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6月14日 認知症予防の日【今日は何の日?】

【6月14日 認知症予防の日】〔由来〕アルツハイマー病を発見したアロイス・アルツハイマー博士の誕生日から日本認知症予防学会が制定。認知症予防の大切さを啓発している。関連コンテンツ急速に進行する認知症(1)【外来で役立つ!認知症Topics】高度アルツハイマー型認知症にも使用できるドネペジル貼付薬「アリドネパッチ27.5mg/55mg」【下平博士のDIノート】夜勤と認知症リスク~UK Biobankの縦断的研究認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用かビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

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第165回 NP制度化、かかりつけ医機能認定制……、開業医常任理事を4人増員し、とにかく反対し続ける日医に未来はあるのか?

規制改革推進会議答申書、ナース・プラクティショナーは結局調査止まりこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。雨も止み暑さが和らいだ土曜、畑の草取りや玉ねぎの収穫などを手伝って来ました。先輩の話では、今年はグリーンピースや空豆、ニンニク、玉ねぎなどが例年になく豊作だったそうです。有機農法にこだわるあまり、貧相で虫食いの野菜が特徴の農園だったのですが、今年は直売所に置いても恥ずかしくない野菜ばかりで安心しました。「春が短く、早く夏が来たにもかかわらず、虫の出始めは例年並だったせいで、虫の被害が少なかったからではないか」と先輩は分析していました。温暖化の影響はこんなところにも出ているのでしょうか……。お土産に採れたての野菜をたくさんもらい、地球の未来について考えながら帰京しました。さて今回は、6月1日に政府の規制改革推進会議が公表した答申書、「転換期におけるイノベーション・成長の起点」1)の中の、とくに医療提供に関するパートについて考えてみたいと思います。「第162回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体(後編) 『看護師に処方権』『NP国家資格化』の行方は?」で多少の期待を込めて書いたナース・プラクティショナー(NP)ですが、結局は調査止まり、訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大についても、実態調査を行ったうえで「必要な対応の検討を求める」方針となり、全体として尻すぼみの結果に終わりました。半ば予想されていたことですが、今回も日本医師会や日本薬剤師会などが強硬に反対したことが大きな理由です。現場の医師や薬剤師の仕事そのものにも大きなプラスになる改革だと思うのですが、未来のことを考えず、今ある既得権を守ろうとするその頑なさには、いつも”感心”してしまいます。「NP制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえる」の一文答申の「医療・介護・感染症対策」の「医療関係職種間のタスク・シフト/シェア等」における医師、看護師間のタスクシェアについては、「医師、看護師が実際に果たしている役割や課題を令和6年度及び7年度に調査し、更なる医師、看護師間でのタスクシェアを推進するための措置について検討する」とされました。そして、「その際、限定された範囲で 診療行為の一部を実施可能な国家資格であるナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする」との一文が入りました。「看護師が医師の包括的指示を受けて行い得る業務を明確化するため、現場のニーズを踏まえて、包括的指示の例を示す」ことや、「特定行為研修修了者の養成促進」「特定行為の運用状況と地域医療におけるニーズを現場の医師及び看護師等から把握し、特定行為の拡充について検討する」ことなども提言されました。訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大も見送り日本薬剤師会が強く反対していた訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大についても、「具体的にどのような地域にどの程度の頻度でどのような課題があるかについて現場の医師、薬剤師、看護師及び患者等に対して調査を行い、必要な対応を検討」とされ、具体案の提示にまで至りませんでした。ただ、24時間対応を謳いながら対応していない薬局に是正を求めるほか、それでも状況が改善しない場合は「訪問看護ステーションに必要な薬剤を配置することも含め必要な対応を検討する」としました。読みようによっては、「薬局も真面目にやらないと、制度化してしまうよ」と脅されたともとれます。医療・介護・感染症対策ワーキンググループで医師の佐々木 淳専門委員(医療法人社団悠翔会 理事長)の提案が、具体的で実効性がありそうだっただけに、この部分は今後動いて行く可能性も高そうです。答申前、日看協は厚労大臣に要望、日医など医療団体は反対の意見書ところで、規制改革推進会議の答申書が公表される10日前の5月22日、日本看護協会は「ナース・プラクティショナー(NP)制度の創設に関する検討」など、来年度の予算・政策に関する要望書を、加藤 勝信厚生労働大臣に提出しています2)。日看協は「特定行為研修制度では対応できない医療ニーズがあり、医師の指示が得られずに症状が悪化する利用者が少なくない」ことなどを踏まえ、NP制度化を改めて加藤厚労相に要望したわけですが、Medifax等の報道によれば、加藤厚労相は、NP制度の創設について、「離島やへき地など必要な場所はどこなのか、そしてそれらの地域の医療をどう支えるのか」との観点から、検討が必要との認識を示したとのことです。一方、NPの導入を阻止したい日本医師会は、5月24日、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会などとの連名で、「連携体制を強化することが第一に行われるべきことです。(中略)その点を改善しないまま、新たな資格により看護師が診断・処方をすれば解決するということはあり得ません」とする意見書3)を公表しています。意見書では、訪問看護師と医療機関との連絡体制を改めて確認するなど連携の強化をまず行うべきだと提言、在宅医療の分野で特定行為研修を推進する必要性も指摘しています。CBnewsマネジメントなどの報道によれば、日医の釜萢 敏常任理事は5月24日の定例記者会見で、「国によって医療の供給や提供体制は大きく異なる。NPの制度化が日本で本当に必要なのか慎重に検討する必要がある」と述べたとのことです。NPの必要性は「在宅医療」だけに留まるものではない日本ではNPは必要ない、医療現場で問題は何も起こっていない、やるなら特定行為研修の充実で十分だ、とする日医など医師、病院団体と、「医師の指示が得られず症状が悪化する利用者が少なくない」と主張し、NP制度化を要望する日看協。話はまったく噛み合わず、規制改革推進会議の答申も、一見日医寄りの内容となりました。しかし、「ナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする」の一文が入ったことは、小さいながらも確実な前進と捉えることができそうです。日医側の意見書を読んでみると、なかなか苦しい言い訳だと感じます。「連携体制を強化することが第一」でそれが改善しないまま新たな資格をつくっても仕方がない、と主張していますが、そこを改善してこなかった、あるいはそこまで手が回らないのは一体誰なのか、という話です。現状、NPは「在宅医療」についての議論に留まっていますが、早晩、「医療」全体にも当てはまる話となっていくでしょう。日看協も厚労省に陳情するだけでなく、国民も巻き込んだPR作戦でも展開すれば局面も変わると思うのですが……。日本医師会常任理事4人増員の背景自分たちの既得権を壊しかねない規制改革案にとにかく反対し続ける日本医師会ですが、6月4日、新たに4人の常任理事を決定したと公表しました。立候補者が4人と定員と同数のため、6月25日に開催される第154回日本医師会定例代議員会では選挙は行われません。日本医師会の常任理事は現在10人。日本医師会の常任理事の14人への増員は3月26日の第153回臨時代議員会で承認され決定しました。「膨大かつ多様化する会務に対応できる有能な人材を、全国から発掘・登用し適材適所に配置する」ことが目的としています。この常任理事増員について、週刊ダイヤモンドの2023年6月3日号(医学部&医者特集号)に、「会長の座を巡って繰り返されるクーデター 医師会『役員大増員』の内情」というタイトルの、興味深い記事が掲載されています。その記事は、4人増員の最大の目的は、「4人を全国4地区に振り分けて、1人当り12都道府県を担当し、しっかりと会員増員や『医政活動』をやっていただく」(松本 吉郎会長の代議員会での言葉)ためと書いています。つまり、医師会員を増やし、自民党員を増やし、自民党議員とのつながりを強め、選挙における日医の力(集票力)を復活させるための常任理事増員というわけです。同記事はさらに、政権(自民党)と関係がうまく築けていない松本会長が「医政活動を強化しなければならないような状況に追い込まれているということだ。政権との太いパイプが築けていないからこそ、会員増強を図り国政選挙などで集票力を誇示しなければとの焦りのぞく」とも書いています。男性中心かつ診療所開業医のための利権団体同記事はまた、本連載の「第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念」でも書いた、かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」かをめぐってのひと悶着と、その結果、かかりつけ医機能の制度が骨抜きになってしまったことや、日医が発行する医学生向け情報誌のアンケートで、日医のイメージの5位が「開業医の利益のために活動している」であったことなどを挙げて、「日医がいま以上に『政治力』を発揮することを、医療全体、とりわけ現役の医師や、これから医師になろうとする医学生たちは望んでいるだろうか」とも書いています。先週、ある取材で地方の病院経営者に会ったのですが、「日医の新しい常任理事、4人とも診療所開業医だよ。これで診療所開業医のための利権団体という性格がこれまで以上に強まるね」と嘆いていました。人口減少、高齢社会という未来を見据えることなく、既得権とプライドに固執して制度の大胆な改革案に反対し続ける日本医師会に果たして未来はあるのでしょうか。ちなみに、増員された4人の常任理事は全員男性。現在の会長、副会長3人、常任理事14人中、女性は1人です。このあたりも時代に乗り遅れている気がします。「ズレてますから」と直言してくれる人間は、日医幹部の周りにいないのでしょうか。参考1)規制改革推進に関する答申~転換期におけるイノベーション・成長の起点~/内閣府2)令和6年度予算・政策に関する要望書/日本看護協会3)制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループにおけるナースプラクティショナー(NP)の議論について/日本医師会など

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患者情報から治療期間を評価して、漫然投与薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第54回

 今回は、長期服用薬の治療期間を疑問に思い、患者情報を収集し直して漫然投与となりがちな薬剤の必要性を再考した症例を紹介します。副作用などの問題がなくても、治療の適応があるのかどうかを定期的に考える機会は必要です。急性疾患で処方された薬剤がいつまで必要なのか、慢性疾患であれば処方時点と現在で治療内容が妥当であるのか否かを、薬剤師の視点で評価しましょう。患者情報85歳、女性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠30mg 3錠 分3 毎食後2.トラネキサム酸錠250mg 3錠 分3 毎食後3.五苓散エキス顆粒 3包 分3 毎食後4.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは半年前の施設入居時から上記の処方薬を服用していました。処方監査を実施していた薬剤師が、採血結果もなく、病歴も認知症のみなのになぜ止血剤および鉄剤を飲んでいるのか不明であったため、基礎疾患や治療経過を収集する治療計画(Care plan)を立案しました。当然、出血既往があると予測はつきますし、そのための貧血治療と考えるのが妥当ですが、いつ・どこの・どの程度の出血なのか明確でないことに違和感がありました。担当薬剤師へ情報を引き継ぎ、担当薬剤師が施設訪問時に看護師と入居前に入院していた病院の看護サマリーと診療情報提供書を確認しました。すると、繰り返す転倒から慢性硬膜下血腫が生じ、1年前に穿頭血腫ドレナージ術を施行していたことがわかりました。術後の再出血予防および血腫サイズの縮小などを目的に現行の治療薬が処方され、クエン酸第一鉄もそのときの採血結果をもとに追加されていました。そこで現在の主治医が外科医であることから現行薬の必要性を相談することにしました。医師への相談と経過主治医に電話で、長期的に現行薬を服用していて服薬アドヒアランスは維持されていることを伝えたうえで、病歴の聴取、今後の脳外科受診などの予定について確認しました。また、今後の治療方針も確認しました。主治医は病歴を把握していたものの、現行薬を今後どうするかについては保留中だったそうで、前回の術後頭部CT画像の確認から現行薬の必要性はないだろうという返答がありました。また、貧血治療も採血予定(Hb、フェリチン、TIBC、MCVなど)を組んだので、そこで鉄剤の中止を検討するとのことでした。最後に医師より、長期服用薬の評価は緊急性がなければ後回しになってしまうことが多いので、こういうアシストはとても助かるとお礼がありました。患者さんは現在も施設で転倒もなく、出血イベントも起きずに生活しています。鉄剤もその後の採血結果で異常所見はなく、治療は終了となりました。薬が終了したことで本人の服薬負担も看護師の与薬負担も減らすことができました。このように、病歴確認と見直しを行い、漫然投与となりがちな薬剤について今一度治療の適応があるのかどうか考える機会は必要です。治療継続の必要可否について確認する薬剤師のアプローチも多剤併用を予防するポジティブアクションに繋がると実感しました。

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末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、BPPV診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行われた。今回、BPPV診療ガイドラインの作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やBPPV診療ガイドラインでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患 BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。 よって、BPPV診療ガイドラインは耳鼻咽喉科や神経内科などめまいを扱う医療者向けにMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠し作成されているが、BPPVの疫学(p.20)や鑑別診断(p.25~27)はぜひ多くの医師に一読いただきたい。 以下、BPPV診療ガイドラインの治療に関する全10項目のCQを示す。―――CQ1:後半規管型BPPVに耳石置換法は有効か?CQ2:後半規管型BPPVに対する耳石置換術中に乳突部バイブレーションを併用すると効果が高いか?CQ3:後半規管型BPPVに対する耳石置換法後に頭部の運動制限を行うと効果が高いか?CQ4:外側半規管型BPPV(半規管結石症)に耳石置換法は有効か?CQ5:外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に耳石置換法は有効か?CQ6:BPPVは自然治癒するので経過観察のみでもよいか?CQ7:BPPV発症のリスクファクターは?CQ8:BPPVの再発率と再発防止法は?CQ9:BPPVに半規管遮断術は有効か?CQ10:BPPVに薬物治療は有効か?――― 今回、今井氏は「めまい診療を行う医師にはCQ5とCQ8に目を通して欲しい」と述べており、その理由として「両者に共通するのは、諸外国では積極的に行われているにもかかわらず日本ではまだ実績が少ない治療法という点」と話した。「たとえば、CQ8のBPPVの再発防止については、ビタミンDとカルシウム摂取が有効であると報告されているが、国内でのエビデンスがないため推奨度は低く設定された。次回のBPPV診療ガイドライン改訂までにエビデンスが得られ、推奨度が高くなることを期待する」とも話した。BPPVと鑑別すべきめまいを伴う疾患 めまいを伴う疾患はBPPVのほか、脳卒中やメニエール病をはじめ、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、起立性調節障害、起立性低血圧が挙げられる。とくに起立性低血圧はBPPVの34%で合併しており鑑別が困難であるので注意したい。なお、めまいの訴えが初回で単発性の場合、高血圧・心疾患・糖尿病が既往にある患者では脳卒中も鑑別診断に挙げるべきである。BPPVを疑う鍵は「めまいが5分以内で治まる」か否か BPPVの確定診断のためには特異的な“眼振”を確認することが必要であるので、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラといった特殊機材を有している施設でしか診断できないが、同氏は「BPPV診療ガイドラインには掲載されていないが、非専門医でもBPPVを疑うことは可能」とコメントしている。「眼振が確認できない施設では、われわれが開発した採点システム1)を用いて患者の症状をスコア化し、合計2点以上であればBPPVを疑って専門医に紹介して欲しい」と説明した。 本採点システムを開発するにあたり、同氏らは大阪大学医学部附属病院の耳鼻咽喉科およびその関連病院のめまい患者571例を対象に共通の問診を行い、χ2検定を実施。BPPV患者とそれ以外の患者で答えに有意差のあった問診項目を10個抽出した。同氏はこれについて「10個の項目に0~10点を付け、患者の答えから求めた合計点によりBPPVか否かを判断した際、感度、特異度の和が最も高くなるように点数を決定し、0点の項目を除外すると最終的に4項目に絞ることができた。なかでも“めまいが5分以内で治まる”は点数が2点と高く、BPPV診断で最も重要な問診項目であることも示された」と説明した。なお、本採点システムによる BPPVの診断の感度は81%、特異度は69%だった。 以下より、そのツールを基にケアネットで作成した患者向けスライドをダウンロードできるので、非専門医の方にはぜひ利用して欲しい。『良性発作性頭位めまい症の判別ツール』(患者向け説明スライド) なお、CareNeTVでは『ガイドラインから学ぶ良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療のポイント』を配信中。話術でも定評のある新井 基洋氏(横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科 部長)が改訂BPPV診療ガイドラインを基に豊富な写真・イラストや動画を用いて解説している。

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HER2陽性の転移のある大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの有用性(DESTINY-CRC02)/ASCO2023

 HER2陽性大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の2つの用量による治療成績が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・MDアンダーゾンがんセンターのKanwal Raghav氏より発表された。日本も参加した国際共同盲検化第II相試験のDESTINY-CRC02試験の初回解析結果報告である。対象:中央判定で確認されたHER2陽性(IHC3+またはIHC2+/ISH+)でBRAF野生型の切除不能または再発大腸がん・試験群1:T-DXd 5.4mg/kgを3週ごと投与(5.4mg群:82例)・試験群2:T-DXd 6.4mg/kgを3週ごと投与(6.4mg群:40例)・評価項目:[主要評価項目] 盲検独立中央判定による奏効率(ORR)[副次的評価項目] 治験担当医評価によるORR、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・5.4mg群と6.4mg群に各40例が割り付けられたが、5.4mg群には追加で42例が登録された。・患者背景としては、両群間にばらつきはなく、年齢中央値は58~62歳、アジア人が半数以上、RAS野生型が8割以上を占めた。・前治療のライン数中央値は3.5、抗EGFR抗体、抗HER2薬、抗VEGF抗体などが使用されていた。・ORRは5.4mg群では37.8%、6.4mg群では27.5%であった(両群ともすべてPR)。5.4mg群、6.4mg群ともにRAS変異型にも奏効が認められた。・DCRは5.4mg群で86.6%、6.4mg群で85%であった。DOR中央値は5.4mg群で5.5ヵ月、6.4mg群でも5.5ヵ月であった。・PFS中央値は5.4mg群で5.8ヵ月、6.4mg群では5.5ヵ月であった。OS中央値は5.4mg群で13.4ヵ月、6.4mg群では未到達であった。・Grade3以上の治療下発現有害事象(TEAE)は、5.4mgの49.4%、6.4mgの59.0%に認められた。そのなかでも頻度が高い好中球減少、貧血、血小板減少の発現は、5.4mg群と6.4mg群で、それぞれ16.9%と28.2%、9.6%と23.1%、6.0%と12.8%で、いずれも6.4mg群で多かった。・間質性肺疾患/肺炎は全Gradeで5.4mg群の8.4%(5.4mg群はGrade1~2のみ)、6.4mg群の12.8%に発現した。Grade5は6.4mg群で1例報告されている。 Raghav氏は、「本試験は、5.4mg群と6.4mg群の有用性を比較できる統計学的パワーは持たせていない」とした上で、「HER2陽性の切除不能または再発大腸がんに対しては、T-DXdは有効性と安全性の面から、5.4mg/kgが単剤での至適用量と思われる」と結んだ。

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HR+/HER2-進行乳がんへのパルボシクリブ、2次治療での継続は有効か(PALMIRA)/ASCO2023

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療でパルボシクリブ+内分泌療法で奏効後に進行した患者の2次治療において、パルボシクリブを1次治療と異なる内分泌療法(2次内分泌療法)と併用しても、2次内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善しなかったことが第II相PALMIRA試験で示された。スペイン・Medica Scientia Innovation Research(MEDSIR)のAntonio Llombart-Cussac氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:HR+/HER2-進行乳がんの1次治療としてパルボシクリブ+内分泌療法(アロマターゼ阻害薬もしくはフルベストラント)を受け、臨床的有用性(奏効または24週間以上の安定)が得られた後に進行した患者、もしくはパルボシクリブベースの術後補助療法を12ヵ月以上受けた後、治療終了後12ヵ月以内に進行した患者 198例・試験群(パルボシクリブ+ET群):パルボシクリブ+2次内分泌療法(1次内分泌療法に応じてレトロゾールまたはフルベストラント)136例・対照群(ET群): 2次内分泌療法単独 62例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師によるPFS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、臨床的有用率(CBR)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2022年10月に適格患者198例を2:1に無作為に割り付けた。データカットオフ(2023年2月2日)時点で追跡期間中央値は13.2ヵ月だった。・治験責任医師評価によるPFS中央値は、パルボシクリブ+ET群4.9ヵ月、ET群3.6ヵ月で、PFSの改善はみられなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.66~1.07、両側検定p=0.149)。・すべてのサブグループのPFSにおいても同様だった。・6ヵ月PFS率は、パルボシクリブ+ET群が42.1%、ET群が29.1%であった。・内臓転移の有無別のPFSも、あり(121例)でのHRが0.79(95%CI:0.59~1.06、両側検定p=0.112)、なし(77例)でのHRが0.94(95%CI:0.62~1.42、両側検定p=0.767)と有意な改善はみられなかった。・以前のパルボシクリブ治療期間別のPFSも、6~18ヵ月(28例)でのHRが0.93(95%CI:0.50~1.73、両側検定p=0.815)、12ヵ月以上(170例)でのHRが0.83(95%CI:0.63~1.07、両側検定p=0.154)と有意な改善はみられなかった。・ORRおよびCBRに有意差はみられなかった。・OSにおけるHRは1.06(95%CI:0.75~1.51、両側検定p=0.738)であった。・新たな安全性シグナルは確認されなかった。 現在、CDK4/6阻害薬の継続投与により大きなベネフィットを受ける患者を調べるために、多くのバイオマーカー研究プログラムが進行している。

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進行NSCLC、腫瘍治療電場療法を標準治療に上乗せでOS改善(LUNAR)/ASCO2023

 腫瘍治療電場(TTフィールド)療法は、さまざまな機序で非侵襲的にがん細胞を死滅させる治療法で、すでに膠芽腫および悪性胸膜中皮腫に対する治療として、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている(本邦では、膠芽腫について薬事承認を取得[保険適用は初発膠芽腫のみ])。非小細胞肺がん(NSCLC)については、前臨床モデルで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やタキサン系抗がん剤の効果を増強することが報告されている1-3)。そこで、転移を有するNSCLC患者を対象に、TTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検証する海外第III相試験「LUNAR試験」が実施された。その結果、TTフィールド療法の上乗せにより、全生存期間(OS)が有意に改善した。本結果について、米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのTiciana Leal氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・試験デザイン:海外第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた、転移を有する22歳以上のNSCLC患者276例・試験群(TTフィールド+標準治療群):TTフィールド療法(150kHzを1日18時間以上)+標準治療(ICI[ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブのいずれか]またはドセタキセルを治験担当医師が選択) 137例・対照群(標準治療群):上記と同様の標準治療 139例・評価項目:[主要評価項目]OS(TTフィールド+標準治療群vs.標準治療群)[主要な副次評価項目]OS(TTフィールド+ICI群vs.ICI群、TTフィールド+ドセタキセル群vs.ドセタキセル群)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、組織型別のOS、組織型別のPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者背景は、年齢中央値64歳(範囲:22~86歳)、男性が65%、ECOG PS 0/1が96%、前治療のライン数1が89%、ICIによる前治療歴ありが31%であった。・ITT集団におけるOS中央値は、標準治療群が9.9ヵ月であったのに対し、TTフィールド+標準治療群は13.2ヵ月であり、TTフィールド+標準治療群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.98、p=0.035)。1年OS率はそれぞれ42%、53%、3年OS率はそれぞれ7%、18%であった。・ICIによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ICI群が10.8ヵ月であったのに対し、TTフィールド+ICI群は18.5ヵ月であり、TTフィールド+ICI群で有意に改善した(HR:0.63、95%CI:0.41~0.96、p=0.03)。・ドセタキセルによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ドセタキセル群が8.7ヵ月、TTフィールド+ドセタキセル群が11.1ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28)。・組織型別のOS中央値は、非扁平上皮NSCLCで標準治療群が9.9ヵ月、TTフィールド+標準治療群が12.6ヵ月であった(HR:0.80、95%CI:0.54~1.16、p=0.28)。扁平上皮NSCLCでは、それぞれ10.1ヵ月、13.9ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.05)。・ITT集団におけるPFS中央値は、標準治療群が4.1ヵ月、TTフィールド+標準治療群が4.8ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.85、95%CI:0.67~1.11、p=0.23)。・ITT集団におけるORRは、標準治療群が17%、TTフィールド+標準治療群が20%であり、有意差は認められなかった(p=0.5)。完全奏効(CR)は標準治療群が1例であったのに対し、TTフィールド+標準治療群が4例であった。・有害事象は、標準治療群の91%、TTフィールド+標準治療群の97%に発現した。皮膚炎がそれぞれ2%、43%に発現し、TTフィールド+標準治療群で多かったが、Grade3以上のものはそれぞれ0%、2%であった。肺臓炎や免疫関連有害事象の発現率は両群に差がみられなかった。TTフィールド療法に関連があると判断された有害事象に、Grade4以上のものはなかった。 本結果についてLeal氏は、「TTフィールド療法は第III相試験(LUNAR試験)において主要評価項目を達成した。TTフィールド療法は、プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた転移を有するNSCLCに対する標準治療の選択肢として考慮されるべきである」とまとめた。また、未治療の進行NSCLC患者を対象としたTTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検討する試験も進行中とのことである。

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LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!? 

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値であると、冠動脈疾患(CVD)の発症や死亡のリスクが高いことが知られている。しかし、急性冠症候群患者のLDL-C低値が死亡リスクを上昇させることを示唆する観察研究の結果が複数報告されており1-4)、「LDL-Cパラドックス」と呼ばれている。そこで、スウェーデン・ウプサラ大学のJessica Schubert氏らの研究グループは、初発の心筋梗塞で入院した患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象としたデータベース研究を実施した。その結果、LDL-C高値の患者は死亡リスクが低く、非心血管疾患による入院リスクも低かった。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2023年5月31日号に掲載された。LDL-C値が低い群ほど心筋梗塞入院後の死亡率が高かった 研究グループは、心筋梗塞疑いで専門施設に入院した患者を登録したスウェーデンのデータベース(SWEDEHEART)を用いて、2006年1月~2016年12月に初発の心筋梗塞で入院した18歳以上の患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象とした観察研究を実施した。対象患者は、ベースライン時のLDL-C値(mmol/L)で四分位に分類された(Q1:2.4以下、Q2:2.4超~3.0、Q3:3.0超~3.6、Q4:3.6超)。主要評価項目は全死亡率、非致死的心筋梗塞の再発率であった。LDL-Cとは無関係とされる非心血管疾患(肺炎、大腿骨近位部骨折、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、新規がん診断)による入院についても検討した。LDL-C値と転帰の関連はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 心筋梗塞で入院した患者のLDL-C値についての観察研究の主な結果は以下のとおり。・心筋梗塞で入院した対象患者のベースライン時の年齢中央値は66歳、LDL-C中央値は3.0mmol/L(約116.1mg/dL)であり、LDL-C値が低いほど患者の年齢と併存疾患が増加した。・追跡期間(中央値:4.5年)中に1万236例が死亡し、4,973例に非致死的心筋梗塞の再発が認められた。・全死亡率(/1000人年)は、ベースライン時のLDL-C値が低い群ほど高く(Q1:56、Q2:35、Q3:26、Q4:20)、ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、全死亡リスクが低かった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.71~0.80)。・一方、ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、非致死的心筋梗塞の再発リスクが高かった(HR:1.16、95%CI:1.07~1.26)。・ベースライン時のLDL-C値が最も高い(Q4)群は最も低い(Q1)群と比較して、肺炎、大腿骨近位部骨折、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、新規がん診断による入院のリスクがいずれも低かった(それぞれ、HR[95%CI]:0.54[0.46~0.62]、0.69[0.55~0.87]、0.40[0.31~0.50]、0.81[0.71~0.93])。・退院時にスタチンを使用していなかった患者の50%が追跡終了前に死亡した。全死亡患者の47%は、死亡前6ヵ月間にスタチンが処方されていなかった。・ベースライン時のLDL-C値が中央値以下の集団において、退院後6~10週後のLDL-C値の変化量で四分位に分類した結果、最もLDL-C値が低下した群において、全死亡率と致死的心筋梗塞の再発率が低かった。 本研究結果について、著者らは「LDL-C低値にもかかわらず心筋梗塞を発症した患者には、動脈硬化性CVDを促進するほかの要因が存在することが示唆される。これは、心筋梗塞発症時のLDL-C値にかかわらず、脂質低下療法を継続することの重要性を強調するものである。とくに心筋梗塞発症時にLDL-C低値で未治療である場合には、過少治療のリスクが高まる可能性があるため、非常に重要である」と考察している。

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20年間で同じ統合失調症患者に対する薬物治療はどう変化したか

 最近の薬理学的疫学データによると、第2世代抗精神病薬(SGA)単剤療法で治療されている患者の割合が増加していると報告されているが、同じ患者を長期間にわたって分析した研究は、これまでほとんどなかった。獨協医科大学の古郡 規雄氏らは、同じ統合失調症患者に対する薬物療法が20年間でどう変化したかを検討するため、20年間のデータが入手可能な患者を対象とし、レトロスペクティブに評価を行った。その結果、同じ統合失調症患者であっても、20年間でゆっくりではあるが確実に第1世代抗精神病薬(FGA)からSGAへ切り替わっていることが明らかとなった。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月17日号の報告。 本研究は、2021年4月に日本の精神科病院15施設で実施された。同じ病院で20年以上治療を行った統合失調症患者を対象に、2001、06、11、16年(5年ごと)の処方データをレトロスペクティブに解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は716例、2021年時点での平均年齢は61.7歳、女性の割合は49.0%であった。・抗精神病薬単剤療法率は、過去20年間でわずかな増加を認めた。・SGA使用率は、過去20年間で28.9%から70.3%へ顕著な増加がみられたが、SGA単剤療法率は緩やかな増加傾向を示すにとどまった。・過去20年間で抗コリン薬併用率は減少傾向を示したが、抗うつ薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用率に変化は認められなかった。

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急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。中国のダブルダミー無作為化試験 RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、大・中脳血管の閉塞を伴わない脳梗塞を有し、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが5点以上で、少なくとも1肢に中等度~重度の脱力がみられ、以下の4つの臨床状態のいずれかに当てはまる患者であった。 (1)血栓溶解療法、血栓回収療法の適応がなく、最終健常確認から24時間以内、(2)発症後24~96時間の時点で脳梗塞症状の進行を認める、(3)血栓溶解療法後早期に、神経症状の増悪がみられる、(4)血栓溶解療法後4~24時間の時点で神経症状の改善がない。 被験者は、tirofiban静脈内投与+プラセボ経口投与を受ける群(tirofiban群)、またはアスピリン(100mg/日)経口投与+プラセボ静脈内投与を受ける群(アスピリン群)に無作為に割り付けられ、2日間の投与が行われた。その後は、全例に90日目までアスピリンが経口投与された。 有効性の主要エンドポイントは、90日時点における非常に優れたアウトカムとされ、mRSスコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0または1であることと定義された。主要エンドポイントの達成割合は予想より低い 1,177例が登録され、tirofiban群に606例(年齢中央値68.0歳、男性62.5%、NIHSSスコア中央値9.0点、脳梗塞発症または症状進行から無作為化までの時間中央値10.9時間)、アスピリン群に571例(68.0歳、65.3%、9.0点、11.2時間)が割り付けられた。ほとんどの患者が、アテローム性動脈硬化性と推定される小梗塞を有していた。 90日時にmRSスコア0または1を達成した患者の割合は、tirofiban群が29.1%(176/604例)と、アスピリン群の22.2%(126/567例)に比べ、有意に優れた(補正後リスク比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.04~1.53、p=0.02)。 90日時の総合アウトカム(mRSスコア0/1、NIHSSスコア0/1、Barthel指数95~100点、Glasgowアウトカム尺度5点の統合)(共通オッズ比[OR]:1.38、95%CI:1.07~1.78、p=0.01)は、tirofiban群で良好であったが、90日時のmRSスコア中央値(共通OR:1.23、95%CI:1.00~1.51、p=0.06)には有意差はみられなかった。 死亡は、tirofiban群が3.8%(23/604例)、アスピリン群は2.6%(15/567例)で認められ、両群間に有意な差はなかった(補正後リスク比:1.62、95%CI:0.88~2.95、p=0.12)。症候性頭蓋内出血は、tirofiban群が1%(6/606例)で発現し、アスピリン群では発現しなかった(p=0.03)。 著者は、「非常に優れたアウトカムの達成割合は、両群とも予想より低かった。これは、参加者の多くが大学病院以外の施設で募集されたため、脳梗塞後の院外リハビリテーションを受けなかった可能性があり、機能回復が限定的であったことが原因と推察される」としている。

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広範囲虚血患者に対する経皮的脳血栓回収術の有効性が示された(解説:高梨成彦氏)

 本研究はこれまで治療適応外とされていた広範囲虚血患者でも、経皮的脳血栓回収術によって予後が改善することを示したものである。先のRESCUE-Japan LIMIT(Yoshimura S, et al. N Engl J Med. 2022;386:1303-1313.)の結果を補強するもので、同じくISC2023において中国から報告されたANGEL-ASPECTSでも同様の結果が示された。今後はASPECTSの低い=虚血コアの大きな患者に対しても血栓回収術の適応が拡大されることになるだろう。 研究対象となっているのはCT検査においてASPECTS 5点以下、または潅流CTかMRI拡散強調画像をRAPIDで評価して虚血コアが50mL以上である症例である。90日後のmRSが0~2であった患者の割合は内科治療群が7.0%であったのに対して血管内治療群では20.0%にも達している。興味深いことに、さらに広範な虚血を来した患者についても解析が行われており、70mL、100mL、150mLでも血管内治療群で予後が良好であった。 早期に神経症候が悪化した例は血管内治療群に多く、これは90日後の予後不良に関連していた。このうち症候性出血が生じていたのは1例であり、悪化の原因は再灌流による脳浮腫にあると考えられている。これは術後の脳浮腫に対処することでさらに血栓回収術の予後は改善できる可能性を示しており、術後管理の方法についてさらに研究が進められることが期待される。

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イラストで見る消化器手術アトラス

写真だけでは把握しにくい外科解剖のポイントをイラストで表現!「手術」77巻・第6号(2023年5月臨時増刊号)手術手技の要点解説を創刊コンセプトとする「手術」誌の王道を行く特集。「外科解剖」「食道・胃」「大腸」「肝胆膵」の章からなり、臓器別の各論が消化器手術アトラスに相当します。押さえておきたい手技を中心に、今日的な内容で構成。また、総論として、ここ最近のトピックスを取り上げた解剖の章が設けられ、最新の知見やエキスパートならではの見立てが盛り込まれています。座右に置き、熟読すべき充実の内容です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    イラストで見る消化器手術アトラス定価8,800円(税込)判型B5判頁数352頁発行2023年5月企画北川 雄光電子版でご購入の場合はこちら

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良性発作性頭位めまい症の判別ツール

その症状、良性発作性頭位めまい症?良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは末梢性めまいのなかで最も頻度が高く、治療法が確立しているため予後良好の疾患です。カルシウム代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現します。好発しやすい方の特徴は、加齢(50代以上)、高血圧、高脂血症などの既往、喫煙などです。めまいの原因には、BPPV以外にもメニエール病、起立性低血圧、脳卒中などがあり、鑑別して適切な治療を行う必要があります。まずは、以下の症状がないかチェックしてみましょう。合計が2点以上ならBPPVを疑い、そうではない場合はBPPV以外の疾患の可能性があります。自覚症状スコア□ぐるぐる回るような(回転性)めまいがある+1□めまいは寝返りすると起こる+1□めまいは5分以内でおさまる+2□今回のめまいと難聴、耳鳴り、耳閉感(蝸牛症状)が関連する、または以前から片側の耳で難聴がある-1監修:今井 貴夫氏(ベルランド総合病院めまい難聴センター センター長)出典:Imai T, et al. Acta Otolaryngol. 2016;136:283-288.Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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加速する医療のタスク・シフト、今後はどう変わる? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第111回

薬局で薬剤師として働いている方は、薬剤師業務を行う中で「もうちょっとやれることが広がったらな」と一度は思ったことがあるのではないでしょうか。小さな話ですが、私は薬局で薬剤師が患者さんに湿布を貼ってあげてもよいのか、それは医療行為にあたるのか、と薬局で話し合ったことがあります。医療行為のタスク・シフト/シェアに動きがありそうです。政府の規制改革推進会議は6月1日、今後取り組む263項目の答申をまとめた。人手不足対策として、医師の業務を看護師に移すなどの「タスク・シフト」を明記したほか、人工知能(AI)を使った医療機器の開発促進などを盛り込んだ。政府は6月半ばに実施計画を閣議決定する。(中略)タスク・シフトについては、国の研修を受けた看護師が一部の医療行為を担える制度の普及が進んでいない。この研修を2024年度中に受けやすくするほか、看護師が担える業務を明確にし、業務範囲を広げることも検討する。(2023年6月1日付 朝日新聞デジタル)看護師は主に医師の診察・治療の補助を行いますが、医師の指示の下で一定の医療行為はできるとされています。さらに難易度の高い特定の医療行為については、国の研修を受講した看護師が担える制度が2015年に始まりました。しかし、研修が長時間に及ぶなどの理由で普及が想定どおりに進みませんでした。現在、医師が看護師に医療行為を指示する場合、日時や薬剤名を指定する「具体的指示」と、患者の状態変化を予測して一定範囲の行為を示す「包括的指示」があります。近くに医師がいる病院勤務の看護師と異なり、訪問看護師は医師と連絡がつかない場合などに患者への迅速な処置ができない事例があったことを踏まえ、上記の答申案では包括的指示で実施できる行為を2023年度中に明確にするよう求めました。包括的指示の範囲拡大の例として、「一定以上の発熱の場合は検査や投薬を実施する」などが挙げられています。これらにより、医師の不在時に訪問看護師が投薬の必要性などを判断することになるかもしれません。あくまでも個人的な印象ですが、少し前までは看護師の業務拡大などと聞くと、「看護師に負けない!」という薬剤師の声が聞こえましたが、ここ最近は聞かなくなったなという印象があります。在宅医療に携わる薬剤師が増えてきて、勝ち負けではなく、他の専門職といかに協働していくか、その現場でいかにその専門性を発揮するかという点にフォーカスされるようになってきたのではないでしょうか。また、答申では、訪問看護師が薬剤をすぐに入手できるよう24時間対応薬局の普及に向けた輪番制導入も促すとしています。現在、訪問看護ステーションに配置できる薬剤は限られているため、脱水症状で医師から点滴の指示が出ても、看護師が輸液を取りに行くのに往復で数時間かかるといったケースもあるようです。これとともに、配置できる薬剤の対象を拡充できないかという検討も規制改革推進会議で進められています。2024年4月から時間外労働の上限規制が医師にも適用されるため、医療現場は大きく変わろうとしています。また、高齢化や人材不足などさまざまな問題もある中、現場でそれぞれの職種が協力し、質・効率ともによい医療が提供されることが望まれています。

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買えば終わりのラクラク資産形成では○○に全集中しよう!【医師のためのお金の話】第69回

資産形成は人生のメインイベントではない。多くの人にとって、これは真実でしょう。豊かな人生を送るためには、健康や家族が大事。資産形成は目的ではなく、あくまでも豊かな人生を送るためのツールです。しかし、世の中には資産形成を目的にしている人が少なからず存在するのも事実です。そのような人は、株式投資家だけではなく、不動産投資家にも多く見受けられます。彼らは、株式投資や不動産投資を娯楽として捉えているようです。たしかに、自分が投資した銘柄の株価が上がって利益を得る楽しみには麻薬的な楽しさがあります。不動産投資でも同様に、お宝物件を探す楽しみを趣味にしている人が少なくありません。資産形成を趣味にするのは、理想的な状況といえなくもないです。しかし一般的には、資産形成にかける時間は最小限にして、有意義な人生を過ごすことに注意を向けるほうが望ましいでしょう。だからといって、資産形成にまったく時間を費やさないのはご法度。最小限の時間で資産形成の結果を出すための方法を考えてみましょう。忙しい医師は資産のメンテナンスに時間を割かないのが吉有意義な人生を過ごすのは理想的ですが、現実問題として医師は忙しいです。目の前にうずたかく積まれた仕事をこなすだけで1日があっという間に過ぎていきます。有意義な人生を過ごすうんぬんではなく、余暇をひねり出すだけでも一苦労ですね。やっとの思いで絞り出した貴重な時間は、有意義に過ごす必要があります。やはり、資産形成にはできるだけ時間を割かないほうが良さそうです。しかし、資産形成ができないと、人生を楽しめないのも事実。なかなか難しい問題ですね。資産形成にある程度時間を割かざるを得ないですが、忙殺されるのは避けたいところ。ここで私の失敗談をお話ししましょう。まずは株式投資です。株式投資を始めた当初、株価が気になって仕方ありませんでした。寝ても覚めても株価がアタマから離れない。当時はスマホがなかったので、手軽に株価を確認する手段がありません。街中の証券会社の店頭には、株価を知らせる電光掲示板があります。あろうことかデートの最中に証券会社の前で立ち止まって株価を確認する始末。その後どうなったかは想像にお任せします…。不動産投資では、もっと悲惨な状況でした。事業と比べると楽だといわれている不動産経営ですが、それでもやるべきことは山のようにあります。一応、管理会社が入退去の管理やクレーム対応を行ってくれますが、オーナーが対処せざるを得ない場面も多いです。休みの日に所有物件に行って細かい作業をしたり、クレーム対応に頭を悩ましたりしたことも数知れません。ただでさえ平日の医師業務で疲れ切っているところに、不動産投資の対応をせざるを得なかったのは本当に辛い思い出です。買えば終わりのラクラク資産形成とは数々の失敗や苦労から、私はできるだけメンテナンス不要な投資対象を探すようになりました。しかし、メンテンナンス不要の投資対象なんて本当にあるのでしょうか? 探し始めると、買ってしまえばほとんど手のかからないモノは意外と多いことに気付きました。以下に例示してみましょう。株式投資:指数ETF、安定している大型株外貨投資:米国債、社債、MMF不動産投資:戸建物件、店舗物件、コインパーキング、底地物件その他:太陽光発電、コインランドリー驚くほど多くの投資対象が該当しています。驚きの結果ですね。しかし実際には、投資対象を厳選するというよりも、どこまで自分が関与するかのほうが重要な因子かもしれません。たとえば、不動産投資の1棟マンション。お金さえ払えば自動運転も可能です。ただし、自分が楽をしようとすればするほど収益性が下がります。これは1棟マンションに限らず、ほとんどすべての投資対象に当てはまります。つまり、買えば終わりのラクラク資産形成とは、お金を払わなくても収益性が下がらない投資対象を吟味する戦略なのです。資産形成は買う時に全集中しよう!前述の手のかからない投資対象の中で、私が所有しているのは、安定している大型株、米国債、戸建物件、店舗物件、コインパーキング、そして太陽光発電です。いずれも、購入してからは、ほとんどメンテナンスに時間を割く必要がありません。自動運転できる投資対象を選好する戦略はわかりました。しかし、資産形成のキモはこれではありません。資産形成で最も重要なことは「できるだけ安く買う」です。高値買いした投資対象は、資産ではなく負債と考えるほどの覚悟が必要かもしれません。できるだけ安く買うためには、購入に全集中する必要があります。株式であれば、市場の流れを観察して暴落したタイミングに勇気をもって買いに行く。不動産なら、良い物件情報を入手するための地道な調査や不動産業者さんとの人間関係の構築に注力するべきでしょう。資産形成でキモとなる部分にすべての時間を投入して、それ以外はできるだけ省略化するのが、最小限の時間で結果を出す戦略です。そのためには、できるだけ安く買う努力を惜しんではいけないのです。

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英語で「利益が不利益を上回る」は?【1分★医療英語】第84回

第84回 英語で「利益が不利益を上回る」は?I feel my new medication is causing lots of problems. Can we stop it?(私の新しく始めた薬は問題が大きいように感じます。服用を中止してもよいですか?)I understand that this medication has side effects, but I still believe the benefits outweigh the harm.(この薬に副作用があることは理解しています。それでも、利益が不利益を上回っていると信じています)《例文1》We should continue this therapy as long as the benefits outweigh the harm.(利益が不利益を上回っている限りは、この治療を続けるべきです)《例文2》Unfortunately, the potential benefits do not seem to outweigh the obvious risks for that alternative medicine.(残念ながら、その代替療法の潜在的な利益は、明らかである不利益を上回らないと思います)《解説》“the benefits outweigh the harm”(利益が不利益を上回る)というこの表現は、さまざまな場面で頻用できて便利です。とくに医療現場では、利益と不利益を天秤にかけて議論する場面が多くあります。“the benefits outweigh the risks”も同様の文脈で頻用します。元になっている動詞は、“重さを測る”という意味の“weigh”(wayと同じ発音)であり、“outweight”ではないことに注意が必要です。同様に、“weigh the benefits and harms”もしくは、“weigh the risk-benefit balance”などのようにも言い換えられます。講師紹介

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第167回 帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも

無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature

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HER2+胆道がんに対するtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性/ASCO2023

 数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村 能章氏よりなされた。 これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。・対象:1ライン以上の化学療法治療歴のある進行または転移を有するHER2陽性胆道がん症例(HER2陽性:HER2高発現[IHC 3+]またはHER2遺伝子増幅あり[FISH/NGS]と定義)・介入:tucatinib 300mg×2/日+トラスツズマブ6mg/kg(初回8mg/kg)3週ごと・評価項目:[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年6月~2022年5月に30例が胆道がんコホートに登録され、追跡期間中央値は10.8ヵ月であった。・患者の年齢中央値は68.5歳、アジア人が76.7%、胆嚢がんが50%、StageIVが60.0%、前治療のライン数中央値は2であった。・ORRは46.7%で、CRは1例(3.3%)、PRは13例(43.3%)であった。DCRは76.7%で、DOR中央値は6.0ヵ月であった。・腫瘍縮小効果発現までの中央値は2.1ヵ月であった。・PFS中央値は5.5ヵ月で、6ヵ月PFS率は49.8%、12ヵ月PFS率は16.1%であった。・OS中央値は15.5ヵ月で、6ヵ月OS率は73.0%、12ヵ月OS率は53.6%であった。・治療関連有害事象は全例に認められ、主なものは発熱43.3%、下痢40.0%、インフュージョンリアクション26.7%、血中クレアチニン増加26.7%、ALT上昇26.7%などであった。Grade3以上の有害事象は、悪心10%、胆管炎10%、食欲不振10%などであり、治療関連死はなかった。・HER2検査の中央判定と施設判定での陽性一致率は、IHC、FISH共に87.5%であり、血液検体を用いたNGSでは75.9%であった。中央判定でHER2陰性と判定された症例に、奏効例はなかった。

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DLL3陽性SCLC・神経内分泌がん、BI 764532のFirst in Human試験/ASCO2023

 Notchリガンドの1つであるDLL3はNotchを阻害する働きを有する。DLL3は、小細胞肺がん(SCLC)や神経内分泌がん(NEC)の細胞表面に高発現しており、薬剤ターゲットとして有望視されている。DLL3とCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体のBI 764532は、DLL3陽性細胞および異種移植モデルマウスで強力な前臨床抗腫瘍活性を示したことが報告された1)。そこで、DLL3陽性SCLC、NEC患者を対象としたBI 764532のファースト・イン・ヒューマン試験(NCT04429087)が実施されている2)。現在進行中の本試験において、BI 764532は管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についても有望な結果が得られていることが示された。ドイツ・ドレスデン工科大学のMartin Wermke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。BI 764532の治療関連有害事象による投与中止例は4%と少なかった・試験デザイン:第I相非盲検用量漸増試験・対象:既治療のDLL3陽性進行SCLC 57例、NEC 41例、大細胞NEC(LCNEC)9例・投与方法:以下の3つの異なるレジメンを用いて、BI 764532を静脈内投与した。治療は病勢進行(PD)または許容できない毒性が認められるまで、最大36ヵ月継続された。 A:固定用量(3週ごと) B1:固定用量(毎週) B2:A、B1の用量に基づく用量漸増(毎週)・評価項目[主要評価項目]最大耐用量の同定、最大耐用量の評価期間における用量規定毒性(DLT)[副次評価項目]RECIST v1.1に基づく奏効率(ORR)など DLL3陽性SCLC、NEC患者を対象としたBI 764532のファースト・イン・ヒューマン試験の主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2023年3月26日)の安全性解析集団(BI 764532を1回以上投与された患者)における患者背景は、年齢中央値60.0歳(範囲:32~79歳)、ECOG PS 0/1がそれぞれ26%(28例)、73%(78例)、PD-1/PD-L1阻害薬による前治療歴ありが49%(52例)、3ライン以上の前治療歴ありが31%(33例)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は86%(92例)に認められ、最も多く認められたものはサイトカイン放出症候群(CRS)であった。CRSは全体で59%(63例)に認められたが、Grade1/2が57%(61例)、Grade3~5が2%(2例)であり、対症療法やステロイド、抗IL-6受容体抗体を用いて容易に管理可能であった。・そのほかの主なTRAE(15%以上に発現)は、リンパ球数減少(20%、21例)、味覚異常(20%、21例)、無力症(19%、20例)、発熱(18%、19例)であった。・投与中止に至ったAE、TRAEはそれぞれ13%、4%に認められた。・DLTは5例に認められ、内訳はCRS 2例(Grade3~4)、錯乱状態1例(Grade3)、注入に伴う反応(Grade2)、神経系障害1例(Grade3)であった。・最大耐用量の同定には至らず、用量漸増が継続中。・90μg/kg以上の用量で投与した際のORRは25%(SCLC:26%、NEC:19%、LCNEC:60%)、病勢コントロール率は52%(SCLC:51%、NEC:44%、LCNEC:100%)であった。完全奏効は認められなかった。・奏効のみられた18例中14例で奏効が持続し、最長は13.1ヵ月(持続中)であった(2023年4月21日時点)。 Wermke氏は本結果について、「臨床有効用量におけるBI 764532の安全性は臨床的に許容可能かつ管理可能であり、TRAEによる投与中止例は4%と少なかった。また、治療反応は持続的と考えられた」とまとめた。

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