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ボストンの冬と政府閉鎖の影響【臨床留学通信 from Boston】第18回

ボストンの冬と政府閉鎖の影響11月も下旬になると、ボストンの最低気温は氷点下になります。海辺のため風も冷たく、体感温度はさらに3~5度ほど低く感じられます。10月上旬から軽めのダウンジャケットを出して着ていましたが、もはやしっかりとした厚手のものでないと寒さを凌げません。通勤は車ですが、米国の医療従事者の多くはスクラブで勤務先へ向かいます。スクラブのズボンは生地がペラペラで薄いため、丈の長いダウンコートでないと、足元が寒くて仕方がないのです。さて今回は、米国政府のシャットダウン(政府閉鎖)のお話です。10月1日から11月12日まで続きました。これまでで最長の2018年の35日間という記録を超えて、今回は43日間にも及ぶ過去最長の閉鎖となりました。原因は、民主党がオバマケアの補助延長などを求めたのに対し、共和党が反発して予算が成立しなかったことにあります。これにより政府機能が停止し、米国国立衛生研究所(NIH)などの公的機関が停止しました。身近なところでは国立公園やスミソニアン博物館などが休館となりましたが、影響はそれだけにとどまらず、私の医療現場にも波及してきました。私が勤務するBeth Israel Deaconess Medical Centerでは、年間450件ほどのTAVR(経カテーテル大動脈弁留置術)を行っています。マサチューセッツ州の遠方から来院される患者さんも多いため、手技の必要性やリスク説明などをする外来診療には、頻繁に「テレヘルス(遠隔医療)」を活用していました。しかし、予算不成立の影響で、メディケア(65歳以上の公的医療保険)対象者へのテレヘルス運用が中止となってしまったのです。その結果、患者さんはただ説明を受けるだけのためにボストンまでの来院を余儀なくされ、これまで自宅勤務が可能だったナース・プラクティショナーたちも、対面(インパーソン)での勤務を余儀なくされました。他にも大きな影響を受けたのが飛行機です。管制塔の職員も国家公務員であるため、期間中は人員が削減され、欠航や遅延が相次ぎました。私もTCTの学会からの帰路、デンバー経由の便を利用したのですが、4時間も余計に足止めを食らいました。何かと政府の動向が生活に直結するアメリカ暮らし。8年目になっても、なかなか慣れるものではありません。Column政府のシャットダウン中は「国立公園への立ち入りも禁止されるのでは?」と懸念しましたが、予約していたホテルもキャンセルできず、思い切ってボストンから北へ車を4時間走らせ、メイン州の「アーカディア国立公園」へ行ってきました。現地に着いてみると、受付の職員はおらず、幸いなことに、入場制限もかかっていませんでした。通常なら30ドルほどかかる入場料も徴収されることなく、そのまま入ることができました。岩肌と海が織りなす自然が魅力的な場所で、10月の紅葉もちょうど見頃。有名なメイン州のロブスターも頬張り、2泊3日の充実した旅行となりました。画像を拡大する

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インフル感染時のWBCやCRP、どんな変化を示す?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第17回

Q17 インフル感染時のWBCやCRP、どんな変化を示す?インフルエンザウイルス感染の有無のチェックには迅速検査がありますが、このとき血液検査ではWBC・CRPは一般的にはどのような変化をしているものでしょうか?

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領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

腎臓と泌尿器の専門医が得意分野を紹介「小児診療 Knowledge & Skill」第3巻腎・泌尿器疾患は、尿の生成・輸送を担う腎臓・尿管、蓄尿・排泄を担う膀胱・尿道の2つの領域にわたる。一連のしくみは密接に関わり、腎臓と泌尿器の専門医がともに得意分野を紹介。日本では3歳児検尿と学校検尿の普及により、小児科医が腎疾患の早期発見に寄与している。尿路感染症、夜尿症など身近な疾患から、専門的なネフローゼ症候群、糸球体疾患まで、臨床に活かすセレンディピティ。本書のポイント小児の腎臓病学と泌尿器科学の2つの領域を横断的にまとめたとらえ方が難解な腎・泌尿器疾患を14の章立てによりシステマティックに提示し、外来から専門医につなぐタイミングをコラムでガイド専門的な画像検査所見、病理所見、症例写真を多数紹介DOHaD、先天性腎尿路異常(CAKUT)が影響する小児の腎・泌尿器疾患、出生前から始まる慢性腎臓病(CKD)への予防を見据えた画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数376頁発行2025年11月総編集加藤元博(東京大学 教授)専門編集張田 豊(東京大学 准教授)ご購入はこちらご購入はこちら

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第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」

診療報酬「本体」は引き上げの方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。師走となり、診療報酬改定の議論が白熱してきました。各紙報道によれば、診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は小幅引き下げの見通しの一方、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分は2024年度改定以上の引き上げが見込まれ、全体ではプラス改定となりそうです。12月7日のNHKも、「政権幹部の1人は『高市総理大臣は、引き上げに意欲を見せており、プラス改定になる方向だ』と話すなど、人件費などに充てられる『本体』の引き上げ幅が焦点となる見通しです」と報じています。最大の関心事は病院と診療所それぞれに対する配分引き上げ幅はもちろん重要ですが、医療関係者の最大の関心事は病院と診療所、それぞれに対する配分でしょう。医療経済実態調査や財政審の「秋の建議」など、次期改定を左右する様々な発表が相次ぎ、事態は混沌としています。全国各地の病院の窮状に加え、今年は日本維新の会が自民党との連立政権に加わったことで、診療所院長が主な構成員である日本医師会にとってはいつになく厳しい状況となっています。最近では新聞だけではなくテレビでも、病院経営の苦しさが連日のように報道されています。日本医師会は「財務省の『二項対立による分断』には、絶対に乗ってはいけない」(11月29日に開かれた九州医師会連合会における日本医師会の松本 吉郎会長の発言)と警戒感をあらわにしています。特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字関連する最近の発表をおさらいしましょう。まず、医療経済実態調査です。次期診療報酬の改定に向けた基礎的な資料となるものですが、病院の経営状況の悪さが改めてクローズアップされました。厚生労働省は11月26日、中医協の調査実施小委員会と総会で第25回医療経済実態調査の結果を公表しました。今回の調査は2023~24年度の経営状況が対象となり、1,167の病院(回答率50.2%)、医療法人立と個人立を合わせて2,232の診療所(同54.9%)から回答を得ています。それによると、一般病院の開設主体別では、医療法人(402施設)は2023年度がマイナス1.1%、2024年度がマイナス1.0%でほぼ横ばい、公立(130施設)はマイナス17.1%からマイナス18.5%へ悪化、国立(24施設)はマイナス5.8%からマイナス5.4%、公的(51施設)はマイナス5.5%からマイナス4.1%と若干改善したものの赤字幅は依然大きいままでした。医業損益は、病院全体で67.2%、一般病院で72.7%が赤字でした。経常損益でも病院全体で58.0%、一般病院で63.3%が赤字でした。とくに特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字で、急性期病院の苦境が際立っていました。診療所経営も悪化したものの病院ほどではない一方、診療所ですが、医療法人立の無床診の損益率は2024年度が5.4%と、2023年度の9.3%から悪化しました。医療法人立の無床診の平均損益率は診療科で差が大きく、低かったのは外科(回答49施設)0.4%、精神科(25施設)1.6%、産婦人科(35施設)2.7%、整形外科(143施設)3.1%、内科(581施設)が4.2%、小児科(86施設)4.7%などでした。一方、高い収益を上げたのは耳鼻咽喉科(91施設)の9.5%、眼科(96施設)の8.7%、皮膚科(71施設)の8.1%などでした。なお、個人立の無床診療所は院長等の報酬が費用に含まれないために数値が高く出る傾向がありますが、2024年度は29.1%と、2023年度(32.3%)から低下しました。端的に言えば「病院はとても厳しい、診療所もそこそこ厳しいものの、病院ほどではない」というのが医療経済実態調査の結果ということになります。このままでは「分が悪過ぎる」と考えたのでしょうか? 日本医師会の江澤 和彦常任理事は12月3日の定例記者会見で、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。「病院はすでに瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きている」ことに危機感を示し、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と語り、危機に直面しているのは病院だけではないことを強調しました。財務省は「メリハリ」強調、診療所の診療報酬の適正化を提案医療経済実態調査が公表された6日後の12月2日には、財務省の財政制度等審議会(十倉 雅和会長・住友化学相談役)が、「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)を取りまとめ、片山 さつき財務相に手渡しました。秋の建議では2026年度診療報酬改定について「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッションと言えよう。これを実現するためには、医療機関の経営状況のデータを精緻に分析することが必要である。特に物価・賃金対応については、医療機関の種類・機能ごとの経営状況や費用構造に着目した上で、本来は過去の改定の際に取り組むべきであった適正化・効率化を遂行することも含め、メリハリときめ細やかさを両立させた対応を強く求めるものである」と「メリハリ」という言葉を何度も使って医療機関の種類・機能ごとに差を付けるべきだと主張しました。その上で、「1)赤字経営の診療所が顕著に増加しているという主張もあるが、医療機関の経営状況に関する厚生労働省等のデータによると、物価高騰の中でも、診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準を維持していること、2)他職業との相対比較における開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っていることなどを踏まえ、診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべきである」と、診療報酬の病院への重点配分と診療所の診療報酬の適正化を改めて主張しています。11月に開かれた財政制度等審議会・分科会での主張とほぼ同じで、診療所をターゲットとしている点は変わりません。秋の建議の社会保障関連ではその他、「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築、リフィル処方箋の拡充、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しなど提言しています。「かかりつけ医機能の報酬上の評価」は個々の診療報酬についても言及、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めています。なお、昨年の秋の建議まで、財務省が繰り返し提言してきた「診療報酬の地域別単価の導入」は、今回は盛り込まれませんでした。経団連、健保連、維新も「メリハリ」求めるこうした動きの中、診療報酬の「メリハリ」を求める声は各方面からも高まっています。経団連(日本経済団体連合会)は11月28日、健康保険組合連合会や日本労働組合総連合会(連合)など医療保険関係5団体と共に、上野 賢一郎・厚生労働大臣と面会し、2026年度診療報酬改定に関する共同要請を行いました。要請では、「高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している」状況下での診療報酬改定について、「基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない」と従来の「単純な一律の引上げ」を批判、その上で、「優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」と、病院への重点配分を強く求めています。さらに、12月4日には日本維新の会が社会保障制度改革の推進を求める申し入れを高市 早苗首相に手渡しています。申し入れでは、2026年度診療報酬改定について、「診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け、医科・歯科・調剤の固定的な配分の見直しなど診療報酬体系の抜本的な見直しを行うこと」を求めるとともに、「抜本的見直しの方向性について、中央社会保険医療協議会に任せることなく、年末に政治の意思として決定し、示すこと」を要請しました。「今やらないでいつやる?」と病院団体の関係者は思っているのでは日本医師会は「二項対立による分断」と言いますが、そもそも病院経営と診療所経営の”格差”を形作ってきた一因は日本医師会にもあるのではないでしょうか。年末に診療報酬の改定率が決まった後も、年明けの中央社会保険医療協議会総会で、2026年度診療報酬改定の答申が行われるまで「メリハリ」を巡る戦いは続くでしょう。「今やらないでいつやるんだ」と病院団体の関係者は思っているに違いありません。次期改定で本当の意味での「メリハリ」が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したいと思います。

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「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?【論文から学ぶ看護の新常識】第42回

「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?COVID-19後の看護管理者を対象とした研究により、最も多く見られた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であり、特に「個人の学歴」がそれらの有意な予測因子であることが示された。Majed Mowanes Alruwaili氏の研究で、Journal of Nursing Management誌2024年6月14日号に掲載の報告を紹介する。COVID-19後の時代における看護管理者の心理的プロファイル:看護リーダーシップへの示唆サウジアラビアの看護管理者における抑うつ、不安、ストレス、および心理的苦痛のレベルを調査するために、横断研究を実施した。2023年8月から2024年2月にかけて、アラビア語翻訳版の抑うつ・不安・ストレス尺度(The Depression Anxiety Stress Scales-21:DASS-21)を使用し、オンラインプラットフォームにてデータを収集した。データ分析には重回帰分析を用いた。主な結果は以下の通り。COVID-19後の時代において、看護管理者の間で最も多くみられる問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であった。個人の最終学歴は、不安(B=−1.60、95%信頼区間[CI]:−2.83~−0.38)、ストレス(B=−1.78、95%CI:−3.32~−0.25)、および心理的苦痛(B=−4.83、95%CI:−8.38~1.28)に対する唯一の有意な予測因子であった(いずれもp<0.05)。看護管理者の国籍は、ストレスの結果と相関していた(B=2.48、95%CI:0.35~4.61、p<0.05)。看護管理者は、危機的状況にさらされた場合、ストレスや全般的なメンタルヘルスの問題に苦しむ可能性が極めて高い。管理者の抑うつ、不安、ストレスを軽減するため、適切なタスクの委任を含むさまざまな戦略が検討できる。医療現場の最前線で指揮を執る看護管理者に対する期待と業務負荷は高まっています。今回紹介するのは、サウジアラビアの看護管理者を対象に行われた精神衛生に関する横断研究です。COVID-19パンデミック以降実施されたこの調査において、看護管理者の中で最も頻繁にみられた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」でした。本研究で最も注目すべき発見は、「個人の学歴」が心理的苦痛の有意な予測因子であった点です。これは、修士号保有者ほど、高度な教育課程で培われる批判的思考や問題解決能力、そして広い視野が、パンデミックのような未曾有の危機において、複雑な状況を整理し対処するための強力な「武器」として機能したためと考えられます。逆に言えば、十分な教育的準備なしに管理職の重責を担うことは、精神的リスクを高める可能性があるということです。この知見は、日本の臨床現場のリーダー育成においても重要な意味を持ちます。高度な専門教育を受けた高度実践看護師、そして管理職が学ぶ知識やスキルは、単に業務をこなすためだけのものではなく、組織的な重圧や困難な意思決定に伴うストレスから、自身のメンタルヘルスを守るための「防波堤」にもなります。今後のキャリア支援においても、管理職に任命するだけでなく、その役割に見合った教育の機会を十分に提供することが求められます。最後に、管理者の皆さん!いつもマネジメントお疲れ様です!学びを力に変えて、どうか自身を追い込み過ぎず、無理しすぎないようにしてくださいね。論文はこちらAlruwaili MM. J Nurs Manag. 2024;2024:8428954.

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飲酒が加齢性難聴リスクに影響~日本人1万4千人のデータ

 加齢性難聴における飲酒の影響については結論が出ていない。今回、東北大学の高橋 ひより氏らが東北メディカル・メガバンク計画のコホートデータを用いた横断研究を実施したところ、飲酒と加齢性難聴との間に関連がみられ、その関連は男女によって異なることが示唆された。男性では、過度の飲酒は潜在的な危険因子となるが、女性では、適度な飲酒は保護効果をもたらす可能性があるという。Scientific Reports誌オンライン版2025年12月2日号に掲載。 本研究では、東北メディカル・メガバンク計画のコホートデータ(自己申告式質問票および純音聴力検査閾値:500、1,000、2,000、4,000Hz)を用いて、飲酒量と加齢性難聴の関連を調査した。加齢性難聴は、聞こえが良いほうの耳で閾値が25dBを超える状態と定義した。50~79歳の男性5,219人と女性9,266人を対象に、多重ロジスティック回帰分析を男女別に実施した。 主な結果は以下のとおり。・男性では、1日当たりアルコール摂取量が60~80g(オッズ比[OR]:1.42、95%信頼区間[CI]:1.05~1.94)および80g以上(OR:1.55、95%CI:1.12~2.16)において4,000Hzでの加齢性難聴の発症リスクが高いことと有意に関連していた。・一方、女性では1日当たり10~20gのアルコール摂取が4,000Hzにおける加齢性難聴の発症リスクが低いことと有意に関連していた(OR:0.81、95%CI:0.68~0.96)。・飲酒関連の一塩基多型(SNP)の評価から、アルコールが加齢性難聴に及ぼす影響は遺伝子型によって異なる可能性が示唆された。

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ヌシネルセンの高用量処方はSMA患者のQOLをさらに改善する/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、2025年9月19日に脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤型(28mg製剤、50mg製剤)について、新用量医薬品/剤形追加の承認を取得した。わが国は世界初の両剤型の承認・販売国となり、この承認を受け、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、SMAの疾患概要、治療の変遷、患者のニーズなどに関する講演などが行われた。高用量ヌシネルセンで筋力維持などができる可能性へ 「脊髄性筋萎縮症の治療 スピンラザ高用量投与を迎えて」をテーマに、長年本疾患の研究に携わってきた齋藤 加代子 氏(東京女子医科大学名誉教授/瀬川記念小児神経学クリニック)が、SMAの疾患概要と治療の課題などを解説した。 SMAは、脊髄における前角細胞(運動神経細胞)の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病であり、発症年齢などの区分により0~IV型まで5つの型がある。 わが国の発生率は出生1万人当たり0.51例、有病率は人口10万人当たり1例とされ、8割以上の患者が2歳までに発症しているために新生児マススクリーニングが早期発見のために重要と齋藤氏は指摘する1)。 SMAの治療で使用されるヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)であり、運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。 治療では開始時期により運動機能の改善効果もみられ2)、早期診断と早期治療が重要であり、現在では国の実証事業として新生児のマススクリーニング検査がほぼ全国で行われている。 こうした診療環境の中でSMAの全病型で最も多く報告されたアンメットニーズは「筋力の改善」であり、「呼吸機能と球機能(bulbar function)に関する項目(呼吸機能の改善、嚥下機能の改善など)では、I/II型のほうがIII型よりも重要である可能性が高い」と報告されている3)。また、PK/PDモデルを用いた予測では、脳脊髄液中のヌシネルセン濃度に対しニューロフィラメントの減少をはじめとする用量依存的な治療反応が示唆されていたことから高用量製剤の開発が待たれている。 そこで、高用量製剤の製品化に向け50/28mgの有効性および安全性を検討するため、3部構成のDEVOTE試験が行われた。とくにパートBでは、未治療の乳児型SMA患者(75例)および乳児型以外のSMA患者(25例)について国際共同第III相、二重盲検、並行群間比較試験が行われた。 その結果、乳児型SMA患者におけるフィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査(CHOP INTEND)総スコアについて183日目のベースラインからの変化量の最小二乗(LS)平均値は、50/28mg群15.1(95%信頼区間:12.4~17.8)、マッチングシャム処置群ー11.1(95%信頼区間:ー15.9~ー6.2)であり、LS平均値の差は26.2(95%信頼区間:20.7~31.7、p<0.0001、共分散分析および多重補完法)であったことから、優越性が検証された。 乳児型SMA患者における死亡または永続的換気までの期間について、カプランマイヤー法に基づいた期間の中央値は、50/28mg群では推定できず、12/12mg群で24.7週(95%信頼区間:14.4~NA、名目上のp=0.2775、罹患期間で層別したlog rank検定)だった。 302日目における乳児神経学的検査(HINE)第1項 哺乳/嚥下能力の低下がみられた患者の割合は、50/28mg群で6%(2/35例)、12/12mg群で33%(4/12例)であり、改善がみられた患者の割合は、50/28mg群で26%(9/35例)、12/12mg群で8%(1/12例)だった。 パートCでは日本人を含む乳児型SMA患者(2例)および乳児型以外のSMA患者18歳未満(14例)と18歳以上(24例)について、302日目における拡大Hammersmith運動機能評価スケール(HFMSE)、上肢機能モジュール改訂版(RULM)のベースラインからの変化量について評価がなされ、その結果変化量の平均値(標準誤差)は、HFMSEで1.8点(3.99点)、RULMで1.2点(2.14点)だった。 安全性は、50/28mg群では3/50例(6.0%)、12/12mg群では1/25例(4.0%)に副作用が認められ、貧血や発熱、不快などの発現が報告された一方で、本試験での死亡および投与中止に至った副作用は認められなかった。 齋藤氏はまとめとして、SMAにおいて疾患修飾治療薬3種の臨床試験が成功して実臨床で使える時代となったこと、発症抑制のための新生児マススクリーニングを拡充・推進する方針で実証事業開始されたことに触れ、最後に「ヌシネルセン高用量投与という新たな時代が今始まった」と期待を寄せた。患者の希望は「筋力アップ」 続いて「SMA家族の会」の理事長である大山 有子氏が、患者・患者家族のリアルな声と「SMA患者さん治療ニーズに関する調査結果」をテーマに講演を行った。 自身の子供がSMAI型であり、子供の日常生活を疾患介護の苦労とともに画像・動画で説明し、ヌシネルセンなどの治療薬の乳幼児期における劇的な症状改善の効果を紹介した。 次に家族会とバイオジェンが共同で行った患者・患者家族などへのアンケート内容を説明した。アンケートは、2025年9月3~14日にかけてSMA患者21人、介護者63人(計84人)に行ったもの。・「薬による治療」は96%が受けており、「治療でできるようになったこと」は「座位」、「寝返り」などの回答が多かった。・「リハビリテーション」については、「病院で実施」が69%、「自宅で実施」が76%だった。・「患者がもっとできるようになりたいこと」では、「トイレ」、「移動」などの回答が多く、「そのために必要な機能」について、「筋力」、「体幹」などの回答が多かった。

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アトピー性皮膚炎へのウパダシチニブ、増量および減量の有効性と安全性/BJD

 成人の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対する、JAK1阻害薬ウパダシチニブのこれまでの主要な臨床試験では、15mg(UPA15)および30mg(UPA30)の固定用量1日1回投与による有効性と安全性が評価されてきた。カナダ・クイーンズ大学のMelinda Gooderham氏らは、日本を含む第IIIb/IV相無作為化国際多施設共同盲検treat-to-target試験を実施し、12週間の治療後の臨床反応に基づくUPA30への増量およびUPA15への減量の有効性と安全性を検討した。British Journal of Dermatology誌2025年12月号掲載の報告より。 18歳以上65歳未満の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者461例が1:1の割合でUPA15群またはUPA30群に無作為に割り付けられ、12週間の二重盲検期間中1日1回経口投与された。UPA15群では、12週時点でEczema Area and Severity Index(EASI)-90未達成の患者は30mgに増量し(UPA15/30群)、EASI-90を達成した患者は15mgの投与を継続した(UPA15/15群)。UPA30群では、12週時点でEASI-90未達成の患者は30mgの投与を継続し(UPA30/30群)、EASI-90を達成した患者は15mgに減量した(UPA30/15群)。 主要有効性評価項目は、24週時点におけるEASI-90達成率で、安全性についても評価された。 主な結果は以下のとおり。・UPA15群に229例、UPA30群に232例が割り付けられた。・24週時点で、UPA15/30群の48.1%(64/133例、95%信頼区間[CI]:39.6~56.6)がEASI-90を達成し、UPA30/15群の68.5%(89/130例、95%CI:60.5~76.4)がEASI-90を維持していた。・24週時点で、UPA15/15群では74.6%(53/71例、95%CI:64.5~84.8)、UPA30/30群では29.3%(24/82例、95%CI:19.4~39.1)がEASI-90を維持していた。・24週時点で、UPA15/30群の32.5%(27/83例、95%CI:22.5~42.6)およびUPA30/15群の38.0%(38/100例、95%CI:28.5~47.5)が最悪のかゆみの数値評価尺度(WP-NRS)0または1を達成し、それぞれ20.7%(17/82例、95%CI:12.0~29.5)および35.0%(35/100例、95%CI:25.7~44.3)がEASI-90かつWP-NRS 0/1を達成した。・24週時点における試験治療下での有害事象の発現率は、UPA15/15群では43.1%(31/72例)、UPA15/30群では54.2%(78/144例)、UPA30/30群では61.5%(56/91例)、UPA30/15群では48.9%(65/133例)であった。悪性腫瘍、中央判定された静脈血栓塞栓症イベント、死亡は報告されていない。 著者らは、「12週時点のEASI-90達成状況に応じたウパダシチニブの用量漸増/減量戦略により、24週時点でのEASI-90達成および維持が可能であることが示された」とし、安全性についても既知のウパダシチニブの安全性プロファイルと一致し、新たな安全性上の懸念は確認されなかったとまとめている。

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日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10・11月号の報告。 ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。主な結果は以下のとおり。・現在のワークフロー下における最大平均待ち時間は6.4ヵ月と推定され、BBMの導入により待ち時間の減少が認められた。・BBMに基づく確認診断により、治療対象患者数が大幅に増加した。・BBMによるトリアージ検査は、待ち時間の短縮をもたらしたが、一時的に治療対象患者数を増加させた。 著者らは「PETや脳脊髄液検査をBBMに基づく診断に置き換えることで、コスト削減による治療対象患者数の増加が期待され、検査需要の増加につながる可能性がある」としている。

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VTE後の抗凝固療法、90日以上継続で再発リスク大幅低下/BMJ

 米国・ハーバード大学医学大学院のKueiyu Joshua Lin氏らの研究チームは、誘因のない静脈血栓塞栓症(VTE)の患者では、90日以上の初期抗凝固療法終了後に経口抗凝固療法(OAC)を継続すると、抗凝固療法を中止した場合と比較して、VTE再発のリスクが低下し、大出血のリスクは上昇するが、OAC継続群で良好な純臨床的ベネフィット(net clinical benefit:VTE再発と大出血の複合アウトカム)を認め、これらはVTE発症から少なくとも3年にわたりOACを使用している患者でも持続的に観察されることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月12日号で発表された。2つの大規模データベースを用いた標的試験エミュレーション 研究チームは、米国の2つの大規模な健康保険データベースであるOptum Clinformatics Data Mart(Optum CDM)とメディケア(うち出来高払い分)を用いて標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った(米国国立老化研究所などの助成を受けた)。 VTEを有する18歳以上(Optum CDM)または65歳以上(メディケア)の成人で、可逆的な誘発因子のないVTEによる初回入院後30日以内にOAC(ワルファリン、直接作用型OAC)を開始し、90日以上治療を継続した患者を対象とした。 傾向スコア1対1マッチング法を用いて、治療継続群と治療中止群(30日以内に再処方がない集団)を比較した。 有効性の主要アウトカムはVTE再発による入院、安全性の主要アウトカムは大出血とした。副次アウトカムは純臨床的ベネフィット(VTE再発と大出血の複合)および死亡率であった。OACによる治療期間(90~179日、180~359日、360~719日、720~1,079日、1,080日以上)で層別化して解析した。全死因死亡率も低下 傾向スコアでマッチさせたOACによる治療継続と治療中止の組み合わせ3万554組を試験コホート(平均年齢73.9歳、女性57.0%)とした。 90日以上の初期抗凝固療法終了後に、治療を中止した患者と比較してOACによる治療を継続した患者は、VTE再発の発生率が著明に低く(補正後ハザード比[aHR]:0.19[95%信頼区間[CI]:0.13~0.29]、補正後率差/1,000人年:-25.50[95%CI:-39.38~-11.63])、大出血の発生率が高かった(1.75[1.52~2.02]、4.78[1.95~7.61])。 また、治療継続群は、全死因死亡率が低く(aHR:0.74[95%CI:0.69~0.79]、補正後率差/1,000人年:-14.31[95%CI:-22.02~-6.59])、純臨床的ベネフィットが著しく優れた(0.39[0.36~0.42]、-21.01[-32.31~-9.71])。 VTE再発の発生率は、アピキサバン、リバーロキサバン、ワルファリンで同程度であったが、OAC継続による出血リスクの絶対的な増加は、ワルファリンに比べ直接作用型OACで小さかった。投与期間が最長の集団で、大出血の相対リスク消失 治療継続群におけるVTE再発の発生率の減少は、OACによる治療期間の長さにかかわらず一貫して認めた(各治療期間のaHR、90~179日:0.22[95%CI:0.16~0.32]、180~359日:0.17[0.13~0.23]、360~719日:0.15[0.11~0.20]、720~1,079日:0.18[0.07~0.49]、1,080日以上:0.13[0.04~0.41])。 また、治療継続群における大出血の発生率の上昇も治療期間を通じてみられたが、OAC使用期間が最長の集団では治療中止群との差がなくなった(各治療期間のaHR、90~179日:2.38[95%CI:1.88~3.02]、180~359日:1.92[1.56~2.37]、360~719日:1.85[1.34~2.57]、720~1,079日:2.04[0.96~4.36]、1,080日以上:1.00[0.40~2.48])。 治療継続群の良好な純臨床的ベネフィットは、治療期間の長さにかかわらず一貫して認め(各治療期間のaHR、90~179日:0.50[95%CI:0.43~0.57]、180~359日:0.37[0.32~0.41]、360~719日:0.38[0.32~0.45]、720~1,079日:0.36[0.26~0.50]、1,080日以上:0.27[0.17~0.43])、OACの種類による差はみられなかった。 著者は、「本研究で得られた優れた純臨床的ベネフィットは、初期抗凝固療法終了後、最長で少なくとも3年間のOAC継続投与を支持する知見である」「これらの結果は、OAC継続投与の平均的な効果を反映するものであり、誘因のないVTE患者ごとに、個別化を要する治療継続の意思決定を行ううえで有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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成人の肺炎球菌感染症予防の新時代、21価肺炎球菌結合型ワクチン「キャップバックス」の臨床的意義/MSD

 MSDは11月21日、成人の肺炎球菌感染症予防をテーマとしたメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野(第二内科)教授の迎 寛氏が「成人の肺炎球菌感染症予防は新しい時代へ ―21価肺炎球菌結合型ワクチン『キャップバックス』への期待―」と題して講演した。高齢者肺炎球菌感染症のリスクや予防法、10月に発売されたキャップバックスが予防する血清型の特徴などについて解説した。高齢者肺炎の脅威:一度の罹患が招く「負のスパイラル」 迎氏はまず、日本における肺炎死亡の97.8%が65歳以上の高齢者で占められている現状を提示した。抗菌薬治療が発達した現代においても、高齢者肺炎の予後は依然として楽観できない。とくに強調されたのが、一度肺炎に罹患した高齢者が陥る「負のスパイラル」だ。 肺炎による入院はADL(日常生活動作)の低下やフレイルの進行、嚥下機能の低下を招き、退院後も再発や誤嚥性肺炎を繰り返すリスクが高まる。海外データでは、肺炎罹患群は非罹患群に比べ、その後の10年生存率が有意に低下することが示されている1)。迎氏は、高齢者肺炎においては「かかってから治す」だけでは不十分であり、「予防」がきわめて重要だと訴えた。 また迎氏は、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の重篤性についても言及した。肺炎球菌に感染した場合、4分の1の患者が髄膜炎や敗血症といったIPDを発症する。IPD発症時の致死率は約2割に達し、高齢になるほど予後が不良になる。大学病院などの高度医療機関に搬送されても入院後48時間以内に死亡するケースが半数を超えるなど、劇症化するリスクが高いことを指摘した。 さらに、インフルエンザ感染後の2次性細菌性肺炎としても肺炎球菌が最多であり、ウイルスとの重複感染が予後を著しく悪化させる点についても警鐘を鳴らした。とくに、高齢の男性が死亡しやすいというデータが示された2)。定期接種と任意接種の位置付け 現在、国内で承認されている主な成人用肺炎球菌ワクチンは以下のとおりである。・定期接種(B類疾病):23価莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)対象:65歳の者(65歳の1年間のみ)、および60〜64歳の特定の基礎疾患を有する者。※以前行われていた5歳刻みの経過措置は2024年3月末で終了しており、現在は65歳のタイミングを逃すと定期接種の対象外となるため注意が必要である。・任意接種:結合型ワクチン(PCV15、PCV20、PCV21)21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21、商品名:キャップバックス)やPCV20などの結合型ワクチンは、T細胞依存性の免疫応答を誘導し、免疫記憶の獲得が期待できるが、現時点では任意接種(自費)の扱いとなる。最新の接種推奨フロー(2025年9月改訂版) 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会による合同委員会が発表した「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)」では、以下の戦略が示されている3)。・PPSV23未接種者(65歳など)公費助成のあるPPSV23の定期接種を基本として推奨する。任意接種として、免疫原性の高いPCV21やPCV20を選択すること、あるいはPCV15を接種してから1〜4年以内にPPSV23を接種する「連続接種」も選択肢となる。・PPSV23既接種者すでにPPSV23を接種している場合、1年以上の間隔を空けてPCV21またはPCV20を接種(任意接種)することで、より広範な血清型のカバーと免疫記憶の誘導が期待できる。従来行われていたPPSV23の再接種(5年後)に代わり、結合型ワクチンの接種を推奨する流れとなっている。 また、迎氏は接種率向上の鍵として、医師や看護師からの推奨の重要性を強調した。高齢者が肺炎球菌ワクチンの接種に至る要因として、医師や看護師などの医療関係者からの推奨がある場合では、ない場合に比べて接種行動が約8倍高くなるというデータがある4)。このことから、定期接種対象者への案内だけでなく、基礎疾患を持つリスクの高い患者や、接種を迷っている人に対し、医療現場から積極的に声を掛けることがきわめて重要であると訴えた。既存ワクチンの課題と「血清型置換」への対応 肺炎球菌ワクチンの課題として挙げられたのが、小児へのワクチン普及に伴う「血清型置換(Serotype Replacement)」である。小児へのPCV7、PCV13導入により、ワクチンに含まれる血清型による感染は激減したが、一方でワクチンに含まれない血清型による成人IPDが増加している5)。 迎氏は「現在、従来の成人用ワクチンでカバーできる血清型の割合は低下傾向にある」と指摘した。そのうえで、新しく登場したPCV21の最大の利点として、「成人特有の疫学にフォーカスした広範なカバー率」を挙げた。PCV21の臨床的意義:IPD原因菌の約8割をカバー PCV21は、従来のPCV13、PCV15、PCV20には含まれていない8つの血清型(15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35B)を新たに追加している。これらは成人のIPDや市中肺炎において原因となる頻度が高く、中には致死率が高いものや薬剤耐性傾向を示すものも含まれる。 迎氏が示した国内サーベイランスデータによると、PCV21は15歳以上のIPD原因菌の80.3%をカバーしており、これはPPSV23(56.6%)やPCV15(40.0%)と比較して有意に高い数値である6)。 海外第III相試験(STRIDE-3試験)では、ワクチン未接種の50歳以上2,362例を対象に、OPA GMT比(オプソニン化貪食活性幾何平均抗体価比)を用いて、PCV21の安全性、忍容性および免疫原性を評価した。その結果、PCV21は比較対照のPCV20に対し、共通する10血清型で非劣性を示し、PCV21独自の11血清型においては優越性を示した。安全性プロファイルについても、注射部位反応や全身反応の発現率はPCV20と同程度であり、忍容性に懸念はないと報告されている7)。コロナパンデミック以降のワクチン戦略 講演の結びに迎氏は、新型コロナウイルス感染症対策の5類緩和以降、インフルエンザや肺炎球菌感染症が再流行している現状に触れ、「今冬は呼吸器感染症の増加が予想されるため、感染対策と併せて、改めてワクチン接種の啓発が必要だ。日本は世界的にみてもワクチンの信頼度が低い傾向にあるが、肺炎は予防できる疾患だ。医療従事者からの推奨がワクチン接種行動を促す最大の因子となるため、現場での積極的な働き掛けをお願いしたい」と締めくくった。■参考文献1)Eurich DT, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2015;192:597-604. 2)Tamura K, et al. Int J Infect Dis. 2024;143:107024. 3)65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)4)Sakamoto A, et al. BMC Public Health. 2018;18:1172. 5)Pilishvili T, et al. J Infect Dis. 2010;201:32-41. 6)厚生労働省. 小児・成人の侵襲性肺炎球菌感染症の疫学情報 7)生物学的製剤基準 21価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)キャップバックス筋注シリンジ 添付文書

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未治療および再発・難治性CLL/SLLへのピルトブルチニブ、イブルチニブと直接比較(BRUIN-CLL-314)/JCO

 BTK阻害薬投与歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者(未治療および再発・難治性症例)に対して、非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブを共有結合型BTK阻害薬イブルチニブと直接比較した無作為化比較試験で、全奏効率(ORR)についてピルトブルチニブがイブルチニブに非劣性を示したことを、米国・The Ohio State University Comprehensive Cancer CenterのJennifer A. Woyach氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月7月号に掲載。 本試験では、662例を1:1の比率でピルトブルチニブ群またはイブルチニブ群に無作為に割り付けた。すべての患者にBTK阻害薬投与歴はなかった。主要評価項目は、ITT集団および再発・難治性症例における独立審査委員会(IRC)評価によるORRであった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目であるORRは、ITT集団においてピルトブルチニブ群が87.0%(95%信頼区間[CI]:82.9~90.4)、イブルチニブ群が78.5%(95%CI:73.7~82.9)で、ORR比は1.11(95%CI:1.03~1.19、両側検定のp<0.0001)であった。再発・難治性症例(437例)では、ピルトブルチニブ群が84.0%(95%CI:78.5~88.6)、イブルチニブ群が74.8%(95%CI:68.5~80.4)で、ORR比が1.12(95%CI:1.02~1.24、両側検定のp<0.0001)であった。未治療症例(225例)では、IRCによるORRはピルトブルチニブ群で92.9%(95%CI:86.4~96.9)、イブルチニブ群で85.8%(95%CI:78.0~91.7)であった。治験責任医師評価によるORR結果も同様であった。・治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)は、ITT集団(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.39~0.83)、再発・難治性症例(HR:0.73、95%CI:0.47~1.13)、未治療症例(HR:0.24、95%CI:0.10~0.59)において、ピルトブルチニブ群が優位であった。・心血管系有害事象(心房細動/粗動および高血圧)の発現率はピルトブルチニブ群のほうが低かった。

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PAH診断1年未満の中~高リスク患者へのソタテルセプト上乗せは有効である(解説:原田和昌氏)

 アクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトは長期罹患の肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者においてPAHの悪化と死亡率を改善するが、診断後1年未満のPAH患者における有効性は不明であった。米国のMcLaughlin氏らは、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であるHYPERION試験により、PAHの診断から1年未満の成人において、基礎治療へのソタテルセプト追加はプラセボと比較し臨床的悪化のリスクを有意に低下させることを示した。 WHO機能分類クラスII~IIIのPAH患者で、診断から1年未満、死亡リスクが中~高リスク(REVEAL Lite 2リスクスコア≧6またはCOMPERA 2.0スコア≧2)、また90日以上安定した2剤または3剤併用療法を受けている18歳以上の患者を、ソタテルセプト群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、上乗せ投与した。主要エンドポイントは臨床的悪化(全死亡およびPAHの悪化による24時間以上の予期せぬ入院、心房中隔欠損作成術、肺移植、PAHによる運動負荷試験の成績の悪化)で、初回イベント発生までの時間を評価した。 320例(ソタテルセプト群160例、プラセボ群160例)が解析対象集団となった。平均年齢は56歳であった。追跡期間中央値13.2ヵ月において、主要エンドポイントが少なくとも1回発生した患者は、ソタテルセプト群17例(10.6%)、プラセボ群59例(36.9%)であった(ハザード比:0.24、95%信頼区間:0.14~0.41、p<0.001)。PAHの悪化による予期せぬ入院が3例(1.9%)と14例(8.8%)、全死亡が7例(4.4%)と6例(3.8%)に起こった。心房中隔欠損拡大術、肺移植はなかった。最も多いソタテルセプトの有害事象は鼻出血(31.9%)と毛細血管拡張(26.2%)であった。 診断1年未満のPAHの成人において、既存の治療にソタテルセプトを上乗せすることはプラセボよりも臨床的悪化を抑制した。特筆すべきはKaplan-Meierカーブの分離が速やかで、12ヵ月でのNNTは5であった。なお、先行するZENITH試験(WHO機能分類IIIまたはIV)で有効性が確認されたため、本試験は2025年1月30日に早期終了となった。残るはソタテルセプトがPAHの第1選択薬となるかであるが、それはまだ明らかでない。

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異物除去(11):外耳道異物(4)ボタン電池【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q155

異物除去(11):外耳道異物(4)ボタン電池Q155休日夜間診療所で当直バイト中、夜22時に外耳道異物の3歳男児が受診した。同伴の両親からの聴取では「ボタン電池を入れてしまったかもしれない、おそらく挿入は受診の30分前くらいだろう」とのこと。耳鏡で見ると、明らかにボタン電池が入っている。現時点で鼓膜穿孔はなさそうだ。自分で1回鑷子を用いて除去を試みたができなかった。幸い、電池は回転していない。耳鼻科対応が可能な近隣の総合病院に紹介しようとあたってみるが、どこも対応が困難なようだ。受けてくれそうな病院は隣町の救急病院で、どう考えても救急病院まで移動で1時間はかかるだろう。どうしようか。(1)もう一度、除去を試みる(2)なるべく乾燥させることを促しながら救急搬送する(3)陰極側に薄いガーゼを留置して救急搬送する(4)酢酸を塗布して救急搬送する(5)翌日、近くの耳鼻科開業医に受診してもらう

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