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被災地で心を病む人々と、ともに生きる―不幸な人?挑戦者? ―

相馬中央病院 副院長小柴 貴明2012年8月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。被災地 相馬市にある相馬中央病院周辺には、心の風邪に罹った患者さんが多い。風邪の程度は、軽いものから、かなりの重症まである。こういった患者さんは、診察室に入って来られた瞬間の表情が、どこか違う。うつむき加減で、来られる患者さん。険しい表情の患者さん。落ち着きのない患者さん。私は、仙台市の精神科医の友人から、相双地区から、多くの心を病む人が診察に来られるとの話を聞いた。震災以後、相双地区には、相当数の心を病む人がいるにも、かかわらず、そのような患者さんを専門に診る医者がほとんどいないのだという。このような、事情から相馬中央病院で、不眠や、不安、不定愁訴を訴える患者さんに、私は臓器移植やHIV感染症に携わってきた臨床医、研究者でありながら、精神科医のアドバイスを受け、心理医学療法を開始した。この仕事を始めようと考えた一つのきっかけは、あるサイコセラピストから、教わった、とても興味深い話。人の感情には、楽しい、うれしいなどのポジティブな感情と、悲しみ、怒り、恐怖などのネガティブな感情がある。人は、ポジティブな感情は、机の上に、ネガティブな感情は整理もせず、引き出しにしまってしまう。例えば、職場で嫌いな人への怒りを抑えなければ、人間関係に歪が入ったりする。しかし、ネガティブな感情をあるとき、敢えて引き出しから出して、整理する必要があるというのだ。ネガティブな感情を自分でも気づかないでいる人すらある。いつまでも、ネガティブな感情から逃げるのではいけない。自分のために認めてあげることで、病んだ心は少しずつ和らぐのだと、そのサイコセラピストは言う。仙台の精神科医の友人も、同意見であった。私は、最低30分の時間をかけて、心の風邪に罹った患者さんの机の引き出しを開き、封じ込まれたネガティブな感情を患者さんに認めてもらうように、努めている。7月25日は、朝9時から、夕方6時まで、昼食を取る間もなく、診察に来られる患者さんに、心の引き出しを開いて頂いた。そうして、新たなことに気付いた。受診される患者さんは、50代以降の高齢者。多くの人は、懸命に何十年もの間、悲しみ、怒り、恐怖 (例えば、幼少期の嫌な思い出、苦痛な人間関係) と戦ってきた。しかし、3.11 が起きて以降、これまでの長年の我慢の糸がプツンと切れてしまい、ついに心の病気となってしまったかのように見える。この世に生を受けた全ての人は、死を迎え永遠の休息を得るまで、必ず何かの苦悩を抱えて生きている。実に、3.11は、被災地の全ての人々の苦悩に、大きな追いうちをかけていたのだ。診察を受けられた患者さんには、家族、家が津波に流された人、仮設住宅に移って何時になったら元の家に戻れるかわからない人、仕事を失った人がおられる。私が封印された感情を引き出すと、多くの患者さんが咽び泣かれた。そして、この日、私の外来についてくれた 寺島和美看護師も、また、患者さんと一緒に涙を流した。はたして、患者さんの引き出しにしまわれていたネガティブな感情とは、なんだったのか?悲しみ?否。 怒り?否。 恐怖?否。私には、そのどれでもなく、もっともっと深遠なもの。言葉で表すことのできないほどの激しいものではないかと思われた。くたくたになって、帰宅してベッドに入った。しかし、その夜、私は、長時間にも亘る壮大な悲劇的シンフォニーを聞いたような興奮で、眠られぬ夜を過ごした。翌日、寺島看護師は、私に点滴を勧めた。彼女も同じく、眠れなかったという。彼女は細やかな心遣を、患者さんにだけではなく、私にも向けてくれた。点滴の最後の一滴が落下したとき、元気を取り戻した私は、彼女にこう言った。「私たちが、患者さんと共に、肩を落としてはいけない。私たちは、医療のプロ。咽び泣く患者さんは、不幸な人ではない。これから、立ち上がろうとする挑戦者。長距離ランナーが、疲れて、しばし道端に座りこんでいる。私たちは、懸命に生きる挑戦者たちと、ここでまた懸命にともに生きる。」その瞬間、私と同じく、睡眠不足で疲れきった表情をしていた寺島看護師の眼が、突如、キラッと輝いた。これからも、被災地の人々と、医療スタッフの果敢な挑戦は続く。

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世界で初めて家庭血圧計の測定値に基づいた降圧目標値を東北大学が検証 ーHOMED-BP研究の最終結果ー

 東北大学を中心に全国より457名の医師が参加して家庭血圧の適正な降圧目標値を検証した大規模無作為化比較試験HOMD-BP研究の最終結果が浅山 敬 氏によってまとめられ、Hypertension Research誌に発表された。この結果は8月16日に同誌のwebサイトにて「ADVANCE ONLINE PUBLICATION」として出版前に公開された。本研究では家庭血圧に基づき、125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれかに無作為に分けられ、心血管イベントの発生を一次評価項目として実施されたが、厳格コントロール群で降圧目標に達した割合が有意に低く、両群間に一次評価項目で有意な差が認められなかった。 家庭血圧測定はある特定の1日だけでなく、長期間にわたり測定することが比較的簡単に行えるため、正確性、再現性、薬効評価などに期待が持てる。わが国では2005年においても臨床医の90%は患者に家庭血圧測定を勧め、高血圧患者の70%以上は家庭血圧計を所有している。しかし、現在のガイドラインの根拠となっている大規模臨床試験の結果は、すべて診察室血圧に基づいたものであり、家庭血圧の最適な降圧目標値の検証が求められていた。 そこで本研究は世界で初めて、家庭血圧計の測定値に基づき、降圧目標を定め、薬物治療を強化していく方法を採用し、最適な家庭血圧の降圧目標値と最適な初期薬物治療を検証するために、わが国で2001年より開始された。 本研究には457名の医師が参加し、3,518例の高血圧症例(家庭血圧の測定値が135-179/85-119mmHg)がエントリーされた。患者はまず、家庭血圧値125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれか2群に無作為に割り付けられ、その後、初回治療としてACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬のいずれか3群に割り付けられ、2×3のマトリクスデザインによって研究が行われた。 主要評価項目としたエンドポイントは、心血管系疾患死、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの発生とした。主な結果は下記のとおり。(1) フォローアップの中央値は5.3年。(2) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、多くの降圧薬を処方していた。   厳格群=1.82剤 vs 通常群=1.74剤(P=0.045)(3) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、家庭血圧の降圧度が大きかった。  〔収縮期血圧〕厳格群=22.7mmHg vs 通常群=21.3mmHg(P=0.018)  〔拡張期血圧〕厳格群=13.9mmHg vs 通常群=13.1mmHg(P=0.020)(4) しかし、降圧目標達成率は厳格コントロール群で有意に低かった。   厳格群=37.4% vs 通常群=63.5%(P

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(3)〕 急性虚血性脳卒中院内30日死亡リスクモデルの予測能がNIHSSスコアで改善

米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のGregg C. Fonarow氏らは、全米782ヵ所の病院で治療を受けた12万7,950人について追跡した結果、急性虚血性脳卒中30日院内死亡リスクモデルの予測能が、脳卒中の重症度を示す米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアを盛り込むことで、有意に改善することを明らかにした。NIHSSスコアを盛り込まない30日院内死亡モデルのC統計量は0.772(95%信頼区間:0.769~0.776)だったのに対し、盛り込んだ同モデルのC統計量は0.864(同:0.861~0.867)で識別能は有意に高かった(p<0.001)。また、30日院内死亡リスクモデルにNIHSSスコアを盛り込むことによる、ネット再分類改善度は93.1%(同:91.6~94.6、p<0.001)、統合識別能改善度は15.0%(同:14.6~15.3、p<0.001)だった。 NIHSSスコアは、t-PA静注療法の適応決定や予後予測において有用な示標とされ、本邦でもt-PA静注療法が考慮される脳梗塞超急性期にはこのスコアを用いることが必須とされている。今回の研究から、NIHSSスコアが急性虚血性脳卒中30日院内死亡リスクの予測にも役立つことが明らかにされ、急性虚血性脳卒中を扱う施設では、NIHSSスコアによる脳卒中の重症度評価とその幅広い臨床応用が求められる。

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寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

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うつ病はCOPD増悪・入院の独立した危険因子:久留米大学

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者はうつ病や睡眠障害を合併することが多いと言われている。そして、合併することで健康関連QOL(HRQOL)に悪影響を及ぼす。久留米大学 伊藤氏らはCOPD患者におけるうつ病および睡眠障害の影響を検討した。Respirology誌2012年8月号の報告。 40歳以上のCOPD患者85名とコントロール群46名のうつ病および睡眠障害に関して12ヵ月間調査を行った。COPDの診断にはスパイロメトリー、動脈血ガス分析を実施。HRQOLの評価尺度であるSGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)、うつ病自己評価尺度(CES-D: Center for Epidemiologic Studies Depression)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・COPD患者ではコントロール群と比較し、うつ病および睡眠障害の有病率が有意に高く、相対リスクはうつ病で7.58(95%信頼区間:1.03~55.8)、睡眠障害で1.82(1.03~3.22)であった。・COPD患者ではCES-DとPSQIの間に相関関係があった。・うつ病および睡眠障害の発症率と有意に相関していた項目は、低BMI、重篤な呼吸困難、HRQOLの低さ、動脈血酸素分圧の低さ、動脈血二酸化炭素分圧の高さであった。・うつ病を伴うCOPD患者における症状増悪や入院に至る割合は、睡眠障害合併例やうつ病や睡眠障害を合併していない例と比較し有意に高かった。・うつ病はCOPD患者における症状増悪や入院の独立した危険因子であると考えられる。■関連記事ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加なぜ、うつ病患者はアルツハイマー病リスクが高いのか?COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(2)〕 運動不足解消の微妙な効果

運動不足の解消が0.68年寿命を延ばす。確かにそうかもしれない。日本人の摂取エネルギーは減少傾向にあり、正すべきは食事より運動不足の解消である、それは日本人にとってもあてはまるだろう。しかしちょっと待て、と思う。 40歳の人が毎日1時間運動して、16年間続けると約0.68年を運動に費やすことになる。さらに運動を24年間続けると、運動に費やす期間の合計は1年となってしまい、寿命の延びを相殺してしまうかもしれない。その1時間の運動の時間を、もっと自分の好きなことに使えば、0.32年長生きしたのと同じかもしれない。 1時間の運動を16年間続けて寿命が0.68年延びるのと、その1時間をのんびりソファで本でも読んで暮らすのと、どちらがいいかはほとんど好みの問題だ。寿命が延びるというコトバはわかりやすく魅力的だが、寿命を延ばすためにかける労力とのバランスで考えると、意外にその効果は大したことないのかもしれない。

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ACE阻害薬は肺炎リスクを減少、特に脳卒中、アジア人で大きい可能性

 ACE阻害薬とARBの肺炎リスクについて、ポルトガル・リスボン大学のDaniel Caldeira氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、これまで考えられていたようにACE阻害薬には肺炎に対する保護作用があることがエビデンスとして示された。また、「脳卒中既往」「アジア人」が最も大きな恩恵を享受できる可能性があることも示唆された。強力な支持データは不足していたが、肺炎関連死を抑制することも認められたという。BMJ誌2012年8月4日号(オンライン版2012年7月11日号)掲載報告より。システマティックレビューとメタ解析、適格試験は37件 Caldeira氏らによる検討は、PubMedを介したMedline、Web of Science、米国FDAのウェブサイトを2011年6月時点で検索して行われ、システマティックレビューと引用参考文献についても評価をした。解析対象試験は、2人の独立レビュワーにより、ACE阻害薬とARBの肺炎リスクとの関連を検討した無作為化対照試験、コホート試験、ケースコントロール試験を選出し、試験特性、推定データを取り出し分析した。適格試験は37件だった。 主要アウトカムは、肺炎罹患率とし、副次アウトカムは肺炎関連死とした。また、ベースラインで有していた疾患(脳卒中、心不全、慢性腎臓病)、患者特性(アジア人、非アジアン人)によるサブグループ解析も行われた。 主要アウトカムに関するデータが得られたのは、ACE阻害薬と対照治療とを比較検討した19試験、ARBと対照治療とを比較検討した11試験、ACE阻害薬とARBを直接比較検討した2試験だった。ACE阻害薬群は、対照治療群、ARB治療群よりも肺炎リスクが有意に減少 結果、ACE阻害薬群は対照治療群よりも[オッズ比:0.66、95%信頼区間:0.55~0.80、i2=79%]、またARB群よりも(直接的・間接的比較を合わせた推定オッズ比:0.69、0.56~0.85)、肺炎リスクの有意な減少が認められた。 サブグループ解析では、脳卒中患者において、ACE阻害薬群が対照治療群よりも(オッズ比:0.46、95%信頼区間:0.34~0.62)、またARBs群よりも(同:0.42、0.22~0.80)、肺炎リスクが低かった。 ACE阻害薬による肺炎リスクの低下は、非アジア人患者よりも(オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.34~0.54)アジア人患者で有意に減少した(同0.82:0.67~1.00、サブグループ間p

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インフルエンザワクチン優先接種戦略、高齢化と獲得免疫が鍵

 世界各国にインフルエンザパンデミックへの対策プランがあり、ワクチン供給が不足した場合の優先接種方法が決められている。大半の国のプランは、他国やWHOの計画を基に作成されているが、オランダ・感染症疾病対策センターのAnna K Lugner氏らは、「各国の事情(人口構造、社会的接触パターン、医療システム、医療費構造)が異なるなかで、どのような優先接種方法が最も費用対効果に優れるのかは、これまで検証されていなかった」として、ドイツ、オランダ、イギリス3ヵ国を対象に4つの異なるワクチン戦略の費用対効果について比較検討する経済的疫学モデル研究を行った。BMJ誌2012年8月4日号(オンライン版2012年7月12日号)掲載報告より。想定パンデミック下で4つの戦略について3ヵ国の費用/QALYを算出し比較研究グループが検証したのは、異なる国で想定されるあらゆるインフルエンザパンデミックにおいても単一のインフルエンザワクチン接種戦略が費用対効果に優れるのかどうか、どの年齢群が資源注入によるベネフィットが最も高くワクチン接種を受けるべきか、また異なる国では異なる戦略が適用されるのかどうかについてだった。近接するが社会・文化的背景の異なるドイツ、オランダ、イギリス各国の社会的接触パターンや人口構造データを入手し、数理モデルを作成して解析した。各国で想定されるインフルエンザAウイルス伝播が描出された、ウイルス感受性・曝露・感染・リカバリー伝播を加味して作成した年齢群モデルを用いて、4つのワクチン接種戦略[ワクチン非接種、全員へワクチン接種、65歳以上高齢者へ接種、高伝播群(5~19歳)へ接種]を比較した。4つの戦略は、ワクチンがパンデミックの早期に接種可能だったかピーク時となったか、また全員がウイルス感受性が高く感染しやすい状態だったか、高齢者は免疫を獲得していたかについても評価された。主要評価項目は、1QALY(生活の質を調整した生存年)獲得に要する費用(費用/QALY)だった。高齢社会が顕著なドイツは65歳以上に、オランダとイギリスは5~19歳への接種戦略に軍配解析の結果、すべてのワクチン接種戦略が費用対効果に優れており、費用/QALYは非介入群と比較して介入群のほうが大きかった。費用/QALYの割合が大きかったのは、ワクチン接種がパンデミックピーク時となった場合、また高齢者が免疫を獲得していた場合だった。各国の1QALY獲得に要する費用は、ドイツが7,325ユーロ、オランダ1万216ユーロ、イギリス7,280ユーロだった。最も費用対効果に優れる至適戦略は、想定シナリオによってばかりでなく国によっても異なった。特にワクチンがパンデミック早期に接種可能な場合、また獲得免疫がなかった場合、最も費用効果に優れる接種戦略は、ドイツでは高齢者への接種戦略だったが(1QALY獲得に940ユーロ)、オランダとイギリスでは高伝播群への接種戦略だった(各国同525ユーロ、163ユーロ)。この違いは、ドイツでは高齢者の割合がオランダとイギリスに比べて有意に高いという各国人口構造の違いによるものだった。結果を踏まえLugner氏は、「どの国においても費用対効果に優れるという単一のワクチン接種戦略はなかった。今後、インフルエンザパンデミック緩和のための費用対効果に優れる選択肢の決定には、特に高齢者割合と獲得免疫が重要になるだろう」と結論している。

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抗うつ薬切替のベストタイミングは?

 うつ病における薬物治療では、第一選択薬の使用で奏功しない場合も多く、次の薬剤への切り替えはしばしば行われる。しかし、どのタイミングで切り替えを行えばよいかについては確立されていない。Romera氏らは大うつ病患者における抗うつ薬を切り替える最適なタイミングを明らかにするための検討を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年8月号の報告。 対象は、エスシタロプラム10㎎/日で4週間の初期治療を行った後、無効または効果不十分(ハミルトンうつ病評価尺度17項目版[HAMD-17]スコアのベースラインからの減少量<30%)であった大うつ病患者。早期切り替え群(デュロキセチン60~120㎎/日に切り替えて12週間投与)と従来の切り替え群(エスシタロプラム10~20㎎/日をさらに4週間投与し、無反応(HAMD-17の減少量<50%)であった場合には、デュロキセチン60~120㎎/日に切り替えて8週間投与。反応が認められた場合にはエスシタロプラムを継続投与)にランダムに割り付けた。両群の主要エンドポイントは治療反応率と寛解(HAMD-17 ≦7)までの時間とした。カプラン・マイヤー法、ロジスティック解析、反復測定にて分析を行った。主な結果は以下のとおり。・初期治療を行った840例のうち、無効または効果不十分であった566例(67%)は、早期切り替え群(282例)と従来の切り替え群(284例)にランダム化された。・主要エンドポイントである治療反応までの時間(25%カプランマイヤー推定値:3.9 週vs 4.0週、p=0.213)、寛解までの時間(6.0週vs 7.9週、p=0.075)は両群間で差が認められなかった。・治療反応率は同等であったが(64.9% vs 64.1%)、寛解率は早期切り替え群の方が高かった(43.3% vs 35.6%、p=0.048)。関連医療ニュース ・うつ病治療“次の一手”は?SSRI増量 or SNRI切替 ・難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」 ・うつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット

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ARBを含まない3剤併用療法で1ヵ月以内に30mmHgの降圧を達成:レニン阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬

 今や、ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用療法が降圧治療におけるゴールデンスタンダードとして繁用されている。この3剤以外の併用療法で、強力な降圧効果が期待できる組み合わせは存在するのか?2009年、わが国においてもレニン阻害薬アリスキレン(販売名=ラジレス)が登場し、10余年ぶりの新しい作用機序の降圧薬が治療のラインナップとして加わったが、Lacourcière氏らはアリスキレンを含めた3剤併用療法が2剤併用療法に比べ、有意に強力な降圧効果を発揮することをJournal of Hypertension誌に発表した。なお、この論文は出版前の7月22日に公開された。3剤併用療法では降圧治療開始から2週以内に、2剤併用療法より優れた治療経過を示した。 Lacourcière氏らは中等度から重度の高血圧患者1,191名を対象に1〜4週の単盲検下でのプラセボ投与後、下記の降圧薬併用治療群に無作為に割り付け、4週経過後に強制的に投与量を倍増する治療を合計8週間行った。1) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+アムロジピン(5mg/日→10mg/日)2) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)3) アムロジピン(5mg/日→10mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)4) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+アムロジピン(5mg/日→10mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)主な結果は下記のとおり。1. 3剤併用療法によって、ベースラインより4週目には-30.7/-15.9mmHg、8週目には  -37.9/-20.6mHgの降圧が得られ、この降圧度はどの2剤併用療法より有意に優れていた。2. 3剤併用療法によって、2週目にはすでに-27.8mmHgの降圧度を観測した。3. 24時間自由行動下血圧(ABPM)によって測定した24時間血圧、昼間血圧、夜間血圧においても  2剤併用療法より有意に優れた降圧度を示した。4. 降圧目標(140/90mmHg未満)達成率は  〔中等度および重症度例〕 62.3%  〔重症度のみ〕 57.5%

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(1)〕 久しぶり・・・電気的除細動と抗不整脈薬をテーマとした無作為化比較試験

 2000年代前半にN Engl J Medに発表され、衝撃を与えたAFFIRM、RACE試験以来、電気的除細動や抗不整脈薬に関する研究は息をひそめていたので、久しぶりという感のする論文である。「一定期間の洞調律時によって電気的リモデリングが回復するならば、長期的な抗不整脈薬投与は不要となる」という仮説を検証したものである。結果的に、本無作為化比較試験は、この仮説の正当性を実証することができなかったといえる。 一見正当に思えるこの仮説のどこに弱点があったのだろう。おそらくそれは、心房細動の再発における電気的リモデリングの意義である。忘れ去られやすいのは、心房細動の原因が決して電気的リモデリングではないという単純な事実である。電気的リモデリングは数多くある修飾因子の一つにしか過ぎない。本来の原因に手を加えないまま(残念ながらこの本来の原因がわからないのだが・・・)、電気的リモデリングのことばかりを考えていても限界があるということではないだろうか。 現在の臨床現場で、この無作為化比較試験の与える影響は小さいだろう。すでに発作性心房細動に対してカテーテルアブレーションが確立され、1年以内の持続性心房細動に対しても応用される時代となっている。電気的除細動とその後の抗不整脈薬投与には大きすぎる限界があることも皆が知っている状況では、抗不整脈薬を長期投与するか、短期投与で終わらせるかは、患者の症状、意向、医師の考えなど臨床現場に任せるべきことと思われる。そしてもう一点、昔から知られていることだが、電気的除細動後無投薬で1年間心房細動の再発がみられない患者が30%も存在することが、本試験でも再確認されている。この30%という数字は、臨床現場で電気的除細動をするべきか、せざるべきかという決断を難しくする数字である。

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男女間のHIV-1感染、抗レトロウイルス薬の曝露前予防的投与により有意に低下

抗レトロウイルス薬の曝露前投与による男女カップル間のHIV-1感染防御について検討した無作為化試験の結果、感染率の有意な低下が示され、防御効果があることが報告された。試験は、米国・ワシントン大学のJ.M. Baeten氏ら「Partners Preexposure Prophylaxis(PrEP)試験」グループが、テノホビル(TDF、商品名:ビリアード)およびテノホビル配合剤(TDF-FTC、商品名:ツルバダ)についてプラセボとの対照で検討した結果で、単剤、配合剤ともに男女間の感染を防御することが報告された。NEJM誌2012年8月2日号(オンライン版2012年7月11日号)掲載報告より。TDF群、TDF-FTC群、プラセボ群に無作為化し36ヵ月間追跡試験は2008年7月~2010年11月に、ケニアとウガンダ両国合わせて9地点からHIV-1血清不一致の異性愛カップル(男女いずれかのみが感染し血清陽性)4,758組を登録し、経口抗レトロウイルス薬の曝露前予防的投与について、無作為化試験を行った。被験者カップルは、無作為に3つのレジメン、TDF群、TDF-FTC群、プラセボ群(いずれも1日1回投与)に割り付けられ、毎月検査を受け最長36ヵ月間追跡された。主要評価項目は、血清陰性だったパートナーが血清陽性となった割合とした。被験者カップルのうち血清陽性被験者は、抗レトロウイルス療法開始の両国ガイドライン指針を満たしておらず、同治療を受けていなかったが、全カップルとも標準的なHIV-1治療と予防サービスを受けていた。感染率の相対的低下はTDF群67%、TDF-FTC群75%、両剤間の防御効果に有意差はなし試験登録4,758組のうち、4,747例が追跡された(TDF群1,584例、TDF-FTC群1,579例、プラセボ群1,584例)。追跡カップルのうち62%が、男性パートナーがHIV-1血清陰性だった。また、HIV-1血清陽性パートナーのCD4陽性細胞数の中央値は495個/mm3(四分位範囲:375~662)だった。試験期間中に、血清陰性だったパートナーにHIV-1感染が認められたのは82例だった。各群の発生は、TDF群17例(発生率:65/100人・年)、TDF-FTC群13例(同:0.50/100人・年)、プラセボ群52例(同:1.99/100人・年)で、TDF群は67%(95%信頼区間:44~81)、TDF-FTC群は75%(同:55~87)の相対的低下が認められた(両群ともp

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アナストロゾール+フルベストラント併用療法、HR陽性転移性乳がんの生存を改善

 HR陽性転移性乳がんに対する、アロマターゼ阻害薬アナストロゾール(商品名:アリミデックス)とフルベストラント(同:フェソロデックス)の併用療法について行われた第3相無作為化試験の結果、併用療法ではフルベストラントの投与量が標準的とされる用量よりも少なかったにもかかわらず、アナストロゾール単独療法および増悪後はフルベストラントへとクロスオーバーする逐次療法よりも臨床効果が優れることが示された。米国・カリフォルニア大学アーヴィン医療センターのRita S. Mehta氏らが行った検討で、NEJM誌2012年8月2日号で発表された。アナストロゾール単独よりもフルベストラントとの併用療法が優れるか検討 試験は、転移性乳がん治療歴のない閉経後女性を1対1の割合で2群に無作為化して行われた。1群はアナストロゾール1gを毎日経口投与する群で、2群はアナストロゾールとフルベストラントの併用療法群だった。1群は、疾患増悪時にはフルベストラント単独投与へのクロスオーバーが強く推奨された。フルベストラントは1日目500mg、14、28日目に250mgを、以後は月1回250mgを筋注投与した。 患者はタモキシフェン補助療法既往の有無で階層化された。主要エンドポイントは、無増悪生存期間とし、事前規定の副次アウトカムを全生存とした。 2004年6月1日~2009年7月1日に707例が無作為化され、intention-to-treat解析は無作為化後に試験不適格となった被験者を除く694例を対象に行われた。無増悪生存期間の中央値、13.5ヵ月対15.0ヵ月 結果、無増悪生存期間の中央値は、1群13.5ヵ月、2群15.0ヵ月で、併用療法の増悪または死亡のハザード比は0.80(95%信頼区間:0.68~0.94)だった(log-rank検定によるp=0.007)。 併用療法は概してすべてのサブグループにおいて有意な交互作用なく、アナストロゾール単独群よりも効果的だった。 1群患者の41%は進行後にフルベストラントへと完全にクロスオーバーしたが、全生存率も併用療法でより長かった。全生存期間中央値は、1群41.3ヵ月、2群47.7ヵ月で、死亡ハザード比は0.81(95%信頼区間:0.65~1.00)だった(log-rank検定p=0.05)。 2群死亡例のうち3例は治療と関連していた可能性があった。なおグレード3~5の毒性作用の発現率は、2群間で有意差はなかった。

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インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

 2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。 本研究では、内視鏡検査で腺腫を有していた患者をケース、腺腫のない患者をコントロールとし、オッズ比(OR)および関連する信頼区間(CI)は多変量ロジスティック回帰分析により計算された。 主な結果は以下のとおり。・インスリンを12ヵ月以上投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者(n=196)は、コントロールの患者と比較して、インスリン暴露によるオッズ比の有意な増加は認められなかった。しかし、インスリンを18ヵ月以上(OR 1.6、95%CI:1.1~2.5)、24ヵ月以上(OR 1.7、95%CI:1.1~2.6)、36ヵ月以上(OR 2.0、95%CI:1.2~3.4)投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者でインスリン曝露によるオッズ比が有意に増加した(トレンド検定p=0.05)。・病期が進行した腺腫を有する2型糖尿病患者の間で、インスリンの暴露における同様の傾向が見られた。・腺腫の位置については、インスリン療法の影響を受けなかった。 これらの結果から、著者らは、インスリン療法を受けている糖尿病患者は、より厳格な大腸がんスクリーニングが必要だろうと述べている。

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食後高血圧:見過ごしがちな動脈硬化のリスクマーカー

 愛媛大学大学院医学研究科加齢制御内科学の上谷英里氏らは、動脈硬化の新たなリスクマーカーとして食後高血圧をAtherosclerosis誌に発表した。この研究成果は7月20日出版に先駆けてインターネットで公開された。 食後高血糖や食後高脂血症が動脈硬化、心血管イベントのリスクファクターであることが従来より知られており、実臨床においてはそれらに特化した治療も行われている。しかし、高血圧に関しては、夜間高血圧や早朝高血圧は目を向けられてきたものの、食後高血圧はこれまで見過ごされていた。上谷氏らは、健康な中高齢者(平均年齢=66±9歳)を対象に、食事前後の血圧と動脈硬化の相関を調査した。血圧は食直前および食後30分の2回を同日に測定し、動脈硬化は上腕-足首脈波伝播速度および頚動脈内膜中肥厚にて評価した。主な結果は下記のとおり。1.〔食直前の平均収縮期血圧〕127±18mmHg 〔食後30分の平均収縮期血圧〕123±18mmHg2. 20mmHg以上の血圧低下が認められた割合は8.4%(n=112)   10mmHg以上の血圧上昇が認められた割合は9.6%(n=129)3. 動脈硬化は食後血圧上昇群、食後血圧低下群のいずれにおいても高率で認められた4. 収縮期血圧の変化度は、食前の収縮期血圧値と強く相関していた(r=0.335,P

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女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンなど)の7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが、スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のTorsten Sandberg氏らの検討で示された。尿路感染症の最大の原因は腸内細菌の抗菌薬に対する耐性化であり、対策としては投与期間の短縮など、抗菌薬の消費量の抑制が重要だという。急性腎盂腎炎は成人女性に高頻度にみられる感染症だが、その治療法に関する対照比較試験は少なく、抗菌薬治療の至適投与期間は確立されていない。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。至適投与期間を前向き無作為化非劣性試験で検討研究グループは、急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン治療における7日間投与と14日間投与の有効性をプロスペクティブに比較するプラセボ対照無作為化非劣性試験を実施した。対象は、スウェーデンの21の感染症医療施設で急性腎盂腎炎と推定診断された18歳以上の妊娠していない女性であった。これらの患者が、シプロフロキサシン(500mg×2回/日)を7日間投与する群あるいは14日間投与する群に無作為に割り付けられた。最初の1週間は非盲検下に全例に同様の治療が行われ、2週目は二重盲検下にシプロフロキサシン(500mg×2回/日)あるいはプラセボが継続投与された。患者、介護者、担当医、試験運営センター職員には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は治療終了後の短期的(10~14日)な臨床治癒率、副次的評価項目は長期的(42~63日)な累積治癒率とし、per-protocol解析を行った。治癒は、臨床的かつ細菌学的な治癒が達成された場合と定義した。短期的臨床治癒率:97% vs 96%、長期的累積治癒率:93% vs 93%2006年2月1日~2008年12月31日までに248例登録され、7日間投与群に126例が、14日間投与群には122例が割り付けられた。それぞれ73例(平均年齢46歳、27~62歳)、83例(同:41歳、23~58歳)が解析の対象となった。短期的臨床治癒率は、7日間投与群が97%(71/73例)、14日間投与群は96%(80/83例)で、短期投与の長期投与に対する非劣性が確認された(群間差:-0.9%、95%信頼区間:-6.5~4.8、非劣性検定:p=0.004)。長期的累積治癒率は両群とも93%(7日間投与群:68/73例、14日間投与群:78/84例)で、これも同様の非劣性が示された(群間差:-0.3%、95%信頼区間:-7.4~7.2、非劣性検定:p=0.015)。両群とも忍容性は良好であった。7日間投与群の1例が筋肉痛で治療を中止し、14日間投与群ではそう痒性発疹による治療中止が1例認められた。最初の1週間の治療後にシプロフロキサシン関連の有害事象を発現した患者は、7日間投与群が5%(4/86例)、14日間投与群は6%(6/93例)だった。粘膜カンジダ感染症は7日間投与群ではみられなかったが、14日間投与群では5例に認めた(p=0.036)。著者は、「高齢女性や比較的重篤な病態の女性を含む急性腎盂腎炎患者において、シプロフロキサシンの7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが示された」と結論し、「薬剤耐性が増加傾向にある現在、短期的抗菌薬療法は好ましい治療法といえよう」と指摘している。

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子どものCT検査、累積被曝線量増加で白血病、脳腫瘍リスクが増大

 子どもに対するCT検査では、放射線の累積被曝線量が約50mGyに達すると白血病の発生リスクが約3倍、約60mGyで脳腫瘍の発生リスクが約3倍になるものの、絶対リスクは小さいことが、英国・ニューカッスル大学のMark S Pearce氏らの検討で示された。CTスキャンは有用な臨床検査だが、電離放射線による発がんリスクの問題が存在し、特に成人に比べて放射線感受性が高い子どものリスクが高いとされる。CT検査を施行された患者の発がんリスクを直接的に検討した試験はこれまで行われていないという。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月7日号)掲載の報告。CT検査によるリスクの増大を後ろ向きコホート試験で評価研究グループは、小児や若年成人におけるCT検査施行後の白血病および脳腫瘍リスクの増大を評価するレトロスペクティブなコホート試験を行った。対象は、がんの診断歴がなく、1985~2002年にイングランド、ウェールズ、スコットランドの国民健康保険サービス(NHS)の診療施設で初回CT検査を受けた22歳未満の者であった。NHS中央レジストリー(1985年1月1日~2008年12月31日)から、発がん、死亡、追跡不能に関するデータを抽出した。CTによる1回のスキャンごとの赤色骨髄および脳の吸収線量(mGy)を推算し、ポワソン相対リスクモデルを用いて白血病および脳腫瘍の発症率の増加について評価した。がんの診断を目的に施行されたCT検査を除外するために、白血病のフォローアップは初回CT検査から2年経過後に、脳腫瘍のフォローアップは5年経過後に開始した。適切な代替検査法がある場合は、そちらを考慮すべきフォローアップ期間中に、17万8,604人中74人が白血病と診断され、17万6,587人中135人が脳腫瘍と診断された。CTスキャンによる放射線被曝線量と、白血病(1mGy当たりの過剰相対リスク[ERR]:0.036、95%信頼区間[CI]:0.005~0.120、p=0.0097)および脳腫瘍(ERR:0.023、95%CI:0.010~0.049、p

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慢性期統合失調症患者に新たな一手!「高酸素吸入療法」

 神経障害に対する高酸素療法については、いくつかの研究で肯定的な結果が示されている。また、統合失調症患者では脳への酸素供給を増加させることにより、ミトコンドリア機能障害によるエネルギー代謝障害や前頭葉機能低下が改善される可能性がある。Bloch氏らは統合失調症の有用な治療法として高酸素吸入療法が選択肢となりうると考え、検討を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年8月号の報告。 対象はベースラインで精神医学的評価と認知機能評価を受けた慢性期統合失調症の外来患者およびホステルなど地域の精神科施設に入所している患者。4週間の高酸素吸入療法群(酸素濃度40%)または定期的な空気の吸入(酸素濃度21%)を行ったコントロール群に無作為に割り付けた。1夜につき少なくとも7時間、経鼻呼吸チューブより吸入を受けた。試験終了後はほかの治療方法にクロスオーバーされた。 主な結果は以下のとおり。・15例の患者は調査完了した(フェーズA完了は5例)。・高酸素吸入療法群ではコントロール群と比較し、PANSSスコアの有意な改善が認められた。・神経心理学的検査によると、高酸素吸入療法は記憶と注意に関して有効であった。・統計学的な有意性が示されたにも関わらず効果量は小さかった。その理由として、対象患者が慢性かつ重症例であったことが考えられる。関連医療ニュース ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ ・抗精神病薬の長期投与、その課題とは ・「グルタミン酸仮説」を検証

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東京大学高齢社会総合研究機構 在宅医療推進総合研修プログラム 動機付けコース

千葉県柏市で実施された、東京大学高齢社会総合研究機構在宅医療推進総合研修プログラム動機付けコースの1日目(2012年3月25日実施)の模様をお送りします。開業医の先生方が在宅医療に参入する動機付けに主眼をおいたコースとなっており、在宅医療を導入するにあたって必要な知識とノウハウ、専門職連携協働(IPW:Interprofessional Work)の意義など、多職種でのワークショップを通じて疑似体験していただいています。辻哲夫先生の今後の見通しと在宅医の果たすべき役割、川越正平先生、平原佐斗司先生による「疼痛緩和」「認知症」の講義とワークショップ、最後に川越正平先生からの診療報酬・制度から見た実務面の講義で成り立っています。将来、在宅医療を視野に入れておられる開業医の先生必見のコースです。講師2日目 番組一覧 【全4回】番組10 第10回 在宅ケアにおいて何故IPW(専門職連携協働)が必要なのか?番組11 第11回 在宅療養を支える医療・介護資源番組12 第12回 グループ討論1:在宅医療への期待(同職種)番組13 第13回 グループ討論2:地域で求められる在宅医療とは(多職種)1日目 番組一覧 【全9回】番組1 第1回 21世紀前半の社会と医療、在宅医の果たすべき役割番組2 第2回 在宅医療の導入番組3 第3回 がん疼痛緩和に必要な知識番組4 第4回 事例検討:がんの症状緩和と多職種による在宅療養支援(前半)番組5 第5回 事例検討:がんの症状緩和と多職種による在宅療養支援(後半)番組6 第6回 認知症の基本的理解~アルツハイマー型認知症を中心に番組7 第7回 事例検討:認知症患者の行動心理微候(BPSD)へのアプローチ番組8 第8回 事例検討:認知症の緩和ケア番組9 第9回 これから在宅医療に取り組むにあたって~やりがい・実務・報酬・制度

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