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ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第275回

ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク院内感染対策において、私たちは常に新たな課題に直面しています。コロナ禍で注目されたテーマなので、いろいろな研究やエビデンスが出てきました。今回ご紹介する事例は、都市部の病院のICUで発生した、20ヵ月に及ぶ奇妙な多剤耐性エンテロバクターのアウトブレイクです。この事例がとくに注目に値するのは、標準対策では制御できなかった感染拡大が、まさかのアイツによって引き起こされていたことです。タイトルに書いちゃってますが…。っていうか、この連載、ゴキブリ論文多くない?Hanrahan J, et al. Invasion of superbugs: Cockroach-driven outbreak of multidrug-resistant Enterobacter in an ICU.Antimicrob Steward Healthc Epidemiol. 2024 Oct 1;4(1):e155.アウトブレイクは、隣接する病室の2人の患者から多剤耐性エンテロバクターが検出されたことから始まりました。医療スタッフはただちに接触予防策、手指衛生の強化、個々の医療機器の使用徹底など、標準的な感染対策プロトコールを適用しました。しかし、これらの対策にもかかわらず、新たな感染例が次々と確認されていきました。環境調査では、ベッドサイドキャビネット、マットレス、ベッド柵、ゴミ箱の蓋、人工呼吸器、吸引装置など、多くの環境表面から多剤耐性エンテロバクターが検出されました。徹底的な消毒清掃を実施しましたが、一部の病室では繰り返し清掃が必要な状況が続きました。このアウトブレイクの謎を解く重要な手がかりとなったのは、現場の看護師の観察眼! 看護師の1人が病室でゴキブリを目撃していたという報告を受け、捕獲したゴキブリを用いた培養検査を実施しました。その結果、多剤耐性エンテロバクターに加えて、多剤耐性緑膿菌、MRSA、MSSA、アスペルギルス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など、複数の院内感染の原因となる微生物が検出されたのです。耐性菌ゴキブリや!最終的に、このアウトブレイクでは入院患者131名中25名(19.5%)が多剤耐性エンテロバクターに感染または保菌していました。感染までの平均期間は14.5日(±10.7日)で、最短でわずか3日というありさまでした。害虫駆除の専門家による対策強化後、一時的に新規感染例は抑制されましたが、13ヵ月後に再びゴキブリが発見され、その1週間後に新たな感染例が確認されました。いや、この害虫ほんまに何やねん…。この論文が声高に書いているのは、病院環境における害虫の存在を決して軽視してはならないということです。とくにゴキブリはさまざまな病原体の媒介者となる可能性があり、比較的清潔な病院が多い日本の医療機関でも注意が必要です。

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第248回 逆転無罪!“見返りなしで逮捕”されたあの事件

倫理的には問題だが、現在の法律では裁くことができない。そんな“理不尽”な司法判断に直面したのは、私のこれまでの記者生活の中で2度目だ。「現判決を破棄する。被告人両名は無罪」以前、本連載も取り上げたKKR札幌医療センターの敷地内薬局選定に関連し、同センター事務部長と保険薬局チェーン・アイン薬局を展開するアインファーマシーズ(以下、アイン)の元社長と元取締役の3人が公契約関係競売等妨害罪に問われた裁判。一審判決では3被告いずれも有罪となったが、ともに懲役6ヵ月、執行猶予2年の判決を言い渡されたアインの元社長と元取締役は判決を不服として控訴していた。昨年11月に控訴審初公判が開かれた際、青沼 潔裁判長は被告弁護人側が求めた証人尋問、被告人質問などを即座に却下し、10分足らずで結審させる“塩対応”をした。ここでおそらく私たち記者だけでなく、検察、被告人、弁護人のいずれも控訴棄却で一審判決支持を予想していたはずだ。しかし、1月28日に開かれた控訴審判決では、冒頭のように逆転無罪という予想に反した結論となった。「被告人、弁護人のいずれも…予想していたはずだ」と前述したのは、この瞬間の法廷の様子でも明らかだった。青沼 潔裁判長の無罪言い渡しの瞬間、被告人席にいた弁護人の1人は、まるで鞭で打たれたかのようにビクッと体を動かし、隣にいたマスク姿の被告人の元取締役は驚いたように大きく目も見開いて裁判長を見つめていたからだ。事件の概要は本連載(第211回、第237回)を参考にしてもらいたいが、今回逆転無罪となった判決の理由を端的に説明するならば、KKR側が敷地内薬局選定のために採用した公募型プロポーザルの中身を詳細に検討すると、これが競争入札に当たらないとの判断からだ。そもそも一審判決が根拠としたのは、「随意契約であっても競争入札の実質を有するものは入札に当る」という昭和33年最高裁判例である。ちなみに公募型プロポーザルは、随意契約の1種に分類されている。一審判決では(1)KKRの公募型プロポーザルは審査項目と一定の客観性・公平性を担保した審査基準を設定、(2)審査項目内では敷地内薬局事業者がセンターに支払う賃料という一般競争入札の落札価格にも似た経済的・客観的項目を相当程度重視、(3)非公表の予定価格の設定、不特定多数の参加者の公募、参加事業者は互いに他の事業者の提示内容を知らずに企画を提案、(4)あらかじめ定めた基準で提案順位を付けるなど手続の競争性を担保、の観点からKKRの公募型プロポーザルは「競争入札の実質を有する」と判断していた。これに対し、高裁判決は、各審査項目の優劣基準・配点の公募参加者への明示、そしてKKR側選定委員の採点基準がないため、採点は選定委員の裁量に大きく依存し、採点実態も合理性に欠くことなどから競争入札に求められる客観性・公平性が担保されていたとは言えず、「競争入札の実質を具備すると認めることには合理的な疑いが残る」との判断を示した。さらに優先交渉権者を決める今回の公募型プロポーザルは、最終交渉で契約締結に至らないことや提出した企画提案書とは異なる内容の契約締結の可能性も残され、手続き面でも公契約関係競売入札妨害罪を定めた刑法第96条の6で定める「契約を締結するためのもの」には当たらないとも判断した。結果、少なくとも今回のKKRが行った公募型プロポーザルに限定して言えば、競争入札ではないので、刑罰には問えないとなった。ただ、そもそも今回の事件の要点とも言える、KKR事務部長がアイン側のみに他の参加者の提案内容を漏らして企画提案書の再提出を求め、それにアイン側が応じたことは高裁判決内でも「公正を害する行為」で、KKR札幌医療センターが「公」の立場であるとの一審の判断を維持した。しかも、一審で同じ罪に問われたKKR事務部長は控訴しなかったため、すでに懲役1年・執行猶予3年の有罪が確定している。もし、今回の高裁判決が確定すれば、そもそも問題となったKKRによる公募型プロポーザルは競争入札ではないので、事務部長を有罪とした判断も事実上誤りとなる。なんともバランスが悪く、モヤる判決である。思い出す、あの事件さて、冒頭で私がこのような経験は2度目であると書いたが、1度目は通称・ディオバン事件である。この事件は、ノバルティスが販売する降圧薬でアンジオテンシンII受容体拮抗薬のバルサルタン(商品名:ディオバン)に関し、発売後に実施したカルシウム拮抗薬のアムロジピンを主とするバルサルタン以外の降圧治療と比較した複数の臨床研究で、バルサルタン群が有意に心血管イベントを抑制したとの論文が公表されたものの、この論文の統計解析がノバルティス社員によって操作されていたというもの。東京地検は論文を用いたノバルティスによるプロモーションが薬機法で禁じる誇大広告に当たるとして統計解析担当者であるノバルティス社員と法人としてのノバルティスを起訴。しかし、一審の東京地裁は、査読付き論文は広告に当たらないとして無罪を言い渡した。この件は検察が控訴、上告したがいずれも棄却され一審の無罪判決が確定した。ただ、臨床研究に関係した5大学の調査委員会は、いずれも関連論文を不適性と断じてそのすべてが撤回され、さらに一審判決ではノバルティス社員本人が否定し続けたにもかかわらず、この社員によるデータ操作を認定している(社員本人は否定)。これも不正はあるが、現行法の適用外という結論だったのだ。刑事裁判で、このような社会一般感情から見ると疑問符がつく判決言い渡しが時々起こるのは、より平たく言うと刑事事件は判決次第で懲役や禁錮といった人の自由を奪う深刻な罰則を伴うため、事実認定や法律解釈を厳格に行わねばならないからである。同時に法律とは、社会変化に対応しながら新規立法・条文の追加、解釈が変化するものであり、その結果、「倫理的に問題だが罪にはならない」が起こり得ることは想定できることだ。これらは頭でわかっていても、やはり今でも「…」となってしまう。さてこのアイン裁判、2月12日が上告期限である。札幌高検はどうするのか? とりあえず私は判決翌日から札幌高裁広報課に上告有無の確認の電話をしている。

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ハッチンソン・ギルフォード早老症候群〔HGPS:Hutchinson-Gilford progeria syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome:HGPS)は、1886年にJonathan Hutchinsonと1897年にHasting Gilfordが報告したことから命名された疾患である。遺伝性早老症の中でも、とくに症状が重篤な疾患であり、出生後半年頃より著しい成長障害、皮膚の強皮症様変化、禿頭、脱毛、小顎、老化顔貌、皮下脂肪の減少、四肢関節の拘縮を呈する。精神運動機能や知能は正常である。脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、心血管系合併症により平均寿命は14.6歳と報告されている。■ 疫学全世界で350~400例の典型HGPS患者が報告されており、米国NPO法人のProgeria Research Foundationには、2024年12月末の時点で151例の典型HGPS患者が登録されている。また、2024年9月30日時点でアメリカのHGPS有病率は約2,000万人に1人と報告されている。中国からの論文では調査した17省の有病率(中央値)は5,300万人に1人で、最も頻度の高い海南省は約2,300万に1人と報告されている。筆者らが2023年に全国調査した結果ではわが国のHGPS有病率は約1,667万人に1人であった。■ 病因ラミンAは核膜を物理的に支える枠組みを構成する。ラミン分子が核構造を物理的に安定化させることでクロマチン構造を維持し、また、安定的な転写因子との共役が機能的にも重要である。変異ラミンAタンパクであるプロジェリン(またはファルネシル化プレラミンA)が蓄積すると核膜構造に異常を来し、物理的影響による損傷を受けやすくなる。また、ヘテロクロマチンの分布や量に変化が生じ、異常なテロメアが形成されることで染色体の機能が変化する。このエピジェネティックな変化はすべての遺伝子発現に大きな影響を与える。ラミンAは発生過程のさまざまな転写調節因子に結合し、種々の遺伝子発現に関与するため、プロジェリンは組織構築の過程に重要なNotchシグナル伝達経路の下流で機能する複数の因子の発現量を変化させ、胎児期から成人期まで細胞と臓器の機能分化に大きな影響を与える。また、HGPS患者において臨床的に最も重篤な合併症は小児期早期からの脳心血管障害である。これはプロジェリンの発現が血管平滑筋細胞に小胞体ストレスや炎症を引き起こし、その結果、アテローム性動脈硬化が進行すると報告されている。■ 病態:プロジェリン産生のメカニズムLMNA遺伝子の典型的変異c.1824C>Tは潜在的なスプライス部位ドナーを活性化することにより異常スプライシングを引き起こし、ラミンAタンパク質の中間部分に50アミノ酸が欠失した変異型プレラミンAが産生される。この変異はC末端CAAXモチーフに影響を与えないため、ZMPSTE24によりカルボキシル末端の3アミノ酸は切断され、末端のシステインはカルボキシメチル化される。ZMPSTE24が認識し切断する配列(RSYLLG)は、異常スプライシングにより欠失した50アミノ酸内に含まれるためエンドペプチダーゼZMPSTE24で切断されない。その結果、恒久的にファルネシル化とカルボキシメチル化された変異型プレラミンA、すなわちプロジェリンが産生される。同様にZMPSTE24が認識するプレラミンA内の配列(RSYLLG)内のミスセンスバリアントによりZMPSTE24で切断を受けない分子病態が報告されている。また、ZMPSTE24遺伝子異常により正常なZMPSTE24が産生されないため、プレラミンAの内部切断が起こらずプロジェリンが産生され、その結果、下顎末端異形成症を発症する。■ 症状正常新生児として出生するが、乳児期から著明な成長障害と皮膚の萎縮・硬化を呈する。乳幼児期から脱毛、前額突出、小顎などの早老様顔貌、皮膚の萎縮・硬化、関節拘縮が観察される。動脈硬化性疾患による重篤な脳血管障害や心血管疾患は加齢とともに顕在化し、生命予後を左右する重要な合併症である。悪性腫瘍は10歳以上の長期生存例に認められる重要な合併症である。■ 分類1)プロジェリンを産生する典型遺伝型を保有するHGPS(典型HGPS)LMNA遺伝子のエクソン11内の点突然変異c.1824C>T(p.Gly608Gly)が原因である。特徴的な臨床表現型のHGPS患者の約9割がこの病的バリアントを保有する。この変異によりスプライシング異常が生じ、変異ラミンAタンパク(プロジェリン)が合成される。2)プロジェリンを産生する非典型遺伝型を保有するHGPS(非典型HGPS)非典型HGPSの臨床的な特徴は典型HGPに類似する。LMNA遺伝子の典型病的バリアント(c.1824C>T)以外でプロジェリンを産生するエクソン11またはイントロン11の病的バリアントが原因である。c.1821G>A(p.Val607Val)、c.1822G>A(p.Gly608Ser)、c.1968+5G>C、c.1968+1G>A、c.1968+2T>A、c.1968+1G>Aなどが報告されている。3)プロセシング不全性のプロジェライド・ラミノパチー(PDPL)LMNA遺伝子内の特定の位置の病的ミスセンスバリアントによりZMPSTE24の認識部位を喪失するため、プレラミンAが内部切断されない。c.1940T>G(p.L647R)が報告されている。また、ZMPSTE24遺伝子のホモ接合性または複合ヘテロ接合性機能喪失型病的バリアント(ZMPSTE24欠損)によりプレラミンAが内部切断されない。いずれもプロジェリンが産生される。■ 予後典型HGPSは10歳代でほぼ全例が死亡し、生命予後は極めて不良である。一方で、非典型HGPSでは40歳以上の長期生存例も報告されているが、動脈硬化性疾患に加え、がんの発生(とくに多重がん)に留意する必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特徴的な臨床症状とLMNA遺伝子検査による。c.1824C>T(p.Gly608Gly)がヘテロ接合性に確認されれば、典型HGPSと診断される。過去にプロジェリン産生が証明されている病的バリアントがヘテロ接合性に確認されれば、非典型HGPSと診断される。ホモ接合性または複合ヘテロ接合性ZMPSTE24の機能喪失型バリアントによりZMPSTE24遺伝子異常と診断する。わが国の指定難病「ハッチンソン・ギルフォード症候群(告示番号333)」では、臨床症状と遺伝学的検査の組み合わせにより「Definite」と「Probable」を分けて診断する(令和7年に改訂が予定されている)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)プロジェリンが原因であるHGPSに対して、ファルネシル転移酵素阻害薬ロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の臨床的効果が証明され、米国食品医薬品局(FDA)は2020年11月に世界で初めてロナファルニブを医薬品として承認した。以降、欧州やオーストラリア、中国でも承認され、わが国においても2024年1月に厚生労働省に薬事承認され同年5月より販売が開始されている。なお、本剤は、典型HGPS、非典型HGPSに加え、プロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチーも適応症となる。Gordonらは、本剤の内服治療により有意な死亡率の低下を認めたと報告している。4 今後の展望■ 診断法プロジェリンに対する特異的モノクロナル抗体を用いた血漿中プロジェリンの免疫測定法がGordon らの研究グループから報告されている。国内でもLC-MS/MSを用いたラミンAタンパク質バリアントの測定系の確立とその実用化に向けた準備が進められている。■ 治験プロジェリンとラミンAの結合阻害作用を有する低分子化合物Progerininの国際共同治験(Phase I)が2020年より進められている。ほかの国際治験の進捗については、Progeria Research Foundationのホームページで随時公開されている。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、遺伝科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報令和6年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「早老症のエビデンス集積を通じて診療の質と患者QOLを向上する全国研究」研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)NPO法人 Progeria Research Foundation(英語のホームページで詳細な情報・資料を公開/一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Progeria Clinical Care Handbook(プロジェリアの子どもたちの家族と医療従事者のためのガイド第2版)(日本語版のガイドが無料ダウンロードできる/医療従事者向けのまとまった情報)1)Hutchinson J. Med Chir Trans. 1886;69:473-477.2)Gilford H. Med Chir Trans. 1897;80:17-46:25.3)Gordon LB, et al. GeneReviews [Internet]; 1993-2024.4)Wang J, et al. Pediatr Res. 2024;95:1356-1362.5)Gordon LB, et al. Circulation. 2023;147:1734-1744.公開履歴初回2025年2月7日

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体重減少には週何分くらいの有酸素運動が必要か

 ダイエットではどのくらいの時間、有酸素運動をすれば痩せることができるだろうか。この疑問について、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの公衆衛生学部疫学・生物統計学科のAhmad Jayedi氏らの研究グループは有酸素運動と脂肪率の指標との用量反応関係を明らかにするために文献の系統的レビューと用量反応のメタ解析を行った。その結果、週30分の有酸素運動は、成人の体重または肥満者の体重、ウエスト周囲径および体脂肪値の緩やかな減少と関連していることが明らかになった。この結果はJAMA Network Open誌2024年12月26日号に掲載された。痩せるには週30分の有酸素運動でも効果あり 研究グループは、2024年4月30日までのPubMed、Scopus、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどの文献から介入期間が8週間以上の無作為化臨床試験で、成人の過体重または肥満者に対する観察の下での有酸素運動の効果を評価したものについて検討し、PRISMAのガイドラインに従った。データ抽出は2人のレビュアーからなる2つのチームが、それぞれ独立して重複して実施。ランダム効果メタ解析を行い、週30分の有酸素運動ごとの平均差と95%信頼区間(CI)を推定し、曲線的な関連性の形状を明らかにした。 主要アウトカムは体重、ウエスト周囲径、体脂肪などであり、エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)ツールを用いて、非常に低いものから高い確実性までの範囲で評価した。 主な結果は以下のとおり。・成人の過体重または肥満者の合計6,880例(女性4,199例[61%]、平均年齢±SD:46±13歳)について、116の無作為化臨床試験を検討。・有酸素運動を週30分行うごとに、体重は0.52kg(95%CI:-0.61~-0.44、109試験、GRADE中)、ウエスト周囲径は0.56cm減少(95%CI:-0.67~-0.45、62試験、GRADE高)、体脂肪率は0.37%減少(95%CI:-0.43~-0.31、65試験、GRADE中)していたほか、内臓脂肪組織(平均差:-1.60cm2、95%CI:-2.12~-1.07、26試験、GRADE高)と皮下脂肪組織(平均差:-1.37cm2、95%CI:-1.82~-0.92、27試験、GRADE中)も同様の結果だった。・有酸素運動は、生活の質(QOL)の身体的側面(標準化平均差[SMD]:1.69SD、95%CI:1.18~2.20)および精神的側面(SMD:0.74SD、95%CI:0.29~1.19)の緩やかな増加と関連した(参加者80例の試験1件、GRADE低)。・軽度~中等度の有害事象のほとんどは筋骨格系の症状で、わずかながら事象の増加と関連していた(リスク差は参加者100例当たり2件増加、95%CI:1~2、GRADE低)。・用量反応メタ解析により、体重、ウエスト周囲径および体脂肪の測定値は、有酸素運動の継続時間が週300分まで増加することで、直線的または単調に減少することが示された。・中等度~強度の有酸素運動を週150分継続することで、ウエスト周囲径および体脂肪について臨床的に著明な減少がもたらされた。 これらの結果から研究グループは、「週30分の有酸素運動への取り組みは、成人の過体重または肥満者における体重、ウエスト周囲径および体脂肪測定の緩やかな減少と関連していた。その一方で、臨床的に著明な減少を達成するためには、中等度以上の強度で週150分を超える有酸素運動が必要かもしれない」と結論付けている。

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アルツハイマー病患者に対する有酸素運動のベネフィット/BMJ Open

 アルツハイマー病患者の認知機能や実行機能に対する身体活動の影響は、数多くの研究で調査されているものの、その結果は完全に一致しているとはいえない。また、特定のトレーニングや使用する評価ツールに関する研究も、不十分である。中国・湖南渉外経済学院のLinlin Yang氏らは、有酸素運動がアルツハイマー病患者のQOL、認知機能、抑うつ症状に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Open誌2025年1月11日号の報告。 対象研究には、アルツハイマー病患者に対する介入として有酸素運動を用いたすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。2024年3月12日までに公表された研究を、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASE、Scopus、CINAHL、CNKIより、システマティックに検索した。2人の独立した著者により、定義された手法を用いてデータ選択、検索を行った。バイアスリスク、システマティックレビューおよびメタ解析、エビデンスの確実性の評価には、それぞれCochrane risk of bias tool、ランダム効果モデル、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。研究間の異質性を評価するため、Stata MP V.18.0およびV.14.0を用いてメタ回帰を実施した。標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。データは、Cochrane CollaborationのReview Manager V.5.4を用いてレビューした。結果の安定性および信頼性を確認するため感度分析を実施し、出版バイアスを確認するためファンネルプロットおよびEgger's testを用いた。出版バイアスの修正および評価には、Duval and Tweedie clipping methodを用いた。 主な結果は以下のとおり。・有酸素運度は、アルツハイマー病患者の認知機能を向上させることが示唆された。・ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、アルツハイマー病評価尺度の認知サブスケール(ADAS-cog)スコア、QOLの有意な改善が認められた。一方、抑うつ症状については、有意な差が認められなかった。【MMSEスコア】SMD:0.95、95%CI:0.58〜1.32、z=5.06、p<0.00001【ADAS-cogスコア】SMD:−0.67、95%CI:−1.15〜−0.20、z=2.77、p=0.006【QOL】SMD:0.36、95%CI:0.08〜0.64、z=2.51、p=0.01【抑うつ症状】SMD:−0.25、95%CI:−0.63〜0.13、z=1.27、p=0.21・サブグループ解析では、介入期間が16週超、介入1回当たり50分未満の場合、MMSEスコアの改善が認められた。・介入期間が16週超、介入1回当たり30分超の場合、ADAS-cogスコアの改善が認められた。・有酸素運動を週3回以上、介入1回当たり30〜50分以上を16週間継続した場合、QOLの向上が認められた。 著者らは「アルツハイマー病に対する有酸素運動は、認知機能およびQOLの改善に寄与するが、抑うつ症状には有意な影響を及ぼさないことが明らかとなった。ただし、含まれた研究の異質性の高さや質のばらつきを考慮すると、より科学的かつ客観的なRCTにより本結果を検証する必要がある」と結論付けている。

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日本人乾癬患者へのデュークラバシチニブ、年齢やBMIごとの有効性

 TYK2阻害薬デュークラバシチニブの乾癬に対する有効性は確認され、本邦においても2022年に承認・発売されているが、年齢およびBMIによる層別解析を含む長期的な実臨床での有効性の検討は十分ではない。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らは、日本人乾癬患者におけるデュークラバシチニブの実臨床における52週時での有効性を、年齢およびBMIにより層別化して評価する前向き研究を実施。結果をThe Journal of Dermatology誌オンライン版1月28日号に報告した。 本研究は、2022年12月~2024年8月に実施された。中等症~重症の乾癬を有する15歳以上の日本人患者107例を対象とし、デュークラバシチニブ6mgを1日1回、52週間投与した。治療効果は、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75、PASI 90、PASI 100の達成率およびその他の主要な臨床指標により評価。データは年齢(<65歳 vs.≧65歳)およびBMI(<25 vs.≧25)により層別化された。 主な結果は以下のとおり。・PASIスコアの平均値は、年齢およびBMIにより層別化されたいずれのグループにおいても、52週までに同様の減少がみられた。・52週時点でのPASI 75、PASI 90、PASI 100の達成率は、65歳未満の患者ではそれぞれ86.36%、65.22%、39.13%であった。65歳以上の患者ではそれぞれ86.36%、59.09%、13.64%であり、65歳以上の患者ではPASI 100の達成率がやや低い傾向がみられた。・52週時点でのPASI 75、PASI 90、PASI 100の達成率は、BMI<25の患者ではそれぞれ88.24%、82.86%、29.41%であった。BMI≧25の患者では81.82%、73.33%、18.18%であり、4週、16週、24週、40週時点においてもこれらの達成率がやや低い傾向がみられた。 著者らは、デュークラバシチニブが年齢およびBMIにより層別化された全患者群において、52週時の乾癬の臨床指標を改善したとまとめている。そのうえで本研究結果は、デュークラバシチニブが高齢の乾癬患者に対しても若年〜中高年患者と同様に有効である可能性を示唆した一方で、BMI≧25の患者では、BMI<25の患者と比較して効果がやや低い可能性を示唆したと考察している。

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安定胸痛への冠動脈CTA管理、10年後アウトカムを改善/Lancet

 安定胸痛患者に対する冠動脈CT血管造影(CCTA)による管理は、10年後も冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の持続的な減少と関連していた。英国・エディンバラ大学のMichelle C. Williams氏らSCOT-HEART Investigatorsが、スコットランドの循環器胸痛クリニック12施設で実施した無作為化非盲検並行群間比較試験「Scottish Computed Tomography of the Heart trial:SCOT-HEART試験」の10年追跡の結果を報告した。SCOT-HEART試験についてはこれまでに、CCTA管理により5年間の冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞のリスクが約4割低下することが示されていた。著者は、「CCTAによる冠動脈アテローム性動脈硬化症の同定は、安定胸痛患者の長期的な心血管疾患予防を改善する」とまとめている。Lancet誌2025年1月25日号掲載の報告。SCOT-HEART試験10年間の解析 研究グループは、冠動脈心疾患による症候性の安定狭心症の疑いのある18~75歳の患者を、標準治療+CCTA併用群または標準治療単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 今回の10年間の解析は事前に規定されたもので、eDRIS(electronic Data Research and Innovation Service)を介してスコットランド公衆衛生局(Public Health Scotland)より臨床アウトカムに関する情報を入手し、必要に応じて医療記録を確認するとともに、薬剤の使用に関する情報はPrescribing Information Systemから得た。 主要アウトカムは、冠動脈心疾患死または非致死的心筋梗塞の発生、副次アウトカムは全死因死亡、心血管死、冠動脈心疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中などで、ITT解析を行った。10年後も冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞が減少 2010年11月18日~2014年9月24日に、4,146例が登録され(平均年齢57[SD 10]歳、男性2,325例[56.1%]、女性1,821例[43.9%])、2,073例が標準治療+CCTA併用群に、2,073例が標準治療単独群に割り付けられた。 追跡期間中央値10.0年(四分位範囲:9.3~11.0)において、冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の発生は、CCTA併用群137例(6.6%)、標準治療単独群171例(8.2%)であり、CCTA併用群における減少が維持されていた(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.63~0.99、p=0.044)。 全死因死亡、心血管死、冠動脈心疾患死および非致死的脳卒中の発生は両群間で差はなかったが(すべてp>0.05)、非致死的心筋梗塞(90例[4.3%]vs.124例[6.0%]、HR:0.72[95%CI:0.55~0.94]、p=0.017)および主要有害心血管イベント(172例[8.3%]vs.214例[10.3%]、0.80[0.65~0.97]、p=0.026)はCCTA併用群のほうが少なかった。 また、冠動脈血行再建術の施行は同程度であったが(315例[15.2%]vs.318例[15.3%]、HR:1.00[95%CI:0.86~1.17]、p=0.99)、予防的治療薬の処方はCCTA群のほうが多かった(有効なデータのある患者1,486例中831例[55.9%]vs.1485例中728例[49.0%]、オッズ比:1.17[95%CI:1.01~1.36]、p=0.034)。

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直腸がん3年無病生存率、経肛門的TME vs.腹腔鏡下TME/JAMA

 中下部直腸がん患者において、経肛門的直腸間膜全切除術(total mesorectal excision:TME)は腹腔鏡下TMEに対し3年無病生存率について非劣性であることが認められた。中国・中山大学のZiwei Zeng氏らが、中国の16施設で実施した第III相無作為化非盲検非劣性試験「TaLaR試験」の結果を報告した。これまでの研究では、経肛門的TMEは腹腔鏡下TMEと比較し、短期的な組織病理学的アウトカムと合併症に関して有用であることが示されているが、長期的な腫瘍学的アウトカムは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月23日号掲載の報告。中下部直腸がん患者1,115例を無作為化 研究グループは、18~75歳で臨床病期I~IIIの中下部直腸がんと診断され、TMEの原則に従い括約筋温存手技を用いた根治的治療の対象となりうる患者を登録し、経肛門的TME群または腹腔鏡下TME群に1対1の割合で無作為に割り付け、最初の1年間は3ヵ月ごと、2年目は6ヵ月ごと、その後は年1回、追跡評価を行った。 主要評価項目は3年無病生存率で、経肛門的TMEの腹腔鏡下TMEに対する非劣性マージンは群間差の97.5%信頼区間(CI)の下限が-10%とした。副次評価項目は、3年全生存率および3年局所再発率であった。 2016年4月~2021年6月に計1,115例が無作為化され、経肛門的TME群544例、腹腔鏡下TME群545例が主要評価項目解析対象集団となった。年齢中央値は60歳で、男性が692例、女性が397例であった。3年無病生存率は経肛門的TME群82.1%、腹腔鏡下TME群79.4% 3年無病生存率は、経肛門的TME群82.1%(97.5%CI:78.4~85.8)、腹腔鏡下TME群79.4%(75.6~83.4)であった。両群間差は2.7%(97.5%CI:-3.0~8.1)で、97.5%CIの下限が規定した非劣性マージンを上回っており、非劣性が検証された。 3年局所再発率は、経肛門的TME群3.6%(95%CI:2.0~5.1)、腹腔鏡下TME群4.4%(2.6~6.1)であり(ハザード比:0.81、95%CI:0.44~1.49)、3年全生存率はそれぞれ92.6%(90.4~94.8)、90.7%(88.3~93.2)であった(0.78、0.52~1.19)。

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がんが肺に転移しやすいのはなぜ?

 肺はがん細胞にとって魅力的な場所なのか、進行がん患者の半数以上で肺転移が認められる。その理由の一つとなり得る研究結果が報告された。この研究では、がんが転移した肺の中ではアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の濃度が上昇しており、がん細胞が増殖しやすい環境が形成されている可能性のあることが示唆されたという。フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB、ベルギー)がん生物学センターのGinevra Doglioni氏らによるこの研究結果は、「Nature」に1月1日掲載された。 Doglioni氏は、「乳がんに罹患したマウスや患者の肺では、がんに罹患していないマウスや患者の肺に比べてアスパラギン酸のレベルが高いことが分かった。これは、アスパラギン酸が肺転移に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している」とVIBのニュースリリースで述べている。 この研究でDoglioni氏らはまず、肺に転移したがん細胞の遺伝子発現について調べ、通常とは異なる「翻訳プログラム」が存在することを示すエビデンスを見つけた。翻訳とは、細胞内で遺伝情報を設計図にしてタンパク質を生成するプロセスのことをいう。翻訳プログラムが変化すると生成されるタンパク質の種類も変わり、その結果、がん細胞が肺という環境で成長しやすくなっている可能性がある。 では、このような進行性のがん転移では、何が翻訳プログラムの変化を引き起こす要因となっているのだろうか。Doglioni氏らが転移性乳がんマウスのがん細胞を調べた結果、肺転移におけるがん細胞の攻撃性や増殖性の促進は、タンパク質であり翻訳開始・伸長因子でもあるeIF5Aのハイプシン化という翻訳後修飾の増加により引き起こされる可能性が示唆された。 さらに、腫瘍分泌因子(tumour-secreted factor;TSF)で前処理したマウスと対照マウスの肺間質液中の栄養素濃度を比較したところ、前者ではアスパラギン酸の濃度が顕著に増加していることが確認された。そこで、アスパラギン酸がeIF5Aのハイプシン化に及ぼす影響を検討したところ、アスパラギン酸は、がん細胞に取り込まれるのではなく、がん細胞表面にあるNMDA受容体というタンパク質を活性化させることが判明した。これによりシグナル伝達カスケードが引き起こされ、最終的にeIF5Aのハイプシン化が促進される。がん細胞は、このプロセスを通じて翻訳プログラムを変化させ、肺の環境を自らの増殖に適したものに変えていることが示唆された。 転移性乳がん患者の肺腫瘍サンプルを調査したところ、マウスで観察されたものと同様の翻訳プログラムの存在が確認された。また、肺転移では他の臓器への転移と比較して、アスパラギン酸に結合するNMDA受容体のサブユニットの発現量が増加していることも明らかになった。 論文の上席著者であるVIBのSarah-Maria Fendt氏は、「この相関関係は、臨床的な文脈において本研究結果が重要であることを強調しており、アスパラギン酸によるシグナル伝達が肺で増殖するがん細胞に共通する特徴である可能性を示唆している。さらに、今回特定されたメカニズムを標的とする薬剤はすでに存在しており、さらなる研究によって臨床に応用されるようになる可能性がある」と述べている。

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よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。 近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。 2020~2021年の住民健診に参加した年齢60~79歳の1,717人のうち、研究参加への同意を得られ、データ欠落のない916人(平均年齢68.4±5.0歳、男性46.2%)を解析対象とした。両年度とも参加していた人については2020年度のデータを使用した。OFの評価には、「硬い食べ物を食べるのが困難か?」など8項目の質問から成る精度検証済みの質問票(Oral Frailty Index-8;OFI-8)を使用。そのスコアに基づき、OFなしが40.3%、プレオーラルフレイル(OFの予備群〔POF〕)が18.2%、OFが41.5%と判定された。笑いの頻度については、「声を出して笑う頻度は?」という質問で評価。ほぼ毎日が40.8%、週に1~5回が43.3%、月に1~3回が11.1%、ほとんどないが4.9%だった。 笑う頻度が「週1回未満」の群を基準として、年齢と性別の影響を調整した解析(モデル1)の結果、笑う頻度がほぼ毎日の群にはOFが有意に少なく(オッズ比〔OR〕0.38〔95%信頼区間0.26~0.57〕)、頻度が週に1~5回の群もOFが少なかった(OR0.51〔同0.35~0.76〕)。調整因子に、喫煙・飲酒・運動習慣、身体的フレイル、高血圧・糖尿病の既往を追加した解析(モデル2)では、笑う頻度が週に1~5回の群についてはOFとの関連の有意性が消失したが(OR0.66〔0.43~1.02〕)、頻度がほぼ毎日の群では引き続きOFが有意に少ないという関連が認められた(OR0.54〔0.34~0.86〕)。 モデル2において、笑う頻度以外に、抑うつ症状がないこともOFに対する負の有意な関連因子だった(「抑うつ症状あり」を基準とするOR0.39〔0.25~0.61〕)。その一方、高齢(1歳高齢であるごとにOR1.08〔1.05~1.11〕)、女性(OR1.74〔1.14~2.65〕)、喫煙(現喫煙がOR2.63〔1.57~4.40〕、過去喫煙がOR1.75〔1.15~2.66〕)、飲酒(毎日がOR1.70〔1.15~2.51〕、機会飲酒は非有意)は、正の有意な関連因子として特定された。運動習慣や地域活動への参加は、モデル1では有意な負の関連が認められたが、モデル2では非有意となった。 著者らは、本研究が新型コロナウイルスパンデミック中に実施されたことが結果に影響を及ぼしている可能性を否定できないといった限界点を挙げた上で、「交絡因子を調整後、毎日笑うことと抑うつ症状がないことが、OFの少なさと関連していた。公衆衛生戦略として、社会的なコミュニケーションを拡大して人々が声を出して笑える頻度を増やし、抑うつのリスクを抑制することが、フレイル予防・改善を通じて健康寿命を延伸する可能性があるのではないか」と述べている。

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ワクチン接種後の免疫抑制療法患者のリスクを抗体の有無で評価(解説:栗原宏氏)

本研究のまとめ・免疫抑制療法患者において、抗SARS-CoV-2スパイク抗体(抗S Ab)陽性者は感染・入院リスクが低い・感染リスク要因:年齢が若い(18~64歳)、子供との同居、感染対策の実施・入院リスク要因:併存疾患の存在強み(Strong Points)・3つの異なる免疫抑制患者群におけるCOVID-19リスクを大規模データで解析・抗S Abの有無と感染・重症化リスクの関連を明確化・実臨床データとリンクし、健康アウトカムに関する実証的な証拠を提供限界(Limitations)・因果関係ではなく相関関係の分析に留まる・治療介入(抗ウイルス薬、モノクローナル抗体)の影響が不明確・ワクチンの種類や接種時期の詳細な分析が不足・行動要因(マスク着用、社会的距離)の影響が考慮されていない可能性 本研究は、免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体の有無が、感染および入院率にどのような影響を与えるかを評価する約2万人規模のコホート研究である。 免疫抑制療法では、ワクチン接種後の免疫応答が低下する可能性があり、COVID-19感染リスクが高いと考えられる。 英国の全国疾病登録データを用い、以下の3つの免疫抑制患者群において抗体の影響を評価した。1)固形臓器移植(SOT)2)まれな自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)3)リンパ系悪性腫瘍(lymphoid malignancies)主な結果と臨床的意義 いずれの群でも、抗体陽性者のCOVID-19感染率・入院率は、年齢・人種・既存疾患などを調整しても有意に低かった。より具体的には、抗体陰性者の感染リスクは1.5〜1.8倍、入院リスクは2.5〜3.5倍高かった。 これらの結果から、免疫抑制患者に対し抗体検査を活用することで、高リスク群を特定し、追加ワクチン接種や早期治療などの対応を提供できる可能性が示唆された。 しかし、本研究は相関関係の分析に留まるため、・「抗体ができやすい人=健康状態が良く感染リスクが低い」・「抗体ができにくい人=強力な免疫抑制療法を受けており感染・重症化リスクが高い」といった因果関係の逆転の可能性も考慮する必要がある。 また、本研究では、ワクチンの種類・接種回数の影響、抗体価の高低、行動習慣(通勤・外出頻度)の影響は評価されていない。感染リスク要因の考察 感染リスク要因として、年齢が若いこと、子供との同居、感染対策の実施が挙げられた。「感染対策をしている人の感染リスクが高い」という結果は直感的に意外だが、これは 「感染リスクが高い人ほど対策をしているが、免疫が弱いため、それでも感染しやすい」という背景を反映しているという可能性がある。 本研究は、免疫抑制患者における抗S Abの有無とCOVID-19感染・入院リスクの相関を示し、免疫抑制患者のCOVID-19管理戦略を考えるうえで重要な知見を提供していると考えられる。

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日本薬剤師会からカスハラに備えた保険が登場!? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第145回

前回のコラムで、薬局薬剤師に対するカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)の調査結果を紹介しました。その調査は東京都薬剤師会で行われたもので、カスハラを受けたことが「ある」と回答した薬剤師は約7割にものぼりました。私もカスハラを経験したうちの1人で、全国レベルでも多くの薬剤師がカスハラを経験していると想像できます。今回、日本薬剤師会がカスハラなどに対する対応として、新たな保険の取り扱いを開始すると発表しました。日本薬剤師会は、薬局を利用する住民からのクレーム行為に備えた独自の保険として、2月15日から会員薬局向けに「クレーム対応費用保険」の取り扱いを開始する。補償期間は1年間で保険料は1店舗当たり年間9000円。1事故当たりの弁護士への相談料や着手金、報酬金など補償限度額は100万円、保険期間中1店舗当たり補償限度額は200万円となる。14日から加入対象となる薬局へ薬剤師賠償責任保険等の募集案内として送付する。(2025年1月10日付 薬事日報)今回の保険は薬剤師個人で入るのではなく、加入者は薬局開設者(法人代表者)または管理薬剤師となっており、薬剤師賠償責任保険の加入が条件とのことです。薬局の店舗ごとに入るというイメージでしょう。気になるのは、「どういったトラブルの際にどうやって助けてくれるの?」という補償の内容ですが、補償対象者が患者さんや近隣住民などの第3者から過大な要求を受けた場合、法律にのっとった円満解決を支援してくれます。保険会社設置の専門相談窓口「クレームコンシェル」による無料相談、アドバイスなどのサービスも受けることができます。クレームコンシェル常駐の弁護士との1回の相談時間は15分で、一般的な法律相談や法制度上の助言を行ってくれるとのことです。薬局業務においては、患者さんとの間に薬に関することだけでなく、待ち時間や在庫、コミュニケーションなど、多岐にわたるトラブルが発生します。最近では薬の在庫がないというシチュエーションが多いかと思いますが、調達時間だけでなく連絡やお渡し方法など、芋づる式にトラブルが広がる可能性もあります。また、患者さんだけではなく、医師や病院職員、薬に関係のない近隣住民とも店舗の外装などでトラブルが起こる可能性があります。大きな問題になった際に弁護士に相談できるというのは心強いですよね。2025年2月~2026年2月までの1年間の保険加入を希望する場合の新規加入の申し込みを2月14日まで受け付けています。開設者と管理薬剤師のどちらか1人の申込みでその店舗が補償されるので、どちらかの申し込みでよいとのことです。補償期間は1年間、保険料は1店舗当たり年間9,000円です。個人的には、思ったより安いかもと思いました。東京都薬剤師会は、相談窓口の設置やハラスメント防止を啓発するポスターの薬局内掲示なども推奨しています。本来はクレームやハラスメントがなく、本保険の利用が少ないことが望ましいですよね。ましてや弁護士の助言を求める事例なんてないほうがよいに決まっています。ポスター掲示から保険加入まで、さまざまな「サービス」が出てきましたが、現代の薬局業務においてカスハラは大きな問題の1つになっているため今後も増えていくでしょう。まずはこの保険の加入薬局用に「カスハラを弁護士に相談する体制が整っている薬局です」などのポスターが登場するかもしれません。

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脳外科外来の便秘相談 【Dr. 中島の 新・徒然草】(566)

五百六十六の段 脳外科外来の便秘相談日本中が寒波だ大雪だと大変なことになっています。帯広では観測史上最大の積雪を記録したのだとか。ありがたいことに、今のところ大阪は晴れ。しかし、天気予報では金曜日の降雪確率は45%になっています。油断大敵ですね。さて、外来をやっていてよく聞く訴えが便秘です。ひょっとすると「眠れない」の次に多い訴えかもしれません。なぜ脳外科外来で便秘の相談をされるのか、それは謎です。そもそも高齢の患者さんは、診療科に関係なく、その時に一番困っていることを訴える傾向にあります。とはいえ「ここは脳外科です。便秘のことは消化器内科で相談してください」と言うのもあまりいい考えとは思えません。私のイメージする消化器内科医というのは消化器がんなどと戦っている人たちであり、ただの便秘でコンサルするのも気が引けるからです。結局、脳外科外来では何か有難そうな話をしておいて、後はかかりつけ医にお任せするのが一番ですね。なら、どういうアドバイスをするのがいいのか。それをいつものChatGPTに尋ねてみました。もちろん、私が何か投薬するというのは無し。便秘の患者さんには、すでに何らかの処方がされていることが多く、その上に私が薬を重ねると話が無限にややこしくなるからです。薬以外の対策、その1は食事。便通をよくするためには食物繊維の多いものを食べるべし、というのが定説です。食物繊維には不溶性と水溶性の2種類あるのだとか。お恥ずかしながら私は知りませんでした。不溶性食物繊維は便を膨らませて腸の蠕動運動を促進する作用があるそうです。が、狙いどおりにいかない時はお腹が膨らんでガスがたまり、かえって患者さんに辛い思いをさせるかもしれません。だから、こちらを勧めるのはやめておきましょう。一方、水溶性食物繊維は便を柔らかくして便通を良くすることになっています。こっちのほうは、とくに害もなさそう。リンゴ、バナナ、オートミール、大麦、海藻類(わかめ、昆布)、こんにゃくなどに多く含まれるとのこと。この中では大麦というのがよくわかりませんでした。調べてみると、大麦入りを前面に掲げているパン、パンケーキ、麺、クラッカー、スープ、サラダ、シリアルなどがあるようです。まずは自分で買って試してみるのもいいかも。患者さんにお勧めするときに無難なのは、リンゴ、バナナ、わかめ、昆布あたりでしょうか。2番目に、ツボのマッサージ。経験的には母指球やふくらはぎをマッサージすると腸が動き、便が出やすくなる気がします。あらためてツボ(経穴)を調べてみると、いろいろあることがわかりました。まずは母指球をマッサージすると腸が動くというもの。実は母指球を押すときに、その真裏にあるツボの合谷(ごうこく)も押しているのかもしれません。合谷を押すと腸が動くということになっていますから。次に、ふくらはぎをマッサージすると腸が動くというもの。ふくらはぎのある下腿には、便通に関係したツボが2ヵ所あるそうです。1つは足三里(あしさんり)で、これは膝蓋骨の外側下端から下に4横指のすこしくぼんだところ。ここを押すと消化管全般に効くのだとか。もう1つが三陰交(さんいんこう)で、内果から上に向かって4横指の部分。ここも消化管全般に効くとのこと。2ヵ所のツボとも、自分で押してみると気のせいか体調が良くなったような気が……あとは天枢(てんすう)とか太衝(たいしょう)とかいうツボも便秘に効くことになっています。こういったツボは、患者さんが自分でマッサージすることができる分、使い勝手が良さそうですね。最後に生活習慣です。まずは、よく喋るというのが良いそうです。喋ることによって、無意識のうちに消化管に空気を吸い込むのでしょうか。それとも口の動きに腸が連動しているのかもしれません。私の経験でも、喋ると便通が良くなるという現象はあるように思います。独り暮らしの患者さんなど、喋る相手がいなかったら、本の音読とか読経とかで代用できますね。般若心経なら4分くらいですむので、健康と精神修養を兼ねて自分自身でやってみようかな。次に歩くということ。ちょっと考えても、歩くのが腸運動に好影響を与えるということはありそう。また、毎日同じ時間にトイレに座る習慣をつけるのもいいそうです。ということで、これらの有難い話を毎回1つ、患者さんに伝授することにしましょう。私の場合、3ヵ月毎の通院というのが一番多いパターンなので、1つの話で3ヵ月間は持ちます。求められるたびに1つずつ順番に有難い話をしておけば、3年くらいは続くはず。3年経ったら患者さんのほうも話の中身を忘れてしまっているはずなので、また最初からスタートです。どうやら便秘対応にも自信が出てきました。もう「どこからでもかかってきなさい!」という気分です。最後に1句脳外科で 便秘に悩む 雪の日々

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食物アレルギーの原因食物

食物アレルギーの原因として多いのは?マカデミア ソバナッツ1.1%1.1%0歳大豆 1.3%キウイ1.3%エビ3.0%年齢別にみると…ピスタチオ0.8%1~2歳その他鶏卵 61.8%鶏卵10.6%牛乳 20.9%クルミ 19.6% イクラ 14.1%小麦 13.1%イクラ鶏卵26.7%カシューナッツ4.6%28.7% クルミ 34.5%13.0% 落花生 11.6%カシューナッツ落花生 7.4%9.2%カシューナッツ6.5%7~17歳イクラ5.7%小麦18.9%エビエビ16.5%大豆9.1%12.4%クルミイクラ 7.9%7.0%15.2%カシューナッツ 6.3%※各年齢群で5%以上を占めた原因食物※初発例のみ(n=3,981人)小麦n=6,033人※初発および誤食例を含む18歳以上クルミ 18.7%落花生8.1%3~6歳牛乳13.4%消費者庁「令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」掲載「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から「即時型食物アレルギーの原因食物(品目別)」・「年齢群別原因食物(初発例)」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 1

今回のキーワード家族システムエマニュエル・トッド地政学権威主義不平等個人主義化情報化硬直化文化進化文化結合症候群前回(その3)、逆に医療保護入院が必要とされてしまう現実的な理由は、強制入院への家族の同意が権利であり義務であると家族、社会、そして国が捉えてしまっているからであることがわかりました。そして、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源が扶養義務であることを突き止めました。それでは、この扶養義務をはじめ、そもそもなぜ私たちはこれほどまでに家族のつながりにとらわれるのでしょうか? そして、なぜ私たちは人権意識が乏しいのでしょうか?今回(その4)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、新しい学問である地政学の視点から、これらの疑問を解き明かします。そして、日本ならではの根深い国民性を「直系家族病」と名付け、文化結合症候群として捉え直します。日本人の人権意識はどんだけ低いの?まずは、この映画で、日本人の人権意識の低さを描いたシーンをいくつか紹介します。今回、注目するのは、主人公の明日香と同棲していた放送作家の鉄雄です。彼は、明日香の「自殺未遂」騒動で、大事な企画会議をドタキャンしてしまいました。事情が事情なだけに釈明できないなか、なんとその罰ゲームとして、彼はその後の会議中に番組の企画でいきなり頭に布袋をかぶせられて目隠しのまま、拉致される形で成田空港に直行し、ミャンマーの奥地に連れて行かれます。まるで映画に出てくるテロリストによる誘拐のワンシーンのようです。そして、明日香が入院している精神科病院のホールのテレビに、「超緊急企画!会議バックレ作家、焼畑鉄雄、ミャンマー少数山岳民族R族の村にて、肩にオウムを乗せ、ファッションキャンペーン強行命令!行け!焼畑上等兵!肩にオウムを乗せて行け!」という興奮気味のアナウンスが流れ、鉄雄が映し出されるのです。そして、それを見ている患者たちみんながお腹を抱えてげらげら笑い転げるのです。これは、1990年代から2000年代前半にかけて大ヒットした某バラエティ番組を彷彿とさせます。今で言うリアリティ番組の先駆けだったわけですが、拉致や監禁が定番でした。当時、人権侵害は精神科病院の中だけではなかったのでした。そして、この状況は、げらげら笑っている患者たち自身の境遇に重なり、皮肉めいています。しかし、つい最近まで、この患者たち(医療保護入院)と同じように、日本人には見慣れた光景として、問題視されなかったのでした。明日香が医療保護入院を同意したことについて問いただした時も、鉄雄は「だっておれ基本、言われるがままじゃん」と開き直っています。彼は、明日香の人権よりも、医者などの「上(権威)に逆らわない」ことを選んでいます。これは、日本人の人権意識の低さをよく描いています。それでは、なぜ日本人の人権意識は低いのでしょうか? 実はこれは、家族のつながりにとらわれることと深く関係しています。どういうことでしょうか?次に、世界の国々の家族の形と国民性の関係から、この答えを導いてみましょう。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 2

世界の国々の家族の形と国民性の関係とは?鉄雄を代表として日本人の人権意識は低いことがわかりました。一方で、明日香は、家族と絶縁していたわけですが、父の急死をきっかけに、わざわざ仏壇を買って実家に送りつけるシーンがありました。絶縁しているからと言って単純に割り切れないのでした。それでは、他の国ではどうでしょうか?ここから、世界の国々の家族の形(家族システム)を、地政学の視点から大きく2つ、細かく4つに分けて、国民性(文化)と関係づけてみましょう。この家族システムは、著名な歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏による分類を参考にしています1)。なお、地政学とは、地理と政治の関係を考える新しい学問です。この学問によって、地理的条件による家族のあり方(家族構成や家族関係などの家族システム)と国家のあり方(制度や政治体制などの国家システム)は、実は密接に関係していることを説明することができます。ちなみに、家族システムの進化心理学的な起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)核家族約700万年前に人類が誕生した当初は、まだ母親と子供たちのみが一緒に暮らす母子家庭でした。約300万年前に父親が加わって一緒に暮らすようになり、家族が誕生しました。そして、子供は、大人になったらもとの家族から離れ、自分の新しい家族をつくりました。大きく2つに分類した家族システムの1つは、核家族です。これは、父親と母親と未婚の子供たちが同居する、まさに核となる家族構成です。これが、最初の家族システムです。子供は、成人したら親と一緒にいないため、親の言うことを聞く必要はありません。もちろん、親も口出ししません。けがや病気などで働けなくなっても、そもそも一緒にいなくてわからないので、養うこと(扶養義務)はありません。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれることはありません。もはや「縁」(つながり)が薄いので、明日香のように「絶縁する」という発想すらありません。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、自由主義(個人主義)の文化を生み出します。もともとは狩猟採集生活をしており、食料は蓄えられません。そのため、その日暮らしで、新しい食料を求めて移動生活をしていました。ところが、約1万数千年前に、「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で農耕牧畜革命が起こり、食料が蓄えられるようになりました。そして、定住生活が広がっていきました。すると、親は自分が死んだ後に、土地や家などの財産を子供に受け継がせること(相続)ができるようになりました。ここで、この核家族を古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。a.絶対核家族1つ目は古いタイプの核家族、絶対核家族です。これは、相続を親の遺言によって自由に決める家族です。なぜなら、住んでいた土地がもともと寒冷で作物が育ちにくいなどの理由で、十分な財産を蓄えられなかったり、狩猟採集をそのまま続けていたことで、そもそも子供に相続する財産があまりないからです。たとえたまたま財産ができたとしても、世代交代をするたびに継がせていたわけでないため、子供たちに平等に分け与えるものだという意識が芽生えにくく、平等主義の文化は根付きません。このタイプの国は、もともと英国です。そして、だからこそ近世(16世紀)の英国で世界最初の公的扶助(救貧法)が生まれたのでした。この制度によって、扶養においての家族システムを国家システムが代わりに担うようになったのでした。一方で、相続への執着がないため、家族の伝統やしきたりに縛られず、発想が革新的になります。だからこそ近代(18世紀)の英国で最初に産業革命が起きたのでした。彼らの文化は、逆説的にも原始的で「野蛮」(より自由)です。だからこそ、利益を最大限に追及することができたのでした。そして、大英帝国が栄え、絶対核家族は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの現在の英語圏に広がっていきました。b.平等主義核家族2つ目は新しいタイプの核家族、平等主義核家族です。これは、相続を平等に分ける家族です。なぜなら、農耕牧畜が発展していったことで、世代交代をするたびに継がせる財産があるからです。そうなると、子供たちに平等に分け与える意識が働き、平等主義の文化が根付きます。一方で、相続がもらえるために多少は親に気を遣う分、そして平等主義である分、平等主義核家族は絶対核家族ほど革新的にはなれません。このタイプの国は、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの西側の欧州です。また、かつてスペインやポルトガルから独立したラテンアメリカの国々です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 3

(2)父系家族大きく2つに分類した家族システムのもう1つは、父系家族です。これは、先ほどの平等主義核家族から変わっていったタイプです。これをさらに古いタイプと新しいタイプの2つに分けて、その特徴をまとめてみましょう。なお、母系家族については、数がきわめて少ないために、この記事の分類には入れていません。a.直系家族約5千年前に最初の文明(メソポタミア文明)が、農耕牧畜革命と同じ「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)で誕生しました。当時、人口が増えていったことで、持てる土地は限られていき、争いも増えていきました。そのため、親は、土地や家の相続先を子供1人だけに絞り、しかもその1人を一番年上の男子(長男)としました。そして、家(財産)を守るために、長男は結婚してもそのまま家にとどまるようになりました。1つ目は古いタイプの父系家族、直系家族です。これは、子供(長男)が成人して結婚してさらにその子供が生まれても、三世代で同居し続ける家族構成です。他の子供(次男以下の息子)たちは結婚して家を出て、親が持っている限られた農地を部分的に借りる形(地主小作関係)で集約的な農作業を一緒に行いました4)。一方で、娘たちは他の家族の妻(嫁)になります。つまり、子供は、成人しても、結局親(娘は義理の親)と一緒にいることが多いため、親の言うことを聞く必要があります。もちろん、親は家長であるため、子供にいろいろ口出しして、けがや病気などで働けなくなったら養う必要(扶養義務)があります。逆に、親が年老いたら子供が介護します。つまり、このタイプの家族システムでは、家族にとらわれます。そして、この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、権威主義の文化を生み出します。また、兄弟の序列が強く意識され、不平等を受け入れる文化が根付きます。相続先に娘は入っていない点で、必然的に女性差別も生まれます。こうして、貧富の差ができて、社会が階層化された封建社会が生まれました。この社会では、相続への執着が強いため、継承することに重きが置かれ、家族の伝統やしきたりに縛られ、発想が保守的になります。このタイプの国は、日本、韓国、北朝鮮などの東アジアと、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の東側や北側の一部の国です。ちなみに、江戸時代の日本の識字率が世界で断トツのトップだったのは、資産(相続)だけでなく、読み書きなどの文化資産も継承する文化が根付いていたからであると説明することができます。b.共同体家族約4千年前から、当時の中国でも直系家族が広がっていきました。ところが、紀元前4世紀頃に、モンゴルの遊牧民がやってきたことで、中国の家族システムは再び変わっていきました。そのわけは、彼らは軍隊(騎馬隊)でもあったため、兄弟が横並びになり、一致団結していたからです2)。2つ目の新しいタイプの父系家族、共同体家族(外婚型共同体家族)です。これは、子供(息子)たちが成人して結婚してさらにその子供が生まれても、家を出ずに全員で親と同居する家族構成です。娘たちは、結婚相手の夫の家で同居します。家族全員で農作業を一緒にするのは直系家族と同じですが、さらに家族全員で一緒に暮らす点が違います。そのため、けがや病気などで働けなくなったら、目の前にいるわけですから必ず養います。これは扶養義務というよりは、当然のことになります。大家族であることから、その人数を束ねる父親の権限は強くなります。この家族のあり方はその社会のあり方に発展し、強い権威主義の文化を育みます。また、一緒に暮らしているわけなので、当然相続も平等になります。これは、息子たち(男性)同士の平等主義の文化が根付きます。一方で、娘たちは、相続先に入っていないうえに、結婚相手の兄弟たちとも一緒に暮らすなかで立場的には弱く、女性差別が大きくなっていきます。このタイプの国は、中国、ロシア、ベトナム、キューバなどです。まさに、もともと共産主義圏の一党独裁(個人崇拝)の国が当てはまっています。なお、アラブ諸国などのイスラム圏も共同体家族です。ただし、いとこ婚が30~50%ときわめて多いという独特の特徴があり、内婚型共同体家族として区別されています。このわけは、やはり砂漠が多く水資源が乏しいことで、略奪などによって生死がかかっているため、なるべく信頼できる身内(部族)で固まろうとするからです3)。彼らの権威は、言うまでもなくイスラム教です。そして、娘たちはいとことして最初から許嫁になっている点でさまざまな制限をされてしまい、女性差別が最も深刻になっていることもわかります。ちなみに、英国が最も古い絶対核家族のままであるのは、島国であり、次々と新しい家族システムができていった「肥沃な三日月地帯」(現在のイラク付近)や中国などのユーラシア大陸の中心から遠く離れていて、そこで生まれた新しい文化がなかなか辿り着かなかったからであると説明できます。また、欧州の西側の国々が2番目に古い平等核家族のままであるのも、同じように説明することができます。ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの欧州の一部の国については、平等主義核家族から直系家族には変われたのですが、その遠さからその後に共同体家族までは変わり切れなかったと説明することができます。日本、韓国、北朝鮮などの東アジアも同じように説明することができます。このように、方言と同じく、中心から離れた地域(周辺地域)ほど、古い文化(保守性)が同心円状に残るという法則は、周辺地域の保守性原則と呼ばれています1)。参考までに、人類の起源地であるアフリカは、核家族、直系家族、共同体家族、さらには一夫多妻制が混在しています。また、米国は、同じく絶対核家族である英国や他の英語圏とは違い、居住できる国土が広すぎることから、公的扶養の文化が根付きにくいことが指摘されています3)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4

結局日本人が家族のつながりにとらわれて、人権意識が低いわけは?入院中に明日香は、蕁麻疹が出ただけで看護師から「クワイエット行き」(隔離拘束)にさせられそうになりました。その時とっさに、蕁麻疹の様子をコモノ(明日香を訪ねてきた面会者)に携帯電話で撮らせます。すると、看護師から「閉鎖病棟では写真撮影は禁止ですよ」と言われ、それを取り上げられそうになります。権威主義の常とう手段、証拠隠滅です。しかし、ひるまず、「初耳ですね。ルールを提供する側なら、あらかじめルールを提示しておくのが、フェアなやり方なんじゃないでしょうか」と言い返すのです。当然の権利を主張した瞬間で、私たちもスカッとします。まさにこのフェアであることは、直系家族(権威主義)ではなく、核家族(自由主義)の価値観による人権意識です。しかし、明日香のような人は少ないようです。なぜでしょうか?この原因を、日本の歴史から解き明かしてみましょう。日本は、平安時代までは相続を分ける平等主義核家族でした。争いが増えた鎌倉時代(14世紀)以降に、一人だけ相続する直系家族が農家でも武家でも徐々に広がり、江戸時代に行き渡りました1)。そして明治になり、明治民法(1896年施行)によって家制度として初めて明文化されました。明治民法では、長男が代々家長(家督)となり、単独で相続を継ぐ権利を得ることとされ、その見返りとして家長はその家族(親族)のメンバーを扶養する義務を負うこととされました。これが、扶養義務の法的な起源です。これは、まさに直系家族という日本の家族システムをそのまま明文化したものです。当時の農村では、親族で集まった集落をつくっており、家督相続と扶養義務のセットはとても合理的でした。そもそも当時は、公的扶助(生活保護)が明確には確立していませんでした。すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をしており、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。そしてこれが、「子供(家長以外の家族)は成人しても親(家長)の言うことを聞くべきであり、困ったら親(家長)を頼るべきである」というその3で説明した現在の日本人の国民性の起源でもあります。以上から、鎌倉時代から現在まで約600年かけて、直系家族という日本の家族システムを確立させ、家族のつながりにとらわれるという日本独特の国民性(文化)を完成させたことになります。同時にこの600年間で、この家族システム(文化)に適応する人(遺伝子)がより生き残り、より子孫を残してきたことにもなります。それでは、そのような人(遺伝子)とはどんな特徴があるでしょうか?それは、権威にひれ伏し(受け身)、不平等でも恐縮して気を遣うこと(不安)です。まさに、先ほどの鉄雄の「だっておれ、言われるがままじゃん」というセリフです。さらに言えば、彼は番組企画で拉致された時も同じスタンスだったわけですが、そこまで彼ができるのも、その後の番組編集で「きっとおいしくしてくれる」というご褒美(権威)を薄々期待していたからです。あとで鉄雄が明かしたように、実は拉致されることはあらかじめ知らされており、パスポートも周到に用意していたのでした。たとえ人権侵害という形になっても「言うことを聞いていれば悪いようにはされない」という暗黙の了解の文化がそこにあります。実際の研究では、日本人は脳内物質の国際比較においても世界で最も受け身(ドパミン不足)で不安(セロトニン不足)になりやすいことがわかっています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。なお、その記事では、受け身で不安になりやすい日本人の気質について、他の要因にも触れています。この受け身で不安になりやすい気質は、「自分はだめだ」という自己肯定感の低さにもつながります。その方が、直系家族の文化に適応できて都合が良いからです。むしろそうなる必要があったというわけです。実際の統計でも、日本人は世界で最も自己肯定感が低いことがわかっていますが、これにも納得がいくでしょう。このように、家族システムにおいても、文化進化と遺伝子進化は共進化していることが考えられます。共進化の詳細については、関連記事3をご覧ください。以上より、日本人が家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのは、日本の家族システムが長らく直系家族であったために、権威主義と不平等を受け入れる文化進化と遺伝子進化が共進化してきたからであると説明することができます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 5

逆になんで今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたの?明日香が運ばれた救急病院で、救急医は鉄雄に「あんた、よっぽどひどいことしたんじゃないのか!」と、まるで一昔前の父親のように怒鳴っていました。その医者は勘違いしていたわけですが、そう言うのが正しいと思っている様子でした。また、すぐに退院したいと言う明日香に対して、担当看護師は「早期退院で自殺を繰り返されたら、責任を問われるのはこちら側ですから」と釘を刺していました。彼女は、自分たちが責任を取ると言い切れるほど正しいことをしていると思っているのでした。実際は、「権威は常に正しい(正しくなければならない)」ため、横暴にもなれて、しかも間違えるわけがないので責任を取ることはありません。これらは、典型的なパターナリズム(父権主義)で、直系家族の価値観(文化)に由来します。しかし現在では、このように父親が怒鳴るのは、モラルハラスメントと呼ばれます。医者が患者に説教するだけでもドクターハラスメントと呼ばれます。何が変わったのでしょうか? 言い換えれば、なぜ今は家族のつながりにとらわれ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなってきたのでしょうか?その答えは、戦後の社会構造の変化です。この変化を大きく2つ挙げてみましょう。(1)個人主義化戦後(1945年)からまもなく、家族システムが核家族である欧米による自由主義(個人主義)と平等主義の価値観による法整備が進み、相続は遺言か法定相続(平等原則)によるものとされ、夫婦間や兄弟間で不平等な家督相続(家制度)は廃止されました。そして、工業化や都市化に伴い、成人した子供は実家近くに住むとは限らなくなりました。また、長男であっても結婚して同居し続けるとは限らなくなりました。そして、2000年代以降の情報化によって、SNSをはじめとして便利な世の中になりました。一人でいても寂しさも紛らわすものはいくらでもあり、ますます個人主義化が進みました。このようにして、現在(2023年統計)では、核家族は約60%、一人暮らしは30%台で、戦前で圧倒的な多数派だった三世代世帯家族(直系家族)はごく数%の少数派になってしまいました。明日香のように家族関係は希薄となりました。このように、個人主義化によって現在の日本の家族システムが絶対核家族に変わってしまったからこそ、家族のつながりにとらわれるのが当たり前に思えなくなったのでした。(2)情報化これまで「権威は常に正しい」としてみんな受け入れていました。なぜなら、正しいかの真実(証拠)を確かめることができなかったからです。しかし、科学が進歩し情報化した現代では、正しさを測る判断基準(科学的根拠)に個人がアクセスできます。伝統や経験論で語られる政治、経済、医療、教育などのさまざまな権威が必ずしも正しくないということがバレてしまうようになりました。さらに、だれでもSNSで発信できるため、権威による横暴が映像や音声で詳らかに晒されるようになりました。もはや立場が上の人(権威)がその権威を守るために、隠蔽することも難しくなりました。このように、情報化によって「権威は常に正しい」という前提(フィクション)が崩れてしまい、人権よりも権威を優先することは難しくなってしまったからこそ、人権意識が低いのが当たり前に思えなくなったのでした。ちなみに、この点で、日本よりも権威主義の強い共同体家族の中国やロシアが、情報統制に必死になっているのも、理解できるでしょう。じゃあなんで当たり前に思えなくなっているのに変えられないの?今は、家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのが当たり前に思えなくなっているのに、結局なかなか変えることができません。なぜでしょうか?その答えは、先ほど説明した日本人の受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)はなかなか変わらないからです。この気質の人(遺伝子)が広がり多数派になるまで、鎌倉時代から少なくとも600年かかりました。一方、個人主義化(核家族化)という社会構造の変化が起きて、まだたかだか50年ちょっとです。この新しい文化が広がる、つまりこの文化に不適応な受け身で不安になりやすい気質(遺伝子)が減り(淘汰され)、適応的な積極的で不安になりにくい気質(遺伝子)が増える(選択される)には、まだ時間がかかることが推測できます。そして、この事実から、もともと直系家族の文化が、継承は得意であっても革新は不得意であり、その凝り固まった文化を引きずる状態(硬直化)を説明することができます。これを名付けるなら、「直系家族病」です。この病の症状は、医療保護入院を廃止できないだけにとどまりません。不登校、ひきこもり、新型うつ、非婚、少子化、介護、過激なバッシングなど、実は日本ならではの社会問題が挙げられます。つまり、これらの問題は、驚いたことに、この病の症状(結果)として説明できてしまい、根っこの部分ですべてつながっていたということになります。これは、もともと直系家族であった日本の文化に強く結びついた国民性であり国民病、つまり文化結合症候群と言えるでしょう。なお、文化結合症候群の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)「我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上」p.68、pp.74-79、pp.87-88:エマニュエル・トッド、文藝春秋、20222)「家族システムの起源I ユーラシア 上」pp.208-209:エマニュエル・トッド、藤原書店、20223)「トッド人類史入門」p.123、p.143:エマニュエル・トッドほか、文藝春秋、20234)「現代家族のパラダイム革新」p.8:野々山久也、東京大学出版会、2007「直系家族病」(文化結合症候群)の関連記事不登校映画「かがみの孤城」(その1)【結局なんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 3非婚私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】過剰なバッシング(正義中毒)苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1<< 前のページへ■関連記事女性誌「STORY」(その2)【そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?(家族療法)】Part 2苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 2NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 1

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