患者・市民参画(PPI)の詳細情報、4医学誌でも不足/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/30

 

 「患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)」は、無作為化比較試験(RCT)の効率と妥当性を向上させ、研究が患者の真のニーズと嗜好に合致するようにするためにきわめて重要とされる。ベルギー・KU LeuvenのAlice Vanneste氏らは、主要な医学雑誌に掲載されたRCT論文やそのプロトコールのうち、PPIの記載があるのは20%未満にすぎず、PPIの役割と貢献度に関する詳細な情報は不足しており、プロトコールで計画されたPPI活動と発表された論文で報告された内容の間には矛盾が存在することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2025年4月10日号に掲載された。

主要4誌のメタ疫学研究

 研究グループは、主要な医学雑誌に掲載されたRCTの論文およびその試験プロトコールに記載されたPPIの報告とその進展の状況を経時的に調査する目的でメタ疫学研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 4つの主要医学雑誌(BMJ、JAMA、NEJM、Lancet)で2015~23年に発表されたRCT論文と、これに関連する査読付きのプロトコールをPubMedで検索した。各雑誌でこの期間に発表されたその年の最初の10件のRCTを対象とした(論文360報)。

 本研究では、PPIを「患者、介護者、一般市民が、試験の計画・立案から実施、結果報告に至るまで、研究の全過程に積極的に関与することであり、試験参加者としての役割とは異なるもの」と定義した。

試験委員会への参加が最も多い

 360報の論文のうち、対応するプロトコールに言及していたのは299報(83%)であった。PPIを報告していたのは、64報(18%)の論文と56報(19%)のプロトコールだけであった。36件のRCTでは、論文とプロトコールの両方でPPIを報告していたが、両者のPPI報告には顕著な矛盾が存在した。全体として、360の試験のうち84試験(23%)が、論文とプロトコールのいずれか、または両方でPPIを報告していた。

 PPIを報告した論文64報とプロトコール56報では、PPI活動に関与していたのは主に患者とその代理人で、最も一般的なPPI活動は試験委員会(たとえば、運営、管理、データ監視の委員会)への参加であった(論文:44報[69%]、プロトコール:39報[70%])。

 PPIは、主にRCTの開発段階で行われ、試験デザインに関するフィードバック、試験資料(参加者情報、同意書など)のレビュー、試験の実行可能性(パイロット試験中の試験参加負担、受診頻度、介入の受容性など)の評価などの情報が得られた。

PPI報告は増加傾向に

 プロトコールには論文よりも詳細な情報が記載されていることもあったが、いずれにおいてもほとんどの場合、PPIの貢献度については曖昧なことが多く、特定のアウトカムやRCT内での意思決定への影響に関する詳細な情報の記載はなかった。また、PPIの寄与に関する正式な評価の記載は、プロトコール(18報[32%])よりも論文(37報[58%])で多く、主に謝辞の部分でPPIの貢献度を評価していた。

 PPI報告は、全体的に経時的に増加する傾向を認め、過去2年間に最高水準に達していたが、まだ30%を超えていなかった。また、2014年にPPI報告を義務付けたBMJ誌は、論文中のPPI報告の多くを占めた(49報[77%])。PPI報告を義務付けていない他誌では、論文よりもプロトコールでPPIが報告されることが多かった。

 著者は、「これらの知見は、一貫性があり詳細で構造化された記述を可能にし、最終的に臨床研究におけるPPIの透明性と影響力を増強するためには、標準化されたPPI報告の方法が必要であること示すものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)