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専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。ASUにおけるFeSS管理プロトコールの有用性を評価するクラスター無作為化試験QASC(Quality in Acute Stroke Care)試験の研究グループは、急性期脳卒中の専門病棟(acute stroke unit: ASU)に入院中の患者において、エビデンスに基づく発熱(fever)、高血糖(hyperglycaemia=sugar)、嚥下障害(swallowing dysfunction)(FeSS)の管理が、退院後のアウトカムに及ぼす影響を評価する単盲検クラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCTとhigh dependency unit(HDU)を備えたASUに入院した発症後48時間以内の虚血性脳卒中または脳出血患者で、英語を話す18歳以上の者とした。FeSS群には、集学的チームによるFeSS管理のための治療プロトコール(ASU入院後72時間内に行う看護師による管理が中心)が施行され、対照群は既存のガイドラインの簡易版に基づく治療を受けた。介入前(無作為割り付け前)と、介入後の患者コホートを登録し、90日後の死亡または要介助[修正Rankinスケール(mRS)≧2]、機能評価[Barthelインデックス(BI)]、QOL(SF-36の「身体機能」と「心の健康」)を比較した。研究助手、統計解析担当、患者には割り付け情報はマスクされた。脳卒中専門病棟の拡充につながる知見19のASUがクラスターとして登録され、FeSS群に10施設、対照群には9施設が割り付けられた。介入前(2005年7月30日~2007年10月30日)のデータは687例から、介入後(2009年2月4日~2010年8月25日)のデータは1,009例(FeSS群:558例、対照群:451例)から得られた。介入前データの解析結果はすでに報告されており、90日後の死亡、死亡または要介助、機能評価などはFeSS群と対照群で同等であった。介入後は、脳卒中の重症度にかかわらず、90日後における死亡またはmRS≧2の割合はFeSS群が42%(236/558例)と、対照群の58%(259/449例)に比べ有意に低かった(p=0.002)。SF-36の「身体機能」の平均スコアはFeSS群[45.6(SD 10.2)]が対照群[42.5(SD 10.5)]よりも有意に良好だった(p=0.002)が、死亡率[4%(21/558例)vs. 5%(24/451例)、p=0.36]やSF-36の「心の健康」[49.5(SD 10.9)vs. 49.4(SD 10.6)、p=0.69]に差はなく、機能評価[BI≧60:92%(487/532例)vs. 90%(380/423例)、p=0.44]も両群で同等であった。著者は、「エビデンスに基づく看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールは、脳卒中専門病棟退院後の患者において良好なアウトカムをもたらす」と結論し、「これらの知見は脳卒中専門病棟の拡充の可能性を示すものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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乳房温存術後の放射線療法による再発抑制効果は背景因子で異なる

乳房温存術後の温存乳房に対し放射線療法を追加することにより、再発率がほぼ半減して乳がん死は約6分の5にまで低下し、これらのベネフィットはほとんどのサブグループで認められるが、その程度は背景因子によって異なることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)によるメタ解析で示された。早期乳がんには通常、乳房温存術が行われるが、温存乳房内には微小腫瘍病変が残存している可能性があり、後年、局所再発や遠隔転移を来す恐れがある。乳房温存術後の放射線療法により再発や乳がん死が低減することが示されているが、より有効性の高いサブグループが存在する可能性があるという。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月20日号)掲載の報告。放射線療法追加の効果の背景因子による違いを評価EBCTCGは、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者において、さまざまな予後因子や背景因子に応じて再発や乳がん死の状況を解析し、15年乳がん死リスクに対する10年再発リスクの影響を検討するためのメタ解析を行った。解析には、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者と受けなかった患者の予後を比較した17件の無作為化試験に登録された1万801例の個々の患者データを用いた。このうち、病理学的にリンパ節転移陰性(pN0)あるいは陽性(pN+)と確定された患者は8,337例であった。1例の15年乳がん死の回避には4例の10年再発の予防が必要初回再発(局所および遠隔)の10年リスクは、乳房温存術単独群の35.0%から放射線療法追加群では19.3%まで有意に低下し(絶対低下率:15.7%、95%信頼区間:13.7~17.7、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の25.2%から追加群では21.4%まで有意に減少した(同:3.8%、1.6~6.0、2p=0.00005)。pN0例(7,287例)においては、10年再発リスクは乳房温存術単独群の31.0%から放射線療法追加群では15.6%まで(絶対低下率:15.4%、95%信頼区間:13.2~17.6、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の20.5%から追加群では17.2%まで有意に低減した(同:3.3%、0.8~5.8、2p=0.005)。pN0例における再発リスクの絶対低下率は年齢、腫瘍の悪性度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)の使用状況、手術範囲によって変動がみられ、これらの背景因子を用いて10年再発リスクの絶対低下率を「高(≧20%)」「中(10~19%)」「低(<10%)」に分けて予測が可能であった。また、この分類に対応した15年乳がん死リスクの絶対低下率が高い群は7.8%、中等度の群は1.1%、低い群は0.1%であった(死亡の絶対低下率の傾向検定:2p=0.03)。pN+例(1,050例)は、10年再発リスクが乳房温存術単独群の63.7%から放射線療法追加群では42.5%まで有意に低下し(絶対低下率:21.2%、95%信頼区間:14.5~27.9、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の51.3%から追加群では42.8%まで有意に減少した(同:8.5%、1.8~15.2、2p=0.01)。全体として、10年後の再発を4例で予防できれば、1例を15年後の乳がん死から救うことが可能であった。このような関連は、リンパ節転移の状態が確定された患者におけるリスク低減の高/中/低の予測カテゴリーでも同様に認められた。著者は、「乳房温存術後の温存乳房に対する放射線療法により再発率がほぼ半減し、乳がん死は約6分の5にまで低下した。これらのベネフィットはほとんどのサブグループでみられたが、ベネフィットの程度は患者の背景因子によって実質的に異なっており、治療の決定の際に予後の予測が可能と考えられる」と結論し、「温存乳房内の微小残存腫瘍を放射線療法で死滅させることで局所再発と遠隔転移の双方を抑制可能なことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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2011年初夏にドイツで大流行したO104:H4の疫学的プロファイル

ドイツでは、2011年5月、6月、7月に、志賀毒素産生性大腸菌O104:H4による胃腸炎および溶血性尿毒症症候群(HUS)が大流行した。その疫学的プロファイル調査の結果、同定された大腸菌株は通常のO104:H4ではみられないタイプであったこと、HUS発生が主に成人の女性で多かったことが明らかにされた。ドイツ・Robert Koch研究所Christina Frank氏らHUS研究チームによる。同大流行は、もやしの消費が媒介となった可能性が最も高いとされている。NEJM誌2011年11月10日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載報告より。2ヵ月間で3,816例報告、北ドイツに集中研究チームは、ドイツにおいて報告された志賀毒素産生性大腸菌O104:H4による胃腸炎例およびHUS例と、ハンブルグ大学医療センターに紹介されてきた患者の臨床情報について解析を行った。報告例について、発症時期が2011年5月1日~7月4日であり、血清型がO104または不明の志賀毒素産生性大腸菌に感染した患者で、HUSまたは胃腸炎の発症が報告された例を、大流行の対象と定義した。結果、3,816例(うち死亡54例)が同定義に当てはまった。発生報告は、北ドイツに集中しており、5月21、22日がピークであった。腸管凝集性大腸菌の遺伝子タイプを有しESBLを産生する志賀毒素産生性大腸菌HUS患者は、そのうち845例(22%)だった。HUS患者の大半は成人(88%、年齢中央値42歳)で、女性が過度に多かった(68%)。菌の推定潜伏期間中央値は8日間で、下痢発症からHUS発現までは中央値5日間であった。一方、ハンブルグ大学医療センターで前向きに追跡した59例の患者については、HUS例は12例(20%)だったが、性差、また初期症状・徴候について有意差は認められなかった。また、発生株について調べた結果、血清型はO104:H4であったが、腸管凝集性大腸菌の遺伝子タイプを有し、通常O104:H4でみられる腸管出血性大腸菌の遺伝子タイプはみられず、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生する志賀毒素産生性大腸菌であることが確認された。

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬 カナキヌマブ

2011年9月、カナキヌマブ(商品名:イラリス)がクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の適応を国内で初めて取得した。この承認にあたり2011年11月8日(火)に「ノバルティスファーマ・メディアフォーラム」が開催された。演者の横田俊平氏(横浜市立大学大学院 医学研究科 発生成育小児医療学 教授)、および「CAPS患者・家族の会」代表を務める利根川聡氏の講演内容をレポートする。待望の新薬の承認本講演の冒頭において、横田氏は、「これまで、国内でCAPSに適応のある薬剤がなかった。そのため、患者さんは日々進行する辛い症状に耐え、そのご家族もまた、その姿を目の当たりにし、苦しみ続けてきた。そのような方々にとって、カナキヌマブは、まさに長い間待ち望まれてきた新薬である」と述べ、カナキヌマブが画期的な新薬であることを強調した。CAPSとは炎症性サイトカインのひとつであるヒトインターロイキン(IL)-1βが過剰に産生することで、炎症反応が起こる慢性自己炎症疾患群である。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて発疹、発熱、関節痛などが繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性がある。国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多い1)~3)。現在、国内の患者数は30名程度とされるが、未診断の患者を含めると全国に100名くらいの患者がいると見込まれている。投与間隔8週間で効果を発揮カナキヌマブはヒトインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で8週毎に皮下投与する。国内における臨床試験では、投与24週以内に完全寛解した患者さんの割合は94.7%で、投与48週以内に完全寛解した割合は100%であった。横田氏によれば、CAPS治療はこれまで、対症療法しかなかったが、カナキヌマブの登場により、CAPSの炎症症状を速やかに寛解させることができるようになったという。それは患者のQOLや予後の改善だけでなく、家族にとっても大変喜ばしいことであるとも述べた。治療上の注意点国内臨床試験における主な副作用は19例中12例(63.2%)に認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)であった。横田氏はCAPS治療を行う上で感染症には注意が必要であると述べている。カナキヌマブの特性上、投与により発熱や炎症が治まるため、たとえば肺炎であるにも関わらず、肺炎と診断されないケースがあるという。また、世界的にみても、発売して間もない薬剤であるため、長期的な評価に乏しく、今後も慎重な経過観察が必要とも述べた。CAPS患者・家族の会の存在カナキヌマブは申請から8ヵ月間という短期間での承認に至ったが、その背景にはCAPS患者・家族の会の存在も大きい。CAPS患者・家族の会の代表を務める利根川聡氏のご息女は、1歳になる前にCAPSを発症し、全身の発疹、発熱、関節痛などにより、車いす生活を余儀なくされた。当時、CAPS治療は対症療法しかなかったため、ただひたすら苦しみに耐えるわが子の姿を見守る日々が続いた。しかし、カナキヌマブでの治療を受け、それらの症状は次第に寛解し、今では外で運動することができるまでになったという。利根川氏にとって何より嬉しかったことは毎日、苦しい表情をしていた我が子に笑顔が戻り、周囲の子供達と同じような生活が送れるようになったことだという。しかし、高額な薬剤費が家族の経済的な負担になっているという課題も残されている。現在、CAPS患者・家族の会では、国による患者支援を受けるため、難病指定・特定疾患の認定を要望する活動を続けている。まとめカナキヌマブは世界的にみても、発売されて間もない薬剤であるため、今後も慎重な経過観察が必要であるといえる。しかしながら、カナキヌマブの登場により、今後CAPS治療は大きく変わっていくであろう。これまでCAPS患者はCAPSと診断されず、施設を転々とするケースも多かったという。この薬剤の登場を契機に、より多くの医療関係者がCAPSという希少疾患に対する見識を深め、早期診断、早期治療を行っていくことも次の課題といえよう。

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EC-ICバイパス術、2年再発性同側性虚血性脳卒中のリスクを低下せず

症候性アテローム動脈硬化性内頸動脈閉塞(AICAO)で同側性脳虚血の認められる人に対し、抗血栓療法に加えて頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を行っても、2年長期の再発性同側性虚血性脳卒中のリスク減少にはつながらないことが示された。米国・ノースカロライナ大学のWilliam J. Powers氏らが、約200人を対象に行った無作為化非盲検試験の結果で、JAMA誌2011年11月9日号で発表した。AICAOで同側性脳虚血の195人を、2年間追跡研究グループは、2002~2010年にかけて、米国とカナダの計49ヵ所の医療センターまたは計18ヵ所のPETセンターにて試験を行った。大半は大学病院の付属施設だった。被験者は195人で、動脈造影によってAICAOが確認され、120日以内に頭部片側症状があり、PETによる同側性脳酸素摂取率増加から血行動態的脳虚血が認められた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(97人)にはEC-ICバイパス術を実施し(手術群)、もう一方の群(98人)は同術を実施しなかった(非手術群)。被験者は全員、抗血栓療法とリスク因子への介入が行われた。主要エンドポイントは、手術群が(1)術後30日間の全脳卒中または死亡、(2)無作為化後2年以内の同側性虚血性脳卒中だった。非手術群または手術群にいながら手術を受けなかった人は、(1)無作為化後30日間の全脳卒中または死亡、(2)無作為化後2年以内の同側性虚血性脳卒中だった。手術群で主要エンドポイント発生率に有意差なく、試験は早期終了結果、本試験は手術による有益性が認められなかったため、早期に中止となった。試験開始2年後までの主要エンドポイント発生率は、手術群21.0%(95%信頼区間:12.8~29.2、20件)に対し、非手術群22.7%(同:13.9~31.6、20件)で、両群発生率に格差は認められなかった(発生率格差:1.7ポイント、95%信頼区間:-10.4~13.8、p=0.78)。なお、30日後同側性虚血性脳卒中の発生率は、手術群が14.4%に対し非手術群は2.0%と、発生率格差は12.4ポイント(同:4.9~19.9)に上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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冠動脈血行再建術後の心臓負荷試験、医師の報酬体系の違いで実施率が増減

冠動脈血行再建術後の心臓負荷試験の実施率は、医師の報酬体系に関連しており、技術料・診断料ともに請求する医師は、どちらも請求しない医師に比べて、核ストレステストの実施率は2.3倍、心エコー検査実施率は12.8倍に、それぞれ増大することが報告された。米国・デューク大学のBimal R. Shah氏らが、冠動脈血行再建術後に外来診察を受けた約1万8,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月9日号で発表した。技術料・診断料を請求、診断料のみ請求、請求なしの3群に分類して比較研究グループは、米労働者が加入するUnited Healthcareの管理記録で、2004年11月1日~2007年6月30日にかけて、冠動脈血行再建術の実施後90日以上外来通院した患者1万7,847人について調査を行った。平均年齢は54.6歳、うち女性は21%だった。被験者を担当する医師は、心臓負荷試験に対する報酬の請求体系の違いから、技術料・診断料ともに請求、診断料のみ請求、どちらも請求しない、の3通りに分類した。ロジスティック回帰モデルを用いて、医師の請求体系と、術後外来診察後30日以内の心臓負荷試験実施率との関連を分析した。核ストレステスト、心エコーともに、実施率は非請求群が最小、技術料・診断料群が最大結果、核ストレステストの実施率は、被験者全体では12.2%(95%信頼区間:11.8~12.7)だった。担当医の請求体系別では、技術料・診断料群は12.6%(同:12.0~13.2)、診断料群は8.8%(同:7.5~10.2)、非請求群では5.0%(同:4.4~5.7)と、各群で有意差が認められた(p<0.001)。また負荷心エコーの実施率も、技術料・診断料群2.8%(同:2.5~3.2)、診断料群1.4%(同:1.0~1.9)、非請求群0.4%(同:0.3~0.6)と、有意な傾向が認められた(p<0.001)。核ストレステスト実施に関する、非請求群に対するそれぞれの補正後オッズ比は、技術料・診断料群が2.3、診断料群が1.6だった(p<0.001)。心エコー実施に関する、同オッズ比は、技術料・診断料群が12.8、診断料群が7.1だった(p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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今年はどうなる?抗インフルエンザ薬

QLifeは18日、同社が行った調査『抗インフルエンザウイルス剤の処方動向調査2011』の結果を発表した。昨シーズンに抗インフルエンザイウルス剤を処方した全国の医師にアンケートを行い、内科・小児科を中心とする505人から回答を得た。今年のインフルエンザは、厚生労働省からワクチン供給予定量が当初見込みより下回ることが発表された直後に、例年よりも早い流行入りの可能性がマスコミによって報道されていた。2009~2010年の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生以降、インフルエンザ情報に対して敏感になっている人も多いため、医師は、受診した患者や家族に対してインフルエンザの正しい対処法を説明することがより重要になっている。ところが、医師の間でも耐性ウイルスに関しては情報・認識が錯綜しているのが現状だ。「耐性ウイルスが市中で広く流行しているとお考えですか」との設問に対して、「流行している」「流行していない」の両回答が21%と拮抗した。また増殖性、病原性についても、「耐性ウイルスの方が強い」が18%と、「通常のウイルスの方が強い」回答12%を上回る結果となった。昨シーズンに処方した抗ウイルス剤の比率をきいたところ、タミフルが57%と最も多く、次いでイナビル20%、リレンザ19%、ラピアクタ2%の順であった。今後の処方意向に関しても「対成人」「対10歳未満」の両方でタミフルが最も多く、リレンザは対成人と対10歳未満とで大きく異なる結果となった。また、自由回答コメントのなかには「必要ないと思われる場合でも、薬を強く希望する人が増えた」という医師からの回答もあった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/2417.html

30609.

医師の専門性認定、患者や同僚医師の評価に基づく判定は慎重に

医師の専門性を患者や同僚医師の評価に基づいて判定する場合、当該医師や評価者の背景因子に起因する組織的バイアスが生じる可能性があるため注意を要することが、英国・ペニンシュラ医科歯科大学のJohn L Campbell氏らの調査で示された。王立医師協会(GMC)は、イギリスの医師が医師免許を継続して保持するには妥当性を再確認する必要があり、そのためには最新かつ実臨床に即した医療を提供可能なことを示すよう提言している。医師による認定の申請を判定するには、患者や他の同僚医師からの多岐にわたる評価がエビデンスの重要な情報源になるという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月27日号)掲載の報告。医師の専門能力評価に影響する予測因子を調査研究グループは、医師の専門性を評価する際にみられる組織的バイアス(多くの個別の条件下で評価が行われるため、実際の価値とはずれが生じること)の原因に関して質問票を用いて横断的に調査し、得られたデータについて解析を行った。調査対象は、イングランドとウェールズのさまざまな専門領域の非研修段階にある医師1,065人と、その同僚医師1万7,031人および患者3万333人であった。GMCによる患者および同僚医師への質問票を用いて当該医師の専門能力を評価し、医師自身と患者、同僚の背景因子に起因する可能性のある予測因子について検討した。多くの情報源からの医師の評価は慎重に解釈すべき医師および患者の背景因子で調整したところ、ヨーロッパ以外の国で学位を取得した医師に対する患者の評価が低いことが示された。すなわち、これらの医師では、1)特に精神科医として診療業務を行っている医師の評価が低い、2)質問票を提出した白人患者が少ない、3)当該医師の診察を「たいへん重要(very important)」とした患者が少ない、4)「かかりつけ医に診てもらう」と回答した患者が少ない、などの傾向が認められた。同僚医師の評価は、イギリスおよび南アジア以外の国で学位を取得した医師において低かった。これらの医師では、1)代理医師として雇用、2)GPあるいは精神科医として診療、3)非専門的職員(staff grade)、準専門医(associate specialist)あるいは他の同等職種として雇用、4)医師と毎日あるいは毎週、専門的な交渉を行っていると答えた同僚が少ない、などの事例が確認された。完全調整後のモデルによる解析では、当該医師の年齢、性別、人種は、患者や同僚医師による評価の独立の予測因子ではなかった。患者や同僚の年齢、性別も、当該医師の評価の予測因子ではなく、同僚の人種も関連はなかった。これらの結果を踏まえ、著者は「医師の専門性に関する患者や同僚医師の評価を考慮する際は注意が必要である。標準化された専門性の評価法がない場合は、多くの情報源からの意見に基づく医師の評価は慎重に解釈すべき」と警告し、「専門家としての医師の評価には、評価者や評価対象医師の背景因子に起因する組織的バイアスが存在する可能性がある。医師としての妥当性の再確認を目的に、GMCの患者/同僚質問票を用いた調査を行う場合、多くの情報源からの評価は少なくとも初期段階においては「形成的評価」として行われるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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内視鏡手術のトレーニング用システム2点を開発 11月の日本神経内視鏡学会にて発表へ

外科医向け精密削開練習用骨モデルを製造・販売する大野興業は14日、内視鏡下における水頭症手術(第3脳室底開窓)および経蝶形骨手術(下垂体腺腫)のトレーニング用システムを開発したことを発表した。同トレーニングシステムは、大平 貴之氏(慶應義塾大学 脳神経外科)監修のもとで行われた。水頭症患者の脳室内形状を軟質素材でリアルに再現した「水頭症手術モデル」は、第三脳室底開窓術トレーニングを可能にした。また、鼻腔内鼻甲介や頭蓋底大脳血管などの器官を硬質軟質各種素材でリアルに再現した「経蝶形骨手術モデル」は、粘膜切開剥離と軟骨折除からトルコ鞍底部骨除去に至る内視鏡トレーニングが可能だという。なお、経鼻内視鏡による手術は、脳神経外科と耳鼻咽喉科によるコラボレーションが一般的なため、鼻腔内の再現については、角田 篤信氏(東京医科歯科大学 耳鼻咽喉頭頸部外科)も監修に加わっている。同社は、これら2点のトレーニングシステムは練習者が内視鏡を用いて患者を施術する感覚を繰り返す練習とより深い手技の理解と習得に役立ち、これから内視鏡手術を学ぶ多くの若いドクターにとっても有効なツールになるのではと述べている。また、今回のシ新モデルの開発については、2011年11月17日・18日に岡山にて開催される第18回 日本神経内視鏡学会で発表される予定。プレスリリースはこちらhttp://www.atpress.ne.jp/view/23744第18回 日本神経内視鏡学会Webサイトhttp://www.congre.co.jp/jsne2011/

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OKI、「救急医療搬送支援システム」の販売を開始

OKIは16日、救急患者の疾患情報と病院の受け入れ状況をリアルタイムで情報収集し、最適な医療機関への搬送支援を行う「救急医療搬送支援システム」を開発したと発表した。同システムは2012年3月より販売開始される予定。救急搬送における医療機関の受け入れ困難は社会問題になっているが、この問題の解消には、救急患者の処置ができる専門医の受け入れ可能状況を把握し、救急車が適切な医療機関への搬送を行う仕組みづくりが重要となる。救急医療体制支援システム構築の「GEMITS」プロジェクト(注1)は、2009年度から経済産業省の委託事業として岐阜大学が取り組み、2010年度からはNPO岐阜救急災害研究開発機構が総務省の委託事業としても実施している。同社はこれまで「GEMITS」プロジェクトに参画し、救急患者の疾患情報の共有や最適な医療機関への搬送を支援するシステムを構築、実証実験に参加してきた。また、企業や関係団体と連携して「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたGEMITSアライアンスパートナーズ(GEMAP〔注2〕)の設立発起人の一員として、「GEMITS」の普及に努めているという。今回、同社はGEMITSプロジェクト参画の経験をいかし、また、これまで様々な分野で培ってきた通信技術やシステム開発力を組み合わせ「救急医療搬送支援システム」を開発した。コンセプトは、救急患者に「最適な病院に、最適の時間で搬送し、最適な処置ができる」こと。同システムは、エンジン機能にあたる「統合エージェント」を中核に7つのシステムから構成されている。中心となる機能は、医師がICタグを装備することで病院での位置情報などから繁忙度を判断する機能。また、救急隊員が所持するタッチパネル式の専門端末(Android搭載)を使って患者の疾患情報や搬送状況を送信することもできる。リアルタイムで収集した医師の繁忙度と患者の疾患および搬送状況をもとに「統合エージェント」が、受け入れ病院の候補を選定する。これらの機能のほかに、受け入れ病院の医療スタッフを支援する機能や、テレビ会議で救急隊員と病院が患者情報を共有できる機能を備えている。注1:GEMITS(Global Emergency Medical supporting Intelligent Transport System)岐阜大学を中心とした産学連携事業体が国の事業との連携を図り、救急医療体制支援システムを構築するプロジェクト。現在、困難な状況にある救急医療体制を医療資源の育成、最適化利用を図ることで、再生できることを実証し、救急医療体制のロールモデルとして全国に展開することを目的に活動を行っている。注2:GEMAP:GEMITSアライアンスパートナーズ(GEMITS Alliance Partners)2011年6月に設立された幅広い分野の企業や関係団体と連携して、「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたコンソーシアム形式の機関。詳細はプレスリリースへhttp://www.oki.com/jp/press/2011/11/z11074.html

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新たなサーファクタント治療が早産児の人工呼吸器適応を低減

持続的気道陽圧法(CPAP)で自発呼吸が保持されている早産児では、細いカテーテルを用いたサーファクタント治療によって人工呼吸器の適応が低減することが、ドイツLubeck大学のWolfgang Gopel氏、Cologne大学のAngela Kribs氏らが実施したAMV試験で示された。サーファクタント治療は、通常、呼吸窮迫症候群の治療のために人工呼吸器を装着された早産児に気管内チューブを介して施行されるが、挿管せずに安定状態が保持されている早産児にはCPAPの不利益を考慮してこの治療は行われない。一方、ドイツの新生児集中治療施設では、気管内挿管や人工呼吸器を必要としないサーファクタント治療(治療中のみ気管内に細いカテーテルを留置してCPAPを行いながら施行)が広く普及しつつあるという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年9月30日号)掲載の報告。人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸をうながす新たなサーファクタント治療AMV(Avoiding Mechanical Ventilation)試験の研究グループは、早産児において人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸を促す新たなサーファクタント治療の有用性を評価するための無作為化対照比較試験を行った。2007年10月~2010年1月までに、ドイツの12の新生児集中治療施設に在胎週数26~28週、出生時体重1.5kg未満の早産児220人が登録された。これらの新生児が、生後12時間以内に標準治療群あるいは介入群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての早産児はCPAPで安定状態を保持され、必要に応じてレスキュー挿管が行われた。介入群の早産児には、自発呼吸をうながすために吸入気酸素濃度(FiO2)が0.30以上となるよう、喉頭鏡で気管内に細いカテーテル(2.5~5 french)を留置して経鼻的CPAPが施行された。カテーテル留置後に喉頭鏡を外して1~3分間の気管内サーファクタント治療(100mg/kg体重)を行い、治療終了後は即座にカテーテルを抜去した。主要評価項目は、生後25~72時間において、人工呼吸器の適応もしくは人工呼吸器は使用しないが二酸化炭素分圧(pCO2)65mmHg(8.6kPa)以上かFiO2 0.60以上、あるいはその双方を要する状態が2時間以上に達した場合とした。生後2~3日および在院期間中の人工呼吸器適応率が有意に改善介入群に108人が、標準治療群には112人が割り付けられ、すべての新生児が解析の対象となった。生後2~3日における人工呼吸器の適応率は介入群の28%(30/108人)に対し標準治療群は46%(51/112人)であり、有意な差が認められた(絶対リスク低下:-0.18、95%信頼区間:-0.30~-0.05、p=0.008)。在院期間中の人工呼吸器適応率は介入群の33%(36/108人)に比べ標準治療群は73%(82/112人)と、有意差がみられた(絶対リスク低下:-0.40、95%信頼区間:-0.52~-0.27、p<0.0001)。人工呼吸器使用日数中央値は、介入群が0日、標準治療群は2日であり、生後28日までに酸素補給療法を要した早産児は30%(30/101人)、標準治療群は45%(49/109人)(p=0.032)であった。死亡数は介入群が7人、標準治療群は5人、重篤な有害事象はそれぞれ21人、28人であり、いずれも有意な差はなかった。著者は、「CPAPによって自発呼吸が保持されている早産児に対する細いカテーテルを用いたサーファクタント治療は、標準治療に比べ人工呼吸器の適応を低減させた」と結論したうえで、「鎮痛薬や鎮静薬の使用は主要評価項目に影響を及ぼさなかったが、極度な未熟児ではこれらの薬剤による血圧低下や脳灌流障害の有害な影響が指摘されており、介入群で使用頻度が低かったことがベネフィットにつながった可能性もある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除マージンは2cmで十分か?

厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPeter Gillgren氏らの検討で示された。悪性黒色腫は、近年、主に白人において罹患率および死亡率が増加傾向にあり、診断年齢は低下する傾向にある。標準的治療は切除術だが、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫を切除する際の病巣辺縁からの最適な切除マージンについては、議論が多く確立された知見はないという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月24日号)掲載の報告。切除マージン2cmと4cmのOSを比較する無作為化試験研究グループは、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫の切除マージンを2cmとした場合と4cmの場合の生存の差について検討する多施設共同無作為化試験を実施した。対象は、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの原発性悪性黒色腫患者で、切除マージンが2cmの群あるいは4cmの群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率(OS)とした。5年OSは両群とも65%1992年1月22日~2004年5月19日までに、スウェーデン、デンマーク、エストニア、ノルウェーの53病院が参加し、9つの専門施設に936例が登録された。切除マージン2cm群に465例が、4cm群には471例が割り付けられた。各群1例ずつが追跡不能となったが、解析には含めた。追跡期間中央値6.7年における死亡数は、2cm群が181例、4cm群は177例であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.85~1.29、p=0.64)。5年OSは、2cm群が65%(95%信頼区間:60~69)、4cm群も65%(95%信頼区間:60~70)と、両群で同等であった(p=0.69)。著者は、「厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分かつ安全であることが示唆される」と結論し、「国際的なガイドラインの多くは厚さ2mm以上の腫瘍の切除マージンは2~3cmを推奨しているが、3cmの場合は2cmよりも創閉鎖が明らかに困難で、2cmであれば多くの場合は植皮なしで閉鎖が可能である。今後は、全無作為化試験のメタ解析を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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第VIII因子インヒビター重症血友病A患者に対するAICCの予防的投与戦略

第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。34例を対象に予防的投与期間中とオンデマンド治療期間中の出血回数を比較研究グループは、欧米16ヵ所の血友病治療センターで2003年11月~2008年9月に、2歳以上のインヒビター高値の血友病A患者で、出血に対しバイパス製剤による治療を始めていた(試験前6ヵ月間で6回以上出血エピソードがあった)患者34例を登録した。被験者は無作為に、AICCの予防的静注[目標用量85U/kg体重(±15%)を週3回(連続しない日に投与)]を6ヵ月間行う治療と、オンデマンド治療[出血に対し目標用量85U/kg体重(±15%)のAICCを投与]を6ヵ月間行う治療をクロスオーバーで受け、それぞれの治療期間における出血回数を主要エンドポイントとして比較された。両治療の間には、3ヵ月間の休薬期間が設けられ、その間の出血についてはオンデマンド治療が行われた。予防的投与は全出血エピソードを62%減少試験を完了しper-protocol解析で有効性評価がされたのは、34例中26例であった。結果、オンデマンド治療期間と比較して予防的投与期間は、全出血エピソードが62%減少(P<0.001)、関節血症は61%減少(P<0.001)、標的関節出血(6ヵ月間の治療期間中片方の関節血症が3回以上)は72%減少(P<0.001)した。被験者の33例が1回以上試験薬を受けており、それら被験者について安全性の評価が行われた。結果、1例が試験薬に対するアレルギー反応を有した。(武藤まき:医療ライター)

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ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。カナダ6病院で前向き研究研究グループは、2006年3月6日~2007年6月25日にわたり、カナダのケベック州とオンタリオ州にある6つの国立病院で15ヵ月間にわたる前向き研究を行った。対象病院の患者に関して、人口統計学的情報、既知のリスク因子、潜在的な交絡因子などの情報収集と、週1回の便検体または直腸スワブの収集を行い解析した。C. difficile分離株の遺伝子型の同定はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にて行い、C. difficile毒素AおよびBの血清抗体値測定なども行った。合計4,143例の患者の情報が収集され解析された。感染例2.8%、保菌例3.0%で、北米PFGE1型(NAP1)株は感染例では62.7%、保菌例36.1%ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は117例(2.8%)、保菌例は123例(3.0%)だった。ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は、「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と有意な関連が認められた。一方保菌例については、「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」が関連していた。また、北米PFGE1型(NAP1)株を有していたのは、感染例では62.7%であったが、保菌例では36.1%だった。(武藤まき:医療ライター)

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胸部X線による肺がん検診、肺がん死亡率低下に効果なし

胸部X線による年1回の肺がん検診は、肺がん死亡率を低下しないと結論する報告が発表された。米国・ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが、15万人超を対象に行われた、がんスクリーニング無作為化比較試験「PLCO」から肺がんスクリーニング4年間の追跡結果を解析した結果で、JAMA誌2011年11月2日号(オンライン版2011年10月26日号)で発表した。胸部X線による肺がん検診の死亡率に対する有効性は、これまで明らかにされていなかった。追跡期間13年間で、肺がん死亡率、肺がん罹患率などを分析PLCOは前立腺、肺、大腸、卵巣の4つのがんスクリーニングを対象とする試験。被験者は毎年スクリーニングを受ける群と、通常の医療ケアを受ける群に割り付けられフォローアップが行われた。研究グループは、それら被験者の胸部X線による肺がんスクリーニングの死亡率の影響を調べた。1993~2001年にかけて、55~74歳の15万4,901人が無作為に割り付けられ、一方の群(7万7,445人)には年1回の胸部X線正面像撮影による肺がんスクリーニング検査が4年間にわたり行われた。もう一方の群(7万7,456人)には通常の医療ケアが行われた。スクリーニング検査の陽性結果に対するフォローアップについては、被験者とその医師らによって決定した。主要アウトカムは肺がん死亡率、副次アウトカムは肺がん罹患率と診断目的の処置による合併症、総死亡率とされた。追跡期間は13年、または2009年末時点までのいずれかで、先に到達した時点までで調査が行われた。累積肺がん罹患率、肺がん死亡率ともに両群で有意差なし検診群における肺がん検診実施率は、初回が86.6%、1~3年後は79~84%だった。対照群における検診実施率は、11%だった。追跡期間中の累積肺がん罹患率は、1万人・年当たり、検診群20.1、対照群19.2と、両群で有意差はなかった(累積肺がん罹患率比:1.05、95%信頼区間:0.98~1.12)。同期間中の肺がん死亡数も、検診群1,213人、対照群1,230人と、両群で同等だった(肺がん死亡率比:0.99、同:0.87~1.22)。肺がんの組織学的状態や病期についても、両群で有意差は認められなかった。また、大量喫煙者3万人超について6年間追跡して行ったサブグループ分析でも、検診群と対照群で、肺がん死亡率に有意差はなかった(肺がん死亡率比:0.94、同:0.81~1.10)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。がん全体の標準化罹患比は2.10、過剰絶対リスクは10万人・年当たり719.3研究グループは、1987~2008年の米国移植レシピエントの登録簿「US Scientific Registry of Transplant Recipient」に登録された17万5,732人の臓器移植レシピエントを元に、多種のがん発症リスクについて分析した。同レシピエントのうち、腎臓が58.4%、肝臓が21.6%、心臓が10.0%、肺が4.0%だった。全体では、がんを発症したのは1万656人で、発症率は1,375人/10万人・年、標準化罹患比は2.10(95%信頼区間:2.06~2.14)、過剰絶対リスクは719.3/10万人・年(同:693.3~745.6)だった。肝臓移植後6ヵ月以内の肝臓がん発症リスクは500倍超なかでも、非ホジキンリンパ腫の発症頻度が最も高く、発症者数は1,504人、発症率は194.0/10万人・年、標準化罹患比は7.54(同:7.17~7.93)、過剰絶対リスクは168.3/10万人・年(同:158.6~178.4)だった。次いで頻度が高かったのは肺がんで、発症者数は1,344人、発症率は173.4/10万人・年、標準化罹患比は1.97(同:1.86~2.08)、過剰絶対リスクは85.3/10万人・年(同:76.2~94.8)。続いて肝臓がんで、発症者数は930人、発症率は120.0/10万人・年、標準化罹患比は11.56(同:10.83~12.33)、過剰絶対リスクは109.6/10万人・年(同:102.0~117.6)、腎臓がんの、発症者数752人、発症率は97.0/10万人・年、標準化罹患比は4.65(同:4.32~4.99)、過剰絶対リスクは76.1/10万人・年(同:69.3~83.3)だった。肺がんについては、肺移植レシピエントで最も発症リスクが高く標準化罹患比は6.13だったが、他の臓器移植レシピエントでも高く、心臓2.67、肝臓1.95、腎臓1.46であった。肝臓がんについては、肝移植レシピエントでのみ発症リスクが増大し、標準化罹患比は43.83、なかでも移植後6ヵ月の同リスクは著しく高く同比508.97に上った。術後10~15年のリスクも2倍以上に上った(標準化罹患比:2.22、95%信頼区間:1.57~3.04)。腎臓がんは、腎移植レシピエントで高く標準化罹患比は6.66で、その値は追跡期間中に上昇したり下降したりした。また肝移植レシピエント(同1.80)、心移植レシピエント(同2.90)でもリスク増大が認められた。

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婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

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周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に無作為化プラセボ対照試験トラネキサム酸は止血剤の中でも非常に安価で、最近の大規模無作為化試験で外傷大出血患者の死亡率を低下することが示されており、心臓外科では周術期輸血率を低下するため標準的となっている。整形外科手術、肝臓手術でもその有効性は示されているが、泌尿器科では明らかになっていなかった。そこでCrescenti氏らは、2008年4月~2010年5月にSan Raffaele大学病院で、18歳以上で本試験に参加することに同意した根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に試験を行った。本試験では、心房細動の人、薬剤溶出性ステント治療を受けた冠状動脈疾患の人、重症の慢性腎不全、先天性または後天性血栓形成傾向、トラネキサム酸に対するアレルギーがあるまたはその疑いがある人は除外された。被験者は無作為に、トラネキサム酸もしくはプラセボ(食塩水)を受ける群に割り付けられた。トラネキサム酸投与は、術前に負荷量500mg量を20分間、術中は250mg/時間の持続点滴が行われた。 主要アウトカムは、手術時に輸血を受けた患者数とし、副次アウトカムは術中の失血とした。トラネキサム酸群の輸血率、術中失血量が有意に低下被験者は200例全員が手術を受け、追跡も完了した。輸血患者の割合は、トラネキサム酸群34例(34%)、プラセボ群55例(55%)で、トラネキサム酸群の輸血率の有意な低下が認められた(P=0.004)。トラネキサム酸群の輸血率の絶対低下は21%(95%信頼区間:7~34)であり、相対的リスクは0.62(同:0.45~0.85)、治療必要数(NNT)は5(同:3~14)だった。術中の平均失血量は、プラセボ群よりトラネキサム酸群で有意に少なかった(P=0.02)。両群間の差は232 mL(同:29.7~370.7)だった。フォローアップにおいて死亡患者はいなかった。また血栓塞栓症イベント発生については、両群間に格差はなかった。

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