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新生児聴覚スクリーニング、生後2週間までに実施が発達アウトカム良好

新生児聴覚スクリーニングは、生後2週間までに行った方が、生後9ヵ月に実施するよりも、永久小児聴覚障害児の3~5歳時点での発達アウトカムが良好であることが、オランダ・ライデン大学メディカルセンターのAnna M. H. Korver氏らが、約57万人の小児を対象に行った試験で明らかになった。新生児聴覚スクリーニングは世界各国で実施されているが、同プログラム実施時期を支持する確固たるエビデンスはほとんどない。JAMA誌2010年10月20日号発表より。新生児スクリーニング実施の約34万人、生後9ヵ月スクリーニング実施の約23万人を追跡オランダでは、2002~2006年の間に、国内65地域で、生後9ヵ月時点で行う聴覚スクリーニングを、生後2週間までに行う新生児聴覚スクリーニングに切り替えが行われた。そこで研究グループは、オランダで2003~2005年に生まれた小児全員を対象に、2009年末まで追跡調査を行った。新生児聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれた子どもは33万5,560児、生後9ヵ月聴覚スクリーニングを実施する地域で生まれたのは23万4,826児だった。追跡期間中、永久小児聴覚障害と診断されたのは、新生児スクリーニング群263児(1000児当たり0.78児)、9ヵ月スクリーニング群171児(同0.73児)だった。そのうち両群計301児(69.4%)を対象に解析が行われた。両群間には主要なコミュニケーション法や教育方法について違いはなかった。発達アウトカム、QOLともに新生児スクリーニング群のスコアが良好新生児スクリーニング群の80児、9ヵ月スクリーニング群の70児について、3~5歳時点での発達アウトカムについて評価を行ったところ、多変量解析の結果、「Child Development Inventory」により評価した全般的な発達アウトカムスコアは、新生児スクリーニング群の方が、9ヵ月スクリーニング群よりも良好だった(p=0.003)。具体的には、社会的発達については、両群の指数の差は8.8(95%信頼区間:0.8~16.7)、粗大運動に関する指数の差は9.1(同:1.1~17.1)と、いずれも新生児スクリーニング群の方が良好だった。また、生活の質(QOL)スコアも、両群の差は5.3(同:1.7~8.9)と、新生児スクリーニング群の方が良好だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高血圧2010 第1回 減塩 2010 (1)患者さんの食塩摂取量を知る

第33回日本高血圧学会総会が10月15~17日に開催された。前回の開催以降、高血圧の領域では、レニン阻害薬、 ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売され、これら薬剤の処方のあり方が話題になりがちではあり、本総会でもそれらを主眼としたセッションが開かれた。それらは他の情報ソースに任せるとして、ケアネットでは前回の総会が開催された 2009年10月からこの1年の間に影響力が大きい研究結果が発表された「減塩」「微量アルブミン尿」「降圧目標」の3つにテーマを絞り、学会での発表内容とこの1年間のトピックスをシリーズで採り上げたいと思う。第1回、第2回は「減塩」を採り上げる。現状:「1日6g以下」の減塩を指示している医師は3割未満 ―第33回日本高血圧学会総会より―久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らは「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が実地医家における有用度および診療実態に関するアンケート調査結果を発表した。対象は福岡県内科医会と佐賀県医師会内科医部会の会員2,415 名に郵送し、896名から回答を得た(回答率37.1%)。1日の食塩摂取量をどのくらいに指導しているかという質問に対して、 JSH2009で推奨している「6g以下」と回答したのは30%未満であったの対し、「7g以下」が約17% 、「10g以下」が約16% 、「指示していない」が約23%にのぼった。+5g/日の食塩摂取により脳卒中が23%増える ―BMJ誌2009年12月5日号より―減塩の重要性を支持する新しい知見が昨年12月に得られた。この報告によると、塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95% 信頼区間:1.06-1.43 、p=0.007)、心血管疾患のリスクは有意差がないものの高い傾向がみられた(相対リスク:1.14 、95% 信頼区間:0.99-1.32 、p=0.07)。これは過去 40年に実施されたプロスペクティブ試験13件、19コホートをメタ解析し、17万7,025人(正常血圧者も含む、87,809 名は日本人)のデータから得られた結果で、1日の塩分摂取量が 5g多いと脳卒中のリスクが23%、心血管疾患のリスクが17%高まることを示した。弊社が実施したアンケートにおいても高血圧診療における減塩に関する重要度は他の生活習慣修正に比べて群を抜いて高い。高血圧診療において減塩が重要であると認識されているにもかかわらず、減塩指導が難しいのはなぜか。減塩指導の第一歩である食塩摂取量の評価にその一因がある。実際に患者さんの食塩摂取量を把握するのに難渋している先生方も多いと思われる。本総会でも、より簡便に、それであって正確に食塩摂取量を評価する方法について発表された。起床後第2尿は、24時間蓄尿に近い信頼性で食塩摂取量を評価できる ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―岩手県立中央病院の大本晃弘氏は、起床から臥位にならずに採取した「起床後第2尿」が簡便かつ「24時間蓄尿」に近い信頼性が得られることはすでに報告されているが、「随時尿」では食塩摂取量を過少評価することを発表した。減塩下における男性(n=53)の食塩摂取量を「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって評価したところ、それぞれ6.6±1.5g、6.2±1.7g、5.6±1.5gであり、随時尿による評価は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価された。女性では有意差が認められなかった。次に男性高血圧患者(n=22)において高食塩食を摂取した期間の「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって食塩摂取量を評価したところ、15.7±2.1g、16.2±2.3g、11.3±1.3gであった。これらの結果から、随時尿は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価し、特に高食塩摂取下では過小評価の程度が著しいことを示した。高血圧患者では正常血圧者より減塩モニタによる食塩排泄量が高値 ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―減塩モニタは、夜間尿(約8時間相当)の食塩量を電動法を用いて測定し、そこから24時間食塩排泄量を推定する。すでに減塩モニタを用いた自己測定が簡便かつ信頼性が高いことが報告されている。国立病院機構の今泉悠希氏は、減塩モニタを用いた自己測定によって高血圧患者、正常血圧者の食塩排泄量を家庭での自己測定により、30日間の平均値を比較検討した。その結果、高血圧患者の30日間平均食塩排泄量は9.1g/日と、正常血圧者の8.3g/日より高かった。特に肥満高血圧では9.6g/日と高く、非肥満群では8.1g/日と正常血圧者と同程度であり、肥満高血圧患者における減塩指導戦略の構築の必要性を訴えた。日本高血圧学会 減塩ワーキンググループの報告では、食塩摂取量の各評価法について信頼性と簡便性を比較しているが、「起床後第2尿」は、簡便性がやや劣るものの、信頼性はやや優れると評価し、「減塩モニタ」は、信頼性がやや劣るものの、簡便性が優れると評価している。診療現場で食塩摂取量を評価する目的は、正確性よりむしろ患者に減塩を継続しようという意識をもってもらうことであり、種々の評価法の特徴を把握し、診療現場に合わせて選択することが薦められている。では、減塩指導の方法についてどのような試みがみられているのだろうか。 次回は、減塩に対する試みの成果をレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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臨床治験データは義務的に公表すべきである

ドイツがん学会のDirk Eyding氏らは、「Reboxetineは、概して無効であり、場合によっては有害となり得る抗うつ薬である。公表されているエビデンスは、出版バイアスがかかったものである」ことをBMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月12日号)で発表した。未発表論文を含めたプラセボまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)との対照試験データの、システマティックレビューとメタ解析の結果を踏まえたもので、「本結果は、過去の薬理学的データも含め臨床治験の結果は、公表を義務化する必要性があることを強調するものだ」と結論している。米国で承認されなかったreboxetineの出版バイアスの影響を調査Eyding氏らは、プラセボまたはSSRIとの比較で、うつ病の急性治療におけるreboxetineの有効性および有害事象を評価する目的で、未発表を含めた試験論文のシステマティックレビューとメタ解析を行った。reboxetineは、1997年に欧州各国で抗うつ薬として上市されたが、米国では有効性についての疑念から承認されていない。研究グループは、抗うつ薬研究は特に出版バイアスの影響があることを踏まえ、reboxetineにおける出版バイアス影響の測定を行った。解析は、2009年2月までの発表試験論文をMedline、Embase、PsycINFO、BIOSIS、Cochrane Libraryで検索する一方、ファイザー社(ドイツ)から未発表試験データも入手した。適格としたのは、大うつ病の成人へ6週間以上の急性期治療が行われた、プラセボもしくはSSRIとの比較による二重盲検無作為化試験。主要評価項目は、有効性アウトカムとして、寛解率と反応率、および有害アウトカムとして、一つ以上の有害事象または有害事象による服薬中止とした。出版バイアスの測定は、発表試験と未発表試験との比較で行われた。対プラセボ115%、対SSRIで23%有効性が過大評価解析適格となったのは13試験、被験者4,098例だった。そのうち被験者74%(3,033/4,098)分のデータは未公表のものだった。結果、reboxetineとプラセボとの比較において、寛解率に有意な差は認められなかった(オッズ比:1.17、95%信頼区間:0.91~1.51、P=0.216)。反応率については8試験で検討されていたが、メタ解析では不均一性が大きかった(I2=67.3%)が、少数の入院患者を除いた感度分析の結果、reboxetine投与を受けた患者群とプラセボ群との反応率に有意差は認められないことが示された(オッズ比:1.24、95%信頼区間:0.98~1.56、P=0.071、I2=42.1%)。SSRI〔fluoxetine、パロキセチン(同:パキシル)とcitalopram〕との比較では、reboxetineの方が、寛解率(オッズ比:0.80、95%信頼区間:0.67~0.96、P=0.015)、反応率(同:0.80、0.67~0.95、P=0.01)ともに劣性だった。有害アウトカムに関しては、reboxetineはプラセボと比べ両指標項目とも劣性で(P

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アプガースコアは脳性麻痺発症の堅密な指数である

新生児に対し行われるアプガー測定でのスコア低値は、脳性麻痺と強く関連していることが明らかにされた。関連は標準出生体重児で強く、低出生体重児ではわずかで、特に四肢麻痺との関連が強いという。ノルウェー公衆衛生研究所のKari Kveim Lie氏らが、住民ベースのコホート研究の結果、報告したもので、BMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月7日号)で発表された。ノルウェー新生児対象に、アプガースコアと脳性麻痺発症との関連を調査Kveim Lie氏らは、出生5分後に測定されるアプガースコアと脳性麻痺との関連を、標準出生体重児と低出生体重児それぞれで評価した。また、痙性脳性麻痺の四肢麻痺、両側麻痺、片麻痺それぞれとの関連についても評価した。主要評価項目は、5歳未満での脳性麻痺発症。評価は、ノルウェーのMedical Birth Registryに登録された1986~1995年生まれの全新生児で、ノルウェー国内全小児部門の退院記録が集積されたNorwegian Registry of Cerebral Palsy in Children born 1986-95のデータとリンクし検討が行われた。対象児は、形成異常なしの単生児で1年生存が確認された54万3,064例だった。体重とは独立して、スコア4未満が発症と強く関連5歳未満で脳性麻痺が発症したのは、988例(1,000例につき1.8例)だった。全体では、アプガースコアが3未満群での発症が11%(39/369例)、一方、スコア10群の発症はわずか0.1%(162/17万9,515)で、両群間の発症差は53倍(出生時体重補正後オッズ比:53、95%信頼区間35~80)だった。出生時体重が2,500g以上では、アプガースコア4未満の群が、8超群に比べオッズ比125(95%信頼区間:91~170)と、より多く発症する傾向が認められた。一方、出生時体重が1,500g未満では、両スコア間のオッズ比は5(95%信頼区間:2~9)でほぼ同一だった。各体重群(1,500g未満、1,500~2,499g、2,500g以上)ともスコア4未満児が脳性麻痺を発症した割合が最も高く、10~17%を占めていた。アプガースコア低値は、痙性脳性麻痺の3つのサブグループそれぞれと強く関連していた。特に、四肢麻痺で関連が最も強く、補正後アプガースコア4未満対8超のオッズ比は137(95%信頼区間77~244)だった。Lie氏は、「アプガースコアは、出生直後の生命力の強さの基準となるばかりでなく、生命力を低下させる脳性麻痺発症の堅密な指数であることが示された」と結論している。

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治療学会にて「精巣腫瘍患者会創設」キックオフイベントを開催 キャンサーネットジャパン

NPO法人キャンサーネットジャパンは、精巣腫瘍サバイバーである小嶋修一氏、改發厚氏、京都府立医科大学泌尿器外科学の三木恒治教授を発起人とし、日本初の精巣腫瘍患者会を創設する。これまで個人のホームページやブログにて個別に発信されているカバーしきれない情報を、科学的根拠に基づき、集約的に、組織的に情報提供しようというもの。創設に伴い、10月30日(土)の日本治療学術集会にて、精巣腫瘍患者会の創設キックオフイベントを開催する。同イベントには、患者、家族だけでなく医療者の出席も歓迎とのこと。「精巣腫瘍患者会創設!」キックオフイベント ●概要:精巣腫瘍患者会創設に際して、患者会の趣旨や取り組みを紹介するとともに、出席者の交流を深める ●日時:平成22年10月30日(土)18時00分~ ●会場:〔メイン会場〕グランドプリンスホテル京都:地下1階 ローズルーム、〔サブ会場〕TBS放送センター ●出席者:三木 恒治(京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)・小嶋 修一(TBSテレビ報道局解説室・精巣腫瘍経験者)・改發厚(精巣腫瘍経験者)・賛同者他 ●申し込み:10月28日(木)17時までに下記メールアドレスへE-mail: j_tag@cancernet.jp 当日は、USTREAMによるライブ映像配信を行うhttp://www.cancernet.jp/j-tag/ 詳しくはこちら http://www.cancernet.jp/eve/101030JTAG.pdf

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クロピドグレル治療中の虚血イベント再発リスクが高い患者とは?

ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体を持つ者は抗血小板能が低下しており、特に経皮的インターベンションを施行された急性冠症候群(ACS)患者ではクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療中の虚血イベントの再発リスクが高いことが、米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器科のJessica L Mega氏らが実施したTRITON-TIMI 38試験の薬理遺伝学的解析で示された。クロピドグレルおよびprasugrelはP糖蛋白(P-gp)を介して細胞外に排出される。P-gpはABCB1遺伝子(MDR1遺伝子とも呼ばれる)によってコードされ、ABCB1遺伝子多型(特に3435C→T)は薬剤の輸送や効果に影響を及ぼす可能性があるという。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。TRITON-TIMI 38試験のACS患者と他の7試験に参加した健常者を評価TRITON-TIMI 38試験の研究グループは、クロピドグレルあるいはprasugrelによる治療を受けた患者の心血管アウトカムに及ぼすABCB1遺伝子多型およびCYP2C19遺伝子変異の影響を評価した。また、健常者を対象に、これらの薬剤の薬力学/薬物動態学的(PK/PD)特性に及ぼす遺伝子型の影響について検討した。TRITON-TIMI 38試験で経皮的インターベンションを施行され、クロピドグレル(1,471例)あるいはprasugrel(1,461例)による治療を受けた急性冠症候群(ACS)患者2,932例についてABCB1遺伝子型の解析を行った。ABCB1遺伝子の3435C→T多型と治療15ヵ月までの効果に関する主要エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発現率の関連を解析し、ABCB1遺伝子3435C→T多型とCYP2C19機能低下型対立遺伝子の複合的な影響について評価した。さらに、他の7試験に参加した健常者321人の遺伝子型を解析し、遺伝子変異と最大血小板凝集率の関連および薬剤の活性代謝産物の血漿濃度を測定した。約半数が、クロピドグレル治療中に心血管系の有害事象の発現リスクが高いクロピドグレル群のうち、ABCB1遺伝子3435C→T多型の患者は心血管死、心筋梗塞、脳卒中のリスクが有意に高かった(p=0.0064)。Kaplan-Meier 法で算出した主要エンドポイントのイベント発生率は、3435C→T多型がTTホモ接合体の患者が12.9%(52/414例)と、3435CT/CCの患者の7.8%(80/1,057例)に比べリスクが有意に高かった(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.22~2.44、p=0.002)。ABCB1遺伝子3435C→T多型かつCYP2C19遺伝子のキャリアであることは、主要エンドポイント発現の独立の予測因子であり、クロピドグレルを投与されたCYP2C19機能低下型対立遺伝子、ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体あるいはその両方を持つ患者1,454例のうち681例(47%)においてリスクが有意に上昇していた(ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.38~2.82、p=0.0002)。健常者の検討では、3435TTホモ接合体の者は3435CT/CCの者に比べクロピドグレル投与による最大血小板凝集率の絶対低下率が7.3%劣っていた(p=0.0127)。prasugrelを投与されたACS患者および健常者では、ABCB1遺伝子型と臨床的および薬理学的なアウトカムに有意な相関は認めなかった。著者は、「ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体を持つ者は抗血小板能が低下しており、クロピドグレル治療中の虚血イベントの再発リスクが高い」と結論し、「ABCB1遺伝子およびCYP2C19遺伝子の双方を考慮すると、経皮的インターベンションを施行されたACS患者の約半数は、標準用量のクロピドグレル治療中に心血管系の重篤な有害事象を発現するリスクの高い遺伝子型を有すると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ACSに対するticagrelor、遺伝子型を問わずクロピドグレルよりも有効:PLATO試験サブ解析

急性冠症候群(ACS)患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレル(商品名:プラビックス)よりも有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らが行ったPLATO試験の遺伝子解析で明らかとなった。本試験では、ticagrelorの高い効果とともに冠動脈バイパス術(CABG)非施行例では大出血が増加することが確認されている。一方、CYP2C19遺伝子、ABCB1遺伝子の遺伝子型がクロピドグレルの効果に影響を及ぼすことが知られているが、ticagrelorのアウトカムへの影響は解明されていなかった。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。遺伝子型と治療アウトカムの関連を評価PLATO試験の研究グループは、ACS患者のCYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型が、ticagrelorとクロピドグレルのアウトカムの差や各治療群内のアウトカムの違いに及ぼす影響を検討するサブ解析を行った。PLATO試験に参加したACS患者から得られたDNAサンプルを用いて、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子(*2、*3、*4、*5、*6、*7、*8)、機能亢進型対立遺伝子*17およびABCB1遺伝子の一塩基多型(SNP)3435C→Tの解析を行った。CYP2C19遺伝子型は機能喪失型対立遺伝子の有無で、ABCB1遺伝子型は予測される遺伝子発現の程度(高発現、中発現、低発現)で層別化した。効果に関する主要評価項目は、最長12ヵ月のticagrelorおよびクロピドグレル治療後の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。ticagrelorを使用すれば事前の遺伝子検査は不要に遺伝子解析には1万285例がサンプルを提供した。主要評価項目の発現率は、CYP2C19遺伝子型の有無にかかわらずticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった。すなわち、いずれかの機能喪失型対立遺伝子を有する患者の主要評価項目発現率はticagrelor群8.6%、クロピドグレル群11.2%(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.60~0.99、p=0.0380)、機能喪失型対立遺伝子を持たない場合はそれぞれ8.8%、10.0%(同:0.86、0.74~1.01、p=0.0608)であった(相互作用のp値=0.46)。ABCB1遺伝子についても、主要評価項目の発現率はすべての遺伝子型でticagrelor群がクロピドグレル群よりも低かった(高発現群との相互作用のp値=0.39、8.8% vs. 11.9%、ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.55~0.92)。クロピドグレル群では、治療30日の主要評価項目の発現率はいずれかのCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する患者が、どの機能喪失型対立遺伝子も持たない患者に比べて高く(5.7% vs. 3.8%、p=0.028)、機能喪失型対立遺伝子を持つ患者のイベント発現率は、治療早期からticagrelor群がクロピドグレル群よりも大差をもって低かった。CYP2C19機能亢進型対立遺伝子を有するクロピドグレル群の患者は、これを持たない患者や機能喪失型対立遺伝子を持つ患者に比べ、大出血の頻度が有意に高かった(11.9% vs. 9.5%、p=0.022)が、薬剤の種類と個々の遺伝子型の相互作用による大出血の程度には差を認めなかった。著者は、「ACS患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレルよりも有効なことが示された」と結論し、「クロピドグレルの代わりにticagrelorを使用すれば、現在の2剤併用抗血小板療法の前に行うことを推奨されている遺伝子検査は不要となる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

東邦大学医学部卒業後、関連病院に勤務。その後大学に戻る。日本整形外科学会では数々の専門医を取得。内視鏡学会技術認定医でもあり、内視鏡を駆使した手術では一目置かれている。現在、東邦大学医療センター大森病院整形外科 准教授。患者のライフスタイルを大切にした「やさしい手術」を目指す当院の整形外科では年1,100件の手術、そのうち脊椎関係が200件以上あります。大学病院なので、他の病院では手術ができないような高齢者や、糖尿病などの合併症を抱えている方が多いのが特徴です。したがって手術自体の難易度も高く、術後の管理にもかなり気を遣うケースが多々あります。また、他の病院から急に難症例を紹介されることもあります。夜に突然相談され、翌日予定されている手術までの間に執刀したこともあります。手術自体に関しても、ただ見た目をきれいに手術するだけではなく、その患者の術後の生活までを考えた手術でなければいけません。手術を受ける患者は、下は10代から上は90歳を超える方までいます。また体質やライフスタイルも人それぞれです。執刀する際は患者に適した術式や治療方法を選択し、患者にやさしい手術ができるように心掛けています。「早期離床の実現」は患者の負担を減らす昔はとにかく患者を寝かしすぎていたと思います。私が入局したての頃は、患者を3、4週間ベッドに寝かせていました。ギプスをつけている方や麻痺がある方は、寝ている期間が長ければ長いほど足に血栓ができやすくなります。患者さんの身体を起こしたとたんに血栓が肺に飛べば急性肺動脈血栓塞栓症、頭に飛べば脳塞栓を起こしてしまうという危険がありました。今では一般の方々にも有名になった、いわゆる「エコノミークラス症候群」です。当院は早期の離床が実現しています。たとえば、腰椎椎間板ヘルニアの場合、内視鏡や顕微鏡を使用することにより、これまでは骨から筋肉を剥がす必要があったものを、剥がさなくてよくなりました。この場合、患者の痛みや負担が軽減するので、手術の翌日から歩行が可能になります。患者が、高校生や大学生くらいだと早く退院したがるので、抜糸は外来で行うこともあります。手術執刀と術後管理など、治療へのアプローチ方法を少しずつ怖がることなく変えてきた成果だと思っています。整形外科でも、循環器・泌尿器・婦人科などとの連携は重要腰痛は、腰そのものが悪い場合もありますが、泌尿器、産婦人科系の疾患が原因である場合もあります。さらにはメンタル面が関係していることもあるので、主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。患者自身がストレスと感じていなくても、身体がストレスと感じていて、それが腰痛につながっていたというケースもあります。手術をする前によく診療を重ねないと大変なことになりますので、整形外科だけの判断をしないようにしています。また、高齢の方には血行障害を持っている人が多いので、ABIやTBIの検査をするようにしていますが、その検査だけでも判断がつかず、循環器科とやりとりが続く場合もあります。他の診療科も同じだとは思いますが、整形外科も他科との連携がとても重要になってきています。垣根を超えた臨床研究で今の私がある診療で一番大切なこと。それは患者との信頼関係を築きあげることだと思います。そのため、最初の診察時には患者の人柄をみます。患者は「この先生どんな人だろう」「信用できるのかな」と不安に思っています。それをやわらげ、信頼してもらうためには、こちらから話しやすい雰囲気を作ったり、話題を工夫したりする必要があります。ですから、まず患者がどのような人柄なのかをみる必要があるのです。正確な診断を下すためには、検査も大事ですが、患者の生活環境も含めて、患者のことを良く知ることが大切です。信頼関係を築けなくては正しい診断ができないのです。今の若い医師は患者に対して深入りしない傾向があります。もっと私たちが、患者と信頼関係を構築することの重要性を伝えていく必要があるのかもしれません。また、患者の人柄も様々ですから、日頃からコミュニケーション能力を磨くことが必要です。普段からいろいろな人と接し、自分の引き出しをこつこつ増やしていく、そんな地道な努力も必要だと思います。これは医学生の頃からでもできることです。是非、今の医学生には、勉強させすればよいというだけでなく、一人の大人として、きちんと人と接することができるように心がけて欲しいものです。熱意があればチャンスはいくらでもある私は図々しい性格ですから、わからないことがあるとアポイントもなしに勝手に解剖の教室や他の医局にいき、教授を捕まえて質問しています。後で、その領域の大家だった……などと気づくこともあるくらいです。若い頃も、違う医局の先輩に勝手に相談しにいっていました。関連病院に出ていた時は、夜こちらに来て、教授に論文を添削してもらったこともありました。研究や指導には厳しいですが、「これがやりたい」と頑張る人には、自分の仕事を後回しにしてでも協力してくださる先生方が多い、そう感じています。東邦大学はそんな雰囲気がありますので、今の若手も、もっと積極的であってほしいなと思っています。わからないことがあったらどんどん上級医や先輩を捕まえて聞いて欲しいですし、「これがやりたい」ということがあればもっとアピールしてもよいと思います。東邦大学の場合、成績優秀な学生ほど外へと出ていきますが、自分の出身大学で臨床研究し続けるメリットも考えた方がよいです。出身大学だからこそ自分の望んでいる研究ができる、周りからの協力が得やすいというメリットがあるはずです。また、自分を成長させるために、自分がこういう医師になりたいと思えるような人に出会ったら、その人の行動をまねたり、読んでいる書籍・参考書などを自分も読んでみたりすることをおすすめします。私も若い頃から実践していますが、自分一人で勉強していては身に付かないような知識や考え方を蓄積することができ、幅広い引き出しを持つことができます。若いうちは恥ずかしいとは思わず、いろいろな診療科の先生や先輩たちとコミュニケーションをとってほしいですね。どんな領域でも他科との連携は必要な時代です。きっと将来の財産になります。質問と回答を公開中!

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准教授 高橋 寛先生の答え

クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点など先生の記事大変勉強になりました。特に「主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛 だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。」というくだりはハットしました。私の病院も腰痛患者を大きな病院へ紹介することが多々あります。精密な検査はできないまでも、クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点などがあれば是非教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。とにかく触診することです。60歳以上の方で、糖尿病、高血圧の方は多数おられます。下肢痛がひどい方の場合、血流障害があれば、下肢の皮膚温が低下しています。また必ず足背動脈の拍動はチェックすべきです。下肢の疼痛、しびれに関して、血流障害と腰椎病変が両方関与していることもままあります。手術をしたのち、残存した症状が血流障害の可能性もあります。私は何度も痛い目に遭っています。例えば76歳男性,糖尿病、高血圧の治療中の方でした。ABI正常値、足背動脈も蝕知可能、MRIではL5/Sの狭窄あり、S1神経根ブロックは有効でしたので内視鏡下手術を行いました。術後短期間は症状改善したようですが、下肢のしびれが再燃し、下肢の造影CTを行った所、立派なASOでした。術前に糖尿病科の医師に血流障害について質問したところ大丈夫と言われて鵜呑みにした結果です。最近では糖尿病、透析患者にはABIに加えTBIも検査しています。超音波骨折治療法について貴院は超音波骨折治療法の実施施設とのことですが、症例数と成績を教えていただけないでしょうか?また、この治療法は使える範囲が決まっていますが、仮にその範囲制限を考えなかった場合、範囲外の症例にも活用できそうなのでしょうか?症例数は把握しておりませんが多数行っております。成績は明らかに有効だと思います。制限が無ければ、新鮮骨折、骨切り手術、骨移植術などに対しての適応があれば良いと思います。(ヤンキース時代、松井選手が橈骨遠位端骨折に対してやってましたよね?)東邦での研修の改善ポイントについて東邦大学での研修についてお聞きします。当然良いところばかりではなく、改善する必要があることも多いと思います。高橋先生が感じる、ここは改善しなければ、と思っていらっしゃることがありましたら教えてもらいたいです。あくまで整形外科の事ですが、もっとじっくりと研修医相手に系統立てた講義をする時間を作るべきだと思います。これは研修医の先生へのお願いです。我々も人間です。興味を持ってぶつかってきてくれる人には、何でも見せるし、頑張ってお付き合いします。後期研修について現在、市中病院で研修している卒後1年目の者です。後期研修は大学でと思っております。東邦大学さんの雰囲気のよさが大変分かり参考になりました。ただ、よその大学出身でも、東邦大出身の先生と同じように扱っていただけるのでしょうか?また、現在東邦さんにいる後期研修医の中に他大学出身の先生は何割くらいいらっしゃるのでしょうか?差し支えなければ教えていただけると幸いです。正確な数は把握していないのでお答えできません。しかしながら東邦大学は、他大学の出身だからといって差別はしておりません。同等に扱っているはずです。私の部下にも他大学出身の医師がおりますが、脊椎外科の研修中であり、近日中に指導医を取得する予定です。他科にも他大学から入局し、講師以上になられている先生も多々おります。ストレスが腰痛につながるケースについて研修医なので質問が拙いかも知れませんが許して下さい。先生の記事の中にストレスが腰痛につながるケースがあるとありましたが、その症例を見分けるポイントはあるのでしょうか?ご教示宜しくお願いします。例えば、腰椎椎間板ヘルニア疑いの患者の場合です。通常はSLRテストをベッド上で行うはずです。これを疑わしい場合には、患者が座った状態で、膝関節を徐々に何気なく持ち上げます。すると本当にヘルニアの患者であれば体をのけぞらせます。これをflip testと言います。心理テストを行う事もあります。診察所見をとり、患者と話をし、画像所見と一致すれば問題ありませんが、違和感を感じた場合には医者同士で相談するのも1つの手でしょう。奇形性脱臼について出生時にすでに完全に脱臼している、奇形性脱臼についてうかがいます。治療が困難な症例だと思いますが、先端の臨床研究では何かしら研究は進んでいるのでしょうか?またこのような患者の場合、人工関節を入れることが可能なのでしょうか?身近に聞ける医師がいないため、お聞きしたいと考えました。宜しくお願いします。ごめんなさい、先天性脱臼の研究については門外漢です。しかしながら、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼、膝関節脱臼例の経験は当科でありますが、人工関節を入れていますよ。カイロプラクティックについて腰痛は専門外なので、素人質問になって恐縮です。小さな医院で内科をやっている町医者です。腰痛持ちの患者さんから、病院で診てもらうのが良いのか?カイロプラクティックに通うのが良いのか?と質問を受けることが多々あります。もちろん病院で診察してもらうことを進めるのですが、近所に、米政府の公認の「Doctor of Chiropractic」という資格を持っているカイロプラクティック師がいるらしく、整形外科医よりもそちらの方が専門的なのでは?と聞かれ、答えに困っています。何か明確に説得する方法はないものでしょうか?ご教示お願いします。私が留学した12年前にも、アメリカでも民間療法については問題視されておりました。単なる腰痛であれば、マッサージによって局所の血流が改善したり、筋緊張が緩和されて良いこともあります。しかしながら高齢者で骨粗鬆症がある場合、外傷が無くても脊椎圧迫骨折を来すことはままあります。脊柱の変形を力任せに引っ張っても矯正できるものではありません。よく骨盤牽引をすると、椎間板腔が拡がったり、脊柱の側弯が矯正されると勘違いされている患者さんもおられます。あくまで牽引は、筋緊張を和らげるために行っているものです。整形外科をやっておりますと、民間療法に行った後、症状がかえって悪くなり、受診される方を見受けます。私たち、整形外科で完全に痛みが取れないため民間療法に行く方もおられるでしょうが、少なくとも一度は整形外科を受診し、病態、骨質等を診察、評価されることをすすめます。やさしい手術について記事拝見しました。常に新しいものを取り入れようとしているお姿感服いたします。先生が駆け出しのころと、今とで一番変わった手術、術式を挙げるとしたら何があるでしょうか?できれば患者にとって最もやさしくなった手術を知りたいです。小生、とある田舎で老人相手にクリニックやっております。腰痛患者は総合病院におくりますが、高齢の方は大きい病院に行きなさいと言うと、怖がってなかなか行きません。「●●手術は、昔はこんなに大変だったけど、今は●●することで簡単になったんだよ。だからあなたの場合もよくなるよ、安心して大きい病院で診てもらいなさい。」と言って元気付けて不安を取り除きたいと考えております。宜しくお願いします。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対する手術だと思います。内視鏡を用いた方法ですと通常、翌日には離床できます。また最近、全国的に普及している棘突起縦割式の除圧術も術後疼痛が少なく、術後2,3日で離床が可能です。とにかく私が医師になった20年以上前には術後2週間の安静は普通でした。高齢の方は臥床期間が長いと、誤嚥性肺炎、褥瘡、認知症、筋力低下など様々な合併症を生じます。なるべく痛みの少ない手術を高齢者にはする事が肝心です。また最近固定術もMIS(Minimally invasive surgery)といってなるべく侵襲の少ない方法を様々検討しております。早ければこれも翌日離床可能です。私どもも、どの方法が優れているか、現在検証中です。先天的?な脊柱管の形態画像診断をしている放射線科医です。「腰痛精査」といった依頼で、腰椎 MRI を読影することが多いです。画像所見そのものにはあまり意味はないと考え、依頼内容に関連する所見を中心にレポートに列挙し、「症状に合うものを選んでください」とという気持ちでいます。ところで質問なのですが、脊柱管の狭さ、という観点から見ると、椎間板や黄色靭帯などと並んで、 先天的?な脊柱管の形態も重要に思えます。椎弓根が短いというだけでなく、左右椎弓板のなす角度が狭いこともよく経験されます。自分なりに調べたのですが、あまり系統立てて検討した報告やコンセンサスのようなものを見つけることができませんでした。何か良い資料などがありましたら教えていただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。(あまり重要なことでない、普通の教科書に載っている常識である、かもしれません。そうでしたらすいません。)先生のおっしゃる通りです。脊柱管が狭くても症状がない場合は治療の対象外であり、あくまで画像所見に見合った症状、症状に見合った画像所見があるかどうか整形外科医は判断すべきです。脊柱管狭窄症の分類には先天性(発育性脊柱管狭窄症)があります。古くはVerbiestの文献が有名です。J Bone Joint Surg36B 230-2371954,Orthop 、Clin North Am 6 : 177-196 1975などでしょうか?欧米人と、東洋人の我々ではかなり脊柱のアライメント、形態は異なります。そもそも脊柱管狭窄症自体が少ないと思います。日本人の正常例を報告した文献はあると思います。アメリカでは日本と異なりなかなか画像検査にも制限があります。今後先生が多数の症例から日本人の年代毎の形態評価など行い、発表されれば高く評価されるはずです。腰椎の形成術についてお世話になります。腰椎が潰れて歩行障害を生じている人に、椎体部分にプラスチックのようなものを入れ椎体を形成し、腰痛を緩和する手術があると聞きました。聖路加病院でやっているようですが、私は熊本ですが、地方でも一般的に普及してきている手術でしょうか?治療を希望している患者がいますのでお教えいただければ幸いです。経皮的椎体形成術は1984年にフランスで血管腫に対して初めて行われた術式ですが、近年、脊椎圧迫骨折に対しても行われています。椎体形成術には、骨セメント(PMMA),リン酸カルシウム骨セメント(CPC),自家骨、ハイドロキシアパタイトを用いた方法があります。骨セメントを用いた方法は、短時間で固まり、即効性があるため普及していますが、その一方、骨セメントの脊柱管内への漏出、固まる際に発生する熱、静脈塞栓等様々な問題点も抱えております。したがってもし放射線科医が行うのであれば、脊椎外科医と緊密な連携をとっている施設で行うべきでしょう。私どもの施設に、骨セメントを用いた椎体形成術後に馬尾障害を生じた患者が緊急搬送されてきた事もあります。どんな方法も、利点、欠点はあります。患者が納得できるように説明できる医師がぃる施設をお探しになるのが良いと思います。総括若い人には未来があります。是非、高い所を目指して頑張って下さい。頑張れば必ず周りが評価します。評価されれば余計に頑張りたくなります。また整形外科に興味のある方、是非、当科も選択肢の1つとして下さい。准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

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ネビラピン服用者にはネビラピンを含まないレジメンが優れる

HIV感染妊婦に対し、母子感染を防止する目的での抗レトロウイルス薬投与は、3剤併用療法を受けていない場合は、ネビラピン(商品名:ビラミューン)単独投与がWHOによって推奨されている。しかしネビラピンは母子感染を減らすものの、服用した妊婦の大半にネビラピン耐性ウイルスが出現。耐性ウイルスは時間とともに減少するが低レベルの持続が、ネビラピン単独療法後6~18ヵ月で開始される3剤併用療法の効力を弱めることが懸念されている。今後、数十万規模での服用者が予想される中、米国ブリガム&ウィメンズ病院のS. Lockman氏ら研究グループは、ネビラピン服用者に対する3剤併用療法には、ネビラピンを含まないレジメンの方がよいかどうかをオープンラベル無作為化試験で検討した。NEJM誌2010年10月14日号掲載より。ネビラピン服用・非服用者を、2つの3剤併用療法に無作為化し追跡試験はアフリカ7ヵ国で、CD4+T細胞数200個/mm3以下のHIV-1に感染した、試験登録前に6ヵ月以上ネビラピン単独服用歴のある妊婦241例と、同服用歴のなかった500例を対象に行われた。被験者は無作為に、tenofovir-emtricitabine+ネビラピンの併用療法群(ネビラピン併用群)か、tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビル(商品名:カレトラ)の併用療法群(ロピナビル併用群)に割り付けられた。主要エンドポイントは、ウイルス学的失敗が確認された時点または死亡とした。tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビルの方が優れるネビラピン単独服用歴のある被験者241例は、ネビラピン併用群に121例、ロピナビル併用群に120例それぞれ無作為化された。結果、主要エンドポイントに達した割合がネビラピン併用群26%で、ロピナビル併用群8%よりも有意に高かった(補正後P=0.001)。ウイルス学的失敗は37例で、ネビラピン併用群28例、ロピナビル併用群9例だった。ウイルス学的失敗なしでの死亡は5例(それぞれ4例と1例)だった。また両群の差は、ネビラピン単独服用から3剤併用療法開始までの期間が長いほど小さくなる傾向が認められた。ネビラピン耐性ウイルスは、基線での血漿サンプルを用いた後ろ向きバルク塩基配列決定法の結果、239例中33例(14%)で検出された。一方、ネビラピン単独服用歴のなかった被験者500例については、主要エンドポイントは、ネビラピン併用群249例中34例(14%)、ロピナビル併用群251例中36例(14%)だった。Lockman氏は、「ネビラピン単独服用歴のある女性には、tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビルの方が優位だった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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変形性膝関節症の新しい疼痛治療tanezumabの有効性と安全性は?

変形性膝関節症の新しい疼痛治療として開発中の、神経成長因子(NGF)を標的とするヒト型モノクローナル抗体tanezumabの、安全性と鎮痛効果を検討するproof-of-concept試験の結果が、NEJM誌2010年10月14日号(オンライン版2010年9月30日号)に掲載された。米国カリフォルニア大学デイビス校のNancy E. Lane氏らによる発表で、tanezumab投与により、中等度~重度の変形性膝関節症患者の関節痛軽減と機能改善が認められたこと、軽度~中等度の有害事象との関連などが報告された。変形性膝関節症患者450例を、tanezumab投与群かプラセボ投与群に無作為化し検討試験は、2006年3月~2007年5月に40~75歳の変形性膝関節症患者450例を募集し、tanezumab投与群かプラセボ投与群に無作為化し行われた。tanezumab投与群の患者は、10、25、50、100、200μg/kg体重のいずれかを投与。投与は、1日目と56日目に行われた。有効性の主要評価基準は、歩行時の膝の痛み、患者の総合評価による治療の実感とした。また試験者側も、疼痛、こわばり、身体的機能についてはWOMACを用い、OMERACT-OARSIの効果判定基準を用いて治療反応率を評価した。安全性の評価も行った。有望な治療法であることは示された1~16週の平均で、基線からの、歩行時の膝の痛みの平均減少率は、tanezumab群は投与量により45~62%であった一方、プラセボ群は22%だった(P

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CABG周術期の輸血実施率、病院間で85%差以上と大幅なバラつき:米国

米国で冠動脈バイパス術(CABG)の術中・術後の輸血率は、医療機関によって85%差以上の大幅な格差があることが明らかになった。またその原因が、患者の年齢、性別、症状の程度といったケース・ミックスにあると説明できるのは、約2割程度だったという。周術期の輸血はコスト高の割に安全面に不安があり、実施を減らそうとの動きがある。しかし実施の現状については明らかになっていなかった。そこで米国Duke大学医療センター周術期臨床研究部門のElliott Bennett-Guerrero氏らが、10万人超のCABGを実施した患者について観察コホート試験を実行。JAMA誌2010年10月13日号で発表した。米国内798ヵ所、10万2,470人についてCABG周術期輸血率を調査研究グループは、2008年に全米798ヵ所の医療機関で、一つの血管に対する初回CABGを受けた人10万2,470人について調査を行った。主要評価項目は、術中・術後の赤血球輸血、新鮮凍結血漿輸血、血小板輸血のいずれかの実施率だった。被験者のデータは、Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgeryデータベースに集積した。赤血球輸血、新鮮凍結血漿輸血、血小板輸血いずれの実施率も大幅格差結果、2008年に人工心肺使用心停止下CABGを100回以上実施した408施設における、合わせて8万2,446人について見てみたところ、赤血球輸血実施率は7.8~92.8%、新鮮凍結血漿輸血率は0~97.5%、血小板輸血率は0.4~90.4%だった。被験者全体について多変量解析を行った結果、患者個人のリスク補正後、輸血率は医療施設の場所(p=0.007)、教育病院か否か(p=0.03)、病院規模(p

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がんスクリーニング、進行がん患者へのベネフィットは疑問なのに相当割合で続行

がんスクリーニングがルーチンのプライマリ・ケアに組み込まれているが、余命が限られている進行がん患者に対してはベネフィットに疑問があるものの、相当割合で実施されていることが調査により明らかになった。米国Sloan-Kettering記念がんセンターのCamelia S. Sima氏らが、約9万人の進行がん患者と、その対照群について調べた結果によるもので、JAMA誌2010年10月13日号で発表した。進行期の肺・大腸・膵臓・胃食道・乳がん患者と対照群を追跡同氏らは、1998~2005年にかけて、米国高齢者向け公的医療保険メディケアの65歳以上加入者で、進行期の肺・大腸・膵臓・胃食道・乳がんのいずれかと診断された8万7,736人について追跡調査を行った。対照群として、メディケア加入者でがんの診断を受けていない、年齢や性別、人種などをマッチングした8万7,307人を抽出し追跡した。追跡期間は、2007年末または患者が死亡するまでのいずれかの早い方とした。がん診断前にスクリーニング歴ある人の方が継続して受けている割合が高い結果、女性被験者で、追跡期間中に1回以上のマンモグラフィを受けた人は、進行がん群8.9%、対照群22.0%だった。子宮頸がん検査の実施率はそれぞれ、5.8%と12.5%だった。男性被験者で、前立腺特異抗原(PSA)検査を受けたのは、進行がん群15.0%、対照群27.2%だった。男性・女性被験者で、下部消化管内視鏡検査の実施率は、進行がん群1.7%、対照群4.7%だった。また、実施率は、進行がんの診断を受ける以前12~24ヵ月の間に、同種のがんスクリーニング歴のある人の方がない人より高かった。ある人とない人のマンモグラフィ実施率は16.2%対5.7%、子宮頸がん検査は14.7%対4.0%、PSA試験は23.3%対10.3%、下部消化管内視鏡検査は6.1%対1.5%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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乳幼児の喘鳴は、細菌感染、ウイルス感染とそれぞれ独立して関連

乳幼児における急性の喘鳴と細菌感染には、有意な関連があることが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らが、前向き出生コホート研究を行い報告したもので、関連はウイルス感染と同様だが独自のものだという。ガイドラインでは、乳幼児の喘鳴には抗菌薬投与をルーチンに行わないよう勧告している。無作為化試験による喘鳴への抗菌薬投与の有効性も報告されていないが、欧米での最近の就学前児童を対象とした調査で、ウイルス感染による急性喘鳴例では抗菌薬が最も多く処方されていることが明らかになっている。こうした背景を受けBisgaard氏らは、これまで研究報告がされていない喘鳴と気道への細菌感染との関連、およびその関連がウイルス感染のものとは別のものなのか調査を行った。BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年10月4日号)掲載より。生後4週~3歳児を対象に、喘鳴と細菌感染との関連を調査本研究は、コペンハーゲンで喘息の母親から生まれた411例を追跡調査している「コペンハーゲン前向き小児喘息研究」の被験児を対象に行われた。母子は生後4週から3歳になるまで、研究拠点のクリニックに定期通院または緊急入院した記録があった。主要評価項目は、喘鳴発作時の気道に認められた細菌あるいはウイルスの頻度と、定期通院時に呼吸器症状が伴わなかった頻度とした。喘鳴との関連オッズ比、細菌感染2.9、ウイルス感染2.8細菌感染に関する解析対象は984検体(幼児361人)だった。ウイルスに関する解析対象は844検体(幼児299人)、両方一緒に解析されたのは696検体(幼児277人)だった。喘鳴発作は、細菌感染、ウイルス感染いずれとも関連が認められた。細菌感染のオッズ比は2.9(95%信頼区間:1.9~4.3、P

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従来心血管リスク+CKDステージ情報で、冠動脈心疾患リスクを改善?

慢性腎臓病(CKD)は病期ステージ1から、もともと血管疾患が認められなかった人のその後の冠動脈心疾患リスクを上昇することが報告された。イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生プライマリ・ケア部門のEmanuele Di Angelantonio氏らが、約1万7,000人の住民ベースの前向きコホート研究で明らかにしたもので、BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月30日号)で発表された。CKDステージの情報が入手可能だった33~81歳の1万6,958人を追跡Angelantonio氏らは、住民ベースでの、CKDステージごとの重大心血管疾患発生との関連および非血管死亡との関連を明らかにするため、レイキャビク(アイスランド)の住民を対象に調査を行った。血管疾患が認められず、eGFR、尿蛋白に基づくCKDステージの情報が入手可能だった33~81歳の1万6,958人が登録され、重大冠動脈心疾患および死亡のハザード比を主要評価項目に検討された。登録時にCKDステージ1の人、冠動脈心疾患リスクが1.55倍被験者のうち、登録時にCKDを有していたのは1,210人(7%)だった。追跡期間中央値24年の間に、冠動脈心疾患を発症したのは4,010人、脳卒中死亡559人、非血管系が原因の死亡は3,875人だった。基準群(eGFR:75~89mL/min/1.73m2、尿蛋白なし)と比べて、GFRが標準範囲値より低い腎機能が低下した人は、冠動脈心疾患リスクの上昇はみられなかった。対照的に、登録時にCKDを有していた1,210人(7%)の冠動脈心疾患リスク(ハザード比)は、従来心血管リスクで補正後、ステージ1で1.55(95%信頼区間:1.02~2.35)、ステージ2で1.72(1.30~2.24)、ステージ3aで1.39(1.22~1.58)、ステージ3bで1.90(1.22~2.96)、ステージ4で4.29(1.78~10.32)だった。そして、従来心血管リスクにCKD情報を加味することで、冠動脈心疾患リスクの区分および再分類指標を上昇させた(P

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ショ糖は、痛みを伴う処置を受ける新生児の疼痛緩和に有効か

ショ糖の経口投与は、痛みを伴う処置を受けた新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応に影響を及ぼさず、鎮痛薬としては有効ではないことが、イギリス・オックスフォード大学のRebeccah Slater氏らが行った無作為化試験で示唆された。多くの新生児が、繰り返し施行される侵襲的処置を受けるために入院するが、これらの処置による疼痛が神経発達に及ぼす短期的、長期的な有害作用のエビデンスが蓄積されている。ショ糖の行動的および生理的な疼痛スコアの改善効果を根拠に、新生児の処置痛の軽減にその経口投与が推奨されているが、これらの疼痛スコアの改善は必ずしも新生児の疼痛除去に関連しない可能性があるという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。ショ糖と滅菌水で、脳、脊髄の疼痛反応を比較研究グループは、新生児に対する痛みを伴う処置がもたらす脳および脊髄の疼痛反応を、ショ糖の経口投与が軽減するか否かを検討する二重盲検無作為化対照比較試験を行った。2009年2月~2010年3月までに、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ病院で誕生した新生児59人が登録された。これらの新生児が、痛みを伴う処置として、臨床的に必要とされる血液サンプルの採取を目的に踵を穿刺された。この処置に先立ち、新生児は、24%ショ糖液0.5mLあるいは滅菌水0.5mLを1mL注射器で舌前面に直接に滴下する群のいずれかに無作為に割り付けられた。研究者、担当医、両親には投与された溶液の情報は知らされなかった。主要評価項目は、1回の穿刺で引き起こされた脳の疼痛反応(脳波検査のデータを記録し、主成分分析で判定)とし、副次評価項目は行動的(顔の表情の変化など)、生理的(脳波、パルス酸素濃度測定など)指標や観察的疼痛スコア[新生児の疼痛評価の指標である未熟児疼痛プロファイル(PIPP)]による評価、および脊髄侵害反射離脱反応とした。観察的疼痛スコアは改善したが、脳、脊髄の疼痛反応に差はないショ糖群に29人が、滅菌水群は30人の新生児が割り付けられ、主要評価項目の解析はそれぞれ20人、24人で可能であった。穿刺後の脳の疼痛反応の平均値は、ショ糖群が0.10(95%信頼区間:0.04~0.16)、滅菌水群は0.08(同:0.04~0.12)であり、両群間に差を認めなかった(p=0.46)。刺激を受けた足の大腿二頭筋から得られた脊髄侵害反射離脱の程度および反応潜時には、両群間で有意な差はみられなかった。平均PIPPスコアは、ショ糖群が5.8(95%信頼区間:3.7~7.8)と、滅菌水群の8.5(同:7.3~9.8)に比べ有意に低く(p=0.02)、投与後に表情の変化がみられない新生児の割合もショ糖群で多かった[35%(7/20人)vs. 0%(0/24人)、p<0.0001]。著者は、「これらのデータは、ショ糖の経口投与は新生児の脳および脊髄の侵害反射回路の反応には影響を及ぼさないことを示唆するため、鎮痛薬としては有効でない可能性がある」と結論し、「ショ糖の投与により、痛みを伴う処置後の新生児の臨床的な観察的疼痛スコアが改善されても、それを疼痛の除去と解釈すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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2倍用量クロピドグレル、PCI施行ACS患者に対する有用性を確認

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行された急性冠症候群(ACS)患者に対する抗血栓療法では、標準の2倍用量のクロピドグレル(商品名:プラビックス)を7日間投与するレジメンが、標準用量に比べ、心血管イベントおよびステント血栓症の発生を有意に低減することが、カナダMcMaster大学(ハミルトン)のShamir R Mehta氏らが行った無作為化試験(CURRENT-OASIS 7試験)で示された。PCI施行例では、クロピドグレルとアスピリンの併用療法が最も頻用されているが、近年、ACSに対する早期PCI施行例の増加に伴い、より迅速な作用の発現とより高度な抗血栓作用を有するレジメンの開発が求められている。クロピドグレルの負荷用量を2倍に増量し、引き続き標準用量で維持療法を行うアプローチの有用性がいくつかの試験で示唆されているという。Lancet誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載の報告。2剤の2用量を評価する2×2ファクトリアル無作為化試験CURRENT-OASIS 7の研究グループは、PCI施行例における重篤な冠動脈イベントおよびステント血栓症の予防のためのクロピドグレルおよびアスピリンの至適用量を検討する2×2ファクトリアルデザインの無作為化試験を行った。2006年6月~2009年7月までに、39ヵ国597施設から早期PCIの適応とされたACS患者2万5,086例が登録された。これらの患者が、クロピドグレルを2倍用量(負荷用量/日:初日600mg、2~7日150mg、8~30日75mg、1万2,520例)あるいは標準用量(負荷用量/日:初日300mg、2~30日75mg、1万2,566例)投与する群に無作為に割り付けされ、引き続き各群がアスピリンを高用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日300~325mg)あるいは低用量(負荷用量/日:初日≧300mg、2~30日75~100mg)投与する群に無作為に割り付けられた。クロピドグレルの比較は二重盲検下に行われ、アスピリンの比較はアウトカム評価のマスク下にオープンラベルで実施された。事前に規定された解析は実際にPCIを施行された1万7,263例(2倍/高用量群:4,298例、2倍/低用量群:4,262例、標準/高用量群:4,326例、標準/低用量群:4,377例)について行われた。主要評価項目は、30日以内の心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生とし、PCI施行の傾向性で補正の上、intention-to-treat解析が行われた。クロピドグレル2倍用量群で主要評価項目の発生が14%低下30日間のフォローアップを完遂したのは、クロピドグレルの2倍用量群8,560例中8,558例、標準用量群8,703例中8,702例で、アスピリンの高用量群8,624例中8,622例、低用量群8,639例中8,638例であった。主要評価項目の発生率は、クロピドグレルの2倍用量群が3.9%(330/8,560例)と、標準用量群の4.5%(392/8,703例)に比べ有意に低下した(補正ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.74~0.99、p=0.039)。definiteに分類されるステント血栓症の発生率は、それぞれ0.7%(58/8,560例)、1.3%(111/8,703例)であり、2倍用量群で有意に減少した(同:0.54、0.39~0.74、p=0.0001)。アスピリン高用量群における主要評価項目の発生率は4.1%(356/8,624例)、低用量群は4.2%(366/8,639例)であり、両群間に差を認めなかった(同:0.98、0.84~1.13、p=0.76)。大出血の頻度は、クロピドグレル2倍用量群[1.6%(139/8,560例)]が標準用量群[1.1%(99/8,703例)]よりも有意に高かった(同:1.41、1.09~1.83、p=0.009)が、アスピリンの高用量群[1.5%(128/8,624例)]と低用量群[1.3%(110/8,639例)]では差はみられなかった(同:1.18、0.92~1.53、p=0.20)。著者は、「PCI施行ACS患者では、クロピドグレルの7日間2倍用量投与により、心血管イベントおよびステント血栓症が標準用量投与に比べ低減したが、アスピリンの高用量と低用量量では差はなかった」と結論し、「早期の侵襲的治療戦略としてPCIの適応とされたACS患者の場合、すべての症例でクロピドグレル2倍用量レジメンを考慮してよい」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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2型糖尿病患者の重症低血糖と有害転帰リスクとの関連

メタ解析で、強化血糖コントロールは心筋梗塞リスクを減じ死亡リスクへの重大な影響はないながらも、重症低血糖のリスクが上昇することが示されている。ACCORD試験では、強化血糖コントロール群で観察された超過死亡はそうした治療の有害反応によるとの推論をあおったが、事後解析で、超過死亡は低血糖の高率な発症が直接的原因ではないことが示されている。そこで、オーストラリア・シドニー大学ジョージ国際保健研究所のSophia Zoungas氏らADVANCE試験共同研究グループは、同試験被験者における重症低血糖と有害臨床転帰との関連を調べた。NEJM誌2010年10月7日号掲載より。重症低血糖患者を中央値5年にわたって追跡研究グループは、ADVANCE試験の被験者1万1,140例の2型糖尿病患者について、重症低血糖と大血管・細小血管イベントリスク、および死亡リスクとの関連について検討した。解析は、ベースライン時とランダム化後の測定共変量値を補正した、Cox比例ハザードモデルを用いて行われた。被験者のうち、追跡期間中央値5年の間に1回以上の重症低血糖を起こしていたのは、231例(2.1%)だった。そのうち150例は強化血糖コントロール群(5,571例の2.7%)、81例が標準血糖コントロール群(5,569例の1.5%)に割り付けられた被験者だった。重症低血糖の発症から初回主要イベント発生までの期間中央値は、大血管イベントが1.56年(四分位範囲:0.84~2.41)、細小血管イベントが0.99年(同:0.40~2.17)、死亡が1.05年(同:0.34~2.41)だった。低血糖は重大な有害イベントが起きやすいことのマーカーか追跡期間中、重症低血糖は、主要なイベント補正後リスクの有意な上昇と関連していた。大血管イベントのハザード比は2.88(95%信頼区間:2.01~4.12)、細小血管イベントのハザード比は1.81(同:1.19~2.74)、心血管系起因の死亡のハザード比は2.68(同:1.72~4.19)、全死因死亡のハザード比は2.69(同:1.97~3.67)だった(いずれもP

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腎機能障害を伴う急性心不全患者へのrolofylline、治療薬としての将来性示されず

急性心不全患者では頻繁に有害転帰と関連する腎機能の低下がみられる。それら腎機能低下にはこれまでの実験・臨床研究から、アデノシンを介した対抗制御反応が関与する可能性が示唆されている。そこで米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校/サンフランシスコ退役軍人医療センターのBarry M. Massie氏ら研究グループは、アデノシンA1受容体拮抗薬rolofylline投与が、急性心不全患者の呼吸困難を改善し、腎機能を悪化させるリスクを減少し、より良好な臨床経過をもたらすとの仮説を検証する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験「PROTECT」を行った。NEJM誌2010年10月7日号掲載より。腎機能障害を伴う急性心不全患者2,000例超を無作為化研究グループは、発症後24時間以内の、腎機能障害を伴う急性心不全の入院患者2,033例を、1日30mgのrolofylline静注を最大3日間投与する群とプラセボを投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付け追跡した。主要エンドポイントは、治療成功、治療失敗、あるいは患者の臨床症状に変化なしとした。定義は、生存、心不全の状態、腎機能の変化に基づき行われた。副次エンドポイントは、治療後の持続性腎機能障害の発現、心血管または腎臓が原因の60日死亡率および再入院率とした。プラセボとの比較で有益性示されず結果、プラセボと比較して、rolofyllineの主要エンドポイントに関する有益性は示されなかった(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.78~1.09、P=0.35)。副次エンドポイントの持続性腎機能障害の発現は、rolofylline群で15.0%、プラセボ群は13.7%(P=0.44)だった。また、60日死亡・再入院率については両群で同等だった(rolofylline群30.7%、プラセボ群31.9%、P=0.86)。全体の有害事象の発生率は両群で同等だった。rolofylline群でのみ、てんかん発作がみられたが、これはアデノシンA1受容体拮抗薬の有害作用として知られる。これらの結果から研究グループは、「rolofylline投与が、主要臨床複合エンドポイントに良好な影響を与えることは認められず、腎機能や60日転帰も改善しなかった」と述べ、「腎機能障害を伴う急性心不全患者への治療薬としての将来性は示されなかった」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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一般市民による心肺蘇生、胸骨圧迫CPRなら退院時生存率が従来法の1.6倍

心臓が原因で院外心停止を起こした人に対し、その場に居合わせた医療専門家ではない一般市民による心肺蘇生法(CPR)は、胸骨圧迫のみのCPRが、従来のCPRよりも退院時生存率が1.6倍高いことが明らかにされた。米国アリゾナ州保健局のBentley J. Bobrow氏らが、5年にわたり、院外心停止をした18歳以上5,000人超を対象に行った前向き観察コホート研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月6日号で発表した。一般市民によるCPR、従来法666人、胸骨圧迫のみ849人研究グループは、2005年1月1日~2009年12月31日にかけて、アリゾナ州で心臓が原因で院外心停止した18歳以上、5,272人について調査を行った。そのうち、医療従事者によるCPRを受けた人、心停止が医療施設内だった人を除く4,415人について追跡した。被験者のうち、その場に居合わせた人によるCPRを受けなかったのは、2,900人だった。一方、一般市民により、従来CPRを受けたのは666人、胸骨圧迫のみCPR(compression-only CPR;COCPR)を受けたのは849人だった。5年間でCOCPR実施は急増、生存率も3.7%から9.8%に主要評価項目とした退院時生存率は、CPRを受けなかった群は5.2%(95%信頼区間:4.4~6.0)、従来CPRを受けた群は7.8%(同:5.8~9.8)だったのに対し、COCPRを受けた群は13.3%(同:11.0~15.6)で最も高率だった。退院時生存に関する、従来CPR群の非CPR群に対する補正後オッズ比は0.99(同:0.69~1.43)だったのに対し、COCPR群の非CPR群に対する補正後オッズ比は、1.59(同:1.18~2.13)であり、同従来CPR群に対する補正後オッズ比は、1.60(同:1.08~2.35)だった。また、院外心停止の際の居合わせた人によるCPR実施率は、2005年から2009年にかけて、28.2%から39.9%に増加していた(p

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