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自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。 対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADOS-2モジュール4および改訂版では、統合失調症とASDの鑑別は困難であったが、A7、A10、B1、B6、B8、B9を組み合わせた予測モデルは、両疾患を鑑別するうえで、優れた精度を示した。・ADOS-2は統合失調症の偽陽性率が高く、統合失調症患者においてADOS-2すべてのドメインおよび合計スコアと陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアとの間に正の相関が認められた。・ADOS-2アルゴリズムにおいて、自閉スペクトラム症のカットオフ値が陽性の患者は、陰性の患者よりも、PANSS陰性症状スコアが有意に高かった。・ロジスティック回帰分析では、ADOS-2アルゴリズム尺度の陽性度は、PANSS陰性症状スコアのみを使用して予測可能なことが明らかとなった。 著者らは「ASDと統合失調症の鑑別には、ADOS-2と複数の項目を組み合わせることにより実現可能であることが示唆された」とし「本知見は、ASDと統合失調症の治療戦略の開発に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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新生児マススクリーニングでみつかる長鎖脂肪酸代謝異常症/ウルトラジェニックス

 希少疾病の分野に特化し、多様な治療薬の研究・開発を行うウルトラジェニックスは、希少疾病啓発事業の一環として、「長鎖脂肪酸代謝異常症」をテーマにメディアセミナーを開催した。 長鎖脂肪酸代謝異常症は、運動や空腹などで体内のエネルギー需要が増加するような状況で突然発症することが多い疾患で、わが国では毎年数十人の新患が発生していると推定されている。セミナーでは、専門医からの疾患説明と患者会から患者の現状などについての講演が行われた。心筋症、横紋筋融解症、色素性網膜症などを呈する希少疾病 「長鎖脂肪酸代謝異常症(long-chain fatty acid oxidation disorders:LC-FAOD)」をテーマに大石 公彦氏(東京慈恵会医科大学小児科学講座 主任教授)が、疾患の病態と診療について説明した。 LC-FAODは、長鎖脂肪酸の輸送や分解が障害されることでミトコンドリアでのエネルギー産生不足が生じる疾患。脂肪酸は、心臓、肝臓、骨格筋にとって主要なエネルギー源であり、ミトコンドリアでの脂肪酸酸化は、空腹時や代謝ストレス時の重要なエネルギー供給源となる。これがうまくできないことで、入院、緊急治療、さらには突然死を生じる可能性が出てくる(乳幼児では乳幼児突然死症候群[SIDS]と間違われることがある)。 LC-FAODは、常染色体潜性遺伝疾患であり、父親と母親から変異遺伝子を受け継いだ場合に発症する。患者数は、米国で毎年約100例が、わが国では毎年約10~50例の新生児が本症と診断されている。 LC-FAODは、脂肪によるエネルギー代謝に依存する臓器からさまざまな症状を示すが、主に次の5つの症状がある。(1)心筋症 左心室の筋肉の肥厚が初期に観察されることがあり、拡張型心筋症に進行する可能性がある。また、時には心嚢液貯留を伴う場合もあり、不整脈が心筋症の有無に関わらず発生することがある。(2)横紋筋融解症/骨格筋障害 筋肉痛、筋緊張低下、運動不耐性、ミオグロビン尿、反復性横紋筋融解症がみられることがある。また、これらの症状は持久力を要する運動によって誘発されることが多いが、麻酔やウイルス感染後にもみられることもある。(3)非ケトン性低血糖 時には、けいれん、昏睡、脳損傷を引き起こすことがある。また、肝機能障害(トランスアミナーゼ上昇、肝腫大、高アンモニア血症)と組み合わさって観察されることがよくある。(4)末梢神経障害 とくに三頭酵素欠損症(TFP欠損症)ではより頻繁にみられる(80%以下の患者が何らかの末梢神経障害を持つ)。また、LCHAD単独欠損症の患者では、5~10%が不可逆的な末梢神経障害を発症する。(5)色素性網膜症 LCHAD単独欠損症の患者でよくみられ、30~50%以上の患者が不可逆的な網膜症を発症する。また、約50%で2歳までに網膜に色素変化がみられる。 LC-FAODの臨床表現型は時間とともに変化し、成人期に診断された場合と小児期に診断された場合で異なることがある。また、急激に発生し、入院、救急受診、緊急治療、さらには突然死を引き起こす可能性があり、同じ種類の疾患、さらには同じ疾患を持つ家族内でも、徴候や症状の多様性がみられるのが特徴的である。 心筋症は新生児期から成人期を通じてみられ、低血糖・肝障害は新生児期~青年期に、筋力低下・横紋筋融解症は青年期~成人期でみられる。 LC-FAODの診断について新生児スクリーニング(NBS)では、生後数日以内に乾燥血液スポットを採取し、タンデムマススクリーニングでアシルカルニチンプロファイルを分析。血漿アシルカルニチンの測定により診断ができる。一方で、アシルカルニチン結果が正常な場合や診断確認のために遺伝子検査を実施するが、酵素アッセイなどの生化学的検査などでは、技術的に困難であり時間がかかる場合がある。 とくに新生児では、非典型的な症状が多いためにマススクリーニングが本症の早期発見・早期介入のためには重要となる。実際、多くの研究報告で、NBSによりLC-FAOD患者の予後が改善したこと、NBSで発見された患者の死亡率は、症状発現後に診断された患者よりも低かったことなどが報告されている。 LC-FAODの治療では、現在中心として行われているのは、「空腹を避けること」と「長鎖脂肪酸の摂取量を制限すること」である。また、急性期には、早期入院によるグルコース点滴も行われる。そのほか、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を含んだ食品の摂取も行われ、最近では、米国でトリヘプタノイン治療の研究が行われている。 最後に大石氏は、患者が直面している課題として、「長期間、原因不明の症状に苦しんでいる患者さんの存在」、「適切な治療に辿り着けない問題」、「困難な食事療法と社会的な孤独感」、「社会的・心理的負担」、「疾患認知度の低さと医療資源の限界」などがあると示し、講演を終えた。社会認知度の低い希少疾病にも関心を 「患者家族からみた長鎖脂肪酸代謝異常症をテーマに、柏木 明子氏(有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会 ひだまりたんぽぽ 代表)が、患者・患者家族視点からの課題や悩み、医療などへの要望を語った。 自身の子供が「メチルマロン酸血症」を発症しており、そのことで患者会を設立した経過を説明。患者会に寄せられた声から新生児マススクリーニングの重要性などを訴えた。また、LC-FAODなどのCPT2欠損症などの疾患で発症を予防するために「哺乳を含め食事間隔を空けないこと」と「シックデイはすぐに点滴を」と家族などが注意すべき事項を説明した。その他、特殊ミルクやMCTについて「治療食の入手が簡単ではないこと、コストが高いこと、質の信頼性が担保されていないこと」などの現在の問題点を指摘した。 最後に柏木氏はまとめとして「医療従事者に病気の理解が十分浸透していないことを感じている」、「発症の予防などには主治医一人ではなく多職種の連携体制が必要である」、「社会的認知のない疾患では、子供の預け先や保育園をみつけることが困難である」、「生命予後は改善したが、成人診療科が存在しない」など課題と要望を述べ、講演を終えた。

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NSAIDsとPPI併用で下部消化管出血リスク上昇か

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用者の上部消化管出血を予防し、消化性潰瘍や胃食道逆流症などの治療に広く使用されている。しかし複数の先行研究では、NSAIDs単独使用よりも、NSAIDsとPPIの併用のほうが下部消化管出血の発生率が高いことが指摘されていた。韓国・慶熙大学のMoonhyung Lee氏らは、実臨床での NSAIDs+PPI併用者とNSAIDs単独使用者間の下部消化管出血リスクを比較したところ、NSAIDs+PPI併用者のほうが下部消化管出血リスクが高いことが判明した。Gut and Liver誌オンライン版2025年1月3日号に掲載。 本研究は後ろ向き観察研究であり、5つの医療機関から得られたデータを、共通データモデルを用いて解析した。18歳以上のNSAIDs+PPI群またはNSAIDs+胃粘膜保護薬(MPA)群とNSAIDs単独群の間で、下部消化管出血のリスクを比較した。広範な傾向スコアマッチング後、Cox比例ハザードモデルおよびKaplan-Meier推定を使用した。リスク観察期間は、インデックス日翌日から観察終了日、または最大455日間(処方期間90日と観察期間365日)とした。MPAは、ほとんどがeupatilinまたはレバミピドが使用されていた。 主な結果は以下のとおり。【NSAIDs+PPI群vs.NSAIDs単独群】・NSAIDs+PPI群2万4,530 例、NSAIDs単独群5万7,264例のうち、8,728組の傾向スコアマッチングペアを解析した。・NSAIDs+PPI群では、NSAIDs単独群よりも下部消化管出血のリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.843、95%信頼区間[CI]:1.998~4.044、p<0.001)。・NSAIDs+PPI群での下部消化管出血リスク増加は、65歳以上の高齢者(HR:2.737)、男性(HR:2.963)、女性(HR:3.221)でも確認された。【NSAIDs+MPA群vs.NSAIDs単独群】・NSAIDs+MPA群1万6,975例、NSAIDs単独群2万1,788例のうち、5,638組の傾向スコアマッチングペアを解析した。・NSAIDs+MPA群とNSAIDs単独群の比較では、下部消化管出血リスクに有意差は認められなかった(HR:2.057、95%CI:0.714〜5.924、p=0.172)。 本結果について著者らは「下部消化管出血リスクは、NSAIDs単独群よりもNSAIDs+PPI 群のほうが高いことが示された。NSAIDs+PPI併用療法の代替候補として、NSAIDs+MPA併用は、下部消化管出血リスクを軽減できる実行可能な治療オプションであることを示唆しているかもしれない」と述べている。

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急性期脳梗塞、血管内再灌流後にウロキナーゼ動注は有効か?/JAMA

 主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中で、最終健常確認後24時間以内に血管内血栓除去術を受け、ほぼ完全または完全な再灌流が達成され静脈内血栓溶解療法歴のない患者に対し、ウロキナーゼ動脈内投与(動注)を追加しても90日後の機能障害のない生存は改善しなかった。中国・重慶医科大学附属第二医院のChang Liu氏らPOST-UK investigatorsが、中国の35施設で実施した医師主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「Adjunctive Intra-Arterial Urokinase After Near- Complete to Complete Reperfusion for Acute Ischemic Stroke(POST-UK)試験」の結果を報告した。末梢動脈および微小循環における持続性または新たな血栓は、介入後の梗塞を促進し神経学的回復の可能性を低下させる恐れがあるが、血管内血栓除去術後の動脈内血栓溶解療法が、機能障害のない生存を高める有望な戦略となることが第IIb相臨床試験「CHOICE試験」で示されていた。JAMA誌オンライン版2025年1月13日号掲載の報告。ウロキナーゼ動注群vs.対照群、無作為化90日後の機能障害のない生存を比較 研究グループは、頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈第1セグメントまたは第2セグメントの閉塞を認め、NIHSSスコアが25以下、修正Rankinスケール(mRS)スコアが<2、静脈内血栓溶解療法歴はなく、小~中程度の虚血コア(6時間以内の非造影CTでASPECTSスコア6以上、ASPECTSスコア7以上、または発症後6~24時間にDAWN試験あるいはDEFUSE-3試験の選択基準を満たす)を有し、発症(最終健常確認)から24時間以内に血管内血栓除去術を受けeTICIグレード2c(ほぼ完全な再灌流)以上を達成した18歳以上の患者を、ウロキナーゼ動注群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 ウロキナーゼ動注群では、標的領域にウロキナーゼ10万IUを単回注入し、対照群では動脈内血栓溶解療法を行わなかった。 有効性の主要アウトカムは、無作為化90日後の機能障害のない生存(mRSスコア0または1)を達成した患者の割合、安全性の主要アウトカムは90日以内の全死因死亡および48時間以内の症候性頭蓋内出血とした。90日後の機能障害のない生存の患者割合、両群で有意差なし 2022年11月15日~2024年3月29日に535例が無作為化された。ウロキナーゼ動注群の1例が直ちに同意を撤回したためウロキナーゼ動注群267例、対照群267例となった。患者背景は、年齢中央値69歳、女性が223例(41.8%)で、532例(99.6%)が試験を完遂した。最終追跡調査は2024年7月4日に行われた。 90日後の機能障害のない生存患者の割合は、ウロキナーゼ動注群45.1%(120/266例)、対照群40.2%(107/266例)であった(補正後リスク比:1.13、95%信頼区間[CI]:0.94~1.36、p=0.19)。 90日死亡率はそれぞれ18.4%、17.3%(補正後ハザード比:1.06、95%CI:0.71~1.59、p=0.77)、症候性頭蓋内出血の発現率はそれぞれ4.1%、4.1%(補正後リスク比:1.05、95%CI:0.45~2.44、p=0.91)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。

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HER2+早期乳がんへの術後T-DM1、iDFS改善を長期維持しOS有意に延長/NEJM

 トラスツズマブを含む術前化学療法後に浸潤がんの残存が認められたHER2陽性(HER2+)早期乳がん患者において、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はトラスツズマブと比較して、全生存期間(OS)を延長し、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が維持されていた。米国・National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (NSABP) FoundationのCharles E. Geyer Jr氏らが、第III相無作為化非盲検比較試験「KATHERINE試験」のiDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析の結果を報告した。術前化学療法後に浸潤がんが残存するHER2+早期乳がん患者は、再発および死亡のリスクが高い。KATHERINE試験では、iDFSの1回目の中間解析においてT-DM1のトラスツズマブに対する優越性が検証され(非層別ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)、この結果に基づき「HER2+の乳がんにおける術後療法」の適応追加が承認されていた。NEJM誌2025年1月16日号掲載の報告。術前療法で浸潤がん残存HER2+早期乳がん、T-DM1 vs.トラスツズマブを比較 研究グループは、タキサン系化学療法およびトラスツズマブを含む術前薬物療法を受け、手術後、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんの残存が認められたHER2+早期乳がん患者を、T-DM1群またはトラスツズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、14サイクル投与した。 主要評価項目はiDFSとし、重要な副次評価項目はOSなどであった。iDFSの定義は、同側浸潤性乳がん再発、同側局所の浸潤性乳がんの再発、遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡のいずれかが無作為化から最初に認められた日までの期間とされた。 有効性の解析はITT解析とし、iDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析は、iDFSのイベントが384件発生後に行うことと規定された。 ITT集団には各群743例の患者が組み込まれた。中央値8.4年追跡後もiDFSの改善は維持、OSの有意な改善を認める 追跡期間中央値8.4年において、iDFSのイベントはT-DM1群で146例(19.7%)、トラスツズマブ群で239例(32.2%)に報告された。浸潤性疾患または死亡の非層別HRは0.54(95%CI:0.44~0.66)であり、iDFSの改善が維持されていた。 7年iDFS率は、T-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった(群間差:13.7%ポイント)。 死亡は、T-DM1群89例(12.0%)、トラスツズマブ群126例(17.0%)が報告された。死亡のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)で、事前に規定された有意水準(p<0.0263、HR:0.739に相当)を超えており、T-DM1群はトラスツズマブ群より死亡リスクが有意に低いことが認められた。推定7年OS率はT-DM1群89.1%、トラスツズマブ群84.4%であった(群間差4.7%ポイント)。 Grade3以上の有害事象は、T-DM1群で26.1%、トラスツズマブ群で15.7%に報告された。

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医師による身体活動量の評価は慢性疾患の予防につながる

 医師が患者の身体活動量について尋ねることは、慢性疾患の予防に役立つ可能性があるようだ。米アイオワ大学ヘルスケア医療センターの患者を対象にした調査結果から、中強度から高強度の身体活動を週に150分以上というガイドラインの推奨を満たしていた人では、高血圧や心疾患、糖尿病など19種類の慢性疾患の発症リスクが有意に低いことが示された。論文の上席著者である、アイオワ大学健康・人間生理学分野のLucas Carr氏らによるこの研究結果は、「Preventing Chronic Disease」1月号に掲載された。 この研究でCarr氏らは、2017年11月1日から2022年12月1日の間にアイオワ大学ヘルスケア医療センターで健康診断を受けた患者を対象に、Exercise Vital Sign(EVS)質問票を用いた身体活動量のスクリーニングを受けた患者と受けていない患者の健康状態を比較した。また、スクリーニングで測定された身体活動量の違いに基づく健康状態の比較も行った。 EVS質問票は、「中強度から高強度の身体活動(早歩きなど)を週に平均何日程度行っていますか」と「中強度から高強度の身体活動を平均何分間行っていますか」の2つの質問で構成されている。Carr氏は、「この2つの質問には、通常は30秒もあれば回答できるので、患者の診察の妨げになることはない。それにもかかわらず、患者の全体的な健康状態について多くの情報を得ることができる」と述べている。 Carr氏らはまず、EVSの有効なデータがそろった患者7,261人と、スクリーニングを受けていない患者3万3,445人の比較を行った。その結果、身体活動量のスクリーニングを受けた患者は、受けていない患者に比べて、肥満(15%対18%)、うつ病(17%対19%)、高血圧(22%対28%)、合併症のない糖尿病(5.9%対8.5%)、合併症を伴う糖尿病(4.4%対7.3%)、貧血(4.6%対6.1%)、甲状腺機能低下症(9.3%対10.0%)、うっ血性心不全(1.1%対1.9%)、および中等度の腎不全(1.8%対2.5%)の発症率が有意に低いことが明らかになった。 次に、身体活動量のスクリーニングを受けた7,261人の患者を身体活動量に基づき、十分な身体活動量(4,382人、60%)、不十分な身体活動量(2,607人、36%)、身体活動を全く行わない(272人、4%)の3群に分けて健康状態を比較した。その結果、十分な身体活動量の群は、不十分な身体活動量の群や身体活動を全く行わない群に比べて、肥満、うつ病、合併症のない/合併症を伴う高血圧・糖尿病、弁膜症、うっ血性心不全など、身体活動不足に関連する19種類の併存疾患のリスクが低いことが示された。 こうした結果に基づき研究グループは、医師に対し、患者に身体活動量について質問し、活動量を増やす必要がある患者には活動量を増やすように促すことを推奨している。Carr氏は、「現在の医療環境では、患者の身体活動量を増やすために医師が支援を行っても、それに対する報酬を得ることは難しい。身体活動量の不足を報告している患者に対しては、身体活動の処方や地域の健康専門家などの支援サービスと簡単につながるための選択肢が必要だ」と述べている。 Carr氏は、「この研究は、たとえ短時間であっても、患者と身体活動習慣について話すことの大切さを強調している」との見方を示す。なお、2024年12月に「Journal of Physical Activity and Health」に発表した関連研究でCarr氏らは、医師が患者への身体活動のカウンセリングを行った場合、保険会社が医師に95%近くの確率で払い戻しを行っていることを明らかにしている。同氏は、「われわれの研究結果は、推奨されている身体活動に関する請求コードを医療従事者が申請すると、高確率で払い戻しが行われていることを示唆している。この結果は、身体活動量の評価とカウンセリングサービスを提供する取り組みの推進を支持するものだ」と結論付けている。

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PM2.5が多いとマラソン選手の記録が低下する

 マラソン選手は良い記録を出すために、レース前やレース中に摂取する食べ物や飲み物に細心の注意を払う。しかし、新たな研究によると、レース時の大気汚染のレベルも、走行タイムを左右する因子の一つであることが明らかになった。大気汚染のレベルが高いほど、選手の走行タイムが悪化する傾向があるという。 この研究は、米ハーバード大学博士課程のElvira Fleury氏らによるもので、詳細は「Sports Medicine」に12月18日掲載された。論文の筆頭著者であるFleury氏は、「ハイレベルのマラソン選手は記録向上のために、トレーニング、栄養、シューズやウエア、競技コース、さらに天候まで考慮して大会に臨んでいる。しかしわれわれの研究から、パフォーマンスの最大化には、大気汚染の影響をも考慮すべきであることが示された」と述べている。 Fleury氏らは、米国で定期的に行われている9件の大規模なマラソン大会の2003~2019年のデータ(計140大会分)を利用して、選手の完走タイムと当日の大気汚染レベル(PM2.5濃度)との関連を検討した。解析対象サンプル数は、男性が150万6,137件、女性は105万8,674件だった。 解析の結果、大会当日のPM2.5濃度が1μg/m3高いごとに、男性選手の平均完走時間は32秒(95%信頼限界30~33)、女性選手は25秒(同23~27)長いことが分かった。また、完走タイムの中央値で全体を二分して比較すると、記録が上位の選手の方が、大気汚染による記録低下の影響がより強く認められた。論文の上席著者である米ブラウン大学のJoseph Braun氏は、大学発のリリースの中で、「この結果は、大気汚染が高齢者や影響を受けやすい人々だけに健康リスクをもたらすのではなく、トレーニングを積み最も健康的と目される人々にさえ悪影響を及ぼす可能性のあることを意味している」と述べている。 研究グループによると、これまでの報告で大気汚染が心臓病、呼吸器疾患、肺がんのリスクだけでなく、全死亡リスクとも関連していることが示されているという。また今回の研究で明らかにされた、マラソン選手への大気汚染の影響のメカニズムについては、血圧の上昇、血管の収縮、肺機能の低下、および短期的な認知機能への影響を介してパフォーマンスを低下させる可能性があると推測している。 Braun氏は、「マラソンを完走できるような人は、一般的に非常に健康で高い心肺機能を有している。われわれの解析結果は、そのような極めて健康な人々に対しても、現在の環境基準を超えないレベルの大気汚染が悪影響を及ぼすことを明らかにした」と本研究の意義を強調。また著者らは、「今回のデータは、自動車や発電所のエネルギー源を化石燃料から環境負荷の少ない別の方法へ転換することで、大気汚染物質の排出を削減するという取り組みを支持するものである」と付け加えている。

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令和の婚活!【Dr. 中島の 新・徒然草】(564)

五百六十四の段 令和の婚活!寒い冬が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。こころなしか日が長くなってきました。家の外も寒いばかりでなく、過ごしやすい日がチラホラ。さて、先日の医師会の新年会でのこと。某先生が婚活の話を持ち出しました。この人を仮にA子先生としましょう。彼女には年頃の娘さんがいて「いいお婿さんはいないでしょうか?」というもの。こういった話は患者さんからも親戚からも散々聞かされてきました。以前は一生懸命頭を捻っていましたが、現在では皆さんに「そりゃあ結婚相談所一択ですよ」と応じることにしています。医師会の席でもそのように言ったら、周囲から「そうだ、そうだ」「異議なし!」と思わぬ賛同を得ました。なので、私も調子に乗って念押しです。中島「昔はお見合いオバサンがいろいろ世話を焼いていたんですけど、現在はネットが代わりをしてくれますからね」A子先生「結婚相談所というのはネットを使うんですか?」中島「そうそう。登録者同士が自分で相手を選んでどんどんお見合いをするんですよ」まあ、実際にはいろんなシステムがあるとは思いますが。中島「安くて緩いのはマッチングアプリですね。でも値段が高くて入会審査の厳しい結婚相談所のほうが、真面目に相手を探している人が多いんじゃないかな」A子先生「そんなシステムがあるなんて知りませんでした」B先生「ウチの若いスタッフも半分以上が利用していますよ」中島「入会の時に独身証明書とか収入証明書とか出して、ウソ偽りのないようにするんです」A子先生「ひえーっ、中島先生は詳しいですね」中島「そりゃあ婚活漫画を読んでいるし、患者さんからもあれこれ聞かされていますからね」本当は外来で婚活当事者に根掘り葉掘り聴いているわけです。休日は複数のお見合いをこなしているとか、仮交際の相手が10人を超えたので間違えないようエクセルで管理しているとか。C先生「娘さんも実家住まいでお母さんに何でもしてもらっていたら、結婚なんか考えないでしょう」A子先生「ウチの娘は独立して○○士をしているんです」一同「ヒエーッ!」A子先生「本人は結婚する気満々なんですけど、相手がいなくて」ちなみに○○士のところには、誰でも知っている文系国家資格が入ります。中島「そういう人こそピッタリですよ。結婚相談所に登録しながら、別に恋愛するのも自由だし!」A子先生「そんなのアリなんですか?」中島「もちろん。結婚相談所は最後の砦ではなくて、最初に扉を叩くべきところです。婚活市場で自分がどういう評価を受けるかもよくわかりますしね」A子先生「あの、どういう人が高評価なのでしょうか」C先生「端的に言って、男は年収、女は年齢ですね」もちろん女性でも年収が高いに越したことはありません。中島「あと、男の外見にはこだわらないほうがいいですね」A子先生「ちょっとはこだわりたいんですけど?」中島「既婚男性の外見なんか、半分以上は奥さんの責任ですよ」一同「なるほど」以前、新婚の看護師さんに「ウチの主人は不細工で……」といいながら写真を見せられてコメントに困ったことがありました。ところが、1年後にバッタリと道で出くわしたら、別人かと思うほどシュッとした爽やか青年に変わっていたのです。あの時ばかりは驚きました。B先生「登録する時の写真はプロに撮ってもらいましょう」A子先生「でも、お高いんでしょ?」B先生「せいぜい数万円ですよ。でも写真くらいプロとアマの技術の差の大きいものはありませんからね」中島「この数万円に勝負がかかっているんだから、お母さんがポンと出してあげたらどうですか?」ということで、四方八方からのアドバイス。とくに、脳外科の中にも結婚相談所を利用して身を固めた男性レジデントがいる、という話をすると、A子先生は俄然ヤル気を見せました。中島「皆のアドバイスが今日最大の収穫でしたね」A子先生「あとはどこに登録するか……頑張ります!」もし読者の中で、手っ取り早く令和の結婚相談所システムを知りたい方がおられたら、婚活漫画を読むかYouTubeで検索するのが一番!やっぱり餅は餅屋、よくできたシステムに感心させられます。最後に1句新年会 婚活話で 盛り上がる

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副腎性クッシング症候群〔Adrenal Cushing's syndrome〕

1 疾患概要■ 定義クッシング症候群は、副腎皮質から慢性的に過剰産生されるコルチゾールにより、中心性肥満や満月様顔貌といった特徴的な臨床徴候を示し、糖・脂質代謝異常、高血圧などの合併症を伴う疾患である。手術により治癒が期待できる内分泌性高血圧症の1つである。 広義のクッシング症候群は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存性クッシング症候群(下垂体性のクッシング病や異所性ACTH産生腫瘍など)とACTH非依存性クッシング症候群(副腎性クッシング症候群)に大別され、本稿では副腎性クッシング症候群について解説する。■ 疫学厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班による全国実態調査では、日本全国で1年間に約50症例の副腎性クッシング症候群の発症が報告されている。CT検査などが行われる機会が増えた現在では、副腎偶発腫を契機に診断される症例が増加していると考えられる。副腎腺腫によるクッシング症候群の男女比は1: 4と女性に多く、30~40代に好発する。■ 病因副腎皮質の腺腫やがんなどにおいてコルチゾールが過剰産生される。その分子メカニズムとしてcAMP-プロテインキナーゼA(protein kinase A:PKA)経路およびWNT-βカテニンシグナル経路の異常が示されている。顕性クッシング症候群を生じる症例の約85%で症例の副腎皮質腺腫において、PKAの触媒サブユニットをコードするPRKACA(protein kinase A catalytic subunit α)遺伝子、およびアデニル酸シクラーゼを活性化することによりcAMP産生に関わるタンパク質をコードするGNAS(α subunit of the stimulatory G protein)遺伝子、WNTシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達因子であるβカテニンをコードするCTNNB1(β catenin)遺伝子の変異を認めることが報告されている。■ 症状クッシング症候群に特異的な症状として、中心性肥満(顔、頸部、体幹のみの肥満)、満月様顔貌、鎖骨上および肩甲骨上部の脂肪沈着(野牛肩:buffalo hump)、皮膚の菲薄化、皮下溢血、赤色皮膚線条、近位筋萎縮による筋力低下があり「クッシング徴候」と言う。その他、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症や性腺機能低下症、骨粗鬆症、精神障害、ざ瘡、多毛を認めることもある。■ 分類副腎腫瘍によるもの、副腎結節性過形成によるものに大別される。副腎腫瘍には副腎皮質腺腫、副腎皮質がんがあり、副腎結節性過形成にはACTH非依存性大結節性過形成(primary bilateral macronodular adrenal hyperplasia:PBMAH)、原発性色素性結節状副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease:PPNAD)が含まれる。顕性クッシング症候群のうちPBMAH、PPNADの頻度は併せて5.8%とまれである。また、クッシング徴候を欠くがコルチゾール自律分泌を認める症例を「サブクリニカルクッシング症候群」と言う。■ 予後副腎皮質腺腫によるクッシング症候群は、治療によりコルチゾールを正常化できた症例では同年代とほぼ同程度の予後が期待できる。治療しなければ、感染症や心血管疾患のリスクが増加し、予後に影響することが示されており、早期発見、治療が重要である。一方、副腎皮質がんはきわめて悪性度が高く、急速に進行し、肝臓や肺などへの遠隔転移を認めることも多く予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)クッシング徴候や副腎偶発腫、また、治療抵抗性の糖尿病、高血圧、年齢不相応の骨粗鬆症を認めた際は、クッシング症候群を疑い精査を行う。まず、病歴、服薬状況の問診によりステロイド投与による医原性クッシング症候群を除外し、血中コルチゾール濃度に影響を及ぼす薬剤(表)の使用を確認する。表 クッシング症候群の診断に影響する可能性がある薬剤(左側は一般名、右側は商品名)画像を拡大する血中コルチゾール濃度は視床下部から分泌されるCRHの調節により早朝に高値になり、夜間には低値になる日内変動を示す。クッシング症候群ではCRHの調節を受けないため、コルチゾールの日内変動は消失し、デキサメタゾン内服により抑制されない。そのため、24時間尿中遊離コルチゾール高値、デキサメタゾン1mg抑制試験で翌朝血清コルチゾール値≧5μg/dL、夜間血清コルチゾール濃度≧5μg/dLのうち、2つ以上あればクッシング症候群と診断する。さらに早朝の血漿ACTH濃度を測定し、測定感度以下(<5μg/mL)に抑制されていれば副腎性クッシング症候群と診断する。図に診断のアルゴリズムを示す。図 クッシング症候群の診断アルゴリズム画像を拡大するただし、うつ病、慢性アルコール依存症、神経性やせ症、グルココルチコイド抵抗症、妊娠後期などでは視床下部からのCRH分泌増加による高コルチゾール血症(偽性クッシング症候群)を呈することがあり、抗てんかん薬内服ではデキサメタゾン抑制試験で偽陽性を示すことがあるため、注意が必要である。副腎腫瘍の有無の検索のため腹部CT検査を行う。副腎皮質腺腫は脂肪成分が多いため、単純CT検査で辺縁整、内部均一な10HU未満の低吸収値を認める。直径4cm以上で境界不明瞭、内部が出血や壊死で不均一な腫瘍の場合は副腎皮質がんを疑い、MRIやFDG-PETなどさらなる精査を行う。PBMAHでは著明な両側副腎の結節性腫大を認め、PPNADでは副腎に明らかな腫大や腫瘍を認めない。コルチゾールの過剰産生の局在診断のため131I-アドステロール副腎皮質シンチグラフィを行う。片側性副腎皮質腺腫によるクッシング症候群では、健側副腎に集積抑制を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)副腎皮質腺腫では腹腔鏡下副腎摘出術を施行することで根治が期待できる。術後、対側副腎によるコルチゾール分泌の回復までに6ヵ月~1年を要するため、その間は経口でのグルココルチコイド補充を行う。手術困難な症例や、片側副腎摘出術後の再発例、著明な高コルチゾール血症による糖代謝異常や精神異常、易感染性のため術前に早急なコルチゾールの是正が必要な症例に対しては、副腎皮質ステロイドホルモン合成阻害薬であるメチラポン(商品名:メトピロン)、トリロスタン(同:デソパン)、ミトタン(同:オペプリム)が投与可能である。11β-水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは可逆性で即効性があることから最もよく用いられている。副腎皮質がんでは開腹による腫瘍の完全摘出が第1選択であり、術後アジュバント療法として、または手術不能例や再発例に対しては症状軽減のためミトタンを投与する。ミトタンは約25~30%の奏効率とされているが、副作用も少なくないため有効血中濃度を維持できない症例も多い。PBMAHでは、症状が軽微な症例や腫大副腎の左右差もあり、合併症などを考慮して症例ごとに片側あるいは両側副腎摘出術や薬物療法による治療方針を決定する。一部の症例でみられる異所性受容体に対する阻害薬が有効な場合もあるが、長期使用による成績は報告されていない。PPNADでは、顕性クッシング症候群を発症することが多いため、両側副腎全摘が第1選択となる。サブクリニカルクッシング症候群では、副腎腫瘍のサイズや増大傾向、合併症を考慮して症例ごとに経過観察または片側副腎摘出術を検討する。4 今後の展望唾液コルチゾール濃度は、外来での反復検査が可能で、遊離コルチゾール濃度との相関が高いことが知られており、欧米では、夜間の唾液コルチゾール濃度がスクリーニングの初期検査として推奨されているが、わが国ではまだ保険適用ではなくカットオフ値の検討が行われておらず、今後の課題である。また、2021年3月に11β-水酸化酵素阻害薬であるオシロドロスタット(同:イスツリサ)の使用がわが国で承認された。メチラポンと比べて服用回数が少なく、多くの症例で迅速かつ持続的にコルチゾールの正常化が得られるとされており、長期使用成績の報告が待たれる。5 主たる診療科内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究(医療従事者向けのまとまった情報)1)出村博ほか. 厚生省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査研究班 平成7年研究報告書. 1996;236-240.2)Lacroix A, et al. Lancet. 2015;386:913-927.3)Yusuke S, et al.Science. 2014;344:917-920.4)Rege J, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107:e594-e603.5)日本内分泌学会・日本糖尿病学会 編. 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック. 診断と治療社;2023.p.182-187.6)Nieman Lk, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93:1526-1540.公開履歴初回2025年1月23日

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 1

今回のキーワード障害者権利条約医療保護入院制度法律の抜け穴判断基準入院費精神医療審査会家族調整市町村長同意前回(その1)は、強制入院の1つである医療保護入院について詳しく説明しました。実は、この医療保護入院は、もはや世界で日本だけにしかなく、障害者権利条約に従っていないと国連から改善勧告がなされています1)。また、精神科医が所属する基幹学会(日本精神神経学会)からは、すでに医療保護入院を廃止すべきであるとの見解が示されています2)。つまり、日本ならではの医療保護入院という制度が障害者への人権侵害を招いており、しかもそれに私たちがあまり気付いていないという衝撃の事実です。どういうことでしょうか?今回(その2)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、医療保護入院制度の問題点を明らかにして、強制入院ビジネスの不都合な真実に迫ります。医療保護入院制度の問題点とは?まず、医療保護入院制度の問題点を、病院、家族、地域の3つの立場からそれぞれ明らかにしてみましょう。(1)強制入院の裁量権が病院に独占明日香が強制入院させられた精神科病院は、民間病院でした。実際に、精神科病院の8割以上は民間病院です。よくよく考えると、本来、行動制限のような人権侵害ができるのは警察などの公権力に限られています。しかし、精神障害に限っては、私人(民間病院)がほぼ独断ですることが可能になっています。1つ目の問題点は、強制入院の裁量権が精神科病院に独占されていることです。それを可能にする「法律の抜け穴」を、大きく3つ挙げてみましょう。a.医療保護入院の判断基準が曖昧明日香が入院していた女子病棟には、さまざまな人が入院していました。たとえば、おそらく統合失調症で、何らかの妄想によって自分の髪の毛を燃やしたり暴れる人です。この場合は、措置入院の要件にもなっている「自傷他害のおそれ」があるため、強制入院が必要であると多くの人が納得できます。一方、摂食障害で、食事を食べない、食べても吐くために、超低体重になっている人も何人かいました。確かに、摂食という点では自立不全ではありますが、程度の問題になるため、自傷他害ほど白黒つけられません。また、判断能力が保たれている場合は、本人の意思で体重を減らしていることになります。本人の意思でお酒を飲み続けるアルコール依存症と、「本人の意思」という生き方の問題(嗜癖)としては同じです。ちなみに、アルコール依存症だけではさすがに強制入院の対象になりません。なお、摂食障害が嗜癖である理由については、関連記事1をご覧ください。1つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることです。その1でも説明しましたが、強制入院の要件は、自傷、他害、自立不全によって「自他への不利益が差し迫っている」ことです。自傷と他害は明確ですが、自立不全は程度の問題になるため、明確ではありません。そもそも、根拠となる精神保健福祉法では「医療及び保護のため」としか記載されていません。つまり、入院が必要と精神科医(精神保健指定医)が独断し、家族が同意すれば、誰でも強制入院させることができます。これは、実はとんでもない権力です。しかも、現在では入院したあとに家族が同意を撤回しても、医療保護入院は継続できるという行政解釈がなされてしまいました3)。ますますとんでもない状況になっています。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 2

b.医療保護入院の入院費が収入源担当看護師は、明日香に「料金は一括で払っていただいていますから」と伝えていました。ここからわかることは、当たり前と言えば当たり前ですが、民間の精神科病院は、営利組織でもあります。2つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の入院費が精神科病院の収入源になってしまっていることです。収入を確保するためには、なるべく多くの患者を強制入院させて、改善してもすぐに退院させないようにする必要があります。経営方針の最適解は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることを利用して、常に満床、なるべく空きベッドを出さないことです。一方で、任意入院や外来通院では、この経営戦略は使えません。わかりやすく言うなら、犯人が捕まらなくても警察署はつぶれないですが、患者が捕まらないと精神科病院はつぶれてしまうということです。このような精神科病院で働く精神科医や看護師にも職業倫理や人権意識があることにはあります。しかし、当然のことながら、雇われている立場であり、経営方針に従わないと嫌がらせをされたり、別の理由をつけられて職を追われます。それを見越しているため、忖度したり渋々従っていることも想像できるでしょう。また、精神保健指定医は国家資格で、更新のために定期的に研修会に参加する必要があります。しかし、これを開催する団体に限っては、主に民間の精神科病院が所属する学会や協会です。国家資格でありながら、国が直接開催するという形をとっていません。申し込みの時に、あえてこれらの団体の名前を表示させて、選ばせる仕組みになっています。いくら便宜的とは言え、このように国家資格の更新に民間の精神科病院の団体の息がかかっているように見えるため、精神科医は資格を無事に更新するため、やはり精神科病院の経営方針に忖度せざるを得ないでしょう。また、この研修会では、国連の勧告によって「精神障害者の権利の擁護」という言葉が精神保健福祉法に新たに盛り込まれたという事実は説明されるのですが、精神科医(精神保健指定医)はどう具体的に「権利擁護」をするべきかについては、いっさい触れられません。これは、利害関係を考えれば当然と言えば当然です。精神科医たちに本気で人権擁護に取り組まれてしまっては、より多くの患者をより長く入院させられなくなり、精神科病院が赤字経営に陥ってしまうからです。そしてそれは結局、精神科医たちの職場を失ってしまうことになるからです。このような構造的な問題は、精神科病院にとって世の中にあまり知られたくない不都合な真実です。さらにおかしな点は、入院費の支払いを患者本人に請求している点です。入院費は保険診療ではありますが、自己負担があります。映画では、差額ベッド代が1泊2万円の「ブルジョア部屋」に5年間入院している患者がいました。本人が支払うことは、入院中で物理的にも経済的にも不可能です。心理的にも絶対に払いたくないでしょう。そうなると、扶養義務があって、入院に同意した家族が代わりに支払うことになるわけです。しかも、先ほどにも触れましたが、家族が同意を撤回しても医療保護入院は継続可能であるため、支払い義務は続きます。これは、治療契約として明らかに破綻しており、やはりおかしな状況になっています。ちなみに、もう1つの強制入院である措置入院は、行政命令であるため、警察に留置されているのと同じ扱いで、入院費は完全に公費で、支払い義務はないです。実際の統計(2023年)では、日本の精神科病院における医療保護入院患者は約13万人で、措置入院患者数は約1,600人です。この2つを合わせた強制入院率は、欧州諸国の約15倍と、断トツに多いです1)。欧州諸国には医療保護入院がないことから、単純に考えて、もしも日本も医療保護入院がなくなれば、欧州諸国と同じ低い水準の強制入院率になることが推測できます。しかも、2002年から、もともと増え続けていた任意入院が減り、逆に医療保護入院が増え始め、2023年には倍になっています。このわけは、2002年から診療報酬の高い精神科救急病棟(スーパー救急)が国家的に推進され、その認定要件に強制入院の患者がより多く(その病院の入院患者の6割以上)いることとされてしまったからであることが考えられています。つまり、任意入院になるはずの患者をあえて医療保護入院にしていることが推測できます。このことからも、医療保護入院がいかに都合よく利用されているかがわかります。そして、この状況は、さすがに国としても想定外だったようです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 3

c.医療保護入院への審査が形骸化明日香は、強制入院中のため、締め切りのある原稿を書くことも送ることもできないなか、面会に来たコモノ(放送作家である鉄雄の弟子)から「代わりに書きました」と聞かされます。しかし、その内容があまりにも突飛であったため、そのショックから持病の蕁麻疹が全身に出てしまい、コモノが叫び声を上げてしまいます。それを聞きつけた担当看護師は、他の看護師たちに「(明日香用の)クワイエット(ルーム)の手配を」と速やかに指示を出すのです。しかし、明日香もひるみません。すぐに上半身裸になり、蕁麻疹の様子をコモノに携帯で撮らせて、「この病院は、患者がこんな体(蕁麻疹)になっているのに、治療もせずに監禁しようとしているってインターネットに写真をアップしますよ」と反論するのです。明日香はこうするしか、「クワイエット行き」(隔離拘束)を免れる方法がなかったのでした。なお、厳密には、隔離拘束の最終的な判断は精神保健指定医が行います。3つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院への審査が形骸化されていることです。審査とは、都道府県が設置した精神医療審査会のことです。ここに、患者は強制入院中の不当な扱いに対して処遇改善請求や退院請求をする権利があります。しかし、実際にそれが認められるのは数%にすぎません1)。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?そのわけは、書類審査だけだからです。立ち入り審査や聞き取り審査はありません。その書類も、審査に引っかからないように、たとえ頻度は少なくても症状をきっちり記載する作文対策をすることができます。むしろ、審査請求の認定率が少しでもあるのは、単に精神科医が作文対策をうっかり「怠った」だけの書類上の不備であることが推測できます。ちなみに、先ほど医療保護入院への同意を家族が撤回できないと説明しましたが、その代わりに家族が退院請求をすることができるとの行政からの説明があります。しかし、結局これも認定される可能性は、かなり低いわけです。なお、退院支援相談員は、2014年の精神保健福祉法の改正で導入されましたが、結局この役職も「当該医療機関内に配置」と明記され、その精神科病院に勤務する精神保健福祉士になってしまうため、支援ではあっても、審査の役割はありません。わざわざ明記されているのは、外部の目を入れさせないようにするためではないかと邪推してしまいます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 4

(2)強制入院の裁量権が家族にも明日香の主治医は、担当看護師に「(強制入院)と言っても、旦那が出せって言ったら、こっちはそんな強制力ないですから」「旦那のオッケーさえあれば、出るの早いんじゃない」と言っていました。先ほどにも触れましたが、現在では「旦那が出せ」と行っても、病院はそれ突っぱねることができるようになりました。ただ、このセリフは、とても開けっ広げですが、医療保護入院制度の問題の本質を突いています。2つ目の問題点は、強制入院の裁量権が家族にもあることです。「出せ」って言われて出すわけではなくなりましたが、反対に「出さないで」と言われたら、なかなか退院させられないことになります。病院としては、空きベッドができてしまうのは避けたいのですが、入院の長期化(3ヵ月以上)で診療報酬が減算されていくのも避けたいです。理想的にはぴったり3ヵ月で退院させて、次の患者を入れ替わりで入院させたいという思惑があります。ホテル経営と発想は同じです。しかし、家族が「今は家で受け入れる余裕がない」などと言えば、主治医も配慮はします。家族が本人の入院を厄介払いに思っていれば、なおさら手こずります。これは、退院するかどうかは、主治医と家族が相談して決める、そして家族の意向にある程度合わせる、いわゆる「家族調整」です。家族が退院後の受け入れを渋れば、病状とは無関係に入院が継続されます。つまり、入院する段階だけでなく、退院する段階にも家族には裁量権があることになります。病状が安定すれば強制入院を速やかに解除するという人権擁護の取り組みは、明らかに後回しであることがわかります。2014年の精神保健福祉法の改定前は、まだ同意する家族の優先順位があり、それが同等の場合は裁判所で同意者の選任の審判を受けるという手続きがありました。これは、司法の目が強制入院に少しでも向けられていることを意味しました。しかし、現在は、家族なら誰でも同意できることになり、司法の目はなくなりました。また、2023年の改正では、同意する家族等から除外される者が「身体に対する暴力を行った配偶者(DV加害者)等」とされましたが、これから行うリスクのある者や精神的な暴力(モラルハラスメント)は含まれていません。よくよく考えると、本来夫婦は対等であるはずなのに、一方が精神障害であるためにもう一方に強制入院に同意する権限(裁量権)を与えることで、力関係を生み出します。たとえば、「言うこと聞かないとまた入院させるよ」と言うなど、医療保護入院による家族同意自体がモラルハラスメントのリスクをはらんでいることになります。ちなみに、もしも明日香の「旦那」(家族)が、逆に入院に同意しなかったり、そもそも家族がいなかったらどうなっていたでしょうか? いくら救急病院に空きベッドがないからと言って、いきなり精神科病院に転院させられることはなくなります。別の救急病院に転院して、意識が戻ったところでその救急病院の医師(多くは併診する精神科医)が判断能力を評価するわけです。または、その医師が専門外で評価できない場合、警察通報にて警察保護の上、措置診察(措置入院の判断のための診察)が行われます。ただし、どちらにせよ、以下の点で、かかりつけの心療内科への通院は勧められますが、まず強制入院(措置入院)にはならないでしょう。酒に酔った勢いで間違えて薬を多く飲んだと主張している点希死念慮は酩酊中の発言であり、現在は見られない点謝罪や反省の弁を述べて、判断能力が保たれている点その直前まで職業適応しており、もともと問題行動を認めていない点雑誌の原稿の締め切りをとても気にしており、今後も社会適応が見込める点<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 5

(3)強制入院の裁量権が地域社会にも広がるおそれ映画では、明日香の内縁の夫が、医療保護入院の同意者になっていましたが、実際には法的な夫か血縁関係のある家族である必要があるため、無効であるとその1で説明しました。明日香の父はすでに他界しており、兄弟はなく、唯一の家族である母とは、絶縁状態でした。家族がいないだけでなく、明日香のように家族がいても疎遠で「かかわりたくない」との理由で同意も反対もせずに意思表示を示さない場合も、2024年の精神保健福祉法の改正によって、市町村長が同意の可否を判断できるようになりました。これは一見すると、公的な立場が関わるので、入院の要件が措置入院と同じように、より厳正になるのではないかと思われるかもしれません。しかし、「市町村長同意事務処理要領」4)を確認する限り、「人権擁護」には触れていませんでした。つまり、市町村長同意は、家族同意の形式的な代行にすぎず、むしろ病院の言いなりになってしまうおそれがあります。市町村は、患者の権利擁護をする立場(アドボケーター)にはなっていないということです1)。しかも、それだけではありません。3つ目の問題点は、強制入院の裁量権が地域社会にも広がるおそれがあることです。核家族化した現代社会では、明日香のように家族と疎遠な人たちがますます増えており、今後に医療保護入院について意思表示を示さない家族がますます増えるでしょう。この状況は、実質的には市町村同意の権限拡大です。そうなると、まず懸念されるのは、ホームレスです。ホームレスは、生活保護をあえて選ばない、または選ぶことができないくらい判断能力が低いながら、生活能力がぎりぎり保たれているグレーゾーンの人たちです。ホームレスは、家族がいたとしても、すでにホームレスであることから、基本的に家族とは疎遠です。つまり、逆説的にも、今までのホームレスは、生活に自由はあまりなさそうですが、家族がいても同意も反対もしないために強制入院はさせられないという「自由」がありました。しかし、その同意か反対かを問う必要がなくなったため、地域住人の要望を受けた市町村がホームレスを地域で取り締まり、精神科病院に連れていくことができます。これは、強制入院についての、地域社会の参入です。精神科病院としては、衛生的には抵抗があるかもしれません。ただ、実際に認知機能が低下しているという病状があり、入院費は生活保護により公費扱いになるため、断らないでしょう。ただし、それはホームレスにとってはたして幸せでしょうか? 私たちの価値観からしてみれば、保護されて衣食住が満たされているから、幸せだろうと思うかもしれません。しかし、保護の名のもと「収容」されて、彼らにとっての「自由」がなくなるわけです。本人が望んでいないことを良かれと思って強いるのは、ただの偽善になってしまいます。地域社会の保安という思想が優先されており、そこに人権意識はありません。なお、ホームレスの自由権の詳細については、関連記事2をご覧ください。もっと言えば、地域社会に都合が悪い人は、ホームレスだけではありません。ゴミ屋敷の住人、新興宗教を普及しようとする人、さらには行政や政府を批判して抗議活動をする人です。彼らは社会で望ましいとされる生き方(主流秩序)から逸脱しているため、「ゴミ収集がやめられない強迫症」、「特定の宗教の教義へのこだわりがある発達障害」、そして「行政や政府への被害妄想がある妄想症」という診断のもと、強制入院の対象にされるおそれがあります。つまり、彼らにまで、強制入院の対象が拡大するおそれがあります。明日香が入院していた精神科病院の「クワイエット行き」(隔離拘束をする保護室)が、地域社会で繰り広げられるわけです。本来、人権侵害のリスクのある権力は厳しく監視するべきなのに、「抜け穴」をさらにつくってしまっては、公安警察がいた戦前に逆戻りです。強制入院ビジネスの不都合な真実とは?医療保護入院制度の問題点は、強制入院の裁量権が、病院に独占されていること、家族にもあること、今後に地域社会にも広がるおそれがあるということでした。そして、これを可能にしているのが、医療保護入院の判断基準が曖昧で、入院費が収入源になってしまい、審査が形骸化しているという「法律の抜け穴」や、不合理な行政解釈、さらには市町村同意の権限拡大でした。人権擁護が尊ばれる時代の流れに明らかに逆行しています。このような医療保護入院制度のおかげで、精神科病院は、一大巨大産業であり続けています。これは、関係者たちが世の中に知られたくない、不都合な真実です。名付けるなら「強制入院ビジネス」です。そして、強制入院させられる障害者が、人権侵害という、そのビジネスのツケを払わされ続けているということです。1)「医療保護入院」p.4-P5、p.41、p.57、p.80:精神医療、批評社、20202)「精神保健福祉法改正に関する学会見解」P2:日本精神神経学会、20223)「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律等の施行 に伴うQ&A」P9:厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部精神・障害保健課、20164)「市町村長同意事務処理要領」:厚生労働省、2023「不都合な真実」ビジネスの関連記事障害年金ビジネス万引き家族(後編)【年金の財源を食いつぶす!?「障害年金ビジネス」とは?どうすればいいの?】Part 1カウンセリングビジネスM-1グランプリ(続編・その2)【ツッコミから学ぶこれからのセラピーとは?】Part 2教育ビジネスドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 1幼児教育ビジネス伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1生殖ビジネスキッズ・オールライト(その2)【そのツケは誰が払うの? その「不都合な真実」とは?(生殖ビジネス)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「心のカルテ」(後編)【なんでやせ過ぎてるってわからないの?(エピジェネティックス)】Part 1映画「路上のソリスト」(その2)【「不幸」になる権利はあるの?私たちはどうすればいいの?(ホームレスの自由権)】Part 1

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第131回 医師の子ども、中学受験させる?

中学受験が大活況まだ赤ちゃんだと思っていたわが子も、気付けば小学6年生。やべえ、光陰矢の如しすぎる。私の子どもの中学受験が終わりました。受験のリアルを横で見てきた親としては、「昔より問題がムズくなってね?」というのが一番の感想でした。日本全体では少子化が進む一方で、中学受験者数は右肩上がり。首都圏では、受験率が40%を超えるというデータもあります。同世代の医師の知り合いのお子さんも、この2~3年中学受験に挑んでいる人が多いです。中学受験に必要な算数は、中学生で習う範囲の専門知識を使わず、小学算数のやり方で解くという暗黙のルールがあったような気がします。しかし、塾ではそんなものはすでに崩壊していて、円周率は「π」で話が進んでいきますし、xやyなどの代数もガンガン使っています。私が中学受験したのは30年以上前ですが、当時の特殊算だった「つるかめ算」や「通過算」といった問題は、今では基礎の基礎。今では、立体を何度も切断して解答を導くような問題も出題されています。「しょせん中学受験の算数だから僕もまだイケる」とナメていましたが、どこの学校の模試も難しすぎてほとんど解けませんでした。さらに、コラムを書いているくせに、私は国語が大の苦手でして。最近では、「先生は、もったいぶった し○○○しい 様子で話を始めた」という穴埋め問題を解答できませんでした。この問題、「しかつめらしい」が正解ですが、私、人生で一度もこの単語使ったことないですね(笑)。「しかめ面」じゃなくて、「鹿爪」なんですね。コロナ禍前の壮行会が再びコロナ禍は、受験校の周辺で塾が集まって「絶対合格するぞー!」といった壮行会が減っていました。しかし、現在は再び、のぼりを持った先生と生徒が集まって、校門前やグラウンドで「エイエイオー!」と大きな声を上げていました。近所迷惑になるエリアの学校では、別会場の貸しビルなどでやっていたそうです。『二月の勝者』という中学受験の漫画があります。塾講師の分析力もすごいですが、出てくる生徒の学力をどのように調整するかというディテールにこだわっている名作です。ちょっと盛って描いているのかな、と当時思っていました。しかし実際に受験生の親をやってみると、まさにこの作品のような感じだったかもしれません。私は「学歴社会」という言葉は好きではなくて、子どもが中学受験しようとしまいとどちらでもよかったのですが、子どもが受験したいと言ってきたので、サポートしました。理系や医学部はかなり人気化しつつあります。知り合いの医師と話していると、医学部進学歴の高い中高を受験させる医師がやはり多いようです。

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25種類の治療抵抗性うつ病治療の有効性比較〜ネットワークメタ解析

 オーストリア・ウィーン医科大学のJohan Saelens氏らは、治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療を比較し、エビデンスに基づく治療選択を促進するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2024年12月30日号の報告。 2つ以上の抗うつ薬試験で治療反応が認められなかった成人うつ病を対象に実施されたランダム化比較試験(RCT)を対象研究とした。2023年4月13日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseより検索した。すべてのRCTは、研究群が10例以上で構成され、双極性うつ病または精神病性うつ病患者は除外された。研究の質の評価には、Cochrane Risk of Bias Tool-2を用いた。主要アウトカムは、治療反応率とした。ランダム効果ネットワークメタ解析を用いてオッズ比(OR)を算出した。 主な内容は以下のとおり。・8,234件のうち69件のRCTを分析に含めた。・対象患者数は1万285例(女性:5,662例、男性:4,623例)、25種類の治療法が含まれた。・25種類の治療法のうちプラセボまたは対照治療よりも高い治療反応を示した治療法は、電気けいれん療法(ECT)、ミノサイクリン、シータバースト刺激(TBS)、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法、ケタミン、アリピプラゾールのみであった。・ORの範囲は、アリピプラゾールの1.9(95%信頼区間[CI]:1.25〜2.91)からECTの12.86(95%CI:4.07〜40.63)であった。・中程度の異質性が認められた(I2:47.3%、95%CI:26.8〜62.0)。・対象研究のうち、バイアスリスクが高い研究は12.5%、低い研究は28.13%、懸念のある研究は59.38%と評価された。 著者らは「治療抵抗性うつ病の治療法の中には、さまざまなアウトカムに対し強力な治療効果を示すもの(ECT、TBS、rTMS、ケタミン)もあれば、一部のアウトカムに有用なアウトカムを示すもの(ミノサイクリン、アリピプラゾール)もある」とし「これらの知見は、治療抵抗性うつ病に対するエビデンスに基づく治療選択の指針となる可能性がある」としている。

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MASLD患者の転帰、発症リスクに性差

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は世界的に増加傾向にあり、好ましくない肝臓や肝臓以外における転帰の主な原因となっている。米国のMASLD患者のデータを使用し、性別と肝臓および肝臓以外の転帰との関連性を調査した、米国・スタンフォード大学医療センターのTaotao Yan氏らによる研究がJAMA Network Open誌2024年12月4日号に掲載された。 研究者らは2007~22年のMerative MarketScanデータベースからMASLDの成人患者を特定し、傾向スコアマッチングを使用して男性/女性群のベースライン特性のバランスを取った。肝臓関連の転帰(肝硬変、肝代償不全、肝細胞がん[HCC])と肝臓以外の転帰(心血管系疾患[CVD]、慢性腎臓病[CKD]、肝臓以外の性別に関係ないがん)の発生率を推定し、性別ごとに比較した。 主な結果は以下のとおり。・MASLD患者76万1,403例のうち、ベースライン特性がマッチした男女34万4,436組が分析に含まれた。平均年齢(52.7歳/53.0歳)のほか、糖尿病や高血圧などの既往症、服薬状況などは2群間でバランスが取れていた。・女性は男性と比較して、1,000人年当たりのあらゆる肝臓関連の転帰(12.72対11.53)および肝硬変(12.68対11.55)の発生率が有意に高かった。・一方、男性は肝代償不全(10.40対9.37、ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.08~1.14)、HCC(1.88対0.73、HR:2.59、95%CI:2.39~2.80)、CVD(17.89対12.89、HR:1.40、95%CI:1.37~1.43)、CKD(16.61対14.42、HR:1.16、95%CI:1.13~1.18)、および性別に関係のないがん(6.68対5.06、HR:1.32、95%CI:1.27~1.37)の発生率が高かった。 著者らは「これは性別とMASLDの好ましくない臨床転帰との関連性を調べるために設計された最大のコホート研究だ。女性のほうが肝硬変の発症率とリスクが高いことがわかったが、これはMASLDが米国の女性における肝移植の主な適応であるという観察結果と一致している。既存の研究結果と同様に、本研究でも、男性のMASLD患者はHCCリスク増との有意な関連性がわかった。さらに、男性のMASLD患者は女性よりもCVDと性別に関係のないがんのリスクが高いことで、一般集団では男性が女性よりもCVDとがんリスクが高いという既存の知識を裏付けた。私たちの研究は、MASLD患者の肝臓および肝臓以外の臨床転帰のリスクに有意な性差があるという証拠を提供し、性別に基づいたMASLD予防、モニタリング、および治療管理戦略の方針を支援するものである」とまとめた。

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透析中の骨粗鬆症患者へのデノスマブは心血管イベントリスクを上げる可能性/京都大

 透析患者の骨粗鬆症の治療では、腎排泄に頼らないデノスマブが使用されている。しかし、その有効性、安全性を他の骨粗鬆症治療薬と比較した大規模研究はこれまでなかった。そこで、桝田 崇一郎氏(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野)らの研究グループは、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブは、ビスホスホネートと比較し、骨折リスクを低減させる一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があることを、電子レセプトデータを用いたコホート研究により明らかにした。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2025年1月7日オンライン版に掲載された。1,032例でデノスマブと経口ビスホスホネートの効果を比較 研究グループは、DeSCヘルスケアが保有する電子レセプトデータを利用し、標的試験エミュレーションの枠組みのもと、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの有効性と安全性を比較するコホート研究を実施した。 対象は50歳以上の透析患者で、骨粗鬆症の診断を受け、2015年4月~2021年10月までの間にデノスマブもしくは経口ビスホスホネートを新規に開始した患者。主要評価項目は、薬剤使用開始から3年間の骨折と主要心血管イベント(MACE)の発生リスク。 主な結果は以下のとおり。・患者は合計で1,032例が同定された(デノスマブ群658例、経口ビスホスホネート群374例)。・全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性だった。・MACEの3年間の発生率はデノスマブ群のほうが高く、リスク差は8.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~16.7)、リスク比は1.36(95%CI:0.99~1.87)だった。・複合骨折の3年間の発生率はデノスマブ群のほうが低く、リスク差は-5.3%(95%CI:-11.3~-0.6)、加重3年リスク比は0.55(95%CI:0.28~0.93)だった。 この結果を受け研究グループは、腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足し、交絡が残存していたこと、安全性アウトカムには腎臓のエンドポイントが含まれていなかったことを研究の限界として指摘し、「経口ビスホスホネートと比較し、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。しかし、この推定値は不正確であり、今後も研究が必要である」と述べている。

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妊娠糖尿病、メトホルミン±SU薬vs.インスリン/JAMA

 妊娠糖尿病治療において、経口血糖降下薬(メトホルミンおよび必要に応じてグリベンクラミドを追加)は、インスリンと比較して、在胎不当過大児の出生割合に関する非劣性基準を満たさなかった。オランダ・アムステルダム大学医療センターのDoortje Rademaker氏らが、無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。妊娠糖尿病のコントロールにおいて、メトホルミンおよびグリベンクラミドの単剤投与はインスリンの代替として使用されているが、これらの経口血糖降下薬による治療がインスリン単独の治療と比較して、周産期アウトカムに関して非劣性であるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月6日号掲載の報告。在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証 研究グループは、2016年6月~2022年11月にオランダの25医療センターで、経口血糖降下薬による治療戦略がインスリン療法に対して、在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証した。最終フォローアップは2023年5月。 試験には、2週間の食事療法後に血糖コントロールが不十分(空腹時血糖値95mg/dL超[5.3mmol/L超]、食後1時間血糖値140mg/dL超[7.8mmol/L超]、食後2時間血糖値120mg/dL超[6.7mmol/L超]のいずれかとして定義)であった単胎妊娠16~34週の妊娠糖尿病患者820例が登録された。 被験者は、メトホルミン(1日1回500mgで開始し、3日ごとに1日2回1,000mgまたは最大許容量まで増量、409例)またはインスリン(試験施設の処方による、411例)による治療を受ける群に無作為に割り付けられた。メトホルミン群では必要に応じてグリベンクラミドを追加投与した。その後、必要に応じてグリベンクラミドに代えてインスリンを用いた。 主要アウトカムは、在胎不当過大児(在胎期間と性別に基づく出生体重が90パーセンタイル超)の割合の群間差であった。副次アウトカムは、母体の低血糖、帝王切開、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、母体の体重増加、早産、分娩損傷、新生児の低血糖、新生児の高ビリルビン血症、新生児集中治療室(NICU)入室などであった。在胎不当過大児は経口血糖降下薬群23.9%、インスリン療法群19.9% 被験者820例のベースライン(試験登録時)の平均年齢は33.2(SD 4.7)歳、妊娠時BMI値30.4(6.2)、35%が初産であった。アウトカムの解析(per protocol解析)には、同意を得られなかった被験者、追跡データを得られなかった被験者を除外した、経口血糖降下薬群406例、インスリン療法群398例が対象に含まれた。 試験期間中、インスリンを使用せずに経口血糖降下薬のみ(メトホルミン単剤および必要に応じてグリベンクラミド追加)で血糖コントロールを維持したのは320例(79%)であった。 新生児における在胎不当過大児の割合は、経口血糖降下薬群23.9%(97例)、インスリン療法群19.9%(79例)であり(絶対リスク差:4.0%、95%信頼区間[CI]:-1.7~9.8、非劣性のp=0.09)、絶対リスク差の95%CI値は非劣性マージンの8%を超えていた。 母体の低血糖は、経口血糖降下薬群53例(20.9%)、インスリン療法群26例(10.9%)であった(絶対リスク差:10.0%、95%CI:3.7~21.2)。その他の副次アウトカムは、群間差は認められなかった。

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