生体腎移植、自家骨髄間葉系幹細胞で拒絶反応発生率を低下、アウトカムも良好

提供元:ケアネット

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公開日:2012/04/03

 



生体腎移植の際に、抗体導入療法として、抗IL-2受容体抗体の代わりに自家骨髄間葉系幹細胞を使うと、術後の拒絶反応率が低下し、腎機能回復も早いことが報告された。中国・厦門(アモイ)大学のJianming Tan氏らが、約160人の生体腎移植患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月21日号で発表した。

自家骨髄間葉系幹細胞vs.抗IL-2受容体抗体、急性拒絶反応発生率や腎機能などを検証




研究グループは、2008年2月~2009年5月にかけて、159人の生体腎移植患者を、三群に分けての無作為化試験を行った。

一群(53人)と二群(52人)には、骨髄由来の自家間葉系幹細胞[MSC;1~2×10(6)/kg]を腎再灌流時と2週間後にそれぞれ投与した。また、一群には標準用量のカルシニューリン阻害薬(CNI)を、二群には標準用量の80%のCNIを投与した。残りの一群は、コントロール群(51人)として、抗IL-2受容体抗体と標準用量CNIを投与した。

主要アウトカムは、1年時点の急性拒絶反応発生率と腎機能とし、副次アウトカムは、患者生存率と移植片生着率および有害事象の発生率とした。

6ヵ月急性拒絶反応発生率、MSC群が約8%、コントロール群が約22%




結果、13ヵ月時点、30ヵ月時点の患者生存率・移植片生着率は、いずれの群でも有意差はなかった。

6ヵ月時点の急性拒絶反応発生率は、MSC+CNI標準量群が53人中4人(7.5%、95%信頼区間:0.4~14.7、p=0.04)、MSC+CNI 80%量群が52人中4人(7.7%、同:0.5~14.9、p=0.046)だったのに対し、コントロール群では51人中11人(21.6%、同:10.5~32.6)と高率だった。

また、腎機能について、両MSC群はコントロール群に比べ、回復が早く、術後1ヵ月の糸球体濾過量(GFR)予測値が、より高値だった。具体的には、コントロール群とのGFR予測値の平均値格差が、MSC+CNI標準量群で6.2mL/min/1.73m2(同:0.4~11.9、p=0.04)、MSC+CNI 80%量群で10.0 mL/min/1.73m2(同:3.8~16.2、p=0.002)だった。

術後1年間の日和見感染率も、両MSC群が、コントロール群より低率だった(ハザード比:0.42、同:0.20~0.85、p=0.02)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)