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高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 本調査では、メディカル・データ・ビジョンのデータベースの非識別化データを解析した。2018年11月~2023年5月に最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブ(+内分泌療法)を投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者を同定した。全体集団および高齢者集団のTTDなどを、カプランマイヤー法を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。●最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブを投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者3,669例のうち、1,681例(45.8%)が65歳以上であった。年齢中央値は全体集団63歳(範囲:21~97)、高齢者集団72歳(65~97)であった。骨・骨髄転移があったのは60.1%および56.3%、内臓転移があったのは54.9%および55.9%であった。高齢者集団では併存疾患を有している割合が高かった。●高齢者集団のアベマシクリブレジメンで最も多かったのはアベマシクリブ+フルベストラント(55.0%)で、アベマシクリブ+レトロゾール(31.9%)、アベマシクリブ+アナストロゾール(13.0%)と続き、全体集団と同等であった。●初回アベマシクリブ療法のTTD中央値は全体集団と高齢者集団で類似していた(以下、括弧内は95%信頼区間)。 ・全体集団 13.1ヵ月(12.5~14.0) ・高齢者集団 12.8ヵ月(11.4~13.6)●高齢者集団のうち、75歳以上の場合はTTDが短かった。 ・65~69歳 13.2ヵ月(11.4~15.3) ・70~74歳 13.2ヵ月(11.0~15.2) ・75歳以上 11.2ヵ月(9.8~13.0)●内臓転移がある場合もTTDが短かった。 ・内臓転移あり 11.5ヵ月(10.3~13.0) ・内臓転移なし 14.0ヵ月(12.2~15.4)●初回アベマシクリブ療法から最後の乳がん治療のTTDは、年齢にかかわらず同等であった。 ・全体集団 42.1ヵ月(40.5~45.7) ・高齢者集団 40.2ヵ月(37.0~44.0)●化学療法開始までの期間は、高齢者集団のほうが長かった。 ・全体集団 30.6ヵ月(28.8~33.1) ・高齢者集団 34.8ヵ月(30.2~39.5)●アベマシクリブの初回投与を承認用量(300mg/日)で実施していた割合は、全体集団79.3%、高齢者集団69.6%(65~69歳79.9%、70~74歳72.9%、75歳以上56.8%)であった。治療中に1段階以上減量したのは、全体集団55.7%、高齢者集団58.3%で、初回の減量までの期間は高齢者集団で短かった。

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口腔疾患、過去30年間の有病率と負荷の変化/Lancet

 世界保健機関(WHO)の「口腔保健に関する世界戦略および行動計画(Global Oral Health Action Plan)2023-2030」では、2030年までに口腔疾患の有病率を10%減らすという包括的な世界目標を設定している。この目標に向けた進捗状況をモニタリングするためには、口腔疾患の世界的な負荷に関する確実性の高い最新の情報が最も重要になる。英国・Royal London Dental HospitalのEduardo Bernabe氏らGBD 2021 Oral Disorders Collaboratorsは、1990~2021年の30年間の世界的な口腔疾患の負荷状況をシステマティック解析とメタ解析にて調べ、負荷状況の変化はわずかで、口腔疾患制御のための過去および現行の取り組みは成功しておらず、新たなアプローチが求められていることを示した。著者は、「多くの国が、口腔疾患の新たな症例の発生制御と口腔保健に対する膨大な満たされないニーズに取り組むという、2つの課題に直面している」と述べている。Lancet誌2025年3月15日号掲載の報告。未治療う蝕、歯周炎、口腔がんなどの1990~2021年の有病率、DALYsを推定 研究グループは、システマティック解析により、WHO規定の地域・国レベルにおける未治療う蝕、重度の歯周炎、無歯顎、その他の口腔疾患、口唇・口腔がんおよび口唇口蓋裂の、1990~2021年の有病率および障害調整生存年(DALYs)を推定した。 疫学調査、住民ベースのレジストリおよび人口動態統計からデータを抽出し、DisMod-MR 2.1(本報告がベースとしたGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD]解析用に開発されたベイズメタ回帰モデリングツール)を用いてモデル化し、口腔疾患の有病率、罹患率、寛解率および死亡率の推定値の一貫性を確保した。 推定DALYsは、早期死亡による損失生存年数(YLLs)と障害生存年数(YLDs)の合計とした。YLDsは、推定有病率、口腔疾患の後遺症(障害の程度)および後遺症の期間を乗算して推定した。すべての口腔疾患がYLDsに結びついたが、YLLにも結びついたのは口唇・口腔がんおよび口唇口蓋裂のみであった。95%不確実性区間(UI)は、事後分布の1,000描出値の25th~975thのメトリック範囲で生成した。変化はほとんどなし、最も高負荷は無歯顎、重度の歯周炎、口唇・口腔がん 2021年における主要口腔疾患(未治療う蝕、重度の歯周炎、無歯顎、その他の口腔疾患)の、世界統合の年齢標準化有病率は10万人当たり4万5,900(95%UI:4万2,300~4万9,800)で、世界で36億9,000万人(34億~40億)が罹患していた。 最も多くみられた口腔疾患は、未治療の永久歯う蝕(年齢標準化有病率は10万人当たり2万7,500[95%UI:2万4,000~3万2,000])と重度の歯周炎(1万2,500[1万500~1万4,500])であった。 無歯顎、重度の歯周炎、口唇・口腔がんは、DALYsと年齢標準化DALY比によって最も高負荷であることが明らかにされた。また、1990~2021年の傾向から、有病率と負荷の変化(上昇または低下)は比較的小さいことが明らかになった。 有病率とDALYsの上昇はすべての口腔疾患で認められたが、未治療の乳歯う蝕の有病率あるいはDALYsに変化が認められず、口唇口蓋裂はDALYsの-68.3%(95%UI:-79.3~-46.5)が認められた。また、未治療の永久歯う蝕と無歯顎の年齢標準化有病率およびDALYsはいずれも低下していたが、未治療の乳歯う蝕と重度の歯周炎はいずれも変化がみられなかった。口唇・口腔がんは、有病率は上昇したがDALYsは変化がみられず、口唇口蓋裂は、有病率は変化がみられなかったがDALYsは低下していた。 WHO地域別にみると、アフリカ地域と東地中海地域が、ほとんどの口腔疾患の有病率とDALYsの上昇が最も大きかった一方、欧州地域は上昇が最も小さいか変化なしであった。欧州地域は、未治療の乳歯う蝕(-9.88%[95%UI:-12.6~-6.71])と永久歯う蝕(-5.94%[-8.38~-3.62])の両方の年齢標準化有病率が低下した唯一の地域であった。 重度の歯周炎の有病率とDALYsは、アフリカ地域で低下した、無歯顎の有病率とDALYsは、アフリカ地域、南東アジア地域、西太平洋地域で低下した。さらに、口唇・口腔がんは、欧州地域と南北アメリカ地域ではDALYsが低下し、口唇口蓋裂のDALYsはすべての地域で低下していた。 著者は、「結果は、過去30年間の対策は不十分であり、住民の口腔保健にほとんど変化がなかったことを示すものであった。将来的に、大規模かつ影響力のある対策を講じない限り、この傾向は続くだろう」と述べている。

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細菌性膣症、男性パートナーの治療で再発予防/NEJM

 細菌性膣症は生殖可能年齢の女性の約3分の1に認められ、再発は一般的である。細菌性膣症の原因菌のパートナー間での感染エビデンスは、半面で男性パートナーへの治療が治癒を高めることも示唆することから、オーストラリア・モナシュ大学のLenka A. Vodstrcil氏らStepUp Teamは、一夫一婦関係にあるカップルを対象とした非盲検無作為化比較試験を行い、細菌性膣症の女性への治療に加えて、男性パートナーに対して経口および局所抗菌薬治療を行うことにより、12週間以内の細菌性膣症の再発率が標準治療と比べて低下したことを報告した。NEJM誌2025年3月6日号掲載の報告。一夫一婦関係のカップルをパートナー治療群または女性のみ治療群に無作為化 試験は2019年4月~2023年11月に、オーストラリアの3州で展開する2つの性の健康サービス(sexual health services)および3つの家族計画サービス(family-planning services)の施設で行われた。 一夫一婦関係にあるカップルを1対1の割合でパートナー治療群(女性とその男性パートナーに治療)または対照群(女性のみに治療)に無作為に割り付けた。パートナー治療群では、女性は初回治療として推奨される抗菌薬の投与を受け、男性パートナーは経口および局所の抗菌薬治療(メトロニダゾール400mg錠の投与および2%クリンダマイシン クリームの陰茎皮膚への塗布、いずれも1日2回を7日間)を受けた。対照群では、基材を問わずクリーム塗布による陰茎部の細菌叢構成の変化への懸念から、女性にのみ初回抗菌薬治療を行った。再発の絶対リスク差、パートナー治療群が-2.6例/人年で有意差 81組のカップルがパートナー治療群に、83組のカップルが対照群に無作為化された。 試験はデータおよび安全性モニタリング委員会の判断によって、150組が12週の追跡調査完了後に、女性のみの治療が女性および男性パートナー両者への治療に対して劣性であったため中止された。 修正ITT集団において、12週間以内の細菌性腟症の再発はパートナー治療群の女性で24/69例(35%、再発率1.6例/人年[95%信頼区間[CI]:1.1~2.4])、対照群の女性で43/68例(63%、4.2例/人年[3.2~5.7])であった。再発の絶対リスク差は-2.6例/人年(95%CI:-4.0~-1.2)であった(p<0.001)。 治療を受けた男性における有害事象は、悪心、頭痛、金属味などが報告された。

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慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対してザヌブルチニブ発売/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2025年3月19日、未治療および再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対して、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)を発売したと発表した。 本剤は、未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたSEQUOIA試験、再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたALPINE試験、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫患者を対象としたASPEN試験の3つの主要な第III相試験に基づき、2024年12月27日に承認されている。 本剤の世界的な臨床開発プログラムには、30の国と地域で35以上の試験に登録された約6千例の患者が含まれており、70の国と地域で承認され、10万例以上が治療を受けているという。<製品概要>販売名:ブルキンザカプセル80mg一般名:ザヌブルチニブ効能・効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫用法・用量:通常、成人にはザヌブルチニブとして1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。承認日:2024年12月27日発売年月日:2025年3月19 日薬価:6,636.10円製造販売元:BeiGene Japan合同会社

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第3回 加速する高齢化と揺らぐ老年医療──迫り来る「専門医不足」の波

近年、こちらアメリカでも高齢化が急速に進んでおり、2020年の65歳以上の人口は5,580万人(総人口の16.8%)でしたが、2050年までにおよそ8,200万人(22.8%)に達すると予測されています1)。こうした状況下で注目されるのが、高齢者の医療を専門とする「老年医学」の医師不足です。今回はそんな問題を取り上げた記事をご紹介します。アメリカが直面する深刻な高齢化の現実Business Insiderの記事によれば、老年医学を専門とする医師の数は、2000年代初頭では1万人に上ったのが、今では約7,400人にまで減少しているといいます2)。その一方、今後の需要を考えれば、3万人が必要になると推定されており、現在の医療システムはすでに歪みを来し始めています。多くの病院や診療所が、限られたマンパワーの中で数多くの高齢患者を抱え、予約待ちリストが数ヵ月単位で埋まってしまうところも珍しくありません。著者の私自身、そうした現場で働いていて、身近に感じている問題ですが、このような事態は、老年医療現場の負担を今後もますます増大させ、ケアの質低下を招きかねない大きな課題となっています。敬遠される老年医学の専門性と複雑さ老年医学の道を選ぶ医師が減っている背景には、複雑な高齢者医療の現場があると考えられます。高齢者は複数の慢性疾患を同時に抱えることが多く、服薬管理だけでも薬が20種類近くに及ぶケースもあるため、医師には高い総合診療能力が求められます。にもかかわらず、報酬水準や社会的評価の面で老年医学は決して高待遇とはいえず、若い医師は循環器内科や腫瘍内科など、より専門性が高く高収入が見込まれる分野に進む傾向があります。さらに、高齢者医療を敬遠する理由として、現場での負担感や繁忙度の高さを挙げる声も少なくありません。実際、多くの医療現場でマンパワーやベッド数が圧迫され、介護施設ではスタッフ不足による新規入所者の受け入れ制限も行われている状況が報告されています。日本はさらに深刻この話題は、当然日本にとっても対岸の火事ではありません。現状の医療システムで十分高齢者医療は成立していると思われる方も少なくないかもしれませんが、本当に最適な医療が行われているのかには疑問が残ります。日本における高齢者人口は2024年時点で約3,625万人(総人口の29.3%)に上り、日本は主要国で最も高齢化率が高い国です3)。また、今後も高齢化率の上昇は続く見通しで、2040年には高齢化率34.8%と推計されています 。日本の高齢者人口は今後数十年にわたり高水準を維持し、総人口に占める割合も3人に1人から、将来的には2人に1人近くになると見込まれています。そんな中、老年科専門医の数が少ないことは、日本では話題にもあまり上らない課題です。国内の老年科専門医の数は1,800人前後です。この数字は、小児科専門医(約1万6,000人)の1割にも満たず、日本の医師全体(約34万人)からみるとごくわずかです4)。拡大する高齢者人口の規模に対して老年科専門医の数は非常に少なく、地域によっては老年医学を専門とする医師がほとんどいない状況も指摘されています。これからの高齢社会を支えるために老年医学の専門家が不足している現状は、患者だけでなく社会全体にとっても看過できません。寿命が延びるほど、転倒予防から認知症ケアまで多面的なサポートが必要になり、そうした問題に対処する十分なスキルを持つ医師や看護師、また介護スタッフなどとの連携がますます重要になります。記事でも示されているように、対策として研修プログラムの拡充や魅力的な給与体系の再検討、医療補助スタッフの育成支援などが鍵となりますが、今のところ劇的な打開策は見えていません。こうしたギャップを埋め、高齢者一人ひとりに適切な医療を提供するためには、日米両国ともに、老年科専門医の育成では足りず、医療従事者全体で高齢者医療に対応できる体制を整えていく必要があるでしょう。そのためには、医療系学生のうちからそうした学びを深めることができる仕組みこそが大切ではないかと感じています。参考文献・参考サイト1)United States Census Bureau. 2023 Population Projections for the Nation by Age, Sex, Race, Hispanic Origin and Nativity. 2023 Nov 9.2)Sor J. America's aging population faces a growing shortage of geriatric care. Business Insider. 2025 Mar 9.3)総務省統計局. 統計からみた我が国の高齢者. 2024年9月15日.4)Arai H, Chen LK. Aging populations and perspectives of geriatric medicine in Japan. Glob Health Med. 2024;6:1-5.

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トラネキサム酸による産後の致命的な出血予防効果は大出血診断前でも有効―IPD meta-analysis(解説:前田裕斗氏)

 トラネキサム酸(TXA)は線溶系を抑制する薬剤であり、出血量の減少や止血効果が期待される。既存研究において「臨床的に診断された産後出血」に対するTXA投与で死亡率を減らす効果を示しており、WHOも出血発生後の使用を推奨している。しかし「出血が起こる前からの予防投与」に関しては、十分に結論が得られていなかった。本研究は、トラネキサム酸の死亡または重大な外科的介入を要する産後大出血に対する予防効果をみた無作為化比較試験(RCT)のメタアナリシスである。 本研究の手法であるindividual patient data(IPD) meta-analysisとは、要するに公表されている集計データ(治療群と対照群の平均値・標準偏差・サンプルサイズなど)をまとめたものではなく、各研究に参加した個々の被験者の生データ(個人レベルのデータ)を収集し、それらを統合して解析を行う手法である。これにより、より精度の高い解析を行うことができる。さらにTXA vs.プラセボの効果をみたRCTのみを組み入れることで、より質の高い研究となっている。 主な結果として、TXA群はプラセボ群と比べて、致命的な出血発生率が有意に減少(オッズ比:0.77、95%信頼区間:0.63~0.93)し、分娩様式や貧血の有無、投与タイミング(産後出血の診断前後)による有意な治療効果の差はみられなかった。また、血栓性の合併症について2群で有意差は認められなかった。この結果は全妊婦にTXAの予防投与を行うことで致命的な出血を予防できる可能性を示唆しているが、出血の発生頻度が低いことを考えると、必ずしも費用対効果や副作用の点で優れているとは限らず、今後どんな群にTXAを投与するのが適切かの検討が必要である。 臨床現場への適応については、有害事象に乏しいこともあり、今後日本でも出血ハイリスク群に対して臍帯クランプをした時点から落とし始める施設が増えるかもしれない。一方、本研究で組み入れられたRCTは、ほとんどが低中所得国で行われたものであることを考えると、日本で同様の結果が得られるかどうかは議論の余地があり、今後日本で蓄積されたデータの解析が待たれるだろう。

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ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。 しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。 ランダム化比較試験としては事前に設定した有効性、安全性エンドポイントに対する仮説検証が目標となるが、臨床家は結果に基づいて実臨床における治療選択を考える。「頭蓋内出血の既往のある心房細動」でもDOACで虚血性脳卒中リスクを低減できるが、頭蓋内出血リスクは増える。未来に虚血性脳卒中リスクの高い個別症例を選別してDOACをのませる、などの個別最適化医療への方向転換が必要である。

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春分、そして明るい話【Dr. 中島の 新・徒然草】(572)

五百七十二の段 春分、そして明るい話読者の皆さん、今日は春分です。小学校の頃、われわれは「春分は昼と夜の長さが同じ」と習いました。しかし、実際には昼のほうが夜よりも少し長いのです。というのも、日の出の時刻は「太陽の上辺が見えた瞬間」と定義されており、太陽の中心が地平線と一致する時刻ではありません。日の入りの時刻も同様に「太陽の上辺が見えなくなる瞬間」と定義されています。よって春分の日に太陽の光が地表を照らすのは12時間以上。さらに、地平線近くの太陽光は空気の影響で少し屈折するそうです。これは「スネルの法則」と呼ばれています。そのため、本来は地平線の下にある太陽が見えるのです。この日の出・日の入りの定義とスネルの法則により、厳密には春分の日は昼の方が夜よりも長くなります。このことを本で読んで「なるほど」と感心した中島少年は、小学校の授業で担任教師が「春分の日は昼と夜の長さが同じです」と言った瞬間、勢いよく手を挙げて「先生、春分の日は昼の方が夜よりも長いです!」と発言し、ずいぶん周囲の顰蹙を買ってしまいました。きっと少なからぬ数の読者が同じような経験をしたことと思います。あの時、どう言えば波風が立たなかったのでしょうか。今でも答えは見つかっていません。実際、国立天文台によれば、今年の大阪での春分の日の出は6時2分、日の入りは18時10分で、やはり昼のほうが長くなっています。ちなみに、春分は英語でvernal equinoxまたはspring equinox、秋分はautumnal equinoxなのだそうです。そもそもequi- は「等しい」を意味する接頭辞で、equator(赤道)、equilibrium(均衡)、equity(公平、公正)などに使われています。一方、noxは「夜」を意味し、nocturnal(夜行性の)、noxious(有害な:「夜の闇のように危険なもの」)、night(夜)などの語源となっています。つまり、equinoxには「等しい夜」という意味が含まれているわけですね。ずいぶん前置きが長くなってしまいました。今回は頭部外傷後の高次脳機能障害を抱える患者さん2人の、ちょっと明るい話をお伝えしたいと思います。お1人目は定年退職直後の男性。この方は大手建築会社に勤務していましたが、交通事故で頭部外傷を負い、高次脳機能障害になってしまいました。主な障害は「感情的になりやすい」こと。ハローワークなどで仕事を探し、役所の建築・土木部門に採用されるものの、長続きしませんでした。最初は「こんな専門家が来てくれるなんて助かります」と役所にも喜ばれるのですが、職場の同僚の不出来に我慢ができず、つい大きな声を出してしまうことがたびたびあったそうです。再診のたびに「職場で大切なのはハイパフォーマンスよりも人間関係ですよ」とアドバイスしてきましたが、この患者さんはなかなか実行できませんでした。ところが、今回ついに「来年度も引き続き働いてもらえませんか」と言われたそうです。現在の職場は健康・福祉部門。専門外の仕事なので、周囲に教えてもらいながら取り組まなくてはならず、自然に腰が低くなったことが良い結果を生んだようです。「これからもお願いします」と言われて、すごく嬉しかったと仰っていました。もう1人は30歳前後の男性。この方も交通事故による頭部外傷で高次脳機能障害になってしまいました。結婚したばかりで、家を建てて張り切っていた矢先の事故だったそうです。性格が変わってしまい、些細なことでカッとするようになったため、奥さんにとっては「どこに地雷があるかわからない」状態だったのでしょう。結局、離婚ということになってしまいました。せっかく建てた広い家に独り取り残され、寂しい日々を送っていたそうです。ところが、ついに結婚相談所を利用して再婚することができました。再婚相手には自分の障害についてきちんと説明したそうです。こちらもめでたい話ですね。とはいえ、高次脳機能障害を他人に理解してもらうのは簡単なことではありません。中島「機会があったら、奥さんも一緒に外来に来てください」患者「ぜひ、そうさせていただきます」中島「私のほうからも、ご本人の障害について説明しましょう」新しい奥さんが障害を理解したとしても、実際の結婚生活を送るに当たっては、さまざまな困難が待ち受けていることでしょう。そのサポートをするのも、医師としての役割の一つ。お2人が明るく、楽しく、前向きに生きていけるよう応援したいと思います。ということで、今回は明るい出来事を聞かせてもらい、こちらまで嬉しくなったというお話でした。最後に1句春分が 明るい話 連れてきた

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 1

今回のキーワード不安受け身アイデンティティ勤勉性べき思考学習性無力感不登校教師のメンタルダウン皆さんが小学生だった時、学校は楽しかったですか? 皆さんに小学生のお子さんがいるなら、お子さんは学校に楽しく行っているでしょうか?前回(その1)、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」のいくつかのシーンを通して、日本の学校教育の良さが、ルールを守る規律、周りに合わせる協調性、努力する忍耐力であることがわかりました。一方で、その裏返しでもある危うさは、周りと同じことをやらせすぎる同調圧力、言いなりにさせるモラルハラスメント、吊し上げをするスケープゴートであることがわかりました。今回(その2)、引き続きこの映画のいくつかのシーンを通して、そこまでされてしまった生徒たちの心理、そこまでしてしまう教師たちの心理に迫ります。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場していますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを指摘しています。そこまでされると生徒たちはどうなってしまうの?放送係の6年生の男子と女子が、卒業式を間近にして、放送室でおしゃべりをしています。彼女から「卒業、嬉しい?」と聞かれると、彼は「悲しいと寂しい」と答えます。さらに彼女から「もっといろんなことに責任を持たなきゃいけない? 大人になるって感じちゃう?」と核心を突かれると、「感じちゃうから嫌だ。子供のままでいたい」と正直に答えていました。決して楽しみにはしていないようです。彼のなかにはどんな心理があるのでしょうか?ここで、大きく2つ挙げてみましょう。(1)楽しめない―不安になりやすい彼らは「責任」という言葉を意識していました。この映画に登場する先生たちもたびたび使っていました。つまり、責任という名の、やらなければならないことやダメ出しをされることが先々にどんどん増えていくとプレッシャーを感じ、萎縮してしまっています。不安そうで、決して楽しみにはしていません。1つ目の心理は、楽しむことができず、不安になりやすいことです。この原因として、もともと不安になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの生徒同士の同調圧力によって自分らしさ(アイデンティティ)が削がれていくために、自分はこうなりたいというワクワクした将来像が見えてこず、漠然とした不安があるだけなのでした。心理学では、これをべき思考と呼んでいます。こうであるべき、こうでなければならないという規律や役割などの多数派(主流秩序)が求める価値観にとらわれてしまうということです。また、先生たちは、頑張ればできると思い込んでいるため、「責任」という言葉を通して「頑張ること」を最優先にしていることも要因です。逆に、できていても頑張っていなければ、認めようとしません。また、楽しめているかどうかにについてはいっさい触れられず、むしろ最初から楽しもうとすると頑張っていないと見なされ、「不真面目だ」という圧までかけられます。楽しむことができるのは、頑張って何かができたあとだけのようです。確かに、その1でも登場した1年生の女子のように、頑張ればある程度できるようになります。しかし、不安のなりやすさと同じように、頑張るという忍耐力(パーソナリティ)やできるという認知能力にも、遺伝的な違いがグラデーションのようにあります。たとえば、頑張って伸びる人と潰れる人、走って速い人と遅い人がいるのと同じです。さらに言えば、楽しんで伸びる人と伸び悩む人もいます。つまり、生徒の個性(遺伝)によって頑張ることと楽しむことのバランスを取り、何よりも生徒を不安にさせなくする必要があります。先生たちが遺伝についての知見を先入観なく受け入れることができていない時点で、やはり時代遅れになっています。なお、認知能力(知能)とパーソナリティへの遺伝、家庭環境、学校環境(家庭外環境)のそれぞれの影響の度合いについては、関連記事1の後半以降をご覧ください。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 2

(2)選べない―受け身になりやすい彼は、「子供のままでいたい」と言っていました。一方で、6年生の教室で先生が「中学校に言ったら提出物が多くなる。このまま(提出物を忘れる状態)じゃかなり危険だぞ」と忠告していました。確かにその通りです。しかし、そんな脅し文句ばかり言われていると、彼のように、早く大人になって好きなことをしたい、つまり自分の生き方を選びたいという期待や夢が膨らみません。2つ目の心理は、選ぶことができず、受け身になりやすいことです。この原因として、もともと受け身になりやすい気質(遺伝)が考えられますが、それと同じかそれ以上に校則や役割があまりにも多すぎる学校環境が考えられます。その1でもご説明しましたが、そんな学校環境のなかでの教師たちによるモラルハラスメントによって自主性(勤勉性)が育まれないために、自分からこうしたいというエネルギーが沸いてこず、ただ指示待ち人間になっているだけなのでした。心理学で、これは学習性無力感と呼ばれています。できないことを繰り返し強いられることによって、自分はできない(無力である)と学習してしまうのです。また、「責任」という言葉が便利に使われて、「やるべきこと」が限りなく多いことも要因です。逆に、やりたいことを選び、やりたくないことを選ばないという選択の自由がほとんどなく、自由にしようとすると先生の言うことを聞いていないと見なされ、「偉そうだ」という圧までかけられます。確かに、給食当番と掃除当番は、日々の社会的な活動として意味づければ「やるべきこと」でしょう。そして、学校の勉強ももちろん「やるべきこと」です。しかし、運動会、卒業式などの行事の練習を生徒全員が揃って数週間前からすることは、どうでしょうか? ある先生は「運動会の表現を通して、殻を破ってほしい」と言い、運動会の練習を必死に取り組む理由を力説していました。しかし、それは参加するという選択を自らしてこそです。強制されている限り、そうなる根拠はありません。つまり、実はこのような行事を強いるのには合理的な理由がなく、決して「やるべきこと」ではありません。また、先ほど触れたように認知能力には個人差(遺伝的な違い)があるのに、授業内容はすべて画一的で詰め込まれています。レベル分けもほとんどされていないので、自分のレベルに合わない授業を選ばない(自分のレベルに合う授業を選ぶ)という選択肢がないです。あえて選ばないとしたら、すべてを選ばない、つまり不登校の一択しかありません。よくよく考えると、本来の責任の意味は、自分が自由に選んだものに対して負うものです。自由と責任はセットです。つまり、最初の時点で選ばない権利(拒否権)があるはずです。自分で納得して選ぶからこそ、その行動への責任感が芽生えます。しかし、学校で使われる「責任」の多くは、一方的に押し付けられたタスクであり、選ばない権利がありません。しかも、その1でもご説明した通り、その多くが合理的な理由がないものです。つまり、学校で使われる「責任」の正体とは、生徒にとって「責任」という名の衣をかぶった「強制労働」であり、生徒を「奴隷」として逃がさないための都合の良い美辞麗句であったことがわかります。そんななかで、この真実にいち早く敏感に気付いて逃げ出した生徒が、不登校と呼ばれるのです。そしてそんな生徒たちは、学校には絶対に行きたがらないのに、学習塾や習いごとには抵抗なく行くのです。つまり、不登校の原因は、生徒だけでなく、このような学校の時代遅れのやり方にもあったというわけです。これが、不登校が増え続ける最大の原因でしょう。なお、不登校の心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。そもそも責任とは、大人になるにつれて自由とセットでだんだんと増えていくものです。なぜなら、大人になる(自立)とは、自分の行動を自分で決めて、自由に生きていくことだからです。そこには、楽しみがあり喜びがあります。その自由に対して責任があるのです。つまり、小学生の時からむやみに、しかも一方的に押し付つけるものではないです。そんなことをしてしまったら、自分が自由に選んで責任を取るという大人になるための練習ができなくなります。なお、実際に、国際比較において、日本人は最も不安になりやすく、最も受け身になりやすい国民性であることがわかっています。この詳細については、関連記事3のページの後半をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その2)【なんで生徒も先生も楽しくなさそうなの?なんで先生はそこまでしてしまうの?】Part 3

なんで教師はそこまでしてしまうの?生徒たちの心理は、楽しむことができずに不安になりやすい、選ぶことができずに受け身になりやすいということがわかりました。それでは、なぜ先生たちはそこまでしてしまうのでしょうか?ある先生が本音を打ち明けます。「ちょっと油断すると大変で、日々戦いですね。自由と制限のバランスって。平均台の上を歩いてるような。すごいバランスの上で仕事やってるなって思うんです」と。どうやら先生たちも生徒たちをもっと自由にさせてあげたいようですが、なかなかできないようです。なぜでしょうか?ここから、その事情を大きく2つ挙げてみましょう。(1)やることが多すぎる―実は教師も不安で楽しめない給食のシーン。黒板前のモニターの大画面に残り時間がデジタルでカウントダウンされ、0になったらタイマーが鳴っていました。その間、生徒たちは、コロナ禍でもあるため、黙々と食べていました。まるで、オリンピックのタイムトライアルです。時間に追われており、あまりおいしく食べられそうにないです。ここにも厳しい規律があると思いつつ、先生がそこまでするのは、次にやることが決まっているという現実にも気付きます。1つ目の事情は、教師はやることが多すぎることです。実は、生徒たちだけでなく、その生徒たちの相手をする先生たちも、学習指導要領とその学校の習わしという厳しい規律に縛られています。それをこなせないということは、教師失格を意味します。つまり、生徒だけでなく、実は教師も「自分らしさ」を発揮できずに不安になりやすく、教えることを純粋に楽しめない職場環境に身を置いていたのでした。実際に映画では、自分にも厳しくてつらそうにしている先生はいても、楽しそうにしている先生は見つけられませんでした。そんな先生たちを間近に見ている生徒たちが、楽しくできるわけがありません。そして、そんなふうにしかならないなら、早く大人になりたいと思うわけがありません。(2)やることを変えられない―実は教師も受け身で選べないある先生は、生徒たちを体育館に集めて、「自分の殻を破る」ことについて熱弁していました。なんと、わざわざセラミックの大きな殻を用意して、自ら自分の頭に当てて割るパフォーマンスまでしていました。そのせいで、おでこから少し血が出てしまい、生徒たちは大騒ぎします。このパフォーマンスの狙いは、実は「殻を破る」ことを伝える以上に、このパフォーマンスを通して、生徒たちが盛り上がり、気持ちが1つになること(同調)でしょう。ここにも熱血(熱血風?)という同調圧力があることが確認できるわけですが、彼がそこまでするのは、このパフォーマンスをはじめ同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートを利用しないと、生徒に「やるべきこと」をやらせられないという現実にも気付きます。つまり、先生たち自身もどうしようもなく、最初の先生が言っていた「ちょっと油断すると大変」なのでした。2つ目の事情は、教師はやることを変えられないことです。生徒にとって負担である学校行事は、実は同じかそれ以上に先生たちにとっても負担です。あるシーンでは、先生たちだけで、運動会のかけっこの順位付けとその後の誘導の練習までもしていました。しかし、だからと言って、「そこまでやらなくてもいいこと」として、行事内容を簡素化しようにも、他の学校ではやっているのに自分たちの学校だけ変えるわけにはいかないという先生たち同士の同調圧力が働いています。職員室のシーンで、副校長は「鎌倉幕府は、外(敵)からは守れたけど、内(味方同士の不満)から壊れた」「副校長はボロ雑巾ですから、何でも言ってください」と受容的に話していました。しかし、いくら個別に不満を受け止めても、管理職の立場で行事内容を簡素化する決断は、「自分たちだけ楽してる」と対外的に思われたくないので、避けたいでしょう。それでも主張する教師がいるなら、その人は周りから「他の先生方は頑張っているのに(自分は頑張っていない)」などと言われ、仲間外れ(スケープゴート)にされるでしょう。それを見越して誰も言い出せないという空気もありそうです。また、生徒たちがついてこなかったり学級崩壊しようものなら、その先生は指導力がなく、頑張っていないとみなされます。実際に、先ほど頭から少し出血した先生は、せっかく「自分らしく」体を張ったのに、そのあとに生徒たちが興奮して騒いでいて困ったと別の先生から細かく指摘され、謝るはめになっていました。先ほどの「自由と制限」の「日々戦い」は、生徒たちだけでなく、先生たちも直面していることがわかります。生徒を自由にさせてしまっては先生にそのツケが回ってくる、そして先生を自由にさせてしまっては他の先生にそのツケが回ってくるという理屈です。つまり、実は教師も「主体性」を発揮できずに受け身になりやすく、教育を変えるという選択ができない職場環境に身を置いているのでした。そんななかで、あえて状況を変えるとしたら、それは教師を辞めることです。生徒が不登校になるのと構図は同じです。実際に、教師のメンタルダウンによる休職率がいかに高いかはすでに社会問題になっています。そして、そんな状況が見透かされ、ますます教師になりたいと思う人が減っています。そんな先生たちを間近に見ている生徒たちが、自分の行動を自分で選んでいけると思うわけがありません。そして、そんなふうにしかならないなら、早く大人になりたいと思うわけがありません。それでは、どうすればいいのでしょうか?(次回に続く)<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 1映画「かがみの孤城」(その1)【結局なんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 1苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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強迫症併存の双極症I型に対するLAI抗精神病薬補助療法の有用性

 双極症と強迫症は、併存することが多く、このような場合の治療には、大きな課題がある。双極症における強迫症の併存は、自殺リスクの増加や機能障害などの重篤な臨床的特徴と関連している。強迫症には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であるが、双極症の躁症状への転換リスクを増加させる可能性がある。アリピプラゾール月1回製剤やパリペリドン月1回製剤などの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、双極症治療における有病な代替治療として期待されるが、強迫症併存の双極症に対する有効性および安全性は、十分に研究されていない。イタリア・Asl Napoli 1 CentroのVassilis Martiadis氏らは、強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の有効性および忍容性を評価するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2025年2月2日号の報告。 対象は、強迫症併存の双極症患者27例。気分安定薬(リチウムまたはバルプロ酸)と併用してLAI抗精神病薬による治療を行った。臨床的および精神病理学的評価は、ベースラインおよび定期的に実施し、評価尺度にはYale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いた。安全性および忍容性の評価には、UKU副作用評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬治療は、躁病エピソードを引き起こすことなく、強迫症の症状や気分安定に対する有意な改善が認められた。・アリピプラゾールLAIは、パリペリドンLAIと比較し、体重増加に対する忍容性が良好であった。・アリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIとの間に、全体的な有効性の有意な差は認められなかった。 著者らは「強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の補助療法は、効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢である可能性が示唆された。このような患者に対する治療戦略を改善するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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HR+/HER2-乳がんへのダトポタマブ デルクステカンを発売/第一三共

 第一三共は、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬である抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2025年3月19日に薬価収載され、同日より発売したことを発表した。 本剤は、TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。化学療法の前治療歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移を有する乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験において、本剤投与群では医師選択化学療法投与群よりも有意に無増悪生存期間が延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象は半数以下であったことが示された。なお、アジア人サブグループ解析においても、全体集団と同様の結果が得られている。<製品概要>販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日および発売日:2025年3月19日薬価:100mg 1瓶 311,990円製造販売元:第一三共株式会社

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潰瘍性大腸炎に対する1日1回の経口薬オザニモドを発売/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは2025年3月19日、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬オザニモド(商品名:ゼポジア)を発売した。 オザニモドは、潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬である。S1P1受容体および S1P5受容体に高い親和性を持って選択的に結合するS1P受容体調節薬であり、リンパ球上に発現するS1P1受容体に結合し、S1P1受容体の内在化および分解を誘導することにより、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持する。この作用によってリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害することで、潰瘍性大腸炎の病理学的変化を改善すると考えられている。 本薬剤は、海外では再発型多発性硬化症の成人患者および中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者に対する治療薬として、2020年以降に米国、欧州などの多くの国で承認されており、長期的な安全性プロファイルを有する。また、1日1回投与の経口薬であり、患者の負担を軽減し、QOLの向上に寄与することが期待されている。<製品概要>販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg一般名:オザニモド塩酸塩製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日薬価:12,313.30円(スターターパック1シート)、4,792.80円(0.92mg 1カプセル)効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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再発・難治性濾胞性リンパ腫に対する二重特異性抗体モスネツズマブを発売/中外

 中外製薬は、2024年12月27日に「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」に対して製造販売承認を取得した抗CD20/CD3ヒト化二重特異性モノクローナル抗体であるモスネツズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ルンスミオ)について、2025年3月19日に薬価収載され、販売を開始したことを発表した。 本剤は、過去に少なくとも2つの標準治療が無効または治療後に再発した濾胞性リンパ腫に対する新たな治療選択肢である。効果に応じ投与期間があらかじめ定められているfixed durationの治療であり、治療に伴う患者さんの負担軽減が期待されるという。 今回の承認は、過去に2つ以上の標準治療を受けたことのある再発・難治性濾胞性リンパ腫患者を対象に実施した国内第I相試験の拡大コホート(FLMOON-1試験)および同じ患者集団を対象としたロシュ社による海外第I/II相試験の成績に基づいており、両試験で本剤の単剤投与による有効性および安全性が評価された。<製品概要>販売名:ルンスミオ点滴静注1mg、ルンスミオ点滴静注30mg一般名:モスネツズマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:再発又は難治性の濾胞性リンパ腫効能又は効果に関連する注意:・本剤による治療は、抗CD20モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも2つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。・十分な経験を有する病理医により、Grade1~3Aと診断された患者に投与すること。用法及び用量:通常、成人にはモスネツズマブ(遺伝子組換え)として、21日間を1サイクルとし、1サイクル目は1日目に1mg、8日目に2mg、15日目に60mg、2サイクル目は1日目に60mg、3サイクル目以降は1日目に30mgを8サイクルまで点滴静注する。8サイクル終了時に、完全奏効が得られた患者は投与を終了し、また、病勢安定又は部分奏効が得られた患者は、計17サイクルまで投与を継続する。製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日発売開始日:2025年3月19日薬価:1mg1瓶 83,717円、30mg1瓶 2,393,055円製造販売元:中外製薬株式会社

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失明を来し得る眼疾患のリスクがセマグルチドでわずかに上昇

 2型糖尿病の治療や減量目的で処方されるセマグルチドによって、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)という失明の可能性もある病気の発症リスクが、わずかに高まることを示唆するデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼研究所のCindy Cai氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に2月20日掲載された。 NAIONは、網膜で受け取った情報を脳へ送っている「視神経」への血流が途絶え、視野が欠けたり視力が低下したり、時には失明に至る病気。一方、セマグルチドはGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)という薬の一種で、血糖管理や減量のために処方される。2024年に、同薬がNAION発症リスクを高めるという論文が発表された。ただし、ほぼ同時期にその可能性を否定する研究結果も発表されたが、安全性の懸念が残されている。これらを背景としてCai氏は、複数のデータベースを統合した大規模サンプルを用いた後ろ向き研究を実施した。 解析には、医療費請求データや電子カルテなど計14件のデータを使用し、二つの手法でNAION発症リスクを検討した。一つ目は、セマグルチドが新たに処方された患者と、セマグルチド以外のGLP-1RA、およびGLP-1RA以外の血糖降下薬が処方された患者を比較する、実薬対照コホートデザインによる検討。二つ目は、同一患者内で当該薬剤を使用していた期間と使用していなかった期間とでリスクを比較する、自己対照研究デザインによる検討。 解析対象は3710万人の2型糖尿病患者であり、そのうち81万390人がセマグルチドの新規使用者だった。NAIONの発症リスクの検討には、1件の診断コードのみで定義した高感度モデルと、90日以内に2件以上の診断コードが記録されている場合で定義した高特異度モデルという2パターンを用いた。NAION発症率は、高感度モデルでは10万人年当たり14.5、高特異度モデルでは同8.7だった。 実薬対照コホートデザインの高感度モデルでは、セマグルチドはSGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬のシタグリプチン、SU薬のグリピジドとの比較でNAIONリスクに有意差はなかった。高特異度モデルでは、エンパグリフロジンとの比較でのみ、リスクが有意に高かった(ハザード比〔HR〕2.27〔95%信頼区間1.16~4.46〕)。 自己対照研究デザインにおいてセマグルチドは、高感度モデルで発生率比(IRR)1.32(同1.14~1.54)、高特異度モデルでIRR1.50(同1.26~1.79)と有意なリスク上昇が認められた。また、別のGLP-1RAであるエキセナチドも高特異度モデルでIRR1.62(同1.02~2.58)と有意なリスク上昇が認められた。 著者らは、「われわれの研究により、セマグルチドとNAIONリスクとの関連についての新たなエビデンスが示された。認められたリスクは先行研究に比べて小さかった。潜在的なメカニズムや因果関係の特定のために、さらなる研究が求められる」と述べている。またCai氏は、「セマグルチドは全身性の副次的効果が豊富な薬剤ではあるが、患者と医師はNAIONのリスクに留意する必要がある」としている。

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厳格な血圧管理が高齢者にもたらすベネフィットはリスクを上回る

 地域在住の高齢者では、厳格な血圧管理による健康上の利点は潜在的なリスクを上回る可能性の高いことが、最新の大規模臨床試験により明らかにされた。試験では、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする治療を受けた高齢者の約85%で、腎障害などの潜在的なリスクと比較して、得られるベネフィット(ネットベネフィット)の方が大きいことが示されたという。米カリフォルニア大学デービス校のSimon Ascher氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Geriatrics Society」に2月18日掲載された。 収縮期血圧とは、心臓が収縮して全身に血液を送り出す際の血圧のことであり、上の血圧とも呼ばれている。高血圧の高齢者、中でもより高齢の人やフレイル状態の人、多剤併用者での最適な血圧管理目標値については専門家の間で一致した見解が得られていない。 Ascher氏らは今回、SPRINT試験に参加した地域在住の65歳以上の高齢者5,143人を対象に、厳格な血圧管理のネットベネフィットを患者ごとに推定した。SPRINT試験は、収縮期血圧の厳格な管理(120mmHg未満)と標準的な管理(140mmHg未満)のどちらが心血管疾患や死亡リスクをより低減できるかを調査した大規模研究である。本研究では、それぞれの血圧管理目標値における、あらゆる原因による死亡(全死亡)、心血管イベント、認知機能の変化、重度の有害事象の絶対リスク差を算出した。さらに、算出されたそれぞれのリスクに重み付けを行い、その合計を個々の患者のネットベネフィットとし、年齢別(65〜74歳、75歳以上)、SPRINT試験に基づくフレイル状態(健康、ややフレイル、フレイル)、および多剤併用(5剤以上)別に比較した。 その結果、患者が降圧療法によりもたらされ得るベネフィット(死亡、心血管イベント、認知障害のリスク低下)の方が降圧療法に伴うリスク(急性腎障害、失神)よりもはるかに重要と考えるシナリオを想定した場合には、厳格な血圧管理によるネットベネフィットの中央値は4%ポイントとなり、100%の参加者がネットベネフィットを得られることが示された。一方、患者がリスクとベネフィットの重要度を同等と見なすシナリオを想定した場合、厳格な血圧管理によるネットベネフィットの中央値は1%ポイントであり、85%の参加者がネットベネフィットを得られることが示された。 より高齢の参加者やフレイル状態の参加者は、両シナリオにおいてより多くの有害事象が生じた一方で、厳格な血圧管理によるネットベネフィットは大きくなる傾向が認められた。さらに、多剤併用の参加者は、ベネフィットをリスクよりもはるかに重要と考えるシナリオにおいて、より大きなネットベネフィットを得ることが確認された。 研究グループは、「これらの結果は、個人の推定リスクとアウトカムに対する好みを考慮すると、SPRINT試験の対象となる高血圧を有する地域在住の高齢者の多くにおいて、厳格な血圧管理によるベネフィットがリスクを上回ることを示している。特に、厳格な血圧管理に耐えられず、またベネフィットも得られにくいと考えられがちな高リスク集団においても、その利点が認められた点は重要である」と話す。そして、「多くの米国人が血圧を適切にコントロールできていないことを考えると、この結果は非常に重要だ」と付言している。 研究グループは、問題の一因は、高齢で、フレイル状態にあり、多剤併用の高血圧患者に対する厳格な血圧管理に医師が消極的だったことにあると指摘する。「われわれの研究結果は、従来の常識に反して、年齢、フレイル、多剤併用などの要因が厳格な血圧管理に対する障害と見なされるべきではないことを示唆している」と結論付けている。

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手術中の強オピオイド鎮痛薬の使用は手術後の疼痛と関連

 手術中に強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルとスフェンタニルを使用することは、手術後の望ましくない「疼痛経験」と独立して関連することが示された。「疼痛経験」とは、単なる痛みの強度だけでなく、感情的・精神的・認知的な側面を含めた包括的な概念である。ニース・パスツール病院大学病院センター(フランス)のAxel Maurice-Szamburski氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に2月25日掲載された。 Maurice-Szamburski氏は、「オピオイド鎮痛薬は手術後の疼痛軽減に役立つことがあるが、手術中の使用、特に、強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルやスフェンタニルの使用は、逆に疼痛を増大させる可能性がある」と述べている。 この研究では、フランスの5カ所の総合教育病院で、全身麻酔下で選択的手術を受けた18〜70歳の成人患者971人(年齢中央値49.6歳、65歳以下88%、男性48%)のデータの二次解析が行われた。対象者の手術前の不安は、アムステルダム術前不安・情報尺度(APAIS)により、また、疼痛、睡眠の質、ウェルビーイングは、手術の前後に視覚アナログ尺度(VAS)を用いて測定されていた。主要評価項目は、手術後1日目にEvaluation du Vecu de l'Anesthesie Generale(EVAN-G)質問票で測定した患者の疼痛経験とし、EVAN-G疼痛次元の25パーセンタイル未満の場合を「不良な疼痛経験」と定義した。手術の種類としては、整形外科または脊椎(37%)、耳鼻咽喉(29%)、消化器(15%)が多かった。 271人(27.9%)が手術後の不良な疼痛経験を報告していた。多変量解析では、手術中のレミフェンタニルとスフェンタニルの使用が、手術後の不良な疼痛経験の独立した予測因子であることが示された。これらの薬剤の使用により不良な疼痛経験が生じるオッズ比は26.96(95%信頼区間2.17〜334.23、P=0.01)と推定された。この結果について研究グループは、「これは、『オピオイド誘発性痛覚過敏』と呼ばれる既知の現象と一致している。高用量のオピオイドにさらされた患者では、痛みの刺激に対する感受性が高まる可能性がある」との見方を示している。 また、米国麻酔科学会(ASA)による全身状態分類であるASA-PS(ASA physical status)分類でクラスIIIに分類される重篤な全身疾患を有すること(オッズ比5.09、95%信頼区間1.19〜21.81、P=0.028)、手術後の抗不安薬の使用(同8.20、2.67〜25.20、P<0.001)、手術後の健忘(同1.58、1.22〜2.06、P=0.001)も、不良な疼痛経験のリスクを高める要因であることが示された。一方、手術前に鎮痛薬を使わないこと(同0.49、0.25〜0.95、P=0.035)と整形外科の手術(同0.29、0.12〜0.69、P=0.005)は不良な疼痛経験のリスクを低下させる要因であった。 研究グループは、「痛みは強さ以外の側面が見落とされがちだが、手術後の急性疼痛が慢性疼痛へ移行するリスクを予測する上ではそれらが非常に重要だ。したがって、不良な疼痛経験の要因を理解することにより、痛みの強度の管理だけにとどまらない、周術期ケアの新たな選択的ターゲットが明らかになる可能性がある」と述べている。

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超迅速遺伝子検査が脳腫瘍の手術の助けに

 慎重を要する脳腫瘍患者の腫瘍の摘出で、実験段階にある超迅速遺伝子検査が外科医の助けとなることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部神経外科・病理学准教授のDaniel Orringer氏らによる新たな研究で示唆された。この検査では、組織標本中のがん細胞の量を15分以内に測定することができる。これは、患者が手術室にいる間に外科医がフィードバックを得るのに十分な速さだ。また、腫瘍辺縁部の1mm2当たり5個未満という低密度のがん細胞も検出可能であるという。詳細は、「Med」に2月25日掲載された。 Orringer氏らは、「その迅速性と正確性から、脳腫瘍の手術中にリアルタイムでがん細胞を検出できる、この種のものとしては初の実用的なツールになる」と結論付けている。Orringer氏は、「脳腫瘍をはじめとする多くのがんにおいて、がんの手術の成功と再発の予防は、できる限り安全に腫瘍とその周囲のがん細胞を切除することが前提となる」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 この検査は、超迅速ドロップレットデジタルPCR(超迅速ddPCR)と呼ばれるものだ。ddPCRは、ターゲットとするDNAやRNAを高精度で定量化する技術であるが、通常、結果を得るまで数時間かかる。 超迅速ddPCRの開発にあたり研究グループは、標準的なddPCR検査を構成する各ステップの効率性を追求した。例えば、腫瘍標本からDNAを抽出するのに必要な時間を30分から5分未満に短縮した。また、検査に使用する化学物質の濃度を上げることで効率性を高め、一部の工程の所用時間を2時間から3分未満に短縮した。さらに、単一の反応容器でPCRに必要な2種類の温度を調整するのではなく、それぞれの温度に合わせて事前に温めた2つの反応容器を使用することで、時間の節約を実現した。このようにして開発された超迅速ddPCRでは、結果を得るまでに要する時間はわずか15分だという。 Orringer氏らは、NYUランゴン校の22人の患者から採取した75点以上の組織標本を用いて超迅速ddPCR検査を実施した。患者は全員が脳腫瘍の一種である神経膠腫の摘出手術を受けていた。検査では、低悪性度神経膠腫やメラノーマで見られることの多い2種類の遺伝子変異(IDH1 R132H、BRAF V600E)のレベルが測定された。その結果、超迅速ddPCR検査の結果は、標準的なddPCR検査による結果と一致することが確認された。 Orringer氏は、「超迅速ddPCRがあれば、外科医はどの細胞ががん化しているか、また特定の組織部位にどの程度の数のがん細胞が存在するかを、これまでにない精度で判定できるようになる可能性がある」と言う。 論文の上席著者であるNYUグロスマン医学部の人類遺伝学・ゲノム学センターのGilad Evrony氏は、「われわれの研究から、超迅速ddPCRが脳腫瘍の手術中に分子診断を行うための迅速かつ効率的なツールとなり得ることが明らかになった。この検査は、脳腫瘍以外のがんにも使用できる可能性がある」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 次のステップは、超迅速ddPCRを自動化し、手術室での使用をより迅速かつ簡便にすることであると、研究グループは述べている。また、この検査を他の種類のがんに対応させる計画もあるという。ただし、この検査が広く利用できるようになるまでには、さらに改良を重ね、臨床試験で検討される必要があると、研究グループは注意を促している。

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