軟性S状結腸鏡の単回スクリーニング検査が、結腸・直腸がんの予防に高い効果

提供元:ケアネット

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公開日:2010/05/20

 



55~64歳の年齢層を対象に単回の軟性S状結腸鏡検査を行うと、結腸・直腸がんの発症および死亡が実質的に予防され、医療コストも抑制されることが、イギリスImperial College LondonのWendy S Atkin氏らが実施した無作為化試験で示された。結腸・直腸がんは世界で3番目に多いがんであり、毎年100万人以上が発症し、60万人以上が死亡しているという。2年毎の便潜血検査が早期発見や死亡率の抑制に有用なことが3つの無作為化対照比較試験で示されているが、結腸・直腸がんおよび腺腫の3分の2は軟性S状結腸鏡検査が可能な直腸およびS状結腸に発現するため、そのスクリーニング検査としての有用性に期待が寄せられている。Lancet誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月28日号)掲載の報告。

約17万人をスクリーニング対象とした無作為化試験




研究グループは、55~64歳の年齢層を対象に、軟性S状結腸鏡検査を1回のみ施行し、ポリープなどの病変が見つかれば病態に応じて切除するというアプローチにより、結腸・直腸がんの発症率および死亡率が実質的に低減しうるとの仮説を立て、その検証を行った。

イギリスの14施設が参加し、スクリーニングの案内に応じて事前に質問票に回答し、適格基準を満たした170,432人が、介入群(軟性S状結腸鏡検査を施行)あるいは対照群(検査非施行)に無作為に割り付けられた。

主要評価項目は、スクリーニング時に発見された例も含めた結腸・直腸がんの発症率および結腸・直腸がんによる死亡率とした。

ITT解析:発症率が23%、死亡率が31%低減、PP解析:33%、43%低減




1994年11月~1999年3月までに、対照群に113,195人が、介入群には57,237人が割り付けられ、それぞれ112,939人および57,099人が最終的な解析の対象となった。実際に軟性S状結腸鏡検査を受けたのは40,674人(71%)であった。

スクリーニング後のフォローアップ期間中央値は11.2年であった。この間に結腸・直腸がんと診断されたのは2,524人(対照群:1,818人、介入群:706人)であった。20,543人(対照群:13,768、介入群:6,775人)が死亡し、そのうち結腸・直腸がんが原因と特定されたのは727人(対照群:538人、介入群:189人)であった。

intention-to-treat解析では、介入群の結腸・直腸がん発症率は対照群に比べ23%低減し(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.70~0.84)、死亡率は31%低減した(ハザード比:0.69、95%信頼区間:0.59~0.82)。

per protocol解析では、介入群の自己選択バイアスを補正したところ、介入群の結腸・直腸がんの発症率は対照群よりも33%低下し(ハザード比:0.67、95%信頼区間:0.60~0.76)、死亡率は43%低下した(ハザード比:0.57、95%信頼区間:0.45~0.72)。

副次評価項目である直腸およびS状結腸の遠位部での発症率は50%低減した(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.42~0.59)。試験終了時点において、1例の結腸・直腸がんの発症を予防するのに必要な軟性S状結腸鏡検査施行数は191人(95%信頼区間:145~277人)であり、1例の死亡を予防するのに要する施行数は489人(95%信頼区間:343~852)であった。

著者は、「軟性S状結腸鏡検査は安全で実臨床に適した検査法であり、55~64歳の年齢層に1回のみ施行すれば、実質的な結腸・直腸がんの予防効果が長期にわたって得られる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)