サイト内検索|page:1497

検索結果 合計:35104件 表示位置:29921 - 29940

29922.

デルマトームの神経根圧迫による疼痛やチクチクする痛みとの一致率は低い

 デルマトーム(皮膚知覚帯)は多様で、過去の研究では著しい個人差が示されている。なかでもL5またはS1神経根圧迫を有する患者では、疼痛およびチクチクする痛みの分布がデルマトームとあまり一致していないことが明らかとなった。英国・ジェームズクック大学病院のChristopher Taylor 氏らは観察的ケースシリーズ研究の結果、患者の自己申告は痛みや知覚異常の解剖学的な発生源を特定するには信頼性が低いと報告した。Spine誌2013年5月号(オンライン版2013年1月15日号)の掲載報告。神経根痛の分布をコンピューターで図式化してデルマトームと比較 本研究の目的は神経根痛の分布パターンを、既報のデルマトームと比較することであった。 放射線学的および外科的に証明された椎間板ヘルニアによる神経根圧迫を有する患者(L5神経根圧迫98例[L5群]、S1神経根圧迫83例[S1群])を対象に、疼痛およびチクチクする痛みの分布をコンピューターで図式化した。 神経根痛の分布パターンをデルマトームと比較した主な結果は以下のとおり。・L5群で、疼痛の分布がL5デルマトームと少しでも一致したのは正面22例(22.4%)、背面60例(61.2%)、両方13例(13.3%)で、50%以上一致したのはわずか1例(1.0%)であった。・同様にS1群で、疼痛の分布がS1デルマトームと少しでも一致したのは正面3例(3.6%)、背面64例(77.1%)、両方15例(18.1%)で、50%以上一致した患者はいなかった。・L5群で、チクチクする痛みの分布がL5デルマトームと少しでも一致したのは正面27例(29.7%)、背面27例(29.7%)、両方14例(15.4%)で、19例(20.9%)は50%以上一致した。・同様にS1群で、チクチクする痛みの分布がS1デルマトームと少しでも一致したのは正面3例(3.6%)、背面44例(53.0%)、両方18例(21.7%)で、50%以上一致した患者は12例(14.5%)であった。

29923.

COPD治療薬による肺炎発症リスクの差があるだろうか?(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(106)より-

COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療において、吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬配合剤は標準的治療の1つとして位置づけられ、本邦でも2種の製品が利用可能となっている。本研究(PATHOS)では、そのいずれかで、治療中のCOPD症例において、肺炎発症のリスクと肺炎関連mortalityに差があるかどうかを後方視的に観察している。本論文の評価の大前提として、観察研究の限界を熟知したうえで評価しなければならないことを強調しておきたい。 結果は、フルチカゾン/サルメテロールではブデソニド/ホルモテロールより1.73倍肺炎が多く、肺炎関連死亡も多かった(ハザード比:1.76)。 著者らも考察しているように、COPDや肺炎の診断が専門医によりなされていないなどいくつかの限界は否めないが、背景因子をマッチさせた1群2,734名という大きな集団で、明らかな推計学的有意差が得られたことにはインパクトがある。このような結果となった機序は、フルチカゾンは肺内に高濃度かつ長時間とどまりやすいため、局所の感染防御機構を抑制するのではないかと著者らは推察している。 吸入ステロイド薬は気管支喘息治療薬として普及し始めた当初、易感染性や、骨代謝への悪影響が生じるのではないかと懸念された時期があった。多くの報告がなされたものの、どの薬剤であっても通常用量で大きな問題が生じることはなく、現在まで喘息治療の第一選択として位置づけられている。また、筆者の日常臨床において肺炎合併が高率という経験も有していない。今回のPATHOSがエビデンスとなりえるかどうかは、今後の前向き比較試験を待って判断すべきであろう。

29925.

【ご案内】医療介護多職種交流会 第1回MLB+(メディカルラーニングバープラス)

 一般社団法人LINKは、6月30日に医療・介護現場で働く方々を対象に、学びのイベント「医療介護多職種交流会 第1回MLB+(メディカルラーニングバープラス)を開催する。 開催概要は以下のとおり。【日時】2013年6月30日(日)17:00~20:00(受付16:45~)【プレゼンター①】ペ ホス 氏(認知症介護コーチ)テーマ:認知症ケアでコミュニケーションを難しくさせるもの【プレゼンター②】沢村 真治 氏(理学療法士、鍼灸マッサージ師)テーマ:目に見えないつながり【プレゼンター③】清水 広久 氏(医師)テーマ:「チーム医療と信念対立」~真のチーム医療構築を目指して~【場所】グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル7F ナレッジサロン大阪市北区大深町3-1http://kc-i.jp/access/【対象者】医療介護に関わる方【定員】先着30名(限定)【参加費】1,000円(飲食はサロン内で別途実費でご購入いただけます)【参加申し込み方法】下記URLの「チケットを申し込む」からご登録くださいhttp://the1stmlbplus.peatix.com【Medical Learning Barについて】MLB公式Facebookページ:https://www.facebook.com/MedicalLearningBar一般社団法人LINKウェブサイト:http://www.link-japan.coプロモーションビデオ:http://goo.gl/apaEU【お問い合わせ】E-mail : info@link-japan.co専用フォーム:http://goo.gl/Bj9w3

29926.

抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

 米国・ザッカーヒルサイド病院精神医学研究部門のMasahiro Nitta氏らは、統合失調症における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)追加投与の意義を検討するためメタ解析を実施した。その結果、NSAIDs追加によるベネフィットは明確に示されなかったことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年5月29日号の掲載報告。 統合失調症におけるNSAIDsの有効性と忍容性をプラセボと比較評価するため、メタ解析を行った。2012年12月31日までに公表されたPubMed、PsycINFO、ISI Web of Scienceおよび米国国立精神保健研究所(NIMH)の臨床試験登録を検索し、無作為化プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析により、NSAIDs追加の有効性を評価した。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコアの変化とした。副次アウトカムは、PANSSの陽性および陰性サブスコアの変化、全原因による試験中止、忍容性とした。プールされた標準化平均変化によるランダム効果(Hedges'g)およびリスク比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・未公表の3試験を含む8試験(774例)において、PANSS総スコアの平均効果量(effect size)は、-0.236(95%CI:-0.484~0.012、p=0.063、I2=60.6%)であり、NSAIDsのプラセボに対する優越性は傾向を示すにとどまった。・PANSS陽性スコアの平均効果量は、-0.189(同:-0.373~-0.005、p=0.044)、PANSS陰性スコアの平均効果量は-0.026(同:-0.169~0.117、p=0.72)であった。・全原因による試験中止の相対リスクは1.13(同:0.794~1.599、p=0.503)であった。・PANSS総スコアにおけるNSAIDsのプラセボに対する有意な優越性は、アスピリン投与(2件、p=0.017)、入院(4件、p=0.029)、初回エピソード(2件、p=0.048)およびメタ回帰解析におけるPANSS陰性サブスコア低値(6件、p=0.026)などの状況下で減弱がみられた。・以上のように、抗精神病薬によるファーストライン治療が行われている統合失調症患者において、NSAIDsの追加はPANSS総スコアの変化においてベネフィットをもたらさないことが示された。・また、陽性症状においてはNSAIDsによるベネフィットが得られる可能性があるが、その効果はわずかで小さいものであった。・データベースに限界があるため、とくに初回エピソード患者においてはさらなる対照試験が必要である。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か? 高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は? 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか?

29927.

喫煙と出血性脳卒中の死亡率との関連~香港での前向きコホート研究

 喫煙は、出血性脳卒中のサブタイプの1つであるクモ膜下出血の有意な危険因子であるが、もう1つのサブタイプである脳出血との関連性については確立されていない。香港大学のLin Xu氏らは、香港の高齢の中国人の大規模コホートで、喫煙と出血性脳卒中のサブタイプ(脳出血、クモ膜下出血)ごとの関連性を検討した。Stroke誌オンライン版2013年5月30日版に掲載。 この試験は、香港保健省高齢者保健センターの18施設すべてにおいて実施された前向きコホート試験である。1998年7月~2001年12月に65歳を超える中国人6万6,820人が登録され、2012年5月31日までフォローされた。多変量Cox回帰分析により、ベースライン時の喫煙と出血性脳卒中およびそのサブタイプ別の死亡率の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・平均10.9年(SD=3.1)のフォローアップ期間の後、出血性脳卒中により648人が死亡し、そのうち530人(82%)が脳出血であった。・喫煙は、出血性脳卒中(ハザード比[HR]=2.19、95%信頼区間[CI]:1.49~3.22)、脳出血(HR=1.94、95% CI:1.25~3.01)、クモ膜下出血(HR=3.58、95%CI:1.62~7.94)のリスクと関連していた(年齢、性別、教育、公的支援、住居タイプ、毎月の支出、アルコール摂取、運動について調整後の値)。

29928.

0.5%ニフェジピンクリームの抗しわ効果を確認

 イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のGabriella Calabro氏らは、顔のしわ治療において、局所ニフェジピンクリームの有効性を確認したことを発表した。しわの深さが改善され、皮膚の保湿性と弾力性が増したという。ニフェジピンの抗しわ特性は最近、提唱されたものであった。Journal of Dermatological Treatment誌オンライン版2013年5月20日号の掲載報告。 Calabro氏らは、0.5%ニフェジピンベースの局所製剤(クリーム)の抗しわ効果を確認することを目的に無作為化試験を行った。 対象は、45~60歳の女性で顔に中程度からやや重度のしわがある20例のボランティア被験者。被験者を無作為化し、10例は0.5%ニフェジピンクリームを、10例は良質の乳液を、1日2回90日間塗布した。 主な結果は以下のとおり。・治療後のしわ重症度評価尺度(WSRS)スコアは、ニフェジピン群のみ、ベースラインのスコアよりも有意に低下した。・平均WSRSスコアは、ニフェジピン群はT0時点3.85、T3時点は1.84であった。一方、対照群は、それぞれ3.78、3.36であった。・両群の全患者において、Corneometry法による水分量の測定での皮膚のハイドレーションは有意に上昇し、TEWL(水分蒸散量)は減少がみられ、皮膚の状態が改善していることが示された。・Dermolab装置による測定で、皮膚ハイドレーションはニフェジピン群で有意に上昇している一方、対照群の上昇はニフェジピン群よりも低いことが記録された。・比色定量法による評価は、0.5%ニフェジピンクリーム使用群は、皮膚が全体的に有意に明るくなったが、乳液使用の対照群は、いずれのライトニング指数にも変化が認められなかった。※保険適用のニフェジピンは経口薬のみで、対象疾患は狭心症、本態性高血圧症、腎性高血圧症に限られる。

29929.

EV71ワクチン、乳幼児対象の第3相試験で高い有効性と良好な安全性を報告/Lancet

 エンテロウイルス71(EV71)ワクチンの有効性と安全性、免疫原性について検討した第3相無作為化試験の結果、有効性は高く、安全性は良好で、免疫原性の維持が確認されたことを、中国・江蘇省疾病管理予防センター(CDC)のFeng-Cai Zhu氏らが報告した。EV71感染症は1974年に疾患報告されて以降、世界的に手足口病(HFMD)と関連した発生が、とくに乳幼児で多く報告され、過去10年では600万例以上の感染、2,000例以上の死亡が報告されているという。不活化アラムアジュバントEV71ワクチンは中国で開発され、成人および小児を対象とした第1相、第2相試験で安全性と免疫原性が確認されていた。今回の第3相試験は乳幼児を対象に、EV71と関連した疾患予防を目的とした評価が行われた。Lancet誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。6~35月齢児1万245例をワクチン接種群とプラセボ群に無作為化 第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、中国国内4施設において健常6~35月齢児を対象とし、無作為に1対1の割合で、ワクチン接種群とプラセボ(ミョウバンアジュバント)群に割り付け行われた。ワクチンは、0、28日に接種され、試験担当者および被験児と保護者には、割り付け情報は知らされなかった。 主要エンドポイントは、サーベイランス期間中(56日~14ヵ月)のEV71関連のHFMD発生およびEV71関連の疾患とした。解析は事前に規定した集団について行われた。 1万245例が登録され、5,120例がワクチン接種群に、5,125例がプラセボ群に割り付けられた。ワクチン有効性、EV71関連手足口病には90.0%、EV71関連疾患には80.4% 主要有効性解析の結果、ワクチン接種群(4,907例)のEV71関連HFMD発生は3例、EV71関連疾患の発生は8例であった。プラセボ群(4,939例)の発生はそれぞれ30例、41例であった。 ワクチンの有効性は、EV71関連HFMDに対しては90.0%(95%信頼区間[CI]:67.1~96.9、p=0.0001)、EV71関連疾患に対しては80.4%(同:58.2~90.8、p<0.0001)であった。 重大有害事象の報告は、ワクチン接種群1.2%(62/5,117例)、プラセボ群1.5%(75/5,123例)で有意差はみられなかった(p=0.27)。有害事象の発生も両群で有意差はなかった(71.2%vs. 70.3%、p=0.33)。

29930.

航空機内の医学的緊急事態、医療従事者はいかに対処すべきか?/NEJM

 民間航空機の機内では、毎年、約4万4,000件の医学的緊急事態が発生し、その主な原因は失神、呼吸器症状、消化器症状であり、多くの場合に医師が有志で医療活動を行っている実態が、米国・ピッツバーグ大学のDrew C. Peterson氏らの調査で明らかとなった。現在、世界的な民間航空機搭乗者数は年間約27億5,000万人に上る。機内での医学的緊急事態発生時の対応にはおのずと限界があるが、こうした状況に対する医師や医療従事者の訓練、経験が十分でないことも事実である。これまでに行われた同様の調査は、単一の航空会社の情報に基づき、患者の転帰は対象外の場合が多かったという。NEJM誌オンライン版2013年5月30日号掲載の報告。機内の医師からの医学的緊急事態連絡の記録を評価 研究グループは、航空機内での医学的緊急事態の発生状況と患者の転帰に関する調査を行った。 2008年1月1日~2010年10月31日までに、5つの国内線と国際線の民間航空会社(この間の世界の全搭乗者の約10%を占める)の機内から、医師が直接に連絡を入れた医療相談センターの医学的緊急事態記録の評価を行った。 最も頻度の高い医学的問題や同乗者による支援の特徴について検討し、予定外の着陸地への飛行、病院への搬送、入院の発生状況やその関連因子を同定した。604飛行に1回、遭遇機会は珍しくない 調査期間中に機内から医療相談センターへ連絡のあった医学的緊急事態は1万1,920件で、604飛行に1回の割合であった。 最も頻度の高かった問題は失神や失神寸前の状態(37.4%)で、次いで呼吸器症状(12.1%)、悪心・嘔吐(9.5%)の順であった。同乗の医師による医学的支援は48.1%で行われ、着陸地の変更は7.3%であった。 搭乗終了後の追跡データが得られた1万914人のうち、25.8%が救急隊により病院に搬送され、8.6%が入院、0.3%が死亡した。最も多い入院の原因は、脳卒中の疑い(オッズ比[OR]:3.36%、95%信頼区間[CI]:1.88~6.03)、呼吸器症状(OR:2.13、95%CI:1.48~3.06)、心臓症状(OR:1.95、95%CI:1.37~2.77)の順だった。 著者は、「機内における医学的緊急事態の主な原因は失神、呼吸器症状、消化器症状で、多くの場合に医師が有志で医療活動を行っていた。着陸地の変更や死亡例は少なく、さらなる医療評価を要したため病院へ搬送された乗客は約4分の1だった」とまとめている。 なお、今回のデータに基づくと、世界では毎年、機内で約4万4,000件の医学的緊急事態が起きていると推定されるという。著者は、「このような事態は乗客の立場ではまれだが、毎日起きているため、旅行中の医療従事者にとっては、気分の悪くなった乗客を支援する機会は珍しくない」と述べ、「機内での医学的緊急事態に関する基礎知識や利用可能な医療資源の知識を持つことで、効果的な支援活動が可能になる」として、具体的な対処法のアルゴリズムを挙げている。

29931.

「抑うつ+過度な飲酒」その影響は?

 多くの若者にとって、過度な飲酒はアルコール乱用の典型であり、とくに抑うつ症状を有する者によく見られる。それにもかかわらず、抑うつと過度な飲酒が合わさった際の神経心理学的アウトカムへの影響はほとんど知られていなかった。オーストラリア・シドニー大学のDaniel F. Hermens氏らは、この影響を検討した結果、抑うつに過度な飲酒が加わると視覚的学習能力、記憶力、精神的な柔軟性が低下することを報告した。Psychiatry Research誌オンライン版2013年5月28日号の掲載報告。  本研究は、抑うつを有する過度な飲酒者(binge-drinkers)が、抑うつ単独あるいは過度な飲酒単独と比べ、神経心理学的機能障害がより顕著であるか否かを検討することを目的とした。18~30歳の支援を求めている若者で、最近抑うつ症状が認められたbinge-drinkers(43例)またはnon-bingers(48例)について、神経心理学的検査を実施した。また、2つの健常対照群(binge-drinkers:24例、non-bingers:21例)を追加登録して、同様の検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・抑うつを有するbinge-drinkersは、抑うつ単独または過度な飲酒単独の場合に比べ、一貫して質的コントロールは不良であった。・抑うつを有するbinge drinkersでは視覚的学習能力と記憶力が有意に低下していた一方で、精神的な柔軟性については低下傾向がみられた。・抑うつ単独または過度な飲酒単独は、対照と比べ神経心理学的状態に有意な差はみられなかった。・以上を踏まえて著者は、「抑うつ症状を有する若年者に対しては、過度な飲酒に着目した治療戦略が、不良な長期臨床アウトカムの背景にある神経生物学的変化の予防に寄与しうることが示唆される」と結論している。関連医療ニュース うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感! 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

29932.

「脳卒中再発予防のためには収縮期血圧130mmHg未満」を支持する結果(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(105)より-

脳卒中既往歴のある症例の降圧目標値に関して、欧州のガイドラインは130/80mmHgとしている。これは、脳卒中再発予防におけるACE阻害薬ペリンドプリルの有用性を検討したPROGRESS試験の結果を参考にしている。一方、わが国のガイドライン2009年版では140/90mmHgとしているが、これに関しては反論も多い。脳卒中初発および再発の、最大のリスク因子は高血圧であることに議論の余地はなく、これまでの介入試験でも”The lower the better”を証明してきた。 本試験SPS3(Secondary Prevention of Small Subcortical Stroke)trialは、NIHの公的支援によっておこなわれた臨床試験である。約3,000人のラクナ梗塞患者を収縮期血圧130~149mmHg目標群と130mmHg未満を目標とする群にランダマイズして、平均3.7年間追跡された。全脳卒中、致死的脳卒中、心筋梗塞複合などにおいていずれも有意は差はみられなかったものの、厳格目標群の方が発症率が低い傾向が認められた。頭蓋内出血は厳格降圧群の方が有意に発症率が低いという結果だった。この結果は、従来の「脳卒中再発抑制のためには収縮期血圧130mmHg未満のより厳格な降圧が望ましい」というコンセンサスを支持する結果といえる。 本試験では、試験開始直後から両群間の血圧値に大きな差がみられ、その差が継続していることが大きな特徴である。3,000人規模の参加者にもかかわらず有意差がつかなかった最大の理由はやはり、イベント発症数が少なかったことによる。 医療現場では、再発予防のために抗血小板薬は必須となっており、また高脂血症があればスタチン薬を処方する時代になったため、脳卒中再発が発生しにくい状況にあることを反映しているともいえよう。

29933.

帝王切開の短期的アウトカム、手法の違いによる有意差はない/Lancet

 帝王切開を行う際に、子宮の一層または二層縫合といった手法の違いによって、術後6週間の短期的アウトカムに有意な差はみられないことが示された。UK Medical Research CouncilとWHOとによる「CORONIS試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2013年5月28日号で発表した。帝王切開の手技は複数あるが、これまで無作為化試験による厳格な検討は行われていなかったという。本検討は、いずれの手術が母体および出生児のアウトカム改善と関連しているのかについて調べることを目的とした。帝王切開の5カテゴリーについて、2つの方法を無作為に割り付け 研究グループは、2007年5月20日~2010年12月31日にかけて、アルゼンチン、チリ、ガーナ、インド、ケニア、パキスタン、スーダンの医療機関19ヵ所を通じて、合計1万5,935例の妊婦について、非レギュラー型一部要因に関する無作為化非盲検試験を行った。 比較は次の5つのカテゴリーと手法について行われた。(1)腹部切開の際の鈍的または鋭的エントリー、(2)子宮修復を行う際、露出か腹腔内か、(3)子宮の一層または二層縫合、(4)腹膜(骨盤と膣壁)の縫合または非縫合、(5)子宮修復におけるクローミック腸線またはポリグラクチン910の使用、についてで、被験者は無作為に、いずれかの組み合わせの技術に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後6週間後診察時の死亡、母性感染症罹患率、追加的手術の実施、1単位超の輸血、の複合アウトカム発生率とした。いずれの手法でも、6週間アウトカムに有意差なし 結果、5カテゴリーのいずれについても、主要アウトカムに有意差はみられなかった。具体的には、(1)鈍的または鋭的エントリーのリスク比は1.03、(2)露出か腹腔内かのリスク比は0.96、(3)一層または二層縫合のリスク比は0.96、(4)縫合または非縫合のリスク比は1.06、(5)クローミック腸線またはポリグラクチン910のリスク比は0.90だった。 一方、重大有害事象の報告は144例で、そのうち手術に関する報告と思われたのは26例だった。重大有害事象の大半は、手術あるいは帝王切開の既知の合併症だった。 これらの結果を踏まえて研究グループは、「帝王切開の手技の違いによって、短期的アウトカムについて有意差はなかった」と結論。そのうえで、長期的アウトカムにも違いがないかについて調べるため、長期追跡の必要性について言及した。

29934.

ラクナ梗塞患者の二次予防目的とした血圧目標値は<130mmHgが有益:SPS3/Lancet

 ラクナ梗塞を最近(180日以内)発症した患者に対し、収縮期血圧目標値130mmHg未満とする血圧コントロールは「有益であり支持される」ことを、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のOscar R Benavente氏らがSecondary Prevention of Small Subcortical Strokes(SPS3)試験の結果、発表した。SPS3試験は米国NIH-NINDSの資金提供の下、ラクナ梗塞患者の二次予防を目的に、抗血小板療法および今回発表した血圧管理についてそれぞれ2つのアームを検討した国際共同オープンラベル無作為化試験で、抗血小板療法については先に発表されている。血圧管理は、血圧を下げることは脳卒中予防に結びつくが、脳卒中再発予防の至適目標値は不明であったことから、高値群(130~149mmHg)と低値群(<130mmHg)を設定し、再発への影響を調べたものであった。Lancet誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。収縮期血圧目標値130~149mmHg群vs. <130mmHg群に無作為化し検討 SPS試験は、北アメリカ、ラテンアメリカ、スペインに居住する、MRIで症候性ラクナ梗塞が確認された患者を対象とした。2003年3月~2011年4月の間に集められた患者は無作為に、収縮期血圧目標値130~149mmHg(目標高値群)または同<130mmHg(目標低値群)に、2×2多因子デザインにて割り付けられ追跡を受けた。 主要エンドポイントは、全脳卒中(脳梗塞、脳出血含む)の減少とし、intention to treat解析にて評価した。全脳卒中は低下するも有意差はみられず、一方で脳出血は有意に低下 3,020例が登録され、目標高値群に1,519例が、低値群に1,501例が割り付けられた。追跡期間は平均3.7(SD 2.0)年、患者の平均年齢は63(SD 11)歳であった。 追跡1年時点における各群の収縮期血圧平均値は、目標高値群が138mmHg(95%信頼区間[CI]:137~139)、低値群が127mmHg(同:126~128)だった。 追跡期間中の初回脳卒中再発の発生は277例だった。そのうち243例(86%)が脳梗塞だった。 解析の結果、目標低値群の全脳卒中(ハザード比[HR]:0.81、95%CI:0.64~1.03、p=0.08)は減少したが有意差は認められなかった。同様の結果は、身体障害となるまたは致死的脳卒中(同:0.81、0.53~1.23、p=0.32)、心筋梗塞または血管性死亡の複合アウトカム(同:0.84、0.68~1.04、p=0.32)でもみられた。 一方で、脳出血の発生率は有意な低下がみられた(同:0.37、0.15~0.95、p=0.03)。 また治療関連の重篤な有害事象の発生はほとんどみられなかった。 以上の結果を踏まえて試験グループは、「脳卒中の低下は有意ではなかったが、最近のラクナ梗塞患者において、収縮期血圧目標値を130mmHg未満とすることは有益であり、その指標を使用することを支持する」と結論している。

29936.

アルツハイマー病の早期ステージに対し、抗Aβ治療は支持されるか?

 アミロイドβ(Aβ)堆積はアルツハイマー病の特徴の1つである。Vincent Dore氏らは、アルツハイマー病患者と健常高齢者を対象とした断面研究および長期追跡の解析から、Aβが同疾患ステージの早期で認知障害を呈する前から灰白質萎縮を加速することを明らかにした。また海馬、後帯状、楔前部領域での萎縮の速度が速いことも明らかにした。得られた所見を踏まえて著者は、「早期ステージで抗Aβ治療を行うことは高い効果を得られる見込みが高いという考え方を支持するものである」と報告している。JAMA Neurology誌オンライン版2013年5月27日号の掲載報告。 アルツハイマー病発症前の段階で、個人のリスクを同定することは、不可逆的なシナプスやニューロンの損失が起きる前に早期の治療介入が可能となるため、興味深い重大研究である。そこでDore氏らは、PiB-PET(Pittsburgh compound B positron emission tomography)検査にてアルツハイマー病の病理学的評価を行った無症候性の被験者を対象に、Aβ堆積と灰白質萎縮および認知障害との関連を調べた。 被験者は、オーストラリア・メルボルンのオースティン病院で集められたAustralian Imaging, Biomarkers, and Lifestyle Study of Agingのコホートからアルツハイマー病患者40例と、対照の健常高齢者93例で、全員が神経心理学的評価とMRIおよびPiB-PET検査を受けた。また、対照群のうち54例は、18ヵ月後と36ヵ月後に再度の神経心理学的評価を受けた。主要評価項目は、皮質表面で行った局所解析による、皮質厚とPiB蓄積、エピソード記憶との関連であった。 主な結果は以下のとおり。・対照のPiB蓄積陰性(NC-)群と比較して、対照のPiB蓄積陽性(NC+)群では、楔前部領域と海馬において皮質厚の有意な減少がみられ、エピソード記憶との関連が認められた。・また皮質厚は、NC+群の新皮質PiB蓄積と負の相関がみられた。・長期解析の結果、NC+群の側頭葉と海馬における灰白質萎縮がより速いことが示された。灰白質萎縮は、NC+群では時間とともに、とくに側頭葉における拡大が認められた。・以上のように、無症候性被験者において、Aβ堆積が灰白質萎縮および記憶障害と関連していることが明らかになった。・また灰白質萎縮の早期徴候が、海馬と後帯状、楔前部領域で検出された。さらに、疾患の進行とともに灰白質萎縮は側頭葉で拡大していった。・これらの所見は、Aβ堆積は良好なプロセスではなく、早期ステージでの抗Aβ治療による介入は効果的となる見込みが高いとの考え方を支持するものであった。関連医療ニュース 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか 入院期間の長い認知症患者の特徴は?:大阪大学

29937.

外傷後の神経痛に対する新規ケモカイン受容体2拮抗薬AZD2423

 新しいケモカイン受容体(CCR2)拮抗薬 AZD2423の、外傷後神経痛に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討した多施設共同無作為化二重盲検試験の結果が、スウェーデン・アストラゼネカ社のJarkko Kalliomaki氏らにより発表された。 AZD2423は、安全性および忍容性に問題は無く、神経障害性疼痛評価質問票(NPSI)による評価で特定の疼痛に対する効果が示唆されたことなどが報告された。PAIN誌2013年5月号(オンライン版2013年2月13日号)の掲載報告。 対象は外傷後の神経痛患者133例で、AZD2423 20mg群、150mg群またはプラセボ群に無作為化された。いずれも治験薬を28日間経口投与した。 主要評価項目は、試験終了時におけるベースライン時からの平均疼痛スコア(それぞれ投与の最終5日間ならびに投与開始前5日間の平均値)の変化量であった。疼痛スコアは、0~10までの数値的評価スケールを用いた。 副次的有効性評価項目は、NPSI、疼痛スコア最悪値、患者による全般的印象(PGI)の変化)、睡眠や日常活動に及ぼす影響とした。 主な結果は以下のとおり。・平均疼痛スコアの変化について、投与群間の有意差は認められなかった(AZD2423 20mg群:-1.54、AZD2423 150mg群:-1.53、プラセボ群:-1.44)。・しかしプラセボ群と比較してAZD2423 150mg投与群は、NPSI総スコア、ならびに発作痛および感覚異常に関するNPSIサブスコアが大きく減少する傾向がみられた。・その他の副次的有効性評価項目について投与群間で差はみられなかった。・AZD2423両群の有害事象の頻度と種類はプラセボ群と類似していた。・ケモカインリガンド2血漿中濃度の増加および単球の減少(AZD2423 150mg投与群で-30%)がみられ、AZD2423投与量とCCR2との相互作用が示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

29938.

地中海食は脳卒中・認知障害・うつ病を予防できるか?

 近年、地中海食と脳卒中や認知症など脳疾患との関連を調査した研究結果がしばしば報告されている。アテネ大学(ギリシャ)のTheodora Psaltopoulou氏らは、地中海食の遵守度と、脳卒中やうつ病、認知障害、パーキンソン病の発症リスクの関連を調査したすべての研究をメタアナリシスによって定量的に評価し、Annals of Neurology誌オンライン版2013年5月30日号に報告した。 メタアナリシスの対象は、2012年10月31日までにPubMedで検索できた論文で、地中海食とこれらの脳疾患リスクとの関連について、相対リスク(RR)の効果推定値を報告している研究論文とし、条件にあった22報を評価した(脳卒中11報、うつ病9報、認知障害8報、パーキンソン病1報)。  なお、地中海食とは、野菜・豆・果物・シリアルを多く摂取し、オリーブオイルからn-3系不飽和脂肪酸を多く摂取し、魚を比較的多く、乳製品は低・中等量、肉や家禽類は少量、食事中に適量の赤ワインを摂取する食事である。 主な結果は以下のとおり。・地中海食の遵守度が高い場合は、脳卒中(RR=0.71、95%CI:0.57~0.89)、うつ病(RR=0.68、95%CI:0.54~0.86)、認知障害(RR=0.60、95%CI:0.43~0.83)のリスク減少に一貫して関連していた。・地中海食の遵守度が中程度の場合でも、うつ病や認知障害のリスク減少と関連していたが、脳卒中を予防する傾向はごくわずかであった。・サブグループ解析では、地中海食の遵守度が高い場合において予防効果が大きくみられたのは、虚血性脳卒中、軽度認知障害、認知症(とくにアルツハイマー病)であった。・メタ回帰分析では、脳卒中予防における地中海食の効果は、男性においてより大きい傾向がみられた。・うつ病に関しては、地中海食の遵守度が高い場合は年齢に関係なく予防効果がみられたが、遵守度が中程度の場合は年齢とともに効果は消滅するようである。

29940.

健康診断の採血で右上肢が廃用となったケース

内科最終判決平成14年9月5日 松山地方裁判所 判決概要経験年数20年のベテラン看護師が、健康診断目的で来院した42歳女性の右肘尺側皮静脈から採血を試みた。針を挿入直後に患者が「痛い!」と訴え、血液の逆流がなかったので左側から改めて採血した。ところが、採血直後から右上肢の知覚障害、痛み、浮腫、運動障害が出現し、大学病院整形外科で反射性交感神経異栄養症(RSDS)と診断され、労災等級第7級に相当する後遺障害が残存した。詳細な経過患者情報42歳女性。特記すべき既往症なし経過平成8年7月17日09:40定期健康診断時に、尺側皮静脈から採血するため右腕肘窩部分に針を刺したが、血液の逆流はなく、針が刺された後で「痛い!」といったため針を抜き、針やスピッツを新しいものに変えて、改めて左腕に針を刺して採血は完了した。ところが、採血直後から右手第1-第2指にしびれを自覚し、同日総合病院整形外科を受診して、「右正中神経麻痺、反射性交感神経性萎縮症」と診断された。12月16日大学病院整形外科医師は、右上肢の知覚障害、痛み、浮腫、運動障害があることから「カウザルギー」と診断した。平成11年3月10日労災認定。右上肢手関節と肘関節の中心部より右手指にかけて、常時疼痛を中心とした異常感覚および知覚低下、右上肢肘関節以下の神経症状による運動障害があるとして、障害等級第7級3号に該当すると認定。平成13年11月9日本人尋問。右手、とくに親指の付け根付近から上肢にかけての約20cmの部分に強い痛みがあると訴え、被告ら代理人が少し触れようとすると激しく痛がった。本人の上申書右腕は痛くて伸ばせない右手指も無理に伸ばそうとすると歯の神経にさわったような電撃的な痛みが出るし、不意に痛むこともある右手指から肘までの1/2の範囲は、常時、火傷したようなきりきりとした痛みがある肘の内側にはじくじくとした鈍痛がある肩と肘の真ん中あたりから指先にかけて、いつもむくんでいる右手指のうち、小指以外は何かに触れただけで飛び上がるような痛みがある。指先から遠位指節間関節(指先にもっとも近い関節)までほとんど感覚がないため、物を握れないこのため右手はほとんど用をなさないし、寝る時は右手が下にならないように気をつける。手首を内側に向けて捻っている状態は楽だが、その反対はできないなどの障害が残っている当事者の主張患者側(原告)の主張採血時、血液の逆流がなく血管内に注射針を刺入できていないことがわかったのに、注射針をそのまま抜こうとせず、注射針の先を動かして血管を探すような動作をし、痛みを訴えたにもかかわらず同様の動作を続けた結果、右腕正中神経を注射針の先で傷つけたため、右手第1-第2指にしびれ、疼痛を生じる障害を負った。看護師は肘窩の静脈に針を刺す場合、正中神経を傷つけないように注射針を操作するべき注意義務があるのに、不用意に操作した過失によって正中神経を損傷しRSDSを併発した。病院側(被告)の主張担当看護師は勤続20年のベテラン保健師・看護師であり、通算数千件もの採血を実施しているが、一度もミスなどしたことはない。採血の際は、皮膚から約15度の角度で針先カット面を上にして血管穿刺を行っており、かつ、血液の逆流が認められないため、スピッツを数ミリ手前に引いたのみであり、注射針の先を動かして血管を探すなどした事実はない。このような採血によって皮膚の表面上を走る尺側皮静脈から、遠く離れた深部にある正中神経を傷つけることはあり得ない。また、右腕の痛みに対し星状神経ブロックなどの医師の勧める基本的治療を行わず、痛みのまったくない軽度な治療を行うのみであった。また、日常行動を調査したビデオによれば、右手を普通に用いて日常生活を送っていると認められ、法廷の本人尋問での言動は事実と異なる演技に過ぎない。各医師の診断結果や、これらに基づく労働基準監督署長の判断も、同様に原告が演技をし、またはその訴えたところに従って作成され判断されたものに過ぎず、誤っている。仮に採血による後遺障害が残っているとしても、それは医師から再三の治療上のアドバイスがあったにもかかわらず拒否し、特異な気質と体質により複雑な病態となったものと考えられる。裁判所の判断原告は採血直後から右手のしびれなどを訴えるようになり、現在でも右手は触れられただけでも強い痛みを訴え、大学病院医師は採血を原因とする「右上肢カウザルギー」ないし「RSDS」と診断している。痛みに関する供述にはやや誇張された面があると感じられるが、およそ障害がない、あるいはその障害が軽微であるとの根拠とすることはできない。したがって、採血時に肘窩の尺側皮静脈に注射針を深く刺し、正中神経を傷つけたため右手が使えなくなったのは、採血担当看護師の過失である。原告側合計3,254万円の請求に対し、2,419万円の判決考察たった1回の採血失敗によって、右手が使えなくなるという重度後遺障害が残存し、しかも2,419万円もの高額賠償につながったという衝撃的なケースです。肘の解剖学的な構造をみると、尺側皮静脈は腕の内側を走行し、比較的太い静脈の一つです。ただその深部には、筋膜の内側に上腕動脈と伴走するように正中神経が走行しています。本件では、結果的にはこの正中神経に針が届いてしまい、右腕が使い物にならなくなるほどの損傷をうけて医事紛争に発展しました。本当にこの神経を刺してしまうほど、深く注射針を挿入してしまったのかは、おそらく担当した看護師にしかわからないことだと思いますが、採血直後から正中神経に関連した症状が出現していますので、正中神経に損傷が及んだことを否認するのは難しいと思います。ただし、今回問題となったRSDSには特有の素因があることも知られていて、交感神経過反応者、情緒不安定、依存性、不安定性を示す性格の持ち主であることも知られています。今回の採血では、担当看護師の主張のように、けっして針をブスブスとつき刺すような乱暴な操作をしていないと思います。にもかかわらず重篤な障害に至ってしまったということは、今後私たちが採血や注射を担当する以上、一定の確率で否が応でも今回のような症例に遭遇する可能性があることになります。ではどうすればこのような紛争を未然に防ぐことができるかというと、あらかじめ採血をする時には、危険な部位には針を刺さないようにすることが必要です。通常は肘の外側に太い神経はみられないので、可能な限り内側の尺側皮静脈から採血するのは避け、外側の皮静脈に注射するのが懸命でしょう。もしどうしても採血可能な静脈が内側の尺側皮静脈以外にみつからない場合には、なるべく静脈の真上から針を挿入し、けっして針が深く入らないようにすることが望まれます。また、採血時に普通ではみないほどひどく痛がる患者の場合には、RSDSへと発展しやすい体質的な素因が考えられますので、無理をして何回も針を刺さないように心がけるとともに、場合によっては医師の判断を早めに仰ぐようにするなどといった配慮が必要だと思います。内科

検索結果 合計:35104件 表示位置:29921 - 29940