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クラリスロマイシン製剤、ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る適応症追加を申請

大正製薬株式会社とアボット ジャパン株式会社は8月31日、両社がそれぞれ日本において製造・販売している「クラリス錠200」と「クラリシッド錠200mg」(クラリスロマイシン製剤)について、プロトンポンプ阻害薬(4成分・5ブランド)及びアモキシシリン水和物(一般名、3ブランド)を用いた3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ感染症に係る、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の適応症を追加する申請を、9社共同で厚生労働省に行ったと発表した。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、ヘリコバクター・ピロリ感染によりひき起こされる慢性活動性胃炎であり、胃・十二指腸潰瘍をはじめとした様々なヘリコバクター・ピロリ関連疾患の発症に大きく関与していると考えられている。しかし、日本におけるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の保険適用上の対象疾患は、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃の内視鏡的治療後胃に限られている。そこで、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本ヘリコバクター学会の3学会は、連名で2011年12月にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎における除菌療法の早期承認を求める要望書が厚生労働大臣に提出した。これを受け、今般、関連9社は、平成11年(1999年)2月1日付研第4号、医薬審第104号「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、公知の文献等を科学的根拠とし、各薬剤について医薬品製造販売承認事項一部変更の申請を行った。今回、承認事項の一部変更申請を行った製品名等は下記の通り。 ※( )内は一般名、< >内は製造販売会社●プロトンポンプ阻害薬・タケプロンカプセル15、30、同OD錠15、30(ランソプラゾール)<武田薬品工業株式会社>・オメプラール錠10、20(オメプラゾール)<アストラゼネカ株式会社>・オメプラゾン錠10mg、20mg(オメプラゾール)<田辺三菱製薬株式会社>・パリエット錠10mg(ラベプラゾールナトリウム)<エーザイ株式会社>・ネキシウムカプセル10mg、20mg(エソメプラゾールマグネシウム水和物)<アストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社>●アモキシシリン水和物製剤・パセトシンカプセル125、250、同錠250<協和発酵キリン株式会社>・サワシリンカプセル125、250、同錠250<アステラス製薬株式会社>・アモリンカプセル125、250、同細粒10%<武田薬品工業株式会社>●クラリスロマイシン製剤・クラリス錠200<大正製薬株式会社(発売:大正富山医薬品株式会社)>・クラリシッド錠200mg<アボット ジャパン株式会社>●メトロニダゾール製剤・フラジール内服錠250mg<塩野義製薬株式会社>●組合せ製剤・ランサップ400、同800<武田薬品工業株式会社>・ランピオンパック<武田薬品工業株式会社>詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2012/120831.asp

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。心房細動患者の脳梗塞発症率は、発作性、持続性の病型による差はなく同等であるが、併存疾患や年齢によって梗塞リスクが異なり、リスク定量化の試みがなされている。2010年のESC心房細動管理ガイドラインから、従来のCHADS2スコアの欠点(低リスク例の層別化が不十分)が改善されたCHA2DS2-VAScスコアが採用されている。CHA2DS2-VASCスコアは、0 pointでは脳梗塞発症率が0%で、CHADS2スコアよりも低リスクを判別できて、抗凝固療法を必要としない例を効率よく除外できる。 ワルファリンは、きわめて有用・有効な抗凝固薬であるが、安全治療域が狭く、至適投与量の個人差が大きいうえ、多くの食品、薬物と相互作用があるなどの欠点を持っている。ワルファリンコントロールに繊細なコントロールが要求される理由のひとつとして、アジア人では、白人に比べて頭蓋内出血の頻度が約4倍高い(Shen AY, et al. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 309-315.)ことがあげられる。ESCガイドライン2010では、出血リスクの評価としてHAS-BLEDスコア(Pisters R, et al. Chest. 2010; 138: 1093-1100.)を用いている。 本研究の結果、CKDを合併したNVAFは、梗塞リスクのみならず、出血リスクも高い特徴があることが明らかになった。従来の評価法のうち、HAS-BLEDスコアには腎機能が含有されるが(A)、CHA2DS2-VAScスコアには含有されていない。本研究の詳細を検討すると、CKD合併NVAFでは、梗塞リスクに対する高血圧(H)、心不全(C)、血管疾患(V)、糖尿病(D)の寄与が有意ではなかった(原著Table 3参照)。本邦でダビガトランの市販後に、腎機能低下患者で致死的な出血合併症を認めたことは記憶に新しい。個々の医師がCKDに高い関心を持つとともに、NVAFに対する抗凝固療法の安全性・有効性をさらに高める、より普遍的なリスク評価法の開発が必要であろう。

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アスリートが経験する脳震盪はうつ病リスクを増加させる

 アスリートの多くが経験する脳震盪。脳震盪は、頭部に激しい衝撃を受けた直後に起こる一過性の脳障害で、めまいや頭痛、意識喪失などが短期的に発現する。中等度以上の脳震盪では、脳が損傷を受ける可能性も高く、障害が残ったり、死亡に至るケースもある。Kerr氏らは、脳震盪が将来のうつ病発症の独立した危険因子であることを、Am J Sports Med誌オンライン版2012年8月24日号で報告した。 NFL (アメリカ・プロフットボールリーグ)を引退した選手を対象とした前向きコホート研究。2001年の一般健康調査(GHS)をベースラインとし、2010年までフォローアップを行った。調査項目は、人口統計情報、選手生活で経験した脳震盪、身体的・精神的な健康状態、各種疾患の有病率。身体的健康状態は健康関連QOL評価尺度(SF-36 PCS)にて評価した。2010年に自己申告した脳震盪の経験により、5つのカテゴリー(経験なし、1~2回、3~4回、5~9回、10回以上)に層別化を行った。主要評価項目は、ベースラインからフォローアップまでのうつ病診断とし、単純暴露因子の結果に対するリスク比を算出した。分析には、ポアソン回帰分析および推定補正リスク比のばらつきにロバスト分散を用いた。脳震盪と9年間のうつ病リスクの関係や傾向はカイ二乗検定により分析した。主な結果は以下のとおり。・ベースラインとフォローアップのGHSデータが得られた1,044名のうち、期間中にうつ病と診断されたのは106名(10.2%)であった。・少なくとも1回以上の脳震盪を経験したと自己報告した選手は65%であった。・9年間のうつ病発症リスクは脳震盪の経験回数と相関していた(経験なし:3.0%、10回以上:26.8% [線形トレンド:p

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『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●マサチューセッツ慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と繊維筋痛症(CFIDS/ME and FM)の会「この夏、ME/CFSの研究は大きく前進するための舵を切った」と、半年ぶりに再会したナンシーは、いつものように低いトーンの落ち着いた声で静かに言いました。彼女は、「マサチューセッツ CFIDS/ME and FMの会」の理事の一人です。この病気に30年以上も罹っていて、病気についての専門知識は深く、医学研究の進捗状況や医師たちの動向、さらにアメリカ内外の他の患者団体の動きにも精通しています。ナンシーは患者のための地域活動もしていて、地区患者会の例会の場所をとったり、会員に連絡したりしています。例会当日の会場設営もしていて、会員に和やかな楽しい時間を過ごしてもらおうと、スーツケース2つにお茶やお菓子を準備し、季節にちなんだ飾りつけもします。私が同行させて頂いた2月のバレンタインの月の例会は、ピンクと赤がテーマで、テーブルクロスは赤、紙皿や紙コップやナプキンはハートの模様で、ハート形の置物も用意されていました。ナンシーから手渡された、最近のアメリカ政府のME/CFS対策についての書類には、次のようなことが書かれていました。2012年6月13日と14日に、HHS(The Health and Human Services)は、慢性疲労症候群諮問委員会(The Chronic Fatigue Syndrome Advisory Committee: CFSAC)を開催しました。委員には10人のメンバーが選ばれましたが、臨床の専門家、FDA(食品医薬品局)代表を含む7人の元HHSメンバーのほかに、患者アドボケイトもメンバーとして入りました。そして、3時間にわたる公聴会が行われました。その他にも7つの患者団体の代表が報告をする機会が設けられました。さらに、このCFSACとは別に、HHSは所属を越えて協働できるために慢性疲労症候群の特別作業班(Ad Hoc Working Group on CFS)も結成しました。そこには、CDC(疾病予防管理センター)、NIH(国立健康研究所)、FDA(食品医薬品局)など各部局の代表も含まれています。こうした委員会や作業班が作られた背景には、オバマ大統領の意向があるといいます。インディアナ・ガジェットというオンライン新聞によると、ネバダ州のリノに住むME/CFS患者の妻は、2011年5月にオバマ大統領に、ME/CFS患者の救済、特にこの病因も分からず治療法もない病気の解明の為に、研究予算を付けて助けて欲しいという手紙を出しました。これに対してオバマ氏は、NIHを中心に研究を進めるための努力をすると回答しました。また、オバマ氏は、偏見を呼ぶCFSという病名にも配慮を示し、MEと併記したとのことでした。新聞記事は「これでオバマは新しい友人を何人か作った」と結ばれています。全米で約100万人いると推計されているこの病気の患者が味方になるなら、目前に大統領選を控えたオバマ氏にとって政治的に大きな力になることでしょう。●スウェーデンにおける自閉症とアスペルガーの会スウェーデンのストックホルム県に住むブルシッタとシュレジンは、ふたりとも「自閉症とアスペルガーの会」の有給職員です。ブルシッタには33歳になる自閉症の息子さんがいて、シュレジンには20歳になる自閉症と発達障害の息子さんがいます。8月に発達障害児・者への施策や医療を視察するためにスウェーデンを訪れたのですが、その際にこの二人にお会いしました。「自閉症とアスペルガーの会」は、患者も患者家族も、医療提供者も社会サービス提供者も学校関係者も、関心がある人がすべて入れる会です。親が中心になって1975年に設立され、ストックホルム県内では会員が3,000人います。全国組織もあって、こちらは会員が12,000人います。活動としては、メンバーのサポートをしたり、子どもたちの合宿を企画したりしています。ホームページがあり、機関誌も出しています。ブルシッタによれば現在の会の中心的な活動は、政治的な動きだといいます。確かに会の活動が様々な施策を実現してきたことは、色々なところで実感しました。今回、ストックホルム県内の、様々な制度を見聞したり施設(発達障害センター)を訪れたりしました。その際に、こうした制度や施設をコミューン(地方自治体)に作らせるように働きかけてきたのは、「自閉症とアスペルガーの会」のような親たちや専門職が加入している自閉症や発達障害の患者会だったということを、何人もの施設の長の方々から聞きました。さらには、自閉症に対する大学の研究にも、こうした患者会は大きな役割を果たしています。カロリンスカ研究所に付属する子ども病院における自閉症研究グループであるKIND(発達障害能力センター)は、企業やEU科学評議会などからの資金援助を受けていますが、その時大きな後押しになったのが、「自閉症とアスペルガーの会」だったといいます。KINDのディレクターのスティーブン・ボルト氏は、会からの大きな支えを強調していました。スウェーデンでは1980年代にハビリテーションのシステムが作られ、生きてゆくうえで支援が必要な人々に対する支援が整えられてきましたが、十分とは言えないままでした。それが1994年に施行されたLLS(特別援護法)によって、支援の制度は大きく前進しました。この法律の制定にも、患者団体などの利益団体の働き掛けが大きな後押しになったそうです。2004年にスタートした自閉症のハビリテーションセンターや、2007年にスタートしたADHD(注意欠陥・多動性障害)センターでも、責任者の方は口々に、患者会が政治家に働きかけることでセンターが誕生したと言っていました。そして、このような支援を受けることは、ニーズのある人々の権利なのだと繰り返していました。●各国での患者会の現状スウェーデンに先立って訪れたアルゼンチンで開かれた国際社会学会でも、各国で患者会が医療政策決定において重要な役割を担っていることが報告されました。私が発表した医療社会学のセッションでは、イギリスからは「当事者会・患者会とイングランドのNHS(National Health Service:筆者挿入)の変化」、イタリアからは「トスカーナ地方における健康保健サービスの向上と社会運動の役割」と題される研究成果が紹介されました。それぞれ、地域におけるヘルスケア改革に、当事者団体や患者団体のアドボカシー活動が大きな役割を果たしたことに関する実証研究でした。最後に私の発表の番となり、「日米における患者と市民の参加」と題した、日本とアメリカの合わせて7つの患者会に対する、アンケート調査とインタビュー調査の結果を報告しました。この調査は、2010年から2011年にかけて行われたもので、患者会の意味と役割について、メンバーに意識を尋ねたものです。アンケートに対しては、日本では132票、アメリカでは109票の有効回答が寄せられ、インタビューの方では23人の方が対象者になってくださいました。患者会は、脳障害、脳卒中、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、ポストポリオ症候群、卵巣がんなどでした。当初は、アメリカの患者会の方が日本よりも、政治的問題に発言してゆくアドボカシー活動への関心が高く、実際に活動も行っているという仮説を立てましたが、どちらの国も同程度に関心が高く、活動をしているという結果が認められました。ただし日米とも、患者会がアドボカシー活動を積極的に行うようになってきたのは、ここ10年から20年のことだといいます。それまでは、患者や親たちは問題を個人で抱え込むしかなかったといいます。患者や親たちは、病気による身体的あるいは生活上の苦しさを理解されず、ましてや支援など受けることもできませんでした。そして逆に、病気のことをよく知らない一般の人や医療者から、非難するような言葉や態度を浴びせられてきたといいます。30年以上も筋痛性脳脊髄炎の患者であったナンシーの言葉を借りれば、「社会からは理解されず、医療者から虐待されてきた」というのです。それは発達障害を持つ子や親も同様でした。スウェーデンでも80年代くらいまでは、ADHDや自閉症を持つこども達は、さまざまな失敗をしては親や教師から叱られ、親の方も育て方が悪いと周囲から非難されてきたといいます。●日本の患者会昨年9月に、東京で開催されたランセットの医療構造改革に関するシンポジウムでは、タイからの登壇者に「日本では患者会との協働はどのようになっているのですか」と聞かれ、「患者会は、自分たちの半径5メートルしか見ていない」ので意見を聞いても仕方ないというようなことを権威ある立場の日本人医師が答え、椅子から転げ落ちるほどびっくりしました。ランセットの会議に招待されるような方が、そのようなことを国際社会の場で発言するとは、日本の医師をはじめとする医療界の認識の浅さや遅れではないか忸怩たる思いがしたものです。このことは、以前にMRICにも書きましたが、この状況は今後変わってゆくでしょうか。日本でも、いくつかの患者会はアドボカシー活動をしています。例えばNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(通称、ME/CFSの会)は、偏見に満ちた病名を変更させるために患者会の名前を変えました。そして、この病気の研究を推進してもらいように、厚労副大臣や元厚労大臣を始め、何人もの国会議員や厚労省職員に面会し、研究の重要性と必要性を訴えかけました。さらに、ME/CFS患者が適切な社会サービスを受けられるようにするため、いくつもの地方自治体の長や議会に要望書を提出し、複数において採択されてきています。さらにME/CFSの会は、この病気の世界的権威ハーバード大学医学校教授のアンソニー・コマロフ氏に、会が11月4日に開催するシンポジウムに向けてのメッセージも頂きました。ME/CFSは、未だに日本では医療者からも家族からも想像上の病気や精神的なものと誤解され、患者が苦しんでいることをご存知のコマロフ氏は、この病気が器質的なものであることを繰り返し、日本でも研究が進められるように呼びかけました。実際に研究が進んだり、社会サービスが受けられるようになったりといった具体的な成果はなかなか上がって来ていませんが、この様に患者会は、様々な活動を行い、続けていればいつか実現すると信じて続けられています。●当事者参画の可能性アルゼンチンの国際社会学会で同じセッションに参加していらしたシドニー大学教授のステファニー・ショート氏は、「私たち社会学者は、特に私の世代は、マルクス主義の影響が大きかったから、体制批判とか、社会運動とか、っていう視点で見ちゃうのよね。でも、今は時代が変わったわね」、とおっしゃっていました。彼女はまた、私の行った日米調査の調査票を使って、今度はオーストラリアでやろうという共同研究の話を持ちかけてくれました。もちろんぜひ調査を実施してみたいと思っています。次の国際社会学会の大会は横浜で開催されます。ちょうど私の所属する星槎大学も横浜に事務局がありますので、医療社会学の面々のパーティ係を任命されました。会場探しもしますが、その時までに、日本の行政や医療専門職が患者会の役割を重視し、患者のための医療体制ができてきたという報告をこの学会で発表できるようになればいいと思いました。謝辞:スウェーデンの患者会は、セイコーメディカルブレーンの主催する研修で知り合いました。研修を企画して下さった同社会長の平田二郎氏、研修参加を推奨し財政的支援をして下さった星槎グループ会長の宮澤保夫氏に感謝いたします。また、日米患者会調査の実施に当たって、資金の一部を助成して下さった安倍フェローシップ(Social Science Research Councilと日本文化交流基金)に感謝の意を表します。<参考資料>インディアナ・ガジェット オバマ、CFSについて応えるhttp://www.indianagazette.com/b_opinions/article_75b181eb-bd88-5fe4-bc90-f7b09f869ffd.html略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(12)〕 起死回生となるかフルベストラント

転移性乳がんに対するフルベストラントはこれまで一つもポジティブデータは存在しなかった。フルベストラントは現在の乳がんホルモン治療薬の標準治療であるタモキシフェンと違って、エストロゲンアゴニスト作用のない、pure anti-estrogen薬剤として有用性が期待された薬剤であったが、これまで行われてきた第3相比較試験ではことごとく失敗に終わってきた。転移性乳がんに対する一次治療として、タモキシフェンとの比較では、非劣性が証明されず(Howell A et al. J Clin Oncol. 2004; 22: 1605-1613.)、二次治療としても、アナストロゾールとの比較(Osborne CK et al. J Clin Oncol. 2002; 20: 3386-3395., Howell A et al. J Clin Oncol. 2002; 20: 3396-3403.)エクセメスタンとの比較(Chia S et al. J Clin Oncol. 2008; 26: 1664-1670.)でも有意な結果は得られていない。 今回の結果は、フルベストラントの起死回生ともなるべく一発ポジティブデータである。単剤投与では有用性が証明できなかったので、アナストロゾールとの併用で有用性を見ようというものである。製薬企業ベースの試験が多い中、この試験は、米国公的資金サポートを受けたSWOG(南西部がん研究グループ)の試験であることは信頼に足るものであるが、プラセボが使用されなかったことは残念である。また、同様のデザインでネガティブデータがすでに公表されている(Bergh J et al. J Clin Oncol. 2012; 30: 1919-1925.)。FACT試験と呼ばれるこの試験は、514名を対象としたフルベストラント+アナストロゾール併用vs.アナストロゾール単剤のランダム化比較試験であるが、主要エンドポイントの無増悪生存期間では有意差はなかった(11ヵ月 vs. 10ヵ月)。 今回の試験結果のみで、フルベストラント+アナストロゾールが標準治療になるものではないと思われるが、乳がん治療において、フルベストラントの今後の生き残る道が示されたのではないかと思われる。勝俣 範之先生のブログはこちら

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STEMIへのPCI、バイオリムス溶出性ステントで主要有害心血管イベントリスクが半減

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、バイオリムス溶出性ステントを用いた場合、べアメタルステントを用いた場合と比べて、標的血管に関連する再梗塞などの有害心血管イベント発生率がおよそ半減することが明らかにされた。スイス・ベルン大学病院のLorenz Raber氏らが、約1,200例の患者について行った前向き無作為化比較試験「COMFORTABLE AMI(Comparison of Biolimus Eluted From an Erodible Stent Coating With Bare Metal Stents in Acute ST-Elevation Myocardial Infarction)」の結果、報告したもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞などの複合イベントを比較STEMI患者へのPCIにおける薬剤溶出性ステントとベアメタルステントとの有効性および安全性についてはなお議論が続いている。バイオリムス溶出性ステントは、新規世代の生分解性ポリマー製の薬剤溶出性ステントで、重大有害臨床イベントに関して大規模試験で同じ薬剤溶出性ステントで前世代のシロリムス溶出性ステントと比べ非劣性か良好である可能性が示され、STEMI患者では明確なベネフィットが示唆された。Raber氏らは、バイオリムス溶出性ステントとベアメタルステントとを比較検討するため前向きコホート試験を行った。2009年9月19日~2011年1月25日の間、ヨーロッパとイスラエルの11ヵ所でSTEMIでPCIを行った患者1,157例を対象とした。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の575例にはバイオリムス溶出性ステントを用いたPCIを、もう一方の582例にはベアメタルステントによるPCIを行った。主要アウトカムは、1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞、虚血による標的部位再建術の複合イベント発生率だった。標的血管に関連する再梗塞リスク、バイオリムス群がベアメタル群の0.2倍結果、主要アウトカムの有害心血管イベント発生率は、ベアメタル群が8.7%(49例)に対し、バイオリムス群は4.3%(24例)と、リスクはおよそ半減した(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.30~0.80、p=0.004)。なかでも、標的血管に関連する再梗塞発生率は、ベアメタル群が2.7%(15例)に対しバイオリムス群は0.5%(3例)と、ハザード比は0.20(同:0.06~0.69、p=0.01)だった。虚血による標的部位再建術の発生率もまた、ベアメタル群が5.7%(32例)に対し、バイオリムス群は1.6%(9例)と、ハザード比は0.28(同:0.13~0.59、p<0.001)だった。一方で、心臓死発生率は、ベアメタル群が3.5%(20例)に対しバイオリムス群が2.9%(16例)と、両群で有意差はなかった(p=0.53)。ステント血栓症発生率は、バイオリムス群が0.9%(5例)に対しベアメタル群は2.1%(12例)と、有意差は認められなかったがバイオリムス群で低率の傾向がみられた(p=0.10)。

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総頸動脈内膜中膜複合体厚、従来の心筋梗塞・脳卒中予測モデルを改善せず

 総頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)を予測モデルに加えても、従来のフラミンガムリスクスコアの予測モデルに比べ、初回心筋梗塞または脳卒中の10年発症予測能は改善しないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのHester M. Den Ruijter氏らが、14件のコホート試験について行ったメタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。CIMTが心血管イベントの絶対リスクを予測するリスクスコアを改善することに関しては、研究結果に一貫性がなかった。延べ4万6,000人についてメタ解析、中央値11年追跡研究グループは、地域住民ベースのコホート試験14件、被験者総数4万5,828人を対象とするメタ解析を行った。CIMTを予測モデルに追加することで、初回心筋梗塞または脳卒中の10年発症予測能が、従来のフラミンガムリスクスコアによる予測に比べ、改善するかどうかを調べた。追跡期間の中央値は11年で、その間に発生した初回心筋梗塞または脳卒中は4,007件だった。CIMTを追加してもC統計量は同等、純再分類改善度は0.8%CIMTを追加した予測モデルのC統計量は0.759(95%信頼区間:0.752~0.766)で、フラミンガムリスクスコアのみによる予測モデルのC統計量0.757(同:0.749~0.764)と同等だった。CIMT追加モデルによる純再分類改善度は0.8%(同:0.1~1.6)とごくわずかだった。リスク度が中程度の人については、追加モデルによる純再分類改善度は3.6%(同:2.7~4.6)だった。男女間に差異は認められなかった。

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(11)〕 JAK阻害薬は関節リウマチの診療に2回目のパラダイムシフトをもたらすか?

炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤の登場により、関節リウマチ(RA)に対する治療指針は大きく変革し、関節破壊進行の抑制と身体機能の改善を目標に、疾患活動性を寛解にコントロールすることが重要と考えられるようになった。一方で生物学的製剤抵抗例も未だ存在し、また生物学的製剤は注射製剤で薬価が高いという問題点がある。 今回、平均年齢50歳、平均罹病期間8年で既存の治療に抵抗性(85%がMTX抵抗例、20%が生物学的製剤抵抗例)の難治例に対して、新規経口薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(トファシチニブ)の第3相無作為化試験の結果が示された。JAK阻害薬はIL-2,4,7,9,15,21のシグナルを阻害し、自己免疫応答を抑制すると考えられている。 治療開始3ヵ月で、トファシチニブ投与群の60%の患者が、腫脹関節数、圧痛関節数、患者あるいは医師の評価、身体機能評価、CRPの20%の改善を達成し、35%の患者が50%の改善、25%が70%の改善を示し、プラセボ群の26.7%,12.5%, 5.8%より有意に高く、治療開始後比較的速やかに疾患活動性が改善することが示された。身体機能についてもトファシチニブ投与群で有意に改善することが示された。腫脹関節数0-1、圧痛関節数0-1の寛解状態の達成は早期RA患者の治療目標であり予後を改善させると考えられているが、本研究にエントリーされたRA患者は難治例で罹病期間が長く寛解の達成は困難と予想され、トファシチニブ投与群の寛解率、低疾患活動性の達成率は8.7%、17%にとどまり、寛解達成率に関してはプラセボ群と比較して有意な改善は認められなかった。RAの治療は免疫抑制を伴うことから抗生剤の静脈投与を必要とするような重篤感染症の発生が問題となることがあるが、トファシチニブ投与群では610例中6例で6ヵ月以内に重篤感染症が発生した。 今後、早期例に対する寛解達成率、関節破壊進行の抑制効果、MTXの併用の治療成績、市販後全例調査等による安全性の評価などが検討されれば、経口薬であることで本剤の薬価が生物学的製剤より低く設定され、現在のRAの治療ストラテジーが再度大きく変革する可能性がある。

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10年後に10万人の“ジェネラリスト”創出を目指す!!

7月16日、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京・文京区)において「Generalist Japan 2012」が、一般社団法人 Medical Studio(代表:野崎 英夫 氏)の主催、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会の後援により開催された。当日は、祝日にも関わらず、全国より総合診療科の医師、研修医、医学生など300名以上が参集した。オープニング・リマーク:医療崩壊を救う“ジェネラリスト”特別に制作・編集された動画「Generalist Japan 2012 Opening Movie」で幕を開け、川島 篤志 氏(市立福知山市民病院 総合内科)の総合司会のもと開会を宣言、「今回の場は、ジェネラリスト(総合診療医)の将来を考え、実践する、その一歩として考え催されるものである。議論への積極的な参加をお願いしたい」と述べ、開始された。はじめに主催者代表として野崎 英夫 氏が「オープニング・リマーク」として自身が医師になった動機を語るともに、喫緊の問題を提起し、「医師不足により救急体制が崩壊しつつある、在宅医療でも現場の医師が不足している状況で、医師が早くこの事態に気づくことが重要。これからの病院はスペシャリスト(専門医)が集うところであり、医師はもっと院外へ出て、地域で共同体を作っていくことが大切だ。そして、未来の医療について大きく絵を描き、問題に気づき、解決するために行動を起こすことが求められている」と今回の開催の趣旨を述べた。オープニング・パネル:ジェネラリストは日本の医療を救うのか「オープニング・パネル」として「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマに有識者4名のパネリストが会場を巻き込み、熱い議論を行った。問題提起として各パネリストから次のような発言がなされた。「現在は医療の知識の格差が顕著である。これからは命の延命の程度(社会、家庭、行政の関係で)が課題となる」や「ジェネラリストが今後の医療を変える突破口となると思う。今後は実態の把握、目指す目標、達成の手段など具体的にアクションを起こすことが大事」との指摘のほか、「沖縄は離島が多いため、自然とジェネラリストになることが求められる。そのノウハウを活かすために東京に来たが、地域医療について東京は遅れている。今後10年で10万人のジェネラリストを育成し、わが国の医療の格差(経済と知識の両方)を何とか解決しなくてはいけない」という目標設定や「日本とヨーロッパでは、医療者の定義が異なる。ヨーロッパでは、医師が医療・福祉・共同体作りを行っていて身近な存在だが、日本ではまだ遠い存在だと感じている。身近な存在には家庭医であるジェネラリストがなるべきだと考える」などのコメントが述べられた。続いてディスカッションとなり、「医療に関して情報公開が不完全であり、透明さがない。患者側も医療への理解力を上げていかないといけない」という意見や「地域での医師分布、専門領域での医師分布、昼夜間での医師分布の異常が起っている。医師全員が守備範囲を広げなくてはいけない。具体例として当院では、病院見学の際は見学者全員が院内PHSをもち医療活動を行う、参加型医療を実践させている。もちろん患者にも協力してもらい、医師の教育をポジティブに見てもらう、医師の育成の現場に参加させる試みを行っている」という事例紹介や「イギリスのGP(家庭医)のように『価値の実現共有』が必要。たとえば100個の医療変革アクションプランの発表が必要ではないか」という提案が行われた。会場からは、「ジェネラリストが活躍する時代だと実感している。これからは具体的な目標(増員人数や増員の方法、啓発方法など)を定め行動することが大事。若手医師には『総合医』という確固としたキャリアパスを示すことが大切」という提案や「専門医とジェネラリストが手を携えて診療にあたり、診療の見落としを無くすことが重要で張り合うものではない」という意見や「今までジェネラリストは、一般社会に存在を広めてこなかったことが反省点。現在の医療は、昔のように単純に診療をして、治療をしておしまいではなく、患者と寄り添い、患者の代弁人(アドボカシー)として関わることも重要な使命と考えている。このことを一般社会に広く周知する必要がある」などの提案がなされた。最後にパネリストが一言ずつコメントを寄せ、「今後の実行への期待」や「これから医療を変えるスタートとしたい」など抱負を述べた。午後からは会場を2ヵ所に分け、10名の識者から成る円卓会議「ジェネラリスト・ラウンドテーブル」と若手医師から構成される「エンパワーメント・セッション」が開催された。ジェネラリスト・ラウンドテーブル:ジェネラリスト大国ニッポンになるためにはジェネラリスト・ラウンドテーブルでは、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」をテーマに3時間にわたるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、次のような内容の問題提起や意見が出され、話し合いが行われた。――ジェネラリストの定義、教育、役割とは?活躍の場で名称は変わり、境界は曖昧である。ER、集中治療室、病院総合医、病院以外であれば家庭医と呼ばれる育てるには後期臨床研修後のキャリアパスが大事。ジェネラリストになるためのトレーニングはある程度必要(例:1次救急の患者を診療できるレベル)。そのため、へき地臨床研修と大病院での研修をバランスよく実施する必要がある専門医で補いきれない部分を補完するのはジェネラリストの役目――ジェネラリストをいかに広げていくか?ジェネラリストがこれから、行政、自治体とどうつながっていくのか、プロモートできる人(ジェネラリストの伝道師)を育てる総合診療部門は収益を生む部門であることを、より強調することと社会へのPRが大事ジェネラリストの横の連携が弱い。横の連携を強化し、診療ノウハウの交換やジェネラリストが語る場、居場所となる場(例:医師会)を作ることが必要――高齢者とジェネラリスト高齢者は疾患の数が多く、身体の恒常性も破たんしている場合もあり、治療して治すことは難しい。そこで、高齢者の患者に寄り添う医師としてジェネラリストが活躍するアメリカのように患者のQOLを重視し、患者とゆるい距離間で家族も巻き込み寄り添う、顧問的な役割にジェネラリストがぴったり合う。その際、もっとチーム力をもって看護師やセラピストを入れることも大切高齢者特有の終末期医療は、在宅医療で多くの経験を積む必要がある。研究がメインの大病院では学ぶことが難しい――ジェネラリストは医療の質を上げるか?わが国では、ジェネラリストになると生活環境が改善される。それを見越してジェネラリストが増えれば、過分な診療から解放された専門医の生活も改善され、医療の質全体が上がる今後、ジェネラリストが増えれば医療費が削減されるかどうかの検証は必要――ジェネラリストとしての研究への取り組みジェネラリストは個別化しているので医局のしがらみなく、コラボレーションをして研究、発表をしたらいい研究費用がなくてもジェネラリストでしかできないフィールド研究もある。今大事なのは、よく行われているリサーチ・クエスチョンではなく、ジェネラリストの素朴な疑問を整理し、研究・発表すること。ジェネラリスト全員の疑問を収集して、流すシステムが必要であり、それを指揮できる旗振り役も必要●自由討論――なぜジェネラリストはメジャーにならなかったのか?従来は精神論が多すぎた。ジェネラリスト自体の考えがバラけていて、一本化されていなかったのが問題。今後はジェネラリストが、医療の担い手として専門医に便利な存在であること、その効果を宣伝することが大事であり、社会に向かってわかりやすいものを作る必要がある一般への啓発は、マスコミを利用しないとうまくいかないジェネラリストとは、医療全体を見ることができる医師であると思う「ジェネラリストは収益が良い」という魅力あるモデルを示すことができれば、後に続く医師がでるエンパワーメント・セッション1:ジェネラリストの魅力を伝える医学教育孫 大輔 氏(東京大学 医学教育国際協力研究センター)の司会のもと、5名のパネリストから自己紹介とともにテーマに関するコメントが寄せられた。「研修医への教育内容の範囲(どこまで教えるか、任せるか)」、「1日の中での教育時間(指導の負担が大きすぎる)」、「医学教育の本質的な内容(医学教育が軽く見られている)」、「大学でのジェネラリストの低い地位について」などをもとに会場の参加者とディスカッションを行った。ディスカッションでは、若手医師をジェネラリストに導くために「大学等で居場所を作り、発表の場を作ることが必要」や「長い医学教育の中で臨床でしか教わらないヒドゥン(隠れた)カリキュラムがジェネラリストには大事。これをうまく活用すれば育成の時間節約になる」、「ジェネラリストを育てるためには臨床の現場を見せて、ベッドサイドで突き放して教えることで伸びる」、「指導医が研修医の診断能力を診断する。この時間を指導医が楽しめるかが教育のカギとなる」などの意見が寄せられた。最後に孫氏が、まとめとして次のポイントを示した。教育者自身が医学教育をとにかく楽しむヒドゥン(隠れた)カリキュラムの活用(背中で楽しさを見せる)大学での水先案内人を増やす(学内でジェネラリストの占めるポストを増やす)ジェネラリストだけでなく専門医とよい連携をする大学だけでなく地域とつながった医学教育が必要国民や市民参加型の医学教育を志向するエンパワーメント・セッション2:越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとはセッション2では、草場 鉄周 氏(北海道家庭医療学センター)の司会のもと、「地域とジェネラリストの関係について」ディスカッションが行われた。4名のパネリストが自己紹介とともに、テーマについて次のようにコメントを寄せた。「日本の医療はジェネラリスト待望の方向へ向かっている。地域で診療の格差が顕在化した今、その隙間を埋めることができるのがジェネラリストだと考える」という役割論や「地域医療の視点からジェネラリストは地域をつなげる大事な役目を担っていると思う」という地域との連携や「これから日本の医療で果たすジェネラリストの役割を考えていきたい。原発被災地で働いているが、将来の日本の姿が被災地にあるように思う。いかにチームの中心としてジェネラリストが活躍しなくてはいけないかをディスカッションしたい」という要望、そして「地方でも共同体がまとまっている地域とそうでない地域がある。その差が医療の受益の格差を生む一因ともなっている。どうすれば若手の医師が、ジェネラリストとして地域に残る、または入っていくのかその方法を考えたい」という問題提起が述べられた。以上のコメントに対し、会場からは「普段から地域の住民と医師とのコミュニケーションは大切である。何かのきっかけで急に行おうとしてもうまくいかないことがある」や「患者は医師の前ではかなり萎縮している。この見えない距離を縮めないと医師は、コミュニティのリーダーにはなれない」、「看護師などの他種職種と在宅医療のカンファレンスを行っている。医師はファシリテートをする役目だと思う」、「コミュニケーションの量が、活動の活発化に比例する。これからのコミュニティは、一方的な命令ではなく、対話をして納得してからではないと動いていかない」という意見などがあった。まとめとして草場氏から「ジェネラリストを育てるには、コミュニティを視野に入れた活動が必要。たとえば、地域医師会は限られた予算の中で医療をどうするか真剣に考えている。そうした地域の先輩の中に入り、活動を広げていくことが大切」と感想を述べ、セッションを終了した。ラップ・アップ・セッション:ジェネラリスト宣言「ラップ・アップ・セッション」として、1日の総括が行われた。セッションでは、司会の孫 大輔 氏が、「市民参加型の医療へ向け今日から新しいことが始まる予感がする。今後はジェネラリストの定義と質の保証が必要となるし、General Mindも養成する必要がある」と述べ、もう一人の司会者の坂本 文武 氏は「今回のように集い、考えることが大事。仕組みを変えていく努力が必要で、ディスカッションを通じて解決策を見つける。今後は医師だけでなく、別の立場の人の視点も大切」とコメントを寄せた。続いて当日の参加者全員に配布されたアブストラクト集の「私のジェネラリスト宣言」について説明が行われ、その場で参加者に「今からの気持ちの表明」として、個人の目標を記入してもらい、今後の取り組みへの奮起を促した。次に、事前に投票を行っていた「ジェネラリストが増えた社会のありかた」についての投票結果を発表。第1位には「ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳をもって意見交換・連携できる社会」が選ばれた。最後にジェネラリスト宣言が発表され、次の一文が述べられ、はじめての「Generalist Japan 2012」は終了した。ジェネラリスト宣言「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで、生老病死が生活の一部になっている社会」ジェネラリスト Japan 2012 Opening Movie http://www.youtube.com/watch?v=bE75pE66Y2gMedical Studio USTREAM(当日の動画が視聴できます)http://www.ustream.tv/channel/medical-studio-ustream#eventsMedical Studio のFacebookページ http://www.facebook.com/medicalstudio.jp

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軽度アルツハイマー病患者と介護者に対する社会心理的介入は有効か?

 DAISYと呼ばれる軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法は、患者の認知症の進行、うつ状態、QOLおよび介護者のうつ状態、QOLを改善しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のF B Waldorff氏らが行ったDAISY試験で示された。中等度~高度アルツハイマー病患者とその介護者に対するカウンセリングや心理社会的介入により、患者の病態が改善する可能性が示唆されている。しかし、患者と介護者双方への介入について検討した試験は少なく、軽度の患者を対象とした試験はこれまでなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月17日号)掲載の報告。軽度患者・介護者への介入の効果を無作為化試験で評価DAISY(Danish Alzheimer Intervention Study)試験は、軽度アルツハイマー病の外来患者とその介護者に対する、早期の社会心理的なカウンセリングおよび支援プログラムによる介入の有効性を評価する多施設共同無作為化試験。デンマークの5つの地域のプライマリ・ケア施設および認知症外来を受診した330組の軽度アルツハイマー病患者と介護者が、通常の支援のみを受ける群あるいは通常支援に加えDAISY介入(多角的で準個別化されたカウンセリング、教育、支援)を受ける群に無作為に割り付けられた。評価者には割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、患者の認知症の進行度(mini mental state examination:MMSE)、うつ状態(Cornell scale for depression in dementia:CSDD)、QOL(European quality of life visual analogue scale:EQ-VAS)スコア、および介護者のうつ状態(geriatric depression scale:GDS)、QOL(EQ-VAS)スコアのベースラインから12ヵ月後までの変化とした。患者のうつ状態は改善の傾向に通常支援単独群に167組(患者:平均年齢75.9歳、女性55%、介護者:66.5歳、66.5%)、DAISY介入追加群には163組(患者:76.5歳、53%、介護者:65.5歳、66.9%)が割り付けられた。12ヵ月後に解析の対象となったのはそれぞれ145組、131組であった。多重検定の補正法としてBenjamini-Hochberg法を用い、偽発見率(false discovery rate)5%を有意水準とし、p<0.0005の場合に有意差ありとした。結果、1年後の評価において通常支援単独群とDAISY介入追加群の間には、主要評価項目、副次的評価項目のいずれにおいても有意な差は認めなかった。しかし、DAISY介入追加群では患者のCSDDのみ良好な傾向がみられた(補正前:p=0.0146、補正後:p=0.0103)。著者は、「軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法であるDAISYによる1年間の介入は、認知症の進行、うつ状態、QOLを改善しなかった」と結論し、「小さいながらも、うつ状態について改善効果を認めたため、うつ状態を併発するアルツハイマー病患者に焦点を当てた検討の余地があるかもしれない」と指摘している。

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小学生の貧血、校長への報奨金で改善

 健康サービスの提供者に、助成金のほかに成果に応じた報奨金を支払うことで、子どもの貧血が改善される可能性があることが、米国スタンフォード大学医学部のGrant Miller氏らが中国の農村地域で行った調査で示された。開発途上国には、健康状態の改善に寄与する安価で優れた効果を持つ技術やサービスはあるものの、それを遂行し普及させる技能が一般に弱いとされる。目標の達成に対して、その方法を問わずに支払われる報奨金は、サービスの提供における創造性や技術革新の促進に向けた動機づけを強化する可能性があるが、開発途上国ではこれまで、健康アウトカムに直接的に準拠した、能力に応じた報奨金の有効性の評価は行われていなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月27日号)掲載の報告。報奨金の効果をクラスター無作為化試験で評価研究グループは、中国農村地域の子どもの貧血の改善における、健康サービス提供者への職能に応じた報奨金の支払いの効果を評価するために、クラスター無作為化試験を実施した。対象は、無作為に選ばれた中国北西部の農村地域の小学校72校(3,553人、4~5年生、9~11歳)。これらの学校が、以下の4つの群に無作為に割り付けられた。1)介入を行わない群、2)校長が貧血に関する情報のみを受け取る群(情報群)、3)校長が貧血の情報と無条件の助成金を受け取る群(助成金群)、4)校長が貧血情報と助成金に加え、生徒の貧血が改善した場合に報奨金を受け取る群(報奨金群)。助成金は、学校運営予算だけでは貧血対策費が賄えない学校に生徒1人当たり1日1.5円(赤身肉55~85gを購入できる)が拠出された。報奨金は、貧血生徒が非貧血と診断されると1人当たり150円が校長に支払われた(貧血生徒が半減した場合、月給の約2ヵ月分に相当)。非介入群に27校(1,623人)、情報群に15校(596人)、助成金群に15校(667人)、報奨金群には15校(667人)が割り付けられた。貧血はヘモグロビン濃度<115g/L(<11.5g/dL)と定義した。報奨金群で貧血が24%低下生徒の平均ヘモグロビン濃度は、非介入群に比べ情報群が1.5g/L(95%信頼区間[CI]:-1.1~4.1、p=0.245)上昇し、助成金群は0.8g/L(同:-1.8~3.3、p=0.548)、報奨金群は2.4g/L(同:0~4.9、p=0.054)上昇した。報奨金群では、平均ヘモグロビン濃度の2.4g/Lの上昇により貧血生徒が24%減少した。約20%の学校が本試験とは別の報奨金の支払い制度に参加していたが、情報群と報奨金群ではこれらの制度との相互作用が認められた。すなわち、既存の報奨金制度に参加していない学校に比べ、参加校の情報群ではヘモグロビン濃度が9.8g/L(95%CI:4.1~15.5、p=0.01)、報奨金群では8.6g/L(同:2.1~15.1、p=0.07)上昇していた。著者は、「報奨金の支払いは、健康アウトカムの改善に中等度の効果を有することが示唆された」と結論しており、「他の動機づけや既存の報奨金との相互作用を把握することが重要であり、これを理解しないとせっかくの増強された効果を見逃すことになる」と指摘している。

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うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

 わが国の気分障害患者は増加の一途をたどっている。気分障害の中でも、躁病エピソードとうつ病エピソードを繰り返す双極性障害の診断・治療への関心は高い。治療に関しては、双極性障害の適応を有する薬剤が最近いくつか承認された背景もあり、日本うつ病学会は本年(2012年)3月末に双極性障害治療ガイドラインの改訂を行っている。一方、診断に関しては、躁症状や軽躁状態を把握することが難しく、うつ病と診断されるケースも少なくない。Perugi氏らは、双極性障害の診断ツールとして開発され、国際的にテストされているHCL-32(Hypomania Checklist-32)の有用性を検討し、Psychopathology誌オンライン版2012年8月7日号で報告した。 対象として、DSM-IV基準により大うつ病と診断された571例(563例が適格)が継続的に登録され、多施設共同横断観察研究を行った。躁病エピソード(躁症状、軽躁状態)はHCL-32で評価し、うつ病エピソード(抑うつ症状、不安症状)はZungうつ病自己評価表にて評価した。主な結果は以下のとおり。・119例の患者は双極性障害(Ⅰ型またはⅡ型)と診断された。・HCL-32トータルスコアおよび14のサブスコアにおいて、双極性障害患者の躁病エピソードの発生は大うつ病患者に比べ有意に高く、感度は0.85、特異性は0.78であった。・若干の偽陽性がみられるものの、HCL-32は大うつ病患者における過去の軽躁病エピソードの把握に有用であると考えられる。関連医療ニュース ・双極性障害の再発予防に有効か?「Lam+Div療法」 ・双極性障害患者に対するオランザピン単剤 or 併用の忍容性 ・双極性障害に対する薬物療法レビュー

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バンデタニブが局所進行性/転移性分化型甲状腺がんのPFSを延長:無作為化二重盲検第2相試験

 放射性ヨード耐性の進行性分化型甲状腺がんに対する有効な標準的治療はまだない。Sophie Leboulleux氏らは、RET、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達のチロシンキナーゼ阻害薬であるバンデタニブが、無作為化二重盲検第2相試験によって、局所進行性または転移性分化型甲状腺がんに対する有効性を示したことを報告した。著者らは、この疾患に対するチロシンキナーゼ阻害薬のさらなる研究が必要であるとしている。The Lancet Oncology誌オンライン版2012年8月13日号に掲載。 本試験は、ヨーロッパの16施設において、18歳以上の局所進行性または転移性分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、または低分化がん)の患者が登録され、バンデタニブ群(バンデタニブ300mg/日)またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における無増悪生存期間(PFS)である(治験責任医師の評価に基づく)。 主な結果は以下のとおり。・2007年9月28日~2008年10月16日に、バンデタニブ群72例、プラセボ群73例が割り付けられた。・データカットオフ(2009年12月2日)までに、113例(78%)の患者が進行(バンデタニブ群52例[72%]、プラセボ群61例[84%])、40例(28%)が死亡した(バンデタニブ群19例[26%]、プラセボ群21例[29%])。・PFS中央値は、バンテタニブ群11.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~14.0)、プラセボ群5.9ヵ月(4.0~8.9)であり、バンデタニブ投与によりPFSが延長した(ハザード比[HR]:0.63、60%CI:0.54~0.74;片側p=0.008)。・Grade3以上の主な有害事象は、QTc延長(バンデタニブ群10例[14%]対プラセボ群0例)、下痢(7例[10%]対0例)、無力症(5例[7%]対3例[4%])、疲労(4例[5%]対0例)であった。・治療関連の重篤な有害事象により、バンデタニブ群では2例(皮膚転移による出血および肺炎)、プラセボ群では1例(肺炎)が死亡した。

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福島県南相馬市・大町病院から(9) 南相馬に患者を戻して本当に大丈夫なのか

南相馬市大町病院佐藤 敏光2012年8月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。南相馬市大町病院の佐藤です。入院患者数は72名となりました。8月から定床が80床から104床に増えました。24床が急に増えたのは療養型病床を開けるようになったからです。療養型は30:1の看護基準で良く、72時間以内の夜勤時間も当てはめなくても良いそうです(月8回:2交代制のため1回16時間×8=128時間以内の枠はあり)。これは看護師不足の南相馬の病院にとっては良いことのように見えますが、実際は看護師の過重労働を課しているようなものです。看護助手さんができることはお願いしていますが、急性期以上に手のかかる患者がいることは事実です。実際、医療区分を上げる?ため、1日8回以上喀痰吸引を行い、PEGやバルーンカテが入っていても週1回入浴させ、福島県立医大の先生には、外来が終わった6時過ぎに『褥瘡回診』をしていただいています。そのような『企業努力』をしないと、慢性期を持つ民間病院は成り立っていかないのです。急性期に厚く、慢性期に冷たい診療報酬(入院基本料)が、慢性期病院の普及の妨げになり、双葉病院のような精神科病院に多くの慢性期患者が集まっていたのではなかったでしょうか。小野田病院の菊地院長先生は原発事故が起こらないことを前提としないと復興は進まないとおっしゃっていました。少し空いた急性期に群馬県に預けた患者さん達を戻し、少しづつ慢性期に移していく方法は、私を含め病院経営者は誰でも考えることです。この問題で8月初めに開かれた医局会は大きく揉めました。一人の医師から”福島第一原発がまだ不安定な時期に患者を戻して、本当に大丈夫なのか、避難マニュアルもできていないのに万が一原発が危なくなったときに昨年のようなことが繰り返されるのではないか”と発言があり、帰還計画の見直しが必要となりました。この医師は昨年の311時に、少なくなった看護師の代わりになって食事の世話、オムツの取り替え、体位変換などやってくれた医師でした。患者が全員避難完了後は、市内の避難所を廻り、食事の炊き出しなどを手伝っていたことを後から知りました。極限の苦労を体験したから言える重い言葉でした。避難マニュアル作成は私の仕事でした。緊急時避難準備区域解除前に作成された南相馬市の避難マニュアル( http://expres.umin.jp/mric/hinanzissikeikaku.pdf  )は、自宅にいる市民を対象としており、施設に入っている介護老人や入院患者については施設任せ、病院任せになっています。1年以内には完成をと知り合いの医師の病院の災害対策マニュアルを取り寄せましたが、職員の勤務について、原発事故の際には地震や火事の場合とは明らかに異なる対応をとらなければいけないことが分かり、つまづいてしまいました。以前のjisin-iryou netにも投稿しましたが、本院には震度6以上や火事の発生時には電話連絡網を通じて職員に集まるような内規があります。311時には津波に遭った市民に対応するため、非番の職員までもかけつけてくれました。1号機が爆発した後にも、市立病院を訪れた広島大星教授の屋内退避していれば大丈夫との言葉を信じ、病院に来る患者に対応していました(透析は3月17日まで継続)。3月14日に3号機が爆発した後は東電の子会社に勤める夫などから南相馬も危ないとの情報が流れると、あっという間に職員がいなくなってしまいました。屋内退避についても当時は外出について曖昧でした。車での通勤くらいは大丈夫ということでしたが、3月12日夜から15日午後までは南相馬の空間放射線濃度は福島県の中で(20km圏内を除いて)一番高かったのです。避難せずに通勤を続けた職員1人がWBCを受け、Ce137が検出された(2回目で検出されなくなりました)ことは前にもお伝えしましたが、新地から通う別な職員が今回初めてWBCを受け、Ce137が検出されたことを聞かされました。新地は空間放射線濃度は低いし、家庭菜園も作っていない、一緒に受けた夫や子供さんからは検出されなかったと。考えられるのは往復1時間あまりかかる通勤の間に車内に入った空気しかありません。今度福島第一原発が危機的状況に陥ったら、爆発する前に若い職員を避難させなければいけない、患者もできるだけ早く(ヘリコプターを使い)避難させなければいけない(30km圏内飛行禁止はナンセンスだと思います)、動かせない患者がいたら、その家族に食事の介助やオムツの交換をお願いする、群馬県から患者さんを戻すときにはそのくらいのことは(家族に)話しておきたいと思います。最近、吉田昌郎福島第一原発前所長がビデオレターで述べていることです。(六道輪廻サバイバル日記から)--これから第1原発や福島県はどうあるべきか?◆そういう次元の高い話になると今すぐに答えがないが、やっぱり発電所をどうきちっと安定化させるかがベースだ。そこができていない中で、地元にお帰りいただくわけにはいかないので、そこが最大の(課題だ)。これは事故当時も言っていたが、日本国中だけでなく世界の知恵を集めて、より発電所、第1原発をより安定化させることが一番求められている。いろいろなだれの責任うんぬんということもきちっとやるべきだが、やはり発電所を少しでも安定させる。それには人も必要だし、技術もいろいろな知恵が必要だ。そこに傾注するということが重要なことだと思う。そのうえで、地元の方々に(通常の)生活に戻っていただけるか考えることができる。いずれにしても現場を落ち着かせる、安定化させることが一番重要な責務だ。私はちょっとまだ十分な体力がないが、戻ったらそういう形で現場のために力を届けたい。--引用ここまで最少人員を残し、原発処理にあたった吉田前所長の福島県民に対する詫びの言葉と優しさが込められた話だと思います。

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ESC(欧州心臓病学会) 2012速報

注目のESC Congress 2012開催。循環器領域のホットライン、臨床試験結果はもちろん、今年は、東日本大震災に関する発表なども予定され、例年以上に注目度が高くなっています。その中から、ケアネットでは、臨床に役立つ興味深い演題を厳選してお届けします。開催期間中は毎日新しい演題を更新しますので、ご期待ください。コンテンツ

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ナイアシン/laropiprant併用の忍容性に疑問符。導入期間を含めおよそ1万5千例が脱落:HPS2-THRIVE試験

8月26日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート I」セッションでは、HPS2-THRIVE試験の安全性中間解析が報告された。今回の発表は主に安全性に関する中間解析報告であり、忍容性に疑問を投げかけるものとなった。オックスフォード大学(英国)のJane Armitage氏が報告した。本試験は、ナイアシンによる動脈硬化性イベント抑制効果を検討する試験である。「LDL-C低下療法+ナイアシン」による心血管系イベント抑制作用は、昨年のAHAで報告された二重盲検試験AIM-HIGH (Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides and Impact on Global Health Outcomes)で、すでに否定されている。しかしAIM-HIGHの試験規模は登録数3,424例であり、HPS2-THRIVEに比べると小さい。またナイアシンによる顔面潮紅で二重盲検化が破られぬよう、対照群にも低用量のナイアシンを服用させていた。一方、HPS2-THRIVEは、laropiprant(ナイアシンによる顔面潮紅抑制剤)で潮紅抑制を図っているため、プラセボ群はナイアシンを全く服用していない。AIM-HIGHと異なり、純粋な「ナイアシン vs プラセボ」の比較が企図されている。HPS2-THRIVE試験の対象は、心筋梗塞、脳卒中、PVDあるいは冠動脈疾患合併糖尿病例である。ナイアシン/laropiprant(2g/日)群とプラセボ群に無作為化された。HDLコレステロール(HDL-C)を増加させるナイアシンが血管系イベントを抑制させるか、現在も二重盲検法で追跡中である(ただし全例、シンバスタチン 40mg/日(±エゼチミブ 10mg/日)によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法を受けている)。本試験では無作為化前、適格となった38,369例に、導入期間として8週間ナイアシン療法(ナイアシン/laropiprant)を行った。その結果、33.1%にあたる12,696例が脱落(服用中止)していた。うち76.9%(9,762例)は、薬剤が脱落の原因とされた。脱落理由として明らかな症状は、皮膚症状、消化管症状、筋症状などである。上記を経て、最終的に25,673例が無作為化された。42.6%は中国からの登録である。平均年齢は64.4歳、83%が男性だった。78%に冠動脈疾患、32%に脳血管障害、13%に末梢動脈疾患を認め、33%が糖尿病例(重複あり)だった。今回、「中間安全性解析」として報告されたのは、無作為化後平均3.4年間における試験薬服用中止例の割合とその理由である。ナイアシン療法群では、無作為化後さらに、24.0%(3,084例)が新たに脱落していた(15.7%が服用薬関連)。プラセボ群は15.4%である(服用薬関連は7.5%)。群間差の検定なし。ナイアシン療法群で発現率の高かった有害事象は、「皮膚症状」(5.1%)、「消化器症状」(3.6%)、「骨格筋症状」(1.6%)、「糖尿病関連」(0.9%)、「肝障害」(0.7%)である。いずれもプラセボ群よりも高い数値だった。ただし「肝障害」には一過性のものが含まれている。そのため重篤な肝障害に限れば、ナイアシン療法群、プラセボ群とも発現率は0.1%となった。また、ナイアシン療法群では「筋障害」発現率が0.54%と、プラセボ群の0.09%に比べ有意に高かった(リスク比:5.8、95%信頼区間:3.1~10.7)。この「筋障害」の増加は、主として中国人におけるリスク増加の結果だった(ナイアシン療法群:1.13% vs プラセボ群:0.18%)。Armitage氏によれば、2013年には臨床転帰を含む最終報告が行われるという。来年の結果報告が待たれる。関連リンク

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糖尿病例の高リスク病変に対するPCI──、DES時代でもCABGに対する非劣性は証明できず:CARDia試験延長5年間追跡

8月27日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート II」セッションにおいて、CARDia(Coronary Artery Revascularisation in Diabetes)試験の延長5年間の追跡成績が報告された。当試験は、糖尿病例の高リスク冠動脈病変に対する予後改善作用を、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の間で比較した無作為化試験である。当初予定した1年間の追跡で、CABGに対するPCIの非劣性が証明されなかったため追跡期間を延長し(中央値:5.1年間)、今回の報告に至った。しかし、PCI群の約7割が薬物溶出ステント(DES)を用いていたにもかかわらず、CABGに対するPCIの非劣性は確認できなかった。そのため、DES登場前のBARI試験において示唆された「糖尿病例多枝病変ではCABGのほうが良好」との知見を覆すには至らなかった。イースト・アングリア大学(英国)のRoger Hall氏が報告した。CARDia試験の対象は、多枝病変、あるいは左前下行枝に複雑病変を認め、血行再建の適応があった糖尿病510例である。平均年齢は64歳、男性が74%を占めた。糖尿病罹患期間は10年。3枝病変は62%に認めた。これら510例は、CABG群(254例)とPCI群(256例)に無作為に割り付けられた。CABG群では、平均2.9枝に対しバイパスが行われた。グラフトの94%は左内胸動脈だった。一方PCI群では、平均3.6本のステントが留置された。うち69%はDES(シロリムス溶出)であった。第一評価項目は「死亡、初発の心筋梗塞および脳卒中」で、CABGに対するPCIの「非劣性」証明が目的とされた。しかし、結果としてCABGに対するPCIの「非劣性」は認められず、CABG群に比べPCI群では、一次評価項目のハザード比が増加傾向を示した(ハザード比:1.34、95%信頼区間:0.94~1.93)。有意差に至らなかったのは「検出力不足のため」とHall氏は説明している。事実、この症例数でも「十分な検出力を有する」(原著論文)とされた評価項目「一次評価項目+血行再建術再施行」のリスクは、PCI群で有意かつ著明に高かった(ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.14~2.14)。また「非致死的心筋梗塞」リスクも、PCI群で有意に高かった。以上よりHall氏は、「多枝病変を認める糖尿病患者に対する、ルーチンなPCIを支持する明確なエビデンスは得られなかった」と述べた。一方、本試験では前出BARI試験と異なりPCI群における死亡の有意増加は認めなかったため、明らかにPCIが適している病変では考慮してもよいとの考えを示した。関連リンク

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