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双極症における片頭痛と関連する臨床的特徴

 双極症患者は、併存疾患を有していることが多く、片頭痛は最も一般的な併存疾患の1つであるといわれている。双極症における片頭痛の有病率に関する研究は増加しているが、関連する臨床的特徴、併存疾患、治療法は、いまだ十分に調査されておらず、一貫性も認められていない。フランス・ University of Clermont AuvergneのLudovic Samalin氏らは、成人双極症患者の大規模コホートを用いて、片頭痛に関連する臨床的特徴および併存疾患について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年6月15日号の報告。 対象は、FondaMental Advanced Centers of Expertiseに通院している双極症外来患者4,348例。社会人口統計学的および臨床的データは、標準化された手法を用いて収集した。片頭痛を含む医学的併存疾患の生涯診断は、自己報告、臨床医評価、病歴レビューに基づき行った。片頭痛と社会人口統計学的要因、臨床的特徴、併存疾患、薬剤との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極症患者における片頭痛の有病率は20%であり、双極症II型で29.1%、双極症I型で19.9%であった。・多変量解析により、片頭痛と関連している因子として、以下が特定された。【若年】オッズ比(OR):0.98、95%信頼区間(CI):0.97〜0.99【女性】OR:2.15、95%CI:1.56〜2.95【睡眠障害】OR:1.06、95%CI:1.02〜1.11【小児期のトラウマ】OR:1.01、95%CI:1.00〜1.02【高血圧】OR:1.88、95%CI:1.13〜3.15【乾癬】OR:1.61、95%CI:1.01〜2.56【喘息】OR:1.65、95%CI:1.02〜2.67【第2世代抗精神病薬使用率の低さ】OR:0.65、95%CI:0.48〜0.87 著者らは「片頭痛は双極症で頻繁にみられる併存疾患であり、とくに若年、女性、睡眠障害やトラウマ歴を有する患者では、臨床的負担が増大する。双極症患者の片頭痛を軽減するためにも、気分の安定、睡眠マネジメント、トラウマサポートなど統合的な治療アプローチが必要とされることが明らかとなった」と結論付けている。

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通院費増で遺伝子変異に関連した治験への参加率が低下、制度拡充が必要/国立がん研究センター

 がんの臨床試験(治験)では、地域の医療機関が参加条件に該当した患者を治験実施施設に紹介することが一般的だ。患者は自宅から離れた治験実施施設に通わねばならないケースも多く、時間的・経済的負担が生じる。国立がん研究センター中央病院 先端医療科の上原 悠治氏、小山 隆文氏らは、施設までの通院費と治験の参加可能性が関連するかを検討する後ろ向きコホート研究を行った。 2020~22年に、がん遺伝子パネル検査後に国立がん研究センター中央病院に治験目的で紹介された進行固形腫瘍患者1,127例を対象に、通院費と治験参加状況の関連を調査した。主要評価項目は遺伝子変異に関連した治験への参加、副次評価項目は遺伝子変異とは関連しない治験への参加だった。多変量ロジスティック回帰分析により、移動費用と治験参加率との関連を評価した。本研究の結果はESMO Real World Data and Digital Oncology誌オンライン版2025年2月25日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。・1,127例のうち、127例(11%)は遺伝子変異に関連した治験に参加し、114例(10%)は遺伝子変異とは関連しない治験に参加した。・通院費(公共交通機関の往復料金)の中央値は17ドル(約2,000円:2022年、研究開始時の為替レート[1ドル=120円]で計算)だった。多変量解析の結果、通院費が100ドル(約1万2,000円)以上の患者は、100ドル未満の患者と比較して、遺伝子変異に関連する治験に参加する割合が有意に低いことが示された(7%vs.13%、オッズ比[OR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.30~0.88)。・遺伝子変異に関連する治験への参加する割合は、通院費が100ドル未満、100~200ドル未満、200ドル以上と増加するにつれ低下した(13%vs.9%vs.6%、OR:0.70、95%CI:0.28~1.52、OR:0.46、95%CI:0.22~0.85)。・通院費は遺伝子変異とは関連しない治験へ参加する割合には影響を与えなかった。遺伝子変異に関連する治験の参加者は初回診察予約から治験参加までの期間の中央値が、遺伝子変異とは関連しない治験の参加者よりも短かった(21日vs.31日、p=0.006)。 この結果を受けた上原氏のコメントは以下のとおり。 「現在、国立がん研究センターでは、治験参加者への『被験者負担軽減費』として通院の負担を軽減する制度がある。しかし、当制度は参加者の居住地にかかわらず一律で、遠方に住む参加者は交通費の負担が重くなる傾向にある。本邦で治験を実施している多くのがんセンターや大学病院でも、こうした負担軽減費の相場は1回の通院あたり7,000~1万円程度となっており、通院費が遠方から治験を検討している患者の大きな負担となっていることが予想された。 米国の場合、2018年に出た米国食品医薬品局(FDA)のガイダンス1)で、通院費、宿泊費等の合理的な費用を支給することは治験参加者に対して不当な影響を及ばさない(=治験に参加する強い誘引にならない)旨が示されており、全額支給を行う医療機関も増えてきている。同様の制度を本邦で検討する際、実際に高額な通院費が治験に入る際の障壁になっていないかどうか検討するために計画したのが本研究だ。 結果として、がんの遺伝子変異に関連する一治験において、通院費負担が大きくなるほど参加する割合が低下することが確認された。遺伝子変異とは関連しない一治験では傾向が見出されなかったのは、遺伝子変異に関連する治験に比べて治験参加までの期間が長く、その間に病態が進行して参加できなくなる、などの背景があったと考察している。 本邦における治験へのアクセスの地域格差を解消するため、この結果をもとに、参加者の居住地に応じた被験者負担を軽減する制度の必要性が感じられた。今後は、患者個々の社会的因子を考慮した通院費の負担感など、より詳細な因子を調査することも検討している。また、オンライン診療などを活用する分散型臨床試験(DCT)の導入が別のアプローチの解決策となる可能性がある。」

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非専門医による診療機会を考慮、成人先天性心疾患診療ガイドライン改訂/日本循環器学会

 成人先天性心疾患診療ガイドラインが7年ぶりに改訂され、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会で山岸 敬幸氏(東京都立小児総合医療センター 院長/日本循環器学会 理事/日本小児循環器学会 理事長)が改訂点などを解説した。成人先天性心疾患の発生頻度 先天性心疾患は出生数に占める割合として1.3~1.5%で推移し、近年の少子化に伴い、その発症数は減少している。その一方で、診断技術の進歩や手術成績の向上により、患者の約90%が成人に達するようになり、生存期間中央値は、軽症84.1歳、中等症75.4歳、重症53.3歳と報告され、成人先天性心疾患の患者数は年間約1万例のペースで増加している1)。小児期には保護者に連れられて定期的に通院していた患者が、就学や就職などを契機に通院を中断し、成人期に不整脈や心不全などを発症して一般の循環器内科に受診するケースが増加しているため、成人先天性心疾患専門医以外の循環器医にも理解が必要な領域になっている。自然歴、後期合併症 本来、先天性心疾患は軽症でも、手術による修復後でも、生涯にわたって医療・管理を受けることが推奨される。というのは、先天性心疾患に対する手術は、一部の単純先天性心疾患を除いて根治術ではなく、あくまで正常な血行動態に近づける修復術であり、術後の異常として遺残症(residual disease:術前から認められ術後も持続する異常)、続発症(sequela:手術に伴って新たに生じる異常)、そして合併症(complication:修復手術に伴って予期せず生じる異常)があり、生涯にわたって管理を要する。また、小児期に手術適応にならない症例や、早期診断されずに未修復で成人になる症例もある。このような現状から、山岸氏は「今回の改訂に際し、専門医でなくとも標準的な診療を提供できるための指針となるよう、基本的な内容をわかりやすく記述するスタイルを維持した。診療に必要な情報を簡潔かつ明確に伝えることを優先し、小児科から成人診療科へのシームレスな移行と生涯的な管理に役立つことを目的とした」とガイドラインの構成について説明した。 現在、日本において成人先天性心疾患学会に認定されている専門医は全都道府県で登録されているものの、多くの成人先天性心疾患患者にフォローが必要な状況を考慮すると、その数は患者数に比して圧倒的に少ない。同氏は、「循環器診療に携わるすべての医療者に成人先天性心疾患患者の対応をしていただきたい」と説明した。 また、今回、同時に改訂された心不全診療ガイドライン2)に準じた心不全のステージ分類(図2、p.20)や症状(表4、p.21)が第2章の「心不全」の項に記載されているが、成人先天性心疾患にこの分類を当てはめることは容易ではなく、元々の形態や機能の異常を有するため、術前・術後にかかわらず、多くがステージBに相当する。また、特有の心不全症状があり、「たとえば、修正大血管転位症にみられる体心室右室や、単心室手術後のFontan循環が挙げられる。体心室右室は左室と構造が異なり、長期間にわたり体循環を支えることができないため、小児期には無症状であったとしても加齢に伴い心不全のリスクが高まる。Fontan循環も小児期には元気でも、潜在的な体うっ血と低心拍出が持続し、成人期に心不全として顕在化する。成人先天性心疾患では、このような心不全があることを非専門医にもおさえてもらいたい」と解説した。「なお、現状で推奨とエビデンスレベルを示せる病態は少ないが、感染性心内膜炎のように推奨表が掲載されているものもあるので、エビデンスレベルは高くはないが、併せて参照されたい」とコメントした。診断、内科的治療 続いて、成人先天性心疾患の診断と病態評価(第3章参照)については、「体心室右室の診断などでも心エコー検査が重要。心房・心室・大血管の心エコー法診断(表10、p.31)を用いることが有用」と説明した。心臓MRIは近年では有用なツールとして汎用されており、推奨表はないものの、適応が示された(表13、p.37)。心臓カテーテル検査については推奨表が記載され(推奨表2、p.38)、電気生理学的検査についても推奨とエビデンスレベルが示された(推奨表3、p.39)。 成人先天性心疾患の心不全は、数多くみられる成人の後天性心不全と異なり、右心不全が多いことが特徴で、これまでに蓄積されている薬物治療のエビデンスをそのまま当てはめることができない。そのため、心不全診療ガイドラインなどを参考にしながら、体心室右室やFontan循環といった先天性心疾患特有の病態を踏まえた内容が内科的治療(第4章、p.40)に盛り込まれた。肺高血圧症の最重症型であるEisenmenger症候群は、従来、治療法がなく対症療法により経過観察されてきたが、昨今、治療についてのエビデンスが集積しつつあり、推奨とエビデンスレベルが示されている(推奨表10、p.50)。非チアノーゼ型先天性心疾患・チアノーゼ型先天性心疾患 各論では、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、Fallot四徴症など、個々の疾患について、可能な限り解剖図が挿入され、推奨とエビデンスレベルが示された。最近、多くのFontan術後患者が成人になり、高齢化して明らかになってきた疾患として、FALD(Fontan-associated liver disease、Fontan関連肝疾患)が注目されているため、その診断およびフォローアップについて解説されている。 最後に山岸氏は「体系的にガイドラインとしてまとめることは難しい領域であるが、推奨が付けられる範囲でまとめ、専門医でなくとも標準的な診療を提供するための指針となるように作成した」と成人先天性心疾患の専門医以外の協力も仰ぎたい点を強調した。今回、Heart View誌2025年3月号3)にもガイドラインを踏まえたベストプラクティスとして特集が組まれており、「ぜひ一緒に読んでほしい」と締めくくった。(ケアネット 土井 舞子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起/日本糖尿病学会

 「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を適応症として2024年5月に発売された経口AKT阻害薬カピバセルチブについて、日本糖尿病学会では2025年4月15日、高血糖・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)発現についての注意喚起1)を発出した。以下に抜粋するとともに、これを受けて同日発表された日本乳学会からの見解2)についても紹介する。 インスリンシグナル伝達のマスターレギュレーターであるAKTを阻害するカピバセルチブにより、インスリン抵抗性が誘導され高血糖を発現するリスクが想定される。実際に臨床試験(CAPItello-291試験)3)では有害事象として16.9%に高血糖を認めており、わが国における市販直後調査(2024月5月22日~2024年11月21日)でも高血糖関連事象が33例報告され、そのうち1例がDKAにより死亡している(推定使用患者数約350例)。 臨床成績を踏まえ、適正使用ガイド4)においては、投与開始後1ヵ月間は2週間ごと、その後も1ヵ月ごとの空腹時血糖値の測定、3ヵ月ごとのHbA1cの測定が推奨されていた。しかしながらとくに注意すべき点として、投与開始1日目から高血糖の発現の可能性があること(高血糖発現の中央値:15日、範囲:1~367日)、一部の症例でDKAを発症すること、また、国内市販後ではもともと非糖尿病者であったにもかかわらず、カピバセルチブ投与を開始後、DKAを発症し、大量のインスリン(100単位/時間)投与によっても血糖マネジメントが不十分で死亡に至った症例が報告されていることが挙げられる。 CAPItello-291試験では、1型糖尿病またはインスリンの投与を必要とする2型糖尿病患者およびHbA1c 8.0%以上の患者は除外されていたことから、インスリン分泌が高度に低下した症例へのカピバセルチブ投与の際には、投与初日からのより綿密な血糖値などのモニタリング、食欲不振などの消化器症状を含めた問診および診察、ならびに原疾患治療にあたる医師と糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)の適切な連携が重要であると思われる。急激な血糖値上昇のリスクや大量のインスリン投与を要する可能性も想定し、診療にあたっていただきたい。 日本糖尿病学会からの注意喚起発出を受け、日本乳学会からも補足事項として見解が発表された。補足事項では、上記下線部分の症例に加え、同様にDKAを発症した症例がもう1症例あるとし、これらの症例はそれぞれ再発病変に対する10次治療、8次治療としてカピバセルチブが投与されているとした。乳がん診療医においては、CAPItello-291試験の適応基準(主に2次治療から3次治療での使用)に沿った治療を行うよう注意喚起するとともに、以下の見解を示している。・CAPItello-291試験の適応基準を守った場合でも高血糖やDKAが発生する可能性はあり、注意深い経過観察が必要であることには変わりないが、その場合の検査スケジュールは推奨されているものでよいと思われる。・やむを得ずCAPItello-291試験の適応基準外の投与となった場合には、検査や診察を含め厳重な経過観察が必要。・また、高血糖に関してGrade2以上の有害事象が発生した場合は、関係各科と緊密に連絡をとりながら厳重な経過観察が必要。

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症候性発作性AFのアブレーション、パルスフィールドvs.クライオバルーン/NEJM

 症候性発作性心房細動患者において、パルスフィールドアブレーション(PFA)はクライオバルーンアブレーション(CBA)と比較し、植込み型心臓モニターを用いた持続的リズムモニタリングによる評価で、心房性頻脈性不整脈の初回再発の発生率に関して非劣性であることが示された。スイス・ベルン大学のTobias Reichlin氏らSINGLE SHOT CHAMPION Investigatorsが、スイスの3次医療機関2施設で実施した医師主導の無作為化非劣性試験「SINGLE SHOT CHAMPION試験」の結果を報告した。肺静脈隔離術は発作性心房細動の有効な治療法で、PFAは非熱的アブレーション法のため心筋以外への有害作用はほとんどない。持続的リズムモニタリングを用いて評価したアウトカムに関するPFAとCBAの比較データは不足していた。NEJM誌オンライン版2025年3月31日号掲載の報告。アブレーション後の心房性頻脈性不整脈の再発を植込み型心臓モニターで評価 研究グループは、過去24ヵ月以内に12誘導心電図またはホルター心電図で30秒以上持続する症候性発作性心房細動が確認され、現在の心房細動治療ガイドラインに従って肺静脈隔離術の適応を有する18歳以上の成人患者を、PFA群またはCBA群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 PFA群では、多電極のペンタスプライン型PFAカテーテル(Farapulse、Boston Scientific製)、CBA群ではクライオバルーン(Arctic Front、Medtronic製)を用い、全例に植込み型心臓モニター(Reveal LinQ、Medtronic製)を留置して持続的リズムモニタリングを行った。 主要エンドポイントは、ブランキング期間以降のアブレーション後91~365日における30秒以上持続する初回心房性頻脈性不整脈(心房細動、粗動または頻拍)の再発とし、非劣性マージンは、再発の累積発生率の群間差(PFA群-CBA群)の両側95%信頼区間(CI)の上限20%ポイントとした。 安全性エンドポイントは、30日以内の手技関連合併症(心嚢穿刺を要する心タンポナーデ、24時間以上持続する横隔神経麻痺、介入を要する重篤な血管合併症、脳卒中/一過性脳虚血発作、左房食道瘻、死亡)の複合とした。再発率はPFA群37.1%vs.CBA群50.7%、PFAの非劣性が示される 2022年9月20日~2023年11月16日に計210例が無作為化された(PFA群105例、CBA群105例)。 主要エンドポイントのイベントはPFA群39例、CBA群53例に認められ、Kaplan-Meier法による累積発生率はそれぞれ37.1%および50.7%、群間差は-13.6%(95%CI:-26.9~-0.3、非劣性のp<0.001、優越性のp=0.046)であった。 30日以内の手技関連合併症は、PFA群で1例(1.0%)に脳卒中、CBA群で2例(1.9%)に心嚢穿刺を要する心タンポナーデが発現した。 なお著者は、検討したPFAはFarapulseシステムのみを使用しており、他のPFAシステムには当てはまらない可能性があること、追跡調査期間が1年と短期であることなどを研究の限界として挙げている。

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冠動脈疾患へのPCI、FFRガイド下vs.IVUSガイド下/Lancet

 血管造影に基づく冠血流予備量比(FFR)ガイド下で血行再建の決定やステント最適化を行う包括的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)戦略は、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCIと比較して、12ヵ月時の死亡、心筋梗塞または再血行再建術の複合アウトカムに関して非劣性が認められたことを、中国・the Second Affiliated Hospital of Zhejiang University School of MedicineのXinyang Hu氏らが、同国22施設で実施した医師主導の無作為化非盲検非劣性試験「FLAVOUR II試験」の結果で報告した。FFRガイド下での血行再建術の決定またはIVUSを用いたステント留置の最適化は、血管造影のみを用いたPCIと比較し優れた臨床的アウトカムが得られるが、血行再建の判断とステント最適化の両方を単一の手法で行った場合の臨床アウトカムの差は依然として不明であった。著者は、「今回の結果は、FFRガイド下PCIの役割と適応に関して、今後のガイドラインに影響を与えることになるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。1年後の死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合を比較 研究グループは、虚血性心疾患の疑いがあり、冠動脈造影で2.5mm以上の心外膜冠動脈に50%以上の狭窄が認められる18歳以上の患者を、血管造影によるFFRガイド下PCI群またはIVUSガイド下PCI群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けはWebベースのプログラムを用いて行い、試験実施施設および糖尿病の有無で層別化した。 両群とも、事前に規定されたPCI基準とPCI至適目標に基づいて、血行再建術の決定とステント留置の最適化が行われた。 主要アウトカムは、ITT集団における12ヵ月時点の死亡、心筋梗塞または再血行再建術の複合とし、非劣性マージンは累積発生率の群間差(絶対差)が2.5%ポイントとした。FFRガイド下はIVUSガイド下に対して非劣性 2020年5月29日~2023年9月20日に1,872例が登録された。このうち33例が同意撤回または医師の判断で登録中止となり、923例がFFRガイド下PCI群に、916例がIVUSガイド下PCI群に無作為化された。患者背景は、年齢中央値66.0歳(四分位範囲[IQR]:58.0~72.0)、男性1,248例(67.9%)、女性591例(32.1%)などであった。 FFRガイド下PCI群では標的血管990本中688本(69.5%)、IVUSガイド下PCI群では標的血管984本中797本(81.0%)で血行再建術が実施された。 追跡期間中央値12ヵ月(IQR:12~12)において、主要アウトカムのイベントは、FFRガイド下PCI群で56例、IVUSガイド下PCI群54例で確認され(6.3%vs.6.0%、絶対群間差:0.2%[片側97.5%信頼区間[CI]上限:2.4]、ハザード比[HR]:1.04[95%CI:0.71~1.51])であり、FFRガイド下PCIのIVUSガイド下PCIに対する非劣性が認められた(非劣性のp=0.022)。 全死因死亡率は、FFRガイド下PCI群1.8%、IVUSガイド下PCI群1.3%であり、群間差は確認されなかった(絶対群間差:0.4%[95%CI:-0.7~1.6]、HR:1.34[0.63~2.83]、p=0.45)。狭心症の再発率も両群とも低く、それぞれ923例中26例(2.8%)、916例中35例(3.8%)であった。

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iPS細胞移植、パーキンソン病患者の脳内でドパミン産生を確認/京大

 京都大学医学部附属病院と京都大学iPS細胞研究所とが連携して実施した、パーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植する第I/II相臨床試験において、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞は生着し、ドパミンを産生することが確認され、腫瘍形成などの重篤な有害事象は認められなかった。本結果により、パーキンソン病に対する安全性と臨床的有益性が示唆された。本結果はNature誌オンライン版2025年4月16日号に掲載された。 パーキンソン病では、中脳黒質のドパミン神経細胞が減少し、それによって動作緩慢、筋強剛、静止時振戦を特徴とする運動症候群を発症する。薬物療法は、初期の段階では運動症状を効果的に緩和するが、長期経過により運動合併症や薬剤誘発性ジスキネジア(不随意運動)など対応が困難な問題が生じる。そのため、失われたドパミン神経細胞を補充する細胞治療が代替治療法として検討されてきた。欧米では、ヒト中絶胎児の脳を移植する治験が行われてきたが、倫理的問題や安定した供給の困難さが指摘されてきた。 京都大学iPS細胞研究所の高橋 淳氏らの研究グループは、これまでにヒトiPS細胞からドパミン神経細胞を誘導する方法を開発し、サルのパーキンソン病モデルにおいて脳内でドパミンを産生し、運動症状を改善することを確認してきた。 2018年8月より開始した本試験「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」では、50~69歳の7例のパーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植した。主要評価項目は安全性および有害事象の発生とし、副次評価項目は運動症状の変化およびドパミン産生として、24ヵ月にわたって観察した。3例の患者は低用量移植(片側半球当たり2.1~2.6×106個の細胞)を受け、4例の患者は高用量移植(片側半球当たり5.3~5.5×106個)を受けた。安全性の評価は7例、有効性の評価は1例がCOVID-19感染のため6例で行われた。 主な結果は以下のとおり。・重篤な有害事象は発生しなかった。軽度~中等度の有害事象は73件発生した。・治療上の調整が必要でない限り、患者の抗パーキンソン病治療薬の投与量は維持されたが、その結果ジスキネジアが増加した。・MRIによる評価では、移植組織の異常増殖は認められなかった。・国際パーキンソン病・運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)パートIIIによる評価において、OFFスコアの改善が6例中4例、ONスコアの改善が5例に認められた。6例全体の平均変化量は、OFFスコアが-9.5(-20.4%)、ONスコアが-4.3(-35.7%)であった。・ホーエン・ヤールの重症度分類では4例の患者が改善した。・18F-DOPA PETでは、被殻のドパミン取り込み(Ki値)が平均44.7%増加し、高用量移植群でより顕著に認められた。 本結果は、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞のパーキンソン病患者への移植が安全かつ有効である可能性を示した初の報告となる。著者らは「将来的には、細胞移植と遺伝子治療、薬物療法、リハビリテーションを組み合わせることで、有効性を高める戦略が考えられる。さらに、iPS細胞を用いた自家移植も有望な選択肢となる可能性がある」とまとめている。

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臓器の生物学的老化の加速は疾患リスクに影響する

 臓器の生物学的年齢(臓器年齢)は人によって異なり、臓器の老化の加速により、その臓器だけでなく、他の臓器に関連した疾患のリスクも予測できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMika Kivimaki氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」3月号に掲載された。 Kivimaki氏らは、特定の臓器年齢の加速は、1)その臓器の疾患リスクを高めるのか、2)他の臓器に関連する加齢関連疾患や、それらの疾患の同時発症のリスクも高めるのか、を検討した。対象は、35年以上にわたり1万人以上の英国成人を追跡したホワイトホールII研究のデータから抽出した、45〜69歳の6,235人とした。対象者の血漿プロテオームの解析により9つの臓器(心臓、血管、肝臓、免疫系、膵臓、腎臓、肺、腸、脳)の年齢を推定し、同年代の人の臓器年齢との差を算出した。その後、対象者を平均19.8年間追跡し、45種類の加齢関連疾患とマルチモビディティ(多疾患併存)の発症について調査した。 年齢、性別、人種、解析対象外の臓器における年齢差を調整して解析した結果、臓器年齢の差が大きい人では、30種類の疾患のリスクが高いことが明らかになった。また、6種類の疾患は、それぞれが関連する特定の臓器の生物学的老化の加速とのみ関連していた。具体的には、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに、肝臓では肝不全リスクが2.13倍、心臓では拡張型心筋症リスクが1.65倍、慢性心不全リスクが1.52倍に、肺では肺がんリスクが1.29倍に、免疫系では無顆粒球症が1.27倍、リンパ節転移リスクが1.23倍の上昇を示した。さらに、臓器年齢の差が大きいほど、複数の臓器に関連した疾患が同時に発症するリスクも上昇を示し、臓器年齢の差が1標準偏差増加するごとに同リスクは、動脈で2.03倍、腎臓で1.78倍、心臓と脳で1.52倍、膵臓で1.43倍、肺で1.37倍、免疫系で1.36倍、肝臓で1.30倍に上昇していた。 意外なことに、認知症のリスクが最も高かったのは、脳ではなく免疫系の生物学的老化の加速が見られた人だった。研究グループは、「この結果は、重度の感染症にかかりやすい人は老年期に認知症になるリスクも高いという、これまでの研究結果を裏付けるものだ」と述べている。また、「この研究結果は、炎症プロセスが神経変性疾患の発症に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆するものだ」との見方も示している。 研究グループは、「この研究は、臓器特異的な血液検査が早期の疾患リスクの特定に役立つ可能性があることを浮き彫りにしている」と述べている。Kivimaki氏は、「このような検査により、将来的には、特定の臓器に対する適切なケアが必要かどうかのアドバイスや、特定の疾患を発症するリスクが高い可能性があるとの早期警告を提供できる可能性がある」と話している。

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抗血小板薬併用療法のde-escalationの意味わかる?(解説:後藤信哉氏)

 最近、急性冠症候群に対するPCI後の抗血小板薬併用療法のde-escalationという言葉がしばしば使われる。筆者には初めから言葉に対して違和感があった。de-escalationだから、放置しておくとescalationしてしまうのを、escalationしない方向に向けようという意味だろうか? 急性冠症候群は致死的疾患である。心筋梗塞になることを予防する必要があった。抗血小板薬併用療法にて血栓イベントリスクを低減させる努力が続けられた。当初から、抗血小板薬併用療法の有効性・安全性は12ヵ月の試験にて検証された。抗血小板薬開発に詳しい読者ならご存じのように、抗血小板薬併用療法の期間延長を目指す試験も施行された。疾病として血栓イベントリスク低減を目指すことは間違っていないが、長期の抗血小板薬併用療法では重篤な出血イベントリスクも増えてしまう。そこで、方向を変えてde-escalationを目指すグループも生まれた。 本試験は12ヵ月が標準治療であった抗血小板薬併用療法を、最短1ヵ月のfull dose抗血小板薬併用療法+5ヵ月のチカグレロル単剤+6ヵ月のアスピリン単剤群と比較した。12ヵ月の適応を取得した抗血小板薬開発企業にとってはまさにde-escalationを強いられる。使用するデバイスはpaclitaxel-coated balloonsなので、de-escalationできるのは急性冠症候群一般でなくpaclitaxel-coated balloonsの症例のみとde-escalationの対象を限局できるのが、製薬企業の容認できる部分だろうか? 中国1国で施行したランダム化比較試験であり、「paclitaxel-coated balloons」で治療を受けた症例であれば、と限局した条件ではあるが、抗血小板薬併用療法は1ヵ月でよいことを示唆した点は評価できる。

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大阪府民の心が一つになった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(576)

五百七十六の段 大阪府民の心が一つになった!2025年4月13日、ついに大阪万博が開幕しました。大阪では55年ぶりとなる万国博覧会です。この記念すべき日には、さまざまな関連イベントが行われ、その中でも注目されていたのが、航空自衛隊ブルーインパルスによる飛行でした。午前11時40分頃に関西空港を飛び立ち、大阪府の上空を1周するということを聞き、私たち夫婦も近所の見晴らしの良い場所まで出かけてみました。小雨の降るあいにくの天気にもかかわらず、すでに多くの家族連れが集まっており、歩道橋やビルの屋上、道路の脇まで人と車がビッシリ!「どこからこんなに人が来たんわけ?」と思うほど、辺りは善男善女であふれていました。みんな考えることは同じだったようですね。スマホでYouTubeの実況を見ながら、ブルーインパルスの登場を今か今かと待ちます。「今、関空を飛び立ったぞ」「3機は飛んだけど、あと3機はまだみたい」「先頭はもう大阪城に着いてしまうんじゃないか?」やきもきしていると、地上に残っていた3機が突然方向を変え、駐機場へ戻っていきました。続いて飛び立っていた3機も着陸し、結局、悪天候のため飛行は中止に。おそらく、単独での飛行は問題なくても、6機編隊によるアクロバット飛行はリスクが高いと判断されたのでしょう。中止の情報が知らされると、思わず「ざ〜んね〜ん!」とため息が……その瞬間、まさに大阪府民の心がひとつになったはず。さて、今回の万博は1970年以来の開催となります。私が小学生のときに体験したあの万博は、3月から9月までの半年間行われました。最初の頃の入場者数は1日10数万人程度でしたが、次第に増え、最終的には1日50万人を超える日もあったくらいです。「混雑もそのうち落ち着くだろう」と考えていた人たちの予想は外れ、終盤まで大混雑が続きました。私も2回ほど、会場に行きましたが、アメリカ館では「月の石」を見るために2時間待ち。  見た感想は「ただの石ころだ」というものでした。それでも当時は娯楽も限られていた時代なので、日本中が万博に熱狂していました。展示する側も気合いが入っていて、五重塔を模したパビリオンを建ててしまった企業まであったほどです。ウィキペディアで調べてみると、1年かけて建てた高さ86メートルの七重塔だったらしく、日本一高い東寺の五重塔よりも30メートルも高かったのだとか。その熱意とエネルギーには、ただただ驚かされます。今では当時の会場が「万博記念公園」や「ららぽーとEXPOCITY」として再開発され、その周囲には「万博外周道路」があります。この道路は1周5キロほどの大規模なものですが、今回の夢洲会場に設置された「大屋根リング」は1周2キロだそうです。この大屋根リングですが、当初、私は「直径2キロ、1周が6キロ。外周道路よりも大きい!」と勘違いして、ものすごく感動しました。実際にはそこまで大きくはなかったわけですね。写真で見ても1周2キロくらいのサイズ感なので、本当のサイズを知って妙に納得してしまいました。大屋根リングのほうも、勝手に感動されたり勝手に納得されたりで、さぞかし迷惑なことでしょう。今回の万博ですが、私自身は現地に行くかどうかはまだ決めていません。でも、もし行ったとしたら、個人的な楽しみよりも「本当に入場に2時間かかるのか」「退場に1時間かかるのか」「1杯4,000円の蕎麦とやらはどんな味なのか」「2億円かけたというトイレは一体どんな造りなのか」を体験して、ケアネット読者の皆さんに万博の実際をレポートしたいと思います。ということで最後に1句春雨の 幻となる インパルス

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第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会 会長インタビュー【Oncologyインタビュー】第49回

出演:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)教授 山本 信之氏2025年5月17日より、第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会が開催される。総会のテーマは「最高のがんサポーティブケアを目指して beyond evidence」である。会長の和歌山県立医科大学山本信之氏に学術集会の見どころについて聞いた。参考第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会ホームページ

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発達障害と緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第98回

発達障害と緩和ケア皆さんは発達障害について勉強したことはありますか? 精神科の先生以外は、専門的に勉強したことがある方は少ないかと思います。私も専門外ではありますが、緩和ケア領域では対応が難しい状況でしばしば議論になる分野ですので、この機会に少しご紹介します。今回の質問基幹病院から外来に紹介されたがん患者さんの紹介状に「発達障害の疑い」とありました。あまり詳しく勉強したことがない分野ですが、どのような点に注意が必要でしょうか?最初に、今回の議論の前提を共有しておきましょう。私自身、精神科の専門医ではなく、体系的に勉強した経験もありません。発達障害の医学的な正しい理解に当たっては、適切な文献や書籍を参照ください。私は緩和ケアの実践に当たって知っておくとよいこと、という観点から紹介します。発達障害は知的な能力の偏りが大きく、得意・不得意にばらつきが大きい、という特徴があります。特定の情報や感覚に集中し過ぎる、逆に気にし過ぎないといったことがあります。よくある例として、周囲から「空気が読めない」と評価されることがあります。「空気を読む」って、よく考えるとなかなか難しいことですよね。音情報としての相手の口調、映像情報として相手の表情をキャッチし、相手の社会的立場なども考慮して、どのように振る舞うべきかを決めなければなりません。でもこういうのって誰かが説明してくれるわけではありません。自分で多くの情報を処理して、適切に自分の行動に反映することが求められます。そして、こうしたことが苦手なことが多いのが、発達障害の特徴の1つです。さて、このような特徴が緩和ケアを提供するうえで、どのような問題となるのでしょうか? たとえば、痛みの評価で「一番痛かった時を10点とすると、今は何点ですか?」と尋ねることがよくあります。この質問に対して、「痛みを数字で表現なんてできません」って真顔で返答されることがあります。これは、「痛み」という自覚症状と「数字」という、まったく異なる情報を結び付けられないことから生じます。このような場合には、本人の表現しやすい方法で個別に痛みを評価する方法が必要です。たとえば、数字での表現が難しくても、「立ち上がる時に痛い」といった動作での表現ならばしやすいかもしれません。「痛みを数字に変換して、カルテに記載する」といった医療者目線だけでなく、患者さんの特性に合わせることでやり取りしやすくなります。ほかにも、発達障害の特性のある患者さんには、曖昧な言い方よりも具体的にはっきりと伝えたほうが良いことが多いようです。在宅療養を希望するかを知りたいとき、「これからどうしたいですか?」といった聞き方をすることが多いですよね。多くの場合、点滴などが減って、入院の治療が終了に近づいているような状況です。しかし、患者さんはこうした「暗黙の前提」を共有するのが苦手だったりします。そのため、「どうしたいって言われても、どうすれば良いか先生なのだから教えてください」といった反応があったりします。医療者の意図をくみ取れず、食い違いが生じているのですね。こういった場合、「来週に退院ができる病状になりそうなので、退院の準備について話をさせてください。たとえば、訪問診療など在宅医療の準備が必要かもしれません」といったように、具体的な話をすると伝わりやすくなります。最後に、発達障害を考える際の重要な点を紹介します。ここまで述べたように、発達障害を思わせる特性が強い患者さんがいても、必ずしも診断にこだわる必要はありません。また、本人が困っていなかったり、影響が許容範囲だったりするのであれば、あまり「発達障害」という用語を出す必要もないでしょう。最初に述べたように、空気を読むことの難しさは誰しもあるもので、あくまで程度の問題です。時としてレッテル貼りの弊害もあるので、発達障害という診断にこだわらないようにしましょう。患者さんとのコミュニケーションに違和感を持ったときに今回の話を思い出していただき、工夫してもらえたらと思います。今回のTips今回のTips発達障害の診断にこだわらず、緩和ケアを提供するうえで支障になる発達障害らしさに対して工夫しましょう。

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HBc抗体、単独陽性の解釈【1分間で学べる感染症】第24回

画像を拡大するTake home messageHBc抗体が単独で陽性である場合には、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つの可能性を考えよう。B型肝炎ウイルス(HBV)感染の血清学的マーカーのうち、単独のHBc抗体陽性に遭遇することがたびたびあります。一見解釈が難しそうに思えるこの結果ですが、次の4つのシナリオを考えることでしっかり理解することができます。1. ウインドウ期急性B型肝炎の回復過程で、HBs抗原が消失し、HBs抗体がまだ出現していない時期です。このHBs抗原の消失とHBs抗体の出現までの間は「ウインドウ期」と呼ばれ、HBc抗体のみ陽性となる可能性があります。この場合は、IgM型HBc抗体が陽性となることが多いです。2. 既感染(遠隔期)過去にHBVに感染し、時間の経過と共にHBs抗体が抗体価の低下によって陰性化する場合があり、HBc抗体のみが陽性となる状態です。とくに高齢者や免疫力が低下した人でみられることがあります。一度HBVに感染しているため、抗がん剤や免疫抑制薬の種類による再活性化のリスクを考慮し、HBV DNAの定期的モニタリングが推奨されます。3. 慢性感染(潜伏HBV感染)HBVに感染し、肝組織内に存在している状態です。HBs抗原が検出されない場合、通常のスクリーニングでは見逃されることがあります。HBV DNAが血清中で検出限界以下または低力価で検出されることがあります。慢性肝疾患や肝がんのリスクが増加する可能性があるため、長期的なフォローアップが必要です。4. 偽陽性近年の酵素免疫測定法(EIA)の精度向上により偽陽性率は低下していますが、自己免疫疾患での交差反応を中心に、一定の割合で発生することがあります。再検査、ほかのHBVを組み合わせることにより、次のステップにつなげることができます。以上、HBc抗体が単独陽性となった場合は、1)ウインドウ期、2)既感染(遠隔期)、3)慢性感染(潜伏HBV感染)、4)偽陽性の4つのうちのいずれかの可能性があります。患者のリスクを踏まえて適切に解釈できるよう心掛けましょう。1)Wang Q, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017;2:123-134

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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日本循環器学会(JCS)学術集会まとめ

国内最大規模を誇る日本循環器学会(JCS)学術集会。ここでは、CareNet.comで配信された本学術集会に関する過去5年分のニュース記事を開催年度ごとにまとめて紹介します。関連コンテンツ心不全診療Up to Date診療科別2024年上半期注目論文5選(循環器内科編)診療科別2024年下半期注目論文5選(循環器内科編)Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」脂質異常症診療Q&A見落とさない!がんの心毒性臨床留学通信 from Boston

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第7回 コーヒーの淹れ方が心臓の健康を左右する?ディテールがモノを言うかもしれないという話

コーヒーは多くの方にとって、朝の目覚めから仕事の合間の息抜きまで、幅広い場面で登場する身近な存在でしょう。健康への影響についてはさまざまな研究があり、「適量であれば体に良い」という話を耳にされたことがあるかもしれません。実際、コーヒーの摂取と2型糖尿病1)やパーキンソン病2)のリスク低下との関連を示した研究がこれまで報告されています。しかし、最近スウェーデンの大学の研究者が公表した研究3)によれば、ただコーヒーを飲むかどうかだけではなく、コーヒーの「淹れ方」にも注目する必要があるかもしれないということです。今回は、この研究の内容と結果をお伝えしたいと思います。フィルターの有無が生む意外な差今回ご紹介する研究では、いわゆる「悪玉」コレステロールであるLDLコレステロールの値を上昇させる可能性があるジテルペンがコーヒーに含まれる量を、職場や公共施設などに設置されているコーヒーマシンで抽出したコーヒーやドリップコーヒーなどを対象に測定しています。すると、紙フィルターを通すドリップ式と比べて、構造上フィルターの機能が弱いコーヒーマシンでは、ジテルペンが高い濃度で残る傾向がみられたのです。図. 各種コーヒー抽出液のジテルペン(カフェストール)含有量Orrje E, et al. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025 Feb 20. CC BY 4.0画像を拡大する以前から、トルコ式コーヒーやフレンチプレスなど「湯で煮出す」タイプ、あるいはフィルターを通さない抽出法ではジテルペンが多く含まれることが知られていました。これを踏まえ、一部の北欧諸国では「紙フィルターを用いてコーヒーを淹れる習慣」を推奨するガイドラインが示されています。実際、研究チームも「1日に何杯もコーヒーを飲む人が、紙フィルターを通さない淹れ方ばかりを選択すると、LDLを押し上げるリスクが高まるかもしれない」と指摘しています。日本人の日常にどう影響するのか日本ではコンビニやカフェ、自動販売機などから手軽にコーヒーを購入する機会が多いですが、これらがどのような抽出法かを常に意識する人は少ないかもしれません。とりわけ、職場にあるコーヒーメーカーで何杯も飲む方は、マシンが紙フィルターを使うドリップ方式なのか、それとも濃縮液をお湯で割るリキッド方式なのかなどを一度確認してみるのもよいかもしれません。研究では、リキッド方式のマシンではジテルペンが抑えられる傾向がある一方、抽出型のマシンではジテルペン濃度が高めになる可能性が示唆されています。また、エスプレッソのように短時間で高圧抽出する場合、特に高いジテルペン量が検出されたと報告されているため、日常的に何杯もエスプレッソまたはカフェラテなどを飲まれる方は注意が必要かもしれません。ただし、断定的に「エスプレッソは危険だ」とするものでもありません。実際の健康への影響がこの研究で測定されているわけではないため、一概に「どの淹れ方でどれほど健康リスクが高い」という話はできないからです。また、仮に健康リスクとの関連があったとしても、量も物をいうでしょう。しかし「フィルターをしっかり通したコーヒーの方が、余計なコレステロール上昇リスクを抑えやすい」という認識は持っていてもいいのかもしれません。コーヒーは香りや風味、リラックス効果など、多くの人を魅了する存在です。その一方で、こうした研究をきっかけに、淹れ方や飲み方にも少し目を向けてもいいのかもしれません。コーヒーに関する研究は無数にありますが、その淹れ方で分けると、研究結果が変わってくるのかもしれません。そうした視点は著者の私にもなかったので新しい発見で、体に良いイメージのあるコーヒーだからこそ、抽出法のようなディテールにも今後の研究で目を向けていく必要があるのでしょう。総じて、今回の研究結果だけをもとに「絶対に紙フィルターを使うべき」などと極端に捉える必要はないでしょう。あくまで自分の生活に合ったスタイルを保ちつつ、もしコーヒーをよく飲まれる方は適切なフィルターを選んだり、飲む頻度を一度見直してみたりしてもいいのかもしれません。今後さらに健康への直接的な影響を評価した研究が行われれば、この「淹れ方」による違いが実際問題どの程度の影響をもたらすのかが明確になるでしょう。いずれにせよ、同じコーヒーでも 「抽出方法の違い」が健康上の意味を持つかもしれないという鋭い視点は、コーヒーのみならずさまざまな食事、飲料にも応用が効きそうな話だったのではないでしょうか。 1) Huxley R, et al. Coffee, decaffeinated coffee, and tea consumption in relation to incident type 2 diabetes mellitus: a systematic review with meta-analysis. Arch Intern Med. 2009;169:2053-2063. 2) Zhang T, et al. Associations between different coffee types, neurodegenerative diseases, and related mortality: findings from a large prospective cohort study. Am J Clin Nutr. 2024;120:918-926. 3) Orrje E, et al. Cafestol and kahweol concentrations in workplace machine coffee compared with conventional brewing methods. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025 Feb 20. [Epub ahead of print] ■新着【大画像】/files/kiji/20250304132940-sns.png【サムネイル】/files/kiji/20250304133008.png

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若年性認知症患者、過去30年間で2倍超

 若年性のアルツハイマー病やその他の認知症(EOAD)は、患者本人だけでなくその家族にも大きな負担をもたらす。しかし、EOADの世界的な負担は、これまで十分に調査されていなかった。中国・Jinan University First Affiliated HospitalのZenghui Zhang氏らは、1990〜2021年の世界の疾病負担(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors:GBD)2021研究のデータを用いて、EOADの世界、地域、各国の負担を評価するため、本研究を実施した。European Journal of Neurology誌2025年3月号の報告。 GBD2021のデータより、40〜64歳の成人データを抽出した。主要アウトカムは、EOADの年齢調整罹患率、発生率、死亡率、障害調整生存年(DALY)、21地域および204ヵ国における年平均変化率(AAPC)とした。 主な結果は以下のとおり。・2021年のEOAD症例数は775万件(95%不確実性区間[UI]:5.82〜10.08)に達しており、1990年の367万件(95%UI:2.75〜4.76)から2倍超の増加が認められた。・年齢調整罹患率は、1990年は10万人当たり341.2人(95%UI:255.89〜442.79)であったが、2021年には363.5人へ増加しており、AAPCは0.26%であった(p<0.001)。・2021年のEOAD有病率は、女性(428万人、95%UI:3.24〜5.56)のほうが男性(346万人、95%UI:2.57〜4.52)よりも高かった。・2021年におけるEOADの死亡者数は0.07万人(95%UI:0.01〜0.23)、377万人(95%UI:1.69〜8.88)DALYであった。・さらに、106万人DALYは、喫煙、空腹時血糖値の上昇、高BMIに起因していた。 著者らは「40〜64歳におけるEOADの世界における症例数は、1990年から2021年にかけて、2倍超に増加している。この問題に対処するためにも、ターゲットを絞った戦略および介入が早急に求められる」と結論付けている。

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日本の男性乳がんの生存率、女性乳がんと比較~12府県のがん登録データ

 男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。 本研究では、宮城県、山形県、栃木県、新潟県、福井県、愛知県、滋賀県、大阪府、鳥取県、山口県、長崎県、熊本県において1993~2011年に診断された乳がん18万1,540例(うち男性1,058例、0.6%)を解析した。5年および10年の純生存率(net survival:がん以外の死亡がなかったと仮定した場合の生存率)を推定し、性別、期間(1993〜97年、1998〜2002年、2003〜06年、2007〜11年)、年齢(50歳未満、50〜69歳、70〜99歳)、病期、組織型で層別化した。過剰ハザード比(EHR)は、期間、年齢、病期、組織型で調整した。これらの因子間の異質性の評価にはコクランのQ検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・男性乳がん全体の5年および10年純生存率推定値はそれぞれ90.7%(95%信頼区間[CI]:86.3~93.7)および83.7%(同:72.2~90.8)、女性乳がん全体ではそれぞれ88.3%(同:88.1~88.5)および79.1%(同:78.7~79.4)であった。・男性乳がんの生存は女性乳がんと同程度であり、EHRは5年生存で0.88(95%CI:0.70~1.09)、10年生存で0.86(同:0.69~1.07)であった。・異質性の分析では、これらの層において生存率に有意な性差は認められなかった。

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