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小児に対する抗精神病薬、心臓への影響は

 小児および青年に対する抗精神病薬の使用は、米国のみならず欧州においても大幅に増加している。しかし、小児に対する第2世代抗精神病薬(SGA)の心臓への安全性に関するエビデンスは限られている。スペイン・Sant Joan de Deu病院のJose A Alda氏らは、小児および青年に対するSGAの心臓への副作用を評価し、臨床、人口統計、治療因子による影響を検討した。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 本研究は、抗精神病薬の治療を開始した未治療または準未治療の小児および青年216例を対象に、自然的縦断的多施設共同研究にて実施された。12ヵ月(ベースライン、3,6,12ヵ月)の補正QT(QTc)間隔や心拍数などの変数に対する抗精神病薬治療の影響を分析した。サンプルで使用された3種類の主要な処方薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピン)の違いを評価した。 主な結果は以下のとおり。・211例がクエチアピン、リスペリドン、オランザピンのいずれかで治療を行った。・フォローアップ期間中に有意なQTcの変動は認められなかった(p = 0.54)。・SGA間のQTc率の差は認められなかった(リスペリドン vs.オランザピン:p=0.43、リスペリドンvs.クエチアピン:p=0.42、オランザピンvs.クエチアピン:p=0.23)。・人口統計、臨床、併用治療の変数を考慮すると、ベースラインの太り過ぎのみがQTc延長と相関していた(p=0.003)。・全サンプルの心拍数は、フォローアップ期間中に減少傾向にあった(p=0.054)。・しかし、クエチアピン治療患者は、リスペリドン治療患者と比較し、心拍数の増加が認められた(p=0.04)。・本サンプルにおいて、SGAは小児や青年に対し安全な心臓への副作用プロファイルを有し、QTc間隔や心拍数の平均的な増加は認められなかった。関連医療ニュース 第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索 未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は 統合失調症、心臓突然死と関連するプロファイルは

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ジャガイモ摂取量が多いほど妊娠糖尿病になりやすい?/BMJ

 妊娠前のジャガイモ摂取量が妊娠糖尿病(GDM)のリスクと有意に関係していることを、米国立衛生研究所のWei Bao氏らが10年にわたる前向きコホート研究の結果、報告した。ジャガイモを他の野菜・豆・全粒粉食品に置き換えると、GDM発症リスクが低下する可能性もあるという。これまで、ジャガイモ摂取量とGDMとの関連性については明らかにされていなかった。ジャガイモは、米国人のための食生活指針では、健康的な食物として野菜の中に分類されている。しかし、急速に吸収されるデンプンを多量に含むため、糖代謝に悪影響を及ぼすことが先行研究で示唆されていた。BMJ誌オンライン版2016年1月12日号の掲載報告。看護師健康調査の参加者約1万6,000人、4年ごとの食事摂取頻度調査にて評価 研究グループは、GDMとジャガイモの摂取量との関連を調べるため、1991年以降に看護師健康調査(Nurses’ Health Study)IIに参加し2001年まで追跡した1万5,632人のデータを解析した。 対象は、6ヵ月以上単胎児妊娠が継続し、GDMおよび慢性疾患(2型糖尿病、心血管疾患、がん)の既往がない女性で、1991年から4年ごとに、食事摂取頻度調査票を用い前年における日常の食事摂取量を評価した。ジャガイモの摂取に関しては、焼いたまたはゆでたジャガイモやマッシュポテト1カップ、あるいはフライドポテト113gを1皿とした。 GDM発症は医師から診断を受けたとの自己報告とした。そのうち94%は医療記録によって確認された。週約500g以上食べている女性の発症リスク、あまり食べない女性の1.5倍 10年間で2万1,693例の単胎児妊娠中、854例のGDM発症が認められ、妊娠前のジャガイモ摂取量が多い女性ほどGDM発症リスクが高かった。 年齢、出産経験、人種、糖尿病の家族歴、喫煙、食事・非食事因子および妊娠前のBMIで補正後、ジャガイモ摂取量が週1皿未満と比較した相対リスク(RR)は、週1皿で1.20(95%信頼区間[CI]:0.97~1.48)、週2~4皿で1.27(1.04~1.55)、週5皿以上は1.50(1.15~1.96)と有意なリスク増大との関連が認められた(傾向のp=0.006)。 一方で、週2皿分のジャガイモを他の野菜・豆・全粒粉食品に置き換えることで、GDM発症リスクは9~12%低下した。リスク低下は、他の野菜類9%(RR:0.91、同:0.85~0.97)、豆類10%(0.90、0.83~0.99)、全粒粉食品12%(0.88、0.83~0.94)であった。 なお、妊娠中のジャガイモ摂取に関しても同様に、摂取量が多いほどGDM発症リスク増大との有意な関連が認められた。週1皿未満と比較した場合のGDM発症の補正後RR(95%CI)は、週1回で1.18(0.95~1.45)、週2~4皿で1.21(0.99~1.48)、週5皿以上で1.40(1.08~1.83)であった(傾向のp=0.03)。 著者は本研究について、ジャガイモ摂取量とGDM発症が自己報告であり、GDMの重症度も不明、対象女性の90%以上が白人であるなどの限界があることを指摘。あくまで観察研究であり、今回の結果はジャガイモ摂取量とGDM発症との因果関係を示すものではないとし、「今後、介入研究や無作為化比較試験で確認する必要がある」とまとめている。

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結核性髄膜炎への強化療法は生存率を改善するか/NEJM

 成人結核性髄膜炎患者に対し、最初の2ヵ月間高用量リファンピシン+レボフロキサシンを併用する初期強化標準治療を行っても、標準治療のみの場合と比較して生存率は上昇しなかった。ベトナム・オックスフォード大学臨床研究所のA. Dorothee Heemskerk氏らが、無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験の結果、明らかにした。結核性髄膜炎はしばしば致命的であり、早期の抗結核治療とグルココルチコイドを用いた補助療法により生存率は改善するが、それでも患者の3分の1近くが死に至るとされている。研究グループは強化抗結核療法により、脳内結核菌への殺菌力が高まり死亡率を低下するのではないかと仮説を立て試験を行った。NEJM誌2016年1月14日号掲載の報告。4剤併用vs.高用量リファンピシン+レボフロキサシンを追加した初期強化治療 試験は、2011年4月18日~14年6月18日に、ベトナム・ホーチミン市の結核専門病院または熱帯感染症専門病院に入院した18歳以上の結核性髄膜炎患者817例を対象とした(男性68.5%、年齢中央値35歳、疾患重症度[MRC]グレード1:38.9%、ヒト免疫不全ウイルス[HIV]感染者349例・42.7%)。 強化治療群(408例)と標準治療群(409例)に無作為化し、どちらの治療群にも、標準治療(リファンピシン10mg/kg/日+イソニアジド5mg/kg/日[最大300mg/日]+ピラジナミド25mg/kg/日[最大2g/日]+エタンブトール20mg/kg/日[最大1.2g/日]の4剤併用療法を3ヵ月間行い、同用量のリファンピシン+イソニアジドを6ヵ月間)を行った。加えて強化治療群には最初の2ヵ月間、リファンピシン5mg/kg/日(標準治療と合わせると15mg/kg/日となる)+レボフロキサシン20mg/kg/日を、標準治療群にはプラセボを、二重盲検法にて投与した。 主要評価項目は、無作為化後9ヵ月間の死亡とし、副次評価項目は9ヵ月時点での神経障害、神経学的イベント発現/死亡までの期間、および重篤有害事象などとした。9ヵ月後の全死亡および神経障害に差はなし 9ヵ月の追跡期間中に強化治療群で113例、標準治療群で114例が死亡した(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.73~1.22、p=0.66)。イソニアジド耐性結核菌感染患者群では強化治療の有効性が示唆されたが(HR:0.45、95%CI:0.20~1.02、p=0.06)、全例および他のサブグループでは強化治療群と標準治療群とで9ヵ月間の生存に有意差はなかった。 Cox回帰分析の結果、予後不良の予測因子として治療開始時の重篤な神経学的症状(MRCグレード1に対してグレード2のHR:2.41、グレード3のHR:6.31)、HIV感染(HR:2.53)、多剤耐性またはリファンピシン耐性(HR:4.72)などが認められた。 9ヵ月時点での神経障害ならびに神経学的イベント発現/死亡までの期間は、全例および各サブグループいずれにおいても両群で差はなかった。Grade3以上の有害事象は、強化治療群と標準治療群とで視覚障害(14例 vs.4例、p=0.02)およびけいれん発作(23例 vs.11例、p=0.04)に有意差がみられたが、治療中断に至った有害事象の総数に差はなかった(95例 vs.64例、p=0.08)。 今回、先行研究と異なり高用量リファンピシンとフルオロキノロンによる初期強化治療の有効性が示されなかった理由として、著者はリファンピシンの用量不足などを挙げている。一方、以前の研究と比較して、疾患重症度が軽度(MRCグレード1)の患者が比較的多く、薬剤耐性菌感染症に対する2次治療やHIV感染症の管理が改善したことなどにより、全死亡率は低かったとも述べ、「結核性髄膜炎患者の生存の鍵を握るのはより早期の診断と治療である」とまとめている。

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糖尿病歴と自殺・事故死リスク~日本人10万人の検討

 JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)グループの山内 貴史氏らは、糖尿病歴が外因死(自殺および事故死)のリスクに関連するかどうか、日本人の大規模集団における前向きコホートのデータを使用して検討した。その結果、男女とも59歳以下(ベースライン時)で、糖尿病歴のある人はない人と比べて外因死(とくに事故死)のリスクが有意に高かった。Diabetes & metabolism誌オンライン版2016年1月18日号に掲載。 著者らは、JPHCによる前向き研究における1990~2012年のデータを分析した。外因死の調整リスク比(RR)の計算にはポアソン回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・集団コホートは日本における住民10万5,408人(男性4万9,484人・女性5万5,924人、平均年齢51.2[SD 7.9]歳)。・ベースライン時点で、男性3,250人(6.6%)と女性1,648人(3.0%)に糖尿病歴があった。・追跡期間中、糖尿病歴のある人のうち外因死が113人(自殺41人、事故死72人)に認められ、糖尿病歴がない人では外因死が1,304人(自殺577人、事故死727人)に認められた。・糖尿病歴のある人において、外因死のリスクが高かった(男性 RR:1.4、95%CI:1.2~1.8、女性 RR:1.6、95%CI:1.01~2.4)。・ベースライン時の年齢が40~49歳(RR:1.9、95%CI:1.3~2.7)および50~59歳(RR:1.4、95%CI:1.05~1.9)の人においても、糖尿病歴のある人で外因死のリスクが有意に高かった。

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結果にコミットする【Dr. 中島の 新・徒然草】(103)

百三の段 結果にコミットする今年いただいた年賀状で一番インパクトがあったのは、「ライザップで腹筋を6つに割りました」というものです。送り主の年齢は推定65歳!私はライザップをよく知らなかったので調べてみたのですが、2ヵ月で30万円以上かかるパーソナルトレーニングのジムのようです。値段も驚きなら、60代で腹筋を割ることができたという効果にも驚きました。さて、腹筋を割るためには、腹直筋を鍛えることもさることながら、その直上にあるプヨプヨの脂肪をなくしてしまわなくてはなりません。脂肪さえなくなれば、皮下の腹直筋が浮かび上がって見えてきます。皮下の脂肪を減らすためには、摂取カロリーを減らし消費カロリーを増やすのみ。ただそれだけ。この簡単なことができないので皆が困っているのです。つまりわかってはいるものの実行が伴わないわけですね。「結果にコミットする」と謳うライザップでは、この実行部分に力を入れているのではないかと思います。漏れ聞くところでは、専任トレーナーとの間に築かれる人間関係だとか、毎食の写真をスマホで撮影してトレーナーにチェックしてもらうとか、コンビニで売っているものの中で、食べていいものと良くないものが示されるとか、あの手この手で会員は実行を促されるようです。よく考えられたシステムだと思います。「だったら中島先生もライザップを試したら?」そんな声が聞こえてきそうです。しか~し。たかが「摂取カロリーを抑えて、消費カロリーを増やす」というそれだけのことに、人様の力を借りてしまったら、私が意志の弱い人間だということを満天下に知らしめるようで、何だか抵抗を感じてしまいます。というわけで「1人ライザップ」なるものを考えました。摂取カロリーを抑える:間食を止める。腹八分目。消費カロリーを増やす:筋トレ&ストレッチ。毎日歩く。数値目標を決めて、毎朝の体重測定と記録。後は実行のみ。何事も30日間続ければ習慣化するということなので、しばらく黙々と1人でやってみます。実は、ちょっとした秘策も考えついているのです。自分でやってみて成果が出れば秘策と共に皆様に報告します。報告がないときには……そっとしておいてやってください。最後に1句目標を 達成できたら 俺スゲエ

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てんかんと自殺企図、病因は共通している

 てんかん発症患者は非発症者と比べて、てんかん診断前でも初回自殺企図のリスクが2.9倍高く、また自殺企図の再発リスクも1.8倍高いことが、米国・コロンビア大学のDale C. Hesdorffer氏らによる、住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。JAMA Psychiatry誌2016年1月号の掲載報告。てんかんと自殺企図およびその再発の関連が診断前でもみられた 先行研究で、てんかん患者は自殺リスクが5倍高いことが示されているが、自殺企図に関してや、精神障害や抗てんかん薬が自殺企図リスクに影響を及ぼすかどうかは、ほとんど明らかとなっていない。そこで研究グループは、自殺企図とてんかんとの関連の程度を評価するため、てんかん診断以前に初回の自殺企図および2回目の自殺企図(自殺企図の再発)を試みた患者(症例患者)と、てんかんを認めず初回および再発の自殺企図がみられた患者(対照患者)を比較する検討を行った。また、同関連について、精神障害の併存、および抗てんかん薬処方の除外による影響についても評価した。検討は、住民ベースの後ろ向きコホート研究にて、英国のClinical Practice Research Datalinkを用いて、一般診療を受けている人から症例患者と対照患者を特定して行った。症例患者は1987~2013年に診断を受けた10~60歳。対照患者は、各症例患者のてんかん診断日以前にてんかんの診断を受けていない、誕生年、性別、一般診療を適合させた各4例(症例患者1例に対し、対照患者4例)を無作為に選定した。主要評価項目は、症例患者と対照患者の初回自殺企図および自殺企図再発のハザード比(HR)であった。 てんかんと自殺企図との関連の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・症例患者1万4,059例(年齢中央値:36歳)vs.対照患者5万6, 184例(同36歳)において(年齢範囲は両群とも10~60歳)、症例患者のてんかん診断前における初回自殺企図リスクは2.9倍(95%信頼区間[CI]:2.5~3.4)高率であった。・症例患者278例(年齢中央値:37歳)vs.対照患者434例(同35歳)において(年齢範囲は両群とも10~61歳)、症例患者のてんかん診断前における自殺企図再発リスクは1.8倍(95%CI:1.3~2.5)高率であった。・診断日以前の抗てんかん薬処方を除外しても、自殺企図リスクについて結果に意味のある変化は認められなかった。・精神障害の有無別の解析でも、自殺企図リスクについての結果に意味のある変化は認められなかった。 著者らは、「てんかんと自殺企図およびその再発の関連が発症前でもみられたことは、両者の生物学的基盤が共通していることを示唆するものである」と述べ、「自殺企図およびその再発は、抗てんかん薬の服用がなくても、また精神障害の診断がなくても関連がみられ、機序は不明だが病因が共通しているとのエビデンスを強化する所見が示された」とまとめている。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか

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肥満外科手術を受ける患者、うつ病19%、過食性障害17%/JAMA

 肥満外科手術を受ける患者は精神疾患を有する頻度が高く、なかでもうつ病は19%、過食性障害は17%と高いことが判明した。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAaron J. Dawes氏らがメタ解析の結果、明らかにした。肥満外科手術を望む患者で精神疾患はよくみられるが、有病率や術後のアウトカムに与える影響については不明であった。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。約30年の文献を基にメタ解析 Dawes氏らは1988~2015年にかけて、MEDLINE、PsycINFOなどの文献データベースを基に、肥満外科手術前後の精神状態に関する報告を含む試験を特定しメタ解析を行った。 試験の質についてバイアス・リスク評価ツールで、また試験結果のエビデンスの質については、GRADE(Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)で評価した。術前精神疾患と術後体重減の一貫した関連はなし 68件の発表論文を特定した。そのうち術前の精神状態の罹患率について報告したものは59件(被験者総数:6万5,363例)、術前の精神状態と術後アウトカムとの関連について報告したものは27件(同:5万182例)だった。 肥満外科手術を予定または実施した患者のうち、最も罹患率の高い精神疾患は、うつ病(19%、95%信頼区間:14~25)と過食性障害(17%、同:13~21)だった。 術前の精神疾患と、術後の体重減との関連については、一貫したエビデンスは得られなかった。また、うつ病も過食性障害も、術後体重減のアウトカムとの関連はなかった。 一方で肥満外科手術は、術後のうつ病罹患率低下(7試験、8~74%の減少)や、うつ症状の重症度(6試験、40~70%低減)と一貫した関連が認められた。著者は、「中等度のエビデンスだが、肥満外科手術と術後うつ病低下との関連が裏付けられた」とまとめている。

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鼠径ヘルニア手術、代替低価格メッシュでもアウトカム同等/NEJM

 鼠径ヘルニアの修復に使用する合成メッシュについて、低価格の滅菌した蚊帳用メッシュを用いても、高額な市販軽量合成メッシュを使用した場合と術後1年の再発率や術後合併症リスクは、いずれも同等であることが明らかにされた。スウェーデン・ウメオ大学のJenny Lofgren氏らが、302例の男性患者を対象に行った試験で明らかにした。低・中所得国では、市販軽量メッシュは高価なため使えない患者も多く、滅菌した蚊帳用のメッシュが代替品として使われているという。ただしこれまでその治療アウトカムについて厳格な試験は行われていなかった。NEJM誌2016年1月14日号掲載の報告。術後1年のヘルニア再発と術後合併症リスクを比較 研究グループは、ウガンダ東部で、初発片側還納性鼠径ヘルニアの成人男性患者302例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行い、低価格メッシュと市販メッシュによる修復の治療アウトカムを比較した。両メッシュともに、軽量メッシュだった。 被験者は18歳以上で、手術は熟練の外科医4人がそれぞれ行った。 主要評価項目は、術後1年のヘルニア再発と術後合併症だった。ヘルニア再発率、低価格群で0.7%、市販メッシュ群で0%と同等 被験者の追跡率は、術後2週で97.3%、術後1年で95.6%だった。 ヘルニア再発率は、低価格メッシュ群0.7%(1例)、市販メッシュ群0%(0例)と、両群で有意差はなかった(絶対リスク差:0.7ポイント、95%信頼区間:-1.2~2.6、p=1.0)。 また、術後合併症の発症率も、低価格メッシュ群30.8%(44例)、市販メッシュ群は29.7%(44例)と同等だった(絶対リスク差:1.0ポイント、同:-9.5~11.6、p=1.0)。

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排便時の姿勢、理想は「考える人」

 排便の際、通常の座位姿勢よりも、彫刻「考える人」の姿勢がより効率的になりうることを、米国・クリーブランドクリニックフロリダ 大腸外科のS.Takano氏らが報告した。Techniques in Coloproctology誌2016年2月号の掲載。排便時の姿勢「考える人」による影響を評価 著者らは、上体を曲げて「考える人」の姿勢を取ると、排便が容易になるという仮説のもと、排便時の「考える人」の姿勢による影響を評価した。 本研究は、単一グループの前向き研究であり、2013年1月~6月の期間、シネデフェコグラフィー中に、通常の座位姿勢でペーストを排泄できなかった患者が登録された。シネデフェコグラフィーは、初めに座った姿勢で行われたが、もし患者が、ペーストを排泄できなかった場合には、「考える人」を模擬した姿勢を取らせた。通常の座位姿勢でペーストを排泄することができた患者は、本研究から除外し、両方の姿勢(通常の座位、および「考える人」)で、いきんでいる間の肛門直腸角(ARA)、会陰面の距離(PPD)、恥骨直腸筋の長さ(PRL)をX線写真から測定した。 排便時の「考える人」の姿勢による影響評価の主な結果は以下のとおり。・22人の患者が、通常の座位姿勢ではバリウムペーストを排泄できず、「考える人」の姿勢でシネデフェコグラフィーを受けた。・22人中、17人の患者は、平均56歳(22~76歳)の女性であった。・「考える人」の姿勢は、通常の座位姿勢よりも、いきんでいる間のARAが有意に広く(113° vs. 134°、それぞれp=0.03)、PPDが有意に長く(7.1cm vs. 9.3cm、それぞれp=0.02)、PRLが有意に長かった(12.9cm vs. 15.2cm、それぞれp=0.005)。・22人中、11人の患者は、「考える人」の姿勢を取ることで、完全に排泄することができた。 著者らは、便秘患者を再教育する際、「考える人」の排便姿勢を取らせるという方法が役立つかもしれないとまとめている。

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高齢ドライバー、緑内障で事故率増加、とくに左側視野障害の関与大

 70歳以上の高齢者では自動車衝突事故率が急増するが、視野障害と事故率との関連については一貫した研究結果が得られていなかった。米国・アラバマ大学のMiYoung Kwon氏らは地域住民ベースの後ろ向き研究を行い、高齢ドライバーの中で緑内障を有する人は有していない人と比較して過失のある事故率が高く、運転視野の障害が関連している可能性があることを明らかにした。Ophthalmology誌2016年1月号(オンライン版2015年10月14日号)の掲載報告。 研究グループは、高齢ドライバーにおける緑内障と自動車衝突事故との関連、ならびに視野障害の影響について、後ろ向き研究を行い調査した。 対象は、アラバマ州中北部に住む70歳以上のドライバー2,000例。州の記録より、本研究に登録前5年間における過失のある自動車衝突事故について調査した(主要評価項目)。また、視覚機能として、両眼遠距離視力、両眼コントラスト感度(CS)および両眼運転視野を測定した。 主な結果は以下のとおり。・緑内障のドライバー(206例)は非緑内障ドライバーと比較して、年齢および精神状態で調整した自動車衝突事故率が1.65倍高かった(95%信頼区間[CI]:1.20~2.28、p=0.002)。・緑内障ドライバーにおいて、自動車衝突事故率は視力およびCSとは関連していなかったが、重篤な視野障害がある人はない人と比較して調整済事故率が2.11倍高かった(95%CI:1.09~4.09、p=0.027)。・視野を6つの区域(水平線、垂直線、水平線より上半分と下半分、垂直線より左側と右側)に分けると、緑内障ドライバーでは左側、上および下半分の視野障害が高い事故率と関連した。なかでも左側の視野障害は、他の区域に比べ3.16倍と最も高かった(p=0.001)。

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うつ病既往で感染症リスク増加

 予備的研究では、うつ病とその後の感染症リスク増加との関連が示唆されている。デンマーク・オーフス大学のNiklas W Andersson氏らは、うつ病とさまざまな感染症リスクとの関連を、時間的関係や用量反応関係も含み調査した。International journal of epidemiology誌オンライン版2015年12月26日号の報告。 97万6,398人のプロスペクティブな住民ベースの研究より、1995~2012年にうつ病を経験した14万2,169例を、デンマークレジストリと関連付けて調査した。性別や年齢を調整し、非うつ病者と比較した、うつ病患者における感染症の相対リスクを推定するために生存分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は、広範囲の感染症リスク増加と関連していた(罹患率比 [IRR]:1.61、95%CI:1.49~1.74、p=0.000、任意の感染症において)。・特定の時間的影響のエビデンスはなかったが、うつ病発症後の感染症の全般的なリスク増加は、発症後の最初の1年間(IRR:1.67、95%CI:1.25~2.22、p=0.000)からその後11年以上(IRR:1.61、95%CI:1.39~1.85、p=0.000)、上昇したままであった。・用量反応分析は、単一うつ病エピソードで感染症リスクが59%増加し(IRR:1.59、95%CI:1.45~1.75、p=0.000)、4つ以上のうつ病エピソードではさらに増加した(IRR:1.97、95%CI:0.92~4.22、p=0.082)。・しかし、結果は完全な線形的な相関を示すものではなかった。 結果を踏まえ、著者らは「本調査結果より、うつ病の存在が感染症リスクの増加と関連しており、このことはうつ病発症後の特定の期間に限定されるわけではないことが示唆された。用量反応関係も存在すると考えられるが、うつ病と感染症リスクとの関連を確認するためのさらなる検討が必要である」とまとめている。関連医療ニュース うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは ビタミンDによるうつ症状軽減の可能性は 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か

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小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善、治療曝露量の減量が寄与/NEJM

 5年生存を達成した小児がん患者の晩期死亡率を低減する治療戦略として、治療曝露量の減量が有効であることが、米国・聖ジュード小児研究病院のGregory T. Armstrong氏らの調査で明らかとなった。米国で1970~80年代に小児がんと診断され、5年生存を達成した患者の18%が、その後の25年以内に死亡している。そのため、最近の小児がん治療の目標は、晩発性の生命を脅かす作用をいかに減じるかに置かれているという。NEJM誌オンライン版2016年1月13日号掲載の報告より。約3万4,000例で晩期死亡を治療開始年代別に検討 研究グループは、小児がんサバイバーを長期にフォローアップする病院ベースのレトロスペクティブな多施設共同コホート試験(Childhood Cancer Survivor Study[CCSS])を実施した(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、21歳以前にがんと診断され、1970~99年に治療を開始し、5年以上生存した患者であり、北米の31施設に3万4,033例が登録された。これは、試験期間中の小児がんサバイバーの約20%に相当した。 フォローアップ期間中央値は21年(範囲:5~38)であった。人口統計学的因子および健康関連死因による死亡に影響を及ぼす疾患の因子の評価を行った。疾患因子には、原発がんの再発や進行は含まないが、がん治療による晩発性の作用が含まれた。 3万4,033例の内訳は、男性が1万8,983例、女性が1万5,050例で、治療開始時期は1970年代が9,416例、80年代が1万3,181例、90年代が1万1,436例であり、診断時年齢は0~4歳が1万3,463例、5~9歳が7,826例、10~14歳が7,144例、15~20歳は5,600例であった。 診断名は、白血病(1万0,199例)、ホジキンリンパ腫(4,332例)、非ホジキンリンパ腫(2,837例)、中枢神経系腫瘍(6,369例)、ウィルムス腫瘍(3,055例)、神経芽細胞腫(2,632)、横紋筋肉腫(1,679例)、骨腫瘍(2,930例)だった。晩発性作用の早期検出や対処法の改善も寄与 サバイバーの最終フォローアップ時の年齢中央値は28.5歳(範囲:5.5~58.5)で、30~39歳が全体の30%、40歳以上が15%であった。 試験期間中に3,958例(11.6%)が死亡した(原発がんの再発、進行による死亡2,002例、外的要因による死亡338例を含む)。このうち1,618例(41%)が健康関連死因による死亡であり、2次がんが746例、心臓が241例、肺が137例、その他が494例であった。 15年死亡率は、全死因死亡が1970年代の10.7%から、80年代は7.9%、90年代には5.8%へ有意に低下した(傾向のp<0.001)。健康関連死因死亡も、3.1%から、2.4%、1.9%へと有意に減少した(傾向のp<0.001)。また、原発がんの再発、進行による死亡も、7.1%、4.9%、3.4%と有意に抑制されていた(傾向のp<0.001)。 このような死亡率の改善には、2次がん(p<0.001)、心臓(p=0.001)、肺(p=0.04)に関連する死亡率の有意な低下が反映していると考えられた。 年代別の治療の変遷としては、(1)急性リンパ性白血病に対する頭蓋内放射線照射の施行率が、70年代の85%から80年代には51%、90年代は19%に低下、(2)ウィルムス腫瘍への腹部放射線照射がそれぞれ78%、53%、43%へ、(3)ホジキンリンパ腫に対する胸部放射線照射が87%、79%、61%へと減少した。 急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫では、アンスラサイクリン系薬剤の投与量も経時的に減少していた。これら4疾患は、治療曝露量が経時的に減量された後に、健康関連死因による15年死亡率が経時的に低下していた。 著者は、「小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善には、治療の曝露量の低減が影響しており、治療の晩発性の作用のリスクや重症度が軽減するようにデザインされた治療レジメンの有効性が確認された」とまとめ、「晩発性作用を早期に検出する戦略の促進や対処法の改善とともに、治療レジメンを修正して放射線療法や化学療法の曝露量を低減することで、多くの小児がんサバイバーの余命が延長したことを示す定量的なエビデンスが得られた」としている。

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ニンニク油、潰瘍性大腸炎の保護薬として有望か

 ニンニク油(GO)は、ラットにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎を抑制し、その効果は抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節作用による可能性があることを、エジプト・タンタ大学のMohamed Balaha氏らが報告した。結果を踏まえて、著者らは、「GOが、潰瘍性大腸炎患者に推奨される有望な保護剤になりうる」とまとめている。Life Sciences誌オンライン版2016年1月9日号掲載の報告。 GOは、炎症性疾患など多くの疾患に対する治療法として、民間療法の中で何世紀にもわたって使われてきたが、最近になって、強力な抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節作用を有することが明らかになった。そこで、著者らは、DSS誘発性大腸炎ラットモデルにおけるGOの保護効果を評価した。 DDS誘発性大腸炎は、ラットに1日目~7日目までの7日間、5%DSSを含む水を自由に飲ませることで誘発した。GOは、25、50、100mg/kg/日の用量を経口投与し、メサラジン(15mg/kg/日)を標準薬として使用した。すべてのラットは、1日目~7日目の7日間、毎日2時間(午前10時~11時に行う処置前後の1時間)絶食させた。ラットの体重、大腸の重量、大腸ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性、大腸還元型グルタチオン(GSH)、マロンジアルデヒド(MDA)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1βレベル、IL-10レベル、大腸組織の肉眼的、顕微鏡的変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・GO投与により、大腸の重量、MPO活性、MDA、TNF-α、IL-1βレベルの増加は有意に抑制された。・体重、大腸SOD活性、GSH、IL-10レベルの低下が増強した。・用量依存的に、大腸粘膜の著明な肉眼的、顕微鏡的変化が改善した。

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高コレステロール血症治療に新風 国内初のPCSK9 阻害薬「エボロクマブ」承認

 アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(本社:東京、代表取締役社長:高橋栄一)とアステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:畑中好彦)は、アステラス・アムジェン・バイオファーマが2016年1月22 日、高コレステロール血症治療薬エボロクマブ(遺伝子組換え)(商品名:レパーサ皮下注)について、厚生労働省より製造販売承認を取得した旨発表した。 エボロクマブはヒト IgG2 モノクローナル抗体で、ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する。PCSK9 は、LDL-Cを血中から取り除く肝臓の働きを低下させるタンパク質。心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA 還元酵素阻害剤(スタチン)で効果不十分な、家族性高コレステロール血症(FH)または高コレステロール血症を効能・効果とした皮下注射剤である。 複数の国内第III相試験において、スタチンなどの脂質低下療法にエボロクマブを追加したところ、LDL-C値の顕著な低下がみられた。心血管系リスク及びLDL-C値の高い日本人患者を対象とした第III相試験 YUKAWA-2試験では、異なる1日用量のアトルバスタチン併用下で、エボロクマブ投与群(140mg を2週間に1回または420mgを 4週間に1回)とプラセボ投与群を比較したところ、12週時点および10週と12週時点の平均のLDL-Cのベースラインからの低下率は67%~76%であった。エボロクマブ投与群で2%を超えて認められた有害事象は、鼻咽頭炎(エボロクマブ投与群16.8%、プラセボ投与群17.8%)、胃腸炎(エボロクマブ投与群3.0%、プラセボ投与群1.0%)および咽頭炎(エボロクマブ投与群、プラセボ投与群共に2.5%)であった。 家族性高コレステロール血症ホモ接合体(HoFH)の患者を対象とした国際共同非盲検単群試験 TAUSSIG試験では、LDL-Cのベースラインからの低下率は約23%であった。エボロクマブ投与患者で5%を超えて認められた有害事象は、鼻咽頭炎(9.0%)およびインフルエンザ(7.0%)であった。効能・効果家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症、ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA 還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る。効能・効果に関連する使用上の注意(1)適用の前に十分な診察及び検査を実施し、家族性高コレステロール血症又は高コレステロール血症であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。(2)家族性高コレステロール血症以外の患者では、冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病等の罹患又は既往歴等から、心血管イベントの発現リスクが高いことを確認し、本剤投与の要否を判断すること。用法・用量●家族性高コレステロール血症へテロ接合体及び高コレステロール血症:通常、成人にはエボロクマブ(遺伝子組換え)として140mgを2週間に1回又は420mgを4週間に1回皮下投与する。●家族性高コレステロール血症ホモ接合体:通常、成人にはエボロクマブ(遺伝子組み換え)として420mgを4週間に1回皮下投与する。効果不十分な場合には420mgを2週間に1回皮下投与できる。なお、LDL アフェレーシスの補助として本剤を使用する場合は、開始用量として420mgを2週間に1回皮下投与することができる。用法・用量に関連する使用上の注意HMG-CoA 還元酵素阻害剤と併用すること。[日本人における本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない。]アステラス製薬 プレスリリースはこちら(PDF)。

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悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)〔malignant soft tissue tumor / soft tissue sarcoma〕

1 疾患概要■ 定義全身の軟部組織(リンパ・造血組織、グリア、実質臓器の支持組織を除く)より発生し、骨・軟骨を除く非上皮性間葉系組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管・リンパ管、筋肉、腱・滑膜組織および外胚葉由来の末梢神経組織などを含む)から由来する腫瘍の総称で、良性から低悪性~高悪性まで100種類以上の多彩な組織型からなる軟部腫瘍のうち、生物学的に悪性(局所再発や遠隔転移しうる)のものを悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)と呼ぶ。■ 疫学人口10万人あたり約3人の発生率で、全悪性腫瘍の0.7~1.0%程度とまれな悪性腫瘍である(わが国では胃がんや肺がんの1/20程度)が、経年的には増加傾向にある。また、骨・軟部肉腫が通常のがん腫に比し、若年者に多い傾向があることから、20歳未満の小児悪性腫瘍の中では約7.4%を占める。発生部位は軟部肉腫全体の約60%が四肢に発生し、そのうち約2/3が下肢(とくに大腿部に最も好発)に発生するが、その他の部位(臀部や肩甲帯、胸・腹壁などの表在性体幹部、後腹膜や縦隔などの深部体幹)にも広く発生するのが、軟部肉腫の特徴である。■ 病因近年の分子遺伝学的解析の進歩により、軟部肉腫においても種々の遺伝子異常が発見されるようになった。なかでも、特定の染色体転座によって生じる融合遺伝子異常が種々の組織型の軟部肉腫で検出され(表1)、その病因としての役割が明らかになってきた。こうした融合遺伝子異常は、すべての軟部肉腫のうち約1/4で認められる。一方、融合遺伝子異常を示さない残り3/4の軟部肉腫においても、いわゆるがん抑制遺伝子として働くP53、RB1、PTEN、APC、NF1、CDKN2などの点突然変異や部分欠失による機能低下、細胞周期・細胞増殖・転写活性・細胞内シグナル伝達などを制御する種々の遺伝子(CDK4、MDM2、KIT、WT1、PDGF/PDGFR、VEGFR、IGF1R、AKT、ALKなど)異常が認められ、その発症要因として関与していると考えられる。また、NF1遺伝子の先天異常を有する常染色体優性遺伝疾患である多発性神経線維腫症(von Recklinghausen病)では神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)やその他の悪性腫瘍が発生しやすく、乳がんなどの治療後の上肢リンパ浮腫を基盤に生じるリンパ管肉腫(Stewart-Treves症候群)、放射線照射後に発生するpostradiation sarcomaなども知られている。画像を拡大する■ 症状無痛性のしこり(軟部腫瘤)として発見されることが最も多い。疼痛(自発痛や圧痛)や局所熱感、患肢のしびれなどは時にみられるが必発ではなく、良悪性の鑑別にはあまり役立たない。腫瘤の大きさは米粒大~20cmを超えるような大きなものまでさまざまであるが、明らかに増大傾向を示すような腫瘤の場合、悪性の可能性が疑われる。ただし、一部の腫瘍(とくに滑膜肉腫)ではほとんど増大せずに10年以上を経過し、ある時点から増大し始めるような腫瘍もあるので注意が必要である。縦隔や後腹膜・腹腔内の軟部肉腫では、相当な大きさになり腫瘤による圧迫症状が出現するまで発見されずに経過する進行例が多いが、時に他の疾患でCTやMRI検査が行われ、偶然に発見されるようなケースも見受けられる。■ 分類正常組織との類似性(分化度: differentiation)の程度により病理組織学的に分類される。脂肪肉腫、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫(かつての悪性線維性組織球腫)、線維肉腫、横紋筋肉腫、神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)、滑膜肉腫などが比較的多いが、そのほかにもまれな種々の組織型の腫瘍が軟部肉腫には含まれ、組織亜型も含めると50種類以上にも及ぶ。■ 予後軟部肉腫には低悪性のものから高悪性のものまで多彩な生物学的悪性度の腫瘍が含まれるが、その組織学的悪性度(分化度、細胞密度、細胞増殖能、腫瘍壊死の程度などにより規定される)により、生命予後が異なる。また、組織学的悪性度(G)、腫瘍の大きさ・深さ(T)、所属リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)により病期分類が行われ、予後とよく相関する(表2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)軟部腫瘤の局在・局所進展度とともに、質的診断をするための画像診断としてはMRIが最も有用であり、必須といってもよい。腫瘍内の石灰化の有無、隣接骨への局所浸潤の有無、隣接主要血管・神経との位置関係をみるにはCTのほうが有用であるが、腫瘍自体の質的診断という点ではMRIよりも劣る。したがって、まずはMRIを施行し、画像診断できるもの(皮下に局在する良性の脂肪腫、典型的な神経鞘腫や筋肉内血管腫など)の場合には、外科的腫瘍切除を含め治療方針を生検なしに決定できる。しかし、軟部腫瘍の場合には画像診断のみでは診断確定できないものも少なくなく、良悪性の鑑別を含む最終診断確定のためには、通常生検が必要となる。生検はある程度の大きさの腫瘤(最大径がおおむね3cm以上)では、局麻下での針生検(ベッドサイドで、または部位によってはCTガイド下で)を行うが、針生検のみでは診断がつかない場合には、あらためて全麻・腰麻下での切開生検術が必要となることもある。また、径3cm未満の小さな表在性の腫瘍の場合、生検を兼ねて一期的に腫瘍を切除する(切除生検)こともあるが、この場合、悪性腫瘍である可能性も考慮し、腫瘍の周辺組織を腫瘍で汚染しないよう注意する(剥離の際に腫瘍内切除とならないよう気を付ける、切除後の創内洗浄は行わない、など)とともに、後の追加広範切除を考慮し、横皮切(とくに四肢原発例)は絶対に避けるなどの配慮も必要となる。皮下に局在する小さな腫瘍の場合、良悪性の区別も考慮されることなく一般診療所や病院で安易に局麻下切除した結果、悪性であったと専門施設に紹介されることがしばしばある。しかし、その後の追加治療の煩雑さや機能予後などを考えると、診断(良悪性の鑑別も含む)に迷った場合には、安易に切除することなく、骨・軟部腫瘍専門施設にコンサルトまたは紹介したほうがよい。生検により悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の確定診断がついたら、組織型・悪性度や必要に応じて肺CT、局所CT、骨シンチグラム、FDG-PET/CTなどを行い、腫瘍の局所進展度・遠隔転移(とくに肺転移)などを検索したうえで、治療方針を決定する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の原則は、外科的腫瘍広範切除(腫瘍を周囲の正常組織を含め一塊に切除する術式)であるが、必要に応じて術前あるいは術後に放射線治療を併用し、術後局所再発の防止を図る。組織型(とくに滑膜肉腫、横紋筋肉腫、未分化神経外胚葉腫瘍、粘液型脂肪肉腫など)や悪性度によっては、また、遠隔転移を有する腫瘍の場合には、抗悪性腫瘍薬による全身化学療法を併用する。4 今後の展望これまで長い間、軟部肉腫に対する有効な抗悪性腫瘍薬としてはドキソルビシン(商品名:アドリアシンなど)とイホスファミド(同:イホマイド)の2剤しかなかったが、近年ようやくわが国でも軟部肉腫に対する新規薬剤の国際共同臨床試験への参加や治験開発が進むようになってきた。2012年9月には、軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬であるパゾパニブ(同:ヴォトリエント)が、わが国でもオーファンドラッグとして製造・販売承認され、保険適応となった。また、トラベクテジン〔ET-743〕(同:ヨンデリス/2015年9月に承認)やエリブリン(同:ハラヴェン/わが国では軟部肉腫に対しては保険適応外)など複数の軟部肉腫に対する新規抗腫瘍薬の開発も行われている。5 主たる診療科整形外科、骨軟部腫瘍科 など軟部肉腫は希少がんであるにもかかわらず、組織型や悪性度も多彩で診断の難しい腫瘍である。前述のMRIでの画像診断のみで明らかに診断がつく腫瘍以外で良悪性不明の場合、小さな腫瘍であっても安易に一般診療所や病院で生検・切除することなく、骨・軟部腫瘍を専門とする医師のいる地域基幹病院の整形外科やがんセンター骨軟部腫瘍科にコンサルト・紹介するよう心掛けてほしい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス(各種がんのエビデンスデータベース「軟部肉腫」の情報)日本整形外科学会(骨・軟部腫瘍相談コーナーの情報)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)(骨軟部腫瘍グループの研究に関する情報)NPO骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)(医療従事者向けの診療・研究情報)患者会情報日本に「サルコーマセンターを設立する会」(肉腫患者および家族の会)1)上田孝文. と化学療法. 2013; 40: 318-321.公開履歴初回2013年06月06日更新2016年01月26日

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アリピプラゾールLAIのレビュー、メリット・デメリットは

 カナダ・アルバータ大学のPierre Chue氏らは、月1回アリピプラゾール持続性水懸筋注用の文献レビューを行った。Current medical research and opinion誌オンライン版2015年12月29日号の報告。 キーワードを用いて各種ウェブサイト(FDA、EMA、Otsuka、Lundbeck、NIH)のデータベースを検索し、関連論文のハンドサーチを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効性に関しては、52週のプラセボ対照試験、38週の経口アリピプラゾールとの非劣性試験、および急性再発統合失調症成人入院患者において再発防止が認められている。・アリピプラゾール持効性注射剤(LAI)は、パリペリドンLAIとの直接比較試験より、健康関連QOLや機能の改善が認められており、他の第2世代抗精神病薬と比べ、費用対効果が高いと考えられる。・6ヵ月のミラーイメージスイッチ試験より、従来の抗精神病薬治療と比較して、入院や関連コストの削減が認められた。・安全性・忍容性に関しては、新たな報告はなく、経口アリピプラゾールと同様であった。 結果を踏まえ、著者らは「経口アリピプラゾールの治療経験やLAIの現在の有用性は、臨床にさまざまな潜在的メリットをもたらすため、統合失調症の治療選択肢として検討すべきことが示唆された」としている。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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術後の栄養管理、診療科ごとの傾向と課題は?

 術後の栄養管理は、患者の回復に大きな影響を及ぼす。2010年より「栄養サポートチーム加算 200点(週1回)」の算定が可能となり、さまざまな病院で栄養サポートチーム(Nutrition Support Team、以下NST)の活動をはじめとした栄養管理に対する関心がますます高まっている。 そこで、今回は稲葉 毅氏(帝京大学医学部附属病院 外科)らによる、NSTなどの活動を通じて明らかになった各診療科の栄養管理における傾向と課題、さらにNSTの関わり方を考察した論文「外科系病棟の栄養管理 ―診療科による栄養管理の相違―」1)を紹介する。 著者の勤務する大学病院では、2006年にNSTが設置されたが、NSTへのコンサルト数は十分とは言えなかった。そこで、2010年度より褥瘡対策チームとの合同回診を開始し、栄養不良状態の患者に対応し始めた。その結果、褥瘡を有する患者には栄養不良患者が多いことが明らかになり、NSTが対応する診療科・症例が増加した。併せて、2008年から参加している欧州代謝栄養学会のnutritionDay栄養調査から、栄養管理のさらに詳しい状況を探ることができた。これらの活動における、従来NSTにコンサルトのなかった診療科との接触を通じて、術後における栄養管理の特色が明らかになった。内科系・外科系にみられる術後の栄養管理の傾向 2つの活動から示された、主な診療科における術後の栄養管理の傾向は以下のとおり。【外科系】・消化器外科:悪性腫瘍や消化管狭窄などのため、栄養状態不良の患者が多く、積極的な栄養療法が日常的に行われていた。・脳神経外科:手術後に経腸栄養を投与されているケースが多かった。術後高血糖を考慮し、糖尿病用の栄養剤を多く用いられていた。・心臓血管外科:栄養過多患者が多く、水分量を厳密に管理される傾向があるため、経腸栄養が必要なケースは少なかった。・耳鼻咽喉科:咽喉頭がんに対して栄養管理が必要なケースがあり、中心静脈栄養や末梢静脈栄養で対応されていた。また、経管栄養には習熟していない印象であった。【内科系】・神経内科:胃瘻を造設するケースが多く、経管栄養を積極的に用いる傾向にあった。しかし、栄養投与量は他科に比べて低かった(成人男性で900kcal/day程度であった)。・血液内科・呼吸器内科:慢性的に栄養不良な患者が多いが、基本的に経口摂取可能であるため栄養補助療法が十分に行われていない傾向にあった。各診療科における術後の栄養管理の課題とは さらに、著者は、各診療科において、患者の性質ごとに術後の栄養管理の課題が存在することを指摘した。 まず、内科系の診療科は、実際の摂食量にかかわらず、入院時に設定されたエネルギー制限食が漫然と投与されているケースがみられる。これに対して、外科系の診療科は、こうした漫然とした投与は少ないものの、中心静脈栄養使用時の脂肪製剤投与不足や、経腸栄養使用時の微量元素製剤の投与欠如などがみられる。 そのうえで著者は、今後このような問題症例をどのように発見していくかが課題であると強調した。さらに、NSTは自施設における各診療科の各特長を踏まえたうえで、各科の栄養治療法を学びながら栄養管理を進めていく必要があると考察した。 原著には、より詳細な調査結果や考察が記載されている。術後の栄養状態が不良な患者を抱えている先生方にはぜひ一読いただき、NSTへのコンサルトを含めた栄養管理方法を改めて検討していただきたい。

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カナダ開発の腎不全リスク予測ツール、国際的に有用/JAMA

 カナダで開発された腎不全リスクの予測ツールが、国際的に有用であることを、カナダ・マニトバ大学のNavdeep Tangri氏らが、30ヵ国31コホートの患者集団で検証した結果、報告した。カナダで開発されたのは、年齢、性別、eGFR、ACR濃度を因子としたもので、2集団を対象に開発・検証が行われていた。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。30ヵ国ステージ3~5の患者72万1,357例のデータを含む31コホートで検証 研究グループは、同ツールについて、他国および腎臓専門医のケアを受けていないCKD集団で検証を行う必要があるとして、地理的に異なる患者集団について、メタ解析データを通じてリスク予測ツールの精度を検証した。 末期腎不全に関するデータをCKD Prognosis Consortiumの参加コホートから収集。対象は31コホート、4大陸30ヵ国から参加したステージ3~5の患者72万1,357例であった。各コホートのデータが集められたのは1982~2014年であった。 収集したデータを2012年7月~15年6月に分析。オリジナルツール(4因子を用いたもの)で各コホートのハザード比を算出し、ランダム効果メタ解析で統合し、新たにプール腎不全リスクツールを生成した。オリジナルツールとプールツールの識別能を比較し、地理的な検定因子の必要性を評価した。 主要評価項目は、腎不全(透析または腎移植治療を要する)とした。優れた識別能を示したが、非北米コホートでは一部で追加因子の必要性も判明 フォローアップ中央値4年の間に、CKD患者72万1,357例のうち、腎不全が認められたのは2万3,829例であった。 31コホートのうち16コホート(61万7,604例)は北米、15コホート(10万3,753例)はアジア、ヨーロッパ、オーストラリアのコホートであった。平均年齢は74歳、eGFRは46mL/分/1.73m2、大半が男性(うち97%が退役軍人)、女性はまれ(うち75%が沖縄の女性)であった。 オリジナルツールは、すべてのコホートにおいて優れた識別能(腎不全を呈した人と呈さなかった人を区別する能力)を示した。全体のC統計値は2年時点で0.90(95%信頼区間[CI]:0.89~0.92、p<0.001)、5年時点でも0.88(0.86~0.90、p<0.001)であった。年齢、人種、糖尿病有無別で評価したサブグループでも同程度の識別能が示された。 これらの識別能はプールツールによっても改善はされなかったが、検定(予測リスクと観察結果との差)の結果、北米コホートには適切だが、非北米コホートではリスクの過大評価が認められるものがあった。これらについては地理的な検定因子の因子で、2年時点でベースラインリスクを32.9%低下、5年時点で16.5%低下し、2年時点で15コホートのうち12コホートで、5年時点では13コホートのうち10コホートで検出能を改善できた(それぞれp=0.04、p=0.02)。 著者は、「カナダ人コホートで開発した腎不全リスクツールは、31の多様なコホートでも高い識別能を示し、十分な検出能があることが示された。ただし一部では地理的な追加因子が必要と思われた」とまとめている。

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション2

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション1表1は新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。低下体温は投与前体温から投与後体温を引いた値です。表1 薬剤投与前後の体温調査データ(再掲)統計学の説明をする場合、データ数が少ない例のほうがわかりやすいので、表1の新薬Yの300例、従来薬Xの400例から各10例を選び、表2を作成しました。こちらのデータで説明していきましょう。表2 各10例のデータ■平均値表2のデータについて、まず、新薬Yの投与前体温と投与後体温の平均値を計算してみましょう。次に、求められた平均値の差分(低下体温)を求めてください。従来薬Xについても、同様の計算をしてみましょう(表3)。表3 平均値による解熱効果の比較表3からどのようなことがいえるでしょうか?新薬Y、従来薬Xのどちらも、投与後体温平均値は投与前平均値に比べて低くなっていて、解熱効果があるといえますね。ただし、どれくらい下回れば解熱効果があったといえるかという、統計学的基準はありません。ここでは仮に、投与前の体温より投与後の体温が下回れば解熱効果があったとしましょう。ほかにも言えることがありますね。新薬Yの低下体温1.81℃が、従来薬Xの低下体温2.00℃に比べ値が小さかったので、従来薬Xのほうが効果があるようにみえます。これは、新薬Y(n=10)と従来薬X(n=10)を比較した計算結果を見る限り、間違いではありませんが、これでは新薬Yを患者に薦めることはできません。そこで、何かデータの見方が間違っていたのではないかと、疑問を持つことが大切です。つまり、もっとデータを見る目を鍛えないといけないということです。■中央値体温のように数量で測定されたデータを「量的データ」といいます。量的データは平均値だけでなく、中央値を見ることが必須です。中央値(median)とは、データを降順あるいは昇順に並べたとき、真ん中に位置する値です。たとえば、データが37.5、38.2、38.6の3個の場合、中央値は38.2になります。では、表2の従来薬Xの投与前体温と投与後体温の中央値を求めてみましょう。このデータのように、データの個数が偶数の場合の中央値の算出方法は、真ん中に位置する2つの値の平均となります。したがって、中央値は37.8となります(表4)。表4 従来薬X投与前データの中央値では、平均値と中央値を比較してみましょう。平均値(38.65℃)のほうが、中央値(37.8℃)より値が大きくなっています。その理由は、平均値の計算に、ほかに比べて大きな値(ここでは44.5℃)のデータが含まれているからです。そのデータに引きずられて値が大きくなっているのです。一方、中央値は44.5℃と大きな値のデータがあっても、真ん中の値なのでその影響は受けません。ですから、平均値のほうが中央値より値が大きくなっているのです。■外れ値この学習では仮に、解熱剤は一般に患者の体温が37~40℃位の場合に効果があるとしましょう。したがって、表2の投与前体温は数例を除いて、ほぼこの範囲に入っています。ほとんどの患者の体温が37~40℃の間にある中で、X_196の患者(44.5℃)は本来、この薬剤を適用してはいけない患者だった可能性がありますね。44.5℃は、通常データでなく異常なデータだといえます。このようなデータを統計学では「外れ値(outlier)」といいます。値の大きな外れ値がある場合、平均値は大きめに出るので平均値を用いて分析するのは危険です。つまり、外れ値がある場合は中央値を用いて分析するということになります。ここで知っておいていただきたいのは、平均値と中央値を両方計算し、両者の値がほぼ同じであるかどうかを確認することです。では、表2の新薬Yの投与前体温の中央値を求めて、平均値と比較してみましょう。35.2 37.0 37.4 37.7 38.4 38.5 38.6 38.7 38.8 39.6中央値は38.45℃になりますね。新薬Yの投与前体温は、平均値37.99、中央値38.45です。両者は異なるので中央値を適用します。新薬Yは、平均値が中央値より小さくなっています。その原因は値の小さな外れ値(35.2℃)があるからです。新薬Y投与後、従来薬X投与後の中央値を求め、平均値と中央値の比較表を作成してみましょう(表5、6)。表5 新薬Yの平均値と中央値の比較表6 従来薬Xの平均値と中央値の比較先ほど、平均値の差から、「新薬Yの低下体温1.81℃が、従来薬Xの低下体温平均値2.00℃に比べ値が小さかったので、従来薬Xのほうが効果があるようにみえる」としましたが、これが間違いであったということがわかりますね。このように、外れ値がある場合は中央値で比較すればよいということです。表7で中央値を計算した結果を見ると、中央値の差による新薬Yの低下体温は2.05℃で従来薬Xの低下体温1.25℃を上回り、新薬Yのほうが従来薬Xに比べ解熱効果があったといえます。表7 中央値による解熱効果の比較表5と表6をみると、平均値と中央値が「異なる」と「ほぼ同じ」が混在しています。このように1つでも「異なる」があれば、中央値で分析してください。ただし通常は、よく使われている平均値のほうが中央値より使いやすい場合が多いようです。そこで、外れ値を除外して、平均値で比較しても構いません。実際に計算してみると、表8のようになります。低下体温は、新薬Yのほうは2.00℃、従来薬Xは1.40℃で、新薬Yのほうが従来薬Xより効果があったといえます。表8 外れ値を除外した平均値による解熱効果の比較このように、中央値、外れ値を除外した平均値、どちらで分析を行っても結論は同じということになります。■今回のポイントインデックスページへ戻る

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循環器内科 米国臨床留学記 第5回

第5回:米国でよく使うけれど日本にない薬日本と米国の循環器領域の実臨床に、どのような違いがあるか見ていきたいと思います。米国で頻用されるわりに、日本で使われていない薬が幾つかあります。regadenoson 心筋シンチグラムアメリカで最も使用されている負荷薬剤はregadenoson(商品名:Lexiscan)で、80%以上のシェアを占めます。2008年にFDAに承認された比較的新しい薬剤です。負荷心筋シンチの薬剤として、日本ではアデノシンとジピリダモールが日本では使用されていると思います。これらの薬剤はアデノシンA2A受容体を介して、冠動脈の拡張を誘発します。しかしながら、同時にA1、A2Bなどの他のアデノシン受容体を刺激してしまうため、からだのほてり、息切れ、胸部不快感が起こり、房室ブロックや気管支れん縮を惹き起こすこともあります。regadenosonは、選択性adenosine A2A受容体刺激剤であり、副作用を起こす可能性が少なくて済みます。アデノシンと比べても急速に作用し、効果も長続きするため、持続静注が不要です。シリンジポンプも不要で、約10秒で静注すればよいので、きわめて使い勝手が良い薬です。 また、運動負荷試験で目標心拍数に到達しなかった場合は、アデノシンやジピリダモールでは、運動負荷を中止して、薬物負荷をやり直さなければなりません。運動負荷試験に費やした時間が無駄になります。regadenosonは運動負荷で目標心拍数に到達しないとわかった段階で、試験を薬物負荷に変更して、regadenosonを静注して使用することも可能です。regadenosonはアデノシンとの比較試験でも、有効性は同等でかつ副作用が少ないことが確認されています(Mahmarian JJ, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2009;2:959.)。実臨床でもregadenosonは痙攣の閾値を下げるため、てんかんの既往のある症例ではadenosineを使うことがありますが、基本的にはregadenosonを使うことがほとんどです。微小気泡コントラスト心エコーコントラスト心エコー法は、心腔内の異常構造物(腫瘍、血栓など)の同定や心室筋の壁運動、虚血性心疾患における心筋の灌流診断やviability評価にも非常に有用です。米国では、第2世代の微小気泡造影剤であるperflutoren脂肪マイクロスフェア(商品名:Definity)、perflutorenプロテイン型マイクロスフェア(同 Optison)が主に使用されています。 ご存じのように、米国の患者はBMIが高く、心エコーの解像度は日本人より悪いことが多いです。心エコーの20%以上で壁運動の描出が困難であるとの報告もあり、自然と微小気泡造影剤が必要な症例も多く、病院によっては技師の判断で使用が許されています。運動もしくはドブタミン負荷心エコーにも、微小気泡造影剤はよく使われます。われわれの施設では虚血性心疾患が疑われ、運動可能な症例に運動負荷心電図と心エコーを積極的に用いていますが、全例で微小気泡剤であるperflutorenを使用します。運動負荷心エコーは、時間や人手がかかりますし、運動直後は心臓が激しく左右に振れており、心筋の描出が難しいことが少なくありません。そういった事情のためか、日本では心筋シンチグラムに比べて、運動負荷心エコーを行っている施設は少ないと思われます。私自身も日本では負荷心エコーの経験は豊富ではありませんでしたが、負荷後の解像度が悪く、診断がつかないということが度々ありました。そのような症例でもperflutorenを使えば、収縮期の壁厚変化や心内膜の運動をより正確に評価できます。微小気泡造影剤は、血栓など異常構造物の描出にも有用です。図に示したのは、左室内に多数の小血栓を認めた症例です。perflutoren使用前は、解像度が悪く、心尖部は左室心内膜側の辺縁すらしっかり描出できません。perflutoren使用後は、左室心内膜側の辺縁が明確になり、血栓も容易に検出できています。 なお、perflutorenなどの第2世代微小気泡造影剤は、心内シャントが確認されている症例では、微小マイクロスフェアが細動脈にトラップされる可能性があるため、禁忌となっています。そのためperflutoren使用前に生理食塩水を使用したバブルテストを行い、心内シャントの存在を除外することが必要となります。私が日本にいた頃は、同じく第2世代であるレボビストが使用されていましたが、日本心エコー図学会によると供給が停止しており、日本で使用できる微小気泡造影剤の入手が難しいようです(参考:日本心エコー図学会 Q&A http://www.jse.gr.jp/QA/echo.html)。

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