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第38回 食卓を支配する「超加工食品」の正体とは? 世界的権威が警告する健康リスクと、今日からできる見分け方

スーパーマーケットやコンビニに並ぶ、色鮮やかで手軽な食品たち。袋を開ければすぐに食べられ、味も見た目にもおいしく、しかも安価だったりします。私たちの生活に欠かせない存在となったこれらの食品ですが、その多くが「超加工食品」と呼ばれるカテゴリーに属することをご存じでしょうか。近年、この超加工食品が私たちの健康に深刻な悪影響を及ぼしているという科学的証拠が次々と明らかになっています。そして今回、医学誌The Lancet誌が、超加工食品に関する大規模な特集シリーズを組み、その健康リスクについて警鐘を鳴らしました1)。本記事では、この最新の論文に基づき、超加工食品とはいったい何なのか、具体的にどのようなリスクがあるのか、そして私たちはどう向き合えばよいのかを考えていきたいと思います。キッチンにはない「謎の成分」が目印? 超加工食品の定義と見分け方まず、私たちが普段口にしている食品は、加工の度合いによって4つのグループに分けられます。これを「Nova分類」と呼びます。 1.未加工・最小限の加工食品 野菜、果物、肉、卵、牛乳など、素材そのものや、乾燥・粉砕・加熱などの単純な加工しかしていないもの 2.加工食材 料理に使う油、バター、砂糖、塩など 3.加工食品 缶詰の野菜、チーズ、焼きたてのパンなど、素材に塩や油を加えて保存性を高めたりおいしくしたりしたもの 4.超加工食品 ここが今回の主役です超加工食品とは、単に加工された食品というわけではありません。最大の特徴は、「家庭のキッチンには通常置いていないような工業的な成分」が含まれていることです。具体的には、カゼイン、乳糖、乳清などの抽出物や、加水分解タンパク質、異性化糖(高果糖コーンシロップ)、硬化油などが挙げられます。さらに、風味を良くしたり、見た目を整えたりするための「化粧品のような添加物」、たとえば香料、着色料、乳化剤、甘味料、増粘剤などがふんだんに使われています。身近な例で言えば、炭酸飲料、スナック菓子、大量生産された袋入りのパン、チキンナゲットなどの再構成肉製品、インスタントスープ、そして「ヘルシー」をうたうダイエットシェイクや一部の植物性代替肉なども、実は多くがこのカテゴリーに含まれます。「ヘルシー」な「超加工食品」がこの世の中にはたくさん存在するのです。しかし、実際には見分け方はシンプルです。パッケージの表側に騙されてはいけません。見分けるには、パッケージの裏側にある原材料名を見る必要があります。もしそこに、あなたの家のキッチンにない、見慣れない名前(たとえば「○○抽出物」「○○色素」「乳化剤」「スクラロース」など)が並んでいたら、それは超加工食品である可能性が高いと言えます。なぜ「超加工」されると体に悪いのか? 栄養バランスだけではない複合的なリスクそれでも、「カロリーや栄養バランスに気をつければ、加工食品でも問題ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、今回の論文は、問題がそれほど単純ではないことを指摘しています。第一に、栄養の質が劇的に低下します。超加工食品の割合が増える食事は、糖分、脂肪、塩分が高くなりやすく、逆に健康維持に不可欠な食物繊維、タンパク質、ビタミン、ミネラルが不足する傾向があります。第二に、「食べ過ぎ」を引き起こす構造になっています。超加工食品は、企業が利益を最大化するために、消費者が「もっと食べたい」と感じるように設計されています。柔らかくて噛む必要があまりない、心地よい食感、絶妙に調整された味と香りなど、私たちの満腹中枢を麻痺させるのです。実際、米国国立衛生研究所(NIH)が行った実験では、栄養価をそろえた食事であっても、超加工食品中心の食事をしたグループは、そうでない食事をしたグループに比べて、1日当たり約500kcalも多く摂取し、体重が増加したというデータがあります。第三に、食品添加物や汚染物質のリスクです。パッケージから溶け出す化学物質や、加工過程で生成される有害物質、そして乳化剤や人工甘味料などが腸内環境(マイクロバイオーム)を乱し、体に炎症を引き起こす可能性が指摘されています。つまり、超加工食品は、単に栄養が偏っているだけでなく、物理的な構造や化学的な組成そのものが、私たちの体のシステムを狂わせる可能性があるのです。がん、心臓病、うつ病まで… データが示す深刻な健康リスクでは、実際に超加工食品を食べ続けると、どのような病気のリスクが上がるのでしょうか。論文では、世界中の100以上の長期的な追跡調査の結果を統合し、解析しています。その結果、超加工食品の摂取量が多いグループは、少ないグループに比べて、以下のような病気のリスクが統計的に有意に高くなることが明らかになりました。 肥満・過体重:リスクが21%増加 2型糖尿病:リスクが25%増加 心血管疾患(心臓病や脳卒中など)による死亡:リスクが18%増加 うつ病:リスクが23%増加 クローン病:リスクが90%増加 全死亡リスク(あらゆる原因による死亡):リスクが18%増加 とくに注目すべきは、これらのリスク上昇の度合いが、健康に良いとされる「地中海食」がもたらす病気予防効果と、ほぼ同程度のインパクト(ただし逆方向、つまり悪影響として)を持っているという点です。つまり、超加工食品を食べることは、健康的な食事のメリットを相殺し、さらにマイナスに突き落とすほどの力を持っていると言えます。ただし、すべての超加工食品が同じように悪いわけではないでしょう。たとえば、全粒粉を使った大量生産のパンやヨーグルトなどは、清涼飲料水や加工肉に比べればリスクが低い可能性があります。しかし、全体として見れば、加工されていない食品(普通のヨーグルトや手作りの肉料理)の方が、超加工されたバージョン(甘味や香料入りのヨーグルトやソーセージ)よりも健康的であるという大原則は変わりません。私たちはどうすればいいのか?この論文の結論として、超加工食品の蔓延は、世界的な慢性疾患の増加の「主要な推進要因」であると断定されています。イギリスやアメリカでは、すでにカロリー摂取量の半分以上が超加工食品で占められています。日本や韓国などのアジア諸国はまだそこまで高くはありませんが、その消費量は年々増加傾向にあります。私たち消費者ができることは、まず「知ること」です。買い物の際、時々パッケージの裏を見て、なじみのない添加物が入っていないか確認することが第一歩です。そして、無理のない範囲で「素材」に近い食品を選び、自宅で調理する頻度を増やすことが、最善の防衛策といえます。もちろん、忙しい現代社会において、超加工食品を完全にゼロにすることは現実的ではないでしょう。しかし、「便利さ」の裏側に、私たちの健康を蝕むリスクが潜んでいることを理解し、日々の選択を少しずつ変えていくことが、自分や家族の未来を守ることにつながるのではないでしょうか。 参考文献・参考サイト 1) Monteiro CA, et al. Ultra-processed foods and human health: the main thesis and the evidence. The Lancet. 2025 Nov 18. [Epub ahead of print]

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糖尿病、非肥満者は発症前に体重減少の傾向

 東アジア人は白人よりも低い体重で糖尿病を発症することが知られており、その背景には異なる発症メカニズムが存在する可能性がある。日本人の健康診断データを用いた後ろ向き観察縦断コホート研究により、非肥満者では糖尿病発症前に体重減少が先行する一方、肥満者では糖尿病発症前に体重増加がみられることが明らかになった。富山大学・四方 雅隆氏らによるこの研究成果は、Endocrine Journal誌オンライン版2025年9月25日号に発表された。 この研究は、日本人9,260例の健康診断データを用いた後ろ向き観察縦断コホート研究として実施された。対象者の61.4%が男性で、観察期間中に259例が糖尿病を発症した。観察期間開始から3年以内に糖尿病を発症した者は除外した。参加者を肥満群(BMI 25 kg/m2以上)と非肥満群(BMI 25kg/m2未満)の2つのサブタイプに分類し、糖尿病発症に至るまでの体重変化のパターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・肥満群では糖尿病発症前にBMIが増加し、その後減少するパターンが観察された。一方、非肥満群では糖尿病発症前にBMIが減少し、その後安定するという対照的なパターンが示された。・非肥満群では糖尿病発症前に年間BMI変化が-0.15kg/m2以下(体重減少)を示す参加者が、+0.15kg/m2以上(体重増加)を示す参加者よりも有意に多かった(p=0.003)。これらの結果は、非肥満群では体重減少が糖尿病発症に先行することを示している。 研究者らは、「非肥満でありながら血糖値が上昇している人(ただし、糖尿病の診断基準は満たさない)は、糖尿病発症の高リスク群として考慮すべきだ。従来、体重増加が糖尿病リスクとして注目されてきたが、この研究結果は、非肥満者においては体重減少が糖尿病発症の前兆となる可能性を示唆している。これらのハイリスク層を早期に特定し、体重減少に焦点を当てない生活指導を提供することが糖尿病発症予防において重要だ。この知見は、とくに東アジア人における糖尿病の予防戦略に新たな視点をもたらすものである」としている。

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乳がん化学療法中の頭皮冷却で発毛が回復しにくい患者の因子は?

 頭皮冷却は化学療法誘発性脱毛症(CIA)を軽減する効果的な介入として注目されており、脱毛抑制に加えて治療後の発毛促進も期待されている。しかし、一部の患者では頭皮冷却を実施しても持続性化学療法誘発性脱毛症(pCIA)が生じることがある。今回、韓国・成均館大学校のHaseen Lee氏らは、乳がん患者を対象に、頭皮冷却を実施してもpCIAが生じる患者の臨床的・遺伝的因子を解析し、NPJ Breast Cancer誌2025年11月12日号で報告した。 研究グループは、韓国・ソウルのサムスンメディカルセンターで、アントラサイクリン系および/またはタキサン系抗がん剤による化学療法と頭皮冷却を併用したStageI~IIIの乳がん女性123例を解析した。主要評価項目はpCIAで、化学療法6ヵ月後に発毛が認められない、または不完全と定義した。 主な結果は以下のとおり。・化学療法中に頭皮冷却を受けた患者123例(平均年齢45.6歳)が解析に含まれた。主な化学療法はTAC療法(40例)およびTCHP療法(34例)であった。・化学療法中、患者の58.5%がベースライン時の毛髪の太さの75%以上を維持し、CIAを発症しなかった。・アントラサイクリン系レジメンは、非アントラサイクリン系レジメンよりもCIAの発症率が高かった。・化学療法の6ヵ月後に15例(12%)がpCIAを発症した。・内分泌療法を受けなかった患者と比較した結果、タモキシフェン単独療法はpCIAの独立したリスク因子として特定された(調整オッズ比:11.66、95%信頼区間:1.87~120.20)。・chr20p11(男性型脱毛症遺伝子)およびHLA-DQB1(円形脱毛症遺伝子)の変異はpCIAとの関連性がわずかに認められたが有意ではなかった。・化学療法6ヵ月後、タモキシフェン単独療法群では毛髪の太さはベースライン時より減少したままであったが、タモキシフェン単独療法を除く内分泌療法群では毛髪の太さに有意差を認めなかった。・毛髪密度は、内分泌療法群間で有意差を認めなかった。 研究グループは「これらの結果は、タモキシフェンが化学療法後の毛包の回復を損なう可能性があることを示唆しており、頭皮冷却を受けている患者に対する個別カウンセリングと綿密な皮膚科的フォローアップの重要性を強調している」とまとめた。

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子宮体がん再発後も妊孕性温存に挑戦~GL改訂も視野にクラウドファンディング実施/婦人科悪性腫瘍研究機構

 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の子宮体がん委員会副委員長や『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』の作成委員を務める山上 亘氏(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授)は、「子宮体/子宮内膜異型増殖症に対する任孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第II相試験」を継続するため、2025年10月16日よりクラウドファンディングを実施。第一目標金額680万円、第二目標金額980万円を達成し、現在、追加支援を募集している。一刻も早く、妊孕性温存希望者の子宮全摘回避を 『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』第6章のCQ29「妊孕性温存療法施行時に病変遺残がある、あるいは妊孕性温存療法後の子宮内再発に対して、保存的治療は勧められるか?」において、子宮内再発で妊孕性温存を強く希望する患者には、厳重な管理のもとに再度の黄体ホルモン療法(MPA療法)を提案することが示されている(推奨の強さ:2、エビデンスレベル:C)。しかし、本来再発例には子宮全摘出術を勧め、保存的治療を行わないことが推奨されているため、妊孕性温存を強く希望する患者であっても、子宮摘出されている例が全国的に散見されるという。そこで、山上氏らはこの状況を食い止めるため黄体ホルモン療法のエビデンス創出を目指し、再発後の子宮体がん・異型子宮内膜増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証する多施設前向き臨床試験(JGOG2051/KGOG2031)をスタートさせた。全国81施設および韓国・Korean Gynecologic Oncology Group(KGOG)協力のもと、2024年12月までに国内外から目標症例数115例の集積が完了している。 あとは経過観察、統計解析を残すところまできた本研究だが、ここに来て公的資金による継続的支援が困難となり、試験中止を余儀なくされている状況である。今後、ガイドラインに本試験結果を反映して若年者の子宮全摘出を回避する推奨を創出するためには、試験結果の論文化に向けてデータ解析をする必要があるため、追加の支援募集を始めた。これについて山上氏は、「本研究結果で再度のMPA療法の有効性が認められれば、安心して患者さんに治療選択肢を提案できるようになる。再発後も妊孕性温存を諦めないための新しい治療選択肢を確立していきたい」とし、「皆さまのお力をお借りして、本臨床試験により子宮体がん妊孕性温存療法の限界を見極めていきたい。その成果を患者さんに届け、1人でも多くの妊娠の希望を叶えたいと考える」と思いを述べた。【プロジェクト概要】・目標金額:第一目標680万円、第二目標980万円、現在追加支援募集中・募集期間:12月14日(日)午後11時まで・プロジェクトの目的:再発後の子宮体がん・子宮内膜異型増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証し、妊孕性温存希望患者への保存的治療を早期に普及させる・寄付金の使徒:データセンター費用、論文化に向けたデータ解析費用、成果発信のための国内外学会発表、論文化費用など

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認知症リスクを低下させるコーヒー、紅茶の摂取量は1日何杯?

 コーヒーと紅茶の摂取量と認知症の長期リスクとの関連性は、これまで十分に解明されていなかった。さらに、これらの関連性における循環炎症バイオマーカーの潜在的な媒介的役割についても、ほとんど研究されていない。中国・浙江大学のMinqing Yan氏らは、コーヒーと紅茶の摂取量と循環炎症バイオマーカーおよび認知症の長期リスクとの関連を明らかにするため、2つの縦断的研究を評価した。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2025年10月27日号の報告。 対象は、Health and Retirement Study(HRS、2013~20年、6,001例)およびFramingham Heart Study Offspringコホート(FOS、1998~2018年、2,650例)に参加したベースライン時点で認知症でない人。コーヒーと紅茶の摂取量は、両コホートにおいて半定量的な食物摂取頻度調査票を用いて評価した。認知症の診断は、検証済みのアルゴリズムと臨床審査パネルを用いて確定した。コーヒーと紅茶の摂取量と認知症との関連性を評価するために、Cox比例ハザードモデルを用いた。循環炎症バイオマーカーがこれらの関連性を媒介しているかどうかを検討するため、媒介分析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値は、HRSで7.0年、FOSで11.1年。認知症を発症した人は、HRSで231例、FOSで204例であった。・コーヒー摂取が1日2杯以上の場合は、1日1杯未満と比較し、認知症リスクの28~37%低下が認められた。【HRS】ハザード比(HR):0.72、95%信頼区間(CI):0.52~0.99、p-trend=0.045【FOS】HR:0.63、95%CI:0.45~0.90、p-trend=0.015・適度な紅茶摂取は、非摂取者と比較して、HRSにおいて認知症リスクの低下と関連していたが、FOSでは有意な関連性は認められなかった。【HRS:1日0~1杯未満】HR:0.65、95%CI:0.48~0.89【HRS:1日1~2杯未満】HR:0.53、95%CI:0.30~0.94・媒介分析の結果、コーヒー摂取量と認知症との関連性は、インターロイキン-10(IL-10、29.30%)、シスタチンC(24.45%)、C-反応性蛋白(CRP、16.54%)、インターロイキン-1受容体拮抗薬(IL-1RA、11.06%)、可溶性腫瘍壊死因子受容体-1(sTNFR-1、10.78%)によって部分的に媒介されていることが示唆された。 著者らは「コーヒーの摂取量が多いほど、認知症リスクの低さに関連しており、この関連性は一連の炎症性バイオマーカーによって部分的に媒介されていると考えられる。適量の紅茶摂取も、認知症のリスク低下と関連している可能性がある。これらの知見を検証するためにも、今後さらに大規模な観察研究および介入研究が求められる」と結論付けている。

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balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬、CKD患者のアルブミン尿を減少/Lancet

 疾患進行リスクの高い慢性腎臓病(CKD)患者において、balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬はアルブミン尿の減少においてダパグリフロジン単独投与に対する優越性が示され、忍容性は良好で、カリウムへの影響も軽微であり、予期せぬ安全性の懸念は認められなかった。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らMIRO-CKD study investigatorsが、北米・南米、アジア、欧州の15ヵ国106施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検実薬対照用量設定試験「MIRO-CKD試験」の結果を報告した。新規ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるbalcinrenoneは、小規模な臨床試験においてSGLT2阻害薬ダパグリフロジンとの併用によりアルブミン尿を減少させる傾向が示されていた。Lancet誌2025年11月22日号掲載の報告。12週時の尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の相対変化量を評価 研究グループは、推定糸球体濾過量(eGFR)が25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が100mg/g超5,000mg/g以下、および血清カリウム値が3.5mmol/L以上5.0mmol/L以下の成人患者を、balcinrenone 15mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 15mg併用)群、balcinrenone 40mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 40mg併用)群またはプラセボ/ダパグリフロジン10mg(ダパグリフロジン単独)群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 いずれも12週間投与した後、8週間休薬し投与中止後の効果も評価した。 ACE阻害薬またはARBの投与を受けている場合、スクリーニング前の少なくとも4週間、安定用量を投与されている患者は参加可能であった。 有効性の主要エンドポイントは、無作為化され少なくとも1回以上試験薬の投与を受けた患者における、ベースラインから投与12週時までのUACRの相対変化量とした。15mg併用および40mg併用ともダパグリフロジン単独に対して優越性を示す 2024年5月1日~12月18日に、613例がスクリーニングされ、適格基準を満たした324例が無作為化された(balcinrenone 15mg併用群108例、balcinrenone 40mg併用群110例、ダパグリフロジン単独群106例)。患者背景は、平均年齢64.6歳(SD 12.4)、女性110例(34%)、男性214例(66%)、アジア系103例(32%)、黒人またはアフリカ系アメリカ人23例(7%)、白人183例(56%)、平均eGFRは42.2mL/分/1.73m2(SD 10.5)、UACR中央値365mg/g(四分位範囲:157~825)で、56%がSGLT2阻害薬を服用していた。 主要エンドポイントにおいて、balcinrenone 15mg併用およびbalcinrenone 40mg併用のダパグリフロジン単独に対する優越性が認められた。ダパグリフロジン単独群に対する12週時におけるベースラインからのUACRの相対変化量は、balcinrenone 15mg併用群で-22.8%(90%信頼区間[CI]:-33.3~-10.7、p=0.0038)、balcinrenone 40mg併用群で-32.8%(90%CI:-42.0~-22.1、p<0.0001)であった。 高カリウム血症の有害事象は、balcinrenone 15mg併用群で6%(7/108例)、balcinrenone 40mg併用群で7%(8/110例)、ダパグリフロジン単独群で5%(5/106例)に発現した。低血圧および腎イベントの有害事象は少なく、治療群間で類似しており、重篤な事象は認められなかった。死亡が2例報告されたが、いずれも最終投与から28日以上経過後であった。

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GLP-1/GCG作動薬pemvidutide、MASH改善も肝線維化は改善せず/Lancet

 肝線維化ステージF2またはF3の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)患者において、GLP-1受容体およびグルカゴン受容体のデュアルアゴニストであるpemvidutideは、24週時において肝線維化の悪化を伴わないMASH改善という第1の主要エンドポイントは達成したが、MASH悪化を伴わない肝線維化の改善という第2の主要エンドポイントは達成しなかった。米国・Houston Methodist HospitalのMazen Noureddin氏らが、米国およびオーストラリアの83施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「IMPACT試験」の結果を報告した。pemvidutideは第I相試験で、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)における肝臓脂肪量および体重への有望な効果が示されていた。Lancet誌オンライン版2025年11月11日号掲載の報告。1.2mg群、1.8mg群、プラセボ群で24週時のMASH改善と肝線維化改善を評価 研究グループは、肝生検にてMASHおよび肝線維化(ステージF2またはF3)が確認され、非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア(NAS)が4以上、BMI値27以上、MRIによるプロトン密度脂肪分画測定(MRI-PDFF)による評価で肝脂肪化率≧8%、肝硬度測定(LSM)≧8.5kPaの18~75歳の成人を、pemvidutide 1.2mg群、同1.8mg群またはプラセボ群に1対2対2の割合で無作為に割り付け、週1回48週間皮下投与した。 主要エンドポイントは、24週時における肝線維化の悪化を伴わないMASH改善(NASスコアが2以上改善、かつ風船様変性を認めず小葉炎症のスコアが0または1)、ならびに24週時におけるMASH悪化を伴わない肝線維化改善(NASスコアの悪化を伴わない肝線維化ステージ1段階以上の改善)とした。MASH改善率は58%、52%、20%、肝線維化改善率は33%、36%、28% 2023年7月27日~2025年4月29日に1,557例がスクリーニングされ、適格基準を満たした212例が無作為化された(pemvidutide 1.2mg群41例、1.8mg群85例、プラセボ群86例)。 第1の主要エンドポイントである24週時の肝線維化の悪化を伴わないMASH改善を達成した患者の割合は、プラセボ群20%(18/86例)に対し、pemvidutide 1.2mg群58%(24/41例)(群間差:38%、95%信頼区間[CI]:21~56、p<0.0001)、1.8mg群52%(45/85例)(32%、19~46、p<0.0001)であった。 一方、第2の主要エンドポイントである24週時のMASH悪化を伴わない肝線維化改善を達成した患者の割合は、プラセボ群28%(24/86例)に対し、pemvidutide 1.2mg群33%(13/41例)(群間差:5%、95%CI:-13~22、p=0.59)、1.8mg群36%(30/85例)(8%、-6~22、p=0.27)であった。 有害事象は、pemvidutide 1.2mg群で41例中32例(78%)、1.8mg群で85例中69例(81%)、プラセボ群で86例中58例(67%)に報告された。また、有害事象による投与中止はそれぞれ41例中0例、85例中1例(1%)、86例中2例(2%)であり、pemvidutideは良好な忍容性を示した。 なお、これらの結果を受けて、より長期の追加試験が計画されている。

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歯周病は脳にダメージを与え脳卒中のリスクを高める

 歯周病が脳の血管にダメージを与えたり、脳卒中のリスクを高めたりする可能性のあることが、2件の研究で明らかになった。歯周病と虫歯の両方がある場合には、脳卒中のリスクが86%上昇することや、習慣的なケアによってそのリスクを大きく抑制できる可能性があることも報告された。いずれも、米サウスカロライナ大学のSouvik Sen氏らの研究の結果であり、詳細は「Neurology Open Access」に10月22日掲載された。 一つ目の研究は、歯周病のある人とない人の脳画像を比較するというもの。解析対象は、一般住民のアテローム性動脈硬化リスク因子に関する大規模疫学研究「ARIC研究」のサブスタディーとして実施された、口腔状態の詳細な検査も行う「Dental ARIC」の参加者のうち、脳画像データのある1,143人(平均年齢77歳、男性45%)。このうち800人が歯周病ありと判定された。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、喫煙、高血圧、糖尿病など)を調整後、歯周病のある人は脳の白質高信号域(認知機能低下リスクの高さと関連のある部分)の体積が有意に大きく(P=0.012)、その体積と歯周病の重症度との有意な関連も認められた(ρ=0.076、P=0.011)。 二つ目の研究もDental ARICのデータが用いられた。解析対象5,986人(平均年齢63±5.6歳、男性48%)のうち、1,640人は口腔の健康状態が良好、3,151人は歯周病があり、1,195人は歯周病と虫歯が併存していた。そして、それら両者が併存していると、虚血性脳卒中のリスクが86%有意に高く(ハザード比〔HR〕1.86〔95%信頼区間1.32~2.61〕)、主要心血管イベントのリスクも36%有意に高いことが分かった(HR1.36〔同1.10~1.69〕)。また虚血性脳卒中の病型別の検討では、血栓性脳梗塞(HR2.27〔1.22~4.24〕)、および心原性脳塞栓(HR2.58〔1.27~5.26〕)のいずれも、有意なリスク上昇が認められた。 一方、希望につながるデータも示された。歯磨きやデンタルヘルスで日常的な口腔ケアを行い、定期的に歯科へ通院している人は、歯周病が約3割少なく(オッズ比〔OR〕0.71〔0.58~0.86〕)、歯周病と虫歯の併存が約8割少ないという(OR0.19〔0.15~0.25〕)、有意な関連が観察された。 報告された2件の研究結果は、口腔衛生状態が良くないことが脳卒中を引き起こすという直接的な因果関係を証明するものではない。しかし、口腔内の炎症が心臓と脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとする、近年増加しているエビデンスを裏付けるものと言える。これらのデータを基に研究者らは、「歯と歯茎の健康を維持することが、脳卒中リスクを軽減する簡単な方法の一つになる可能性がある」と述べている。 なお、世界保健機関(WHO)は、世界中で35億人が歯周病や虫歯を有していると報告している。また米国心臓協会(AHA)によると、米国では毎年79万5,000人以上が脳卒中を発症しているという。

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パーキンソン病患者の“よだれ”が示すもの、全身的な神経変性との関連を示唆

 パーキンソン病でよく見られる“よだれ(流涎)”は、単なる口腔のトラブルではないかもしれない。日本の患者を対象とした新たな研究で、重度の流涎がある患者では、運動・非運動症状がより重く、自律神経や認知機能にも異常がみられることが示された。流涎は、全身的な神経変性の進行を映す新たな臨床的サインとなる可能性があるという。研究は順天堂大学医学部脳神経内科の井神枝里子氏、西川典子氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「Parkinsonism & Related Disorders」に掲載された。 パーキンソン病は、動作の遅れや震えなどの運動症状に加え、自律神経障害や認知機能低下など多彩な非運動症状を伴う進行性の神経変性疾患である。その中でも流涎(唾液の排出障害)は、生活の質や誤嚥性肺炎リスクに影響するにもかかわらず、軽視されがちで、標準的な評価方法も確立されていない。本研究は、この見過ごされやすい症状の臨床的重要性を明らかにするため、日本のパーキンソン病患者を対象に、流涎の有病率や特徴を調べ、運動・非運動症状との関連を検討することを目的とした。 本横断研究では、2015年11月~2022年8月の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科でパーキンソン病と診断された患者811人を初期スクリーニングした。運動症状および非運動症状は、MDS-UPDRSパートI〜IV、MMSE、MoCA-J、FAB、PDSS-2、JESS、およびPDQ-39を用いて評価した。心臓の自律神経機能は、メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィーによる遅延心・縦隔比(H/M比)で評価した。ドパミン作動性神経の機能は、ドパミントランスポーター単光子放射断層撮影(DaT SPECT)を用い、年齢調整済み基準データベースを基にzスコアを算出した。流涎の重症度は、MDS-UPDRSパートIIの項目2で評価した。群間比較には、連続変数に対してt検定、カテゴリ変数に対してカイ二乗検定を用いた。 本研究の最終的な解析対象は513人で、そのうち341人(66.5%)が流涎症を有しており、144人(28.1%)が重度と診断された。流涎はMDS-UPDRSの全領域(パートI〜IV)で有意に高いスコアと関連し、運動症状・非運動症状のいずれも重症であることを示した(P<0.001〜P=0.011)。流涎群ではMMSE(P=0.010)およびFAB(P=0.006)のスコアが低く、より顕著な認知機能障害を認めた。また、PDSS-2スコアおよびPDQ-39総合スコアはいずれも有意に高値であり(ともにP<0.001)、睡眠の質および生活の質(QoL)の低下が示唆された。さらに、MIBG心筋シンチグラフィー(対象は402例)では心・縦隔比(H/M比)の低下がみられ(P=0.047)、心臓自律神経機能障害の進行が示された。加えて、DaT SPECT(対象は431例)では線条体のzスコアが有意に低下しており(P=0.001)、シナプス前ドパミン作動性神経活動の低下を反映していた。 年齢・罹病期間・性別を調整した多変量回帰解析の結果、流涎の重症度は、より重度の運動症状・非運動症状、高いレボドパ換算用量、より強い認知機能障害、日中過眠の増加、より重度の睡眠障害、生活の質の低下、そしてDaT取り込み量のzスコア低下と有意に関連していた。 著者らは、「流涎を伴うパーキンソン病患者は、運動症状・非運動症状がより重く、認知機能や自律神経機能にも影響がみられ、生活の質も低下していた。これらの結果は、流涎が単独の末梢的症状ではなく、パーキンソン病における全身的な病態進行の臨床マーカーとして機能する可能性があるという仮説を支持するものである」と述べている。 なお、本研究は帝人ファーマ株式会社の支援を受けて実施された。

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心不全に伴う体液貯留管理(4):症例2(79歳男性)Dr.わへいのポケットエコーのいろは】第10回

心不全に伴う体液貯留管理(4):症例2(79歳男性)今回は、後縦靭帯骨化症の影響により寝たきりで、足のむくみのある79歳男性を例に、ポケットエコーの有用性を考えていきましょう。足のむくみがある79歳男性【今回の症例】79歳男性主訴足がすれて、むくんでいる現病歴意識疎通は明瞭だが、ベッド上の生活で、ほぼ全介助の状態1日30本喫煙。常に息苦しい感じがある禁煙ができないため、家族はCOPDとしての治療介入に消極的内服薬(服薬管理者:配偶者)プレガバリン75mg 1×、リマプロスト アルファデクス15μg 3×、メコバラミン1.5mg 3×、レボチロキシン62.5μg 1×、酪酸菌製剤錠3T 3×、ロキソプロフェン180mg 3×、ガバペンチン600mg 3×、L-カルボシステイン1,500mg 3×、レバミピド300mg 3×、アンブロキソール45mg 3×、ジメチコン120mg 3×、ラメルテオン8mg 1×、トラゾドン25mg 1×、クロナゼパム0.5mg 1×、スボレキサント15mg 1×併存症後縦靭帯骨化症、甲状腺機能低下症、糖尿病、C型慢性肝炎治療後バイタル体温36.0℃、血圧140/80mmHg、脈拍65回/分 整、SpO2 97%(room air)今回は79歳男性で、意思疎通は明瞭に取れますが、後縦靭帯骨化症の影響でベッド上の寝たきりの生活です。タバコが大好きで1日30本吸っていて「なんか息苦しい感じがある」と本人は言っています。家族は「タバコをやめられないんだったら治療する意味がない」と言い、家族のほうが治療に消極的でした。薬剤を見るとわかるのですが、とくに心不全の指摘はなく、肺気腫の要素があるのかもしれないといったところです。治療経過まず心エコーを見てみましょう。治療介入前の心エコー像1回当てただけでわかりますが、胸水がかなり溜まっていて、下大静脈(IVC)は27mm、呼吸性変動は消失していました。僧帽弁と三尖弁は同時に開いていたため、VMTスコアは2aでした。胸水が溜まっていて、VMTスコアから慢性心不全の非代償寄りで、右心不全の要素が強めと判断しました。そのため、治療はフロセミド20mgから開始しました。治療経過を見ていくと、治療介入から1ヵ月後にはむくみがかなり減っていました。IVCは23mmでしたが呼吸性変動が出てきていました。僧帽弁と三尖弁が開くのはほぼ同時です(図1)。少し改善が観察されているということで、フロセミド20mgはそのまま継続しました。図1 治療開始1ヵ月後のNT-proBNP・症状・VMTスコア画像を拡大する続いて、治療開始2ヵ月後のエコー像を見てみましょう。治療介入後の心エコー像最終的に、NT-proBNP値に著変はなかったですが、心エコー所見は改善しました。三尖弁と僧帽弁の開放はほぼ同時ながらも三尖弁がやや先行するようになり、胸水も初回と比べて著明に減少。VMTスコアは1点、IVCは16mmで呼吸性変動も認められました。フロセミド20mgの介入で2ヵ月後には、このような状況になりました(図2)。図2 治療開始2ヵ月後のNT-proBNP・症状・VMTスコア画像を拡大する治療介入2ヵ月後には「先生、すごく調子がいい」「よく寝られる」「タバコがうまいわ」と言っていて、タバコに対する介入はできなかったのですが、心不全を発見してQOLの向上に寄与することができたケースでした。まとめ4回にわたって、心不全に伴う体液貯留管理へのポケットエコーの応用を紹介しました。そのなかで、心不全の治療介入の判断にVMTスコアが非常に有用であることが、理解いただけたのではないでしょうか。VMTスコアは繰り返して用いることで、診断だけではなく治療効果の判定にも使えます。そして、エコーは我々だけではなく、患者やその家族も絵として見ることができます。たとえば「胸水がこんなに減っている」「心臓の動きが良くなっている」という画像を共有することで、家族も「先生のおかげで、本人も楽になっているようだ」と治療効果を視覚的に実感し、より協力的になっていただけるという利点もあります。

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セファゾリン【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第5回

セファゾリンここまで、ペニシリン系のスペクトラムを学びました。今回からはセフェム系です。セフェム系もペニシリン系同様に開発順で学んでいくのが良いため、第1世代から順を追って解説していきます。セファゾリンのスペクトラム第1世代セフェム系抗菌薬といえば、セファゾリンです。「ア」がつくので1番目と覚えるとわかりやすいかと思います。セファゾリンのスペクトラムは「S&S±PEK」。いきなり英語が出てきてびっくりされた方もいらっしゃるかと思いますが、S&SはStaphylococcus属とStreptococcus属の頭文字で、それぞれブドウ球菌と連鎖球菌を指します。PEKは、Proteus mirabilis、大腸菌(Escherichia coli)、Klebsiella pneumoniaeの頭文字です。このPEKというのは、以前説明した腸内細菌目に含まれます。ここで最初のS&Sに注目してみましょう。いきなりペニシリン系の復習となりますが、ペニシリン系でブドウ球菌をカバーできるのはどのあたりだったでしょうか? βラクタマーゼ阻害薬を配合しているアンピシリン・スルバクタムからですね。逆に言えば、そこまでしないとペニシリン系でブドウ球菌をカバーすることはできません。セフェム系では初期段階のセファゾリンから、ブドウ球菌をカバーすることができて楽ですね。このお得感を皆さんには噛みしめていただきたいです。では、ブドウ球菌と連鎖球菌を簡単にカバーできることには、どのようなメリットがあるでしょうか。これは、皮膚関連で悪さをする代表的な細菌をまとめて叩くことができるということです。具体的には、蜂窩織炎の第1選択として大活躍します。ほかには、周術期抗菌薬として術前投与することも多いかと思うのですが、これは皮膚についているブドウ球菌が術野を開いた時に、パラパラと落っこちて手術部位感染症を起こすのを防ぐという意味合いがあります。次に、PEKの部分について見ていきます。先ほどお伝えしたとおり腸内細菌目です。これらの細菌は、尿路感染症で問題になることが多いです。ここで、S&S±PEKの部分をよく見ていただくと、PEKの前は「±」となっていることに気付かれた方もいらっしゃると思います。実は、セファゾリンがPEKをカバーできるかどうかは、地域によって、大きく異なってくるため注意が必要です。病院によっては、検出される細菌の感受性検査の結果をまとめたアンチバイオグラムを作成されているところもありますが、アンチバイオグラムがなく、地域での薬剤耐性の程度がわからない病院ではどうしたらよいのでしょうか。次回はこの課題について、考えてみます。また、PEKの「P」についても深堀りしてみます。

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第291回 東大病院の整形外科医、収賄の疑いで逮捕 「国際卓越研究大学」の認定にも影響か?

過去の類似事件にまったく学ぼうとしない、国立大学病院の医師と医療機器メーカーこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、八ヶ岳山麓に移り住んだ大学の先輩宅を訪問がてら、八ヶ岳の西岳を登ってきました。まだ積雪はなく、ただひたすら標高差1,000メートル近くを登り、そして降りるだけの単純な登山でしたが、富士山、南アルプス、中央アルプス、御嶽山などが望め、そこそこ楽しめました。「クマが出ました」という少々古い掲示板も見かけました。ただ、ブナ林ではなくほぼ針葉樹林の八ヶ岳南面にツキノワグマはいるのでしょうか。ちょっと眉唾な情報だなと思いつつも、クマ鈴をしっかり鳴らしながらの山行でした。さて、今回は11月20日に全国紙、NHKなどがいっせいに報じた東京大学医学部附属病院(東京都文京区)の准教授(53)が収賄の疑いで警視庁に逮捕された事件について書いてみたいと思います。今回の事件、「第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は『オノアクト使用の見返りだった』」など本連載でも度々書いてきた奨学寄付金がらみの事件です。しかも、「第263回 大学病院などで医療機器メーカー社員が無資格でX線検査の異常、医療機器絡みのリベートや不当な現金供与、労務提供がいつまでたってもなくならない理由とは」などで取り上げた、整形外科のインプラントがらみです(この事件は私立大学などで発覚したため収賄事件にはならず)。過去の類似事件にまったく学ぼうとしない、国立大学病院の医師や医療機器メーカーには呆れるばかりです。大腿骨のインプラントの使用について便宜を図る趣旨で現金を寄付させる警視庁は11月19日、医療機器メーカー、日本エム・ディ・エム(東京都新宿区)から寄付金名目で賄賂を受け取ったとして、東京大学医学部附属病院の救急・集中治療科のA医師(53)を収賄の疑いで逮捕したと発表しました。同日、日本エム・ディ・エムの元社員(41)についても贈賄容疑で逮捕しました。寄付金は研究や教育の充実が本来の目的ですが、警視庁は一部が賄賂に当たると判断したとのことです。11月20日付の朝日新聞などの報道によれば、A医師は「東大病院の医師として2021年9月と2023年1月、同社が扱う大腿骨のインプラントの使用について便宜を図る趣旨で、同社側に現金計80万円を寄付させ、そのうち計約70万円相当の賄賂を受け取った疑い」があり、元社員は「2023年1月に現金を渡した疑いがある」とのことです。A医師は東大医学部卒業後、1997年に東大病院に採用され、別の複数の病院に出向後、2007年から再び勤務、同病院の救急・集中治療科に所属しながら、整形外科・脊椎外科の「外傷診チーフ」として骨折患者の手術などを担当、東大病院で使用する人工股関節インプラントの選定に影響力を持っていたとのことです。ちなみに、日本エム・ディ・エムを巡っては、長野県佐久市の市立国保浅間総合病院の医師2人に現金を渡したとして、今年6月~7月に社員と元社員計3人が警視庁に贈賄容疑で書類送検され、在宅起訴されています。この捜査の過程で同社公表の「学術研究助成費 奨学寄附金」を精査した結果、今回の事件が浮上したとのことです。親族へのプレゼントとして、米アップル社製のタブレットやパソコンを学内生協で購入11月20日付朝日新聞の報道によれば、「東大に寄付をしようとする企業や個人は、具体的な寄付先や金額、目的を記した書類を提出する。学内での審査を経て、寄付金が送金されると、その一部は大学に差し引かれるが、約85%は医師ら個人が自由に使うことができた」としています。A容疑者のもとには「逮捕容疑を含めて同社など5社から16年12月~23年1月に振り込まれた寄付金約300万円があった。そのうち約150万円について、警視庁が使途などを調べている」とのことです。「捜査関係者によると、(中略)容疑者は寄付金の一部について、親族へのプレゼントとして、米アップル社製のタブレットやパソコンを学内生協で購入する費用に充てていた」そうです。また、11月21日付の朝日新聞の報道によれば、同社のA容疑者に対する営業は2019年春ころから始まり、同年9月に同社の人工股関節インプラントの登録申請が行われ、同年11月に登録されたとのことです。同社は翌2020年3月、A容疑者側に初めて寄付。2021年9月と2023年2月にも寄付が行われ、この2回の寄付が収賄の逮捕容疑になったとしています(2020年3月分は収賄罪の公訴時効が成立)。また、11月20日付の朝日新聞の別の報道によれば、A医師が同社から複数回飲食接待を受けていたこともわかっています。国立大学病院の医師への接待にもかかわらず、同社内では民間病院への接待として経費精算されていた疑いがあり、国立大学病院の医師が収賄罪の対象となる「みなし公務員」に当たることから、それを隠蔽する意図があったとみられています。ちなみに刑法は「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の拘禁刑に処する」と定めています。三重大臨床麻酔部汚職事件で製薬企業の奨学寄付金や寄附講座への寄付を廃止する動きは加速したが国立大学病院医師の奨学寄附金がらみの事件で記憶に新しいのは、前述の本連載「第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件」などで度々書いてきた三重大臨床麻酔部の事件です。この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に奨学寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。一審では「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断、2023年1月に懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決が下されました。この事件、元教授は一審を控訴、二審を上告しましたが、つい先月、2025年10月29日に最高裁は第三者供賄と詐欺の罪に関する上告を棄却する決定を下し、元教授の懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の一審および二審判決が確定しています。この事件をきっかけとして、製薬企業の奨学寄付金や寄附講座への寄付を廃止する動きは加速しました。奨学寄付金は使い道を定めず無償提供されるため、大学や研究室にとっては使い勝手が良い研究費でしたが、その削減傾向が強まったのです。今回の東大病院の事件から推察されるのは、製薬企業の奨学寄付金支出は厳しくなった一方で、医療機器メーカーのそれは相変わらずユルユルだったらしいということです。そのユルユルの奨学寄付金を自分の小遣いにして、研究と関係ない私用のiPadやMacの購入に充てていたとは、東大出身の医師とは思えない脇の甘さと言えます。まもなく発表の国際卓越研究大学の認定だが大学幹部は「もう無理かも」ところで、今回の東大病院医師の逮捕は、思わぬ方面への影響も危惧されています。それは国際卓越研究大学の認定です。朝日新聞は11月20日、「東大病院の医師逮捕に大学幹部『もう無理かも』 卓越大認定の発表目前」と題する記事を発信、「東大は現在、政府が作った10兆円規模の大学ファンドから巨額の資金を得られる「国際卓越研究大学」の認定を目指している。文部科学省が12月にも新たな認定大学を発表する予定で、同省の有識者会議が大学のガバナンス体制などについて詰めの審査を行っている。(中略)容疑者は東大病院の医師であり、同大医学部の准教授でもある。ある東大幹部は19日夜の取材に『これで、もう国際卓越大は無理かもしれない』と話した」と報じています。大学病院医師の逮捕が国際卓越研究大学の認定にどれくらい影響するかわかりません。しかし、松本 洋平文部科学大臣は11月21日の閣議後記者会見で、東大病院の医師が収賄容疑で逮捕されたことについて「社会の信頼を大きく損なう事態が発生し大変遺憾だ」と述べています。東北大学に先を越され、今年こそ国際卓越研究大学の認定をと意気込んでいただけに、想定外の”身から出た錆”に、東大総長以下理事会の皆さんは今頃頭を抱えていることでしょう。

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配置が手厚いICUは本当に「コスパ」がよい? 日本の比較研究【論文から学ぶ看護の新常識】第40回

配置が手厚いICUは本当に「コスパ」がよい? 日本の比較研究人員配置が手厚いICU(特定集中治療室管理料1および2)は、死亡率を下げるだけでなく、費用対効果の面でも優れていることが、井汲 沙織氏らの研究で示されている。Journal of intensive care誌2023年12月4日号に掲載の報告を紹介する。集中治療科専門医の配置に関連するICU死亡率と費用対効果:日本全国観察研究研究チームは、集中治療専門医らの配置が手厚い「特定集中治療室管理料1および2(ICU1/2)」と、それ以外の「特定集中治療室管理料3および4(ICU3/4)」において、臨床アウトカムと費用対効果を比較するため、後ろ向き観察研究を行った。日本の全国的な行政データベースを使用し、2020年4月から2021年3月の間にICUに入室した患者を特定し、ICU1/2群とICU3/4群に分類した。ICU死亡率と院内死亡率を算出するとともに、質調整生存年(Quality-adjusted Life Year:QALY)と医療費の差から増分費用対効果比(Incremental cost-effectiveness ratio:ICER)を算出し、比較した。ICERが500万円/QALY未満の場合を費用対効果が高いと判断した。主な結果は以下の通り。ICU1/2群(n=7万1,412、60.7%)は、ICU3/4群(n=4万6,330、39.3%)と比較して、ICU死亡率(2.6%vs. 4.3%、p<0.001)および院内死亡率(6.1%vs. 8.9%、p<0.001)が低かった。患者1人あたりの平均費用は、ICU1/2で224万9,270±195万5,953円、ICU3/4で168万2,546±158万8,928円であり、差額は56万6,724円であった。ICERは71万8,659円/QALYであり、費用対効果の閾値(500万円/QALY)を下回っていた。ICU1/2における治療は、ICU3/4と比較して、死亡率が低かった。また、費用対効果が高く、ICERは500万円/QALY未満であった。専門家やマンパワーが多いICUって良い医療ができそうですよね?でもそれって科学的な事実なのでしょうか?また質が上がるとしても、医療費を無制限に投じてよいのでしょうか。今回はこうした疑問に答える論文を紹介します。研究当時のICUの管理料は、人員配置が手厚い「1および2」と、標準的な「3および4」に分かれていました(2024年診療報酬改定以降は6区分になっています)。「1および2」は専門医や経験豊富な看護師の配置が義務付けられ、質の高い医療環境が整っている分、1日あたりの費用も高く設定されています。研究結果から、実際にICU管理料1・2ではICU内・院内死亡率が低く、質の高い医療が提供できていると考えられます。一方で、質の高い医療を提供するために、多くの人材を雇い、医療費を使いすぎては医療を継続的に提供することはできません。この研究の面白い点は、死亡率だけでなく、費用対効果を評価していることです。ICU管理料1・2とICU管理料3・4の治療成果を、患者の生存期間にQOLを加味した指標「QALY」と、1QALYを上げるためのコストの差「ICER」で比較しました。日本では、ICERの費用対効果の基準として「500万円/QALY未満」が一般的に用いられます(ドルやユーロでは額が異なります)。つまり「1QALYを上げるのに500万円以下なら“コスパがよい”」ということになります。今回の結果(約72万円/QALY)は、この閾値を大きく下回っています。これは、ICU管理料1・2の医療は、コストが増加したとしても、それに見合った、あるいはそれ以上の救命とQOLの改善をもたらしている、すなわち極めて費用対効果が高いことを示しています。看護配置の視点でみると、ICU管理料1・2は認定・専門看護師の配置を要件としており、本研究の知見は、認定看護師のような専門的なスキルを持つ看護師の存在が、死亡率の低減に貢献している可能性を示唆しています。これは、単に看護師の数だけでなく、看護の質の高さが患者アウトカムに直結することを意味し、認定・専門看護師が現場で提供する高度なケアの価値を裏付けるものです(もちろん、看護の力だけでなく、専門医が2名以上勤務していること、院内に臨床工学技士が常駐していること、病室の広さなど複数の項目に違いがありますので、何がどの程度影響しているかは本研究ではわかりません)。今目の前の患者だけでなく、未来の患者を救うために、「Evidence-Based Medicine:EBM(根拠に基づく医療)」だけでなく、継続した医療を提供するための「価値」を測る「Value-Based Medicine:VBM(価値に基づく医療)」の考え方を持つことが、今後の日本の看護・医療により必要になっていくかもしれません。論文はこちらIkumi S, et al. J Intensive Care. 2023;11(1):60.

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急増するナッツ類アレルギー、近年はより少ない量で発症の傾向/国立成育医療研究センター

 近年、日本では木の実(ナッツ類)アレルギーの有病率が急速に増加しており、とくに、クルミアレルギーの有病率は2014年と比較して4倍以上増加し、比較的安定しているピーナッツを上回ったという。現在、ナッツ類は日本において卵に続いて2番目に多い食物アレルギーの原因となっている1)。 国立成育医療研究センターの久保田 仁美氏らの研究チームは、日本における直近10年間に発生したナッツ類アレルギー症例の調査結果から、近年ではより少ない摂取量でアレルギー症状が出ることが判明したことを報告した。同センターは2025年11月17日にプレスリリースを出し、同内容はThe Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2026年1月号にも掲載された。 研究者らは、2013~23年の10年間に同センターの患者に対して行った1,275件のピーナッツ、カシューナッツ、クルミの経口負荷試験データを用いて、ナッツ類それぞれのED05値(アレルギー患者集団のうち、5%の人でアレルギー症状が引き起こされる量)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・2013~23年全期間のED05値は、ピーナッツ4.88mg、カシューナッツ0.53mg、クルミ4.37mgだった。・2013~19年と2020~23年のED05値を比較したところ、クルミは2019年以前は14.94mgだったが、2020年以降は3.26mgに大幅に減少しており、以前より少ない摂取量でアレルギーが引き起こされることがわかった。ピーナッツとカシューナッツは有意差は認められなかったものの、同様に減少傾向がみられた(ピーナッツ:8.87mg→4.12mg、カシューナッツ:4.29mg→0.66mg)。 研究チームは「ED05値の変化は、日本におけるクルミアレルギー患者の増加や、重症化などの変化が影響している可能性がある。食習慣がグローバル化する中で日本国内における食物アレルギーの原因食物も変化している。今回の調査で、ナッツ類のED05値は欧米で報告される値に近づきつつあり、食物アレルギーのリスク評価を定期的に見直す重要性が改めて認識された」としている。

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HR+/HER2-乳がんの局所領域再発、術後化学療法でiDFS改善/ESMO Open

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がんの局所領域再発(LRR)に対して、根治的手術後の術後化学療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善することが、JCOGの多施設共同後ろ向きコホート研究で示唆された。とくに、非温存乳房内再発(非IBTR)例、原発腫瘍に対する術後内分泌療法中の再発例や周術期化学療法未施行例において、iDFS改善と関連していた。がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏らがESMO Open誌2025年11月7日号に報告。 本研究の対象は初発乳がん手術後にLRRと診断されたHR+/HER2-乳がん患者で、2014~18年にLRRに対する根治的手術を受けた患者を、LRRに対する術後化学療法(CTx)実施の有無に基づいて2群に分けた。主要評価項目はiDFS、副次評価項目は全生存期間(OS)とした。主要解析は逆確率治療重み付けを組み込んだ二重ロバストCox比例ハザードモデルを用いて実施し、傾向スコアマッチングを用いた感度分析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は計958例(平均年齢:55歳、男性:5例)で、初回手術からLRR診断までの中央値は9.5年(四分位範囲:3.1~10.1)であった。CTx群は235例(25%)、非CTx群は722例(75%)であった。・全症例における5年iDFS率は75.4%(95%信頼区間[CI]:72.4~78.2)であり、多変量解析ではCTx群で良好なiDFSが認められた(ハザード比:0.70、95%CI:0.49~0.99、p=0.045)。これらの結果は感度解析でも支持された。・サブグループ解析では、非IBTR例、初発乳がんへの術後内分泌療法中の再発例、初発乳がんへの周術期化学療法未施行例において、CTx群でiDFSが良好であった。・OSについては多変量Cox比例ハザードモデルにおいて、有意差はみられなかったがCTx群で悪化傾向が認められた。 著者らは本研究の限界として、本研究は後ろ向き研究デザインであり、残余交絡因子の存在の可能性があることや、IBTR症例において真の再発と新規の原発腫瘍を区別できなかったことなどを挙げ、「慎重な解釈が必要」としている。

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日本の糖尿病診療の実態、地域・専門医/非専門医で差はあるか?/日本医師会レジストリ

 日本医師会が主導する大規模患者レジストリJ-DOME(Japan Medical Association Database of Clinical Medicine)のデータを用い、日本の糖尿病診療の現状を分析した研究結果が発表された。国際医療福祉大学の野田 光彦氏らによる本研究はJMA Journal誌2025年10月15日号に掲載された。 研究者らは、2022年度にJ-DOMEへ患者を登録した全国116の医療機関を対象に、2型糖尿病患者2,938例のデータを解析した。施設を地域別に7グループ(北海道・東北、北関東、南関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄)に分け、地域間の比較を行った。また、糖尿病専門医の在籍施設と非在籍施設の違いについても検討した。 主な結果は以下のとおり。・全国116の医療機関で2型糖尿病と診断された2,938例が解析対象となった。年齢中央値71(範囲:8~99)歳、男性1,567例(53%)、1機関当たりの平均患者数は25.3(範囲:1~150)例であった。・患者の全国平均のHbA1c値は6.96%、血圧は129.7/73.0mmHgで、脂質値(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)を含めたいずれの値も、地域間で有意差は認められなかった。・専門医在籍施設(45施設)と、非在籍施設(71施設)を比較したところ、HbA1cの平均値は、専門医施設(7.13%)が非専門医施設(6.86%)より有意に高値だった。これは、専門医施設で糖尿病網膜症(専門医施設22.8%vs.非専門医施設7.7%)や糖尿病性腎症(21.8%vs.16.1%)などの合併症を有する患者が多いためと推察された。なお、血圧や脂質管理の指標は、専門医と非専門医施設間で有意差は認められなかった。・一方、合併症の早期発見に直結する定期検査の受診率では、専門医施設と非専門医施設で差がみられた。眼科の定期検査受診率は、専門医施設で78.5%と高かったのに対し、非専門医施設では53.9%に留まった。尿中アルブミン定量検査受診率も専門医施設(62.5%)が非専門医施設(33.5%)に比べ、2倍近かった。 研究者らは、「本研究結果は、分析したどの地域でも全国平均からの大きな逸脱はみられず、日本全国で糖尿病ケアの水準が比較的均一であることが示された。これは診療ガイドラインの普及や医療の標準化によるものと考えられる。一方、糖尿病合併症の進行を抑制するために不可欠な定期検査の受診率では、専門医と非専門医施設で依然として大きな差が存在することも示された。大多数の患者を診療している非専門医施設における定期的な眼科受診や尿中アルブミン定量検査の実施を標準化し、底上げを図ることが、糖尿病医療の質全体を向上させるために重要だ。専門医と非専門医間の連携強化の推進とともに、非専門医に対する合併症検査の重要性の啓発と、実施体制の整備が急務となる」としている。

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肝細胞がん、周術期の併用補助療法で無イベント生存改善/Lancet

 再発リスクが中等度または高度の切除可能な肝細胞がん患者において、手術+周術期camrelizumab(抗PD-1抗体)+rivoceranib(VEGFR2チロシンキナーゼ阻害薬)併用療法は手術単独と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能と考えられることが、中国・Liver Cancer Institute and Key Laboratory of Carcinogenesis and Cancer InvasionのZheng Wang氏らによる「CARES-009試験」の結果で示された。本研究の成果は、Lancet誌2025年11月1日号に掲載された。中国16施設で行われた第II/III相の無作為化試験 CARES-009試験は、中国の16施設で実施した第II/III相の非盲検無作為化試験であり、2021年3月~2024年1月に参加者を登録した(Shanghai Hospital Development CenterおよびJiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18~75歳、中国肝がん病期分類(CNLC)に基づき、門脈本幹腫瘍栓(Vp4)のないStageIb~IIIa(バルセロナ臨床肝がん[BCLC]病期分類で、腫瘍径>5cmのStageA、StageB、Vp4病変や肝外転移のないStageCに相当)と判定された切除可能な肝細胞がん患者を対象とした。再発リスクは、CNLC StageIb~IIaを中等度、同IIb~IIIaを高度とした。 これらの参加者を、手術+周術期治療群(周術期治療群)または手術単独群に無作為に割り付けた。周術期治療群では、術前補助療法としてcamrelizumab(2週ごと、静注)+rivoceranib(1日1回、経口)を2サイクル投与後、手術を実施し、術後補助療法としてcamrelizumab(3週ごと、静注)+rivoceranib(1日1回、経口)を最大で15サイクル投与した。 第III相の主要評価項目は、担当医判定によるEFS(無作為割り付けから、外科的に切除不能な病勢進行、局所または遠隔再発、全死因死亡までの期間)とした。294例を登録、手術全例でR0達成 294例(ITT集団)を登録し、周術期治療群に148例(年齢中央値58.0歳[四分位範囲:51.3~66.0]、男性88%、B型肝炎ウイルス感染が肝がんの主原因の患者76%)、手術単独群に146例(59.0歳[50.8~66.0]、86%、78%)を割り付けた。 周術期治療群のうち、141例(95%)が実際に術前補助療法を受け、131例(93%)が2サイクルを完了した。術後補助療法は110例が受けた。根治的外科切除術は、周術期治療群で136例(92%)、手術単独群で143例(98%)に実施され、全例で完全切除(R0)が達成された。MPR、DFSも良好 事前に規定された中間解析(追跡期間中央値21.3ヵ月)におけるEFS中央値は、手術単独群が19.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.9~評価不能)であったのに対し、周術期治療群は42.1ヵ月(23.2~評価不能)であり、ハザード比(HR)は0.59(95%CI:0.41~0.85、p=0.0040)と事前に規定された統計学的有意性の境界値(p=0.0148)を満たした。 主な副次評価項目である病理学的著効(MPR:切除標本中の生存腫瘍細胞の割合が50%以下)の達成率も周術期治療群で有意に優れた(35%vs.8%、p<0.0001)。全生存期間(OS:無作為割り付けから全死因死亡までの期間)については、中間解析時にデータが不十分で解析はできなかった。また、副次評価項目である担当医判定による無病生存期間中央値(DFS:外科切除術から再発または死亡までの期間)は周術期治療群で良好だった(40.8ヵ月vs.19.4ヵ月、HR:0.59、95%CI:0.40~0.86)。Grade3以上の治療関連有害事象は38% 安全性の評価では、290例(周術期治療群141例、手術単独群149例[周術期治療群のうち手術のみを受けた6例を、手術単独群に含めた])を解析の対象とした。Grade3以上の治療関連有害事象は、周術期治療群で53例(38%)に発現し、手術単独群では認めなかった。重篤な治療関連有害事象は、周術期治療群で19例(13%)にみられた。 周術期治療群では、治療関連有害事象により術前補助療法で5例(4%)、術後補助療法で17例(12%)が、いずれかの薬剤の投与中止に至った。術前補助療法中に治療関連死が2例で発生し、1例は肝不全(治療関連の可能性あり)、1例は肝腎不全(因果関係は不確定)によるものであった。また、同群で免疫関連有害事象が33例(23%)報告され、このうち7例(5%)はGrade3以上だった。 術後合併症は、Clavien-Dindo分類のGrade2以上が、周術期治療群で46例(35%)、手術単独群で24例(16%)に発生した。 著者は、「これらの知見は、再発リスクが中等度または高度の切除可能な肝細胞がんに対する有望な新規の治療アプローチとして、周術期camrelizumab+rivoceranibを支持するものである」「病理学的奏効は、複数の固形がんで術前補助療法の生存に関連する代替エンドポイントとして注目を集めているが、肝細胞がんにおけるMPRの閾値は研究によって異なるため、最適なカットオフ値を決定するための大規模な研究が求められる」としている。

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IgA腎症患者へのatacicept、蛋白尿を46%減少/NEJM

 IgA腎症の治療において、atacicept(B細胞活性化因子[BAFF]と増殖誘導リガンド[APRIL]の二重阻害薬、ヒトTACI-Fc融合タンパク質)はプラセボと比較して、36週の時点で蛋白尿の有意な減少をもたらし、有害事象のほとんどは軽度~中等度であったことが、米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らORIGIN Phase 3 Trial Investigatorsによる第III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験「ORIGIN 3試験」の中間解析で報告された。本研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年11月6日号で発表された。31ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 ORIGIN 3試験は、IgA腎症の治療におけるataciceptの安全性と有効性の評価を目的とし、日本を含む31ヵ国の157施設で実施した(Vera Therapeuticsの助成を受けた)。今回は、事前に規定した36週時の中間解析の結果が報告された。 試験の対象は年齢18歳以上、生検で確定したIgA腎症で、24時間尿中タンパク質/クレアチニン比≧1.0(タンパク質とクレアチニンはグラム[g]単位で測定)、蛋白尿(1日当たり1.0g以上の尿中タンパク質排泄量)、推定糸球体濾過量(eGFR)≧30mL/分/1.73m2の患者であった。 これらの参加者を、atacicept群(150mg、週1回、患者自身が自宅で皮下投与)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、36週時点の24時間尿中タンパク質/クレアチニン比のベースラインからの変化率とした。Gd-IgA1値の減少、血尿の消失も優れる 203例を有効性の中間解析に組み入れた。atacicept群が106例(平均年齢40.1歳、男性54%、平均尿中タンパク質/クレアチニン比1.7、平均eGFR値65.3mL/分/1.73m2、平均尿中タンパク質排泄量2.2g/日)、プラセボ群が97例(40.9歳、60%、1.8、64.9mL/分/1.73m2、2.3g/日)だった。202例(99.5%)が最大承認用量または最大耐用安定用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、108例(53.2%)が安定用量のナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬の投与を受けていた。 36週時の24時間尿中タンパク質/クレアチニン比のベースラインからの変化率は、プラセボ群が-6.8%であったのに対し、atacicept群は-45.7%と、蛋白尿の有意な減少を示した(減少の幾何平均群間差:41.8%ポイント、95%信頼区間[CI]:28.9~52.3、p<0.001)。蛋白尿は、atacicept群では12週目という早い段階で減少が確認され、明らかな改善効果が36週目まで持続した。 ガラクトース欠損型IgA1(Gd-IgA1)の値は、早い場合はatacicept群の患者で4週目には減少しており、36週目までの変化率は同群が-68.3%、プラセボ群は-2.9%であった(減少の幾何平均群間差:67.4%ポイント、95%CI:63.8~70.6)。 また、ベースラインで血尿を認めた122例(60.1%)のうち、36週目までにatacicept群の81.0%(51/63例)、プラセボ群の20.7%(12/58例)で血尿が消失した(オッズ比:19.1、95%CI:7.3~50.0)。注射部位反応、上気道感染症が多い 安全性の解析には、試験薬の投与を少なくとも1回受けた428例(各群214例)を含めた。有害事象は、atacicept群で127例(59.3%)、プラセボ群で107例(50.0%)に発現した。各群214例のうち、軽度が90例(42.1%)および74例(34.6%)、中等度が34例(15.9%)および24例(11.2%)と、軽度~中等度がほとんどを占めた。重篤な有害事象は、それぞれ1例(0.5%、胆嚢炎[試験薬との関連はない])および11例(5.1%)にみられた。 いずれかの群で5%以上に発生した有害事象は、注射部位反応(atacicept群19.2%、プラセボ群1.9%)、上気道感染症(12.1%、8.9%)、上咽頭炎(7.9%、6.1%)、注射部位紅斑(5.6%、0.5%)であった。 著者は、「これらの知見は、同様の患者集団を対象とし、同一の投与量と投与スケジュールを用いた第IIb相試験と一貫性があることから、ataciceptによるBAFFとAPRILの二重阻害は、IgA腎症の基盤となる病態生理を標的としており、それによって疾患経過を修飾する可能性が示唆される」としている。

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双極症予防にメトホルミンが有効な可能性

 2型糖尿病治療薬であるメトホルミンは、メンタルヘルスに良い影響を与えることが示唆されている。中国・福建医科大学のZhitao Li氏らは、メトホルミン使用と双極症リスクとの間の潜在的な因果関係を評価するため、メンデルランダム化(MR)解析を実施した。Medicine誌2025年10月24日号の報告。 メトホルミンに対する遺伝的感受性と双極症リスクとの間の因果関係を明らかにするため、公開されているゲノムワイド関連解析(GWAS)の統計データを用いて、2標本双方向MR解析を実施した。メトホルミン使用に関連するゲノムワイドの有意な一塩基多型(SNP)を操作変数とした。メトホルミン使用と双極症との間の因果関係を決定するため、操作変数重み付けなどの手法を用いてMR解析を行った。水平的多面発現の影響を検出および補正するために、加重中央値、加重モード、単純モード、MR-Egger回帰、MR-pleiotropy残差平方和および外れ値などの補完的な手法を適用した。操作変数の異質性の評価にはCochran Q統計量、感度分析にはleave-one-out法を用いた。 主な内容は以下のとおり。・操作変数重み付け分析では、メトホルミン使用と双極症リスクとの間に有意な因果関係が認められた。【GWAS ID:ebi-a-GCST003724】オッズ比(OR):0.032、95%信頼区間(CI):0.002~0.593、p=0.021【GWAS ID:ieu-a-800】OR:1.452E-04、95%CI:1.442E-07~1.463E-01、p=0.012【GWAS ID:ieu-a-808】OR:0.33、95%CI:0.270~0.404、p=0.000・感度分析では、個々の結果に異質性は認められず(p>0.05)、有意な出版バイアスも認められなかった。 著者らは「この結果は、メトホルミンが双極症の予防因子となる可能性を示唆しており、精神疾患の予防と治療における代謝介入の応用に新たな理論的根拠を提供するものである」としている。

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