、臨床培養士などの認定資格を持つ人が、医療機関内に一定数いることを要件とする医療機関の認定制度を発足させる方針であることが明らかになった。(参考)再生医療の治療・研究拠点に「お墨付き」、経産省が重点支援へ…3~5か所想定(読売新聞)再生医療「どの病院なら安全?」学会が認定へ 年内にも新たな制度(朝日新聞)2040年には市場が20倍? 注目の再生医療・細胞治療に匹敵する、世界初の発見(財経新聞)6.民間病院グループが民事再生法申請、負債総額132億円/千葉県千葉県で八千代病院や成田リハビリテーション病院を運営する医療法人社団心和会(四街道市)が、4月4日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した。健診サービスのほか訪問介護ステーションの開設や積極的な多角経営を展開していたところ、新型コロナウイルスのクラスター発生などが影響したほか、前理事長の不動産トラブルなどで資金繰りが悪化し、経営状況では2021年から赤字となっていた。医療法人側は、診療体制を維持しながら、新たなスポンサーを探して事業譲渡を行う方針。(参考)「八千代病院」の医療法人が民事再生法申請 負債総額132億円 四街道・心和会 コロナ、不動産トラブルで資金繰り悪化(千葉日報)千葉県内で八千代病院など複数の病院を経営する(医)社団心和会が民事再生を申請(東京商工リサーチ)

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第60回 正規確率プロットとは?【統計のそこが知りたい!】

第60回 正規確率プロットとは?今回も正規分布における分布の調査方法について説明します。前回解説した「歪度と尖度」と同様に観測されたデータ(サンプル)の累積相対度数の傾向から度数分布が正規分布であるかを調べる方法を「正規確率プロット(Normal probability plot)」と言います。正規確率プロットは、累積相対度数から「z値」と言う統計量を算出します。図1の度数分布の累積相対度数を、正規確率プロットによって正規分布であるかを調べてみましょう。図1z値とは、第58回で学習した、z分布(標準正規分布)における下側確率が累積相対度数となる横軸の値です。また、z値はExcel関数(図2)で求められます。図2 Excelでのz値の求め方算出したz値を表に書き込むと下記のようになります。表 z値(右端)を追加した一覧表次に、z値を縦軸、階級値を横軸にとり散布図(図3)を描きます。このグラフを「正規確率プロット」と言います。図3 事例の散布図散布点が直線傾向にあると判定できた場合、「度数分布の形状は正規分布である」と言えます。言い換えると直線傾向がみられるので、「正規分布である」と言えます。■判断の着眼点散布点に対する直線の当てはまり具合は決定係数で把握できます。決定係数が0.99以上の場合、度数分布は正規分布と判断します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?第58回 標準正規分布とは?第59回 歪度と尖度とは?

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映画「ドラえもん のび太と空の理想郷」【それでもパーフェクトな子供にさせたい?(自己肯定感)】Part 1

今回のキーワード主流秩序過剰適応排他性独裁国家多様性自己効力感ほど良い(グッド・イナッフ)中学受験みなさんは子供をパーフェクトにさせたいですか? 勉強ができてスポーツができて、親や先生の言うことをよく聞くような? やがて、パーフェクト(有名)な学校に合格させて、パーフェクトな会社に就職させて、パーフェクトな人と結婚させて…。そんな子供を育てる自分はパーフェクトな親になるでしょうか?一方で、そんなパーフェクトであることに危うさはないでしょうか? それに気付かせてくれるのが、映画「ドラえもん のび太と空の理想郷」です。今回の舞台は、誰もがパーフェクトになれる楽園「パラダピア」。そこで、ドラえもんやのび太たちが冒険を繰り広げます。とくに今回は、子供だけでなく、大人も楽しめ考えさせられるストーリーになっています。この記事では、この映画を通して、パーフェクトであると思えること(自己効力感)とパーフェクトでなくてもいいと思えること(自己肯定感)をテーマに、より良い子育てのあり方、そしてより良い社会のあり方を一緒に考えてみましょう。パラダピアとは?のび太は、出木杉くんから教えてもらった空想の国ユートピアを探し求めるなか、ついに未来の世界で、パラダピアを見つけます。そこで出迎えるパーフェクトネコ型ロボットのソーニャから、パラダピアがどんな国かを聞かされます。それでは、まずその特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)争いがないソーニャは説明します。「人口は400人ほど。みな、穏やかでルールを守り、大人はよく働き、子供はよく勉強をします」「ここは争いも犯罪もない、誰もが幸せに暮らせる世界」と。これは、出木杉くんのセリフ「ユートピアは…争いも戦争もなく、飢えることもない、誰もが幸せに暮らせる国なんだ」に重なります。1つ目は、争いがないことです。(2)みんなパーフェクトになれるソーニャは続けて「パラダピアには不思議な力があるのです。のび太様もここで暮らせば、勉強もスポーツもできるパーフェクト小学生になります」と言います。実際に、パラダピアの学校では、みんな笑顔で親切です。のび太は、何とか算数の問題を解くとみんなから祝福されて幸せそうです。2つ目は、みんなパーフェクトになれることです。(3)偉い人がすべて決めてくれるソーニャはのび太たちを大聖堂に案内し、三賢人を紹介します。そして、「サイ様は科学、ポーリー様は政治、カルチ様は文化芸術をつかさどる賢人。このパラダピアは3人の天才が創り上げた理想の国なのです」と説明します。彼らが、パラダピアで起きるものごとをすべて決めているというわけです。3つ目は、偉い人がすべて決めてくれることです。パラダピアの正体とは?パラダピアとは、争いがなく、みんなパーフェクトになれて、偉い人がすべて決めてくれる、まさにユートピアのようです。しかし、実はパラダピアにはある大きな秘密が隠されていました。これは、パーフェクトであることの危うさにつながります。次のページから、その危うさを3つ挙げてみましょう。なお、ネタバレになりますので、ご注意ください。次のページへ >>

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映画「ドラえもん のび太と空の理想郷」【それでもパーフェクトな子供にさせたい?(自己肯定感)】Part 2

パラダピアの正体とは?ここからがネタバレになりますので、ご注意ください。(1)「パーフェクト」な人の言いなりになるドラえもんとのび太の前に、マリンバが現れます。彼女は、未来の世界でパラダピアに無理やり連れてこられ閉じ込められている住人たちを助け出す任務を負っていたのです。彼女は、2人に「三賢人が研究しているのは人を操る光よ」と明かします。その光とは、実はパラダピアンライト(パラダピアの人工太陽)だったのです。1つ目は、「パーフェクト」な人の言いなりになることです。受け身になり、自分の頭で考えなくなることです。「パーフェクト」とは、実は三賢人にとって都合の良い人間になることだったのです。よって、ここではパーフェクトをカギかっこにしています。そして実は、この「パーフェクト」は私たちの世の中で多数派が望ましいと思う価値観とも言い換えられます。心理学では、これを主流秩序と呼んでいます。そして、それに従わせる力を同調圧力と呼んでいます。パラダピアンライトは、まさにこの象徴と言えるでしょう。なお、主流秩序の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)パーフェクト」であることにとらわれるパラダピアンライトによって、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんが一様に同じ笑顔でおとなしくなり、パラダビアの住人になっていくなか、のび太だけがなぜか変わりません。そんなのび太は「みんな、怒ることも大笑いすることも泣くこともない。ただ毎日、三賢人の決めた通りに生活してるだけ。そんなのパーフェクトなんかじゃない」と言うのです。2つ目は、「パーフェクト」であることにとらわれることです。そのために取りつくろい、やがて染まってしまうことです。これは、パーフェクトであることに無理をしてしまったり、パーフェクトでなければ生きている価値がないと自分を追い詰めてしまうことにもなってしまいます。これは、エリートの自殺が少なからずいることを説明できるでしょう。心理学では、これを過剰適応と呼んでいます。この詳細は、関連記事2をご覧ください。(3)「パーフェクト」でなければ懲らしめられるのび太は夜中にジャイアンたちを起こして逃げだそうと試みます。ところが、ジャイアンから「勝手に外に出るのは規則違反ですよ」と言われ、スネ夫からは「すみませーん、規則を破ろうとする人がいまーす」と誰かを呼ばれそうになります。また、ソーニャは、ドラえもんと仲良くなったことで、三賢人の言うことをすぐに従わなくなります。すると、三賢人から「また、ガラクタに戻すぞ!」と脅されます。パラダピアは、争いのない国なのではなく、自己主張したら罰せられる国だったのです。3つ目は、「パーフェクト」でなければ懲らしめられることです。それ以外は認められず、それ以外の生き方の自由や多様性がないことです。心理学では、これを排他性と呼んでいます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「ドラえもん のび太と空の理想郷」【それでもパーフェクトな子供にさせたい?(自己肯定感)】Part 3

自己肯定感とは?パーフェクトであることの危うさは、「パーフェクト」な人の言いなりになる、「パーフェクト」であることにとらわれる、「パーフェクト」でなければ懲らしめられることであることがわかりました。つまり、パラダピアという国は、ユートピアとは名ばかりで、その正体は実は独裁国家であったということです。三賢人に追い詰められるなか、ドラえもんは「パーフェクトになんかならなくていい」「これがぼくだからだ!」と訴えます。そして、ドラえもんが何もできない状況で、三賢人から「役に立たないロボットは価値がないでしょう?」と問われた時、のび太は「ドラえもんはぼくのそばにいてくれるよ」「一緒に泣いてくれるよ。一緒に笑ってくれるよ。いらないものなんかじゃない!ぼくの大事な友達だ!」と言い返します。そして、「パーフェクト」洗脳から目が覚めたジャイアン、スネ夫、しずかちゃんも加わり、「いろんな人がいるから面白いんだ。ここはユートピアなんかじゃない!」とはっきり言うのです。最後に、のび太たちがパラダピアでの冒険を終えて無事に帰ってきた時、彼はドラえもんに「ぼく、なんだかこの町が前よりずっと好きになったよ。ユートピアなんていらなかったんだ」「だってこの世界は初めから素晴らしいんだもん!」と言います。パラダピアに来た当初に「ぼくのいた世界はひどい」というのび太のセリフと対照的です。彼の成長を感じさせます。今回の冒険で、彼は、多様性の素晴らしさを学び、そして、自己肯定感を高めたのでした。自己肯定感とは、「パーフェクトでなくてもいい」「どんなことがあっても大丈夫」など、自分を無条件に肯定する感覚です。いわゆる自尊心とも言い換えられます。ただし、のび太は、ラストシーンで0点の答案を見たママから怒られて「そのままのぼくを愛してよ~」と言い返してオチがつきました。このように、「ありのまま」で良いだけだと、努力をしなくなります。これこそがユートピアです。やはり自己肯定感だけ高ければいいわけではありません。自己効力感とは?一方で、自己肯定感とは対照的に、「パーフェクトである」「自分はできる」など、自分には能力があり何かを成し遂げることができる感覚は、自己効力感です。いわゆる自信とも言い換えられます。ドラえもんに登場するキャラクターの中で、この自己効力感が高いのは、出木杉くんです。彼は典型的な優等生で、パラダピアに行かなくてもすでに「パーフェクト小学生」です。ただし、パーフェクトであることの危うさを踏まえると、彼の弱点が見えてきます。それは、のび太たちの大冒険のメンバーには一度も採用されないことです。そのわけは、彼がパーフェクトであるゆえに、たとえ冒険に加わっても知識を披露するだけで、ラストシーンののび太たちのようにワクワクするキャラクターにはならないからです。そもそも彼のキャラクターからすると、誘われても冒険することを辞退するでしょう。だからこそ、彼は、登場するにしても毎回序盤だけなのです。どんな子育てがいいの?のび太と出木杉くんのキャラクターから、自己肯定感と自己効力感はどちらかが高いだけでは危うさがあることがわかりました。このことから、どんな子育てがいいのでしょうか? それは、自己肯定感も自己効力感もバランスよく育むことです。このような子育ては、国家になぞらえると、自己効力感に重きを置く独裁国家でもなく、自己肯定感に重きを置くユートピアでもない、民主主義国家といえるでしょう。つまり、「パーフェクト」でも「ありのまま」でもない、「ほど良い(グッド・イナッフ)」を目指すことです。なお、これらの子育てのタイプの詳細については、関連記事4をご覧ください。この記事のグラフでは、自己肯定感を非認知能力、自己効力感を認知能力と表記しています。本当の「理想郷」とは?昨今、中学受験が過熱しています。ますます多くの家庭が、パラダピアのような独裁国家になっていくことが懸念されます。独裁国家ほど、きれいな言葉などで飾り立てるのを好みます。しかし、その危うさを知った今、実は教育ビジネスに煽られ踊らされ、子供も親も息苦しさを感じている状況が透けて見えてきます。この映画は、私たち大人へのそんな教訓が暗に込められているようにも思えてきます。子育てとは、「ほど良さ」のあり方を育むによって「この世界は素晴らしい」「生きてることは素晴らしい」とまず子供が思えるようになることではないでしょうか? そう思える子供がやがて大人になった社会こそが、本当の「理想郷」と言えるのではないでしょうか?1)「小説 映画ドラえもん のび太と空の理想郷」:福島直浩、小学館、2023<< 前のページへ■関連記事ウエストワールド【あなたは「満足な豚」それとも「不満足なソクラテス」?(哲学セラピー)】Part 1Mother(前編)【過剰適応】マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 1そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1

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