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安物椅子の効能【Dr. 中島の 新・徒然草】(595)

五百九十五の段 安物椅子の効能暦の上ではもう秋、朝夕は少しばかり過ごしやすくなりました。それでも日中に水道の蛇口を捻るとお湯が出てきます。「あれっ? 給湯になっているのかな」と思うのは、こんな時ですね。もちろんそんなはずもなく、暑さのせいで水がお湯になっているわけですが。さて、言うまでもなく、われわれが追求しているのは西洋医学。東洋医学や民間医療に比べると、生死を左右する病気の診断や手術を含む治療では絶大な威力を発揮します。しかし、日常生活の中で生じるちょっとした不調、たとえば頭痛や腰痛、不眠、倦怠感といった愁訴に対しては、私自身もなかなか本気になれません。先日、私の外来を訪れた70代の女性。背筋の伸びたダンスインストラクターでした。主訴は歩行障害です。3ヵ月ほど前から右足が動きにくくなったのだとか。実際に歩いてもらうと、確かに右足を軽く引きずっています。それだけでなく、右の腰と臀部の軽い痛み、右膝窩部から下腿前面にかけての違和感も訴えていました。すでに他の医療機関で撮影した頭、頚椎、腰椎のMRIでは、これといった異常が見当たらなかったとのこと。私はいろいろな問診と身体所見を取った結果、最終的に坐骨神経痛、それも梨状筋症候群が歩行障害の主たる原因ではないかと思うに至りました。これは坐骨神経が梨状筋によって圧迫され、下肢の運動障害や感覚障害を呈する疾患です。当然のことながら、患者さんの次の疑問は治療です。正直なところ、私自身は坐骨神経痛とか梨状筋症候群についてはまったくの素人。そこで汗だくになってネット検索をしたのです。患者さんの前でスマホをあれこれ触るのもカッコ悪いのですが、他に方法はありません。苦し紛れの説明をせざるを得ませんでした。 中島 「治療は大きく分けて3つ。外科的治療、内科的治療、その他といったところです」 患者 「外科的治療というのは手術のことですか?」 中島 「そういうことになりますね」 患者 「とんでもない、手術なんかしません!」 そりゃそうでしょうね。どう考えても「圧迫している梨状筋を切ろう」などというのは単純すぎる発想です。 患者 「内科的治療というのは薬ですか?」 中島 「薬とか湿布とかブロック注射あたりだと思います」 患者 「どんな薬を使うのでしょうか」 中島 「鎮痛剤とかかな」 患者 「そんなに痛いわけじゃないのに?」 痛くない人に痛み止めを使っても意味ないですよね。同じ理屈で、湿布もブロック注射も却下。「痛みさえ取れればスムーズに歩ける」という状況でもないわけだし。となると、次は「その他」の治療か?実は診察中、自発痛や圧痛を調べるために、この患者さんの臀部を押したり引いたりしたのです。そのことが結果的に梨状筋をマッサージすることになったのでしょうか。直後に、患者さんが軽快に歩けるようになりました。スムーズに歩けたのは、わずか2〜3メートルだけで、すぐに元に戻ってしまったわけですが。でも、このことは大切なヒントになっているかもしれません。つまり、アプローチとしてはマッサージやストレッチ、エクササイズの方向性も考えられるということです。それ以上のことは私にはわからなかったので、梨状筋症候群をホームページで熱く語っている整形外科クリニックを探し出し、そちらを受診するようお勧めしました。帰宅後に「梨状筋症候群 ストレッチ」で検索すると、YouTubeに大量の動画が存在することに気付きました。もちろん玉石混交だろうとは思いますが、その中には彼女に適したものもあるはず。幸い、1ヵ月後にフォローの再診予約を入れているので、その後の状況をお伺いしようと思います。後で聞いたところ、同僚の中には梨状筋症候群になったという医師もいました。彼女の場合、転勤して椅子が立派になってから、次第にこの患者さんと同じような症状に苦しめられたそうです。それまで愛用していた安物の椅子に変えると、徐々に元に戻ったのだとか。そう考えると、ひょっとして今回の患者さんも、椅子が変わった類のエピソードがあるのかもしれません。再診の時に確認してみましょう。さらに、この患者さんがダンスインストラクターであることを考えても、身体を動かす系の治療法を提案したほうが、納得感が得られるのではないかという気がします。これまで私は、マッサージ、ストレッチ、エクササイズといった方法をあまり重視してきませんでしたが、そういったものも有力な治療オプションの1つではないかと思うようになりました。日々、西洋医学を実践する一方で、少しばかり視野の広がる思いをした次第です。引き続き、この患者さんの経過を見守ることといたしましょう。最後に1句 秋の日々 あれこれ考え また試す

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抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第9回

抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!Question年齢相応の心機能で、とくに大きな異常のない発症後4時間経過した発作性心房細動の50歳台女性に、胸部違和感改善のためリズムコントロールを目指しピルシカイニド注を投与しましたが、リズムコントロールできず別の薬剤で再度リズムコントロールを目指すこととなりました。画像を拡大する

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第25回 医師の服装、白衣はもう古い?最新研究が明かす意外な“正解”

病院を訪れたとき、診察室に入ってきた医師の服装を見て、無意識に「頼りになりそう」「話しやすそう」といった第一印象を抱いた経験はないでしょうか。長年、医師の象徴とされてきた「白衣」ですが、実は患者が本当に信頼を寄せる服装は、状況によってまったく異なることが最新の研究で明らかになっています。BMJ Open誌で発表された論文1)は、医師の服装に対する患者の認識に関する28件の研究を分析したものです。その結果、患者の好みは診察を受ける場所、医師の専門分野、さらには医師の性別によっても大きく変化することが示唆されています。単なる身だしなみの問題ではなく、服装が患者との信頼関係を左右する重要なコミュニケーションツールであることが、改めて浮き彫りになりました。かつて医師の服装は、19世紀後半に衛生観念と科学の象徴として「白衣」が標準となった歴史があります。しかし、多様化する現代の医療現場において、その常識は変わりつつあるのかもしれません。救急外来ではスクラブ、専門外来では白衣?場所で変わる「理想の医師像」今回の研究で最も明確になったのは、患者が医師に求める服装は「TPO」によって決まるという点です。たとえば、一刻を争う救急初療室や手術室といった緊張感の高い環境では、患者は圧倒的に「スクラブ(手術着)」を好む傾向にありました。これは、スクラブが清潔さや専門性、そして「いつでも動ける準備ができている」という頼もしさを感じさせるためだと考えられています。実際に、コロナウイルスのパンデミックを経て、衛生管理への意識が高まったことで、スクラブや個人防護具(PPE)に対する好意的な見方が強まったようです。実際、私の働くニューヨークでも、パンデミック前には「スーツ+ネクタイ」が男性医師のスタンダードのようになっていましたが、パンデミック後はスクラブが定着しました。一方、かかりつけ医のようなプライマリーケアの現場では、少し事情が異なります。長期的な関係構築やコミュニケーションが重視されるため、カジュアルな服装に白衣を羽織ったスタイルが「親しみやすい」として好まれると報告されています。さらに、専門分野による違いも興味深いところです。たとえば、皮膚科や脳神経外科、眼科の患者は伝統的な白衣を好む一方で、麻酔科や消化器内科ではスクラブ姿の医師が好まれる傾向がみられました。これは、患者がその専門分野の性質(処置が多いか、対話が中心かなど)を無意識に理解し、それに合った服装を医師に期待していることの表れかもしれません。男性医師はスーツで信頼度UP、女性医師は白衣で「看護師」に?服装に潜む無意識の偏見今回の研究で、もう一つ注目すべきは服装の印象が医師の性別によっても大きく異なるという点です。論文によると、男性医師がスーツに白衣といったフォーマルな服装をしていると、患者から「よりプロフェッショナルで信頼できる」と評価される傾向が強くみられました。ところが、女性医師が同様の服装をしていても、患者から看護師や他の医療スタッフと誤解されてしまうケースが頻繁に報告されたのです。これは、患者側に根強く存在する「医師は男性」「看護師は女性」といった無意識のジェンダーバイアスが、服装の認識にも影響を与えていることを示唆しているのかもしれません。女性医師は男性医師よりも外見で判断されやすいという指摘もあり、服装が意図せずして性別による壁を生み出している現実が浮き彫りとなりました。この研究は、「画一的なドレスコード」ではなく、状況や患者の期待に合わせた、より柔軟な服装規定の必要性を示唆しています。医師の服装は、単なる「ユニフォーム」ではありません。患者に安心感を与え、円滑なコミュニケーションを促し、治療効果を高める可能性を秘めた、重要な一要素なのです。参考文献・参考サイト1)Kim J, et al. Patient perception of physician attire: a systematic review update. BMJ Open. 2025;15:e100824.

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退職は健康改善と関連、とくに女性で顕著――35ヵ国・10万人規模の国際縦断研究/慶大など

 退職が高齢者の健康に与える影響は一様ではない。近年、多くの国で公的年金の受給開始年齢が引き上げられ、退職時期の後ろ倒しが進んでいる。こうした状況に対し、退職の健康影響を検討した研究は数多いが、「認知機能を低下させる」「影響はない」「むしろ有益である」と結果は分かれていた。 慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らの研究グループは、米国のHealth and Retirement Study(米国健康・退職調査:HRS)をはじめとする35ヵ国の縦断調査データを統合解析し、50〜70歳の10万6,927例(観察数39万6,904例)を対象に、退職と健康・生活習慣の関連を検証した。本研究の結果はAmerican Journal of Epidemiology誌オンライン版2025年6月13日号に掲載された。 本研究のアウトカムは、退職後の認知機能(単語記憶テスト)、身体的自立度(ADL/IADL)、自己評価による健康度(5段階)、生活習慣(身体的不活動[中等度~強度の運動が週1回未満]、喫煙、大量飲酒[男性1日5杯以上、女性4杯以上])の変化であった。参加者は2年ごとに調査され、平均6.7年間追跡された。各国の年金受給開始年齢を操作変数とした固定効果付きIV回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 参加者の男女比は半々で、就労者と比較して退職者は年齢が高く、男性・既婚者・高学歴の割合が低かった。また、肉体労働や職務裁量が低い職歴の経験割合も低かった。【女性】・認知機能:+0.100標準偏差(SD)改善・身体的自立度:+3.8%改善・自己評価健康度:+0.193 SD改善・身体的不活動:-4.3%減少・喫煙:-1.9%減少【男性】・自己評価健康度:+0.100 SD改善認知機能、身体的自立度、生活習慣には有意な改善なし。 退職はとくに女性において認知機能や身体的自立を高め、生活習慣の改善を伴うことが示された。 研究者らは「なぜ退職は女性だけに有益なのか」という問いに対し「背景に退職後の生活行動に性差がある可能性がある」と指摘している。「女性は退職後に社会参加や余暇活動に積極的に関わる傾向が強く、身体活動の機会が増える。また、職場ストレスからの解放が喫煙行動の減少につながる可能性がある。これらの行動変化が、認知機能や身体機能の維持・改善に寄与していると考えられる。一方、男性は退職後にそのような生活習慣の改善が目立たず、効果は自己評価の健康度の改善にとどまった。通勤・労働負担の減少や余暇の拡大が主観的な健康感を高めたものとみられる」とした。 さらに、研究者らは「退職は健康状態を改善するが、年金受給開始年齢の引き上げによってこの効果を享受できる時期が遅れる可能性がある」と警鐘を鳴らす。「とくに女性にとっては、退職が認知症や身体機能障害のリスク低減に結び付く可能性があり、退職時期の遅延が社会的コストを増大させかねない。政策的な年金受給開始年齢引き上げの影響は慎重に検討する必要がある。また、退職後の健康的なライフスタイルを推進することは、公衆衛生全体を改善するための不可欠な取り組みとなるだろう」としている。

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ブレクスピプラゾールによるアジテーション治療は認知症患者だけでなく介護者にとっても有効

 香川大学の中村 祐氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する日本人患者を対象に、ブレクスピプラゾール治療が患者の神経精神症状および介護者の苦痛に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。 第II/III相多施設共同二重盲検試験において、ブレクスピプラゾール1mgまたは2mg/日群およびプラセボ群に3:4:4でランダムに割り付け、10週間の治療を行った。評価には、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いた。患者の症状および介護者の苦痛は、NPIおよびNPI-Distressで定義した。 主な結果は以下のとおり。・10週目におけるNPI総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.2(p=0.5891)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−8.4(p<0.0001)であった。・10週目におけるNPI-Distress総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.1(p=0.2292)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−3.9(p<0.0001)であった。・ブレクスピプラゾール2mg/日群とプラセボ群を比較したところ、NPIスコアは2ポイント以上、NPI-Distressの興奮/攻撃性スコアは1ポイント以上の改善を示した。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人の急性期認知症における患者の症状改善および介護者の苦痛軽減に有効である可能性が示唆された」としている。

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cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。 本研究は、ドイツの大学の乳がんセンター3施設を対象とした後ろ向き多施設コホート研究であり、2020~24年にHR+/HER2-乳がんと診断され、INSEMA試験の基準(cT1、グレード1~2、50歳以上、cN0、乳房温存術を施行)を満たす867例を解析した。病理学的リンパ節転移陽性(pN+)の割合、術後に上方修正された病期やグレードの割合、術後治療への影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の内訳は、50~60歳が305例、61~70歳が275例、71~80歳が236例、80歳超が51例であった。・SNBによってpN+と診断されたのは124例(14.3%)であった。・微小転移と孤立性腫瘍細胞を除外した場合、SNBを省略すると見逃される転移の割合は10.5%であった。この割合は、INSEMA試験やSOUND試験とほぼ同等であった。・pN+は、若年、腫瘍径が大きい、Ki67値が高い患者で多かった。・pN+となった124例のうち101例で化学療法やCDK4/6阻害薬、放射線照射などの術後治療が新たに考慮された。・SNBで病期やグレードが術後に上方修正された割合は18.8%であり、もしSNBを省略していた場合には2次的にSNBが必要になった可能性があった。・CDK4/6阻害薬の適応症例における再発予防に必要な手術数は、年齢と腫瘍径によって大きく異なり、111~333例に1例であった。 これらの結果より、研究グループは「一部の患者ではSNBの省略は安全であると考えられる。しかし、今回のリアルワールドデータの解析では、遺伝子発現プロファイルなど他の予後予測ツールを併用しない限り、腋窩リンパ節の評価は依然として個別の治療方針の決定に重要であることを示唆している」とまとめた。

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富裕層の医師はどれくらい?/医師1,000人アンケート

 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)によると、2023年の日本の富裕層・超富裕層の世帯数は前回調査(2021年)から11.3%増加し、合計約165万世帯となった。これは全体の約3%に当たる。では、医師のなかに富裕層・超富裕層はどれくらいいるのだろうか。そこで、CareNet.comでは20~60代の医師1,005人を対象に、世帯年収・純金融資産額に関するアンケート調査を実施した(2025年7月27日~8月2日実施)。本アンケート調査では、世帯年収と純金融資産額を調査し、富裕層・超富裕層の割合を算出した。また、資産運用の成功/失敗のエピソードも募集した。世帯年収1,400万円以上は53.1%、3,000万円以上は16.1% 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)では、共働きで世帯年収1,500万円以上の家庭を「パワーファミリー」、都市部居住の共働きで世帯年収3,000万円以上の家庭を「スーパーパワーファミリー」としている。 では、医師の世帯ではどうだろうか。CareNet.comが実施したアンケート調査では、世帯年収1,400~3,000万円が49.8%、3,000万円以上が10.8%であった。この数字には、既婚かつ片働きの世帯(431人)や独身世帯(177人)が含まれている。そこで、共働き世帯(397人)に絞ってみると、世帯年収1,400~3,000万円が53.1%、3,000万円以上が16.1%であった。すなわち、共働き世帯のうちパワーファミリー相当は7割近くに上り、スーパーパワーファミリー相当も2割弱ということになる。富裕層・超富裕層は約13% 次に、世帯の純金融資産保有額※について聞いた。富裕層・超富裕層は純金融資産保有額に基づいて定義され、富裕層は「1億円以上5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」である。野村総合研究所のレポート1)では、日本の富裕層は153.5万世帯(2.8%)、超富裕層は11.8万世帯(0.2%)とされている。 こちらも医師の世帯をみてみると、富裕層に当たる「1億円以上5億円未満」は11.2%、超富裕層に当たる「5億円以上」は2.0%であった。富裕層と超富裕層を合わせると13.2%に上り、日本全体の3.0%を大きく上回った。 富裕層・超富裕層の割合を開業医・勤務医別にみると、開業医では19.3%、勤務医では7.2%であり、開業医が高かった。また、共働き世帯は富裕層・超富裕層の割合が高く17.2%であった。片働き世帯は10.4%、独身世帯は11.3%であった。年代別にみると、年代が上がるほど富裕層・超富裕層の割合が高く、60代では18.3%に上った。※ 純金融資産は、現金・預金や株式などの金融資産総額から住宅ローンなどの負債総額を差し引いたものを指す。不動産や車などは含まない。資産運用の実施、20~40代は7割超 資産運用の実施状況を聞いた。その結果、運用中と回答した割合は、全体では64.7%であった。しかし、年代別にみると20代、30代、40代がそれぞれ71.4%、78.5%、75.6%と高かった一方で、50代、60代はそれぞれ55.1%、54.7%と低い傾向にあった。また、50代、60代の3割超が、資産運用を一度も実施したことがないと回答した。日本株、オルカンやS&P500などの投資信託が人気 資産運用の内訳をみると、運用対象は「日本株」が最も多く(60.0%)、次いで「投資信託/ETF(全世界):オールカントリーなど」(46.7%)、「投資信託/ETF(米国):S&P500など」(43.8%)であった。不動産(12.4%)、金・プラチナ(12.4%)、暗号資産(8.4%)なども一定数を占めた。 また、「投資・資産運用の成功/失敗エピソード」を募集したところ、成功例として「新型コロナ流行期の押し目買い」「S&P500の長期積立」「ドルコスト平均法」などが挙げられた。一方、失敗例としては「証券会社や銀行の勧誘で購入した商品の暴落」「FXなどでの大損」「株式を保有していた会社の倒産」などが目立った。【成功エピソード】・コロナショックの時、日本株を買いあさって、5,000万円の含み益がある(50代、腎臓内科)・駅直結の新築マンションを購入したら、期待通りに値上がりした(50代、その他)・S&P500を堅実に積み立てており、元本の倍くらいになっている(40代、精神科)・2022年ごろから、ひたすらドルコスト平均法。失敗は感じていない(20代、眼科)【失敗エピソード】・証券会社に勤める患者さんに勧められて人生で初めて購入した株があっという間に値下がりし、現在は100分の1になっている。その患者さんは来なくなった(50代、内科)・投資会社に勧められた株を買ったあと暴落した。すぐに損切りしてしまったが、その後10年経って株価が上がった。塩漬けでも持っておけばよかったと思った(60代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・FXなどで一瞬で5,000万円くらい溶かしたことがあるので、リスクの高い投資は行わないようにしている(50代、産婦人科)・トルコリラの投資をしたら1/3になった(50代、泌尿器科)・株式を保有していた会社が倒産した(60代、内科)・研修医時代にワンルームマンションに投資。売却したがとんとんだった。苦労のほうが多い(40代、皮膚科)・最近株を盗まれた(60代、腎臓内科)・かなり前に株で大損して(2,000万円くらい)以後株の世界から足を洗った(60代、内科)・いつも損ばかり(60代、内科)【その他のエピソード】・知らないものには手を出さない(40代、内科)・投資信託に現金を使い過ぎて、給料日まで現金がギリギリとなり、ひもじい日々を過ごした(30代、放射線科)・株を買ったら買いっぱなし。その後の株価を見ることもない(60代、泌尿器科)・損失が怖くて大きなお金は株式投資できない(40代、脳神経外科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の世帯年収・資産はどれくらい?/医師1,000人アンケート(ケアネット 佐藤 亮)■参考文献・参考サイトはこちら1)株式会社野村総合研究所ニュースリリース(2025年2月13日)9月限定!CareNetふるさと納税 9月限定で「CareNetふるさと納税」を実施します。キャンペーンにご参加いただくとCareNetポイントを大量進呈!! 10月からの制度変更前、最初で最後のポイント祭! 賢い節税&厳選返礼品も。お見逃しなく!※キャンペーンはサービス開始日~9月30日までとなります。

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抗IL-4Rαモノクローナル抗体薬stapokibart、鼻茸を伴う重症慢性副鼻腔炎に有効/JAMA

 鼻茸を伴う重症の慢性副鼻腔炎成人患者において、日常的な点鼻ステロイド療法にstapokibartを併用投与することで24週時の鼻茸サイズと鼻症状の重症度を有意に改善させることが示された。中国・首都医科大学のShen Shen氏らが、中国の51施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「CROWNS-2試験」の結果を報告した。stapokibartは、新規の抗インターロイキン4受容体αサブユニット(IL-4Rα)モノクローナル抗体であり、中国において中等症~重症のアトピー性皮膚炎ならびに季節性アレルギー性鼻炎の治療薬として用いられている。第II相無作為化二重盲検比較試験「CROWNS-1試験」において、鼻茸を伴う重症の好酸球性慢性副鼻腔炎に対する有効性が示されていた。JAMA誌オンライン版2025年8月18日号掲載の報告。ステロイド点鼻療法へのstapokibart併用をプラセボ併用と比較 CROWNS-2試験の対象は鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の成人患者で、スクリーニングの6ヵ月以上前に副鼻腔手術歴があるか、または過去2年以内に全身性ステロイド投与歴があり、両側の鼻茸スコアが5以上(範囲:0~8)かつ週平均鼻閉スコアが2以上(範囲:0~3)の患者であった。なお、登録患者の60%以上は鼻茸を伴う好酸球性慢性副鼻腔炎であることとした。好酸球性慢性副鼻腔炎は、血中好酸球が6.9%以上(喘息なし)または3.7%以上(喘息あり)、鼻茸組織中好酸球数が55個/HPF以上または27%以上と定義した。 研究グループは、適格患者をstapokibart(300mg皮下投与)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、2週ごとに24週間投与した(試験投与期)。両群とも4週間の導入期および試験投与期中、モメタゾンフランカルボン酸エステル点鼻液を1日1回(各鼻腔に100μg)噴霧した。 主要エンドポイントは2つで、全体集団および好酸球性慢性副鼻腔炎患者集団における24週時の鼻茸スコアおよび鼻閉スコアのベースラインからの変化であった(意味のある変化の閾値[MCT]はそれぞれ≧1点および≧0.5点)。stapokibartの有効性と安全性を確認 2022年8月9日~2023年4月28日に、274例がスクリーニングされ、適格患者180例が無作為化された。このうち、179例(平均[±SD]年齢45.0±12.9歳、女性61例[34.1%])が少なくとも1回試験薬の投与を受けた(stapokibart群90例、プラセボ群89例)。追跡調査終了日は2024年6月25日であった。 24週時における鼻茸スコアのベースラインからの最小二乗(LS)平均変化量は、全体集団でstapokibart群-2.6点、プラセボ群-0.3点(LS平均群間差:-2.3、95%信頼区間[CI]:-2.6~-1.9、p<0.001)、好酸球性慢性副鼻腔炎患者集団ではそれぞれ-3.0点、-0.4点(-2.5、-2.9~-2.1、p<0.001)であった。 24週時における鼻閉症状のベースラインからのLS平均変化量は、全体集団でstapokibart群-1.2点、プラセボ群-0.5点(LS平均群間差:-0.7、95%CI:-0.9~-0.5、p<0.001)、好酸球性慢性副鼻腔炎患者集団でそれぞれ-1.3点、-0.5点(-0.8、-1.0~-0.6、p<0.001)であった。 有害事象の発現割合は、stapokibart群77.8%、プラセボ群69.7%、重篤な有害事象はそれぞれ2.2%、1.1%であった。stapokibart群では、プラセボ群に比べて関節痛(7.8%vs.0%)ならびに高尿酸血症(5.6%vs.1.1%)の発現割合が高かった。

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スピロノラクトン、維持透析患者の心不全・心血管死を減少させるか/Lancet

 維持透析を受けている腎不全患者において、スピロノラクトン25mgの1日1回経口投与はプラセボと比較し、心血管死および心不全による入院の複合アウトカムを減少させなかった。カナダ・McMaster UniversityのMichael Walsh氏らが、12ヵ国143の透析プログラムで実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「ACHIEVE試験」の結果を報告した。維持透析を受けている腎不全患者は心血管疾患および死亡のリスクが大きいが、スピロノラクトンがこれらの患者において心不全および心血管死を減少させるかどうかは明らかになっていなかった。著者は、「本試験では、維持透析患者におけるスピロノラクトン導入の有益性は認められなかった。維持透析患者の心血管疾患と死亡を減少させるための、ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に代わる選択肢について、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2025年8月16日号掲載の報告。心血管死または心不全による入院の複合アウトカムをプラセボと比較 ACHIEVE試験の対象は、45歳以上、または糖尿病の既往がある18歳以上の腎不全患者で、3ヵ月以上維持透析を受けている患者であった。 研究グループは、登録患者全例に非盲検導入期としてスピロノラクトン25mgを1日1回7週間以上経口投与し、血清カリウム値が6.0mmol/Lを超えておらず、忍容性があり試験薬の服薬を順守できると判断した患者を、ブロック無作為化法(ブロックサイズ4)により、施設で層別化し、スピロノラクトン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。患者、医療従事者および評価者は、いずれも盲検化された。 主要アウトカムは心血管死または心不全による入院の複合アウトカムで、無作為化された全患者を解析対象集団としてイベント発生までのtime-to-event解析を行った。無益性のため試験は早期に中止 2017年9月19日~2024年10月31日に3,689例がスクリーニングされ、3,565例が非盲検導入期に登録された。このうち2,538例が、スピロノラクトン群(1,260例)またはプラセボ群(1,278例)に無作為化された。患者背景は、女性931例(36.7%)、男性1,607例(63.3%)であった。 2024年12月10日時点で、主要アウトカムのイベント報告数508件(総予想数の78%)を含む中間解析の結果に基づき、外部の安全性・有効性モニタリング委員会により無益性による試験の早期中止が勧告された。最終追跡調査は2025年2月28日に終了し、追跡期間中央値は1.8年(四分位範囲:0.85~3.35)であった。 複合アウトカムのイベントは、スピロノラクトン群で258例(10.46件/100患者年)、プラセボ群で276例(11.33件/100患者年)に認められ、ハザード比(HR)は0.92(95%信頼区間[CI]:0.78~1.09、p=0.35)であった。 両群で心血管死(HR:0.89、95%CI:0.74~1.08)、心臓死(0.81、0.64~1.03)、血管死(1.07、0.77~1.47)、および全死因死亡(0.95、0.83~1.09)はいずれも同等で、心不全による初回入院(0.97、0.72~1.30)ならびにあらゆる初回入院(0.96、0.87~1.06)も両群で差はなかった。

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白血病治療薬が高リスク骨髄異形成症候群にも効果を発揮

 最近承認された白血病治療薬が、致命的な骨髄疾患と診断された一部の患者にも有効である可能性が、パイロット試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)患者の約5人に3人が、米食品医薬品局(FDA)が2022年に、急性骨髄性白血病(AML)患者向けに承認したオルタシデニブ(商品名レズリディア)による治療に反応を示したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンター白血病部門主任のJustin Watts氏らによるこの研究結果は、「Blood Advances」に7月16日掲載された。 オルタシデニブは、腫瘍の発生に関与する変異型イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)を選択的に阻害する薬である。FDAは、IDH1遺伝子変異陽性の再発または難治性AML成人患者に対してオルタシデニブを承認している。Watts氏らによると、AML患者の約10%にIDH1遺伝子変異が見られるという。しかし、この変異はMDS患者の約3〜5%にも見られるため、同氏らは、オルタシデニブがこの疾患の治療においても有効なのではないかと考えた。 米国がん協会(ACS)によると、前白血病またはくすぶり型白血病とも呼ばれるMDSは、骨髄内の造血細胞に異常が生じて血球が正常に成熟できなくなって発症し、貧血や感染症、出血傾向、免疫機能の低下などが生じる。MDSはAMLへ進行することが多いという。 Watts氏らは、IDH1遺伝子変異陽性で中等度から極めて高リスクのMDS患者22人(年齢中央値74歳、男性59%)を対象に、オルタシデニブの単剤療法と、AMLやMDSに対する標準的な抗がん薬であるアザシチジンとの併用療法の有効性を検討した。対象者のうち6人が単剤療法(再発/難治性4人、初回治療2人)、16人が併用療法(再発/難治性11人、初回治療5人)を受けた。 その結果、全奏効率(ORR)は全体で59%(完全寛解率27%〔6/22人〕、骨髄における完全寛解率32%〔7/22人〕)、治療に対する反応の評価が可能だった19人では68%(完全寛解率32%〔6/19人〕、骨髄における完全寛解率37%〔7/19人〕)であった。治療法別のORRは、単剤療法群で33%(2/6人)、併用療法群で69%(11/16人)であった。奏効に至るまでの期間(TTR)は中央値2カ月、奏効期間(DOR)は中央値14.6カ月、全生存期間(OS)は中央値27.2カ月であった。さらに、ベースライン時に輸血依存だった患者のうち、62%が赤血球輸血非依存(56日間)に、67%が血小板輸血非依存に到達したことも示された。 Watts氏は、「非常に高リスクのMDS患者集団において、奏効率だけでなく、血球数の改善、DORの延長、OSの改善など、実に注目すべき成果が得られた」とマイアミ大学のニュースリリースで述べている。また、研究グループは、「以前の研究では治療抵抗性MDS患者の生存期間は6カ月未満だったことを考えると、本研究結果は心強い」と述べている。 研究グループによると、この研究結果はすでに治療基準の変更につながっており、国立総合がんセンターネットワークのガイドラインにおいて、IDH1遺伝子変異陽性のMDS患者に対してオルタシデニブによる治療が推奨されている。研究グループは現在、どのAML患者とMDS患者がオルタシデニブに長期的に反応する可能性があるかを検討しているところだという。

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若年者の大腸がん検診受診率を上げる方法は?(解説:上村 直実 氏)

 わが国における2023年の部位別がん死亡数は、男性では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんの順に多く、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は推定14万8,000例で死亡者数が5万3,000例とされており、罹患者のうち3例に1例が死亡すると推測される。大腸がんの場合、早期がんの完治率は90%以上であり、早期発見とくに検診ないしはスクリーニングの整備が喫緊の課題となっている。 西欧諸国では免疫学的便潜血検査(FIT)、便中の多標的RNA検査、直接の大腸内視鏡検査などさまざまな検診方法の有効性を比較する臨床研究が盛んに報告されている。しかし、いずれの検診方法を行っても、大腸がんの死亡率低下には検診の受診率がキーポイントとなっている。今回、大腸がんの著明な増加が報告されているものの検診受診率がきわめて低い若年者(45~49歳)を対象として、最も効果的なリクルート法を模索した臨床研究が施行された結果、電子媒体を用いてFITのみまたは大腸内視鏡検査のみの推奨に対して受諾または拒否を選択する方法に比べて、FITと大腸内視鏡検査2種類を送付したものから患者が能動的に選択する方法の検診受診率が有意に高く、さらにFITのキットを直接郵送して患者に受諾または拒否を選択してもらう方法が最も有効であることが2025年8月のJAMA誌に報告された。 人口が日本の約3倍である米国と本邦の年間大腸がん死亡者数は5万例強でほぼ同数で、大腸がん死亡率は本邦のほうが著明に高いことが明らかになっているが、その原因は検診受診率の差であるとされている。すなわち、米国は自由診療のため大腸内視鏡検査は数十万円を要するが、50歳を過ぎた国民に大腸内視鏡検査を1回のみ無償で提供しており、便潜血検査による検診と合わせると、大腸がん検診受診率は約70%とされている。一方、本邦の1次検診受検率は20%で、便潜血検査の陽性者のうち精査の大腸内視鏡検査を受けているのは60%であり(日本大腸肛門病学会)、検診受診率は10%強にすぎず米国と比較して著しく低いといえる。このように、米国と本邦の大腸がん死亡率の差は検診受診率の差によるものと考えられる。 今回の論文にある臨床研究に関しては、方法自体が電子媒体を用いた患者伝達法など日本の現状とは大きく異なるものがあり、一概に参考にならないと思われるが、上述したように大腸がんは早期発見により90%以上が完治可能な疾患であることから、日本で行われている1次検診(FIT)から精密検査の大腸内視鏡検査へ誘導する過程でも便潜血キットの送付による方法も考慮して、大腸がん死亡者を減らすために住民検診や企業健診で用いられているFITによる1次検診の参加率を向上する新たな方策を検討すべき時である。

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ChatGPTで英語革命!ChatGPTの「いろは」【タイパ時代のAI英語革命】第3回

ChatGPTの種類前々回、前回でAIに関しての知識を深めたところで、ようやくChatGPTを使っていきましょう。ChatGPTは、OpenAIが提供する対話型AIツールで、ブラウザバージョンとアプリが存在します。質問や指示を入力することで、まるで人と話すように自然な文章で回答を得ることができます。まずはChatGPTを使用する際に、無料か有料かで使えるバージョンが異なり、大きく2つのプランがあることを知っておきましょう。1)無料プラン使用できるモデルGPT-5、使用超過時はGPT-5 miniに切り替えGPT-5は2025年8月に登場し、以前のGPT-4oからさまざまな機能が改良されました。無料版でも時間当たり制限付きで有料版の機能を使えます。ただ、これが一定回数を超えるとGPT-5 miniにダウングレードされます。2)有料(ChatGPT Plus)プラン 月額20ドル(約3,000円)使用できるモデルGPT-5 / GPT-5 Thinking / GPT-4o / GPT-4.1 / GPT-4.1 mini / その他Legacyモデル先ほど説明したものに加えて、有料版では以下のような性能が備わっています。下の図を参考にしていただければと思います。画像を拡大するこのように、機能が大きく異なります。1日数回程度しか使わない場合は無料版の使用範囲内でも事足りるかもしれませんが、私はいつも作業の際に常にスクリーンの1つにChatGPTを開いておくほど頻繁に使用しています。今後の回で医療英語におけるさまざまなChatGPTの使い方を紹介するに当たり、ストレスなく無制限&最大限の機能を使えるよう、いったん有料版を契約することを強くお勧めします。月額制なので、使ってみて必要ないと思えば翌月に解約することもできます。ChatGPTの設定サインアップせずに使うと、使える機能が限りなく狭められるのと、チャットの記録が残らず不便なので、まずはアカウント登録とサインアップから始めましょう(すでにアカウントを持っている方は飛ばしてください)。まずはChatGPTの画面を開き、出てきた画面の右上の「無料でサインアップ」をクリックして指示に従い、アカウントを作成します。これで登録が完了すれば、ChatGPTを開いた時に自動的に自分のアカウントが開くようになるはずです。登録後は左にタブ画面が出るようになります。画像を拡大する左タブの「新しいチャット」をクリックすると、新しいチャットボックスが出て、新たな会話ができるようになります。新たなボックスを開くたびに以前のチャットは消え、左下に履歴として残ります。チャットボックスの左にある「+」を押すと、画像や動画をアップロードできます。ツールをクリックするといくつかの機能(Deep Search、画像を作成する、ウェブ検索、canvasなど)が表示され、それをクリックすると各機能に特化した専用チャットボックスが作られます。本連載では、これらのツール単体を直接使用することはあまりないので、「こんなものもあるんだな」程度に理解しておいていただければOKです。基本的にはチャットボックスにすべての指示を書き出すことで、上記の機能を使うこともできます。右にはマイクボタンがありますが、これを使うとタイピングの代わりに音声認識をして文字起こしをしてくれます。そして一番右にある4本線を押すと音声モードに切り替わります。こちらをクリックすると、タイピングなしでChatGPTと会話ができます。驚くほど自然なトーンで話し掛けてきます。この機能は今後の活用術でたくさん使うことになりますので、ぜひ覚えておいてください。ChatGPTのメモリ機能有料版にすると、過去のチャットボックスを保存するメモリ機能があると記載しましたが、デフォルトではメモリ機能がオンになっています。見た目には過去のチャットの学習履歴が消えてしまっていても、実はチャット内容はデータとして残されており、ある程度たまってくると、新しいチャットボックスであっても使用者の過去のチャットの深い記憶が引き継がれています。一例を挙げると、私が1年以上メモリ機能をオンのまま使用しており、新しいチャットボックスを開いた際に、「私の仕事が何だったか忘れました。何でしたっけ?」と聞いてみたところ、私の職場、職歴、自分の研究内容、発表内容など、詳細に情報が出てきて驚きました。便利なようですがこの機能は一長一短です。たとえば、自分の英語学習の進捗やレベルの推移などをGPTに記憶させたい際には、この機能を使って「今の自分のスピーキングにおけるアクセントは1週間前と比べてどれくらい成長しましたか?」と書くと、過去の記憶を引っ張り出して比較してくれます。ただ、先ほどのように個人情報が自分のGPTに詳細に記憶され、そのデータが利用される可能性も否定はできません。また、自分の思考の特性なども記憶されるため、ChatGPTが生み出してくれる情報が自分好み、つまりバイアスがかかった回答になることもありえます。こうした点を避けるために、メモリ機能をオフにしたい際には以下の方法で設定が可能です。まずは→チャットボックスの右上にある「アカウント」のマークをクリック→「設定」をクリック→「パーソナライズ」をクリック→「保存されたメモリを参照する」「チャット履歴を参照する」をオフこの設定でメモリに残らなくなります。また、特定のチャットボックスのみ履歴を残したくないときは、アカウントマークの横にある吹き出しマークをクリックすると、履歴に残ったり、ChatGPTのメモリを使用または更新したり、モデルの学習に使用されたりすることのない一時チャットモードに切り替えることができます。

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第278回 いよいよ本格化するOTC類似薬の保険外し議論、日本医師会の主張と現場医師の意向に微妙なズレ?(後編)

「調査対象に偏りが見受けられるため、調査結果については詳細な分析が必要」と日本医師会こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いろいろあった夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)も終わり、野球はNPBとMLBのポストシーズン進出争いにその焦点が移ってきました。気になるのはMLBのロサンゼルス・ドジャースの夏に入ってからの失速ぶりです。この週末のサンディエゴ・パドレスとの3連戦では1勝2敗と負け越し、結果、パドレスにナショナル・リーグ西地区首位に並ばれました(現地8月24日現在、25日には再び首位に)。投手陣、とくにリリーフ陣の弱さがポストシーズンに向けて最大の弱点になっています。大谷 翔平選手で視聴率を稼いできたNHKも気が気でないでしょう。開幕時はワールドシリーズ出場間違いなしと言われたスター軍団のあと1ヵ月余りの戦いぶりと、ダルビッシュ 有投手擁するパドレスのさらなる追い上げに注目したいと思います。さて、今回も前回に引き続き、三党合意(自民・公明・維新)で決まったOTC類似薬の保険外しについて書いてみたいと思います。前回は、日本医師会が8月6日の記者会見で、OTC類似薬の保険外しの動きに対し強い反対の意向を改めて表明、その理由として「経済的負担の増加」と「自己判断・自己責任での服用に伴う臨床的なリスク」を挙げたこと、その一方で、今年7月、日本経済新聞社と日経メディカル Onlineが共同で医師に対して行った調査では「OTC類似薬の保険外しに医師の賛成6割」という意外な結果が出たことについて書きました。日本医師会は、記者会見でこの結果に対し、「調査対象に偏りが見受けられるため、調査結果については詳細な分析が必要」と苦言を呈したのですが、そんなに”偏った”調査だったのでしょうか。もう少しその内容を見てみましょう。「保険適用から外してもよい」と考える薬効群分類は「総合感冒薬」「湿布薬」「ビタミン剤」など日経メディカル Onlineは7月30日付けで「医師7,864人に聞いたOTC類似薬の保険適用除外への賛否」という記事を配信しました。対象は日経メディカル Onlineの医師会員で総回答者数は7,864人、調査期間は参議院選挙前の2025年7月1~6日です。同記事によれば、調査に回答した医師の過半数である62%が「OTC類似薬の保険適用除外」に対し賛成(「賛成」20%、「どちらかと言えば賛成」42%の合計)でした。なお、回答した医師の内訳は、病院勤務医70.1%、診療所勤務医15.2%、病院経営者1.5%、診療所開業医10.8%、研究者・行政職1.1%、その他2.4%です。病院勤務医が7割と最も多く、診療所開業医が実際の割合(病院長含め開業医の割合は医師全体の約2割程度)よりも若干低かったのですが、大きな「偏り」というほどのものではないでしょう。立場別での賛否では、病院勤務医が「賛成」の率が最も高く(69%)、次いで診療所勤務医(54%)、病院経営者(51%)の順でした。診療所開業医は「賛成」36%、「反対」が63%でした。「反対」が多いとはいえ約4割が保険適用除外に「賛成」とは、ある意味意外な結果でした。OTC類似薬のうち、「保険適用から外してもよい」と考える薬効群分類について聞いた質問では、「総合感冒薬」(51%)、「外用消炎鎮痛薬(湿布薬)」(41%)、「ビタミン剤」(37%)、「外用保湿薬(ヘパリン類似物質など)」(31%)が上位を占めました。保険適用から除外してよいと考える理由については、「増え続ける国民医療費を抑制するため」52%、「医薬品目的で受診する人を減らすため」31%、「OTC薬と効果に大きな違いがないため」27%、「多忙な診療業務の負担を軽減するため」16%という結果でした。つまり、勤務医を中心に現場の医師たちの実に半数が、増え続ける医療費をなんとかせねばと考えており、さらに、医師の働き方改革や医師偏在によって多忙を極める医師たちの一定数が、OTC類似薬の保険適用除外は医薬品目的で受診する人を減らし、診療業務を効率化するためにプラスになると考えているわけです。日本医師会の主張と現場の医師の意向のズレは、「軽症でも患者を手放さず、初診料・再診料を柱に診療報酬を確保する」ことを第一義とする(診療所開業医中心の)日医と、「本当に診療が必要な患者だけを効率的に診たい」現場医師との間にある、”診療方針のズレ”といえるかもしれません。OTCよりも危険な処方薬ですらきちんと説明が行われず、ポリファーマシーによる健康被害も起こっている日本医師会は「自己判断・自己責任での服用に伴う臨床的なリスク」を反対の理由に挙げ、「OTC類似薬の保険適用除外は、重複投与や相互作用の問題等、診療に大きな支障を来たす懸念がある」とその危険性を指摘していますが、現実問題として重複投与や相互作用を常に気にしながら処方箋を書いている医師はどれくらいいるのでしょうか。以前(第270回 「骨太の方針2025」の注目ポイント[後編])にも書いたことですが、そもそも現状、処方箋を発行する医師は薬の説明をほぼ薬局薬剤師に丸投げし、その薬局薬剤師も印刷された薬剤情報提供書を右から左へ受け流しているだけ、というところが少なくありません(私や家族の経験からも)。OTCよりも危険な処方薬ですらきちんと説明が行われず、ポリファーマシーによる健康被害も起こっている状況はそのままに、「OTC類似薬の保険適用除外は、診療に大きな支障を来たす懸念がある」とはやや言い過ぎではないでしょうか。「経済的負担の増加」は税制などの制度変更とマイナ保険証を活用したDXで改善できるのでは?OTC類似薬の保険適用除外のもう一つの問題と言われる患者の「経済的負担の増加」ですが、こちらは税制などの制度変更とマイナ保険証を活用したDXで改善できるのではないでしょうか。今年5月の三党協議の場で、使用額が大きいOTC類似薬の上位6品目と湿布薬1品目について、通常の使用日数で患者負担額がどれくらい違うかについての厚生労働省の試算が示されています。それによれば、「ヘパリン類似物質クリーム」で市販薬はOTC類似薬の5.4倍、その他の薬でも1.1〜3.4倍という結果でした。日本医師会の江澤 和彦常任理事は8月6日の記者会見でOTC類似薬を保険適用外にすることで、患者の自己負担額で比較すると30倍以上になると指摘、「経済的な問題で国民の医療アクセスが絶たれる」と懸念を示しています。しかし、患者負担の面からみれば増加ですが、国の医療費負担の面からは削減になるわけで、セルフメディケーション税制(特定市販薬を年1万2,000円超購入した場合、超過分を8万8,000円まで控除できる制度)の限度額や対象薬剤を拡充したり、医療費控除との併用を認めるような改革を行ったりすれば、患者の経済的負担増はいくらでも軽減できると思います。セルフメディケーション税制は現行の医療費控除の「特例」のため、重複控除を避ける必要があるため「選択適用」となっていますが、それこそ今の時代に合っていない制度と言えるでしょう。なお、セルフメディケーション税制については2026年12月に制度の期限を迎えるものの、国は制度の恒久化と対象薬剤(インフルエンザ検査を追加など)の拡大を検討しています。3党合意と骨太の方針でOTC類似薬の保険適用除外が決まっているのですから、それに合わせて同制度の抜本的な見直しを期待したいところです。セルフメディケーション推進で職能の重要性が増すと考えられる薬剤師、しかし日本薬剤師会はOTC類似薬の保険適用除外になぜか「反対」また、薬局等でOTCを購入しているのが患者本人なのか、家族など第三者用なのか、というチェック等もマイナンバーカードを活用し、お薬手帳の情報などと紐付けることで、より効率的に行うことができるのではないでしょうか。さらに、セルフメディケーション税制に基づく所得控除の申告もe-Tax(国税電子申告・納税システム)で簡単にできるようにすれば、OTCの活用は今まで以上に進むはずです。要はそうした制度・仕組みをつくろう、セルフメディケーションを推進しようという意欲や熱意が国や各ステークホルダーにあるかどうかだと思います。その意味では、診療と処方権を絶対に手放したくない日本医師会はさておいて、セルフメディケーション推進でその職能の重要性が増すと考えられる薬剤師を束ねる日本薬剤師会が、OTC類似薬の保険適用除外に対して「今までの仕組みを壊すことになる」(岩月 進・日本薬剤師会会長)などとして「反対」の立場を表明(2025年2月段階)しているのがまったく解せません。薬剤師は自分たちの職能を高めたり、仕事を増やしたりすることが嫌いなのでしょうか。AIやロボットに仕事を奪われてもいいのでしょうか。OTC類似薬の保険適用除外は、2025年末までの予算編成過程を通じて具体的な検討を進め、早期に実現可能なものは2026年度から実行される予定です。そうした動きを阻止するべく日本医師会、日本薬剤師会など守旧派勢力が今後、どんなアクション起こすかが注目されます。

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看護師の燃え尽きがインシデントを招く?データが示す実態【論文から学ぶ看護の新常識】第28回

看護師の燃え尽きがインシデントを招く?データが示す実態看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)が、患者の転倒や投薬エラーといったインシデントの発生と関連していることが、最新の大規模メタアナリシスで示された。Lambert Zixin Li氏らによる研究で、JAMA Network Open誌2024年11月4日号に掲載された。看護師のバーンアウトと患者の安全、満足度、ケアの質との関連:システマティックレビューとメタアナリシス研究チームは、看護師のバーンアウトと、患者の安全、満足度、ケアの質との関連の大きさと、その調整因子を評価することを目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。Web of Scienceなどの7つのデータベースを用いて、1994年1月1日から2024年2月29日までの研究を検索した。主な結果は以下の通り。32ヵ国、28万8,581名の看護師を含む85件の研究が対象となった。患者の安全への影響:看護師のバーンアウトは、患者の安全に関する以下の指標の悪化と関連していた。安全文化・風土の低下(標準化平均差[SMD]:−0.68、95%信頼区間[CI]:−0.83~−0.54)患者安全評価グレードの低下(SMD:−0.53、95%CI:−0.72~−0.34)院内感染の増加(SMD:−0.20、95%CI:−0.36~−0.04)患者の転倒の増加(SMD:−0.12、95%CI:−0.22~−0.03)投薬エラーの増加(SMD:−0.30、95%CI:−0.48~−0.11)有害事象や患者安全インシデントの増加(SMD:−0.42、95%CI:−0.76~−0.07)看護ケアの未実施の増加(SMD:−0.58、95%CI:−0.91~−0.26)(褥瘡の頻度との有意な関連はなかった)患者満足度への影響:看護師のバーンアウトは、患者満足度の評価の低下と関連していた(SMD:−0.51、95%CI:−0.86~−0.17)。(患者からの苦情や患者虐待の頻度とは有意に関連しなかった。)ケアの質への影響:看護師のバーンアウトは、看護師自身が評価したケアの質の低下と関連していた(SMD:−0.44、95%CI:−0.57~−0.30)。(標準化死亡率とは有意に関連しなかった。)関連の強さ:上記の関連は、看護師の年齢、性別、職務経験、地域によらず一貫しており、年数が経過しても持続していた。患者安全のアウトカムでは、バーンアウトの「個人的達成感の低さ」は、「情緒的消耗感」や「脱人格化」よりも関連が小さく、また「大学教育を受けた看護師」においても関連が小さかった。看護師のバーンアウトは、医療の質と安全性の低下、そして患者満足度の低下と関連していることが明らかになった。最新のシステマティックレビューとメタアナリシスから、看護師のバーンアウトが患者の安全、満足度、そしてケアの質に直接影響を与えることが明らかになりました。これは、看護師個人の情緒的消耗や脱人格化といった問題にとどまらず、医療現場における安全文化の低下、院内感染の増加、転倒、投薬エラー、看護ケアの未実施など、具体的なインシデントに直結することがデータで示されています。この「バーンアウトと、患者安全・満足度・ケアの質の低下」という重要な関連は、看護師の年齢や性別、職務経験、働く国や地域によらない、普遍的な課題であることが示されました。さらに、バーンアウトによる患者安全への悪影響は過去30年間改善されることなく続いており、ケアの質への悪影響は、時代と共に強まっているという深刻な実態も明らかになりました。これらの結果は、臨床現場でインシデントが増加している場合、その原因を看護師個人の問題として叱責したり、表面的な要因の追求だけで終わらせるべきではないことを示しています。むしろ、スタッフの精神的な疲労やバーンアウトが根底にある可能性をぜひ考慮してみてください。この視点を持つことで、問題への介入方法が大きく転換し、看護師のウェルビーイング向上だけでなく、患者さんへの安全で質の高いケアの提供に直接繋がることが、本研究でも示唆されています。さらには、本研究結果を通して、エッセンシャルワーカーである私たち看護師の労働環境や待遇の改善について、組織や行政が改めて考える一つのきっかけになることを願います。論文はこちらLi LZ, et al. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2443059.

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医師の終末期の選択、95%が延命治療を拒否

 医師が進行がんや末期アルツハイマー病になった場合、どのような終末期医療を希望するのか? ベルギー・ブリュッセルのEnd-of-Life Care Research GroupのSarah Mroz氏らによる研究結果が、Journal of Medical Ethics誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。 研究チームは2022年5月~2023年2月に一般開業医、緩和ケア専門医、その他臨床医の1,157人を対象に横断的調査を実施した。ベルギー、イタリア、カナダ、米国(オレゴン州、ウィスコンシン州、ジョージア州)、オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州)の8エリアで、参加した医師に進行がんと末期アルツハイマー病という2つの仮想の臨床シナリオを提示し、終末期医療の意向に関する情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・出身国に関係なく、進行がんとアルツハイマー病の両ケースで90%以上の医師が症状緩和のための薬物療法を希望し、95%以上が心肺蘇生、人工呼吸器、経管栄養を避けることを希望した。・医師が心肺蘇生、人工呼吸器、経管栄養の延命治療を「良い選択肢」だと考えることはまれだった(心肺蘇生:がんの場合0.5%・アルツハイマー病の場合0.2%、人工呼吸器:同0.8%・0.3%、経管栄養:同3.5%・3.8%)。・医師の約半数が安楽死(積極的安楽死・医師幇助による自殺)を良い選択肢だと考えていた(がんの場合54.2%、アルツハイマー病の場合51.5%)。安楽死を良い選択肢だと考える医師の割合は、がんの場合はイタリアの37.9%からベルギーの80.8%、アルツハイマー病の場合は米国・ジョージア州の37.4%からベルギーの67.4%と幅があった。・安楽死の法的選択肢がある地域で開業している医師は、がん(オッズ比[OR]:3.1)とアルツハイマー病(OR:1.9)の両方に対して、安楽死を良い選択肢だと考える傾向が強かった。 研究者らは「医師の多くは、終末期における症状の緩和を強化し、延命治療を避けることを好む傾向があった。進行がんやアルツハイマー病の場合、半数以上の医師が安楽死を希望した。安楽死の希望は地域によって大きなばらつきがあり、安楽死の合法化が、地域ごとの希望に影響を与えているようだ」としている。

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肥満症には社会全体で対応し、医療費を削減/PhRMA、リリー

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)と日本イーライリリーは、「イノベーションによる健康寿命の延伸と国民皆保険の持続性:肥満症を例にして」をテーマにヘルスケア・イノベーションフォーラムを都内で共同開催した。 肥満症は、わが国でも患者数が増加し、健康障害と社会的スティグマ(偏見)を伴う、深刻な慢性疾患となっている。その一方で、肥満者の生活習慣のみがフォーカスされ、自己管理の問題と見なされる傾向がある。従来は、運動療法や食事療法など治療選択肢が少なかったこともあり、他の疾患と同じレベルの必要な治療が行われてこなかった。 しかし、近年では、治療薬という新たな治療選択肢が登場し、肥満症に関連する健康障害の改善のみならず、国民皆保険制度の持続可能性の向上にも寄与することが期待されている。 フォーラムでは、臨床、財務行政、厚生行政、製薬のパネリストが、肥満症をテーマに、医療政策の現状と課題、今後の医療イノベーションの役割について議論した。重篤な疾患の上流にある肥満症対策が医療費の軽減につながる はじめに日本イーライリリー 代表取締役社長のシモーネ・トムセン氏が、「肥満疾患の社会経済的負担は重大であり、数兆円規模で影響を与えている。早期介入を通じ、肥満関連健康障害を改善することは、財政的負担を軽減する大きな機会となる。このフォーラムを通じ、肥満症が適切に診療され、肥満症患者にとってより良い治療環境を実現するための第一歩を踏み出せることを願う」と挨拶した。 続いてシンポジウムでは、門脇 孝氏(虎の門病院院長)、岡本 薫明氏(元財務事務次官)、鈴木 康裕氏(国際医療福祉大学学長)、パトリック・ジョンソン氏(イーライリリーアンドカンパニー エグゼクティブ・バイスプレジデント)が登壇した。 シンポジウムでは、「なぜ今肥満症か?」、「日本の肥満症の課題と解決策」、そして「医療制度の持続性」について議論された。肥満症に焦点が当たっている理由として、肥満・肥満症が死に至る健康障害(心筋梗塞、脳卒中など)の上流に位置しており、気付かれにくいため健康障害を引き起こしやすいこと。そして、その健康障害が医療費などを圧迫することなどが挙げられた。 また、肥満症の課題としては、スティグマについて多くの意見が出され、ルッキズムもわが国では大きくなりつつあることが指摘された。肥満症を正しく理解し、患者の自己努力だけに委ねないよう、社会全体が取り組む必要があるという意見が出された。 そして、肥満症に関するエビデンスの創出についても、他の重篤な疾患の予防にもつながる本症への対策は、治療効果のエビデンスを研究することで健康のアウトカムだけでなく、経済的な効果も適切に検証する必要があるという提言が行われた。 また、エビデンスの観点では、患者など当事者の声が認識されていないことが大きな課題であり、これが社会的なスティグマにつながるとされ、今後は当事者の声を政策に反映していくことが、肥満症対策と政策推進の大きな鍵だとの提案がなされた。 医療制度の持続性については、医療にとどまらない予防、健康増進、健康診断が重要であり、社会・経済的に課題を抱えた肥満症の当事者も多く、こうした患者への切れ目のない支援が、社会全体で必要との意見が出された。とくに健康無関心層への啓発やメッセージ発信が必要との提言がされた。 最後にPhRMA日本代表のハンス・クリム氏が「政策決定者や医療界のリーダーは、バイオ医薬品イノベーションエコシステムが直面する課題に対処する必要がある。研究開発とイノベーションへの投資を促進し、患者が新規医薬品に迅速にアクセスできる政策が必要」と閉会の挨拶を述べ、フォーラムを終えた。

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玄関付近に植物のある家に住んだほうが日本人のうつ病リスクが低い

 高齢者のうつ病は、認知機能低下や早期死亡リスク上昇につながる可能性がある。住居環境とうつ病との関連は、多くの研究で報告されているものの、玄関付近の特性とうつ病との関連性を調査した研究は限られている。千葉大学の吉田 紘明氏らは、日本人高齢者における玄関付近の特性とうつ病との関連を明らかにするため、横断的研究を実施した。Preventive Medicine Reports誌2025年6月20日号の報告。 2022年1月〜2023年10月、65歳以上の日本人を対象にコホート研究を実施した。解析対象は、東京都23区内に居住する2,046人(平均年齢:74.8±6.2歳)。2023年におけるうつ病の状況は、老年期うつ病評価尺度(GDS15)を用いて評価した。2023年の玄関エリアの特性を説明変数として用いた。修正ポアソン回帰分析を用いて、うつ病有病率比および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象者2,046人中458人(22.4%)がうつ病に分類された。・玄関付近に植物や花のある住宅に住む人は、そうでない人と比較し、うつ病の有病率が低かった(有病率比:0.84、95%CI:0.71〜0.98)。・住宅種別による層別解析では、集合住宅居住者における植物や花のある住宅に住む人のうつ病有病率比は0.72(95%CI:0.52〜0.99)であった。・戸建て住宅に住む人では、有意な関連が認められなかった(有病率比:0.85、95%CI:0.70〜1.03)。 著者らは「日本人高齢者のメンタルヘルスをサポートするためには、玄関付近の特性に配慮することが重要である。植物や花を配置できる玄関周りのデザインとマネジメントシステムは、高齢者のうつ病予防に役立つ可能性が示唆された」と結論付けている。

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複雑性黄色ブドウ球菌菌血症へのdalbavancin週1回投与、標準治療に非劣性/JAMA

 複雑性黄色ブドウ球菌菌血症で、初期治療により血液培養の陰性化と解熱を達成した入院患者において、標準治療と比較してdalbavancin週1回投与は、70日の時点で「アウトカムの望ましさ順位(desirability of outcome ranking:DOOR)」が優越する確率は高くないが、臨床的有効性は非劣性であることが、米国・デューク大学のNicholas A. Turner氏らが実施した「DOTS試験」で示された。黄色ブドウ球菌菌血症に対する抗菌薬静脈内投与は、一般に長期に及ぶためさまざまな合併症のリスクを伴う。dalbavancin(リポグリコペプチド系抗菌薬)は、終末半減期が14日と長く、in vitroで黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性菌を含む)に対する抗菌活性が確認されていた。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年8月13日号で報告された。週1回投与2回の有効性を評価する北米の無作為化試験 DOTS試験は、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の初期治療を終了した入院患者におけるdalbavancinの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検評価者盲検化無作為化優越性試験であり、2021年4月~2023年12月に米国の22施設とカナダの1施設で参加者を登録した(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成を受けた)。 年齢18歳以上、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症と診断され、無作為化の前に、初期抗菌薬治療開始から72時間以上、10日以内に血液培養の陰性化と解熱を達成した患者を対象とした。被験者を、dalbavancin(1日目、8日目の2回、1,500mg/日、静脈内投与)または標準治療(メチシリン感受性の場合はセファゾリンまたは抗ブドウ球菌ペニシリン、メチシリン耐性の場合はバンコマイシンまたはダプトマイシン、治療医の裁量で4~8週間投与)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、70日時点のDOORとし、次の5つの構成要素の組み合わせで優越性を評価した。(1)臨床的成功:黄色ブドウ球菌菌血症の徴候および症状が消失した状態での生存、(2)感染性合併症:新たな部位の感染発現、菌血症の再発、感染部位の管理のための予定外の追加処置、(3)安全性:重篤な有害事象、試験薬の投与中止に至った有害事象、(4)死亡率、(5)健康関連生活の質(HRQOL)。 dalbavancinのDOOR優越の確率に関する95%信頼区間(CI)が50%を超える場合に、優越性が達成されたと判定することとした。有害事象による投与中止が少ない 200例(平均[SD]年齢56[16.2]歳、女性62例[31%])を登録し、dalbavancin群に100例、標準治療群に100例を割り付けた。試験登録後の入院期間中央値はそれぞれ3日(四分位範囲:2~7)および4日(2~8)だった。167例(84%)が70日目まで生存し、有効性の評価を受けた。70日目に有効性の評価を受けなかった参加者は、解析では臨床的失敗と見なされた。 70日時点で標準治療群に比べdalbavancin群でDOORが優越する確率は47.7%(95%CI:39.8~55.7)であり、dalbavancin群の優越性は示されなかった。 DOORの各構成要素については、試験薬の投与中止に至った有害事象の頻度(3.0% vs.12.0%、DOOR優越の確率:54.5%[95%CI:50.8~58.2])がdalbavancin群で低かったが、臨床的失敗(20.0%vs.22.0%、51.0%[45.3~56.7])、感染性合併症(13.0%vs.12.0%、49.5%[44.8~54.2])、非致死性の重篤な有害事象(40.0%vs.34.0%、47.0%[40.4~53.7])、死亡率(4.0%vs.4.0%、50.0%[47.1~52.9])は、いずれも両群で同程度であった。忍容性は良好 副次エンドポイントである臨床的有効性(70日時点で次の3項目がない状態と定義。臨床的失敗[抗菌薬治療の追加または継続を要する黄色ブドウ球菌菌血症の徴候または症状が消失していない]、感染性合併症、死亡)の割合は、dalbavancin群73%、標準治療群72%(群間差:1.0%[95%CI:-11.5~13.5])と、事前に規定された非劣性マージン(95%CI下限値:-20%)を満たしたことから、dalbavancin群の非劣性が示された。 また、dalbavancinは良好な忍容性を示した。重篤な有害事象はdalbavancin群40%、標準治療群34%、試験薬の投与中止に至った有害事象はそれぞれ3%および12%、Grade3以上の有害事象は51%および39%、とくに注目すべき有害事象は12%および8%、治療関連有害事象は8%および6%で発現した。 著者は、「主要エンドポイントとして菌血症に特化したDOORを使用したため、単純な臨床的有効性のアウトカムよりもリスクとベネフィットのバランスをより適切に反映した結果が得られた可能性がある」「死亡率が低かったのは、菌血症の消失後に参加者を登録したため、生存の可能性が高い集団が選択されたことが一因と考えられる」「dalbavancinは標準治療に比べ、DOORに関して優れていなかったが、他の有効性や安全性のアウトカムを考慮すると、本研究の知見は実臨床におけるdalbavancinの使用の判断に役立つ可能性がある」としている。

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最低賃金上昇へは診療報酬の期中改定対応を要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月20日に定例記者会見を開催した。会見では、「最低賃金の上昇を受けた期中改定の必要性」と、10月に開催される「女性のがん」に関するシンポジウムの概要が説明された。医療機関の倒産は地域医療へダメージ はじめに会長の松本氏が「賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がってきている中で、医療では人員配置の制約もあり、医療職1人当たりの労働生産性を上げて、全体の員数を減らすといったような対応は難しく、人員を確保し続ける必要がある。また、診療報酬は固定価格であり、医療機関は賃上げにはとても対応できるような経営状況にはない。そのため、医師会は期中改定が必要であると要望しており、基本診療料を中心に診療報酬が引き上げられるべきと考えている。一部報道では医療機関の経営悪化が深刻化していることが広く報じられ、東京商工リサーチによれば2025年上半期の医療機関の倒産は16年ぶりの高水準となっている。このままの状況が続けば患者さんの受診がかなり制限される、あるいは入院ができなくなるといった医療が制限される状況になる」と懸念を述べた。 続いて常任理事の城守 国斗氏(医療法人三幸会 理事長)が、具体的な課題と要望内容を説明した。 この数年、最低賃金は4~6%前後の伸びを示しているものの、医療は公定価格で運営され、診療報酬改定は2年に1度であり、本体改定率は2022(令和4)年度改定では0.43%のプラス、2024(令和6)年度改定では0.88%のプラスとなっている。 これでは、最低賃金や人事院勧告の高い伸び率や本年の春季労使交渉の平均賃上げ率5.26%などに対応できる状況ではない。このような状態が続くと医療職が他産業へ流出するなどの事態が懸念される。とくに最低賃金への対応は、ベースアップ評価料の引き上げではなく、「基本診療料を中心に引き上げるべきと考え、最低賃金が引き上げられる今秋から年末に向けて期中改定が必要だと考えており、国に要望していきたい」と語った。 最後にシンポジウムのお知らせとして常任理事の黒瀬 巌氏(医療法人社団慶洋会 理事長)が、女性特有のがんは近年増加していること、20~40代の間でも発症するがんが増加傾向にあることを指摘し、「子宮頸がんや乳がんの初期ではほとんど症状がなく、見過ごされがちであり、いずれのがんも早期発見できれば完治する可能性が高い疾患」と指摘。今回のシンポジウムは、このようなことを踏まえ、「がんの早期発見・治療に結び付けるために、定期的な検診とともに、早期から医療機関への適切な受診が必要であることを啓発することが目的」と説明した。 シンポジウムは、「知って安心! 女性のがんを正しく学ぼう!」をテーマに、10月5日(日)の14時30分(2時間)より日本医師会館 大講堂で開催予定。

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