サイト内検索|page:1542

検索結果 合計:33593件 表示位置:30821 - 30840

30821.

救急外来、待ち時間が長いほど受診後の非入院帰宅者の有害イベントリスクが上昇

救急外来を受診後に入院せずに帰宅した患者では、待ち時間が長いほどその後の短期的な有害イベントの発生リスクが上昇することが、カナダ・トロント大学のAstrid Guttmann氏らの調査で明らかとなった。詳細は、BMJ誌2011年6月4日号(オンライン版2011年6月1日号)に掲載された。医師に面会せずに帰宅しても、診察を受けた場合と比較してリスクに変化はなかったという。先進諸国では、救急外来の長い待ち時間が広範な問題を引き起こしており、治療の遅れはもとより、時間的制約のある治療や入院を要する病態のよくない患者における不良な予後の原因にもなることが知られている。また、多くの患者が診察後に入院せず帰宅しており、最大で約10%の患者が医師にも会わずに病院を去るという。救急外来で長い待ち時間を過ごしたのち入院せず帰宅した患者における有害イベントの発生リスク 研究グループは、待機時間が長い時間帯に救急外来を受診し、長い待ち時間を過ごしたのちに入院せずに帰宅した患者における有害イベントの発生リスクについて検討するために、地域住民ベースのレトロスペクティブなコホート試験を実施した。 2003年4月~2008年3月までに、カナダ・オンタリオ州の高収容数の救急外来を受診後に入院せずに帰宅した患者(医師の診察を受けた後に帰宅、医師と面会せず診断、治療を受けずに帰宅)が解析の対象となった。 主要評価項目は、主な背景因子(患者、受診時間帯、施設)で調整後の有害事象リスク(7日以内の入院あるいは死亡)とした。救急外来での平均待ち時間が長くなると短期的な入院・死亡リスクが上昇 5年間で1,393万4,542人が救急外来で医師の診察を受けたのち入院せずに帰宅し、医師と面会せずに帰宅したのは61万7,011人であった。 7日以内に有害なイベントが発生するリスクは、救急外来での平均待ち時間が長くなるに従って上昇した。待ち時間が6時間以上の患者の1時間未満の患者に対する調整オッズ比は、重症例では死亡が1.79(95%信頼区間:1.24~2.59)、入院が1.95(同:1.79~2.13)であり、軽症例では死亡が1.71(同:1.25~2.35)、入院が1.66(同:1.56~1.76)であった。 医師による診察の有無は、入院せずに帰宅した患者における有害イベントの発生リスクには影響しなかった。 著者は、「待機時間が長い時間帯に救急外来を受診することで、平均待ち時間が延長し、その結果として、帰宅に支障のないくらいには十分な体力のある患者において短期的な死亡や入院のリスクが増大していた。医師と面会せずに帰宅しても、短期的な有害イベントのリスクは上昇しなかった」と結論している。

30822.

硬膜外脊髄電気刺激で完全運動対麻痺患者の起立、歩行が回復

硬膜外脊髄電気刺激により、完全運動対麻痺患者の脚運動の機能回復が得られたことが、米国・ルイビル大学ケンタッキー脊髄研究センターのSusan Harkema氏らの検討で示され、Lancet誌2011年6月4日号(オンライン版2011年5月20日号)で報告された。この介入法は、重篤な麻痺患者の機能回復に有用な臨床的アプローチとして期待されるという。脊髄損傷の動物モデルでは、脊髄に対する一定期間の反復刺激や特定のタスクに最適化された運動訓練によって、運動のコントロール能が向上することが示されている。完全運動対麻痺の23歳男性に、硬膜外脊髄電気刺激を施行研究グループは、硬膜外脊髄刺激はヒトの脊髄回路を生理学的に調節して起立や歩行運動の感覚入力を可能にし、これらのタスクを実行する神経コントロールの起点として作用するのではないかと考え、これを検証する症例研究を実施した。対象は、2006年7月に交通事故でC7-T1亜脱臼による対麻痺をきたした23歳の男性で、臨床的に検出可能な随意運動機能は完全に喪失していたが、T1脊髄以下の感覚は部分的に保持されていた。26ヵ月間で170セッションの運動訓練を行ったのち、2009年12月、外科的に16列の電極をL1-S1の硬膜外に埋め込んで長期的に電気刺激を与えられるようにし、最大で250分間の脊髄刺激を行った。起立と歩行を目標に29の新たな方法を試み、さまざまな刺激の組み合わせやパラメータについて検討を行った。重篤な麻痺患者の機能回復に有用な可能性硬膜外電気刺激によって、男性はバランスを保つための介助だけで、自分の全体重を支えて4.25分間起立することができた。患者は、起立に最適化されたパラメータを使用した刺激を与えられている間は起立していられるようになった。刺激パラメータを歩行に最適化すると、運動様パターンを示すことも明らかになった。さらに、電極の埋め込みから7ヵ月後には、患者は脚運動の上脊髄性のコントロールを回復したが、これは硬膜外電気刺激の施行中に限定された。著者は、「硬膜外電気刺激を用いた特定のタスクに最適化された訓練は、完全な損傷を免れた神経回路を復活させ、可塑性を促進する可能性がある」と結論し、「これらの介入は、重篤な麻痺患者の機能回復に向けた臨床的アプローチとして有用と考えられる」としている。(菅野守:医学ライター)

30823.

NV1FGFによる血管新生療法、重症下肢虚血患者の大切断術、死亡を低減せず

重症下肢虚血患者に対する非ウイルス性ヒト線維芽細胞増殖因子1発現プラスミド(NV1FGF)による血管新生療法は、下肢切断術施行および死亡を低減しないことが、英国Ninewells病院のJill Belch氏らが実施したTAMARIS試験で示され、Lancet誌2011年6月4日号(オンライン版2011年5月31日号)で報告された。欧米では最大で約2,000万人が末梢動脈疾患に罹患し、そのうち2~5%が最も重篤な病態である重症下肢虚血に至るという。線維芽細胞増殖因子1(FGF1)は血管の新生を調節、促進し、血管内皮細胞の遊走、増殖、分化を活性化することで既存の血管からの毛細血管の発生を促すことが知られている。下肢虚血患者に対するNV1FGFのプラセボ対照無作為化第III相試験TAMARIS試験は、血行再建術が非適応の重篤な下肢虚血患者に対する血管新生療法としてのNV1FGFの有用性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験である。2007年12月1日~2009年7月31日までに、30ヵ国171施設から、下肢の虚血性潰瘍あるいは軽度の皮膚壊疽がみられ、血行動態に基づく選択基準(足首血圧<70mmHg、爪先血圧<50mmHgあるいはその両方、治療足の経皮的酸素分圧<30mmHg)を満たした患者525例が登録され、NV1FGF(0.2mg/mL、筋注)を投与する群あるいはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は2週ごとに4回(第1、15、29、43日)実施され、1回につき治療足に対し8回の注射が行われた。主治医、患者、研究チームには治療割り付け情報は知らされなかった。評価項目は大切断術(足首より上部での切断)の施行あるいは全死因死亡までの期間および発生率とし、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を用いたintention-to-treat解析を行った。有効な治療法開発が課題として残るV1FGF群に259例が、プラセボ群には266例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。全体の平均年齢70歳(50~92歳)、男性が365例(70%)、糖尿病患者は280例(53%)、冠動脈疾患既往歴のある患者は248例(47%)であった。大切断術施行あるいは死亡の割合は、NV1FGF群が33%(86/259例)、プラセボ群は36%(96/266例)であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.11、95%信頼区間:0.83~1.49、p=0.48)。大切断術の施行や死亡までの期間にも差はみられなかった。虚血性心疾患(NV1FGF群10% vs. プラセボ群10%、p=1.00)、悪性新生物(3% vs. 2%、p=0.55)、網膜疾患(4% vs. 6%、p=0.42)、腎機能障害(7% vs. 6%、p=0.49)の発現率も、両群で同等であった。著者は、「重症下肢虚血患者に対するNV1FGFによる血管新生療法は切断術施行および死亡の低減に有効とのエビデンスは得られなかった」と結論し、「これらの患者に対する有効な治療法の開発は大きな課題として残されている」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30824.

新生児CMVスクリーニングに唾液検体リアルタイムPCR法が有用

難聴の重大原因である先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症の新生児スクリーニングについて、リアルタイムPCR法が有用であることが示された。米国・アラバマ大学バーミングハム校小児科部門のSuresh B. Boppana氏ら研究グループが行った前向き多施設共同スクリーニング研究による。新生児CMV感染症スクリーニングの標準アッセイは出生時に採取した唾液検体による迅速培養法とされているが、自動化ができず大規模スクリーニングに不向きであった。そこでリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をベースとし、出生時に採取した液体の唾液検体もしくは乾燥させた唾液検体を用いる2種のリアルタイムPCR法が開発された。研究グループはその有用性について検討した。NEJM誌2011年6月2日号掲載報告より。新生児3万4,989例を対象に前向きスクリーニング研究2008年6月~2009年11月の間に、米国内7施設で生まれた新生児3万4,989例が、出生時に採取した唾液検体を用いて迅速培養法と2種のリアルタイムPCR法のうち1種以上の検査を受けた。リアルタイムPCR法の有用性の検証は、第1相群(液体唾液PCR群)と第2相群(乾燥唾液PCR群)の前向き研究にて行われた。第1相群は迅速培養と液体唾液PCRを受けた1万7,662例で、第2相群は迅速培養と乾燥唾液PCRを受けた1万7,327例だった。感度および特異度、液体唾液PCRは100%・99.9%、乾燥唾液PCRは97.4%・99.9%結果、全被験児のうち177例(0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)が、3種の検査法のうち1種以上でCMV陽性だった。第1相群で陽性だったのは93例。そのうち85例(第1相群の0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)は、液体唾液PCR、迅速培養ともに陽性だった。残る8例は、液体唾液PCRは陽性だったが迅速培養は陰性だった。迅速培養との比較による液体唾液PCRの感度は100%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は91.4%、陰性適中率は100%だった。第2相群で陽性だったのは84例だった。そのうち迅速培養陽性は76例(第2相群の0.4%、95%信頼区間:0.3~0.5)だった。うち乾燥唾液PCRも陽性だったのは74例で、2例は乾燥唾液PCR陰性だった。また乾燥唾液PCR陽性だが迅速培養陰性は8例あった。迅速培養との比較による乾燥唾液PCRの感度は97.4%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は90.2%、陰性適中率は99.9%だった。Boppana氏は「液体唾液検体でも乾燥唾液検体でもリアルタイムPCR法は、CMV感染症検出に高い感度と特異度を示した。したがって新生児CMV感染症スクリーニングの強力なツールとなりうるとみなすべきである」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

30825.

小児の特発性膜性腎症にウシ血清アルブミン関与の可能性示唆

ネフローゼ症候群の原因疾患として最も多い膜性腎症のうち、自己免疫疾患が原因と考えられている特発性膜性腎症について、フランス・パリ公立Tennon病院のHanna Debiec氏らにより新たな知見が報告された。膜性腎症は、免疫複合体が糸球体基底膜の上皮下に沈着することにより腎臓の濾過機能が障害されると考えられている。ウイルスや細菌、腫瘍など外因性抗原が特定される症例は二次性膜性腎症と分類されるが、いずれも抗原の特定や性質、病院や発症機序など不明な部分が多い。特発性膜性腎症についても最近、2つの抗原候補が同定され、そのうちのM型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)は同症例の70%に認められたが、その他の抗原については明らかではない。その抗原候補として、Debiec氏らは、疫学調査で示された自己免疫疾患発現リスク因子としての栄養学的要因に着目、牛乳や牛肉蛋白質の一種で腸管吸収され抗体誘導の可能性があり得るウシ血清アルブミンの関与を探った。結果、小児例の一部でその病態への関与が示唆される知見が得られたという。NEJM誌2011年6月2日号掲載より。小児9例、成人41例についてウシ血清アルブミンの関与を探る研究グループは、2004~2009年に生検を受け二次性膜性腎症を否定された特発性膜性腎症の50例(小児9例、成人41例)と、対照群172例について調査した。血清検体を採取し、ELISA法とウエスタンブロット法で抗ウシ血清アルブミン抗体と血中アルブミン血清について調べた。また、二次元ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、血清検体から免疫精製したウシ血清アルブミンの性質を解析した。さらに糸球体沈着物中のウシ血清アルブミンを検出し、IgGを抽出し反応性を解析した。小児例でのみ上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミンが検出結果、小児4例、成人7例の計11例に、高濃度な血中抗ウシ血清アルブミン抗体が認められた。いずれもIgG1とIgG4のサブクラスだった。またこれら患者は、血中ウシ血清アルブミン値の上昇も認められた。しかし、血中免疫複合体の濃度は上昇が認められなかった。ウシ血清アルブミンの性質についての解析では、小児4例ではpHの基本域に属することを示したが、成人例は天然のウシ血清アルブミンと同様に中性域に属することを示した。また小児例でのみ、上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミン(陽イオン性血中ウシ血清アルブミンとウシ血清アルブミン特異抗体の両方)が検出された。それはPLA2R非存在下でIgGと共存しており、IgGはウシ血清アルブミンに特異的だった。Debiec氏は、このように小児膜性腎症患者の一部で、血中陽イオン性ウシ血清アルブミンと抗ウシ血清アルブミン抗体の両方が認められたこと、また上皮下の免疫沈着物中にそれらが存在することを踏まえ、「実験モデルで示されているように、陽イオン性ウシ血清アルブミンが陰イオン性の糸球体係蹄壁に結合し、免疫複合物のin situ形成をすることが病原となっていることが示唆される」と結論。最後に「さらなる疫学調査は必要だが、小児例の可能性として食事由来のウシ血清アルブミンやウシ血清アルブミンの免疫処置が考えられ調査を促す必要がある。もしウシ血清アルブミンが検出されたら、食生活からそれを除去することは有益であろう。我々の研究は、ほかにも食物抗原が膜性腎症の発現に関係している可能性を高めるものとなった」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

30826.

抗悪性腫瘍剤 エリブリンメシル酸塩(商品名:ハラヴェン)

新規抗がん剤であるエリブリンメシル酸塩(以下エリブリン、商品名:ハラヴェン)が、2011年4月、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤での治療歴を含む化学療法施行後の手術不能または再発乳がんを適応として承認された。今年7月にも薬価収載・発売が予定されている。 進行または再発乳がん治療の現状と課題現在、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤での治療歴を有する進行または再発乳がんに対しては、カペシタビン、S-1、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカンなどが用いられている。しかし、どの薬剤もベストサポーティブケアとの比較試験の結果を持たないというのが現状である。また、近年、化学療法を外来治療で行うことが主流となり、治療時間の短縮化など、外来治療に適した薬剤が求められている。単剤で初めて前治療歴のある進行または再発乳がんの全生存期間を延長このような状況のなか、エリブリンは海外第Ⅲ相試験(EMBRACE試験)において、単剤で初めて、前治療歴のある進行または再発乳がんにおける全生存期間(OS)を有意に延長した1)。本試験では、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む2~5レジメンの化学療法歴のある進行または再発乳がん762例を対象とし、エリブリン投与群と主治医選択治療群を比較した。最新の解析結果では、エリブリン投与群は主治医選択治療群に比べて2.7ヵ月間の有意なOS延長が認められている(13.2ヵ月 vs 10.5ヵ月、ハザード比:0.81、p=0.014)。なお本試験では、主治医選択治療群の96%がビノレルビン、ゲムシタビン、カペシタビンなどの化学療法を受け、4%がホルモン療法を受けていた。また、安全性については、骨髄抑制が高頻度に認められており、とくに好中球減少が多く認められている。骨髄抑制が発現しやすい患者の場合には注意して投与することが必要である。短い投与時間と簡便性エリブリンの特長として、投与時間の短さと簡便さが挙げられる。エリブリンは、2~5分でボーラスもしくは点滴静注で投与する。溶解補助剤に伴う過敏反応を回避するステロイドなどの前処置が不要であることから、ルート確保、投与、フラッシングまでを約30分で終えることができる。そのため、外来治療における患者の負担を軽減でき、さらに看護師の負担も軽減できる。外来化学療法室での限られたベッド数を考えると、こうした特長は施設にとってメリットと言えるだろう。タキサン耐性症例における効果エリブリンは、チューブリン重合を阻害して細胞分裂を抑制することにより、抗腫瘍効果を示す。同じくチューブリンに作用するタキサン系薬剤とは作用部位が異なるため、交差耐性は起こりにくいと考えられている。実際にin vitro、in vivoにおける試験において、エリブリンがパクリタキセル耐性細胞に対し、パクリタキセル感受性細胞と同様の抗腫瘍効果を示したことが報告されている2)。臨床においても、タキサン耐性症例に対する効果が期待されており、今後の臨床症例の蓄積が待たれる。日米欧3極同時申請通常、外資系製薬会社で開発される薬剤は、欧米での承認から数年遅れて日本で承認される。そのようななか、エリブリンは2010年3月に世界で初めて日米欧で同時申請され、同年11月に米国、2011年3月に欧州、4月に日本で承認された。米国における承認から半年以内に日本で承認されたことになる。今後の開発薬剤について、さらにドラッグラグが短縮されていくことが期待される。延命を目的とする再発がん治療において、治療選択肢の増加は大きな意義を持つ。エーザイ株式会社オンコロジー領域部部長の内藤輝夫氏は、「アントラサイクリン系やタキサン系薬剤の投与後に進行・再発した患者さんにおいて、今後は延命効果が証明されたエリブリンがお使いいただけることは、患者さんの生きる希望につながる。また、これまでの治療ですでに数種類の薬剤を投与され、効果が期待できる薬剤がなくなった患者さんにとって、新たな治療オプションが増えることは非常に意義がある」と話している。

30827.

2型糖尿病高齢者の骨折リスク、骨密度Tスコア低下やFRAXスコア上昇と関連

 2型糖尿病を有する高齢者において、大腿骨頸部の骨密度Tスコア低下やWHO骨折評価ツールのFRAXスコア上昇が、骨折リスク増大と関連することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAnn V. Schwartz氏らが、骨折に関する3つの前向き観察試験の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月1日号で発表した。2型糖尿病を有する人はそうでない人と比べて、骨密度が高い傾向にあるにもかかわらず骨折リスクが高いことが知られている。しかし骨折予防の中心対象となる骨密度が低い2型糖尿病の高齢者については、そうした関連は明らかにされていなかった。骨密度TスコアやFRAXスコアと、2型糖尿病高齢者の骨折リスクとの関連を分析 Schwartz氏らは、1997~2009年の間に行われた3つの前向き観察試験データを分析した。被験者は、地域に居住する高齢者で、3試験合計で女性9,449人、男性7,436人だった。そのうち2型糖尿病の女性高齢者は770人、男性高齢者は1,199人だった。 2型糖尿病女性高齢者770人のうち、平均追跡期間12.6(標準偏差:5.3)年で、股関節骨折者は84人、非脊椎骨折者は262人であった。同男性者では1,199人のうち、平均追跡期間7.5(標準偏差:2.0)年で、股関節骨折者は32人、非脊椎骨折者は133人だった。骨密度Tスコア1単位低下で股関節骨折リスクは、女性1.88倍、男性5.71倍に 大腿骨頸部骨密度Tスコアが1単位低下することによる、2型糖尿病女性高齢者の年齢補正後ハザード比は、股関節骨折については1.88(95%信頼区間:1.43~2.48)、非脊椎骨折については1.52(同:1.31~1.75)だった。同男性被験者ではそれぞれ5.71(同:3.42~9.53)、2.17(同:1.75~2.69)だった。 また、股関節骨折FRAXスコアが1単位上昇することによる、股関節骨折の年齢補正後ハザード比は、女性では1.05(同:1.03~1.07)、男性では1.16(同:1.07~1.27)だった。骨粗鬆症性骨折FRAXスコア1単位上昇による同ハザード比は、女性では1.04(同:1.02~1.05)、男性では1.09(同:1.04~1.14)だった。 Tスコア、年齢、FRAXスコアを一定とした場合、2型糖尿病患者を有する高齢者のほうが、有さない高齢者に比べ骨折リスクが高かった。また骨折リスクを一定とした場合、2型糖尿病高齢者のほうが、有さない高齢者に比べTスコアは高かった。股関節骨折に関するTスコア差は推定平均、女性0.59(同:0.31~0.87)、男性0.38(同:0.09~0.66)だった。

30828.

心臓・肺移植後の生存率、手術実施時刻で異なるのか?

心臓または肺移植後1年までの生存率について、手術の実施時刻が日中でも夜間でも同等であることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンズ病院循環器手術部門のTimothy J. George氏らが、心臓・肺移植を受けた約2万7,000人について、後ろ向きコホート試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月1日号で発表した。最近の患者安全に関する組織ベースのアプローチ研究では、夜間の手術は転帰不良に通じると強調されるようになっているが、George氏らは手術時刻と罹患率や死亡率とは無関係であると仮説を立て検証試験を行った。心臓移植患者約1万7,000人と肺移植者患者約1万1,000人を中央値32.2ヵ月追跡研究グループは、全米臓器配分ネットワーク(UNOS)のデータベースから、2000年1月~2010年6月にかけて、心臓または肺の移植手術を受けた人、2万7,118人について試験を行った。被験者のうち、心臓移植を受けたのは1万6,573人で、手術実施時刻が朝7時から夜7時まで(日中群)だったのは8,346人(50.36%)、同夜7時から翌朝7時まで(夜間群)が8,227人(49.64%)だった。肺移植を受けたのは、1万545人で、日中群が5,179人(49.11%)、夜間群が5,366人(50.89%)だった。追跡期間は中央値32.2ヵ月で、その間に死亡した人は8,061人(28.99%)だった。術後30日、90日、1年の生存率、日中群と夜間群でいずれも有意差なし術後30日生存率は、心臓移植・日中群が95.0%、夜間群が95.2%(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.83~1.32、p=0.67)、肺移植・日中群が96.0%、夜間群が95.5%(同:1.22、同:0.97~1.55、p=0.09)と、いずれの移植においても両群で有意差はなかった。また術後90日生存率についても、心臓移植・日中群が92.6%、夜間群が92.7%(ハザード比:1.05、p=0.59)、肺移植・日中群が92.7%、夜間群が91.7%(同:1.23、p=0.02)と、両群で有意差はなかった。術後1年生存率も、心臓移植・日中群が88.0%、夜間群が87.7%(ハザード比:1.05、p=0.47)、肺移植・日中群が83.8%、夜間群が82.6%(同:1.08、p=0.19)と、両群で有意差はなかった。なお、肺移植を受けた人のうち、気道裂開が認められたのは、日中群1.1%に対し夜間群1.7%と、夜間群でわずかな増大が認められた(p=0.02)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30829.

子宮頸がん集団検診でのDNA法、カットオフ値の増加は安全に女性の負担を有意に減らす

子宮頸がん集団検診でhybrid capture-2法を用いる場合、カットオフ値は≧1 rlu/co(relative light units/cut-off level)とされているが、それ以上の値(≧10 rlu/coまで)を用いた場合も感度は良好で、特異度に関しては高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性を半減できることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学公衆衛生部門のMatejka Rebolj氏らが、システマティックレビューを行い報告したもので、「集団検診でのカットオフ値を上げてよいことが示された。検診を受ける女性にとっては安全で負担が有意に減る」とまとめている。hybrid capture-2法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)-DNA法の一つ。細胞診では感度が低いとして英国など数ヵ国でDNA法の導入が検討されているという。BMJ誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月23日号)掲載より。hybrid capture-2法を検証した無作為化試験をシステマティックレビューRebolj氏らは、PubMedをデータソースとしてシステマティックレビューを行った。hybrid capture-2法を用いた子宮頸がん集団検診の無作為化試験論文を検索し、陽性者数やカットオフ値により子宮頸部上皮内腫瘍を有した人を階層化していた、2010年8月までに発行された論文を選んだ。本研究では、各試験の不均一性のためにメタ解析はできなかった。解析対象となったのは6試験、25のカットオフ値のデータで、解析されたカットオフ値は≧1 rlu/co、≧2 rlu/co、≧3 rlu/co、≧4 rlu/co、≧5 rlu/co、≧10 rlu/coについてだった。感度、最低でも≧2 rlu/coで0.97、≧10 rlu/coで0.91グレードIII以上の子宮頸部上皮内腫瘍に関する相対的感度は試験により異なったが、最低でもカットオフ値≧1 rlu/coとの比較で、≧2 rlu/coは0.97、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)は0.92、≧10 rlu/coは0.91を示した。同様の傾向が、グレードII以上の感度についてもみられた。特異度は、最低でも≧2 rlu/coで1%、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)で2%、≧10 rlu/coで3%の上昇を示し、最大ではそれぞれ24%、39%、53%まで上昇した。その結果、高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性者の検出を回避することができた。この総体的パターンにおいてアウトライアーは2例だけだった。Rebolj氏は「≧2 rlu/co~≧10 rlu/coのカットオフ値を用いることで感度は低下するが、国際的に推奨されているグレードII以上の検出感度として90%以上が必要という基準を満たしており、特異度については≧1 rlu/coは高かった。このことはhybrid capture-2法のカットオフ値を集団検診において増やしてよいということを示すものであり、女性にとってはかなり安全で、有意に負担が減ることになる」と結論している。

30830.

子癇前症ハイリスクの妊婦にL-アルギニン+抗酸化ビタミンサプリ食提供で発生率減少

子癇前症ハイリスクの妊婦に、L-アルギニンと抗酸化ビタミンを含むサプリメント食を摂取させることで、疾患の発生率が減少したことが無作為化単盲検プラセボ対照試験によって示された。抗酸化ビタミンだけの摂取群では子癇前症に対する保護作用は認められなかったという。メキシコ国立大学医学校基礎医学部門のFelipe Vadillo-Ortega氏らが行った試験の結果で、BMJ誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月19日号)で掲載された。既往か一親等親族に子癇前症歴のある672例を3群に無作為化試験は、メキシコシティの公立第3病院で行われた。被験者は、出産経験がある妊婦で、以前の妊娠時に子癇前症を有した人、また母親・姉妹で子癇前症歴のある人で、疾患再発リスクが高いと考えられる妊娠14~32週の妊婦を登録して行われ、分娩時まで追跡した。被験者には棒状のメディカルフード(L-アルギニンと抗酸化ビタミンを含む、抗酸化ビタミンだけ、プラセボ)が支給された。主要評価項目は、子癇前症か子癇症の発症とした。抗酸化ビタミン単独では有意な減少認められずプラセボ群には222例が、L-アルギニン+抗酸化ビタミン群には228例が、抗酸化ビタミン単独群には222例が割り付けられた。被験者は、メディカルフードを受けている間に、4~8回外来受診をした。子癇前症の発生率は、プラセボ群との比較で、L-アルギニン+抗酸化ビタミン群で絶対リスクは0.17(95%信頼区間:0.12~0.21)低下し、有意な減少が認められた(p<0.001)。抗酸化ビタミン単独群でもベネフィットは認められたが、統計的には有意でなかった[p=0.052、絶対リスク低下:0.07(同:0.005~0.15)]。L-アルギニン+抗酸化ビタミン群の効果は、抗酸化ビタミン単独群との比較でも有意であった[p=0.004、絶対リスク低下:0.09(同:0.05~0.14)]。

30831.

人のハいで読める ! Dr.山口の胸部写真読影 免許皆伝

第1回「基礎編① 基本は正常解剖から」第2回「基礎編② 人のハい読影法とは?」第3回「基礎編③ 無気肺を覚えよう!」 第1回「基礎編① 基本は正常解剖から」読影法の基本となる「正常解剖」を簡単におさらいします。気管と気管支、大静脈心臓と大動脈、肺動脈等、読影の際に必要不可欠な着目点をイラストやCT 画像も加えながら、読影の考え方の基本からじっくりと見ていきます。読影が苦手な人、もっと早く読影したい人、自分に合った読影法を探している人にとって大いに参考になるはずです。第2回「基礎編② 人のハい読影法とは?」人のハい読影法の具体的なコンセプトにグッと迫ります。まずはマイナーフィッシャー、メジャーフィッシャー、縦隔線といった読影の手掛かりとなる「線」の解説から始まり、本題の「人のハい読影法」を実例と簡略イラストを交えて、詳しく解説します。そして読影法の補足として、見逃してはいけない大切なサイン、例えば、シルエットサイン、サービコトラチックサインなどをおさらいします。マンツーマンのQ & A 形式で実際の胸部写真を使いながら、読み方の順序、注意するポイントなどをじっくりとわかりやすく紹介します。第3回「基礎編③ 無気肺を覚えよう!」無気肺とは、肺の一部または肺全体の空気がなくなり肺がつぶれた状態です。放置しておくと肺炎なども引き起こすため的確な診断、すなわち正確な読影が重要となります。各肺葉の無気肺は、胸部X線写真においても特徴的な像を呈することから、これらの像をまずパターン認識して覚えておくことが大切です。今回はまずイラストで右上葉無気肺、右中葉無気肺、右下葉無気肺、左上葉無気肺、左下葉無気肺の各パターンを覚えます。そして後半では、実際の無気肺のX 線画像を使いながら、縦隔や太い気管支の偏位、横隔膜の偏位、胸郭の変形、無気肺陰影と隣接臓器とが接する部分のシルエットサインといった読影のポイントを、Q & A 形式で解説していきます。

30832.

小児の細菌性髄膜炎に対するCTRX、5日間投与vs. 10日間投与/Lancet

発展途上国の小児において重大な疾病であり死亡の原因となっている細菌性髄膜炎に対して、静注の抗菌薬セフトリアキソン(CTRX、商品名:ロセフィンなど)が多くの国で推奨されているが、その至適な投与期間について確立されていない。アフリカ南東部のマラウイ共和国・マラウイ大学医学校小児科のElizabeth Molyneux氏らは、CTRXの投与期間について、5日間投与と10日間投与との同等性を検証する国際共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を、2ヵ月~12歳児を対象に行った。Lancet誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。細菌学的治療失敗、再発を主要アウトカムに無作為化試験試験は2001年9月~2006年12月にかけて、バングラデシュ、エジプト、マラウィ、パキスタン、ベトナムの5ヵ国10小児科病院の協力を得て行われた。いずれの病院も年間150例以上の細菌性髄膜炎患児を受け入れていた。対象は、細菌性髄膜炎の原因菌として肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型、髄膜炎菌を有した2ヵ月~12歳児。無作為化は、5日間のCTRX治療で臨床的に安定したと診断された1,027例を、均等にコンピュータ配分で、さらに5日間治療を行う群とプラセボ群とに割り付ける方法で行われた。割り付け情報は患児、保護者、また医療スタッフにも知らされなかった。主要アウトカムは、細菌学的治療失敗(脳脊髄液または血液培養検査で陽性)および再発。分析は、パー・プロトコール解析にて行われた。5日間で症状が安定したら投与を打ち切って問題ない解析に含まれたのは、1,004例(5日間治療群:496例、10日間治療群:508例)だった。治療失敗例は、5日間治療群、10日間治療群ともに0例だった。再発は、5日間治療群で2例が報告、うち1例はHIVを有する患児だった。10日間治療群では再発はみられなかった。抗菌薬投与の副作用は、両群とも軽度で同等に認められた。Molyneux氏は、「肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型または髄膜炎菌による細菌性髄膜炎を発症した2ヵ月~12歳児で、CTRXの5日間投与で症状が安定した患児は、問題なく投与を打ち切ってよい」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30833.

再発性・治療抵抗性非小細胞肺がんへのベバシズマブ+エルロチニブ:BeTa試験

再発性または治療抵抗性の標準第一療法治療後の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)+エルロチニブ(同:タルセバ)の併用レジメンの有効性と安全性について検討された第3相二重盲検プラセボ対照試験「BeTa」の結果が、Lancet誌2011年5月28日号に掲載された。試験は、米国テキサス大学腫瘍学部門のRoy S Herbst氏らにより行われた。ベバシズマブとエルロチニブは腫瘍増殖ターゲット、細胞毒性効果がそれぞれ異なる。第1相、第2相試験で同併用レジメンの安全性および細胞活性が認められたことを踏まえて行われた試験であった。12ヵ国177施設からの636例を対象にBeTa試験は2005年6月~2008年4月に、12ヵ国177施設から登録された636例を対象に行われた。コンピュータシステムにて無作為に、エルロチニブ+ベバシズマブ群(ベバシズマブ群:319例)かエルロチニブ+プラセボ群(対照群:317例)に割り付けられた。割り付け情報は被験者、試験スタッフ、研究者には知らされなかった。主要エンドポイントは、全被験者の全生存期間とし、副次エンドポイントには、無病生存期間、客観的奏効率および期間、安全性(有害事象の発生率)、有効性エンドポイントとの評価、生物マーカー解析が含まれた。全生存期間中央値、ベバシズマブ群9.3ヵ月、対照群9.2ヵ月結果、全生存期間中央値は、ベバシズマブ群9.3ヵ月(IQR:4.1~21.6)、対照群9.2ヵ月(同:3.8~20.2)と、両群間に差は認められなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.80~1.18、p=0.7583)。無病生存期間は、ベバシズマブ群3.4ヵ月(同:1.4~8.4)、対照群1.7ヵ月(同:1.3~4.1)と、ベバシズマブ群のほうが長期であることが示された(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.52~0.75)。また、ベバシズマブとエルロチニブには臨床作用があることも示されたが、これら副次エンドポイントの結果は、有意差があると評価することはできなかった。本試験では、主要エンドポイントが副次エンドポイントよりも先に有意であることが示されていなければならないとされていたことによる。重篤な有害事象は、ベバシズマブ群で42%(安全性に関するデータが利用できた313例中130例)、対照群は36%(114/317例)報告された。グレード5の事象発生は、ベバシズマブ群では、動脈血栓塞栓症イベント2例などを含む20件(6%)が、対照群では14件(4%)が報告された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30834.

脳卒中後の体重免可トレッドミルトレーニングはPT訪問リハビリより有効か

米国で脳卒中後リハビリテーションとして取り入れられるようになっている、体重支持吊り下げ装置付きトレッドミル運動機器を用いた歩行訓練(体重免可トレッドミルトレーニング:BWSTT)の有効性について、理学療法士(PT)による訪問リハビリでの漸進的エクササイズとの比較での無作為化試験が行われた。米国NIHから助成金を受け脳卒中後リハビリの有効性、時期、強度、期間について調査研究をしているデューク大学地域・家庭医学部門のPamela W. Duncan氏らLEAPS(Locomotor Experience Applied Post-Stroke)研究グループが行った。BWSTTは、パイロット試験や小規模臨床試験で効果が示唆されている程度だが商業ベースに乗り導入が増えており、早急な無作為化試験の実施が求められていたという。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。早期BWSTT群、後期BWSTT群、訪問リハ群に割り付け評価研究グループは、以下を仮定し第3相単盲検無作為化試験を行った。(1)標準的理学療法に加えてのBWSTTは、早期提供(脳卒中後2ヵ月)あるいは後期提供(同6ヵ月)とも1年時点の歩行機能レベルの高い患者の割合が、PTにより脳卒中後2ヵ月に行われる漸進的強度・バランス運動による割合よりも多い。(2)BWSTTの早期実施は同後期実施よりも歩行速度を改善(なぜならパイロット試験で早期の回復程度が最も大きいと示されているから)し、6ヵ月時点までに申し分ないものとなる。被験者は、脳卒中後2ヵ月未満の408例(62.0±12.7歳、男性54.9%、4,909例を2回のスクリーニングで絞り込んだ)で、歩行障害の程度に応じて中等度(0.4~0.8m/秒歩行可能、53.4%)か重度(<0.4m/秒、46.6%)に階層化し、3つのトレーニング群(早期BWSTT群:139例、後期BWSTT群:143例、訪問リハ群:126例)のいずれかに無作為に割り付けた。各群介入は90分のセッションを週3回、36回(12~16週の間に)行われた。主要アウトカムは、各群の1年時点の歩行機能改善者の割合とした。歩行機能改善について3群で有意差なし、歩行速度など改善同程度1年時点で歩行機能が改善したのは、被験者全体では52.0%だった。早期BWSTT群と訪問リハ群の改善について有意差はなかった(補正後オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.50~1.39)。後期BWSTT群と訪問リハ群についても有意差はなかった(同:1.19、0.72~1.99)。3群の、歩行速度、運動機能回復、バランス感覚、機能状態、QOLの改善は同程度だった。また、BWSTT介入が遅いことや、初期の歩行障害が重度であることは、1年時点のアウトカムに影響はなかった。関連する重篤有害事象は10件報告された(早期BWSTT群2.2%、後期BWSTT群3.5%、訪問リハ群1.6%)。軽度有害事象は、訪問リハ群と比較して両BWSTT群で介入期間中、めまいや失神の発生頻度が高かった(P=0.008)。また歩行障害が重度の被験者において複数回転倒する人が、早期BWSTT群で他の2群よりみられた(P=0.02)。研究グループは「BWSTTが、PT訪問リハでの漸進的エクササイズよりも優れていることは立証されなかった」と結論。「訪問リハのほうがリスクが小さく、適しているといえるかもしれない。また重度歩行障害者に早期BWSTTを行った場合の複数回転倒の割合が高いことは、これら患者には歩行機能改善に加えてバランス感覚を改善するプログラムを組み込むべきであることを示唆するものである」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

30835.

細菌性髄膜炎、ワクチン導入で乳幼児リスクは減少、疾病負荷は高齢者に:米国CDC

1998~2007年の細菌性髄膜炎に関する疫学調査を行った米国疾病管理予防センター(CDC)は、発生率は減少しているが、同疾病による死亡率はなお高いこと、また1990年代初期以降の各対策導入によって乳幼児のリスクの減少には成功したが、相対的に現在、高齢者が疾病負荷を負うようになっているとの報告を発表した。米国では1990年代初期に乳幼児へのインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを導入した結果、細菌性髄膜炎の発生率が55%減少。2000年に導入した肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)では、侵襲性肺炎球菌感染症が5歳未満児75%減少、65歳以上31%減少したと報告されている。このほかにも全妊婦を対象にB群レンサ球菌(GBS)スクリーニングなど予防策が講じられるようになっており、今回の調査は、今後の予防戦略の基礎資料とするため1998~2007年の細菌性髄膜炎の発生率の動向、2003~2007年の髄膜炎の疫学を評価することを目的に行われた。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。1998年から2007年の間に発生率31%減少調査は、Emerging Infections Programs Network(新興感染症プログラムネットワーク:EIPネットワーク)の8つのサーベイラインス地域(1,740万人居住)から報告された細菌性髄膜炎の症例を分析して行われた。細菌性髄膜炎については、髄膜炎の臨床診断と合わせて、脳脊髄液その他通常無菌部位に、インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、GBS、リステリア菌、髄膜炎菌のいずれかが確認された場合と定義した。対象地域・期間中、細菌性髄膜炎と特定された患者は3,188人だった。転帰データが入手できたのは3,155人、うち死亡は466人(14.8%)だった。髄膜炎の発生率は、31%減少(95%信頼区間:-33~-29)していた。1998~1999年には人口10万当たり2.00例(同:1.85~2.15)だったが、2006~2007年には同1.38(同:1.27~1.50)となっていた。患者年齢30.3歳から41.9歳に上昇患者の年齢中央値は、30.3歳(1998~1999年)から41.9歳(2006~2007年)へと上昇していた(Wilcoxon順位和検定によるP<0.001)。致命率は、1998~1999年15.7%、2006~2007年14.3%で、有意な変化がみられなかった(P=0.50)。2003~2007年報告症例(1,670例)では、最も優勢を占めたのは肺炎レンサ球菌で58.0%に上っていた。次いでGBS(18.1%)、髄膜炎菌(13.9%)、インフルエンザ菌(6.7%)、リステリア菌(3.4%)だった。2003~2007年の米国における細菌性髄膜炎の年間症例数は約4,100例、死亡500例と推定された。(武藤まき:医療ライター)

30836.

健康な中年女性の新規心房細動発症は、死亡リスクの独立因子

致死的心血管イベントの潜在的なリスクがわずかな健康な中年女性において、新規心房細動発症は死亡リスクの独立した因子であることが報告された。米国3万人強の女性を対象とするWomen’s Health Study(WHS)のデータを基に、スイス・バーゼル大学病院のDavid Conen氏らが分析を行い報告したもので、JAMA誌2011年5月25日号で発表した。心房細動・心血管疾患歴のない女性約3万5,000人を中央値15.4年追跡Conen氏らは、1993~2010年(3月16日)にかけてWHSに参加し、試験開始時に心房細動歴や心血管疾患歴のない3万4,722人について調査を行った。被験者の年齢は試験開始時点で45歳以上、中央値53歳だった。主要アウトカムは、総死亡、心血管死、非心血管死とし、副次アウトカムは、脳卒中、うっ血性心不全、心筋梗塞などだった。追跡期間の中央値は15.4年、追跡期間中に心房細動を発症したのは1,011人(2.9%)だった。総死亡リスク2.14倍、心血管死リスク4.18倍、非心血管死リスク1.66倍心房細動の有無によって罹患率を比較したところ、1,000人・年当たりの総死亡率は、心房細動発症者が10.8に対し非発症者が3.1、心血管死亡率は同じく4.3に対し0.57、非心血管死亡率は6.5に対し2.5と、心房細動発症者がいずれも有意に高率だった。多変量モデルによる分析の結果、新規心房細動発症者の非発症者に対するハザード比は、総死亡が2.14(95%信頼区間:1.64~2.77)、心血管死が4.18(同:2.69~6.51)、非心血管死が1.66(同:1.19~2.30)だった。死因の可能性がある非致死的心血管イベントについて補正後、これらハザード比は減弱したが、心房細動発症は各死亡のリスク因子として有意なままだった。補正後ハザード比は、総死亡1.70、心血管死2.57、非心血管死1.42。なお、発作性心房細動発症者(656人)の死亡リスクは、心血管疾患によるもののみ高く、ハザード比は2.94だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30837.

プライマリ・ケア医が多い地域、高齢者の転帰良好、死亡率など低下:米国

米国で、プライマリ・ケア医が多い地域は少ない地域に比べ、高齢者の転帰が良く、死亡率や外来通院で治療が可能な病気(ACSC)による入院率などが低率であることが報告された。外来プライマリ・ケアの実態を反映する、メディケア支払いに基づくプライマリ・ケア専従換算に基づく分析でその傾向はより強く示された。ただしその場合、医療費コストは割高であることも示されたという。米国・ダートマス医学校健康政策研究センターのChiang-Hua Chang氏らが、米国高齢者向け公的医療保険(メディケア)加入者のうち、出来高払い制プラン加入者の約20%にあたる500万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年5月25日号で発表した。医療の質が向上しコストも抑制できるとしてプライマリ・ケア医を増やすことへの関心は高いが、プライマリ・ケア医数と患者のアウトカムに関しては十分に明らかにはされていないという。二通りのプライマリ・ケア医算出法で、死亡率、ACSC入院率、コストについて分析Chang氏らは、2007年のメディケア出来高払い制プラン加入者のうち、513万2,936人について、人口当たりプライマリ・ケア医の数と、その転帰との関連を分析した。プライマリ・ケア医数(一般内科医と家庭医)については、被験者の居住地郵便番号で割り振ったプライマリ・ケアサービス地域(PCSA)ごとに、(1)米国医師会データの診療所ベースでみた地域総人口当たりの数、(2)メディケア支払いに基づく同受給者当たりのプライマリ・ケア専従換算者数(FTE)の二通りで算出した。主要アウトカムは、年間死亡率とACSCによる入院率、メディケア支払いコストとし、個人の属性や地域によって補正を行った。結果、プライマリ・ケア医数は地域による顕著な格差がみられた。(1)での分析による五分位範囲最低群の中央値は人口10万当たり17.4人、最高群は同81.3人であり、(2)の分析でもほぼ2倍の格差があり、最低群は加入者10万当たり64.7人、最高群は同103.2であった。なお(1)と(2)の医師数間の相関性は低かった(スピアマン順位相関係数:r=0.056、P<0.001)。プライマリ・ケア専従が多い地域、死亡率、ACSC入院率は低いがコスト高(1)での分析による死亡率は、五分位範囲最低群で5.47/100加入者だったのに対し、最高群では5.38/100加入者(リスク比:0.98)、ACSC入院率はそれぞれ79.61/1,000加入者と74.90/1,000加入者(リスク比:0.94)で、プライマリ・ケア医数が多い地域のほうがそれぞれ有意に低かった。コストは、最低群と最高群で有意差はなかった。加入者1人当たり最低群8,765ドル、最高群8,722ドル(リスク比:1.00)だった。(2)の分析でも、死亡率は最低群5.49/100加入者だったのに対し、最高群5.19/100加入者(リスク比:0.95)、ACSC入院率はそれぞれ79.48/1000加入者と72.53/1000加入者(リスク比:0.91)で、プライマリ・ケア医数が多い地域が有意に低かった。しかしコストについては、最低群8,769ドルに対し、最高群8,857ドルと、やや高額であった(リスク比:1.01)。Chang氏は報告の最後で、「我々の研究は、プライマリ・ケア医を増やすだけでは死亡率や入院率、医療費コストを確実に大幅に低下することにはならないという慎重な見方を提示するものである」と述べ、「結果として名ばかりのプライマリ・ケア医となれば、養成増は患者にとって期待外れの恩恵しかもたらさないものとなりかねない」とまとめている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30838.

骨髄異形成症候群-相次ぐ新薬発売で治療が大きく変化

骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に多く見られる疾患で、高齢者の人口増加に伴い有病率の増加が懸念されている。MDS治療において、治癒を期待できるのは造血幹細胞移植のみであるが、高齢者には難しく、有効な治療手段がない。このような状況のなか、昨年から今年にかけてMDS治療における新薬の発売が相次ぎ、治療方法が大きく変化しつつある。 ここでは、2011年5月31日、帝国ホテル(東京)にて開催されたプレスセミナー「今だからこそ正しく知りたい『血液がん』~MDSの事例から~」(主催:セルジーン株式会社)での埼玉医科大学総合医療センター血液内科 教授 木崎昌弘氏の講演から、MDSの最新の治療についてレポートする。増加するMDS患者現在、日本におけるMDS患者は約10,000 人と推定され、高齢者の人口増加に伴い患者数は増加している。患者数の増加について、木崎氏は「疾患に関する理解が広まり、血液内科へ紹介、診断されるケースが増えていることも理由の1つではないか」と述べた。MDSは、骨髄不全と前白血病状態という2つの側面を持つ疾患である。男女比は2:1で、高齢者に多く発症し、他のがんに対する化学療法や放射線療法の前治療歴もリスク因子に挙げられている。MDSのリスク分類と治療の現状MDSの治療方針は、MDSの病型、リスク分類に加え、症状、年齢、全身状態、患者の意向を考慮し決定される。リスク分類については、国際予後判定システム(IPSS)では「骨髄中の芽球の割合」「血球減少が何種類か」「染色体異常の種類」の3項目により判定するが、各リスク群における生存期間中央値と急性骨髄性白血病(AML)移行率は、低リスク:5.7年/19%、中間リスク-1:3.5年/30%、中間リスク-2:1.2年/33%、高リスク:0.4年/45%である。現在、MDS治療で治癒を期待できるのは同種造血幹細胞移植のみであるが、高リスク群あるいは頻回の輸血を必要とする場合に適応となり、一般的には55歳位までに限られている。日本における移植成績は欧米よりも良好であり、MDS全体での移植後長期生存率は約40%と比較的良好といえる。比較的若年者には、AML治療に準じた強力な化学療法が行われるが、一般的に奏効率は低い。相次ぐ新薬発売このような状況のなか、2010年、新たな治療薬としてレナリドミド(商品名:レブリミド)が承認された。レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失を伴うMDSに対して有用性が認められており、海外第3相試験において、プラセボ群に比べて赤血球輸血非依存率を有意に増加させ、ヘモグロビン値を増加させることが示されている。また、5番染色体異常が正常になる例も認められたことから、木崎氏は疾患の本態を改善している可能性もあると述べた。さらに自験例として、レナリドミドの投与により、へモグロビン値が徐々に増加し、5番染色体異常が正常となった症例(68歳女性)の治療経過を提示した。さらに今年、メチル化阻害剤であるアザシチジン(商品名:ビダーザ)が発売された。アザシチジンは高リスクMDSにおいて高い有効性を示し、多施設国際共同第3相試験において、従来の治療群と比較して全生存期間(24.5ヵ月 vs 15ヵ月)、2年生存率(50.8% vs 26.2%)を有意に改善したことが報告されている。輸血依存による鉄過剰症の治療一方、MDS治療においては、輸血依存による鉄過剰症がしばしば問題となる。鉄過剰症はさまざまな臓器障害の原因となり、全生存率(OS)を低下させるが、過剰となった鉄分を除去する鉄キレート剤デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)が2008年に発売されている。フランスでのプロスペクティブ調査では、赤血球輸血を実施するMDS患者において、デフェラシロクス投与によりOSを有意に改善したことが報告されている。新たな治療薬を含めたリスク別治療方針木崎氏は、米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン2011年v.2を基にしたリスク別治療方針を紹介した。低リスク群では輸血頻度の軽減やAMLへの移行をできるだけ少なくするために、造血因子やレナリドミド、アザシチジンを投与する。高リスク群では生存期間の延長をゴールとして、アザシチジンの投与やAMLに準じた化学療法、同種造血幹細胞移植を行う。残念ながら、治療失敗あるいは治療に反応しない場合には臨床試験に頼るしかないという現状である。患者さんとの向き合い方MDS患者には、どのように向かい合えばよいのか。木崎氏はMDS患者に対して、MDSにはさまざまな治療の選択肢があること、加えて、治りにくい病気であるが病態解明に関する研究の進歩とともに新しい薬剤の開発も盛んなので、主治医と相談して最適な治療法を選択するように伝えていると紹介した。(ケアネット 金沢 浩子)

30839.

初発心筋梗塞後のアスピリン+PPI、非PPI併用と比べ心血管イベントリスク1.46倍

 抗血栓薬とプロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用は抗血栓効果を減弱し心血管リスクを高めるとの報告に大きな注目が集まっているなか、デンマーク・コペンハーゲン大学病院循環器部門のMette Charlot氏らが、アスピリンとPPIの併用による心血管リスクについて、同国内診療データを基に後ろ向き解析を行った。初発心筋梗塞後で同併用を受けている患者について調査した結果、有害心血管イベントリスク上昇との関連が認められたと報告している。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月11日号)掲載より。デンマーク国内30歳以上の診療データを基に後ろ向き傾向スコア適合研究 Charlot氏らは、初発心筋梗塞後でアスピリン治療を受けている患者の重大心血管イベント発生について、PPIの影響を評価することを目的に、デンマーク国内全病院の診療データを基にした後ろ向き傾向スコア適合研究を行った。 被験者は、1997~2006年の間に30歳以上で、初発心筋梗塞を発症し退院後30日間生存、その間にアスピリンの処方を受けた全患者とし、退院後1年間追跡した。クロピドグレル(商品名:プラビックス)の処方を受けた患者は除外した。 主要転帰は、心血管死・心筋梗塞再発・脳卒中の複合エンドポイントとし、PPI使用との関連をKaplan-Meier分析法、Cox比例ハザードモデル、傾向スコア適合Cox比例ハザードモデルを用いて解析を行った。PPI併用者の特徴は、高齢、女性、複数投与、より多くの共存症 試験適格患者は1万9,925人だった。そのうち3,366人(16.9%)に複合エンドポイント(心血管死・心筋梗塞再発・脳卒中)が認められた。 試験適格患者のうち、PPI併用者は4,306例(21.6%)だった。PPI併用者は非併用者と比べ、高齢で、女性が多く、複数の薬物併用投与を受けており、より多くの共存症を有していた。 時間依存型解析による、PPI併用者の非併用者に対する複合エンドポイント発生のハザード比は1.46(95%信頼区間:1.33~1.61、p<0.001)だった。 傾向スコア適合モデル(8,318人)に基づく同ハザード比は1.61(同:1.45~1.79、p<0.001)だった。 また感度解析の結果、アスピリンとH2ブロッカー併用ではリスク上昇との関連は示されなかった(ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.79~1.38、p=0.78)。

30840.

2008年英国NICEの勧告による、歯科治療での抗菌薬予防的投与中止の影響

感染性心内膜炎のリスクが高いと思われる患者に対する抗菌薬の予防的投与は、いまだ多くの国で行われているが、英国国立医療技術評価機構(NICE)は2008年3月に、歯科の侵襲的治療に先立って行われる同抗菌薬予防的投与の完全中止を勧告した。シェフィールド大学臨床歯科学部門のMartin H Thornhill氏らは、このNICEガイドライン導入前後の同処置変化および感染性心内膜炎発生率の変化を調査した。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載より。ガイドライン後、予防的投与は78.6%減少、症例・関連死の増加傾向がストップ英国では全入院患者について、1次的退院診断名と最大12の2次的診断名がデータベース化されている。Thornhill氏らは、そのデータから、1次的退院診断名および2次的診断名として、急性または亜急性の感染性心内膜炎のデータがある患者を対象に、ガイドライン導入前後の比較研究を行った。主要評価項目は、予防的投与に用いられたアモキシシリン(商品名:サワシリンなど)3g単回経口投与またはクリンダマイシン(同:ダラシン)600mg単回経口投与の1ヵ月間の処方数、感染性心内膜炎の毎月の症例数、同疾患関連による病院死または口腔レンサ球菌によると考えられる感染性心内膜炎の症例数とした。結果、NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方数は、月平均1万277例(標準偏差:1,068)から2,292例(同:176)と、78.6%(P<0.001)減少という有意に大きな変化がみられた。一方で、ガイドライン導入前にみられていた感染性心内膜炎の普遍的な増加傾向が、導入後は一転してみられなくなっていた(P=0.61)。非劣性試験の結果、ガイドライン導入後、症例増加については9.3%以上、また感染性心内膜炎関連の病院死増加については12.3%以上を削減した可能性が示された。ハイリスク患者への予防的投与についてはさらなる検証をThornhill氏は、「NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方は78.6%も減少したにもかかわらず、導入後2年間の感染性心内膜炎の発症例または死亡率の増加を大きく削減していた。このことはガイドライン支持に寄与するが、今後もデータのモニタリングを行い、さらに臨床試験によって、特にハイリスク患者を感染から守るには抗菌薬予防的投与が有用であるのかどうか決定する必要がある」と述べている。

検索結果 合計:33593件 表示位置:30821 - 30840