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30421.

抗てんかん薬「ビガバトリン」サノフィとアルフレッサが共同開発契約を締結

サノフィ・アベンティスは5日、同社の抗てんかん薬「ビガバトリン」(γ-アミノ酪酸(GABA)分解酵素阻害剤)の日本における開発に関して、アルフレッサファーマと共同開発したと発表した。ビガバトリンは、1989年に英国で最初に承認されている抗てんかん薬です。欧米ではSabrilの製品名で販売されており、英国の治療ガイドラインでは乳幼児においてみられる点頭てんかんの第一選択薬に位置づけられている。日本では、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、この点頭てんかんに対するビガバトリンの必要性が検討され、同社がが正式に開発要請を受けたという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=068EF964-EA25-4B42-A438-7B881FB6EB69.pdf

30422.

抗がん剤「HALAVEN」の中東欧地域におけるファーマスイス社との販売提携

エーザイは5日、英国子会社であるエーザイ・ヨーロッパ・リミテッドが、抗がん剤「HALAVEN」(一般名:エリブリン メシル酸塩)について、中東欧地域における販売提携契約をファーマスイス社(本社:スイス)と締結したと発表した。同剤は、前治療歴のある転移性乳がんの患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めての新規抗がん剤であり、「アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種のがん化学療法による前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん」患者様に対する単剤療法として2011年3月に欧州委員会(European Commission)から承認され、現在、欧州11カ国において販売されている。今回の契約に基づき、ファーマスイス社はブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、 ルーマニア、ハンガリー、スロベニアにおいて、HALAVENの販売活動を行うという。本提携により、エーザイが販売拠点を持たないこれら中東欧の国々の患者様に、革新的新薬である「HALAVENR」を供給することが可能になる。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201215.html

30423.

災害時などの画像データ消失トラブルに備える クラウド型医用画像ストレージサービス

富士フイルムは5日、クリニックの診断画像をデータセンターで保管するクラウド型医用画像ストレージサービス「+STORAGE(プラスストレージ)」を、医療施設の診療業務を支援する同社の医療クラウドサービス「ASSISTA Portal(アシスタポータル)」の新たなサービスとして、富士フイルムメディカルを通じて、4月16日より提供開始すると発表した。同サービスは、クリニックで使用される医用画像診断ワークステーション「C@RNACORE(カルナコア)」に保管される診断画像データを、院外にある同社データセンターでバックアップし、災害などによる画像データ消失トラブルの際に迅速な復旧を行えるようにするもの。C@RNACORE上で医師が画像診断した後、診断確定ボタンを押すと、画像データがC@RNACOREに付属したハードディスクと同社データセンターに自動的に送信されてバックアップを行う仕組みとなっている。院内のハードディスクとデータセンターそれぞれで同じ画像データを保管するため、通常の診断業務の際の過去画像参照は院内ハードディスクから行うことができ、万一災害などで院内に保管された画像データが消失した場合も、データセンターから復旧することが可能だという。クリニックでのX線画像のデジタル化は、過去画像との比較読影の容易さや、病院間の連携が可能になるなどのメリットから着実に進んでおり、X線装置を保有するクリニックの約7割以上にまで拡大していると推定される。しかし、利便性が高い一方で、デジタル化された診断画像は記録メディアに大量に保管されるため、機器が故障した場合や災害時に、大切な患者の画像データをすべて失う恐れもある。昨年3月11日に発生した東日本大震災では、被災した多くのクリニックが画像データを失ったため、被災地での新たなスタートにあたり、「大切な診断画像情報の消失を何としても回避したい」という強いニーズがあったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0624.html

30424.

AHA推奨の健康指標、遵守項目が多いほど死亡リスクは有意に減少

米国心臓協会(AHA)が推奨する7項目からなる心血管健康基準について、6項目以上を満たしている人は、1項目以下しか満たしていない人に比べ、全死亡リスクは半分以下、心血管疾患死や虚血性心疾患死リスクは3分の1以下に減少することが示された。米国疾病管理予防センター(CDC)のQuanhe Yang氏らが、約4万5,000人の成人データを調べて明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月28日号(オンライン版2012年3月16日号)で発表した。ただしYang氏は、同基準7項目すべてを満たしている人は、1~2%とごくわずかであったことについても言及している。同基準7項目を満たすのは、1~2%とごくわずか研究グループは、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey ;NHANES)の、1988~1994年、1999~2004年、2005~2010年の3つの調査データを用い、20歳以上成人4万4,959人について調査を行った。被験者について、AHAが推奨する「非喫煙」「運動をしている」「血圧値正常」「血糖値正常」「総コレステロール値正常」「標準体重」「健康な食事を摂取」の7項目からなる心血管健康基準の適用度合いと、全死亡と、心血管疾患や虚血性心疾患による死亡リスクとの関連を分析した。結果、被験者のうち、同基準7項目をすべて満たしていたのは、1988~1994年群で2.0%、2005~2010年群で1.2%と、ごくわずかだった。追跡期間は中央値14.5年。その間に、全死亡2,673人、心血管疾患死1,085人、虚血性心疾患死が576人、それぞれ発生した。6項目以上達成群、1項目以下達成群に比べ、全死亡リスクは半分以下同基準項目のうち1項目以下しか満たしていない人の、年齢・性別標準化絶対死亡リスクは、全死亡が14.8、心血管疾患死が6.5、虚血性心疾患死が3.7だった(いずれも1,000人・年当たり)。一方、同基準を6項目以上満たしていた人では、全死亡が5.4、心血管疾患死が1.5、虚血性心疾患死が1.1だった。6項目以上達成群の1項目以下達成群に対する補正後ハザード比は、全死亡が0.49(95%信頼区間:0.33~0.74)、心血管疾患死が0.24(同:0.13~0.47)、虚血性心疾患死が0.30(同:0.13~0.68)だった。補正後集団寄与比率は、全死亡59%、心血管疾患死64%、虚血性心疾患死63%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30425.

薬剤費自己負担の増加で、小児喘息患者の喘息による入院増加

米国の5~18歳の小児喘息患者について、薬剤費の自己負担額が増えるにつれ、喘息治療薬服用日数がやや減少し、一方で喘息による入院件数が増大することが明らかにされた。米国・ミネソタ大学のPinar Karaca-Mandic氏らが、約9,000人の18歳以下の喘息患者について調べた結果で、JAMA誌2012年3月28日号で発表した。米国では近年、民間医療保険会社が、薬剤費の患者自己負担を増加してきているという。そのことによる小児患者への影響については明らかにされていなかった。年間喘息治療薬自己負担は、約150ドル研究グループは、1997~2007年に治療を開始した、小児喘息患者8,834人について、薬剤費の自己負担額と、喘息治療薬の使用量、喘息による入院や救急外来受診との関連について、後ろ向きに調査を行った。調査対象となったのは、37の雇用主で、追跡期間は1年間だった。被験者の平均年齢は7.3歳、うち男子が59.9%だった。追跡期間中の、喘息治療薬自己負担額の年間平均は、5~18歳(5,913人)が154ドル(95%信頼区間:152~156)、5歳未満(2,921人)が151ドル(同:148~153)だった。追跡期間1年の間に、被験者のつい5~18歳が喘息治療薬を服用した日数は平均40.9%、喘息による入院は220人(3.7%)だった。5歳未満は、喘息治療薬服用日数は平均46.2%、喘息による入院は231人(7.9%)だった。薬剤自己負担額最高四分位範囲の入院は2.4/100児、最低同範囲は1.7/100児喘息治療薬の服用日数についてみると、5~18歳では、自己負担額が最も少ない四分位範囲群41.7%に対して、最も多い四分位範囲群は同40.3%と有意に少なかった(p=0.02)。5歳未満では、こうした有意差は認められなかった。また、補正後の喘息による入院についてみると、5~18歳では、自己負担額最高四分位群が2.4/100児(同:1.9~2.8)だったのに対し、最低四分位群は1.7/100児(同:1.3~2.1)と、有意に少なかった(p=0.004)。5歳未満の被験者では、こうした格差はなかった。なお、救急外来受診については、薬剤自己負担額による有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30426.

子宮頸がん検診の予後改善効果を確認

子宮頸がんの治癒率は、症状の発現で病変がみつかった女性よりも、検診で発見された女性のほうが高く、検診によって予後が改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のBengt Andrae氏らの調査で示された。通常、検診で発見された子宮頸がん女性は、外来で発見された場合に比べ生存期間が長いが、検診プログラムはリードタイム・バイアス(lead time bias、早期に発見されたため生存期間が長くみえ、生存率も高くみえるバイアス)によってそのベネフィットの評価が歪められるという。そこで、同氏らは浸潤性子宮頸がんの治癒率を指標に、検診プログラムの有用性について検討した。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。検診の予後改善効果を検証する前向きコホート試験研究グループは、検診による浸潤性子宮頸がんの検出は予後を改善するのか、それともリードタイムの分だけ生存期間が長いだけなのかを検証するために、地域住民ベースの全国的なコホート試験を実施した。1999~2001年にスウェーデンで子宮頸がんと診断された女性1,230例をプロスペクティブにフォローアップした。平均フォローアップ期間は8.5年であった。主要評価項目は、検診歴、年齢、病理組織学的分類、FIGO stageなどで層別化した治癒率とした。治癒率が26%改善治癒率は、検診で浸潤がんを検出された女性が92%と、症状の発現によって浸潤がんが確認された女性の66%に比べ有意に26%改善した。症状発現例の治癒率は、推奨されたとおりの間隔で検診を受けた患者のほうが、検診日を過ぎてから受けた患者よりも有意に14%高かった。治癒率は、小細胞がんを除くすべての病理組織学的タイプで同等であり、FIGO stageと密接な相関を示した。診断時のstageで調整後も、検診で検出された患者の治癒率は有意に優れていた。著者は、「検診によって子宮頸がんの治癒率が改善した」と結論し、「交絡の完全な除外は不可能だが、検診の有効性はリードタイム・バイアスに起因するものではなく、down-stagingの効果よりも大きかった。検診プログラムの評価では治癒率を考慮すべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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携帯電話の使用、神経膠腫の発生に影響せず

アメリカでは現在、携帯電話の使用率がほぼ100%に達しているが、関連が指摘されている神経膠腫のリスク増大は認めないことが、アメリカ国立がん研究所のM P Little氏らの検討で示された。国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は最近、2つの疫学試験[interphone試験(2010年)、スウェーデン試験(2011年)]で報告された相対的なリスクに基づいて、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの関連について再評価を行い、発がん促進の可能性のある携帯電話のマイクロ波放射の分類を行った。その一方で、1990年半ば以降、脳腫瘍の発生率の傾向は携帯電話の使用増加を反映しておらず、一般にこの状況は現在も続いているという。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載の報告。神経膠腫発生の観測値と推定値を、携帯電話の使用状況との関連で比較研究グループは、IARCの発がん性分類における携帯電話の位置づけの観点から、神経膠腫のリスクに関する最近の2つの報告(IARC分類に基づく)と、アメリカにおける実際の発生状況の整合性について検討した。1997~2008年の神経膠腫発生の観測値と推定値を比較した。推定値は、2010年のInterphone試験、2011年のスウェーデンの試験で報告された相対リスクと、年齢・レジストリー・性別による調整値、携帯電話の使用データ、種々の潜伏期間を統合して算出した。アメリカのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムの12のレジストリーから、1992~2008年の神経膠腫発生のデータを用いた。神経膠腫と診断された18歳以上の非ヒスパニック系の白人2万4,813例が解析の対象となった。使用状況は大きく変わったが、リスクは変化せず1992~2008年の間に、アメリカの携帯電話の使用状況はほぼ0%から100%へと大きく変化したが、この間に年齢特異的な神経膠腫の発生率は全般的に変化しなかった(年間発生率の変化率:-0.02%、95%信頼区間:-0.28~0.25%)。電話の使用と神経膠腫リスクが相関し、さらに潜伏期間10年、低相対リスクとした場合でも、推定値が観測値を上回っていた。腫瘍の潜伏期間と累積電話使用期間から算出されたスウェーデン試験の相対リスクに基づくと、アメリカの2008年の推定値は観察値を40%以上も上回っていた。一方、Interphone試験の携帯電話の使用頻度が高い群における神経膠腫発生の推定値は観測値と一致していた。携帯電話の使用頻度が低い群や相対リスクが1以上の群に限定した場合でも、これらの結果の妥当性は維持されていた。著者は、「IARCの再評価に基づくスウェーデン試験で報告された携帯電話の使用による神経膠腫のリスク増大は、アメリカの携帯電話使用者における観測値とは一致しなかったが、Interphone試験の中等度リスク群とアメリカの状況は一致していた」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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ニュージーランドでも、入院の最大原因は感染性疾患

先進国ニュージーランドでも、入院の最大の原因は感染性疾患であり、感染症罹患リスクには明確な人種的、社会的な隔差が存在することが、ニュージーランド・オタゴ大学のMichael G Baker氏らの調査で示された。重篤な感染性疾患の疾病負担は先進国では低下傾向にあるが、ニュージーランドでは総発生率を検討した全国調査はほとんどないという。Lancet誌2012年3月24日号(オンライン版2012年2月20日号)掲載の報告。疫学情報の新たなモニタリング法を開発研究グループは、重篤な感染性疾患の疫学情報をモニタリングする系統的な方法を開発し、その妥当性を検証した。1989~2008年のニュージーランドにおける感染性および非感染性疾患による全入院について全国的な疫学調査を行い、人種別、社会経済的状況別の発生率を検討した。国際疾病分類第9版(ICD-9)に基づく診療データの記録方式を第10版(ICD-10)に準拠したものに拡張し、これをニュージーランド保健省の入院データに適用した。得られた結果を解析して、保健診療の経時的な変化について評価し、急性疾患による入院の状況を調査した。他国でのサーベイランスにも適用可能入院の最大の原因は感染症であった。急性疾患による入院に占める割合は、1989~1993年の20.5%から2004~2008年には26.6%に増加していた。感染症の罹患リスクには明確な人種的、社会的な隔差が認められた。2004~2008年の年齢で標準化した感染症罹患リスクの率比は、ヨーロッパ系人種に比べ先住民マオリ族が2.15、太平洋系民族は2.35であった。貧困度の五分位別の解析では、社会経済的な貧困度が最も低い群に比べ、最も高い群の感染症罹患リスクの率比は2.81だった。これらの隔差は過去20年で実質的に増大しており、特に最も貧困度の高いマオリ族と太平洋系民族で感染リスクが高かった。著者は、「これらの知見は、感染性疾患の予防努力のいっそうの強化と、人種・民族的、社会的な隔差を縮小し、所得、住環境、保健サービスへのアクセスなど広範な社会的因子の隔差に関し公知を促す必要性をさらに高めるものである」と結論づけ、「我々が開発した方法は、他の国でも感染性疾患のサーベイランスに適用可能と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30429.

dutasteride、低リスク前立腺がんへの積極的治療の必要性を低減

5α還元酵素阻害薬であるdutasterideは、積極的観察(active surveillance)を受けている低リスク前立腺がん男性において、積極的治療(aggressive treatment)の必要性を低減し、良好な補助的効果をもたらす可能性があることが、カナダ・トロント大学プリンセス・マーガレット病院のNeil E Fleshner氏らが実施したREDEEM試験で示された。局所前立腺がんは進行が遅く、疾患関連死のリスクが低い場合でも過剰な治療が行われることが多いとの指摘がある。dutasterideは5α還元酵素のタイプ1と2の双方を阻害する唯一の5α還元酵素阻害薬で、北米では症候性の良性前立腺過形成の治療薬として承認されている。局所前立腺がん患者の血清ジヒドロテストステロンを90%以上低下させ、一部の患者では病変の縮小も確認されているという。Lancet誌2012年3月24日号(オンライン版2012年1月24日号)掲載の報告。低リスク前立腺がんに対する安全性と有効性を評価REDEEM試験は、積極的観察によるフォローアップを選択した低リスク前立腺がん男性において、局所前立腺がんの病勢進行に対するdutasterideの安全性および有効性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験。アメリカとカナダの65施設から、腫瘍量が少なくGleasonスコア5~6の前立腺がんで、積極的観察によるフォローアップを選択した48~82歳の男性が登録された。これらの患者が、dutasteride 0.5mg/日あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。3年間のフォローアップが行われ、18ヵ月および3年目に12コア生検を行った。主要評価項目は、前立腺がんの無増悪期間とした。無増悪期間は、試験開始から病理学的な病勢進行(生検による評価)まで、あるいは臨床的な病勢進行(前立腺切除術、放射線療法、ホルモン療法の施行)までの期間とした。有害事象の頻度は同等2006年8月10日~2007年3月26日までに302例が登録され、そのうち生検を1回以上受けた289例(96%)が解析の対象となった。dutasteride群に144例、プラセボ群には145例が割り付けられた。フォローアップ期間3年までに前立腺がんの病勢進行を認めたのは、dutasteride群が54例(38%)、プラセボ群は70例(48%)で、有意な差がみられた(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.43~0.89、log-rank検定:p=0.009)。有害事象の頻度は両群ともに高かった(dutasteride群83%、プラセボ群87%、Fisher正確度検定:p=0.34)。そのうち治療関連有害事象はdutasteride群が23%、プラセボ群は15%(p=0.11)、治療中止の原因となった有害事象はそれぞれ3%、4%(p=0.75)、重篤な有害事象は15%、15%(p=1.0)であり、治療関連死は両群ともにみられなかった。性機能関連の有害事象あるいは乳房の隆起、圧痛を認めたのは、dutasteride群が35例(24%)、プラセボ群は23例(15%)だった。心血管の有害事象はそれぞれ8例(5%)、7例(5%)にみられたが、前立腺がんによる死亡や転移病変は認めなかった。著者は、「dutasterideは積極的観察を受けている低リスク前立腺がん男性において、積極的治療の必要性を低減し、良好な補助的効果をもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

30430.

双極性障害治療における課題と新たな治療選択肢への期待

 2012年2月22日、オランザピン(商品名:ジプレキサ)の「双極性障害におけるうつ症状の改善」の適応承認を受け、3月14日、日本イーライリリー株式会社による記者発表会が開催された。この会では、帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授の張賢徳氏より、現在の双極性障害治療の課題や新たなる選択肢への期待などについて講演が行われた。双極性障害とは? 双極性障害は躁症状とうつ症状の二つの病相を繰り返す疾患であり、わが国における生涯有病率は0.6%程度 1) と決して珍しい疾患ではない。躁症状は自尊心の肥大や快楽的活動への熱中などにより人間関係や社会的信頼の失墜をもたらす一方で、うつ症状は無気力や種々の身体症状、自殺のリスクの増大などにより、患者やその家族の社会生活に大きな影響を及ぼすことが知られている。双極性障害診療の問題点 双極性障害の診断には躁症状の認識が重要であるが、患者が躁症状を自覚していないことが多く、医師に報告されないことも多いため診断が難しいと言われている。さらに、双極性障害におけるうつ症状と単極性うつ病の症状は類似しており、鑑別が難しいケースが少なくない。海外の報告によると、69%の患者が単極性うつ病など他の精神疾患と診断され、適切に診断されるまで10年以上かかる患者は35%にのぼると言われている 2)。 鑑別診断が難しい一方で、薬物治療に関してはそれぞれのうつ症状に対し、異なるアプローチを要する。しかし、これまで、わが国において双極性障害におけるうつ症状の改善の適応を有する治療薬はなく、気分安定薬や抗精神病薬、抗うつ薬などが用いられてきた。双極性障害におけるうつ症状に対し抗うつ薬治療を継続すると、躁転やラピッドサイクル化、衝動性の亢進などのリスクが伴うことが報告されており 3)、その使用の是非や適切な治療の重要性が長期にわたり叫ばれてきた。オランザピン、「躁」「うつ」両症状に適応をもつ唯一の双極性障害治療剤に このような背景のもと、非定型抗精神病薬であるオランザピンは双極性障害における躁症状に加え、わが国では初となるうつ症状の改善も承認され、両症状の改善に適応が認められた唯一の薬剤となった。 今回の適応取得の根拠となった国際共同第III相プラセボ対象二重盲検比較試験及び非盲検継続治療試験(HGMP試験)は、DSM-IV-TRにより『双極I型障害、最も新しいエピソードがうつ病』と診断され、大うつ病エピソードの基準を満たしている患者514例を対象としており、日本人156例も含まれる。結果をみると、最終観察時点(投与開始6週後)におけるMADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale:うつ症状の評価指標)合計点のベースラインからの変化量の平均値は、オランザピン群でプラセボ群と比較して有意な改善が認められ、日本人のみで検討した場合でも同様の結果が示された。また、うつ症状治療時における躁症状の発現率もプラセボと比較して有意に少ないことも示された。HGMP試験に続いて実施された長期投与試験(HGMS試験)では、HGMP試験を完了した日本人患者及びHGMS試験から参加した患者を対象に48週間、オランザピンの持続した効果が示された。張氏は講演の中で、「双極性障害の治療の基本は波のコントロールである。両症状の改善の適応をもつオランザピンは情動の安定化が期待できるのではないだろうか」と述べた。 なお、同試験における副作用は、頻度の高いものから体重増加、傾眠、食欲亢進、鎮静、過眠症などであった。 また、うつ症状の疾患自体に自殺のリスクが伴うため、十分に患者の状態を評価しながら投与することが必要であることから、添付文書の使用上の注意に自殺に対する注意喚起が追記された。今後への期待 双極性障害は患者の社会生活や健康、生命が脅かされる重大な疾患であり、薬物治療を中断すると再発するリスクが大きいことが知られている。さらに再発を繰り返すにつれて次の再発までの期間が短くなることに加え、薬剤の効果が得られなくなることが報告されており 4)、早い段階から適切な治療を行うことが必要である。 双極性障害の治療目標の一つに、「再発を防ぎ、患者が普通の社会生活を送れるようにする」ことが挙げられる。わが国で唯一、双極性障害における躁症状とうつ症状の両症状に適応を有するオランザピンは今後、長期的な症状のコントロールと再発の予防の観点からも、治療上重要な役割を担うことが期待される。

30431.

急性骨髄性白血病の遺伝子プロファイリング

急性骨髄性白血病(AML)患者について、その体細胞変異の遺伝子プロファイリングがリスク層別化に有用であり、予後および治療を決定することができる可能性があることが報告された。米国・Sloan-Kettering記念がんセンターJay P. Patel氏らが、60歳未満のAML患者398例の遺伝子プロファイリングについて検証した結果による。最近の研究成果として、体細胞突然変異に予後因子としての価値があることが示されていたが、AML治療における評価は、第3相試験では系統的になされていなかった。NEJM誌2012年3月22日号(オンライン版2012年3月14日号)掲載報告より。18遺伝子の変異解析から予後因子としての意義を調査Patel氏らは、60歳未満のAML患者398例をダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)による寛解導入療法を、標準用量または高用量で受ける2群に無作為に割り付け、それぞれについて18遺伝子の変異解析を実施した。そのうえで、104例の独立した患者群で同解析所見についての検証を行った。 結果、患者の97.3%で1個以上の体細胞変異が確認された。そして、FLT3遺伝子内の縦列重複(FLT3-ITD、P=0.001)、MLL遺伝子内の縦重複(MLL-PTD、P=0.009)、ASXL1遺伝子変異(P=0.05)、PHF6遺伝子変異(P=0.006)は、全生存率の低下と関連していることが、一方で、CEBPA遺伝子変異(P=0.05)、IDH2遺伝子変異(P=0.01)は、全生存率の改善と関連している所見が得られた。また、NPM1変異は、NPM1変異とIDH1変異またはIDH2変異の両方を有する患者に限って、好ましい効果をもたらすことも確認された。生存率を改善する遺伝子変異を確認それら所見を踏まえて、研究グループは、年齢、白血球数、導入量、寛解後の治療法とは独立した、リスク層化を改善する遺伝的予測因子を定めて、独立コホートで、その予測因子としての有意性を検証した。結果、高用量ダウノルビシン投与群は、同標準用量投与と比較して、DNMT3A変異かNPM1変異またはMLL転座のいずれかを有する患者で生存率を改善することが認められた(P=0.001)。野生型のDNMT3A、NPM1、MLL各遺伝子をを有する患者では改善は認められなかった(P=0.67)。(朝田哲明:医療ライター)

30432.

急性虚血性脳卒中に対するtenecteplase対アルテプラーゼ

 急性虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法として、tenecteplase(遺伝子組み換え型変異体組織プラスミノーゲン活性因子)は、現在唯一の標準療法であるアルテプラーゼ(商品名:アクチバシン、グルトパ)よりも再灌流および臨床アウトカムが有意に優れることが無作為化試験の結果、報告された。本報告は、英国・ジョン・ハンター病院のMark Parsons氏らが、アルテプラーゼ標準療法と、2つの用量群でのtenecteplase療法とを比較検討したフェイズ2Bの無作為化オープンラベル単盲検試験の結果で、NEJM誌2012年3月22日号で発表された。無作為化前に、被験者にCT灌流イメージングを実施 研究グループは、75例の虚血性脳卒中患者を、発症後6時間以内にアルテプラーゼ(0.9mg/kg体重)またはtenecteplase(0.1mg/kg体重または0.25mg/kg体重)を投与されるよう3群に無作為に割り付け(各25例ずつ)比較検討した。無作為化に際し、血栓溶解療法のメリットを最も受けやすい患者を選択するため、基線でのCT灌流イメージングで梗塞巣よりも20%以上大きな灌流病変があり、CT血管造影でこれに関連した血管閉塞が認められる患者を適格とした。 共通主要エンドポイントは、24時間後の灌流強調MRI検査画像で再灌流が確認された灌流障害病変部の割合と、NIHSS(the National Institutes of Health Stroke Scale、42ポイントスケールでスコアが高いほど神経学的欠損が重い)で評価した24時間後の臨床的改善の度合いとした。高用量tenecteplase群が再灌流と臨床アウトカムに優れる 全患者の基線での平均(±SD)NIHSSスコアは14.4±2.6で、投与までに要した時間は2.9±0.8時間だった。24時間後、tenecteplase投与群は2群とも、アルテプラーゼ群より再灌流(P=0.004)と臨床状態(P

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生体腎移植、自家骨髄間葉系幹細胞で拒絶反応発生率を低下、アウトカムも良好

生体腎移植の際に、抗体導入療法として、抗IL-2受容体抗体の代わりに自家骨髄間葉系幹細胞を使うと、術後の拒絶反応率が低下し、腎機能回復も早いことが報告された。中国・厦門(アモイ)大学のJianming Tan氏らが、約160人の生体腎移植患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月21日号で発表した。自家骨髄間葉系幹細胞vs.抗IL-2受容体抗体、急性拒絶反応発生率や腎機能などを検証研究グループは、2008年2月~2009年5月にかけて、159人の生体腎移植患者を、三群に分けての無作為化試験を行った。一群(53人)と二群(52人)には、骨髄由来の自家間葉系幹細胞[MSC;1~2×10(6)/kg]を腎再灌流時と2週間後にそれぞれ投与した。また、一群には標準用量のカルシニューリン阻害薬(CNI)を、二群には標準用量の80%のCNIを投与した。残りの一群は、コントロール群(51人)として、抗IL-2受容体抗体と標準用量CNIを投与した。主要アウトカムは、1年時点の急性拒絶反応発生率と腎機能とし、副次アウトカムは、患者生存率と移植片生着率および有害事象の発生率とした。6ヵ月急性拒絶反応発生率、MSC群が約8%、コントロール群が約22%結果、13ヵ月時点、30ヵ月時点の患者生存率・移植片生着率は、いずれの群でも有意差はなかった。6ヵ月時点の急性拒絶反応発生率は、MSC+CNI標準量群が53人中4人(7.5%、95%信頼区間:0.4~14.7、p=0.04)、MSC+CNI 80%量群が52人中4人(7.7%、同:0.5~14.9、p=0.046)だったのに対し、コントロール群では51人中11人(21.6%、同:10.5~32.6)と高率だった。また、腎機能について、両MSC群はコントロール群に比べ、回復が早く、術後1ヵ月の糸球体濾過量(GFR)予測値が、より高値だった。具体的には、コントロール群とのGFR予測値の平均値格差が、MSC+CNI標準量群で6.2mL/min/1.73m2(同:0.4~11.9、p=0.04)、MSC+CNI 80%量群で10.0 mL/min/1.73m2(同:3.8~16.2、p=0.002)だった。術後1年間の日和見感染率も、両MSC群が、コントロール群より低率だった(ハザード比:0.42、同:0.20~0.85、p=0.02)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高齢者は聴力低下の自覚に乏しい、スクリーニングには“ささやき検査”が有効

高齢者の聴力スクリーニングでは、単一の質問ではなく10項目からなる質問票のほうが、また2フィート先からささやいた文字や数などを答える「ささやき検査」が有効であるとの報告が、JAMA誌2012年3月21日号で発表された。米国・ミネソタ大学のJames T. Pacala氏らが、高齢者の聴覚障害について行われた1,700超の研究結果を再調査し明らかにした。高齢者の聴力の低下は、自覚がないまま進行することも少なくないという。米国の2005~2006年のNational Health and Nutrition Examination Surveyによると、70歳以上のうち、聴力低下が認められる人の割合は63%で、そのなかでも中程度から重度の聴覚障害は27%に上ることがわかっている。10項目の聴覚障害調査票によるスクリーニング、単一質問より有効研究グループは、1980~2011年12月1日までに発表された、高齢者の聴力喪失に関する研究結果について、PubMedを用いて再調査を行った。抽出した1,742件の研究結果のうち、エビデンスの程度が、A(質が高い)、B(中程度の質)以上のものについてのみ、分析を行った。医師による聴力喪失に関する診察時のスクリーニングの種類とその検査能について、以下のような結果が得られた。問診時の質問で、「聞こえにくいことがありますか?」「聞く力が弱くなってきたと思いますか?」という質問による、聴力喪失に関する陽性尤度比は2.4~4.2、陰性尤度比は0.33~0.55だった。さらに、10項目の質問からなる、「聴覚障害調査票、高齢者スクリーニング版」(Hearing Handicap Inventory for the Elderly-Screening Version)で、8ポイント超の場合、陽性尤度比は2.4~7.9、陰性尤度比は0.25~0.70と、先の質問よりも検査能は高かった。2フィート先からのささやき検査、特に除外診断に有効聴力障害のスクリーニングとして、なかでも検査能が高かったのは、2フィート先からの「ささやき検査」だった。6つの文字または数字のうち、3つ以上について聞き取れなかった場合を失格とし、陽性尤度比は7.4、陰性尤度比は0.007と、特に聴力障害の可能性を除外するのに有効だった。一方、オーディオスコープを用いた聴力検査は、ささやき試験よりも検査能は劣り、陽性尤度比は3.1~5.8、陰性尤度比は0.03~0.40だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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MediLegal 医療従事者のためのワンポイント・リーガルレッスン

医療従事者のための法律コンテンツ「MediLegal」では、毎回異なるテーマを選択、実際にあった裁判例を通じて医療と法律の関わり合いを学んでいきます。「知らなかった」、「聞いたことない」ではもはや済まされない現代。これから医療を行っていく上で、本プログラムにより考えられるリスクをうまく避けて、自分が加害者にならないように学習ください。講師は、医師資格をもつ新進気鋭の弁護士、大磯義一郎氏(浜松医科大学医学部 教授)。医師だからこそ語ることができる事件の内容と医療者としての注意すべき点を是非ご覧ください。

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第1回 医療水準:未熟児網膜症事件

■今回のテーマのポイント1.過失とは、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療を行ったことである2.新規治療法が全国に普及していく過程においては、医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して医療水準を判断する3.このことは、すでに普及している治療法についても同様に判断される事件の概要原告出生時においては、未熟児網膜症について、各種研究報告がなされており、その存在は認識されてきているものの、いまだ(旧)厚生省において、診断と治療に対する研究班が組織されている最中であり、報告書等もまだ出ておらず、また、未熟児網膜症の診断と治療につき、研修を受けられる施設もほとんどありませんでした。このような時期において、原告に対する未熟児網膜症の発見が遅れたため、両眼ともに視力が0.06となった事案について、被告の眼底検査義務、診断治療義務、転医義務違反が争われました。事件の経過原告は、昭和49年12月11日に妊娠31週、体重1508gで出生しました。原告は、被告病院において、保育器にて酸素投与等を受け、翌年1月23日に保育器より出て、2月21日に退院しました。その間、原告に対し、眼底検査は12月27日に1回行われ、「格別の変化がなく、次回検診の必要なし」とされていました。その後、3月28日に眼底検査を行った際も、「異常なし」と診断されたものの、4月9日の眼底検査上、異常が認められ、同月16日に他院を紹介受診したところ、両眼とも未熟児網膜症瘢痕期3度であると診断されました。最終的に原告の視力は両眼とも0.06となりました。原告出生時においては、未熟児網膜症について、各種研究報告がなされており、被告病院でも、その存在は認識され眼科医と協力し、未熟児網膜症を発見した場合には転医する体制をとっていました。しかし、いまだ未熟児網膜症に対する光凝固療法は有効な治療法として確立されているとは言えず、(旧)厚生省においても診断と治療に対する研究班が組織されている最中であり、報告書が公表されたのは昭和50年8月以降でした。また、未熟児網膜症の診断と治療につき、医師が研修を受けられる施設はほとんどなく、実際に被告病院眼科医も研修を受けていませんでした。事件の判決当該疾病の専門的研究者の間でその有効性と安全性が是認された新規の治療法が普及するには一定の時間を要し、医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性、医師の専門分野等によってその普及に要する時間に差異があり、その知見の普及に要する時間と実施のための技術・設備等の普及に要する時間との間にも差異があるのが通例であり、また、当事者もこのような事情を前提にして診療契約の締結に至るのである。したがって、ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして、新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである(最判平成7年6月9日第民集49巻6号1499頁)ポイント解説民事医療訴訟において、損害賠償責任が認められるためには、不法行為(民法709条※)の要件である(1)過失(故意は稀有)、(2)損害、(3)(過失等と損害の間に)因果関係が認められなければなりません。そして、医療訴訟における過失とは、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療を行ったことと考えられています(最判昭和57年3月30日民集135号563頁)。一方で、わが国の医療提供体制は、大きく1次医療機関から3次医療機関まで定められており、それぞれの医療機関が有する診断機器等物理的設備に大きな差があることから、必然的に診断・治療能力に差が生じます。もちろん、診察の上、高次の医療機関による診療を行うべきと判断された場合には、転医を行うこととなりますが、致命的な希少疾患であっても、症状・所見に乏しい場合も多々あること、基礎となる診断機器等物理的設備に制限もあることから限界があるといえましょう。そこで、法的に求められる「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」が、医療機関の性格、所在地域等を問わず一律の水準が求められるのかが問題となります。本判決では、「新規治療法においては、ある一つの時点を境に、全国すべての医療機関に対して、一律に医療水準とするというのではなく、現実的に各医療機関に順次伝達していくという事情を踏まえ、医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべき」と判示しました。しかし、本判決はガイドラインが作成されている等、すでに一定程度普及していると考えられる診断・治療については、医療機関の性質を問わず、一律の水準が求められ、ただ転医義務の問題が生ずるにすぎないと考えるのか、そうではなく現実に基づき、各医療機関の性質によって求められる水準が異なると考えるのかについては、言及していませんでした。ただ、その後の判決において、本判決を引用して、「人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであるが(最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁)、具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最判昭和57年3月30日民集135号563頁)。そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく、診療に当たった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」(最判平成8年1月23日民集50巻1号1頁)と判示しており、これが現時点における医療水準についての判例となっていることから、現実に基づき「各医療機関の性質によって求められる水準が異なると考えられている」といえます。※参照条文(不法行為による損害賠償)第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁最判昭和57年3月30日民集135号563頁最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁最判平成8年1月23日民集50巻1号1頁

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クロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「フィダキソマイシン」 アステラスが日本で独占的開発・販売へ

アステラス製薬は30日、米国のバイオ医薬品会社オプティマー社(英名:Optimer Pharmaceuticals, Inc.)と、同社のクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬である「Fidaxomicin(フィダキソマイシン)」について、日本における独占的開発・販売契約を2012年3月29日(米国時間)に締結したと発表した。「フィダキソマイシン」はオプティマー社が開発した新規の作用機序と選択的な抗菌スペクトルを有する経口の大環状抗菌剤で、同社の欧州子会社であるアステラス ファーマ ヨーロッパ Ltd.が、2011年2月に欧州、中東、アフリカ、独立国家共同体(CIS)の地域における本剤の独占販売権を、オプティマー社より取得している。欧州においては、「DIFICLIR」という製品名で販売の準備段階にあるという。また、日本国内においては同剤の開発は行われていないが、今後、同社が開発を進めていくとのこと。なお、欧米で実施されたクロストリジウム・ディフィシル感染症患者を対象とした第III相臨床試験において、同剤はバンコマイシンと同等の臨床治療効果が確認されているという。また、バンコマイシンに対して統計学的に有意に優れた総合治療効果と再発抑制効果があることも認められているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-141.html

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非小細胞肺治療剤「ザーコリ」 製造販売承認を取得

ファイザーは30日、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺(NSCLC:Non-Small Cell Lung Cancer)の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ、以下、ザーコリ)の製造販売承認を取得したと発表した。ザーコリは、ALKを阻害する世界初の化合物。ALK遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)などの腫瘍の発生や形成に関わる重要な因子である。肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在は日本人研究者によって発見され、2007年に初めて発表された。予備的な疫学調査ではNSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性とされている。ザーコリは、ALK融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内シグナル伝達経路を遮断します。国内においては、2010年3月より非小細胞肺がん患者を対象とした治験を開始し、2011年1月には希少疾病用医薬品(オーファンドラック)に指定された。第1相臨床試験の成績については、2010年10月28日付のNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に発表されておりまた、米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)などの学会において、第1相試験および第2相試験の結果が発表されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_03_30.html

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英国NHSで導入された簡易院内死亡率指数SHMIの特徴

英国・シェフィールド大学のMichael J Campbell氏らは、透明性、再現性、可視化に優れた、英国内全病院の入院データから導き出した簡易院内死亡率指数(summary hospital mortality index:SHMI)を開発した。これまでにも院内標準死亡率指数(hospital standardised mortality ratio:HSMR)など死亡率指数はいくつかあったが、SHMIはそれらと違い全入院・死亡データおよび退院30日以内データに基づくもので、2011年10月からNHS(英国保健サービス)の病院評価指標として採用されているという。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載報告より。5年間分の英国全入院データから導き出した指数Campbell氏らはSHMI開発に当たって、5年間分の英国内全入院データを用いて後ろ向き横断調査を行った。具体的には、2005年4月1日から2010年9月30日の、Hospital episode statistics for Englandのデータと英国統計局の死亡データとを突き合わせ、院内死亡と退院30日以内の死亡を主要評価項目として評価を行った。対象に含まれたのは、146の総合病院および72の専門病院に入院した3,650万例分のデータであった。簡易な予測因子で評価が可能評価を行った最終モデルで予測因子として含まれたのは、入院診断名、年齢、性、入院タイプ、共存症であった。院内死亡または退院30日以内死亡は、男性入院患者では4.2%、女性では4.5%で認められた。全入院の75%が救急入院で、それらの人での院内死亡は5.5%だった。対照的に、選択的入院者での院内死亡は0.8%だった。チャールソン共存症スコア0の院内死亡者の割合は2%であったのに対し、スコアが5以上の院内死亡者の割合は15%だった。これらの変数を用いると、地域性や救急外来の既往回数で補正後も、相対的標準院内死亡率が著しく変わることはなかった。Campbell氏らは、これらの予測因子を用いてSHMIを開発。その指数は、標準を逸脱するような病院を特定したり、また以前からの院内死亡率指数を強固なものとすることが示されたと述べている。

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無作為化臨床試験での非盲検評価のバイアス効果は?

バイナリアウトカムの無作為化試験で多用される非盲検評価は、推定治療効果に大幅なバイアス効果をもたらしており、オッズ比評価で約36%過大に評価していることが明らかにされた。ノルディック・コクラン・センター(デンマーク)のAsbjorn Hrobjartsson氏らが、同じバイナリアウトカムの盲検と非盲検の試験の評価についてシステマティックレビューを行った結果による。非盲検評価についてはバイアスを疑うことが賢明だとされているが、その影響については明らかではなかった。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年2月27日号)掲載報告より。同じバイナリアウトカムによる盲検評価と非盲検評価のオッズ比を検証Hrobjartsson氏らは、PubMed、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled Trials、HighWire Press, and Google Scholarから、同じバイナリアウトカムによる盲検と非盲検による無作為化試験を選出し、推定治療効果に及ぼす非盲検アウトカム評価者の影響を調べた。各々の試験について、非盲検評価者のオッズ比と盲検評価者のオッズ比とを比較し、その比率が<1の場合は、非盲検評価が盲検評価者よりも推定効果をオプティミステッィクに作成したことを示したとした。逆分散ランダム効果メタ解析による個々のオッズ比比率をプールし、メタ回帰分析によるオッズ比比率の変化の理由を調べ、また、盲検評価者と非盲検評価者間での一致率を分析し、バイアスを中和するための再分類に必要な患者数を割り出した。非盲検は平均36%過大に評価、一方で非盲検と盲検評価の一致率78%主要解析の対象となったのは21試験(4,391例)だった。そのうち8件は、個々の患者データが入手可能だった。また大部分の試験のアウトカムは、患者機能の質的評価など主観的なものだった。そのオッズ比比率は、0.02から14.4までの幅が認められた。また、プールされたオッズ比比率は0.64(95%信頼区間:0.43~0.96)であり、非盲検法ではオッズ比を平均36%過大に評価していることが示された。オッズ比比率の低値と主観的アウトカムとの有意な関連は認められなかった(P=0.27)。試験への非盲検評価者の全体的な関与(P=0.60)、また、非盲検被験者のアウトカムに対する脆弱性についても(P=0.52)、有意な関連は認められなかった。データが活用できた12件の試験では、盲検評価者と非盲検評価者の評価の一致率は、中央値78%だった(四分位範囲:64~90%)。また、非盲検評価者による治療効果の過大評価は、1試験で中央値3%(1~7%)の評価患者の誤分類によるものであることが示された。Hrobjartsson氏は、「非盲検のアウトカム評価は大幅なバイアス効果をもたらしているが、一方で、盲検評価者と非盲検評価者との高いアウトカムの一致が認められ、わずかな患者の誤分類によって修正されるものである」と結論している。

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