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プラスチック添加物が年間約197万件の早産に関連

 プラスチックに柔軟性を与える一般的な化学物質であるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)が、年間約200万件の早産に関与している可能性が新たな研究で示された。DEHPは、これまで長年にわたって人体に対する有害性が指摘されてきたフタル酸エステル類に分類される化学物質の一種で、化粧品から洗剤、防虫剤に至るまで、さまざまな製品に広く使用されている。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のSara Hyman氏らによるこの研究結果は、「eClinicalMedicine」に3月30日掲載された。 DEHPは環境中に広く存在するため、空気中から吸い込んだり、水や食物を介して摂取したりする可能性がある。Hyman氏らは今回、2018年の米国やカナダ、ヨーロッパなどの調査データに加え、調査データが存在しない地域については既存のメタ解析で推定された曝露量を用いて、世界203の国および地域におけるフタル酸エステル類への曝露分布を推定した。さらに、先行のコホート研究で得られたフタル酸エステル(DEHP、フタル酸ジイソノニル〔DINP〕)曝露と早産との関連を各地域の曝露分布に適用し、早産への影響を推定した。 その結果、2018年に世界で記録された約197万件の早産(同年の早産全体の8.74%)が母親のDEHP曝露に関連するとともに、約7万4,000人の新生児の死亡にも関連していることが示された。早産の負担が最も高かったのは中東と南アジアで、この2地域だけでDEHP曝露に起因すると推定された早産の54%を占めていた。次いで負担が高かったのはアフリカでの26%だった。DINP曝露の早産に対する影響も同様で、188万件の早産および6万4,000人の新生児の死亡に関連することが示された。 論文の筆頭著者であるHyman氏は、「フタル酸エステル類への曝露が早産に与える影響を世界規模で推定した結果、特に影響を受けやすい地域で曝露を抑制することが、早産や早産後に起こりやすい健康問題の予防につながる可能性のあることが明らかになった」とNYUランゴンのニュースリリースで述べている。 また、論文の上席著者でNYU小児科学教授のLeonardo Trasande氏は、「われわれの分析は、フタル酸エステル類を一つずつ規制し、理解が不十分な代替物質に置き換えるだけでは、より大きな問題の解決にはならないことを明確に示している」と述べている。その上で同氏は、「われわれは有害な化学物質を相手に『もぐらたたき』のように危険なゲームをしているといえる。今回の分析結果は、同じ過ちを繰り返さないために、プラスチック添加物全体に対するより強力で包括的な規制が急務であることを示している」と付け加えた。 なお、研究グループによると、フタル酸エステルは他の面でも健康に影響を及ぼす可能性があるという。Hyman氏は、「例えば、フタル酸エステルへの曝露はがん、心疾患、不妊症のリスクの上昇と関連していることが他の研究で示されている」と指摘している。

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親のストレスが軽くなると子どもの肥満リスクが低下する

 ストレスを抱える親をサポートすることが、子どもの肥満の予防に役立つ可能性が報告された。米イェール大学医学部ストレスセンターのRajita Sinha氏らの研究によるもので、詳細は「Pediatrics」に3月6日掲載された。 この研究では、マインドフルネスのトレーニングを受けた親はストレスが低下してポジティブな感情を抱くようになり、その子どもたちの食生活が改善し、体重増加も見られなくなった。論文の上席著者であるSinha氏は、「ストレスが小児肥満の発症に大きく影響することは、すでに知られていた。しかし驚いたことに、親がストレスにうまく対処できるようになると、子育ての質が向上して、子どもの肥満リスクが低下した」と語っている。 論文中の研究背景によると、肥満の親の子どもは肥満リスクが高いことが、先行研究で示されている。研究者らによると、親のストレスが子どもの肥満の隠れた要因である可能性も指摘されており、ストレスを抱えた親は子どもの食事の調理にあまり手をかけず、ファストフードやジャンクフードに頼りがちだという。また、現行の小児肥満予防プログラムは主に栄養と運動に関する教育に重点を置いているが、その教育が持続的な改善をもたらすことは多くないとのことだ。 今回の研究では、2~5歳の子どもを持つ過体重または肥満の親をランダムに2群に分け、1群にはストレスコントロールと不健康な行動の回避に焦点を当てたマインドフルネス・トレーニングに加え、健康的な食生活と運動に関する教育介入を行った。もう一方の群(対照群)には健康的な食生活と運動に関する教育のみを行った。介入期間は両群ともに12週間で、週1回、最長2時間程度、グループ単位で実施された。この期間中、親のストレスレベルと子どもの体重をモニタリングし、また介入終了後も3カ月間、子どもの体重や食生活の変化を観察した。 解析対象となった親は114人で、平均年齢34.6±5.8歳、母親が95.6%、BMIは34.8±6.2であり、子どもは平均月齢43.5±13.5月で女児が52.6%だった。解析の結果、マインドフルネス・トレーニングを受けた群では、親のストレスが軽減して子育てを肯定的に捉えるように変化し、さらに子どもの不健康な食生活が改善された。しかし対照群ではこのような変化が認められなかった。 介入開始から介入終了後3カ月にかけて、親がマインドフルネス・トレーニングを受けた群では、BMIが85パーセンタイル(米疾病対策センター〔CDC〕による小児の過体重のカットオフ値)以上の子どもの割合には、有意な変化がなかった。それに対して対照群の子どもでは、その割合が22%から39.6%へと有意に増加していた(オッズ比6.04〔95%信頼区間1.06~34.4〕)。 Sinha氏は、「幼い子どもの親自身が、マインドフルネスなどによりストレスをコントロールする方法を身に付け、健康的な食生活と運動を実践することが、親のストレスによる体重増加という悪影響から子どもたちを守ることにつながるようだ」と述べている。

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心血管リスクが高い女性は骨折リスクも高い

 女性では心臓の健康状態が骨折のリスクと関連していることを示すデータが報告された。米テュレーン大学のRafeka Hossain氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Regional Health-Americas」に3月27日掲載された。心血管イベントリスクが高い女性は、大腿骨近位部骨折のリスクもほぼ2倍に上るという。 論文の筆頭著者であるHossain氏は、「これまでの研究でも心血管疾患と骨折リスクの関連性が示唆されていたが、大腿骨近位部骨折のリスクとの関連の強さに驚いた」と述べている。また、「心血管イベントと骨折はいずれも非常に発生頻度が高く、治療費も高額となる」とし、「両者のリスクを抑制することで高齢者の生活の質(QOL)を向上させられるのではないか」と語っている。 この研究では、現在進行中の閉経後の女性を対象とする大規模観察研究「女性の健康イニシアチブ(WHI)」の参加者2万1,300人を、心血管イベントリスクの高さに基づき4群に分類し、骨折の新規発生との関連を検討した。心血管イベントリスクの評価には、米国心臓協会(AHA)が2023年に発表した、向こう10年間または30年間の心血管イベントリスクの高さを予測するツール「PREVENT」という計算式を用いた。 その結果、心血管イベントのリスクが最も高い(向こう10年で20.0%以上)と予測された群は、最もリスクが低い(同5.0%未満)群と比較して、大腿骨近位部骨折のリスクが93%高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕1.93〔95%信頼区間1.55~2.42〕)。心血管イベントリスクが2番目に高い(向こう10年で7.5~19.9%)群も、大腿骨近位部骨折リスクが33%高かった(HR1.33〔95%信頼区間1.14~1.56〕)。また、大腿骨近位部骨折発生までの期間が、心血管イベントリスクが最も低い群は中央値20.3年であるのに対して、心血管イベントリスクが最も高い群は同15.0年と短かった。 これらの結果に基づきHossain氏は、「心臓のための健康管理と骨のための健康管理は、切り離して考えるべきではない」と述べている。研究者らによると、慢性炎症、カルシウム代謝の変化、動脈硬化による骨の血流低下など、心臓と骨に悪影響を及ぼす可能性のある生物学的プロセスが数多く存在するという。閉経後のエストロゲンレベルの低下も、心血管疾患と骨量減少のリスクの双方を高め得るとのことだ。 一方、心血管イベントや骨折の予防についてHossain氏は、「心血管に対して保護的に働く多くの因子、例えば習慣的な運動、カルシウムとビタミンDを豊富に含む、バランスの取れた食事、禁煙、糖尿病や高血圧などの治療は、骨を守るのにも役立つ」と解説。また、「骨折リスクを抑制する効果的な治療法は多々ある。よって、心血管イベントリスクが中等度以上と判定された場合、特に閉経後の女性では、骨の健康状態に関するスクリーニング検査を受ける必要性について、医師に相談してみる価値があるのではないか」と付け加えている。ただし研究者らは、心血管イベントのリスクスコアを骨折リスク評価の標準的ツールに組み込むには、さらなる研究による検証が必要であることを強調している。

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“IVUS-using PCI”?―違和感だらけのIVUS-CHIP試験(解説:中野明彦氏)

【背景】 IVUS-guided PCI vs. angio-guided PCIについてはこれまで数多くの試験が行われ、メタ解析を含めIVUS-guided PCI 優位という結果が大勢だった。1,000例を超える大規模RCTには、IVUS-XPL(2015、韓国、long lesion)、ULTIMATE(2018、中国、all-comers)、IVUS-ACS(2024、中国主体、ACS)などがあり、いずれもMACEあるいはTLF/TVFがほぼダブルスコアの結果だった。さらに、IVUSにOCTを含めた血管内イメージングガイド戦略として複雑病変を対象に比較したRENOVATE-COMPLEX-PCI(2023、韓国)も同様の結果だった。こうした流れの中で、複雑・高リスクPCIを対象とした今回のIVUS-CHIP試験が、主要評価項目である標的血管不全においてハザード比1.25(95%CI:0.97~1.60)と、むしろIVUS-guide群が不利にも見える結果を示したことは驚きであった。 一方で、日常臨床におけるIVUSを主体とした血管内イメージング使用率は国・地域によって大きく異なる。registryやsurveyを概観すると、日本は85%前後、韓国は30%弱、欧州・米国では5~15%(中国は調査不能)という結果だった。医療保険制度の違いが反映されている可能性も高いが、IVUSに対する習熟度、さらにはPCIの文化そのものが異なってくる可能性すらある。IVUS-CHIPの結果を読み取る際にこの背景は無視できない。【論者が感じた違和感】 最大の違和感はまさしくその結果である。筆者らは「PCI技術、デバイス、前処置、後拡張などの進歩により、Angio-guideでも十分良好な成績が出た」と考察し、さらには「経験豊富な高症例数術者が参加していたことから、IVUS群で得られた知見がangio群の手技戦略にも反映される“学習効果”や“再較正”が起きた可能性がある」としている。でも、果たしてそうなのだろうか? 手技内容を見るとlesion preparation rateはIVUS群91.8%、angio群90.2%とほとんど差がなかった。さらに注目すべきはcalcium modification device(CMD)の使用率である。IVUS群ではRA 6.5%・OA 2.5%・IVL 10.6%、angio群ではRA 7.3%・OA 2.7%・IVL 7.5%であり、群間差がきわめて小さい。歴史的にはangiographyベースでCMDが用いられてきたtrialは少なくない。しかし現代の石灰化PCIでは、少なくとも本来は、血管内イメージングによって石灰化の分布・深さ・角度・長さ・結節性などを把握し、そのうえで、どのmodificationが必要かを判断すべきである。とくにIVLは石灰化形態評価と親和性が高く、RAやOAも石灰化の局在や偏在性が不明なままでは適応判断も安全性評価も粗くなる。そう考えると、高度石灰化病変が40%を超える集団でありながらIVUS群でCMD使用が明確に増えていない点は、IVUSで得られた情報が前処置戦略へ十分に反映されなかった可能性を示唆している。 さらに、低い最適化基準達成率(患者単位で53.3%、病変単位で48.0%)、angio群での低いIVUSへのcrossover(0.9%)等々、この試験は本当に“IVUS-guided PCI”を検証していたのか、という疑問が出てくる。【IVUSが本来果たすべき役割】 DES留置を前提としたPCIでIVUSが果たす役割は明確である。(1)lesion preparationの選択、(2)stent planning(径・長さ・landing zone)の精度向上、(3)高拡張の適正化、(4)より良い最終形への追加修正、などである。これまでの臨床試験でも最適化基準を満たした群で良好な予後が示されてきた。 本試験では、上述のとおりIVUSがlesion preparationには寄与しておらず、IVUS群での最適化達成も不十分だった。ステント血栓症低下(0.2%vs.1.0%)がIVUSの有用性を反映しているとはいえ、全般的にはIVUSで得られた情報が全体のstrategy changeに結び付いていない可能性がある。 さらに本試験での最大ステント径(3.50±0.54mm vs.3.38±0.52mm)、後拡張バルーン径(3.90±0.70mm vs.3.72±0.67mm)は他試験に比して大きく、よりlarge vesselを多く含む集団であった可能性が高い。大血管ではangio-guideでもサイズ判断が比較的成立しやすい。また多少拡張不十分でも絶対的な内腔が確保されやすく、flow limitationや再狭窄・再血行再建に直結しにくい。IVUSはサイズ判断が難しく過小評価されやすい中等度径以下の血管、びまん性病変、複雑なedge設定を要する病変でこそ、その真価が発揮される。【本試験の本質と懸念される波紋】 本試験と同じACC 2026で発表されたunprotected LMTに対する同じ枠組みでの試験(OPTIMAL)も同様にneutralだった。これも欧州28施設からの報告である。これらの結果を受けて複雑病変CCSでClass1A、ACSでIIaとなっているESCガイドラインでのIVUSの位置付けが議論の対象となる可能性がある。 IVUS文化が根付き習熟度が高い日本では、IVUSは以前から複雑PCIの標準的補助手段として強く位置付けられてきた。そうした環境では、本試験が日常臨床に与える影響は少ないと予想する。 IVUS-CHIPは、「複雑PCIにおけるIVUSは無効である」ことを示したのではなく、「IVUSを“使う”だけで治療戦略が十分に差別化されず最適化が達成されなければ予後改善にはつながりにくい」ことを本質的に示した試験と解釈すべきではないだろうか。 “IVUS-guided PCI”という言葉の中身が改めて問われている。

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急性腰痛・坐骨神経痛【日常診療アップグレード】第55回

急性腰痛・坐骨神経痛問題35歳女性。腰痛を主訴に来院した。2日前、3歳の子供を持ち上げた際、右下肢から右足にかけて放散する腰痛を自覚した。鋭い電撃痛で右足のしびれや脱力感もある。痛みのため、熟睡できないと訴えている。尿失禁や便失禁はない。既往歴に糖尿病があるが、コントロールは良好である。バイタルサインは正常で、右腰部の脊柱外側に圧痛がある。右下肢を伸展しながら30度まで挙上すると、右足に放散する痛みが生じる。股関節屈曲、膝関節伸展、足の背屈と底屈、および右足の親指の背屈における筋力は保たれている。下肢全体の感覚は異常がなく、下肢の反射は左右対称で正常である。NSAIDsを処方し、1週間後のMRI検査をオーダーした。

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5月5日 熱中症対策の日【今日は何の日?】

【5月5日 熱中症対策の日】〔由来〕「立夏」(5月5日頃)の頃から熱中症患者の報道が出始めることから、早期の注意と熱中症予防にはこまめな水分補給が大切であることの啓発を目的に「熱中症ゼロへ」プロジェクト(日本気象協会)と日本コカ・コーラが共同で2014年に制定。関連コンテンツ第26回 夏の猛暑、実はあなたの老化を「喫煙レベル」で加速させていた!今すぐできる対策とは?【NYから木曜日】小児の熱中症【すぐに使える小児診療のヒント】第36回 重症熱中症には“Active Cooling”を!【救急診療の基礎知識】根性より水分!?令和の夏を生き抜く医学的戦略?【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

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不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?【非専門医のための緩和ケアTips】第123回

不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?不眠に対する処方はどうしていますか? 従来はベンゾジアゼピン系が広く用いられてきましたが、最近はあまり処方しないほうがよいとも言われています。緩和ケアにおいてはどのように考えるのでしょうか?今日の質問訪問診療で担当している患者から、最近不眠気味なので睡眠薬を処方してほしいと相談がありました。予後は月単位と想定される方ですが、まだトイレなどで歩いていたため、転倒の心配を説明し、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬を処方しました。ただ、その後もあまり眠れなかったようで、もっと強い睡眠薬はないかと相談されました。終末期が近い患者でもベンゾジアゼピン系睡眠薬は使用しないほうがよいのでしょうか?かなり実践的なご質問をいただきました。最近はベンゾジアゼピン系睡眠薬(以下、ベンゾ)の弊害が強調されるようになり、「不眠=ベンゾはNG」として処方を避ける場面が多くなっています。ただ、今回のように終末期に差し掛かった状況であれば、私自身はベンゾの処方は「あり」だと考えています。もちろん、慢性的な不眠に対して長期間使用することは推奨しませんし、転倒やせん妄といったベンゾによる弊害が強く懸念される場合も処方しません。不眠に対する睡眠薬の位置付けは、「環境調整などの非薬物療法に取り組んだうえでの手段」であり「不眠の原因を取り除く」ことが処方の目的です。そして、薬剤の選択としては、まずはベンゾを避けることが推奨されます。ベンゾは入眠効果が速い一方で、日中の眠気の持ち越し、せん妄、転倒、認知機能への悪影響といったリスクがあり、交通事故なども懸念されます。高齢者ではとくにリスクが強調され、避けられることが多くなっています。私が研修医のころは不眠を訴える入院患者にはルーティンでベンゾを処方していたことを考えると、大きく位置付けが変わったことがわかります。ただ、短期的な強いストレスで入眠困難が著明であり、確実性の高い入眠効果を期待する際には、ベンゾは今でもよい選択肢だと考えます。では、終末期の場合はどうでしょうか。予後がそう長くなく、解決困難な強い身体症状がある、そうした時に「眠れない」という状況はよくあります。身体症状を和らげるためにベストを尽くすのは大切ですが、患者自身や家族が疲弊しないことも大切です。せん妄などの弊害が許容できれば、夜間をしっかり休むことを優先してベンゾの処方も一手でしょう。長期的な予後が期待できない場合には、依存など長期使用の弊害を考慮する必要性も薄まります。このあたりの対応は、専門家間でも統一されていない印象です。ある精神科の先生は「終末期であっても、ベンゾは処方しない」という方針でした。一方、私自身は「ベンゾだからダメ」と思考停止になるのではなく、注意点をよく理解し、患者の苦痛緩和を実現するためにほかの手段がない場合には使用が許容される、というスタンスです。皆さんはどのように考えますか?今日のTips今日のTips終末期の不眠に対しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の弊害をよく理解し、個々のケースで使用を検討しましょう。

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第317回 妊娠高血圧腎症の血液ろ過治療が小規模試験で有効

抗体を使った血液ろ過による妊娠高血圧腎症治療が少人数の臨床試験で効果を示しました1-4)。妊娠高血圧腎症は命を落とすこともある妊娠中の重大な合併症で、高血圧を引き起こして母親と赤ちゃんの両方に深刻な害を及ぼす恐れがあります。残念ながらこれといった根本治療法はありません。妊娠高血圧腎症の進展につれて、胎盤が放つタンパク質のsFlt-1が増加します。sFlt-1は血管新生を促すVEGFやPLGFを阻止する抗血管新生因子として知られ、妊娠高血圧腎症の発症の主因の1つと目されていますsFlt-1を狙う抗体を妊婦に投与することが治療の手立てとなりそうですが、いかんせん胎児への害が心配です3)。そこでCedars-Sinai Medical CenterのAnanth Karumanchi氏らは抗体を体内に投与するのではなく、体外でsFlt-1を除去する手段を開発しました。その方法は抗sFlt-1抗体入りの吸着剤を詰めた血液ろ過(アフェレーシス)装置を使います。患者の血液を一旦体外に出し、透析に似た要領でその装置をくぐらせて体内に戻すことで血中のsFlt-1を除去します。まず妊娠したヒヒ(baboon)で試したところ、血中のsFlt-1の量がおよそ半減しました。続いて、出産にはまだ早い妊娠高血圧腎症の妊婦16例に試したところやはりsFlt-1濃度が低下し、動脈圧が低下しました。また、動脈圧の低下とsFlt-1濃度の低下が強く関連しました。そして何よりなことに妊娠をより長く保つ効果も示唆されました。入院してからの妊娠が中央値で10日間維持され、未治療の場合の見込み(4日間)2)を2倍超上回りました。母親の有害事象は軽微でした。軽度の低カルシウム血症が3例、針を指した部位の皮膚出血が1例、仮性陣痛が1例に生じました。赤ちゃんへの重大な害は認められませんでした。赤ちゃんの出産を急いで母親の命を繋ぎ止めることが今のところ妊娠高血圧腎症への唯一の対処法です。それはとりも直さず超早産の心配事と隣り合わせです。今回開発されたsFlt-1ろ過手段が使えるようになれば超早産の危機をより柔軟に乗り越えうるようになる、とCedars-Sinaiの産婦人科の長であるSarah Kilpatrick氏は言っています4)。今回の試験の位置付けはあくまでも予備試験(pilot trial)です。次の段階として、開発された手段が妊娠を確実に延長しうるかどうかや経過の改善をもたらすかどうかを、より大人数の対照群ありの試験で調べる必要があります2)。ちなみに、sFlt-1を体外で取り除く試みは他にもあり、たとえば15年ほど前の2011年にはsFlt-1を吸着するデキストラン硫酸セルロース(DSC)によるアフェレーシスの予備試験の結果が報告されています。妊娠高血圧腎症の3例がDSCアフェレーシスを複数回受け、入院後の妊娠が長ければ23日間保たれました5)。 参考 1) Thadhani R, et al. Nat Med. 2026 Apr 27. [Epub ahead of print] 2) Medicine: Blood filtering may provide treatment for preeclampsia / Nature. 3) Could blood filtering help treat one of pregnancy’s most deadly conditions? / Scientific American 4) Study: New preeclampsia treatment may safely extend pregnancy / Eurekalert 5) Thadhani R, et al. Circulation. 2011;124:940-50.

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境界性パーソナリティ障害の治療で最も使われている薬剤は?

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は有病率が高いにもかかわらず、承認されている治療薬は依然として存在しない。米国・Boehringer Ingelheim PharmaceuticalsのCarissa White氏らは、BPD治療の課題を特定するため、実臨床におけるBPD患者の治療経過を評価した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年3月20日号の報告。 診断後14日以内(ベースライン)に薬物療法を受けており、12ヵ月以上の治療データを有する、12歳以上、BPDの診断を1回以上受けている患者を対象に、レトロスペクティブ観察コホート研究を行った。患者データは、Holmusk NeuroBluデータベース(ver.21R2)の匿名化されたMindLinc電子健康記録より抽出し、治療経過を分析した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインで薬物療法を受けていた患者のうち、1,461例(16.1%)が12ヵ月間のフォローアップ調査データを有していた。・ベースラインで最も頻繁に使用されていた薬剤は抗うつ薬(80.4%)であり、単独または他の薬剤クラスとの併用で使用されていた。・次いで、第2世代抗精神病薬(SGA)、抗不安薬、気分安定薬が使用されていた。・ベースライン後12ヵ月間で、最も頻繁に報告された治療経路は、抗うつ薬から別の抗うつ薬への変更であった。・最も多く使用されていた抗うつ薬はセルトラリン(5.5%)であり、次いでfluoxetine(5%)、citalopram(5%)であった。・最も多く使用されていた気分安定薬は、ラモトリギン(24.9%)、ガバペンチン(15.4%)、バルプロ酸(7.1%)であった。・最も多く使用されていたSGAは、クエチアピン(22.1%)、アリピプラゾール(19.0%)であった。・2種類以上の向精神薬の併用は、ベースラインで83.1%の患者に認められ、フォローアップ期間および年齢とともに増加が認められた。・本研究の限界として、精神療法に関するデータの欠如、治療アドヒアランスに関する情報がない処方記録の使用が挙げられる。 著者らは、実臨床におけるBPD治療で多剤併用率が83.1%と高かったことに対し、「本結果はBPD治療ガイドラインと完全には合致していない可能性があり、BPD患者は相当な治療負担を抱えている可能性が示唆された」とし、「観察された治療パターンの多様性は、BPDの複雑な症状を反映しており、薬物療法戦略を改善し、患者にとって有意義なアウトカムにつなげるためには、BPDの神経生物学に関する理解を深める必要がある」とまとめている。

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低リスクの非浸潤性乳管がん、積極的監視でも早期転帰は手術と同等か

 低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性では、積極的監視療法と直ちに手術を行った場合とで、浸潤性乳がんの発生率に大きな差は認められない可能性が、新たな臨床試験で示された。積極的監視療法は、治療を行わないことを意味するのではなく、患者の状態を継続的に評価し、必要に応じて適切な治療介入を行える体制で経過を観察する方法である。オランダがん研究所のJelle Wesseling氏らによるこの研究は、第15回欧州乳がん学会(EBCC 15、3月25~27日、スペイン・バルセロナ)で発表された。 DCISは、乳管内にがん細胞が認められるが、周囲には広がっていない(非浸潤)状態のがんである。米国立がん研究所(NCI)によると、DCISで見られる乳管内のがん細胞は、将来的に浸潤性乳がんに進行する可能性があるとされる。DCISに対しては通常、手術が行われ、場合によっては放射線療法やホルモン療法なども行われる。しかし、DCISが浸潤性乳がんに進行するのは、5人に1人程度にとどまるという。Wesseling氏は、「数十年もの間、DCISは『乳がんの初期段階』と位置付けられてきたため、ほぼ必ずと言っていいほど、乳がんと同じように治療されてきた。しかし、もしDCISのほとんどが危険な浸潤性乳がんに進行しないのなら、一部の女性は過剰治療を受けているのではないかという大きな疑問が浮かんでくる」と指摘する。 今回の臨床試験には、オランダの約60カ所の病院で治療を受けた低リスクDCISの女性1,423人が登録された。試験が2017年に開始された当初、最初の73人の患者は、手術を受ける群と積極的監視療法を受ける群のいずれかにランダムに割り付けられた。その後は、患者自身がいずれかの治療法を選択できるように試験内容が変更され、約4分の3(1,025人)が積極的監視療法、330人が即時手術を選択した。なお、本試験は、浸潤性乳がんの発生が60例に達した時点で中止して中間解析を行う設計となっており、今回の報告はその中間解析の結果である。 平均約2年の追跡期間における解析の結果、浸潤性乳がんに進行した患者の割合は、手術群で9%(33/363人)、積極的監視療法群で6%(63/1,060人)だった。また、見つかった腫瘍のサイズは、手術群で平均6mmだったのに対し、積極的監視療法群では平均9mmとやや大きかったが、悪性度に差はなかった。 Wesseling氏は、「低リスクのDCISと診断された女性にとって、今回の中間解析の結果は心強いものだ。現時点では、即時手術と比べて積極的監視療法が早期の転帰を悪化させることを示す証拠はない」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「この結果は、患者と医師が即時手術を選択した場合、DCISに対する過剰治療となる可能性があることを示唆している。ただ、乳がん診療ガイドラインに何らかの変更を加える前に、より長期の追跡とさらなる研究が必要だ」としている。また同氏は、「医師として、私は『害を与えてはならない』という原則に従っている。目標は、女性をリスクにさらすことなく不必要な治療を避けることだ」と強調している。 EBCC 15の会長で、ナバラ大学クリニック(スペイン)の乳腺外科学部門長であるIsabel Rubio氏も、Wesseling氏の見解に同意を示し、「追跡期間がより長期であれば、こうした結果は選択された一部の患者に対する治療強度を下げるアプローチを支持するものとなる可能性がある。つまり、慎重なモニタリングを伴う積極的監視療法によって、過剰治療を回避しつつ手術と同程度の転帰をもたらす可能性があることを示している」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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短時間でも高強度の運動で慢性疾患リスクは低下する

 健康のために、長時間の運動は必ずしも必要ないようだ。新たな大規模研究で、毎日、ほんの数分でも強めの運動を取り入れるだけで、主要心血管イベント(MACE)や心房細動、2型糖尿病などの慢性疾患リスクを下げるのに役立つ可能性が示された。中南大学(中国)湘雅公衆衛生学院のMinxue Shen氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に3月29日掲載された。 運動時間が同じである場合、高強度の運動は中強度の運動よりも健康効果が高いことが知られている。しかし、高強度の運動がさまざまな慢性疾患にどの程度の効果があるのか、また、運動の強度と量のどちらが重要なのかは明確になっていない。 Shen氏らは今回、UKバイオバンク参加者を対象に、総運動量に占める高強度運動の割合(%VPA)と8種類の慢性疾患および死亡との関連を検討した。参加者のうち9万6,408人(平均年齢61.9歳、女性56.3%)の運動量はデバイスで測定されており、37万5,730人(自己申告群、平均年齢56.2歳、女性52.2%)は自己申告により運動量が報告されていた。慢性疾患は、MACE、心房細動、2型糖尿病、免疫介在性炎症性疾患、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病(CKD)、認知症を対象とした。 デバイス測定データのある参加者の追跡期間中央値は8.8~8.9年で、この間にMACEが9,366件、心房細動が4,123件、2型糖尿病が2,210件、免疫介在性炎症性疾患が1,721件、MASLDが1,706件、慢性呼吸器疾患が2,873件、CKDが2,565件、認知症が942件、死亡が4,219件発生した。解析の結果、%VPAの増加に伴い全ての慢性疾患リスクが低下する非線形の逆相関が認められた。この関連は、総運動量で調整後も一貫していた。また、%VPAが4%超の群では0%の群と比較して、慢性疾患のリスクが約29%(心房細動、ハザード比0.708)~63%(認知症、同0.368)低かった。さらに、関節リウマチや乾癬などの免疫介在性炎症性疾患では、運動強度が特に重要で総運動量の影響は小さい一方、2型糖尿病やMASLD、CKD、全死因死亡では、総運動量と運動強度の両方が疾患リスクに比較的バランス良く寄与していることが示された。 Shen氏は、「高強度の運動は、低強度の運動では十分に得られない、体内の特定の反応を引き起こすようだ」と話す。同氏によると、息が上がる程度の運動は、心臓の働きを効率化し、血流を改善し、炎症を抑えるのに役立つという。また、脳の健康にも良い影響を与える可能性があり、これが認知症リスクの低下につながると考えられる。 ただし、研究グループは、「高強度の運動は、特に高齢者や持病のある人にとっては安全とは限らない。その場合でも、運動量を少し増やすだけでも効果はある。それぞれの状況に合わせた運動が大切だ」と述べている。

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尿路感染症疑いの適切な外来トリアージとは?推奨を発表

 尿路感染症(UTI)疑いの成人患者に対する外来トリアージについて、経験的抗菌薬投与、尿検査および診察方法の妥当性を検討し、推奨事項をまとめたコンセンサス声明が、「JAMA Network Open」に2月2日掲載された。 米退役軍人省(VA)アナーバー医療システムのJennifer Meddings氏らは、UTIが疑われる成人患者に対するトリアージおよび管理方針の妥当性を評価するため、研究論文のスコーピングレビューを実施した。136の臨床シナリオごとに最大9つの管理戦略の妥当性が評価された。 主な推奨事項は以下の通り。腎盂腎炎、複雑性膀胱炎または尿路閉塞が疑われる症状がある場合には、当日中に対面にて評価を行う。下痢や性器分泌物など非尿路症状を伴う場合には診察を行う。膀胱炎症状を伴わず、尿の色調や性状の変化のみを理由とする尿検査や経験的治療は行わない。女性において、排尿痛、頻尿、尿意切迫感、恥骨上部痛といった新規の典型的な膀胱炎症状があり、かつ抗菌薬耐性のリスクがない場合には、検査や診察を行わずに経験的治療を開始する。抗菌薬耐性のリスクを有する女性および全ての男性では、抗菌薬の初回投与前に尿検査および尿培養を実施する。適切なタイミングでの尿検査や診察を受けることが困難な患者には、経験的治療を考慮してよい。 Meddings氏は、「完全オンラインで問診票への回答や医療者とのやり取りが可能となった現在でも、それだけでは正確な診断や適切な治療に十分でない場合があることを、本指針を通じて患者と医療者の双方に認識してもらいたい」と述べている。 なお、1人の著者がミシガン州ブルークロス・ブルーシールドの臨床品質委員会との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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ロボット支援気管支鏡検査で肺がん診断の迅速化と精度向上を実現

 肺がん検診で検出される異常の多くは無害で良性であるが、ごく一部には危険なものも含まれる。こうした中、新たな研究で、ロボット技術によりその異常が良性であるか悪性であるかを迅速かつ安全に識別できる可能性が示された。米メイヨー・クリニックの呼吸器・集中治療医であるSebastian Fernandez-Bussy氏らによるこの研究結果は、「Mayo Clinic Proceedings」4月号に掲載された。Fernandez-Bussy氏は、「肺がんの生存率は早期発見に大きく依存する。より早期に、かつ合併症の発生を抑えて診断・治療できる技術は、生存率の向上に寄与する可能性がある」と述べている。 肺がんは通常、胸部CT検査で微小な結節として発見される。しかし、より危険な悪性結節と、はるかに一般的な良性結節をいかに識別するかが課題であった。疑わしい末梢肺病変の評価には、従来、CTガイド下経胸壁生検(CTTB)や気管支鏡生検が用いられてきたが、肺の構造上、ごく少量の組織しか採取できないことが多く、目的の組織を得るために複数回の挿入が必要であった。 こうした状況下で導入されたのが、形状感知型ロボット支援気管支鏡検査(shape-sensing robotic-assisted bronchoscopy;ssRAB)である。ssRABは2019年に米食品医薬品局(FDA)の承認を取得している。この装置により、医師は1度の器具の挿入で生検に必要な数の肺組織サンプルを採取できるようになった。さらに、超音波気管支鏡(EBUS)を使用することで、縦隔リンパ節へのがんの広がりも同時に評価できる。加えて、高度な3D画像技術の導入により、生検をより高い精度で行えるようになっているという。Fernandez-Bussy氏は、「この技術は、肺がんの早期診断において画期的な変化をもたらした」とニュースリリースで述べている。 本研究では、ssRABを用いた肺病変診断について、約5年間の実臨床データが解析された。データには、2019年7月から2024年8月の間にフロリダ州、アリゾナ州、ミネソタ州のメイヨー・クリニックの3施設でssRABを受けた1,904人の患者から採取された2,115個の肺病変のデータが含まれていた。 その結果、2019年にssRABが導入された当時、原発性肺がんの診断例に占める早期段階のがんの割合は46%であったが、2024年半ばには68.9%へと増加した。一方、局所進行がんまたは転移がんの割合は、2019年の54%から2024年には31.1%へと減少した。ssRABの診断率は、厳密な定義では76.9%、やや緩い定義では80.2%であった。悪性腫瘍に対する感度は85.0%であった。 さらに、研究グループによると、患者によっては、結節の評価および超音波気管支鏡ガイド下針生検による病期分類と同時に、治療も受けていた。ssRABでは、特に手術や放射線が難しい患者では、電気的に腫瘍を破壊する治療(パルスフィールドアブレーション)などが併用されるためである。論文の上席著者であるメイヨー・クリニックの胸部外科部長であるJanani Reisenauer氏は、「私はこれを『single anesthetic lung surgery pathway(単回麻酔で肺の診断から手術まで行う一連の診療フロー)』と呼んでいる。この治療法により、通院回数が減少し、家族と過ごす時間が確保され、回復も短縮される」と述べている。 肺がんを早期に発見して治療することは、患者に大きな利益をもたらす。研究グループによれば、まだ転移していない小さな腫瘍の場合、5年生存率は67%であるのに対し、転移した腫瘍では12%にとどまる。

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AIで医療教育は変わるか? 問診評価で指導医の負担軽減の可能性

 医師の働き方改革が進む中、医療教育の現場でも効率化と質の担保の両立が課題となっている。AIを活用した仮想患者による問診評価について、指導医による評価と比較した研究が発表された。AIの評価は指導医と高い一致を示し、評価時間は6割以上短縮されたという。研究は、順天堂大学医学部総合診療科の高橋宏瑞氏らによるもので、詳細は2月17日付の「JMIR Medical Education」に掲載された。 適切な臨床面接は正確な診断と患者との信頼関係構築に不可欠であり、従来は実際の患者や模擬患者との実習と指導医の指導によって習得されてきた。近年は、「何年経験したか」ではなく「何ができるようになったか」で評価する能力基盤型医学教育(CBME)が広がり、評価や記録業務の負担が課題となっている。こうした中、大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIによる仮想患者と自動評価の仕組みが登場しているが、専門家評価との一致や妥当性の検証は十分ではない。本研究では、AIによる臨床面接評価と指導医による評価の一致度を比較し、AIが代替可能かを検証するとともに、評価時間の短縮効果や経験差による影響を検討した。 標準化された「脚の脱力」の症例をAIの仮想患者として設定し、医学生2人、研修医3人、指導医2人の計7人がそれぞれ問診を行った。面接内容を書き起こしたテキストを、25項目からなる評価尺度を用いて採点した。評価は3つの方法で比較した。まず、GPT-o1 ProとGPT-5 Proは、同じ条件(同じプロンプト)で各テキストを5回ずつ評価し、ハルシネーションや評価のばらつきを確認した。次に、別の臨床指導医5人が同じ基準で独立に採点した。一致度はPearson相関係数(r)や級内相関係数(ICC)などで評価し、1件あたりの所要時間と時間短縮率も算出した。 平均面接スコアは、AIによる評価と指導医による評価でほぼ同程度だった(GPT-o1 Proを用いたAI評価:平均52.1±6.9点、GPT-5 Proを用いたAI評価:平均53.2±9.2点、人間による評価:平均53.7±6.8点)。 AI評価と人間評価の一致度は高く(r=0.90、Linの一致相関係数=0.88)、評価の偏りも小さかった(GPT-o1 Pro:平均差0.4±2.7点、GPT-5 Pro:平均差1.5±5.2点。BlandーAltman解析の一致限界はそれぞれ-4.9~5.7、-8.6~11.7)。 信頼性を示すCronbachのα係数は、GPT-o1 Proで0.81、GPT-5 Proで0.86、人間評価で0.80といずれも高水準だった。一方、ICC(評価者間の一致度を示す指標)はAI評価で0.77および0.82と良好だったのに対し、人間評価では0.38にとどまった。さらに、評価のばらつきを示す変動係数はAI評価が6.6%で、人間評価(13.9%)の約半分だった。 処理時間は、AIが3~4分程度で完了したのに対し、医師は約10分を要し、最大で約68%の時間短縮に相当した。 著者らは、GPT-o1 ProおよびGPT-5 Proによる評価が指導医と同等の精度とより高い一貫性を示し、評価時間も大幅に短縮できたと報告している。その上で、「AIは人間評価者を補完または一部代替し得る可能性があるとしつつ、教育現場での活用には慎重な設計と継続的な人間の監督が不可欠だ」と強調している。 なお、本研究は単一の模擬症例を対象とした小規模な検討にとどまる。著者らは、より多様な症例での検証や学習効果・費用対効果の評価に加え、実際の診療能力との関連を検証する必要があると指摘する。また、高い一致度が直ちに公平性を保証するわけではなく、性別や文化的背景などに関する潜在的なバイアスへの検証も不可欠だとしている。(HealthDay News 2026年4月6日)

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日勤の看護師不足、入院患者の死亡・再入院と関連――日本の病院データ

 看護師の配置不足は入院患者の予後に影響するのか。今回、日本の急性期病院を対象とした研究で、病棟の通常水準を下回る看護師配置、特に日勤帯での不足が、院内死亡や再入院の増加と関連することが示された。約7万7,000件の入院データを解析した結果で、日々の人員配置を適切に維持する重要性が示唆された。研究は、国立保健医療科学院疫学・統計研究部の森岡典子氏、東京科学大学医療本部クオリティ・マネジメント・センターの森脇睦子氏、筑波大学医学医療系社会医学の宮脇敦士氏、英サウサンプトン大学のPeter Griffiths氏らによるもので、詳細は2月25日付で「JAMA Network Open」に掲載された。 看護師は医療・ケア従事者の中で最大の職種であり、その配置は医療の質や安全性、医療提供体制の効率に大きく関わるとされる。これまでの研究でも、看護師配置が多いほど院内死亡や有害事象が減少するなど、患者アウトカムが改善することが示されてきた。一方で、実際の病棟では適切な人員配置の判断が看護管理者の経験や判断に依存している面もあり、エビデンスに基づく指針は十分とは言えない。さらに、病院単位で集計した患者対看護師比などの固定的な指標では病棟ごとに異なるケアニーズを十分に反映できない可能性がある。そこで本研究では、病棟ごとの通常水準を基準とした入院期間中の看護師不足を、日勤と夜間の時間帯別に評価し、院内死亡や再入院、在院日数との関連を検討した。 本研究は、日本の9病院82病棟の診療報酬請求データ(DPC)と病棟ごとの日々の看護師勤務表データを連結して行った後ろ向きコホート研究である。対象は2019年4月~2020年3月に入院した20歳以上の患者で、ICU滞在日は解析から除外した。対象病棟はいずれも、患者7人に対して看護師1人以上を配置する一般急性期病棟で最も手厚い「7対1看護配置」を採用していた。看護師不足(アンダースタッフィング)は、入院期間中の患者1人当たりの看護提供時間(中央値)が各病棟の通常水準(年間中央値)を下回る場合と定義し、24時間全体、日勤帯、夜勤帯(準夜・深夜)で評価した。解析では院内死亡、退院後7日および30日以内の再入院、在院日数を評価項目とし、傾向スコアマッチング(PSM)や病院・病棟の違いを考慮したマルチレベル回帰モデルを用いて解析した。 解析対象は7万7,289件の入院で、患者の平均年齢は69歳、約半数が手術を伴う入院だった。PSM後は、年齢や併存疾患などの患者背景は両群でほぼ同等となった。 その後の解析では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じていた場合、院内死亡率はそうでない場合より高かった(24時間:3.1%対2.8%、日勤帯:3.2%対2.8%)。また、24時間全体で看護師不足があった場合は30日以内再入院率が高く(11.2%対10.5%)、日勤帯で不足があった場合は7日以内再入院率が高かった(2.3%対2.1%)。一方、夜間の看護師不足は院内死亡や再入院と有意な関連を示さなかった。 在院日数は、24時間全体、日勤帯、夜間のいずれの時間帯で看護師不足があった場合でも長く、平均在院日数はそれぞれ14.6日対13.8日、14.7日対13.7日、14.1日対13.6日だった。多層モデルによる解析でも同様の結果が得られ、24時間の看護師不足は院内死亡リスクの上昇(調整オッズ比1.22)や30日以内再入院(同1.05)と関連していた。 さらに感度解析でも結果は概ね同様で、看護師不足と院内死亡および在院日数の延長との関連は一貫して認められた。 著者らは、「急性期病院では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じている場合、院内死亡や再入院、在院日数の延長と関連する可能性が示された」としている。その上で、日々の看護師配置レベルを継続的に把握し、通常からの逸脱・不足が生じた場合にリリーフ支援などでタイムリーに対応することが、患者アウトカムの改善につながる可能性があると指摘している。 なお、本研究の限界として、看護師不足の基準を病棟ごとの年間中央値で定義しており最適な配置水準は不明である点、看護師の経験構成など未測定要因の影響を考慮できていない点、さらに大規模公的病院のデータに基づくため結果の一般化に限界がある点が挙げられる。

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中リスクの急性肺血栓塞栓症に対する超音波補助カテーテル血栓溶解療法が有効で重篤な出血合併症を増加させなかった(HI-PEITHO試験)(解説:佐田政隆氏)

 急性肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の死亡率は、診断されず未治療の場合は約30%と高いが、適切な治療を実施すれば2~8%まで低下することが知られている。致死的PTE患者の75%は発症から1時間以内に、残りの25%は発症48時間以内に死亡するとされており、遅れることなくPTEを診断して適切な治療を施すことがきわめて重要である。 心停止やショックといった高リスク例では、早急に機械的補助循環を導入し、抗凝固療法に加えて再灌流療法(血栓溶解療法、外科的血栓摘除術、カテーテル治療)の実施を検討することが国内外で推奨されている。 一方、中リスクのPTE患者に対する血栓溶解療法の有効性は確立していなかった。2014年に発表になったPEITHO試験では、血行動態が安定している中リスクのPTE患者約1,000例に対し、抗凝固療法(ヘパリン)に加えて血栓溶解薬としてのtPAを全身投与する治療が、抗凝固療法単独よりも死亡・血行動態悪化の発生率を低下させたものの、重大な出血リスクを高めた(Meyer G, et al. N Engl J Med. 2014;370:1402-1411.)。 日本循環器学会と日本肺高血圧・肺循環学会による2025年改訂版「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」においては、重症度別に急性PTEに対する治療戦略をフローチャートで提示している。中リスクのうち、右心機能障害と心臓バイオマーカーの上昇のいずれも認める場合、抗凝固療法を開始するとともに慎重なモニタリングを行い、血行動態が悪化した場合には再灌流療法の実施を考慮することが推奨されている。 Boston Scientific社が開発したEKOSシステムでは、高周波・低出力の超音波エネルギーカテーテルを用いることで、血栓溶解薬の投与量、投与期間を減じても従来と同等の血栓溶解効果が期待できることが示され、欧米では販売されている。本HI-PEITHO試験は市販後非盲検無作為化試験である。中リスクの急性PTEに対するEKOSシステムを使用した血栓溶解と抗凝固の併用療法は、抗凝固療法のみと比較して、7日以内のPTE関連死、症候性のPTE再発、心肺機能の代償不全/虚脱の複合イベントの発生率を低下させたが、重篤な出血リスクは増加させなかった。 今まで、PTEに対するカテーテルを用いた血栓溶解療法については十分なエビデンスは示されておらず、わが国では、海外で使用されているカテーテルが承認されていない。そのため、もっぱらガイディングカテーテルを用いた用手的吸引術が用いられてきており、関連学会から未承認の血栓吸引あるいは血栓除去カテーテルについて早期承認申請が行われている。抗凝固療法としてDOACが主流となった現在、日本でもPTEに対する血栓除去カテーテル治療が本研究のようなRCTの結果に基づき承認されていき、患者の予後改善につながることを期待したい。

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第293回 医師にとっての2040年-地域医療構想の転換で働き方はどう変わるか-

診療報酬改定、医療機関の経営悪化、医師需給の議論――個別に語られてきたこれらの変化は、いま1つの方向へ収斂しつつある。2026年に示された新たな地域医療構想は、「病床」から「機能」への転換を明確に打ち出した。本稿では、特別編としてこの構造変化が医師の働き方やキャリアにどのような影響を及ぼすのかを考える。はじめに大型連休に入り、今年の初めからの医療関連ニュースや厚生労働省の資料を改めて見直してみた。診療報酬改定、医療機関の経営悪化、医師需給の議論、そして地域医療構想の見直し――個別に見ればそれぞれ独立した話題に思えるが、俯瞰すると1つの方向性が浮かび上がる。それは、「医療提供体制そのものが転換期にある」という点に尽きる。地域医療構想の変化:病床から機能へ厚労省は2026年3月に「2040年に向けた地域医療構想の取りまとめ」を公表した。従来の地域医療構想は、2025年に向けて各2次医療圏に必要病床数を医療機能ごとに整理する、いわば「病床配分」の枠組みであった。その一方で、今回の見直しは単なる病床再編にとどまらず、「どの医療をどこで担うか」という機能そのものの再設計を志向するものと考えられる。画像を拡大する画像を拡大する稼働率引き上げが意味するもの:静かなハードル設定今回の見直しで見過ごされがちだが重要なことは、各医療機能における病床稼働率の前提が引き上げられている点である。従来は高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%とされていたが、新たな構想では高度急性期78%、急性期83%、回復期(包括期)87%、慢性期92%と見直されている。一見すると数%の変化にすぎないが、稼働率は単なる運営指標ではなく、「その機能を担うに足る患者数を安定的に確保できるか」を示す指標と解釈することもできる。すなわち、この引き上げは各機能を維持するための実質的な参入基準の引き上げとみることができる側面がある。とくに急性期においては、稼働率83%を安定的に維持するためには一定規模以上の患者集約が不可欠となる。これは結果として、「患者が集まらない急性期は成立しにくい」という政策的メッセージを内包している。従来であれば一定程度の稼働で維持できていた機能も、今後は重症度や医療・看護必要度といった要件とあわせて基準を満たせなければ、機能転換を余儀なくされる可能性がある。この意味で、稼働率の引き上げは単なる数値の修正ではなく、「機能を満たす医療機関のみが残る」というハードルが設けられたとみることもできる。急性期集約と高齢者救急の拡大新たな地域医療構想では、「急性期医療の集約化」と「高齢者救急・在宅医療への対応強化」が明確に示されている。背景には、85歳以上人口の増加と生産年齢人口の減少がある。若年人口の減少により手術を中心とする急性期医療のニーズは減少する一方で、誤嚥性肺炎や心不全といった内科系救急患者は増加すると考えられる。すなわち、医療需要は単純な量的減少ではなく、質的転換の局面に入っているといえる。医療機関経営に現れた構造変化コロナ禍後も病床稼働率や外来患者数の回復は限定的であり、2025年度の医療機関倒産は過去最多となった。民間病院でも赤字法人の増加が報道されている(病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減)。これは一時的な現象というより、医療需要や環境の変化に対して適応できない医療機関が市場から退出しつつある状況を示している。厚労省の政策の中核として、「急性期拠点機能の集約」が挙げられる。急性期拠点病院を人口20〜30万人当たり1施設とする考え方は、従来の地域分散型モデルの見直しを意味する。その結果、中小規模の急性期病院は、(1)統合、(2)機能転換(包括期・慢性期+在宅支援)、(3)病床縮小といった選択が迫られる構図となる。この再編は、勤務医と開業医の双方に影響を及ぼすと考えられる。勤務医への影響:専門医と総合医の分化この変化は勤務医のキャリアにも影響を及ぼすとみられる。急性期拠点病院では、高度医療・手術・重症救急を担う専門医の集約が進む。その一方で、そのポジションは限られるため、選抜性が高まる可能性がある(今後の医療需要の変化を見据えた専門医の養成について)。今後は医療と介護の複合ニーズが一層高まるため、勤務医の多くは高齢者救急や地域急性期、包括期を担うことが求められると考えられる。この領域では、多疾患併存患者への対応や在宅復帰支援など、総合的な診療能力がより重要となる。また、文部科学省による地域実習プログラムや、日本病院協会と日本プライマリ・ケア連合学会が運営する総合医育成事業「総合医リカレント実践事業 ReGeneral」は、こうした変化を背景とした人材政策と位置付けることができる。結果として、医師の役割は「高度専門医」と「総合診療型医師」に分化していく可能性がある。開業医への影響:外来モデルの転換開業医にとっても影響は小さくない。人口減少の進行により外来患者数は長期的に減少する可能性があり、診療所数の増加(診療所数は1980年代前半約8万施設のところ2020年約10万施設と約1.25倍)とあわせて競争環境は厳しさを増すと考えられる。従来の外来中心モデルは、持続性の観点から再検討が必要となる可能性がある。その一方で、在宅医療の需要は今後も間違いなく増加していく。高齢者医療では早期退院と在宅復帰が前提となるため、開業医には退院後の受け皿としての役割が求められる場面が増えていくとみられる。医師需給と報酬構造の変化医師数は増加しているものの、地域偏在や診療科偏在は依然として残る。その結果、急性期拠点では医師不足が続く一方で、都市部では供給過剰が生じる可能性がある。これに伴い、医師の報酬構造も均一ではなくなり、主治医として担う機能や地域によって格差が広がる可能性がある。医学部定員削減のリスク医学部定員削減について医道審議会医師分科会医師専門研修部会や経済財政諮問会議で話し合われているが、地方医療提供体制への影響には慎重な検討が必要となる。全国的に医師数が増加しても、地方における医師不足が解消されるとは限らない。とくに地方の救急医療体制では、若手医師の確保が困難となれば、診療体制の維持そのものが難しくなる可能性がある。今後は医師数の総量よりも、機能に応じた配置がより重要な論点となる。医療再編の本質:機能を満たすかの選択2040年に向けた医療再編は、医療機関に対して「どの機能を担うか」を問うものである。急性期に特化するのか、地域急性期や包括期(従来の回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟)を担うのか、あるいは在宅医療や介護との連携を強化するのか--それぞれの選択は、医師の働き方やキャリアにも直結する。おわりに:変化の中での医師の選択以上のように、新たな地域医療構想は医療提供体制の構造変化を伴うものであり、医師の役割にも影響を及ぼす可能性がある。重要なのは、今年の診療報酬改定を2年に1度の恒例行事として受け取らず、改定の全体像を通して政府が医療提供体制の変化への第1歩として捉え、自らの専門性や立ち位置を見直す契機とすることであろう。今後の医療提供体制が変化する中、読者の先生方は、どのような役割を選択されるだろうか。 参考 1) 新たな地域医療構想に関する取りまとめ(厚労省) 2) 人口減少社会の中での総合的な国力の強化(経済財政諮問会議) 3) 25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞) 4) 病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減(同) 5) 医療提供体制の現状~病院数の推移~(厚労省) 6) 地域の医師、文科省が育成支援へ…中小病院で長期間学ぶ「地域実習プログラム」開発支援(読売新聞) 7) 総合医育成プログラム 「総合医リカレント実践事業 ReGeneral」(日本プライマリ・ケア連合学会) 8) 今後の医療需要の変化を見据えた専門医の養成について(厚労省)

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脳ドックのガイドライン2026

日本脳ドック学会がまとめる最新ガイドライン脳ドックの水準と有効性の向上を目指し、日本脳ドック学会がまとめるガイドラインの最新版。各項目の内容を刷新し、最新の知見をもとにまとめました。脳卒中や認知症の予防など、日常診療にも大いに役立ちます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳ドックのガイドライン2026定価5,720円(税込)判型A4判頁数150頁発行2026年2月編集脳ドックのガイドライン2026 改訂委員会/一般社団法人 日本脳ドック学会-脳卒中・認知症予防のための医学会-ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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脳の老化はアルツハイマー病でどのくらい加速する?

 脳の老化に伴う進行性の形態学的および神経生物学的変化は、アルツハイマー病などの神経変性疾患では著しく加速する。これらの変化を早期に検出し鑑別することは、診断、治療計画、治療法の開発においてきわめて重要である。米国・スティーブンス工科大学のShima Jalalian氏らは、加齢に伴う脳の萎縮に対する軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病の影響を明らかにするため、本研究を実施した。Annals of Biomedical Engineering誌オンライン版2026年3月24日号の報告。 本研究では、タンパク質バイオマーカーの伝播と組織レベルの萎縮を連動させ、認知機能が正常な加齢、MCI、アルツハイマー病を鑑別するための計算マルチフィジックスフレームワークを開発した。本モデルにより、アミロイドβとタウタンパク質の拡散に関するネットワークベースのシミュレーションおよび脳力学の有限要素モデルを統合し、40年間にわたる脳形状の経時的変化をシミュレーションした。 主な結果は以下のとおり。・特筆すべきことに、アミロイドβの蓄積がタウによる変性よりも10年以上先行することが観察された。この所見は、経験的なバイオマーカー研究の結果と一致していた。・本研究では、変位、皮質厚、曲率、溝の深さなど、脳形態の定量的指標であるメカノマーカーを複数導入した。これらは、疾患特異的な変形パターンを定量的に測定する指標として機能している。・シミュレーションの結果、アルツハイマー病は正常な加齢と比較し、脳萎縮を約12年加速させ、内側側頭葉と後頭葉で早期に差異が生じることが予測された。 著者らは「皮質厚と面積伸長は、正常な加齢と異常な加齢を区別するための早期かつ高感度なマーカーであることが示唆された。なかでも、縁上回と嗅内皮質は、早期に脆弱な領域として考慮すべきであると考えられる。本結果は、物理法則に基づいた計算モデルが、神経変性の早期発見に寄与し、領域特異的かつ病期特異的な診断ツールの開発を促進する可能性があることを強調するものである」としている。

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在宅化学療法は安全に実施できる

 がん患者に対する化学療法は、病院や治療施設で長時間をかけて、点滴で薬剤を静脈に投与するのが通常である。しかし、米メイヨー・クリニック総合がんセンターのRoxana Dronca氏らによる新たな研究で、一部の患者では、自宅でも化学療法を安全に実施でき、患者の負担や煩わしさを大幅に軽減できる可能性が示された。この研究結果は、「NEJM Catalyst」4月号に掲載された。 Dronca氏は、「がん治療は従来、患者が長時間にわたり点滴センターで過ごすことを必要としてきた。しかも多くの場合、その場所は自宅から遠く離れている。在宅化学療法により、高品質な医療を患者のもとへ安全に届けることが可能となり、患者がメイヨー・クリニックに期待する水準を維持しつつ負担を軽減できるようになる」とニュースリリースで述べている。 このパイロット研究では、さまざまな固形がん患者10人(65歳以上が80%)を対象に6カ月以上にわたり在宅化学療法を実施した。患者は、1人当たり5〜16回(総計93回)の抗がん剤の静脈内投与を自宅で受けた。患者はオンライン診療および遠隔モニタリングを通じて、常時、がん医療チームと接続された状態を維持した。 その結果、在宅化学療法は安全かつ有効に実施可能であり、治療関連の点滴反応(抗がん剤投与後24時間以内)やカテーテル関連感染は認められなかった。10人中6人(60%)が6カ月以上の在宅化学療法を完了し、そのうち4人は6カ月以降も継続を希望した。4人は在宅化学療法を早期に中止したが、その理由は、自宅では実施できない別の化学療法レジメンへの変更が必要になったためであった。試験期間中に、医療機関での治療への変更を希望した患者はいなかった。 経験や満足度に関する調査に回答した全ての患者が遠隔診療に対して高い満足度を示し(6/6人)、ケアチームにより感情面で支えられたと回答した(7/7人)。さらに、71%(5/7人)は他の人にも在宅化学療法を勧めると回答した。 研究グループによると、在宅化学療法は治療に伴う身体的・精神的・経済的負担の軽減に寄与する。なぜなら、患者は通院の必要がなくなり、日常生活への支障も少なくなるためだ。Dronca氏は、「この治療アプローチは、単なる利便性の向上にとどまらない。治療中の生活の質(QOL)を改善し、従来のがんセンターにアクセスすることが困難な患者に対する医療提供の拡大にもつながる」と述べている。 メイヨー・クリニックは現在、2023年8月に開始した本パイロット研究に続く本格的な臨床試験を実施中である。

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