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人間の「脳内コンパス」の場所を特定か

 人間には、「脳内コンパス」ともいうべき、迷子にならないようにするための脳活動パターンがあることを突き止めたと、英バーミンガム大学心理学分野のBenjamin Griffiths氏らが報告した。Griffiths氏らは、空間の中での自分の位置を把握してナビゲートするために使用する体内のコンパスを人間の脳内で初めて特定したと話している。詳細は、「Nature Human Behaviour」に5月6日掲載された。この発見をきっかけに、アルツハイマー病やパーキンソン病といったナビゲーション機能や見当識がしばしば損なわれる疾患について解明が進む可能性がある。 Griffiths氏は、「自分が向かっている方向を把握することは非常に重要だ。自分がいる場所や向かっている方向に少しでも誤差があると悲惨なことになり得る」と言う。さらに同氏は、「鳥、ネズミ、コウモリなどの動物には、正しい方向に進むための神経回路があることが知られている。しかし、人間の脳が実世界でどのように対処しているのかについて分かっていることは驚くほど少ない」と話す。 人間の脳活動を追跡するためには、通常、被験者ができるだけ静止していることが求められる。しかし今回の研究では、52人の参加者を対象に、脳波(EEG)を測定する携帯型のデバイスとモーションキャプチャを使って、動き回る人々の脳波と頭部の動きを分析した。研究参加者は、頭部に携帯型EEGデバイスを装着した状態で、複数のコンピューターのモニターからの指示に応じて頭や目を動かし、その間の脳活動がEEGデバイスにより測定された。また、てんかんなどの脳の疾患のモニタリング目的で脳に電極を埋め込んだ別の10人の参加者にも同様の実験を実施した。 その結果、脳後部の中心領域できめ細かく調整された頭の方向に関する信号が確認された。また、その信号は、対象者が別の方角に頭を向ける直前に検出され、頭の向きの変化を予測できる特有のパターンを持っていることも明らかになった。Griffiths氏は、「これらの信号を読み取ることで、脳がどのようにナビゲーション情報を処理するのか、また、これらの信号が視覚的な目印など他の手がかりとどのように連動するのかに焦点を合わせることができる」と説明する。 また、Griffiths氏は、「われわれのアプローチは、これらの機能についての研究に新たな道を開くものであり、神経変性疾患の研究や、ロボット工学および人工知能(AI)におけるナビゲーション技術の改善にもつながる可能性がある」と付け加えている。 今後の研究についてGriffiths氏は、「今回の研究で得られた知見からさらに一歩進め、脳が時間をどのようにナビゲートしているのか、また、そのような脳の活動が記憶に関連しているのかどうかを解明することになるだろう」と話している。

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血液がん患者のICU退室後1年の生存率は21%

 集中治療室(ICU)に入室した血液がん(HM)患者の7日生存率は49%、12カ月生存率は21%であるという研究結果が、「Intensive Care Medicine」に3月11日掲載された。 トロント大学マウントサイナイ病院(カナダ)のLaveena Munshi氏らは、2018~2020年にICUに入室したHM患者を対象に、前向き観察研究を実施した。生存者は長期生存と機能的転帰について追跡された。 患者414人が登録され、そのうち急性白血病患者が51%、リンパ腫・多発性骨髄腫患者が38%、造血幹細胞移植(HCT)を受けた患者は40%であった。解析の結果、ICU入室の最も一般的な理由は、急性呼吸不全と敗血症であった(それぞれ50%、40%)。退室後7日時点に生存していた対象者(ICU生存者)は、49%であった。コホート全体の12カ月生存率は21%であった(ICU生存者では43%)。生存者のうち、中等度から重度のフレイルの有病率は、7日時点で42%、6カ月時点で14%、12カ月時点で8%であった。機能的自立指標の中央値は7日目で80であった。6カ月時点および12カ月時点の身体機能、疼痛、社会機能、メンタルヘルス、精神的ウェルビーイングは、年齢および性別でマッチさせた一般集団のスコアを下回っていた。12カ月生存率の低下は、フレイル、同種HCT、腎障害、ICU入室中の心臓合併症と関連していた。 著者らは、「重症疾患とがんの複雑な相互作用を鑑みると、重症疾患がHM/HCT患者の長期生存に影響を及ぼす可能性があることが示された」と述べている。

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セマグルチド投与で心不全患者の利尿薬必要量が減少

 心不全患者の体内には水分がたまりやすいため、過剰な水分を排出する作用のあるループ利尿薬がしばしば処方される。こうした中、画期的な肥満症治療薬であるセマグルチド(商品名ウゴービ)によって利尿薬の必要性を減らせる可能性のあることが、肥満を伴う収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象とした臨床試験のデータの解析で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授のKavita Sharma氏らによるこの解析結果は、欧州心臓病学会(ESC)による欧州心不全学会(Heart failure 2024、5月11~14日、ポルトガル・リスボン)で発表され、「European Heart Journal」に5月13日掲載された。 ESCのニュースリリースによると、心不全の代表的なタイプの一つであるHFpEFでは、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能は正常に保たれているものの、筋肉が硬くなって広がりにくくなる。そのため、全身から心臓に血液が戻りにくくなり、全身が必要とする酸素を豊富に含んだ血液を送り出すことができなくなるという。 Sharma氏らは今回、肥満(BMI 30以上)だが糖尿病のないHFpEF患者529人を対象としたSTEP-HFpEF試験と、肥満で糖尿病のあるHFpEF患者616人を対象としたSTEP-HFpEF-DM試験の二つの臨床試験の参加者(計1,145人)のデータを統合して解析した。試験開始時点で利尿薬を使用していなかったのは220人で、223人がループ利尿薬以外の利尿薬、702人がループ利尿薬を使用していた。参加者は52週間にわたって週1回、セマグルチド2.4mgまたはプラセボを皮下注射する群にランダムに割り付けられていた。 その結果、セマグルチド群ではプラセボ群に比べて、心不全に関連した症状や身体的制限に関する標準的な評価尺度であるカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の改善度が大きく、特に利尿薬使用患者で大きな改善が認められた(プラセボ群と比べたKCCQ-CSSの平均差は、利尿薬使用患者で+9.3、利尿薬非使用患者で+4.7)。また、試験開始時からの体重変化率はプラセボ群と比べてセマグルチド群で大きく、プラセボ群との差(平均)は、利尿薬非使用患者で-8.8%、ループ利尿薬の使用量が最も多かった患者で-6.9%であることが示された。 さらに、セマグルチドの使用は6分間歩行距離などの他の心不全の指標の改善にも関与している可能性が示されたほか、ループ利尿薬の使用量に大きな影響を及ぼすことが判明した。すなわち、試験期間中にプラセボ群ではループ利尿薬の使用量が平均で2.4%増加していたのに対し、セマグルチド群では平均で17%減少していたという。このほか、同試験では、利尿薬の使用状況によって分類したサブグループの全てにおいて、セマグルチド群ではプラセボ群と比べて重篤な有害事象が少ないことも示されたと、研究グループはESCのニュースリリースの中で述べている。 Sharma氏は全体的な結果として「利尿薬使用の有無にかかわりなく、HFpEF患者において、セマグルチドは症状や身体的制限を改善するとともに、体重をより減少させることが示された」と説明している。 さらにSharma氏は、セマグルチドを投与された患者では、プラセボを投与された患者と比べて、利尿薬の平均使用量が減少し、利尿薬の投与量が増加する可能性が低下し、利尿薬の投与量を減らす必要性が増加する可能性が示されたことに言及。「これらのパラメーターは、セマグルチドの疾患修飾作用と、この試験の対象者と同様の条件を満たす患者集団において、同薬が長期的な臨床アウトカムの改善に関連する可能性を示唆している」と述べている。

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食事前の10秒をください!?(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者この間、ネットを見ていたら「食事前の10秒だけください」と書かれている写真があって。医師 それで?(患者の話に興味を示す)患者 最後まで読んだら健康食品の広告で、食事前に飲むのに10秒もかからないって話みたいで。画 いわみせいじ痩せた人もいるって書いてあるし、今だけお得だからつい購入したのですが、全然、効果はなかったです…。医師 そうでしたか。せっかく食事前の10秒を使うなら、お金もかからずにもっと良い方法がありますよ!患者 それはどんな方法ですか?医師 食事前に、これから食べる食事を記録することです。食べた後ではなくてね。患者 なるほど。それなら、食べ過ぎないかもしれませんね。(納得した顔)ポイント食事前に食べる予定の食事を記録する習慣を作ることがダイエットにつながることを上手に説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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寄り道編(1)アドレナリン?エピネフリン?【臨床力に差がつく 医薬トリビア】第50回

※当コーナーは、宮川泰宏先生の著書「臨床力に差がつく 薬学トリビア」の内容を株式会社じほうより許諾をいただき、一部抜粋・改変して掲載しております。今回は、月刊薬事60巻9号「臨床ですぐに使える薬学トリビア」の内容と併せて一部抜粋・改変し、紹介します。寄り道編(1)アドレナリン?エピネフリン?Question2つの名称をもつアドレナリン(エピネフリン)。なぜ、2つの名称がつけられた?

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第214回 岸田首相、初夏の山形・酒田へ。2024年度から制度テコ入れの地域医療連携推進法人に再び脚光

日本海総合病院と日本海ヘルスケアネットを視察こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。来週からはや6月、いよいよ夏本番です。新緑が映える6月の山は、紅葉の秋山よりも瑞々しく、1年の中で一番美しいと思います。初夏の山で私がとくに好きなのは、山形県の鳥海山です。6月の鳥海山は、それなりの装備が必要なため登山者もまだそれほど多くはなく、新緑と残雪の白のコントラストを存分に楽しむことができます。深田 久弥はその著書『日本百名山』で「名山と呼ばれるにはいろいろの見地があるが、山容秀麗という資格では、鳥海山は他に落ちない」と書くほどです。ただ、難点はあります。山が大きく、日帰りするには少々行程が長過ぎる点です。私も何度か登っているのですが、北西側の鉾立山荘から登る象潟口コースでは、スタート時間が遅かったこともあって頂上に辿り着けず、途中で敗退しています。来年あたりこのコースをリベンジしようかと考えているところです。さて、そんな鳥海山を眺望できる庄内平野に位置する山形県酒田市を、5月19日に岸田文雄首相が訪れました。目的は地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院の視察です。山形県の庄内地方では、日本海総合病院が中心となって、12の法人、1自治体で構成された地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットが組織され、様々な連携業務、共同事業を行っています。岸田首相は、日本海ヘルスケアネットの医療・介護連携の実際と共に、普及が遅々として進まず依然批判も多いマイナ保険証や電子処方箋が活用されている姿を自分の目で確かめるため、酒田を訪れたようです。「“連携推進法人”の制度普及に今後も努める」と言明日本海総合病院が中心となって運営されている日本海ヘルスケアネットは、人口減少が進む地方における地域医療連携推進法人の成功事例の一つです。また、複数の医療施設及び介護事業所が診療情報を共有する「ちょうかいネット」も医療DXの先駆けとして有名です。視察後の記者会見で岸田首相は、医療・介護の連携の強化、医療従事者の交流、職員の共同研修、医療機器の共同利用、医薬品の共同交渉、地域フォーミュラリ、「ちょうかいネット」といった日本海ヘルスケアのさまざまな取り組みについて言及した後、「患者の目線に立って、地域の医療提供体制が効率的で質の高いものになるよう、実効的な仕組みを構築していきたい」と述べるとともに、地域医療連携推進法人について、「今、全国で39法人、認定を受けています。そして、昨年、利用拡大を図る医療法の改正も行いました。あわせて、介護・福祉分野においても、類似の仕組みがあります。すなわち、社会福祉連携推進法人という21の法人が認定を受けている。これらを合わせて、普及に努めていきたい」と、“連携推進法人”の制度普及に今後も力を入れると語りました。今年の「骨太の方針」に4年連続で記述される可能性も地域医療連携推進法人については、本連載でも、「第168回 3年連続3回目、地域医療連携推進法人言及の背景」、「第138回 かかりつけ医制度の将来像」、「第69回 制度化4年目にして注目集める地域医療連携推進法人の可能性」などで度々取り上げて来ました。2017年4月に制度がスタートし、7年経ったわりには、現状39法人と数的には今ひとつですが、政府が毎年6月に公表する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において3年連続で地域医療連携推進法人が記述されたことからも、国(厚生労働省というより財務省)が医療・介護連携や機能分担の切り札になると今でも考えていることは間違いありません。今回、岸田首相が地域医療連携推進法人を実際に視察したことで、「医療・介護連携や機能分担の切り札」という位置付けはますます強固なものとなり、まもなく公表される「骨太の方針」にも4年連続で記述されるかもしれません。浜松医科大学と浜松医療センターとの連携など新しい動きもその地域医療連携推進法人ですが、各地で新しい動きもあります。今年3月には、静岡県浜松市が運営する浜松医療センターと国立大学法人の浜松医科大学が県西部の医療体制を充実させてより高度な医療を提供するため、地域医療連携推進法人を2025年4月に設立する計画が明らかになっています。大学病院本院が地域医療連携推進法人に参画するケースとしては、藤田医科大学(愛知県豊明市)が中心となってつくられた地域医療連携推進法人・尾三会(愛知県)、関西医科大学(大阪府枚方市)が中心となってつくられた地域医療連携推進法人・北河内メディカルネットワーク(大阪府)がありますが、お互いに基幹病院同士、しかも一方は国立大学法人というケースははじめてです。また、2025年4月に岐阜県で設立された地域医療連携推進法人・美濃国地域医療リンケージは、岐阜県笠松市で松波総合病院を経営する社会医療法人 蘇西厚生会、美濃市立美濃病院、一般社団法人 海津市医師会で構成されており、それぞれの所在地の医療圏が岐阜医療圏、中濃医療圏、西濃医療圏と異なっているのが大きな特徴です。その「理念」には「医療圏の垣根を越え、お互いに補完し合うことで、急速に進む少子高齢化の中で、安定性と持続性を併せもった効率的な医療提供体制を構築し、それぞれの地域住民の暮らしの安心を実現する」と書かれており、地方における広域の地域医療連携推進法人の可能性を探るユニークな試みとして注目を集めています。成功事例という“追い風”や制度変更による“使い勝手”の向上などで、今後、加速度的に増えていくかも2024年4月からは、医療法の一部が改正され、地域医療連携推進法人に個人立の医療機関も参加できるようになりました(それまでは医療法人など非営利法人に限られていました)。個人立が参加する場合は、従来は認められていた参加法人への出資、貸付はできなくなりますが、外部監査等が不要になったり、一部事務手続きが簡素化されたりするなど、“使い勝手”が良くなり、設立の敷居も低くなります。7年間で39法人とそれほど増えてこなかった地域医療連携推進法人ですが、各地での成功事例という“追い風”や制度変更による“使い勝手”の向上などによって、今後、加速度的に増えていくかもしれません。

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カリウム吸着薬の必要性を検討して薬剤性便秘を解消【うまくいく!処方提案プラクティス】第60回

 今回は、治療評価がなされずに長期服用していたカリウム吸着薬の副作用と思われる便秘に着目し、中止することで解消した症例を紹介します。患者さんや施設スタッフの負担となっていることを聴取し、服薬契機や治療評価の時期などに注目してみると、現在の治療の必要性を考えやすくなります。薬剤師の視点で考えたことを整理して、医師と意見共有してみましょう。患者情報88歳、男性(施設入居)基礎疾患認知症、脳梗塞、糖尿病、胸部大動脈瘤、大腸がん術後介護度要介護4服薬管理施設職員が管理処方内容1.アスピリン・ランソプラゾール配合錠 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠0.625mg 2錠 分1 朝食後3.ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% 25g 分1 朝食後4.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.シタグリプチンリン錠50mg 1錠 分1 朝食後6.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.ピコスルファートNa内用液0.75% 10mL 便秘時5〜15滴で調整本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から間もなく硬便(ブリストル便形状スケール[BSFS]1〜2)と便秘症状が強くなり、酸化マグネシウムと頓用のピコスルファートを開始して2週間が経過しました。BSFS 2および排便頻度が2〜3日のため、ピコスルファート15滴で調整を続けていましたが、便秘解消がいまひとつで不穏症状も出現していました。介護スタッフから、服薬錠数が増えると介護抵抗なども強くなるので何かよい手立てはないか、と相談がありました。現状の服用薬剤から何か減らすことで工夫はできないかという点から、薬剤性便秘の可能性を探りました。そこで着目したのが、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーでした。ポリスチレンスルホン酸Caは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換することで、カリウムを体外に排泄する薬剤(陽イオン交換樹脂)1)ですが、便秘の副作用が多く、重大な副作用として腸管穿孔の報告2)もあります。導入の経緯を診療情報提供書にさかのぼって調査すると、カリウム値が5.6mEq/Lと高カリウム血症を発症した際に、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー50g 分2 朝夕食後の処方が開始となっていました。その3週間後の採血で3.5mEq/Lに低下したことから現在の量に減量となっていました。大腸がん術後でイレウスのリスクもあることと、認知症があることから便秘増悪でせん妄リスクもあることから排便コントロールは重要です。カリウム値をモニタリングしながらポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーを中止することで、服薬数も減らすことができ、排便コントロールも少なからずポジティブな効果になるのではないだろうかと考えました。医師への相談と経過医師に電話で、下剤調整後の現況を情報共有し、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーによる弊害の可能性について相談しました。医師も、用量は少ないものの副作用報告として多いことを認識しており、中止しようと返答がありました。また、カリウム値については次回の診療で採血をしてフォローすることとなりました。指示を受けた翌日からポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーが中止となりました。患者さんは、中止して2日後には排便があり(BSFS 3、中等量)、その後も安定して0〜1日の排便(BSFS 2〜3、中等量)で安定して経過しています。さらに、その後のカリウム値の検査結果も4.0mEq/Lと基準値内で推移していました。便秘増悪には環境変化などさまざま要因がありますが、薬剤性のアプローチは薬剤師にとって大事なアクションの1つだと実感した事例です。1)ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% インタビューフォーム2)「消化器内視鏡」編集委員会編. 大腸疾患アトラスupdate. 東京医学社;2020. p232.

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日本人脳卒中患者では低体重ほど転帰不良/国立循環器病研究センター

 ボディマス指数(BMI)の高い人は、そうでない人に比べ、生活習慣病や心血管病の発症リスクが高い一方で、心血管病発症後の機能回復はむしろ良好であることが報告されている。脳卒中でも、肥満は発症リスク因子となるが、脳卒中発症後の転帰に関する研究結果は一貫していないことから、国立循環器病研究センターの三輪 佳織氏らの研究グループは、BMIが脳卒中後の転帰に影響があるか検証を行った。その結果、BMIが脳卒中病型ごとの転帰に影響を及ぼすことが判明し、とくにBMIが低い人では不良となることがわかった。この研究結果はInternational Journal of Stroke誌オンライン版2024年4月23日号に掲載された。高齢者の健康管理に役立つBMIの数値は 研究グループは、2006年1月~22年12月まで日本脳卒中データバンク(JSDB)に登録された急性期脳卒中例のうち入院時BMIが入力された症例を対象とした。BMIはWHO推奨のアジア人における定義に基づき、18.5未満を低体重、18.5~23.0未満を正常体重、23.0~25.0未満を過体重、25.0~30.0未満をI度肥満、30以上をII度肥満と分類した。脳卒中は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分類し、さらに脳梗塞病型はTOAST分類を用いて、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、その他の脳梗塞、原因不明脳梗塞に分類した。 評価項目である退院時の転帰(患者自立度)は、国際標準尺度である修正ランキンスケール(0[後遺障害なし]~6[死亡]の7段階の評価法)を用い、同尺度の5~6を転帰不良、0~2を転帰良好と定義した。これらを共変量で調整した後、混合効果ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・急性期の脳卒中5万6,230例のうち、脳梗塞(4万3,668例、平均年齢74±12歳、男性61%)、脳出血(9,741例、平均年齢69±14歳、男性56%)、クモ膜下出血(2,821例、平均年齢63±15歳、男性33%)が今回の研究対象。・BMI18.5未満(低体重)は、脳梗塞と各病型(心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)や脳出血における転帰不良のリスクを約1.4~2.3倍に高めた。・アテローム血栓性脳梗塞では、BMIと転帰不良にU字型の関連を認め、低体重と肥満はいずれも、転帰不良のリスクを高めた。・低体重は、とくに重症の脳梗塞や再灌流療法後における転帰不良と関連した。・BMI23.0~25.0(過体重)や80歳以上の高齢者におけるBMI25.0~30.0(I度肥満)のグループは、脳梗塞後の転帰不良リスクが9~17%低下し、“obesity paradox”を認めた。 研究グループは、今回の研究結果から「高齢者の体重管理の目標値としてBMI25を基準にすることが適切であり、BMIに基づく体重管理は脳卒中の発症予防および重症化予防の実現可能な対策といえる」と考察を行っている。

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単剤療法を開始する統合失調症患者のケアパターンと経口抗精神病薬切り替えコスト

 統合失調症において抗精神病薬は主要な治療法であるが、治療目標の達成や副作用を最小限にするため、疾患経過に伴って薬剤を変更する必要がある。実臨床における治療パターンや、切り替えを含む抗精神病薬の変更に関連する経済的な影響について、評価した研究は限られている。米国・OptumのRebecca Fee氏らは、経口抗精神病薬(OAM)の単剤療法を開始した統合失調症患者の治療パターンを調査し、抗精神病薬の切り替えに関連する医療資源利用およびコストを評価した。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 米国のメディケア・アドバンテージおよび民間医療保険に加入していて、2015~21年6月にOAMの単剤療法を開始(または6ヵ月以上経過した後に再開)した統合失調症患者(2件以上の請求データを有する成人患者)を対象とした。治療の時機および間隔を用いた請求データに基づくアルゴリズムにより、最長7年間にわたるOAM単剤療法開始患者の投与変更、とくに単剤療法の切り替えを特定した。最初のOAM単剤療法から次のOAM単剤療法へ切り替えた患者(切り替え群)を、臨床的および人口統計学的特徴に基づき、切り替えを行っていないOAM単剤療法開始患者(非切り替え群)とマッチさせた。切り替えに関連する医療資源利用および最初の切り替えの前後3ヵ月に発生したコストを、両群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・OAM単剤療法を開始した患者6,425例中1,505例(23.4%)は、フォローアップ期間中に少なくとも1回、他のOAM単剤療法切り替えを経験していた。・最初の切り替えまでの平均時間は209±333日(中央値:67日)であり、フォローアップの人年当たりの切り替え率は0.65、最初の切り替えの56%はOAM開始から3ヵ月以内に行われていた。・OAM単剤療法を開始した患者のうち947例(14.7%)は、最初のOAM単剤療法切り替え患者あった。傾向スコアマッチング後、最初の切り替え群865例と非切り替え群865例がマッチされた。・非切り替え群と比較し、最初の切り替え群は、すべての原因による受診の平均回数、統合失調症関連の緊急受診および入院の平均回数が多く、1ヵ月当たりの入院日数は長かった。・統合失調症関連の平均コストは、患者1人当たり、切り替え群で1,252±2,602ドル、非切り替え群で402±2,027ドルであった(p<0.001)。 著者らは「OAM単剤療法を開始した統合失調症患者の約4分の1は最初のOAMの変更を行っており、その多くは最初のOAM切り替えから3ヵ月以内であった。また、切り替えを行った患者は、行わなかった患者と比較し、医療資源利用およびコストの増加が認められた」とまとめ、「本結果は、症状コントロールを効果的に維持し、忍容性のリスクを最小限にするOAM単剤療法を開始する重要性を強調するものであり、これによりOAM切り替えの必要性を最小限とし、過剰な医療資源の利用およびコストを削減することが可能である」としている。

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HPVワクチン接種プログラムの効果、社会経済的格差で異なるか?/BMJ

 以前の検討によってイングランドで観察されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムの高い予防効果は、その後12ヵ月間の追跡調査においても継続しており、とくにワクチンの定期接種を受けた女性では、社会経済的剥奪の程度5つの段階のすべてで子宮頸がんとグレード3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生率が大きく低下したが、剥奪の程度が最も高い地域の女性では低下の割合が最も低い状態にあることがわかった。一方で、子宮頸がんの罹患率は、ワクチン接種女性において、未接種の女性でみられる社会経済的剥奪の程度による勾配はみられなかったことが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMilena Falcaro氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年5月15日号に掲載された。イングランド居住女性の観察研究 本研究は、2006年1月1日~2020年6月30日にイングランドに居住した20~64歳の女性を解析の対象とした住民ベースの観察研究である(Cancer Research UKの助成を受けた)。 イングランドでは、2008年にHPVワクチン接種が導入され、12~13歳の女児に定期接種が行われた。また、2008~10年には、より年長で19歳未満の集団を対象に接種の遅れを取り戻すためのキャッチアップ・キャンペーンが展開された。 2006年1月1日~2020年6月30日に、2万9,968例が子宮頸がんの診断を、33万5,228例がCIN3の診断を受けた。追加追跡期間の相対リスク減少率:子宮頸がん83.9%、CIN3は94.3% 12~13歳時にHPVワクチンの定期接種を受けた集団では、追加された12ヵ月間の追跡調査(2019年7月1日~2020年6月30日)における子宮頸がんおよびCIN3の補正後年齢調整罹患率に関して、ワクチン接種を受けなかった集団と比較した相対リスク減少率が、子宮頸がんで83.9%(95%信頼区間[CI]:63.8~92.8)、CIN3で94.3%(92.6~95.7)と大幅に低下していた。 また、2020年の半ばまでに、HPVワクチン接種により、687例(95%CI:556~819)の子宮頸がんと2万3,192例(2万2,163~2万4,220)のCIN3を予防したと推定された。 社会経済的剥奪の程度が最も強い地域に居住する女性では、ワクチン接種後の子宮頸がんおよびCIN3の割合は最も高いままであったが、剥奪の5段階すべてでこれらの割合は大幅に低下していた。健康格差の縮小をもたらす可能性も キャッチアップ・キャンペーンでワクチン接種を受けた女性のCIN3予防率は、社会経済的剥奪の程度が最も弱い地域に比べ最も強い地域で低く、16~18歳時に接種した女性では40.6%に対し29.6%、14~16歳時に接種した女性では72.8%に対し67.7%であった。 また、ワクチン接種を受けていない女性における子宮頸がんの罹患率には、社会経済的剥奪の程度が強い地域から弱い地域へと下方に向かう急峻な勾配を認めたのに対し、ワクチン接種を受けた女性では、もはやこのような勾配はみられなかった。 著者は、「本研究の知見は、十分に計画を立てて実行された公衆衛生介入は、健康状態を改善するだけでなく、健康格差の縮小ももたらす可能性があることを示している」としている。

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日本人結節性痒疹、ステロイド外用薬使用下のネモリズマブの有用性は?

 日本人の結節性痒疹患者におけるネモリズマブの長期投与の最適用量、有効性、安全性を評価した国内第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果が報告された。本試験では、試験開始前のステロイド外用薬の継続下においてネモリズマブ30mg、60mgの有用性をプラセボと比較した。その結果、ネモリズマブ群で結節性痒疹のそう痒や皮膚症状の改善が認められた。東京医科歯科大学皮膚科の横関 博雄氏らNemolizumab-JP11 Study GroupがBritish Journal of Dermatology誌オンライン版2024年4月17日号で報告した。 本試験は、高用量ステロイド外用薬による治療を実施したにもかかわらず、中等度以上のそう痒(かゆみスコア3以上かつPeak Pruritus Numerical Rating Scale[PP-NRS]7以上)を有する13歳以上の日本人結節性痒疹患者を対象とした。対象患者を、ネモリズマブ30mg群(初回投与のみ60mg)、同60mg群(本邦承認外用量)またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週間ごとに16週間投与した。対象患者はいずれもステロイド外用薬を併用した。 有効性の主要評価項目は、投与開始16週後のPP-NRS週平均の変化率。有効性の副次評価項目は、そう痒、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLなどであった。なお、本試験は2020年12月に開始され、データ解析は2022年5月に行われた。16週の治療完了後、適格患者は52週の長期試験に組み込まれ追跡された。 主な結果は以下のとおり。・230例が対象となり、ネモリズマブ30mg群に77例、同60mg群に76例、プラセボ群に77例が割り付けられた。・投与開始16週後のベースラインからのPP-NRS週平均の変化率(最小二乗平均値)は、ネモリズマブ30mg群-61.1%、同60mg群-56.0%、プラセボ群-18.6%であった。・ネモリズマブ群とプラセボ群のPP-NRS週平均の変化率の群間差は、30mg併用群が-42.5%(95%信頼区間[CI]:-51.9~-33.1、p<0.0001)、60mg併用群が-37.4%(-46.7~-28.1、p<0.0001)であり、いずれも統計学的に有意な差が認められた。・ネモリズマブ群は、プラセボ群と比較して、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLの改善が大きかった。・ネモリズマブの忍容性は、両用量群とも良好であった。

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PPIとH2ブロッカーで頭痛リスク上昇か

 胸焼けを抑えるための薬を服用している人は、服用していない人に比べて片頭痛やその他の重度の頭痛のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。このようなリスク上昇は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、制酸薬など、検討した全ての種類の胃酸分泌抑制薬で認められたという。米メリーランド大学栄養学・食品科学部門のMargaret Slavin氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月24日掲載された。 Slavin氏は、「胃酸分泌抑制薬は幅広い用途で使用されている。この薬剤と片頭痛や重度の頭痛との潜在的な関連を考慮すると、今回の研究結果はさらなる調査実施の必要性を示したものだと言えるだろう」と述べる。同氏はさらに、「胃酸分泌抑制薬に関しては、しばしば過剰処方が指摘されている。また、PPIの長期使用により認知症リスクなど他のリスクが上昇する可能性を示唆する新たな研究結果も報告されている」と付け加えている。 胃酸が食道まで逆流する胃酸逆流は、食後や横になっているときに起こり、胸焼けや胃潰瘍を引き起こす。頻回な胃酸逆流は胃食道逆流症(GERD)の原因となり、それが食道がんにつながることもある。今回、Slavin氏らは、胃酸分泌抑制薬(PPI、H2ブロッカー、制酸薬)を使用している成人患者1万1,818人を対象に、胃酸分泌抑制薬の使用と片頭痛や重度の頭痛との関連を検討した。 胃酸分泌抑制薬使用者と非使用者での片頭痛や重度の頭痛の有病率は、PPIでそれぞれ25%と19%、H2ブロッカーで25%と20%、制酸薬で22%と20%であった。年齢や性別など頭痛に影響を及ぼす因子を調整して解析した結果、胃酸分泌抑制薬の使用者は非使用者に比べて、偏頭痛や重度の頭痛の発症リスクが有意に高いことが明らかになった。リスクは、PPI使用者で70%、H2ブロッカー使用者で40%、制酸薬使用者で30%の増加であった。 このような結果が示されたものの、Slavin氏は、この研究で対象としたのは処方薬のみであり、処方薬よりも薬効が低い傾向にある市販薬は対象としていない点を強調。その上で、「医師に相談することなく使用中の胃酸分泌抑制薬の服用を中止すべきではない」と主張している。同氏は、「胃酸の逆流とそれに付随する症状を抑えるために胃酸分泌抑制薬を必要とする人は数多く存在する。胃酸分泌抑制薬やサプリメントを使用していて、片頭痛や重度の頭痛に悩まされている人は、薬の服用を続けるべきかどうかを医師と相談する必要がある」と「Neurology」誌のニュースリリースの中で述べている。

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喫煙歴があっても食習慣次第で肺気腫リスクが低下

 現喫煙者や元喫煙者など、肺気腫のリスクが高い人であっても、植物性食品中心の食習慣によって、その罹患リスクが抑制される可能性を示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのMariah Jackson氏らの研究によるもので、詳細は「Chronic Obstructive Pulmonary Diseases : Journal of the COPD Foundation」3月発行号に掲載された。 肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種で、血液中の二酸化炭素と酸素の交換が行われる肺胞の構造が破壊されて、呼吸機能が不可逆的に低下する病気。原因は主に喫煙であり、肺気腫の進行抑制には禁煙が必須だが、禁煙治療の成功率は高いとは言えない。一方で、植物性食品中心の食習慣が、呼吸器疾患の病状に対して潜在的な保護効果をもたらす可能性が報告されている。Jackson氏らはこのような背景の下、食習慣と肺気腫リスクの関連の有無を検討した。 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスクを探索する目的で実施された、米国での多施設共同前向きコホート研究(CARDIA研究)のデータを用いた二次分析として行われた。CARDIA研究の参加者は18~30歳で、30年間追跡されている。研究参加者5,515人から、追跡開始後20年目までに、自己申告に基づく喫煙習慣(現喫煙または元喫煙)が確認されなかった人や、食習慣に関する調査に回答していなかった人などを除外し、1,351人(平均年齢25.5±3.5歳、女性58.4%)を解析対象とした。 追跡開始25年目に行ったCT検査で、175人(13.0%)に肺気腫が確認された。食習慣の質を評価するスコア(APDQS)の五分位に基づき、植物性食品中心の食習慣らしさで全体を5群に分類して肺気腫の罹患者率を比較すると、スコアの第5五分位群(最も植物性食品中心の食習慣である上位20%)は4.5%であるのに対して、第1五分位群(最も植物性食品中心の食習慣でない下位20%)は25.4%だった。 肺気腫の罹患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、累積喫煙量、摂取エネルギー量、教育歴など)を調整後、第5五分位群は第1五分位群に比べて肺気腫罹患のオッズ比(OR)が56%低かった〔OR0.44(95%信頼区間0.19~0.99)、傾向性P=0.008〕。また、APDQSスコアが1標準偏差高いごとにオッズ比は34%低下していた。つまり、食事に占める野菜や果物の割合が高いほど、肺気腫のリスクは低かった。 Jackson氏は、「われわれの研究結果は、食習慣と喘息の罹患リスクとの関連を示した先行研究の結果と一致している。喫煙歴のある人の慢性肺疾患リスクを抑制しようとする場合、食事などの修正可能な因子が極めて重要なポイントとなる」と話している。また同氏は、「食習慣を健康的なものに改善することが、慢性肺疾患に罹患しながらも禁煙が困難な状況にある人の一助となるのではないか。さらなる研究が必要ではあるが、将来的には公衆衛生関連のガイドラインなどで、特に子どもや若年者に対する食事の推奨事項として、これらの情報を提供できる可能性がある」と付け加えている。

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小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

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代替エンドポイントの適否は臨床試験でなくても確認できる(解説:折笠秀樹氏)

 評価項目(エンドポイント)には臨床と代替があります。たとえば、高血圧症であれば、臨床は脳心疾患であり、代替は血圧値です。代替である血圧値の低下が立証されれば、新薬の承認を得ることができます。その前提は、血圧値と脳心疾患の間に相関があることです。がんを除く32領域の慢性疾患で使われた37個の代替エンドポイントに対して、臨床エンドポイントとの相関性を調査しました。臨床試験から成るメタアナリシスで確かめられたのは、15個(41%)だけでした。残りの22個(59%)では、そうしたメタアナリシスはなかったようです。よく眺めると、メタアナリシスがないのは希少疾患が多そうでした。 続いて、メタアナリシスがあった15個の代替エンドポイントを調べました。54報のメタアナリシスがあり、109件の臨床試験が含まれていました。両者の相関性を報告していたのは59件(54%)ありましたが、強い相関性を示していたのは10件(17%)にすぎませんでした。このことから、相関性のエビデンスがないのに代替エンドポイントで承認されているのが現実だという報告でした。 この研究の最大の限界は、臨床試験しか調べていないことだと思います。両者の相関性は、疫学研究で確認している例がほとんどだと思います。私自身も新たな代替エンドポイントを使用する際は、必ず疫学データで裏付けできるようにと言ってきました。縦断的な疫学研究によって、代替エンドポイントの悪化と臨床イベント発現の有意な相関性が見られれば、それは十分強固な証拠になるはずです。臨床試験である必要性はないと思います。 臨床エンドポイントで承認するとなると、大規模かつ長期試験が必須となり、新薬が承認されるまで時間がかかります。そうするとドラッグロスが生じ、患者さんにとって不利益が生じます。希少疾患では、いつになっても承認されることがないかもしれません。そこで、代替エンドポイントによる承認は避けられません。疾患の詳しいメカニズムに関する研究が進み、疾患バイオマーカーの開発も伸びています。代替エンドポイントによる早期の新薬承認は、これから必要性を増してくると思われます。そのために、疾患レジストリーや電子カルテ等のRWDの活用も盛んになることでしょう。

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「高齢者施設の服薬は昼1回に集約」提言のインパクト【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第132回

薬局で働いていると、高齢化を感じる機会は多いのではないでしょうか。2022年10月時点の日本の高齢化率(65歳以上の人口が占める割合)は29%です。約10年前の2011年の高齢化率は18%でしたので、1年で約1%増えているイメージですね。いまの65歳は元気な人が多く、高齢化社会大綱において「65歳以上を一律に“高齢者”と見る一般的な傾向は、現状に照らせばもはや現実的なものではなくなりつつある」とされているとはいえ、今後は高齢者施設のニーズがさらに高まり、それに伴って施設職員の負担は増えると考えられます。そのような中、超高齢社会における対策として、日本老年薬学会が「高齢者施設の服薬簡素化提言」を5月17日に出しました。【提言1】服薬回数を減らすことには多くのメリットがある服薬回数を減らすと、誤薬リスクの低下と医療安全の向上に加えて、入所者/入居者にとっては服薬負担の軽減と服薬アドヒアランスの向上、施設職員にとっては与薬負担の軽減と勤務の平準化が期待できる。【提言2】服薬は昼1回に:昼にまとめられる場合は積極的に検討する施設職員の多い昼の時間帯に服薬を集約することで、さらなるメリットが期待できる。ただし、昼服用に適さない薬剤もあり、また療養場所が変わったときには再度の見直しが必要になるなど制限もある。個人的には、「昼1回にまとめる」という具体的な提案がとてもよいと思います。どんな患者さんでも/どんな薬でもというわけにはいきませんが、単に「服薬回数を減らす」のではなく、マンパワー不足などの現実的な問題から「昼1回にまとめる」と具体的に提案することで、メリットの大きさや取り組みやすさを感じます。この提言の背景として、「施設では職員の勤務シフトを組んで朝昼夕、眠前の配薬・与薬・服薬確認に対応しているが、現状の処方では、他のケアもある中で服薬支援を確実に遂行するには限界がある」という課題が挙げられています。また、近年、薬剤師からもポリファーマシーに対して処方提案を行うことが増えていますが、「ポリファーマシー対策では、処方見直しを行って薬剤の種類が減っても、服薬回数は変わらないことがある」とあり、それには静かにうなずくしかありません。服薬簡素化により、誤薬のリスクを減らし、患者さんご本人や職員の負担軽減が期待されます。しかし、服薬簡素化には患者さんや家族から十分な理解を得て、療養場所が変わった際には再度の見直しが必要とも記載されています。注意することは多々ありますが、服薬簡素化が大きな流れになる可能性もあると期待が高まります。日本老年薬学会は、服薬簡素化を導入するための手順やフローチャートなどをホームページで公開していますので、ぜひ見てみてください。実際に目の前で起きているこれらの問題に着目し、専門家が集まり、仮説を立て、検証し、それを学会の取り組みとして発表していてとても素敵だぁと思うとともに、目の前の患者さんの服薬負担やアドヒアランスを改善するヒントとしてとても参考になります。関連サイト高齢者施設の服薬簡素化提言 第1版

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英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

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高齢者診療の困ったを解決するヒントは「老年医学」にあり!【こんなときどうする?高齢者診療】第1回

今回のテーマは、「なぜ今、老年医学が必要なのか?」です。このような症例に出会ったことはありませんか?85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。適切な診断と治療をして疾患は治ったにもかかわらず状況が悪化してしまう-高齢者診療でよく遭遇する場面かもしれません。老年医学はこうしたジレンマに向かい合うきっかけを提供し、すべての高齢者に対してQOLの維持・向上を図ること、また同時に心や体のさまざまな症状をコントロールするために体系化された学問です。老年医学の原則とアプローチ(「型」)を実践することで、困難事例に解決の糸口をみつけることができるようになります。老年医学の原則:コモンなことはコモンに起きる-老年症候群と多疾患併存日本における平均寿命と健康寿命はいずれも延伸していますが、平均寿命と健康寿命のギャップは医療の進歩にも関わらず顕著には短縮しておらず、女性で約12年、男性で約7~8年あります。1)この期間に多くの高齢者が抱える問題が2つあります。ひとつは老年症候群。たとえば記憶力の低下や抑うつ、転倒や失禁などの認知・身体機能の低下など、高齢者にコモンに起きる症状・兆候を「老年症候群」と総称します。もうひとつは、多疾患併存(multimorbidity)です。年齢に比例して併存疾患の数が多くなり、60歳以降では約20%が3つ以上の疾患を有しているという調査があります。2)高齢者の治療やケアをする場合、老年症候群と多疾患併存があるという前提で診察やケアにあたることが大切です。老年医学の型:5つのM老年症候群があり、多疾患併存状態にある高齢者の診療は、疾患の診断-治療という線形思考で解決しないことがほとんどです。そこで、複雑な状況を俯瞰するために「5つのM」というフレームを使います。要素は、大切なこと(Matters most)、薬(Medicine)、認知機能・こころ(Mind)、身体機能(Mobility)、複雑性・落としどころ(Multi-complexity)の5つです。今回のケースを5つのMを使って考えてみましょう。ポイントはMatters mostから考え始めること。「生きがい」・「大切なこと」といったことでもよいのですが、「今、患者/家族にとって一番の困りごとは何か、肺炎を治療した先の日々の生活に期待することは何か?」を入院加療の時点で考えられると、行うべき介入がさまざまな角度から検討できるようになります。今回のケースでは、肺炎治療後に自宅に帰り、自立した生活をできる限り続けることがゴールだったと考えてみましょう。そうすると、肺炎治療に加えて1人で歩行するための筋力維持が必要だと気付くでしょう。また筋力を維持するためには栄養状態にも気を配らなければなりません。それに気付けば理学療法士や管理栄養士など、その分野の専門職に相談するという選択肢もあります。また、肺炎治療中の絶対安静や絶食は、筋力や栄養状態の維持を同時に叶えるために適切な選択だろうか?本当に必要なのだろうか?と立ち止まって考えることもできます。しかし命に係わるかもしれない肺炎の治療は優先事項のひとつですから、落としどころとして、安静期間をできる限り短くできないか検討する、あるいはリハビリテーションの開始を早める、誤嚥のリスクを見極めて経口摂取を早期から進めていく、といった選択肢が出てくるかもしれません。100%正しい選択肢はありません。ですが5つのMで全体像を俯瞰すると、目の前の患者に対して、提供できる医療やケアの条件の中で、患者のゴールに近づく落としどころや優先順位を考えることができます。高齢者にかかわるすべての医療者で情報収集し共有する今回のケースでは、例として理学療法士や管理栄養士を出しましたが、その他にもさまざまな専門職が高齢者の医療に携わっています。医師は診断・治療といった医学的介入を職業の専門性として持つ一方で、患者とコミュニケーションできる時間が少ないために十分な「患者―医師関係」が構築しにくく、患者・家族が本当に大切にしていることが届きにくい場合があります。そのため、協働できる多職種の方とともに患者の情報を得る、そして彼らの専門性を活かして介入の方法やその分量のバランスをとること、落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。参考1)内閣府.令和5年度版高齢社会白書(全体版).第1章第2節高齢期の暮らしの動向.2)Miguel J. Divo,et al. Eur Respir J. 2014; 44(4): 1055–1068.

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