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認知症施設入所者、急性期入院時の経管栄養率は営利・大病院・末期ほど高い

米国ナーシングホーム入所の重度認知障害者が、急性期病院に入院した際に経管栄養を導入される頻度は、営利病院、病床数が多い病院ほど高く、また死亡前6ヵ月以内にICUを利用した人で高率であることが明らかになった。重度認知障害者に対する経管栄養のベネフィットに関しては議論が分かれている。一方で、ナーシングホームで経管栄養を受けている人の、およそ3分の2が急性期病院に入院した際に導入されている。米国ブラウン大学Warren Alpert校高齢者ヘルスケア研究センターのJoan M. Teno氏らは、導入傾向を明らかにしようと調査を行った。JAMA誌2010年2月10日号より。入院中の経管栄養導入率は毎年減少研究グループは、2000~2007年にかけて、米国のナーシングホーム居住の重度認知障害者16万3,022人について調査を行った。被験者の入院回数は、合わせて28万869件、入院先の急性期病院の数は2797カ所だった。入院中の経管栄養導入率は、入院100件当たり0~38.9件と幅があり、平均値は同6.5件、中央値は5.3件だった。また、平均導入率は、2000年の7.9/入院100件から、2007年の6.2/入院100件へと徐々に減少していた。導入率は営利病院が公立病院の約1.3倍、310床超の病院が101床未満の約1.5倍入院中の経管栄養導入率は、公立病院が入院100件中5.5件に対し営利病院は同8.5件と、高率だった(補正後オッズ比:1.33、95%信頼区間:1.21~1.46)。また、病床数が101床未満の病院では同4.3件だったのに対し、310床超では同8.0件と高かった(同:1.48、1.35~1.63)。さらに病院で死亡した人のうち、死亡前6ヵ月に集中治療室(ICU)を利用した人が多い病院の方が、導入率も高かった。同割合が最も低い10分位範囲の群では、導入率は入院100件中2.9件だったのに対し、最も高い10分位範囲の群では、同10.1件だった(同:2.60、2.20~3.06)。患者属性で補正した後も、こうした傾向には有意差がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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社会経済的格差が、国民のがん治療格差をもたらしている:英国

英国で2000年に公表された「NHS Cancer Plan」は、英国社会全体の、がん治療アウトカムの向上と健康格差を是正するため、医療サービスへのアクセスの平等を図ることを目的に作成されたものである。ロンドン大学校疫学・公衆衛生部門のRosalind Raine氏らのグループは、その導入効果を評価するため、がん患者の救急入院と選択的入院、大腸がん、乳がん、肺がんの外科手術の種類が、社会経済的要因、年齢、性別、入院年によってどのように変動したかを調査した。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月14日号)より。衰退が進む地域の女性、高齢者ほどがん救急入院率が高い研究グループは、1999年4月1日から2006年3月31日までの病院症例統計(HES)の患者個人データを基に、反復横断研究を行った。症例対象は大腸がん、乳がん、肺がんの診断で入院治療を受けた50歳以上の患者56万4,821例。主要評価項目は、救急入院した患者の比率と、推奨手術治療を受けた患者の割合とした。結果、がん救急入院率が、社会経済的に衰退傾向が進む地域の住民、女性、高齢者で高い傾向にあることが明らかになった。たとえば乳がんに関する救急入院率は、地域衰退指数(Index of Multiple Deprivation、5段階評価)が最低の地域(衰退が進んでいない地域)と最高地域(衰退が進む地域)との補正オッズ比が、0.63(95%信頼区間:0.60~0.66)だった。また肺がんに関する救急入院率で、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は3.13(同:2.93~3.34)に上った。この年齢層による差異は、年々改善している傾向はみられたが、衰退が進む地域の患者については、改善傾向はみられなかった。衰退が進む地域の患者ほど、がん推奨手術を受けていないさらに、衰退指数が高い地域の患者ほど、大腸がん、乳がん、肺がんで推奨される手術を受けていないことが認められた。またその傾向が、改善してきている傾向は認められなかった。たとえば、大腸がんで前方切除術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では75.5%(4,497/5,959例)だったのに対し、最高地域では67.4%(3,529/5,237例)で、オッズ比1.34(95%信頼区間:1.22~1.47)の差があった。乳がんで乳房温存手術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では63.7%(18,445/28,960例)だったのに対し、最高地域では54.0%(11,256/20,849例)で、オッズ比は1.21(同:1.16~1.26)だった。また男性は女性と比べて前方切除術や肺がん切除術を受けている割合が低く、高年齢層ほど乳房温存手術と肺がん切除を受けている割合が低かった。たとえば、肺がん切除の場合、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は、0.52(95%CI 0.46~0.59)。これらから研究グループは、「NHS Cancer Plan実行にもかかわらず、国民の医療サービスへのアクセスおよびケア供給いずれにも、社会経済的要因がいまだに強い影響をおよぼしている」と報告をまとめている。

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

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人工呼吸器装着の重症疾患患者、非鎮静で非装着日数が増加

人工呼吸器装着中の重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法が、非装着日数を増加させることが、デンマークOdense大学病院麻酔科・集中治療医学のThomas Strøm氏らが実施した無作為化試験で示された。人工呼吸器装着重症疾患患者の標準治療では、通常、持続的な鎮静が行われる。最近は毎日中断しながら鎮静を継続する方法の有用性も示されているが、Odense大学病院の集中治療室(ICU)では非鎮静のプロトコールが標準だという。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。非鎮静群と中断的鎮静群の非装着日数を比較する単施設無作為化試験研究グループは、人工呼吸器装着期間は毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法で短縮できることを検証するために、単施設における無作為化試験を実施した。24時間以上の人工呼吸器の装着を要すると考えられる成人重症疾患患者140例が登録され、非鎮静群(70例)あるいは毎日中断しながら鎮静[プロポフォール(商品名:ディプリバンなど)20mg/mLを48時間、以後ミダゾラム(同:ドルミカムなど)1mg/mL]を続ける群(70例)に無作為に割り付けられた。両群ともモルヒネ(2.5あるいは5mg)がボーラス投与された。主要評価項目は人工呼吸器装着後28日までの非装着日数とし、入院~28日までのICU収容日数および入院~90日までの入院日数も記録した。28日までの非装着日数:13.8日 vs. 9.6日48時間以内に死亡あるいは人工呼吸器が抜管された27例が試験から除外された。平均人工呼吸器非装着日数は、非鎮静群(55例)が13.8日と中断的鎮静群(58例)の9.6日に比べ有意に増加した(平均差:4.2日、p=0.0191)。非鎮静群は、ICU在室日数(ハザード比:1.86、p=0.0316)および30日までの入院日数(同:3.57、p=0.0039)がともに、中断的鎮静群よりも有意に短かった。事故による抜管、CTやMRIによる脳検査を要する症例、人工呼吸器関連の肺炎はみられなかった。激越型せん妄の頻度は、非鎮静群が20%(11/55例)と中断的鎮静群の7%(4/58例)に比べ有意に高かった(p=0.0400)。著者は、「人工呼吸器装着重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を行うよりも鎮静を行わない方法が非装着日数を増加させる」と結論し、「この効果の他施設における再現性を検証するために多施設共同試験を実施すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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帝王切開は医学的適応がある場合に限定して施行すべき

妊産婦および新生児の周産期アウトカムを改善するには、帝王切開は医学的適応がある場合に限って施行すべきであることが、タイKaen大学産婦人科のPisake Lumbiganon氏らがWHOの世界調査として実施した出産法と妊娠アウトカムに関する研究で明らかとなった。近年、帝王切開施行率が世界的に上昇しており、その妥当性について議論が起きているという。不必要な帝王切開の実施は、産科領域におけるエビデンスと実臨床のミスマッチの古典的な実例とされ、その議論を通じて実臨床における必然的な帰結を変更する試みの複雑さに注目が集まっている。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月12日号)掲載の報告。日本を含むアジア9ヵ国が参加研究グループは、WHOの世界調査の一環として、2004~2005年にアフリカとラテンアメリカで、2007~2008年にはアジアにおいて、個々の出産法の施行率を推算し、出産法と妊産婦、新生児の予後の関連を検討した。アジアの調査には9ヵ国(カンボジア、中国、インド、日本、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム)が参加した。各国の首都と2つの地域あるいは行政区が無作為に選ばれた。施設の詳細と産科治療のリソースのデータを集め、妊婦の診療記録を収集して産科および周産期イベントのデータを解析した。帝王切開で妊産婦、新生児の周産期リスクが増加登録された122施設から11万2,152件の出産が報告され、そのうち10万9,101件(97%)のデータが得られ、10万7,950件が解析可能であった。帝王切開は分娩前と分娩中、医学的適応の有無で4群に分け、経膣分娩は自然分娩(対照)と手術分娩の2群に分けて解析した。全体の帝王切開の施行率は27.3%(2万9,428件)、経膣分娩率は72.7%(7万8,522件)であった。経膣分娩のうち、自然分娩が69.5%(7万5,057件)、手術分娩は3.2%(3,465件)であった。妊産婦の周産期リスクを妊産婦死亡/罹病インデックス(妊産婦死亡、集中治療室入院、輸血、子宮摘出術、内腸骨動脈結紮術のうち一つ以上)で解析したところ、経膣自然分娩に比べ他の5群はいずれもリスクが高かった(補正ハザード比:経膣手術分娩2.1、分娩前非適応帝王切開2.7、分娩前適応帝王切開10.6、分娩中非適応帝王切開14.2、分娩中適応帝王切開14.5)。骨盤位(逆子)の周産期アウトカムは、分娩前帝王切開(補正ハザード比:0.2)、分娩中帝王切開(同:0.3)ともに改善されたが、7日以上の新生児集中治療室(NICU)入室リスクは分娩前帝王切開(同:2.0)、分娩中帝王切開(同:2.1)ともに高かった。著者は、「妊産婦および新生児の周産期アウトカムを改善するには、帝王切開は医学的適応がある場合に限って施行すべき」と結論し、「帝王切開による出産を計画している妊婦と医療者は、可能性のあるリスクについて十分に話し合ったうえで決定すべき」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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多発性硬化症に対する経口fingolimod、2年間の有効性確認

多発性硬化症の治療薬として開発中の、経口fingolimod(FTY720、フィンゴリモド;スフィンゴシン1リン酸受容体調節薬)は、リンパ節からのリンパ球放出を抑制する作用が特徴の免疫抑制薬である。これまで第II相、第III相(12ヵ月間)臨床試験の結果、プラセボまたはインターフェロンβ-1a筋注と比べて、多発性硬化症の再発率およびMRI評価のエンドポイントを有意に改善することが明らかになった。本稿は、スイス・バーゼル大学病院Ludwig Kappos氏らFREEDOMS治験グループによる、24ヵ月間の第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験の報告で、NEJM誌2010年2月4日号(オンライン版2010年1月20日号)に掲載された。再発寛解型多発性硬化症患者1,033例を対象に治験グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが0~5.5で、過去1年間に1回以上の再発または過去2年間に2回以上再発したことがある18~55歳の再発寛解型多発性硬化症患者1,272例を登録、24ヵ月間にわたって二重盲検無作為化試験を行った。被験者は経口fingolimodまたはプラセボを1日1回、0.5mgまたは1.25mg投与された。エンドポイントは、年間の再発率(主要エンドポイント)と障害進行までの期間(副次エンドポイント)とした。被験者のうち試験を完了したのは、計1,033例(81.2%)だった。0.5mg、1.25mg用量とも24ヵ月間の再発率、障害進行リスクを有意に低下主要エンドポイントの年間再発率は、fingolimod 0.5mg投与群が0.18、fingolimod 1.25mg投与群が0.16に対し、プラセボ投与群は0.40だった(投与群対プラセボはいずれもP

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多発性硬化症に対する経口クラドリビン、2年間の有効性確認

日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に研究グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが5.5以下で、過去1年間に1回以上の再発を経験した再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に無作為化試験を行った。被験者は、経口クラドリビンを累積投与量で3.5mg/kg体重投与される群、同5.25mg/kg体重投与される群、またはプラセボを投与される群に1:1:1となるよう割り付けられた。試験期間96週のうち、最初の48週での投薬は4コース(クラドリビン3.5mg/kg群は2コース+プラセボ2コース)行われた(投薬日数計8~20日間/年)。その後の48週以降に2コース(48週時点と52週時点)投与が各群に行われた(プラセボ群にはプラセボ投与、他の2群にはクラドリビン投与)。主要エンドポイントは、96週時点での再発率とした。試験を完了したのは1,184例(89.3%)、解析はintention-to-treatにて行われた。3.5mg群、5.25mg群とも再発率・障害進行とも有意に低下、ただし有害事象も高頻度クラドリビン投与群はいずれの用量群も、年間再発率がプラセボ群より有意に低下した。それぞれ3.5mg群0.14、5.25mg群0.15、プラセボ群0.33だった(両比較ともP

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敗血症ヒドロコルチゾン療法患者への強化インスリン療法、フルドロコルチゾン

敗血症性ショックを起こした患者に行われるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド療法)に関して、強化インスリン療法を行っても従来インスリン療法の場合と比べて、院内死亡率に有意差はないことが明らかになった。また、フルドロコルチゾン(商品名:フロリネフ)を追加投与しても、同死亡率に有意差はなかった。フランスVersailles大学のDjillali AnnaneらCOIITSS(Corticosteroids and Intensive Insulin Therapy for Septic Shock)研究グループが、約500人の敗血症患者を対象に、無作為化試験によって明らかにしたもので、JAMA誌2010年1月27日号で発表している。敗血症性ショック患者へのコルチコステロイド療法は、高血糖を誘発する可能性が指摘されており、また同療法でフルドロコルチゾンを追加投与するベネフィットは明らかになっていなかった。SOFAスコア8以上の敗血症患者509人を無作為化研究グループは、2006年1月~2009年1月にかけて、フランス11ヵ所の集中治療室(ICU)で、敗血症患者509人について多施設共同2×2無作為化試験を行った。被験者は、重症度評価基準のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで8以上だった。被験者は、(1)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群、(2)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群、(3)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群、(4)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群に割り付けられた。ヒドロコルチゾンは50mgを6時間毎にボーラス投与にて、フルドロコルチゾンは1日1回50μg経口投与にて、それぞれ7日間行われた。インスリン療法の違い、フルドロコルチゾンの有無いずれも、死亡率に有意差なし院内死亡率は、強化インスリン群が45.9%、従来インスリン群が42.9%だった(相対リスク:1.07、95%信頼区間:0.88~1.30、p=0.50)。重度低血糖(40mg/dL未満)がみられたのは、強化インスリン群の方が従来インスリン群より有意に多く、患者1人当たり平均頻度の差は0.15(95%信頼区間:0.02~0.28、p=0.003)だった。また、フルドロコルチゾン投与群の退院時死亡率は42.9%、同非投与群は45.8%で、有意差はみられなかった(相対リスク:0.94、同:0.77~1.14、p=0.50)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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CKDの転帰、糸球体濾過量が同レベルなら、蛋白尿が多い群で増悪

慢性腎不全(CKD)患者、糸球体濾過量(GFR)が同レベルなら、蛋白尿濃度が高い患者の方が、死亡や心筋梗塞のリスクが増大するようだ。カナダCalgary大学内科Brenda R. Hemmelgarn氏らが、92万人以上について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年2月3日号で発表した。92万人超を中央値35ヵ月で追跡同研究グループは、2002~2007年にかけて、カナダのアルバータ州で血清クレアチニン値を1回以上測定した人で、登録時に腎臓移植を必要としなかった、92万985人の成人について調査を行った。蛋白尿については、試験紙法とアルブミン・クレアチニン比(ACR)による測定を行った。追跡期間の中央値は、35ヵ月。被験者の89.1%が、GFR値が60mL/min/1.73m(2)以上だった。GFR量が多く高濃度の蛋白尿群の死亡率は、正常値群の2倍以上結果、蛋白尿が高濃度(試験紙法によるもの)で、GFR値が60mL/min/1.73 m(2)以上の群の補正後死亡率は、7.2/千人・年だった。これに対し、蛋白尿正常でGFR値が45~59.9mL/min/1.73m(2)の群では、2.9/千人・年で、2倍以上に上ることが認められた(率比:2.5、95%信頼区間:2.3~2.7)。蛋白尿をACRで測定した場合も、それぞれの群の補正後死亡率は、15.9/千人・年と7.0/千人・年と、率比は2.3(同:2.0~2.6)だった。また、心筋梗塞による入院や末期腎疾患、血清クレアチニン値の倍増といったイベントリスクについても、両群を比較した際、同様の傾向がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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「タイケルブ」が米国でホルモン受容体陽性/HER2陽性の転移性乳がん患者の一次治療として迅速承認を取得

英国グラクソ・スミスクラインは米国食品医薬品局(FDA)が「タイケルブ」について、転移性乳がん患者の経口薬による治療のファーストラインとして、タイケルブを使用した新たな併用療法を迅速承認したと発表した。同社の日本法人が5日に報告した。今回承認されたタイケルブの適応症は、ホルモン受容体陽性(HR+)かつHER2陽性の閉経後転移性乳がん患者に対するレトロゾールとの併用療法。タイケルブとアロマターゼ阻害剤との併用療法は転移性乳がんを対象としたトラスツズマブを含む化学療法のレジメンとは比較されていない。タイケルブはすでに、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤、タキサン系抗悪性腫瘍剤、及びトラスツズマブによる治療歴のあるHER2過剰発現を示す手術不能または再発乳患者におけるカペシタビン(製品名:ゼローダ)との併用療法として承認を取得している。現在、タイケルブ(欧州ではTYVERB)は、欧州医薬品審査庁(EMEA)によって、同様な適応症で審査中とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2010_01/P1000611.html

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術前心臓検査、中~高リスクの待機的非心臓手術施行患者の予後を改善

中~高リスクの待機的非心臓手術を受ける患者は、術前の非侵襲的心臓負荷検査によって1年生存率が改善され、入院期間が短縮することが、カナダ臨床評価学研究所(ICES)のDuminda N Wijeysundera氏が実施したコホート研究で示された。術前の非侵襲的心臓負荷検査は術後の心臓合併症を予防する可能性があるという。また、虚血性心疾患を検出したり、術前のインターベンション、術中の積極的な血行動態管理、術後のサーベイランス、手術の回避が有効な患者を同定するだけでなく、周術期のβ遮断薬使用の指針ともなる。それゆえ、ACC/AHAガイドラインは術前心臓検査を推奨しているが、対象は心臓合併症のリスク因子を有する患者に限られ、リスク因子のない患者を含めた術後の予後への影響は明確ではないという。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月28日号)掲載の報告。10年間の後ろ向きコホート研究研究グループは、中~高リスクの待機的非心臓手術施行前の非侵襲的心臓負荷検査が生存率および入院期間に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート研究を行った。対象は、1994年4月1日~2004年3月31日までにカナダ・オンタリオ州の救急施設に収容され、中~高リスクの待機的非心臓手術を施行された40歳以上の患者で、術前6ヵ月以内に非侵襲的心臓負荷検査を受けた者とした。全体の1年生存率、入院期間は改善されたが、低リスク患者ではむしろ有害な可能性も全コホート27万1,082人のうち、非侵襲的心臓負荷検査を受けたのは2万3,991人(8.9%)であった。傾向スコア法で術前心臓負荷検査を受けた患者と受けない患者の差を補正し、背景因子をマッチさせたコホート(4万6,120人)を設定した。術前心臓負荷検査により、1年生存率が有意に8%上昇し(ハザード比:0.92、p=0.03)、入院日数は有意に0.24日短縮した(p<0.001)。サブグループ解析として、改訂版心リスク指標(Revised Cardiac Risk Index;RCRI)に基づく検討を行ったところ、術前心臓負荷検査は低リスク(RCRIスコア:0)患者ではむしろ有害であった(ハザード比:1.35)が、中リスク(RCRIスコア:1~2)患者(ハザード比:0.92)および高リスク(RCRIスコア:3~6)患者(ハザード比:0.80)では有意なベネフィットが得られた。著者は、「術前の非侵襲的心臓負荷検査により、中~高リスクの待機的非心臓手術施行例患者の1年生存率が改善され、入院期間が短縮された」と結論し、「このベネフィットがもたらされるのは、主に3つ以上のリスク因子を有する周術期心臓合併症の高リスク患者である。一方、リスク因子が1~2つの中リスク患者ではベネフィットが少なくなり、リスク因子のない低リスク患者ではむしろ有害な可能性が示唆される。これらの知見は、術前心臓検査を推奨するACC/AHAガイドラインを支持するものである」としている。(菅野守:医学ライター)

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肺がん診断後の禁煙により予後が改善

早期肺がんの診断後に禁煙を開始すると、喫煙を継続した場合に比べ65歳以上の患者の予後が改善することが、イギリス・バーミンガム大学タバココントロール研究センターのA Parsons氏らによる系統的なレビューで示された。喫煙は原発性肺がん発症のリスク因子であり、生涯喫煙者は生涯非喫煙者の20倍のリスクを有するとされる。一方、肺がんと診断されたのちの禁煙が予後に及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した試験を系統的にレビュー研究グループは、原発性肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響のエビデンスについて系統的レビューを行った。データベース(CINAHL、Embase、Medline、Web of Science、CENTRAL)を用い、発症時の病期や腫瘍の組織像にかかわらず、肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験および縦断的観察研究を抽出し、各論文に掲載された文献リストの論文にもあたった。2名の研究者が別個に個々の論文をレビューし、適格基準を満たす試験を選択した。変量効果モデルを用いて各試験のデータを統合し、不均質性の評価にはI2 statisticを使用した。このレビューで得られた診断後の喫煙継続者と禁煙者の死亡率に基づいて生命表をモデル化した。これを用いて早期非小細胞肺がんおよび限局型小細胞肺がんの5年生存率を推算した。非小細胞肺がん、限局型小細胞肺がんとも、5年生存率が2倍以上に解析の対象となった10試験のうち9試験では、ほとんどの患者が早期肺がんと診断されていた。早期非小細胞肺がんでは、診断後も喫煙を継続した患者の全死亡率は禁煙した場合の約3倍であり(ハザード比:2.94)、再発率は約2倍(同:1.86)に達した。限局型小細胞肺がんでは、全死亡率が約2倍(ハザード比:1.86)、2次原発がんの発現率が4倍以上(同:4.31)、再発率が約1.3倍(同:1.26)であった。非小細胞肺がんにおいて、禁煙ががん特異的死亡率や2次原発がんの発現に及ぼす影響を解析した試験はなかった。得られたデータに基づいてモデル化した生命表では、65歳以上の非小細胞肺がんの場合、喫煙を継続した患者の5年生存率が33%であったのに対し、禁煙した患者では70%に達した。限局型小細胞肺がんの5年生存率は、喫煙者の29%に対し禁煙者は63%であった。著者は、「早期肺がんの診断後の禁煙は予後を改善することが示唆された」と結論し、「生命表では、禁煙の肺がん抑制効果によって防止された死亡の予測値が、禁煙の心呼吸器疾患の抑制効果で防止された死亡の数よりも大きかったことから、禁煙のベネフィットは主にがんの進行の抑制によるものと考えられる。早期肺がんが見つかった場合は禁煙を勧めるべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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医療職は親に人気!親が子供になってほしい職業は看護師が1位

バンダイが0歳から12歳の保護者2000人に行ったアンケートによると、将来、子供になってほしい職業は男女総合で看護師が一番多かった。女の子では、看護師が1位、保育士、パティシエ、薬剤師が続く。男の子では公務員が1位、プロ野球選手、医師が続いた。親にとって子供の将来へ安定志向が見えるなか、医療職が根強い人気であることがわかる。●調査結果はこちらhttp://www.bandai.co.jp/kodomo/question173.html

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日本語版「NCCNガイドライン」がWeb公開

世界的な診療ガイドラインである「NCCNガイドライン」の日本語版が、先端医療振興財団臨床研究情報センターのWebサイトにて公開されました。まずは結腸、直腸の2種を掲載。今後、各種のガイドラインを増やしていくという。●サイトはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/index.html

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双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効:BALANCE試験

長期的な治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウム(商品名:リーマスなど)とバルプロ酸(同:デパケンなど)の併用がバルプロ酸単剤よりも有効なことが、イギリス・オックスフォード大学精神科のJohn R Geddes氏らが行った無作為化試験(BALANCE試験)で示された。双極性障害は寛解が得られても多くが再発、慢性化し、世界的に15~44歳の障害の原因として最も重要な疾患の一つとされる。炭酸リチウムとバルプロ酸セミナトリウムはいずれも単剤で双極性障害の再発予防薬として推奨されているが、十分な効果が得られない患者も多い。再発例には、エビデンスがほとんどないにもかかわらず両薬剤の併用療法が推奨されているのが現状だという。Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2009年12月23日号)掲載の報告。単剤と併用を比較するオープンラベル無作為化試験BALANCE試験の研究グループは、リチウムとバルプロ酸の併用療法がそれぞれの単剤療法よりも双極性I型障害の再発予防に有効か否かを検討する、オープンラベル無作為化試験を実施した。イギリス、フランス、アメリカ、イタリアの41施設から16歳以上の双極性I型障害患者330例が登録され、リチウム単剤群(血漿濃度0.4~1.0mmol/L、110例)、バルプロ酸単剤群(同750~1,250mg、110例)、両薬剤併用群(110例)に無作為に割り付けられた。患者と医師には治療割り付け情報が伝えられたが、予後イベントの評価を行う試験管理チームには知らされなかった。最長で24ヵ月間のフォローアップが行われた。主要評価項目は「緊急の気分障害エピソードに対する新たな介入の開始」とし、intention-to-treat解析を行った。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない緊急の気分障害エピソードで介入を受けた患者は、併用群が54%(59/110例)、リチウム単剤群が59%(65/110例)、バルプロ酸単剤群は69%(76/110例)であった。併用群は、バルプロ酸単剤群よりもエピソードに対する介入が有意に低減した(ハザード比:0.59、p=0.0023)が、リチウム単剤群との比較では有意な差は認めなかった(ハザード比:0.82、p=0.27)。リチウム単剤群はバルプロ酸単剤群よりも介入の低減効果が高かった(ハザード比:0.71、p=0.0472)。16例に重篤な有害事象がみられた。そのうち7例がバルプロ酸単剤群で、3例が死亡した。5例がリチウム単剤群で2例が死亡、4例は併用群で死亡は1例であった。著者は、「臨床的に長期の治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウムとバルプロ酸の併用あるいはリチウム単剤がバルプロ酸単剤よりも有効なことが示唆される。このベネフィットは、試験開始時の重症度とは関連せずに認められ、2年間持続した。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない」と結論している。さらに、「アメリカやイギリスの双極性障害治療ガイドラインでは、長期的治療の1次治療としてバルプロ酸単剤を推奨しているが、リチウムとの併用あるいはリチウム単剤を考慮すべきである。また、リチウム単剤療法中に再発を繰り返す患者にはバルプロ酸単剤への切り替えが推奨されているが、この場合は併用療法がより有効であろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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病態安定HIV感染患者、ラルテグラビル切り替え効果の非劣性示せず:SWITCHMRK 1、2試験

ロピナビル-リトナビル(商品名:カレトラ)ベースのレジメンでヒト免疫不全ウイルス(HIV)が抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、同薬剤による脂質異常などの有害事象の回避を目的にラルテグラビル(同:アイセントレス)へ切り替える治療法は、ロピナビル-リトナビルを継続した場合に比べウイルス抑制効果が劣るため許容されないことが、2つの多施設共同試験(SWITCHMRK 1、2試験)で示された。HIV-1インテグラーゼ阻害薬という新たなクラスの経口抗HIV薬であるラルテグラビルは、プロテアーゼ阻害薬であるロピナビル-リトナビルにみられる脂質異常などの有害事象がなく、未治療例、既治療例ともに有効性が確認されている。病態が安定したHIV感染患者には、ウイルス抑制効果が同等であれば、より簡便で有害事象の少ない治療法が望ましい。アメリカ・ノースカロライナ大学のJoseph J Eron氏が、Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月13日号)で報告した。切り替え群と継続群で脂質の変化率、ウイルス抑制効果、安全性を評価SWITCHMRK試験の研究グループは、ロピナビル-リトナビルをベースとする併用レジメンでウイルスが抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、ラルテグラビルへの切り替えとロピナビル-リトナビル継続の安全性と有効性を比較する二重盲検ダブルダミー無作為化第III相試験を実施した。対象は、ロピナビル-リトナビルをベースとするレジメンにより血漿ウイルスRNA濃度がPCR法で50コピー/mL未満あるいは分岐DNA法で75コピー/mL未満の状態が3ヵ月以上持続している18歳以上のHIV感染患者。2007年6月~2008年5月までに、2つの試験に5ヵ国81施設から848例が登録され、707例が適格基準を満たした。ロピナビル-リトナビルからラルテグラビル(400mg×2回/日)への切り替え群に353例が、ロピナビル-リトナビル(200mg/50mg×2錠×2回/日)継続群には354例が無作為に割り付けられた。いずれの群も、2つ以上のヌクレオシド系あるいはヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬を併用することとした。主要評価項目は、試験開始から12週までの血清脂質値の平均変化率、24週におけるウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合、24週までの有害事象の頻度とした。切り替え群は血清脂質値が低下したが、ウイルス抑制効果が予想以上に低い2つの試験を合わせ、少なくとも1回の治療を受けた702例が有効性および安全性の評価の対象となった(切り替え群:350例、継続群:352例)。血清脂質の変化率は、2試験ともに切り替え群が継続群に比べて有意に大きく(p<0.0001)、両試験を合わせた総コレステロール値の変化率は切り替え群が-12.6%、継続群が1.0%、非HDLコレステロール値はそれぞれ-15.0%、2.6%、トリグリセライド値は-42.2%、6.2%であり、いずれも切り替え群が良好であった。24週の時点でウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合は、切り替え群の84.4%(293/347例)に対し継続群は90.6%(319/352例)であり、切り替え群が6.2%低かった。臨床的な有害事象および検査値異常の頻度は両群で同等であった。重篤な薬剤関連有害事象や治療関連死は認めなかった。中等度~重度の有害事象のうち1%を超えたのは継続群の下痢(3%)のみであった。切り替え群のウイルス抑制効果が継続群に比べ予想以上に低かったため、両試験は24週の時点で中止された。著者は、「血清脂質値は、ラルテグラビルへの切り替え群がロピナビル-リトナビル継続群に比べ低下したが、切り替え群の継続群に対するウイルス抑制効果の非劣性は示されなかった」と結論している。さらに、「事後解析では、切り替え群のうち特に本試験登録前の抗HIV治療が無効であった症例でウイルス抑制効果が低かったのに対し、前治療無効歴のない症例では両群のウイルス抑制効果は同等であった。無作為割り付け前に前治療無効歴の有無で層別化しなかったことが、データの解釈を混乱させた可能性がある」と指摘し、「日常診療においてレジメン変更のリスクとベネフィットを考慮する際は、過去の薬剤耐性検査や治療結果などの背景情報を可能な限り収集すべきである」としている。(菅野守:医学ライター)

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ロタウイルスワクチンの接種効果:アフリカからの報告

ロタウイルスは、世界的に乳幼児における重症胃腸炎の最も頻度が高い原因として知られる。世界保健機構(WHO)によれば、ロタウイルス感染による年間の小児死亡例は推定52万7,000例で、そのうち23万例以上は、サハラ以南のアフリカで起きているという。南アフリカのWitwatersrand大学疾病ワクチン予防研究部門のShabir A. Madhi氏らは、アフリカの1歳未満児におけるロタウイルスワクチンの有効性に関する臨床試験を実施。その結果、1歳未満での重症ロタウイルス胃腸炎発生の有意な低下が確認できたと報告した。同地域は貧困が深刻で医療資源が限られており、ワクチン接種による重症化予防が期待されている。NEJM誌2010年1月28日号より。乳児約5,000例を、3回or2回接種群、プラセボ群に無作為化し追跡Madhi氏らは、南アフリカ共和国とマラウイ共和国両国の複数施設から健康な乳児を登録し、重症ロタウイルス胃腸炎予防に関する、経口ロタウイルス生ワクチンの有効性を評価する無作為化プラセボ対照試験を行った。試験に登録された乳児は、南アフリカから3,166児(全体の64.1%)、マラウイから1,773児(同:35.9%)の計4,939児で、1:1:1の比率で無作為に、ワクチン2回投与群(プラセボ投与1回を含む3回投与群も含む、1,647例)、ワクチン3回投与群(1,651例)、プラセボ3回投与群(1,641例)に割り付けられ追跡された。ワクチン接種は、生後6週目、10週目、14週間目に行われた。積極的な追跡サーベイランスで、1歳未満に起きた野生型ロタウイルスによる胃腸炎症状エピソードの評価を行い、Vesikariスケールで類型化した。重症ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン有効性は61.2%有効性解析に含まれたのは4,417児。そのうち重症ロタウイルス胃腸炎の発生は、プラセボ群で4.9%、ワクチン接種群は1.9%で、ワクチンの有効性は61.2%(95%信頼区間:44.0~73.2)だった。ワクチン有効性は、マラウイ(49.4%)の方が、南アフリカ(76.9%)より低かった。しかし重症ロタウイルス胃腸炎が予防された症例数は、マラウイ(6.7例/ワクチン接種100児年)の方が、南アフリカ(4.2例/ワクチン接種100児・年)より多かった。原因を問わない重症胃腸炎に対するワクチン有効性は、30.2%だった。一つ以上の重篤な有害事象は、ワクチン接種群は9.7%、プラセボ群では11.5%報告された。(医療ライター:朝田哲明)

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ロタウイルスワクチンの接種効果:メキシコからの報告

メキシコでは2006年2月から2007年5月にかけて、小児に対する一価ロタウイルスワクチン接種が段階的に導入された。その有効性を評価するため、メキシコ保健省青少年保健センター(CENSIA)のVesta Richardson氏らは2008年と20009年に、メキシコ小児の下痢関連死について調査を行った。結果、有意な低下が確認され、ロタウイルスワクチン接種の有効性が示唆されたと報告した。NEJM誌2010年1月28日号より。5歳未満児のワクチン接種の有効性を、死亡データを用いて評価Richardson氏らは、2003年1月~2009年5月のメキシコ5歳未満児の下痢による死亡のデータを入手し、ロタウイルスワクチン導入前(2003~2006年)をベースラインとし、2008年および2008~2009年のロタウイルス流行期との、下痢関連死亡率に関する比較を行った。ワクチンの1回接種率は、行政データから、2007年12月までに生後11ヵ月以下の乳児で、約74%に上ると推計された。ワクチン接種導入後は下痢関連死亡率が5歳未満児35%、0歳児41%減少解析の結果、2008年の5歳未満児の下痢関連死亡は1,118例で、2003~2006年(ベースライン)死亡例の年間中央値1,793例より、675例減少していた。下痢関連死亡率でみると、ベースラインで10万児当たり18.1例だったものが、2008年には同11.8例に減少しており、減少率は35%(95%信頼区間:29~39、P

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ロタウイルスワクチンの接種効果:米国SCID乳児でウイルス感染例が報告

米国で、経口5価ロタウイルス生ワクチン(RV5)の接種を受けた、重症複合型免疫不全症(SCID)の乳児3児が、同ウイルスに感染したことが報告された。いずれの乳児も、同ワクチンの初回または2回目の接種後1ヵ月以内に、脱水症状や下痢を起こし、その後、SCIDであることが判明したケースだという。米国Baylor大学のNiraj C. Patel氏らの症例報告によるもので、NEJM誌2010年1月28日号で発表された。米国では2006年にRV5が承認を受け、その後、乳児へのルーチン摂取が行われるようになっている。脱水や重度下痢、成長障害など引き起こすPatel氏らの報告によると、1児は、生後2ヵ月と4ヵ月に、RV5の接種を受けたケース。その後、生後5ヵ月の時、脱水、重度の下痢、代謝性アシドーシス、成長障害、肺炎で入院した。2児目は、生後2ヵ月と4ヵ月でRV5を接種し、2回目を受けた6日後、ショック症状、脱水、水溶状の下痢を起こしたケース。3児目は、生後2ヵ月でRV5を接種後、重度の下痢、成長障害、呼吸促迫を起こしたケースだった。なおいずれの乳児も、集団保育は受けていなかった。RV5投与前にSCID検査の実施が望ましい3児の便について、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)定量法と遺伝子配列分析を行った結果、RV5ワクチンに含まれるウシロタウイルス(WC3)が検出された。RV5は親株となるWC3と4種のヒトロタウイルスを合わせ、弱毒化したもの。これまでに、WC3様のウシロタウイルスの、ヒトへの感染例は報告されていなかった。この結果を受け、Patel氏らは、SCIDの家族歴がない乳児に対し、SCIDの有無を事前に見極めずにRV5ワクチンを接種することは「あり得るかもしれない」とした上で、新生児に対して行う血液検査の中で、SCIDの有無を見極めることで、医師による乳児に対するワクチン投与の、より効果的な選択を可能にし、ワクチン投与に伴う病気の発症予防にもつながると述べている。米国では、新生児に対し、より頻度の高い遺伝性疾患に関する血液検査を行っており、その際、SCIDの有無を検査している州もあるという。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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