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新規睡眠薬登場後、日本におけるBZD減量成功率は?

 不眠症に対するベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の長期使用は、依存や認知機能低下などの有害事象と関連している。デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)やメラトニン受容体作動薬(MRA)などの新しい作用機序を持つ新規睡眠薬は、BZDよりも安全であるものの、BZDからの切り替えは簡単ではない。京都府立医科大学の綾仁 信貴氏らは、BZDの使用期間に着目し、新規睡眠薬の導入がBZDの減薬にどのような影響を与えるかを明らかにするため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2026年7月17日号の報告。 対象は、2021年5月~2022年4月、日本の2つの医療機関において新規睡眠薬による治療を開始したBZD使用中の外来不眠症患者。主要評価項目は、1年間のフォローアップ期間終了時におけるBZDの減薬(1剤以上の減量)の成功率とした。BZDの使用期間と減薬成功との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・全体として3,802例に対して5,114剤の睡眠薬(うち新規睡眠薬は38%)が処方されていた。そのうち190例がBZD使用中に新規睡眠薬の投与を開始していた。・フォローアップ期間終了時、46%の患者においてBZDの減薬が達成された。・BZDの減薬成功率は、それまでのBZDの使用期間が1年未満の患者のほうが1年以上の患者よりも有意に高かった(69%vs.36%、p<0.0001)。・共変量で調整した後、定期的でないBZDの使用を基準とした場合の減薬成功のオッズ比は、BZDの使用期間が1~5年の場合で0.21(95%信頼区間:0.08~0.56)、5年以上の場合で0.16(同:0.06~0.43)であった。 著者らは「新規睡眠薬の導入が、BZDの減薬に有効である可能性が示唆された。しかし、それまでのBZDの使用期間が長くなるにつれて成功率は著しく低下することが明らかとなった。将来的なBZDの中止を可能にするためには、長期使用を避け、より安全な新規睡眠薬の使用を優先することが適切なアプローチであると考えられる」と結論付けている。

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心房細動の新規発症、日本人の腎機能低下はどれくらい?

 新規発症の心房細動(AF)は、腎機能低下を加速させる可能性があるという研究結果が、「JAMA Network Open」に5月14日掲載された。 京都大学の森雄一郎氏らは、就労年齢の成人において、新規発症のAFとその後の腎機能低下との関連を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、AFの既往歴、心血管系疾患、末期腎疾患のない、洞調律の35~59歳の健診受診者とした。年次健診の間にAFの新規発症を認めた2万3,510人(AF発症群)を、AFを認めなかった11万7,550人(対照群)と1対5でマッチングした。 解析の結果、推算糸球体濾過量(eGFR)の年間低下率は、AF発症群の方が対照群より大きかった(−1.23mL/分/1.73m2対−0.94mL/分/1.73m2)。また、eGFRが30%以上低下した人の割合も、AF発症群で高かった(ハザード比2.91)。 著者らは、「今回の知見は、AF管理における心血管・腎・代謝の観点の重要性を示唆するものである。AFが慢性腎臓病進行に及ぼす累積的影響、およびAF治療による腎アウトカム改善効果については、さらなる検討が必要である」と述べている。 なお、2人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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エイズ治療薬の真打ち登場!(解説:岡慎一氏)

 「安定期の患者に対するイスラトラビル/レナカパビルの合剤週1回1錠療法が、現在の第1選択薬である1日1回1錠療法に非劣性を示した」という内容の論文である。 1997年に強力な抗レトロウイルス薬併用療法が登場して、HIV感染者の予後が劇的に改善した。しかし、当時は、1日20錠の薬剤を5回に分けて服用する必要があった。副作用も強かった。それでも患者は我慢して飲み続けた。adherenceという言葉がはやったが、当然脱落者も少なくなかった。その後、抗HIV薬の改良は進み、2013年には1日1回1錠で治療できるようになった。1日1回服用のことをQDというが、さらに強調したSingle tablet regimen(STR)という造語が使われた。 しかし、抗HIV薬の開発はとどまるところを知らず、2022年には、2ヵ月に1回の注射で治療ができるようになった。long-acting注射薬の登場であった。個人的には、毎日薬を飲むより、2ヵ月間治療のことを忘れることができるこの治療が主流になるだろうと思ったが、それほどこの治療を利用する患者は増えなかった。注射という投与法がネックになったのだろうか? そして今回の治療薬である。long-acting経口薬の登場である。経口で、週1回1錠で治療できるのである。イスラトラビルは、かつて月1回服用でのHIV感染予防の治験が行われたが、この時は副作用としてリンパ球数の低下が問題となり中止となった。今回の週1回の投与量であれば、この副作用は見られていない。また、月1回が可能としても、実は、月1回というのが28日だったりすると意外に複雑であるが、週1回であれば決まった曜日に飲めばいいので簡単である。僕なら、「Sunday Pill」と名付けたい。治療効果が高く、安全で、服薬日を覚えやすい。これ以上の新薬開発がいるだろうか? まさに真打ちの登場である。

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MRIが耳の中の鉄球を吸いこんだ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第312回

MRIが耳の中の鉄球を吸いこんだ異物論文専門医として毎日PubMedを眺めている私ですが、今回はいつもと少し勝手が違いました。というのも、異物を取り出したのが医師ではなく、MRIそのものだったからです。「MRI室に金属を持ち込んではいけない」これは医療者なら誰もが叩き込まれる大原則です。ペースメーカー、動脈瘤クリップ、体内に残った金属片。強力な磁場は、それらを一瞬で凶器に変えてしまいます。ところが今回の論文は、その磁力が「隠れていた異物」のほうを暴いてしまった、という逆転劇でした。Mckinnon K, et al. An unexpected ferromagnetic foreign body in a paediatric researchparticipant undergoing 3T MRI. BMJ Case Rep. 2024;17:e258969.舞台はイギリス。早産で生まれた子供の脳の発達を追う縦断研究に、男児が参加していました。その日、研究用の脳MRIを撮る予定でした。研究チームは、当然ながら安全対策を徹底していました。書面と口頭による安全チェックリスト、金属の有無の確認、髪や肌の視触診。撮影前には「安全のための小休止」まで設け、子供には磁場のない模擬スキャナーで予行演習までさせる念の入れよう。ここまでやれば、まず金属が紛れ込む余地はなさそうに思えます。さて、いよいよ本番。母親が男の子を抱き上げ、ボア(あの筒の穴)をのぞかせてあげました。その瞬間、スタッフは見ました。何かが、ヒュンとボアの中へ飛んでいくのを。すぐに子供と母親をMR環境の外へ避難させ、ボアの中を調べてみると、そこには直径5mmの鉄球が転がっていたのです。耳の中に入っていた鉄球が、MRIの磁力にヒュンッと引き抜かれて飛んでいったのでした。幸い、耳に外傷はありませんでした。考えてみれば、これはかなり際どい出来事です。3テスラという磁場は、地磁気のおよそ数万倍。強磁性体であれば、たとえ5mmの小さな鉄球でも、磁石に引かれて弾丸のように振る舞います。飛び出す向きやタイミングが少し違っていれば、外耳道や鼓膜を傷つけていたかもしれません。驚いたのは親御さんです。鉄球のことなどまったく知らず、子供自身も「耳に何か入れた」とは一言も言っていませんでした。ただ、よくよく振り返ってみると、ここ2週間ほど、聞こえがおかしいかも、という違和感がうっすらあったそうです。犯人は、ずっとそこにいたわけです。MRI撮影時は、本人も家族も知らない金属が、するりとすり抜けてしまうことがある。それを、身をもって(というかMRIをもって)教えてくれた1例です。

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【GET!ザ・トレンド】難治性てんかん診療の最前線(前編)

難治性てんかんがもたらす社会生活の壁薬物治療で発作を十分に抑えられない「難治性てんかん」の患者は、日本に約30万人存在するといわれています。こうした患者は、発作自体の苦痛や危険に加え、社会生活において主に以下の3つの深刻な困難に直面しています。1つ目は「運転の制限による生活への支障」です。自動車の運転には「意識障害や運動障害を伴う発作が2年以上ないこと」などの厳格な法的基準が設けられています。難治性てんかんの場合、この条件を満たすことが難しく、免許の取得や更新ができません。地方など車社会においては、これが通勤や日常生活に直結する非常に大きな壁となります。2つ目は「就労の困難さと経済的不安」です。ある病院の調査では、患者の約33%が未就労であり、その多くが「就労希望はあるものの支援を受けられていない」状態にあることがわかっています。発作のコントロールへの不安や、職場での理解不足といった精神的な困難さが、社会参加へのハードルを高くしています。3つ目は「セルフスティグマ(自己への偏見)による孤立」です。患者自身が「発作を見られるのは恥ずかしい」「他人に迷惑をかける」とネガティブに思い込み、病気を隠したり支援を求めることを自ら諦めたりしてしまいます。これが自己効力感や生活の質(QOL)の低下を招き、社会的な孤立を深める要因となっています。外科治療が持つ、人生を変える本当の意味社会的な困難を抱える難治性てんかんの患者にとって、外科治療は単なる症状緩和にとどまらず、「人生を根本から好転させる可能性」を秘めています。適切な外科治療を行えば、約7割の患者で発作の消失が期待できます。たとえば、発作の原因となっている脳の異常部位を取り除く「焦点切除術」などの根治術が成功すれば、長年制限されていた就労や自動車の運転への道が開けます。何よりも「いつ発作が起きるかわからないという恐怖」から解放される意味は大きいです。つまり外科治療とは、服薬量の減少による副作用の軽減や、何よりもこの恐怖からの解放をもたらし、患者が自立した生活を取り戻すためのきわめて重要なステップとなります。臨床現場で感じる「壁」や「ジレンマ」難治性てんかんの患者にとって外科治療は大きな希望ですが、臨床現場においては、手術に至るまでの過程にさまざまな「壁」や「ジレンマ」が存在します。最大の壁は、適切な時期に専門施設へ紹介されていないことです。適切な抗発作薬を2種類使用しても発作が抑制されない場合、薬剤抵抗性と判断されます。しかし実際には、医療者も患者も外科治療を最終手段と考えがちで、長年薬の変更が繰り返されるケースが少なくありません。評価が遅れれば、事故のリスクや認知機能の低下に加え、就学・就労機会の喪失など社会的孤立が深刻化し、手術で発作が止まったとしても失われた社会生活を取り戻せなくなる恐れがあります。また、「専門施設への紹介=すぐに手術が決定する」という誤解も壁です。専門施設は、多職種チームで詳細な検査と検討を行い、薬の見直しや手術を見送る結論を出すこともあります。「手術を迷うから行かない」のではなく、「まず評価を受け、どんな選択肢があるかを知る」場所なのです。外科治療は最後の手段ではなく、標準的な治療選択肢の1つであると社会全体で共有していく必要があります。さらに、手術の手前にある侵襲的なモニタリング(頭蓋内脳波検査)の壁も大きなジレンマでした。従来は頭蓋骨を大きく開ける検査が行われ、患者の身体的・精神的苦痛や紹介医の葛藤を生み、専門施設への紹介をためらわせる一因になっていました。しかし最近では、定位的頭蓋内脳波(SEEG)が国内でも普及しつつあります。これは小さな穴から脳深部に直接電極を留置する手法で、患者の負担や恐怖を大幅に軽減しつつ、安全・正確に焦点を同定できるようになっています。このように術前の壁を下げる着実な進歩が続く中、医療の最前線では、さらに身体的負担の少ない最新技術が進歩しています。後編では、新たな非侵襲的なアプローチに迫ります。>>後編に続く

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外の海へ漕ぎ出せ!~血栓と出血の狭間で揺れる循環器内科医に届いた「1ヵ月」の福音~【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第99回

はじめに:血栓と出血、あちらを立てればこちらが立たず循環器内科の外来診察室では、日々このような静かな葛藤が繰り広げられています。患者「先生、歯茎から血が出るし、腕に大きな青あざができるんですけど……」医師「そうですよね……でも、お薬をやめると血管が詰まってしまう危険もあるんです。脳梗塞の心配もありますからね……」心房細動(AF)を合併し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)によってステントを留置した患者の治療は、まさに綱渡りです。心房細動による脳梗塞を防ぐには抗凝固薬(DOAC)が必要です。一方で、留置したステントの血栓性閉塞を防ぐためには抗血小板薬(P2Y12阻害薬)が必要になります。その結果、「DOAC+抗血小板薬」という強力な2剤併用抗血栓療法を続けざるを得ません。ところが、血栓予防を強化すればするほど、必然的に出血リスクは高まります。血栓を防いで命を救っているのか。あるいは出血という新たな危険を招いているのか。医師の心は常にその狭間で揺れ続けます。「この2剤併用療法を、いったいいつまで続ければよいのか?」長年にわたり、「十分な期間しっかり続けるべきだ」という考え方と、「できるだけ早く減らして出血を防ぐべきだ」という考え方がせめぎ合ってきました。世界中の循環器医が明確な答えを求め続けてきたこの命題に、日本から極めて重要なエビデンスが投じられたのです。金字塔:『Lancet』誌への掲載という快挙2026年7月15日、医学界の最高峰の一つである国際総合医学雑誌『Lancet』に、日本発の臨床研究が掲載されました1)。「OPTIMA-AF試験」です。『Lancet』は『New England Journal of Medicine』『JAMA』『BMJ』と並び、世界中の臨床医と研究者が注目する総合医学雑誌です。そこに日本主導の無作為化比較試験が掲載されることは、日本の循環器領域にとって歴史的快挙と言ってよいでしょう。この研究は、大阪大学の外海 洋平(そとみ・ようへい)氏らを中心とする「OPTIMA-AF Investigators」によって施行されました。本試験は、非弁膜症性心房細動を合併した冠動脈疾患患者を対象に、PCI後のDOACとP2Y12阻害薬の併用期間を1ヵ月に短縮し、その後DOAC単剤へ移行する戦略の有効性と安全性を検証した多施設共同無作為化比較試験です。全国75施設から1,079例が解析対象として登録されました。オールジャパンの結集と「外の海」への船出臨床研究に携わった経験がある者なら、この数字の重みがわかるはずです。全国75施設にわたり1,000例を超える患者を登録し、長期間にわたって追跡を完遂することは容易ではありません。日常診療に追われながら厳格なプロトコールを守り、質の高いデータを収集し続けるためには、研究事務局だけでなく各施設の医師、CRC、看護師、薬剤師など、多くの人々の献身が必要です。特筆すべきは、本研究が従来の大学医局や系列病院の枠を超えた、まさに「オールジャパン」の体制によって成し遂げられたことでしょう。日本の医療界には、ともすれば組織の垣根や地域の壁が存在します。しかし「OPTIMA-AF」は、それらを超えて国内の力を結集し、世界へ向けて発信された成果でした。そして実務的に研究を牽引した外海 洋平氏の名前を見るたび、私はある光景を思い浮かべます。日本の臨床研究という「内海」から船出し、世界標準という「外の海」へと漕ぎ出していく研究者たちの姿です。その航海は決して平穏ではありません。資金、人材、英語、査読、国際競争。その幾重もの荒波を乗り越えた末に、ついに世界最高峰の舞台へ到達したのです。OPTIMA-AF試験の概要と解釈非弁膜症性心房細動CHADS2スコア1点以上PCI施行患者解析対象1,079例無作為に以下の2群へ割り付けられました。1ヵ月併用群(542例)DOAC+P2Y12阻害薬を1ヵ月投与その後DOAC単剤へ移行12ヵ月併用群(537例)同治療を12ヵ月継続その後DOAC単剤へ移行有効性(全死亡または血栓塞栓イベント)1ヵ月群:5.4%、12ヵ月群:4.3%、HR:1.25(95%信頼区間[CI]:0.73~2.17)事前に設定された基準を満たし、1ヵ月群の非劣性が示されました。安全性(ISTH大出血または臨床的に重要な非大出血)1ヵ月群:4.5%、12ヵ月群:8.8%、HR:0.50(95%CI:0.30~0.81)1ヵ月群では出血イベントが有意に減少し、出血リスクはほぼ半減しました。これらの結果は、「1ヵ月で抗血小板薬を中止しDOAC単剤へ移行する戦略は、主要有効性評価項目について12ヵ月併用療法に対する非劣性を示し、さらに出血を大幅に減らした」ことを意味します。もちろん、著者ら自身も慎重な解釈を促しています。実際の血栓イベント発生率は想定より低く、主要有効性評価項目については十分な注意をもって評価すべきであることが論文のDiscussion中で繰り返し述べられています。それでもなお、少なくとも本試験の条件下においては、抗血小板薬の早期中止によって出血を減らしながら、有効性を維持し得る可能性が示された意義は極めて大きいと言えるでしょう。おわりに:世界へ投じられた大きな一石OPTIMA-AF試験が示したのは、単に「薬を1剤減らせる」という話ではありません。血栓症を防ぐために出血リスクを受け入れるのか。出血を避けるために血栓リスクを甘受するのか。その長年のジレンマに対して、「よりよい均衡点が存在するかもしれない」という希望を、無作為化比較試験という最も信頼性の高い方法論によって示したのです。もちろん、この1本の研究だけですべての議論が終わるわけではありません。対象患者の大部分は慢性冠症候群であり、急性冠症候群や欧米集団への一般化には慎重さが求められます。また著者らも、主要有効性評価項目については今後さらなる検証が必要であると述べています。しかし、それでもなお、この成果は今後の国内外の診療ガイドラインや臨床実践に大きな影響を与える可能性を秘めています。明日からの循環器外来で、「ステントを入れて1ヵ月たちましたね。そろそろ薬を減らせるかもしれません」と語ることができる患者さんが増えるかもしれないのです。それは出血合併症を減らし、患者の負担を軽くし、より合理的な抗血栓療法への道を開くことにつながります。緻密な研究デザインのもと、全国の施設を束ね、多くの困難を乗り越え、世界最高峰の舞台へ到達したOPTIMA-AF研究グループに、心からの敬意と祝意を表したいと思います。Congratulations!血栓と出血の狭間で悩み続けてきた循環器医たちにとって、この研究は確かに一筋の光として届いたはずです。そして、外海 洋平氏らが切り開いた「外の海」への航路は、これから先も日本発の臨床研究を乗せた多くの船を世界へ導いていくに違いありません。 1) Sotomi Y, et al. Lancet. 2026 Jul 15. [Epub ahead of print]

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8月21日 治療アプリの日【今日は何の日?】

【8月21日 治療アプリの日】〔由来〕CureAppが製造・販売する「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ」が厚生労働省から薬事承認を取得した2020年8月21日を記念して制定。治療アプリは、従来の医薬品やハードウェア医療機器では治療効果が不十分だった病気を治すためのもので、アプリを第3の治療法として多くに人に知ってもらい、活用してもらうことが目的。関連コンテンツ治療用アプリの処方の仕方早漏のスマホアプリ治療で射精までの時間が2倍も延長【バイオの火曜日】高血圧治療補助アプリ、オンライン算定点数の新設や要件緩和へ/CureApp高血圧アプリの有効性決定因子が明らかに/Hypertension高齢者機能評価+コミュニケーション支援が高齢がん治療の安全性を改善/日本臨床腫瘍学会

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第327回 実直でユーモア溢れるタケノコ医者、坂口力氏に献杯

INDEX連載に寄せられて最も驚いたご意見タケノコ医者の偉大な功績小泉首相に果敢に挑んだ、あるエピソード連載に寄せられて最も驚いたご意見私の本連載は読者の皆さまからご意見を受け付ける設定となっているため、実際にさまざまなご意見が届く。情報提供や好意的なご意見もあれば、半ばお叱りのようなもの、あるいはもはやイチャモンに近いもの(とくにワクチン関連)もある。そのような中、2024年1月、車椅子生活が始まりかけていた父親を介護する母親が扱える軽量車椅子の選択肢の少なさと地方在住者ゆえに実機を試せる機会が少ないことを嘆いた話を公開したことがある(第193回 両親の老老介護で思い知る「地域包括ケアシステムって何?」)なかば私の老父の介護の愚痴と言ってもいい内容なのだが、これに2件のメールをいただいた。頂いたメールのうち1通は、ある医療機器メーカーにお勤めの方がお勧めの車椅子を教えてくれたもの、そしてもう1通は頸椎打撲後にリハビリを受け、シルバーカー歩行ができるようになった方からで、シルバーカーの使い方を懇切丁寧に教えてくれた内容だった。後者のメールの冒頭には「ご意見、ごもっともだと思いながら、読み終えました」とあった。要は私の地域包括ケアシステムに対する批判への賛同と受け止めた。通常はそこで終わりなのだが、この時はこの率直な感想にやや驚いた。というのも書いた人が人だったからだ。おそらく私にこの内容を転送してきた担当編集者も同じ思いだったろう。というのもメールの送信主は、8月7日に92歳で逝去した初代厚生労働大臣の坂口力氏だったからである。坂口氏と言えば、公明党の重鎮で三重大学医学部(旧・三重県立大学医学部)卒の医師である。公明党は1999年10月に自民党、自由党(党首・小沢 一郎氏)との自自公連立政権に参加した。2000年4月には小沢氏の自由党が連立離脱を決定。これに反対した自由党の一部が保守党を結成して連立政権に残留し、新たな自公保連立政権がスタート、2000年12月に第2次森 喜朗改造内閣が成立した際に厚生大臣兼労働大臣に坂口氏が就任し、第2次小泉改造内閣成立後の2004年9月まで約4年弱、厚生労働大臣(以下、厚労相)を務めた。厚労相在任期間の最長はいまも坂口氏のままだ。タケノコ医者の偉大な功績坂口氏の最大の功績として語り継がれているのが、らい予防法違憲国家賠償請求訴訟において国の控訴断念に大きな役割を果たしたことである。日本ではハンセン病に罹患した患者について、法的には感染伝播のおそれがある存在として1907年の「法律第11号 癩(らい)予防二関スル法律」とこれを引き継いだ1931年の癩予防法(旧法「らい予防法」)、そして戦後は1953年に公布された「らい予防法」(通称:らい新法)により、強制隔離政策が行われた。すでに1960年代前半には、ハンセン病の治療法が確立され患者の強制隔離は医学的には必要なかったにもかかわらず、この隔離政策は1996年の同法廃止まで続けられてきた。同法廃止時に厚生大臣だった菅 直人氏は患者たちに謝罪をしたものの、すでに1952年の世界保健機関(WHO)第1回ハンセン病専門家委員会では、強制隔離には重大な弊害があり、できる限り避けるべきとの見解が明らかにされていたが、日本の「らい新法」公布はその翌年となった。いわば国際的にはハンセン病患者の隔離は標準的な対応ではなかったにもかかわらず、「らい新法」による強制隔離政策で患者は人権を奪われてきたとして、1998年7月、「らい新法」そのものが違憲だったとして患者13人が国を相手取って損害賠償を求める裁判を熊本地裁に提訴した。結果は2001年5月に国が敗訴の判決。通常、違憲を訴える裁判の一審で国が敗訴しても、そこであっさり判決が確定することはほぼない。国として定めた法令を違憲と判断されて国側も黙っているわけにはいかないからである。この「らい新法」に関する熊本地裁での敗訴の際も、厚生労働省も法務省も控訴の方針で動いていた。その中で矢面に立ち控訴断念を訴えたのが坂口氏である。最終的に当時の首相だった小泉 純一郎氏の決断で国の控訴断念が決定する。この時の件を坂口氏が振り返った記事がある。自らを「タケノコ医者」*と呼んだ坂口氏。私がこれを読んで率直に驚いたのは、大臣就任直後まで“「らい新法」のことを知らなかった”という事実を隠していない点だ。そもそも世に法律は数多あるため、大臣に就任した国会議員が所轄官庁の抱える法律をすべて把握していなくとも何ら不思議はない。しかし、権謀術数が渦巻き、一寸先は闇とされる政治の世界では、自らの不明を率直に語る政治家は非常にまれである。なんと素直な人だろうと思ってしまった。そして周囲が控訴一色となるなかで、辞表を胸に首相官邸に赴くところも鬼気迫るところがある。*やぶ医者にも至らない半人前という意で「タケノコ医者」とし、常に弱い立場の人に寄り添おうとしたという(朝日新聞:「『タケノコ医者』が貫いた控訴断念 坂口力さん生前語った最後の問い」より)小泉首相に果敢に挑んだ、あるエピソードさてその坂口氏だが、実はエピソードの尽きない御仁でもある。前述の「らい新法」以外では、首相だった小泉氏と“対立”もしている。具体的には規制緩和や聖域なき構造改革を主張した小泉氏が推し進めた構造改革特区のうち、医療分野の規制緩和を図る通称「医療特区」で株式会社参入を認めた件である。やや長くなるが、この時の大臣のぶら下がり会見でのやり取りを引用したい。坂口氏医療特区につきまして、われわれ株式会社の導入につきましては反対をしてまいりましたが、総理の決断によりまして自由診療におきますこの特区への参入と申しますか、株式会社として自由診療に限って行う、こういう決断が出たようでございます。総理の決断であります以上お受けする以外にないというふうに思っております。記者大臣としてはこれまでずっと反対のお立場をとられていましたが、改めて今日決定を聞いてどのような。坂口氏そうですね、昨夜も総理にかなり私の意見を申し上げました。医療の中でやはり医師に与えられた裁量というのは非常に大きいというふうに思っています。この医師の与えられた裁量といいますのは、これは医療効果を上げるという意味での裁量だというふうに思っております。そこに株式会社が導入されて、そして利益を上げる、収益を上げるということを中心になりましたときに、その医師に与えられました医療効果を上げるという、その裁量がほかの要因によって左右される。即ち経済要因によって左右されるということが大変私は心配です、危惧いたしますということを昨夜も申し上げたところでございます。今日総理が言われましたのは、そうした意味でいわゆる医療保険と関係のない自由診療の分野でありましたことは、一つの救いではあったというふうに思っております。記者自由診療に限定したとしても、何らかの影響というのは避けられないとお考えでしょうか。坂口氏やはり私は影響が出ると思っております。医療機関が厳しい中であるにもかかわらず医療法人という傘の下で一生懸命にやってくれている、それを株式会社が参入をして利益を上げてもいい、そして配当を出してもいいというようなことになってまいりますと、その医療法人という傘の中で頑張っていた人達の気持ちが崩れることがありはしないか、大変心配をいたしております。記者総理のご決断を受け入れるということではあっても、納得はしていないということでしょうか。坂口氏まあ、そうですね、心の底から納得して受け入れるということではありません。しかし総理の決断である以上お受けいたします。ちなみにこの時のぶら下がり会見では、「らい新法」での辞表問題もあったせいか、以下のような記者とのやり取りもある。記者あり得ないことだとは思うんですけれども。坂口氏あり得ないことは言わないでください。記者大臣がこれをもってお辞めになるということはございませんか。坂口氏そんなことはありません。いちいち辞めておりましたら、何遍辞めなければならないか。最後の一言に思わず爆笑してしまった。ある意味、医療という聖域を目の敵にしてきた小泉氏に、医師でありながら厚労相として仕えることがどれだけ大変だったかがうかがい知れる。一方、在任中には2004年の年金改革に向けて自分の名前を冠した「坂口試案」を発表したことでも知られる。それまでの年金制度改革は、少子高齢化で財政が厳しくなることを受けて保険料を引き上げることが中心だった。ところが坂口試案ではこれを転換し、保険料負担を先に固定し、それを超える財政悪化は、マクロ経済スライドを導入して給付水準の調整で吸収するという方式を打ち出した。この試案は現在の年金制度の骨格となっている。こうしてみると、曲がったことは嫌いで何事も思ったら言わずにはいられない、実直さが坂口氏の気性だと改めて知ることができる。そう考えれば、すでに政界から身を引いたとはいえ、かつては厚労省トップだった人物が厚労省の看板政策である「地域包括ケアシステム」を批判的に捉える言説に賛同するのもある意味納得できる。そしてそんな御仁から生前“お褒め”の言葉を頂けたのは、光栄と言うよりほかにはない。改めてご冥福をお祈りしたい。

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認知症サポート制度「チームオレンジ」のメリットとは?

 「チームオレンジ」とは、日本政府の認知症施策推進大綱で掲げられた、認知症に関する国家的な取り組みである。本取り組みは、認知症と共に生きる人やその家族と、研修を受けた地域ボランティア(オレンジサポーター)をつなぐものである。オレンジサポーターは、日常生活における実践的な支援を行うとともに、地域の支援ネットワークの構築を促進する。2023年までに本取り組みは、全国で約1,900のチーム、3万3,000人のサポーターを擁する規模に拡大したが、オレンジサポーターが自身の役割を通じてどのような有益性を感じているかについては、これまで十分に明らかにされていなかった。札幌医科大学の横山 和樹氏らは、札幌市におけるサポーターの実際の経験を通じて、チームオレンジがもたらす有益性について検討した。BMC Geriatrics誌オンライン版2026年7月16日号の報告。 札幌市内の8つの地域拠点から、目的的サンプリングによって選定された16人のオレンジサポーターを対象に質的内容分析を実施した。半構造化インタビューは、2024年12月~2025年3月に行われた。データの収集と分析は、データが十分に集まるまで継続した。 主な結果は以下のとおり。・2つの主要なテーマが特定された。・第1のテーマである「オレンジサポーターがチームオレンジで得た学び」は、次の4つのカテゴリーで構成されていた。(1)認知症と共に生きる人やその家族の「人としての尊厳」の尊重(2)多様なニーズの理解と支援(3)認知症と共に生きる人やその家族の強みの発見(4)協働を通じた地域社会へのインクルージョンの促進・第2のテーマである「オレンジサポーターが認識したチームオレンジの包括的な有益性」には、次の3つのカテゴリーが含まれていた。(1)日常生活における認知症への意識の高まり(2)相互依存的な貢献を通じたエンパワーメント(3)活動を通じた精神的なウェルビーイングの向上 著者らは「チームオレンジは、サポーターが認知症と共に生きる人と関わるための前向きな認識や実践的なスキルを養うと同時に、個人のエンパワーメントや精神的なウェルビーイングの向上を実感できる場として機能していると考えられる。日本独自の文化的背景に根差し、政策に基づいたモデルであるチームオレンジは、国際的な認知症にやさしい地域づくりの取り組みを発展させるうえで応用可能な知見を提供しており、高齢者におけるケア改善、社会参加の促進、社会的孤立に関連する健康リスクの低減といった点においても重要な示唆を含んでいる」と結論付けている。

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BMIだけでは心血管リスクを見誤る?腹囲・WHRの意義/JACC

 BMIは全身の肥満度を評価する指標として広く用いられているが、体組成や脂肪分布を反映しにくく、心血管疾患(CVD)リスクの異質性を見落とす可能性がある。腹囲やウエスト・ヒップ比(WHR)は中心性肥満の代替指標であり、BMI区分と一致しない場合も少なくない。そこで、米国・Johns Hopkins Ciccarone Center for Prevention of Cardiovascular DiseaseのZeina A Dardari氏らは、BMIの標準体重・過体重・肥満区分を腹囲およびWHRで再分類し、9つのCVD関連アウトカムに対する予後的意義を検討した。その結果、腹囲およびWHRは従来のBMI区分におけるリスクの過小・過大評価を同定し、CVDリスクの再分類に有用であることが示された。本研究結果は、Journal of the American College of Cardiology誌2026年8月11日号に掲載された。 本研究は、Cross-Cohort Collaboration(CCC)に参加する15コホートのデータを用いて行われた。対象は、腹囲またはWHRの調和済みデータを有し、9つのアウトカム(致死的・非致死的心筋梗塞、致死的・非致死的脳卒中、心不全、心房細動、全冠動脈疾患、全CVD、冠動脈疾患死亡、CVD死亡、全死亡)の少なくとも1つについて追跡可能であった25万9,388人とした。BMI区分別に、臨床的に高値と定義される腹囲またはWHRの有無で対象者を分類し、多変量Cox比例ハザードモデルにより各アウトカムのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・腹囲データを有する対象者は25万9,351人、WHRデータを有する対象者は21万8,984人であった。追跡期間中央値は20.0年(95%信頼区間[CI]:12.7~23.5)であった。・BMIで標準体重に分類された対象者のうち、高腹囲は5%、高WHRは18%に認められた。過体重に分類された対象者では、高腹囲が39%、高WHRが40%であった。・BMIで肥満に分類された対象者のうち、低腹囲は9%、低WHRは45%に認められた。・BMIで標準体重または過体重に分類された対象者では、臨床的に定義された腹囲またはWHRが高値の場合、多くのアウトカムでリスクが15~50%高かった。・BMIで肥満に分類された対象者のうち低腹囲を有する集団では、標準体重かつ低腹囲の集団と比較して、全死亡を除き有意なリスク差は認められなかった。全死亡については、低腹囲を有する肥満集団でリスクが有意に低かった。・男性とは対照的に、肥満だがWHRが低い女性は、正常体重でWHRが低い女性と比較して、すべてのアウトカムでリスクが有意に高かった。ただし、HRは肥満かつ高WHRの集団より小さかった。・BMIで肥満に分類された対象者における高腹囲または高WHRに関連する集団寄与リスクは13~49%の範囲であった。・集団寄与リスクの推定値が最も高かったのは、高腹囲に関連する心不全および心房細動であった。 本研究結果について著者らは、「腹囲およびWHRは従来のBMI区分における誤分類を同定し、標準体重、過体重、肥満の各区分を横断してCVDリスクを再分類することで、診断的および予後的価値を付加する」とまとめた。

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既治療の進行腎細胞がん、ベルズチファン+レンバチニブがPFS改善(LITESPARK-011)/Lancet

 抗PD-1/PD-L1療法後に増悪した進行淡明細胞型腎細胞がん患者において、ベルズチファン+レンバチニブはカボザンチニブと比較し、全生存期間(OS)に有意差はなかったものの無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、安全性プロファイルは単剤投与の場合と同程度であったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのRobert J. Motzer氏らLITESPARK-011 Investigatorsが実施した「LITESPARK-011試験」で示された。著者は、「ベルズチファン+レンバチニブは、抗PD-1/PD-L1療法後の進行淡明細胞型腎細胞がん患者に対する新たな標準治療となりうるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月12日号掲載の報告。カボザンチニブと比較、主要評価項目はPFSとOS LITESPARK-011試験は、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米および南米の25ヵ国、計184施設で実施した第III相無作為化非盲検実薬対照試験である。 対象は、18歳以上の切除不能な局所進行または転移のある淡明細胞型腎細胞がん患者で、1次または2次治療としての抗PD-1/PD-L1療法(VEGFRチロシンキナーゼ阻害薬併用の有無を問わない)後、または術前・術後補助療法としての抗PD-1/PD-L1療法の最終投与後6ヵ月以内に、病勢進行が認められた患者であった。 研究グループは、適格患者をベルズチファン(120mg)+レンバチニブ(20mg)併用群またはカボザンチニブ(60mg)群に、Web応答システム(ブロックサイズ4)を用いて1対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行または許容できない有害事象が発現するまで1日1回経口投与した。 割り付けの層別因子は、国際転移腎細胞がんデータベースコンソーシアム(IMDC)の予後スコア(0、1~2、3~6)、抗PD-1/PD-L1療法の治療ライン(術後補助療法/術前術後補助療法/1次治療、2次治療)、および地域(北米、西ヨーロッパ、その他の地域)であった。 主要評価項目は、盲検下独立中央評価委員会判定によるPFSならびにOSの2つで、無作為化された全例を解析対象集団とし、PFSまたはOSのいずれかで有意差が認められた場合は主要評価項目達成と定義した。 安全性は、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された患者を対象に評価した。PFS中央値は14.8ヵ月vs.10.7ヵ月、ベルズチファン+レンバチニブ群で有意に延長 2021年3月5日~2023年9月1日に955例がスクリーニングされ、このうち747例が無作為化された(ベルズチファン+レンバチニブ群371例、カボザンチニブ群376例)。 患者背景は、565例(76%)が男性、182例(24%)が女性、651例(87%)が白人であった。 第2回中間解析(2025年4月9日データカットオフ、追跡期間中央値:29.0ヵ月、四分位範囲:23.7~34.9)において、PFS中央値はベルズチファン+レンバチニブ群14.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.2~16.6)、カボザンチニブ群10.7ヵ月(95%CI:9.2~11.1)であり、ベルズチファン+レンバチニブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.59~0.84、片側p<0.0001、有意水準片側p=0.0047)。 OS中央値は、ベルズチファン+レンバチニブ群34.9ヵ月(95%CI:27.5~未到達)、カボザンチニブ群27.6ヵ月(95%CI:24.0~31.4)で、両群間に有意差は認められなかった(HR:0.85、95%CI:0.68~1.05、片側p=0.061、有意水準片側p=0.0115)。 Grade3以上の有害事象は、ベルズチファン+レンバチニブ群で84%(311/370例)、カボザンチニブ群で83%(307/371例)に発現した。両群で最も発現割合が高かったGrade3以上の有害事象は、高血圧であった(ベルズチファン+レンバチニブ群31%、カボザンチニブ群29%)。副作用による死亡は、ベルズチファン+レンバチニブ群で2例(血栓性微小血管症、肺炎)、カボザンチニブ群で1例(喀血)報告された。

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COPD増悪予防、アジスロマイシンvs.roflumilast:標的試験エミュレーション/BMJ

 増悪を経験した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の維持療法として、アジスロマイシンはroflumilastと比較し、中等度~重度COPD増悪の発生リスク低下と関連していることを、米国・ハーバード大学医学大学院のGerard T. Portela氏らが、同国の大規模な健康保険データベースを用いて実施した標的試験エミュレーション(target trial emulation)研究の結果で明らかにした。アジスロマイシンとroflumilastは、COPDの長期管理における増悪リスクの低減に有用であり、国際ガイドラインである「GOLD」において増悪を経験した患者への使用が推奨されているが、これまで臨床医がいずれを選択すべきかを判断するデータはほとんど存在していない。著者は、「本研究では安全性の比較評価は行われなかったものの、示された治療アウトカムに関するエビデンスは、今後発表されることになるであろう大規模無作為化比較試験のデータを補完しうるものとなるだろう」とまとめている。BMJ誌2026年8月5日号掲載の報告。初回中等度~重度COPD増悪までの期間を標的試験エミュレーションで評価 研究グループは、Optum Clinformatics Data Martデータベースを用い、2011年3月1日~2024年8月31日に維持療法としてアジスロマイシンまたはroflumilast経口薬の新規処方を受けた患者を対象とする標的試験エミュレーションを行った。 解析対象は、COPDを有し、保険加入継続期間が183日以上で、維持療法としてアジスロマイシンまたはroflumilastの経口投与を新たに開始した40歳以上の患者で、他の肺疾患(例:気管支拡張症、嚢胞性線維症、間質性肺疾患など)の所見を有する患者、またはアジスロマイシンの別の適応(例:HIV感染症または非結核性抗酸菌症の診断)を有する患者は除外した。 傾向スコア1対1マッチング法を用いて、アジスロマイシン群とroflumilast群を比較した。 主要評価項目は、中等度~重度COPD増悪の初回発生までの期間で、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。中等度~重度COPD増悪のリスクがアジスロマイシン群で17%低下 主要解析には、傾向スコアマッチングに基づく7,550組が含まれた。患者の平均年齢は70歳で、56%が女性であった。 アジスロマイシン群では2,753人年の追跡期間中に3,054例が中等度~重度COPD増悪を経験し(補正前発生率:1人年当たり1.1件)、roflumilast群では2,620人年の追跡期間中に3,503例が同増悪を経験した(補正前発生率:1人年当たり1.3件)。 アジスロマイシン群はroflumilast群と比較し、初回の中等度~重度COPD増悪が17%減少し(HR:0.83、95%CI:0.79~0.87)、1年時点の中等度~重度COPD増悪の絶対リスクはアジスロマイシン群0.60(95%CI:0.58~0.61)、roflumilast群0.67(95%CI:0.65~0.68)であった(群間差:-0.07[95%CI:-0.09~-0.05]、治療必要数:15[95%CI:12~21])。 これらの結果は、事前に規定した感度解析およびサブグループ解析においても一貫していた。

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胃がんに初の周術期治療、D-FLOTレジメン承認/AZ

 2026年6月、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が「胃における術前・術後補助療法」の適応追加で国内承認された。これまで手術と術後補助化学療法を中心としてきた日本の胃がん治療に、デュルバルマブとFLOT療法を組み合わせた周術期治療の選択肢が加わることとなる。8月4日に開催されたアストラゼネカのメディアセミナーでは、山梨大学医学部外科学講座第1教室教授の市川 大輔氏が「胃がん治療のアンメットメディカルニーズとMATTERHORN試験がもたらすPractice Change」と題して講演を行った。 日本では胃がんに対する外科治療が高度に標準化され、原発巣切除+所属リンパ節郭清を基本として良好な治療成績を積み上げてきた。一方、定型手術の範囲を超えてリンパ節や隣接臓器を同時切除する拡大手術については、単純に切除範囲を広げるだけでは予後改善につながらないことが明らかになってきた。その結果、治療成績向上の焦点は、外科治療から薬物療法を組み合わせた集学的治療へと移ってきた。 ただし、その発展の仕方は日本と欧米で異なる。市川氏は、早期発見例が多く、D2リンパ節郭清など手術の質が標準化されてきた日本では「まず確実に切除する」戦略が発展したのに対し、高度進行例が多く手術の質にも施設間格差がある欧米では「まず薬物療法を確実に行う」という考え方から術前化学療法が普及したと、説明した。 日本の従来戦略にも課題は残る。胃切除後には胃容量の減少に伴う食事摂取量低下などさまざまな栄養障害が生じ、術後補助化学療法を十分に導入・継続できない場合がある。全国胃がん登録を用いた解析では、StageII/IIIの胃がん患者1万5,848例のうち、術後補助化学療法が実施されなかった割合は46.5%で、とくに75歳以上では71.5%に達した。 そこで注目されてきたのが術前化学療法戦略だ。術前治療には、薬物療法を確実に導入できることに加え、微小転移への早期介入、腫瘍縮小による治癒切除率の向上などが期待できる。さらに、腫瘍が存在する術前から免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与することで、豊富ながん抗原を背景にT細胞を活性化し、微小転移を抑制できる可能性がある。一方、治療中の病勢進行や有害事象による手術延期、術前病期診断の誤差に伴う過剰治療などのデメリットもある。 こうした背景の下で行われたのが、国際共同第III相MATTERHORN試験である。切除可能なStageII~IVAの胃または食道胃接合部腺がん患者948例を、デュルバルマブ+FLOT(D-FLOT)群474例とプラセボ+FLOT群474例に無作為化。術前・術後にFLOTをそれぞれ4回投与するとともにデュルバルマブまたはプラセボを併用し、その後デュルバルマブまたはプラセボを最大10回単独投与した。主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)、重要な副次評価項目には病理学的完全奏効(pCR)率などが設定された。 結果、D-FLOT群はプラセボ+FLOT群に対してEFSを有意に延長した。EFSのハザード比(HR)は0.71(95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)で、イベント発生リスクを29%低減した。EFS中央値はD-FLOT群で未到達、プラセボ+FLOT群では32.82ヵ月だった。pCR率はそれぞれ19.2%、7.2%で、D-FLOT群が有意に高かった。安全性では、Grade3/4の有害事象発現率はD-FLOT群71.6%、プラセボ+FLOT群71.2%で、大きな差は認められなかった。 日本人サブセットはD-FLOT群40例、プラセボ+FLOT群46例と限られるものの、全体集団を上回るEFS改善傾向が示された(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)。一方、Grade3/4の好中球数減少が両群とも約67%に認められたほか、発熱性好中球減少症もD-FLOT群12.5%、プラセボ+FLOT群4.3%に認められ、いずれも全体集団より高値だった。市川氏は、良好な成績は日本の術技や術後管理のレベルの高さに起因する可能性があるとする一方で、欧米で確立されたFLOTレジメンそのものへの忍容性も含め、適切な支持療法が必要になると指摘した。 こうしたエビデンスを受け、日本胃学会は2026年6月19日付の「胃治療ガイドライン速報」において、「根治切除可能な臨床病期II~IVAの胃・胃食道接合部腺に対する周術期D-FLOT療法およびその後のデュルバルマブ単剤療法を推奨する」とした。 市川氏は、今後は外科医だけでなく腫瘍内科医を含めた多職種で治療戦略を検討し、患者背景、臨床病期、腫瘍特性、薬物療法への忍容性などを踏まえて、周術期治療に適切な症例を選択することが重要になるとの考えを示した。D-FLOTレジメン承認を契機に、日本の切除可能進行胃がんにおいても、「まず手術」という従来の治療体系から周術期全体を見据えて治療を最適化する時代へと移行することになりそうだ。

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夜型の人では夜遅い食事パターンが肥満関連指標と関連

 夜型の人では、体脂肪が多く、脂質や糖代謝に関連する指標も不良であることが、新たな研究で示された。ニュージーランドの女性287人を対象としたこの研究では、朝型、夜型、中間型のいずれのクロノタイプでも1日の総エネルギー摂取量に大きな差は認められなかった一方、夜型の人では朝の時間帯の摂取量が少なく、夜遅い時間帯の摂取量が多かった。このような食事パターンは、体脂肪率や腹部脂肪の増加、脂質代謝や糖代謝の悪化と関連していることが示されたという。グリフィス大学(オーストラリア)栄養学教授のRozanne Kruger氏らによるこの研究結果は、7月7日付で「Frontiers in Nutrition」に掲載された。 この研究では、18~45歳の女性287人を対象に、クロノタイプ(朝型、中間型、夜型)と食事摂取(カロリー、栄養)、食事のタイミング、体組成指標、代謝バイオマーカーとの関連を検討した。5日間の食事記録から、エネルギー、主要栄養素、微量栄養素の食事からの摂取量、および1日のどの時刻に食事を摂ったかを解析した。 参加者のクロノタイプは、54%が中間型、34%が夜型、12%が朝型だった。夜型群は、朝型や中間型と比べて、BMI、体脂肪率、アンドロイド/ガイノイド(A/G)比(アンドロイド〔腹部〕領域の脂肪とガイノイド〔臀部・太もも〕領域の脂肪の比率)が高かった。 1日の総エネルギー摂取量は、3群間では統計学的な有意差は認められなかったが、朝型と中間型群を合わせた群と夜型群を比較すると、夜型群の方が総エネルギー摂取量が有意に多かった。朝型・中間型群は夜型群に比べて、午前10時以前のエネルギー、タンパク質、炭水化物、脂質の摂取量が多かった一方、夜型群では午後8時以降のエネルギー、タンパク質、炭水化物、脂質の摂取量が多かった。 こうした傾向は、体脂肪率またはA/G比で層別化した解析でも認められた。高体脂肪率群では夜型群で午前10時以前のエネルギー、タンパク質、炭水化物の摂取量が朝型・中間型群より少なく、午後8時以降のエネルギー、炭水化物、脂質の摂取量が多かった。高A/G比群では、夜型群で午前10時以前のエネルギー、タンパク質、炭水化物の摂取量が少なく、午後8時以降のエネルギー、タンパク質、炭水化物、脂質の摂取量が多かった。中でもタンパク質のエネルギー比率(総エネルギー摂取量に占める割合)は、総エネルギー摂取量で補正後も有意に高かった。さらに、夜型群では朝型・中間型群と比べて、脂質代謝指標や糖代謝指標も不良だった。 Kruger氏は、「1日の総エネルギー摂取量は、クロノタイプにかかわらず大きな差はなかった一方で、食事のタイミングには明確な違いが見られた」と述べている。研究グループによると、本来であれば睡眠を取るべき夜間に食事をすると、体への負担が大きくなるという。夜間に高エネルギー食品を摂取すると、体はそのエネルギーを消費するよりも脂肪として蓄積されやすくなり、肥満になりやすくなったり、健康状態が悪化したりする可能性があるという。Kruger氏は、「この結果は、『いつ食べるか』が『何を食べるか』と同じくらい重要であることを示している。特に生活リズムが夜型の人では、夜遅い時間の食事を減らすことが、健康状態の改善のための重要な戦略になる可能性がある」と述べている。

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クレアチンはうつ病改善に役立つ?

 筋力増強を目的に利用されることも多いサプリメントの一つであるクレアチンは、うつ病の治療にも役立つのだろうか? このトピックに関する既報研究をまとめた、オタワ大学(カナダ)のBassam Jeryous Fares氏らによる短報が、「Brain Medicine」に6月30日付で掲載された。それによると、クレアチンがうつ病治療のサポートに有効な可能性はあるものの、十分なエビデンスはまだ得られていないという。 クレアチンは、肉や魚などの食品に含まれているアミノ酸誘導体で、細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしている。筋力増強作用があることから、筋力トレーニングをしている人の間で、サプリメントとして広く利用されている。このクレアチンは脳でのエネルギー利用にも関わっていて、気分障害や統合失調症などの精神疾患患者では脳内のクレアチン代謝の変化が観察されるという報告もある。そのため理論的には、クレアチンの摂取が精神疾患の治療をサポートする可能性もある。Fares氏らは、既報文献のレビューによりこの点を検討した。 レビューの対象には、ランダム化比較試験(RCT)の報告が5件含まれていた。それらは、米国、イスラエル、韓国、インド、ブラジルで1件ずつ実施され、研究参加者は合計238人(クレアチン群126人、プラセボ群112人)、平均年齢36±14歳、男性26.0%だった。4件は大うつ病性障害(MDD)患者を対象とし、他の1件は大うつ病エピソードのある双極症患者を対象としていた。 MDD患者を対象に実施された1件のRCTは、抗うつ薬であるエスシタロプラムにクレアチン5g/日を追加し8週間介入した結果、プラセボを追加した群よりもうつ病の症状が改善することを示していた。別のMDD患者対象RCTでは、認知行動療法(CBT)とクレアチンの並行介入が、CBTとプラセボによる介入よりも症状改善に有効であることを報告していた。ただし、双極症患者を対象とする研究を含む他の3件のRCTは、有意な効果を示していなかった。 クレアチンの忍容性については全体的に見ておおむね良好で、副作用は胃腸の不快感などの軽度なものがほとんどであった。しかし、双極症患者対象研究において、クレアチン群の2人に軽躁状態または躁状態が発現したと報告されていた。今回のレビューの結果について研究者らは、「クレアチンは大うつ病の補助療法として有望な可能性がある一方で、エビデンスは一貫しておらず、より大規模かつ長期間のRCTが必要」と述べている。 論文の筆頭著者であるFares氏も、「レビューで観察されたシグナルは興味深いものではあるが、結論を導き出すものではない。5件のRCTのうち2件では有効性が示された一方、残る3件では有意な効果は認められなかった」と総括。その上で、「このような結果は、臨床診療を変えるほどのエビデンスがまだ蓄積されていないことを意味するものだ。むしろこのトピックに、さらなる探求を進めるだけの価値があることを示唆する結果と言える」としている。

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長期的な経済的逆境は認知機能低下や脳構造変化と関連か

 経済的逆境は、精神的なストレスを増大させるだけでなく、脳の老化と関連する可能性があるーーそんな研究結果が報告された。若年成人期から中年期にかけて慢性的に経済的困窮を抱えていたり世帯所得が低かった人は、53歳時点で実施された認知機能検査の成績が低い傾向にあることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJacques Wels氏らによるこの研究は、7月23日付で「Innovation in Aging」に掲載された。 持続的な経済的逆境が認知機能の加齢に伴う変化や脳の健康に長期的にどのような影響を及ぼすのかは、十分に明らかになっていない。そこでWels氏らは、英国の1946年出生コホート(2,759人)を対象に、26~53歳時の経済的逆境(世帯所得の低さ、経済的困窮)と、53歳時の認知機能、53歳から69歳までの認知機能の変化との関連を解析した。さらに、69~71歳時に脳MRI検査を受けた一部の参加者では、経済的逆境と高齢期の脳構造との関連も調べた。参加者には、26歳、43歳、53歳時点での世帯所得に加え、36歳、43歳、53歳時点で経済的困窮の有無について質問した。 その結果、世帯所得が低い状態や経済的困窮を経験することが多かった人では、53歳時点における情報処理速度や言語記憶の成績が低かった。これらの人では、53歳以降の言語記憶の低下速度は比較的緩やかだったが、これは53歳時点ですでに認知機能スコアが低かったことによるものと考えられた。さらに、MRI解析からは、持続的な低世帯所得は、脳の萎縮に伴い拡大することが知られている脳室容積の増大と関連することも示された。経済的逆境と脳構造の変化との関連は、男性、幼少期に社会経済的状況が不利だった人、アルツハイマー病の遺伝的リスク因子であるAPOE ε4保有者でより強く認められた。 研究グループは、本研究で対象としたコホートの世代では、男性が家計の担い手と見なされることが多かったため、経済的逆境の影響をより強く受けた可能性があると考察している。また、喫煙や飲酒などの健康に好ましくない生活習慣が多かったことも影響した可能性があるとしている。 Wels氏は、「認知機能の加齢による変化を検討したこれまでの研究の多くは、経済的逆境を単一時点でしか評価していない。本研究では、数十年にわたるデータを用いたことで、認知機能に大きな影響を及ぼすのは一時的な困難ではなく、長年にわたる経済的逆境の積み重ねであることが明らかになった」とニュースリリースで述べている。 一方、論文の上席著者であるUCL公衆衛生・実験医学部門教授のPraveetha Patalay氏は、「今回の結果は、経済的逆境に直面している人々を支援し、慢性的な貧困を減らすことが、将来的な認知機能低下や認知症リスクの低減につながる可能性を示唆している」との見解を示している。

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GLORY-2:肥満症に対するmazdutideの減量効果と真の治療ゴール(解説:永井聡氏)

 mazdutideはEli Lilly社によって創製されたオキシントモジュリン由来のペプチドアナログであり、グルカゴン(GCG)/GLP-1受容体デュアルアゴニストである。GLP-1受容体介在性の食欲抑制効果に加え、GCG受容体を介した脂肪分解および肝臓でのエネルギー消費亢進による減量効果が期待されており、現在、中国の製薬企業が同国内での治験を進めている。 GLORY-2試験は、BMI30以上の肥満を有する中国人患者を対象とした第III相試験である。60週間にわたるmazdutide 9mgの週1回皮下投与により、プラセボ群と比較して−15.15%の体重減少を達成した。直接比較試験ではないものの、チルゼパチドに迫る強力な減量効果を示している。安全性に関しては、GLP-1関連薬に共通する嘔気・嘔吐などの消化器症状が高頻度に認められたが、本薬特異的な重篤な有害事象は報告されていない。 現時点において、mazdutideは中国以外での開発予定はない。しかし、同クラスのGCG/GLP-1受容体デュアルアゴニストとしては、survodutideが日本や欧米を含めてグローバルで開発中である。すでに強力な減量効果を持つチルゼパチドが上市されている中、「経口薬でもなく、減量率も同等レベルの新規注射薬」には、それほどのインパクトがないと感じられるかもしれない。 ここで改めて強調したいのは、「肥満」と「肥満症」の違いである。単なる美容目的や「減量のみ」を目的としたGLP-1関連薬の不適切使用は社会的な問題となっており、メディアでも多く取り上げられている。過度な減量の裏には、消化器症状などの副作用や、るい痩(筋肉量減少)のリスクが潜んでいる。しかし、われわれの日常的な「適正な肥満症治療」の現場においても、無意識のうちに「体重が何キロ減ったか」という成果ばかりを強調してしまってはいないだろうか。日進月歩で新薬の開発が進むGLP-1関連薬の領域は、ともすれば「減量率の競争」に陥りつつあるのが現実である。 体重減少のみを目的とするならば、極端に言えば「たまたま血圧が高い肥満者に、単なる減量目的で薬剤を投与している」ことと大差なくなってしまう。肥満症治療において真に求められるのは、高血圧、脂質異常症、MASLD/MASHといった肥満関連合併症の改善であり、さらにその先にある長期的な心血管イベントの抑制、生命予後の改善、そしてQOLの向上であるはずだ1)。 この点において、mazdutideは単なるGLP-1受容体作動薬とは異なり、GCG受容体を介して肝臓でのエネルギー消費亢進と脂肪の分解・酸化を直接的に促すという強みを持つ。本試験でも肝内脂肪の著明な低下が示されており、MASLD/MASHを合併する肥満症への効果が強く期待される。興味深いことに、最近、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドがアルコール使用障害に対しても臨床的有用性を示すことが報告され、注目を集めている2)。mazdutideのようなデュアルアゴニストは、その特長を生かし、「アルコール使用障害」と「肝内脂肪の改善・線維化抑制」に対する同時治療を可能にするポテンシャルを秘めているかもしれない。 これからの肥満症治療は、単一の減量指標にとらわれず、患者個々の病態に沿った薬剤の「使い分け」が求められる時代となるだろう。そのためにも、日常診療においては単なる「減量率の競争」から脱却し、患者さんの声にしっかりと耳を傾けながら、その人にとっての「真の治療ゴール」は何かを共に考え、対話を重ねて治療を進めていただきたい。もちろん、現時点ではmazdutideが長期的な生命予後やQOLを改善するという直接的なエビデンスは確立されておらず、今後のさらなるデータ蓄積が待たれる。

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残暑の三景【Dr. 中島の 新・徒然草】(645)

六百四十五の段 残暑の三景急に涼しくなりましたね。案外、今年の夏は短かったのでしょうか。また暑くなるかもしれないので、用心するにこしたことはありません。さて、今回は最近起こった小噺を並べました。その1:前職は自衛隊某介護施設での男性看護師さんとの雑談。 看護師 「自分、前職は自衛隊だったんですよ」 中島 「自衛隊病院とか?」 看護師 「いや、部隊の方です」 中島 「どう違うわけ?」 看護師 「部隊は基本的に健康な若い男性ばかりなんで」 そうするとあまり看護師さんの出番がないわけか。 看護師 「米軍との合同演習もあったりするんですけど、向こうの看護師は何から何までやるんですよ。日本だったら先生たちがやるようなことまで」 そこで少し励ましてあげることにしました。 中島 「日本でもNP(診療看護師)さんたちはいろいろやってるよ」 看護師 「本当ですか?」 中島 「気管切開の前立ちとか、PICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)の留置とか」 看護師 「そんなことまでやっていいんですか!」 中島 「もちろん一定の条件はあるけどね」 彼は興味津々。そばにいた介護職の女性に「もし僕が急に消えたら……そのときは察してね」と言ってました。ひょっとしたら、その介護施設に悪いことをしてしまったかな。その2:畑はありがた迷惑以前に銭湯をやっていた外来患者さん、とうに80歳を超えた女性です。この人のご主人が銭湯跡地で畑をやっています。なんせ元が銭湯だから土地が広い。野菜なんかをいろいろと作っては、奥さんや娘さんに配っているわけです。ところが「お父さん、助かるわあ!」とはならないのが現実の面白いところ。この人の作ったトマトはきわめて不評。酸っぱいうえに硬い。奥さんにも娘さんにも「自分が作ったものは自分で食べろ」と言われているのだとか。気の毒すぎる。確かに、最近の野菜直販所なんかで売っているトマトはよくできています。甘いし軟らかいし。でもご主人はめげません。こうなったら来年はサツマイモだ、と言っているそうです。しかし、サツマイモといえば鳴門金時とか五郎島金時とかいろいろあるわけで……。ああいうのに対抗するのは無謀じゃないかな。その3:ちゃんと見張っとけ私は乳酸菌飲料を愛飲しています。冷蔵庫にはいつもストックあり。ちょっと喉が渇いたときや口の中が苦くなったときなど。1口だけ飲みます、1本じゃありません。そうすると、なんだか徳を積んだみたいな気がするわけですよ。ある日、スーパーマーケットに行ったときのこと。この乳酸菌飲料をおばちゃんが売っていたのです。試飲+販売という形ですね。こういうのを見たら関西人としては、つい茶々を入れたくなります。「これ飲むと元気が出てくるんですよ」と言うおばちゃんから、試飲用のカップを受け取りました。親指と人差し指でつまめる小さいものです。コプッと1口。 中島 「ぬおおおお。力が湧いてきたー!」 当然のことながら期待するじゃないですか。「やっぱり来ましたか!」とか「嘘!」とか、そういうツッコミを。でも、おばちゃんから返ってきたのは「そんなにすぐに効くはずないんですけどね」という真面目な一言だけ。おい、おばちゃん。責任をもって突っ込めよ。ワイの立場があらへんやないか。それやったら、こっちかてホンマのことを言うぞ。「すぐには効かんっていうけどな、どうせ永遠に効かんのやろ!」って。もちろん言いませんでしたよ、そんなこと。とはいえ、いつまでもツッコミ待ちしているわけにもいきません。とりあえず、おばちゃんの商品説明を聞くことにしました。鉄分が入っているとかビタミンが入っているとか。ちょっと値段が高めのものは「有効成分が2倍です!」とか、すかさず勧めてきます。で、2本だけ買うことにしました。どっちみち必要だし。そうしたらおばちゃんは「4本買ってよ」と譲りません。なんでも4本買うと、かわいいキャラクター付きのスプーンをもらえるそうです。要らんがな、そんなもん。第一、急にキャラクター付きのスプーンを持って帰ったら女房に疑われるじゃないですか。おばちゃんだって、亭主がかわいいスプーンを持ってたら疑うでしょ、愛人でもできたのかって。えっ……ウチの亭主にそんな甲斐性ないって?不細工やから心配してへんって?甘い!おばちゃんが苦労して稼いだ金をキャバクラにつぎこんでまっせ、きっと。ちゃんと見張っといたほうがエエと思うけどな。ということで最後に1句 おまけでも スプーンは要らぬ 残暑かな

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発熱と両側耳下腺の腫脹が主訴、疑うべき疾患は?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

発熱と両側耳下腺の腫脹が主訴、疑うべき疾患は?40歳の女性。2週間前からの発熱と両側耳下腺の腫脹を主訴に来院した。徐々に増悪する左顔面の違和感と閉眼困難も自覚している。既往歴なし。体温 38.0℃、血圧 120/74mmHg、SpO2 98%(room air)。身体診察で、両側耳下腺のびまん性腫脹と左末梢性顔面神経麻痺を認める。胸部X線で両側肺門リンパ節腫脹、血液検査で血清ACE高値、軽度の高カルシウム血症を認めた。

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在宅患者からの電話対応――電話トリアージのコツ【非専門医のための緩和ケアTips】第130回

在宅患者からの電話対応――電話トリアージのコツ在宅緩和ケアでは、患者や家族からの電話からその後の対応を判断する場面があります。でも、医療者間の相談ですら電話でのやりとりは難しい場面が多いのに、患者や家族からであればなおさらですよね。どういった工夫ができるのでしょうか?今日の質問在宅緩和ケアをやっていて難しいと感じるのが、患者や家族からの電話連絡への対応です。当院では最初に看護師が受けるのですが、往診したほうがよいかなどの判断に苦慮しているようです。電話でのやりとりは在宅緩和ケアで非常に重要なので、何か工夫できることがあれば知りたいです。患者や家族からの電話連絡をもとに緊急性を判断し、適切にアクションを取る訪問看護師には本当に頭が下がりますし、質問くださった先生がその苦労を慮っているのも素晴らしいですね。こういった電話をもとに対応を判断することを「電話トリアージ」と呼びます。救急領域では公的サービスの「#7119」をはじめとした相談窓口があり、症状を伝えて救急車を呼んだほうがよいかなどを相談するシステムがありますが、同じような発想です。さて、在宅緩和ケア領域における「電話トリアージ」はどのようにすればよいのでしょうか? 私の経験上、在宅医療の場合、患者はもちろん、家族も高齢の方が多く、電話で詳細な情報を説明させることは難しい場合があります。患者・家族に話させるよりは心配を受け止めつつ、医療者側から判断に必要な情報を聞き出すほうが実際的です。つまり、確認すべき事項をまとめてマニュアル化し、看護師に渡しておくことが現実的な対応策であり、こうした準備はスタッフのスキルアップの観点からも重要です。具体的には以下のような項目でしょう。(1)状況いつから/どのくらい悪い/今どこにいる/誰がそばにいる(2)呼吸話せるか/横になれるか/喘鳴はあるか/SpO2が測れるなら数値(3)意識普段と比べてどうか/せん妄らしいか(注意障害・見当識)(4)痛み急に強くなったか/動くと悪化するか/部位はどこか(5)出血・嘔吐・下痢などあれば量と回数(多い・少ないといった主観でOK)(6)内服・頓用どの薬剤をいつ使ったか・効果があったか/副作用は(7)介護力今夜を乗り切れるか(家族の疲労・限界度合いも重要な情報)普段から訪問診療をしている患者であれば、医療者側の事前知識もあるため、詳細に聞かなくてもよい項目もあるでしょう。電話口でこうした情報を引き出しながら、対応を判断します。さて、「電話トリアージ」のマニュアルを整備するうえで、私が重要と考えることを紹介します。●患者や家族が話していることが正しいとは限らない電話で「息苦しさはないですか?」と聞いて「大丈夫です」と回答があっても、実際には言いにくかった、気付けていなかった、といったことがあります。重要なことは、直接確認をしないと危ないケースもあるでしょう。●尋問にならないように留意するもう1つは、電話でさまざまなことを確認するのは大切である一方、患者や家族が尋問されているような気持ちにさせないことが重要です。医療者としては必要なことを聞いているだけのつもりでも、相手はいろいろ聞かれたけれどうまく答えられなかった、というネガティブな経験になってしまうこともよく聞きます。一定時間をかけてうまく情報を収集できなければ、「よくわかりました。少し心配な点もあるので、お伺いしてもよろしいですか?」と切り替える、ということを自分用のマニュアルに加えてもよいでしょう。「電話トリアージ」は有効であるものの、限界もあります。そこをよく理解して、有効な場面で使いこなしながら、電話だけでは対応が難しい場面では無理をせず直接診察する、というのは大切な態度だと思います。いかがでしょうか? 皆様の工夫もぜひ教えてください。今日のTips今日のTips電話トリアージの有効性と限界を理解して、うまく活用しよう。

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