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医療法学的視点から見た診療ガイドラインを考える

 9月14日(土)、東京大学医学部(本郷キャンパス)において第4回医療法学シンポジウムが開催され、全国より医師、医療従事者をはじめ約60名が参加した。 今回はテーマに「医療法学的視点から見た診療ガイドライン」を掲げ、診療ガイドラインの医事裁判での引用や使われ方、裁判官の判断に与える影響などについて識者からのレクチャーとパネルディスカッションが行われた。■診療ガイドラインの目的は「医療の均てん化と医療者の教育」 診療ガイドラインは、多種存在しているが、一般的には「医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決断を下せるよう支援する目的で、体系的な方法に則って作成された文書」のことであり、その多くの目的は医療の均てん化と医療者の教育である。医師には、診療ガイドラインの内容に沿いつつも、診療では広範な裁量も尊重されており、患者の意向を考慮して個々の患者に最も妥当な治療法を選択することが望ましいとされていることは、医療者には周知の事実である。 しかしながら、ひとたび医療事故が起こり、裁判となった場合、診療ガイドラインがあたかも標準診療の基準のように取り扱われ、ガイドラインから外れた診療がなされた場合、医療者側の診療裁量権よりも、ガイドラインが尊重され、医療機関側に責任を負担させる、という不幸な事態が散見されている。 こうした現実が司法のどのような理論からきているのか、医療者がとり得るべき対応はないのかを今回のシンポジウムで明らかにすることを目的に開催された。■医療と司法の相互理解 最初に慶應義塾大学の古川 俊治氏(医師、弁護士)が、シンポジウムの目的を「医療と司法の相互理解を目指すこと」と述べ、5名の演者によるレクチャーが行われた。 富永愛法律事務所の富永 愛氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点からみた診療ガイドラインの在り方」と題し、がんの中でも特に訴訟が目立つ肝細胞がん、乳がんの裁判を例に「裁判では裁判官は必ずといっていいほど、判断の基準にガイドラインや薬の添付文書に目を通し、ケースによっては判決文で引用するほど訴訟での使用は日常化している。しかし、裁判官は、一律ガイドラインだけで判断しているわけではなくガイドラインを用いる際でも目的意識を持って作成されたものは、その目的趣旨までさかのぼって判断をしている。今後はガイドライン作成時にはその目的や使用対象者を意識して作成する必要がある」と説明した。 東京大学の山田 奈美恵氏(医師)は、医師の立場から「医療者から見た診療ガイドライン」として『肝診療ガイドライン』と『乳診療ガイドライン』を例に、これら診療ガイドラインの作成過程、臨床現場での使用の実際、その問題点を説明した。最近、医師の診療ガイドラインへの意識は、(訴訟を見据えて)変化しつつあること、診療ガイドラインが抱えるエビデンスレベルに差異があること、研修医などが個別の医学的考察の前に診療ガイドラインを過度に重視することもあることなどの問題点が医師の視点より報告された。 井上法律事務所の山崎 祥光氏(弁護士、医師)は、「ガイドラインの証拠としての扱い」と題し、医事裁判でのガイドラインの証拠能力について説明を行った。裁判官が診療ガイドラインを重視する理由として、医療水準の認定の難しさや、外からみると診療ガイドラインが何らかの「ルール」にみえることが挙げられ、この点につき医療者の考えは司法(裁判官)に十分理解されていないと説明された。今後も、診療ガイドラインが裁判などで使用されることが避けられない以上、診療ガイドラインに、その目的や対象、推奨の強さ、医師の裁量の幅などの前提部分を明確に記載することが重要であると述べた。 浜松医科大学の大磯 義一郎氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点から見た診療ガイドラインのあり方」と題して、(医療側に不利なケースが多い類型の)裁判での診療ガイドラインの使われ方とその判決の状況を説明した。これらを踏まえたうえで医療と司法の診療ガイドラインに対する相互理解を促進するために、司法に誤解され得る表記は避け、前文で医師の裁量権についての記載を行うことや例外事由の列挙を具体的にすること、適切なバージョンアップを行うことなど司法の側にも正しく理解できるようなガイドライン作りの提案を行った。 北浜法律事務所の小島 崇宏氏(医師、弁護士)は、「医療法学的視点から見たより良い診療ガイドラインの提示」として、自身の医事裁判の経験から裁判官は、自身の考える妥当な結論を念頭に、事実認定を試みるという思考パターンであること、そのため診療ガイドラインが時には医師の主張を覆すための証拠として用いられているのが現状であること、したがって、この点を踏まえた診療ガイドライン作りが求められることを説明した。また、医事裁判では、エビデンス不足や記載の曖昧さが裁判の結果を左右するとして、診療ガイドラインの内容について例えばグレードの低いものはその点をわかりやすく記載することや推奨度の高いものでも原則と例外を分けて記載することなど、丁寧な記載が必要と提案を行った。■シンポジウム 医事裁判で問題になる「説明と同意」 大磯義一郎氏の司会の下、再度演者が登壇し、医事裁判での診療ガイドラインの地位や診療ガイドライン以外の審理の際の判断の仕方(例えば鑑定として第三者の立場で医師が呼ばれて証言する)などの現状が伝えられた。また、最近では診療ガイドラインの普及の影響なのか和解で終結するケースの報告が多いことなどがレポートされるとともに、問題点として個々の医療ケースを考えない画一的な診療ガイドラインの当てはめ(例えば大都市の病院と離島の診療所も適用は同じだと考えている)など、裁判での問題も多いことが報告された。特に提案として、診療ガイドラインから外れる診療については、きちんと事前に患者、患者家族に説明し、同意を得ておくことや、診療録への記載が大切であり、紛争化を防ぐためにも十分に行ってもらいたいとアドバイスがなされた。 その他、医事裁判全体については、日常のカルテの記載不足、誤記載や管理不備も問題であり、特に注意が必要である。裁判に発展し、敗訴するケースではこうした点に不備がみられる場合が多いなども報告された。 今後も診療ガイドラインは、医療の発展のためにも必要であり作成されるべきであるが、裁判に使用されかつ重視されることも避けがたい事実であり、「司法にも正しく理解されるかたちに作成する」「医療者も司法の側に普段から説明を行う」などの相互理解が必要であるとシンポジウムを締めくくった。 最後に公益財団法人がん研究会の土屋了介氏(医師)が、閉会の挨拶を述べ、終了した。

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CareNet.comについてCareNet.comとはどんなサイトですか?医師以外でも会員登録できますか?医師ではないですが、医師限定のコンテンツを見ることはできませんか?CareNet.comとはどんなサイトですか?CareNet.comは36万人を超える医療従事者に利用されている、医療情報専門サイトです。日常診療に役立つ、良質な医療情報を提供しています。株式会社ケアネットが運営しています。■いますぐ現場で使える「医療コンテンツ」手技動画や患者指導、ガイドライン解説など、明日からの臨床現場ですぐに使えるコンテンツを、豊富に取り揃えています。メディカル専門の編集部が会員医師の声をもとに厳選してお届けします。■日本語でわかる注目の海外論文を要約「ジャーナル四天王」海外の一流雑誌に掲載された論文を日本語で要約。日本の現場にもインパクトが大きいものを厳選。その他、専門家による解説や最新の国内医療ニュースなど、医療のいまが手軽にわかります。■専門外の疾患を手軽にアップデート「特集」ケアネットの「特集」では、毎回1つの疾患にフォーカスし、診断・治療の基本や最新情報、ガイドラインなどを編集部がまとめて紹介。専門外の疾患がわかりやすいと評判です。※ご登録・ご利用ともに無料です。医師以外でも会員登録できますか?医師の方以外でも、薬剤師・看護師・病院職員・製薬メーカーの方など、医療従事者または医療関係者の方であれば、ご登録いただけます。医師ではないですが、医師限定のコンテンツを見ることはできませんか?コンテンツの内容や監修の先生の意向、また薬事法や関連法規の諸事情により、ご利用いただく方を限定させて頂いております。申し訳ございませんが、ご了承ください。

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ご利用環境/動画視聴についてCareNet.comが正しく表示されません動画が再生できませんCareNet.comが正しく表示されません当サイトを快適にご覧いただくため、以下の環境での閲覧を推奨しております。動画が再生できません動画が再生できない場合には複数の原因が考えられます。下記のトラブルシューティングの内容を実行すると、問題を解決できる場合があります。はじめに:下の「再生確認用サンプル」は再生できますか?#FAQbackground { clear: both; width: 100%; padding-top: 10px; padding-right: 0px;}#FAQmovie { width: 300px; margin: 0 auto; clear: both; padding-bottom: 10px; padding-left: 0px;} 再生確認用サンプル動画 再生できなかった場合:以下の全ての手順をお試しください。再生できた場合:以下の2、3、4、5、7をお試しください。(1)ブラウザ以外のアプリケーションを停止し、ブラウザのウインドウやタブを閉じてみる。複数のアプリケーションが動作していたり、ブラウザが複数のウインドウやタブを開いていたりすると、PCに負荷がかかり動画が再生されない場合があります。(2)PCを再起動してみる。PCやデバイス側が不安定になっている場合にはPCの再起動で回復する可能性があります。(3)ブラウザの一時ファイル(キャッシュファイル)やCookieを削除する。再生に必要なデータが不完全な状態でブラウザに保存されてしまうと動画やデータの再読み込みができなくなる事があります。ブラウザの一時ファイル(キャッシュファイル)やCookieを削除してください。ブラウザの一時ファイルやCookieの削除の方法はご利用のブラウザのヘルプなどをご確認ください。(4)ブラウザのプラグインや拡張機能を無効にする。ブラウザのプラグインや拡張機能の影響で動画が再生されない場合があります。特に広告ブロック(AdBlock等)のプラグインによる影響が考えられます。プラグインや拡張機能を無効にし、ブラウザを再起動してください。(5)ブラウザのセキュリティーレベル設定を確認する。ブラウザのセキュリティーレベルの設定や、特定の項目の設定をすることにより、動画の再生ができないことがあります。セキュリティーレベルの設定を厳しく(高く)設定していないか確認し、CookieやJavaScriptの使用を禁止している場合は許可するように設定を変更してください。(6)インターネットの回線速度を確認する。動画の視聴には最低限500kbps以上の安定した回線速度が必要です。また、快適にご覧いただくには2Mbps以上の環境をお勧めします。視聴環境の回線速度を調べるには検索サイト(Google等)で「インターネット速度テスト」を検索し、回線速度テストサイトでテストを行ってください。また、CookieやJavaScriptの使用を禁止していても再生ができません。セキュリティーレベルの設定を確認し、拒否や制限をしていれば許可するように変更してください。(7)セキュリティーソフトやネットワーク機器、ご利用のプロバイダの設定を確認する。セキュリティーソフトやネットワーク機器、プロバイダの設定で動画の再生を制限していることや、特定のサイトからの動画配信を拒否している場合があります。動画再生の設定や制限をご確認いただき、特定のサイトからの動画配信を拒否している場合には、以下のサイト(ドメイン)からの配信を許可するようにしてください。carenet.commrp.carenet.com*.brightcove.com*.api.brightcove.complayers.brightcove.netedge.api.brightcove.comhls.ak.o.brightcove.comuds.ak.o.brightcove.com※セキュリティーソフトやネットワーク機器、プロバイダの設定の詳細はマニュアルや販売・提供元のサイトなどを参照ください。※プロバイダで「ぷらら(Plala)」を利用している場合、動画配信制限設定がされているケースがあります。設定・変更方法はぷららのヘルプページをご参照ください。(8)別のブラウザを利用してみる。各ブラウザの設定やバージョンにより、動画の再生できない場合があります。他のブラウザで再生できた場合、再生できなかったブラウザの設定を変更したり、最新版にアップデートしたりすると問題が解決する可能性があります。※ブラウザを新しく入手するには下記のリンクをご参照ください。Edge(Chromium版)/Chrome上記を試しても解決されない場合には、ケアネットカスタマーセンターへお問い合せください。※使用ブラウザ、OSのバージョン、画面の表示内容等をお伝えください。※Chromeをご利用の方は接続ログファイル(HARファイル)をお送りいただければ、より詳細な調査が可能となります。--- 接続ログファイル(HARファイル)の作成方法 -----------------■Windowsをご利用の場合a.Google Chromeを起動します。b.動画が再生できないページにアクセスします。c.キーボードの"F12 キー"を押し、画面下部にデベロッパーツール画面を表示します。d.デベロッパーツール画面、上部からタブから"Network"タブを選択します。e.ページをリロード(再読み込み "Ctrl+R"または"F5キー")します。f.事象が再現されることを確認します。g.Networkタブ内にて、右クリックし、「Save as HAR with content(HAR形式にて保存)」を選択します。h.保存したファイルを添付してカスタマーセンターへお送りください。【(Windows版)接続ログファイル作成方法.pdf】も合わせてご参考ください。■MacOSをご利用の場合a.Google Chromeを起動します。b.動画が再生できないページにアクセスします。c.メニューの「表示」->「開発/管理」->「デベロッパツール」を開きます。(もしくは、Command + Option + i キーを同時に押します。)d.デベロッパーツールの「Network」タブを選択します。e.Command + R を押し、ページを再読み込みします。f.マウスの右ボタンをクリックし(トラックパッドの場合は指2本でクリックし)、「Save as HAR with Content」(HAR形式にて保存)を選択します。g.保存したファイルを添付してカスタマーセンターへお送りください。【(MacOS版)接続ログファイル作成方法.pdf】も合わせてご参考ください。

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リンク/著作権について

リンク/著作権についてCareNet.comのコンテンツを、病院のホームページや自分のブログに転載したり、プリントアウトして勉強会で使用したりしてもよいですか?CareNet.comで提供する、動画・音声・スライド等の情報(以下総称して「コンテンツ」といいます。)は、当社および第三者(出演者・執筆者・撮影者等)に帰属します。私的使用のための複製その他の著作権法で認められている場合を除き、当社の許諾なく、コンテンツの全部または一部の転載・複製等の利用を行うことはご遠慮ください。著作権侵害行為があったとき、またはそのおそれがあると当社が判断したときは、損害の賠償を求める場合があります。また、著作権法その他の法令に基づき刑事罰が科せられる場合があります。CareNet.comにリンクを張ってもよいですか?CareNet.comのページへのリンクは、原則として自由です。ただし、当社が提供する情報の信頼性が害される場合、またはそのおそれがあると当社が判断した場合には、リンクの削除をお願いすることがございます。なお、当社は事前の予告無く、コンテンツの内容を変更または削除することがあります。あらかじめご了承ください。

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Cookie設定方法について

Cookie設定方法についてWindowsにおける設定方法EdgeGoogle ChromeMacintoshにおける設定方法SafariGoogle Chromeスマートフォン・タブレット端末における設定方法iOS SafariAndroid 標準ブラウザWindowsにおける設定方法<Edgeの場合>1.ブラウザ右上部にある[…]アイコン → 設定を選択してください。2.[設定]メニュー内の[詳細設定を表示]を選択してください。3.メニュー内の[Cookie]の状態を[Cookieをブロックしない]に選択すると設定完了です。<Chromeの場合>1.ブラウザ右上部にある[︙]アイコン → [設定]を選択します。2.[プライバシーとセキュリティ]メニューをクリックして、[サイトの設定]をクリックします。3.[サイトの設定]セクションにある[権限][Cookieとサイトデータ]をクリックします。4.[サイトにCookieデータの保存と読み取りを許可する(推奨)]をオンにします。Macintoshにおける設定方法<Safariの場合>1.ブラウザ上部メニューの[Safari] → [環境設定]を選択してください。2.[プライバシー]タブ内の「CookieとWebサイトのデータ」で[すべてのCookieをブロック]のチェックを外し、ウィンドウを閉じれば設定完了です。<Chromeの場合>1.ブラウザ右上部にある[︙]アイコン → [設定]を選択します。2.[プライバシーとセキュリティ]メニューをクリックして、[サイトの設定]をクリックします。3.[サイトの設定]セクションにある[権限][Cookieとサイトデータ]をクリックします。4.[サイトにCookieデータの保存と読み取りを許可する(推奨)]をオンにします。スマートフォン・タブレット端末における設定方法<iPhone Safariの場合>1.ホーム画面で「設定」を選択します。2.「Safari」を選択します。3.「すべてのCookie をブロック」をオフにします。<Android 標準ブラウザの設定>1.標準ブラウザの画面で、メニューボタンを選択します。2.「設定」を選択します。3.「プライバシーとセキュリティ」の「Cookieを許可」を、チェックします。

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「AMI急性期のPCIは責任病変だけにしろ!」と私は教えられました(コメンテーター:中川 義久 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(133)より-

私が急性心筋梗塞(AMI)の治療について、これまで教えられ、自分自身も若手医師に教えていることは、「AMI急性期のPCIは責任病変だけにしろ!他の病変は落ちついてから日を改めて治療しろ!」でした。自分にとっては疑いもない正論と信じていた内容に疑問符を投げかける研究結果が発表されました。それが、PRAMI研究です。オランダのアムステルダムで開催されたESC 2013で発表され、同時にNEJM誌に掲載されました。 AMIの代表的な病態である、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞の責任血管のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行に比べて、引き続いて責任血管以外の狭窄への予防的PCIを施行することによって、心血管イベントを65%低下させると報告しています。責任血管以外にPCIの適応病変があると術者が判断する患者を、梗塞責任病変の治療に成功した時点で、カテ室の中においてランダマイズしたものです。 日本でPCIに携わる者の感覚では、急性期に責任血管のみへのPCIを施行した患者は、その入院中に他枝にPCIを施行してから退院させることが通常です。したがって、この研究のデザインを次のように誤解してしまうのです。つまり、緊急PCI時に一期的に予防的PCIまで行う群と、緊急手技と待機的手技に分けて入院中に治療した群を比較した研究と、先入観をもって考えがちです。 しかし、この研究においては、staged PCIは極力避けるようにデザインされ、厳しく制限されています。つまり、責任病変のみの治療を行った群と、責任病変を含む完全血行再建を行った群を比較した試験ともいえます。この面では、「AMI急性期のPCIは責任病変だけにしろ!他の病変は落ちついてから日を改めて治療しろ!」という教えの、完全血行再建を図るように、という部分は正しさが再確認されたといえます。 一方で、本研究には先進性もあります。それは、PCIの技術や器具の進歩によって、責任血管の再開通に成功した患者において、引き続いて他枝に同時にPCIを施行しても、十分に耐えられる患者群がいるという事実です。その観点からは、私が疑ったことがなかった教えは打ち破られたといえます。 先人から教えられたことにも、常に修正や改善の余地がないかを考え続けることの大切さを教えられた、価値ある論文です。

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早期胃がん術後の抗がん剤副作用で死亡したケース

・腫瘍最終判決判例タイムズ 1008号192-204頁概要53歳女性、胃内視鏡検査で胃体部大弯に4~5cmの表層拡大型早期胃がん(IIc + III型)がみつかり、生検では印環細胞がんであった。胃2/3切除およびリンパ節切除が行われ、術後に補助化学療法(テガフール・ウラシル(商品名:UFT)、マイトマイシン(同:MMC)、フルオロウラシル(同:5-FU))が追加された。ところが、5-FU®静注直後から高度の骨髄抑制を生じ、術後3ヵ月(化学療法後2ヵ月)で死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない53歳女性経過1992年3月6日背中の痛みを主訴に個人病院を受診。3月18日胃透視検査で胃体部大弯に陥凹性病変がみつかる。4月1日胃内視鏡検査にて、4~5cmに及ぶIIc + III型陥凹性病変が確認され、生検でGroup V印環細胞がんであることがわかり、本人にがんであることを告知の上、手術が予定された。4月17日胃2/3切除およびリンパ節切除術施行。術中所見では漿膜面にがん組織(のちに潰瘍瘢痕を誤認したものと判断された)が露出していて、第2群リンパ節にまで転移が及んでいたため、担当医師らはステージIIIと判断した。4月24日病理検査結果では、リンパ節転移なしと判定。4月30日病理検査結果では、早期胃がんIIc + III、進達度m、印環細胞が増生し、Ul III-IVの潰瘍があり、その周辺にがん細胞があるものの粘膜内にとどまっていた。5月8日病理検査結果では前回と同一で進行がんではないとの報告。ただしその範囲は広く、進達度のみを考慮した胃がん取り扱い規約では早期がんとなるものの、すでに転移が起こっていることもあり得ることが示唆された。5月16日術後経過に問題はなく退院。5月20日白血球数3,800、担当医師らは術後の補助化学療法をすることにし、抗がん剤UFT®の内服を開始(7月2日までの6週間投与)。6月4日白血球数3,900、抗がん剤MMC® 4mg投与(6月25日まで1週間おきに4回投与)。6月18日白血球数3,400。6月29日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。6月30日抗がん剤5-FU® 1,250mg点滴静注。7月1日白血球数2,900。7月3日白血球数2,400、身体中の激痛が生じ再入院。7月4日白血球数2,200、下痢がひどくなり、全身状態悪化。7月6日白血球数1,000、血小板数68,000。7月7日白血球数700、血小板数39,000、大学病院に転院。7月8日一時呼吸停止。血小板低下が著しく、輸血を頻回に施行。7月18日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.リンパ節転移のないmがん(粘膜内がん)に補助化学療法を行った過失診療当時(1992年)の知見をもってしても、表層拡大型IIc + III早期胃がん、ステージI、リンパ節、腹膜、肝臓などのへの転移がなく外科的治癒切除を行った症例に、抗がん剤を投与したのは担当医師の明らかな過失である。しかも、白血球数が低下したり、下痢がみられた状態で抗がん剤5-FU®を投与するのは禁忌であった2.説明義務違反印環細胞がん、表層拡大型胃がんについての例外的危険を強調し、抗がん剤を受け入れざるを得ない方向に誘導した。そして、あえて危険を伴っても補助化学療法を受けるか否かを選択できるような説明義務があったにもかかわらず、これを怠った3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った病院側(被告)の主張1.リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失術中所見ではがん組織が漿膜面まで明らかにでており、第2群のリンパ節に転移を認めるのでステージIIIであった。病理組織では摘出リンパ節に転移の所見がなく、肝臓などに肉眼的転移所見がみられなかったが、それで転移がなかったとはいえない。本件のような表層拡大型早期胃がんはほかの胃がんに比べて予後が悪く、しかも原発病巣が印環細胞がんという生物学的悪性度のもっとも強いがんであるので、再発防止目的の術後補助化学療法は許されることである。白血球数は抗がん剤の副作用以外によっても減少するので、白血球数のみを根拠に抗がん剤投与の適否を評価するべきではない2.説明義務違反手術で摘出したリンパ節に転移がなく、進達度が粘膜内ではあるが、この結果は絶対的なものではない。しかも原発病巣が生物学的悪性度のもっとも強い印環細胞がんであり、慎重に対処する必要があるので、副作用があるが抗がん剤を投与するかどうか決定するように説明し、患者の同意を得たので説明義務違反はない3.医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務1980年以降に早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えが確立したが、担当医師ががん専門病院に勤務していたのは1970~1980年であり、この当時は抗がん剤の効果をみるために早期胃がんに対しても術後補助化学療法治療試験が盛んに行われていた。したがって、早期胃がんに対して補助化学療法を行わないとの考えを開業医レベルの担当医師に要求するのは無理である裁判所の判断1. リンパ節転移のないmがんに補助化学療法を行った過失担当医師らは肉眼所見でがん組織が漿膜面まで露出していたとするが、これは潰瘍性瘢痕をがんと誤認したものである。また、第2群のリンパ節に転移を認めるステージIIIであったと主張するが、数回にわたって行われた病理検査でがんが認められなかったことを優先するべきであるので、本件は進行がんではない。したがって、そもそも早期がんには不必要かつ有害な抗がん剤を投与したうえに、下痢や白血球減少状態などの副作用がみられている状況下では禁忌とされている5-FU®を、常識では考えられないほど大量投与(通常300~500mgのところを1,250mg)をしたのは、医師として当然の義務を尽くしていないばかりか、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない。2. 説明義務違反説明義務違反に触れるまでもなく、担当医師に治療行為上の重大な過失があったことは明らかである。3. 医療知識を獲得して適切な診断・治療を患者に施すべき研鑽義務を怠った。担当医師はがん専門病院に勤務していた頃の知見に依拠して弁解に終始しているが、がん治療の方法は日進月歩であり、ある知見もその後の研究や医学的実践において妥当でないものとして否定されることもあるので、胃がんの治療にあたる以上最新の知見の修得に努めるべきである。原告側合計6,733万円の請求を全額認定考察この判例から得られる教訓は、医師として患者さんの治療を担当する以上、常に最新の医学知識を吸収して最良の医療を提供しなければならないということだと思います。いいかえると、最近ようやく臨床の現場に浸透しつつあるEBM(evidence based medicine)の考え方が、医療過誤かどうかを判定する際の基準となる可能性が高いということです。裁判所は、以下の知見はいずれも一般的な医学文献等に掲載されている事項であると判断しました。(1)mがんの再発率はきわめて低いこと(2)抗がん剤は胃がんに対して腫瘍縮小効果はあっても治療効果は認められないこと(3)印環細胞がん・表層拡大型胃がん、潰瘍型胃がんであることは再発のリスクとは関係ないこと(4)抗がん剤には白血球減少をはじめとした重篤な副作用があること(5)抗がん剤は下痢の症状が出現している患者に対して投与するべきでないことこれらの一つ一つは、よく勉強されている先生方にとっては常識的なことではないかと思いますが、医学論文や学会、症例検討会などから疎遠になってしまうと、なかなか得がたい情報でもあると思います。今回の担当医師らは、術中所見からステージIIIの進行がんと判断しましたが、病理組織検査では「転移はないmがんである」と再三にわたって報告が来ました。にもかかわらず、「今までの経験」とか「直感」をもとに、「見た目は転移していそうだから、がんを治療する以上は徹底的に叩こう」と考えて早期がんに対し補助化学療法を行ったのも部分的には理解できます。しかし、われわれの先輩医師たちがたくさんの症例をもとに築き上げたevidenceを無視してまで、独自の治療を展開するのは大きな問題でしょう。ことに、最近では医師に対する世間の評価がますます厳しくなっています。そもそも、総務庁の発行している産業分類ではわれわれ医師は「サービス業」に分類され、医療行為は患者と医療従事者のあいだで取り交わす「サービスの取引」と定義されています。とすると、本件では「自分ががんの研修を行った10~20年前までは早期胃がんに対しても補助化学療法を行っていたので、早期胃がんに補助化学療法を行わないとする最新の知見を要求されても困る」と主張したのは、「患者に対し10~20年前のまちがったサービスしか提供できない」ことと同義であり、このような考え方は利用者(患者)側からみて、とうてい受容できないものと思われます。また、「がんを治療する以上は徹底的に叩こう」ということで5-FU®を通常の2倍以上(通常300~500mgのところを1,250mg)も使用しました。これほど大量の抗がん剤を一気に投与すれば、骨髄抑制などの副作用が出現してもまったく不思議ではなく、とても「知らなかった」ではすまされません。判決文でも、「常識では考えられないほど抗がん剤を大量投与をしたのは、抗がん剤の副作用に対する考慮の姿勢がみじんも存在しない」と厳しく批判されました。「医師には生涯教育が必要だ」、という声は至るところで耳にしますが、今回の事例はまさにそのことを示していると思います。日々遭遇する臨床上の問題についても、一つの考え方にこだわって「これしかない」ときめつけずに、ほかの先生に意見を求めたり、文献検索をしなければならないと痛感させられるような事例でした。・腫瘍

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SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は

 強迫性障害は、WHOが指摘するところの、最も手立てのない疾患の一つである。セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)は強迫性障害の治療薬としてFDAで承認されている唯一の薬剤であるが、SSRI単独で症状を最小限にできる患者は少ない。このような例には、抗精神病薬またはexposure(強迫行為のきっかけとなる刺激への曝露)とritual prevention(強迫行為の回避)(EX/RP)からなる認知行動療法を追加することが、プラクティスガイドラインで推奨されている。米国・コロンビア大学のHelen Blair Simpson氏らは、強迫性障害患者へのSSRI治療において認知行動療法を追加することの効果について、ランダム化臨床試験にて検討した。その結果、exposureとritual prevention(EX/RP)の追加は、リスペリドンならびにプラセボの追加と比較して、症状のほか見識、機能およびQOLの改善に優れることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年9月11日号の掲載報告。 本研究では、成人強迫性障害の初回治療としてのSSRI治療において、抗精神病薬による強化療法、EX/RPの追加およびプラセボとを無作為化試験で比較検討した。2007年1月から2012年8月までに、強迫性障害と不安障害を専門とする外来クリニック2施設において、試験登録12週以前にSSRIを服用したにもかかわらず中等度以上の強迫性障害を認める患者(18~70歳)を適格として実施された。適格例163例のうち100例を、リスペリドン群(40例)、EX/RP群(40例)、またはプラセボ群(20例)に無作為に割り付け、86例が試験を完了した。SSRIを同量で維持している期間中に、リスペリドン(最大4mg/日)の8週間投与群、EX/RP群(1週間に2回、17セッション)、またはプラセボ群に無作為化し、独立評価委員会による4週間ごとの評価が行われた。主要評価項目は、エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)によるOCD重症度とした。 主な結果は以下のとおり。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して8週目におけるY-BOCSスコア減少が有意に大きいことが、混合効果モデルにより示された(対リスペリドン 平均[SE]:-9.72[1.38]、p<0.001/対プラセボ 同-10.10[1.68]、p<0.001)。なお、リスペリドン群とプラセボ群間で有意な差は認められなかった(平均[SE]:-0.38[1.72]、p=0.83)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して反応性が良好であった(Y-BOCSスコアが25%以上減少した割合:EX/RP群80%、リスペリドン群23%、プラセボ群15%、p<0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して症状を最小限に抑えられた患者の割合が多かった(Y-BOCSスコア12以下:EX/RP群43%、リスペリドン群13%、プラセボ群5%、p=0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して見識、機能およびQOLの改善においても優れていた。・SSRIへのEX/RPの追加は、リスペリドンまたはプラセボを追加した場合と比較して優れていた。・以上を踏まえて著者は「SSRI投与中で臨床的に重大な症状が続いている強迫性障害患者に対しては、抗精神病薬を投与する前に、有効かつ問題となる有害事象プロファイルが少ないEX/RPの適用を考慮すべきである」と結論している。関連医療ニュース 難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」/a> なぜ?第二世代抗精神病薬投与による“強迫症状”発現機序 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー

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電子タバコは禁煙達成に本当に有効なのか/Lancet

 2004年に発売された「ニコチン入り電子タバコ」は、数百万人の愛煙家がいるとされ、やめるために吸っている人も多く(英国では禁煙に取り組む人の27%が利用)、10年以内にその売上高は一般的なタバコを凌駕するのではと言われるほど急増しているという。しかし、喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけには議論の余地があり、信頼性の高いデータも不足しているのが現状である。そこでニュージーランド・オークランド大学のChristopher Bullen氏らは、ニコチン入り電子タバコの有効性と安全性について評価するプラグマティックな無作為化対照優越性試験を行った。Lancet誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告より。6ヵ月時点の禁煙継続を評価 研究グループは、禁煙セッションにおいて、ニコチン入り電子タバコは、ニコチンパッチおよびプラセボ(ニコチンなし電子タバコ)よりも禁煙補助剤として有効であり、有害イベントリスクも増大しないと仮定して検討を行った。 試験は2011年9月6日~2013年7月5日に、オークランドにおいて、18歳以上の禁煙希望者を対象に行われた。被験者は、コンピュータブロック無作為化にて、電子タバコ(16mgニコチン入り)群、ニコチンパッチ(21mg/日)群、プラセボ(ニコチンなし電子タバコ)群の3群に、4対4対1の割合で割り付けられた[人種(マオリ、パシフィック、非マオリ・パシフィック)、性(男、女)、ニコチン依存度(FTNDテストで>5、≦5)により9ブロックに層別化されて割り付けられた]。各補助剤の使用は、被験者が喫煙をやめると選択した日の1週間前から始め、選択日から12週間後まで使用した。また被験者には、行動を後押しするボランティアによる電話カウンセリングの支援が行われた。 主要アウトカムは、6ヵ月時点の生化学検査(呼気NO値<10ppm)に基づく禁煙の継続であった。評価はintention to treat(ITT)解析にて行われた。電子タバコの有効性はわずか、さらなる研究が必要 1,293例が試験適格の評価を受け、657例が無作為化され(電子タバコ群289例、パッチ群295例、プラセボ群73例)、ITT解析に組み込まれた。 結果、6ヵ月時点で禁煙していた人は、電子タバコ群7.3%(21/289例)、パッチ群5.8%(17/295例)、プラセボ群4.1%(3/73例)であった。 事後解析にて行った有効性に関する非劣性試験(リスク差限界値5%)の結果、電子タバコ群とパッチ群のリスク差は1.51(95%信頼区間[CI]:-2.49~5.51)、電子タバコ群とプラセボ群の同差は3.16(同:-2.29~8.61)で統計的有意差は認められなかった。 なお試験の結果について著者らは「禁煙達成率が推定値(20%)よりもかなり低かった。そのため電子タバコの優位性を検討するには統計的検出力が不十分であった」と述べている。推定値に近かったのは7日間禁煙達成率(過去7日間禁煙できていた人の割合)で、相対リスクは電子タバコを支持する差を示したが、6ヵ月時点で有意差は示されなかった。また、被験者の大半は期間中央値50日以内に再喫煙に至っていた。群別では、電子タバコ群は同35日、パッチ群同14日、プラセボ群同12日だった。 有害イベントの発生は、電子タバコ群137例、パッチ群119例、プラセボ群36例で有意差は特定できず、有害イベントと各試験補助剤との関連エビデンスは見いだせなかった。 以上を踏まえて著者は、「禁煙補助剤として、ニコチン入り・なしを問わず電子タバコの有効性はわずかであった。禁煙達成率はニコチンパッチと同程度であった。有害イベントは少なかった」と結論した。そのうえで「喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけは不確定であり、個人および集団レベルでの有用性と有害性を明白に確立するためのさらなる研究が急務である」とまとめている。

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心原性ショック急性心筋梗塞へのIABP、12ヵ月死亡率も低下せず/Lancet

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞への大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、12ヵ月後の死亡率を低減しないことが明らかにされた。ドイツ・ライプツィヒ大学のHolger Thiele氏らが、患者600例を対象とした非盲検無作為化比較試験「IABP-SHOCK II」の結果、報告した。すでにIABP-SHOCK IIの結果として、IABPによる30日死亡率の低下が認められないことが示されていた。しかし心原性ショックの先行研究において、延長フォローアップにおいてのみ死亡率のベネフィットが示されたことがあり、著者らは本試験についても6、12ヵ月の評価を行った。なお、最新の国際ガイドラインでは、レジストリデータに基づき心原性ショックを伴う急性心筋梗塞へのIABPの推奨ランクは引き下げられている。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告より。被験者の年齢中央値は70歳、約7割が男性 IABP-SHOCK II試験は、ドイツ国内36施設にて2009年6月16日~2012年3月3日の間に行われた。試験では、心原性ショックの合併症を有する急性心筋梗塞患者で早期血行再建術と適切な薬物療法が予定されている600例を無作為に2群に分け、一方にはIABPを(301例)、もう一方の群(299例)には対照治療を行った。 治療効果に関する主要エンドポイントは30日全死因死亡率だったが、加えて、6ヵ月後、12ヵ月後の生存者の生活の質(QOL)についてEuroqol-5Dを用いて評価した。 被験者の年齢中央値は70歳(四分位範囲:58~77)で、69%が男性だった。12ヵ月死亡率はIABP群52%、対照群51%、その他のアウトカムも有意差示されず 12ヵ月の追跡を完了した595例(99%)のうち、死亡はIABP群52%(155例)、対照群51%(152例)で、両群に有意差はなかった(相対リスク比[RR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.86~1.18、p=0.91)。 再梗塞(RR:2.60、95%CI:0.95~7.10、p=0.05)、血行再建術(同:0.91、0.58~1.41、p=0.77)、脳卒中(同:1.50、0.25~8.84、p=1.00)のいずれについても、両群間に有意な差はなかった。 また、生存者に対して行われた、運動能、痛み・苦痛、不安またはうつ症状などを含むQOL評価も両群で有意差はなかった。

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椎間板ヘルニアに対して椎弓間硬膜外ステロイド注入は有効か

 腰椎椎間板ヘルニアの治療において硬膜外注射は広く使用されているが、その有効性や必要性、適応症などについては今も議論が続いている。米国・ルイビル大学のLaxmaiah Manchikanti氏らは、腰椎椎間板ヘルニアや神経根炎の疼痛管理に対する最新の介入法である蛍光透視下の椎弓間硬膜外注射の有効性を評価するため、無作為化二重盲検比較試験を行い、この方法による局所麻酔薬の注入は有効であることを明らかにした。1年間の追跡では局所麻酔薬単独使用よりステロイド併用のほうが優れている可能性も示唆している。Pain Practice誌2013年9月(オンライン版2012年12月27日)の掲載報告。 研究グループは、腰椎椎間板ヘルニアまたは神経根炎患者120例を対象に、局所麻酔薬(リドカイン0.5%、6mL)単独使用と局所麻酔薬(リドカイン0.5%、5mL)+ステロイド(ベタメタゾン1mL)併用の椎弓間硬膜外注射を比較する無作為化二重盲検比較試験を実施した。 主要評価項目は、疼痛緩和および50%以上の機能改善である。 主な結果は以下のとおり。・2回の治療で3週間以上疼痛が緩和し有意な改善がみられたのは、局所麻酔薬単独使用群80%、ステロイド併用群86%であった。・1年間(52週)の平均治療回数は局所麻酔薬単独使用群3.6回、ステロイド併用群4.1回で、鎮痛が得られていた期間はそれぞれ33.7±18.1週および39.1±12.2週であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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