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睡眠呼吸障害の小児、扁桃摘出術は有効か/JAMA

 いびきと軽度の睡眠時無呼吸を有する睡眠呼吸障害(SDB)の小児の治療において、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術は監視的待機(watchful waiting)と比較して、12ヵ月の時点での実行機能(executive function)および注意力(attention)を改善しないが、行動、症状、生活の質(QOL)、血圧などを有意に改善することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSusan Redline氏らが実施した「PATS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号に掲載された。米国7施設の単盲検無作為化臨床試験 PATS試験は、米国の7つの睡眠センターで実施された単盲検無作為化臨床試験であり、2016年6月~2021年2月に参加者を登録した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]協力協定の助成を受けた)。 年齢3~12.9歳、習慣性のいびきがみられ、閉塞性の無呼吸低呼吸指数(AHI)が3点未満のSDB患児458例(平均年齢6.1歳、女児230例[50%])を登録し、早期にアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術を施行する群(手術群)に231例、監視的待機を行う群に227例を無作為に割り付けた。 2つの主要アウトカムとして、実行機能を評価するための、保護者報告によるBehavior Rating Inventory of Executive Function(BRIEF)のGlobal Executive Composite(GEC)Tスコアと、コンピュータベースの注意検査であるGo/No-go(GNG)テストのd-prime信号検出スコアの、ベースラインから12ヵ月時までの変化量を評価した。BRIEF GEC Tスコア、GNG d-primeスコアの変化量に差はない ベースラインで169例(36.9%)が過体重または肥満で、108例(23.6%)に喘息の既往があり、282例(61.6%)で扁桃腺が口腔咽頭幅の50%以上を占めており、331例(72.3%)でAHIが1点未満(中央値0.5点[四分位範囲[IQR]:0.2~1.1])であった。 12ヵ月の時点でのベースラインからのBRIEF GEC Tスコアの変化量は、手術群が-3.1点、監視的待機群は-1.9点であり、実行機能については両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(群間差:-0.96点、95%信頼区間[CI]:-2.66~0.74、p=0.27)。 また、GNG d-primeスコアの12ヵ月時までの変化量は、手術群が0.2点、監視的待機群は0.1点と、注意力にも両群間に統計学的に有意な差はなかった(群間差:0.05点、95%CI:-0.18~0.27、p=0.68)。有害事象の頻度は同程度 一方、行動上の問題(CBCL総問題スコア:-3.09点[97%CI:-4.90~-1.28]、p<0.001)、眠気(mESSスコア:-1.18点[-2.15~-0.21]、p=0.01)、SDB症状(PSQ-SRBDスコア:-0.16点[-0.20~-0.12]、p<0.001)、疾患特異的QOL(OSA-18スコア:-9.75点[-12.84~-6.65]、p<0.001)、全般的QOL(PedsQL総スコア:4.76点[1.44~8.09]、p=0.005)のベースラインから12ヵ月時までの変化量は、いずれも監視的待機群に比べ手術群で有意に改善した。 手術群は監視的待機群と比較して、12ヵ月後の収縮期および拡張期血圧のパーセンタイル値の低下が大きかった(変化量の群間差:収縮期血圧:-9.02[97%CI:-15.49~-2.54]、p=0.006、拡張期血圧:-6.52[-11.59~-1.45]、p=0.01)。また、AHIが睡眠中1時間当たり3イベント以上へ進行した患児の割合は、監視的待機群が13.2%であったのに対し、手術群は1.3%と有意に少なかった(群間差:-11.2%[97%CI:-17.5~-4.9、p<0.001)。 6例(2.7%)が、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術に関連した重篤な有害事象を経験した。試験との関連を問わない有害事象が1件以上発生した患者は、手術群が175例、監視的待機群は172例であった。 著者は、「これらの知見は、睡眠ポリグラフ検査でAHIが低くても習慣性のいびきを呈する小児における、手術の有益性を排除するものではない。今後、どの小児がアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術の恩恵を受ける可能性が高いかを特定するための、取り扱いが簡便なスクリーニング法を開発する研究が必要である」としている。

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高齢者RSV感染における予防ワクチンの意義(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 原著論文 Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults./NEJM―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2023年夏以降、急性呼吸器感染症として新型コロナに加え、季節性インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV:respiratory syncytial virus)の3種類のウイルス感染に注意すべき新時代に突入した。興味深い事実として、新型コロナが世界に播種した2020年度にはインフルエンザ、RSVの感染は低く抑えられていたが、2021年度以降、両ウイルス感染は2019年以前のレベルに戻りつつある。この場合、インフルエンザは11月~1月、RSVは7月~8月に感染ピークを呈した。 本邦にあっては、RSVは主として幼児/小児の感染症として位置付けられており、ウイルス感染症の有意な危険因子である高齢者に対する配慮が不十分であった。本論評では、高齢者RSV感染に適用される新たな遺伝子組み換えProtein-based vaccine(RSVPreF3 OA、商品名:アレックスビー筋注用、グラクソ・スミスクライン)とGene-based vaccine(mRNA-1345、Moderna)に関する治験結果を基に、高齢者RSV感染症の全体像について考察する。RSVの分子生物学 RSVは1956年に同定されたParamyxovirus科のPneumovirus属に分類されるウイルスである。エンベロープを有する直径150~300nmのフィラメント状の球形を示す一本鎖(-)RNAウイルスで、10種の遺伝子をコードする15,000個の塩基からなる。RSVにあって宿主細胞との接着、侵入を司るのがウイルス表面に発現する1,345個のアミノ酸配列を有するF蛋白(膜融合前F蛋白)である(コロナウイルスのS蛋白に相当)。RSVは表面抗原であるG蛋白の違いによってA型とB型の2種類の亜型に分類されるが、両者の膜融合前F蛋白には明確な差を認めない。RSVの自然宿主はヒトを中心とする哺乳動物である。高齢者RSV感染の疫学 すべての新生児において母親と同程度のRSV抗体(母体からの移行抗体)が認められるが、その値は徐々に低下し、生後7ヵ月目以降のRSV抗体は生後に起こった新規自然感染に由来する(生後2年までに、ほぼ100%が新規感染)。それ以降、生涯を通して再感染を繰り返す。RSV感染の最大の脅威は生後3ヵ月以内の乳児、未熟児、先天性心疾患を有する小児であることは間違いないが、近年、成人、とくに、高齢者におけるRSV感染の重要性が指摘されている。 欧米の検討では、看護施設に入所中の高齢者のうち年間で5~10%がRSVに罹患、うち10~20%が肺炎を合併、2~5%が死亡すると報告されている。さらに、65歳以上の高齢者にあってA型インフルエンザによる死亡が毎年3.7万人であるのに対し、RSVによる死亡は毎年1万人(インフルエンザの約30%)に達すると報告されている。18歳以上の成人を対象とした検討では、基礎疾患として喘息、COPD、糖尿病、冠動脈疾患、うっ血性心不全を有する人のRSV感染による入院比率は、基礎疾患を有さない人に比べ有意に高いことが示されている。高齢に加え、上記の基礎疾患は新型コロナ、季節性インフルエンザ感染の増悪因子としても作用するので、ウイルス性呼吸器感染症の普遍的危険因子として念頭に置く必要がある。インフルエンザ感染との比較において、RSV感染のほうが入院した症例の肺炎合併頻度、基礎疾患として存在する喘息、COPDの増悪頻度が高いことが示されている。 本邦においては、RSV感染が小児科定点からの報告のみであり、本邦独自の成人データは集積されていない。2024年以降、3種のウイルスによる急性呼吸器感染症の本邦における重要性を確立するためには、RSV感染症に関する情報収集は成人を含めた広範囲な対象に広げる必要があり、早期の法的整備を望むものである。先進国のデータからの外挿値ではあるが、本邦の60歳以上の高齢者におけるRSV感染による入院者数は毎年6.3万人、死亡者数は4.5千人と推定されている(Savic M, et al. Influenza Other Respir Viruses. 2023;17:e13031.)。RSVワクチン開発の軌跡 RSVに対するワクチン製造は1960年代に開始され、当初は不活化されたRSVを生体に導入する不活化ワクチンが中心であった。しかしながら、不活化ワクチンを用いた臨床治験の結果は悲惨なものであった。失敗の原因は、不活化ワクチンの導入によってウイルス殺傷能力の低い不適切IgG抗体が産生され抗体依存性感染増強(ADE:Antibody dependent enhancement of infection)が発生したためである。それ以降の検討で、RSVが宿主細胞に侵入する際に本質的な働きをする膜融合前F蛋白の重要性が明らかにされ、それを標的として20世紀後半から現在に通じるモノクローナル抗体薬(mAb)、ワクチンの製造が開始された。まず初めに、膜融合前F蛋白に対する遺伝子組み換えmAbであるパリビズマブ(商品名:シナジス、アストラゼネカ)が実用化され、種々のハイリスクを有する新生児、乳児、幼児のRSV感染に伴う下気道感染の重症化阻止治療薬として使用されている(本邦承認:2002年1月)。現在、パリビズマブの半減期を延長させたニルセビマブの開発が進行中である。 新型コロナ発生に伴い、高度の蛋白・遺伝子工学手法を駆使した数多くのワクチンが作成されたことは記憶に新しい。新型コロナに対するワクチンは2種類に大別され、1つ目はGene-based vaccineであり、標的S蛋白をコードするmRNAをヒトに直接導入するもの(ファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスなど)、2つ目はProtein-based vaccineあるいはSubunit vaccineと定義されるもので、S蛋白に関する遺伝子情報をヒト以外の細胞に導入しS蛋白を生成、それをヒトに接種するものであった(ノババックス[武田]のヌバキソビッドなど)。2017年以降、以上と質的に同様のワクチンが、RSVの膜融合前F蛋白を標的として作成され始めた。高齢者に対する治験結果が報告されているProtein-based vaccineとしては、アレックスビー筋注用(GSK)とアブリスボ筋注用(ファイザー)がある。アレックスビー筋注用は2023年9月に、60歳以上の高齢者に対するRSV予防ワクチンとして本邦で製造承認された(米国での承認は2023年5月)。2023年12月、GSKはアレックスビー筋注用の適用を50歳以上の成人に拡大する申請を厚労省に提出した。 米国においては、アブリスボ筋注用も60歳以上の高齢者に使用可能である(2023年8月承認)。しかしながら、アブリスボ筋注用の特記事項は、本ワクチンを妊娠24~36週の妊婦に1回接種し、母体で作られた抗体を胎児に移行させるという斬新な方法が提示されたことである(米国での承認:2023年8月)。この方法によって新生児のRSV感染に由来する重症下気道感染を予防できるようになった(生後3ヵ月以内のRSV感染による重症化予防率:81.8%、生後6ヵ月以内の重症化予防率:69.4%)。本邦にあっては、アブリスボ筋注用は母体/新生児用として認可されているが(2023年11月)、高齢者用としては認可されていないことに注意する必要がある。 RSV膜融合前F蛋白を標的とした高齢者用のGene-based vaccineとしてmRNA-1345(Moderna)の開発が進められている。2023年現在、本ワクチンは、米国、スイス、オーストラリアなどにおいて製造承認の申請が始まっているが、本邦においても2024年度内に製造申請がなされるものと予測される。高齢者におけるRSVワクチンの予防効果 Papiらは60歳以上の高齢者2万4,966例を対象としたアレックスビー筋注用に関する国際共同プラセボ対照第III相試験の結果を報告した(Papi A, et al. N Engl J Med. 2023;388:595-608.)。中央値が6.7ヵ月の追跡期間においてRSVの下気道感染全体に対する有効率(予防効果)は82.6%であった。RSV感染の重症化因子(COPD、喘息、慢性心不全、糖尿病、慢性心血管疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患)を有する対象での下気道感染症に対する有効率は94.6%であった。これらの結果は、アレックスビー筋注用が高齢者のRSV感染全体に対して臨床的に意義ある予防効果を発揮することを示す。RSV-A型に対する下気道感染に対する有効率は84.6%、RSV-B型に対する有効率は80.9%と両亜型間でほぼ同等の有効率を示した。 Wilsonらは60歳以上の高齢者3万5,541例を対象としたmRNA-1345に関する国際共同無作為化二重盲検第III相試験の結果を発表した(Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023;389:2233-2244.)。追跡期間の中央値は3.7ヵ月でRSV関連下気道感染に対する予防有効率は83.7%であった。基礎疾患の有無、RSV亜型による予防有効率に明確な差を認めなかった。以上より、Gene-based vaccineであるmRNA-1345のRSV感染抑制効果はProtein-based vaccineアレックスビー筋注用と同等であり、2024年度内に本邦を含め世界各国で承認されるものと期待される。 高齢者に対するRSVワクチンにあって今後の課題の1つがワクチンの年間接種回数である。しかしながら、RSVにあっては年1回の流行ピークが同定されているので、その時期に合わせた年1回のワクチン接種で十分だと論者らは考えている。RSVに関するもうひとつの課題は抗ウイルス薬の確立で早期の開発が望まれる。

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第177回 災害派遣医療チーム(DMAT)182隊が派遣、災害関連死防止のため患者を移送へ/能登半島地震

<先週の動き>1.災害派遣医療チーム(DMAT)182隊が派遣、災害関連死防止のため患者を移送へ/能登半島地震2.2024年度の診療報酬改定、高齢者の救急搬送を受け入れる病棟の新設へ/厚労省3.大学病院の対応能力を超過、臓器移植の体制整備が急務/移植学会4.処方箋なしで病院の薬が買える「零売薬局」を規制強化/厚労省5.3次救急病院において救急救命士への指示拒否やパワハラが発覚/鳥取県6.高齢化と後継者不足で約半数の開業医が10年以内に引退へ、地域医療が危機/山形県1.災害派遣医療チーム(DMAT)182隊が派遣、災害関連死防止のため患者を移送へ/能登半島地震能登半島地震の影響で石川県の高齢者施設では、災害関連死のリスクが高まっている。過去の災害では、多くの災害関連死が高齢者施設や自宅で発生しており、現在も同様の状況が懸念されている。神戸協同病院の上田 耕蔵院長は、施設の現状が「限界を超えた状態」にあると指摘している。東日本大震災のデータによると、災害関連死の25%が発生から1週間以内に起きており、能登半島地震でも同様の事態が発生している可能性がある。被災地では、1月14日現在、災害派遣医療チーム(DMAT)182隊が活動しており、災害支援ナースも複数の自治体から派遣されている。また、熊本地震でも活躍したモバイルファーマシーも活動を開始している。しかし、高齢者施設や自宅での災害関連死のリスクは依然として高く、とくに高齢者の健康状態に問題があるため、自宅にとどまっている人々に対する支援が重要となっている。東日本大震災の事例を分析した結果、関連死の8割は震災後3ヵ月以内に発生し、死因の多くは呼吸器疾患や心血管疾患であった。能登半島地震の被災地では、避難所のトイレ、食事、寝床の改善が重要であり、とくに高齢者に対するケアが必要とされている。災害関連死を防ぐためには、ライフラインの復旧とともに、弱っている人々を早急にみつけ、適切な医療や支援を提供することが求められている。このため石川県は災害関連死を防ぐため、被災した人たちの2次避難や広域避難を急いでいる。なお、厚労省は能登地震への対応について「まとめサイト」を設けており、地震に関する情報を掲載して、随時更新している。参考1)石川県能登地方を震源とする地震について(厚労省)2)石川県能登地方を震源とする地震による被害状況等について(同)3)「まだまだ水が足りない」 石川・被災地の総合病院、人工透析もできず(神奈川新聞)4)病院や施設でも高齢者に命の危機 半島部から350人以上を移送(毎日新聞)5)災害関連死、発生のピークは1~2週間後 東日本大震災の事例を分析(朝日新聞)6)災害関連死、施設や自宅で起きている恐れ もう「限界を超えた状態」(同)2.2024年度の診療報酬改定、高齢者の救急搬送を受け入れる病棟の新設へ/厚労省2024年度の診療報酬改定に向けた議論が大詰めを迎えている。1月12日、武見 敬三厚生労働大臣は中央社会保険医療協議会(中医協)に諮問を行った。改定の基本方針は、医療関係職種の賃上げと働き方改革の推進に重点を置いたものとなっており、診療報酬の本体は0.88%引き上げられ、そのうち0.61%分が看護職員や病院薬剤師の賃上げに、0.28%分が若手勤務医や事務職員の賃上げに充てられる。中医協では、この前提に基づいて点数配分を議論し、改定案を答申する予定である。入院医療の評価に関しては、高齢者の救急搬送を受け入れる病棟の新設や、急性期入院医療の評価項目の見直しが焦点となっている。また、外来医療では、地域包括診療料の算定要件と評価の見直し、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応、介護との連携強化が議論されている。賃上げを実現するため、入院基本料などの評価の見直しも検討され、外来診療での感染防止対策や職員の賃上げに対する評価の見直しも含まれている。また、栄養管理体制基準明確化や、患者への身体的拘束を組織的に最小化にする体制整備なども追加された。医療DXによる情報連携や医療・介護連携の推進も、2024年度同時改定の重要ポイントとされている。これには、オンライン資格確認体制整備や、遠隔医療の推進、医療保険と介護保険との給付調整見直し、医療・介護のリハビリ連携強化などが含まれている。質の高い医療サービスの実現に向けては、がん医療や小児医療の充実、食材料費や光熱費の高騰への対応、医療安全対策の強化などが議論されている。また、医療保険財政逼迫を踏まえ、長期収載品の患者特別負担の適正化や、後発医薬品の使用促進なども検討されている。この改定は、医療人材の確保と賃上げ、医療サービスの質の向上、医療DXの推進など、多岐にわたる分野に影響を及ぼすとみられており、今後、個別改定項目の論議を経て、中医協総会は2月上旬に武見厚労相へ答申を行う予定。参考1)これまでの議論の整理(案)について(厚労省)2)2024年度診療報酬改定を諮問、厚労相 中医協の議論大詰めへ(CB news)3)賃上げで入院基本料などの「評価見直す」24年度改定議論の整理、中医協了承(同)4)2024年度診療報酬改定の項目固まる!病院の機能分化、処遇改善、医療・介護連携、医療DX推進など診療報酬で推進!-中医協総会(Gem Med)3.大学病院の対応能力を超過、臓器移植の体制整備が急務/移植学会昨年、国内の主要な大学病院において臓器移植手術の断念が急増していることが読売新聞の報道で明らかになった。2023年、東京大学、京都大学、東北大学の3大学病院では、人員や病床不足のため、60件以上の臓器移植を受け入れることができなかった。とくに東京大学では35件の受け入れを断念し、前年の4倍に急増していた。他の大学でも同様の事態が発生している。この背景には、脳死ドナーからの臓器提供が増加していることがある。2023年は132件と過去最多となり、提供件数が大きく伸びた結果、限られた移植施設に要請が集中した。また、臓器摘出手術が休日に偏って行われることも、施設の対応能力を超える一因となっている。土日祝日に摘出手術が行われた割合は、2020年以降61%に増加している。心臓と肺の移植手術は特定の病院に集中しており、東京大、国立循環器病研究センター、大阪大の3施設で心臓移植の約70%、京都大、東北大など4施設で肺移植の約75%を占めている。移植手術の実績がある施設に患者が集まる傾向があり、結果的に臓器の受け入れ先に選ばれやすい状況が生じている。このような状況に対し、医療関係者からは「救える命が救えなくなる」という危機感が表明され、市民団体や専門家らは、ドナー増を見据えた移植体制の整備を国に求めている。東京大学の佐藤 雅昭教授は、看護師や臨床工学技士の不足により、1日に行える移植手術が限られている現状を指摘し、病状が悪化した患者が移植の順番が回って来たにもかかわらず、別の緊急手術に人員が割かれたために移植を断念し、その後患者が亡くなった事例を挙げている。国立循環器病研究センターでは、2023年に32件の心臓移植を実施し、1施設あたりの年間心臓移植件数で過去最多を記録したが、ドナーの増加に伴い、3件同時に要請が来た場合の対応が難しくなるとの懸念を示している。日本移植学会の小野 稔理事長は、現在持ちこたえている移植施設でも早晩深刻な状況に陥ることが予想されるとし、臓器移植の体制充実を求める要望書を国に提出するなど対策を求める方針を明らかにした。参考1)臓器移植見送り、東大・京大・東北大で昨年60件超…提供集中で「対応できる限界超え」(読売新聞)2)移植見送り相次ぎ「救える命救えなくなる」…ドナー増加で体制整備急務(同)3)臓器摘出手術の曜日に偏り、対応能力超え…休日に60%(同)4)臓器移植の体制充実を求める要望書、学会が国に提出へ…東大などで受け入れ断念相次ぎ(同)4.処方箋なしで病院の薬が買える「零売薬局」を規制強化/厚労省厚生労働省は、一部の医療用医薬品を処方箋なしで販売する「零売薬局」に対する規制を強化する方針を示した。現行法では、約2万種類ある医療用医薬品のうち、7,000種類の医薬品を処方箋なしで販売する「零売薬局」について、近年は、「処方箋なしで病院の薬が買える」などと利便性を訴えて増加しており、都市部を中心に全国で約100店の零売薬局があることが問題視されてきた。このため、厚労省は「医薬品の販売制度に関する検討会」を2023年2月から定期的に開催し、具体的な問題点や新たな規制のあり方について検討を重ねてきた。これまで厚労省は、災害時の受診困難や市販薬での代替が難しい場合など、正当な理由がある場合に限り、必要な受診勧奨を行った上での販売を認めていたが、法的拘束力はなかった。その結果、日常的に販売を行う薬局が存在し、不適切な広告を行う薬局が確認されていた。新たな規制では、このようなメリットのみを強調する広告も禁止される。厚労省は、来年以降の法改正を目指し、昨年12月に医薬品の販売制度に関する検討会で改正案をまとめ、厚生科学審議会(医薬品医療機器制度部会)での議論を経て、法改正が進められる予定。参考1)処方箋なしで病院の薬「零売薬局」規制へ 緊急時のみ(日経新聞)2)「医薬品の販売制度に関する検討会」の「とりまとめ概要資料」(厚労省)3)第11回医薬品の販売制度に関する検討会(同)5.3次救急病院において救急救命士への指示拒否やパワハラが発覚/鳥取県鳥取市の鳥取県立中央病院と県東部消防局の関係が、救急搬送を巡る問題で悪化している。昨年12月5日~14日の間、病院の救命救急センター長が消防局に対し、救急救命士からの医療行為指示要請に応じないと通知。この拒否は、院長の許可なく行われ、10日間続いていた。廣岡 保明院長は、「県の手順書が不十分なため、医師が責任を問われる可能性があったため、救命救急センター長が独断で指示要請を拒否した」と説明している。この間、救急救命士は他の病院の医師の指示を受けながら患者を中央病院に搬送した。さらに消防局側は、搬送時に病院医師からパワーハラスメントを受けたと訴え、病院に調査を要請している。廣岡院長は今回の問題について記者会見を開いて陳謝し、再発防止策を講じる意向を示した。また、救急隊員に対するパワハラ行為を認め、消防局側からの約20件の調査要請についても明らかにした。現在、病院側は通常通り救急車を受け入れ、12月15日以降は、指示要請にも応じてとしている。県東部消防局は、地域住民への救急サービスが低下しないよう努めるとコメントした。今回の事件は、医療機関と消防の間の連携に影響を与え、地域住民への医療提供にも影響を与えかねない深刻な事態となっている。神戸大学の小谷 穣治教授は、「医療事故のリスクを抑えるために、医療機関と消防の円滑な連携が求められる」と指摘している。参考1)救急隊の医療行為指示要請医師が拒否 県立中央病院の院長陳謝(NHK)2)救急救命士への指示拒否 鳥取県立中央病院、医師のパワハラ認める(毎日新聞)3)県立病院と消防局の関係が悪化、医師が救急救命士への指示を一時拒否…消防側「搬送時にパワハラも」(読売新聞)4)県民の皆様へ(マスコミ報道について)(鳥取県立中央病院)6.高齢化と後継者不足で約半数の開業医が10年以内に引退へ、地域医療が危機/山形県山形県内の開業医の高齢化が進み、後継者不足が深刻化していることが明らになった。山形県医師会が行ったアンケートによると、約半数の開業医が10年以内に引退する可能性が高いと回答し、後継者が決まっている医師はわずか20.6%にとどまった。とくに60代以上の医師が多く、地域医療を支える現役医師の高齢化が顕著だった。この状況は、地域医療の崩壊をまねく恐れがあり、県医師会は危機感を示している。過去10年で診療所の減少が顕著な地域もあり、とくに最上地域では7診療所が新たに開設された一方で、14診療所が閉院している。また、酒田地区医師会の調査では、半数近くの診療所が10年以内に閉院する可能性があると回答している。医師不足に対応するため、山形県と県医師会は2024年度に「医業承継事業」を実施する方針を立てている。この事業では、開業を希望する医師と後継者不足に悩む診療所を結ぶマッチング専用のホームページを開設し、マッチングの提案や支援制度の紹介を行う予定。新年度予算案には関連費用として1,530万円が計上されている。この取り組みは、地域医療の維持と後継者問題の解決に向けた重要な一歩となる見込み。参考1)高齢化進む開業医 半数余“10年以内に引退の可能性“と回答(NHK)2)診療所の6割「後継者決まっていない」…山形県医師会「地域医療が崩壊しかねない」(読売新聞)

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死亡確認、どんなかたちが理想?【非専門医のための緩和ケアTips】第67回

第67回 死亡確認、どんなかたちが理想?自分以外の医師は、どんなふうに死亡確認をしているのだろうって思うことはありませんか? 初期研修医ならいざ知らず、ある程度の年齢になると、ほかの医師の死亡確認に同席することはあまりないでしょう。今回は緩和ケアの実践でも重要なシーンである、死亡確認について考えてみましょう。今日の質問私の診療所は、初期研修の地域研修施設で、定期的に初期研修医が学びに来ます。研修中は在宅医療でお看取りをする機会があり、その指導をする必要もあります。とはいえ、私自身、学生や研修医時代に死亡確認の指導を受けた記憶がなく、何を伝えるべきか迷います…。私自身、死亡確認について明確に指導を受けた経験はありません。ただ、若手医師の多い環境で勤務してきたので、「どんなふうにやってますか?」と時々話題になり、皆で議論したことが学びになりました。患者、家族にとってはもちろん、医療者にとっても死亡確認は重要な場面です。それまで積み重ねてきたケアや関係の集大成であり、医師の立ち居振る舞いがネガティブな影響を与えないことが求められます。緩和ケア病棟に限定されたものではありますが、死亡確認時に関する研究があります1)。日本で行われた、遺族を対象にホスピス・緩和ケアの質の評価した研究で、この中で死亡確認にまつわる内容も調査しています。「遺族にとって、どのような死亡確認が望ましいか」がテーマの1つです。この研究では、「医師の死亡確認の仕方には、改善すべきところがあった」という質問について、「大いにある」「かなりある」「ある」との回答は計12.4%でした。また、改善の必要性に関連した要素では、「主治医以外の医師による死亡確認」は改善の必要性が有意に高くなり、「死亡確認を行う前に、医師は患者に声を掛けてから診察を始めた」は改善の必要性が有意に低くなる、という結果になりました。この知見をどのように臨床と教育の現場に活かすとよいでしょうか?ここからは私の解釈と意見になります。まず、死亡確認の改善の必要性について、12.4%という数字を多いと見るか少ないと見るかは意見の分かれるところですが、多くの家族にとって大切なシーンですので、医療者としては常に改善できないかを顧みる必要があるでしょう。一方、改善の要素としては、必ず主治医が死亡確認をできるわけではないので、事前に家族に「主治医以外が対応する可能性もある」と説明し、主治医以外の患者には、いっそう丁寧に対応する意識が必要でしょう。具体的には、「主治医の先生から申し送りをしてもらっている」と伝えるとよいかもしれません。また、「患者さんに声を掛ける」というのは私もよくしていますが、ここには経験や練習が必要かもしれません。「声掛けをしましょう」とアドバイスされても、死亡確認は診療とはまた違った緊張が伴う場面であり、何を言ったらよいか、わからなくなりそうです。ここでは、ロールプレイの研修などが有効でしょう。死亡確認時の工夫、皆さんの知見もぜひ共有ください。今回のTips今回のTipsよりよい死亡確認については、関連研究があります。施設内で議論する、ロールプレイ研修をするなど、工夫をしてみてください。1)浜野 淳. 42. 緩和ケア病棟における望ましい死亡確認に関する研究. 遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究4(J-HOPE4).日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団;2020.p.253-256.

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1

今回のキーワード社会的な自我(アイデンティティ)味方になる(自尊心)寄り添いワード大人扱いする(自信)お小遣い歩合制家庭のルールづくり夢を語り合う(自我)ユートピア型前回は、不登校の根っこの心理を掘り下げました。それは、自我の弱さでした。そして、不登校が増えている一番の原因を解き明かしました。それは、社会構造の変化でした。それでは、これらを踏まえて、自分の子供が学校に行けなくなったらどうすればいいのでしょうか?今回も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、再び発達心理学の視点から、不登校への効果的な親の対応(ペアレントトレーニング)をご紹介します。好きなことをさせるだけじゃだめなの?主人公のこころは、不登校になってから、家でテレビを見るか横になっているだけでした。近くに住む萌ちゃんが毎回学校からの届け物を郵便ポストに入れていましたが、その時もこころは窓からこっそり見ているだけで、かかわりを持とうとしません。自分の子供が不登校になった時、親として無理やり学校に行かせることは本人を追い詰めるだけなので、確かに望ましくないです。かと言って、こころのようにただ家にいて、本人の好きにさせるだけでいいのでしょうか? 教育関係者の中には、そうするよう提唱する人もいます。はたして、どうなんでしょうか?このやり方は、前回説明した自我を育むという点においては、明らかに望ましくないです。確かに、家で好きなことをしているだけでは、単に今ここでどうしたいかという「個人的な自我」(自己愛)は育まれます。しかし、ただ家にいるだけでは、勉強(認知能力の学習)はなかなかする気になれず、クラスメートや先生とのかかわり(社会的コミュニケーション)の刺激もありません。すると、これから社会でどうなりたいか、つまり大人になってどう生きていきたいかという「社会的な自我」(アイデンティティ)はやはり育まれなくなります。これが理由です。もっと言えば、先進国で日本ほど不登校に寛容な国はありません。たとえば、米国で子供が不登校になると、ネグレクトとして親に罰金が課され、子供には心理カウンセリングが義務づけられます。そして、米国や欧州の多くの国々では、代わりに少なくともホームスクーリング(家庭学習)が義務づけられています。なお、ドイツにいたってはホームスクーリングさえ認められず、転校するなどして通学することが義務づけられています。世界的に見れば、それくらい子供に教育を受けさせることは親や国家の義務とされています。日本は、家族主義が根強いため、不登校への対応は主に家庭に任せ、国は法的な介入をしないというスタンスを取り続けています。しかし、さすがにこれだけ不登校が増え続けるなか、不登校の黙認は、日本国憲法に定められた三大義務の1つである「教育を受けさせる義務」を親も国家も果たしていないことになります。もはや、好きなことをさせるだけでは「教育ネグレクト」と言わざるを得ません。じゃあ親はどうしたらいいの?好きなことをさせるだけでは望ましくない理由は、「社会的な自我」(アイデンティティ)が育まれなくなるからであることがわかりました。これを踏まえて、それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? こころと母親のやり取りから不登校を解決するために必要な親の対応を、ペアレントトレーニングとして、順番に大きく3つ挙げてみましょう。なお、ペアレントトレーニングとは、もともとADHD(注意欠如多動症)などの発達障害の子供への親の対応スキルを練習することですが、不登校にも広げることができます。(1)味方になる―自尊心こころの母親は、フリースクールの先生の助言もあって、こころにあまり口出しをせず、根気強く見守るようになります。普段から他愛のない雑談を心がけるようになります。こころがいじめを打ち明けた時は、「本当に気付いてあげられなくてごめん」と言い、やさしく抱きしめます。1つ目は、味方になることです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.雑談1つ目は、雑談です。これは、ただ親が「宿題やった?」「どこ行ってたの?」などと見張るようセリフはNGです。雑談の内容は、親がただ知りたいことではなく、あくまで子供が話したいことに寄せるのがコツです。たとえば、一緒にテレビを見ながら「このお笑い芸人おもしろいね」「この俳優、私の最近の推しメンだわ」などと楽しく話すことです。雑談の目的は、情報ではなく情動、つまりまず信頼関係を築くことです。b.良いところ探し2つ目は、良いところ探しです。これは、まさに子供の良さや強みをどんどん指摘していくことです。ここで、良いところが見つからないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはありません。たとえどんなネガティブなことでもポジティブに返すことができます。心理学では、リフレーミング(認知再構築)と呼ばれています。具体例は表1をご覧ください。良いところ探しの目的は、良さが本当にあるかどうかではなく、良さがあると思ってくれる味方がいることを子供に伝えることです。なお、これは、褒めるスキルにも通じます。詳細については関連記事1をご覧ください。c.寄り添いワード最後にして一番大事なのは、3つ目の寄り添いワードです。これは、欧米圏のようにことあるごとに「アイラブユー」と言い添えることです。ただし、日本人はストレートな表現に馴れていないです。いきなり言ってしまうと気持ち悪がられるおそれがありますので、言い換える必要があります。たとえば、普段から会話の中で「きみは大事だよ」「一緒にいて幸せだよ」と言うことです。また、いじめを打ち明けた時などは、子供の気持ちを受け止めることです。説教したり審判するのは逆効果です。助言については、「アドバイスほしい?」と確認するくらい慎重になる必要があります。具体例は、表2をご覧ください。なお、これは、うつ病など弱っている人へのかかわり方にも共通しています。この詳細については関連記事2をご覧ください。このようにして味方になることで、「自分は大丈夫」(OK)という安心感を育み、自尊心(自己肯定感)を高めることができます。これが、土台としてまず必要になります。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 2

(2)大人扱いする―自信こころの母親は、こころが城に通っている間に家にいないことに気付き心配して指摘します。しかし、こころから「監視されるの好きじゃない」と言い返されると、その後は、それ以上言わず、本人に任せるようになります。2つ目は、大人扱いすることです。ここで、その方法を具体的に4つ挙げてみましょう。a.プライバシー尊重1つ目は、プライバシーの尊重です。たとえば、部屋の掃除という口実で、勝手に持ち物を確認したり、日記を見たりしないことです。携帯電話を持たせている場合、勝手に見ないことです。ここで、「心配だから確認したい」と思う人はいますでしょうか? これは、子供扱いです。本人が「大人になりたい」という自我を削ぐことになります。そして、信頼関係も損ねてしまいます。もしも、皆さんが大人扱いする感覚がよくわからない場合は、ホームステイ中の外国人の若者だったらどう接するかと想像したらいいでしょう。もはや文化が違うわけです。相手の文化を尊重して、こっちの文化を押し付けることはできないです。親切に接して、決して勝手に携帯電話をのぞき見しないでしょう。それくらいの距離感が必要であるということです。b.大人トーク2つ目は、大人のトークです。たとえば、親が話しかけても子供が無愛想な時、「その態度は何なの?」と叱る(攻撃)のではなく、それ以上何も言わないという黙認(非主張)でもなく、フラットな大人の関係を意識して、ほどほどに伝えることです。具体例は表3をご覧ください。なお、これは、心理学ではアサーションと呼ばれています。この詳細については、関連記事3をご覧ください。c.お小遣い歩合制こころは、他のメンバーへのお誕生日プレゼントを自分の財布から支払っていました。こころはお小遣いをもらっているようです。実は、お小遣いは、子供を心理的に自立させるためにも効果的なツールであると言われています1)。一方で、不登校の相談を受ける時、お小遣いについて確認すると、多くの親がお小遣いをあげていない、つまり必要に応じて親の判断でお金を渡していることが判明しています。そうではなくて、このお小遣いに仕組みをつくる必要があります。3つ目は、お小遣い歩合制です。具体例は図1をご覧ください。ポイントは、親の判断や気分でお小遣いをあげないこと、つまりお小遣いのルール化です。まず、あらかじめベースのお小遣いを設定します。そして、たとえばフリースクールに行けたら1日プラス〇円と設定するのです。これは、大人の給料(報酬制)と同じです。心理学的には、トークンエコノミー(行動療法)と呼ばれています。これを本人がある程度納得する形で提案し、一緒に署名します(契約制)。定期的に見直して、項目や金額設定を変更する話し合いも行います(交渉制)。こうすることで、「何もしなくてもお金がもらえる」「なくなったらねだればいいや」という子供っぽい発想がなくなります。そして、「がんばったら自由に使えるお金が増える」「計画的にお金を使おう」という発想が生まれます。そうなるためにも、安易にお金を渡さないことも必要です。d.家庭のルールづくりこころの家には、ゲーム機がありませんでした。原作では、こころが不登校になってから父親が一方的にゲーム機を取り上げてしまったと説明されていました。確かに、ゲーム機やスマホを最初から家に置かないようにするのも1つのやり方です。ただし、ただ一方的に取り上げるだけでは子供扱いです。それでは、ゲームやスマホの時間制限をお小遣い歩合制の項目に入れるのはどうでしょうか? 残念ながら、機能しないでしょう。なぜなら、子供はその分を損してもやり続けるからです。それくらい、ゲームやスマホは依存性が強いのです。夜遅くまでゲームに熱中していれば、朝起きられないのは当たり前です。こんな時、親が本人を無理やり叩き起こして学校まで送迎するのはどうでしょうか? これも明らかに子供扱いです。「親が起こして連れてってくれるからいいや」とますます子供っぽい発想になります。そこで、最後にして最重要なのが、家庭のルールづくりです。具体例は図2をご覧ください。このポイントは、 まずペナルティの設定です。そして、ある程度納得してもらうために、ゲーム依存症のリスクがどれほどのものか根拠(データ)を示すとともに、家族の目標、つまりビジョンを示すことです。また、「家族で助け合う」というビジョンを入れておくと、先ほどのお小遣い歩合制によって「お金がもらえないなら家事は手伝わない」という発想を予防することもできます。さらに、なるべく家族全員に署名してもらいます。つまり、立会人の存在です。ルールが機能するためには、ペナルティの設定と同時に、それをチェックする周りの目が必要になります。これは、ルールを課される子供だけでなく、ルールを課す親にも向けられているという点で、とてもフェアで妥当なものになるでしょう。家庭のルールづくりの一番の目的は、ゲームやスマホなどの家庭内の娯楽の制限です。娯楽という点では、テレビも含まれます。こころは、城に招かれる前、1日中テレビを見ていました。家庭は、確かに安心できる場所であることが必要ですが、楽しい場所である必要はありません。むしろ、「家にいてとても楽しい」と思っている子供がそれよりも娯楽が少ない学校やフリースクールに行くわけがないことは容易に想像できます。「家にいると退屈だ」と子供に思わせることが必要になります。その方が、そんな家を早く出て自立したいと思うでしょう。「それじゃかわいそうだ」と思う人はいますでしょうか? この発想も子供扱いです。私たち親は、自立できる人を育てる責任があります。それが最優先されます。その責任がある以上、不登校の子供に家庭内の娯楽の制限をすることはやはり必須になります。ちょうど、糖尿病の子供にお菓子やジュースなどの嗜好品を制限するのとまったく同じです。そうしないのは、やはり「教育ネグレクト」と言わざるをえません。つまり、大人扱いをするとは、本人がどんな行動を選択するかの自由を与えると同時に、その行動への責任を教え、責任を取る練習をさせることであることがわかります。よく言われるように、自由と責任はセットです。この責任とは、最終的には自分の人生を自分で生きる責任です。逆に言えば、成人したら、経済的な援助は基本的にできない、病気になるなど困ったときに一時的に限ることをあらかじめ伝える必要があります。また、「ゲームをやらせろ」と暴れる場合は、もはや対応の限界です。暴行や器物破損として警察に通報を必要があることを本人に冷静に伝える必要もあります。つまり、家庭のルールは社会のルールにつながっています。なお、このような限界設定は、やはりその前に味方になるという信頼関係を十分に築いていることが大前提です。この信頼関係がなければ、そもそも家庭のルールを守ろうとする気が子供に起こらないでしょう。このようにして、もともとの自尊心を土台として、さらに大人扱いすることで、「自分はできる」(can)という有能感を育み、自信(自己効力感)を高めることができます。これが、中核として必要になります。(3)夢を語り合う―自我こころの両親は、二人とも仕事をしていました。しかし、夕食などで、とくに仕事については話題にしていませんでした。実は、話してほしい話題があります。3つ目は、夢を語り合うことです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.背中語り1つ目は、背中を見せる、つまり背中語りをすることです。まず、親が、仕事をはじめボランティアなども含めた社会参加をどうしていて、どうなりたいのかという「夢」(ビジョン)をさりげなく語っていることです。これは「味方になる」の方法の1つである雑談の延長です。たまに愚痴は言いつつも、やはりがんばっていることを夫婦で語り合っていることです。いつか行ってみたい場所、いつか会ってみたい人たちなども語るのも良いでしょう。逆に言えば、親が仕事の愚痴を吐いてばっかりでつまらなさそうにしているだけでは、子供は大人になって仕事をがんばりたいとは思わなくなるでしょう。これは、心理学的にはモデリングと呼ばれています。思春期の子供は親の言うことは聞かなくなりますが、親のまねは知らず知らずにしてしまうということです。b.タイムマシン2つ目は、タイムマシンに乗せるです。これは、タイムマシンに乗って未来の自分を見にいったら、どんな自分が見れるか想像しもらうことです。何歳でどんな場所にいて、どんな格好や表情をしているか、誰とどんな話をしているか、細かく聞き出すことです。さらに、それを子供に書き出してもらって、その紙を張り出すことを提案します。絵が得意なら、絵にして飾るのも良いでしょう。夢(未来)を語るとは、自分の人生に責任を感じていくプロセスでもあります。すると、じゃあ今どうすればいいのかがおのずと沸き起こってきます。それは、夢(目的)を叶えるために少なくとも学校に行くことは必要だと気付くことです。こうして、自分で決めて行動することで、自分の行動に責任を持つようになります。それが自分の生き方に納得するという自我同一性(アイデンティティ)につながっていきます。この働きかけは、心理学的にはタイムマシンクエスチョン(ブリーフセラピー)と呼ばれています。ポイントは、未来の自分の視点に立たせ、考えさせることです。ちなみに、視点は、未来の自分だけでなく、理想の自分、尊敬する人(ロールモデル)に置き換えることもできます。具体例は、表4をご覧ください。この考えさせるかかわりの詳細については、関連記事4をご覧ください。c.意味づけ3つ目は、意味づけることです。これは、うまく行かないことや嫌なことがあっても、それを「これは夢(目的)を叶えるために必要なんだ」と意味づけることです。夢を具体的に描けていれば、これが可能になります。「試練」「次にうまくやるためのリハーサル」などと伝えることもできます。これは、「味方になる」でご紹介したポジティブ返しでもあります。実際の研究では、人はストレスがあることによって、自ら成長していくこともわかっています。心理学的には、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。つまり、うまく行かないことや嫌なことは、成長するためにはむしろある程度必要であるという考え方です。これは、悔しさという心理の機能です。この点で、親が失敗させないように先回りして指示したり、嫌な思いをさせないように人間関係を制限するのは、逆効果であるということです。この詳細については、学校環境の影響度として、関連記事5をご覧ください。なお、夢を語ったり意味づけしてもらうためには、「味方になる」の方法の1つである良いところ探しから、本人が自分の強み(リソース)を自覚していることが大前提です。そして、「大人扱いする」の方法の1つである家庭のルールづくりから、本人が自分の人生を自分で生きる責任を自覚していることも大前提です。この強みや責任の自覚がなければ、いくら夢を聞いても、「わからない」「思いつかない」としか答えなかったり、「つまんない大人になってる」としか言わないでしょう。このように、先ほどの有能感を中核として、夢を語り合うことで、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という自分の人生への責任感を育み、個人的そして社会的な自我(アイデンティティ)を確立することができます。これが、仕上げとして必要になります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3

これからの家族のあり方とは?不登校へのペアレントトレーニングとして、味方になる、大人扱いをする、夢を語り合うことで、自尊心、自信、自我を順に育んで、学校に行くことは必要であると自覚させることであることがわかりました。つまり、学校は、行きたいか行きたくないかという好き嫌いの問題ではなく、行く必要があるという必要性の問題であると自分で思えるかどうかであるということです。言われてみれば、当たり前のことのように思えますが、この発想を促す自我がもともと弱かったり、育まれていなかったために、あっさり不登校になっていたのです。以上を踏まえて、これからの家族のあり方とはどういうものが望ましいでしょうか? ここから、家族を国家のタイプに例え、大きく4つに分けて、その答えを導いてみましょう。(1)独裁国家型1つ目は、独裁国家型です。これは、北朝鮮、ロシア、中国のように、逆らうとひどい目に遭う国です。これは、封建社会の価値観に通じます。家族に置き換えれば、前回すでに紹介した1980年代以前の日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になっているわけではなく、無理やり大人扱いして、一方的に責任を押し付ける特徴があります。結局、自尊心は育まれず、自信はありますが、自我は弱いです。そのため、「とにかくやらなきゃ」(should)という発想になりがちです。このタイプは、現代の価値観では時代遅れとなっており、家族のあり方としてはもちろん危ういです。(2)ユートピア型2つ目は、ユートピア型です。これは、中東のオイルマネーで豊かな国です。そこには、その名の通り、王子と呼ばれる働かない人が多くいます。家族に置き換えれば、ちょうどこころのように、1980年代以降の不登校を招きやすい日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなっていますが、大人扱いが不十分で、無責任にさせてしまう特徴があります。自尊心はある程度育まれるものの、自信がなく、結局自我は弱いままです。そのため、「誰かやって」(please)という発想になりがちです。このタイプは、不登校だけでなく、アルコール、ギャンブル、ひきこもりなど嗜癖の問題を招くリスクが最もある点で、やはり家族のあり方として危ういでしょう。(3)民主国家型3つ目は、民主国家型です。これは、欧米圏のように、積極的な話し合いと多数決によって成り立っている国です。家族に置き換えれば、おそらく萌ちゃんの家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になり、大人扱いして、夢(より良い未来)を語り合う特徴です。自尊心も自信も育まれて、必然的に自我は強くなります。そのため、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という発想になります。このタイプこそが、不登校を防ぐ点でも、これからの家族のあり方として、望ましいわけです。(4)無法地帯型4つ目は、無法地帯型です。これは、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルのような戦争状態の国です。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなれず、大人扱いどころではなく、いつ「殺される」(虐待される)かわからないという特徴があります。もちろん、自尊心も自信も育まれず、自我も芽生えないです。先のことは何もわからないため、「やらない」(no way)という発想に陥ります。このタイプは、もはや家族のていをなしていない点でも、家族のあり方として、決して望ましくないでしょう。ちなみに、日本は国としては民主国家の形になってはいるのですが、家族としてはまだ家族主義が根強いことから、ユートピア型になってしまっている家族が多いのが現状です。だから、不登校が多いのです。逆に言えば、家族も個人主義化して家族主義から抜け出して民主国家型になれば、不登校は海外と同じように目立たなくなることが予測できます。なお、この家族の国家タイプの詳細については、関連記事6をご覧ください。いじめにとらわれると不登校が解決しづらくなるこころが母親にいじめの件を打ち明けたことから、母親が担任の先生に迫るシーンがありました。親心として、いじめ加害者を断罪したいと思う気持ちはよくわかります。「その子のせいで不登校になった」「その子がいなければ不登校にはならなかった」というロジックです。しかし、前回説明したとおり、いじめは不登校のきっかけ(誘因)にすぎず、たとえいじめがなかったとしても、不登校の根本的な原因である自我の弱さは変わりません。城に来た他の6人と同じように、別のきっかけでこころは遅かれ早かれ不登校になる可能性が考えられます。不登校にならなかったとしたら、ただそれは誘発されずに運が良かっただけです。つまり、いじめを掘り下げても、不登校は解決しないです。むしろ、いじめられることは、子供の心理からしてみれば、恥です。学年が変わるタイミングで加害者たちを別のクラスにするなどの対策は必要ですが、親がいじめにとらわれて騒ぎ続けると、子供が前に進めなくなります。そもそもいじめの認定は、いじめられたと主張する本人の主観による要素が大きいです。これは、ちょっとでも何かされたり(いじりや陰口だけでも)、逆にちょっとでも相手にされない(無視)だけでも「いじめ」であると本人が認識する場合も含まれることを意味します。そのため、犯罪レベルを除くと、もはや不登校に「いじめ」があるかどうかを明確に区別することには限界があります。また、進化心理学的に考えれば、いじめは人類が心の進化の過程で社会を維持するために獲得した負の機能(社会脳)です。私たちが集団をつくる限り、いじめの心理をなくすことは難しいのが現実です。いじめを減らす取り組みはもちろん必要ですが、仮にいじめを完全になくすことができたからといって、自我の弱さは変わらないため、不登校が劇的に改善することはないでしょう。逆に、先ほどのストレス関連成長(SRG)の観点から、大人の社会でもいじめはあるのに、学校で小さな「いじめ」(対人ストレス)までも厳しく取り締まって「無菌状態」(ストレスフリー)をつくってしまったら、大人になった時に「免疫力」(ストレス耐性)が高まらず、結局小さな「いじめ」ですぐに参ってしまうでしょう(ストレス脆弱性)。たとえば、こころが自我の弱いまま大人になったら、今度は「新型うつ」(職場不適応)になる可能性が考えられます。なお、「新型うつ」の詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、不登校といじめ(犯罪レベルを除く)を積極的に結びつけることには大きな意味はなく、むしろいじめにとらわれてしまうと、不登校が解決しづらくなってしまうおそれがあります。なお、いじめの心理と対策の詳細については、関連記事8をご覧ください。ちなみに、こころの母親から「学校に行けないのはこころちゃんのせいじゃないって」というセリフがありました。あとからいじめ被害が判明したため、結果的には、自分を責めてしまいそうなこころに味方になるメッセージを伝えるという効果がありました。一方で、子供にはこれからどうするかについて責任を感じなくて良いという裏メッセージとして伝わる可能性もあり、実は危ういセリフであることもわかります。まさに、これはユートピア型ならではの声かけです。よって、安易に使わない方が良いでしょう。厳密に言うと、学校に行けなくなったことへの責任は確かにないですが、これからどうするかにはやはり責任があります。これは、アルコール依存症と同じで、なってしまったことへの責任は本人にないですが、治す責任は本人にあるということです。ちなみに、ひきこもりの人の多くが口を揃えて言うセリフがあります。それは「こうなったのは親のせいだ」です。このような責任逃れの心理(モラルハザード)に陥らないようにするためにも、やはり、「誰のせい」「誰のせいじゃない」などと学校に行けなくなった原因を掘り下げることは避けて、その他の寄り添いワード(1ページ目)を使いつつ、これからどうしたらいいかという解決にフォーカスすることが有効です。1)「子供におこづかいをあげよう!」P66:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】ツレがうつになりまして。【うつ病】逃げるは恥だが役に立つ【アサーション】ドラえもん【子供のメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1こうして私は追いつめられた【新型うつ病】告白【いじめ(同調)】Part 1

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便通異常症 慢性便秘(2)二次性慢性便秘症【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q100

便通異常症 慢性便秘(2)二次性慢性便秘症Q100慢性便秘症の介入をする上で、まずは二次性の除外をすることが重要である。本邦の『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』でも除外すべき二次性の原因疾患として、慢性便秘症を来す基礎疾患がリスト化されている。2023年から追加となった基礎疾患は?

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子どもの検査値の判断に迷ったら

そっと開けばポイントがわかる「小児科」64巻13号(2023年12月臨時増刊号)複数の既往歴や不定愁訴をもつことが多い成人患者と異なり、子どもは症状がはっきりしていることが多い分、検査結果が予想と異なっていたり、想定に反して検査上の異常がなかったりした場合、どう判断すべきか迷う…そんな場面に役立つ1冊を目指しました。日常診療でおなじみの検査から少々専門的な検査まで、検査結果の解釈に迷いが生じたときにそっと見直していただきたい情報をコンパクトにまとめました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    子どもの検査値の判断に迷ったら定価8,800円(税込)判型B5判頁数394頁発行2023年12月編集「小児科」編集委員会電子版でご購入の場合はこちら

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乳がん脳転移例、全脳照射前のBEEPで脳特異的PFS改善

 脳転移を有する乳がん患者において、ERBB2(HER2)サブタイプにかかわらず、ベバシズマブ+エトポシド+シスプラチン(BEEP)導入療法を行ってから放射線の全脳照射を行った場合、全脳照射のみの場合よりも脳特異的無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、国立台湾大学病院のTom Wei-Wu Chen氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2023年12月21日号掲載の報告。 近年、乳がんに対する薬物療法は目覚ましい進歩を遂げており、術後再発や遠隔転移のコントロールが良好になっている。しかし、脳転移に奏効する薬剤は乏しく、治療の評価は確立していない。そこで研究グループは、BEEP導入療法を追加することで、全脳照射後の脳特異的PFSが改善するかどうかを検討するため、多施設共同無作為化非盲検試験を実施した。 研究グループは、2014年9月9日~2018年12月24日まで台湾の脳転移を有する乳がん患者を評価し、2021年12月31日まで追跡調査を行った。対象は、年齢20~75歳、全脳照射未実施、局所治療に適さない脳転移で少なくとも1つの測定可能な病変を有する乳がん患者であった。BEEP導入療法を3サイクル行った後に全脳照射を行う実験群と、全脳照射のみを行う対照群に2:1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく脳特異的PFS、全脳照射後の脳転移病変に対する他治療の開始、死亡であった。その他の評価項目は、8週後の脳特異的奏効率(ORR)、8ヵ月後の脳特異的PFS率、PFS、全生存期間であった。 主な結果は以下のとおり。・合計118例が無作為化され、intention-to-treatコホートは112例(実験群74例、対照群38例)で構成された。年齢中央値は56歳(範囲:34~71)、61例(54.5%)がERBB2陽性であった。・脳特異的PFSの中央値は、実験群は8.1ヵ月(範囲:0.3~29.5)、対照群は6.5ヵ月(範囲:0.9~25.5)であった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.44~1.13、p=0.15[事前に設定した有意水準を超えていたため有意])。・8週後の脳特異的ORRに有意差はなかった(実験群41.9%、対照群52.6%)。・8ヵ月後の脳特異的PFS率は、実験群は48.7%であった一方で対照群は26.3%であり、実験群において有意に高かった(p=0.03)。・有害事象は、予防的なG-CSF製剤投与で管理可能であった。 これらの結果より、研究グループは「この知見は、放射線の全脳照射の前にBEEP導入療法を行うことで、脳転移を有する乳がんのコントロールが改善する可能性があることを示しており、難治性脳転移および頭蓋外転移に対する全身療法のアンメットニーズに対応できる可能性がある」とまとめた。

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統合失調症の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性比較

 統合失調症は、重篤な神経認知障害を引き起こす疾患である。統合失調症に対する抗精神病薬治療は、精神病理および神経認知機能の改善をもたらすことが期待される。インド・Government Medical College and HospitalのSanya Sharma氏らは、統合失調症患者の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性を比較するため、プロスペクティブ介入比較研究を行った。その結果、アリピプラゾールとオランザピンは、神経認知プロファイルの改善に有効であり、それぞれ特定の領域に対してより有効であることが示唆された。Indian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年10月号の報告。 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-V)に従い、統合失調症患者をベースライン時の簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および神経心理学的検査で評価した。対象患者は、コンピューターで生成したランダムナンバーに基づき、アリピプラゾール群(1日当たり10~30mgを経口投与)とオランザピン群(1日当たり5~20mgを経口投与)にランダムに割り付けられ、10週目に再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者40例が、10週間の研究期間を終了した。・ベースライン時、大多数の患者において、1つ以上の神経認知領域の重大な欠損が認められた。・アリピプラゾール群、オランザピン群のいずれにおいても、精神症状および神経認知プロファイルの改善が認められた。・アリピプラゾール群では、オランザピン群と比較し、処理速度の有意な改善が認められた。・アリピプラゾールによるストループ効果(p=0.000)および視空間認識能力(p<0.001)の非常に有意な改善が認められた。・オランザピン群では、意味流暢性(p<0.01)、言語流暢性(p<0.01)において非常に有意な改善が認められた。

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妊娠中の大麻使用、有害な妊娠アウトカムが増加/JAMA

 妊娠期間中の継続的な大麻使用により、胎盤機能不全に関連する有害な妊娠アウトカムが増加し、とくに在胎不当過小児が多くなることが、米国・University of Utah HealthのTorri D. Metz氏らが実施した「NuMoM2b試験」の補助的解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年12月12日号に掲載された。米国8施設9,257例のコホート研究の補助的解析 NuMoM2b試験は、米国の8つの医療センターで実施したコホート研究であり、2010~13年に参加者を募集し、今回の補助的解析は2020年6月~2023年4月に行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。 母親(未経産婦)の大麻曝露の判定は、妊娠期間中(妊娠6週0日~13週6日[初回受診]、同16週0日~21週6日[2回目受診]、同22週0日~29週6日[3回目受診])に採取した凍結保存尿検体を用いて、尿イムノアッセイ法により11-ノル-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)を確認することで行った。陽性の場合は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析で確定した。 9,257例を解析に含めた。大麻曝露妊婦は610例(6.6%)で、このうち197例(32.4%)は妊娠第1期にのみ大麻を使用しており、413例(67.6%)は妊娠第1期以降も継続的に使用していた。有害な主要複合アウトカム:曝露妊婦25.9% vs.非曝露妊婦17.4% 主要アウトカム(在胎不当過小児、人工早産、死産、妊娠高血圧症候群の複合)は、1,660例(17.9%)で発生した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け解析では、主要複合アウトカムの発生率は非大麻曝露妊婦が17.4%であったのに対し、大麻曝露妊婦は25.9%と高率であった(補正後相対リスク:1.27、95%信頼区間[CI]:1.07~1.49)。 また、3つの大麻曝露モデル(非曝露、妊娠第1期のみの曝露、妊娠中の継続的曝露)では、非大麻曝露妊婦と比較して、妊娠第1期のみの大麻曝露は主要アウトカムとの関連がなかったが、継続的な大麻曝露は主要アウトカムとの関連を認めた(最小限の補正後相対リスク:1.32[95%CI:1.09~1.60]、完全補正後相対リスク:1.33[1.09~1.61])。人工早産、妊娠高血圧症候群とは関連がない 在胎不当過小児(曝露妊婦8.6% vs.非曝露妊婦4.2%、補正後相対リスク:1.52、95%CI:1.08~2.14)は大麻曝露妊婦で多く、死産は補正前相対リスクが大麻曝露妊婦で高かった(1.5% vs.0.5%、補正前相対リスク:2.89[1.37~6.09]、補正後相対リスク:1.63[0.69~3.88])。 人工早産(3.9% vs.3.2%、補正後相対リスク:0.78[95%CI:0.49~1.24])および妊娠高血圧症候群(16.0% vs.12.9%、補正後相対リスク:1.13[0.91~1.40])は大麻曝露との関連がなかった。 大麻曝露妊婦の妊娠期間中の総THC-COOH値は、16~3万5,707ng/mL(中央値265ng/mL)の範囲であった。妊娠第1期の定量化されたTHC-COOH値が高いことと、妊娠期間を通じた大麻の累積推定曝露量が多いことは、いずれも主要複合アウトカムの発生割合が高いことと関連した。 著者は、「これまでの研究でも、ヒトの大麻使用と胎児の発育不良との間には一貫した関連を認めており、本研究では死産が多かった点が注目に値する」と指摘し、「母体および新生児のアウトカムを最適化するために、妊娠中の大麻使用は避けるべきである」としている。

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クリスマスケーキが健康増進に寄与?/BMJ

 デザートは、何世紀にもわたってクリスマスのお祝いで重要な役割を担っているが、中世イングランドのプディングがかなり健康的なものだったのに比べ、最近は不健康な食材を含むレシピが多くなり、死亡や疾病のリスクに関して懸念が示されている。米国・エモリー大学のJoshua D. Wallach氏らは、英国のテレビ料理番組「ブリティッシュ・ベイクオフ(The Great British Bake Off)」の、クリスマスデザートのレシピに使用されている食材の健康への影響を調査した。その結果、死亡や疾病のリスク増加と関連する食材よりも、むしろリスク減少と関連のある食材のほうが多いことが明らかになったという。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「CHAMPAGNE PROBLEMS」掲載の報告。アンブレラレビューのアンブレラレビュー 研究グループは、「ブリティッシュ・ベイクオフ」のクリスマスデザートに含まれるさまざまな食材の健康上の有益性と有害性の評価を目的に、観察研究のメタ解析のアンブレラレビューを収集し、それらのアンブレラレビューを行った(特定の研究助成は受けていない)。 「ブリティッシュ・ベイクオフ」のウェブサイトと医学関連データベース(Embase、Medline、Scopus)を用いて、クリスマスデザートに使用する食材と死亡または疾病リスクとの関連を評価した観察研究のメタ解析に関するアンブレラレビューの文献を収集した。48件のレシピに含まれる17の食材グループのリスクを評価 「ブリティッシュ・ベイクオフ」のウェブサイトに掲載されているクリスマスデザート(ケーキ、ビスケット、ペストリー、プディング/デザート)のレシピは48件で、一意の値で178品目の食材が含まれた。これらを17の包括的な食材グループ(バター、精粉、砂糖、卵、塩、着色料/香料、果物、アルコール、ミルク、ナッツ類、コーヒーなど)に分類した。 46編のアンブレラレビューにおいて、食材グループと死亡または疾病のリスクの関連について363件の要約が報告されていた。これらの要約された関連性のうち、149件(41%)が有意であり、そのうち110件(74%)は死亡または疾病のリスクを減少させ、39件(26%)はリスクを増加させると推定された。 食材グループがリスクを減少させた110件の要約のうち、32件(29%)はがんの発生率または死亡率、20件(18%)は神経学的または脳の疾患、16件(15%)は心血管疾患の発生率または死亡率であった。また、リスクを増加させた39件の要約のうち、22件(56%)はがんの発生率または死亡率、5件(13%)は自己免疫疾患、4件(10%)は神経学的または脳の疾患だった。果物、コーヒー、ナッツ類を含むレシピが多い 死亡または疾病のリスク減少と関連のある食材グループのうち、最も多かったのは果物(44/110件、40%)で、次いでコーヒー(17/110件、16%)、ナッツ類(14/110件、13%)の順であった。一方、死亡または疾病のリスク増加と関連のある食材グループでは、アルコール(20/39件、51%)の頻度が高く、次いで砂糖(5/39件、13%)であった。 著者は、「観察的栄養学研究の限界に関する懸念を脇に置くことができるなら、われわれは喜んで、クリスマスには誰もがケーキを食べられると報告するだろう」としている。

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レボチロキシンの静注投与は不安定な脳死患者の心臓提供率を向上させるか?(解説:小野稔氏)

 脳死による脳圧亢進が起こると、カテコラミンをはじめとしたさまざまなメディエータが放出されることが知られている。脳死後によく遭遇する不安定な血行動態や心機能の障害に甲状腺ホルモンを主体とした神経内分泌障害が寄与しているという理論があり、それを予防あるいは改善する目的で欧米では古くから経験的に脳死ドナーの前処置として甲状腺ホルモンが投与されてきた。補充療法の妥当性についてはいくつかの大規模な観察研究が行われ、有効性が示唆されてきた。しかし、無作為化試験は少数例を対象にドナーの血行動態を評価するに限られ、臓器利用率の向上を評価するには不十分であった。 このようにエビデンスレベルが低いにもかかわらず、ガイドラインにおいては血行動態が不安定なドナー、あるいは心臓提供があるドナーへの甲状腺ホルモンの投与を推奨している。その一方で、甲状腺ホルモンの投与は早期のグラフト不全が高くなる可能性を示唆するいくつかの研究も存在する。そこで、静注のT4製剤であるレボチロキシンを血行動態不安定、あるいは心臓提供を検討されている脳死ドナーに投与することが心臓移植率を上昇させるという仮説を基にして多施設並行群無作為化臨床試験が実施された。 米国の15の臓器採取機関が参加した。2020年12月から2022年11月までの脳死患者3,259例のうち、年齢は14~55歳、体重45kg以上で、血行動態不安定(適切な容量負荷を行っても昇圧薬と強心薬が必要な状態)の心臓提供の可能性がある適格患者852例が対象となった。1時間当たりレボチロキシン30μgを12時間以上点滴静注する患者と生食を投与する患者に1対1に無作為に割り付けが行われた。両群419例ずつが組み入れられ、背景因子に差はなかった。投与群230例(54.9%)、対照群223例(53.2%)が心臓移植に至った(有意差なし)。ドナー左室駆出率が50%以下か以上かに分けてみても両群間の心臓移植率に差がなかった。30日生存率は投与群97.4%に対して対照群95.5%で非劣性であった。投与群ではドナーの高度の高血圧や頻脈などの有害事象が有意に多かった(p<0.001)が、ドナー心停止やドナー死亡につながるような重大な有害事象はなかった。 血行動態が不安定、あるいは心臓提供が考慮される脳死ドナーに対して、レボチロキシンの投与は心臓提供率の向上や心臓移植後生存率の改善に関与しなかった。むしろ、高度な高血圧や頻脈などのドナー血行動態への有害事象が増加するという結果であった。ちなみに、わが国では脳死ドナーへの甲状腺ホルモンは推奨されておらず、ほとんど投与されていない。

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第193回 両親の老老介護で思い知る「地域包括ケアシステムって何?」

今回はやや私事で恐縮だが、医療・介護を考える上で見逃せないと思う事態を現在進行形で経験しているので、それについて触れてみたい。80代後半の私の両親は今も健在で、実家で暮らしている。周囲の同世代では両親ともにすでに他界しているケースも少なくない中では、無事生きていること自体がありがたい。しかし、年齢からもわかるように当然ながら完全な健康体ではない。とくに父親は軽度認知障害(MCI)持ちである。現状は物が覚えにくくなり、私や母親が言ったこともすぐ忘れるが、本人も十分自覚があり、「最近の仕事? 物忘れ。ガハハハ」と口にするほどだ。むしろ物忘れには周囲も本人もある程度慣れてきている。そして、かれこれ7~8年前くらいから歩行がかなり遅くなり、リハビリに通っている。一時は周囲が「もう歩けなくなるのでは?」と危惧するほどだったが、リハビリのおかげで持ち直した。とはいえ、やはり周囲と比べれば歩みがかなりゆっくりで、時にシルバーカーを使う。現在の歩行状況はシルバーカーなしでは約5分おき、シルバーカー利用でも約8~9分おきに休憩を取らねばならない。現在1人で出歩くのは、シルバーカーを使いながら自宅近所を散歩する時ぐらいである。ところが父親は元来賑やかな繁華街が好きな人だ。性格的に陰キャ(陰気なキャラクター)で自分から何かのアクションを起こすタイプではないのだが、何となく賑やかなところ、具体的にはガラス越しに繁華街の賑わいが見える飲食店などで食事をしたり、お茶をしたりするのが好きなのである。父親が私や姉を訪ねて東京にふらりと出てくることができた時代は、人通りの多い市中のオープンエアのカフェを利用したがるのが常だった。しかし、前述のような状況なので、現在は繁華街に出かける際には母親の付き添いが必要だ。母親も市街地でのイベントなどを検索し、土日になると父親を繁華街周辺に連れ出し、喜ぶ父親の写真をLINEで送ってくる。そんな母親が先日、珍しく「本心ではイライラして仕方がないが、我慢している」という趣旨の愚痴をこぼしてきた。何かというと、繁華街から戻る最中、父親が5分おきにベンチなどに腰を掛けて休憩を取ることに付き合うのが疲れて仕方がないということなのだ。まだ普通に歩くことができる母親にとっては、一般成人ならば徒歩15分くらいの距離の移動に1時間以上かかることはかなりのストレスだろう。ここは無視してはならぬと思い、仕事の手を止め、必死にLINEでやり取りを続けた。そうした中で母親から出てきたのが、「適当な軽量の車椅子はないものだろうかね?」という話だった。要は折り畳みで軽量の車椅子を父親と外出するときに持ち歩き、父親が休みたいと言い出した時にそれをさっと展開して父親を乗せて母親が介助し、また父親が歩きたいと言えば、その時はまた折りたたむというような使い方ができるものである。そうすれば父親の休みたいという願望と母親のストレス解消の一石二鳥になる。正直、母親が介護疲れで倒れるのは私も望まない。ということで、いつもは物ぐさで知られている自分も動き出した。偶然、身近に使わない車椅子を保有する人がいたので、まずはそれを譲ってもらったが、自走もできるかなりの重量のものだったので、今母親が求めているものとは異なった。なんせ80代半ば過ぎの老老介護で、細腕の母親が申し訳程度の折り畳みができるだけの10kg超の車椅子を扱えるわけがない。そこで年末年始に実家に戻ったついでに、地元の介護ショップを覗いてみることにした。ところがここでまず大きな壁にぶち当たった。東北地方の首都と呼ばれる街だが、インターネット検索で見つかるめぼしい介護用品ショップは10店舗程度。そのうちアクセスが良い百貨店内の店舗2ヵ所に行ってみたが、あるのはシルバーカーか自走式車椅子という左右両翼のような典型的商品のみ。うち1店舗にはかろうじて重量10kgちょうどの軽量折り畳み車椅子が展示してあった。私の感覚では十分軽いと思ったが、後日母親が1人で訪ねて触ってみたところ、本人にとってはまだ重いとのことだった。これよりも約2kg軽いタイプは、カタログ上では見せられたが、あくまで「購入前提の取り寄せになる」という。車椅子の場合、使用する人、介助者双方にとっての使いやすさのバランスが重要であり、実機に触れることなしに購入は考えられない。そこでやむなく私がその車椅子の発売元に連絡を取ったところ、私の地元の県にある2ヵ所の大手介護ショップを挙げ、そこからの依頼があればデモ機を貸し出せるとのこと。一瞬、光明が見えた感じだったが、教えられたショップはともに郊外型ショッピングセンターのように、鉄道駅から徒歩15分以上とアクセスが悪い。父親はもともと車の運転が好きな人だったが、今のような徴候が見え始めた5年ほど前に運転免許証を返納。母親と私は元来ペーパードライバーである。「ショップ最寄り駅からタクシーを使えば?」という声も聞こえてきそうだが、それは首都圏などの感覚。この2件のショップの最寄り駅は、駅前に客待ちタクシーがいない駅なのだ。かといって父親の歩みに合わせて、真冬に老夫婦が1時間以上かけてショップまで歩くのは明らかに無理がある。繁華街と違って休憩できるベンチも途中にはないだろう。結局、母親は車が出せそうな知人に連絡を取った。今回、改めて痛感させられたのが、首都圏とその他の地方都市の差。そして介護サービス・商品のグラデーションの少なさである。父親のような、健康と病気の合間のような状態の人に使いやすいサービス、老老介護を前提にしたサービスはまだまだ少ない。もちろん今は社会全体が超高齢化社会というマインドに移行していく過渡期なのだから、そうなのだろう。しかし、長らく「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム」というフレーズを耳にタコができるほど聞かされてきた身からすると、今回の経験で改めて「地域包括ケアシステムって何?」と思ってしまうのだ。

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フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬

フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬フェニルアラニン(Phe)は必須アミノ酸の1種であり、食事などから摂取したPheは主にPhe水酸化酵素(PAH)によりチロシンに変換される。しかし、フェニルケトン尿症(PKU)ではPheを分解するPAHの活性が先天的に低下することで、Pheの蓄積や血中Phe値の上昇が起こり、尿中にPheや代謝産物のフェニルピルビン酸が大量に排泄される。過剰なPheや代謝産物が正常の代謝を阻害することで、新生児や乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞、成人においてもさまざまな精神症状や酸化ストレスの成因となるとされており、生涯を通じて治療が必要とされている。フェニルケトン尿症の治療における課題PKUの治療は基本的に生涯にわたる食事療法である。たんぱく質を制限することでPheの摂取を抑えるため、肉、魚、卵、豆類、乳製品などの高蛋白食品を食べることはほとんどできないとされている。野菜などの低蛋白食品に加えて、治療用ミルク(フェニルアラニン除去ミルク)で不足するその他のアミノ酸やカロリーを補うのだ。一生涯続く食事制限は食べる楽しみの低下や外食機会の喪失など、患者さんのQOL低下につながる可能性があるが、これまで解決策はなかった。パリンジックの登場で変わる患者さんの生き方このような状況の中、約30年ぶりにPKU治療薬としてペグバリアーゼ(製品名:パリンジック)が登場した。パリンジックはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)を免疫原性の低減と消失半減期の延長を目的としてポリエチレングリコール化した製剤であり、PAHの酵素活性を代替し、Pheをアンモニアとケイ皮酸に代謝することで、血中Phe濃度を低下させる。使用する際は2.5mgから開始し、導入期に4週間、漸増期に5週間以上かけて20mgまで増量する。20mgで効果不十分な場合は最大60mgまで増量が可能。日本人を対象とした臨床試験では、投与開始後経時的に血中Phe濃度が低下していた。さらに、この血中Phe濃度の推移を各症例で検討したところ、観察期間中のある日を境に、大幅に血中Phe濃度が低下する例が数例観察されており、このタイミングでパリンジックが効果を発揮したと推測される。ただし、効果発揮にかかる時間は個人差があるため、まずは治療を中断しないことが重要である。効果発現後はたんぱく質制限の必要はなくなるため、食事制限のない生活を送ることが可能だ。生涯を通じた食事制限は食事の楽しみだけではなく、食事の伴うイベントなどの機会もPKU患者から奪うものとなっていた。パリンジックの登場により、単なる食事だけではない、さまざまな制約が解決されることに期待がかかる。

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非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める

Common Diseaseの画像所見を整理し深く理解「臨床放射線」68巻12号(2023年12月臨時増刊号)日々の診療でよく目にする疾患、Common Diseaseであっても、非典型的な所見を知らないと正しい診断にたどり着けないことがあります。また、典型的所見であっても、画像診断を行ううえで類似の所見を示す他の疾患との鑑別は欠かせません。そこで本年の臨時増刊号は「非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める」と題し、放射線科の関係者が日々取り組むCommon Diseaseの画像診断に役立つ特集を企画しました。日常診療のレベルアップにご用立てください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める定価9,350円(税込)判型B5判頁数270頁発行2023年12月編集「臨床放射線」編集委員会電子版でご購入の場合はこちら

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双極性障害患者の原因別死亡率と併存する神経発達障害

 双極性障害患者の早期死亡に関するこれまで研究は、サンプルサイズが小さいため、限界があった。台湾・長庚記念病院のWei-Min Cho氏らは、台湾の人口の約99%を対象に、双極性障害患者の早期死亡および併存する神経発達障害、重度の双極性障害との関係を調査した。その結果、精神科入院頻度の高い双極性障害患者は、自殺死亡リスクが最も高く、自閉スペクトラム症の併存は自然死や偶発的な死亡のリスク増加と関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年12月6日号の報告。 対象は、双極性障害患者16万7,515例および性別、年齢により1:4でマッチさせた対照群。データは、台湾の国民死亡台帳データベースとリンクされている国民健康保険データベースより抽出した。原因別死亡率(すべての原因による死亡、自然死、事故または自殺による不自然死)の調査には、時間依存性Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・性別、年齢、収入、居住地、身体的条件で調整した後、双極性障害患者における死亡リスクと最も関連していたのは自殺(ハザード比[HR]:9.15、95%信頼区間[CI]:8.53~9.81)であり、次いで不自然死(HR:4.94、95%CI:4.72~5.17)、偶発的な死亡(HR:2.15、95%CI:1.99~2.32)、自然死(HR:1.02、95%CI:1.00~1.05)であった。・原因別死亡リスクの増加に、注意欠如多動症の併存は影響していなかったが、自閉スペクトラム症を併発すると、とくに自然死(HR:3.00、95%CI:1.85~4.88)、偶発的な死亡(HR:7.47、95%CI:1.80~31.1)のリスクが増加することが示唆された。・原因別死亡率は、精神科入院頻度に応じて線形傾向を示し(各々、p for trend<0.001)、1年間に2回以上入院した双極性障害患者では、自殺死亡リスクが34.63倍(95%CI:26.03~46.07)に増加した。

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炎症性乳がんへのNAC、1ラインvs.2~3ラインで転帰の差は

 多くのStageIII炎症性乳がん患者は、第1選択治療として術前化学療法(NAC)を受け、十分な反応を示し手術可能となるが、追加のNACが必要となるケースもある。米国・ハーバード大学医学大学院のFaina Nakhlis氏らは、1ラインvs.2~3ラインのNACを受けた患者における臨床転帰を評価した。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年12月28日号への報告。 2施設において、1ラインまたは2~3ラインのNACを受けたStageIII炎症性乳がん患者が特定された。ホルモン受容体とHER2の状態、グレード、および病理学的完全奏効(pCR)が評価され、乳がんのない生存期間(BCFS)および全生存期間(OS)はKaplan-Meier法により評価された。多変数Coxモデルを用いてハザード比(HR)が推定された。 主な結果は以下のとおり。・808例の適格患者が特定された(1997~2020年、年齢中央値:51歳、追跡期間中央値:69ヵ月)。・733例(91%)が1ライン、75例(9%)が2~3ラインのNACを受けていた。2~3ラインのNACを受けた患者において、グレード3、トリプルネガティブ、HER2陽性の乳がんがより多かった。・1ラインの患者178例(24%)、2~3ラインの患者14例(19%)でpCRを達成した。・5年BCFSは2~3ラインの患者で不良であったが(33% vs.46%、HR:1.37、95%信頼区間[CI]:0.99~1.91)、pCRを達成した192例では同様であった(1ラインの患者:76% vs.2~3ラインの患者:83%)。・308例(1ラインの患者:276例、2~3ラインの患者:32例)が死亡した。・5年OSは1ラインの患者:60% vs.2~3ラインの患者:53%(HR:1.32、95%CI:0.91~1.93)、 pCR達成例では1ラインおよび2~3ラインの患者でともに83%であった。 著者らは、「StageIII炎症性乳がん患者において、pCR率はNACのライン数によらず同様であり、pCRを達成した患者におけるBCFSおよびOSは同程度であった」としている。

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尿が黄色くなるメカニズムが明らかに

 尿中の黄色色素としてウロビリンが同定されているが、この発見から125年以上の間、ウロビリンの産生に関与する酵素は不明とされていた。しかし、米国・メリーランド大学のBrantley Hall氏らの研究グループが腸内細菌叢由来のビリルビン還元酵素(BilR)を同定し、この分子がビリルビンをウロビリノーゲンに還元し、ウロビリノーゲンが自然に分解されることで尿中の黄色色素ウロビリンが産生されることを明らかにした。また、BilRは健康成人ではほぼ全員に存在していたが、新生児・乳児や炎症性腸疾患(IBD)患者で欠損が多く認められた。本研究結果は、Nature Microbiology誌2024年1月3日号で報告された。 研究グループは、ビリルビンをウロビリノーゲンへ還元する酵素を同定し、微生物によるビリルビンの還元と健康との関係を検討することを目的として本研究を実施した。腸内細菌のスクリーニングと比較ゲノム解析により、ビリルビンを還元する候補分子を探索した。また、黄疸を発症しやすい生後1年未満の新生児・乳児(4,296例)、血清ビリルビン濃度が変化していることの多いIBD患者(1,863例)、健康成人(1,801例)を対象としてメタゲノム解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビリルビンをウロビリノーゲンに還元する酵素としてBilRが同定され、Firmicutes門に属する腸内細菌が多くコードしていた。・BilRが検出されない割合は、健康成人(1,801例)では0.1%であったが、生後1ヵ月未満の新生児(1,341例)は約70%(p<2.2×10-16)、クローン病患者(1,224例)および潰瘍性大腸炎患者(639例)はいずれも30%以上(いずれもp<2.2×10-16)であった。・1歳までに、ほとんどの乳児でBilRが検出された。 本研究結果について、著者らは「新生児では、ビリルビンを還元する微生物が腸内に存在しないか少ないために、新生児黄疸が発生・悪化するという仮説を支持するものであった。IBD患者では、ビリルビンを還元する微生物が存在する割合が低いことから、ビリルビン代謝の破綻と非抱合型胆汁酸の増加が組み合わさることで、ビリルビンカルシウム胆石の発生率が上昇している可能性があると考えられる」と考察している。ただし、「結論を出すにはさらなる研究が必要である」とも述べている。

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