病態安定HIV感染患者、ラルテグラビル切り替え効果の非劣性示せず:SWITCHMRK 1、2試験

提供元:ケアネット

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公開日:2010/02/11

 



ロピナビル-リトナビル(商品名:カレトラ)ベースのレジメンでヒト免疫不全ウイルス(HIV)が抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、同薬剤による脂質異常などの有害事象の回避を目的にラルテグラビル(同:アイセントレス)へ切り替える治療法は、ロピナビル-リトナビルを継続した場合に比べウイルス抑制効果が劣るため許容されないことが、2つの多施設共同試験(SWITCHMRK 1、2試験)で示された。HIV-1インテグラーゼ阻害薬という新たなクラスの経口抗HIV薬であるラルテグラビルは、プロテアーゼ阻害薬であるロピナビル-リトナビルにみられる脂質異常などの有害事象がなく、未治療例、既治療例ともに有効性が確認されている。病態が安定したHIV感染患者には、ウイルス抑制効果が同等であれば、より簡便で有害事象の少ない治療法が望ましい。アメリカ・ノースカロライナ大学のJoseph J Eron氏が、Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月13日号)で報告した。

切り替え群と継続群で脂質の変化率、ウイルス抑制効果、安全性を評価




SWITCHMRK試験の研究グループは、ロピナビル-リトナビルをベースとする併用レジメンでウイルスが抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、ラルテグラビルへの切り替えとロピナビル-リトナビル継続の安全性と有効性を比較する二重盲検ダブルダミー無作為化第III相試験を実施した。

対象は、ロピナビル-リトナビルをベースとするレジメンにより血漿ウイルスRNA濃度がPCR法で50コピー/mL未満あるいは分岐DNA法で75コピー/mL未満の状態が3ヵ月以上持続している18歳以上のHIV感染患者。2007年6月~2008年5月までに、2つの試験に5ヵ国81施設から848例が登録され、707例が適格基準を満たした。

ロピナビル-リトナビルからラルテグラビル(400mg×2回/日)への切り替え群に353例が、ロピナビル-リトナビル(200mg/50mg×2錠×2回/日)継続群には354例が無作為に割り付けられた。いずれの群も、2つ以上のヌクレオシド系あるいはヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬を併用することとした。

主要評価項目は、試験開始から12週までの血清脂質値の平均変化率、24週におけるウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合、24週までの有害事象の頻度とした。

切り替え群は血清脂質値が低下したが、ウイルス抑制効果が予想以上に低い




2つの試験を合わせ、少なくとも1回の治療を受けた702例が有効性および安全性の評価の対象となった(切り替え群:350例、継続群:352例)。

血清脂質の変化率は、2試験ともに切り替え群が継続群に比べて有意に大きく(p<0.0001)、両試験を合わせた総コレステロール値の変化率は切り替え群が-12.6%、継続群が1.0%、非HDLコレステロール値はそれぞれ-15.0%、2.6%、トリグリセライド値は-42.2%、6.2%であり、いずれも切り替え群が良好であった。

24週の時点でウイルスRNA濃度<50コピー/mLの患者の割合は、切り替え群の84.4%(293/347例)に対し継続群は90.6%(319/352例)であり、切り替え群が6.2%低かった。

臨床的な有害事象および検査値異常の頻度は両群で同等であった。重篤な薬剤関連有害事象や治療関連死は認めなかった。中等度~重度の有害事象のうち1%を超えたのは継続群の下痢(3%)のみであった。

切り替え群のウイルス抑制効果が継続群に比べ予想以上に低かったため、両試験は24週の時点で中止された。

著者は、「血清脂質値は、ラルテグラビルへの切り替え群がロピナビル-リトナビル継続群に比べ低下したが、切り替え群の継続群に対するウイルス抑制効果の非劣性は示されなかった」と結論している。

さらに、「事後解析では、切り替え群のうち特に本試験登録前の抗HIV治療が無効であった症例でウイルス抑制効果が低かったのに対し、前治療無効歴のない症例では両群のウイルス抑制効果は同等であった。無作為割り付け前に前治療無効歴の有無で層別化しなかったことが、データの解釈を混乱させた可能性がある」と指摘し、「日常診療においてレジメン変更のリスクとベネフィットを考慮する際は、過去の薬剤耐性検査や治療結果などの背景情報を可能な限り収集すべきである」としている。

(菅野守:医学ライター)