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餅などの窒息には背部叩打法で応急手当

餅などの窒息には背部叩打法で応急手当東京消防庁の発表では、過去5年間(2020~24年)で餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人は338人。そのうち約9割以上が65歳以上の高齢者です。そして、この搬送は1月と12月に集中しており、搬送された方の約1割の方が死亡しています。周りの方で右図の「チョークサイン」をした人がいたら、次の応急手当を実行しましょう。■背部叩打法の実施手順(1)背部叩打法は誰にでも実施できる、比較的簡単な方法。(2)傷病者が立っている場合や座っている場合は、傷病者の背中側から、片手の手のひらの付け根で、両側の肩甲骨の間を数回以上強くたたく(図1)。(3)傷病者が倒れている場合は、傷病者を手前に引き起こして横向きにし、自分の足で傷病者の胸を支え、背部をたたく(図2)。図1 成人/小児の例図2 成人/小児の例小児の例(引用:東京消防庁 餅などによる窒息事故に注意!https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mochi.html)Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第275回 国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省

<先週の動き> 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省厚生労働省が発表した2024年末時点の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、国内の医師数は前回調査から1.3%増加し、34万7,772人と過去最多を更新した。人口10万人当たりの医師数も全国平均で267.4人と、前回から5.3人増加していた。施設別では、診療所に勤務する医師が4.1%増の11万1,699人と大きく伸びた一方、病院勤務者は0.3%減の21万9,393人となった。また、大学病院などの教育・研究機関に所属する医師数も減少傾向にあり、専門医志向の高まりを背景とした大学院進学者の減少が浮き彫りとなっている。診療科別では、内科が全体の約19%を占めて最多だが、注目すべきは明暗が分かれた特定診療科の動向。近年、自由診療の拡大を背景に美容外科医が急増しており、前回から4割近い増加をみせた。対照的に、外科医はピーク時から約4%減少していた。過酷な労働環境や訴訟リスクが敬遠される要因とみられるが、2026年度からの専門研修登録状況では、外科を志望する医師が前年比で16.9%増と大幅な回復の兆しをみせている。これは一部の病院による給与引き上げや学会の魅力発信が功を奏した形である。地域格差も依然として深刻であり、人口10万人当たりの医師数が最も多い徳島県の345.4人に対し、最少の埼玉県は189.1人と、1.8倍以上の開きがある。また、産婦人科・産科医が全体として1.2%減少する中、福井県と埼玉県の格差も顕著となっている。総数が増加する一方で、医師の働き方改革や専門科の偏在、地域間格差といった課題は山積している。日本専門医機構は今後、若手医師の意識調査や、自己研鑽と労働の切り分けに関する標準時間の策定を進め、持続可能な医療体制の構築を急ぐ方針。 参考 1) 令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚労省) 2) 医師、約35万7,000人=過去最多を更新、24年末-厚労省(時事通信) 3) 国内医師数34.8万人、24年は過去最多 診療所勤務が増加(日経新聞) 4) 2026年度からの専門医資格取得を目指す研修、「外科医を目指す医師」が大幅増の可能性大-日本専門医機構・渡辺理事長(Gem Med) 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府政府は12月24日、2026年度当初予算案の一般会計総額を、過去最大の122兆3,000億円程度とする方向で最終調整に入った。高齢化に伴う社会保障関係費の増大に加え、物価高や賃上げへの対応により、歳出は2年連続で過去最大を更新する。税収も過去最高を見込むものの、足りない分は29兆6,000億円に及ぶ新規国債の発行で賄う、厳しい財政運営となった。今回の予算編成の大きな焦点とされた2026年度診療報酬改定については、医療従事者の人件費にあたる「本体」部分を2年度平均でプラス3.09%引き上げることで合意した。本体の3%を超える引き上げは1996年度以来、実に30年ぶりの高水準。上野 賢一郎厚生労働大臣と片山 さつき財務大臣の折衝を経て、物価高騰に直面する病院経営の安定と、全職種にわたる確実な賃上げを実現するための財源確保が決着した。異例の措置として、改定率は2026年度にプラス2.41%、2027年度にプラス3.77%と段階的に引き上げる手法が初めて導入される。これにより、各年度で3.2%のベースアップを目指すとともに、他産業との人材獲得競争が激しい看護補助者や事務職員には5.7%の上乗せ措置が講じられる。その一方で、医薬品の公定価格である薬価は市場実勢価格を踏まえ0.87%引き下げられ、薬価引き下げを含めたネットでは2.22%のプラス改定となり、12年ぶりの全体プラスとなる。しかし、現役世代の保険料負担を抑えるため、患者には新たな負担も求められる。市販薬と成分が重なる「OTC類似薬」については、薬剤費の4分の1を患者が特別料金として上乗せ負担する仕組みが2027年3月から開始される。また、後発薬がある先発品を希望する際の追加負担も現行の4分の1から2分の1へと引き上げられ、高額療養費制度の上限額も所得に応じて段階的に引き上げられる。今回の改定は、30年ぶりの大幅なプラス改定で医療現場の窮状を救う一方、薬剤費や一部の自己負担を「聖域」とせずメスを入れる、全世代型社会保障への大きな転換点と位置付けられる。今後、医師にはリフィル処方の推進やエビデンスに基づく薬剤選択が求められるようになり、医療機関の経営と診療の質、そして患者負担のバランスをどう取るかが、現場の新たな課題となる。予算案は12月26日に閣議決定が行われた。また、同日、診療報酬改定について中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承され、中医協総会は公聴会を1月23日に開催することで決定した。なお、政府は2026年1月23日に召集される通常国会で予算案について審議し、3月末までに成立を目指している。 参考 1) 診療報酬改定について(厚労省) 2) 来年度予算案、122.3兆円程度 国債前年度上回る29.6兆円-26日閣議決定(時事通信) 3) 診療報酬2.22%引き上げ、薬価0.87%引き下げも全体で12年ぶりプラス改定…閣僚折衝で合意(読売新聞) 4) 「2026→27年度」と物価・人件費が高騰する点踏まえ2026年度2.41%、27年度3.77%の診療報酬本体引き上げ-上野厚労相(Gem Med) 5) 診療報酬本体はプラス3.09%、医科の実質的な増加分は0.23%(日経メディカル) 6) 122兆円の来年度予算案が閣議決定…過去最大の社会保障関係費・防衛費、「責任ある積極財政」路線鮮明に(読売新聞) 7) 第639回総会資料(厚労省) 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府政府は12月24日、医療費の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」の見直し案を正式に決定した。今回の改正では、現役世代の保険料上昇を抑制する狙いから、1ヵ月当たりの負担上限額を2027年8月までに段階的に引き上げる一方、長期治療が必要な患者の生活を守るための新たなセーフティーネットが導入される。具体的な引き上げ幅について、来年8月に現行の所得区分に応じ4~7%引き上げられ、さらに2027年8月には所得区分を現在の5~13段階へと細分化した上で、最大38%程度の引き上げを実施する。政府の試算によると、年収約650~770万円の層では、月額上限が現在の約8万円から約11万円へと上昇する。これは昨年末に検討されていた「最大70%超」という大幅な引き上げ案が患者団体の強い反発で凍結されたことを受け、上げ幅を約半分に抑制した形。特筆すべきは、がんや難病などで長期にわたり高額な治療を続ける患者への配慮である。過去12ヵ月で3回上限に達した場合、4回目から負担が下がる「多数回該当」の金額は原則として据え置かれた。さらに、月ごとの支払額の変動による家計の破綻を防ぐため、所得に応じて年間の支払い総額に上限を設ける「年間上限額」が新設される。平均的な年収世帯の場合、年間上限は53万円に設定される。その一方で、70歳以上の外来受診費を軽減する「外来特例」についても、負担上限額が段階的に引き上げられる。年収約200~370万円の層では、現在の月額1万8,000円から2年後には2万8,000円となる。政府は今回の見直しにより、累計1,600億円規模の保険料負担の圧縮を見込んでいる。上野厚労大臣は「長期療養者の経済的負担に配慮した内容であり、丁寧に説明して理解を得たい」と述べているが、患者団体からは依然として、現役世代の負担増が治療の断念につながりかねないとして、さらなる抑制を求める声も上がっている。 参考 1) 高額療養費の自己負担上限、年収に応じ最大38%引き上げ…石破内閣時の70%超案から抑制(読売新聞) 2) 高額療養費、月の上限4~38%上げ 27年8月、患者配慮で改革縮む(日経新聞) 3) 高額療養費制度 月当たり負担上限額 所得に応じ引き上げへ(NHK) 4) 高額療養費の見直し、背景に少子化財源も 患者は「更なる抑制を」(朝日新聞) 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省厚生労働省は、2026(令和8)年度の診療報酬改定および医療保険制度改革において、市販薬(OTC医薬品)と成分・効能が類似する医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」の自己負担の在り方を見直す方針を固めた。現役世代の負担抑制と医療保険制度の持続可能性を高める不断の取組の一環として、保険適用は維持しつつも、対象薬剤に対して「特別の料金」を求める新たな仕組みを創設する。新しい制度の最大の柱は、薬剤費の4分の1(25%)を保険外の特別負担とし、残る4分の3(75%)を従来の保険給付対象とする点。具体的な対象として、ロキソニンやアレグラ、ヒルドイドなど、日常診療で頻用される77成分、約1,100品目が検討されている。実施時期は2027年3月を目指しており、これによる医療費削減効果は約900億円と試算されている。ただし、受診行動や重症化への影響を考慮し、配慮が必要な層については追加負担を求めない方針である。具体的には、子供、がん患者、難病患者、低所得者、入院患者のほか、医師が医療上長期間の使用が不可欠と判断した慢性疾患患者などが除外対象として検討されている。また、今回の改革ではOTC類似薬以外にも薬剤給付の適正化が並行して進められる。後発医薬品の使用促進を目的とし、先発品(長期収載品)を希望した場合の特別料金を、現在の薬価差の4分の1から「2分の1」へ引き上げることが決定した。加えて、症状が安定した患者へのリフィル処方せんや長期処方の原則化を視野に入れ、院内掲示の必須化など普及に向けた環境整備を加速させる。厚労省は、この新たな負担増について国民の理解を得るため、セルフメディケーションの推進やスイッチOTC化の目標達成に向けた取り組みを強化し、2027年度以降はさらなる対象範囲の拡大や負担割合の引き上げも視野に検討を継続する構えである。医療現場においては、患者への丁寧な説明とともに、医学的妥当性や経済性の視点も踏まえたより効率的な処方の推進が求められる。 参考 1) アレグラ、ロキソニンに追加料金 市販類似薬、負担25%上乗せ(共同通信) 2) ロキソニンやアレグラに上乗せ料金 OTC類似薬、77成分判明(日経新聞) 3) OTC類似薬 特別料金上乗せ対象 まずは77成分 約1,100品目の方針(NHK) 4) 特別料金の対象となる医薬品の成分一覧[案](厚労省) 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省厚生労働省は、12月22日に「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を開き、急速に進む少子化に対応するため、小児および周産期医療体制の再編に向けた論点を提示した。2030年度から始まる第9次医療計画を念頭に、限られた医療資源の効率的な配置と、質の高い医療の維持が大きな柱となる。現在、周産期医療においては、NICU(新生児特定集中治療室)の整備が目標を大きく上回る一方で、出生数の減少により、とくに「地域周産期母子医療センター」での病床利用率の低下が顕著となっている。一部の施設では利用率が50%を割り込んでおり、専門医の偏在も課題となっている。これに対し、支払側委員からは、利用率の低い施設の再編や、NICUとGCU(新生児回復期治療室)の整備バランスの見直しを求める声が上がっている。一方、小児医療については、単純な施設の集約化に対して慎重な意見が相次いだ。日本小児科学会の滝田 順子会長は、小児医療の広範な専門性を指摘し、安易な集約は地域医療の崩壊を招くと警鐘を鳴らす。まずは、外来を担う「かかりつけ機能」と、入院を担う「拠点機能」の役割分担を地域ごとに明確にすることが優先されるべきとの考えである。また、最重症例への対応については、都道府県をまたいだ広域連携の構築が必要であることも議論された。今後の対策として、2025年度補正予算に計上された「地域連携周産期医療体制モデル事業」を通じ、集約化の先行事例を収集し、全国へ展開する方針である。少子化が想定を上回るペースで進む中、ワーキンググループは今年度内に一定の取りまとめを行い、地域の実情に応じた持続可能な提供体制の構築を急ぐ考え。 参考 1) 第3回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 周産期医療体制、さらなる集約へ 地域周産期母子センターの再編求める声も 厚労省WG(CB news) 3) 少子化進む中で小児、産科医療機関の「集約化」論議進む、ただし「小児科の単純な集約は危険」との指摘も―小児・周産期WG(Gem Med) 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府政府は12月24日、介護従事者のさらなる処遇改善を図るため、2026年度に「介護報酬」を全体で2.03%引き上げる臨時改定を行うことを正式に決定した。本来、介護報酬は3年に1度の改定サイクルだが、加速する他産業の賃上げや物価高騰に対応するため、異例の前倒し実施となる。今回の改定の最大の柱は、介護・障害福祉分野で働く職員の給与を、月額最大1万9,000円引き上げる。具体的には、訪問看護やケアマネジャーを含む幅広い介護従事者を対象に、一律で月1万円の賃上げを実施。これに加え、ICT活用によるケアプランデータ連携システムの導入など、生産性向上や協働化に取り組む事業所の職員には、さらに月7,000円が上乗せされる。ここに定期昇給分を加え、最大1万9,000円の増額を実現し、全産業平均との賃金格差の解消を目指す。その一方で、制度の持続可能性を確保するための効率化も進められる。これまで全額保険給付(自己負担なし)であったケアマネジメントについて、一部有料化に踏み切る。「住宅型有料老人ホーム」や、それに準ずる「サービス付き高齢者向け住宅」の入居者を対象に、ケアプラン作成や生活相談を行う業務を新たなサービス区分とし、原則1割の自己負担を求めることとなる。焦点となっていた「利用料2割負担」の対象者拡大については、高齢者の生活実態や医療保険の負担増との兼ね合いを慎重に見極める必要があるとして、年内の決定を見送った。2027年度から始まる第10期介護保険事業計画の開始前までに改めて結論を出す方針。今回の臨時改定は、深刻な人手不足が続く現場にとって大きな支えとなるが、同時に利用者や現役世代への負担転嫁という課題も突きつけている。政府は2026年6月の施行に向け、具体的な算定要件の詳細を詰める方針である。 参考 1) 介護報酬、2.03%増へ 来年度臨時改定で職員賃上げ-政府(時事通信) 2) 介護報酬は2026年度の臨時改定で2.03%引き上げ(日経メディカル) 3) 介護報酬 来年度臨時で2.03%引き上げ “職員給与増やすため”(NHK)

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「変形性関節症」、英語でどう説明する?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第44回

医学用語紹介:変形性関節症 osteoarthritis「変形性関節症」は英語でosteoarthritis(OA)です。arthritis(関節炎)という単語そのものは一般の方にも浸透していますが、単に“You have osteoarthritis.”とだけ言われても、多くの人はそれがどういった状態を指すのかよくわからない、というのが実情です。患者さんへの説明では、より平易な言い換えが必要になります。では、どんな言い方をすれば、伝わりやすくなるでしょうか。講師紹介

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「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」改訂のポイント

 2025年6月、日本認知症学会、日本老年精神医学会、日本神経学会、日本精神神経学会、日本老年医学会、日本神経治療学会の監修により、「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」が公表された1)。2016年の第2版公表から9年ぶりとなる今回の改訂では、最新のエビデンスと新規薬剤の登場を踏まえた、より実践的な治療アルゴリズムが示されている。 本稿では、本ガイドラインのワーキンググループの主任研究者を務めた筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 教授の新井 哲明氏による解説を基に、改訂のポイントと臨床における留意点をまとめる。地域医療におけるBPSD対応の切実なニーズ 認知症患者数は2025年に約471万例、2060年には約645万例に達すると推計されている2)。認知症患者の60〜90%が最低1つは経験するとされるBPSD(行動・心理症状)は、患者本人のQOL低下や早期の施設入所リスクを高めるだけでなく、とくにBPSDにおける過活動・攻撃的行動は、介護者への負担増大により不適切なケアを誘発する「悪循環」を招く最大の要因となっている。 認知症におけるBPSD(行動・心理症状)は、心理症状として、抑うつ、不安、焦燥、無気力・無関心、妄想などがあり、行動症状として、興奮、大声を出す、叩くなどの攻撃的な行動、同じ行動を繰り返す常同行動、徘徊などがある。 この悪循環を防ぐためには、BPSDへの早期かつ適切な介入が不可欠である。地域での支援体制が不可欠であり、とくにかかりつけ医の役割が大きく、早期発見や家族支援、地域包括支援センターや専門医との連携を通じて、認知症の人と家族を支える役割が求められている。 新井氏が紹介した、かかりつけ医200人(内科、精神科、脳神経内科、脳神経外科、老年科)を対象としたアンケート調査では、以下の実態が明らかになった。・処方実態:非専門医であっても約8割がBPSDに対して抗精神病薬を処方している。・処方理由:「危険度が高い時」「介護負担が高い時」が主な理由となっている。・66%の医師が従来のガイドライン(第2版)を活用(参照・利用)している。 この結果は、地域医療の現場においてBPSDへの薬物療法がすでに広く行われていることを示唆しており、より安全で適正な使用指針の普及が急務であった。ガイドライン第3版:BPSDへの対応の原則 今回のガイドライン改訂(第3版)は、新規薬剤の登場やエビデンスの蓄積を反映し、より実践的なアルゴリズムへと刷新された。BPSDへの対応においては、まず以下の原則を順守することが重要となる。 原則として、「緊急性が高く速やかな薬物治療の開始を要するような精神症状が認められた場合には、認知症疾患医療センターを含めた認知症専門医がいる医療機関に紹介する」とされている。たとえば、重度のうつ状態、他者に危害を加える可能性が非常に高い妄想、自分自身や他者を危険にさらす原因となる攻撃性などがそれに相当する。 かかりつけ医・認知症サポート医で対応する場合は以下を考慮する。・せん妄の除外・BPSD様症状を引き起こし得る病態の鑑別:感染症、脱水、便秘、疼痛など・BPSD様症状を引き起こし得る薬剤の除外・レビー小体型認知症の可能性:幻視や妄想、抗精神病薬への過敏性に注意が必要 上記のとおり病態を把握した後、環境調整、ケアの変更、リハビリテーションの利用など、非薬物的介入を優先する。症状が改善しない場合にのみ薬物療法を検討する。薬物治療を開始する際は、低用量で開始する。 向精神薬を使用する場合には、本人・家族との共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)のプロセスを経ることが明記された。本人の意思が確認できる場合は、アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)などによる話し合いを尊重し、本人の理解が不十分な場合や意思が確認できない場合は、家族などと繰り返し話し合い、本人の推定意思と最善利益を踏まえて方針を決定する。向精神薬の使用中は常に減量・中止を念頭に置き、長期使用は避ける、などが明記されている。5つのカテゴリー分類とアルゴリズムの明確化 第2版からの大きな変更点として、BPSDの症状分類が整理された。「過食・異食・徘徊・介護の抵抗」といった薬剤効果が乏しい症状は独立カテゴリーから外れた(非薬物的対応を推奨)。症状は以下の5つに分類され、それぞれの対応方針がアルゴリズムで示されている。・幻覚・妄想:まずメマンチンや抑肝散の投与を検討する。これらにより標的症状が改善せず緊急性が高い場合、抗精神病薬の投与を検討する。レビー小体型認知症にみられる幻視には、まずコリンエステラーゼ阻害薬を投与することが望ましい。・易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション):アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動に対しては、ブレクスピプラゾールが保険適用を有する。・不安・抑うつ:抗うつ薬やタンドスピロン、抑肝散、クエチアピンの使用を検討する。・アパシー:非薬物的介入が基本だが、コリンエステラーゼ阻害薬が有効なことがある。・睡眠障害:睡眠衛生指導や睡眠覚醒リズムの確立のための環境調整を行った上で、病態に応じてオレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、抗うつ薬(トラゾドン)の使用を検討する。 BPSDに対する薬剤開始後は、副作用のモニタリングを行った後、患者本人の苦痛や介護者/家族の負担が軽減したかどうかを評価する。NPI-Q(Neuropsychiatric Inventory - Questionnaire)を用いて効果の定量的な評価を行うことが望ましい。抗精神病薬の適正使用と各薬剤の臨床的位置づけ とくに介護負担の大きい易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション)について、アルツハイマー型と診断された患者には、非薬物的介入が無効な場合、ブレクスピプラゾールのみ保険適用となっている。 クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンに関しては、原則として、器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通達がある(2011年9月28日、厚生労働省保険局医療課長、保医発0928第1号、社会保険診療報酬支払基金、第9次審査情報提供)。このうち、ハロペリドールは錐体外路系副作用が強いことから、パーキンソン病、レビー小体型認知症には使用禁忌である。 チアプリドは、脳梗塞後遺症に伴う精神興奮・徘徊・せん妄に保険適用があるため、血管性認知症患者における易刺激性・焦燥性興奮に対して使用を考慮してもよい。 睡眠障害に対しては、睡眠薬の項の記載に従った薬剤選択を行い、それでも改善のない場合は、クエチアピンの使用を考慮してもよい。レビー小体型認知症の幻覚・妄想、易刺激性・焦燥性興奮、不安・抑うつ、睡眠障害に対しても、クエチアピンの使用を考慮してもよいと記載されている。 本ガイドラインでは、抗精神病薬の副作用についても詳細に記載されている。留意点として以下のような項目が記載されている。・抗精神病薬の併用(2剤以上)は避ける。・2週間くらいの時間をかけて薬効を評価する。・常に減量・中止が可能かを検討し、長期使用は避ける。抗精神病薬でBPSDが軽快した場合には、投与開始4ヵ月以内に減量・中止を試みる。ブレクスピプラゾールへの期待 2024年9月、ブレクスピプラゾールは「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する過活動又は攻撃的言動」に対し、国内で初めて効能・効果を取得した。・対象:易刺激性・焦燥性興奮といった内的な不穏を背景とする攻撃的言動に適応となる。単なる徘徊や、これらを伴わない幻覚・妄想は適応外である。・有効性:国内第II/III相試験(BRIDGE試験)において、CMAIスコア(アジテーション指標)を有意に改善させた。・安全性:錐体外路症状などの副作用リスクは比較的低いとされるが、他の抗精神病薬と同様に、傾眠、運動緩慢、流涎過多などへの注意は必要である。 本ガイドライン改訂を受けて、大塚製薬主催で6月23日に開催されたプレスセミナーにて、新井氏は自ら経験した症例として「夫婦間で、妻の妄想から暴言・暴力に発展したケース」を紹介した。ブレクスピプラゾールの投与によって症状が落ち着き、夫婦関係も良好になったことを挙げ、本剤が患者の在宅生活の継続に寄与する可能性を示唆した。 新井氏は、「ガイドラインが改訂され、治療アルゴリズムや薬剤の位置づけが明確化された。これらの情報が広くかかりつけ医・認知症サポート医に普及することで、より適切なBPSD診療が実現し、本人のQOL向上や介護負担の軽減といった社会的課題の解決につながることが期待される」と結んだ。

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大手術後の老年症候群発症は転帰を悪化させる

 せん妄、栄養失調、転倒、脱水症状などの、高齢者によく見られ、医師の診察や治療を必要とする多種多様な健康問題は、老年症候群と呼ばれる。新たな研究で、大手術後の老年症候群の発症は予後不良と関連することが明らかになった。手術後の回復期間中にこうした問題が生じた高齢者は、1年以内に死亡するリスクが高く、病院や介護施設での滞在期間が長くなることが示されたという。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのTimothy Pawlik氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Surgeons」に11月20日掲載された。 Pawlik氏は、「老年症候群は、『炭鉱のカナリア』のように、患者の潜在的な脆弱性を知らせる前兆となる可能性がある。こうした症状を加齢の当然の現象として片付けないことが極めて重要だ。これらは、入院中も退院後も患者がより綿密なモニタリングと適切なサポートを必要とすることを示す重要な警告サインなのだ」と述べている。 この研究でPawlik氏らは、2016年から2021年の間に、冠動脈バイパス術(CABG)、肺切除術、腹部大動脈瘤(AAA)手術、膵切除術、結腸切除術の5種類の大手術のうちのいずれかを受けた66歳超の患者78万337人のメディケア請求データを分析した。老年症候群は、入院中に、せん妄、転倒、骨折、褥瘡、衰弱、脱水、失禁、抑うつ、栄養不良のいずれかの診断を受けた場合と定義した。主要評価項目は、90日以内に自宅で過ごせた日数(days at home;DAH)と1年後の生存率とした。 その結果、患者の10.9%(8万4,760人)が、入院中に少なくとも1種類の老年症候群の症状を新たに発症した。老年症候群を発症した患者の中で最も多く認められた症状は脱水症(66.7%)であり、次いで、せん妄(25.2%)、栄養不良(13.2%)、転倒(3.1%)、失禁(2.4%)、褥瘡(2.3%)、抑うつ(1.0%)の順だった。老年症候群発症の予測因子としては、高齢(オッズ比1.03)、併存疾患数(同1.61)、緊急手術(同1.57)が同定された。また、手術の種類によってもリスクは異なり、例えば膵切除術では腹部大動脈瘤手術の約4倍のリスクであった(同3.86)。 主要評価項目については、老年症候群を発症した患者は未発症の患者と比べて自宅退院できる可能性が大幅に低く(ハザード比3.90)、手術後90日間のDAHも中央値で約16日少なかった(66日対82.5日)。さらに、1年以内の死亡リスクも2倍以上高く(ハザード比2.32)、特に2種類以上の老年症候群を発症した場合には3倍以上に増加した(同3.72)。 研究グループは、「これらの結果は、高齢者の個々の医学的問題を考慮した上で異なるアプローチを取ることが重要であることを示している」と述べている。Pawlik氏は、「高齢患者特有のニーズに焦点を当てることで、老年症候群をより適切に予測、予防、管理することができ、それが、患者が自宅に戻り、生活を取り戻すのを直接的に支援することにつながる」と述べている。

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ワクチン接種率の低下により世界で麻疹患者が急増

 世界保健機関(WHO)は11月28日、麻疹(はしか)排除に向けた世界の進捗状況をまとめた報告書を発表した。それによると、2000年から2024年の間に、世界の麻疹による死亡者数は88%減少し、およそ5800万人の命が救われた。一方で、かつて麻疹排除を目前にした国々で再び感染が広がっている事実も明らかにされた。これは、麻疹ワクチンの定期接種を受けていない小児が増えていることを示唆している。報告書では、「世界的な麻疹排除の達成は、依然として遠い目標だ」と指摘されている。 2024年には、米州を除く全てのWHO地域(アフリカ、南東アジア、欧州、東地中海、西太平洋)の59カ国で麻疹の大規模または深刻な流行(アウトブレイク)が59件発生した。これらのうち、23件(39%)がアフリカ地域、20件(34%)が欧州地域、10件(17%)が東地中海地域、5件が西太平洋地域、1件が南東アジア地域で報告された。麻疹のアウトブレイク数は、2021年には21件、2022年には37件であり、2024年のアウトブレイク数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生以降では最多で、2003年以来2番目に多かった。 WHOは、麻疹ワクチンの定期接種や感染監視体制がパンデミック以降、十分に回復していないことが、これまでの成果を危うくしていると警告している。 米国は2000年に麻疹排除を達成した。これは、「12カ月間以上、伝播を継続した麻疹ウイルス(国内由来、国外由来を問わず)が存在しない状態」と定義されている。しかし、米疾病対策センター(CDC)は今年、1,798件の麻疹確定症例を報告した。これは、排除達成以降で最多である。WHOは現在、米国やカナダをはじめ、かつて麻疹排除を達成したにもかかわらず感染が再燃している国々を注視している。 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、「麻疹ウイルスは、依然として世界で最も感染力の強いウイルスだ。有効で低コストのワクチンがあるにもかかわらず、ウイルスは接種率のすき間を突いて広がる」とCNNに対して語っている。 WHOで予防接種プログラムを統括するDiana Chang Blanc氏によると、2024年に麻疹ウイルスに対する免疫が十分でなかった小児は、世界で3000万人以上に上ったという。2024年の世界全体での麻疹ワクチンの初回接種率は84%であり、ワクチンの効果を95%まで高めるために必要な2回目の接種率は76%でしかなかった。 一方で、前進も見られている。今年、カーボベルデ、セイシェル、モーリシャスがアフリカ地域で初めて麻疹排除を達成した。さらに、太平洋地域の21の島嶼国では、麻疹と風疹の両方の排除を達成した。 Blanc氏は、「麻疹排除に向けて確かな進展があるのは事実だ。それでも、症例数と死亡者数は今なお容認できないほど高水準だ」と話す。同氏は、麻疹による死亡はワクチンの2回接種を受けることで全て予防可能であることを強調する。 WHOによると、接種率低下の背景には、パンデミック中の接種機会の喪失やワクチンに関する誤情報、紛争地域などワクチンを届けることが困難な地域の存在、資金減少が要因だとしている。さらにWHOは、麻疹・風疹実験室ネットワークへの支援縮小など、近年のグローバルヘルス分野における資金削減により免疫ギャップが拡大し、今後さらに大規模なアウトブレイクが発生する可能性があると警告している。

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男性のビール腹は心不全リスクの可能性

 男性によく見られ、“ビール腹”と呼ばれることもある腹部肥満が、心不全のリスクと関連しているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で報告された。ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター(ドイツ)のJennifer Erley氏らが発表した。 この研究から、腹部肥満は心筋の肥厚と心室の縮小に関連していることが示された。研究者らによると、これらの変化は心不全リスクにつながるものと考えられるという。Erley氏は、「腹部肥満、つまりウエスト・ヒップ比(W/H比)が高い状態は、単にBMIが高い場合よりも、心臓リモデリングとの関連が強いようだ。心筋が厚くなるのに心臓の全体的な大きさは増えず、心臓の容積が小さくなる」と解説。そして、「心臓の心室が狭くなるため、心臓が送り出す血液の量は減少する。また、血液を送り出した後に心臓が弛緩し拡張する能力も低下する。それらの変化により、最終的には心不全につながる可能性がある」とのことだ。 Erley氏らの研究では、心臓病の既往歴のない46~78歳の成人2,244人(女性43%)の心血管MRI画像が解析され、BMIおよびW/H比との関連が検討された。研究参加者のうち、BMIに基づいて、男性の69%、女性の56%が過体重または肥満に分類された。また、世界保健機関(WHO)の基準に基づき、男性の91%、女性の64%が腹部肥満に分類された。なお、WHOの基準では、W/H比が男性は0.90以上、女性は0.85以上を腹部肥満と判定する。 解析の結果、腹部の脂肪量が多いことは、心筋の肥厚と心室の縮小に関係していることが示された。このような変化は女性に比較して男性でより顕著であり、特に心臓から肺へ血液を送り出す右心室で顕著だった。腹部肥満との関連性が性別により異なるという点についてErley氏は、「男性は女性よりも若い年齢から“ビール腹”になることが多いという一般的な傾向、あるいは、女性は女性ホルモンのエストロゲンによって心臓の健康がある程度守られていることが関係しているのかもしれない」と話している。 Erley氏は、「われわれの研究結果は、腹部肥満による心臓への構造的影響に関して、女性よりも男性の方がより脆弱である可能性のあることを示唆している。これは、これまでの研究ではあまり報告されていなかった知見だ」と、本研究の意義を強調。また、中年期の人々へのアドバイスとして、「体重全体を減らすことに焦点を当てるのではなく、定期的な運動、バランスの取れた食事、そして必要な時には時機を逸せず治療を受けることなどにより、腹部への脂肪蓄積を防ぐことに重点を置くべきだ」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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月1回の注射で重症喘息患者の経口ステロイド薬が不要に?

 重症喘息があり、発作予防のために毎日、経口コルチコステロイド薬(以下、経口ステロイド薬)を使用している人は少なくない。しかし、経口ステロイド薬には重い副作用を伴うことがある。 こうした中、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器免疫学臨床教授のDavid Jackson氏らが、治療へのテゼペルマブの追加が重症喘息患者の症状と経口ステロイド薬の必要性にもたらす効果を調べる第3b相臨床試験を実施。その結果、この抗体薬により対象患者の90%で毎日の経口ステロイド薬の使用量を減らすことができ、約半数で経口ステロイド薬の使用を完全に中止することができたことが示された。テゼペルマブは、免疫系の一部を標的とするよう設計された抗体薬で、肺の炎症を軽減する働きがある。製薬企業のAstraZeneca社とAmgen社の資金提供を受けて実施されたこの臨床試験の結果は、英国胸部疾患学会(BTS)冬季学術集会(BTS Winter Meeting 2025、11月26~28日、英ロンドン)で発表されるとともに、「Lancet Respiratory Medicine」に11月26日掲載された。 喘息患者を支援する非営利団体Asthma + Lung UKのリサーチ・ディレクターで、この臨床試験には関与していないSamantha Walker氏は、「これは将来の喘息治療に向けた極めて有望な進展であり、重症喘息患者の人生を大きく変える可能性がある」と話している。 重症の喘息は消耗性で、命に関わることもある。患者は多くの場合、症状を抑えるために毎日経口ステロイド薬を使用するが、この薬は骨粗鬆症や糖尿病、感染症の発症リスクを高める可能性があることが知られている。  今回の臨床試験には、11カ国の68の臨床施設で登録された298人(女性69.1%)の重症喘息患者が参加した。患者は4週間に1回、210mgのテゼペルマブの注射を最長で52週間にわたって受けた。また、喘息の症状や服薬に関する質問票に回答した。主要評価項目は、喘息コントロールを悪化させることなく経口ステロイド薬の処方用量を1日5mg以下に削減できた参加者の割合、および経口ステロイド薬を中止した参加者の割合とし、試験開始から28週目と52週目(試験終了時)に評価した。ベースラインにおける経口ステロイド薬の平均維持用量は1日10.8mgであった。 その結果、喘息コントロールを悪化させることなく経口ステロイド薬の処方用量を5mg/日以下に削減できた参加者の割合は、28週目で88.9%(265人)、52週目で89.9%(268人)であった。また、経口ステロイド薬の使用を中止できた参加者の割合は、28週目で32.2%(96人)、52週目で50.3%(150人)であった。さらに、52週間にわたる試験期間中、患者の約3分の2(66.9%)では喘息発作が発生しなかったことも確認された。 論文の筆頭著者であるJackson氏は、今回の臨床試験の結果について、「重症度が最も高いタイプの喘息の患者にとって重要な前進だ」とKCLのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「テゼペルマブはアレルギー関連症状を抑えることや、慢性副鼻腔炎の改善をもたらすことも明らかにされている。したがって、この臨床試験の結果は、特に上気道症状と下気道症状の両方がある重症喘息患者にとって有望な結果である」と付け加えている。  なお、テゼペルマブは、喘息治療に導入された最初の抗体薬ではない。研究グループによると、昨年実施されたKCLの別の試験では、すでに承認されている別の抗体薬のベンラリズマブでも同様の有効性が報告されているという。

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連休中に健康的な生活習慣を維持する秘訣

 年末年始などの連休には、旅行に出かけたり家族でのイベントがあったりして、普段よりもかえって忙しくなり、健康的な生活習慣を続けられなくなる人も少なくない。ただ、専門家によると、健康を維持するために、そのような限られた期間も常に完璧であろうとする必要はないようだ。また、米バージニア工科大学のSamantha Harden氏は、気を付けるべきは忙しさもさることながら、連休という機会への過剰な期待だと、同大学が12月1日に発表したリリースの中で述べている。 人々が実生活の中でどのようにウェルビーイングを形成しているのかを研究しているHarden氏は、「私たちはしばしば、仕事から離れて時間ができたなら、健康づくりのためのルーティンを編み出して『最高の自分』に変わるチャンスが訪れると期待している。しかし、実際に連休に入ると、好むと好まざるを問わず他のさまざまな用事に時間が奪われてしまい、計画通りにいかないことが多い」と話す。そして同氏は、連休こそ生活習慣改善の理想的な機会と考えるのではなく、むしろ普段の休日の生活に健康的な行動を少しずつ取り入れることを提案している。 具体的に、以下のような工夫をいくつか示すことができる。・良い習慣を積み重ねる:既に習慣的に行っていることに、何かもう一つ健康に良い行動を組み合わせる。例えば、歯磨きの後に何か感謝することを見つけるようにしたり、夕食後には短時間の散歩をしたりするなど。・ゲームの要素を盛り込む:健康のための行動をゲームのように楽しむ。例えば、皿洗いが終わるたびにプランクチャレンジ(体重を使って手軽にできる体幹トレーニング)をして、事前に作っておいた運動メニューのビンゴカードを塗りつぶしていくなど。・ほかの人を巻き込む:例えば、友人や家族をフィットネスクラスに誘ったり、屋外を散歩しながら誰かに電話をかけたりするなど。 なお、連休中に旅行へ行く場合には、移動中に時間ができたらこまめに体を動かし、水分を十分に取り、交通ダイヤの乱れの影響で不安が生じないように余裕をもって行動することが大切だという。 Harden氏は、ウェルビーイングを運動や栄養のみで考えるのではなく、それ以上の視点で捉えることを勧めている。同氏によると、ウェルビーイングには六つの側面があるとのことだ。六つの側面とは、幸福、心身の健康、親密な社会関係、生きがいと目的、人格と美徳、物質的・経済的な安定だ。そして同氏は、「連休中は身体の健康のために充てる時間やその他のリソースは減るかもしれない。しかし一方で、親しい人とのつながりや社会関係を意識する機会は多くなるのではないか」と述べている。 最後に同氏は、「連休中に限らず普段の生活についても当てはまることだが、健康的であるためには1日たりともルーティンから外れたら失敗だとは考えないことだ。ゼロか百かという考え方はたいていうまくいかない。自分の目標や状況、あるいはリソースに見合わない期待を抱くことで、かえって生きづらさを感じるようなことは避けるべきだ。健康のためのチェックリストをあまり盛り込み過ぎない方がよい」とアドバイスしている。

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多発性硬化症と口腔内細菌の意外な関係、最新研究が示す病態理解の可能性

 多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の神経線維を包むミエリンが自己免疫反応によって障害される希少疾患で、視覚障害や運動麻痺、感覚障害などさまざまな症状を引き起こす。最新の研究で、MS患者の口腔内に存在する特定の歯周病菌、Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)の量が、病気の重症度や進行に関わる可能性が示された。研究は、広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の内藤裕之氏、中森正博氏らによるもので、詳細は11月3日付で「Scientific Reports」に掲載された。 MSの発症には遺伝的素因に加え、ウイルス感染や喫煙、ビタミン欠乏などの環境因子が関与すると考えられ、近年は腸内細菌の異常も病態形成に影響することが示唆されている。また、口腔内細菌、特に歯周病菌も中枢神経疾患に影響することが報告されており、慢性的な炎症や免疫応答を介してMSの進行や重症度に関与する可能性がある。これまでに歯周病とMSの関連や、MS患者における特定菌種の増加が報告されているものの、臨床指標や再発・進行との具体的な関連や菌種ごとの差異は不明である。こうした背景を踏まえ著者らは、MSや視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の患者の舌苔サンプルから歯周病菌量を定量し、臨床特徴やMRI所見との関連、さらに菌種ごとの影響を探索する横断的研究を実施した。 本研究は2023年5~11月にかけて実施され、広島大学病院脳神経内科を受診した15歳以上のMS、NMOSD、MOGAD患者112人が解析対象となった。患者から採取した舌苔サンプルは4種の歯周病菌種 (F. nucleatum、P. gingivalis、P. intermedia、T. denticola)を標的とした定量的PCRを用いて分析した。先行研究に倣い、細菌の総存在量に対する比率が第3四分位数を超える場合「高相対量」と定義された。患者の重症度は総合障害度評価尺度(EDSS)で評価し、スコア4をカットオフとした。 本研究の最終的な解析対象は98人(平均年齢48.6歳、女性77.6%)となった。これらのうち、56人がMS、31人がNMOSD、11人がMOGADとそれぞれ診断された。MS、NMOSD、MOGADで歯周病菌の高相対量に有意差はなく、口腔衛生習慣もほぼ同等であった。 単変量解析により、MS患者における各歯周病菌とEDSSスコアの関係を調べたところ、F. nucleatumの相対量が高いMS患者は、低い患者に比べてEDSSスコアが有意に高く、EDSS ≥4の割合も多かった(61.5% vs 18.6%、P=0.003)。多重比較補正(Benjamini-Hochberg法)を行った後も、MS患者におけるF. nucleatumの高相対量とEDSS ≥4の関連のみが有意であった(P=0.036)。一方、他の歯周病菌の相対量は、EDSS ≥4との有意な関連は認められなかった。また、NMOSDおよびMOGAD患者においても、EDSSスコアと各菌の高相対量との関連は認められなかった。 単変量解析では、MS患者の重症度(EDSS ≥4)に影響を与える要因として、F. nucleatumの高相対量に加え、年齢、MSのサブタイプ、発作回数、罹病期間も示唆された。しかし、これらの因子を考慮した多変量解析では、F. nucleatumの高相対量のみが独立して有意であった(オッズ比10.0、95%信頼区間1.45~69.4、P=0.020)。 著者らは、「本研究は、MS患者において口腔内のF. nucleatum相対量がEDSSスコアと強く関連することを示した。因果関係は示せないが、将来的な研究課題としては、サイトカイン関連機構などの免疫学的メカニズムの解明や、口腔ケアなどの介入による影響の検討が挙げられる」と述べている。 本研究の限界として、単施設の横断的観察研究であり、MS以外の疾患群やF. nucleatum陽性患者が少なくサンプルサイズが限られていたこと、歯周病の臨床評価や抗菌薬使用歴、口腔行動の影響、免疫指標測定が不十分であり、残存交絡や因果関係の推定は困難であったことを挙げている。

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第294回 初めてづくしの診療報酬大幅改定、その中身とは

とにかく異例づくしである。2026年診療報酬改定のことだ。正直、診療報酬本体の改定率が+3.09%と伝わった瞬間の個人的な感想は「嘘だろ!」というものだった。もうすでに+1%未満に慣れてしまったせいか、「何が起きたんだ?」とさえ思った。確かに事前に漏れ伝わってきた話は、さすがの財務省も病院経営の苦境への対応はやむを得ないとして1%台のプラスを主張し、これに対して厚生労働省は3%台を主張する形で平行線をたどっているというものだった。私自身は「おそらく1%台の後半、もしかしたら2%に届くかも?」との読みを持っていたが、まさかの決着である。ちなみに私が医療専門紙記者となった1990年代前半は+4%超の改定があり、1996年は+3.4%。その後は小泉 純一郎政権下での史上初のマイナス改定まで、半ば倍々ゲームの逆を行くかのような下がり方をした。旧民主党政権下では久々に1%台となったものの、自民党の政権復帰とともに前回の2024年までは1%未満という微々たる改定率が続いてきた。つまりは1996年改定以来、実に30年ぶりの数字である。薬価・医療材料の引き下げ幅は0.87%であり、本体と薬価引き下げ分を合わせた最終改定率がプラスとなるのも14年ぶり、最終改定率が2%超となるのも実に32年ぶりで、すべてにおいて異例の改定率である。しかも、さらに今回驚かされたのが、当初発表された+3.09%も2年分の平均であり、2026年度が2.41%、27年度が3.77%という段階的な改定率が設定されたことだ。こうした仕組みは診療報酬史上初のことである。もはや異次元の診療報酬改定と言ってもよいかもしれない。さてその内訳だが、これは2020年改定時から新たに公表され始めたもので、要は特例や特定の目的に紐付けられたものなどを以下のように明示している。(1)賃上げ対応分:+1.70%(2)物価対応分:+0.76%(3)食費・光熱水費分:+0.09%(4)24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分:+0.44%(5)政策医療・医療高度化対応:+0.25%(6)適正化・効率化対応分:-0.15%このうち(1)と(2)も単年度ごとの改定率があり、(1)は26年度が+1.23%、27年度が+2.18%、(2)は26年度が+0.55%、27年度が+0.97%。さらに(2)については、とくに2026年度以降の物価上昇への対応として2年分平均として+0.62%(2026年度が+0.41%、2027年度が+0.82%)を充て、施設類型ごとの費用関係データに基づき、病院が+0.49%、医科診療所が+0.10%、歯科診療所が+0.02%、保険薬局が+0.01%。残る+0.14%は大学病院も含む高度機能医療を担う病院への特例的な対応としての上乗せ分である。また、(4)は病院が+0.40%、医科診療所が+0.02%、歯科診療所が+0.01%、保険薬局が+0.01%の配分。このように特例の対応分について医科部分を病院と診療所に分けたのも初のことである。一方、正味の診療報酬アップは政策医療・医療高度化対応分の+0.25%であり、この配分は医科が+0.28%、歯科が+0.31%、調剤が+0.08%となる。これは1972年7月、田中 角栄政権時に厚生大臣、大蔵大臣、内閣官房長官の閣僚合意で決められた診療報酬配分である医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3が踏襲された形だ。こうして俯瞰してみると、異例の高改定率とはいえ、とりわけ急性期を担う病院に手厚くしたことがわかる。その意味では今年初めくらいから各方面で伝えられた病院の苦境という情報発信が功を奏したとも言える。そして今回の診療報酬改定の発表文書では、付帯事項のような説明文書もかなりの分量が割かれている。まず、注目すべきは物価高騰対応である。実際の経済・物価の動向が今回の改定時の見通しから大きく変動し、医療機関などの経営状況に支障が生じた場合は2027年度予算編成で「加減算を含め更なる必要な調整を行う」と記述している。「加減算」という文言はインフレ鎮静化時の減算もあり得ることを示唆している。また、賃上げについても、2024年改定でベースアップ評価料の対象外の医療者(入院基本料や初・再診料を賃上げ原資として配分される40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工士など)への賃上げ措置を確認するため、「実効性が確保される仕組みの構築や実績の把握を迅速かつ詳細に行う」ことをうたっている。さらに医師偏在対策についても具体的な記述があり、「改正医療法に基づき、外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合には、診療報酬上の減算措置を講じることで、医師偏在対策の実効性を高めることとする」という文言がある。そして何より個人的に注目したのは、前述の(4)の中で「メリハリ」という言葉を使ってきたことである。実は先頃の自民党と日本維新の会による社会保障関連政策に関する政調会長間合意文書でも「令和8年度診療報酬改定におけるメリハリ付け」が筆頭に来ている。このメリハリは多くの人が想像できていると思うが、「今回は病院、とくに急性期医療を担う本格的な病院の苦境は救うが、そのほかについては厳しくする」という意味に読めてしまう。実際、前述の医師偏在対策の文言や効率化・適正化分に「長期処方・リフィル処方の取り組み強化等による効率化」が含まれていることなども併せれば、経営実態調査からも比較的良好だった医科診療所をかなり意識しているのではないだろうか?そして改定率では手厚いはずの病院についても、改定率決定に先立ち成立した2025年度補正予算の中身を見ると、一定の締め付けをしてくることは予想できる。補正予算では「医療・介護等支援パッケージ」に1兆3,649億円が付けられ、このうち最大だった「医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援」の5,341億円に次いだのが「病床数の適正化に対する支援」の3,490億円だった。これは医療需要の変化を踏まえて病床数の適正化を進める一般・療養・精神病院と有床診療所に対し、1床当たり410.4万円(休床の場合は205.2万円)を支援するもの。従来から病床の転換・再編では国や都道府県から補助金が支出されていたが、今回の額は破格である。これらを総合すると、私自身は「今回は大目に見てやるが、この間に国の政策に沿った自助努力をしなければ、後は知らないよ」と読めてしまうのである。 参考 1) 厚生労働省:診療報酬改定について

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化学療法中のワクチン接種【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第6回

化学療法中のがん患者は、化学療法の影響や原疾患により免疫力が低下しているため、感染症に罹患しやすく重症化しやすい傾向があります。国内のガイドラインやASCOガイドラインおいても、がん患者の治療やケアにおいて適切なワクチン接種がもたらす良い影響が述べられています。今回は固形がん化学療法中の患者を想定した、5つの主なワクチンの特徴や効果、推奨される接種時期についてお話しします。1)インフルエンザワクチン背景がん患者がインフルエンザに罹患した場合、死亡のリスクが高いことが複数の研究から報告されています。とくに肺がんや血液腫瘍患者はより重症化するリスクが高いことが知られています。インフルエンザワクチンは、A型(H3N2・H1N1)とB型の3株を含む混合ワクチンであり、世界的流行株とWHO推奨株に基づき毎年選定されるため、毎年の接種が推奨されます。健康な人における有効性は70~90%程度とされていますが、流行株との一致度により変動します。予防効果と安全性複数の研究から、血清学的な反応は健康な人と比較して劣る可能性はあるものの、予防医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されています。近年、高用量インフルエンザワクチン(商品名:エフルエルダ筋注)が承認され、米国では65歳以上のがん患者に高用量ワクチン接種が推奨されています。化学療法中のインフルエンザワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。注意点リツキシマブやオファツムマブ、オビヌツズマブなどの治療後は、少なくとも半年間はワクチン効果が期待できない可能性があります。また、免疫抑制薬を服用中の患者でも効果が低い場合があります。接種時期インフルエンザワクチンは10~12月までの接種が推奨されています。化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種するのが理想ですが、治療中に流行期を迎える場合は接種時期を調整する必要があります。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。2)肺炎球菌ワクチン背景日本の成人市中肺炎では、肺炎球菌が最も頻度の高い起炎菌です。65歳以上や糖尿病・心不全などの基礎疾患を有する場合には、重症感染症を起こしうるため、肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。国内データでは、侵襲性肺炎球菌感染症の死亡率は約19%と高く、患者の約7割は65歳以上です。また、固形がん患者や脾摘患者が肺炎球菌感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが高いことが報告されています。予防効果と安全性肺炎球菌ワクチンによる抗体価の上昇は、化学療法中であっても健康な人と同等であると報告されています。化学療法中の肺炎球菌ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。ワクチンの特徴ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス[PPSV23]:定期接種)と結合型ワクチン(キャップバックス[PCV21]、プレベナー20[PCV20]、バクニュバンス[PCV15])の2種類があります。免疫力をつける力(免疫原性)はPCV21/20/15のほうがPPSV23より高いです。日本ワクチン学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会では、がん患者へのPCV20の1回接種もしくはPCV15とPPSV23の連続接種を推奨しています。画像を拡大する接種時期肺炎球菌感染症は1年を通して発生するため、季節を問わず接種が可能です。化学療法開始前(少なくとも2週間前)に接種、もしくは化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。3)帯状疱疹ワクチン背景水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)初感染は水痘として発症し、感染後に後根神経節に不活性状態で長期間潜伏します。その後、加齢・疲労・病気などで免疫が弱まるとウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。症状は片側に帯状に広がる発疹と刺すような痛みが典型的で、約10%の症例で帯状疱疹後神経痛が発生し、QOLを低下させる原因になります。免疫不全のない患者と比較して、固形がん患者は約5倍、血液がん患者は約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています。画像を拡大する安全性化学療法中の帯状疱疹ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。生ワクチンは、免疫低下患者(がん薬物療法中やステロイド使用中)には接種不可です。接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。4)新型コロナ(COVID-19)ワクチン背景がん患者はCOVID-19に罹患すると重症化しやすいため、ワクチン接種の利益は大きいです。そのため、基本的には接種を検討すべきとされています。ただし、がんの種類や治療内容、免疫状態により、効果や副反応が異なる可能性があります。治療のタイミングにより接種時期を調整したほうがよい場合もあります。副反応が治療の有害事象と区別しにくい場合があるため注意が必要となります。総じて、患者ごとの状況に応じて主治医と相談して判断することが重要と考えられます。予防効果と安全性ワクチンを接種したがん患者約3万例を対象とした観察研究が報告されており、がん患者であってもCOVID-19ワクチンを2回接種することで感染リスクが低下することが示されています。一方でワクチンの感染リスク低下効果は58%(非がん患者:90%以上)であり、がん患者ではワクチンの効果が減弱する可能性が示唆されています。とくにワクチン接種前6ヵ月以内に化学療法を受けた場合はワクチンの効果が低いことが報告されています。定期的な追加接種が推奨され、感染時は早期の受診と抗ウイルス薬治療が重要となります。接種時期基本的に最新の推奨スケジュールに従った接種が推奨され、明確な最適時期はまだ不明ですが化学療法の開始前に接種して、化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期を避けて接種することが望ましいです。抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。注意事項ワクチン接種により、接種側の腋窩・鎖骨上窩・頸部リンパ節の腫大が報告されており、PETでも集積を認めることがあり、転移との鑑別が必要になる場合があります。画像検査の際にはワクチン接種歴と部位の情報を得ておくことが望ましいです。5)RSウイルスワクチン背景高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患、がんなど)、免疫機能が低下している人は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあり、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の院内死亡が推定されています。米国での大規模データ研究では、がん患者がRSウイルス感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが2倍以上高いことが報告されています。画像を拡大する接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。1)Kamboj M, et al. JCO Oncol Pract. 2024;20:889-892. 2)日本学会、日本治療学会、日本臨床腫瘍学会. 新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A:2021.3)国立がん研究センター:がん情報サービス4)日本乳学会. 乳診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.5)アレックスビー筋注用添付文書6)アブリスボ筋注用添付文書講師紹介

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口が青く染まって昏睡状態、何の中毒? 【中毒診療の初期対応】第3回

<今回の症例>年齢・性別62歳・男性患者情報自宅近くの公園のベンチで横になっているのを通りがかりの近所の女性が発見するも、呼びかけても反応がない状態であったため、救急センターに搬送された。初診時は鼾様呼吸、呼吸数12/分、SpO2 96%(室内気)、血圧124/78mmHg、心拍数62bpm、意識レベルJCS 100、瞳孔 左右2.5mm同大、対光反射+、体温36.4℃であった。身体所見では、口唇、歯牙、口腔内は青く染まっていた。気管挿管により気道を確保し、経鼻胃管を挿入したところ、青色の液体が吸引された。なお、病院にかけつけた妻が患者の所持品を確認すると財布の中身がなくなっていた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 6.30×103/mm3、Hb 14.2g/dL、Ht 44.0%、Plt 109×103/mm3。生化学検査では、TP 7.2g/dL、AST(GOT)21IU/L、ALT(GPT)20IU/L、LDH 276IU/L、CPK 84IU/L、AMY 211IU/L、Glu 102mg/dL、BUN 12mg/dL、Cr 0.7mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 106mEq/Lであった。動脈血ガス(室内気)では、pH 7.364、PaCO2 44.6Torr、PaO2 82.5Torr、HCO3- 23.7mmol/L、BE -0.4mmol/L、乳酸値 1.4mmol/Lであった。尿中薬物簡易スクリーニングキットでBZO(ベンゾジアゼピン類)が陽性であったが、患者の「お薬手帳」ではベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方歴は確認できなかった。念のためフルマゼニル0.2mgを静注したところ20秒後には開瞼し、従命が認められた。しかし、患者は20分後には再び昏睡状態となった。入院後の経過ベンゾジアゼピン受容体作動薬中毒と診断した。活性炭50gを微温湯300mLに懸濁して経鼻胃管より注入し、輸液療法のみで経過観察入院とした。翌日には覚醒したため気管チューブを抜管した。患者は薬物の摂取を否定したが、「公園のベンチに座って休んでいたところ、見知らぬ若い女性に声をかけられ、ラムネの瓶をもらって一緒に飲んだ。それ以降の記憶がない」と話した。患者の同意を得て、警察に通報した。<問題1><解答はこちら>2.フルニトラゼパム1)上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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国試直前の12月、僕が勉強を抜けてインターンに行った理由【研修医ケンスケのM6カレンダー】第9回

国試直前の12月、僕が勉強を抜けてインターンに行った理由さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。2025年ももうおしまい。すっかりオリオン座も見慣れるようになりました。年を重ねるごとに、1年の早さを感じます。先月の国立保健医療科学院での研修は国内外での移動が多く、人生で初めてインフルエンザA・B両方に罹患しました。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。2025年ラストの今回は必修対策とキャリアの考え方についてお話しさせていただきます。必修分野、とくに救命救急に関する得点率をあげよう(フィリピン大学医学部附属病院の救急外来)医師国家試験に合格するためには必修問題(B・Eブロック)で80%以上の正答率が絶対条件。しかも、他の問題と違って、必修は「足切り」があるので、どんなに一般・臨床で得点しても、ここでつまずくと不合格になってしまいます。逆に言えば、「必修は大丈夫」と自信を持てるだけで、メンタル的にかなり安心できます。必修対策の基本は(1)必修ガイドラインを読む、(2)過去問を徹底する、の2つです。とくに強化してほしいのが救命救急に関する分野です。心肺蘇生、ショックや意識障害への初期対応など、必修で毎年問われる定番テーマで、これらの基礎知識をもとにした判断力が問われるので、各論ブロックでも得点差がつくところ。必修でも各論でも通用する、お得な分野を攻略して、全体の得点力アップにつなげましょう! 直前講座は「完成度アップ」のためにぜひ使おう!(フィリピン大学医学部の正面入り口。手前の白いロゴは踏むと試験に落ちるという噂)12月といえば、いよいよ各予備校の直前講座が始まる時期。私も正直講義のスライドやテキストのボリュームに圧倒されましたが、ここには本当によく練られた「得点源のエッセンス」が詰まっています。過去問の焼き直しだけじゃない「得点差がつくテーマ」最新のガイドラインやトピック国家試験で出やすい「ひっかけ」のパターンなど、今の自分の知識をブラッシュアップするのに最適。どの予備校のコンテンツでもOKですが、勉強会などでそれぞれが学んだことをアウトプットし合うのはとてもおすすめ。違う視点や表現に触れることで、理解が一気に深まることもありますよ。「学生」でいられる時間、あと4ヵ月だけ!(WHO西太平洋地域の事務局本会議場内にて)国試の直前期で、毎日勉強漬けの日々かもしれません。でも、忘れないで欲しいのが「学生でいられるのはあと4ヵ月だけ」ということ。「学生です」っていうだけで、社会ではまだまだ優しくしてもらえます。見学、インターン、イベント参加、会いたい人に会う…自分の興味に素直に動くことができる時間は、すごく貴重です。私は6年生の12月に、思い切って厚生労働省でのインターンに参加しました。そのときに出会った医系技官や公衆衛生医師の話をきっかけに、研修医2年目の秋に国立保健医療科学院で研修することまでつながりました。あのとき、「やってみたい」と思って一歩踏み出せて本当に良かったと感じています。最後に(世界三大夕陽の1つ、マニラ湾の夕陽)この時期、やるべきことが多すぎて、焦る気持ちもあると思います。でも、大丈夫。大事なのは「全部をやる」ことではなく、「合格に必要なことを確実に積み上げていく」ことです。必修、とくに救急は基礎を固めよう直前講座は力の底上げにうまく活用しようそして、「今しかない学生生活」も少しだけ大事にしてみよう応援しています。あともう一踏ん張り!

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帯状疱疹ワクチン、認知症予防だけでなく進行も抑制か/Cell

 認知症の発症と進行には神経炎症が関連しており、神経向性ウイルスが認知症の発症や進行の一因となっている可能性が指摘されている。今年に入って、帯状疱疹ワクチンが認知症発症を予防する可能性があるとの報告1)があったが、同じ米国・スタンフォード大学の研究グループが、帯状疱疹ワクチン接種と軽度認知障害発症、さらにすでに認知症を発症した人の死亡リスクとの関連について調査を行い、結果がCell誌オンライン版2025年12月2日号に掲載された。 研究者らは、ウェールズのプライマリ診療所の電子カルテのデータから1925年9月1日~1942年9月1日生まれの30万4,940例を抽出、うち認知障害歴のない28万2,557例を軽度認知障害(MCI)発症リスクの解析対象とし、すでに認知症と診断された1万4,350例を認知症関連死亡の解析対象とした。ウェールズでは帯状疱疹ワクチン接種プログラム開始時にワクチンの数に限りがあったため、開始直後に80歳の誕生日を迎えた人は1年間ワクチン接種対象となったのに対し、直前に誕生日を迎えた人は生涯にわたって対象外となり、ワクチン接種率に大きな差が出たことを利用し、接種資格の有無と、実際の接種の有無で比較した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ中にMCI発症リスク解析対象の7.3%(2万712例)がMCIと診断された。ワクチン接種資格あり群(資格あり群)ではMCI発症が1.5パーセントポイント減少し、実際にワクチンを接種した群(接種群)は3.1パーセントポイント減少した。・認知症関連死亡解析対象の49.1%(7,049例)が認知症関連で死亡した。資格あり群では認知症関連死が8.5パーセントポイント低下し、接種群は29.5パーセントポイント減少した。全死亡率においても資格あり群は6.5パーセントポイント、接種群は22.7パーセントポイント低下した。・MCI発症リスクおよび認知症関連の死亡リスク低減効果は、女性において有意差が認められた。一方で男性では統計学的な有意差は認められなかった。・認知症の病型別では、混合型認知症において、ほかの認知症(アルツハイマー型や血管性)よりも相対的な効果が高い傾向が示唆された。 研究者らは「この研究は、帯状疱疹ワクチンが、早期のMCIから認知症の最終段階である死亡に至るまで、認知症のリスクと進行を抑制する可能性を示した初のエビデンスである。今回は生ワクチンが対象だったが、近年では組み換えワクチンが普及しており、これらが同様の認知保護効果を持つかは今後の研究で明らかにする必要がある。また本研究は、交絡因子や制度的バイアスの可能性は完全には排除できず、今後の大規模ランダム化比較試験が待たれる」とした。

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HR+/HER2-転移乳がん内分泌療法後の1次治療、SGはPFS延長せず(ASCENT-07)/SABCS2025

 局所進行切除不能または転移のあるホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん患者における内分泌療法(ET)後の1次治療として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)は医師選択の化学療法と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示さなかった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのKomal Jhaveri氏が、日本も参加している第III相ASCENT-07試験の主要解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。・試験デザイン:第III相非盲検無作為化試験・対象:局所進行切除不能または転移のあるHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する化学療法歴がなく、以下のうち1つ以上に該当:2ライン以上のET±標的療法後に進行/1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬開始後<6ヵ月に進行/術後ET+CDK4/6阻害薬開始後<24ヵ月に再発し追加のETの対象外)・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注) 456例・対照群:医師選択治療(カペシタビンもしくはパクリタキセルもしくはnab-パクリタキセル) 234例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、QOL[その他の副次評価項目]治験責任医師評価によるPFS、ORR、安全性など・観察期間中央値:15.4ヵ月(データカットオフ:2025年9月15日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値はSG群57歳vs.対照群58歳、HER2発現状態はIHC 0が42%vs.43%、転移の診断から無作為化までの期間中央値は23.9ヵ月vs.26.2ヵ月、内臓転移ありが89%vs.88%、肝転移ありが70%vs.67%であった。・前治療歴については、治療ライン中央値はともに2ライン、ET+CDK4/6阻害薬治療歴ありがSG群91%vs.対照群92%、CDK4/6阻害薬による治療期間≦12ヵ月が43%vs.42%であった。・BICRによるPFS中央値は両群で8.3ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.69~1.05、p=0.130)で、SG群における統計学的に有意な改善は認められなかった。・BICRによるPFSのサブグループ解析の結果は、全体集団とおおむね一致していたが、HER2 IHC 0の患者ではSG群で数値的に良好な傾向を示した。・治験責任医師評価によるPFS中央値はSG群8.4ヵ月vs.対照群6.4ヵ月(層別HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、名目上のp=0.008)であり、SG群で数値的な改善傾向を示した。・OSデータは未成熟であり(maturity:27%)、OS中央値は両群ともに未到達であったが、SG群で良好な傾向が示された(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、名目上のp=0.029)。・試験治療中止後の次治療は、ADCがSG群32%vs.対照群61%、化学療法が84%vs.66%などであった。・BICRによるORRはSG群37%(CR:1%)vs.対照群33%(CR:0%)、奏効期間中央値は12.1ヵ月vs.9.3ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はSG群72%vs.対照群48%で発現し、TEAEによる治療中止は3%vs.7%であった。SG群の安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、多く発現したGrade3以上のTEAEは、好中球減少症(56%)、白血球減少症(14%)、貧血(10%)などであった。 Jhaveri氏は、TROPiCS-02試験に基づき、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する内分泌療法および化学療法後の標準治療として引き続き位置付けられるとした(本邦では2025年12月25日現在未承認)。なお、ASCENT-07試験は進行中で、OSが継続して評価される予定。

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片頭痛予防のためのフレマネズマブ長期使用に関する実臨床データの解析結果

 片頭痛予防を目的としたフレマネズマブの長期使用に関して、実臨床におけるデータは限られている。このギャップを埋めるため、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMessoud Ashina氏らは、フレマネズマブの実臨床における有用性を評価したPEARL試験の第3回中間解析を行い、最長12ヵ月間投与した場合の長期的な有効性、安全性、忍容性を評価した。Neurological Sciences誌2025年12月号の報告。 PEARL試験は、欧州11ヵ国で実施された24ヵ月間のプロスペクティブ第IV相観察試験である。対象は、慢性または反復性片頭痛と診断され、フレマネズマブ(225mg月1回または675mg年4回)の皮下投与を受け、6ヵ月以上の治療を完了した18歳以上の成人患者。主要エンドポイントは、治療開始後6ヵ月間における1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)が50%以上減少した患者の割合と定義した。副次エンドポイントは、平均MMD、急性片頭痛薬の使用、片頭痛評価尺度(MIDAS)と頭痛影響テスト(HIT)で測定した片頭痛関連障害スコアのベースラインから12ヵ月目までの平均変化量とした。安全性は、有害事象データの収集により評価した。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年9月22日)時点で登録された1,140例のうち968例を有効性の解析対象に含めた。・主要エンドポイントは、58.5%の患者で達成した。・12ヵ月にわたり、MMD、急性片頭痛薬の使用、障害スコアの持続的な減少が観察された。・新たな安全性シグナルは検出されなかった。 著者らは「PEARL試験の第3回中間解析の結果は、大規模な実臨床の片頭痛患者におけるフレマネズマブの長期的有効性を示すエビデンスである。これらの結果は、片頭痛の予防戦略としてのフレマネズマブの継続的な使用を支持するものであり、片頭痛の管理に実臨床のエビデンスを統合することの価値を強調するものである」としている。

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再発・難治性濾胞性リンパ腫、R2療法+エプコリタマブでORR・PFS改善/Lancet

 再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者において、レナリドミド+リツキシマブの2剤併用療法(R2)と比較して、エプコリタマブ+R2の3剤併用療法は、奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)に関して優越性が認められた。エプコリタマブ+R2はR2と比較してGrade3以上の有害事象の発現割合が高かったが、有害事象は管理可能で、個々の既知の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのLorenzo Falchi氏らが、30ヵ国189施設で実施した国際共同無作為化非盲検第III相試験「EPCORE FL-1試験」の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、エプコリタマブ+R2を濾胞性リンパ腫の2次治療以降における新たな標準治療と位置付けるものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月7日号掲載報告。R2へのエプコリタマブ上乗せの有効性と安全性を検証 研究グループは、18歳以上、ECOG PSスコア0~2で、抗CD20抗体と化学療法を併用した1レジメン以上の治療歴のあるステージII~IV(以前の分類ではGrade1~3A)の再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者を、エプコリタマブ+R2群またはR2のみ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 28日間を1サイクルとして、エプコリタマブはサイクル1~3では週1回、サイクル4~12では4週間ごとに、2~3ステップ漸増により最長12サイクル皮下投与した。レナリドミドは20mg 1日1回を最長12サイクル経口投与し、リツキシマブはサイクル1では週1回、サイクル2~5では4週ごとに375mg/m2を最長5サイクル静脈内投与した。 主要評価項目は、独立判定委員会によるLugano基準に基づくORRおよびPFSであった。 統計解析はORR→PFSの順に階層的検定を行い、有意水準はORRが片側0.005、PFSは片側0.0023とした。 2025年5月24日のデータカットオフ日までに2回の中間解析が実施され、本報告はPFSイベントの78%が発生した後に実施された第2回中間解析に基づくものであった。エプコリタマブ+R2群でORRは95%、PFSは中央値未到達 2022年9月20日~2025年1月10日に、スクリーニングを受けた668例のうち488例が無作為化された(エプコリタマブ+R2群243例、R2群245例)。 本試験は主要評価項目を達成し、エプコリタマブ+R2群のR2群に対する優越性が検証された。 追跡期間中央値14.8ヵ月(四分位範囲:11.4~19.0)において、ORRはエプコリタマブ+R2群95%(95%信頼区間[CI]:92~97)、R2群79%(74~84)(群間差:16%、95%CI:10~22、p<0.0001)であった。 また、PFS中央値は、エプコリタマブ+R2群では未到達、R2群では11.7ヵ月(95%CI:11.1~15.1)であり、エプコリタマブ+R2群で有意に延長した(ハザード比:0.21、95%CI:0.14~0.31、p<0.0001)。16ヵ月PFS率は、エプコリタマブ+R2群で良好であった(85.5%vs.40.2%)。 Grade3以上の有害事象の発現率は、エプコリタマブ+R2群90%(219/243例)、R2群68%(161/238例)であった。エプコリタマブ+R2群におけるサイトカイン放出症候群は軽度(Grade1:28例[21%]、Grade2:7例[5%])かつ管理可能であり、全例で回復した。

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無症候性高度頸動脈狭窄症、薬物療法+CASで周術期脳卒中/死亡リスク減/NEJM

 無症候性の高度頸動脈狭窄症患者において、強化薬物療法単独と比較し、頸動脈ステント留置術(CAS)を追加すると、周術期脳卒中または死亡、あるいは4年以内の同側脳卒中の複合リスクが低下した。一方、頸動脈内膜剥離術(CEA)の追加では有意な効果は得られなかった。米国・メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らが、5ヵ国155施設で実施した2つの観察者盲検並行群間試験「Carotid Revascularization and Medical Management for Asymptomatic Carotid Stenosis Trials:CREST-2試験」の結果を報告した。薬物療法、CAS、CEAの進歩により、無症候性頸動脈狭窄症の適切な治療方針に疑義が生じている。強化薬物療法に血行再建術を追加することで、強化薬物療法単独より大きな効果が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年11月21日号掲載の報告。強化薬物療法単独vs.CAS併用、強化薬物療法単独vs.CEA併用の2つの試験を実施 研究グループは、35歳以上で、無作為化前180日以内に頸動脈領域の脳卒中、一過性脳虚血発作または一過性黒内障の既往のない無症候性の高度(70%以上)頸動脈狭窄を有する患者を登録した。 ステント留置術試験では強化薬物療法群とCAS+強化薬物療法群(CAS併用群)を比較し、頸動脈内膜剥離術試験では強化薬物療法群とCEA+強化薬物療法群(CEA併用群)を比較した。 主要アウトカムは、無作為化から44日目までの脳卒中または死亡、あるいはその後の追跡期間(最長4年間)における同側虚血性脳卒中の発生の複合であった。CAS併用で、周術期脳卒中/死亡および4年以内の同側脳卒中の複合リスクが低下 ステント留置術試験では1,245例が無作為化され、追跡期間中央値は3.6年(四分位範囲[IQR]:1.6~4.0)であった。2014年12月10日に無作為化が開始され、最終追跡調査は2025年7月31日に完了した。 頸動脈内膜剥離術試験では1,240例が無作為化され、追跡期間中央値は4.0年(IQR:2.0~4.0)であった。2014年12月9日に無作為化が開始され、最終追跡調査は2024年9月30日に完了した。 主要アウトカムのイベントの4年発生率は、ステント留置術試験において、強化薬物療法群6.0%(95%信頼区間[CI]:3.8~8.3)、CAS併用群2.8%(95%CI:1.5~4.3)(絶対リスク群間差:3.2%、95%CI:0.6~5.9、p=0.02)、頸動脈内膜剥離術試験において、強化薬物療法群5.3%(95%CI:3.3~7.4)、CEA併用群3.7%(95%CI:2.1~5.5)(絶対リスク群間差:1.6%、95%CI:-1.1~4.3、p=0.24)であった。 無作為化から44日目までに、ステント留置術試験では、強化薬物療法群で脳卒中や死亡の発生はなかったが、CAS併用群で脳卒中7例、死亡1例が発生した。一方、頸動脈内膜剥離術試験では、強化薬物療法群で脳卒中3例、CEA併用群で脳卒中9例が発生した。

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