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1型糖尿病に対するIL-1阻害薬単独投与、膵β細胞機能を改善せず/Lancet

 発症して間もない1型糖尿病の治療において、ヒト型抗ヒトIL-1モノクローナル抗体カナキヌマブ(商品名:イラレス、承認適応はクリオピリン関連周期性症候群)、およびヒトIL-1受容体拮抗薬アナキンラ(未承認)をそれぞれ単独投与しても、膵β細胞機能の改善効果は得られないことが、米国・ミネソタ大学のAntoinette Moran氏らによる検討で示された。1型糖尿病などの自己免疫性疾患の病因には自然免疫が関与しているが、これまでに自然免疫の主要なメディエーターであるIL-1を阻害するアプローチの有用性を評価する臨床試験は行われていないという。Lancet誌2013年6月1日号(オンライン版2013年4月5日号)掲載の報告。2種類のIL-1阻害薬の単独投与の効果を2つのプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、発症して間もない1型糖尿病患者に対するカナキヌマブおよびアナキンラによる膵β細胞機能の改善効果を評価する2つのプラセボ対照無作為化第IIa相試験[Type 1 Diabetes TrialNet Canakinumab Study(カナキヌマブ試験)、Anti-Interleukin-1 in Diabetes Action(AIDA、アナキンラ試験)]を実施した。 対象は、混合食負荷試験(MMTT)でC-ペプチド値0.2nmol/L以上の1型糖尿病であり、カナキヌマブ試験は年齢6~45歳、試験登録前100日以内に診断を受けた患者、アナキンラ試験は年齢18~35歳、12週以内に診断を受けた患者であった。 カナキヌマブ試験には北米の12施設が、アナキンラ試験には欧州の14施設が参加し、それぞれカナキヌマブ2mg/kg(最大300mg)またはプラセボを月1回、12ヵ月投与する群、およびアナキンラ100mg/日またはプラセボを9ヵ月投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了時のMMTTによるC-ペプチド値の2時間曲線下面積(AUC)(ベースライン値で調整)とした。いずれも単剤では無効、併用療法として有効な可能性も カナキヌマブ試験には、2010年11月12日~2011年4月11日までに69例が登録され、カナキヌマブ群に47例(年齢中央値11歳、男性51%)が、プラセボ群には22例(10.5歳、64%)が割り付けられ、それぞれ45例、21例が解析の対象となった。 アナキンラ試験にも、2009年1月26日~2011年5月25日までに69例が登録され、アナキンラ群に35例(年齢中央値27歳、男性74%)が、プラセボ群には34例(25歳、65%)が割り付けられ、それぞれ25例、26例が解析の対象とされた。 治療終了時の試験薬群とプラセボ群のC-ペプチド値AUCの差は、カナキヌマブ試験が0.01nmol/L(95%信頼区間[CI]:-0.11~0.14、p=0.86)、アナキンラ試験は0.02nmol/L(95%CI:-0.09~0.15、p=0.71)であり、いずれも試験薬による有意な改善効果は認めなかった。 有害事象については、カナキヌマブ試験では発生数および重症度のいずれも両群間に差はなく、アナキンラ試験は試験薬群がプラセボ群よりも重症度が有意に高かった(p=0.018)が、これは主にGrade 2の頻度の差(29 vs 12%)や、注射部位反応などの皮膚科的イベントの頻度の差(54 vs 26%)によるものだった。 著者は、「カナキヌマブおよびアナキンラは1型糖尿病患者の治療において安全に投与可能であるが、免疫調節薬の単独療法としてはいずれも膵β細胞機能の改善には無効であった」と結論づけ、「IL-1阻害薬は、臓器特異的な自己免疫性疾患の治療において、獲得免疫を標的とする薬剤との併用で有効性を発揮したり、早期の病態(前糖尿病)における糖尿病の予防治療として効果を示す可能性がある」と指摘している。

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脳卒中患者の下肢への間欠的空気圧迫法、DVTリスクを低減/Lancet

 脳卒中により自力歩行が困難な患者において、下肢への間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression:IPC)は深部静脈血栓症(DVT)のリスクを有意に抑制し、生存率を改善する可能性もあることが、英国・エジンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったCLOTS 3試験で示された(http://www.dcn.ed.ac.uk/clots/)。脳卒中などで入院した患者に高頻度にみられる静脈血栓塞栓症(VTE)は、回避可能な死因、併存症と考えられている。外科手術を受けた患者ではIPCにより下肢を連続的に圧迫することでDVTのリスクが低下することが知られているが、脳卒中患者に対する効果を示す信頼性の高いエビデンスはこれまでなかったという。本研究は2013年5月31日に欧州脳卒中学会(ESC、ロンドン市)で報告され、同日付けLancet誌オンライン版に掲載された。DVTリスク低減効果を無作為化試験で評価 CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)3試験は、脳卒中患者におけるIPCのDVTリスク低減効果を評価する多施設共同無作為化試験。急性脳卒中で入院後3日以内の、自力では動けない(介助なしではトイレに行けない)患者を対象とした。 これらの患者がIPC(両下肢)を施行する群または非IPC群に無作為に割り付けられ、7~10日および25~30日に圧迫duplex超音波検査(CDU)によるDVTの評価が行われた。6ヵ月間のフォローアップを行い、生存および症候性VTEの発現状況について検討した。 画像診断医やCDU技師には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は30日までにCDUで検出された近位静脈のDVTまたは画像検査で確認された近位静脈の症候性DVTとした。DVTリスクを35%抑制、とくに出血性脳卒中で高い効果 2008年12月8日~2012年9月6日までに英国の94施設から2,876例が登録され、IPC群に1,438例(年齢中央値76歳、男性48%)が、非IPC群にも1,438例(77歳、48%)が割り付けられた。 主要評価項目の発現率はIPC群が8.5%(122/1,438例)、非IPC群は12.1%(174/1,438例)であり、IPCによる絶対リスク減少率(ARR)は3.6%(95%信頼区間[CI]:1.4~5.8)であった。 主要評価項目到達前に死亡した323例およびCDUを受けなかった41例を除外した場合の主要評価項目の発現率は、IPC群9.6%(122/1,267例)、非IPC群14.0%(174/1,245例)であり、調整オッズ比(OR)は0.65(95%CI:0.51~0.84、p=0.001)と有意差が認められた。 30日死亡率はIPC群が10.8%(156例)と、非IPC群の13.1%(189例)に比べ良好な傾向が認められた(OR:0.80、95%CI:0.63~1.01、p=0.057)。 下肢の皮膚損傷がIPC群の3.1%(44例)にみられ、非IPC群の1.4%(20例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.002)が、負傷を伴う転倒はそれぞれ2.3%(33例)、1.7%(24例)と両群間に差を認めなかった(p=0.221)。 著者は、「IPCは、運動能が低下した脳卒中患者におけるDVTリスクの低減に有効な方法であり、生存率を改善する可能性も示唆される」と結論し、「とくに出血性脳卒中患者に対する高い効果は注目に値する(OR:0.36、95%CI:0.17~0.75)。また、IPCはDVTリスクの高い他の疾患にも有効な可能性がある」と指摘している。

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境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連

 Edward A. Selby氏は、境界性パーソナリティ障害(BPD)と睡眠障害の関連について、レトロスペクティブに検討を行った。その結果、BPDと睡眠障害との間に関連が認められ、両者が相互に悪影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。これまで、BPDにおける慢性睡眠障害の状況を検討した研究は少なかった。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 睡眠と感情の制御およびストレス管理との関連を明らかにしてこれらの関係を立証することは、現在の治療の向上につながりうる。本研究で著者は、パーソナリティ障害と睡眠障害について評価しているNational Comorbidity Survey-Replication(NCS-R)Part IIの母集団(Kessler & Merikangas、2004のデータ[5,692例])を解析し、慢性睡眠障害の程度(入眠困難、睡眠維持困難、早期覚醒)と、その結果としての浅眠について検討した。 慢性的な健康の問題、Axis Iの合併症、過去1年間の自殺企図および社会人口統計学的な項目を踏まえたうえで、BPDの診断項目と症状を用いてロジスティックおよび線形回帰解析を行い、睡眠と関連する問題の予測を行った。 主な結果は以下のとおり。・BPDは、慢性の睡眠に関連する3つの問題すべてと有意に関連しており、その結果として不眠症とも関連していた。・BPDと睡眠の問題との関連の程度は、従来より示されているAxis I障害と睡眠の問題との関連の程度に匹敵するものであった。・BPDの症状は慢性の睡眠の問題と相互に作用し、社会的/感情障害、認知障害、自己管理障害に関連していることが予測された。・以上より著者は、「睡眠障害とBPD症状との間には一貫した関連がみられ、日中の浅眠につながっている。そして浅眠によりBPD症状が悪化するという悪循環が、高レベルの機能障害につながっている」とまとめ、「BPD患者の睡眠状況を日常的に評価すべきであり、慢性の睡眠問題の解決は、感情コントロールの改善、治療スキルの実施を通して治療の向上につながる可能性がある」と考察している。関連医療ニュース 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには 双極性障害の自殺予防に求められるのは・・・ 検証!統合失調症患者の睡眠状態とは

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聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】

3.「腰痛篇」4.「腹痛篇」 3.「腰痛篇」特に高齢の方に多い腰痛。骨の疾患に加えて、中には重篤な疾患も含まれるため要注意です。【症例1】1年前に「ぎっくり腰」の診断を受けたことがある76歳の女性。今回は歩けなくなるほどの腰痛ということで救急で受診されました。診察の結果、圧迫骨折であることがわかりました。圧迫骨折は、骨粗鬆症を原因とする場合が多く、これをきっかけに寝たきりになるケースも多いことから、ぜひとも予防したい疾患です。そのためにも、骨密度検査を積極的に行うことが重要なポイントになります。【症例2】3日前から腰痛と右大腿部痛を自覚された79歳の女性。慢性糸球体腎炎、好酸球性心筋炎の治療中です。この症例を腰痛のRed flag signに照らしあわせて診察を進めていくと、重大な疾患が見つかりました。腰痛の原因となる重大な疾患をどう見つけるかについて詳しく解説します。【症例3】37歳の若い男性。腰背部痛は17年前からと長期にわたり、数年前からは、仰臥位を取ることができず、ソファで座って眠っているとのことです。身体所見、検査ともに大きな異常は見つかりませんでしたが、カギとなった項目がESR上昇でした。腰痛の原因となる重篤な疾患では、ESRが上昇することが多いのです。さっそく、状況から膠原病科にコンサルトしたところ、診断することができました。【症例4】2ヵ月前から腰痛が増悪している60歳の男性。変形性脊椎症を疑われていましたが、ついに激痛で立てなくなり救急外来を受診しました。前回紹介した腰痛のRed flag signに照らし合わせてみると、安静で軽快しないなど、どうやら重大な疾患が隠れていそうです。4.「腹痛篇」ひとえに腹痛といっても、その部位、痛みの性質、強さによって症状も原因もさまざまです。なかには、重篤な疾患も含まれているため、注意が必要です。【症例1】比較的急激に発症した心窩部痛で救急外来に訪れた37歳の男性。痛みもスケール10/10と激しい痛みです。このような急性腹症は、消化管の穿孔や肝胆系の急性炎症、大血管系の障害も考えられます。本症例では、多量の飲酒歴から、急性膵炎を疑い検査を進めます。【症例2】急激に上腹部痛を発症した55歳の男性。やはり、飲酒歴があります。腹膜刺激症状が出ていることから、CTを撮影したところ、アルコール性の急性膵炎であることがわかりました。他に、消化管穿孔の症例もご紹介します。【症例3】大動脈瘤を指摘されている84歳の男性。がまんできない下腹部痛で来院しました。さっそく"OPQRST"で診断したところ、腸管穿孔や大動脈瘤破裂が疑われました。検査を進めたところ、CTで腹腔内遊離ガスから、十二指腸潰瘍穿孔であることがわかりました。【症例4】糖尿病と高血圧の既往のある55歳の男性。がまんできない左側腹部痛で来院しました。こちらも、"OPQRST"で診断したところ、重篤な疾患であることはまちがいなさそうです。身体所見では、血圧が収縮期で90mmHgと低下し、ショックバイタルを示していました。急いで腹部造影CTを撮ったところ、大動脈瘤破裂が見つかりました。緊急性の高い急性腹症の重篤な疾患の見分け方についても詳しく解説します。

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重症インフルエンザへのオセルタミビル2倍量投与の効果を検討/BMJ

 重症インフルエンザに対し、オセルタミビルを通常の2倍量投与しても、治療効果は通常量投与の場合と同等であったことが示された。東南アジア感染症臨床研究ネットワーク(South East Asia Infectious Disease Clinical Research Network)が、インドネシアなど東南アジア4ヵ国13病院で重症インフルエンザ患者について行った、無作為化二重盲検試験の結果、報告した。BMJ誌5月30日号で発表した。4ヵ国13ヵ所の病院で326人の患者を無作為化 ガイドラインでは、重症インフルエンザに対し通常量よりも高用量を用いることが推奨されている。同ネットワークはその推奨の妥当性を調べることを目的に、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの13ヵ所の医療機関で無作為化二重盲検試験を行った。 重症インフルエンザの確定診断を受けた1歳以上の入院患者326例を無作為に2群に分け、一方にはオセルタミビルを通常の2倍量(165例)、もう一方には通常量(161例)を投与した。被験者のうち、15歳未満は246例(75.5%)だった。 主要アウトカムは、投与5日目の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によるウイルスの有無とした。投与5日目のインフルエンザ陰性率は両群とも約7割 被験者のうち、インフルエンザA型ウイルス感染者は260例(79.8%)、インフルエンザB型ウイルス感染者は53例(16.2%)だった。 5日目にRT-PCR陰性だった割合は、2倍量群が159例中115例(72.3%、95%信頼区間:64.9~78.7)、通常量群が154例中105例(68.2%、同:60.5~75.0)と、両群に有意差はなかった(群間格差:4.2%、同:-5.9~14.2、p=0.42)。 死亡率についても、2倍量群が165例中12例(7.3%)、通常量群が161例中9例(5.6%)と、有意差はなかった(p=0.54)。 酸素補充療法や集中治療室(ICU)での治療、人工呼吸器を利用した日数の中央値も、いずれも両群で有意差はなかった。 著者は「重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルの2倍量投与は通常投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも利点は認められなかった」と結論している。

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クリゾチニブ、ALK融合遺伝子陽性進行NSCLCの2次治療として有効/NEJM

 既治療の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ALKのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、標準的な化学療法よりも優れた有用性を持つことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlice T Shaw氏らの検討で示された。日本も参加した本試験の報告は、米国臨床腫瘍学会(ASCO、シカゴ市)期間中の2013年6月1日にNEJM誌オンライン版に掲載された。ALKは、NSCLC、未分化大細胞リンパ腫、小児神経芽細胞腫などのがん種で確認されているチロシンキナーゼであり、NSCLCの約5%にみられるALKの染色体再配列は肺がんの分子サブタイプに規定されている。クリゾチニブは、ALK、ROS1、METを標的とする低分子の経口TKIで、すでに2つの単群試験で優れた臨床効果が確認されている。標準的な単剤化学療法と非盲検無作為化試験で比較 研究グループは、進行NSCLCの治療におけるクリゾチニブと標準的化学療法の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験を行った。 対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法による1レジメンの前治療歴があるALK融合遺伝子陽性の局所進行・転移性NSCLC患者であった。これらの患者が、クリゾチニブ(250mg)を1日2回経口投与する群または標準的な化学療法[3週を1コースとしてペメトレキセド(PEM、500mg/m2)もしくはドセタキセル(DOC、75mg/m2)を静注投与]を施行する群に無作為に割り付けられた。 化学療法群のうち病勢進行(PD)となった患者は、クリゾチニブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)であった。PFS中央値が2倍以上に延長、肺がん症状、QOLも有意に改善 2010年2月~2012年2月までに347例が登録され、クリゾチニブ群に173例(年齢中央値51歳、男性43%、PS0 42%、腺がん95%、転移性95%)、化学療法群には174例(49歳、45%、37%、94%、91%)が割り付けられた。化学療法群のうち99例(57%)にPEMが、72例(41%)にはDOCが投与された。 PFS中央値はクリゾチニブ群が7.7ヵ月と、化学療法群の3.0ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.37~0.64、p<0.001)。クリゾチニブ群のPEM群に対するPFS中央値のHRは0.59(95%CI:0.43~0.80、p<0.001)、DOC群に対するHRは0.30(95%CI:0.21~0.43、p<0.001)だった。 奏効率はクリゾチニブ群が65%であり、化学療法群の20%(PEM群29%、DOC群7%)よりも有意に良好であった(p<0.001)。全生存期間(OS)の中間解析では、両群間に有意な差は認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、p=0.54)。 有害事象は、クリゾチニブ群で視覚障害(60%)、下痢(60%)、悪心(55%)、嘔吐(47%)、便秘(42%)、肝アミノトランスフェラーゼ値上昇(38%)の頻度が高く、化学療法群では悪心(37%)、疲労感(33%)、便秘(23%)、脱毛(20%)、呼吸困難(19%)が高頻度にみられた。 患者の自己申告による肺がん症状(咳嗽、呼吸困難、胸痛)の増悪までの期間中央値は、クリゾチニブ群が5.6ヵ月であり、化学療法群の1.4ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.40~0.71、p<0.001)。ベースラインからのQOLの改善効果もクリゾチニブ群が化学療法群よりも良好だった(p<0.001)。 著者は、「クリゾチニブは、既治療のALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCの治療において、標準的化学療法よりも優れた有用性を持つことが示された」と結論し、「クリゾチニブによる明確なOSの改善効果が得られなかったのは、クロスオーバーが交絡因子となっているためと考えられる」と指摘している。

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治療抵抗性統合失調症患者の脳は、特徴的な所見を示す

 統合失調症では最大3分の1の患者が治療抵抗性を示す。ブラジル・サンパウロ連邦大学のAndre Zugman氏らは非治療抵抗性および健常対照との比較で、それら治療抵抗性患者の脳皮質厚の特徴を調べた。その結果、統合失調症では特異的所見かつ、より重症であることを示す皮質厚の特徴として、背外側前頭前皮質(DLPFC)の減少がみられたことを報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年5月27日号の掲載報告。 研究グループは、治療抵抗性統合失調症における生物学的基本過程の理解を深めることは、治療改善につながる可能性があるとして本検討を行った。治療抵抗性統合失調症(SCZ)患者、非治療抵抗性SCZ患者、健常対照の3群を設定し、それぞれの患者の構造的MRIスキャン画像データを入手し検討した。スキャン画像は皮質表面モデリング(freesurferパッケージで実施)にて解析し、皮質厚の群間差異を特定した。統計的有意差は、モンテカルロシミュレーションにて評価し、補正後p<0.01とした。 主な結果は以下のとおり。・治療抵抗性SCZ患者は、両側性に広範囲にわたる領域(前頭・頭頂・側頭・後頭)での皮質厚の減少がみられた。・非治療抵抗性SCZ患者は、2つの領域(左上前頭前皮質、左尾中前頭皮質)での皮質厚の減少がみられた。・また、治療抵抗性SCZ患者は非治療抵抗性SCZ患者と比較して、背外側前頭前皮質(DLPFC)の減少も認められた。・以上の結果を踏まえて著者は、「この脳領域の変化が、治療抵抗性のいわゆるマーカーとなりうるかを調べるべきであろう」と述べ、「この仮説を検証するため、初回エピソードから治療抵抗性SCZの診断確定までを個人追跡した前向き研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症の重症度・社会性の低下は、海馬体積の減少と関連 新知見!慢性期統合失調症患者では意志作用感が減退:慶応義塾大学 治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

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新規骨粗鬆症治療薬カテプシンK阻害剤odanacatibの日本人患者における骨密度増加効果は?-二重盲検ランダム化比較試験-

 odanacatibは、骨再吸収を低下させ骨密度(BMD)を増加させる選択的かつ可逆的なカテプシンK阻害剤であり、2014年に承認申請が予定されている。本試験は、骨粗鬆症日本人患者においてodanacatibの有効性と安全性を評価するために行われた多施設共同二重盲検ランダム化比較試験である。この結果、52週間にわたるodanacatib治療が、腰椎およびすべての股関節部位で用量依存的にBMDを増加し、骨粗鬆症日本人患者における忍容性が高いことが示された。国立国際医療研究センターの中村 利孝氏らによる報告(Osteoporosis International誌オンライン版2013年5月29日号掲載)。 主な結果は以下のとおり。・対象は286例(94%が女性、平均年齢68.2(SD:7.1)歳)。・主要評価項目である腰椎(L1~L4)BMDにおける52週時のベースラインからの変化率は、プラセボ群、odanacatib 10mg、25mgおよび50mgにおいてそれぞれ0.5、4.1、5.7、および5.9%であった。・副次的評価項目である股関節BMDにおける変化率はそれぞれ-0.4、1.3、1.8、および2.7%であり、大腿骨頸部および転子部BMDの変化も股関節と同様であった。・骨代謝マーカーは用量依存的に減少したが、骨形成マーカーに対する影響は骨吸収マーカーに対する影響と比較して少なかった。・忍容性と安全性プロファイルは、どの有害事象でも用量相関がなくすべての治療群間で類似していた。

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認知機能トレーニング/リハビリテーションはどの程度有効なのか?

 認知機能障害、とくに記憶障害は、アルツハイマー病(AD)および脳血管性認知症の早期ステージを規定する特徴であり、認知機能トレーニングおよび認知機能リハビリテーションは、それらの障害に特異的な介入アプローチである。オーストラリア国立大学のAlex Bahar-Fuchs氏らは、その有効性や介入がもたらす影響についてアップデートレビューを行った。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年6月5日掲載の報告。 今回の最新レビューの目的は、軽度のADあるいは脳血管性認知症を有する人への認知機能トレーニングおよび認知機能リハビリテーションの有効性とインパクトを評価することであった。評価は、重大な認知および非認知アウトカムとの関連で行い、認知症患者と主要介護者それぞれに、短・中・長期的に行った。文献は、2012年11月2日時点での最新のものを複数の文献データベースを基に検索・収集した。試験適格基準は、英語で発表された無作為化試験(RCT)、ならびに認知機能リハビリテーションまたは認知機能トレーニングの介入を対照介入と比較しているもので、認知症者本人や家族介護者(またはその両方)の評価に適切なアウトカムを報告していることとした。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、認知機能トレーニング介入について報告していた11試験、認知機能リハビリテーション介入について報告していた1試験が組み込まれた。後者は効果サイズを調べることは可能であったが、メタ解析は行えなかった。・解析の結果、認知機能トレーニングは、報告された全アウトカムに関してプラスまたはマイナスいずれの効果とも関連がみられなかった。・全体的に試験の質は、低~中等度であった。・唯一であったリハビリ介入試験は、多数の患者・介護者のアウトカムに関して有望な結果が認められた。また概して質も高かった。・著者は、「認知機能トレーニングのエビデンスはなお限られており、エビデンスの質を改善する必要がある。認知機能トレーニングから得られる有意な利点はいまだ示されていない」と結論。また、介入によって生じるいくつかの増大効果を十分に捉えることができる標準的転帰尺度が獲得できていないことに言及した。・認知機能リハビリテーションに関する1試験については、「有望ではあるが予備的報告にとどまるもの」と述べている。・以上を踏まえて、よりよいデザインの試験によるさらなる検討を行い、明確なエビデンスを求めていくことが必要であること、研究者は、有用な用語を用いて適正に、介入について描出・分類しなければならないと指摘した。関連医療ニュース アルツハイマー病の早期ステージに対し、抗Aβ治療は支持されるか? Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方

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手の手術後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)が明らかに

 CRPSの研究は、利用可能な試験コホートにおける不均一性により難しいとされている。米国・スタンフォード大学のAlison Pepper氏らは、手の手術を受けた患者における、早期にみられる複合性局所疼痛症候群(CRPS)様症状の特色を特徴づけることを試みた。その結果、共通してみられることとして、点刺激や圧刺激、寒冷刺激に対する感度が高いことなどを明らかにした。The Journal of Pain誌2013年5月号(オンライン版2013年2月28日号)の掲載報告。 研究グループは、手の外科クリニックにおいて選択的手術とキャスト固定法を受けた43例の患者を集めた。 キャスト除去日に、患者は定量的感覚テスト(quantitative sensory testing:QST)によって、血管運動、発汗促進、栄養変化および水腫、疼痛感度について評価を受けた。疼痛強度は、キャスト除去時とさらに1ヵ月後に評価を行った。Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs(LANSS)スケールを用いて痛みの特徴を評価した。また、皮膚生検を行い、炎症性メディエーターの発現を分析した。 主な結果は以下のとおり。・大半の患者の手術を受けた手における、血管性および栄養的変化を同定した。・概して同様に、点状、圧、寒冷の刺激に対する感度の増大が観察された。・さらに、手術を受けた側の手の皮膚において、IL-6値、TNF-α、肥満細胞マーカーのトリプターゼの上昇が認められた。・中等度から重度の疼痛は、手術を受けた側の手についてはキャスト除去後1ヵ月時点においても持続していた。・探索的解析の結果、身体、QSTと遺伝子発現の変化および疼痛関連アウトカムの間における相互関係が示唆された。・本研究は、手術とその後に固定術を受けた患者の四肢におけるCRPS様症状の特色を同定した。今回の被験者を対象としたさらなる研究は、CRPSメカニズムの理解を深め、同状態における治療に役立つ可能性がある。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

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飲酒による大腸がんリスクへの影響、葉酸強化政策により減弱~米国の前向きコホート研究

 米国の医療従事者における前向きコホート研究で、葉酸強化政策前後の大腸がんリスクにおける飲酒の影響を評価したところ、多量飲酒による大腸がんリスクへの影響が葉酸摂取により減弱する可能性が示された。米国メリーランド大学のHongmei Nan氏らによる報告。Annals of epidemiology誌オンライン版2013年5月29日号に掲載された。  米国ではFDA(米国食品医薬品局)により、1998 年から現在まで葉酸強化食として穀物製品に対して葉酸を添加(強化)することが義務付けられている。著者らは、飲酒と大腸がんの関連について、女性は看護師健康調査(NHS)、男性は医療従事者フォローアップ研究(HPFS)における前向きコホート研究で、葉酸強化政策前後の期間(1998年以前vs.1998年以降)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・飲酒は大腸がんのリスク増加に関連していた。・マルチビタミンや葉酸サプリメント(両方またはどちらか)を使用していない人において、飲酒者(30g/日以上)の非飲酒者に対する合併多変量相対リスクは1.36(95%信頼区間[CI]:1.09~1.70、傾向のp=0.02)であった。・飲酒者(30g/日以上)の非飲酒者に対する合併多変量相対リスクは、葉酸強化以前(NHS1980/ HPFS1986~1998年)が1.31(95%CI:1.00~1.71、傾向のp=0.10)、強化以降(1998~2008年)が1.07(95%CI:0.69~1.65、傾向のp=0.67)と、強化以前のほうが強化以降に比べ飲酒の影響が若干大きかった。

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病院側の指示に従わず狭心症発作で死亡した症例をめぐって、医師の責任が問われたケース

循環器最終判決平成16年10月25日 千葉地方裁判所 判決概要動悸と失神発作で発症した64歳女性。冠動脈造影検査で異型狭心症と診断され、入院中はニトログリセリン(商品名:ミリスロール)の持続点滴でコントロールし、退院後はアムロジピン(同:ノルバスク)、ニコランジル(同:シグマート)、ジルチアゼム(同:ヘルベッサー)、ニトログリセリン(同:ミリステープ、ミオコールスプレー)などを処方されていた。発症から5ヵ月後、再び動悸と気絶感が出現して、安静加療目的で入院となった。担当医師はミリスロール®の点滴を勧めたが、前回投与時に頭痛がみられたこと、点滴に伴う行動の制限や入院長期化につながることを嫌がる患者は、「またあの点滴ですか」と拒否的な態度を示した。仕方なくミリスロール®の点滴を見合わせていたが、患者が看護師の制止を聞かずトイレ歩行をしたところ、再び強い狭心症発作が出現し、さまざまな救命措置にもかかわらず約2時間後に死亡確認となった。詳細な経過患者情報64歳女性経過平成11(1999)年2月10日起床時に動悸が出現し、排尿後に意識を消失したため、当該総合病院を受診。胸部X線、心電図上は異常なし。3月17日~3月24日失神発作の精査目的で入院、異型狭心症と診断。3月24日~3月27日別病院に紹介入院となって冠動脈造影検査を受け、冠攣縮性狭心症と診断された。6月2日早朝、動悸とともに失神発作を起こし、当該病院に入院。ミリスロール®の持続点滴と、内服薬ノルバスク®1錠、シグマート®3錠にて症状は改善。6月9日失神や胸痛などの胸部症状は消失したため、ミリスロール®の点滴からミリステープ®2枚に変更。入院当初は頭痛を訴えていたが、ミリステープ®に変更してから頭痛は消失。6月22日状態は安定し退院。退院処方:ノルバスク®1錠、ミリステープ®2枚、チクロピジン(同:パナルジン)1錠、シグマート®3錠、ロキサチジン(同:アルタット)1カプセル。7月2日起床時に動悸が出現、ミオコールスプレー®により症状は改善。7月5日起床時に動悸が出現、ミオコールスプレー®により症状は改善。7月7日起床時立ち上がった途端に動悸、気絶感が出現したとの申告を受け、ノルバスク®を中止しヘルベッサー®を処方。7月12日05:30起床してトイレに行った際に動悸、気絶感が出現。トイレに腰掛けてミオコールスプレー®を使用した直後に数分間の意識消失がみられた。06:50救急車で搬送入院。安静度「ベッド上安静」、排泄「尿・便器」使用、酸素吸入(1分間当たり1L)、ミリステープ®2枚(朝、夕)、心電図モニター使用、胸痛時ミオコールスプレー®を2回まで使用と指示。09:30入室直後に尿意を訴えた。担当看護師は医師の指示通り尿器の使用を勧めたが、患者は尿器では出ないのでトイレに行くことに固執したため、看護師長を呼び、ベッドを個室トイレの側まで動かし、トイレで排尿させた。排尿後に呼吸苦がみられたので、酸素吸入を開始し、ミリステープ®を貼用したところ2~3分で落ちついてきた。担当看護師は定時のシグマート®、ヘルベッサー®を内服させ、今後は尿器を使用することを促した。担当医師も訪室して安静にすべきことを説明し、ミリスロール®の点滴を勧めたが、患者は「またあの点滴ですか」と拒否的な態度を示したため、やむを得ずミリスロール®の点滴をしないことにした。その後、胸部症状は消失。15:00見舞いにきた家族が「点滴していなかったんだね」といったところ、患者は「軽かったのかな」と答えたとのこと(病院側はその事実を確認していない)。18:30尿意がありトイレでの排尿を希望。担当看護師は尿器の使用を勧めたが、トイレへ行きたいと強く希望したため、看護師は医師に確認するといって病室を離れた(このとき担当医師とは連絡取れず)。18:43トイレで倒れている患者を看護師が発見。ただちにミオコールスプレー®を1回噴霧したが、「胸苦しい、苦しい」と状態は改善せず。18:50ミオコールスプレー®を再度噴霧したが状態は変わらず、四肢冷感、冷汗が認められ、駆けつけた医師の指示でニトログリセリン(同:ニトロペン)1錠を舌下するが、心拍数は60台に低下、血圧測定不能、意識低下、自発呼吸も消失した。19:00乳酸リンゲル液(同:ラクテック)にて血管確保、心拍数30~40台。19:10イソプレナリン(同:プロタノール)1A、アドレナリン(同:ボスミン)1Aを静注するとともに、心臓マッサージを開始し、心拍数はいったん60台へと回復。19:33気管内挿管に続き、心肺蘇生を続行するが効果なし。20:22死亡確認。死因は致死性の狭心症発作と診断した。死亡後、担当医師は「点滴(ミリスロール®)をすべきでした。しなかったのは当方のミスです」と述べたと患者側は主張するが、その真偽は不明。当事者の主張1. 担当医師が硝酸薬の点滴をしなかった点に過失があるか患者側(原告)の主張平成11年から発作が頻発し、入院に至るまでの経緯や入院時の症状から判断して、ミリスロール®など硝酸薬の点滴をすべきであった。これに対し担当医師は、患者に対してミリスロール®の点滴の必要性を伝えたが拒絶されたと主張するが、診療録などにはそのような記載はない。過去の入院では数日間にわたってミリスロール®の点滴治療を受け、その結果一応の回復を得て退院したため、担当医師からミリスロール®の必要性、投与しない場合の危険性などを十分聞いていれば、ミリスロール®点滴に同意したはずである。病院側(被告)の主張動悸、失神は狭心症発作の再発であり、入院安静が必要であること、2回目入院時に行ったミリスロール®の点滴が再度必要であることを説明したが、患者は「またあの点滴ですか」といい、行動が不自由になること、頭痛がすることなどを理由に点滴を拒絶したため、安静指示と内服薬などの投与によって様子をみることにした。つまり、ミリスロール®の点滴が必要であるにもかかわらず、患者の拒絶により点滴をすることができなかったのであり、診療録上も「希望によりミリスロール®点滴をしなかった」ことが明記されている。医師は、患者に対する治療につき最適と判断する内容を患者に示す義務はあるが、この義務は患者の自己決定権に優越するものではないし、患者の意向を無視して専断的な治療をすることは許されない。2. 硝酸薬点滴を行った場合の発作の回避可能性患者側(原告)の主張入院時にミリスロール®の点滴をしていれば発作を防げた可能性は大きく、死亡との間には濃厚な因果関係がある。さらに死亡後担当医師は、「点滴をすべきでした。しなかったのは当方のミスです」と述べ、ミリスロール®の点滴をしなかったことが死亡原因であることを認めていた。病院側(被告)の主張7月12日9:30、ミリステープ®を貼用し、シグマート®、ヘルベッサー®を内服し、午後には症状が消失して容態が安定していたため、ミリスロール®の点滴をしなかったことだけが発作の原因とはいえない。3. 患者が安静指示に違反したのか患者側(原告)の主張看護師や患者に対する担当医師の安静指示があいまいかつ不徹底であり、結果としてトイレでの排尿を許す状況とした。担当医師が「ベッド上安静」を指示したと主張するが、入院経過用紙によれば「ベッド上安静」が明確に指示されていない。当日午後2:00の段階では、「トイレは夕方までの様子で決めるとのこと」と看護師が記載しているが、夕方までに決められて伝えられた形跡はない。18:30にも「Drに安静度カクニンのためTELつながらず」との記載があり、看護師は夕方になってもトイレについて明確な指示を受けていない。病院側(被告)の主張入院時指示には、安静度は「ベッド上安静」、排泄は「尿・便器」と明記している。これはベッド上で仰臥(あおむけ)または側臥(横向き)でいなければならず、排泄もベッド上で尿・便器をあててしなければならないという意味であり、トイレでの排尿を許したことはない。「トイレは夕方までの様子で決めるとのこと」という記載の意味は、トイレについての指示がいまだ無かったのではなく、明日の夕方までの様子をみて、それ以降トイレに立って良いかどうかを決めるという意味である。当日9:30尿意を訴えたため、医師から指示を受けていた看護師は尿器の使用を勧めたが、看護師の説得にもかかわらず尿器では出ないと言い張り、トイレに行くと譲らなかったので、やむを得ず看護師長を呼び、二人がかりでベッドを個室内のトイレ脇まで運び、トイレで排尿させたという経緯がある。そして、今回倒れる直前、看護師は患者から「トイレに行きたい」といわれたが、尿器で排泄するように説得した。それでも患者はあくまでトイレに行きたいと言い張ったため、担当医師に確認してくるから待つようにと伝えナースステーションへ行ったものの、担当医師に電話がつながらず、すぐに病室に戻ると同室内のトイレで倒れていたのである。4. 発作に対する医師の処置は不適切であったか患者側(原告)の主張狭心症の発作時には、速効性硝酸薬の舌下を行うべきものとされてはいるが、硝酸薬を用いると血圧が低下するので、昇圧剤を投与して血圧を確保してから速効性硝酸薬などにより症状の改善を図るべきであった。被告医師は、ミオコールスプレー®を2回使用して、その副作用で血圧低下に伴う血流量の減少を招いたにもかかわらず、さらに昇圧剤を投与したり、血圧を確保することなくニトロペン®を舌下させた点に過失がある。その結果、狭心症の悪化・心停止を招来し、患者を死に至らしめた。病院側(被告)の主張異型狭心症においては、冠攣縮発作が長引くと心室細動や高度房室ブロックなどの致死性不整脈が出現しやすくなるので、発作時は速やかにニトログリセリンを服用させるべきである。ニトログリセリンの副作用として血圧の低下を招くことがあるが、狭心症発作が寛解すれば血圧が回復することになるから、まず第一にニトログリセリンを投与(合計0.9mg)したことに問題はなく、発作を寛解させるべくニトロペン®1錠を舌下させた判断にも誤りはない。本件においては、致死的な狭心症発作が起きていたのであり、脈拍低下、血圧測定不能、自発呼吸なしなどの重篤な状態に陥ったのは狭心症発作によるものであって、ニトロペン®1錠を舌下したことが心停止の原因となったのではない。裁判所の判断1. 担当医師が硝酸薬の点滴をしなかった点に過失があるか鑑定A患者は狭心症発作が頻発および増悪したために入院したものであり、不安定狭心症の治療を目的としている。狭心症予防薬としてカルシウム拮抗薬の内服と硝酸薬貼付がすでに施行されており、この状態で不安定化した狭心症の治療としては、硝酸薬あるいはこれと同様の効果が期待される薬剤の持続静注が必要と考える。また、過去の入院で硝酸薬の点滴静注が有効であったことから、硝酸薬は、本件患者に対し比較的安心して使用できる薬剤と思われる。さらに、心電図モニターならびに患者の状態を常時監視できる医療状況が望ましく、狭心症発作が安定するまでの期間は、冠動脈疾患管理病棟(CCU)あるいは集中治療室(ICU)での管理が適当と考えられ、本件患者の入院初期の治療としてミリスロール®などの硝酸薬点滴を行わなかったのは不適切であった。不安定狭心症患者は急性心筋梗塞に移行する可能性が高いため、この病態を患者に十分説明し、硝酸薬点滴を使用すべきであったと考える。以前も同薬剤の使用により、本件患者の狭心症発作をコントロールしており、軽度の副作用は認められたものの、比較的安全に使用した経緯がある。患者が硝酸薬点滴を好まないケースもあるが、病状の説明、とりわけ急性心筋梗塞に進展した場合のデメリットを説明した後に施行すべきものであると考えられ、仮に本件患者がミリスロール®などの点滴に拒否的であった場合でも、その必要性を十分説明して、本件患者の初期治療として、ミリスロール®などの硝酸薬あるいは同等の効果が期待できる薬剤の点滴を行うべきであった。鑑定B狭心症の場合、硝酸薬は重要な治療薬である。また、冠動脈攣縮性狭心症においては、カルシウム拮抗薬も重要な治療薬である。本症例ではミリステープ®とカルシウム拮抗薬が投与されており、ミリスロール®などの硝酸薬点滴を行わなかったことだけをもって不適切な治療と判断することは難しい。仮に本件患者がミリスロール®などの点滴に拒否的であった場合についても、ミリスロール®などの点滴を行わなければならない状態であったかどうかについては判断が難しい。また、基本的に患者の了承のもとに治療を行うわけであるから、了承を得られない限りはその治療を行うことはできないのであって、拒否する場合において点滴を強制的に行うことが妥当であるかどうかは疑問である。鑑定C本症例は、失神発作をくり返していることからハイリスク群に該当する。発作の回数が頻回である活動期の場合は、硝酸薬、カルシウム拮抗薬、ニコランジルなどの持続点滴を行うことが望ましいとされており、実際に前回の入院の際には発作が安定化するまで硝酸薬の持続点滴が行われている。本件では、十分な量の抗狭心症薬が投与されており、慢性期の発作予防の治療としては適切であったといえるが、ハイリスク群に対する活動期の治療としては、硝酸薬点滴を行わなかった点は不適切であったといえる。発作の活動期における治療の基本は、冠拡張薬の持続点滴であり、純粋医学的には本件の場合、必要性を十分に説明して行うべきであり、仮に本件患者がミリスロール®などの点滴に拒否的であった場合であっても、その必要性を十分説明して、ミリスロール®などの硝酸薬点滴を行うべき状態であったといえる。ただし、必要性を十分に説明したにもかかわらず、患者側が点滴を拒否したのであれば、医師側には非は認められないこととなるが、どの程度の必要性をもって説明したかが問題となろう。裁判所の見解不安定狭心症は急性心筋梗塞や突然死に移行しやすく、早期に確実な治療が必要である。本件では前回の入院時にミリスロール®の点滴を行って症状が軽快しているという治療実績があり、入院時の病状は前回よりけっして軽くないから、硝酸薬点滴を必要とする状態であったといえる。もっとも担当医師の立場では、治療方法に関する患者の自己決定権を最大限尊重すべきであるから、医師が治療行為に関する説明義務を尽くしたにもかかわらず、患者が当該治療を受けることを拒絶した場合には、当該治療行為をとらなかったことにつき、医師に過失があると認めることはできない。そうすると、本件入院時にミリスロール®など硝酸薬点滴をしなかったことについて、被告医師に過失がないといえるのは、硝酸薬点滴の必要性などについて十分な説明義務を果たしたにもかかわらず、患者が拒否した場合に限られる。担当医師が入院時にミリスロール®点滴を行わなかったのは、必要性を十分に説明したにもかかわらず、「またあの点滴ですか」と点滴を嫌がる態度を示し、ミリスロール®の副作用により頭痛がすること、点滴をすることによって行動の自由が制限されること、点滴をすることによって入院が長くなることの3点を嫌がって、点滴を拒絶したと供述する。そして、入院診療録の「退院時総括」には「本人の希望もあり、ミリスロール®DIV(点滴)せずに安静で様子をみていた」との記載があるので、担当医師はミリスロール®の点滴静注を提案したものの、患者はミリスロール®の点滴を希望しなかったことがわかる。ところが、医師や看護師が患者の状態などをその都度記録する「入院経過用紙」には、入院時におけるミリスロール®の点滴に関するやりとりの記載はなく、担当医師から行われたミリスロール®点滴の説明やそれに対する患者の態度について具体的な内容はわからない。それよりも、午後3:00頃見舞にきた家族が、「点滴していなかったんだね」といったことに対し、「軽かったのかな」と答えたという家族の証言から、患者は自分の病状についてやや楽観的な見方をしていたことがわかり、担当医師からミリスロール®点滴の必要性について十分な説明をされたものとは思われない。担当医師は患者の印象について、「医療に対する協力、その他治療に難渋した」、「潔癖な方です。頑固な方です」と述べているように、十分な意思の疎通が図れていなかった。そのため、入院時にミリスロール®の点滴に患者が拒否的な態度を示した場合に、担当医師があえて患者を説得して、ミリスロール®の点滴を勧めようとしなかったことは十分考えられる状況であった。そして、当時の患者が不安定狭心症のハイリスク群に該当し、硝酸薬点滴をしないと危険な状況にあることを医師から説明されていれば、点滴を拒絶する理由になるとは通常考え難いので、十分に説明したという担当医師の供述は信用できない。つまり、自己の病状についてきわめて関心を抱いていた患者であるので、医師から十分な説明を受けていれば、医師の提案する治療を受け入れていたであろうと推測される。したがって、担当医師は当時の病状ならびにミリスロール®点滴の必要性について十分に説明したとは認められず、説明義務が果たされていたとはいえない。2. 硝酸薬点滴を行った場合の発作の回避可能性鑑定A不安定狭心症の治療としてミリスロール®の効果は約80%と報告されている。不安定狭心症の病態によりその効果に差はあるが、硝酸薬などの薬剤が不安定狭心症を完全に安定化させるわけではない。また、急激な冠動脈血栓形成に対しては硝酸薬の効果は低いと考える。そうするとミリスロール®点滴を実施することで発作を回避できたとは限らないが、回避できる可能性は約70%と考える。鑑定B冠動脈攣縮性狭心症の場合、ミリスロール®などの硝酸薬の点滴が冠動脈の攣縮を軽減させる可能性がある。本件発作が冠動脈攣縮性狭心症発作であった可能性は十分考えられることではあるが、最終的な本件発作の原因がほかにあるとすれば、ミリスロール®点滴を行っても回避は難しい。したがって、回避可能性について判断することはできない。鑑定C一般論からすると、持続点滴の方が経口や経皮的投与よりも有効であることは論をまたないが、持続点滴そのものの有効性自体は100%ではないため、持続点滴をしていればどの程度発作が抑えられたかについては、判断しようがない。また、本件では十分な量の冠拡張薬が投与されていたにもかかわらず、結果的に重篤な狭心症発作が起こっており、発作の活動性がかなり高く発作自体が薬剤抵抗性であったと捉えることもでき、持続点滴をしていたとしても発作が起こった可能性も否定できない。以上のように、持続点滴によって発作が抑えられた可能性と持続点滴によっても発作が抑えられなかった可能性のどちらの可能性が高いかについては、仮定の多い話で答えようがない。裁判所の見解冠動脈攣縮性狭心症の発作に対してはミリスロール®の点滴が有効である点において、各鑑定は一致していることに加え、回避可能性をむしろ肯定していると評価できること、そもそも不作為の過失における回避可能性の判断にあたっては、100%回避が可能であったことの立証を要求するものではないのであって、前回入院時にミリスロール®の点滴治療が奏効していることも併せ考慮すると、今回もミリスロール®の点滴を行っていれば発作を回避できたと考えられる。3. 患者に対する安静指示について担当医師の指示した安静度は「ベッド上安静」、排泄は「尿・便器」使用であることは明らかであり、この点において被告医師に過失は認められない。4. 発作に対する処置について鑑定Aニトログリセリン舌下投与を低血圧時に行うと、さらに血圧が低下することが予想される。しかし、狭心症発作寛解のためのニトログリセリン舌下投与に際し、禁忌となるのは重篤な低血圧と心原性ショックであり、本件発作時はこれに該当しない。さらに本件発作時は、静脈ラインが確保されていないと思われ、点滴のための留置針を穿刺する必要がある。この処置により心筋虚血の時間が延長することになるため、即座にニトログリセリンを舌下させることは適切と考える。鑑定Bニトロペン®そのものの投与は血圧が低いことだけをもって禁忌とすることはできない。本件発作時の状況下でニトロペン®舌下に先立ち、昇圧剤の点滴投与を行うかどうかの判断は難しい。しかし、まず輸液ルートを確保し、酸素吸入の開始が望ましい処置といえ、必ずしも適切とはいえない部分がある。鑑定C冠攣縮性狭心症の発作時の処置としては、血圧の程度いかんにかかわらず、まずは攣縮により閉塞した冠動脈を拡張させることが重要であるため、ニトロペン®をまず投与したこと自体は問題がない。しかしながら、昇圧剤の投与時期、呼吸循環状態の維持、ボスミン®投与の方法に問題があり、急変後の処置全般について注意義務違反が認められる。裁判所の見解ニトログリセリンの舌下については、各鑑定の結果からみて問題はない。なお、鑑定の結果によれば、発作の誘因は発作の直前のトイレ歩行ないし排尿である。担当医師からベッド上安静、尿便器使用の指示がなされ、担当看護師からも尿器の使用を勧められたにもかかわらずトイレでの排尿を希望し、さらに看護師から医師に確認するので待っているように指示されたにもかかわらず、その指示に反して無断でベッドから降りて、トイレでの排尿を敢行したものであり、さらに拒否的な態度が被告医師の治療方法の選択を誤らせた面がないとはいえないことを考慮すると、患者自身の責任割合は5割と考えられる。原告(患者)側合計5,532万円の請求に対し、2,204万円の判決考察拒否的な態度の患者についていくら説明しても医師のアドバイスに従わない患者さん、病院内の規則を無視して身勝手に振る舞う患者さん、さらに、まるで自分が主治医になったかのごとく「あの薬はだめだ、この薬がよい」などと要求する患者さんなどは、普段の臨床でも少なからず遭遇することがあります。本件もまさにそのような症例だと思います。冠動脈造影などから異型狭心症と診断され、投薬治療を行っていましたが、再び動悸や失神発作に襲われて入院治療が開始されました。前回入院時には、内服薬や貼布剤、噴霧剤などに加えてミリスロール®の持続点滴により症状改善がみられていたので、今回もミリスロール®の点滴を開始しようと提案しました。ところが患者からは、「またあの点滴ですか」「あの薬を使うと頭痛がする」「点滴につながれると行動が制限される」「点滴が始まると入院が長くなる」というクレームがきて、点滴は嫌だと言い出しました。このような場合、どのような治療方針とするのが適切でしょうか。多くの医師は、「そこまでいうのなら、点滴はしないで様子を見ましょう」と判断すると思います。たとえミリスロール®の点滴を行わなくても、それ以外のカルシウム拮抗薬や硝酸薬によってもある程度の効果は期待できると思われるからです。それでもなおミリスロール®の点滴を強行して、ひどい頭痛に悩まされたような場合には、首尾よく狭心症の発作が沈静化しても別な意味でのクレームに発展しかねません。そして、ミリスロール®の点滴なしでいったんは症状が改善したのですから、病院側の主張通り適切な治療方針であったと思います。そして、再度の発作を予防するために、患者にはベッド上の安静(トイレもベッド上)を命じましたが、「どうしてもトイレに行きたい」と患者は譲らず、勝手に離床して、致命的な発作へとつながってしまいました。このような症例を「医療ミス」と判断し、病院側へ2,200万円にも上る賠償金の支払いを命じる裁判官の考え方には、臨床医として到底納得することができません。もし、大事なミリスロール®の点滴を医師の方が失念していたとか、看護師へ安静の指示を出すのを忘れて患者が歩行してしまったということであれば、医師の過失は免れないと思います。ところが、患者の異型狭心症をコントロールしようとさまざまな治療方針を考えて、適切な指示を出したにもかかわらず、患者は拒否しました。「もっと詳しく説明していればミリスロール®の点滴を拒否するはずはなかったであろう」というような判断は、結果を知ったあとのあまりにも一方的な考え方ではないでしょうか。患者の言い分、医師の言い分極論するならば、このような拒否的態度を示す患者の同意を求めるためには、「あなたはミリスロール®の点滴を嫌がりますが、もしミリスロール®の点滴をしないと命に関わるかもしれませんよ、それでもいいのですか」とまで説明しなければなりません。そして、理屈からいうと「命に関わることになってもいいから、ミリスロール®の点滴はしないでくれ」と患者が考えない限り、医師の責任は免れないことになります。しかし、このような説明はとても非現実的であり、患者を脅しながら治療に誘導することになりかねません。本件でもミリスロール®の点滴を強行していれば、確かに狭心症の発作が出現せず無事退院できたかもしれませんが、患者側に残る感情は、「医師に脅かされてひどい頭痛のする点滴を打たれたうえに、病室で身動きができない状態を長く強要された」という思いでしょう。そして、鑑定書でも示されたように、本件はたとえミリスロール®を点滴しても本当に助かったかどうかは不明としかいえず、死亡という最悪の結果の原因は「異型狭心症」という病気にあることは間違いありません。ところが裁判官の立場は、明らかに患者性善説、医師性悪説に傾いていると思われます。なぜなら、「退院時総括」の記述「本人の希望もあり、ミリスロール®DIV(点滴)せずに安静で様子をみていた」というきわめて重大な記述を無視していることその理由として、「入院経過用紙」には入院時におけるミリスロール®の点滴に関するやりとりの記載がないことを挙げている裁判になってから提出された家族からの申告:当日午後3:00頃見舞にきた家族が、「点滴していなかったんだね」といったことに対し、「軽かったのかな」と患者が答えたという陳述書を全面的に採用し、患者側には病態の重大性、ミリスロール®の必要性が伝わっていなかったと断定つまり、診療録にはっきりと記載された「患者の希望でミリスロール®を点滴しなかった」という事実をことさら軽視し、紛争になってから提出された患者側のいい分(本当にこのような会話があったのかは確かめられない)を全面的に信頼して、医師の説明がまずかったから患者が点滴を拒否したと言わんばかりに、医師の説明義務違反と結論づけました。さらにもう一つの問題は、本件で百歩譲って医師の説明義務違反を認めるとしても、十分な説明によって死亡が避けられたかどうかは「判断できない」という鑑定書がありながら、それをも裁判官は無視しているという点です。従来までは、説明が足りず不幸な結果になった症例には、300万円程度の賠償金を認めることが多いのですが、本件では(患者側の責任は5割としながらも)説明義務違反=死亡に直結、と判断し、総額2,200万円にも及ぶ高額な判決金額となりました。本症例からの教訓これまで述べてきたように、今回の裁判例はとうてい医療ミスとはいえない症例であるにもかかわらず、患者側の立場に偏り過ぎた裁判官が無理なこじつけを行って、死亡した責任を病院に押し付けたようなものだと思います。ぜひとも上級審では常識的な司法の判断を期待したいところですが、その一方で、医師側にも教訓となることがいくつか含まれていると思います。まず第一に、医師や看護師のアドバイスを聞き入れない患者の場合には、さまざまな意味でトラブルに発展する可能性があるので、できるだけ詳しく患者の言動を診療録に記載することが重要です(本件のような最低限の記載では裁判官が取り上げないこともあります)。具体的には、患者の理解力にもよりますが、医師側が提案した治療計画を拒否する患者には、代替可能な選択肢とそのデメリットを提示したうえで、はっきりと診療録に記載することです。本件でも、患者がミリスロール®の点滴を拒否したところで、(退院時総括ではなく)その日の診療録にそのことを記載しておけば、(今回のような不可解な裁判官にあたったとしても)医療ミスと判断する余地がなくなります。第二に、その真偽はともかく、死亡後に担当医師から、「(ミリスロール®)点滴をすべきでした。しなかったのは当方のミスです」という発言があったと患者側が主張した点です。前述したように、診療録に残されていない会話内容として、裁判官は患者側の言い分をそのまま採用することはあっても、記録に残っていない医師側の言い分はよほどのことがない限り取り上げないため、とくに本件のように急死に至った症例では、「○○○をしておけばよかった」という趣旨の発言はするべきではないと思います。おそらく非常にまじめな担当医師で、自らが関わった患者の死亡に際し、前向きな考え方から「こうしておけばよかったのに」という思いが自然に出てしまったのでしょう。ところが、これを聞いた患者側は、「そうとわかっているのなら、なぜミリスロール®を点滴しなかったのか」となり、いくら「実は患者さんに聞いてもらえなかったのです」と弁解しても、「そんなはずはない」となってしまいます。そして、第三に、担当医師の供述に対する裁判官への心証は、かなり重要な意味を持ちます。判決文には、「担当医師は当公判廷において、患者が『またあの点滴ですか』といったことは強烈に覚えている旨供述するものの、患者に対しミリスロール®点滴の必要性についてどのように説明を行ったかについては、必ずしも判然としない供述をしている」と記載されました。つまり、患者に行った説明内容についてあやふやな印象を与える証言をしてしまったために、そもそもきちんとした説明をしなかったのだろう、と裁判官が思い込んでしまったということです。医事紛争へ発展するような症例は、医療事故発生から数年が経過していますので、事故当時患者に口頭で説明した内容まで細かく覚えていることは少ないと思います。そして、がんの告知や手術術式の説明のように、ある一定の緊張感のもとに行われ承諾書という書面に残るようなインフォームドコンセントに対し、本件のように(おそらく)ベッドサイドで簡単にすませる治療説明の場合には、曖昧な記憶になることもあるでしょう。しかし、ある程度の経験を積めば自ずと説明内容も均一化してくるものと思いますので、紛争へと発展した場合には十分な注意を払いながら、明確な意思に基づく主張を心がけるべきではないかと思います。循環器

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急性脳内出血後の降圧治療、積極的降圧vs.ガイドライン推奨/NEJM

 発症6時間以内の急性脳内出血患者に対して、1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHgとした積極的降圧治療と、ガイドラインで推奨されている同<180mmHgの場合を比較した、オーストラリア・シドニー大学のCraig S. Anderson氏らによるINTERACT2試験の結果が報告された。死亡および重度身体障害発生の主要転帰について、積極的降圧治療の有意な低下は示されなかったが、試験課程で脳卒中試験に認められたRankinスコアの順序尺度解析(ordinal analysis)では、機能的転帰の改善が示されたという。NEJM誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。目標<140mmHgとガイドライン推奨<180mmHgを比較 INTERACT2(Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial 2)は、脳内出血患者への早期の積極的降圧治療の有効性と安全性を評価することを目的に、2008年10月~2012年8月に21ヵ国144病院から被験者を募り行われた国際多施設共同前向き無作為化非盲検試験だった。 被験者は、発症6時間以内の脳内出血患者は2,839例(平均年齢63.5歳、男性62.9%)で、無作為に、積極的降圧治療を受ける群(1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHg、1,403例)またはガイドライン推奨治療(1時間以内の収縮期血圧目標値<180mmHg、1,436例)に割り付けられた。使用する降圧治療は医師の選択にて行われた。 主要転帰は90日時点での、修正Rankinスケールのスコア3~6で定義される死亡(スコア6)または重大な身体障害(スコア5)とした。また、修正Rankinスコアの事前規定順序尺度解析も行い副次アウトカムとして評価した(スコア0~6の全7段階の身体的機能評価)。その他に重度有害事象イベントの発生率について両群間で比較した。順序解析で積極的降圧治療による機能的転帰の改善が示される 主要転帰の判定を受けたのは2,794例だった。<140mmHg群での主要転帰発生は、719/1,382例(52.0%)、ガイドライン推奨治療群は785/1,412例(55.6%)で、<140mmHg群のオッズ比は0.87(95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.06)で有意差はみられなかった。 一方で、順序解析の結果、修正Rankinスコアの低下は、<140mmHg群が有意であった(より重大な障害に関するオッズ比:0.87、95%CI:0.77~1.00、p=0.04)。 死亡率は、<140mmHg群11.9%、ガイドライン推奨治療群12.0%だった(p=0.96)。 また、非致死的重大有害事象の発生は、それぞれ23.3%、23.6%だった(p=0.92)。 これらの結果から著者は、「積極的降圧治療は、主要転帰を有意に減少しなかった。修正Rankinスコアによる順序解析では、積極的降圧治療による機能的転帰の改善が示された」と結論している。

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抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学

 うつ病に対し、実臨床でどの抗うつ薬を第一選択薬として処方すべきかを検討した報告はいくつか行われているが、その後の継続的な治療効果などに関する研究はほとんどない。京都大学の古川 壽亮氏らは、日本における抗うつ薬による治療実態について健康保険データベースを用い調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2013年5月27日号の報告。 対象は、2009年~2010年の日本の健康保険データベースより抽出された、新規抗うつ薬で治療を開始した初発の非精神病性うつ病患者1,592例。調査項目は第一選択薬の継続と効果、第二選択薬の時期と種類、抗うつ薬治療の合計期間である。 主な結果は以下のとおり。・第一選択薬の開始用量および最大用量は、おおむねガイドラインで推奨されるとおりであった。しかし最大用量に関しては、推奨範囲の最小値に近い傾向が認められた。・第一選択薬の処方継続性は、ガイドラインの推奨を大きく下回っていた(初回処方での脱落率25%、3ヵ月以内の脱落率55%)。・第一選択薬にほかの向精神薬を追加投与した割合は14%(中央期間3ヵ月)、第一選択薬から他の抗うつ薬へ切り替えた割合は17%(中央期間2ヵ月)であった。・第二選択薬の選択は多岐にわたった。・抗うつ薬治療の合計時間は、中央期間4ヵ月と短かった。また、68%が6ヵ月で治療を中止していた。・健康保険データベースにおける非精神病性単極性うつ病の診断は、おおよそのものであるという点で、本研究には限界がある。・現在のガイドラインは、実臨床とは大いにかけ離れたものとなっている。こうしたなか、ガイドラインは実際の臨床の経験を反映する必要がある。・また、医療者は治療オプションを制限し、より効果的な治療を見極めて実践できるよう、エビデンスに基づいた比較効果研究が許されるべきである。関連医療ニュース SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 統合失調症患者の服薬状況を検証

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NSAIDsは血管・消化管イベントリスクを増大、心不全は約2倍に/Lancet

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与により、血管・消化管イベントリスクは増大することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のColin Baigent氏らCoxib and traditional NSAID Trialists’(CNT)共同研究グループが、メタ解析の結果、報告した。これまでCOX-2選択的阻害薬や従来型NSAIDs(tNSAIDs)を含むNSAIDsの血管・消化管への影響は、とくに血管疾患を有する患者において明らかではなかった。Lancet誌2013年5月30日号掲載の報告より。合計754件のプラセボ対照試験とNSAIDs間比較試験についてメタ解析 研究グループは、NSAIDsとプラセボについて行った無作為化プラセボ対照比較試験280件(被験者総数12万4,513例)と、NSAIDs間(1種類対その他種類)について行った無作為化比較試験474件(同22万9,296例)について、メタ解析を行い、NSAIDsの血管・消化管イベントリスクへの影響について分析した。 主要アウトカムは、重大血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致的死脳卒中、血管死)、重大冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞または冠動脈死)、脳卒中、死亡、心不全、上部消化管合併症(穿孔、閉塞、出血)とした。ナプロキセンは重大血管イベントが増加せず 解析の結果、重大血管イベント発生率は、プラセボとの比較で、COX-2とジクロフェナクで3割増しと増大が大きく、率比はそれぞれ1.37(95%信頼区間[CI]:1.14~1.66、p=0.0009)と1.41(同:1.12~1.78、p=0.0036)だった。同リスクの増加は主に、重大冠動脈イベントリスクの増大によるもので、COX-2とジクロフェナクの同イベント率比は1.76(p=0.0001)と1.70(p=0.0032)だった。 プラセボとの比較で、COX-2とジクロフェナクに割り付けられた被験者1,000例のうち、年間で3例以上が重大血管イベントを発症し、うち1例は致死的であった。 イブプロフェンは、重大冠動脈イベントの発生リスクは有意に増大したが(率比:2.22、95%CI:1.10~4.48、p=0.0253)、重大血管イベント発生リスクは有意な増大は認められなかった(同:1.44、95%CI:0.89~2.33)。ナプロキセンも、重大血管イベント発生リスクについて、有意な増大はみられなかった(同:0.93、0.69~1.27)。 血管死リスクは、COX-2(率比1.58、99%CI:1.00~2.49、p=0.0103)とジクロフェナク(同:1.65、0.95~2.85、p=0.0187)で有意な増大がみられた。イブプロフェンでは有意差はみられず(同:1.90、0.56~6.41、p=0.17)、ナプロキセンでは、同リスクが増大しなかった(同:1.08、0.48~2.47、p=0.80)。 なお、重大血管イベントへの影響の割合は、ベースラインでの特性(血管リスクを含む)とは関連していなかった。 心不全発症リスクについては、すべてのNSAIDsでおよそ2倍に増大した。 またすべてのNSAIDsで、上部消化管合併症リスクの増大がみられた。各率比はそれぞれCOX-2が1.81(p=0.0070)、ジクロフェナク1.89(p=0.0106)、イブプロフェン3.97(p<0.0001)、ナプロキセン4.22(p<0.0001)だった。 著者は「高用量のジクロフェナクとおそらくイブプロフェンは、COX-2と比べて血管リスクが高いこと、一方で高用量ナプロキセンはその他のNSAIDsと比べて血管リスクは低いことが示された。NSAIDsは血管・消化管イベントリスクを増大する。しかしそのリスクの大きさは予測可能であり、臨床意思決定に役立つだろう」と報告をまとめている。

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世界初のFD治療剤が登場 ~今後のFD治療に与える影響は?~

 2013年6月7日(金)、千代田区丸の内にて、島根大学医学部 内科学講座第二 教授 木下芳一氏による「機能性ディスペプシア(FD)」のメディアセミナーが開催された(主催:ゼリア新薬工業株式会社/アステラス製薬株式会社)。機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)とは? FDは、機能性消化器疾患の国際的診断基準であるRome III基準で「食後のもたれ感・膨満感、早期満腹感(飽満感)、心窩部痛(みぞおちの痛み)などの消化器症状を訴えるが、原因となる器質的疾患が見当たらない疾患」と定義されている。これまでFDは「慢性胃炎」と診断されることが多かった。日本国際消化管運動研究会2006では、上腹部症状を有する症例のうち、9割以上の症例では器質的疾患が無かったと報告されている。FDの原因は? FDは以下のようなさまざまな原因が考えられている。1) 胃排出能異常、胃の適応性弛緩障害2) 胃酸分泌過剰、分泌異常3)ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の感染などによる胃粘膜の炎症4) 消化管知覚過敏5) 心理的要因同じFD患者でも、それぞれの病態・病因が異なっているのが現状のようだ。世界初のFD治療剤アコチアミド新発売 これまでFDに対して適応を有する薬剤はなかったが、2013年6月6日(木)、世界初となる機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド錠100mg」(一般名:アコチアミド塩酸塩水和物)が発売された。アコファイドは消化管運動に重要な役割を果たす神経伝達物資アセチルコリンの分解酵素である末梢のアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、上記1)に該当する胃排出能異常、胃の適応性弛緩障害を改善させ、胃もたれや早期飽満感に効果が期待される。アコファイドの臨床試験結果 食後の膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感を有するFD(Rome III)例(892例)を対象としてアコチアミド100mg×3/日、28日間の投与とプラセボ投与の大規模多施設ランダム化二重盲検試験(第3相)が行われ、治療効果についての全体的な印象(overall treatment efficacy)と3症状(食後の膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感)の消失率の2つの主要エンドポイントにおいて、アコチアミド投与群で有意に改善したことが報告されている。また、本試験における有害事象発現率と副作用発現率については、プラセボ投与群との間に統計的な有意差は認められていない。FDに対する診断と治療 胃がんなど他疾患の可能性を除外した上で、FDと診断した場合にはH.pyloriの検査が推奨される。感染が認められる際は除菌治療を行い、感染が認められない場合、または除菌後も症状が持続する場合には、低脂肪のものを少量食べるなどの食事療法を実施する。さらに患者さんの愁訴があれば、胃痛が中心の場合には胃酸分泌抑制剤などを投与し、胃もたれが中心となる場合には、アコチアミドなどの消化管運動機能改善薬を投与するというのがひとつのフローとなる(場合によっては両薬剤の併用を考慮し、それでも症状改善が十分でない場合には抗うつ薬や抗不安薬を検討する)。 先述のようにFDの原因はさまざまであるが、以前に比べ、多様な治療が可能になりつつあると木下氏は述べている。アコファイドの発売によりFD患者の自覚症状の改善やQOL向上が期待されるとともに、FD治療の幅が広がることは多くの医療関係者にとってベネフィットになると言えよう。

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