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Vol. 1 No. 1 緒言

森野 禎浩 氏岩手医科大学内科学講座循環器内科分野本邦における急性冠症候群(acute coronarysyndrome: ACS)の治療実態を客観視する機会が訪れた。冠動脈インターベンション(percutaneous coronaryintervention:PCI)は国内で急速に普及したが、大都市にとどまらず、比較的中小の都市に点在する基幹病院でもprimary PCI(ACSの再潅流療法)を行うことができるのが日本の最大の特徴だ。欧米と異なり、年間PCI症例数300例に満たない小規模施設が散在するため、人的リソースが分散しがちで、スタッフ1人にかかる負担が増すばかりか、教育効率低下の恐れもある。一方、各地域に治療可能施設が分散することは、時間との闘いであるACS治療には潜在的なメリットも多い。ACS患者が来院すれば、主に若い専門医が昼夜を問わず集まり、心臓カテーテルで診断・血行再建を行うことが日本型診療の通例となっている。その代償として、現場スタッフはオンコール体制に縛られ街から外に出ることすら制約を受け、朝まで緊急カテをしてもそのまま午前の定時仕事に就くというのが通常で、それに見合う十分な報酬体制も整っていない。要するに、PCI 施行医やコメディカルの自己犠牲のもとに日本の急性期循環器医療は成り立ってきた。 日本のACSの治療実態を把握するため、約100施設で、連続症例登録を基本とした前向きレジストリー(PACIFIC試験)が行われ、その結果が最近公表された。同様の大規模国際レジストリー(GRACE試験:施行時期が異なるが大勢に大きな差はないはずである)と比較し、諸外国に比べて日本のACS治療体制がいかに特殊なのか、いかに好成績を収めているのか容易に理解できる。日本の代表的施設では94%ものACS患者が緊急PCIを受けているのに対し、欧米を含む諸外国においてはカテーテル検査ですら56%、PCIとなると全体の33%にしか行われていない。この著しい治療スタイルの違いが、ACS患者の院内死亡率に大差をつけた最大の誘因と考察されている。こうした事実を実感していないであろう日本の多くの現場スタッフに、日本型ACS医療の素晴らしさをできるだけ速く伝達しなければならないと考えていた。幸いなことに、新しく発刊されるCardioVascular Contemporary誌にこの分野の特集をしていただけることになり、さらに同試験を企画・指導した宮内先生ご自身に、PACIFIC試験に見る日本のACS治療の実態について詳説いただけることとなった。 ACSの急性期治療の大原則は、一刻も早い再潅流療法である。それに付随して、アスピリンとクロピドグレルのローディング投与のように、万国共通の確立された薬物療法が基礎を占める。しかしながら、ACS治療の具体的工夫となると、日本が牽引する分野が少なくない。primary PCIは大量の血栓を末梢に飛ばさないよう処理する必要があるが、血栓吸引や末梢塞栓防止の保護フィルターの臨床応用は、日本で盛んに進められてきた。また、ニコランジルやhANPといった薬剤の心筋保護作用を証明するために臨床試験も精力的に仕掛けられてきた。恐らく、生命予後のみならず、「心筋壊死量を少しでも少なくする」ことを目的に、これだけ精緻に、かつ二重・三重の追加療法を具体的に実践してきた国もないだろう。日本の良好なACS治療成績は、PCIの施行体制のみならず、このようなさまざまな集学的アプローチの複合結果だと思われる。こうしたACS治療の最新コンセンサスについては石井先生に明快にまとめていただいた。 救命し得たACS発症患者の外来管理のゴールは、血管イベントの2次予防であり、本質的にはそこまでACS治療と呼ぶべきである。彼らは安定狭心症の血行再建後の患者に比べても、血管イベントの再発率が高いことが知られ、より積極的な薬物治療介入が求められる。日本の動脈硬化性疾患の特徴として、脳血管障害の比率が高いことがREACHレジストリーで指摘されたが、薬物溶出性ステントによるPCI後の患者においても、脳血管障害の発生頻度が冠動脈イベントより高いことがj-Cypherレジストリーで明らかとなった。アテローム血栓症(ATIS)という疾患概念が提唱され随分経つが、脳血管合併症をかなり意識した薬物療法が日本の循環器内科医には必要である。ACS発症後の2次予防治療として、抗血小板薬やスタチンを中心とした積極的薬物介入の必要性やその他動脈硬化因子の改善が必要であることは周知の事実だが、この分野を画像診断に造詣の深い大倉先生にまとめていただけることとなった。 ACS、特にST上昇型心筋梗塞(STEMI)の場合、発症から閉塞血管の疎通にかかる時間が予後を左右する。そのため、「door-to-balloon時間(来院からバルーンなどによって血行の再疎通を果たせるまでの時間)を90分以内にしよう」ということが国際的スローガンとなってきた。筆者は最近岩手県に転勤したが、STEMI患者のpeak CPK値が、今まで経験した患者群より明らかに高いと実感している。これは広い医療圏ゆえの搬送問題、我慢強い患者さんの気質など、種々の時間的ハンディキャップに基づいていると考察できる。管轄地域のACSの医療体制構築が自身の最大のテーマであり、実現のためには1人でも多くのPCI施行医を育成するとともに、primary PCI施設の効率的再配置、患者啓蒙活動、初診医との連携強化など、時間短縮を目指したトータルな医療設計が不可欠である。地方の内科医数の減少に歯止めがかからないなか、過酷な診療実態から特に循環器内科医になることが敬遠される傾向にある昨今だ。今回の特集で、日本型ACS治療体制がどうやら世界に誇れる素晴らしいものであることがわかってきたが、現場スタッフの献身的努力に極度に依存する体質など、課題も山積みである。本来、循環器医療は非常にやり甲斐があり、おもしろく、若い医師の人気が集まる分野のはずである。今こそ、急性期循環器診療体制のグランドデザインを、行政も交えて皆で熟考していく必要があるのではないか?そんなことばかり考えて、初めての北国の冬を過ごしている。

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Vol. 1 No. 1 ACSの実態-PACIFIC Registry からわかったこと

宮内 克己 氏順天堂大学医学部循環器内科はじめに本邦における急性冠症候群(ACS)を含めた虚血性心疾患は、生活習慣の欧米化に伴い増加している。その予防や、発症した場合の急性期治療、および2次予防治療は日々実践されている。しかし、この領域における技術革新や薬剤開発は目覚ましく、診断法や治療法は日々変化し、薬剤あるいは治療法の有効性を検証する大規模臨床試験も世界中で施行されている。このような試験をまとめるかたちでevidence based medicine(EBM)は形成され、やがてガイドラインが作成される。したがって、進歩する医療から形成されたガイドラインを、そのときどきの治療実態や結果である予後を調査することで検証し、現状の問題点や今後の課題を見いだすことがわれわれには求められている。一方、ACSは冠動脈の不安定プラークの破綻とそれに続く血栓形成が主因となるが、こうした病態は全身の血管で発症しうることであり、脳血管で発現すれば脳梗塞、末梢動脈であれば急性動脈閉塞と診断される。すなわち、これらの疾患はそれぞれ独立の疾患ではなく、全身の血管に広がり、生涯進行するアテローム血栓症という臨床的症候(アテローム血栓性イベント)としての概念が確立してきた。従来、ACSに限定した調査は行われているが、他臓器のアテローム血栓性イベント再発の実態まで捉える報告は少ない。そこでアテローム血栓性イベントとその危険因子に焦点を当てた国際観察研究REACH Registryが施行され、わが国からも約5,000症例が登録され、世界との比較において新たな知見が得られた。また、日本の実臨床におけるACSの治療実態と、アテローム血栓性イベントの再発の実情を把握する目的で施行された観察研究がPACIFIC Registryである。本稿では、わが国におけるアテローム血栓性イベントの発症に関する前向き観察研究であるPACIFIC(Prevention of AtherothrombotiC Incidents Following Ischemic Coronary attack)について概説する。日本における急性冠症候群(ACS)を対象に、2年間の観察期間での治療実績や予後を観察するものである。日本人の予後-REACH Registry国際大規模観察研究1)で、対象疾患は45歳以上の確定した冠疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患(2次予防患者と文中では定義する)、または1次予防ハイリスク患者で、登録時の背景、治療内容、予後を追跡した。対象患者は6万人を超える大規模なもので、登録期間は7か月、44の国、参加医師は5,587名に及んだ。2003年12月から2004年6月までの間に67,888名(うち55,499名が2次予防、12,389名が1次ハイリスク患者)が登録され、5年追跡まで学会報告されている。登録時の患者背景をみると、冠硬化症単独が59.3%と大半を占めるが、冠・脳・末梢動脈疾患単独例は全体の80.8%であり、3者の合併は1.6%であった2)。1年後の予後を心血管死、心筋梗塞、脳卒中、またはこのイベントに入院を加えたものをエンドポイントにすると、2次予防患者は1次予防患者に比べ、1年、2年ともに有意に発症率が高率であった(4.7% vs 2.3%, p

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Vol. 1 No. 1 remark 日本のACS治療の特長を浮き彫りにした意義ある研究 PACIFIC Registry

代田 浩之 氏順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学これまで心筋梗塞に関する大規模観察研究はいくつかありましたが、日本の急性冠症候群(ACS)を全国規模で捉えたという点で、このPACIFIC Registryは非常に意義の大きい研究であると思います。この研究によって、これまでそうではないかと思われていたいくつかのことが、現実のデータとして明らかになりました。特筆すべきは、日本におけるPCIの施行率の高さです。GRACE研究においてはわずか33%にとどまっていたPCI施行率が、本研究では94%にのぼることが示されました。GRACE研究が行われた時期とは5年ほどの開きがあるとはいえ、それを差し引いてもこのPCI施行率の乖離は、欧米と日本の治療事情の違いを表しているといってよいでしょう。日本における良好な予後は、そうした背景が寄与していると考えることができます。世界的にみると、海外の研究では組み入れた対象にさまざまな人種が含まれているためにばらつきが存在したり、研究参加国それぞれの治療環境が異なっていたりと、国ごとの状況を捉えることはなかなか困難です。しかしこのPACIFIC Registryでは、標準化された治療が全国に普及しているという、日本の現状をよく反映したデータが示されていると思います。良い意味での日本の“特殊”な治療環境も浮き彫りにした研究といえるでしょう。今後、PACIFIC Registryは論文化され、さらに細かなデータが発表されることが予定されています。MACCEや死亡、急性期の出血と予後との関連、さまざまな予測因子の解析など、われわれ臨床医が知っておくべき情報がたくさん含まれた報告になると思われますから、その発表が非常に楽しみです。また、本研究がベースとなり、今後はさらに対象例数を増やした有意義な研究が行われていくことを期待します。

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アトピー性皮膚炎患者の悩みの種、目の周りの黒ずみへのレーザー治療の有効性

 アトピー性皮膚炎患者の悩みの種となっている目の周りの黒ずみについて、レーザー治療が有効かつ安全に使用可能であることを、韓国・中央大学のKui Young Park氏らがパイロットスタディを行い報告した。アトピー性皮膚炎患者の多くに同症状がみられ治療への希求も高いが、同治療に関する文献的な報告はほとんどなかった。Journal of Cosmetic and Laser Therapy誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、2790-nm Er:YSGG(2,790nmエルビウムyttrium scandium gallium garnet)によるレーザー治療について、アトピー性皮膚炎患者の目の周りの黒ずみに対する臨床的有効性と安全性を評価した。 被験者は、軽度のアトピー性皮膚炎患者である21歳超の韓国人10例。アトピー性皮膚炎活動期で治療を要する患者は、レーザー治療後に増悪の可能性があり除外された。 2790-nm Er:YSGGレーザー治療は、フルエンス1.8~2.2J/cm2、スポットサイズ6mm、10%重複でのパルス幅0.3msを指標として、目の周り全体に4週間に1回の間隔で行われた。 有効性の評価は、盲検下で研究者によって0~5の四分位階調度スコアを用いて行われた。また、患者に対して同一スコアを用いた書面で回答を求める満足度の評価を行った。副作用について起こりうるすべての事象について評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療後2ヵ月時点の評価において、74.5%(スコア2.7)の改善を示し、患者満足度(スコアスケール)も平均74%(2.4)が改善を示した。・4ヵ月時点の評価では、同72.5%(2.5)、71.5%(2.3)の改善を示した。・重篤な副作用やアトピー性皮膚炎の増悪は報告されなかった。・アトピー性皮膚炎患者の目の周りの黒ずみについて、2790-nm Er:YSGGレーザー治療は有効かつ安全に使用できる可能性がある。

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【ご案内】医療介護多職種交流会 第5回MLB×Kobe(メディカルラーニングバー神戸)

 一般社団法人LINKは、4月13日に医療・介護現場で働く方々を対象に、学びのイベント「医療介護多職種交流会 第5回MLB×Kobe(メディカルラーニングバー神戸)を開催する。 開催概要は以下のとおり。【日時】2013年4月13日(土) 17:00~20:00(受付:16:45~)【講師】飯塚 三枝子 氏(ビオラ奏者・音楽療法士)【テーマ】「病院における音楽療法の一つの形として ~音で楽しく 音で楽に~」【参加対象】医療・介護関係者【定員】先着50名様(定員に達し次第、締め切らせていただきます)【開催場所】神戸三宮 イタリアンレストラン&バー CROSS(クロス)神戸市中央区山本通1-7-21 水木北野シルクハイツB1F地図はこちら【参加費】当日払い 5,000円(2DRINK+バイキング+お土産)【参加申込方法】http://the5thmlbkobe.peatix.com上記URLの「チケットを申し込む」からご登録ください(事前登録制)【Medical Learning Barについて】MLB公式Facebookページ:https://www.facebook.com/MedicalLearningBar一般社団法人LINKウェブサイト:http://www.link-japan.coプロモーションビデオ:http://goo.gl/apaEU【お問い合わせ】E-mail : info@link-japan.co専用フォーム:http://goo.gl/Bj9w3

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統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤

 非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)は、統合失調症患者や双極性障害患者に対し広く用いられている。海外では筋注製剤も承認されており、急性期治療における有用な選択肢として期待されている。イタリア・サピエンツァ大学のSergio De Filippis氏らは、統合失調症または双極性障害の急性期治療として、アリピプラゾール筋注の有用性をオープランラベル試験により検証した。Pharmacotherapy誌オンライン版2013年3月15日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症または双極性障害で急性の興奮状態にある患者について、非定型抗精神病薬アリピプラゾール9.75mgの筋肉注射の有効性と安全性を評価した。試験は、一大学の精神科病棟で行われ、筋注後の治療反応を評価した。評価は、初回筋注後30、60、90、120分および24時間後にPANSS陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale)の興奮項目(PANSS-EC)と興奮/鎮静評価尺度(Agitation/Calmness Evaluation Scale:ACES)にて、また2、4、6、24時間後に臨床全般印象度(Clinical Global Impressions scale:CGI)にて行われた。また、サブサンプルにおいて血中アリピプラゾール値とデヒドロアリピプラゾール値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・201例(統合失調症79例、双極性障害122例)を対象とした。・PANSS-ECのスコアは、40%以上減少した。・アリピプラゾール筋注は、臨床指標を有意に改善した。・PANSS-ECの改善は、30分後から始まり進行していった。・ACESの改善は90分後で、その後は維持された。・CGIスコアの減少は絶え間なく着実に24時間後まで続いた。・治療反応率は2時間後時点で83.6%であった。再投与後は、統合失調症群、双極性障害群とも90%超まで上昇した。・PANSS-ECの個別指標別にみた場合に、治療反応に性差が認められる項目もあったが、全体的には同程度であった。・臨床モニタリングにおいて、副作用の報告をした患者は皆無であった。ただし、あらゆる副作用が報告されなかったのは、観察期間が短かったことと関連している可能性がある。・治療領域は特定されなかった。また、治療レベルはいずれの臨床指標とも関連していなかった。・本研究結果は、二重盲検試験に十分に匹敵するもので、おそらくプラセボを対照と していない試験においてより高値が期待できる。関連医療ニュース ・アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国) ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・アリピプラゾールvsその他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(77)〕 TNFα阻害薬により低疾患活動性を達成した関節リウマチ患者でTNFα阻害薬の減量や中止は可能か?

TNFα阻害薬の登場により関節リウマチの診療にパラダイムシフトがおこり、関節リウマチの疾患活動性を数値化し、糖尿病や高血圧のように定められた治療目標(寛解、低疾患活動性)に向けて治療が強化されるようになった。一般的な治療方法は第一選択薬としてメトトレキサート(MTX)が使用され、治療目標を達成できない場合にTNFα阻害薬が使用される。一方でTNFα阻害薬の問題点として、感染症の合併や薬価が高いことが問題となっており、治療目標を達成した後にどのように治療を継続するべきかに関連したエビデンスの構築が課題となっていた。 本研究では、日常診療で遭遇することの多い、MTX投与後も中等度の疾患活動性にある平均年齢48歳、平均罹病期間6~7年のRA患者が対象となった。オープンラベルでMTXとTNFα阻害薬のエタネルセプト(ETN)を36週間投与し、低疾患活動性を達成した患者604例が、MTX+ETN 50mg/week、MTX+ETN 25mg/week、MTX+プラセボの3群に無作為に割り付けられた。1年間治療が行われた後の低疾患活動性達成率はそれぞれ82.6%、79.1%、42.6%であった。身体機能と関節破壊に関してはMTX+プラセボはMTX+ETN 50mg/weekより身体機能が低下し関節破壊がやや進行するが、ETNを中止しても83%は1年間関節破壊進行を認めなかった。一方、MTX+ETN 25mg/week はMTX+ETN 50mg/weekと比較して身体機能の低下と関節破壊の進行を認めなかった。 以上よりMTX抵抗例の患者にMTX+ETNを使用して低疾患活動性を達成した場合ETNの使用量を半減できること、ETNを中止すると1年後の低疾患活動性の達成率は約半分に低下することからETN中止は望ましい選択肢ではないことが示された。

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視機能喪失の訴えは、うつ病のリスク!?

 自己申告に基づく視機能喪失は、客観的な評価に基づく視力喪失よりも、うつ病との関連が有意であることが、米国・NIHのXinzhi Zhang氏らによる全米成人サンプル調査からのエビデンスとして示された。結果を踏まえて著者は「医療者は、視機能喪失を訴える人のうつ病リスクを認識しなければならない」と結論している。これまで、うつ病と視力喪失の関連について、全米成人サンプルにおける検討はされておらず、特異的なコホート、主に高齢者を対象としたものに限られていた。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2013年3月7日号の掲載報告。 研究グループは、20歳以上が参加した全米調査において、視機能喪失または視力障害を報告した人のうつ病有病率を調べることを目的とした。全米健康・栄養調査(NHANES:全米からの代表的な成人サンプルに基づく断面調査)2005~2008年に参加した20歳以上の米国人合計1万480人を対象とし、一般市民で入院していない米国人の有病率を推定した。主要評価項目は、うつ病評価スケールのPHQ-9に基づくうつ病の有病率と、質問票と視力検査に基づく視力喪失者の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・2005~2008年NHANES被験者において、うつ病(PHQ-9スコア≧10)の有病率は、視力喪失成人群(自己申告に基づく)においては11.3%(95%CI:9.7~13.2)であった。非視力喪失成人群では4.8%(同:4.0~5.7)であった。・一方、視力障害成人群[視力20/40(0.5)未満]では10.7%(95%CI:8.0~14.3)であった。視力正常成人群では6.8%(同:5.8~7.8)であった。・補正後(年齢、性、人種・民族、婚姻状態、一人暮らしか否か、教育レベル、収入、雇用状態、健康保険、BMI、喫煙、不節制飲酒、一般的健康状態、視覚に関する懸念、主要な慢性症状)、自己申告による視機能喪失とうつ病との関連は有意なままであった(全体オッズ比:1.9、95%CI:1.6~2.3)。しかし、視力障害とうつ病との関連は統計的に有意ではなくなった。関連医療ニュース ・重度の認知障害を有する高齢者、視力検査は行うべき? ・仕事のストレスとうつ病リスク:獨協医科大学 ・日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき

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Genome to bedside: lost in translation (Daniel F. Hayes, USA)

ゲノムから臨床へ:我々は翻訳によって混乱するか個別化医療とは、適切な患者に、適切な時期に、適切な量とスケジュールで、適切な治療を行うことである。そのような個別化を行うために、バイオマーカーは治療と同じくらい重要なものとなる。患者がすべての毒性も効果も進んで受け入れるのであれば、すべて行えばよい。しかし患者が一定の毒性を避けるために、一定の治療を控えようとするのであれば、治療を慎重に選択することが求められる。そのために必要なものは予後因子、効果予測因子であり、治療に関するリスクとベネフィットおよびコストに関する患者、医師そして社会の評価である。治療を正当化するためにどの程度の絶対的な利益が存在するか(例:Adjuvant online)という判断が重要である。しかし不適切なバイオマーカーは、不適切な治療と同じくらい有害である。たとえば、ある薬剤をどのように混ぜたらよいかが不明である、濃度がわからない、どのようにその薬剤が役立つかを示す臨床データがない、治療効果と毒性に関するレベルの高いエビデンスがない、といった状況のときに、われわれはその薬剤を使うだろうか。バイオマーカーがその意義を持つためには、その測定系が鋭敏かつ再現性があるのか、実際に臨床的意義のあるような生物学的違い(陽性/陰性)を示すのか、予後を改善するための高いレベルのエビデンスをもって臨床的な決定ができるのか、といった条件が必要である。網羅的な生命分子についての情報を意味するオミックス(Omics)の試験は、もともとデューク大学で、化学療法の感受性を予測するために開発された。オミックス試験には3つの段階があり、発見、検証、そして臨床的有用性と使用に関する評価である。このようなオミックス試験は、通常の試験とは異なり、生物学者、遺伝学者、臨床家/臨床研究者、統計学者、生物情報学者、臨床病理学者といった多くの領域の専門家が協力していく必要がある。検証の段階では、候補となる試験を発見に関わったサンプルで評価し、次に別のサンプルを使って再評価する。発見から検証まで、統計と生物情報学による検討が行われる。またオミックス試験は薬剤とは異なり、2通りの規制監督(regulatory oversight)があり、1つはFDAによるレビューであり、もう1つはlaboratory developed test(LDT)研究室で開発したテストのように、臨床検査室改善法(CLIA)が定めた研究施設における検証である。臨床的有用性については、評価可能な臨床的アウトカムが、オミックス試験を用いない場合と比べて改善するかということであり、FDAやLDTの過程では評価されないが、FDAによるレビューがないことが臨床的有用性がないことを意味しない。臨床的有用性を支持するエビデンスを集めるという過程は、臨床に導入される前に行われるべきである。試験を試験するという過程は、過去に行われた臨床試験から得られた試料を後ろ向きに集めて、前向きに検討するという段階と、マーカー自体が主要評価となる前向き臨床試験の2つである。後者の例として、TAILORx、MINDACT、RxPONDERがある。トランスレーショナルのオミックスの評価に関する報告はwww.nap.eduからダウンロード可能である(コメント:「Evolution of Translational Omics: Lessons Learned and the Path Forward」というタイトルで有料である)。画像を拡大するレポート一覧

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p53 and breast cancer subtypes and new insights into response to chemotherapy (Philippe Bertheau, France)

p53と乳がんのサブタイプ、そして化学療法への反応に関する考察p53の変異は乳がんの20~30%に認められるが、いまだ乳がん治療のためのバイオマーカーとしては使われていない。ヒトのがんにおける2万以上のp53変異を調べた研究では、73%がミスセンス変異であり、次いでフレームシフト変異9%、ナンセンス変異7%、サイレント変異5%、スプライス変異2%と続く。Dumayら(2013年)は乳がんのサブタイプ別に検討し、luminal A 17%,luminal B 41%,HER2+ 50%,molecular apocrine 69%,basal-like 88%であった。変異は非短縮型と短縮型があって、短縮型は新たな機能を持ちうるが、蛋白の発現は非常に低かった。Ellisら(2013年)の研究では、luminalの腫瘍において、MDM2の変異または増幅によるp53の不活化はluminal Bの原因であるようである。Changら(2011年)とHerschkowitzら(2012年)の研究から、basal-likeとclaudin-low typeにおいて、p53はmiR-200の上方調節を通してEMT(Epithelial-Mesenchymal transition,上皮間葉移行)とstem cellの性質を調節している。Martinsら(2012年)は、55例のBRCA1グループを調べ、 p53の変異が、luminalでは最初の最も重要なイベントであり、basal-likeではPTENの消失の後に起こっていた。従来は、p53のwild typeではDNA損傷があるとアポトーシスが起こるため治療効果が高く、p53変異があるとアポトーシスを起こさないため、治療への反応が悪いと考えられてきた。しかしER陽性乳がんでは、しばしばp53 wild typeであるが、p53変異が高頻度であるER陰性乳がんと比べて化学療法への反応性が不良である。p53と化学療法への反応を考えるとき、乳がんのサブタイプ、治療の目的、化学療法のレジメン、そしてp53評価の方法を考慮する必要がある。進行性または炎症性乳がんにおけるdose-dense ACの効果とp53の状況をみたとき、p53 wild typeではpCRが0であったのに対し、p53変異があったものでは15/28でpCRがみられた。予後もp53変異のあったもので良好であったが、タキサンベースでは予後に差がなかった。アルキル化剤の量はER陰性p53変異乳がんにおいては極めて重要である(pCR率:E 7/57,FAC 1/17,dose-dense EC 15/21)。アントラサイクリンを投与したとき、p53 wild typeでは細胞周期の停止が起こり、シクロホスファミドに抵抗性のため、一時的な停止が起こるだけで、また増大する。反対にp53変異ではアントラサイクリンで細胞周期の停止もアポトーシスも起こらないが、シクロホスファミドによりmitotic catastrophe(細胞分裂の異常により染色体分離ができず大きな細胞となる)が起こりpCRとなる。しかし、それを免れると腫瘍の急速増大をきたす。Baileyら(2012年)は、エストロゲン受容体がp53依存性のアポトーシスを防いでいることを見出した。Bonnefoiら(2011年)は、p53の状況を調べた2,000名の患者のうち、p53変異のある方の中でT-ETとFECの術前化学療法の効果を比較したところ、生存率にまったく差はみられなかった。しかしこの結果は症例選択が適切でない可能性があり、TNBCやluminal Bの進行乳がんにおいてdose-dense ACのレジメンで臨床試験を行うべきである。レポート一覧

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Influence of genomics on adjuvant treatments for pre-invasive and invasive breast cancer (Lajos Pusztai, USA)

浸潤前および浸潤性乳がんの補助療法におけるゲノミクスの影響Hassettら(2012年)は、21遺伝子を用いたOncotype Dxの使用を2006年から2008年の期間で調査したところ、アカデミックセンターよりもむしろコミュニティーがんセンターで増えていた。化学療法の使用もそれと並行して増加していた。Oncotype Dx を受けた患者の割合は2006年では14.7%であったのに対し、2008年では27.5%となっていた。StageⅠが30.5%であり、腫瘍径が2cm以下で組織学的異型度が低い場合に多かった。リンパ節転移陰性が95%であり、転移1~3個では5%であった。本検査の結果20~25%の症例で補助治療の推奨が変化していた。では、数あるテストの中でどれを用いるのがよいだろうか。すべてのテストは増殖とERシグナルを定量化して予後を算出しており、類似したエビデンスで立証され、臨床的有用性は強いが間接的な推測に基づいたエビデンスによってのみ支持されている。そのため、MINDACT,TAILORx,RxPONDER,POETIC,OTIMAといった臨床試験が、level 1のエビデンスを出すために進行中である。Kellyら(2012年)は、103名のER陽性のStageI~IIの乳がんでOnocotype DxとPAM50を比較し、約20%でリスク評価に不一致があった。しかし現状ではどの予測がより正確かを証明する方法はない。次にER,PgR,HER2およびKi67は同様の結果をもたらすだろうか。それはYesともいえ、Noともいえる。IHC4 soreを用いて計算するならYesであり、標準化された方法で行うならYesである。ER,PgR,HER2およびKi67を2値のカテゴリーとして解釈するならNoであり、Ki67の閾値は当てにならず、最大の情報をもたらさない。近い将来、より長期の補助療法のためのER陽性患者の選択やDCISの再発を予測する、臨床とゲノミクスのモデルを組み合わせた検査が開発されるだろう。Bianchiniら(2011年)は、増殖とER関連遺伝子の時間依存性の効果を、673名のER陽性StageI~IIIでタモキシフェンを服用した患者で調べたところ、晩期再発のリスクを最も有する患者は、増殖性が高くER発現の高いがんであり、次いで増殖性が低くER発現の低いがんであった。高い増殖性と低いER発現は早期再発に関係していた。低い増殖性と高いER発現では再発率は早期も晩期もきわめて低かった。Courtesyら(2012年)は、ATAC試験を用いてBreast Cancer Index(BCI)とOncotype DxおよびIHC4を比較し、晩期再発の予測をみたところ、5~10年の再発はBCIで有意に再発を予測していた。EndoPredict(EP)もまた晩期再発を予測し、EP highで5~10年の再発が多かった。DCISの再発を予測するものとして、21の遺伝子の中から12の遺伝子を選択して用いたOncotype Dxの成績が報告され、Courtesyら(2012年)は、ECOG5194試験の中において327例のDCISで調べたところ、浸潤がんの再発率は低リスク/中間リスクでは低いが、高リスク群で有意に高かった。しかし腫瘍サイズと閉経も重要な因子であった。これは単施設の小さな研究であり、さらなる検証が必要であろう。画像を拡大するレポート一覧

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Follow-up tests to detect recurrent disease: Patient’s reassurance or medical need? (Ian Smith, UK)

経過観察中に再発を発見するための検査:患者の安心のため?それとも医学的必要性?現在“多くの新しい治療が再発乳がんに対して利用可能となり、早く見つけることが治療において重要である“という定説がある。経過観察の理由として考えられるものは、早期発見により予後を改善する、QOLを改善する、治療の長期的な効果をみる、長期経過観察データを集める、BRCAのようなハイリスクにおける新規病変を検出する、である。集中的な経過観察は利益があるかということに関して3つの無作為化比較試験があり、3,055名の女性が登録されたが、生存率、無再発生存率に差はなく、年齢や腫瘍径、リンパ節転移状況によっても5年の死亡率に差がなく、QOLにも違いがなかった。Pelliら(1999年)は1,243名の患者からなる比較試験で、10年生存率にまったく差がないことを示した。Kokkoら(2005年)はフィンランドにおいて472名の患者を4群(i.3ヵ月毎受診+定期検査、ii.3ヵ月毎受診、iii.6ヵ月毎受診+定期検査、iv.6ヵ月毎受診)、に分けて経過観察したところ(定期検査の内容は、来院毎に血算/生化学/CA15-3、6ヵ毎月に胸部レントゲン、肝USと骨シンチを2年毎)、無再発生存率、全生存率ともに差はなく、コストは3ヵ月と6ヵ月で1,050から2,269ユーロへ、定期検査なしとありとで、1つの再発を見つけるのに4,166から9,149ユーロへ上昇した。それでは患者の安心のために定期検査を行うのか。QOLには差はなく、定期検査で10~15%の偽陽性があり、患者は検査による不安を増していて、むしろ余計な資金を用いることなく必要に応じて受けることを希望している。それにもかかわらず、なぜ患者は定期的な経過観察と検査を行いたがるのか。それは、医師、慈善活動、あるいはメディアがそうするのがよいと言っているからである。しかし、適切に説明したらそうはならないだろう。Pennantら(2010年)は、早期乳がんにおいてPET-CTのステージングについて28の研究をレビューしているが、診断精度は改善したものの、患者の予後が改善したというエビデンスはなかった。Augusteら(2010年)は2つの経済研究から1QALYあたり50,000ユーロ上昇するとした。現在ASCO、ESMO、St Gallenのいずれのガイドラインも、注意深い病歴の聴取、身体検査、定期的なマンモグラフィが、乳がん再発の適切な発見のために推奨されるとしている。身体検査は最初の3年は3~6ヵ月、4~5年は6~12ヵ月毎であり、マンモグラフィは1年毎である。血算、生化学、骨シンチ、胸部レントゲン、肝臓超音波、CT、18FDG-PET、MRI、腫瘍マーカー(CEA、CA15-3、CA27.29)は、無症状の患者に対して定期的に行うことは推奨されていない。それでは誰が経過観察をすることが大切であろうか。Grunfeldら(2006年)は、968名の患者を腫瘍専門医と家庭内科医による経過観察に無作為に割り付け、中央値で3.5年追跡したところ、再発、死亡、QOLともに有意な差はみられなかった。Koinbergら(2004年)は、264名の患者を腫瘍専門医と看護師による経過観察に割り付け5年追跡したが、やはり再発、死亡、QOLともに差がなかった。Meyerら(2012年)は、Dana Farberにおいて547名中218名の早期乳がん患者で、少なくとも診断から2年以上経過している方に質問票に答えてもらったところ、腫瘍内科医による経過観察を好む傾向にはあったものの、家庭内科医やナースプラクティショナーともに問題はなかった。ほとんどの方は電話相談を好んでおらず、ナースプラクティショナーによる経過観察はQOLとサバイバーケアを改善させる1つの方法であることを示した。Royal Marsden病院の経験では、ほとんどの再発は患者自身が自覚し、通常定期的な予約の間であった。より多くの女性は以前よりも乳がんから生存するようになり、経過観察のクリニックも大きくなっており、患者はこれらのクリニックで若い医師が診るようになっている。定期的な経過観察は、しばしば心配を引き起こし、予約がそれほど先でなければ患者からの症状の報告は遅れるかもしれない。最初の2年に2,232名の患者から問い合わせがあり、月平均で55回の電話があり、乳房の症状が40%、更年期症状が20%、再建のことが15%、精神社会的サポートが15%であった。そのうち10~15%がクリニックへの来訪を必要とし、多くが乳房の腫瘤であった。現在、より感度の高い検査法として末梢血中の腫瘍細胞や血清中の腫瘍由来DNAの検出があり、また標的治療が臨床応用されている。Dielら(2008年)らは、大腸がん18名で術後に血中変異DNAを測定し、検出されたものはされなかったものより、有意に無再発生存率が不良であることを示した。分子標的治療の時代に高い技術による経過観察ははたして利益があるだろうか。それを証明するためには次世代の無作為化試験が必要である。レポート一覧

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ザンクト・ガレン乳カンファレンス2013 会員聴講レポート

2013年3月13日から16日までスイス ザンクト・ガレンにて第13回ザンクト・ガレン乳カンファレンス2013が開催された。2年に1回開催されるこの重要な会議における、実用的な情報をニュートラルに提供するため、ケアネットでは会員現役ドクターによる聴講レポートを企画。現在そして今後の乳診療トレンドを紹介する。レポーター1978年から始まった早期乳がんのためのザンクト・ガレン国際会議は、現在2年毎の開催となっており、今年で13回目を数える。今回は、本年(2013年)3月13日から16日の4日間、スイスのザンクト・ガレンで開催された。このカンファレンスは、世界の著名な乳がんの専門医が集まり、早期乳がんの初期治療についのエビデンスをレビュー、議論し、診断や治療方針についてのコンセンサスを得ようというものである。最初の3日間はレビューと議論であり、最終日にパネルメンバーが並んで、さまざまな質問に投票をしながらコンセンサス作りをする。私は初めての参加であり、スイスインターナショナルの直行便であったため、問題なく定刻に到着することができたが、フランクフルトやパリなどを経由した先生方は例年にない天候のため足止めされたり、着陸空港が別国へ変更になったりしたことで、到着が遅れたり、荷物が届かなかったりなど、かなり苦労されたようである。ここでは、今回行われたレビューの中からいくつかピックアップして要約する。最初に、本会議の代表者の一人であるHans-Joerg Senn先生から会議の概要について紹介があった。会議の目的は、乳がん研究における最近の情報と最も重要な科学的進歩を統合し、分子生物学的な基盤に基づいて、日常臨床におけるコンセンサスを再構築しようというものである。今年は94ヵ国から参加者があった。最も多いのはスイスであり次いで中国、ドイツ、日本、英国、オーストリア、米国、イタリア、ベルギー、スウェーデンの順であった。(日本からの参加申し込み者は202名)。パネリストは21ヵ国48名の乳がん専門家から構成され、日本からも2名が選ばれている。専門分野の内訳は腫瘍内科医25名、外科医・産婦人科医13名、病理医・基礎研究者4名、放射線腫瘍医2名、統計家・疫学専門家各2名であった。2年後の2017年3月は、ザンクトガレンからは離れオーストリアのウィーンで開催される予定である。レポート一覧

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How to handle positive sentinel nodes? (Viviana Galimberti, Italy)

センチネルリンパ節陽性をどう扱うか?第3相無作為化比較試験IBCSG 23-01(2013年)は、センチネルリンパ節に微小転移があった場合の郭清と非郭清を比較したものである。5cm以下、N0で乳房温存術または乳房切除術とセンチネルリンパ節生検を行い、微小転移があった931名を非郭清467名、郭清464名に割り付けた。90%はER陽性であり、92%が病理学的腫瘍径3cm未満であった。術前センチネルリンパ節生検が38%で行われていた。乳房切除術は9%、乳房温存術で放射線治療なしが3%、術中照射のみが19%であった。内分泌療法は88%、化学療法は31%に行われていた。リンパ節領域再発は郭清群1%未満、非郭清群1%であった。無再発生存率は非郭清群の方がむしろ高めで非郭清が再発を増やすことはなかった。全生存率はまったく差がなかった。サブグループ分析を行っても郭清群に良好な因子はなかった。これはレベル1のエビデンスであり、センチネルリンパ節で微小転移のみの場合は郭清は行われるべきではない。しかし乳房切除はわずか9%であった(そのうち2.2%が術後に局所領域の放射線治療を受けていた)ため、結論は出ていない。(コメント:乳房温存術後でも放射線治療なしと術中照射のみが22%あり、さらに術後照射でも短期部分照射も含まれると考えられ、少なくとも30%以上は腋窩が照射されていないと考えられる。したがって乳房切除においても十分許容されるものと思われる。)画像を拡大するMilgromら(2012年)は、センチネルリンパ節陽性(大部分はN0 i+またはN1micでありN1は9%)で、腋窩に治療を加えなかった乳房切除術210例と乳房温存術325例を検討した。その結果、経過観察期間中央値57.8ヵ月で無再発生存率は94.7%対90.1%であり、乳房切除術で郭清を加えなくても非常に良好な予後が得られた(コメント:乳房切除術での領域再発は論文上1.2%)。Z0011試験ではcT1-2N0M0でHE染色にてセンチネルリンパ節が1~2個陽性だったものを、郭清対非郭清に無作為化割り付けした。その結果5年無再発生存にも全生存にも有意差はなく、腋窩再発は低率であった。また腋窩郭清による情報はそのほとんどで補助治療を全く変えなかった。このことから全乳房照射を受けるセンチネルリンパ節転移陽性の乳がんでは郭清を辞めるときであるとプレゼンターは結論している。ただし、非郭清の決定は年齢、併存疾患、患者の価値観を含む全ての関連因子を考え行うべきであると結んでいる。画像を拡大するレポート一覧

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Personalizing extent of breast cancer surgery according to molecular subtypes (Monica Morrow, USA)

分子学的サブタイプに基づいた乳がん手術の個別化乳房温存術を選択する基準として考えられるのは、組織型、グレード、リンパ節の状況、ER、HER2、乳房内のがんの拡がり、放射線治療を受けられるか、である。Sorlieら(2001年)は、サブタイプ毎に予後をみており、luminal Aは無再発生存、全生存率ともによいことを示した。Wiechmannら(2009年)による6072例の検討では、HER2陽性とtriple negativeでグレードが高く(60~80%)、HER2陽性で多中心性/多巣性、広範な乳管内進展の頻度が高かった(30%前後)。Millarら(2009年)、Voducら(2010年)、Arvoldら(2011年)の研究から、乳房温存療法後の局所再発はHER2とbasalで高いことが示されている。しかしKyndiら(2008年)、Voducら(2010年)の研究からは、乳房切除術をしてもHER2やbasalでも局所再発率は高く、そのことは必ずしも温存療法を行ったからではないことが示された。一方、Kyndiら(2008年)は、サブタイプ毎に放射線治療の効果を検討した結果、局所再発率はER陽性では効果が非常に高いのに対して、triple negativeでは中程度であり、HER2では優位性が示されなかった。Cancelloら(2011年)は、T1mic、T1a、T1bでみており、局所再発はER陽性では低いものの、HER2やtriple negativeでは高かった。乳房温存療法後の局所領域再発をサブタイプ別にみたLoweryら(2012年)のレビューでも、triple negativeがnon-triple negativeと比べて再発率が高かった。Millarら(2009年)らは、分子学的フェノタイプ毎の検討で、乳房温存療法489例での10年局所再発率は、luminal A 3.6%、luminal B 8.7%、basal 9.6%、HER2 7.7%であった。次に遺伝子学的特性と局所再発の関係をみてみると(未発表データ)、21遺伝子リスクスコアでも70遺伝子特性でも、高リスク群で再発率が明らかに高かった。効果的な全身療法は局所再発に貢献していることが、NSABP B13,B14,B31,N9831でも明確に示されている。Kiessらは(2012年)、HER2陽性の場合にトラスツズマブが局所領域再発に与える影響をみてみると、3年再発率はトラスツズマブなしで7%、ありで1%であった。それでは、高リスクのtriple-negativeサブセットにより大きな手術を行うことが、より良い手術といえるエビデンスはあるのだろうか。Abdulkarimら(2011年)は、triple-negative (T1-2、N0)での5年局所領域無再発率をみており、乳房温存療法で96%、放射線療法なしの乳房切除術で90%であり、多変量解析では乳房切除術がむしろ局所再発の独立した因子であった。またHoら(2012年)の報告では、乳房温存療法と放射線療法なしの乳房切除術で、観察期間73ヵ月での局所再発率も、T1a-bでは3.1%対4.6%、T1-2、N0で4.3%対5.9%と、いずれも乳房切除術で高かった。さらにAdkinsら(2011年)の報告でも、局所領域の無再発生存率はStageI, IIともに乳房温存療法と乳房切除術で差がなかった。次に、より大きな断端を確保することは、triple-negativeにおいてより良いのであろうか。1999年から2009年の535例の検討で、断端が2mm以下であった71例と2mm以上であった464例を比較したとき、60ヵ月での局所再発率はそれぞれ7.3%と5.1%であり、有意差はなかった(p=0.06)。そして、リンパ節再発はERの状況や年齢によって異なるだろうか。Grillら(2003年)は1,500例の温存療法と郭清を行った症例を解析し、リンパ節転移の大きさのみがリンパ節再発の有意な予測因子だった。また、Yates(2012年)らは、リンパ節領域へ照射せず、乳房温存療法または乳房切除術と郭清を行って1~3個のリンパ節転移があった1,065例を検討したところ、グレード、転移リンパ節個数、術後放射線治療のみが有意なリンパ節再発予測因子であった。ACOSOG Z11の結果は、郭清群とセンチネルリンパ節群で、リンパ節再発率はそれぞれ0.5%対0.9%であり、差はなく、無再発生存、全生存においても差がなかった。メモリアルスローンケタリングがんセンター(MSKCC)において、ACOSOG Z11の基準を満たす患者においてセンチネルリンパ節転移陽性であったもののうち、287例について解析を行った。72例が微小転移、215例がマクロ転移であった。そのうち242例(84%)はセンチネルリンパ節生検のみ、45例(16%)は郭清を行った。サブタイプはほぼ同様であり、HR陰性が約10%であった。核グレード3が35%前後を占めていた。MSKCCの非センチネルリンパ節転移予測のためのノモグラムを用いると、センチネルリンパ節生検のみでは、34%と予測されたが、実際の郭清群では72%であった。経過観察期間は13ヵ月と短いが、いずれもリンパ節再発はしていない。以上より、局所再発は分子学的サブタイプによって異なり、より大きな手術は悪い生物学的特徴をカバーしない。有効な全身療法によって改善し、集学的治療は手術による悪影響を減少させる機会を提供する。レポート一覧

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Close / positive margins after breast-conserving therapy: Additional resection or no resection? (William Wood/USA)

断端クローズまたは露出の際に、追加切除は必要か?放射線治療は潜在している腫瘍をコントロールする。部分的な低酸素腫瘍が広い範囲にあれば非常に高線量でなければコントロールできず、美容的には許容しがたいものとなる。手術は大きな腫瘍を切除できるが、これも美容的に許容しがたいものとなる。ではどれくらい広く切除すればよいだろうか。Hollandら(1985年)、Vaiyaら(1996年)の報告では、断端が広いほど残された乳腺への腫瘍の残存率は減少する。一方、1.6cmの腫瘍径に対して3mmの断端を確保する場合、切除量は5.6ccとなるが、1cmでは24.4ccとなる。2.4cmの腫瘍では14.1ccと44.6ccであり、切除量がかなり異なってくる。Singletaryら(2002年)は34の研究をレビューし、局所再発率は断端に腫瘍があるかないかで6%対16%、1mm離れているかいないかで3%対16%、2mmでは5%と12%であった。断端の距離ではあまり変わりなく、断端陽性であることが再発のリスクであった。Houssamiら(2010年)は21の研究を調査し、断端陰性と陽性とで局所再発の比率は2.43であるとした。Parkら(2000年)の報告では、断端が1mm以上離れていても1mm未満であっても、露出していなければ局所再発率は7%であり、露出している場合は18%であった。ただし部分的な露出の場合、全身療法を行っている場合は7%と変わりがなかった。断端陰性とは何か?腫瘍が露出していないもの?1mm?1mmより大きい?2mmより大きい?5mmより大きい?例えば手術中に4mmの断端を確保しても、標本の形は摘出から固定の段階で変化し、1mm未満の断端になることがある。断端陰性とは陽性でないことであり、Parkの研究、Singletaryの34の研究のレビュー、Houssaminoの21の研究のメタ分析でも、近い断端とより広い断端で局所再発に違いはなかった。DCISでは浸潤とは異なるようである。Dunneら(2009年)は22の研究をレビューし、腫瘍の露出がない/1mmより広いことを断端の定義としたとき、局所再発率は9.4%/10.4%であったが、2mmより広い/5mmより広いとしたとき5.8%/3.9%であった。術中超音波ガイダンスの有無で行った臨床試験では、断端陽性率は超音波なしで16.4、ありで3.3%であった。最近ではElectro-magnetic Margin Probeという機器が登場し、断端陰性に貢献するようになった。追加切除は断端陽性の場合に必要と考えられるが、より広い断端の確保がより良いというエビデンスはなく、断端陰性は重要だが、腫瘍の生物学的特性が最も重要である。以上より局所切除では断端陰性が目的であり、断端陽性は過小な治療となり、追加切除が必要である。断端に腫瘍が露出していない場合には追加切除は不要である。画像を拡大するレポート一覧

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Triple negative disease: Germ-line mutations, molecular heterogeneity and emerging target (William D. Foulkes, Canada)

トリプルネガティブ病:胚細胞変異、分子学的異質性、期待される標的このプレゼンテーションの目的は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における胚細胞遺伝子変異の頻度、TNBCをさらにいくつかの異なったタイプに分類すること、これらの結果をTNBCの治療に適用することである。BRCA1は1994年に同定され、数千の異なった変異が認められており、膨大な創始者変異が存在する。BRCA1の変異があると、乳がんおよび卵巣がんの生涯リスクが高くなり、他の部位でのがんのリスクも増大する。また、TNBCの頻度が高いことが特徴であり、DNA修復に重要な役割を果たし、BRCA2やPALB2と相互作用する。TNBCにおけるBRCA1変異保有の頻度は、過去の報告から約10~20%である。またBRCA2変異保有者においてもTNBCはまれではない。PALB2の変異はBRCA1/2よりも少ない。PALB2変異保因者におけるTNBCの頻度は40%程度と見込まれる。これらBRCA1/2、PALB2の変異を同定する意義は、TNBCを持った女性への治療および新たながんへの対策、家族に対する予防と早期発見である。それらの変異が認められなくても家族歴がある場合には、TNBCに関連しているようにみえるさまざまなSNPsが全ゲノム関連解析(GWAS:Genome-wide association study)の研究から同定された。臨床上の利益は非常に少ないが、BRCA1/2のような重要なアレルにおけるリスクを修飾している可能性がある。また新しい経路への手がかりとなり、いくつかのSNPsは体細胞変異と連携しているかもしれない。画像を拡大するTNBCはER/PgR/HER2陰性の均一な1つのタイプとして同定されているが、しかし組織学的にはかなり不均質であり、Lehmannら(2011年)は、21のデータセットからの587例のTNBCを、マイクロアレイの発現より、7つのサブグループ、すなわちBL1,BL2,IM,M,MSL,LAR(もう1つのグループは不安定であり、省略された)に分類した。そのうち50%未満がbasal-likeであり、注目すべきことに14%がluminal Aであった。免疫療法への可能性としては、ER陰性では特に腫瘍へのリンパ球浸潤が予後と関連していて、それは年齢によって逆転しているようである。画像を拡大するTNBCにおける次世代シーケンサーの研究として、ブリティッシュコロンビアのグループが、104例の原発性TNBCを調べたところ、クローンの頻度が広く変化しており、BLBCが最もクローンの多様性があり、p53、PI3K、PTENの変異が優位であった。basal のTNBCではnon basalと比べp53変異の頻度が高く(62%対43%)、クローンの集団と転位の数が多かった。Perouら(2013年)は、86例のTNBCを調べ、変異の頻度はTP53が79.1%と高かったが、それ以外はPIK3CAが10.4%、RB1が4%、MLL3とNF1がそれぞれ3%と低かった。basal-likeにおける治療の標的として考えられるものは、遺伝子の増幅(PI3CA,KRAS,BRAF,EGFR,FGFR1,FGFR2,IGFR1,KIT,MET,PDGFRA)であるが、HIFα/ARNT経路の活性化も高頻度に観察されている。TNBCはしばしば予後不良とされているが、多くの女性は治癒しており、TNBCの多くが進行性であるものの、TNBCのあるサブセットでは従来の治療によく反応し、pCRとともに予後が改善する。その一方でpCRに至らなかったものは非常に予後が悪い。アントラサイクリンにタキサン系薬剤を加えることでER陽性乳がんよりもベネフィットが期待できる。プラチナ製剤はBRCA変異をもった腫瘍以外ではまだ結論は出ていない。BRCA変異はPARP阻害剤の効果と関係しており、プラチナ製剤への反応性も高い。またBRCA1関連乳がんでは、PI3K阻害剤(BKM120)のPARP阻害剤(olaparib)への相乗効果が期待されている。Banerjeeら(2012年)は、TNBC72例中5例に遺伝子の融合を見出しており、これも治療標的の1つとなるかもしれない。レポート一覧

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Special session: St. Gallen breast cancer experts'consensus panel 2013:

スペシャルセッション:パネリストの投票最終日のパネリストによる投票の結果をピックアップしたので参考にしてもらいたい。パネリストは、はい、いいえ、棄権のいずれかを回答する。棄権は原則として、データが不十分、専門に該当しない、COIに抵触する場合に選択することとなっていた。総合司会はEric Winer先生が担当していた。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するレポート一覧

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